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特表2024-521064パラ-アラミドステープル繊維、アラミド紡績糸およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】パラ-アラミドステープル繊維、アラミド紡績糸およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/60 20060101AFI20240521BHJP
   A41D 31/24 20190101ALI20240521BHJP
   D01H 1/02 20060101ALI20240521BHJP
   D02G 3/02 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
D01F6/60 371Z
A41D31/24
D01H1/02
D02G3/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570241
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 KR2022012812
(87)【国際公開番号】W WO2023038346
(87)【国際公開日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】10-2021-0119851
(32)【優先日】2021-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0106994
(32)【優先日】2022-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ユリ
【テーマコード(参考)】
4L035
4L036
4L056
【Fターム(参考)】
4L035AA04
4L035BB03
4L035DD19
4L035EE09
4L035FF07
4L036MA06
4L036PA21
4L036PA31
4L036UA06
4L056AA02
4L056AA21
4L056AA23
4L056FA05
(57)【要約】
本発明は、4%以上の高伸度原糸を適用することで耐切断性が向上したパラ-アラミドステープル繊維およびこれを用いたアラミド紡績糸の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4.1%~6%の伸度および15~24g/dの強度を有する、パラ-アラミドステープル繊維。
【請求項2】
前記パラ-アラミドステープル繊維は、3.5%~5.5%の伸度および15~24g/dの強度を有するフィラメントバンドルを含む、請求項1に記載のパラ-アラミドステープル繊維。
【請求項3】
前記パラ-アラミドステープル繊維は、0.5~3.0deの繊度および20~130mmの繊維長を有する、請求項1に記載のパラ-アラミドステープル繊維。
【請求項4】
請求項1に記載のパラ-アラミドステープル繊維をリング紡績工程に適用して、
Ne16~Ne30の単糸および撚り数(TM)2.0~4.0の範囲のアラミド紡績糸を製造する段階を含む、アラミド紡績糸の製造方法。
【請求項5】
前記アラミド紡績糸は、Ne20の単糸の撚り数が2.0~4.0の範囲である、請求項4に記載のアラミド紡績糸の製造方法。
【請求項6】
前記アラミド紡績糸は、伸度が3.5%以上かつ、強度が7g/d以上を満足する、請求項4に記載のアラミド紡績糸の製造方法。
【請求項7】
前記リング紡績工程は、パラ-アラミドステープル繊維を、カーディング工程、練条工程、粗紡工程および精紡工程に適用する段階を含む、請求項4に記載のアラミド紡績糸の製造方法。
【請求項8】
EN388 Blade Cut Resistance version 2016の方法に基づいて測定された、耐切断性指数が12~18を満足する、請求項4に記載のアラミド紡績糸の製造方法。
【請求項9】
伸度が4.1%~6%であって、強度が15~24g/dであるパラ-アラミドステープル繊維を含むアラミド紡績糸。
【請求項10】
Ne16~Ne30の単糸を有し、撚り数(TM)が2.0~4.0である、請求項9に記載のアラミド紡績糸。
【請求項11】
合糸の紡績糸は、伸度が3.5%以上であって、強度が7g/d以上を満足する、請求項9に記載のアラミド紡績糸。
【請求項12】
