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特表2024-5211442つの対向する方向に機械部品を移動させることができる微小電気機械システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】2つの対向する方向に機械部品を移動させることができる微小電気機械システム
(51)【国際特許分類】
   B81B 7/02 20060101AFI20240521BHJP
   H02N 11/00 20060101ALI20240521BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B81B7/02
H02N11/00 Z
B81B3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572233
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 FR2022050963
(87)【国際公開番号】W WO2022243644
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】2105347
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507069601
【氏名又は名称】シルマック
【氏名又は名称原語表記】SILMACH
(71)【出願人】
【識別番号】594016872
【氏名又は名称】サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス)
(71)【出願人】
【識別番号】505335120
【氏名又は名称】ユニベルシテ、ド、フランシュ‐コント
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE FRANCHE-COMTE
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】ティエリー、コト
(72)【発明者】
【氏名】パトリス、ミノッティ
(72)【発明者】
【氏名】ジル、ブルボン
(72)【発明者】
【氏名】パトリス、ル、モール
【テーマコード(参考)】
3C081
【Fターム(参考)】
3C081AA11
3C081BA07
3C081BA22
3C081BA29
3C081BA33
3C081BA41
3C081BA44
3C081BA48
3C081BA52
3C081BA53
3C081CA03
3C081CA14
3C081DA03
3C081DA04
3C081DA27
3C081DA30
3C081EA21
3C081EA41
3C081EA45
(57)【要約】
本発明は、駆動モジュール(200)を備える微小電気機械システム(10)に関し、駆動モジュール(200)は、固定駆動部分(210)と、可動駆動部分(220)と、
サスペンション(230)と、を備え、可動駆動部分(220)が、サスペンション(230)の弾性変形を生じさせる静電気力の結果として、固定駆動部分(210)に対して第1の方向(A)に移動することができ、可動駆動部分(220)が、サスペンション(230)によって生成される弾性復帰力の結果として、固定駆動部分(210)に対して第1の方向(A)とは反対の第2の方向(B)に移動することができ、アクチュエータ(11)はまた、サスペンション(230)によって生成された弾性力が相殺されないように、第2の方向(B)への第1の可動部分(220)の移動を制限するストッパ(24)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体(6)およびアクチュエータ(11)を備える微小電気機械システム(10)であって、前記アクチュエータ(11)は駆動モジュール(200)を備え、前記駆動モジュール(200)は、
前記支持体(6)に固定して取り付けられた固定駆動部分(210)と、
前記支持体(6)に対して移動可能に取り付けられた可動駆動部分(220)と、
前記可動駆動部分(220)を前記支持体(6)に接続するサスペンション(230)と、を備え、
前記固定駆動部分(210)と前記可動駆動部分(220)との間の非ゼロ電圧の印加によって生じる静電気力の結果として、前記可動駆動部分(220)が前記固定駆動部分(210)に対して第1の方向(A)に移動することができ、前記固定駆動部分(210)に対する前記可動駆動部分(220)の前記移動が、前記サスペンション(230)の弾性変形を生じさせ、
前記印加電圧が低下したときに、弾性変形した前記サスペンション(230)により生じた弾性復帰力が前記静電気力に抗する結果として、前記可動駆動部分(220)が、前記固定駆動部分(210)に対して前記第1の方向(A)とは反対の第2の方向(B)に移動することができ、
前記アクチュエータ(11)がまた、前記サスペンション(230)によって生じる前記弾性力がゼロになる休止位置への前記第2の方向(B)への前記第1の可動駆動部分(220)の移動を防止するストッパ(240)を備える、微小電気機械システム(10)。
【請求項2】
初期非ラッチ構成と最終ラッチ構成との間で移動可能なラッチ機構(500)を備え、前記ラッチ機構の前記初期非ラッチ構成から前記最終ラッチ構成への移行が、前記ストッパ(240)が前記第1の可動駆動部分(220)の前記休止位置への移動に対する障害物ではない前記ストッパ(240)の初期位置から、前記ストッパ(240)が前記第1の可動導出部(220)の前記休止位置への移動を妨げる前記ストッパ(240)の最終位置への、前記ストッパ(240)の移動を生じさせる、請求項1に記載のマイクロシステム。
【請求項3】
前記ラッチ機構(500)が、前記ストッパ(240)に接続された少なくとも1つの第1のスナップ係止ラグ(512)と、前記支持体(6)に接続された第2のスナップ係止ラグ(112)と、を備え、前記第1のスナップ係止ラグ(512)が、前記ラッチ機構(500)が前記最終ラッチ構成にあるときに前記第2のスナップ係止ラグ(112)と係合することができる、請求項2に記載のマイクロシステム。
【請求項4】
前記第1のスナップ係止ラグ(512)が前記第2のスナップ係止ラグ(112)と係合すると、前記第1のスナップ係止ラグ(512)および前記第2のスナップ係止ラグ(112)が、前記ラッチ機構が前記初期非ラッチ構成に戻るのを防止する、請求項3に記載のマイクロシステム。
【請求項5】
前記ラッチ機構(500)がタペット(510)を備え、前記タペット(510)が、前記可動駆動部分(220)が前記固定駆動部分(210)に対して前記第1の方向(A)に初めて移動するときに、前記可動駆動部分(220)が前記タペット(510)を前記第1の方向に押すように配置され、これが、前記ラッチ機構(500)を前記初期非ラッチ構成から前記最終ラッチ構成に移行させる効果を有する、請求項2から4のいずれか一項に記載のマイクロシステム。
【請求項6】
前記ラッチ機構(500)が、前記タペット(510)を前記支持体(6)に接続する可撓性ビーム(520)を備え、前記タペット(510)の前記第1の方向(A)への前記移動の結果として、前記可撓性ビーム(520)が変形される、請求項5に記載のマイクロシステム。
【請求項7】
前記固定駆動部分(210)が、フィンガ(213)を有する固定コーム(211)を備え、前記可動駆動部分(220)が、フィンガ(223)を有する可動コーム(221)を備え、前記可動コーム(221)が前記固定コーム(211)に面して配置され、前記ラッチ機構(500)が前記初期非ラッチ構成にあるときには、前記可動コーム(221)の前記フィンガ(223)が前記固定コーム(211)の前記フィンガ(213)間に係合されず、前記ラッチ機構(500)が前記最終ラッチ構成にあるときには、前記可動コーム(221)の前記フィンガ(223)が前記固定コーム(211)の前記フィンガ(213)間に係合される、請求項2から6のいずれか一項に記載のマイクロシステム。
【請求項8】
前記アクチュエータ(11)が係合モジュール(300)を備え、前記係合モジュール(300)が、
前記支持体(6)に固定して取り付けられた固定係合部分(310)と、
前記支持体(6)に対して移動可能に取り付けられた可動係合部分(320)と、
前記可動係合部分(320)を前記支持体(6)に接続する第2のサスペンション(330)と、を備え、
前記固定係合部分(310)と前記可動係合部分(320)との間の非ゼロ電圧の印加によって生成される静電気力の結果として、前記可動係合部分(320)が、前記可動駆動部分(220)の前記移動に対して垂直に、前記固定係合部分(310)に対して第3の方向(C)に移動することができ、前記固定係合部分(310)に対する前記可動係合部分(320)の前記移動が前記第2のサスペンション(330)の弾性変形を生じさせ、
前記印加電圧が低下したときに、弾性変形した前記第2のサスペンション(330)により生じた弾性復帰力が前記静電気力に抗する結果として、前記可動係合部分(320)が、前記固定係合部分(310)に対して前記第3の方向(C)とは反対の第4の方向(D)に移動することができる、請求項1から6のいずれか一項に記載のマイクロシステム。
【請求項9】
前記駆動モジュール(200)によって前記第1の方向(A)および前記第2の方向(B)に選択的に移動することができ、かつ、前記係合モジュール(300)によって前記第3の方向(C)および前記第4の方向(D)に選択的に移動することができる駆動歯(116)を備え、前記駆動歯(116)が歯車(12)を回転駆動するための前記歯車(12)の連続する歯(112)と噛み合う周期的な移動で前記駆動歯(116)を移動させるように、前記駆動モジュール(200)および前記係合モジュール(300)が制御され得る、請求項8に記載のマイクロシステム。
