(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】トランジスタのミスマッチ耐性のためのマルチモード設計および動作
(51)【国際特許分類】
H03L 7/089 20060101AFI20240521BHJP
H03L 7/085 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H03L7/089 180
H03L7/085
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570401
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 CN2022089610
(87)【国際公開番号】W WO2022257638
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ストロム、ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】アンターボーン、エリック
(72)【発明者】
【氏名】スパーリング、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】チダムバッラオ、ドゥレセッティ
(72)【発明者】
【氏名】ケセルリング、グラント ピー
【テーマコード(参考)】
5J106
【Fターム(参考)】
5J106AA04
5J106CC01
5J106CC24
5J106CC41
5J106CC52
5J106DD06
5J106DD32
5J106DD43
5J106DD46
5J106EE03
5J106GG15
5J106GG17
5J106HH03
5J106JJ08
5J106KK05
5J106KK32
5J106KK37
(57)【要約】
チャージ・ポンプを有する位相ロック・ループが説明される。チャージ・ポンプは、複数のモードから各半導体チップ用のモードを選択して歩留まりを向上させる回路を有する。9つの固有のモードが定義され、そこから各チップのための選択が行われる。選択したモードは、各チップのデバイスのミストラッキング異常の影響を軽減する。どのようにモードを決定し、優先順位付けするかを示す方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位相ロック・ループ(PLL)であって、
複数の選択可能なモードを有するチャージ・ポンプであって、前記複数の選択可能なモードからモードを選択して、前記選択したモードによって制御される回路を使用して電界効果トランジスタ(FET)の予想外に大きなミストラッキングの影響を軽減する、前記チャージ・ポンプを備える、位相ロック・ループ(PLL)。
【請求項2】
基準信号周波数を有する基準信号とフィードバック信号周波数とを比較する位相周波数検出器(PFD)であって、
前記PFDからの増分信号および減分信号に前記チャージ・ポンプが結合され、前記チャージ・ポンプは差動信号を出力し、前記差動信号は前記差動信号のプラス位相とマイナス位相との間に差動電圧を有し、前記チャージ・ポンプ内の回路は、前記増分信号がアクティブであるときに前記差動電圧を増加させ、前記減分信号がアクティブであるときに前記差動電圧を減少させる、前記PFDと、
前記チャージ・ポンプによって駆動される前記差動信号に結合された電圧制御発振器(VCO)であって、前記差動電圧に依存する周波数を出力する、前記電圧制御発振器(VCO)と、
前記VCOによって出力された周波数と前記基準信号周波数との比率である「N」で、前記VCOによって出力された前記周波数を分割する1/N分周器であって、前記フィードバック信号周波数を出力する、前記1/N分周器と、
をさらに備える、請求項1に記載のPLL。
【請求項3】
前記チャージ・ポンプは、
第1の電流ルーティング・ツリーおよび第2の電流ルーティング・ツリーをさらに含み前記増分信号および前記減分信号を受信する電流ルータであって、前記増分信号がアクティブであるときに前記回路は前記差動電圧を増加させ、前記減分信号がアクティブであるときに前記回路は前記差動電圧を減少させる、前記電流ルータと、
第1の供給電圧から前記電流ルータに電流を供給する第1の制御可能な電流源と、
前記電流ルータからの電流を、前記第1の供給電圧よりも低い第2の供給電圧に供給する、第2の制御可能な電流源と、
前記選択したモードに基づいて前記第1および前記第2の制御可能な電流源を制御するコントローラであって、特定の半導体チップのための前記選択したモードは、前記特定の半導体チップ上に保存されている、前記コントローラと、
をさらに備える、請求項2に記載のPLL。
【請求項4】
前記第1の制御可能な電流源は、予想外の量の電流を送出している、PFETおよびNFETからなるタイプから選択される第1のタイプのFETの電流を調整するように制御されることが可能であり、前記第2の制御可能な電流源は、予想外の量の電流を送出している、前記第1のタイプとは反対である第2のタイプのFETの電流を調整するように制御されることが可能であり、前記第1の電流源と前記第2の電流源の両方は、両方のFETタイプが予想外の量の電流を送出するときに、両方のタイプのFETからの電流を調整するように制御されることが可能である、請求項3に記載のPLL。
【請求項5】
前記チャージ・ポンプは、
コモン・モード電圧(Vcm)を基準電圧と比較し、前記第1の制御可能な電流源を制御するために使用されることが可能な第1の増幅器電圧を出力し、前記第2の制御可能な電流源を制御するために使用されることが可能な第2の増幅器電圧を制御する増幅器をさらに備え、
前記差動信号の前記プラス位相は、前記第2のツリーの第1の分岐によって駆動され、前記差動信号の前記マイナス位相は前記第1のツリーの第2の分岐によって駆動され、
前記Vcmは、前記第2のツリーの第2の分岐および前記第1のツリーの第1の分岐上の電圧間の前記コモン・モード電圧である、請求項4に記載のPLL。
【請求項6】
前記増幅器は、FET差動増幅器を備え、前記FET差動増幅器は、
第1のFETおよび第2のFETを含むFET差動ペアであって、前記第1のFETおよび前記第2のFETは前記第1のタイプのFETである、前記FET差動ペアと、前記FET差動ペア上のソース間に結合された選択可能なソース・ディジェネレーション抵抗と、を備え、
前記FET差動ペアのソースの前記第1および第2のFETのテール電流が、第1の電圧源から電流を供給し、前記FET差動増幅器はさらに、
前記第1のFETのドレインに結合されたドレインと第2の電圧源に結合されたソースとを有する前記第2のタイプの第3のFETと、前記第2のFETのドレインに結合されたドレインと前記第2の電圧源に結合されたソースとを有する前記第2のタイプの第4のFETと、
前記第3のFETの前記ドレインと前記第3のFETのゲートとの間に結合された前記第2のタイプの第5のFETであって、前記第5のFETのゲートは、前記選択したモードからの第1の制御信号に結合されている、前記第5のFETと、前記第4のFETの前記ドレインと前記第4のFETのゲートとの間に結合された前記第2のタイプの第6のFETであって、前記第6のFETのゲートは、前記選択したモードからの第2の制御電圧に結合されている、前記第6のFETと、
前記第3のFETの前記ゲートと前記第4のFETの前記ゲートとの間に結合された前記第2のタイプの第7のFETであって、前記第7のFETのゲートは、前記選択したモードからの第3の制御電圧に結合されている、前記第7のFETと、
前記第2の供給電圧に結合されたソースと、前記選択したモードからの第4の制御電圧に結合されたゲートと、前記第2のタイプの第10のFETのゲートに結合されたドレインとを有する前記第2のタイプの第8のFETと、前記第4のFETの前記ドレインと前記第8のFETの前記ドレインとの間に結合された前記第2のタイプの第9のFETであって、前記第9のFETのゲートは、前記選択したモードからの反転された第4の制御電圧に結合されている、前記第9のFETと、を備え、
前記第10のFETは、前記第1の増幅器電圧に結合されたドレインと、前記第2の電圧源に結合されたソースとを有し、
前記第3のFETは、前記第2の増幅器電圧に結合されたドレインを有する、
請求項5に記載のPLL。
【請求項7】
前記増幅器は、
前記テール電流を制御するために前記増幅器内の電圧ミラーを選択するか、または前記テール電流を制御するために前記増幅器外からの電圧を選択する第1のアナログ・マルチプレクサをさらに備える、請求項6に記載のPLL。
【請求項8】
前記増幅器は、
前記選択したモードからの第5の制御電圧に基づいて、前記第1の供給電圧または前記第1のタイプの第11のFETに結合された遠位端を有する抵抗を通して前記第10のFETからの電流を流すように選択する第2のアナログ・マルチプレクサと、互いに結合された前記第11のFETのドレインおよびゲートと、前記選択したモードからの前記第5の制御電圧によって制御され、前記抵抗の近位端上の電圧または前記第10のFETのドレイン電圧を前記増幅器の前記第1の出力に渡す第3のアナログ・マルチプレクサと、
をさらに備える、請求項6に記載のPLL。
【請求項9】
前記選択したモードからの第6の制御値に基づいて、前記第1のタイプの第12のFETからの電流ミラー電圧および前記第1の増幅器電圧を、第4のアナログ・マルチプレクサ出力として選択する第4のアナログ・マルチプレクサと、