EN388 Blade Cut Resistance version 2016の方法に基づいて測定された、耐切断性指数が6~15を満足する、請求項9に記載のアラミド紡績糸。
【請求項13】
保護用手袋または保護服に使用される、請求項9に記載のアラミド紡績糸。
【請求項14】
アラミド紡績糸の編物を含む7ゲージ(7gauge)の保護用手袋に使用される、請求項9に記載のアラミド紡績糸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願との相互参照>
本出願は、2021年9月8日付の韓国特許出願第10-2021-0119851号および2022年8月25日付の韓国特許出願第10-2022-0106994号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、耐切断性を向上させることができるパラ-アラミドステープル繊維、アラミド紡績糸およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、アラミド繊維と通称する芳香族ポリアミド繊維は、ベンゼン環がアミド基(-CONH-)を介して直線的に連結された構造を有するパラ系アラミド繊維と、そうでないメタ系アラミド繊維とを含む。パラ系アラミド繊維は、高強度、高弾性、低収縮などの優れた特性を有しているのであって、直径5mm程度の太さの細い糸でもって2トンの自動車を持ち上げるほどの強大な強度を有している。
【0004】
このようなアラミド繊維は、耐熱性、難燃性、耐薬品性、強度などに優れ、強固な分子構造と結晶性が高くて緻密な構造を有することによって、消防服、防護服、安全手袋などに多く使用されてきた。
【0005】
しかし、最近、用途に応じて、耐切断性が向上したパラアラミド手袋の需要が増加するに伴い、耐切断性が向上した手袋用紡績糸を開発することが重要である。
【0006】
そこで、一般に、フィラメントの伸度が3.5%前後のパラアラミドステープル繊維を用いてアラミド紡績糸を製造した後、これを、保護用手袋の製造に使用している。前記アラミドステープル繊維は、複数のガイドローラを用いて製造されたアラミドフィラメント同士を合わせて作ったトウ(Tow)を用いて、捲縮(Crimp)を付与した後、一定の長さに切断して製造したものである。
【0007】
しかし、前記パラアラミドステープル繊維は、伸度が低くて、依然として耐切断性を向上させるには限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高伸度を有するフィラメントを適用することで、高い紡績性と優れた強度を維持することはもちろんのこと、切断荷重が増加することで、従来よりも耐切断性を大きく向上させることができるパラ-アラミドステープル繊維を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記高伸度原糸とステープル繊維を用いて、優れた耐切断性および機械的物性を有するアラミド紡績糸およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書では、4.1%~6%の伸度および15~24g/dの強度を有する、パラ-アラミドステープル繊維を提供する。
【0011】
前記パラ-アラミドステープル繊維は、4.1%~5.5%の伸度および20~30g/dの強度を有するモノフィラメントを含むことができる。
【0012】
前記パラ-アラミドステープル繊維は、1.0~3.0deの纎度および38~114mmの繊維長を有することができる。
【0013】
また、本明細書では、前記パラ-アラミドステープル繊維をリング紡績工程に適用して、Ne16~Ne30の単糸および撚り数(TM)2.0~4.0の範囲のアラミド紡績糸を製造する段階を含む、アラミド紡績糸の製造方法を提供する。
【0014】
前記アラミド紡績糸は、Ne20の単糸の撚り数が2.0~4.0の範囲であってもよい。
【0015】
前記アラミド紡績糸は、伸度が3.5%以上かつ、強度が7g/d以上を満足することができる。
【0016】
前記リング紡績工程は、パラ-アラミドステープル繊維を、梳綿工程、練条工程、粗紡工程および精紡工程に適用する段階を含むことができる。
【0017】
前記製造されるアラミド紡績糸は、EN388 Blade Cut Resistance version 2016の方法に基づいて測定された、耐切断性指数が6~15を満足することができる。
【0018】
また、本明細書では、前記伸度が4.1%~6%かつ、強度が15~24g/dのパラ-アラミドステープル繊維を含むアラミド紡績糸を提供する。
