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特表2024-521014傾斜機能物品を押出ベースの3Dプリントするための、ならびに低圧および室温下で金属/セラミックの物品を鋳造するためのスラリー供給原料、そのための方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】傾斜機能物品を押出ベースの3Dプリントするための、ならびに低圧および室温下で金属/セラミックの物品を鋳造するためのスラリー供給原料、そのための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/00 20060101AFI20240521BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20240521BHJP
   B22F 10/16 20210101ALI20240521BHJP
   B22F 10/40 20210101ALI20240521BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20240521BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240521BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20240521BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240521BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240521BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240521BHJP
【FI】
B22F9/00 B
B28B1/30
B22F10/16
B22F10/40
B05D3/00 B
B05D7/24 302A
B05D7/24 303A
B05D1/26 Z
B33Y70/00
B33Y30/00
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023566022
(86)(22)【出願日】2022-04-26
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 MY2022050030
(87)【国際公開番号】W WO2022231420
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】PI2021002275
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MY
(31)【優先権主張番号】PI2021006359
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MY
(31)【優先権主張番号】PI2022002158
(32)【優先日】2022-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MY
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523404631
【氏名又は名称】ソリッド ラボ エスディーエヌ ビーエイチディー
【氏名又は名称原語表記】SOLID LAB SDN BHD
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】テイ ジン ユエン
(72)【発明者】
【氏名】ヨー ウェイ ホン
(72)【発明者】
【氏名】ティー シャウ フーン
(72)【発明者】
【氏名】チョン チー ユエン
【テーマコード(参考)】
4D075
4G052
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075BB24Z
4D075BB28Z
4D075BB29Z
4D075EA06
4D075EA14
4D075EA33
4D075EB01
4D075EB05
4D075EB07
4D075EC10
4D075EC11
4D075EC31
4D075EC33
4D075EC35
4D075EC41
4D075EC49
4G052DA04
4G052DA08
4G052DB12
4G052DC06
4K017AA08
4K017BA06
4K017CA07
4K018AA33
4K018BA17
4K018BB04
(57)【要約】
本発明は、傾斜機能物品を押出ベースの3Dプリントするための、および/または低圧および室温下で物品を鋳造するためのスラリー供給原料、それを準備する方法、および押出ベースの3Dプリントおよび/または鋳造の方法ならびにシステムを開示する。スラリー供給原料は、金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含む構築材料と、有機ポリマー結合剤と、添加剤と、揮発性有機溶媒とを含む。前記添加剤と混合される前記構築材料と、前記揮発性有機溶媒に溶解される前記有機ポリマー結合剤とは、それぞれ第1のプレミックスと第2のプレミックスとを形成する。これらは混合されて、物品を製造するための実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜機能物品を押出ベースの三次元(3D)プリントするためのスラリー供給原料であって、
金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含み、多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせであり、10体積%~90体積%の量である構築材料と、
セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択され、150g/L~550g/Lの濃度である有機ポリマー結合剤と、
可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤と、
揮発性有機溶媒と、を備え、
前記構築材料と前記添加剤を混合して第1のプレミックスを、前記有機ポリマー結合剤を前記揮発性有機溶媒に溶解して第2のプレミックスを、それぞれ形成し、それらを混合して前記傾斜機能物品の先行部品としてプリントされる実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成し、
前記有機ポリマー結合剤は、熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方により前記先行部品から脱結合され、その後に行われる焼結処理により、1つ以上の方向に前記傾斜機能物品の最終部品の体積にわたって組成、充填パターンを含む構成、またはそれらの任意の組み合わせが選択的に徐々に変化する前記構築材料を含む前記最終部品が作製される、
ことを、特徴とするスラリー供給原料。
【請求項2】
前記金属は、鉄金属、非鉄金属、鉄金属合金、および非鉄金属合金を含む群から選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載のスラリー供給原料。
【請求項3】
前記セラミックは、粘土、コーディエライトセラミック、ステアタイト、ストーンウェア、土器、磁器、カオリン、石英、ケイ酸塩、カモット、ベントナイト、ムライトを含むケイ酸塩セラミック;アルミナ、イットリア(Y)中で安定化されたジルコニアを含むジルコニア、酸化ベリリウム、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化ウラン(UO)、二酸化プルトニウム(PuO)、酸化イットリウムバリウム銅、スピネル、マグネトプランバイト、ペロブスカイト、チアライトを含む酸化物セラミック;炭化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化ケイ素を含む炭化物セラミック、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、SiAIONを含む窒化物セラミックを含む非酸化物セラミック;ヒドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、非晶質リン酸カルシウム(ACP)、リン酸八カルシウム(OCP)、無水リン酸二カルシウム(DCPA)、リン酸二カルシウム二水和物(DCPD)、一酸化リン酸四カルシウム(TetCp)、二相リン酸カルシウム(BCP)を含むリン酸カルシウムセラミックを含むバイオセラミック、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載のスラリー供給原料。
【請求項4】
前記構築材料の粒径は、300μm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載のスラリー供給原料。
【請求項5】
前記セルロースエステルは、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、セルローストリブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースプロピオネート、セルローストリプロピオネート、セルロースニトレート、セルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートブチレートスクシネート、セルロースプロピオネートブチレート、およびそれらの混合物を含む群から選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載のスラリー供給原料。
【請求項6】
前記セルロースエーテルは、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース、疎水変性エチルヒドロキシエチルセルロース、疎水変性ヒドロキシエチルセルロース、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロース、およびそれらの混合物を含む群から選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載のスラリー供給原料。
【請求項7】
前記有機ポリマー結合剤の数平均分子量は、150,000以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載のスラリー供給原料。
【請求項8】
前記揮発性有機溶媒は、アセトン、ブタノン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノンを含むケトン;脂肪族炭化水素;芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールおよびブタノールを含むアルコール;ギ酸メチル;エチレンカーボネート;プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、γ-ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオザン、ニトロメタン、アセトニトリル、メチルシクロヘキサン、n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、およびそれらの混合物を含む群から選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載のスラリー供給原料。
【請求項9】
前記実質的に均一で流動性のスラリー混合物は、各々がそれぞれの第1のプレミックスとそれぞれの第2のプレミックスとを含む2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のスラリー供給原料。
【請求項10】
前記2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を、イン・サイチュで静的または動的ミキサにより瞬間的に混合されることにより、1種の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する、
ことを特徴とする請求項9に記載のスラリー供給原料。
【請求項11】
前記第2のプレミックスは、10体積%~90体積%の量である、
ことを特徴とする請求項1または9に記載のスラリー供給原料。
【請求項12】
前記傾斜機能物品の張り出し部または片持ち部のための支持構造をプリントするように構成された、実質的に均一で流動性の支持混合物を形成する支持材料を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のスラリー供給原料。
【請求項13】
前記支持材料は、セラミック、犠牲材料、散逸材料、またはそれらの任意の組み合わせを含む、
ことを特徴とする請求項12に記載のスラリー供給原料。
【請求項14】
前記犠牲材料は、熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方において前記先行部品から脱結合される、
ことを特徴とする請求項1または13に記載のスラリー供給原料。
【請求項15】
前記散逸材料は、熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方において前記先行部品から脱結合される、
ことを特徴とする請求項1または13に記載のスラリー供給原料。
【請求項16】
傾斜機能物品を押出ベースの三次元(3D)プリントするためのスラリー供給原料を準備する方法であって、
金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含む構築材料を準備する工程であって、
多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせである前記構築材料を供給する工程と、
前記構築材料を10体積%~90体積%の量で供給する工程と、を含む前記構築材料を準備する前記工程と、
セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択される有機ポリマー結合剤を準備する工程であって、
前記有機ポリマー結合剤を150g/L~550g/Lの濃度で提供する工程を含む前記有機ポリマー結合剤を準備する前記工程と、
可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤を準備する工程と、
揮発性有機溶媒を準備する工程と、
前記構築材料と前記添加剤を混合して第1のプレミックスを形成する工程と、
前記有機ポリマー結合剤と前記揮発性有機溶媒を混合して第2のプレミックスを形成する工程と、
前記第1のプレミックスと前記第2のプレミックスを混合して前記傾斜機能物品の先行部品としてプリントされる実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する工程と、を備え、
前記有機ポリマー結合剤は、熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方により前記先行部品から脱結合され、その後に行われる焼結処理により、1つ以上の方向に前記傾斜機能物品の最終部品の体積にわたって組成、充填パターンを含む構成、またはそれらの任意の組み合わせが選択的に徐々に変化する前記構築材料を含む前記最終部品が作製される、
ことを特徴とするスラリー供給原料を準備する方法。
【請求項17】
各々がそれぞれの第1のプレミックスとそれぞれの第2のプレミックスとを含む2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する工程をさらに含む、
ことを特徴とする請求項16に記載のスラリー供給原料を準備する方法。
【請求項18】
前記2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を、イン・サイチュで静的または動的ミキサにより瞬間的に混合して、1種の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する工程をさらに含む、
ことを特徴とする請求項17に記載のスラリー供給原料を準備する方法。
【請求項19】
前記傾斜機能物品の張り出し部または片持ち部のための支持構造をプリントするように構成された、実質的に均一で流動性の支持混合物を形成する支持材料を準備する工程を含む、
ことを特徴とする請求項16に記載のスラリー供給原料を準備する方法。
【請求項20】
傾斜機能物品を押出ベースの三次元(3D)プリントする方法であって、
スラリー供給原料を供給する工程であって、
金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含む構築材料を準備する工程であって、
多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせである前記構築材料を供給する工程と、
前記構築材料を10体積%~90体積%の量で供給する工程と、を含む前記構築材料を準備する前記工程と、
セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択される有機ポリマー結合剤を準備する工程であって、
前記有機ポリマー結合剤を150g/L~550g/Lの濃度で提供する工程を含む前記有機ポリマー結合剤を準備する前記工程と、
可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤を準備する工程と、
揮発性有機溶媒を準備する工程と、を含む前記スラリー供給原料を供給する前記工程と、
混合された前記構築材料と前記添加剤を混合して第1のプレミックスを形成する工程と、
溶解された前記有機ポリマー結合剤と前記揮発性有機溶媒を混合して第2のプレミックスを形成する工程と、
前記第1のプレミックスと前記第2のプレミックスを混合して前記傾斜機能物品の先行部品としてプリントされる実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する工程と、
熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方により、前記先行部品から前記有機ポリマー結合剤を脱結合する工程と、
前記有機ポリマー結合剤が脱結合した前記先行部品を焼結処理に供して、1つ以上の方向に前記傾斜機能物品の最終部品の体積にわたって変化する組成、充填パターンを含む構成、またはそれらの任意の組み合わせが選択的に徐々に変化する前記構築材料を含む前記最終部品が作製される工程と、を備える、
ことを特徴とする方法。
【請求項21】
各々がそれぞれの第1のプレミックスとそれぞれの第2のプレミックスとを含む2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する工程をさらに含む、
ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を、イン・サイチュで静的または動的ミキサにより瞬間的に混合して、1種の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する工程をさらに含む、
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項23】
前記傾斜機能物品の張り出し部または片持ち部のための支持構造であって、支持材料によって形成された実質的に均一で流動性の支持混合物を備える前記支持構造を提供する工程をさらに含む、
ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項24】
傾斜機能物品を押出ベースの三次元(3D)プリントするシステムであって、
スラリー供給原料を収容する1つ以上の容器を備え、
前記スラリー供給原料は、
金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含み、多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせであって、10体積%~90体積%の量である構築材料と、
セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択され、濃度が150g/L~550g/Lである有機ポリマー結合剤と、
可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤と、
揮発性有機溶媒と、を備え、
前記構築材料と前記添加剤を混合して第1のプレミックスを、前記有機ポリマー結合剤を前記揮発性有機溶媒に溶解して第2のプレミックスを、それぞれ形成し、それらを混合して、実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成し、
前記システムは、
前記1つ以上の容器に収容された前記スラリー供給原料の噴射を調整し、電磁弁、機械式ポンプ、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される噴射調整手段と、
前記噴射調整手段に対する制御信号を生成するように構成される制御部をそなえる計算部であって、前記制御部が、前記傾斜機能物品の最終部品に対して前記制御信号が作用的に影響を及ぼすために使用される材料およびレオロジープロファイルの所定のセットを備えるデータベースに接続されている、前記計算部と、
前記1つ以上の容器に収容された前記スラリー供給原料または前記噴射調整手段に対し流体圧力を提供し、接続された前記1つ以上の容器に収容された前記スラリー供給原料の動きをもたらして、加圧スラリー供給原料を提供するように構成され、空気圧駆動装置、液圧駆動装置、機械的移動装置、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される流体駆動装置と、
前記計算部によって動作可能に駆動され、前記実質的に均一で流動性のスラリー混合物を噴射して前記傾斜機能物品の先行部品を作製するように構成されるプリントヘッドと、をさらに備え、
前記有機ポリマー結合剤は、熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方により前記先行部品から脱結合され、その後に行われる焼結処理により、1つ以上の方向に前記最終部品の体積にわたって組成、充填パターンを含む構成、またはそれらの任意の組み合わせが選択的に徐々に変化する前記構築材料を含む前記最終部品が作製される、
ことを特徴とする、システム。
【請求項25】
前記システムは、2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を、イン・サイチュで瞬間的に混合させることにより、前記プリントヘッドに移動させる前に、1種の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する静的または動的ミキサをさらに備える、
ことを特徴とする請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記1つ以上の容器は、前記傾斜機能物品の張り出し部または片持ち部のための支持構造を前記プリントヘッドまたは他のプリントヘッドを通じてプリントする、実質的に均一で流動性の支持混合物を形成する支持材料を収容する、
ことを特徴とする請求項24または25に記載のシステム。
【請求項27】
低圧および室温下で物品を鋳造するためのスラリー供給原料であって、
金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含み、多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせであって、10体積%~90体積%の量である構築材料と、
セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択され、濃度が50g/L~550g/Lである有機ポリマー結合剤と、
可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤と、
揮発性有機溶媒と、を備え、
前記構築材料と前記添加剤を混合して第1のプレミックスを、前記有機ポリマー結合剤を前記揮発性有機溶媒に溶解して第2のプレミックスを、それぞれ形成し、それらを混合して、前記物品の先行部品を転相により作製するための凝固槽の中で実質的に浸漬された鋳型のキャビティでの鋳造に供される、実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成し、
前記有機ポリマー結合剤は、熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方により前記先行部品から脱結合され、その後に行われる焼結処理により、前記物品の最終部品が作製される、
ことを特徴とするスラリー供給原料。
【請求項28】
低圧および室温下で物品を鋳造するためのスラリー供給原料を準備する方法であって、
金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含む構築材料を準備する工程であって、
多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせである前記構築材料を供給する工程と、
前記構築材料を10体積%~90体積%の量で供給する工程と、を含む前記構築材料を準備する前記工程と、
セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択される有機ポリマー結合剤を準備する工程であって、
前記有機ポリマー結合剤を50g/L~550g/Lの濃度で提供する工程を含む前記有機ポリマー結合剤を準備する前記工程と、
可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤を準備する工程と、
揮発性有機溶媒を準備する工程と、
前記構築材料と前記添加剤を混合して第1のプレミックスを形成する工程と、
前記有機ポリマー結合剤と前記揮発性有機溶媒を混合して第2のプレミックスを形成する工程と、
前記第1のプレミックスと前記第2のプレミックスを混合して、前記物品の先行部品を転相により作製するための凝固槽の中で実質的に浸漬された鋳型のキャビティでの鋳造に供される、実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する工程と、を備え、
前記有機ポリマー結合剤は、熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方により前記先行部品から脱結合され、その後に行われる焼結処理により、前記物品の最終部品が作製される、
ことを特徴とする方法。
【請求項29】
低圧および室温下で物品を鋳造する方法であって、
スラリー供給原料を供給する工程であって、
構築材料を準備する工程であって、
多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせである前記構築材料を供給する工程と、
前記構築材料を10体積%~90体積%の量で供給する工程と、を含む前記構築材料を準備する前記工程と、
セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択される有機ポリマー結合剤を準備する工程であって、
前記有機ポリマー結合剤を50g/L~550g/Lの濃度で提供する工程を含む前記有機ポリマー結合剤を準備する前記工程と、
可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤を準備する工程と、
