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特表2024-520968歯科用グラスアイオノマーセメント組成物及びこの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】歯科用グラスアイオノマーセメント組成物及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/889 20200101AFI20240521BHJP
【FI】
A61K6/889
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023544557
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 KR2021019267
(87)【国際公開番号】W WO2022164026
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0012404
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516371391
【氏名又は名称】ハス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】HASS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】77-14,Gwahakdanji-ro Gangneung-si Gangwon-do 25452,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ソンファン
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ジェソン
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ジンギ
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ジヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジヨン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ウジン
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA06
4C089BA04
4C089BA05
4C089BA06
4C089BA14
4C089BA15
4C089BB04
4C089BC05
4C089BD10
4C089BD11
4C089BE01
4C089BE02
4C089BE05
4C089BE09
4C089BE15
4C089CA07
(57)【要約】
本明細書においては、双性イオン性物質(Zwitterionic material)及びグラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement, GIC)を含む、歯科用グラスアイオノマーセメント組成物及びこの製造方法が提供される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
双性イオン性物質(Zwitterionic material)及びグラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement, GIC)を含む、歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項2】
前記双性イオン性物質の含量は、前記歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の全体の質量に対して約1~5wt%である、請求項1に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項3】
前記歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、ヒドロキシアパタイト(HAp)、ガラス繊維(glass fiber)、銀-錫合金(silver-tin alloy)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)ナノ粒子(nano particles)及び生体活性ガラス(bioactive glass)からなる群から選択される1種以上をさらに含む、請求項1に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項4】
前記双性イオン性物質は、MPC(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine)、スルホベタインメタクリレート(sulfobetaine methacrylate, SB)、DMPC(1,2-dimyristoylsn-glycero-3-phosphatidylcholine)、DMSP(3-dimethylsulfoniopropanoate)、トリゴネリン(trigonelline)、エクトイン(ectoine)、ベタイン(betaine)、SPE(N-(2-methacryloyloxy)ethyl-N,N-dimethylammonio propanesulfonate)、SPP(N-(3-methacryloylimino)propyl-N,N-dimethylammonio propanesulfonate)、CBMA(carboxybetaine methacrylate)及びSPV(3-(2’-vinyl-pyridinio)propanesulfonate)からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項5】
前記双性イオン性物質は、前記MPC及び前記SBを含む、請求項4に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項6】
前記MPC及び前記SBは、1:3~3:1の重量比で含まれる、請求項5に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項7】
前記GICの含量は、前記歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の全体の質量に対して約95~99wt%である、請求項1に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項8】
前記GICは、酸反応性無機充填剤粉末及びポリ酸を含む液体を含む、請求項1に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項9】
前記ポリ酸は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、グルタコン酸、アコニット酸、シトラコン酸、メサコン酸、フマル酸、またはチグル酸の単一重合体及びこれらの共重合体、及びマレイン酸とエチレンの共重合体からなる群から選択される1種以上を含む、請求項8に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項10】
前記ポリ酸を含む液体は、イタコン酸をさらに含む、請求項8に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項11】
前記酸反応性無機充填剤粉末は、塩基性金属酸化物、金属水酸化物、アルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス及びカルシウムフルオロアルミノシリケートガラスからなる群から選択される1種以上を含む、請求項8に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項12】
前記酸反応性無機充填剤粉末は、バリウムガラスをさらに含む、請求項8に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項13】
前記歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、安定化剤、難燃剤、帯電防止剤、軟化剤、強化材、充填材、蛍光増白剤、潤滑剤、陥入減少剤、重縮剤触媒、消泡剤、乳化剤、増粘剤、及び香料からなる群から選択される1種以上をさらに含む、請求項1に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項14】
前記歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Hydroxypropyl Methylcellulose)、ヒドロキシエチルセルロース(Hydroxyethyl Cellulose)、ヒドロキシプロピルセルロース(Hydroxypropyl Cellulose)、ポリビニルアルコール(Polyvinyl Alcohol)、ポリビニルピロリドン(Polyvinyl Pyrrolidone)、カルボマー(Carbomer)、及び酢酸ビニル樹脂(Polyvinyl Acetate)からなる群から選択される1種以上の接着性物質をさらに含む、請求項1に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項15】
前記歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、C=O、C-N、N+(CH3)3、POCH、S=O対称(S=O symmetric)及びS=O非対称(S=O asymmetric)からなる群から選択される1種以上の官能基を含む、請求項1に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項16】
前記グラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement, GIC)は、Zn、Na、F、O、N、Ca、C、Cl、S、P、Si及びAlからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物。
【請求項17】
グラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement, GIC)の液体に、歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の全体の質量に対して、約1~5wt%となるように双性イオン性物質を混合する段階、及び
前記双性イオン性物質が混合された前記グラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement, GIC)の液体及びグラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement, GIC)の粉末を混合する段階を含む、歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の製造方法。
【請求項18】
