IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハミングバード ダイアグノスティクス ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2024-521124がん治療に対する応答を予測するMIRNA
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】がん治療に対する応答を予測するMIRNA
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6869 20180101AFI20240521BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240521BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240521BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240521BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240521BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240521BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20240521BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z ZNA
C12N15/113 Z
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P35/02
A61P11/00
A61K45/06
A61K39/395 N
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572035
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2022059970
(87)【国際公開番号】W WO2022242967
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】21174970.0
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21196432.5
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】523123307
【氏名又は名称】ハミングバード ダイアグノスティクス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Hummingbird Diagnostics GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラジャクマール,ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】スタインクラウス,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】イェン,ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】ホロス,ラスチスラフ
(72)【発明者】
【氏名】ズィコゼック,トビアス
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR42
4B063QR62
4B063QS10
4B063QS25
4B063QX01
4C084AA20
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZB072
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG08
(57)【要約】
本発明は、がんに罹患している患者の応答を予測する方法に関する。さらに、本発明は、がんに罹患している患者に生命予後を提供する方法に関する。さらに、本発明は、がんに罹患している患者を治療するか否かを決定する方法に関する。さらに、本発明は、免疫化学療法又は免疫療法のベネフィットを受けるがんに罹患している患者を選択する方法に関する。さらに、本発明は、これらの方法を実施するためのキットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんに罹患している患者のがん治療に対する応答を予測する方法であって、
がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含み、
該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する、
方法
【請求項2】
前記少なくとも1種のmiRNAが、
(i)配列番号1乃至配列番号8、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群、及び/又は
(ii)配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、配列番号39、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群、
から選択されるヌクレオチド配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種のmiRNAのレベルが、応答予測に関連するか、又は相関する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種のmiRNAのレベルが、前記少なくとも1種のmiRNAの参照レベルと比較される、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記参照レベルが、前記がん治療に非応答であるがんに罹患している被検体からの多数の参照血液サンプルを測定することによって経験的に決定される少なくとも1種のmiRNAのレベルである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記参照レベルより低い、配列番号1乃至配列番号23、配列番号25、配列番号26、配列番号28乃至配列番号35、配列番号37、配列番号39乃至配列番号42、配列号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する前記少なくとも1種のmiRNAのレベルは、前記患者が前記がん治療に応答することを示すか、又は
該参照レベルより高い、配列番号24、配列番号27、配列番号36、配列番号38、配列番号43、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する前記少なくとも1種のmiRNAのレベルは、前記患者が前記がん治療に応答することを示す、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記参照レベルが、前記がん治療に応答するがんに罹患した被検体からの多数の参照血液サンプルを測定することによって経験的に決定される前記少なくとも1種のmiRNAのレベルである、請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記参照レベルより高い、配列番号1乃至配列番号23、配列番号25、配列番号26、配列番号28乃至配列番号35、配列番号37、配列番号39乃至配列番号39乃至配列番号42、配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する前記少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者が前記治療に応答しないことを示すか、又は
前記参照レベルより低い、配列番号24、配列番号27、配列番号36、配列番号38、配列番号43、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する前記少なくとも1種のmi
RNAのレベルは、患者が前記治療に応答しないことを示す、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1種のmiRNAのレベルが、経験的に決定されたカットオフスコアと比較される、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記カットオフスコアが、1種以上の複数のmiRNAの加重和によって、好ましくは、配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、配列番号39、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択される1種以上のmiRNAの加重和によって、決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記カットオフスコアにより、前記患者を、がん治療に応答する患者として、又はがん治療に応答しない患者として分類することが可能になる、請求項9又は請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記がん治療が、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン療法、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び外科的療法からなる群から選択されるか、又はこれらの組み合わせである、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記がん治療が免疫療法である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記免疫療法が、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記がんが、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン療法、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び/又は外科的療法の対象であるがんである、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記がんが免疫療法の対象となる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記免疫療法の対象であるがんが、免疫チェックポイント阻害に感受性である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記免疫チェックポイント阻害が、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記がんが、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、上咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝臓がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパがん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択される、請求項1乃至請求項20のいずれか一項に
記載の方法。
【請求項22】
前記がんが、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、及び膀胱がんからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
がんに罹患している患者に生命予後を提供する方法であって、
がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含み、
該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する、
方法。
【請求項24】
前記少なくとも1種のmiRNAが、
(i)配列番号1乃至配列番号8、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群、及び/又は
(ii)配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、配列番号39、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群
から選択されるヌクレオチド配列を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1種のmiRNAのレベルが生命予後に関連するか、又は相関する、請求項23又は請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1種のmiRNAのレベルが、前記少なくとも1種のmiRNAの参照レベルと比較される、請求項23乃至請求項25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記参照レベルが、既知の不良な生命予後を有するがんに罹患している被検体からの多数の参照血液サンプルを測定することによって経験的に決定される前記少なくとも1種のmiRNAのレベルである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、
前記参照レベルより低い、配列番号1乃至配列番号23、配列番号25、配列番号26、配列番号28乃至配列番号35、配列番号37、配列番号39乃至配列番号42、配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する前記少なくとも1種のmiRNAのレベルが、患者が良好な生命予後を有することを示すか、又は
前記参照レベルより高い、配列番号24、配列番号27、配列番号36、配列番号38、配列番号43、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する前記少なくとも1種のmiRNAのレベルが、患者が良好な生命予後を有することを示す、
請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記参照レベルが、既知の良好な生命予後を有するがんに罹患している被検体からの多数の参照血液サンプルを測定することによって経験的に決定される、前記少なくとも1種のmiRNAのレベルである、請求項26乃至請求項28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、
前記参照レベルより高い、配列番号1乃至配列番号23、配列番号25、配列番号26、配列番号28乃至配列番号35、配列番号37、配列番号39乃至配列番号42、配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列
からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する前記少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者が不良な生命予後を有していることを示すか、又は
前記参照レベルよりも低い、配列番号24、配列番号27、配列番号36、配列番号38、配列番号43、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する前記少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者が不良な生命予後を有することを示す、
請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1種のmiRNAのレベルが、経験的に決定されたカットオフスコアと比較される、請求項23乃至請求項30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記カットオフスコアが、1種以上のmiRNAの加重和によって、好ましくは配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、配列番号39、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択される1種以上のmiRNAの加重和によって決定される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記カットオフスコアにより、良好な又は不良な生命予後を有するとして患者を分類することが可能になる、請求項31又は請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記良好な生命予後は、一定の期間生存する可能性/確率が高いことと関連しているか、又は前記不良な生命予後は、一定の期間生存する可能性/確率が低いことと関連している、請求項27乃至請求項33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記良好な予後を有する患者は、50%を超える、好ましくは60%を超える、より好ましくは70%を超える、さらにより好ましくは80%を超える、さらに一層より好ましくは90%を超える、又は最も好ましくは95%を超える、一定の期間生存する可能性/確率を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記低予後を有する患者は、50%以下、好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満、さらにより好ましくは20%未満、さらに一層より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満の一定の期間生存する可能性/確率を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記一定の期間が、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月(1年)、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、又は10年の期間である、請求項34乃至請求項36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記患者が、がん治療が施される予定である、施されている、又は施された患者である、請求項23乃至請求項37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記がん治療が、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン療法、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び外科的療法からなる群から選択されるか、又はそれらの組み合わせである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記がん治療が免疫療法である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記免疫療法が、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1、PD-L1、PD-L
2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記がんが、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン療法、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び/又は外科的療法の対象であるがんである、請求項23乃至請求項42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記がんが免疫療法の対象である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記免疫療法の対象であるがんが免疫チェックポイント阻害に感受性である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記免疫チェックポイント阻害が、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記がんが、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、上咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝臓がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパがん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択される、請求項23乃至請求項47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記がんが、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、及び膀胱がんからなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
患者のがん治療における副作用を予測する方法であって、
がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含み、
該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する、
方法。
【請求項51】
前記少なくとも1種のmiRNAが、
(i)配列番号1乃至配列番号8、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群、及び/又は
(ii)配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、配列番号39、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群
から選択されるヌクレオチド配列を有する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記少なくとも1種のmiRNAのレベルが、がん治療中に副作用が起こる確率と関連する、請求項50又は51に記載の方法。
【請求項53】
前記少なくとも1種のmiRNAのレベルが、経験的に決定されたカットオフスコアと比
較される、請求項50乃至請求項52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記カットオフスコアが、1種以上のmiRNAの加重和によって、好ましくは配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、配列番号39、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択される1種以上のmiRNAの加重和によって決定される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記カットオフスコアにより、前記患者を、副作用を患わない患者として、又は副作用を患う患者として分類することが可能になる、請求項53又は請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記副作用が免疫関連有害事象である、請求項50乃至請求項55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記副作用、好ましくは免疫関連有害事象が、内分泌障害、皮膚炎、大腸炎、リウマチ性多発筋症(PMR)、下垂体炎、筋炎、甲状腺炎、肺炎、多発性関節炎、肝炎、漿膜炎、甲状腺機能低下症、関節炎、サイノビアリタイド(synovialitides)、及び乾癬からなる群から選択される、請求項50乃至請求項56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記がん治療が、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン療法、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び外科的療法からなる群から選択されるか、又はそれらの組み合わせである、請求項50乃至請求項57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記がん治療が免疫療法である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記免疫療法が、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
がんに罹患している患者をモニタリングする方法であって、
がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含み、
該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、又はそれらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する、
方法。
【請求項63】
前記少なくとも1種のmiRNAが、
(i)配列番号1乃至配列番号8、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群、及び/又は
(ii)配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、配列番号39、それらの断片、及びそられに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群
から選択されるヌクレオチド配列を有する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記少なくとも1種のmiRNAのレベルが、前記少なくとも1種のmiRNAの参照レベルと比較される、請求項62又は63に記載の方法。
【請求項65】
前記参照レベルが、がんに罹患している被検体からの多数の参照血液サンプルを測定することによって経験的に決定される前記少なくとも1種のmiRNAのレベルである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記決定が、第1の時点におけるがんに罹患している患者の血液サンプル中、及びその後の時点における少なくとも1つのさらなる血液サンプル中の前記少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定し、異なる時点で決定された前記レベルを比較することを含む、請求項62乃至65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記患者が、前記がん治療を受けている、受けた、又は受けていた、請求項62乃至請求項66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記がんが、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン療法、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び/又は外科的療法の対象であるがんである、請求項62乃至請求項67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記がんが、免疫療法の対象である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記免疫療法の対象であるがんが、免疫チェックポイント阻害に感受性である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記免疫チェックポイント阻害が、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記がんが、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、上咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝臓がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパがん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択される、請求項62乃至請求項72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記がんが、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、及び膀胱がんからなる群から選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記血液サンプルが、全血又は血液画分である、請求項1乃至請求項74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
前記血液画分が、血球画分及び血漿又は血清からなる群から選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記血球画分が、白血球の画分である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記白血球が、骨髄細胞及び/又はリンパ球である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記骨髄細胞が、顆粒球、単球、マクロファージ、及び樹状細胞(DC)からなる群から選択されるか、又はそれらの組み合わせである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記レベルが、配列決定、好ましくは次世代配列決定、核酸ハイブリダイゼーション、核酸増幅、ポリメラーゼ伸長、質量分析法、又はそれらの任意の組み合わせによって決定される、請求項1乃至請求項79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記レベルが発現レベルである、請求項1乃至請求項80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
がんに罹患している患者を治療するか否かを決定する方法であって、
(i)請求項1乃至請求項22もしくは請求項75乃至請求項81のいずれか一項に記載の方法を実施することにより、該患者をがん治療に応答する患者として特定する工程、請求項23乃至請求項49もしくは請求項75乃至請求項81のいずれか一項に記載の方法を実施することにより、該患者を良好な生命予後を有する患者として特定する工程、又は請求項50乃至請求項61もしくは請求項75乃至請求項81のいずれか一項に記載の方法を実施することにより、該患者をがん治療における副作用に患わない患者として特定する工程、及び
(ii)該患者を(前記)がん治療に割り当てる工程
を含む、方法
【請求項83】
前記がん治療が、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン療法、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び外科的療法からなる群から選択されるか、又はそれらの組み合わせである、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記がん治療が免疫療法である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記免疫療法が、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
がんに罹患している患者のがん治療に対する応答を予測するための少なくとも1種のmiRNAの使用であって、
該少なくとも1種のmiRNAが、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する、
使用。
【請求項88】
がんに罹患している患者に生命予後を提供するための少なくとも1種のmiRNAの使用であって、
該少なくとも1種のmiRNAが、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する、
使用。
【請求項89】
患者のがん治療における副作用を予測するための少なくとも1種のmiRNAの使用であって、
該少なくとも1種のmiRNAが、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそ
れらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する、
使用。
【請求項90】
がんに罹患している患者をモニタリングするための少なくとも1種のmiRNAの使用であって、
該少なくとも1種のmiRNAが、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する、
使用。
【請求項91】
がんに罹患している患者を治療するか否かを決定するための少なくとも1種のmiRNAの使用であって、
該少なくとも1種のmiRNAが、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する、
使用
【請求項92】
前記がんが、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン療法、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び/又は外科的療法の対象であるがんである、請求項87乃至請求項91のいずれか一項に記載の使用。
【請求項93】
前記がんが免疫療法の対象である、請求項92に記載の使用。
【請求項94】
前記免疫療法の対象であるがんが、免疫チェックポイント阻害に感受性である、請求項93に記載の使用。
【請求項95】
前記免疫チェックポイント阻害が、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う、請求項94に記載の使用。
【請求項96】
前記少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤が、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される、請求項95に記載の使用。
【請求項97】
前記がんが、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、上咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝臓がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパがん、血液がん
、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択される、請求項87乃至請求項96のいずれか一項に記載の使用。
【請求項98】
前記がんが、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、及び膀胱がんからなる群から選択される、請求項97に記載の使用。
【請求項99】
がんに罹患している患者のがん治療に対する応答を予測するため、がんに罹患している患者に生命予後を提供するため、患者のがん治療における副作用を予測するため、がんに罹患している患者をモニタリングするため、又はがんに罹患している患者を治療するか否かを決定するためのキットであって、
前記キットは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定するための手段を含む、
キット。
【請求項100】
前記キットが、
(i)配列番号1乃至配列番号8、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群、及び/又は
(ii)配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、配列番号39、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群、
から選択されるヌクレオチド配列を有する少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定するための手段を含む、請求項99に記載のキット。
【請求項101】
前記キットが請求項1乃至請求項86のいずれか一項に記載の方法を実施する方法についての説明書をさらに含む、請求項99又は請求項100に記載のキット。
【請求項102】
前記キットが請求項1乃至請求項86のいずれか一項に記載の方法を実施するために有用である、請求項99乃至請求項101のいずれか一項に記載のキット。
【請求項103】
免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを受けるがんに罹患している患者を選択する方法であって、
がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含み、
ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1(miR-2115-3p)、配列番号39(miR-218-5p)、配列番号13(miR-224-5p)、配列番号7(miR-4676-3p)、配列番号34(miR-6503-5p)、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有し、及び
ここで、該患者は、随意で≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)を有する、
方法。
【請求項104】
前記≧50%のPD-L1 TPSを有する患者が、がん遺伝子活性化変異を有さない、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
前記がんが、免疫化学療法又は免疫療法の対象である、請求項103又は請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記がんが、肺がん、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、上咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝臓がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパがん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択される、請求項103乃至請求項105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記非小細胞肺がん(NSCLC)が後期NSCLCである、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
前記後期NSCLCがIV期のNSCLCである、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記少なくとも1種のmiRNAのレベルが、(miRisk)カットオフスコアと比較される、請求項103乃至請求項109のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
