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特表2024-521025がん免疫治療のためのキメラ抗原受容体で改変された顆粒球-マクロファージ前駆体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】がん免疫治療のためのキメラ抗原受容体で改変された顆粒球-マクロファージ前駆体
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240521BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240521BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20240521BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240521BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20240521BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240521BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240521BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240521BHJP
   C12N 5/0789 20100101ALN20240521BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240521BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12N15/86 Z
C12N15/867 Z
A61K35/15
A61P35/00
A61P35/02
A61K45/00
C12N5/0789
C12N15/13
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568170
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(85)【翻訳文提出日】2023-11-03
(86)【国際出願番号】 US2022030109
(87)【国際公開番号】W WO2022246112
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/190,387
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592048844
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】弁理士法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】イン、チーロン
(72)【発明者】
【氏名】ユエ、シ
(72)【発明者】
【氏名】ジン、シュエユエン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC752
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA65
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
(57)【要約】
本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように顆粒球-マクロファージ前駆体(GMP)を遺伝子操作する方法、およびがん免疫治療のためを含む、その使用を提供する。特定の実施形態では、本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するようにGMPを遺伝子操作する方法であって、CARを含むベクターをGMP中に導入して、CARを発現するGMP(CAR-GMP)を形成するステップ;CAR-GMPを、規定された培養条件において複数回の継代にわたって拡大増殖および培養して、CAR-GMPの集団を生成するステップ;およびCAR-GMPの集団を、顆粒球、マクロファージまたは樹状細胞に分化するようにin vitroで誘導するステップであって、顆粒球、マクロファージまたは樹状細胞がCARを発現する、ステップ、を含む方法を提供する。
【選択図】図5C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように顆粒球-マクロファージ前駆体(GMP)を遺伝子操作する方法であって、
CARを含むベクターをGMP中に導入して、CARを発現するGMP(CAR-GMP)を形成するステップ;
前記CAR-GMPを、規定された培養条件において複数回の継代にわたって拡大増殖および培養して、CAR-GMPの集団を生成するステップ;および
CAR-GMPの前記集団を、顆粒球、マクロファージまたは樹状細胞に分化するようにin vitroで誘導するステップであって、前記顆粒球、マクロファージまたは樹状細胞がCARを発現する、ステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記GMPが幹細胞から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記幹細胞が造血幹細胞である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記造血幹細胞が、対象の骨髄から単離される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が哺乳動物対象である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記対象がヒト患者である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記CARが、抗原に結合することが可能な細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに顆粒球、マクロファージおよび樹状細胞の抗腫瘍活性を、それらの貪食および/または炎症促進性サイトカイン分泌を増加させることによって増加させるように設計された少なくとも1つの細胞内ドメインを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ベクターがウイルスベクターである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルスベクターが、複製性または非複製性であり得、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、麻疹ベクター、ヘルペスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ラブドウイルスベクター、レオウイルスベクター、セネカバレーウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、パルボウイルスベクターまたはアルファウイルスベクターであり得る、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記規定された培養条件が、前記CAR-GMPを、
(i)増殖因子、
(ii)B-Rafキナーゼ阻害剤、ならびに
(iii)Wnt活性化因子および/またはGSK-3阻害剤
を含む培養培地中で培養することを含み、前記CAR-GMPが、複数回の細胞継代および/またはクローン性拡大増殖を受けた後に、形態学的に実質的に未変化のままである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記培養培地が、DMEM/F12および神経基本培地を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記培養培地が、DMEM/F12および神経基本培地を、約5:1~約1:5の比率で含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記培養培地が、DMEM/F12および神経基本培地を、約1:1の比率で含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記培養培地が、インスリン、トランスフェリン、ウシ血清アルブミン(BSA)フラクションV、プトレシン、亜セレン酸ナトリウム、DL-αトコフェロール、ならびにリノレン酸および/またはリノール酸から選択される1つまたは複数の補充剤を含む、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記培養培地には、インスリン、トランスフェリン、BSAフラクションV、プトレシン、亜セレン酸ナトリウム、DL-αトコフェロール、ならびにリノレン酸および/またはリノール酸が補充される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記増殖因子が幹細胞因子(SCF)である、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記B-Rafキナーゼ阻害剤が、GDC-0879、PLX4032、GSK2118436、BMS-908662、LGX818、PLX3603、RAF265、RO5185426、ベムラフェニブ、PLX8394、SB590885およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記Wnt活性化因子が、SKL 2001、BML-284、WAY 262611、CAS 853220-52-7、QS11およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記GSK-3阻害剤が、CHIR99021、CHIR98014、SB216763、BIO、A1070722、AR-A014418およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記CAR-GMPが、マクロファージに分化するように誘導され、これは、前記CAR-GMPを、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)を含むマクロファージ分化培地を用いて培養することを含み、前記マクロファージがCARを発現する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記マクロファージ分化培地が、RPMI 1640、胎仔ウシ血清(FBS)およびMCSFを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項21または請求項22に記載の方法によって調製される、CARを発現するマクロファージ。
【請求項24】
前記CAR-GMPを顆粒球に分化させるステップをさらに含み、これは、前記GMPを、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を含む顆粒球分化培地を用いて培養することを含み、前記顆粒球がCARを発現する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記顆粒球分化培地が、RPMI 1640、FBSおよびGCSFを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項24または請求項25に記載の方法によって調製される、CARを発現する顆粒球。
【請求項27】
がんを有する対象を、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するマクロファージまたは顆粒球で処置するための免疫治療方法であって、
請求項21に記載のマクロファージまたは請求項24に記載の顆粒球を含む組成物を、がんを有する前記対象に投与するステップ
を含む、方法。
【請求項28】
前記組成物が、静脈内または腫瘍間投与される、請求項27に記載の免疫治療方法。
【請求項29】
前記対象が、副腎皮質癌、AIDS関連がん、AIDS関連リンパ腫、肛門がん、肛門直腸がん、肛門管のがん、虫垂がん、小児小脳星細胞腫、小児大脳星細胞腫、基底細胞癌、皮膚がん(非黒色腫)、胆道がん、肝外胆管がん、肝内胆管がん、膀胱(bladder)がん、膀胱(urinary bladder)がん、骨および関節がん、骨肉腫および悪性線維性組織球腫、脳がん、脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視覚路および視床下部神経膠腫、三重陰性乳房がんが含まれる乳房がん、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍、消化管、神経系がん、神経系リンパ腫、中枢神経系がん、中枢神経系リンパ腫、子宮頸がん、小児がん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸がん、結腸直腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、リンパ系新生物、菌状息肉症、Seziary症候群、子宮内膜がん、食道がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼がん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢がん、胃(gastric(stomach))がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍神経膠腫、頭頸部がん、肝細胞(肝臓)がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、眼球がん、島細胞腫瘍(膵内分泌)、カポジ肉腫、腎臓がん、腎がん、喉頭がん、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ヘアリー細胞白血病、口唇および口腔がん、肝臓がん、肺がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、Waldenstram高ガンマグロブリン血症、髄芽腫、黒色腫、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、中皮腫、転移性扁平上皮頸部がん、口のがん、舌のがん、多発性内分泌腫瘍症候群、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、急性骨髄球性白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性障害、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、口腔(oral)がん、口腔(oral cavity)がん、中咽頭がん、卵巣がん、卵巣上皮がん、卵巣低悪性度潜在的腫瘍、膵がん、島細胞膵がん、副鼻腔および鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、松果体芽腫およびテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽細胞腫、前立腺がん、直腸がん、腎盂および尿管、移行上皮がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、ユーイングファミリーの肉腫腫瘍、軟部組織肉腫、子宮がん、子宮肉腫、皮膚がん(非黒色腫)、皮膚がん(黒色腫)、乳頭腫、光線角化症および角化棘細胞腫、メルケル細胞皮膚癌、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃(stomach(gastric))がん、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣がん、咽喉がん、胸腺腫、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺がん、腎盂および尿管ならびに他の泌尿臓器の移行上皮がん、妊娠性絨毛性腫瘍、尿道がん、子宮内膜子宮がん、子宮肉腫、子宮体がん、腟がん、外陰部がん、ならびにウィルムス腫瘍から選択されるがんを有する、請求項27または請求項28に記載の免疫治療方法。
【請求項30】
1つまたは複数の抗がん剤を、がんを有する前記対象に投与するステップをさらに含む、請求項27~29のいずれか一項に記載の免疫治療方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2021年5月19日出願の米国仮特許出願第63/190,387号から、35 U.S.C.§119の下で優先権を主張する。
【0002】
本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように顆粒球-マクロファージ前駆体(GMP)を遺伝子操作する方法、およびがん免疫治療のためを含む、その使用を提供する。
【背景技術】
【0003】
顆粒球、マクロファージおよび樹状細胞は、ヒトにおける自然免疫系の不可欠な構成要素である。これらは、病原体に対する第一線の防御であり、我々の身体の恒常性を維持する際、ならびに感染症、代謝疾患およびがんが含まれる種々の疾患を予防する際にも、中心的な役割を果たす。これらの細胞は、骨髄中の共通の前駆体である顆粒球-マクロファージ前駆体(GMP)に起源する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
顆粒球-単球前駆体(GMP)は、自然免疫系の2つの主要な構成要素である顆粒球およびマクロファージの共通の前駆体である。GMPおよびそれらの誘導体の長期拡大増殖を実施できないことは、これらの免疫細胞の治療適用を大きく制限してきた。本明細書で提示される研究では、均一なGMPは、完全に規定された条件において、長期にわたって指数関数的に拡大増殖され得ることが示された。拡大増殖されたGMPは、機能的顆粒球およびマクロファージに分化する能力を含む、GMPの重要な特色を保持した。拡大増殖されたGMPの移植は、免疫不全マウスにおいて細菌感染症を有効に予防した。さらに、拡大増殖されたGMPは、がん細胞を特異的に貪食するマクロファージを産生するために遺伝子操作され得る。本明細書に記載される方法および組成物は、指数関数的拡大増殖および遺伝子操作されたGMPを可能にする。本開示の方法および組成物によって作製されたGMPは、広範な疾患、特に、感染性疾患およびがんを処置するための免疫治療の開発のために有用である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
