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特表2024-521069非アルコール性脂肪肝疾患の診断用マーカー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】非アルコール性脂肪肝疾患の診断用マーカー
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20240521BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/53 W
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571140
(86)(22)【出願日】2022-05-13
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 KR2022006924
(87)【国際公開番号】W WO2022245066
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】10-2021-0065761
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0065760
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0078025
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521504245
【氏名又は名称】プレクソジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】キム,スゥ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジ ミン
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB01
2G045DA66
2G045FB01
2G045FB03
(57)【要約】
本発明は、非アルコール性脂肪肝疾患の診断用マーカーに関し、より詳細には、エクソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質のレベルを測定する製剤を含むことにより、高い正確度で非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis;NASH)を診断できる組成物及びキット、並びに非アルコール性脂肪肝炎治療剤投与後の予後を正確に予測できる組成物及びキットに関し、本発明に組成物及びキットは、非アルコール性脂肪肝疾患の診断、非アルコール性脂肪肝疾患の予後予測及び非アルコール性脂肪肝疾患治療剤のスクリーニング製剤として様々に活用可能である。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)の治療剤を投与した個体から、エクソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質のレベルを測定する製剤を含む、非アルコール性脂肪肝疾患の予後予測用組成物。
【請求項2】
前記非アルコール性脂肪肝疾患は、非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis;NASH)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記タンパク質のレベルを測定する製剤は、前記タンパク質に特異的な抗体又はアプタマーを含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体の断片及び組換え抗体からなる群から選ばれるいずれか一つ以上である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)の治療剤を投与した個体から、エクソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質のレベルを測定する製剤を含む、非アルコール性脂肪肝疾患の予後予測用キット。
【請求項6】
前記非アルコール性脂肪肝疾患は、非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis;NASH)である、請求項1に記載のキット。
【請求項7】
前記タンパク質のレベルを測定する製剤は、前記タンパク質に特異的な抗体又はアプタマーを含むものである、請求項1に記載のキット。
【請求項8】
ELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)キットである、請求項3に記載のキット。
【請求項9】
非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)の治療剤を投与した個体から分離された生物学的試料から、エクソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質のレベルを測定する測定段階を含む、非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)の予後予測のための情報提供方法。
【請求項10】
測定されたタンパク質のレベルを、正常対照群の試料から測定された値と比較する比較段階をさらに含む、請求項9に記載の情報提供方法。
【請求項11】
前記測定段階は、前記タンパク質に特異的に結合する抗体又はアプタマーを試料と接触させる接触段階を含む、請求項10に記載の情報提供方法。
【請求項12】
前記生物学的試料は、個体から分離された組織、細胞、全血、血清又は血漿からなる群から選ばれるいずれか一つ以上である、請求項9に記載の情報提供方法。
【請求項13】
前記非アルコール性脂肪肝疾患は、非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis;NASH)である、請求項9に記載の情報提供方法。
【請求項14】
前記情報提供方法は、非アルコール性脂肪肝疾患の発病が疑われる個体から分離された試料から測定されたエクソソーム由来ApoA-1タンパク質のレベルが、正常対照群の試料から分離された試料から測定されたレベルよりも低い場合に、非アルコール性脂肪肝疾患の発病危険が高いか、非アルコール性脂肪肝疾患の予後が悪いと判定する、請求項9に記載の情報提供方法。
【請求項15】
非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)が発病した或いは発病が疑われる個体から、エクソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質のレベルを測定する製剤を含む、非アルコール性脂肪肝疾患診断用組成物。
【請求項16】
前記非アルコール性脂肪肝疾患は、非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis;NASH)である、請求項15に記載の非アルコール性脂肪肝疾患診断用組成物。
【請求項17】
前記タンパク質のレベルを測定する製剤は、前記タンパク質に特異的な抗体又はアプタマーを含むものである、請求項15に記載の非アルコール性脂肪肝疾患診断用組成物。
【請求項18】
前記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体の断片及び組換え抗体からなる群から選ばれるいずれか一つ以上である、請求項17に記載の非アルコール性脂肪肝疾患診断用組成物。
【請求項19】
非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)が発病した或いは発病が疑われる個体から、エクソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質のレベルを測定する製剤を含む、非アルコール性脂肪肝疾患診断用キット。
【請求項20】
前記非アルコール性脂肪肝疾患は、非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis;NASH)である、請求項19に記載の非アルコール性脂肪肝疾患診断用キット。
【請求項21】
前記タンパク質のレベルを測定する製剤は、前記タンパク質に特異的な抗体又はアプタマーを含むものである、請求項19に記載の非アルコール性脂肪肝疾患診断用キット。
【請求項22】
ELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)キットである、請求項21に記載の非アルコール性脂肪肝疾患診断用キット。
【請求項23】
非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)が発病した或いは発病が疑われる個体から分離された生物学的試料から、エクソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質のレベルを測定する測定段階を含む、個体の非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)診断のための情報提供方法。
【請求項24】
測定されたタンパク質のレベルを、正常対照群の試料から測定された値と比較する比較段階をさらに含む、請求項23に記載の情報提供方法。
【請求項25】
前記測定段階は、前記タンパク質に特異的に結合する抗体又はアプタマーを試料と接触させる接触段階を含む、請求項23に記載の情報提供方法。
【請求項26】
前記生物学的試料は、個体から分離された組織、細胞、全血、血清又は血漿からなる群から選ばれるいずれか一つ以上である、請求項23に記載の情報提供方法。
【請求項27】
生物学的試料から測定した値が正常対照群試料の値よりも低い場合に非アルコール性脂肪肝疾患であると判定する判定段階をさらに含む、請求項24に記載の情報提供方法。
【請求項28】
前記非アルコール性脂肪肝疾患は、非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis;NASH)である、請求項23に記載の情報提供方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非アルコール性脂肪肝疾患の診断用マーカーに関し、より詳細には、エクソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質のレベルを測定する製剤を含み、高い正確度で非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis;NASH)を診断できる組成物及びこれを含むキットに関する。
【背景技術】
【0002】
間葉系幹細胞は多分化能を有する間質細胞で、造骨細胞、軟骨細胞、筋肉細胞、脂肪細胞などを含む様々な細胞に分化可能な細胞のことを指す。間葉系幹細胞は、軟骨や骨組織、靭帯、骨髄間質などの様々な結合組織に分化できるので、関節炎や、外傷、火傷などによる軟部組織の欠損を治療するなど、様々な疾患への治療用途として研究されている。
【0003】
一方、非アルコール性脂肪肝は、過度なアルコール摂取無しで肝細胞に中性脂肪であるトリグリセロイドが蓄積されることが特徴である。非アルコール性脂肪肝は、現代人の高脂肪及び高炭水化物の摂取と関連した栄養過剰によって増加の一途にある。肥満、糖尿において非アルコール性脂肪肝がしばしば観察されるが、様々な因子が非アルコール性脂肪肝と関連しているとされている。非アルコール性脂肪肝を持つ成人の80%がインスリン抵抗性糖尿病及び心臓疾患などの代謝異常疾患に発展することが報告されている。
【0004】
非アルコール性脂肪肝は、非アルコール性単純脂肪肝(non-alcoholic simple steatosis)と炎症を伴う非アルコール性脂肪肝炎(non-alcoholic steatohepatitis;NASH)とに分類されるが、長期間放置すると、肝炎、肝線維、肝硬変などの深刻な肝疾患に進行することがある。非アルコール性脂肪肝は、肝細胞(hepatocyte)で脂肪の蓄積(脂肪浸潤)を持つことを特徴とする。