前記(miRisk)カットオフスコアより高い少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者が免疫化学療法のベネフィットを受けることを示すか、又は前記(miRisk)カットオフスコア以下の少なくとも1種のmiRNAのレベルは、前記患者が免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを受けることを示す、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
前記方法が、配列番号1(miR-2115-3p)、配列番号39(miR-218-5p)、配列番号13(miR-224-5p)、配列番号7(miR-4676-3p)、配列番号34(miR-6503-5p)、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、又は5種のmiRNAの加重レベルを集約することによって(miRisk)スコアを決定する工程をさらに含む、請求項103乃至請求項111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
前記(miRisk)スコアが、配列番号1(miR-2115-3p)、配列番号39(miR-218-5p)、配列番号13(miR-224-5p)、配列番号7(miR-4676-3p)、及び配列番号34(miR-6503-5p)からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する5種のmiRNAの加重レベルを集約することによって決定される、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記(miRisk)スコアが、以下の式に従って計算される、請求項112又は請求項113に記載の方法。
(miRisk)スコア=(ln(配列番号1(miR-2115-3p)RPM+1)×2.190467)+(ln(配列番号39(miR-218-5p)RPM+1)×0.303095)+(ln(配列番号13(miR-224-5p)RPM+1)×0.598415)+(ln(配列番号7(miR-4676-3p)RPM+1)×1.101122)+(ln(配列番号34(miR-6503-5p)RPM+1)×0.958823)
式中、RPMは100万回あたりの読み取り数を意味する。
【請求項115】
前記(miRisk)スコアが、(miRisk)カットオフスコアと比較される、請求項112乃至請求項114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記(miRisk)カットオフスコアが約-0.073である、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
(miRisk)スコア>約-0.073が、前記患者が免疫化学療法からベネフィットを受けることを示すか、又は(miRisk)スコア≦約-0.073が、前記患者が免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを受けることを示す、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
がんに罹患している患者を免疫化学療法又は免疫療法で治療するか否かを決定する方法であって、
(i)請求項103乃至請求項117のいずれか一項に記載の方法を実施することにより、免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを受ける患者として前記患者を特定する工程、及び
(ii)前記患者を前記治療に割り当てる工程、
を含む方法。
【請求項119】
がんに罹患している患者を免疫化学療法又は免疫療法で治療する方法であって、
(i)請求項103乃至請求項117のいずれか一項に記載の方法を実施することにより、免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを受ける患者として前記患者を特定する工程、及び
(ii)前記療法で前記患者を治療する工程、
を含む方法。
【請求項120】
免疫化学療法又は免疫療法のベネフィットを受けるがんに罹患している患者を選択するためのキットであって、
前記キットは、がんに罹患している前記患者の血液サンプル中の、配列番号1(miR-2115-3p)、配列番号39(miR-218-5p)、配列番号13(miR-224-5p)、配列番号7(miR-4676-3p)、配列番号34(miR-6503-5p)、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定するための手段を含み、
該患者は、随意で≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)を有する、
キット。
【請求項121】
前記≧50%のPD-L1 TPSを有する患者が、がん遺伝子活性化変異を有さない、請求項120に記載のキット。
【請求項122】
前記がんが、免疫化学療法又は免疫療法の対象である、請求項120又は121に記載のキット。
【請求項123】
前記がんが、肺がん、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、上咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝臓がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパがん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択される、請求項120乃至122のいずれか一項に記載のキット。
【請求項124】
前記肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項123に記載のキット。
【請求項125】
前記非小細胞肺がん(NSCLC)が後期NSCLCである、請求項124に記載のキット。
【請求項126】
前記後期NSCLCがIV期のNSCLCである、請求項125に記載のキット。
【請求項127】
前記キットが、請求項103乃至請求項117のいずれか一項に記載の方法を実施する方法についての説明書をさらに含む、請求項120乃至請求項126のいずれか一項に記載のキット。
【請求項128】
前記キットが、請求項103乃至請求項117のいずれか一項に記載の方法を実施するために有用である、請求項120乃至請求項127のいずれか一項に記載のキット。
【請求項129】
前記キットが、コンテナ及び/又はデータキャリアをさらに含む、請求項120乃至請求
項128のいずれか一項に記載のキット。
【請求項130】
化学療法剤と組み合わせて、前記患者のがん治療に使用するための免疫療法薬であって、該患者は、≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)、及び以下の式に従って計算された(miRisk)スコア>約-0.073を有する免疫療法薬。
(miRisk)スコア=(ln(配列番号1(miR-2115-3p)RPM+1)×2.190467)+(ln(配列番号39(miR-218-5p)RPM+1)×0.303095)+(ln(配列番号13(miR-224-5p)RPM+1)×0.598415)+(ln(配列番号7(miR-4676-3p)RPM+1)×1.101122)+(ln(配列番号34(miR-6503-5p)RPM+1)×0.958823)
【請求項131】
≧50%のPD-L1 TPSを有する前記患者が、がん遺伝子活性化変異を有さない、請求項130に記載の使用するための免疫療法薬。
【請求項132】
前記がんが、免疫化学療法又は免疫療法の対象である、請求項130又は請求項131に記載の使用される免疫療法薬。
【請求項133】
前記がんが、肺がん、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、上咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝臓がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパがん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜 がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択される、請求項130乃至請求項132のいずれか一項に記載の使用するための免疫療法薬。
【請求項134】
前記肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項133に記載の使用するための免疫療法薬。
【請求項135】
前記非小細胞肺がん(NSCLC)が後期NSCLCである、請求項134に記載の使用するための免疫療法薬。
【請求項136】
後期NSCLCがIV期のNSCLCである、請求項135に記載の使用するための免疫療法薬。
【請求項137】
前記免疫療法薬が、PD-1/PD-L1を標的とする阻害剤である、請求項130乃至請求項136のいずれか一項に記載の使用するための免疫療法薬。
【請求項138】
前記PD-1/PD-L1を標的とする阻害剤が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択される、請求項137に記載の使用するための免疫療法薬。
【請求項139】
免疫療法薬と組み合わせて、患者のがん治療に使用するための化学療法剤であって、
該患者は、≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)、及び以下の式に従って計算された(miRisk)スコア>約-0.073を有する化学療法剤。
(miRisk)スコア=(ln(配列番号1(miR-2115-3p)RPM+1)×2.190467)+(ln(配列番号39(miR-218-5p)RPM+1)×0.303095)+(ln(配列番号13(miR-224-5p)RPM+1)×0.598415)+(ln(配列番号7(miR-4676-3p)RPM+1)×1.101122)+(ln(配列番号34(miR-6503-5p)RPM+1)×0
.958823)
【請求項140】
前記≧50%のPD-L1 TPSを有する患者が、がん遺伝子活性化変異を有さない、請求項139に記載の使用するための化学療法剤。
【請求項141】
前記がんが免疫化学療法又は免疫療法の対象である、請求項139又は140に記載の使用するための化学療法剤。
【請求項142】
前記がんが、肺がん、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、上咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝臓がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパがん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜 がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択される、請求項139乃至請求項141のいずれか一項に記載の使用するための化学療法剤。
【請求項143】
前記肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項142に記載の使用するための化学療法剤。
【請求項144】
前記非小細胞肺がん(NSCLC)が後期NSCLCである、請求項143に記載の使用するための化学療法剤。
【請求項145】
前記後期NSCLCがIV期のNSCLCである、請求項144に記載の使用するための化学療法剤。
【請求項146】
前記化学療法剤がプラチナダブレットである、請求項139乃至請求項145のいずれか一項に記載の使用するための化学療法剤。
【請求項147】
随意に化学療法剤と組み合わせて、患者のがん治療に使用するための免疫療法薬であって、
該患者は、≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)、及び以下の式に従って計算される(miRisk)スコア≦約-0.073を有する、免疫療法薬。
(miRisk)スコア=(ln(配列番1(miR-2115-3p)RPM+1)×2.190467)+(ln(配列番号39(miR-218-5p)RPM+1)×0.303095)+(ln(配列番号13(miR-224-5p)RPM+1)×0.598415)+(ln(配列番号7(miR-4676-3p)RPM+1)×1.101122)+(ln(配列番号34(miR-6503-5p)RPM+1)×0.958823)
【請求項148】
≧50%のPD-L1 TPSを有する前記患者が、がん遺伝子活性化変異を有さない、請求項147に記載の使用するための免疫療法薬。
【請求項149】
前記がんが免疫化学療法又は免疫療法の対象である、請求項147又は請求項148に記載の使用するための免疫療法薬。
【請求項150】
前記がんが、肺がん、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、上咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝臓がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパがん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立
腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択される、請求項147乃至請求項149のいずれか一項に記載の使用するための免疫療法薬。
【請求項151】
前記肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項150に記載の使用するための免疫療法薬。
【請求項152】
前記非小細胞肺がん(NSCLC)が、後期NSCLCである、請求項151に記載の使用するための免疫療法薬。
【請求項153】
前記後期NSCLCがIV期のNSCLCである、請求項152に記載の使用するための免疫療法薬。
【請求項154】
前記免疫療法薬が、PD-1/PD-L1を標的とする阻害剤である、請求項147乃至153のいずれか一項に記載の使用するための免疫療法薬。
【請求項155】
前記PD-1/PD-L1を標的とする阻害剤が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択される、請求項154に記載の使用するための免疫療法薬。
【請求項156】
前記随意の化学療法剤がプラチナダブレットである、請求項147乃至請求項155のいずれか一項に記載の使用するための免疫療法薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんに罹患している患者のがん治療に対する応答を予測する方法に関する。さらに、本発明は、がんに罹患している患者に生命予後を提供する方法に関する。さらに、本発明は、がんに罹患している患者を治療するか否かを決定する方法に関する。さらに、本発明は、免疫化学療法又は免疫療法のベネフィットを受けるがんに罹患している患者を選択する方法に関する。さらに、本発明は、これらの方法を実施するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
がんとは、体のどこかで異常な細胞が制御されずに増殖することである。異常な細胞は、がん細胞、悪性細胞、又は腫瘍細胞と呼ばれる。がん細胞は制御不能に増殖し、がん細胞の塊を形成することがある。
【0003】
がん治療には、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン接種療法、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び外科的療法が含まれるが、これらに限定されない。腫瘍の大きさ、悪性度、リンパ節転移及び腫瘍-リンパ節-転移(TNM)病期分類などの標準的な臨床パラメーターは、がん治療レジメンに関して患者を層別化するための転帰及び重症度と相関する可能性がある。しかし、組織学的サブタイプによってグループ化された病期が一致した腫瘍は、同じ治療レジメンに対して異なる応答を示す可能性がある。
【0004】
免疫療法は最近、末期がんにおける非常に有効な治療として認識されている。免疫療法に使用される薬剤は、腫瘍が一般的に検出を回避する機序を遮断し、免疫系を開放してがんと戦うことによって作用する。顕著なベネフィットに加えて、免疫療法は特徴的な(時には重篤な)副作用を伴うことがある。このため、免疫療法は、有益性がリスクを上回ると予測される患者にのみ実施する必要がある。PD-1阻害剤クラス(ニボルマブ及びペムブロリズマブ)における免疫療法に対する応答予測の中心は、腫瘍のPD-L1発現の定量化である。しかし、依然として約30%の患者のみが陽性応答を達成する。
【0005】
さらに、末期がんでは、免疫療法(IO)単独又は免疫療法と化学療法との併用(すなわち、免疫化学療法(ICT))が、主要な国際ガイドラインで治療選択肢として推奨されている。しかし、個々の患者における理想的な治療選択に関しては依然として不確実性がある。
【0006】
免疫療法に対する陽性応答は、腫瘍微小環境における悪性細胞及び免疫細胞の間の局所的な相互作用と、腫瘍及び末梢免疫系の間のより遠位の相互作用との両方に依存している。後者は非侵襲的な治療ガイダンスを提供する可能性があるが、血液ベースのバイオマーカーはまだルーチンの臨床使用には入っていない。
【0007】
したがって、がん治療、特に免疫療法、応答予測、及び生存予測のためのより正確なバイオマーカーに対する差し迫った必要性がある。さらに、免疫療法に加えて化学療法からベネフィットを得る患者を特定できる新しいバイオマーカーに対する差し迫った必要性がある。
【0008】
複数の証拠から、末梢血中に保持された情報は、限局性腫瘍微小環境内の免疫応答を予測する可能性があることが示唆されている。免疫療法応答と、末梢血数及び末梢で増殖したT細胞クローンとの間に関連性が認められている。
【0009】
本発明者らは、がん治療、特に免疫療法のための全血からの応答及び生存予測miRNAを特定した。これらの新しいmiRNAは、がん疾患における迅速かつ正確な臨床応答予測及び生命予後を可能にする。したがって、前記miRNAは、がん治療、特に免疫療法におけるコンパニオン診断又は相補的診断として使用することができる。さらなる利点として、反復的な液体生検は、手順上のリスクを低下させ、縦断的モニタリングを実施し、及び例えば腫瘍PD-L1発現の動的プロセスを調査する手段として(先行技術の方法によって必要とされるような)連続腫瘍生検よりも実施可能である。さらに、これらの新しいmiRNAは、がんに罹患している患者を選択して、免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを得ることを可能にする。
【発明の概要】
【0010】
第1態様において、本発明は、がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含む、がんに罹患している患者のがん治療に対する応答を予測する方法に関し、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号(SEQ ID No.)1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0011】
第2態様において、本発明は、がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含む、がんに罹患している患者に生命予後を提供する方法に関し、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0012】
第3態様において、本発明は、がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含む、患者のがん治療における副作用を予測する方法に関し、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0013】
第4態様において、本発明は、がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含む、がんに罹患している患者をモニタリングする方法に関し、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0014】
第5の態様において、本発明は、
(i)第1態様に係る方法を実施することにより、がん治療に応答する患者を特定する工程、第2態様に係る方法を実施することにより、生命予後が良好な患者を特定する工程、又は第3態様に係る方法を実施することにより、がん治療において副作用が生じない患者を特定する工程、及び
(ii)患者を(前記)がん治療に割り当てる工程、
を含む、がんに罹患している患者を治療するか否かを決定する方法に関する。
【0015】
第6の態様において、本発明は、がんに罹患している患者のがん治療に対する応答を予測するための少なくとも1種のmiRNAの使用に関し、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0016】
第7の態様において、本発明は、がんに罹患している患者に生命予後を提供するための少なくとも1種のmiRNAの使用に関し、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0017】
第8の態様において、本発明は、患者のがん治療における副作用を予測するための少なくとも1種のmiRNAの使用に関し、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0018】
第9の態様において、本発明は、がんに罹患している患者をモニタリングするための少なくとも1種のmiRNAの使用に関し、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0019】
第10の態様において、本発明は、がんに罹患している患者を治療するか否かを決定するための少なくとも1種のmiRNAの使用に関し、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0020】
第11の態様において、本発明は、がんに罹患している患者のがん治療に対する応答を予測するため、がんに罹患している患者に生命予後を提供するため、患者のがん治療における副作用を予測するため、がんに罹患している患者をモニタリングするため、又はがんに罹患している患者を治療するか否かを決定するためのキットに関し、ここで該キットは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する少なくとも1種のmiRNAの発現レベルを決定するための手段を含む。
【0021】
第12の態様において、本発明は、がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含む、免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを得るためにがんに罹患している患者を選択する方法に関し、
ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1(miR-2115-3p)、配列番号39(miR-218-5p)、配列番号13(miR-224-5p)、配列番号7(miR-4676-3p)、配列番号34(miR-6503-5p)、それらの断片、及びそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有し、ここで、患者は、随意に≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(Tumor Proportion Score、TPS)を有する。
【0022】
第13の態様において、本発明は、
(i)第12の態様に係る方法を実施することにより、免疫化学療法又は免疫療法のベネフィットを受ける患者を特定する工程、及び
(ii)患者を当該療法に割り当てる工程、
を含む、がんに罹患している患者を免疫化学療法又は免疫療法で治療するか否かを決定する方法に関する。
【0023】
第14の態様において、本発明は、免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを得るためにがんに罹患している患者を選択するためのキットに関し、該キットは、がんに罹患している患者の血液サンプルにおいて、配列番号1(miR-2115-3p)、配列番号39(miR-218-5p)、配列番号13(miR-224-5p)、配列番号7
(miR-4676-3p)、配列番号34(miR-6503-5p)、それらの断片、及びそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定するための手段を含み、ここで、患者は、随意に、≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)を有する。
【0024】
本発明のこの概要は、必ずしも本発明のすべての特徴を説明するものではない。他の実施態様は、以下の詳細な説明を検討することにより明らかになるであろう。
【0025】
[発明の詳細な説明]
定義
本発明を以下に詳細に記載する前に、本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル及び試薬に限定されないことが理解されるべきであり、これらは変化し得る。また、本明細書中で使用される用語は、特定の実施態様のみを記載する目的のためであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されるべきである。
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的及び科学的用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0026】
好ましくは、本明細書中で使用される用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)」,Leuenberger,H.G.W,Nagel,B.and Kolbl,H.eds.(1995)、Helvetica Chimica Acta,CH-4010 Basel,Switzerland」に記載されるように定義される。
【0027】
いくつかの文献が本明細書の本文全体にわたって引用されている。本明細書中に引用される文書(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様、使用説明書、GenBank Accession Number配列提出物などを含む)の各々は、上記であろうと下記であろうと、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる記載も、本発明が先行発明によりそのような開示に先行する権利を有しないことを認めるものと解釈されるべきではない。このような組み込まれた参考文献の定義又は教示と、本明細書に記載された定義又は教示との間に矛盾がある場合、本明細書の本文が優先される。
【0028】
本発明に従う用語「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」のような変形は、規定された整数又は整数の群を含むことを意味するが、任意の他の整数又は整数の群を排除することは意味しない。本発明に従う用語「実質的に含む」は、規定された整数又は整数の群を含むことを意味するが、規定された整数に実質的に影響を及ぼすか又は変更する改変又は他の整数を除外する。本発明に従う用語「からなる(consisting of)」又は「からなる(consists of)」のような変形は、規定された整数又は整数の群を含み、任意の他の整数又は整数の群を排除することを意味する。
【0029】
本発明を説明する文脈において(特に特許請求の範囲の文脈において)使用される用語「a」及び「an」及び「the」ならびに同様の参照は、本明細書において別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方をカバーすると解釈されるべきである。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、それが先行する定量値からの特定の変動を
示す。特に、「約」という用語は、別段の指示又は推論がない限り、それが先行する定量値からの±5%の変動を許容する。「約」という用語の使用は、別段の明示がない限り、特定の定量値自体も含む。例えば、「約80℃」という表現は、±4℃の変動を許容し、従って、76℃乃至84℃の範囲を指す。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「バイオマーカー」とは、正常もしくは異常なプロセス、又は状態もしくは疾患の指標である、血液、他の体液、又は組織において見出される生物学的分子をいう。バイオマーカーは、身体が疾患又は状態の治療にどの程度よく応答するかを予見するために使用することができ、あるいは特定の疾患又は状態-又は疾患の転帰-を、例えば血液サンプル中に見出される前記バイオマーカーの特定の値と関連付けるために使用することができる。バイオマーカーは、分子マーカー及びシグネチャー分子とも呼ばれる。バイオマーカーが疾患の推定される経過及び転帰を予測するために使用される場合、それは予後バイオマーカーと呼ばれることがある。本明細書に記載されるバイオマーカーはmiRNAである。前記miRNAは、予測及び予後のバイオマーカーである。
【0032】
用語「miRNA」(「マイクロRNA」という呼称も可能である)は、本明細書中で使用される場合、共に共有結合した少なくとも10個のヌクレオチド及び45個以下のヌクレオチドの一本鎖RNA分子を指す。好ましくは、本発明で使用されるポリヌクレオチドは、10乃至45ヌクレオチド長又は15乃至35ヌクレオチド長、より好ましくは16乃至28ヌクレオチド長又は18乃至23ヌクレオチド長の分子、すなわち、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、又は45ヌクレオチド長であり、随意に標識及び/又は伸長された配列(例えば、ビオチンストレッチ)を含まない。該miRNAは遺伝子発現を調節し、そのDNAから転写される遺伝子によってコードされているが、該miRNAはタンパク質に翻訳されない(すなわち、miRNAは非コードRNAである)。miRNAをコードする該遺伝子は、プロセシングされた成熟miRNA分子よりも長い。該miRNAは最初、一次miRNA転写物(pri-miRNA)と呼ばれるより長い前駆体分子(>1000ヌクレオチド長)として転写される。Pri-miRNAはヘアピン構造をもち、ドローシャ酵素(マイクロプロセッサー複合体の一部として)によってプロセシングされる。ドローシャプロセシングの後、pri-miRNAはわずか60乃至100ヌクレオチド長であり、及び前駆体miRNA(pre-miRNA)と呼ばれる。この時点で、該pre-miRNAは細胞質に輸送され、そこでダイサー酵素に遭遇する。ダイサーは該miRNAを2つに切断し、二本鎖miRNA鎖を生じさせる。伝統的に、これらのmiRNAアームの1つだけが遺伝子調節に重要であると考えられていた:RNA-誘導性サイレンシング複合体(RISC)にロードされることになっており、及び細胞内で高濃度で発生するアームである。これはしばしば「ガイド」鎖と呼ばれ、miRと呼ばれる。もう一方のアームは「マイナーmiRNA」又は「パッセンジャーmiRNA」と呼ばれ、しばしばmiRと呼ばれる。パッセンジャーmiRNAは完全に分解されると考えられていたが、詳細な配列決定研究にはいくつかのマイナーなmiRNAが残存し、実際に遺伝子調節に機能的な役割を果たしていることを明らかにした。これらの開発により、命名法は変化した。miR/miRの命名法の代わりに、miR-5p/miR-3pの命名法が採用されている。新しいシステムでは、miRNAの5’アームは常にmiR-5pと呼ばれ、3’アームはmiR-3pと呼ばれる。現在の命名法は以下の通りである:接頭辞「miR」の後にダッシュと数字が続き、後者はしばしば命名の順序を示す。例えば、hsa-miR-16はhsa-miR-342よりも前に命名され、発見された可能性が高い。大文字の「miR-」は該miRNAの成熟型(例えば、hsa-miR-16-5p及びhsa-miR-16-3p)を指し、大文字でない「mir-」は該pre-miRNA及び該pri-miRNA(例えば、hs
a-miR-16)を指し、「MIR」はそれらをコードする遺伝子を指す。しかし、これは最近の変更であるため、文献では元のmiR/miR*名を参照することが多い。プロセシング後、二本鎖miRNA鎖はアルゴノート(AGO)タンパク質にロードされ、RISCの前駆体を形成する。この複合体は二本鎖をほどき、パッセンジャーRNA鎖は捨てられ、成熟した一本鎖miRNAをもつ成熟したRISCが残る。該miRNAは標的遺伝子の発現を抑制するので、該RISCの一部のままである。これはmiRNA生合成の標準的な経路であるが、他にもさまざまな経路が発見されている。これらには、ドローシャ非依存性経路(ミルトロン経路、snoRNA-由来経路、及びshRNA-由来経路など)及びダイサー非依存性経路(切断をAGOに依存する経路、及びtRNaseZに依存する経路など)が含まれる。
【0033】
本明細書で使用される用語「miRBase」は、検証されたmiRNAの十分に確立されたレポジトリを指す。miRBase(www.mirBase.org)は、公表されたmiRNA配列及び注釈の検索可能なデータベースである。mirBase配列データベースの各エントリーは、miRNA転写物(データベースではmiRと呼ばれる)の予測されるヘアピン部分を、成熟miRNA配列(miRと呼ばれる)の位置及び配列の情報とともに表す。ヘアピン配列及び成熟配列の両方が検索及び閲覧に利用でき、そしてエントリーは名前、キーワード、参照、及び注釈によっても検索できる。すべての配列データ及び注釈データもダウンロードできる。
【0034】
本明細書に記載されるmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらに一層より好ましくは少なくとも99%、例えば、少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0035】
2つ以上のポリヌクレオチド中の残基は、その残基がポリヌクレオチド構造中の類似の位置を占める場合、互いに「対応する」といわれる。2つ以上のポリヌクレオチドにおける類似の位置が、核酸配列又は構造的類似性に基づいてポリヌクレオチド配列を整列させることによって決定され得ることは、当該分野において周知である。このような整列ツールは、当業者に周知であり、例えば、ワールド・ワイド・ウェブ上で、例えば、標準設定を用いてClustalW又はAlign、好ましくはAlign EMBOSS::needle、Matrix:Blosum62、Gap Open 10.0、Gap Extend 0.5で得ることができる。
【0036】
本明細書中で使用される用語「疾患」は、個体の身体に影響を及ぼす異常な状態を指す。疾患はしばしば、特定の症状及び徴候に関連する医学的状態と解釈される。ヒトにおいて、用語「疾患」は、罹患した個体に対して疼痛、機能不全、苦痛、社会的問題、若しくは死亡、又は個体と接触しているそれらに対して同様の問題を引き起こす任意の状態を指すためにより広く使用されることが多い。この広い意味では、傷害、障害、障害、症候群、感染症、逸脱行動、及び構造と機能の非定型的な変化を含むことがあるが、他の状況及び他の目的では、これらは識別可能なカテゴリーとみなすことができる。多くの病気にかかり、それとともに生活することは、人生に対する見方や人格を変える可能性があるから、病気は通常、身体的にだけでなく感情的にも個人に影響を及ぼす。
【0037】
本明細書中で使用される用語「がん」は、調節されない細胞増殖によって典型的に特徴付けられる、個体における生理学的状態を指すか、又は記載する。がんの例としては、限定されるものではないが、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)又は小細胞肺がん(SCLS)、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、
膀胱がん、皮膚がん、鼻咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝臓がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパがん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病が挙げられる。本明細書中で使用される用語「がん」はまた、がん転移を包含する。
【0038】
本明細書で使用される用語「肺がん」は、肺の組織における制御されない細胞増殖からなる疾患を指す。この増殖は転移につながる可能性があり、これは隣接組織への浸潤及び肺を越えた浸潤である。原発性肺がんの大多数は上皮細胞に由来する肺がんである。肺がんは男女ともにがん関連死の最も一般的な原因である。最も一般的な症状は、息切れ、せき(喀血を含む)、及び体重減少である。肺がんは、後期肺がん、特にIV期の肺がんであり得る。肺がんの主な種類は、非小細胞肺がん(NSCLC)と小細胞肺がん(SCLC)である。好ましくは、肺がんはNSCLC、具体的にはIV期のものである。
【0039】
本明細書中で使用される用語「腫瘍」は、悪性であるか良性であるかを問わず、病変及び新生物細胞の成長及び増殖、ならびに異常な組織成長を生じる全ての前がん性及びがん性の細胞及び組織をいう。
【0040】
本明細書中で使用される用語「療法的治療/療法」は、患者の健康状態を改善し、及び/又は患者の寿命を延長する(増加させる)任意の治療/療法に関する。該治療/療法は、患者における疾患を排除し得、患者における疾患の発症を停止、阻害、もしくは遅延させ得、患者における症状の頻度もしくは重篤度を低下させ得、及び/又は疾患を現在有する患者もしくは以前に有していた患者における再発を低下させ得る。
【0041】
本明細書中で使用される用語「がん治療」とは、がんの予防、管理、治療、及び/又は改善において使用され得る任意のプロトコル、方法、及び/又は薬剤をいう。特に、本明細書中で使用される用語「がん治療」は、以下の1つ以上を達成することを意味する:
(i)腫瘍増殖阻害及び/又は腫瘍細胞死
(ii)腫瘍マーカーの減少
(iii)腫瘍病変及び転移の抑制
(iv)画像検査(例えば、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、ポジトロン放射断層撮影(PET)など)で証明された腫瘍量の減少、及び
(v)患者による臨床評価又は自己報告によって証明された腫瘍量の減少。
具体的には、がん治療は、限定されるものではないが、薬物療法、支持療法、及び/又は医療関係者のような当業者に公知のがんの予防、管理、治療、及び/又は改善に有用な他の療法を含む。より具体的には、がん治療は、限定されるものではないが、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン接種療法、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び/又は外科的療法を含む。さらにより具体的には、がん治療は免疫療法である。
【0042】
本明細書で使用される用語「化学療法」は、標準化された化学療法レジメンの一部として、化学療法薬としても知られる1種以上の抗がん剤を使用するがん治療の一種に関する。化学療法は、治癒を目的として(好ましくは薬物の組み合わせを含む)、又は延命又は症状の軽減を目的として(緩和化学療法)投与され得る。好ましくは、化学療法は、プラチナダブレット化学療法である。
【0043】
本明細書中で使用される用語「化学療法剤」とは、がん細胞の制御されない成長及び増殖を直接的又は間接的に阻害する任意の薬剤をいう。化学療法剤は、限定されるものではないが、アルキル化剤、代謝拮抗薬、フォリン酸、葉酸拮抗薬、有糸分裂阻害剤、アント