【0019】
さらに、前記アラミド紡績糸は、伸度が3.5%以上、かつ、強度が7g/d以上を満足する。付加して、前記アラミド紡績糸は、EN388 Blade Cut Resistance version 2016の方法に基づいて測定された、耐切断性指数が6~15を満足する。
【0020】
また、前記製造されるアラミド紡績糸は、保護用手袋または保護服に使用できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来よりも高伸度である4%以上の高い伸度を有するフィラメント(原糸)を適用することで、既存に比べて耐切断性を15~60%以上向上させるパラ-アラミドステープル繊維、及び、既存と同等水準以上の機械的物性と耐切断性が向上した紡績糸を製造しうるアラミド紡績糸の製造方法を提供可能である。
【0022】
また、本発明のパラ-アラミドステープル繊維と紡績糸は、既存と比較して相対的に高い強度を有し、かつ、紡績性にも優れており、業界で要求する基本的な機械的物性を満足することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明の実施形態によるパラ-アラミドステープル繊維およびアラミド紡績糸の製造方法に関してより具体的に説明する。
【0024】
発明の一実施形態によれば、4.1%~6%の伸度および15~24g/dの強度を有する、パラ-アラミドステープル繊維が提供される。
【0025】
本発明者らは、最近、用途に応じて、耐切断性が向上したパラアラミド手袋の需要が増加するにつれ、既存のパラアラミド紡績糸を適用したものよりも耐切断性が向上した手袋用紡績糸を開発すべく研究を進行させた。その結果、少なくとも4%以上の既存より高伸度を有する原糸を適用した、パラ-アラミドステープル繊維を用いる場合、同じ基準の撚り数を適用した紡績糸を提供した時、既存より耐切断性を大きく向上させることができることを、実験を通して確認して、発明を完成した。
【0026】
また、本発明の高伸度原糸およびステープル繊維は、既存と同等水準以上の均一な繊度と紡績性を示すことができる。
【0027】
<パラ-アラミドステープル繊維>
以下、高い伸度を有するパラ-アラミドからなるフィラメントまたはステープル繊維について説明する。
【0028】
前記パラ-アラミド紡績糸は、保護用手袋に適用できるが、例えば、前記7ゲージ(gauge)(7G)の保護用手袋に使用されるパラ-アラミド紡績糸は、一般に番手が20番手(Ne20)以上であり、これを2本撚り合わせた合撚糸でもって手袋を編んで提供される。
【0029】
しかし、前記パラアラミド紡績糸は、伸度が4%以下と低くて、耐切断性を大きく向上させるには制約がある。
【0030】
そこで、本明細書では、パラ-アラミドフィラメントの伸度が少なくとも4%以上、あるいは4.1%~6%あるいは4.5~6%のものを適用したステープル繊維を提供することによって、既存に比べて、紡績糸の撚り数が同等であるか低い場合に、いずれも優れた耐切断性向上の効果を示しうる。つまり、前記パラ-アラミドフィラメントとステープル繊維の伸度が増加することによって、柔軟な特性が増加し、このような特性によって、既存と同一水準または低い撚り数が適用されても、優れた機械的物性を維持しながらも耐切断性を改善できるアラミド紡績糸を製造可能である。言い換えれば、パラアラミド紡績糸の伸度が4%以下でも、前記パラ-アラミドフィラメントの伸度を4%以上の特定範囲に調節することによって、従来よりも耐切断性指数を改善しうる。具体的には、前記パラ-アラミドフィラメントの伸度が4.5~6%の場合、強靭性が増加して、紡績糸の耐切断性をさらに向上させることができる。前記パラ-アラミドステープル繊維は、4.1%~6%の伸度あるいは15~24g/dの強度を有しうる。
【0031】
前記パラ-アラミドステープル繊維は、4.1%~5.5%の伸度および20~30g/dの強度を有するモノフィラメントを含むことができる。より具体的には、前記パラ-アラミドステープル繊維は、4.2%~5.5%あるいは4.5~5.5%あるいは4.6~6%の伸度および20~30g/dの強度を有するモノフィラメントを含むときに、耐切断性が、より優れた紡績糸を提供することができる。
【0032】
また、前記パラ-アラミドステープル繊維は、3.5%~5.5%の伸度および15~24g/dの強度を有するフィラメントバンドルを含むことができる。前記フィラメントバンドルの伸度は、4.2~5.5%あるいは4.5~5.5%あるいは4.6~6%であるときに、紡績糸に対して、より優れた耐切断性を提供することができる。
