(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】表面を検査するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20240521BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
G01N21/84 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571804
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2022063483
(87)【国際公開番号】W WO2022243390
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】102021113233.9
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507231987
【氏名又は名称】ベーユプスィロンカー-ガードネル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スパーリング、ウーヴェ
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA89
2G051AB07
2G051BA01
2G051BA05
2G051BA06
2G051BB01
2G051CA04
2G051CB01
2G051CB05
2G051CC07
(57)【要約】
表面、特に効果顔料を有する自動車両の表面を検査するための方法であって、検査されるべき表面に放射線が第1の放射デバイスによって第1の所定の放射角度で照射され、カラー画像記録デバイスが、第1の観察角度で放射方向によって照射される表面の空間分解画像を記録し、この画像記録デバイスが、画像記録デバイスに衝突する放射線の波長に依存するとともに人間の眼に衝突する放射線の波長に依存する第2の所定の感度(X(λ))とは異なる第1の所定の感度(F(λ))を有しており、第1の感度(F(λ))と第2の感度(X(λ))との間の差がフィルタデバイスによって少なくとも部分的に補償されることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面(10)、特に効果顔料を有する自動車両の表面を検査するための方法であって、
検査されるべき表面(10)に放射線が第1の放射デバイス(2)によって第1の所定の放射角度(a1)で照射され、カラー画像記録デバイス(4)が、第1の観察角度(b)で放射方向によって照射される前記表面の空間分解画像を記録し、この画像記録デバイス(4)が、該画像記録デバイスに衝突する放射線の波長に依存するとともに人間の眼に衝突する放射線の波長に依存する第2の所定の感度(X(λ))とは異なる第1の所定の感度(F(λ))を有する、方法において、
前記第1の感度(F(λ))と前記第2の感度(X(λ))との間の差がフィルタデバイス(6)によって少なくとも部分的に補償されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記フィルタデバイス(6)が前記表面(10)と前記画像記録デバイス(4)との間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フィルタデバイスは、前記画像記録デバイスによって記録される画像の評価に影響を及ぼすことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルタデバイス(6)は、200nm-1000nmの波長範囲内に、前記波長に応じてこの波長範囲内で変化する透過率を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