揮発性有機溶媒を準備する工程と、を含む前記スラリー供給原料を供給する前記工程と、
混合された前記構築材料と前記添加剤を混合して第1のプレミックスを形成する工程と、
溶解された前記有機ポリマー結合剤と前記揮発性有機溶媒を混合して第2のプレミックスを形成する工程と、
前記第1のプレミックスと前記第2のプレミックスを混合して、実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する工程と、
前記実質的に均一で流動性のスラリー混合物を鋳型の中での鋳造に供する工程と、
前記実質的に均一で流動性のスラリー混合物で満たしたキャビティをもつ前記鋳型を凝固槽の中に実質的に浸漬させて、転相により前記物品の先行部品を作製する工程と、
前記有機ポリマー結合剤を熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方により前記先行部品から脱結合する工程と、
前記有機ポリマー結合剤を脱結合した前記先行部品を焼結処理に供して、前記物品の最終部品を作製する工程と、を備える、
ことを特徴とする方法。
【請求項30】
低圧および室温下で物品を鋳造するシステムであって、
スラリー供給原料を収容する1つ以上の容器を備え、
前記スラリー供給原料は、
金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含み、多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせであって、10体積%~90体積%の量である構築材料と、
セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択され、濃度が50g/L~550g/Lである有機ポリマー結合剤と、
可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤と、
揮発性有機溶媒と、を備え、
前記構築材料と前記添加剤を混合して第1のプレミックスを、前記有機ポリマー結合剤を前記揮発性有機溶媒に溶解して第2のプレミックスを、それぞれ形成し、それらを混合して、実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成し、
前記システムは、
前記1以上の容器に収容された前記実質的に均一で流動性のスラリー混合物を鋳造するように構成された鋳型と、
転相により前記物品の先行部品を作製するために、前記実質的に均一で流動性のスラリー混合物で満たしたキャビティをもつ前記鋳型をその中に実質的に浸漬させるように構成された凝固槽と、
前記先行部品から前記有機ポリマー結合剤を脱結合する脱結合手段と、を備え、
前記脱結合手段は、前記物品の最終部品を作製するための焼結処理がその後に行われる、熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方を備える、
ことを特徴とするシステム。
【請求項31】
押出ベースの三次元(3D)プリントするための供給原料の組成物であって、
構築材料と、
結合剤溶液と、を備え、
前記結合剤溶液は、セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択され、
前記組成物は、スラリー混合物の形態で適用される、
ことを特徴とする供給原料の組成物。
【請求項32】
三次元(3D)プリントされた物品であって、
構築材料と、
結合剤溶液と、を備え、
前記結合剤溶液は、セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択され、
前記組成物は、スラリー混合物の形態で適用される、
ことを特徴とする三次元プリントされた物品。
【請求項33】
三次元(3D)プリントするための供給原料材料を準備する方法であって、
セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択される結合剤溶液を準備する工程と、
構築材料と前記結合剤を混合してスラリー混合物を形成する工程と、を備え、
前記供給原料材料はプリント用のノズルに直接的に投入可能である、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、積層造形および/または鋳型鋳造の分野に関する。より具体的には、本発明は、傾斜機能物品を押出ベースの3Dプリントするための、ならびに低圧および室温下で金属/セラミックの物品を鋳造するためのスラリー供給原料、スラリー供給原料を準備する方法、および押出ベースの3Dプリントおよび/または鋳造の方法、ならびに同システムに関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリント(3D印刷)とも呼ばれる積層造形は、デジタルファイルから三次元の物品または部品を作成する工業生産への変換的手法である。この技術より、3Dでソリッドな物体の造形が可能となり、したがって複雑な部品を実現することができる。典型的には、材料の薄層が堆積されて、鋳造、鍛造、および機械加工などの従来の技法では製造できなかった複雑な形状が作成される。3Dプリントは、今後数年間の重要な革新的工業プロセスの1つと見なされている。それは、投資界において非常に興味深く、収益性の高い市場であり、世界中の企業や業界に無限の選択肢をもたらす。
【0003】
積層造形の主要な進歩のひとつは、傾斜機能材料(Functionally Graded Material;FGM)を製造する能力である。FGMは、その構造特性がその量に沿って変化し、一緒に混合される2つの原材料の特性を有することである。対照的に、従来の複合材料は均一(homogeneous;均質)な混合物であり、したがって、それらは、構成原料の望ましい特性の間の妥協を必要とする。FGMの大部分が、それぞれの成分の純粋な形態を含有するので、構成原料の望ましい特性の間の妥協の必要性はなくなる。双方の成分の特性は、最大限に活用することができる。例えば、セラミックを金属と混合して、金属側の靭性またはセラミック側の耐火性を損なうことなく、最終的にFGM物品を形成することができる。従来、FGMの製造には、レーザ粉末堆積および固体粉末鍛造が利用されてきた。他の従来の製造方法には、レーザクラッディング、散布形成、沈降、および固化などのin-situ(イン・サイチュ)処理技術が含まれる。
【0004】
積層造形技術の中で、紫外線で液状の軽硬化性樹脂の分子間に鎖を形成し、架橋し、樹脂を固化させるバット光重合が、FGM部品または物品を作製するために使用される。選択的レーザ焼結および選択的レーザ溶融などのレーザベースのプロセスと、溶融堆積モデリングなどを使用して、様々な幾何学的形状の材料、層上の層を堆積させることもできる(すなわち、物体を作り出すための材料を追加する)。興味深いことに、これらの積層造形技術に共通する特徴は、材料特性の変化が通常プリント方向またはz軸上に向かう個別の形態をもつ一次元空間のみに制限される点である。これらの技術は、残念ながら、FGMおよびその反響(echoes)に対し十分に対応していない。さらに、バット光重合およびFDMは主に、熱可塑性またはプラスチック複合体(固体原料の形態をもつ)のプリントに関与し、これらの汎用性を低下させ、さらに弱体化させるのが、より大きな欠点である。多くの従来の3Dプリントの別の主な欠点は材料の連続する層を配置することによって1つの材料のみを一度にプリントすることを可能にすることであり、FGM物品のような同じ物体における構成成分が変化する異なる材料の一体化を必要とする多くの潜在的な用途を制限する。また、さらなる欠点として、固形の供給原料を使用する従来の3Dプリントでは、物品をプリントする際の材料部品のその場で(in-situで)のミキシングができない。したがって、2つ以上の軸にわたって変動または勾配を有するFGM物品を製造することができる新しい原料および積層造形技術を開発することが望まれている。
【0005】
他方、鋳造は基本的に、所望の部品の形状を持つ鋳型のキャビティ内に液状材料、通常は溶融金属を注入して行われる。そのあと、液体材料は所望の形状に凝固するまで、通常は鋳型を介して熱が放出されることによって冷却される。簡単そうに聞こえるかもしれないが、鋳造は一般に、溶融金属を使用する複雑な冶金のために、非常に複雑なプロセスである。鋳造処理は、消耗的な鋳型プロセスと永続的な鋳型プロセスとに分けることができる。消耗的な鋳型処理では、鋳型(典型的には砂、石膏およびセラミックから作製される)は、鋳物を除去するために壊される。対照的に、永続的な鋳型処理では、鋳型(典型的には高温で強度を保持する金属から作製される)が再利用され、したがって、鋳物が容易に取り出し可能なように設計されなければならない。
【0006】
従来の鋳造における課題の一つは、鋳型キャビティ内に流入させる前に、予め金属を溶融状態に溶融させる必要があることである。このような溶融プロセスは、使用される金属の融点に応じた極めて高い温度にするためにより高いエネルギーを必要とすることが欠点である。それに加えて、溶融金属を重力によって引き下げることができるが、実際には溶融金属を金型キャビティ全体に押し込むためにはかなりの量の圧力をかけるか、または加える必要がある。残念ながら、粉末噴射成形のような他の鋳造方法も鋳型そのものが非常に高圧力下にさらされなければならないという同様の高圧需要があり、加えて、工具コストが高く、設定のリードタイムが長い。したがって、エネルギー需要と工具コストを著しく低減して金属/セラミック物品の製造を可能とする新規よりグリーンな供給原料および鋳型鋳造技術を開発することが望まれている。
【0007】
背景として、米国特許出願公開第2014/0087210 A1号(以下、’210号公報)は少なくとも2つの別個の粉末状前駆体から、切削工具または成形工具などの金属またはセラミック部品を作製する手法を開示している。’210号公報では、前記方法は、極めて硬質のコア粒子をカプセル化することによって作製された強靭被覆硬質粉末(TCHP)の複合材料粒子と非常に強靭な結合剤と構造材料のような複数種被覆粒子と炭化物、典型的にはWC-Coなどの少なくとも1つの支持粉末とからなる第1の混合物を形成することを含む。’210号公報によれば、この混合物は、緑色体に成形され、焼結されて、傾斜機能または多成分物品を形成する。国際公開第2018/009593 A1号(以下、’593号公報)は、金属物体を作製する複数の手法を公開している。これらの方法は’593号公報によれば、一般に、金属粉末スラリーを犠牲鋳型、例えば、3Dプリントによって作製された鋳型に添加し、スラリー/鋳型混合物を加熱することを含む。’593号公報では、加熱工程は、スラリーを硬化させて、鋳型内に緑色部品(グリーンパート; green part)を作製する工程、鋳型および結合剤を焼失させて、褐色部品(ブラウンパート;brown part)を作製する脱結合工程、焼結工程、および熱間等方圧加圧法工程を含んでよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0087210(A1)号明細書
【特許文献2】国際公開第2018/009593(A1)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の理由および明細書を読んで理解することにより当業者に明らかとなる他の理由によって、その体積の1つ以上の方向において異なる材料の変化を有するFGM物品を製造するために使用するための改良された供給原料が当業者に必要である。ここで、上記の体積の1つ以上の方向においては、漸進的な変化は、個別の明確に規定されて互換性をもつ性質も備える2つの層の間の直線的または連続的な特性の変化および/または離散的な変化として実現されてよい。さらに、添加剤製造技術、低圧および室温下で金属/セラミックの物品を鋳造するために使用するための改良された供給原料、鋳型鋳造技術、およびそれらのシステムも必要とされている。従来技術では、同様の原料およびそれら原料の製造技術が存在するかもしれないが、多くの実用的な目的のために、依然としてかなりの改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、本発明のいくつかの態様の基本的な理解を提供するために、本発明の簡略化した概要を提示する。この概要は、本発明の広範な概要を示すものではない。その唯一の目的は、後で提示するより詳細な説明への前置きとして、本発明のいくつかの概念を簡略化した形式で提示することである。
【0011】
したがって、本発明は、傾斜機能物品を押出ベースの三次元(3D)プリントするためのスラリー供給原料を提供する。
【0012】
本発明のスラリー供給原料は、金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含み、多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせであり、10体積%~90体積%の量である構築材料と、セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択され、150g/L~550g/Lの濃度である有機ポリマー結合剤と、可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤と、揮発性有機溶媒とを備え、前記構築材料と前記添加剤を混合して第1のプレミックスを、前記有機ポリマー結合剤を前記揮発性有機溶媒に溶解して第2のプレミックスを、それぞれ形成し、それらを混合して前記傾斜機能物品の先行部品としてプリントされる実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成し、前記有機ポリマー結合剤は、熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方により前記先行部品から脱結合され、その後に行われる焼結処理により、1つ以上の方向に前記傾斜機能物品の最終部品の体積にわたって組成、充填パターンを含む構成、またはそれらの任意の組み合わせが選択的に徐々に変化する前記構築材料を含む前記最終部品が作製される、ことによって特徴付けられてよい。
【0013】
好ましくは、この金属は、鉄金属、非鉄金属、鉄金属合金、および非鉄金属合金を含む群から選択される。
【0014】
好ましくは、このセラミックは、粘土、コーディエライトセラミック、ステアタイト、ストーンウェア、土器、磁器、カオリン、石英、ケイ酸塩、カモット、ベントナイト、ムライトを含むケイ酸塩セラミック;アルミナ、イットリア(Y)中で安定化されたジルコニアを含むジルコニア、酸化ベリリウム、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化ウラン(UO)、二酸化プルトニウム(PuO)、酸化イットリウムバリウム銅、スピネル、マグネトプランバイト、ペロブスカイト、チアライトを含む酸化物セラミック;炭化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化ケイ素を含む炭化物セラミック、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、SiAIONを含む窒化物セラミックを含む非酸化物セラミック;ヒドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、非晶質リン酸カルシウム(ACP)、リン酸八カルシウム(OCP)、無水リン酸二カルシウム(DCPA)、リン酸二カルシウム二水和物(DCPD)、一酸化リン酸四カルシウム(TetCp)、二相リン酸カルシウム(BCP)を含むリン酸カルシウムセラミックを含むバイオセラミック、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。
【0015】
好ましくは、この構築材料は、300μm以下の粒子メッシュサイズを含む。
【0016】
好ましくは、このセルロースエステルは、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、セルローストリブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースプロピオネート、セルローストリプロピオネート、セルロースニトレート、セルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートブチレートスクシネート、セルロースプロピオネートブチレート、およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0017】
好ましくは、このセルロースエーテルは、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース、疎水変性エチルヒドロキシエチルセルロース、疎水変性ヒドロキシエチルセルロース、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロース、およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0018】
好ましくは、この有機ポリマー結合剤の数平均分子量は、150,000以下である。
【0019】
好ましくは、この揮発性有機溶媒は、アセトン、ブタノン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノンを含むケトン;脂肪族炭化水素;芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールおよびブタノールを含むアルコール;ギ酸メチル;エチレンカーボネート;プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、γ-ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオザン、ニトロメタン、アセトニトリル、メチルシクロヘキサン、n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0020】
好ましくは、この実質的に均一で流動性のスラリー混合物は、各々がそれぞれの第1のプレミックスとそれぞれの第2のプレミックスとを含む2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を含む。
【0021】
好ましくは、この2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を、イン・サイチュで静的または動的ミキサにより瞬間的に混合されることにより、1種の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する。
【0022】
好ましくは、この第2のプレミックスは、10体積%~90体積%の量である。
【0023】
好ましくは、このスラリー供給原料は、傾斜機能物品の張り出し部または片持ち部のための支持構造をプリントするように構成された、実質的に均一で流動性の支持混合物を形成する支持材料をさらに備える。
【0024】
好ましくは、この支持材料は、セラミック、犠牲材料、散逸材料、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0025】
好ましくは、この犠牲材料は、熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方において先行部品から脱結合される。
【0026】
好ましくは、この散逸材料は、熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方において先行部品から脱結合される。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、傾斜機能物品を押出ベースの三次元(3D)プリントするためのスラリー供給原料を準備(調製)する方法が提供される。
【0028】
本発明の準備方法は、金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含む構築材料を準備する工程であって、多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせである構築材料を供給する工程と、構築材料を10体積%~90体積%の量で供給する工程と、を含む構築材料を準備する工程と、セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択される有機ポリマー結合剤を準備する工程であって、有機ポリマー結合剤を150g/L~550g/Lの濃度で提供する工程を含む有機ポリマー結合剤を準備する工程と、可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤を準備する工程と、揮発性有機溶媒を準備する工程と、構築材料と添加剤を混合して第1のプレミックスを形成する工程と、有機ポリマー結合剤と揮発性有機溶媒を混合して第2のプレミックスを形成する工程と、第1のプレミックスと第2のプレミックスを混合して傾斜機能物品の先行部品としてプリントされる実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する工程と、を備え、有機ポリマー結合剤は、熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方により先行部品から脱結合され、その後に行われる焼結処理により、1つ以上の方向に傾斜機能物品の最終部品の体積にわたって組成、充填パターンを含む構成、またはそれらの任意の組み合わせが選択的に徐々に変化する構築材料を含む最終部品が作製される、ことによって特徴付けられてよい。
【0029】
好ましくは、この方法は、各々がそれぞれの第1のプレミックスとそれぞれの第2のプレミックスとを含む2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する工程を含む。
【0030】
好ましくは、この方法は、2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を、イン・サイチュで静的または動的ミキサにより瞬間的に混合して、1種の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する工程を含む。
【0031】
好ましくは、この方法は、傾斜機能物品の張り出し部または片持ち部のための支持構造をプリントするように構成された、実質的に均一で流動性の支持混合物を形成する支持材料を準備する工程を含む。
【0032】
本発明の第3の態様によれば、傾斜機能物品を押出ベースの三次元(3D)プリントする方法が提供される。
【0033】
本発明のプリント方法は、スラリー供給原料を供給する工程であって、金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含む構築材料を準備する工程であって、多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせである構築材料を供給する工程と、構築材料を10体積%~90体積%の量で供給する工程と、を含む構築材料を準備する工程と、セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択される有機ポリマー結合剤を準備する工程であって、有機ポリマー結合剤を150g/L~550g/Lの濃度で提供する工程を含む有機ポリマー結合剤を準備する工程と、可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤を準備する工程と、揮発性有機溶媒を準備する工程と、を含むスラリー供給原料を供給する工程と、構築材料と添加剤を混合して第1のプレミックスを形成する工程と、有機ポリマー結合剤と揮発性有機溶媒を混合して第2のプレミックスを形成する工程と、第1のプレミックスと第2のプレミックスを混合して傾斜機能物品の先行部品としてプリントされる実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する工程と、熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方により、先行部品から有機ポリマー結合剤を脱結合する工程と、有機ポリマー結合剤が脱結合した先行部品を焼結処理に供して、1つ以上の方向に傾斜機能物品の最終部品の体積にわたって変化する組成、充填パターンを含む構成、またはそれらの任意の組み合わせが選択的に徐々に変化する構築材料を含む最終部品が作製される工程と、を備える、ことによって特徴付けられてよい。
【0034】
好ましくは、この方法は、各々がそれぞれの第1のプレミックスとそれぞれの第2のプレミックスとを含む2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する工程を含む。
【0035】
好ましくは、この方法は、2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を、イン・サイチュで静的または動的ミキサにより瞬間的に混合して、1種の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する工程を含む。
【0036】
好ましくは、この方法は、傾斜機能物品の張り出し部または片持ち部のための支持構造を提供する工程を含む。支持構造は、支持材料によって形成された実質的に均一で流動性の支持混合物を備える。
【0037】
本発明の第4の態様によれば、傾斜機能物品を押出ベースの三次元(3D)プリントするシステムが提供される。
【0038】
本発明のシステムは、スラリー供給原料を収容する1つ以上の容器を備え、スラリー供給原料は、金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含み、多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせであって、10体積%~90体積%の量である構築材料と、セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択され、濃度が150g/L~550g/Lである有機ポリマー結合剤と、可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤と、揮発性有機溶媒と、を備え、構築材料と添加剤を混合して第1のプレミックスを、有機ポリマー結合剤を揮発性有機溶媒に溶解して第2のプレミックスを、それぞれ形成し、それらを混合して、実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成し、システムは、1つ以上の容器に収容されたスラリー供給原料の噴射を調整し、電磁弁、機械式ポンプ、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される噴射調整手段と、噴射調整手段に対する制御信号を生成するように構成される制御部をそなえる計算部であって、制御部が、傾斜機能物品の最終部品に対して制御信号が作用的に影響を及ぼすために使用される材料およびレオロジープロファイルの所定のセットを備えるデータベースに接続されている、計算部と、1つ以上の容器に収容されたスラリー供給原料または噴射調整手段に対し流体圧力を提供し、接続された1つ以上の容器に収容されたスラリー供給原料の動きをもたらして、加圧スラリー供給原料を提供するように構成され、空気圧駆動装置、液圧駆動装置、機械的移動装置、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される流体駆動装置と、計算部によって動作可能に駆動され、実質的に均一で流動性のスラリー混合物を噴射して傾斜機能物品の先行部品を作製するように構成されるプリントヘッドと、をさらに備え、有機ポリマー結合剤は、熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方により先行部品から脱結合され、その後に行われる焼結処理により、1つ以上の方向に最終部品の体積にわたって組成、充填パターンを含む構成、またはそれらの任意の組み合わせが選択的に徐々に変化する構築材料を含む最終部品が作製される、ことによって特徴付けられてよい。