【0033】
前記パラ-アラミドステープル繊維の伸度が4.1%以下である場合、耐切断性が向上できず、6%を超えると、フィラメント製造の過程で問題が生じてフィラメントを生産することができない。
【0034】
より好適には、前記高伸度原糸を適用したステープル繊維で紡績糸を製造した後、これを用いて手袋を作ると、切断荷重が増加するに伴い、耐切断性(EN388 Blade Cut Resistance index基準)が約15~60%まで向上しうる。
【0035】
一方、前記高伸度を有するパラ-アラミドステープル繊維は、固有粘度が5.0~10.0dl/gのポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)粒子を用いてパラアラミド重合体を合成し、前記得られたパラアラミド重合体を紡糸ドープ(Dope)の均一な吐出段階を経ることで、前記モノフィラメントを用いた、3.5~5.5%の伸度および20~30g/dの強度を有するフィラメントバンドルを含み、4.1%~6%の伸度および15~24g/dの強度を有するアラミドステープル繊維として製造することができる。
【0036】
具体的には、前記4%以上の伸度を有するパラ-アラミドステープル繊維は、以下の方法でもって伸度を調節して製造することができる。
【0037】
1)有機溶媒に芳香族ジアミンを溶解させて混合溶液を製造した後、2)前記混合溶液に芳香族ジアシドハライドを一次投入し、反応させて予備重合体を製造した後、3)前記混合溶液に芳香族ジアシドハライドを二次投入し、反応させてパラアラミド重合体を製造した後、4)製造されたパラアラミド重合体について、直径基準で50~5,000μm以内のもののみを選別し、これを硫酸に溶かして紡糸ドープを製造した後、5)製造された紡糸ドープを繊維状に紡糸し、凝固、水洗および乾燥を行ってアラミドフィラメントを製造することができる。
【0038】
そして、6)前記アラミドフィラメント同士を合わせて束状のトウを製造した後、前記トウを紡糸油剤でもって水洗(例えば、50~90℃および1500~5500リットル/hrの条件)し、水洗の末端部で圧搾(Squeezing)(例えば、圧搾ロール(Squeezing Roll)の圧力:1.0~5.0bar)し、一次紡績油剤を塗布(例えば、30~70℃の温度で1~8重量%の濃度の紡績油剤を塗布)し、一次紡績油剤の末端部で圧搾(Squeezing)(例えば、Squeezing Rollの圧力:1.0~5.0bar)し、スチームによってアニーリングした後にクリンピング(例えば、1.5~3.5barのRoll圧力と0.3~1.8barのスタッファボックス(Stuffer Box)の圧力でクリンピング)した後、5~10個/インチの捲縮を付与し、二次紡績油剤の塗布(例えば、150~300g/minの量で1~8重量%の濃度の二次紡績油剤の塗布)、乾燥過程(例えば、75~105℃と2~6mpmの条件)、カッティング過程(例えば、3~15%のDraw ratioと50~100mpmの条件)およびベーラー(baler;例えば、30~60Hzの条件)を経て、パラ-アラミドステープル繊維を製造することができる。
【0039】
前記パラ-アラミドステープル繊維を製造するためのパラアラミド重合体は、芳香族ジアミンと、芳香族ジアシドまたはその誘導体とを単量体として、極性溶媒中で無機塩を触媒として使用し、-10~50℃の温度条件で強い撹拌により製造することができる。
【0040】
前記芳香族ジアミンは、パラ-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノビフェニル、2,6-ナフタレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミンおよび4,4’-ジアミノベンズアニリドなどが使用できる。
【0041】
前記芳香族ジアシドまたはその誘導体としては、芳香族ジアシドハライドが挙げられ、前記芳香族ジアシドハライドは、テレフタロイルジクロリド、4,4’-ベンゾイルジクロリド、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジクロリドおよび1,5-ナフタレンジカルボン酸ジクロリドなどが使用できる。
【0042】