【請求項10】
前記アクチュエータ(11)が割り出しモジュール(400)を備え、前記割り出しモジュール(400)が、
前記支持体(6)に固定して取り付けられた固定割り出し部分(410)と、
前記支持体(6)に対して移動可能に取り付けられた可動割り出し部分(420)であって、前記可動割り出し部分(420)が、前記可動割り出し部分(420)を前記支持体(6)に接続する第3のサスペンション(430)を備え、前記可動割り出し部分(420)が、前記固定割り出し部分(410)と前記可動割り出し部分(220)との間の非ゼロ電圧の印加によって生じる静電気力の結果として、前記可動駆動部分(420)の前記移動に対して垂直に、前記固定割り出し部分(410)に対して第3の方向(C)に移動することができ、前記可動割り出し部分(420)の前記固定割り出し部分(410)に対する移動が、前記第3のサスペンション(430)の弾性変形を生じさせる、可動割り出し部分(420)と、を備え、
前記印加電圧が低下したときに、弾性変形した前記第3のサスペンション(430)により生じた弾性復帰力が前記静電気力に抗する結果として、前記可動割り出し部分(420)が、前記固定割り出し部分(410)に対して前記第3の方向(C)とは反対の第4の方向(D)に移動することができる、請求項1から9のいずれか一項に記載のマイクロシステム。
【請求項11】
前記割り出しモジュール(400)によって前記第3の方向(C)および前記第4の方向(D)に選択的に移動することができる割り出し歯(120)を備え、前記割り出し歯(120)が歯車(12)の歯(121)と係合して前記歯車(12)の回転を防止し、および前記歯車(12)の前記歯(121)から係合解除されて前記歯車(12)の回転を可能にする交互の動きで前記割り出し歯(120)を駆動するように、前記割り出し歯モジュールが制御され得る、請求項10に記載のマイクロシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小電気機械システムの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
微小電気機械システム(またはMEMS)は、半導体材料をエッチングすることによって製造される小型システムである。これらのマイクロシステムは、マイクロメートル寸法を有する機械部品を備え、動作のためのエネルギー源として電気を使用する。
【0003】
仏国特許出願公開第2874907号明細書は、例えば、シリコンなどの半導体材料のチップをエッチングすることによって形成された駆動デバイスを記載している。駆動デバイスは、歯車と順次係合することができる駆動歯と、駆動歯を第1の軸(半径方向軸)に沿って移動させることができる第1の要素モジュールと、歯車に対して歯を第2の軸(接線方向軸)に沿って移動させることができる第2の要素モジュールとで構成されるアクチュエータと、を備える。第1の要素モジュールおよび第2の要素モジュールは、互いに噛み合うコームからなる構造を有する静電モジュールである。
【0004】
第1の要素モジュールおよび第2の要素モジュールは、ヒステリシス軌道を有する周期的な運動で駆動歯を動かすように、位相シフトされた交互のアドレス指定信号によって制御される。この周期的な移動の間、駆動歯は駆動位相と係合解除位相とを交互に繰り返す。各サイクルにおいて、駆動歯は歯車の歯と係合し、歯車を1ステップ回転させる。駆動歯が歯車の連続する歯と係合し、その結果、歯車を段階的な回転運動で駆動するように、サイクルが繰り返される。
【0005】
駆動位相の間、駆動歯は、互いに噛み合ったコームによって生成された静電気力の結果として第1の方向に移動する。一方、係合解除位相中、駆動歯は、噛み合ったコームのサスペンションによって生成される弾性復帰力の結果として、第1の方向とは反対の第2の方向に移動する。
【0006】
このタイプの駆動デバイスは、従来の時計モータに代えて時計機構の歯車を駆動するために使用することができ、一般に、歯車を回転駆動するのに必要な機械部品の数を減らすことができるという利点を有する。
【0007】
しかしながら、このデバイスは、一般に、歯車を2つの回転方向に駆動することを可能にしない。
【0008】
実際、歯車が第1の回転方向(例えば時計回り)に1ステップ回転することを可能にする駆動力は、第2の静電モジュールの互いに嵌合するコーム構造によって生成される静電気力から生じる。一方、第2の静電モジュールのサスペンションによって生じる弾性復帰力は、歯車を第1の回転方向とは反対の第2の回転方向(例えば反時計回り)に回転させるには不十分である。実際、第2の静電モジュールがその初期位置に近づくほど、これらの弾性復帰力は減少する。第2の静電モジュールが初期位置にあるとき、弾性復帰力はゼロである。したがって、弾性復帰力は、歯車を1ステップ移動させるのに十分ではない。
【0009】
しかし、特定の用途、特に時計工学の分野では、ホイールを第1の回転方向(例えば時計回り)および第1の回転方向とは反対の第2の回転方向(例えば反時計回り)に選択的に駆動できることが望ましい。
【0010】
歯車を両方の回転方向に駆動することができるようにするために、1つの解決策は、2つの別個の駆動デバイス、すなわち、第1の回転方向にホイールを駆動するように制御される第1の駆動デバイスと、第2の回転方向にホイールを駆動する第2の駆動デバイスと、を提供することである。
【0011】
しかし、2つの駆動デバイスの使用は、機械システムのかさを増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2874907号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の1つの目的は、バルクを低減しながら、例えば歯車などの機械部品を選択的に2つの反対方向に移動させることを可能にする微小電気機械システムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、支持体およびアクチュエータを備える微小電気機械システムによる本発明の範囲内で達成され、アクチュエータは駆動モジュールを備え、駆動モジュールは、
支持体に固定して取り付けられた固定駆動部分と、
支持体に対して移動可能に取り付けられた可動駆動部分と、
可動駆動部分を支持体に接続するサスペンションと、を備え、
固定駆動部分と可動駆動部分との間の非ゼロ電圧の印加によって生じる静電気力の結果として、可動駆動部分が固定駆動部分に対して第1の方向に移動するように適合され、固定駆動部分に対する可動駆動部分の移動が、サスペンションの弾性変形を生じさせ、
印加電圧が低下したときに、弾性変形したサスペンションにより生じた弾性復帰力が静電気力に抗する結果として、可動駆動部分が、固定駆動部分に対して第1の方向とは反対の第2の方向に移動することができ、
アクチュエータがまた、サスペンションによって生じる弾性力がゼロになる休止位置への第2の方向への第1の可動部分の移動を防止するストッパを備える。
【0015】
ストッパは、サスペンションによって生成される弾性復帰力がゼロにならない可動駆動部分の移動範囲を画定することを可能にする。
【0016】
ストッパの位置は、サスペンションによって生成される弾性復帰力の強度が所定の非ゼロ値よりも大きいままであるように選択することができる。
【0017】
したがって、アクチュエータは、静電気力に起因して機械部品を第1の方向に移動させるように選択的に制御され、弾性復帰力に起因して機械部品を第2の方向に移動させるように形成することができる。
【0018】
この微小電気機械システムにより、歯車を第1の回転方向および第2の回転方向の両方に駆動するために単一のアクチュエータのみを使用することが可能である。
【0019】
微小電気機械システムはまた、以下の特徴を有することができる。
【0020】
マイクロシステムは、初期非ラッチ構成と最終ラッチ構成との間で移動可能なラッチ機構を備え、ラッチ機構の初期非ラッチ構成から最終ラッチ構成への移行が、ストッパが第1の可動駆動部分の休止位置への移動に対する障害物を形成しないストッパの初期位置から、ストッパが第1の可動導出部の休止位置への移動を妨げるストッパの最終位置への、ストッパの移動を生じさせる。
【0021】
ラッチ機構が、ストッパに接続された少なくとも1つの第1のスナップ係止ラグと、支持体に接続された第2のスナップ係止ラグとを備え、第1のスナップ係止ラグが、ラッチ機構が最終ラッチ構成にあるときに第2のスナップ係止ラグと係合することができる。
【0022】
第1のスナップ係止ラグが第2のスナップ係止ラグと係合すると、第1のスナップ係止ラグおよび第2のスナップ係止ラグが、ラッチ機構が初期非ラッチ構成に戻るのを防止する。
【0023】
ラッチ機構がタペットを備え、タペットが、可動駆動部分が固定駆動部分に対して第1の方向に初めて移動するときに、可動駆動部分がタペットを第1の方向に押すように配置され、これが、ラッチ機構を初期非ラッチ構成から最終ラッチ構成に移行させる効果を有する。
【0024】
ラッチ機構が、タペットを支持体に接続する可撓性ビームを備え、タペットの第1の方向への移動の結果として、可撓性ビームが変形される。
【0025】
固定駆動部分がフィンガを有する固定コームを備え、可動駆動部分がフィンガを有する可動コームを備え、ラッチ機構が初期非ラッチ構成にあるときに、可動コームのフィンガが固定コームのフィンガの間に係合されないように、可動コームが固定コームに面して配置され、ラッチ機構が最終ラッチ構成にあるときに、可動コームのフィンガが固定コームのフィンガ間に係合される。
【0026】
アクチュエータが係合モジュールを備え、係合モジュールが、