【0039】
好ましくは、このシステムは、2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を、イン・サイチュで瞬間的に混合させることにより、プリントヘッドに移動させる前に、1種の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する静的または動的ミキサを備える。
【0040】
好ましくは、このシステムは、2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を、イン・サイチュで瞬間的に混合させることにより、プリントヘッドに移動させる前に、1種の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する静的または動的ミキサを備える。
【0041】
好ましくは、1つ以上の容器は、傾斜機能物品の張り出し部または片持ち部のための支持構造を前記プリントヘッドまたは他のプリントヘッドを通じてプリントする、実質的に均一で流動性の支持混合物を形成する支持材料を収容する。
【0042】
本発明の第5の態様によれば、低圧および室温下で物品を鋳造するためのスラリー供給原料が提供される。
【0043】
本発明のスラリー供給原料は、金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含み、多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせであって、10体積%~90体積%の量である構築材料と、セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択され、濃度が50g/L~550g/Lである有機ポリマー結合剤と、可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤と、揮発性有機溶媒と、を備え、構築材料と添加剤を混合して第1のプレミックスを、有機ポリマー結合剤を揮発性有機溶媒に溶解して第2のプレミックスを、それぞれ形成し、それらを混合して、物品の先行部品を転相により作製するための凝固槽の中で実質的に浸漬された鋳型のキャビティでの鋳造に供される、実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成し、有機ポリマー結合剤は、熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方により先行部品から脱結合され、その後に行われる焼結処理により、物品の最終部品が作製される、ことによって特徴付けられてよい。
【0044】
本発明の第6の態様によれば、低圧および室温下で物品を鋳造するためのスラリー供給原料を準備する方法が提供される。
【0045】
本発明の前記方法は、金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含む構築材料を準備する工程であって、多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせである構築材料を供給する工程と、構築材料を10体積%~90体積%の量で供給する工程と、を含む構築材料を準備する工程と、セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択される有機ポリマー結合剤を準備する工程であって、有機ポリマー結合剤を50g/L~550g/Lの濃度で提供する工程を含む有機ポリマー結合剤を準備する工程と、可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤を準備する工程と、揮発性有機溶媒を準備する工程と、構築材料と添加剤を混合して第1のプレミックスを形成する工程と、有機ポリマー結合剤と揮発性有機溶媒を混合して第2のプレミックスを形成する工程と、第1のプレミックスと第2のプレミックスを混合して、物品の先行部品を転相により作製するための凝固槽の中で実質的に浸漬された鋳型のキャビティでの鋳造に供される、実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する工程と、を備え、有機ポリマー結合剤は、熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方により先行部品から脱結合され、その後に行われる焼結処理により、物品の最終部品が作製される、ことによって特徴付けられてよい。
【0046】
本発明の第7の態様によれば、低圧および室温下で物品を鋳造する方法が提供される。
【0047】
本発明の前記方法は、スラリー供給原料を供給する工程であって、構築材料を準備する工程であって、多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせである構築材料を供給する工程と、構築材料を10体積%~90体積%の量で供給する工程と、を含む構築材料を準備する工程と、セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択される有機ポリマー結合剤を準備する工程であって、有機ポリマー結合剤を50g/L~550g/Lの濃度で提供する工程を含む有機ポリマー結合剤を準備する工程と、可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤を準備する工程と、揮発性有機溶媒を準備する工程と、を含むスラリー供給原料を供給する工程と、混合された構築材料と添加剤を混合して第1のプレミックスを形成する工程と、溶解された有機ポリマー結合剤と揮発性有機溶媒を混合して第2のプレミックスを形成する工程と、第1のプレミックスと第2のプレミックスを混合して、実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する工程と、実質的に均一で流動性のスラリー混合物を鋳型の中での鋳造に供する工程と、実質的に均一で流動性のスラリー混合物で満たしたキャビティをもつ前記鋳型を凝固槽の中に実質的に浸漬させて、転相により物品の先行部品を作製する工程と、有機ポリマー結合剤を熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方により先行部品から脱結合する工程と、有機ポリマー結合剤を脱結合した先行部品を焼結処理に供して、物品の最終部品を作製する工程と、を備える、ことによって特徴付けられてよい。
【0048】
本発明の第8の態様によれば、低圧および室温下で物品を鋳造するシステムが提供される。
【0049】
本発明の前記システムは、スラリー供給原料を収容する1つ以上の容器を備え、スラリー供給原料は、金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含み、多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせであって、10体積%~90体積%の量である構築材料と、セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択され、濃度が50g/L~550g/Lである有機ポリマー結合剤と、可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤と、揮発性有機溶媒と、を備え、構築材料と添加剤を混合して第1のプレミックスを、有機ポリマー結合剤を揮発性有機溶媒に溶解して第2のプレミックスを、それぞれ形成し、それらを混合して、実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成し、システムは、1以上の容器に収容された実質的に均一で流動性のスラリー混合物を鋳造するように構成された鋳型と、転相により物品の先行部品を作製するために、実質的に均一で流動性のスラリー混合物で満たしたキャビティをもつ鋳型をその中に実質的に浸漬させるように構成された凝固槽と、先行部品から有機ポリマー結合剤を脱結合する脱結合手段と、を備え、脱結合手段は、物品の最終部品を作製するための焼結処理がその後に行われる、熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方を備える、ことによって特徴付けられてよい。
【0050】
本発明の上記および他の目的、特徴、態様、および利点は添付図面を適切に参照して以下に提供される詳細な記述を注意深く読むことにより、より良く理解されるのであろう。
【0051】
添付の図面を参照して、以下の詳細な記載を検討することにより、本発明がより完全に理解され、その多くの付随する効果が容易に理解されるのであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明の一実施形態による二元材料プリントのための構成を示す。
図2】二元材料プリントのための構成を示す図であり、材料Aは、本発明の一実施形態による第1の実質的に均一で流動性のスラリー混合物(例えば、構築材料としての金属)を示し、材料Bは、本発明の一実施形態による第2の実質的に均一で流動性のスラリー混合物(例えば、構築材料としてのセラミック)を指す。
図3A】本発明の一実施形態による押出ベースの三次元(3D)プリントを通してスラリー供給原料を使用して製造された傾斜機能物品の側面図および上面図であり、材料Aは、本発明の一実施形態による第1の実質的に均一で流動性のスラリー混合物(例えば、構築材料としての金属)を示し、材料Bは、本発明の一実施形態による第2の実質的に均一で流動性のスラリー混合物(例えば、構築材料としてのセラミック)を指す。
図3B】本発明の一実施形態による押出ベースの三次元(3D)プリントを通してスラリー供給原料を使用して製造された傾斜機能物品の側面図および上面図であり、材料Aは、本発明の一実施形態による第1の実質的に均一で流動性のスラリー混合物(例えば、構築材料としての金属)を示し、材料Bは、本発明の一実施形態による第2の実質的に均一で流動性のスラリー混合物(例えば、構築材料としてのセラミック)を指す。
図4】本発明の一実施形態による押出ベースの3Dプリントによるスラリー供給原料を用いて製造された多孔質の傾斜機能物品の多孔度勾配を示す図である。
図5A】押出ベースの3Dプリントを通してスラリー供給原料を使用して製造された傾斜機能物品の斜視図であり、材料Aは、本発明の一実施形態による第1の実質的に均一で流動性のスラリー混合物(例えば、構築材料としての金属)を示し、材料Bは、本発明の一実施形態による第2の実質的に均一で流動性のスラリー混合物(例えば、構築材料としてのセラミック)を指す。
図5B図5Aの傾斜機能物品の線A-Aに沿った断面図であり、材料Aは、本発明の一実施形態による第1の実質的に均一で流動性のスラリー混合物(例えば、構築材料としての金属)を示し、材料Bは、本発明の一実施形態による第2の実質的に均一で流動性のスラリー混合物(例えば、構築材料としてのセラミック)を指す。
図6A】本発明の一実施形態のスラリー供給原料を押出ベースの3Dプリントにより製造された傾斜機能物品である同心状を有する緑色部品の断面を示す写真を示す図である。
図6B】本発明の一実施形態のスラリー供給原料を押出ベースの3Dプリントにより製造された傾斜機能物品である同心状を有する緑色部品の断面を示す写真を示す図である。
図6C】本発明の一実施形態の図6Aおよび6Bの緑色部品の第1の層のx-y平面における勾配遷移を示す図である。
図6D】本発明の一実施形態の図6Aおよび6Bの緑色部品の第2の層のx-y平面における勾配遷移を示す図である。
図7】本発明の一実施形態の傾斜機能物品を押出ベースの3Dプリントするためのスラリー供給原料を準備する手法を示すフローチャートである。
図8】本発明の一実施形態による、傾斜機能物品を押出ベースの3Dプリントする手法を示すフローチャートである。
図9A】本発明の一実施形態の傾斜機能物品を押出ベースの3Dプリントするためのシステム設定を示す図である。
図9B】本発明の一実施形態の傾斜機能物品を押出ベースの3Dプリントするためのメカニズムを示す図である。
図10】本発明の一実施形態のスラリー供給原料を使用して傾斜機能物品を押出ベースの3Dプリントするために採用された第1のシステム、第2のシステム、および第3のシステムを示す図である。
図11】本発明の一実施形態のスラリー供給原料を使用して傾斜機能物品を押出ベースの3Dプリントするために採用された第1のシステム、第2のシステム、および第3のシステムを示す図である。
図12】本発明の一実施形態のスラリー供給原料を使用して傾斜機能物品を押出ベースの3Dプリントするために採用された第1のシステム、第2のシステム、および第3のシステムを示す図である。
図13】本発明の一実施形態のスラリー供給原料を使用して傾斜機能物品を押出ベースの3Dプリントするために採用された第1のシステム、第2のシステム、および第3のシステムを示す図である。
図14】本発明の一実施形態の傾斜機能物品に使用するための充填パターンおよびその密度を示す図である。
図15】本発明の一実施形態の傾斜機能物品の張り出し部または片持ち部のためのプラットホーム上にプリントされた支持構成を示す図である。
図16】単一のプリントヘッドまたはノズルを使用して、前記傾斜機能物品の張り出し部または片持ち部のための支持構造をプリントするための第1の構成を示す図であり、材料Aは、本発明の一実施形態による第1の実質的に均一で流動性のスラリー混合物(例えば、構築材料としての金属)を示し、材料Bは、本発明の一実施形態による第2の実質的に均一で流動性のスラリー混合物(例えば、構築材料としてのセラミック)を示し、材料Cは実質的に均一で流動性の支持混合物を指し、材料A、BおよびCは、本発明の一実施形態にしたがって、単一の静的または活性混合物中で混合される。
図17】2つのプリントヘッドまたはノズルを使用して、前記傾斜機能物品の張り出し部または片持ち部のための支持構造をプリントするための第2の構成を示す図であり、材料Aは、本発明の一実施形態による第1の実質的に均一で流動性のスラリー混合物(例えば、構築材料としての金属)を示し、材料Bは、本発明の一実施形態による第2の実質的に均一で流動性のスラリー混合物(例えば、構築材料としてのセラミック)を示し、材料Cは実質的に均一で流動性の支持混合物を指し、材料AおよびBは、本発明の一実施形態にしたがって、単一の静的または活性混合物中で混合され、材料Cは他のプリントヘッドに導かれることを示す。
図18】本発明の一実施形態による、その張り出し部または片持ち部のための支持構造を必要とし、かつ、スラリー供給原料を用いて傾斜機能物品を押出ベースの3Dプリントするために採用されたシステムを示す図である。
図19】本発明の一実施形態による、内部に凹んだ、または形成されたキャビティを有する第1の部品と、前記第1の部品を取り外し可能に包み込む第2の部品とを備える再使用可能な鋳型を示す図であり、キャビティは、本発明の一実施形態による単一の実質的に均一で流動性の混合物を収容する。
図20】本発明の一実施形態による2つの実質的に均一で流動性の混合物を収容するように適合された、図1の鋳型のキャビティを示す図である。
図21】本発明の一実施形態による2つの実質的に均一で流動性の混合物を静的または動的ミキサを使用して受け入れるように適合された、図1の鋳型のキャビティを示す図である。
図22】本発明の一実施形態における、室温で低圧下で物品を鋳造するためのスラリー供給原料を準備する手法を示すフローチャートである。
図23】本発明の一実施形態における、室温で低圧下で物品を鋳造する手法を示すフローチャートである。
図24】現在の一実施形態による、(図5で説明した)室温で低圧下で物品を鋳造する手法を示すブロック図である。
図25】本発明の一実施形態によるダイレクトプリントシステムを示す図である。
図26】本発明の一実施形態によるマルチマテリアルプリンタの構成を示す図である。
図27】本発明の一実施形態によるin-situミキシングプリンタの構成を示す図である。
図28】本発明の一実施形態による3Dプリント物品を含む処理を示すフローチャートである。
図29】本発明の一実施形態による熱脱結合および焼結プロファイルを示す図である。
図30】本発明の一実施形態によるステンレス鋼ベースの供給原料プリントの側面図である。
図31】本発明の一実施形態によるステンレス鋼ベースの硬化物品の斜視図である。
図32】本発明の一実施形態によるステンレス鋼ベースの焼結物品の斜視図である。
図33】本発明の一実施形態によるセラミックベースの原料プリントの側面図である。
図34】本発明の一実施形態に係るセラミックベースの硬化物の斜視図である。
図35】本発明の一実施形態に係るセラミックベースの焼結物の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図面は、縮尺通りではない場合があることに留意されたい。図面は本発明の典型的な態様のみを示すことを意図しており、したがって、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【0054】
本発明は、傾斜機能物質(FGM)である傾斜機能材料の押出ベースの三次元(3D)プリントに使用するためのスラリー供給原料、それを準備(調製)する方法、物品を押出ベースで3Dプリントする方法、およびそのためのシステムを開示する。利点として、押出ベースの3Dプリントに供されるスラリー供給原料によって、本発明は、(3軸の)3次元様式のものを含む、1つ以上の方向に最終部品の体積にわたって徐々に変化する組成、充填パターンを含む構成、またはそれらの任意の組み合わせが選択的に変化する材料含むFGM物品を製造する。本発明によって製造されたこのようなFGM物品は驚くべきことに、1つ以上の方向において、個別の明確に規定されて互換性をもつ性質も備える2つの層の間の直線的または連続的な特性、例えば、組成、充填パターンを含む構成、またはそれらの任意の組み合わせの変化および/または離散的な漸進的な変化を示す。さらに、本発明は複雑で洗練された処理、成分、または部品(例えば、供給原料ヒータなど)を使用することなく、非常に具体的かつ小型で、費用効率が高く、迅速かつ簡単な方法で使用および維持することができる。
【0055】
本質的に、本発明の傾斜機能物品、またはFGM物品として知られている物品はその多相特性(すなわち、微細構造、および、引張強度、熱伝導率、ヤング率などの機械的特性)が次第に変化することを特徴とする不均一な物品に関する。従来、FGM製造技術は、薄型およびバルクFGMにしたがって分類することができる。前者の場合、薄型FGMは、典型的には表面コーティングまたは蒸着技術によって形成される。後者では、バルクFGMの製造技術が粉末冶金、遠心法、および積層造形を含む。積層造形では、バルクFGMがバット光重合プロセス、レーザベースのプロセス、例えば、選択的レーザ焼結(SLS)および選択的レーザ溶融(SLM)、または溶融堆積モデリング法(FDM)によって形成することができる。これらの従来の方法は、通常プリント方向またはz軸上にある単一の寸法空間内の物質特性のみを変化させることができる。対照的に、FDMおよびバット光重合は、全てではないが、ほとんどが熱可塑性またはプラスチック複合プリントのみに使用される。これらの従来の方法は3次元(3D)空間(ここで、デカルト座標系は3つの相互に垂直な座標軸、すなわち、x軸、y軸、およびz軸に基づく)の平面にわたる組成、構造、充填パターン、および/または特性の変化、または少なくとも1つの種類の構築材料、例えば、金属またはセラミックの変化を有するFGM物品をプリントすることができない。
【0056】
本明細書で使用される用語「スラリー」は、固体-液体混合物および固体-気体混合物の両方を含む、固体-流体混合物を指す。便宜上、固体-液体スラリーに関して、本発明は、固体および液体が別々の相に存在する供給原料組成物として論じる。固体-液体スラリーは、本発明のシステムに投入され、完全にまたは部分的に分離された固体および液体も含む。
【0057】
「供給原料」という語は、本明細書で使用される場合、傾斜機能物品またはFGM物品を作製することができる本システムに供給されるのに適した特性を有する原材料または原材料の混合物として定義され、また、そのシステムに注入するのに適した混合物を生成するためにまだ混合されていない、または、さらに混合されている成分であると解釈されるものとする。
【0058】
本明細書で使用するとき、「プレミックス」という語は、共に混合され、スラリー混合物を構成する混合物の1つの部分を形成する成分を指す。
【0059】
本明細書で使用される用語「充填パターン」または「構造充填材」は、傾斜機能物品の内部および/または外部内に空隙空間を残すパターンを指す。パターンは、見えないものであるのが好ましい。前記パターンは、線、ジグザグ構造、格子構造、三角形構造、かご目構造、ハニカム構造、3Dハニカム構造、立方体構造、立方体細分構造、オクテット構造、ジャイロイド構造、星形構造、オクタグラム螺旋構造、アルキメデス弦構造、ヒルベルトカーブ構造、直線構造、同心構造、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定されない。充填パターンは、適応充填プリント処理を使用して形成されることが好ましい。
【0060】
本明細書で使用される「3次元プリント」または「3Dプリント」という語はプリントノズルを通した押出によるプリント(すなわち、押出ベースの3Dプリント)、または平らな面、プレートまたは基材上に3つの方向(例えば、長さ、幅および高さ)に延在する3次元部分または物体を提供する工程を指す。
【0061】
本明細書で使用される「先行部品」または「緑色部品」という用語は、他の製造技術でさらに加工されるために本発明によって製造される焼結される前の状態にある傾斜機能物品の物品または予備成形物を指す。
【0062】
本明細書で使用される「褐色部品」という用語は、供給原料を以前に共に保持していた結合剤、犠牲材料および/または散逸材料を除去するために熱分解処理および/または溶媒脱結合処理に供された先行部品または緑色部品から製造された傾斜機能物品を指す。褐色部品は、傾斜機能物品の最終または完成した部品を製造するために、さらに加熱されて部品が完全に焼結されるか、または焼結に供されてもよい。
【0063】
本明細書で使用される「変動した」または「変動」という用語は広義の用語であり、その通常の意味で使用され、点、線、またはデータの組からの変動の発散または大きさを含むが、これらに限定されない。一実施形態において、傾斜機能材料の最終部品における構築材料の組成および/または構造は、例えば、既知のまたは標準的なの3Dプリント材料に基づく可能性の範囲を表す基準またはデータセットの外の範囲を含む変動を有することができる。この用語は、正の変動、負の変動、および中性の変動を包含し得る。正の変動は、前記基準またはデータセットを超える正の偏差を示してよい。負の変動は、前記基準またはデータセットを達成することができない負の偏差を示してよい。中性の変動は、基準またはデータセットに関する構築材料の組成および/または構造のゼロバリエーション、例えば、遷移勾配のないことを示してよい。
【0064】
本発明の好ましい一実施形態によれば、スラリー供給原料は、構築材料、有機ポリマー結合剤、添加剤(任意であり得る)、および揮発性有機溶媒を含む。この点に関して、有機ポリマー結合剤は、揮発性有機溶媒中に溶解し、したがって有機ポリマー結合剤溶液を生成する。添加剤は、所定のレオロジー挙動およびプリント特性を得るために構築材料に添加される。スラリー供給原料は本質的に、前記有機ポリマー結合剤溶液を、添加剤と混合された前記構築材料とブレンドすることによって形成することができる。得られたスラリー供給原料は、外部熱供給手段なしに室温でプリントし、乾燥させることができる。
【0065】
本発明の構築材料は、好ましくはスラリー供給原料を形成するために使用され、傾斜機能物品が本発明の押出ベースの3Dプリントのためのシステム内に構築される粉末を指す。粉末、または粒子状材料もしくは粒子と呼ばれる粉末は、様々なメッシュサイズを有する。一実施形態では、構築材料は、約300μm以下、好ましくは約200μm未満の粒径を有する。構築材料は、本発明の押出ベースの3Dプリントのためのシステムに使用するための層形成材料であることが好ましい。構築材料はまた、粒状粉末、繊維状粉末、および鱗片状粉末などの様々な形状であってよい。好ましい実施形態では、構築材料が約10体積%~約90体積%、より好ましくは約30体積%~約90体積%の量で使用される。
【0066】
構築材料は、金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含むことが好ましい。本発明の一実施形態では、構築材料が多孔質、非多孔質、またはこれらの任意の組み合わせであってよい。例えば、多孔質金属は有意な多孔度、例えば、約0.5cc/gを超える多孔度を有する金属粒子を意味する。構築材料は、100μm未満(ミクロ多孔質)および/または100μm超(メソ多孔質)の細孔を有してよい。一方、非多孔質金属はほとんどまたは全く多孔性を有さない、例えば、約0.05cc/g未満の多孔度を有する金属粒子を意味する。多孔質セラミックは、好ましくは制御可能な多孔度および良好な機械的特性を有する多孔性を有する。用語「多孔度」は、本明細書で使用される場合、多孔質物品、例えばその多孔質構築材料中の空隙空間の体積分率を指す。
【0067】
本発明において使用される多孔質金属および/または多孔質セラミックは、好ましくはミクロ多孔質であり、例えば、好適な発泡剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料などを用いた直接発泡によって生成することができる。多孔度は、塩の結晶化のサイズによって制御することもできる。
【0068】
本発明の好ましい一実施形態では、構築材料が金属(多孔質および/または非多孔質)またはセラミック(多孔質および/または非多孔質)のみを含んでよい。また、構築材料はその傾斜機能物品に対する構築材料の所望の特性を適切に満たすように、所定の混合比率または体積割合で、金属とセラミックとの組み合わせを含んでよい。その組み合わせの例として、金属およびセラミック;多孔質金属およびセラミック;金属および多孔質セラミック;多孔質金属、非多孔質金属およびセラミック;金属、多孔質セラミックおよび非多孔質セラミック;多孔質金属、非多孔質金属、多孔質セラミックおよび非多孔質セラミックなどが挙げられる。様々な他の組み合わせ(例えば、第1の金属、第2の金属、第1のセラミック、第2のセラミックなど)が考えられる。
【0069】
本発明において使用される金属は、鉄金属、非鉄金属、鉄金属合金、および非鉄金属合金を含む群から選択されることが好ましい。
【0070】
鉄金属は、鋼材、ステンレス鋼材、軟鋼材、鋳鉄、可鍛性鉄、延性鋳鉄などから選択される。鉄金属は、好ましくは鉄、鉄クロム合金、鉄クロムニッケル合金、鉄クロム亜鉛合金、鉄クロムアルミニウム合金、鉄クロムマグネシウム合金、鉄クロム鉛合金、鉄アルミニウム合金、鉄亜鉛合金、ステンレス鋼、鉄ニッケル合金、および、それらの組み合わせを含む。鋼材および/またはステンレス鋼材の好ましい例としては、AISI 304、AISI 304L、AISI 316、AISI 316L、AISI 430、AISI 630(17-4PH)、および、AISI 631(17-7PH)が挙げられる。A2~A5、D2、H13、M2、および4140のような他の鋼材も、本発明では使用することができる。
