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特表2024-520993インプラント型医療機器のための通信システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】インプラント型医療機器のための通信システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/362 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
A61N1/362
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561293
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2022062727
(87)【国際公開番号】W WO2022253531
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】63/195,405
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】21183354.6
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
2.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】512158181
【氏名又は名称】バイオトロニック エスエー アンド カンパニー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】BIOTRONIK SE & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Woermannkehre 1 12359 Berlin Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タフ、ブライアン エム.
(72)【発明者】
【氏名】スウェンソン、クルト
(72)【発明者】
【氏名】ベルグストロム、ディーン
(72)【発明者】
【氏名】マーリン、ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】マクミラン、ブラッド
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053KK02
4C053KK04
4C053KK07
(57)【要約】
本発明は、インプラント型医療機器IMD40及び外部機器60を含む、IMD40と外部機器60との間のワイヤレス・メッセージ転送のための通信システム10を対象とし、IMD40は、患者の健康ステータスをモニタするように構成され、及び/又は、患者に療法信号を送達するように構成され、IMD40は、プロセッサ、メモリ・モジュール、及び外部機器60とメッセージを双方向にやり取りするように構成されたトランシーバ・モジュールを備える。複数のIMDとの通信をサポートし、IMDの組立て及びクリニック内使用の一環としてターゲットのIMDに特有の対話を促進するための、低オーバーヘッド手段を可能にする通信システム及び方法を提供するために、外部機器60は、予め定義された第1のタイム・インターバルT1A内にウェイク・アップ信号に続くID要求メッセージ200と組み合わせられた予め定義されたウェイク・アップ信号100を、IMDのトランシーバ・モジュールに送るように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラント型医療機器(IMD、40)及び外部機器(60)を含む、IMD(40)と外部機器(60)との間のワイヤレス・メッセージ転送のための通信システム(10)であって、
前記IMD(40)が、患者(30)の健康ステータスをモニタするように構成され、及び/又は、前記患者に療法信号を送達するように構成され、前記IMD(40)が、プロセッサ、メモリ・モジュール、及び前記外部機器(60)と前記メッセージを双方向にやり取りするように構成されたトランシーバ・モジュールを備え、前記外部機器(60)が、予め定義された第1のタイム・インターバル(T1A)内にウェイク・アップ信号に続くID要求メッセージ(200)と組み合わせられた予め定義された前記ウェイク・アップ信号(100)を、前記IMD(40)の前記トランシーバ・モジュールに送るように構成され、前記ID要求メッセージが、予め定義されたセットからの予め定義された異なる要求仕様のうちの1つを収容し、
前記IMD(40)の前記プロセッサが、先に受信されたID要求メッセージに対するID応答メッセージ(300)を生み出すように、且つ前記ID要求メッセージの受信後のタイム・スロット内に前記ID応答メッセージを前記トランシーバ・モジュールから前記外部機器(60)に送るように構成され、前記ID応答メッセージが、前記メモリ・モジュールの予め定義されたメモリ・アドレスから読み出されたID情報を含み、前記メモリのセクションが、前記先に受信されたID要求メッセージによって送られた前記要求仕様に基づいて前記プロセッサによって決定され、前記タイム・スロット(S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8)が、前記メモリの決定されたセクションから読み出された前記ID情報に基づいて前記プロセッサによって決定される、
通信システム(10)。
【請求項2】
前記メモリ・アドレスが、前記IMD(40)のシリアル番号のメモリ・アドレスである、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
外部機器(60)が、ランダムに、又はルール・ベースのスキームに従って、セットからの複数のID要求コマンドのうちの1つを選ぶように構成され、各ID要求コマンドにより、前記IMD(40)の前記プロセッサが、前記メモリの異なるセクションを選ぶことが可能になる、請求項1又は2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記メモリの前記決定されたセクションから読み出された前記ID情報に基づいて、前記トランシーバ・モジュールによって前記ID応答メッセージ(300)を送るための複数のタイム・スロット(S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、その他)のうちの1つを選ぶように構成される、請求項1から3までのいずれかに記載の通信システム。
【請求項5】
前記外部機器(60)が、前記予め定義された第1のタイム・インターバル(T1A)内に前記ウェイク・アップ信号に続くID要求メッセージ(200)とそれぞれ組み合わせられた複数の予め定義されたウェイク・アップ信号(100)を、前記IMD(40)の前記トランシーバ・モジュールに送るように構成され、前記予め定義されたウェイク・アップ信号のうちの第2の信号が、予め定義された第2のタイム・インターバル(T2)内に前記予め定義されたウェイク・アップ信号のうちの第1の信号に続き、前記第2のタイム・インターバルが、前記第1のタイム・インターバルよりも長い、請求項1から4までのいずれかに記載の通信システム。
【請求項6】