【0005】
非アルコール性単純脂肪肝は非アルコール性脂肪肝炎に進行することがあるため、非アルコール性脂肪肝炎において脂肪の蓄積は、様々なレベルの肝の炎症及び傷跡と関連し、多くの場合、インスリン抵抗性、異常脂質血症及び高血圧と関連すると知られている。非アルコール性脂肪肝炎は、過体重、高いコレステロール及びトリグリセロイド数値、及び/又はインスリン抵抗性を有する人々からしばしば発生する。
【0006】
しかしながら、近年、肥満人口の増加に伴って非アルコール性脂肪肝炎患者が増加するにもかかわらず、安全で且つ長期服用可能な非アルコール性脂肪肝炎の治療剤の開発は僅かしか進んでおらず、非アルコール性脂肪肝炎の診断のための製剤やキットの開発は満足できない状況である。したがって、慢性疾患である非アルコール性脂肪肝炎の診断に適合しながら、正確で迅速な非アルコール性脂肪肝炎の診断用組成物又はキットの開発と非アルコール性脂肪肝炎治療剤投与後の予後診断組成物に対する要求が高まっている状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明者らは、非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)の診断マーカーとしてエクソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質を用いて迅速で正確に非アルコール性脂肪肝疾患を診断できることを確認した。
【0008】
そこで、本発明の目的は、非アルコール性脂肪肝疾患の診断用組成物を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、非アルコール性脂肪肝疾患の診断用キットを提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、非アルコール性脂肪肝疾患の診断のための情報提供方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、非アルコール性脂肪肝疾患治療剤スクリーニング方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、非アルコール性脂肪肝疾患の予後予測用組成物を提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、非アルコール性脂肪肝疾患の予後予測用キットを提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、非アルコール性脂肪肝疾患の予後予測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、非アルコール性脂肪肝疾患の診断用マーカーに関し、本発明に係る非アルコール性脂肪肝疾患の診断用組成物、予後予測用組成物又はそれらのキットは、迅速で正確に非アルコール性脂肪肝疾患を診断でき、非アルコール性脂肪肝疾患治療剤投与後の予後を正確に予測できる。
【0016】
そこで、本発明者らは、本発明に係るエクソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質のレベルを測定する製剤が、既存方法に比べてより正確に非アルコール性脂肪肝疾患を診断し且つ予後を予測できることを確認した。
【0017】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0018】
本発明の一態様は、非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)が発病した或いは発病が疑われる個体から、エクソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質のレベルを測定する製剤を含む、非アルコール性脂肪肝疾患診断用組成物である。
【0019】
本明細書における用語「マーカー(marker)」は、非アルコール性脂肪肝疾患を有する個体を正常群個体と区分して診断できる物質で、非アルコール性脂肪肝疾患を有する個体において増加又は減少を示すポリペプチド、タンパク質又は核酸、脂質、糖脂質、糖タンパク質又は糖などのような有機生体分子をいずれも含んでよく、例えば、非アルコール性脂肪肝疾患を有する個体においてレベルが減少するタンパク質であってよいが、これに限定されるものではない。
【0020】
本明細書において用語「エクソソーム」とは、細胞が細胞外に分泌したり、細胞内に存在する、脂質二重層で構成された膜構造を有する小胞(membrane vesicle)であり、ほとんど全ての真核生物の体液に存在する。エクソソームの直径は30~1000nm程度であり、多重小胞体(multivesicular bodies)が細胞膜と融合する際に細胞から放出されるか、細胞膜から直ちに放出される。エクソソームが、凝固、細胞-細胞間コミュニケーション及び細胞性免疫を仲裁する機能的役割を担うために、細胞内の生体分子であるタンパク質、生体活性脂質及びRNA(miRNA)を輸送する役割を担うことはよく知られている。
【0021】
エクソソームは微細小胞体(microvesicle)を包括する概念である。エクソソームのマーカータンパク質としてはCD63、CD81などが知られており、その他にはEGFRのような細胞表面の受容体、信号伝達関連分子、細胞付着関連タンパク質、MSC関連抗原、熱衝撃タンパク質(heat shock protein)、小胞形成に関連したAlixなどのタンパク質が知られている。
【0022】
本明細書における用語「ApoA-1タンパク質」は、ApoA-1遺伝子によってコードされるタンパク質であり、HDLパーティクルの主要タンパク質成分として脂質代謝において特定の役割を担うことが知られている。ApoA-1は、しばしば心血管疾患の予測のためのバイオマーカーとして用いられることが知られているが、エクソソーム由来ApoA-1タンパク質のバイオマーカーとしての用途は知られたことがない。本発明の発明者らは、個体の血漿内でエクソソーム由来ApoA-1のタンパク質レベル測定により、非アルコール性脂肪肝疾患が発病した或いは発病が疑われる個体の発病の有無を正確に診断できることを確認した。
【0023】
本明細書における用語「非アルコール性脂肪肝疾患」は、慢性肝疾患の中で最も一般的な疾患であり、2型糖尿病、肥満及び代謝症候群と密接な関係があると知られており、単純脂肪症(simple steatosis)から非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis,NASH)、さらには肝硬変症までを含む疾患を意味する。
【0024】
本発明において用語「診断」は、病理状態の存在又は特徴を確認することを意味する。本発明の目的上、診断は、非アルコール性脂肪肝疾患発病の有無を確認することである。
【0025】
本発明の一具現例において、非アルコール性脂肪肝疾患は、非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis;NASH)であってよい。
【0026】
本明細書における用語「非アルコール性脂肪肝炎」は、非アルコール性脂肪肝疾患の一つで、脂肪肝と共に炎症或いは線維化を伴うことを特徴とする進行性肝疾患であり、肝硬変や肝癌を誘発する前区疾患を意味する。
【0027】
本明細書における用語「タンパク質のレベルを測定する製剤」とは、試料に含まれた標的タンパク質のレベルを測定する方法に用いられる製剤を意味する。タンパク質のレベルを測定する製剤は、当業界に公知されたタンパク質検出製剤を含んでよく、例えば、ウェスタンブロット(western blotting)、ELISA(enzyme linked immunosorbent assay)、放射線免疫分析(Radioimmunoassay;RIA)、放射免疫拡散法(radioimmunodiffusion)、オクタロニー(Ouchterlony)免疫拡散法、ロケット免疫電気泳動(rocket immunoelectrophoresis)、免疫組織化学染色法(immunohistochemical staining)、免疫沈殿分析法(Immunoprecipitation Assay)、補体固定分析法(Complement Fixation Assay)、免疫蛍光法(immunofluorescence)、免疫クロマトグラフィー法(immunochromatography)、FACS(fluorescenceactivated cell sorter analysis)及びタンパク質チップ分析法(protein chip technology assay)などの方法に使用される抗体を含んでよいが、これに限定されるものではない。
【0028】
本発明の一具現例において、タンパク質のレベルを測定する製剤は、タンパク質に特異的な抗体又はアプタマーを含むものであってよい。
【0029】
本発明の一具現例において、抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体の断片及び組換え抗体からなる群から選ばれるいずれか一つ以上であってよい。
【0030】
本明細書における用語「抗体」は、タンパク質又はペプチド分子の抗原性部位に特異的に結合可能なタンパク質性分子を意味する。抗体は、各遺伝子を通常の方法によって発現ベクターにクローニングしてマーカー遺伝子によってコードされるタンパク質を得、得られたタンパク質から通常の方法によって製造されてよい。抗体の形態は特に限定されず、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体の断片又は組換え抗体など、抗原結合性を有するものであれば、それの一部も本発明の抗体に含まれる。本発明において抗体には全ての免疫グロブリン抗体が含まれる他、ヒト化抗体などの特殊抗体も含まれてよい。なお、抗体は、2個の全長の軽鎖及び2個の全長の重鎖を有する完全な形態の他、抗体分子の機能的な断片も含む。抗体分子の機能的な断片とは、少なくとも抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2及びFvなどであってよい。
【0031】
本明細書における用語「アプタマー」とは、一本鎖オリゴヌクレオチドを意味し、所定の標的分子に対する結合活性を有する核酸分子を意味する。アプタマーは、その塩基配列によって様々な3次元構造を有してよく、抗原-抗体反応のように特定物質に対して高い親和力を有し得る。アプタマーは、所定の標的分子に結合することにより、所定の標的分子の活性を阻害することができる。
【0032】
本発明のアプタマーは、RNA、DNA、修飾された(modified)核酸又はこれらの混合物であってよく、その形態が直鎖状又は環状であってよいが、それらに限定されない。アプタマーは、それぞれの塩基配列を参照して、当該技術の分野における通常の知識を有する者が公知の方法によって容易に作製可能である。
【0033】
本発明の他の態様は、非アルコール性脂肪肝疾患が発病した或いは発病が疑われる個体から、エクソソーム由来ApoA-1タンパク質のレベルを測定する製剤を含む、非アルコール性脂肪肝疾患診断用キットである。
【0034】
本発明において、キットは、抗体の免疫学的検出のため、基材、適当な緩衝溶液、発色酵素又は蛍光物質で標識された二次抗体、発色基質などを含んでよい。
【0035】
基材は、特に次に限定されないが、ニトロセルロース膜、ポリビニル樹脂で合成された96ウェルプレート、ポリスチレン樹脂で合成された96ウェルプレート、及びガラスでできたスライドガラスなどが用いられてよく、発色酵素は、特に次に限定されないが、ペルオキシダーゼ(peroxidase)、アルカラインホスファターゼ(Alkaline Phosphatase)が用いられてよい。蛍光物質は、次に限定されないが、FITC、RITCなどであってよく、発色基質液は、特に次に限定されないが、ABTS(2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸))又はOPD(o-フェニレンジアミン)、TMB(テトラメチルベンジジン)であってよい。
