(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】新規なビフィドバクテリウム・ロンガム菌株及びこの用途
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20240521BHJP
C12N 5/077 20100101ALI20240521BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240521BHJP
A61K 35/745 20150101ALI20240521BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240521BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20240521BHJP
A61Q 19/06 20060101ALI20240521BHJP
A23K 10/18 20160101ALI20240521BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
C12N1/20 E
C12N5/077
A23L33/135
A61K35/745
A61P3/04
A61K8/99
A61Q19/06
A23K10/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570106
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 KR2021015958
(87)【国際公開番号】W WO2022239916
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2021-0061960
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523427375
【氏名又は名称】ビーティージン カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン-シク
(72)【発明者】
【氏名】エムディー.シャミン ラマン
(72)【発明者】
【氏名】カン インソク
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B065
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
2B150AB10
2B150AC08
2B150BB01
4B018MD86
4B018ME01
4B018MF01
4B065AA21X
4B065AA90X
4B065BA22
4B065BB19
4B065BB28
4B065BB34
4B065BB37
4B065BC03
4B065BC05
4B065BC07
4B065BC11
4B065BD16
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA44
4B065CA50
4C083AA031
4C083AA032
4C083CC01
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC07
4C083EE50
4C083FF01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC59
4C087CA10
4C087CA11
4C087MA52
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA70
(57)【要約】
本発明は、新規なビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)菌株及びこの用途に関し、より詳細には、抗肥満活性を有する新規なビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株及び前記菌株の培養物を含む抗肥満用途の薬学組成物、健康機能食品、化粧料組成物、飼料組成物及び試薬組成物等に関する。本発明の寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株培養物は、脂肪前駆細胞が脂肪細胞へと脂肪細胞化する成熟化過程を抑える効果があることから、これを抗肥満の薬学組成物、健康機能食品、化粧料組成物、飼料組成物及び試薬組成物等の用途に適用することができ、さらに、脂肪前駆細胞に本発明の菌株培養物を処理する場合、脂肪細胞への成熟化を抑えることができるので、肥満等の関連治療剤の開発・研究にも積極的に活用できることが見込まれる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株。
【請求項2】
寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を有効成分として含有する、肥満(obesity)の予防又は治療用の薬学的組成物。
【請求項3】
前記培養物は、培養液、培養濃縮液、培養液乾燥物、培養液抽出物、培養上澄み液、培養上澄み濃縮液、培養上澄み液乾燥物及び培養上澄み液抽出物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を含む、肥満(obesity)の予防又は改善用の健康機能食品。
【請求項5】
前記培養物は、培養液、培養濃縮液、培養液乾燥物、培養液抽出物、培養上澄み液、培養上澄み濃縮液、培養上澄み液乾燥物及び培養上澄み液抽出物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の健康機能食品。
【請求項6】
寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を含む、スリーミング(slimming)用の化粧料組成物。
【請求項7】
前記培養物は、培養液、培養濃縮液、培養液乾燥物、培養液抽出物、培養上澄み液、培養上澄み濃縮液、培養上澄み液乾燥物及び培養上澄み液抽出物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の化粧料組成物。
【請求項8】
前記化粧料組成物は、ローション、化粧水、クリーム、エッセンス、フォーム及びパックからなる群から選択される剤形であることを特徴とする、請求項6に記載の化粧料組成物。
【請求項9】
寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を含む、肥満(obesity)の予防又は改善用の飼料組成物。
【請求項10】
前記培養物は、培養液、培養濃縮液、培養液乾燥物、培養液抽出物、培養上澄み液、培養上澄み濃縮液、培養上澄み液乾燥物及び培養上澄み液抽出物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の飼料組成物。
【請求項11】
寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を含む、脂肪前駆細胞(pre-adipocyte)の脂肪細胞(adipocyte)への成熟化の抑制用の試薬組成物。
【請求項12】
前記培養物は、培養液、培養濃縮液、培養液乾燥物、培養液抽出物、培養上澄み液、培養上澄み濃縮液、培養上澄み液乾燥物及び培養上澄み液抽出物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項11に記載の試薬組成物。
【請求項13】
分離された脂肪前駆細胞(pre-adipocyte)に寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を処理することを含む、脂肪前駆細胞の脂肪細胞(adipocyte)への成熟化の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)菌株及びこの用途に関し、より詳細には、抗肥満活性を有する新規なビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株及び前記菌株の培養物を含む抗肥満用途の薬学組成物、健康機能食品、化粧料組成物、飼料組成物及び試薬組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪組織(adipose tissue)は、全身性恒常性(systemic homeostasis)の保持に中枢的な組織であって、白色脂肪組織(white adipose tissue)の過剰な蓄積は、肥満(obesity)を引き起こす。未成熟の脂肪前駆細胞(pre-adipocyte)から脂肪細胞への転換過程を脂質生成(adipogenesis)と称し、このような脂質生成は、ホルモンシグナル及び様々な転写因子(transcriptional factor)をはじめとする色々な因子によって調節される。
【0003】
脂質生成の初期の段階において、脂質生成ホルモン刺激は、Wnt/β-カテニンシグナル伝達の抑制とともに、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)-β及び-δのような初期の転写因子の発現を誘導する上で必要である。その結果、このような初期の遺伝子の発現の後、中期の脂質生成刺激がマスターレギュレーターであるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)及びC/EBPαを刺激し、最終的な分化及び脂肪細胞の形成に必要とされるアディポネクチン及び脂肪酸結合タンパク質4(FABP4)の発現につながる。
【0004】
一方、大韓民国公開特許第10-2019-0118985号公報においては、ビフィドバクテリウム・ロンガム菌株の抗肥満効果として脂肪細胞の分化抑制活性を開示しているが、菌株培養物の処理によってベージュ脂肪細胞及び褐色脂肪細胞に特異的な遺伝子の発現が非処理コントロール(対照群)に比べて格段に増加するということを開示しているが、これは、白色脂肪細胞の褐色脂肪化に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】大韓民国公開特許第10-2019-0118985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、脂肪前駆細胞の脂肪細胞への成熟化を抑える新規なビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)菌株を提供することである。
【0007】
また、本発明が解決しようとする課題は、前記菌株培養物を含む抗肥満用途の薬学組成物、健康機能食品、化粧料組成物、飼料組成物及び試薬組成物等を提供することである。
【0008】
さらに、本発明が解決しようとする課題は、前記菌株培養物を分離された脂肪前駆細胞に処理して脂肪細胞への成熟化を抑える方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような諸課題を解決するために、本発明は、寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株を提供する。
【0010】
また、本発明は、寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を有効成分として含有する肥満(obesity)の予防又は治療用の薬学的組成物を提供する。
【0011】
前記培養物は、培養液、培養濃縮液、培養液乾燥物、培養液抽出物、培養上澄み液、培養上澄み濃縮液、培養上澄み液乾燥物及び培養上澄み液抽出物からなる群から選択されることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明は、寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を含む肥満(obesity)の予防又は改善用の健康機能食品を提供する。
【0013】
前記培養物は、培養液、培養濃縮液、培養液乾燥物、培養液抽出物、培養上澄み液、培養上澄み濃縮液、培養上澄み液乾燥物及び培養上澄み液抽出物からなる群から選択されることが好ましい。
【0014】
さらにまた、本発明は、寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を含むスリーミング(slimming)用の化粧料組成物を提供する。
【0015】
前記培養物は、培養液、培養濃縮液、培養液乾燥物、培養液抽出物、培養上澄み液、培養上澄み濃縮液、培養上澄み液乾燥物及び培養上澄み液抽出物からなる群から選択されることが好ましい。
【0016】
前記化粧料組成物は、ローション、化粧水、クリーム、エッセンス、フォーム及びパックからなる群から選択される剤形であることが好ましい。
【0017】
さらにまた、本発明は、寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を含む肥満(obesity)の予防又は改善用の飼料組成物を提供する。
【0018】
前記培養物は、培養液、培養濃縮液、培養液乾燥物、培養液抽出物、培養上澄み液、培養上澄み濃縮液、培養上澄み液乾燥物及び培養上澄み液抽出物からなる群から選択されることが好ましい。
【0019】
さらにまた、本発明は、寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を含む脂肪前駆細胞(pre-adipocyte)の脂肪細胞(adipocyte)への成熟化の抑制用の試薬組成物を提供する。
【0020】
前記培養物は、培養液、培養濃縮液、培養液乾燥物、培養液抽出物、培養上澄み液、培養上澄み濃縮液、培養上澄み液乾燥物及び培養上澄み液抽出物からなる群から選択されることが好ましい。
【0021】
