(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】フェリチン又はその相同体を含む組換え宿主
(51)【国際特許分類】
C12N 1/21 20060101AFI20240521BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240521BHJP
A61K 33/26 20060101ALI20240521BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240521BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240521BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240521BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240521BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240521BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240521BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240521BHJP
A23L 33/14 20160101ALI20240521BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240521BHJP
C12N 15/29 20060101ALN20240521BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20240521BHJP
C07K 14/415 20060101ALN20240521BHJP
C12P 21/02 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
C12N1/21
A61K38/17 ZNA
A61K33/26
A61P7/06
A61P43/00 121
C12N1/15
C12N1/19
C12N5/10
C12N7/01
A23L33/135
A23L33/14
C12N15/12
C12N15/29
C07K14/47
C07K14/415
C12P21/02 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571539
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 US2022030118
(87)【国際公開番号】W WO2022246119
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520480186
【氏名又は名称】シデロ バイオサイエンス,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】SIDERO BIOSCIENCE, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】カイル,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】コナー,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ,ダレン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B064
4B065
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B018MD06
4B018MD79
4B018MD80
4B018MD81
4B018MD85
4B018MD89
4B018ME14
4B018MF06
4B064AG01
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA08
4B064CA09
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4B064CC24
4B064DA01
4B064DA10
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
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4B065AA86X
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4B065AB01
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4B065CA24
4B065CA41
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084CA53
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA55
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA11
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA55
4C086ZC75
4H045AA10
4H045AA30
4H045CA30
4H045CA40
4H045EA01
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
少なくとも第1のセットの染色体及び第2のセットの染色体を含む組換え宿主であって、第1のセットの染色体及び第2のセットの染色体の少なくとも1つは、フェリチン又はその相同体をコードする組換え遺伝子を含む、組換え宿主が本明細書中で開示されている。フェリチン又はその相同体をコードする組換え遺伝子を含む原栄養体を含む組換え宿主も本明細書中で開示されている。組換え宿主は、組成物、摂取可能な物品、ダイエタリーサプリメント又は医薬組成物に含まれてもよい。対象に本発明の組成物を投与する方法も本明細書中で開示されている。
【選択図】
図9A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1のセットの染色体及び第2のセットの染色体を含む、組換え宿主であって、
前記第1のセットの染色体及び前記第2のセットの染色体の少なくとも1つは、フェリチン又はその相同体をコードする組換え遺伝子を含む、前記組換え宿主。
【請求項2】
前記第1のセットの染色体及び前記第2のセットの染色体は、二倍体を含む、請求項1に記載の組換え宿主。
【請求項3】
前記第1のセットの染色体及び前記第2のセットの染色体は、多倍体を含む、請求項1に記載の組換え宿主。
【請求項4】
前記第1のセットの染色体及び前記第2のセットの染色体は、異数体を含む、請求項1に記載の組換え宿主。
【請求項5】
前記組換え宿主は、原栄養性である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項6】
前記組換え遺伝子は、配列番号2、配列番号3及び/又は配列番号4の核酸配列或いはその相同体を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項7】
前記組換え遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列又はその相同体をコードする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項8】
前記第1のセットの染色体及び前記第2のセットの染色体の一方のみが、フェリチン又はその相同体をコードする前記組換え遺伝子を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項9】
前記第1のセットの染色体及び前記第2のセットの染色体の両方が、フェリチン又はその相同体をコードする前記組換え遺伝子を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項10】
前記組換え遺伝子は、前記第1のセットの染色体上の第1の遺伝子座及び前記第2のセットの染色体上の第2の遺伝子座に位置する、請求項9に記載の組換え宿主。
【請求項11】
前記第1の遺伝子座及び前記第2の遺伝子座は、それぞれの染色体上の同じ遺伝子座にある、請求項10に記載の組換え宿主。
【請求項12】
前記第1の遺伝子座及び前記第2の遺伝子座は、それぞれの染色体上の異なる遺伝子座にある、請求項10に記載の組換え宿主。
【請求項13】
前記第1のセットの染色体及び前記第2のセットの染色体の一方のみが、機能的選択マーカー遺伝子をコードする、請求項1から8のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項14】