前記有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N’-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ヘキサメチルホスホアミド(HMPA)、N,N,N’,N’-テトラメチルウレア(TMU)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、およびこれらの混合物が使用できる。
【0043】
前記無機塩は、CaCl2、LiCl、NaCl、KCl、LiBrおよびKBrが使用できる。
【0044】
前記芳香族ジアミンは、パラ-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノビフェニル、2,6-ナフタレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミンおよび4,4’-ジアミノベンズアニリドなどが使用できる。
【0045】
前記芳香族ジアシドハライドは、テレフタロイルジクロリド、4,4’-ベンゾイルジクロリド、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジクロリドおよび1,5-ナフタレンジカルボン酸ジクロリドなどが使用できる。
【0046】
この際、予備重合体を0~48時間エージング処理するか、重合溶媒中の無機塩の含有量を単量体の含有量に対し40~60重量%に調節してもよい。
【0047】
次に、製造されたパラアラミド重合体を硫酸に溶かして紡糸ドープを製造した後、紡糸ドープを、紡糸口金を通して繊維状に紡糸した後、凝固槽および凝固チューブを通過させることで紡糸された繊維を凝固し、水洗ローラおよび乾燥ローラを順次に通過させることで水洗および乾燥した後、巻取ローラに巻取ってパラアラミド繊維を製造することができる。
【0048】
本明細書において、「ステープル繊維」は、モノフィラメントから切断された一定の長さを有する。
【0049】
このため、前記方法で製造されたパラ-アラミドステープル繊維は、0.5~3.0deの繊度および20~130mmの繊維長を有することができる。
【0050】
前記繊度は、FAVIMAT装置を用いて測定される。また、前記繊維長は、定規を用いて肉眼で測定する方法で測定される。
【0051】
<アラミド紡績糸の製造方法およびアラミド紡績糸>
一方、発明の他の実施形態によれば、前記パラ-アラミドステープル繊維をリング紡績工程に適用して、Ne16~Ne30の単糸および撚り数(TM)2.0~4.0の範囲のアラミド紡績糸を製造する段階を含む、アラミド紡績糸の製造方法が提供される。
【0052】
この時、本明細書において、「Ne」は、紡績糸の番手(太さ)表示に使用される英式綿番手(Ne)を示す。また、前記番手(Yarn count)は、1ポンド(lb)重量の綿で糸の長さが840ヤード(yds)の糸を作った時の単位重量あたりの長さ(‘s)を意味する。
【0053】
本明細書によれば、高い伸度を有するパラ-アラミドからなるフィラメントまたはステープルを用いて耐切断性に優れたアラミド紡績糸を提供できるのであるが、以下に、より詳しく説明する。
【0054】
上述のように、前記パラ-アラミドステープル繊維は、既存よりも高伸度である4.1%~6%の伸度を有し、かつ、15~24g/dの強度を有する特徴がある。
【0055】
このようなパラ-アラミドステープル繊維は、相対的に高いカーディング速度にも適用可能であり、例えば、30kg/hr以上の速度でカーディングしても、高い均斉度と優れた機械的物性を有することができ、これによって高い紡績性と優れた紡績歩留まりを実現することができる。
【0056】
本発明は、既存と同じ撚り数を適用した紡績糸を提供した時、既存よりも耐切断性を大きく向上させることができる。つまり、紡績糸の製造時、高い伸度を有するパラ-アラミドからなるフィラメントまたはステープル繊維とともに、撚り数も一定範囲に設定することによって、アラミド紡績糸の耐切断性を改善するのに寄与することができる。
【0057】
具体的には、前記アラミド紡績糸は、上述した特徴を有するパラ-アラミドステープル繊維を適用して、リング紡績工程により番手が、番手Ne16~Ne30の単糸を有するようにするのであり、このような単糸の撚り数(TM)2.0~4.0の範囲となるように調節して、合糸されて製造される。したがって、前記アラミド紡績糸は、前記単糸の番手内にて前記範囲での撚り数を適用した時、従来よりも耐切断性を改善することができる。また、前記単糸番手内にて撚り数が既存と同一でも、特定の物性を有するパラ-アラミドステープル繊維を使用するので、合糸されたアラミド紡績糸の耐切断性をさらに向上させることができる。
