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特表2024-520978高圧下および/または高温下で連続フロー化学反応を行うための気液固反応器カスケードおよび液固反応器カスケード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】高圧下および/または高温下で連続フロー化学反応を行うための気液固反応器カスケードおよび液固反応器カスケード
(51)【国際特許分類】
   C07C 213/02 20060101AFI20240521BHJP
   C07C 215/76 20060101ALI20240521BHJP
   C07C 45/29 20060101ALI20240521BHJP
   C07C 47/54 20060101ALI20240521BHJP
   C07C 15/14 20060101ALI20240521BHJP
   C07C 51/347 20060101ALI20240521BHJP
   C07C 63/331 20060101ALI20240521BHJP
   C07C 209/48 20060101ALI20240521BHJP
   C07C 211/12 20060101ALI20240521BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20240521BHJP
   C07C 2/86 20060101ALI20240521BHJP
   B01J 3/00 20060101ALI20240521BHJP
   B01J 3/04 20060101ALI20240521BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20240521BHJP
   B01J 31/06 20060101ALI20240521BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20240521BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20240521BHJP
   B01J 23/66 20060101ALI20240521BHJP
   C07D 333/08 20060101ALI20240521BHJP
   C07D 207/27 20060101ALI20240521BHJP
   C07D 317/38 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
C07C213/02
C07C215/76
C07C45/29
C07C47/54
C07C15/14
C07C51/347
C07C63/331
C07C209/48
C07C211/12
C07B61/00 300
C07C2/86
B01J3/00 B
B01J3/04 G
B01J23/42 Z
B01J31/06 Z
B01J31/02 101Z
B01J23/89 Z
B01J23/66 Z
C07D333/08
C07D207/27
C07D317/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558689
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2022061243
(87)【国際公開番号】W WO2022229278
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】2104386
(32)【優先日】2021-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523362179
【氏名又は名称】イプソメディク
【氏名又は名称原語表記】IPSOMEDIC
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ルコント-ノラン,エディット
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BA21B
4G169BA22A
4G169BA22B
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC02A
4G169BC02B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC32B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BE06A
4G169BE06B
4G169BE14A
4G169BE14B
4G169CB02
4G169CB19
4G169CB59
4G169CB77
4G169DA05
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC29
4H006AC45
4H006AC52
4H006BA05
4H006BA21
4H006BA22
4H006BA25
4H006BE20
4H006BJ50
4H006BN30
4H006BS30
4H006BU46
4H039CB30
4H039CC20
4H039CD20
(57)【要約】
本発明は、完全撹拌気液固反応器カスケードを使用して、圧力下または高圧下で、連続フロー化学反応を行うための装置と、そのような反応を実施するための当該装置の使用とに関する。装置は、相互接続されたオートクレーブ反応器のカスケードを含む。カスケードの反応器は、異なる体積のものであり、完全に独立した方法で、個々に制御されることを可能にする手段を備える。反応器のカスケードは、異なる体積の少なくとも2個の反応器を含み、流体流の方向に増加または減少する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続フローにおける圧力下または高圧下および/または高温下の化学反応のための装置であって、相互接続されたN個のオートクレーブ反応器のカスケードを含み、前記カスケードの前記N個の前記反応器は、完全に独立した方法で、前記反応器を個別に制御することを可能にする手段を備え、Nは1より大きい自然数であることが理解され、前記反応器のカスケードは、異なる体積の少なくとも2個の反応器を含み、当該体積は、流体流の方向に増加または減少し、前記化学反応は、気液固系または液固系であり、前記装置は、前記反応器それぞれの間において、流体相が連続フローにあることを許容し、固相がバッチにあることを許容する手段を含み、当該手段は、フィルタキャンドルのシステムであることを特徴とする装置。
【請求項2】
各反応器は、液体出入口と、可能であれば反応ガス入口と、破裂板と、通気口と、パラメータ測定用浸漬スリーブと、サンプリングバルブと、ダブルジャケットと、加熱カラーと、各反応器の底部に配置されるバルブと、を備え、失活触媒を取り除いて、新しい触媒に交換することを可能にし、各反応器は、出口および内部で、フィルタ、特にフリットを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
液体アウトレットオリフィスには、フィルタキャンドルのシステムが取り付けられ、2~50μmの多孔を有することを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
UV、NIR、ラマンによる分析技術、あるいは他のあらゆる分析技術によるオンライン分析ツールPAT(プロセスアナリティカルテクノロジー)が各反応器の間に配置されることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記カスケードの終端に第N+1の反応器を配置し、前記カスケードの反応器の1つを切り離す必要があるメンテナンス操作中は、処理に接続できることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
高圧下で反応を行うための装置であって、前記反応器のカスケードでNが3以上である場合、第1の反応器の体積がR1となり、第2の反応器の体積がR1~0.5R1のR2となり、第3の反応器の体積が0.8R1~0.4R1のR3となるように、前記反応器の体積は減少することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
反応熱が50kJ/molを超える反応を行うための請求項1~6のいずれか1項に装置の使用であって、前記反応器のカスケードでNが3以上である場合、前記第1の反応器の体積がR1となり、前記第2の反応器の体積が1.25R1~1.5R1のR2となり、前記第3の反応器の体積が1.5R1~4R1のR3となるように、前記反応器の体積は増加することを特徴とする装置の使用。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の装置の使用であって、圧力下または高圧下で、前記気液固系および前記液固系の反応、特に、水素化反応、酸化反応、カルボニル化反応、カルボキシル化反応、アミノ化反応、特に、アンモノリシス反応、Heck反応または鈴木-宮浦反応、好ましくは水素化反応を行うための使用。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に装置の使用であって、気液固系反応を行うための使用であり、撹拌器のブレードによって生じる低下により、反応媒体に反応ガスの分散を確実に行う自給式中空タービンによって撹拌することを含み、撹拌速度は、圧力低下を克服するのに十分なものであり、好ましくは300rpm超であり、特に500rpmであるのが好ましいことを特徴とする装置の使用。
