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特表2024-521074標的搬送アセンブリおよび照射システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】標的搬送アセンブリおよび照射システム
(51)【国際特許分類】
   G21K 1/02 20060101AFI20240521BHJP
   H05H 13/00 20060101ALI20240521BHJP
   G21K 5/08 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G21K1/02 C
H05H13/00
G21K5/08 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571319
(86)(22)【出願日】2022-05-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 US2022027815
(87)【国際公開番号】W WO2022245550
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】17/303,126
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516236702
【氏名又は名称】キュリウム ユーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】キセレフ, マキシム
【テーマコード(参考)】
2G085
【Fターム(参考)】
2G085AA11
2G085BA17
2G085BE01
(57)【要約】
標的搬送アセンブリは、筐体と、標的と、コリメータとを含む。筐体は、真空窓箔によって分割される、コリメータ区画および標的区画を含み、コリメータは、コリメータ区画内に除去可能に配置され、標的は、標的区画内に配置される。コリメータ区画は、照射位置におけるサイクロトロンビームラインに取り付けられ、標的区画は、照射位置における冷却流体供給ラインおよび冷却流体帰還ラインと流体連通している。標的は、冷却流体供給ラインからの冷却流体によって冷却される。コリメータは、標的を照射するためにサイクロトロンビームラインからの粒子ビームを指向し、ビーム進入径と、ビーム退出径とを含む。コリメータは、コリメータ区画と熱接触している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射システムの照射位置へ、およびそれから標的を移送するための標的搬送アセンブリであって、前記標的搬送アセンブリは、
少なくともコリメータ区画と、標的区画とを含む筐体であって、前記コリメータ区画および前記標的区画は、真空窓箔によって分割され、前記コリメータ区画は、前記照射位置におけるサイクロトロンビームラインに取り付けられ、前記標的区画は、前記照射位置における冷却流体供給ラインおよび冷却流体帰還ラインと流体連通している、筐体と、
前記標的区画内に固定され、前記冷却流体供給ラインからの冷却流体によって冷却される、標的と、
前記コリメータ区画内に除去可能に搭載され、前記標的を照射するために前記サイクロトロンビームラインからの粒子ビームを指向するように配置される、コリメータであって、前記コリメータは、進入径と、退出径とを含み、前記コリメータは、前記コリメータ区画と熱接触している、コリメータと
を備える、標的搬送アセンブリ。
【請求項2】
前記標的区画はさらに、前記標的を前記標的区画内の定位置に固定するためのバッキングスペーサを含み、冷却流体が前記標的の後方を通過することを可能にする、請求項1に記載の標的搬送アセンブリ。
【請求項3】
前記標的区画はさらに、少なくとも1つの付加的な標的を含み、各付加的な標的は、前記粒子ビームが先の標的から退出した後、前記粒子ビームからの放射線を吸収する、請求項1に記載の標的搬送アセンブリ。
【請求項4】
前記コリメータ区画に隣接する流体筐体をさらに備え、前記流体筐体の流体は、前記冷却流体供給ラインに結合されるチャネルを通して、前記流体筐体に進入する、請求項1に記載の標的搬送アセンブリ。
【請求項5】
前記筐体はさらに、前記コリメータ区画に熱的に結合される複数のフィンを含み、前記複数のフィンのそれぞれは、前記コリメータと前記流体との間の接触面積を増加させ、前記コリメータと前記冷却流体との間の熱交換を促進するように構成される、請求項4に記載の標的搬送アセンブリ。
【請求項6】