前記選択したモードからの第7の制御値に基づいて、前記第12のFETからの前記電流ミラー電圧および前記第1の増幅器電圧を、第5のアナログ・マルチプレクサ出力として選択する第5のアナログ・マルチプレクサと、
をさらに備える、請求項5に記載のPLL。
【請求項10】
前記第4のアナログ・マルチプレクサ出力および前記第5のアナログ・マルチプレクサ出力は、前記第1の制御可能な電流源から第1の電流ルーティング・ツリーへの第1の電流値を制御し、かつ前記制御可能な電流源から第2の電流ルーティング・ツリーへの、前記第1の電流値と等しい第2の電流値を制御する、請求項9に記載のPLL。
【請求項11】
前記選択したモードからの第8のコントローラ値に基づいて、前記第2のタイプの第13のFETからの電流ミラー電圧および前記第2の増幅器電圧を、第6のアナログ・マルチプレクサ出力として選択する第6のアナログ・マルチプレクサと、
前記選択したモードからの第9のコントローラ値に基づいて、前記第13のFETからの前記電流ミラー電圧および前記第2の増幅器電圧を、第7のアナログ・マルチプレクサ出力として選択する第7のアナログ・マルチプレクサと、
をさらに備える、請求項10に記載のPLL。
【請求項12】
複数のチャージ・ポンプ・スライスであって、前記チャージ・ポンプ・スライスの各々のプラス位相出力が互いに結合され、前記チャージ・ポンプ・スライスの各々のマイナス位相出力が互いに結合されている、前記複数のチャージ・ポンプ・スライスをさらに備える、請求項2に記載のPLL。
【請求項13】
前記増分信号および減分信号をバッファリングし、前記増分信号および減分信号のコピーをバッファリングして第2のチャージ・ポンプ・スライス内の第2のバッファ回路に渡す、第1のチャージ・ポンプ・スライス内の第1のバッファ回路をさらに備える、請求項12に記載のPLL。
【請求項14】
半導体チップ上のデバイスのミストラッキングの位相ロック・ループ(PLL)内の影響を軽減する方法であって、
プロセス、温度、および電圧条件を含むワースト・ケース・デバイス・コーナーを定義することであって、デバイス・コーナーは、FET間のトラッキングの実験室での測定値を使用して決定される、前記定義することと、
半導体デバイスの電気特性のミストラッキングの影響を軽減するモードを定義することと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記実験室での測定値は、前記半導体チップ上でのナノプローブ測定値を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
すべての指定のコーナーの主要なPLL仕様について定義された前記モードの各々を解析することをさらに含み、前記解析することは、FETの前記実験室での測定値で判明した実際の特性を修正した回路シミュレーションをコンピュータ上で行うことをさらに含み、
前記コンピュータ・シミュレーションは、チャージ・ポンプ内の差動信号のコモン・モード電圧が、各モードの歩留まり結果を提供するコモン・モード基準電圧から指定の電圧差内にあるかどうかを決定するDC(非過渡)統計解析を含み、
前記コンピュータ・シミュレーションは、前記PLLが安定しており、前記PLLの位相余裕が許容可能であるかどうかを決定する過渡解析を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記過渡解析は、前記PLLが基準信号にロックされているときの位相余裕を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記過渡解析は、増分が「0」で、減分が「1」であるときの位相余裕を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記過渡解析は、増分が「1」で、減分が「0」であるときの位相余裕を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
コモン・モード・ステップが与えられたときに安定性を含む前記過渡解析が解析され、前記コモン・モード・ステップは、前記コモン・モード基準電圧の変化および前記コモン・モード電圧の変化のうちの一方であり、前記回路シミュレーションで行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記過渡解析は、前記減分信号をオンにして前記PLLの周波数を最小に設定し、次に、前記PLLのリセットをリリースしてそれをロックすることで安定性を決定することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記DCおよび過渡解析から、各PLLのモードの選択のためのモードの優先順位付けをすることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記PLLの適切な動作のための前記優先順位付けされたモードの順序で前記PLLをテストし、そのモードを前記チップ上のモード・ストレージにセーブすることを含む、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
7nm(ナノメートル)プロセスなどの最近の半導体プロセスは、特に新世代のプロセスが成熟する前に、デバイス・パラメータがそれらのデバイス・パラメータの指定の分布外にある可能性がある。
【0002】
例えば、7nm技術における電界効果トランジスタ(FET)では、Pチャネル電界効果トランジスタ(PFET)の閾値が、実験室での測定において指定の閾値分布を超えていることがわかっている。Nチャネル電界効果トランジスタ(NFET)の閾値も、実験室での測定において指定の閾値分布を超えていることがわかっている。さらに悪いことに、異なる半導体チップが異なるFET上で閾値電圧異常を持つ可能性があるため、同じ設計の異なる半導体チップ上で異なる「調整」が必要になる可能性がある。
【0003】
半導体チップのクロック回路内でよく使用される位相ロック・ループ(PLL)などのいくつかの回路は、FETにおける閾値などの異常に起因する、PFETからPFET、NFETからNFET、およびPFETからNFETのミストラッキング(mis-tracking)に敏感である。
【0004】
初期のハードウェアでは、コンピュータ回路シミュレーションは、特定のPLL設計に対して高い歩留まりを予測していたが、許容できない歩留まりが見られた。FET閾値を含むデバイス・パラメータを決定するためにナノプロービングを使用した実験室での作業では、同じタイプのFET間でさえも閾値電圧とトラッキングとが、許容できない歩留まりの原因であることが示された。
【0005】
閾値電圧のデバイス異常が発生する場所が不明確であるため、チップごとに、さらにはPLLの部分で、複数のモードから、各個々の半導体チップのための選択モード、1つのモード(またはPLLが複数のチャージ・ポンプ・スライスを備えるチャージ・ポンプを有する場合、複数のモード)を選択することができるPLLの設計を開発することが必要になった。選択したモードで制御されるPLL内の追加回路が、PLL内のチャージ・ポンプの電流を調整して、実験室での測定で特定されたデバイス異常を解消する。
【0006】
各半導体チップは、多数のPLLを有し得る。各PLLは、複数のチャージ・ポンプ・スライスを有し得る。テストは、半導体ファウンドリにおいてまたは動作立ち上げ(bring up)時のいずれかで、動作可能で安定したモードが見つかるまで、歩留まりとPLL安定性を提供する可能性が最も高いものから、歩留まりとPLL安定性を提供する可能性が最も低いものへという順で、モードを選択するように決定されたモード優先度を使用して行われ、そのモードが使用される。この方法は、半導体チップ上の各PLLに使用され、複数のチャージ・ポンプ・スライスが実装されている場合は、各チャージ・ポンプ・スライス上で使用される。このようなテストは、テスタで貴重な時間がかかるため、優先順位付けが重要である。
【0007】
PLLの歩留まりと安定性をテストするための故障メカニズム、実験室での測定手順、および回路シミュレーションを解析する方法を開発する必要がある。モードを実装するための回路を設計する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
本発明の実施形態は、7nm(ナノメートル)以下の技術で半導体チップ上のチップ単位の歩留まり向上を提供する方法および装置を提供する。
【0009】
7nm技術を使用する初期のチップは、デバイス特性が指定の分布から大幅に外れることに起因する故障が生じていた。特に、電界効果トランジスタ(FET)閾値が仕様の分布を大幅に外れている。特に、PチャネルFET(PFET)閾値が仕様から外れていることがわかっており、1つのPFETから別のPFETにトラッキングしない。同様に、NチャネルFET(NFET)閾値も仕様から外れており、NFETからNFETにトラッキングしない。予想されるNFETからPFETへのトラッキングも指定よりも大きい。第1のチップのデバイス異常が第2のチップの異常と同じではない場合があるため、同じ設計の異なるチップに異なる故障が発生する場合がある。異常とは、指定のデバイス特性分布外の予想外のデバイス特性である。位相ロック・ループ(PLL)などのデバイス特性仕様に依存する回路には、許容できない故障率があった。
【0010】