この変化する透過率は、前記第1の感度と前記第2の感度との間の波長依存の差を少なくとも一時的に補償するように選択されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記表面(10)と前記フィルタデバイス(6)との間に配置される屈折光学素子(12)によって、前記フィルタデバイスに衝突する放射が、影響を受け、特に屈折されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の所定の放射角度(a2)で前記第2の放射デバイス(14)によって前記表面に放射線が照射され、前記画像記録デバイスは、前記第2の放射デバイス(14)によって照射される前記表面の画像を記録することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記フィルタデバイスは、前記放射デバイスの発光スペクトルL(λ)、標準光の強度経過I(λ)、特に人間の眼の少なくとも1つの三刺激関数X(λ)、及び/又は前記画像記録デバイスのフィルタ特性F(λ)のためのものを考慮に入れることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記表面(10)に対して垂直な方向に対する前記観察角度(b)は、10°よりも小さく、好ましくは5°よりも小さく、好ましくは3°よりも小さく、及び/又は前記表面に対して垂直な方向に対する第1の入射角が、70°~20°、好ましくは60°~30°、好ましくは50°~40°であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの放射デバイスが、指向性放射線又は拡散放射線を前記表面(10)へと方向付けることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
表面(10)、特に効果顔料を有する自動車両の表面を検査するための装置であって、
検査されるべき表面(10)に放射線を第1の所定の放射角度(a1)で照射する第1の放射デバイス(2)を有し、第1の観察角度(b)で放射方向によって照射される前記表面の空間分解画像を記録するカラー画像記録デバイス(4)を有し、この画像記録デバイス(4)が、該画像記録デバイスに衝突する前記放射線の波長に依存するとともに人間の眼に入射する前記放射線の波長に依存する第2の所定の感度とは異なる第1の所定の感度を有する、装置において、
前記第1の感度と前記第2の感度との間の差を少なくとも部分的に補償するフィルタデバイスを有することを特徴とする装置。
【請求項12】
前記フィルタデバイスは、前記表面(10)と前記画像記録デバイス(4)との間のビーム経路に配置されることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
屈折素子、特にレンズが、前記表面(10)と前記フィルタデバイスとの間に配置されることを特徴とする、請求項11又は12に記載の装置(1)。
【請求項14】
前記第1の放射デバイスは、発光ダイオード(LED)、特に三蛍光体LEDを備えることを特徴とする、請求項11~13のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項15】
少なくとも1つの第2の放射デバイス及び/又は第2のセンサデバイスを備えることを特徴とする、請求項11~14のいずれか一項に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面特性を検査するための方法及び装置に関する。本発明は車両表面に関連して説明されるが、装置が家具などの他の表面にも適用できることに留意されたい。
【背景技術】
【0002】
効果顔料によるコーティングは、しばらくの間、最新技術で知られてきた。これらは、視野角に応じて異なる光学特性を有する。そのような表面を検査するための多種多様な検査デバイスも知られている。そのような検査は、例えば、損傷した表面のためのラッカーを製造するために行なうことができる。
【0003】
このため、そのような表面の標準化された評価を可能にする検査手順及び検査装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、表面の最も正確な想定し得る評価を可能にするという目的に基づく。特に、人間の眼の観察特性が考慮されるようになっている。特に、検査されるべき表面の現実的な色印象も可能にされるべきである。
【0005】
本発明によれば、これは、独立請求項に係る方法及び装置によって達成される。有利な実施形態及び更なる発展形態が、従属請求項の主題である。
【0006】
本発明の表面、特に効果顔料を有する自動車両の表面を検査するための方法において、検査されるべき表面に放射線が第1の放射デバイスによって第1の所定の放射角度で照射され、カラー画像記録デバイスが、第1の観察角度で放射方向によって照射される表面の空間分解画像を記録し、画像記録デバイスが、画像記録デバイスに衝突する放射線の波長に依存するとともに人間の眼に衝突する放射線の波長に依存する第2の所定の感度(人間の眼の)とは異なる第1の所定の感度を有する。
【0007】
