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特表2024-521077フロントガラス内の光学的欠陥を検出するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】フロントガラス内の光学的欠陥を検出するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/896 20060101AFI20240521BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G01N21/896
G01N21/88 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571444
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2022063275
(87)【国際公開番号】W WO2022243288
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】21175028.6
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】リバルチク,テオ
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA85
2G051AB06
2G051AC04
(57)【要約】
【課題】現在の検査システムでは検出されないかもしれないが、運転者の目には可視的であり続け得る、特定の光学的欠陥を検出するための新規で実装が容易な方法を提供する。
【解決手段】フロントガラス内の光学的欠陥を検出するための方法(1000)であり、フロントガラスの屈折力の強度のデジタル画像マップを、入力として取込み、光学的欠陥のデジタル画像マップを、出力として提供するに際し、(a)屈折力の強度が異なる領域を検出し境界画定するための、屈折力の前記デジタル画像マップの画像処理ステップ(1001)と、(b)各々の検出領域について、代表的な幾何学的距離および屈折力の代表値を計算するステップ(1002)と、(c)代表的な幾何学的距離と屈折力の代表値との間の積が、2.9×10-4以上である検出領域の画像マップを計算するステップ(1003)とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントガラス内の光学的欠陥を検出するための、コンピュータ実装方法において、フロントガラスの屈折力の強度のデジタル画像マップを、入力として取込み、光学的欠陥のデジタル画像マップを、出力として提供する方法であって、
(a)屈折力の強度が異なる領域を検出し境界画定するための、屈折力の前記デジタル画像マップの画像処理ステップと、
(b)各々の検出領域について、代表的な幾何学的寸法および屈折力の代表値を計算するステップと、
(c)代表的な幾何学的距離と屈折力の代表値との間の積が、2.9×10-4以上である検出領域の画像マップを計算するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記ステップ(c)中の積が、5×10-4~2×10-3、好ましくは7×10-4~1.5×10-3、より好ましくは1×10-3である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(a)の画像処理が、ブロブ検出、詳細には屈折力のデジタル画像マップのガウス分布のラプラス演算子、屈折力のデジタル画像マップのガウス分布の差、または、屈折力のデジタル画像マップのヘシアンの行列式の計算を通したブロブ検出である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(b)において、代表的な幾何学的寸法および屈折力の代表値が、小数視力スケールにおけるその見かけのサイズが、0.5~3、好ましくは0.67~1.25、より好ましくは1である検出領域について計算される、請求項1から3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(a)における検出領域が、楕円で境界画定され、前記ステップ(b)で計算された検出領域の代表的な幾何学的距離が、前記楕円の短軸である、請求項1から4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
前記各々の検出領域の屈折力の代表値が、前記検出領域内の平均屈折力、中央屈折力、最大屈折力または最大/最小屈折力差である、請求項1から5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の方法を実施するための手段を含むデータ処理システム。
【請求項8】
プログラムが、コンピュータによって実行された時点で、請求項1から6のいずれか一つに記載の前記方法をコンピュータに実施させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項9】