デバイス異常の不確実性のために、閾値電圧などのデバイス特性がどの程度仕様から外れ得るかについての研究結果に基づいて、デバイス異常をチップ単位で軽減するための装置および方法を特定する必要がある。PLL回路内のチャージ・ポンプは、PLLの故障を引き起こすデバイス異常に特に敏感である。
【0011】
複数のモードが、実験室での測定で見つかったデバイス特性範囲を使用して定義され、歩留まりのための非過渡(DC)回路シミュレーション(non-transient (DC) circuit simulation)と過渡回路シミュレーション(transient circuit simulation)の両方で実証されて、起動時およびノイズ条件においてPLLが動作しなければならないさまざまな条件下でのPLLの安定性を検証する。半導体ファウンドリにおけるまたはチップの動作立ち上げ時のテストには時間がかかる。したがって、より有望なモードから始めて、歩留まりと安定性の観点から許容される第1のモードを選択する、複数の選択可能モードから選択するモードのテストの優先順位付けが行われる。
【0012】
独立請求項には、複数のモードを有するチャージ・ポンプを有するPLLであって、複数のモードから選択を行い、選択したモードで制御される回路を使用してFETの予想外に大きなミストラッキングを軽減できる、PLLが詳述されている。上述したように、各チップ(および、実際には、所与のチップ上の各PLL)には、異なるデバイス異常がある可能性があるため、選択したモードのオンチップ・ストレージが必要である。チャージ・ポンプは、多くの場合、指定の制限内でトラッキングする必要がある複数の「スライス」で実装されている。各「スライス」に対して選択したモードのオンチップ・ストレージを実装することができる。
【0013】
その独立請求項から従属して、従属請求項には、PLLの要素が詳述されている。さらなる従属請求項には、指定の制限を上回る閾値を有するPFETまたはNFETなどの「弱い」デバイスを考慮して制御できる制御可能な電流源が詳述されている。コントローラは、選択したモードに基づいて、歩留まりを確保するためにどの程度の電流を調整する必要があるかを制御する。
【0014】
従属請求項では、コモン・モード電圧と基準電圧とを比較して、チャージ・ポンプの差動出力が基準電圧の指定の電圧内にあることを確実にし、制御可能な電流源を制御する電圧を提供する、チャージ・ポンプ内の増幅器が紹介されている。増幅器は、選択したモードからの制御信号を使用して電圧を提供して、制御可能な電流源を制御する。アナログ・マルチプレクサが、増幅器内で作成された提供電圧と、チップ上またはチャージ・ポンプ内の他の場所に「グローバル」に提供される電流ミラー電圧との間で選択する。
【0015】
高速クロック(例えば、1GHz(ギガヘルツ)以上)を生成する最近のPLL回路には、チャージ・ポンプに非常に短い、10ピコ秒ほどの増分および減分パルスを出力する位相および周波数検出器(PFD)がある。このような短いパルスの波形と持続時間を維持するには、増分および減分信号がバッファリングされることが重要である。複数の「スライス」を有するチャージ・ポンプでは、単一のゲート負荷が増分および減分信号にかかる増分および減分バッファの「デイジー・チェーン」が特許請求される。
【0016】
コーナーの定義方法、実験室での測定方法、実験室での測定に基づいて歩留まりおよび安定性を確保するために定義および実行されるコンピュータ回路シミュレーション、ならびに回路シミュレーションの結果を使用する優先順位付け方法を説明するために、方法の請求項が含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1B】半導体チップ上の位相ロック・ループのブロック図である。
【
図2A】増分信号および減分信号のタイミング図である。
【
図2B】増分信号および減分信号をバッファリングおよび反転する回路を示す図である。
【
図2C】増分信号および減分信号のためのバッファの「デイジー・チェーン」を示す図である。
【
図3】制御可能な電流と、差動信号のプラス位相とマイナス位相との間の電圧を増減する電流ルータとを有するチャージ・ポンプを示す高レベル回路図である。チャージ・ポンプは、本発明のさまざまな実施形態による、かつ個々の半導体チップに特有の、複数のモードからの特定のモードで動作する電界効果トランジスタ(FET)の観察されたミストラッキングを軽減することができる。
【
図4】
図3と似ているが、電流ルータの詳細な回路図を伴う図である。
【
図5】特定のチップ上のさまざまなFETミストラッキングを軽減するために定義されたモードの表である。
図6および
図7に詳細に説明されているアナログ・マルチプレクサおよびFETスイッチを制御するための制御信号値とともに各モードの簡単な説明が記載されている。
【
図6】
図4のチャージ・ポンプの追加の詳細を示す図である。
【
図8】所与の半導体チップについてモードを定義し、モードを解析し、モード選択の優先順位付けをする方法のフローチャートである。
【
図9】指定のプロセス分布外のFET特性が定義されている2つの条件を示すフローチャートである。
【
図10】指定のプロセス分布の定義されたモードの各々の故障の割合と、
図9で定義された2つの条件とを示す1000ケース・モンテ・カルロ統計DC(非過渡)シミュレーションの結果を示す図である。
【
図11】位相ロック・ループのいくつかの動作条件に対する位相ロック・ループの位相余裕に関する過渡および周期安定性(PSTB)回路シミュレーションの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
最近まで、半導体製造技術では、電界効果トランジスタ(FET)(PFETはPチャネル電界効果トランジスタであり、NFETはNチャネル電界効果トランジスタである)は、電流対ゲート-ソース電圧およびゲート-ドレイン電圧などの特性を確実にトラッキングするために頼りにすることができた。トラッキングとは、特に半導体チップ上で互いから指定の距離内にあるときに、第1のPFETが第2のPFETと極めて同様に信頼度が高く動作することを意味をする。同様に、第1のNFETは、半導体チップ上で互いから指定の距離内で第2のNFETと極めて同様に信頼度が高く動作する。歴史的には、NFETとPFETとの間にも信頼性の高い指定の程度のトラッキングがあり、これもまた半導体チップ上で互いから指定の距離内にある。このトラッキングは、第1のトランジスタのチャネル長が第2のトランジスタと同様であるようにさせる半導体処理でもたらされていた。FET閾値はチャネル長とチャネルのドーピングに関連することがよく知られている。
【0019】
非常に短いチャネル長(例えば、7ナノメートル)が製造される最近の半導体処理では、チャネル長、ドーピング、および場合によっては他のFET特性のわずかな変動がPFET間、NFET間、およびNFETとPFETとの間の時折発生する大きなミストラッキングを引き起こす可能性があるため、信頼性が高くトラッキングを指定することが問題になっている。半導体処理が成熟するにつれて、ミストラッキングの範囲がより正確に指定される可能性がある。しかし、その成熟まで、指定のミストラッキングは不正確である可能性がある。
【0020】
位相ロック・ループ(PLL)などのいくつかの回路は、予想外のミストラッキングに敏感になる可能性がある。PLLの故障は、7ナノメートル(nm)技術では、ミストラッキングに起因してハードウェアで見られている。ナノプロービングは、ナノスケールのタングステン線を使用して半導体チップ上のデバイス電気パラメータを抽出する方法である。金属1(metal one)(M1)層にディレイヤ(delayered)された初期のハードウェアからの個々のデバイスの徹底ナノプローブ・スイープが行われた。実験室での詳細なナノプロービングにより、故障は指定のトラッキング分布を超えたミストラッキングによって引き起こされたことが決定された。さらに厄介なことに、各チップは異なるミストラッキング特性を有していることがわかった。複数の並列接続されたチャージ・ポンプ・スライスを有する測定されたハードウェアでは、第1のチャージ・ポンプ・スライスと第2のチャージ・ポンプ・スライスとの間で指定されているものよりも大きい電流ミスマッチ率が見られた。模範的な比率(実験室で観察されたものとは限らない)は1.26であり得るが、指定のミスマッチ率は1.15であり得る。このような訳で、本明細書では、本発明の実施形態において、各半導体チップ上のPLLのミストラッキング異常を軽減する回路を説明する。
【0021】
次に、
図1Aおよび
図1Bを参照すると、PLL100が示されている。PLL100は、位相周波数検出器(PFD)101と、チャージ・ポンプ102と、コンデンサC1と、R0およびC2を含むRCフィルタと、電圧制御発振器(VCO)103と、1/N分周器104とを備える。チャージ・ポンプ102は、複数のチャージ・ポンプ102スライスを含んでもよく、
図1Aでは102Aおよび102Bと指定されている。チャージ・ポンプ102スライスは、それらの出力プラス位相が「点状(dotted)」にされ(互いに接続され)、それらの出力マイナス位相が「点状」にされている。全体として、チャージ・ポンプ102は複合チャージ・ポンプ機能を指す。チャージ・ポンプ102には、1つのチャージ・ポンプ102スライスしかない場合があり、単にチャージ・ポンプ102と呼ばれ得る。
【0022】