前記第1のセットの染色体及び前記第2のセットの染色体の両方が、機能的選択マーカー遺伝子をコードする、請求項1から7及び9から12のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項15】
フェリチン又はその相同体をコードする前記組換え遺伝子は、機能的選択マーカー遺伝子と密接に連結される、請求項1から14のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項16】
フェリチン又はその相同体をコードする前記組換え遺伝子を含む前記第1のセットの染色体又は前記第2のセットの染色体の一方は、機能的URA3遺伝子又はその相同体を含まない、請求項1から15のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項17】
各遺伝子の非変異コピーが、前記第1のセットの染色体及び/又は前記第2のセットの染色体に存在する、請求項1から16のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項18】
フェリチン又はその相同体をコードする組換え遺伝子を含む原栄養体を含む、組換え宿主。
【請求項19】
前記組換え宿主は、二倍体、多倍体又は異数体である、請求項18に記載の組換え宿主。
【請求項20】
前記組換え遺伝子は、配列番号2、配列番号3及び/又は配列番号4の核酸配列或いはその相同体を含む、請求項18又は請求項19に記載の組換え宿主。
【請求項21】
前記組換え遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列又はその相同体をコードする、請求項18から20のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項22】
フェリチンをコードする前記組換え遺伝子は、染色体に組み込まれる、請求項1から21のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項23】
フェリチン又はその相同体をコードする前記組換え遺伝子は、URA3遺伝子若しくはその相同体及び/又はLEU2若しくはその相同体と密接に連結される、請求項1から22のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項24】
前記組換え遺伝子は、H-フェリチンのアミノ酸配列をコードする、請求項1から23のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項25】
前記組換え宿主は、H-フェリチンタンパク質を産生する、請求項1から24のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項26】
前記組換え遺伝子は、哺乳動物H-フェリチン遺伝子を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項27】
前記組換え遺伝子は、ヒトH-フェリチン遺伝子を含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項28】
前記相同体は、ヒトH-フェリチンと少なくとも80%の配列同一性を有する、請求項1から27のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項29】
前記組換え遺伝子は、植物H-フェリチン遺伝子を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項30】
前記組換え宿主は、L-フェリチンタンパク質を産生する、請求項1から29のいずれか一項に記載の組換え宿主。
【請求項31】
請求項1から30のいずれか一項に記載の前記組換え宿主を含む、組成物。
【請求項32】
前記組成物は、鉄をさらに含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記鉄は、前記組換え宿主の乾物に基づいて少なくとも1重量%の量で存在する、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記鉄の少なくとも5%は、フェリチンと複合体を形成している、請求項32又は請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記鉄の供給源は、鉄塩、有機鉄複合体、鉄ナノ粒子、又はそれらの組み合わせである、請求項32から34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記鉄の少なくとも一部は、前記フェリチン又は前記その相同体と複合体を形成している、請求項32から35のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項37】
前記鉄の少なくとも一部は、前記フェリチン又は前記その相同体と複合体を形成していない、請求項32から36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
前記組換え宿主は、細菌、ウイルス、又はそれらの組み合わせを含む、請求項31から37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
前記組換え宿主は、真菌、藻類、原生動物、微小な蠕虫、微生物、又はそれらの組み合わせを含む、請求項31から38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
前記組換え宿主は、真菌を含む、請求項31から39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
前記真菌は、酵母を含む、請求項39又は請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
少なくとも1つの増量剤をさらに含む、請求項31から41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
第2の組換え宿主、プロバイオティック、プレバイオティック、又はそれらの組み合わせをさらに含む、請求項31から42のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
前記第2の組換え宿主は、配列番号2、配列番号3及び/又は配列番号4の核酸配列或いはその相同体を含む、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記第2の組換え宿主は、配列番号1のアミノ酸配列又はその相同体をコードする組換え遺伝子を含む、請求項43又は請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記第2の組換え宿主は、フェリチン又はその相同体を発現する、請求項43から45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
前記第2の組換え宿主は、フェリチン又はその相同体を発現しない、請求項43から46のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
請求項31から47のいずれか一項に記載の組成物を含む、摂取可能な物品。
【請求項49】
前記摂取可能な物品は、医療食品の形態である、請求項48に記載の摂取可能な物品。
【請求項50】
前記摂取可能な物品は、食品の形態である、請求項48に記載の摂取可能な物品。
【請求項51】
前記摂取可能な物品は、食品成分の形態である、請求項48に記載の摂取可能な物品。
【請求項52】
請求項31から47のいずれか一項に記載の組成物を含む、ダイエタリーサプリメント。
【請求項53】
請求項31から47のいずれか一項に記載の組成物を含む、医薬組成物。
【請求項54】
対象に請求項31から47のいずれか一項に記載の組成物を投与することを含む、方法。
【請求項55】
前記組成物は、少なくとも13mgの鉄を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記投与することは、単回用量を含む、請求項54又は請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記投与することは、連続的に投与される1つ以上の用量を含む、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記投与することは、食餌管理のために投与することを含む、請求項54から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記対象は、鉄欠乏ではない、請求項54から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記対象は、前記組成物を摂取することによって利益を得る、請求項54から59のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フェリチン又はその相同体を含む組換え宿主に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄吸収の欠乏又は過剰な鉄喪失は、様々な症状を伴う最適でない血液及び/又は組織鉄レベルをもたらす。鉄補充療法の現行の業界標準は、硫酸鉄サプリメントの経口投与である。しかしながら、そのようなサプリメントは、鉄が完全に吸収されない、又はサプリメントが一貫したレベルの鉄を生じるために環境条件に依存するため、効果が限定されていた。硫酸鉄サプリメントの使用はまた、胃腸の不快感をもたらす場合もある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
