(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】エキュベクテディンのための投薬レジメン
(51)【国際特許分類】
C07D 517/22 20060101AFI20240521BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240521BHJP
A61K 31/4995 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
C07D517/22 CSP
A61P35/00
A61K31/4995
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572000
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 EP2022063653
(87)【国際公開番号】W WO2022243482
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)J Clin Oncol,vol 39(15 Supl),page 168s,Abs No.3078に公開された「First-in-human study of PM14 in patients with advanced solid tumors」 (2)ASCO American Society of Clinical Oncology,57th Annual Meetingで公開された「First-in-human study of PM14 in patients with advanced solid tumors」というタイトルのプレゼンテーション資料 (3)データーベース「EU Clinical Trial Register」に公開された「EudraCT Number:2021-001186-20」の臨床試験の情報 (4)ウェブサイトに公開された「Ensayo de diferentes esquemas de PM14 solo y en combinacion con radioterapia en sarcomas de tejidos blandos y otros tumores solidos」のプリントアウト (5)データーベース「ClinicalTrials.gov」に公開された 「Multicohort Trial of Different Schemes of PM14 in Monotherapy and in Combination With Radiotherapy in Soft Tissue Sarcomas and Other Solid Tumor(PRIME)」と称する臨床試験の情報 (6)データーベース「ClinicalTrials.gov」に公開された 「PM14 Administered Intravenously to Patients With Advanced Solid Tumors」と称する臨床試験の情報
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】505404208
【氏名又は名称】ファルマ、マール、ソシエダード、アノニマ
【氏名又は名称原語表記】PHARMA MAR,S.A.
【住所又は居所原語表記】Poligono Industrial La Mina,Avda.de los Reyes,1,Colmenar Viejo,E-28770 Madrid,SPAIN
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カルメン・カハット
(72)【発明者】
【氏名】ピラル・ラルデッリ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・フェルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥロ・ソト
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB31
4C086GA13
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、がんの治療における使用のための、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルに関する。本発明はまた、ある特定の投薬レジメンでのがんの治療における使用のための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの治療における使用のための式Iの化合物:
【化1】
又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルであって、前記化合物が、約0.5mg/m
2~約9mg/m
2、好ましくは約1.0mg/m
2~約9.0mg/m
2、約1.5mg/m
2~約9.0mg/m
2、約2.0mg/m
2~約9.0mg/m
2、約2.5mg/m
2~約8.5mg/m
2、約3.0mg/m
2~約8.0mg/m
2、約3.5mg/m
2~約7.5mg/m
2、約4.0mg/m
2~約7.0mg/m
2、約4.0mg/m
2~約6.5mg/m
2、約4.5mg/m
2~約6.5mg/m
2、約4.5mg/m
2~約6.0mg/m
2の総用量で3週間サイクルで対象に投与される、使用のための化合物。
【請求項2】
前記総用量が、約3.0mg/m
2~約6.0mg/m
2、約3.0mg/m
2~約5.6mg/m
2、約3.5mg/m
2~約5.6mg/m
2、約4.0mg/m
2~約5.0mg/m
2又は約4.5mg/m
2である、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
前記総用量が、約4.0mg/m
2~約5.5mg/m
2、約4.5mg/m
2~約5.0mg/m
2、約4.5mg/m
2又は約5.0mg/m
2である、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
前記総用量が、約4.0mg/m
2~約9.0mg/m
2、約4.0mg/m
2~約8.0mg/m
2、約4.5mg/m
2~約7.5mg/m
2、約5.0mg/m
2~約7.0mg/m
2、約5.5mg/m
2~約6.5mg/m
2、又は約6.0mg/m
2である、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
前記総用量が、約6.0mg/m
2~約9.0mg/m
2、より好ましくは約6.5mg/m
2~約8.5mg/m
2、より好ましくは約7.0mg/m
2~約8.0mg/m
2、より好ましくは7.0mg/m
2又は8.0mg/m
2である、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
前記化合物が、前記3週間サイクル中に単回用量として投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
前記単回用量が、約4.5mg/m
2である、請求項6に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
前記単回用量が、約5.0mg/m
2である、請求項6に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
前記化合物が、前記3週間サイクル中に、1回目の用量及び2回目の用量として投与される、請求項1、4又は5に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
前記1回目の用量が、前記3週間サイクルの1日目に投与され、前記2回目の用量が、前記3週間サイクルの8日目に投与される、請求項9に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
前記1回目の用量に対して投与される化合物の量及び前記2回目の用量に対して投与される化合物の量が等しい、請求項9又は10に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
前記1回目の用量及び前記2回目の用量に対する前記総用量が6.0mg/m
2である、請求項9~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
前記1回目の用量及び前記2回目の用量に対する前記総用量が7.0mg/m
2である、請求項9~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項14】
前記1回目の用量及び前記2回目の用量に対する前記総用量が8.0mg/m
2である、請求項9~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項15】
前記1回目の用量が3.0mg/m
2であり、前記2回目の用量が3.0mg/m
2である、請求項9~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項16】
前記1回目の用量が3.5mg/m
2であり、前記2回目の用量が3.5mg/m
2である、請求項9~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項17】
前記1回目の用量が4.0mg/m
2であり、前記2回目の用量が4.0mg/m
2である、請求項9~11のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項18】
前記式Iの化合物が、前記3週間サイクル中に2、3、4、5、6、7、8、9又は10回投与される、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項19】
前記式Iの化合物が、前記3週間サイクル中に2回投与される、請求項18に記載の使用のための化合物。
【請求項20】
前記式Iの化合物が、前記3週間サイクル中に3回投与される、請求項18に記載の使用のための化合物。
【請求項21】
前記式Iの化合物が、前記3週間サイクルの1日目、2日目及び3日目に投与される、請求項20に記載の使用のための化合物。
【請求項22】
前記総用量が、約0.5mg/m
2、約1.0mg/m
2、約1.5mg/m
2、約2.0mg/m
2、約2.5mg/m
2、約3.0mg/m
2、約3.5mg/m
2、約4.0mg/m
2、約4.5mg/m
2、約5.0mg/m
2、約5.5mg/m
2、約6.0mg/m
2、約6.5mg/m
2、約7.0mg/m
2、7約.5mg/m
2、約8.0mg/m
2、約8.5mg/m
2、又は約9.0mg/m
2である、請求項18~21のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項23】
各個々の用量(すなわち、毎日)が、約0.5mg/m
2、1.0mg/m
2、1.5mg/m
2、2.0mg/m
2、2.5mg/m
2、3.0mg/m
2、3.5mg/m
2、4.0mg/m
2、4.5mg/m
2、5.0mg/m
2、5.5mg/m
2、6.0mg/m
2、6.5mg/m
2、7.0mg/m
2、7.5mg/m
2、8.0mg/m
2、8.5mg/m
2、又は9.0mg/m
2である、請求項18~22のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項24】
前記化合物が、非経口投与され、好ましくは静脈内投与される、請求項1~23のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項25】
前記化合物が、注入によって投与される、請求項24に記載の使用のための化合物。
【請求項26】
注入時間が、最大24時間である、請求項25に記載の使用のための化合物。
【請求項27】
前記注入時間が、3時間である、請求項25に記載の使用のための化合物。
【請求項28】
前記注入時間が、24時間である、請求項25に記載の使用のための化合物。
【請求項29】
前記化合物が、放射線療法とともに投与され、前記放射線療法が、前記化合物の投与前、前記化合物の投与と同時に、又は前記化合物の投与に続いて投与される、請求項1~28のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項30】
前記がんが、非小細胞肺がん及び小細胞肺がんを含む肺がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、乳がん、膵臓がん、軟部組織肉腫又は骨肉腫を含む肉腫、卵巣がん、前立腺がん、胃がん、腎がん、黒色腫、神経内分泌腫瘍、子宮内膜がん、腺様嚢胞がん、並びに副腎皮質がんから選択される、請求項1~29のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項31】
前記腎がん(renal cancer)が、腎がん(renal carcinoma)、腎明細胞がん、又は低分化型副腎腫を含む副腎腫である、請求項30に記載の使用のための化合物。
【請求項32】
前記黒色腫が、無色素性黒色腫である、請求項30に記載の使用のための化合物。
【請求項33】
前記軟部組織肉腫が、線維肉腫、平滑筋肉腫及び脂肪肉腫から選択される、請求項30に記載の使用のための化合物。
【請求項34】
