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特表2024-521033クロマトグラフィー方法およびクロマトグラフィー装置、特に超臨界液体クロマトグラフィーのための方法および装置
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  • 特表-クロマトグラフィー方法およびクロマトグラフィー装置、特に超臨界液体クロマトグラフィーのための方法および装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】クロマトグラフィー方法およびクロマトグラフィー装置、特に超臨界液体クロマトグラフィーのための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/02 20060101AFI20240521BHJP
   G01N 30/04 20060101ALI20240521BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20240521BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20240521BHJP
   C07C 51/47 20060101ALI20240521BHJP
   C07C 57/12 20060101ALI20240521BHJP
   C07B 63/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G01N30/02 N
G01N30/04 P
G01N30/88 C
G01N30/86 J
C07C51/47
C07C57/12
C07B63/00 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568396
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2022058552
(87)【国際公開番号】W WO2022238046
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】LU500141
(32)【優先日】2021-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(31)【優先権主張番号】LU500521
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523405890
【氏名又は名称】カーデー・ファルマ・ベクスバッハ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ギーセルマン・ギデオン
(72)【発明者】
【氏名】フロンツォーニ・ローベルト
(72)【発明者】
【氏名】ラモス-テルセロ・エリア
(72)【発明者】
【氏名】ショポヴァ-ゴスポジノヴァ・デニツァ
(72)【発明者】
【氏名】カッラ・ブルーノ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA04
4H006AD17
4H006BD80
4H006BS10
(57)【要約】
本発明は、クロマトグラフィー方法、特に、超臨界液体クロマトグラフィーのための方法であって、分離すべき出発物質がクロマトグラフィーによって各画分に分離され、そして前記出発物質の少なくとも1つの標的成分を少なくとも1つの所定の標的含有率で含む、前記各画分の少なくとも1つが、標的生成物画分として排出される方法に関する。本発明によると、所定の標的含有率を含まない画分が残部画分を形成し、および、前記残部画分のうちの少なくとも1つのうちの少なくとも一部が、これから分離すべき出発物質に加えられる。好適には、標的成分の含有率が、出発物質の標的成分含有率よりも小さく所定の標的含有率から逸脱している残部画分のうちの少なくとも1つのうちの少なくとも一部が、これから分離すべき出発物質に加えられる。本発明の1つの実施態様において、標的成分含有率が、出発物質の標的成分含有率よりも大きく所定の標的含有率から逸脱している残部画分は、さらなる操作、特にさらなる処理および/または処分のために排出される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィー方法、特に、超臨界液体クロマトグラフィーのための方法であって、分離すべき出発物質がクロマトグラフィーによって各画分に分離され、そして前記出発物質の少なくとも1つの標的成分を少なくとも1つの所定の標的含有率で含む、前記各画分のうちの少なくとも1つを、標的生成物画分として排出する方法において、
前記所定の標的含有率を含まない画分が残部画分を形成し、および前記残部画分のうちの少なくとも1つのうちの少なくとも一部が、これから分離すべき出発物質に加えられることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
標的成分の含有率が、出発物質の標的成分含有率からよりも小さく前記所定の標的含有率から逸脱している、前記残部画分のうちの少なくとも1つのうちの少なくとも一部が、これから分離すべき出発物質に加えられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
標的成分含有率が、出発物質の標的成分含有率からよりも大きく前記所定の標的含有率から逸脱している残部画分が、さらなる操作、特にさらなる処理および/または処分のために排出され、ここで前記所定の標的含有率は、好ましくは最小含有率および/または最大含有率であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記出発物質中および前記各画分中の標的成分の含有率が決定され、および好ましくは、前記残部画分の標的成分含有率が前記出発物質の標的成分含有率と比較されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記出発物質中および前記各画分中の少なくとも2つの、任意選択的にそれより多くの、異なる標的成分の含有率が決定され、および好ましくは、前記残部画分の異なる標的成分含有率が前記出発物質の標的成分含有率と比較されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