【請求項10】
圧力下または高圧下で、前記気液固系の反応、特に、水素化反応、酸化反応、カルボニル化反応、カルボキシル化反応、アミノ化反応、特に、アンモノリシス反応、好ましくは水素化反応を行うための請求項9に記載の使用。
【請求項11】
高温で、前記液固系の反応、特に、Heck反応および鈴木-宮浦反応を行うための請求項8に記載の使用。
【請求項12】
前記反応は、反応ガス圧が2バール(0.2MPa)~500バール(50MPa)、好ましくは、2バール(0.2MPa)~250バール(25MPa)であり、さらに好ましくは、2バール(0.2MPa)~50バール(5MPa)となるように実施されることを特徴とする請求項8、9または10に記載の使用。
【請求項13】
反応温度は-10~300℃、好ましくは、少なくとも130℃の高温であり、好ましくは、ダブルジャケットまたは加熱カラーのいずれかを使用し、前記反応温度および触媒負荷は、前記反応器それぞれで異なることが可能であることを特徴とする請求項8~10のいずれか1項または請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記反応は、反応ガス圧が1バール(0.1MPa)~100バール(10MPa)、好ましくは、1バール(0.1MPa)~50バール(5MPa)であり、さらに好ましくは、1バール(0.1MPa)~30バール(3MPa)となるように実施されることを特徴とする請求項8または11に記載の使用。
【請求項15】
反応温度は-10~300℃、好ましくは、少なくとも130℃の高温であり、好ましくは、ダブルジャケットまたは加熱カラーのいずれかを使用し、前記反応温度および触媒負荷は、前記反応器それぞれで異なることが可能であることを特徴とする請求項8、11または14に記載の使用。
【請求項16】
ラネーニッケルの存在下でアジポニトリルからキサメチレンジアンミンへの連続水素化反応のために、前記処理は、異なる体積の少なくとも3個の反応器を使用することによって、触媒の体積を減少させて質量を増加させ、前記反応器に応じた温度で実施されることを特徴とする請求項8~10のいずれか1項または請求項12に記載の使用。
【請求項17】
前記反応器のカスケードは3つの要素を含み、前記第1の反応器の体積がR1である場合、前記第2の反応器の体積はR1の2分の1であるR2となり、前記第3の反応器の体積はR1の3分の1であるR3となるように前記反応器の体積は減少することを特徴とする請求項8~16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
白金担持カーボン触媒(Pt/C)の存在下でp-ニトロフェノールからp-アミノフェノールへの連続水素化反応のために、前記処理は、反応器が2~5個のカスケードを使用することによって、好ましくは、前記反応器に応じて減少させた水素圧で実施されることを特徴とする請求項8~10のいずれか1項または請求項12もしくは13に記載の使用。
【請求項19】
ベータゼオライトの存在下で無水酢酸を使用するアニソールからアセタニソールへの連続アセチル化反応のために、前記処理は、反応器が少なくとも2個のカスケードを使用することによって、温度が少なくとも130℃で実施されることを特徴とする請求項8~10のいずれか1項または請求項12もしくは13に記載の使用。
【請求項20】
ナトリウムメタノラートの存在下でエチル2-(2-ピロリドン)-ブチラートから2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブチルアミドへの連続アンモノリシス反応のために、前記処理は、反応器が少なくとも2個のカスケードを使用することによって、圧力が少なくとも7.5バール(0.75MPa)で、温度が少なくとも117℃で実施されることを特徴とする請求項8~10のいずれか1項または請求項12もしくは13に記載の使用。
【請求項21】
SiliaCatPd(0)パラジウム触媒を使用するベンジルアルコールからベンズアルデヒドへの連続酸化反応のために、前記処理は、反応器が少なくとも2個のカスケードを使用することによって、圧力が少なくとも10バール(1MPa)で、温度が少なくとも85℃で実施されることを特徴とする請求項8~10のいずれか1項または請求項12もしくは13に記載の使用。
【請求項22】
ジエチルアミノエチルセルロース触媒を使用する酸化プロピレンから炭酸プロピレンへのカルボキシル化反応のために、前記処理は、反応器が少なくとも2個のカスケードを使用することによって、圧力が少なくとも7バール(0.7MPa)で、温度が少なくとも95℃で実施されることを特徴とする請求項8~10のいずれか1項または請求項12もしくは13に記載の使用。
【請求項23】
Pd-Cu/C触媒を使用するボロン酸とヨウ化アリールの連続鈴木-宮浦反応のために、前記処理は、反応器が少なくとも2個のカスケードを使用することによって、温度が少なくとも105℃で、圧力が少なくとも2バール(0.2MPa)で実施されることを特徴とする請求項8、11、14または15に記載の使用。
【請求項24】
パラジウムPd-M/C触媒(Mは金属)を使用するアルケニルまたはアルキンとヨウ化アリールの連続Heck反応のために、前記処理は、反応器が少なくとも2個のカスケードを使用することによって、温度が少なくとも105℃で、圧力が特に4バール(0.4MPa)で実施されることを特徴とする請求項8、11、14または15に記載の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、完全撹拌気液固反応器カスケードによる連続フローにおいて、圧力下または高圧下で化学反応を行うことが可能な装置と、そのような反応を実施するための当該装置の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧下の化学反応(水素化、酸化、カルボニル化など)は、基礎化学製品(石油化学製品)および精密化学製品(医薬品、化粧品など)の双方の分野で、工業規模で実施される化学変換の大部分を占める。基本的に、圧力下で二水素を使用する水素化反応は、精密化学製品の世界で行われる化学反応の約20%を占める(非特許文献1)。
【0003】
超高圧(数10~数100バール)下で行われるこれらの同じ化学変換は、市場ニーズを満たすために使用される反応器の体積が極めて大きく(最大1,000リットル)なるため、極めて危険である。引火性が高い性質の気体(水素、酸素)または毒性が高い性質の気体(アンモニア、一酸化炭素)を使用する際は、高圧下での化学反応の場合は、工業単位を設定する以前に、多くの制限規定基準の順守を必要とする。(Seveso分類では高閾値)
【0004】
現在、従来のバッチ処理(反応器に投入-反応-排出-洗浄の順序)から連続フロー処理(連続的に反応器に供給して排出)への移行は、特に、関連する気体の体積が大幅に減少するため、リスクを大幅に下げ、リスクによる危険性が良好に制御されることが、一般に認められている(非特許文献2)。その結果、本質的安全が得られる。
【0005】
表面積対体積比が極端に減少することにより、連続処理への移行の結果、常に、優れた圧力反応を得る工業単位を指定するために修得する主要パラメータとなる気液転移、液固転移および気固転移(材料および熱)が有意に改善することが可能となる(非特許文献3)。一般に、この特徴によって、同等のバッチ処理と比べて、連続装置の性能(収率、選択率、生産率、環境放出、エネルギー収支)が大幅に改善されるようになる。
【0006】
装置の性能レベルをリアルタイムで可視化するために、連続生産設備、すなわちオンライン分析システムへの統合が可能となることによって、ほぼ瞬時にあらゆる欠陥を修正することが可能となり、安全および品質が大幅に改善することにつながる。
【0007】
しかしながら、高圧下で化学反応を実施することは、このタイプの変換が三相媒体(気体、液体、固体触媒)でほぼ系統的に行われることと、一般に、ピストンタイプの連続反応器では固相を変えずに移動させることができないことが大きな難題となる(非特許文献4)。
【0008】
この問題を克服するために、いくつかの革新的装置が、高圧下で連続フロー化学反応の実施を可能にする工業環境などの学術環境で設計されている。マクロ多孔性モノリシック反応器またはメソ多孔性モノリシック反応器の使用によって、固体触媒を担持する材料の多孔によって変形する母材を直接移すことが可能である(非特許文献5)。触媒カートリッジに予めパッケージ化された反応器や、触媒または固定触媒層でコーティングされた管型反応器を使用することは、これらの反応を実施するための解決策の選択肢である(特許文献1-2、非特許文献6-7)。いわゆる「スラリー」反応器の使用によって、触媒活性部位と反応物の良好な接触を確実にする三相連続フローを達成することが可能となる(特許文献3-4、非特許文献8)。
【0009】
しかしながら、これらの装置は、それほど柔軟性がないことが多く、詰まり、汚れ、「溶失」の問題や、技術的メンテナンス(触媒の交換)が困難であるなど、大きな実用的難点を抱えている。これらの装置と、従来のバッチ反応器で一般に使用される工業触媒との互換性が低く、結晶性の粒径(5~350μmの大小固体粒子の存在)または物理化学的性質の観点から、さらに制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第7988919号明細書