前記骨肉腫が、軟骨肉腫、好ましくは粘液様軟骨肉腫である、請求項30に記載の使用のための化合物。
【請求項35】
前記塩が、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、エチレンジアミン、エタノールアミン、N,N-ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン、及び塩基性アミノ酸から選択される、請求項1~34のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項36】
請求項1~35のいずれか一項に記載の使用のための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルと、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物。
【請求項37】
請求項1~35のいずれか一項に記載の使用のための、請求項25に記載の薬学的組成物を含む、剤形。
【請求項38】
がんの治療のための薬剤の製造における、請求項1~35のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル、又は請求項36に記載の薬学的組成物、又は請求項37に記載の剤形の使用であって、前記化合物が、請求項1~35のいずれか一項に定義されるように投与される、使用。
【請求項39】
がんの治療を必要とする患者においてがんを治療する方法であって、治療有効量の請求項1~35のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル、又は請求項36に記載の薬学的組成物、又は請求項37に記載の剤形を、前記患者に投与することを含み、前記化合物が、請求項1~35のいずれか一項に定義されるように投与される、方法。
【請求項40】
請求項1~35のいずれか一項に記載の投与のための説明書とともに、請求項1に記載の化合物を含む、キット。
【請求項41】
がんの治療における使用のための式Iの化合物:
【化2】
又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルであって、前記がんが、腎がん、黒色腫、神経内分泌腫瘍、子宮内膜がん、腺様嚢胞がん、副腎皮質がん、骨肉腫、及び軟部組織肉腫から選択される、使用のための化合物。
【請求項42】
前記腎がん(renal cancer)が、腎がん(renal carcinoma)、腎明細胞がん、又は副腎腫であり、前記副腎腫が、低分化型副腎腫であり得る、請求項41に記載の使用のための化合物。
【請求項43】
前記黒色腫が、無色素性黒色腫である、請求項41に記載の使用のための化合物。
【請求項44】
前記軟部組織肉腫が、平滑筋肉腫及び脂肪肉腫から選択される、請求項41に記載の使用のための化合物。
【請求項45】
前記骨肉腫が、軟骨肉腫、好ましくは粘液様軟骨肉腫である、請求項41に記載の使用のための化合物。
【請求項46】
前記塩が、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、エチレンジアミン、エタノールアミン、N,N-ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン、及び塩基性アミノ酸から選択される、請求項41~45のいずれか一項に記載の使用のための化合物。
【請求項47】
請求項41~46のいずれか一項に記載の使用のための、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルと、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物。
【請求項48】
請求項41~46のいずれか一項に記載の使用のための、請求項36に記載の薬学的組成物を含む、剤形。
【請求項49】
請求項41~46のいずれか一項に定義される通りのがんの治療のための薬剤の製造における、請求項41~46のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル、又は請求項47に記載の薬学的組成物、又は請求項48に記載の剤形の、使用。
【請求項50】
がんの治療を必要とする患者においてがんを治療する方法であって、治療有効量の請求項41~46のいずれか一項に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル、又は請求項47に記載の薬学的組成物、又は請求項48に記載の剤形を、前記患者に投与することを含み、前記がんが、請求項41~46のいずれか一項に定義される通りである、方法。
【請求項51】
請求項41~50のいずれか一項に記載の投与のための説明書とともに、請求項41に記載の化合物を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のがんの治療における使用のためのエクテイナサイジン化合物(PM14)に関する。本発明はまた、がんの治療における使用のためのPM14の投薬レジメンに関する。
【背景技術】
【0002】
エクテイナサイジンは、海洋被嚢類Ecteinascidia turbinataから単離された非常に強力な抗腫瘍剤である。WO2018/197663は、以下の式:
【化1】
を有する化合物4-Sとして記述されるPM14を含む合成エクテイナサイジン化合物を記載している。
【0003】
PM14は、非小細胞肺がん(NSCLC)、結腸直腸腺がん、乳腺がん、膵臓腺がん、前立腺腺がん、及び前立腺がん細胞株に対するインビトロ活性、並びに線維肉腫、乳腺がん、NSCLC、卵巣がん、胃がん、小細胞肺がん(SCLC)、前立腺腺がん、及び前立腺がん異種移植モデルにおけるインビボ活性を実証するために、WO2018/197663に示された。
【0004】
がん(複数可)の新しい治療法及び/又はがん(複数可)の改善された治療法を開発する必要性が依然として存在する。本発明は、この必要性に対処する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の態様によれば、がんの治療における使用のための、式Iの化合物
【化2】
又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが提供され、化合物が、約0.5mg/m
2~約9mg/m
2、好ましくは約1.0mg/m
2~約9.0mg/m
2、約1.5mg/m
2~約9.0mg/m
2、約2.0mg/m
2~約9.0mg/m
2、約2.5mg/m
2~約8.5mg/m
2、約3.0mg/m
2~約8.0mg/m
2、約3.5mg/m
2~約7.5mg/m
2、約4.0mg/m
2~約7.0mg/m
2、約4.0mg/m
2~約6.5mg/m
2、約4.5mg/m
2~約6.5mg/m
2、約4.5mg/m
2~約6.0mg/m
2の総用量で3週間サイクルで対象に投与される。
【0006】
初めて、忍容性が高く、管理可能な安全性プロファイルを有する臨床投薬レジメンが特定された。加えて、ヒトにおける有効性は、投薬レジメンに関連して実証されている。
【0007】
総用量は、約3.0mg/m2~約6.0mg/m2、約3.0mg/m2~約5.6mg/m2、約3.5mg/m2~約5.6mg/m2、約4.0mg/m2~約5.0mg/m2又は約4.5mg/m2であってもよい。
【0008】
総用量は、約4.0mg/m2~約9.0mg/m2、約4.0mg/m2~約8.0mg/m2、約4.5mg/m2~約7.5mg/m2、約5.0mg/m2~約7.0mg/m2、約5.5mg/m2~約6.5mg/m2、又は約6.0mg/m2であってもよい。
【0009】
総用量は、4.5mg/m2であってもよい。総用量は、5.0mg/m2であってもよい。総用量は、7.0mg/m2であってもよい。総用量は、8.0mg/m2であってもよい。
【0010】
化合物は、3週間サイクル中に単回用量として投与されてもよい。単回用量は、約4.5mg/m2であってもよい。単回用量は、約5.0mg/m2であってもよい。
【0011】
化合物は、3週間サイクルの1日目に4.5mg/m2の用量で投与されてもよい。
【0012】
化合物は、3週間サイクルの1日目に5.0mg/m2の用量で投与されてもよい。
【0013】
化合物は、3週間サイクル中に1回目の用量及び2回目の用量として投与されてもよい。1回目の用量は、3週間サイクルの1日目に投与されてもよく、2回目の用量は、3週間サイクルの8日目に投与されてもよい。1回目の用量に対して投与される化合物の量及び2回目の用量に対して投与される化合物の量は、等しくてもよい。1回目の用量及び2回目の用量に対する総用量は、約6.0mg/m2であってもよい。1回目の用量は約3.0mg/m2であってもよく、2回目の用量は約3.0mg/m2であってもよい。
【0014】
1回目の用量及び2回目の用量に対する総用量は、約7.0mg/m2であってもよい。1回目の用量は約3.5mg/m2であってもよく、2回目の用量は約3.5mg/m2であってもよい。
【0015】
1回目の用量及び2回目の用量に対する総用量は、約8.0mg/m2であってもよい。1回目の用量は約4.0mg/m2であってもよく、2回目の用量は約4.0mg/m2であってもよい。
【0016】
化合物は、3週間サイクルの1日目、8日目に3.0mg/m2の用量で投与されてもよい。
【0017】
化合物は、3週間サイクルの1日目、8日目に3.5mg/m2の用量で投与されてもよい。
【0018】
化合物は、3週間サイクルの1日目、8日目に4.0mg/m2の用量で投与されてもよい。
【0019】
化合物は、非経口投与されてもよく、好ましくは静脈内投与されてもよい。
【0020】
このがんは、非小細胞肺がん及び小細胞肺がんを含む肺がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、乳がん、膵臓がん、軟部組織肉腫及び骨肉腫を含む肉腫、卵巣がん、前立腺がん、胃がん、腎がん、黒色腫、神経内分泌腫瘍、子宮内膜がん、腺様嚢胞がん、並びに副腎皮質がんから選択されてもよい。腎がん(renal cancer)は、腎がん(renal carcinoma)、腎明細胞がん、又は低分化型副腎腫を含む副腎腫であり得る。黒色腫は、無色素性黒色腫であってもよい。軟部組織肉腫は、線維肉腫、平滑筋肉腫及び脂肪肉腫から選択され得る。骨肉腫は、粘液様軟骨肉腫を含む軟骨肉腫であってもよい。
【0021】
本発明の態様によれば、がんの治療における使用のための、式Iの化合物
【化3】
又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが提供され、がんが、腎がん、黒色腫、神経内分泌腫瘍、子宮内膜がん、腺様嚢胞がん、副腎皮質がん、骨肉腫、及び軟部組織肉腫から選択される。
【0022】
本発明は、本明細書に開示されるがんにおける式Iの化合物の有効性を実証するデータを初めて提供した。
【0023】
がんは、腎がんであり得、腎がん、腎明細胞がん、及び副腎腫から選択され得、ここで、副腎腫は、低分化型副腎腫であり得る。
【0024】
がんは、黒色腫であってもよく、無色素性黒色腫であってもよい。
【0025】
がんは、軟部組織肉腫であってもよく、平滑筋肉腫及び脂肪肉腫から選択されてもよい。
【0026】
がんは、骨肉腫であってもよく、粘液様軟骨肉腫を含む軟骨肉腫であってもよい。
【0027】
塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、エチレンジアミン、エタノールアミン、N,N-ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン、及び塩基性アミノ酸から選択され得る。
【0028】
更なる態様では、本明細書で定義される使用のための、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルと、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物が提供される。
【0029】
更なる態様では、本明細書で定義される使用のための、本明細書で定義される薬学的組成物を含む剤形が提供される。
【0030】
更なる態様では、本明細書に定義される使用のための、説明書とともに、本明細書に定義される化合物、組成物、又は剤形を含むキットが提供される。
【0031】
更なる態様では、本明細書で定義される使用に従って使用される場合、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル、又は本明細書で定義される薬学的組成物、又は本明細書で定義される剤形が提供される。
【0032】
更なる態様では、がんの治療のための薬剤の製造における、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル、又は本明細書で定義されるような薬学的組成物、又は本明細書で定義されるような剤形の使用であって、化合物が、本明細書で定義されるように投与される、使用が提供される。
【0033】
更なる態様では、がんの治療を必要とする患者においてがんを治療する方法であって、治療有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはエステル、又は本明細書で定義される薬学的組成物、又は本明細書で定義される剤形を患者に投与することを含み、化合物が本明細書で定義されるように投与される、方法が提供される。