これらに加えて、本発明は、分離された脂肪前駆細胞(pre-adipocyte)に寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を処理することを含む脂肪前駆細胞の脂肪細胞(adipocyte)への成熟化の抑制方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株培養物は、脂肪前駆細胞が脂肪細胞へと脂肪細胞化する成熟化過程を抑える効果があることから、これを抗肥満の薬学組成物、健康機能食品、化粧料組成物、飼料組成物及び試薬組成物等の用途に適用することができ、さらに、脂肪前駆細胞に本発明の菌株培養物を処理する場合、脂肪細胞への成熟化を抑えることができるので、肥満等の関連治療剤の開発・研究にも積極的に活用できることが見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】優れた抗肥満活性を有する本発明の寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株のスクリーニング過程を模式図として示したものである。
【
図2】本発明の寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を様々な濃度にて24、48及び72時間をかけて処理した細胞の増殖をMTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム臭化物)にて評価した結果を示すものである。
【
図3】脂肪前駆細胞に本発明の寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を様々な濃度にて処理した後、細胞内の中性脂肪の蓄積をオイルレッドO(ORO)染色により評価した結果である。結果は、平均±SEM(n=3)で表わされ、重要な差は、(***)P<0.001,(**)P<0.01,(*)P<0.05として提示された。ここで、PA:Pre-adipocytes(脂肪前駆細胞)、MDI:Methylisobutylxanthine-Dexamethasone-Insulin(メチルイソブチルキサンチン-デキサメタゾン-インスリン)、Rosi:Rosiglitazone(ロシグリタゾン)、MRS:MRS培地、YB:B.longum subsp.Infantis YB0411 cultural supernatant(ビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティスYB0411培養上澄み液)をそれぞれ示す。
【
図4】本発明の寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を処理した後、脂肪前駆細胞の脂質生成(adipogenesis)の初期及び後期の段階マーカーCebp/β、Cebp/α、Cebp/δ、Pparγ、aP2及びadiponectin(アディポネクチン)のmRNAの発現様相を示す。結果は、平均±SEM(n=3)で表わされ、重要な差は、(***)P<0.001,(**)P<0.01,(*)P<0.05として提示された。ここで、PA:Pre-adipocytes(脂肪前駆細胞)、MDI:Methylisobutylxanthine-Dexamethasone-Insulin(メチルイソブチルキサンチン-デキサメタゾン-インスリン)、Rosi:Rosiglitazone(ロシグリタゾン)、MRS:MRS培地、YB:B.longum subsp.Infantis YB0411 cultural supernatant(ビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティスYB0411培養上澄み液)をそれぞれ示す。
【
図5】本発明の寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を様々な濃度にて処理した後、脂肪前駆細胞の脂質生成(adipogenesis)マーカーCEBP/α、CEBP/β、PPARγ、AP2及びSIRT1のタンパク質の発現様相を示す。結果は、平均±SEM(n=3)で表わされ、重要な差は、(***)P<0.001,(**)P<0.01,(*)P<0.05として提示された。ここで、PA:Pre-adipocytes(脂肪前駆細胞)、MDI:Methylisobutylxanthine-Dexamethasone-Insulin(メチルイソブチルキサンチン-デキサメタゾン-インスリン)、Rosi:Rosiglitazone(ロシグリタゾン)、MRS:MRS培地、YB:B.longum subsp.Infantis YB0411 cultural supernatant(ビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティスYB0411培養上澄み液)をそれぞれ示す。
【
図6】本発明の寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を処理した後のCEBP/βのタンパク質発現免疫蛍光画像(倍率=260X)を示す。
【
図7】本発明の寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を処理した後のPPARγのタンパク質発現免疫蛍光画像(倍率=360X)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を詳述する。
【0025】
本発明の発明者らは、新規な肥満治療剤の開発のために様々な乳酸菌培養液から抗肥満効果を検定し、寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物において、脂肪前駆細胞(pre-adipocytes)の脂肪細胞(adipocytes)への成熟化の抑制活性があることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0026】
したがって、本発明は、寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株を提供する。
【0027】
本発明の前記新規なビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株は、2020年11月30日付けで韓国生命工学研究院生物資源センター(Korean Collection for Type Cultures, Korea Research Institute of Bioscience and Biotechnology)に受託番号KCTC14393BPをもって寄託された。
【0028】
本発明の寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物は、脂肪前駆細胞の脂肪細胞への成熟化過程を抑える効果があるので、抗肥満の用途として適用可能である。
【0029】
具体的には、本発明の寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物(1μl/ml又は5μl/ml)は、脂肪前駆細胞に24~72時間をかけて処理する場合であっても、細胞毒性を示さなかった。