連続的に実施されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
少なくとも、標的成分含有率の決定および比較、ならびに分離すべき出発物質への前記残部画分の添加が、自動的に実施されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記残部画分が、これから分離すべき出発物質に、クロマトグラフィーによる前記出発物質の分離前に加えられ、前記出発物質および前記残部画分が好ましくは前記分離の前に混合されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
これから分離すべき出発物質にその分離前に加えられる残部画分の流れが、前記出発物質および/または前記標的生成物画分における標的成分の含有率に応じて制御されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記出発物質が、
- 脂肪酸および/またはそれらの誘導体の混合物、好ましくは不飽和、特に多価不飽和脂肪酸および/またはそれらの誘導体の混合物、ならびに/あるいは
- 混合物、好ましくはカルボン酸および/またはそれらの誘導体の混合物、好ましくはカンナビノイドおよび/またはそれらの誘導体の混合物、ならびに/あるいは
- 多価不飽和脂肪酸の、好ましくはエイコサペンタエン酸(EPA)および/またはドコサヘキサエン酸(DHA)および/またはドコサペンタエン酸(DPA)の代謝産物、または前記代謝産物と同じ組成を有する物質を含有する混合物、ならびに/あるいは
- 好ましくはEPA、DHAおよび/またはDPAに由来する少なくとも1種の炎症収束性メディエーター(PRM)および/または特異的炎症収束性メディエーター(SPM)を含有する混合物、ならびに/あるいは
- 少なくとも1種の炎症収束性メディエーター(PRM)、好ましくは18-HEPE、17-HDHAおよび/または14-HDHAならびに/あるいは特異的炎症収束性メディエーター(SPM)、好ましくはリポキシン類、レゾルビン類、プロテクチン類および/またはマレシン類を含有する混合物
であるか、またはこれらを含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記標的成分が、多価不飽和脂肪酸、好ましくはエイコサペンタエン酸(EPA)および/またはドコサヘキサエン酸(DHA)、あるいはカンナビジオール(CBD)またはテトラヒドロカンナビノール(THC)であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記標的成分が、多価不飽和脂肪酸の、好ましくはエイコサペンタエン酸(EPA)および/またはドコサヘキサエン酸(DHA)および/またはドコサペンタエン酸(DPA)の代謝産物であるか、または前記代謝産物と同じ組成を有する物質であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記標的成分が、炎症収束性メディエーター(PRM)、好ましくは18-HEPE、17-HDHAおよび/または14-HDHA、ならびに/あるいは少なくとも1種の特異的炎症収束性メディエーター(SPM)、好ましくはリポキシン、レゾルビン、プロテクチンおよび/またはマレシンであることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
出発物質を各画分へと分離するための少なくとも1つの分離カラム(5)、前記各画分を取り出すためのデバイス、および前記出発物質の少なくとも1つの標的成分を所定の標的含有率で含む画分のうちの少なくとも1つを排出するためのデバイスを含む、クロマトグラフィー装置、特に、超臨界液体クロマトグラフィーのための装置であって、
前記所定の標的含有率を含まない画分の少なくとも一部を、これから分離すべき出発物質に導くためのデバイスを特徴とする、前記装置。
【請求項15】
これから分離すべき出発物質に導くための前記デバイスが、標的成分の含有率が、出発物質の標的成分含有率からよりも小さく前記所定の標的含有率から逸脱している画分の少なくとも一部分を、前記のこれから分離すべき出発物質に導くように設計されていることを特徴とする、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
好ましくはさらなる操作、特にさらなる処理および/または処分のために、標的成分含有率が、出発物質の標的成分含有率からよりも大きく前記所定の標的含有率から逸脱している画分を少なくとも排出するためのデバイスを特徴とする、請求項14または15に記載の装置。
【請求項17】
前記各画分における標的成分の含有率の測定のためのデバイス(15、16、17)によって、ならびに好ましくは、制御および/または調整のための測定デバイスで測定された測定値を、制御量および/または操作量として使用するように設けられた、画分取り出しデバイスの制御および/または調整のためのデバイスを特徴とする、請求項14~16のいずれか1つに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロマトグラフィー方法、特に、超臨界液体クロマトグラフィーのための方法であって、分離すべき出発物質が超臨界液体クロマトグラフィーによって各画分に分離され、そして前記出発物質の少なくとも1つの標的成分を少なくとも1つの所定の標的含有率で含む、前記各画分のうちの少なくとも1つが、標的生成物画分として排出される方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、超臨界液体クロマトグラフィーのための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