【0034】
本発明は、以下の非限定的な例によって更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】MRIーH-121異種移植片を保有し、プラセボ又はPM14(PM140014で処置したマウス(N=10匹/群)の腫瘍増殖(平均)及び体重(差し込み図)曲線を示す。
【
図2】MRIーH-121異種移植片を保有し、プラセボ又はPM14(PM140014で処置したマウス(N=10匹/群)の腫瘍増殖(中央値)曲線を示す。
【
図3】MRIーH-121異種移植片を保有し、プラセボ又はPM14(PM140014)で処置したマウスで得られたカプラン-マイヤー生存曲線を示す。
【
図4A】スケジュールA(D1、D8)に従う様々な用量でのヒト臨床試験における有効性データを示す。
【
図4B】スケジュールB(D1)に従う様々な用量でのヒト臨床試験における有効性データを示す。
【
図5A】スケジュールA(D1、D8)に従う様々な用量でのヒト臨床試験における用量制限毒性データを示す。
【
図5B】スケジュールB(D1)に従う様々な用量でのヒト臨床試験における用量制限毒性データを示す。
【
図6】以下の薬物動態データを示す:(A)PM14血漿濃度対時間、(B)用量調整PM14対時間。
【
図7】異なる用量及び注入速度でのPM14の薬物動態のシミュレーションを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下は、本発明の全ての態様に適用される。
【0037】
PM14は、臨床試験中の合成化合物である。PM14は、発がん性転写の特異的阻害剤である。PM14は、いくつかのがんモデルにおいて奨励的な前臨床活性を示している。PM14は、WO2018/197663(化合物4-Sとして)に最初に開示された。PM14の構造は次の通りである:
【化4】
。
【0038】
PM14は、mRNA合成を阻害することにより、タンパク質コード遺伝子の活性転写を特異的に阻害するDNA形成付加物に結合する。転写阻害のメカニズムは、伸長RNAポリメラーゼII(PolII)の不可逆的分解と、その後のDNA二本鎖切断の生成とを伴う。最終的な効果として、PM14は、腫瘍細胞のS期及びアポトーシスに対する細胞周期の停止を誘導する。
【0039】
「薬学的に許容される塩」及び「エステル」という用語は、患者への投与時に、本明細書に記載の化合物を(直接的又は間接的に)提供することができる任意の薬学的に許容される塩又はエステルを指す。しかしながら、薬学的に許容されない塩もまた、それらが薬学的に許容される塩の調製に有用であり得るため、本発明の範囲内にあることが理解されるであろう。塩の調製は、当該技術分野で既知の方法によって行うことができる。
【0040】
例えば、本明細書で提供される化合物の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により、塩基性部分又は酸性部分を含む親化合物から合成することが可能である。一般に、そのような塩は、例えば、これらの化合物の遊離酸若しくは塩基を、水若しくは有機溶媒、又は両方の混合物中の適切な塩基若しくは酸の化学量論的量と反応させることによって調製される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、2-プロパノール、又はアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。酸付加塩の例としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの無機酸付加塩、並びに例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、及びp-トルエンスルホン酸塩などの有機酸付加塩が挙げられる。アルカリ付加塩の例としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びアンモニウム塩などの無機塩、並びに例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、N,N-ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン及び塩基性アミノ酸塩などの有機アルカリ塩が挙げられる。
【0041】
本発明の化合物は、遊離化合物又は溶媒和物(例えば、水和物)のいずれかの結晶又は非晶質形態であり得、全ての形態が本発明の範囲内であることが意図されている。溶媒和の方法は、当該技術分野において一般に知られている。
【0042】
加えて、本明細書で言及される化合物は、同位体標識形態で存在し得る。本明細書で言及される化合物の全ての薬学的に許容される塩、エステル、及び同位体標識された形態、並びにそれらの混合物は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0043】
より簡潔な記載を提供するために、本明細書で与えられる定量的表現のうちのいくつかは、「約」という用語を用いることは適格ではない。「約」という用語が明示的に使用されるか否かにかかわらず、本明細書で与えられる全ての量は、実際の所与の値を指すことを意味し、そのような所与の値に対する実験条件及び/又は測定条件に起因する等価値及び近値を含む、当業者に基づいて合理的に推測されるそのような所与の値との近似値を指すことも意味することが理解される。
【0044】
本出願において、「がん」とは、悪性組織又は細胞を原因とする腫瘍、新生物、及び任意の他の悪性疾患を含むことを意味する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「治療する」という用語は、別途示されない限り、そのような用語が適用される疾患若しくは状態、又はそのような障害若しくは状態の1つ以上の症状の進行を反転、減衰、緩和、遅延、又は阻害することを意味する。
【0046】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトなどの哺乳類、他の霊長類、スポーツ動物、牛などの商業的関心のある動物、馬などの家畜、又はイヌ及びネコなどのペットを含む、本発明の化合物で処置される生体を指す。好ましくは、対象は、ヒトである。
【0047】
軟部組織肉腫
軟部組織肉腫は、身体のどの部分にも影響を及ぼす可能性がある。それらは、筋肉、神経、脂肪組織、及び血管などの支持組織又は結合組織で発達する。軟部組織肉腫としては、胃腸(GI)管に発生する一般的な種類の肉腫であるGIST、女性の生殖器系:子宮(uterus)(子宮(womb))、卵巣、膣、外陰及び卵管に発生する婦人科肉腫、並びに後腹膜に発生する後腹膜肉腫が挙げられる。
【0048】
手術によって腫瘍を除去することができる初期段階で検出されない限り、現在、軟部組織肉腫の治癒はない。軟部組織肉腫患者の約16%が進行期(転移性)疾患を有する。これらの患者について、5年相対生存率は16%である(アメリカがん協会)。
【0049】
脂肪肉腫
1つの特定の軟部組織肉腫は、脂肪肉腫である。脂肪肉腫は、顕微鏡下で脂肪細胞に似た結合組織の稀ながんである。これは、全ての軟部組織肉腫の最大18%を占める。脂肪肉腫は、身体のほぼ全ての部分に発生し得るが、脂肪肉腫症例の半数以上は、大腿部に関与し、最大3分の1は、腹腔に関与する。脂肪肉腫は、40歳~60歳の成人に影響を及ぼす傾向がある。それが子供に起こるとき、それは通常10代の間に起こる。以下に示すように、4種類の脂肪肉腫がある。脂肪肉腫による再発及び転移のリスクは、悪性度(grade)が高いほど増加する。
【0050】
高分化型脂肪肉腫は、最も一般的なサブタイプであり、通常、低悪性度腫瘍として始まる。低悪性度の腫瘍細胞は、顕微鏡下では正常な脂肪細胞によく似ており、ゆっくりと増殖し変化する傾向がある。
【0051】
粘液様脂肪肉腫は、中悪性度から高悪性度の腫瘍である。その細胞は、顕微鏡下では正常ではなく、高悪性度成分を有する可能性がある。
【0052】
脱分化型脂肪肉腫は、低悪性度の腫瘍が変化し、腫瘍内の新しい細胞が高悪性度であるときに発生する。
【0053】
平滑筋肉腫
平滑筋肉腫、又はLMSは、平滑筋で増殖する稀ながんの一種である。平滑筋は、腸、胃、膀胱、及び血管を含む身体の中空器官にある。女性では、子宮内にも平滑筋がある。これらの平滑筋組織は、血液、食物、及びその他の物質を、身体内を移動させ、気づかない間に働くのに役立つ。LMSは侵襲性がんであり、腹部又は子宮内で最も頻繁に見られる。LMSは、軟部組織肉腫の一種であり、軟部組織肉腫症例の10%~20%を占める。LMSは、小児よりも成人においてより一般的である。米国では年間わずか約20~30人の子供だけがLMSと診断されていると推定される。子宮のLMSは、米国では年間100万人当たり約6人を冒している。遺伝性網膜芽細胞腫、リ・フラウメニ(Li-Fraumeni)症候群、神経線維腫症1型、結節性硬化症、母斑基底細胞がん症候群、ガードナー症候群、及びウエルナー症候群を含む特定の遺伝的状態は、LMSに関連していると考えられている。
【0054】
骨肉腫
様々な原発性骨がんがあり、影響を受ける骨又は近くの組織の部分と、腫瘍を形成する細胞の種類に名前が付けられている。
【0055】
軟骨肉腫
軟骨肉腫は、軟骨細胞から始まり、2番目に多い原発性骨がんである。それは、20歳未満の人では稀である。20歳以降、軟骨肉腫になるリスクは75歳頃まで上昇する。女性は男性と同じ頻度でこのがんにかかる。
【0056】
軟骨肉腫は、軟骨のある場所で始まり得る。ほとんどは骨盤、脚、又は腕などの骨で発症するが、気管、喉頭、胸壁、肩甲骨、肋骨、又は頭蓋骨から始まることもある。
【0057】
骨外性粘液様軟骨肉腫
骨外性粘液様軟骨肉腫(EMS)又は粘液様軟骨肉腫(EMCとも呼ばれる)は、骨の外の軟部組織に形成される稀な、ゆっくりと増殖するタイプのがんであり、通常、特別な融合タンパク質が作られることをもたらすNR4A3遺伝子に特定の変化を有する。骨外性粘液様軟骨肉腫は、通常、大腿部に発生するが、膝、臀部、又は体幹(胸部及び腹部)にも発生する場合もある。それらは大きくなり、近くの組織又は身体の他の部分、特に肺に広がる可能性がある。治療後何年も経過してから再発することもある。骨外性粘液様軟骨肉腫は、通常、中年又は高齢者に発生し、小児及び青年には稀である。
【0058】
線維肉腫
線維肉腫は、骨よりも軟部組織でより頻繁に発症する。線維肉腫は、通常、高齢者及び中年成人に発生する。脚、腕、及び顎の骨が最も頻繁に罹患する。
【0059】
黒色腫
黒色腫は、メラニン細胞(皮膚に日焼け又は茶色の色を与える細胞)が制御不能に成長し始めると発症する皮膚がんの一種である。黒色腫は、他のタイプの皮膚がんよりもはるかに少ない。しかし、黒色腫は、早期に発見されて治療されなければ、身体の他の部分に広がる可能性がはるかに高いため、より危険である。英国では、毎年約16,200人が黒色腫と診断されている。黒色腫と診断された人々の数は、過去数十年にわたって増加している。黒色腫は、英国で5番目に多いがんである。
【0060】
黒色腫は皮膚のどこにでも発症する可能性があるが、男性では体幹部(胸部及び背部)、女性では脚部から発症する可能性が高い。首及び顔は他の多く発生する部位である。
【0061】
無色素性黒色腫は、悪性細胞がほとんど又は全く色素を有さない黒色腫の形態である。「無色素性(amelanotic)」という用語は、色素が部分的にしか欠如していない病変を示すためにしばしば使用されるが、病変が全ての色素を欠く真の無色素性黒色腫は稀である。
【0062】
濃い色の皮膚を有することは、これらのより一般的な部位で黒色腫のリスクを低下させるが、誰でも手のひら、足の裏、又は爪の下において黒色腫にかかる可能性がある。これらの領域の黒色腫は、白人よりもアフリカ系アメリカ人の黒色腫の方がはるかに大きな割合を占めている。
【0063】
黒色腫は、目、口、性器、及び肛門領域など、身体の他の部分でも形成されることがあるが、これらは皮膚の黒色腫よりもはるかに少ない。
【0064】
神経内分泌腫瘍
膵臓神経内分泌腫瘍(NET)、又は膵島細胞腫瘍は、膵臓から始まるがんの一種である。膵臓NETは、あまり一般的ではないタイプの膵臓がんである。それらは膵臓がんの2%未満を占めるが、より一般的なタイプよりも良好な予後を有する傾向がある。膵臓神経内分泌腫瘍は、神経内分泌細胞から始まる。神経内分泌細胞(又は内分泌細胞)は、身体の他の領域にも見られるが、膵臓の神経内分泌細胞から形成されるがんのみが、膵臓神経内分泌腫瘍と呼ばれる。
【0065】
膵臓の神経内分泌細胞は、膵島(又はランゲルハンス島)と呼ばれる小さなクラスターに見られる。これらの島は、インスリン及びグルカゴンのようなホルモンを作り、それらを血液中に直接放出する。
-グレード1(低悪性度又は高分化型とも呼ばれる)の神経内分泌腫瘍は、正常細胞のように見え、急速に増殖していない細胞を有する。
-グレード2(中悪性度又は中分化型とも呼ばれる)の腫瘍は、低悪性度腫瘍と高悪性度腫瘍との間の特徴を有する。
-グレード3(高悪性度又は低分化型とも呼ばれる)の神経内分泌腫瘍は、非常に異常に見える細胞を有し、増殖がより速い。これらは、神経内分泌がん(NEC)としても知られている。
【0066】
膵臓NETは、それらが機能しているか、又は機能していないかに基づいて命名される。
【0067】
機能しているNETは、血液中に放出されるホルモンを作り、症状を引き起こす。大部分(最大70%)の機能しているNETは、インスリノーマである。他のタイプはあまり一般的ではない。