本発明によれば、第1の感度と第2の感度との間の差がフィルタデバイスによって少なくとも部分的に補償される。
【0008】
表面を観察する場合、RGBカメラなどの市販の画像記録デバイスが人間の眼の波長依存の感度からずれる特定の波長依存の感度を有するという問題が生じる。したがって、目的は、照射面の最も現実的な想定し得る画像記録(又はこの画像記録の最も現実的な想定し得る評価)を可能にすることである。
【0009】
したがって、本発明は、フィルタデバイスによって、人間の眼に対する画像記録デバイスの少なくとも部分的な適合を達成することを提案する。
【0010】
CIE標準感情価系(CIE Standard Valence System)又はCIE標準表色系(CIE Standard Colour System)は、人間の色知覚(色)と色刺激の物理的原因(色)との間の関係を確立するために国際照明委員会(CIE-Commission internationale de l’eclairage)によって規定された表色系である。この表色系は、知覚可能な色の全体を取り込む。色空間座標を使用して、主に英語圏では、Yxy色空間又はCIE-Yxyという用語、及び三刺激色空間も一般的に使用される。
【0011】
特に英語圏では、3つの基本値X、Y、Zは三刺激と呼ばれる。この意味において、これらの基本値は、(この目的のために)規定された正規化基本色の3つの部分である。各色は、そのような3つの数字で識別することができる。したがって、三刺激系という用語は、CIE標準系に一般的に使用される。この曲線は三刺激曲線とも呼ばれる。
【0012】
好ましくは、フィルタデバイスは、放射デバイスと観察デバイスとの間のビーム経路に配置される光学フィルタデバイスである。しかしながら、フィルタデバイスは、画像記録デバイスによって記録される画像を評価する評価デバイスの構成要素であることも考えられ、フィルタデバイスは、好ましくは、ここで波長依存の感度の重み付けを行なうことができ、それに応じて画像評価デバイスによって記録された画像がピクセルごとに重み付けされるのが好ましい。
【0013】
したがって、この実施形態では、画像が記録され、特に色に関して個々のピクセルが評価され、波長依存の評価及び/又は重み付けが実行される。
【0014】
さらに好ましい方法において、フィルタデバイスは、画像記録デバイスによって記録される画像の評価に影響を及ぼす。好ましくは、画像は、区分ごとに、特にピクセルごとに評価される。この評価の範囲内で、ピクセルごとの重み付けを行なうことができる。特に、重み付けは、画像記録に入射する光の波長に応じて実行することができる。好ましくは、記録された画像の異なるピクセルは異なるように重み付けされる。
【0015】
例えば光学フィルタデバイスと比較して更に改善された整合を達成するために、光学フィルタデバイスと「ソフトウェア」フィルタデバイスの両方を使用することも可能である。
【0016】
好ましい方法において、フィルタデバイスは、検査されるべき表面と画像記録デバイスとの間に配置される。したがって、この実施形態において、フィルタデバイスは、好ましくはビーム経路に組み込まれて放射が好ましくは通過する光学素子である。
【0017】
すなわち、画像記録デバイスは、フィルタデバイスを介して表面を観察することが好ましい。
【0018】
このフィルタデバイスは、好ましくは、波長依存の透過率を有する。波長依存の透過率は、特に自然な周囲条件下での人間の観察者の観察と観察デバイスとの間の差が他方で少なくとも部分的に補償されるように、観察デバイスに到達する光が光の波長に応じて既に適合されているという効果を有する。
【0019】
好ましくは、200nm-1000nmの波長範囲内に、フィルタデバイスは、波長に応じてこの波長範囲内で変化する透過率を有する。
【0020】
波長範囲は、フィルタデバイスに照射される放射線、特に照射される光の波長範囲であると理解される。好ましくは、フィルタデバイスは、少なくとも幾つかの領域において、好ましくは連続的に、800nm~1000nm、好ましくは700nm~1000nmの波長範囲に透過率を有し、この透過率は(照射光強度に対して)20%未満、好ましくは15%未満、好ましくは10%未満、特に好ましくは5%未満である。
【0021】
好ましくは、フィルタデバイスは、少なくとも幾つかの領域において、(照射光強度に対して)20%未満である透過率を200nm-400nmの波長範囲に有する。
【0022】