【0058】
より具体的には、前記アラミド紡績糸は、番手Ne20の単糸の撚り数(TM)が2.0~4.0あるいは2.0~3.5あるいは2.0~3.0あるいは2.0~2.5の範囲であってもよい。また、前記アラミド紡績糸は、合糸の紡績糸の伸度が3.5%以上かつ、強度が7g/d以上を満足することができる。この時、前記アラミド紡績糸の番手がNe20の時、このような前記Ne20の単糸の撚り数(TM)が2.0以下であれば、撚り数が過度に少なくて単繊維が解かれて紡績糸の製造が難しい問題がある。また、前記Ne20の単糸の撚り数(TM)が4.0以上であれば、過度な撚りで紡績糸がごわついて着用感が低下し、製造される手袋の形態がねじれることがある。
【0059】
この場合、前記紡績糸を適用して作った手袋の場合、既存に比べて15~60%向上した耐切断性を実現することができる。
【0060】
好ましい一実施形態によれば、前記製造されたアラミド紡績糸は、EN388 Blade Cut Resistance version 2016の方法に基づいて測定された、耐切断性指数が12~18を満足することができる。より具体的には、前記耐切断性指数は、12~17あるいは12.3~16.7であってもよい。
【0061】
また、前記リング紡績工程は、この分野にてよく知られた方法により提供可能である。例えば、前記リング紡績工程は、パラ-アラミドステープル繊維を梳綿(carding)、練条(drawing)および精紡(spinning)の工程に適用する段階を含むことで、前記単糸の範囲および撚り数を有する紡績糸を提供することができる。この時、カーディング工程前にブローイング(blowing)工程をさらに含むことができる。また、練条過程が終わった後、スライバーをさらに増やして最小限の撚りを与える粗紡(roving)工程がさらに含まれる。
【0062】
より具体的には、前記パラ-アラミドステープル繊維を30kg/hr以上の速度でカーディングする段階は、カーディング機の内部固定カーディングバーの針布密度をドッファ上端200~700PPSIおよびリッカーイン上端10~400PPSIとして適用し、シリンダ速度を200~500rpmとして適用することができる。
【0063】
前記製造されるアラミド紡績糸は、Ne16~Ne30の単糸および合糸の紡績糸の伸度が3.5%以上かつ、強度が7g/d以上を満足することができる。
【0064】
前記アラミド紡績糸の製造方法は、連続した繊維束であるスライバーまたは粗糸(roving)を細くし、撚りを与えるために繊維束を束ねる工程を含むことができる。
【0065】
また、前記アラミド紡績糸の製造方法は、前記カーディング段階の後に得られたサブ-スライバー同士を合わせて練条(Drawing)する段階と、精紡(Spinning)する段階とをさらに含むことができる。
【0066】
複数のガイドローラを用いて、前記アラミドフィラメント同士を合わせて束状のトウを製造した後、前記トウを紡糸油剤の水洗、水洗末端部Squeezing、一次紡績油剤の塗布、一次紡績油剤末端部Squeezing、スチームによるアニーリング後のクリンピング後、5~10個/インチの捲縮を付与し、二次紡績油剤の塗布、乾燥過程、カッティング過程およびベーラーを経て、アラミドステープル繊維を製造することができる。
【0067】
前記製造されたアラミドステープル繊維をカーディング工程により複数のサブ-スライバーを製造することができる。つまり、カーディング工程により前記アラミド単繊維を平行に配列することによって、繊維集合体であるサブ-スライバーを得ることができる。
【0068】
そして、サブ-スライバー(sub-sliver)同士を合わせた後、練条工程により前記スライバーに最小限の撚りを付与して強度を維持させた後、精紡工程により前記スライバーを延伸と同時に撚り合わせてアラミド紡績糸を製造することができる。
【0069】
したがって、発明の他の実施形態によれば、伸度が4.1%~6%かつ、強度が15~24g/dのパラ-アラミドステープル繊維を含むアラミド紡績糸が提供される。
【0070】
このため、上述のように、本明細書によるアラミド紡績糸は、番手Ne16~Ne30の単糸を有し、撚り数(TM)が2.0~4.0であってもよい。
【0071】
また、前記アラミド紡績糸は、合糸の紡績糸の伸度が3.5%以上、かつ、強度が7g/d以上を満足する。付加して、前記アラミド紡績糸は、EN388 Blade Cut Resistance version 2016の方法に基づいて測定された、耐切断性指数が6~15を満足する。