前記冷却流体は、前記標的区画内の前記標的の周囲に流動し、前記標的が前記粒子ビームによって照射されるにつれて、前記標的を冷却する、請求項1に記載の標的搬送アセンブリ。
【請求項7】
照射システムの標的搬送アセンブリのコリメータ区画内に含められるコリメータであって、前記コリメータは、ビーム進入径と、ビーム退出径と、内側表面と、外側表面とを有し、前記ビーム進入径は、前記退出径よりも大きく、前記標的搬送アセンブリ内に含められる標的を照射するために粒子ビームを指向するように配置される狭窄チャネルを形成し、前記コリメータの前記内側表面は、前記粒子ビームと前記ビーム進入径における前記コリメータの前記内側表面との間の入射角が、前記粒子ビームと前記ビーム退出径における前記コリメータの前記内側表面との間の入射角よりも大きくあるように湾曲される、コリメータ。
【請求項8】
前記コリメータは、電位計に接続される、少なくとも1つの電気的に絶縁された区分を含む、請求項7に記載のコリメータ。
【請求項9】
前記コリメータの区分は、保定リングを用いて、前記コリメータ区画に除去可能に取り付けられる、請求項8に記載のコリメータ。
【請求項10】
前記区分は、陽極酸化することによって絶縁される、請求項8に記載のコリメータ。
【請求項11】
前記コリメータは、純アルミニウムおよびアルミニウム合金のうちの少なくとも1つから加工される、請求項7に記載のコリメータ。
【請求項12】
前記コリメータの前記外側表面は、前記コリメータ区画に熱的に結合される、請求項7に記載のコリメータ。
【請求項13】
照射システムであって、
粒子ビームを発生させるためのサイクロトロンビームラインと、
標的を照射するための標的ステーションと
を備え、
前記標的ステーションは、
筐体と、
前記標的を含む、標的搬送アセンブリであって、前記標的搬送アセンブリは、前記標的ステーション内の照射位置へ、およびそれから前記標的を移送する、標的搬送アセンブリと、
前記照射位置へ、およびそれから前記標的搬送アセンブリを移動させるための、垂直運搬システムと、
前記標的搬送アセンブリを前記照射位置に固定し、水および真空用取付具を前記標的搬送アセンブリに提供するための、前面および背面クランプと
を備える、照射システム。
【請求項14】
前記垂直運搬システムは、
ウインチと、
前記標的搬送アセンブリに除去可能に接続されるケーブル取付具であって、前記ウインチは、前記照射位置へ、およびそれから前記標的搬送アセンブリを移送するために、前記ケーブルの長さを調節する、ケーブル取付具と
を含む、請求項13に記載の照射システム。
【請求項15】
前記ケーブル取付具は、前記ケーブル取付具を前記標的搬送アセンブリに除去可能に取り付け、それから取り外すための磁石を含む、請求項14に記載の照射システム。
【請求項16】
前記前面および背面クランプは、ねじジャック機構を使用して、前記標的搬送アセンブリを前記照射位置に固定し、そこから除去するように推進され、前記ねじジャック機構は、左巻および右巻ねじ山付きねじを含む、請求項13に記載の照射システム。
【請求項17】
前記前面および背面クランプは、前記標的搬送アセンブリを前記照射位置に固定するように同時に作動される、請求項13に記載の照射システム。
【請求項18】
前記前面および背面クランプは、同時に、前記標的搬送アセンブリを前記照射位置から解放し、前記標的搬送アセンブリを前記照射位置から除去する、請求項13に記載の照射システム。
【請求項19】
前記標的搬送アセンブリは、ビーム進入側と、前記ビーム進入側に対向する側とを含み、前記流体の入口および出口は、対向側に隣接する、請求項13に記載の照射システム。
【請求項20】
標的を照射するための方法であって、
再利用可能な標的搬送アセンブリを提供することであって、前記再利用可能な標的搬送アセンブリは、
標的区画と、コリメータ区画とを含む、筐体と、
前記標的区画内に配置される、少なくとも1つの標的と、
前記コリメータ区画内の少なくとも1つのコリメータと
を備える、ことと、
垂直運搬システムを使用して、照射システムの標的ステーション内の照射位置に前記標的搬送アセンブリを位置付けることと、
粒子ビームを用いて、前記標的搬送アセンブリ内に配置される前記少なくとも1つの標的を照射し、放射性同位体を生産することであって、前記粒子ビームは、前記少なくとも1つのコリメータによって前記少なくとも1つの標的に指向されることと、
前記垂直運搬システムを使用して、前記標的搬送アセンブリを前記照射位置から除去することと
を含む、方法。
【請求項21】
マスタスレーブマニピュレータを使用して、前記標的区画から前記標的を除去することをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項22】