前記双性イオン性物質は、MPC(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine)、スルホベタインメタクリレート(sulfobetaine methacrylate, SB)、DMPC(1,2-dimyristoylsn-glycero-3-phosphatidylcholine)、DMSP(3-dimethylsulfoniopropanoate)、トリゴネリン(trigonelline)、エクトイン(ectoine)、ベタイン(betaine)、SPE(N-(2-methacryloyloxy)ethyl-N,N-dimethylammonio propanesulfonate)、SPP(N-(3-methacryloylimino)propyl-N,N-dimethylammonio propanesulfonate)、CBMA(carboxybetaine methacrylate)及びSPV(3-(2’-vinyl-pyridinio)propanesulfonate)からなる群から選択される1種以上を含む、請求項17に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の製造方法。
【請求項19】
前記双性イオン性物質は、前記MPC及び前記SBを含む、請求項18に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の製造方法。
【請求項20】
前記MPC及び前記SBは、1:3~3:1の重量比で含まれる、請求項19に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の製造方法。
【請求項21】
前記双性イオン性物質を混合する段階は、ヒドロキシアパタイト(HAp)、ガラス繊維(glass fiber)、銀-錫合金(silver-tin alloy)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)ナノ粒子(nano particles)及び生体活性ガラス(bioactive glass)からなる群から選択される1種以上を混合させる段階を含む、請求項17に記載の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年1月28日付の韓国特許出願第2021-0012404号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含む。
本発明は、歯科用組成物に関し、より具体的には、歯科用グラスアイオノマーセメント組成物及びこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用セメントは、永久的または臨時的な修復から金属性修復物の接合、歯根管の密封、チーズパックまたは保護帯等の様々な歯科治療に使用される材料である。歯科用セメントは、永久性を保障することはできないが、経済的で簡単に使用することができるという利点のため、歯科修復術式において半分以上で使用されている。このような、歯科用セメントは構成成分によって、グラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement)、リン酸亜鉛セメント(zinc phosphate cement)、ケイ素リン酸亜鉛セメント(zinc silicate cement)、酸化亜鉛-ユージノールセメント(zinc oxide-eugenol cement)、ポリカルボキシレートセメント(polycarboxylate cement)、レジンセメント(resin cement)、ケイ酸セメント(silicate cement)及び水酸化カルシウムセメント(calcium hydroxide cement)等に分類することができる。
【0003】
このうち、グラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement, GIC)は、静菌作用及び虫歯発生を抑制することができる優れたフッ素遊離能を有し、象牙質と類似した熱膨張係数を有し、硬化する間に収縮が少なく、優れた歯質との結合力を有し、少ない微小漏洩等の利点がある。
【0004】
一方、このような歯科用セメントは、冷たい食べ物及び熱い食べ物等による温度変化、酸性及びアルカリ性の食べ物等による酸度変化及び咀嚼する力による激しい圧力変化、常に唾液に濡れているヒトの口腔の特性に耐えることができる耐久性を有しなければならない。
【0005】
さらに、歯科用セメントはほとんどが、ブラッシングのような機械的洗浄が無視されると、細菌性プラーク(bacterial plaque)及び歯石が付着することがある。また、湿った口腔内環境により、バイオフィルム(biofilm)が容易に形成される可能性があり、形成されたバイオフィルムは、バクテリア及びカビの凝集形成をさらに引き起こすことがある。
【0006】
そこで、口腔内の温度、酸度、圧力及び湿度変化等に耐えることができる適切な硬さを備え、バクテリア及びカビの繁殖が困難で、人体に対するアレルギー及び内分泌攪乱のような悪影響を及ぼす物質に対する溶出がない安定性の高い素材が求められている。
【0007】
しかし、前述のグラスアイオノマーセメントは、低い摩耗抵抗性、低い引張強度、乾燥敏感性、研磨の難しさ、長い硬化時間、審美的に不透明(chalk)等の欠点を有するため、臨床的適用に限界がある。
【0008】
発明の背景となる技術は、本発明に対する理解をより容易にするために作成された。発明の背景となる技術に記載された事項が先行技術として存在することを認めるものとして理解されてはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、前述のグラスアイオノマーセメントの限界を克服するために、添加剤を使用して機械的特性を増加させようとすることが研究されてきた。より具体的には、従来のグラスアイオノマーセメントの欠点を克服するために、複合レジンが混合されたレジン強化型グラスアイオノマーセメント(Resin Modified Glass Ionomer, RMGI)が開発された。しかし、これもまた窩洞(cavity)が大きい場合、光不透過性、色調の制限及び施術後の色安定性等の審美的限界を有し、複合レジンに比べて低い結合力を有する。さらに、レジン強化型グラスアイオノマーセメントもやはり脱水に敏感であるため、初期硬化後、10分以上そのまま置き安定化された後、注水下で研磨しなければならないため、依然として臨床の限界を有している。
【0010】
また、グラスアイオノマーセメントは、前述のレジンだけでなく、機械的性質を向上させるために、銀-錫、銀-パラジウム及び銀-チタニウムのような金属合金が混合されて使用されたが、不快な金属の色の変化と共に生体活性を損傷させた。
【0011】
結局、従来のグラスアイオノマーセメントは機械的特性のみを向上させるだけで、生体活性、すなわち、骨の形成に関連するアパタイト(apatite)またはヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite)の析出のようなミネラル化を向上させることができず、これにより、歯の根本的な治療及び予防効果を提供することができなかった。
【0012】
一方、本発明の発明者らは、双性イオン性物質が様々な歯科用材料と使用され、タンパク質とバクテリアの吸着を遮断する防汚効果に寄与することに注目した。そこで、本発明の発明者らは、双性イオン性物質がGICにも使用される場合、GICでも向上された防汚効果を提供することができることを認知し、これにより、GICと一緒に修復材料としてバクテリアによる感染を効果的に防止することができる新しい歯科用組成物について研究した。
【0013】
その結果、本発明の発明者らは、双性イオン性物質がGICと一緒に用いられる場合、GICを単独で使用した時よりも、表面タンパク質及びバクテリアの吸着に対する遮断効果が増加することを発見した。さらに、本発明の発明者らは、双性イオン性物質が前述の防汚効果だけでなく、バクテリアを含む様々な微生物に対する死滅にも寄与することができることを発見し、これは双性イオン性物質によるイオン放出効果であることを認知した。
【0014】
この時、本発明の発明者らは、互いに異なる双性イオン性物質間の電荷の密度差によって、GIC内部に存在する架橋酸素(Bridging oxygen(BO))間の結合が切れると、非架橋酸素(Non-bridging oxygen(NBO))の比率が増加することを発見した。さらに、高いNBO比率により、前述のイオン放出効果が高くなるという点も発見した。
【0015】
そこで、本発明の発明者らは、双性イオン性物質だけでなく、純電荷(net charge)が0に収束せず、GIC内部で電荷の密度差を引き起こすことができる場合、GICのイオン放出効果を向上させることができることを認知した。
【0016】
その結果、本発明の発明者らは、双性イオン性物質だけでなく、ヒドロキシアパタイト(HAp)、ガラス繊維(glass fiber)、銀-錫合金(silver-tin alloy)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)ナノ粒子(nano particles)及び生体活性ガラス(bioactive glass)のような電荷を帯びる様々な物質もまた、GICのイオン放出効果を向上させることができることを発見した。
【0017】
また、本発明の発明者らは、特定の分解性ガラス組成物が、Na+、Si4+及びCa2+のようなイオンの放出により、骨と化学結合を形成することができることをさらに注目した。
結局、本発明の発明者らは、一つ以上の双性イオン性物質または双性イオン性物質と共に含まれ、純電荷が0ではなく、電荷の密度差を引き起こすことができる様々な物質がGICと一緒に用いられる場合、GICのイオン放出が向上し、これによる連鎖的なメカニズムにより、生体活性が増加し、歯のエナメル質の形成を増加することができることを発見した。
【0018】
従って、本発明が解決しようとする課題は、特定の比率を有する一つ以上の双性イオン性物質またはヒドロキシアパタイト(HAp)、ガラス繊維(glass fiber)、銀-錫合金(silver-tin alloy)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)ナノ粒子(nano particles)及び生体活性ガラス(bioactive glass)からなる群から選択される1種以上の物質を含むことにより、歯の生物防汚効果及び抗菌性を向上させることができる歯科用修復材料であるグラスアイオノマーセメントを提供することである。
本発明の課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない別の課題は、以下の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一実施例によると、本発明は、双性イオン性物質(Zwitterionic material)及びグラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement, GIC)を含む、歯科用グラスアイオノマーセメント組成物を提供する。
【0020】