特定の実施形態では、本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように顆粒球-マクロファージ前駆体(GMP)を遺伝子操作する方法であって、CARを含むベクターをGMP中に導入して、CARを発現するGMP(CAR-GMP)を形成するステップ;CAR-GMPを、規定された培養条件において複数回の継代にわたって拡大増殖および培養して、CAR-GMPの集団を生成するステップ;およびCAR-GMPの集団を、顆粒球、マクロファージまたは樹状細胞に分化するようにin vitroで誘導するステップであって、顆粒球、マクロファージまたは樹状細胞がCARを発現する、ステップ、を含む方法を提供する。さらなる実施形態では、GMPは、幹細胞から得られる。なおさらなる実施形態では、幹細胞は、造血幹細胞である。別の実施形態では、造血幹細胞は、対象の骨髄から単離される。なお別の実施形態では、対象は、哺乳動物対象である。さらなる実施形態では、対象は、ヒト患者である。なおさらなる実施形態では、CARは、抗原に結合することが可能な細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに顆粒球、マクロファージおよび樹状細胞の抗腫瘍活性を、それらの貪食および/または炎症促進性サイトカイン分泌を増加させることによって増加させるように設計された少なくとも1つの細胞内ドメインを含む。別の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。なお別の実施形態では、ウイルスベクターは、複製性または非複製性であり得、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、麻疹ベクター、ヘルペスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ラブドウイルスベクター、レオウイルスベクター、セネカバレーウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、パルボウイルスベクターまたはアルファウイルスベクターであり得る。ある特定の実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。別の実施形態では、規定された培養条件は、CAR-GMPを、(i)増殖因子、(ii)B-Rafキナーゼ阻害剤、ならびに(iii)Wnt活性化因子および/またはGSK-3阻害剤を含む培養培地中で培養することを含み、CAR-GMPは、複数回の細胞継代および/またはクローン性拡大増殖を受けた後に、形態学的に実質的に未変化のままである。さらなる実施形態では、培養培地は、DMEM/F12および神経基本培地(Neural Basal Medium)を含む。なおさらなる実施形態では、培養培地は、DMEM/F12および神経基本培地を、約5:1~約1:5の比率で含む。別の実施形態では、培養培地は、DMEM/F12および神経基本培地を、約1:1の比率で含む。なお別の実施形態では、培養培地は、インスリン、トランスフェリン、ウシ血清アルブミン(BSA)フラクションV、プトレシン、亜セレン酸ナトリウム、DL-αトコフェロールおよび/またはリノレン酸から選択される1つまたは複数の補充剤を含む。さらなる実施形態では、培養培地には、インスリン、トランスフェリン、BSAフラクションV、プトレシン、亜セレン酸ナトリウム、DL-αトコフェロールおよびリノレン酸が補充される。ある特定の実施形態では、増殖因子は、幹細胞因子(SCF)である。別の実施形態では、B-Rafキナーゼ阻害剤は、GDC-0879、PLX4032、GSK2118436、BMS-908662、LGX818、PLX3603、RAF265、RO5185426、ベムラフェニブ、PLX8394、SB590885およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。なお別の実施形態では、Wnt活性化因子は、SKL 2001、BML-284、WAY 262611、CAS 853220-52-7、QS11およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。さらなる実施形態では、GSK-3阻害剤は、CHIR99021、CHIR98014、SB216763、BIO、A1070722、AR-A014418およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、規定された培養条件は、CAR-GMPを、(i)増殖因子;(ii)B-Rafキナーゼ阻害剤;(iii)マイトジェン活性化キナーゼ相互作用タンパク質キナーゼ1および2(Mnk1/2)を阻害する薬剤;(iv)PI3K経路を阻害する薬剤;(v)必要に応じて、1つまたは複数の血清構成要素を含む培養培地中で培養することを含み;CAR-GMPは、複数回の細胞継代および/またはクローン性拡大増殖を受けた後に、形態学的に実質的に未変化のままである。さらなる実施形態では、培養培地は、DMEM/F12および神経基本培地を含む。なおさらなる実施形態では、培養培地は、DMEM/F12および神経基本培地を、約5:1~約1:5の比率で含む。別の実施形態では、培養培地は、DMEM/F12および神経基本培地を、約1:1の比率で含む。なお別の実施形態では、培養培地は、インスリン、トランスフェリン、ウシ血清アルブミン(BSA)フラクションV、プトレシン、亜セレン酸ナトリウム、DL-αトコフェロールおよび/またはリノレン酸から選択される1つまたは複数の補充剤を含む。さらなる実施形態では、培養培地には、インスリン、トランスフェリン、BSAフラクションV、プトレシン、亜セレン酸ナトリウム、DL-αトコフェロールおよびリノレン酸が補充される。なおさらなる実施形態では、増殖因子は、幹細胞因子(SCF)である。別の実施形態では、B-Rafキナーゼ阻害剤は、GDC-0879、PLX4032、GSK2118436、BMS-908662、LGX818、PLX3603、RAF265、RO5185426、ベムラフェニブ、PLX8394、SB590885およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。さらなる実施形態では、Mnk1/2を阻害する薬剤は、CGP-57380、セルコスポラミド(cercosporamide)、BAY 1143269、トミボセルチブ(tomivosertib)、ETC-206、SLV-2436およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。なおさらなる実施形態では、PI3K経路を阻害する薬剤は、3-メチルアデニン、LY294002、アルペリシブ、ワートマニン、ケルセチン、hSMG-1阻害剤11j、ザンデリシブ、アルペリシブ塩酸塩、イデラリシブ、ブパリシブ、コパンリシブ、IPI549、ダクトリシブ、ピクチリシブ、SAR405、デュベリシブ、フィメピノスタット(fimepinostat)、GDC-0077、PI-103、YM-20163、PF-04691502、タセリシブ、オミパリシブ(omipalisib)、サモトリシブ(samotolisib)、イソラムネチン、ZATK474、パルサクリシブ、リゴサチブ、AZD8186、GSK2636771、ジシテルチド、TG100-115、AS-605240、PI3K-IN-1、ダクトリシブトシル酸塩、ゲダトリシブ(gedatolisib)、TGX-221、ウムブラリシブ、AZD 6482、セラベリシブ(serabelisib)、ビミラリシブ(bimiralisib)、アピトリシブ、アルファ-リノレン酸、Vps34-PIK-III、PIK-93、Vps34-IN-1、CH5132799、レニオリシブ、ボクスタリシブ(voxtalisib)、GSK1059615、ソノリシブ(sonolisib)、PKI-402、PI4KIIIベータ-IN-9、HS-173、BGT226マレイン酸塩、ピクチリシブジメタンスルホン酸塩、VS-5584、IC-87114、ケルセチン二水和物、CNX-1351、SF2523、GDC-0326、セレタリシブ(seletalisib)、アカリシブ(acalisib)、SAR-260301、ZAD-8835、GNE-317、AMG319、ネミラリシブ(nemiralisib)、IITZ-01、PI-103塩酸塩、オロキシンB、ピララリシブ(pilaralisib)、AS-252424、クパンリシブ(cpanlisib)二塩酸塩、AMG 511、ジシテルチドTFA、PIK-90、テナリシブ(tenalisib)、エスクレチン、CGS 15943、GNE-477、PI-3065、A66、AZD3458、ジンセノサイドRk1、ソフォカルピン(sophocarpine)、ブパリシブ塩酸塩、Vps34-IN-2、リンペルリシブ(linperlisib)、アルニコリド(arnicolide)D、KP372-1、CZC24832、PF-4989216、(R)-デュベリシブ、PQR530、P11δ-IN-1、ウムブラリシブ塩酸塩、MTX-211、PI3K/mTOR阻害剤-2、LX2343、PF-04979064、ポリガラサポニン(polygalasaponin)F、グラウコカリシン(glaucocalyxin)A、NSC781406、MSC2360844、CAY10505、IPI-3063、TG 100713、BEBT-908、PI-828、ブレビアナミド(brevianamide)F、ETP-46321、PIK-294、SRX3207、ソフォカルピン一水和物、AS-604850、デスメチルグリシテイン(desmethylglycitein)、SKI V、WYE-687、NVP-QAV-572、GNE-493、CAL-130塩酸塩、GS-9901、BGT226、IHMT-PI3Kδ-372、PI3Kα-IN-4、パルサクリシブ塩酸塩、PF-06843195、PI3K-IN-6、(S)-PI3Kα-IN-4、PI3K(ガンマ)-IN-8、BAY1082439、CYH33、PI3Kγ阻害剤2、PI3Kδ阻害剤1、PARP/PI3K-IN-1、LAS191954、PI3K-IN-9、CHMFL-PI3KD-317、PI3K/HDAC-IN-1、MSC2360844ヘミフマル酸塩、PI3K-IN-2、PI3K/mTOR阻害剤-1、PI3Kδ-IN-1、オイスカフ酸、KU-0060648、AZD 6482、WYE-687二塩酸塩、GSK2292767、(R)-ウムブラリシブ、PIK-293、イデラリシブD5、PIK-75、ヒルステノン(hirsutenone)、ケルセチンD5、PIK-108、hSMG-1阻害剤11e、PI3K-IN-10、NVP-BAG956、PI3Kγ阻害剤1、CAL-130、ON 146040、PI3kδ阻害剤1、PI3Kα/mTOR-IN-1、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、CAR-GMPは、マクロファージに分化するように誘導され、これは、CAR-GMPを、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)を含むマクロファージ分化培地を用いて培養することを含み、マクロファージは、CARを発現する。なお別の実施形態では、マクロファージ分化培地は、RPMI 1640、胎仔ウシ血清(FBS)およびMCSFを含む。代替的な実施形態では、方法は、CAR-GMPを顆粒球に分化させるステップをさらに含み、これは、GMPを、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を含む顆粒球分化培地を用いて培養することを含み、顆粒球は、CARを発現する。さらなる実施形態では、顆粒球分化培地は、RPMI 1640、FBSおよびGCSFを含む。
【0006】
ある特定の実施形態では、本開示は、本開示の方法によって作製される、CARを発現するマクロファージもまた提供する。
【0007】
特定の実施形態では、本開示は、本開示の方法によって作製される、CARを発現する顆粒球をさらに提供する。
【0008】
別の実施形態では、本開示は、がんを有する対象を、CARを発現するマクロファージまたは顆粒球で処置するための免疫治療方法であって、本開示の方法によって作製されるCARを発現するマクロファージまたは本開示の方法によって作製されるCARを発現する顆粒球を含む組成物を、がんを有する対象に投与するステップを含む、方法を提供する。さらなる実施形態では、組成物は、静脈内または腫瘍間投与される。なおさらなる実施形態では、マクロファージまたは顆粒球は、免疫治療方法で処置される対象の幹細胞由来のGMPから得られる。別の実施形態では、対象は、副腎皮質癌、AIDS関連がん、AIDS関連リンパ腫、肛門がん、肛門直腸がん、肛門管のがん、虫垂がん、小児小脳星細胞腫、小児大脳星細胞腫、基底細胞癌、皮膚がん(非黒色腫)、胆道がん、肝外胆管がん、肝内胆管がん、膀胱(bladder)がん、膀胱(urinary bladder)がん、骨および関節がん、骨肉腫および悪性線維性組織球腫、脳がん、脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視覚路および視床下部神経膠腫、三重陰性乳房がんが含まれる乳房がん、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍、消化管、神経系がん、神経系リンパ腫、中枢神経系がん、中枢神経系リンパ腫、子宮頸がん、小児がん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸がん、結腸直腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、リンパ系新生物、菌状息肉症、Seziary症候群、子宮内膜がん、食道がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼がん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢がん、胃(gastric(stomach))がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍神経膠腫、頭頸部がん、肝細胞(肝臓)がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、眼球がん、島細胞腫瘍(膵内分泌)、カポジ肉腫、腎臓がん、腎がん、喉頭がん、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ヘアリー細胞白血病、口唇および口腔がん、肝臓がん、肺がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、Waldenstram高ガンマグロブリン血症、髄芽腫、黒色腫、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、中皮腫、転移性扁平上皮頸部がん、口のがん、舌のがん、多発性内分泌腫瘍症候群、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、急性骨髄球性白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性障害、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、口腔(oral)がん、口腔(oral cavity)がん、中咽頭がん、卵巣がん、卵巣上皮がん、卵巣低悪性度潜在的腫瘍、膵がん、島細胞膵がん、副鼻腔および鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、松果体芽腫およびテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽細胞腫、前立腺がん、直腸がん、腎盂および尿管、移行上皮がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、ユーイングファミリーの肉腫腫瘍(ewing family of sarcoma tumor)、軟部組織肉腫、子宮がん、子宮肉腫、皮膚がん(非黒色腫)、皮膚がん(黒色腫)、乳頭腫、光線角化症および角化棘細胞腫、メルケル細胞皮膚癌、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃(stomach(gastric))がん、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣がん、咽喉がん、胸腺腫、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺がん、腎盂および尿管ならびに他の泌尿臓器の移行上皮がん、妊娠性絨毛性腫瘍、尿道がん、子宮内膜子宮がん、子宮肉腫、子宮体がん、腟がん、外陰部がん、ならびにウィルムス腫瘍から選択されるがんを有する。なお別の実施形態では、免疫治療方法は、1つまたは複数の抗がん剤を、がんを有する対象に投与するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1A~Eは、操作されたSCF/2i GMPから生成されたαCD19 CAR-マクロファージが、ヒトB-ALL細胞を有効に貪食することを示す図である。(A)SCF/2i GMPを、GFP mRNAでエレクトロポレーションしたか、またはGFPレンチウイルス(pSin-GFP)で形質導入した。トランスフェクションの48時間後に、GFP発現を、蛍光顕微鏡(上パネル)およびフローサイトメトリー(下パネル)によって分析した。フローサイトメトリーデータは、5つの独立した実験からの平均±SDとして示される。(B)CAG-Cas9-GFPマウスに由来するSCF/2i GMPを、対照またはGFP sgRNAでエレクトロポレーションし、GFP発現を、エレクトロポレーションの48時間後に、フローサイトメトリーによって分析した。データは、3つの独立した実験からの平均±SDとして示される。(C)CarP-RFP、CarPFc-19-RFPおよびCarPzFc-19-RFPの構造を示す模式図。(D)SCF/2i GMPを、CarP-RFPまたはCarPzFc19-RFPレンチウイルスで形質導入し、RFP陽性GMPを選別し、SCF/2i中でさらに拡大増殖させた。RFP陽性GMPに由来する1×10個のマクロファージを、抗CD47抗体を用いてまたは用いずに事前処置した1×10個のGFP陽性ヒトB-ALL細胞と共に共培養した。細胞を、共培養の1時間後にPBSで洗浄し、位相差画像および蛍光画像を取得した。(E)(D)中の細胞をトリプシン処理し、GFPおよびRFP発現を、フローサイトメトリーによって分析した。貪食性マクロファージのパーセンテージを定量化した。データは、3つの独立した実験からの平均±SDとして示される。
図2図2A~Cは、GMPの拡大増殖、分化および遺伝子操作を示す図である。(A)GFP標識したE.coliと共に1時間インキュベートすることによる、GMP由来マクロファージの貪食分析。マクロファージによって飲み込まれたGFP標識した細菌を示す代表的な位相差画像および蛍光画像、ならびにGFP標識した細菌と共に(赤)または伴わずに(青)インキュベートしたGMP由来マクロファージのフローサイトメトリー分析の代表的なプロット。フローサイトメトリーデータは、3つの独立した実験からの平均±SDとして示される。(B)分化した細胞を、2×10細胞/ウェルの密度で96ウェルプレート中にプレートし、500ng/mlのLPSを用いてまたは用いずに6時間刺激し、その後、上清中のサイトカイン分泌を、ELISAによって測定した。データは、3つの独立した実験からの平均±SDとして示される。(C)改変SCF/2i中で拡大増殖させたGMPを、CarP-RFPまたはヒトCarPzFc19-RFPレンチウイルスで形質導入した。RFP陽性GMPを選別し、改変SCF/2i中でさらに拡大増殖させた。RFP陽性GMPに由来するマクロファージを、1×10細胞/ウェルの密度で24ウェルプレート中にプレートし、DMEM/10%FBS中で一晩培養し、その後、抗CD47抗体を用いてまたは用いずに事前処置した1×10個のGFP陽性ヒトB-ALL細胞を各ウェルに添加した。共培養の1時間後、細胞をPBSで洗浄し、トリプシン処理し、GFPおよびRFP発現を、フローサイトメトリーによって分析した。貪食性マクロファージのパーセンテージを定量化した。データは、3つの独立した実験からの平均±SDとして示される。
図3図3A~Dは、図1に関連して、遺伝子操作されたSCF/2i GMP由来マクロファージによるヒトB-ALL細胞の貪食を示す図である。(A)SCF/2iマウスGMPを、CarP-RFPまたはCarPFc19-RFPレンチウイルスで形質導入し、RFP陽性細胞を選別し、SCF/2i中で拡大増殖させた。RFP陽性マウスGMPに由来するマクロファージを、1×10細胞/ウェルの密度で24ウェルプレート中にプレートし、DMEM/10%FBS中で一晩培養し、その後、1×10個のGFP陽性ヒトB-ALL細胞を各ウェルに添加した。共培養の1時間後、細胞をPBSで洗浄し、トリプシン処理し、GFPおよびRFP発現を、フローサイトメトリーによって分析した。貪食性マクロファージのパーセンテージを定量化した。データは、3つの独立した実験からの平均±SDとして示される。(B)異なる時点におけるCarPzFc19-RFP発現マクロファージの貪食のプロセスを示すタイムラプス画像。時間は分で示される。矢印は、貪食される前および後のGFP陽性B-ALL細胞を示す。画像はビデオから抽出した。(C)SCF/2iマウスGMPを、αHER2 CarPzFc19-RFPレンチウイルスで形質導入した。RFP陽性GMPを選別し、SCF/2i中で拡大増殖させた。RFP陽性GMPに由来するマクロファージを、1×10細胞/ウェルの密度で24ウェルプレート中にプレートし、DMEM/10%FBS中で一晩培養し、その後、1×10個のGFP陽性SK-BR-3細胞を各ウェルに添加した。共培養の1時間後、位相差画像および蛍光画像を取得した。(D)SCF/2i GMPを、αCD19 CarPzFc19-RFPまたはαHER2 CarPzFc19-RFPレンチウイルスで形質導入し、RFP陽性GMPを選別し、SCF/2i中でさらに拡大増殖させた。αCD19 CarPzFc19-RFPまたはαHER2 CarPzFc19-RFPを発現する1×10個のマクロファージを、GFP陽性ヒトB-ALL細胞またはSKBR-3細胞と共に共培養した。共培養の1時間後、細胞をPBSで洗浄し、トリプシン処理し、GFPおよびRFP発現を、フローサイトメトリーによって分析した。貪食性マクロファージのパーセンテージを定量化した。データは、3つの独立した実験からの平均±SDとして示される。
図4図4A~Bは、図2Cに関連して、操作されたGMPに由来するαCD19 CAR-マクロファージが、ヒトB-ALL細胞を有効に貪食することを示す図である。(A)GMPを、改変SCF/2i中で拡大増殖させ、ヒトCarPzFc19-RFP(h CarPzFc19-RFP)レンチウイルスで形質導入した。hCarPzFc19-RFP発現GMPに由来するマクロファージを、GFP標識したヒトB-ALL細胞と共に共培養した。共培養の1時間後、位相差画像および蛍光画像を取得した。(B)抗CD47抗体と共に事前インキュベートしたGFP標識したヒトB-ALL細胞と共に共培養したhCarPzFc19-RFP発現マクロファージの逐次的な蛍光画像。
図5図5A~Dは、αCD19 CAR-GMPの移植がマウスにおいて白血病細胞を弱体化させることを示す図である。(A)GFP標識したヒトB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)細胞を、NSGマウス中に注射して、B-ALLマウスモデルを創出した。B-ALL注射の21日後、aCD19 CAR-GMPまたはPBSを注射し、FACS分析を週に1回実施して、末梢血中のGFP陽性B-ALL細胞の割合を決定した。(B)代表的なFACS分析結果。(c)対照(PBS)および処置(aCD19 CAR-GMP)についての生存率。(D)対照および処置マウスにおける血液中のGFP陽性B-ALL細胞のパーセンテージ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「この(the)」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数形の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つの(a)細胞」に対する言及は、複数の細胞を含み、「この(the)顆粒球-マクロファージ前駆体」に対する言及は、当業者に公知の1つまたは複数の顆粒球-マクロファージ前駆体およびその等価物に対する言及を含む、などである。
【0011】