【特許文献2】国際公開第2017/106916号
【特許文献3】米国特許第8534909号明細書
【特許文献4】国際公開第2007/112945号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】A. van den Berg et al. Tetrahedron 2005, 61, 2733-2742
【非特許文献2】I. R. Baxendale et al. J. Chem. Technol. Biotechnol. 2013, 88, 519-552
【非特許文献3】J.-C. M. Monbaliu et al. Eur. J. Org. Chem. 2018, 2301-2351
【非特許文献4】C. O. Kappe et al. ChemSusChem 2011, 4, 300-316
【非特許文献5】Chem. Eng. Sci. 2001, 56, 6015-6023
【非特許文献6】Duprat F. et al., Org. Proc. Res. Dev. 2020, 24, 686-694
【非特許文献7】J. Comb. Chem. 2008, 10, 88-93
【非特許文献8】Chemical Engineering Journal 2011, 167(2-3), 718- 726
【発明の概要】
【0012】
本発明者らは、気体・液体・固体または液体・固体が完全撹拌され、相互接続されるN(Nは1より大きい自然数)個のオートクレーブ反応器のカスケードに基づき、連続フローにおいて、圧力下または高圧下および/または高温下で行われる化学反応が可能な新規装置を設計した。
【0013】
この装置は、完全に柔軟性があり、反応ガス圧10~500バール、温度-30~300℃を許容し、触媒負荷が有意(0.1~5%w/wまたは10%w/w)であり、滞留時間が数分~数時間と幅広くなりうるすべてのタイプの不均一系触媒(粒径2~500μm)と互換性がある。
【0014】
本発明の気液固(GLS)系装置および液固(LS)系装置は、反応速度に従って、至適条件下で動作することが可能となる。実験部分に示すように、本発明の装置は、固相および液相で連続動作するために触媒の定濃度および設定を変えることができない既存のシステムとは異なり、高柔軟性を示す。
【0015】
本発明の気液固(GLS)系装置は、反応速度および気液転移に従って触媒負荷を変えることが可能となり、柔軟性が高くなる。
【0016】
したがって、本発明の主題は、連続フローにおける圧力下または高圧下の化学反応のための装置であって、相互接続されたN個のオートクレーブ反応器のカスケードを含み、カスケードのN個の反応器は、異なる体積であり、完全に独立した方法で、反応器を個別に制御するための手段を備え、Nは1より大きい自然数であることが理解され、好ましくは、反応器のカスケードは、異なる体積の少なくとも2個の反応器を含み、体積は流体流の方向に増加または減少することを特徴とする装置である。また、本発明は、異なる体積の反応器のカスケードを含み、反応は、反応媒体の体積、温度、反応ガス圧、触媒濃度および/またはスターラー回転速度に関して、反応器に依存する様々な条件下で行われる装置に関することが理解される。
【0017】
本発明は、連続フローにおける圧力下または高圧下および/または高温下の化学反応のための装置であって、相互接続されたN個のオートクレーブ反応器のカスケードを含み、カスケードのN個の反応器は、完全に独立した方法で、反応器を個別に制御することを可能にする手段を備え、Nは1より大きい自然数であることが理解され、反応器のカスケードは、異なる体積の少なくとも2個の反応器を含み、体積は、流体流の方向に増加または減少し、前記化学反応は、気液固系または液固系であり、前記装置は、前記反応器それぞれの間において、流体相が連続フローにあることを許容し、固相がバッチにあることを許容する手段を含むことを特徴とする装置である。
【0018】
「圧力下」とは、数十万パスカルより大きいことを意味し、このような圧力に耐えることができないため、当業者によって使用されるホウケイ酸ガラス反応器で行うことができない化学反応の観点での通常の圧力に相当する。
【0019】
「高圧」とは、1MPaより大きい圧力を意味し、反応物の1つが気体である場合の圧力に相当する。
【0020】
「高温」という表現は、約50℃より高い温度に相当する。
【0021】
「連続フローにおける」という表現は、流動する液体反応媒体が通る反応器内での化学反応の実施を意味し、この特定の化学反応のすべての段階が、反応物の1つの完全転化および/または所望の生成物を得るために、中間物を分離せずに行われる。「反応器のカスケード」とは、ある順序通りに連続するいくつかの反応器を意味し、各反応器は、決められた化学反応の1または複数段階の転化に特化しており、この段階すべてが、その順序で連続する反応器で前記化学反応を実施することが可能となる。
【0022】
「オートクレーブ反応器」という表現は、液相と気相で連続する際に、数十万パスカルの圧力に耐えることができる反応器を示す。
【0023】
Nは、反応器の数を表し、2以上の自然数であり、2~10が有利であり、2、3、4、5、6、7、8、9または10の値を取ることができる。連続フローアセンブリには、そのような能力のある反応器が少なくとも2個必要となる。カスケードにおける反応器の数は、10を超えることができない。実際、反応器を追加すると、前段の反応器より圧力が低下し、特に、1反応器あたり約0.3~2バール(0.03~0.2MPa)の損失することから、反応器が10個超のカスケードで最後となる反応器では、反応速度が著しく減少すると考えられる。
【0024】
「各反応器を個別に制御することを可能にする」という表現は、圧力、温度、液体の体積、そして何よりも反応媒体の組成を制御することを意味する。実際に、時間に応じて反応媒体の組成をモニタリングすることによって、反応速度をモニタリングすることと、時間に応じて触媒活性を制御することと、触媒失活が大きく、必要とされる品質基準、すなわち、予想する反応の転化率を満たさない場合に触媒負荷を交換する計画することとが可能となる。使用した触媒負荷は、反応器nの反応体積に応じて、底バルブから約15分~1時間で、反応器nからすぐに取り除かれる。実際に、底バルブから触媒を取り除く前に、反応器を不活性ガス(窒素、アルゴンなど)で不活性化しなければならず、その後、液相と固相を完全に取り出して、反応器を洗浄してから、反応器に新しい触媒を充填し、反応器n-1から反応媒体を再投入しなければならない。この反応器nは、失活触媒を取り除く間は迂回させ、他の反応器が動作している間に洗浄して新しい触媒を投入する。「完全に独立」という表現は、各反応器の圧力または温度などのパラメータが、他の反応器の動作に影響を及ぼさないことを意味する。「異なる体積」という表現は、反応器の体積差が、カスケードにおける別の反応器に比べて、少なくとも5%であることを意味する。言い換えると、2個の反応器の体積差が5%未満であれば、これらの反応器の体積は同じであるとみなす。
【0025】
「体積が増加または減少する」とは、カスケードの反応器の体積がカスケードの方向に従って厳密に増加または減少しうるという事実を意味するが、カスケードに、体積が同じ反応器がいくつかあって、その体積より大きい反応器が少なくとも1個あるような場合も意味し、さらに、カスケードに、体積が増加するか、あるいは同じ体積の一連の反応器があり、その後に、体積が減少する1または複数の反応器が続くことも意味し、さらに、カスケードに、体積が減少するか、あるいは同じ体積の一連の反応器があり、その後に、体積が増加する1または複数の反応器が続くことも意味する。
【0026】
「流体流の方向」とは、流体流が、最初の反応器から最後の反応器にユーザによって定義された方向で反応器のカスケード全体を流れ、単一方向に循環することを意味する。「最初の反応器」とは、原料が投入される反応器を意味する。
【0027】
「気液固系反応」という表現は、1または複数の反応物が気体状態にあり、1または複数の反応物が液体状態にあり、これらの反応物の少なくとも1つまたは触媒が固体状態にあることを意味する。
【0028】
「液固系反応」とは、1または複数の反応物が液体状態にあり、少なくとも反応物または触媒が固体状態にあることを意味する。
【0029】
「バッチにある」という表現は、触媒または固体の試薬が、反応中に投入される反応器に残っていることを意味する。本発明の特定の主題は、各反応器が、液体出入口と、可能であれば反応ガス入口と、破裂板と、通気口と、パラメータ測定用浸漬スリーブと、サンプリングバルブと、ダブルジャケットと、加熱カラーと、各反応器の底部に配置されるバルブと、を備え、失活触媒を取り除いて、新しい触媒に交換することを可能にすることを特徴とする装置である。
【0030】
特に、本発明の特定の主題は、上記で定義した装置であって、各反応器は、液体出入口と、可能であれば反応ガス入口と、破裂板と、通気口と、パラメータ測定用浸漬スリーブと、サンプリングバルブと、ダブルジャケットと、加熱カラーと、各反応器の底部に配置されるバルブと、を備え、失活触媒を取り除いて、新しい触媒に交換することを可能にし、各反応器はフィルタを備え、特に、固液分離を確実に行うために液体出口の反応器の内側にフリットを備え、反応器に固体を保持することによって、固相はバッチにあり、液相は連続することを特徴とする装置である。一般に、各反応器はカウンタブレードを備えるのが好ましい。