-インスリノーマは、インスリンを作る細胞から生じる。
-グルカゴノーマは、グルカゴンを作る細胞から生じる。
-ガストリノーマは、ガストリンを作る細胞から生じる。
-ソマトスタチノーマは、ソマトスタチンを作る細胞から生じる。
-VIPomaは、血管活性腸ペプチド(VIP)を作る細胞から生じる。
-ACTH分泌腫瘍は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を作る細胞から生じる。
【0068】
機能していないNETは、症状を引き起こすのに十分な過剰なホルモンを生成しないため、しばしば発見される前にかなり大きくなる可能性がある。大きなサイズに増殖すると発生する可能性のある症状には、腹痛、食欲不振、及び体重減少が挙げられる。
【0069】
カルチノイド腫瘍は、消化器系の他の部分でははるかに一般的であるが、膵臓から始まることはめったにない。これらの腫瘍は、しばしばセロトニンを作る。
【0070】
子宮内膜がん
子宮内膜がん(子宮内膜がん(腫)とも呼ばれる)は、子宮の内膜(子宮内膜)の細胞から始まる。これは、子宮内で最も一般的な種類のがんである。子宮内膜がんは、以下を含む異なる組織型に分類され得る:
-腺がん
-子宮がん肉腫又はCS
-扁平上皮がん
-小細胞がん
-移行性がん
-漿液性がん
【0071】
明細胞がん、粘液性腺がん、未分化型がん、脱分化型がん、及び漿液性腺がんは、あまり一般的ではないタイプの子宮内膜腺がんである。それらは、ほとんどのタイプの子宮内膜がんよりも早く増殖し、広がる傾向がある。診断されるまでに子宮外に広がっていることがよくある。
【0072】
子宮内膜様がん-ほとんどの子宮内膜がんは、腺がんであり、子宮内膜様がんは、これまで最も一般的な種類の腺がんである。子宮内膜様がんは腺細胞から始まり、正常な子宮内膜(uterine lining(子宮内膜(endometrium))によく似ている。これらのがんのうちのいくつかは、扁平上皮細胞(扁平上皮細胞は平坦で薄い細胞である)、並びに腺細胞を有する。子宮内膜様がんには、以下を含む多くのサブタイプがある:
-腺がん、(扁平上皮分化を伴う)
-腺棘細胞腫
-腺扁平上皮(又は混合細胞)
-分泌がん
-線毛性がん
-絨毛腺がん
【0073】
子宮がん肉腫(CS)は、子宮内膜から始まり、子宮内膜がん及び肉腫の両方の特徴を有する。これまで、CSは子宮肉腫と呼ばれる異なる種類の子宮がんと考えられていたが、低分化型子宮内膜がんであるとは考えられていない。
【0074】
子宮CSは、2型子宮内膜がんである。CS腫瘍は、悪性中胚葉混合腫瘍又は悪性ミュラー管混合腫瘍(MMMT)としても知られる。それらは、子宮がんの約3%を占める。
【0075】
腺様嚢胞がん
腺様嚢胞がん(ACC)は、腺組織から始まるがんの一種である腺がんの稀な形態である。最も一般的には、頭頸部の大唾液腺及び小唾液腺に発生する。また、乳房、子宮、又は身体内の他の場所でも発生する可能性がある。
【0076】
副腎皮質がん
副腎がんは、腎臓の上にある小さい三角腺(副腎)の一方又は両方から始まる稀ながんである。副腎皮質がんとも呼ばれる副腎がんは、どの年齢でも発生する可能性がある。しかし、それは5歳未満の子供、並びに40代及び50代の成人が罹患する可能性が最も高い。
【0077】
腎がん
腎(又は腎臓)がんは、腎臓から始まるがんの一種である。腎がんには多くの種類がある。
【0078】
腎細胞がん又は腎細胞腺がんとしても知られている腎細胞がん(RCC)は、腎臓がんの最も一般的な種類である。腎臓がん10例のうち約9例が腎細胞がんである。RCCは通常、腎臓内で単一の腫瘍として増殖するが、1つの腎臓に2つ以上の腫瘍がある場合もあれば、両方の腎臓に同時に腫瘍がある場合もある。RCCには以下のいくつかの組織学的サブタイプがある:
-明細胞腎細胞がん:これは、腎細胞がんの最も一般的な形態である。RCC患者の10人中約7人がこの種のがんを有している。明細胞RCCを構成する細胞は、非常に青白く又は透明に見える。
-非明細胞腎細胞がん:
○乳頭状腎細胞がん(好色素性とも呼ばれる):これは、2番目に一般的なサブタイプであり、RCC10例のうち約1例がこのタイプである。これらのがんは、ほとんどではないにしても、腫瘍の一部で乳頭を形成する。
○色素嫌性腎細胞がん:このサブタイプは、RCCの約5%(100例中5例)を占めている。これらのがんの細胞も、明細胞のように青白いが、はるかに大きく、間近に見たときに認識することができる特定の他の特徴を有する。
-稀な種類の腎細胞がん:これらのサブタイプは非常に稀であり、それぞれがRCCの1%未満を占めている。
○集合管RCC
○多房性嚢胞状RCC
○髄様がん
○粘液管状紡錘細胞がん
○神経芽腫関連RCC
-未分類の腎細胞がん:腎細胞がんは、それらの外観が他のカテゴリのいずれにも適合しないか、又は複数の種類のがん細胞が存在するため、未分類としてラベル付けされるのは稀である。
【0079】
他の種類の腎臓がんには以下が含まれる:
-移行上皮がん:腎臓における100例のがんのうち、約5~10例は、尿路上皮がんとしても知られる移行上皮がん(TCC)である。
-ウィルムス腫瘍(腎芽腫):ウィルムス腫瘍は、ほとんどの場合、小児で発生する。この種類のがんは、成人では非常に稀である。
-腎肉腫:腎肉腫は、腎臓の血管又は結合組織から始まる稀な種類の腎臓がんである。それらは全ての腎臓がんの1%未満を占める。
【0080】
本発明の実施形態によれば、がんの治療における使用のための、式Iの化合物:
【化5】
又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが提供され、がんが、腎がん、黒色腫、神経内分泌腫瘍、子宮内膜がん、腺様嚢胞がん、副腎皮質がん、骨肉腫、及び軟部組織肉腫から選択される。
【0081】
好ましい実施形態では、腎がん(renal cancer)は、腎がん(renal carcinoma)、腎明細胞がん又は副腎腫である。副腎腫は、低分化型副腎腫であってもよい。
【0082】
好ましい実施形態では、黒色腫は、無色素性黒色腫である。
【0083】
好ましい実施形態では、軟部組織肉腫は、平滑筋肉腫及び脂肪肉腫から選択される。好ましい実施形態では、軟部組織肉腫は、線維肉腫を除外する。
【0084】
好ましい実施形態では、骨肉腫は、粘液様軟骨肉腫を含む軟骨肉腫である。
【0085】
本発明の実施形態によれば、がんの治療における使用のための式Iの化合物:
【化6】
又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルが提供され、化合物が約0.5mg/m
2~約9mg/m
2の総用量で3週間サイクルで対象に投与される。
【0086】
本明細書で使用される場合、「総用量」という用語は、3週間サイクル中に投与される化合物の総量を指す。
【0087】
好ましい実施形態では、総用量は、約1.0mg/m2~約9.0mg/m2、約1.5mg/m2~約9.0mg/m2、約2.0mg/m2~約9.0mg/m2、約2.5mg/m2~約8.5mg/m2、約3.0mg/m2~約8.0mg/m2、約3.5mg/m2~約7.5mg/m2、約4.0mg/m2~約7.0mg/m2、約4.0mg/m2~約6.5mg/m2、約4.5mg/m2~約6.5mg/m2、約4.5mg/m2~約6.0mg/m2である。
【0088】
好ましい実施形態では、総用量は、約3.0mg/m2~約6.0mg/m2、約3.0mg/m2~約5.6mg/m2、約3.5mg/m2~約5.6mg/m2、約4.0mg/m2~約5.0mg/m2又は約4.5mg/m2である。
【0089】
好ましい実施形態では、総用量は、約4.0mg/m2~約9.0mg/m2、約4.0mg/m2~約8.0mg/m2、約4.5mg/m2~約7.5mg/m2、約5.0mg/m2~約7.0mg/m2、約5.5mg/m2~約6.5mg/m2、又は約6.0mg/m2である。
【0090】
好ましい実施形態では、総用量は、約4.5mg/m2~約8.0mg/m2、約4.5mg/m2~約5.0mg/m2、約7.0mg/m2~約8.0mg/m2、約4.5mg/m2~約5.0mg/m2、約7.0mg/m2、又は約8.0mg/m2である。
【0091】
化合物は、3週間サイクル中に1回以上の用量で投与されてもよい。例えば、化合物は、3週間サイクル中に1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10回投与されてもよい。いくつかの実施形態では、化合物は、週に1回投与されてもよい。他の実施形態では、化合物は、1日1回投与されてもよい。
【0092】
総用量は、3週間サイクル内の各個々の用量間で均等に分割されてもよい。別の言い方をすれば、各用量に対して投与される化合物の量は等しくてもよい。
【0093】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、3週間サイクル中に単回用量として投与される。
【0094】
好ましくは、単回用量は、約3.0mg/m2~約6.0mg/m2、より好ましくは約3.0mg/m2~約5.6mg/m2、より好ましくは約3.5mg/m2~約5.6mg/m2、更により好ましくは約4.0mg/m2~約5.0mg/m2である。単回用量は、約4.5mg/m2であることが特に好ましい。単回用量は、サイクルの1日目に投与されてもよい。
【0095】
単回用量は、約5.0mg/m2であることが更に特に好ましい。単回用量は、サイクルの1日目に投与されてもよい。
【0096】
特に好ましい実施形態では、式Iの化合物は、3週間サイクルの1日目に4.5mg/m2の用量で投与される。
【0097】
更に特に好ましい実施形態では、化合物は、3週間サイクルの1日目に5.0mg/m2の用量で投与される。
【0098】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、サイクル中に2、3、4、5、6、7、8、9又は10回投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、サイクル中に3回投与される。いくつかの実施形態では、化合物は、3週間サイクル中に3回投与される。
【0099】
いくつかの実施形態では、化合物は、サイクル中、1、2及び3日目に3回投与される。
【0100】
好ましくは、用量の各々に対して投与される化合物の量は、等しくてもよい。例えば、薬物が3週間サイクルの1、2及び3日目に3回投与される場合、これらの日の各々に投与される用量は同じである。
【0101】
好ましくは、総用量は、約0.5mg/m2、1.0mg/m2、1.5mg/m2、2.0mg/m2、2.5mg/m2、3.0mg/m2、3.5mg/m2、4.0mg/m2、4.5mg/m2、5.0mg/m2、5.5mg/m2、6.0mg/m2、6.5mg/m2、7.0mg/m2、7.5mg/m2、8.0mg/m2、8.5mg/m2、9.0mg/m2、9.5mg/m2、10.0mg/m2、10.5mg/m2、又は11.0mg/m2である。
【0102】
好ましくは、各個々の用量(すなわち、毎日)は、約0.5mg/m2、1.0mg/m2、1.5mg/m2、2.0mg/m2、2.5mg/m2、3.0mg/m2、3.5mg/m2、4.0mg/m2、4.5mg/m2、5.0mg/m2、5.5mg/m2、6.0mg/m2、6.5mg/m2、7.0mg/m2、7.5mg/m2、8.0mg/m2、8.5mg/m2、又は9.0mg/m2である。
【0103】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、3週間サイクル中1回目の用量及び2回目の用量として(すなわち、3週間スケジュール中に2回)、投与される。
【0104】
1回目の用量は、3週間サイクルの1日目に投与され、2回目の用量は、3週間サイクルの8日目に投与される。
【0105】
好ましくは、1回目の用量に対して投与される化合物の量及び2回目の用量に対して投与される化合物の量は、等しい。
【0106】
好ましくは、1回目の用量及び2回目の用量に対する総用量は、約0.5mg/m2~約9.0mg/m2、より好ましくは約1.0mg/m2~約9.0mg/m2、より好ましくは約1.5mg/m2~約9.0mg/m2、より好ましくは約2.0mg/m2~約9.0mg/m2、より好ましくは約3.0mg/m2~約9.0mg/m2、より好ましくは約4.0mg/m2~約9.0mg/m2、より好ましくは約5.0mg/m2~約9.0mg/m2、より好ましくは約6.0mg/m2~約9.0mg/m2、より好ましくは約4.0mg/m2~約8.0mg/m2、より好ましくは約6.0mg/m2~約9.0mg/m2、より好ましくは約5.0mg/m2~約7.0mg/m2、更により好ましくは約5.5mg/m2~約6.5mg/m2である。1回目の用量及び2回目の用量に対する総用量は、約6.0mg/m2であることが特に好ましい。
【0107】
好ましくは、1回目の用量及び2回目の用量は、約2.25mg/m2~約3.75mg/m2、より好ましくは、約2.5mg/m2~約3.5mg/m2、更により好ましくは、約2.75mg/m2~約3.25mg/m2である。1回目の用量及び2回目の用量は、約3.0mg/m2であることが特に好ましい。
【0108】
特に好ましい実施形態では、1回目の用量及び2回目の用量に対する総用量は、約6.0mg/m2~約9.0mg/m2、より好ましくは約6.5mg/m2~約8.5mg/m2、より好ましくは約7.0mg/m2~約8.0mg/m2、より好ましくは約7.0mg/m2又は約8.0mg/m2である。