前記ウェイク・アップ信号(100)が、介在ギャップ(102)によって分離された初期セグメント(101)と後期セグメント(103)とにセグメント化され得るパルス出力トレインからなり、例えば、前記パルス出力トレインの前記初期セグメントのパルス振幅が、前記パルス出力トレインの前記後期セグメントのパルス振幅と比較されたときに同じである、又は異なる、請求項1から5までのいずれかに記載の通信システム。
【請求項7】
前記外部機器(60)が、その範囲内でそれぞれ発見されたIMD(40)に、短い固有の参照アドレスを割り当てるように構成される、請求項1から6までのいずれかに記載の通信システム。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれかに記載された通信システム(10)の外部機器(60)。
【請求項9】
請求項1から7までのいずれかに記載された通信システム(10)のIMD(40)。
【請求項10】
インプラント型医療機器(IMD、40)と外部機器(60)との間のワイヤレス・メッセージ転送のための通信方法であって、前記IMD(40)が、患者(30)の健康ステータスをモニタし、及び/又は、前記患者に療法信号を送達し、前記IMD(40)が、プロセッサ、メモリ・モジュール、及び前記外部機器(60)と前記メッセージを双方向にやり取りするトランシーバ・モジュールを備え、前記方法が、
前記外部機器(60)によって、予め定義された第1のタイム・インターバル(T1A)内にウェイク・アップ信号に続くID要求メッセージ(200)と組み合わせられた予め定義された前記ウェイク・アップ信号(100)を、前記IMD(40)の前記トランシーバ・モジュールに送るステップであって、前記ID要求メッセージが、予め定義されたセットからの予め定義された異なるID要求コマンドのうちの1つを収容する、送るステップと、
前記ID要求メッセージの受信後のタイム・スロット内にID応答メッセージを前記トランシーバ・モジュールから前記外部機器(60)に送るために、前記IMD(40)の前記プロセッサによって、先に受信されたID要求メッセージに対する前記ID応答メッセージ(300)を生み出すステップであって、前記ID応答メッセージが、前記メモリ・モジュールの予め定義されたメモリ・アドレスにおけるメモリ・セル・セクションから読み出されたID情報を含み、前記メモリの前記セクションが、前記先に受信されたID要求メッセージによって送られた前記ID要求コマンドに基づいて前記プロセッサによって決定され、前記タイム・スロット(S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8)が、前記メモリの決定されたセクションから読み出された前記ID情報に基づいて前記プロセッサによって決定される、生み出すステップと
を含む、通信方法。
【請求項11】
前記外部機器(60)によって、ランダムに、又はルール・ベースのスキームに従って、多数のID要求コマンドのうちの1つが選ばれ、各ID要求コマンドにより、前記IMD(40)の前記プロセッサが、前記メモリの異なるセクションを選ぶことが可能になる、請求項10に記載の通信方法。
【請求項12】
前記プロセッサによって、前記メモリの前記決定されたセクションから読み出された前記ID情報に基づいて、前記ID応答メッセージ(300)を送るための多数の異なるタイム・スロット(S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8、その他)のうちの1つが選ばれる、請求項10から11までのいずれかに記載の通信方法。
【請求項13】
前記外部機器(60)によって、前記予め定義された第1のタイム・インターバル(T1A)内に前記ウェイク・アップ信号に続くID要求メッセージ(200)とそれぞれ組み合わせられた複数の予め定義されたウェイク・アップ信号(100)が、前記IMD(40)の前記トランシーバ・モジュールに送られ、前記予め定義されたウェイク・アップ信号のうちの第2の信号が、予め定義された第2のタイム・インターバル(T2)内に前記予め定義されたウェイク・アップ信号のうちの第1の信号に続き、前記第2のタイム・インターバルが、前記第1のタイム・インターバルよりも長い、請求項10から12までのいずれかに記載の通信方法。
【請求項14】
プロセッサによって実行されるときに、請求項10から13までのいずれかに記載の方法のステップを前記プロセッサに実施させる命令を含むコンピュータ・プログラム製品。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータ・プログラム製品を記憶するコンピュータ可読データ・キャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプラント型医療機器(IMD:implantable medical device)と外部機器との間のワイヤレス・メッセージ転送のための通信システムを対象とし、ここで、IMDは、患者の健康ステータスをモニタするように構成され、及び/又は、患者に療法信号を送達するように構成される。外部機器は、少なくとも部分的には体外に配置される。本発明は、ワイヤレス・メッセージ転送のためのそれぞれの方法、それぞれのコンピュータ・プログラム製品、及びそれぞれのコンピュータ可読データ・キャリアを更に対象とする。コンピュータ・プログラム製品は、例えば、IMD内及び/又は外部機器内のハードウェア・サポート手段に関連したソフトウェア・ルーチンであってよい。
【背景技術】
【0002】
能動及び受動インプラント型医療機器(IMD)、例えば、ペースメーカ(リード付き)、BioMonitor、インプラント型リードレス・ペーサ(ILP:Implantable Leadless Pacer)、インプラント型リードレス圧力センサ(ILPS:Implantable Leadless Pressure Sensor)、インプラント型心臓除細動器(ICD:Implantable Cardiac Defibrillator)、又は皮下インプラント型除細動器(即ち、S-ICD:Subcutaneous Implantable Cardiac Defibrillator)は、患者の健康ステータスをモニタするための生理学的信号を収集するセンサを収容し、それらの信号をデータとして、医師若しくは患者の機器に、又はリモート・サーバに、外部機器を使用して送信する。これらの様々なセンサから、又はそのようなセンサのいずれかから収集されたデータは、限定はしないが、ECG、インピーダンス、活動性、姿勢、心音、圧力、呼吸、及び他のデータを含むことができる。能動IMD(例えば、ペースメーカ、ILP、ICD、又はS-ICD)は、心腔(例えば、心房又は心室)内の電気刺激などの療法出力を、患者に提供することができる。
【0003】
通常、そのようなIMDは、データ処理のためのプロセッサ、及び、例えば患者の身体内にインプラントされた場合に外部機器とメッセージを双方向にやり取りするように構成されたトランシーバ・モジュールからなる。場合により、それ自体のトランシーバを使用する外部機器は、IMDのトランシーバ・モジュールとメッセージを双方向にやり取りするために構成される。外部機器は、コンピュータ(いくつかのケースにおいてはプログラマと呼ばれる)に接続された別々の機器であってもよいし、又はコンピュータなどのリモート機器内に統合されたモジュールであってもよい。外部機器は、例えば、患者の健康ステータス若しくはIMDステータスに関するデータをIMDから受信することを求める、又は(患者に適切な療法を適用するようにIMDを構成するために)プログラムすることを求める要求の形式でメッセージを生み出して、IMDのトランシーバに送る。
【0004】