ラサイクリン、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、シグナル変換阻害剤、血管形成の阻害剤、及び/又はヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤を含む。好ましくは、化学療法剤はプラチナダブレットである。
【0044】
本明細書で使用される用語「放射線療法」は、がん性/悪性細胞を制御又は死滅させるために電離放射線を使用する一種のがん治療に関する。電離放射線は通常、直線加速器によって照射される。放射線療法は、いくつかの種類のがんが体の1つの領域に限局していれば、治癒する可能性がある。また、原発性悪性腫瘍を切除する手術後の腫瘍再発を予防するために、補助療法の一部として使用されることもある。放射線療法は化学療法と相乗的であり、感受性の高いがんでは化学療法の前、最中、後に用いることができる。
【0045】
用語「免疫療法」とは、ヒト又は動物の免疫系の1種以上の成分が、全身及び/又は局所効果、ならびに予防及び/又は治癒効果を含むいくつかの治療的ベネフィットを直接的又は間接的に達成するために意図的に調節される任意の治療をいう。免疫療法は、全身的、局所的又は両方を問わず、任意の経路(例えば、経口、静脈内、皮膚、注射、吸入など)によって、1種以上の免疫療法薬又は薬剤を、単独で又は任意の組み合わせで、ヒト又は動物被験体に投与することを含み得る。免疫療法は、サイトカインの産生を誘発、増加、減少、停止、予防、遮断又は他の方法で調節すること、及び/又はサイトカインもしくは免疫細胞を活性化もしくは不活性化すること、及び/又は免疫細胞のレベルを調節すること、及び/又は体内の特定の位置もしくは特定の種類の細胞もしくは組織に1種以上の治療物質もしくは診断物質を送達すること、及び/又は特定の細胞もしくは組織を破壊することを含むことができる。免疫療法は、局所作用、全身作用、又はその両方の組み合わせを達成するために使用することができ、また、他の抗がん療法によって引き起こされた可能性のある副作用を軽減又は排除するために使用することもできる。
【0046】
免疫応答を誘導又は増幅するように設計された免疫療法は、活性化免疫療法として分類され、一方、免疫応答を減少又は抑制する免疫療法は、抑制免疫療法として分類される。
【0047】
抗腫瘍免疫療法は幅広い可能性を秘めており、さまざまな種類の悪性腫瘍にわたって持続的かつ強力な応答を引き起こすため、多くの異なるタイプの進行期がんの治療に使用できる。
【0048】
免疫療法は、免疫療法薬の投与を包含する。
【0049】
本明細書で使用される用語「免疫療法薬」は、がん細胞に対する身体の免疫応答を間接的又は直接的に回復させ、増強し、刺激し、又は増加させ、及び/又は他の抗がん療法の副作用を減少させる任意の薬物、化合物、又は生物学的製剤を指す。当技術分野で公知の一般的な免疫療法薬の例としては、チェックポイント阻害剤、サイトカイン、がんワクチン、モノクローナル抗体などの抗体、及び/又は非サイトカインアジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、又はさらに、免疫療法的治療は、患者への免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、細胞、樹状細胞、B細胞など)の投与を含む。特に、前記免疫細胞は、抗原提示細胞及び/又はキメラ抗原受容体T細胞である。
【0050】
免疫療法薬は、非特異的であってもよく、すなわち、人体ががん細胞の増殖及び/又は拡散と戦う上でより効果的になるように免疫系を一般的に高めることができ、又はそれらは特異的であってもよく、すなわち、がん細胞自体を標的とすることができる。免疫療法レジメンは、非特異的及び特異的免疫療法薬の使用を組み合わせてもよい。
【0051】
非特異的免疫療法薬は、免疫系を刺激するか又は間接的に改善する物質である。非特異的免疫療法薬は、がん治療のための主療法として単独で、ならびに主療法に加えて使用さ
れており、この場合、非特異的免疫療法薬は、他の療法(例えば、がんワクチン)の有効性を増強するためのアジュバントとして機能する。非特異的免疫療法薬はまた、この後者の状況において、他の治療の副作用、例えば、特定の化学療法剤によって誘導される骨髄抑制を軽減するように機能し得る。非特異的免疫療法薬は、重要な免疫系細胞に作用し、サイトカインや免疫グロブリンの産生増加などの二次応答を引き起こすことができる。あるいは、これらの薬剤自体がサイトカインを含むこともできる。非特異的免疫療法薬は、一般に、サイトカイン又は非サイトカインアジュバントとして分類される。多くのサイトカインは、免疫系を増強するように設計された一般的な非特異的免疫療法として、又は他の治療と共に提供されるアジュバントとして、がん治療に適用されている。適切なサイトカインとしては、インターフェロン、インターロイキン、及び/又はコロニー刺激因子が挙げられるが、これらに限定されない。インターフェロン(IFN)としては、例えば、IFN-α(IFN-α)、IFN-β(IFN-β)、及び/又はIFN-γ(IFN-γ)が挙げられる。インターロイキンとしては、例えば、IL-2、IL-4、IL-11、及び/又はIL-12が挙げられる。コロニー刺激因子(CSF)には、例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF又はフィルグラスチム)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF又はサルグラモスチム)、及び/又はエリスロポエチン(エポエチンα、ダルボポエチン)が含まれる。
【0052】
さらに、免疫療法薬は、能動的であり得るか、すなわち、体液性及び細胞性免疫応答を含む身体自身の免疫応答を刺激するか、又はそれらは受動的であり得る、すなわち、身体の外部で生成された抗体、エフェクター免疫細胞、抗原提示細胞などの免疫系成分を含む。特に、受動免疫療法は、がん細胞又は免疫細胞の表面に見出される特定の抗原に対して特異的であるか、又は特定の細胞増殖因子に対して特異的である1種以上のモノクローナル抗体の使用を含む。モノクローナル抗体は、例えば、特定の型のがんに対する被験体の免疫応答を増強するため、血管新生に関与するものなどの特定の細胞増殖因子を標的化することによってがん細胞の増殖を妨害するため、又は化学療法剤、放射性粒子もしくは毒素などの薬剤に連結もしくは結合された場合にがん細胞への他の抗がん剤の送達を増強することによって、多くの方法でがん治療に使用され得る。
【0053】
腫瘍は、免疫逃避の複数のメカニズムを介して免疫介在性認識を回避することが知られている。腫瘍抗原に慢性的に曝露されると、T細胞は機能不全/枯渇状態になり、T細胞の生存と機能を制限する様々なチェックポイント阻害受容体(IR)を上方制御する。したがって、免疫療法は、特に、T細胞機能を刺激し、T細胞死を予防することによってがんを治療するアプローチを包含する。このアプローチは、調節受容体を遮断又は活性化する化合物、例えば抗体によるT細胞機能の刺激が、腫瘍の退縮を引き起こすのに十分であり得るという驚くべき知見に基づいている。チェックポイント遮断は、例えば、T細胞機能がそれらの抑制性受容体を遮断する化合物で刺激される方法であり、一方、T細胞共刺激は、それらの刺激性受容体を標的とする化合物でT細胞機能を活性化することを目的とする方法である。本明細書に記載される免疫療法は、特に、チェックポイント阻害剤の投与を包含する。
【0054】
本発明の1つの態様において、免疫療法薬は、PD-1/PD-L1阻害剤である。本発明の1つの好ましい態様において、PD-1/PD-L1阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択される。この点に関して、ペムブロリズマブとニボルマブはPD-1タンパク質を特異的に標的とするのに対し、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、及びアベルマブはPD-L1リガンドを特異的に標的とすることに注意すべきである。PD-1はプログラム細胞死タンパク質1を意味し、PD-L1はプログラム細胞死リガンド1を意味する。PD-1はリガンドPD-L1の受容体である。
【0055】
本明細書中で使用される用語「免疫チェックポイント阻害剤」とは、1以上の免疫チェックポイントタンパク質を全体的に又は部分的に減少させる、阻害する、妨害する、又は調節する任意の化合物をいう。抑制には、機能の低下と完全な遮断が含まれる。多くの免疫チェックポイント阻害剤が知られており、これらの既知の免疫チェックポイントタンパク質阻害剤と同様に、(近い)将来、代替の免疫チェックポイント阻害剤が開発される可能性がある。免疫チェックポイント阻害剤としては、ペプチド、抗体、核酸分子、及び/又は小分子が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、プログラム細胞死リガンド2(PD-L2)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、LAG3(リンパ球活性化遺伝子-3)、TIGIT(免疫グロブリン及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)、CD73(エクト-5’-ヌクレオチダーゼ(NT5E))、及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。より好ましくは、PD-L1を標的とする阻害剤は、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、及びアベルマブからなる群から選択され、PD-1を標的とする阻害剤は、ペムブロリズマブ及びニボルマブからなる群から選択される。
【0056】
本明細書で使用される「予測」という用語は、患者ががん治療に応答するか、又はがん治療に応答して臨床結果を達成するかの予後を指す。ある態様において、がん治療に対する正の応答が予測される。いくつかの代替的態様において、がん治療に対する負の応答が予測される。がん治療に対する患者の応答の予測は、通常、がん治療で患者を治療する前に行われる。予測された結果が陽性であれば、患者はがん治療を受けることになる。予測された結果が陰性であれば、患者はがん治療を受けないか、別のがん治療を受けることになる。例えば、がんに罹患している患者が免疫療法に応答しないと予測される場合、患者は、放射線療法及び/又は化学療法のような免疫療法以外の別の療法で治療され得る。しかしながら、がん治療に対する応答の予測は、がん治療の開始後に実施することもできる。予測された結果が陽性であれば、がん治療を継続する。予測された結果が陰性的であれば、がん治療は変更又は中止される。
【0057】
特に、本明細書中に記載される、がんに罹患している患者のがん治療に対する応答を予測する方法は、がん治療に応答する患者を、がん治療に応答しない患者から識別するのに適している。典型的には、応答者又は非応答者としての患者の特徴付けは、標準又はトレーニングセットを参照することによって行うことができる。標準は、応答者又は非応答者であることが知られている被験体のプロフィールであってもよく、あるいは数値/参照レベルであってもよい。そのような所定の標準は、印刷されたリスト又はダイアグラム、コンピュータソフトウェアプログラム、数学的アルゴリズム、又は他の媒体のような任意の適切な形態で提供され得る。患者が応答者であると予測される場合、医師は、がん治療、例えば免疫療法を患者に投与する決定を下すことができる。患者がノンレスポンダーであると予測される場合、医師は、がん治療を投与するのではなく、代わりに別のがん治療を投与するという決定を下すことができる。この場合、さらなる有害な副作用を回避することができる。
【0058】
本発明者らは、がんに罹患している患者のがん治療に対する応答の予測を可能にする新規なmiRNAバイオマーカーを特定した。該miRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。がん治療は、好ましくは免疫療法である。
【0059】
本明細書中で使用される用語「応答」とは、がん治療の結果として生じるか、又はそれと相関する、患者の状態の変化をいう。ある態様において、応答は、有益な応答であるか、又は有益な応答を含む。ある態様において、有益な応答は、状態の安定化(例えば、治
療の非存在下で生じることが予想されるか又は典型的に観察される悪化の予防又は遅延)、状態の1以上の症状の改善(例えば、頻度及び/又は強度の減少)、及び/又は状態の治癒の見込みの改善などを含み得る。特に、応答は、免疫療法に対するがんに罹患している患者の応答である。
【0060】
具体的には、がん治療で治療された、がんに罹患しているがん患者又は(対照)被検体は、個体が、症状の予防又は重篤度の低減、又はがんの進行の遅延などの臨床的に有意なベネフィットを含む、当技術分野で受け入れられている一連の客観的基準又はその合理的な修正に従った抗がん効果の証拠を示す場合、がん治療に対して「応答する」、「応答」を有する、「陽性応答」を有する、又は「応答する」と考えられる。上記の用語はまた、がんに関して使用され得ることが理解される。
【0061】
がんに対する抗がん治療の効果を評価するための様々な異なる客観的基準が当技術分野で知られている。世界保健機関(WHO)基準(Miller,A B,et al.,Cancer 1981;47(1):207-14)及びその修正版、the Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)(Therasse P, et al.,J Natl Cancer Inst 2000;92:205-16)及びその改訂版(Eisenhauer E A, New response evaluation criteria in solid tumors:revised RECIST guideline(version 1.1).Eur J Cancer 2009;45(2):228-47)は、腫瘍病変の大きさ及び数の画像決定、ならびに例えばコンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、又は従来のX線写真からの新たな病変の検出に基づく一連の客観的基準である。選択された病変(標的病変と呼ばれる)の寸法を用いて、異なる時点からの画像間の腫瘍量の変化を計算する。次いで、算出された応答は、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定(SD)、又は進行(PD)に分類される。CRは腫瘍の完全消失(-100%)であり、PDは約20乃至25%以上の増加(特定の基準による)及び/又は新たな病変の出現である。PRとは、腫瘍病変の大きさが有意に(少なくとも約30%)縮小するが(新たな病変の出現を伴わない)、完全奏効には至らないことであり、SDはPRとPDの中間である。
【0062】
しかし、場合によっては、解剖学的画像のみでは十分でないことがある。例えば、免疫チェックポイント阻害剤などによる免疫療法に対する意味のある腫瘍応答は、場合によっては上記のWHO又はレシスト(RECIST)基準に従って、遅延後に生じることがある。免疫関連応答基準(irRC)は、免疫療法で観察された追加の好ましい応答パターンを捉えるために定義された(Wolchok,J D,et al.(2009)Guidelines for the evaluation of immune therapy activity in solid tumors:immune-related response criteria.Clin.Care Res.15,7412-7420.)。irRCの開発者は、WHO基準に基づいて基準を作成したが、それを修正した。irRCでは、腫瘍量は「指標」病変と新規病変を組み合わせることによって測定される。通常、腫瘍量は、ベースライン時に限られた数の「指標病変」(すなわち、識別可能な最大の病変)を用いて単純に測定され、その後の時点で特定された新たな病変は「病勢進行」としてカウントされる。これに対して、irRCでは、新たな病変は単に腫瘍量の変化である。irRCは、当初WHO基準に規定されていた病変の双方向測定を維持した。irRCでは、免疫関連の完全奏効(irCR)とは、測定されたか測定されていないかを問わず、すべての病変が消失し、新たな病変が認められないこと、免疫関連の部分奏効(irPR)とは、irRCで定義されたベースラインからの腫瘍量の50%減少、免疫関連の進行性疾患(irPD)とは、記録された最低レベルからの腫瘍量の25%増加である。それ以外はすべて免疫関連安定疾患(irSD)とみなされる
。ここでの考え方は、たとえ腫瘍量が増加していても、最初の投与から数ヵ月後に免疫系が「始動」し、多くの患者で腫瘍量が最終的に減少する可能性が高いということである。25%の閾値では、この明らかな遅延を考慮することができる。
【0063】
irRCは、免疫チェックポイント阻害剤やその他の免疫療法薬に適用できる。当業者は、減少した動脈増強及び減少した腫瘍密度が減少した生存腫瘍組織(例えば、腫瘍壊死による)の指標である、腫瘍動脈増強の程度及び/又は腫瘍密度の変化のような種々の因子を腫瘍生存組織の指標として考慮し、さらなる応答基準が当該分野において公知であることを理解するであろう。
【0064】
対照的に、がん療法で治療された、がんに罹患しているがん患者又は(対照)被験体は、その療法が、症状の予防又は重篤度の低下のような臨床的に有意なベネフィットをもたらさず、又はがんの進行速度を増加させない場合、そのがん療法に対して「応答しない」、「応答がない」、「負の応答」を有する、又は「非応答」であると考えられる。
【0065】
本明細書中で使用される用語「予後」は、疾患からの回復の可能性、又は疾患の起こり得る発症もしくは結果の予測を意味し、限定されるものではないが、患者の生存、特に全生存期間、患者におけるがんの再発の可能性、及び腫瘍転移の可能性の予測を含む。
【0066】
本明細書で使用される用語「生命予後」は、がんに罹患している患者の死亡の可能性/確率の予測を指す。特に、本明細書で使用される「がんに罹患している患者に生命予後を提供する」という用語は、がんに関して、患者が良好な予後(低い死亡確率)を有するか、又は不良な予後(高い死亡確率)を有するかを決定することを意味する。患者は、好ましくは、がん治療が投与される予定である、投与されている、又は投与された患者である。生命予後は、予測される全生存期間(OS)及び/又は2年又は5年の追跡時の生存と定義することができる。生存の可能性/確率は、0%乃至100%の値で表すことができ、ここで、100%は、指示された期間生存する高い可能性/確率(良好な予後)であり、0%は、指示された期間生存する低い確率/確率(不良な予後)である。表示される期間は、(少なくとも/最大で)3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月(1年)、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、又は10年であり得る。
【0067】
具体的には、良好な生命予後は、ある期間生存する可能性/確率が高いことと関連している。より具体的には、良好な予後を有する患者は、特定の期間生存するために、50%を超える、好ましくは60%を超える、より好ましくは70%を超える、さらにより好ましくは80%を超える、さらに一層より好ましくは90%を超える、又は最も好ましくは95%を超える可能性/確率を有する。一定の期間は、(少なくとも)3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月(1年)、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年の期間であることが好ましい。
【0068】
具体的には、不良な生命予後は、ある期間生存する可能性/確率が低いことと関連している。より具体的には、低予後を有する患者は、特定の期間生存するために50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、さらにより好ましくは20%以下、さらに一層より好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下の可能性/確率を有する。一定の期間は、(多くても)3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月(1年)、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年の期間であることが好ましい。
【0069】
あるいは、がんに罹患している患者は、短い又は長い生存期間を有することが予測される。用語「短い生存期間」、例えば(多くても)3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、又は12ヶ月(1年)は、患者が、前記がんに罹患している(対照)被検体の一般集団において観察される中央値(又は平均)よりも短い生存期間を有することを示す。患者の生存期間が短い
場合、それは患者が「予後不良」であることを意味する。逆に、用語「長い生存期間」、例えば(少なくとも)2年、少なくとも5年、少なくとも8年、又は少なくとも10年は、患者が、前記がんに罹患している(対照)被験体の一般集団において観察される中央値(又は平均)よりも高い生存期間を有することを示す。患者が長い生存期間を有する場合、それは患者が「良好な予後」を有することを意味する。例えば、生存期間が短いと予測される患者は、2年又は5年の追跡調査時にはもはや生存していないが、生存期間が長いと予測される患者は、2年又は5年の追跡調査時には依然として生存している。当業者は、「全生存期間(OS)」時間が、一般に、示された期間の間に特定の型のがんを生存する人々のパーセンテージに基づき、それとして表されることを認識する。がんの統計では、2年又は5年の全生存率が用いられることが多い。具体的な実施態様では、予後が良好な患者は2年又は5年の期間生存する。予後不良の患者は、2年又は5年の期間生存しない。
【0070】
がんに罹患している患者に生命予後を提供する方法は、例えば、治療後の個体の(全又は長期)生存の可能性があるか否かを予測するのに有用な手段である。本方法はまた、がんに罹患している任意の特定の患者に対して最も適切な治療法を選択することによって治療決定を行うために臨床的に使用することができる。治療法は、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン接種療法、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び外科的療法からなる群から選択され得る。
【0071】
カプラン-マイヤー解析は、生存解析に推奨される統計的手法である。これは、研究への加入後の患者の生存時間の分布を解析することによって適用される。解析では、これらを登録後の所定の時点まで生存している患者の割合で表している。グラフでは、生存している患者の割合を時間に対してプロットすると、特徴的な減少(しばしば指数関数的)が見られ、曲線の急峻さは調査中の治療の有効性を示している。生存曲線が浅いほど、治療はより効果的である。カプラン-マイヤー分析は、2つの異なる治療に関連する生存曲線間の差の統計的有意性をテストするために使用することができる。
【0072】
本発明者らは、このような解析により、がんに罹患している患者の生命予後の提供を可能とする新たなmiRNAバイオマーカーを特定した。これらのmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。本発明者らは、当該miRNAが、がん治療を受けたがん患者の生存期間に関する識別因子であることを見出した。これらは、高リスク患者と低リスク患者を階層化/分類することを可能にする予後指標である。
【0073】
用語「PD-L1腫瘍比率スコア(Tumor Proportion Score、TPS)」とは、本明細書中で使用される場合、全ての生存腫瘍細胞中のPD-L1陽性腫瘍細胞のパーセンテージをいう。したがって、PD-L1腫瘍比率スコア(TPS)を決定する場合、PD-L1に対して膜結合型陽性に染色される全ての腫瘍細胞を計数し、腫瘍細胞の総数(陽性腫瘍細胞のパーセンテージ値)で割る。PD-L1のTPSは、治療レジメンの選択における決定基準となる可能性がある。特に、≧50%のPD-L1 TPSを有するがんに罹患している患者の治療レジメンは、<1%未満のPD-L1 TPSを有するがんに罹患している患者の治療レジメン、及び/又は1乃至49%のPD-L1 TPSを有するがんに罹患している患者の治療レジメンとは異なり得る。
【0074】
例えば、IV期のNSCLCのような後期の肺がんでは、<1%のPD-L1 TPSを有する患者は通常、化学療法で治療され、1乃至49%のPD-L1 TPSを有する患者は通常、免疫化学療法で治療される。
【0075】
現在、PD-L1 TPSが50%以上のIV期のNSCLCなどの進行期肺がん患者に対する治療選択肢として、免疫療法と免疫化学療法の両方が推奨されている。免疫作療法に応答しない約60%の患者の一部では、化学療法が免疫作療法の併用により腫瘍を感作させるため、免疫化学療法が有益となる可能性がある。しかし、この追加的な治療負担は、毒性の頻度及び重症度の増加という代償を伴い、患者の約70%にグレード3-4の有害事象が認められた。免疫療法と免疫化学療法のどちらを選択するかは、依然として主に臨床判断に基づいている。考慮される因子には、全身状態、転移部位の数及び疾患の侵攻性が含まれる。しかし、最適な治療法は依然として不明であることが多い。
【0076】
本発明者らは、この問題を解決し、免疫療法ではなく免疫化学療法による治療からベネフィットを得る患者を特定することを可能にする(miRisk)カットオフスコアを定義した。本方法では、患者が本当に必要とする場合には、化学療法と関連する高い身体的ストレスと組み合わせて免疫療法を受けるだけでよい。したがって、この(miRisk)カットオフスコアは、補完的な診断として治療法の決定を可能にする。
【0077】
本明細書中で使用される場合、用語「患者」とは、彼女又は彼ががん治療に応答するか否かを知ることが所望される、がんに罹患している任意の個体をいう。がんに罹患している患者ががん治療に応答するか、又はがん治療に応答しないかを予測することができ得る。患者が、がん治療に応答する患者として特定された場合、患者は、該がん治療に割り当てられる。患者が、がん治療に応答しない患者として特定される場合、患者は、前記がん治療に割り当てられないが、代替のがん治療に割り当てられ得る。
【0078】
本明細書中で使用される場合、用語「患者」はまた、生命予後を知ることが望まれる、がんに罹患している任意の個体をいう。がんに罹患している患者は、良好な又は不良な生命予後を有すると決定され得る。
【0079】
本明細書中で使用される用語「患者」はまた、患者においてがんがどのように発生するかを知ることが望まれる、がんに罹患している任意の個体をいう。この患者は、例えば、縦断的モニタリングの形でモニタリングすることができる。したがって、がんの経過(特に治療後又は治療中)を患者において観察することができる。
【0080】
本明細書中で使用される用語「患者」はまた、患者が免疫療法又は免疫化学療法(すなわち、患者選択/層別化)からベネフィットを得る(可能性がある)か否かを知ることが望まれる、がんに罹患している任意の個体をいう。
【0081】
患者は、ヒト及び他の哺乳動物、例えば、ウサギ、マウス、ラット、又はサルなどの動物の両方を含む任意の哺乳動物であり得る。ヒト患者が特に好ましい。
【0082】
本明細書で使用される用語「(対照)被検体」は、がん治療の既知の応答者又は非応答者であるがんに罹患している個体を指す。本明細書で使用される用語「(対照)被検体」はまた、既知の良好な又は不良な生命予後を有するがんに罹患している個体を指す。(対照)被験体は、ヒト及び他の哺乳動物、例えば、ウサギ、マウス、ラット、又はサルなどの動物。の両方を含む任意の哺乳動物であり得る。ヒト対照被験体が特に好ましい。
【0083】
本明細書で使用される用語「血液サンプル」は、全血又は血液画分を包含する。好ましくは、血液画分は、血球画分、血漿、及び血清からなる群から選択される。特に、血液画分は、血液画分及び血漿又は血清からなる群から選択される。例えば、血液細胞画分は、赤血球、白血球、及び/又は血小板を包含する。より好ましくは、血液細胞画分は白血球の画分である。具体的には、白血球は、骨髄細胞及び/又はリンパ球を包含する。より具体的には、骨髄細胞は、顆粒球、単球、マクロファージ、及び樹状細胞(DC)からなる
群から選択されるか、又はそれらの組み合わせである。血液サンプルは、0.01乃至20mL、より好ましくは0.1乃至10mL、さらにより好ましくは0.5乃至8mL、最も好ましくは1乃至5mLの容量を有することが好ましい。
【0084】
該血液サンプルは、患者又は(対照)被検体から血液を取り出すことによって提供することができるが、予め単離されたサンプルを使用することによって提供することもできる。例えば、血液サンプルは、患者又は(対照)被検体から、従来の採血技術によって採取され得る。
【0085】
該血液サンプルは、さらに、療法的治療の開始前、療法的治療の間、及び/又は療法的治療の後に、患者又は(対照)被検体から得ることができる。血液サンプルが、少なくとも1人の(対照)被検体、例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、400、500、又は1,000人(対照)被検体から得られる場合、それは「参照血液サンプル」と呼ばれる。好ましくは、参照血液サンプルは、検査される患者の血液サンプルと同じ供給源由来であり、例えば、両方とも、全血サンプル又は血球画分である。さらに、両者が同じ種、例えばヒト由来であることが好ましい。また、(代替的又は追加的に)、(対照)被検体の参照血液サンプル及びテストされる患者の血液サンプルの測定が同一であること、例えば、両方が同一の体積を有することが好ましい。参照血液サンプル及び血液サンプルが、同性及び同様の年齢の(対照)被検体/患者由来であることが特に好ましい。
【0086】
全血サンプルは、採血管によって採取することができる。それは、例えば、PAXgene血液RNAチューブ、テンパス血液RNAチューブ、EDTAチューブ、Na-クエン酸塩チューブ、ヘパリンチューブ、又はACDチューブ(酸性クエン酸-デキストロース)に収集される。
【0087】
全血サンプルはまた、例えば、Mitraマイクロサンプリングデバイスを用いる血液スポット技術によって収集され得る。この技術は、より少ないサンプル量、典型的にはヒトについて45乃至60μL又はそれ以下を必要とする。例えば、全血は、針又はランセットで指を刺すことによって、患者から抽出することができる。したがって、全血サンプルは、血液滴の形態を有することができる。次いで、該血液滴は、吸収性プローブ、例えば、全血を吸収することができるセルロースのような親水性ポリマー材料上に置かれる。サンプリングが完了したら、血斑を空気中で乾燥させた後、処理のために実験室に移送又は送付する。血液は乾燥しているので、危険とはみなされない。したがって、取り扱い又は送付において特別な予防措置を講じる必要はない。一旦分析場所に到達すると、所望の成分、例えばmiRNAは、乾燥血液スポットから上清中に抽出され、次いで、さらに分析される。この技術は、自宅で(在宅ケア/自宅サンプリングに基づいて)がんを有する患者をモニタリングするため、又はスクリーニング目的のために適している。
【0088】
本明細書中で使用される用語「骨髄細胞」は、白血球のサブグループをいう。このサブグループには、顆粒球、単球、マクロファージ、及び樹状細胞(DC)が含まれる。言い換えれば、顆粒球、単球、マクロファージ、及び樹状細胞(DC)は、骨髄細胞と総称される。1つの実施態様において、骨髄細胞は、顆粒球、単球、マクロファージ、及び樹状細胞(DC)からなる群から選択されるか、又はそれらの組み合わせである。骨髄細胞は血液及びリンパ系を循環し、腫瘍関連組織損傷を含む組織損傷部位及び様々なケモカイン受容体を介した感染部位に急速に動員される。このように、骨髄細胞は免疫系の重要な武器(arm)であり、一連の病原体に対する自然防御に大きく関与している。骨髄細胞はまた、主に抗原提示と適応免疫細胞の動員を介して、自然免疫と適応免疫を結びつける上で重要な役割を果たしている。上述のように、本発明者らは、生命予後及び応答予測のた
めの新規なmiRNAバイオマーカーを特定した。それらのいくつかは、骨髄細胞に特異的/排他的に存在する。これらのmiRNAは、配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号12、配列番号17、配列番号19、配列番号28、配列番号31、配列番号34、配列番号38、配列番号41乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。上記miRNAは、本明細書において骨髄miRNAとして設計される。
【0089】
本明細書に記載される方法において、miRNAのレベルは、患者の血液サンプル中で決定される。本明細書中で使用される用語「レベル」は、miRNAの量(例えば、グラム、モル、又はイオンカウントで測定される)又は濃度(例えば、絶対濃度又は相対濃度、例えば、100万当たりの読み取り数(RPM)又はNGSカウント)をいう。本明細書中で使用される用語「レベル」はまた、スケーリングされた、正規化された、又はスケーリング及び正規化された量又は値(例えば、RPM)を含む。特に、miRNAのレベルは、配列決定、好ましくは次世代配列決定(例えば、ABI SOLID、Illumina Genome Analyzer、Roche 454 GS FL、BGISEQ)、核酸ハイブリダイゼーション(例えば、マイクロアレイ又はビーズ)、核酸増幅(例えば、PCR、RT-PCR、qRT-PCR、又はハイスループットRT-PCR)、ポリメラーゼ伸長、質量分析、フローサイトメトリー(例えば、ルミネックス)、又はそれらの任意の組合せによって決定される。具体的には、miRNAのレベルは、前記miRNAの発現レベルである。
【0090】
当業者は、本明細書中に記載される多くの実施態様において、決定されたmiRNAレベルが、適切なmiRNA「参照レベル」と比較されることを理解する。具体的には、miRNAのレベルを、該miRNAの参照レベルと比較する。より具体的には、miRNAの参照レベルは、(対照)被検体の血液サンプル中で決定される。さらにより具体的には、参照レベルは、がん治療に対する応答者又は非応答者であることが知られているがんに罹患している被験体由来の多数の参照血液サンプルを測定することによって、又は既知の良好なもしくは不良な生命予後を有するがんに罹患している被検体由来の多数の参照血液サンプルを測定することによって、経験的に決定される。典型的には、当業者によって理解されるように、参照レベルは、患者の血液サンプル中のmiRNAレベルを決定又は分析するために利用される条件に匹敵する条件下で決定される。
【0091】
参照レベルはまた、miRNAのカットオフ又は閾値レベルであり得る。典型的には、カットオフ又は閾値レベルは、実験的、経験的、又は理論的に決定することができる。カットオフ又は閾値レベルは、当業者によって認識されるように、既存の実験条件及び/又は臨床条件に基づいて任意に選択することもできる。カットオフ又は閾値は、検査の機能及びベネフィット/リスクバランス(偽陽性及び偽陰性の臨床的結果)に応じて、最適な感度及び特異度を得るために決定されなければならない。典型的には、最適な感度及び特異度(したがって閾値レベル)は、実験データに基づく受信者動作特性(Receiver Operating Characteristic、ROC)曲線を用いて決定することができる。例えば、参照の群におけるmiRNAレベルを決定した後、テストされるサンプル中の測定されたmiRNAレベルの統計的処理のためにアルゴリズム分析を使用することができ、従って、サンプル分類のために有意性を有する分類標準を得ることができる。ROC曲線の正式名称は受信者動作特性曲線(receiver operator characteristic curve)であり、受信者動作特性曲線(receiver operation characteristic curve)としても知られている。主に臨床バイオマーカー検査に用いられる。ROC曲線は、真陽性率(感度)及び偽陽性率(1-特異度)の連続変数を反映する包括的な指標である。画像合成法による感度と特異度の関係を明らかにした。一連の異なるカットオフ又は閾値レベル
を連続変数として設定し、一連の感度及び特異度値を計算する。次に、感度を垂直座標として使用し、特異度を水平座標として使用して曲線を描く。曲線下面積(AUC)が高いほど、予測/予後/診断の精度が高くなる。ROC曲線上で、座標図のはるか左上に最も近い点は、高い感度と高い特異度の両方の値を有する臨界点である。ROC曲線のAUC値は1.0から0.5の間である。AUC>0.5の場合、予測/予後/診断結果は、AUCが1に近づくにつれてますます良くなる。AUCが0.5から0.7の間の場合、精度は低くなる。AUCが0.7から0.8の間の場合、精度は中程度である。AUCが0.8以上であれば精度は高い。AUCが0.9を超えると、精度は非常に高くなる。
【0092】
本明細書で使用される用語「分類器」は、所与のサンプルを、該サンプルの特定の特徴に基づいて所定のクラスに分類することによって、サンプル間を区別するか、又はサンプルを特徴付けることを可能にする予測/予後モデルを指す。例えば、本明細書中で使用される分類は、未知の応答予測の患者の血液サンプルが、2つの既定のクラスのうちの1つのクラスに属する場合、比較的高い感度及び特異性で予測することができ、各クラスは、予測された推定応答を表す。出力は、0乃至1のいずれかのクラスに属する確率として与えられ得る。本明細書で使用される分類はまた、生命予後が未知の患者の血液サンプルが、2つの所与のクラスのうちの1つのクラスに属する場合、比較的高い感度及び特異性で予測することができ、各クラスは、予測された推定生存を表す。出力は、0乃至1のいずれかのクラスに属する確率として与えられ得る。具体的には、分類器は、がん治療に対する応答者とがん治療に対する非応答者とを区別することを可能にする。分類器はまた、良好な生命予後を有する患者から不良な生命予後を有する患者を区別することを可能にし得る。さらに、分類器はまた、患者が免疫療法又は免疫化学療法に割り当てられるべきか、及び/又はそれで治療されるべきかを区別することを可能にし得る。
【0093】
本明細書中で使用される用語「薬学的有効量」は、所望の応答又は所望の効果を単独で、又はさらなる用量と一緒に達成する量をいう。特定の疾患の治療の場合、所望の応答は、好ましくは疾患の経過の阻害に関する。これは、疾患の進行を遅らせること、特に、疾患の進行を中断又は逆転させることを含む。疾患の治療における所望の応答はまた、疾患の発症の遅延又は発症の予防であり得る。本明細書に記載される有効量は、治療される状態、疾患の重篤度、年齢、生理学的状態、大きさ、及び体重を含む患者の個々のパラメーター、治療期間、付随する治療のタイプ(存在する場合)、特定の投与経路、及び同様の因子に依存する。従って、用量は、種々のこのようなパラメーターに依存し得る。初回投与では患者の応答が不十分な場合には、より高用量(又は、より局所化した別の投与経路で得られる有効な高用量)を使用してもよい。本明細書に記載される疾患は、がん、好ましくは肺がんである。
【0094】
本発明の文脈において、「部品のキット(略して:キット)」という用語は、本明細書で特定される構成要素の少なくともいくつかの任意の組み合わせであると理解され、それらは、空間的に共存し、機能ユニットに結合され、及びそれらはさらなる構成要素を含むことができる。
【0095】
本発明の実施態様
以下、本発明についてさらに説明する。以下の一節では、本発明の様々な態様がより詳細に定義される。このように定義された各態様は、明確に反対のことが示されない限り、他の態様と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示される任意の特徴は、反対のことが明確に示されない限り、好ましい又は有利であると示される任意の他の特徴と組み合わせることができる。
【0096】