コンピュータにより実行された時点で、請求項1から6のいずれか一つに記載の方法を前記コンピュータに実施させる命令を含むコンピュータ可読媒体。
【請求項10】
フロントガラス内の光学的欠陥を検出するためのプロセスにおいて、前記方法が、
(a)フロントガラスの屈折力の強度のデジタル画像マップの獲得ステップと、
(b)屈折力の強度が異なる領域を検出し境界画定するために、コンピューティングシステムを用いた、前記デジタル画像マップの処理ステップと、
(c)代表的な幾何学的距離と屈折力の代表値との間の積が、2.9×10-4以上である検出領域の画像マップの、コンピュータシステムを用いた計算ステップと、
を含むプロセス。
【請求項11】
前記ステップ(c)中の積が、5×10-4~2×10-3、好ましくは7×10-4~1.5×10-3、より好ましくは1×10-3である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
フロントガラスの製造プロセスにおける、請求項1から6のいずれか一つに記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントガラス内の光学的欠陥を検出するためのコンピュータ実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フロントガラスは、例えば自動車、鉄道輸送および航空機など輸送業界において周知である。
フロントガラスは、通常、ポリマ中間層と共に積層された2枚の屈曲したシートでできている。
【0003】
フロントガラスは、それを通して運転者が、前方にあるもの、例えば道路、レール、景色などを検分するグレージングである。
したがって、安全上の理由で、フロントガラスを通して見える物体の歪みは、可能なかぎり低いものでなければならず、少なくともそれは、運転者を混乱させるようなものであってはならない。
これに関連して、フロントガラスの光学的品質は、国際連合欧州経済委員会(UN/ECE)の協定規則第43号付属書3の第9.2項に詳述されている一定の要件を満たさなければならない。
【0004】
当該技術分野においては、協定規則第43号の枠組内でフロントガラスの光学的歪みを測定するために意図され得るいくつかの方法および機器が、記述されている。
【0005】
欧州特許出願公開第0463940号明細書は、シャドウ イルミネーションに基づいてフロントガラスの光学的品質を測定するためのプロセスを記述している。
【0006】
国際公開第98/17993号、英国特許第2152210号明細書、および欧州特許出願公開第1061357号明細書は、透過または反射パターンの画像解析を通してフロントガラスの光学的歪みを測定するための方法について記述している。
【0007】
国際公開第2017/008159号は、色収差の合成画像の解析を通してフロントガラス内の光学的欠陥を検出するための方法について記述している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0463940号明細書
【特許文献2】国際公開第98/17993号
【特許文献3】英国特許第2152210号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1061357号明細書
【特許文献5】国際公開第2017/008159号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
当該技術分野において記述されている方法は、効率の良いものではあるにせよ、人間が目視で検出できるにもかかわらず、いくつかの光学的欠陥を検出し損なう可能性がある。
人間の視覚は概して前記方法を実装する大部分の検査システムよりも柔軟性があり、時として特定の角度または異なる角度では、フロントガラスの運転席側および/または助手席側においてのみ目に見える光学的欠陥が、製造ライン上の検査システムによって完全に見落されている場合がある。
直接的かつ否定的な結果は、技術仕様を満たしているものと当初はみなされていたフロントガラスが、その後顧客によって拒絶される可能性がある、というものである。
苦情および生産ロスが発生する可能性がある。
【0010】
その上、これらの見落された、または検出されなかった光学的欠陥のいくつかは、同じ特徴または特徴的性質を有していない可能性があり、こうして、検査システムがそれらの検出に関して1つ1つ異なる挙動を示す場合があるということが分かっている。
いくつかの特定的なセットアップで、これらの欠陥を検出できる検査システムもあれば、できない検査システムもあり得る。
したがって、検査システムの特徴の如何に関わらず、検査システムにこれらの欠陥を検出させるためのセットアップおよび/または基準を発見することは、困難である。
さらに、このようなセットアップまたは基準を発見することができても、これには、製造ラインの構成全体との適合性を維持することが、なおも必要となる。