この時、本明細書で使用される用語、「双性イオン性物質」は、分子内に酸性及び塩基性原子団を有し、両側の基が同時にイオン化状態であり、陰、陽の二つの電荷を有するイオン性物質を意味することができる。さらに、このような双性イオン性物質は、官能基及びこれを架橋する炭素によって、純電荷が0でないことがある。
【0021】
本発明の特徴によると、双性イオン性物質の含量は、前記歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の全体の質量に対して、約1~5wt%であってもよい。
本発明の他の特徴によると、本発明は、前述の双性イオン性物質と共に、ヒドロキシアパタイト(HAp)、ガラス繊維(glass fiber)、銀-錫合金(silver-tin alloy)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)ナノ粒子(nano particles)及び生体活性ガラス(bioactive glass)からなる群から選択される1種以上を含んでもよい。しかし、これらに制限されず、歯科用グラスアイオノマー組成物に含まれる物質は、双性イオン性物質だけでなく、純電荷が0ではなく、電荷の密度差を引き起こすことができる2種類以上の物質の組み合わせを全て含むことができる。
【0022】
この時、前述の双性イオン性物質、ヒドロキシアパタイト(HAp)、ガラス繊維(glass fiber)、銀-錫合金(silver-tin alloy)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)ナノ粒子(nano particles)及び生体活性ガラス(bioactive glass)は補強剤(Modifier)を意味することができる。例えば、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の製造方法で用いられる双性イオン性物質は、双性イオン性物質内の電荷の密度差を用いて、GIC内部に存在する架橋酸素(Bridging oxygen(BO))間の結合を遮断し、非架橋酸素(Non-bridging oxygen(NBO))の比率を増加させることにより、内部のイオン放出を増加させ、物理的性質を強化させることができる補強剤である。そこで、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の製造方法において用いられる補強剤は、前述の双性イオン性物質だけでなく、偏向された電荷の密度を有することにより、GIC内部のNBOの比率を増加させることができる様々な物質をさらに含むことができる。
【0023】
本発明の他の特徴によると、双性イオン性物質、及びヒドロキシアパタイト(HAp)、ガラス繊維(glass fiber)、銀-錫合金(silver-tin alloy)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)ナノ粒子(nano particles)及び生体活性ガラス(bioactive glass)からなる群から選択される1種以上のものは、その純電荷(net charge)が、0でないものであってもよい。すなわち、添加されたそれぞれの物質に含まれている官能基の部分電荷が、不均衡であるため、相殺される部分電荷が不均質になり、より効果的にBO間の結合を遮断することができる。
【0024】
本発明のもう一つの特徴によると、双性イオン性物質は、MPC(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine)、スルホベタインメタクリレート(sulfobetaine methacrylate, SB)、DMPC(1,2-dimyristoylsn-glycero-3-phosphatidylcholine)、DMSP(3-dimethylsulfoniopropanoate)、トリゴネリン(trigonelline)、エクトイン(ectoine)、ベタイン(betaine)、SPE(N-(2-methacryloyloxy)ethyl-N,N-dimethylammonio propanesulfonate)、SPP(N-(3-methacryloylimino)propyl-N,N-dimethylammonio propanesulfonate)、CBMA(carboxybetaine methacrylate)及びSPV(3-(2’-vinyl-pyridinio)propanesulfonate)からなる群から選択される1種以上を含んでもよく、望ましくは、前記MPC及びSPを含んでもよい。前記MPC及びSBが同時に含まれる場合、MPC及びSBの比率は、重量を基準にして、MPC約1対SB約1であってもよいが、これに制限されず、MPC及びSB以外の様々な双性イオン性物質が様々な比率で設定され用いることができる。例えば、MPC対SBの比率は、1対3~3対1の間で設定することができる。この時、2種類以上の双性イオン性物質が前述の特定の比率で含まれる場合、双性イオン性物質内の電荷の密度がさらに偏向されるため、GICに含まれているイオンの放出量をさらに向上することができ、これにより、生体活性をさらに増進することができる。
【0025】
本発明のもう一つの特徴によると、GICの含量は、歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の全体の質量に対して、約95~99wt%であってもよい。この時、歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、全体の質量に対して、約95~99wt%のGICを含むことにより、GIC固有の特性及び物理的性質を変えずに維持し、補強剤による追加的な効果をさらに含むことができる。
【0026】
本発明のもう一つの特徴によると、GICは、酸反応性無機充填剤粉末及びポリ酸を含む液体を含むことができるが、これに制限されず、水硬性粉末及び水のような液体の組み合わせであってもよい。
【0027】
本発明のもう一つの特徴によると、酸反応性無機充填剤粉末は、酸性の成分の存在下で化学的に反応する無機充填剤であり、酸性の液体が混合される場合、酸-塩基反応で放出されるカルボキシル基イオン(-COOH)が歯質Ca2+と化学的に結合することができることにより、歯に高い付着力を有することができる。例えば、酸反応性無機充填剤は、塩基性金属酸化物、金属水酸化物、アルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス及びカルシウムフルオロアルミノシリケートガラスからなる群から選択される1種以上を含んでもよいが、これらに制限されず、シリカを含む物質は全て含んでもよい。
【0028】
一方、本発明の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物において、望ましい酸反応性無機充填剤は、カルシウムフルオロアルミノシリケートガラスであってもよく、これは約13~19μmの粒子を有することができる。さらに、カルシウムフルオロアルミノシリケートガラスは、SiO2、Al2O3、CaF2、Na3AlF6、AlF3、及びAlPO4からなる群から選択される1種以上によって合成してもよいが、これらに制限されない。
【0029】
本発明のもう一つの特徴によると、本発明の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物において、酸反応性無機充填剤の塩基性金属酸化物は、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム及び酸化亜鉛からなる群から選択される1種以上を含んでもよく、金属水酸化物は、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化ストロンチウムからなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0030】
本発明のもう一つの特徴によると、本発明の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物において、酸反応性無機充填剤粉末は、放射線不透過性を高めるために、バリウムガラス(barium glass)をさらに含むことができる。
【0031】
本発明のもう一つの特徴によると、前記ポリ酸を含む液体は、複数の酸性繰り返し単位を有する重合体を意味することができ、重合体それぞれの骨格には、酸性を示す官能基が付着していることがあり、単一重合体であるか、共重合体であってもよい。すなわち、本発明の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物に含まれている前記ポリ酸を含む液体は、ポリ酸だけでなく、酸反応性無機充填剤粉末と一緒に酸-塩基反応でカルボキシル基イオン(-COOH)を放出し、歯質Ca2+と化学的結合を引き起こすことができる全ての重合体を全て含むことができ、例えば、前記ポリ酸は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、グルタコン酸、アコニット酸、シトラコン酸、メサコン酸、フマル酸、またはチグル酸の単一重合体及びこれらの共重合体、及びマレイン酸とエチレンの共重合体;からなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0032】
本発明のもう一つの特徴によると、前記ポリ酸を含む液体は、前述の酸性重合体以外に物性改善のための添加剤として、イタコン酸(Itaconic Acid)をさらに含むことができるが、これに制限されず、粘度を下げるための、すなわち、分子間の水素結合を遮断してゲル(gel)化を防止することができる様々な物質を全て含むことができる。
【0033】
さらに、本発明の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物に含まれるポリ酸を含む液体は、前述の物性改善用添加剤だけでなく、錯化剤をさらに含むことができる。例えば、本発明の歯科用グラスアイオノマーセメント組成物に含まれる液体に含むことができる錯化剤として、酒石酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、サリチル酸、メリト酸、ジヒドロキシ酒石酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、2、4及び2、6ジヒドロキシ安息香酸、ホスホノカルボン酸、及びホスホノコハク酸からなる群から選択される1種以上をさらに含んでもよいが、これらに制限されない。
【0034】
本発明のもう一つの特徴によると、安定化剤、難燃剤、帯電防止剤、軟化剤、強化材、充填材、蛍光増白剤、潤滑剤、陥入減少剤、重縮剤触媒、消泡剤、乳化剤、増粘剤、及び香料からなる群から選択される1種以上のものをさらに含んでもよいが、これらに制限されない。
【0035】
本発明のもう一つの特徴によると、歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、C=O、C-N、N+(CH3)3、POCH、S=O対称(S=O symmetric)及びS=O非対称(S=O asymmetric)からなる群から選択される1種以上の官能基を含んでもよい。
【0036】