また、「または」の使用は、特記しない限り、「および/または」を意味する。同様に、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」および「含む(including)」は、相互交換可能であり、限定と解釈されない。
【0012】
種々の実施形態の説明が、用語「含む」を使用する場合、当業者は、一部の具体的な例において、ある実施形態が、「~から本質的になる」または「~からなる」という言葉を使用して代替的に記載され得ることを理解することが、さらに理解される。
【0013】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。多くの方法および試薬は、本明細書に記載される方法および試薬と類似または等価であるが、例示的な方法および材料が、本明細書で開示される。
【0014】
本明細書で言及される全ての刊行物は、本明細書の記載と併せて使用され得る方法論を記載および開示することを目的として、参照により本明細書に完全に組み込まれる。さらに、本開示で明示的に定義された用語と類似または同一な、1つまたは複数の刊行物中で提示される任意の用語に関して、本開示中に明示的に提供された用語の定義が、あらゆる点で優先する。
【0015】
本発明が、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコールおよび試薬などに限定されず、したがって変動し得ることを理解すべきである。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を記載することだけを目的としており、特許請求の範囲のみによって定義される本発明の範囲を制限することは意図しない。
【0016】
作業例以外では、または他に示される場合、本明細書で使用される成分の量または反応条件を表す全ての数字は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解すべきである。用語「約」は、パーセンテージと併せて本開示を記載するために使用される場合、±1%を意味する。他の例では、本明細書で使用される場合、用語「約」は、測定可能な値、例えば、量、持続時間などを指し、特定された値からの±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%または±0.1%の変動を包含する。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「投与する」は、所望の部位における薬剤の少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路による、対象中への本明細書で開示される薬剤(例えば、操作されたGMP、またはそれに由来するマクロファージもしくは顆粒球)の配置を指す。
【0018】
「自家」細胞は、本明細書で使用される場合、細胞が後に再投与される個体と同じ個体に由来する細胞を指す。
【0019】
用語「抗体断片」は、本明細書で使用される場合、一般に、インタクトな抗体の抗原結合部位を含み、したがって、抗原に結合する能力を保持する、インタクトな抗体の一部分のみを含むタンパク質断片を指す。本定義によって包含される抗体断片の例には、以下が含まれる:(i)VL、CL、VHおよびCH1ドメインを有するFab断片;(ii)CH1ドメインのC末端における1つまたは複数のシステイン残基を有するFab断片である、Fab’断片;(iii)VHおよびCH1ドメインを有するFDA断片;(iv)VHおよびCH1ドメインならびにCH1ドメインのC末端における1つまたは複数のシステイン残基を有するFd’断片;(v)抗体の単一の腕のVLおよびVHドメインを有するFv断片;(vi)VHドメインからなるdAb断片(Wardら、Nature 341、544~546(1989));(vii)単離されたCDR領域;(viii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab’断片を含む二価断片である、F(ab’)2断片;(ix)単鎖抗体分子(例えば、単鎖Fv;scFv)(Birdら、Science 242:423~426(1988);およびHustonら、PNAS(USA)85:5879~5883(1988));(x)同じポリペプチド鎖中に軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む、2つの抗原結合部位を有する「二重特異性抗体」(例えば、EP404,097;WO93/11161;およびHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444~6448(1993)を参照されたい);(xi)相補的軽鎖ポリペプチドと一緒になって抗原結合領域の対を形成するタンデムFdセグメントの対(VH-CH1-VH-CH1)を含む「直鎖状抗体」(Zapataら、Protein Eng.8(10):1057~1062(1995);および米国特許第5,641,870号)。
【0020】
「B-Raf」キナーゼ阻害剤は、B-Rafキナーゼと呼ばれるタンパク質の活性を遮断もしくは低減する、またはB-Rafキナーゼの量を低減する物質、例えば、化合物または分子を指す。B-Rafは、細胞成長およびシグナル伝達を制御することを助けるキナーゼ酵素である。これは、黒色腫および結腸直腸がんが含まれる一部の型のがんにおいて、変異した(変化した)形態で見出され得る。一部のB-Rafキナーゼ阻害剤は、がんを処置するために使用される。B-Rafキナーゼ阻害剤の例には、GDC-0879、PLX4032、GSK2118436、BMS-908662、LGX818、PLX3603、RAF265、RO5185426、ベムラフェニブ、PLX8394およびSB590885が含まれるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、本明細書で開示される方法は、B-Rafキナーゼ阻害剤GDC-0879の使用を含む。
【0021】
「有益な結果」には、疾患状態の重症度を低くすることまたは軽減すること、疾患状態が悪化しないように予防すること、疾患状態を治癒させること、疾患状態が発症しないように予防すること、患者が疾患状態を発症する可能性を低下させること、および患者の寿命または平均余命を延長させることが含まれ得るが、これらに決して限定されない。非限定的な例として、「有益な結果」または「所望の結果」は、1つまたは複数の症状の軽減、欠損の程度の縮小、がん進行の安定化された(即ち、悪化しない)状態、転移または侵襲性の遅延または減速、およびがんに関連する症状の寛解または緩和であり得る。
【0022】
本開示の目的のために、用語「がん」は、他のように具体的に示されない限り、細胞増殖性障害、新生物、前がん性細胞障害およびがんを包含するために使用される。したがって、「がん」は、転移または腫瘍成長をもたらし得る異常な細胞増殖を受ける任意の細胞を指す。例示的ながんには、副腎皮質癌、AIDS関連がん、AIDS関連リンパ腫、肛門がん、肛門直腸がん、肛門管のがん、虫垂がん、小児小脳星細胞腫、小児大脳星細胞腫、基底細胞癌、皮膚がん(非黒色腫)、胆道がん、肝外胆管がん、肝内胆管がん、膀胱(bladder)がん、膀胱(urinary bladder)がん、骨および関節がん、骨肉腫および悪性線維性組織球腫、脳がん、脳腫瘍、脳幹神経膠腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視覚路および視床下部神経膠腫、三重陰性乳房がんが含まれる乳房がん、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍、消化管、神経系がん、神経系リンパ腫、中枢神経系がん、中枢神経系リンパ腫、子宮頸がん、小児がん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸がん、結腸直腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、リンパ系新生物、菌状息肉症、Seziary症候群、子宮内膜がん、食道がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼がん、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢がん、胃(gastric(stomach))がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛性腫瘍神経膠腫、頭頸部がん、肝細胞(肝臓)がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、眼球がん、島細胞腫瘍(膵内分泌)、カポジ肉腫、腎臓がん、腎がん、喉頭がん、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、ヘアリー細胞白血病、口唇および口腔がん、肝臓がん、肺がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、Waldenstram高ガンマグロブリン血症、髄芽腫、黒色腫、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、中皮腫、転移性扁平上皮頸部がん、口のがん、舌のがん、多発性内分泌腫瘍症候群、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、急性骨髄球性白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性障害、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、口腔(oral)がん、口腔(oral cavity)がん、中咽頭がん、卵巣がん、卵巣上皮がん、卵巣低悪性度潜在的腫瘍、膵がん、島細胞膵がん、副鼻腔および鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、松果体芽腫およびテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽細胞腫、前立腺がん、直腸がん、腎盂および尿管、移行上皮がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、ユーイングファミリーの肉腫腫瘍、軟部組織肉腫、子宮がん、子宮肉腫、皮膚がん(非黒色腫)、皮膚がん(黒色腫)、乳頭腫、光線角化症および角化棘細胞腫、メルケル細胞皮膚癌、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃(stomach(gastric))がん、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣がん、咽喉がん、胸腺腫、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺がん、腎盂および尿管ならびに他の泌尿臓器の移行上皮がん、妊娠性絨毛性腫瘍、尿道がん、子宮内膜子宮がん、子宮肉腫、子宮体がん、腟がん、外陰部がん、ならびにウィルムス腫瘍が含まれるがこれらに限定されない。
【0023】
「キメラ抗原受容体」または「CAR(単数)」または「CAR(複数)」は、本明細書で使用される場合、細胞(例えば、GMP細胞)上に抗原特異性をグラフトする、操作された受容体を指す。CARは、人工T細胞受容体、キメラT細胞受容体またはキメラ免疫受容体としても公知である。種々の実施形態では、CARは、抗原特異的ドメイン(ASD)、ヒンジ領域(HR)、膜貫通ドメイン(TMD)、共刺激ドメイン(CSD)および細胞内シグナル伝達ドメイン(ISD)を含む組換えポリペプチドである。
【0024】
「CAR結合ドメイン」は、標的細胞上の抗原に特異的に結合するCARの部分を指す。一部の実施形態では、CARの結合ドメインは、抗体またはその機能的等価物またはその断片またはその誘導体が含まれる、CAR構築物(例えば、PCT/US2017/064379を参照されたい)において使用される公知の結合ドメインのいずれかを含む。標的化領域は、全長重鎖、Fab断片、単鎖Fv(scFv)断片、二価単鎖抗体または二重特異性抗体を含み得、これらは各々、標的抗原に対して特異的である。
【0025】
「状態」および「疾患状態」には、本明細書で使用される場合、がん、腫瘍または感染性疾患が含まれ得る。例示的な実施形態では、状態には、悪性新生物細胞増殖性障害または疾患の任意の形態が含まれるが、これらに決して限定されない。
【0026】
「共刺激ドメイン」は、本明細書で使用される場合、細胞の増殖、生存および/または発生を増強するポリペプチドドメインを含むCARの部分を指す。共刺激ドメインは、必要に応じたドメインまたはCARである。本発明のCARは、共刺激ドメインを含まなくてもよく、1つまたは複数の共刺激ドメインを含んでもよい。各共刺激ドメインは、典型的には、TNFRスーパーファミリーのメンバー、CD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、Dap10、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40またはそれらの組み合わせを含む。他の共刺激ドメイン(例えば、他のタンパク質からの)は、当業者に明らかである。
【0027】
「遺伝子改変されたGMPによって標的化される疾患」は、本明細書で使用される場合、遺伝子改変された細胞が、治療的に有益な結果をもたらすために罹患細胞を標的化するか健康な細胞を標的化するかにかかわらず、本開示の遺伝子改変されたGMP細胞(またはそれに由来する顆粒球もしくはマクロファージ)による、任意の様式での任意の疾患に関与する任意の細胞の標的化を包含する。遺伝子改変された細胞は、CARを発現し、このCARは、標的細胞の表面上に発現される抗原のいずれかを標的化し得る。標的化され得る抗原の例には、癌腫、肉腫、リンパ腫、白血病、胚細胞腫瘍および芽細胞腫上で発現される抗原;種々の免疫細胞上で発現される抗原;ならびに種々の血液学的疾患、自己免疫疾患および/または炎症性疾患に関連する細胞上で発現される抗原が含まれるがこれらに限定されない。標的化され得る他の抗原は、当業者に明らかであり、本開示のCARによって標的化され得る。
【0028】
用語「有効量」または「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、疾患または障害の少なくとも1つまたは複数の症状を減少させるための、CARを発現するように操作されたGMP(それに由来するマクロファージまたは顆粒球)を含む組成物の量を指し、所望の効果を提供するのに十分な組成物の量に関する。語句「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、任意の医学的処置に適用可能な合理的なベネフィット/リスク比で、障害を処置するのに十分な組成物の量を意味する。
【0029】
症状における治療的または予防的に有意な低減は、対照もしくは未処置の対象、または本明細書に記載される細胞性組成物を投与する前の対象の状態と比較した、測定されたパラメーターにおける、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約125%、少なくとも約150%またはそれよりも大きな低減である。測定されたまたは測定可能なパラメーターには、疾患の臨床的に検出可能なマーカー、例えば、上昇したまたは抑圧されたレベルの生物学的マーカーが含まれる。要求される正確な量は、処置されている疾患の型、対象の性別、年齢および体重などの因子に依存して変動する。
【0030】
「エフェクター機能」は、分化した細胞の特殊化した機能を指す。顆粒球またはマクロファージのエフェクター機能は、例えば、細胞溶解活性またはサイトカインの分泌であり得る。
【0031】
用語「発現ベクター」は、発現されるヌクレオチド配列に動作可能に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現のための十分なシス作用性エレメントを含み;発現のための他のエレメントは、宿主細胞によってまたはin vitro発現系中に供給され得る。発現ベクターには、組換えポリヌクレオチドを取り込むコスミド、プラスミド(例えば、ネイキッド、またはリポソーム中に含有された)およびウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスなど)が含まれる、全て当該分野で公知のものが含まれる。
【0032】
「顆粒球コロニー刺激因子」または「GCSF」(コロニー刺激因子3(CSF3)としても公知)は、顆粒球および幹細胞を産生するように骨髄を刺激する糖タンパク質である。種々の種にわたる遺伝子配列、タンパク質配列およびオルソログが、当該分野で公知である(例えば、参照により本明細書に組み込まれるNCBI参照配列:NP_000750.1を参照されたい)。
【0033】
「増殖因子」は、細胞、例えば、幹細胞の成長を促進するのに有効であり、補充剤として培養培地に添加されない限り、基本培地の構成要素ではない物質、例えば、化合物または分子を指す。増殖因子には、幹細胞因子(SCF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)、上皮増殖因子(EGF)、インスリン様増殖因子-I(IGF-I)、インスリン様増殖因子-II(IGF-II)、血小板由来増殖因子-AB(PDGF)、および血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、アクチビン-A、Wntおよび骨形態形成タンパク質(BMP)、インスリン、サイトカイン、ケモカイン、モルフォゲン、中和抗体、他のタンパク質、ならびに小分子が含まれるがこれらに限定されない。外因性増殖因子がまた、実質的に未分化の状態でのGMPの培養物の維持を補助するために、本開示に従う培地に添加され得る。かかる因子またはそれらの有効な濃度は、本明細書の他の場所に記載されるように、または細胞を培養する当業者に公知の技法を使用して、同定され得る。特定の実施形態では、GMPは、SCFを含む培養培地中で培養される。
【0034】
「ヒンジ領域」は、本明細書で使用される場合、CAR結合ドメインとCARの膜貫通ドメインとの間にある親水性領域を指す。ヒンジ領域には、抗体のFc断片またはその断片もしくは誘導体、抗体のヒンジ領域またはその断片もしくは誘導体、抗体のCH2領域、抗体のCH3領域、人工スペーサー配列、あるいはそれらの組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。ヒンジ領域の例には、CD8aヒンジ、および例えば、Gly3ほどの小ささであり得るポリペプチドで作製された人工スペーサー、またはIgG(例えば、ヒトIgG4)のCH1およびCH3ドメインが含まれるがこれらに限定されない。他のヒンジ領域は、当業者に明らかであり、本発明の代替的実施形態と併せて使用され得る。
【0035】
「細胞内シグナル伝達ドメイン」または「細胞質ドメイン」は、本明細書で使用される場合、エフェクター機能シグナルを伝達し、その特殊化した機能を実施するように細胞に指示するドメインを含むCARの部分を指す。エフェクター機能シグナルを伝達するドメインの例には、T細胞受容体複合体のz鎖またはそのホモログのいずれか(例えば、h鎖、FceR1gおよびb鎖、MB1(Iga)鎖、B29(Igb)鎖など)、ヒトCD3ゼータ鎖、CD3ポリペプチド(D、dおよびe)、sykファミリーチロシンキナーゼ(Syk、ZAP 70など)、srcファミリーチロシンキナーゼ(Lck、Fyn、Lynなど)ならびにT細胞伝達に関与する他の分子、例えば、CD2、CD5およびCD28が含まれるがこれらに限定されない。他の細胞内シグナル伝達ドメインは、当業者に明らかである。
【0036】
用語「単離された」は、本明細書で使用される場合、それが通常関連する他の材料を実質的に含まない分子、生物学的薬剤、細胞または細胞性材料を指す。一態様では、用語「単離された」は、天然供給源中に存在するそれぞれ他のDNAもしくはRNA、またはタンパク質もしくはポリペプチド、または細胞もしくは細胞オルガネラから分離された、核酸、例えば、DNAもしくはRNA、またはタンパク質もしくはポリペプチド(例えば、抗体もしくはその誘導体)、または細胞もしくは細胞オルガネラを指す。用語「単離された」は、組換えDNA技法によって産生される場合には細胞性材料、ウイルス材料もしくは培養培地を実質的に含まない、または化学的に合成される場合には化学的先駆物質もしくは他の化学物質を実質的に含まない、核酸またはペプチドもまた指す。さらに、「単離された核酸」は、断片として天然に存在することがなく、天然状態で見出されない、核酸断片を含む意味である。用語「単離された」は、他の細胞性タンパク質から単離されたポリペプチドを指すためにも本明細書で使用され、精製されたポリペプチドおよび組換えポリペプチドの両方を包含する意味である。用語「単離された」は、他の細胞または組織から単離された細胞または組織を指すためにも本明細書で使用され、培養された細胞または組織および操作された細胞または組織の両方を包含する意味である。
【0037】
「リンカー」または「リンカードメイン」は、本明細書で使用される場合、本開示のCARのドメイン/領域のいずれかを一緒に連結する、約1~100アミノ酸長のオリゴペプチドまたはポリペプチド領域を指す。リンカーは、隣接するタンパク質ドメインが互いに対して動くように自由であるように、グリシンおよびセリンなどの柔軟な残基から構成され得る。より長いリンカーは、2つの隣接するドメインが互いを立体的に妨害しないことを確実にすることが望ましい場合に使用され得る。リンカーは、切断可能または切断不能であり得る。切断可能なリンカーの例には、2Aリンカー(例えば、T2A)、2A様リンカーまたはそれらの機能的等価物およびそれらの組み合わせが含まれる。一部の実施形態では、リンカーには、ピコルナウイルス2A様リンカー、ブタテシオウイルスのCHYSEL配列(P2A)、Thosea asignaウイルス(T2A)またはそれらの組み合わせ、バリアントおよび機能的等価物が含まれる。他のリンカーは、当業者に明らかである。