【0036】
本発明において、キットは、個体の非アルコール性脂肪肝疾患診断に使用するための試薬をさらに含んでよい。試薬は、バッファー、指示薬、又はその組合せを含んでよいが、これに限定されるものではない。
【0037】
本発明の一具現例において、キットは、ELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)キットであってよい。
【0038】
本発明のさらに他の態様は、非アルコール性脂肪肝疾患が発病した或いは発病が疑われる個体から分離された生物学的試料から、エクソソーム由来ApoA-1タンパク質のレベルを測定する測定段階を含む、個体の非アルコール性脂肪肝疾患診断のための情報提供方法である。
【0039】
本発明の一具現例において、方法は、測定されたタンパク質のレベルを、正常対照群の試料から測定された値と比較する比較段階をさらに含んでよい。
【0040】
本発明の一具現例において、測定段階は、ApoA-1タンパク質に特異的に結合する抗体又はアプタマーを試料と接触させる接触段階を含んでよい。
【0041】
本明細書における用語「個体」は、非アルコール性脂肪肝疾患が発病した或いは発病の可能性があるヒトを含む全ての動物を意味できる。動物は、ヒトの他、これと類似の症状の治療を要するウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラクダ、カモシカ、イヌ、ネコなどの哺乳動物であってよいが、これに限定されない。
【0042】
本明細書における用語「正常対照群」とは、非アルコール性脂肪肝疾患が発病しないか又は発病が疑われない個体を意味する。
【0043】
本明細書における用語「試料」とは、非アルコール性脂肪肝疾患が発病した患者から分離され、エクソソーム由来ApoA-1タンパク質の発現レベルを測定する直接的な対象を意味する。
【0044】
本発明の一具現例において、試料は、個体から分離された組織、細胞、全血、血清又は血漿からなる群から選ばれるいずれか一つ以上であってよい。
【0045】
本発明の一具現例において、方法は、生物学的試料から測定した値が正常対照群試料の値よりも低い場合に非アルコール性脂肪肝疾患として判定する判定段階をさらに含んでよい。
【0046】
本発明のさらに他の態様は、非アルコール性脂肪肝疾患の治療候補物質を、疾患の発病した個体から分離される生物学的試料に処理して、エクソソーム由来ApoA-1タンパク質の発現程度を測定する測定段階、及び測定したタンパク質発現程度を、候補物質を処理していない対照群の発現程度と比較する比較段階を含む、非アルコール性脂肪肝疾患治療剤スクリーニング方法である。
【0047】
本明細書における用語「治療候補物質」とは、個体の試料から測定されるエクソソーム内のApoA-1タンパク質のレベルを増加させ、非アルコール性脂肪肝疾患の治療可能性がある物質であり、オリゴヌクレオチド、タンパク質、化合物などを制限なく含む。
【0048】
本明細書における用語「オリゴヌクレオチド」は、数個~数十個のヌクレオチドがリン酸ジエステル結合(phosphodiester bond)で重合して形成された重合体を意味する。
【0049】
本発明に係るスクリーニング方法の比較段階において、個体から分離される生物学的試料内のエクソソーム由来ApoA-1タンパク質レベルが対照群に比べて有意に増加する場合に、候補物質は非アルコール性脂肪肝疾患の治療剤として可能性があることを意味する。
【0050】
本発明のさらに他の態様は、非アルコール性脂肪肝疾患の治療剤を投与した個体から、エクソソーム由来ApoA-1タンパク質のレベルを測定する製剤を含む、非アルコール性脂肪肝疾患の予後予測用組成物である。
【0051】
本明細書における用語「非アルコール性脂肪肝疾患治療剤」は、非アルコール性脂肪肝疾患を治療するか、非アルコール性脂肪肝疾患の重症度又は関連パラメータを改善又は緩和させ得る全ての物質を意味し、例えば、本発明者らは、誘導万能幹細胞(induced pluripotent stem cell;iPSC)由来間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell;MSC)から分離されたエクソソームが、既存の臨床で用いられる治療剤に比べて、非アルコール性脂肪肝疾患の治療、緩和改善の効果に優れていること確認した。
【0052】
本明細書における用語「予後」とは、疾患の経過及び死亡又は生存の結果をあらかじめ予測する行為を意味する。より具体的には、予後又は予後予測とは、疾患の経過は患者の生理的又は環境的状態によって異なることがあり、このような患者の状態を総合的に考慮して治療前/後の病気の経過を予測する全ての行為と解釈されてよい。本発明の目的上、予後は、非アルコール性脂肪肝疾患の治療前/後、疾患の経過及び完治の有無をあらかじめ予想して非アルコール性脂肪肝疾患患者の無病生存率又は生存率を予測する行為と解釈されてよい。
【0053】
例えば、「予後が良い」と予測することは、治療されたか否かに関係なく、非アルコール性脂肪肝疾患患者の生存率が高いレベル又は脂肪肝疾患と関連した指標が改善されたレベルを示し、非アルコール性脂肪肝疾患患者が治療される可能性が高いということを意味し、「予後が悪い」と予測することは、非アルコール性脂肪肝疾患の治療後の患者の生存率が低いか、脂肪肝疾患と関連した指標が悪化したレベルを示すことを意味する。
【0054】
一例として、本発明者らは、エクソソーム由来ApoA-1タンパク質のレベルを測定する場合に、既存の臨床に使用されている血清中のApoA-1タンパク質のレベルを測定する場合に比べて、非アルコール性脂肪肝疾患の改善の有無をより正確に把握できることを確認した。
【0055】
本発明の一具現例において、非アルコール性脂肪肝疾患の治療剤は、誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞から分離されたエクソソームを有効成分として含む組成物であってよい。
【0056】
本明細書において用語「幹細胞」は未分化された細胞で、自己複製能力を有しながら2つ以上の異なる種類の細胞に分化する能力を有する細胞のことを指す。本発明の幹細胞は、自己又は同種由来幹細胞であってよい。
【0057】
本明細書において用語「誘導万能幹細胞」は、体細胞のような既に分化した細胞に脱分化(dedifferentiation)を誘導して初期の未分化された状態に戻り、全分化能(pluripotency)を有するようになった細胞を意味する。
【0058】
前記脱分化は、特定遺伝子(例えば、Sox2、c-Myc、Klf4、Oct-4など)を導入して発現させるか、前記特定遺伝子が導入された細胞で作られた脱分化誘導タンパク質を注入して誘導されてよい。
【0059】
前記全分化能は、生体を構成する3種の胚葉(germ layer)、すなわち、内胚葉(endoderm)、中胚葉(mesoderm)及び外胚葉(ectoderm)起源の組織又は器官に分化できる能力を意味する。
【0060】
本明細書において用語「間葉系幹細胞」は多分化能を有する細胞で、造骨細胞、軟骨細胞、筋肉細胞、脂肪細胞などを含む様々な細胞に分化できる幹細胞のことを指す。前記間葉系幹細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞が最も多く用いられるが、骨髄の他にも、臍帯又は臍帯血、脂肪組織、羊水、奥歯の歯牙突起(tooth bud)に由来し得る。間葉系幹細胞は、間質細胞(stromal cell)とも呼ばれる。
【0061】
前記「誘導万能幹細胞」は、分化した細胞から人為的な脱分化過程によって多能性分化能を有するように誘導された細胞を指す言葉で、脱分化幹細胞とも呼ばれる。
【0062】
本発明において、誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞の前駆細胞は、SSEA-4(stage-specific embryonic antigen 4)タンパク質を発現しないものであってよい。
【0063】
本明細書における用語「誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞の前駆細胞」は、誘導万能幹細胞から間葉系幹細胞に完全に分化する直前段階の細胞で、誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞の一種と見なすことができ、SSEA-4タンパク質を発現しなく、追加培養によって完全な間葉系幹細胞の性質を有することになる細胞を意味する。
【0064】
本発明において、誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞は、SSEA-4タンパク質を発現しない誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞の前駆細胞から分化したものであってよい。
【0065】
前記人為的な脱分化過程は、レトロウイルス、レンチウイルス及びセンダイウイルスを用いたウイルス媒介又は非ウイルス性ベクターの利用、タンパク質及び細胞抽出物などを利用する非ウイルス媒介脱分化因子の導入によって行われるか、幹細胞抽出物、化合物などによる脱分化過程を含む。
【0066】
前記誘導万能幹細胞は、胚芽幹細胞とほぼ同じ特性を有し、具体的には、類似の細胞形状を示し、遺伝子及びタンパク質発現パターンが類似であり、in vitro及びin vivoで全分化能を有し、テラトーマ(teratoma)を形成し、マウスの胚盤胞(blastocyst)に挿入させた時にキメラ(chimera)マウスを形成し、遺伝子の生殖線転移(germline transmission)が可能である。
【0067】
本発明の誘導万能幹細胞は、ヒト、サル、ブタ、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ウサギなどの全ての哺乳動物由来の誘導万能幹細胞を含むが、好ましくは、ヒト由来の誘導万能幹細胞である。
【0068】
また、本発明の前記誘導万能幹細胞が脱分化する前の体細胞は、臍帯、臍帯血、骨髄、脂肪、筋肉、神経、皮膚、羊膜、羊水又は胎盤などに由来する体細胞であってよいが、これに限定されない。
【0069】
本発明において誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞から分離されたエクソソームは、上述した誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞(BxC)内に存在したり又はBxCから分泌されたエクソソームを意味する。
【0070】
本明細書において用語「有効成分として含む」とは、誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞から分離されたエクソソームが非アルコール性脂肪肝疾患の予防又は治療活性を達成するのに十分な量を含むことを意味する。
【0071】
本発明の一具現例において、非アルコール性脂肪肝疾患の治療剤は、前処理物質で前処理された、誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞から分離されたエクソソームを有効成分として含む組成物であってよい。
【0072】
本明細書において用語「前処理」とは、誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞の前駆細胞の培養過程において前処理物質が添加された細胞培養培地を誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞の前駆細胞に接触させる過程を意味する。
【0073】
本発明の一具現例において、前処理物質は、1-(ベンゾチアゾリルスルホニル)-5-クロロ-1水素-インドール-2ブタン酸[1-(6-benzothiazolylsulfonyl)-5-chloro-1H-indole-2-butanoic acid]又はエキセンディン-4(Exendin-4)であってよい。
【0074】