【0031】
また、各反応器の液体出口からの液体は清澄液と呼ばれ、各反応器を備えるフィルタシステムによって、固体の痕跡はなくなる。「フィルタ」という用語は、流体を通すが、固体を保持する多孔を有する壁のことを言う。このため、固体触媒と反応物は、反応器内に残留し、流体流によって循環しない。特に、触媒は、完全失活するまで使用することが可能となる。
【0032】
本発明の特定の目的は、各反応器は、反応ガス入口と、各反応器の間にフリットから触媒を取り除くための第2の気体入口と、液体出入口と、破裂板と、通気口と、パラメータ測定用浸漬スリーブと、サンプリングバルブと、ジャケットと、加熱カラーと、各反応器の底部に配置されるバルブと、を備え、失活触媒を取り除いて、新しい触媒に交換することを可能にすることを特徴とする装置である。連続する2個の反応器の間の圧力は、主に液相出口でフィルタが詰まることにより、約0.3~2バール低下するが、不活性ガス(アルゴンや窒素など)を加えることにより相殺できることから、反応に必要な圧力下で反応器nを維持し、前記反応器nで、反応器nから反応器n+1に液体を連続して移動させることができる。本発明の特定の主題は、上記で定義した装置であって、液体アウトレットオリフィスには、フィルタキャンドルのシステムが取り付けられ、2~50μmの多孔を有することを特徴とする装置である。
【0033】
「フィルタキャンドル」という表現は、交換面が大きく、固相に適応する多孔、すなわち、この固相を反応器で保持し、反応器の出口で清澄液を得るために、固体結晶のサイズより小さい多孔を有するフィルタシリンダ、中空シリンダ、多孔シリンダを意味する。
【0034】
本発明の特定の主題は、上記で定義した装置であって、UV、NIR、ラマンによる分析技術、あるいは他のあらゆる分析技術によるオンライン分析ツールPAT(プロセスアナリティカルテクノロジー)が各反応器の間に配置されることを特徴とする装置である。
【0035】
この装置は、進行中の処理の適切な機能をリアルタイムで可視化するために、オンライン分析システム(UV、ラマン、NIRプローブによる分析技術、あるいは他のあらゆる分析技術)を備えることができる。
【0036】
「オンライン分析ツールPAT」は、サンプル採取を必要とせず、連続処理を制御して最終生成物の品質を得るために、分光分析器、クロマトグラフィー組成分析器、固定用センサーおよび自動統計データ分析のセットを意味する。
【0037】
本発明の特定の実施形態では、液体アウトレットオリフィスは、フィルタキャンドルのシステムが取り付けられ、2~50μmの多孔を有し、UV、NIR、ラマンによるオンライン分析解析ツールPAT(プロセスアナリティカルテクノロジー)が、各反応器の間に配置される。そのような装置は、液相での連続処理(母材の供給と生成物の回収)と、固相でのバッチの実施が可能となる。実際に、カスケードの各反応器の間に位置するフィルタキャンドルのシステムによって、各反応器に特定の触媒負荷を一定に保つことが可能となる。
【0038】
本発明の特定の目的は、方法が、液相に関しては連続フローで、固相に関してはバッチで実施されることを特徴とする装置である。この装置は、高水準の管理レベルを備えており、カスケードの各反応器の個々のパラメータ(温度、圧力、撹拌、触媒負荷)を独立して制御することができる。効率的な液体ガス移動は、自己注入タービンとカウンタブレードのシステムによって、カスケードの各反応器で確実に行われる。この装置は、圧力下または高圧下のあらゆるタイプの化学反応、主に水素化反応を行うために使用されるが、酸化反応、カルボニル化反応またはアミノ化反応を行うためにも使用することができる。
【0039】
この装置は、カスケードの1~N(Nは自然数)個の反応器を接続することによって連続モードで、単一の閉じた反応器を使用することによってバッチモードで使用することができ、本発明の文脈においては、比較結果に言及する。上で定義するような装置であって、圧力下または高圧下で反応を行うための装置は、反応器のカスケードでNが3以上である場合、第1の反応器の体積がR1となり、第2の反応器の体積がR1~0.5R1のR2となり、第3の反応器の体積が0.8R1~0.4R1のR3となるように、反応器の体積は減少することを特徴とすることができる。例えば、1:0.75:0.5の比で体積が減少する反応器のカスケードで動作することが可能である。反応器のカスケードの体積が、流体流の方向に減少するこのタイプの装置は、反応熱が50kJ/mol未満の反応、一般には、温度を増加させることによって反応率を加速できるケン化または逆エステル化の反応の実施に使用されるのが好ましい。また、本発明は、圧力下または高圧下で反応を行うための装置に関し、反応器のカスケードでNが3以上である場合、第1の反応器の体積がR1となり、第2の反応器の体積が1.25R1~1.5R1のR2となり、第3の反応器の体積が1.5R1~4R1のR3となるように、反応器の体積は増加することを特徴とする。例えば、1:1.5:4の比で体積が増加する反応器のカスケードで動作することが可能である。体積が、流体流の方向に増加するこのタイプの装置は、触媒水素化または酸化などの反応熱が50kJ/molを超える反応の実施に使用されるのが好ましい。原則として、体積が増加する反応器カスケードは、例えば、50kJ/molを超えるような反応熱が高い場合、および/または、反応速度が極めて低く、転化率が40%を超える場合に使用される。その場合は、触媒負荷および温度を増加させることが前提となり、最適の体積生産率を得るためには、滞留時間を増加させることが必要となる。
【0040】
本発明の特定の目的は、上で定義するような使用であって、圧力下または高圧下で、気液固系および液固系の反応、特に、水素化反応、酸化反応、カルボニル化反応、カルボキシル化反応、アミノ化反応、特に、アンモノリシス反応、Heck反応または鈴木-宮浦反応、好ましくは水素化反応を行うための使用である。本発明の特定の目的は、上で定義するような使用であって、圧力下または高圧下で、気液固系の反応、特に、水素化反応、酸化反応、カルボニル化反応、カルボキシル化反応、アミノ化反応、特に、アンモノリシス反応、好ましくは水素化反応を行うための使用である。本発明の特定の目的は、上で定義するような使用であって、高温で、液固系反応、特に、Heck反応および鈴木-宮浦反応を行うための使用である。
【0041】
本発明の特定の目的は、各反応器は、スターラーのブレードによって生じる低下により、反応媒体に反応ガスの分散を確実に行う自給式中空タービンによって撹拌することを含み、撹拌速度は300rpmを超えることが好ましいことを特徴とする装置である。
【0042】
本発明の特定の目的は、上で定義するような使用であって、気液固系反応を行うための使用であり、撹拌器のブレードによって生じる低下により、反応媒体に反応ガスの分散を確実に行う自給式中空タービンによって撹拌することを含み、撹拌速度は、圧力低下を克服するのに十分なものであり、好ましくは300rpm超であり、特に500rpmであるのが好ましいことを特徴とする。
【0043】
「自給式タービン」という表現は、中空回転軸を備えたタービンを示し、撹拌ブレードの後方で、反応器の底部で液相に分散するために、反応器の気相に存在する反応ガスを吸収する。この現象は、回転速度が300rpm超または500rpm超である場合に、反応器における液面高さによる圧力低下を食い止めるために、撹拌ブレードの後方の低下によって引き起こされる。撹拌速度が、液体高さによる圧力低下を克服するのに十分でない場合、撹拌器のブレードのレベルで、気相の再循環が反応器の上部や反応器の底部に存在する液相に全くなく、気液転移は強く抑制されることから、反応率の大幅減少を引き起こしかねない。
【0044】
「撹拌」とは、反応器内の液相が、可能な限り均質となるような方法で混合され、特に、反応媒体は、触媒の懸濁液が分散され、均質となるような温度や濃度において、可能な限り均質となることが理解される。実際に、非混和性液の存在によって、反応器内に2相が生成されうる。また、これにより、反応物の1つが固体である場合、および/または、不均一系触媒が必要である場合に、液相で固体を懸濁させることが可能となる。また、これにより、気液固系反応の場合は、気体は液体の中に分散させることができる。
【0045】
また、本発明は、カスケードの終端に第N+1の反応器を配置し、カスケードの反応器1個を切り離す必要があるメンテナンス操作中は、処理に接続できることを特徴とする装置に関する。
【0046】
また、本発明の特定の目的は、上で定義するような装置であり、カスケードの終端に第N+1の反応器を配置し、カスケードの反応器を1個切り離す必要がある時折発生するメンテナンス操作中は、処理に接続できることを特徴とする。
【0047】
「単発のメンテナンス操作」という表現は、反応器の1個で触媒を取り変えるか、あるいは温度センサー、圧力センサーまたはPATセンサー制御システムの故障を修理することを意味する。
【0048】
本発明は、上で定義するような使用であり、反応は、気液固系反応であり、反応ガス圧が2バール(0.2MPa)~500バール(50MPa)、好ましくは、2バール(0.2MPa)~250バール(25MPa)であり、さらに好ましくは、2バール(0.2MPa)~50バール(5MPa)となるように実施されることを特徴とする。本発明は、上で定義するような気液固系反応での使用であり、反応温度は-10~300℃、好ましくは、少なくとも130℃の高温であり、好ましくは、ダブルジャケットまたは加熱カラーのいずれかを使用し、反応温度および触媒負荷は、反応器それぞれで異なることが可能であることを特徴とする。