マスタスレーブマニピュレータを使用して、前記コリメータを前記コリメータ区画から除去することと、
前記コリメータの部品を前記標的搬送アセンブリの他の部品とは別個に処分することと
をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
マスタスレーブマニピュレータを使用して、前記標的区画と前記コリメータ区画との間に配置される、真空窓および真空シールを置換することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記照射システムの遮蔽されたチャンバ内のマスタスレーブマニピュレータを使用して、前記標的搬送アセンブリを改造することと、
続いて、少なくとも1つの付加的な標的に照射するために、前記改造された標的搬送アセンブリを再利用することと
をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記標的搬送アセンブリが前記照射位置から除去されるとき、高度に活性化された部品を伴わない、アクセス可能な標的ステーションを提供することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その開示が、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる、2021年5月20日に出願された、米国非仮特許出願第17/303,126号の優先権を主張する。
【0002】
(分野)
本分野は、概して、放射性同位体の生産に関し、より具体的には、放射性同位体を調製するためのシステムおよび方法における使用のための標的搬送アセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
放射性医薬品、すなわち、放射性元素(例えば、放射性同位体)を組み込む薬品は、典型的には、診断的および/または療法的目的のために核医学において使用される。放射性同位体は、直接生産(例えば、粒子ビームを使用する陽子または中性子誘起反応)によって生産され得る。照射システムによる少なくともいくつかの放射性同位体の生産では、標的搬送装置が、(例えば、標的が照射された後)放射性同位体として、標的材料を照射システムの中へ、および照射システムから外へ移動させるために使用され得、したがって、放射性同位体は、安全に回収され得る。これらのシステムでは、少なくともいくつかの照射された部品は、照射システムから除去されることができない。例えば、粒子ビームを標的材料に誘導するコリメータは、標的搬送装置のように照射システムから除去されない。保守および修復が、「高温」である(すなわち、照射された部品からの高い放射線レベルを含む)照射システム上で遂行されることができないため、照射された部品が、閾値放射線レベルを下回って「冷え」得るように、最大6ヶ月の保守および修復のための遅延が存在し得る。故に、全ての照射された部品を照射システムから除去し、放射線レベルを低下させることを促進し、人員の放射線暴露を低減させ、照射システムの保守および修復に対して要求されるダウンタイムを低減させる、方法およびシステムに対する必要性が、存在する。
【0004】
本背景の節は、下記に説明および/または請求される本開示の種々の側面に関連し得る技術の種々の側面を読者に紹介することが意図される。本議論は、本開示の種々の側面のより深い理解を促進するために、背景情報を読者に提供する際に役立つと考えられる。故に、これらの記述は、先行技術の承認としてではなく、本観点において熟読されるものであることを理解されたい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(簡単な要約)
一側面では、照射システムの照射位置へ、およびそれから標的を移送するための標的搬送アセンブリは、コリメータ区画と、標的区画とを含む筐体と、標的と、コリメータとを含む。コリメータ区画は、内側表面と、外側表面とを含み、コリメータ区画および標的区画は、真空窓箔によって分割される。コリメータ区画は、サイクロトロンビームラインに取り付けられ、標的区画は、照射位置における冷却流体供給ラインおよび冷却流体帰還ラインと流体連通している。標的は、標的区画内に固定され、冷却流体供給ラインからの冷却流体によって冷却される。コリメータは、コリメータ区画内に除去可能に搭載され、標的を照射するためにサイクロトロンビームラインからの粒子ビームを指向するように配置される。コリメータは、進入径と、退出径とを含み、コリメータは、コリメータ区画の内側と熱的に接触している。
