(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】グリコール分解によるポリエチレンテレフタレートの解重合方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/03 20060101AFI20240521BHJP
C07C 69/82 20060101ALI20240521BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20240521BHJP
B01J 31/04 20060101ALI20240521BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
C07C67/03
C07C69/82 B
B01J37/04 102
B01J31/04 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023570039
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(85)【翻訳文提出日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 IB2022054519
(87)【国際公開番号】W WO2022243832
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】102021000012617
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521262172
【氏名又は名称】アクアフィル ソシエタ ペル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】AQUAFIL S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェッケット、ミケーレ
(72)【発明者】
【氏名】ベルトッラ、マッダレーナ
(72)【発明者】
【氏名】ダル モーロ、アナクレート
(72)【発明者】
【氏名】モデスティ、ミケーレ
(72)【発明者】
【氏名】グエッラ、ステファノ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169AA09
4G169BA27A
4G169BA27B
4G169BB05C
4G169BB08C
4G169BB16C
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BD12C
4G169BE08A
4G169BE08B
4G169CB25
4G169CB35
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4G169DA04
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4G169FC02
4H006AA02
4H006AC41
4H006BA06
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4H006BA09
4H006BA45
4H006BE90
4H006BJ50
4H006BN10
4H006KA30
4H006KC30
4H039CA99
4H039CE20
4H039CL30
(57)【要約】
本発明は、エチレングリコール(EG)を用いたグリコール分解(glycolysis)による、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む材料の解重合方法であって、少なくとも1種類の触媒の存在下、PETを含む材料をEGと反応させてビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)及び/又はそのオリゴマーを含むグリコール分解産物を得ることを含み、前記触媒は、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、及びその混合物から選択される金属の酢酸塩を含む、方法に関する。触媒を、酢酸と金属を含む化合物とのin situ反応により、調製することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレングリコール(EG)を用いたグリコール分解(glycolysis)による、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む材料の解重合方法であって、
少なくとも1種類の触媒の存在下、PETを含む材料をEGと反応させてビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)及び/又はそのオリゴマーを含むグリコール分解産物を得ることを含み、
ここで、前記触媒は、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、及びこれらの混合物から選択される金属の酢酸塩を含む、
方法。
【請求項2】
前記触媒は、酢酸と前記金属を含む化合物とのin situでの反応により得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属を含む化合物は、酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、塩化物、及びこれらの混合物から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属を含む化合物は、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三塩化アルミニウムから選択される、請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記PETを含む材料は、前記金属を含む化合物を含む、請求項2~請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