本発明の一実施例によると、本発明は、グラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement、GIC)の液体に、歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の全体の質量に対して、約1~5wt%となるように、双性イオン性物質を混合する段階及び双性イオン性物質が混合されたGIC液体及びGIC粉末を混合する段階を含む、歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の製造方法を提供する。
【0037】
本発明の特徴によると、双性イオン性物質をGIC液体に混合する段階において、双性イオン性物質は、前記MPC及び前記SBを含むことが望ましく、より望ましくは、前記MPC対SBは、その重量を基準として1対3~3対1の重量比で含まれるものであるが、これに制限されず、一つ以上の様々な双性イオン性物質が含まれる場合、様々な比率で混合させて含むことができる。
【0038】
本発明の他の特徴によると、本発明は、GICの液体に双性イオン性物質を混合する段階で、ヒドロキシアパタイト(Hap)、ガラス繊維(glass fiber)、銀-錫合金(silver-tin alloy)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)ナノ粒子(nano particles)及び生体活性ガラス(bioactive glass)からなる群から選択される1種以上を混合させる段階をさらに含むことができる。
【0039】
以下、実施例を通じて、本発明をより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものに過ぎないため、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものと解釈されてはならない。
【発明の効果】
【0040】
本発明は、双性イオン性物質を含む歯科用グラスアイオノマーセメント組成物を提供することにより、従来のGIC単独で構成された歯科用組成物が有する抗菌予防及び治療に関連する限界点を克服することができる。
【0041】
より具体的には、本発明は、一つ以上の双性イオン性物質または補強剤が一緒に含まれることにより、GICを単独で用いた時よりも向上された防汚効果及び生体活性を提供することができる。
【0042】
すなわち、本発明は、歯の修復治療に適用され、防汚作用と共にそれに伴う抗菌活性を提供し、虫歯菌を遮断及び予防することができ、さらに、バクテリアのような微生物によって引き起こされる感染による炎症反応を予防し、優れた抗菌力を有する歯科用修復物質を提供することができる効果がある。
【0043】
特に、本発明は、口腔内組織に対して感染及び齲蝕症をもたらす可能性があるカンジダ菌(Candida albicans)、アクチノマイセスネスランディ(Actinomyces naeslundii)、ベイロネラパルブラ(Veillonella parvula)、ストレプトコッカスソブリヌス(Streptococcus sobrinus)、ストレプトコッカスサンギス(Streptococcus sanguis)、ストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカスミティス(Streptococcus mitior)、ラクトバチルスカゼイ(Lactbacillus casei)、ラクトバチルスアシドフィルス(Lactbacillus acidophilus)、アクチノマイセスビスコサス(Actinomyces viscosus)のような病原性バクテリアの生物付着及びこれによるタンパク質の付着防止効果が優れていることがある。
【0044】
また、本発明は、双性イオン性物質が一緒に含まれることにより、GICを単独で用いた時と異なり、歯に対する根本的な治療及び予防効果をもたらすことができる。すなわち、本発明は、双性イオン性物質が一緒に含まれることで、より多くのイオンが放出され、生体活性を向上させ、これにより、歯のエナメル質の形成を向上させ、歯自体の虫歯菌に対する防御機能及び機械的特性を向上させることができる。
本発明による効果は、以上で例示した内容によって制限されず、より多様な効果が本明細書内に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物及びこの製造方法を例示的に示した図である。
図2a】以下の様々な実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の組成及び含量を示した図である。
図2b】本発明の一実施例に用いられる双性イオン性物質についての構造式を示した図である。
図3】本発明の実施例及び対照群に対する赤外線分光法(Fourier Transformed Infrared Spectroscopy, FTIR)についての結果を示した図である。
図4a】X線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy, XPS)の結果を示した図である。
図4b】本発明の実施例で放出されたイオンに対するプロファイルについての結果を示した図である。
図4c】本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメントから放出されたイオンによる振動周波数の結果であるラマンスペクトルの結果を示した図である。
図5a】双性イオン性物質のNet Chargeについての例示図を示した図である。
図5b】双性イオン性物質の炭素鎖についての例示図を示した図である。
図5c】双性イオン性物質による本発明の実施例におけるNet ChargeについてのXPS及びラマンスペクトルの結果を示した図である。
図5d】前述の図5a及び5cの結果を定量化したグラフを示した図である。
図5e】本発明の実施例及び対照群に対する水素結合の結果を示した図である。
図6a】本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物に対する抗菌効果についての結果を示した図である。
図6b】本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物に対する生物膜(バイオフィルム、biofilm)の防止効果についての結果を示した図である。
図7a】本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の表面及び断面についてのSEMイメージを示した図である。
図7b】双性イオン性物質による本発明の実施例における骨活性能力についてのラマンスペクトルの結果を示した図である。
図7c】本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物のpH変化についての結果を示した図である。
図8】本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物に対する湿潤性及び機械的特性についての結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述する実施例を参照すれば明らかになるであろう。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されず、互いに異なる様々な形態で具現されるものであり、単に本実施例は、本発明の開示が完全であるようにし、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇によって定義されるのみである。
【0047】
本明細書で使用される用語、「バイオフィルム(biofilm)」は、歯及び歯科用歯科矯正術装置の表面に形成されたタンパク質、カビ及びバクテリア等からなる群集を意味することができる。このようなバイオフィルムは、口腔内の一定の温度及び湿度とバクテリアの栄養となる食べカスにより、成長し続け、厚くなることがある。厚くなったバイオフィルムは毒性物質が生じ、虫歯及び歯茎の炎症を引き起こし、最終的に歯肉炎や歯周炎を引き起こす。さらに、バイオフィルムが形成されると、その上に食べカス等によるタンパク質等が積み重なりプラーク(plaque)が形成され、プラークが厚くなると同時に硬くなり歯石が形成されることがある。そこで、プラーク及び歯石の形成を遮断するためには、プラーク及び歯石の原因となるバイオフィルムの形成から阻害しなければならない。
【0048】
本明細書で使用される用語、「バイオマス(biomass)」は、バイオフィルムに形成されている群集の全体的なバクテリアの生物量を意味することができる。
以下では、図1を参照して、本発明の様々な実施例に用いられる歯科用グラスアイオノマーセメント組成物及びこの製造方法を説明する。
【0049】
図1は、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の製造方法を例示的に図示したものである。
本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の製造方法は、歯科用組成物の全体の質量に対して、約1~5wt%の双性イオン性物質をグラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement、GIC)の液体に混合する段階(S110)、及び双性イオン性物質が混合されたGIC液体及びGIC粉末を混合する段階(S120)を含むことができる。
【0050】
この時、本発明の様々な実施例で使用されるGICは、主にフルオロアルミノシリケート系ガラス粉末と、主にポリアクリル酸からなるポリ酸を含む液体との反応によって形成することができ、本発明の様々な実施例で使用されるGICは、本分野で商業的に使用されるケアダインレストア(Caredyne Restore, GC Corporation, Tokyo, Japan)であってもよいが、これに制限されず、本技術の同一分野で使用される様々なGICを用いることができる。
【0051】
例えば、本発明の様々な実施例で使用されるGICは、酸反応性無機充填剤粉末及びポリ酸を含む液体を含むことができる。この時、酸反応性無機充填剤粉末及びポリ酸を含む液体が混合される場合、酸-塩基反応で放出されるカルボキシル基イオン(-COOH)が歯質Ca2+と化学的に結合することができることにより、GICは歯で高い付着力を有することができる。
【0052】
この時、前記酸反応性無機充填剤粉末は、酸性成分の存在下で化学的に反応する無機充填剤であり、塩基性金属酸化物、金属水酸化物、アルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス及びカルシウムフルオロアルミノシリケートガラスからなる群から選択される1種以上を含んでもよいが、これらに制限されず、シリカを含む物質は全て含むことができる。
【0053】
しかし、本発明の様々な実施例で使用される望ましいGICは、カルシウムフルオロアルミノシリケートガラスを含むことができ、これは約13~19μmの粒子を有することができる。さらに、カルシウムフルオロアルミノシリケートガラスは、SiO2、Al2O3、CaF2、Na3AlF6、AlF3、及びAlPO4からなる群から選択される1種以上によって合成することができるが、これらに制限されない。
【0054】