【0030】
また、本発明の寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物(1μl/ml又は5μl/ml)をMDIと同時に脂肪前駆細胞に処理する場合、細胞内の中性脂肪の蓄積がほとんど現れないことを確認した。
【0031】
さらに、本発明の寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を脂肪前駆細胞に処理すれば、脂質生成(adipogenesis)の初期及び後期の段階マーカーCebp/β、Cebp/α、Cebp/δ、Pparγ、aP2及びadiponectin(アディポネクチン)のmRNA発現が格段に減ることを確認した。
【0032】
さらにまた、本発明の寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を脂肪前駆細胞に処理すれば、脂質生成(adipogenesis)マーカーCEBP/α、CEBP/β、PPARγ、AP2及びSIRT1のタンパク質の発現が格段に減ることを確認した。
【0033】
したがって、本発明は、寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を有効成分として含有する肥満(obesity)の予防又は治療用の薬学的組成物を提供する。
【0034】
前記培養物は、培養液、培養濃縮液、培養液乾燥物、培養液抽出物、培養上澄み液、培養上澄み濃縮液、培養上澄み液乾燥物及び培養上澄み液抽出物からなる群から選択されることが好ましい。
【0035】
本発明の寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を含む薬学的組成物は、それぞれの使用目的に合うように、通常の方法に従って、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁剤、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口剤形、滅菌注射溶液の注射剤など多種多様な形態に剤形化して使用可能であり、経口投与してもよく、静脈内、腹腔内、皮下、直腸、局所投与などをはじめとする多種多様な経路を介して投与可能である。
【0036】
このような薬学的組成物には、担体、賦形剤又は希釈剤などがさらに含まれ得る。含まれ得る好適な担体、賦形剤又は希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスファート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、非晶質セルロース、ポリビニールピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油などが挙げられる。また、本発明の薬学的組成物は、充填剤、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などをさらに含んでいてもよい。
【0037】
好ましい態様として、経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記薬学的組成物に少なくとも1種以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混合して剤形化する。また、単なる賦形剤に加えて、マグネシウムステアレート、タルクなどの潤滑剤が用いられることも可能である。
【0038】
好ましい態様として、経口用の液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが挙げられ、頻繁に用いられる単なる希釈剤である水、液体パラフィンに加えて、色々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘未剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。
【0039】
好ましい態様として、非経口投与のための製剤としては、滅菌された水溶液剤、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤、坐剤などが挙げられる。非水性溶剤、懸濁剤には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物性油、エチルオレートなどの注射可能なエステルなどが含まれ得る。注射剤には、溶解剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤、防腐剤などの従来の添加剤が含まれ得る。
【0040】
本発明の寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物は、薬剤学的に有効な量で投与する。本発明において、「薬剤学的に有効な量」は、医学的な治療に適用可能なリーズナブルな恵み/リスクの比率で疾患を治療する上で十分な量を意味し、有効容量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物への敏感度、投与時間、投与経路及び排出割合、治療期間、同時に用いられる薬物をはじめとする要素及びその他の医学分野における周知の要素によって決定可能である。本発明の薬学的組成物は、個別の治療剤として投与したり、他の治療剤と併用して投与したりしてもよく、従来の治療剤と順次に又は同時に投与してもよく、単一に又は多重に投与してもよい。上記の要素をいずれも考慮して、副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、これは、当業者により容易に決定可能である。
【0041】
好ましい態様として、本発明の薬学的組成物において、寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物の有効量は、患者の年齢、性別、体重に応じて異なり得、一般には、体重1kg当たりに1~5,000mg、好ましくは、100~3,000mgを毎日又は1日おきに投与してもよく、1日に1~3回にわけて投与してもよい。しかしながら、投与経路、疾病の重症度、性別、体重、年齢などに応じて増減可能であるため、前記投与量がいかなる方法によっても本発明の範囲を限定することはない。
【0042】
本発明の薬学的組成物は、様々な経路を介して対象に投与可能である。投与のあらゆる方式は予想可能であるが、例えば、経口、直腸又は静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜又は脳室内(intracerebroventricular)注射により投与可能である。
【0043】