【0071】
非鉄金属は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、亜鉛、亜鉛合金、カドミウム、クロム(III)、銅、銅(II)カドミウム、鉛、コバルト、コバルトクロム、コバルトクロムモリブデン、ニッケル、ニッケル合金、モリブデン、チタン、タンタル、ニオブ、銀、および、金から選択される。アルミニウムおよび/またはアルミニウム合金の好ましい例としては、AlSi10Mg、AlSi7Mg、ADC12およびAlMg5Mnが挙げられる。ニッケル合金の好ましい例としては、合金706、合金718、合金625、合金725や、例えばFeNi36または64FeNiなどのインバー型、または、ハステロイX、ハステロイCおよびコバールが挙げられる。
【0072】
本発明で使用されるセラミックは、好ましくはケイ酸塩セラミック、酸化物セラミック、非酸化物セラミック、バイオセラミック、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。
【0073】
ケイ酸塩セラミックは、好ましくは粘土、コーディエライトセラミック、ステアタイト、ストーンウェア、土器、磁器、カオリン、石英、ケイ酸塩、カモット、ベントナイト、ムライト、およびそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0074】
酸化物セラミックは、好ましくはアルミナ、酸化イットリア(Y)中で安定化されたジルコニアを含むジルコニア、酸化ベリリウム、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化ウラン(UO)、二酸化プルトニウム(PuO)、酸化イットリウムバリウム銅、スピネル、マグネトプランバイト、ペロブスカイト、チアライト、およびそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0075】
非酸化物セラミックは、好ましくは炭化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化ケイ素などの炭化物セラミック、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどの窒化セラミック、酸化窒化アルミニウム、SiAION(ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)および窒素(N)の要素に基づくセラミック)を含む窒化物セラミック、およびそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0076】
バイオセラミックは、好ましくはリン酸カルシウムセラミックであって、例えば、ヒドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、非晶質リン酸カルシウム(ACP)、リン酸八カルシウム(OCP)、無水リン酸二カルシウム(DCPA)、リン酸二カルシウム二水和物(DCPD)、一酸化リン酸四カルシウム(TetCp)、二相リン酸カルシウム(BCP)、およびそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0077】
本発明の構築材料は、ひび割れ、垂れ下がり、または層間剥離を起こさない他の焼結可能な材料、例えばガラス粉末、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含んでよい。
【0078】
本発明において使用される有機ポリマー結合剤は、少なくとも2つの熱分解温度を有することが好ましい。熱分解では、還元剤として作用することができる分解生成物(すなわち、傾斜機能物品)が有機ポリマー結合剤を含有するものをこれらの温度で加熱すると形成される。前記有機ポリマー結合剤は、粉末、すなわち金属および/またはセラミックの粒子間の反応を阻害しないように選択されることが好ましい。前記の有機ポリマー結合剤は、それに対応する熱分解温度未満の温度で分解または蒸発することが好ましい。
【0079】
前記の有機ポリマー結合剤は、好ましくはセルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択される。前記有機ポリマー結合剤は、約150g/L~約550g/L、より好ましくは約200g/L~約500g/Lの濃度で使用されることが好ましい。本発明の様々な実施形態において、有機ポリマー結合剤の数平均分子量は、約150,000以下、より好ましくは約100,000以下である。
【0080】
セルロースエステルは、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、セルローストリブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースプロピオネート、セルローストリプロピオネート、セルロースニトレート、セルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートブチレートスクシネート、セルロースプロピオネートブチレート、およびそれらの混合物を含む群から選択されることが好ましい。
【0081】
セルロースエステル誘導体は、セルロースのエステル化によって調製することができる。好ましいセルロースエステル誘導体としては、セルロースのアセテート、ブチレート、ベンゾエート、フタレートおよびアントラニル酸エステル、好ましくはセルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、スクシノイルセルロース、セルロースフオロエート、セルロースカルバニレート、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0082】
セルロースエーテルは、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース、疎水変性エチルヒドロキシエチルセルロース、疎水変性ヒドロキシエチルセルロース、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロース、および、それらの混合物を含む群から選択されることが好ましい。
【0083】
セルロースエーテル誘導体は、カルボキシメチル化、カルボキシエチル化およびカルボキシプロピル化によって調製することができる。好ましいセルロースエーテル誘導体の例はナノセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、トリチルセルロースなどであるが、これらに限定されない。
【0084】
いくつかの有機ポリマー結合剤では、カチオン性セルロース誘導体を使用してよい。いくつかの前記有機ポリマー結合剤はアルギン酸塩、デンプン、キチンおよびキトサンなどの多糖類、アガロース、ヒアルロン酸、ならびにそれらの誘導体またはコポリマー(例えば、グラフトコポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー)、またはそれらの混合物などを含んでよい。
【0085】
本発明で使用される添加剤は、任意の所望の特性、例えばスラリー原料中の所望の物理的な、機械的な、および熱的な特性を達成するために、構築材料およびその有機ポリマー結合剤に添加されてよい。本発明の好ましい実施形態では、添加剤が可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。添加剤は、約1体積%~約15体積%の量で使用されることが好ましい。添加剤の量は、本発明で選択される添加剤の特定の種類に応じて、前記範囲外で変化し得ることが理解される。
【0086】
可塑剤とは、スラリー供給原料に添加されて作業性、柔軟性および可塑性を向上させる物質を意味することが好ましい。好ましくは、可塑剤は、フタル酸ジブチル、フタル酸ジアリール、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ-2-メトキシエチル、フタル酸トリフェニル、(ジプロピレングリコール)ブチルエーテル、酒石酸ジブチル、モノリシノール酸ジエチレングリコールなどのフタル酸エステル、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、蜜蝋、カンデリラワックス、セラックワックス、カルナウバワックス、石油ワックス、またはそれらの混合物からなる群から選択される天然もしくは合成ワックス、グリセロール、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、エチルo-ベンゾイルベンゾエート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、N-エチルトルエンスルホンアミド、p-トルエンスルホン酸o-クレシル、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、およびこれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤を含む。
【0087】
消泡剤は、好ましくはスラリー供給原料の表面張力を低下させることによって泡を排除する物質である。消泡剤は、金属およびセラミックの表面特性を変化させ、揮発性有機溶媒の界面張力を低下させて発泡体を除去する役割を果たす。消泡剤は、好ましくはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールコポリマー、アルキルポリアクリレート、ポリジメチルシロキサン(シリコーン油)、エチレンビスステアラミド(EBS)、パラフィンワックス、エステルワックス、脂肪アルコールワックス、白色油または植物油、長鎖脂肪アルコールを有するワックス、脂肪酸石鹸、エステル、ポリエーテル変性ポリシリカンおよびトリアルカン/アルケンホスフェートならびにそれらの混合物を含む群から選択される。
【0088】
分散剤は、金属およびセラミックのスラリー減量中での相互分散を維持するために作用する成分であることが好ましい。分散剤は、好ましくはケイ酸塩化合物、ポリカーボネートナトリウム、およびアルコールからなる群から選択される化合物である。
【0089】
犠牲材料は、焼結前に緑色部品または褐色部品中に存在していれば、褐色部品を焼結して最終的な傾斜機能物品または最終部品になるまで形成された完全焼結体(すなわち、最終部品)内に、少なくとも同じ形態で、任意の有意な量で存在しない物質であることが好ましい。一実施形態では、犠牲材料は、緑色または褐色部品上に層を形成し、後に取り除かれて空隙を残す。犠牲物質は、焼結工程中に昇温されると、最初に緑色または褐色部品内に液相を形成し、その後、1つまたは複数のガス状副生成物として気化または、分解して、緑色または褐色部品を残すオルトリン酸アルミニウムを含んでよい。犠牲材料は、パラフィンワックスを含むことが好ましい。
【0090】
散逸材料は、セラミック部品分および/または金属部分を傾斜機能物品の三次元造形物内に鋳造するための鋳型として機能することができ、次いでセラミックおよび/または金属鋳造部分を損なうことなく溶解、融解および/または蒸発させることによってセラミック鋳造部分および/または金属部分から除去することができる材料であることが好ましい。本発明において使用される散逸材料は、(セラミックまた金属のコア材料に対する)熱膨張および/または散逸性を持つ様態などの所望の特性を達成するように選択されるゴムまたはプラスチック材料であってよい。
【0091】
一実施形態では犠牲材料、散逸材料、またはそれらの組み合わせは、先行部品または熱分解、溶媒脱結合、またはそれらの任意の組み合わせによってポリマー結合剤が脱結合された(すなわち、褐色部品)先行部品から除去される。熱分解は、犠牲材料および/または構築材料以外の散逸材料、すなわち金属粒子および/またはセラミック粒子の加熱、熱脱結合、緻密化/焼結、部分的または完了溶融を含む群から選択することができることが好ましい。前記溶媒脱結合は、先行部品、褐色部品および/または最終部品を、犠牲材料および/または散逸材料を溶解する溶媒に浸漬することを含んでもよい。歪みをより良好に制御して、脱結合の時間を大幅に短縮することが可能である。前記溶媒としては、n-ヘキサン、ヘプタン、シンナー、アセトン、メチルエチルケトン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、塩化メチレン、および超臨界二酸化炭素などの代替溶媒、ならびに水などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
骨格材料は、好ましくはそのスラリー原料に機械的一体性を付与するためのバットレス材料である。前記骨格材料は、キトサン、フィブリン、変性アルギン酸塩などのゲル様材料、ポリカプロラクトンおよび他のプラスチックなどの頑丈な材料、ならびにセラミックおよび他の粉末、ヒドロキシアパタイト、またはリン酸三カルシウムを含有するスラリーを含む群から選択されてもよい。骨格材料はまた、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびポリ(ラクチド-co-グリコリド)を含んでもよい。
【0093】
本発明で使用される水溶性無機塩は、好ましくは硝酸塩、ホウ酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸塩、リン酸塩、I族元素の塩、アンモニウム塩およびそれらの組み合わせを含む群から選択される。一実施形態では、水溶性無機塩が希土類金属塩化物を含む。
【0094】
発泡剤(foaming agentまたはblowing agent)は、好ましくはスラリー原料、特にその構築材料の金属および/またはセラミック中に、発泡体、好ましくは一般に気泡発泡体を形成することができる成分、または複数の成分の組み合わせを指す。発泡剤は、固体、液体、または超臨界材料であってもよい。
【0095】
本発明の好ましい実施形態では、発泡剤が室温で液状または固形であり、構築材料の融解温度より低い分解温度を有し、分解温度より高い温度に加熱されると、窒素、二酸化炭素またはアンモニアなどの気体を発生させながら分解する熱分解性剤である。発泡剤は、アゾジカルボンアミドおよび/またはその金属塩、ヒドラゾジカルボンアミド、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、アジ化カルシウム、トリヒドラジノ-sym-トリアジン、pp’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチルオジニトリル、トルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルヒドラジド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、およびそれらの組み合わせを含む群から選択されてよい。多糖類発泡剤は、好ましくはアロールート粉末、タピオカデンプン、ジャガイモデンプン、コムギ、イネ、および、トウモロコシ粉末を含む。発泡剤の量は、所望の膨張係数にしたがって決定することができる。
【0096】
本発明で用いる添加剤としてのグラフェンは、複数の炭素原子が共有結合してなる多環芳香族化合物が好ましい。共有結合した炭素原子は繰り返し単位として6員炭素環を形成し、さらに5員炭素環および/または7員炭素環を含んでいてもよい。本発明では、グラフェンが単層グラフェンに限定されず、例えば、最大10個の単層グラフェン層を有するマルチグラフェンも包含する。グラフェンは、好ましくは酸化グラフェンまたはアミド修飾グラフェンなどの修飾グラフェンに加えて、純粋または天然グラフェンを含む。
【0097】
「グラファイト酸」および「酸化グラファイト」としても知られる酸化グラフェンは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、またはエポキシ基などの酸素を含む官能基が様々な割合でグラフェン上に結合する構造を含むことができるが、これらに限定されるものではなく、グラファイトを強力な酸化剤で処理することによって得てよい。本発明の一実施形態では、酸化グラフェンが酸化グラフェンを含むナノコンポジットを含む。酸化グラフェンは、また、還元された酸化グラフェン、つまり、還元された形態の酸化グラフェンを含み、例えば、還元処理に供され部分的にまたは実質的に還元された酸化グラフェンである。還元された酸化グラフェンは、還元処理によって酸素のパーセンテージが減少した酸化グラフェンも指す。
【0098】
他の添加剤、例えば、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、および離型剤を本発明で使用することができる。
【0099】
揮発性有機溶媒は、構築材料に対して化学的に不活性であるが、好ましくは本発明のシステムによって、プリント中またはプリント後に蒸発または放出される。揮発性有機溶媒は、構築材料以外のスラリー供給原料の成分(例えば、有機高分子結合剤)を完全に溶解させるために必要であり、本システムのプリントヘッドのプリントノズルの目詰まりを防止するための湿潤剤としても機能する。また、傾斜機能物品の組成、充填パターンを含む構造、またはそれらの任意の組み合わせにおいて、構築材料(すなわち、金属およびセラミック)のばらつき(変化)を促進し、引火点が比較的高く、および、臭気が比較的少ない揮発性有機溶媒を使用することが望ましい。揮発性有機溶媒は、好ましくは約20℃で約0.133mbarまたは13.3Pa(0.1mmHg)を超える低い蒸気圧を有する溶媒である。
【0100】
揮発性有機溶媒は、約1体積%~約50体積%の量で使用されることが好ましい。本発明の一実施形態には、有機ポリマー結合剤溶液である第2のプレミックスとして得られる溶液の好ましい濃度または所望の濃度を考慮して、その有機ポリマー結合剤中に適量の揮発性有機溶媒を使用すべきである。
【0101】
揮発性有機溶媒は、好ましくはアセトン、ブタノン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノンを含むケトン、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールおよびブタノールを含むアルコール、ギ酸メチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、γ-ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオザン、ニトロメタン、アセトニトリル、メチルシクロヘキサン、n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0102】
本発明の様々な実施形態において、添加剤と混合された構築材料は、第1のプレミックスを形成し、揮発性有機溶媒(すなわち、前記有機ポリマー結合剤溶液)と共に、または、その中で溶解された前記有機ポリマー結合剤は、第2のプレミックスを形成することが好ましい。第1のプレミックスおよび第2のプレミックスは、は実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成するために混合され、次いで、前記傾斜機能物品の先行部品としてプリントされることが好ましい。第2のプレミックスは、約10体積%~約90体積%、より好ましくは約10体積%~約70体積%の量であることが好ましい。
【0103】
そのミキシングは、前記傾斜機能物品の先行部品として本システムにてプリントされる、実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成または作製することが好ましい。したがって、図3Aおよび図3B図4図5Aおよび図5Bは、本発明によって製造された傾斜機能物品に関する図示をしたものである。本発明の実質的に均一で流動性のスラリー混合物は組成物の少なくとも2つの無作為な試料がその中の成分(例えば、構築材料、有機ポリマー結合剤、添加剤、および/または揮発性有機溶媒)の大まかにまたは実質的に同じ量、濃度および分配を有するように、同じ状態で実質的に1つの形態相を有する均一に混合される組成物を指すことができる。本発明の実質的に均一で流動性のスラリー混合物はまた、重力下で流動性であり、かつ/または投入(ポンプ輸送)され得る成分(例えば、構築材料、有機ポリマー結合剤、添加剤および/または揮発性有機溶媒)を有する組成物を包含することを意味する。また、実質的に均一で流動性のスラリー混合物は、容器などの格納容器から重力、または、従来の機械式、油圧、または空気圧式のポンプ輸送手段によって輸送される組成物の性能を示す。
【0104】
1つの好ましい実施形態では、実質的に均一で流動性のスラリー混合物は、2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を含む。図2に概略的に示されるように、2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物は、静的または動的ミキサ中でin-situで瞬時に混合されて、1つの実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する。前記2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物は、それぞれ、第1のプレミックスと第2のプレミックスとを含む2種の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を含むことが好ましい。例えば、2種の実質的に均一で流動性のスラリー混合物、すなわち、第1の実質的に均一で流動性のスラリー混合物と、第2の実質的に均一で流動性のスラリー混合物とがある。第1の実質的に均一で流動性のスラリー混合物は、好ましくは添加剤である分散剤と混合された構築材料である金属を含む第1のプレミックスと、揮発性有機溶媒であるアセトン中に溶解された前記有機ポリマー結合剤であるセルロースエステルを含む第2のプレミックスとを含む。第2の実質的に均一で流動性のスラリー混合物は、好ましくは添加剤である発泡剤と混合された構築材料であるセラミックを含む第1のプレミックスと、揮発性有機溶媒であるブタノン中に溶解された前記有機ポリマー結合剤であるセルロースエーテルを含む第2のプレミックスとを含む。得られた第1および第2の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を、前記単一の静的または動的ミキサ中で混合して、押出成形の前に単一の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する。
【0105】
「in-situ」という用語は、混合が行われる、または、混合を提供する場所、またはオンサイト混合を意味することが理解されるのであろう。したがって、混合部位でスラリー供給原料を形成するために、構築材料、有機ポリマー結合剤、添加剤および/または揮発性有機溶媒は、一般に、共注入される(共送達される)か、または、単一の静的または動的ミキサ(目的部位)にともに供されて、単一の静的または動的ミキサ内の共噴射部位で混合または集合させられる。
【0106】
「瞬間的に」または「瞬間的な」という用語は構築材料、有機ポリマー結合剤、添加剤、揮発性有機溶媒、添加剤と混合された構築材料、および/または揮発性有機溶媒(すなわち、有機ポリマー結合剤溶液)と共にまたはその中に溶解された前記有機ポリマー結合剤を混合して、その単一の静的または動的ミキサ中でそのスラリー供給原料を準備するのに必要な時間を意味することも理解されよう。本発明では、このような瞬間的な混合は、1秒から数秒の時間で行われてよい。処理の合計時間(数分まで)と比較して、数秒単位の混合は、非常に迅速または瞬間的であると考えることができる。
【0107】
本明細書で使用される「単一の静的または動的ミキサ」という用語は従来技術のように、複数の非動作的に連結されたランダムミキサではなく、静的または動的ミキサの単一のユニットを指すことをさらに理解されたい。
【0108】
本発明の様々な実施形態において、有機ポリマー結合剤は、好ましくは前記熱分解温度に基づく熱分解処理、溶媒脱結合処理、またはこれらの組み合わせにおいて、先行部品から脱結合される。熱分解処理は先行部品内の残留応力を緩和するかまたはさらに高めるために、構築材料以外の部品、すなわち金属粒子および/またはセラミック粒子以外の加熱、熱脱結合、緻密化/焼結、部分的または完了溶融、および/または、潜在的に緻密化後のアニーリングを含む群から選択することができることが好ましい。ある実施例では、加熱の熱分解処理が室温で、または通常の熱処理時間および温度よりも低い温度および短い時間で、例えば、約60℃~約200℃で、約10分~約1時間で効果を得られてよい。
【0109】
先行部品の前記溶媒脱結合処理は、先行部品を溶媒と接触させて、溶解可能な結合剤(もしあれば、添加剤と共に)を本体から抽出することを含んでもよい。本発明による溶媒脱結合に適した溶剤としては、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、ヘプタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、塩化メチレン、および、例えば超臨界二酸化炭素、および水などの代替溶剤が挙げられる。
【0110】
前記熱分解処理および/または前記先行部品の前記溶媒脱結合処理は、その後に焼結処理が行われて、傾斜化機能物品の最終部品を作製する。最終部品は、3次元構造を形成する1つ以上の方向に最終部品の体積にわたって組成、充填パターンを含む構成、またはその任意の組み合わせが選択的に徐々に変化する構築材料を含むことが好ましい。組成、充填パターンを含む構成、またはその任意の組み合わせの変化、その体積内で非ゼロ距離にわたって連続的にまたは小さなステップで生じる変化または偏差を指す漸進的なものであることが好ましい。前記1つまたは複数の方向は、傾斜機能物品の基準点システムに対する空間内の任意の空間方向(x、y、および/またはz)を含むことが好ましい。
【0111】
本発明のスラリー供給原料は、支持材料をさらに含むことが好ましい。支持材料は、傾斜機能物品の張り出し部または片持ち部のための支持構造をプリントするように構成された、実質的に均一で流動性の支持混合物を形成することが好ましい。支持構造は、積層造形を使用して複雑な幾何学的形状の製造を可能にするための必須要素の部分である。
【0112】
支持構造または支持層は、典型的には張り出し部の下に、または、部分材料自体によって支持されていない、形成中の前記傾斜機能物品の先行部品のキャビティ内に構築される。支持構造は、実質的に均一で流動性のスラリー混合物が堆積されるのと同じ堆積技術を利用して構築されてもよい。ホストコンピュータは、形成中の前記傾斜機能物品の先行部品の張り出し部または自由空間部分のための支持構造として作用する追加の幾何学的形状を生成してよい。次いで、前記支持材料は、プリント処理中に、生成された幾何学的形状にしたがって、同じプリントヘッド(実質的に均一で流動性のスラリー混合物と同様)または別のプリントヘッドまたはノズルから堆積される。支持材料は、単一のノズルまたは複数のノズル構成を使用してプリントすることができる。支持材料は、製造中に部分材料に付着し、プリント工程が完了したときに、前記傾斜機能物品の完成先行部品から取り外し可能である。
【0113】