【0006】
別の側面では、照射システムの標的搬送アセンブリのコリメータ区画内に含められるコリメータは、ビーム進入径と、ビーム退出径と、内側表面と、外側表面とを有する。ビーム進入径は、退出径よりも大きく、標的搬送アセンブリ内に含められる標的を照射するために粒子ビームを指向するように配置される狭窄チャネルを形成する。コリメータの内側表面は、粒子ビームとビーム進入径におけるコリメータの内側表面との間の入射角が、粒子ビームとビーム退出径におけるコリメータの内側表面との間の入射角よりも大きくあるように湾曲される。
【0007】
さらなる別の側面では、照射システムは、粒子ビームを発生させるためのサイクロトロンビームラインと、標的を照射するための標的ステーションとを含む。標的ステーションは、筐体と、標的搬送アセンブリと、垂直運搬システムと、前面および背面クランプとを含む。標的搬送アセンブリは、標的を含み、標的ステーション内の照射位置へ、およびそれから標的を移送する。垂直運搬システムは、照射位置へ、およびそれから標的搬送アセンブリを移動させる。前面および背面クランプは、標的搬送アセンブリを照射位置に固定し、水および真空用取付具を標的搬送アセンブリに提供する。
【0008】
また別の側面では、標的を照射するための方法は、再利用可能な標的搬送アセンブリを提供することと、垂直運搬システムを使用して、照射システムの標的ステーション内の照射位置に標的搬送アセンブリを位置付けることと、粒子ビームを用いて、標的搬送アセンブリ内に配置される少なくとも1つの標的を照射し、放射性同位体を生産することと、垂直運搬システムを使用して、標的搬送アセンブリを照射位置から除去することとを含む。標的搬送アセンブリは、標的区画と、コリメータ区画とを含む、筐体と、標的区画内に配置される、少なくとも1つの標的と、コリメータ区画内の少なくとも1つのコリメータとを含む。粒子ビームは、少なくとも1つのコリメータによって少なくとも1つの標的に指向される。
【0009】
上記に述べられた側面と関連して言及される特徴の種々の微調整が、存在する。さらなる特徴もまた、同様に、上記に述べられた側面内に組み込まれ得る。これらの微調整および付加的な特徴は、個々に、または任意の組み合わせにおいて存在してもよい。例えば、図示される実施形態のいずれかと関連して下記に議論される種々の特徴は、単独で、または任意の組み合わせにおいて、上記に説明される側面のいずれかの中に組み込まれ得てもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、標的を照射し、放射性同位体を発生させるための例示的システムの側面図である。
【0011】
図2A図2Aは、図1に示される、例示的システムの断面図である。
【0012】
図2B図2Bは、図1に示される、例示的システムの機械的運搬システムの概略図である。
【0013】
図3図3は、図1のシステムとの併用にとって好適な例示的標的搬送アセンブリの斜視図である。
【0014】
図4図4は、直線「X-X」に沿って得られる、図3に示される例示的標的搬送アセンブリの断面図である。
【0015】
図5図5は、図3に示される、例示的標的搬送アセンブリの別の斜視正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
対応する参照文字は、図面のいくつかの図全体を通して、対応する部品を示す。
【0017】
(詳細な説明)
図1は、標的を照射し、放射性同位体を発生させるための例示的照射システム100の側面図である。システム100は、例えば、限定ではないが、天然ルビジウム標的を含む標的材料を照射し、例えば、限定ではないが、Sr-82を含む種々の放射性同位体を発生させ、別様に処理するために使用されてもよい。システム100は、ビーム進入口102からビーム進入口の対向側の側面104まで跨架し、システム100は、概して、標的ステーション106と、排気されたサイクロトロンビームライン108とを含む。標的搬送アセンブリ200(図2Aに示される)は、標的搬送アセンブリ200が、照射位置にあるとき、標的ステーション106内に含められる。粒子ビーム(例えば、低エネルギーの30MeVの陽子ビームまたは高エネルギーの70MeVの陽子ビーム)は、サイクロトロン(ここで図示される)によって発生され、矢印Aの方向において、サイクロトロンビームライン108から標的ステーション106まで通過する。
【0018】