本発明者らは、がん治療、特に免疫療法のための全血からの応答及び生存予測miRNAを特定した。これらの新しいmiRNAは、がん疾患における迅速かつ正確な臨床的予
測及び生命予後を可能にする。したがって、前記miRNAは、がん治療、特に免疫療法におけるコンパニオン診断又は相補的診断として使用することができる。さらに、これらの新しいmiRNAは、がんに罹患している患者を選択して、免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを得ることを可能にする。
【0097】
従って、第1態様において、本発明は、がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のmiRNA)のレベルを決定する工程を含むがんに罹患している患者のがん治療に対する応答を予測する(インビトロ)方法に関し、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0098】
具体的には、
(i)配列番号1乃至配列番号44までに従うヌクレオチド配列
(ii)(i)に記載のヌクレオチド配列の断片であるヌクレオチド配列、好ましくは、1乃至12、より好ましくは1乃至8、最も好ましくは1乃至5又は1乃至3の断片であるヌクレオチド配列、例えば、(i)に記載のヌクレオチド配列より短い1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12ヌクレオチド、又は
(iii)(i)に従うヌクレオチド配列又は(ii)に従うヌクレオチド配列断片に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列
を有する該少なくとも1種のmiRNAのレベルが、がんに罹患している患者の血液サンプルで決定される。
【0099】
1つの好ましい実施態様において、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号8、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、もっとさらに好ましくは少なくとも95%又は99%の配列同一性、例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。もう1つの好ましい実施態様において、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、配列番号39、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらに一層より好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。図9は、配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、及び配列番号39に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAの好ましい組合せを示す。少なくとも2種のmiRNAのレベルが決定される場合、該miRNAは、miRNAセット又はシグネチャーとして指定されることに留意すべきである。より好ましくは、miRNAセット又はシグネチャーは、表2に含まれるセット又はシグネチャーである。配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、及び配列番号39に従うヌク
レオチド配列を有するmiRNAの組合せが最も好ましい。
【0100】
該少なくとも1種のmiRNAのレベルは、応答予測に関連するか、又は相関する。
【0101】
1つの実施態様において、該少なくとも1種のmiRNAのレベルは、該少なくとも1種のmiRNAの参照レベルと比較される。
【0102】
特に、該参照レベルは、がん治療に応答しないがんに罹患している被検体由来の多数の参照血液サンプルを測定することによって経験的に決定される少なくとも1種のmiRNAのレベルである。例えば、該参照レベルは、がん治療に応答しないがんに罹患している被検体由来の少なくとも2、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも5000の参照サンプルから決定される。
【0103】
好ましい一実施態様では
該参照レベルより低い、配列番号1乃至配列番号23、配列番号25、配列番号26、配列番号28乃至配列番号35、配列番号37、配列番号39乃至配列番号42、配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば、少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する該少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者が前記がん治療に応答することを示すか、
該参照レベルより高い、配列番号24、配列番号27、配列番号36、配列番号38、配列番号43、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する該少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者が前記がん治療に応答することを示すか、
該参照レベルと同等又はそれ以上の、配列番号1乃至配列番号23、配列番号25、配列番号26、配列番号28乃至配列番号35、配列番号37、配列番号39乃至配列番号42、配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する該少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者が前記がん治療に応答しないことを示すか、又は
該参照レベルと同等又はそれ以下である、配列番号24、配列番号27、配列番号36、配列番号38、配列番号43、それらの断片、ならびにそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する該少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者が前記がん治療に応答しないことを示す。
【0104】
追加的に、又は代替的に、該参照レベルは、前記がん治療に応答するがんに罹患してい
る被検体からの多数の参照血液サンプルを測定することによって経験的に決定される少なくとも1種のmiRNAのレベルである。例えば、該参照レベルは、前記がん治療に対して応答しているがんに罹患している被検体からの少なくとも2、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも5000の参照サンプルから決定される。
【0105】
好ましい一実施態様では、
該参照レベルを上回る、配列番号1乃至配列番号23、配列番号25、配列番号26、配列番号28乃至配列番号35、配列番号37、配列番号39乃至配列番号42、配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する該少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者が前記治療に応答しないことを示すか、
該参照レベル未満である、配列番号24、配列番号27、配列番号36、配列番号38、配列番号43、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する該少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者が前記治療に応答しないことを示すか、
該参照レベルと同等又はそれ以下である、配列番号1乃至配列番号23、配列番号25、配列番号26、配列番号28乃至配列番号35、配列番号37、配列番号39乃至配列番号42、配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば、少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列をからなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する該少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者が前記治療に応答することを示すか、又は
該参照レベルと同等又はそれ以上である、配列番号24、配列番号27、配列番号36、配列番号38、配列番号43、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば、少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する該少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者が前記治療に応答することを示す。
【0106】
分析のために被検体あたり1つの参照血液サンプルを採取することが実施できる。前記参照レベルは、平均参照レベルであってもよい。それは、被検体の該参照レベルを測定し、その「平均」値(例えば、平均、中央値又は最頻値)を計算することによって決定され得る。該参照レベルはまた、1種以上のmiRNAのレベルの加重和(好ましくは、配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、配列番号39、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択される1種以上のmiRNAの加重和)によって決定され得る。参照血液サンプルは、患者の血液サンプルと同じ供給源(例えば、全血又は血液画分)に由来することが好ましい。該参照レベルは、テストされる患者と同じ性別(例えば、女性又は男性)及び/又は類似の年齢/生活段階(例えば、成人又は高齢者)の対照のものであることがさらに好ましい。
【0107】
本発明の文脈において、前記「参照レベル」は、ときには「miRisk」と呼ばれる。
【0108】
例示的な実施態様において、「1以上のRNAのレベルの加重和によって決定された参照レベル」は、以下の式に従って計算される。
miRisk=(log(miR-2115-3p RPM+1)×1.870)+(log(miR-218-5p RPM+1)×0.907)+(log(miR-224-5p RPM+1)×0.495)+(log(miR-4676-3p RPM+1)×1.309)+(log(miR-6503-5p RPM+1)×1.159)
【0109】
miR-2115-3p、miR-218-5p、miR-224-5p、miR-4676-3p、及びmiR-6503-5pのヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号1、39、13、7、及び34として添付の配列表に示されている。
【0110】
特定の実施態様では、このmiRiskスコア閾値を上回るmiRiskスコアを有する被検体は、非応答者であり、このmiRiskスコア閾値を下回るmiRiskスコアを有する被検体は、療法に対する応答者である。
【0111】
特定の例示的実施態様では、miRiskスコア閾値は約-0.139であり、すなわち、miRiskスコアがこのmiRiskスコア閾値を上回る被検体は、非応答者であり、一方、miRiskスコアがこのmiRiskスコア閾値を下回る被検体は、療法に対する応答者である。
【0112】
好ましくは、該少なくとも1種のmiRNAのレベルは、該参照レベルの少なくとも0.6倍又は0.7倍、より好ましくは、少なくとも0.8倍又は0.9倍、さらにより好ましくは、少なくとも1.2倍、1.5倍、又は2.0倍、さらに一層より好ましくは、少なくとも3.0倍又は4.0倍下/上である。例えば、該少なくとも1種のmiRNAのレベルは、該参照レベルの少なくとも0.6倍、少なくとも0.7倍、少なくとも0.8倍、少なくとも0.9倍、少なくとも1.0倍、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2.0倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも2.8倍、少なくとも2.9倍、少なくとも3.0倍、少なくとも3.1倍、少なくとも3.2倍、少なくとも3.3倍、少なくとも3.4倍、少なくとも3.5倍、少なくとも3.6倍、少なくとも3.7倍、少なくとも3.8倍、少なくとも3.9倍、又は少なくとも4.0倍下/上である。
【0113】
「同等」とは、上記のように、好ましくは、レベルが0乃至<20%の間で変化することを意味し、例えば、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、19.9、19.99、又は19.999%である。この点で「同等」とは、具体的には、検出されたレベル変動が測定の精度内にあることを意味する。測定の精度は、使用される測定方法に依存する。
【0114】
1つの代替的な実施態様において、少なくとも1種のmiRNAのレベルは、経験的に決定された(中央値)カットオフスコア、(中央値)カットオフレベル、又は(中央値)閾値レベルと比較される。具体的には、(中央値)カットオフスコアは、1種以上のmiRNAの加重和(好ましくは、配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、配列番号39、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有す
る配列からなる群から選択される種1以上のmiRNAの加重和)によって決定される。より具体的には、(中央値)カットオフスコアは、がん治療に応答する患者又はがん治療に応答しない患者として患者を分類/層別化することを可能にする。具体的な数式については、上記を参照する。
【0115】
もう1つの実施態様において、がん治療は、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン接種療法、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び外科的療法からなる群から選択される。好ましくは、がん治療は、免疫療法又は化学療法である。
【0116】
より好ましくは、免疫療法は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。さらにより好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。より好ましくは、化学療法は、少なくとも1種の化学療法剤の投与を伴う。さらにより好ましくは、少なくとも1種の化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、フォリン酸、葉酸拮抗薬、有糸分裂阻害剤、アントラサイクリン、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、シグナル変換阻害剤、血管形成の阻害剤、及びヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤からなる群から選択される。
【0117】
1つの追加的又は代替的な実施態様において、がんは、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン接種治療、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び/又は外科的療法の対象であるがんである。好ましくは、がんは、免疫療法、化学療法、又は免疫化学療法の対象である。
【0118】
より好ましくは、免疫療法の対象であるがんは、免疫チェックポイント阻害/免疫チェックポイント療法に感受性である。さらに一層より好ましくは、免疫チェックポイント阻害は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。さらに一層より好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。あるいは、がんはPD-L1発現がんである。より好ましくは、化学療法の対象であるがんは、化学療法剤に感受性である。さらにより好ましくは、化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、フォリン酸、葉酸拮抗薬、有糸分裂阻害剤、アントラサイクリン、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、シグナル変換阻害剤、血管形成の阻害剤、及びヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤からなる群から選択される。
【0119】
具体的には、がんは、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、鼻咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝がん、卵巣がん、食道がん、膵がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパ系がん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択される。より具体的には、がんは、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、及び膀胱がんからなる群から選択され、該がんは免疫療法の対象である。
【0120】
患者ががん療法に応答することが明らかになった場合、患者をがん療法に割り当て、その後、該がん療法で治療することができる。
【0121】
1つのより好ましい実施態様において、本方法は、免疫療法に対するがんに罹患している患者の応答を予測し、該方法は、がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のmiRNA)のレベルを決定する工程を含み、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0122】
好ましくは、免疫療法は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。より好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、該少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0123】
さらにより好ましい一実施態様では、本方法は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う免疫療法に対するがんに罹患している患者の応答を予測し、該方法は:がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のmiRNA)のレベルを決定する工程を含み、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0124】
さらに一層より好ましい一実施態様では、本方法は、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、又は膀胱がんに罹患している患者の免疫療法に対する応答を予測するものであり、本方法は肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、又は膀胱がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のmiRNA)のレベルを決定する工程を含み、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、
例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0125】
好ましくは、免疫療法は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。より好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0126】
最も好ましい一実施態様では、本方法は、肺がん、特に非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、又は膀胱がんに罹患している患者の、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う免疫療法に対する応答を予測し、本方法は、肺がん、特に非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、又は膀胱がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のmiRNA)のレベルを決定する工程を含み、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0127】
好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0128】
本発明のmiRNAバイオマーカーは、免疫療法におけるPD-L1バイオマーカーの代替バイオマーカーとして使用することができる。PD-L1は、免疫チェックポイント阻害剤に対する応答のバイオマーカーである。本発明の実験データは、本発明のmiRNAバイオマーカーが、免疫療法、特に免疫チェックポイント阻害剤に対する肺がんに罹患している患者の応答を予測することを可能にすることを示している。本発明のmiRNAバイオマーカーは、PD-L1バイオマーカーを補完することもできる。PD-1阻害剤クラスにおける免疫療法に対する応答予測の中心は、腫瘍PD-L1発現の定量化である。しかし、それでも陽性応答を達成するのは患者の約30%にすぎない。本発明のmiRNAバイオマーカーと先行技術で知られているPD-L1バイオマーカーとの併用は、30%の値を改善/増加させる可能性がある。
【0129】
別の態様では、本発明は、少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含む、がんに罹患している患者のがん治療に対する応答を予測する方法に関し、ここで該少なくとも1種のmiRNAは、骨髄細胞において特異的に生じる。
【0130】
骨髄細胞は、白血球のサブグループである。骨髄細胞は、顆粒球、単球、マクロファージ、及び樹状細胞(DC)を包含する。具体的には、骨髄細胞は、顆粒球、単球、マクロファージ、及び樹状細胞(DC)からなる群から選択されるか、又はそれらの組み合わせ
/混合物である。
【0131】
好ましくは、少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15のmiRNA)のレベルは、がんに罹患している患者の血液サンプルにおいて決定され、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号12、配列番号17、配列番号19、配列番号28、配列番号31、配列番号34、配列番号38、配列番号41乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらに一層より好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。その他の好ましい実施態様については、本発明の第1態様を参照する。
【0132】
第2態様において、本発明は、がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のmiRNA)のレベルを決定する工程を含む、がんに罹患している患者に生命予後を提供する(インビトロ)方法に関し、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0133】
具体的には、
(i)配列番号1乃至配列番号44までに従うヌクレオチド配列、
(ii)(i)に記載のヌクレオチド配列の断片、好ましくは、1乃至12、より好ましくは1乃至8、最も好ましくは1乃至5又は1乃至3の断片であるヌクレオチド配列、例えば、(i)に記載のヌクレオチド配列より短い1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12であるヌクレオチド配列、又は
(iii)(i)に従うヌクレオチド配列又は(ii)に従うヌクレオチド配列断片に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列
を有する該少なくとも1種のmiRNAのレベルが、がんに罹患している患者の血液サンプルで決定される。
【0134】
1つの好ましい実施態様において、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号8、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらに一層より好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。もう1つの好ましい実施態様において、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、配列番号39、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらに一層より好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチ
ド配列を有する。図9は、配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、及び配列番号39に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAの好ましい組合せを示す。少なくとも2種のmiRNAのレベルが決定される場合、該miRNAは、miRNAセット又はシグネチャーとして指定されることに留意すべきである。より好ましくは、miRNAセット又はシグネチャーは、表2に含まれるセット又はシグネチャーである。配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、及び配列番号39に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAの組合せが最も好ましい。
【0135】
該少なくとも1種のmiRNAのレベルは、生命予後と関連するか、又は相関する。
【0136】
1つの実施態様において、該少なくとも1種のmiRNAのレベルは、該少なくとも1種のmiRNAの該参照レベルと比較される。
【0137】
特に、該参照レベルは、既知の不良な生命予後を有するがんに罹患している被検体からの多数の参照血液サンプルを測定することによって経験的に決定された少なくとも1種のmiRNAのレベルである。例えば、該参照レベルは、既知の不良な生命予後を有するがんに罹患している被検体からの少なくとも2、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも5000の参照サンプルから決定される。
【0138】
一つの好ましい実施態様では
該参照レベルより低い、配列番号1乃至配列番号23、配列番号25、配列番号26、配列番号28乃至配列番号35、配列番号37、配列番号39乃至配列番号42、配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者が良好な生命予後を有することを示し、
該参照レベルより高い、配列番号24、配列番号27、配列番号36、配列番号38、配列番号43、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する少なくとも1種のmiRNAにレベルは、患者が良好な生命予後を有することを示し、
該参照レベルと同等又はそれ以上である、配列番号1乃至配列番号23、配列番号25、配列番号26、配列番号28乃至配列番号35、配列番号37、配列番号39乃至配列番号42、配列番号44、それらの断片、及びそれらに対し少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば、少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者の生命予後が不良であることを示し、
該参照レベルと同等又はそれ以下である、配列番号24、配列番号27、配列番号36、配列番号38、配列番号43、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば、少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99
%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者が不良な生命予後を有することを示す。
【0139】
追加的に、又は代替的に、該参照レベルは、既知の良好な生命予後を有するがんに罹患している被検体由来の多数の参照血液サンプルを測定することによって経験的に決定される少なくとも1種のmiRNAのレベルである。例えば、該参照レベルは、既知の良好な生命予後を有するがんに罹患している被検体由来の少なくとも2、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも5000の参照サンプルから決定される。
【0140】
一つの好ましい実施態様では
該参照レベルより高い、配列番号1乃至配列番号23、配列番号25、配列番号26、配列番号28乃至配列番号35、配列番号37、配列番号39乃至配列番号42、配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば、少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者が不良な生命予後を有することを示すか、
該参照レベル未満である、配列番号24、配列番号27、配列番号36、配列番号38、配列番号43、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば、少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者の生命予後が不良であることを示すか、
該参照レベルと同等又はそれ以下である、配列番号1乃至配列番号23、配列番号25、配列番号26、配列番号28乃至配列番号35、配列番号37、配列番号39乃至配列番号42、配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば、少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者が良好な生命予後を有することを示すか、又は
該参照レベルと同等又はそれ以上である、配列番号24、配列番号27、配列番号36、配列番号38、配列番号43、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば、少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する少なくとも1種のmiRNAにレベルは、患者が良好な生命予後を有することを示す。
【0141】
分析のために被検体ごとに1つの参照血液サンプルを採取することが実施できる。前記参照レベルは、平均参照レベルであってもよい。それは、被検体の参照レベルを測定し、その「平均」値(例えば、平均、中央値又は最頻値)を計算することによって決定され得る。該参照レベルはまた、1種以上のmiRNAのレベルの加重和(好ましくは、配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、配列番号39、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択される1種以上のmiRNAの加重和)によって決定され得る。参照血液サンプルは、患者の血液サ
ンプルと同じ供給源(例えば、全血又は血液画分)に由来することが好ましい。該参照レベルは、テストされる患者と同じ性別(例えば、女性又は男性)及び/又は類似の年齢/生活段階(例えば、成人又は高齢者)の被検体のものであることがさらに好ましい。
【0142】
本発明の文脈において、前記「参照レベル」は、ときには「miRisk」と呼ばれる。
【0143】
例示的な実施態様において、「1以上のRNAのレベルの加重和によって決定された参照レベル」は、以下の式に従って計算される。
miRisk=(log(miR-2115-3p RPM+1)×1.870)+(log(miR-218-5p RPM+1)×0.907)+(log(miR-224-5p RPM+1)×0.495)+(log(miR-4676-3p RPM+1)×1.309)+(log(miR-6503-5p RPM+1)×1.159)
【0144】
miR-2115-3p、miR-218-5p、miR-224-5p、miR-4676-3p、及びmiR-6503-5pのヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号1、39、13、7、及び34として添付の配列表に示されている。
【0145】
特定の実施態様において、このmiRiskスコア閾値を上回るmiRiskスコアを有する被験体は、不良な生命予後を有し、このmiRiskスコア閾値を下回るmiRiskスコアを有する被験体は、良好な生命予後を有する。
【0146】
特定の例示的実施態様では、該miRiskスコアは約-0.139であり、すなわち、該miRiskスコアがこのmiRiskスコア閾値を上回る被検体は、不良な生命予後を有し、一方、miRiskスコアがこのmiRiskスコア閾値を下回る被検体は、良好な生命予後を有する。
【0147】
好ましくは、少なくとも1種のmiRNAのレベルは、該参照レベルの少なくとも0.6倍又は0.7倍、より好ましくは、少なくとも0.8倍又は0.9倍、さらにより好ましくは、少なくとも1.2倍、1.5倍、又は2.0倍、さらに一層より好ましくは、少なくとも3.0倍又は4.0倍下/上である。例えば、該少なくとも1種のmiRNAのレベルは、該参照レベルの少なくとも0.6倍、少なくとも0.7倍、少なくとも0.8倍、少なくとも0.9倍、少なくとも1.0倍、少なくとも1.1倍、少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.4倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.6倍、少なくとも1.7倍、少なくとも1.8倍、少なくとも1.9倍、少なくとも2.0倍、少なくとも2.1倍、少なくとも2.2倍、少なくとも2.3倍、少なくとも2.4倍、少なくとも2.5倍、少なくとも2.6倍、少なくとも2.7倍、少なくとも2.8倍、少なくとも2.9倍、少なくとも3.0倍、少なくとも3.1倍、少なくとも3.2倍、少なくとも3.3倍、少なくとも3.4倍、少なくとも3.5倍、少なくとも3.6倍、少なくとも3.7倍、少なくとも3.8倍、少なくとも3.9倍、又は少なくとも4.0倍下/上である。
【0148】
「同等」とは、上記のように、好ましくは、レベルが0乃至<20%の間で変化することを意味し、例えば、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、19.9、19.99、又は19.999%である。この点で「同等」とは、具体的には、検出されたレベル変動が測定の精度内にあることを意味する。測定の精度は、使用される測定方法に依存する。
【0149】
1つの代替的な実施態様において、少なくとも1種のmiRNAのレベルは、経験的に
決定された(中央値)カットオフスコア、(中央値)カットオフレベル、又は(中央値)閾値レベルと比較される。具体的には、(中央値)カットオフスコアは、1種以上のmiRNAの加重和(好ましくは、配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、配列番号39、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択される1種以上のmiRNAの加重和)によって決定される。より具体的には、(中央値)カットオフスコアにより、患者を良好又は不良な生命予後を有するものとして分類することができる。具体的な数式については、上記を参照。
【0150】
具体的には、良好な生命予後は、一定の期間生存する可能性/確率が高いことと関連しているか、又は不良な生命予後は、一定の期間生存する可能性/確率が低いことと関連している。
【0151】
具体的には
良好な予後を有する患者は、一定の期間生存するために、50%を超える、好ましくは60%を超える、より好ましくは70%を超える、さらにより好ましくは80%を超える、さらに一層より好ましくは90%を超える、又は最も好ましくは95%を超える可能性/確率を有するか、又は低予後な患者が一定の期間生存する確率は50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下、さらに一層より好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下である。
【0152】
より具体的には、一定の期間は、(少なくとも/多くても)3か月、6か月、9か月、12か月(1年)、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、又は10年の期間である。
【0153】
例えば、良好な予後を有する患者は、(少なくとも)3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月(1年)、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、又は10年の期間生存するために、50%を超える、好ましくは60%を超える、より好ましくは70%を超える、さらにより好ましくは80%を超える、さらに一層より好ましくは90%を超える、又は最も好ましくは95%を超える可能性/確率を有するか、又は低予後を有する患者は、(多くても)3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月(1年)、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、又は10年の期間生存するために、50%以下、好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満、さらにより好ましくは20%未満、さらに一層より好ましくは10%未満、及び最も好ましくは5%未満の可能性/確率を有する。
【0154】
生命予後は、2年又は5年追跡時の予測生存と定義され得る。例えば、良好な生命予後を有する患者は、2年又は5年の追跡調査時に依然として生存しているが、不良な生命予後を有する患者は、2年又は5年の追跡調査時にもはや生存していない。
【0155】
もう1つの態様において、患者は、がん治療が投与される予定である、投与されている又は投与された患者である。好ましくは、患者は、未治療のがん患者である。患者が良好な生命予後を有することが明らかになった場合、患者をがん治療に割り当て、その後、該がん治療で治療することができる。好ましくは、がん治療は、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン接種療法、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び外科的療法からなる群から選択される。より好ましくは、がん治療は、免疫療法又は化学療法である。
【0156】
さらにより好ましくは、免疫療法は、該少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。さらに一層より好ましくは、該少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。
具体的には、該少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0157】