a.20℃~70℃の範囲内の温度で、酢酸、前記金属を含む化合物、及びEGを混合すること;
b.前記工程aにおいて得られた混合物を、170℃~230℃の範囲内の温度まで加熱すること;並びに
c.前記工程bにおいて得られた混合物に、前記PETを含む材料を供給して、グリコール分解産物を得ること
を含む、請求項2~請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
a.20℃~70℃の範囲内の温度で、EG、酢酸、及び前記PETを含む材料、並びに前記金属を含む化合物を混合すること;並びに
b.前記工程aにおいて得られた混合物を、170℃~230℃の範囲内の温度まで加熱して、前記反応を起こさせてグリコール分解産物を得ること
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記PETを含む材料は、PETを含むポストコンシューマ廃棄物(post-consumer waste)及び/又は産業スクラップ(post-industrial scrap)を含む、好ましくはPETを含むポストコンシューマカーペット廃棄物を含む、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記PETを含む材料は、細粒(granules)、フレーク、繊維、又はフラフ(fluff)の形態である、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
EGとPETmの重量比(EG:PETm)は、1:1~8:1、好ましくは1:1~4:1、さらに好ましくは1:1~2:1であり、ここで、PETmは前記PETを含む材料を示す、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒が酢酸マグネシウムを含む場合、マイクロ波照射により前記反応混合物を加熱することを含まない、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
エチレングリコール(EG)を用いたグリコール分解(glycolysis)による、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む材料の解重合方法であって、
金属の酢酸塩を含む少なくとも1種類の触媒の存在下、PETを含む材料をEGと反応させてビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)及び/又はそのオリゴマーを含むグリコール分解産物を得ることを含み、
ここで、前記触媒は、酢酸と前記金属を含む化合物とのin situ反応により得られる、
方法。
【請求項13】
酢酸と前記金属を含む化合物との前記in situ反応は、
a.20℃~70℃の範囲内の温度で、酢酸、前記金属を含む化合物、及びEGを混合すること;
b.前記工程aにおいて得られた混合物を、170℃~230℃の範囲内の温度まで加熱すること;並びに
c.前記工程bにおいて得られた混合物に、前記PETを含む材料を供給して、前記グリコール分解産物を得ること
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
酢酸と前記金属を含む化合物との前記in situ反応は:、
a.20℃~70℃の範囲内の温度で、EG、酢酸、及び前記PETを含む材料、並びに前記金属を含む化合物を混合すること;
b.前記工程aにおいて得られた混合物を、170℃~230℃の範囲内の温度まで加熱して、前記反応を起こさせて前記グリコール分解産物を得ること
を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリコール分解(glycolysis)によるポリエチレンテレフタレートの解重合方法に関する。具体的には、前記方法は、環境への影響が低減されており、容易に入手可能な原料から調製可能な触媒を使用する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)は、高い強度及び高い透明性を有する半結晶性熱可塑性ポリエステルである。PETは、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)とのエステル化反応、又はジメチルテレフタレート(DMT)とEGとのエステル交換反応により得られる。その物理的特性及び化学的特性により、PETには多くの用途がある。具体的には、PETは、織物繊維及びカーペット(繊維グレードPET)、食品容器(例えば、飲料用ボトル、ボトルグレードPET)、並びに食品包装用フィルム(フィルムグレードPET)の製造用に使用される。
【0003】
現在、世界的PET製造は年8千万トンを超える量に達する。PETの高い消費量及び非生分解性の観点から、使用済み製品の環境への影響、及び新しい製品の製造のための石油由来原料の消費を低減するために、この材料をリサイクルする強力な技術的ニーズがある。
【0004】
PET廃棄物リサイクルの第一の方法は、いわゆる「メカニカルリサイクル」による。メカニカルリサイクルは、混入物からのポリマーの機械的分離及びその後の再細粒化に基づく。具体的には、メカニカルリサイクルは、PET廃棄物の選別及び分離、混入物の除去、粉砕、加熱処理、及び細粒への押出を含む。このリサイクル技術は、広く使用されているが限定的であり、ボトルからPETを回収するためしか使用することができず、混入物の含有率は比較的低い(約10%(重量/重量)未満)。加えて、PET廃棄物中の染料及び他の添加剤の存在、並びに工業的製造サイクルに再導入することを可能とするための再細粒化の必要性により、バージン原料から得られるポリマーより低品質のリサイクルポリマーがもたらされる。メカニカルリサイクルは、さらに、ポリマー中に上述の混入物が蓄積し、リサイクルされる度に得られるポリマー品質の劣化をもたらすことを伴う。
【0005】