【0049】
本発明は、上で定義するような使用であり、反応は、液固系反応であることを特徴とし、反応は、反応ガス圧が1バール(0.1MPa)~100バール(10MPa)、好ましくは、1バール(0.1MPa)~50バール(5MPa)であり、さらに好ましくは、1バール(0.1MPa)~30バール(3MPa)となるように実施されることを特徴とする。
【0050】
本発明は、上で定義するような液固系反応での使用であり、反応温度は-10~300℃、好ましくは、少なくとも130℃の高温であり、好ましくは、ダブルジャケットまたは加熱カラーのいずれかを使用し、反応温度および触媒負荷は、反応器それぞれで異なることが可能であることを特徴とする。
【0051】
本発明は、上で定義するような使用であって、ラネーニッケルの存在下でアジポニトリルからキサメチレンジアンミンへの連続水素化反応の使用に関し、処理は、異なる体積の少なくとも3個の反応器を使用することによって、触媒の体積を減少させて質量を増加させ、反応器に応じた温度で実施されることを特徴とする。
【0052】
本発明は、上で定義するような装置の使用に関し、反応器のカスケードは3つの要素を含み、第1の反応器の体積がR1である場合、第2の反応器の体積はR1の2分の1であるR2となり、第3の反応器の体積はR1の3分の1であるR3となるように反応器の体積は減少することを特徴とする。
【0053】
本発明は、上で定義するような使用であって、白金担持カーボン触媒(Pt/C)の存在下でp-ニトロフェノールからp-アミノフェノールへの連続水素化反応のための使用に関し、処理は、反応器が2~5個のカスケードを使用することによって、好ましくは、反応器に応じて減少させた水素圧で実施されることを特徴とする。
【0054】
本発明は、上で定義するような使用であって、ベータゼオライトの存在下で無水酢酸を使用するアニソールからアセタニソールへの連続アセチル化反応のための使用に関し、処理は、反応器が少なくとも2個のカスケードを使用することによって、温度が少なくとも130℃で実施されることを特徴とする。本発明は、上で定義するような使用であって、ナトリウムメタノラートの存在下でエチル2-(2-ピロリドン)-ブチラートから2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブチルアミドへの連続アンモノリシス反応のための使用に関し、処理は、反応器が少なくとも2個のカスケードを使用することによって、圧力が少なくとも7.5バール(0.75MPa)で、温度が少なくとも117℃で実施されることを特徴とする。
【0055】
本発明は、上で定義するような使用であって、SiliaCat(登録商標)Pd(0)パラジウム触媒を使用するベンジルアルコールからベンズアルデヒドへの連続酸化反応のための使用に関し、処理は、反応器が少なくとも2個のカスケードを使用することによって、圧力が少なくとも10バール(1MPa)の圧力で、温度が少なくとも85℃で実施されることを特徴とする。
【0056】
本発明は、上で定義するような使用であって、ジエチルアミノエチルセルロース触媒を使用する酸化プロピレンから炭酸プロピレンへの連続カルボキシル化反応のための使用に関し、処理は、反応器が少なくとも2個のカスケードを使用することによって、圧力が少なくとも7バール(0.7MPa)で、温度が少なくとも95℃で実施されることを特徴とする。
【0057】
本発明は、上で定義するような使用であって、Pd-Cu/C触媒を使用するボロン酸とヨウ化アリールの連続鈴木-宮浦反応のための使用に関し、処理は、反応器が少なくとも2個のカスケードを使用することによって、温度が少なくとも105℃で、圧力が少なくとも2バール(0.2MPa)で実施されることを特徴とする。
【0058】
本発明は、上で定義するような使用であって、パラジウムPd-M/C触媒(Mは金属)を使用するアルケニルまたはアルキンとヨウ化アリールの連続Heck反応のための使用に関し、処理は、反応器が少なくとも2個のカスケードを使用することによって、温度が少なくとも105℃で、圧力が特に4バール(0.4MPa)で実施されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】圧力下での反応との関係における装置の簡略ブロック図を示し、滞留時間は、4個の反応器のカスケードの第1の反応器で転化率が60%となるように設定されている。
図2】N=4(反応器が4個のカスケード)の場合に、連続処理に使用される完全装置のP&ID図(配管計装図)である。
図3】単一の閉じた反応器においてバッチ処理に使用される完全装置のP&ID図である。
図4】連続処理に使用される完全装置の断面図であり、N=2(反応器が2個のカスケード)であり、(1)はカウンタブレードを表す。
図5】自給式ラシュトンタービンの写真である。
図6】連続処理に使用される完全装置の写真であり、N=2(反応器が4個のカスケード)である。
図7】実施例2で設定した条件下で、連続的に行なったp-ニトロフェノールからp-アミノフェノールへの水素化反応の転化率(HPLCで測定)のグラフである
図8A】バッチで行なったp-ニトロフェノールからp-アミノフェノールへの水素化反応の転化率(HPLCで測定)のグラフである。
図8B】最適条件で連続する3個の反応器で連続的に行なったp-ニトロフェノールからp-アミノフェノールへの水素化反応の転化率(HPLCで測定)のグラフである。
図9】N=4(サイズが増加する反応器が4個のカスケード)の場合に、連続処理に使用される完全装置のP&ID図(配管計装図)である。
図10】N=4(サイズが減少する反応器が4個のカスケード)の場合に、連続処理に使用される完全装置のP&ID図(配管計装図)である。
図11】気液固系反応に使用される反応器のカスケードの反応器1個の図であり、(1)は、撹拌軸を表し、(2)は、反応器で定圧を維持するための連続気体入口を表し、(3)は、フリットが触媒で被覆され、カスケードの2個の反応器間で圧力低下を引き起こす場合のガス流入点を表し、これにより、反応器内の触媒を再懸濁し、反応器の液体容量を一定に維持することが可能であり、(4)は、反応器の出口の清澄液が反応器n+1に連続的に流入することを表し、(5)は、フリットを表し、(6)は、自給式タービンを表し、(7)は、温度調節用ダブルジャケットを表し、(8)は、失活触媒排出口を表し、(9)は、触媒が失活した際に触媒を取り出すためのバルブを表し、(10)は、液面を表し、(11)は、連続液体入口を表し、(12)は、液体サンプル取入口を表し、(13)センサー(温度、圧力、PAT制御)を設置するためのインレットを表す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
装置は、気体・液体・固体が完全に同じように完全撹拌されるオートクレーブ反応器から成り、反応器は、フィルタキャンドルを備える流体接続部によって相互接続される(図1)。
【0061】
各反応器は筒型ステンレスタンクから成り、その体積は100ml~200リットルである。実験室/パイロットレベルの反応器の体積にとって好ましい値は、250mlであり(図6)、工業レベルでは、2~200リットルである。
【0062】
一実施形態によれば、各反応器の寸法は、内径が45mm~80cm、高さが9~100cmであり、全体積は150mL~200Lであり、内径が45~500mm、高さが95~600mmであり、全体積が150mL~120Lであるのが好ましい。各反応器の外径は、特に高圧力下の反応の場合に、さらに大きくできることが有利である。
【0063】
一実施形態によれば、各反応器の気密性は、使用する生成物と温度に適合するバイトン(登録商標)のOリングまたは同等のものによって確保にされる。反応器は、ナットを備える密閉具によって閉じられ、反応器内の圧力を維持するために、反応器の体積と動作条件に適合させる。
【0064】
一実施形態によれば、密封性は、フランジのシステムによって圧縮されたガスケットのシステムによって確保される。この動作モードは、超高圧処理(200バール(20MPa)超)の場合に好ましい。各反応器のシャッターは、0~1200rpmで撹拌速度を調整可能な個々のコントロールボックスに接続されたモータードライブシャフトによって横移動する。各反応器のシャッターとモーター式撹拌タービンは、フレームに固定されることが有利であり、反応器のサイズに適合するステンレス鋼にあるのが好ましい(図6)。
【0065】