照射システム100は、好適には、アーチ型天井(図示せず)から床(図示せず)まで垂直に跨架する、放射線室内に位置する。標的ステーション106は、部屋の垂直方向の長さに跨架する。すなわち、標的ステーション106は、床に対してボルト締めされ、アーチ型天井を通して貫通する。標的ステーション106は、アーチ型天井の上方に位置する「ホットセル」とも称される、遮蔽されたチャンバ(図示せず)において終端し得る。他の実施形態では、照射システム100および標的ステーション106は、任意の好適な構成を有してもよい。例えば、ホットセルは、標的ステーション106の異なる部品内に位置してもよい、またはホットセルは、標的ステーション106から分離されてもよい。
【0019】
標的ステーション106は、筐体110と、筐体110内に配置される垂直運搬システム112(図2Bに示される)と、冷却流体供給部114とを含む。垂直運搬システム112は、図2Bに対して下記に説明されるように、ウインチ116を使用して、標的搬送アセンブリ200を標的ステーション106内の照射位置へ、およびそれから移送する。
【0020】
冷却流体供給部114は、冷却流体供給ライン120と、冷却流体帰還ライン118とを含む。冷却流体供給ライン120は、標的搬送アセンブリが、照射位置にあるとき、冷却流体を標的搬送アセンブリ200に提供し、冷却流体帰還ライン118は、本明細書でさらに説明されるように、冷却流体が、標的搬送アセンブリ200に供給された後、それを廃棄する。冷却流体供給部114はまた、冷却流体供給ライン120および冷却流体帰還ライン118を通して、圧縮空気を標的搬送アセンブリ200に供給する。標的搬送アセンブリ200に供給された圧縮空気は、標的搬送アセンブリ200が、照射位置から外へ移動するとき、標的搬送アセンブリ200が、放射性冷却流体で汚染されないように、標的搬送アセンブリ200から任意の放射性冷却流体をパージする。
【0021】
照射システム100はさらに、サイクロトロンビームライン108と標的ステーション106との間に配置される蛇腹122と、立方体124とを含む。蛇腹122は、図2Aを参照してさらに説明されるように、ねじジャック機構125を使用して、照射位置に標的搬送アセンブリ200を挟着する、機械的に作動されるクランプ(例えば、図2Aに示される、前面クランプ126)の移動の自由度を可能にする。立方体124は、本明細書でさらに説明されるように、標的搬送アセンブリ200が、照射位置にあるとき、標的搬送アセンブリ200が、標的ステーション106内で真空密シールを有するように、真空ポンプへの接続を提供する。
【0022】
図2Aは、システム100の断面図であり、標的ステーション106内の照射位置における標的搬送アセンブリ200を示す。標的搬送アセンブリ200が、標的ステーション106内の定位置に固定され、粒子ビームから放射線を受光するように位置付けられるとき、標的搬送アセンブリ200は、照射位置にある。標的搬送アセンブリ200は、標的206が、標的搬送アセンブリ200の中に挿入された後、垂直運搬システム112によって照射位置の中に降下されてもよく、したがって、標的206内に含められる標的材料が、粒子ビームによって照射されることができる。
【0023】
標的搬送アセンブリ200は、標的ステーション106の前面クランプ126および背面クランプ128によって定位置に固定される。クランプ126、128は、同時に作動し、両方とも、(例えば、標的搬送アセンブリ200に向かって推進されることによって)標的搬送アセンブリ200を照射位置に固定し、(例えば、標的搬送アセンブリ200から離れるように推進されることによって)標的搬送アセンブリ200を照射位置から除去する。クランプ126、128は、左巻および右巻のねじを含む、ねじジャック機構125(図1に示される)を使用して作動される。ねじジャック130は、標的搬送アセンブリ200が、照射位置から除去されるとき、クランプを開放位置まで押動する(例えば、クランプ126、128を後退させる)ことによって、クランプ126、128を作動させる。前面クランプ126が、閉鎖されるとき、前面クランプ126は、Oリング134が、標的搬送アセンブリ200と真空フランジ132との間に真空密シールを生成するように、真空フランジ132を標的搬送アセンブリ200の中に駆動させる。背面クランプ128が、作動されると、背面クランプ128は、冷却流体供給ライン120および冷却流体帰還ライン118を標的搬送アセンブリ200の中に駆動させる。すなわち、背面クランプ128が、作動されるとき、背面クランプ128は、冷却流体供給ライン120を標的搬送アセンブリ200の冷却流体供給チャネルの中に駆動させ、冷却流体帰還ライン118を標的搬送アセンブリ200の冷却流体帰還チャネルの中に駆動させる。標的搬送アセンブリ200の標的材料は、標的材料が、冷却流体供給ライン120からの冷却流体によって照射されるにつれて、冷却される。冷却流体は、冷却流体供給ライン120から流動し、標的材料を通過し、冷却流体帰還ライン118を通して、標的搬送アセンブリ200から退出する。