PET廃棄物リサイクルの第二の方法は、いわゆる「ケミカルリサイクル」である。ケミカルリサイクルは、加溶媒分解による、PETポリマー鎖のその出発モノマー又はオリゴマーへの化学的変換(解重合)に基づく。PET解重合産物を、混入物から容易に精製した後、新たな重合方法で使用することができ、したがって、メカニカルリサイクル方法に関連する欠点を克服することができる。ケミカルリサイクルは、元の原料をPET廃棄物の処理から得ることを可能とするので、この技術は、循環型経済及び持続可能な開発の概念を支える基準を満足するさらなる利点を有する。
【0006】
PET解重合反応を、以下のいくつかの方法で行うことができる。
・加水分解(酸性、アルカリ性、又は中性)により、モノマーEG及びTPAを製造すること。
・メタノール分解により、DMTを製造し、次いで、EGとのエステル交換反応によりPETへ変換すること。
・グリコール分解、例えば、EGによるポリマー鎖の分解により、ビス-2-ヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)を製造すること。
【0007】
現在は、EGを用いたグリコール分解による解重合は、PET又は他の広く使用されるポリマー(例えば、ポリウレタン製造用の不飽和ポリエステル樹脂)の合成においてモノマーとして直接使用することができる産物(化合物BHET)をもたらすので、開発のために最も可能性がある、最も有利なリサイクル技術であると考えられている。
【0008】
EGを用いたグリコール分解によるPETの解重合は、一般に、通常は触媒の存在下で、180℃~250℃の範囲の温度及び大気圧で行われる。解重合中、ポリマー鎖は、ポリマー鎖の加溶媒分解切断により変換され、理論的完全解重合によりモノマー(BHET)を生じるか、又は部分的解重合によりオリゴマーと共にモノマーを生じる。
【0009】
EGを用いたPETの解重合方法に関する反応の概略図を下記ダイアグラム1に示す。
【化1】
【0010】
バージン原料から得られるPETの特徴及び特性と完全に同等な特徴及び特性を有する様々なグレード(ボトルグレード、繊維グレード、及びフィルムグレード)のPETを製造するためのモノマーとして、BHETを使用することができる。BHETからPETの生成をもたらす重合反応を、ダイアグラム2に示す。
【化2】
【0011】
BHETの重合は、1モルのEGを遊離し、該EGは、例えば解重合方法において、リサイクルすることができる。
【0012】
解重合反応を、触媒の存在下又は触媒の非存在下で行うことができる。しかしながら、非触媒解重合は、触媒グリコール分解と比較して、PETのBHETへの低変換収率及び著しく長い反応時間のため、経済的に実行不可能な方法である。
【0013】
PET解重合のために最もよく使用される触媒は、金属塩、具体的には、Zn、Ti、Pb、Mn、及びNaの塩に主に基づく。これらの金属の塩は、通常、酢酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、及び塩酸塩である。工業的方法では、解重合反応の速度及び収率に関してその効率が高いため、酢酸亜鉛が圧倒的に最も広く使用されている触媒である。
【0014】
解重合の終わりに、触媒と共に導入される金属は、最終製品の品質への干渉を防ぎ、かつ、その後のリサイクルサイクルの間にポリマー中に蓄積されるのを避けるために、さらなるポリマーの製造に使用される前にモノマーから除去されなければならない。
【0015】
金属塩を触媒として使用する触媒解重合方法は、例えば、欧州特許出願公開第0723951(A1)号及び国際公開第2017/087752(A1)号に記載されている。
【0016】
欧州特許出願公開第0723951(A1)号は、リサイクルされたポストコンシューマ廃棄物又は産業廃棄物からPETを解重合することにより、高純度BHETを調製する方法を記載する。好ましくは、解重合は、酢酸Zn、酢酸La、及び酢酸Ce、又はチタンブトキシド(Ti(OBu)4)をベースとする触媒により触媒される。方法実行の唯一の例では、約2.2mmol/kg(PET+EG)の量で触媒として酢酸亜鉛が使用される。欧州特許出願公開第0723951(A1)号は、さらに、試験された触媒の中でも酢酸カルシウム及び他の化合物について言及しており、酢酸カルシウムは酢酸亜鉛と比較して効果に乏しいことを示す。
【0017】
国際公開第2017/087752(A1)号は、マイクロ波により解重合反応が補助される、PETのケミカルリサイクル方法を記載する。反応混合物は、触媒及びマイクロ波吸収剤を含む触媒系を含む。触媒は、好ましくは、亜鉛塩、具体的には酢酸亜鉛である。代替の触媒としては、酢酸マグネシウムが挙げられる。
【0018】
最先端技術で現在使用されるPET解重合のための金属触媒は、いくつかの欠点を有する。第一に、最も有効な触媒は、遷移金属及び重金属(例えば、Zn、Ti、Pb)、すなわち、環境への影響が大きい元素をベースとし、解重合の終わりにBHETモノマーからそれらを除去することはかなり難しい。
【0019】
第二に、触媒は比較的多い量で使用される(反応混合物中の触媒/PET比は、触媒の種類及び反応条件に応じて、4%~6%(重量/重量)の量であり得る)ので、解重合方法の継続性を保証するためには、確実に多量の触媒を常時利用可能とすることが工業プラントにおいて極めて重要である。これは、プラントが触媒のために適切な貯蔵空間を備えることを意味し、非常に多くの場合、触媒はさらに、劣化を防ぐために制御された湿度及び温度条件下で貯蔵されなければならない(例えば、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の酢酸塩は吸湿性である)。
【0020】
第三に、触媒は合成化合物であるので、これらの製造コストは比較的高く、得られるBHETの最終コストに著しく影響する。
【0021】
前述の欠点の観点から、最新技術は、公知技術の方法に関して代替触媒を用いた触媒解重合方法を明白に必要としていることは明らかである。具体的には、触媒は、環境への影響が低く、容易且つ安価に入手可能でなければならない。
【0022】
PETリサイクル方法のさらなる欠点は、解重合することができる廃棄物の種類が限定されていることである。現在、解重合により回収されるPET廃棄物は、ほぼ例外なく、プラスチック容器、特に、ボトルの分別収集に由来するものである。他の種類の廃棄物、特に、紡糸プロセス又はポストコンシューマカーペット回収からのPET繊維は、これらが含む高レベルの混入物に起因して、ほとんど使用されないままであり、埋め立てられることになる。