【0011】
したがって、現在の検査システムでは検出されないかもしれないが、人間の運転者の目には可視的であり続け得る、これらの特定の光学的欠陥を検出するための新規で実装が容易な方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様においては、請求項1に記載されている通りのフロントガラス内の光学的欠陥を検出するためのコンピュータ実装方法が提供されており、従属する請求の範囲は、有利な実施形態である。
【0013】
本発明の第2の態様においては、該方法を実装するためのデータ処理システム、コンピュータプログラムおよびコンピュータ可読媒体が提供されている。
【0014】
本発明の第3の態様においては、請求項10に記載のフロントガラス内の光学的欠陥を検出するためのプロセスが提供されており、独立する請求の範囲は、有利な実施形態である。
【0015】
方法およびプロセスの両方が、フロントガラスの製造プロセスにおいて使用され得る。
【0016】
本発明の第1の傑出した利益は、それが、大部分の一般的検査システムにより未検出のままにとどまっている可能性があるものの、それでも人間の目、例えば運転者の目には見えている可能性があるフロントガラス内の光学的欠陥を検出することを可能にする、という点にある。
【0017】
第2の利点は、本発明が、既存の製造プロセスにおいて実装が比較的容易であり、そのためたとえ適応の必要があるとしても僅かしか必要としない、という点にある。
より厳密には、本コンピュータ実装方法の発明ならびに本発明にしたがったプロセスは、製造ラインおよび/または品質管理プロセスにおいてすでに利用可能である屈折力のデジタル画像マップを獲得する設備に由来する利益を得ることができる。
【0018】
第3の利点は、本発明が、フロントガラスを通して遠隔の物体を見る場合に、運転者に、光学的欠陥が見える可能性のある相対的サイズに関する洞察力を間接的に提供する、という点にある。
このとき、光学的欠陥が見やすさに影響を及ぼし得るか否かを査定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の態様の一実施形態に係る光学的欠陥を検出するためのコンピュータ実装方法のデータのフローチャートである。
図2】フロントガラスの屈折力の強度をグレースケールで表したデジタル画像マップの一例である。
図3】本発明の第2の態様に係るデータ処理システムである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1]を参照すると、本発明の第1の態様の一実施形態では、フロントガラス内の光学的欠陥を検出するための、コンピュータ実装方法1000において、
フロントガラスの屈折力の強度のデジタル画像マップを、入力I1001として取込み、光学的欠陥のデジタル画像マップを、出力O1001として提供する方法であって:
(a)屈折力の強度が異なる領域を検出し境界画定するための、屈折力の前記デジタル画像マップの画像処理ステップ1001と;
(b)各々の検出領域について、代表的な幾何学的寸法および屈折力の代表値の計算ステップ1002と;
(c)代表的な幾何学的距離と屈折力の代表値との間の積が、2.9×10-4以上である検出領域の画像マップの計算ステップ1003と、
を含む方法が、提供されている。
【0021】
該方法1000は、[図2]にその一例が提供されているフロントガラスの屈折力の強度のデジタル画像マップを、入力I1001として取込む。
屈折力とは、光を集中させるレンズの能力を意味する。
レンズがどれほど光を屈折させるかに応じて、光は発散または収束し得る。
屈折力のSI単位は、ディオプトリー(dpt)とも呼ばれ、メートルで表したものの逆数(m-1)である。
【0022】
図2]では、屈折力の強度は、フロントガラス全体にわたるグレースケールパターンによって表わされ、白色の囲み領域については、後述する。
【0023】
フロントガラス内の屈折力の測定は、当該技術分野において、例えば欧州特許出願公開第3012619明細書、欧州特許出願公開第0463940号明細書、欧州特許出願公開第0342127号明細書、欧州特許出願公開第0685733号明細書において十分に記載されている。
代替的に、あるいは測定を補足するものとして、欧州特許出願公開第3756114号明細書のように、屈折力をシミュレートすることも可能である。
これらの方法は、全て、フロントガラスの屈折力のデジタル画像マップを直接提供してもよいし、あるいはこのデジタル画像マップを獲得するように適応されてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態において、デジタル画像マップは、フロントガラスの法線に対して、特定の角度においてか、または複数の所与の角度の一範囲について獲得されてもよい。
好ましい実施形態において、デジタル画像マップは、運転者が使用時にフロントガラスを通して物体を検分し得る角度に対応するか、またはそれらの角度を代表する角度においてか、または角度範囲内で、獲得され得る。
