(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】目的の組換え産物を産生するための修飾細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 5/07 20100101AFI20240521BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240521BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240521BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240521BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240521BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20240521BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240521BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240521BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
C12N5/07
C12N5/10 ZNA
C12P21/02 C
C12N15/09 100
C12N15/09 110
C12N15/113 Z
C12N15/86 Z
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571894
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 US2022030345
(87)【国際公開番号】W WO2022246259
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ミサギ, シャーラム
(72)【発明者】
【氏名】カステラーノ, ブライアン メギア
(72)【発明者】
【氏名】タン, タンミン
(72)【発明者】
【氏名】アシュケナージ, アヴィ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スネデカー, ブラッドリー アール.
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064AG27
4B064AG32
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
(57)【要約】
本開示は、特定の内因性細胞タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように修飾された細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)、および目的の組換え産物、例えば、組換えタンパク質、組換えウイルス粒子または組換えウイルスベクターの産生にそのような細胞を使用する方法に関する。これらの修飾は、改善された細胞培養性能(例えば、生存能力および産物力価の増大)を含む、いくつかの重要な領域に所望の形質を有する操作された細胞を生成するように特に選択された。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾細胞であって、非修飾細胞内の内因性タンパク質の発現と比較して2つ以上の内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように細胞が修飾され、
(a)発現が減少または排除された内因性タンパク質のうちの1つ以上が、細胞培養中に修飾細胞のアポトーシスを促進し、
(b)発現が減少または排除された内因性タンパク質のうちの1つ以上が、小胞体ストレス応答(UPR)を調節する、修飾細胞。
【請求項2】
修飾細胞であって、非修飾細胞内の内因性タンパク質の発現と比較して2つ以上の内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように細胞が修飾され、1つ以上の内因性タンパク質が、BCL2結合X、アポトーシス制御因子(BAX)およびBCL2アンタゴニスト/キラー1(BAK)からなる内因性タンパク質群から選択され、内因性タンパク質のうちの1つがプロテインキナーゼR様ERキナーゼ(PERK)である、修飾細胞。
【請求項3】
BAX、BAKおよびPERKの発現が、減少または排除される、請求項2に記載の修飾細胞。
【請求項4】
目的の組換え産物を発現するように操作される、請求項1から3のいずれか一項に記載の修飾細胞。
【請求項5】
目的の組換え産物を発現する組換え細胞から生成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の修飾細胞。
【請求項6】
1つ以上の内因性タンパク質が、検出可能な発現を有しない、請求項4または5に記載の修飾細胞。
【請求項7】
目的の組換え産物が、ウイルスベクターを含む、請求項4または5に記載の修飾細胞。
【請求項8】
目的の組換え産物が、ウイルス粒子を含む、請求項4または5に記載の修飾細胞。
【請求項9】
目的の組換え産物が、組換えタンパク質を含む、請求項4または5に記載の修飾細胞。
【請求項10】
組換えタンパク質が、抗体もしくは抗体融合タンパク質またはその抗原結合断片である、請求項9に記載の修飾細胞。
【請求項11】
抗体が、多重特異性抗体またはその抗原結合断片である、請求項10に記載の修飾細胞。
【請求項12】
抗体が、単一の重鎖配列、および単一の軽鎖配列、またはその抗原結合断片からなる、請求項10に記載の修飾細胞。
【請求項13】
抗体が、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項10から12のいずれか一項に記載の修飾細胞。
【請求項14】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項10から13のいずれか一項に記載の修飾細胞。
【請求項15】
目的の組換え産物が、1つ以上の標的位置で細胞ゲノムに組み込まれた外因性核酸配列によってコードされる、請求項4または5に記載の修飾細胞。
【請求項16】
検出可能なBAX、BAKおよびPERKを発現しない、請求項1から15のいずれか一項に記載の修飾細胞。
【請求項17】
低下したレベルのBAX、BAKおよびPERKを発現する、請求項1から15のいずれか一項に記載の修飾細胞。
【請求項18】
修飾動物細胞である、請求項1から17のいずれか一項に記載の修飾細胞。
【請求項19】
修飾動物細胞が、修飾されたSf9細胞、CHO細胞、HEK 293細胞、HEK-293T細胞、BHK細胞、A549細胞またはヒーラ細胞である、請求項18のいずれか一項に記載の修飾細胞。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の修飾細胞を含む組成物。
【請求項21】
(a)請求項1から19のいずれか一項に記載の修飾細胞を培養すること、および
(b)培養培地または修飾細胞から目的の組換え産物を回収すること
を含む、目的の組換え産物を産生する方法であって、
目的の組換え産物を発現する修飾細胞が、BAX、BAKおよびPERKの発現の減少または排除を示す、方法。
【請求項22】
(a)BAX、BAKおよびPERKを標的とするヌクレアーゼ支援および/または核酸を細胞に適用して、前記内因性遺伝子の発現を減少させるかまたは排除すること、ならびに
(b)非修飾細胞と比較して前記内因性遺伝子の発現が減少または排除されている修飾細胞を選択すること
を含む、修飾細胞を産生する方法。
【請求項23】
修飾が、目的の組換え産物をコードする外因性核酸の導入前に、または目的の組換え産物をコードする外因性核酸の導入後に行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ヌクレアーゼ支援遺伝子標的化系が、CRISPR/Cas9、CRISPR/Cpf1、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALENまたはメガヌクレアーゼからなる群から選択される、請求項22から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
遺伝子発現の減少が、RNAサイレンシングによって媒介される、請求項22から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
RNAサイレンシングが、siRNA遺伝子標的化およびノックダウン、shRNA遺伝子標的化およびノックダウン、ならびにmiRNA遺伝子標的化およびノックダウンからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
目的の組換え産物が、核酸配列によってコードされる、請求項21および23から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
核酸配列が、1つ以上の標的位置で修飾細胞の細胞ゲノムに組み込まれる、請求項21および23から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
修飾細胞によって発現される目的の組換え産物が、修飾細胞の細胞ゲノムにランダムに組み込まれた核酸配列によってコードされる、請求項21および23から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
目的の組換え産物が、ウイルスベクターを含む、請求項21および23から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
目的の組換え産物が、ウイルス粒子を含む、請求項21および23から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
目的の組換え産物が、組換えタンパク質を含む、請求項21および23から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
組換えタンパク質が、抗体もしくは抗体融合タンパク質またはその抗原結合断片である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
抗体が、多重特異性抗体またはその抗原結合断片である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
抗体が、単一の重鎖配列、および単一の軽鎖配列、またはその抗原結合断片からなる、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
抗体が、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項33から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項33から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
目的の産物を精製すること、目的の産物を採取すること、および/または目的の産物を製剤化することを含む、請求項21から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
修飾細胞が修飾動物細胞である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
修飾動物細胞が、修飾されたSf9細胞、CHO細胞、HEK 293細胞、HEK 293T細胞、BHK細胞、A549細胞またはヒーラ細胞である、請求項21から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
野生型のBax遺伝子、Bak遺伝子およびPERK遺伝子の各々のポリヌクレオチドおよび機能的コピーを含む対応する単離された動物細胞よりも高い特異的産生性を有する、請求項1から40のいずれか一項に記載の修飾細胞。
【請求項42】
Bax遺伝子、Bak遺伝子およびPERK遺伝子の各々の機能的コピーを含む対応する単離された動物細胞よりもアポトーシスに対して耐性である、請求項1から41のいずれか一項に記載の修飾細胞。
【請求項43】
フェドバッチ、灌流、プロセス強化、半連続灌流、または連続灌流細胞培養プロセスで使用される、請求項1から42のいずれか一項に記載の修飾細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月21日に出願された米国仮特許出願第63/191,781号に対する優先権を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が援用されており、それに対して優先権が主張される。
【0002】
本開示は、特定の内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように修飾された細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)、および目的の組換え産物、例えば、組換えタンパク質、組換えウイルス粒子または組換えウイルスベクターの産生にそのような細胞を使用する方法に関する。これらの修飾は、生存能力の改善、および産物力価の増大を含む、重要な領域に予想外の相乗的形質を有する操作された細胞を生成する。
【背景技術】
【0003】
細胞生物学および免疫学の急速な進歩により、がん、心血管疾患および代謝性疾患を含む様々な疾患のための新規の治療用組換え産物、例えば、組換えタンパク質、組換えウイルス粒子および組換えウイルスベクターを開発する需要が高まっている。これらの生物医薬品候補は、一般に、目的の産物を発現することができる市販の細胞株によって製造される。例えば、CHO細胞は、モノクローナル抗体を産生するように広く適合されている。
【0004】
細胞による特定のタンパク質の発現は、細胞培養性能にとって有害である。例えば、アポトーシスを促進するタンパク質は、培養物の生存能力および産生性を低下させ得る。さらに、生物医薬品の産生の過程で、組換え産物の発現は、細胞適応を誘発する高いタンパク質恒常性負荷(proteostatic burden)を課す可能性がある。例えば、細胞は、多くの場合、タンパク質恒常性負荷の増加を軽減するために、小胞体ストレス応答(UPR)を利用する。しかし、UPRは、全体的なタンパク質翻訳の減少を最終的にもたらし、目的の組換え産物について達成される力価に悪影響を及ぼし得る。
【0005】
したがって、当技術分野では、目的の組換え産物、例えば、組換えタンパク質、組換えウイルス粒子または組換えウイルスベクターを産生するためのさらに効率的な方法、修飾細胞および組成物が必要とされており、ここで、目的の組換え産物を発現する修飾細胞は、細胞生存能力、および目的の産物の産生に関連する力価に関連する改善された属性を示す。そのような改善された細胞は、細胞のゲノムを修飾すること(すなわち、細胞株操作)によって実現され得る。
【発明の概要】
【0006】
特定の実施形態では、本開示は、修飾細胞であって、非修飾細胞内の内因性タンパク質の発現と比較して2つ以上の内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように細胞が修飾され、(a)発現が減少または排除された内因性タンパク質のうちの1つ以上が、細胞培養中に修飾細胞のアポトーシスを促進し、(b)発現が減少または排除された内因性タンパク質のうちの1つ以上が、小胞体ストレス応答(UPR)を調節する、修飾細胞に関する。
【0007】
特定の実施形態では、本開示は、修飾細胞であって、非修飾細胞内の内因性タンパク質の発現と比較して2つ以上の内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように細胞が修飾され、1つ以上の内因性タンパク質が、BCL2結合X、アポトーシス制御因子(BAX)およびBCL2アンタゴニスト/キラー1(BAK)からなる内因性タンパク質群から選択され、内因性タンパク質のうちの1つがプロテインキナーゼR様ERキナーゼ(PERK)である、修飾細胞に関する。
【0008】
特定の実施形態では、本開示は、修飾細胞であって、BAX、BAKおよびPERKの発現が、減少または排除される修飾細胞に関する。
【0009】
特定の実施形態では、本開示は、上記の修飾細胞に関し、修飾細胞は、目的の組換え産物を発現するように操作される。特定の実施形態では、本開示は、上記の修飾細胞に関し、修飾細胞は、目的の組換え産物を発現する組換え細胞から生成される。特定の実施形態では、本開示は、上記の修飾細胞に関し、1つ以上の内因性タンパク質は、検出可能な発現を有しない。特定の実施形態では、本開示は、上記の修飾細胞に関し、目的の組換え産物は、ウイルスベクターを含む。特定の実施形態では、本開示は、上記の修飾細胞に関し、目的の組換え産物は、ウイルス粒子を含む。特定の実施形態では、本開示は、上記の修飾細胞に関し、目的の組換え産物は、組換えタンパク質を含む。特定の実施形態では、本開示は、上記の修飾細胞に関し、組換えタンパク質は、抗体もしくは抗体融合タンパク質またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、本開示は、上記の修飾細胞に関し、抗体は、多重特異性抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、本開示は、上記の修飾細胞に関し、抗体は、単一の重鎖配列、および単一の軽鎖配列、またはその抗原結合断片からなる。特定の実施形態では、本開示は、上記の修飾細胞に関し、抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である。特定の実施形態では、本開示は、上記の修飾細胞に関し、抗体はモノクローナル抗体である。特定の実施形態では、本開示は、上記の修飾細胞に関し、目的の組換え産物は、1つ以上の標的位置で細胞ゲノムに組み込まれた外因性核酸配列によってコードされる。
【0010】
特定の実施形態では、本開示は、上記の修飾細胞に関し、修飾細胞は、検出可能なBAX、BAKおよびPERKを発現しない。特定の実施形態では、本開示は、上記の修飾細胞に関し、修飾細胞は、低下したレベルのBAX、BAKおよびPERKを発現する。
【0011】
特定の実施形態では、本開示は、上記の修飾細胞に関し、修飾細胞は修飾動物細胞である。特定の実施形態では、修飾動物細胞は、修飾されたSf9細胞、CHO細胞、HEK 293細胞、HEK-293T細胞、BHK細胞、A549細胞またはヒーラ細胞である。
【0012】
特定の実施形態では、本開示は、上記の修飾細胞を含む組成物に関する。
【0013】
特定の実施形態では、本開示は、(a)上記の修飾細胞を培養すること、および(b)培養培地または修飾細胞から目的の組換え産物を回収することを含む、目的の組換え産物を産生する方法であって、目的の組換え産物を発現する修飾細胞が、BAX、BAKおよびPERKの発現の減少または排除を示す、方法に関する。
【0014】
特定の実施形態では、本開示は、(a)BAX、BAKおよびPERKを標的とするヌクレアーゼ支援および/または核酸(nuclease-assisted and/or nucleic acid targeting BAX,BAK,and PERK)を細胞に適用して、上記内因性遺伝子の発現を減少させるかまたは排除すること、ならびに(b)非修飾細胞と比較して上記内因性遺伝子の発現が減少または排除されている修飾細胞を選択することを含む、修飾細胞を産生する方法に関する。
【0015】
修飾細胞を産生するための上記の方法の特定の実施形態では、修飾は、目的の組換え産物をコードする外因性核酸の導入前に、または目的の組換え産物をコードする外因性核酸の導入後に行われる。特定の実施形態では、ヌクレアーゼ支援遺伝子標的化系は、CRISPR/Cas9、CRISPR/Cpf1、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALENまたはメガヌクレアーゼからなる群から選択される。特定の実施形態では、遺伝子発現の減少は、RNAサイレンシングによって媒介される。特定の実施形態では、RNAサイレンシングは、siRNA遺伝子標的化およびノックダウン、shRNA遺伝子標的化およびノックダウン、ならびにmiRNA遺伝子標的化およびノックダウンからなる群から選択される。
【0016】
特定の実施形態では、目的の組換え産物は、核酸配列によってコードされる。特定の実施形態では、核酸配列は、1つ以上の標的位置で修飾細胞の細胞ゲノムに組み込まれる。特定の実施形態では、修飾細胞によって発現される目的の組換え産物は、修飾細胞の細胞ゲノムにランダムに組み込まれた核酸配列によってコードされる。
【0017】
特定の実施形態では、目的の組換え産物は、ウイルスベクターを含む。特定の実施形態では、目的の組換え産物は、ウイルス粒子を含む。特定の実施形態では、目的の組換え産物は、組換えタンパク質を含む。特定の実施形態では、組換えタンパク質は、抗体もしくは抗体融合タンパク質またはその抗原結合断片である。特定の実施形態では、抗体は、多重特異性抗体またはその抗原結合断片である。特定の実施形態において、抗体は、単一の重鎖配列および単一の軽鎖配列、またはそれらの抗原結合断片からなる。特定の実施形態では、抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である。特定の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。
【0018】
上記の方法の特定の実施形態では、目的の産物を精製すること、目的の産物を採取すること、および/または目的の産物を製剤化することを含む。
【0019】
上記の方法の特定の実施形態では、修飾細胞は修飾動物細胞である。特定の実施形態では、修飾動物細胞は、修飾されたSf9細胞、CHO細胞、HEK 293細胞、HEK 293T細胞、BHK細胞、A549細胞またはヒーラ細胞である。
【0020】
特定の実施形態では、本開示は、野生型のBax遺伝子、Bak遺伝子およびPERK遺伝子の各々のポリヌクレオチドおよび機能的コピーを含む対応する単離された動物細胞よりも高い特異的産生性を有する修飾細胞に関する。
【0021】
特定の実施形態では、本開示は、Bax遺伝子、Bak遺伝子およびPERK遺伝子の各々の機能的コピーを含む対応する単離された動物細胞よりもアポトーシスに対して耐性である修飾細胞に関する。
【0022】
特定の実施形態では、本開示は、フェドバッチ、灌流、プロセス強化、半連続灌流、または連続灌流細胞培養プロセスで使用される修飾細胞に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】PDGFRaは、UPR活性化によってダウンレギュレートされる。
図1Aは、mAb1発現CHO細胞をpH7.07で増殖させた場合、PDGFRaタンパク質レベルおよびmRNAレベルがそれぞれダウンレギュレートされたことを示す。
【
図1B】
図1Bは、mAb1発現CHO細胞をpH7.07で増殖させた場合、PDGFRaタンパク質レベルおよびmRNAレベルがそれぞれダウンレギュレートされたことを示す。
【
図1C】
図1Cは、化学的UPR誘導物質:ツニカマイシンおよびDTTによって処理した2つのmAb1発現宿主細胞株、CHO DG44およびCHO-K1のウエスタンブロット分析を示す。
【
図1D】
図1Dは、ツニカマイシンおよびDTTによって処理した、
図1Cの両宿主細胞株におけるPDGFRa mRNAレベルのqPCR分析を示す。
【
図1E】
図1Eは、UPR経路特異的阻害剤の存在下でUPRを活性化するためにツニカマイシンによって処理したmAb1発現CHO-K1細胞のウエスタンブロット分析を示す。XBP-1のRT-PCRパネルは、IRE1アルファRNase活性化を示す。
【
図1F】
図1Fは、UPR経路特異的阻害剤の存在下でツニカマイシンによって処理したCHO-K1細胞内のPDGFRa mRNAレベルのqPCR分析を示す。
【
図1G】
図1Gは、ツニカマイシンおよびPERK阻害剤によって処理したWTおよびPERK KO空宿主CHO-K1(クローン9)細胞株のウエスタンブロット分析を示す。
【
図2A】
図2Aは、様々なUPR経路特異的阻害剤の存在下でUPRを活性化するためにタプシガルジンによって処理したmAb1発現CHO-K1細胞のウエスタンブロット分析を示す。XBP-1のRT-PCRパネルは、IRE1アルファRNase活性化を示す。
【
図2B】
図2Bは、様々なUPR経路特異的阻害剤の存在下でUPRを活性化するためにツニカマイシンによって処理した空宿主CHO-K1細胞のウエスタンブロット分析を示す。
【
図2C】
図2Cは、様々なUPR経路特異的阻害剤の存在下でタプシガルジンによって処理したCHO-K1細胞内のPDGFRa mRNAレベルのqPCR分析を示す。
【
図2D-E】
図2Dは、対照としてルシフェラーゼに対するsgRNAを用いた、PERK遺伝子に対するCas9-sgRNAのウエスタンブロット分析を示す。
図2Eは、PERKをノックアウトするためにCas9を使用した後の空宿主CHO-K1単一細胞クローンのウエスタンブロット分析を示す。
図1Gではクローン9を使用した。
【
図3A-B】PDGFRaシグナル伝達は細胞増殖、例えば、CHO細胞増殖に重要であり、増殖因子シグナル伝達はPDGFRa阻害後にインタクトである。
図3Aは、タンパク質合成、細胞周期進行および細胞増殖の上流のPDGFRaおよびインスリン受容体(IR)シグナル伝達の概略図である。太い矢印は、それぞれの受容体による強度の高い活性化を示す。
図3Bは、シードトレイン培地中のPDGFRa阻害剤および/またはインスリンの存在下または非存在下での4日後の空のCHO-K1宿主細胞のVCCおよび生存率%を示す。
【
図3C】
図3Cは、シードトレイン培地中のPDGFRa阻害剤および/またはインスリンの存在下または非存在下での4日後の(
図3Bの)空宿主CHO-K1細胞のウエスタンブロット分析を示す。
【
図3D】
図3Dは、産生中のPDGFRa阻害剤および/またはインスリンの存在下でのmAb2発現CHO-K1細胞の12日目の相対IVCC、生存率%、相対力価および相対Qpを示す。
【
図4A】
図4Aは、シードトレイン培地中のPDGFRa阻害剤濃度を増加させた際の4日後の空宿主CHO-K1細胞生細胞数(VCC)および生存率%を示す。
【
図4B】
図4Bは、シードトレイン培地中のPDGFRa阻害剤濃度を増加させた際の4日後の空宿主CHO-K1細胞のウエスタンブロット分析を示す。
【
図4C】
図4Cは、10μM濃度のPERK阻害剤の存在下または非存在下で産生させた際のウエスタンブロット分析mAb2発現CHO-K1細胞を示す。
【
図4D】
図4Dは、PERK阻害剤の存在下または非存在下でのmAb2発現CHO-K1細胞の産生中のUPR、CHOPおよびGADD34のPERK分岐の下流標的のqPCR分析を示す。
【
図5A】PDGFRaレベルは、PERK KO細胞株における産生中に安定化される。
図5Aは、PERKをノックアウトするためにCRISPR-Cas9を使用した後のmAb2発現CHO-K1単一細胞クローンのウエスタンブロット分析を示す。
【
図5B】
図5Bは、mAb2発現CHO-K1 PERK KO細胞の14日目の相対IVCC、生存率%、相対力価および相対Qpを示す。
【
図5C】
図5Cは、mAb2発現CHO-K1 WTおよびPERK KO細胞の産生のウエスタンブロット分析を示す。
【
図6A】PERKおよびBax/Bak TKOは、バイオプロセスの結果を相乗的に増加させる。
図6Aは、PERKをノックアウトするためにCas9を使用した後のシードトレインにおけるmAb3発現CHO-K1単一細胞クローンのウエスタンブロット分析を示す。
【
図6B】様々なバイオプロセス、すなわち、リーン産生培地、リッチ産生培地、およびリッチ産生培地を使用した強化プロセスにわたる様々なmAb3発現CHO-K1宿主の全体的な力価(
図6Bに示される)。
【
図6C】様々なバイオプロセス、すなわち、リーン産生培地、リッチ産生培地、およびリッチ産生培地を使用した強化プロセスにわたる様々なmAb3発現CHO-K1宿主の相対Qp(
図6Cに示される)。
【
図6D】
図6Dは、リッチ産生培地中の様々なmAb3発現CHO-K1宿主のウエスタンブロット分析を示す。
【
図6E-1】
図6Eは、リーン産生培地およびリッチ産生培地中の重鎖mRNAレベルおよび軽鎖mRNAレベルのqPCR分析を示す。
【
図6E-2】
図6Eは、リーン産生培地およびリッチ産生培地中の重鎖mRNAレベルおよび軽鎖mRNAレベルのqPCR分析を示す。
【
図7A】
図7Aは、相対力価、QpおよびIVCCを示す、Bax/Bak DKOバックグラウンドまたはPERK/Bax/Bak TKOバックグラウンドのいずれかにおけるmAb3発現プールの6日間の産生のバイオプロセスの結果を示す。
【
図7B】
図7Bは、相対力価、QpおよびIVCCを示す、WT、PERK KO、Bax/Bak DKOまたはPERK/Bax/Bak TKOバックグラウンドのいずれかにおけるFab1発現プールの14日間の産生のバイオプロセスの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、特定の内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように修飾された細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)、および目的の組換え産物、例えば、組換えタンパク質、組換えウイルス粒子または組換えウイルスベクターの産生にそのような修飾細胞を使用する方法に関する。これらの修飾は、生存能力の改善、および産物力価の増大を含む、いくつかの重要な領域に所望の形質を有する操作された細胞を生成する。
【0025】
モノクローナル抗体などの異種分子の発現に一般的に使用される方法の1つは、フェドバッチプロセスによるものであり、このプロセスでは、細胞は最初に播種され、次いで、産生期間の経過にわたってバッチで供給される。産生プロセス中の様々な要因が、不良な産生および産物品質の結果につながる可能性がある。1つの要因は、異種分子の大量の合成によるタンパク質恒常性ストレス(proteostatic stress)の増加である。小胞体(ER)は、小胞体ストレス応答(UPR)を活性化することによってこのストレスに適応することができる。UPRは、ERがその最大タンパク質フォールディング能力に達し、タンパク質合成およびフォールディングに対する増大した要求に対応することができない場合に典型的に引き起こされる。UPRは、フォールディングされていないポリペプチドの蓄積を感知し、ERを拡大し、シャペロン産生を増加させ、全体的なタンパク質翻訳を減少させることによってERホメオスタシスを促進するシグナル伝達経路を活性化することによって応答する3つの同定されたER膜貫通タンパク質を有する。これらのプロセスがタンパク質恒常性ストレスを緩和することができない場合、持続的なUPR活性化はアポトーシス細胞死をもたらし得る。通常の状態では、これらのUPRセンサーは、ER内腔の免疫グロブリン結合タンパク質(BiP)と呼ばれるERシャペロンによって結合されており、これにより、それらは不活性に保たれる。ER内腔にフォールディングされていないタンパク質が蓄積すると、BiPはこれらのセンサーから解離して、ERタンパク質恒常性ストレスを減少させるためにフォールディングされていないタンパク質またはミスフォールドタンパク質のフォールディングを補助し、それによって、UPR受容体の活性化を可能にする。
【0026】
3つのUPRセンサーは、イノシトール要求性酵素1(inositol-requiring enzyme 1)(IRE1)、プロテインキナーゼR様ERキナーゼ(PERK)および活性化転写因子6(ATF6)である。UPRのIRE1分岐は最も保存されており、IRE1はキナーゼおよびリボヌクレアーゼ(RNase)の両方として機能する。IRE1は、XBP1(Xボックス結合タンパク質1)mRNA転写物の非従来的なスプライシングに関与している。このスプライシングは、短い形態のXBP1を産生し、この短い形態は、UPR標的遺伝子を調節してERのタンパク質フォールディング能力を増加させる転写因子である。これらの標的遺伝子は、脂質生合成酵素およびERAD(ER関連分解)成分を調節することによってERを拡大および修飾する。UPRの別の分岐、PERK(プロテインキナーゼR様ERキナーゼ)はキナーゼであるが、リボヌクレアーゼ活性を欠く。活性化されると、PERKは、eIF2アルファをリン酸化することによって全体的なmRNA翻訳を減少させ、それによって、その活性を低下させる。同時に、短いオープン読み枠を含有する、mRNAのサブセットは、選択的なタンパク質翻訳を受ける。これらのmRNAの1つは、C/EBP相同タンパク質(CHOP)と呼ばれる別の転写因子の発現を調節する活性化転写因子4(ATF4)をコードし、これにより、Bimおよびデスレセプター5(DR5)を含むアポトーシス経路の成分が調節される。PERKの適度な活性化はCHOPを介して細胞保護的に機能するが、PERK活性化が延びると細胞死がもたらされる。最後に、UPRのATF6分岐は、ERからゴルジ装置へのATF6の輸送およびタンパク質分解活性化を伴う。タンパク質分解の際に、ATF6は、タンパク質フォールディングシャペロンに関与するERタンパク質、例えば、BiPおよびGRP94、ならびにタンパク質ジスルフィドイソメラーゼなどのフォールダーゼの産生を増加させることによってER能力を増加させるのに役立つ転写因子として機能する。UPRの3つの分岐は、全体的なタンパク質フォールディング負荷を減少させると同時にERのタンパク質フォールディング能力を増加させることによって、タンパク質恒常性ストレスを緩和するために協働する。
【0027】
本開示は、Bax/Bak二重ノックアウト(DKO)抗体発現細胞株においてPERKをノックアウトすることにより、生存能力および増殖の増加が明らかにされ、驚くべきことに、対照細胞株と比較して特異的産生性および力価の相乗的増加も示されたという発見に少なくとも部分的に基づく。
【0028】
限定ではなく明確にするために、本開示の主題の詳細な説明は、以下のサブセクションに分割される:
5.1 定義;
5.2 内因性タンパク質の発現の減少または排除;
5.3 遺伝子特異的修飾を含む細胞;
5.4 細胞培養方法;
5.5 目的の組換え産物の産生;および
5.6 例示的な非限定的な実施形態
【0029】
5.1。定義
本明細書中で使用される用語は一般に、本開示の文脈内で、かつ、各用語が使用される具体的な文脈においての、当該技術分野における通常の意味を有する。特定の用語を以下で、または、本明細書の他の箇所にて論じ、本開示の組成物および方法、ならびに、それらの作製および使用方法について記載する、実践者向けの追加の案内を示す。
【0030】
本明細書で使用する場合、特許請求の範囲、および/または明細書内で、「を含む」という用語と共に用いられる場合、語句「a」または「an」の使用は、「1つ」を意味し得るが、これは「1つ以上の」、「少なくとも1つの」、および「1つまたは2つ以上」の意味とも一致する。
【0031】
本明細書で使用する場合、「を含む(comprise(s)/include(s))」、「を有する(having/has)」、「することができる」、「を含有する」という用語、およびこれらの変形は、追加の作用または構造物の可能性を排除しない、オープンエンドの移行句、用語、または単語であることが意図される。また、本開示では、明示的に記載されているかどうかにかかわらず、本明細書に提示される実施形態または要素を「含む」、それら「から成る」、およびそれら「から本質的に成る」他の実施形態も企図されている。
【0032】
「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値の許容誤差範囲内であることを意味し、これは、一部には、値を測定または決定する方法、すなわち、測定システムの制限に依存するものである。例えば、「約」は、当技術分野の慣例によって、3以内または3を超える標準偏差を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の20%まで、好ましくは10%まで、更に好ましくは5%まで、更になお好ましくは1%までの範囲を意味し得る。あるいは、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、この用語は、値の1桁以内、好ましくは5倍以内、更に好ましくは2倍以内を意味し得る。
【0033】
用語「細胞培養培地」および「培養培地」は、以下のカテゴリーのうちの1つ以上からの少なくとも1つの成分を典型的に提供する、哺乳動物細胞を増殖させるために使用される栄養素溶液を指す:
1)通常はグルコースなどの炭水化物の形態のエネルギー源;
2)あらゆる必須アミノ酸、通常は20個のアミノ酸+システインの基本的なセット;
3)低濃度で必要とされるビタミンおよび/または他の有機化合物;
4)遊離脂肪酸;ならびに
5)微量元素(微量元素は、通常はマイクロモル範囲の非常に低い濃度で典型的に必要とされる無機化合物または天然に存在する元素として定義される)。
【0034】
栄養素溶液には、場合により、以下のカテゴリーのいずれかからの1つ以上の成分を補充することができる:
1)例えば、インスリン、トランスフェリンおよび上皮増殖因子としてのホルモンおよび他の増殖因子;