支持体上に固定して取り付けられた固定係合部分と、
支持体に対して移動可能に取り付けられた可動係合部分と、
可動係合部分を支持体に接続する第2のサスペンションと、を備え、固定係合部分と可動係合部分との間の非ゼロ電圧の印加によって生成される静電気力の結果として、可動係合部分が、可動駆動部分の移動に対して垂直に、固定係合部分に対して第3の方向に移動することができ、固定係合部分に対する可動係合部分の移動が第2のサスペンションの弾性変形を生じさせ、
印加電圧が低下したときに、弾性変形した第2のサスペンションにより生じた弾性復帰力が静電気力に抗する結果として、可動係合部分が、固定係合部分に対して第3の方向とは反対の第4の方向に移動することができる。
【0027】
マイクロシステムは、駆動モジュールによって第1の方向および第2の方向に選択的に移動することができ、かつ、係合モジュールによって第3の方向および第4の方向に選択的に移動することができる駆動歯を備え、駆動歯が歯車を回転駆動するために歯車の連続する歯と噛み合う周期的な移動で駆動歯を移動させるように、駆動モジュールおよび係合モジュールが制御され得る。
【0028】
アクチュエータは割り出しモジュールを備え、割り出しモジュールは、
支持体に固定して取り付けられた固定割り出し部分と、
支持体に対して移動可能に取り付けられた可動割り出し部分であって、可動割り出し部分を支持体に接続する第3のサスペンションを備える、可動割り出し部分と、を備え、
可動割り出し部分が、固定割り出し部分と可動割り出し部分との間の非ゼロ電圧の印加によって生じる静電気力の結果として、可動駆動部分の移動に対して垂直に、固定割り出し部分に対して第3の方向に移動することができ、可動割り出し部分の固定割り出し部分に対する移動が、第3のサスペンションの弾性変形を生じさせ、
印加電圧が低下したときに、弾性変形した第3のサスペンションにより生じた弾性復帰力が静電気力に抗する結果として、可動割り出し部分が、固定割り出し部分に対して第3の方向とは反対の第4の方向に移動することができる。
【0029】
マイクロシステムは、割り出しモジュールによって第3の方向および第4の方向に選択的に移動することができる1つの割り出し歯を備え、割り出し歯が歯車の歯と係合して歯車の回転を防止し、および歯車の歯から係合解除されて歯車の回転を可能にする交互の動きで割り出し歯を駆動するように、割り出し歯モジュールが制御され得る。
【0030】
他の特徴および利点もまた、純粋に例示的であり、限定的ではなく、添付の図面を参照して読まれなければならない以下の説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の1つの可能な実施形態による微小電気機械システムを概略的に示す側面図である。
図2】微小電気機械システムを概略的に示す上面図である。
図3】駆動モジュール、ストッパ、およびストッパを位置決めするためのラッチ機構の一部を示す、図2の微小電気機械システムの詳細図である。
図4】係合解除モジュールの一部を示す、図2の微小電気機械システムの詳細図である。
図5】割り出しモジュールの一部を示す、図2の微小電気機械システムの詳細図である。
図6】駆動歯および割り出し歯を示す、図2の微小電気機械システムの詳細図である。
図7】ラッチ機構の初期化のステップを概略的に示す図である。
図8】ラッチ機構の初期化のステップを概略的に示す図である。
図9】ラッチ機構の初期化のステップを概略的に示す図である。
図10】ラッチ機構の初期化のステップを概略的に示す図である。
図11】ラッチ機構の初期化前の駆動モジュールを概略的に示す図である。
図12】ラッチ機構の初期化後の駆動モジュールを概略的に示す図である。
図13】第1の可撓性ビーム幅について、可動駆動部分が固定駆動部分に対して第1の方向に移動するときに駆動歯に作用する異なる力の強度を概略的に示す図である。
図14】可動駆動部分が第1の可撓性ビーム幅に対して第1の方向とは反対の第2の方向に固定駆動部分に対して移動するときに駆動歯に作用する弾性復帰力の強度を概略的に示す図である。
図15】可動駆動部分が第2の可撓性ビーム幅で固定駆動部分に対して第1の方向に移動するときに駆動歯に作用する異なる力の強度を概略的に示す図である。
図16】第2の可撓性ビーム幅に関して可動駆動部分が第1の方向とは反対の第2の方向に固定駆動部分に対して移動するときに駆動歯に作用する弾性復帰力の強度を概略的に示す図である。
図17】互いに噛み合うコームのフィンガの形状の詳細図である。
図18】歯車が第1の回転方向に駆動されることを可能にする駆動歯の第1の周期的動きを概略的に示す図である。
図19】歯車を第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に駆動することを可能にする駆動歯の第2の周期的動きを概略的に示す図である。
図20】ラッチ機構の初期化前の本発明の可能な一実施形態による微小電気機械システムの概略図である。
図21】ラッチ機構の初期化後の本発明の可能な一実施形態による微小電気機械システムの概略図である。
図22】駆動モジュールの電気制御信号、係合モジュールの電気制御信号、および割り出しモジュールの電気制御信号を概略的に示す図であり、各電気制御信号は方形波形状を有する。
図23】一期間にわたる駆動モジュールの電気制御信号、係合モジュールの電気制御信号、および割り出しモジュールの電気制御信号をより詳細に示す図である。
図24】アクチュエータが図22および図23の電気制御信号によって制御されるときに得られる駆動モジュール、係合モジュール、および割り出しモジュールの動きを概略的に示す図である。
図25】駆動モジュールの電気制御信号の電圧の値の関数としての駆動モジュールの動きを概略的に示す図である。
図26】係合モジュールの電気制御信号の電圧の値の関数としての係合モジュールの動きを概略的に示す図である。
図27】割り出しモジュールの電気制御信号の電圧の値の関数としての割り出しモジュールの動きを概略的に示す図である。
図28】本発明の可能な一実施形態による、駆動モジュールの電気制御信号、係合モジュールの電気制御信号、および割り出しモジュールの電気制御信号を概略的に示す図である。
図29】アクチュエータが図14の電気制御信号で制御されるときに得られる駆動モジュールの動きを概略的に示す図である。
図30】アクチュエータが図14の電気制御信号で制御されるときに得られる係合モジュールの動きを概略的に示す図である。
図31】本発明の別の可能な実施形態による、駆動モジュールの電気制御信号および係合モジュールの電気制御信号を概略的に示す図である。
図32】微小電気機械システムを制御するための制御回路を概略的に示す図である。
図33図32の制御回路の一部を形成する減衰回路を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1から図6において、示されている微小電気機械システム10は、例えばシリコンなどの半導体材料の基板1内のエッチング方法によって得られている。
【0033】
使用される基板1は、例えば、「シリコン・オン・インシュレータ」(SOI)タイプのものである。この基板1は、シリコンの厚い下層(第1の層2)、酸化シリコンの中間層(第2の層3)、および下層よりも薄い厚さを有するシリコンの上層(第3の層4)を含む。基板1の上層4はエッチングされて一組の機械部品5を形成しているが、基板1の下層2はエッチングされておらず、機械部品5のための支持体6を構成している。酸化シリコン3の中間層の一部は犠牲層として機能し、可動機械部品を支持体6から取り外すことを可能にするために除去されているが、犠牲層の別の部分は残っており、機械部品を支持体6に取り付けることを可能にする。さらに、残っている犠牲層の部分は、機械部品5と支持体6との間、したがって異なる機械部品5の間の電気絶縁体として作用する。
【0034】
したがって、図1図6に示す微小電気機械システム10は、支持体6と、微小寸法を有する機械部品5と、を備える。機械部品5は、支持体6の表面の上方に配置されている。
【0035】
より正確には、図1から図6に示す例では、微小電気機械システム10は、アクチュエータ11およびホイール12を備える。アクチュエータ11は、基板1の上層4に形成されている。ホイール12はまた、基板1の上層4に形成されていてもよく、または独立して形成された挿入部分であってもよい。
【0036】
アクチュエータ11は、回転軸の周りで支持体6に対して回転するようにホイール12を駆動するように構成される。
【0037】
図2図4に示すアクチュエータ11は、フレーム100と、3つの要素モジュール200、300および400と、を備える。
【0038】
フレーム100は、支持体6に対して固定されている。
【0039】
3つの基本モジュールは、駆動モジュール200、係合モジュール300、および割り出しモジュール400を含む。
【0040】
ホイール12は、歯車である。すなわち、その外周に一連の歯を有する。各歯は、ホイールの回転軸に対して半径方向軸に沿って延在する。歯車12は、2,000と10,000μmとの間に含まれる直径を有することができる。歯車12は、例えば、200と1,000との間の歯を有することができる。
【0041】
駆動モジュール200は、固定駆動部分210および可動駆動部分220を備える。
【0042】
固定駆動部分210は、支持体6に固定して取り付けられている。固定駆動部分210は、第1のキャリア214と、第1のキャリア214から垂直に延在する複数の固定コーム211と、を備える。各固定コーム211は、シャンク212と、シャンク212から垂直に延在するフィンガ213と、を備える。
【0043】
可動駆動部分220は、第2のキャリア224と、第2のキャリア224から垂直に延在する複数の可動コーム221と、を備える。各可動コーム221は、シャンク222と、シャンク222から垂直に延在するフィンガ223と、を備える。