【0072】
この時、本明細書によるパラ-アラミドモノフィラメント、パラ-アラミドステープル繊維およびパラ-アラミド紡績糸の強度および伸度は、KS K ISO 2062の試験方法に基づいて評価することができる。また、ゲージ長(Gauge length)、試験速度(Test speed)の設定条件は、マニュアル上の内容に準じて測定することができる。
【0073】
また、紡績糸の耐切断性指数は、EN388 Blade Cut Resistance version 2016の方法に基づいて評価することができる。したがって、前記アラミド紡績糸は、耐切断性に優れて、保護用手袋または保護服を含む製品に適用可能であり、より好適には、保護用手袋に使用可能である。前記保護用手袋は、7ゲージ(7 gauge)の保護用手袋を含み、前記保護服は、消防服、溶接服、競艇服などが含まれる。前記製品は、アラミド紡績糸を含む編物または織物であってもよい。最も好適には、前記製品は、アラミド紡績糸の編物を含む7ゲージ(7gauge)の保護用手袋であってもよい。前記編物または織物は、この分野にてよく知られた通りに製織される。
【0074】
以上のように、本発明では、高伸度原糸/ステープルを適用し、撚り数(TM)を低くした時にも、耐切断性が向上する効果を提供可能で、保護用手袋(例えば、7ゲージの手袋)や保護服に適用時、作業者の負傷の危険を低減可能で安定性を改善することができる。
【0075】
発明を下記の実施例においてより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0076】
[実施例および比較例:アラミドステープル繊維およびアラミド紡績糸の製造]
表1および2のように、原糸の物性や紡績条件を変更してパラ-アラミドステープル繊維およびアラミド紡績糸を製造した。
【0077】
<実施例1>
窒素雰囲気下、反応器内に、有機溶媒としてNMPおよび無機塩としてCaCl2を92:8の重量比で混合した混合溶媒を入れて、スラリー中のパラ-フェニレンジアミン(p-phenylene diamine、PPD)の濃度が5重量%となるようにPPDを添加してスラリーを製造した。
【0078】
次に、スラリーにPPDのモル数の40モル%に相当するテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)を添加した後、反応させてパラアラミド予備重合体を製造した。
【0079】
以後、製造されたパラアラミド予備重合体にPPDのモル数の60モル%に相当するTPCを二次添加した後、反応させてパラアラミド重合体を製造した。
【0080】
99.8重量%の硫酸に、前記で得られたパラアラミド重合体を、紡糸ドープの全体の重量に対して19重量%に溶解させて紡糸ドープを製造した。紡糸口金を通してドープを繊維状に紡糸した後、凝固槽および凝固チューブを順次に通過させつつ紡糸された繊維を凝固し、水洗ローラおよび乾燥ローラを順次に通過させることで水洗および乾燥した後、巻取ローラに巻き取って、単糸繊度が1.5デニールであって、かつ、伸度が4.9%であるパラ-アラミドフィラメントを製造した。この時、パラ-アラミドフィラメントバンドル(束)の伸度は4.5%であった。
【0081】
次に、複数のガイドローラを用いて、前記パラ-アラミドフィラメント同士を合わせて束状のトウを製造した後、前記トウについて、紡糸油剤の水洗、水洗の末端部での圧搾(Squeezing)、一次紡績油剤の塗布、一次紡績油剤の末端部での圧搾(Squeezing)、スチームによるアニーリングの後でのクリンピングを行った後、5~10個/インチの捲縮を付与し、二次紡績油剤の塗布、乾燥過程、20~130mmの長さにカッティングを行ってから、ベーラーを経て、パラ-アラミドステープル繊維を製造した。
【0082】
次に、前記パラ-アラミドステープル繊維をリング紡績工程に適用して、アラミド紡績糸を製造した。
【0083】
具体的には、カーディング機における内部固定カーディングバーの針布密度は、ドッファ(doffer)の上端で200~700PPSI、リッカーイン(licker-in)の上端で10~400PPSI、およびシリンダ速度200~500rpmの条件で、30kg/hr以上の高速カーディング工程により、パラ-アラミドステープル繊維を複数のサブ-スライバーに製造した。その後、各個のサブ-スライバー同士を合わせた後、練条工程により前記スライバーに表1の水準の撚りを付与して強度を維持させた後、粗紡および精紡の工程により、前記スライバーを延伸と同時に撚り合わせて番手20番手(Ne20)および撚り数(TM、twist multiplier)が2.3TMの単糸を製造し、単糸2本を合わせたアラミド2つ撚りの紡績糸を製造した。(紡績糸の最終製品番手:20/2)。