少なくとも第1のセットの染色体及び第2のセットの染色体を含む組換え宿主であって、第1のセットの染色体及び第2のセットの染色体の少なくとも1つは、フェリチン又はその相同体をコードする組換え遺伝子を含む、組換え宿主が本明細書中で開示されている。
【0004】
フェリチン又はその相同体をコードする組換え遺伝子を含む原栄養体を含む組換え宿主も本明細書中で開示されている。
【0005】
本発明の組換え宿主を含む組成物も本明細書中で開示されている。
【0006】
本発明の組成物を含む摂取可能な物品も本明細書中で開示されている。
【0007】
本発明の組成物を含むダイエタリーサプリメントも本明細書中で開示されている。
【0008】
本発明の組成物を含む医薬組成物も本明細書中で開示されている。
【0009】
対象に本発明の組成物を投与する方法も本明細書中で開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ヒトH-フェリチンのアミノ酸配列(配列番号1)を示す。
【
図2】ヒトH-フェリチンの核酸配列(配列番号2)を示す。
【
図3】ヒトH-フェリチン遺伝子FTH1、及び選択URA3遺伝子を含むフェリチン発現カセットの構造を示す概略図である。フェリチン発現カセットをオリゴヌクレオチドプライマー0-730及び0-731を使用してプラスミドRLK/pL5659からPCRによって増幅した。二重の横線は3.2kbpのフェリチン発現カセットを示し、白抜きの矢印は、DNA合成の方向(5’から3’)を示す矢印とともにプライマーの位置を示し、斜線の矢印は、遺伝子の3’末端(コード化タンパク質のカルボキシ末端)を示す矢印の先端とともにオープンリーディングフレーム(ORF:open-reading frame)を示し、白抜きの矢印は、転写の方向(5’から3’)を示す矢印とともに構成的高発現酵母TDH3プロモーターの位置を示し、白抜きのブロックは酵母CYC1ターミネーターを示す。
【
図4A】
図3に示される発現カセットの核酸及びアミノ酸配列(配列番号3)を示す。
【
図4B】
図3に示される発現カセットの核酸及びアミノ酸配列(配列番号3)を示す。
【
図4C】
図3に示される発現カセットの核酸及びアミノ酸配列(配列番号3)を示す。
【
図4D】
図3に示される発現カセットの核酸及びアミノ酸配列(配列番号3)を示す。
【
図4E】
図3に示される発現カセットの核酸及びアミノ酸配列(配列番号3)を示す。
【
図4F】
図3に示される発現カセットの核酸及びアミノ酸配列(配列番号3)を示す。
【
図4G】
図3に示される発現カセットの核酸及びアミノ酸配列(配列番号3)を示す。
【
図5】TDH3プロモーターを含むフェリチン発現カセットの染色体組込みを示す概略図である。二重の横線は3.2kbpのフェリチン発現カセットを示し、網状の矢印は、DNA合成の方向(5’から3’)を示す矢印とともにプライマーの位置を示し、斜線の矢印は、遺伝子の3’末端(コード化タンパク質のカルボキシ末端)を示す矢印の先端とともにオープンリーディングフレーム(ORF)を示し、白抜きの矢印は、転写の方向(5’から3’)を示す矢印とともに構成的高発現酵母TDH3プロモーターの位置を示し、白抜きのブロックは酵母CYC1ターミネーターを示す。
【
図6A】
図5に示されるTDH3において染色体に組み込まれたフェリチン発現カセットの核酸配列(配列番号4)を示す。
【
図6B】
図5に示されるTDH3において染色体に組み込まれたフェリチン発現カセットの核酸配列(配列番号4)を示す。
【
図6C】
図5に示されるTDH3において染色体に組み込まれたフェリチン発現カセットの核酸配列(配列番号4)を示す。
【
図6D】
図5に示されるTDH3において染色体に組み込まれたフェリチン発現カセットの核酸配列(配列番号4)を示す。
【
図6E】
図5に示されるTDH3において染色体に組み込まれたフェリチン発現カセットの核酸配列(配列番号4)を示す。
【
図6F】
図5に示されるTDH3において染色体に組み込まれたフェリチン発現カセットの核酸配列(配列番号4)を示す。
【
図6G】
図5に示されるTDH3において染色体に組み込まれたフェリチン発現カセットの核酸配列(配列番号4)を示す。
【
図6H】
図5に示されるTDH3において染色体に組み込まれたフェリチン発現カセットの核酸配列(配列番号4)を示す。
【
図6I】
図5に示されるTDH3において染色体に組み込まれたフェリチン発現カセットの核酸配列(配列番号4)を示す。
【
図6J】
図5に示されるTDH3において染色体に組み込まれたフェリチン発現カセットの核酸配列(配列番号4)を示す。
【
図7】実施例1において一倍体酵母フェリチン複合体で処置したラットと比較した二倍体酵母フェリチン複合体で処置したラットにおけるヘモグロビン回復を比較する。
【
図8】実施例1において一倍体酵母フェリチン複合体で処置したラットと比較した二倍体酵母フェリチン複合体で処置したラットにおけるヘマトクリット回復を示す。
【
図9A】酵母の1gのサンプルの重量パーセントに基づく一倍体酵母サンプル及び二倍体酵母サンプルの鉄含有量を示す。
【
図9B】一倍体酵母サンプル及び二倍体酵母サンプルのH-フェリチン含有量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明の目的で、反対のことが明記されている場合を除いて、本発明は様々な代替的変形物及びステップの順序を想定できることが理解されるべきである。さらに、任意の操作の例、又は別の方法で示された場合以外、値、量、パーセンテージ、範囲、部分範囲及び割合を表す数などのすべての数は、用語が明白に示されていなくても、「約」という語が前に置かれているかのように読むことができる。したがって、反対のことが示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメーターは、本発明によって得られる所望の結果により変化する可能性のある近似値である。最低でも、均等論の適用を特許請求の範囲に限定しようとするものではなく、各数値パラメーターは、少なくとも報告された有効数字の数を考慮し、通常のまるめ手法を適用することによって解釈されるべきである。制限的又は非制限的な数値範囲が本明細書に記載される場合、数値範囲内の又は数値範囲に包含されるすべての数、値、量、パーセンテージ、部分範囲及び割合は、こうした数、値、量、パーセンテージ、部分範囲及び割合が、明確にそのすべてが書き出されているかのように、本出願の元の開示に具体的に含まれ、それに属すると見なされるべきである。
【0012】
本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメーターは近似値ではあるが、特定の例に記載される数値はできる限り正確に報告される。本発明の広い範囲を示す数値範囲及びパラメーターは近似値ではあるが、特定の例に記載される数値はできる限り正確に報告される。ただし、いかなる数値も、本質的に、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差の結果として必然的に生じるある一定の誤差を含む。
【0013】
本明細書中で使用される場合、別のことが示されない限り、複数の用語はその単数の対応物を包含することができ、別のことが示されない限り、逆もまた同様である。例えば、本明細書において酵母の「ある」種(”a” species of yeast)又は「1」セットの染色体(“a” set of chromosomes)と言及されても、これらの構成要素の組み合わせ(すなわち、複数の構成要素)が使用されてもよい。さらに、本出願において、「又は」の使用は、別のことが具体的に示されない限り、「及び/又は」が特定の例において明確に使用されることがあっても「及び/又は」を意味する。
【0014】
本明細書中で使用される場合、「含むこと(including)」、「含有すること(containing)」及び同様の用語は、本出願の文脈では「含むこと(comprising)」と同義であると理解され、したがって、非制限的であり、記載されていない、及び/又は挙げられていない追加の要素、材料、成分及び/又は方法ステップの存在を排除しない。
【0015】
本明細書中で使用される場合、「からなること」とは、本出願の文脈ではいかなる不特定の要素、成分及び/又は方法ステップの存在も排除するものと理解される。
【0016】