【0044】
アクチュエータ11はまた、可動駆動部分220をフレーム100に接続する第1のサスペンション230を備える。第1のサスペンション230は、可動コーム221のシャンク222に平行に延在する2つの可撓性ビーム231を備える。可撓性ビーム231は、第2のキャリア224をフレーム100に接続する。
【0045】
可動コーム221は、固定コーム211の間に交互に配置されている。すなわち、可動コーム221は、固定コーム211と交互に配置されている。さらに、可動コーム221および固定コーム211は対になって配置され、各対は固定コーム211および関連する可動コーム221を含む。より正確には、対の各固定コーム211のフィンガ213は、それらの自由端が同じ対の関連する可動コーム221のフィンガ223に向けられて延在する。同様に、対の可動コーム221のフィンガ223は、それらの自由端が同じ対の固定コーム211のフィンガ213に向けられて延在する。さらに、固定コーム211のフィンガ213および可動コーム221のフィンガ223は、接線軸に平行に延在する。
【0046】
アクチュエータ11がホイール12と相互作用する位置を通るホイール12の半径に垂直な軸は、「接線軸」と呼ばれる。
【0047】
駆動モジュール200はまた、固定駆動部分210上に形成されたコンタクトパッド215を備える。コンタクトパッド215は、固定駆動部分210に電気制御信号を印加するための制御回路に接続可能である。コンタクトパッド215は、固定駆動部分210上に金属層を堆積させることによって形成することができる。
【0048】
アクチュエータ11はまた、フレーム100上に形成された1つまたは複数のコンタクトパッド115を備える。コンタクトパッド115は、グランドに接続することができる。コンタクトパッド115は、フレーム100上に1つまたは複数の金属層を堆積させることによって形成することができる。
【0049】
アクチュエータ11はまた、駆動歯116と、駆動歯116を駆動モジュール200の可動駆動部分220に接続する駆動ビーム117と、を備える。
【0050】
駆動歯116は、歯車12の歯121と係合して、歯車12を回転駆動することができる。駆動ビーム117は、歯車12に対して接線軸に沿って延在する。
【0051】
電気コンタクトパッド115、215を介して固定駆動部分210と可動駆動部分220との間に非ゼロ電圧を印加することにより、固定コーム211に向かって可動コーム221を引き付ける静電気力が生じる。より正確には、一組の可動コーム221は、それぞれ、同じ組の固定コーム211に向かって引き寄せられる。コーム211、221間に生じる静電気力により、可動駆動部分220は、固定駆動部分210に対して接線軸に平行な第1の方向(矢印A)に移動する。
【0052】
可動駆動部分220が固定駆動部分210に対して第1の方向に移動することにより、第1のサスペンション230が弾性変形する。サスペンション230の弾性変形は、可動駆動部分220をフレーム100に接続する可撓性ビーム231の屈曲を含む。この弾性変形により、第1のサスペンション230は、静電気力に対抗しようとする弾性復帰力を生じさせる。この弾性復帰力は、第1のサスペンション230が受ける弾性変形の振幅に伴って大きくなる。
【0053】
固定駆動部分210および可動駆動部分220にかかる張力が低下またはゼロになると、静電気力は弾性復帰力より小さく、またはゼロになる。第1のサスペンション230により生じた弾性復帰力によって、可動駆動部分220は、固定駆動部分210に対して接線軸に平行な第1の方向とは反対の第2の方向(矢印B)に移動する。より正確には、一対の可動コーム221の各々は、同じ対の固定コーム211から離れるように移動する。
【0054】
駆動歯116が駆動ビーム117を介して可動駆動部分220に接続されると、駆動モジュール200によって駆動歯116を接線軸に平行に、第1の方向(矢印A)に、次いで第2の方向(矢印B)に連続的に移動させることができる。
【0055】
係合モジュール300は、固定係合部分310および可動係合部分320を備える。
【0056】
固定係合部分310は、支持体6に固定して取り付けられている。固定係合部分310は、第3のキャリア314と、第3のキャリア314から垂直に延在する複数の固定コーム311と、を備える。各固定コーム311は、シャンク312と、シャンク312から垂直に延在するフィンガ313と、を備える。
【0057】
可動係合部分320は、第4のキャリア324と、第4のキャリア324から垂直に延在する複数の可動コーム321と、を備える。各可動コーム321は、シャンク322と、シャンク322から垂直に延在するフィンガ323と、を備える。
【0058】
係合モジュール300の固定コーム311および可動コーム321は、係合モジュール200の固定コーム211および可動コーム221に対して垂直に向けられている。
【0059】
アクチュエータ11はまた、可動係合部分320をフレーム100に接続する第2のサスペンション330を備える。第2のサスペンション330は、可動コーム321のシャンク322に平行に延在する2つの可撓性ビーム331を備える。可撓性ビーム331は、第4のキャリア324をフレーム100に接続する。
【0060】
可動コーム321は、固定コーム311の間に交互に配置されている。さらに、可動コーム321および固定コーム311は対になって配置され、各対は固定コーム311および関連する可動コーム321を含む。より正確には、対の各固定コーム311のフィンガ313は、それらの自由端が関連する可動コーム321のフィンガ323に向けられて延在する。同様に、可動コーム321のフィンガ323は、その自由端が固定コーム311のフィンガ313に向けられて延在する。さらに、固定コーム311のフィンガ313および可動コーム321のフィンガ323は、半径方向軸に平行に延在する。
【0061】
アクチュエータ11がホイール12と相互作用する位置を通るホイール12の半径に平行な軸は、「半径方向軸」と呼ばれる。
【0062】
係合モジュール300はまた、固定係合部分310に形成されたコンタクトパッド315を備える。コンタクトパッド315は、固定係合部分310に電気制御信号を印加するための電位源に接続することができる。
【0063】
アクチュエータ11はまた、駆動歯116を係合モジュール300の可動係合部分320に接続する係合ビーム118を備える。
【0064】
係合ビーム118は、歯車12に対して半径方向軸に沿って延在する。
【0065】
電気コンタクトパッド115、315を介して固定係合部分310と可動係合部分320との間に非ゼロ電圧が印加されると、可動コーム321を固定コーム311に向かって引き付ける静電気力が生じる。より正確には、一組の可動コーム321は、それぞれ、同じ組の固定コーム311に向かって引き寄せられる。生じた静電気力により、可動係合部分320は、固定係合部分310に対して半径方向軸と平行な第3の方向(矢印C)に移動する。
【0066】
固定係合部分310に対する可動係合部分320の第3の方向への移動は、第2のサスペンション330の弾性変形を生じさせる。サスペンション330の弾性変形は、可動係合部分320をフレーム100に接続する可撓性ビーム331の屈曲を含む。この弾性変形により、第2のサスペンション330は、静電気力に対抗しようとする弾性復帰力を生じさせる。この弾性復帰力は、弾性変形の振幅に伴って大きくなる。
【0067】
固定係合部分310と可動係合部分320との間にかかる張力が低下またはゼロになると、静電気力が弾性復帰力より小さくなるか、またはゼロになる。第2のサスペンション330により生じた弾性復帰力により、可動係合部分320は、固定係合部分310に対して、半径方向軸と平行な第3の方向とは反対の第4の方向(矢印D)に移動する。
【0068】
したがって、駆動歯116が係合ビーム118を介して可動係合部分320に接続されると、駆動歯116は、係合モジュール300によって、半径方向軸に平行に、第3の方向(矢印C)および第4の方向(矢印D)に連続して移動することができる。
【0069】
駆動ビーム117および係合ビーム118の各々は、駆動モジュール200によって生成された接線方向運動および係合モジュール300によって生成された半径方向運動をそれぞれ駆動歯116に伝達するのに十分な可撓性を有し、一方で、これらの2つの運動の分離を可能にする。したがって、2つの動き(接線方向の動きおよび半径方向の動き)を互いに独立して制御することができる。
【0070】
割り出しモジュール400は、固定割り出し部分410および可動割り出し部分420を備える。
【0071】
固定割り出し部分410は、支持体上に固定して取り付けられる。固定割り出し部分410は、第5のキャリア414と、第5のキャリア414から垂直に延在する複数の固定コーム411と、を備える。各固定コーム411は、シャンク412と、シャンク412から垂直に延在するフィンガ413と、を備える。
【0072】
可動割り出し部分420は、第6のキャリア424と、第6のキャリア424から垂直に延在する複数の可動コーム421と、を備える。各可動コーム421は、シャンク422と、シャンク422から垂直に延在するフィンガ423と、を備える。
【0073】
アクチュエータ11はまた、可動割り出し部分420をフレーム100に接続する第3のサスペンション430を備える。第3のサスペンション430は、コーム421のシャンク422に平行に延在する2つの可撓性ビーム431を備える。可撓性ビーム431は、横ビーム424をフレーム100に接続する。
【0074】