上記のタイプのクロマトグラフィー方法は、利用によって知られている。分離すべき物質混合物は、例えば多孔質材料でできたいわゆる充填物を含む固定相を有するクロマトグラフィーカラムに通される。物質混合物の異なる物質は、固定相を通って流れる際に異なる保持に付され、すなわちそれらは、固定相における強さの異なる相互作用のために、異なる速さで固定相を通って流れる。これが分離を可能にする。
【0004】
超臨界液体クロマトグラフィー(SFC)を実施するための方法は、とりわけ、脂肪酸混合物から多価不飽和脂肪酸を分離するために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、より高い収率をもたらす、冒頭に述べたタイプの方法を創出するという課題に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この課題は、所定の標的含有率を有さない画分が残部画分を形成し、および、前記残部画分の少なくとも1つのうちの少なくとも一部が、これから分離すべき出発物質に加えられることにより、解決される。
【0007】
有利には、残部画分またはその少なくとも一部は、分離プロセスにおいてリサイクルされる。単一のクロマトグラフィー装置において、物質を分離プロセスに数回付すことが可能である。有利には、標的生成物の収率を増加させることができる。
【0008】
本発明の特に好ましい実施形態では、標的成分の含有率が、出発物質の標的成分含有率からよりも小さく所定の標的含有率から逸脱している残部画分のうちの少なくとも1つのうちの少なくとも一部が、これから分離すべき出発物質に加えられる。最後に挙げた標的成分含有率を含む前記残部画分は、任意選択的に、これから分離すべき出発物質に全て加えることができることは理解されよう。好適には、標的成分の含有率が、出発物質の標的成分含有率からよりも小さく所定の標的含有率から逸脱しているそのような残部画分またはそれらの少なくとも一部だけが、これから分離すべき出発物質に加えられる。
【0009】
標的成分含有率が、出発物質の標的成分含有率からよりも小さく所定の標的含有率から逸脱している、前記残部画分の一部は、分離が意図される出発物質にそれを加えることによって、本発明の方法の中で直接リサイクルされる。これにより、一方では、クロマトグラフィーによって処理すべき分離物質中の標的成分の含有率が、標的含有率により近づけられ、その結果、標的生成物のより高い収率を達成することができる。他方、リサイクルすべき残部画分に見いだされる標的成分は、標的生成物画分に加えることができる。
【0010】
好適には、標的成分含有率が、出発物質の標的成分含有率からよりも大きく所定の標的含有率から逸脱している残部画分は、さらなる操作、特にさらなる処理および/または処分のために排出される。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記の所定の標的含有率は、最小含有率および/または最大含有率である。標的生成物におけるそれぞれの成分の含有率が出発物質と比較して増加されるべきである場合、前記の所定の標的含有率は、典型的には、最小含有率である。標的生成物におけるそれぞれの成分の含有率が出発物質と比較して低下されるべきである場合、前記の所定の標的含有率は、典型的には、最大含有率である。
【0012】
好適には、標的含有率が最小含有率である場合、標的成分含有率が出発物質の標的成分含有率よりも大きい残部画分だけが、これから分離すべき出発物質に加えられる。
【0013】
好ましくは、標的成分含有率が出発物質の標的成分含有率よりも小さい残部画分は、さらなる操作、特にさらなる処理および/または処分のために排出される。
【0014】
逆に、標的含有率が最大含有率である場合、好適には、これから分離すべき出発物質には、標的成分含有率が出発物質の標的成分含有率よりも小さい残部画分だけが加えられる。
【0015】
好ましくは、次いで、標的成分含有率が出発物質の標的成分含有率よりも大きい残部画分は、さらなる操作、特にさらなる処理および/または処分のために排出される。
【0016】
本発明のさらなる実施形態では、出発物質中および各画分中の少なくとも2つの、任意選択的にそれより多くの異なる標的成分の含有率が決定され、および好ましくは、残部画分の異なる標的成分含有率が出発物質のものと比較される。有利には、複数の成分の含有率を考慮することができる。特に、複数の成分の標的成分に対しては最小含有率を、他に関しては最大含有率を定めることができる。
【0017】
本発明の一実施態様において、出発物質におけるおよび画分における標的成分の含有率が、好ましくは適切な測定デバイスによって、決定され、ここで標的成分含有率の決定は、好ましくは連続的に行われる。
【0018】
好適には、残部画分の標的成分含有率は、出発物質の標的成分含有率と比較される。前記比較の結果に基づいて、画分が標的生成物画分または残部画分として処理されるかどうか、特に、残部画分が出発物質に加えられるか、またはさらなる操作のために排出されるかが決められる。
【0019】
少なくとも複数の残部画分または全ての残部画分を互いに混合し、当該残部画分混合物の標的成分含有率を測定してもよい。残部画分混合物の標的成分含有率に基づいて、残部画分混合物が出発物質に加えられるか、またはさらなる操作のために排出されるかが決められる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも、標的成分含有率の決定および比較、ならびに分離されるべき出発物質への残部画分の添加は、自動的に実施される。標的成分含有率決定に基づいて、それぞれの画分をどのように取り扱うべきかが識別される。標的成分含有率測定により、それぞれの画分が、それが標的生成物画分として使用できるような標的成分含有率を有することが判明した場合、当該それぞれの画分は、好適には自動的に、標的生成物として排出される。画分が逸脱した標的成分含有率を有する場合、それぞれの画分は出発物質に、好ましくは自動的に、加えられるか、または処分される。