さらに、本発明の様々な実施例で使用されるGICの塩基性金属酸化物は、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、及び酸化亜鉛からなる群から選択される1種以上を含んでもよく、金属水酸化物は、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化ストロンチウムからなる群から選択される1種以上を含んでもよいが、これらに制限されない。
【0055】
また、本発明の様々な実施例で使用されるGICは、放射線不透過性を高めるために、バリウムガラス(barium glass)をさらに含むことができるが、これに制限されない。
また、本発明の様々な実施例で使用されるGICは、前述のように、酸反応性無機充填剤ではなく、シリカガラスを含む水硬性粉末を含むことができる。そこで、本発明の様々な実施例で使用されるGICは、前述の水硬性粉末及び水のような液体の組み合わせであってもよい。
【0056】
一方、本発明の様々な実施例で使用されるGICの液体は、複数の酸性繰り返し単位を有する重合体を意味することができ、重合体それぞれの骨格には、酸性を示す官能基が付着していることがあり、単一重合体であるか、共重合体を意味することができる。
【0057】
この時、本発明の様々な実施例で使用される液体は、酸性の繰り返し単位を含まなければならないため、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、グルタコン酸、アコニット酸、シトラコン酸、メサコン酸、フマル酸またはチグル酸の単一重合体及び共重合体、及びマレイン酸とエチレンの共重合体のうちから選択される少なくとも一つを含んでもよいが、望ましい酸性の共重合体は、ポリアクリル酸であってもよい。そこで、前記液体は、ポリアクリル酸を含む液体であってもよい。
【0058】
さらに、本発明の様々な実施例で使用されるポリ酸を含む液体は、物性改善のための添加剤として、イタコン酸(Itaconic Acid)をさらに含むことができるが、これに制限されず、粘度を下げるための、すなわち、分子間の水素結合を遮断してゲル(gel)化を防止することができる様々な物質を全て含むことができる。この時、イタコン酸が本発明の様々な実施例で使用される液体に使用される場合、複数の酸性繰り返し単位を有する重合体と共に使用することができ、この比率は、複数の酸性繰り返し単位を有する重合体2に対してイタコン酸1であってもよいが、これに制限されない。
【0059】
また、本発明の様々な実施例で使用される液体は、錯化剤をさらに含むことができる。例えば、本発明の様々な実施例で使用される、ポリ酸を含む液体に含むことができる錯化剤として、酒石酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、サリチル酸、メリト酸、ジヒドロキシ酒石酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、2、4及び2、6ジヒドロキシ安息香酸、ホスホノカルボン酸、及びホスホノコハク酸からなる群から選択される1種以上をさらに含んでもよいが、これらに制限されない。特に、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物のうちのGICは、Zn、Na、F、O、N、Ca、C、Cl、S、P、Si及びAlからなる群から選択される1種以上のイオンを含んでもよいが、これらに制限されず、GICと結合して、これを放出することができる様々なイオンを全て含むことができる。
【0060】
まず、双性イオン性物質をGIC液体に混合する段階(S110)で用いられる双性イオン性物質は、MPC(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine)、スルホベタインメタクリレート(sulfobetaine methacrylate, SB)、DMPC(1,2-dimyristoylsn-glycero-3-phosphatidylcholine)、DMSP(3-dimethylsulfoniopropanoate)、トリゴネリン(trigonelline)、エクトイン(ectoine)、ベタイン(betaine)、SPE(N-(2-methacryloyloxy)ethyl-N,N-dimethylammonio propanesulfonate)、SPP(N-(3-methacryloylimino)propyl-N,N-dimethylammonio propanesulfonate)、CBMA(carboxybetaine methacrylate)及びSPV(3-(2’-vinyl-pyridinio)propanesulfonate)からなる群から選択される1種以上を含んでもよいが、これらに制限されず、望ましくは、MPCまたは/及びSB、より望ましくは、MPC及びSBを含んでもよい。
【0061】
より具体的には、双性イオン性物質をGIC液体に混合する段階(S110)で双性イオン性物質としてMPCが使用される場合、MPCの含量は、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の全体の質量に対して、約1~5wt%であってもよいが、これに制限されず、望ましいMPCの含量は、約2~4wt%であってもよく、より望ましい含量は、約2.5wt%~3.5wt%であってもよい。この時、MPCの含量が1%未満の場合、MPCの機能が発揮されるのに十分でない量であるため、GICの機械的特性、抗菌性及び生体活性に対する効果が向上されないことがあり、MPCの含量が5%超過の場合、強い引力を有するMPCが増加するにつれ、これらの間の引力により互いに凝集力が強くなり、ナノ粒子の凝集を発生させ、GIC表面に小さな空隙を引き起こすことがある。さらに、このように発生した空隙は、GICが処理された歯の表面を粗くすることで、歯の表面に微生物が生息及び吸着することがある。また、MPCの含量が5%超過の場合、GICのようなメイン物質の物理的性質が変化する可能性があるため、GICと一緒に使用される双性イオン性物質の含量は1~5wt%であってもよい。
【0062】
前述と同様に、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物において、双性イオン性物質としてSBが含まれる場合、SBの含量は、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の全体の質量に対して、約1~5wt%であってもよいが、これに制限されず、望ましいSBの含量は、約2~4wt%であってもよく、前述の含量を超過するか、未満で添加した場合、MPCと同じ問題が発生する可能性がある。
【0063】
一方、双性イオン性物質としてMPC及びSBが同時に使用される場合、MPC及びSBの総含量は、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の全体の質量に対して、約1~5wt%であってもよいが、これに制限されず、望ましいMPCの含量は、約2~4wt%であってもよい。
【0064】
さらに、この時、MPC及びSBの比率は、重量比基準でMPC1に対して、同量のSB1であってもよい。このような特定の比率のMPC及びSBを含むGICは、各物質が含んでいる官能基の部分電荷が異なることにより、これらの純電荷(Net charge)が「0」でない特定の方向の電荷を帯びて極性が発生することがある。そこで、より高い極性が現れた本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、静電気的相互作用、すなわち、水素結合力が向上し、水和層形成がより増加することがある。そこで、MPC及びSBの比率は、重量比基準でMPC約1対SB約1であってもよいが、これに制限されず、MPC対SBの比率は、重量比基準で1対3~3対1の間で設定することができる。
【0065】
一方、双性イオン性物質をGIC液体に混合する段階(S110)で用いられる双性イオン性物質は、GICの物理的性質を変化させることなく、これに対する機能を補強することができる補強剤(Modifier)である。より具体的には、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の製造方法で用いられる双性イオン性物質は、双性イオン性物質内の電荷の密度差を用いて、GIC内部に存在する架橋酸素(Bridging oxygen(BO))間の結合を遮断し、非架橋酸素(Non-bridging oxygen(NBO))の比率を増加させることにより、内部のイオン放出を増加させることができる補強剤である。そこで、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の製造方法で用いられる補強剤は、前述の双性イオン性物質だけでなく、偏向された電荷の密度を有することにより、GIC内部のNBOの比率を増加させることができる様々な物質をさらに含むことができる。
【0066】
例えば、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の製造方法で用いられる補強剤は、GICの物理的性質を強化させることができる物質をさらに含むことができ、ヒドロキシアパタイト(HAp)、ガラス繊維(glass fiber)、銀-錫合金(silver-tin alloy)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)ナノ粒子(nano particles)、生体活性ガラス(bioactive glass)からなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0067】
そこで、双性イオン性物質をGIC液体に混合する段階(S110)は、双性イオン性物質と共に、ヒドロキシアパタイト(HAp)、ガラス繊維(glass fiber)、銀-錫合金(silver-tin alloy)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)ナノ粒子(nano particles)及び生体活性ガラス(bioactive glass)からなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
【0068】
この時、双性イオン性物質;及びヒドロキシアパタイト(HAp)、ガラス繊維(glass fiber)、銀-錫合金(silver-tin alloy)、ジルコニア(ZrO2)、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)ナノ粒子(nano particles)及び生体活性ガラス(bioactive glass)からなる群から選択される1種以上の物質は、その純電荷(net charge)が、0でない場合がある。
【0069】
一方、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の製造方法は、双性イオン性物質が混合されたGIC液体及びGIC粉末を混合する段階(S120)の後、安定化剤、難燃剤、帯電防止剤、軟化剤、強化材、充填材、蛍光増白剤、潤滑剤、陥入減少剤、重縮剤触媒、消泡剤、乳化剤、増粘剤、及び香料からなる群から選択される1種以上を混合する段階をさらに含むことができる。
【0070】