【0023】
PETを含むカーペットは、例えば、ポリマー材料及び非ポリマー材料である異なる種類の材料を含む多層構造物から成り、添加剤として使用された様々な無機物質が存在している。具体的には、カーペットでは、外部から見える繊維部分、前記繊維部分が結合された下層支持布若しくは下層支持メッシュ(いわゆる一次基布)又は支持体表面と接触しているカーペットの裏地(いわゆる二次基布)を作製するために、ポリエステルが使用される。ゴムラテックス及びフィラー材(例えば、カルシウム塩及びマグネシウム塩、アルミニウム化合物)などの接着材又は補強材の中間層を、これらの層間に配置することができる。これらのライフサイクルの終わりに、PETを含むカーペットは、総じて、混入物画分の裁断及び分離が行われ、綿様外観(いわゆるフラフ(fluff))を有する繊維状材料を生じる。フラフは、比較的多量の混入物(約20重量%以下)と共にPETを含み、最も豊富な混入物は、炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウム、ドロマイト鉱物、アルミノケイ酸塩、及びアルミニウム三水酸化物である。
【0024】
使用中に吸着された混入物(例えば、接着剤)と共に、カーペットの特定の構造物及び化学組成物は、これらに含まれるPETの回収をかなり複雑にし、経済的に成り立たない。しかしながら、カーペットからのPET廃棄物は、大量に入手可能なために依然としてリサイクルのための非常に興味深い材料源である。したがって、この種類の材料を効果的に使用することもできる解重合方法を開発することは望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
したがって、前述の最新技術の観点から、本出願人は、公知技術の前述の欠点を克服する、PETを含む材料の解重合方法を提供するという課題に直面した。具体的には、本出願人は、環境への影響が低減され、公知の触媒同様の効率又は公知の触媒に対して優れてさえいる効率を有する触媒を使用する解重合方法を提供するという課題に直面した。加えて、触媒は、容易に入手可能でなければならないか又はこれらの特徴を有する原料から容易に調製可能でなければならない。
【0026】
本出願人は、さらにポストコンシューマカーペット回収からの廃棄物などの相当量の混入物を含む廃棄物に由来するPET含有材料を含む、様々な種類の廃棄物及び処理スクラップに由来するPET含有材料を供給することができる、解重合方法を提供するという問題に取り組んだ。
【課題を解決するための手段】
【0027】
以下の記載にさらに例示される、上記目的及び他の目的を、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、又は酢酸アルミニウムを触媒として使用する、PETを含む材料の解重合方法により達成することができることが分かった。これらの塩は、金属成分が重金属又は遷移金属から構成されていないが、アルカリ土類金属(Ca及びMg)及び両性金属(Al)から成るので、環境への影響が低減されながら、酢酸亜鉛などの最新技術において公知の最も効率的な触媒と同様であり、前記触媒よりさらに高い効率を有することもあることが分かった。さらに、これらの塩は、容易に入手可能であって比較的安価であり、水で簡単に洗浄することによってでも、解重合の終わりに得られるBHETから容易に除去することができる。
【0028】
場合によっては(例えば、酢酸カルシウム)、本発明に係る触媒は、低重量濃度であっても、公知の触媒より高い反応速度を示し、公知の方法に対してより短時間で解重合を完了することを可能とする。これは、最先端の方法において必要とされるものより、同じ製造能力に対して小容量の反応器を使用することができるという利点を提供する。
【0029】
本出願人は、驚くべきことに、酢酸と、前述の金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、又は重炭酸塩などの金属対イオンを含む化合物との反応混合物中で、in situで解重合触媒が生成され得ることも分かった。反応混合物に酢酸及び金属含有化合物を適切に添加することにより、反応速度及びPETからBHETへの変換収率の両方に関して、実験施設内で(ex situ)調製されて反応混合物に添加された同じ化合物と完全に同様の効率で解重合反応を触媒可能な金属の酢酸塩を生成することが可能であった。
【0030】
容易に入手可能であり低コストである環境への影響が低い試薬からの触媒のin situでの生成は、上述の公知の技術の触媒の供給に伴うデメリットを克服することを可能にする。
【0031】
有利に、ポストコンシューマカーペット廃棄物由来の材料中に一般的に存在する炭酸カルシウム、炭酸カルシウムと炭酸マグネシウムとの混合物、又は水酸化アルミニウムなどの解重合に供給されるPET含有材料中の混入物として存在する金属化合物として使用することにより、触媒がin situで調製され得ることも観察された。これは、BHETの製造のために広範囲のPET廃棄物、具体的には、ポストコンシューマカーペット廃棄物などの現在は主に埋め立て地に廃棄されるものを利用することを可能とする。
【0032】
加えて、本明細書に記載されるin situ触媒調製方法は、Ca、Mg、及びAlの酢酸塩のみに限定されるものではない。事実、前記方法を、酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸鉄、酢酸マンガン、及び酢酸アンチモンなど、公知の技術の触媒などの解重合触媒として効率的に作用可能な任意の酢酸金属塩の存在下、グリコール分解によるPET含有材料の解重合において有利に利用することができる。
【0033】