【0038】
用語「レンチウイルスベクター」は、特に、Miloneら、Mol.Ther.17(8):1453~1464(2009)に提供される自己不活性化レンチウイルスベクターが含まれる、レンチウイルスゲノムの少なくとも一部に由来するベクターを指す。クリニックで使用され得るレンチウイルスベクターの他の例には、例えば、Oxford BioMedicaのLENTIVECTOR(登録商標)遺伝子送達技術、LentigenのLENTIMAX(商標)ベクター系などが含まれるがこれらに限定されない。非臨床型のレンチウイルスベクターもまた利用可能であり、当業者に公知である。
【0039】
本明細書で使用される場合、「長期培養」または「長期拡大増殖」は、細胞が数において拡大増殖し、ならびに/またはかなりの生存度および実質的に類似の形態学を維持するような、制御された条件下での細胞の増殖を指す。一部の実施形態では、この用語は、所望の形態学および細胞数を維持しながらの培養の期間(例えば、約2か月間またはそれよりも長い期間にわたる)を指し、または少なくとも10回の培養継代の継代(例えば、培地交換)の数に関連し得る。他の実施形態では、この用語は、ある期間にわたる数における増加(例えば、約2か月間の期間での、少なくとも100万倍の増加)を指す。一部の実施形態では、長期培養物は、4か月間よりも長い期間、6か月間よりも長い期間、または1年間よりも長い期間にわたって培養される。他の実施形態では、長期培養物は、15継代よりも多く、18継代よりも多く、または20継代よりも多く継代される。
【0040】
「マクロファージコロニー刺激因子」または「MCSF」(コロニー刺激因子1(CSF 1)としても公知)は、単球、マクロファージおよび骨髄前駆体細胞の増殖、分化および生存に関与する。種々の種にわたる遺伝子配列、タンパク質配列およびオルソログが、当該分野で公知である(例えば、参照により本明細書に組み込まれるNCBI参照配列:NP_000748.4を参照されたい)。
【0041】
「ポリヌクレオチド」には、本明細書で使用される場合、DNA、RNA、cDNA(相補的DNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、rRNA(リボソームRNA)、shRNA(低分子ヘアピン型RNA)、snRNA(核内低分子RNA)、snoRNA(短核小体(short nucleolar)RNA)、miRNA(microRNA)、ゲノムDNA、合成DNA、合成RNAおよび/またはtRNAが含まれるがこれらに限定されない。
【0042】
別の配列に対してある特定のパーセンテージ(例えば、80%、85%、90%または95%)の「配列同一性」を有するポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド領域(またはポリペプチドもしくはポリペプチド領域)は、アラインした場合に、そのパーセンテージの塩基(またはアミノ酸)が、2つの配列を比較した場合に同じであることを意味する。アラインメントおよびパーセント相同性または配列同一性は、当該分野で公知のソフトウェアプログラム、例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1987)補遺30、セクション7.7.18、表7.7.1に記載されるものを使用して決定され得る。好ましくは、デフォルトパラメーターがアラインメントのために使用される。典型的なアラインメントプログラムは、デフォルトパラメーターを使用するBLASTである。特に、典型的なプログラムは、以下のデフォルトパラメーターを使用するBLASTNおよびBLASTPである:遺伝子コード=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリックス=BLOSUM62;描写=50配列;ソート法=HIGH SCORE;データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+SwissProtein+SPupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、以下のインターネットアドレスにおいて見出すことができる:ncbi.nlm.nih.gov/cgi-bin/BLAST。
【0043】
本開示が、ポリペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、抗体もしくはその断片に関連する場合、それらの等価物もしくは生物学的等価物は、本開示の範囲内であると意図されることが、明確な引用なしに、他を意図しない限り、推論される。本明細書で使用される場合、用語「その生物学的等価物」は、参照タンパク質、抗体もしくはその断片、ポリペプチドまたは核酸に言及する場合、「その等価物」と同義である意図であり、所望の構造または機能性をなおも維持しつつ最小限の相同性を有するものを意図する。本明細書で具体的に列挙されない限り、上記のいずれもが、その等価物を含むことが企図される。例えば、等価物は、少なくとも約70%の相同性もしくは同一性、または少なくとも80%の相同性もしくは同一性、およびあるいは、または少なくとも約85%、またはあるいは少なくとも約90%、またはあるいは少なくとも約95%、またはあるいは少なくとも98%のパーセント相同性もしくは同一性を意図し、参照タンパク質、ポリペプチド、抗体もしくはその断片または核酸と実質的に等価な生物学的活性を示す。あるいは、ポリヌクレオチドに言及する場合、その等価物は、参照ポリヌクレオチドまたはその相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドである。あるいは、ポリペプチドまたはタンパク質に言及する場合、その等価物は、参照ポリペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチドまたはその相補体にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドから発現されたポリペプチドまたはタンパク質である。
【0044】
用語「レトロウイルスベクター」は、レトロウイルスゲノムの少なくとも一部分に由来するベクターを指す。レトロウイルスベクターの例には、AddgeneまたはClontechから入手可能な、MSCVneo、MSCV-pac(またはMSCV-puro)、MSCV-hygroが含まれる。レトロウイルスベクターの他の例は、MSCV-Bgl2-AvrII-Bam-EcoR1-Xho-BstB1-Mlu-Sal-ClaI.I03(配列番号872)である。
【0045】
用語「スリーピングビューティートランスポゾン」または「スリーピングビューティートランスポゾンベクター」は、スリーピングビューティートランスポゾンゲノムの少なくとも一部分に由来するベクターを指す。
【0046】
「幹細胞因子」または「SCF」(KIT-リガンド、KLまたはスチール因子としても公知)は、c-KIT受容体(CD117)に結合するサイトカインである。SCFは、膜貫通タンパク質および可溶性タンパク質の両方として存在することができる。このサイトカインは、造血(血球の形成)、精子形成およびメラニン形成において重要な役割を果たす。種々の種にわたる遺伝子配列、タンパク質配列およびオルソログが、当該分野で公知である(例えば、参照により本明細書に組み込まれるNCBI参照配列NP_000890.1を参照されたい)。
【0047】
本明細書で使用される場合、「実質的に均一な集団」は、細胞の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、95%、もしくはさらには98%またはそれよりも多くが、示された型のものである、細胞の集団を指す。
【0048】
「膜貫通ドメイン」は、本明細書で使用される場合、形質膜を横断するCARの領域を指す。CARの膜貫通ドメインは、膜貫通タンパク質(例えば、I型膜貫通タンパク質)の膜貫通領域、人工疎水性配列またはそれらの組み合わせである。他の膜貫通ドメインは、当業者に明らかである。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ、ベータもしくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CDl la、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRFl)、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7R a、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CDl ld、ITGAE、CD103、ITGAL、CDl la、LFA-1、ITGAM、CDl lb、ITGAX、CDl lc、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRT AM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Lyl08)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46、NKG2Dおよび/またはNKG2Cの膜貫通ドメインから選択されるタンパク質に由来するまたはそれからクローニングされた膜貫通ドメインを含み得る。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「処置する」、「処置」、「処置すること」または「寛解」は、疾患または障害に関連する状態の進行または重症度を逆転、軽減、寛解、阻害、減速または停止させることが目的である、治療的処置を指す。用語「処置すること」は、状態、疾患または障害、例えばがんの少なくとも1つの有害効果または症状を低減または軽減することを含む。処置は、1つまたは複数の症状または臨床マーカーが低減される場合、一般に、「有効」である。あるいは、処置は、疾患の進行が低減もしくは休止される場合、「有効」である。即ち、「処置」には、症状またはマーカーの改善だけでなく、処置の非存在下で予想される症状の進行または悪化の休止または少なくとも減速もまた含まれる。有益なまたは所望の臨床結果には、検出可能であれ検出不能であれ、1つまたは複数の症状の軽減、疾患の程度の縮小、疾患の安定化された(即ち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延または減速、病状の寛解または緩和、および軽快(部分的であれ全体的であれ)が含まれるがこれらに限定されない。疾患の「処置」という用語には、疾患の症状または副作用からの救済を提供することも含まれる(緩和処置が含まれる)。一部の実施形態では、がんの処置には、腫瘍体積を減少させること、がん細胞の数を減少させること、がん転移を阻害すること、平均余命を増加させること、がん細胞増殖を減少させること、がん細胞生存を減少させること、またはがん性状態に関連する種々の生理学的症状の寛解が含まれる。
【0050】
「Wnt活性化因子」は、Wntシグナル伝達経路を誘導する化合物または分子を指す。Wntシグナル伝達経路は、細胞表面受容体を介してシグナルを細胞中に送るタンパク質で始まるシグナル伝達経路の一群である。3つのWntシグナル伝達経路が特徴付けられている:カノニカルなWnt経路、非カノニカルな平面内細胞極性経路および非カノニカルなWnt/カルシウム経路。3つ全ての経路は、生物学的シグナルを細胞の内側のDisheveledタンパク質に送るFrizzledファミリー受容体への、Wntタンパク質リガンドの結合によって活性化される。Wntは、350~400アミノ酸長である分泌型脂質改変シグナル伝達糖タンパク質の多様なファミリーを含む。これらのタンパク質上で起こる脂質改変の型は、23~24個のシステイン残基の保存されたパターン中のシステインのパルミトイル化である。パルミトイル化は、分泌のための形質膜へのWntタンパク質の標的化を開始させ、脂肪酸の共有結合に起因してWntタンパク質がその受容体に結合するのを可能にするので、必要である。Wntタンパク質は、適切な分泌を確実にするために炭水化物を結合させる糖鎖付加もまた受ける。Wntシグナル伝達では、これらのタンパク質は、パラ分泌および自己分泌経路を介して異なるWnt経路を活性化するリガンドとして作用する。これらのタンパク質は、種にわたって高度に保存されている。これらは、マウス、ヒト、Xenopus、ゼブラフィッシュ、Drosophilaおよび多くの他のものにおいて見出され得る。Wnt活性化因子の例には、SKL 2001、BML-284、WAY 262611、CAS 853220-52-7およびQS11が含まれるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、本明細書で開示される方法は、Wnt活性化因子活性を有する本開示の化合物の使用を含む。
【0051】
顆粒球およびマクロファージは、自然免疫系の2つの主要な細胞型である。これらは、病原体に対する第一線の防御であり、我々の身体の恒常性を維持する際、ならびに感染症ならびに代謝疾患およびがんが含まれる種々の疾患を予防する際にも、中心的な役割を果たす。顆粒球およびマクロファージは、貪食と呼ばれるプロセスにおいて、侵入してくる微生物を飲み込み消化する。貪食に加えて、マクロファージは、抗原提示体としても重要な役割を果たし、リンパ球などの他の免疫細胞を動員することによって、特異的防御機構(適応免疫)を開始する。最近、マクロファージは、がんと闘うための魅力的な治療標的にもなっている。その大きい治療潜在力にもかかわらず、顆粒球およびマクロファージを拡大増殖および遺伝子改変するための有効な方法は存在せず、それらの臨床適用を大きく制限している。
【0052】
より有望なアプローチは、顆粒球およびマクロファージが起源する骨髄中の共通の前駆体である顆粒球-単球前駆体(GMP)細胞を拡大増殖および遺伝子改変することである。本明細書で使用される場合、GMPは、哺乳動物種(例えば、ウシ、イヌ、ウマ、ネコ、ヒト、マウス、霊長類、ラットなど)に由来し得るまたはそれから得られ得る。ex vivoで拡大増殖されたGMPは、治療適用のために十分なマクロファージを生成する能力を可能にし得る。拡大増殖されたGMPは、最も豊富な型の顆粒球である好中球へと分化するようにも誘導され得、好中球は、好中球減少症または好中球機能不全を有する患者において感染症と闘うために、血液循環中に次いで注入され得る。より重要なことに、GMPは、増強された抗腫瘍活性または抗菌活性を有する遺伝子操作されたマクロファージを生成するために容易に改変され得る。マクロファージは、それらを操作するために使用される遺伝子材料を含む任意の外来粒子を飲み込み消化するが、GMPは貪食活性を有さず、このことが、それらをはるかに好ましい標的にしている。しかし、数十年間の集中的な研究にもかかわらず、GMP、ならびに造血系の他の幹/前駆体細胞の長期ex vivo拡大増殖は、いまだ実現されていない。
【0053】
造血系の細胞は、最上位の造血幹細胞(HSC)、最下位の種々の成熟血球、ならびに中間の造血幹および前駆体細胞(HSPC)、例えば、間にあるGMPの階層構造で体系化される。HSPCの大きな治療潜在力に誘引されて、多数のグループが、過去20年間にそれらのex vivo拡大増殖のための培養条件を開発することを試みてきた。今までのところ、全ての条件が根本的な制限を有している:これらの条件は、任意の型のHSPCの均一な集団を連続して指数関数的に拡大増殖させることができない。
【0054】
独自の課題は、1つの型のHSPCを別の型のHSPCから、特に、その直ぐ上流の前駆体および下流の子孫から区別し分離することの困難さであった。実際、従来の免疫表現型分析は、1つのHSPC型をその直ぐ上流の前駆体および下流の子孫から区別することができない。クローンレベルでは、先を見越して精製されたHSCは、なおも高度に不均一であり、多様な遺伝子発現パターンおよび別個の細胞機能を有する細胞を含有する。HSPCは、いくらか類似した細胞表面マーカー発現を有するが不均一な機能を有する細胞の連続体にわたるので、これは予想される。この不均一な細胞集団内で、単一の幹/前駆体細胞型の拡大増殖を促進することができる増殖因子/サイトカインおよび小分子を同定することは、技術的に非常に挑戦的である。
【0055】
顆粒球、マクロファージおよび樹状細胞は、骨髄中の共通の前駆体である顆粒球-マクロファージ前駆体(GMP)に起源する。自然免疫細胞の計り知れない治療潜在力にもかかわらず、クリニックにおけるそれらの適用は、これらの細胞またはそれらの前駆体GMPを有効に拡大増殖および遺伝子改変することが現在できないことに起因して、大きく制限されてきた。GMPの長期拡大増殖のための方法が、本明細書で提供される。ex vivoで拡大増殖されたGMPは、in vitroおよびin vivoの両方で、成熟した機能的な顆粒球、マクロファージおよび樹状細胞へと効率的に分化することができる。これらのex vivoで拡大増殖されたGMPは、遺伝子改変することもできる。GMPの産生のための本明細書で開示される方法、およびそれから産生されるGMPは、以下に起因して、大きな有用性を有する:(1)GMPの長期拡大増殖は、基礎研究および臨床適用の両方のために、無制限の均質な細胞集団を提供する;(2)GMPの長期拡大増殖は、GMP遺伝子およびそれらの発現を改変することによる免疫応答の調節の研究を可能にする;ならびに(3)ex vivoで拡大増殖されたGMPは、移植が含まれる臨床適用のために使用することができる。例えば、ex vivoで拡大増殖されたGMPは、好中球減少症を処置するために容易に使用され得る。さらに、本開示は、マクロファージおよび樹状細胞に分化するようにさらに誘導され得るGMPの遺伝子改変(例えば、ノックアウトSIRPαおよび/またはPI3Kγ遺伝子;アンジオテンシン変換酵素の過剰発現)もまた提供する。本明細書で提示される研究では、これらの操作されたマクロファージおよび樹状細胞は、増強された抗腫瘍効果を示し、単剤療法として、または他の免疫学的薬剤、例えば、抗PD-1/PD-L1抗体およびキメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞との併用療法として、がんを処置するために臨床的に使用され得る。GMPを、CAR-マクロファージを産生するようにも操作した。これらのCAR-マクロファージは、がんおよび他の疾患を処置するために使用され得る。
【0056】
マクロファージは、M1極性またはM2極性として元々分類された多様な表現型を示す。M1極性化マクロファージは、抗原を提示し、IL-12、IL-23、インターフェロンガンマ(IFNγ)および反応性酸素種(ROS)を産生する能力を示す。M1マクロファージは、抗腫瘍においてより有効であり、T細胞応答をTヘルパー1型(Th1)または細胞媒介性免疫応答に向けて歪める。対照的に、M2マクロファージは、IL-10およびTGF-βを産生し、組織リモデリングに関与し、免疫抑制的性質を有し、Th2または抗体媒介性免疫応答を促進する。腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、腫瘍微小環境の主要な構成要素を構成する。これらの細胞は、腫瘍免疫抑制を促進する優勢なM2表現型マクロファージである。最近の研究は、免疫チェックポイント遮断の使用によって無効にされない、T細胞機能の抑制へのそれらの寄与を支持している。したがって、マクロファージは、がんと闘うための魅力的な治療標的になっている。マクロファージの大きい治療潜在力にもかかわらず、クリニックにおけるそれらの適用は、マクロファージまたはそれらの前駆体GMPを拡大増殖および遺伝子改変するための有効な方法が現在存在しないことに起因して、大きく制限されてきた。GMPの長期拡大増殖は、これらの細胞を治療的により適用可能なものにするための遺伝子改変を可能にする。
【0057】
特定の実施形態では、本開示は、複数回の細胞継代およびクローン性拡大増殖を受けた後に形態学的に未変化のままの顆粒球/マクロファージ前駆体細胞(GMP)の均一な細胞集団の長期拡大増殖のための方法を提供する。さらなる実施形態では、本明細書で開示される方法は、GMPを、増殖因子(例えば、SCF)、B-Rafキナーゼ阻害剤(例えば、GDC-0879)、Mnk1/2を阻害する薬剤、PI3K経路を阻害する薬剤、および必要に応じて、1つまたは複数の血清構成要素が含まれるがこれらに限定されない因子および薬剤の組み合わせを含む培養培地中で培養するステップを含む。なお別の実施形態では、GMPの長期培養物は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように遺伝子操作される。
【0058】
幹細胞は、特定の特殊化した機能を有する細胞(例えば、組織特異的細胞、実質細胞およびそれらの前駆体)が含まれる他の細胞型への分化が可能な細胞である。前駆体細胞(即ち、「多分化能性」)は、異なる最終分化した細胞型を生じることができる細胞、および種々の前駆体細胞を生じることが可能な細胞である。生物の細胞型の全てではないが一部または多くを生じる細胞は、「多能性」幹細胞と呼ばれる場合が多く、これらは、成熟生物の身体中の任意の細胞型へと分化することができるが、リプログラミングなしでは、それらが由来した細胞へと脱分化することはできない。理解されるように、「多分化能性」幹/前駆体細胞(例えば、顆粒球/マクロファージ前駆体細胞(GMP))は、多能性幹細胞よりも狭い分化潜在力を有する。GMPへの誘導の前に、本明細書で開示される幹細胞は、いくつもの遺伝子操作技法、例えば、遺伝子治療、遺伝子編集システム、相同組換えなどの使用によって、遺伝子改変され得る。かかる改変された幹細胞は、増強された治療を提供し得る(例えば、Nowakowskiら、Acta Neurobiol Exp(Wars)73(1):1~18(2013)を参照されたい)。ある特定の実施形態では、幹細胞または前駆体細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように、またはキメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含有するように、操作され得る。