PFD101は、指定の周波数を有する基準信号121を受信し、また、1/N分周器104によって出力されるフィードバック信号127を受信する。PFD101は、INC122およびDEC123を出力し、これらは、チャージ・ポンプ102によって受信される。INC122のアクティブ・レベルは、チャージ・ポンプ102に、VCO103の周波数を上げる必要があることを示す。DEC123のアクティブ・レベルは、チャージ・ポンプ102に、VCO103の周波数を下げる必要があることを示す。チャージ・ポンプ102は、FILT124およびFILTN125をVCO103に出力する。
【0023】
PLL100をリセットするには、RESET128がアサートされて、INC122およびDEC123のいずれかで連続的な「1」を駆動する。RESET128がアサートされ、DEC123が「1」の場合の実施形態では、VCO103は最小VCO103周波数で動作する。RESET128がアサートされ、INC122が「1」の場合の実施形態では、VCO103周波数は最大VCO周波数にある。RESET128が解放されると、PLL100はフィードバック信号127およびRef121がロックされるように周波数を変更する。
【0024】
本発明の実施形態では、チャージ・ポンプ102スライスと呼ばれる複数のチャージ・ポンプ102インスタンスが並列に結合されている場合がある。各チャージ・ポンプ102スライスは、INC122およびDEC123(場合により、前のチャージ・ポンプ102スライスでバッファリングされている)を受信し、FILT124およびFILTN125に結合された出力を有する。
図1Aに、このような実施形態が示されており、102Aとして参照される第1のチャージ・ポンプ・スライスおよび第2のチャージ・ポンプ・スライス102Bが示されている。追加のチャージ・ポンプ102スライスが企図されている。チャージ・ポンプ102スライス間のPFETがトラッキングすることが重要である。チャージ・ポンプ・スライス102間のNFETがトラッキングすることが重要である。上記の詳細なナノプローブ解析では、故障のあるPLL100では、1つのチャージ・ポンプ102スライス内の第1のPFETの電流は、ある距離にある同一のチャージ・ポンプ102スライス内の第2のPFETの0.437ほどになり得ることが指摘されている。故障のあるPLL100は、第1のPFETと第2のPFETとの間で平均で0.524の比率となる。正常動作するチャージ・ポンプでは、チャージ・ポンプ102スライス間で平均で0.7以上の比率となる。
【0025】
R0およびC2は、PLL設計でよく知られているように、ループ・フィルタとして機能する。また、C1はFILT124とFILTN125との間に結合されて、高周波ノイズを除去する。C1の静電容量は一般にC2の静電容量の約10%である。PLLループ・フィルタは当技術分野でよく知られており、本明細書ではこれ以上説明しない。
【0026】
VCO103は、FILT124およびFILTN125の差動信号を受信し、FILT124とFILTN125との間の電圧によって決定される周波数を有する信号126を生成する。信号126は、半導体チップ上でのクロッキングに使用され得る。信号126は、差動信号またはシングルエンド信号として実装され得る。
図1Aでは、VCO103によって出力された周波数は、基準信号121の周波数の「N」倍であるべきである。1/N分周器104は、信号126の周波数を「N」で分割し、結果をフィードバック信号127でPFD101に出力する。そして、PFD101は、信号126の周波数の調整が必要な場合は、前述の通り、アクティブなINC122またはアクティブなDEC123を生成する。
【0027】
図1Bは、模範的なチップ150を示す。チップ150はPLL100を含む。チップ150は、上記のようにPFD101で使用される基準信号121を受信する。チップ150はまた、通常は、I/O113によって駆動される、または受信される、あるいはその両方が行われるI/O信号129として一般的に示される多数の入力および出力を有する。チップ150は通常は、ロジック回路110とストレージ112を有し、また、アナログ-デジタル回路A/D111を含み得る。ストレージ112には、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)、スタティック・ランダム・アクセス・メモリ(SRAM)、電気ヒューズ(eヒューズ)、レジスタ、または他のストレージ回路が含まれ得る。
【0028】
図2Aは、INC122およびDEC123の模範的な波形を示す。非限定的なタイミング例では、PFD101は、INC122またはDEC123のどちらかを、間隔201で示される10ナノ秒(ns)ごとにアクティブにできる(またはどちらもアクティブにしない)。INC122またはDEC123のアクティブ・パルスの幅は、間隔202で示される10ピコ秒(ps)であり得る。INC122およびDEC123のパルス幅は短く、通常は負荷を低減するためにバッファリングが必要となる。また、詳細に説明する模範的なチャージ・ポンプ102では、INC122とDEC123の両方の位相が必要である。
【0029】
図2Bは、チャージ・ポンプ102のためにINC122およびDEC123のバッファリングされた正相および負相を生成する模範的なバッファリング回路バッファ290を示す。INC440は、INC122の正のバッファリングされたバージョンである。INCN441は、INC122の負のバッファリングされたバージョンである。DEC442は、DEC123の正のバッファリングされたバージョンである。DECN443は、DEC123の負のバッファリングされたバージョンである。本発明の実施形態は、
図1Aに並列に結合されて示されている、102Aおよび102Bとして参照される複数のチャージ・ポンプ102スライスを備え得る。イネーブル220は、INC122およびDEC123の再給電をオフにするために使用される。
【0030】
図2Cは、4つのバッファ290の「デイジー・チェーン」を示し、4つのチャージ・ポンプ102スライスの各々に1つずつにあり、チャージ・ポンプ102スライスは、102A、102B、102C、および102Dとして参照される。対応するバッファ290は、290A、290B、290C、および290Dとして参照される。前述のチャージ・ポンプ102の各々におけるバッファリングに加えて、
図2Cに示すように、INC122およびDEC123は、各バッファ290において、INC122XおよびDEC123Xとしてバッファリングされて渡されて、次のバッファ290に、当該次のバッファ290のINC122およびDEC123入力として受信され、したがって、増分および減分がバッファリングされ、「デイジー・チェーン」にされる。バッファ290Aは、PFD101からINC122およびDEC123を受信する。イネーブル220Aが「1」であるときに、バッファ290Aは再給電し、INC122およびDEC123をINC122AおよびDEC123Aとしてバッファ290Bに渡す。同様に、バッファ290Cは、バッファ290BからINC122BおよびDEC123Bを受信する。バッファ290Dは、バッファ290CからINC122CおよびDEC123Cを受信する。バッファ290Dは、INC122DおよびDEC123Dを生成するが、対応するチャージ・ポンプ102スライスからの4つのバッファからなるこの模範的なチェーンでは、テスト目的以外では、バッファのデイジー・チェーンの完全性を検証するために、INC122DおよびDEC123Dは何にも接続されない。INC122DおよびDEC123Dはラッチされており、バッファ・チェーンがINC122およびDEC123を全体に通すことの検証を可能にする。
【0031】
前述のバッファ290のデイジー・チェーンでは、各バッファ290は、
図2Cにイネーブル220A、220B、220C、および220Dとして示す個別のイネーブル220を有し得る。イネーブル220Aが「0」の場合、INC122およびDEC123は渡されない(チャージ・ポンプ102Aスライスは動作不可である)。イネーブル220Aが「1」の場合、INC122およびDEC123はバッファ290Bに渡され、チャージ・ポンプ102Aスライスは動作可能である。イネーブル220Bが「0」の場合、INC122およびDEC123は渡されず、チャージ・ポンプ・スライス102Bは動作不可である。イネーブル220Cおよびイネーブル220Dは、同様に働く。つまり、任意のバッファ290のイネーブル220の「0」は、INC122およびDEC123のデイジー・チェーン経路をブロックし、対応するチャージ・ポンプ102スライスを動作不能にし、また、INC122およびDEC123は、デイジー・チェーンの下位にあるバッファに渡されない。このデイジー・チェーンのイネーブル化によって、この例では、4つのチャージ・ポンプ102スライスのいずれも動作させないか、1つ、2つ、3つ、または4つすべてを動作させる。
【0032】
バッファ290へのINC122およびDEC123入力は、
図2Bに示すインバータの入力に接続でき、インバータは、INC122XおよびDEC123Xを出力して、任意のバッファ290を個別にオンまたはオフにすることができるが、そうすることでINC122およびDEC123への別のゲート負荷が追加され、
図2Aを参照して説明したように、10ピコ秒ほどであり得るパルス幅が小さい信号ではゲート負荷を最小限に抑えることが重要であることが理解される。
【0033】