【0109】
好ましくは、1回目の用量及び/又は2回目の用量は、約3.0mg/m2~約4.5mg/m2、より好ましくは、約3.25mg/m2~約4.25mg/m2、更により好ましくは、約3.5mg/m2~約4.0mg/m2である。1回目の用量及び/又は2回目の用量は、約3.5mg/m2、又は約4.0mg/m2であることが特に好ましい。
【0110】
特に好ましい実施形態では、式Iの化合物は、3週間の1日目に3.0mg/m2の用量で、かつ8日目に3.0mg/m2の用量で投与される。
【0111】
更に特に好ましい実施形態では、式Iの化合物は、3週間の1日目に3.5mg/m2の用量で、かつ8日目に3.5mg/m2の用量で投与される。
【0112】
更に特に好ましい実施形態では、式Iの化合物は、3週間の1日目に4.0mg/m2の用量で、かつ8日目に4.0mg/m2の用量で投与される。
【0113】
いくつかの実施形態では、化合物は、非経口投与される。好ましくは、化合物は、静脈内投与される。
【0114】
本明細書に開示される投薬レジメンは、がんの治療に有用である。好ましい実施形態では、がんは、非小細胞肺がん及び小細胞肺がんを含む肺がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、乳がん、膵臓がん、軟部組織肉腫又は骨肉腫を含む肉腫、卵巣がん、前立腺がん、胃がん、腎がん、黒色腫、神経内分泌腫瘍、子宮内膜がん、腺様嚢胞がん、並びに副腎皮質がんから選択される。
【0115】
好ましい実施形態では、肺がんは、非小細胞肺がん又は小細胞肺がんである。
【0116】
好ましい実施形態では、腎がん(renal cancer)は、腎がん(renal carcinoma)、腎明細胞がん又は副腎腫である。副腎腫は、低分化型副腎腫であり得る。
【0117】
好ましい実施形態では、黒色腫は、無色素性黒色腫である。
【0118】
好ましい実施形態では、肉腫は、軟部組織肉腫である。
【0119】
好ましい実施形態では、軟部組織肉腫は、線維肉腫、平滑筋肉腫及び脂肪肉腫から選択される。
【0120】
好ましい実施形態では、肉腫は、骨肉腫である。
【0121】
好ましい実施形態では、骨肉腫は、粘液様軟骨肉腫を含む軟骨肉腫である。
【0122】
本発明の更なる実施形態では、本明細書に記載されるがんの治療における使用のための、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはエステルと、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物が提供される。
【0123】
薬学的に許容される担体又はビヒクルは、組成物が、例えば、錠剤又は粉末形態であるように、粒子状であり得る。担体(複数可)は液体であり得、組成物は、例えば、経口用シロップ剤又は注射用液体である。加えて、担体(複数可)は、例えば、吸入投与に有用なエアロゾル組成物を提供するように、気体又は液体であり得る。粉末はまた、吸入剤形に使用され得る。「担体」という用語は、本発明による化合物とともに投与される希釈剤、アジュバント又は賦形剤を指す。そのような薬学的担体は、液体、例えば、水及び油であってもよく、石油、動物、植物又は合成由来のもの、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などを含む。担体は、生理食塩水、アカシアガム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイド状シリカ、尿素、二糖類などであり得る。加えて、補助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤、及び着色剤を使用してもよい。一実施形態では、動物に投与される場合、本発明による化合物及び組成物、並びに薬学的に許容される担体は、無菌である。水は、本発明に従う化合物が静脈内に投与される場合、好ましい担体である。生理食塩水溶液及びデキストロース水溶液及びグリセロール水溶液も、液体担体として、特に注射用溶液に用いることができる。好適な薬学的担体には、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどの賦形剤も含まれる。所望な場合、本組成物はまた、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有することができる。
【0124】
投与形態の例としては、経口、局所、非経口、舌下、直腸、膣、眼、及び鼻腔内が挙げられるが、これらに限定されない。非経口投与には、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射又は注入技術が挙げられる。好ましくは、組成物は非経口投与される。
【0125】
本発明の薬学的組成物は、動物、好ましくはヒトへの組成物の投与時に、本発明による化合物が生物学的に利用可能であることを可能にするように製剤化することができる。組成物は、1つ以上の投薬単位の形態をとることができ、例えば、錠剤は、単一の投薬単位であることができ、本発明による化合物の容器は、液体又はエアロゾル形態で化合物を含有し得、単一又は複数の投薬単位を保持し得る。
【0126】
経口投与を意図する場合、組成物は、好ましくは固体又は液体の形態であり、半固体、半液体、懸濁液及びゲル形態は、本明細書において固体又は液体のいずれかとして考慮される形態内に含まれる。
【0127】
経口投与用の固体組成物として、組成物は、粉末、顆粒、圧縮錠剤、ピル、カプセル、チューインガム、ウエハーなどの形態で製剤化され得る。そのような固体組成物は、典型的には、1つ以上の不活性希釈剤を含有する。更に、以下のうちの1つ以上が存在し得る:カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、又はゼラチンなどの結合剤、デンプン、ラクトース、又はデキストリンなどの賦形剤、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、コーンスターチなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、コロイド状二酸化ケイ素などの滑沢剤、スクロース又はサッカリンなどの甘味剤、ペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ風味などの風味剤、及び着色剤。
【0128】
組成物がカプセルの形態(例えば、ゼラチンカプセル)である場合、それは、上記の種類の材料に加えて、ポリエチレングリコール、シクロデキストリン又は脂肪油などの液体担体を含有することができる。
【0129】
組成物は、液体の形態、例えば、エリキシル、シロップ、溶液、エマルション又は懸濁液であり得る。この液体は、経口投与又は注射による送達に有用であり得る。経口投与を意図する場合、組成物は、甘味剤、保存剤、染料/着色剤、及び風味増強剤のうちの1つ以上を含み得る。注射による投与のための組成物において、界面活性剤、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、緩衝剤、安定剤、及び等張剤のうちの1つ以上も含まれ得る。
【0130】
好ましい投与経路は、非経口投与であり、これには、皮内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与、鼻腔内投与、硬膜外投与、脳内投与、脳室内投与、くも膜下腔内投与、膣内投与、又は経皮投与が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい投与方法は、施術者の裁量に任されており、一部には、病状の部位(がんの部位など)に依存する。より好ましい実施形態では、本発明による化合物は、静脈内投与される。最大24時間の注入時間が使用されるのに好ましく、より好ましくは1~12時間であり、1~6時間が最も好ましい。注入時間は24時間であってもよい。更なる注入時間には、1、2、3、4、5又は6時間が含まれる。注入時間は3時間であってもよい。病院で一晩滞在することなく治療を行うことができる短い注入時間が特に望ましい。しかしながら、注入は、12~24時間、又は必要に応じて更に長い時間であってもよい。注入は、例えば、1~4週間の好適な間隔で行ってよい。
【0131】
溶液、懸濁液、又は他の同様の形態であるかどうかにかかわらず、本発明の液体組成物はまた、以下のうちの1つ以上を含むことができる:注射用水などの無菌希釈剤、生理食塩水溶液、好ましくは生理食塩水、リンガー溶液、等張ナトリウム塩化物、合成モノ若しくはジグリセリド、ポリエチレングリコール、グリセリン、若しくは他の溶媒などの固定油、ベンジルアルコール若しくはメチルパラベンなどの抗菌剤、及び塩化ナトリウム若しくはデキストロースなど等張の調整のための薬剤。非経口組成物は、ガラス、プラスチック、又は他の材料で作られたアンプル、使い捨てシリンジ、又は多用量バイアルに封入され得る。生理食塩水が好ましいアジュバントである。
【0132】
典型的には、この量は、少なくとも約0.01%の本発明の化合物であり、組成物の少なくとも80重量%を構成し得る。経口投与を意図する場合、この量は、組成物の約0.1重量%~約80重量%の範囲で変化させることができる。好ましい経口組成物は、組成物の重量に対して、約4%~約50%の本発明の化合物を含み得る。
【0133】
非経口投薬単位が、約0.01重量%~約10重量%の本発明の化合物を含有するように、本発明の好ましい組成物を調製する。より好ましい非経口投薬単位は、約0.5重量%~約5重量%の本発明の化合物を含有する。
【0134】
本発明の化合物は、任意の好都合な経路により、例えば、注入又はボーラス注射により、上皮又は粘膜皮膚ライニングを介した吸収により投与され得る。
【0135】
特定の実施形態では、治療を必要とする領域に、本発明の1つ以上の化合物、又は組成物を局所的に投与することが望ましい場合がある。一実施形態では、投与は、がん、腫瘍、又は腫瘍性若しくは前腫瘍性組織の部位(又は以前の部位)での直接注射によるものであり得る。
【0136】
肺投与も、例えば、吸入器又はネブライザーの使用、及びエアロゾル化剤を含む製剤の使用、又はフルオロカーボン若しくは合成肺表面活性剤中の灌流を介して用いることができる。ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、トリグリセリドなどの従来の結合剤及び担体とともに、坐剤として製剤化することができる。
【0137】
本組成物は、溶液、懸濁剤、エマルション、錠剤、丸剤、ペレット、カプセル剤、液体を含有するカプセル剤、粉末剤、徐放性製剤、坐剤、エマルション、エアロゾル剤、スプレー剤、懸濁剤、又は使用に好適な任意の他の形態の形態をとることができる。好適な薬学的担体の他の例は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0138】
薬学的組成物は、薬学的分野で周知の方法論を使用して調製することができる。例えば、注射によって投与されることが意図される組成物は、溶液を形成するように、本発明の化合物を水、又はリン酸緩衝生理食塩水などの他の生理学的に好適な希釈剤と組み合わせることによって調製され得る。界面活性剤を添加して、均質な溶液又は懸濁液の形成を容易にすることができる。
【0139】
本発明による好ましい組成物には、以下が含まれる:
●本発明の化合物及び二糖を含む薬学的組成物。特に好ましい二糖は、ラクトース、トレハロース、スクロース、マルトース、イソマルトース、セロビオース、イソサッカロース、イソトレハロース、トゥラノース、メリビオース、ゲンチオビオース、及びそれらの混合物から選択される。
●本発明の化合物及び二糖を含む凍結乾燥された薬学的組成物。特に好ましい二糖は、ラクトース、トレハロース、スクロース、マルトース、イソマルトース、セロビオース、イソサッカロース、イソトレハロース、トゥラノース、メリビオース、ゲンチオビオース、及びそれらの混合物から選択される。
【0140】
本発明の実施形態における活性物質対二糖の比は、二糖の溶解度に従って決定され、製剤が凍結乾燥されるときには、二糖の凍結乾燥性に従っても決定される。この活性物質:二糖比(w/w)は、いくつかの実施形態では約1:10、他の実施形態では約1:20、更に他の実施形態では約1:50であり得ることが想定される。他の実施形態は、約1:5~約1:500の範囲のそのような比率を有し、なお更なる実施形態は、約1:10~約1:500の範囲のそのような比率を有することが想定される。
【0141】
本発明の化合物を含む組成物は、凍結乾燥され得る。本発明の化合物を含む組成物は、通常、そのような化合物の特定の量を含むバイアルに提示される。
【0142】
本発明による化合物は、がんの治療として手術を受けた動物に投与することができる。本発明の一実施形態では、追加の治療法は、放射線療法である。本発明の具体的な実施形態では、本発明による化合物は、放射線療法と同時に投与される。別の具体的な実施形態では、放射線療法は、本発明の化合物の投与の前又は後に、好ましくは、本発明の化合物若しくは組成物の投与の前又は後に、少なくとも1時間、3時間、5時間、12時間、1日、1週間、1ヶ月、より好ましくは数ヶ月(例えば、最大3ヶ月)投与される。
【0143】