可動コーム421は、固定コーム411の間に交互に配置されている。さらに、可動コーム421および固定コーム411は対になって配置され、各対は固定コーム411および関連する可動コーム421を含む。より正確には、対の各固定コーム411のフィンガ413は、それらの自由端が関連する可動コーム421のフィンガ423に向けられて延在する。同様に、可動コーム421のフィンガ423は、その自由端が固定コーム411のフィンガ413に向けられて延在する。さらに、固定コーム411のフィンガ413および可動コーム421のフィンガ423は、半径方向軸に平行に延在する。
【0075】
アクチュエータ11はまた、割り出し歯120を備える。図3に示す例では、割り出し歯120は、2つの突起126と、2つの突起126の間に設けられた凹部127と、を備える。割り出し歯120が歯車12の歯121と係合すると、凹部127は歯車12の歯121を凹部127内に受け入れ、これはホイール12の回転を阻止する効果を有する。
【0076】
アクチュエータ11はまた、割り出し歯120を割り出しモジュール400の可動割り出し部分420に接続する割り出しビーム128を備える。
【0077】
割り出しビーム128は、歯車12に対して半径方向軸に沿って延在する。
【0078】
電気コンタクトパッド415および115を介して固定割り出し部分410と可動割り出し部分420との間に非ゼロ電圧を印加すると、固定コーム411に向かって可動コーム421を引き付ける静電気力が生じる。より正確には、一組の可動コーム421は、それぞれ、同じ組の固定コーム411に向かって引き寄せられる。生じた静電気力により、可動割り出し部分420は、固定割り出し部分410に対して半径方向軸と平行な第3の方向(矢印C)に移動する。
【0079】
固定割り出し部分410に対する可動割り出し部分420の第3の方向への移動は、第3のサスペンション430の弾性変形を生じさせる。サスペンション430の弾性変形は、可動割り出し部分420をフレーム100に接続する可撓性ビーム431の屈曲を含む。この弾性変形により、第3のサスペンション430は、静電気力に対抗しようとする弾性復帰力を生じさせる。この弾性復帰力は、弾性変形の振幅に伴って大きくなる。
【0080】
固定割り出し部分410と可動割り出し部分420との間にかかる張力が低下またはゼロになると、静電気力は弾性復帰力より小さく、またはゼロになる。第3のサスペンションによって生成された弾性復帰力の結果として、可動割り出し部分420は、固定割り出し部分410から半径方向軸に平行な第3の方向とは反対の第4の方向(矢印D)に離れるように移動する。
【0081】
割り出し歯120が割り出しビーム128を介して可動割り出し部分420に接続されると、割り出し歯120はこうして、半径方向軸に平行に、割り出しモジュールによって第3の方向および第4の方向に連続的に移動する。
【0082】
したがって、割り出し歯120をホイール12に対して半径方向に交互に移動させることが可能である。
【0083】
位相シフトされた周期的な電気制御信号によって駆動モジュール200および係合モジュール300を適切に制御することによって、ヒステリシスの第1の周期的動き(図18に示す動き)またはヒステリシスの第1の周期的動きに対して反転されたヒステリシスの第2の周期的動き(図19に示す動き)で駆動歯116を動かすことが可能である。
【0084】
駆動歯116がヒステリシス内の第1の周期的動きで移動すると、駆動歯116は、歯車12の連続する歯121と噛み合い、歯車12を第1の回転方向に段階的な回転運動で駆動する。
【0085】
歯がヒステリシス内の第2の周期的動きで移動すると、駆動歯116は、歯車12の連続する歯121と噛み合い、歯車12を第1の回転方向とは反対の第2の回転方向に段階的な回転運動で駆動する。
【0086】
並行して、割り出しモジュール400は、係合モジュール300に印加される電気制御信号と位相が反対の電気制御信号によって制御される。
【0087】
したがって、駆動歯116がホイール12の歯121から係合解除されると、割り出し歯120はホイール12の歯121と係合する。逆に、駆動歯116がホイール12の歯121と係合しているとき、割り出し歯120はホイール12の歯121と係合解除される。
【0088】
したがって、割り出し歯120は、駆動歯116がホイール12の歯121から係合解除されている間(係合解除位相の間)、ホイール12の早すぎる回転を防止する。一方、割り出し歯120は、(駆動位相中に)駆動歯116によって引き起こされるホイール121の回転に対して障害物を形成しない。
【0089】
アクチュエータ11はまた、駆動モジュール200の可動駆動部分220の第2の方向(矢印B)への移動を制限することを可能にするストッパ240を備える。
【0090】
アクチュエータ11はまた、所定の位置で支持体に対して当接部240を位置決めするためのラッチ機構500を備える。
【0091】
図3において、当接部240およびラッチ機構500は、微小電気機械システム10の製造直後に、すなわち微小電気機械システムを動作させる前のラッチ機構500のラッチ前に得られるものとして示されている。
【0092】
この図では、ラッチ機構500は非ラッチ構成にある。
【0093】
さらに、この図から分かるように、この構成では、駆動モジュール200の可動コーム221のフィンガ223は、駆動モジュール200の固定コーム211のフィンガ213の間に係合されない。
【0094】
ラッチ機構500は、タペット510と、タペット510から接線軸に沿って延在する弾性脚部511と、を備える。図3に示す例では、ラッチ機構は、2つの弾性脚部511を備える。
【0095】
各弾性脚部511は、自由端を有し、その自由端に配置された第1のスナップ係止ラグ512を備える。
【0096】
ラッチ機構500はまた、タペット510をフレーム100に接続する可撓性ビーム520を備える。図2に示す例では、ラッチ機構500は2つの可撓性ビーム520を備える。可撓性ビーム520は、互いに平行に、半径方向軸に沿って延在する。
【0097】
ストッパ240は、タペット510に固定されている。言い換えると、ストッパ240は、タペット510に対して固定されている。より正確には、図3に示す例では、ストッパ240およびタペット510は、単一の固有の材料片に形成されている。
【0098】
さらに、フレーム100は、第2のスナップ係止ラグ112を備える。図3に示す例では、フレーム100は、2つの第2のスナップ係止ラグ112を備える。
【0099】
図7図10は、ラッチ機構500をラッチするステップを概略的に示し、ラッチ機構500をラッチされていない構成(図7に示す構成)からラッチされた構成(図10に示す構成)に移行させることを可能にする。
【0100】
図7に示すように、電気コンタクトパッド115、215を介して駆動モジュール200の固定駆動部分210と可動駆動部分220との間に非ゼロ電圧が印加される。
【0101】
印加された電圧は、接線軸に平行な第1の方向(矢印A)に駆動モジュール200の可動駆動部分220を固定駆動部分210に対して移動させる効果を有する静電気力を生じさせる。
【0102】
図8に示すように、その移動中、可動駆動部分220はタペット510を押し、これはタペット510を移動させ、ストッパ240も第1の方向(矢印A)に移動させる効果を有する。
【0103】
これはまた、第1のスナップ係止ラグ512を第2のスナップ係止ラグ112に押し付ける効果を有する。
【0104】
それらの形状により、第1のスナップ係止ラグ512は、弾性脚部511の屈曲を生じさせることによって第2のスナップ係止ラグ112上を摺動する。図8に示す例では、弾性脚部511は互いに接近しながら屈曲する。
【0105】
図9に示すように、弾性脚部511の屈曲により、第1のスナップ係止ラグ512は、第2のスナップ係止ラグ112を越えて押される。
【0106】
第1のスナップ係止ラグ512が第2のスナップ係止ラグ112を超えると、弾性脚部511は元の形状に戻る傾向がある。図9に示す例では、弾性脚部511は互いに分離している。弾性脚部511の分離は、第1のスナップ係止ラグ512を第2のスナップ係止ラグ112と係合させる効果を有する。
【0107】
図10に示すように、その後に、駆動モジュール200の固定駆動部分210と可動駆動部分220との間に印加される電圧が除去される。静電気力が消滅する。
【0108】
第1のサスペンション230によって及ぼされる弾性復帰力の結果として、駆動モジュール200の可動駆動部分220は、接線軸に平行な第2の方向(矢印B)に駆動モジュール200の固定駆動部分210に対して移動する。駆動モジュール200の可動駆動部分220がストッパ240に当接するまで、駆動モジュール200の可動駆動部分220は固定駆動部分210に対して第2の方向に移動する。
【0109】
しかしながら、ストッパ240は、第1のスナップ係止ラグ512および第2のスナップ係止ラグ112によって保持され、タペット510がその初期位置に戻るのを防止する。
【0110】
ラッチ機構500がラッチ構成になると、ストッパ240は、ストッパ240が第1のサスペンションによって生成される弾性力がゼロになる休止位置への第2の方向への第1の可動駆動部分220の移動を防止する位置に配置される。
【0111】
換言すれば、ストッパ240は、第1のサスペンション230を永久的に弾性変形させた状態で保持するように位置している。ストッパ240の位置は、第1のサスペンション230によって及ぼされる弾性復帰力の最小値を決定する。
【0112】
ストッパ240の存在に起因して、第1のサスペンション230によって及ぼされる弾性復帰力は、この最小値より小さくすることができない。
【0113】
図11は、ラッチ機構500のラッチ前の駆動モジュール200を概略的に示す。
【0114】