PLL100のさまざまな実施形態では、いくつかのまたはすべての回路が適切なバッファリングを有する電流モード・ロジック(CML)で実装され得ることが理解される。
【0034】
図3は、本発明の実施形態によるチャージ・ポンプ102の高レベル図を示す。
【0035】
チャージ・ポンプ102は、上述のように、INC122およびDEC123、またはINC122およびDEC123の、バッファリングされ、反転されたバージョンを受信し、FILT124およびFILTN125を出力する。信号325Aおよび325B上の電流は、信号321によって制御されて、制御可能な電流源302によって供給電圧Vddから提供されて、電流ルータ360に電流を提供する。同様に、信号322によって制御されて、制御可能な電流源303は、電流ルータ360から信号326Aおよび326B上で電流を接地に取り込む。一般に、信号321および322は、各々、バスであり、信号321および322の周りの楕円で示されるように、複数の信号を含む。
【0036】
モード304は、特定のチップ上で使用する複数のモードのうちのモードを保持するストレージである。モード304は、信号323を介してコントローラ301と通信する。信号323は、楕円で示されるように、複数の信号を含むバスである。チャージ・ポンプ102が複数のチャージ・ポンプ102スライスを含む実施形態では、モード304は各チャージ・ポンプ102スライスに使用するために選択したモードを保存することができる。
【0037】
複数のモードからの最適モードは、チップが製造されている工場におけるテスタで決定することができる。モードは、PLL100の安定性と正常動作とに基づいて決定することができる。例えば、テスタは、PLL100の正常動作および安定性を決定するために使用できる、上記のチップの信号129のうちの1つまたは複数の信号を受信することができる。コモン・モード電圧670(後述)が、Vdd/2(通常は供給電圧Vddの半分である基準電圧)と比較され得る。PLL100の正常動作のために、モードを1つずつチェックできる。各モードにおけるPLL100の安定性は、テスタで、既知のロジック・ビルトイン・セルフテスト(LBIST:logic built in self-test)を実行するか、または入出力ビルトイン・セルフテスト(IOBIST:input output built in self-test)を実行し、ロジック・エラー(パリティ、エラー訂正コード(ECC)、ビット・エラー・レート(BER)、またはチップ150の正常動作をチェックできる他のチェック技術など)をチェックすることによってチェックできる。特定のチップ150に対して選んだモードを選択すると、選択したモードはモード304に書き込まれ得る。モード304はストレージ112のeヒューズ部分であり得る。モード304から読み出された選択したモードは、コントローラ301によって使用される。
【0038】
別の実施形態では、顧客サイトでのチップ150の動作立ち上げ時に適切なモードを選択することができる。可能なモードのセットを、信号129のうちの1つまたは複数を介してチップ150にロードし、ストレージ112のレジスタに保存することができる。ローディングは、DRAM、SRAM、レジスタ、またはラッチなどのストレージ112の一部の中へスキャンされてもよい。そこから選択する、可能なモードのセットは、モード304のeヒューズ領域に保存され得る。選択したモード(工場においてまたは動作立ち上げ時に、可能なモードのセットから設定される)は、コントローラ301によって、
図3に一般的に示されている制御可能な電流源302および303に適用される。
【0039】
図3を引き続き参照すると、コントローラ301は、コモン・モードVcm670を基準電圧Vdd/2と比較することができる。Vdd/2(供給電圧の半分)は、模範的な目的のために基準電圧として使用されることが理解される。他の基準電圧を使用することもできるが、Vdd/2は、Vdd(供給電圧)および接地から抵抗分割器(resistor divider)で容易に作成される。Vdd/2はまた、PFETがプル・アップされ、NFETがプル・ダウンされた状態で、チャージ・ポンプがVddと接地との間で対称的であるため、優れた基準電圧の選択である。コントローラ301は、選択したモードに従って信号バス321および322上で制御信号を適用する。Vcm670の生成が
図6に示され、
図6を参照して説明される。
【0040】
Vcm670とVdd/2との比較は、工場のテスタによって使用されて、チップ150上のストレージ112のeヒューズ・ストレージに書き込むモードを決定することができる。テスタは、信号129内の信号を介してVcm670およびVdd/2を受信する。あるいは、A/D111がVcm670とVdd/2との差のデジタル値を提供し、その結果を信号129内の1つまたは複数の信号を介してテスタに送信することもできる。Vcm670とVdd/2との比較は、チップ150の動作立ち上げ時にモード選択が行われた場合にも使用できる。
【0041】
次に、
図4を参照すると、本発明の実施形態が示されている。モード304は、選択したモードを、信号323を介してコントローラ301に通信する。
図4の実施形態では、321および322上の信号の各々は、複数の信号導体を有する。321および322内の信号は、
図5に示すように各モードの値を有している。
【0042】
電流ルータ360は、P5、P6、N5、およびN6を有する第1の電流ルーティング・ツリーと、P7、P8、N7、およびN8を有する第2の電流ルーティング・ツリーとを含む。ルーティングは、第1および第2の電流ルーティング・ツリーにおけるDEC442、DECN443、INCN441、およびINC440の値によって決定される。
【0043】
導体325Aおよび325Bは、それぞれ、制御可能な電流源302内の等しい電流を、電流ルータ360内の第1および第2の電流ルーティング・ツリーに流す。
【0044】
導体326Aおよび326Bは、それぞれ、制御可能な電流源303内の等しい電流を、電流ルータ360内の第1および第2の電流ルーティング・ツリーから流す。
【0045】
電流ルータ360は、
図2Aを参照して前述したように、FILT124とFILTN125との間により多くの電圧がある必要がある場合に、短時間上昇するINC440を受信する。つまり、VCO103によって信号126上に出力される周波数を上昇させるために、FILT124とFILTN125との差を大きくする必要がある。P7によってFILT124に電荷が追加されてFILT電圧が高くなり、N6によってFILTN125から電荷が取り去られてFILTNが低くなり、FILT124とFILTN125との間の電圧が上昇する。
【0046】
電流ルータ360は、FILT124とFILTN125との間の電圧を下げる必要がある場合に、短時間上昇するDEC442を受信する。N7によってFILT124から電荷が除去されて、FILT124の電圧が下げられ、P6によってFILTN125に電荷が追加されて、FILTN125の電圧が高くなる。これにより、FILT124とFILTN125との間の電圧が下がる。
【0047】
INC440が上昇し、INCNが低下すると、P8が停止し、P7がオンになり、FILT124に電荷が追加される。同時に、INC440は、FILTNから電荷を除去するN6をオンにし、INCNはN5をオフにする。FILT124に電荷を追加し、FILTN125から電荷を取り去ると、FILT124からFILTN125への電圧が上昇し、VCO103に、信号126へのその出力の周波数を増加させる。DEC442は「0」であり、P5を導通させる。N5がオフになると、P5の電流が信号676上に出て、
図6に示す演算増幅器681によって吸収される。同様に、P8がオフにされると、P8からN8に流れていた電流は、
図6の演算増幅器680から信号675を介して供給される。
【0048】
DEC442が上昇し、DECN443が低下すると、P6がオンになり、P5がオフになる。P6を通る電流はFILTN125に流れ、FILTN125の電圧を上昇させる。N7がオンになり、電流をFILT124から引き出してFILT124を下げる。FILTとFILTNとの間の電圧が低下し、信号126上に出力されるVCO103の周波数が低下する。P5がオフにされると、P5からN5に流れていた電流は、ここで、演算増幅器681から信号676上に供給されるようになる。N8がオフにされると、P8を流れる電流は演算増幅器680によって信号675を介して吸収される。
【0049】
INC122またはDEC123の狭いパルスがアクティブな場合を除き、325A上の電流は、P5およびN5を流れ、
図6に示すように、Vcm670を作成する回路に結合された676上に信号を生成する。同様に、INC122またはDEC123の狭いパルスがアクティブな場合を除き、信号325B上の電流は、P8およびN8を流れ、
図6に示すVcm670を作成する回路に結合された675上に信号を生成する。
【0050】
次に、
図6および
図7を参照して、本発明の実施形態の回路および動作を詳細に説明する。
【0051】
図6では、電流ルータ360は、
図4の電流ルータ360について説明したように動作する。FETおよび信号は、同じ参照番号が付けられている。
【0052】
以下の説明では、図面中の丸で囲まれた文字(例えば、
【数1】
など)は、モード304に保存されたモードに基づくコントローラ301からのデジタル信号を表している。