したがって、第一の態様によれば、本発明は、モノエチレングリコール(EG)を用いたグリコール分解(glycolysis)による、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む材料の解重合方法であって、少なくとも1種類の触媒の存在下、PETを含む材料をEGと反応させてビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)及び/又はそのオリゴマーを含むグリコール分解産物(glycolized product)を得ることを含み、前記触媒は、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、及びこれらの混合物から選択される金属の酢酸塩を含む、方法に関する。
【0034】
第二の態様によれば、本発明は、エチレングリコール(EG)を用いたグリコール分解による、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含む材料の解重合方法であって、金属の酢酸塩を含む少なくとも1種類の触媒の存在下、PETをEGと反応させてビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)及び/又はそのオリゴマーを含むグリコール分解産物を得ることを含み、前記触媒は、酢酸と前記金属を含む化合物との反応によりin situで得られる、方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】実施例1~実施例3の解重合反応の総収率の時間依存傾向を示す図である。
【
図2】実施例4及び実施例5の解重合反応の総収率の時間依存傾向を示す図である。
【
図3】実施例6及び実施例7の解重合反応の総収率の時間依存傾向を示す図である。
【
図4】実施例8の解重合反応の総収率の時間依存傾向を示す図である。
【
図5】実施例9~実施例10の解重合反応の総収率の時間依存傾向を示す図である。
【
図6】実施例13と比較した実施例12の解重合反応の総収率の時間依存傾向を示す図である。
【
図7】実施例14の解重合反応の総収率の時間依存傾向を示す図である。
【
図8】実施例3と比較した、実施例15の解重合反応の総収率の時間依存傾向を示す図で図である。
【
図9】実施例5と比較した、実施例16の解重合反応の総収率の時間依存傾向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
総じて、本発明による解重合方法に供給されるPETを含む材料は、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上の量のPETを含む任意の材料であってよい。前記材料は、混入物、すなわち、PET以外の化合物を、40重量%以下の量、好ましくは30重量%以下の量、さらに好ましくは20重量%以下の量で含んでよい。
【0037】
回収された廃棄物由来のPET含有材料中に通常存在する混入物の例は、染料、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン)、ゴムラテックス、ポリアミド、ポリビニルアルコール(EVOH)、ポリ酢酸ビニル(EVA)、UV吸収剤;フィラー(例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、カーボンブラック、シリカ)、金属粒子(例えば、アルミニウム)、及び物品の使用に由来する他の混入物である。
【0038】
好ましくは、PETを含む材料は、例えば、以下のような多種多様な製品由来であってもよい、ポストコンシューマ(post-consumer)PET廃棄物及び/又は産業(post-industrial)PET廃棄物を含む。
・食品製品(例えば、水、及びソフトドリンクなど)用の透明及び/又は着色PETボトル;
・PET層が他のポリマー材料又は金属材料の層と結合された、通常は食品産業用である、多層PET物品;
・織物及びカーペットなどのPET繊維を含む物品。
【0039】
特に好ましい実施形態では、解重合された材料は、PETを含むポストコンシューマ廃棄物(post-consumer waste)及び/又は産業スクラップ(post-industrial scrap)を含む、好ましくはPETを含むポストコンシューマカーペット廃棄物を含む。
【0040】
PETを含む材料を、細粒(granules)、フレーク、繊維、又はフラフ(fluff)の形態で解重合方法に供給することができる。
【0041】
解重合触媒は、反応混合物中に存在するPETを解重合するために効果的な量で、反応混合物中に存在する。好ましくは、触媒は、解重合される材料中に含まれるPETの重量に対して、0.1重量%~5重量%の範囲、より好ましくは0.4重量%~2.0重量%の範囲の量で反応混合物中に存在する。
【0042】
好ましくは、触媒は、1kg(PET+EG)当たり、5mmol超の触媒、より好ましくは15mmol超の触媒、さらに好ましくは20mmol超の触媒、例えば、20~50mmolの範囲の触媒の割合で反応混合物中に存在し、「PET+EG」は、PETを含む材料中に存在するEG及びPETの総重量である。
【0043】
上述のように、触媒を実験施設内で調製し、それ自体を反応混合物に添加することができ、又は酢酸、及び前記酢酸と金属の酢酸塩を生成することができる少なくとも1種類の金属を含む化合物のin situ反応により触媒を調製することができる。
【0044】
本明細書では、「金属の酢酸塩」との表現は、混合塩、すなわち、酢酸アニオン(以後「Ac」とも呼ぶ)に加えて、酢酸イオン以外の1又は複数の対イオンが存在する金属の塩も含む。混合塩の例は、炭酸水素カルシウムの酢酸塩(calcium bicarbonate acetate)(以下、Ca(HCO3)Acとも呼ぶ)であり、これは、適切な化学量論比での酢酸と炭酸カルシウムとの反応から得ることができる。
【0045】
好ましくは、金属を含む化合物は、酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、塩化物、及びこれらの混合物から選択される。
【0046】
好ましくは、金属を含む化合物は、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三塩化アルミニウムから選択される。
【0047】