この図に示すように、可動コーム221のフィンガ223は、固定コーム211のフィンガ213の間に係合していない。
【0115】
さらに、第1のサスペンション230は休止位置にある。すなわち、第1のサスペンション230の可撓性ビーム231は変形しない。したがって、第1のサスペンション230が及ぼす弾性復帰力はゼロである。
【0116】
図12は、ラッチ機構500のラッチ後の駆動モジュール200を概略的に示す。
【0117】
この図に示すように、可動コーム221のフィンガ223は、固定コーム211のフィンガ213の間に設けられた空間に部分的に係合している。
【0118】
ストッパ240が可動駆動部分220の休止位置への復帰を阻止することにより、可撓性ビーム231は弾性変形した状態で保持される。したがって、第1のサスペンション230が及ぼす弾性復帰力はゼロではない。
【0119】
図13は、可動駆動部分220が固定駆動部分210に対して第1の方向(矢印Aの方向)に移動するときに駆動歯116に作用する異なる力の強度を概略的に示す図である。
【0120】
駆動歯116に作用する力は、固定部分210と可動駆動部分220との間に印加される電圧による静電気力と、第1のサスペンション230の変形による弾性復帰力である。
【0121】
弾性復帰力は、静電気力に対抗する。このため、駆動歯116に作用する駆動力の強さは、静電気力の強さと弾性復帰力の強さとの差となる。
【0122】
図13の図の灰色の領域は、第1の回転方向(矢印Aの方向)における第1のサスペンション230(ビーム幅:33μm)の第1の剛性値に対して駆動歯116に及ぼされる駆動力を示す。
【0123】
この図から分かるように、静電気力の強度は、固定駆動部分210に対する可動駆動部分220の移動中に比較的一定のままである。
【0124】
一方、弾性復帰力の大きさは、可動駆動部分220が第1の方向に移動するほど大きくなる。
【0125】
弾性復帰力の強さの増加は、第1のサスペンション230の剛性に依存する。比較として、この図は、第1のサスペンション230の第1の剛性値(ビーム幅=33μm)に対する弾性復帰力の強度の変動と、第1のサスペンション230の第2の剛性値(ビーム幅=15μm)に対する弾性復帰力の強度の変動と、を示す。
【0126】
また、可動駆動部分220の移動がゼロであれば、弾性復帰力の強さはゼロではない。実際、この位置では、第1のサスペンション230は、ストッパ240の存在に起因して変形する。
【0127】
図14は、可動駆動部分220が固定駆動部分210に対して第1の方向とは反対の第2の方向(矢印Bの方向)に移動したときに駆動歯116に作用する弾性復帰力の強度を概略的に示す図である。
【0128】
この図から分かるように、可動部分には静電気力が作用していない。
【0129】
可動駆動部分220は、弾性復帰力のみによって固定駆動部分210に対して第2の方向に移動する。
【0130】
弾性復帰力の大きさは、可動駆動部分220が第2の方向に移動するにしたがって小さくなる。しかしながら、ストッパ240の存在に起因して、弾性復帰力の強度はゼロにならない。弾性復帰力の強度は、ゼロではない最小値よりも大きいままである。
【0131】
この図に示すように、弾性復帰力の強さの低下は、第1のサスペンション230の剛性に依存する。したがって、この図は、第1のサスペンションの第1の剛性値(ビーム幅=33μm)に対する弾性復帰力の強度の変動を示す。
【0132】
図14の図の灰色の領域は、第2の回転方向(矢印Bの方向)における第1のサスペンション230(ビーム幅:33μm)の第1の剛性値に対して駆動歯116に及ぼされる駆動力を示す。
【0133】
図15は、可動駆動部分220が固定駆動部分210に対して第1の方向に移動するときに駆動歯116に作用する異なる力の強度を概略的に示す図である。
【0134】
駆動歯116に作用する力は、固定駆動部分210と可動駆動部分220との間にかかる張力によって生じる静電気力と、第1のサスペンション230の変形による弾性復帰力である。弾性復帰力は、静電気力に対抗する。
【0135】
この図は、第1のサスペンション230の第2の剛性値(ビーム幅=15μm)に対する弾性復帰力の強度の変化を示す。
【0136】
図15の図の灰色の領域は、第1のサスペンション230の第2の剛性値(ビーム幅:15μm)に対する、第1の方向(矢印Aの方向)で駆動歯116に及ぼされる駆動力の強度の変動を示す。第1の剛性値よりも小さいこの第2の剛性値は、より大きなグレーゾーン(図13および図15のグレー領域の面積の比較)をもたらし、したがって、第1の方向の駆動力のより大きな強度ももたらす。
【0137】
図16は、可動駆動部分220が第1のサスペンション230の第2の剛性値に対して第1の方向とは反対の第2の方向に固定駆動部分210に対して移動するときに駆動歯116に作用する弾性復帰力の強度を概略的に示す図である。
【0138】
この図から分かるように、可動駆動部分220には静電気力は作用しない。
【0139】
可動駆動部分220は、弾性復帰力のみによって固定部分210に対して第2の方向に移動する。
【0140】
弾性復帰力の大きさは、可動駆動部分220が第2の方向に移動するにしたがって小さくなる。
【0141】
しかしながら、ストッパ240の存在に起因して、弾性復帰力の強度はゼロにならない。弾性復帰力の強度は、ゼロではない最小値よりも大きいままである。
【0142】
この図は、第1のサスペンション240の第2の剛性値(ビーム幅=15μm)に対する弾性復帰力の強度の変化を示す。
【0143】
図16の図の灰色の領域は、第2の回転方向(矢印Bの方向)における第1のサスペンション230の第2の剛性値(ビーム幅:15μm)に対して駆動歯116に及ぼされる駆動力を示す。比較として、第1の剛性値に対する第2の方向の駆動力も同じ図に表示される。
【0144】
図13図16は、第1のサスペンションの剛性が高くなるほど、歯車12を第1の回転方向に駆動するのに役立つ駆動力が急激に減少することを示している。
【0145】
したがって、意図される用途に応じて、第1のサスペンション230の剛性は、歯車12の第1の回転方向への回転駆動のより良好な有効性または歯車12の第2の回転方向への回転駆動のより良好な有効性を促進するために調整され得る。
【0146】
図17は、固定コーム211のフィンガ213の形状および駆動モジュール200の可動コーム221のフィンガ223の形状の詳細図である。
【0147】
生産中の微小電気機械システムのエッチングに使用されるエッチング技術は、各微小システムの固定部分と可動部分との間に最小間隔を設けることを必要とする。
【0148】
例えば、図1図6に示すような微小電気機械システムの場合、固定コームと可動コームのフィンガ間に最小間隔を設ける必要がある。
【0149】
最小間隔Guは、エッチング深さに依存する。例えば、深さ200μmの深さで深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)の手法で行うエッチングの場合、最小間隔Guは約4~6μmとすることができる。
【0150】
ラッチ機構500のラッチ前では、可動コーム221のフィンガ223は、固定コーム211のフィンガ213と係合していない。可動コーム221のフィンガ223は、固定コーム211の最も近いフィンガ213から第1の間隔G1だけ離間している。
【0151】
固定コーム211のフィンガ213と可動コーム221のフィンガ223との間の間隔G1は、最小間隔Guよりも大きい。2つのフィンガ間の「間隔」は、2つのフィンガを分離する最短距離として定義される。
【0152】
ラッチ機構500のラッチ後に、可動コーム221のフィンガ223が固定コーム211のフィンガ213の間に係合される。
【0153】
したがって、可動コーム221のフィンガ223は、固定コーム211の最も近いフィンガ213から、第1の間隔G1よりも小さい第2の間隔G2および第3の間隔G3だけ離間している。より正確には、可動コーム221のフィンガ223は、可動コーム221のフィンガ223の一方の側に位置する固定コーム211のフィンガ213から第2の間隔G2だけ離間しており、可動コーム221のフィンガ223の他方の側に位置する固定コーム211の別のフィンガ213から第3の間隔G3だけ離間している。固定コーム211のフィンガ213および223と可動コーム221のフィンガ223との間の間隔G2およびG3は、最小間隔Gu未満とすることができる。間隔G2および/または間隔G3は、0.1から5μmの間に含まれ、好ましくは1から3μmの間に含まれ得る。例えば、間隔G2は3μmに等しくすることができ、間隔G3は4μmに等しくすることができる。
【0154】
特に、フィンガ213、223の厚さ(すなわち、シリコンの上層のエッチングの深さ)と、固定コーム211のフィンガ213と可動コーム221のフィンガ223との間の間隔との比は、50から400の間に含まれることができ、好ましくは70から150の間に含まれることができる。
【0155】
駆動モジュール200によって生成される静電気力は、固定コーム211のフィンガ213と可動コーム221のフィンガ223との間の間隔に反比例するため、これは、使用されるエッチング技術によって課される間隔の制約を省きながら、駆動モジュール200によって生成される駆動力を増加させる効果を有する。
【0156】
第2の間隔G2は、固定駆動部分210に対する可動駆動部分220の移動中に、可動コーム221のフィンガ223の移動が完全に直線的ではなく、固定コーム211のフィンガ213に完全に平行でもないという事実を考慮に入れるために、第3の間隔G3とは異なり得る。
【0157】
図20および図21は、本発明の別の可能な実施形態による微小電気機械システム10を概略的に示す。
【0158】