1-(ベンゾチアゾリルスルホニル)-5-クロロ-1水素-インドール-2ブタン酸[1-(6-benzothiazolylsulfonyl)-5-chloro-1H-indole-2-butanoic acid]は、「ラニフィブラノール(Lanifibranor)」という名称で使われてよく、ペルオキシソーム増殖体活性化受容体(peroxisome proliferator-activated receptors,PPARs)のアゴニストである。
【0075】
本発明の一具現例において、非アルコール性脂肪肝疾患の治療剤は、ラニフィブラノールで前処理された、誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞から分離されたエクソソームを有効成分として含む組成物(BxC-V37e)であってよい。
【0076】
本発明の一具現例において、非アルコール性脂肪肝疾患は、非アルコール性脂肪肝炎であってよい。
【0077】
本発明の一具現例において、タンパク質のレベルを測定する製剤は、前記タンパク質に特異的な抗体又はアプタマーを含むものであってよい。
【0078】
本発明の一具現例において、抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体の断片及び組換え抗体からなる群から選ばれるいずれか一つ以上であってよい。
【0079】
本発明のさらに他の態様は、非アルコール性脂肪肝疾患の治療剤を投与した個体から、エクソソーム由来ApoA-1タンパク質のレベルを測定する製剤を含む、非アルコール性脂肪肝疾患の予後予測用キットである。
【0080】
本発明の一具現例において、非アルコール性脂肪肝疾患は、非アルコール性脂肪肝炎であってよい。
【0081】
本発明の一具現例において、タンパク質のレベルを測定する製剤は、前記タンパク質に特異的な抗体又はアプタマーを含むものであってよい。
【0082】
本発明の一具現例において、キットは、ELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)キットであってよい。
【0083】
本発明のさらに他の態様は、非アルコール性脂肪肝疾患の治療剤を投与した個体から分離された生物学的試料から、エクソソーム由来ApoA-1タンパク質のレベルを測定する測定段階を含む、非アルコール性脂肪肝疾患の予後予測のための情報提供方法である。
【0084】
本発明の一具現例において、方法は、測定されたタンパク質のレベルを、正常対照群の試料から測定された値と比較する比較段階をさらに含んでよい。
【0085】
本発明の一具現例において、測定段階は、タンパク質に特異的に結合する抗体又はアプタマーを試料と接触させる接触段階を含んでよい。
【0086】
本発明の一具現例において、生物学的試料は、個体から分離された組織、細胞、全血、血清又は血漿からなる群から選ばれるいずれか一つ以上であってよい。
【0087】
本発明の一具現例において、方法は、非アルコール性脂肪肝疾患の発病が疑われる個体から分離された試料から測定されたエクソソーム由来ApoA-1タンパク質のレベルが、正常対照群の試料から分離された試料から測定されたレベルよりも低い場合に、非アルコール性脂肪肝疾患の発病危険が高いか、非アルコール性脂肪肝疾患の予後が悪いと判定することであってよい。
【0088】
本発明の一具現例において、方法は、非アルコール性脂肪肝疾患の発病が疑われる個体から分離された試料から測定されたエクソソーム由来ApoA-1タンパク質のレベルが、正常対照群の試料から分離された試料から測定されたレベルよりも低い場合に、非アルコール性脂肪肝疾患の発病危険が高いか、非アルコール性脂肪肝疾患の予後が悪いと判定する判定段階をさらに含んでよい。
【0089】
本発明の一具現例において、非アルコール性脂肪肝疾患は、非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis;NASH)であってよい。
【発明の効果】
【0090】
本発明は、非アルコール性脂肪肝疾患の診断用マーカーに関し、より詳細には、エクソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質のレベルを測定する製剤を含むことにより、高い正確度で非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis;NASH)を診断できる組成物及びキット、並びに非アルコール性脂肪肝炎治療剤投与後の予後を正確に予測できる組成物及びキットに関し、本発明の組成物及びキットは、非アルコール性脂肪肝疾患の診断、非アルコール性脂肪肝疾患の予後予測及び非アルコール性脂肪肝疾患治療剤のスクリーニング製剤として様々に活用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1】BxC-e(前処理されていないBxCのエクソソーム)及びBxC-V37e(ラニフィブラノールで前処理された誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞に由来するエクソソーム)のプロテオミックシグネチャーを示すヒートマップである。
【0092】
図2】本発明の一実施例に係るBxC-V37eエクソソームの薬物シグネチャーを示すグラフである。
【0093】
図3】HepG2においてBxC-V37eシグネチャーのKEGG経路を示す。赤色表記は、BxC-V37eのシグネチャータンパク質を示し、青色表記は、BxC-V37e処理によって上方調節されたシグネチャー遺伝子を示し、黒色表記は、BxC-V37eのシグネチャー薬品と関連した標的を示す。
【0094】
図4】本発明の一実施例によってPBS又はBxC-V37eを投与した正常及びメチオニン/コリン欠乏(MCD-diet)食餌誘導NASHマウスの肝組織写真である。
【0095】
図5】本発明の一実施例に係るPBS又はBxC-V37eを投与したNASHマウスの血清から測定したALTレベルを示すグラフである。(正常(normal);n=6、MCD-diet;n=5)。
【0096】
図6】本発明の一実施例に係るPBS又はBxC-V37eを投与したNASHマウスの血清から測定したASTレベルを示すグラフである。(正常(normal);n=6、MCD-diet;n=5)。
【0097】
図7】本発明の一実施例によってPBS又はBxC-V37eを投与したMCD食餌誘導マウスの肝組織においてヘマトキシリン及びエオシン染色結果を示す写真である(GLP-1R作用剤は陽性対照群として使用され、スケールバーは50μm。)。
【0098】
図8】炎症、肥大及び脂肪症指数の指数を用いてNAFLD活性指数(NAFLD activity score;NAS)を分析した結果を示すグラフである(データは平均±SEMで表示され、* p<0.05;*** p<0.001)
【0099】
図9】誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞前駆細胞(BxC)から分離したエクソソーム(BxC-e)の脂肪分化抑制効果を示す図である。
【0100】
図10】本発明の一実施例によってPBS、GLP-1R作用剤又はBxC-V37eを投与したNASHマウスの血清から得たエクソソーム由来ApoA-1の免疫ブロット分析(ウェスタンブロット)結果を示す写真である。
【0101】
図11】本発明の一実施例によってPBS、GLP-1R作用剤又はBxC-V37eを投与したNASHマウスの血清から得たエクソソームApoA-1の免疫ブロット分析(ウェスタンブロット)結果を示すグラフである。
【0102】
図12】本発明の一実施例によって対照群(n=20)及び肥満NAFLD被験者の血清から、2兄糖尿病があるか(n=16)又はない(n=19)ヒトエクソソーム由来ApoA-1レベルを測定した結果を示すグラフである。
【0103】
図13図13から図24は、本発明の一実施例によってヒト血清中のエクソソーム由来ApoA-1タンパク質レベルと、代謝パラメータ[BMI、ALT、AST、SBP(Systolic blood pressure)、DBP(Diastolic blood pressure)、インスリン、HOMA-IR、Hs-CRP、TG、TC、HIS及びNAFLD肝脂肪スコア(liver fat score)]との相関関係を示すグラフである。図13は、ヒト血清中のエクソソーム由来ApoA-1タンパク質レベルと、BMIとの相関関係を示す。
図14】本発明の一実施例によるヒト血清中のエクソソーム由来ApoA-1タンパク質レベルと、ALTとの相関関係を示す。
図15】本発明の一実施例によるヒト血清中のエクソソーム由来ApoA-1タンパク質レベルと、ASTとの相関関係を示す。
図16】本発明の一実施例によるヒト血清中のエクソソーム由来ApoA-1タンパク質レベルと、SBPとの相関関係を示す。
図17】本発明の一実施例によるヒト血清中のエクソソーム由来ApoA-1タンパク質レベルと、DBPとの相関関係を示す。
図18】本発明の一実施例によるヒト血清中のエクソソーム由来ApoA-1タンパク質レベルと、インスリンとの相関関係を示す。
図19】本発明の一実施例によるヒト血清中のエクソソーム由来ApoA-1タンパク質レベルと、HOMA-IRとの相関関係を示す。
図20】本発明の一実施例によるヒト血清中のエクソソーム由来ApoA-1タンパク質レベルと、Hs-CRPとの相関関係を示す。
図21】本発明の一実施例によるヒト血清中のエクソソーム由来ApoA-1タンパク質レベルと、TGとの相関関係を示す。
図22】本発明の一実施例によるヒト血清中のエクソソーム由来ApoA-1タンパク質レベルと、TCとの相関関係を示す。
図23】本発明の一実施例によるヒト血清中のエクソソーム由来ApoA-1タンパク質レベルと、HISとの相関関係を示す。
図24】本発明の一実施例によるヒト血清中のエクソソーム由来ApoA-1タンパク質レベルと、NAFLD肝脂肪スコアとの相関関係を示す。
【0104】
図25図25図36は、本発明の一実施例によってヒト血清中のApoA-1タンパク質レベルと、代謝パラメータ[BMI、ALT、AST、SBP(Systolic blood pressure)、DBP(Diastolic blood pressure)、インスリン、HOMA-IR、Hs-CRP、TG、TC、HIS及びNAFLD肝脂肪スコア]との相関関係を示すグラフである。図25は、ヒト血清中のApoA-1タンパク質レベルと、BMIとの相関関係を示す。
図26】本発明の一実施例によるヒト血清中のApoA-1タンパク質レベルと、ALTとの相関関係を示す。
図27】本発明の一実施例によるヒト血清中のApoA-1タンパク質レベルと、ASTとの相関関係を示す。
図28】本発明の一実施例によるヒト血清中のApoA-1タンパク質レベルと、SBPとの相関関係を示す。
図29】本発明の一実施例によるヒト血清中のApoA-1タンパク質レベルと、DBPとの相関関係を示す。
図30】本発明の一実施例によるヒト血清中のApoA-1タンパク質レベルと、インスリンとの相関関係を示す。
図31】本発明の一実施例によるヒト血清中のApoA-1タンパク質レベルと、HOMA-IRとの相関関係を示す。
図32】本発明の一実施例によるヒト血清中のApoA-1タンパク質レベルと、Hs-CRPとの相関関係を示す。
図33】本発明の一実施例によるヒト血清中のApoA-1タンパク質レベルと、TGとの相関関係を示す。
図34】本発明の一実施例によるヒト血清中のApoA-1タンパク質レベルと、TCとの相関関係を示す。
図35】本発明の一実施例によるヒト血清中のApoA-1タンパク質レベルと、HISとの相関関係を示す。
図36】本発明の一実施例によるヒト血清中のApoA-1タンパク質レベルと、NAFLD肝脂肪スコアとの相関関係を示す。
【0105】
図37】MCD食餌マウスに、NASH治療候補物質として知られたデュラグルチドを投与し、PBS投与グループ対比の、血清中ApoA-1とエクソソーム由来ApoA-1の既存NASH関連パラメータであるAST数値変化率の相関関係を示すグラフである。
【0106】