治療されるがんの種類に応じて、任意の放射線療法プロトコルを使用することができる。例えば、限定するものではないが、X線放射を照射することができ、特に、高エネルギーメガ電圧(1MeVを超えるエネルギーの放射線)を深部腫瘍に使用することができ、電子ビーム及び直交電圧X線放射を皮膚がんに使用することができる。ラジウム、コバルト、及び他の元素の放射性同位体などのガンマ線放出放射性同位体も投与され得る。
【0144】
本発明の化合物及び本発明の組成物は、特定の種類のがんの治療に特に有効であることが見出された。
【0145】
したがって、本発明による化合物及び組成物は、腫瘍細胞若しくはがん細胞の倍加若しくは増殖を阻害するため、又は動物、好ましくはヒトにおけるがんを治療するために有用である。
【0146】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって更に説明される。
【実施例】
【0147】
PM14は、WO2018/197663(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の教示に従って得ることができる。
【0148】
実施例1:RXF 393及びCaki-1インビトロアッセイにおける腎がん活性
細胞株及び細胞培養:この実施例では、以下のヒトがん細胞株が使用されている(コレクションコード及び原発組織を括弧内に示す)。
-RXF 393(NCI)(腎がん)
-Caki-1(ATCC HTB-46)(腎明細胞がん)
【0149】
細胞株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)又は米国国立がん研究所(NCI)から得た。細胞を適切な培養培地、すなわち、
-RXF 393用のRPMI
-Caki-1用のMcCoy’s 5A中で維持した。
【0150】
全ての培地に、10%のFBS、2mMのL-グルタミン、及び100ユニット/mLのペニシリン-ストレプトマイシンを補充した。
【0151】
細胞生存率アッセイ:化合物の抗増殖活性を評価するために、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)還元に基づく比色アッセイを使用した。MTTは、機能的なミトコンドリアによって紫色のホルマザンに還元されるテトラゾリウム塩であるため、紫色の強度は生細胞の量に比例する。細胞株に応じてウェル当たり5,000~15,000個の細胞の範囲のアッセイにおける最終細胞密度に到達するために、適切な数の細胞を96ウェルプレートに播種し、5%CO2及び98%の湿度で、37℃で24時間培養培地中に静置させた。次に、培養培地中の化合物又はDMSOを添加して、200μLの最終容量と、1%(v/v)のDMSO中の0.1μg/mL(ドキソルビシンの場合は10μg/mL)から始まる10回の連続2/5希釈をカバーする範囲内の意図された化合物濃度とに達した。この時点で、以下に記載されるように、1%(v/v)のDMSOで処理された一組の「タイムゼロ制御プレート」をMTTで処理した。残りのプレートを、前述の環境条件下で72時間にわたってインキュベートした。その後、培養培地中の50μLの1mg/mL MTT溶液をウェルに添加し、37℃で6~8時間インキュベートして、ホルマザン結晶を生成した。次いで、培養培地を除去し、100μLの純粋なDMSOを各ウェルに添加して、ホルマザン生成物を有色溶液に溶解させ、その540nmでの吸光度を、PolarStar Omegaマイクロプレートマルチラベルリーダー(BMG Labtech,Ortenberg,Germany)で最終的に測定した。
【0152】
全ての評価を3回で実施し、得られたデータを、米国国立がん研究所(NCI)によって開発されたアルゴリズム(Boyd MR and Paull KD(1995)Drug Dev.Res.34:91-104)に従って、Prism v5.0ソフトウェア(GraphPad Software,La Jolla,CA,USA)を用いて4パラメータロジスティック曲線に非線形回帰によってフィッティングさせた。そのようなアルゴリズムは、化合物効果を定義する3つのパラメータ:GI
50(対照培養物と比較して細胞増殖阻害の50%を生成する化合物濃度)、TGI(対照培養物と比較して全細胞増殖阻害、すなわち細胞増殖抑制効果を引き起こす化合物濃度)、及びLC
50(正味細胞殺傷細胞傷害効果の50%を生じる化合物濃度)の計算を可能にする。簡単に言えば、「Tz」が時間ゼロでの細胞数であり、「C」がDMSO処理された対照ウェル中の72時間後の細胞数であり、「T」が試験ウェル中の72時間後の細胞数である場合、2つの異なるシナリオが考慮され得る:
1.Tz<T<C(すなわち、効果又は増殖阻害なし)の場合、細胞生存は以下のように定義される:
【数1】
2.T<Tz(すなわち、正味の細胞殺傷)の場合、細胞生存は以下のように定義される:
【数2】
【0153】
GI50は、最終的に参照値として使用される。ここに提示される結果は、少なくとも3回の独立した実験で得られたGI50の幾何平均に対応し、それらの各々は、全ての腫瘍細胞株における全ての化合物に対して3回実施された。幾何平均の有意な(約70%)信頼区間を定義するには、その値に、対応する幾何標準偏差(GSD)を掛けて除算する必要があり、これも計算された。GSDが4を超えると、反復間で外れ値が同定され、人為的なバイアスを防ぐためにそれらの値を無視して平均GI50が再計算された。
【0154】
結果:RXF 393及びCaki-1についてのGI
50値を以下で表1に示し、一方、GSD値を以下で表2に示す。
【表1】
【表2】
【0155】
実施例2:RXF 486L及びRXF 1781Lインビトロアッセイにおける腎がん活性
化合物の取り扱い:PM14(Pharma Mar)を粉末として供給し、-80℃で凍結出荷し、-20℃で保存した。
【0156】
PM14の作業ストック溶液をDMSO中で1.042mMの濃度で調製し、少量アリコートをー20℃で保存した。実験の各日に、作業ストック溶液の凍結アリコートを解凍し、処置前及び処置中に室温で保存した。
【0157】
その後の希釈は、完全なRPMI1640細胞培養培地を用いて行った。DMSOストック溶液を、最初に1:22で希釈した(4.5%(v/v)DMSOに対応)。この溶液から、中間希釈プレートを使用して、細胞培養培地を用いたハーフログ(half-log)段階での連続希釈を行った。最後に、中間希釈プレートから採取した10μlを、細胞培養プレートの140μl/ウェルに移した。したがって、最高試験濃度で、DMSOストックを、アッセイにおける0.3%(v/v)の最大DMSO濃度に対応する1:330に希釈した。
【0158】
細胞株及び細胞培養:非PDX由来の細胞株は、NCI(Bethesda,MD)によって提供されたか、又はATCC(Rockville,MD)若しくはDSMZ(Braunschweig,Germany)から購入したかのいずれかである。この実施例では、以下のヒトがん細胞株が使用されている:
-RXF 486L(副腎腫、低分化型)
-RXF 1781L(副腎腫、低分化型)
【0159】
細胞株を週に1回又は2回定期的に継代させ、最大20回の継代にわたって培養中に維持した。全ての細胞を、10%(v/v)のウシ胎児血清(Sigma,Taufkirchen,Germany)及び0.1mg/mLのゲンタマイシン(Life Technologies,Karlsruhe,Germany)を補充した、RPMI 1640培地(L-グルタミンを含む25mM HEPES、#FG1385、Biochrom,Berlin,Germany)中で、5%のCO2の加湿雰囲気で37℃で増殖させた。
【0160】
細胞増殖アッセイ:修飾ヨウ化プロピジウム(PI)ベースの単層アッセイを使用して、化合物の抗がん活性を評価した(Dengler WA,Schulte J,Berger DP,Mertelsmann R,Fiebig HH,Anti-Cancer Drugs 1995,6:522-532)。簡潔に述べると、細胞を指数増殖期培養物から採取し、細胞株の増殖速度に応じて、4,000~30,000個細胞/ウェルの細胞密度で、計数して、96ウェル平底マイクロタイタープレートに播種した。24時間の回復期の後、細胞が指数関数的増殖を再開することを可能にするために、10μlの培養培地(4つの対照ウェル/細胞株/プレート)又は試験化合物を含む培養培地を添加した。PM14を、10種の濃度で、ハーフログ増分で、3.16μMまで2連で適用し、処置を4日間継続した。4日間の処置の後、次に、細胞を200μlのPBSで洗浄して、死んだ細胞及び破片を除去し、次に、7μg/mlのヨウ化プロピジウム(PI)及び0.1%(v/v)のTriton X-100を含む溶液を200μl添加した。室温で1~2時間のインキュベーション期間の後、蛍光(FU)を、Enspireマルチモードプレートリーダー(励起λ=530nm、放出λ=620nm)を使用して測定して、付着した生存細胞の量を定量した。
【0161】
IC50及びIC70値を、Oncotest Warehouse Softwareを使用して、4パラメータ非線形曲線適合によって計算した。平均IC50値の計算には、幾何平均を使用した。
【0162】
結果:RXF 486L及びRXF 1781LのIC
50値を以下で表3に示し、一方、RXF 486L及びRXF 1781LのIC
70値を以下で表4に示す。
【表3】
【表4】
【0163】
実施例3:MRIーH-121マウス異種移植試験における腎がん活性
化合物:灰白色の凍結乾燥PM14ケーキのバイアルをー20℃で保存した。ケーキを注射用水(Sigma-Aldrich,Co)2mlで0.5mg/mlの濃度に再構成した。更なる希釈は、注射用5%グルコース溶液/USP(Baxter,Inc.)で行った。透明なPM14溶液を得た。
【0164】
プラセボ:白色から灰白色の凍結乾燥プラセボケーキ(組成:スクロース200mg、乳酸5.52mg、水酸化ナトリウム1.28mg)のバイアルを5℃で保存した。ケーキを注射用水(Sigma-Aldrich,Co)1.5mlで再構成した。更なる希釈は、注射用5%グルコース溶液/USP(Baxter,Inc.)で行い、透明な溶液を得た。
【0165】
動物:4~6週齢の雌無胸腺nu/nuマウスを、Envigo(Barcelona,Spain)から購入した。
【0166】
動物を、個々に換気されたケージ(Sealsafe(登録商標)Plus、Techniplast S.P.A.)に収容した:1ケージ当たり10匹のマウスを、21~23℃及び40~60%の湿度で12時間の明暗サイクル。
【0167】
マウスに、照射された標準げっ歯類食(Tecklad 2914C)及び滅菌水に自由に接近できるようにさせた。動物を5日間馴化させた後、個々のタトゥーが識別された。
【0168】
動物プロトコルは、地域の動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committees)に従って審査及び承認された。
【0169】
腫瘍ライン:MRI-H-121は、元々DCT腫瘍バンクから得られたヒト腎がん腫瘍株である。A.E.Bogden博士、Mason Research Institute MAによって開発され、無胸腺ヌードマウスにおける連続移植腫瘍株として維持された。元々の組織は、マサチューセッツ大学医学センターの患者に由来した。
【0170】
試験群:簡潔に述べると、4~6週齢の雌の無胸腺nu/nuマウスに、連続移植されたドナーマウスからのMRI-H-121組織を皮下に移植した。腫瘍をドナー動物から除去し、断片(3mm3)に切断した。組織を膜、出血及び壊死領域から切除し、Matrigel(商標)(Corning Incorporated Life Sciences)に配置し、皮下に移植した。イソフルランの吸入によってレシピエントマウスに麻酔し、背中の皮膚への小さな切開を行って、マウスごとに1つの腫瘍断片をピンセットで移植した。マウスを毎日監視した。
【0171】
担腫瘍動物を、2つの群(N=10匹/群):1.25mg/kgで投与されるPM14及びプラセボに無作為に割り当てた。全ての処置は、3週間連続して(0日目、7日目、及び14日目)、1週間に1回静脈内投与された。
【0172】
腫瘍測定値は、デジタルキャリパー(Fowler Sylvac、S235PAT)を使用して決定した。長楕円体の体積を計算するための式を使用して、二次元腫瘍測定値から腫瘍体積(mm3)を推定した。
腫瘍体積(mm3)=(a・b2)/2。
【0173】
式中、a:腫瘍のmm単位での長さ(最長直径)及びb:幅(最短直径)。
【0174】
腫瘍体積及び動物体重を、処置初日から週2~3回測定した。
【0175】
処置忍容性は、体重の進展、全身毒性の臨床的徴候、及び注射部位における局所損傷の証拠を監視することによって評価した。
【0176】
20%超の致死率及び/又は20%の正味体重減少をもたらす処置は、毒性とみなされた。動物を、その腫瘍が約2,000mm3に達したとき、及び/又は重度の壊死が見られたときに安楽死させた。
【0177】
腫瘍が約190mm3に達すると、担腫瘍動物を以下の実験群(N=10匹/群)に無作為に割り当てた:
1.プラセボ
2.PM14(1.25mg/kg)
【0178】
処置は、0日目に開始され、3週間連続して(0、7、及び14日目)、週に1回静脈内投与された。
【0179】
第1、第2、第3、第4及び第5週後の群からの腫瘍体積データを、両側マン・ホイットニーU検定を使用して比較した。データは、中央値及び四分位範囲(IQR)として提示される。
【0180】
