IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サムファン ティーエフ カンパニー,リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-マスク及びその製造方法 図1
  • 特表-マスク及びその製造方法 図2
  • 特表-マスク及びその製造方法 図3
  • 特表-マスク及びその製造方法 図4
  • 特表-マスク及びその製造方法 図5
  • 特表-マスク及びその製造方法 図6
  • 特表-マスク及びその製造方法 図7
  • 特表-マスク及びその製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】マスク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20240521BHJP
   D06M 13/188 20060101ALI20240521BHJP
   D06M 11/74 20060101ALI20240521BHJP
   D01D 5/04 20060101ALI20240521BHJP
   D01D 5/08 20060101ALI20240521BHJP
   D04H 1/728 20120101ALI20240521BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
D06M13/188
D06M11/74
D01D5/04
D01D5/08 D
D04H1/728
B32B5/26
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501310
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(85)【翻訳文提出日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 KR2021008630
(87)【国際公開番号】W WO2022039384
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】10-2020-0102950
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0071726
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522490907
【氏名又は名称】サムファン ティーエフ カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】タク,ビョン ファン
(72)【発明者】
【氏名】アン,ユ ジン
【テーマコード(参考)】
3B211
4F100
4L031
4L033
4L045
4L047
【Fターム(参考)】
3B211CC03
3B211CD02
4F100AD07
4F100AD07A
4F100AD07B
4F100AD07C
4F100AH02A
4F100AH02B
4F100AH02C
4F100AK07
4F100AK07D
4F100AK42
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100AK42C
4F100AR00D
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA21B
4F100BA21C
4F100DC11
4F100DC11A
4F100DG01
4F100DG01B
4F100DG01C
4F100DG15
4F100DG15D
4F100GB56
4F100GB56B
4F100GB56C
4F100GB66
4F100JB06
4F100JB06D
4F100JC00
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4L031AA18
4L031AB32
4L031AB34
4L031BA02
4L033AA07
4L033AB05
4L033AB07
4L033BA16
4L045AA01
4L045AA05
4L045AA08
4L045BA34
4L047AB02
4L047AB08
4L047CA01
4L047CA04
4L047CC03
4L047CC12
(57)【要約】