この他の実施形態は、駆動モジュール200が接線軸に平行な対称軸に対して対称であるという点で、図1から図6に示す実施形態とは異なる。
【0159】
図1から図6の実施形態のように、駆動モジュール200は、固定駆動部分210および可動駆動部分220を含む。
【0160】
固定駆動部分210は、支持体6に固定して取り付けられている。
【0161】
この実施形態では、固定駆動部分210は、2つの第1のキャリア214を備え、第1の系列の固定コーム211は、第1のキャリア214の一方から垂直に延在し、第2の系列の固定コーム211は、第1のキャリア214の他方から垂直に延在する。
【0162】
可動駆動部分220は、第2のキャリア224と、第2のキャリア224から垂直に延在する複数の可動コーム221と、を備える。
【0163】
この実施形態では、可動コーム221は、第2のキャリア224の第1の側面から延在する第1の組の可動コームと、第1の側面とは反対の第2のキャリア224の第2の側面から延在する第2の組の可動コームと、を含む。したがって、可動コーム221は、第2のキャリア224の両側に対称的に延在する。
【0164】
同様に、第1の系列の固定コームの固定コーム211は、第2のキャリア224の第1の側面から延在し、第2の系列の固定コームの固定コーム211は、第1の側面とは反対の第2のキャリア224の第2の側面から延在する。したがって、固定コーム211は、第2のキャリア224の両側に対称的に延在する。
【0165】
アクチュエータ11はまた、可動駆動部分220をフレーム100に接続する第1のサスペンション230を備える。第1のサスペンション230は、可動コーム221のシャンク222に平行に延在する4つの可撓性ビーム231を備える。可撓性ビーム231は、第2のキャリア224をフレーム100に接続する。4つの可撓性ビーム231は、第2のキャリア224の第1の側面から延在する2つの可撓性ビームと、第2のキャリア224の第2の側面から延在する2つの他の可撓性ビームと、を含む。したがって、第1のサスペンション230は、接線軸に平行な対称軸に対して対称である。
【0166】
可動コーム221は、固定コーム211の間に交互に配置されている。すなわち、可動コーム221は、固定コーム211と交互に位置している。さらに、可動コーム221および固定コーム211は対で配置され、各対は固定コーム211および関連する可動コーム221を含む。より正確には、対の各固定コーム211のフィンガ213は、それらの自由端が同じ対の関連する可動コーム221のフィンガ223に向けられて延在する。同様に、対の可動コーム221のフィンガ223は、それらの自由端が同じ対の固定コーム211のフィンガ213に向けられて延在する。さらに、固定コーム211のフィンガ213および固定コーム221のフィンガ223は、接線軸に平行に延在する。
【0167】
図20は、ラッチ機構500のラッチ前の駆動モジュール200を概略的に示す。
【0168】
この図に示すように、可動コーム221のフィンガ223は、固定コーム211のフィンガ213の間に係合していない。
【0169】
さらに、第1のサスペンション230は休止位置にある。すなわち、第1のサスペンション230の可撓性ビーム231は変形しない。したがって、第1のサスペンション230が及ぼす弾性復帰力はゼロである。
【0170】
図21は、ラッチ機構500のラッチ後の駆動モジュール200を概略的に示す。
【0171】
この図に示すように、可動コーム221のフィンガ223は、固定コーム211のフィンガ213間に設けられた空間に部分的に係合している。
【0172】
ストッパ240が可動駆動部分220の休止位置への復帰を阻止することにより、可撓性ビーム231は弾性変形した状態で保持される。したがって、第1のサスペンション230が及ぼす弾性復帰力はゼロではない。
【0173】
この実施形態の一つの利点は、第1のサスペンション230の対称的な構成に起因して、可動駆動部分220が固定駆動部分210に対して移動する間、可動コーム221のフィンガ223の移動が完全に直線的であり、固定コーム211のフィンガ213に平行であることである。
【0174】
言い換えれば、第2のキャリア224は、接線軸に沿って移動するように拘束され、半径方向軸に沿って移動することができない。
【0175】
したがって、固定コーム211および可動コーム221のフィンガ213、223間の間隔G2、G3をさらに小さくすることができる。また、第2の間隔G2と第3の間隔G3とを等しくすることができる。間隔G2およびG3(図17に示す)は、1μm未満とすることができる。
【0176】
これにより、駆動モジュール200により生じた静電気力をより大きくすることができる。
【0177】
図22は、駆動モジュールの電気制御信号の一例、係合モジュールの電気制御信号の一例、および割り出しモジュールの電気制御信号の一例を概略的に示す。
【0178】
図22では、各電気制御信号は電圧電気制御信号である。したがって、図22の図は、各電気制御信号の電圧の変動を時間の関数として示す。各電気制御信号は周期的であり、実質的に方形波の形状を有する。
【0179】
例えば、駆動モジュールの電気制御信号は、最小電圧値(例えば、Vmin=0)と最大電圧値(例えば、Vmax=110ボルト)とを交互にとる。
【0180】
図23の図は、一期間中の時間の関数としての各電気制御信号の電圧の変動をより正確に示す。
【0181】
図24は、駆動モジュール200の可動駆動部分220の経時的な移動、係合モジュール300の可動係合部分320の経時的な移動、および割り出しモジュール400の可動部分420の経時的な移動を概略的に示す。
【0182】
これらの動きは、アクチュエータ11が図22および図23に示されているものと同一の電気制御信号で制御されるときに得られた。
【0183】
図24は、駆動モジュール200の可動駆動部分220が跳ね返ることを示す。これらの跳ね返りは、本質的に、可動駆動部分220がそのストロークの終わりに達するときに生じる。より正確には、これらの跳ね返りは、第2の方向(矢印B)への要素運動中に可動駆動部分220がストッパ240に接触したとき、すなわち、弾性変形した第1のサスペンション230により生じる弾性復帰力の結果として可動駆動部分220がその初期位置に戻るときに視認可能である。
【0184】
図24はまた、係合モジュール300の可動係合部分320および割り出しモジュール400の可動割り出し部分420も残留振動を受けることを示している。
【0185】
これらの跳ね返りまたはこれらの残留振動は、アクチュエータ11の適切な動作に有害である。
【0186】
一方では、可動部分の逆方向への移動を指令する前に、これらの跳ね返りまたはこれらの振動が十分に減衰されるのを待つ必要があり、これにより、アクチュエータを制御できる周波数が制限される。
【0187】
一方、跳ね返りは、機械部品間に繰り返しの衝撃を発生させ、接触している表面の早期摩耗を引き起こし、微小電気機械システムの寿命を短縮する。
【0188】
図25は、可動駆動部分220と固定駆動部分210との間に印加される電気制御信号の電圧の値の関数としての駆動モジュール200の可動駆動部分220の動きを概略的に示す図である。
【0189】
この図は、より詳細には、駆動モジュール200に印加される電気制御信号の電圧の値が経時的に漸進的に直線的に増加するときの固定駆動部分210に対する可動駆動部分220の移動の振幅を示す。
【0190】
図25に見られるように、電気制御信号の電圧の値がしきい値電圧値Vdebut未満であるとき、可動駆動部分220は固定駆動部分210に対して移動しない。実際、可動駆動部分220と固定駆動部分210との間に生じる静電気力は、第1のサスペンション230によって生じる弾性復帰力に打ち勝つには不十分であり、したがって、可動駆動部分220を固定駆動部分210に対して移動させるには不十分である。言い換えると、第1のサスペンション230は、固定駆動部分210に対して可動駆動部分220を移動させることができるようにするために静電気力が克服しなければならない弾性プレストレスを受ける。
【0191】
電気制御信号の電圧の値がしきい値電圧値Vdebutとしきい値電圧値Vfinとの間に含まれるとき、可動駆動部分220は固定駆動部分210に対して移動する。実際、可動駆動部分220と固定駆動部分210との間に生じる静電気力は、固定駆動部分210に対する可動駆動部分220の移動を生じさせる。固定駆動部分210に対する可動駆動部分220の移動の振幅は、電気制御信号の電圧の値に応じて連続的に増加する。
【0192】
制御信号の電圧の値が電圧Vfinよりも大きい場合、可動駆動部分220は固定駆動部分210に対して移動しなくなる。実際、可動駆動部分はフレーム100に当接している。したがって、静電気力の増加は、固定駆動部分210に対する可動駆動部分220のさらなる移動を引き起こさない。
【0193】
図26は、係合モジュール300に印加される電気制御信号の電圧の値の関数としての係合モジュール300の可動係合部分320の動きを概略的に示す図である。
【0194】
駆動モジュール200については、可動係合部分320と固定係合部分310との間に生じる静電気力が、可動係合部分320を固定係合部分310に対して移動させるには不十分であるしきい値電圧値Vdebutを決定することができる。
【0195】
係合モジュール300の場合、電気制御信号の電圧の値がしきい値電圧値Vdebut未満であるとき、可動係合部分320は固定係合部分310に対して移動しない。実際、可動コーム321のフィンガ323が固定コーム311のフィンガ313に係合していないため、固定コーム311と可動コーム321との間に生じる静電気力は非常に小さい。
【0196】
可動係合部分320がフレーム100に当接するしきい値電圧値Vfinを決定することも可能である。