本明細書中で使用される場合、「基本的に~からなること」とは、本出願の文脈では、明記された要素、材料、成分及び/又は方法ステップ「並びに記載されているものの基本的な新規の特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさないもの」を含むものと理解される。
【0017】
本明細書中で使用される場合、「組換え宿主」とは、ゲノムが少なくとも1つの組換え遺伝子によって増強又は導入されている宿主を意味する。「増強される」又は「導入される」とは、ヒトの介入によって引き起こされた増強又は導入を指す。例示的な組換え宿主としては、植物、真菌、例えば、酵母、細菌又は動物、例えば、イヌ、ブタ若しくはウシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「組換え遺伝子」は、1つ以上の遺伝子又は遺伝子のセグメントが挿入されて、新規の遺伝子の組み合わせが得られた核酸配列である。組換え遺伝子は、一般に、使用される状況において天然には見られない遺伝子である。組換え遺伝子は、配列が天然には生じない組込み部位で組換え宿主の染色体に組み込まれた遺伝子である場合もある。組換え遺伝子は、組換え宿主以外の種由来のDNA配列であってもよい。組換え遺伝子は、そのDNA配列の遺伝子産物の過剰発現又は改変された発現を可能にするために、組換え宿主のゲノムの付加的な位置に挿入された組換え宿主で天然に生じる遺伝子の1つ以上の追加のコピーであってもよい。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「一倍体」とは、1セットの染色体を含む細胞を意味する。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「1セットの染色体」とは、一倍体のゲノムを意味する。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「二倍体」とは、染色体の2つの相同セットを含む細胞を意味する。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「多倍体」とは、染色体の3つ以上の相同セットを含む細胞を意味する。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「異数体」とは、異常な数の染色体を含む細胞を意味する。「異常な数の染色体」とは、所与の生物の通常の染色体数とは異なる染色体数を意味する。例えば、出芽酵母(S.cerevisiae)細胞は、16の染色体を含む。異数体出芽酵母細胞は、例として、15の染色体又は17の染色体(すなわち、16以外のあらゆる数)を含む場合がある。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「相同」とは、類似のセントロメア位置、遺伝子組成及び長さの染色体の対を意味する。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「2セットの染色体」とは、二倍体のゲノムを意味する。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「相同体」とは、相同の対の一方の染色体を意味する。
【0027】
本明細書中で使用される場合、「原栄養体」又は「原栄養性」とは、無機材料から栄養分を合成することができる微生物を意味する。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「接合する(mate)」、「接合される」、又は「接合する(mates)」は、反対の接合型である2つの細胞、一般には一倍体が、融合して、一般に二倍体を形成するプロセスである。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「フェリチン」は、原核生物及び真核生物を含む、大半の微生物において主要な細胞内鉄貯蔵タンパク質として働く球状タンパク質である。フェリチンは、24のポリペプチドサブユニットを含む大きな(480kDa近い)マルチサブユニット複合体であり、水酸化鉄コア内に4,500原子もの鉄イオン(Fe2+又はFe3+)を含むことができる。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「摂取可能な」とは、経口で体内に取り入れることができることを意味する。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「医療食品」とは、通常の食餌だけでは満たすことのできない特有の栄養所要量を有する疾患の処置のために摂取又は経腸投与されるように設計された食品を意味する。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「ダイエタリーサプリメント」又は「栄養サプリメント」とは、食事に加えて対象の食餌を補充するために摂取されるものを意味する。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「組成物」は、溶液、分散液、又は固体、例えば、粉末を意味する。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「医薬組成物」とは、対象に適切に投与された場合に治療又は代謝効果を誘導することができる任意の化学的又は生物学的組成物、材料、薬剤などを意味し、不活性形態の組成物、材料、薬剤など及びその活性代謝産物を含み、そのような活性代謝産物は、インビボで形成され得る。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「対象」又は「患者」とは、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、霊長類、及び/又はげっ歯類を含む、哺乳動物を含む動物を意味する。
【0036】
本明細書中で使用される場合、ある量(例えば、用量)の組成物を「投与すること」は、対象自身又は別の対象(例えば、医療専門家、介護者、家族)によって行われてもよい。本組成物は、組成物の投与に関する説明書(例えば、組成物を入れた容器のラベル上に書かれた説明書)とともに対象又は対象に対する投与者によって提供されてもよい。
【0037】
本明細書中で使用される場合、「処置する」、「処置」、又は「処置すること」は、発症を予防すること、或いは、例えば、鉄欠乏障害又は腸内マイクロバイオーム障害を含むこともある障害の結果として生じるものなどの患者又は対象が経験する病状又は症状を変えることを意図して患者又は対象に施される治療的、予防的又は防止的措置を意味する。患者又は対象に施される「処置」は、最大で完全な除去及びそれを含む、患者又は対象が処置される状態の任意の臨床的又は定量的に測定可能な低減を達成することができる。「処置」は、治療的処置及び予防的又は防止的な措置の両方を指す。「処置」はまた、一時的な治療と指定される場合もある。「処置」はまた、食餌性鉄源としての組成物の投与を含む場合もある。処置を必要とするものとしては、既に1つ以上の鉄欠乏障害があるもの、障害が予防されるべきであるもの及び鉄補充から利益を得る可能性のあるものが挙げられる。
【0038】
本明細書中で使用される場合、「食餌管理」とは、医療食品、食品成分、又はダイエタリーサプリメントの投与による状態の処置を意味する。
【0039】
本明細書中で使用される場合、「塩」とは、金属カチオン及び非金属アニオンからなり、0の全電荷を有するイオン化合物を意味する。塩は、水和していても、又は無水物でもよい。
【0040】
本明細書中で使用される場合、本発明の組成物に関する「乾物」とは、組成物が、組成物の総重量に基づいて10重量%を超えない水を含むことを意味する。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「乾物に基づく」とは、乾物含有量に換算して構成成分の濃度を表すことによって組成物中の構成成分の濃度を表す方法を意味する。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「鉄複合体」又は「有機鉄複合体」は、有機化合物と複合体を形成するか、又は別の方法(例えば、イオン結合)で有機化合物と結合した(II)又は(III)酸化状態の鉄を含む化合物である。適した有機鉄複合体の例としては、鉄高分子複合体、鉄炭水化物複合体、及び鉄アミノグリコサン複合体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「密接に連結された」とは、第1の遺伝子が第2の遺伝子の5センチモルガン以内にあることを意味する。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「センチモルガン」とは、一世代において乗換えにより染色体上の第1のマーカーが同じ染色体上の第2のマーカーから分離されることになる1%の確率と等しい計測の単位を意味する。