本発明は、着用者の顔面を覆うマスク本体と、前記マスク本体の両側に結合した着用紐とを含むマスクであって、前記マスク本体は、メッシュ構造の支持層と、前記支持層の外面に形成され、汚染物質をろ過するフィルタコーティング層とからなるフィルタ部材を含み、前記フィルタコーティング層は、前記支持層に電気紡糸された微細繊維のウェブからなることを特徴とする。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の顔面を覆うマスク本体と、前記マスク本体の両側に結合した着用紐とを含むマスクであって、
前記マスク本体は、メッシュ構造の支持層と、前記支持層の一側表面に形成され、汚染物質をろ過するフィルタコーティング層とからなるフィルタ部材を含み、
前記フィルタコーティング層は、前記支持層に電気紡糸された微細繊維のウェブからなることを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記フィルタコーティング層は、前記支持層の一側表面に電気紡糸された第1の微細繊維のウェブからなる第1のフィルタコーティング層と、前記第1のフィルタコーティング層の表面に電気紡糸された第2の微細繊維のウェブからなる第2のフィルタコーティング層とを含み、
前記第2の微細繊維の径は、前記第1の微細繊維の径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記支持層と前記フィルタコーティング層は、ポリエステル(PET)材質からなることを特徴とする請求項2に記載のマスク。
【請求項4】
前記支持層は、5~50デニール太さのポリエステル原糸を、100~150メッシュで製織してなされることを特徴とする請求項3に記載のマスク。
【請求項5】
前記第1の微細繊維の太さは、10~40μmであり、前記第2の微細繊維の太さは、0.05~2μmであることを特徴とする請求項2に記載のマスク。
【請求項6】
前記支持層又は前記フィルタコーティング層の少なくともいずれか1つは、グラフェン成分又はリノレン酸成分の少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項7】
前記マスク本体は、更に、前記支持層の他側表面に結合され、複数の貫通孔が形成された接顔部材を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のマスク。
【請求項8】
前記接顔部材は、撥水性のポリプロピレン(PP)材質からなる不織布であることを特徴とする請求項7に記載のマスク。
【請求項9】
前記マスク本体の外面には、前記フィルタ部材と前記接顔部材が超音波融着により互いに接合した接合部が形成され、
前記接合部は、前記フィルタ部材と前記接顔部材がそれぞれの枠部に沿って互いに接合され、前記マスク本体を形成する第1の接合部と、前記フィルタ部材と前記接顔部材がマスク本体の中央部で互いに接合され、前記マスク本体が着用者の顔面に密着することを防止するリブ機能を果たす第2の接合部とを含むことを特徴とする請求項8に記載のマスク。
【請求項10】
前記接顔部材は、グラフェン成分又はリノレン酸成分の少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項7に記載のマスク。
【請求項11】
原糸をメッシュ構造で製織して、支持層を形成するステップと、
電気紡糸により、前記支持層の一側表面に、第1の微細繊維のウェブからなる第1のフィルタコーティング層を形成するステップと、
電気紡糸により、前記第1のフィルタコーティング層の表面に、第2の微細繊維のウェブからなる第2のフィルタコーティング層を形成するステップと、
前記第1のフィルタコーティング層及び前記第2のフィルタコーティング層が形成された前記支持層の他側表面に、接顔部材を結合するステップとを含み、
前記第2の微細繊維の径は、前記第1の微細繊維の径よりも小さく、前記接顔部材には、複数の貫通孔が形成されたことを特徴とするマスクの製造方法。
【請求項12】
前記支持層と前記第1のフィルタコーティング層及び前記第2のフィルタコーティング層は、ポリエステル材質からなり、
前記接顔部材は、撥水性のポリプロピレン材質からなる不織布であることを特徴とする請求項11に記載のマスクの製造方法。
【請求項13】
原糸を用いて、メッシュ構造の支持層を形成するステップと、
電気紡糸により、前記支持層の一側表面に、第1の微細繊維のウェブからなる第1のフィルタコーティング層を形成するステップと、
電気紡糸により、前記第1のフィルタコーティング層の表面に、第2の微細繊維のウェブからなる第2のフィルタコーティング層を形成するステップとを含み、