一実施形態によれば、各反応器のシャッターは、ニーズに応じて、1/8”(0.3175cm)または1/4”(0.635cm)、あるいは、1”(2.54cm)の4~8個のノズルを備え、4~6個のノズルを備えるのが好ましい(図3)。シャッターノズルの1つは、1/8”(0.3175cm)、1/4”(0.635cm)または1”(2.54cm)のステンレスチューブによって、スウェージロック社から市販されているスウェージロック4ウェイバルブの接合部に接続される(図3)。チューブの直径は、反応体積に従うことから、反応体積が10~150リットル、好ましくは10~50リットルのオーダーのものである場合は、大きくなる。この交差接続部の経路の1つは、反応ガス供給部に接続される。この交差コネクタの経路の他の1つは、反応器内の反応ガス圧を測定するための電子(および/または針)式圧力計に接続され、時間に応じた圧力の記録が可能となる。この交差接続の第3のポートは、破裂板式安全装置に接続される。一実施形態によれば、この破裂板は、圧力が、処理に対して定義され、一般には150バール(15MPa)未満の安全圧を超えた場合に作動する。一実施形態によれば、200バール(20MPa)、250バール(25MPa)または500バール(50MPa)の圧力に耐える破裂板を取り付けることができるが、反応器(シール、ポンプ、オリーブフィッティングなど)のすべての部品がそのような圧力に耐えることが前提である。反応ガス給水路は、逆止弁、1/4回転バルブおよびニードルバルブを備えている。反応ガス供給は、適切な圧力を送り出すことができるレギュレータによって確実に行われる。シャッターのノズルの1つが、母材給送経路(1/8”(0.3175cm)、1/4”(0.635cm)または1”(2.54cm)のチューブ)に接続される。この経路は、母材供給速度を正確に調整するために1/4回転バルブとニードルバルブを備える(図3)。一実施形態(バッチ)によれば、この経路は閉じられた状態にすることができる。別の実施形態(連続)によれば、この経路は、自動的に制御される液流で反応器内の作動圧より高い圧力を送り出すことができる1~300ml/分より低い流速用のHPLCポンプか、あるいは自動的に液流を制御して調整するための液流量メーターに関連付けられる反応器内の作動圧より高い圧力を送り出すことができる300ml~50L/分の流量用の工業用ポンプに接続される。シャッターのノズルの1つは、反応器をパージすることを可能にする不活性ガス供給経路に接続される(図3)。この経路には、自動化できる1/4回転バルブが取り付けられている。
【0066】
好ましい実施形態によれば、反応は不活性雰囲気で行われ、不活性ガスはアルゴンである。一実施形態によれば、この不活性ガスは窒素である。シャッター接続の1つは、脱気口に接続される(図3)。この脱気経路には、反応器を減圧するのに自動1/4回転バルブが取り付けられている。この経路の出口は、すべて安全に残留気体を除去するために、吸気装置の下に配置しなければならない。シャッターのノズルの1つは反応器に浸漬させるチューブを備え、サンプルを採取することが可能である(図3)。この浸漬チューブは、浸漬端にフィルタキャンドルを備えている。
【0067】
フィルタキャンドルはネジ付き焼結中空円筒から成り、多孔は2~50μmであることが可能であるのが有利であるが、5~50μmが好ましい。サンプリングバルブは、1/4回転バルブとニードルバルブであり、過度の圧力で反応混合物の代表サンプルを回収することが可能である。このセットは、完全自動化するように計画されている。シャッターのノズルの他のものは、浸積スリーブを一般的なプローブを備えることが可能な反応器に導入するのに使用されるのが有利である。一実施形態によれば、このプローブは熱電対であることが可能である。反応器には、ネジ付きサイドアウトレットがある。「一(連続)実施形態によると、このオリフィスは、フィルタキャンドルが取り付けられ、カスケードの下流反応器へのアウトレットチャネル(チューブ 1/8”(0.3175cm)、l/4”(0.635cm)または1”(2.54cm)~2”(5.08cm))に接続される。撹拌は、自給式ラシュトンタービンによって確実に行われる。撹拌装置は、中空軸と中空羽根車から成る。この中空タービンは、5~7枚のバーチカルブレードによって共に連結した2枚の平行なステンレスディスクから成る。一実施形態によれば、これらのブレードは、ディスクの半径に平行に向けることができる。別の実施形態によれば、これらのブレードは、ディスクの半径に対して10~30度の角度で向けることができる。タービンの回転が一定速度になると、ディスクの下流を低下させる。反応器のデッドボリュームに送り出された加圧水素は、中空軸を通って低下域に追い込まれ、微小気泡の形で溶媒に分散する。そのような装置は、カウンタブレードを備え、効率的な気液転移を確実に行う(図5)。撹拌シャフトの長さは、80~800mmである。スターラーの長さは、反応器の体積に依存するため、100mlの体積に対しては、長さは、例えば80mmのオーダーであり、200Lの反応器に対しては、スターラーの長さは、例えば約80cmである。この長さは、特に80~200mm、80~600mm、200~600mm、200~800mmまたは600~800mmである。ディスクの直径は、20mm~50cmであり、20mm~40cmであるのが好ましく、反応器の体積に適合する。
【0068】
本発明の主題は、本発明による装置の使用であり、触媒負荷は、反応器それぞれにおいて異なることが可能であることを特徴とする。上述の通り、水素化反応における触媒負荷は、反応器それぞれにおいて異なることができ、例えば、1:1.3:1.5の比、反応器3個のカスケードでは0.7:1.7:2の比となりうる。触媒負荷は、例えばパラジウム中で1モル%のオーダー、あるいは、この割合の倍数であることが可能である。撹拌速度は1,000RPM(1分当りの回転数)のオーダーのものであることが可能である。また、約800RPMの速度を用いることができる。
【0069】
反応器は、所望温度で動作するために、温度制御装置を備えることができることが有利である。一実施形態によれば、この温度は-30~300℃である。別の実施形態によれば、この温度は、シールが耐えられるのであれば、さらに高くてもよい。一実施形態によれば、この加熱装置は、反応器に開けられた2つのネジ穴(非開口)によって反応器にネジ止めされた取り外し可能なダブルジャケットであることが可能である。この動作モードでは、低温(-30~120℃)が好ましい。この同じ実施形態によれば、ダブルジャケットの温度の制御は、サーモスタッドで制御される熱伝導流体によって確実に行われる。工業用反応器の場合は、ジャケットは、取り外しできず、ステンレス鋼で作製される。別の実施形態によれば、この加熱装置は、コントロールボックスに接続されるアンチスカルディングプレートを備えるセラミック製の加熱カラーであることが可能である。この動作モードでは、高温(120~300℃)が好ましい。
【0070】
したがって、本発明は、本発明による装置の使用に関し、反応温度は-10~300℃が可能であり、少なくとも130°の高温が好ましく、ダブルジャケットまたは加熱カラーのいずれかの使用によるのが好ましいことを特徴とする。
【0071】
本発明の主題は、本発明による装置の使用であり、反応温度は、反応器それぞれにおいて異なることが可能であることを特徴とする。反応温度、特に水素化反応の温度は、特に100℃のオーダーであることが可能であり、80~120℃のオーダーでも可能である。上述のように、反応温度は、反応器のカスケードの反応器によって異なることができ、例えば、反応器3個のシステムでは、第1および第2の反応器に対して80℃のオーダーであることが可能であり、第3の反応器に対して100℃のオーダーであることが可能である。また、その温度は、反応器3個のシステムでは、第1の反応器に対して100℃のオーダー、第2の反応器に対して110℃のオーダー、第3の反応器に対して130℃のオーダーであることが可能である。
【0072】
一実施形態によれば、そのような反応器は、バッチモードで単独で使用できるが、給送経路およびアウトレットオリフィスが、反応ガスの作動圧に耐える要素によって遮断されることが前提である(図3)。
【0073】
別の実施形態によれば、連続フローで動作するカスケードで、同じタイプの反応器1~N(Nは自然数)個を接続することができる(図2)。好ましい実施形態によれば、バッチモードで行われる速度論的研究に加え、単一の連続反応器での物質収支によって、カスケードに接続される反応器の最適数Nを求めることができる。別の実施形態によれば、この数Nは、実験的に求められる。
【0074】
本発明は、本発明による装置の使用であり、反応は、反応ガス圧が10バール(1MPa)~500バール(50MPa)、好ましくは、10バール(1MPa)~250バール(25MPa)であり、さらに好ましくは、10バール(1MPa)~50バール(5MPa)となるように実施されることを特徴とする。水素化反応では、水素圧は、20バール(2MPa)または30バール(3MPa)のオーダーが好ましく、10バール(1MPa)、12バール(1.2MPa)、20バール(2MPa)および50バール(5MPa)の値も使用することができる。3個の反応器が使用される場合、反応器それぞれの圧力は、第1の反応器では15バール(1.5MPa)、第2の反応器では12バール(1.2MPa)および第3の反応器では10バール(1MPa)、第1の反応器では20バール(2MPa)、第2の反応器では12バール(1.2MPa)および第3の反応器では5バール(0.5MPa)または第1の反応器では30バール(3MPa)第2の反応器では28バール(2.8MPa)および第3の反応器では5バール(0.5MPa)のオーダーであることが可能である。カスケードのN個の反応器を通る反応混合物の循環は、各反応器に加える圧力を減少させることによって、確実に行うことができる。カスケードのN個の反応器は、供給混合物の循環を改善するために、それぞれのフレームに、高さを減少させて固定することができるのが有利である。装置への反応混合物の供給は、反応ガスに作動圧より大きい圧力を送り出すことが可能なHPLCポンプまたは従来の工業用ポンプによって、確実に行うことができる。供給および排出の調整は、各反応器間に配置されたニードルバルブの開度を調整することによって改善することができる。反応器間の各接続部には、自動化可能なバルブがあり、流量制御部は、各反応器間の流れを制御するために各反応器間に挿入することになる。カスケード内に固相(触媒)を循環させないことは、反応器の各アウトレットオリフィスのフィルタキャンドルの存在によって確実に行われる。反応混合物の循環経路が詰まった場合、カスケードに逆圧を僅かに加えて、介在するフィルタキャンドルの詰まりを取り除くことができる。一実施形態によれば、この逆圧は、カスケード内に加える反応ガス圧を一時的に増加させることによって加えることができる。