【0059】
さらなる実施形態では、本明細書で開示されるGMPは、幹細胞に由来する。幹細胞には、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞、非胚性(成体)幹細胞および臍帯血幹細胞が含まれ得る。本開示の培地を使用して培養され得る幹細胞型には、ヒト、マウス、ラット、サルおよび類人猿が含まれる任意の哺乳動物種に由来する幹細胞が含まれる(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Nature 448:313~318、2007年7月;およびTakahashiら、Cell 131(5):861~872を参照されたい)。
【0060】
特定の実施形態では、本開示のGMPは、誘導多能性細胞(iPSまたはiPSC)に由来する。iPSCは、(内因性遺伝子の)選択的遺伝子発現によって、または異種遺伝子によるトランスフェクションによって、非多能性細胞から得られる多能性幹細胞の1つの型である。誘導多能性幹細胞は、Kyoto University、JapanのShinya Yamanakaのチームによって記載されている。Yamanakaらは、胚性幹細胞において特に活性な遺伝子を同定し、それらの遺伝子の選択によってマウス線維芽細胞をトランスフェクトするために、レトロウイルスを使用している。最終的に、多能性幹細胞の産生のために重要な4つの重要な多能性遺伝子が単離された:Oct-3/4、SOX2、c-MycおよびKlf4。より最近の研究は、ある特定の培養条件と追加の因子を組み合わせたこれらの因子のうちのより少数が、多能性幹細胞を誘導することができるとしている。細胞は、Fbx15細胞についての抗生物質選択によって単離された。同じグループは、Harvard、MITおよびUniversity of California、Los Angelesからの2つの他の独立した研究グループと共に、iPSへのマウス線維芽細胞の首尾よいリプログラミングを示し、生存可能なキメラの産生さえも示す研究を公開した。
【0061】
代替的な実施形態では、本明細書で開示されるGMPは、胚性幹細胞(ESC)に由来する。ESCは、ヒト胚の未分化の内部細胞塊に由来する幹細胞である。胚性幹細胞は多能性であり、これは、胚性幹細胞が3つの一次胚葉:外胚葉、内胚葉および中胚葉の全ての誘導体へと成長(即ち、分化)することができることを意味している。多能性は、胚性幹細胞を、成体において見出される成体幹細胞から区別する;胚性幹細胞は、身体中の全ての細胞型を生成することができるが、成体幹細胞は多分化能性であり、限定数の細胞型のみを産生することができる。さらに、規定された条件下では、胚性幹細胞は、それら自身を無制限に増殖させることが可能である。これは、胚性幹細胞が研究および再生医療の両方のための有用なツールとして使用されることを可能にするが、それは、胚性幹細胞が、継続的な研究または臨床使用のために際限のない数の胚性幹細胞を産生できるからである。
【0062】
別の代替的な実施形態では、本明細書で開示されるGMPは、臍帯血幹細胞に由来する。臍帯血は、赤ん坊の誕生後に胎盤中および臍帯中に残された血液である。臍帯血は、全血中で見出される全ての要素から構成される。臍帯血は、赤血球、白血球、血漿、血小板を含有し、造血幹細胞に富んでもいる。造血幹細胞は、Chularojmontriら、J Med Assoc Thai 92(3):S88~94(2009)中で教示されるものが含まれる、当該分野で教示されるいくつもの単離方法を使用して、臍帯血から単離され得る。さらに、STEMCELL Technologies、Thermo Fisher Scientific、Zen-Bioなどが含まれる複数の業者からの市販のキットが、CD34細胞(即ち、造血幹細胞)をヒト臍帯血から単離するために利用可能である。
【0063】
なお別の代替的な実施形態では、本明細書で開示されるGMPは、非胚性幹細胞に由来する。非胚性幹細胞は、それ自体を再生でき、組織または臓器の主要な特殊化した細胞型の一部または全てを生じるように分化することができる。生きた生物における非胚性幹細胞の主な役割は、それらが見出される組織を維持および修復することである。科学者は、非胚性幹細胞の代わりに体性幹細胞という用語も使用し、このとき、体性とは、身体の細胞(胚細胞でも精子でも卵でもない)を指す。非胚性幹細胞は、脳、骨髄、末梢血、血管、骨格筋、皮膚、歯、心臓、腸、肝臓、卵巣上皮および精巣が含まれる多くの臓器および組織において同定されている。これらは、各組織の特定の領域(「幹細胞ニッチ」と呼ばれる)に存在すると考えられる。生きた動物では、非胚性幹細胞は、必要に応じて、長い期間にわたって分裂することができ、特定の組織の特徴的な形状ならびに特殊化した構造および機能を有する成熟細胞型を生じ得る。
【0064】
特定の実施形態では、本明細書で開示されるGMPは、造血幹細胞(HSC)に由来する。HSCは、臍帯血および骨髄から容易に単離され得る。かかる単離プロトコールは、当該分野で公知であり、典型的には、HSCの単離のための細胞選択マーカーとして、CD34を使用する(例えば、Lagasseら、Nat Med.6:1229~1234(2000)を参照されたい)。
【0065】
本明細書で開示される方法では、GMPは、増殖因子(例えば、SCF)、B-Rafキナーゼ阻害剤(例えば、GDC-0879)、Mnk1/2を阻害する薬剤、PI3K経路を阻害する薬剤、および必要に応じて、1つまたは複数の血清構成要素が含まれるがこれらに限定されない因子および薬剤の組み合わせを含む培養培地中で成長および拡大増殖され得る。培養培地は、種々の他の生物学的薬剤が補充された改変基本培地であり得る。基本培地は、培養物中の細胞の成長を支持するのに有効なアミノ酸、ビタミン、塩および栄養素の溶液を指すが、通常、これらの化合物は、追加の化合物が補充されない限り、細胞成長を支持しない。栄養素には、細胞によって代謝され得る炭素供給源(例えば、糖、例えば、グルコース)、ならびに細胞の生存に必要な他の化合物が含まれる。これらは、化合物(例えば、必須アミノ酸)を合成するために必要なタンパク質をコードする遺伝子のうち1つもしくは複数の非存在に起因して、細胞自身が合成できない化合物であり、または細胞が合成できる化合物に関しては、それらの特定の発生状態に起因して、必要な生合成タンパク質をコードする遺伝子が、十分なレベルとして発現されていない。いくつかの基本培地、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI 1640、Knockout-DMEM(KO-DMEM)およびDMEM/F12は、哺乳動物細胞培養の分野で公知であるが、実質的に未分化の状態での幹細胞の成長を支持する薬剤が補充され得る任意の基礎培地(base medium)が使用され得る。ある特定の比率の、上で例示された基本培地のうち1つ(例えば、DMEM/F12)と神経基本培地(またはあるいは他の基本培地、例えば、IMDMおよび/またはStemSpan(商標)SFEMII)とを含む培養培地が、GMPの成長の改善を予想外に提供したことが、本明細書でさらに見出された。特に、上で例示された基本培地のうち1つ(例えば、DMEM/F12)の神経基本培地に対する約5:1~約1:5の比率が、GMPを培養するために使用され得る。さらなる実施形態では、GMPを成長させるための培養培地は、約1:1の、神経基本培地に対するDMEM/F12を含む。
【0066】
上に示されるように、GMPを成長させるための本明細書で開示される培養培地には、インスリン、トランスフェリン、BSAフラクションV、プトレシン、亜セレン酸ナトリウム、DL-αトコフェロールおよびリノレン酸が含まれるがこれらに限定されない1つまたは複数の追加の薬剤が補充され得る。ある特定の実施形態では、GMPを成長させるための本明細書で開示される培養培地には、インスリン、トランスフェリン、BSAフラクションV、プトレシン、亜セレン酸ナトリウム、DL-αトコフェロールおよびリノレン酸が補充される。
【0067】
理解されるように、継続的に、または定期的な間隔で、典型的には、1~3日毎に、使用済みの培養培地を新鮮な培養培地で置き換えることが望ましい。新鮮な培地を使用することの1つの利点は、細胞が、従来の技法に従ってフィーダー細胞上で培養した場合、または馴化培地中で培養した場合よりも、均一かつ迅速に拡大増殖するように、条件を調整する能力である。
【0068】
以前の出発細胞集団と比較した場合、4倍、10倍、20倍、50倍、100倍、1000倍またはそれよりも大きく拡大増殖されたGMPの集団が得られ得る。適切な条件下では、拡大増殖された集団中の細胞は、培養を開始するために使用したGMPと比較して、50%、70%またはそれよりも多くが未分化状態である。1継代当たりの拡大増殖の程度は、培養の終了時に回収された細胞のおおよその数を、培養物中に元々播種された細胞のおおよその数によって除算することによって計算され得る。成長環境の幾何学が限定的である場合、または他の理由のために、細胞は、さらなる拡大増殖のために、類似の成長環境中に必要に応じて継代され得る。総拡大増殖は、継代の各々における全ての拡大増殖の積である。もちろん、各継代で拡大増殖された全ての細胞を保持する必要はない。例えば、細胞が各培養物中で2倍拡大増殖するが、細胞の約50%だけが各継代で保持される場合、およそ同じ数の細胞が、次に進められる。しかし、4回の培養の後、細胞は、16倍の拡大増殖を受けたと言われる。細胞は、当該分野で公知の極低温凍結技法によって貯蔵され得る。
【0069】
本明細書でより詳細に示されるように、GMPは、増殖因子(例えば、SCF)、B-Rafキナーゼ阻害剤(例えば、GDC-0879)、Mnk1/2を阻害する薬剤、PI3K経路を阻害する薬剤、および必要に応じて、1つまたは複数の血清構成要素が含まれるがこれらに限定されない因子および薬剤の組み合わせを含む培養培地中で成長および拡大増殖され得る。
【0070】
本開示は、遺伝子操作技法を使用して、本明細書で開示されるGMPを遺伝子改変する方法を提供する。特に、本開示のGMPは、遺伝子改変技法に対して感受性であり、それにより、基礎的科学研究および臨床治療適用におけるGMPの使用を可能にすることが、本明細書で示された。したがって、拡大増殖および遺伝子改変されたGMPは、広い臨床適用へと容易に移転させることができる。したがって、本開示は、本明細書で開示されるGMPを遺伝子改変する方法をさらに提供する。かかる方法は、遺伝子編集システム、相同組換えまたは部位特異的変異誘発を使用することによって、GMP中に改変を遺伝子操作するステップを含み得る。遺伝子編集システムの特定の例には、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALENおよびCRISPRが含まれる。
【0071】
ある特定の実施形態では、CRISPRシステムは、II型CRISPRシステムであり、Cas酵素は、DNA切断を触媒するCas9である。Streptococcus pyogenesに由来するCas9または任意の近縁のCas9による酵素作用は、20ヌクレオチドのガイド配列にハイブリダイズし、20ヌクレオチドの標的配列の後ろにプロトスペーサー-隣接モチーフ(PAM)配列(例には、本明細書に記載されるように決定され得るNGG/NRGまたはPAMが含まれる)を有する標的部位配列において二本鎖切断を生成する。部位特異的DNA認識および切断のためのCas9を介したCRISPR活性は、ガイド配列、ガイド配列に一部ハイブリダイズするtracr配列、およびPAM配列によって規定される。CRISPRシステムのさらなる態様は、KarginovおよびHannon、The CRISPR system:small RNA-guided defense in bacteria and archaea、Mole Cell 2010年1月15日;37(1):7に記載されている。
【0072】
Streptococcus pyogenes SF370由来のII型CRISPR遺伝子座は、4つの遺伝子Cas9、Cas1、Cas2およびCsn1のクラスター、ならびに2つの非コードRNAエレメント:tracrRNA、および非反復配列の短い鎖(スペーサー、各々約30bp)によって間隔をあけられた反復配列(ダイレクトリピート)の特徴的アレイを含有する。このシステムでは、標的化されたDNA二本鎖切断(DSB)は、4つの逐次的なステップで生成される。最初に、2つの非コードRNAであるpre-crRNAアレイおよびtracrRNAが、CRISPR遺伝子座から転写される。第2に、tracrRNAは、pre-crRNAのダイレクトリピートにハイブリダイズし、これは次いで、個々のスペーサー配列を含有する成熟crRNAへとプロセシングされる。第3に、成熟crRNA:tracrRNA複合体は、crRNAのスペーサー領域とプロトスペーサーDNAとの間でのヘテロ二重鎖形成を介して、プロトスペーサーおよび対応するPAMを含む標的配列にCas9を指向させる。最後に、Cas9が、PAMの標的配列の切断を媒介して、プロトスペーサー内にDSBを創出する。ある特定の実施形態では、RNAポリメラーゼIllベースのU6プロモーターは、tracrRNAの発現を駆動するためのものである。
【0073】
典型的には、内因性CRISPRシステムに関して、CRISPR複合体(標的配列にハイブリダイズし、1つまたは複数のCasタンパク質と複合体化したガイド配列を含む)の形成は、標的配列中またはその近傍(例えば、標的配列から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50またはそれよりも多くの塩基対以内)での一方または両方の鎖の切断を生じる。理論によって束縛されることは望まないが、野生型tracr配列の全てまたは一部分(例えば、野生型tracr配列の約20、26、32、45、48、54、63、67、85もしくはそれよりも多くのヌクレオチド、または約20、26、32、45、48、54、63、67、85もしくはそれよりも多くのヌクレオチドよりも多く)を含み得るまたはそれからなり得るtracr配列もまた、例えば、ガイド配列に作動可能に連結されるtracrメイト配列の全てまたは一部分への、tracr配列の少なくとも一部分に沿ったハイブリダイゼーションによって、CRISPR複合体の一部を形成し得る。一部の実施形態では、CRISPRシステムのエレメントの発現が、1つまたは複数の標的部位におけるCRISPR複合体の形成を指示するように、CRISPRシステムの1つまたは複数のエレメントの発現を駆動する1つまたは複数のベクターが、宿主細胞(例えば、GMPまたは幹細胞)中に導入される。例えば、Cas酵素、tracrメイト配列に連結されたガイド配列、およびtracr配列は各々、別々のベクター上の別々の調節エレメントに作動可能に連結され得る。あるいは、同じまたは異なる調節エレメントから発現されるエレメントのうち2つ以上が、単一のベクター中で組み合わされ得、1つまたは複数の追加のベクターが、第1のベクター中に含まれないCRISPRシステムの任意の構成要素を提供する。単一のベクター中で組み合わされるCRISPRシステムエレメントは、任意の適切な配向で配置され得る、例えば、1つのエレメントが、第2のエレメントに対して5’側に(第2のエレメントの「上流」に)または第2のエレメントに対して3’側に(第2のエレメントの「下流」に)位置し得る。1つのエレメントのコード配列は、第2のエレメントのコード配列の同じ鎖または対向鎖上に位置し得、同じ方向または対向方向で配向され得る。一部の実施形態では、単一のプロモーターが、CRISPR酵素をコードする転写物、ならびにガイド配列、tracrメイト配列(必要に応じて、ガイド配列に作動可能に連結される)、および1つまたは複数のイントロン配列内に包埋されたtracr配列(例えば、各々が異なるイントロン中に、2つ以上が少なくとも1つのイントロン中に、または全てが単一のイントロン中に)のうち1つまたは複数の発現を駆動する。一部の実施形態では、CRISPR酵素、ガイド配列、tracrメイト配列およびtracr配列は、同じプロモーターに作動可能に連結され、同じプロモーターから発現される。
【0074】
一部の実施形態では、CRISPR発現ベクターは、1つまたは複数の挿入部位、例えば、制限エンドヌクレアーゼ認識配列(「クローニング部位」とも呼ばれる)を含む。一部の実施形態では、1つまたは複数の挿入部位(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個もしくはそれよりも多くの挿入部位、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個もしくはそれよりも多くの挿入部位よりも多く)が、1つまたは複数のベクターの1つまたは複数の配列エレメントの上流および/または下流に位置する。一部の実施形態では、挿入部位中へのガイド配列の挿入後、および発現の際に、ガイド配列が、真核生物細胞(例えば、GMPまたは幹細胞)中の標的配列へのCRISPR複合体の配列特異的結合を指示するように、ベクターは、tracrメイト配列の上流、かつ必要に応じて、tracrメイト配列に作動可能に連結された調節エレメントの下流に、挿入部位を含む。一部の実施形態では、ベクターは、2つ以上の挿入部位を含み、各挿入部位は、各部位におけるガイド配列の挿入を可能にするために、2つのtracrメイト配列間に位置する。かかる配置では、2つ以上のガイド配列は、2コピー以上の単一のガイド配列、2つ以上の異なるガイド配列、またはこれらの組み合わせを含み得る。複数の異なるガイド配列が使用される場合、単一の発現構築物が、細胞内の複数の異なる対応する標的配列へとCRISPR活性を標的化するために使用され得る。例えば、単一のベクターは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20もしくはそれよりも多くのガイド配列、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20もしくはそれよりも多くのガイド配列よりも多くを含み得る。一部の実施形態では、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくはそれよりも多くのかかるガイド配列含有ベクター、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくはそれよりも多くのかかるガイド配列含有ベクターよりも多くが提供され得、必要に応じて、細胞に送達され得る。
【0075】
一部の実施形態では、ベクターは、CRISPR酵素、例えば、Casタンパク質をコードする酵素コード配列に作動可能に連結された調節エレメントを含む。Casタンパク質の非限定的な例には、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても公知)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、それらのホモログ、またはそれらの改変バージョンが含まれる。一部の実施形態では、未改変のCRISPR酵素、例えば、Cas9は、DNA切断活性を有する。一部の実施形態では、CRISPR酵素は、標的配列の位置、例えば、標的配列内および/または標的配列の相補体内において、一方または両方の鎖の切断を指示する。一部の実施形態では、CRISPR酵素は、標的配列の最初または最後のヌクレオチドから約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、50、100、200、500またはそれよりも多くの塩基対以内での、一方または両方の鎖の切断を指示する。一部の実施形態では、ベクターは、変異したCRISPR酵素が、標的配列を含有する標的ポリヌクレオチドの一方または両方の鎖を切断する能力を欠如するように、対応する野生型酵素に関して変異したCRISPR酵素をコードする。例えば、S.pyogenes由来のCas9のRuvC I触媒ドメイン中のアスパラギン酸からアラニンへの置換(D10A)は、Cas9を、両方の鎖を切断するヌクレアーゼから、ニッカーゼ(一本鎖を切断する)に変換する。Cas9aをニッカーゼにする変異の他の例には、限定なしに、H840A、N854AおよびN863Aが含まれる。さらなる例として、Cas9の2つ以上の触媒ドメイン(RuvC I、RuvC II、およびRuvC IIIまたはHNHドメイン)が、全てのDNA切断活性を実質的に欠如する変異したCas9を産生するために、変異され得る。一部の実施形態では、D10A変異は、全てのDNA切断活性を実質的に欠如するCas9を産生するために、H840A、N854AまたはN863A変異のうち1つまたは複数と組み合わされる。一部の実施形態では、変異した酵素のDNA切断活性が、その非変異形態と比較して約25%、10%、5%、1%、0.1%、0.01%未満またはそれよりも低い場合、CRISPR酵素は、全てのDNA切断活性を実質的に欠如するとみなされる。酵素がSpCas9ではない場合、変異は、SpCas9の10位、762位、840位、854位、863位および/または986位に対応するいずれかまたは全ての残基においてなされ得る(これは、例えば、標準的な配列比較ツールによって確定され得る)。特に、以下の変異:D10A、E762A、H840A、N854A、N863Aおよび/またはD986A、のいずれかまたは全てが、SpCas9において好ましいだけでなく、置き換えアミノ酸のいずれかについての保存的置換もまた、想定される。他のCas9における対応する位置における同じもの(またはこれらの変異の保存的置換)もまた示される。