好ましくは、400nm-700nmの波長範囲において、フィルタデバイスは、80%を超える、好ましくは85%を超える、好ましくは90%を超える、好ましくは95%を超える透過率を有する少なくとも1つの(波長)部分領域、好ましくは少なくとも2つの波長部分領域を含む。好ましくは、450nm及び650nmの波長範囲において、フィルタデバイスは、40%未満、好ましくは30%未満、好ましくは20%未満、好ましくは15%未満の透過率を有する少なくとも1つの波長部分領域を有する。
【0023】
好ましくは、400nm-700nmの波長範囲では、フィルタデバイスは、80%を超える透過率を有する少なくとも1つの波長部分範囲と、20%未満の透過率を有する少なくとも1つの波長部分範囲の両方を有する。
【0024】
好ましい方法において、この変化する透過率は、第1の感度と第2の感度との間の波長依存の差を少なくとも一時的に補償するように選択される。
【0025】
これに関連して、放射デバイスの発光スペクトルL(λ)、標準光の強度曲線I(λ)、特に人間の眼の少なくとも1つの三刺激関数X(λ)、及び/又は画像記録デバイスのフィルタ特性F(λ)の特性値又は特性曲線を、フィルタデバイスを選択する際に考慮に入れることが特に好ましい。
【0026】
好ましくは、フィルタデバイスの波長依存の透過率T(λ)は、以下をもたらす。
T(λ)=X(λ)/(I(λ)・L(λ)・F(λ))
【0027】
ここで、I(λ)は光の種類の波長依存の特性を示し、例えばD65であり、L(λ)は光源の波長依存の特性を示し、F(λ)は観察デバイス(特にRGBフィルタ、とりわけそのフィルタ)の波長依存の特性を示し、X(λ)は眼の波長依存の光感受性(三刺激関数)を示す。
【0028】
好ましくは、観察デバイスの波長依存特性及び眼の波長依存の光感度は、少なくとも2つ、好ましくは3つの所定の波長範囲にわたって異なる機能を有する。
【0029】
好ましくは、第1の波長範囲は、300nm-600nm、好ましくは350nm-550nm、好ましくは400nm-500nmに及ぶ。更に、好ましくは、第2の波長範囲は、400nm-700nm、好ましくは450nm-650nm、好ましくは500nm-650nm、好ましくは530nm-600nmに及ぶ。更に、好ましくは、第3の波長範囲は、500nm-900nm、好ましくは550nm-800nm、好ましくは600nm-700nmに及ぶ。
【0030】
その際、人間の眼の知覚範囲全体をカバーすることが好ましい。
【0031】
さらに好ましい方法において、フィルタデバイスに衝突する放射が、好ましくは表面とフィルタデバイスとの間に配置される屈折光学素子によって、影響を受け、特に屈折する。好ましくは、放射線は、実質的に平行又は平行にフィルタデバイスに衝突するように回折される。好ましくは、放射線はフィルタデバイスに垂直に衝突する。
【0032】
さらに好ましい方法において、第2の放射デバイスによって放射線が第2の所定の放射角度で表面に照射され、画像記録デバイスは、第2の放射デバイスによって照射される表面の画像を記録する。
【0033】
好ましくは、第1及び第2の放射デバイスは、異なる時間又は期間に表面を照射する。これに代えて又は加えて、第2の画像記録デバイスが第2の観察角度で表面を観察することも考えられる。
【0034】
2つ以上の放射デバイスによって照射することによって、異なる整列された効果顔料から生じる効果を検出することも可能である。
【0035】
更に好ましい方法では、好ましくは第3の放射角度で表面に放射線を放射する第3の放射デバイスも設けられる。
【0036】
さらに好ましい方法では、表面に対して垂直な方向に対する観察角度は、10°よりも小さく、好ましくは5°よりも小さく、好ましくは3°よりも小さい。
【0037】
さらに好ましい方法では、表面に対して垂直な方向に対する第1の入射角が、70°~20°、好ましくは60°~30°、好ましくは50°~40°である。
【0038】
好ましくは、表面に対して垂直な方向に対する第2の放射デバイスの第2の放射角度は、85°~50°、好ましくは85°~60°、好ましくは85°~70°である。
【0039】
好ましくは、少なくとも1つの放射デバイスが、指向性放射線又は拡散放射線を表面へと方向付ける。拡散放射を使用することにより、曇天下で日射をシミュレートすることができ、指向放射を使用することにより、曇天下で日射をシミュレートすることができる。
【0040】
好ましくは、少なくとも1つの更なる放射デバイス、好ましくは全ての放射デバイスが、表面上に拡散放射線又は特に指向性放射線を導く。
【0041】