図38】MCD食餌マウスに、NASH治療候補物質として知られたデュラグルチドを投与し、PBS投与グループ対比の、血清中ApoA-1とエクソソーム由来ApoA-1の既存NASH関連パラメータであるhs-CRP数値変化率の相関関係を示すグラフである。
【0107】
図39】MCD食餌マウスに、NASH治療候補物質として知られたデュラグルチドを投与し、PBS投与グループ対比の、血清中ApoA-1とエクソソーム由来ApoA-1の既存NASH関連パラメータであるACC1数値変化率の相関関係を示すグラフである。
【0108】
図40】MCD食餌マウスに、NASH治療候補物質として知られたデュラグルチドを投与し、PBS投与グループ対比の、血清中ApoA-1とエクソソーム由来ApoA-1の既存NASH関連パラメータであるNRF2数値変化率の相関関係を示すグラフである。
【0109】
図41】MCD食餌マウスにBxC-V37eを投与し、PBS投与グループ対比の、血清中ApoA-1とエクソソーム由来ApoA-1の既存NASH関連パラメータであるAST数値変化率の相関関係を示すグラフである。
【0110】
図42】MCD食餌マウスにBxC-V37eを投与し、PBS投与グループ対比の、血清中ApoA-1とエクソソーム由来ApoA-1の既存NASH関連パラメータであるhs-CRP数値変化率の相関関係を示すグラフである。
【0111】
図43】MCD食餌マウスにBxC-V37eを投与し、PBS投与グループ対比の、血清中ApoA-1とエクソソーム由来ApoA-1の既存NASH関連パラメータであるACC1数値変化率の相関関係を示すグラフである。
【0112】
図44】MCD食餌マウスにBxC-V37eを投与し、PBS投与グループ対比の、血清中ApoA-1とエクソソーム由来ApoA-1の既存NASH関連パラメータであるPCNA数値変化率の相関関係を示すグラフである。
【0113】
図45】MCD食餌マウスにBxC-eを投与し、PBS投与グループ対比の、血清中ApoA-1とエクソソーム由来ApoA-1の既存NASH関連パラメータであるhs-CRP数値変化率の相関関係を示すグラフである。
【0114】
図46】MCD食餌マウスにBxC-eを投与し、PBS投与グループ対比の、血清中ApoA-1とエクソソーム由来ApoA-1の既存NASH関連パラメータであるオイルレッドO(Oil red O)染色結果変化の相関関係を示すグラフである。
【0115】
図47】MCD食餌マウスにBxC-eを投与し、PBS投与グループ対比の、血清中ApoA-1とエクソソーム由来ApoA-1の既存NASH関連パラメータであるAnnexinA5数値変化率の相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0116】
非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)の治療剤を投与した個体から、エクソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質のレベルを測定する製剤を含む、非アルコール性脂肪肝疾患の予後予測用組成物に関する。
【実施例
【0117】
以下、本発明を、下記の実施例を用いてより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0118】
実施例1:材料及び方法
【0119】
1-1.動物実験
6週齢C57BL/6雄野生型(WT)マウスは、Koatech Co.,Ltdから入手し、12週間Chow食餌(n=6)又はメチオニン/コリン欠乏食餌(MCD-diet)(n=15)で飼育した。動物管理及び手順は、大韓民国の株式会社ノタス(Knotus Co.,Ltd)の齧歯類動物施設区域の承認を受けた(承認番号:19-KE-265)。MCD-diet食餌マウスは、18週に2nmol/kgデュラグルチド(dulaglutide,GLP-1受容体作用剤)を隔日で4週間皮下注射し、1匹当たりに400μgのBxC-e及びBxC-V37eを1日1回、週に3回、4週間静脈注射した。実験の終了時にマウスを麻酔し、血清と肝組織を収集した。環境条件は次を維持するように設定した:温度、23±3℃;相対湿度、55±15%;換気、10~20回の時間当たり換気;光度、150~300Lux;12時間明/12時間暗の周期で調節。
【0120】
1-2.細胞培養
細胞保持のために、ヒト一次肝細胞(human primary hepatocyte,ScienCell,Carlsbad,CA,USA)を、5%ウシ胎児血清(FBS)、1%ペニシリン抗生剤及び成長補助剤(ScienCell)及びTHP-1単核球(ATCC)と共に肝細胞基本培地(Hepatocyte Basal Medium)で培養した。そして、成長補助剤(ScienCell)及びTHP-1単核球(ATCC,Manassas,VA,USA)を、RPMI培地(Gibco,Waltham,MA,USA)で10% FBS(Hyclone,Chicago,IL,USA)及び1%抗生剤/抗真菌剤(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)と共に培養した。NASH in vitroモデルを作るために、ヒト一次肝細胞を2% FBS+DMEMにおいて100mM FA(2オレイン酸:1パルミチン酸)で48時間処理した後、無血清DMEMに100mM FA含有の100μg/mL BxC-V37eを供給した。また、500nMタプシガルギン(thapsigargin)を無血清DMEMにおいてBxC-V37eで24時間同時に処理した。一方、THP-1単核球は、10% FBS+RPMIにおいて24時間200ng/mL PMA、100ng/mL LPS及び20ng/mL IFNγで刺激した。その後、100μg/mL BxC-V37eを100ng/mL LPS及び20ng/mL IFNγで無血清DMEMにおいて24時間処理した。両細胞とも5% CO及び95%加湿インキュベーターで37℃で成長させた。リン酸化レベルを評価するために、ヒト一次肝細胞とTHP-1大食細胞を100μg/mL BxC-V37eで24時間処理した。その後、100mM FA又は200ng/mL PMA、100ng/mL LPS及び20ng/mL IFNγをそれぞれ一次肝細胞に30分間(phospho-Akt及びphospho-AMPK)又はTHP-1大食細胞に10分間(phospho-p65)添加した。
【0121】
1-3.誘導万能幹細胞(iPSC)由来間葉系幹細胞前駆細胞(BxC)の分離及び培養
誘導万能幹細胞(iPSC)を、10%のFBS及び10ng/mlのbFGFを添加したDMEMで7日間培養した。次に、培養された誘導万能幹細胞から、FACSを用いて、細胞表面にSSEA-4(stage-specific embryonic antigen 4)タンパク質を発現しないSSEA-4(-)細胞を分離した。また、分離されたSSEA-4(-)細胞を継代して上記と同じ培地で7日間追加培養し、本発明の誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞の前駆細胞を作製した。本発明者らは、前記誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞の前駆細胞をBxC(brexogen stem cell)と命名した。
【0122】
BxCと命名された誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞の前駆細胞を、培養培地[高グルコースDMEM(Gibco,Cat no.11995-065)、10%ウシ胎児血清(HyClone)、1% MEM非必須アミノ酸溶液(100X)(Gibco,Cat no.11140-050)]で追加培養した。
【0123】
1-4.誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞前駆細胞(BxC)由来エクソソーム(BxC-e)分離
培養された誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞の前駆細胞(以下、BxC)培養培地を回収して300xgで10分間遠心分離し、残っている細胞と細胞残余物を除去した。上澄液を取って0.22μmフィルターで濾過した後、高速遠心分離機(high speed centrifuge)を用いて10,000xg、4℃で70分間遠心分離した。遠心分離された上澄液をさらに取り、超遠心分離機(ultracentrifuge)を用いて100,000xg、4℃で90分間遠心分離して上澄液を除去した。下層に残っているエクソソームをPBS(phosphate buffered saline)に希釈して以下の実験に使用した。
【0124】
1-5.pan-PPAR作用剤前処理iMSCの培養及びRNA-seq分析
iMSC(継代数4)は、T-75フラスコ(Eppendorf,Hamburg,Germany)で37℃、5% CO及び95%湿度条件で15%ウシ胎児血清(FBS)、高グルコースダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s modified Eagle’s medium,DMEM)(Hyclone,Chicago,IL,USA)及び1%抗生剤/抗真菌剤(Hyclone,Chicago,IL,USA)で培養した。90%コンフルエンシー(confluency)に到達した時に、細胞をTryPLE Express(Thermo Fisher Science)で分離し、10,000cells/cmの密度で4層Cell Factoryシステム(Thermo Fisher science)に接種した。翌日、細胞を10μMラニフィブラノール(Lanifibranor)(Cayman,Ann Arbor,MI,USA)で24時間処理した後、培地を吸引し、DulbeccoのDPBS(phosphate buffered saline)(Hyclone)で洗浄した。
【0125】
RNAシーケンスは、Macrogen社製の応用プログラムによってRNAシーケンシングプロトコルを適用した。階層的クラスタリングは、|fold changes|≧2及び独立t-test p<0.05を満たす差等変動されたスクリプトのパターンを提示するための類似性尺度であり、完全連結(complete linkage)及びユークリッド距離(Euclidean distance)アルゴリズムを用いて分析した。gProfiler(https://biit.cs.ut.ee/gprofiler/gost)及びKEGG経路(http://www.genome.jp/kegg/pathway)に基づいて重要な遺伝子目録に対する遺伝子強化及び経路分析を行った。
【0126】
1-6.pan-PPAR作用剤前処理されたiMSCエクソソームの分離
ラニフィブラノール前処理iMSC由来のエクソソーム(BxC-V37e)を下記のように分離した。
【0127】
ラニフィブラノール前処理されたiMSC培地は、serum-free、xono-free StemPro MSC培地(Gibco)に替えた。培養3日後に培養液を収穫し、300gで10分間遠心分離した後、上澄液を2,000gで20分間遠心分離した。上澄液を10,000gでさらに80分間遠心分離した。その後、0.2μm真空フィルター(Merck Millipore,Burlington,MA,USA)で上澄液を濾過した。最後に、エクソソームは、100,000gで80分間超遠心分離によって分離され、その後、ペレットはPBSで洗浄して超遠心分離(Beckman Coulter,CA,USA)したし、エクソソームペレットをPBSに再懸濁させた。
【0128】
1-7.極低温透過電子顕微鏡(TEM)
フォルムバール/カーボン(formvar/carbon)フィルムでコートされた200-mesh銅グリッド(MiTeGen,Ithaca,NY,USA)を親水性処理した。EVサスペンション(4μL)をグリッドに置いてそれぞれ100%及び4℃の湿度及び温度で90秒間ブロットした。グリッドの細胞外小胞は、120kvでTalos L120C FEI TEM(Thermo Fisher Scientific)を用いて36,000倍の倍率で視覚化した。