2)例えば、カルシウム、マグネシウムおよびホスフェートとしての塩およびバッファー;
3)例えば、アデノシン、チミジンおよびヒポキサンチンなどのヌクレオシドおよび塩基;ならびに
4)タンパク質および組織の加水分解物。
【0035】
細胞を「培養すること」とは、細胞を、細胞の生残および/または成長および/または増殖に好適な条件下にて、細胞培養培地と接触させることを意味する。
【0036】
「バッチ培養液」とは、培養プロセスの開始時に、細胞培養のための全ての構成成分(細胞、および全ての培養栄養素を含む)が、培養バイオリアクターに供給されている培養液を意味する。
【0037】
本明細書で使用する場合、「フェドバッチ培養細胞培養液」とは、細胞と培地が培養バイオリアクターに最初に供給され、追加の培養栄養素が、培養プロセス中に培養液に連続して、または個別に増加して供給され、培養終了前に、周期的に細胞および/または生成物が回収される、またはされない、バッチ培養液を意味する。
【0038】
場合によっては連続培養液と呼ばれる「還流培養液」とは、細胞が、例えば濾過、封入、マイクロ担体へのアンカリングなどにより培養液中に保持され、培地が連続して、段階的に、または断続的に(またはこれらの任意の組み合わせで)導入され、培養バイオリアクターから取り除かれる培養液である。
【0039】
本明細書で使用する場合、「細胞」という用語は、動物細胞、哺乳動物細胞、培養細胞、宿主細胞、組換え細胞、および組換え宿主細胞を意味する。このような細胞は、一般に、適切な栄養素および/または増殖因子を含有する培地に入れた場合に増殖および生存可能な、動物、例えば、哺乳動物、組織から得られるかまたはそれに由来する細胞株である。
【0040】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」および「宿主細胞培養物」は、区別なく使用され、外因性核酸を続いて導入して組換え細胞を作製することができる細胞およびそれらの子孫を指す。これらの宿主細胞はまた、特定の内因性宿主細胞タンパク質の発現を変化または欠失させるように修飾(すなわち、操作)されていてもよい。宿主細胞には、「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれ、これらは、継代数によらず、一次形質転換細胞およびそれに由来する子孫を含む。子孫は、親細胞の核酸含有量と完全に同一である必要はないが、変異を含むことができる。元の形質転換細胞においてスクリーニングまたは選択されたのと同じ機能または生物活性を有する変異子孫が、本明細書に含まれる。これらの宿主細胞に外因性核酸を導入すると(例えば、トランスフェクションによって)、元の「宿主細胞」、「宿主細胞株」または「宿主細胞株」に由来する組換え細胞が作製される。用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」および「宿主細胞培養物」はまた、そのような組換え細胞およびそれらの子孫を指し得る。
【0041】
用語「組換え細胞」、「組換え細胞株」および「組換え細胞培養物」は、区別なく使用され、目的の組換え産物の発現を可能にするために外因性核酸が導入された細胞およびそれらの子孫を指す。そのような細胞によって発現される組換え産物は、組換えタンパク質、組換えウイルス粒子または組換えウイルスベクターであり得る。
【0042】
用語「動物宿主細胞」または「動物細胞」は、適切な栄養素および増殖因子を含有する培地中の単一層培養または懸濁培養のいずれかに置いた場合に増殖および生存可能な、動物に由来する細胞株を指す。以下に記載される哺乳動物細胞に加えて、本開示の文脈内の好適な動物宿主細胞の例には、限定するものではないが、無脊椎動物細胞および非哺乳動物脊椎動物(例えば、鳥類、爬虫類および両生類)細胞が挙げられ得る。無脊椎動物細胞の例には、以下の昆虫細胞、すなわち、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(イモムシ)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)(蚊)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)(蚊)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(ショウジョウバエ)およびカイコガ(Bombyx mori)が挙げられる。例えば、Luckow et al.,Bio/Technology,6:47-55(1988);Miller et al.,in Genetic Engineering,Setlow,J.K.et al.,eds.,Vol.8(Plenum Publishing,1986).pp.277-279;およびMaeda et al.,Nature,315:592-594(1985)を参照されたい。
【0043】
用語「哺乳動物宿主細胞」または「哺乳動物細胞」とは、適切な栄養素および成長因子を含有する培地内の、単一層培養液または懸濁培養液のいずれかに配置したときに、増殖および生残可能な哺乳動物に由来する細胞株を意味する。特定の細胞株に必要な増殖因子は、例えば、Mammalian Cell Culture(Mather,J.P.ed.,Plenum Press,N.Y.1984)、およびBarnes and Sato,(1980)Cell,22:649に記載されているように、過度な実験を伴わず経験的に速やかに決定される。典型的には、細胞は、目的の、多量の特定のタンパク質、例えば糖タンパク質を、培地中に発現させて分泌させることができる。本開示の文脈内の好適な哺乳動物宿主細胞の例には、チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216 1980);dp12.CHO細胞(1989年3月15日に公開された欧州特許第307,247号);CHO-K1(ATCC、CCL-61);SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児由来腎臓株(懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされた293または293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.,36:59 1977);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.,23:243-251 1980);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A,ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.,383:44-68 1982);MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒト肝がん株(Hep G2)が挙げられ得る。特定の実施形態では、哺乳動物細胞には、チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216 1980);dp12.CHO細胞(1989年3月15日に公開された欧州特許第307,247号)が挙げられる。
【0044】
細胞培養物の「増殖期」とは、細胞が一般に、急速に分裂する、指数的に細胞が増殖する期間(対数期)を意味する。増殖期にて、細胞が維持される時間の長さは、例えば細胞の種類、細胞の増殖速度、および/または培地の状態に基づいて変化することができる。特定の実施形態において、この期の間に、細胞は一定期間(通常1~4日間)、細胞増殖が最大化されるような条件下において培養される。宿主細胞の増殖サイクルの決定は、過度な実験をすることなく想到される、特定の宿主細胞に対して決定される。「細胞増殖が最大化されるような期間および条件下」などは、特定の細胞株に対して、細胞増殖および分裂が最適であると測定される培養条件を意味する。特定の実施形態において、増殖期の間に、細胞は、特定の細胞株に対しての最適な増殖が達成されるように、一般に約30~40℃の加湿・制御大気下にて、必要な添加剤を含有する栄養素培地にて培養される。特定の実施形態において、細胞は、約1~4日間、通常は2~3日間の期間、増殖期で維持される。
【0045】
細胞培養の「産生期」とは、細胞増殖が停滞する/停滞を続ける期間を意味する。対数的な細胞増殖は典型的には、この期の前、または間に低下し、タンパク質産生に引き継がれる。産生期の間、対数的な細胞増殖は終わり、タンパク質産生が主となる。この期間の間、培地は一般に、タンパク質の連続した産生を支え、所望の糖タンパク質生成物を得るために補充される。フェドバッチ培養および/または還流細胞培養プロセスは、この期の間に細胞培地を補充するかまたは新鮮な培地を提供して、所望の細胞密度、生存率、および/または組換えタンパク質生成物の力価を達成および/または維持する。産生期は大規模に実施することができる。
【0046】
タンパク質の活性に関して本明細書で使用する場合、「活性」という用語は、酵素活性、リガンド結合、薬物輸送、イオン輸送、タンパク質局在化、受容体結合、および/または構造活性を含むがこれらに限定されないタンパク質の任意の活性を指す。そのような活性は、タンパク質の発現を低減または排除し、それによってタンパク質の存在を低減または排除することによって調節、例えば低減または排除することができる。そのような活性はまた、得られた修飾タンパク質が野生型タンパク質と比較して低減または排除された活性を示すように、タンパク質をコードする核酸配列を改変することによって、調節、例えば低減または排除することができる。
【0047】
「発現」または「発現する」という用語は、本明細書において、宿主細胞内で生じる転写および翻訳を意味するように用いられる。宿主細胞内での産生遺伝子の発現度合いは、細胞内に存在する、対応するmRNAの量、または、細胞により産生される産生遺伝子によりコードされるタンパク質の量のいずれかに基づいて測定することができる。例えば、産生遺伝子から転写されるmRNAは、ノーザンハイブリダイゼーションにより定量化されるのが望ましい。Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,pp.7.3-7.57(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989).産生遺伝子によりコードされるタンパク質は、タンパク質の生物活性をアッセイすること、または、そのような活性とは無関係な、タンパク質と反応可能な抗体を使用するウエスタンブロットもしくはラジオイムノアッセイ等のアッセイを用いることのいずれかにより定量化することができる。Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,pp.18.1-18.88(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989).
【0048】
本明細書で用いられる場合、「ポリペプチド」は、概して、約10より多くのアミノ酸を有するペプチドおよびタンパク質を指す。ポリペプチドは、宿主細胞と相同でありうるか、または好ましくは外因性であってよく、これは、チャイニーズハムスター卵巣細胞によって産生されるヒトタンパク質、または哺乳動物細胞によって産生される酵母ポリペプチドなど、利用されている宿主細胞に対して異種、すなわち外来であることを意味する。ある特定の実施形態では、哺乳動物ポリペプチド(もともと哺乳類生物から誘導されるポリペプチド)が用いられ、より好ましくは、培地に直接分泌されるものが用いられる。
【0049】
「タンパク質」という用語は、高次の三次構造および/または四次構造を生成するのに十分な鎖長を持つアミノ酸の配列を指す。これは、そのような構造を有しない「ペプチド」または他の低分子量の薬物と区別するためである。本明細書のタンパク質は、典型的には、少なくとも約15~20kD、好ましくは少なくとも約20kDの分子量を有する。本明細書の定義に包含されるタンパク質の例としては、宿主細胞タンパク質、ならびに全ての哺乳動物タンパク質、特に、治療用および診断用抗体等の治療用および診断用タンパク質、ならびに、1つ以上の鎖間および/または鎖内ジスルフィド結合を含む多鎖ポリペプチドを含む、1つ以上のジスルフィド結合を含有する一般的なタンパク質が挙げられる。
【0050】
用語「抗体」は、本明細書では最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限り、限定するものではないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体(例えば、単一の重鎖配列と単一の軽鎖配列とからなる抗体(そのようなペアリングの多量体を含む))、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体断片を含む様々な抗体構造を包含する。
【0051】
本明細書で使用する場合、抗体の「抗体断片」、「抗原結合部」(もしくは単に「抗体部」)、または、抗体の「抗原結合断片」とは、抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含むインタクトな抗体以外の分子を意味する。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子(例えばscFvおよびscFab);単一ドメイン抗体(dAb);ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。特定の抗体断片の総説については、Holliger and Hudson,Nature Biotechnology 23:1126-1136(2005)を参照のこと。
【0052】
用語「キメラ」抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の起源または種に由来し、その重鎖および/または軽鎖の残りの部分が、異なる起源または種に由来する抗体のことを指す。
【0053】
抗体の「クラス」とは、その重鎖が有する定常ドメインまたは定常領域のタイプのことを指す。抗体には5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分けることができる。特定の実施形態では、抗体はIgG1アイソタイプである。特定の実施形態では、抗体はIgG2アイソタイプである。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプのうちの1つに割り当てることができる。
【0054】
本明細書で使用する場合、「力価」という用語は、所与の量の培地体積で分けられた細胞培養液により産生された、組み換えにより発現した抗体の総量を意味する。力価は典型的には、1ミリリットルまたは1リットルの培地当たりの、抗体のミリグラムの単位(mg/mLまたはmg/L)にて表される。特定の実施形態では、力価は、1リットルの培地当たりの抗体のグラム(g/L)で表される。力価は、異なる培地条件下でタンパク質生成物を得ることと比較しての、力価の増加割合といった、相対的な測定値の観点から表現または評価することができる。
【0055】
「核酸」、「核酸分子」または「ポリヌクレオチド」との用語は、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物および/または物質を含む。各ヌクレオチドは、塩基で構成され、具体的には、プリン塩基またはピリミジン塩基(すなわち、シトシン(C)、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)またはウラシル(U))、糖(すなわち、デオキシリボースまたはリボース)、およびリン酸基で構成される。多くの場合、核酸分子は塩基の配列によって記述され、それにより前記塩基は核酸分子の一次構造(線状構造)を表す。塩基の配列は、通常、5’から3’に向かって表される。本明細書において、核酸分子という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)(例えば、相補的DNA(cDNA)およびゲノムDNAを含む)、リボ核酸(RNA)、特に、メッセンジャーRNA(mRNA)、DNAまたはRNAの合成形態、およびこれらの分子の2つ以上を含む混合ポリマーを包含する。核酸分子は、線状または環状であり得る。加えて、核酸分子という用語には、センス鎖およびアンチセンス鎖の双方、ならびに一本鎖形態および二本鎖形態が含まれる。さらに、本明細書に記載の核酸分子は、天然に存在するヌクレオチドまたは天然に存在しないヌクレオチドを含むことができる。非天然ヌクレオチドの例としては、誘導体化された糖もしくはリン酸骨格結合を有する修飾ヌクレオチド塩基または化学的に修飾された残基が挙げられる。核酸分子はまた、in vitroおよび/またはin vivo、例えば宿主または患者において本開示の抗体を直接発現させるためのベクターとして好適なDNA分子およびRNA分子を包含する。そのようなDNA(例えば、cDNA)またはRNA(例えば、mRNA)ベクターは、非修飾であり得るか、または修飾され得る。例えば、mRNAは、in vivoで抗体を産生するために対象にmRNAを注入することができるように、RNAベクターの安定性および/またはコードされた分子の発現を高めるように化学修飾され得る(例えば、Stadler et al,Nature Medicine 2017,published online 12 June 2017,doi:10.1038/nm.4356または欧州特許第2 101 823号B1を参照されたい)。
【0056】
本明細書で使用する場合、「ベクター」という用語は、連結している別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指す。
【0057】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞により産生された抗体の、またはヒト抗体レパートリーを利用する非ヒト源に由来する抗体のアミノ酸配列、あるいは他のヒト抗体をコードする配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
【0058】
「ヒト化」抗体とは、非ヒトCDR由来のアミノ酸残基と、ヒトFR由来のアミノ酸残基とを含むキメラ抗体を指す。特定の態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、CDRの全てまたは実質的に全てが非ヒト抗体のCDRに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト抗体のFRに対応する。ヒト化抗体は、場合により、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。抗体、例えば非ヒト抗体の「ヒト化型」とは、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0059】
本明細書で使用される「超可変領域」または「HVR」という用語は、配列内で超可変であり、抗原結合特異性を決定する、抗体可変ドメインの領域、例えば「相補性決定領域」(CDR)のそれぞれを意味する。
【0060】
一般に、抗体は、6つのCDR、すなわち、VHに3つ(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)、およびVLに3つ(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)を含む。本明細書における例示的なCDRには、以下が含まれる:
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)および96~101(H3)に存在する超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987));
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)および95~102(H3)に存在するCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991));ならびに
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)および93~101(H3)に存在する抗原接触(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996))。
【0061】
特に指定されない限り、CDRは、上記のKabat et al.に従い決定される。当業者は、CDRの表記は、上記Chothia、上記McCallum、または、任意の他の科学的に認可された命名システムに従い決定することができることを理解するであろう。
【0062】
「イムノコンジュゲート」とは、細胞傷害剤を含むがこれに限定されない、1種以上の異種分子にコンジュゲートされた抗体である。
【0063】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち該集団を構成する個々の抗体が、可能性の或る変異体抗体(これらは例えば天然に存在する変異を含むかまたはモノクローナル抗体調製物の製造中に生じ、そのような変異体は通常少量存在する)を除き、同一でありおよび/または同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を対象とする。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の製造を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本開示の主題に従ったモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない様々な技法によって作製することができ、そのような方法および他の例示のモノクローナル抗体の作製方法は、本明細書に記載されている。
【0064】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、一般に類似の構造を有し、各ドメインが4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と3つの相補性決定領域(CDR)とを含む。(例えば、Kindt et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照)。抗原結合特異性を与えるには、単一のVHまたはVLドメインで十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、その抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使用して相補的VLまたはVHドメインのライブラリをそれぞれスクリーニングして、単離されてもよい。例えば、Portolano et al.,J.Immunol.150:880-887(1993);Clarkson et al.,Nature 352:624-628(1991)を参照されたい。
【0065】
本明細書で使用する場合、「細胞密度」という用語は、所与の体積の培地中での、細胞の数を意味する。特定の実施形態では、より高いタンパク質産生能をもたらすという点で、高い細胞密度が望ましい。細胞密度は、培地から試料を抽出し、顕微鏡の下で細胞を分析すること、市販されている細胞計数装置を使用すること、または、バイオリアクターそのもの(もしくは培地および懸濁細胞が通過して、バイオリアクターに戻るループ)に導入した、市販されている好適なプローブを使用することを含むがこれらに限定されない、当該技術分野において公知の任意の技術により監視することができる。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「組換えタンパク質」は、「異種」、すなわち、利用される宿主細胞に対して外来性である核酸、例えば、非ヒト宿主細胞に導入される、ヒト抗体をコードする核酸によってコードされる抗体を含むペプチドおよびタンパク質を一般に指す。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「組換えウイルス粒子」は、天然に存在し得るか、またはワクチン産生に使用するために外因性核酸を組み換えることによって産生され得るウイルス粒子を一般に指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「組換えウイルスベクター」は、限定するものではないが、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、レトロウイルス、ポックスウイルス、レンチウイルスに基づく組換えベクターを含む、例えば、遺伝子療法に使用するために外因性ウイルス要素を発現するように修飾されたウイルスベクターを一般に指す。
【0069】
5.2。内因性タンパク質の発現の減少または排除
特定の実施形態では、本開示は、1つ以上の内因性タンパク質の発現が減少または排除される修飾細胞、例えば、CHO細胞に関する。例えば、限定するものではないが、修飾細胞内の内因性タンパク質発現を減少させるかまたは排除するための方法には、(1)例えば、欠失、挿入、置換またはそれらの組合せを遺伝子に導入することによる、内因性タンパク質またはその成分をコードする遺伝子の修飾、(2)内因性タンパク質またはその成分をコードするmRNAの転写および/または安定性を減少させるかまたは排除すること、ならびに(3)内因性タンパク質またはその成分をコードするmRNAの翻訳を減少させるかまたは排除することが含まれる。特定の実施形態では、タンパク質発現の減少または排除は、標的化ゲノム編集によって得られる。例えば、CRISPR/Cas9に基づくゲノム編集を使用して、1つ以上の標的遺伝子を修飾し、編集のために標的とされた単数または複数の遺伝子の発現の減少または排除をもたらすことができる。
【0070】
特定の実施形態では、発現の減少または排除のために標的とされる内因性細胞タンパク質のうちの1つ以上は、アポトーシスの促進に果たすそれらの役割に基づいて選択される。アポトーシスは培養物の生存能力および産生性を低下させる可能性があるため、そのようなタンパク質の発現を減少させるかまたは排除することは、培養物の生存能力および産生性に良い影響を及ぼし得る。例えば、限定するものではないが、アポトーシスの促進に果たすその役割に基づいて選択される細胞タンパク質は、BCL2結合X、アポトーシス制御因子(BAX)またはBCL2アンタゴニスト/キラー1(BAK)である。
【0071】
特定の実施形態では、本開示の修飾細胞は、BAXの発現の減少または排除を示す。特定の実施形態では、BAXとは、本明細書で使用される場合、真核生物BAX細胞タンパク質、例えば、CHO BAX細胞タンパク質(Entrez遺伝子ID:100689032;GenBank ID:EF104643.1)およびその機能的バリアントを指す。特定の実施態様では、本明細書で使用される場合、BAXの機能的バリアントは、目的の組換え生成物の生成に使用される修飾細胞の野生型BAX配列と50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一性を有するBAX配列バリアントを包含する。
【0072】
特定の実施形態では、本開示の修飾細胞は、BAKの発現の減少または排除を示す。特定の実施形態では、BAKとは、本明細書で使用される場合、真核生物BAK細胞タンパク質、例えば、CHO BAK細胞タンパク質(GenBank ID:EF104644.1)およびその機能的バリアントを指す。特定の実施形態では、BAKの機能的バリアントは、本明細書で使用される場合、目的の組換え産物の産生に使用される修飾細胞の野生型BAK配列に対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するBAK配列バリアントを包含する。
【0073】
特定の実施形態では、本開示の修飾細胞は、BAXおよびBAKの発現の減少または排除を示す。
【0074】
特定の実施形態では、発現の減少または排除のために標的とされる内因性細胞タンパク質のうちの1つ以上は、小胞体ストレス応答(UPR)の調節に果たすそれらの役割に基づいて選択される。例えば、限定するものではないが、UPRの調節に果たすその役割に基づいて選択される細胞タンパク質は、イノシトール要求性酵素1(IRE1)、プロテインキナーゼR様ERキナーゼ(PERK)または活性化転写因子6(ATF6)である。特定の実施形態では、本開示の修飾細胞は、PERKの発現の減少または排除を示す。特定の実施形態では、PERKとは、本明細書で使用される場合、真核生物PERK細胞タンパク質、例えば、CHO PERK細胞タンパク質(遺伝子ID:100765343;GenBank:EGW03658.1;ならびにアイソフォームNCBI参照配列:XP_027285344.2およびNCBI参照配列:XP_016831844.1)およびその機能的バリアントを指す。特定の実施形態では、PERKの機能的バリアントは、本明細書で使用される場合、目的の組換え産物の産生に使用される修飾細胞の野生型PERK配列に対して50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有するPERK配列バリアントを包含する。
【0075】
特定の実施形態では、本開示の修飾細胞は、以下の内因性タンパク質、すなわち、BAX、BAKおよびPERKの発現の減少または排除を示す。
【0076】
特定の実施形態では、本開示の細胞は、非修飾、すなわち、「参照」細胞内の内因性細胞タンパク質の発現と比較して、1つ以上の内因性細胞タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように修飾される。特定の実施形態では、参照細胞は、1つ以上の特定の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現が減少または排除されていない細胞である。特定の実施形態では、参照細胞は、BAX、BAKおよび/またはPERKをコードする遺伝子の野生型対立遺伝子の少なくとも1つまたは両方を含む細胞である。例えば、限定するものではないが、参照細胞は、BAX、BAKおよび/またはPERKをコードする遺伝子の両野生型対立遺伝子を有する細胞である。特定の実施形態では、参照細胞はWT細胞である。特定の実施形態では、1つ以上の内因性細胞タンパク質の発現を減少させるかまたは排除する修飾は、目的の組換え産物をコードする外因性核酸の導入前に行われる。特定の実施形態では、1つ以上の内因性細胞タンパク質の発現を減少させるかまたは排除する修飾は、目的の組換え産物をコードする外因性核酸の導入後に行われる。
【0077】
特定の実施形態では、内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように修飾された細胞内の1つ以上の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現は、参照細胞、例えば、WT細胞の対応する内因性タンパク質発現の約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満または約1%未満である。特定の実施形態では、内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように修飾された細胞内の1つ以上の内因性タンパク質の発現は、参照細胞、例えば、WT細胞の対応する内因性タンパク質発現の約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満または約1%未満である。
【0078】
特定の実施形態では、内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように修飾された細胞内の1つ以上の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現は、参照細胞、例えば、WT細胞の対応する内因性タンパク質発現の少なくとも約90%、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、少なくとも約10%、少なくとも約5%、少なくとも約4%、少なくとも約3%、少なくとも約2%または少なくとも約1%である。特定の実施形態では、内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように修飾された細胞内の1つ以上の内因性タンパク質の発現は、参照細胞、例えば、WT細胞の対応する内因性タンパク質発現の少なくとも約90%、少なくとも約80%、少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、少なくとも約20%、少なくとも約10%、少なくとも約5%、少なくとも約4%、少なくとも約3%、少なくとも約2%または少なくとも約1%である。
【0079】
特定の実施形態では、内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように修飾された細胞内の1つ以上の特定の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現は、参照細胞、例えば、WT細胞の対応する内因性タンパク質発現の約90%以下、約80%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下である。特定の実施形態では、内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように修飾された細胞内の1つ以上の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現は、参照細胞、例えば、WT細胞の対応する内因性タンパク質発現の約40%以下である。特定の実施形態では、内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように修飾された細胞内の1つ以上の内因性タンパク質の発現は、参照細胞、例えば、WT細胞の対応する内因性タンパク質発現の約90%以下、約80%以下、約70%以下、約60%以下、約50%以下、約40%以下、約30%以下、約20%以下、約10%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下である。
【0080】
特定の実施形態では、内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように修飾された細胞内の1つ以上の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現は、参照細胞、例えば、WT細胞の対応する内因性タンパク質発現の約1%~約90%、約10%~約90%、約20%~約90%、約25%~約90%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約80%~約90%、約85%~約90%、約1%~約80%、約10%~約80%、約20%~約80%、約30%~約80%、約40%~約80%、約50%~約80%、約60%~約80%、約70%~約80%、約75%~約80%、約1%~約70%、約10%~約70%、約20%~約70%、約30%~約70%、約40%~約70%、約50~約70%、約60~約70%、約65~約70%、約1~約60%、約10~約60%、約20~約60%、約30~約60%、約40~約60%、約50%~約60%、約55%~約60%、約1%~約50%、約10%~約50%、約20%~約50%、約30%~約50%、約40%~約50%、約45%~約50%、約1%~約40%、約10%~約40%、約20%~約40%、約30%~約40%、約35%~約40%、約1%~約30%、約10%~約30%、約20%~約30%、約25%~約30%、約1%~約20%、約5%~約20%、約10%~約20%、約15%~約20%、約1%~約10%、約5%~約10%、約5%~約20%、約5%~約30%、約5%~約40%である。特定の実施形態では、内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように修飾された細胞内の1つ以上の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現は、参照細胞、例えば、WT細胞の対応する内因性タンパク質発現の約1%~約90%、約10%~約90%、約20%~約90%、約25%~約90%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約80%~約90%、約85%~約90%、約1%~約80%、約10%~約80%、約20%~約80%、約30%~約80%、約40%~約80%、約50%~約80%、約60%~約80%、約70%~約80%、約75%~約80%、約1%~約70%、約10%~約70%、約20%~約70%、約30%~約70%、約40%~約70%、約50~約70%、約60~約70%、約65~約70%、約1~約60%、約10~約60%、約20~約60%、約30~約60%、約40~約60%、約50%~約60%、約55%~約60%、約1%~約50%、約10%~約50%、約20%~約50%、約30%~約50%、約40%~約50%、約45%~約50%、約1%~約40%、約10%~約40%、約20%~約40%、約30%~約40%、約35%~約40%、約1%~約30%、約10%~約30%、約20%~約30%、約25%~約30%、約1%~約20%、約5%~約20%、約10%~約20%、約15%~約20%、約1%~約10%、約5%~約10%、約5%~約20%、約5%~約30%、約5%~約40%である。