本発明において、「投与」は、任意の適切な方法により患者に所定の物質を提供することを意味し、本発明の薬学的組成物の投与経路は、狙いの組織に辿り着ける限り、通常のあらゆる経路を介して経口又は非経口にて投与可能である。また、本発明の組成物は、有効成分を標的細胞に届けることが可能な任意の装置を用いて投与されてもよい。
【0044】
本発明において、「対象」は、特に限定されるものではないが、例えば、ヒト、猿、牛、馬、羊、豚、鶏、七面鳥、ウズラ、猫、犬、マウス、鼠、兎又はモルモットを網羅し、好ましくは、哺乳類、より好ましくは、ヒトを意味する。
【0045】
また、本発明は、寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を含む肥満(obesity)の予防又は改善用の健康機能食品を提供する。
【0046】
前記培養物は、培養液、培養濃縮液、培養液乾燥物、培養液抽出物、培養上澄み液、培養上澄み濃縮液、培養上澄み液乾燥物及び培養上澄み液抽出物からなる群から選択されることが好ましい。
【0047】
本発明の健康機能食品は、肥満の予防又は改善に効き目がある食品及び飲料などに様々に利用可能である。本発明の健康機能食品は、寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を含む。該食品としては、例えば、各種の食品類、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康補助食品類などが挙げられ、粉末、顆粒、錠剤、カプセル又は飲料の形で使用可能である。
【0048】
本発明の寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物は、一般に、食品の全重量の0.01~15重量%で加えることができ、健康飲料組成物は、100mlを基準として0.02~10g、好ましくは、0.3~1gの割合にて加えることができる。
【0049】
本発明の健康機能食品は、指示された割合にて必須成分として前記化合物を含有するものに加えて、食品学的に許容可能な食品補助添加剤、例えば、天然炭水化物及び各種の香味剤などを追加成分として含有していてもよい。
【0050】
前記天然炭水化物の例としては、ブドウ糖、果糖などの単糖類、マルトース、スクロースなどの二糖類及びデキストリン、シクロデキストリンなどの多糖類などの通常の糖及びキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールが挙げられる。
【0051】
前記香味剤としては、ソーマチン(タウマチン)、レバウジオシドA又はグリチルリチンのようなステビアなどの天然香味剤及びサッカリン、アスパルテームなどの合成香味剤が使用可能である。前記天然炭水化物の割合は、本発明の健康機能食品100ml当たりに、一般に、約1~20g、好ましくは、約5~12gを用いる。上記に加えて、本発明の健康機能食品は、色々な栄養剤、ビタミン、鉱物、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び充填剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤などを含有していてもよい。これらに加えて、本発明の健康機能食品は、天然果物ジュース及び果物ジュース飲料及び野菜飲料などの製造のための果肉を含有していてもよい。このような成分は、独立して又は組み合わせて使用可能である。このような添加剤の割合は、本発明のデルフィニジン及びこの薬学的に許容可能な塩の100重量部当たりに0.01~約20重量部の範囲において選択されることが一般的である。
【0052】
また、本発明は、寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を含むスリーミング(slimming)用の化粧料組成物を提供する。
【0053】
前記培養物は、培養液、培養濃縮液、培養液乾燥物、培養液抽出物、培養上澄み液、培養上澄み濃縮液、培養上澄み液乾燥物及び培養上澄み液抽出物からなる群から選択されることが好ましい。
【0054】
前記「スリーミング」は、身体の全体又は特定の部位の体積が減少する現象を意味し、例えば、身体の全体又は特定の部位の脂肪の除去又は減少であってもよい。
【0055】
本発明の化粧料組成物の有効成分は、組成物の全重量に対して、0.01~50重量%で含まれてもよく、好ましくは、0.1~20重量%、さらに好ましくは、1~10重量%である。このような含量の範囲内において適切な剤形安定性を確保することができ、狙いのスリーミング効果を期待することができる。
【0056】
本発明の前記組成物は、本発明の有効成分に加えて、本発明の有効活性を損なわない限りにおいて、抗酸化、抗老化、補湿、肌再生促進の効果のための公知の天然物抽出物やその他の成分をさらに含めて使用可能である。
【0057】
また、前記組成物は、通常化粧料組成物に添加される成分、例えば、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤、ゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型又は非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤及びキレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性又は親油性の活性剤などの化粧品学又は皮膚科学の分野において通常用いられる補助剤や担体を含んで特定の剤形に成形可能である。
【0058】
本発明の化粧料組成物は、当業界において通常製造されるいかなる剤形にも製造可能であり、例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、パック、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル及びスプレーなどに剤形化可能であるが、これらに何ら限定されるものではない。より具体的には、ローション、化粧水、柔軟化粧水、栄養化粧水、クリーム、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、粉末ファウンデーション、乳濁液ファウンデーション、ワックスファウンデーション、クレンジングクリーム、フォーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレー、パウダー、パクト、リップグロス、リップスティック、シャドウ、シャンプー及びリンスなどの剤形に製造可能である。
【0059】
本発明の剤形がペースト、クリーム又はゲルである場合には、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク又は酸化亜鉛などが使用可能である。
【0060】
本発明の剤形がパウダー又はスプレーである場合には、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート又はポリアミドパウダーが使用可能であり、特に、スプレーである場合には、さらにクロロフルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタン又はジメチルエーテルなどの推進体を含んでいてもよい。