さらに、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の製造方法は、双性イオン性物質が混合されたGIC液体及びGIC粉末を混合する段階(S120)の後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Hydroxypropyl Methylcellulose)、ヒドロキシエチルセルロース(Hydroxyethyl Cellulose)、ヒドロキシプロピルセルロース(Hydroxypropyl Cellulose)、ポリビニルアルコール(Polyvinyl Alcohol)、ポリビニルピロリドン(Polyvinyl Pyrrolidone)、カルボマー(Carbomer)、及び酢酸ビニル樹脂(Polyvinyl Acetate)からなる群から選択される1種以上を混合する段階をさらに含むことができる。
【0071】
すなわち、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、歯科用組成物、すなわち、裏装材、ベース、合着材、修復材及び接着剤等の用途に使用されるために、前述の物質を追加でさらに含むことができ、前述の物質に制限されず、より様々な添加物をさらに含むことができる。そこで、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、歯科用材料として様々な用途に使用することができる。
【0072】
さらに、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、前述の歯科用だけでなく、イオン放出の増加が要求される様々な分野で使用することができる。例えば、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、向上されたイオン放出特性を用いた疾患診断及び治療のための薬物及び遺伝子伝達用のナノ伝達体として用いることができ、歯だけでなく、ミネラル合成が要求される有機体、すなわち、造骨形成剤等の様々な分野で用いることができる。
【0073】
結局、前述の製造方法によって形成された本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、一つ以上の双性イオン性物質を含むことにより、イオン放出が増加し、極性が増加するにつれ、タンパク質及びバクテリアの吸着を遮断する防汚活性を増加することができる。さらに、前述のイオン放出の増加により、連鎖的に行われる生体内メカニズムは、バクテリアを含む様々な微生物を殺害することができる生体活性及びエナメル質化の活性を向上させることができる。
【0074】
以下では、図2a~5eを参照して、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の特性について説明する。
まず、以下で説明する本発明の様々な実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、少なくとも一つ以上の双性イオン性物質が含有されたグラスアイオノマーセメントであってもよい。より具体的には、図2aを参照すると、以下の様々な実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の組成及び含量についての例示図が図示される。
【0075】
本発明の実施例1は、全体の歯科用組成物に対して、97wt%のグラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement, GIC)及び3wt%のMPC(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine)を含有し、本発明の実施例2は、全体の歯科用組成物に対して、97wt%のGIC及び3wt%のスルホベタインメタクリレート(sulfobetaine methacrylate, SB)を含有し、本発明の実施例3は、全体の歯科用組成物に対して、97wt%のGIC、1.5wt%のMPCを含有及び1.5wt%のSBを含有している。
【0076】
さらに、Caredyne Restore(GC Corporation, Tokyo, Japan)のグラスアイオノマーセメント(glass ionomer cement, GIC)100wt%が対照群として設定された。
【0077】
この時、それぞれの実施例及び対照群は、前述の製造方法で予め設定された含量に従って、粉末形態の双性イオン性物質がGIC液体と混合された後、GIC粉末と混合して準備された。
さらに、本発明の様々な実施例に使用されたMPC及びSBは、アニオン基とカチオン基を同時に含んでいる双性イオン性物質(両側性イオン、zwitterion)である。より具体的には、図2bを参照すると、本発明の一実施例に用いられる双性イオン性物質に対する構造式が図示される。
【0078】
MPC(2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine)は、生体二重膜リン脂質の構成成分であるホスファチジルコリン(Phosphatidylcholine, PC)の親水性官能基を模写し、生体親和的で環境にやさしい素材として注目されている。また、MPCは、前述の親水性官能基を含むことにより、高い親水性を有し、安定的な水和シェルを形成することができ、優れた防汚機能(anti-gouling)を有することができる。
【0079】
さらに、SB(sulfobetaine methacrylate)は、前述のホスファチジルコリンのリン酸基の代わりにスルホン酸(sulfonate)官能基を有するスルホベタイン(sulfobetaine)を含むことにより、MPCと同様に生体親和的であり、生体内での応用可能性が高く、一分子内にスルホン酸アニオン基とアンモニウムカチオン基を同時に有する両側性イオンである。さらに、SBも防汚機能を有しており、PC基盤の高分子に比べて容易かつ簡便に合成することができるため、より商業的な用途に容易に使用することができる。
【0080】
結局、前述の双性イオン性物質であるMPC及びSBは、一部程度の違いはあるが、ほとんどの双極性高分子は、疎水性または静電気的な引力を通じて、水溶液内の非特異的な吸着を抑制することができる。また、添加剤として双性イオン性物質の添加は、タンパク質の熱的、化学的変性を抑制することができる。特に、前述のMPC及びSBは、生体内の構成成分を模写することで、より安定的に生体内で用いることができる。
【0081】
図3を参照すると、前述の本発明の実施例及び対照群に対する赤外線分光法(Fourier Transformed Infrared Spectroscopy, FTIR)についての結果が図示される。この時、FTIRは、前述の組成によって合成された本発明の実施例の組成を確認するために行われ、15mmの直径(diameter)及び2mmの厚さ(thickness)を有するディスク試片で作製され、分析に使用された。さらに、結果は、instrument’s OMNIC spectra softwareを使用し、4cm-1の分解能で、スペクトル(4000~800cm-1)で得た。
【0082】
実施例1~実施例3は、共通して1715cm-1でC=Oに該当するピーク(peak)及び1325cm-1でC-Nに該当するピークが共通して現れたが、対照群(control)では前述のピークが現れなかった。
さらに、実施例1及び実施例3は、前述のピークと共に、970cm-1でN+(CH3)3に該当するピーク及び1060cm-1でPOCHに該当するピークが共通して現れたが、対照群(control)では前述のピークは現れなかった。
【0083】
さらに、実施例2及び実施例3は、1037cm-1でS=O対称(S=O symmetric)に該当するピーク及び1170cm-1でS=O非対称(S=O asymmetric)に該当するピークが共通して現れたが、対照群(control)では前述のピークが現れなかった。
【0084】
すなわち、本発明の実施例1~3は、それぞれに添加された双性イオン性物質に含まれる官能基により、それぞれの特徴的なピークを示すことで、双性イオン性物質それぞれが安定的にGICと結合したことを意味することができる。
【0085】
さらに、図4aを参照すると、X線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy, XPS)の結果が図示される。この時、イオン放出分析実験方法であるXPSは10×2mmサイズの試片で、本発明の実施例及び対照群が作製され、37℃で24時間保管された後に分析された。
【0086】
本発明の実施例1~3の物質表面(surface)の原子構成は、対照群と同様に亜鉛(Zn)を含み、共通してNa、F、O、N、Ca、C、Cl、S、P、Si及びAlを含んでいることが示される。すなわち、本発明の実施例1~3は、対照群と同じGICに対する構成が発見されたことにより、本発明の実施例1~3は、双性イオン性物質の添加により、結合状態及び原子の構成状態が変化せず、本GICに対する特性が維持されることを意味することができる。
【0087】
さらに、図4bを参照すると、本発明の実施例で放出されたイオンに対するプロファイルについての結果が図示される。
より具体的には、MPC及びSBを含む本発明の実施例3が、全ての種類のイオンを有意に最も多く放出することが示される(p<0.001)。
【0088】
特に、Znの場合、対照群は約0.24ppmであり、実施例1~3はそれぞれ約3.19ppm、約12.40ppm及び約61.98ppmであり、双性イオン性物質を含む本発明の実施例のZn放出量は、双性イオン性物質を含まない対照群より約13倍~260倍程度多いことが示される。
【0089】
また、Caの場合、対照群は約0.23ppmであり、実施例1~3はそれぞれ約0.58ppm、約1.58ppm及び約9.25ppmであり、双性イオン性物質を含む本発明の実施例のCa放出量は、双性イオン性物質を含まない対照群より約2倍~40倍程度多いことが示される。
【0090】
また、Srの場合、対照群は約0.23ppmであり、実施例1~3はそれぞれ約1.08ppm、約2.27ppm及び12.68ppmであり、双性イオン性物質を含む本発明の実施例のSr放出量は、双性イオン性物質を含まない対照群より約5倍~55倍程度多いことが示される。
【0091】
また、Pの場合、対照群は約0.61ppmであり、実施例1~3はそれぞれ約46.58ppm、約2.90ppm及び約81.13ppmであり、双性イオン性物質を含む本発明の実施例のP放出量は、双性イオン性物質を含まない対照群より約5倍~133倍程度多いことが示される。
【0092】
すなわち、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、双性イオン性物質を含むことにより、イオン放出量を増加することができる。特に、MPC及びSBの両方が含まれた実施例3において、最も効果的にイオン放出を向上することができることが示されることで、双性イオン性物質は、単独で使用された時より2種類以上を特定の比率で組み合わせる場合、GICのイオン放出に対する効果をより向上させることを意味することができる。
【0093】