【0024】
標的搬送アセンブリ200は、標的搬送アセンブリ200内に含められる標的材料が、照射され、放射性同位体が、発生された後、照射位置から移動される。例えば、標的搬送アセンブリ200は、照射位置からホットセルまで移動され得る。ホットセルは、本明細書でさらに説明されるように、放射性同位体が、人員によって、標的搬送アセンブリ200から安全に(すなわち、人員を放射性同位体からの高レベルの放射線に暴露させることなく)回収され得るように、鉛ガラス枠と、マスタスレーブマニピュレータとを含んでもよい。
【0025】
図2Bは、システム100の垂直運搬システム112の概略図である。垂直運搬システム112は、ケーブル152を含み、ケーブル152は、ウインチ116(図1に示される)に取り付けられる。ケーブル152は、単一のケーブル152または複数のケーブル152であってもよい。垂直運搬システム112は、シャックル154と、スイベル156と、ケーブル152の下方移動を促進するための錘158と、ケーブル152を標的搬送アセンブリ200に磁気的かつ取外可能に接続する磁石160(例えば、ニオジミウム合金から加工される)とを含む。ウインチ116は、ケーブル152の長さを調節し、ケーブル152が、標的搬送アセンブリ200に磁気的に結合されるとき、標的搬送アセンブリ200を照射位置の中に、およびそれから外へ移動させる。
【0026】
一実施形態では、磁石160は、標的搬送アセンブリ200の上側プレート162に接続する。上側プレート162は、鋼鉄鋼または鋼鉄合金から加工される。標的搬送アセンブリ200はさらに、プラスチックから加工される下側プレート164と、上側プレート162と下側プレート164との間のスペーサ166とを含む。
【0027】
図3-5は、標的搬送アセンブリ200の種々の図を図示する。図3は、標的搬送アセンブリ200の斜視側面図である。図4は、図3に示される直線「X-X」線に沿って得られた、標的搬送アセンブリ200の断面図である。図5は、標的搬送アセンブリ200の別の斜視側面図である。
【0028】
図3を参照すると、標的搬送アセンブリ200は、筐体201を含み、ビーム進入側202からビーム進入側202の対向側の側面204まで跨架する。標的搬送アセンブリ200が、標的ステーション106内の照射位置にあり、標的搬送アセンブリ200内に配置される標的206(図4に示される)が、粒子ビームによって照射されるとき、粒子ビームは、ビーム進入側202において標的搬送アセンブリ200に進入し、矢印A方向において、標的搬送アセンブリ200を通して通過する。
【0029】
図4を参照すると、標的搬送アセンブリ200は、コリメータ区画208と、標的区画210とを含む。真空窓箔212は、コリメータ区画208と標的区画210との間に配置される。標的206は、標的区画210内に配置される。標的搬送アセンブリ200が、照射位置にあるとき、コリメータ区画208は、サイクロトロンビームライン108(図2に示される)に取り付けられ、標的区画210は、冷却流体供給部114(図2に示される)に取り付けられる(すなわち、それと流体連通している)。照射位置では、冷却流体が、冷却流体供給ライン120から標的搬送アセンブリ200の中に移動するにつれて、標的206は、冷却流体供給部114によって冷却され、冷却流体が、標的206を通り越して移動するにつれて、標的206から放射する熱を吸収し、冷却流体帰還ライン118を通して、標的搬送アセンブリ200から退出する。
【0030】
コリメータ214は、コリメータ区画208内に除去可能に配置され、粒子ビームを指向し、標的区画210内の標的206を照射する。コリメータ214は、内側表面216と、外側表面218とを含み、コリメータ214は、ビーム進入側220からビーム退出側222まで跨架する。ビーム進入側220は、ビーム進入径Nを有し、ビーム退出側222は、ビーム退出径Tを有する。ビーム進入径Nは、ビーム退出径Tよりも大きく、したがって、コリメータ214は、ビーム進入側220からビーム退出側224まで狭窄チャネル224を形成する。コリメータ214の内側表面216は、ビーム進入側220における内側表面216と粒子ビーム(チャネル224を通して点線として示される)との間の入射角θが、ビーム退出側222における内側表面216と粒子ビームとの間の入射角θよりも大きくあるように湾曲される。例えば、入射角θは、10°よりも大きくあり得(例えば、11°)、入射角θは、5°未満(例えば、3°または4°)であり得る。コリメータ214の変動する入射角θおよびθは、粒子ビームの経路から漂遊し、コリメータ214の内側表面216に衝打するいくつかの粒子が、狭い入射角のために偏向されるため、コリメータ214の活性化(例えば、コリメータ214に放射すること)を最小限にする。