本発明は、さらに、表面、特に効果顔料を有する自動車両の表面を検査するための装置であって、検査されるべき表面に放射線を第1の所定の放射角度で照射する第1の放射デバイスを有し、第1の観察角度で放射方向によって照射される表面の空間分解画像を記録するカラー画像記録デバイス(例えばRGBカメラ)を有し、画像記録デバイスが、画像記録デバイスに衝突する放射線の波長に依存するとともに人間の眼に入射する放射線の波長に依存する第2の所定の感度とは異なる第1の所定の感度を有する、装置に関する。
【0042】
本発明によれば、装置は、第1の感度と第2の感度との間の差および/または偏差を少なくとも部分的に補償するフィルタデバイスを有する。
【0043】
効果顔料は、例えば、TiO2製の顔料であり得る。
【0044】
少なくとも部分的な補償により、400nm~700nmの波長範囲にわたって積分された平均偏差及び/又は偏差が、フィルタデバイスの使用によって減少され、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%減少されることが理解される。
【0045】
好ましくは、装置は多角度測定デバイスであり、すなわち、幾つかの(照明及び/又は照射)角度から表面を検査するのに適しており、そのように意図されている。
【0046】
好ましくは、装置は、白黒画像捕捉デバイスを使用する装置と「後方」互換性がある。特に、本発明で得られた測定結果は、白黒撮像記録デバイスで得られた測定結果と比較することができる。
【0047】
しかしながら、本発明は、自動車両のベースコート(又は他の表面)にも使用することができる。
【0048】
一般に、フィルタは、着色ガラス又は染料を添加することによって望ましくない光を吸収する、又は干渉コーティングを使用して望ましくない光を反射する。したがって、所望の透過プロファイルを達成するために、特別に設計された干渉コーティング及び/又は選択された材料を使用することが可能である。
【0049】
例えば、高密度コーティング及び優れた光学性能を伴う基板を有するハードコーティングされた光学フィルタを使用することができる。従来、コーティングされた光学フィルタは、一般に、低コストで効率的なフィルタを形成するために互いに積層された吸収材料、干渉コーティング、及び金属層の幾つかの層からなる。
【0050】
着色ガラスフィルタ並びにプラスチックフィルタ及びラテンフィルタなどの他の吸収フィルタは、フィルタのスペクトル特性に影響を及ぼすために、ソース基板内に元素、成分、染料又は他の着色剤を含む。
【0051】
光学フィルタデバイスは、吸収フィルタ及びダイクロイックフィルタの2つの主要なカテゴリに分けることができる。2つの変形例間の違いは、ブロッキングのタイプにある。吸収フィルタにより、光は、使用されるガラスによって吸収され、内部エネルギー又は熱に変換される。吸収フィルタは、望ましくない光からのノイズが問題となる用途に理想的である。また、吸収フィルタは、ブロッキングが角度に依存しないという利点も有する。光は広範囲の角度でフィルタに当たることができ、フィルタは依然としてその透過特性及び吸収特性を保持する。
【0052】
一方、ダイクロイックフィルタデバイスは、望ましくない波長を反射し、光スペクトルの所望の部分が通過できるようにする。このようにして、両方の波長範囲を別々に使用することができる。これは、フィルタのコーティングによって達成される。これは、異なる屈折率を有する異なる材料の1つ以上の薄層を有する。結果として生じる部分反射は、特定の波長範囲で特異的に干渉し、反射又は透過を抑制する。
【0053】
吸収フィルタとは対照的に、ダイクロイックフィルタは角度依存性である。設計で意図されたものとは異なる入射角を有するダイクロイックフィルタに光が当たる場合、有効層厚が変化し、したがって設計波長も変化する。このため、前述のレンズは、フィルタデバイスに到達する光をコリメートするために有利に使用される。更に、偏光依存性が増大する可能性がある。
【0054】
好ましい実施形態では、フィルタデバイスがNG(ニュートラルガラス)フィルタである、或いは、フィルタデバイスがニュートラルガラスフィルタ要素も有する。好ましくは、このフィルタデバイスは、表面から発する放射線がフィルタデバイスに垂直に当たるように配置される。
【0055】
好ましくは、放射デバイス及び観察デバイス並びにフィルタデバイスは、共通のハウジング内に配置される。好ましくは、このハウジングの内壁は光吸収性である。更に好ましい実施形態では、ハウジングが本質的に1つの開口のみを有し、該開口を通じて表面が観察される。更に好ましい実施形態では、装置が携帯可能である。