【0076】
示されたオルソログもまた、本明細書に記載される。Cas酵素は、Cas9と同定され得るが、それは、これが、II型CRISPRシステムの複数のヌクレアーゼドメインを有する最も大きいヌクレアーゼと相同性を共有する一般的なクラスの酵素を指し得るからである。最も好ましくは、Cas9酵素は、spCas9もしくはsaCas9由来である、またはそれに由来する。由来したとは、由来した酵素が、野生型酵素と高い程度の配列相同性を有するという意味で、野生型酵素に主に基づくが、本明細書に記載されるいくつかの方法で変異されている(改変されている)ことを意味する。
【0077】
CasおよびCRISPR酵素という用語は、他が明らかでない限り、一般に、相互交換可能に本明細書で使用されることが理解される。上で言及したように、本明細書で使用される残基番号付けの多くは、Streptococcus pyogenesのII型CRISPR遺伝子座からのCas9酵素を指す。しかし、本開示が、他の種の微生物由来の多くのさらなるCas9、例えば、SpCas9、SaCa9、St1Cas9などを含むことが理解される。
【0078】
遺伝子編集システム(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPRおよびTALEN)が、改変をGMPまたは幹細胞中に遺伝子操作するため、例えば、GMPまたは幹細胞中に見出される既存の遺伝子を置き換えまたは破壊する(ノックアウト)ために使用され得る。本明細書に提示される実施例に示されるように、本開示のGMPは、ノックアウト変異に対して特に感受性である。さらに、追加のノックアウト、例えば、SIRPα遺伝子ノックアウトおよび/またはPI3Kγ遺伝子ノックアウトが、本開示のGMPから容易に創出され得ると予想される。あるいは、同じ編集システム(例えば、CRISPRおよびTALEN)が、その遺伝子座において見出されない配列情報を含有するように遺伝子座を変更するため(ノックイン変異)に使用され得る。かかる改変は、「獲得された機能」を有するGMPを創出するために使用され得る。かかる改変されたGMPは、例えば、疾患または障害に関連する生体分子を発現させることによって、病状を模倣するために特に有用である。
【0079】
別の実施形態では、GMP細胞は、ベクターを使用して操作される。例えば、本開示のCARは、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、スリーピングビューティートランスポゾン、ピギーバックトランスポゾンを使用することが含まれるがこれらに限定されないいくつもの技法を使用して、またはmRNAトランスフェクションによって、または上記方法の組み合わせを使用して、細胞中に導入され得る。CARは、内因性プロモーター(例えば、TCRαまたはTCRβプロモーター)の制御下にあるように発現され得る。一部の実施形態では、CARは、外来プロモーター(例えば、CMVプロモーター)を使用して発現される。
【0080】
一部の実施形態では、CARをコードする核酸分子を導入することは、本明細書に記載されるように培養したGMP中に、CARをコードする核酸分子を含むベクターを形質導入すること、またはCARをコードする核酸分子をトランスフェクトすることを含む。
【0081】
一部の実施形態では、方法は、a)GMPの培養物を拡大増殖および維持するために培養されるGMPの集団を提供するステップ;b)CAR構築物をコードする核酸を含むベクターをGMP中に導入するステップ;ならびにc)形質転換/トランスフェクトされたGMPを培養するステップ、を含む。一部の実施形態では、方法は、GMPの、骨髄系およびリンパ系系統の血球への分化、例えば、単球、マクロファージ、顆粒球、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球の、血小板、T細胞、B細胞およびナチュラルキラー細胞への分化をさらに提供する。特定の実施形態では、本明細書で開示される方法は、GMPを、MCSFを含むマクロファージ分化培地を用いて培養することによって、本開示のGMPをマクロファージへと分化させるステップをさらに含む。なおさらなる実施形態では、マクロファージ分化培地は、RPMI 1640、10%FBSおよび20ng/mLのMCSFを含む。代替的な実施形態では、本明細書で開示される方法は、GMPを、GCSFを含む顆粒球分化培地を用いて培養することによって、本開示のGMPを顆粒球へと分化させるステップをさらに含む。なおさらなる実施形態では、顆粒球分化培地は、RPMI 1640、10%FBSおよび20ng/mLのGCSFを含む。
【0082】
特定の実施形態では、本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように顆粒球-マクロファージ前駆体(GMP)を遺伝子操作する方法であって、CARを含むベクターをGMP中に導入して、CARを発現するGMP(CAR-GMP)を形成するステップ;CAR-GMPを、規定された培養条件において複数回の継代にわたって拡大増殖および培養して、CAR-GMPの集団を生成するステップ;およびCAR-GMPの集団を、顆粒球、マクロファージまたは樹状細胞に分化するようにin vitroで誘導するステップであって、顆粒球、マクロファージまたは樹状細胞がCARを発現する、ステップを含む方法を提供する。さらなる実施形態では、GMPは、幹細胞から得られる。なおさらなる実施形態では、幹細胞は、造血幹細胞である。別の実施形態では、造血幹細胞は、対象の骨髄から単離される。なお別の実施形態では、対象は、哺乳動物対象である。さらなる実施形態では、対象は、ヒト患者である。なおさらなる実施形態では、CARは、抗原に結合することが可能な細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに、顆粒球、マクロファージおよび樹状細胞の抗腫瘍活性を、それらの貪食および/または炎症促進性サイトカイン分泌を増加させることによって増加させるように設計された少なくとも1つの細胞内ドメインを含む。別の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。なお別の実施形態では、ウイルスベクターは、複製性または非複製性であり得、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、麻疹ベクター、ヘルペスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ラブドウイルスベクター、レオウイルスベクター、セネカバレーウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、パルボウイルスベクターまたはアルファウイルスベクターであり得る。ある特定の実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。別の実施形態では、規定された培養条件は、CAR-GMPを、(i)増殖因子、(ii)B-Rafキナーゼ阻害剤、ならびに(iii)Wnt活性化因子および/またはGSK-3阻害剤を含む培養培地中で培養することを含み、CAR-GMPは、複数回の細胞継代および/またはクローン性拡大増殖を受けた後に、形態学的に実質的に未変化のままである。さらなる実施形態では、培養培地は、DMEM/F12および神経基本培地を含む。なおさらなる実施形態では、培養培地は、DMEM/F12および神経基本培地を、約5:1~約1:5の比率で含む。別の実施形態では、培養培地は、DMEM/F12および神経基本培地を、約1:1の比率で含む。なお別の実施形態では、培養培地は、インスリン、トランスフェリン、ウシ血清アルブミン(BSA)フラクションV、プトレシン、亜セレン酸ナトリウム、DL-αトコフェロールおよび/またはリノレン酸から選択される1つまたは複数の補充剤を含む。さらなる実施形態では、培養培地には、インスリン、トランスフェリン、BSAフラクションV、プトレシン、亜セレン酸ナトリウム、DL-αトコフェロールおよびリノレン酸が補充される。ある特定の実施形態では、増殖因子は、幹細胞因子(SCF)である。別の実施形態では、B-Rafキナーゼ阻害剤は、GDC-0879、PLX4032、GSK2118436、BMS-908662、LGX818、PLX3603、RAF265、RO5185426、ベムラフェニブ、PLX8394、SB590885およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。なお別の実施形態では、Wnt活性化因子は、SKL 2001、BML-284、WAY 262611、CAS 853220-52-7、QS11およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。さらなる実施形態では、GSK-3阻害剤は、CHIR99021、CHIR98014、SB216763、BIO、A1070722、AR-A014418およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、規定された培養条件は、CAR-GMPを、(i)増殖因子;(ii)B-Rafキナーゼ阻害剤;(iii)マイトジェン活性化キナーゼ相互作用タンパク質キナーゼ1および2(Mnk1/2)を阻害する薬剤;(iv)PI3K経路を阻害する薬剤;(v)必要に応じて、1つまたは複数の血清構成要素を含む培養培地中で培養することを含み;CAR-GMPは、複数回の細胞継代および/またはクローン性拡大増殖を受けた後に、形態学的に実質的に未変化のままである。さらなる実施形態では、培養培地は、DMEM/F12および神経基本培地を含む。なおさらなる実施形態では、培養培地は、DMEM/F12および神経基本培地を、約5:1~約1:5の比率で含む。別の実施形態では、培養培地は、DMEM/F12および神経基本培地を、約1:1の比率で含む。なお別の実施形態では、培養培地は、インスリン、トランスフェリン、ウシ血清アルブミン(BSA)フラクションV、プトレシン、亜セレン酸ナトリウム、DL-αトコフェロールおよび/またはリノレン酸から選択される1つまたは複数の補充剤を含む。さらなる実施形態では、培養培地には、インスリン、トランスフェリン、BSAフラクションV、プトレシン、亜セレン酸ナトリウム、DL-αトコフェロールおよびリノレン酸が補充される。なおさらなる実施形態では、増殖因子は、幹細胞因子(SCF)である。別の実施形態では、B-Rafキナーゼ阻害剤は、GDC-0879、PLX4032、GSK2118436、BMS-908662、LGX818、PLX3603、RAF265、RO5185426、ベムラフェニブ、PLX8394、SB590885およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0083】
さらなる実施形態では、Mnk1/2を阻害する薬剤は、CGP-57380、セルコスポラミド、BAY 1143269、トミボセルチブ、ETC-206、SLV-2436およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。なおさらなる実施形態では、PI3K経路を阻害する薬剤は、3-メチルアデニン、LY294002、アルペリシブ、ワートマニン、ケルセチン、hSMG-1阻害剤11j、ザンデリシブ、アルペリシブ塩酸塩、イデラリシブ、ブパリシブ、コパンリシブ、IPI549、ダクトリシブ、ピクチリシブ、SAR405、デュベリシブ、フィメピノスタット、GDC-0077、PI-103、YM-20163、PF-04691502、タセリシブ、オミパリシブ、サモトリシブ、イソラムネチン、ZATK474、パルサクリシブ、リゴサチブ、AZD8186、GSK2636771、ジシテルチド、TG100-115、AS-605240、PI3K-IN-1、ダクトリシブトシル酸塩、ゲダトリシブ、TGX-221、ウムブラリシブ、AZD 6482、セラベリシブ、ビミラリシブ、アピトリシブ、アルファ-リノレン酸、Vps34-PIK-III、PIK-93、Vps34-IN-1、CH5132799、レニオリシブ、ボクスタリシブ、GSK1059615、ソノリシブ、PKI-402、PI4KIIIベータ-IN-9、HS-173、BGT226マレイン酸塩、ピクチリシブジメタンスルホン酸塩、VS-5584、IC-87114、ケルセチン二水和物、CNX-1351、SF2523、GDC-0326、セレタリシブ、アカリシブ、SAR-260301、ZAD-8835、GNE-317、AMG319、ネミラリシブ、IITZ-01、PI-103塩酸塩、オロキシンB、ピララリシブ、AS-252424、クパンリシブ二塩酸塩、AMG 511、ジシテルチドTFA、PIK-90、テナリシブ、エスクレチン、CGS 15943、GNE-477、PI-3065、A66、AZD3458、ジンセノサイドRk1、ソフォカルピン、ブパリシブ塩酸塩、Vps34-IN-2、リンペルリシブ、アルニコリドD、KP372-1、CZC24832、PF-4989216、(R)-デュベリシブ、PQR530、P11δ-IN-1、ウムブラリシブ塩酸塩、MTX-211、PI3K/mTOR阻害剤-2、LX2343、PF-04979064、ポリガラサポニンF、グラウコカリシンA、NSC781406、MSC2360844、CAY10505、IPI-3063、TG 100713、BEBT-908、PI-828、ブレビアナミドF、ETP-46321、PIK-294、SRX3207、ソフォカルピン一水和物、AS-604850、デスメチルグリシテイン、SKI V、WYE-687、NVP-QAV-572、GNE-493、CAL-130塩酸塩、GS-9901、BGT226、IHMT-PI3Kδ-372、PI3Kα-IN-4、パルサクリシブ塩酸塩、PF-06843195、PI3K-IN-6、(S)-PI3Kα-IN-4、PI3K(ガンマ)-IN-8、BAY1082439、CYH33、PI3Kγ阻害剤2、PI3Kδ阻害剤1、PARP/PI3K-IN-1、LAS191954、PI3K-IN-9、CHMFL-PI3KD-317、PI3K/HDAC-IN-1、MSC2360844ヘミフマル酸塩、PI3K-IN-2、PI3K/mTOR阻害剤-1、PI3Kδ-IN-1、オイスカフ酸、KU-0060648、AZD 6482、WYE-687二塩酸塩、GSK2292767、(R)-ウムブラリシブ、PIK-293、イデラリシブD5、PIK-75、ヒルステノン、ケルセチンD5、PIK-108、hSMG-1阻害剤11e、PI3K-IN-10、NVP-BAG956、PI3Kγ阻害剤1、CAL-130、ON 146040、PI3kδ阻害剤1、PI3Kα/mTOR-IN-1、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、CAR-GMPは、マクロファージに分化するように誘導され、これは、CAR-GMPを、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)を含むマクロファージ分化培地を用いて培養することを含み、マクロファージは、CARを発現する。なお別の実施形態では、マクロファージ分化培地は、RPMI 1640、胎仔ウシ血清(FBS)およびMCSFを含む。代替的な実施形態では、方法は、CAR-GMPを顆粒球に分化させるステップをさらに含み、これは、GMPを、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)を含む顆粒球分化培地を用いて培養することを含み、顆粒球は、CARを発現する。さらなる実施形態では、顆粒球分化培地は、RPMI 1640、FBSおよびGCSFを含む。
【0084】
本明細書で提示される研究では、ex vivoで拡大増殖されたGMPを、高い効率および特異性でがん細胞を標的化するCAR-マクロファージを産生するように操作することができることが見出された。したがって、本開示は、がん免疫治療の使用のために、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように顆粒球-マクロファージ前駆体(GMP)を遺伝子操作する方法を提供する。キメラ抗原受容体は、抗原に結合することが可能な細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび少なくとも1つの細胞内ドメインを含む。細胞内ドメインは、顆粒球、マクロファージおよび樹状細胞の抗腫瘍活性を、それらの貪食および/または炎症促進性サイトカイン分泌を増加させることによって増加させるように設計される。CAR-GMPは、拡大増殖され、in vitroまたはin vivoで顆粒球、マクロファージまたは樹状細胞に分化するように誘導され得る。CAR-GMPまたはそれらの誘導体である顆粒球、マクロファージおよび樹状細胞は、患者中に養子移入され、患者において、これらは、腫瘍に浸潤し、標的細胞を死滅させることによって、強力な免疫エフェクターとして作用する。
【0085】
CAR-GMPは、がんを有する対象を処置するために、1つまたは複数の抗がん剤と組み合わせてさらに投与され得る。本明細書で開示されるCAR-GMPと共に使用され得る抗がん剤の例には、アルキル化剤、例えば、チオテパおよびCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミド;スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン(piposulfan);アジリジン、例えば、ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)およびウレドパ(uredopa);アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチイレンチオホスホラミド(triethiylenethiophosphoramide)およびチイメチローロメラミン(tiimethylolomelamine)が含まれるエチレンイミンおよびメチラメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(例えば、ブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成アナログトポテカンが含まれる);ブリオスタチン;カリスタチン(callystatin);CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビセレシン合成アナログが含まれる);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログKW-2189およびCB1-TM1が含まれる);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビシン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロウレア(nitrosurea)、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムヌスチン(ranimnustine);ビンカアルカロイド;エピポドフィロトキシン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特に、カリケアマイシンガンマllおよびカリケアマイシンオメガll;L-アスパラギナーゼ;アントラセンジオン置換尿素;メチルヒドラジン誘導体;ダイネミシンAが含まれるダイネミシン;ビスホスホネート、例えば、クロドロネート;エスペラミシン;ならびにネオカルチノスタチンクロモフォアおよび関連の色素タンパク質エンジイン抗生物質(antiobiotic)クロモフォア)、アクラシノマイシン(aclacinomysin)、アクチノマイシン、アウトラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ(pyrrolino)-ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンが含まれる)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、例えば、マイトマイシンC、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗薬、例えば、メトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸アナログ、例えば、デノプテリン(denopterin)、メトトレキサート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキサート;プリンアナログ、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、ドロモスタノロンプロピオン酸塩、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎剤、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補給剤(replenisher)、例えば、フロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミド(aldophosphamide)グリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);エリプチニウム(elliptinium)酢酸塩;エポチロン;エトグルシド;ガリウム硝酸塩;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);マイタンシノイド、例えば、マイタンシンおよびアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニチアエリン(nitiaerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサンチオン(losoxantione);ポドフィリン酸(podophyllinic acid);2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene、Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2 2”-トリクロロチイエチルアミン(2,2 2”-trichlorotiiethylamine);トリコテセン(特に、T-2トキシン、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンAおよびアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、TAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)、ABRAXANE(登録商標)Cremophorフリーの、パクリタキセルのアルブミン操作されたナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners、Schaumberg、Ill.)