さらにより好ましくは、化学療法は、少なくとも1種の化学療法剤の投与を伴う。さらに一層より好ましくは、該少なくとも1種の化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、フォリン酸、葉酸拮抗薬、有糸分裂阻害剤、アントラサイクリン、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、シグナル変換阻害剤、血管形成の阻害剤、及びヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤からなる群から選択される。
【0158】
1つの追加的又は代替的な実施態様において、がんは、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン接種治療、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び/又は外科的療法の対象であるがんである。好ましくは、がんは、免疫療法、化学療法、又は免疫化学療法の対象である。
【0159】
より好ましくは、免疫療法の対象であるがんは、免疫チェックポイント阻害/免疫チェックポイント療法に感受性である。さらに一層より好ましくは、免疫チェックポイント阻害は、該少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。さらに一層より好ましくは、該少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、該少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。あるいは、がんはPD-L1発現がんである。
【0160】
より好ましくは、化学療法の対象であるがんは、化学療法剤に感受性である。さらにより好ましくは、化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、フォリン酸、葉酸拮抗薬、有糸分裂阻害剤、アントラサイクリン、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、シグナル変換阻害剤、血管形成の阻害剤、及びヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤からなる群から選択される。
【0161】
具体的には、がんは、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、鼻咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝がん、卵巣がん、食道がん、膵がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパ系がん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択される。より具体的には、がんは、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、及び膀胱がんからなる群から選択される。該がんは免疫療法の対象である。
【0162】
1つのより好ましい実施態様において、本方法は、がんに罹患している患者に生命予後を提供し、該方法はがんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のmiRNA)のレベルを決定する工程を含み、
ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対し少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択
されるヌクレオチド配列を有し、
ここで、患者は、免疫療法が投与される予定である、投与されている、又は投与されたことがある患者である。
【0163】
好ましくは、免疫療法は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。より好ましくは、該少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、該少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0164】
さらにより好ましい一実施態様では、本方法は、がんに罹患している患者に生命予後を提供し、該方法はがんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のmiRNA)のレベルを決定する工程を含み、
ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有し、
ここで、患者は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う免疫療法が投与される、投与されている、又は投与されたことがある患者である。
【0165】
好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0166】
さらに一層より好ましい一実施態様では、本方法は、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、又は膀胱がんに罹患している患者に生命予後を提供し、前記方法は肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、又は膀胱がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のmiRNA)のレベルを決定する工程を含み、
ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至歯配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有し、
ここで、患者は、免疫療法が投与される予定である、投与されている、又は投与されたことがある患者である。好ましくは、免疫療法は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。より好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73
及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0167】
最も好ましい一実施態様では、本方法は、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、又は膀胱がんに罹患している患者に生命予後を提供し、本方法は肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、又は膀胱がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のmiRNA)のレベルを決定する工程を含み、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有し、
ここで、患者は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う免疫療法が投与される、投与されている、又は投与されたことがある患者である。
【0168】
好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0169】
本発明のmiRNAバイオマーカーは、免疫療法におけるPD-L1バイオマーカーの代替バイオマーカーとして使用することができる。本発明の実験データは、本発明のmiRNAバイオマーカーが、免疫療法、特に免疫チェックポイント阻害剤を受けた肺がんに罹患している患者の生命予後を作成することを可能にすることを示している。本発明のmiRNAバイオマーカーは、PD-L1バイオマーカーを補完することもできる。
【0170】
別の態様では、本発明は、少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含む、がんに罹患している患者に生命予後を提供する方法に関し、ここで、少なくともmiRNAは、骨髄細胞において特異的に/排他的に生じる。
【0171】
骨髄細胞は白血球のサブグループである。骨髄細胞は、顆粒球、単球、マクロファージ、及び樹状細胞(DC)を包含する。具体的には、骨髄細胞は、顆粒球、単球、マクロファージ、及び樹状細胞(DC)からなる群から選択されるか、又はそれらの組合せ/混合物である。
【0172】
好ましくは、少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15のmiRNA)のレベルは、がんに罹患している患者の血液サンプルにおいて決定され、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号12、配列番号17、配列番号19、配列番号28、配列番号31、配列番号34、配列番号38、配列番号41乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、ささらに一層より好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、
85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。その他の好ましい実施態様については、本発明の第2態様を参照する。
【0173】
第3態様において、本発明は、がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含む、患者のがん治療における副作用を予測する(インビトロ)方法に関し、
該少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のmiRNA)が、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0174】
具体的には、
(i)配列番号1乃至配列番号44に従うヌクレオチド配列、
(ii)(i)に記載のヌクレオチド配列の断片であるヌクレオチド配列、好ましくは、(i)に記載のヌクレオチド配列より短い、1乃至12、より好ましくは1乃至8、最も好ましくは1乃至5又は1乃至3、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12である断片であるヌクレオチド配列、又は
(iv)(i)に従うヌクレオチド配列もしくは(ii)に従うヌクレオチド配列断片に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列、
を有する少なくとも1種のmiRNAのレベルが、がんに罹患している患者の血液サンプルで決定される。
【0175】
1つの好ましい実施態様において、少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号8、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらに一層より好ましくは少なくとも95%又は99%の配列同一性、例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。もう1つの好ましい実施態様において、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、配列番号39、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらに一層より好ましくは少なくとも95%又は99%の配列同一性(例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%)を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。図9は、配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、及び配列番号39に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAの好ましい組合せを示す。少なくとも2種のmiRNAのレベルが決定される場合、該miRNAは、miRNAセット又はシグネチャーと呼ばれることに留意すべきである。より好ましくは、miRNAセット又はシグネチャーは、表2に含まれるセット又はシグネチャーである。配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、及び配列番号39に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAの組み合わせが最も好ましい。
【0176】
該少なくとも1種のmiRNAのレベルは、がん治療中に副作用が生じる確率と関連している。
【0177】
1つの実施態様において、少なくとも1種のmiRNAのレベルは、経験的に決定された(中央値)カットオフスコア、(中央値)カットオフレベル、又は(中央値)閾値レベルと比較される。具体的には、(中央値)カットオフスコアは、1種以上のmiRNAのレベルの加重和(好ましくは、配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、配列番号39、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択される1種以上のmiRNAの加重和)によって決定される。より具体的には、(中央値)カットオフスコアは、患者を副作用に罹患しない患者、又は副作用に罹患する患者に分類することを可能にする。
【0178】
本発明の文脈において、前記「基準レベル」又は「カットオフスコア」は、「miRisk」と呼ばれることがある。
【0179】
例示的な実施態様において、「1以上のRNAのレベルの加重和」は、以下の式に従って計算される。
miRisk=(log(miR-2115-3p RPM+1)×1.870)+(log(miR-218-5p RPM+1)×0.907)+(log(miR-224-5p RPM+1)×0.495)+(log(miR-4676-3p RPM+1)×1.309)+(log(miR-6503-5p RPM+1)×1.159)
【0180】
miR-2115-3p、miR-218-5p、miR-224-5p、miR-4676-3p、及びmiR-6503-5pのヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号1、39、13、7、及び34として添付の配列表に示されている。
【0181】
特定の実施態様において、このmiRiskスコア閾値は、患者を、副作用に罹患しない患者又は副作用に罹患する患者として分類することを可能にする。
【0182】
特定の例示的な実施態様において、miRiskスコア閾値は、約-0.139である;すなわち、このmiRiskスコア閾値は、患者を、副作用に罹患しない患者、又は副作用に罹患する患者として分類することを可能にする。
特に、副作用は、免疫関連の有害事象である。より具体的には、副作用、特に免疫関連の有害事象は、内分泌障害、皮膚炎、結腸炎、リウマチ性多発筋痛症(polymyaglia rheumatica、PMR)、下垂体炎、筋炎、甲状腺炎、肺炎、多発性関節炎、肝炎、漿膜炎、甲状腺機能低下、関節炎、サイノビアルタイド(synovialitides)、及び乾せんからなる群から選択される。
【0183】
もう1つの態様において、がん治療は、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン接種療法、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び外科的療法からなる群から選択される。好ましくは、がん治療は、免疫療法又は化学療法である。
【0184】
より好ましくは、免疫療法は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。さらにより好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0185】
さらに好ましくは、少なくとも1種の化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、フォリン酸、葉酸拮抗薬、有糸分裂阻害剤、アントラサイクリン、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、シグナル変換阻害剤、血管形成の阻害剤、及びヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤からなる群から選択される。
【0186】
患者はがんに罹患している患者である。1つのさらなる又は代替の実施態様において、がんは、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン接種療法、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び/又は外科的療法の対象であるがんである。好ましくは、がんは免疫療法、化学療法又は免疫化学療法の対象である。より好ましくは、免疫療法の対象であるがんは、免疫チェックポイント阻害/免疫チェックポイント療法に感受性である。さらに一層より好ましくは、免疫チェックポイント阻害は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。さらに一層より好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。あるいは、がんはPD-L1発現がんである。あるいは、がんはPD-L1発現がんである。
【0187】
より好ましくは、化学療法の対象であるがんは、化学療法剤に感受性である。さらにより好ましくは、化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、フォリン酸、葉酸拮抗薬、有糸分裂阻害剤、アントラサイクリン、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、シグナル変換阻害剤、血管形成の阻害剤、及びヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤からなる群から選択される。
【0188】
具体的には、がんは、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、鼻咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝がん、卵巣がん、食道がん、膵がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパ系がん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択される。
より具体的には、がんは、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、及び膀胱がんからなる群から選択され、該がんは免疫療法の対象である。
【0189】
より好ましい一実施態様では、本方法は、患者の免疫療法における副作用を予測するものであり、本方法は、がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含み、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。好ましくは、免疫療法は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。より好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0190】
さらにより好ましい一実施態様では、本方法は、患者の少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与に伴う免疫療法における副作用を予測し、本方法は、がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のmiRNA)のレベルを決定する工程を含み、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0191】
好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0192】
さらに一層より好ましい一実施態様において、本方法は、患者の免疫療法における副作用を予測するものであり、該方法は、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、又は膀胱がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含み、ここで、該少なくとも1種のmiRNAが、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0193】
好ましくは、免疫療法は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。より好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0194】
1つの最も好ましい実施態様において、本方法は、患者の少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与に伴う免疫療法における副作用を予測し、該方法は、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、又は膀胱がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含み、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0195】
好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイ
ント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0196】
上記の副作用は、特に免疫関連の有害事象である。より具体的には、副作用、特に免疫関連の有害事象は、内分泌障害、皮膚炎、結腸炎、リウマチ性多発筋症(PMR)、下垂体炎、筋炎、甲状腺炎、肺炎、多発性関節炎、肝炎、漿膜炎、甲状腺機能低下、関節炎、サイノビアルタイド(synovialitides)、及び乾せんからなる群から選択される。
【0197】
別の態様では、本発明は、少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含む、患者のがん治療における副作用を予測する方法に関し、ここで、少なくともmiRNAは、骨髄細胞において特異的に/排他的に生じる。
【0198】
骨髄細胞は、白血球のサブグループであり、顆粒球、単球、マクロファージ、及び樹状細胞(DC)を包含する。具体的には、骨髄細胞は、顆粒球、単球、マクロファージ、及び樹状細胞(DC)からなる群から選択されるか、又はそれらの組み合わせ/混合物である。
【0199】
好ましくは、少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15のmiRNA)のレベルは、がんに罹患している患者の血液サンプルにおいて決定され、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号12、配列番号17、配列番号19、配列番号28、配列番号31、配列番号34、配列番号38、配列番号41乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらに一層より好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
その他の好ましい実施態様については、本発明の第3態様を参照する。
【0200】
第4態様において、本発明は、がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含む、がんに罹患している患者をモニタリングする(インビトロ)方法に関し、
該少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のmiRNA)は、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
本方法は、患者におけるがんの経過を決定することを可能にする。
【0201】
具体的には、
(i)配列番号1乃至配列番号44までに従うヌクレオチド配列、
(ii)(i)に記載のヌクレオチド配列の断片であるヌクレオチド配列、好ましくは、(i)に記載のヌクレオチド配列より短い、1乃至12、より好ましくは1乃至8、最も
好ましくは1乃至5又は1乃至3、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12ヌクレオチドである断片であるヌクレオチド配列、又は
(v)(i)に従うヌクレオチド配列又は(ii)に従うヌクレオチド配列断片に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列、
を有する少なくとも1種のmiRNAのレベルが、がんに罹患している患者の血液サンプルで決定される。
【0202】
1つの好ましい実施態様において、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号8、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらに一層より好ましくは少なくとも95%又は99%の配列同一性、例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。もう1つの好ましい実施態様において、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、配列番号39、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらに一層より好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。図9は、配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、及び配列番号39に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAの好ましい組合せを示す。少なくとも2種のmiRNAのレベルが決定される場合、該miRNAは、miRNAセット又はシグネチャーと呼ばれることに留意すべきである。より好ましくは、miRNAセット又はシグネチャーは、表2に含まれるセット又はシグネチャーである。配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、及び配列番号39に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAの組合せが最も好ましい。
【0203】
1つの実施態様において、該少なくとも1種のmiRNAのレベルは、該少なくとも1種のmiRNAの該参照レベルと比較される。
【0204】
この比較により、患者におけるがんの経過を決定することができる。がんが患者において悪化するか、がんが患者において悪化しない/安定しているか、又はがんが患者において改善するかを決定することができる。
【0205】
該参照レベルは、患者におけるがんの経過を決定することを可能にする任意のレベルであり得る。それは、(対照)被験体(すなわち、健康な被験体及び/又はがんを有する被験体のようなテストされる患者とは異なる被験体)又は同じ患者から得ることができる。後者の場合、個体は、例えば、縦断的モニタリングの形態でがんについて再テストすることができる。個体が依然としてがん疾患に罹患しているか、又はもはやがん疾患に罹患していないと決定することができる。
【0206】
本発明の文脈において、前記「基準レベル」は、「miRisk」と呼ばれることがある。
【0207】
例示的な実施態様において、基準レベルは、以下の式に従って計算することができる。
miRisk=(log(miR-2115-3p RPM+1)×1.870)+(log(miR-218-5p RPM+1)×0.907)+(log(miR-22
4-5p RPM+1)×0.495)+(log(miR-4676-3p RPM+1)×1.309)+(log(miR-6503-5p RPM+1)×1.159)。
【0208】
miR-2115-3p、miR-218-5p、miR-224-5p、miR-4676-3p、及びmiR-6503-5pのヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号1、39、13、7、及び34として添付の配列表に示されている。
【0209】
1つの特定の実施態様において、このmiRiskスコア閾値は、がんが患者において悪化するか、がんが患者において悪化しない/安定しているか、又はがんが患者において改善するかを決定することを可能にし得る。
【0210】
特定の例示的な実施態様では、miRiskスコア閾値は約-0.139である。このmiRiskスコア閾値は、がんが患者において悪化するか、がんが患者において悪化しない/安定しているか、又はがんが患者において改善するかを決定することを可能にし得る。
【0211】
特に、該参照レベルは、がんに罹患している被検体からの多数の参照血液サンプルを測定することによって経験的に決定される少なくとも1種のmiRNAのレベルである。例えば、該参照レベルは、がんに罹患している被検体からの少なくとも2、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも5000の参照サンプルから決定される。
【0212】
もう1つの実施態様において、前記決定は、第1の時点でのがんに罹患している患者の血液サンプル中の、および後の時点での(同じ患者の)少なくとも1つのさらなる血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定し、異なる時点で決定された前記レベルを比較することを含む。この比較により、患者におけるがんの経過を決定することができる。がんが患者において悪化するか、がんが患者において悪化しない/安定しているか、またはがんが患者において改善するかを決定することができる。
【0213】
第1の時点と後の時点との間の期間は、好ましくは、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日(1週間)、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも1ヶ月、または少なくとも2ヶ月である。例えば、患者は、例えば毎日または1週間に1回、定期的に検査されてもよい。患者は、第2、3、4、5、6、7、8、9、または10の時点(第1の時点およびさらなる時点)で(再)検査されてもよい。
【0214】
患者におけるがんの経過の決定に加えて、患者のがん治療をモニターすることができる。それゆえ、1つの好ましい態様において、患者は、該がん治療を受けている、受けた、又は受けていたことがある患者である。
【0215】
例えば、患者は、完全な決定/モニタリングプロセス(例えば、薬物又は薬剤の投与)の間に治療を受けてもよいし、第1の時点(例えば、薬物又は薬剤の投与)の前、その時点、又はその後に治療を受けてもよく、後の時点で再検査されてもよい。特に、前記第1の時点は、治療の開始前であってもよく、前記後の時点は、治療中及び/又は治療後であってもよい。治療が薬物又は薬剤の投与を包含し、患者が前記治療に応答する場合、薬物又は薬剤の投与を継続してもよく、薬物又は薬剤の用量を減らしてもよく、又は薬物又は薬剤の投与を停止してもよい。治療が薬物又は薬剤の投与を包含し、患者が該治療に応答しない場合、薬物又は薬剤の用量を増加させてもよく、薬物又は薬剤を変更してもよく、
又は治療様式を変更してもよく、例えば、免疫療法を化学療法に変更してもよい。薬物又は薬剤は、免疫チェックポイント阻害剤又は化学療法剤であり得る。
【0216】
好ましくは、がん治療は、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン接種療法、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び外科的療法からなる群から選択される。より好ましくは、がん治療は、免疫療法又は化学療法である。
【0217】
さらにより好ましくは、免疫療法は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。さらに一層より好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0218】
さらにより好ましくは、化学療法は、少なくとも1種の化学療法剤の投与を伴う。
さらに一層より好ましくは、少なくとも1種の化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、フォリン酸、葉酸拮抗薬、有糸分裂阻害剤、アントラサイクリン、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、シグナル変換阻害剤、血管形成の阻害剤、及びヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤からなる群から選択される。
【0219】
1つの追加的な又は代替的な実施態様において、がんは、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン接種治療、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び/又は外科的療法の対象であるがんである。好ましくは、がんは、免疫療法、化学療法、又は免疫化学療法の対象である。
【0220】
より好ましくは、免疫療法の対象であるがんは、免疫チェックポイント阻害/免疫チェックポイント療法に感受性である。さらにより好ましくは、免疫チェックポイント阻害は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。さらに一層より好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。あるいは、がんは、PD-L1発現がんである。
【0221】
さらに好ましくは、化学療法の対象であるがんは、化学療法剤に感受性である。さらにより好ましくは、化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、フォリン酸、葉酸拮抗薬、有糸分裂阻害剤、アントラサイクリン、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、シグナル変換阻害剤、血管形成の阻害剤、およびヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤からなる群から選択される。
【0222】
具体的には、がんは、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、鼻咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝がん、卵巣がん、食道がん、膵がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパ系がん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択される。
より具体的には、がんは、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、及び膀胱がんからなる群から選択され、該がんは免疫療法の対象である。
【0223】
1つのより好ましい実施態様において、本方法は、がんに罹患している患者をモニタリングするためのものであり、該方法は
(i)第1の時点におけるがんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベル、及び後の時点における(同じ患者の)少なくとも1つのさらなる血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程、及び
(ii)異なる時点で決定された前記レベルを比較する工程
を含み、
ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有し、及び
ここで、患者は、前記がんの免疫療法を受けている、受けた、又は受けていたことがある。
【0224】
好ましくは、免疫療法は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。より好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0225】
さらにより好ましい一実施態様において、本方法は、がんに罹患している患者をモニタリングするためのものであり、該方法は
(i)第1の時点におけるがんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベル、及び後の時点における(同じ患者の)少なくとも1つのさらなる血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程、及び
(ii)異なる時点で決定された前記レベルを比較する工程
を含み、
ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有し、及び
ここで、患者は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与と共に、前記がんの免疫療法を受けている、受けた、又は受けていたことがある。
【0226】
好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0227】
さらに一層より好ましい一実施態様では、本方法は、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、又は膀胱がんに罹患している患者をモニタリングするためのものであり、本方法は、
(i)肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん
又は膀胱がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを、第1の時点で決定し、その後の時点で(同じ患者の)少なくとも1つのさらなる血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程、及び
(ii)異なる時点で決定された前記レベルを比較する工程
を含み、
ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有し、及び
ここで、患者は、前記がんの免疫療法を受けている、受けた、又は受けたことがある。
【0228】
好ましくは、免疫療法は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。より好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0229】
最も好ましい一実施態様では、本方法は、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、又は膀胱がんに罹患している患者をモニタリングするためのものであり、本方法は、
(i)肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん又は膀胱がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを、第1の時点で決定し、その後の時点で(同じ患者の)少なくとも1つのさらなる血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程、及び
(ii)異なる時点で決定された前記レベルを比較する工程
を含み、
ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有し、及び