【0075】
ラマン分析プローブまたはNIR分析プローブは、圧力下での処理効率をリアルタイムで可視化するために、さらには、必要に応じて、メンテンス作業(失活触媒の交換)を計画するために、カスケードの2個の反応器間の接続レベルで一体化することができることが有利である(図2)。
【0076】
そのようなメンテンス作業は、処理全体を停止することなく、単に、反応器1個を切り離すためにカスケードからを取り外すことによって行うことができることが有利である。カスケードの終端に、第N+1(Nは自然数)の同一の反応器を設けることができることが有利であり、カスケードのN基の反応器(Nは自然数)によって処理を維持し、性能レベルを落とさないように、上流の反応器のメンテンス作業の間にのみ稼働させる。カスケードのN個(Nは自然数)の反応器の個々の全パラメータ(温度、圧力、撹拌速度、可能であれば触媒負荷)は、完全に独立した方法で制御され、可視化することができる。一実施形態によれば、カスケードのN個(Nは自然数)の反応器に、同じ組み合わせの動作パラメータを適用することが可能である。別の実施形態によれば、異なるパラメータを適用することができる。流体接続および気体接続はすべて、反応ガス作動圧に適合するSwagelok(登録商標)継手の部品(オリーブフィッティング、ユニオン+ワッシャーおよびフェルール)によって確実に行われる。一実施形態によれば、これらの接続部はすべて、1/8”(0.3175cm)、1/4”(0.635cm)または1”(2.54cm)のチューブから成る。一実施形態によれば、これらの接続部全ては、1/8”(0.3175cm)、あるいは反応器の体積に適合するさらに寸法の大きいチューブから成る。本発明の主題は、上述のような使用であって、圧力下で、気液固系反応および液固系反応、特に、水素化反応、酸化反応、カルボニル化反応、アミノ化、好ましくは水素化反応を行うための使用である。水素化反応は、白金族の金属、特に、白金、パラジウム、ロジウムおよびルテニウムなどの触媒、例えば、ロジウムベースのウィルキンソン触媒、イリジウムベースのクラブトリー触媒または炭酸カルシウムに担持したパラジウムベースのリンドラー触媒の存在下で行われる。また、水素化反応では、ラネーニッケルまたは漆原ニッケルルなどのニッケルベースの触媒を使用することができ、ラネーニッケル、白金担持カーボン(Pt/C)またはSiliaCat触媒、特に、SiliacatPd(0)が使用されるのが好ましい。SiliacatPd(0)は、ゾル‐ゲル系で補足されたPdから成る触媒である。具体的には、高分散性Pdナノ粒子(4.0~6.0nmの範囲で均一)は、有機ケイ素マトリックスにカプセル化される。以下に、この触媒の構造を示す。
【0077】
【化1】
【0078】
この触媒は、ドイツのDichrom社およびカナダのSilicycle社を含む数社によって市販されている。
【0079】
本発明の特定の主題は、本発明の装置の使用であって、ラネーニッケルの存在下でアジポニトリルからヘキサメチレンジアンミンへの連続水素化反応の使用に関し、処理は、異なる体積の少なくとも3個の反応器を使用することによって、触媒の体積を減少させて質量を増加させ、反応器に応じた温度で実施されることを特徴とする。この反応を実施時は、反応器のカスケードは3つの要素を含み、第1の反応器の体積がR1である場合、第2の反応器の体積はR1の2分の1であるR2となり、第3の反応器の体積はR1の3分の1であるR3となるように反応器の体積は減少することを特徴とする。
【0080】
本発明は、本発明の装置の使用であって、白金担持カーボン触媒(Pt/C)の存在下でp-ニトロフェノールからp-アミノフェノールへの連続水素化反応のための使用に関し、処理は、反応器が2~5個のカスケードを使用することによって、好ましくは、反応器に応じて減少させた水素圧で実施されることを特徴とする。
【0081】
本発明の主題は、本発明の装置の使用であって、ベータゼオライトの存在下で無水酢酸を使用するアニソールからアセタニソールへの連続アセチル化反応のための使用に関し、方法は、反応器が少なくとも2個のカスケードを使用することによって、温度が少なくとも130℃で実施されることを特徴とする。
【0082】
情報目的(近く)の上述の数字は、10%、20%または25%の最良の余地によって解釈されるべきであると理解される。
【0083】
以下の実施例は、本発明を例示する方法で記載する。この参考例は、特許請求の範囲で請求するような本発明を実施するために使用することができ、例えば、単一の反応器が使用される場合、本発明によるカスケードには、同じタイプではあるが寸法の異なる反応器のカスケードを配置することができると理解される。
【0084】
[実施例]
1)参考例:バッチモードにおけるp-ニトロフェノールからp-アミノフェノールへの水素化反応
【0085】
この反応をバッチモードで単一の閉じた反応器で行う。反応器に、ニトロフェノール6.95gのEtOH100ml溶液と、Pt/C(シグマアルドリッチ社)9.75mgとを予め投入する。次に、反応器を、窒素でパージ(パージ3回、5~7バール)し、水素(H、Alphagaz(登録商標)、エア・リキード社)により15バールで加圧する。撹伴速度を1000RPMに設定し、反応器を、ダブルジャケットを用いて80℃で1時間20分加熱する。反応終了時、反応器を窒素パージすることによって、不活性化し、反応媒体をHPLCで分析する(逆相、カラムC18)。分析により、p-ニトロフェノールからp-アミノフェノールの転化率が92%であり、反応副産物が全くないことを示す。
【0086】
2)完全撹拌連続反応器2~5個のカスケードにおけるp-ニトロフェノールからp-アミノフェノールへの連続水素化反応
【0087】
2つの完全撹拌連続反応器のカスケードでこの反応を行うために、同じ装置を再利用する。オートクレーブの触媒負荷を一定に保つために、第1の反応器のアウトレットチャネルに5μmのフィルタキャンドルを取り付け、あらゆる点で第1の反応器と同様の第2の反応器の入口に接続する。2個の反応器に、Pt/C(シグマアルドリッチ社)20mg(10%w/w)を投入する。第1の反応器では、転化率50%(p-ニトロフェノール3.48gに対してp-アミノフェノール2.72g)をシミュレートし、第2の反応器で転化率75%(p-ニトロフェノール1.8gに対してp-アミノフェノール4g)をシミュレートする。上述の条件下、但し、圧力は僅かに減少させる(第1の反応器で80℃、15バール、1000RPM、第2の反応器で80℃、12バール、1000PM)。カスケードに、p-ニトロフェノールのエタノール溶液(0.3M)を、流速3mL/分(滞留時間は1反応器当り30分)の5時間流し込む。第2の反応器の排出バルブを、出口流速が入口流速とほぼ等しくなるように調整する。5時間反応させる。4分毎にサンプルを採取する。HPLC分析では、転化率は、20分間は70~83%を示すが、その後約80%で安定し、副産物の生成がないことを示す。別のケースでは、第3の反応器をカスケードに接続する。同様に、この反応器にPt/C20mgを投入し、初期転化率が90%(p-ニトロフェノール695mgに対してp-アミノフェノール4.9g)となるようにシミュレートする。上述の条件(80℃、1000PM、15バール、12バール、10バール)で、カスケードに、流速4mL/分(滞留時間は25分)で4時間流し込む。第3の反応器の出口で、4分毎にサンプルを採取する。HPLC分析では、転化率は、20分間で80~96%を示すが、4時間後に約95%で安定したことを示す。
【0088】
3)参考例:Siliacat Pd(0)触媒によるバッチモードにおけるp-ニトロフェノールからp-アミノフェノールへの水素化反応
【0089】
この反応をバッチモードで単一の閉じた反応器で行う。反応器に、p-ニトロフェノール6.95gのEtOH(アルドリッチ社)100ml溶液と、Pt/C(Silicycle社)0.208mgとを予め投入する。次に、反応器を、窒素でパージ(パージ3回、5~7バール)し、水素(H、Alphagaz、エア・リキード社)により15バールで加圧する。撹伴速度を1000RPMに設定する。反応器を80℃の温度に加熱した場合は、転化率が80分後に86%となり、反応を100℃で行う場合は、転化率が60分後に88%となる。
【0090】
4)連続反応器2個でのSiliacat Pd(0)触媒による連続モードにおけるp-ニトロフェノールからp-アミノフェノールへの水素化反応
【0091】
速度論的研究に従い、最初の2個の反応器の評価基準を考慮に入れながら、第3の反応器のシミュレーションを行った。得られた結果は、以下の表に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
上記の表では、「Mcata」触媒の量をmol%で表現する。連続する3個の反応器により、p-アミノフェノールが3.7kg/L/日の生産率で得られる。図8Bは各反応器に対する転化率を示す。
【0094】
5)反応器の設計により動作条件を全体論的最適化してNiRaによるヘキサメチレンジアミンでのアジポニトリルの連続水素化反応