実際、車両のフレームワークに対するフロントガラスの傾斜角は、通常、車両毎に変動することから、運転者の視野角、そして次に光学的欠陥が検分される確率もまた、この傾斜角に応じて変動し得る。
したがって、屈折力のデジタルマップを獲得する場合には、この効果を考慮に入れることが有利であり得る。
該方法の精度および信頼性を、改善することができる。
【0025】
屈折力の強度が異なるデジタル画像マップの領域を検出し境界画定するためのステップ(a)の画像処理1001は、物体検出のための任意の適応された画像処理方法であってよい。
画像処理方法は、ニューラルネットワークまたは非ニューラルネットワーク方法であってよい。
【0026】
好ましい実施形態において、画像処理1001は、ブロブ検出、詳細には屈折力のデジタル画像マップのガウス分布のラプラス演算子、屈折力のデジタル画像マップのガウス分布の差、または、屈折力のデジタル画像マップのヘシアンの行列式の計算を通したブロブ検出であってよい。
ブロブ検出は、ニューラルネットワーク方法に比べ実装がより簡単であり得、それでいて、大部分の種類のフロントガラスおよび利用分野のために貴重な結果を提供する。
【0027】
ステップ(b)では、検出領域の代表的な幾何学的寸法は、ステップ(a)においてそれらの境界を表わすように選択された形状によって左右され得る。
しかしながら、一般的経験則としては、代表的であるためには幾何学的寸法についての計算値は、有利には、その形状が検出領域を境界画定するために適切なものであることを条件として、選択された形状の如何に関わらず、ほとんど変動を示さないものでなければならない。
【0028】
多くの形状が好適であり得、かつ、領域を検出し境界画定するために使用される画像処理方法ならびに、領域の境界に対して期待され得る近接度および精確度に応じて、多少の差こそあれ複雑なものであってよい。
例えば、これらの形状は、凸多角形、例えば方形または矩形といった凸状形状、または曲線図形、例えば円または楕円、あるいは凹状形状、例えば凹多角形または凹曲線図形であってよい。
【0029】
本発明の範囲の下での光学的欠陥は、多くの場合規則的で、比較的丸味があるかまたは細長い凸形状であり得ることから、いくつかの有利な実施形態において、ステップ(a)における検出領域は、楕円で境界画定されていてよく、ステップ(b)で計算された検出領域の代表的な幾何学的距離は、前記楕円の短軸である。
【0030】
ステップ(b)では、各検出領域の計算された代表的な幾何学的寸法は、長さの単位、例えばSI単位ではメートルという単位を有し、計算された屈折力の代表値は、例えばSI単位でm-1またはdptなどの長さの逆数の単位を有する。
【0031】
各々の検出領域の屈折力の代表値は、異なる方法を通して計算され得る。
いくつかの実施形態において、各検出領域の屈折力の代表値は、前記検出領域内の平均屈折力、中央屈折力、最大屈折力または最大/最小屈折力差である。
【0032】
ステップ(c)で計算される積の値は、無次元数である。
いくつかの実施形態において、この数は、ラジアン(rad)で表現され得る角度を代表するものとみなされ得る。
この点に関して、ステップ(c)で提供された2.9×10-4の最小値は、このとき、フロントガラスを通してそのフロントガラスから所与の距離Dのところに位置設定された物体を見る場合に、人間の目すなわち運転者に光学的欠陥が見え得る最小歪み係数を代表するものとみなされてよい。
ラジアンで表現されたこの2.9×10-4という最小値と距離Dとの積は、運転者が見ることのできる物体の距離Dとの関係における光学的欠陥の見かけのサイズを提供し得る。
【0033】
ステップ(c)では、代表的な幾何学的距離と屈折力の代表値との間の積が2.9×10-4以上である検出領域について、検出領域の画像マップが計算される。
このとき、2.9×10-4という最小値を、半無限区間の低境界値とみなすことができる。
いずれの光学的欠陥も、実質的には、人間の目が知覚できるものよりも大きいいずれかのサイズを有し得ることから、高い境界値を定義しようとするいかなる試みも、純粋に人為的かつ恣意的なものとみなされる可能性がある。
実際には、より大きい光学的歪みについての所望される要件に応じて、高い境界値が定義されてよい。
【0034】
いくつかの実施形態において、ステップ(c)において計算された積の値は、5×10-4~2×10-3、好ましくは7×10-4~1.5×10-3であり得、より好ましくは1×10-3であってよい。
これらの値の間隔は、2.9×10-4の最小値よりも大きい。
したがって、これらは、2.9×10-4の最小値ほど厳密なものでないと思われるかもしれない。
しかしながら、これらは、詳細には最も一般的な車両のフレームワークに関して、フロントガラスの最も一般的な構成に適応されてよい。
【0035】
該方法は、代表的な幾何学的距離と屈折力の代表値との間の積が2.9×10-4以上である検出領域の画像マップを、出力O1001として提供する。