前記第2の微細繊維の径は、前記第1の微細繊維の径よりも小さいことを特徴とするマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスク及びその製造方法に関し、より詳しくは、マスク本体を構成するフィルタ部材が、メッシュ構造の支持層の表面に非常に薄いフィルタ層がコートされた形態に構成されることで、着用者の呼吸が容易であり、且つ、汚染物質や細菌に対する過効率も優れたマスク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マスクは、空気中に含まれた粉塵、花粉、粒子状物質、病原性細菌など、人体に有害な汚染物質が人体の呼吸器内に吸入することを防止するためのものであって、一般に、着用者の顔面を覆うマスク本体と、前記マスク本体の左右両端に、着用者の耳に掛けるように、丸状の耳ひもを結合した形態からなる。
【0003】
従来のマスクは、主に、綿素材で製造されているが、このような綿素材のマスクは、鼻腔や口腔を通じて冷たい空気を直接吸い込むことを防止するので、風邪などの予防は可能であるものの、組織が粗い平面綿織物の特性から、綿織物の組織間に形成された気孔よりも小さいウイルス、細菌、粒子状物質などのようにサイズが非常に小さな有害物質の遮断には、効果的ではないという問題点があった。
【0004】
これにより、最近は、黄砂、粒子状物質、微小粒子状物質、病原性細菌などを遮断できるように、不織布及びフィルタなどを混用して、フィルタリング性能が改善した保健用・防疫用マスクに関する需要が急激に増加する傾向であり、このような保健用・防疫用マスクに関する具体的な内容は、特許文献1などに開示されている。
【0005】
前記保健用・防疫用マスクの代表としては、メルトブローン(melt blown)不織布フィルタを使用するKF(Korea Filter)80、KF94マスクが挙げられるが、これらの保健用・防疫用マスクは、殆ど、マスク本体の外形維持と汚染物質のろ過のために、静電気を帯びる繊維を一定の厚さ(0.15~0.25mm)で積層して、マスク本体を形成する。
【0006】
そこで、従来の保健用・防疫用マスクは、空気がマスク本体を通過すると、前述した静電気により、空気中に含まれた微細な汚染物質が吸着されるようになっているが、この場合、着用者が呼吸する空気は、このようなマスクの厚さを通過しなければならないので、吸気抵抗の増加で長時間着用すると、着用者の呼吸が不便となる問題点があった。
【0007】
また、従来の保健用・防疫用マスクは、静電気により汚染物質を吸着する方式であるので、日常生活では、微細汚染物質に対する遮断効率は優れているが、プールやウォーターパークのような遊泳場、又は雨天時など、水分に露出した環境で着用するようになると、マスク本体が水でぬれて、不織布フィルタの静電気が失われ、汚染物質に対するろ過機能が十分作動しないことになり、感染者の飛沫などを介して伝わる重症急性呼吸器症候群(SARS)や新型コロナウイルスなどの病原性細菌やバクテリアを遮断することはできないという問題点がある。
【0008】
また、従来の保健用・防疫用マスクは、前述したように、静電気繊維を一定の厚さで積層しなければならないので、遊泳場で着用すると、マスク本体がぬれて、不織布全体に浸透した水粒子がマスク本体の微細気孔を塞ぐことになり、着用者の呼吸が更に困られるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国公開特許第2011-0046906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述したような従来技術の問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、マスク本体の厚さを格段に薄くして、着用者の呼吸が容易であり、且つ、汚染物質や細菌に対するろ過効率も優れたマスク及びその製造方法を提供することである。
【0011】
また、本発明の他の目的は、マスク本体が水でぬれた場合でも、水切りが優れて、着用者の呼吸が容易であるだけでなく、汚染物質や細菌に対するろ過効率も、水でぬれる前とほとんど同等水準に維持されることで、水遊び場又は雨天時のように水分に露出した環境でも、持続的な着用が可能であり、感染者の飛沫などを介して伝わる病原性細菌の感染を防止することができるマスク及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記のような目的を達成するために、本発明は、着用者の顔面を覆うマスク本体と、前記マスク本体の両側に結合した着用紐とを含むマスクであって、前記マスク本体は、メッシュ構造の支持層と、前記支持層の一側表面に形成され、汚染物質をろ過するフィルタコーティング層とからなるフィルタ部材を含み、前記フィルタコーティング層は、前記支持層に電気紡糸された微細繊維のウェブからなることを特徴とする。