前記支持材料は、セラミック、犠牲材料、散逸材料、またはそれらの任意の組み合わせを含むことが好ましい。本発明の一実施形態では、支持材料が好ましくは約75μmを超える粒径を有する。1つの代表的な実施形態によれば、セラミック、犠牲材料、および/または散逸材料は、好ましくは第1のプレミックスを形成し、前記有機ポリマー結合剤は、揮発性有機溶媒で溶解されて、第2のプレミックスを形成する。前記第1のプレミックスおよび前記第2のプレミックスは、一緒に添加されて、実質的に均一で流動性の支持混合物を形成する。
【0114】
熱分解処理および/または溶媒脱結合処理および/または焼結処理は、支持構造と傾斜機能性物品の先行部品との間の結合を抑制することができることが好ましい。したがって、焼結された傾斜機能物品は、その支持構造から容易に取り出すことができる。
【0115】
本発明の一実施形態において、金属を主成分とする傾斜機能物品については、支持材料として実質的に均一で流動性のセラミックを使用することが好ましい。支持材料を形成する比較的粗いセラミック粉末は焼結後に緩く充填された構造をもたらし、これは脆く、傾斜機能物品とうまく融合しない。したがって、傾斜機能物品から支持構造を除去するために最小限の労力で済む。本発明の一実施形態において、セラミックを主成分とする傾斜機能物品については、支持材料として、無機塩などの実質的に均一で流動性のある犠牲材料を使用することが好ましい。支持材料は、水を使用する溶媒脱結合処理中に容易に除去することができる。次いで、傾斜機能物品の先行部品を、熱分解および焼結処理のために比較的粗いアルミナ粉末中に埋め込んで、最終的な傾斜機能物品を形成する。
【0116】
図6A図6B図6C、および図6Dは、本発明によって製造された傾斜機能物品の未焼成試料または部品を例示的に示す。これらの図において、緑色部品は、x-y平面およびz方向において螺旋同心形状の連続的な遷移において変化する独特のFGM遷移勾配を示す。好ましくは、10%アルミナスラリー混合物と90%粘土スラリー混合物とを有するベースから開始され、90%アルミナスラリー混合物および10%粘土スラリー混合物を有する中間部分への滑らかな移行し、次いで、10%アルミナスラリー混合物および90%粘土スラリー混合物を有する上部部分に到達する。図6Aおよび図6Bにおける緑色部品のより暗い色合いおよびより明るい色合いは、それぞれ、粘土を主成分とする混合物およびアルミナを主成分とする混合物を示す。以下の構成は、前記緑色部品を達成するために実用的であってよい。
【0117】
表1:第1の混合物の組成物
【表1】
【0118】
表2:第2の混合物の組成物
【表2】
【0119】
図7を参照すると、傾斜機能物品を製造するために押出ベースの3Dプリントに使用するためのスラリー供給原料を準備する方法は、好ましくは以下の工程を含む。
(a)金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含む構築材料を準備する準備工程であって、
(a-1)多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせである構築材料を供給する工程と、
(a-2)構築材料を10体積%~90体積%の量で供給する工程と、を含む前記準備工程と、
(b)セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択される有機ポリマー結合剤を準備する準備工程であって、
(b-1)有機ポリマー結合剤を150g/L~550g/Lの濃度で提供する工程を含む前記準備工程と、
(c)可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤を準備する準備工程と、
(d)揮発性有機溶媒を準備する準備工程と、
(e)混合された構築材料と添加剤を混合して第1のプレミックスを形成する形成工程と、
(f)溶解された有機ポリマー結合剤と揮発性有機溶媒を混合して第2のプレミックスを形成する形成工程と、
(g)第1のプレミックスと第2のプレミックスを混合して傾斜機能物品の先行部品としてプリントされる実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する形成工程と、を備える。
【0120】
この方法は、各々がそれぞれの第1のプレミックスおよびそれぞれの第2のプレミックスをそれぞれ含む、2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する形成工程と、2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を、in-situで静的または動的ミキサにより瞬間的に混合して、1種の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する形成工程とをさらに含むことが好ましい。
【0121】
以前の段落に記載されているように、有機ポリマー結合剤は、熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方により先行部品から脱結合され、その後に行われる焼結処理により、1つ以上の方向に傾斜機能物品の最終部品の体積にわたって組成、充填パターンを含む構成、またはそれらの任意の組み合わせが選択的に徐々に変化する前記構築材料を含む最終部品を作製する。
【0122】
この方法は明瞭化のために番号が付与された系列として示されているが、番号の付与は必ずしもステップの順序を記述しているわけではない。これらのステップのいくつかは、省略されたり、並行して実施されたり、または厳密な順番を維持することを必要とせずに実施されたりし得ることを理解されたい。
【0123】
図8を参照すると、傾斜機能物品プリントする(すなわち、押出ベースの3Dプリント)方法は、好ましくは以下の工程を含む。
【0124】
(a)スラリー供給原料を供給する供給工程であって、
(a-1)金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含む構築材料を準備する準備工程であって、
(a-1-1)多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせである前記構築材料を供給する工程と、
(a-1-2)構築材料を10体積%~90体積%の量で供給する工程と、を含む前記準備工程と、
(a-2)セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択される有機ポリマー結合剤を準備する準備工程であって、
(a-2-1)有機ポリマー結合剤を150g/L~550g/Lの濃度で提供する工程を含む前記準備工程と、
(a-3)可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤を準備する準備工程と、を含む前記供給工程と、
(b)混合された構築材料と添加剤を混合して第1のプレミックスを形成する形成工程と、
(c)溶解された有機ポリマー結合剤と揮発性有機溶媒を混合して第2のプレミックスを形成する形成工程と、
(d)第1のプレミックスと第2のプレミックスを混合して前記傾斜機能物品の先行部品としてプリントされる実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する形成工程と、
(e)熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方により、先行部品から有機ポリマー結合剤を脱結合する脱結合工程と、
(f)有機ポリマー結合剤が脱結合した先行部品を焼結処理に供して、1つ以上の方向に傾斜機能物品の最終部品の体積にわたって変化する組成、充填パターンを含む構成、またはそれらの任意の組み合わせが選択的に徐々に変化する構築材料を含む最終部品が作製される焼結工程と、を備える。
【0125】
この方法は、各々がそれぞれの第1のプレミックスおよびそれぞれの第2のプレミックスをそれぞれ含む、2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する形成工程と、2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を、in-situで静的または動的ミキサにより瞬間的に混合して、1種の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する形成工程とをさらに含むことが好ましい。
【0126】
この方法は明瞭化のために番号が付与された系列として示されているが、番号の付与は必ずしもステップの順序を記述しているわけではない。これらのステップのいくつかは、省略されたり、並行して実施されたり、または厳密な順番を維持することを必要とせずに実施されたりし得ることを理解されたい。
【0127】
本発明の好ましい一実施形態において、傾斜機能物品の押出ベースの3Dプリントのために使用されるシステムが、1つ以上の容器、噴射調整手段、計算部、流体駆動装置、任意選択的に、単一の静的または動的ミキサ、およびプリントヘッドを含むことが好ましい。図9Aおよび図9B図10図11図12および図13は、本発明のシステムを例示的に図示するものである。
【0128】
図9Aでは、所定のプリントノズル構成を有するシステムは、好ましくは加熱チャンバのキャビティ内の平坦面または基板(例えば、加熱板)上に配置される。プリントノズルから押し出された先行部品は、平坦面上に堆積される。前記平坦面は、本発明の一実施形態では前記部品を作製するためにプリントノズルと動作可能に協働するレベリングプラットフォーム(自己または機械的)である。レベリングプラットフォームは、プリントヘッドのプリントノズル用の計算部と同じ、または異なる計算部によってコンピュータ数値的に制御することができる。加熱チャンバおよび/または加熱プレートは、好ましくは任意である。
【0129】
図9Bは、傾斜機能物品を製造するための押出ベースの3Dプリントのための機構を示す。図ではスラリー供給原料が流体駆動装置に接続された容器内に収容され、この流体駆動装置は、スラリー供給原料を、計算部における制御部による制御時に、噴射調整手段に送る。実質的に均一で流動性のスラリー混合物であるスラリー供給原料がプリントヘッドに導入されるとすぐに、前記供給原料は、プリントヘッドに取り付けられたプリントノズルを通して平坦面上に押し出され、傾斜機能物品の緑色部品が作製される。プリントヘッドは、ヒータ等を有していないことが好ましい。加熱プレートは、好ましくは任意である。熱風または室温換気は、任意のベースで提供されてもよい。
【0130】
1つ以上の容器、または、コンテナ、槽、またはベッセルは、以前の段落に記載されるように、スラリー供給原料および/またはその構成要素を別々に収容するように構成されることが好ましい。上記の容器は、気密封止されることが好ましい。容器は、様々な形状およびサイズの金属、プラスチックなど、またはそれらの複合体から作製され得る。
【0131】
一実施形態では、各容器が、個々の個別の方法で、構築材料、有機ポリマー結合剤、添加剤、および揮発性有機溶媒を収容する。例えば、4つの別個の容器が備えられ、それぞれが、構築材料、有機ポリマー結合剤、添加剤、および揮発性有機溶媒を貯蔵するように適合される。これらの4つの容器は、スラリー供給原料の前記構成要素のin-situにおける混合のために特別に構成される。
【0132】
別の態様では、構築材料の金属およびセラミックが異なる別個の容器に収容される。一例として、金属粒子は第1の容器に、セラミック粒子は第2の容器に格納される。構築材料の金属およびセラミックは例えば、特定の金属またはセラミックの特性(例えば、物理的特性、化学的特性、レオロジー特性など)、金属および/またはセラミックの種類(例えば、金属A、金属B、セラミックA、セラミックB、多孔質金属A、多孔質金属B、多孔質セラミックA、多孔質セラミックBなど)、ならびにそれらの傾斜機能物品が必要とする最終特性に応じて、さらに多くの別個の容器に貯蔵することができる。本発明の別の態様では、構築材料が第1のプレミックスを形成する添加剤と混合され、1つの容器内に貯蔵でき、有機ポリマー結合剤は第2のプレミックスを形成する揮発性有機溶媒と共にまたは、その中で溶解され、別の容器内に貯蔵できる。これらの2つの容器はそのような混合物(すなわち、予め混合された構築材料および添加剤、ならびに揮発性有機溶媒中の予め溶解された有機ポリマー結合剤)を前記静的または動的ミキサに供給するように構成される。
【0133】
さらに別の実施形態では、第1の容器が1種の添加剤および前記有機ポリマー結合剤溶液と混合された構築材料を含有する実質的に均一で流動性のスラリー混合物であるスラリー供給原料を貯蔵するように構成され、第2の容器は前記有機ポリマー結合剤溶液と混合された別の添加剤を貯蔵するように構成される。前記第1の容器および前記第2の容器は、任意の所望のまたは目標とされる充填パターンを得るために、傾斜機能物品の微小多孔度を変化させるように配置されることが好ましい。この点に関して、前記別の添加剤は、犠牲材料および/または散逸材料である。上述の容器の配置は、微小多孔度を変化に対しては適用可能ではない場合がある。
【0134】
噴射調整手段は、容器に機械的に接続されるのが好ましい。噴射調整手段は、その中に設けられた制御ピストンの位置を制御することによって、容器に貯蔵されたスラリー供給原料および/またはその構成成分の噴射速度および量を調節するように構成されることが好ましい。噴射調整手段は、その計算部の制御部に接続され、通信することが好ましい。
【0135】
噴射調整手段は、好ましくは電磁弁、機械式ポンプ、およびそれらの組み合わせを含む群から選択される。
【0136】
本発明において使用される電磁弁は、サーボ弁とも呼ばれ、静的または動的ミキサの上流に配置された容器内に格納されたスラリー供給原料および/またはその構成成分を、下流に配置されたユーザー回路によって、圧力が制御されるように制御された方法で接続、さらに具体的には連通させることができる任意の装置を指す。このような電磁弁は、一般に、2つのチャンバとスライド弁を備える。スライド弁は、その位置に応じて、一方のチャンバを高圧供給回路に接続、他方のチャンバを低速圧流体戻し回路に接続するように制御されている。また、チャンバの一方は、さらにユーザ回路に接続される。この種の電磁弁装置に含まれるのは、圧力源がユーザ回路と直接的に連通するのではなく、それ自体が電磁弁によって制御される振動ピストンを介してそれに作動的に接続されるパルセータであることに留意されたい。
【0137】
ここで使用される機械式ポンプ、または単純なポンプは、広義語であり、その通常の意味にしたがって、流体流れを促すことができる任意の装置であり、少なくとも本発明では、スラリー供給原料の流れを促すことができる。一例として、ポンプは、シリンジポンプ、蠕動ポンプ、真空ポンプ、電動ポンプ、機械式ポンプ、スラリポンプ、遠心ポンプ、油圧ポンプ、およびこれらの任意の組み合わせを含むことができる。いくつかの実施形態での使用に適したポンプおよび/またはポンプ部品は、前記スラリーの有効かつ一貫したポンプ輸送を確実にするように適切に得ることができる。
【0138】
制御部に接続された計算部は、プロセッサおよびメモリを含む任意のシステムを指すことが好ましい。いくつかの実施形態では、計算部がディスプレイを含んでもよい。計算部は、好ましくは噴射調整手段、静的または動的ミキサ、および/またはそのプリントヘッドに対する制御信号を生成するように構成される。前記制御信号は、それらに接続された部品を制御するために使用される単一の信号または1組の複数の信号である。制御信号は、噴射速度、噴射量、噴射時間、蒸着速度、プリントノズルまたはプリントヘッドの位置決め、傾斜機能物品の形状などの1つまたは複数の特性(本システムに関連する)を制御することができることが好ましい。前記制御部は、好ましくは本発明で使用される材料およびレオロジープロファイルの所定のセットを備えるデータベースに接続される。このデータベースは、前記傾斜機能物品の最終部品に対して制御信号が作用的に影響を及ぼすために使用される。例えば、制御信号は構築材料のレオロジープロファイルにしたがって調整されて、噴射調整手段が、前記プロファイルおよび所望の傾斜機能物品に対応する正確な噴射速度および/または噴射量を適用できるようにする。制御部は、メモリと、サーバと一体化されたプロセッサとを含むハードウエア装置を含んでもよい。メモリは、命令を実行するモジュール/ユニットを記憶するように構成され、プロセッサは、具体的には、本明細書に記載の1つまたは複数の処理を実行するために、前記命令を実行するように構成される。
【0139】
いくつかの実施形態では、計算部が内蔵型システムである。いくつかの実施形態では、計算部が内蔵型ではない。計算部は、演算能力および/または記憶装置メモリ(例えば、CPU、マイクロプロセッサー等)を備えた専用のコンピュータまたは専用の演算装置であり、典型的には、本発明のシステムを動作させるための動作ソフトウェア(例えば、噴射調整手段、静的または動的ミキサおよびプリントヘッド)を実行して、所定のプリント手順を実行することが好ましい。計算部は、本発明のシステムに一体化されているか、または専用の方法でシステムに接続されてシステムを動作させる。
【0140】
典型的な実施形態では、計算部がピアツーピアアプリケーションへのリクエストメッセージを受信するためのピアツーピアモジュールを備える。リクエストメッセージは、本発明のシステムによって製造される所望の製品、すなわち傾斜機能物品のデータや情報とカスタマイズパラメータを含んでいる。
【0141】
流体駆動装置は、前記容器または前記噴射調整手段に隣接して配置される。流体駆動装置は、移送機構との間で流体圧力または圧力流体を提供または供給して、それぞれの容器内に収容されたスラリー供給原料および/またはその構成成分の動きをもたらすように構成された圧力駆動装置、または前記噴射調整手段の圧力駆動装置であることが好ましく、それぞれの容器内に収容されたスラリー供給原料および/またはその構成成分を動かして、加圧スラリー供給原料および/または加圧部品を提供する。このような用語「流体圧力」はこの特徴の任意の適切な流体圧力をカバーし、真空を含むのに十分な広さであることが意図される。
【0142】
好ましい実施形態では、本発明の流体駆動装置は、空気圧駆動装置、液圧駆動装置、機械的移動装置、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択することができる。本明細書で使用される前記空気圧駆動装置は、好ましくは、圧縮空気が通過することによって作動される任意の種類の機器を包含する。例えば、空気圧駆動装置は、比較的低コストでありながら効率的なロータリピストンエアモータおよび携帯型高圧空気圧筒部などの、加圧下で空気または他の気体によって作動されるシステムである。油圧駆動装置は、別の減速機備えていてもいなくてもよいが、油圧モータを組み込んだ油圧駆動装置であることが好ましい。機械的移動装置は、スラリー供給原料を噴射調整手段に移送するために使用することができる。また、流体駆動装置は、本発明のために適切に採用される任意の他の電動式移動装置を含む。
【0143】
本発明で任意に使用される単一の静的または動的ミキサは、好ましくは2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物をin-situで単独で、瞬間的に混合して、プリントヘッドに移動させる(移送する)前に、1つまたは単一の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成するように構成される。
【0144】
単一の静的ミキサまたはモーションレスミキサは、本質的に、内部移動機械部品を含まないミキサである。静的ミキサは、1つ以上の実質的に静止した混合要素、例えば、ブレード、プレート、羽根などの邪魔板を含む装置であり、スラリー供給原料など流動流体および/またはそれらの成分を導管を通じで混合して、流れの分割や分裂パターンを生成して、流動液体中で、例えば放射状の循環や交換によるらせん状の混合のような混合を達成する。静的混合要素は、典型的には導管内で不動であるが、流動流体の混合に実質的に寄与しない限り、導管に対して移動が制限された静止要素の制限された移動が起こり得る。複数の静的混合要素を有する静的ミキサでは、これらの要素が互いに対して直列に、および/または互い違いに配置されることができる。静的ミキサは、好ましくは混合された流動流れ、すなわち、実質的に均一で流動性のスラリー混合物を、ミキサの短い長さにわたって生成するように選択される。一方、動的ミキサは、前記静的ミキサとは逆であり、移動部品を含むことが好ましい。動的ミキサは、スラリー供給原料およびその構成成分を、それらがそこに装填された後または装填されている間に一緒に混合することができる。当業者であれば適切に選択できるように、前述のミキサの代わりに、同様の性質を持つ他のミキサを使用することもできるであろう。
【0145】
プリントノズルを備えたプリントヘッドは、好ましくは平らな表面上にプリントまたは押し出す直前に、前記実質的に均一で流動性のスラリー混合物を保持するチャンバを含む。したがって、本発明のスラリー供給原料を考慮すると、プリントヘッドはヒータ等を必要としない利点がある。一実施形態では、プリントヘッドは、単一のプリントヘッド、プリントバー、線形または非線形配列に編成された一つまたは複数のプリントノズルを備えた複数のプリントヘッドを有するキャリッジアセンブリまたは取り付けブロックとを含む。プリントヘッドは、その計算部によって動作可能に駆動され、流体駆動装置から直接的に受け取られ、および/または単一の静的または動的ミキサから受け取られた、前記実質的に均一で流動性のスラリー混合物を噴射、押出、分配、堆積、または概して排出するように構成されて、前記傾斜機能物品の先行部品を生成することが好ましい。実質的に均一で流動性のスラリー混合物の排出は、プリントヘッドを利用して、スラリー供給原料の連続的または非連続的な流れをプリントノズルから平坦な表面または基板上に形成および発射、または押し出す非接触分配処理である。静的または動的ミキサは、別の計算部または同じ計算部によって制御されることができる分配部を介して前記プリントヘッドに接続することができる。
【0146】
本発明のシステムの一つの典型的な実施形態において、図10を参照してわかるように、容器(すなわち、容器1および容器2)は、流体駆動装置に接続される。
【0147】
噴射調整手段は、容器と、プリントヘッドに接続された単一の静的または動的ミキサとの間に配置される。計算部は、噴射調整手段、静的または動的ミキサ、プリントヘッドを管理するのが好ましい。噴射調整手段は、機械式のポンプであることが好ましい。
【0148】
本発明のシステムの1つの典型的な実施形態では、分配部が静的または動的ミキサとプリントヘッドとの間に配置されていることを除いて、図11は、図10の構成と本質的に同じである。この構成では、計算部が、噴射調整手段(すなわち、機械式ポンプ)、静的または動的ミキサ、分配部、プリントヘッドを管理するのが好ましい。
【0149】
本発明のシステムの1つの典型的な実施形態において、図12は、噴射調整手段として電磁弁を使用する別の配置を示している。電磁弁は、容器の前に配置され、流体駆動装置と接続する。静的または動的ミキサは、容器、および、プリントヘッドの前に配置された分配部に接続される。計算部は、電磁弁、静的または動的ミキサ、分配部、プリントヘッドを管理するのが好ましい。
【0150】
本発明は以下の実施例によって具体的に説明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されないことが理解されるべきである。
【0151】
本発明は直接スラリー書き込み技術(ここで、AおよびBは任意の金属ファミリー群またはセラミックファミリー群であり得る)によって、例えば技術者などの人が金属Aから金属B、金属AからセラミックA、またはセラミックAからセラミックBへの変化に基づくFGM物品を作製することを可能にする。本発明のこの汎用的な方法は、プリントされた物体の物質特性を、従来技術および/または従来の製造方法に開示されているように単一の方向ではなく、三次元方向(図3Aおよび図3Bを参照)に変化させることができる。本発明は極限状態で機能性を維持するために独自の金属/セラミック複合材料を形成するために、それぞれの材料の優れた特性を使用または利用することによって、完全な使用または最適化を可能にする。
【0152】
本発明の押出ベースのプリントは、FGM物品の固有の特性を形成するために、材料データベース(符号化された例プロファイルが図3Aおよび図3Bに示されている)を介して提供される指針に基づくCADモデルおよび標的材料プロファイルの工学的デザインから始まる。そして、CADモデルは、純粋なプログラムを介して処理され、本発明のシステムに対するGcode(3Dプリンタを実行する指示命令)を生成する。次に、材料プロファイルがその生成されたGcodeと統合される設計後処理ソフトウェアが続く。後処理ツールは、プリント処理自体の間にプリンタが混合物組成を変化させることができるように、材料混合比をGcodeにプログラムすることを可能にする。
【0153】
独自の3Dプリンタ(これは本発明のシステム)は2つ以上の押出機から成っていてもよく、これにより、本発明のFGMプリントにおいて2つ以上の種類の材料を混合することができる。スラリー供給原料はプリンタ制御部によって制御されるモータによって駆動される機械式ポンプ内にスラリー供給原料を移動させるための圧を提供するために、空気圧/油圧駆動を有する容器またはタンク内に供給される。スラリー供給原料は、プリントされる材料の粘度に応じて、静的または動的ミキサに正確にポンピングされる。供給原料はスラリー形成であるので、材料の変化が別個の形成でしか達成できない既存の添加方法または技術と対照的に(図1参照)、図2に示されるように、プリント中に2種類以上の材料の混合を容易にスケールアップし、プリント処理中にin-situで混合することができる。
【0154】
本発明のスラリーミックスプリントは、硬化したプリント物を形成するための溶剤系結合剤の蒸着に依存する。したがって、有機ポリマー結合剤の濃度および前記結合剤と結合粒子(すなわち、金属および/またはセラミック粉末)との間の比率の制御は、プリントされた溶液がプリントノズルから押し出された後にその形状を維持するのに充分な静的降伏応力を有することを保証するための重要な工程となり、一方、静的ミキサ(能動的移動部分を伴わない流体の混合を指す)または動的ミキサ(動的剪断機構を介して流体を混合するロータを含む)を使用して混合されて、図2に示されるように、プリント中に均一なスラリー混合物を形状成することが依然として可能である。静的または動的ミキサには、有効粘度作業範囲がある。
【0155】