【0081】
特定の実施形態では、内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように修飾された細胞内の1つ以上の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現は、参照細胞、例えば、WT細胞の対応する内因性タンパク質発現の約5%~約40%である。
【0082】
特定の実施形態では、様々な参照細胞(例えば、対応する遺伝子の野生型対立遺伝子の少なくとも1つまたは両方を含む細胞)内の1つ以上の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現レベルは変動し得る。
【0083】
特定の実施形態では、遺伝子操作系を使用して、1つ以上の特定の内因性タンパク質の発現(例えば、BAX、BAKおよび/またはPERK発現)を減少させるかまたは排除する。当該技術分野において公知の様々な遺伝子組換えシステムを、本明細書で開示される方法のために使用することができる。そのような系の非限定的な例には、CRISPR/Cas系、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)系、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)系、ならびに低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)およびマイクロRNA(miRNA)などの遺伝子サイレンシングによってタンパク質発現を減少させるかまたは排除するための他のツールの使用が挙げられる。従来の、改善された、または修正されたCasシステム、および、Cpf-1などの、その他の細菌ベースのゲノム切除ツールを含む、当該技術分野において公知の任意のCRISPR/Casシステムを、本明細書で開示される方法と共に使用することができる。
【0084】
特定の実施形態では、1つ以上の遺伝子、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドなどの内因性タンパク質をコードする遺伝子の一部は、細胞内の対応する内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するために欠失される。特定の実施形態では、遺伝子の少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%または少なくとも約90%が欠失される。特定の実施形態では、遺伝子の約2%以下、約5%以下、約10%以下、約15%以下、約20%以下、約25%以下、約30%以下、約35%以下、約40%以下、約45%以下、約50%以下、約55%以下、約60%以下、約65%以下、約70%以下、約75%以下、約80%以下、約85%以下または約90%以下が欠失される。特定の実施形態では、遺伝子の約2%~約90%、約10%~約90%、約20%~約90%、約25%~約90%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約80%~約90%、約85%~約90%、約2%~約80%、約10%~約80%、約20%~約80%、約30%~約80%、約40%~約80%、約50%~約80%、約60%~約80%、約70%~約80%、約75%~約80%、約2%~約70%、約10%~約70%、約20%~約70%、約30%~約70%、約40%~約70%、約50%~約70%、約60%~約70%、約65%~約70%、約2%~約60%、約10%~約60%、約20%~約60%、約30%~約60%、約40%~約60%、約50%~約60%、約55%~約60%、約2%~約50%、約10%~約50%、約20%~約50%、約30%~約50%、約40%~約50%、約45%~約50%、約2%~約40%、約10%~約40%、約20%~約40%、約30%~約40%、約35%~約40%、約2%~約30%、約10%~約30%、約20%~約30%、約25%~約30%、約2%~約20%、約5%~約20%、約10%~約20%、約15%~約20%、約2%~約10%、約5%~約10%、または約2%~約5%が欠失される。
【0085】
特定の実施形態では、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドをコードする遺伝子の少なくとも1つのエクソンは、細胞内で少なくとも部分的に欠失される。本明細書で使用される「部分的に欠失される」は、例えば、エクソンの領域の少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、約2%以下、約5%以下、約10%以下、約15%以下、約20%以下、約25%以下、約30%以下、約35%以下、約40%以下、約45%以下、約50%以下、約55%以下、約60%以下、約65%以下、約70%以下、約75%以下、約80%以下、約85%以下、約90%以下、約95%以下、約2%~約90%、約10%~約90%、約20%~約90%、約25%~約90%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、約80%~約90%、約85%~約90%、約2%~約80%、約10%~約80%、約20%~約80%、約30%~約80%、約40%~約80%、約50%~約80%、約60%~約80%、約70%~約80%、約75%~約80%、約2%~約70%、約10%~約70%、約20%~約70%、約30%~約70%、約40%~約70%、約50%~約70%、約60%~約70%、約65%~約70%、約2%~約60%、約10%~約60%、約20%~約60%、約30%~約60%、約40%~約60%、約50%~約60%、約55%~約60%、約2%~約50%、約10%~約50%、約20%~約50%、約30%~約50%、約40%~約50%、約45%~約50%、約2%~約40%、約10%~約40%、約20%~約40%、約30%~約40%、約35%~約40%、約2%~約30%、約10%~約30%、約20%~約30%、約25%~約30%、約2%~約20%、約5%~約20%、約10%~約20%、約15%~約20%、約2%~約10%、約5%~約10%、または約2%~約5%が欠失されることを指す。
【0086】
特定の非限定的な実施形態では、CRISPR/Cas9系を使用して、細胞内の1つ以上の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現を減少させるかまたは排除する。クラスター化され、規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(CRISPR)システムは、原核細胞にて発見されたゲノム編集ツールである。ゲノム編集に利用する場合、システムは、Cas9(crRNAをガイドとして利用してDNAを修飾することができるタンパク質)、CRISPR RNA(crRNA、Cas9により使用され、Cas9と活性の複合体を形成するtracrRNA(一般にヘアピンループ形態である)に結合する領域と共に、宿主DNAの正しい部分にcrRNAをガイドするためのRNAを含有する)、および、トランス活性化crRNA(tracrRNA、crRNAに結合し、Cas9との活性の複合体を形成する)を含む。用語「ガイドRNA」および「gRNA」は、細胞内のゲノム配列またはエピソーム配列などの標的配列へのCas9などのRNAガイドヌクレアーゼの特異的会合(または「標的化」)を促進する任意の核酸を指す。gRNAは、単分子(単一のRNA分子を含み、あるいはキメラと呼ばれる)またはモジュラー(例えば、二重化によって互いに通常会合しているcrRNAおよびtracrRNAなどの複数、典型的には2つの別個のRNA分子を含む)であり得る。
【0087】
CRISPR/Cas9戦略は、ベクターを使用して細胞をトランスフェクトすることができる。ガイドRNA(gRNA)は、Cas9を使用して、細胞内の標的DNAを識別して、直接結合するための配列であるため、各用途に対して設計することができる。複数のcrRNAおよびtracrRNAを合わせてパッケージ化して、一本鎖ガイドRNA(sgRNA)を形成することができる。細胞内にトランスフェクションするために、sgRNAをCas9遺伝子と共に結合させ、ベクター内に組み入れることができる。
【0088】
特定の実施形態では、1つ以上の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現を減少させるかまたは排除するのに使用するためのCRISPR/Cas9系は、Cas9分子と、内因性タンパク質またはその成分をコードする遺伝子の標的配列に相補的な標的化ドメインを含む1つ以上のgRNAとを含む。特定の実施形態では、標的遺伝子は、内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドをコードする遺伝子の領域である。標的配列は、遺伝子内の任意のエクソン領域またはイントロン領域であり得る。
【0089】
特定の実施形態において、gRNAは単一のベクターで細胞に投与され、Cas9分子は第2のベクターで細胞に投与される。特定の実施形態において、gRNAおよびCas9分子は、単一のベクターで細胞に投与される。あるいは、gRNAおよびCas9分子のそれぞれが、別のベクターにより投与されることができる。特定の実施形態では、CRISPR/Cas9系は、1つ以上のgRNAと複合体化したCas9タンパク質を含むリボ核タンパク質複合体(RNP)として細胞に送達され得、例えば、エレクトロポレーションによって送達され得る(例えば、細胞にRNPを送達する追加の方法については、DeWitt et al.,Methods 121-122:9-15(2017)を参照)。特定の実施形態では、CRISPR/Cas9系を細胞に投与すると、内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現が減少または排除される。
【0090】
特定の実施形態では、遺伝子操作系は、細胞内の1つ以上の特定の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現を減少させるかまたは排除するためのZFN系である。ZFNは制限酵素として作用することができ、これは、ジンクフィンガーDNA結合ドメインを、DNA切断ドメインと組み合わせることにより作製される。ジンクフィンガードメインを操作して、特異的なDNA配列を標的化することができ、これにより、ジンクフィンガーヌクレアーゼが、ゲノム内で所望の配列を標的化することが可能になる。個々のZFNのDNA結合ドメインは典型的には、複数の、個別のジンクフィンガー反復を含有し、それぞれが複数の塩基対を認識することができる。新しいジンクフィンガードメインを生成するための、最も一般的な方法は、既知の特異性を有する小さいジンクフィンガー「モジュール」を組み合わせることである。最も一般的な、ZFNの切断ドメインは、II型制限エンドヌクレアーゼFokI由来の、非特異的切断ドメインである。ZFNは、標的DNA配列内で二本鎖の切断(DSB)を行うことにより、タンパク質の発現を調節し、これは、相同テンプレートの不存在下にて、非相同末端結合(NHEJ)により修復される。このような修復は、塩基対の欠失または挿入をもたらし、フレームシフトを生成し、有害なタンパク質の産生を防止することができる(Durai et al.,Nucleic Acids Res.;33(18):5978-90(2005))。ZFNの複数の対を使用して、ゲノム配列の大きなセグメント全体を完全に除去することもできる(Lee et al.,Genome Res.;20(1):81-9(2010))。
【0091】
特定の実施形態では、遺伝子操作系は、細胞内の1つ以上の特定の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現を減少させるかまたは排除するためのTALEN系である。TALENは、操作してDNAの特異的な配列を切断することができる制限酵素である。TALENシステムは、ZFNに類似した原理で作動する。TALENは、転写活性化因子様エフェクターDNA結合ドメインを、DNA切断ドメインと組み合わせることにより生成される。転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、特定のヌクレオチドを強く認識する2つの可変位置を有する33~34のアミノ酸の繰り返しモチーフで構成されている。これらのTALEのアレイを組み立てることによって、TALE DNA結合ドメインを操作して、所望のDNA配列に結合させ、それによって、ゲノムの特定の位置で切断するようにヌクレアーゼを誘導することができる(Boch et al.,Nature Biotechnology;29(2):135-6(2011))。特定の実施形態では、標的遺伝子は、BAX、BAKおよび/またはPERKをコードする。
【0092】
特定の実施形態では、1つ以上の特定の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現は、対応する核酸(例えば、mRNA)に対する相補的配列を有するオリゴヌクレオチドを使用して減少または排除され得る。このようなオリゴヌクレオチドの非限定例としては、低分子干渉RNA(siRNA)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、およびマイクロRNA(miRNA)が挙げられる。特定の実施形態では、このようなオリゴヌクレオチドは、BAX、BAKおよび/またはPERK核酸配列の少なくとも一部に対して相同であり得、対応する核酸配列に対するその部分の相同性は、少なくとも約75、または少なくとも約80、または少なくとも約85、または少なくとも約90、または少なくとも約95、または少なくとも約98パーセントである。特定の非限定的な実施形態において、相補部分は、少なくとも10個のヌクレオチド、または少なくとも15個のヌクレオチド、または少なくとも20個のヌクレオチド、または少なくとも25個のヌクレオチド、または少なくとも30個のヌクレオチドを構成することができ、アンチセンス核酸、shRNA、mRNA、またはsiRNA分子は、最大15、または最大20、または最大25、または最大30、または最大35、または最大40、または最大45、または最大50、または最大75、または最大100ヌクレオチド長であることができる。アンチセンス核酸、shRNA、mRNA、またはsiRNA分子は、DNA、または非定型もしくは天然に存在しない残基、例えば、これに限定されないがホスホロチオエート残基を含むことができる。
【0093】
本明細書に開示される遺伝子操作系は、ウイルスベクター、例えば、ガンマレトロウイルスベクターなどのレトロウイルスベクター、およびレンチウイルスベクターを使用して細胞に送達され得る。キャプシドタンパク質が、ヒト細胞を感染させるのに機能的である場合、レトロウイルスベクターと、適切なパッケージング株の組み合わせが好適である。限定するものではないが、PA12(Miller,et al.(1985)Mol.Cell.Biol.5:431-437)、PA317(Miller,et al.(1986)Mol.Cell.Biol.6:2895-2902)およびCRIP(Danos,et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:6460-6464)を含む様々なアンホトロピックなウイルス産生細胞株が知られている。非両種性粒子、例えば、VSVG、RD114、またはGALVエンベロープおよび当該技術分野で知られている他の任意のものでシュードタイプされた粒子も好適である。形質導入の可能な方法にはまた、例えば、Bregni,et al.(1992)Blood 80:1418-1422の方法による、プロデューサー細胞との細胞の直接共培養、または例えば、Xu,et al.(1994)Exp.Hemat.22:223-230;およびHughes,et al.(1992)J.Clin.Invest.89:1817の方法による、適切な増殖因子およびポリカチオンの有無にかかわらず、ウイルス上清のみもしくは濃縮ベクターストックとの培養も含まれる。
【0094】
他の形質導入ウイルスベクターを使用して、本明細書に開示される細胞を修飾することができる。特定の実施形態では、選択されたベクターは、高い感染効率と、安定な組込みおよび発現とを示す(例えば、Cayouette et al.,Human Gene Therapy 8:423-430,1997;Kido et al.,Current Eye Research 15:833-844,1996;Bloomer et al.,Journal of Virology 71:6641-6649,1997;Naldini et al.,Science 272:263-267,1996;およびMiyoshi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.94:10319,1997を参照)。使用することができる他のウイルスベクターには、例えば、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ワクシニアウイルス、ウシパピローマウイルス、またはヘルペスウイルス、例えばエプスタイン・バーウイルス(例えば、Miller,Human Gene Therapy 15-14,1990;Friedman,Science 244:1275-1281,1989;Eglitis et al.,BioTechniques 6:608-614,1988;Tolstoshev et al.,Current Opinion in Biotechnology 1:55-61,1990;Sharp,The Lancet 337:1277-1278,1991;Cornetta et al.,Nucleic Acid Research and Molecular Biology 36:311-322,1987;Anderson,Science 226:401-409,1984;Moen,Blood Cells 17:407-416,1991;Miller et al.,Biotechnology 7:980-990,1989;LeGal La Salle et al.,Science 259:988-990,1993;and Johnson,Chest 107:77S-83S,1995のベクターも参照のこと)が含まれる。レトロウイルスベクターは、特によく開発されており、臨床現場で使用されている(Rosenberg et al.,N.Engl.J.Med 323:370,1990;Anderson et al.、米国特許第5,399,346号)。
【0095】
本明細書に開示される細胞の遺伝子操作には、非ウイルス手法も使用することができる。例えば、リポフェクション(Feigner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84:7413,1987;Ono et al.,Neuroscience Letters 17:259,1990;Brigham et al.,Am.J.Med.Sci.298:278,1989;Staubinger et al.,Methods in Enzymology 101:512,1983)、アシアロオロソムコイド-ポリリジンコンジュゲーション(Wu et al.,Journal of Biological Chemistry 263:14621,1988;Wu et al.,Journal of Biological Chemistry 264:16985,1989)の存在下で核酸を投与することによって、または外科的条件下でのマイクロインジェクション(Wolff et al.,Science 247:1465,1990)によって、核酸分子を細胞に導入することができる。遺伝子導入のための、他の非ウイルス方法としては、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、電気穿孔法、および原形質融合を用いる、インビトロでのトランスフェクションが挙げられる。リポソームもまた、核酸分子を細胞内に送達するのに、潜在的に有益である可能性がある。対象の罹患組織への正常な遺伝子の移植は、正常な核酸をエクスビボで培養可能な細胞型(例えば、自己または異種の初代細胞またはその子孫)に移入し、その後、細胞(またはその子孫)を標的組織に注射するか、または全身的に注射することによっても達成され得る。
【0096】
5.3 遺伝子特異的修飾を含む細胞
一態様では、本開示は、1つ以上の内因性タンパク質の発現が減少または排除された1つ以上の細胞、例えば、動物細胞を含む細胞または組成物に関する。特定の実施形態では、細胞では、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現が減少または排除されている。
【0097】
本明細書で使用される場合、発現の排除とは、参照細胞と比較した場合の細胞内の特定の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現の排除を指す。本明細書で使用される場合、発現の減少とは、参照細胞と比較した場合の細胞内の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現の減少を指す。
【0098】
本開示の主題に関連して有用な細胞の非限定的な例には、無脊椎動物細胞および非哺乳動物脊椎動物(例えば、鳥類、爬虫類および両生類)細胞、例えば、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)細胞、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)細胞、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)細胞およびカイコガ(Bombyx mori)細胞、または哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞(例えば、DHFR CHO細胞)、dp12.CHO細胞、CHO-K1(ATCC、CCL-61)、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(例えば、COS-7 ATCC CRL-1651)、ヒト胎児由来腎臓株(例えば、懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされたHEK 293またはHEK 293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(例えば、BHK、ATCC CCL 10)、マウスセルトリ細胞(例えば、TM4)、サル腎臓細胞(例えば、CV1 ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(例えば、VERO-76、ATCC CRL-1587)、ヒト子宮頸癌細胞(例えば、HELA、ATCC CCL 2)、イヌ腎臓細胞(例えば、MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝臓細胞(例えば、BRL 3A、ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(例えば、W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝臓細胞(例えば、Hep G2、HB 8065)、マウス乳房腫瘍(例えば、MMT 060562、ATCC CCL 51)、TRI細胞、MRC 5細胞、FS4細胞、ヒト肝がん株(例えば、Hep G2)、骨髄腫細胞株(例えば、Y0、NS0およびSp2/0)が挙げられる。特定の実施形態において、細胞はCHO細胞である。CHO細胞の追加の非限定的な例には、CHO K1SV細胞、CHO DG44細胞、CHO DUKXB-11細胞、CHOK1S細胞およびCHO K1M細胞が挙げられる。
【0099】
特定の実施形態では、本明細書に開示される細胞は、目的の組換え産物を発現する。特定の実施形態では、目的の組換え産物は組換えタンパク質である。特定の実施形態では、目的の組換え産物はモノクローナル抗体である。目的の組換え産物の追加の非限定的な例は、セクション5.5に記載される。
【0100】
特定の実施形態では、本明細書に開示される細胞は、商業的に有用な量の目的の組換え産物の産生のために使用され得る。特定の実施形態では、本明細書に開示される細胞は、参照細胞、例えば、WT細胞よりも高い産生性および高い力価ならびに増加した/拡大した生存能力を少なくとも部分的に介して、目的の組換え産物の商業的に有用な量の産生を促進する。
【0101】
特定の実施形態では、本明細書に開示される細胞は、目的の組換え産物をコードする核酸を含み得る。特定の実施形態では、核酸は、1つ以上のベクター、例えば発現ベクター中に存在し得る。ベクターの1種は「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントがライゲートされ得る環状二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターは、ウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲートされ得る。特定のベクターは、それらが導入される細胞内で自己複製し得る(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、細胞への導入時に細胞のゲノムに組み込まれ、それによって、細胞ゲノムとともに複製される。さらに、特定のベクター、発現ベクターは、それらが作動可能に連結する遺伝子の発現を誘導し得る。一般に、組換えDNA技法において利用される発現ベクターは、プラスミド(ベクター)の形態である場合が多い。本開示で使用するための発現ベクターの更なる非限定例としては、等価な機能的役割を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)が挙げられる。
【0102】
特定の実施形態では、目的の組換え産物をコードする核酸は、本明細書に開示される細胞に導入され得る。特定の実施形態では、細胞への核酸の導入は、限定するものではないが、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含有するウイルスベクターまたはバクテリオファージベクターによる感染、細胞融合、染色体媒介遺伝子移入、微小核体媒介遺伝子移入、スフェロプラスト融合などを含む、当技術分野で公知の任意の方法によって行われ得る。特定の実施形態では、細胞は、真核生物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。特定の実施形態では、細胞はリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。
【0103】
特定の実施形態では、目的の組換え産物をコードする核酸は、宿主細胞ゲノムにランダムに組み込まれ得る(「ランダム組込み」または「RI」)。例えば、限定するものではないが、目的の組換え産物をコードする核酸は、1つ以上の特定の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現が減少または排除されるようにも修飾されている細胞のゲノムにランダムに組み込まれ得る。
【0104】
特定の実施形態では、目的の組換え産物をコードする核酸は、標的化された様式(本明細書で詳細に説明される「標的化組込み」または「TI」)で宿主細胞ゲノムに組み込まれ得る。例えば、限定するものではないが、目的の組換え産物をコードする核酸は、1つ以上の特定の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現が減少または排除されるように修飾されている細胞のゲノムに標的化された様式で組み込まれ得る。特定の実施形態では、目的の組換え産物をコードする核酸の導入のためのTI宿主細胞の使用は、堅牢で安定な細胞培養性能をもたらし、得られた目的の組換え産物内の配列バリアントのリスクを低下させる。TI宿主細胞、およびその使用のための戦略は、参照によりその内容全体が組み込まれる米国特許出願公開第20210002669号に詳細に記載されている。
【0105】
標的化組込みを使用する特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列は、TI宿主細胞のゲノムの特定の遺伝子座内の部位に組み込まれる。特定の実施形態では、外因性ヌクレオチド配列が組み込まれている遺伝子座は、Contigs NW_006874047.1、NW_ 006884592.1、NW_ 006881296.1、NW_ 003616412.1、NW_ 003615063.1、NW_ 006882936.1、およびNW_ 003615411.1から選択される配列に対して少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%相同である。
【0106】
特定の実施態様では、組み込まれた外因性配列のすぐ5’のヌクレオチド配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド41190-45269、NW_006884592.1のヌクレオチド63590-207911、NW_006881296.1のヌクレオチド253831-491909、NW_003616412.1のヌクレオチド69303-79768、NW_003615063.1のヌクレオチド293481-315265、NW_006882936.1のヌクレオチド2650443-2662054、またはNW_003615411.1のヌクレオチド82214-97705、およびそれらに少なくとも50%相同な配列からなる群から選択される。特定の実施態様では、組み込まれた外因性配列のすぐ5’のヌクレオチド配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド41190-45269、NW_006884592.1のヌクレオチド63590-207911、NW_006881296.1のヌクレオチド253831-491909、NW_003616412.1のヌクレオチド69303-79768、NW_003615063.1のヌクレオチド293481-315265、NW_006882936.1のヌクレオチド2650443-2662054、またはNW_003615411.1のヌクレオチド82214-97705に少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%相同である。
【0107】
特定の実施形態では、組み込まれた外因性配列のすぐ3’のヌクレオチド配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド45270~45490、NW_006884592.1のヌクレオチド207912~792374、NW_006881296.1のヌクレオチド491910~667813、NW_003616412.1のヌクレオチド79769~100059、NW_003615063.1のヌクレオチド315266~362442、NW_006882936.1のヌクレオチド2662055~2701768、またはNW_003615411.1のヌクレオチド97706~105117、およびそれらに対して少なくとも50%相同な配列からなる群から選択される。特定の実施態様では、組み込まれた外因性配列のすぐ3’のヌクレオチド配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド45270-45490、NW_006884592.1のヌクレオチド207912-792374、NW_006881296.1のヌクレオチド491910-667813、NW_003616412.1のヌクレオチド79769-100059、NW_003615063.1のヌクレオチド315266-362442、NW_006882936.1のヌクレオチド2662055-2701768、またはNW_003615411.1のヌクレオチド97706-105117に少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%相同である。
【0108】
特定の実施態様では、組み込まれた外因性配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド41190-45269、NW_006884592.1のヌクレオチド63590-207911、NW_006881296.1のヌクレオチド253831-491909、NW_003616412.1のヌクレオチド69303-79768、NW_003615063.1のヌクレオチド293481-315265、NW_006882936.1のヌクレオチド2650443-2662054、およびNW_003615411.1のヌクレオチド82214-97705、およびそれらに少なくとも50%相同な配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列によって5’に隣接している。特定の実施態様では、組み込まれた外因性配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド45270-45490、NW_006884592.1のヌクレオチド207912-792374、NW_006881296.1のヌクレオチド491910-667813、NW_003616412.1のヌクレオチド79769-100059、NW_003615063.1のヌクレオチド315266-362442、NW_006882936.1のヌクレオチド2662055-2701768、およびNW_003615411.1のヌクレオチド97706-105117、およびそれらに少なくとも50%相同な配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列によって3’に隣接している。特定の実施態様では、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列の5’に隣接するヌクレオチド配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド41190-45269、NW_006884592.1のヌクレオチド63590-207911、NW_006881296.1のヌクレオチド253831-491909、NW_003616412.1のヌクレオチド69303-79768、NW_003615063.1のヌクレオチド293481-315265、NW_006882936.1のヌクレオチド2650443-2662054、またはNW_003615411.1のヌクレオチド82214-97705に少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、および少なくとも約99.9%相同である。特定の実施形態では、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列の3’に隣接するヌクレオチド配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド45270~45490、NW_006884592.1のヌクレオチド207912~792374、NW_006881296.1のヌクレオチド491910~667813、NW_003616412.1のヌクレオチド79769~100059、NW_003615063.1のヌクレオチド315266~362442、NW_006882936.1のヌクレオチド2662055~2701768、およびNW_003615411.1のヌクレオチド97706~105117に対して少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%相同である。
【0109】
特定の実施態様では、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列は、Contigs NW_006874047.1、NW_ 006884592.1、NW_ 006881296.1、NW_ 003616412.1、NW_ 003615063.1、NW_ 006882936.1、およびNW_ 003615411.1、ならびにそれらに少なくとも50%相同な配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列に作用可能に結合している。特定の実施態様では、外因性ヌクレオチド配列に作用可能に結合しているヌクレオチド配列は、Contigs NW_006874047.1、NW_ 006884592.1、NW_ 006881296.1、NW_ 003616412.1、NW_ 003615063.1、NW_ 006882936.1、およびNW_ 003615411.1から選択される配列に少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または少なくとも約99.9%相同である。
【0110】