【0129】
1-8.ナノ粒子追跡分析(NTA)分析
BxC-V37eに対する粒子サイズ分布及び濃度測定は、NTAに基づくnanosight NS300機器(Malvern Panalytical,Malvern,UK)で行った。分析のために、BxC-V37eを滅菌PBS(1:100)で希釈してNTAの最適体積に到達させた。測定は、23.0~25.2℃の範囲の室温でBlue 488nmレーザーとsCMOSカメラを数回反復して行った。サンプル分析は、シャッター600、ゲイン250、カメラレベル10、NTAバージョン3.00064及び感知臨界値10のようなカメラ設定及び処理条件で10分間行った。
【0130】
1-9.DiR及びDiD及び蛍光イメージングでBxC-V37eラベリング
BxC-V37eをLipophilic Tracers(Invitrogen,Waltham,MA,USA)のプロトコルによって37℃で10分間1μg/mL DiRバッファーと共に培養した。その後、DiR標識されたBxC-V37eを100,000xg及び4℃で80分間遠心分離し、PBS(Gibco)で洗浄した。最後に、200又は400μgのDiR標識されたBxC-V37eを0.1mL PBSに再懸濁し、静脈経路を通じてC56BL/6マウスに注入した。24時間後、DiR標識されたBxC-V37eをIn Vivoイメージングシステム(IVIS)(Caliper Life Sciences,Waltham,MA,USA)によって740nmの励起波長、790nmの励起波長及び790nmの放出波長で検出した。関心領域(ROI)の強度は、ステラジアン(steridian)当たり平方センチメートル当たり秒当たり最大光子数(p/s/cm/sr)の単位で表示した。DiD標識されたBxC-V37eを製造する手順は、上に説明した方法と同一にして製造した。DiD-標識されたBxC-V37eをヒト一次肝細胞又はTHP-1大食細胞に、それぞれの刺激の有無に関係なく24時間処理した。24時間後、DiD標識されたBxC-V37eは、Nikon Eclipse Ti2-U蛍光顕微鏡(Nikon,Tokyo,Japan)で観察した。
【0131】
1-10.生物情報学分析
HepG2細胞に100mM脂肪酸(2オレイン酸:2パルミチン酸)処理6時間後にRNeasyミニキット(Qiagen,Hilden,Germany)で全RNAを回収した。回収されたRNAは、GeneChip(登録商標)Human Gene 2.0 STアレイ(Affymetrix,Santa Clara,CA,USA)を用いてプロファイリングした。脂肪酸誘導発現変動遺伝子(differentially expressed genes;DEGs)は、fold changeカットオフ1.5と確認した。DEGは、FDR q-値カットオフ0.05(http://www.gsea-msigdb.org/gsea)でKEGGを用いた遺伝子セットの強化分析を受けた。BxC-V37e特徴は、転写体(transcriptomic)、タンパク質体(proteomic)及び連結性(Connectivity)マップ分析によって構成された。BxC-V37eを脂肪酸処理されたHepG2細胞に適用し、全RNAを前述のようにプロファイリングした。BxC-V37eによって誘導されたDEGは、fold changeカットオフ1.5と確認した。BxC-V37eが豊富なタンパク質は、LC-MS/MS(ヨンセ・プロテオム研究所,ソウル)を用いて定性及び定量的に確認した。BxC-V37eによって誘導されたDEGは、連結性マップ図分析によってBxC-V37eと類似の転写体プロファイルを有する薬物とその標的遺伝子を確認した。BxC-V37eによって誘導されたDEG、BxC-V37eのタンパク質及び確認されたBxC-V37e類似薬物の標的遺伝子は、BxC-V37eシグネチャーと確認された。確立されたBxC-V37eシグネチャーは、(https://string-db.org)との相互作用信頼度0.9においてタンパク質-タンパク質相互作用ネットワーク及び機能的強化分析を受けた。
【0132】
1-11.流細胞分析
分離されたエクソソームは、MACSPlex Exosome Kit,human(Miltenyi Biotec,Bergisch Gladbach,Germany)を用いて染色し、Attune NxTフローサイトメーター(Thermo Fisher Scientific)で分析した。肝細胞再生に対するエクソソーム効果を分析するために、肝細胞をエクソソーム処理後に抗ヒトCD90APC-Cy7(BioLegend,San Diego,CA,USA)で染色し、Attune NxTフローサイトメーター(Thermo Fisher Scientific)を用いて分析した。iMSCがMSCに対する典型的な細胞表面マーカーを発現するかを確認するために、iMSCをCD73APC、CD105PE、CD45FITC、CD31PE及びCD34APC(eBioscience,Waltham,MA,USA)及びCD90APC-Cy7(BioLegend)で染色した。分析は、Attune NxTフローサイトメーター(Thermo Fisher Scientific)を用いて行った。
【0133】
1-12.血清生化学検査
BxC-V37e注射4週後に血清サンプルを収集し、blood biochemical analyzer(7180,Hitachi,Japan)を用いて次の媒介変数を検査した:ALT(アラニントランスアミナーゼ(Alanine transaminase))、AST(アスパラギン酸トランスアミナーゼ(Aspartate transaminase))、TG(トリグリセロイド(Triglyceride))、ブドウ糖、TC(総コレステロール)、HDL_C(高密度リポタンパクコレステロール)、LDL_C(低密度リポタンパクコレステロール)、LDH(乳酸脱水素酵素)、GGT(Gamma-glutamyltransferase)。
【0134】
1-13.実時間qPCR(Real-time qPCR)
全RNAは、TRIzol(登録商標)(Ambion,Waltham,MA,USA)を用いて肝組織及び様々な細胞類型から分離された。cDNAは、AccuPower(登録商標)CycleScript RT PreMix dT20(Bioneer,Daejeon,South Korea)と共に1μgの全RNAを用いて合成した。増幅反応は、メーカーのプロトコルにしたがってPowerSYBR(登録商標)Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)を用いて行った。遺伝子発現レベルは、QuantStudioTM 5 Real-Time RCRシステム(Applied Biosystems)を用いて実時間qPCRで測定した。
【0135】
GAPDHは、各サンプルのmRNA量の差を正規化するために参照遺伝子として使用された。相対的な遺伝子発現レベルは、2-ΔΔCt方法を用いて分析し、それぞれの実験は3回行われた。
【0136】
1-14.ウェスタンブロット(Western blot)
細胞又は組織は、プロテアーゼ抑制剤(Thermo Fisher Scientific)が補充されたNP40溶解緩衝液(Life Technologies,Carlsbad,CA,USA)で溶解させた。タンパク質濃度は、メーカーのプロトコルにしたがってBradford AssayTM試薬(Thermo Fisher Scientific)を用いて決定した。サンプルを4x Laemmliバッファー(Bio-Rad Laboratories)で3:1に希釈し、100℃で10分間加熱した。タンパク質をprecast polyacrylamide Mini-PROTEAN TGX gels(Bio-Rad Laboratories,Hercules,CA,USA)にロード及び分離し、PVDFメンブレイン(Bio-Rad Laboratories)に移した。メンブレインをEveryBlotブロッキングバッファー(Bio-Rad Laboratories)で5分間遮断した後、一次抗体と共に4℃で一晩培養した。全ての一次抗体はEveryBlotブロッキングバッファーで希釈された。使用された一次抗体は次の通りである:anti-GM130、PCNA、AMPK、phospho-AMPK(Thr172)、phospho-p65(Ser536)、Pan-Akt、Phospho-Akt(Thr308)(Cell Signaling Technology、Leiden,The Netherlands)、anti-CD9、Calnexin、Abca1、IL-1β、p65、ACC1、Annexin5、β-actin、GAPDH(Abcam,Cambridge,UK)、anti-ApoA-1(LSBio,Seattle,WA,USA)、anti-TSG101、CD81(Invitrogen)、anti-TNF-α、PGC-1α、NRF2及びCHOP(Novusbio,Centennial,CO,USA)。CD81以外の全ての標的タンパク質は還元条件で行われた。メンブレインを10分間5回洗浄した後、二次抗体と共に1時間培養した。二次抗体は、抗ウサギIgGと抗マウスIgG(Abcam)を使用した。メンブレインを10分間5回洗浄した後、ECL SelectTMウェスタンブロッティング検出試薬(GE Healthcare,Little Chalfont,UK)を用いて標的タンパク質を検出し、ChemiDocイメージングシステム(Bio-Rad Laboratories)を用いてイメージを分析した。
【0137】
1-15.酵素連結免疫吸着剤分析(ELISA)
ELISA分析は、市販中のマウスELISAキットを用いて行った。メーカーのプロトコルにしたがってインスリン(Novus bio)、hs-CRP(R&D systems)、FFA(遊離脂肪酸)及びApoA-1(Abcam)分析を行った。インスリンに対する分析感度は<0.19ng/mLで、分析内及び分析間の分散係数は<5.93%及び<6.35%であった。hs-CRPに対する分析感度は<0.015ng/mLで、分析内及び分析間の分散係数は<7.7%及び<10.8%であった。ApoA-1に対する分析感度は11.2pg/mLで、分析内及び分析間分散係数はそれぞれ<4.7%及び<5.6%であった。
【0138】
1-16.組織病理学的分析
肝組織を10%パラホルムアルデヒドに固定し、切断、脱水、パラフィン包埋のような一般的な組織処理を行った。5μmの肝組織断面スライスをスライドに付着し、キシレンを用いて標本のパラフィンを除去した。エタノールで再水和した組織をヘマトキシリン&エオシン(H&E)で染色した。オイルレッドO(Oil red O)染色の場合、組織をOCT化合物(Sakura Finetek,Torrance,CA,USA)を用いて埋め立てた後、cryotome(Leica,Wetzlar,Germany)を用いて20μmで切片した。その後、Zen2.3ブルーエディションイメージ分析機(Carl Zeiss,Oberkochen,Germany)を用いて組織病理学的サンプルの分析を行い、総面積別染色面積の百分率に正規化した。NAFLD活性点数(NAS)の検査は、組織学的基準によってなされたし、全体面積による占有面積観察を基準に、大小胞性脂肪症、微細小胞性脂肪症及び肥大レベルは0~3点と評価した。脂肪症と肥大はいずれも40~100の倍率で評価された。炎症点数は、5個領域を無作為に選択し、0~3点と評価された。
【0139】
1-17.免疫組織化学染色