上述のように、触媒をin situで調製する場合、酢酸Ca、酢酸Mg、及び酢酸Al以外の酢酸塩を含んでよい。そのような場合、金属を含む化合物は、亜鉛、鉄、マンガン、アンチモン、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種類の金属を含み、前述の化合物は、酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、又は塩化物の形態である。
【0048】
in situ触媒を生成するために必要な試薬を、EG、又はEGとPETを含む材料とを含む混合物に、一緒に又は別々に添加することができる。
【0049】
好ましい実施形態では、PETを含む材料は、触媒的に有効な量、すなわち、酢酸と反応させることにより解重合反応を触媒可能な酢酸塩を提供するのに十分な量で金属を含む化合物をさらに含む。金属を含む化合物の濃度が、触媒的に有効な量で金属酢酸塩を得るのに十分でない場合、意図的に、金属化合物を反応混合物に添加することができる。
【0050】
好ましくは、酢酸は、PETを含む材料に対して、0.01重量%~5重量%の範囲、より好ましくは0.03重量%~1.5重量%の範囲、さらに好ましくは0.1重量%~1重量%の範囲の量で、反応混合物に添加される。
【0051】
好ましくは、金属を含む化合物は、PETを含む材料に対して、0.01重量%~5重量%の範囲、より好ましくは0.02重量%~1.8重量%の範囲、さらに好ましくは0.06重量%~1.2重量%の範囲の量で、反応混合物に添加される。
【0052】
好ましくは、酢酸と金属化合物とのモル比は、1:1~1:10の範囲である。
【0053】
本出願人は、金属酢酸塩生成反応は、対応するエチレングリコールモノ酢酸ポリエステル(EGMA)又はエチレングリコールジ酢酸ポリエステル(EGDA)の生成を伴う、酢酸とEGとの反応と競合し、したがって、酢酸塩触媒生成反応の収率に影響する可能性があることに注目した。しかしながら、このことは、適切な条件下で、EG、又はEGとPETとの混合物に、酢酸及び金属化合物を添加することにより、克服され得ることが分かった。具体的には、好ましくは20℃~70℃、より好ましくは20℃~50℃、さらに好ましくは20℃~40℃の範囲の比較的低い温度で、酢酸及び金属化合物を、EG、及び場合によりPETを含む材料と最初に混合し、次いで、混合物の温度を解重合反応のために選択された温度まで上昇させることにより進行させることが好ましい。いずれもの特定の理論を参照するまでもなく、低温において、触媒生成反応は、EGMAエステル及びEGDAエステルの生成より有利であり、金属酢酸塩が一旦生成されれば、反応混合物の温度を、EGMAエステル及びEGDAエステルの生成をもたらすことなく解重合温度まで上昇させることができる。
【0054】
解重合されるPETを含む材料中に金属化合物が含まれる場合、好ましくは低温において、EG及び酢酸に後者も添加される。
【0055】
特に、ある実施形態では、in situ触媒生成を含む解重合方法は、
a.20℃~70℃、好ましくは20℃~50℃の範囲内の温度で、酢酸、金属を含む化合物、及びEGを混合すること;
b.工程aにおいて得られた混合物を、170℃~230℃の範囲内の温度まで加熱すること;並びに
c.工程bにおいて得られた混合物に、PETを含む材料を供給して、グリコール分解産物を得ること
を含む。
【0056】
PETを含む材料が、酢酸との反応による触媒のin situ生成のための前駆体として作用する1又は複数の金属化合物をさらに含む場合、触媒のin situでの調製は特に有用である。実際、材料の金属含有率を決定し、続いて、反応混合物中に酢酸を添加することが可能である。PETを含む材料中に金属化合物が比較的大量に存在する場合、常時、金属化合物のほんの一部を転換し、必要な量の触媒を生成するのに十分な酢酸を添加することが可能である。次いで、混入物として存在する金属化合物の残部は、グリコール分解産物の精製工程において除去される。これは、特に、通常、少なくとも3重量%~5重量%の炭酸カルシウム及び/又は水酸化アルミニウムを含む回収されたカーペット(フラフ)由来のリサイクルPETの場合に当てはまる。
【0057】
特に、ある実施形態では、in situ触媒生成を用いる解重合方法は、
a.20℃~70℃、好ましくは20℃~50℃の範囲内の温度で、EG、酢酸、及び前記PETを含む材料、並びに前記金属を含む化合物を混合すること;
b.工程aにおいて得られた混合物を、170℃~230℃の範囲内の温度まで加熱して、反応を起こさせてグリコール分解産物を得ること
を含む。
【0058】
好ましくは、グリコール分解反応を、170℃~230℃の範囲、より好ましくは190℃~210℃の範囲の温度で行う。反応混合物の加熱は、マイクロ波照射によって行われるものではない。
【0059】
ある実施形態では、触媒が酢酸マグネシウムを含む場合、反応混合物の加熱は、マイクロ波照射によって行われるものではない。
【0060】
グリコール分解反応では、好ましくは、1:1~8:1の範囲、より好ましくは1:1~4:1の範囲、さらに好ましくは1:1~2:1の範囲のEG:PETmの重量比で、EGが使用され、PETmはPETを含む材料を示す。
【0061】
グリコール分解反応の期間は、温度、撹拌、及び反応器の種類などの反応条件に応じて広範囲に変わり得る。通常、反応時間は、1時間~6時間、好ましくは1.5時間~4時間である。反応を、バッチ式方法又は連続式方法で行うことができる。反応圧は、通常、大気圧であるが、減圧又は加圧を使用してもよい。
【0062】
グリコール分解反応は、BHET及び/又はそのオリゴマーを含むグリコール分解産物の精製をもたらす。解重合の終わりに、通常、グリコール分解産物は、未反応のPET及び他の解重合産物(例えば、水、EGに不溶性の混入物など)を含む材料の残留画分も含んでいる。
【0063】
BHET及び/又はそのオリゴマーを、グリコール分解産物から分離し、蒸留、濾過、及び結晶化などの公知の技術の適切な技術を用いて精製することができる。
【0064】
本明細書に記載される方法により得られるBHET及び/又はそのオリゴマーを、ポリエステル重合体及び共重合体の新たな製造方法において原料として使用することができる。例えば、これらを重合して、リサイクルBHETのみから、又はバージン原料から作製されたBHETと組合せて、PETを製造することができる。