そこで、図4cを参照すると、前述のイオンによる振動周波数の結果であるラマンスペクトルの結果が図示され、前述のように、本発明の実施例1~3は、双性イオン性物質により、組成物表面のイオン放出量が多くなるにつれ、これに対する振動エネルギーの強度(intensity)が対照群より高いことが示される。また、図4bの結果と同様に、本発明の実施例3がイオン放出による振動エネルギーの強度(intensity)が最も高いことが示されることにより、特定の比率のMPC及びSBの組み合わせがGICのイオン放出に対する効果をより向上させることを意味することができる。
【0094】
このような、MPC及びSBの組み合わせによってさらに上昇したイオン放出向上効果は、各物質の官能基で現れる固有電荷量が異なることにより、極性が強くなって引き起こされることがある。
【0095】
例えば、図5aを参照すると、双性イオン性物質のNet Chargeについての例示図が図示される。まず、図5aの(a)を参照すると、MPC及びSBそれぞれに含まれる正電荷及び負電荷のサイズは、それぞれに含まれる官能基が異なることにより、互いに相異する。そこで、MPC及びSBが同時に含まれる場合、Net Chargeが「0」に収束しなくなり、強い極性が示されることがある。従って、図4a~4bで前述のMPC及びSBの組み合わせによる著しく向上したイオン放出効果は、このような強い極性の発生によって引き起こされることがある。
【0096】
その反面、図5aの(b)を参照すると、MPCまたはSBがそれぞれ単独である場合、含まれる双性イオン性物質が同一物質であることにより、全ての電荷の合計(純電荷、Net Charge)が「0」に近く収束することができ、これにより、極性が前述の2種類以上の組み合わせより弱いことがある。
【0097】
しかし、MPCまたはSBのような双性イオン性物質、すなわち、補強剤は、単独でGICに含まれる場合でも、極性を示すことができ、これにより、図4a~4bの実施例1及び/または2のように、GICのイオン放出に対する向上効果を引き起こすことができる。
【0098】
より具体的には、図5bを参照すると、双性イオン性物質の炭素鎖についての例示図が図示される。本発明の一実施例に使用される補強剤として、双性イオン性物質を含み、双性イオン性物質は、正電荷及び負電荷を帯びる官能基が炭素鎖、すなわち、炭素-炭素結合を通じて連結されている。
【0099】
このような、双性イオン性物質は、含まれる炭素鎖の長さが長くなるほど、双極子モーメント(dipole moment)の大きさ、すなわち、各官能基に対する偏極性が大きくなるにつれ、純電荷が「0」に収束せず、極性を示すことができる。そこで、本発明の双性イオン性物質を含む補強剤は、1種類を含む場合でも、そして特に2種類以上の組み合わせによって純電荷が0でなくなる場合、これを含まないGICより著しく向上されたイオン放出効果を有することができる。結局、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物に含むことができる補強剤は、前述の双性イオン性物質だけでなく、純電荷が「0」に収束せず、極性を有する様々な物質を全て含むことができる。
【0100】
さらに、図5cを参照すると、双性イオン性物質による本発明の実施例において、Net Chargeに対するXPS及びラマンスペクトルの結果が図示される。まず、図5cの(a)を参照すると、双性イオン性物質が含まれる場合、プロトン化(protonation)された窒素の比率が増加することが示され、特に、MPC及びSBが同時に含まれる実施例3がプロトン化された窒素の強度が高いことが示され、プロトン化された窒素、すなわち、双性イオン性物質の添加によりカチオンが増加することを意味することができる。さらに、窒素は、プロトン化されて分子間の反発力を引き起こすため、分子間の凝集が最小になって強い極性を示すようになり、これによりイオン放出を増加することができる。
【0101】
さらに、図5cの(b)を参照すると、Siと架橋された非架橋酸素(Non-bridging oxygen(NBO))及び架橋酸素(Bridging oxygen(BO))の比率は、添加された双性イオン性物質により異なって示され、実施例2がNBOに対する比率が高いことが示される。すなわち、互いに異なる2種類以上の双性イオン性物質を含む場合、原子の構造的安定性を有するSi-O-Siより、相対的に非安定的な構造を有するSi-O-NBO及びSi-O-2NBOに対する比率が高くなるにつれ、これらによる電荷密度の差、すなわち、イオン性(極性)を増加することができる。
【0102】
より具体的には、図5dを参照すると、前述の図5a及び5cの結果に対するグラフが図示され、単一双性イオン性物質(zwitterionic network modifier)のみが含まれる場合、純電荷(net charge)が0に収束する。これに対して、2種類以上の双性イオン性物質(zwitterionic network modifier)が含まれる場合、部分電荷分布によって純電荷を決定することができ、MPC(-)官能基の部分電荷は-1.5952であり、SB(-)官能基の部分電荷は-0.9537であるため、部分電荷が不均質になり、より効果的に架橋酸素の結合を分解させることができる。
【0103】
結局、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、双性イオン性物質を含むことで、双性イオン性物質の(-)官能基による強い引力により、Si-O-Siの結合が切れることで、イオン放出が増加し(イオン放出通路形成)、これにより極性を増加することができる。特に、2種類以上の双性イオン性物質を含む場合、これらに対する電荷差がさらに大きくなることにより、これらの異なる電荷によってさらに多くのイオンを放出することができる。
【0104】
さらに、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、双性イオン性物質によって極性が増加するにつれ、強い水素結合(hydrogen bonding)を形成することができ、これにより、より厚い水和層(hydration layer)を形成することができる。
【0105】
そこで、図5eを参照すると、本発明の実施例1~3は、対照群(control)より強い水素結合の強さを有することが示される。さらに、本発明の実施例のうち、2種類以上の双性イオン性物質を含む本発明の実施例3は、前述のように、双性イオン性物質それぞれの官能基による部分電荷によって、より多くのイオンを放出し、これにより、最も強い水素結合の強さを有することが示される。
【0106】
結局、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、双性イオン性物質を含むことにより、イオン放出を向上することができ、これによる水素結合力が向上し、より厚い水和層を形成することができる。さらに、前述の特性によって形成された水和層は、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物にバイオフィルムのような歯に有害な物質を遮断することができる防汚効果を向上させることができる。
【0107】
以下では、図6a及び図6bを参照して、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物に対する防汚効果について説明する。
まず、図6aを参照すると、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物に対する抗菌効果についての結果が図示される。この時、対照群(control)及び本発明の実施例1~3は、直径5mm及び厚さ1.5mmの金型によってディスク状の試片の形態で準備され、虫歯菌(Streptococcus mutans)を含むBHI培地を試片上に配置して、37℃で18時間培養した後、超音波処理を通じて試片と菌を分離し、分離された菌をmicroplate reader(Epoch, BioTek Instruments, VT, USA)を用いて600nmでOD値を測定した後、これに対するOD値を評価した。さらに、対照群(control)に対する自主的なイオン放出による抗菌性を評価するために、GICを含まない試片を準備して比較評価した。
【0108】
そこで、図6aの(a)を参照すると、対照群(control)は、前述の4a及び4bで述べたように、イオンが放出されることにより、抗菌作用が起こることが示される。しかし、本発明の実施例1~3よりも試片内に存在する生存虫歯菌の数が多いことが示される。すなわち、本発明の実施例1~3は、対照群よりも有意に低い虫歯菌数を示すことで、より向上された抗菌活性を有することを意味することができる(p<0.01)。特に、本発明の実施例3の場合、有意に最も低い虫歯菌数を有することが示されることで、2種類以上の双性イオン性物質が最も効果的に抗菌活性を提供することを意味することができる。
【0109】
次に、図6aの(b)を参照すると、実施例及び対照群それぞれに存在する虫歯菌のCFU(colony forming unit)結果が図示される。本発明の実施例1~3に付着した虫歯菌のCFUレベルは、対照群に比べて有意に低いことが示され(p<0.01)、実施例1~3間の差はないことが示される。このような結果は、双性イオン性物質が虫歯菌の吸着を遮断することで、獲得された虫歯菌の数が減少したことを意味することができる。
【0110】
さらに、図6bを参照すると、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物に対する生物膜(バイオフィルム、biofilm)防止効果についての結果が図示される。この時、バイオフィルムモデルは、虫歯または歯周疾患がなく、3ヶ月間抗生剤を摂取せず、収集前24時間は歯磨きをせず、収集前2時間は食事をしなかった6名の供与者から唾液を収集し、同じ比率で混合した。その次に、混合された唾液はMcBainブロス培地50に対して1の比率で混合され、バイオフィルムモデルとして使用した。さらに、対照群(control)及び本発明の実施例1~3は、直径5mm及び厚さ1.5mmの金型によってディスク状の試片形態で準備され、バイオフィルムモデルを試片上に配置し、8時間及び16時間の間隔で培地を交替しながら37℃のCO2培養器で24時間培養した。その次に、バイオフィルムが形成された試片を微生物の生死の有無を確認することができるlive/dead bacterial viability kit (Molecular Probes, Eugene, OR, USA)を用いて染色し、これを共焦点レーザー顕微鏡(laser scanning microscopy, CLSM, LSM880, Carl Zeiss, Thornwood, NY, USA)を用いて無作為に選択された5ヶ所の位置でバイオフィルムを視覚化した。その次に、軸方向に積層されたバイオフィルムのイメージを獲得し、Zen(Zen, Carl Zeiss, Thornwood, NY, USA)を用いて各バイオフィルムの厚さを測定し、ImageJ(NIH, Bethesda, MA, USA)を用いてバイオマス(biomass)を分析した。
【0111】
まず、図6bの(a)を参照すると、対照群(control)が生きている微生物に対する緑色蛍光が最も多く発現していることが示される。さらに、積層されたバイオフィルムもまた、最も厚いことが示される(スケールバーは100μmを意味する)。
【0112】