肝組織組片があるスライドを、60℃に保たれる乾燥器に入れ、1時間乾燥させた後、キシレンを用いてパラフィンを除去した。エタノールと水で再水和された組織を、0.03%過酸化酵素と共に15分間培養して内因性過酸化酵素を遮断した。Pres-EDTAバッファー(pH 9.0)を121℃で圧力鍋(press cooker)を用いて15分間反応させ、抗原回収を行った。非特異的反応を防止するため、4% BSA+デキストランを30分間添加した。その後、抗TNF-α(Abcam)一次抗体を1時間反応させた後、抗LAISTE IgG H&L(Abcam)二次抗体と共に30分間室温でゆっくり撹拌しながら培養した。その後、サンプルは、BX53生物学的顕微鏡(Olympus,Tokyo,Japan)でイメージングしたし、分析のために代表イメージをキャプチャーした。
【0140】
1-18.活性酸素種(Reactive oxygen species;ROS)分析
一次肝細胞を24時間400μM Hで刺激した。その後、BxC-V37eを無血清DMEM培養培地においてHで刺激された一次肝細胞に24時間処理した後DPBSで洗浄した。CellROX(登録商標)試薬(Life Technologies)を無血清DMEMに最終濃度5μMで細胞に添加し、37℃で30分間培養した。染色後、細胞を4%パラホルムアルデヒド(Fujifilm Wako Chemicals,Richmond,VA,USA)に10分間固定した後、DPBSで3回洗浄した。核と細胞体はそれぞれ、NucBlueTM固定細胞(Fixed Cell)染色又はCellTrackerTM(Life technologies)で対照染色された。この過程後、全てのサンプルをNikon Eclipse Ti2-U(Nikon,Tokyo,Japan)を用いて観察し、核強度によるROS陽性強度の百分率で分析した。
【0141】
1-19.細胞生存力分析
一次ヒト肝細胞(2×10cell/mL)を96ウェルプレートで成長させ、37℃及び5% CO条件で無血清DMEMに4時間培養した。450nmでの吸光度データ(OD値)は、マルチプレートリーダ(multiplate reader)(Thermo Fisher Scientific)で測定した。BxC-V37eが一次肝細胞の生存力に及ぼす影響は、メーカーのプロトコルによってCell Counting Kit-8(CCK-8)分析(Enzo life sciences,Farmingdale,NY,USA)を用いて測定した。
【0142】
1-20.ヒト血清の代謝パラメータ(metabolic parameters)及びエクソソームApoA-1濃度測定
ソウルアサン病院機関審議委員会(承認番号:2008-0367)とインハ大学病院(承認番号:08-115,2016-06-015)の承認を受けた研究プロトコル下で、20名の健康な被験者、19名の肥満NAFLD被験者及び16名の2型糖尿病を有する肥満NAFLD被験者から血清サンプルの代謝特性を確認した。健康な集団は、ソウルアサン病院産婦人科で良性疾患によって選択的腹部手術を受けた。全ての肥満グループは、腹腔鏡RYGB手術を受けた。悪性又は重症の肝又は腎臓疾患の被験者と妊娠又は授乳中の女性は除外されたし、全ての被験者に登録時に書面同意を受けた。NAFLDの診断は、臨床的特徴と血液検査に基づいて診断した。採血3日前に、全ての被験者は糖尿病と高血圧治療剤を中断したし、血液サンプルは12時間禁食後に採取され、血漿と血清は直ちに遠心分離で分離された。ALT、AST、空腹ブドウ糖、インスリン、HOMA-IR、コレステロール、トリグリセリド、肝脂肪症指数(Hepatic steatosis index;HIS)及びNAFLD肝脂肪指数(NAFLD肝脂肪スコア)及びhs-CRPの循環濃度を、当業界に公知の通りに測定した。エクソソーム由来ApoA-1濃度は、メーカーのプロトコルにしたがってヒトELISAキット(Abcam)を用いて測定した。ApoA-1に対する分析感度は<3ng/mLで、分析内及び分析間の分散係数はそれぞれ<4%及び<10%であった。
【0143】
1-21.統計分析
統計分析は、SPSS(IBM用バージョン18.0,Chicago,IL,USA)を用いて行われた。3個以上のグループが含まれた比較では、Tukeyの事後検定に対する一元分散分析(one-way ANOVA)を用いて統計分析が行われた。比較に2グループのみが含まれた場合には、対をなす単側スチューデントt検定を用いた。データは平均±標準誤差(SE)で表現され、0.05未満のp値は統計的に有意なものと見なした。
【0144】
実施例2:BxC-V37eエクソソームのNASHに対する効果確認
2-1.NASHに対するBxC-V37e特性分析
【0145】
LC-MS/MSによってBxC-V37eが豊富な総32個のタンパク質が確認されたし、アポリポタンパクA-1(apolipoprotein A-1)(豊富度=191.3)、CD81抗原(豊富度=183.8)、トロンボスポンジン-1(thrombospondin-1)(豊富度=155.7)、コラーゲンアルファ-1(collagen alpha-1)(豊富度=118.1)及びアルファ-2-アンチプラスミノ(alpha-2-antiplasmin)(77.2)が含まれたことが確認された(図1)。
【0146】
BxC-V37eの薬理学的結果を機能的に予測するために連結マップ分析を行った結果、59個の標的遺伝子と関連した18個の薬物がBxC-V37eの転写体プロファイルと有意に類似していることを確認したし、ここには、トリシリビン(AKT抑制剤、Connectivity score=99.75)、EI-273(PKC抑制剤、99.59)、4,5-ジアニリノフタルアミド(EGFR抑制剤、98.63)、BRD-A94297859(XIAP抑制剤、98.49)及びGW-0742(PPAR受容体作用剤、94.6)が含まれたことが確認された(図2)。また、機能的濃縮は、BxC-V37eによって110個の上方調節された遺伝子が117個の標準信号経路で有意に豊富であることを示した(q<0.05)。したがって、BxC-V37eシグネチャーは、蛋白体、転写体及び連結マップ分析によって確認された108個の遺伝子で構成されたことを確認した。
【0147】
タンパク質-タンパク質相互作用ネットワーク及び機能的強化分析は、BxC-V37eシグネチャーが脂肪代謝、線維症、局所付着を含む炎症反応(q=5.7E-04)、ケモカイン信号伝達経路(q=5.5E-03)、非アルコール性脂肪肝疾患(q=6.2E-03)、NF-kappa B信号伝達経路(q=8.7E-03)、インスリン信号伝達経路(q=1.1E-02)及びPPAR信号伝達経路(q=4.2E-02)と関連した信号伝達経路において非常に強化していることを示し(図3)、このような結果は、BxC-V37eを肝脂肪症及び炎症に適用する可能性を示唆する。
【0148】
2-2.NASHモデルにおいてBxC-V37eの生体内評価
BxC-V37eの治療機能を、MC-欠乏食餌(MC-deficient diet)によって誘導されたNASHのマウスモデルを用いて調べた。肝の全体的な形態を調べた結果、MCD-dietマウスの肝は、正常マウスに比べて青白く変わることが観察された(図4)。これに対し、BxC-V37eで処理されたNASHマウスの肝は、対照群に見られるように、より暗く観察された。そして、デュラグルチド(Dulaglutide)及びPBS処理動物の肝では差異が観察されなかった。肝全体の重さは、PBS及びBxC-V37e処理されたNASHマウスにおいて差がなかった(データは表示されない;MCD+PBS,5.78±0.12%対MCD+BxC-V37e,5.33±0.23%)。血清分析は、PBS処理された動物に比べて、MCD+BxC-V37eグループの血清において肝機能マーカー(ALT及びAST)の濃度が有意に減少したことが見られた(図5及び図6)。
【0149】
また、H&E染色及びBxC-V37eの処理後の形態変化を観察した結果、MCD+PBSグループに比べて、MCD+BxC-V37eグループにおいてより少ない数の脂肪滴(lipid droplet)及び炎症細胞の浸潤減少が発見されたし(図7)、NAFLD深刻度の指標であるNAS点数分析は、MCD+BxC-V37eグループにおいて減少した(図8)。要するに、このようなデータは、BxC-V37eが一般的にNASHにおいて肝機能を改善させるということを示唆する。
【0150】
2-3.誘導万能幹細胞由来間葉系幹細胞前駆細胞由来エクソソーム(BxC-e)の脂肪細胞分化抑制効果確認
ヒト脂肪細胞(primary human adipocyte,ATCC,USA)を6ウェルプレートに分注し、1%ペニシリン-ストレプトマイシン及び10% CSが添加されたDMEM培地(Gibco,USA)を用いて37℃、5% CO培養器でコンフルエント(confluent)な状態に育つまで(最大で6日)培養させた。
【0151】
脂肪細胞を6日培養した後、1%ペニシリン-ストレプトマイシン及び10% FBSが添加されたDMEM培地(Gibco,USA)に、脂肪分化培地[34μMパントテン酸塩(pantothenate,Sigma)、66μMビオチン(biotin,Sigma)、0.5mMインスリン(Sigma)、1mMデキサメタゾン(dexamethasone,Sigma)及び0.05M IBMX(Sigma)]が添加された基本培地で5日間培養した。その後、DMEM培地(Gibco,USA)に脂肪分化培地[34μMパントテン酸塩(pantothenate,Sigma)、66μMビオチン(biotin,Sigma)、0.5mMインスリン(Sigma)及び1mMデキサメタゾン(dexamethasone,Sigma)]が添加された培地でさらに9日間培養した。
【0152】
このとき、陰性対照群(Negative Control)は、10% FBSが添加されたDMEM培地で14日間培養した脂肪細胞、溶媒対照群(Vehicle control)は、BxC-eを処理せずに脂肪分化条件で14日間培養された脂肪細胞であり、BxC-e処理群は、BxC-eが含まれた脂肪分化条件において14日間培養された脂肪細胞である。
【0153】
培養液を完全に除去した後、PBSで2回洗浄し、10%ホルマリン溶液を400ul/wellで添加して細胞を1時間固定させた。PBSで洗浄し、オイルレッドO標準溶液(Oil-red O working solution)を400ul/wellで添加し、分化した脂肪細胞内の脂肪を2時間染色させた。その後、オイルレッドO標準溶液を除去し、二次蒸留水を用いてウェルの壁に付いているオイルレッドO標準溶液を完全に除去した後、乾燥器に入れて5分間乾燥させた後、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)を500ul/wellになるようにウェルに添加した。
【0154】
マイクロプレートリーダ(Model 680 microplate reader,Bio-Rad,USA)を用いて490nmで吸光度を測定し、脂肪の量を比較した。
【0155】
図9から確認できるように、本発明のBxCに由来するエクソソーム(BxC-e)は、脂肪細胞の脂肪形成(lipogenesis)を抑制する効果に優れていることが分かる。
【0156】
2-4.エクソソーム由来ApoA-1タンパク質を用いた非アルコール性脂肪肝疾患診断の正確度評価
免疫ブロット分析を用いてBxC-V37eにおいてApoA-1タンパク質レベルを定量的比較した。分析の結果、エクソソーム由来ApoA-1タンパク質は、NASHマウスでは減少したのに対し、BxC-V37eを投与した動物では増加した(図10及び図11)。また、血清中のエクソソーム由来ApoA-1は、対照群に比べてNAFLDを有する肥満患者において減少した(図12)。
【0157】
そして、ELISA分析によって得たヒトの血清ApoA-1とエクソソーム由来ApoA-1数値と非アルコール性脂肪肝疾患関連代謝パラメータ(metabolic parameter)との相関関係を、SPSS統計プログラムを用いてスピアマン(spearman)方式で分析した。R値が(+)であれば正の相関関係を、(-)であれば負の相関関係を意味し、p値が0.05以下であれば統計的な有意性を有すると見なした。
【0158】