【0013】
前記フィルタコーティング層は、前記支持層の一側表面に電気紡糸された第1の微細繊維のウェブからなる第1のフィルタコーティング層と、前記第1のフィルタコーティング層の表面に電気紡糸された第2の微細繊維のウェブからなる第2のフィルタコーティング層とを含み、前記第2の微細繊維の径は、前記第1の微細繊維の径よりも小さい。
【0014】
前記支持層とフィルタコーティング層は、ポリエステル(PET)材質からなる。
【0015】
前記支持層は、5~50デニール太さのポリエステル原糸を、100~150メッシュで製織してなされる。
【0016】
前記第1の微細繊維の太さは、10~40μmであり、前記第2の微細繊維の太さは、0.05~2μmである。
【0017】
前記支持層又は前記フィルタコーティング層の少なくともいずれか1つは、グラフェン成分又はリノレン酸成分の少なくともいずれか1つを含む。
【0018】
前記マスク本体は、更に、前記支持層の他側表面に結合され、複数の貫通孔が形成された接顔部材を含む。
【0019】
前記接顔部材は、撥水性のポリプロピレン(PP)材質からなる不織布である。
【0020】
前記マスク本体の外面には、前記フィルタ部材と前記接顔部材が超音波融着により互いに接合した接合部が形成され、前記接合部は、前記フィルタ部材と前記接顔部材がそれぞれの枠部に沿って互いに接合され、前記マスク本体を形成する第1の接合部と、前記フィルタ部材と前記接顔部材がマスク本体の中央部で互いに接合され、前記マスク本体が着用者の顔面に密着することを防止するリブ機能を果たす第2の接合部とを含む。
【0021】
また、本発明によるマスクの製造方法は、原糸をメッシュ構造で製織して、支持層を形成するステップと、電気紡糸により、前記支持層の一側表面に、第1の微細繊維のウェブからなる第1のフィルタコーティング層を形成するステップと、電気紡糸により、前記第1のフィルタコーティング層の表面に、第2の微細繊維のウェブからなる第2のフィルタコーティング層を形成するステップと、前記第1及び第2のフィルタコーティング層が形成された前記支持層の他側表面に、接顔部材を結合するステップとを含み、前記第2の微細繊維の径は、前記第1の微細繊維の径よりも小さく、前記接顔部材には、複数の貫通孔が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によるマスクは、マスク本体を構成するフィルタ部材が、メッシュ構造の支持層と、前記支持層の表面に形成された薄肉のフィルタコーティング層とからなることで、前記微細気孔を介した空気吸入流路の長さ(フィルタコーティング層の厚さに対応)が非常に短いため、従来、厚い不織布材質からなる保健用・防疫用マスクと比較して、汚染物質(花粉、粒子状物質、病原性細菌など)に対するろ過効率は、同等レベルで優れており、その上に、吸気抵抗が少なくて、着用者の呼吸が非常に容易となる。
【0023】
また、本発明によるマスクは、静電気的な引力ではなく、前記フィルタコーティング層に形成された微細気孔により汚染物質をろ過する方式であるので、雨天時又は遊泳場などのように水分に露出した環境でフィルタ部材が水でぬれた場合でも、汚染物質に対するろ過効率を、水でぬれる前と同等水準に維持することができる。
【0024】
また、本発明によるマスクは、水分に露出した環境でフィルタ部材がぬれても、薄いフィルタコーティング層を通過する水が支持層の網目を通じて抜き出て、フィルタ部材の微細気孔が詰まらないので、着用者の呼吸が容易であり、持続的な着用が可能であり、感染者の飛沫などを介して伝わる病原性細菌の感染を非常に効率よく防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係るマスクの前面を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るマスクの背面を示す斜視図である。
図3図1のA-A部に沿う断面図である。
図4図3における第1及び第2のフィルタコーティング層のそれぞれの微細構造と、これに対するSEM写真を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るマスクの製造方法を説明するための工程図である。
図6】本発明の一実施形態に係るマスクの性能(粉塵ろ過効率、顔面部吸気抵抗)試験結果を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係るマスクの性能(細菌ろ過効率)試験結果を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係るマスクの性能(細菌ろ過効率)試験結果の試験成績書を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、本発明の好適な実施形態を、添付の図面を用いて、具体的に説明する。