このような画像マップの一例が、[図2]に提供されており、図中、白色囲み領域は検出領域を表わし、屈折力のデジタル画像マップに重ね合わされている。
【0036】
いくつかの実施形態において、ステップ(b)における検出領域は、さらに、小数視力スケールにおけるその見かけのサイズが、0.5~3;好ましくは0.67~1.25、より好ましくは1となるようなものであり得る。
人間の視覚の範囲内の視力は、当該技術分野において周知であり、EN ISO 8596:2018規格内で完全に説明されている。
高度の光学的品質が要求されるいくつかの利用分野、すなわち航空機、モータースポーツ、プレミアムカーの利用分野においては、見かけのサイズについての基準が、有利な補足となり得る。
このような基準は、人間の目が敏感に反応し得る光学的欠陥を高度の信頼性で検出できることを保証し得る。
【0037】
本発明の第1の態様に係る方法1000は、フロントガラスの製造プロセスにおいて使用すると有利であり得る。
製造プロセスは、すでに屈折力のデジタルマップを獲得するための機器を含み得ることから、該方法を実装するために前記プロセスに対して必要とされ得る適応は、たとえあったとしても僅かしかない。
【0038】
本発明の第2の態様においては、[図3]を参照して、本発明の第1の態様の実施形態のいずれか一つに係る方法1000を実施するための手段を含むデータ処理システム3000、およびコンピュータによって実行された時点で本発明の第1の態様の実施形態のいずれか一つに係る方法をコンピュータに実施させる命令を含むコンピュータプログラムI3001が、提供されている。
【0039】
データ処理システム3000は、本発明の第1および第2の態様の実施形態のいずれかに係る方法を実施するための手段3001を含む。
該方法を実施するための手段3001の例は、タスクまたはアクションを行なうために自動的に算術演算または論理演算シーケンスを実施するよう命令を受けることのできるデバイスであり得る。
コンピュータとも呼ばれるこのようなデバイスは、単数または複数の中央処理ユニット(CPU)およびこれらの演算を行なうように適応された少なくとも1つのコントローラデバイスを含むことができる。
それはさらに、他の電子的構成要素、例えば入出力インタフェース3002、不揮発性または揮発性記憶装置3003および、コンピュータ内部の構成要素間またはコンピュータ間のデータ転送用の通信システムであるバスを含むことができる。
入出力デバイスの1つは、ヒューマンマシンインタラクション用ユーザインタフェース、例えば人間が理解できる情報を表示するためのグラフィカルユーザインタフェースであり得る。
【0040】
計算は、実質的な量のデータを処理するために大量の計算処理能力を必要とすることから、データ処理システムは、有利には、特にレイトレーシングにおける画像処理のためにCPUよりも効率の良いものにする並行構造を有する単数または複数のグラフィック処理ユニット(GPU)を含むことができる。
【0041】
コンピュータプログラムI3001に関しては、コンパイル型であれインタプリタ型であれ、あらゆる種類のプログラミング言語を用いて、本発明の方法のステップを実装するように使用されることができる。
コンピュータプログラムI3001は、ソフトウェアソリューションの一部、例えば実行可能な命令、コード、スクリプトなどおよび/またはデータベースの集合の一部であってよい。
【0042】
いくつかの実施形態においては、コンピュータにより実行された時点で、本発明の第1の態様の実施形態のいずれか係る方法をコンピュータに実施させる命令を含むコンピュータ可読記憶装置または媒体3003も提供されている。
【0043】
コンピュータ可読記憶装置3003は、好ましくは不揮発性記憶装置またはメモリ、例えばハードディスクドライブまたはソリッドステートドライブであってよい。
コンピュータ可読記憶装置は、コンピュータの一部としての取外し可能な記憶媒体または取外し不可能な記憶媒体であってよい。
【0044】
代替的には、コンピュータ可読記憶装置は、取外し可能な媒体の内部の揮発性メモリであってよい。
【0045】
コンピュータ可読記憶装置3003は、実行可能な命令をダウンロードできるサーバとして使用されるコンピュータの一部であってよく、これらの命令がコンピュータによって実行された時点で、コンピュータに、本明細書中に記載の実施形態のいずれかに係る方法を実施させる。
【0046】
代替的には、プログラムI3001は、例えばクラウドコンピューティングなどの分散コンピューティング環境内で実装されてよい。
命令は、クライアントコンピュータが接続し、方法に対する入力としてエンコードされたデータを提供できるサーバ上で実行可能である。
ひとたびデータが処理されると、出力をクライアントコンピュータ上にダウンロードしデコードするか、または、例えば命令として直接送ることができる。
この種の実装は、クラウドコンピューティングソリューションなどの分散コンピューティング環境内で実現できることから、有利であり得る。
【0047】