【0021】
本発明のさらなる実施形態では、残部画分は、これから分離すべき出発物質に、クロマトグラフィーによるその分離前に加えられる。好ましくは、そのために、前記残部画分が前記出発物質に加えられる容器が設けられる。好適には、前記出発物質および前記残部画分は、分離前に混合される。
【0022】
本発明の一実施形態において、これから分離すべき出発物質にその分離前に加えられる残部画分の流れが、出発物質および/または標的生成物画分における標的成分の含有率に応じて、調節され、好ましくは制御される。
【0023】
本発明によるクロマトグラフィー方法は、超臨界液体クロマトグラフィーのための方法の実施のために特に有利であることが分かる。それはさらに、有利には、液体クロマトグラフィーのために、特に薄層クロマトグラフィーまたはカラムクロマトグラフィー、特に低圧液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)またはイオン交換クロマトグラフィー(IC)、またはフィールド・フロー・フラクショネーション(FFF)のために使用することができる。
【0024】
本発明によるクロマトグラフィー方法は、いわゆるバッチ法で実施することができる。その場合、分離は、好適には、段階的に行われる。特に、第1の分離ステップにおいて、複数の画分への分離が実施され、当該画分は上記のように取り扱われる。次のステップは、任意選択的に出発物質を残部画分またはその一部と一緒に分離しながら、実施される。
【0025】
しかしながら、本発明による方法は、連続的に実施されるクロマトグラフィー方法においても使用することができる。複数のクロマトグラフィーカラムが互いに接続されているこのようなクロマトグラフィー方法は、例えば、真の移動床クロマトグラフィー(TMB:True Moving Bed Chromatographie)および擬似移動床クロマトグラフィー(SMB:Simulated Moving Bed Chromatographie)である。
【0026】
SMBクロマトグラフィーでは、複数のクロマトグラフィーカラムが互いに直列に接続される。クロマトグラフィーカラム間の異なる接続部位に、物質混合物と溶離剤が導入される。同様に、ラフィネートとエキストラクトは別の接続部位で取り出され、ここで、クロマトグラフィーにおいてより短い保持に付される1種の物質または任意選択的に複数の物質はラフィネートとして取り出され、クロマトグラフィーにおいてより長い保持に付される1種の物質または複数の物質はエキストラクトとして取り出される。従って、物質混合物は、公知のクロマトグラフィー方法を用いると、クロマトグラフィーの操作に応じて、2つの異なる物質サブ混合物に分離することができ、ここで、第1の物質サブ混合物は、より短い保持に付される物質を含有し、第2の物質サブ混合物は、より長い保持に付される物質を含有する。
【0027】
好適には、前記方法は、連続的に実施される。擬似移動床(SMB)法が前記方法の連続的な実施に特に適していることが見い出された。
【0028】
本発明の方法による処理には、クロマトグラフィー方法のための溶離剤に可溶性である出発物質が適している。
【0029】
特に、超臨界液体クロマトグラフィーに関して、出発物質は、超臨界COにまたは超臨界COと少なくとも1種の追加的な溶媒、例えばメタノールおよび/またはエタノールとの混合物に可溶性である、少なくとも1種の物質または複数の物質の混合物であり得る。
【0030】
出発物質が脂肪酸および/またはそれらの誘導体の混合物、好ましくは不飽和、特に多価不飽和脂肪酸および/またはそれらの誘導体の混合物であるかまたはそれらを含む場合に、前記方法が特に有利であることが見出された。その場合、前記標的成分は、多価不飽和脂肪酸および/またはそれらの誘導体のうちの1つであり得る。特に好ましくは、前記標的成分は、エイコサペンタエン酸(EPA)および/またはドコサヘキサエン酸(DHA)である。
【0031】
好適には、EPAの標的成分最小含有率は、900mg/g、好ましくは970mg/gである。
【0032】
DHAの標的成分最小含有率は、好適には、850mg/g、好ましくは900mg/gである。
【0033】
前記出発物質はさらに、カルボン酸および/またはそれらの誘導体の混合物、好ましくはカンナビノイドおよび/またはカンナビノイド誘導体の混合物であるか、またはそれらを含むことができる。前記標的成分は、好ましくはカンナビジオール、好ましくはCBD、またはテトラヒドロカンニビノール(THC:Tetrahydrocannibinol)またはその誘導体、特に酸、好ましくはCBD/A、THC/A、CBG/A、CBN/Aおよび/またはCBC/Aである。
【0034】
本発明の一実施形態において、前記出発物質は、多価不飽和脂肪酸の、好ましくはエイコサペンタエン酸(EPA)および/またはドコサヘキサエン酸(DHA)および/またはドコサペンタエン酸(DPA)の少なくとも1つの代謝産物を含むか、または前記代謝産物と同じ組成を有する物質を含む、混合物であるかまたは当該混合物を含む。
【0035】
好適には、前記標的成分は、多価不飽和脂肪酸の、好ましくはエイコサペンタエン酸(EPA)および/またはドコサヘキサエン酸(DHA)および/またはドコサペンタエン酸(DPA)の代謝産物であるか、または前記代謝産物と同じ組成を有する物質である。
【0036】
本発明のさらなる実施形態において、前記出発物質は、好ましくはEPA、DHAにおよび/またはDPAに由来する、少なくとも1種の炎症収束性メディエーター(PRM:pre-resolving mediator)および/または少なくとも1種の特異的炎症収束性メディエーター(SPM:specialized pre-resolving mediator)を含む混合物であるか、または当該混合物を含む。
【0037】
好適には、前記標的成分は、好ましくはEPA、DHAにおよび/またはDPAに由来する少なくとも1種の炎症収束性メディエーター(PRM)および/または少なくとも1種の特異的炎症収束性メディエーター(SPM)であり、前記物質混合物から分離される。