【0027】
図1及び図2はそれぞれ、本発明の一実施形態に係るマスクの前面と背面を示す斜視図であり、図3は、図1のA-A部に沿う断面図である。
また、図4は、図3における第1及び第2のフィルタコーティング層のそれぞれの微細構造と、これに対するSEM写真を示す図であり、図5は、本発明の一実施形態に係るマスクの製造方法を説明するための工程図である。
【0028】
本発明の一実施形態に係るマスクは、着用者の顔面を覆うマスク本体1と、前記マスク本体1の両側に結合した着用紐2とを含む。
【0029】
また、前記マスク本体1は、汚染物質をろ過するフィルタ部材10を含み、本明細書の詳細な説明及び特許請求の範囲において、「汚染物質」とは、花粉、粒子状物質、微小粒子状物質、病原性細菌(又は、バクテリア)、前記病原性細菌が含まれた飛沫などを全て含む概念である。
【0030】
また、前記フィルタ部材10は、メッシュ(mesh)構造の支持層11と、前記支持層11の一側表面(すなわち、外面又は内面)に形成され、汚染物質をろ過するフィルタコーティング層12、13とを含み、本実施形態では、一例として、前記フィルタコーティング層12、13が、支持層11の外面に形成されている。
【0031】
ここで、前記支持層11は、マスク本体1又はフィルタ部材10の形状を維持するために、空気流動や水切りに優れたメッシュ構造(すなわち、網状構造)からなり、本発明では、公知の高分子樹脂材質の繊維原糸のいずれか1つを製織して、前記メッシュ構造を形成している。
【0032】
このために、本実施形態では、一例として、前記支持層11がポリエステル(PET)原糸を用いて、メッシュ構造に織造され、具体的には、5~50デニール(denier)太さのポリエステル原糸を、100~150メッシュで製織する。
【0033】
また、前記フィルタコーティング層12、13は、微細な汚染物質をろ過するフィルタとしての機能を果たし、本発明では、高分子樹脂溶融液(すなわち、紡糸溶液)を前記支持層11の外面に電気紡糸して得られる微細繊維のウェブ(web)からなり、前記電気紡糸に関する具体的な内容は、公知技術であるので、ここでは、これに関する体的な説明は省略する。
【0034】
このように、本発明によるマスクは、空気流動や水切りに優れた前記支持層11が、マスク本体1又はフィルタ部材10の形状を維持し、その外面に形成されたフィルタコーティング層12、13は、汚染物質をろ過する実質的なフィルタ機能のみを果たすように構成される。
【0035】
そこで、前記フィルタコーティング層12、13は、汚染物質をろ過するためのウェブを形成するために必要な厚さで、支持層11の外面に積層(又は、コーティング)されると十分であるが、本実施形態では、一例として、前記フィルタコーティング層12、13が約10~500μmの厚さで形成される。
【0036】
これにより、従来の保健用・防疫用マスクで使用されるメルトブローン不織布フィルタの厚さ(0.15~0.25mm)と比較すると、本発明によるマスクは、汚染物質をろ過する実質的なフィルタ部を形成する繊維ウェブ(すなわち、フィルタコーティング層)の厚さ(10~500μm)が、コーティング膜程度の水準で格段に薄くなる。
【0037】
その結果、本発明によるマスクは、呼吸時、フィルタコーティング層12、13に形成された微細気孔(後述する)を介した空気流路の長さ(すなわち、フィルタコーティング層の厚さに対応)が非常に短いので、相対的に空気流路の長さ(すなわち、不織布フィルタの厚さに対応)の長い従来の不織布フィルタで製作された保健用・防疫用マスクと比較して、マスクの主要性能である顔面部吸気抵抗が大きく低下するメリットを有する。
【0038】
そこで、本発明によるマスクは、花粉遮断用や粒子状物質遮断用マスクとして使われる場合、汚染物質に対するろ過効率は、従来の保健用・防疫用マスクと同等水準で優れ、且つ、着用者の呼吸は、格段に容易となる効果を奏する。
【0039】
また、本発明によるマスクは、前記フィルタコーティング層12、13が水を貯蔵する程度の厚さを有さないので、雨天時又は遊泳場(プール、ウォーターパークなど)のように水分に露出した環境でマスクを着用する場合、フィルタ部材10がぬれても、フィルタコーティング層12、13を通過する水がフィルタコーティング層12、13に浸透するか、後述するように、フィルタコーティング層12、13に形成された微細気孔にたまっておらず、支持層11の網目を通じて殆ど抜け出るようになる。