リード付きの心臓リズム管理(CRM:Cardiac Rhythm Management)インプラントなどの最新のIMDにおいて、(例えば、プログラマに接続された)外部機器のIMDとの通信は、通常、システムが、一度に1つよりも多いIMDの知識を有すること、又は1つよりも多いIMDと連係することを必要とすることなく進んできた。この長く続いている利便性は、あいにく、リードレスIMDにおける使用ケース、とりわけ、サービスの終了時のニーズと両立しないことが判明している。リードレス状況においては、患者の臓器(例えば、患者の心臓)内の正確に同じ位置に施された「古い」IMDの替えとして「新規の」療法を送達するために、迅速なヘッダ接続交換によって2つの別々のIMD間でリードの共通セットを交換することができないので、「古い」及び「新しい」IMDから療法サポートの段階的廃止及び段階的導入をサポートするための通信スキームが必要とされる。更に、システムが1つよりも多いリードレスIMDとの通信を(シリアルであっても)サポートすることになる場合、あらゆる単一のそのようなIMDは、いかなる範囲内IMDとも、又はいかなる他の範囲内外部機器ともデータのやり取りを妨げるやり方で、外部機器と干渉しないことが当てはまらなければならない。
【0005】
従来型の能動IMDが外部機器の通信範囲内に常にあるケースにおいては、そのような従来型の能動IMDによって(しばしば、高エネルギー・パルス、即ちHEP:high-energy pulseを介して)「ウェイク・アップ」信号が受信されると、関係するプロトコル次第で、従来型の能動IMDが直ちに応答出力の送信を始める状態へと移行が強制されることがある。そのような対話は、他の機器が認識されるようにするためのサポートを拒否する外部機器への絶え間ないデータの「吐き出し」を作り出して、事実上、複数のIMDと通信するためのいかなる能力も退けることができる。先行のCRMインプラント・システムは、別の身体内インプラントが外部機器と通信することを必要とし得る状況を全く考慮しなかったので、任意の単一の機器が通信リンクの許容可能な範囲を完全に占有しないようにするための奨励策は、ほとんど、又は全く存在しなかった。このタイプの対話は、患者の解剖学的組織を通して信号送信を容易にするためにキャリア・レートを十分に低く(例えば、32kHz)するように設計されたケースでとりわけ問題となり、なぜなら、より遅いデータ・レートは、より長い送信及び受信の対話を助長して、他のインプラントから出現したあらゆる範囲内で競合する送信の、問題となる時間的重なり合いの間に、より大きなターゲットを作り出すからである。
【0006】
CRM市場に共通するいくつかのIMD通信サポート・スキームにおいては、より迅速なデータのやり取りを可能にするために、より高い周波数の通信キャリア(例えば、200kHz)を使用した経緯があることにもまた留意すべきである。そのような方策は、適応した形で、潜在的にはより多くのIMDが(適正なシステム設計を前提として)外部機器と非競合的に対話することを可能し得るものの、インプラントと外部機器と間のより大きな物理的離隔距離次第では、より高い周波数の通信シグナリングの減衰がますます問題となる。(本質的に患者の解剖学的組織内により深く配置される)リードレスIMDにおいては、より高い周波数の通信方策の採用が、あいにく、インプラントがサポートするのに十分備えていない電力を引き出す必要性を余儀なくしており、この新しく出現した類の製品についてのIMDの長寿命性にまさに挑んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それに応じて、複数のIMDとの通信をサポートし、IMDの組立てと臨床使用の両方の一環としてターゲットのIMDに特有の対話を促進するための、低オーバーヘッド手段を可能にする通信システム及び方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上の問題は、請求項1の特徴を備えたIMDと外部機器との間のワイヤレス・メッセージ転送のための通信システムによって、請求項10の特徴を備えたそれぞれの通信方法によって、請求項14の特徴を備えたコンピュータ・プログラム製品によって、及び請求項15の特徴を備えたコンピュータ可読データ・キャリアによって解決される。コンピュータ・プログラム製品は、IMD及び外部機器によるソフトウェア・ルーチン及び/又は関連したハードウェア・サポート手段であってよい。
【0009】
詳細には、本問題は、IMD及び外部機器を含む、IMDと外部機器との間のワイヤレス・メッセージ転送のための通信システムによって解決され、IMDは、患者の健康ステータスをモニタするように構成され、及び/又は、患者に療法信号を送達するように構成される。IMDは、プロセッサ、メモリ・モジュール、及び外部機器とメッセージを双方向にやり取りするように構成されたトランシーバ・モジュールを備える。外部機器は、予め定義された第1のタイム・インターバル内にウェイク・アップ信号に続くID要求メッセージと組み合わせられた予め定義されたウェイク・アップ信号を、IMDのトランシーバ・モジュールに送るように構成され、ID要求メッセージは、予め定義されたセットからの予め定義された異なる要求仕様のうちの1つを収容する。IMDのプロセッサは、先に受信されたID要求メッセージに対するID応答メッセージを生み出して、このID要求メッセージの受信後のタイム・スロット内にこのID応答メッセージをトランシーバ・モジュールから外部機器に送るように構成される。ID応答メッセージは、メモリ・モジュールの予め定義されたメモリ・アドレスにおけるメモリ・セル・セクションから読み出されたID情報を含み、メモリ・セルのセクションは、先に受信されたID要求メッセージによって送られた要求仕様に基づいてプロセッサによって決定され、タイム・スロットは、メモリ・セルの決定されたセクションから読み出されたID情報に基づいてプロセッサによって決定される。要求仕様はまた、ID要求コマンドと呼ばれてもよい。更に、メモリ・セルはまた、(セルなしで)メモリと呼ばれてもよい。
【0010】
代替として、又は追加として、IMDのプロセッサは、先に受信されたID要求メッセージに対するID応答メッセージを生み出すように、且つこのID要求メッセージの受信後のタイム・スロット内にこのID応答メッセージをトランシーバ・モジュールから外部機器に送るように構成され、ID応答メッセージは、メモリ・モジュールの予め定義されたメモリ・アドレスから読み出されたID情報を含み、メモリのセクションは、先に受信されたID要求メッセージによって送られた要求仕様に基づいてプロセッサによって決定され、タイム・スロットは、メモリの決定されたセクションから読み出されたID情報に基づいてプロセッサによって決定される。
【0011】
IMDは、患者の健康ステータスをモニタするように構成された、及び/又は、患者に療法信号を送達するように構成された、上で定義されたインプラント型医療機器であり、例えば、ILP、ILPS、又はICDである。
【0012】
IMDは、データ処理のためのプロセッサと、外部機器からメッセージ(即ち、通信信号)を受信し、外部機器にメッセージを送信するためのトランシーバ・モジュール(例えば、適切な通信管理能力に接続されたアンテナ又はコイル)とを備える。要求メッセージは、外部機器によってIMDに送られた命令又はコマンド要求である。IMDのトランシーバ・モジュールによって外部機器に送られたメッセージは、応答メッセージとしての働きをする。一般に、メッセージは、明確に定義されたアルゴリズム及びデータ構造において表現され、それらによって解釈される、通信プロトコルの一部として定義された構文及び意味論システムに埋め込まれたビットの列である。IMDのトランシーバ・モジュールによって受信された要求メッセージは、データ処理のためにプロセッサに中継される。同様に、プロセッサは、信号/メッセージの内容を生み出し、信号/メッセージはその後、応答メッセージとして外部機器に送るためのトランシーバ・モジュールに中継される。