【0038】
本発明のさらなる実施形態において、前記出発物質は、炎症収束性メディエーター(PRM)、好ましくは18-HEPE、17-HDHAおよび/または14-HDHAの、および/または特異的炎症収束性メディエーター(SPM)、好ましくはリポキシン類、レゾルビン類、プロテクチン類および/またはマレシン類の混合物であるか、またはそれを含む。
【0039】
好適には、前記標的成分は、少なくとも1種の炎症収束性メディエーター(PRM)、好ましくは18-HEPE、17-HDHAおよび/または14-HDHA、ならびに/あるいは特異的炎症収束性メディエーター(SPM)、好ましくはリポキシン、レゾルビン、プロテクチンおよび/またはマレシンである。
【0040】
炎症収束性メディエーター(PRM)は、好ましくは、18-HEPE、17-HDHA、14-HDHAの物質群からの少なくとも1種の物質である。
【0041】
特異的炎症収束性メディエーター(SPM)は、好ましくは、リポキシン、レゾルビン、プロテクチン、マレシンの物質群からの少なくとも1種の物質である。
【0042】
リポキシンは、好ましくは、LxA4(5S,6R,15S-トリヒドロキシ-7E,9E,11Z,13E-ETE)、LxB4(5S,14R,15S-トリヒドロキシ-6E,8Z,10E,12E-ETE)、15-epi-LxA4(5S,6R,15R-トリヒドロキシ-7E,9E,11Z,13E-エイコサテトラエン酸)、15-epi-LxB4(5S,14R,15R-トリヒドロキシ-6E,8Z,10E,12E-エイコサトリエン酸)の物質群からの少なくとも1種の物質である。
【0043】
レゾルビンは、好適には、EPA、DHAおよび/またはDPAに由来する。
【0044】
レゾルビンは、好ましくは、少なくとも
-RvE1(5S,12R,18R-トリヒドロキシ-6Z,8E,10E,14Z,16E-EPA)、18S-RvE1(5S,12R,18S-トリヒドロキシ-6Z,8E,10E,14Z,16E-EPA)、RvE2(5S,18R-ジヒドロキシ-6E,8Z,11Z,14Z,16E-EPA)、RvE3(17R,18R/S-ジヒドロキシ-5Z,8Z,11Z,13E,15E-EPA)の物質群からの物質、
および/または
-RvD1(7S,8R,17S-トリヒドロキシ-4Z,9E,11E,13Z,15E,19Z-DHA)、RvD2(7S,16R,17S-トリヒドロキシ-4Z,8E,10Z,12E,14E,19Z-DHA)、RvD3(4S,11R,17S-トリヒドロキシ-5Z,7E,9E,13Z,15E,19Z-DHA)、RvD4 (4S,5R,17S-トリヒドロキシ-6E,8E,10Z,13Z,15E,19Z-DHA)、RvD5(7S,17S-ジヒドロキシ-4Z,8E,10Z,13Z,15E,19Z-DHA)、RvD6(4S,17S-ジヒドロキシ-5E,7Z,10Z,13Z,15E,19Z-DHA)の物質群からの物質、
および/または
-RvT1(7,13R,20-トリヒドロキシ-8E,10Z,14E,16Z,18E-DPA)、RvT2(7,8,13R-トリヒドロキシ-9E,11E,14E,16Z,19Z-DPA)、RvT3(7,12,13R-トリヒドロキシ-8Z,10E,14E,16Z,19Z-DPA)、RvT4(7,13R-ジヒドロキシ-8E,10Z,14E,16Z,19Z-DPA)の物質群からの物質、
である。
【0045】
プロテクチンは、好適には、DHAにおよび/またはDPAに由来する。
【0046】
プロテクチンは、好ましくは、少なくとも
-PD1またはNPD1(10R,17S-ジヒドロキシ-4Z,7Z,11E,13E,15Z,19Z-DHA)、PDX(10S,17S-ジヒドロキシ-4Z,7Z,11E,13Z,15E,19Z-DHA)、22-ヒドロキシ-PD1(10R,17S,22-トリヒドロキシ-4Z,7Z,11E,13E,15Z,19Z-DHA)、17-epi-PD1またはAT-PD1(10R,17R-ジヒドロキシ-4Z,7Z,11E,13E,15Z,19Z-DHA)、10-epi-PD1またはent-AT-NPD1(10S,17S-ジヒドロキシ-4Z,7Z,11E,13E,15Z,19Z-DHA)の物質群からの物質、
および/または
-PD1n-3(10,17-ジヒドロキシ-7,11,13,15,19-DPA)、PD2n-3(16,17-ジヒドロキシ-7,10,12,14,19-DPA)の物質群からの物質、
である。
【0047】
マレシンは、好適には、DHAにおよび/またはDPAに由来する。
【0048】
マレシンは、好ましくは、少なくとも
-MaR1(7R,14S-ジヒドロキシ-4Z,8E,10E,12Z,16Z,19Z-DHA)、MaR2(13R,14S-ジヒドロキシ-4Z,7Z,9E,11E,16Z,19Z-DHA)、7-epi-MaR1(7S,14S-ジヒドロキシ-4Z,8E,10Z,12E,16Z,19Z-DHA)、MaR-L1(14S,22-ジヒドロキシ-4Z,7Z,10Z,12E,16Z,19Z-DHA)、MaR-L2(14R,22-ジヒドロキシ-4Z,7Z,10Z,12E,16Z,19Z-DHA)の物質群からの物質、
および/または
-MaR1n-3(7S,14S-ジヒドロキシ-8E,10E,12Z,16Z,19Z-DPA)、MaR2n-3(13,14-ジヒドロキシ-7,9,111,16,19-DPA)、MaR3n-3(13,14-ジヒドロキシ-7,9,111,16,19-DPA)の物質群からの物質、
である。
【0049】
超臨界液体クロマトグラフィー(SFC)のための溶離剤として、好ましくは、超臨界二酸化炭素、プロパン、N-ペンタン、トリフルオロメタノマキセノン(Trifluormethanomaxenon)、水またはアンモニアが使用される。溶離剤は、共溶媒として、溶媒、好ましくはエタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチルおよび/またはトリフルオロ酢酸を有し得る。