【0031】
粒子ビームの軸(例えば、図4に示される点線)からの粒子の偏移は、概して、正規分布を辿り、ビーム軸からの距離が、増加するにつれて、粒子の数は、減少する。コリメータ214の表面に遭遇するとき、粒子が、偏向または吸収され得る。粒子が偏向される確率は、コリメータ214の入射角が減少するにつれて、増加する。例えば、90度の入射角(従来のコリメータにおいて一般的に使用される入射角)の場合、全ての粒子のほぼ100%が、吸収され、従来のコリメータの過熱および活性化につながる。粒子が衝打する可能性がより高い、ビーム軸により近接する粒子に対して、コリメータ214におけるより小さな入射角θを提示することによって、偏向される粒子の数は、増加され、吸収される粒子の数は、減少される。故に、粒子ビームからの粒子損失は、コリメータ214によって最小限にされ、標的206上の粒子ビームのフルエンスは、したがって、コリメータ214によって最大化される一方、コリメータの活性化および加熱が、最小限にされる。
【0032】
コリメータ214の外側表面218は、コリメータ区画208と熱接触しており、標的搬送アセンブリ200の筐体201は、コリメータ区画208と熱接触している。筐体201は、コリメータ区画208に隣接する、冷却流体容積226を含む。冷却流体容積226は、チャネル228によって冷却流体供給ライン120に接続される。冷却流体供給ライン120が、冷却流体を標的206に供給するにつれて、供給された冷却流体の一部が、チャネル228を通して、冷却流体容積226まで流動する。冷却流体容積226は、コリメータ区画208に熱的に結合される、複数のフィン230を含む。フィン230は、コリメータ区画208と流体容積226との間の表面積を増加させ、コリメータ214と流体容積226内の冷却流体との間の熱交換を促進する。冷却流体は、冷却流体供給ライン118を通して、流体容積226に進入し、コリメータ214の周囲に移動し、粒子ビームが、コリメータ214を通して通過するにつれて、コリメータ214から放射する熱を吸収し、流体容積226から冷却流体帰還ライン118まで退出する。
【0033】
標的区画210はさらに、標的206を標的区画210内の定位置に固定する、バッキングスペーサ232を含む一方、標的206の背面側(例えば、対向側204に隣接する側)の冷却流体の通過を可能にする。いくつかの実施形態では、標的区画210は、バッキングスペーサ232の後方に設置される(すなわち、標的206の後方に、かつ対向側204に向かって設置される)、1つ以上の付加的な標的206を含んでもよい。これらの実施形態では、標的206は、標的区画210内に設置され、したがって、粒子ビームは、第1の標的206に進入し、そこから退出し、隣接する第2の標的206に進入し、そこから退出する等となる。故に、各標的206は、粒子ビームが、各先の標的206から退出した後、粒子ビームからの放射線を吸収する。各標的206は、標的区画210内の定位置に標的206を保持するためのバッキングスペーサ232を含む。
【0034】
標的搬送アセンブリ200の筐体201、コリメータ区画208、標的区画210、およびコリメータ214は、純アルミニウム金属またはアルミニウム合金から加工される。真空窓箔は、HAVAR(登録商標)、モリブデン、または類似する高強度金属合金から加工される。標的206は、INCONEL(登録商標)、モネル、ステンレス鋼、ニオブ、チタン、または標的材料と混合可能な別の金属合金から加工され、好適な標的材料(例えば、ルビジウム)が、標的206内に設置され、標的材料が、照射された後、同位体を生産する。
【0035】
ここで図5を参照すると、標的搬送アセンブリ200の側面202のビーム進入側の側面斜視図が、コリメータ214をより詳細に示し、説明するために図示されている。本実施形態では、コリメータ214は、コリメータ区画208の円周の周囲に配置される、4つの電気的に絶縁された区分240a-dを含む。他の実施形態では、コリメータ214は、任意の好適な数の区分240を含んでもよく、例えば、2つの区分240、3つの区分240、5つの区分240等を含む。区分240は、陽極酸化プロセスを通して電気的に絶縁され、区分240、したがって、コリメータ214は、純アルミニウムまたはアルミニウム合金から加工される。