【0040】
そこで、本発明によるマスクは、マスク本体1がぬれても、水切りが優れており、後述するフィルタ部材10の微細気孔(具体的には、フィルタコーティング層の微細気孔)が詰まらないので、着用者の呼吸が容易であり、水分に露出した環境でも、持続的な着用が可能である。
【0041】
一方、本発明によるマスクは、前記フィルタコーティング層12、13が1つのコーティング層からなるように構成することもできるが、汚染物質に対するろ過効率を向上するために、必要によっては、前記フィルタコーティング層12、13が複数のコーティング層からなるように構成することもできる。
【0042】
このために、本実施形態では、一例として、前記フィルタコーティング層12、13が、前記支持層11の外面に電気紡糸された第1の微細繊維(図示せず)のウェブからなる第1のフィルタコーティング層12と、前記第1のフィルタコーティング層12の外面に電気紡糸された第2の微細繊維(図示せず)のウェブからなる第2のフィルタコーティング層13とを含む。
【0043】
ここで、前記第1のフィルタコーティング層12は、支持層11の外面に直接電気紡糸されて、相対的にサイズの大きいマクロ気孔(macro pore)である第1の微細気孔12aを形成し、前記第2のフィルタコーティング層13は、第1のフィルタコーティング層12の外面に電気紡糸されて、前記第1の微細気孔12aを区画して、相対的にサイズの小さいマイクロ気孔(micro pore)である第2の微細気孔13aを形成する。
【0044】
このために、前述した電気紡糸段階において、前記第2のフィルタコーティング層13を形成する第2微細繊維の径は、前記第1のフィルタコーティング層12を形成する第1の微細繊維の径よりも小さく形成されるように調節するのが望ましい。
【0045】
本実施形態では、一例として、前記フィルタコーティング層12、13は、支持層11との接着性を考えて、同一材質であるポリエステル材質からなることと構成したが、これに限定されるものではなく、必要によっては、支持層11と異なる高分子樹脂材質からなることもできる。
【0046】
また、本実施形態では、一例として、前記第1の微細繊維の太さは、10~40μmであり、前記第2の微細繊維の太さは、0.05~2μmである。
【0047】
このように構成される本発明によるマスクのフィルタ部材10は、従来の不織布フィルタで製作された保健用・防疫用マスク(すなわち、KF80又はKF94マスクなど)のように静電気的な引力や斥力により汚染物質を吸着する方式ではなく、前記フィルタコーティング層12、13に形成された第1及び2の微細気孔12a、13aにより、汚染物質をろ過する方式であるので、フィルタ部材10の製作に際して静電気処理をする必要がなく、マスクの製造コストを低減することができる。
【0048】
また、従来の不織布フィルタで製作された保健用・防疫用マスクは、水分に露出した環境でぬれた場合、静電気が失われて、保健用・防疫用マスクの主要性能である粒子状物質のろ過効率と細菌のろ過効率が格段に低下する不都合を有する。
【0049】
それに対して、本発明によるマスクは、マスク本体1がぬれても、フィルタ部材10の粒子状物質のろ過効率と細菌のろ過効率が、ぬれる前とほとんど同等水準に維持されるので、感染者の飛沫などを介して伝わるSARSや新型コロナウイルスなどの伝染性細菌(又は、バクテリア)を効率よく遮断することができる。
【0050】
一方、本実施形態でのように、フィルタコーティング層12、13が支持層11の外面に形成される場合、着用者の顔面に接するようになる前記支持層11の内面がメッシュ構造であるため、メッシュの荒い質感により、着用感が低下する不便さがある。
【0051】
そこで、本実施形態によるマスクは、これを防止するために、一例として、前記マスク本体1が前記支持層11の他側表面(本実施形態の場合、支持層の内面)に結合される接顔部材20を更に含んでおり、必要によって、例えば、粒子状物質遮断用又は花粉遮断用の前記接顔部材20の構成は、省略可能である。
【0052】
また、水分に露出した環境(特に、水遊び中)において、着用者の顔面に接するマスク本体1の枠部を介して、又は、マスク本体1の前面から接顔部材20を介して、前記マスク本体1と着用者の顔面の間に水が流入した場合、流入した水が、前記フィルタ部材10の方向に排出されるようにするため、前記接顔部材20には、複数の排水孔21が貫通孔の形状に形成されることもできる。
【0053】
ここで、前記排水孔21は、前述した排水機能と共に、前記接顔部材20による呼吸抵抗を最小化することで、保健用・防疫用マスクの主要性能の1つである顔面部吸気抵抗が増加することを防止する機能も果たすことになる。