【0084】
<実施例2>
表1のように、紡績糸の製造時、番手が20番手(Ne20)の単糸の撚り数をTM2.9となるようにすることを除いて、実施例1と同様の方法でパラ-アラミドステープル繊維およびアラミド紡績糸を製造した。
【0085】
<実施例3>
表1のように、紡績糸の製造時、番手が20番手(Ne20)の単糸の撚り数をTM3.5となるようにすることを除いて、実施例1と同様の方法でパラ-アラミドステープル繊維およびアラミド紡績糸を製造した。
【0086】
<実施例4>
表1のように、パラ-アラミドモノフィラメントおよびパラ-アラミドステープル繊維の伸度が4.1%のものを用いたことを除いて、実施例1と同様の方法でパラ-アラミドステープル繊維およびアラミド紡績糸を製造した。
【0087】
<比較例1>
表2のように、既存の一般に使用する、伸度が4.0%、かつ、強度が20g/dである表1の条件によるパラ-アラミドステープル繊維を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法でアラミド紡績糸を製造した。
【0088】
<比較例2>
表2のように、既存の一般に使用する、伸度が4.0%、かつ、強度が20g/dである表1の条件によるパラ-アラミドステープル繊維を用いたことを除いて、実施例2と同様の方法でアラミド紡績糸を製造した。
【0089】
<比較例3>
表2のように、既存の一般に使用する、伸度が4.0%、かつ、強度が20g/dである表1の条件によるパラ-アラミドステープル繊維を用いたことを除いて、実施例3と同様の方法でアラミド紡績糸を製造した。
【0090】
[実験例]
前記実施例および比較例のパラアラミド繊維および紡績糸の特性を次の方法で評価し、その結果は、表1および表2の通りであった。
【0091】
(1)モノフィラメント、ステープル繊維および紡績糸の強伸度の測定
紡績糸は、KS K ISO 2062試験方法でUSTER装置を活用して評価し、ゲージ長(Gauge length)、試験速度(Test speed)の設定条件は、マニュアル上の内容に準じて測定した。
【0092】
(2)耐切断性の測定
EN388 Blade Cut Resistance version 2016の方法に基づいて、実施例および比較例の耐切断性を評価した。耐切断性は、実施例および比較例のパラアラミド紡績糸を、7ゲージ(7 gauge)の保護用手袋に使用されるサイズの手袋編み機を用いて、手袋編みにより、編物を製造して評価した(100%パラアラミド紡績糸20番手2つ撚り、5本で製造)。
【0093】
【表1】
【0094】
【表2】
【0095】
前記表1および表2に示されているように、前記実施例1~4のアラミド紡績糸は、4.1%~6%の範囲の伸度および15~24g/dの強度を有するパラ-アラミドステープル繊維を用いることによって、既存と同等水準の紡績糸の撚り数を付与した時(番手が20番手(Ne20)で単糸の撚り数TM2.3~3.5)に、比較例1~3に比べて、耐切断性が大きく向上した。特に、本発明は、高伸度原糸およびステープル繊維を適用することによって、TMを2.3程度と低くした時、耐切断性が比較例1~3よりも大きく向上した。つまり、前記実施例1~3は、22.7g/dの強度と4.5%の高伸度とを有するフィラメントバンドルを含むパラ-アラミドステープル繊維を用いることによって、紡績糸の耐切断性をより改善できることが確認された。特に、前記実施例1は、低い撚り数でも、最も高い耐切断性を示すことが可能で、品質はもちろんのこと、安定性に優れた保護用手袋を提供することができる。また、伸度が4.1%の原糸を用いた実施例4は、伸度が4.0%の原糸を用いた比較例1と比較して耐切断性が、より向上した。
【0096】
これに対し、比較例1~3は、既存の、一般に適用される水準の伸度4.0%のステープル繊維を用い、パラ-アラミドステープル繊維に含まれるフィラメントバンドルの伸度が3.5%および21.5g/dの強度を示すことによって、実施例1~3と同じ条件の撚り数(番手が20番手(Ne20)の単糸の撚り数;TM2.3~3.5)を適用した時、実施例よりも相対的に耐切断性が低下することが分かる。
【国際調査報告】