【0013】
IMDは、データを記憶するためのメモリ、バッテリ・サポートその他を含む電力供給部、患者から生理学的信号を取得するための少なくとも1つのセンサ、及び/又は、例えば電気療法信号若しくは電磁療法信号を発生させ、施すための信号発生器などのモジュールを更に備えることができる。トランシーバ・モジュール、メモリ・モジュール、電力供給部、少なくとも1つのセンサ、及び/又は信号発生器は、プロセッサに電気的に接続されてよい。
【0014】
IMDのメモリ・モジュールは、ランダム・アクセス・メモリ(RAM:random access memory)、読み出し専用メモリ(ROM:read-only memory)、不揮発性RAM(NVRAM:non-volatile RAM)、電気的に消去可能なプログラマブルROM(EEPROM:electrically-erasable programmable ROM)、フラッシュ・メモリ、又は任意の他のメモリ・ストレージ・タイプなどの、任意の揮発性の、不揮発性の、磁気的な、電気的な媒体、その他を含むことができる。
【0015】
外部機器は、少なくとも部分的には体外に配置されており、プロセッサを有する別々のモジュールであってよく、コンピュータ(例えば、医師の機器、リモート・サーバ、プログラマ)にワイヤレスに、又はワイヤによって接続されてよい。代替として、外部機器は、そのようなコンピュータの統合ユニットを形成してもよく、例えば、プログラマの統合ユニットを形成してもよい。双方向通信のために、外部機器は、メッセージ(信号)のためのトランシーバ、例えば、通信モジュールに接続されたコイルを備えることができる。通信モジュールは、プロセッサを備えてもよいし、又は、特にそれがコンピュータから離れたモジュールである場合は、プロセッサとインターフェースを取ってもよい。
【0016】
外部機器とIMDとのワイヤレス通信は、無線通信(ワイヤなし)を含む。通信は、誘導磁気手段、音響方法(例えば、超音波)、並びに/又は、音響波、光学波、及び/若しくは電磁波、例えば、ラジオ周波数領域におけるBluetooth、WLAN、ZigBee、NFC、Wibree、若しくはWiMAX、或いは、赤外線又は光学周波数領域におけるIrDA又は自由空間光(FSO:free-space optical)通信を使用することができる。
【0017】
本発明に関して、各プロセッサは、命令制御ユニット及び算術論理ユニットを備えた、命令を解釈して実行する、IMD、外部機器、及び/又はコンピュータの機能性ユニットとみなされる。(リモートの)コンピュータ又は外部機器は、人間が介在することなく多数の算術演算及び論理演算を含む実質的な計算を実施することができる機能性ユニットであり、例えば、パーソナル・モバイル機器(PMD:personal mobile device)、デスクトップ・コンピュータ、サーバ・コンピュータ、クラスタ/ウェアハウス・スケール・コンピュータ又は埋め込み型システムなどである。
【0018】
一実施例において、IMDのプロセッサは、少なくとも、予め定義されたスリープ状態と予め定義されたアクティブ状態とを採用する。アクティブ状態において、プロセッサは、例えば、療法適用のために、内部的に記憶されたデータを収集する、集約する、又は(1つ又は複数の応答において)アウトバウンドに発信する、或いは、測定値を収集するための措置を制御する、若しくは取る、又はルーチンを実行する。それに応じて、アクティブ状態において、プロセッサは、外部要求に応答するために、及び/又は、内部プログラム・シーケンスに従ってデータを処理するために動作する。以下において、アクティブ状態は、任意の更なるコマンド要求を処理するためにIMDの準備ができているかについてシステムに合図する前に、外部機器からの要求に関連した長々としたルーチンを完了するために意図的に働く「ビジー条件」に相当してよい。しかしながら、スリープ状態において、プロセッサは、更なるアクティブ状態の対話のために呼び起されることが可能な状況において、IMDの単純なメンテナンスを通して通信のサポートに最小限関与するにすぎない(それによって、電力を節約する)。IMDが更なるターゲットのメッセージ/データのやり取りを促進することが可能なのは、より高電力なアクティブ状態条件へと移行するときのみである。一実施例において、受信機回路は、医療提供者(HCP:health care provider)が外部機器を介して対話を試みるときにはいつでも機器と通信することが可能であることを証明しなければならないので、受信機回路は、IMDのサービス時間中常に実行している。
【0019】
本発明によれば、外部機器からのIMDとの通信の始まりに、IMDのプロセッサは、初めにスリープ状態にあり、外部機器は、予め定義されたウェイク・アップ信号をIMDのトランシーバ・モジュールに送り、ウェイク・アップ信号は、予め定義された第1のタイム・インターバル内にそのウェイク・アップ信号に続くID要求メッセージと組み合わせられ、ID要求メッセージは、予め定義されたセットからの別個の要求コマンドのうちの1つを収容する。
【0020】
一実施例において、外部機器は、予め定義された第1のタイム・インターバル内にウェイク・アップ信号に続くID要求メッセージとそれぞれ組み合わせられた複数の予め定義されたウェイク・アップ信号を、IMDのトランシーバ・モジュールに送るように構成され、そのような予め定義されたウェイク・アップ信号のうちの第2の信号が、予め定義された第2のタイム・インターバル内にそのような予め定義されたウェイク・アップ信号のうちの第1の信号に続き、第2のタイム・インターバルは、第1のタイム・インターバルよりも長い。ID要求メッセージと組み合わせられた第1のウェイク・アップ信号は、既知のHEP(即ち、ノイズなし)と同様に扱われてよい。第1のウェイク・アップ信号は、更なる通信をサポートするためのシステム内の利得設定の調整を支援するためにIMDによって評価されてよく、IMDは更に、観察されたシグナリングが実際に外部機器からのHEP入力であることを確認するためのプロセスを開始することができる。ウェイク・アップ信号及びID要求メッセージの次のクラスタ化グループ分けで、IMDは、信号が実際に有効なウェイク・アップ入力であることを確認することができ、次いで、ベースラインのバイナリ位相シフト・キーイング(BPSK:binary phase shift keying)通信シグナリングを復号するために必要な、通信クロック・サポート及び位相ロック・ループ(PLL:phase lock loop)要素の開始に進むことができる。ウェイク・アップ信号及びID要求メッセージの第3のグループ分けがインプラントに達する時間までに、IMDのトランシーバは、アクティブになり、更なる通信のために準備されてよい。
【0021】