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「鉄」は、例えば、酸化鉄、硫酸鉄、及び水素化鉄に限定されない塩の形態であってもよい元素鉄を指す。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「鉄欠乏の」又は「鉄欠乏」とは、対象が≦25%のTSAT及び≦100ng/mLの血清フェリチン濃度を有する状態を指す。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「貧血」とは、対象が13g/dL未満のヘモグロビン濃度を有する状態を指し、対象は、健康に関連したクオリティ・オブ・ライフの質問票に対する回答に基づいて鉄欠乏、鉄取り込み及び/又は鉄代謝に関連する障害又は疾患と一般に関連づけられる症状を示す場合もある。本明細書中で使用される場合、「鉄欠乏性貧血」とは、対象が20%未満のTSAT、50ng/mL未満の血清フェリチン濃度、及び13g/dL未満のヘモグロビン濃度を有する状態を指す。対象は、健康に関連したクオリティ・オブ・ライフの質問票に対する回答に基づいて鉄欠乏、鉄取り込み、及び/又は鉄代謝に関連する障害又は疾患と一般に関連づけられる症状を示す場合もある。鉄欠乏障害の例としては、不十分な鉄の食餌摂取又は吸収が原因となる鉄欠乏が挙げられる。鉄欠乏障害は、例えば、栄養不良、妊娠(産後期間を含む)、重い子宮出血、慢性疾患(慢性腎疾患を含む)、がん、腎透析、胃バイパス、多発性硬化症、下肢静止不能症候群、糖尿病(例えば、I型又はII型糖尿病)、インスリン耐性、及び注意欠陥障害に関連することがある。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「トランスフェリン飽和度(TSAT)」は、総鉄結合能(TIBC)に対する血清鉄の割合を意味する。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「総鉄結合能(TIBC)」は、血清タンパク質と結合できる鉄の総量を意味する。
【0050】
本明細書中で使用される場合、「機能的選択マーカー」又は「機能的選択マーカー遺伝子」とは、組換え宿主の増殖のための特定の条件下において増殖優位性を備える遺伝要素を意味する。
【0051】
本明細書中で使用される場合、「増殖優位性」とは、組換え宿主の後代の90%以上が遺伝子カセットを含むことを意味する。
【0052】
本明細書中で使用される場合、「遺伝子カセット」は、機能的選択マーカー遺伝子及びフェリチンをコードする遺伝子を含む。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「変異体」は、非機能性遺伝子を意味する。本明細書中で使用される場合、「非変異体」は、機能性遺伝子を意味する。
【0054】
フェリチン又はその相同体をコードする組換え遺伝子を含む、又は基本的にそれからなる、又はそれからなる組換え宿主が本明細書中で開示されている。
【0055】
少なくとも第1のセットの染色体及び第2のセットの染色体を含む、基本的にそれらからなる、又はそれらからなる組換え宿主であって、第1のセットの染色体及び第2のセットの染色体の少なくとも1つは、フェリチン又はその相同体をコードする組換え遺伝子を含む、組換え宿主も本明細書中で開示されている。
【0056】
フェリチン又はその相同体をコードする組換え遺伝子を含む、基本的にそれからなる、又はそれからなる原栄養体を含む、組換え宿主も本明細書中で開示されている。
【0057】
上述のとおり、組換え宿主は、フェリチンを発現してもよい(例えば、組換え宿主は、フェリチン又はその相同体をコードする遺伝子を含んでもよい)。フェリチン又はその相同体をコードする遺伝子は、組換え宿主がフェリチン遺伝子の発現によりフェリチンタンパク質を産生することを可能にする。適したフェリチンは、哺乳動物若しくは植物H-フェリチンサブユニット及び/又はL-フェリチンサブユニットを含んでもよい。H-フェリチンをコードする限り、いかなる種由来のいかなるH-フェリチンサブユニットでも使用できる。H-フェリチンサブユニットは、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、霊長類、及び/又はげっ歯類などの哺乳動物のH-フェリチンサブユニットであってもよい。H-フェリチンサブユニットは、ヒトH-フェリチン(FTH1)であってもよい(配列番号1、
図1を参照、
図2も参照)。H-フェリチンはまた、ヒトH-フェリチンの天然に存在する又は合成の相同体又はバリアントであってもよい。H-フェリチン相同体は、ヒトH-フェリチンと80%から100%の配列同一性、例えば、ヒトH-フェリチンと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有してもよく、鉄と結合し、マルチサブユニットフェリチン鉄複合体(以下に示される)を形成する能力を保持するが、鉄とフェリチンとの間の様々な結合及び解離強度をもたらすよう変異させてもよい。任意に、フェリチンは、L-フェリチンであっても、又はそれを含んでもよい。例えば、フェリチンサブユニットは、L-フェリチンと比較して少なくとも20%のH-フェリチン、例えば、L-フェリチンと比較して少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%のH-フェリチンを含んでもよい。任意に、フェリチンサブユニットのすべて(すなわち、100%のフェリチンサブユニット)がH-フェリチンであってもよく、又はフェリチンサブユニットのすべて(すなわち、100%のフェリチンサブユニット)がL-フェリチンであってもよい。
【0058】
本発明によると、H-フェリチンは、組換えH-フェリチンであってもよい。例えば、H-フェリチンは、適切なプロモーターの制御下でH-フェリチンをコードするポリヌクレオチド配列を含む微生物株において産生されたヒトH-フェリチン、又はその相同体であってもよい。(配列番号3を参照、
図3及び4も参照)。フェリチンをコードする組換え遺伝子は、染色体外にあってもよく(エピソーム)、又は染色体に組み込まれてもよい。(配列番号4を参照、
図5及び6も参照)。
【0059】
組換え宿主は、原栄養性であってもよい。原栄養性組換え宿主は、二倍体、多倍体、又は異数体のいずれかであってもよい。本発明において有用な適した二倍体組換え宿主の例としては、真菌、藻類、原生動物、微小な蠕虫、微生物、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明において有用な適した多倍体又は異数体組換え宿主の例としては、真菌 植物、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、鉄の栄養補充に適した組換え微生物株は、ヒトを含む、哺乳動物に対して高いバイオアベイラビリティを有する形態で鉄を貯蔵することができ、例えば、ヒトの消費に対して一般的に安全と認められる(GRAS:Generally Regarded As Safe)要件を満たしているものである。治療用化合物を生成するプロセスに使用することができる他の微生物も、本発明の組成物に使用することができる。真菌は、例えば、酵母であってもよい。酵母の非限定例としては、サッカロマイセス(Saccharomyces)、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)、クリベロマイセス(Kluyveromyces)、又はピキア(Pichia)属の様々な種が挙げられる。藻類の非限定例としては、クラミドモナス(Chlamydomonas)属の様々な種が挙げられる。組換え宿主は、本発明において組成物の重量の一部をなす可能性のある不純物を含む場合もあるが、これらの重量は、組成物の総乾物重量から除かれる。
【0060】
上述のとおり、組換え宿主は、二倍体及び原栄養性であってもよい。組換え宿主が二倍体及び原栄養性である場合、各遺伝子の非変異コピーが、2セットの染色体のうちの少なくとも1つに存在する。これは、二倍体組換え宿主が自立するのに必要とされるすべての栄養素を無機材料から産生することを可能にし、したがって、それを原栄養性にする。
【0061】
図3及び5に示されるとおり、例では、H-フェリチン遺伝子は、一倍体組換え宿主のセットの染色体に安定して組み込むことができる。他の例において、二倍体、多倍体、又は異数体組換え宿主の第1のセットの染色体は、安定して組み込まれたH-フェリチン遺伝子を含んでもよい。本出願の目的で、「第1のセットの染色体」及び「第2のセットの染色体」という用語が便宜上使用されるが、特定の順序又は染色体数に対する限定を示すものではない(すなわち、本明細書において都合上「第2のセットの染色体」と呼ばれる2、若しくは3、又はそれ以上の完全又は部分的なセットの染色体が存在する場合もある)。さらに別の例において、二倍体組換え宿主の両セットの染色体又は多倍体若しくは異数体の少なくとも2つの染色体は、安定して組み込まれたH-フェリチン遺伝子を含んでもよい。H-フェリチン遺伝子は、任意の機能的選択マーカー遺伝子と密接に連結されて、遺伝子カセットを構成することができる。例えば、URA3、LEU2、TRP1、HIS3、又はMET15などの適した機能的選択マーカー遺伝子が当業者にはわかるであろう。例えば、H-フェリチン遺伝子は、URA3遺伝子と密接に連結されてもよい。組換え宿主の染色体に存在する機能的選択マーカー遺伝子のコピーは、それを機能的でなくす機能的選択マーカー遺伝子の変異体であってもよい。当業者には理解されるであろうとおり、これは、第1の一倍体の遺伝子カセットを含む一倍体の選択を促進し、第2の一倍体は変異URA3遺伝子であってもよい。明確にするために、H-フェリチン遺伝子及び機能的選択マーカー遺伝子に加えて、遺伝子カセットは、例えば、プロモーター及びターミネーターを含む、当業者に既知の他の構成要素をさらに含んでもよい。