【0050】
好適には、クロマトグラフィーの溶離剤は、例えば従来技術から超臨界液体クロマトグラフィー(SFC)に関して知られているように、分離の実施後、再度、クロマトグラフィーの実施のために使用される。そのために、好適には、それは液体クロマトグラフィーの実施後に分離した後に、液体クロマトグラフィーの実施のための溶離剤が供給される溶離剤リザーバに導かれる。
【0051】
最初に述べた装置は、クロマトグラフィー装置の、特に超臨界液体クロマトグラフィーのための装置の、それ自体は公知の典型的な構成を含む。特に、前記装置は、分離カラム、分離物質リザーバ、溶離剤リザーバ、及び上述の画分を取り出すためのデバイスを備える。分離物質リザーバおよび溶離剤リザーバは、それぞれの分離物質及び溶離剤が分離カラムに、管理されて、好ましくは制御および/または調整されて、加えられ得るように、分離カラムに接続される。画分取り出しデバイスは、それぞれのフラクションを分離カラムから、特に調整および/または制御されて、取り出せるように、分離カラムに接続される。さらに、画分取り出しデバイスは、分離の実行後に溶離剤または溶離剤混合物を再び溶離剤リザーバに供給できるように、分離カラムに接続される。様々な画分の取り出しのために、それには好ましくは、それぞれの画分を導くことができる複数の分画カラムが設けられる。
【0052】
好ましくは、分離物質リザーバは出発物質リザーバに接続され、好ましくは連続的に、出発物質が供給される。好適には、分離物質リザーバはさらに、標的成分含有率が出発物質の標的成分含有率よりも大きい残留物質画分を加えるように設計される。そのために、ラインを画分取り出しデバイスと分離物質リザーバとの間に設けることができ、それを介して、それぞれの残留物質画分を分離物質リザーバに加えることができる。
【0053】
本発明の特に好ましい実施形態において、画分取り出しデバイスは、標的生成物画分および残部画分を、特にそれぞれの標的成分含有率に応じて、様々に送るように設計される。好適には、画分取り出しデバイスはそのために、弁を設けた複数のラインを有し、それらを介して随意に画分を送ることができる。標的生成物画分は、好ましくは、そのために意図された標的生成物容器に導かれる。適切な残部画分は、分離物質容器に導かれる。別の残留物質画分は、さらなる操作のための容器に導かれる。
【0054】
前記装置は、好適には、出発物質中の標的成分含有率を測定するためのデバイスと、画分中の標的成分含有率を測定するためのデバイスとを備える。さらに、残部画分が出発物質に加えられる分離容器内にある分離物質中の標的成分含有率の測定のためのデバイスを設けることができる。
【0055】
本発明の一実施形態では、前記装置は、画分取り出しデバイスが、測定デバイスによる測定結果に応じて、画分を適切に送るように設けられる。そのために、前記装置は、測定値を読み出し、評価し、それぞれの評価結果に応じて画分取り出しデバイスを、特に弁の操作下で、意図した物質移送が行われるように調節する、制御-および/または調整デバイスを備えることができる。
【0056】
本発明を以下で、実施例および実施例に関する添付の図面に基づいて、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、本発明による装置を概略的に示す。
図2図2は、図1に従う本発明による装置の一部を概略的に示す。
図3図3は、本発明によるさらなる装置を概略的に示す。
【0058】
A. 図1および図2の装置:
図1は、超臨界液体クロマトグラフィーのための本発明による装置1を概略的に示す。装置1は、例えばDE19934168A1に記載されているもののような、SFC装置の公知の構成要素を有する。特にそれは、出発物質リザーバ2からの出発物質および溶離剤リザーバ4からの溶離剤を入れる分離カラム5を備える。
【0059】
分離カラム5による分離において生成した画分は、分画デバイス6を介して、分画カラム7、8、9に導かれる。分画カラム7、8、9の各々は、ラインを介して、標的生成物容器13、残留物質容器14および分離物質容器3にそれぞれ接続されている。
【0060】
さらに、分画カラム7、8、9の各々は、切替可能な弁デバイス10、11、12をそれぞれ有し、それによって、それぞれ分画カラム7、8、9で得られた画分をどの容器に導くかを調節することが可能である。従って、切替可能な弁デバイス10、11、12により、分画カラム7、8、9からのそれぞれの画分を、随意に、容器3、13、14の各々に導くことができる。
【0061】
分離物質容器3に、出発物質リザーバ2からの出発物質が供給される。分離カラム4で分離すべき材料は、分離物質容器3から供給される。
【0062】
出発物質リザーバ2および分画カラム7、8、9、ならびに任意選択的に分離物質容器3には、それぞれの容器中の物質の少なくとも1つの成分の含有率を決定することを意図された、測定デバイス15、16、17、18、19がそれぞれ設けられる。
【0063】
装置1は、制御部20を備え、これは図2に概略的に示すように、測定デバイス15、16、17、18、19からの測定データを受け取り、当該測定データに基づいて切替可能な弁デバイス10、11、12を調節するように設計されている。
【0064】
超臨界液体クロマトグラフィーを実施する場合、分離容器3に、出発物質リザーバ2から出発物質が供給され、分離容器からの物質は、溶離剤4の添加下で、分離カラム5において分離される。生成された様々な画分は、分画デバイス6を介して分画カラム7、8、9に分離され、それぞれの分画カラム7、8、9における画分中の標的生成物の含有率が、測定デバイス15、16、17によって測定される。さらに、出発物質リザーバ2における、および任意選択的に分離容器3における標的生成物の含有率が、測定デバイス18、19によって測定される。
【0065】
制御部20には、条件(それらに基づいて、弁デバイス10、11、12の弁が調節される)が記憶されている。
【0066】
第1の条件は、標的生成物最小含有率である。それぞれの測定において所定の標的生成物最小含有率を有する画分の場合、前記弁が、これらの画分が標的生成物容器13に導かれるように切り替えられる。