一実施例において、ウェイク・アップ信号は、8サイクルのギャップによって分離された、初期8サイクルのパルス出力トレイン及び後期8サイクルのパルス出力トレインであり、24サイクル長のギャップのある出力をもたらす。例えば、従来型製品の通信スキームで使用されているように、例えば32.768Hzでの既知の2サイクルの高エネルギー・クロック・パルス出力(HEP)を含む、他のウェイク・アップ信号がまた使用されてもよい。最初に言及した実施例によれば、知られている従来型製品のHEP実装は、より大きなクロック・サイクル・カウント及び識別用内部ギャップ署名の包含を通して、リードレス・サポート用に低電力のウェイク・アップを可能にするように修正されている。増加したサイクル・カウント及びギャップ特徴により、ノイズ入力への影響しやすさをより容易に回避できるので、着信HEPを認識する際にIMDがより少ない電力を消費するのを可能にすることによって、機器のサービス時間を損なうことなく、深部インプラントのウェイク・アップ・サポートが向上する。上で説明したウェイク・アップ信号は、IMDのプロセッサ又はトランシーバ回路によって知られている予め定義されたパターンによって確認される(即ち、アクティブなパルス及びギャップをテンプレートと照合する)能力を有し、これは、意図されたときにのみプロセッサのウェイク・アップ(即ち、スリープ状態からアクティブ状態への移行)が行われることを保証するために使用されてよく、やはり、ノイズ耐性を向上させる。この改訂された深部インプラントのHEPウェイク・アップ・アプローチは更に、従来型IMDも同様に呼び起こす能力を維持している。一実施例において、初期8サイクルのパルス出力トレインのパルス振幅は、後期8サイクルのパルス出力トレインのパルス振幅とは異なっていてもよい。HEPシーケンス内の出力のこのマルチ・レベルのセグメント化は、後続のベースライン通信のためにどの利得設定が最善であるかを決定し、前記後続のベースライン通信の間に利用すべき出力振幅に関するフィードバックを外部機器に与えるために、IMDに追加的な柔軟性を与える。
【0022】
代替として、又は追加として、ウェイク・アップ信号は、介在ギャップによって分離された初期セグメントと後期セグメントとにセグメント化され得るパルス出力トレインからなり、例えば、パルス出力トレインの初期セグメントのパルス振幅は、パルス出力トレインの後期セグメントのパルス振幅と比較されたとき、同じである、又は異なる。
【0023】
本発明によれば、ウェイク・アップ信号に続くID要求メッセージは、予め定義されたセットからの別個のID要求コマンドのうちの1つを表し、これは、ベースライン通信の開始及び時間多重化されたIMD応答のプロビジョニングにおいて、ランダムに選ばれてもよいし、又は関係するプロセスの一部としてのルール・ベースの選択に従って選ばれてもよい。ID要求メッセージは、IMDのプロセッサがメモリ・モジュール内のメモリ・アドレスを読み出すための情報を収容し、これはID要求メッセージに適切に対処するために不可欠である。適正なデータのやり取りのために、IMDは、外部機器の通信範囲内にある必要がある。送られた要求仕様に基づいて、IMDのプロセッサは、メモリ・モジュールのコマンド関連セクションに記憶された情報を読み出す。この情報は、「ID情報」と呼ばれる。一実施例において、メモリ・アドレスは、IMDのシリアル番号のメモリ・アドレスである。この実施例において、ID情報は、IMDのシリアル番号のセクションであり、ID要求コマンドは、IMDのシリアル番号のどのセクションがIMDのプロセッサによって読み出される必要があるのか、又は読み出されるべきかを決定する。
【0024】
一実施例において、外部機器は、ランダムに、又はルール・ベースの基準を介して、セットからの8つのID要求コマンドのうちの1つを選び、各要求コマンドは、IMDのプロセッサに、メモリの異なるセクション、例えば、メモリの3ビットのセクションを選ぶように指示する。ルール・ベースで選ぶことは、例えば、最後に使用された値よりも1つ大きい、又は1つ小さいバイナリ・インデックス値を有するファミリ内の次のID要求コマンドを毎回選ぶこと、或いは、あらゆる2番目に大きい値、又は2番目に小さい値を選ぶことを含むことができる。最大値又は最小値に達した場合は、それぞれ、最小値又は最大値で、即ち、折り返して、選ぶことを続行する。他のルールもまた適用されてよい。
【0025】
代替として、又は追加として、外部機器は、ランダムに、又はルール・ベースのスキームに従って、セットからの複数のID要求コマンドのうちの1つを選ぶように構成され、各ID要求コマンドにより、IMDのプロセッサは、メモリの異なるセクションを選ぶことが可能になる。
【0026】
ID情報は、ある一定の値、例えば、IMDのシリアル番号のセクションであってよい。本発明によれば、読み出されたID情報に基づいて、ID応答メッセージがその間に外部機器に送り返される必要があるタイム・スロットが、プロセッサによって決定される。2つの異なる(例えば、異なるシリアル番号をそれぞれ有する)IMDの場合、それらのそれぞれのメモリ・モジュールから、2つの異なるID情報値が導き出されることになる確率が高い。それに応じて、両方のIMDのID応答メッセージは、異なるタイム・スロットを使用して、それらのトランシーバによって送られることになる。このスキームは、時間多重化された応答管理として知られている。それによって、外部機器は、別個のIMDを区別することが可能である。発見段階の適用において、そのような時間多重化スキームにより、複数のリードレスIMDが、ID要求メッセージに対して規定された遅延で応答して、外部機器との通信をサポートすることが可能になる。追加として、外部機器の通信範囲内のいずれか1つのIMDを認識することにより、他のIMDと対話するシステムの能力を妨げたり、更に悪くは、通信インフラストラクチャにとってのIMDの視認性をまるで否定したりはしないことが保証される。各タイム・スロットのスタートは、ID要求メッセージの終了に対する固有の固定された遅延を表すことができ、固定長を有することができる。各タイム・スロットは、他のタイム・スロットと比較して、同じ又は異なる長さを有することができる。
【0027】
一実施例において、プロセッサは、IMDのメモリの決定されたセクションから読み出されたID情報(例えば、3ビットのコード)に基づいて、8つの異なるタイム・スロットのうちの1つを選ぶ。IMDのID応答メッセージは、IMDのシリアル番号の全部又は一部を収容することができる。また、8つよりも多い、又は少ない異なるタイム・スロットが、プロセッサによって選ばれてもよい。
【0028】
代替として、又は追加として、プロセッサは、メモリの決定されたセクションから読み出されたID情報に基づいて、トランシーバ・モジュールによりID応答メッセージを送るための、複数のタイム・スロットのうちの1つを選ぶように構成される。
【0029】
上で概説したようにIMDが発見されると、通信システムは、見つかったIMDを、短い固有の参照アドレスとペアリングする後続のプロセスを始めることができる。外部機器によって提供されるペアリング・プロセスは、例えば、任意の発見されたIMDについて読み出されたシリアル番号(例えば、4バイトのバイナリ値)を取り込むことと、より短い(例えば、3ビットのバイナリ値)固有の参照アドレスをIMDに割り当てることとを伴うことができる。そのようなアプローチは、多数の範囲内IMDのうちの1つにメッセージが送られるときにはいつでも、シリアル番号に基づいたより長いターゲットのアドレスのオーバーヘッドをメッセージ及び応答パケットに含ませることなく、代わりに、より短い参照アドレスを含むだけで、プロセスが続行できることを意味する。このアプローチは、リードレス・サポート用に使用される限定されたデータ・スループットの通信スキームにより多くの余裕を残して、通信リンク全体を通して意味のあるペイロード内容を渡す。本アプローチは更に、向上した臨床サポート、及びサービスの終了時に欠かせないIMDの取り替えを可能にし、あるIMDから別のIMDへと療法出力を切り替えるための通信ベースの手段を事実上提供する。本発明のシステム及び方法は、外部機器の範囲内で発見された各IMDによる、データのやり取り、プログラミング、その他に焦点を合わせたリードレス通信を可能にする。ここで、通信は、特定の時間又は位置に(必ずしも)拘束されず、いつでも提供されてよい。更に、通信は、小さな深部インプラント・リードレスIMDの特定のエネルギー要件に適合される。本発明の方法及びIMDは更に、工場出荷時プログラム設定のインストール、デバッグ、較正、及び他のデータ中継のニーズの一環として、製造中に個々のIMDを互いに隔てる必要性を排除する。