【0062】
H-フェリチン遺伝子を含む組換え宿主は、少なくとも1つの二倍体細胞、多数体細胞、又は異数体細胞を含んでもよい。一倍体は、1つの完全なセットの染色体を含む。組換え宿主が二倍体である場合、反対の接合型である2つの一倍体が接合して、二倍体組換え宿主を形成する。組換え二倍体宿主の第1のセットの染色体の1つの染色体は、組換えH-フェリチン遺伝子を含んでもよい。組換えH-フェリチン遺伝子は、染色体に組み込まれた遺伝子カセットの一部であってもよい。組換えH-フェリチン遺伝子は、H-フェリチンの産生のためのアミノ酸配列をコードする。H-フェリチンコード配列は、組換え宿主が鉄補充に適したビヒクルとして働くのに十分な高いレベルの鉄貯蔵タンパク質を産生するよう、遺伝子カセットにおいて適切なプロモーターの制御下に置かれてもよい。適したプロモーターは当該技術分野において知られており、高レベルの構成的発現を誘導するプロモーター及び発現を環境条件によって制御することができるプロモーターが挙げられる。例えば、酵母組換え宿主では、適した構成的プロモーターは、酵母TDH3転写プロモーターであってもよい。例えば、酵母組換え宿主では、適した調節可能なプロモーターは、酵母GAL1プロモーターであってもよい。さらに、組換え宿主の遺伝子構成は、様々な潜在的に有利な結果を達成するようさらに操作されてもよい。例えば、タンパク質分解が、鉄貯蔵タンパク質の安定性を向上させるよう操作されてもよい。鉄輸送機構が、以下に限定されないが、細胞表面、液胞、又はミトコンドリアの鉄濃度を含む、特定の細胞内区画の鉄濃度を変えるなどの、望ましい結果を達成するよう操作されてもよい。組換え宿主の鉄含有量は、組換え宿主を増殖させる培地に既知の量の鉄化合物を添加することによって調節されてもよい。組換え宿主を使用して、ヒト及び他の動物に対する鉄補充を、組換え宿主の消費又は摂取を含むが、これらに限定されない多くの任意の手段によって達成することができる。組換え宿主は、特に鉄補充のために増殖させられてもよく、又は別のプロセス(例えば、発酵)の副産物であってもよい。例では、二倍体、多倍体、又は異数体組換え宿主は、原栄養酵母の一般的な栄養要求しか有さない場合もある。すなわち、遺伝子変異によりフェリチンをコードする1セットの染色体の栄養要求が、第2のセットの染色体中の遺伝子の非変異コピーの存在により補完される。同様に、遺伝子変異により第2のセットの染色体の栄養要求が、第1のセットの染色体中の遺伝子の非変異コピーの存在によって補完される。
【0063】
例では、第2のセットの染色体は、フェリチンを発現しなくてもよい。第2のセットの染色体は、機能的選択マーカーをさらに発現しなくてもよい。すなわち、第2のセットの染色体は、遺伝子カセットを含まなくてもよい。例えば、第1のセットの染色体は、タンパク質の産生に必須のアミノ酸であるロイシンの合成に関与する変異LEU2遺伝子を含んでもよい。第2のセットの染色体は、非変異LEU2遺伝子を含んでもよく、これが、少なくとも第1のセットの染色体及び第2のセットの染色体を含む二倍体、多倍体、又は異数体がロイシンを合成するのを可能にする。ロイシンを合成する第2のセットの染色体の能力が、アミノ酸を合成することができない第1のセットの染色体を補う。結果として、二倍体、多倍体、又は異数体組換え宿主は、原栄養酵母が合成するすべての通常の栄養材料を産生することができる(すなわち、組換え宿主は、原栄養体である)。すなわち、各遺伝子の非変異コピーが、二倍体組換え宿主中の2つの相同染色体のうちの少なくとも1つ、多倍体組換え宿主中の3つ以上の相同染色体のうちの少なくとも1つ、又は異数体若しくは異数体組換え宿主中の少なくとも2セットの染色体のうちの少なくとも1つに存在する。
【0064】
例えば、第1のセットの染色体は、リボ核酸(RNA)の合成に必須の核酸塩基であるウラシルの合成に関与する変異URA3遺伝子を含んでもよい。第2のセットの染色体は、非変異体URA3遺伝子を含んでもよく、これが第2のセットの染色体がウラシルを合成するのを可能にする。ウラシルを合成する第2のセットの染色体の能力が、核酸塩基を合成することができない第1のセットの染色体を補う。結果として、二倍体又は多倍体組換え宿主は、原栄養酵母が合成するすべての通常の材料を産生することができる(すなわち、組換え宿主は、原栄養体である)。
【0065】
他の例において、第1のセットの染色体及び第2のセットの染色体は、フェリチンをコードしてもよい。両セットの染色体は、機能的選択マーカー遺伝子をさらにコードしてもよい。すなわち、両セットの染色体は、遺伝子カセットを含む。両セットの染色体が遺伝子カセットを発現する場合、遺伝子カセットは、異なる遺伝子座にあってもよく、その結果、各セットの染色体が異なる変異を有する。例えば、第1のセットの染色体は、変異LEU2遺伝子及び非変異URA3遺伝子を含んでもよく、同時に第2のセットの染色体は、非変異LEU2遺伝子及び変異URA3遺伝子を含む。
【0066】
本発明はまた、本明細書中で開示されている組換え宿主の1つを含む組成物を開示する。例において、本組成物は、少なくとも第1のセットの染色体及び第2のセットの染色体を含む組換え宿主を含んでも、又は基本的にそれからなっても、又はそれからなってもよく、第1のセットの染色体及び第2のセットの染色体の少なくとも1つは、フェリチン又はその相同体をコードする組換え遺伝子を含む。別の例において、本組成物は、フェリチン又はその相同体をコードする組換え遺伝子を含む原栄養体を含む、組換え宿主を含んでも、又は基本的にそれからなっても、又はそれからなってもよい。本組成物は、鉄をさらに含んでもよい。組換え宿主によって発現されるフェリチン及び鉄は、フェリチン鉄複合体を形成してもよい。鉄の供給源は、鉄塩、有機鉄複合体、元素鉄ナノ粒子、又はそれらの組み合わせであってもよい。適した鉄塩の例としては、以下に限定されないが、硫酸鉄が挙げられる。適した鉄複合体の例としては、鉄高分子複合体、鉄炭水化物複合体、及び鉄アミノグリコサン複合体が挙げられるが、これらに限定されない。これらの有機鉄複合体は、商業的に入手可能であってもよく、及び/又は当該技術分野において既知の方法によって合成されてもよい。鉄炭水化物複合体の適した非限定例としては、鉄糖複合体、鉄オリゴ糖複合体、及び鉄多糖複合体、例えば、鉄カルボキシマルトース、鉄スクロース、鉄ポリイソマルトース(鉄デキストラン)、鉄ポリマルトース(鉄デキストリン)、グルコン酸鉄、鉄ソルビタール、及び鉄水素化デキストランが挙げられ、これらは、ソルビトール、クエン酸及びグルコン酸及びそれらの混合物などの他の化合物とさらに複合体を形成してもよい(例えば、鉄デキストリン・ソルビトール・クエン酸複合体及び鉄スクロース・グルコン酸複合体)。鉄アミノグリコサン複合体の適した非限定例としては、コンドロイチンスルファート、鉄デルマチンスルファート、及び/又は鉄ケラタンスルファートが挙げられ、そのそれぞれが他の化合物、及びそれらの混合物とさらに複合体を形成してもよい。鉄アミノグリコサン複合体の例としては、鉄ヒアルロン酸、鉄タンパク質複合体、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
鉄は、フェリチンを発現する組換え宿主及び鉄の乾物に基づいて少なくとも1重量%、例えば、少なくとも3重量%、例えば、少なくとも5重量%、例えば、少なくとも5.5重量%の量で組成物中に存在してもよい。鉄は、フェリチンを発現する組換え宿主及び鉄の乾物に基づいて15重量%を超えない、例えば、10重量%を超えない、例えば、9.5重量%を超えない、例えば、8重量%を超えない量で存在してもよい。鉄は、フェリチンを発現する組換え宿主及び鉄の乾物に基づいて1重量%から15重量%、例えば、3重量%から12重量%、例えば、3重量%から8重量%、例えば、5重量%から10重量%、例えば、5.5重量%から9.5重量%の量で組成物中に存在してもよい。
【0068】
本組成物は、フェリチン又はその相同体と複合体を形成していない細胞内鉄及び/又は細胞外鉄を含んでもよい。
【0069】