【0061】
本発明の剤形が溶液又は乳濁液である場合には、担体成分として、溶媒、溶解化剤又は乳濁化剤が使用可能であり、例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール又はソルビタンの脂肪酸エステルが挙げられる。
【0062】
本発明の剤形が懸濁液である場合には、担体成分として、水、エタノール又はプロピレングリコールなどの液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルなどの懸濁剤、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガー又はトラカントなどが使用可能である。
【0063】
本発明の剤形が界面活性剤含有クレンジングである場合には、担体成分として、脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イセチオネート、イミダゾリウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体又はエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが使用可能である。
【0064】
また、本発明は、寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を含む肥満(obesity)の予防又は改善用の飼料組成物を提供する。
【0065】
前記培養物は、培養液、培養濃縮液、培養液乾燥物、培養液抽出物、培養上澄み液、培養上澄み濃縮液、培養上澄み液乾燥物及び培養上澄み液抽出物からなる群から選択されることが好ましい。
【0066】
本発明において、ターミノロジー「飼料」は、動物が食べて、摂取し、かつ消化させるための、又はこれらに適した任意の天然又は人工の規定食、1食など又は前記1食の成分を意味し得る。前記飼料の種類は、特に制限されるものではなく、当該技術分野において通常用いられる飼料が使用可能である。前記飼料の非制限的な例としては、穀物類、根果類、食品加工副産物類、藻類、繊維質類、製薬副産物類、油脂類、デンプン類、粕類又は穀物副産物類などの植物性飼料、タンパク質類、無機物類、油脂類、鉱物性類、油脂類、単細胞タンパク質類、動物性プランクトン類又は飲食物などの動物性飼料が挙げられる。これらは単独にて用いてもよいし、あるいは、2種以上を混合して用いてもよい。
【0067】
さらに、本発明は、寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を含む脂肪前駆細胞(pre-adipocyte)の脂肪細胞(adipocyte)への成熟化の抑制用の試薬組成物を提供する。
【0068】
前記培養物は、培養液、培養濃縮液、培養液乾燥物、培養液抽出物、培養上澄み液、培養上澄み濃縮液、培養上澄み液乾燥物及び培養上澄み液抽出物からなる群から選択されることが好ましい。
【0069】
前記試薬組成物は、例えば、研究用の試薬組成物として適用可能である。通常、実験室の条件下で本発明の試薬組成物を細胞又は実験動物に投与することができ、具体的な投与方法と安全規則などは、実験者の各実験室の内部遵守規定に従って行われることが好ましい。
【0070】
さらにまた、本発明は、分離された脂肪前駆細胞(pre-adipocyte)に寄託番号KCTC14393BPのビフィドバクテリウム・ロングム亜種インファンティス(Bifidobacterium longum subsp.Infantis)YB0411菌株の培養物を処理することを含む脂肪前駆細胞の脂肪細胞(adipocyte)への成熟化の抑制方法を提供する。
【0071】
前記脂肪前駆細胞は、個体から自然的又は人為的な方法により分離されたものを対象とする。個体から分離された前記細胞は、適切な培養条件下で数日から数週間をかけて培養されてもよく、場合によって、凍結保管されてもよい。
【0072】
分離された前記細胞に本発明の有効成分を投与する方法は、通常の技術者にとって自明な事項であり、好ましくは、本明細書中の下記の実施例に記載されているところに従うことができる筈である。
【0073】
以下では、具体的な実施例を挙げて本発明についてさらに詳しく説明する。下記の実施例は本発明の望ましい一態様を記載したものに過ぎず、下記の実施例に記載されている事項によって本発明の権利範囲が限られて解釈されるものではないということは明らかである。
【0074】
[実施例]
1.材料及び方法
1.1.ケミカル及び試薬
デキサメタゾン、イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)、インスリン、ロシグリタゾン(ROSI)、オイルレッドO染料、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム臭化物(MTT)及び4%ホルムアルデヒドは、シグマアルドリッチ社(アメリカ合衆国ミズーリ州セントルイス所在)から購入した。ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)及び新生子ウシ血清(NBCS)は、ギブコ社(アメリカ合衆国ニューヨーク州グランドアイランド所在)から購入した。ウシ胎児血清は、アトラスバイオロジカルス社(アメリカ合衆国コロラド州フォートコリンズ所在)から購入した。ペニシリンーストレプトマイシン溶液は、ハイクローン・ラボラトリーズ社(アメリカ合衆国ニューヨーク州サウスローガン所在)から購入した。C/EBPβ、C/EBPα、PPARγ、AP2及びSIRT1に対する抗体は、セルシグナリングテクノロジー(アメリカ合衆国マサチューセッツ州ダンバー所在)から購入した。β-アクチンに対する抗体は、アブカム社(アメリカ合衆国マサチューセッツ州ケンブリッジ所在)から購入した。BCAプロテインアッセイキットは、サーモフィッシャーサイエンティフィック社(米国イリノイ州ロックフォード所在)から購入し、プロテインローディングバッファーは、バイオ・ラッド・ラボラトリーズ社(アメリカ合衆国カリフォルニア州ハーキュリーズ所在)から購入した。リポリシスアッセイキットは、バイオビジョン社(アメリカ合衆国カリフォルニア州ミルピタス所在)から購入した。
【0075】
1.2.細胞培養、分化及び処置
3T3-L1マウス胎児線維芽細胞を韓国細胞株バンク(KCLB-10092.1)から入手し、10%(v/v)熱失活させたNCS(ネオカルジノスタチン)及び1%(v/v)抗生物質-抗真菌剤溶液(100U/mlペニシリン、100U/mlストレプトマイシン)が添加されたDMEM(高グルコース)培地において、5%のCO2を含む加湿インキュベーターに37℃おいて培養した。3T3-L1脂肪前駆細胞の分化は、10%ウシ胎児血清(FBS)、0.5mM IBMX、1μMデキサメタゾン及び10μg/mlインスリンを含むDMEM(MDI)に入れ替えることにより誘導した。2日後に、MDI培地は10%FBS及び10μg/mlインスリンが添加されたDMEMに入れ替えられた。分化誘導をしてから5~7日後に、約90%の脂肪前駆細胞が丸い形状の成熟した脂肪細胞に転換された。インスリン供給培地は、毎2日おきに交換された。