有効で均一な混合物を得るために、スラリー混合物は、両方のタイプの材料原料がある範囲の剪断速度にわたって粘度変化のわずかな変動を有するように準備されなければならない。異なるタイプの粉末サイズまたは形状は、それらのレオロジー挙動に関して有意な差異をもたらす。レオロジーの調整は、それぞれの材料内、かつ、全ての変動混合物にわたる両方の混合物の組み合わせで行われなければならない。理想的には、それらは金属および/またはセラミックでは約30~90体積%、前記有機ポリマー結合剤では約200~500g/Lおよび/または10~70体積%、ならびに添加剤では約1~15体積%の範囲内であるべきである。2つの材料間の広い範囲の比にわたって変化し得る有効な混合物は、2つの材料を単に一緒に混合することによって得られるものではない。例として、約10~80体積%のプリント率に適した流動性混合物を得るためには、原料材料Aが非常に粘性であり、材料Bがその材料の状態で非常に液状であることが必要とされる場合がある。両方のスラリーは本質的に非ニュートン流体であるので、同様のせん断速度またはポンピング速度は異なった体積流量をもたらす可能性があり、これはユーザによってプログラムされた混合比が不正確となる可能性がある。したがって、本発明では原料材料のレオロジープロファイル(すなわち、スラリー供給原料の構成要素)およびそれらの混合物は実験構成によって達成され、マッピングされなければならない。これらのレオロジープロファイルは材料プロファイルの設計と統合されて、均一な混合比が得られるように、両方のスラリーの送り体積流量が一貫していることを確実にするために、純粋なGcodeの後処理中に含まれるべき独特の補償係数を形成する。2つの材料の間に達成可能な効果的な混合比があり、すなわち、それは通常、約10~90%の範囲である。これは、形成される必要がある物品の必要性および特性に応じて、金属およびセラミック混合物、すなわち、金属Aおよび金属B、金属A(多孔質混合物)および金属A(非多孔質混合物)、セラミックA(多孔質)およびセラミックA(非多孔質)またはセラミックAおよびセラミックBの形成の生成を可能にする。ミキサを通って流れる材料の混合物は、3種類以上の材料であってもよく、任意の図に示されるものに限定されない。この構成により、材料Aと材料Bとを、プリント処理中に正確な比率で混合することができる。
【0156】
構成の例を以下に示す。
【0157】
・材料A(液状の低濃度結合剤を有する金属/セラミックA)および材料B(添加剤のプレミックスを有する純粋な結合剤)。これは、(準備を簡略化するために)単一のノズルのみを用いたプリント中に、予混合されたスラリー材料の早すぎる乾燥を防止する。スラリーの正確なレオロジー挙動は、プリント条件、すなわち温度および湿度に基づいて調整することができる。
【0158】
・材料A(金属)および材料B(セラミック)の両材料の混合物は、プリント中に、プリンタ制御部ソフトウェアを経由して、三次元的に正確に変化させることができ、これにより、図3Aおよび図3Bに示されるように、三次元にわたって変化する傾斜機能材料を作り出すことが可能となる。これは、2つ以上の材料の混合物であってもよく、1つ以上の方向に変化し、in-situでプリントされる可能性があることに留意されたい。
【0159】
・材料A(多孔質金属/セラミック混合物)は材料A(濃縮混合物)に骨格非可溶性材料/発泡剤の添加して形成され、材料Aは金属およびセラミックの群から選択することができる。これは、ソリッドかつ多孔質材料が充填される殻のような独特の構造のプリントを可能にし、多孔質材料を充填することができる(図4参照)。多孔性勾配は、線形または一次元だけでなく、図4に示されるように、3D空間にわたって適用される放物線状勾配にも制御することができる(図5Aおよび図5B参照)。
【0160】
ここで、多孔質金属の定義は、金属またはセラミック/金属発泡体/セラミック発泡体を指してもよい。多孔質構造は、ミクロ多孔質(<100μm)およびマクロ多孔質(>100μm)として分類することができる。本実施形態では、純粋なソフトウェアを介して充填構造を制御することによってマクロ多孔質が得られる(ハニカム、適応立方体、三角形、星形、グリロイド、線、同心円、ヒルベルトカーブ、格子構造などの様々な形状で形成することができる)。本発明は、発泡剤または犠牲材料、散逸材料、または骨格材料を加えることによって、ミクロ多孔質を取り扱うことができる。これは、多孔質混合物と非多孔質混合物との前記in-situ混合により、単一溶液中にプリントされたミクロ多孔性およびマクロ多孔性構造の制御を可能にする。発泡剤は、多孔質形状および構造に対する最小限の制御で、ランダムな多孔質構造の形成することができる。犠牲材料/逃亡材料/骨格材料の添加による混合により、多孔質サイズ、密度、および形状を正確に制御する。
【0161】
以下は、金属およびセラミックを含む、構築材料の非限定的な組み合わせである。
・金属-金属
(i)Al-Cu
(ii)AL-Ni
(iii)Ni-Ti
(iv)316L-H13
(v)“Ti-6Al-4V”-304L
(vi)低炭素鋼-高炭素鋼
(vii)304-304多孔質構造
・金属-セラミック
(i)Al-SiC
(ii)Al-Al
(iii)Ni-ZrO2
(iv)Cu-SiC
【0162】
・セラミック-セラミック
(i)SiC-SiC(異なる密度)
(ii)Al-Al(多孔質構造)
(iii)Al-SiC
(iv)Al-ZrO
【0163】
漸進的な材料転移(金属-金属の(i)~(v)を参照)を含むFGM物品について、各個々の材料のベースとなる配合物を、以下の表に例示的に表す。このような組み合わせの変化は、勾配遷移に対して0~100%の間で行うことができる。
【0164】
表3:推奨する最終混合物の組成物
【表3】
【0165】
表4:推奨する多孔質複合材料混合物
【表4】
【0166】
低炭素鋼-高炭素鋼間の遷移には、以下の組成物を用いることができる。
【0167】
表5:第1の混合物の組成物
【表5】
【0168】
表6:第2の混合物の組成物
【表6】
【0169】
304-304多孔質構造の場合、構造の多孔度は、塩の結晶化のサイズによって制御される。以下のものを用いることができる。
【0170】
表7:第1の混合物の組成物
【表7】
【0171】
表8:第2の混合物の組成物
【表8】
【0172】
粘土と低炭素鋼との間の遷移には、以下のものを用いることができる。
【0173】
表9:第1の混合物の組成物
【表9】
【0174】
表10:第2の混合物の組成物
【表10】
【0175】
<他の実施例/様態>
本発明はさらに、低圧および室温下で物品を鋳造するためのスラリー供給原料、それを準備(調製)する方法、物品を鋳造する方法、およびそのためのシステムを開示する。利点として、再利用可能な鋳型と併せて使用される前記スラリー供給原料によって、本発明は、高圧や金属の溶解を必要とせずに金属/セラミック物品の鋳造ができるので、従来の鋳造方法を単純化したものである。本発明は主に、室温での金属/セラミック鋳造のために準備された新規なスラリーベースの供給原料、ならびに再利用可能な鋳型の設計および構成に焦点を当てる。前記供給原料はスラリー形態であるので、前記スラリー供給原料は、流動性および可動性をそなえ、重力または最小限の圧力で前記鋳型内への正確な鋳造体積制御が可能なので、高圧噴射システムのリスクのある投資を回避することがさらに可能である。さらに、本発明は複雑で洗練された処理、成分、または部品を使用することなく、非常に具体的かつ小型で、費用効率が高く、迅速かつ簡単な方法で使用および維持することができる。
【0176】
本明細書で使用される用語「物品」とは、鋳型鋳造によってスラリー供給原料から作製され、任意の形状を持つ製造物品または半製品を指す。
【0177】
本明細書で使用するとき、用語「スラリー」は、固体-液体混合物および固体-気体混合物の両方を含む、固体-流体混合物を指す。便宜上、固体-液体スラリーに関して、本発明は、固体および液体が別々の相に存在する供給原料組成物として論じる。固体-液体スラリーは、本発明のシステムに投入され、完全にまたは部分的に分離された固体および液体も含む。
【0178】
本明細書で使用される「供給原料」という用語は、物品を作製することができる本システムに供給されるのに適した特性を有する原材料または原材料の混合物として定義され、また、その鋳型と共に使用するのに適した混合物を生成するためにまだ混合されていないか、またはさらに混合されるべき成分であると解釈されるものとする。
【0179】
本明細書で使用される「プレミックス」という語は、共に混合され、スラリー混合物を構成する混合物の1つの部分を形成する成分を指す。
【0180】
本明細書で使用される用語「低圧」は、2MPa以下の圧力を指す。
【0181】
本明細書で使用される用語「室温」は、スラリー供給原料に追加のエネルギーが消費されないこと、または近傍温度を示す。一実施形態では、この用語は、約20℃~30℃の温度域を指す。
【0182】
本明細書で使用される「先行部品」または「緑色部品」という用語は、他の製造技術でさらに加工されるために本発明によって製造される焼結される前の状態にある物品または物品の予備成形物を指す。
【0183】
本明細書で使用される「褐色部品」という用語は、供給原料を以前に共に保持していた結合剤、犠牲材料および/または散逸材料を除去するために熱分解処理および/または溶媒脱結合処理に供された先行部品または緑色部品から製造された物品を指す。褐色部品は、物品の最終または完成した部品を製造するために、さらに加熱されて部品が完全に焼結されるか、または焼結に供されてもよい。
【0184】
本発明の好ましい一実施形態によれば、スラリー供給原料は、構築材料、有機ポリマー結合剤、添加剤(任意であり得る)、および揮発性有機溶媒を含む。
【0185】
有機ポリマー結合剤は、揮発性有機溶媒中に溶解し、したがって有機ポリマー結合剤溶液を生成することが好ましい。添加剤は、所定のレオロジー挙動およびプリント特性を得るために構築材料に添加されることが好ましい。スラリー供給原料は本質的に、前記有機ポリマー結合剤溶液を、添加剤と混合された前記構築材料とブレンドすることによって形成することができる。得られたスラリー供給原料は、再利用可能な鋳型に導入され、外部熱供給手段なしに室温で転相により乾燥させることができる。
【0186】
本発明の構築材料は、好ましくはスラリー供給原料を形成するために使用され、物品が本発明の鋳造のためのシステム内に構築される粉末を指す。粉末、または粒子状材料もしくは粒子と呼ばれる粉末は、様々なメッシュサイズを有する。一実施形態では、構築材料は、約300μm以下、好ましくは約200μm未満の粒径を有する。構築材料は、本発明の鋳造のためのシステムに使用するための層形成材料であることが好ましい。構築材料はまた、粒状粉末、繊維状粉末、および鱗片状粉末などの様々な形状であってよい。好ましい実施形態では、構築材料が約10体積%~約90体積%、より好ましくは約30体積%~約90体積%の量で使用される。
【0187】
構築材料は、金属、セラミック、または、それらの任意の組み合わせを含むことが好ましい。本発明の一実施形態では、構築材料が多孔質、非多孔質、またはこれらの任意の組み合わせであってよい。例えば、多孔質金属は有意な多孔度、例えば、約0.5cc/gを超える多孔度を有する金属粒子を意味する。構築材料は、100μm未満(ミクロ多孔質)および/または100μm超(メソ多孔質)の細孔を有してよい。一方、非多孔質金属はほとんどまたは全く多孔性を有さない、例えば、約0.05cc/g未満の多孔度を有する金属粒子を意味する。多孔質セラミックは、好ましくは制御可能な多孔度および良好な機械的特性を有する多孔性を有する。用語「多孔度」は、本明細書で使用される場合、多孔質物品、例えばその多孔質構築材料中の空隙空間の体積分率を指す。
【0188】
本発明において使用される多孔質金属および/または多孔質セラミックは、好ましくはミクロ多孔質であり、例えば、好適な発泡剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料などを用いた直接発泡によって生成することができる。多孔度は、塩の結晶化のサイズによって制御することもできる。
【0189】
本発明の好ましい一実施形態では、構築材料が金属(多孔質および/または非多孔質)またはセラミック(多孔質および/または非多孔質)のみを含んでよい。また、構築材料はその物品に対する構築材料の所望の特性を適切に満たすように、所定の混合比率または体積割合で、金属とセラミックとの組み合わせを含んでよい。その組み合わせの例として、金属およびセラミック;多孔質金属およびセラミック;金属および多孔質セラミック;多孔質金属、非多孔質金属およびセラミック;金属、多孔質セラミックおよび非多孔質セラミック;多孔質金属、非多孔質金属、多孔質セラミックおよび非多孔質セラミックなどが挙げられる。様々な他の組み合わせ(例えば、第1の金属、第2の金属、第1のセラミック、第2のセラミックなど)が考えられる。
【0190】
本発明において使用される金属は、鉄金属、非鉄金属、鉄金属合金、および非鉄金属合金を含む群から選択されることが好ましい。
【0191】
鉄金属は、鋼材、ステンレス鋼材、軟鋼材、鋳鉄、可鍛性鉄、延性鋳鉄などから選択される。鉄金属は、好ましくは鉄、鉄クロム合金、鉄クロムニッケル合金、鉄クロム亜鉛合金、鉄クロムアルミニウム合金、鉄クロムマグネシウム合金、鉄クロム鉛合金、鉄アルミニウム合金、鉄亜鉛合金、ステンレス鋼、鉄ニッケル合金、および、それらの組み合わせを含む。鋼材および/またはステンレス鋼材の好ましい例としては、AISI 304、AISI 304L、AISI 316、AISI 316L、AISI 430、AISI 630(17-4PH)、および、AISI 631(17-7PH)が挙げられる。A2~A5、D2、H13、M2、および4140のような他の鋼材も、本発明では使用することができる。
【0192】
非鉄金属は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、亜鉛、亜鉛合金、カドミウム、クロム(III)、銅、銅(II)カドミウム、鉛、コバルト、コバルトクロム、コバルトクロムモリブデン、ニッケル、ニッケル合金、モリブデン、チタン、タンタル、ニオブ、銀、および、金から選択される。アルミニウムおよび/またはアルミニウム合金の好ましい例としては、AlSi10Mg、AlSi7Mg、ADC12およびAlMg5Mnが挙げられる。ニッケル合金の好ましい例としては、合金706、合金718、合金625、合金725や、例えばFeNi36または64FeNiなどのインバー型、または、ハステロイX、ハステロイCおよびコバールが挙げられる。
【0193】
本発明で使用されるセラミックは、好ましくはケイ酸塩セラミック、酸化物セラミック、非酸化物セラミック、バイオセラミック、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。
【0194】
ケイ酸塩セラミックは、好ましくは粘土、コーディエライトセラミック、ステアタイト、ストーンウェア、土器、磁器、カオリン、石英、ケイ酸塩、カモット、ベントナイト、ムライト、およびそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0195】
酸化物セラミックは、好ましくはアルミナ、酸化イットリア(Y)中で安定化されたジルコニアを含むジルコニア、酸化ベリリウム、酸化イットリウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化ウラン(UO)、二酸化プルトニウム(PuO)、酸化イットリウムバリウム銅、スピネル、マグネトプランバイト、ペロブスカイト、チアライト、およびそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0196】
非酸化物セラミックは、好ましくは炭化チタン、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化ケイ素などの炭化物セラミック、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウムなどの窒化セラミック、酸化窒化アルミニウム、SiAION(ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、酸素(O)および窒素(N)の要素に基づくセラミック)を含む窒化物セラミック、およびそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0197】
バイオセラミックは、好ましくはリン酸カルシウムセラミックであって、例えば、ヒドロキシアパタイト(HAP)、リン酸三カルシウム(TCP)、非晶質リン酸カルシウム(ACP)、リン酸八カルシウム(OCP)、無水リン酸二カルシウム(DCPA)、リン酸二カルシウム二水和物(DCPD)、一酸化リン酸四カルシウム(TetCp)、二相リン酸カルシウム(BCP)、およびそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0198】
本発明の構築材料は、ひび割れ、垂れ下がり、または層間剥離を起こさない他の焼結可能な材料、例えばガラス粉末、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含んでよい。
【0199】
本発明において使用される有機ポリマー結合剤は、少なくとも2つの熱分解温度を有することが好ましい。熱分解では、還元剤として作用することができる分解生成物(すなわち、物品)が有機ポリマー結合剤を含有するものをこれらの温度で加熱すると形成される。前記有機ポリマー結合剤は、粉末、すなわち金属および/またはセラミックの粒子間の反応を阻害しないように選択されることが好ましい。前記の有機ポリマー結合剤は、それに対応する熱分解温度未満の温度で分解または蒸発することが好ましい。
【0200】
前記有機ポリマー結合剤は、セルロースエステル、セルロースエーテル、および、それらの誘導体からなる群から選択されることが好ましい。前記有機ポリマー結合剤は、約50g/L~約550g/L、より好ましくは約100g/L~約500g/Lの濃度で使用されることが好ましい。本発明の様々な実施形態において、有機ポリマー結合剤の数平均分子量は、約150,000以下、より好ましくは約100,000以下である。
【0201】
セルロースエステルは、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースブチレート、セルローストリブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースプロピオネート、セルローストリプロピオネート、セルロースニトレート、セルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースアセテートプロピオネート、カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートブチレートスクシネート、セルロースプロピオネートブチレート、およびそれらの混合物を含む群から選択されることが好ましい。
【0202】
セルロースエステル誘導体は、セルロースのエステル化によって調製することができる。好ましいセルロースエステル誘導体としては、セルロースのアセテート、ブチレート、ベンゾエート、フタレートおよびアントラニル酸エステル、好ましくはセルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、スクシノイルセルロース、セルロースフオロエート、セルロースカルバニレート、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0203】
セルロースエーテルは、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルエチルヒドロキシエチルセルロース、疎水変性エチルヒドロキシエチルセルロース、疎水変性ヒドロキシエチルセルロース、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルヒドロキシアルキルセルロース、および、それらの混合物を含む群から選択されることが好ましい。
【0204】
セルロースエーテル誘導体は、カルボキシメチル化、カルボキシエチル化およびカルボキシプロピル化によって調製することができる。好ましいセルロースエーテル誘導体の例はナノセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、トリチルセルロースなどであるが、これらに限定されない。
【0205】
いくつかの有機ポリマー結合剤では、カチオン性セルロース誘導体を使用してよい。いくつかの前記有機ポリマー結合剤はアルギン酸塩、デンプン、キチンおよびキトサンなどの多糖類、アガロース、ヒアルロン酸、ならびにそれらの誘導体またはコポリマー(例えば、グラフトコポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー)、またはそれらの混合物などを含んでよい。
【0206】
本発明で使用される添加剤は、任意の所望の特性、例えばスラリー原料中の所望の物理的な、機械的な、および熱的な特性を達成するために、構築材料およびその有機ポリマー結合剤に添加されてよい。本発明の好ましい実施形態では、添加剤が可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。添加剤は、約1体積%~約15体積%の量で使用されることが好ましい。添加剤の量は、本発明で選択される添加剤の特定の種類に応じて、前記範囲外で変化し得ることが理解される。
【0207】
可塑剤とは、スラリー供給原料に添加されて作業性、柔軟性および可塑性を向上させる物質を意味することが好ましい。好ましくは、可塑剤は、フタル酸ジブチル、フタル酸ジアリール、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ-2-メトキシエチル、フタル酸トリフェニル、(ジプロピレングリコール)ブチルエーテル、酒石酸ジブチル、モノリシノール酸ジエチレングリコールなどのフタル酸エステル、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、蜜蝋、カンデリラワックス、セラックワックス、カルナウバワックス、石油ワックス、またはそれらの混合物からなる群から選択される天然もしくは合成ワックス、グリセロール、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、エチルo-ベンゾイルベンゾエート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、N-エチルトルエンスルホンアミド、p-トルエンスルホン酸o-クレシル、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、およびこれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤を含む。
【0208】
消泡剤は、好ましくはスラリー供給原料の表面張力を低下させることによって泡を排除する物質である。消泡剤は、金属およびセラミックの表面特性を変化させ、揮発性有機溶媒の界面張力を低下させて発泡体を除去する役割を果たす。消泡剤は、好ましくはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールコポリマー、アルキルポリアクリレート、ポリジメチルシロキサン(シリコーン油)、エチレンビスステアラミド(EBS)、パラフィンワックス、エステルワックス、脂肪アルコールワックス、白色油または植物油、長鎖脂肪アルコールを有するワックス、脂肪酸石鹸、エステル、ポリエーテル変性ポリシリカンおよびトリアルカン/アルケンホスフェートならびにそれらの混合物を含む群から選択される。
【0209】
分散剤は、好ましくはケイ酸塩化合物、ポリカーボネートナトリウム、およびアルコールからなる群から選択される化合物である。分散剤は、好ましくはケイ酸塩化合物、ポリカーボネートナトリウム、およびアルコールからなる群から選択される化合物である。
【0210】
犠牲材料は、焼結前に緑色部品または褐色部品中に存在していれば、褐色部品を焼結して最終的な物品または最終部品になるまで形成された完全焼結体(すなわち、最終部品)内に、少なくとも同じ形態で、任意の有意な量で存在しない物質であることが好ましい。一実施形態では、犠牲材料は、緑色または褐色部品上に層を形成し、後に取り除かれて空隙を残す。犠牲物質は、焼結工程中に昇温されると、最初に緑色または褐色部品内に液相を形成し、その後、1つまたは複数のガス状副生成物として気化または、分解して、緑色または褐色部品を残すオルトリン酸アルミニウムを含んでよい。犠牲材料は、パラフィンワックスを含むことが好ましい。
【0211】
散逸材料は、セラミック部品分および/または金属部分を傾斜機能物品の三次元造形物内に鋳造するための鋳型として機能することができ、次いでセラミックおよび/または金属鋳造部分を損なうことなく溶解、融解および/または蒸発させることによってセラミック鋳造部分および/または金属部分から除去することができる材料であることが好ましい。本発明において使用される散逸材料は、(セラミックまた金属のコア材料に対する)熱膨張および/または散逸性を持つ様態などの所望の特性を達成するように選択されるゴムまたはプラスチック材料であってよい。
【0212】
一実施形態では犠牲材料、散逸材料、またはそれらの組み合わせは、先行部品または熱分解、溶媒脱結合、またはそれらの任意の組み合わせによってポリマー結合剤が脱結合された(すなわち、褐色部品)先行部品から除去される。熱分解は、犠牲材料および/または構築材料以外の散逸材料、すなわち金属粒子および/またはセラミック粒子の加熱、熱脱結合、緻密化/焼結、部分的または完了溶融を含む群から選択することができることが好ましい。前記溶媒脱結合は、先行部品、褐色部品および/または最終部品を、犠牲材料および/または散逸材料を溶解する溶媒に浸漬することを含んでもよい。歪みをより良好に制御して、脱結合の時間を大幅に短縮することが可能である。前記溶媒としては、n-ヘキサン、ヘプタン、シンナー、アセトン、メチルエチルケトン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、塩化メチレン、および超臨界二酸化炭素などの代替溶媒、ならびに水などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0213】
骨格材料は、好ましくはそのスラリー原料に機械的一体性を付与するためのバットレス材料である。前記骨格材料は、キトサン、フィブリン、変性アルギン酸塩などのゲル様材料、ポリカプロラクトンおよび他のプラスチックなどの頑丈な材料、ならびにセラミックおよび他の粉末、ヒドロキシアパタイト、またはリン酸三カルシウムを含有するスラリーを含む群から選択されてもよい。骨格材料はまた、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびポリ(ラクチド-co-グリコリド)を含んでもよい。
【0214】
本発明で使用される水溶性無機塩は、好ましくは硝酸塩、ホウ酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ケイ酸塩、リン酸塩、I族元素の塩、アンモニウム塩およびそれらの組み合わせを含む群から選択される。一実施形態では、水溶性無機塩が希土類金属塩化物を含む。
【0215】
発泡剤(foaming agentまたはblowing agent)は、好ましくはスラリー原料、特にその構築材料の金属および/またはセラミック中に、発泡体、好ましくは一般に気泡発泡体を形成することができる成分、または複数の成分の組み合わせを指す。発泡剤は、固体、液体、または超臨界材料であってもよい。
【0216】
本発明の好ましい実施形態では、発泡剤が室温で液状または固形であり、構築材料の融解温度より低い分解温度を有し、分解温度より高い温度に加熱されると、窒素、二酸化炭素またはアンモニアなどの気体を発生させながら分解する熱分解性剤である。発泡剤は、アゾジカルボンアミドおよび/またはその金属塩、ヒドラゾジカルボンアミド、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、アジ化カルシウム、トリヒドラジノ-sym-トリアジン、pp’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチルオジニトリル、トルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルヒドラジド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム、およびそれらの組み合わせを含む群から選択されてよい。多糖類発泡剤は、好ましくはアロールート粉末、タピオカデンプン、ジャガイモデンプン、コムギ、イネ、および、トウモロコシ粉末を含む。発泡剤の量は、所望の膨張係数にしたがって決定することができる。