およびTAXOTERE(登録商標)(ドセタキセル)(Rhone-Poulenc Rorer、Antony、France);クロランブシル(chloranbucil);GEMZAR(登録商標)(ゲムシタビン);6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金配位錯体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINE(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;xeloda;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DFMO);レチノイド、例えば、レチノイン酸;カペシタビン;ロイコボリン(LV);イレノテカン(irenotecan);副腎皮質抑制薬;副腎皮質ステロイド;プロゲスチン;エストロゲン;アンドロゲン;ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ;ならびに上述のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が含まれるがこれらに限定されない。腫瘍に対するホルモンの作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンが含まれる)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストンおよびFARESTON-トレミフェンなどが含まれる、抗エストロゲン薬および選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM);副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASL(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタニエ(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾールおよびARTMIDEX(登録商標)アナストロゾールなど;ならびに抗アンドロゲン薬、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリドおよびゴセレリン;ならびにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、異常な(abherant)細胞増殖に関与するシグナル伝達経路中の遺伝子の発現を阻害するもの、例えば、PKC-アルファ、RalfおよびH-Rasなど;リボザイム、例えば、VEGF-A発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標)リボザイム)およびHER2発現阻害剤;ワクチン、例えば、遺伝子治療ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチンおよびVAXID(登録商標)ワクチン;PROLEUKIN(登録商標)rJL-2;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELLX(登録商標)rmRH;抗体、例えば、トラスツズマブ、ならびに上述のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体もまた、含まれる抗がん剤である。
【0086】
他の型の細胞免疫治療、例えば、CAR-T治療を上回る、このGMPベースのがん免疫治療のいくつかの利点が存在する。GMPの長期拡大増殖は、免疫治療のための既製のCAR-マクロファージを産生する機会を提供する。既製のCAR-マクロファージの臨床適用における主要なハードルは、ヒト白血球抗原(HLA)適合性である。GMPを長期拡大増殖および遺伝子操作する能力は、免疫治療のための既製のCAR-マクロファージを生成するための健康なドナーおよび/または臍帯血から収集されたGMPのマスター細胞バンクの樹立を可能にする。あるいは、HLA-ユニバーサルなGMPが、上記の遺伝子改変技法を使用して生成され得る。GMPの長期拡大増殖は、これらの細胞をより治療的に適用可能なものにするための、GMPに対する洗練された多重遺伝子操作を可能にする。例えば、シグナル調節タンパク質-α(SIRPα)およびホスファチジルイノシトール3-キナーゼ-γ(PI3Kγ)遺伝子は、GMP由来CAR-マクロファージの抗腫瘍活性をさらに増強するためにノックアウトされ得る。マクロファージにおけるSIRPαノックアウトは、腫瘍細胞とマクロファージとの間でのCD47-SIRPα相互作用を破壊することによって、それらの抗腫瘍活性を増強すると予想される。PI3Kγは、マクロファージにおいて豊富に発現され、免疫の刺激(M1マクロファージ)と抑制(M2マクロファージ)との間でのマクロファージ切り換えを直接制御する。マクロファージにおけるPI3Kγの活性化は、炎症および腫瘍成長の間の免疫抑制を促進する転写プログラムを誘導するが、マクロファージPI3Kγの不活性化は、免疫刺激性転写プログラムを促進する。PI3Kγ-/-マクロファージは、免疫刺激性M1表現型へと極性化することによって、増強された抗腫瘍活性を有すると予想される。
【0087】
遺伝子操作されたGMPの養子移入は、免疫抑制的腫瘍微小環境(TME)を逆転させる潜在力を有する。腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、TMEの主要な構成要素を構成する。実験的研究および臨床研究により、TAMの大多数が、腫瘍細胞がナチュラルキラー(NK)およびT細胞によって攻撃されるのを防止する免疫抑制的M2マクロファージであることが見出された。これらの観察は、最大限の抗腫瘍効果を達成するために、他の免疫治療と組み合わせて、TAMを標的化する必要性を示唆している。1つの戦略は、免疫抑制的M2マクロファージに、抗腫瘍活性を有する免疫刺激性M1マクロファージを補給することである。これは、TAMを枯渇させることと、その後の、PI3Kγ-/-GMPまたはIL-12を過剰発現するGMPから生成された免疫刺激性M1マクロファージの養子移入とによって、達成され得る。IL-12を発現する単球およびマクロファージは、TMEを免疫抑制性から免疫刺激性に変化させることが示されている。
【0088】
GMPは、CAR-T細胞よりも完全かつロバストな免疫応答を開始させる潜在力を有するマクロファージを産生するように操作され得る。マクロファージは、炎症性サイトカインの分泌、がん細胞の貪食、ならびにより重要なことには、がん抗原のプロセシングならびにNKおよびT細胞へのその提示を介して、それらの抗腫瘍活性を示す。マクロファージは、専門の抗原提示細胞(APC)である。マクロファージによって活性化された内因性NKおよびT細胞は、高い選択性および効率で免疫応答を開始させる可能性が高い。したがって、遺伝子操作を介してGMP/マクロファージの力を利用することは、次世代がん免疫治療を開発するための有望なアプローチを示す。
【0089】
本開示は、対象における疾患関連抗原の発現に関連する疾患を処置または予防する方法であって、キメラ抗原受容体(CAR)を含むGMP(またはそれに由来するマクロファージ、顆粒球など)の有効量を対象に投与するステップを含み、CARが、疾患に関連する疾患関連抗原に結合する抗原結合ドメインを含み、当該疾患関連抗原が、CD5、CD19;CD123;CD22;CD30;CD171;CS-1(CD2サブセット1、CRACC、SLAMF7、CD319および19A24とも呼ばれる);C型レクチン様分子-1(CLL-1またはCLECL1);CD33;上皮増殖因子受容体バリアントIII(EGFRviii);ガングリオシドG2(GD2);ガングリオシドGD3(aNeu5Ac(2-8)aNeu5Ac(2-3)bDGalp(l-4)bDGlcp(l-l)Cer);TNF受容体ファミリーメンバーB細胞成熟化(BCMA);Tn抗原((Tn Ag)または(GalNAcα-Ser/Thr));前立腺特異的膜抗原(PSMA);受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1);Fms様チロシンキナーゼ3(FLT3);腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72);CD38;CD44v6;急性白血病またはリンパ腫では発現されるが、造血前駆体上では発現されない糖鎖付加されたCD43エピトープ、非造血がん上で発現される糖鎖付加されたCD43エピトープ、癌胎児抗原(CEA);上皮細胞接着分子(EPCAM);B7H3(CD276);KIT(CD117);インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL-13Ra2またはCD213A2);メソテリン;インターロイキン11受容体アルファ(IL-llRa);前立腺幹細胞抗原(PSCA);プロテアーゼセリン21(テスティシン(Testisin)またはPRSS21);血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2);ルイス(Y)抗原;CD24;血小板由来増殖因子受容体ベータ(PDGFR-ベータ);ステージ特異的胎児抗原-4(SSEA-4);CD20;葉酸受容体アルファ;受容体チロシン-タンパク質キナーゼERBB2(Her2/neu);ムチン1、細胞表面会合(MUC1);上皮増殖因子受容体(EGFR);神経細胞接着分子(NCAM);プロスターゼ(Prostase);前立腺酸性ホスファターゼ(PAP);伸長因子2変異型(ELF2M);エフリンB2;線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAP);インスリン様増殖因子1受容体(IGF-I受容体)、炭酸脱水酵素IX(CAlX);プロテアソーム(プロソーム(Prosome)、マクロペイン(Macropain))サブユニット、ベータ型、9(LMP2);糖タンパク質100(gpl00);ブレークポイントクラスター領域(BCR)およびエーベルソンマウス白血病ウイルス癌遺伝子ホモログ1(Abl)からなる癌遺伝子融合タンパク質(bcr-abl);チロシナーゼ;エフリンA型受容体2(EphA2);フコシルGM1;シアリルルイス接着分子(sLe);ガングリオシドGM3(aNeu5Ac(2-3)bDClalp(l-4)bDGlcp(l-1)Cer);トランスグルタミナーゼ5(TGS5);高分子量黒色腫関連抗原(HMWMAA);o-アセチル-GD2ガングリオシド(OAcGD2);葉酸受容体ベータ;腫瘍内皮マーカー1(TEM1/CD248);腫瘍内皮マーカー7関連(TEM7R);クローディン6(CLDN6);甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR);Gタンパク質共役受容体クラスCグループ5、メンバーD(GPRC5D);X染色体オープンリーディングフレーム61(CXORF61);CD97;CD179a;未分化リンパ腫キナーゼ(ALK);ポリシアル酸;胎盤特異的1(PLAC1);globoHグリコセラミド(glycoceramide)(GloboH)の六糖部分;乳腺分化抗原(NY-BR-1);ウロプラキン2(UPK2);A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1);アドレナリン受容体ベータ3(ADRB3);パンネキシン(pannexin)3(PANX3);Gタンパク質共役受容体20(GPR20);リンパ球抗原6複合体、遺伝子座K 9(LY6K);嗅覚受容体51E2(OR51E2);TCRガンマ代替リーディングフレーム(Alternate Reading Frame)タンパク質(TARP);ウィルムス腫瘍タンパク質(WT1);がん/精巣抗原1(NY-ES0-1);がん/精巣抗原2(LAGE-1a);黒色腫関連抗原1(MAGE-A1);ETS転座-バリアント遺伝子6、染色体12p上に位置(ETV6-AML);精子タンパク質17(SPA17);X抗原ファミリー、メンバーlA(XAGEl);アンジオポエチン結合性細胞表面受容体2(Tie 2);黒色腫がん精巣抗原-1(MAD-CT-1);黒色腫がん精巣抗原-2(MAD-CT-2);Fos関連抗原1;腫瘍タンパク質p53(p53);p53変異体;プロステイン(prostein);サバイビング(surviving);テロメラーゼ;前立腺癌腫瘍抗原-1(PCT A-1またはガレクチン8)、T細胞によって認識される黒色腫抗原1(MelanAまたはMARTI);ラット肉腫(Ras)変異体;ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT);肉腫転座ブレークポイント;黒色腫のアポトーシス阻害剤(ML-IAP);ERG(膜貫通プロテアーゼ、セリン2(TMPRSS2)ETS融合遺伝子);N-アセチルグルコサミニル-トランスフェラーゼV(NA17);ペアードボックスタンパク質Pax-3(PAX3);アンドロゲン受容体;サイクリンBl;v-mycトリ骨髄球腫症ウイルス癌遺伝子神経芽細胞腫由来ホモログ(MYCN);RasホモログファミリーメンバーC(RhoC);チロシナーゼ関連タンパク質2(TRP-2);チトクロムP450 lB 1(CYPlB 1);CCCTC結合因子(ジンクフィンガータンパク質)様(BORIS、即ち、インプリント部位の調節因子の兄弟(Brother of the Regulator of Imprinted Sites))、T細胞によって認識される扁平上皮癌抗原3(SART3);ペアードボックスタンパク質Pax-5(PAX5);プロアクロシン(proacrosin)結合タンパク質sp32(OY-TESl);リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK);Aキナーゼアンカータンパク質4(AKAP-4);滑膜肉腫、Xブレークポイント2(SSX2);終末糖化産物の受容体(RAGE-1);腎遍在性1(RUl);腎遍在性2(RU2);レグマイン;ヒト乳頭腫ウイルスE6(HPV E6);ヒト乳頭腫ウイルスE7(HPV E7);腸カルボキシルエステラーゼ;ヒートショックタンパク質70-2変異型(mut hsp70-2);CD79a;CD79b;CD72;白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIRl);IgA受容体のFc断片(FCARまたはCD89);白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーAメンバー2(LILRA2);CD300分子様ファミリーメンバーf(CD300LF);C型レクチンドメインファミリー12メンバーA(CLEC12A);骨髄間質細胞抗原2(BST2);EGF様モジュール含有ムチン様ホルモン受容体様2(EMR2);リンパ球抗原75(LY75);グリピカン-3(GPC3);Fc受容体様5(FCRL5);および免疫グロブリンラムダ様ポリペプチド1(IGLLl)、MPL、ビオチン、c-MYCエピトープタグ、CD34、LAMP1 TROP2、GFRアルファ4、CDH17、CDH6、NYBR1、CDH19、CD200R、Slea(CA19.9;シアリルルイス抗原)フコシル-GM1、PTK7、gpNMB、CDH1-CD324、DLL3、CD276/B7H3、IL11Ra、IL13Ra2、CD179b-IGLl1、ALK TCRガンマ-デルタ、NKG2D、CD32(FCGR2A)、CSPG4-HMW-MAA、Tim1-/HVCR1、CSF2RA(GM-CSFR-アルファ)、TGFベータR2、VEGFR2/KDR、ルイスAg、TCR-ベータ1鎖、TCR-ベータ2鎖、TCR-ガンマ鎖、TCR-デルタ鎖、FITC、黄体形成(Leutenizing)ホルモン受容体(LHR)、卵胞刺激ホルモン受容体(FSHR)、絨毛性ゴナドトロピンホルモン受容体(CGHR)、CCR4、SLAMF6、SLAMF4、HIV1エンベロープ糖タンパク質、HTLV1-Tax、CMV pp65、EBV-EBNA3c、インフルエンザAヘマグルチニン(HA)、GAD、PDL1、グアニリルシクラーゼC(GCC)、KSHV-K8.1タンパク質、KSHV-gHタンパク質、デスモグレイン3(Dsg3)に対する自己抗体、デスモグレイン1(Dsg1)に対する自己抗体、HLA、HLA-A、HLA-A2、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、HLA-DR、HLA-G、IGE、CD99、RAS G12V、組織因子1(TF1)、AFP、GPRC5D、クローディン18.2(CLD18A2またはCLDN18A.2))、P-糖タンパク質、STEAP1、LIV1、NECTIN-4、CRIPTO、GPA33、BST1/CD157、低コンダクタンスクロライドチャネル、ならびにTNT抗体によって認識される抗原、からなる群から選択され、それにより、対象を処置するまたは対象における疾患を予防する、方法を提供する。
【0090】
別の態様では、対象を処置する方法であって、対象における過剰増殖性障害または状態(例えば、がん)、例えば、固形腫瘍、軟部組織腫瘍、血液がんまたは転移性病変を低減または寛解させるために、キメラ抗原受容体(CAR)を含むGMP(またはそれに由来するマクロファージ、顆粒球など)の有効量を投与するステップを含む、方法が提供される。本明細書で使用される場合、用語「がん」は、組織病理学的な型にも侵襲性のステージにも関係なく、全ての型のがん性成長または発癌プロセス、転移性組織または悪性形質転換した細胞、組織もしくは臓器を含む意味である。例示的な固形腫瘍には、種々の臓器系の悪性疾患、例えば、腺癌、肉腫および癌腫、例えば、乳房、肝臓、肺、脳、リンパ系、消化管(例えば、結腸)、泌尿生殖器(例えば、腎、尿路上皮細胞)、前立腺および咽頭を冒すものが含まれる。腺癌には、がん、例えば、ほとんどの結腸がん、直腸がん、腎細胞癌、肝臓がん、肺の非小細胞癌、小腸のがんおよび食道のがんが含まれる。一実施形態では、がんは、黒色腫、例えば、進行期黒色腫である。上述のがんの転移性病変もまた、本開示の方法および組成物を使用して処置または予防され得る。処置または予防され得る他のがんの例には、膵がん、骨がん、皮膚がん、皮膚または眼内悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、頭頸部のがん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、子宮がん、ファロピウス管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、腟の癌腫、外陰部の癌腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、急性骨髄球性白血病、慢性骨髄球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病が含まれる慢性または急性白血病、小児の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱のがん、腎臓または尿管のがん、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管形成、脊髄の軸の腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘導されたものが含まれる、環境的に誘導されたがん、および当該がんの組み合わせが含まれる。
【0091】