【0067】
さらに別の条件は、測定デバイス18によって測定される標的生成物含有率が、標的生成物最小含有率よりは小さいが、出発物質の標的生成物含有率よりは大きいことである。分画カラム7、8、9のうちの1つからの画分がこの条件を満たす場合、当該画分は、分離容器3に供給され、分離カラム5でまだ処理されていない出発物質と一緒に分離される。
【0068】
分画カラム7、8、9のうちの1つからの画分が最後に挙げた条件を満たさない場合、それは残留物質容器14に導かれる。
【実施例
【0069】
例1:
上述の装置1において、20重量%のEPAおよび70重量%のDHAを有する油が出発物質として処理される。ここではそれは、魚油または藻類油(Algenoel)から製造された油であってよい。
【0070】
装置1による処理の目的は、少なくとも90重量%のDHA含有率を有する油を得ることである。
【0071】
処理すべき油は、出発物質リザーバ2中にある。
【0072】
溶離剤リザーバ4に供される溶離剤として、COと共溶媒としてのエタノールとの混合物が使用される。超臨界液体クロマトグラフィーの実施後、分画カラム7において、68重量%のDHAを有する画分が生成し、分画カラム8において、83重量%のDHAを有する画分が生成し、および分画カラム9において、93重量%のDHAを含有する画分が生成する。
【0073】
測定結果に応じて、弁デバイス10、11、12が、出発物質よりも小さいDHA含有率を有する、分画カラム7からの画分を、残留物質容器14に導くように切り替えられる。弁デバイス11は、83重量%のDHA、すなわち標的生成物含有率より小さい含有率であるが、出発物質の含有率より大きな含有率を有する、分画カラム8からの画分が、分離物質容器に導かれるように切り替えられる。分画カラム9からの画分は、90重量%DHAという標的生成物最小含有率よりも大きい、93重量%DHAというDHA含有率を有し、従って、標的生成物容器3に導かれる。
【0074】
例2:
上記例1に関して記載したような出発データ。
【0075】
ただし、90重量%DHAの標的生成物最小含有率を満たさない分画カラムからの画分は、一緒に混合されて残留物質混合物とされ、当該混合物のDHA含有率が測定される。残留物質混合物が、出発物質のDHA含有率よりも大きいDHA含有率を有する場合、それは分離物質容器3に加えられ、そこで出発物質と混合される。残留物質混合物のDHA含有率が出発物質のDHA含有率よりも小さい場合、それは残留物質容器14に導かれる。
【0076】
例3:
上述の装置1は、20重量%のEPA、70重量%のDHAおよび4重量%のアラキドン酸(ARA)を有する油が出発物質として処理される。ここではそれは、魚油または藻類油から製造された油であってよい。
【0077】
装置1による処理の目的は、少なくとも90重量%のDHA含有率および<0.5%のARA含有率を有する油を得ることである。
【0078】
処理すべき油は、出発物質リザーバ2中にある。
【0079】
溶離剤リザーバ4に供される溶離剤として、COと共溶媒としてのエタノールとの混合物が使用される。超臨界液体クロマトグラフィーの実施後、分画カラム7において、66重量%のDHAおよび3.8重量%のARAを有する画分が生成し、分画カラム8において、83重量%のDHAおよび1.7重量%のARAを有する画分が生成し、および分画カラム9において、93重量%のDHAおよび0.3重量%のARAを含有する画分が生成する。
【0080】
測定結果に応じて、弁デバイス10、11、12が、出発物質よりも小さいDHA含有率および出発物質よりも大きいARA含有率を有する、分画カラム7からの画分を、残留物質容器14に導くように切り替えられる。弁デバイス11は、DHAに関して83重量%のDHA、すなわち標的生成物含有率より小さい含有率であるが、出発物質の含有率より大きな含有率を有し、およびARAに関して1.7重量%のARA、すなわち標的生成物含有率より大きい含有率であるが、出発物質の含有率より小さい含有率を有する、分画カラム8からの画分が、分離物質容器に導かれるように切り替えられる。分画カラム9からの画分は、90重量%DHAというDHA標的生成物最小含有率よりも大きい、93重量%DHAというDHA含有率を有し、およびARA標的生成物最大含有率よりも小さい、0.3重量%ARAというARA含有率を有し、従って、標的生成物容器3に導かれる。
【0081】
例4:
上述の装置1で、出発物質リザーバにおいて、72重量%のEPA、12重量%のDHAおよび16重量%のSDAを有する油が出発物質として供される。ここではそれは、魚油または藻類油から製造された油であってよい。
【0082】
溶離剤リザーバ4に供される溶離剤として、COと共溶媒としてのエタノールとの混合物が使用される。EPA、DHAおよびSDAの含有率が、測定デバイス15、16、17、18、19によって決定され、上記で説明したように、それに応じて切り替えられる。
【0083】
装置1による処理の目的は、少なくとも96重量%のEPA含有率を有する油を得ることである。そのようなEPA含有率を有する画分は、標的生成物容器13内に入れられる。
【0084】
さらに、≦96重量%のEPAを有するが、≧75重量%のEPA、<3重量%のDHAおよび<6重量%のSDAを含有する画分は、分離物質容器3に導かれる。
【0085】
上記含有率を有さない画分は、残留物質容器14に入れられる。
【0086】
例5:
上述の装置1は、70重量%のCBDを有する油が出発物質として処理される。ここではそれは、麻(Hanf)から製造された抽出物であってよい。
【0087】
装置1による処理の目的は、少なくとも90重量%のCBD含有率を有する油を得ることである。
【0088】
処理すべき油は、出発物質リザーバ2中にある。
【0089】
溶離剤リザーバ4に供される溶離剤として、COと共溶媒としてのエタノールとの混合物が使用される。超臨界液体クロマトグラフィーの実施後、分画カラム7において、63重量%のCBDを有する画分が生成し、分画カラム8において、87重量%のCBDを有する画分が生成し、および分画カラム9において、95重量%のCBDを含有する画分が生成する。