【0036】
区分240a-d、したがって、コリメータ214は、保定リング242を用いて、コリメータ区画208に除去可能に結合される。すなわち、区分240のそれぞれは、保定リング242が、コリメータ区画208から除去されるとき、コリメータ筐体201から独立して除去され(例えば、高レベルの廃棄物量を最小限にするために、高度に活性化された部品を、嵩張り、あまり活性化していない部品から分離し)得る。例えば、保定リング242およびコリメータ214のあらゆる区分240は、上記に説明される標的ステーション106(図1に示される)のホットセルのマスタスレーブマニピュレータによって除去されてもよい。
【0037】
区分240は、(例えば、銅線およびコネクタを用いて)電位計回路(図示せず)に電気的に接続されてもよい。粒子ビームから漂遊し、区分240の中に吸収される任意の粒子(例えば、陽子)は、ワイヤ内に電流を生成する。粒子ビームが、コリメータ214の中心から偏移する場合、区分240のうちの少なくとも1つを通した増加された電流が、電位計回路によって検出されるであろう。故に、照射システム100の操作者は、粒子ビームによる任意の異常な挙動に対して警告され得る。
【0038】
本明細書に説明されるシステムおよび方法は、いくつかの利点を含む。第1の利点は、標的搬送アセンブリ200が、再利用可能であることである。例えば、標的搬送アセンブリ200の構成要素の多く(例えば、真空窓箔212、標的206、ガスケット、Oリング等)が、遠隔マニピュレータを使用して除去および交換されることができ、したがって、標的搬送アセンブリ200が、改造され、続いて、多くの標的材料の照射において再利用され、放射性同位体を生産することができる。標的搬送アセンブリ200の構成要素は、除去され、標的ステーション106に取り付けられるホットセル内のマスタスレーブマニピュレータと交換されてもよい。標的搬送アセンブリ200を改造し、標的搬送アセンブリ200の構成要素、特に、概して最も多くの保守を要求する構成要素を交換するための能力は、より少ない廃棄物およびより効率的な放射性同位体生産プロセスを結果としてもたらす。
【0039】
さらに、異なるレベルの放射性廃棄物処分を必要とする、標的搬送アセンブリ200の部品は、それぞれ、対応する廃棄物レベルにおいて処分されることができ、標的搬送アセンブリ200全体が、除去不可能な部品に起因して、最高廃棄物レベルにおいて処分される必要がない。例えば、コリメータ区分240が、アルミニウム合金から加工される場合、コリメータ214および区分240と相互作用する、粒子ビームの放射性副産物は、分解するために何年もかかり、したがって、高レベルの核廃棄物処分、すなわち、高額な費用を必要とし得る。標的搬送アセンブリ200の残りの部分は、低レベルの核廃棄物処分のみを必要とし得るが、これは、それほど高額ではない。
【0040】
説明されるシステムおよび方法の別の利点は、コリメータ214が、標的搬送アセンブリ200内に含められることである。標的搬送アセンブリ200が、照射位置および標的ステーション106から除去されるとき、照射システム100の高度に照射された部品は全て、除去され、標的ステーション106は、いかなる「高温な」構成要素も有しない。故に、標的ステーション106は、急速に「冷たくなり」、したがって、標的搬送アセンブリ200内の標的206が、照射位置から除去された直後に、保守が、人員によって標的ステーション106上で安全に(例えば、人員を閾値安全値を上回る放射線のレベルに暴露させることなく)実施されることができる。
【0041】
本発明またはその実施形態の要素を紹介するとき、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、要素のうちの1つ以上が存在することを意味することを意図される。用語「comprising(~を備える)」、「including(~を含む)」、および「having(~を有する)」は、包括的であり、列挙される要素以外の付加的な要素が存在し得ることを意味することを意図される。
【0042】
種々の変更が、本発明の範囲から逸脱することなく、上記の構成および方法において行われ得るため、上記の説明内に含有され、付随の図面に示される全ての事柄は、限定的な意味ではなく、例証的なものとして解釈されるものとすることを意図される。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
【国際調査報告】