【0095】
3個の異なる反応器で反応を行う。各反応器の体積はそれぞれ、2リットルと、1.5リットル、1リットルである。反応温度は、最初の2個の反応器に対しては80℃、第3の反応器に対しては100℃であり、触媒質量はそれぞれ、10g、13g、15gである。流速は、0.11/秒である。生産率は9.29kgHMD/リットル/時間である。
【0096】
6)高純度p-ニトロソフェノールと、パラ-およびオルト-ニトロソフェノールの混合物の水素化反応
【0097】
パラ-およびオルト-ニトロソフェノールの混合物(比o/p=10/90)の混合物をMeOHに溶解し、Pt/(C)(%質量)を懸濁した。次に、混合物を水素(1気圧)下で撹拌した。2時間後には、混合物は、2-ニトロソフェノールと4-ニトロソフェノールの痕跡を示さなくなった。溶液をセライト(登録商標)でろ過してから、留去して乾燥させ、o/p=10/90の比で2-アミノフェノールと4-アミノフェノールの混合物を得た。Pt/C触媒およびSiliaCat Pd(0)触媒を使用し、高純度p-ニトロソフェノールの水素化反応の他の2つの試験を、圧力(P=15バール)、T=80℃で行なった。99.8%の良好な收率とともに、転化率が99.9%のオーダーで得られた(HPLCによる制御)。
【0098】
7.1)バッチモードで炭酸プロピレンを生成するための固体触媒による酸化プロピレンのカルボキシル化反応
【0099】
使用する触媒は、メルク/シグマアルドリッチ社のDEAE 1ERであり、触媒負荷は76g/Lである。100mLの反応器内の圧力は75.4バール、温度は95℃である。反応は、溶剤なしで行う。選択率は99%超であり、反応時間は60時間である。
【0100】
7.2)連続モードで炭酸プロピレンを生成するための固体触媒による酸化プロピレンのカルボキシル化反応
【0101】
使用する触媒は、ジエチルアミノエチルセルロースである。得られた結果は、以下の表に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
炭酸プロピレンは、0.0174L/H/kgの生産率で得られる。
【0104】
8.1)バッチモードにおけるエチル2-(2-ピロリドン)ブチラート(PBE)から2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブチルアミド(エチラセタム)へのアンモノリシス反応
【0105】
ナトリウムメタノラートMeONaで、反応に触媒作用を及ぼす。エチル2-(2-ピロリドン)ブチラート(1当量)をメタノール(0.3体積)に溶解する。次に、ナトリウムメトキシド(0.04当量)とアンモニア(3.3当量)を共に入れる。再循環したアンモニアを加え、必要量のアンモニアを新しく補充する。次に、反応器をダブルジャケットで加熱し、6バール未満の圧力を維持する(1時間~1時間30分で60℃に加熱)。反応媒体を0℃に冷却(許容温度範囲:-11~10℃)し、同時に、アンモニアを脱気して、再循環させる。メタノールを入れた蒸発器でアンモニアを濃縮する。アンモニアのメタノール溶液は、次の合成で使用する。次に、媒体を濾過し、メタノールで洗浄する。最終生成物は、減圧下または気圧下で乾燥させる(最終内部温度は60±20℃である)。以下の表に、最適動作条件を示す。
【0106】
【表3】
【0107】
8.2)連続モードにおけるエチル2-(2-ピロリドン)ブチラート(PBE)から2-(2-オキソピロリジン-1-イル)ブチルアミド(エチラセタムつまりETI)へのアンモノリシス反応
【0108】
ナトリウムメタノラートMeONaで、反応に触媒作用を及ぼす。以下の表に、最適動作条件を示す。
【0109】
【表4】
【0110】
【表5】
【0111】
得られた結果は、以下の表に示す。
【0112】
【表6】
【0113】
9.1)バッチモードにおけるベンジルアルコールからベンズアルデヒドへの酸化反応
【0114】
動作条件は次の通りである。ベンジルアルコール485mmol(50mL)を、50mLの反応器に入れ、温度85℃、800RPM、O圧4バール(400,000Pa)、Pd触媒(SiliaCat Pd(0)0.125%の触媒負荷で1時間反応させる。転化率は100%であり、選択率は83%である。
【0115】
9.2)連続モードにおけるベンジルアルコールからベンズアルデヒドへの酸化反応
【0116】
第1の反応器(反応器体積100mL)の動作条件は、次の通りである。ベンジルアルコール(964mmol)、Pd(Silicate Pd(0))0.25mol%、T=85℃、O圧P=4バール(400,000Pa)、1000RPM、流速3mL/分。この第1の反応器では、転化率70%、選択率55%を得る。第2の反応器(反応器体積75mL)の動作条件は、次の通りである。ベンジルアルコール(289mmol)、Pd(Silicate Pd(0))0.188mol%、T=85℃、O圧P=10バール(1MPa)、1000RPM、流速3mL/分。この第2の反応器では、転化率94%、選択率84%を得る。第3の反応器(反応器体積50mL)の動作条件は、次の通りである。ベンジルアルコール(58mmol)、Pd(Silicate Pd(0))0.188mol%、T=85℃、O圧P=10バール(1MPa)、1000RPM、流速3mL/分。この第3の反応器では、転化率100%、選択率88%を得る。得られたベンズアルデヒドの体積生産率は、23.98kg/l/hであり、收率は88%である。
【0117】
10.1)バッチモードにおけるフェニルボロン酸による鈴木-宮浦反応
【0118】
2-ヨードチオフェン、2-ヨードベンゼンおよび4-ヨード安息香酸の3種類のヨウ化アリールを試験した。100mLの反応器で、ヨウ化アリール(3.0mmol)、フェニルボロン酸(6.0mmol)、Pd-Cu/C触媒(43.0mg、約4.0mmol)およびKPO(12.0mmol)をエタノール50mLに加える。反応媒体を、不活性雰囲気(窒素)下の78℃で3時間加熱する。反応最後に、反応媒体をろ過する。次に、溶媒を留去する。2-フェニルチオフェンについては、收率は96.7%で、Pd/Cに対する收率は78.2%である。ビフェニルについては、收率は97.5%で、Pd/Cに対する收率は96.7%である。1,4-ビフェニルカルボン酸については、收率は88.7%で、Pd/Cに対する收率は85.1%である。
【0119】
10.2)連続モードにおけるフェニルボロン酸による鈴木-宮浦反応
【0120】
2-ヨードチオフェン、2-ヨードベンゼンおよび4-ヨード安息香酸の3種類のヨウ化アリールを試験した。第1の反応器の動作条件は、T=120℃、P=5バール(500,000Pa)、Pd-Cu/C触媒質量は50mg、反応器体積は100mlであり、体積100mで転化率50%を得る。第2の反応器の動作条件は、T=110℃、P=3.5バール(350,000Pa)、Pd-Cu/C触媒質量は75mg、反応器体積は150mlであり、全転化率90%を得る。最後に、第3の反応器の動作条件は、T=105℃、P=2バール(200,000Pa)、Pd-Cu/C触媒質量は100mg、反応器体積は200mlであり、全転化率100%を得る。流入流は、EtOH50mL中、ヨウ化アリール化合物(3.0mmol)、フェニルボロン酸(6.0mmol)およびKPO(12.0mmol)で構成され、流速は、8ml/分である。
【0121】
11.1)バッチモードにおける2-ヨードチオフェンによるHeck反応
【0122】
スチレン、フェニルアセチレンおよびメチルブチノールの3種類の化合物を試験した。スチレンとメチルブチノールに使用する触媒は、Pd-Cu/Cである。フェニルアセチレンに使用する触媒は、Pd-Ag/Cである。100mLの反応器で、2-ヨードチオフェン(3.0mmol)、アルケンまたはアルキン(6.0mmol)、触媒(43.0mg、約4.0mmol)およびトリエチルアミン(6.0mmol)をアセトニトリル50mLに加える。反応媒体を、窒素雰囲気下82℃で3時間加熱する。反応最後に、反応媒体をろ過する。次に、溶媒を留去する。2-スチルチオフェンについては、收率は88.8%である。2-アセチルフェニルチオフェンについては、收率は88.8%である。2-チオフェンメチルブチノールについては、收率は94.2%である。
【0123】
11.2)連続モードにおける2-ヨードチオフェンによるHeck反応
【0124】
スチレン、フェニルアセチレンおよびメチルブチノールの3種類の化合物を試験した。スチレンとメチルブチノールに使用する触媒は、Pd-Cu/Cである。フェニルアセチレンに使用する触媒は、Pd-Ag/Cである。第1の反応器の動作条件は、T=120℃、P=5バール(500,000Pa)、触媒質量は50mg、反応器体積は100mlであり、体積100mlで転化率50%を得る。第2の反応器の動作条件は、T=110℃、P>5バール(500,000Pa)、触媒質量は75mg、反応器体積は150mlであり、全転化率90%を得る。最後に、第3の反応器の動作条件は、T=105℃、P>4バール(400,000Pa)、触媒質量は100mg、反応器体積は200mlであり、全転化率100%を得る。流入流は、アセトニトリル50mL中、2-ヨードチオフェン(3.0mmol)、アルケンまたはアルキン(6.0mmol)およびトリエチルアミン(6.0mmol)で構成され、流速は、8ml/分である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
【国際調査報告】