【0217】
本発明で用いる添加剤としてのグラフェンは、複数の炭素原子が共有結合してなる多環芳香族化合物が好ましい。共有結合した炭素原子は繰り返し単位として6員炭素環を形成し、さらに5員炭素環および/または7員炭素環を含んでいてもよい。本発明では、グラフェンが単層グラフェンに限定されず、例えば、最大10個の単層グラフェン層を有するマルチグラフェンも包含する。グラフェンは、好ましくは酸化グラフェンまたはアミド修飾グラフェンなどの修飾グラフェンに加えて、純粋または天然グラフェンを含む。
【0218】
「グラファイト酸」および「酸化グラファイト」としても知られる酸化グラフェンは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、またはエポキシ基などの酸素を含む官能基が様々な割合でグラフェン上に結合する構造を含むことができるが、これらに限定されるものではなく、グラファイトを強力な酸化剤で処理することによって得てよい。本発明の一実施形態では、酸化グラフェンが酸化グラフェンを含むナノコンポジットを含む。酸化グラフェンは、また、還元された酸化グラフェン、つまり、還元された形態の酸化グラフェンを含み、例えば、還元処理に供され部分的にまたは実質的に還元された酸化グラフェンである。還元された酸化グラフェンは、還元処理によって酸素のパーセンテージが減少した酸化グラフェンも指す。
【0219】
他の添加剤、例えば、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、および離型剤を本発明で使用することができる。
【0220】
揮発性有機溶媒は、構築材料に対して化学的に不活性であるが、好ましくは本発明のシステムによって、鋳造中または鋳造後に蒸発または放出される。揮発性有機溶媒は、構築材料以外のスラリー供給原料の成分(例えば、有機高分子結合剤)を完全に溶解させるために必要であり、湿潤剤としても機能する。また、物品の組成、充填パターンを含む構造、またはそれらの任意の組み合わせにおいて、構築材料(すなわち、金属およびセラミック)のばらつき(変化)を促進し、引火点が比較的高く、および、臭気が比較的少ない揮発性有機溶媒を使用することが望ましい。揮発性有機溶媒は、好ましくは約20℃で約0.133mbarまたは13.3Pa(0.1mmHg)を超える低い蒸気圧を有する溶媒である。
【0221】
揮発性有機溶媒は、約1体積%~約50体積%の量で使用されることが好ましい。本発明の一実施形態には、有機ポリマー結合剤溶液である第2のプレミックスとして得られる溶液の好ましい濃度または所望の濃度を考慮して、その有機ポリマー結合剤中に適量の揮発性有機溶媒を使用すべきである。
【0222】
揮発性有機溶媒は、好ましくはアセトン、ブタノン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノンを含むケトン、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールおよびブタノールを含むアルコール、ギ酸メチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、1,2-ジメトキシエタン、γ-ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオザン、ニトロメタン、アセトニトリル、メチルシクロヘキサン、n-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0223】
本発明の様々な実施形態において、添加剤と混合された構築材料は、第1のプレミックスを形成し、揮発性有機溶媒(すなわち、前記有機ポリマー結合剤溶液)と共に、または、その中で溶解された前記有機ポリマー結合剤は、第2のプレミックスを形成することが好ましい。第1のプレミックスおよび第2のプレミックスは、は実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成するために混合され、次いで、鋳型のキャビティ内での鋳造に供されることが好ましい。その後、その鋳型は、転相により物品の先行部品を製造するための凝固槽の中で実質的に浸漬されていて、それによって、得られる物品(すなわち、先行部品)に形成される多孔度または細孔を可能な限り最小限で制御または操作するために、揮発性有機溶媒が物品から抽出される。第2のプレミックスは、約10体積%~約90体積%、より好ましくは約10体積%~約70体積%の量であることが好ましい。
【0224】
そのミキシングは、前記物品の先行部品を製造するために本システムに供される、実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成または生成することが好ましい。本発明の実質的に均一で流動性のスラリー混合物は組成物の少なくとも2つの無作為な試料がその中の成分(例えば、構築材料、有機ポリマー結合剤、添加剤、および/または揮発性有機溶媒)の大まかにまたは実質的に同じ量、濃度および分配を有するように、同じ状態で実質的に1つの形態相を有する均一に混合される組成物を指すことができる。本発明の実質的に均一で流動性のスラリー混合物はまた、重力下で流動性であり、かつ/または投入(ポンプ輸送)され得る成分(例えば、構築材料、有機ポリマー結合剤、添加剤および/または揮発性有機溶媒)を有する組成物を包含することを意味する。また、実質的に均一で流動性のスラリー混合物は、容器などの格納容器から重力、または、従来の機械式、油圧、または空気圧式のポンプ輸送手段によって輸送される組成物の性能を示す。
【0225】
1つの好ましい実施形態では、実質的に均一で流動性のスラリー混合物は、2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を含む。図20および図21に概略的に示されるように、2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物は、静的または動的ミキサを使用しまたは使用せずに、in-situで瞬時に混合されて、1つの実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する。前記2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物は、それぞれ、第1のプレミックスと第2のプレミックスとを含む2種の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を含むことが好ましい。例えば、2種の実質的に均一で流動性のスラリー混合物、すなわち、第1の実質的に均一で流動性のスラリー混合物と、第2の実質的に均一で流動性のスラリー混合物とがある。第1の実質的に均一で流動性のスラリー混合物は、好ましくは添加剤である分散剤と混合された構築材料である金属を含む第1のプレミックスと、揮発性有機溶媒であるアセトン中に溶解された前記有機ポリマー結合剤であるセルロースエステルを含む第2のプレミックスとを含む。第2の実質的に均一で流動性のスラリー混合物は、好ましくは添加剤である発泡剤と混合された構築材料であるセラミックを含む第1のプレミックスと、揮発性有機溶媒であるブタノン中に溶解された前記有機ポリマー結合剤であるセルロースエーテルを含む第2のプレミックスとを含む。得られた第1および第2の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を、前記単一の静的または動的ミキサ中で混合して、鋳型への投入前に単一の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する。
【0226】
「in-situ」という用語は、混合が行われる、または、混合を提供する場所、またはオンサイト混合を意味することが理解されるのであろう。したがって、混合部位でスラリー供給原料を形成するために、構築材料、有機ポリマー結合剤、添加剤および/または揮発性有機溶媒は、一般に、共注入される(共送達される)か、または、単一の静的または動的ミキサ(目的部位)にともに供されて、単一の静的または動的ミキサ内の共噴射部位で混合または集合させられる。
【0227】
「瞬間的に」または「瞬間的な」という用語は構築材料、有機ポリマー結合剤、添加剤、揮発性有機溶媒、添加剤と混合された構築材料、および/または揮発性有機溶媒(すなわち、有機ポリマー結合剤溶液)と共にまたはその中に溶解された前記有機ポリマー結合剤を混合して、その単一の静的または動的ミキサ中でそのスラリー供給原料を準備するのに必要な時間を意味することも理解されよう。本発明では、このような瞬間的な混合は、1秒から数秒の時間で行われてよい。処理の合計時間と比較して、数秒単位の混合は、非常に迅速または瞬間的であると考えることができる。
【0228】
本明細書で使用される「単一の静的または動的ミキサ」という用語は従来技術のように、複数の非動作的に連結されたランダムミキサではなく、静的または動的ミキサの単一のユニットを指すことをさらに理解されたい。
【0229】
本発明の様々な実施形態において、有機ポリマー結合剤は、好ましくは前記熱分解温度に基づく熱分解処理、溶媒脱結合処理、またはこれらの組み合わせにおいて、先行部品から脱結合される。熱分解処理は先行部品内の残留応力を緩和するかまたはさらに高めるために、構築材料以外の部品、すなわち金属粒子および/またはセラミック粒子以外の加熱、熱脱結合、緻密化/焼結、部分的または完了溶融、および/または、潜在的に緻密化後のアニーリングを含む群から選択することができることが好ましい。ある実施例では、加熱の熱分解処理が室温で、または通常の熱処理時間および温度よりも低い温度および短い時間で、例えば、約60℃~約200℃で、約10分~約10時間で効果を得られてよい。
【0230】
先行部品の溶媒脱結合処理は、先行部品を溶媒と接触させて、溶解可能な結合剤(もしあれば、添加剤と共に)を本体から抽出することを含んでもよい。本発明による溶媒脱結合に適した溶剤としては、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、ヘプタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、塩化メチレン、および、例えば超臨界二酸化炭素、および水などの代替溶剤が挙げられる。
【0231】
前記熱分解処理および/または前記先行部品の前記溶媒脱結合処理は、その後焼結処理が行われて、物品の最終部品を作製する。
【0232】
本発明の好ましい一実施形態によれば、前記先行部品(または緑色部品)を得るために、以下のものを実用的に使用してよい。
【0233】
表11:第1の混合物の組成物
【表11】
【0234】
表12:第2の混合物の組成物
【表12】
【0235】
図22を参照すると、物品の鋳造に使用するためのスラリー供給原料を準備する方法は、好ましくは以下の工程を含む。
(a)金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含む構築材料を準備する準備工程であって、
(a-1)多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせである構築材料を供給する工程と、
(a-2)構築材料を10体積%~90体積%の量で供給する工程と、を含む前記準備工程と、
(b)セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択される有機ポリマー結合剤を準備する準備工程であって、
(b-2)有機ポリマー結合剤を50g/L~550g/Lの濃度で提供する工程を含む前記準備工程と、
(c)可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤を準備する準備工程と、
(d)揮発性有機溶媒を準備する準備工程と、
(e)混合された構築材料と添加剤を混合して第1のプレミックスを形成する形成工程と、
(f)溶解された有機ポリマー結合剤と揮発性有機溶媒を混合して第2のプレミックスを形成する形成工程と、
(g)第1のプレミックスと第2のプレミックスを混合して、実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成し、前記物品の先行部品を転相により作製するための凝固槽の中で実質的に浸漬された鋳型のキャビティでの鋳造に供される、実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する形成工程と、を備える。それによって、得られる物品(すなわち、先行部品)に形成される多孔性または細孔を可能な限り最小限で調節、制御または操作するために、揮発性有機溶媒が物品から抽出されたものである。
【0236】
この方法は、各々がそれぞれの第1のプレミックスおよびそれぞれの第2のプレミックスをそれぞれ含む、2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する形成工程と、2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を、in-situで静的または動的ミキサにより瞬間的に混合して、1種の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する形成工程とをさらに含むことが好ましい。
【0237】
以前の段落に記載されているように、有機ポリマー結合剤は、熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方により先行部品から脱結合され、その後に行われる焼結処理により、1つ以上の方向に最終部品の体積にわたって徐々に変化する組成、充填パターンを含む構成、またはそれらの任意の組み合わせが選択的に変化する構築材料を含む物品の最終部品が作製される。
【0238】
この方法は明瞭化のために番号が付与された系列として示されているが、番号の付与は必ずしもステップの順序を記述しているわけではない。これらのステップのいくつかは、省略されたり、並行して実施されたり、または厳密な順番を維持することを必要とせずに実施されたりし得ることを理解されたい。
【0239】
図23および図24を参照すると、物品を鋳造する方法は、好ましくは以下の工程を含む。
(a)スラリー供給原料を供給する供給工程であって、
(a-1)金属、セラミック、またはそれらの任意の組み合わせを含む構築材料を準備する準備工程であって、
(a-1-3)多孔質、非多孔質、またはそれらの任意の組み合わせである前記構築材料を供給する工程と、
(a-1-4)構築材料を10体積%~90体積%の量で供給する工程と、を含む前記準備工程と、
(a-2)セルロースエステル、セルロースエーテル、およびそれらの誘導体を含む群から選択される有機ポリマー結合剤を準備する準備工程であって、
(a-2-2)有機ポリマー結合剤を50g/L~550g/Lの濃度で提供する工程を含む前記準備工程と、
(a-3)可塑剤、消泡剤、分散剤、犠牲材料、散逸材料、骨格材料、水溶性無機塩、発泡剤、グラフェン、酸化グラフェン、難燃剤、トナー、離型添加剤、安定剤、帯電防止剤、衝撃改質剤、着色剤、酸化防止剤、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される添加剤を準備する準備工程と、
(a-4)揮発性有機溶媒を準備する準備工程と、を含む前記供給工程と、
(b)混合された構築材料と添加剤を混合して第1のプレミックスを形成する形成工程と、
【0240】
(c)溶解された有機ポリマー結合剤と揮発性有機溶媒を混合して第2のプレミックスを形成する形成工程と、
(d)第1のプレミックスと第2のプレミックスを混合して、実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する形成工程と、
(e)前記実質的に均一で流動性のスラリー混合物を鋳型の中での鋳造に供する工程と、
(f)実質的に均一で流動性のスラリー混合物で満たされたキャビティをもつ鋳型を凝固槽の中に実質的に浸漬させて、転相により揮発性有機溶媒を抽出して前記物品の先行部品を作製する工程と、
(g)熱分解処理および溶媒脱結合処理のいずれかまたは両方により、先行部品から有機ポリマー結合剤を脱結合する脱結合工程と、
(h)有機ポリマー結合剤を脱結合または除去した先行部品(すなわち、褐色部品)を、物品の最終部品を作製するために焼結処理に供する工程と、を備える。
【0241】
この方法は、各々がそれぞれの第1のプレミックスおよびそれぞれの第2のプレミックスをそれぞれ含む、2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する形成工程と、2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を、in-situで静的または動的ミキサにより瞬間的に混合して、1種の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成する形成工程とをさらに含むことが好ましい。
【0242】
この方法は明瞭化のために番号が付与された系列として示されているが、番号の付与は必ずしもステップの順序を記述しているわけではない。これらのステップのいくつかは、省略されたり、並行して実施されたり、または厳密な順番を維持することを必要とせずに実施されたりし得ることを理解されたい。
【0243】
本発明の好ましい一実施形態では、物品を鋳造するために使用されるシステムが、好ましくは1つ以上の容器、(再使用可能な)鋳型、凝固槽、脱結合手段、および任意選択で、単一の静的または動的ミキサを含む。
【0244】
1つ以上の容器、または、コンテナ、槽、またはベッセルは、以前の段落に記載されるように、スラリー供給原料および/またはその構成要素を別々に収容するように構成されることが好ましい。上記の容器は、気密封止されることが好ましい。容器は、様々な形状およびサイズの金属、プラスチックなど、またはそれらの複合体から作製され得る。
【0245】
一実施形態では、各容器が、個々の個別の方法で、構築材料、有機ポリマー結合剤、添加剤、および揮発性有機溶媒を収容する。例えば、4つの別個の容器が備えられ、それぞれが、構築材料、有機ポリマー結合剤、添加剤、および揮発性有機溶媒を貯蔵するように適合される。これらの4つの容器は、スラリー供給原料の前記構成要素のin-situにおける混合のために特別に構成される。
【0246】
別の態様では、構築材料の金属およびセラミックが異なる別個の容器に収容される。一例として、金属粒子は第1の容器に、セラミック粒子は第2の容器に格納される。構築材料の金属およびセラミックは、例えば、特定の金属またはセラミックの特性(例えば、物理的特性、化学的特性、レオロジー特性など)、金属および/またはセラミックの種類(例えば、金属A、金属B、セラミックA、セラミックB、多孔質金属A、多孔質金属B、多孔質セラミックA、多孔質セラミックBなど)、ならびにその物品の必要とされる最終特性に応じて、多くの別個の容器にさらに貯蔵することができる。本発明の別の態様では、構築材料が第1のプレミックスを形成する添加剤と混合され、1つの容器内に貯蔵でき、有機ポリマー結合剤は第2のプレミックスを形成する揮発性有機溶媒と共にまたは、その中で溶解され、別の容器内に貯蔵できる。これらの2つの容器はそのような混合物(すなわち、予め混合された構築材料および添加剤、ならびに揮発性有機溶媒中の予め溶解された有機ポリマー結合剤)を前記静的または動的ミキサに供給するように構成される。
【0247】
さらに別の実施形態では、第1の容器が1種の添加剤および前記有機ポリマー結合剤溶液と混合された構築材料を含有する実質的に均一で流動性のスラリー混合物であるスラリー共有原料を貯蔵するように構成され、第2の容器は前記有機ポリマー結合剤溶液と混合された別の添加剤を貯蔵するように構成される。前記第1の容器および前記第2の容器は、任意の所望のまたは目標とされる充填パターンを得るために、物品の微小多孔度を変化させるように配置されることが好ましい。この点に関して、前記別の添加剤は、犠牲材料および/または散逸材料である。上述の容器の配置は、微小多孔度を変化に対しては適用可能ではない場合がある。
【0248】
再利用可能である鋳型は、本質的にそのキャビティ内で1つ以上の容器から受け入れられるかまたは投入される前記実質的に均一で流動性のスラリー混合物を成形するように構成される。キャビティは、好ましくは所望の形状を有する物品を得るために使用される。キャビティは、鋳型の本体内で同心円状に、内部に、および中心に形成されることが好ましい。一実施形態に、金型は、キャビティを取り囲む任意の所望形状の、効果的に連続した鋳型壁面または鋳造面を有する。前記キャビティは、規則的または不規則な多角形形状を含む任意の形状、例えば、ベル形状、ピラミッドトランク形状、および2つの底面を持つ欠球形状であってよい。
【0249】
鋳型壁の形状は多くの場合、長方形または正方形であるが、対応する断面形状を持つ物品を製造するために、円形または任意の他の対称または非対称形状であってよい。所望であれば、包囲金型壁は、例えば、壁によって画定されるキャビティの断面積および形状を変化させるために、一対の平行な側壁の間で摺動可能な端壁を設けることによって、長さおよび/または形状が調整可能であってもよい。そのような構成では、端壁は側壁部と一体でなくてもよいが、端壁と側壁部とから構成される組み合わされた鋳型壁が効果的に連続し、溶融金属漏れを回避するように、壁は互いに密接に嵌合する。
【0250】
好ましい一実施形態では、鋳型がキャビティが凹んでいるかまたは形成されている第1の部品を備える。鋳型の第1の部品は互いに対向し、中央分割平面に沿って接合して第1の部品の単一の部品を形成する面を有する2つの部分部品によって画定されてもよい。その2つの部分部品は、継ぎ目なく接合または嵌合され、ピンおよび掛け金のような係止手段の有無にかかわらず、所定の位置に保持され得るメス部分部品とオス部分部品とを含むことが好ましい。その第1の部品の2つの部分部品は、前記空キャビティからその結果として生じる先行部品を取り外しまたは除去するために、分解または取り外し可能であることができる。
【0251】
鋳型の第1の部品は、シリコーン、セラミック、コンクリート、熱可塑性物質、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、架橋ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレート、およびポリプロピレンを含む紫外線硬化樹脂、ポリカーボネート、ポリラクチド、エポキシ樹脂、アクリロニトリルブタジエン、スチレン、ガラス繊維、ナイロン、およびそれらの任意の組み合わせから製造されるか、またはそれらから選択される材料から製造されることが好ましい。ケトンおよびアルコール溶媒に対して、非溶解性である他の物質もまた、本発明の本発明で使用することができる。一実施形態では、鋳型の第1の部品は、積層造形または三次元(3D)プリントによって得られ、製造され、または準備される。
【0252】
鋳型の第1の部品は、透過性または非透過性であってもよい。透過性をもつ場合、第1の部品が透過性の壁部を有する周壁を有してもよい。本明細書では透過性という言葉を使用するが、第1の部品の周壁全体が必ずしも透過性である必要はなく、その代わりに、気体の流れが望まれるその一部分のみが透過性である。前記透過性壁部分は、セラミック、シリコーン(材料の特性による)、またはエンジニアリング設計構造である鋳型上にプリントされた微細構造から作製することができる。透過性の第1の部品は本質的に、凝固浴中の非溶媒微粒子とスラリー混合物中の溶媒との間で相変化が起こることを可能にするように構成され、乾燥工程中に物品中に制御可能な細孔が形成される。
【0253】
本発明の鋳型は、第2の部品をさらに含んでよい。好ましくは単一部品である第2の部品は、前記第1の部品を取り外し可能に包むように構成される。前記第2の部分は第1の部品がぴったり合うように挿入可能であるように、第1の部品の外壁と摺動可能に係合可能な管状または細長い外筒状でよい。第2の部品は、第1の部品の一部または実質的に全体を包むかまたは覆うことができる。第2の部分は、第1の部品に対して耐液性の構造であっても、そうでなくてもよい。一実施形態では、鋳型の第2の部分は第1の部品および/またはそのキャビティ内に投入された実質的に均一で流動性のスラリー混合物に、例えば凝固槽からの液体が入って接し、転相を開始することを可能にしてよい。
【0254】
前記第2の部分は、第1の部品と同じ物質から製造されてもよい。一実施形態では、第2の部品は、積層造形または3Dプリントによって得られ、製造され、または準備される。第2の部分の強度および構造的一体性を増大、向上または改善するために、中実のシリコーンを鋳型の第2の部分に塗布することができる。
【0255】
鋳型の第2の部分は、透過性または非透過性であってもよい。透過性をもつ場合、第2の部品が透過性の壁部を有する周壁を有してもよい。本明細書では透過性という言葉を使用するが、第2の部品の周壁全体が必ずしも透過性である必要はなく、その代わりに、気体の流れが望まれるその一部分のみが透過性である。前記透過性壁部分は、セラミック、シリコーン(材料の特性による)、またはエンジニアリング設計構造である鋳型上にプリントされた微細構造から作製することができる。透過性の第2の部品は本質的に、凝固浴中の非溶媒微粒子とスラリー混合物中の溶媒との間で相変化が起こることを可能にするように構成され、乾燥工程中に物品中に制御可能な細孔が形成される。
【0256】
本発明の好ましい一実施形態では、鋳型の第1の部品は、鋳造すべき物理的な物品が陰性シリコーン鋳型を形成するために使用されるシリコーン鋳型製造工程によって準備することができる。シリコーン鋳型を鋳造し、透過性シリコーン配合物(すなわち、室温加硫(RTV)シリコーン/白金硬化シリコーンと、その粒径が5~10μm以内である微細塩との混合物)を使用して洗浄プロセスに供して、5~10μmの孔径を有する透過性シリコーンモールドを形成する。これにより、鋳造スラリー混合物と非溶媒との間で転相を行うことができる。成形型の第2の部分は外部透過性の成形型であり、成形型の剛性を高め、再利用性を延ばすために、中実のシリコーンウォールでコーティングできる。
【0257】
本発明の別の好ましい実施形態では、鋳型が種々の熱可塑性樹脂、例えば、HDPE、LDPE、PETG、PP、PCなどの熱可塑性樹脂、またはケトン&アルコール溶媒に非溶解性である熱可塑性樹脂を使用するフューズデポジション法(FDM)による3Dプリント工程、ケトン基に抵抗するUVベースレジンを使用するステレオリソグラフィ(SLA)、または、透過性シリコーン配合物を使用して透過性鋳型を形成する直接インク書込み法によって作製することができる。FDMおよびSLA法の場合では、透過性鋳型は、鋳型設計のマイクロチャネルに埋め込まれ、3Dプリントを使用して実現されることによって得ることができる。
【0258】
本発明の一実施形態によれば、本発明による物品の製造において、これは、異なる材料成分(例えば、図2および図3の材料Aおよび材料B)の少なくとも2つの異なる実質的に均一で流動性のスラリー混合物から、1つの一体化された部品に鋳造される。少なくとも2つの異なる実質的に均一で流動性のスラリー混合物は、鋳型内に供給され、鋳型に囲まれたキャビティの形状によりその形状が画定される鋳造物に硬化される。鋳造操作は、異なる実質的に均一で流動性のスラリー混合物の間の明確で鋭い界面が達成されるように実施されてもよく、あるいは、2つの異なる実質的に均一で流動性のスラリー混合物の一定の混合が界面ゾーンで起こるように実施されてもよい。