【0076】
1.3.細胞生存評価(cell viability assay)
3T3-L1脂肪前駆細胞を接種(seeding)し、1×104cells/wellの密度にて96ウェルプレートの上に成長させた後、指示された時間をかけて様々な濃度の菌株培養液を処理した。インキュベーションが完了した後、20μlの5mg/ml MTT溶液を添加し、細胞を37℃において3時間をかけてインキュベーションした。得られたホルマザン結晶を150μlのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させ、Victor(商標名)X3マルチラベルリーダー(パーキンエルマー社製、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ウォルサム所在)を用いて590nmにおける吸光度を測定した。
【0077】
1.4.乳酸菌の分離及び同定
【0078】
様々な乳酸菌の分離は、絶対嫌気的な条件下でMRS培地(DE MAN、ROGOSAおよびSHARPEによって開発された培地)を用いて行い、嫌気条件のために、N2ガスを用いて培地内に存在する酸素を取り除いた後、滅菌した。採取した糞便試料0.1gを10mlのMRS培地に懸濁した後、段階的に希釈してMRS平板培地又は血液アガー培地に100μlずつ塗抹して37℃において2日間嫌気条件下で培養した。その結果、生成された単一コロニーを継代培養して純粋分離し、長期保存しながら使用した。
【0079】
分離された乳酸菌の分子生物学的な同定のために、16S rRNA遺伝子をターゲットとするユニバーサルプライマーである27F(5’-AGA GTT TGA TCM TGG CTC A-3’:配列番号1)と1492R(5’-TAC GGY TAC CTT GTT ACG ACT T-3’:配列番号2)を使用し、16S rRNA遺伝子の塩基配列分析を行った。分析して得た塩基配列の確認は、EZbiocloud(http://www.ezbiocloud.net/)から同定検索を用いて行った。
【0080】
1.5.抗肥満活性評価
抗肥満活性を調べるために、3T3-L1細胞をDMEM GlutaMax(登録商標)に10%のNBCSと1%ペニシリン-ストレプトマイシンを混ぜて5%のCO2培養器に37℃の状態で培養した。3T3-L1細胞の細胞濃度が70~80%になったときに48ウェルプレートに接種し、細胞の濃度が100%になったときに、脂肪細胞分化培地MDI(インスリン、デキサメタゾン、イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX))に入れ替えた。2日目には、インスリン、インスリンとROSI、インスリンと試料(菌株培養液)を処理し、4日目にはインスリンのみを処理した。そして、6日目には、試料の処理なしに細胞を固定した。このとき、乳酸菌液の抗肥満効果のために、試料は、培地に0日目、2日目にそれぞれ1、5、そして10μl添加した。このMDIは、細胞分化の間に1日おきに1回入れ替える方式により行った。細胞の濃度が100%となる日を0日目と指定し、0日目には、MDI、ROSIとMDI、試料とMDIといったように構成して処理した。この実験は、それぞれの試料に対して、3回の独立した繰り返し実験として行った。
【0081】
1.6.オイルレッドO染色
分化6日後に、細胞を1×PBSにて洗浄し、10%のホルマリンにて最小限で1時間の間に固定し、0.3%のろ過済みのオイルレッドO溶液で15分間染色した。染色された細胞を蒸留水にて完全に濯ぎ、完全に分化された細胞の表現型的変化(phenotypic change)をAxiovert-25顕微鏡(カールツァイス社製、ドイツイェナ市所在)で撮影した。培養ウェルの全体の画像をキャノン社製の6Dデジタルカメラを用いて取り込んだ。オイルレッドOの量を定量するために、染色された細胞を100%のイソプロパノールにて溶出し、吸光度を520nmにおいてVictor(商標名)X3を用いて測定した。
【0082】
1.7.定量的な逆転写-重合酵素連鎖反応(RT-PCT)分析
総RNAをメーカーの指示に従ってRNA抽出キット(キアゲン社製、アメリカ合衆国カリフォルニア州バレンシア所在)を用いて抽出し、濃度をscandrop(登録商標)分光光度計(ナリティクイエナ社(analytik jena AG)製、ドイツイェナ市所在)を用いて測定した。総RNA(1μg)を逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)に適用するために、Maxime(登録商標)RT PreMix kit(イントロンバイオテクノロジー社製、大韓民国ソウル特別市所在)でcDNAを合成し、Veriti(登録商標)96-Well Thermal Cycler(アプライドバイオシステムズ社製、シンガポール所在)において反応を行った。定量リアルタイムPCRは、CFX96(商標名)リアルタイムPCR検出システム(バイオ・ラッド社製、シンガポール所在)においてiQ(商標名)SYBR(登録商標)Green Supermix kit(バイオ・ラッド社製、シンガポール所在)を用いて行った。この研究において用いられたプライマーの配列は、表1に示す。ターゲット遺伝子の発現量は、Tbpで標準化した。
【0083】
【0084】
1.8.全体の細胞抽出物の製造及びウェスターンブロット分析
回収の前に、乳酸菌処理の処理済みもしくは非処理の細胞を氷冷1×PBSで2回洗浄し、プロテアーゼ阻害剤カクテル、2mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)及び1mMのオルトバナジン酸ナトリウムが添加された放射性免疫沈降分析(RIPA)溶解バッファー(サンタクルーズバイオテクノロジー社製)で溶解させた。溶解物をスクレイピングして回収し、細胞を氷浴中で15分間インキュベーションし、上澄み液を得るためにサンプルを10,000×g、4℃において15分間遠心分離した。タンパク質の濃度をBCAプロテインアッセイキット(ピアース社製、アメリカ合衆国イリノイ州ロックフォード所在)を用いて決定した。各サンプルあたりに同量のタンパク質をローディングし、4~20%のドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル(Mini-PROTEAN(登録商標)Precast Gel、バイオ・ラッド社製)から分離した。電気泳動の後、タンパク質をsemi-dry transfer cell(バイオ・ラッド社製)を用いて13Vにおいて約1.5時間をかけてポリビニリデンフルオライド(PVDF)メンブレイン(Trans-Blot(登録商標)SD Semi-Dry Cell、バイオ・ラッド社製)にトランスファーした。