本発明によると、場合によっては、鉄の少なくとも5%が、フェリチンと複合体を形成していてもよく、例えば、鉄の少なくとも10%、例えば、少なくとも15%、例えば、少なくとも20%、例えば、少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、例えば、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%、例えば、少なくとも80%、例えば、少なくとも90%、例えば、100%がフェリチンと複合体を形成していてもよい。本発明によると、場合によっては、95%を超えない、例えば、90%を超えない鉄が、フェリチンと複合体を形成していてもよい。本発明によると、鉄の5%から100%、例えば、10%から100%、例えば、30%から95%、例えば、50%から90%、例えば、60%から90%、例えば、75%から90%が、フェリチンと複合体を形成していてもよい。
【0070】
本発明の組成物は、任意に第2の組換え宿主をさらに含んでもよい。本明細書中で使用される場合、組換え宿主に関する「第2の」という用語は、別々の異なる組換え宿主を指し、必ずしも2つの組換え宿主のみが存在することを意味するわけではない。第2の組換え宿主は、上記の組換え宿主のいずれかを含んでもよい。第2の組換え宿主は、フェリチンを発現する組換え宿主、フェリチンを発現しない組換え宿主、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。さらに又は代わりに、第2の組換え宿主は、プロバイオティック、プレバイオティック、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0071】
本明細書に記載の任意の組成物は、摂取可能な物品に含まれてもよい。例では、フェリチンを発現する組換え宿主は、摂取可能な物品に含まれてもよい。例えば、摂取可能な物品は、医療食品、食品、食品成分、ダイエタリーサプリメント、医薬組成物、又はそれらの組み合わせであってもよい。他の例において、本明細書に記載の任意の組成物は、座剤の形態であってもよい。他の例において、本明細書に記載の任意の組成物は、ダイエタリーサプリメント又は栄養サプリメントであってもよい。例では、フェリチンを発現する組換え宿主は、ダイエタリーサプリメント又は栄養サプリメントに含まれてもよい。
【0072】
他の例において、本明細書に記載の任意の組成物は、医薬組成物に含まれてもよい。医薬組成物は、例えば、貧血などの鉄欠乏障害の処置のために投与することができる。医薬組成物は、高い投与量の鉄が鉄欠乏の処置に有益であろう場合にはいつでも、投与することができる。
【0073】
本明細書に記載の組成物は、乾燥粉末、液体中の乾燥粉末の分散液、液体中の乾燥粉末の懸濁液、座剤、泡状浣腸、液体浣腸などの形態であってもよく、経口又は直腸投与される様式に製剤化されてもよい。本発明の組成物は、(本明細書に記載の)薬学的に許容される担体又は希釈剤を含み、材料を飲み込むことができるよう液剤、分散剤、乳剤、マイクロエマルジョン剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤などを形成することができる。適したレベルにpHを調節するためにpH調整剤(すなわち、酸又は塩基)が含まれてもよく、及び/又は微生物の活動を妨げるために細菌剤及び抗真菌剤が含まれてもよい。医薬組成物はまた、体内での薬剤の放出を制御するか、又は遅らせる配合物を含んでもよい。場合によっては、医薬組成物は、シリンジ、投薬バイアルなどのディスペンサーに入れられていてもよい。
【0074】
摂取可能な希釈剤又は担体の例は、配合者の判断に従って、糖、例えば、単糖、二糖など;賦形剤、例えば、カカオバター及び蝋;油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及び大豆油;グリコール、例えば、プロピレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェンフリー水;生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;その他の無毒で適合した滑沢剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム;着色剤;放出剤;コーティング剤;保存料並びに酸化防止剤である。
【0075】
本明細書に記載の組成物は、加圧容器から放出されてもよく、又は粉末、顆粒、若しくはトローチの形態であってもよい。本組成物は、少なくとも1つの結合剤及び/又は少なくとも1つの増量剤をさらに含んでもよい。適した結合剤及び増量剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、微結晶性セルロース、セルロースゲル、セルロースガム、カルボキシメチルセルロース、木材パルプ、ダイズレシチン、グリシン、グルタミン酸ナトリウム、植物タンパク質、海藻若しくは抽出物、カラゲナン、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、製剤の他の成分と適合し、妥当なベネフィット/リスク比に見合った、毒性、若しくは別の許容できないものではない、薬学及び獣医学技術における使用に許容されることを意味する。本明細書中で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、所望の特定の剤形に適するような任意及びすべての溶媒、希釈剤、又はその他の液体ビヒクル、分散又は懸濁助剤、界面活性剤、等張化剤、増粘乳化剤、安定剤、保存料、固体結合剤、滑沢剤などを含む。ジェンナーロ(Gennaro)編レミントンの薬科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences)、第19版、マックパブリッシング(Mack Publishing)、イーストン、ペンシルベニア、1995年は、医薬組成物を製剤化する際に使用される様々な担体及びその調製のための既知の技術を提供する。
【0077】
当業者は、患者を効果的に処置するために必要とされる投与量に様々な要因が影響を与えること、したがって、投与量及び投与を、処置される患者を考慮して主治医が選択でき、十分なレベルの活性剤(複数可)のため又は所望の効果を維持するために調節することができることを理解する。考慮され得るさらなる要因としては、疾患状態の重症度、例えば、疾患の中程度又は進行したステージ;患者の年齢、体重、性別及び健康全般;食餌、投与の時間及び頻度;鉄欠乏の状態;投与経路;薬物の組み合わせ;反応感度;事前の処置;並びに治療に対する耐性/反応が挙げられる。医薬組成物は、例えば、30分毎、1時間毎又は1日に1回、1日に複数回、週に1回、週に複数回、2週間に1回、月に1回などで投与されてもよい。
【0078】
本発明の活性剤は、本明細書中で開示されている任意の疾患、障害などを処置するために使用されてもよく、処置される患者又は対象に適した有効用量として投与されてもよい。上記のとおり、本発明の組成物の有効用量は、適切な医学的判断及び経験の範囲内で主治医によって決定されてもよい。活性剤に関する有効用量は、まず細胞培養アッセイ又はマウス、ラット、ウサギ、イヌ、若しくはブタなどの動物モデルにおいて推定することができる。動物細胞モデルは、望ましい濃度及び合計投薬範囲及び投与経路を実現又は決定するために使用でき、これを、ヒトへの投与のための投与量の有用な範囲及び経路を決定するために使用することができる。さらに、臨床試験及び個々の患者反応が、推奨される有効用量を決定する場合もある。
【0079】
有効用量の本明細書に記載の1つの組成物は、1用量当たり少なくとも13mg、例えば、1用量当たり少なくとも50mg、例えば、1用量当たり少なくとも75mg、例えば、1用量当たり少なくとも100mg又はそれ以上の鉄の投与量レベルで投与されてもよい。有効用量の本明細書に記載の1つの組成物は、1用量当たり1000mgを超えない、例えば、1用量当たり700mgを超えない、例えば、1用量当たり300mgを超えない投与量レベルで投与されてもよい。有効用量の本明細書に記載の1つの組成物は、1用量当たり13mgから1000mg、例えば、1用量当たり50mgから700mg、例えば、1用量当たり75mgから300mg、例えば、1用量当たり100mgから300mgの鉄の投与量レベルで投与されてもよい。本明細書に記載されるとおり、投与量レベルは、対象若しくは患者に投与される単回用量として、又は1日の間に投与量レベルを達成する複数回の投与により投与されてもよい。投与量レベルはまた、投与間で日数を空けて週に複数回、週に1回、2週間に1回、又は月に1回の投与に対する投与される鉄の総量であってもよく、用量は、平均の1日当たりの上記の投与量レベルで鉄を投与する。
【0080】