別の態様では、対象を処置する方法であって、対象における過剰増殖性障害または状態(例えば、がん)、例えば、固形腫瘍、軟部組織腫瘍、血液がんまたは転移性病変を低減または寛解させるために、キメラ抗原受容体(CAR)を含むGMP(またはそれに由来するマクロファージ、顆粒球など)の有効量を投与するステップを含む、方法が提供される。本明細書で使用される場合、用語「がん」は、組織病理学的な型にも侵襲性のステージにも関係なく、全ての型のがん性成長または発癌プロセス、転移性組織または悪性形質転換した細胞、組織もしくは臓器を含む意味である。例示的な固形腫瘍には、種々の臓器系の悪性疾患、例えば、腺癌、肉腫および癌腫、例えば、乳房、肝臓、肺、脳、リンパ系、消化管(例えば、結腸)、泌尿生殖器(例えば、腎、尿路上皮細胞)、前立腺および咽頭を冒すものが含まれる。腺癌には、がん、例えば、ほとんどの結腸がん、直腸がん、腎細胞癌、肝臓がん、肺の非小細胞癌、小腸のがんおよび食道のがんが含まれる。一実施形態では、がんは、黒色腫、例えば、進行期黒色腫である。上述のがんの転移性病変もまた、本開示の方法および組成物を使用して処置または予防され得る。処置または予防され得る他のがんの例には、膵がん、骨がん、皮膚がん、皮膚または眼内悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、頭頸部のがん、肛門領域のがん、胃がん、精巣がん、子宮がん、ファロピウス管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、腟の癌腫、外陰部の癌腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、急性骨髄球性白血病、慢性骨髄球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病が含まれる慢性または急性白血病、小児の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱のがん、腎臓または尿管のがん、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管形成、脊髄の軸の腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘導されたものが含まれる、環境的に誘導されたがん、および当該がんの組み合わせが含まれる。
【0092】
以下の実施例は、本開示を例示する意図であるが、限定する意図はない。これらは、使用され得るものの典型であるが、当業者に公知の他の手順が、あるいは使用され得る。
【実施例
【0093】
マウス。C57BL/6J(JAXストック番号000664)、B6.129(Cg)-Gt(ROSA)26Sortm4(ACTB-tdTomato、-EGFP)Luo/J(mTmG、JAXストック番号007676)、B6.129S-Cybbtm1Din/J(gp91phox-、JAXストック番号002365)、NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl(NSG、JAXストック番号05557)およびB6J.129(Cg)-Gt(ROSA)26Sortm1.1(CAG-cas9、-EGFP)Fezh/J(CAG-Cas9-EGFP、JAXストック番号026179)マウスは、Jackson Laboratoryから購入した。全てのマウス(雄性および雌性)は、6週齢と12週齢との間で使用した。全ての動物実験は、University of Southern California Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコールに従って実施した。動物(1ケージ当たり5匹以下のマウス)に、食物および水を提供し、一定の12時間の明暗サイクルで維持した。NSGマウスを、無菌条件下で交配した。
【0094】
CGDマウスモデル。gp91phox-マウス(CGDマウス)に、致死線量(950cGy)を照射し、5×10個のtdTomato陽性GMPおよび2.5×10個のgp91phox-全骨髄細胞(ヘルパー細胞)または2.5×10個のヘルパー細胞のみのいずれかを、尾部静脈注射を介して移植した。移植の2日後、マウスに、2×10個のS aureus株502A(ATCC番号27217;ATCC)または200個のB cepacia桿菌(ATCC番号25609;ATCC)を腹腔内注射した。接種材料中の細菌の数を、連続希釈およびプレーティングによって確認した。PBSまたは5×10個のtdTomato陽性GMPを、細菌の接種の直後に尾部静脈を介して注射し、注射を、その後3日毎に反復した。マウスを1日1回試験し、瀕死の場合、または腹腔チャレンジの7日後に、安楽死させた。腹腔内膿瘍の存在を、目視検査によって評価した。一部の実験では、血液培養物を尾部静脈血液サンプルから得、菌血症をプレート培養によって定量化した。
【0095】
培地および試薬。DMEM/F-12(12400024)およびNeurobasal(21103049)培地は、Thermo Fisher Scientificから購入した。ヒトインスリン(91077C-250MG)、ヒトHolo-トランスフェリン(T0665-100MG)、プトレシン(P5780-5G)、亜セレン酸ナトリウム(S9133-1MG)、リノール酸(L1012-100MG)、DL-アルファトコフェロール(ビタミンE、T3251-5G)およびウシ血清アルブミン(A8806-5G)は、Sigmaから購入した。組換えマウスSCF(250-03)、組換えヒトM-CSF(300-25)および組換えヒトG-CSF(300-23)は、PeproTechから購入した。GDC-0879(S1104)およびSKL2001(S8302)は、Selleckから購入した。
【0096】
B7培地を調製するために、500mlのDMEM/F-12および500mLのNeurobasal培地を混合し、4mgヒトインスリン、20mgヒトHolo-トランスフェリン(Transferin)、16mgプトレシン、12.5μg亜セレン酸ナトリウム、1mgリノール酸、1mgビタミンEおよび2.5gウシ血清アルブミンを補充した。インスリンは、容易には溶解しない;インスリンを、0.01Mの無菌HCl中で4℃で一晩溶解させて、10mg/mLストック溶液を産生する。1mLアリコートで-20℃で貯蔵する。懸濁物を、アリコート化の前に十分混合した。
【0097】
マウスGMPの誘導、拡大増殖および分化。細胞を、5%COウォータージャケットインキュベーター(Thermo Scientific)中で37℃で培養した。C57BL/6J、mTmGまたはCAG-Cas9-EGFPマウスから単離した骨髄細胞を、2×10細胞/ウェルの密度で6ウェルプレート中にプレートし、50ng/mL SCF、1μM GDC-0879および10μM SKL2001(SCF/2i)を補充したB7培地2mL中で培養した。3~4日後、細胞を、ピペッティングによって上下させて単一細胞懸濁物に解離させ、2×10細胞/ウェルの密度で6ウェルプレート中に再プレートし、SCF/2iを補充したB7培地2mL中で培養した。SCF/2i中での2回の継代の後、細胞の大多数は、GMPであった。GMPを、規定通りに3日毎に継代した。分化を誘導するために、GMPを、10cm組織培養ディッシュ中にプレートし、10%FBSを含有し、20ng/mL M-CSF(マクロファージ分化のため)または20ng/mL G-CSF(顆粒球分化のため)のいずれかを補充したRPMI-1640培地中で培養した。GMP由来マクロファージは7日目に回収し(培地は、4日目に1回交換した)、GMP由来顆粒球は3日目に回収して、さらなる実験に使用した。
【0098】
骨髄由来マクロファージを生成するために、C57BL/6Jマウスから単離した2×10個の骨髄細胞を、10cm組織培養ディッシュ中にプレートし、10%FBSおよび20ng/ml M-CSFを含有するRPMI-1640培地中で培養した。培地を4日目に交換し、細胞を7日目に回収した。
【0099】
腹腔マクロファージを、1mLの2%Bio-Gel P-100(Bio-Rad、1504174)を、tdTomato陽性GMPの移植の直後にマウス腹腔中に注射し、その後、4日後に無菌PBSで腹腔洗浄することによって生成した。腹腔から収集した細胞を、蛍光イメージングおよびフローサイトメトリー分析に使用した。
【0100】
GMP細胞の誘導および拡大増殖。臍帯血サンプルは、StemCyte(Baldwin Park、CA)から得、全骨髄は、Stemcell Technologies(カタログ番号70502.2)から購入し、動員末梢血は、StemExpress(カタログ番号MLE4GCSF5)から購入した。単核細胞を、Ficoll-Paque(商標)PLUSキット(GE Healthcare Life Sciences、17-1440-03)を使用して単離した。簡潔に述べると、血液を、1:3の比率でPBSで希釈し、15ml Ficoll-Paque(商標)PLUSを事前充填したSepMate(商標)-50チューブ(Stemcell Technologies、85460)中に添加した。1200gで室温で20分間の遠心分離の後、最上層を収集し、300×gで4℃で10分間遠心分離した。残留赤血球を、ACK溶解緩衝液を使用することによって除去した。細胞を、即座に使用したか、または液体窒素中で凍結保存した。
【0101】
GMPの拡大増殖のために、Lin-(CD3、CD14、CD19およびCD56)CD34CD38CD45RAGMPを、臍帯血、全骨髄または動員末梢血から単離した単核細胞から選別した。選別したGMPを、4×10細胞/ウェルの密度で96ウェルプレート中にプレートし、SCF(50ng/mL.AF-300-07、PeproTech)、GDC-0879(1μM)を補充したB6培地中で培養した。
【0102】
最初のプレーティングの5日後、GMPを、1×10細胞/ウェルの密度で48ウェルプレート中に再プレートすることによって、3日毎に規定通りに継代し、改変SCF/2i中で培養した。SB590885(0.5μM.S2220、Selleck)によるGDC-0879の置き換えは、GMP増殖速度を僅かに増加させることができた。B6培地を調製するために、500mLのDMEM/F-12および500mlのNeurobasal培地を混合し、4mgインスリン、20mg Holo-トランスフェリン、12.5μg亜セレン酸ナトリウム、1mgリノール酸、1mgビタミンEおよび2.5g血清アルブミンを補充する。
【0103】
ヒト白血病細胞の誘導。臨床検体は、成人B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)患者から得た。ヒトB-ALL細胞を、ヒトCD45かつCD19細胞について選別することによって、B-ALL患者の骨髄吸引物から単離した。ヒトB-ALL細胞を、GFPレンチウイルスで形質導入した。細胞を、NSGマウス中に移植し、GFP白血病細胞を、マウス脾臓から、移植の6週間後に選別した。
【0104】
マクロファージ貪食のためのキメラ抗原受容体(CarP)。マウスGMPにおいて使用したCarP構築物を、ヒトCD19 scFvまたはHER2 scFVをヒトCD8ヒンジおよび膜貫通領域に融合させることによって構築し、P2A-RFP(CarP-RFP)、マウスFcer1g(NM_010185.4、aa19~86)-マウスCD19(NM_009844.2、aa491~535)-P2A-RFP(CarPFc19-RFP)またはマウスCD3ζ(NM_001113391.2、aa52~164)-マウスFcer1g(aa45~86)-マウスCD19-P2A-RFP(CarPzFc19-RFP)に連結した。GMPにおいて使用したαCD19 CarP構築物の細胞内ドメインは、ヒトCD3ζ(NM_198053.2、aa52~164)-ヒトFcer1g(NM_004106.1、aa45~86)-ヒトCD19(NM_001178098.1、aa498~544)であった。全てのCarP受容体は、膜標的化のためのN末端CD8aシグナルペプチド(MALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号1))を含有する。全ての受容体は、コドン最適化し、Integrated DNA Technologiesが合成し、制限酵素切断およびT4ライゲーションによって、改変されたpSin-EF2レンチウイルス骨格中にクローニングした。
【0105】
エレクトロポレーション、レンチウイルス産生およびGMP形質導入。GFP mRNA(TriLink、L7601-100)およびシングルガイドRNA(Synthego、配列:CCGUCCAGCUCGACCAGGAU(配列番号2))を、Neonトランスフェクションシステム(ThermoFisher、MPK5000)を使用して、GMP中にエレクトロポレーションした。簡潔に述べると、WTまたはCAG-Cas9-EGFPマウスに由来するGMPを、SCF/2i中で拡大増殖させた。トランスフェクションのために、GMPを回収し、PBSで2回洗浄し、緩衝液R中に1×10/mLの濃度で再懸濁した。5μg GFP mRNAまたはsgRNAを、WTまたはCAG-Cas9-EGFP GMPの懸濁物10μl中に添加し、1600Vの20msの1回のパルスでエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションの後、GMPを、SCF/2i中にプレートし培養した。48時間後、GFP発現を、蛍光顕微鏡およびフローサイトメトリーを使用して試験した。
【0106】
レンチウイルスを、およそ80%のコンフルエンスの、10cmディッシュ中にプレートしたLenti-X 293T細胞(Takara、632180)においてlipofectamine LTX with plusトランスフェクション試薬(ThermoFisher、15338100)を使用する、パッケージングタンパク質をコードするpSinプラスミドおよびベクター(pSPAXおよびpVSVG)の共トランスフェクションによって産生した。ウイルス上清を、トランスフェクションの2日後に収集し、0.45μMフィルターにかけ、Lenti-X濃縮器(Takara、631232)で濃縮した。濃縮されたウイルスを、即座に形質導入に使用したか、または長期貯蔵のために凍結した。GMP形質導入のために、レンチウイルスをGMP培養物に添加し、800gで32℃で1.5時間遠心分離した。細胞を、新鮮な培地中に再懸濁し、48時間培養した。RFP陽性細胞を、FACSによって選別した。
【0107】
定量化および統計分析。統計分析(RNA-seq実験を除く)を、PRISMプログラム(GraphPad)を使用して実施した。2つの群は、対応のないt検定を使用して比較した。2つよりも多くの処置間の差異の統計的有意性を評価するためには、2元配置ANOVAを利用した。
【0108】
がん細胞を選択的に標的化するためのSCF/2i GMPの遺伝子操作。マクロファージは、がんを処置するための魅力的な治療標的である。マクロファージは、がん細胞の貪食およびがん抗原のT細胞への引き続く提示を介して、それらの抗がん効果を示す。マクロファージは、トランスフェクトが困難な細胞であるので、遺伝子操作をSCF/2i GMPに対して実施することができるかどうか、およびこれらの遺伝子操作されたGMP由来のマクロファージを、がん細胞を選択的に標的化するために使用することができるかどうかを評価した。最初に、高い効率の遺伝子改変がSCF/2i GMPにおいて達成できたことが実証された。次に、原理証明研究として、GMPを、ヒトB細胞リンパ腫を特異的に標的化するように遺伝子操作した。キメラ抗原受容体(CAR)T細胞治療は、B細胞リンパ腫を処置するために、米国食品医薬品局(FDA)によって承認されている。より最近、研究により、がん細胞のマクロファージ媒介性貪食が、貪食のためのCAR(CarP)を発現するようにマクロファージを操作することを介して増強され得ることが実証された。ヒトB細胞抗原CD19を認識する細胞外単鎖抗体可変断片(scFv)(αCD19 scFv)、ヒトCD8膜貫通ドメイン、およびFc受容体のマウス共通γサブユニット(FcRγ)と融合したマウスCD19細胞質ドメイン、を含有するCarPを生成した。このCarPFc19導入遺伝子を、赤色蛍光タンパク質(RFP)に連結して(CarPFc19-RFP)、導入遺伝子発現のモニタリングを容易にした。細胞外αCD19 scFv抗体断片、CD8膜貫通ドメインおよび細胞質RFPを含有するが、細胞質シグナル伝達ドメインを有さない対照CarP(CarP-RFP)を構築した(図1Cを参照されたい)。
【0109】
レンチウイルス感染によってCarPFc19-RFPおよびCarP-RFPをSCF/2i GMP中に導入した後、RFP陽性GMPを選別し、SCF/2i中で拡大増殖させた。貪食を評価するために、マクロファージを、CarPFc19-RFPおよびCarP-RFP GMPから生成し、GFP標識したヒトB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)細胞と共に共培養した。予想されたように、非常に稀な(0.21±0.08%)貪食が、CarP-RFP群において観察されたが、それは、CarP-RFPが、貪食シグナルの活性化を担う細胞質ドメインを欠くからである。対照的に、CarPFc19-RFPマクロファージの5.23±1.32%が、1時間の共培養内に、GFP陽性ヒトB-ALL細胞を飲み込んだ(図S2Aを参照されたい)。
【0110】
CarPFc19-RFPを発現するマクロファージの貪食効率は、なおも比較的低かったので、効率が、貪食を促進することができるシグナル伝達モチーフを組み合わせることによって改善できるかどうかを試験した。CD3ζ細胞内ドメインは、FcRγと同じ免疫受容体活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含有し、貪食を増強できることが示されているので(Isakov、1997)、CarPFc19-RFPの細胞質ドメインを、マウスCD3ζ細胞質ドメインを追加することによって改変した(CarPzFc19-RFP)(図1Cを参照されたい)。ヒトB-ALL細胞と共に共培養した場合、CarPzFc19-RFP発現マクロファージは、白血病細胞を即座に飲み込み始めた。一部のマクロファージは、複数の白血病細胞を貪食した(図1Dおよび図3Bを参照されたい)。フローサイトメトリー分析により、CarPzFc19-RFP発現マクロファージの41.57±9.26%が、1時間の共培養内に、白血病細胞を飲み込んだことが示された(図1Eを参照されたい)。
【0111】
次に、がん細胞を標的化する際のCarPマクロファージの特異性を評価した。CarPzFc19-RFPのαCD19 scFvカセットを、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2)scFvで置き換えて、αHER2 CarPを生成した。αHER2 CarP GMPから生成されたαHER2 CarPマクロファージを、HER2を過剰発現するヒト乳房がん細胞株である、GFP標識したSK-BR-3細胞と共に共培養した。30.8±6.3%のαHER2 CarPマクロファージは、1時間の共培養内に、SK-BR-3-GFP細胞を飲み込んだが、貪食は、αHER2 CarPマクロファージをHER2を発現しないGFP標識したヒトB-ALL細胞と共に共培養した場合には、非常に稀であった(図3C~Dを参照されたい)。対照的に、CarPzFc19-RFPマクロファージは、CD19発現ヒトB-ALL細胞を効率的に飲み込んだが、CD19陰性であるSK-BR-3細胞は飲み込まなかった(図3Dを参照されたい)。これらの結果は、CarPマクロファージが、高度に特異的な様式でがん細胞を標的化することを示唆している。
【0112】
CD47遮断は、CarPマクロファージの貪食を相乗的に増強する。以前の研究は、マクロファージ貪食効率が、マクロファージへの「私を食べないで」シグナルであるCD47を遮断することによって増加され得ることを示唆した。CarPzFc19および抗CD47抗体が、マクロファージ貪食を増強するように相乗的に作用できるかどうかを試験した。1時間の共培養内に、事前インキュベーションなしの場合の41.6±9.3%と比較して、CarPzFc19-RFP発現マクロファージの86.2±13.8%が、20μg/ml抗CD47抗体と共に30分間事前インキュベートしたヒトB-ALL細胞を飲み込んだ。CarP-RFPを発現するマクロファージについて、貪食効率は、ヒトB-ALL細胞を抗CD47抗体と共に事前インキュベートした場合、0.21±0.08%から18.57±2.85%に増加した。より顕著なことに、抗CD47抗体と共に事前インキュベートしたほぼ全てのヒトB-ALL細胞は、24時間の共培養の後に、CarPzFc19-RFP発現マクロファージによって飲み込まれ消化された。これらのデータは、CarPおよび抗CD47抗体が相乗的に作用して、がん細胞のマクロファージ貪食を改善することを実証している。
【0113】
がん細胞を選択的に標的化するように、ex vivoで拡大増殖されたGMPを操作する。ex vivoで拡大増殖されたGMPを、ヒトB-ALL細胞を選択的に貪食するように遺伝子操作することができるかどうかを決定するために、CarPzFc19-RFP発現GMPを生成し、改変SCF/2i中で拡大増殖させた。貪食を評価するために、CarPzFc19-RFP GMPから生成されたマクロファージを、GFP標識したヒトB-ALL細胞と共に共培養した。フローサイトメトリー分析により、CarP-RFPを発現するマクロファージの0.87±0.2%と比較して、CarPzFc19-RFP発現マクロファージの28.6±4.5%が、1時間の共培養内に、白血病細胞を飲み込んだことが示された(図2Cおよび図4Aを参照されたい)。CarPzFc19-RFPマクロファージおよびCarP-RFPマクロファージについての貪食効率は、ヒトB-ALL細胞を抗CD47抗体と共に事前インキュベートした場合、それぞれ、69.5±5.6%および32.8±5.5%までさらに増加した(図2Cを参照されたい)。より顕著なことに、CarPzFc19-RFPマクロファージは、36時間の共培養後に、抗CD47抗体と共に事前インキュベートしたほぼ全てのヒトB-ALL細胞を飲み込み消化した(図4Bを参照されたい)。
【0114】
種々の改変が、本開示の精神および範囲から逸脱することなしになされ得ることが理解される。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。

図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
【国際調査報告】