ここで、患者は、該がんの少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う免疫療法を受けている、受けた、又は受けていたことがある。
【0230】
好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0231】
したがって、上記の方法は、がん治療の効果の証拠のための疾患状態の連続的な評価を可能にする。
【0232】
別の態様では、本発明は、少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含む、がんに罹患している患者をモニタリングする方法に関し、ここで、少なくともmiRNAは、骨髄細胞において特異的に/排他的に生じる。
骨髄細胞は白血球のサブグループであり、顆粒球、単球、マクロファージ、及び樹状細胞(DC)を包含する。具体的には、骨髄細胞は、顆粒球、単球、マクロファージ、及び樹状細胞(DC)からなる群から選択されるか、又はそれらの組み合わせである。
好ましくは、少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15のmiRNA)のレベルは、がんに罹患している患者の血液サンプルにおいて決定され、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号12、配列番号17、配列番号19、配列番号28、配列番号31、配列番号34、配列番号38、配列番号41乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらに一層より好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
その他の好ましい実施態様については、本発明の第4態様を参照する。
【0233】
第1乃至第4態様の方法において、血液サンプルは、好ましくは、全血又は血液画分である。特に、血液画分は、血液細胞画分及び血漿又は血清からなる群から選択される。より好ましくは、血液画分は、血液細胞画分、血漿、及び血清からなる群から選択される。血液細胞画分は、赤血球、白血球、及び/又は血小板を含み得る。さらにより好ましくは、血液細胞画分は、白血球の画分である。具体的には、白血球は、骨髄細胞及び/又はリンパ球である。より具体的には、骨髄細胞は、顆粒球、単球、マクロファージ、及び樹状細胞(DC)からなる群から選択されるか、又はそれらの組み合わせである。
【0234】
第1乃至第4態様の方法において、レベルは、好ましくは配列決定、より好ましくは次世代配列決定、核酸ハイブリダイゼーション、核酸増幅、ポリメラーゼ伸長、質量分析、又はそれらの任意の組合せによって決定される。具体的には、レベルは発現レベルである。
【0235】
第5態様において、本発明は、
(i)第1態様に係る方法を実施することにより、がん治療に応答する患者を特定する工程、第2態様に係る方法を実施することにより、生命予後が良好な患者を特定する工程、又は第3態様に係る方法を実施することにより、がん治療において副作用が生じない患者を特定する工程、及び
(ii)患者を(当該)がん治療に割り当てる工程
を含む、がんに罹患している患者を治療するか否かを決定する(インビトロ)方法に関する。
【0236】
1つの実施態様において、がん治療は、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン接種療法、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び外科的療法からなる群から選択される。
【0237】
好ましくは、がん治療は免疫療法又は化学療法である。
より好ましくは、免疫療法は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。さらにより好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0238】
さらに好ましくは、少なくとも1種の化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、フォリン酸、葉酸拮抗薬、有糸分裂阻害剤、アントラサイクリン、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、シグナル変換阻害剤、血管形成の阻害剤、及びヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤からなる群から選択される。
【0239】
1つの追加的又は代替的な実施態様において、がんは、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン接種治療、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び/又は外科的療法の対象であるがんである。好ましくは、がんは、免疫療法、化学療法、又は免疫化学療法の対象である。
【0240】
より好ましくは、免疫療法の対象であるがんは、免疫チェックポイント阻害/免疫チェックポイント療法に感受性である。さらにより好ましくは、免疫チェックポイント阻害は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。さらに一層より好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。あるいは、がんは、PD-L1発現がんである。
【0241】
さらに好ましくは、化学療法の対象であるがんは、化学療法剤に感受性である。さらにより好ましくは、化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、フォリン酸、葉酸拮抗薬、有糸分裂阻害剤、アントラサイクリン、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、シグナル変換阻害剤、血管形成の阻害剤、およびヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤からなる群から選択される。
【0242】
具体的には、がんは、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、鼻咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝がん、卵巣がん、食道がん、膵がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパ系がん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択される。
より具体的には、がんは、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、及び膀胱がんからなる群から選択され、該がんは免疫療法の対象である。
【0243】
患者をがん療法に割り当てた後、患者は最終的に該がん療法で治療される。
【0244】
より好ましい一実施態様において、本方法は、がんに罹患している患者を治療するか否かを決定するためのものであり、本方法は
(i)第1態様に係る方法を実施することにより、免疫療法に応答する患者を特定する工程、第2態様に係る方法を実施することにより、生命予後が良好な患者を特定する工程、又は第3態様に係る方法を実施することにより、免疫療法において副作用が生じない患者を特定する工程、及び
(ii)患者を(当該)免疫療法に割り当てる工程
を含む。
好ましくは、免疫療法は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。より好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1
種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0245】
さらにより好ましい一実施態様において、本方法は、がんに罹患している患者を治療するか否かを決定するためのものであり、本方法は
(i)第1態様に係る方法を実施することにより、患者を、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う免疫療法に応答する患者として特定する工程、第2態様に係る方法を実施することにより、患者を、良好な生命予後を有する患者として特定する工程、又は第3態様に係る方法を実施することにより、患者を、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う免疫療法において副作用が生じない患者として特定する工程、及び
(ii)患者を(当該)免疫療法に割り当てる工程、
を含む。
好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0246】
さらに一層より好ましい一実施態様では、本方法は、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、又は膀胱がんに罹患している患者を治療するか否かを決定するためのものであり、本方法は、
(i)第1態様に係る方法を実施することにより、免疫療法に応答する患者を特定する工程、第2態様に係る方法を実施することにより、生命予後が良好な患者を特定する工程、又は第3態様に係る方法を実施することにより、免疫療法において副作用が生じない患者を特定する工程、及び
(ii)患者を(当該)免疫療法に割り当てる工程、
を含む。
好ましくは、免疫療法は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。より好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0247】
最も好ましい一実施態様では、本方法は、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、又は膀胱がんに罹患している患者を治療するか否かを決定するためのものであり、本方法は、
(i)第1態様に係る方法を実施することにより、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う免疫療法に応答する患者を特定する工程、又は第3態様に係る方法を実施することにより、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う免疫療法において副作用が生じない患者を特定する工程、及び
(ii)患者を前記免疫療法に割り当てる工程、
を含む。
好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0248】
第6態様において、本発明は、がんに罹患している患者のがん治療に対する応答を予測するための、少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のmiRNA)、又は該少なくとも1種のmiRNAの検出を可能にするポリヌクレオチドの(インビトロ)使用に関し、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対し少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0249】
第7態様において、本発明は、がんに罹患している患者に生命予後を提供するための、少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のmiRNA)、又は該少なくとも1種のmiRNAの検出を可能にするポリヌクレオチドの(インビトロ)使用に関し、ここで、該少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のmiRNA)は、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対し少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0250】
第8態様において、本発明は、患者のがん治療における副作用を予測するための、少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のmiRNA)又は該少なくとも1種のmiRNAの検出を可能にするポリヌクレオチドの(インビトロ)使用に関し、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対し少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0251】
第9態様において、本発明は、がんに罹患している患者をモニタリングするための、該少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のmiRNA)、又は該少なくとも1種のmiRNAの検出を可能にするポリヌクレオチドの(インビトロ)使用に関し、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対し少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくと
も90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0252】
第10態様において、本発明は、がんに罹患している患者を治療するか否かを決定するための、該少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、又は44のmiRNA)、又は該少なくとも1種のmiRNAの検出を可能にするポリヌクレオチドの(インビトロ)使用に関し、ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対し少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
【0253】
第7乃至第10態様については、以下のことが適用される。
1つの実施態様において、がん治療は、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン接種療法、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び外科的療法からなる群から選択される。好ましくは、がん治療は免疫療法又は化学療法である。
より好ましくは、免疫療法は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。さらにより好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0254】
より好ましくは、化学療法は、少なくとも1種の化学療法剤の投与を伴う。さらにより好ましくは、少なくとも1種の化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、フォリン酸、葉酸拮抗薬、有糸分裂阻害剤、アントラサイクリン、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、シグナル変換阻害剤、血管形成の阻害剤、及びヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤からなる群から選択される。
【0255】
1つの追加的又は代替的な実施態様において、がんは、免疫療法、化学療法、放射線療法、ワクチン接種治療、幹細胞療法、抗ホルモン療法、免疫抑制療法、抗体療法、及び/又は外科的療法の対象であるがんである。好ましくは、がんは、免疫療法、化学療法、又は免疫化学療法の対象である。
【0256】
より好ましくは、免疫療法の対象であるがんは、免疫チェックポイント阻害/免疫チェックポイント療法に感受性である。さらにより好ましくは、免疫チェックポイント阻害は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。さらに一層より好ましくは、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4、LAG3、TIGIT、CD73及び内因性チェックポイント遮断を標的とする阻害剤からなる群から選択される。具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。あるいは、がんは、PD-L1発現がんである。
【0257】
より好ましくは、化学療法の対象であるがんは、化学療法剤に感受性である。さらによ
り好ましくは、化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、フォリン酸、葉酸拮抗薬、有糸分裂阻害剤、アントラサイクリン、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、シグナル変換阻害剤、血管形成の阻害剤、およびヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤からなる群から選択される。
【0258】
具体的には、がんは、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、鼻咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝がん、卵巣がん、食道がん、膵がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパ系がん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択される。
より具体的には、がんは、肺がん、好ましくは非小細胞肺がん(NSCLC)、乳がん、子宮頸がん、胃がん、及び膀胱がんからなる群から選択される。該がんは免疫療法の対象である。
【0259】
ポリヌクレオチドは、プライマー(例えば、プライマープローブ)又はポリヌクレオチドプローブであり得る。
【0260】
好ましくは、該少なくとも1種のmiRNA(のレベル)は、がんに罹患している患者の血液サンプルにおいて検出/決定される。血液サンプルの好ましい実施態様については、本発明の第1乃至第4態様が参照される。
【0261】
第11態様において、本発明は、がんに罹患している患者のがん治療に対する応答を予測するため、がんに罹患している患者に生命予後を提供するため、患者のがん治療における副作用を予測するため、がんに罹患している患者をモニタリングするため、又はがんに罹患している患者を治療するか否かを決定するためのキット(の(インビトロでの)使用)に関し、該キットは、配列番号1乃至配列番号44、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する該少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定するための手段を含む。
【0262】
具体的には、本発明のキットは、
(i)配列番号1乃至配列番号44までに従うヌクレオチド配列、
(ii)(i)に記載のヌクレオチド配列の断片であるヌクレオチド配列、好ましくは、1乃至12、より好ましくは1乃至8、最も好ましくは1乃至5又は1乃至3の断片であるヌクレオチド配列、例えば、(i)に記載のヌクレオチド配列より短い1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12ヌクレオチド、又は
(vi)(i)に記載のヌクレオチド配列又は(ii)に記載のヌクレオチド配列断片に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列、
を有する少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定するための手段を含む。
1つの好ましい実施態様において、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1乃至配列番号8、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらに一層より好ましくは少なくとも95%又は99%の配列同一性、例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
もう1つの好ましい実施態様において、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1
、配列番号7、配列番号13、配列番号34、配列番号39、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、さらに一層より好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する。
図9は、配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、及び配列番号39に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAの好ましい組合せを示す。
少なくとも2種のmiRNAのレベルが決定される場合、該miRNAは、miRNAセット又はシグネチャーと呼ばれることに留意すべきである。より好ましくは、miRNAセット又はシグネチャーは、表2に含まれるセット又はシグネチャーである。配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、及び配列番号39に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAの組み合わせが最も好ましい。
【0263】
より具体的には、本発明のキットは
次世代シークエンシング(NGS)を実施するための手段、
該少なくとも1種のmiRNAを検出するための少なくとも1種のポリヌクレオチド(プローブ)、
該少なくとも1種のmiRNAに結合するための少なくとも1種のプライマー(例えば、プライマーペア)、及び/又は
前記少なくとも1種のポリヌクレオチド(プローブ)及び前記少なくとも1種のmiRNAのハイブリッドに結合することができる少なくとも1種の抗体、
を含む。
【0264】
該手段は、がんに罹患している患者の血液サンプル中の該少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定することを可能にし、従って、がんに罹患している患者のがん治療に対する応答を予測し、がんに罹患している患者に生命予後を提供し、患者のがん治療における副作用を予測し、がんに罹患している患者をモニターし、又はがんに罹患している患者を治療するか否かを決定することを可能にする。
【0265】
少なくとも1種のポリヌクレオチド(プローブ)は、マイクロアレイ/バイオチップの一部であってもよく、又はビーズベースの多重システムのビーズに結合されてもよい。少なくとも1種のポリヌクレオチド(プライマー、プライマーペア)は、RT-PCRシステム、PCR-システム、又は次世代配列決定システムの一部であり得る。
前記手段はさらに、マイクロアレイ、RT-PCTシステム、PCRシステム、フローサイトメーター、ルミネックス(Luminex)システム、及び/又は次世代配列決定システムを含むことができ得る。
【0266】
好ましくは、該少なくとも1種のmiRNA(のレベル)は、がんに罹患している患者の血液サンプルにおいて検出/決定される。血液サンプルの好ましい実施態様については、本発明の第1乃至第4態様が参照される。
【0267】
さらにより具体的には、キットは、特にがんに罹患している患者由来の組織サンプルなどの生物学的サンプル中のPD-L1のレベルを決定するための手段を含む。前記手段は、PD-L1特異的であるポリヌクレオチド(プローブ)、プライマー(例えば、プライマーペア)、及び/又は抗体を包含し得る。
【0268】
本発明のキットはさらに
(iii)容器、及び/又は
(iv)データキャリア
を含み得る。
【0269】
データキャリアは、非電子データキャリア、例えば、情報リーフレット、情報シート、バーコード、又はアクセスコードなどのグラフィカルデータキャリア、あるいは、フロッピーディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、マイクロチップ、又は別の半導体ベースの電子データキャリアなどの電子データキャリアであってもよい。アクセスコードは、データベース、例えば、インターネットデータベース、集中型データベース、又は分散型データベースへのアクセスを可能にすることができる。アクセスコードはまた、コンピュータにコンピュータユーザのためのタスクを実行させるアプリケーションソフトウェア、又はスマートフォン及び他のモバイルデバイス上で動作するように設計されたソフトウェアであるモバイルアプリへのアクセスを可能にし得る。
【0270】
前記データキャリアは、少なくとも1つの参照、例えば、本明細書で決定された該少なくとも1種のmiRNAのレベルの該参照レベル又はカットオフスコアをさらに含み得る。データキャリアが、データベースへのアクセスを可能にするアクセスコードを含む場合、前記少なくとも1つの参照、例えば、該参照レベル又はカットオフスコアは、このデータベースに格納されてもよい。データキャリアはまた、本発明の第1乃至第5態様による方法を実施する方法に関する情報又は命令を含んでもよい。
【0271】
キットはまた、上述のレベルを決定するための緩衝液、試薬及び/又は希釈剤を含む、商業的及び使用者の観点から望ましい材料を含み得る。
【0272】
第1乃至第11態様において、がんに罹患している患者は、哺乳動物、特にヒトであることが好ましい。
【0273】
上記の全ての態様において、配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、及び配列番号39に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAの組合せが最も好ましい。
【0274】
免疫療法は、多くのがんの標準治療に革命をもたらしている。しかし、現在の重要な限界は、信頼できる有効性バイオマーカーがないことである。例えば、高レベルのPD-L1を発現している進行期NSCLC(PD-L1腫瘍比率スコア(TPS)≧50%)では、免疫療法単独又は免疫療法と化学療法の併用が主要な国際ガイドラインで治療選択肢として推奨されている。それにもかかわらず、個々の患者における理想的な治療選択に関しては依然として不確実性がある。本発明者らは、免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを得るためにがんに罹患している患者を選択することを可能にする新規なmiRNAを特定した。
【0275】
従って、第12態様において、本発明は、がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、又は5種のmiRNA)のレベルを決定する工程を含む、免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを得る(可能性が高い)がんに罹患している患者を選択する(インビトロ)方法に関し、
ここで、該少なくとも1種のmiRNA(例えば、1、2、3、4、又は5個のmiRNA)は、配列番号1(miR-2115-3p)、配列番号39(miR-218-5p)、配列番号13(miR-224-5p)、配列番号7(miR-4676-3p)、配列番号34(miR-6503-5p)、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列であり、及び
ここで、患者は、随意に≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)を有する。
【0276】
≧50%のPD-L1 TPSを有する患者には、EGFR変異、BRAF V660e変異、ALK転座及び/又はROS-1転座等のがん遺伝子活性化変異がないことが望ましい。
【0277】
さらに(代替的又は追加的に)、がんが免疫化学療法又は免疫療法の対象であることが好ましい。免疫化学療法の対象であるがんは、免疫療法薬及び化学療法剤に感受性である。免疫療法の対象であるがんは、免疫療法薬に感受性である。
【0278】
具体的には、免疫療法の対象であるがんは、免疫チェックポイント阻害に感受性である。より具体的には、免疫チェックポイント阻害は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。さらにより具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0279】
がんが、肺がん、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、鼻咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝臓がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパがん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択されることも(代替的に又は追加的に)好ましい。
【0280】
がんは、肺がん、乳がん、子宮頸がん、胃がん、皮膚がん、及び膀胱がんからなる群から選択されることがより好ましい。該がんは、免疫化学療法又は免疫療法の対象である。
肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)であることがさらにより好ましい。
【0281】
非小細胞肺がん(NSCLC)は、後期NSCLCであることがさらに一層より好ましい。後期NSCLCは、IV期のNSCLCであることが最も好ましい。
【0282】
1つの実施態様において、該少なくとも1種のmiRNAのレベルは、(miRisk)カットオフスコアと比較される。(miRisk)カットオフスコアは、患者を、免疫化学療法からベネフィットを得る(可能性が高い)患者、又は免疫化学療法もしくは免疫療法からベネフィットを得る(可能性が高い)患者として分類/選択することを可能にする。
【0283】
好ましくは、(miRisk)カットオフスコアより高い少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者が免疫化学療法からベネフィットを得る(可能性が高い)ことを示すか、又は(miRisk)カットオフ値以下の少なくとも1種のmiRNAのレベルは、患者が免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを得る(可能性が高い)ことを示す。
【0284】
1つの代替的な実施態様において、本方法は、配列番号1(miR-2115-3p)、配列番号39(miR-218-5p)、配列番号13(miR-224-5p)、配列番号7(miR-4676-3p)、配列番号34(miR-6503-5p)、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、95%又は99%、例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、又は5種のmiRNAの加重
レベルを要約することによって、(miRisk)スコアを決定する工程をさらに含む。
【0285】
特に、(miRisk)スコアは、配列番号1(miR-2115-3p)、配列番号39(miR-218-5p)、配列番号13(miR-224-5p)、配列番号7(miR-4676-3p)、及び配列番号34(miR-6503-5p)からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する5種のmiRNAの加重レベルを要約することによって決定される。
【0286】
好ましくは、(miRisk)スコアは、次式により算出される。
(miRisk)スコア=(ln(配列番号1(miR-2115-3p)RPM+1)×2.190467)+(ln(配列番号:39(miR-218-5p)RPM+1)×0.303095)+(ln(配列番号:13(miR-224-5p)RPM+1)×0.598415)+(ln(配列番号:7(miR-4676-3p)RPM+1)×1.101122)+(ln(配列番号:34(miR-6503-5p)RPM+1)×0.958823)
式中、RPMは100万回当たりの読み取り数を意味する。
【0287】
この点に関して、配列番号1に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-2115-3pであり、配列番号39に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-218-5pであり、配列番号13に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-224-5pであり、配列番号7に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-4676-3pであり、配列番号34に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-6503-5pであることに留意されるべきである。
【0288】
より好ましくは、上記で定義された(miRisk)スコアは、(miRisk)カットオフスコアと比較される。
【0289】
さらにより好ましくは、(miRisk)カットオフスコアは約-0.073である。
【0290】
さらに一層より好ましくは、
(miRisk)スコア>約-0.073は、患者が免疫化学療法からベネフィットを得る(可能性が高い)ことを示すか、又は(miRisk)スコア≦約-0.073は、患者が免疫化学療法もしくは免疫治療からベネフィットを得る(可能性が高い)ことを示す。
【0291】
がんに罹患している患者は、哺乳動物、特にヒトであることが好ましい。
【0292】
血液サンプルの好ましい実施態様については、本発明の第1乃至第11態様を参照する。
【0293】
第13態様において、本発明は、
(i)第12態様に係る方法を実施することにより、患者を免疫化学療法又は免疫療法のベネフィットを受ける(可能性のある)患者として特定する工程、及び
(ii)患者を当該療法に割り当てる工程、
を含む、がんに罹患している患者を免疫化学療法又は免疫療法で治療するか否かを決定する(インビトロ)方法に関する。
【0294】
上述のように、(miRisk)スコア>約-0.073を有する患者は、免疫化学療法からベネフィットを得る(可能性が高い)であろうし、前記治療に割り当てられる。あるいは、(miRisk)スコア≦約-0.073を有する患者は、免疫化学療法又は免
疫療法からベネフィットを得る(可能性が高い)であろうし、該治療の1つに割り当てられる。この場合、免疫療法は、化学療法と併用する免疫療法よりも患者への治療負担が少ないため、通常選択される。
【0295】
好ましくは、免疫療法薬は、PD-1/PD-L1を標的とする阻害剤である。より好ましくは、PD-1/PD-L1を標的とする阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択される。
【0296】
好ましくは、化学療法剤はプラチナダブレットである。
【0297】
例えば、免疫療法薬は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択され、及び/又は化学療法薬は、プラチナダブレットである。
【0298】
他の免疫療法薬又は化学療法剤に関しては、本発明の第1乃至第11態様に言及する。
【0299】
がんに罹患している患者は、哺乳動物、特にヒトであることが好ましい。
【0300】
さらなる態様において、本発明は、
(i)第12態様に記載の方法を実施することにより、患者を免疫化学療法又は免疫療法のベネフィットを受ける(可能性のある)患者として特定する工程、及び
(ii)該療法で患者を治療する工程
を含む、免疫化学療法又は免疫療法によってがんに罹患している患者を治療する方法に関する。
【0301】
上述のように、(miRisk)スコア>約-0.073を有する患者は、免疫化学療法からベネフィットを得る(可能性が高い)であろうし、その後、前記療法で治療される。あるいは、(miRisk)スコア≦約-0.073を有する患者は、免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを得る(可能性が高い)であろうし、前記療法の1つで治療される。この場合、免疫療法は、化学療法と併用する免疫療法よりも患者への治療負担が少ないため、通常選択される。
【0302】
好ましくは、免疫療法薬は、PD-1/PD-L1を標的とする阻害剤である。より好ましくは、PD-1/PD-L1を標的とする阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択される。
【0303】
好ましくは、化学療法剤はプラチナダブレットである。
【0304】
例えば、免疫療法薬は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択され、及び/又は化学療法薬は、プラチナダブレットである。
【0305】
他の免疫療法薬又は化学療法剤に関しては、本発明の第1乃至第11態様に言及する。
【0306】
がんに罹患している患者は、哺乳動物、特にヒトであることが好ましい。
【0307】
第14態様において、本発明は、免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを得る(可能性が高い)がんに罹患している患者を選択するためのキット(の(インビトロでの)使用)に関し、該キットは、がんに罹患している患者の血液サンプル中で、配列番号1(miR-2115-3p)、配列番号39(miR-218-5p)、配列番号13(m
iR-224-5p)、配列番号7(miR-4676-3p)、配列番号34(miR-6503-5p)、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定するための手段を含み、ここで、該患者は、随意で、≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)を有する。
【0308】
≧50%のPD-L1 TPSを有する患者は、EGFR変異、BRAF V660e変異、ALK転座及び/又はROS-1転座等のがん遺伝子活性化変異がないことが望ましい。
【0309】
さらに(代替的又は追加的に)、がんが免疫化学療法又は免疫療法の対象であることが好ましい。免疫化学療法の対象であるがんは、免疫療法薬及び化学療法剤に感受性である。免疫療法の対象であるがんは、免疫療法薬に感受性である。
【0310】
具体的には、免疫療法の対象であるがんは、免疫チェックポイント阻害剤に感受性である。より具体的には、免疫チェックポイント阻害は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。さらにより具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0311】
がんが、肺がん、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、鼻咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝臓がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパがん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択されることも(代替的に又は追加的に)好ましい。
【0312】
がんは、肺がん、乳がん、子宮頸がん、胃がん、皮膚がん、及び膀胱がんからなる群から選択されることがより好ましい。該がんは、免疫化学療法又は免疫療法の対象である。肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)であることがさらにより好ましい。
【0313】
非小細胞肺がん(NSCLC)は、後期NSCLCであることがさらに一層より好ましい。後期NSCLCは、IV期のNSCLCであることが最も好ましい。
【0314】