完全腫瘍退縮(CR)は、2回以上の連続した測定について腫瘍体積が63mm3未満である場合に定義した。群間の生存の統計的差異を、ログランク検定を適用するカプランマイヤー曲線によって評価した。
【0181】
統計的分析及びグラフは、GraphPad Prism、バージョン5.02(GraphPad Software Inc.,San Diego,USA)及びNewLab Oncology Software(バージョン2.25.06.00)を使用して実施した。
【0182】
結果:死亡例は記録されなかった。PM14は、MRIーH-121担腫瘍動物によって十分に忍容性されたが、可逆的な平均体重減少(約-15.0%)を16日目に記録したことは重要であった(
図1)。全身毒性の他の臨床的徴候は見られなかった。
【0183】
腫瘍が約190mm3の体積に達した0日目に処置を開始した。
【0184】
プラセボ群の動物を、腫瘍体積(>2,000mm3)及び/又は9日目~30日目の腫瘍壊死のために安楽死処分した。この実験では、MRI-H-121腫瘍は、3.2日の倍加時間を有した。
【0185】
腫瘍増殖曲線を
図1及び
図2に示す。PM14は、MRI-H-121腫瘍異種移植片において非常に強い抗腫瘍活性を示した。プラセボ処置群は、7日目及び14日目に、それぞれ1147(956.4~1468)及び1727(1228~1955)mm
3の中央値(IQR)腫瘍体積を有した。7日目、14日目、21日目、28日目及び35日目に、PM14処置動物は、それぞれ、401.2(374.1~450.0)、472.7(412.0~597.2)、743.8(550.1~940.6)、1392(1069~2085)及び2015(1574~2161)mm
3の中央値(IQR)腫瘍体積を有した。プラセボと比較して、PM14処置動物は、以下の表5に示されるように、安楽死されたプラセボ処置群での最後の測定時間である、7日目から14日目までの高い、統計的に有意な腫瘍減少を経験した。
【0186】
PM14処置群の生存期間は、32.5日であった。以下の表6及び
図3に示すように、PM14処置は、プラセボと比較して生存期間を統計的に有意に増加させた(生存期間中央値13日);p=0.0001)。
【表5】
【表6】
【0187】
結論として、PM14は、MRI-H-121異種移植腫瘍を担持する無胸腺マウスにおいて良好な忍容性プロファイリングを示した。
【0188】
プラセボと比較して、MRI-H-121異種移植片を担持するマウスのPM14処置は、腫瘍体積の高い統計的に有意な減少(p<0.0007)、並びにPM14処置された動物の生存期間の高い統計的に有意な増加(p=0.0001)をもたらした。
【0189】
実施例4:MEXF 276L、MEXL 462NL、及びMEXL 1341Lインビトロアッセイにおける黒色腫活性
IC50値は、実施例2に記載されるように決定されたが、以下のヒトがん細胞株を使用して決定された:
-MEXF 276L(黒色腫)
-MEXF 462NL(黒色腫)
-MEXF 1341L(黒色腫)
【0190】
結果:MEXF 276L、MEXL 462NL、及びMEXL 1341LについてのIC
50値を以下の表7に示し、一方MEXF 276L、MEXL 462NL、及びMEXL 1341LについてのIC
70値を以下の表8に示す。
【表7】
【表8】
【0191】
実施例5:WM-266-4のインビトロアッセイにおける黒色腫活性
GI50値は、実施例1に記載されるように決定されたが、以下のヒトがん細胞株を使用して決定された:
-WM-266-4(ATCC(登録商標)CRL-1676)(黒色腫)
【0192】
細胞株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から得た。細胞を、10%ウシ胎児血清、1%ペニシリン及びストレプトマイシン、並びに2mMのL-グルタミンを補充したMEM培地培養培地中で維持した。細胞を37℃及び5% CO2で培養し、常に低継代状態で維持した。
【0193】
結果:WM-266-4のGI
50値を以下で表9に示す。
【表9】
【0194】
実施例6:異なる用量及び注入速度でのPM14の薬物動態のシミュレーション
異なる用量及び注入速度でのPM14の薬物動態のシミュレーションを、
図7に示す。D1シミュレーション(lhs)は、24時間の注入で4.5mg/m
2をシミュレートする。D1-3シミュレーション(rhs)は、3時間の注入で×3 1.5mg/m
2をシミュレートする。D1-3スケジュールは、100nMの濃度を超えることなく、半減期の延長をシミュレートする。
【0195】
実施例7:進行性固形腫瘍を有する患者に静脈内投与されたPM14の第I相、非盲検、用量漸増、臨床及び薬物動態試験。
主要試験目的
-用量漸増期:用量制限毒性(DLT)を特定し、進行性固形腫瘍を有する患者に、2日(1日目及び8日目)に、又は1日目にのみ、両方とも3週間ごと(q3wk)に3時間にわたって静脈内(i.v.)投与されるPM14の最大耐量(MTD)及び推奨用量(RD)を決定する。
【0196】
副次的試験目的
-進行性固形腫瘍を有する患者に1日目及び8日目又は1日目にi.v.投与されるPM14(両方とも3時間にわたってq3wk)の安全性及び忍容性を評価すること。
-PM14の薬物動態(PK)を決定すること。
-主要なPKパラメータにおける個々のばらつきを説明し得るPM14の体内動態(分布、代謝及び排泄)に関連する遺伝子におけるPGt多型の有無によって、生殖細胞系DNAにおけるファーマコゲノミクス(PGt)を評価すること。
-PM14で治療された患者の腫瘍組織試料及び循環腫瘍DNA(ctDNA)における探索的ファーマコゲノミクス(PGx)分析を実施すること。
-用量漸増期:PM14の抗腫瘍活性の情報を得ること。
【0197】
試験デザイン
古典的な3+3設計に続いて連続再評価法(CRM)を使用した、ヒト初回投与非盲検用量探索第I相試験(以下の用量漸増スケジュールを参照されたい)。
【0198】
患者は、少なくとも3人又は6人の患者のコホートに含まれ、1日目及び8日目のスケジュールで0.25mg/m2から開始して、連続的に増加する用量レベルでPM14を投与される。1日目のスケジュールでは、開始用量は4.5mg/m2である。
【0199】
用量漸増は、1つの用量レベルで含まれるDLTについて完全に評価可能な全ての患者が最初のサイクル(すなわち、3週間)を完了した後にのみ進行する。
【0200】
観察された毒性及び薬物動態の結果に応じて、治験依頼者、独立モニタリング委員会(IMC)及び治験責任医師の間の合意の後、適切であると考えられる場合、他の注入期間及び/又はスケジュールを検討してもよい。
【0201】
患者は、進行、許容できない毒性、同意の撤回、又はそれが患者にとって最善の利益とみなされる間はPM14の投与を受ける。放射線学的腫瘍評価(及び必要に応じて血清腫瘍マーカー)は、治療開始からサイクル6まで2サイクルごとに、その後、治療中に3サイクルごとに行う。治療中止後、患者は、毒性が観察される場合、全ての毒性の消失又は安定化まで追跡される。無増悪で治療を中止した患者は、疾患進行、他の抗腫瘍療法の開始、死亡、又は試験終了日(臨床的カットオフ:最後の患者[最後の患者-最後の来院]の治療中止から6ヶ月後、又は最後の評価可能な患者の発生から9ヶ月後のいずれか早い方)のいずれか早いものまで3ヶ月ごとに追跡される。疾患進行後又は新しい療法の開始後、患者は、死亡又は試験終了日のいずれか早い方まで3ヶ月(±2週間)ごとに生存について追跡される(電話による連絡は許容される)。
【0202】
抗腫瘍応答は、必要に応じて、RECIST v.1.1及び/又は血清腫瘍マーカーを使用して評価される(上記参照)。
【0203】
組み入れ基準:
1.任意の特定の試験処置の前に取得された書面によるインフォームドコンセント(IC)に自発的に署名し、日付が付けられていること。
2.年齢≧18歳であること。
3.米国東海岸がん臨床試験グループ(Eastern Cooperative Oncology Group)(ECOG)作成のパフォーマンスステータス(PS)が≦1であること。
4.用量漸増期については:患者が治癒的標準療法が存在しない進行性固形腫瘍の病理学的に確認された診断を有すること。
5.≧3ヶ月の平均余命であること。
6.RECIST v.1.1に従って測定可能又は測定不可能な疾患を有する患者が、用量漸増期中に適格である。
7.国立がん研究所有害事象共通用語規準(National Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events(NCI-CTCAE v.4))に従って、脱毛症及びグレード1/2の無力症又は倦怠感を除く、以前の治療の薬物関連有害事象(AE)から≦1のグレードに回復していること。
8.初回注入前7日以内の検査値:
a)絶対好中球数(ANC)≧1.5×109/L、血小板数≧100×109/L、及びヘモグロビン≧9g/dL(患者は、臨床的に示唆されるように、試験参加前に貧血のために輸血されてもよい)。
b)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)及びアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)≦基準値上限(ULN)の3倍。
c)総ビリルビン≦ULN(ギルバート症候群を有する患者の場合は、ULNの最大1.5倍)。
d)30mL/分以上のクレアチニンクリアランス(コッククロフト・ゴールトの式を使用して計算される)。
e)血清アルブミン≧3g/dL。
9.ウォッシュアウト期間:
a)最後の化学療法から少なくとも3週間(療法にニトロソウレア又は全身マイトマイシンCが含まれている場合は6週間)経過していること。
b)最後のモノクローナル抗体(MAb)含有療法又は根治的放射線療法(RT)から少なくとも4週間経過していること。
c)最後の生物学的/治験中の単剤療法(MAbを除く)及び/又は緩和的RT(≦10回又は≦30Gy総線量)から少なくとも2週間経過していること。
d)ホルモン療法中にホルモン感受性乳がんが進行している患者(閉経前女性の黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)類似体又は酢酸メゲストロールを除く)では、他の全てのホルモン療法は、治験治療開始の少なくとも1週間前に停止する必要があること。
e)去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)患者は、試験治療前及び試験治療中にホルモン治療を継続し得ること。
【0204】
除外基準:
1.併発疾患/状態:
a)心リスクの増加:
●最適な管理にもかかわらず制御されていない動脈性高血圧(≧160/100mmHg)。
●臨床的に関連する弁膜疾患の存在。
●QT延長症候群の病歴。
●心電図(ECG)によるスクリーニング時に補正QT時間(QTcF、Fridericia補正法)≧450ミリ秒であること。
●研究参加前の6ヶ月以内に、心筋梗塞、狭心症、冠動脈閉塞又は梗塞と一致する所見を伴う冠動脈造影又は心臓負荷試験を含む虚血性心疾患の病歴。
●マルチゲート収集スキャン(MUGA)又は心エコー法(ECHO)による心不全又は左心室機能不全(正常値を下回る左心室駆出分画[LVEF])の病歴。
●以下のいずれか:左束枝ブロック、左前半ブロックを伴う右束枝ブロック、第二(Mobitz II)又は第三度房室ブロックを含むECG異常。
●症候性不整脈(貧血関連の洞性頻拍グレード≦2を除く)又は継続的な治療を必要とする不整脈、及び/又は延長されたQT-QTcグレード≧2、又は不安定な心房細動の存在。治療中に安定した心房細動を有する患者は、他の心臓又は禁止された薬物除外基準を満たしていない場合に許可される。
●臨床的に有意な安静時徐脈(<50拍動/分)。
●PM14の投与を開始する前に中止又は代替薬に切り替えることができない、トルサード・ド・ポワントを誘発するリスクのある併用薬の服用。
●心臓ペースメーカの使用。
b)全身治療を必要とする活動性感染症。
c)既知のヒト免疫不全ウイルス(HIV)又は既知のC型肝炎ウイルス(HCV)感染若しくは活動性B型肝炎。
d)治験責任医師の判断では、患者の本試験への参加に関連するリスクを実質的に増加させるその他の主要な疾患(例えば、COVID-19)。
2.症候性、高用量ステロイドを必要とする、及び進行性中枢神経系(CNS)疾患。除外は、(i)組み込まれる少なくとも4週間前に放射線療法を完了した患者(組み込まれる2週間以内に既に漸減されている過程でステロイドを服用している無症候性の進行していない患者)、及び(ii)放射線療法又はステロイドを必要としない無症候性の脳転移を有する患者に対して行われる。
3.臨床的安定性とは関係なく、がん性髄膜炎を有する患者。
4.以前の骨髄若しくは幹細胞移植、又は骨髄の35%を超える部分に対する放射線療法。
5.試験治療開始前の6ヶ月以内のトラベクテジン又はルルビネクテジン(PM01183)による前治療。
6.医薬品の成分のいずれかに対する既知の過敏症。
7.治療に準拠する、又はプロトコル手順に従う患者の能力の制限。
8.妊娠中又は授乳中の女性。
妊娠可能な女性(WOCBP)は、試験治療中及び最後の注入後少なくとも6ヶ月間、妊娠を避けるために有効な避妊方法を使用することに同意しなければならない。生殖能力のある男性患者は、子供の父親となったり、精子を提供したりすることを控え、治療中及び最後の注入後4ヶ月間有効な避妊方法を使用することに同意しなければならない。生殖能力のある男性患者のパートナーであるWOCBPは、患者の治療中及び最後の注入後4ヶ月間、有効な避妊方法を使用しなければならない。