【0056】
更に好ましい実施形態では、画像記録デバイスがフィルタ、特にRGBフィルタを有する。好ましくは、放射デバイスは、標準光、特にD65標準光を放射する。標準光は、特性放射器の標準化されたスペクトル放射分布曲線を説明するために使用される用語である。D65標準光は、6504ケルビン(灰色の空にほぼ対応する)の色温度を有する放射分布である。
【0057】
更なる有利な実施形態において、装置は、画像記録デバイスによって記録される画像を評価する評価デバイスを有する。
【0058】
好ましい実施形態において、表面と放射デバイスとの間の距離は、3cm~30cm、好ましくは4cm~20cm、好ましくは4cm~10cmである。
【0059】
好ましい実施形態において、放射デバイスは、適切であり、異なる波長の放射線を放出するようになっている。特定の波長の光のみが通過できるようにする異なるフィルタを有するフィルタホイールなどのフィルタデバイスを設けることができる。
【0060】
さらに有利な実施形態では、屈折素子、特にレンズが、表面(検査されるべき)とフィルタデバイスとの間に配置される。このレンズは、好ましくは、(表面によって散乱された)光を本質的に同一直線上でフィルタに衝突させる。レンズ及びフィルタデバイスをユニットとして設計することが可能である。
【0061】
さらに好ましい実施形態では、第1の放射デバイスは、発光ダイオード(LED)、特に三蛍光体LEDを備える。好ましくは、装置は、前述のように、更なる放射デバイスも有する。これらの放射デバイスは、好ましくは発光ダイオード、特に三蛍光体LEDを有する。
【0062】
さらに好ましい実施形態では、装置は、少なくとも1つの第2の放射デバイス及び/又は第2のセンサデバイスを備える。この第2のセンサデバイスは、画像記録デバイスとして設計することもできるが、このセンサデバイスが、それに衝突する放射線の強度を決定するセンサデバイスであることも考えられる。
【0063】
更に好ましい実施形態において、装置は、好ましくは少なくとも3つの異なる角度で表面を照明する少なくとも3つの放射デバイス(又は照明デバイス)を有する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
更なる利点及び実施形態を添付図面において見ることができる。
【
図2】デジタルカメラのRGBフィルタの分光特性を示す。
【
図3】3つの色受容体X(赤)、Y(緑)、及びZ(青)の感度曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1は、表面10を検査するための装置1の概略図を示す。この装置は、表面10ビームS2上に光を放射する第1の放射デバイス2又は照明デバイス2を有する。
【0066】
参照符号4は、第1の放射デバイス(ビーム経路S4)によって照射される表面の少なくとも1つの空間分解画像を記録する画像記録デバイスを示す。参照符号Oはハウジング12の開口を示し、該開口を通じて、表面10が照射されるとともに、画像記録デバイス4が表面を観察する。画像記録デバイスは、0°の観察角度で画像を記録する、すなわち、表面10の垂直上方に配置される。
【0067】
参照符号12は、表面10と画像記録デバイスとの間のビーム経路S4に配置されるフィルタデバイスを示し、該フィルタデバイスを通じて画像記録デバイスが表面10の画像を記録する。
【0068】
参照符号14は、表面10によって反射及び/又は散乱される光をそれがコリメートされる態様で好ましくはフィルタデバイスに対しても垂直にフィルタデバイスに衝突するようにコリメートするべく機能する任意選択的に存在するレンズデバイスを示す。
【0069】
参照符号20は、画像記録デバイス4によって記録される画像を評価する評価デバイスを示す。評価デバイスは、表面の物理的特性に関して特徴的なデータを出力できることが好ましい。
【0070】
参照符号6は、放射線、特に光を表面上に(異なる入射角で、又はビーム経路S2に沿って)放射する第2の放射デバイスを示す。
【0071】
参照符号8は、放射線、特に光をビーム経路S3に沿って表面10上に放射する第3の放射デバイスを示す。
【0072】
好ましくは、放射デバイス2、6及び8を時間遅延を伴って作動させる制御デバイス(図示せず)が設けられる。
【0073】
図2は、入射する放射線の波長に依存する画像記録デバイスの特性を示す。より正確には、この画像記録デバイス又はカメラのRGBフィルタの感度が示される。
【0074】