【0090】
測定結果に応じて、弁デバイス10、11、12が、出発物質よりも小さいCBD含有率を有する、分画カラム7からの画分を、残留物質容器14に導くように切り替えられる。弁デバイス11は、87重量%のCBD、すなわち標的生成物含有率より小さい含有率であるが、出発物質の含有率より大きな含有率を有する、分画カラム8からの画分が、分離物質容器に導かれるように切り替えられる。分画カラム9からの画分は、90重量%CBDという標的生成物最小含有率よりも大きい、95重量%CBDというCBD含有率を有し、従って、標的生成物容器3に導かれる。
【0091】
B. 図3に従う装置:
図3に、さらなる本発明の装置1aが概略的に示されている。物質混合物の分離のために、装置1aは、擬似移動床クロマトグラフィー(SMB)の実施に適したクロマトグラフィーデバイス5aを有する。クロマトグラフィーデバイス5aは、一緒にゾーンI、II、III、IVを形成する複数の相互接続された分離カラムを有する。それ自体はSMB法に関して知られているように、クロマトグラフィーデバイス5aに、変動する位置で、分離されるべき物質混合物および溶離剤が加えられ、および同様に、互いに変動する位置で、ラフィネートおよびエキストラクトが取り出される。
【0092】
このために、適切なラインおよび弁、および任意選択的に接続部、ならびに弁の調節のためのデバイスを含む、ラインデバイス27が設けられる。ラインデバイス27はさらに、ライン内の物質の流れに影響を与えられるように、少なくとも1つのポンプ、好ましくは複数のポンプを有することができる。
【0093】
装置1aは、クロマトグラフィーデバイス5aに分離すべき物質混合物を供給するために、分離すべき出発物質が配置された出発物質リザーバ2aに接続されている分離物質容器3aを有する。クロマトグラフィーデバイス5aによって取り出されたラフィネートはラフィネート容器21に、および取り出されたエキストラクトはエキストラクト容器22に導かれる。ラフィネートおよびエキストラクトをそれぞれの容器21、22に導く前に、分離デバイス23、24において、溶離剤を、特に蒸発によって、それぞれラフィネートまたはエキストラクトから分離することができる。分離デバイス23、24は、例えば、流下膜式蒸発器によって形成することができる。分離デバイス23、24からの溶離剤は、溶離剤リザーバに戻すことができる。
【0094】
標的生成物含有率(複数可)に応じて、ラフィネートは、標的生成物容器13aに、またはリサイクルの目的で、分離物質容器3aに導かれる。エキストラクトは、同様に標的生成物含有率に応じて、分離物質容器3aにまたは残留物質容器14aに入れられる。
【0095】
出発物質リザーバ2aを介して加えられる出発物質からおよび任意選択的にラフィネートおよび/またはエキストラクトから混合される、分離物質容器3aからの物質混合物が、ここでクロマトグラフィーデバイス5aに入れられる。そこで、連続的な物質分離が行われる。
【0096】
図3に示すように、クロマトグラフィーデバイス5aは、ラインデバイス27を介して、ラフィネート容器21、エキストラクト容器22、残留物質容器14a及び分離物質容器3aに接続されている。
【0097】
図3からわかるように、分離物質容器3a用に測定デバイス19aが、ラフィネート容器21用に測定デバイス25が、エキストラクト容器用に測定デバイス26が設けられ、それらによって、それぞれそこに配置された物質の標的生成物含有率(複数可)を測定することができる。さらに、出発物質リザーバ2aには、生成物含有率(複数可)を決定するための測定デバイス18aを設けることができる。
【0098】
図1および図2に基づいて上記で説明したのと同様に、装置1aは、測定デバイス19a、25、26および任意選択的に18aにより測定された測定値を考慮して、出発物質、ラフィネートおよびエキストラクトからの分離物質容器3aにおける物質混合物をどのように混合するか、および/または当該物質混合物をどの程度クロマトグラフィーデバイス5aに加えるかを調節する、制御-および/または調整デバイス20aを有する。当然のことながら、そのために、制御-および/または調整デバイス20aは、それがラインデバイス27、特にその弁および任意選択的にポンプを調節できるように設計されている。
【0099】
例6:
上述の装置1において、60重量%のEPA、15重量%のDHAおよび10重量%のARAを有する油が出発物質として処理される。ここではそれは、魚油または藻類油から製造された油であってよい。
【0100】
装置1による処理の目的は、少なくとも90重量%のDHA含有率を有する油を得ることである。
【0101】
処理すべき油は、出発物質リザーバ2中にある。
【0102】
溶離剤リザーバ4に供される溶離剤として、エタノールが使用される。
【0103】
SMB法におけるクロマトグラフィーデバイス5aによる連続的な物質分離の過程で、ラフィネートとして、EPA含有率が86重量%~97.5重量%の間で変化する物質混合物が取り出される。
【0104】
制御-および/または調整デバイス20aは、ラフィネートが、EPA含有率が>90重量%である場合には標的生成物容器13aに導かれ、EPA含有率が≦90重量%である場合には分離物質容器に導かれるようにプログラムされる。
【0105】
さらに、制御-および/または調整デバイス20aは、EPA含有率が>70重量%であり、ARA含有率が<10重量%である場合には、エキストラクトが分離物質容器に導かれ、それ以外の場合には、残留物質容器14に導かれるようにプログラムされる。
【0106】
制御デバイスおよび/または調整デバイス20aはさらに、分離物質容器3aに入れられる物質量における、それぞれ出発物質リザーバ2a、ラフィネート容器21およびエキストラクト容器からの量が、EPA、DHAおよびARAのそれぞれの含有率が特定の所定の範囲内にあるように調節されるように設けられていてもよい。
図1
図2
図3
【国際調査報告】