【0065】
本明細書に記載される方法を、ポリマー、具体的にはポリエステルの製造のための、当技術分野において公知の機器及び装置を用いて行うことができる。
【0066】
有利に、解重合反応を、in situ触媒生成のために液体酢酸及び固体化合物を添加するための適切な注入口を備えた耐酸性ステンレス鋼反応器内で行うことができる。反応器は、所望の温度まで反応混合物を加熱して撹拌を保持するための加熱手段及び混合手段を備え得る。
【実施例】
【0067】
以下の実施例は、本発明を単に例証する目的のために提供され、付属のクレームにより定義される保護範囲を限定するとみなされるべきでない。
【0068】
実施例では、実施例1~実施例14のグリコール分解反応の総収率の時間依存傾向を図示する、添付の
図1~
図7を参照する。
【0069】
実施例
1.解重合試験
本明細書による方法の効率を、異なる種類のPETを含む廃棄物の一連の触媒解重合試験により検証した。解重合試験を、以下のように行った。
【0070】
グリコール分解反応を、1リットル丸底パイレックスガラス製反応フラスコ内で行った。フラスコを、加熱マントル(イソマントル)により加熱する。反応フラスコは以下の機能を有する4つの口(neck)を備える。
・反応中の液体混合物の温度を検出するために熱電温度計が1つ目の口に挿入され、温度設定ポイントは加熱マントルによりデジタルで設定され得る。
・反応中に発生する蒸気を連続的に供給される冷水流により凝縮するために、還流冷却器が2つ目の口に挿入される。
・残りの2つの口は、モノエチレングリコール(EG)及びPETを含む材料を供給するために用いられ、解重合反応中、これらの2つの口を、2つのすりガラス栓により閉じたままにする。
【0071】
反応混合物を、PTFE磁気撹拌ロッドを用いてマグネティックスターラーにより撹拌を続け、前記撹拌ロッドの回転速度はイソマントルによりデジタルで設定することができる。反応温度及び回転速度を、それぞれ、195℃及び1400rpmに設定した。
【0072】
EG及び(実験施設内で調製した場合)触媒を、反応フラスコに最初に投入する。次いで、生じた蒸気をバブル冷却器により再凝縮しながら、撹拌下で維持した混合物を反応温度まで加熱する。グリコールと触媒との混合物が反応温度に達した時点で、110℃まで予備加熱されたPETを含む材料(以後、単に「PET」とも呼ぶ)をフラスコに導入する。
【0073】
反応フラスコへのPETの投入が始まる瞬間を、反応開始「時間0」(t0)とする。t0で開始して、グリコール分解流体のサンプルを、ガラス製パスツールピペットを用いて一定の間隔で採取し、次いで、冷水で冷却されたバイアルに液体を移して反応進行を停止し、次いで、HPLCにより分析してBHET及びそのオリゴマーの含有率を決定する。
【0074】
グリコール中へのPETの完全溶解が観察される時間も注記する。
【0075】
グリコール分解の終わりに、フラスコの内容物を取り出し、液体を最終過程のHPLC分析に付す。
【0076】
2.実施例1~実施例3(比較) 触媒:酢酸亜鉛(ZnAc2)
ポイント1に記載される手順に従って、細粒化されたPETの解重合を、酢酸亜鉛の存在下行い、異なる濃度で触媒を添加した。使用されたPETは、実質的に純粋な形態(純度約100%)であった。反応混合物の組成を、異なる反応時間で採取された反応液の分析結果と共に表1~表3に示す。
【0077】
EG/PETの重量比及び触媒/PETの重量比は、それぞれ、PETを含む材料に対する、EGの重量比及び触媒の重量比を表す。
【0078】
パラメータ「BHET収率」、(BHETの)「二量体収率」、及び「総収率」は、それぞれ、PETを含む材料の重量に対する、BHETの量の比、BHTの二量体の量の比、及び合計「BHET+二量体」の量の比を表し、モル/モル(%)として表される。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
3.実施例4~実施例5 触媒:酢酸カルシウム(CaAc2)
ポイント1に記載される方法に従って、細粒状のPET(純度100%)を、投入されたPETの1重量%及び3重量%で添加された酢酸カルシウムの存在下で解重合した。
【0084】
反応混合物の組成を、異なる反応時間で採取された反応液の分析結果と共に表4~表5に示す。
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
実施例1~実施例3の結果と実施例4~実施例5の結果の比較は、CaAc2触媒は、ZnAc2と同様の効率を有し、同じ重量の触媒のZnAc2より速い解重合反応速度を有することを示す。
【0089】
4.実施例6~実施例7
PETを含む材料の物理的形態は、解重合反応の程度にも影響を与える可能性があるので、紡糸廃棄物(純度約97.5%)からなるPETを含む廃棄物を供給し、触媒としてZnAc2及びCaAc2を用いることにより、工程1に記載される手順を行った。
【0090】
反応混合物の組成を、異なる反応時間で採取された反応液の分析結果と共に表6~表7に示す。
【0091】
【0092】
【0093】
図3は、実施例6及び実施例7の解重合反応の総収率の時間依存傾向を示す。
【0094】
これらの実施例では2つの異なる重量添加量を比較するが、これらは、同じモル添加量(約5.5mmolの触媒)に相当することが分かる。
【0095】
図3におけるグラフの比較は、CaAc
2が、低重量濃度であっても、従来のZnAc
2の結果とほぼ同様の結果を達成する解重合触媒であることを示す。CaAc
2の存在下の反応は、ZnAc
2を用いる場合より速く完了する。
【0096】
5.実施例8~実施例10 触媒:酢酸カルシウム(CaAc2)
CaAc2触媒の効率を、カーペット回収(フラフ)からのPET廃棄物の解重合反応において試験した。使用されたフラフは、80重量%のPET含有率を有していた。
【0097】
ポイント1に記載される方法を、触媒としてCaAc2を含む反応混合物にフラフを供給することにより行った。
【0098】