図5は、
図6および
図7に示す本発明の実施形態の各モードについて、「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」、「G」、「H」、および「I」に対して、値(「1」または「0」)が示されている、モードの表を示している。「A」、「B」、「C」、および「D」は、
図7のFETのゲートに適用される。「E」は、
図7のアナログ・マルチプレクサ(AMUX)722および723による入力信号の選択を制御する。「F」、「G」、「H」、および「I」は、それぞれ、
図6のAMUX620、621、622、および623における入力選択を制御する。
【0053】
AMUX回路の入力は、「1」および「0」として示されて、「1」または「0」である選択入力によってどちらの入力が選択されているのかを示す。
【0054】
図7に、アナログ・マルチプレクサ(AMUX)の一般化された回路図を示す。一般化されたAMUXは、2つの入力IN1およびIN2、SELECT入力、PA、NA、PB、およびNB、ならびに出力OUTを有するように示されている。図に示すように、SELECT入力は、正および反転信号を有し得る。または、アナログ・マルチプレクサはさらに、反転信号を生成するためにインバータを備えていてもよい。このタイプのAMUXを、
図6および
図7のAMUX620、621、622、623、722、723、および724に使用してもよい。
【0055】
次に、
図6を参照すると、P15および電流源I1が、PBIAS650上に電圧(「F」が「1」であるときに、アナログ・マルチプレクサ(AMUX)620を通して信号652に転送される電圧)を提供する。信号666は、「F」が「0」であるときに、AMUX620を通して信号652に転送されるAMP630で生成された電圧を有する。P1およびP3は、信号652上の電圧に応じて、信号325Aおよび325Bにミラー電流を提供する。電流源I1は、電流源I1としてNFET電流を電流ミラーするNFET抵抗構成など、チップ上に提供される電流であり得る。電流源I1は、また信号129内の信号を介してチップ150の外側から提供される電流であってもよい。電流源I1の非限定的であるが典型的な値は、25マイクロアンペアであり得る。あるいは、電流源I1は、電流源として機能するために、P15のドレインと接地との間に結合された抵抗であってもよい。
【0056】
複数の並列接続されたチャージ・ポンプ102スライスを備える実施形態では、単一のPBIAS650が、チャージ・ポンプ102のすべてのスライスによって共有され得る。ただし、各チャージ・ポンプ102スライスは、ローカルPBIAS650を生成するためにそれ自身の回路を有していてもよい。
【0057】
AMUX621は、「G」が「1」であるときに、PBIAS650を信号653に通し、「G」が「0」であるときに、666上のAMP630内で生成された電圧を信号653に通す。P2およびP4は、信号653上の電圧に応じてミラー電流を提供する。
【0058】
N9および電流源I2は、NBIAS651上に電圧を提供する。電流源I1と同様に、電流源I2はチップ150上に形成されるか、信号129内の信号上でオフ・チップから提供されてもよい。電流源I2の非限定的な電流値は、25マイクロアンペアであり得る。あるいは、電流源I1と同様に、電流源I2は、N9のドレインとVddとの間の抵抗、すなわち、ミラーされたPFET電流ミラー構成であり得る。
【0059】
図7に示すP14およびR12など、抵抗およびPFET(またはNFET)として示されている他のPFETおよびNFETの電流ミラー基準も、電流源I1および電流源I2と同様に、PFET(またはNFET)および電流源として実装され得ることが理解される。
【0060】
「H」が「1」であるときに、AMUX622は、NBIAS651上の電圧を信号655に通す。「H」が「0」であるときに、AMUX622は、信号667上のAMP630内で生成された電圧を信号655に通す。N2およびN4は、それに応じて信号326Aおよび326Bに等しい電流を提供する。
【0061】
「I」が「0」であるときに、AMUX623は、信号667上の電圧を信号654に通す。「I」が「1」であるときに、AMUX623は、NBIAS651上の電圧を通す。N1およびN3は、それに応じて信号326Aおよび326Bに等しい電流を提供する。
【0062】
増幅器「AMP」630は、Vcm670およびVdd/2(Vdd/2は、Vddと接地との間のR4およびR5分圧器によって生成されるものとして示されている)を受信する。AMP630は、信号666および667上に電圧を出力する。
図7を参照して、AMP630をより詳細に説明する。
【0063】
図6は、Vcm670を生成する回路も示している。演算増幅器680が、FILT124および信号675を受信する。信号675は演算増幅器680の出力にも接続されている。演算増幅器680は、信号675上の電流をソースまたはシンクして、信号675上の電圧を強制的にFILT124電圧に向ける。演算増幅器681は、FILTN125および信号676を受信する。信号676は演算増幅器681の出力にも接続されている。演算増幅器681は、電流をソースまたはシンクして、信号676を強制的にFILTN125電圧に向ける。R2およびR3を含む分圧器は、信号675および676間に結合され、この分圧器は信号675および676のコモン・モード電圧Vcm670を作成する。Vcm670は、高周波ノイズを除去するコンデンサC4を有していてもよい。
【0064】
次に、
図7を参照すると、AMP630の詳細な回路図が示されている。
【0065】
AMP630は、P9Aと、P9Bと、P13およびN17を有するパス・ゲート770と、抵抗R9と、P11と、P12と、N16と、N15とを含む差動増幅器を備える。
【0066】
任意選択で、AMUX724が実装されてもよい。AMUX724は、選択信号「J」の制御下で、「J」が「1」であるときは、信号750を選択し、「J」が「0」であるときはPBIAS650を選択する。信号750は、AMP630に対してローカルである、P14およびR12からの電流ミラー電圧である。PBIAS650は、
図6に示されるように作成される。PFETがある程度良好にトラッキングする場合、PBIAS650は、
図6に示すPFET P1、P2、P3、およびP4をより良好にトラッキングすることができる。PFETが良好にトラッキングしないとわかる場合、「J」を使用して信号750を選択し、信号740に通すことができる。信号750は、P14およびR12電流ミラー電圧からの電流ミラー電圧として、AMP630内の回路に物理的に近い場合があるため、AMP630内のPFETとより密接にトラッキングすることが期待される。
【0067】
P9AおよびP9Bは、信号740上の電圧に基づいて差動増幅器に「テール電流」を提供する。
【0068】
各モードで使用される制御信号値および各モードの説明については、
図5の制御信号チャートを参照されたい。便宜上、モードおよび信号値は、本明細書では、各モードの表1~9から含められている。N11からの電流について、P10からの電流ミラー電圧ではなく、VddからのI
*R電圧降下(R8、およびN11からの電流)を選択するモード10を説明するパラグラフが含まれている。先に説明したように、
図7の1つまたは複数のFETゲートに、「A」、「B」、「C」、および「D」の各々が適用される。「E」は、
図7のAMUX722およびAMUX723の選択制御として使用される。「F」、「G」、「H」、および「I」は、それぞれ、
図6のAMUX620、AMUX621、AMUX622、およびAMUX623の選択制御として使用される。
【0069】
【0070】
モード1では、N13はオンである(「A」は「1」である)。N18はオンである(「B」は「1」である)。N14はオフである(「C」は「0」である)。N12はオンである(「D」は「1」である)。N10はオフである(「D」は「1」である)。N11はオフであり(「D」の逆数は「0」である)、N12は信号748を「0」にプルする。パス・ゲート770はオンである(「C」は「0」であり、「C」の逆数は「1」である)。N16電流は、P11から電流をミラーし、電流ミラー電圧を信号667に載せる。N15はP12から電流を搬送する。「F」が「1」であるため、信号666がAMUX620またはAMUX621によって選択されないため、「E」は「ドント・ケア」である。AMUX620はPBIAS650を選択する。また、「G」が「1」であるため、AMUX621はPBIAS650を選択する。「H」が「1」であるため、AMUX622はNBIAS651を選択し、「I」が「0」であるため、AMUX623は信号667を選択する。パス・ゲート770はオンであるため(「C」は「0」であるため、P13およびN17はオンである)、ソース・ディジェネレーションはない。
【0071】
【0072】