上記のとおり、本明細書に記載されている方法は、一般に、本明細書に記載の任意の組成物の対象への投与を含む。方法は、(a)フェリチンを発現する組換え宿主及び(b)鉄を含む、基本的にそれらからなる、又はそれらからなる組成物を、フェリチンを発現する組換え宿主及び鉄の乾物に基づいて少なくとも1重量%の量で投与することを含んでも、又は基本的にそれからなっても、又はそれからなってもよく、鉄の少なくとも60%は、フェリチンと複合体を形成している。例えば、対象に本明細書に記載の任意の組成物を投与することを含む対象を処置するための方法が開示されている。投与することは、対象に有効量の少なくとも1つの本明細書に記載の組成物を投与することを含んでもよい。本明細書中で使用される場合、「有効量」又は「有効用量」という用語は、有害作用を引き起こす可能性のあるいかなる量も上回らない一方で処置の(すなわち、鉄欠乏の症状又は状態を調整する、回復させる、又は予防する)ための示される組成物の量である。有効用量は、処置の過程で増加又は減少する場合もある。有効な処置の有効性又は毒性を評価する方法は、当業者に知られており、例えば、ED50(用量が集団の50%で有効である)及びLD50(用量が集団の50%に致死的である)である。有効な作用に対する毒性作用の用量比が治療指数であり、割合LD50/ED50として表される。特に、ED50及びLD50は、対象の年齢又は状態により変動することがある。
【0081】
本組成物は、単回用量として或いは第1の用量の組成物の投与に続いて第2の用量の組成物の投与が行われるか、又は逆もまた同様に行われるよう、同時又は連続的に投与される複数用量(すなわち、第1、第2、第3などの用量)として投与されてもよい。第1及び第2の用量が連続的に投与される場合、方法は、用量の投与間に待ち時間を含んでもよい。第1、第2、第3などの用量は、同じか、又は異なる量の鉄を含んでもよい。本明細書中で使用される場合、「連続的に」という用語は、第1の用量の本発明の組成物の投与に続いて第2の用量の本発明の組成物の投与が行われる処置プロトコルを指す。本明細書中で使用される場合、「同時に」という用語は、第1及び第2の用量が別々で、実質的に同じ時間に投与される、第1の用量の本発明の組成物の投与及び第2の用量の本発明の組成物の投与を指す。
【0082】
本発明によると、対象の鉄欠乏は、対象に本明細書に記載の任意の組成物を投与することによって、例えば、有効量の本明細書に記載の任意の組成物を投与することによって処置することができる。例えば、対象を処置する方法は、対象に(a)フェリチンを発現する組換え宿主及び(b)鉄を含む組成物を、フェリチンを発現する組換え宿主及び鉄の乾燥重量に基づいて少なくとも1重量%の量で投与することを含んでも、又は基本的にそれからなっても、又はそれからなってもよい。投与することは、経口投与又は直腸投与を含んでもよい。対象は、投与に先立って以下の少なくとも1つを有すると判断されてもよい:機能性鉄欠乏、鉄欠乏、貧血、鉄欠乏性貧血、又は腸内マイクロバイオーム障害。対象は、鉄欠乏でなくてもよい。適した対象は、組成物を取り入れることによって利益を得るであろうあらゆる対象であろう。処置することは、食餌管理を含む場合もある。
【0083】
本発明の特定の態様を詳細に記載してきたが、本開示の教示全体に鑑みそれらの細部に対する様々な改変物及び変形物が開発可能であろうことを当業者は認識するであろう。したがって、開示されている特定の配置は、説明のためのものに過ぎず、添付の特許請求の範囲及び態様並びにその任意及びすべての等価物の最大範囲が示される本発明の範囲を限定するものではないことが意図される。
【0084】
多数の改変物及び変形物が、上記開示に鑑み記載される広い発明概念から逸脱することなく可能であり、本明細書において例示されることを当業者は認識するであろう。したがって、前述の開示は、本出願の様々な例示的態様の説明のためのものに過ぎず、本出願及び添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内にある多数の改変物及び変形物が当業者によって容易に作製され得ることが理解されるべきである。
【実施例1】
【0085】
12:12時間の明暗サイクル(点灯時間06:00から18:00)に維持された温度(23±2℃)及び湿度(40%)制御された部屋内の吊り下げワイヤーケージにケージ当たり1匹の20日齢の雄のスプラーグドーリーラット(エンビゴ(Envigo))を収容した。ラットには示した2ppmの鉄の鉄欠乏食(「ID食」)又は補足食を制限無しに与えた。ID食は、米国国立栄養研究所(AIN:American Institute of Nutrition)-93G食の配合表に従い炭水化物の単独の供給源としてトウモロコシデンプンとともに、鉄を添加せず調製した。硝酸(パーキンエルマー)による湿式消化後に原子吸光分析を使用してすべての食餌の鉄レベルを検証した。すべての実験プロトコルは、米国国立衛生研究所動物実験ガイドラインに従い、ペンシルベニア州立大学動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)によって認可された。
【0086】
ラットにID食を26日間(P21~P47)与え、これにより貧血がもたらされた(平均ヘマトクリット及びヘモグロビンレベルが、それぞれ5.3±0.2及び16.2±0.1%であった)。次いで、P47にラットを体重の均整のとれた2つの食餌群(n=3~5/群)に分けた。食餌群1に一倍体酵母フェリチン複合体(53μg鉄/g食餌、n=4)を含む食餌を与えた。一倍体酵母フェリチン複合体は、
図5の染色体に組み込まれたフェリチン発現カセットを含む単一の染色体を含む。一倍体酵母フェリチン複合体は、栄養要求性である。食餌群2に本出願に記載の二倍体酵母フェリチン複合体(49μg鉄/g食餌、n=3)を含む食餌を与えた。二倍体酵母フェリチン複合体は2つの染色体を含み、第1の染色体は、
図5の染色体に組み込まれたフェリチン発現カセットを含み、第2の染色体は染色体に組み込まれたフェリチン発現カセットがない。二倍体酵母フェリチン複合体は、原栄養性である。割り当てた食餌をラットに14日間与え、フード摂取を試験の間中監視した。
【0087】
図7及び
図8に示した結果は、二倍体酵母フェリチン複合体がそれぞれ、一倍体酵母フェリチン複合体と同等のヘモグロビン回復及びヘマトクリット回復をもたらしたことを示す。
【実施例2】
【0088】
一倍体出芽酵母の作製
一倍体出芽酵母を、ウラシルが欠如した6mMのFeSO4を含む合成完全(SC)培地において30℃で振盪しながら2日間増殖させた。細胞を遠心分離によって回収し、滅菌水で1回洗浄した。再懸濁後、細胞を65℃で30分間インキュベートして、低温殺菌を行った。次いで、細胞を滅菌水でさらに2回洗浄して、取り込まれなかった鉄を除去し、凍結乾燥した。
【0089】
二倍体出芽酵母(S.cevervisiae)の作製
二倍体出芽酵母を、ウラシルが欠如した6mMのFeSO4を含む合成完全(SC)培地において30℃で振盪しながら2日間増殖させた。細胞を遠心分離によって回収し、滅菌水で1回洗浄した。再懸濁後、細胞を65℃で30分間インキュベートして、低温殺菌を行った。次いで、細胞を滅菌水でさらに2回洗浄して、取り込まれなかった鉄を除去し、凍結乾燥した。
【0090】
一倍体及び二倍体酵母サンプルの分析
一倍体及び二倍体酵母サンプルをフェリチンに関して分析するために、酵母調製物のアリコートを電子顕微鏡法により調べた。FHT1の存在をさらに実証するために、酵母ライセートに対するウエスタンブロット分析を行った。サンプルを4~20%のトリ-グリシンSDSゲル上に流した。この後、それをPVDF膜に転写し、まずH-フェリチンに対する抗体(1:500、セルシグナリング(Cell signaling))、続いて二次抗体(1:5000、GEヘルスケア(healthcare))で調べた。酵母中のフェリチンが鉄を含むかどうかを判断するために、25μlの酵母ライセートを4~20%のトリス-グリシンSDSゲル(バイオ・ラッド(BioRad))上に流し、ペルルス株を使用して鉄を評価するために使用した。簡単にいえば、ゲルを脱イオン水で1回すすいだ後、2部のフェリシアン化カリウム(シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)、カタログ#702587)及び1部の10%HCl溶液からなる溶液とともに30分間インキュベートした。次いで、ゲルを数回、脱イオン化水で洗浄して、バックグラウンドを除去し、ブルーペルルス反応に関して観察した。
【0091】
酵母サンプルの鉄含有量を分析するために、酵母を硝酸(nitic acid)中で消化し、原子吸光分析を使用して鉄量を測定した。
【0092】
図9Aに示した結果は、酵母の1gのサンプルの重量パーセントに基づいて一倍体酵母サンプル及び二倍体酵母サンプルの鉄含有量を比較した。示したとおり、二倍体酵母サンプルは、一倍体酵母サンプル(5%)と比較して高い鉄レベル(9%)を有した。
図9Bに示した結果は、一倍体酵母サンプル及び二倍体酵母サンプルのH-フェリチン含有量を比較した。示したとおり、一倍体酵母サンプルは、二倍体酵母サンプル(2.76%)と比較して高い量のH-フェリチン(4.12%)を有した。
【0093】
したがって、二倍体酵母サンプル中にH-フェリチンが少ないという事実にもかかわらず、一倍体酵母サンプルと比較して鉄が多かった。さらに、この差にもかかわらず、一倍体酵母及び二倍体酵母は、インビボ試験において同様に十分に働いた。これは、二倍体酵母が、性能を維持したままでありながら、鉄の吸収がより効率的であったことを示唆する。
【国際調査報告】