メンブレインを0.1%のTween 20(TBST)を含む1×トリス緩衝生理食塩水(TBS)を含む5%の乾燥スキムミルクで震とう器の上において室温下で1時間をかけてブロッキングし、1次抗体を4℃において一晩中インキュベーションした。1次抗体のインキュベーションの後、メンブレインを1×TBSTで各5分間3回洗浄した。メンブレインを特定の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)共役二次抗体で室温下で1.5時間をかけて震とう器の上においてインキュベーションし、約5分間3回洗浄した。すべての洗浄段階は、1×TBSTにおいて行った。免疫反応タンパク質シグナルをケミルミネッセンス電気化学発光(ECL)アッセイを用いて検出し、分子イメージングソフトウェア(バイオ・ラッド社製)を用いて測定した。データの優れた視覚化のために、明るさとコントラストを僅かに調節したが、同一の変化が完全な画像パネルの全体に適用され、画像から損失された部分がないようにした。抗β-アクチンをコントロールとして用いた。ウェスターンブロットデータは、ImageJソフトウェア(アメリカ国立衛生研究所製)を用いて定量した。
【0085】
1.9.免疫蛍光染色の評価
乳酸菌YB0411による脂肪細胞の分化の転写調節因子であるC/EBPβとPPARγのタンパク質発現の調節を観察するために、3T3-L1脂肪前駆細胞を用いた免疫蛍光染色法を利用した。この実験においては、PPARγの拮抗剤であるロシグリタゾン(Rosi)を陽性コントロールに、かつ、乳酸菌培養液は5μl/mlの濃度で3T3-L1脂肪前駆細胞に処理した。3T3-L1脂肪前駆細胞を氷冷MetOHで-20℃において15分間反応させた後、3%のBSAに0.1%のTriton X-100で15分間処理して透過処理した。そして、抑制溶液(Blocking solution、1%のBSA、5%のヤギ血清、0.3%のTriton X-100)で処理した後、一次抗体であるC/EBPβ(CST)とPPARγ(サンタクルーズバイオテクノロジー社製)を1日間4℃において反応させた。そして、Alexa Fluor(登録商標)594共役抗ウサギIgGとAlexa Fluor(登録商標)594共役抗マウスIgG二次抗体をそれぞれ1時間反応させた。DNAを染色するためには、細胞を1ug/mlのDAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)と1分間反応させ、1×PBSTで3回洗浄した後、退色防止剤(ダコ(Dako)社製、アメリカ合衆国カリフォルニア州所在)入りマウンティング培地に搭載して共焦点顕微鏡(オリンパス社製、日本国東京都所在)で観察した。
【0086】
1.10.統計分析
全てのデータは、平均±標準偏差(SD)で示した。異なる処理群間の意味のある違いは、スチューデントのt検定及び2元配置分散分析(two-way ANOVA)、次いで、事後(ポストホック)ボンフェローニ検定を用いて検出した。p値<0.05は、統計的に有意味なものとしてみなした。
【0087】
2.結果
2.1.乳酸菌培養液による細胞内トリグリセライドの蓄積の抑制
3T3-L1脂肪前駆細胞の脂肪細胞への成熟化における乳酸菌培養液の機能を判明させる前に、本発明の発明者らは、3T3-L1脂肪前駆細胞及び分化済みの3T3-L1細胞に用いるための乳酸菌培養液の適切な溶液を細胞生存評価を用いて決定した。
図2に示すように、乳酸菌培養液を1μl/ml又は5μl/mlの濃度にて24、48及び72時間をかけて3T3-L1脂肪前駆細胞に処理した場合、注目すべき細胞毒性は観察されなかった。
【0088】
次いで、乳酸菌培養液の細胞内トリグリセライドの蓄積の効果を確認するために、コンフルエント後の3T3-L1脂肪前駆細胞に1μl/ml又は5μl/mlの濃度にて乳酸菌培養液の存在下若しくは不在下のMDI培地で処理することにより、脂肪細胞への分化を誘導した。6日目にOオイルレッドO染色後の顕微鏡観察は、乳酸菌培養液処理がMDI培地単独で露出されたコントロールと比較して濃度依存的な方式により細胞内トリグリセライドの蓄積の抑制の効果があることを示している(
図3)。
【0089】
2.2.脂質生成における乳酸菌培養液による脂質生成転写因子の発現の調節及び抑制
脂肪前駆細胞の脂肪細胞への分化及び成熟の過程は、多くの転写調節因子により調節される。脂肪細胞への初期の分化過程には、C/EBPβが重要な作用をし、後期の成熟過程においては、PPARγの発現が非常に重要である。そして、C/EBPδとC/EBPαは、脂肪細胞の分化に際して、C/EBPβとPPARγの発現を調節する上で重要な作用をする。adipoQ及びaP2は、PPARγの標的遺伝子であって、脂肪細胞の成熟過程において大量に発現される。本発明の発明者らは、乳酸菌培養液が脂質生成において脂質生成転写因子の発現に影響を及ぼすか否かを調べた。脂肪前駆細胞の分化を誘導するために、3T3-L1培養培地をMDI培地に入れ替えた。本発明の乳酸菌培養液を処理した場合、Cebpβ、Cebpδ、Cebpα、PPARγ、adipoQ及びaP2のmRNAの発現は格段に減った(
図4)。また、乳酸菌培養液は、翻訳の段階でもC/EBPα、C/EBPβ、PPARγ及びaP2の濃度を大幅に減少させた(
図5)。このような結果は、乳酸菌培養液が重要な脂質生成の転写因子を有効に阻害することができるということを示唆する。
【0090】
[受託番号]
【0091】
寄託機関名:韓国生命工学研究院
【0092】
受託番号:KCTC14393BP
【0093】
受託日付:20201130
【0094】
[規則第26条による補正 2022年11月15日]
【0095】
[国家研究開発事業]
【0096】
[課題固有番号] 2015161030
【0097】
[課題番号] 2015R1A6A1A03032522
【0098】
[部処名]教育部
【0099】
[課題管理機関名] 韓国研究財団
【0100】
[研究事業名]重点研究所支援事業
【0101】
[研究課題名]臨床治療用金属-セラミック-高分子ハイブリッド生体材料の開発及び組織再生の研究
【0102】
[寄与率]1/2
【0103】
[課題遂行機関名] 順天郷(スンチョンヒャン)大学産学協力団
【0104】
[研究期間]2015.06.01.~2024.05.31.
【0105】
[国家研究開発事業]
【0106】
[課題固有番号]2017395051
【0107】
[課題番号]NRF-2017M3A9A5051180
【0108】
[部処名]科学技術情報通信部
【0109】
[課題管理機関名] 韓国研究財団
【0110】
[研究事業名] バイオ医療技術開発事業
【0111】
[研究課題名]生物資源研究成果物の確保・管理及び活用
【0112】
[寄与率]1/2
【0113】
[課題遂行機関名] 韓国生命工学研究院
【0114】
[研究期間]2020.01.01.~2020.12.31.
【配列表】
【国際調査報告】