特定の実施態様において、目的の生成物をコードする核酸を、トランスポサーゼ型組込みを使用して宿主細胞ゲノムに組み込むことができる。トランスポザーゼに基づく組込み技術は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるTrubitsyna et al.,Nucleic Acids Res.45(10):e89(2017)、Li et al.,PNAS 110(25):E2279-E2287(2013)および国際公開第2004/009792号に開示されている。
【0111】
特定の実施形態では、目的の組換え産物をコードする核酸は、宿主細胞ゲノムにランダムに組み込まれ得る(「ランダム組込み」または「RI」)。特定の実施形態では、ランダム組み込みは、当技術分野において既知の任意の方法またはシステムにより媒介されうる。特定の実施形態では、ランダム組み込みは、MaxCyte STX(登録商標)エレクトロポレーションシステムにより媒介される。
【0112】
特定の実施形態では、標的化組み込みは、ランダム組み込みと組み合わせることができる。特定の実施形態では、標的化組み込みに続いてランダム組み込みを行うことができる。特定の実施形態において、無作為組み込みは標的組み込みの後に続けることができる。例えば、限定するものではないが、目的の組換え産物をコードする核酸は、1つ以上の特定の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKの発現が減少または排除されるように調節されている細胞のゲノムにランダムに組み込まれ得、目的の同じ組換え産物をコードする核酸は、標的化された様式で細胞のゲノムに組み込まれ得る。
【0113】
特定の実施形態では、本明細書に開示される細胞は、1つ以上の変化した遺伝子を含む。特定の実施形態では、遺伝子に対する変化は、内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除する。特定の実施形態では、本明細書に開示される細胞は、1つ以上の変化したBAX、BAKおよび/またはPERK遺伝子を含む。特定の実施形態では、変化したBAX、BAKおよび/またはPERK遺伝子のその後の転写物は、発現が減少または排除された内因性タンパク質をコードする。特定の実施形態では、1つ以上の変化した遺伝子は、コード化領域の破壊によって変化させられる。特定の実施形態では、遺伝子の変化は、二対立遺伝子の変化を含む。特定の実施形態では、遺伝子の変化は、1以上の塩基対、2以上の塩基対、3以上の塩基対、4以上の塩基対、5以上の塩基対、6以上の塩基対、7以上の塩基対、8以上の塩基対、9以上の塩基対、10以上の塩基対、11以上の塩基対、12以上の塩基対、13以上の塩基対、14以上の塩基対、15以上の塩基対、16以上の塩基対、17以上の塩基対、18以上の塩基対、19以上の塩基対、または20以上の塩基対の欠失を含む。
【0114】
特定の実施形態では、本開示は、修飾細胞、または1つ以上の修飾細胞を含む組成物に関し、修飾細胞、または1つ以上の修飾細胞を含む組成物は、以下の特徴のうちの1つ以上を示す:1)修飾細胞は、修飾を欠く類似の細胞と比較して改善された細胞培養性能を示す;および2)修飾細胞は、修飾を欠く類似の細胞と比較して改善された生存能力を示す。
【0115】
特定の実施形態では、本開示は、以下の特徴の全部を有する細胞、または1つ以上の細胞を含む組成物に関する:1)修飾細胞は、修飾を欠く類似の細胞と比較して改善された細胞培養性能を示す;および2)修飾細胞は、修飾を欠く類似の細胞と比較して改善された生存能力を示す。
【0116】
特定の実施形態では、本開示の修飾細胞は、修飾を欠く類似の細胞と比較して改善された細胞培養性能を示す。特定の実施形態では、本開示の修飾細胞は、i)増加した/拡大した生存能力、および代謝のためのさらに健常なミトコンドリア、ならびに/またはii)さらに高い産生性およびさらに高い力価に起因して、改善された細胞培養性能を示す。特定の実施形態では、本開示の修飾細胞は、BAX、BAKおよび/またはPERKの発現の減少または排除に起因して、増加した/拡大した生存能力、および代謝のためのさらに健常なミトコンドリアを示す。特定の実施形態では、本開示の修飾細胞は、BAXの発現の減少または排除に起因して、増加した/拡大した生存能力、および代謝のためのさらに健常なミトコンドリアを示す。特定の実施形態では、本開示の修飾細胞は、BAKの発現の減少または排除に起因して、増加した/拡大した生存能力、および代謝のためのさらに健常なミトコンドリアを示す。特定の実施形態では、本開示の修飾細胞は、PERKの発現の減少または排除に起因して、さらに高い産生性およびさらに高い力価を示す。特定の実施形態では、本開示の修飾細胞は、BAX、BAKおよび/またはPERKの発現の減少または排除に起因して、増加した/拡大した生存能力、および改善された細胞培養性能を示す。
【0117】
特定の実施形態では、本開示は、改善された細胞培養性能を示す1つ以上のTI細胞を含む修飾細胞または組成物に関する。特定の実施形態では、本開示のTI細胞は、BAX、BAKおよびPERKの発現の減少または排除を示す。特定の実施形態では、本開示のTI細胞は、BAXの発現の減少または排除を示す。特定の実施形態では、本開示のTI細胞は、BAKの発現の減少または排除を示す。特定の実施形態では、本開示のTI細胞は、PERKの発現の減少または排除を示す。
【0118】
特定の実施形態では、細胞は細胞株である。特定の実施形態では、細胞は、一定数の世代にわたって培養された細胞株である。特定の実施形態では、細胞は初代細胞である。
【0119】
特定の実施形態では、目的のポリペプチドの発現は、発現レベルが特定のレベルに維持され、10、20、30、50、100、200または300世代にわたって20%未満で増加または減少する場合、安定である。特定の実施形態では、いかなる選択もせずに培養物を維持することができる場合、目的のポリペプチドの発現は安定である。特定の実施形態では、目的の遺伝子のポリペプチド生成物が約1g/L、約2g/L、約3g/L、約4g/L、約5g/L、約10g/L、約12g/L、約14g/L、または約16g/Lに達する場合、目的のポリペプチドの発現は高い。
【0120】
目的の外因性ヌクレオチドまたはベクターは、トランスフェクション、形質導入、エレクトロポレーションまたは注入を含むがこれらに限定されない従来の細胞生物学的方法によって宿主細胞に導入することができる。特定の実施形態では、目的の外因性ヌクレオチドまたはベクターは、脂質ベースのトランスフェクション法、リン酸カルシウムベースのトランスフェクション法、カチオン性ポリマーベースのトランスフェクション法、またはナノ粒子ベースのトランスフェクションを含む化学ベースのトランスフェクション法によって宿主細胞に導入される。特定の実施形態では、目的の外因性ヌクレオチドは、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、またはアデノ随伴ウイルス媒介形質導入を含むがこれらに限定されないウイルス媒介形質導入によって、宿主細胞に導入される。特定の実施形態では、目的の外因性ヌクレオチドまたはベクターは、遺伝子銃媒介注入によって宿主細胞に導入される。特定の実施形態では、DNA分子およびRNA分子の両方は、本明細書中に記載される方法を使用して宿主細胞に導入される。
【0121】
5.4。細胞培養方法
一態様では、本開示は、本明細書に開示される修飾細胞を培養することを含む、目的の組換え産物を産生する方法を提供する。当技術分野で公知の哺乳動物細胞に適した培養条件は、本明細書に開示される修飾細胞を培養するために使用され得るか(J.Immunol.Methods(1983)56:221-234)、または当業者によって容易に決定され得る(例えば、Animal Cell Culture:A Practical Approach 2nd Ed.,Rickwood,D.and Hames,B.D.,eds.Oxford University Press,New York(1992)を参照)。
【0122】
細胞培養物は、培養される特定の細胞に適した培地中で調製され得る。Ham’s F10(Sigma)、最小必須培地(MEM、Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、およびダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Sigma)等の市販の培地は、例示的な栄養素溶液である。さらに、参照によりその全開示が本明細書に組み込まれるHam and Wallace,(1979)Meth.Enz.,58:44;Barnes and Sato,(1980)Anal.Biochem.,102:255;米国特許第4,767,704号;米国特許第4,657,866号;米国特許第4,927,762号;米国特許第5,122,469号または米国特許第4,560,655号;国際公開第90/03430号;および国際公開第87/00195号に記載されている培地のいずれかを培養培地として使用することができる。これらの培地のいずれかは、必要に応じてホルモンおよび/または他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、または上皮成長因子)、塩類(例えば、塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリン酸塩)、緩衝液(HEPES等)、ヌクレオシド(例えばアデノシンおよびチミジン)、抗生物質(例えばゲンタマイシン(gentamycin/gentamicin))、微量元素(通常、終濃度にてマイクロモル範囲で存在する無機化合物として定義される)、脂質類(リノレン酸または他の脂肪酸)およびそれらの好適な単体、ならびにグルコース、または等価なエネルギー供給源を補充することができる。任意の他の必要な補充物も、当業者に既知であろう適切な濃度で含まれ得る。
【0123】
特定の実施形態では、特定の内因性タンパク質の活性を低下させるおよび/または排除するように修飾された細胞は、CHO細胞である。本開示のCHO細胞を培養するために、任意の好適な培地を使用することができる。特定の実施形態では、CHO細胞を培養するための好適な培地は、アミノ酸、塩、糖およびビタミンなどのいくつかの成分の改変された濃度を有し、グリシン、ヒポキサンチンおよびチミジン;組換えヒトインスリン、加水分解ペプトン、例えば、Primatone HSもしくはPrimatone RL(Sheffield,England)または同等物;細胞保護剤、例えば、Pluronic F68または同等のプルロニックポリオール;ゲンタマイシン;ならびに微量元素を場合により含有する、DMEM/HAM F-12に基づく配合物などの基礎培地成分を含有し得る(DMEMおよびHAM F12培地の組成については、細胞株およびハイブリドーマのアメリカンタイプカルチャーコレクションカタログ、第6版、1988、346~349頁の培養培地配合物を参照)(米国特許第5,122,469号に記載されているような培地の配合が特に適切である)。
【0124】
特定の実施形態では、特定の内因性タンパク質、例えば、BAX、BAKおよび/またはPERKポリペプチドの発現を減少させるおよび/または排除するように修飾された細胞は、組換え産物を発現する細胞である。組換え産物は、目的の組換え産物を発現する細胞を様々な細胞培養条件下で増殖させることによって産生され得る。例えば、組換え産物の大規模または小規模産生のための細胞培養手順が、本開示の文脈内では有用である可能性がある。流動床バイオリアクター、中空繊維バイオリアクター、ローラーボトル培養、振盪フラスコ培養、または撹拌槽バイオリアクターシステムが挙げられるがこれらに限定されない手順を使用することができ(後者の2つのシステムでは、マイクロ担体と共に、または無しで)、代替的にバッチ式、フェドバッチ培養式、または連続式で操作することができる。
【0125】
特定の実施形態では、本開示の細胞培養は、撹拌槽バイオリアクターシステムで実施され、フェドバッチ手順を用いる。フェドバッチ培養では、細胞および培養培地は最初に培養容器に供給され、追加の培養栄養素は、培養の終了前に定期的な細胞および/または産物の採取を行うかどうかにかかわらず、培養中に連続的に、または個別に漸増させて培養物に供給される。フェドバッチ培養には、例えば、周期的に全ての培養物(細胞および培地を含む)が取り除かれ、新鮮な培地で交換される、半連続式フェドバッチ培養が含まれ得る。フェドバッチ培養は、細胞培養のための全ての構成成分(細胞および全ての培養栄養素を含む)が、培養プロセスの開始時に培養容器に供給される、単純なバッチ培養とは区別される。フェドバッチ培養はさらに、上清がプロセス中に培養容器から取り除かれない限りにおいて、還流培養とは区別することができる(還流培養では、細胞は例えば、濾過、封入、マイクロ担体へのアンカリングにより、培養物中に保持される。そして培地が連続して、または断続的に導入され、培養容器から取り除かれる)。
【0126】
特定の実施形態では、培養物の細胞は、特定の細胞、および企図される特定の産生計画に好適であり得る任意のスキームまたはルーチンに従って増殖させることができる。したがって、本開示は、単一工程または複数工程の培養手順を企図する。単一工程培養では、細胞は培養環境に接種され、本開示のプロセスは、細胞培養の単一産生期中に使用される。あるいは、複数の段階培養が想到される。複数段階培養において、細胞は多数の工程または段階で培養することができる。例えば、細胞を、第1工程または増殖期培養液中で成長させることができる。この段階において、場合により貯蔵庫から取り除かれた細胞が、成長および高生存能を促進するのに好適な培地に播種される。細胞培養物に新鮮な培地を添加することによって、好適な期間にわたって細胞を増殖期に維持することができる。
【0127】
特定の実施形態では、流培養または連続細胞培養条件を考案して、細胞培養液の増殖期における哺乳動物細胞の成長を増強する。増殖期において、細胞は、増殖のために最大化された条件下、および期間、増殖する。培養条件、例えば温度、pH、溶存酸素(dO2)などは、特定の宿主で用いられるものであり、当業者には明らかであろう。概して、pHは、酸(例えばCO2)または塩基(例えばNa2CO3またはNaOH)のいずれかを使用して、約6.5と7.5の間のレベルに調整される。CHO細胞などの哺乳動物細胞の培養に適切な温度範囲は、約30℃と38℃の間であり、適切なdO2は空気飽和度の5~90%である。
【0128】
特定の段階において、細胞を使用して、細胞培養の産生期または産生工程を播種することができる。あるいは、上述のとおり、産生期または工程を、播種または増殖期または工程と連続させることができる。
【0129】
特定の実施形態では、本開示に記載される培養方法は、細胞培養物から、例えば、細胞培養物の産生期から組換え産物を採取することをさらに含み得る。特定の実施形態では、本開示の細胞培養方法によって産生された組換え産物は、第3のバイオリアクター、例えば、産生バイオリアクターから採取され得る。例えば、限定するものではないが、開示される方法は、細胞培養物の産生期の完了時に組換え産物を採取することを含み得る。代替的または追加的に、組換え産物は、産生期の完了前に採取され得る。特定の実施形態では、組換え産物は、特定の細胞密度が達成されると、細胞培養物から採取され得る。例えば、限定するものではないが、細胞密度は、採取前に約2.0×107細胞/mL~約5.0×107細胞/mLであり得る。
【0130】
特定の実施形態では、細胞培養液から生成物を回収することは、遠心分離、濾過、音波分離、凝集および細胞除去技術のうちの1つ以上を含むことができる。
【0131】
特定の実施形態では、目的の組換え産物は、細胞から分泌され得るか、または膜結合タンパク質、サイトゾルタンパク質もしくは核タンパク質であり得る。特定の実施形態では、馴化細胞培養培地から可溶型形態の組換え産物を精製することができ、発現細胞から膜画分全体を調製し、TRITON(登録商標)X-100(EMD Biosciences,San Diego,Calif.)などの非イオン性界面活性剤によって膜を抽出することによって、膜結合形態の組換え産物を精製することができる。特定の実施形態では、細胞を溶解し(例えば、機械的な力、超音波処理および/または界面活性剤によって)、遠心分離によって細胞膜画分を除去し、上清を保持することによって、サイトゾルタンパク質または核タンパク質を調製することができる。
【0132】
5.5 目的の組換え産物の産生
本開示の細胞および/または方法は、本明細書に開示される細胞によって発現され得る任意の目的の組換え産物を産生するために使用され得る。
【0133】
5.5.1 ウイルス粒子およびウイルスベクター産物
特定の実施形態では、本開示の細胞および/または方法は、ウイルス粒子またはウイルスベクターの産生に使用され得る。特定の実施形態では、本開示の方法は、ウイルス粒子の産生に使用され得る。特定の実施形態では、本開示の方法は、ウイルスベクターの産生に使用され得る。特定の実施形態では、本開示の方法は、ウイルスポリペプチドの発現に使用され得る。そのようなポリペプチドの非限定的な例には、ウイルスタンパク質、ウイルス構造(Cap)タンパク質、ウイルスパッケージング(Rep)タンパク質、AAVカプシドタンパク質およびウイルスヘルパータンパク質が挙げられる。特定の実施形態では、ウイルスポリペプチドはAAVウイルスポリペプチドである。
【0134】
特定の実施形態では、ウイルス粒子またはウイルスベクターの産生に関連して有用な細胞には、限定するものではないが、ヒト胎児由来腎臓株(例えば、懸濁培養での増殖のためにサブクローニングされたHEK 293またはHEK 293細胞)、ヒト子宮頸癌細胞(例えば、HELA、ATCC CCL 2)、ヒト肺細胞(例えば、W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝臓細胞(例えば、Hep G2、HB 8065)、ヒト肝がん株(例えば、Hep G2)、骨髄腫細胞株(例えば、Y0、NS0およびSp2/0)、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(例えば、COS-7 ATCC CRL-1651)、ベビーハムスター腎臓細胞(例えば、BHK、ATCC CCL 10)、マウスセルトリ細胞(例えば、TM4)、サル腎臓細胞(例えば、CV1 ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(例えば、VERO-76、ATCC CRL-1587)、イヌ腎臓細胞(例えば、MDCK、ATCC CCL 34)、バッファローラット肝臓細胞(例えば、BRL 3A、ATCC CRL 1442)、マウス乳房腫瘍(例えば、MMT 060562、ATCC CCL 51)、TRI細胞、MRC 5細胞およびFS4細胞が含まれる。特定の実施形態において、細胞はCHO細胞である。CHO細胞の追加の非限定的な例には、CHO K1SV細胞、CHO DG44細胞、CHO DUKXB-11細胞、CHOK1S細胞およびCHO K1M細胞が挙げられる。
【0135】
特定の実施形態では、本明細書に記載される方法によって産生されるウイルス粒子によって保有され得る目的の遺伝子の例には、例えば、レニンなどの哺乳動物ポリペプチド;ヒト成長ホルモンおよびウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;アルファ-1-抗トリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体化ホルモン;グルカゴン;レプチン;凝固因子、例えば、第VIIIC因子、第IX因子、組織因子およびフォン・ヴィレブランド因子;抗凝固因子、例えば、プロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性剤;プラスミノゲン活性化因子、例えば、ウロキナーゼまたはヒト尿もしくは組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA);ボンベシン;トロンビン;造血増殖因子;腫瘍壊死因子-アルファおよび-ベータ;腫瘍壊死因子受容体、例えば、デスレセプター5およびCD120;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL);B細胞成熟抗原(BCMA);Bリンパ球刺激因子(BLyS);増殖誘導リガンド(APRIL);エンケファリナーゼ;RANTES(活性化時に調節され、T細胞が正常に発現および分泌している);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-アルファ);血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン;ミュラー管抑制因子;リラクシンA鎖;リラクシンB鎖;プロリラクシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;微生物タンパク、例えば、ベータ-ラクタマーゼ;DNase;IgE;細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA)、例えば、CTLA-4;インヒビン;アクチビン;血小板由来内皮細胞増殖因子(PD-ECGF);血管内皮増殖因子ファミリータンパク質(例えば、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-DおよびP1GF);血小板由来成長因子(PDGF)ファミリータンパク質(例えば、PDGF-A、PDGF-B、PDGF-C、PDGF-Dおよびそのダイマー);線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリー、例えば、aFGF、bFGF、FGF4およびFGF9;上皮増殖因子(EGF);ホルモンまたは増殖因子の受容体、例えば、VEGF受容体(例えば、VEGFR1、VEGFR2およびVEGFR3)、上皮増殖因子(EGF)受容体(例えば、ErbB1、ErbB2、ErbB3およびErbB4受容体)、血小板由来成長因子(PDGF)受容体(例えば、PDGFR-αおよびPDGFR-β)および線維芽細胞成長因子受容体;TIEリガンド(アンジオポエチン、ANGPT1、ANGPT2)、アンジオポエチン受容体、例えば、TIE1およびTIE2;プロテインAまたはD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、ニューロトロフィン-5もしくはニューロトロフィン-6(NT-3、NT-4、NT-5またはNT-6)、または神経発育因子、例えば、NGF-b;トランスフォーミング増殖因子(TGF)、TGF-アルファおよびTGF-ベータ、例えば、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4またはTGF-β5;インスリン様成長因子IおよびII(IGF-IおよびIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP);CDタンパク質、例えば、CD3、CD4、CD8、CD19およびCD20;エリスロポエチン;骨誘導因子;イムノトキシン;骨形成タンパク質(BMP);ケモカイン、例えば、CXCL12およびCXCR4;インターフェロン、例えば、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-ベータおよびインターフェロン-ガンマ;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M-CSF、GM-CSFおよびG-CSF;サイトカイン、例えば、インターロイキン(IL)、例えば、IL-1~IL-10;ミッドカイン;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープの一部;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;制御タンパク質;インテグリン、例えば、CD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA-4およびVCAM;エフリン;Bv8;デルタ様リガンド4(DLL4);Del-1;BMP9;BMP10;ホリスタチン;肝細胞増殖因子(HGF)/散乱因子(SF);Alk1;Robo4;ESM1;パールカン;EGF様ドメインマルチプル7(EGFL7);CTGF、およびそのファミリーのメンバー;トロンボスポンジン、例えば、トロンボスポンジン1およびトロンボスポンジン2;コラーゲン、例えば、コラーゲンIVおよびコラーゲンXVIII;ニューロピリン、例えば、NRP1およびNRP2;プレイオトロフィン(PTN);プログラニュリン;プロリフェリン;Notchタンパク質、例えば、Notch1およびNotch4;セマフォリン、例えば、Sema3A、Sema3CおよびSema3F;腫瘍関連抗原、例えば、CA125(卵巣がん抗原);イムノアドヘシン;および上述のポリペプチドのいずれかの断片および/またはバリアント、ならびに例えば、上述のタンパク質のいずれかを含む1つ以上のタンパク質に結合する抗体断片を含む抗体が挙げられる。
【0136】
いくつかの実施形態では、本開示の哺乳動物細胞によって産生されるウイルス粒子によって保有される目的の遺伝子は、限定するものではないが、8MPI、8MP2、8MP38(GDFIO)、8MP4、8MP6、8MP8、CSFI(M-CSF)、CSF2(GM-CSF)、CSF3(G-CSF)、EPO,FGF1(αFGF)、FGF2(βFGF)、FGF3(int-2)、FGF4(HST)、FGF5,FGF6(HST-2)、FGF7(KGF)、FGF9、FGF1 0、FGF11、FGF12、FGF12B、FGF14、FGF16、FGF17、FGF19、FGF20、FGF21、FGF23、IGF1、IGF2、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFN81、IFNG、IFNWI、FEL1、FEL1(EPSELON)、FEL1(ZETA)、IL 1A、IL 1B、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL1 0、IL 11、IL 12A、IL 12B、IL 13、IL 14、IL 15、IL 16、IL 17、IL 17B、IL 18、IL 19、IL20、IL22、IL23、IL24、IL25、IL26、IL27、IL28A、IL28B、IL29、IL30、PDGFA、PDGFB、TGFA、TGFB1、TGFB2、TGFBb3、LTA(TNF-β)、LTB、TNF(TNF-α)、TNFSF4(OX40リガンド)、TNFSF5(CD40リガンド)、TNFSF6(FasL)、TNFSF7(CD27リガンド)、TNFSF8(CD30リガンド)、TNFSF9(4-1 BBリガンド)、TNFSF10(TRAIL)、TNFSF11(TRANCE)、TNFSF12(APO3L)、TNFSF13(April)、TNFSF13B、TNFSF14(HVEM-L)、TNFSF15(VEGI)、TNFSF18、HGF(VEGFD)、VEGF、VEGFB、VEGFC、IL1R1、IL1R2、IL1RL1、IL1RL2、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3RA、IL4R、IL5RA、IL6R、IL7R、IL8RA、IL8RB、IL9R、IL10RA、IL10RB、IL 11RA、IL12RB1、IL12RB2、IL13RA1、IL13RA2、IL15RA、IL17R、IL18R1、IL20RA、IL21R、IL22R、IL1HY1、IL1RAP、IL1RAPL1、IL1RAPL2、IL1RN、IL6ST、IL18BP、IL18RAP、IL22RA2、AIF1、HGF、LEP(レプチン)、PTNおよびTHPO.kからなる群から選択されるサイトカイン、サイトカイン関連タンパク質およびサイトカイン受容体を含む任意のタンパク質に結合する、またはそれと相互作用するタンパク質をコードし得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、本開示の哺乳動物細胞によって産生されるウイルス粒子によって保有される目的の遺伝子は、CCLI(1-309)、CCL2(MCP-1/MCAF)、CCL3(MIP-Iα)、CCL4(MIP-Iβ)、CCL5(RANTES)、CCL7(MCP-3)、CCL8(mcp-2)、CCL11(エオタキシン)、CCL 13(MCP-4)、CCL 15(MIP-Iδ)、CCL 16(HCC-4)、CCL 17(TARC)、CCL 18(PARC)、CCL 19(MDP-3b)、CCL20(MIP-3α)、CCL21(SLC/エクソダス-2)、CCL22(MDC/ STC-1)、CCL23(MPIF-1)、CCL24(MPIF-2 /エオタキシン-2)、CCL25(TECK)、CCL26(エオタキシン-3)、CCL27(CTACK / ILC)、CCL28、CXCLI(GROI)、CXCL2(GR02)、CXCL3(GR03)、CXCL5(ENA-78)、CXCL6(GCP-2)、CXCL9(MIG)、CXCL 10(IP 10)、CXCL 11(1-TAC)、CXCL 12(SDFI)、CXCL 13、CXCL 14、CXCL 16、PF4(CXCL4)、PPBP(CXCL7)、CX3CL 1(SCYDI)、SCYEI、XCLI(リンホタクチン)、XCL2(SCM-Iβ)、BLRI(MDR15)、CCBP2(D6/JAB61)、CCRI(CKRI/HM145)、CCR2(mcp-IRB IRA)、CCR3(CKR3/CMKBR3)、CCR4、CCR5(CMKBR5/ChemR13)、CCR6(CMKBR6/CKR-L3/STRL22/ DRY6)、CCR7(CKR7/EBII)、CCR8(CMKBR8/ TER1/CKR-L1)、CCR9(GPR-9-6)、CCRL1(VSHK1)、CCRL2(L-CCR)、XCR1(GPR5/CCXCR1)、CMKLR1、CMKOR1(RDC1)、CX3CR1(V28)、CXCR4、GPR2(CCR10)、GPR31、GPR81(FKSG80)、CXCR3(GPR9/CKR-L2)、CXCR6(TYMSTR/STRL33/Bonzo)、HM74、IL8RA(IL8Rα)、IL8RB(IL8Rβ)、LTB4R(GPR16)、TCP10、CKLFSF2、CKLFSF3、CKLFSF4、CKLFSF5、CKLFSF6、CKLFSF7、CKLFSF8、BDNF、C5、C5R1、CSF3、GRCC10(C10)、EPO、FY(DARC)、GDF5、HDF1、HDF1α、DL8、PRL、RGS3、RGS13、SDF2、SLIT2、TLR2、TLR4、TREM1、TREM2およびVHLからなる群から選択されるケモカイン、ケモカイン受容体またはケモカイン関連タンパク質に結合するか、またはそれと相互作用するタンパク質をコードし得る。いくつかの実施形態では、本開示の哺乳動物細胞によって発現されるポリペプチドは、0772P(CA125、MUC16)(すなわち、卵巣がん抗原)、ABCF1;ACVR1;ACVR1B;ACVR2;ACVR2B;ACVRL1;ADORA2A;アグリカン;AGR2;AICDA;AIF1;AIG1;AKAP1;AKAP2;AMH;AMHR2;アミロイドベータ;ANGPTL;ANGPT2;ANGPTL3;ANGPTL4;ANPEP;APC;APOC1;AR;ASLG659;ASPHD1(アスパラギン酸ベータ-ヒドロキシラーゼドメイン含有1;LOC253982);AZGP1(亜鉛-a-糖タンパク質);B7.1;B7.2;BAD;BAFF-R(B細胞活性化因子受容体、BLyS受容体3、BR3;BAG1;BAI1;BCL2;BCL6;BDNF;BLNK;BLRI(MDR15);BMP1;BMP2;BMP3B(GDF10);BMP4;BMP6;BMP8;BMPR1A;BMPR1B(骨形成タンパク質受容体-IB型);BMPR2;BPAG1(プレクチン);BRCA1;ブレビカン;C19orf10(IL27w);C3;C4A;C5;C5R1;CANT1;CASP1;CASP4;CAV1;CCBP2(D6/JAB61);CCL1(1-309);CCL11(エオタキシン);CCL13(MCP-4);CCL15(MIP1δ);CCL16(HCC-4);CCL17(TARC);CCL18(PARC);CCL19(MIP-3β);CCL2(MCP-1);MCAF;CCL20(MIP-3α);CCL21(MTP-2);SLC;エクソダス-2;CCL22(MDC/STC-1);CCL23(MPIF-1);CCL24(MPIF-2/エオタキシン-2);CCL25(TECK);CCL26(エオタキシン-3);CCL27(CTACK/ILC);CCL28;CCL3(MTP-Iα);CCL4(MDP-Iβ);CCL5(RANTES);CCL7(MCP-3);CCL8(mcp-2);CCNA1;CCNA2;CCND1;CCNE1;CCNE2;CCR1(CKRI/HM145);CCR2(mcp-IRβ/RA);CCR3(CKR/CMKBR3);CCR4;CCR5(CMKBR5/ChemR13);CCR6(CMKBR6/CKR-L3/STRL22/DRY6);CCR7(CKBR7/EBI1);CCR8(CMKBR8/TER1/CKR-L1);CCR9(GPR-9-6);CCRL1(VSHK1);CCRL2(L-CCR);CD164;CD19;CD1C;CD20;CD200;CD22(B細胞受容体CD22-Bアイソフォーム);CD24;CD28;CD3;CD37;CD38;CD3E;CD3G;CD3Z;CD4;CD40;CD40L;CD44;CD45RB;CD52;CD69;CD72;CD74;CD79A(CD79α、免疫グロブリン関連アルファ、B細胞特異的タンパク質);CD79B;CDS;CD80;CD81;CD83;CD86;CDH1(E-カドヘリン);CDH10;CDH12;CDH13;CDH18;CDH19;CDH20;CDH5;CDH7;CDH8;CDH9;CDK2;CDK3;CDK4;CDK5;CDK6;CDK7;CDK9;CDKN1A(p21/WAF1/Cip1);CDKN1B(p27/Kip1);CDKN1C;CDKN2A(P16INK4a);CDKN2B;CDKN2C;CDKN3;CEBPB;CER1;CHGA;CHGB;キチナーゼ;CHST10;CKLFSF2;CKLFSF3;CKLFSF4;CKLFSF5;CKLFSF6;CKLFSF7;CKLFSF8;CLDN3;CLDN7(クローディン-7);CLL-1(CLEC12A、MICLおよびDCAL2);CLN3;CLU(クラスタリン);CMKLR1;CMKOR1(RDC1);CNR1;COL 18A1;COL1A1;COL4A3;COL6A1;補体因子D;CR2;CRP;CRIPTO(CR、CR1、CRGF、CRIPTO、TDGF1、奇形癌由来増殖因子);CSFI(M-CSF);CSF2(GM-CSF);CSF3(GCSF);CTLA4;CTNNB1(b-カテニン);CTSB(カテプシンB);CX3CL1(SCYDI);CX3CR1(V28);CXCL1(GRO1);CXCL10(IP-10);CXCL11(I-TAC/IP-9);CXCL12(SDF1);CXCL13;CXCL14;CXCL16;CXCL2(GRO2);CXCL3(GRO3);CXCL5(ENA-78/LIX);CXCL6(GCP-2);CXCL9(MIG);CXCR3(GPR9/CKR-L2);CXCR4;CXCR5(バーキットリンパ腫受容体1、Gタンパク質共役受容体);CXCR6(TYMSTR/STRL33/Bonzo);CYB5;CYC1;CYSLTR1;DAB2IP;DES;DKFZp451J0118;DNCLI;DPP4;E16(LAT1、SLC7A5);E2F1;ECGF1;EDG1;EFNA1;EFNA3;EFNB2;EGF;EGFR;ELAC2;ENG;ENO1;ENO2;ENO3;EPHB4;EphB2R;EPO;ERBB2(Her-2);EREG;ERK8;ESR1;ESR2;ETBR(エンドセリンB型受容体);F3(TF);FADD;FasL;FASN;FCER1A;FCER2;FCGR3A;FcRH1(Fc受容体様タンパク質1);FcRH2(IFGP4、IRTA4、SPAP1A(SH2ドメイン含有ホスファターゼアンカータンパク質1a)、SPAP1B、SPAP1C);FGF;FGF1(αFGF);FGF10;FGF11;FGF12;FGF12B;FGF13;FGF14;FGF16;FGF17;FGF18;FGF19;FGF2(bFGF);FGF20;FGF21;FGF22;FGF23;FGF3(int-2);FGF4(HST);FGF5;FGF6(HST-2);FGF7(KGF);FGF8;FGF9;FGFR;FGFR3;FIGF(VEGFD);FELl(EPSILON);FILl(ZETA);FLJ12584;FLJ25530;FLRTI(フィブロネクチン);FLT1;FOS;FOSL1(FRA-1);FY(DARC);GABRP(GABAa);GAGEB1;GAGEC1;GALNAC4S-6ST;GATA3;GDF5;GDNF-Ra1(GDNFファミリー受容体アルファ1;GFRA1;GDNFR;GDNFRA;RETL1;TRNR1;RET1L;GDNFR-アルファ1;GFR-ALPHA-1);GEDA;GFI1;GGT1;GM-CSF;GNASI;GNRHI;GPR2(CCR10);GPR19(Gタンパク質共役受容体19;Mm.4787);GPR31;GPR44;GPR54(KISS1受容体;KISS1R;GPR54;HOT7T175;AXOR12);GPR81(FKSG80);GPR172A(Gタンパク質共役受容体172A;GPCR41;FLJ11856;D15Ertd747e);GRCCIO(C10);GRP;GSN(ゲルソリン);GSTP1;HAVCR2;HDAC4;HDAC5;HDAC7A;HDAC9;HGF;HIF1A;HOP1;ヒスタミンおよびヒスタミン受容体;HLA-A;HLA-DOB(MHCクラスII分子のベータサブユニット(Ia抗原);HLA-DRA;HM74;HMOXI;HUMCYT2A;ICEBERG;ICOSL;1D2;IFN-a;IFNA1;IFNA2;IFNA4;IFNA5;IFNA6;IFNA7;IFNB1;IFNガンマ;DFNW1;IGBP1;IGF1;IGF1R;IGF2;IGFBP2;IGFBP3;IGFBP6;IL-l;IL10;IL10RA;IL10RB;IL11;IL11RA;IL-12;IL12A;IL12B;IL12RB1;IL12RB2;IL13;IL13RA1;IL13RA2;IL14;IL15;IL15RA;IL16;IL17;IL17B;IL17C;IL17R;IL18;IL18BP;IL18R1;IL18RAP;IL19;IL1A;IL1B;ILIF10;IL1F5;IL1F6;IL1F7;IL1F8;IL1F9;IL1HY1;IL1R1;IL1R2;IL1RAP;IL1RAPL1;IL1RAPL2;IL1RL1;IL1RL2、ILIRN;IL2;IL20;IL20Rα;IL21 R;IL22;IL-22c;IL22R;IL22RA2;IL23;IL24;IL25;IL26;IL27;IL28A;IL28B;IL29;IL2RA;IL2RB;IL2RG;IL3;IL30;IL3RA;IL4;IL4R;IL5;IL5RA;IL6;IL6R;IL6ST(糖タンパク質130);インフルエンザA;インフルエンザB;EL7;EL7R;EL8;IL8RA;DL8RB;IL8RB;DL9;DL9R;DLK;INHA;INHBA;INSL3;