【0030】
本発明によれば、通信システムのコンポーネントであり、上で説明した特徴を有する外部機器及びIMDの両方が、上の問題を同様に解決する。
【0031】
同様に、上の問題は、インプラント型医療機器(IMD)と外部機器との間のワイヤレス・メッセージ転送のための通信方法によって解決され、IMDは、患者の健康ステータスをモニタし、及び/又は、患者に療法信号を送達し、IMDは、プロセッサ、メモリ・モジュール、及び外部機器とメッセージを双方向にやり取りするトランシーバ・モジュールを備え、方法は、以下のステップ、即ち、
- 外部機器によって、予め定義された第1のタイム・インターバル内にウェイク・アップ信号に続くID要求メッセージと組み合わせられた予め定義されたウェイク・アップ信号を、IMDのトランシーバ・モジュールに送るステップであって、ID要求メッセージが、予め定義されたセットからのID要求コマンドのうちの1つを収容する、送るステップと、
- このID要求メッセージの受信後のタイム・スロット内にID応答メッセージをトランシーバ・モジュールから外部機器に送るために、IMDのプロセッサによって、先に受信されたID要求メッセージに対するこのID応答メッセージを生み出すステップであって、ID応答メッセージが、メモリ・モジュールの予め定義されたメモリ・アドレスから読み出されたID情報を含み、メモリのセクションが、先に受信されたID要求メッセージに基づいてプロセッサによって決定され、タイム・スロットが、メモリの決定されたセクションから読み出されたID情報に基づいてプロセッサによって決定される、生み出すステップと
を含む。
【0032】
代替として、又は追加として、ID応答メッセージは、メモリ・モジュールの予め定義されたメモリ・アドレスにおけるメモリ・セル・セクションから読み出されたID情報を含み、メモリのセクションは、先に受信されたID要求メッセージによって送られたID要求コマンドに基づいてプロセッサによって決定され、タイム・スロットは、メモリの決定されたセクションから読み出されたID情報に基づいてプロセッサによって決定される。
【0033】
ID要求コマンドはまた、要求仕様と呼ばれてもよい。メモリ・セルはまた、(セルなしで)メモリと呼ばれてもよい。
【0034】
本発明の方法によって、更なる問い合わせ/テスト、その他について、特定のターゲットのIMDのユーザ選択を支援するために、任意の範囲内(即ち、発見された)リードレスIMDから最小限のIMDステータス情報(即ち、ID情報)を取り出すための手段が見つかる。
【0035】
本方法の一実施例において、セットからの8つのID要求コマンドのうちの1つは、ランダムに、又はルール・ベースの方法論を介して、外部機器によって選ばれ、各ID要求コマンドにより、IMDのプロセッサは、メモリの異なるセクションを選ぶことが可能になる。
【0036】
代替として、又は追加として、多数のID要求コマンドのうちの1つは、ランダムに、又はルール・ベースのスキームに従って、外部機器によって選ばれ、各ID要求コマンドにより、IMDのプロセッサは、メモリの異なるセクションを選ぶことが可能になる。
【0037】
更に、一実施例において、ID応答メッセージを送るための、8つの異なるタイム・スロットのうちの1つは、メモリの決定されたセクションから読み出されたID情報に基づいて、プロセッサによって選ばれる。
【0038】
代替として、又は追加として、ID応答メッセージを送るための、多数の異なるタイム・スロットのうちの1つ、例えば、8つの異なるタイム・スロットのうちの1つは、メモリの決定されたセクションから読み出されたID情報に基づいて、プロセッサによって選ばれる。
【0039】
更に、一実施例において、予め定義された第1のタイム・インターバル内にウェイク・アップ信号に続くID要求メッセージとそれぞれ組み合わせられた複数の予め定義されたウェイク・アップ信号は、外部機器によってIMDのトランシーバ・モジュールに送られ、そのような予め定義されたウェイク・アップ信号のうちの第2の信号は、予め定義された第2のタイム・インターバル内にそのような予め定義されたウェイク・アップ信号のうちの第1の信号に続き、第2のタイム・インターバルは、第1のタイム・インターバルよりも長い。
【0040】
上の方法は、例えば、(外部機器及び/若しくはIMDにおいて、又は外部機器及び/若しくはIMD内で、特にそれらのプロセッサを利用して実行されることになる)コンピュータ・プログラムとして実現され、コンピュータ・プログラムは、コンピュータ・ハードウェア又は通信システムが計算機能若しくは制御機能及び/又は演算を実施するのを可能にする、上記及び下記で指定された(コンピュータ)命令とデータ定義との組合せであるか、或いは、特定のプログラミング言語のルールに準拠し、上記及び下記で指定された機能、タスク、又は問題解決のために必要とされる宣言及びステートメント、若しくは命令から成り立つ構文単位である。
【0041】
更に、プロセッサによって実行されるときに、上で定義された方法のステップをプロセッサに実施させる命令を含むコンピュータ・プログラム製品が開示される。それに応じて、そのようなコンピュータ・プログラム製品を記憶するコンピュータ可読データ・キャリアが説明される。
【0042】
本発明は、これより、付属の概略図を参照して更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】インプラント型リードレス・ペースメーカ(ILP)が患者の心臓の断面内に示された、ILPと外部機器とを含む本発明の通信システムの一実施例を示す図である。
図2図1の外部機器によって提供されるウェイク・アップ信号の一実施例の表現を示す図である。
図3】タイムライン上に提示された、図1の外部機器とILPとの通信方法の概要を示す図である。
図4】タイムライン上に提示された、ウェイク・アップ信号、ID要求メッセージ、及びID応答メッセージのためのタイム・スロットの一実施例の詳細な配列を示す図である。
図5】発見された範囲内ILPのペアリングのための、図1の外部機器に接続されたコンピュータのグラフィカル・ユーザ・インターフェースの実例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、例示的な通信システム10と、患者30の心臓20(右心室21及び右心房22を含む)とを示す。システム10は、IMDの実例としてのリードレス心室ペースメーカ機器40(以下では「ILP40」)と、外部機器60とを含む。ILP40は、(図1に示すように)心臓20の右心室21内にインプラントされるように、且つこの心室のペーシングを行い、内在する心室脱分極を感知して、前記脱分極に応答して心室ペーシングを抑制するように構成されてよい。ILP40は、患者30の姿勢を測定するために、加速度計センサを更に備えることができる。外部機器60を使用してILP40をプログラムするために、プログラマ(図示せず)が使用されてもよい。外部機器60は、身体の外側に配置され、ILP40と双方向に通信するように適合される。