上述のように、本キットは、がんに罹患している患者の血液サンプル中で、配列番号1(miR-2115-3p)、配列番号39(miR-218-5p)、配列番号13(miR-224-5p)、配列番号7(miR-4676-3p)、配列番号34(miR-6503-5p)、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%又は99%、例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する少なくとも1種のmiRNAを、決定するための手段を含む。
【0315】
具体的には、キットは
次世代シークエンシング(NGS)を実施するための手段、
該少なくとも1種のmiRNAを検出するための少なくとも1種のポリヌクレオチド(プローブ)、
該少なくとも1種のmiRNAに結合するための少なくとも1種のプライマー(例えば、プライマーペア)、及び/又は
前記少なくとも1種のポリヌクレオチド(プローブ)及び該少なくとも1種のmiRNAのハイブリッドに結合することができる少なくとも1種の抗体
を含む。
【0316】
該手段は、がんに罹患している患者の血中サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定することを可能にし、従って、免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを得る(可能性が高い)がんに罹患している患者を選択することを可能にする。
【0317】
該少なくとも1種のポリヌクレオチド(プローブ)は、マイクロアレイ/バイオチップの一部であってもよく、又はビーズベースの多重システムのビーズに結合されてもよい。少なくとも1種のポリヌクレオチド(プライマー、プライマーペア)は、RT-PCRシステム、PCR-システム、又は次世代配列決定システムの一部であり得る。
【0318】
前記手段はさらに、マイクロアレイ、RT-PCTシステム、PCRシステム、フローサイトメーター、Luminexシステム、及び/又は次世代配列決定システムを含み得る。
【0319】
上述のように、該少なくとも1種のmiRNA(のレベル)は、がんに罹患している患者の血液サンプル中で検出/決定される。血液サンプルの好ましい実施態様については、本発明の第1乃至第11態様が参照される。
【0320】
より具体的には、キットは、特に、がんに罹患している患者由来の生物学的サンプル(例えば、組織サンプル)におけるPD-L1のレベルを決定するための手段を含む。前記手段は、PD-L1特異的であるポリヌクレオチド(プローブ)、プライマー(例えば、プライマーペア)、及び/又は抗体を包含し得る。
【0321】
より具体的には、本キットは本発明の第12態様の方法を実施するために有用である。
【0322】
本キットは、本発明の第12態様に記載の方法を実施する方法についての説明書を含んでもよい。
【0323】
本キットは、さらに、容器、及び/又はデータキャリアを含み得る。
【0324】
データキャリアは、非電子データキャリア、例えば、情報リーフレット、情報シート、バーコード、又はアクセスコードなどのグラフィカルデータキャリア、あるいは、フロッピーディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、マイクロチップ、又は別の半導体ベースの電子データキャリアなどの電子データキャリアであってもよい。アクセスコードは、データベース、例えば、インターネットデータベース、集中型データベース、又は分散型データベースへのアクセスを可能にすることができる。アクセスコードはまた、コンピュータにコンピュータユーザのためのタスクを実行させるアプリケーションソフトウェア、又はスマートフォン及び他のモバイルデバイス上で動作するように設計されたソフトウェアであるモバイルアプリへのアクセスを可能にすることができる。
【0325】
前記データキャリアは、(miRisk)カットオフスコアをさらに含むことができる。データキャリアがデータベースへのアクセスを可能にするアクセスコードを含む場合、
前記(miRisk)カットオフスコアは、このデータベースに蓄積されてもよい。
【0326】
データキャリアはまた、本発明の第12態様による方法を実施する方法についての情報又は命令を含んでもよい。
【0327】
本キットはまた、上記のレベルを決定するための緩衝液、試薬及び/又は希釈剤を含む、商業的及び使用者の観点から望ましい材料を含み得る。
【0328】
がんに罹患している患者は、哺乳動物、特にヒトであることが好ましい。
【0329】
第15態様において、本発明は、化学療法剤と組み合わせて、患者におけるがん治療において使用するための免疫療法薬に関し、
ここで、患者は、≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)、及び
以下の式に従って計算される(miRisk)スコア>約-0.073を有する。
(miRisk)スコア=(ln(配列番号1(miR-2115-3p)RPM+1)×2.190467)+(ln(配列番号39(miR-218-5p)RPM+1)×0.303095)+(ln(配列番号13(miR-224-5p)RPM+1)×0.598415)+(ln(配列番号7(miR-4676-3p)RPM+1)×1.101122)+(ln(配列番号34(miR-6503-5p)RPM+1)×0.958823)
【0330】
この点に関して、配列番号1に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-2115-3pであり、配列番号39に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-218-5pであり、配列番号13に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-224-5pであり、配列番号7に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-4676-3pであり、配列番号34に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-6503-5pであることに留意すべきである。
【0331】
特に、(miRisk)スコアは、患者の血液サンプル中で決定される。好ましい血液サンプルについては、本発明の第1乃至第11態様が参照される。
【0332】
≧50%のPD-L1のTPSを有する患者は、がん遺伝子活性化変異がないことが望ましい。このようながん遺伝子活性化突然変異は、EGFR突然変異、BRAF V660e突然変異、ALK転座、及び/又はROS-1転座であり得る。
【0333】
さらに(代替的又は追加的に)、がんが免疫化学療法又は免疫療法の対象であることが好ましい。免疫化学療法の対象であるがんは、免疫療法薬及び化学療法剤に感受性である。免疫療法の対象であるがんは、免疫療法薬に感受性である。
具体的には、免疫療法の対象であるがんは、免疫チェックポイント阻害に感受性である。より具体的には、免疫チェックポイント阻害は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。さらにより具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0334】
がんが、肺がん、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、鼻咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝臓がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパがん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択されるこ
とも(代替的に又は追加的に)好ましい。
【0335】
がんは、肺がん、乳がん、子宮頸がん、胃がん、皮膚がん、および膀胱がんからなる群から選択されることがより好ましい。該がんは、免疫化学療法または免疫療法の対象である。肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)であることがさらにより好ましい。
【0336】
非小細胞肺がん(NSCLC)が後期NSCLCであることがさらに一層より好ましく、後期NSCLCがIV期のNSCLCであることが最も好ましい。
【0337】
具体的には、免疫療法薬は、PD-1/PD-L1を標的とする阻害剤である。より詳細には、PD-1/PD-L1を標的とする阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択される。
【0338】
具体的には、併用される化学療法剤はプラチナダブレットである。
【0339】
例えば、免疫療法薬は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択され、及び化学療法薬は、プラチナダブレットである。
【0340】
他の免疫療法薬又は化学療法剤に関しては、本発明の第1乃至第11態様が参照される。
【0341】
組合せの成分、すなわち、免疫療法薬及び化学療法剤は、一緒に、又は互いに独立して(例えば、次々に)投与され得る。
【0342】
がんに罹患している患者は、哺乳動物、特にヒトであることが好ましい。
【0343】
本発明のこの態様は、以下のように表現することもできる:
第15態様において、本発明は、化学療法剤と組み合わせた、がん治療のための薬剤の製造のための免疫療法薬の使用に関し、
ここで、患者は≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)、及び以下の式に従って計算された(miRisk)>約-0.073スコアを有する。
(miRisk)スコア=(ln(配列番号1(miR-2115-3p)RPM+1)×2.190467)+(ln(配列番号39(miR-218-5p)RPM+1)×0.303095)+(ln(配列番号13(miR-224-5p)RPM+1)×0.598415)+(ln(配列番号7(miR-4676-3p)RPM+1)×1.101122)+(ln(配列番号34(miR-6503-5p)RPM+1)×0.958823)
【0344】
あるいは、本発明は、第15態様において、
(i)患者の血液サンプルにおいて、以下の式に従って計算された(miRisk)スコア>約-0.073を決定する工程:
(miRisk)スコア=(ln(配列番号1(miR-2115-3p)RPM+1)×2.190467)+(ln(配列番号39(miR-218-5p)RPM+1)×0.303095)+(ln(配列番号13(miR-224-5p)RPM+1)×0.598415)+(ln(配列番号7(miR-4676-3p)RPM+1)×1.101122)+(ln(配列番号34(miR-6503-5p)RPM+1)×0.958823)、
及び
(ii)化学療法剤と組み合わせて免疫療法薬(の有効量)を、それを必要とする患者に
投与する工程
を含む、患者においてがんを治療するための方法に関し、
ここで、該患者は≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)を有する。
【0345】
第16態様において、本発明は、免疫療法薬と組み合わせて、患者におけるがん治療において使用するための化学療法剤に関し、
ここで、患者は
≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)、及び
以下の式に従って計算される(miRisk)スコア>約-0.073を有する。
(miRisk)スコア=(ln(配列番号1(miR-2115-3p)RPM+1)×2.190467)+(ln(配列番号39(miR-218-5p)RPM+1)×0.303095)+(ln(配列番号13(miR-224-5p)RPM+1)×0.598415)+(ln(配列番号7(miR-4676-3p)RPM+1)×1.101122)+(ln(配列番号34(miR-6503-5p)RPM+1)×0.958823)
【0346】
この点に関して、配列番号1に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-2115-3pであり、配列番号39に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-218-5pであり、配列番号13に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-224-5pであり、配列番号7に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-4676-3pであり、配列番号34に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-6503-5pであることに留意すべきである。
【0347】
特に、(miRisk)スコアは、患者の血液サンプル中で決定される。好ましい血液サンプルについては、本発明の第1乃至第11態様が参照される。
【0348】
≧50%のPD-L1 TPSを有する患者は、EGFR変異、BRAF V660e変異、ALK転座及び/又はROS-1転座等のがん遺伝子活性化変異がないことが望ましい。
【0349】
さらに(代替的又は追加的に)、がんが免疫化学療法又は免疫療法の対象であることが好ましい。免疫化学療法の対象であるがんは、免疫療法薬及び化学療法剤に感受性である。免疫療法の対象であるがんは、免疫療法薬に感受性である。
【0350】
具体的には、免疫療法の対象であるがんは、免疫チェックポイント阻害に感受性である。より具体的には、免疫チェックポイント阻害は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。さらにより具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0351】
がんが、肺がん、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、鼻咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝臓がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパがん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択されることも(代替的に又は追加的に)好ましい。
【0352】
がんは、肺がん、乳がん、子宮頸がん、胃がん、皮膚がん、及び膀胱がんからなる群から選択されることがより好ましい。該がんは、免疫化学療法又は免疫療法の対象である。
肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)であることがさらにより好ましい。
【0353】
非小細胞肺がん(NSCLC)が後期NSCLCであることがさらに一層より好ましく、後期NSCLCがIV期のNSCLCであることが最も好ましい。
【0354】
具体的には、化学療法剤はプラチナダブレットである。
【0355】
具体的には、組み合わせて使用される免疫療法薬は、PD-1/PD-L1を標的とする阻害剤である。より具体的には、PD-1/PD-L1を標的とする阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択される。
【0356】
例えば、化学療法薬はプラチナダブレットであり、免疫療法薬は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択される。
【0357】
他の化学療法剤又は免疫療法薬に関しては、本発明の第1乃至第11態様が参照される。
【0358】
組み合わせの成分、すなわち、化学療法剤及び免疫療法薬は、一緒に、又は互いに独立して(例えば、次々に)投与され得る。
【0359】
がんに罹患している患者は、哺乳動物、特にヒトであることが好ましい。
【0360】
本発明のこの態様は、次のように表現することもできる:
第16態様では、本発明は、免疫療法薬と組み合わせた、がん治療のための薬剤の製造のための化学療法剤の使用に関し、
ここで、患者は、≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)、及び以下の式に従って計算される(miRisk)スコア>約-0.073を有する。
(miRisk)スコア=(ln(配列番号1(miR-2115-3p)RPM+1)×2.190467)+(ln(配列番号39(miR-218-5p)RPM+1)×0.303095)+(ln(配列番号13(miR-224-5p)RPM+1)×0.598415)+(ln(配列番号7(miR-4676-3p)RPM+1)×1.101122)+(ln(配列番号34(miR-6503-5p)RPM+1)×0.958823)
【0361】
あるいは、本発明は、第16態様において、
(i)患者の血液サンプルにおいて、以下の式に従って計算された(miRisk)スコア>約-0.073を決定する工程:
(miRisk)スコア=(ln(配列番号:1(miR-2115-3p)RPM+1)×2.190467)+(ln(配列番号:39(miR-218-5p)RPM+1)×0.303095)+(ln(配列番号:13(miR-224-5p)RPM+1)×0.598415)+(ln(配列番号:7(miR-4676-3p)RPM+1)×1.101122)+(ln(配列番号:34(miR-6503-5p)RPM+1)×0.958823)、
及び
(ii)化学療法剤(の有効量)を免疫療法薬と組み合わせて、それを必要とする患者に投与する工程
を含む、患者においてがんを治療するための方法に関し、
ここで、患者は≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)を有する。
【0362】
第17態様では、本発明は、随意に化学療法剤と組み合わせて、患者におけるがん治療に使用するための免疫療法薬に関し、
ここで、患者は
≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア、及び
以下の式に従って計算した(miRisk)スコア≦約-0.073を有する。
(miRisk)スコア=(ln(配列番号1(miR-2115-3p)RPM+1)×2.190467)+(ln(配列番号39(miR-218-5p)RPM+1)×0.303095)+(ln(配列番号13(miR-224-5p)RPM+1)×0.598415)+(ln(配列番号7(miR-4676-3p)RPM+1)×1.101122)+(ln(配列番号34(miR-6503-5p)RPM+1)×0.958823)
【0363】
この点に関して、配列番号1に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-2115-3pであり、配列番号39に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-218-5pであり、配列番号13に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-224-5pであり、配列番号7に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-4676-3pであり、配列番号34に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAはmiR-6503-5pであることに留意すべきである。
【0364】
特に、(miRisk)スコアは、患者の血液サンプル中で決定される。好ましい血液サンプルについては、本発明の第1乃至第11態様が参照される。
【0365】
≧50%のPD-L1 TPSを有する患者では、がん遺伝子活性化変異がないことが望ましい。このようながん遺伝子活性化変異は、EGFR突然変異、BRAF V660e突然変異、ALK転座、及び/又はROS-1転座であり得る。
【0366】
さらに(代替的又は追加的に)、がんが免疫化学療法又は免疫療法の対象であることが好ましい。免疫化学療法の対象であるがんは、免疫療法薬及び化学療法剤に感受性である。免疫療法の対象であるがんは、免疫療法薬に感受性である。
【0367】
具体的には、免疫療法の対象であるがんは、免疫チェックポイント阻害に感受性である。より具体的には、免疫チェックポイント阻害は、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤の投与を伴う。さらにより具体的には、少なくとも1種の免疫チェックポイント阻害剤は、PD-1/PD-L1又はPD-1/PD-L1経路を標的とする阻害剤である。
【0368】
がんが、肺がん、乳がん、子宮頸がん、胃がん(gastric cancer)、膀胱がん、皮膚がん、鼻咽頭がん、神経内分泌がん、結腸がん、尿路上皮がん、肝臓がん、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、腎臓がん(kidney cancer)、胃がん(stomach cancer)、食道がん、腎臓がん(renal cancer)、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパがん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立腺がん、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択されることも(代替的に又は追加的に)好ましい。
【0369】
がんは、肺がん、乳がん、子宮頸がん、胃がん、皮膚がん、及び膀胱がんからなる群から選択されることがより好ましい。該がんは、免疫化学療法又は免疫療法の対象である。肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)であることがさらにより好ましい。
【0370】
非小細胞肺がん(NSCLC)は、後期NSCLCであることがさらに一層より好まし
い。後期NSCLCは、IV期のNSCLCであることが最も好ましい。
【0371】
具体的には、免疫療法薬は、PD-1/PD-L1を標的とする阻害剤である。より詳細には、PD-1/PD-L1を標的とする阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択される。
【0372】
具体的には、随意に免疫療法薬と組み合わせて使用される化学療法剤は、プラチナダブレットである。
【0373】
例えば、免疫療法薬は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択され、及び化学療法薬は、プラチナダブレットである。
【0374】
他の免疫療法薬又は化学療法剤に関しては、本発明の第1乃至第11態様が参照される。
【0375】
組合せの成分、すなわち、免疫療法薬及び化学療法剤は、存在する場合、一緒に又は互いに独立して(例えば、次々に)投与することができる。
【0376】
がんに罹患している患者は、哺乳動物、特にヒトであることが好ましい。
【0377】
本発明のこの態様は、以下のように表現することもできる:
第17態様において、本発明は、化学免疫療法薬と随意に組み合わせて、患者におけるがん治療のための薬剤の製造のための、免疫療法薬の使用に関し、
ここで、患者は、
>50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)、及び
以下の式に従って計算される(miRisk)スコア≦約-0.073を有する。
(miRisk)スコア=(ln(配列番号1(miR-2115-3p)RPM+1)×2.190467)+(ln(配列番号39(miR-218-5p)RPM+1)×0.303095)+(ln(配列番号13(miR-224-5p)RPM+1)×0.598415)+(ln(配列番号7(miR-4676-3p)RPM+1)×1.101122)+(ln(配列番号34(miR-6503-5p)RPM+1)×0.958823)
【0378】
あるいは、本発明は、第17態様において、
(i)患者の血液サンプルにおいて、以下の式に従って計算された(miRisk)スコア≦約-0.073を決定する工程:
(miRisk)スコア=(ln(配列番号1(miR-2115-3p)RPM+1)×2.190467)+(ln(配列番号39(miR-218-5p)RPM+1)×0.303095)+(ln(配列番号13(miR-224-5p)RPM+1)×0.598415)+(ln(配列番号7(miR-4676-3p)RPM+1)×1.101122)+(ln(配列番号34(miR-6503-5p)RPM+1)×0.958823)、及び
(ii)(有効量の)免疫療法薬を、随意に化学療法剤と組み合わせて、それを必要とする患者に投与する工程、
を含む、患者においてがんを治療するための方法に関し、
ここで、患者は、≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)を有する。
【0379】
本発明の第12乃至第17態様におけるがんは、肺がんであることが最も好ましい。
【0380】
この点において、本発明は、
1.肺がんに罹患している患者の血液サンプル中の少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定する工程を含む、免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを得るために肺がんに罹患している患者を選択する方法であって、
ここで、該少なくとも1種のmiRNAは、配列番号1(miR-2115-3p)、配列番号39(miR-218-5p)、配列番号13(miR-224-5p)、配列番号7(miR-4676-3p)、配列番号34(miR-6503-5p)、それらの断片、及びそれらと少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有し、及び
ここで、患者は≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)を有する、
方法に関する。
【0381】
2.≧50%のPD-L1 TPSを有する患者が、がん遺伝子活性化突然変異を有さない、項目1の方法。
【0382】
3.該肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、項目1又は2の方法。
【0383】
4.該非小細胞肺がん(NSCLC)が後期NSCLCである、項目3の方法。
【0384】
5.後期NSCLCがIV期のNSCLCである、項目4の方法。
【0385】
6.前記少なくとも1種のmiRNAのレベルが、(miRisk)カットオフスコアと比較される、項目1乃至5のいずれか一つの方法。
【0386】
7.(miRisk)カットオフスコアより高い該少なくとも1種のmiRNAのレベルが、患者が免疫化学療法からベネフィットを得ることを示すか、又は(miRisk)カットオフスコア以下の該少なくとも1種のmiRNAのレベルが、患者が免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを得ることを示す、項目6の方法。
【0387】
8.上記方法は、配列番号1(miR-2115-3p)、配列番号39(miR-218-5p)、配列番号13(miR-224-5p)、配列番号7(miR-4676-3p)、配列番号34(miR-6503-5p)、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、又は5個のmiRNAの加重レベルを集約することによって、(miRisk)スコアを決定する工程をさらに含む、項目1乃至7のいずれか1つの方法
【0388】
9.(miRisk)スコアが、配列番号1(miR-2115-3p)、配列番号39(miR-218-5p)、配列番号13(miR-224-5p)、配列番号7(miR-4676-3p)、及び配列番号34(miR-6503-5p)からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する5種のmiRNAの加重レベルを集約することによって決定される、項目8の方法。
【0389】
10.(miRisk)スコアが以下の式に従って計算される、項目8又は9の方法:
(miRisk)スコア=(ln(配列番号1(miR-2115-3p)RPM+1)×2.190467)+(ln(配列番号39(miR-218-5p)RPM+1)×0.303095)+(ln(配列番号13(miR-224-5p)RPM+1)×0.598415)+(ln(配列番号7(miR-4676-3p)RPM+1)×1.101122)+(ln(配列番号34(miR-6503-5p)RPM+1)×0.958823)
式中、RPMは100万回当たりの読み取り数を意味する。
【0390】
11.該(miRisk)スコアが、(miRisk)カットオフスコアと比較される、項目8乃至10のいずれか一つの方法。
【0391】
12.(miRisk)カットオフスコアが、約-0.073である、項目11の方法。
【0392】
13.(miRisk)スコア>約-0.073は、患者が免疫化学療法からベネフィットを得ることを示すか、又は
(miRisk)スコア≦約-0.073は、免疫化学療法又は免疫療法が有益であることを示す、項目12の方法。
【0393】
14.(i)項目1乃至13のいずれかの方法を実施することにより、当該患者を免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを得ている患者として特定する工程、及び
(ii)患者を当該療法に割り当てる工程、
を含む、肺がんに罹患している患者を免疫化学療法又は免疫療法で治療するか否かを決定する方法。
【0394】
15.(i)項目1乃至13のいずれかの方法を実施することにより、当該患者を免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを得ている患者として特定する工程、
(ii)上記療法で患者を治療する工程
を含む、免疫化学療法又は免疫療法によって肺がんに罹患している患者を治療する方法。
【0395】
16.免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを得るために、肺がんに罹患している患者を選択するためのキットであって、該キットが、
肺がんに罹患している患者の血液サンプル中の、配列番号1(miR-2115-3p)、配列番号39(miR-218-5p)、配列番号13(miR-224-5p)、配列番号7(miR-4676-3p)、配列番号34(miR-6503-5p)、それらの断片、及びそれらに対して少なくとも80%の配列同一性を有する配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する該少なくとも1種のmiRNAのレベルを決定するための手段を含み、ここで、該患者は、≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)を有する。
【0396】
17.≧50%のPD-L1 TPSを有する患者が、がん遺伝子活性化突然変異を有さない、項目16のキット。
【0397】
18.該肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、項目16又は17のキット。
【0398】
19.該非小細胞肺がん(NSCLC)が後期NSCLCである、項目18のキット。
【0399】
20.該後期NSCLCがIV期のNSCLCである、項目19のキット。
【0400】
21.項目1乃至13のいずれか1つの方法を実施する方法についての説明書をさらに含む、項目16乃至20のいずれか1つに記載のキット。
【0401】
22.前記キットが項目1乃至13のいずれか1つの方法を実施するために有用である、項目16乃至21のいずれか1つのキット
【0402】
23.化学療法剤と組み合わせて、患者における肺がん治療に使用するための免疫療法薬であって、
ここで、該患者は
≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)、及び
以下の式に従って計算される(miRisk)スコア>約-0.073を有する。
(miRisk)スコア=(ln(配列番号:1(miR-2115-3p)RPM+1)×2.190467)+(ln(配列番号:39(miR-218-5p)RPM+1)×0.303095)+(ln(配列番号:13(miR-224-5p)RPM+1)×0.598415)+(ln(配列番号:7(miR-4676-3p)RPM+1)×1.101122)+(ln(配列番号:34(miR-6503-5p)RPM+1)×0.958823)
【0403】
24.≧50%のPD-L1 TPSを有する前記患者が、がん遺伝子活性化突然変異を有さない、項目23の使用するための免疫療法薬。
【0404】
25.該肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、項目23又は24の使用するための免疫療法薬。
【0405】
26.該非小細胞肺がん(NSCLC)が後期NSCLCである、項目25の使用するための免疫療法薬。
【0406】
27.該後期NSCLCがIV期のNSCLCである、項目26の使用するための免疫療法薬。
【0407】
28.前記免疫療法薬がPD-1/PD-L1を標的とする阻害剤である、項目23乃至27のいずれか1つに使用するための免疫療法薬。
【0408】
29.PD-1/PD-L1を標的とする前記阻害剤が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択される、項目28の使用するための免疫療法薬。
【0409】
30.免疫療法薬と組み合わせて、患者における肺がん治療に使用するための化学療法剤であって、
ここで、該患者は≧50%PD-L1腫瘍比率スコア(TPS)、及び以下の式に従って計算される、(miRisk)スコア>約-0.073を有する。
(miRisk)スコア=(ln(配列番号1(miR-2115-3p)RPM+1)×2.190467)+(ln(配列番号39(miR-218-5p)RPM+1)×0.303095)+(ln(配列番号13(miR-224-5p)RPM+1)×0.598415)+(ln(配列番号7(miR-4676-3p)RPM+1)×1.101122)+(ln(配列番号34(miR-6503-5p)RPM+1)×0.958823)
【0410】
31.≧50%のPD-L1 TPSを有する該患者が、がん遺伝子を活性化する突然変異を有さない、項目30の使用するための化学療法剤。
【0411】
32.前記肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、項目30又は31の使用するための化学療法剤。
【0412】
33.前記非小細胞肺がん(NSCLC)が後期NSCLCである、項目32の使用するための化学療法剤。
【0413】
34.前記後期NSCLCがIV期のNSCLCである、項目33の使用するための化学
療法剤。
【0414】
35.前記化学療法剤がプラチナダブレットである、項目30乃至34のいずれか1つの使用するための化学療法剤。
【0415】
36.随意に化学療法剤と組み合わせて、患者における肺がん治療に使用するための免疫療法薬であって。
ここで、該患者は、≧50%のPD-L1腫瘍比率スコア(TPS)、及び以下の式に従って計算される(miRisk)スコア≦約-0.073を有する。
(miRisk)スコア=(ln(配列番号1(miR-2115-3p)RPM+1)×2.190467)+(ln(配列番号39(miR-218-5p)RPM+1)×0.303095)+(ln(配列番号13(miR-224-5p)RPM+1)×0.598415)+(ln(配列番号7(miR-4676-3p)RPM+1)×1.101122)+(ln(配列番号34(miR-6503-5p)RPM+1)×0.958823)
【0416】
37.≧50%のPD-L1 TPSを有する前記患者が、がん遺伝子活性化突然変異を有さない、項目36の使用するための免疫療法薬。
【0417】
38.前記肺がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、項目36又は37の使用するための免疫療法薬。
【0418】
39.前記非小細胞肺がん(NSCLC)が後期NSCLCである、項目38の使用するための免疫療法薬。
【0419】
40.前記後期NSCLCがIV期のNSCLCである、項目39の使用するための免疫療法薬。
【0420】
41.前記免疫療法薬がPD-1/PD-L1を標的とする阻害剤である、項目36乃至40のいずれか1つの使用するための免疫療法薬。
【0421】
42.PD-1/PD-L1を標的とする前記阻害剤が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、デュルバルマブ、及びアテゾリズマブからなる群から選択される、項目41の使用するための免疫療法薬。
【0422】
43.前記所望の化学療法剤がプラチナダブレットである、項目36乃至42のいずれか1つの使用するための免疫療法薬。
【0423】
本発明の範囲から逸脱することなしに、本発明の様々な変更及び変形は、当業者には明らかであろう。本発明は、特定の好ましい実施態様に関連して説明されてきたが、特許請求の範囲に記載された本発明は、そのような特定の実施態様に過度に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際、関連分野の当業者に自明である、本発明を実施するための記載されたモードの様々な変更は、本発明によってカバーされることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0424】
以下の図面は、本発明の単なる例示であり、添付の特許請求の範囲によって示される本発明の範囲を何ら限定するものと解釈されるべきではない。
図1図1:(A)単変量モデル選択のための偏りのないパイプライン。1)データは、トレインセットとテストセットに50:50で分割される。2)単変量Cox比例ハザードモデルをテストセット内の各特徴に適合させる。3)単一の最良モデルを用いて、目に見えないテストデータを予測する。4)予測はCox比例ハザードモデルに適合し、その有意性は予測の精度のマーカーである。このプロセスは、モデル性能の分布を生成するために、ランダムな50:50分割で反復的に繰り返すことができる。(B)正確に注釈された生存データに適用される単変量パイプラインを用いたモデル性能の分布。赤い垂直線の左側にあるすべてのモデルは、テストデータに対して統計的に有意な予測を行っている。(C)ランダム化された生存情報を有するデータに関するパイプラインの4回の反復。有意な予測モデルはほとんど作成されていない。
図2図2:(A)多変量モデル選択のための偏りのないパイプライン。1)データは、トレインセットとテストセットに50:50で分割される。2)多変量Cox比例ハザードモデルをテストセット内の各特徴に適合させ、有意性が0.001未満のすべてのモデルを選択して多変量モデルを作成する。3)多変量モデルを用いて、目に見えないテストデータを予測する。4)予測はCox比例ハザードモデルに適合し、その有意性は予測の精度のマーカーである。このプロセスは、モデル性能の分布を生成するために、ランダムな50:50分割で反復的に繰り返すことができる。(B)正確に注釈された生存データに適用される多変量パイプラインを用いたモデル性能の分布。赤い垂直線の左側にあるすべてのモデルは、テストデータに対して統計的に有意な予測を行う。最良のモデルの要約を表2に示す。(C)最良のモデル(miR-2115-3p及びmiR-25-3p)を代表的な50%分割テストデータに適合させ、リスクスコア中央値のカットオフ値によって患者を高リスク又は低リスクに分類するために使用した。(D)以前に適合したモデルを用いて、目に見えないテストデータを予測し、以前に定義されたリスク閾値を用いて高リスクと低リスクに分類した。低リスク群では生存期間が有意に長い(ログランク検定、p値0.011)。