INSL4;IRAK1;IRTA2(免疫グロブリンスーパーファミリー受容体転座関連2);ERAK2;ITGA1;ITGA2;ITGA3;ITGA6(a6インテグリン);ITGAV;ITGB3;ITGB4(b4インテグリン);α4β7およびαEβ7インテグリンヘテロ二量体;JAG1;JAK1;JAK3;JUN;K6HF;KAI1;KDR;KITLG;KLF5(GC Box BP);KLF6;KLKIO;KLK12;KLK13;KLK14;KLK15;KLK3;KLK4;KLK5;KLK6;KLK9;KRT1;KRT19(ケラチン19);KRT2A;KHTHB6(毛髪特異的H型ケラチン);LAMAS;LEP(レプチン);LGR5(ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5;GPR49,GPR67);Lingo-p75;Lingo-Troy;LPS;LTA(TNF-b);LTB;LTB4R(GPR16);LTB4R2;LTBR;LY64(リンパ球抗原64(RP105)、ロイシンリッチリピート(LRR)ファミリーのI型膜タンパク質);Ly6E(リンパ球抗原6複合体、遺伝子座E;Ly67、RIG-E、SCA-2、TSA-1);Ly6G6D(リンパ球抗原6複合体、遺伝子座G6D;Ly6-D,MEGT1);LY6K(リンパ球抗原6複合体、遺伝子座K;LY6K;HSJ001348;FLJ35226);MACMARCKS;MAGもしくはOMgp;MAP2K7(c-Jun);MDK;MDP;MIB1;ミドカイン;MEF;MIP-2;MKI67;(Ki-67);MMP2;MMP9;MPF(MPF、MSLN、SMR、巨核球増強因子、メソテリン);MS4A1;MSG783(RNF124、仮想タンパク質FLJ20315);MSMB;MT3(メタロチオネクチン-111);MTSS1;MUC1(ムチン);MYC;MY088;Napi3b(NaPi2bとしても知られる)(NAPI-3B、NPTIIb、SLC34A2、溶質担体ファミリー34(リン酸ナトリウム)、メンバー2、II型ナトリウム依存性ホスフェート輸送体3b);NCA;NCK2;ニューロカン;NFKB1;NFKB2;NGFB(NGF);NGFR;NgR-Lingo;NgR-Nogo66(Nogo);NgR-p75;NgR-Troy;NME1(NM23A);NOX5;NPPB;NR0B1;NR0B2;NR1D1;NR1D2;NR1H2;NR1H3;NR1H4;NR112;NR113;NR2C1;NR2C2;NR2E1;NR2E3;NR2F1;NR2F2;NR2F6;NR3C1;NR3C2;NR4A1;NR4A2;NR4A3;NR5A1;NR5A2;NR6A1;NRP1;NRP2;NT5E;NTN4;ODZI;OPRD1;OX40;P2RX7;P2X5(プリン受容体P2Xリガンド開口型イオンチャネル5);PAP;PART1;PATE;PAWR;PCA3;PCNA;PD-L1;PD-L2;PD-1;POGFA;POGFB;PECAM1;PF4(CXCL4);PGF;PGR;ホスファカン;PIAS2;PIK3CG;PLAU(uPA);PLG;PLXDC1;PMEL17(銀ホモログ;SILV;D12S53E;PMEL17;SI;SIL);PPBP(CXCL7);PPID;PRI;PRKCQ;PRKDI;PRL;PROC;PROK2;PSAP;PSCA hlg(2700050C12Rik、C530008O16Rik、RIKEN cDNA 2700050C12、RIKEN cDNA 2700050C12遺伝子);PTAFR;PTEN;PTGS2(COX-2);PTN;RAC2(p21 Rac2);RARB;RET(retがん原遺伝子;MEN2A;HSCR1;MEN2B;MTC1;PTC;CDHF12;Hs.168114;RET51;RET-ELE1);RGSI;RGS13;RGS3;RNF110(ZNF144);ROBO2;S100A2;SCGB1D2(リポフィリンB);SCGB2A1(マンマグロビン2);SCGB2A2(マンマグロビン1);SCYEI(内皮単球活性化サイトカイン);SDF2;Sema 5b(FLJ10372、KIAA1445、Mm.42015、SEMA5B、SEMAG、セマフォリン5b Hlog、セマドメイン、7のトロンボスポンジンリピート(1型および1型様)、膜貫通ドメイン(TM)および短細胞質ドメイン、(セマフォリン)5B);SERPINA1;SERPINA3;SERP1NB5(マスピン);SERPINE1(PAI-1);SERPDMF1;SHBG;SLA2;SLC2A2;SLC33A1;SLC43A1;SLIT2;SPPI;SPRR1B(Sprl);ST6GAL1;STABI;STAT6;STEAP(6の前立腺の膜貫通上皮抗原);STEAP2(HGNC_8639、IPCA-1、PCANAP1、STAMP1、STEAP2、STMP、前立腺がん関連遺伝子1、前立腺がん関連タンパク質1、6の前立腺の膜貫通上皮抗原2、6の膜貫通前立腺タンパク質);TB4R2;TBX21;TCPIO;TOGFI;TEK;TENB2(推定膜貫通プロテオグリカン);TGFA;TGFBI;TGFB1II;TGFB2;TGFB3;TGFBI;TGFBRI;TGFBR2;TGFBR3;THIL;THBSI(トロンボスポンジン-1);THBS2;THBS4;THPO;TIE(Tie-1);TMP3;組織因子;TLR1;TLR2;TLR3;TLR4;TLR5;TLR6;TLR7;TLR8;TLR9;TLR10;TMEFF1(EGF様および2つのフォリスタチン様ドメインを有する膜貫通タンパク質1;トモレグリン-1);TMEM46(shisaホモログ2);TNF;TNF-a;TNFAEP2(B94);TNFAIP3;TNFRSFIIA;TNFRSF1A;TNFRSF1B;TNFRSF21;TNFRSF5;TNFRSF6(Fas);TNFRSF7;TNFRSF8;TNFRSF9;TNFSF10(TRAIL);TNFSF11(TRANCE);TNFSF12(AP03L);TNFSF13(April);TNFSF13B;TNFSF14(HVEM-L);TNFSF15(VEGI);TNFSF18;TNFSF4(OX40リガンド);TNFSF5(CD40リガンド);TNFSF6(FasL);TNFSF7(CD27リガンド);TNFSFS(CD30リガンド);TNFSF9(4-1 BBリガンド);TOLLIP;Toll様受容体;TOP2A(トポイソメラーゼEa);TP53;TPM1;TPM2;TRADD;TMEM118(リングフィンガータンパク質、膜貫通2;RNFT2;FLJ14627);TRAF1;TRAF2;TRAF3;TRAF4;TRAF5;TRAF6;TREM1;TREM2;TrpM4(BR22450、FLJ20041、TRPM4、TRPM4B、一過性受容体電位カチオンチャネル、サブファミリーM、メンバー4);TRPC6;TSLP;TWEAK;チロシナーゼ(TYR;OCAIA;OCA1A;チロシナーゼ;SHEP3);VEGF;VEGFB;VEGFC;バーシカン;VHL C5;VLA-4;XCL1(リンホタクチン);XCL2(SCM-1b);XCRI(GPR5/ CCXCRI);YY1;ならびに/またはZFPM2に結合し得るか、またはそれと相互作用し得る。
【0138】
多くの他のウイルス成分および/または他の目的の遺伝子は、本開示に従って哺乳動物細胞によってパッケージングされてもよく、上記の一覧は限定を意味するものではない。
【0139】
5.5.2 組換えタンパク質産物
特定の実施形態では、本開示の細胞および/または方法は、組換えタンパク質、例えば、組換え哺乳動物タンパク質の産生に使用され得る。このような組換えタンパク質の非限定的な例には、ホルモン、受容体、抗体融合タンパク質(例えば、抗体-サイトカイン融合タンパク質)を含む融合タンパク質、調節因子、増殖因子、補体系因子、酵素、凝固因子、抗凝固因子、キナーゼ、サイトカイン、CDタンパク質、インターロイキン、治療用タンパク質、診断用タンパク質および抗体が挙げられる。本開示の細胞および/または方法は、産生されている分子、例えば、抗体に特異的ではない。
【0140】
特定の実施形態では、本開示の方法を、治療用および診断用抗体、またはその抗原結合断片を含む抗体の産生に、使用することができる。特定の実施形態では、本開示の細胞および方法によって産生される抗体は、限定するものではないが、単一特異性抗体(例えば、単一の重鎖配列および単一の軽鎖配列からなる抗体(このようなペアリングの多量体を含む))、多重特異性抗体およびその抗原結合断片であり得る。例えば、限定されるものではないが、多重特異性抗体は、二重特異性抗体、二重エピトープ抗体、T細胞依存性二重特異性抗体(TDB)、二重作用FAb(DAF)、またはこれらの抗原結合断片であることができる。
【0141】
5.5.2.1 多重特異性抗体
特定の態様では、本明細書に提供される細胞および方法によって産生される抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。「多重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる部分、すなわち異なる抗原の異なるエピトープ(すなわち、二重特異的)、または、同じ抗原の異なるエピトープ(すなわち、二重エピトープ)に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の態様では、多重特異性抗体は3つ以上の結合特異性を有する。多重特異性抗体は、本明細書に記載した完全長抗体または抗体断片として調製することができる。
【0142】
多重特異性抗体を作製するための技術には、限定するものではないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello,Nature 305:537(1983)を参照)、および「ノブインホール(knob-in-hole)」操作(例えば、米国特許第5,731,168号、およびAtwell et al.,J.Mol.Biol.270:26(1997)を参照)が含まれる。多重特異性抗体は、抗体Fc-ヘテロ二量体分子(例えば、国際公開第2009/089004号を参照)を作製するための静電気操縦(electrostatic steering)効果を操作すること、2つ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号、およびBrennan et al.,Science,229:81(1985)を参照)、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)、および国際公開第2011/034605号を参照)、軽鎖のミスペアリングの問題を回避するために共通の軽鎖技術を使用すること(例えば、国際公開第98/50431号を参照)、二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)を参照)、および単鎖Fv(sFv)ダイマーを使用すること(例えば、Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照)、および例えば、Tutt et al.J.Immunol.147:60(1991)に記載されているように、三重特異性抗体を調製することによって作製することもできる。
【0143】
例えば、「オクトパス(Octopus)抗体」を含む3つ以上の抗原結合部位を有する操作された抗体、またはDVD-Igも本明細書に含まれる(例えば、国際公開第2001/77342号および国際公開第2008/024715号を参照)。3つ以上の抗原結合部位を有する多重特異性抗体の別の非限定例は、国際公開第2010/115589号、同第2010/112193号、同第2010/136172号、同第2010/145792号、および同第2013/026831号に見出すことができる。二重特異性抗体またはその抗原結合断片には、「二重作用性FAb」または「DAF」も含まれる(例えば、米国特許第2008/0069820号および国際公開第2015/095539号を参照)。
【0144】
多重特異性抗体はまた、同じ抗原特異性の1つ以上の結合アームにおいてドメインクロスオーバを有する非対称形態で、すなわち、VH/VLドメイン(例えば、国際公開第2009/080252号および国際公開第2015/150447号を参照)、CH1/CLドメイン(例えば、国際公開第2009/080253号を参照)または完全なFabアームを交換する(例えば、国際公開第2009/080251号、国際公開第2016/016299号を参照、また、Schaefer et al,PNAS,108(2011)1187-1191、およびKlein at al.,MAbs 8(2016)1010-20も参照)ことによって提供され得る。特定の実施形態では、多重特異性抗体はクロスFab断片を含む。「cross-Fab断片」または「xFab断片」または「クロスオーバーFab断片」という用語は、重鎖および軽鎖の可変領域または定常領域のいずれかが交換されたFab断片を指す。cross-Fab断片は、軽鎖可変領域(VL)および重鎖定常領域1(CH1)から構成されるポリペプチド鎖と、重鎖可変領域(VH)および軽鎖定常領域(CL)から構成されるポリペプチド鎖とを含む。非対称Fabアームは、ドメイン界面に荷電または非荷電アミノ酸変異を導入して正しいFab対合を誘導することによって操作することもできる。例えば、国際公開第2016/172485を参照のこと。
【0145】
多重特異性抗体に対する様々なさらなる分子フォーマットが、当技術分野で公知であり、本明細書に含まれる(例えば、Spiess et al.,Mol.Immunol.67(2015)95-106を参照)。
【0146】
特定の実施形態では、本明細書にも含まれる特定のタイプの多重特異性抗体は、標的細胞、例えば、腫瘍細胞上の表面抗原に、およびT細胞を再び標的として標的細胞を死滅させるための、CD3などのT細胞受容体(TCR)複合体の活性化不変成分に同時に結合するように設計された二重特異性抗体である。
【0147】
この目的のために有用であり得る二重特異性抗体形式の追加の非限定的な例には、限定するものではないが、2つのscFv分子が可撓性リンカーによって融合された、いわゆる「BiTE」(二重特異性T細胞エンゲージャー)分子(例えば、国際公開第2004/106381号、国際公開第2005/061547号、国際公開第2007/042261号および国際公開第2008/119567号、Nagorsen and Bauerle,Exp Cell Res 317,1255-1260(2011)を参照);ダイアボディ(Holliger et al.,Prot.Eng.9,299-305(1996))およびその誘導体、例えば、タンデム型ダイアボディ(「TandAb」;Kipriyanov et al.,J Mol Biol 293,41-56(1999));ダイアボディ形式に基づくが、さらに安定化させるためのC末端ジスルフィド架橋を特徴とする「DART」(二重親和性再標的化)分子(Johnson et al.,J Mol Biol 399,436-449(2010))、ならびに全ハイブリッドマウス/ラットIgG分子であるいわゆるトリオマブ(triomab)(Seimetz et al.,Cancer Treat.Rev.36,458-467(2010)に概説されている)が挙げられる。本明細書に含まれる、特定のT細胞二重特異性抗体形式は、国際公開第2013/026833号、国際公開第2013/026839号、国際公開第2016/020309号;Bacac et al.,Oncoimmunology 5(8)(2016)e1203498に記載されている。
【0148】
5.5.2.2 抗体断片
特定の態様では、本明細書において提供する細胞および方法により作製される抗体は、抗体断片である。例えば、限定するものではないが、抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、Fab’-SH断片またはF(ab’)2断片、特にFab断片である。インタクトな抗体のパパイン消化は、重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれ順にVHおよびVL)に加えて、軽鎖の定常ドメイン(CL)および重鎖の第1定常ドメイン(CH1)もそれぞれが含む、2つの同一の抗原結合断片(いわゆる「Fab」断片)を産生する。よって「Fab断片」とは、VLドメインおよびCLドメインを含む軽鎖と、VHドメインおよびCH1ドメインを含む重鎖断片を有する抗体断片のことである。「Fab’断片」は、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む、CH1ドメインのカルボキシ末端における残基の付加によりFab断片と異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’断片である。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位(2つのFab断片)と、Fc領域の一部とを有するF(ab’)2断片が得られる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を構成し、且つin vivo半減期を増加させたFabおよびF(ab’)2断片の議論については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0149】
特定の実施形態では、抗体断片は、ダイアボディ、トリアボディ、またはテトラボディである。「ダイアボディ」は、二価または二重特異性であってよい、2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、欧州特許第404,097号;国際公開第1993/01161号;Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003);およびHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)を参照されたい。トリアボディおよびテトラボディは、Hudson et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)にも記載されている。
【0150】
更なる態様では、抗体断片は一本鎖Fab断片である。「単鎖Fab断片」または「scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体重鎖定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)およびリンカーからなるポリペプチドであり、上記抗体ドメインおよび上記リンカーは、N末端からC末端方向に、以下の順序、すなわち、a)VH-CH1-リンカー-VL-CL、b)VL-CL-リンカー-VH-CH1、c)VH-CL-リンカー-VL-CH1またはd)VL-CH1-リンカー-VH-CLのうちの1つを有する。特に、前記リンカーは、少なくとも30個のアミノ酸、好ましくは32~50個のアミノ酸のポリペプチドである。前記単鎖Fab断片は、CLドメインとCH1ドメインとの間の天然のジスルフィド結合を介して安定化されている。さらに、これらの一本鎖Fab断片は、システイン残基(例えば、Kabatの番号付けによる可変重鎖の44位および可変軽鎖の100位)の挿入による鎖間ジスルフィド結合の生成によってさらに安定化される可能性がある。
【0151】
別の態様では、抗体断片は一本鎖可変断片(scFv)である。「一本鎖可変断片」または「scFv」は、リンカーにより接続された、抗体の重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変ドメインの融合タンパク質である。特に、リンカーは、10~25個のアミノ酸の短いポリペプチドであり、通常、柔軟性のためにグリシンが、かつ、溶解性のためにセリンまたはスレオニンが豊富であり、VHのN末端をVLのC末端と、またはこの逆のいずれかで、接続させることができる。このタンパク質は、定常領域が取り除かれ、リンカーが導入されているにもかかわらず、元の抗体の特異性を保持している。scFv断片の総説については、例えば、Pluckthun,The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)を参照のこと。また、国際公開第93/16185号ならびに米国特許第5,571,894号および同第5,587,458号を参照のこと。
【0152】
別の態様では、抗体フラグメントは単一ドメイン抗体である。「単一ドメイン抗体」は、抗体の重鎖可変ドメインの全部もしくは一部、または軽鎖可変ドメインの全部もしくは一部を含む抗体断片である。特定の態様では、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、米国特許第6,248,516 B1号を参照)。
【0153】
特定の態様では、本明細書において提供される細胞および方法により生成される抗体融合タンパク質は、抗体-サイトカイ融合タンパク質である。このような抗体-サイトカイン融合タンパク質は完全長抗体を含み得る一方、抗体-サイトカイン融合タンパク質の抗体は、特定の実施態様では、抗体断片、例えば、一本鎖可変断片(scFv)、ダイアボディ、Fab断片、または小さな免疫タンパク質(SIP)である。特定の実施態様では、サイトカインは、抗体のN末端またはC末端に融合され得る。特定の実施態様では、抗体-サイトカイン融合タンパク質のサイトカインは、複数のサブユニットからなる。特定の実施態様では、サイトカインのサブユニットは、同じ(ホモマー)である。特定の実施態様では、サイトカインのサブユニットは、異なる(ヘテロマーである)。特定の実施態様では、サイトカインのサブユニットは、同じ抗体に融合する。特定の実施態様では、サイトカインのサブユニットは、異なる抗体に融合する。抗体-サイトカイン融合タンパク質の概説については、例えば、Murer et al.,N Biotechnol.,52:42-53(2019)を参照されたい。
【0154】
抗体断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解が挙げられるがこれに限定されない、様々な技術により作製することができる。
【0155】
5.5.2.3 キメラ抗体およびヒト化抗体
特定の態様では、本明細書において提供する細胞および方法により作製される抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体が、例えば、米国特許第4,816,567号、およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサル等の非ヒト霊長類に由来する可変領域)とヒト定常領域を含む。さらなる例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のクラスまたはサブクラスから変更された「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0156】
特定の態様では、キメラ抗体はヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親の非ヒト抗体の特異性と親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低下させるためにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、CDR(またはその一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(またはその一部)がヒト抗体配列に由来する1つまたは複数の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は、任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部も含む。ある特定の実施態様では、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を復元または改善するように、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0157】
ヒト化抗体およびその作製方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)に概説されており、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);Queen et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号、米国特許第7,527,791号、米国特許第6,982,321号および米国特許第7,087,409号;Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)グラフティングを記載);Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「リサーフェイシング」を記載);Dall’Acqua et al.,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャフリング」を記載);ならびにOsbourn et al.,Methods 36:61-68(2005)およびKlimka et al.,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャフリングに対する「誘導選択」手法を記載)にさらに記載されている。
【0158】
ヒト化に使用され得るヒトフレームワーク領域には、限定するものではないが、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照);軽鎖可変領域または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);およびPresta et al.J.Immunol.,151:2623(1993)を参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照);およびFRライブラリーのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)およびRosok et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照)が含まれる。
【0159】
5.5.2.4 ヒト抗体
特定の態様では、本明細書において提供する細胞および方法により作製される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で知られている様々な技術を使用して産生することができる。ヒト抗体は、一般に、van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)およびLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)に記載されている。
【0160】
ヒト抗体は、抗原投与に応答してヒト可変領域を有するインタクトなヒト抗体またはインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製することができる。このような動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座に取って代わるか、または染色体外に存在するか、または動物の染色体にランダムに組み込まれるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有する。このようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般的に不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照されたい。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載する、米国特許第6,075,181号および同第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術を記載する米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載する米国特許第7,041,870号;ならびにVELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載する米国特許出願公開第2007/0061900号も参照されたい。このような動物によって生成されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによってさらに修飾することができる。
【0161】
ヒト抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によっても作製することができる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫細胞株およびマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);およびBoerner et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照。)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体もまた、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)に記載されている。さらなる方法には、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載)およびNi、Xiandai Mianyixue、26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載)に記載されるものが含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、VollmersおよびBrandlein、Histology and Histopathology、20(3):927-937(2005)ならびにVollmersおよびBrandlein、Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology、27(3):185-91(2005)に記載されている。
【0162】
5.5.2.5 標的分子
本明細書に開示される細胞および方法によって産生される抗体によって標的とされ得る分子の非限定的な例には、可溶型血清タンパク質およびその受容体ならびに他の膜結合タンパク質(例えば、アドヘシン)が挙げられる。特定の実施形態では、本明細書にて開示した細胞および方法により作製した抗体は、8MPI、8MP2、8MP38(GDFIO)、8MP4、8MP6、8MP8、CSFI(M-CSF)、CSF2(GM-CSF)、CSF3(G-CSF)、EPO、FGF1(αFGF)、FGF2(βFGF)、FGF3(int-2)、FGF4(HST)、FGF5、FGF6(HST-2)、FGF7(KGF)、FGF9、FGF1 0、FGF11、FGF12、FGF12B、FGF14、FGF16、FGF17、FGF19、FGF20、FGF21、FGF23、IGF1、IGF2、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFN81、IFNG、IFNWI、FEL1、FEL1(EPSELON)、FEL1(ZETA)、IL1A、IL1B、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL1 0、IL11、IL12A、IL12B、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL17B、IL18、IL19、IL20、IL22、IL23、IL24、IL25、IL26、IL27、IL28A、IL28B、IL29、IL30、PDGFA、PDGFB、TGFA、TGFB1、TGFB2、TGFBb3、LTA(TNF-β)、LTB、TNF(TNF-α)、TNFSF4(OX40リガンド)、TNFSF5(CD40リガンド)、TNFSF6(FasL)、TNFSF7(CD27リガンド)、TNFSF8(CD30リガンド)、TNFSF9(4-1BBリガンド)、TNFSF10(TRAIL)、TNFSF11(TRANCE)、TNFSF12(APO3L)、TNFSF13(April)、TNFSF13B、TNFSF14(HVEM-L)、TNFSF15(VEGI)、TNFSF18、HGF(VEGFD)、VEGF、VEGFB、VEGFC、IL1R1、IL1R2、IL1RL1、IL1RL2、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3RA、IL4R、IL5RA、IL6R、IL7R、IL8RA、IL8RB、IL9R、IL10RA、IL10RB、IL 11RA、IL12RB1、IL12RB2、IL13RA1、IL13RA2、IL15RA、IL17R、IL18R1、IL20RA、IL21R、IL22R、IL1HY1、IL1RAP、IL1RAPL1、IL1RAPL2、IL1RN、IL6ST、IL18BP、IL18RAP、IL22RA2、AIF1、HGF、LEP(レプチン)、PTN、およびTHPO.kからなる群から選択される、1つ、2つまたはそれ以上のサイトカイン、サイトカイン関連タンパク質、およびサイトカイン受容体に結合することができる。
【0163】
特定の実施形態では、本明細書にて開示した細胞および方法により作製される抗体は、CCLI(1-309)、CCL2(MCP-1/MCAF)、CCL3(MIP-Iα)、CCL4(MIP-Iβ)、CCL5(RANTES)、CCL7(MCP-3)、CCL8(mcp-2)、CCL11(エオタキシン)、CCL13(MCP-4)、CCL15(MIP-Iδ)、CCL16(HCC-4)、CCL17(TARC)、CCL18(PARC)、CCL19(MDP-3b)、CCL20(MIP-3α)、CCL21(SLC/エクソダス-2)、CCL22(MDC/STC-1)、CCL23(MPIF-1)、CCL24(MPIF-2/エオタキシン-2)、CCL25(TECK)、CCL26(エオタキシン-3)、CCL27(CTACK/ILC)、CCL28、CXCLI(GROI)、CXCL2(GR02)、CXCL3(GR03)、CXCL5(ENA-78)、CXCL6(GCP-2)、CXCL9(MIG)、CXCL10(IP10)、CXCL11(1-TAC)、CXCL12(SDFI)、CXCL13、CXCL14、CXCL16、PF4(CXCL4)、PPBP(CXCL7)、CX3CL1(SCYDI)、SCYEI、XCLI(リンホタクチン)、XCL2(SCM-Iβ)、BLRI(MDR15)、CCBP2(D6/JAB61)、CCRI(CKRI/HM145)、CCR2(mcp-IRB IRA)、CCR3(CKR3/CMKBR3)、CCR4、CCR5(CMKBR5/ChemR13)、CCR6(CMKBR6/CKR-L3/S TRL22/DRY6)、CCR7(CKR7/EBII)、CCR8(CMKBR8/TER1/CKR-L1)、CCR9(GPR-9-6)、CCRL1(VSHK1)、CCRL2(L-CCR)、XCR1(GPR5/CCXCR1)、CMKLR1、CMKOR1(RDC1)、CX3CR1(V28)、CXCR4、GPR2(CCR10)、GPR31、GPR81(FKSG80)、CXCR3(GPR9/CKR-L2)、CXCR6(TYMSTR/STRL33/Bonzo)、HM74、IL8RA(IL8Rα)、IL8RB(IL8Rβ)、LTB4R(GPR16)、TCP10、CKLFSF2、CKLFSF3、CKLFSF4、CKLFSF5、CKLFSF6、CKLFSF7、CKLFSF8、BDNF、C5、C5R1、CSF3、GRCC10(C10)、EPO、FY(DARC)、GDF5、HDF1、HDF1α、DL8、PRL、RGS3、RGS13、SDF2、SLIT2、TLR2、TLR4、TREM1、TREM2、およびVHLからなる群から選択されるケモカイン、ケモカイン受容体、またはケモカイン関連タンパク質に結合することができる。