【0045】
ILP40は、プロセッサ、データ・メモリ・モジュール、治療信号(例えば、ペーシング信号)を提供するための信号発生器ユニット、ECG測定ユニットを含む測定ユニット、DCインピーダンス・センサ及び加速度計センサ、外部機器60へのメッセージを送って受信するためのトランシーバ、並びに電源などのモジュールを備えることができ、前記モジュールのそれぞれは、なんらかの様式でIMD内に電気的に接続されている。電源は、バッテリ(例えば、充電可能な、又は非充電可能なバッテリ)を含むことができる。データ・メモリ・モジュールは、上で言及した任意のメモリ・タイプを含むことができる。ILP40のプロセッサは、少なくとも、上で説明したスリープ状態及び上で説明したアクティブ状態を採用することができる。
【0046】
外部機器60は、プロセッサ61、及びILP40とメッセージをやり取りするためのトランシーバ62を備え、これらは互いに電気的に接続される。更に、外部機器60は、他の外部機器及び/又はリモート・サーバ(図示せず)とデータをやり取りすることができる。外部機器60は、プログラマであってもよい。ILP40とのメッセージの双方向のやり取りは、両矢印50によって象徴化されている。外部機器60のILP40とのリードレス通信は、例えば、誘導磁気通信、伝導通信、及び音響通信であってよい。
【0047】
以下において、本通信システム及び方法の一実施例の動作が、図2から図5までを参照して説明される。
【0048】
多数のILP40との実用的な通信を可能にし、そのようなILP40のより深いインプラント処置の深さを考慮するために、(以前のシーケンス設計と比較して)より十分なクロック・サイクルのカウント、並びに識別用内部ギャップ署名を含むウェイク・アップ信号100が提供される。図2は、8サイクルのギャップ102によって分離された、2つの8サイクルのパルス出力トレイン101、103(即ち、1つの初期パルス・トレイン101及び後期パルス・トレイン103)からなるそのようなウェイク・アップ信号100の実例を示す。当然ながら、より多い、若しくはより少ないサイクル、又はサイクルのギャップ、例えば、6、7、9、若しくは10のサイクル、又はサイクルのギャップを有する信号100も可能である。図2に示したこの24サイクル長のギャップのある信号100は、ILP内受信機がウェイク・アップ信号100を認識するために必要な感度を下げることをサポートする。ウェイク・アップ信号100は、タイム・インターバルT2(例えば、T2=333ms)の後に繰り返される。ウェイク・アップ信号100は、T1(例えば、T1=732μs)の長さを有する。
【0049】
上で説明したウェイク・アップ信号は、深部リードレス・インプラントを発見する一方で、プログラマの関与のために最新の製品を呼び起こす能力をなおも維持している。上のウェイク・アップ信号は、そのようなインプラントのタイプがより高い信号エネルギーを必要とするとき、単に、無視されて、又はそのようなインプラントのタイプに関係なく終わることになる。
【0050】
図3及び図4は、リードレス通信用に使用されるウェイク・アップ信号がどのようにID要求メッセージとペアにされて、複数のリードレス・インプラントを識別するかを論証する、ウェイク・アップ信号100についての概略表現を収める。わかりやすさのために、図3は、ただ1つのILP40との通信のスタート・アップに焦点を当てており、ILP40のプロセッサは、初め、上で説明したスリープ状態にある。各ウェイク・アップ信号100に続くタイム・インターバルT1A(図2を参照されたい。例えば、T1A=488μs)の短い遅延の後で、外部機器60は、ILP40にID要求メッセージ200を送り、これは以下で詳細に説明される。ILP40による初めのウェイク・アップ信号100の検出を前提として、更なる通信のサポートのための受信機構成に関連付けられた利得条件の評価がILPによって行われてよく、ILP40のプロセッサは、観察されたシグナリングが実際にウェイク・アップ信号100であること(即ち、ノイズではないこと)を確認するためのプロセスを開始し、これは、矢印401で表すステップである。(図示された実施例における333msのタイム・インターバルT2の後の)ウェイク・アップ信号の次のクラスタ化グループ分けで、ILP40のトランシーバは、そのパルス・トレイン101、103、及びそのギャップ102を含むウェイク・アップ信号100が、実際に有効なウェイク・アップ信号であることを確認し(矢印402で象徴化されたステップを参照されたい)、次いで、ベースラインのバイナリ位相シフト・キーイング(BPSK)通信シグナリングを復号するために必要な、通信クロック・サポート及び位相ロック・ループ(PLL)要素の開始に進む(矢印403で表すステップ)。第3のウェイク・アップ信号100がILPに達する時間までに、ILPのプロセッサは、アクティブ状態になり(上で説明したアクティブ状態、矢印404で表すステップ)、更なる通信のために準備される。第1のウェイク・アップ信号の始まりに関するタイム・インターバルT3の後で(T3=3×T2=1s)、第4のウェイク・アップ信号が通信ユニットによって開始されてよい。
【0051】
ベースライン通信の開始をサポートするために、各ウェイク・アップ信号100の後で、外部機器60は、ID要求メッセージ200を送り出す。このメッセージは、ILPによって受信されるとき、ID要求メッセージ200に収容された要求仕様値を使用して、ILPのシリアル番号が記憶されているデータ・メモリ・モジュールの位置を参照するよう、ILP40のプロセッサに請求する。特定のID要求メッセージ200に基づいて、特にその要求仕様に基づいて、ILPが次いで(図3の405に示されるように)ID要求コマンド200に対するそのID応答メッセージ300をその間に送ることになる特定のタイム・スロットS1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8(図4を参照されたい)を決定するために、小さな数のビット(例えば、3ビット)のメモリ・セル・セクションが使用される。各タイム・スロットS1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8は、ID要求メッセージ200に対する特定の遅延を表しており、ここで、ILP40は、そのトランシーバ・モジュールを使用して、外部機器60にその存在を知らせ、そのシリアル番号(又はそのうちのセクション)を搬送するために応答する。図3においては、単一のILP40が外部機器60の範囲内にあり、ILP40は、参照番号300がタグ付けされた灰色のボックスとしての、単にラベル付けされた専用のタイム・スロットにおいて(例えば、タイム・スロットS5において)応答する。単一のILP40の発見後、外部機器60との個々の通信が、例えば、ILP40に実際のステータスを送信することによってスタートしてよい。ベースライン通信のスタートは、図3に矢印405で示した時点の後に始めることができる。下の表は、ID要求メッセージ200の要求仕様の使用を更に概説する。そのようなメッセージについて、複数の要求仕様又はID要求コマンド(特定の示された実施例では8つ、下の表の第1のコラムを参照されたい)が存在する。各々が、それぞれのILP40のデータ・メモリ・モジュールに記憶された範囲内ILPのシリアル番号からビットを決定する。各要求仕様についての対応するビットが、下の表の第2のコラムに列挙されている。外部機器60の範囲内の任意のILPのシリアル番号の規定されたビットに記憶された値(上でID情報と呼ばれたもの)が、特定のタイム・スロットを符号化する。本実施例にあるように、3つのビットは、0(バイナリ:000)と8(バイナリ:111)との間のID情報を有することができ、その結果、8つの異なるタイム・スロットを、下の表の最後のコラムに列挙したように符号化することができる。各タイム・スロットS1からS8までが、別々の緑色のボックスとして図4に示されている。第1のタイム・スロットS1は、ID要求メッセージ200の終了後にタイム・インターバルT5を始め、T5は、例えば、23.4msであってよい。ID要求コマンド200も同様に、23.4msの長さT4を有してよい。各タイム・スロット間のギャップは、T7の長さ=488μsを有してよい。