【0259】
明確に画定された界面が生じるような鋳造作業では、物品の第1の鋳造部分が実質的に均一で流動性のスラリー混合物の混合が生じない程度にまで硬化させられる。
【0260】
物品の鋳造部分の間に界面領域が形成されるような鋳造では、第1の鋳造部分の硬化および冷却が実質的に均一で流動性のスラリー混合物の限定された混合が起こり得るか、または所定の溶解、軟化、または任意の他の変更がすでに鋳造された部分に起こり得る限り、継続することができる。最初に鋳造された実質的に均一で流動性のスラリー混合物の積極的な冷却または休止冷却は、硬化領域が鋳造物を通って移動し、最終的に追加の鋳造が行われる鋳造部分のその側に到達するように、方向付けられた様式で実施されてもよい。
【0261】
凝固槽は、実質的に均一で流動性のスラリー混合物で充填された鋳型を一定期間(例えば、6、12および24時間)浸漬して、転相によって前記物品の先行部品を作製するように構成されるのが好ましい。転相中、前記実質的に均一で流動性のスラリー混合物中の揮発性有機溶媒は、得られる物品(すなわち、先行部品)に形成される多孔性または細孔を可能な限り最小限で調整、制御または操作するために物品から抽出されることが好ましい。結合剤と構築材料との間のセルロース結合剤濃度および体積混合物、すなわち、金属/セラミック粉末含有量を制御することによって、多孔質および/または非多孔質物品を鋳造することができるが、これは従来の鋳造方法では実現不可能である。
【0262】
鋳型のキャビティ内に貯蔵されたスラリー供給原料の転相が起こる凝固槽は、好ましくは非溶媒液体(または凝固液体)である。前記非溶媒液は、水、蒸留水、純水、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択することができる。有機ポリマー結合剤に非溶剤の他の液も本発明で使用することができる。前記凝固槽は、好ましくは前記鋳型をその中に受け入れ、浸漬するのに適した容器中に提供される。一実施形態では、前記凝固槽を保管する容器は1つ以上の型を受けいれ、同時にそれら対応することができる。容器は、前記容器内に取り外し可能に取り付けられた保持フレームを有することができる。好適な係止部材を有する保持フレームは、好ましくは凝固槽内の指定された位置に前記鋳型を固定または保持するように構成される。保持フレームは前記フレームを、鋳型を回収するために凝固槽の上方に持ち上げ、鋳型を浸漬するために容器底面と水平にすることなどができるように、調節可能な取り付け部をさらに備えることができる。
【0263】
脱結合手段は、その鋳型から回収された先行部品から有機ポリマー結合剤を脱結合または除去するためのメカニズムを指す後処理ユニットであることが好ましい。好ましい一実施形態において、脱結合手段は、物品の最終部品を作製するための焼結処理がその後に行われる、熱分解処理を行うための熱分解処理部と、溶媒脱結合処理を行うための溶媒脱結合処理部とのいずれか一方または両方を含む。脱結合手段はまた、焼結処理部を含んでもよい。
【0264】
本発明で任意に使用される単一の静的または動的ミキサは、好ましくは2種以上の実質的に均一で流動性のスラリー混合物をin-situで単独で、瞬間的に混合して、鋳型に移動させる(移送する)前に、1つまたは単一の実質的に均一で流動性のスラリー混合物を形成するように構成される。
【0265】
単一の静的ミキサまたはモーションレスミキサは、本質的に、内部移動機械部品を含まないミキサである。静的ミキサは、1つ以上の実質的に静止した混合要素、例えば、ブレード、プレート、羽根などの邪魔板を含む装置であり、スラリー供給原料など流動流体および/またはそれらの成分を導管を通じで混合して、流れの分割や分裂パターンを生成して、流動液体中で、例えば放射状の循環や交換によるらせん状の混合のような混合を達成する。静的混合要素は、典型的には導管内で不動であるが、流動流体の混合に実質的に寄与しない限り、導管に対して移動が制限された静止要素の制限された移動が起こり得る。複数の静的混合要素を有する静的ミキサでは、これらの要素が互いに対して直列に、および/または互い違いに配置されることができる。静的ミキサは、好ましくは混合された流動流れ、すなわち、実質的に均一で流動性のスラリー混合物を、ミキサの短い長さにわたって生成するように選択される。一方、動的ミキサは、前記静的ミキサとは逆であり、移動部品を含むことが好ましい。動的ミキサは、スラリー供給原料およびその構成成分を、それらがそこに装填された後または装填されている間に一緒に混合することができる。当業者であれば適切に選択できるように、前述のミキサの代わりに、同様の性質を持つ他のミキサを使用することもできるであろう。
【0266】
一実施形態では、本発明のスラリーミックスプリントは、硬化した物品を形成するための溶剤系結合剤の蒸着に依存する。したがって、有機ポリマー結合剤の濃度および前記結合剤と結合粒子(すなわち、金属および/またはセラミック粉末)との間の率の制御は、鋳造物品が型内に投入または堆積されると、その形状を維持するのに十分な静的降伏応力を有することを確実にするための重要なステップとなる。
【0267】
効果的に均一な混合物を得るために、スラリー混合物は、両方のタイプの材料原料がある範囲の剪断速度にわたって粘度変化のわずかな変動を有するように準備されなければならない。
【0268】
異なるタイプの粉末サイズまたは形状は、それらのレオロジー挙動に関して有意な差異をもたらす。レオロジーの調整は、それぞれの材料内、かつ、全ての変動混合物にわたる両方の混合物の組み合わせで行われなければならない。理想的には、それらは金属および/またはセラミックでは約30~90体積%、前記有機ポリマー結合剤では約50~500g/Lおよび/または2.5~70体積%、ならびに添加剤では約1~15体積%の範囲内であるべきである。2つの材料間の広い範囲の比にわたって変化し得る有効な混合物は、2つの材料を単に一緒に混合することによって得られるものではない。例として、約10~80体積%の鋳造率に適した流動性混合物を得るためには、原料材料Aが非常に粘性であり、材料Bがその材料の状態で非常に液状であることが必要とされる場合がある。両方のスラリーは本質的に非ニュートン流体であるので、同様のせん断速度またはポンピング速度は異なった体積流量をもたらす可能性があり、これはユーザによってプログラムされた混合比が不正確となる可能性がある。したがって、本発明では原料材料のレオロジープロファイル(すなわち、スラリー供給原料の構成要素)およびそれらの混合物は実験構成によって達成され、マッピングされなければならない。これらのレオロジープロファイルは材料プロファイルの設計と統合されて、均一な混合比が得られるように、両方のスラリーの送り体積流量が一貫していることを確実にするために、純粋なGcodeの後処理中に含まれるべき独特の補償係数を形成する。2つの材料の間に達成可能な効果的な混合比があり、すなわち、それは通常、約10~90%の範囲である。これは、形成される必要がある物品の必要性および特性に応じて、金属およびセラミック混合物、すなわち、金属Aおよび金属B、金属A(多孔質混合物)および金属A(非多孔質混合物)、セラミックA(多孔質)およびセラミックA(非多孔質)またはセラミックAおよびセラミックBの形成の生成を可能にする。ミキサを通って流れる材料の混合物は、3種類以上の材料であってもよく、任意の図に示されるものに限定されない。この構成により、材料Aと材料Bとを、鋳造処理中に正確な比率で混合することができる。
【0269】
構成の例を以下に示す。
・材料A(液状の低濃度結合剤を有する金属/セラミックA)および材料B(添加剤のプレミックスを有する純粋な結合剤)。
・材料A(多孔質金属/セラミック混合物)は、材料A(濃縮混合物)を有する骨格非可溶性材料/発泡剤の添加によって形成され、材料Aは金属およびセラミックの群から選択することができる。これは、ソリッドかつ多孔質材料が充填される殻のような独特の構造の鋳造を可能にし、多孔質材料を充填することができる(図4参照)。
以下は、金属およびセラミックを含む、構築材料の非限定的な組み合わせである。
・金属-金属
(i)Al-Cu
(ii)AL-Ni
(iii)Ni-Ti
(iv)316L-H13
(v)“Ti-6Al-4V”-304L
(vi)低炭素鋼-高炭素鋼
(vii)304-304多孔質構造
・金属-セラミック
(i)Al-SiC
(ii)Al-Al
(iii)Ni-ZrO2
(iv)Cu-SiC
【0270】
・セラミック-セラミック
(i)SiC-SiC(異なる密度)
(ii)Al-Al(多孔質構造)
(iii)Al-SiC
(iv)Al-ZrO
低炭素鋼-高炭素鋼間の遷移には、以下の組成物を用いることができる。
【0271】
表13:第1の混合物の組成物
【表13】
【0272】
表14:第2の混合物の組成物
【表14】
【0273】
304~304多孔質構造の場合、構造の多孔度は、塩の結晶化のサイズによって制御される。以下のものを用いることができる。
【0274】
表15:第1の混合物の組成物
【表15】
【0275】
表16:第2の混合物の組成物
【表16】
【0276】
粘土と低炭素鋼との間の遷移には、以下のものを用いることができる。
【0277】
表17:第1の混合物の組成物
【表17】
【0278】
表18:第2の混合物の組成物
【表18】
【0279】
<さらなる実施形態/態様>
金属および/またはセラミック粉末-結合剤スラリー混合物の独特な組成を用いた新発明の3Dプリントシステムを供給原料材料として紹介した。金属および/またはセラミック混合物に使用される結合剤は、セルロースエステル、セルロースエーテルおよびその誘導体の群からの前記有機ポリマー結合剤からなる。それは、10~70体積%のベース結合剤としての有機溶媒に溶解され、30~90体積%の1種以上の金属および/またはセラミック粉末からなる固体粒子を添加剤(分散剤、レオロジー調整剤、消泡剤、または発泡剤)と結合させて、金属および/またはセラミック粉末結合剤スラリー混合物を形成する。
【0280】
本発明の一実施形態では、構築材料という用語が固体粒子材料または材料の粉末に関する。材料は、供給原料材料の準備の一部分として混合される。固体粒径は、0.1~100umの範囲であり得る。材料は「供給原料」または「スラリー混合物」の準備に使用される少なくとも1種の金属および/またはセラミックまたは2種以上の構築材料の混合物を指し、互換的に使用することができる。結合剤は、ここでは、エステル、エーテルおよび誘導体のみからなるセルロース群を指す。
【0281】
ここでは、エーテルおよびそのエステル基のセルロース誘導体は、その主分子鎖に連結されたエーテルおよびエステルの官能基を有するバイオベースポリマーの1つとして理解されるべきである。
【0282】
セルロースエーテルは、セルロースの無水グルコース単位中の水酸基の水素原子を、アルキル基または置換アルキル基に属するRで置換することにより生成される高分子質量化合物である。セルロースエーテルの例としては、メチルセルロースおよびエチルセルロースが挙げられる。
【0283】
セルロースエステルは、一般に、良好な膜形成特性を有する水不溶性ポリマーであり、有機基および無機基に分類される。セルロースアセテート(CA)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)などの様々なタイプの有機セルロースエステルを使用することができる。使用できる無機セルロースエステルは、硝酸セルロースおよび硫酸セルロースである。
【0284】
好ましい実施形態において、結合剤の分子質量は、Mw~10万未満である。スラリー混合物は最初に、溶媒100ml当たり20~70gの濃度範囲で結合剤を溶解することによって準備される(すなわち、純度≧95%)。
【0285】
ベース結合剤は、群の単一種の結合剤、分子量が異なる2種以上の群の類似または混合物、または、分子量が異なる2種以上の類似の群をベース結合の配合物としてブレンドしたものでありえる。異なる分子質量または異なる種類の結合剤群の混合物は、所望のレオロジーおよび硬化制御を達成することができる。同様に、結合剤を溶解するために選択される溶媒については、ベース結合剤の配合物中の混合物組成に応じて、単一のタイプまたは異なる溶媒の混合物であり得る。
【0286】
結合剤を溶解するために使用される溶媒は、ベース結合剤の配合物中の混合物組成に応じて、揮発性有機溶媒溶液であることが好ましい。使用される揮発性有機溶媒は、ケトンおよびエステルが好ましい。
【0287】
ケトンは、炭素原子が酸素原子に共有結合しているカルボニル基を持つことを特徴とする任意の級の有機化合物を指す。残りの2つの結合は、他の炭素原子または炭化水素ラジカル(R)に対するものである。ケトンの例としては、アセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコールおよび等が挙げられる。
【0288】
エステルは一般式RCOOR’を有する。式中、Rは水素原子、アルキル基、またはアリール基を示し、R’はアルキル基またはアリール基であり得るが、水素原子ではない。水素原子である場合、化合物はカルボン酸である。エステルの例としては、メチルホルメート、エチルラクテートなどが挙げられる。
【0289】
他の適切な有機溶媒は、ニトロメタン、アセトニトリル、メチルグリコール、テトラヒドロフラン、アルコール、エーテル、芳香族溶媒、脂肪族溶媒およびジアオキサンである。
【0290】
所望のレオロジー挙動およびプリント特性を得るために、可塑剤、消泡剤または発泡剤などの添加剤を配合物に添加することができる。発泡剤は、利用者がプリント工程中に所望の多孔度を形成するために、ミキシングを介してプリントされた物体の濃度を制御することを可能にする。発泡剤のin-situでの添加および混合によって、金属部分の多孔性もまた、プリント工程中に制御することができる。プリント工程中の結合剤の粘性、緑色部品結合剤の強度、構造的および機械的特徴、ならびに硬化速度を制御するために、同じ手法を適用することができる。固体粒子、この場合、金属および/またはセラミック粉末は、ベース結合剤溶液と予め混合された添加剤を湿潤および分散させてスラリー混合物を形成することによって準備することができる。混合物は制御された環境下、すなわち、真空および/または不活性ガス条件下で準備される。
【0291】
フタル酸エステル可塑剤はわずかな臭気および水への限定された溶解性を伴って無色に見えるが、様々な有機溶媒に混和性をもつ。フタル酸エステルは、オルトキシレンの酸化によって得られる無水フタル酸のエステル化によって製造される。
【0292】
フタレートは、アルキル、ベンジル、フェニル、シクロアルキル、またはアルコキシ基であり得る2つの側鎖(RおよびR’)を有するベンゼンジカルボン酸の基本構造を有する。各フタル酸エステルの決定的な特徴およびその分解パターンは、ジアルキル側鎖の長さによって決定される。フタル酸エステルがより分岐している場合、より多くの異性体が利用可能であり、おそらく疎水性である。フタル酸エステル可塑剤の例としては、ジブチルフタレート、ジアリールフタレート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジ-2-メトキシエチルフタレートが挙げられる。
【0293】
前記可塑剤は、前記結合剤の総質量に対して2~10重量%存在する。上記で特定された可塑剤の配合剤に加えて、可塑剤の具体的な例は、N-エチルトルエンスルホンアミド、p-トルエンスルホン酸o-クレシル、酒石酸ジブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリエチル、グリセロール、安息香酸エチルオベンゾイル、グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸メチルフタリルエチルなどからなる群から選択されてよい。
【0294】
ここで、可塑剤とは、物質の可塑性または流動性を高める部品を意味する。いくつかの態様では、部品が有機溶媒として導入され得るが、有機溶媒が蒸発することにつれて、可塑剤として機能し始める。結合剤の組成物は、可塑剤および少なくとも1種の有機溶媒を含み、したがって、有機溶媒が可塑剤として機能し始める場合、結合剤組成物は可塑剤も含有する。換言すれば、セルロースアセテートは溶液中で可塑化される。いくつかの態様では、可塑剤が少なくとも有機溶媒の1つと同じであってもよい。他の態様では、可塑剤が有機溶媒のいずれとも異なる。
【0295】
界面活性剤(例えば、アリールまたはアルキルホスフェート)とも呼ばれる消泡剤または分散剤を添加剤として添加して、液体(例えば、コロイドまたはエマルジョン)中の固体または液体粒子の懸濁を促進して、粒子の分離を改善し、沈降または凝集を防止することができる。分散剤の他の例は、トリエチルホスフェートおよびトリフェニルホスフェートである。
【0296】
金属材料の形態の固形微粒子の本実施形態は、以下の要素の1つまたは2つ以上の組み合わせ物からなる群を指す。
ステンレス鋼:17-4PH、304、304L、310、316、316L、420、440、430Lなど。
チタンおよびチタン合金:Ti64、Ti-6Al-4V、Ti64ELIなど。
アルミニウムおよびアルミニウム合金:AlSi10Mg、AlSi7Mg、ADC12、AlMg5Mnなど。
ニッケルおよびニッケル合金:718、625、Hastelloy(登録商標)X、Kovar、Invar 36、Hastelloy(登録商標)Cなど。
その他の金属:A2、D2、H13、M2、4140、CoCr、CoCrMo、銅合金、青銅、マグネシウム、炭素鋼、クロモリー鋼、Fe-3%Si、Fe-50%Ni、Fe-50%Co、W、WC-5Co、WC-1-Coなど。
【0297】
セラミック材料の形態の固形微粒子の本実施形態は、以下の要素の1つまたは2つ以上の組み合わせ物からなる群を指す。
【0298】
リン酸カルシウムセラミック:ヒドロキシアパタイト(HAp)、リン酸三カルシウム(TCP)、非晶質リン酸カルシウム(ACPs)、および二相性リン酸カルシウム(BCPs)
酸化物セラミック:酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、二酸化ジルコニウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)
ケイ酸塩セラミック:磁器、ケイ酸アルミニウム、カオリン、ケイ酸マグネシウム、ムライト
炭化物セラミック:炭化ホウ素、炭化ケイ素、炭化タングステン
窒化物セラミック:窒化ケイ素、酸窒化ケイ素アルミニウム、窒化アルミニウム、およびそれらの混合物
【0299】
粒子メッシュサイズは、200未満であることが好ましい。
【0300】
ここで、供給原料材料の使用について説明する。
【0301】
供給原料は、図25に示すように、スラリー混合物を層ごとに分配して3D物体を形成することができる押出ベースの3Dプリンタに供給される準備ができた、密閉された保存タンク12内に配置される。保存タンク12は、供給原料を、プリンタ制御部16によって駆動されるプログレッシブキャビティポンプ、蠕動ポンプ、または注射筒であってよいポンプ14に移送するために、加圧15される。ノズル18は、供給原料材料を移動させて分配し、緑色部品20を形成する。
【0302】
緑色部品20は、室温で、もしくは、さらに換気22を行って硬化させることができる。緑色部品20は、任意の熱板24上にプリントすることができる。30~100℃の加熱チャンバもまた、硬化プロセスを促進できる。プリントされた緑色部品20は、取り扱いを容易にするのに充分な保持力を有する。
【0303】
プリンタは、図26に示されるように、別個のノズル18A、18Bを通って送られる2種以上のスラリー金属および/またはセラミック混合物を用いて構成されて、後処理後に独特の多材料または別個の連続傾斜材料構造を形成することができる。
【0304】
スラリー混合物ベースのプリントのための別の構成は、図27に示されるように、in-situ混合によって実施することができる。第1の供給物質26および第2の供給物質28は、以下の構成を有するミキサ30中による混合の前に供給される。
第1の構成:
第1の供給物質:結合剤溶液
第2の供給物質:金属および/またはセラミック粉末溶液
第2の構成:
第1の供給物質:金属-結合剤スラリー混合物
第2の供給物質:セラミック-結合剤スラリー混合物
【0305】
2つの供給物質26、28は、プリント工程中にミキサ30に供給される。緑色部品20の後硬化は、その大きさに応じて、後処理工程に進む前に、完全に硬化された構造を確実にするために必要とされ得る。
【0306】
プリント物の後処理は、褐色部品34を形成するための脱結合処理32と、最終的な焼結部品38を形成するための焼結処理36とを含む。熱脱結合処理32および焼結処理36は、単一の加熱処理または2つの別個の処理によって、金属および/またはセラミック粒子の種類に基づく処理される材料の種類の特定の温度プロファイルにしたがって、制御された環境下で実施することができる。熱脱結合および焼結のプロファイルを図29に示す。熱脱結合中、緑色部品は結合剤の熱分解温度まで加熱され、保持時間は結合剤を完全に確実に除去するために、部品の大きさに応じて変化させることができる。続いて、処理されるべき材料の種類に応じた特定の温度で金属および/またはセラミック粒子を融合する焼結処理が行われる。さらに、熱処理、表面仕上げ、または機械加工などの後処理処理を行ってもよい。
【0307】
[例1]
15μmの平均粒径をもつ60体積%の17-4PH金属粉末、および40体積%の結合剤溶液を用いて、ステンレス鋼17-4PHを準備する。アセトン100mlの溶媒当たり40gの結合剤セルロースアセテート溶液を準備する。
【0308】
結合剤溶液中には、可塑剤、消泡剤および分散剤の混合物からなる添加剤が10体積%存在する。
【0309】
図30に、非加熱環境下の基本的なプリント構成を示す。この構成により、図31に示すような緑色部品20が生成された。後処理後、図32に示すような焼結ステンレス鋼38を得る。
【0310】
[例2]
セラミックの混合物を、70体積%のカオリン、および30体積%のバインダー溶液を用いて準備する。40gのセルロースアセテートを100mlのアセトン溶媒中で準備する。図33に、非加熱環境下の基本的なプリント構成を示す。この構成により、図34に示すような緑色部品20が生成された。後処理後、図35に示すような焼結セラミック38を得る。
【0311】
したがって、3Dプリントのための供給原料が導入される。供給原料は、金属および/またはセラミックスラリー混合物から作製される。供給原料は、意図された3D物体を得るために直接プリントすることができる。
【0312】
本発明の主題の概要が具体的な実施形態を参照して説明されたが、本開示の実施形態のより広い範囲から逸脱することなく、様々な変形および変更がこれらの実施形態に対して行なってよい。本発明の主題のそのような実施形態は本明細書において、単に便宜上、単独で、または集合的に、「発明」という語によって言及しているが、2つ以上の発明が実際に開示される場合、本出願の範囲を任意の単一の開示または発明概念に自発的に限定することを意図するものではない。
【0313】
本明細書に例示される実施形態は、当業者が開示されている教示を実施することを可能にするために十分に詳細に説明されている。
【0314】
本開示の範囲から逸脱することなく、構造的および論理的な置換および変更が行われるように、他の実施形態が使用され、それらの実施形態より引き出されてよい。したがって、詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、様々な実施形態の範囲はそのような特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の全範囲と共に、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0315】
本明細書で使用される場合、用語「または」は、包括的または排他的な意味のいずれかで解釈され得る。さらに、本明細書では、一例として記載されている資源、動作、または構造は、複数の例であってよい。さらに、様々な資源、動作、モジュール、エンジン、およびデータストアの間の境界はいくぶん任意であり、特定の動作は、具体的な例示的な構成の文脈で示される。機能の他の割り当てが想定され、本発明の様々な実施形態の範囲内に含まれ得る。概して、例構成において別個のリソースとして提示される構造および機能は、組み合わせられた構造またはリソースとして実装され得る。同様に、単一の資源として提示される構造および機能は、別個のリソースとして実装され得る。これらおよび他の変形、修正、追加、および改善は、添付の特許請求の範囲によって表される本発明の実施形態の範囲内に入る。したがって、本明細書および図面は、制限的な意味ではなく例示的な意味で考えられるべきである。
【0316】
前述の記載は説明のために、具体的な実施形態に参照するように記載されている。しかしながら、上記の例示的な議論は、網羅的であること、および、考えられる実施形態を開示された形態に厳格に限定することを意図するものではない。上記の教示を考慮して、多くの修正および変形が可能である。実施形態は、関与する原理およびそれらの実際的な用途を最も良く説明するために選択、説明され、それによって、他の当業者が考える特定の使用に適した様々な変形を伴う様々な実施形態を最良に利用することを可能にした。
【0317】
本明細書では様々な要素を説明するために「第1の」、「第2の」などの用語が使用されるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことも理解されよう。これらの用語は、1つの要素を別の要素から区別するためにのみ使用される。例えば、本実施例の範囲から逸脱することない限り、第1の接点は第2の接点と呼ぶことができ、同様に、第2の接点は、第1の接点と呼ぶことができる。第1の接点および第2の接点は両方とも接点であるが、それらは同じ接点ではない。
【0318】
本明細書の例の実施形態の記載において使用される用語は、特定の例の実施形態を説明するためのものにすぎず、限定することを意図するものではない。例の実施形態および添付の例の説明において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上にそうでないことが明示されない限り複数形も含むものとする。本明細書で使用される「および/または」という語は関連する列挙された項目のうちの1つまたは複数の任意のおよびすべての考えられる組み合わせを指し、それらを包含することも理解されよう。用語「含む」および/または「含む」は本明細書で使用される場合、記載された特徴、整数、工程、動作、要素、および/または成分の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、工程、動作、要素、および/または成分、および/またはそれらの群の存在または追加を排除しないことがさらに理解されよう。
【0319】
本明細書において使用される場合、用語「if」は、文脈に応じて、「時」または「その後に」または「決定に応答して」または「検出に応答して」を意味すると解釈され得る。同様に、「決定された場合」または「(記載された条件またはイベントが)検出された場合」という語句は、文脈に応じて、「決定後に」または「決定に応じて」、または、「(記載された条件またはイベントを)検出した後」または「(記載された条件またはイベントの)検出に応じて」を意味すると解釈され得る。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
【国際調査報告】