【0164】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法によって産生される抗体(例えば、二重特異性抗体などの多重特異性抗体)は、以下から選択される1つ以上の標的分子に結合することができる:0772P(CA125、MUC16)(すなわち、卵巣がん抗原)、ABCF1;ACVR1;ACVR1B;ACVR2;ACVR2B;ACVRL1;ADORA2A;アグリカン;AGR2;AICDA;AIF1;AIG1;AKAP1;AKAP2;AMH;AMHR2;アミロイドベータ;ANGPTL;ANGPT2;ANGPTL3;ANGPTL4;ANPEP;APC;APOC1;AR;ASLG659;ASPHD1(アスパラギン酸ベータ-ヒドロキシラーゼドメイン含有1;LOC253982);AZGP1(亜鉛-a-糖タンパク質);B7.1;B7.2;BAD;BAFF-R(B細胞活性化因子受容体、BLyS受容体3、BR3;BAG1;BAI1;BCL2;BCL6;BDNF;BLNK;BLRI(MDR15);BMP1;BMP2;BMP3B(GDF10);BMP4;BMP6;BMP8;BMPR1A;BMPR1B(骨形成タンパク質受容体-IB型);BMPR2;BPAG1(プレクチン);BRCA1;ブレビカン;C19orf10(IL27w);C3;C4A;C5;C5R1;CANT1;CASP1;CASP4;CAV1;CCBP2(D6/JAB61);CCL1(1-309);CCL11(エオタキシン);CCL13(MCP-4);CCL15(MIP1δ);CCL16(HCC-4);CCL17(TARC);CCL18(PARC);CCL19(MIP-3β);CCL2(MCP-1);MCAF;CCL20(MIP-3α);CCL21(MTP-2);SLC;エクソダス-2;CCL22(MDC/STC-1);CCL23(MPIF-1);CCL24(MPIF-2/エオタキシン-2);CCL25(TECK);CCL26(エオタキシン-3);CCL27(CTACK/ILC);CCL28;CCL3(MTP-Iα);CCL4(MDP-Iβ);CCL5(RANTES);CCL7(MCP-3);CCL8(mcp-2);CCNA1;CCNA2;CCND1;CCNE1;CCNE2;CCR1(CKRI/HM145);CCR2(mcp-IRβ/RA);CCR3(CKR/CMKBR3);CCR4;CCR5(CMKBR5/ChemR13);CCR6(CMKBR6/CKR-L3/STRL22/DRY6);CCR7(CKBR7/EBI1);CCR8(CMKBR8/TER1/CKR-L1);CCR9(GPR-9-6);CCRL1(VSHK1);CCRL2(L-CCR);CD164;CD19;CD1C;CD20;CD200;CD22(B細胞受容体CD22-Bアイソフォーム);CD24;CD28;CD3;CD37;CD38;CD3E;CD3G;CD3Z;CD4;CD40;CD40L;CD44;CD45RB;CD52;CD69;CD72;CD74;CD79A(CD79α、免疫グロブリン関連アルファ、B細胞特異的タンパク質);CD79B;CDS;CD80;CD81;CD83;CD86;CDH1(E-カドヘリン);CDH10;CDH12;CDH13;CDH18;CDH19;CDH20;CDH5;CDH7;CDH8;CDH9;CDK2;CDK3;CDK4;CDK5;CDK6;CDK7;CDK9;CDKN1A(p21/WAF1/Cip1);CDKN1B(p27/Kip1);CDKN1C;CDKN2A(P16INK4a);CDKN2B;CDKN2C;CDKN3;CEBPB;CER1;CHGA;CHGB;キチナーゼ;CHST10;CKLFSF2;CKLFSF3;CKLFSF4;CKLFSF5;CKLFSF6;CKLFSF7;CKLFSF8;CLDN3;CLDN7(クローディン-7);CLL-1(CLEC12A、MICLおよびDCAL2);CLN3;CLU(クラスタリン);CMKLR1;CMKOR1(RDC1);CNR1;COL 18A1;COL1A1;COL4A3;COL6A1;補体因子D;CR2;CRP;CRIPTO(CR、CR1、CRGF、CRIPTO、TDGF1、奇形癌由来増殖因子);CSFI(M-CSF);CSF2(GM-CSF);CSF3(GCSF);CTLA4;CTNNB1(b-カテニン);CTSB(カテプシンB);CX3CL1(SCYDI);CX3CR1(V28);CXCL1(GRO1);CXCL10(IP-10);CXCL11(I-TAC/IP-9);CXCL12(SDF1);CXCL13;CXCL14;CXCL16;CXCL2(GRO2);CXCL3(GRO3);CXCL5(ENA-78/LIX);CXCL6(GCP-2);CXCL9(MIG);CXCR3(GPR9/CKR-L2);CXCR4;CXCR5(バーキットリンパ腫受容体1、Gタンパク質共役受容体);CXCR6(TYMSTR/STRL33/Bonzo);CYB5;CYC1;CYSLTR1;DAB2IP;DES;DKFZp451J0118;DNCLI;DPP4;E16(LAT1、SLC7A5);E2F1;ECGF1;EDG1;EFNA1;EFNA3;EFNB2;EGF;EGFR;ELAC2;ENG;ENO1;ENO2;ENO3;EPHB4;EphB2R;EPO;ERBB2(Her-2);EREG;ERK8;ESR1;ESR2;ETBR(エンドセリンB型受容体);F3(TF);FADD;FasL;FASN;FCER1A;FCER2;FCGR3A;FcRH1(Fc受容体様タンパク質1);FcRH2(IFGP4、IRTA4、SPAP1A(SH2ドメイン含有ホスファターゼアンカータンパク質1a)、SPAP1B、SPAP1C);FGF;FGF1(αFGF);FGF10;FGF11;FGF12;FGF12B;FGF13;FGF14;FGF16;FGF17;FGF18;FGF19;FGF2(bFGF);FGF20;FGF21;FGF22;FGF23;FGF3(int-2);FGF4(HST);FGF5;FGF6(HST-2);FGF7(KGF);FGF8;FGF9;FGFR;FGFR3;FIGF(VEGFD);FELl(EPSILON);FILl(ZETA);FLJ12584;FLJ25530;FLRTI(フィブロネクチン);FLT1;FOS;FOSL1(FRA-1);FY(DARC);GABRP(GABAa);GAGEB1;GAGEC1;GALNAC4S-6ST;GATA3;GDF5;GDNF-Ra1(GDNFファミリー受容体アルファ1;GFRA1;GDNFR;GDNFRA;RETL1;TRNR1;RET1L;GDNFR-アルファ1;GFR-ALPHA-1);GEDA;GFI1;GGT1;GM-CSF;GNASI;GNRHI;GPR2(CCR10);GPR19(Gタンパク質共役受容体19;Mm.4787);GPR31;GPR44;GPR54(KISS1受容体;KISS1R;GPR54;HOT7T175;AXOR12);GPR81(FKSG80);GPR172A(Gタンパク質共役受容体172A;GPCR41;FLJ11856;D15Ertd747e);GRCCIO(C10);GRP;GSN(ゲルソリン);GSTP1;HAVCR2;HDAC4;HDAC5;HDAC7A;HDAC9;HGF;HIF1A;HOP1;ヒスタミンおよびヒスタミン受容体;HLA-A;HLA-DOB(MHCクラスII分子のベータサブユニット(Ia抗原);HLA-DRA;HM74;HMOXI;HUMCYT2A;ICEBERG;ICOSL;1D2;IFN-a;IFNA1;IFNA2;IFNA4;IFNA5;IFNA6;IFNA7;IFNB1;IFNガンマ;DFNW1;IGBP1;IGF1;IGF1R;IGF2;IGFBP2;IGFBP3;IGFBP6;IL-l;IL10;IL10RA;IL10RB;IL11;IL11RA;IL-12;IL12A;IL12B;IL12RB1;IL12RB2;IL13;IL13RA1;IL13RA2;IL14;IL15;IL15RA;IL16;IL17;IL17B;IL17C;IL17R;IL18;IL18BP;IL18R1;IL18RAP;IL19;IL1A;IL1B;ILIF10;IL1F5;IL1F6;IL1F7;IL1F8;IL1F9;IL1HY1;IL1R1;IL1R2;IL1RAP;IL1RAPL1;IL1RAPL2;IL1RL1;IL1RL2、ILIRN;IL2;IL20;IL20Rα;IL21 R;IL22;IL-22c;IL22R;IL22RA2;IL23;IL24;IL25;IL26;IL27;IL28A;IL28B;IL29;IL2RA;IL2RB;IL2RG;IL3;IL30;IL3RA;IL4;IL4R;IL5;IL5RA;IL6;IL6R;IL6ST(糖タンパク質130);インフルエンザA;インフルエンザB;EL7;EL7R;EL8;IL8RA;DL8RB;IL8RB;DL9;DL9R;DLK;INHA;INHBA;INSL3;INSL4;IRAK1;IRTA2(免疫グロブリンスーパーファミリー受容体転座関連2);ERAK2;ITGA1;ITGA2;ITGA3;ITGA6(a6インテグリン);ITGAV;ITGB3;ITGB4(b4インテグリン);α4β7およびαEβ7インテグリンヘテロ二量体;JAG1;JAK1;JAK3;JUN;K6HF;KAI1;KDR;KITLG;KLF5(GC Box BP);KLF6;KLKIO;KLK12;KLK13;KLK14;KLK15;KLK3;KLK4;KLK5;KLK6;KLK9;KRT1;KRT19(ケラチン19);KRT2A;KHTHB6(毛髪特異的H型ケラチン);LAMAS;LEP(レプチン);LGR5(ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5;GPR49,GPR67);Lingo-p75;Lingo-Troy;LPS;LTA(TNF-b);LTB;LTB4R(GPR16);LTB4R2;LTBR;LY64(リンパ球抗原64(RP105)、ロイシンリッチリピート(LRR)ファミリーのI型膜タンパク質);Ly6E(リンパ球抗原6複合体、遺伝子座E;Ly67、RIG-E、SCA-2、TSA-1);Ly6G6D(リンパ球抗原6複合体、遺伝子座G6D;Ly6-D,MEGT1);LY6K(リンパ球抗原6複合体、遺伝子座K;LY6K;HSJ001348;FLJ35226);MACMARCKS;MAGもしくはOMgp;MAP2K7(c-Jun);MDK;MDP;MIB1;ミドカイン;MEF;MIP-2;MKI67;(Ki-67);MMP2;MMP9;MPF(MPF、MSLN、SMR、巨核球増強因子、メソテリン);MS4A1;MSG783(RNF124、仮想タンパク質FLJ20315);MSMB;MT3(メタロチオネクチン-111);MTSS1;MUC1(ムチン);MYC;MY088;Napi3b(NaPi2bとしても知られる)(NAPI-3B、NPTIIb、SLC34A2、溶質担体ファミリー34(リン酸ナトリウム)、メンバー2、II型ナトリウム依存性ホスフェート輸送体3b);NCA;NCK2;ニューロカン;NFKB1;NFKB2;NGFB(NGF);NGFR;NgR-Lingo;NgR-Nogo66(Nogo);NgR-p75;NgR-Troy;NME1(NM23A);NOX5;NPPB;NR0B1;NR0B2;NR1D1;NR1D2;NR1H2;NR1H3;NR1H4;NR112;NR113;NR2C1;NR2C2;NR2E1;NR2E3;NR2F1;NR2F2;NR2F6;NR3C1;NR3C2;NR4A1;NR4A2;NR4A3;NR5A1;NR5A2;NR6A1;NRP1;NRP2;NT5E;NTN4;ODZI;OPRD1;OX40;
P2RX7;P2X5(プリン受容体P2Xリガンド開口型イオンチャネル5);PAP;PART1;PATE;PAWR;PCA3;PCNA;PD-L1;PD-L2;PD-1;POGFA;POGFB;PECAM1;PF4(CXCL4);PGF;PGR;ホスファカン;PIAS2;PIK3CG;PLAU(uPA);PLG;PLXDC1;PMEL17(銀ホモログ;SILV;D12S53E;PMEL17;SI;SIL);PPBP(CXCL7);PPID;PRI;PRKCQ;PRKDI;PRL;PROC;PROK2;PSAP;PSCA hlg(2700050C12Rik、C530008O16Rik、RIKEN cDNA 2700050C12、RIKEN cDNA 2700050C12遺伝子);PTAFR;PTEN;PTGS2(COX-2);PTN;RAC2(p21 Rac2);RARB;RET(retがん原遺伝子;MEN2A;HSCR1;MEN2B;MTC1;PTC;CDHF12;Hs.168114;RET51;RET-ELE1);RGSI;RGS13;RGS3;RNF110(ZNF144);ROBO2;S100A2;SCGB1D2(リポフィリンB);SCGB2A1(マンマグロビン2);SCGB2A2(マンマグロビン1);SCYEI(内皮単球活性化サイトカイン);SDF2;Sema 5b(FLJ10372、KIAA1445、Mm.42015、SEMA5B、SEMAG、セマフォリン5b Hlog、セマドメイン、7のトロンボスポンジンリピート(1型および1型様)、膜貫通ドメイン(TM)および短細胞質ドメイン、(セマフォリン)5B);SERPINA1;SERPINA3;SERP1NB5(マスピン);SERPINE1(PAI-1);SERPDMF1;SHBG;SLA2;SLC2A2;SLC33A1;SLC43A1;SLIT2;SPPI;SPRR1B(Sprl);ST6GAL1;STABI;STAT6;STEAP(6の前立腺の膜貫通上皮抗原);STEAP2(HGNC_8639、IPCA-1、PCANAP1、STAMP1、STEAP2、STMP、前立腺がん関連遺伝子1、前立腺がん関連タンパク質1、6の前立腺の膜貫通上皮抗原2、6の膜貫通前立腺タンパク質);TB4R2;TBX21;TCPIO;TOGFI;TEK;TENB2(推定膜貫通プロテオグリカン);TGFA;TGFBI;TGFB1II;TGFB2;TGFB3;TGFBI;TGFBRI;TGFBR2;TGFBR3;THIL;THBSI(トロンボスポンジン-1);THBS2;THBS4;THPO;TIE(Tie-1);TMP3;組織因子;TLR1;TLR2;TLR3;TLR4;TLR5;TLR6;TLR7;TLR8;TLR9;TLR10;TMEFF1(EGF様および2つのフォリスタチン様ドメインを有する膜貫通タンパク質1;トモレグリン-1);TMEM46(shisaホモログ2);TNF;TNF-a;TNFAEP2(B94);TNFAIP3;TNFRSFIIA;TNFRSF1A;TNFRSF1B;TNFRSF21;TNFRSF5;TNFRSF6(Fas);TNFRSF7;TNFRSF8;TNFRSF9;TNFSF10(TRAIL);TNFSF11(TRANCE);TNFSF12(AP03L);TNFSF13(April);TNFSF13B;TNFSF14(HVEM-L);TNFSF15(VEGI);TNFSF18;TNFSF4(OX40リガンド);TNFSF5(CD40リガンド);TNFSF6(FasL);TNFSF7(CD27リガンド);TNFSFS(CD30リガンド);TNFSF9(4-1 BBリガンド);TOLLIP;Toll様受容体;TOP2A(トポイソメラーゼEa);TP53;TPM1;TPM2;TRADD;TMEM118(リングフィンガータンパク質、膜貫通2;RNFT2;FLJ14627);TRAF1;TRAF2;TRAF3;TRAF4;TRAF5;TRAF6;TREM1;TREM2;TrpM4(BR22450、FLJ20041、TRPM4、TRPM4B、一過性受容体電位カチオンチャネル、サブファミリーM、メンバー4);TRPC6;TSLP;TWEAK;チロシナーゼ(TYR;OCAIA;OCA1A;チロシナーゼ;SHEP3);VEGF;VEGFB;VEGFC;バーシカン;VHL C5;VLA-4;XCL1(リンホタクチン);XCL2(SCM-1b);XCRI(GPR5/ CCXCRI);YY1;ならびにZFPM2。
【0165】
特定の実施形態では、本明細書に開示される細胞および方法によって産生される抗体は、CDタンパク質、例えば、CD3、CD4、CD5、CD16、CD19、CD20、CD21(CR2(補体受容体2)またはC3DR(C3d/エプスタイン・バーウイルス受容体)またはHs.73792);CD33;CD34;CD64;CD72(B細胞分化抗原CD72、Lyb-2);CD79b(CD79B、CD79β、IGb(免疫グロブリン関連ベータ)、B29);ErbB受容体ファミリーのCD200メンバー、例えば、EGF受容体、HER2受容体、HER3受容体またはHER4受容体;細胞接着分子、例えば、LFA-1、Mac1、p150.95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、アルファ4/ベータ7インテグリン、およびアルファv/ベータ3インテグリン、例えば、そのアルファサブユニットまたはベータサブユニットのいずれか(例えば、抗CD11a抗体、抗CD18抗体または抗CD11b抗体);増殖因子、例えば、VEGF-A、VEGF-C;組織因子(TF);アルファインターフェロン(アルファIFN);TNFアルファ、インターロイキン、例えば、IL-1ベータ、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-13、IL 17 AF、IL-1S、IL-13Rアルファ1、IL13Rアルファ2、IL-4R、IL-5R、IL-9R、IgE;血液型抗原;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;RANKL、RANK、RSV Fタンパク質、プロテインCなどに結合することができる。
【0166】
特定の実施形態では、本明細書に提供される細胞および方法を使用して、補体タンパク質C5に特異的に結合する抗体(または多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体)(例えば、ヒトC5に特異的に結合する抗C5アゴニスト抗体)を産生することができる。特定の実施形態では、抗C5抗体は、(a)SSYYMA(配列番号1)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;(b)AIFTGSGAEYKAEWAKG(配列番号26)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;(c)DAGYDYPTHAMHY(配列番号27)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;(d)RASQGISSSLA(配列番号28)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;(e)GASETES(配列番号29)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;および(f)QNTKVGSSYGNT(配列番号30)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3から選択される1、2、3、4、5または6つのCDRを含む。例えば、特定の実施形態では、抗C5抗体は、(a)(SSYYMA(配列番号1)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;(b)AIFTGSGAEYKAEWAKG(配列番号26)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;(c)DAGYDYPTHAMHY(配列番号27)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3から選択される1、2もしくは3つのCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)配列;ならびに/または(d)RASQGISSSLA(配列番号28)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;(e)GASETES(配列番号29)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;および(f)QNTKVGSSYGNT(配列番号30)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3から選択される1、2もしくは3つのCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)配列を含む。上記の重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3ならびに軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3の配列は、それぞれ配列番号117、配列番号118、配列番号121、配列番号122、配列番号123および配列番号125として米国特許第2016/0176954号に開示されている。(米国特許出願公開第2016/0176954号の表7および8を参照)。
【0167】
特定の実施形態では、抗C5抗体は、VH配列およびVL配列を含む
それぞれQVQLVESGGG LVQPGRSLRL SCAASGFTVH SSYYMAWVRQ APGKGLEWVG AIFTGSGAEY KAEWAKGRVT ISKDTSKNQV VLTMTNMDPV DTATYYCASD AGYDYPTHAM HYWGQGTLVT VSS(配列番号31)
および
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCRASQGIS SSLAWYQQKP GKAPKLLIYG ASETESGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQN TKVGSSYGNT FGGGTKVEIK(配列番号32)(これらの配列の翻訳後修飾を含む)。上記のVH配列およびVL配列は、それぞれ配列番号106および配列番号111として米国特許第2016/0176954号に開示されている。(米国特許出願公開第2016/0176954号の表7および8を参照)。特定の実施形態では、抗C5抗体は305L015である(米国特許第2016/0176954号を参照)。
【0168】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法によって産生される抗体は、OX40に結合することができる(例えば、ヒトOX40に特異的に結合する抗OX40アゴニスト抗体)。特定の実施形態では、抗OX40抗体は、(a)DSYMS(配列番号2)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;(b)DMYPDNGDSSYNQKFRE(配列番号3)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;(c)APRWYFSV(配列番号4)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;(d)RASQDISNYLN(配列番号5)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;(e)YTSRLRS(配列番号6)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;および(f)QQGHTLPPT(配列番号7)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3から選択される1、2、3、4、5または6つのCDRを含む。例えば、特定の実施形態では、抗OX40抗体は、(a)DSYMS(配列番号2)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;(b)DMYPDNGDSSYNQKFRE(配列番号3)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;および(c)APRWYFSV(配列番号4)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3から選択される1、2もしくは3つのCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)配列;ならびに/または(a)RASQDISNYLN(配列番号5)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;(b)YTSRLRS(配列番号6)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;および(c)QQGHTLPPT(配列番号7)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3から選択される1、2もしくは3つのCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)配列を含む。特定の実施形態では、抗OX40抗体は、VH配列およびVL配列を含む
それぞれEVQLVQSGAE VKKPGASVKV SCKASGYTFT DSYMSWVRQA PGQGLEWIGD MYPDNGDSSY NQKFRERVTI TRDTSTSTAY LELSSLRSED TAVYYCVLAP RWYFSVWGQG TLVTVSS(配列番号8)
および
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCRASQDIS NYLNWYQQKP GKAPKLLIYY TSRLRSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ GHTLPPTFGQ GTKVEIK(配列番号9)(これらの配列の翻訳後修飾を含む)。
【0169】
特定の実施形態では、抗OX40抗体は、(a)NYLIE(配列番号10)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;(b)VINPGSGDTYYSEKFKG(配列番号11)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;(c)DRLDY(配列番号12)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;(d)HASQDISSYIV(配列番号13)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;(e)HGTNLED(配列番号14)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;および(f)VHYAQFPYT(配列番号15)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3から選択される1、2、3、4、5または6つのCDRを含む。例えば、特定の実施形態では、抗OX40抗体は、(a)NYLIE(配列番号10)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;(b)VINPGSGDTYYSEKFKG(配列番号11)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;および(c)DRLDY(配列番号12)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3から選択される1、2もしくは3つのCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)配列;ならびに/または(a)HASQDISSYIV(配列番号13)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;(b)HGTNLED(配列番号14)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;および(c)VHYAQFPYT(配列番号15)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3から選択される1、2もしくは3つのCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)配列を含む。特定の実施形態では、抗OX40抗体は、VH配列およびVL配列を含む
それぞれEVQLVQSGAE VKKPGASVKV SCKASGYAFT NYLIEWVRQA PGQGLEWIGV INPGSGDTYY SEKFKGRVTI TRDTSTSTAY LELSSLRSED TAVYYCARDR LDYWGQGTLV TVSS(配列番号16)
および
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCHASQDIS SYIVWYQQKP GKAPKLLIYH GTNLEDGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCVH YAQFPYTFGQ GTKVEIK(配列番号17)(これらの配列の翻訳後修飾を含む)。
【0170】
抗OX40抗体に関する更なる詳細が、国際公開第2015/153513号で開示されており、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。
【0171】
特定の実施形態では、本明細書に開示される細胞および方法によって産生される抗体は、インフルエンザウイルスB血液凝集素、すなわち、「fluB」に結合することができる(例えば、in vitroおよび/またはin vivoで、インフルエンザBウイルスのYamagata系統由来の血液凝集素に結合するか、インフルエンザBウイルスのVictoria系統由来の血液凝集素に結合するか、インフルエンザBウイルスの祖先系統由来の血液凝集素に結合するか、またはインフルエンザBウイルスのYamagata系統、Victoria系統および祖先系統由来の血液凝集素に結合する抗体)。抗FluB抗体に関する更なる詳細は、国際公開第2015/148806号に記載されており、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0172】
特定の実施形態では、本明細書にて開示した細胞および方法により作製した抗体は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質(LRP)-1またはLRP-8またはトランスフェリン受容体、ならびに、β-セクレターゼ(BACE1またはBACE2)、α-セクレターゼ、γ-セクレターゼ、タウセクレターゼ、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、細胞死受容体6(DR6)、アミロイドβペプチド、α-シヌクレイン、パーキン、ハンチンチン、p75 NTR、CD40、およびカスパーゼ-6からなる群から選択される少なくとも1個の標的に結合することができる。
【0173】
特定の実施形態では、本明細書にて開示した細胞および方法により作製した抗体は、CD40に対するヒトIgG2抗体である。特定の実施形態では、抗CD40抗体はRG7876である。
【0174】
特定の実施形態では、本開示の細胞および方法を使用して、ポリペプチドを産生することができる。例えば、限定されるものではないが、ポリペプチドは標的化された免疫サイトカインである。特定の実施形態において、標的化された免疫サイトカインはCEA-IL2v免疫サイトカインである。特定の実施形態において、CEA-IL2v免疫サイトカインはRG7813である。特定の実施形態では、標的化された免疫サイトカインはFAP-IL2v免疫サイトカインである。特定の実施形態では、FAP-IL2v免疫サイトカインは、RG7461である。
【0175】
特定の実施形態では、本明細書において提供する細胞または方法により作製した多重特異性抗体(二重特異性抗体等)は、CEA、および、少なくとも1つの追加の標的分子に結合することができる。特定の実施形態では、本明細書において提供する方法に従い作製した多重特異性抗体(二重特異性抗体等)は、腫瘍標的化サイトカイン、および少なくとも1つの追加の標的分子に結合することができる。特定の実施形態では、本明細書に提供される方法に従って産生される多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、IL2v(すなわち、インターロイキン2バリアント)に融合され、IL1に基づく免疫サイトカイン、および少なくとも1つの追加の標的分子に結合する。特定の実施形態では、本明細書に提供される方法に従って産生される多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、T細胞二重特異性抗体(すなわち、二重特異性T細胞エンゲージャーまたはBiTE)である。
【0176】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法に従って産生される多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、IL-1アルファおよびIL-1ベータ、IL-12およびIL-1S;IL-13およびIL-9;IL-13およびIL-4;IL-13およびIL-5;IL-5およびIL-4;IL-13およびIL-1ベータ;IL-13およびIL-25;IL-13およびTARC;IL-13およびMDC;IL-13およびMEF;IL-13およびTGF-~;IL-13およびLHRアゴニスト;IL-12およびTWEAK、IL-13およびCL25;IL-13およびSPRR2a;IL-13およびSPRR2b;IL-13およびADAMS、IL-13およびPED2、IL17AおよびIL17F、CEAおよびCD3、CD3およびCD19、CD138およびCD20;CD138およびCD40;CD19およびCD20;CD20およびCD3;CD3SおよびCD13S;CD3SおよびCD20;CD3SおよびCD40;CD40およびCD20;CD-SおよびIL-6;CD20およびBR3、TNFアルファおよびTGF-ベータ、TNFアルファおよびIL-1ベータ;TNFアルファおよびIL-2、TNFアルファおよびIL-3、TNFアルファおよびIL-4、TNFアルファおよびIL-5、TNFアルファおよびIL6、TNFアルファおよびIL8、TNFアルファおよびIL-9、TNFアルファおよびIL-10、TNFアルファおよびIL-11、TNFアルファおよびIL-12、TNFアルファおよびIL-13、TNFアルファおよびIL-14、TNFアルファおよびIL-15、TNFアルファおよびIL-16、TNFアルファおよびIL-17、TNFアルファおよびIL-18、TNFアルファおよびIL-19、TNFアルファおよびIL-20、TNFアルファおよびIL-23、TNFアルファおよびIFNアルファ、TNFアルファおよびCD4、TNFアルファおよびVEGF、TNFアルファおよびMIF、TNFアルファおよびICAM-1、TNFアルファおよびPGE4、TNFアルファおよびPEG2、TNFアルファおよびRANKリガンド、TNFアルファおよびTe38、TNFアルファおよびBAFF、TNFアルファおよびCD22、TNFアルファおよびCTLA-4、TNFアルファおよびGP130、TNF aおよびIL-12p40、VEGFおよびアンジオポエチン、VEGFおよびHER2、VEGF-AおよびHER2、VEGF-AおよびPDGF、HER1およびHER2、VEGFAおよびANG2、VEGF-AおよびVEGF-C、VEGF-CおよびVEGF-D、HER2およびDR5、VEGFおよびIL-8、VEGFおよびMET、VEGFRおよびMET受容体、EGFRおよびMET、VEGFRおよびEGFR、HER2およびCD64、HER2およびCD3、HER2およびCD16、HER2およびHER3;EGFR(HER1)およびHER2、EGFRおよびHER3、EGFRおよびHER4、IL-14およびIL-13、IL-13およびCD40L、IL4およびCD40L、TNFR1およびIL-1 R、TNFR1およびIL-6RおよびTNFR1およびIL-18R、EpCAMおよびCD3、MAPGおよびCD28、EGFRおよびCD64、CSPGsおよびRGM A;CTLA-4およびBTN02;IGF1およびIGF2;IGF1/2およびErb2B;MAGおよびRGM A;NgRおよびRGM A;NogoAおよびRGM A;OMGpおよびRGM A;POL-lおよびCTLA-4;ならびにRGM AおよびRGM Bから選択される少なくとも2つの標的分子に結合することができる。