【0205】
予想される患者数
患者数は、PM14に対する忍容性、並びにMTD及びRDを識別するために必要な用量レベルの数の両方に依存して変化してもよい。3つの医療センターで用量漸増期中に約50人の患者が募集されると予想される。
【0206】
方法
進行性固形腫瘍、適切な臓器機能、及び0~1のECOG PSスコアを有するヒト患者(pt)において、3週間ごとに3時間の注入(q3wk)として投与されるPM14の非盲検用量漸増型第I相試験。2つのスケジュールが検討された:スケジュールA(1日目[D1]、8日目[D8])及びスケジュールB(D1)。
【0207】
評価基準
主要エンドポイント:
用量漸増期:
MTD及びRDの決定:MTDは、評価可能な患者の3分の1以上がサイクル1でDLTを発症する用量漸増中に探索される最低用量レベルとなる。CRMを使用してRDを定義することができる。
【0208】
このプロトコルはヨーロッパの用語に従っているため、RDとMTDは同等ではない。
【0209】
副次的エンドポイント:
-安全性:患者は、PM14の少なくとも1回の部分的注入を受けた場合、安全性を評価することができる。AEは、NCI-CTCAE v.4に従ってグレード付けされる。更に、治療関連の中止及び治療コンプライアンス(用量減少、スキップされた用量及び/又はAEに起因する治療遅延)が記載される。
-薬物動態:PK分析は、標準的ノンコーパートメント解析によって血漿及び尿中で評価される(コンパートメントモデリングは、適切であれば実行されてもよい)。PM14のPK分析のための血漿試料は、全ての患者からサイクル1、及びCRMのステップD中に治療された患者からサイクル2でも得られる。更に、サイクル1及びサイクル2の1日目に生成された尿は、CRMのステップD中に処置された患者から収集される。
-薬理遺伝学:試験中の任意の時点で(好ましくはサイクル1の1日目の治療前PK試料と同時に)収集された単一の血液試料からのPM14の体内動態(分布、代謝及び排泄)に関連する遺伝子におけるPGt多型の有無を評価し、主要PKパラメータの個々の変動性を説明する。
-ファーマコゲノミクス:この探索的解析は、PGx試験のインフォームドコンセントフォーム(ICF)に署名した患者で実施される。DNA修復メカニズムに関与する、又はPM14の作用機序に関連する因子のmRNA又はタンパク質発現レベルは、診断又は再発時に得られた利用可能な腫瘍組織試料及び無細胞ctDNAから評価される。必要であれば、それらの突然変異状態も分析されてもよい。治療後の臨床反応及び転帰との相関を評価する。
-有効性:患者がPM14の少なくとも1回の完全な注入を受け、RECIST v.1.1又は血清マーカーに従って少なくとも1回の臨床的又は放射線学的腫瘍評価を受けている場合、又は治療が不成功と考えられる場合、患者は有効性について評価可能である。治療不成功は、任意の適切な腫瘍評価が実施される前に、臨床的悪化、PDに起因する死亡、又は任意の治療関連の毒性に起因する治療中止として定義される。
【0210】
抗腫瘍活性は、サイクル6までの評価可能な疾患を有する全ての患者において、治療開始後2サイクル(±1週間)ごとに、RECIST v.1.1及び/又は血清マーカーに従って評価される。サイクル6の後に治療を継続する患者は、別段の臨床的適応がない限り、治療中に3サイクル(±1週間)ごとに評価を受ける。全ての画像の匿名化されたコピーは、治験依頼者に提出する必要がある。
【0211】
進行なしで治療を中止した患者は、疾患進行、他の抗腫瘍療法の開始、死亡、又は試験終了日(臨床的カットオフ)のいずれか早い方まで3ヶ月ごとに追跡する。疾患進行後又は新しい療法の開始後、患者は、死亡又は試験終了日のいずれか早い方まで3ヶ月(±2週間)ごとに生存について追跡される(電話による連絡は許容される)。
【0212】
有効性エンドポイントは、奏効率(PRを有する患者のパーセンテージ、CRを有する患者、又は両方の合計[ORR])、4ヶ月以上の安定(stable disease(SD))を有する患者のパーセンテージ、臨床的有益性を有する患者のパーセンテージ(ORR又はSD≧4ヶ月)、及び事象までの時間パラメータ(適切な場合)を含む。有効性エンドポイントは、副次的エンドポイントとする。
【0213】
用量制限毒性の定義
DLTは、治療の最初のサイクル中に発生し、以下に概説する基準の少なくとも1つを満たす、治験薬に関連するAE及び検査室の異常として定義される:
●グレード4の好中球減少症(ANC<0.5×109/L)が3日以上続く。
●任意の期間の発熱性好中球減少症又は好中球減少性敗血症。
●血小板輸血を必要とする出血を伴うグレード4の血小板減少症(血小板数<25×109/L)又はグレード3の血小板減少症。
●7日以上続くグレード4のALT若しくはASTの増加又はグレード3の増加。
●グレード≧2のALT若しくはASTの増加は、総ビリルビンの増加≧2.0×ULN及び正常なアルカリホスファターゼ(ALP)(すなわち、Hyの法則の基準を満たす)を伴う。
●治験薬に関連するその他のグレード3/4の非血液学的AE(以下を除く):
1)悪心/嘔吐(標準的な制吐薬治療を受けている場合を除く)。
2)グレード3の下痢が2日未満続く(標準的な治療を受けている場合を除く)。
3)1週間未満持続するグレード3の無力症。
4)過敏症反応。
5)血管外漏出。
6)非臨床的に関連する生化学的異常(例えば、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ[GGT]の散発的増加)。いずれの場合でも、臨床的関連性について議論する必要がある。
●サイクル1の治験薬に関連するAE(複数可)のため、1日目と8日目のスケジュールのみ、8日目の注入(治療期間+72時間)の投与に失敗。
●治験薬に関連するAE(複数可)のため、PM14の第2のサイクルの投与が14日を超えて遅延。
●次の状況について話し合い、最終的なコンセンサスを文書化する必要がある。
○発症が遅れた(すなわちサイクル1の終了後)DLT。
○治験薬に関連するAE(複数可)に起因する、意図された用量強度の非準拠、又は頻繁な用量遅延又は省略。
【0214】
患者の交代
用量漸増期:患者が主要目的の評価(MTD及びRDの決定)のために完全に評価可能でない場合、患者は交代されなければならない。
【0215】
中止、用量不足、遅延又は中断が毒性に起因する場合を除き、相の主要目的のための評価可能な患者は、少なくとも1つの完全なサイクルを受けており、サイクル1(3週間)中に適切に追跡されている必要がある。
【0216】
具体的には、次の場合に患者を交代させる必要がある:
-毒性(過敏症及び/又は血管外漏出反応を除く)以外の理由で、PM14サイクル(2回の注入スケジュールと2週間の休息のための1日目及び8日目の注入、又は1回の注入スケジュールの1日目、及び3週間の休息)を完了する前に、試験から撤退する場合。
-彼らが、以前にDLTを有していない限り、1回目の投与後3週間以内に禁止された併用薬物を投与されるか、又は他の治療処置(すなわち、大手術)を有する場合。
-サイクル1中に安全性に関する結論を得ることができないというプロトコル逸脱が存在する場合。
【0217】
治療継続の基準
患者は、許容できない毒性及び/又は疾患の進行が発生しない限り、PM14の追加のサイクルで治療され得る。治療継続のための基準は、表10及び表11に含まれる。
【0218】
これらの基準が各サイクルの対応する1日目に満たされない場合、新しいサイクルの投与を遅らせるべきである。パラメータは、少なくとも48時間後、又は必要に応じてそれ以上後に再評価される。新しいサイクルは、これらのパラメータの回復時にのみ常に開始される。薬物関連のAEからの回復には、最大14日間の遅延が許容される。この期間後に回復が起こらない場合、患者は、治験責任医師の基準及び要求に従い、治験依頼者の承認を得た場合を除き、治療を中止しなければならない。
【0219】
1日目と8日目のスケジュールのみ、いずれかのサイクルの8日目に治療継続基準が満たされていない場合、スケジュールされた8日目の注入は最大72時間保留され、この期間が経過しても基準が満たされていない場合、計画された8日目の注入はスキップされる。1日目に計画された注入のみを遅延させることができる。
【表10】
【0220】
投与をスキップされた患者の治療を継続するという決定は、ケースバイケースのアプローチで、治験責任医師と治験依頼者との間の合意後に評価される。
【表11】
【0221】
減量
DLT後の治療、14日を超える治療関連の注入遅延、又は治験責任医師が許容できないとみなす治療関連のAEは、客観的な患者の臨床的有益性の明確な証拠がある場合にのみ継続することができる。これについては、常に治験依頼者と話し合う。これらの状況下で、かつ常に事前に指定された再治療基準への回復に続いて、患者は、用量漸増中の前の注入中に投与された用量レベルのすぐ下の用量レベルで後続の注入を受ける(すなわち、ステップA、B及びC)。
【0222】
開始用量又は用量レベル2で用量減少が必要な場合、治験依頼者と治験責任医師との間で、治験継続及び影響を受けた患者に投与されるその後の用量についての決定が議論される。前述の状況のためにステップD中に用量減少を必要とする患者は、前の注入中に投与された用量レベルよりも20%低い用量レベルで後続の注入を受ける。
【0223】
患者ごとに最大2回の個々の用量減少が許可され、2回超の用量減少を必要とする患者は、治療を中止する。個々の患者の用量が減らされると、再漸増されることはない。
【0224】
結果
用量漸増試験の結果は、以下の通りである。
【0225】
患者背景
患者背景を以下の表12に要約する。
【表12】
【0226】
結果:37人の患者を処置した(スケジュールA/B:28/9人の患者)。患者のベースライン特性(A/B):年齢中央値56/47歳、男性57%/56%、ECOG PS 0:57%/56%、前治療ラインの中央値(範囲):3(1~8)/4(1~10)。最も一般的な腫瘍の種類(A+B):STS(n=7人の患者)、卵巣(n=6)、膵臓(n=4)、前立腺がん(n=3)。最大忍容用量は、Aについて4.5mg/m2であった(用量制限毒性[DLT]:再治療のための実験室パラメータの回復の欠如によるD8省略[n=2人の患者])及びBについて5.6mg/m2(DLT:G4発熱性好中球減少症[n=1]、G4トランスアミナーゼ増加[n=1])。
【0227】
推奨用量(RD)は、D1、D8で3.0mg/m
2(A)であり、D1で4.5mg/m
2(B)であった。RDにはDLTは存在しなかった。最も一般的な毒性は、血液学的異常及びトランスアミナーゼの増加であった。有効性結果を
図4A及び4Bに示し、一方、安全性結果を以下の表13及び14に示し、
図5A及び5Bに要約する。
【表13】
【表14】
【0228】
薬物動態
試験された用量(0.25~5.6mg/m
2)でPM14について線形薬物動態を観察し、幾何平均(CV%)総血漿クリアランス5.9L/時(88%)、分布体積128L(81%)、及び終末半減期中央値(範囲)15.9時間(7.5~34.3時間)を得た。投与された用量の1.6%未満が尿中で回収された。薬物動態データを、
図6A及び
図6Bに示す。
【0229】
用量漸増試験は、進行性固形腫瘍を有する患者における2つのPM14ケジュールのRDを決定した。RDでは、PM14は十分に忍容性があり、管理可能な安全性プロファイルを有している。最も一般的な関連有害事象は、一時的なトランスアミナーゼ増加、悪心/嘔吐、疲労及び好中球減少症である。いくつかの長期腫瘍安定化は、軟部組織肉腫、上皮性卵巣がん、結腸直腸がん及び副腎皮質がんを有する多くの前治療歴のある患者が含まれる患者で観察された。PM14のPKは、試験された用量の範囲で線形であり、肝除去率は低く、末梢組織への分布は中程度であり、16時間の半減期をもたらす。
【0230】
この試験は、以下を含む様々ながんに関して安定(stable disease(SD))を示す:SCLC;平滑筋肉腫及び脂肪肉腫を含むSTS;粘液様軟骨肉腫を含む骨肉腫;神経内分泌腫瘍;卵巣がん;乳がん;子宮内膜がん;前立腺がん、膵臓がん;腺様嚢胞がん;副腎皮質がん;並びに結腸直腸がん。
【0231】
全体として、本発明のデータは、PM14が、SCLC;STS及び骨肉腫を含む肉腫;平滑筋肉腫及び脂肪肉腫を含むSTS;軟骨肉腫を含む骨肉腫;無色素性黒色腫を含む黒色腫;神経内分泌腫瘍;卵巣がん;乳がん;子宮内膜がん;膵臓がん;腺様嚢胞がん;副腎皮質がん;腎がん、腎明細胞がん、副腎腫又は低分化型副腎腫を含む腎がん;並びに結腸直腸がんなどの様々ながんの治療に使用され得ることを実証した。
【0232】
別に、本発明はまた、がんの治療において有用な投薬レジメンを初めて特定した。これらの投薬レジメンは、管理可能な安全性プロファイルで忍容性が良好であると決定されている。ヒトにおける有効性の証拠もまた実証されている。がんは、非小細胞肺がん及び小細胞肺がんを含む肺がん;結腸がん;直腸がん;結腸直腸がん;乳がん;膵臓がん;軟部組織肉腫及び骨肉腫を含む肉腫;線維肉腫、平滑筋肉腫及び脂肪肉腫を含む軟部組織肉腫;軟骨肉腫、又は粘液様軟骨肉腫を含む骨肉腫;卵巣がん;前立腺がん;胃がん;腎がん、腎明細胞がん、副腎腫及び低分化型副腎腫を含む腎がん;無色素性黒色腫を含む黒色腫;神経内分泌腫瘍;子宮内膜がん;腺様嚢胞がん、並びに副腎皮質がんから選択されてもよい。
【0233】
したがって、本発明は、がんを治療するための新たな有効な選択肢を提供する。
【国際調査報告】