【0054】
また、前記接顔部材20は、水分に露出した環境(特に、水遊び中)において、マスク本体1の前面から、接顔部材20を介して、前記マスク本体1と着用者の顔面の間に水が流入することを最小化するために、撥水性材質からなるのが更に望ましく、このために、本実施形態では、前記接顔部材20を、撥水性高分子樹脂であるポリプロピレン(PP)材質からなる不織布として構成している。
【0055】
また、前記マスク本体1の外面には、前記フィルタ部材10と接顔部材20が超音波融着により互いに接合した接合部31、32、33が形成され、前記接合部31、32、33は、前記フィルタ部材10と接顔部材20がそれぞれの枠部に沿って互いに接合した第1の接合部31と、前記フィルタ部材10と接顔部材20が、マスク本体1の中央部で互いに接合した第2の接合部32と、前記着用紐2の端部が、マスク本体1の外面一側に接合した第3の接合部33とを含む。
【0056】
ここで、前記第1の接合部31では、前記フィルタ部材10と接顔部材20の枠部が互いに接合することで、前記マスク本体1を形成することになり、本実施形態では、一例として、前記第1の接合部31が前記枠部だけでなく、フィルタ部材10と接顔部材20の幅方向(すなわち、左右方向)でも形成されて、フィルタ部材10と接顔部材20の過度な相対変位を防止するように構成される。
【0057】
また、前記第2の接合部32では、前記フィルタ部材10と接顔部材20が、マスク本体1の中央部で長さ方向(すなわち、上下方向)に互いに接合され、前記第2の接合部32は、前記マスク本体1が着用者の顔面に密着することを防止するリブ機能を果たすことになる。
【0058】
このために、本実施形態では、一例として、前記第2の接合部32が、マスク本体1の外面方向に突出形成される。
【0059】
また、前述したように、互いに結合するフィルタ部材10と接顔部材20の間には、前記接合部31、32、33を除く領域から互いに離隔した間隙22が形成され、前記間隙22により、フィルタ部材10から接顔部材20の方向に流入した水は、相当部分が排水孔21より相対的に流動抵抗の少ない支持層11のマッシュを介して外部に排出されることで、水分に露出した環境(特に、水遊び中)において、着用者の顔面側に水が流入することを更に防止することができる。
【0060】
一方、本実施形態では、一例として、前記フィルタ部材10が、支持層11と、支持層11の外面に形成されたフィルタコーティング層12、13とからなる場合を説明したが、これに限定されず、必要によっては、前記フィルタコーティング層12、13の外面に、支持層11と同様なメッシュ構造のカバー層(図示せず)を更に含むこともできる。
【0061】
また、前記支持層11、前記第1のフィルタコーティング層及び前記第2のフィルタコーティング層12、13、又は前記接顔部材20の少なくともいずれか1つの素材には、機能性成分が含まれ、本実施形態では、一例として、前記機能性成分として、グラフェン(graphene)成分、又はリノレン酸(linolenic acid)成分の少なくともいずれか1つを使用している。
【0062】
前記グラフェン成分は、優れた電気導電性(銅の100倍)によって、マスク本体1の表面の電気抵抗率を下げて、生成された静電荷を迅速に放出することで、静電気の遮断効果が得られる。
【0063】
また、前記グラフェン成分は、大腸菌、黄色ブドウ球菌などのような細菌を除去する抗菌性能と伸縮性に優れた特性を有するため、マスク本体1の表面の抗菌性を維持する効果と、マスク本体1が着用者の様々な顔面屈曲に沿って容易に変形可能な伸縮性を付与する効果が得られる。
【0064】
また、前記リノレン酸成分は、亜麻仁、ヒマワリ種、チアシード(chia seed)などから抽出された植物性オイルに含まれており、紫外線遮断機能と抗菌機能を有するため、肌を保護し、多量の遠赤外線放射機能により、細胞の活力を増加する効果が得られる。
【0065】
また、前記リノレン酸成分は、吸汗、速乾、及び消臭の機能があるため、長時間のマスク着用にも、口臭除去及び湿気除去により、快適な着用感を維持する効果が得られる。
【0066】
ついで、図5を用いて、前述したように構成される本発明によるマスクの製造方法を説明する。
【0067】
まず、前述したように、ポリエステル原糸を用いて、メッシュ構造の支持層11を製織した後(S10)、電気紡糸により、織造された前記支持層11の外面に、第1の微細繊維のウェブからなる第1のフィルタコーティング層12を形成する(S20)。
【0068】