【0177】
特定の実施形態において、本明細書において提供する方法に従い作製した多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体である。特定の実施形態では、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体は、RG7802である。特定の実施形態では、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体は、以下に示す配列番号18~21に記載のアミノ酸配列を含む:
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCKASAAVG TYVAWYQQKP GKAPKLLIYS ASYRKRGVPS
RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCHQ YYTYPLFTFG QGTKLEIKRT VAAPSVFIFP
PSDEQLKSGT ASVVCLLNNF YPREAKVQWK VDNALQSGNS QESVTEQDSK DSTYSLSSTL
TLSKADYEKH KVYACEVTHQ GLSSPVTKSF NRGEC(配列番号18)
QAVVTQEPSL TVSPGGTVTL TCGSSTGAVT TSNYANWVQE KPGQAFRGLI GGTNKRAPGT
PARFSGSLLG GKAALTLSGA QPEDEAEYYC ALWYSNLWVF GGGTKLTVLS SASTKGPSVF
PLAPSSKSTS GGTAALGCLV KDYFPEPVTV SWNSGALTSG VHTFPAVLQS SGLYSLSSVV
TVPSSSLGTQ TYICNVNHKP SNTKVDKKVE PKSC(配列番号19)
QVQLVQSGAE VKKPGASVKV SCKASGYTFT EFGMNWVRQA PGQGLEWMGW INTKTGEATY
VEEFKGRVTF TTDTSTSTAY MELRSLRSDD TAVYYCARWD FAYYVEAMDY WGQGTTVTVS
SASTKGPSVF PLAPSSKSTS GGTAALGCLV KDYFPEPVTV SWNSGALTSG VHTFPAVLQS
SGLYSLSSVV TVPSSSLGTQ TYICNVNHKP SNTKVDKKVE PKSCDGGGGS GGGGSEVQLL
ESGGGLVQPG GSLRLSCAAS GFTFSTYAMN WVRQAPGKGL EWVSRIRSKY NNYATYYADS
VKGRFTISRD DSKNTLYLQM NSLRAEDTAV YYCVRHGNFG NSYVSWFAYW GQGTLVTVSS
ASVAAPSVFI FPPSDEQLKS GTASVVCLLN NFYPREAKVQ WKVDNALQSG NSQESVTEQD
SKDSTYSLSS TLTLSKADYE KHKVYACEVT HQGLSSPVTK SFNRGECDKT HTCPPCPAPE
AAGGPSVFLF PPKPKDTLMI SRTPEVTCVV VDVSHEDPEV KFNWYVDGVE VHNAKTKPRE
EQYNSTYRVV SVLTVLHQDW LNGKEYKCKV SNKALGAPIE KTISKAKGQP REPQVYTLPP
CRDELTKNQV SLWCLVKGFY PSDIAVEWES NGQPENNYKT TPPVLDSDGS FFLYSKLTVD
KSRWQQGNVF SCSVMHEALH NHYTQKSLSL SPGK(配列番号20)
QVQLVQSGAE VKKPGASVKV SCKASGYTFT EFGMNWVRQA PGQGLEWMG WINTKTGEATY
VEEFKGRVTF TTDTSTSTAY MELRSLRSDD TAVYYCARWD FAYYVEAMD YWGQGTTVTVS
SASTKGPSVF PLAPSSKSTS GGTAALGCLV KDYFPEPVTV SWNSGALTS GVHTFPAVLQS
SGLYSLSSVV TVPSSSLGTQ TYICNVNHKP SNTKVDKKVE PKSCDKTHT CPPCPAPEAAG
GPSVFLFPPK PKDTLMISRT PEVTCVVVDV SHEDPEVKFN WYVDGVEVH NAKTKPREEQY
NSTYRVVSVL TVLHQDWLNG KEYKCKVSNK ALGAPIEKTI SKAKGQPRE PQVCTLPPSRD
ELTKNQVSLS CAVKGFYPSD IAVEWESNGQ PENNYKTTPP VLDSDGSFF LVSKLTVDKSR
WQQGNVFSCS VMHEALHNHY TQKSLSLSPG K(配列番号21)
【0178】
抗CEA/抗CD3二重特異性抗体に関するさらなる詳細は、国際公開第2014/121712号に提供されており、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0179】
特定の実施形態では、本明細書にて開示した細胞および方法により作製した多重特異性抗体(二重特異性抗体等)は、抗VEGF/抗アンジオポエチン二重特異性抗体である。特定の実施形態では、抗VEGF/抗アンジオポエチン二重特異性抗体二重特異性抗体は、Crossmabである。特定の実施形態では、抗VEGF/抗アンジオポエチン二重特異性抗体は、RG7716である。特定の実施形態では、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体は、以下に示す配列番号22~25に記載のアミノ酸配列を含む:
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGYDFT HYGMNWVRQA PGKGLEWVGW INTYTGEPTY
AADFKRRFTF SLDTSKSTAY LQMNSLRAED TAVYYCAKYP YYYGTSHWYF DVWGQGTLVT
VSSASTKGPS VFPLAPSSKS TSGGTAALGC LVKDYFPEPV TVSWNSGALT SGVHTFPAVL
QSSGLYSLSS VVTVPSSSLG TQTYICNVNH KPSNTKVDKK VEPKSCDKTH TCPPCPAPEA
AGGPSVFLFP PKPKDTLMAS RTPEVTCVVV DVSHEDPEVK FNWYVDGVEV HNAKTKPREE
QYNSTYRVVS VLTVLAQDWL NGKEYKCKVS NKALGAPIEK TISKAKGQPR EPQVYTLPPC
RDELTKNQVS LWCLVKGFYP SDIAVEWESN GQPENNYKTT PPVLDSDGSF FLYSKLTVDK
SRWQQGNVFS CSVMHEALHN AYTQKSLSLS PGK(配列番号22)
QVQLVQSGAE VKKPGASVKV SCKASGYTFT GYYMHWVRQA PGQGLEWMGW INPNSGGTNY
AQKFQGRVTM TRDTSISTAY MELSRLRSDD TAVYYCARSP NPYYYDSSGY YYPGAFDIWG
QGTMVTVSSA SVAAPSVFIF PPSDEQLKSG TASVVCLLNN FYPREAKVQW KVDNALQSGN
SQESVTEQDS KDSTYSLSST LTLSKADYEK HKVYACEVTH QGLSSPVTKS FNRGECDKTH
TCPPCPAPEA AGGPSVFLFP PKPKDTLMAS RTPEVTCVVV DVSHEDPEVK FNWYVDGVEV
HNAKTKPREE QYNSTYRVVS VLTVLAQDWL NGKEYKCKVS NKALGAPIEK TISKAKGQPR
EPQVCTLPPS RDELTKNQVS LSCAVKGFYP SDIAVEWESN GQPENNYKTT PPVLDSDGSF
FLVSKLTVDK SRWQQGNVFS CSVMHEALHN AYTQKSLSLS PGK(配列番号23)
DIQLTQSPSS LSASVGDRVT ITCSASQDIS NYLNWYQQKP GKAPKVLIYF TSSLHSGVPS
RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ YSTVPWTFGQ GTKVEIKRTV AAPSVFIFPP
SDEQLKSGTA SVVCLLNNFY PREAKVQWKV DNALQSGNSQ ESVTEQDSKD STYSLSSTLT
LSKADYEKHK VYACEVTHQG LSSPVTKSFN RGEC(配列番号24)
SYVLTQPPSV SVAPGQTARI TCGGNNIGSK SVHWYQQKPG QAPVLVVYDD SDRPSGIPER
FSGSNSGNTA TLTISRVEAG DEADYYCQVW DSSSDHWVFG GGTKLTVLSS ASTKGPSVFP
LAPSSKSTSG GTAALGCLVK DYFPEPVTVS WNSGALTSGV HTFPAVLQSS GLYSLSSVVT
VPSSSLGTQT YICNVNHKPS NTKVDKKVEP KSC(配列番号25)
【0180】
特定の実施形態では、本明細書にて開示した方法により作製した多重特異性抗体(二重特異性抗体等)は、抗Ang2/抗VEGF二重特異性抗体である。特定の実施形態では、抗Ang2/抗VEGF二重特異性抗体は、RG7221である。特定の実施形態では、抗Ang2/抗VEGF二重特異性抗体は、CAS番号1448221-05-3である。
【0181】
任意に、他の分子にコンジュゲートされる可溶性抗原またはその断片は、抗体を生成するための免疫原として使用され得る。受容体などの膜貫通分子の場合、これらの断片(例えば、受容体の細胞外ドメイン)が免疫原として使用され得る。あるいは、膜貫通分子を発現する細胞が免疫原として使用され得る。そのような細胞は、天然源(例えば、がん細胞株)に由来し得るか、または膜貫通分子を発現するように組換え技術によって形質転換された細胞であり得る。抗体の調製に有用な他の抗原およびその形態は、当業者には明らかであろう。
【0182】
特定の実施形態では、本明細書に開示される細胞および方法によって産生されるポリペプチド(例えば、抗体)は、色素または細胞傷害性剤、例えば、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物もしくは動物由来の酵素活性毒素、またはその断片)、または放射性同位体(すなわち、放射性コンジュゲート)などの化学分子にさらにコンジュゲートするように結合することができる。本明細書に記載の方法を使用して作製した抗体または二重特異性抗体を含む免疫抱合体は、1つだけの重鎖、または1つだけの軽鎖の定常領域にコンジュゲートした細胞毒性剤を含有することができる。
【0183】
5.5.2.6 抗体バリアント
特定の態様では、本明細書に提供される抗体、例えば、セクション5.5.5に示す抗体のアミノ酸配列バリアントが企図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的性質を変化させることが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、適切な改変を、抗体をコードするヌクレオチド配列に組み込むことで、またはペプチド合成により調製することができる。このような修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/または抗体のアミノ酸配列内の残基への挿入、および/または抗体のアミノ酸配列内の残基の置換が挙げられる。欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせは、最終構築物が、所望の特徴(例えば、抗原結合)を有する限り、最終構築物に到達するように行われ得る。
【0184】
5.5.2.6.1 置換、挿入および欠失バリアント
ある特定の態様において、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換変異誘発に関心のある部位には、CDRおよびFRが含まれる。保存的置換は、表1において、「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化は、表1において、「例示的な置換」の見出しの下に提供され、またアミノ酸側鎖クラスを参照して以下にさらに記載されるとおりである。目的の抗体中にアミノ酸置換を導入して、その生成物を、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについてスクリーニングすることができる。
【0185】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って分類され得る:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0186】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスのメンバーと交換することを伴うことになる。
【0187】
ある種の置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを含む。一般に、さらなる試験のために選択される結果として生じるバリアント(複数可)は、親抗体と比較して特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)の修飾(例えば、改善)を有し、且つ/または親抗体の実質的に保持された特定の生物学的特性を有するであろう。例示的な置換バリアントは、例えば、本明細書に記載されるものなどのファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して好都合に生成することができる、親和性成熟抗体である。簡潔には、1つまたは複数のCDR残基が変異され、バリアント抗体がファージ上にディスプレイされ、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0188】
例えば抗体親和性を向上させるために、CDRにおいて改変(例えば、置換)が行われ得る。そのような改変は、CDR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照)、および/または抗原と接触する残基に対して行われ得、得られたバリアントVHまたはVLは、結合親和性について試験される。二次ライブラリーを構築し、再選択することによる親和性成熟が、例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの態様では、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリーが作製される。次いで、このライブラリーをスクリーニングして、所望の親和性を有する任意の抗体バリアントを同定する。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのCDR残基(例えば、一度に4~6残基)をランダム化する、CDR指向性アプローチを含む。抗原結合に関与するCDR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して、特異的に特定され得る。特にCDR-H3およびCDR-L3が標的とされることが多い。
【0189】
特定の態様では、置換、挿入、または欠失は、そのような改変が抗体の抗原に結合する能力を実質的に低減させない限り、1つ以上のCDR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的改変(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)は、CDRで行われ得る。そのような改変は、例えば、CDR内の抗原接触残基の外側であっててもよい。上記に提供される特定のバリアントVHおよびVL配列において、各CDRは、改変されていないか、または1つ、2つもしくは3つ以下のアミノ酸置換を含むかのいずれかである。
【0190】
突然変異誘発のために標的とすることができる抗体の残基または領域を同定するための有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085により記載されるように「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法では、残基または標的残基(例えば、arg、asp、his、lys、およびgluなどの荷電残基)のグループを同定し、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)で置換して、抗体と抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを決定する。更なる置換が、初期置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置に導入されてもよい。代替的に、または追加的に、抗原-抗体複合体の結晶構造を使用して、抗体と抗原との間の接触点を同定することができる。そのような接触残基および隣接残基は、置換の候補として標的とされるか、または除去されてもよい。バリアントは、所望の特性を有するか否かを判定するためにスクリーニングされてもよい。
【0191】
アミノ酸配列挿入物には、1個の残基から100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合体、ならびに単一または多数のアミノ酸残基の配列内挿入物が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、酵素(例えば、ADEPT(抗体指向性酵素プロドラッグ療法)のための)または抗体の血清半減期を増大させるポリペプチドに対する抗体のN末端またはC末端への融合が挙げられる。
【0192】
5.5.2.6.2 グリコシル化バリアント
ある特定の態様では、本明細書中に提供される抗体を変更して、抗体のグリコシル化の程度を増減させる。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作り出されるか、または除去されるようにアミノ酸配列を改変させることにより好都合に達成され得る。
【0193】
抗体がFc領域を含む場合、Fc領域に結合したオリゴ糖を改変することができる。哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、N結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般に結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照されたい。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNac)、ガラクトース、およびシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「ステム」のGlcNacに結合したフコースを含み得る。いくつかの態様では、特定の改善された性質を有する抗体バリアントを作製するために、本開示の抗体中のオリゴ糖に修飾を加えることができる。
【0194】
1つの態様において、非フコシル化オリゴ糖、すなわち、Fc領域に付着した(直接または間接的に)フコースを欠くオリゴ糖構造を有する抗体バリアントが提供される。このような非フコシル化オリゴ糖(「アフコシル化」オリゴ糖とも呼ばれる)は特に、二分岐オリゴ糖構造の幹の第1のGlcNAcに結合したフコース残基を欠く、N結合オリゴ糖である。一態様では、天然抗体または親抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加した抗体バリアントが提供される。例えば、非フコシル化オリゴ糖の割合は、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、または場合によっては約100%(すなわち、フコシル化オリゴ糖が存在しない)であってもよい。非フコシル化オリゴ糖の割合は、例えば、国際公開第2006/082515号に記載されているように、MALDI-TOF質量分析法により測定された、Asn297に結合した全てのオリゴ糖の合計(例えば、複合体、ハイブリッド、およびハイマンノース構造)に対する、フコース残基を欠くオリゴ糖の(平均)量である。Asn297は、Fc領域の約297位に位置するアスパラギン残基を指す(Fc領域残基のEUナンバリング);しかしながら、Asn297は、抗体のマイナーな配列変化のために、位置297の上流または下流、すなわち位置294と300の間の約±3個のアミノ酸にも位置し得る。Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の比率が増加した、このような抗体は、改善されたFcγRIIIa受容体結合、および/または改善されたエフェクター機能、特に改善されたADCC機能を有することができる。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号、同第2004/0093621号を参照のこと。
【0195】
フコシル化が低減した抗体を産生することができる細胞株の例には、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);米国特許第2003/0157108号;および国際公開第2004/056312号、特に実施例11)、およびノックアウト細胞株、例えば、アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614-622(2004);Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006);および国際公開第2003/085107号)、またはGDP-フコース合成もしくは輸送体タンパク質の活性が低減もしくは消失した細胞(例えば、米国特許第2004259150号、米国特許第2005031613号、米国特許第2004132140号、米国特許第2004110282号を参照)が挙げられる。
【0196】
さらなる態様において、抗体バリアントには、例えば、抗体のFc領域に付着した二分岐オリゴ糖がGlcNAcにより二分されているバイセクト型(bisected)オリゴ糖が提供される。そのような抗体バリアントは、上述のとおり、低下したフコシル化、および/または改善されたADCCを有することができる。そのような抗体バリアントの例は、例えば、Umana et al.,Nat Biotechnol 17,176-180(1999)、Ferrara et al.,Biotechn Bioeng 93,851-861(2006)、国際公開第99/54342号、同第2004/065540号、同第2003/011878号に記載されている。
【0197】
Fc領域に結合したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も提供される。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有することができる。そのような抗体バリアントは、例えば、国際公開第1997/30087号、同第1998/58964号、および同第1999/22764号に記載されている。
【0198】
5.5.2.6.3 Fc領域バリアント
特定の態様では、1つ以上のアミノ酸改変は、本明細書で提示される抗体のFc領域に導入されてもよく、それにより、Fc領域バリアントを作成する。Fc領域バリアントは、1つまたは複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0199】
特定の態様では、本開示は、全てではないがいくつかのエフェクター機能を有し、これにより、in vivoでの抗体の半減期が重要でありながら、特定のエフェクター機能(補体依存性細胞傷害性(CDC)および抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)など)が不必要または有害である用途に対して望ましい候補となる抗体バリアントを企図する。in vitroおよび/またはin vivo細胞傷害性アッセイを行って、CDCおよび/またはADCC活性の低減/欠乏を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠くが(そのため、ADCC活性を欠く可能性が高い)、FcRn結合能力を保持することを確認することができる。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するのに対して、単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464頁の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986)を参照)およびHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985);5,821,337(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法が用いられ得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTITM非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA;およびCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WIを参照)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む。代替的または追加的に、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に開示されているような動物モデルを対象に評価され得る。C1q結合アッセイを実行して、抗体がC1qに結合することができず、それ故にCDC活性を欠くことを確認することができる。例えば、国際公開第2006/029879号および国際公開第2005/100402号における、C1qおよびC3c結合ELISAを参照のこと。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行うことができる(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045-1052(2003);およびCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738-2743(2004)を参照)。FcRn結合およびin vivoクリアランス/半減期の決定も、当技術分野で公知の方法を使用して行うことができる(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006);国際公開第2013/120929号を参照)。
【0200】
エフェクター機能が低下した抗体としては、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327および329のうちの1つ以上の置換を含むものが挙げられる(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体としては、残基265および297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体(米国特許第7,332,581号)を含む、アミノ酸265位、269位、270位、297位および327位のうちの2つ以上に置換を有するFc変異体が挙げられる。
【0201】
FcRに対する結合が改善または減少したある特定の抗体バリアントが記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号、国際公開第2004/056312号、およびShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照。)
【0202】
特定の態様では、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、および/または334位(残基のEUナンバリング)での置換を有するFc領域を含む。
【0203】
特定の態様では、抗体バリアントは、FcγR結合を減少させる1つまたは複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置234および235(EU番号付けの残基)を有するFc領域を含む。一態様では、置換は、L234AおよびL235A(LALA)である。特定の態様では、抗体変異体は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域に、D265Aおよび/またはP329Gをさらに含む。一態様では、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域における、L234A、L235A、およびP329G(LALA-PG)である。(例えば、国際公開第2012/130831号を参照)。別の態様では、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域における、L234A、L235A、およびD265A(LALA-DA)である。
【0204】
いくつかの態様では、例えば、米国特許第6,194,551号、国際公開第99/51642号、およびIdusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されているように、C1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)の変化(すなわち、改善または減少のいずれか)をもたらす改変がFc領域に対して行われる。
【0205】
半減期が増加し、胎児への母体IgGの移行を担う新生児型Fc受容体(FcRn)への結合が改善された抗体(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)およびKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))は、米国特許第2005/0014934号(Hinton et al.)に記載されている。それらの抗体は、Fc領域とFcRnとの結合を改善する1つまたは複数の置換をその中に有するFc領域を含む。そのようなFcバリアントには、Fc領域残基:238、252、254、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434のうちの1つ以上に置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものが含まれる(例えば、米国特許第7,371,826号;Dall’Acqua,W.F.,et al.J.Biol.Chem.281(2006)23514-23524を参照)。
【0206】
マウスFc-マウスFcRn相互作用にとって重要なFc領域残基は、部位特異的突然変異誘発によって同定されている(例えば、Dall’Acqua,W.F.,et al.J.Immunol 169(2002)5171-5180を参照)。残基I253、H310、H433、N434およびH435(EUインデックスナンバリング)が相互作用に関与する(Medesan,C.,et al.,Eur.J.Immunol.26(1996)2533;Firan,M.,et al.,Int.Immunol.13(2001)993;Kim,J.K.,et al.,Eur.J.Immunol.24(1994)542)。残基I253、H310およびH435が、ヒトFcとマウスFcRnの相互作用に重要であることが分かった(Kim,J.K.,et al.,Eur.J.Immunol.29(1999)2819)。ヒトFc-ヒトFcRn複合体の試験では、残基I253、S254、H435およびY436が相互作用に重要であることが示されている(Firan,M.,et al.,Int.Immunol.13(2001)993;Shields,R.L.,et al.,J.Biol.Chem.276(2001)6591-6604)。Yeung,Y.A.,et al.(J.Immunol.182(2009)7667-7671)では、残基248~259、および301~317、および376~382、および424~437の様々な変異型が報告され、調査されている。
【0207】
ある特定の態様において、抗体バリアントは、FcRn結合を低下させる1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の253位および/または310位および/または435位(EUナンバリングの残基)に置換を有するFc領域を含む。特定の態様では、抗体バリアントは、位置253、310および435にアミノ酸置換を有するFc領域を含む。一態様では、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域内のI253A、H310AおよびH435Aである。例えば、Grevys,A.,et al.,J.Immunol.194(2015)5497-5508を参照されたい。
【0208】
ある特定の態様において、抗体バリアントは、FcRn結合を低下させる1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の310位および/または433位および/または436位(EUナンバリングの残基)に置換を有するFc領域を含む。特定の態様では、抗体バリアントは、310位、433位および436位におけるアミノ酸置換を有するFc領域を含む。一態様では、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域における、H310A、H433AおよびY436Aである。(例えば、国際公開第2014/177460号A1を参照)。
【0209】
ある特定の態様において、抗体バリアントは、FcRn結合を増加させる1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の252位および/または254位および/または256位(EUナンバリングの残基)に置換を有するFc領域を含む。特定の態様では、抗体バリアントは、位置252、254、および256におけるアミノ酸置換を有するFc領域を含む。一態様では、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域内のM252Y、S254TおよびT256Eである。Duncan&Winter,Nature 322:738-40(1988);米国特許第5648260号;同第5624821号;および、Fc領域バリアントの他の例に関しては国際公開第94/29351号も参照のこと。
【0210】
本明細書中に報告されるような抗体の重鎖のC末端は、アミノ酸残基PGKで終わる完全なC末端であり得る。重鎖のC末端は、C末端アミノ酸残基のうちの1つまたは2つが除去された、短縮されたC末端であり得る。1つの好ましい態様では、重鎖のC末端は、短縮されたC末端で終わるPGである。本明細書に報告される全ての態様のうちの1つの態様では、本明細書に明記されるC末端のCH3ドメインを含む重鎖を含む抗体は、C末端グリシン-リシンジペプチドを含む(G446およびK447、EUインデックス番号付けのアミノ酸位置)。本明細書に報告される全ての態様のうちの一態様では、本明細書で明記されるC末端のCH3ドメインを含む重鎖を含む抗体は、C末端グリシン残基(G446、EUインデックス番号付けのアミノ酸位置)を含む。
【0211】
5.5.2.6.4 システイン操作抗体バリアント
特定の態様では、抗体の1つ以上の残基がシステイン残基によって置換されているシステイン操作抗体、例えば、THIOMAB(商標)抗体を作製することが望ましい場合がある。特定の態様では、置換された残基は、抗体の利用しやすい部位で生じる。これらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基が抗体の接近可能部位に配置され、それは、本明細書で更に説明するように、例えば薬物部分またはリンカー-薬物部分等の他の部分に抗体をコンジュゲートさせて免疫コンジュゲートを作製するために使用することができる。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号、同第8,30,930号、同第7,855,275号、同第9,000,130号、または国際公開第2016040856号に記載のように生成することができる。
【0212】
5.5.2.6.5 抗体誘導体
特定の態様では、本明細書に提供される抗体は、当該技術分野で既知であり、容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含有するように更に修飾することができる。抗体の誘導体化に好適な部分としては、水溶性ポリマーが挙げられるが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは任意の分子量であることができ、かつ分枝または非分枝であることができる。抗体に結合したポリマーの数は異なってもよく、2つ以上のポリマーが結合している場合、それらは同じ分子であっても、異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化のために使用されるポリマーの数および/またはタイプは、限定するものではないが、改善される抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が定義された条件下で治療に使用されるかどうかなどの考慮事項に基づいて決定され得る。