モード2では、N13はオンである(「A」は「1」である)。N18はオンである(「B」は「1」である)。N14はオフである(「C」は「0」である)。N12はオンである(「D」は「1」である)。N10はオフである(「D」の逆数は「0」である)。N11がオフである(「D」は「1」で、N12は信号748を接地にプルする)。パス・ゲート770はオンであり(「C」は「0」で、「C」の逆数は「1」である)、信号741および751は同じ電圧になるため、ソース・ディジェネレーションは発生しない。N16電流は、P11を通る電流をミラーし、電流ミラー電圧を信号667に載せる。N15はP12から電流を搬送する。N11はオフである(N12が信号748を「0」にプルする)。AMUX620(「F」が「1」である)またはAMUX621(「G」が「1」である)で信号666が選択されていないため、「E」は「ドント・ケア」である。AMUX622は信号667を選択する(「H」は「0」である)。AMUX623は信号667を選択する(「I」は「0」である)。パス・ゲート770はオンであるため(「C」は「0」であるため、P13およびN17はオンである)、ソース・ディジェネレーションはない。
【0073】
【表3】
モード3では、N13はオフである(「A」は「0」である)。N14はオンである(「C」は「1」である)。N18はオンである(「B」は「1」である)。N12はオンである(「D」は「1」である)。N10はオフである(「D」の逆数は「0」である)。N12は「オン」である(「D」は「1」である)。N11はオフである(N12が信号748を「0」にプルする)。AMUX620(「F」が「1」である)およびAMUX621(「G」が「1」である)がPBIAS650を選択するため、「E」は「ドント・ケア」である。AMUX622(「H」が「0」である)およびAMUX623(「I」が「0」である)は信号667を選択する。N15電流は、P12を通る電流をミラーし、N18およびN14を介してN16への電流ミラー電圧を生成する。N14は信号745(N16のゲート)を信号752(N15のゲート)に結合する。パス・ゲート770がオフである(「C」は「1」であり、「C」の逆数が「0」である)ので、R9は差動増幅器内にソース・ディジェネレーション(P11およびP12のソース)を提供する。
【0074】
【0075】
モード4では、N13はオンである(「A」は「1」である)。N18はオンである(「B」は「1」である)。N14はオフである(「C」は「0」である)。N12はオフである(「D」は「0」である)。N10はオンである(「D」の逆数は「1」である)。N15電流は、信号746を介してP12電流をN11に、N10を信号748にミラーする。N16電流は、電流ミラー電圧上のP11電流を信号667にミラーする。P10は、AMUX723(「E」が「1」である)を通してN11電流を搬送し、AMUX722(「E」が「1」である)を通して電流ミラー電圧を信号666に通す。AMUX620(「F」が「0」である)およびAMUX621(「G」が「0」である)は、信号666上に電流ミラー電圧を通す。AMUX622(「H」が「1」である)およびAMUX623(「I」が「1」である)はNBIAS651を通す。パス・ゲート770はオンであるため(「C」は「0」であるため、P13およびN17はオンである)、ソース・ディジェネレーションはない。
【0076】
【0077】
モード5では、N13はオフである(「A」は「0」である)。N14はオンである(「C」は「1」である)。N18はオンである(「B」は「1」である)。N12はオンである(「D」は「1」である)。N10はオフである(「D」の逆数は「0」である)。N11はオフである(N12が信号748を「0」にプルする)。パス・ゲート770はオフで、ソース・ディジェネレーションを提供する(「C」は「0」であり、「C」の逆数は「1」である)。P12電流はN15を流れる。信号746は、N15を通る電流の電流ミラー電圧を有する。この電圧はまた、N16からN18およびN14にも渡される。N16は、N15と同じ電流を搬送する。信号667は、P11電流およびN16電流に依存する電圧を搬送する。PBIAS650は、AMUX620(「F」が「1」である)およびAMUX621(「G」が「1」である)によって渡される。AMUX622(「H」が「0」である)は信号667上に電圧を通す。AMUX623(「I」が「1」である)はNBIAS651を通す。
【0078】
【0079】
モード6では、N13はオンである(「A」は「1」である)。N18はオンである(「B」は「1」である)。N14はオフである(「C」は「0」である)。N12はオフである(「D」は「0」である)。N10はオンである(「D」の逆数は「1」である)。パス・ゲート770はオンである(「C」は「0」であり、「C」の逆数は「1」である)ので、ソース・ディジェネレーションはない。N16電流は、P11電流を信号667にミラーする。N15電流は、P12電流をミラーし、電流ミラー電圧を、N10を通してN11に通す。AMUX723(「E」が「1」である)は、N11電流をP10に通す。P10電流は、N11電流をミラーし、電流ミラー電圧を、AMUX722を通して666に通す(「E」が「1」である)。AMUX620(「F」が「0」である)は信号666を通す。AMUX621(「G」が「1」である)はPBIAS650を通す。AMUX622(「H」が「1」である)およびAMUX623(「I」が「1」である)はNBIAS651を通す。
【0080】
【0081】
モード7では、N13はオンである(「A」は「1」である)。N18はオフである(「B」は「0」である)。N14はオンである(「C」は「1」である)。N12はオフである(「D」は「0」である)。N10はオンである(「D」の逆数は「1」である)。N16は、P11電流をミラーし、P10電流ミラー電圧を信号667に提供する。N14は、P11電流ミラー電圧を、N14を介してN15に通す。N14は信号745(N16のゲート)を信号752(N15のゲート)に結合する。信号746上の電圧は、P12およびN15内の電流に依存する。N10はオンであり(Dの逆数が「1」である)、信号746を信号748に渡す。N11は、信号748上の電圧に依存して電流を生成する。AMUX723(「E」が「1」である)は、その電流をP10に通す。AMUX722(「E」は「1」である)は、P10電流ミラー電圧を信号666に通す。AMUX620(「F」が「0」である)およびAMUX621(「G」が「0」である)は、信号666上に電圧を通す。AMUX622(「H」が「1」である)およびAMUX623(「I」が「1」である)はNBIAS651を通す。パス・ゲート770はオフである(「C」は「1」である)ため、ソース・ディジェネレーションはアクティブである。
【0082】
【表8】
モード8では、N13はオンである(「A」は「1」である)。N18はオンである(「B」は「1」である)。N14はオフである(「C」は「0」である)。N12はオフである(「D」は「0」である)。N10はオンである(「D」の逆数は「1」である)。パス・ゲート770はオンである(「C」は「0」であり、「C」の逆数は「1」である)ので、ソース・ディジェネレーションはない。N16は、P11から電流を渡し、電流ミラー電圧を信号667に提供する。AMUX622(「F」が「0」である)は信号667上に電圧を通す。AMUX623(「I」が「1」である)はNBIAS651を通す。N15はP12から電流を搬送し、信号746上に電流ミラー電圧を生成し、N10はその電流ミラー電圧をN11に通す。したがって、N11は信号749上に電流を生成する。そして、AMUX723(「E」が「1」である)は信号749上の電流をP10に搬送し、P10電流ミラー電圧はAMUX722(「E」が「1」である)を通して信号666に通される。AMUX620(「F」が「0」である)は信号666の電圧を通す。AMUX621(「G」は「1」である)はPBIAS650を通す。AMUX622(「H」は「0」である)は、667上に電圧を通す。AMUX623(「I」が「1」である)はNBIAS651を通す。
【0083】
【0084】
モード9では、N13はオンである(「A」は「1」である)。N18はオンである(「B」は「1」である)。N14はオフである(「C」は「0」である)。N12はオフである(「D」は「0」である)。N10はオンである(「D」の逆数は「1」である)。パス・ゲート770はオンである(「C」は「0」である)ので、ソース・ディジェネレーションはない。N16はP11電流を通し、それに応じて信号667上に電流ミラー電圧を生成する。N15はP12電流を通し、信号746上に電流モード電圧を作成し、これは、N10を通してN11に転送される。N11は、その電流ミラー電圧を使用して、信号749上に、AMUX723(「E」が「1」である)およびP10を通過する電流を生成する。したがって、P10は、AMUX722(「E」が「1」である)によって信号666に渡される電流ミラー電圧を信号743上に生成する。AMUX620(「F」が「0」である)およびAMUX621(「G」が「0」である)は、666上に電流ミラー電圧を通す。AMUX622(「H」が「0」である)およびAMUX623(「I」が「0」である)は666上に電圧を通す。
【0085】
モード10は、モード4、6、7、8、および9と同じ信号値を使用するが、「E」は「0」であり、N11からの電流は、P10ではなくAMUX723(「E」が「0」である)によってR8を通過し、Vddから信号742へのI*R(N11からの電流と抵抗R8とを掛けたもの)降下が生じる。信号742上の電圧は、AMUX722(「E」が「0」である)内で選択されて、信号666に通される。R8は、I*R降下が、N11から電流を流すときの通常のP10電流ミラー電圧と同じであるように設計されている。