相関関係分析の結果、ヒトの血清においてApoA-1と代謝パラメータとの相関関係を分析したとき、エクソソーム由来ApoA-1とほぼ全ての非アルコール性脂肪肝疾患関連代謝パラメータは強い負の相関関係を示した(図13図24)。そして、エクソソーム由来ApoA-1と非アルコール性脂肪肝疾患の関連代謝パラメータとの相関関係は、TC指標以外にはいずれも、ヒト血清ApoA-1と代謝パラメータとの相関関係よりも強力であることが観察された(図25図36)。
【0159】
このような結果は、エクソソーム由来ApoA-1タンパク質を用いた非アルコール性脂肪肝疾患の診断が、既存の血清中ApoA-1タンパク質をマーカーとして用いて非アルコール性脂肪肝疾患を診断する方法に比べて、飛び切り高い正確度で当該疾患を識別できることを意味し、血清中エクソソーム由来ApoA-1が非アルコール性脂肪肝疾患に対する新しいバイオマーカーとして利用可能であることを示唆する。
【0160】
2-5.エクソソーム由来ApoA-1タンパク質を用いた非アルコール性脂肪肝疾患予後予測の正確度評価
NASH治療剤投与後に血清中ApoA-1とエクソソーム由来ApoA-1が既存NASH関連パラメータの変化をどれくらいよく反映するかをテストし、エクソソーム由来ApoA-1を用いた予後分析正確度を評価した。
【0161】
MCD食餌マウスに、NASH治療候補物質として知られたデュラグルチド(Dulaglutide)、BxC-e及びBxC-V37eを投与し、PBSグループ対比の、血清中ApoA-1とエクソソーム由来ApoA-1の既存NASH関連パラメータであるAST、ACC1、hs-CRP、NRF2、PCNA、AnnexinA5数値及びオイルレッドO染色結果の変化率の連関性を計算した後、SPSS統計プログラムの単純回帰分析(simple regression analysis)を用いて統計分析した(P値が0.05以下であれば、統計的な有意性を有すると見なす。)。
【0162】
実験の結果、図37図40から確認できるように、MCD食餌マウスのデュラグルチド投与群のPBSグループ対比AST、ACC1、hs-CRP及びNRF2数値の変化率は、PBSグループとデュラグルチド投与群間の血清中ApoA-1の変化率に比べて、PBSグループとデュラグルチド間のエクソソーム由来ApoA-1の変化率とより有意な相関関係を有することが確認された。
【0163】
そして、図41図44から確認できるように、MCD食餌マウスのBxC-V37e投与群のPBSグループ対比AST、ACC1、hs-CRP及びPCNA数値の変化率は、PBSグループとBxC-V37e投与群間の血清中ApoA-1の変化率に比べて、PBSグループとBxC-V37e間のエクソソーム由来ApoA-1の変化率とより有意な相関関係を有することが確認された。
【0164】
さらに、図45図47から確認できるように、BxC-eを投与した場合にも、MCD食餌マウスのBxC-e投与群のPBSグループ対比hs-CRP及びAnnexinA5数値及びオイルレッドO染色結果の変化率は、PBSグループとBxC-e投与群間の血清中ApoA-1の変化率に比べて、PBSグループとBxC-e投与群間のエクソソーム由来ApoA-1の変化率とより有意な相関関係を有することが確認された。
【0165】
これらの結果は、デュラグルチド、BxC-e又はBxC-V37eのような治療剤を投与した後に、肝機能指標及び脂肪生成指標、炎症指標の変化程度を、血清中ApoA-1に比べてエクソソーム由来ApoA-1がより正確に反映することを示す。したがって、本発明に係る非アルコール性脂肪肝疾患の予後予測用組成物は、既存の予後予測組成物又は予後予測方法に比べてより正確に非アルコール性脂肪肝疾患の改善程度を正確に反映でき、非アルコール性脂肪肝疾患の診断と関連して様々に利用可能であることを示唆する。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明は、非アルコール性脂肪肝疾患の診断用マーカーに関し、より詳細には、エクソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質のレベルを測定する製剤を含み、高い正確度で非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis;NASH)を診断できる組成物及びこれを含むキットに関する。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
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図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
【手続補正書】
【提出日】2024-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質のレベルを測定する製剤を含み、非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)の治療剤を投与された個体からの生物学的試料に用いられる、非アルコール性脂肪肝疾患の予後予測用組成物。
【請求項2】
前記非アルコール性脂肪肝疾患は、非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis;NASH)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記タンパク質のレベルを測定する製剤は、前記タンパク質に特異的な抗体又はアプタマーを含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体の断片及び組換え抗体からなる群から選ばれるいずれか一つ以上である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
クソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質のレベルを測定する製剤を含み、非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)の治療剤を投与された個体からの生物学的試料に用いられる、非アルコール性脂肪肝疾患の予後予測用キット。
【請求項6】
前記非アルコール性脂肪肝疾患は、非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis;NASH)である、請求項に記載のキット。
【請求項7】
前記タンパク質のレベルを測定する製剤は、前記タンパク質に特異的な抗体又はアプタマーを含むものである、請求項に記載のキット。
【請求項8】
ELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)キットである、請求項に記載のキット。
【請求項9】
非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)の治療剤を投与した個体から分離された生物学的試料から、エクソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質のレベルを測定する測定段階を含む、非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)の予後予測のための情報提供方法。
【請求項10】
測定されたタンパク質のレベルを、正常対照群の試料から測定された値と比較する比較段階をさらに含む、請求項9に記載の情報提供方法。
【請求項11】
前記測定段階は、前記タンパク質に特異的に結合する抗体又はアプタマーを試料と接触させる接触段階を含む、請求項10に記載の情報提供方法。
【請求項12】
前記生物学的試料は、個体から分離された組織、細胞、全血、血清又は血漿からなる群から選ばれるいずれか一つ以上である、請求項9に記載の情報提供方法。
【請求項13】
前記非アルコール性脂肪肝疾患は、非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis;NASH)である、請求項9に記載の情報提供方法。
【請求項14】
前記情報提供方法は、非アルコール性脂肪肝疾患の発病が疑われる個体から分離された試料から測定されたエクソソーム由来ApoA-1タンパク質のレベルが、正常対照群の試料から分離された試料から測定されたレベルよりも低い場合に、非アルコール性脂肪肝疾患の発病危険が高いか、非アルコール性脂肪肝疾患の予後が悪いと判定する、請求項9に記載の情報提供方法。
【請求項15】
クソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質のレベルを測定する製剤を含み、非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)が発病した或いは発病が疑われる個体からの生物学的試料に用いられる、非アルコール性脂肪肝疾患診断用組成物。
【請求項16】
前記非アルコール性脂肪肝疾患は、非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis;NASH)である、請求項15に記載の非アルコール性脂肪肝疾患診断用組成物。
【請求項17】
前記タンパク質のレベルを測定する製剤は、前記タンパク質に特異的な抗体又はアプタマーを含むものである、請求項15に記載の非アルコール性脂肪肝疾患診断用組成物。
【請求項18】
前記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体の断片及び組換え抗体からなる群から選ばれるいずれか一つ以上である、請求項17に記載の非アルコール性脂肪肝疾患診断用組成物。
【請求項19】
クソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質のレベルを測定する製剤を含み、非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)が発病した或いは発病が疑われる個体からの生物学的試料に用いられる、非アルコール性脂肪肝疾患診断用キット。
【請求項20】
前記非アルコール性脂肪肝疾患は、非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis;NASH)である、請求項19に記載の非アルコール性脂肪肝疾患診断用キット。
【請求項21】
前記タンパク質のレベルを測定する製剤は、前記タンパク質に特異的な抗体又はアプタマーを含むものである、請求項19に記載の非アルコール性脂肪肝疾患診断用キット。
【請求項22】
ELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)キットである、請求項19に記載の非アルコール性脂肪肝疾患診断用キット。
【請求項23】
非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)が発病した或いは発病が疑われる個体から分離された生物学的試料から、エクソソーム由来ApoA-1(Exosomal ApoA-1)タンパク質のレベルを測定する測定段階を含む、個体の非アルコール性脂肪肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease,NAFLD)診断のための情報提供方法。
【請求項24】
測定されたタンパク質のレベルを、正常対照群の試料から測定された値と比較する比較段階をさらに含む、請求項23に記載の情報提供方法。
【請求項25】
前記測定段階は、前記タンパク質に特異的に結合する抗体又はアプタマーを試料と接触させる接触段階を含む、請求項24に記載の情報提供方法。
【請求項26】
前記生物学的試料は、個体から分離された組織、細胞、全血、血清又は血漿からなる群から選ばれるいずれか一つ以上である、請求項23に記載の情報提供方法。
【請求項27】
生物学的試料から測定した値が正常対照群試料の値よりも低い場合に非アルコール性脂肪肝疾患であると判定する判定段階をさらに含む、請求項24に記載の情報提供方法。
【請求項28】
前記非アルコール性脂肪肝疾患は、非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis;NASH)である、請求項23に記載の情報提供方法。
【国際調査報告】