【0213】
5.5.2.7 イムノコンジュゲート
本開示はまた、1つまたは複数の治療剤、例えば細胞傷害性剤、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えばタンパク質毒素、微生物、菌類、植物もしくは動物由来の酵素活性毒素、またはこれらの断片)、または放射性同位体にコンジュゲートした(化学結合した)、本明細書で開示される抗体を含むイムノコンジュゲートを提供する。
【0214】
一態様では、イムノコンジュゲートは、前述の治療剤の1つ以上に抗体がコンジュゲートした、抗体薬物コンジュゲート(ADC)である。抗体は典型的には、リンカーを使用して、1つまたは複数の治療剤に接続される。治療剤および薬物およびリンカーの例を含む、ADC技術の概説が、Pharmacol Review 68:3-19(2016)に記載されている。
【0215】
別の態様では、イムノコンジュゲートは、本明細書に記載されるように、酵素活性毒素またはこれらの断片に結合する抗体を含む。これらは以下に限定されるわけではないが、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、エキソトキシンA鎖(緑膿菌からのもの)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、αサルシン、シナアブラギリのタンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウのタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ツルレイシ阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン(enomycin)、ならびにトリコテセンを含む。
【0216】
別の態様では、イムノコンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートされ、放射性コンジュゲートを形成する、本書に記載される抗体を含む。放射性コンジュゲートの生成には、様々な放射性同位体が利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位体が挙げられる。放射性抱合体を検出のために使用する場合、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えば、tc99mもしくはI123、または核磁気共鳴(NMR)画像法(別名、磁気共鳴画像法、MRI)のためのスピン標識、例えば、再びヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、もしくは鉄を含むことができる。
【0217】
抗体および細胞毒性薬の複合体は、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアネート)、およびビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)等の多様な二官能性タンパク質結合剤を使用して作製され得る。例えば、リシンイムノトキシンは、Vitettaら、Science 238:1098(1987)に記載されているように調製することができる。炭素14標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミンペンタ酢酸(MX-DTPA)は、抗体への放射性ヌクレオチドのコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である。国際公開第94/11026号を参照のこと。リンカーは、細胞内での細胞傷害性薬の放出を促進する「切断可能なリンカー」であり得る。例えば、酸不安定リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(Chari et al.,Cancer Res.52:127-131(1992);米国特許第5,208,020号)を使用することができる。
【0218】
本明細書中のイムノコンジュゲートまたはADCは、商業的に入手可能な(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,USAから)、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、スルホ-SMPB、およびSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むがこれらに限定されない、架橋試薬で調製されたそのようなコンジュゲートを明確に企図するが、これらに限定されない。
【0219】
5.6 例示的な非限定的な実施形態
A。修飾細胞であって、非修飾細胞内の内因性タンパク質の発現と比較して2つ以上の内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように細胞が修飾され、
(a)発現が減少または排除された内因性タンパク質のうちの1つ以上が、細胞培養中に修飾細胞のアポトーシスを促進し、
(b)発現が減少または排除された内因性タンパク質のうちの1つ以上が、小胞体ストレス応答(UPR)を調節する、修飾細胞。
【0220】
B。修飾細胞であって、非修飾細胞内の内因性タンパク質の発現と比較して2つ以上の内因性タンパク質の発現を減少させるかまたは排除するように細胞が修飾され、1つ以上の内因性タンパク質が、BCL2結合X、アポトーシス制御因子(BAX)およびBCL2アンタゴニスト/キラー1(BAK)からなる内因性タンパク質群から選択され、内因性タンパク質のうちの1つがプロテインキナーゼR様ERキナーゼ(PERK)である、修飾細胞。
【0221】
B1。BAX、BAKおよびPERKの発現が、減少または排除される、Bの修飾細胞。
【0222】
B2。目的の組換え産物を発現するように操作される、A~B1のいずれか1つの修飾細胞。
【0223】
B3。目的の組換え産物を発現する組換え細胞から生成される、A~B1のいずれか1つの修飾細胞。
【0224】
B4。1つ以上の内因性タンパク質が、検出可能な発現を有しない、B2またはB3の修飾細胞。
【0225】
B5。目的の組換え産物が、ウイルスベクターを含む、B2またはB3の修飾細胞。
【0226】
B6。目的の組換え産物が、ウイルス粒子を含む、B2またはB3の修飾細胞。
【0227】
B7。目的の組換え産物が、組換えタンパク質を含む、B2またはB3の修飾細胞。
【0228】
B8。組換えタンパク質が、抗体もしくは抗体融合タンパク質またはその抗原結合断片である、B7の修飾細胞。
【0229】
B9。抗体が、多重特異性抗体またはその抗原結合断片である、B8の修飾細胞。
【0230】
B10。抗体が、単一の重鎖配列、および単一の軽鎖配列、またはその抗原結合断片からなる、B8の修飾細胞。
【0231】
B11。抗体が、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である、B8~B10のいずれか1つの修飾細胞。
【0232】
B12。抗体がモノクローナル抗体である、B8~B11のいずれか1つの修飾細胞。
【0233】
B13。目的の組換え産物が、1つ以上の標的位置で細胞ゲノムに組み込まれた外因性核酸配列によってコードされる、B2またはB3の修飾細胞。
【0234】
B14。検出可能なBAX、BAKおよびPERKを発現しない、A~B13のいずれか1つの修飾細胞。
【0235】
B15。低下したレベルのBAX、BAKおよびPERKを発現する、A~B13のいずれか1つの修飾細胞。
【0236】
B16。修飾動物細胞である、A~B15のいずれか1つの修飾細胞。
【0237】
B17。修飾されたSf9細胞、CHO細胞、HEK 293細胞、HEK-293T細胞、BHK細胞、A549細胞またはヒーラ細胞である、B16の修飾動物細胞。
【0238】
B18。A~B17のいずれか1つの修飾細胞を含む組成物。
【0239】
B19。(a)A~B17のいずれか1つの修飾細胞を培養すること、および
(b)培養培地または修飾細胞から目的の組換え産物を回収すること
を含む、目的の組換え産物を産生する方法であって、
目的の組換え産物を発現する修飾細胞が、BAX、BAKおよびPERKの発現の減少または排除を示す、方法。
【0240】
C。(a)BAX、BAKおよびPERKを標的とするヌクレアーゼ支援および/または核酸を細胞に適用して、前記内因性遺伝子の発現を減少させるかまたは排除すること、ならびに
(b)非修飾細胞と比較して前記内因性遺伝子の発現が減少または排除されている修飾細胞を選択すること
を含む、修飾細胞を産生する方法。
【0241】
C1。修飾が、目的の組換え産物をコードする外因性核酸の導入前に、または目的の組換え産物をコードする外因性核酸の導入後に行われる、Cによる方法。
【0242】
C2。ヌクレアーゼ支援遺伝子標的化系が、CRISPR/Cas9、CRISPR/Cpf1、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALENまたはメガヌクレアーゼからなる群から選択される、CまたはC1による方法。
【0243】
C3。遺伝子発現の減少が、RNAサイレンシングによって媒介される、CまたはC1による方法。
【0244】
C4。RNAサイレンシングが、siRNA遺伝子標的化およびノックダウン、shRNA遺伝子標的化およびノックダウン、ならびにmiRNA遺伝子標的化およびノックダウンからなる群から選択される、C3による方法。
【0245】
C5。目的の組換え産物が、核酸配列によってコードされる、B19およびC1~C4のいずれか1つの方法。
【0246】
C6。核酸配列が、1つ以上の標的位置で修飾細胞の細胞ゲノムに組み込まれる、B19およびC1~C5のいずれか1つの方法。
【0247】
C7。修飾細胞によって発現される目的の組換え産物が、修飾細胞の細胞ゲノムにランダムに組み込まれた核酸配列によってコードされる、B19およびC1~C5のいずれか1つの方法。
【0248】
C8。目的の組換え産物が、ウイルスベクターを含む、B19およびC1~C7のいずれか1つの方法。
【0249】
C9。目的の組換え産物が、ウイルス粒子を含む、B19およびC1~C7のいずれか1つの方法。
【0250】
C10。目的の組換え産物が、組換えタンパク質を含む、B19およびC1~C7のいずれか1つの方法。
【0251】
C11。組換えタンパク質が、抗体もしくは抗体融合タンパク質またはその抗原結合断片である、C10の方法。
【0252】
C12。抗体が、多重特異性抗体またはその抗原結合断片である、C11の方法。
【0253】
C13。抗体が、単一の重鎖配列、および単一の軽鎖配列、またはその抗原結合断片からなる、C11の方法。
【0254】
C14。抗体が、キメラ抗体、ヒト抗体またはヒト化抗体である、C11~C13のいずれか1つの方法。
【0255】
C15。抗体がモノクローナル抗体である、C11~C13のいずれか1つの方法。
【0256】
C16。目的の産物を精製すること、目的の産物を採取すること、および/または目的の産物を製剤化することを含む、B19~C15のいずれか1つの方法。
【0257】
C17。修飾細胞が修飾動物細胞である、C16の方法。
【0258】
C18。修飾動物細胞が、修飾されたSf9細胞、CHO細胞、HEK 293細胞、HEK 293T細胞、BHK細胞、A549細胞またはヒーラ細胞である、B19~C17のいずれか1つの方法。
【0259】
C19。野生型のBax遺伝子、Bak遺伝子およびPERK遺伝子の各々のポリヌクレオチドおよび機能的コピーを含む対応する単離された動物細胞よりも高い特異的産生性を有する、A~C18のいずれかの修飾細胞または方法。
【0260】
C20。Bax遺伝子、Bak遺伝子およびPERK遺伝子の各々の機能的コピーを含む対応する単離された動物細胞よりもアポトーシスに対して耐性である、A~C19のいずれかの修飾細胞または方法。
【0261】
C21。フェドバッチ、灌流、プロセス強化、半連続灌流、または連続灌流細胞培養プロセスで使用される、A~C20のいずれかの修飾細胞または方法。
【実施例】
【0262】
以下の実施例は、本明細書で開示される主題の例示にすぎず、いかなる意味でも制限とみなすべきではない。
【0263】
材料および方法
ベクターコンストラクト、細胞培養条件および産生
2つの別個の単位としての重鎖(HC)および軽鎖(LC)の両方の発現を、それらのそれぞれのサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターおよび制御因子エレメントによって導いた。プラスミドは、シミアンウイルス(SV)40早期プロモーターおよびエンハンサーエレメントによって導かれる選択マーカーとしてジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)またはピューロマイシンをコードした。HC DNAおよびLC DNAの3’領域に、SV40後期ポリアデニル化(ポリA)シグナル配列を使用した。細胞を、150rpm、37℃および5%CO2で振盪する50mLチューブ回転容器内の独自の無血清DMEM/F12系培地中で培養し、4×105細胞/mLの播種密度で3~4日ごとに継代した(Hu,et al.,2013)。
【0264】
以前に言及されているように(Hsu,Aulakh,Traul,&Yuk,2012)、3、7および10日目に、様々な容器(チューブ回転およびAMBR15)をボーラス供給とともに使用して、独自の化学的に定義された培地を用いて、フェドバッチ産生培養を行った。抗細胞凝集剤を産生アッセイ中の全培養物に使用して、死細胞からのDNAの放出による細胞凝集を防止した。リーン産生培地またはリッチ産生培地を使用して、低い(1~2×106細胞/mL)または高い(10×106細胞/mL)播種密度で細胞を播種した。3日目に、37℃から35℃に培養温度を変化させた。UV検出を伴うプロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用して、力価を決定した。Vi-Cell XR装置(Beckman Coulter項目番号383721)を使用して、生存率および生細胞数を決定した。
【0265】
PERK(EIF2AK3)のCRISPR/Cas9媒介性破壊
sgRNAプライマー配列は、以下のとおりであった:
PERK sgRNA 1:5’AGTCACGGCGGGCACTCGCG
PERK sgRNA 2:5’TACGGCCGAAGTGACCGTGG
PERK sgRNA 3:5’GCGTGACTCATGTTCGCCAG
ルシフェラーゼsgRNA:5’ATCCTGTCCCTAGTGGCCC
【0266】
500万個の細胞を洗浄し、バッファーR(Neon 100uLキット カタログ:MPK10025 Invitrogen)に懸濁した。5マイクログラムのCas9:sgRNA RNP複合体を細胞培養混合物に添加した。1,620Vで3×10msのパルスを使用して、細胞をエレクトロポレーションした。トランスフェクトした細胞を3日間培養し、続いて、限界希釈を介して単一細胞クローニングを行った。ウエスタンブロット分析によって、PERKノックアウトについて、プールおよび単一細胞クローンをスクリーニングした。
【0267】
IRE1アルファRNase活性を検出するためのRT-PCR分析
CHO-XBP1sフォワードプライマー:5’CCTTGTAATTGAGAACCAGG
CHO-XBP1sリバースプライマー:5’CCAAAAGGATATCAGACTCGG
【0268】
Applied Biosystems(#4389986)製の、使用したPower SYBR Green RNA-to CT-1 Step Kitおよびプロトコール。
【0269】
免疫ブロットおよび試薬
150万個の細胞をプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche EDTA不含ミニ錠剤カクテル)を含有する1×NP40バッファー(10mM Tris、pH8.0、0.5%NP40、150mM NaCl、10mM DTT、および5mM MgCl2)中、氷上で20分間溶解した。溶解物をドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)(4~12%Trisグリシン)に供し、ニトロセルロースメンブレンに転写した。トリス緩衝食塩水(TBS)-0.1%Tweenバッファー中5%ミルクを用いてブロックした後、それぞれの抗体を用いてメンブレンをブロットした。HRPコンジュゲート抗ウサギ抗体およびSuperSignal West Dura Extended Duration Substrateを使用して、ブロットを可視化した。以下の阻害剤を使用した:ATF6i(10μM Ceapin-A7(Gallagher,et al.,2016))、PERKi(10μM Compound 39(Axten,et al.,2012))、IRE1i6(10μM 4u8c(Cross,et al.,2012))、IRE1i9(10μM社内/Genentech)、PDGFRi(5~20μM Abcam、AG-1296)。以下の抗体を使用した:抗PDGFRa(Cell Signaling Technology(CST)、D1E1E)、ウサギ抗BiP(C50B12、Cell Signaling Technology、3177)、ウサギ抗PERK(CST、C33E10)、マウス抗β-アクチン-HRP(AC-15)(Abcam、ab49900)、ウサギ抗ホスホ-Akt(Ser473)(CST、D9E)、ウサギ抗Akt(CST、5G3)、ウサギ切断型カスパーゼ3(CST、asp175)、ヤギ抗ヒトIgG-HRP(MP Biomedicals、0855252)、ウサギIRE1a(CST、14C10)、マウス抗ホスホ-IRE1、マウス抗XBP1、ウサギ抗Bax(Abcam、ab32503)、ウサギ抗Bak(CST、D4E4)、ロバ抗ウサギHRP(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、711-035-152)、ウサギ抗sod2(CST、D3X8F)。
【0270】
実施例1:UPR活性化はPDGFRa転写を減衰させ、その発現をダウンレギュレートする
特定のCHO細胞株における比較的低いpH条件によって引き起こされる、シードトレイン培養時のUPRの活性化が、標的pHでの産生培地中の培養増殖に負の影響を及ぼす興味深い現象が、以前に記載された(Tung,et al.,2018)。低pH条件に曝露された場合、この細胞株では、産生中の低増殖プロファイル、および不良なバイオプロセスの結果と相関する高い細胞内BiPレベルが検出された(Tung,et al.,2018)。低pH条件対高pH条件での産生培養増殖の低下の基礎となる機構をさらによく理解するために、シードトレイン培養物を高pH条件および低pH条件下で維持し、質量分析によるプロテオミクス分析に供した。PDGFRaタンパク質レベルの発現の顕著な減少が低pH条件下で観察され(
図1A)、これはPDGFRa遺伝子の転写減衰に関連していた(
図1B)。高い細胞内BiPレベルはUPR活性化を示すため、CHO細胞内のUPRレベルと低下したPDGFRaレベルとの間の潜在的相関を調査することを決定した。ツニカマイシン(Tun、強いUPR誘導物質)およびDTT(弱いUPR誘導物質)を使用して、2つの抗体発現(mAb1)CHO宿主株、CHO DG44およびCHO-K1のシードトレイン培養物に対してUPRを化学的に誘導した。最適なpH条件下で、強いUPR誘導物質(Tun)を用いると、完全に機能的なPDGFRaレベルが、両CHO宿主バックグラウンドでタンパク質レベルおよびmRNAレベルの両方で低下した(
図1Cおよび
図1D)。UPR活性化の指標としてのBiPレベルは、強いおよび弱いUPR化学誘導物質に応答してそれに応じて増加することに留意されたい(
図1C)。ツニカマイシン処理時に観察された低分子量PDGFRaタンパク質バンドは、ツニカマイシン処理がタンパク質グリコシル化を阻害することから、このタンパク質の非グリコシル化形態を表す(
図1C)。
【0271】
UPRのどの分岐がPDGFRaレベルの調節に関与しているかをさらに分析するために、強いUPR誘導物質(ツニカマイシンおよびタプシガルジン)を使用して、UPR経路のATF6分岐、PERK分岐またはIRE1a分岐に対する特異的阻害剤を用いて処理したCHO-K1細胞に対してUPRを誘導した(
図1E、
図1Fならびに
図2A、
図2Bおよび
図2C)。これらのデータにより、ツニカマイシン処理培養物(
図1E)およびタプシガルジン処理培養物(
図2A)の細胞内BiPタンパク質およびXBP-1 RNAプロセシングのレベルの増加によって明らかなように、UPR経路のPERK分岐の阻害が、UPRの他の分岐の活性化に影響を及ぼすことなく、タンパク質レベル(
図1E)およびmRNAレベル(
図1F)でPDGFRaのダウンレギュレーションを救済したことが明らかにされた。UPR経路のPERK分岐の活性化を介したPDGFRaのダウンレギュレーションは、抗体発現細胞(
図1Eおよび
図2A)および空宿主細胞(
図2B)の両方で生じた。PERK阻害剤の存在下で観察されたPERKタンパク質のわずかに低い分子量は、この特異的阻害剤によるPERKの共有結合修飾に起因すると思われる(
図2B)。
【0272】
さらに、CRISPR-Cas9を使用してCHO-K1細胞においてPERK遺伝子をノックアウトするようにsgRNAを設計および試験し(
図2D)、最良のノックアウト表現型を有するトランスフェクトされたプール(sgPERK#2)を単一細胞クローニングして、PERKタンパク質を発現しない空のCHO-K1宿主細胞株を単離した(
図2E)。これらの空のCHO-K1 PERK KO宿主細胞株を増殖、トランスフェクション率、選択培地での回収、および培養性能について評価して、野生型(WT)CHO-K1宿主と同等の全体的な培養性能を有するPERK KO宿主細胞株を同定した。次いで、空のWTおよび空のPERK KO宿主細胞株(クローン9、
図2E)をツニカマイシンおよびPERK阻害剤を用いて、または用いず処理して、UPR誘導時のPDGFRa調節を評価した(
図1G)。WT対照と比較して、PDGFRa発現はUPR誘導時にダウンレギュレートされず、PERK阻害剤の添加は、PERK KO宿主におけるPDGFRa発現をさらに安定化しなかった(
図1G)。
【0273】
本発明者らの抗体発現細胞株の1つであるmAb1 CHO DG44に対するこの調査により、転写のダウンレギュレーション、したがって、PDGFRaタンパク質の減少した発現が、細胞が低pHに曝露されたシードトレイン培養物に由来する場合、産生中の不良な増殖結果の原因である可能性が高いことが明らかにされた(
図1Aおよび
図1B)。この不良な増殖結果が、UPR活性化を示す細胞内BiPレベルの増加と相関することが以前に示された(Tung,et al.,2018)。UPRが化学的に誘導された場合、PDGFRaタンパク質レベルはまた、転写ダウンレギュレーション、すなわち、UPR経路のPERK分岐の化学的阻害によって逆転され得る現象のために低下し、PERK活性化がPDGFRaダウンレギュレーションを媒介することが示唆された(
図1C、
図1D、
図1E、
図1Fならびに
図2A、
図2Bおよび
図2C)。これは、PERK KO細胞株に対するUPRの化学的誘導が、PDGFRa発現のダウンレギュレーションをもたらさなかった場合にさらに確認された(
図1G)。
【0274】
実施例2:PDGFRaシグナル伝達経路はCHO培養増殖に重要であり、インスリンシグナル伝達経路と並行して機能する
UPR誘導性の不良な増殖プロファイルが、PDGFRaレベルの低下と相関することが以前に示された(
図1Aおよび
図1B)(Tung,et al.,2018)。PDGFRaおよびインスリンシグナル伝達経路は、重複する下流標的を有するが(
図3A)、インスリンシグナル伝達はPDGFRaシグナル伝達を負に調節する(Cirri,et al.,2005)。CHO細胞増殖におけるPDGFRaシグナル伝達経路の重要性を試験するために、様々な濃度のPDGFRa阻害剤の存在下で空宿主CHO-K1細胞を培養したところ、Aktシグナル伝達経路の減衰のために20μM濃度(
図3B)で細胞増殖が約50%減少した(
図3C)。PDGFRa阻害剤を用いて処理したCHO培養物へのインスリンの添加は、未処理培養物と比較して、細胞増殖を部分的に救済し(
図3B)、Aktリン酸化を増加させ、したがって、その活性化を増加させた(
図3C)。これらの発見により、PDGFRaシグナル伝達経路およびインスリンシグナル伝達経路が実際にCHO細胞内で重複する下流標的を有すること、ならびにPDGFRa阻害剤の存在下でAktシグナル伝達経路がインタクトなままであることが確認された(
図3Bおよび
図3C)。PDGFRaシグナル伝達はまた、抗体発現(mAb2)CHO細胞株では、フェドバッチ産生の3日目の阻害が細胞生存能力に影響を及ぼすことなく細胞増殖を顕著に減少させたことから、CHO産生培養増殖に重要である(
図3D)。シードトレイン培養物(
図3B)と同様に、産生培養物の3日目のインスリンの添加は、観察された細胞増殖阻害を部分的に救済した(
図3D)。
【0275】
増殖因子を含まない化学的に定義された培地中で培養される、本発明者らのCHO細胞では、PDGFRaシグナル伝達経路が細胞増殖に重要であることが証明され(
図4Aおよび
図4B)、本発明者らのCHO細胞がPDGFRaリガンドを分泌するか、またはPDGFRaシグナル伝達経路がこれらの細胞内で本質的に活性であることが示唆された。培養培地へのインスリンの添加は、PDGFRaシグナル伝達が阻害された場合に細胞増殖を部分的に救済し、PDGFRaおよびインスリン受容体(IR)の両方が部分的に重複するシグナル伝達経路を有することから(
図3A)、PDGFRa阻害剤が特異的であり、下流のシグナル伝達に影響を及ぼさないことが暗示された(
図3Bおよび
図3C)。
【0276】
産生培養では、UPRのPERK分岐によるPDGFRaのダウンレギュレーションも観察され、培養期間の終了に向かうPDGFRaレベルの低下は、その下流標的タンパク質のmRNAレベルの急増によって明らかなように、さらに高いレベルのPERK活性と一致した(
図4Cおよび
図4D)。PERKの化学的阻害は、その下流標的の転写増加を防止し、産生中のPDGFRaレベルも安定化した(
図4Cおよび
図4D)。
【0277】
実施例3:UPRのPERK分岐の活性化は、PDGFRaシグナル伝達を減衰させ、特異的産生性を低下させ、産生中の培養物の生存能力を促進する
mAb2発現CHO-K1細胞株を使用して、PERK阻害剤の非存在下(対照)または存在下(産生の3日目に添加)で、産生培養においてPERK活性化とPDGFRa発現のダウンレギュレーションとの間の相関をモニタリングした。産生培養の13および14日目に観察されたPDGFRaのダウンレギュレーション(
図4C、左パネル)は、PERKの下流標的であるCHOP遺伝子およびGADD34遺伝子のmRNAレベルの増加と相関し(Marciniak,et al.,2004)、PERKシグナル伝達経路の活性化が示された(
図4D)。PERK阻害剤の添加は、PERKシグナル伝達をブロックし(CHOPおよびGADD34のmRNAレベルは増加せず)、PDGFRa発現のダウンレギュレーションを防止した(
図4C右パネル、および
図4D)。PERK阻害剤を使用すると法外な費用がかかり、培養細胞に対するその潜在的なオフターゲット活性を完全に排除することができないため、PDGFRaダウンレギュレーションおよび産生培養性能に果たすこのシグナル伝達経路の役割を直接調査するために、PERK KO mAb2発現CHO-K1細胞株を作製することを決定した。
【0278】
CRISPR-Cas9技術を使用して、mAb2発現CHO-K1細胞株のPERK遺伝子をノックアウトし、単一細胞クローニングの後、親細胞株と同等の増殖プロファイルを有する誘導されたPERK KO細胞株(
図5A、下線付きクローン)を産生培養において評価した(
図5Bおよび
図5C)。PERK KO細胞株は、親細胞株と比較して増殖および生存率の低下を全体的に示したが(
図5B)、WT親細胞株と比較して、PERK KO細胞株の方がいずれも高い特異的産生性を有し、ほとんどの部分で高い力価を有した(
図5B)。産生中のこれらの細胞株のウエスタンブロット分析により、産生の終了に向かってPDGFRa発現レベルの低下を示したWT親細胞株と比較して、PERK KO細胞株ではPDGFRaレベルが安定化されたことが確認された(
図5C)。PERK KO細胞株の方が細胞内BiPタンパク質のレベルが高いことにより、UPR活性化の増加が示されたが(
図5C)、細胞増殖および生存率の観察された低下(
図5B)は、カスパーゼ-3切断の増加と相関し、産生培養の終了に向かうアポトーシス経路の活性化が暗示された(
図5C)。WTまたはPERK KO細胞株によって発現された抗体は、同等の産物品質を有した。
【0279】
これらの発見から、UPRのPERK分岐の活性化が、シードトレインおよび産生培養の両方においてPDGFRaの発現をダウンレギュレートすることが確認された。興味深いことに、PERK KO培養物の方が、低い全体的な生存率および増殖を示したが、産生中の力価および特異的産生性は高かった(
図5B)。これらの培養物における細胞内BiPレベルの増加と、高レベルのカスパーゼ-3切断とは、それぞれUPR経路およびアポトーシス経路の活性化を示し、培養物の生存能力の低下と相関した(
図5C)。産生中の高レベルの特異的産生性は、細胞アポトーシスを引き起こし、早期PERK活性化は、これらの細胞の特異的産生性を単純に低下させることによって細胞アポトーシスを減衰させる可能性が高い。
【0280】
実施例4:Bax/Bak二重ノックアウトCHO細胞株におけるPERKのノックアウトは、導入遺伝子転写を増強し、アポトーシス細胞死を減衰させることによって特異的産生性および力価を劇的に増加させた
PERK KOクローンの方が産生中に高いレベルのアポトーシスを示したため(
図5C)、mAb3発現WT細胞株、またはBax/Bak二重ノックアウト(DKO)細胞株のmAb3発現プールにおいてPERK遺伝子をノックアウトした(
図6A)。Bax/Bakは、ミトコンドリアで作用してアポトーシス細胞死を開始するタンパク質であり(Taylor,Cullen,&Martin,2008)、これらの遺伝子を欠失させると、細胞株はアポトーシスに対してさらに耐性になり、WT CHO細胞株と比較して、長期産生プロセス中の生存能力および産生性が改善される可能性がある(Misaghi,Qu,Snowden,Chang,&Snedcor,2013)。単一細胞選別後、1)リーン産生培地を使用して、2)リッチ産生培地を使用して、および3)強化プロセスでリッチ産生培地を使用して、3つの異なる産生プラットフォームにわたって、PERK/Bax/Bak三重ノックアウト(TKO)クローン(
図6A)を対照(WT、PERK KO、およびBax/Bak DKOプール)と比較した。TKOクローンは、全産生プラットフォームにわたって同等の産物品質属性を維持しながら(表3)、対照よりも高い力価および相対特異的産生性を示す良好なバイオプロセスの結果を示した(
図6Bおよび
図6Cならびに表2)。PERK/Bax/Bak TKOプールおよびクローンを試験する同様の産生プラットフォームから、PERK遺伝子の欠失が、抗体(mAb3)またはFab(Fab1)を発現するさらに高い特異的産生性CHO細胞をもたらすことが明確に明らかにされる(
図7A、
図7Bおよび表4)。これらのデータは、Bax/Bak/PERK TKO CHO細胞の特異的産生性の観察された増加が、クローン特異的または産物特異的ではなく、むしろ一般的な現象であることを示唆している。
表2。異なるバイオプロセスにわたるmAb3発現CHO-K1 TKO細胞のバイオプロセスの結果。
表3。異なるバイオプロセスにわたるmAb3発現CHO-K1 TKO細胞の産物品質。
表4。Bax/Bak DKOおよびPERK/Bax/Bak TKOの単一細胞クローンのバイオプロセスの結果。
【0281】
ウエスタンブロット分析により、PERK/Bax/Bak TKOクローンは、親系統よりも、シードトレイン(
図6A)および産生培地(
図6D)では抗体重鎖および軽鎖の細胞内レベルが高いことが明らかにされた。さらに、TKOクローンは、親系統よりも、産生時に安定化されたPDGFRa発現を示し、カスパーゼ-3切断を示さず、アポトーシス経路の阻害を示した(
図6D)。興味深いことに、PERK/Bax/Bak TKOクローンの方が高いレベルのIRE1a、リン-IRE1a、および顕著に高いレベルのスプライシングされたXBP-1転写因子を有し、これらの細胞が産生時にタンパク質翻訳およびタンパク質恒常性ストレスの増加を経験していることが示された(
図6D)。また、TKOクローンの方が高いレベルのSod2タンパク質を示し、活性酸素種(ROS)経路の活性化が暗示された(
図6D)。これらの発見から、産生中のUPRのPERK分岐の活性化が、タンパク質翻訳、ならびにIRE1a経路およびROS経路の減衰を減少させ、それによって産生培養におけるアポトーシス細胞死を軽減することによって、タンパク質恒常性ストレスを累積的に減少させることが示唆される。これらの産生プロセスをさらに調査することにより、親細胞株と比較してTKOクローンにおける重鎖転写物および軽鎖転写物のmRNAレベルの増加に対して特異的産生性の増加が関連付けられた(
図6E)。これは、UPRのPERK分岐が、IRE1aシグナル伝達またはPDGFRaシグナル伝達の減衰を介して直接的または間接的に、産生中のCMVプロモーターからの導入遺伝子転写を減少させることを示唆している。
【0282】
上記のように、PERK KO細胞株における特異的産生性の増加によるアポトーシスを防止するために、Bax/Bak二重ノックアウト細胞株を発現する抗体においてPERKをノックアウトした(
図6A)。驚くべきことに、産生中のTKOクローンにおける相乗効果は、同等のIVCCおよび生存率を有しながら、親系統よりも高い全体的な力価(最大8g/L)および相対特異的産生性をもたらした(
図6B、
図6Cおよび表2)。この相乗効果は、Bax遺伝子およびBak遺伝子の欠失によるアポトーシスシグナル伝達経路の減衰によるIRE1a活性の延長と併せて、UPRのIRE1a分岐を減衰させることが示されている、PERKの欠失によって引き起こされるIRE1aシグナル伝達の増加(Chang,et al.,2018)によって説明され得る。産生中の本発明者らのTKOクローンでは、リン酸化度が増大したIRE1a、およびその下流標的であるスプライシングされたXBP-1の存在の増加によって示される、IRE1aシグナル伝達の増加および延長が観察された(
図6D)。XBP-1は、バイオプロセスの結果を一過性に改善することが示されており(Rajendra,Hougland,Schmitt,&Barnard,2015)、抗体転写レベルの観察された増加(
図6E)は、UPRのPERK分岐の活性化がCMVプロモーターからの導入遺伝子転写を減衰させるか、またはPDGFRaおよび/もしくはIRE1aシグナル伝達が、直接、もしくはそれらの下流標的を介してCMVプロモーターからの転写を増強する役割を果たすことを示唆している。ただし、これらのシグナル伝達経路間の正確な機構および相互作用は依然として決定されていない。
【0283】
本開示に提示される発見は、抗体発現CHO細胞におけるUPRの慢性活性化が、主にPDGFRaレベルをダウンレギュレートするPERK経路を介して不良な増殖を引き起こし得ることを示唆している。これらの細胞におけるUPRは、ERにおけるタンパク質恒常性ストレスによって主に引き起こされ、ERにおけるタンパク質恒常性ストレスは、細胞培養パラメータから、発現されるタンパク質のアミノ酸配列および組成に及ぶ多くの異なる要因によって引き起こされ得る。これは、タンパク質産生、したがって、ERへの負荷が増加した場合に適応増殖を促進する方法であると考えられる。PDGFRaレベルを調節することによって細胞の増殖および代謝を減速させることにより、ER拡大のためにさらに多くの時間を与えることができ、これもまたPERK経路によって調節される。PERK経路をノックアウトすることは、細胞が増殖することを可能にし得るが、細胞は、高率の特異的産生性およびタンパク質合成によって課される追加のストレスに適応することができないことから、アポトーシスももたらす可能性がある。これを回避するために、アポトーシス経路の成分(Bax/Bak遺伝子)の欠失と併せてPERK経路をノックアウトすることにより、高率の特異的産生性と細胞生存能力の増加とが達成される。したがって、本開示では、アポトーシス経路が減衰された哺乳動物タンパク質発現宿主細胞株においてPERKをノックアウトすると、特異的産生性、したがって、培養力価が顕著に増加し得ることが提案される。
【0284】
本出願を通して引用される、全ての図面および全ての参考文献、特許および公開された特許出願、ならびに寄託番号の内容物は、参照により本明細書に明示的に組み込まれている。
【配列表】
【国際調査報告】