「赤色」、「緑色」、及び「青色」成分を指す3つの曲線R、G、Bが示される。量子効率(%)が座標にプロットされ、入射光の波長が座標にプロットされる。
【0075】
カメラ全体の量子効率は、400nm~800nmの波長範囲で最初に増加し、その後減少することが分かる。このように、画像記録デバイスは、画像再生又は画像記録の独自の特徴を有する。
【0076】
図3は、人の眼の三刺激関数の表示を示す。ここでも、3つの曲線x(λ)、y(λ)及びz(λ)が示されており、nm単位の波長が横軸に記録され、三刺激値が縦軸に記録される。
【0077】
図2及び
図3における図の比較は、画像記録デバイスの波長依存の感度曲線と人間の眼の波長依存の感度曲線とがかなり異なることを示している。これらの差は、本発明によって少なくとも部分的に補償されるべきである。
【0078】
図4は、300nm~800nmの範囲内のD65標準光源の強度経過の図を示す。このタイプの光は、昼光及び曇り空の経過に近似される。第2の曲線Aは、従来の白熱灯の経過を示す。
【0079】
標準発光体Dは、昼光スペクトルを表わし、したがって、多数の工業地域にとって特に重要である。発光体D65は、その名が6,504ケルビン(K)の色温度に由来する。D65は、化学及び製薬産業において、塗料製造において、セラミック、織物、紙及び自動車両産業において使用される。
【0080】
標準発光体D65は、蛍光色を認識することができる高い青色成分を有する。
D65は、評価用光源として用いられる。D65光源のスペクトル分布は、DIN 5033に規定されており、300nm~780nmの波長の間にあり、したがって紫外線と赤色の間にある。
【0081】
図5は、本発明との関連において好ましくは使用される光源、すなわち三蛍光体高CRI LEDの発光スペクトルを示す。この光源は、本質的に400から800nmの間で放射することが分かる。これにより、400nmの座標にプロットされる相対放射強度は、実質的に50%を超える。ここでの色温度は5600Kである。この放射特性は、好ましくは、フィルタデバイスの設計においても考慮される。
【0082】
略語CRIは演色評価数を表わす。演色評価数は、光源の定量的指標であり、理想的な光源又は自然な光源と比較して物体の色をレンダリングする能力を表わす。CRIという用語は、多くの場合、市販の照明製品に使用される。適切に定義されると、評価される試験カラーサンプルに応じて、Ra-一般的な演色評価数-又はRi-特別な演色評価数-と呼ばれるべきである。
【0083】
CRIは、試験光源の演色性を所定の光源の演色性と比較することによって計算される。5000K未満の試験光源の場合、黒体スポットライトが所定の比較光源として使用される。5000Kを超える試験光源については、比較のために昼光(Dランプ)が使用される。Ri及びRaの計算は、CIE技術報告書13.3-1995に詳細に説明される。試験方法は、マンセル色系の初期版からの一組の8個のRa又は14個のRi CIE-1974色サンプルを使用する。最初の8つのサンプルは、適度に飽和されており、カラーサークルを包含し、ほぼ等しい輝度を有する。残りの6つのサンプルは、光源の演色性に関する更なる情報を提供する。
【0084】
図6は、上記のデータ及び上記の式から計算された、本発明に適合したフィルタデバイスの透過過程を示す。このデータに基づいて、
図6に示される透過挙動をほぼ示すフィルタデバイスが製造されることが好ましい。フィルタデバイスの製造において、所望の透過経路を達成するための幾つかの方法があり、これについては上記で説明した。
【0085】
図7a~
図7cは、勾配の3つの表示を示す(座標上の任意の単位でプロットされる)。
図7bは、
図3にも示されている人の眼の経過を再び示している。
図7cは、本発明に従って提案されたフィルタデバイスを伴わない画像記録デバイスから生じる経過を示す。
図7aは、フィルタデバイスを使用した場合に生じる感度又は経過を示す。
図7aに示された経過は、
図7cに示された経過よりも、
図7bに示された「自然の」経過にはるかに近いことが分かる。
【0086】
本出願人は、個別に又は組み合わせて従来技術と比較して新しいものであれば、出願書類に開示された全ての特徴を本発明に不可欠なものとして主張する権利を留保する。更に、個々の図は、それ自体が有利であり得る特徴も記載していることが指摘される。当業者は、図に記載された特定の特徴がこの図から更なる特徴を採用することなく有利であり得ることを直ちに認識する。更に、当業者は、個々の図又は異なる図に示される幾つかの特徴の組み合わせから利点ももたらされ得ることを認識する。
【国際調査報告】