図3図3:(A)miR-2115-3pは、顕著に細胞型特異的な発現パターンを示し、発現は骨髄系の細胞に限定される。(B)PD-L1(CD274)は、その3’UTR内に強力な予測されるmiR-2115-3p標的部位を含む。(C)miR-2115-3pは、非応答者と比較して応答者ではダウンレギュレートされる。
図4図4:miRiskスコアで層別化したNSCLC患者の全生存期間(OS)。a-c トレーニングコホート(n=96)、検証免疫療法コホート(n=84)、及び検証免疫化学療法コホート(n=139)におけるmiRiskスコア低値群と高値群の全生存期間の比較。トレーニング及び検証免疫療法コホートではOSの有意差が観察されたが、検証化学免疫療法コホートでは観察されなかった。d-e トレーニングコホート(n=96)、検証免疫療法コホート(n=84)及び検証免疫化学療法コホート(n=139)におけるPD-L1 TPSで層別化した患者間の全生存期間の比較。全生存期間の差はいずれのコホートにおいても有意には達していない。ハザード比(HR)及び95%信頼区間(CI)は単変量Cox回帰分析を用いて算出し、P値はログランク検定を用いて算出した。すべての統計解析は両側検定であった。
図5図5:ランダムフォレストモデルで層別化した低リスク患者及び高リスク患者の全生存期間(OS)。a-b トレーニングコホート(n=96)及び検証免疫療法コホート(n=84)における低リスク患者と高リスク患者のOSの比較。
図6図6:低リスク患者及び高リスク患者におけるmiRisk miRNAの発現。a-e 低リスク患者と高リスク患者の間の5種のmiRisk miRNAの相対的発現レベルは、低分子RNA配列決定によって測定された。f-j qRT-PCRによって測定された低リスク患者と高リスク患者の間の5種のmiRisk miRNAの相対的発現レベル。三連測定の平均発現を示す。qRT-PCR発現は、ΔCt法(CtmiRNA of interest-Ctmean of HK miRNAs)に従って標準化した。すべての統計的検定は、両側対応のないt検定であった。エラーバーは標準偏差を示す。RPM=100万回あたりのリード数。=P値<0.05、**=P値<0.005、***=P値<0.0005、****=P値<0.00005、ns=有意ではない。
図7図7:外部検証対照コホートにおける低及び高miRisk患者の全生存率。ドイツグロースハンスドルフで採用した治療を受けていないIV期のNSCLC患者19名を、miRiskスコアの低/高によって層別化した。OS生存曲線に有意差は認められない。
図8図8:PD-L1 TPS及びmiRisk miRNAを組み込んだ多変量Cox比例ハザードモデルで層別化した低リスク患者及び高リスク患者の全生存率。a-c トレーニングコホート(n=96)、検証免疫療法コホート(n=84)、及び検証免疫化学療法コホート(n=139)における低/高群間の全生存期間の比較。miRiskモデルと同様に、全生存期間における有意差はトレーニング及び検証免疫療法コホートで観察されたが、検証化学免疫療法コホートでは観察されなかった。ハザード比の大きさは、miRiskモデルで観察されたものよりも小さい。
図9図9:好ましいmiRNAとmiRNAの組み合わせを示す。好ましいmiRNAは、配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、又は配列番号39に従うヌクレオチド配列を有する。本明細書に記載される全ての態様において、配列番号1、配列番号7、配列番号13、配列番号34、及び配列番号39に従うヌクレオチド配列を有するmiRNAの組み合わせが最も好ましい。
図10図10:miRisk別に層別化したNSCLC患者の全生存期間。a-b PD-1/PD-L1阻害剤単独投与の独立した検証(n=56)及び化学免疫療法対照コホート(n=31)におけるmiRiskスコア低値/高値群間の全生存期間の比較。独立した検証コホートではOSの有意差が観察されたが、対照コホートでは観察されなかった。c-d miRisk層別コホートにおけるimmunomonotherapy(IO)と免疫化学療法(ICT)の全生存期間の比較。ハザード比(HR)及び95%信頼区間は単変量Cox回帰分析を用いて算出し、P値はログランク検定を用いて算出した。すべての統計解析は両側検定であった。
【実施例
【0425】
以下に示す実施例は、説明のためだけのものであり、上記の発明を何ら限定するものではない。
【0426】
1.実施例1
未治療のIV期の肺がん患者から採取した97PAX遺伝子サンプルを、免疫療法(ペムブロリズマブ又はニボルマブ)を開始する前に採取し、及び応答及び生存情報を含む対応する臨床データも採取した。miRNA発現プロファイルを測定し、その後それを用いて予測シグネチャーを開発するために、低分子RNAを抽出し、配列決定した。
【0427】
生存を予測できる可能性のあるmiRNAを特定するために、miRNA発現データに対して最初の探索的解析を実施した。単変量Cox比例ハザードモデルを各特徴に順に適合させて、生存時間と有意に関連するmiRNAのショートリストを作成した(p値<0.05)。この解析の結果、生存を予測し、免疫療法への応答を予測する44個のmiRNAが得られた(表1)。
【0428】
【表1】
【0429】
次に、偏りのないパイプラインが構築された(図1A)。これは最初に、データを50:50のトレーニングデータセットとテストデータセットに分割する。単変量生存モデル(Cox比例ハザードモデル)をトレーニングセット内の各miRNAに順に適合させ、
最も性能の高いモデルを選択して、目に見えないトレーニングデータセットを予測する。トレーニングデータセット上の予測は、さらなる生存モデルに適合するための入力として使用される。予測性能は、予測がテストデータセットに適合できる有意性に基づいて判断される。このプロセスを250回反復して、一連のランダムなテスト/トレイン分割にわたるモデル性能の分布を測定する(図1B)。パイプラインをmiRNA発現データ及びランダム化生存データに適用して、ランダム順列制御を実施した(図1C)。真のデータセット上の反復の54%において、パイプラインは、最も予測的な特徴としてmiR-2115-3p(配列番号1)を選択する(ランダム化されたデータセットにおいて最も頻繁に選択される特徴は、反復のわずか8%において選択される)。まとめると、これは、miR-2115-3pが免疫療法治療後の生存と関連しており、関連の強さが、ランダム化されたデータセットのノイズに適合したモデルで観察された強さを上回っているという証拠である。生存の予測因子及び免疫療法への応答の予測因子であった他の43のmiRNAを表1に示す。
【0430】
最後に、第2のパイプライン(図2A)が構築された。データは、トレーニングデータセットとテストデータセットに50:50で分割された。有意な単変量Coxモデルが適合する可能性のあるすべての特徴を選択することにより、テストデータセットを用いて特徴選択を実施した(p値<閾値)。次に、選択された特徴を使用して、多変量コックスモデルをトレーニングデータに適合させ、テストデータを予測した。予測は、有意性が予測性能の尺度である単変量Coxモデルに適合した。最適な特徴を特定し、モデルを評価するために、このプロセスを3500回実行した(図2B及び表2)。好ましいmiRNA及びmiRNAの組合せ(セット/シグネチャー)を表2に列挙する。
【0431】
【表2】
【0432】
この最適化されたモデル(miR-2115-3p及びmiR-25-3pで構成される)を用いて、トレーニング及びテストデータセット内の患者の応答者/非応答者の状態を予測した(トレーニングデータセット内のリスク中央値として定義された閾値リスクスコアに基づく)。トレーニング及びテストデータセット(単一の代表的50:50分割)の両方において、有意に増加した生存率を有する応答患者のコホートを予測することが可能であった(図2D)。miR-2115-3pは、非応答者と比較して応答者ではダウンレギュレートされることが確認された(図3C)。
【0433】
miR-2115-3pは、最も予測的な特徴として際立っており、血液内の関連する細胞集団(単球及び好中球、図3A)において特異的発現を有することが見出された。さらに、miR-2115-3p標的部位は、PD-L1の3’UTR内に存在する(図3B)。
【0434】
要約:未治療のIV期のNSCLC患者において、PD-1/PD-L1阻害剤クラスの免疫チェックポイント阻害剤に対する応答に関連する新たなmiRNAが特定された。さらに、IV期のNSCLCにおけるPD-1/PD-L1阻害剤への応答を予測するm
iRNAベースのシグネチャーが明らかになった。上記のmiRNA/miRNAベースのシグネチャーは、生存予測も可能にする。
【0435】
表3に、配列番号及びヌクレオチド配列を有する特定されたmiRNAを列挙する:
【0436】
【表3】
【0437】
2.実施例2
2.1方法
患者登録
本テストは、ハイデルベルク大学(S-296/2016、S-089/2019)及びグロースハンスドルフ病院倫理委員会(AZ 12-238)によって承認されたものであり、血液サンプルが入手可能なThoraxklinik・ハイデルベルグにおいて、免疫療法単独又は免疫療法と化学療法の併用で治療された進行NSCLC患者全員を対象とした。これらは、公表(Wessels et al.,2020)されているように前向きに収集され、関連する規則に従って、本分析のためにLungenbiobank・ハイデルベルクによって提供された。免疫療法のみを受けた対象患者全員をトレーニングコホートに登録した。対象患者は、それぞれの治療に応じて、免疫療法又は免疫化学療法検証コホートに含まれた。NSCLCの診断は、ハイデルベルク病理学研究所において、肺がんに関する現行のWHO分類(2015年)の基準に従って組織標本を用いて実施された。臨床データ及び検査結果は、患者記録の系統的レビューによって収集された。以下の臨床データが抽出された:ECOGパフォーマンスステータス(PS)、喫煙状況、PD-L1腫瘍比率スコア(TPS)、検査結果、全身及び局所抗がん治療、進行日、最終追跡日、及び死亡日を含む人口統計学的、ベースラインの臨床的及び腫瘍の特徴。好中球/リンパ球比(NLR)は、未治療患者の中央値に相当する文献的カットオフ値5で二分された(Suh,K.J.et al.(2018) Post-treatment neutrophil-to-lymphocyte ratio at week
6 is prognostic in patients with advanced non-small cell lung cancers treated with anti-PD-1 antibody.Cancer Immunol Immunother 67, 459-470;Valero,C.et al.(2021) Pretreatment neutrophil-to-lymphocyte
ratio and mutational burden as biomarkers of tumor response to immune checkpoint inhibitors.Nat Commun 12,729)。PD-L1 TPSは、クローンSP263(ベンタナ/ロシュ、マンハイム、ドイツ)を用いて評価し、現行の治療ガイドライン(Hanna,N.H.et al.(2020) Therapy for Stage IV Non-Small-Cell Lung Cancer Without Driver Alterations:ASCO and OH(CCO)Joint Guideline Update.J Clin Oncol 38,1608-1632)の関連する臨床閾値を反映して、1%未満、1乃至49%、及び50%以上として分析のために三分化した。さらに、新たに転移性NSCLCと診断され、最善の支持療法を選択した患者の小規模コホートを、地域倫理委員会(AZ 12-238)の承認を得た後、Lungenclinic・グロースハンスドルフから非免疫療法対照として募集した。
【0438】
PAXgeneの収集と処理
PAXgene(PreAnalytiX, Hombrechtikon, Switzerland)の血液サンプルを製造業者の指示に従って採取し、直ちに10回反転させ、2時間以内に-20℃で凍結した。長期保存のために、チューブを-80℃に移した。トレーニングコホート:PAXgeneチューブを一晩解凍し、PAXgene Blood miRNA Kit(Qiagen, Venlo,Netherlands)を用いて、製造者の指示に従って抽出した。RNアーゼを含まない水に80μLの溶出液を-80℃で保存した。検証コホート:PAXgeneチューブを一晩解凍し、PAXgene Blood RNA Kit(Qiagen, Venlo, Netherlands)を用いてRNAを抽出した。第1のカラム(RNAシュレッダーカラム)の
フロースルーを保存し、-20℃で保存し、長さ<200ntsのRNAのさらなる抽出に使用した。この目的のために、サンプルのアルコール含有量をイソプロパノールで50%(w/v)にし、サンプルを、RNAカラム工程から開始して、PAXgene Blood miRNA Kitを用いてさらに処理した。RNAを40μLのRNアーゼを含まない水に溶出し、-80℃で保存した。
【0439】
低分子RNA-seq
100ngの総RNA、又は5μLの総RNA(濃度が20ng/μL未満のサンプルの場合)を、QIAseq(登録商標)miRNAライブラリーキット(キアゲン、フェンロー、オランダ)に使用し、以前に報告された非常に豊富なmiRNAを遮断した(miR-16-5p、miR-486-5p、miR-451a(Roberts BS,Hardigan AA,Kirby MK, et al.Blocking of targeted microRNAs from next-generation sequencing libraries.Nucleic Acids Res. 2015;43(21):e145.doi:10.1093/nar/gkv724,Juzenas S,Lindqvist CM,Ito G,et al.Depletion of erythropoietic miR-486-5p and miR-451a improved detectability of rare microRNAs in peripheral blood-derived small RNA sequencing libraries. NAR Genom Bioinform. 2020;2(1):lqaa008.Published 2020 Feb 12.doi:10.1093/nargab/lqaa008))。cDNAを、ライブラリーの固有の二重インデックス化を可能にするプライマー(データは示さず)を用いて増幅し、PCR産物を、Mag-Bind TotalPure NGSビーズ(Omega Bio-Tek,Norcross,USA)を用いて精製した。18サイクルの増幅後のPCR産物を、フラグメントアナライザー(Fragment Analyzer)(Agilent,Santa Clara,USA)上のQuantitative DNAキットを用いて、サイズ及び均一性について評価した。PCR産物の濃度を、Quant-iT dsDNA Assay-Kit(ThermoFisher Scientific、Waltham、USA)によって決定し、96までのサンプルを有する等モルのライブラリープールを調製し、2.7pMの最終プールライブラリー濃度でNextSeq 500(Illumina、San Diego、California)上で配列決定した。配列5’-GATCGTCGGACTGTAGAACTCTGAACGTGT-3’(配列番号45)を有するカスタムインデックス2シークエンシングプライマーを使用した。
【0440】
統計解析
生存回帰のためのペナルティなし、単変量及び多変量Coxモデルは、パッケージscikit-survival(バージョン0.15.1,(Polsterl,S.(2020)scikit-survival:A Library for Time-to-Event Analysis Built on Top of scikit-learn. Journal of Machine Learning Research 21, 1-6))を使用してPython、及びそれぞれデフォルトのパラメーター設定でCoxPHSurvivalAnalysisクラスとCoxPHFitterクラスを使用してLifelines(バージョン0.26.0、(Davidson-Pilon,C. et al.(2021)CamDavidsonPilon/Lifeline:0.26.0)に適合させた。高次元データにおける生存をモデル化する際のp>>n問題を克服するために、Witten及びTibshiraniは、単変量及び段階的選択を用いた離散的特徴選択を含む多くの方法を提案している(Witten,D.M.,and Tibshirani,R.(2010) Survival
analysis with high-dimensional covorants.Stat Methods Med Res 19,29-51)。これらは、package scikit-learn(バージョン0.24.2、(Pedregosa、F.,et al.(2012).Scikit-learn:Machine Learning in Python. Arxiv))及びSelectFpr(Cox比例ハザードモデルがp<0.05で適合できるmiRNA特徴を選択する)及びSequentialFeatureSelector(単一のmiRNA特徴を多変量Cox比例ハザードモデルに連続的に追加し、交差検証された一致指数の最良の改善に基づいて、特定の最大特徴数まで)クラスで実装されている。Scikit-Learnパイプラインを使用して、特徴選択とトレーニング工程を結合し、生存モデルを作成し、新しいデータに対して推論を実行した。scikit-survivalパッケージのRandom Survival Forestモデルを使用して、パラメーター設定(n_estimators=1000、min_samples_split=10、min_samples_leaf=15、max_features=“sqrt”)を使用してモデルをトレーニングした。ランダムフォレストモデルからの特徴の重要性は、パッケージELI5(バージョン0.11.0)からの置換に基づく方法を用いて、生存と各特徴との関連を順番に(ランダムシャフリングを介して)除去したときのモデル一致指数の低下を推定することによってスコア化した。患者は、以前に報告された同様の予後遺伝子発現シグネチャーのカットポイント定義に基づいて、トレーニングデータのリスクスコアの中央値によって高/低リスク群に層別化された(Cho, J.Y. et al. (2011). Gene Expression Signature-Based Prognostic Risk Score in Gastric Cancer. Clin Cancer Res 17, 1850-1857;Hu,Z. et al.(2010).Serum MicroRNA Signatures Identified in a Genome-Wide Serum MicroRNA Expression Profiling predict Survival of Non-Small-Cell Lung Cancer. J Clin Oncol 28, 1721-1726; Yu, S.-L. et al. (2008) MicroRNA Signature Predicts Survival and Relapse in Lung Cancer. Cancer Cell 13, 48-57)。miRiskスコアの予後予測能は、追加の臨床病理学的共変量(PD-L1、ECOG、性別、年齢、治療ライン、物質、組織学、喫煙状況、ANC、ALC)を用いた多変量Cox比例ハザードモデルで評価した。カプラン-メイア法を用いて生存関数を推定し、群をログランク検定で比較した。
【0441】
qRT-PCR法
バイオマーカーmiRNA及びハウスキーピングmiRNAについては、カタログ及びカスタムmiRCury LNA miRNA PCRアッセイをキアゲン(フェンロ、オランダ)に注文した(表4)。cDNA合成には500ngのRNAを用い、濃度が不十分な場合には6.5μLまでのRNA量を用いた。次いで、cDNAを1:80に希釈し、総容量10μLの応答を、製造業者の指示に従って設定し、以下のプロトコルに従ってサイクルした:384ウェル形式のAB Flex 6サイクラー中、95℃で2分、95℃で40×10秒、56℃で60秒。60乃至95℃で溶融曲線分析を実施した。Ct値を決定し、QuantStudio RealTime PCR Softwareバージョン1.3を用いてエクスポートした。95人の患者のトレーニングコホートについて、5種のmiRisk miRNAのCt値を三連で決定した。ΔCt値は、低分散に基づいてNGSによって以前に定義された「ハウスキーピング」miRNAのCt値の平均を差し引くことによって計算した。これらのΔCt値に基づいて、miRiskスコアに従って低リスク又は高リスクの患者からのサンプル間の倍率変化(2ΔΔCt)及びt検定を、シグネチャーmiRNAごとに計算した。
【0442】
【表4】
【0443】
2.2 結果
患者の臨床的特徴
トレーニングコホートは、抗PD-1免疫単独療法を投与されたIV期のNSCLC患者96名で構成された(表5)。77.1%(n=74)がペムブロリズマブを投与され、22.9%(n=22)がニボルマブを投与された。このコホートは、58.3%が腺がん(n=56)、28.1%が扁平上皮がん(n=27)、13.5%がその他のNSCLC(n=13)(NSCLC、NOS及び大細胞神経内分泌肺がんを含む)で構成されていた。患者の62.5%が男性、38.5%が女性であった。患者の91.7%が元喫煙者又は現喫煙者であった。患者の49%が一次治療を受け、47.9%が二次治療を受けた。第3選択で免疫療法を受けた患者は3.1%のみであった。70.8%はPD-L1 TPSが50%以上、20.8%は1乃至49%、8.3%は<1%であった。ECOG 0は36.5%、ECOG 1は58.3%及びECOG 2は5.2%であった。
【0444】
同様の特徴を有する84人の追加患者のコホートを、独立した検証コホートとして用いた(下記の表5参照)。このコホートのうち、患者の52.4%がペムブロリズマブ、47.6%がニボルマブを投与され、25%が一次治療、51.2%が二次治療、15.5%が三次治療、8.4%が四次以上の治療を受け、59.5%が腺がん、31.0%が扁平上皮がん、9.5%がその他のNSCLCsであった。48.8%がPD-L1 TPS≧50%、32.1%が1%-49%、19%が1%以下であった。95.3%が現在又は過去の喫煙者であった。39.3%がECOG 0、54.8%がECOG 1、4.8%がECOG 2、1.2%がECOG 3であった。
【0445】
【表5】
【0446】
非免疫単独療法を投与された患者139人からなる第3のコホートを独立した対照群として用いた(表5)。これらの患者は、プラチナダブレットとペムブロリズマブの免疫化学療法併用療法を受けた。このコホートは、76.3%が腺がん、12.9%が扁平上皮がん、10.8%がその他のNSCLCsで構成されていた。89.2%が一次治療患者、10.8%が二次治療患者であった。50.4%がPD-L1 TPS<1%、27.3%が1乃至49%、22.3%が50%以上であった。40.3%がECOG 0、56.8%がECOG 1、2.2%がECOG 2、0.7%がECOG 3であった。91.4%が元喫煙者又は現喫煙者であった。
【0447】
IV期のNSCLC患者19人からなる4番目の独立したコホートが含まれ、追加の検証コホートとして機能した。
【0448】
免疫療法下での全生存期間(OS)に関するmiRNAベースのリスクモデルの構築
トレーニングコホートの患者(96人)のmiRNA発現を用いて、ペムブロリズマブ又はニボルマブのいずれかの単独剤免疫療法を受けているIV期のNSCLC患者のOSを予測するモデルを開発した。Shuklaらによって記載されたものに基づく計算パイプラインが作成され、生存とのCox単変量関連に基づく特徴の初期フィルタリングを実施した後、さらに段階的な多変量Cox回帰を用いて複数のmiRNAシグネチャーを作成した(Shukla,S.et al.(2016)Development of a RNA-Seq Based Prognostic Signature in Lung Adenocarcinoma.J Natl Cancer I 109,djw200)。
【0449】
より具体的には、統計的に有意な(p<0.05)単変量Cox比例ハザードモデルを適合させることができるmiRNAの特徴を最初に選択し、その結果、合計600個のmiRNAから44個のmiRNAショートリスト(実施例1の上記表1参照)が選択された。次に、順方向逐次特徴選択(forward sequential feature selection)を実施して、miRNA発現データの数を増加させながら組み込んだ多変量Coxモデルを構築した。代替の低スループット定量化プラットフォーム(例えば、qRT-PCR)に適した特徴の小さなサブセットを選択し、モデルの過剰適合を回避するために、交差検証グリッド検索(3乃至10の特徴を有するモデルをテストする)を実施し、最適なモデル性能をもたらす5つの特徴のサブセットを特定した。最後に、選択した5種のmiRNAの特徴を用いて、Cox比例ハザードモデルをトレーニングデータセット全体に適合させ、以下のリスクスコアを算出した:miRisk=(log(miR-2115-3p RPM+1)×1.870)+(log(miR-218-5p RPM+1)×0.907)+(log(miR-224-5p RPM+1)×0.495)+(log(miR-4676-3p RPM+1)×1.309)+(log(miR-6503-5p RPM+1)×1.159)。
【0450】
miR-2115-3p、miR-218-5p、miR-224-5p、miR-4676-3p、及びmiR-6503-5pのヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号1、39、13、7、及び34として添付の配列表に示されている。
【0451】
トレーニングコホート内の全96名の患者についてリスクスコアを算出し(上記の表5参照)、リスクスコアの閾値の中央値に基づいて患者を低リスク群と高リスク群に分類した。特に、miRiskスコア閾値=-0.13906398900641143を算出して、患者を高リスク又は低リスク(高リスク=miRisk>-0.13906398900641143)に層別化した。低リスク群の患者は、高リスク群の患者よりも有意に長く生存する(ハザード比3.98、95%信頼区間2.29-4.54;P=1.560x10-7)(図4a)。新しいデータへの一般化可能なパフォーマンスをテストするために、検証コホート(表5)の84人の患者のmiRiskスコア分析が実行された。低リスク群の患者は、高リスク群の患者よりも有意に長く生存したことが示された(ハザード比2.22、95%信頼区間1.24-3.95、P=0.00902)(図4b)。
【0452】
非線形モデルは、共変量と関心のある結果(我々の場合はmiRNAと免疫療法への応答)との間のより複雑な関係を捉えることを約束する。このようなモデルが予測性能の向上につながるか否かを調査するために、ランダムフォレスト分類器をデータセットでトレーニング及び評価した(Polsterl、2020、上記)。ランダムフォレストモデルは、事前に特徴を選択することなく、トレーニングコホート内の600のmiRNA発現特徴すべてに適合した。トレーニングコホート内の低リスク群と高リスク群の間で、全生存期間に非常に有意な差が認められた(図5a)。ランダムフォレストモデルは、検証コホートにおける一般的なパフォーマンスを示しており、高リスク患者と比較して生存率が有意に高い低リスク患者群を予測している(ハザード比1.97、95%信頼区間1.14-3.41、P=0.0025)(図5b)。最後に、置換に基づく特徴の重要性を用いて、ランダムフォレスト分類器によって使用される最も有益なmiRNA特徴を特定した。miRisk miRNAの3/5は、最大の加重を持つmiRiskモデルの特徴であるmiR-2115-3pを含むランダムフォレストモデルで使用された最も重要な特徴の中で観察された(表6)。
【0453】
【表6】
【0454】
miRiskスコアに寄与する5種のmiRNAのうち4つは、高リスク患者で有意に上昇していることが観察されている(図6a-e)。高リスク患者ではmiR-218-5pのみがわずかに上昇しているが、この差は統計的に有意ではなかった(図6b)。直交法を用いて我々の知見を技術的に検証するために、トレーニングコホートの患者95人のmiRNA発現プロファイルをqRT-PCRを用いて再測定した。qPCR解析では、5種類のmiRNAすべてについてNGSの結果が再現され、変化の方向は同じであり、有意性の程度も同程度であった(図6f-j)。
【0455】
まとめると、2つの全く異なるモデルが我々のデータセットでトレーニングされ、有益なmiRNA特徴のサブセットへの収束が観察された。特徴の定量化は、NGSとqRT-PCRの両方からの測定値間の一貫性を示すことによって技術的に検証された。miRisk Coxに基づくモデルで予測されたリスク群間のハザード比が高いこと、及び解釈が容易であることを考慮して、さらなる調査のために選択された。
【0456】
miRiskスコアは予後ではなく予測因子である
miRiskスコアの潜在的な予測と予後の重要さを識別するために、非ICI単独療法を受けている患者からなる2つのさらに異なる対照患者コホートにおけるモデルのパフォーマンスを調査した。免疫化学療法検証コホート(表5)の患者139例を層別化したところ、低リスク群と高リスク群の生存率に有意な差は認められなかった(ハザード比1.357、95%信頼区間0.72乃至2.572、p=0.366)(図4c)。これ
は、免疫療法のバイオマーカー(腫瘍PD-L1)では化学療法単独に免疫療法を追加した場合の延命効果を予測できないというこれまでの知見と一致している(Gandhi,
L. et al. (2018).Pembrolizumab plus Chemotherapy in Metastatic Non-Small-Cell Lung Cancer. New Engl J Med 378, 2078-2092)。このモデルは、ドイツのグロースハンスドルフで募集され、治療なしで注意深い経過観察を受けることを選択したIV期のNSCLC患者19人からなるさらなる独立した対照コホートで検証された。miRiskスコアを算出したところ、リスク群間で全生存期間に有意な差は認められなかった(図7)。ここでも、これは予後モデルに反する証拠を提供し、免疫療法応答の特異的予測を支持する証拠を提供する。
【0457】
臨床状況におけるmiRiskスコアの評価
全生存期間に関してmiRiskスコアと他の臨床共変量との関連性を調査するため、免疫単独治療検証コホート内で単変量及び多変量Cox回帰を実施した(表7)。miRiskスコアに加えて、免疫療法応答に関連する臨床病理学的共変量をCoxモデルに含めた。単変量解析では、ECOG(ハザード比2.90、95%信頼区間1.47乃至5.73、P=0.00)のみとmiRiskスコア(ハザード比2.23、95%信頼区間1.2乃至4.15、P=0.01)との間に有意な関連が認められた。腫瘍のPD-L1<50%と免疫療法の検証コホートにおける生存率との間に有意ではない関連が観察され、PD-L1が低いほどリスクが増加する傾向が予想された(ハザード比1.78、95%信頼区間0.97-3.28、P=0.06)(表7)。単変量解析では、低ANC及び高ALCの両方で有意ではない保護効果が観察され(表7)、これは、末梢血球数から得られた公表された予測シグネチャーと一致している(Tanizaki, J. et al.(2018).Peripheral blood biomarkers
Associated with Clinical Outcome in Non-Small Cell Lung Cancer Patients Treated
with Nivolumab.Journal of Thoracic Oncology:Official Publication of the International Association for the Study of Lung
Cancer 13,97-105)。この影響は、多変量解析で他の共変量を調整すると減少する。多変量Cox回帰では、ECOG及びmiRiskスコアはいずれものみが、依然として全生存期間の有意な独立予測因子である(表7)。
【0458】
【表7】
【0459】
miRiskスコアは予測バイオマーカーとしてPD-L1組織学よりも優れている
腫瘍PD-L1発現は、現在、NSCLCにおける免疫療法の応答を予測するために承認された唯一のコンパニオン診断バイオマーカーであり、現行のASCO及びESMOガイドラインでは、治療選択肢を選択する際に認識されている。トレーニングコホートと検
証コホートの両方の患者は、PD-L1腫瘍染色レベル(>50%)に基づいて層別化され、生存はカプラン・マイヤー分析によって評価された(図4d-f)。高PD-L1患者では全生存期間が延長する傾向があるが、有意な予測因子であることが観察されたmiRiskスコアとは対照的に、これはいずれのコホートにおいても有意性に達していない。これは、PD-L1がさまざまな腫瘍タイプの患者の約30%のみで免疫療法の応答を予測することを見出した最近のメタアナリシスと一致している(Davis,A.A.and Patel,V.G.(2019).The role of PD-L1 expression as a predictive biomarker:a analysis of all US Food and Drug Administration(FDA)approvals of immune checkpoint inhibitors. J Immunother Cancer 7,278.)。
【0460】
miRスコアモデルは、以前に特定された5つのシグネチャーmiRNAに加えて、腫瘍PD-L1を用いてリトレーニングされた。腫瘍PD-L1発現レベルを追加しても、予測性能に有意な改善は認められなかった(図8)。このことは、ここに提示されたアプローチが、(PD-L1発現とは無関係に)がん疾患における迅速かつ正確な臨床応答予測及び生命予後を可能にすることを明確に示している。
【0461】
3.実施例3:
3.1方法
この研究には、新たにIV期の非小細胞肺がん(NSCLC)と診断され、PD-L1腫瘍比率スコア(TPS)≧50%のあらかじめ登録された患者計155名が含まれ、これらの患者の採血は、関連する規則に従い、ハイデルベルク大学(S-296/2016、S-089/2019、S-916/2019)及びグロースハンスドルフ病院(AZ
12-238、AZ 19-286)の地域倫理委員会の承認を得て、Lungenbiobank・ハイデルベルク及びバイオバンク・ノードから提供された。血液サンプルの処理及び低分子RNA配列決定による低分子RNA発現プロフィールの生成は、上記に詳細に記載されている。すべての匿名化された低分子RNA配列決定データは、受託番号PRJEB50502の下でヨーロピアンヌクレオチドアーカイブ(ENA)に寄託されている。サイキット-サバイバル(バージョン0.15.1)及びLifelines(バージョン0.26.0)のパッケージを用いて、Python(3.8.8)で生存分析を実施した。グラフパッドプリズム(GraphpadPrism、バージョン9.3.1)でカプラン・マイヤー解析を実施した。
【0462】
3.2結果
この研究には、IV期のNSCLC免疫療法(IO-)を受けた124人の患者から、サンプル収集の時点に従って分けられたトレーニング(n=68)及び検証(n=56)コホート、並びに免疫化学療法(ICT)で治療された対照コホート(n=31)が含まれた(表8)。これら3つのコホートは、広く類似した臨床病理学的特徴を示す。
【0463】
【表8】
【0464】
トレーニングコホート(ハザード比3.65、95%信頼区間1.84乃至7.24、P<0.001)のmiRisk低値群では全生存期間の有意な延長が認められ(データは示されていない)、これは検証コホート(ハザード比5.24、95%信頼区間2.17乃至12.66、P<0.001)でも確認された(図10a)。対照的に、miRiskスコアは、免疫化学療法(ICT)対照コホート(ハザード比1.40、95%信頼区間0.21-9.28;P=0.753)の患者の全生存期間(OS)と関連しておらず(図10b)、これは、IO-固有のバイオマーカーがICTへの応答を予測できないという以前の報告と一致している。
【0465】
免疫療法(IO)と免疫化学療法(ICT)の治療決定のための補完的診断としてのmiRiskスコアの有用性を検討するために、検証コホート及び対照コホートを統合して、全生存期間(OS)と治療との間の相互作用を調査した。
【0466】
miRiskの低い患者では、IOとICTの間にOSの差はなかった(ハザード比1.22、95%信頼区間0.12乃至12.25、p=0.849)(図10c)。対照的に、miRiskの高い患者では、IOと比較してICTを受けた患者でOSの有意な改善が観察された(ハザード比0.35、95%信頼区間0.15-0.82、P=0.018)(図10d)。多変量Cox比例ハザードモデルにおける治療とmiRiskスコアとの相互関係は有意であり(P=0.036)、miRiskスコアがIOの有効性
の予後及び予測の両方であることを示唆している(データは示されていない)。
【0467】
最後に、多変量Cox比例ハザードモデルを、他の関連する臨床病理学的共変量を調整した場合に、miRiskスコアのパフォーマンスの調査に用いた。このことから、miRiskスコアは、PD-L1 TPS、腫瘍組織学及びECOGパフォーマンスステータスよりも、IO治療患者(ハザード比4.45、95%信頼区間1.58-12.49、P=0.004)のOSと強い関連を示すことが示された(表9)。
【0468】
【表9】
【0469】
特に、入力特徴として5つの以前に特定されたmiRNAを使用したトレーニングコホートに対する多変量Cox比例ハザードモデルを適合させることは、調製された加重を用いた修正リスクスコアが導かれる;
miRisk=(ln(miR-2115-3p RPM+1)×2.190467)+(ln(miR-218-5p RPM+1)×0.303095)+(ln(miR-224-5p RPM+1)×0.598415)+(ln(miR-4676-3p
RPM+1)×1.101122)+(ln(miR-6503-5p RPM+1)×0.958823)。
【0470】
miR-2115-3p、miR-218-5p、miR-224-5p、miR-4676-3p、及びmiR-6503-5pのヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号1、39、13、7、及び34として添付の配列表に示されている。
【0471】
特に、-0.07250442496171916のmiRiskカットオフスコア/閾値が計算され、ここで、免疫化学療法からベネフィットを得る(可能性が高い)患者として患者を層別化すること(miRiskスコア>-0.07250442496171916、四捨五入-0.073)、又は免疫化学療法又は免疫療法からベネフィットを得る(可能性が高い)患者として患者を層別化すること(miRiskスコア≦-0.07250442496171916、四捨五入-0.073)を可能にした。
【0472】
要約すると、上記の結果は、miRiskスコアのカットオフ値/閾値によって、PD-L1高値のグループ、つまり免疫療法に化学療法薬を追加することからベネフィットを得るためのIV期NSCLC患者を識別できることを示す。言い換えれば、miRisk
のカットオフスコア/閾値は、IOとは対照的にICTによる治療からベネフィットを得る(可能性が高い)高リスク患者のグループを特定することを可能にする。したがって、miRiskのカットオフ値/閾値は、補完的な診断として治療法の決定を支持する。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
【配列表】
2024521124000001.app
【国際調査報告】