これに対し、本発明の実施例1~3は、対照群より低い緑色蛍光が少なく発現していることが示され、特に、実施例3の場合、死んだ微生物を意味する赤色蛍光が最も多く発現していることが示される。
【0113】
そこで、前述の図6bの(a)の結果のうち、バイオフィルムに対する厚さを定量化した図6bの(b)を参照すると、本発明の実施例1~3は、対照群よりバイオフィルムの厚さが有意に低いレベルであることが示され(p<0.001)、本発明の実施例に増殖したバイオフィルムの厚さは、対照群に比べて0.5~0.6倍低いレベルであることが示される。
【0114】
さらに、前述の図6bの(a)の結果のうち、バイオマス(生物量)に対する厚さを定量化した図6bの(c)を参照すると、本発明の実施例1~3は、対照群よりバイオフィルムのマスが有意に低いレベルであることが示され(p<0.001)、本発明の実施例で増殖したバイオフィルムに対する生物量は、対照群に比べて0.38~0.6倍低いレベルであることが示される。
【0115】
以上の結果で、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、双性イオン性物質を含むことにより、水和層形成が向上し、タンパク質及び微生物に対する付着が低下し、バイオフィルムの形成を抑制することができる。
【0116】
さらに、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、前述の水和層形成による付着防止、すなわち、防汚効果以外に、双性イオン性物質によるイオン放出により、微生物の殺生効果が向上することが示される。すなわち、本発明は、防汚効果と共に、微生物に対する抗菌効果を有することを意味することができる。
【0117】
一方、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、双性イオン性物質を含むことにより、イオン放出が向上し、このうちP及びCaイオンに対する放出も向上し、細胞の付着及び増殖に関与するようになる。より具体的には、P及びCa放出による水酸化カルシウム(Calcium hydroxide)が持続的に生成されると、口腔内のpHが高くなり、これによる抗菌環境(antibacterial environment)を造成することができ、これによる一連の信号体系としてサイトカイン(cytokine)のような免疫細胞を生成することができる。 さらに、生成された免疫細胞は、硬組織を形成する細胞を誘導することになり、誘導された細胞は、歯の表面にアパタイト(apatite)及びヒドロキシアパタイト(hydroxy apatite)を形成し、骨活性能力を向上することができる。
【0118】
そこで、図7aを参照すると、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物の表面及び断面に対するSEMイメージが図示される。この時、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物のアパタイト形成能力を評価するために、直径5mm及び厚さ1.5mmの金型によってディスク状の試片形態で準備され、血液成分と類似した疑似体液(Simulated Body Fluid, SBF)に7日間前述の試片を浸漬した後、試片上に形成された層を電界放射型走査電子顕微鏡(field-emission scanning electron microscope)及びimage Jソフトウェアを用いて分析した。
【0119】
より具体的には、対照群(control)は、Ca及びPを含むアパタイト、すなわち、燐灰石がほとんど形成されないことが示される。すなわち、対照群は、GIC表面をミネラル化させることができる生物活性度が非常に低いか、ないため、燐灰石が形成されないことを意味することができる。
【0120】
これに対し、本発明の実施例1~3は、対照群(control)よりも燐灰石が厚く多く形成されたことが示され、特に、実施例3が最も厚く細密な燐灰石を形成したことが示される。
さらに、図7bの(a)を参照すると、双性イオン性物質による本発明の実施例における骨活性能力に対するラマンスペクトルの結果が図示される。984cm-1でPO43-に該当するピークの強度(intensity)は、本発明の実施例1~3全てが対照群より高いことが示され、このうち実施例3が燐灰石の主成分であるPO43-に対するピークの強度が最も高いことが示される。すなわち、双性イオン性物質を含むことにより、骨、すなわち、歯をミネラル化させることができるPO43-に対する形成を向上することができ、特に、一定比率の2種類以上の双性イオン性物質を含む場合、これに対する効果がさらに増進することを意味することができる。
【0121】
さらに、前述の結果を定量化した図7bの(b)を参照すると、本発明の実施例1~3は、対照群よりアパタイトの広さ(area)が有意に高いレベルであることが示され(p<0.001)、本発明の実施例に増殖されたアパタイトの広さは、対照群に比べて50~75倍高いレベルであることが示される。
【0122】
さらに、図7cを参照すると、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物のpH変化に対する結果が図示される。この時、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物のpH変化を測定するために、実施例及び対照群を乳酸溶液(lactic acid solution)に浸した後、時間によるpHを測定して比較した。
【0123】
歯はエナメル質、象牙質、白亜質及び歯髄で構成され、エナメル質は歯の最外層の最も硬い組織として、水酸化燐灰石(apatite)、すなわち、Ca10(PO4)6(OH)2を主成分として含んでいる。このような、エナメル質は酸によって溶解することができる。より具体的には、Ca10(PO4)6(OH)2は下記の化学式1のように、水素イオンによって完全に溶解することができるため、水素イオンが多い酸性溶液で容易に溶解することができる。
【0124】
【化1】
【0125】
結局、歯のエナメル質の溶解、すなわち、脱灰(Demineralization)を防止するためには、歯及び口腔内のpHが重要である。
そこで、図7cを参照すると、本発明の実施例2及び3は、150min以後から、対照群より高いpH環境を造成することが示される。すなわち、双性イオン性物質を含むことにより、本発明の実施例2及び3は、イオン放出量による水和層形成、すなわち、水酸化(OH)イオンが多くなるにつれ、このpHが塩基性に変化することができる。そこで、双性イオン性物質を含む本発明は、歯及び口腔内のpH環境に対する酸性化を防止することができるため、エナメル質の脱灰を予防することができる。
【0126】
以上の結果で、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、双性イオン性物質を含むため、P及びCa等の骨形成関連イオン放出を向上することができ、これにより、免疫細胞誘導及びこれに伴う連鎖的なメカニズム等の生体内活性度が高まり、歯の一番外側の部分の非常に硬い硬組織であるエナメル質層(enamel)の形成を促進することができる。そこで、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、単純な防汚効果及び抗菌効果だけでなく、歯の根本的な治療及びこの機能的向上をもたらすことができる。そこで、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、エナメル質層の形成を促進し、虫歯菌から歯内に形成されている細胞、神経及び血管等の深部組織である歯髄(pulp)を保護することができる。
【0127】
以下では、図8を参照して、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物に対する湿潤性及び機械的特性について説明する。この時、本発明の実施例及び対照群の湿潤性及び機械的特性を評価するために、圧縮強度(Compressive strength)及び湿潤性(wettability)を測定した。さらに、圧縮強度の測定は、国際標準であるISO 9917-1 (2017)に基づいて行われ、圧縮強度測定に使用された本発明の実施例及び対照群は、6mm±0.1mmの直径及び4mm±0.1mmの高さを有する円筒形の試片で準備され、試片の圧縮強度の測定のために、1mm/minのクロスヘッド速度で、汎用試験機で破断するように荷重を加えた。さらに、圧縮強度の方程式はC=4p/(π)で計算された(pは荷重を意味し、dは測定された試片の直径、cは圧縮強度であるMPaを意味する)。さらに、湿潤性の測定は、液体(水)を固体表面上に落とした時、液体が固体表面で液体の滴を形成することになるが、この時の液体と固体表面が成す接触角(contact angle)を測定することによって行われ、この時に使用された実施例及び対照群は、直径15mm及び厚さ2mmのディスク状の試片で準備され、各試片に3μLの蒸留水を落とした後、この接触角を測定した。
【0128】
まず、図8の(a)を参照すると、本発明の実施例及び対照群の圧縮強度は差がなく50~80MPaを有することが示される。すなわち、双性イオン性物質の添加により、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物に対する機械的特性が変化したり、弱化しないことを意味することができる。
【0129】
さらに、図8の(a)を参照すると、本発明の実施例1~3は、対照群より有意に低い接触角を有することが示され(p<0.001)、特に2種類以上の双性イオン性物質を含む実施例3が統計的に有意性を有し、最も低い接触角を有することが示される。
【0130】
すなわち、双性イオン性物質の添加により、GICはより多くのイオンを放出することができ、これにより極性が増加し、親水性が増加することを意味することができる。このような親水性の増加は、水との強い静電気的相互作用(水素結合)を意味することができ、そこで、本発明の一実施例による歯科用グラスアイオノマーセメント組成物は、歯に薄い皮膜のような水和層を形成して、バクテリアの接近及び各種汚染物質が付着しないようにする防汚効果を提供することができる。
【0131】
以上、添付の図面を参照して本発明の実施例をさらに詳細に説明したが、本発明は必ずしもこれらの実施例に局限されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で様々な変形実施が可能である。従って、本発明に開示された実施例は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものであり、これらの実施例によって本発明の技術思想の範囲は限定されない。従って、以上で記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解しなければならない。本発明の保護範囲は、下記の請求の範囲によって解釈されなければならず、それと同等の範囲内にある全ての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されなければならない。

図1
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図6a
【図
図6b
図7a
図7b
図7c
図8
【国際調査報告】