フラフを供給する試験では、グリコール分解反応の終わりに、195℃における反応混合物は、黄褐色の外観を有する懸濁固形物の画分を依然として有しており、懸濁固形物は、反応混合物の熱時濾過(約190℃)により除去された。投入されたフラフの重量の約10%~15%に達する、濾過により分離された不溶性残渣を、DSC、TGA、及びFT-IRにより分析した。分析により、ポリプロピレン、接着剤、及び炭酸カルシウムを含む他の無機物質の混合物の存在が明らかになった。
【0099】
反応混合物の組成を、異なる反応時間で採取された反応液の分析結果と共に表8~表10に示す。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
図4は、実施例8の解重合反応の総収率の時間依存傾向を示し、
図5は、実施例9~実施例10の反応の総収率の時間依存傾向を示す。
【0104】
実施例9及び実施例10は、比較的低いCaAc2触媒濃度及びEG/PET比で操作する場合であっても、ZnAc2などの公知技術のグリコール分解方法において使用される触媒と同様のPETのBHET及びオリゴマーへの変換収率が、より高いEG/PET比で得られる。
【0105】
6.実施例11~実施例12 触媒:酢酸及びin situで生成された炭酸水素カルシウムの酢酸塩(Ca(HCO3)Ac)
ポイント1に記載される手順に従って、以下の解重合試験を行った。実施例11(比較)では、解重合試験を、実質的に混入物を含まない繊維形態のPET(純度約97.5%)を用いて行った。解重合触媒としての効果の可能性を試験するため、反応混合物に酢酸のみを添加した。酢酸を30℃でEGに添加し、次いで、混合物を195℃まで加熱し、還流下で維持した。この温度で、PET繊維を添加した。3時間の反応後、繊維の溶解は観察されず、反応混合物液のHPLC分析はBHETの存在を検出しなかった。
【0106】
実施例12を実施例11と同じ条件下で行ったが、等モルのCaCO3及び酢酸を30℃でEGに添加した。次いで、混合物を195℃まで加熱し、これを還流下で維持し、PET繊維を添加した。線維が完全に溶解されるまで反応を継続した。したがって、表11に示されるデータは、活性な当量の触媒Ca(HCO3)Acが、PET繊維の重量に対して2.66重量%の濃度において反応混合物中で生成されたことを実証する。
【0107】
【0108】
図6は、実施例13と比較した実施例12の解重合反応の総収率の時間依存傾向を示す。
【0109】
7.実施例13 触媒:酢酸及びin situで生成された炭酸水素カルシウムの酢酸塩(Ca(HCO3)Ac)
実施例13を、実施例12と同じ条件下で行ったが、酢酸及びPETフラフを30℃でEGに添加し、PETフラフ(純度80%)に含まれるCaCO3を用いた。フラフ中のCaCO3含有率は、フラフの重量に対して約5重量%であった。
【0110】
反応混合物の組成を、異なる反応時間で採取された反応液の分析結果と共に表12に示す。
【0111】
【0112】
図6は、実施例13の解重合反応の総収率の時間依存傾向を示す。結果は、実施例13のPETグリコール分解法は実施例12と同様な程度まで行われることを示し、リサイクルされたPETを含む材料中の混入物として存在する金属化合物を利用することにより、効果的な解重合触媒をin situ調製することが可能であることが確認された。
【0113】
8.実施例14 触媒:酢酸マグネシウム(MgAc2)
ポイント1に記載される方法に従って、細粒状のPET(純度100%)を、投入されたPETの重量に対して0.45重量%のMgAc2で添加された酢酸マグネシウムを用いて解重合した。
【0114】
反応混合物の組成を、異なる反応時間で採取された反応液の分析結果と共に表13に示す。
【0115】
【0116】
図7は、実施例14の解重合反応の総収率の時間依存傾向を示す。結果は、酢酸マグネシウムもまた、PET解重合において効果的な触媒であることを示す。
【0117】
9.実施例15~実施例18 in situで生成される他の触媒
実施例15~実施例18を、実施例12と同じ条件下で行い、それぞれ、
実施例15では、2:1のモル比の酢酸及び炭酸亜鉛、
実施例16では、2:1のモル比の酢酸及び酸化カルシウム、
実施例17では、2:1のモル比の酢酸及び水酸化マグネシウム、
実施例18では、3:1のモル比の酢酸及び水酸化アルミニウム
を30℃でEGに添加した。
【0118】
次いで、いずれの場合も、混合物を195℃まで加熱し、これを還流下で維持し、PET細粒を添加した。
【0119】
反応混合物の組成を、異なる反応時間で採取された反応液の分析結果と共に表14~表17に示す
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
図8及び
図9は、それぞれ、実施例3及び実施例5と比較した、実施例15及び実施例16の解重合反応の総収率の時間依存傾向を示し、同じ触媒を実験施設内で調製し、次いで、反応混合物に添加した。結果は、in situで生成された触媒は、実験施設内で製造されたものと同様に効果的であることを示す。
【0125】
10.実施例19~実施例20 EGの蒸発及び結晶化によるBHETの回収
それぞれ、実施例12及び実施例13と同じ方法を用いて、実施例19及び実施例20においては、BHET及び二量体を分離して、PETへの重合を可能とする材料を得ることに焦点を当てた。
【0126】
この第一工程では、グリコール分解残渣を濾過して、未変換PET及び他の不純物をグリコール分解材料から分離した。濾過生成物中のグリコールの一部を、真空下でフラッシュ蒸発により蒸発させる。
【0127】
この時点において、大過剰の水(4倍重量のグリコール)を添加して生成物を沈殿させた。次いで、後者を再度濾過し、水で洗浄し、最終的に乾燥した。
【0128】
次いで、得られた材料を、HPLC、FT-IR、DSC、及びNMRにより分析し、BHET及びその二量体であることが確認された。
【0129】
表18に示されるように、分離された生成物の特性(COOH基及びジエチレングリコール(DEG)の含有率、融点)は、重合される材料に通常必要とされる特性と一致する。
【0130】
【国際調査報告】