【表1】

各タイム・スロットS1からS8までは、ID要求メッセージ200の終了に対する固有の固定された遅延を表す。遅延は、T5の長さと、数回の長さT6の各タイム・スロットと、T7とを有し、ここで、例えば、T6=35.5msである。タイム・スロットS1についての遅延はT5であり、他方でタイム・スロットS2についての遅延は、T5+T6+T7、又は、T5+S1の時間長+わずかなギャップである。タイム・スロットS3について、遅延は、結果的にT5+2×T6+2×T7など、又は、T5+S1の時間長+わずかなギャップ+S2の時間長+わずかなギャップとなる。範囲内ILPはその時、計算されたタイム・スロットに合わせた時間長の間それぞれ待ち、次いでID応答メッセージ300の一部としてそのシリアル番号を報告する。このスキームは、所与のID要求メッセージ200に対して、外部機器60範囲内のILP40のすべてが異なるタイム・スロットにおいて応答することになるのを保証するものではない。そのようなケースでは、共有されたタイム・スロットS1からS8までにおける1つよりも多いILPからの重なり合った応答が、外部機器60による応答認識を混同させることが予想される。おそらくは、このタイプの衝突を受けると、ILPの1つ又は両方を発見することはできない。しかしながら、外部機器60によって、ウェイク・アップ信号100に続いてID要求メッセージ200が送られるたびに、別の要求仕様が(示された実施例においては8つから)選ばれて、ID要求メッセージ200と共に送られる。要求仕様の選抜は、ランダムに遂行されてもよいし、又は外部機器60に記憶された特定のルールによって遂行されてもよい。新たなID要求コマンドを使用すると、「デッキをシャッフル」して、範囲内ILPのシリアル番号の別のセクションを事実上選抜して、タイム・スロットを割り当てることになる。新たなタイム・スロットを符号化するためのID要求コマンドのこの選抜により、統計的に、最終的には、多数のILPが、別々の、別個のタイム・スロットに到達することが可能になり、外部機器60によるILPの認識を促進する。
【0052】
上で言及した、規定されたタイム・スロットにおいて個々のILPを外部機器が認識するための時間多重化されたスキームは、「発見」として説明することができるプロセスである。それは、通信システムの唯一の「フレーム・ベースの」部分(即ち、予想されたインターバルにおいて応答に許容差を提供するために、メッセージ出力の規定された規則性が時間内に編成される部分)である。図4から導き出すことができるように、ID要求メッセージ200と第1のタイム・スロットS1との間の長さT5(例えば、23.4ms)を有する短い遅延によって、本スキームはまた、従来型IMDが応答することを許可する。そのようなケースにおいて、従来型IMDは、1つよりも多い範囲内IMDを有する可能性を考えて設計されなかったので、IMDは、単に通信をスタートし、このセットアップ内に、リードレスIMDに関与しようとするシステムの試みを無効にするように予想されることになり、プログラマ・ソフトウェア・インフラストラクチャは、そのような知られている従来型製品に特有のインターフェースを生成することになると思われる。それに応じて、本発明のアプローチは、従来型IMDとの通信をサポートすることが可能である。ILPが外部機器の通信範囲内であり得たとしても、従来型インプラントもまたその範囲にある場合、ILPは、外部機器によって「見えない」ことになると思われる。ILPと通信できることを確実にしたい場合、必要でない限り、従来型機器は外部機器の通信範囲の外側にあることが賢明である。
【0053】
上で概説したようにILPが発見されると、システムは、見つかったILPを、短いアドレスとペアリングする後続のプロセスを始めることができる。ペアリング・プロセスは、任意の発見されたILPについて見つかったシリアル番号(例えば、4バイトのバイナリ値)を取り込むことと、より短いが(例えば、3ビットのバイナリ値)固有の参照アドレスをILPに割り当てることとを伴う。そのようなアプローチは、複数の範囲内ILPのうちの1つにメッセージが送られるときにはいつでも、シリアル番号に基づいたより長いターゲットのアドレスのオーバーヘッドをコマンド及び応答パケットに含ませることなく、プロセスが続行できることを意味する。このアプローチは、リードレス・サポート用に使用される限定されたデータ・スループットの通信スキームにより多くの余裕を残して、通信システム全体を通して意味のあるペイロード内容を渡す。
【0054】
システムが短いアドレスとペアにした任意のILPに対して、追加の情報が報告されることを外部機器60が要求する場合、ステータス/タイプの問い合わせが次いで実行されてもよい。このタイプの基本情報には、考慮事項の中でもとりわけ、例えば、機器が工場出荷時/棚状態にあるか否か、機器のバッテリがどのような条件を提示しているか、及び/又は、ILPインプラント日付の報告が含まれてよい。好ましい実施例においては、このステータス/タイプの問い合わせ情報についてポーリングするために別々のコマンド・ベースの対話を使用するのではなく、ID要求コマンドに対する応答の一部としてIMDによって中継された内容がそのような情報を搬送してもよく、この後者の実施例は、より低いオーバーヘッド手段を与えて、極めて重要な機器情報を迅速にシステム/ユーザに提供する。そのような細部のレンダリングは、完全な機器問い合わせルーチンとして慣習的に知られているものを表すのではなく、代わりに、範囲内ILPからターゲットの値を取り出す、より軽いタッチを表している。そのような対話により、外部機器60のグラフィカル・ユーザ・インターフェース(GUI:graphical user interface)上にユーザ・インターフェースを発生させることが可能になり、これは、外部機器60の範囲内で見つかった複数のILPのうちの適正な1つを医療提供者が選択するのを支援することができる。このタイプの例示的なインターフェースが図5に例証されており、外部機器60の範囲内の異なるILPのタイプのリスト501と、それらの対応するシリアル番号(リスト502を参照されたい)とを示している。リスト501及び503は、上で触れた軽いタッチのステータス情報のタイプの実例を収めている。GUI対話を介した特定のILPのユーザ選択に続いて、通信システムは、(例えば、示されたフィールド504を通してインターフェースを取ることによって、ユーザ命令に応答して)選んだILPとの正式な問い合わせプロセス、及び専用のベースライン通信に入ることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】