【0086】
図5は、
図6および
図7の実施形態の各モードについて、コントローラ301が制御信号「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」、「G」、「H」、および「I」で提供する必要のあるロジック・レベル値を示すチャートである。
図5には、各モードの簡単な説明が含まれている。モード304は、この情報を符号化された形式で保存することができ、その場合、各モードの符号化は、各モードに必要なロジック・レベル値を提供するために復号が必要になる。あるいは、モード304は、単に各モードに必要なロジック・レベル値を保存してもよい。
【0087】
当業者は、模範的な図面および説明は、増分信号がVCOへの差動電圧を増加させ、減分信号がVCOへの差動電圧を減少させるように接続が適切に変更されて、NFETが示されている場所にPFETを使用し、PFETが示されている場所にNFETを使用して「逆さまにする」ことができることを理解するであろう。
【0088】
次に、本発明の方法の実施形態に目を向けると、
図8は、FETの電気特性の予想外に大きなミストラッキングのPLL100への影響を軽減するために使用される高レベル方法800を示している。歩留まりおよびPLL100安定性に基づいた複数のモードからのモードの選択は、以下の方法ステップに示されている。
【0089】
ステップ802において、
図6および
図7を参照して説明したように、複数の選択可能なモードが電流を制御できるように、サブ回路が作成される。選択するための利用可能なモードが
図5に示されている。9つの固有のモードが定義されており、第10のモードは前述の9つのモードのうち5つにおいて使用可能な変形例を対象としている。5つのモードは、AMUX620およびAMUX621のいずれかまたは両方が通すように信号666を選択するモードである。この変形例は、PFET電流ミラー電圧の代わりに「I
*R電圧降下」を使用する。N11からの電流は、AMUX723(「E」が「0」である)によってR8を通してルーティングされる。「I
*R電圧降下」は、AMUX722(「E」が「0」である)によって信号666に対して選択される(「E」が「0」である)。
【0090】
ステップ804において、ワースト・ケース・コーナー(worst case corner)の定義が実行される。これには、ハードウェアで発生し得る測定されたミストラッキングを決定するために、前述の詳細なナノプローブ解析が含まれる。ワースト・ケース・コーナーには、チップ150が動作しなければならない温度および電圧も含まれている。例えば、
図9は、一般的なPFETからNFETへのミストラッキングのコーナーを定義する方法900を示している。ブロック902において、実験室での測定値に基づいて、アップ電流(up current)(PFET)が弱く、ダウン電流(down current)(NFET)が強い。閾値電圧などのデバイス・パラメータに対する手動オーバーライドは、シミュレーションで適宜調整される。ブロック904において、実験室での測定値に基づいて、アップ電流が強く、ダウン電流が弱い。ここでも、シミュレーションのデバイス・パラメータが適宜調整される。
【0091】
ステップ806において、すべてのコーナー(プロセス、温度、電圧)の主要なPLL仕様について、すべてのモードの解析が実行される。これには、選択したFETにFET特性値を加算(または減算)するためにコンピュータ上で回路シミュレーションを行うことが含まれる。例えば、第1のPFETと第2のPFETとの間の閾値電圧の指定のトラッキングがプラスまたはマイナス10%であるが、ナノプロービングにより、異なるチャージ・ポンプ102スライスでPFET閾値電圧が25%異なる可能性があることが判明した場合、PFET閾値の回路シミュレーション・モデルは、実際の実験室の測定値の範囲を対象とするために手動でオーバーライドすることができる。次に、PLL100の回路シミュレーション・モデルは、手動で供給されたオーバーライドを使用して、指定の温度、電圧、およびプロセスのコーナーでシミュレーションされる。PFET閾値電圧以外のFET特性を、手動でオーバーライドすることができることが理解される。特に、NFET特性を手動でオーバーライドすることもできる。
【0092】
ステップ808において、テストで使用されるモードの優先順位付けが行われる。
【0093】
図10は、9つのモードの各々の歩留まりの表を示している。1000ケース・モンテ・カルロ回路シミュレーションが行われた。PLL100の「故障」は、チャージ・ポンプのコモン・モード電圧(Vcm670)が崩壊したケースとして定義される。故障は、チャージ・ポンプ100内でデバイス・ミスマッチが異常に不良であることに起因する。歩留まりとは、Vcm670が、Vdd/2に対して指定の範囲外にある1000件中のケースの数である。モンテ・カルロ1000ケース統計シミュレーションでは、Vdd/2とVcm670との100mV(ミリボルト)以上の差が「故障」と見なされた。
【0094】
「指定の加算器Vtなし」というタイトルの列は、すべてのモードの歩留まりが100%であったことを示している。モンテ・カルロ1000ケースDC(非過渡)統計シミュレーションでは、ファウンドリ指定の回路要素分布(例えば、閾値電圧の分布、チャネル長の分布など)を使用した。すべてのモードには100%の満足のいく歩留まりがあった。これは、指定のデバイス分布を使用したプロトタイプのハードウェアの設計は、予想される故障がないように提供されたため予想されていた。
【0095】
「弱いアップ、強いダウン」および「弱いダウン、強いアップ」列では、PFETおよびNFET閾値の分布は、指定のPFET閾値分布にプラスおよびマイナスΔPVtを、かつ指定のNFET閾値分布にプラスおよびマイナスΔNVtを追加することで拡大される。「デルタ」は実験室での測定値に基づいている。例としてのみ、また、実際の実験室での測定値を必ずしも代表するものではないが、ΔPVtは20mVで、ΔNVtは10mVである場合がある。ここでも、1000ケース・モンテ・カルロ統計解析が実行された。モード3、4、6、7、8、および9は、100%、またはほぼ100%の歩留まりをもたらした。モード1、2、および5の歩留まりは低かった。
【0096】
モンテ・カルロ統計DC回路シミュレーションに加えて、モード304に保存するためのモードをピックするためにモードの優先順位付けをするために、追加の解析が行われた。方法ステップ808は、過渡回路シミュレーションを使用して、特定のチップ150に使用するモードを決めながら、優先順位を付けるモードをさらに決定する。方法ステップ808で満たす必要がある主要なPLL仕様を以下に説明する。「位相余裕」の見出し下の列は、さまざまな条件下での安定性についてコモン・モード・フィードバック・ループを解析するさまざまな方法である。例えば、PLL100がロック状態(すなわち、基準REF121とフィードバック信号127の周波数と位相が揃っている)の間、チャージ・ポンプ・ループは安定している必要がある。ただし、PLL100がロックのプロセス中(すなわち、PLL100が増分または減分時)には、PLL100も安定している必要がある。
【0097】
ロック状態PSTB:PSTBは、PLL100がロックされているときのPLL100の位相余裕についての過渡および周期安定性回路シミュレーションである。
【0098】
INC,DEC=01およびINC,DEC=10:PLL100がロックされている間、INC122またはDEC123は、10マイクロ秒以上のように長時間オンにすることができる。コモン・モード電圧Vcm670は、これが起きている間は安定している必要がある。
【0099】
コモン・モード・ステップ:過渡シミュレーション中に、「ステップ電圧」がコモン・モード基準電圧(図示および説明する例ではVdd/2)に印加される。設計者は、PLL100シミュレーションの過渡シミュレーションをレビューして、発振が発生しないことを確認する。
【0100】
ロックするためのFMIN:この過渡シミュレーションは、前述したように、RESET128をアサートしてPLL100の周波数を最小(または最大)に設定することでDEC123(またはINC122)をオンにし、次にPLL100のリセットをリリースしてPLL100をロックする。
【0101】
図11は、9つのモードの各々についての過渡シミュレーションの位相余裕の結果をまとめた表を示している。大きな位相余裕が望ましい。モード7はいくつかのシミュレーションで不安定性を示した。モード9は限界的な安定性を示す。
【0102】
テスタでの(または、本発明のいくつかの実施形態では、動作立ち上げ時の)時間を節約するために、特定のチップごとにモードを選択するためのモード選択候補の優先順位付けが望ましい。
図10および
図11に示すシミュレーションでは、ほぼ100%の歩留まりと優れた位相余裕を有するため、モード8が最も可能性の高い候補であり得、また、最初に試してみるべきであることが示唆されている。モード8の次は、モード4が優れた位相余裕を有しているが、歩留まりはわずかに低い。モード3は、歩留まりが優れているため、次に試すモードであってもよいが、位相余裕はわずか22.7度である。モード8、4、および3で満足のいく結果が得られない場合は、テスタは他のモードを試してみてもよい。製品のテストやプロセスの成熟度におけるさらなる経験により、優先順位付けの順序が変更される場合がある。
【国際調査報告】