本発明の第3の態様の一実施形態においては、フロントガラス内の光学的欠陥を検出するためのプロセスにおいて、前記方法が:
(a)フロントガラスの屈折力の強度のデジタル画像マップの獲得ステップと;
(b)屈折力の強度が異なる領域を検出し境界画定するために、コンピューティングシステムを用いた、前記デジタル画像マップの処理ステップと;
(c)代表的な幾何学的距離と屈折力の代表値との間の積が2.9×10-4以上である検出領域の画像マップの、コンピューティングシステムを用いた計算ステップと、
を含むプロセスが提供されている。
【0048】
本発明の第1および第2の態様に関して詳述された異なる実施形態の技術的態様および特徴は、本発明の第3の態様にも適用され得る。
本発明の第3の態様に係るプロセスにおいて、それらを変更、変換または適応させることは、当業者の能力の範囲内にある。
【符号の説明】
【0049】
1000 コンピュータ実装方法
1001 画像処理ステップ
1002 幾何学的寸法および屈折力の代表値の計算ステップ
1003 検出領域の画像マップ計算ステップ
3000 データ処理システム
3001 実施するための手段
3002 入出力インタフェース
3003 記憶装置
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-01-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントガラス内の光学的欠陥を検出するための、コンピュータ実装方法において、フロントガラスの屈折力の強度のデジタル画像マップを、入力として取込み、光学的欠陥のデジタル画像マップを、出力として提供する方法であって、
(a)屈折力の強度が異なる領域を検出し境界画定するための、屈折力の前記デジタル画像マップの画像処理ステップと、
(b)各々の検出領域について、代表的な幾何学的寸法および屈折力の代表値を計算するステップと、
(c)代表的な幾何学的距離と屈折力の代表値との間の積が、2.9×10-4以上である検出領域の画像マップを計算するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記ステップ(c)中の積が、5×10-4~2×10-3、好ましくは7×10-4~1.5×10-3、より好ましくは1×10-3である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(a)の画像処理が、ブロブ検出、詳細には屈折力のデジタル画像マップのガウス分布のラプラス演算子、屈折力のデジタル画像マップのガウス分布の差、または、屈折力のデジタル画像マップのヘシアンの行列式の計算を通したブロブ検出である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(b)において、代表的な幾何学的寸法および屈折力の代表値が、小数視力スケールにおけるその見かけのサイズが、0.5~3、好ましくは0.67~1.25、より好ましくは1である検出領域について計算される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(a)における検出領域が、楕円で境界画定され、前記ステップ(b)で計算された検出領域の代表的な幾何学的距離が、前記楕円の短軸である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記各々の検出領域の屈折力の代表値が、前記検出領域内の平均屈折力、中央屈折力、最大屈折力または最大/最小屈折力差である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の方法を実施するための手段を含むデータ処理システム。
【請求項8】
プログラムが、コンピュータによって実行された時点で、請求項1または2に記載の前記方法をコンピュータに実施させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項9】
コンピュータにより実行された時点で、請求項1または2に記載の方法を前記コンピュータに実施させる命令を含むコンピュータ可読媒体。
【請求項10】
フロントガラス内の光学的欠陥を検出するためのプロセスにおいて、前記方法が、
(a)フロントガラスの屈折力の強度のデジタル画像マップの獲得ステップと、
(b)屈折力の強度が異なる領域を検出し境界画定するために、コンピューティングシステムを用いた、前記デジタル画像マップの処理ステップと、
(c)代表的な幾何学的距離と屈折力の代表値との間の積が、2.9×10-4以上である検出領域の画像マップの、コンピュータシステムを用いた計算ステップと、
を含むプロセス。
【請求項11】
前記ステップ(c)中の積が、5×10-4~2×10-3、好ましくは7×10-4~1.5×10-3、より好ましくは1×10-3である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
フロントガラスの製造プロセスにおける、請求項1または2に記載の方法の使用。
【国際調査報告】