前記ステップS20が終了すると、電気紡糸により、前記第1のフィルタコーティング層12の外面に、第2の微細繊維のウェブからなる第2のフィルタコーティング層13を形成し(S30)、ここで、前記第2の微細繊維の径は、前記第1の微細繊維の径よりも小さく形成するのが望ましい。
【0069】
前記ステップS30が終了すると、前記第1及び第2のフィルタコーティング層12、13が形成された前記支持層11の内面に、複数の排水孔21が貫通形成された接顔部材20を結合し(S40)、前記結合は、前述したように、第1及び第2の接合部31、32で超音波融着により行われる。
【0070】
また、前述したように、不織布からなる前記接顔部材20の排水孔21は、通常のレーザ穿孔により望ましく形成される。
【0071】
また、前記ステップS40が終了すると、前記結合された支持層11と接顔部材20をマスク形状に裁断して、マスク本体1を形成した後(S50)、前記マスク本体1の両側に、着用紐2を結合する(S60)。
【0072】
ここで、前記接顔部材20の構成を含まない場合、前記ステップS40を省略し、ステップS50では、支持層11とフィルタコーティング層12、13からなるフィルタ部材10で、マスク本体1を形成する。
【0073】
前述したように構成される本発明によるマスクの性能を評価するために、国内外保健用・防疫用マスクの標準試験規格によって、粉塵捕集効率、顔面部吸気抵抗、細菌ろ過効率の3つの項目に対する試験を行い、その結果を、図6図8に示している。
【0074】
まず、図6は、本発明の一実施形態に係るマスクの性能(粉塵ろ過効率、顔面部吸気抵抗)試験結果を示す図であり、図6の(a)は、KF保健用・防疫用マスクに対する粉塵捕集効率(%)と、顔面部吸気抵抗(mmHО)性能基準であり、図6の(b)は、本実施形態によるマスクに対して、マスク本体1を水に浸漬する前と後の粉塵捕集効率と顔面部吸気抵抗を測定した試験結果である。
【0075】
前記試験は、保健用マスクに対して、国内で準用しているヨーロッパ基準であるBS EN143により、TSI8130テスト機を用いて行われ、エアロゾルは、NaClを用いた(粉塵捕集効率は、95LPM flow rate、顔面部吸気抵抗は、30LPM flow rateを適用)。
【0076】
本発明によるマスクに対する粉塵捕集効率の試験結果、水浸漬前の場合、平均80.8%(試料数3)であって、KF80マスク水準に評価され、水浸漬後の場合、平均73.8%(試料数3)と現れ、水浸漬前と比較して、大きく低下しないことと現れ、本発明によるマスクの場合、水分に露出した環境で水でぬれた場合でも、汚染物質のろ過性能が依然として良好に維持されることを確認した。
【0077】
また、マスク着用時、呼吸容易性を現わす顔面部吸気抵抗の場合、水浸漬前の場合、平均3.7mmHO(試料数3)、水浸漬後の場合、平均4.1mmHO(試料数3)水準で現れ、これらの場合、KFマスク性能基準を満たすことと評価され、もって、本発明によるマスクの場合、日常生活だけでなく、水分に露出した環境(特に、水遊び中)で持続的に着用しても、水切り性能が優れて、着用者が容易に呼吸することができることを確認した。
【0078】
ついで、図7及び図8はそれぞれ、本発明の一実施形態に係るマスクの性能(細菌ろ過効率)試験結果、及びこれに対する試験成績書の写しを示す図であり、図7の(a)は、大韓薬師会で、国内KFマスクに対して細菌ろ過効率を試験した結果であり、図7の(b)は、本発明によるマスクに対して、細菌ろ過効率を試験した結果である。
【0079】
前記試験は、医療用マスクの細菌ろ過効率に対する標準試験方法であるASTM F2101-14により、国内マスク公認試験機関である慶北テクノパークで行われた(黄色ブドウ球菌、試験流速28.3LPM、平均エアロゾルサイズ3.2μmを適用)。
【0080】
本発明によるマスクに対する細菌ろ過効率試験結果、平均97.5%(試料数5)と現れて、KF94マスクと同等以上に評価され、本発明によるマスクが静電気方式ではなく、微細気孔によるろ過方式であることに鑑みると、水でぬれた場合でも、これと同等水準の細菌ろ過効率を現わすと見込まれる。
【0081】
そこで、本発明によるマスクは、水分に露出した環境(特に、遊泳場)でも、感染者の飛沫などを介して伝わる病原性細菌の感染を非常に効率よく防止できることを確認している。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明によるマスクは、粒子状物質遮断用マスク、花粉遮断用マスク、遊泳場専用保健・防疫用マスクなどへの活用が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】