【0197】
制御信号の電圧がしきい値電圧値Vdebutとしきい値電圧値Vfinとの間に含まれるとき、可動係合部分320は固定係合部分310に対して移動する。固定係合部分310に対する可動係合部分320の移動の振幅は、電気制御信号の電圧の値に応じて連続的に大きくなる。
【0198】
図27は、割り出しモジュール400に印加される電気制御信号の電圧の値の関数としての、割り出しモジュール400の可動割り出し部分420の移動を概略的に示す図である。
【0199】
係合モジュール300に関して、それを下回ると、可動割り出し部分420と固定割り出し部分410との間に生成される静電気力が、固定割り出し部分410に対する可動割り出し部分420の移動を生じさせるのに不十分であるしきい値電圧値Vdebutを決定することが可能である。
【0200】
可動割り出し部分420がフレーム100に当接するしきい値電圧値Vfinを決定することも可能である。
【0201】
制御信号の電圧がしきい値電圧値Vdebutとしきい値電圧値Vfinとの間に含まれるとき、可動割り出し部分420は固定割り出し部分410に対して移動する。固定割り出し部分410に対する可動割り出し部分420の移動の振幅は、電気制御信号の電圧の値と共に連続的に増加する。
【0202】
図28は、本発明の可能な一実施形態による、駆動モジュール200の電気制御信号、係合モジュール300の電気制御信号、および割り出しモジュール400の電気制御信号を概略的に示す図である。
【0203】
この図に示すように、駆動モジュール200の電気制御信号は、最小電圧値(例えば、Vmin=0)と最大電圧値(例えば、Vmax=110ボルト)とを交互にとる。
【0204】
最大電圧値Vmaxから最小電圧値Vminまでの移行の間、電気制御信号の電圧値は、最大電圧値Vmaxから最小電圧値Vminまで単調に減少する。
【0205】
加えて、この減少中に、電気制御信号は、
最大電圧値Vmaxと駆動モジュールについて定義されたしきい値電圧値Vfinとの間の第1の平均勾配(この例では、Vfin≒0.83×Vmax)と、
しきい値電圧値Vfinとしきい値電圧値Vdebutとの間の、第1の平均勾配よりも絶対値が小さい第2の平均勾配(この例では、Vdebut≒0.41×Vmax)と、
駆動モジュールについて定義されたしきい値電圧値Vdebutと最小電圧値Vminとの間の、第2の平均勾配よりも絶対値が大きい第3の平均勾配(この例では、Vmin=0)と、を連続して有する。
【0206】
第1の平均勾配は、電気制御信号の値が値Vmaxから値Vfinまで移行する期間[Tmax,Tfin]にわたる電気制御信号の瞬時勾配の平均として定義される。言い換えれば、第1の平均勾配は、(Vfin-Vmax)/(Tfin-Tmax)に等しく、(Tfin-Tmax)は、電気制御信号が値Vmaxから値Vfinまで移行するのにかかる時間である。
【0207】
第2の平均勾配は、電気制御信号の値が値Vfinから値Vdebutまで移行する期間[Tfin,Tdebut]にわたる電気制御信号の瞬時勾配の平均として定義される。言い換えれば、第2の平均勾配は、(Vdebut-Vfin)/(Tdebut-Tfin)に等しく、(Tdebut-Tfin)は、電気制御信号が値Vfinから値Vdebutまで移行するのにかかる時間である。
【0208】
第3の平均勾配は、電気制御信号の値が値Vdebutから値Vminまで移行する期間[Tdebut,Tmin]にわたる電気制御信号の瞬時勾配の平均として定義される。言い換えれば、第3の平均勾配は、(Vmin-Vdebut)/(Tmin-Tdebut)に等しく、(Tmin-Tdebut)は、電気制御信号が値Vdebutから値Vminまで移行するのにかかる時間である。
【0209】
図28に示す例では、電気制御信号は、各期間[Tmax,Tfin]、[Tfin,Tdebut]、および[Tdebut,Tmin]にわたって線形である。この場合、第1の平均勾配は、期間[Tmax,Tfin]にわたって一定である信号の瞬時勾配に等しく、第2の平均勾配は、期間[Tfin,Tdebut]にわたって一定である信号の瞬時勾配に等しく、第3の平均勾配は、期間[Tdebut,Tmin]にわたって一定である信号の瞬時勾配に等しい。
【0210】
しかしながら、他の形態の電気制御信号ももちろん可能であり、例えば、電気制御信号が各期間にわたって線形ではない形態である。
【0211】
図28には、第2の平均勾配のいくつかの可能な値が示されている。
【0212】
図28に示すように、係合モジュール300の電気制御信号、および割り出しモジュール400の電気制御信号は、駆動モジュール200の電気制御信号の形態と同様の形態を有する。
【0213】
この図に示すように、係合モジュール300(それぞれ、割り出しモジュール400)の電気制御信号は、最小電圧値(例えば、Vmin=0)と最大電圧値(例えば、Vmax=110ボルト)とを交互にとる。
【0214】
最大電圧値から最小電圧値までの移行の間、電気制御信号の電圧値は、最大電圧値Vmaxから最小電圧値Vminまで単調に減少する。
【0215】
加えて、この減少中に、電気制御信号は、
係合モジュール300(それぞれ割り出しモジュール400)について定義された最大電圧値としきい値電圧値Vfinとの間の第1の平均勾配(この例では、Vfin≒0.91×Vmax)と、
しきい値電圧値Vfinとしきい値電圧値Vdebutとの間の、第1の平均勾配よりも絶対値が小さい第2の平均勾配(この例では、Vdebut≒0.27×Vmax)と、
係合モジュール300(それぞれ割り出しモジュール400)について定義されたしきい値電圧値Vdebutと最小電圧値Vmin(この例ではVmin=0)との間の、第2の平均勾配よりも絶対値が大きい第3の平均勾配と、を連続して有する。
【0216】
図28には、第2の平均勾配のいくつかの可能な値が示されている。
【0217】
図29は、駆動モジュール200が図28の電気制御信号によって制御されるときに得られる、経時的な固定駆動部分210に対する可動駆動部分220の動きの振幅を概略的に示す図である。
【0218】
駆動モジュール200に印加される電気制御信号のために選択される第2の平均勾配に応じて(すなわち、制御信号が電圧値Vfinから電圧値Vdebutまで移行するのにかかる時間に応じて)、可動部分220の跳ね返りは多かれ少なかれ減衰される。
【0219】
第2の平均勾配の最適値(または制御信号が電圧値Vfinから電圧値Vdebutまで移行するのにかかる時間の最適値)、すなわちこれらの跳ね返りの最良の減衰を得ることを可能にする第2の平均勾配の値を決定することが可能である。
【0220】
図29に示す例では、制御信号が電圧値Vfinから電圧値Vdebutまで移行するのにかかる時間は、跳ね返りの最良の減衰を可能にする0.42msである。この時間は、固定駆動部分210に対する可動駆動部分220の1つの固有自由振動周期に実質的に等しい。例えば、この時間は、固定駆動部分210に対する可動駆動部分220の固有自由振動周期の0.7倍から1.3倍の範囲に含まれる。
【0221】
同様に、図30は、係合モジュール300が図28の電気制御信号で制御されるときに得られる、係合モジュール300の固定係合部分310に対する可動係合部分320の移動の振幅を経時的に概略的に示す図である。
【0222】
この例では、制御信号が電圧値Vfinから電圧値Vdebutまで移行するのにかかる時間は、振動の最良の減衰を可能にする0.56msである。この時間は、固定係合部分310に対する可動係合部分320の1つの固有自由振動周期に実質的に等しい。
【0223】
図31は、本発明の別の可能な実施形態による、駆動モジュールの電気制御信号および係合モジュールの電気制御信号を概略的に示す図である。
【0224】
本実施形態では、前述の実施形態と同様に、制御信号は、最小電圧値Vminと最大電圧値Vmaxとを交互にとる。
【0225】
しかし、本実施形態では、最小電圧値から最大電圧値まで移行の間、電気制御信号の電圧値は、最小電圧値から最大電圧値まで単調に増加する。
【0226】
加えて、電気制御信号の電圧値は、
最小電圧値Vminとしきい値電圧値Vdebutとの間の第4の平均勾配と、
しきい値電圧値Vdebutとしきい値電圧値Vfinとの間の、第4の平均勾配よりも絶対値が小さい第5の平均勾配と、
しきい値電圧値Vfinと最大電圧値Vmaxとの間の、第5の平均勾配よりも絶対値が大きい第6の平均勾配と、を連続して有する。
【0227】
第4の平均勾配は、電気制御信号の値が値Vminから値Vdebutまで移行する期間[Tmin,Tdebut]にわたる電気制御信号の瞬時勾配の平均として定義される。言い換えれば、第4の平均勾配は、(Vdebut-Vmin)/(Tdebut-Tmin)に等しく、(Tdebut-Tmin)は、電気制御信号が値Vminから値Vdebutまで移行するのにかかる時間である。
【0228】
第5の平均勾配は、電気制御信号の値が値Vdebutから値Vfinまで移行する期間[Tdebut、Tfin]にわたる電気制御信号の瞬時勾配の平均として定義される。言い換えれば、第5の平均勾配は、(Vfin-Vdebut)/(Tfin-Tdebut)に等しく、(Tfin-Tdebut)は、電気制御信号が値Vdebutから値Vfinに移行するのにかかる時間である。
【0229】
第6の平均勾配は、電気制御信号の値が値Vfinから値Vmaxまで移行する期間[Tfin,Tmax]にわたる電気制御信号の瞬時勾配の平均として定義される。言い換えれば、第6の平均勾配は、(Vmax-Vfin)/(Tmax-Tfin)に等しく、(Tmax-Tfin)は、電気制御信号が値Vfinから値Vmaxに移行するのにかかる時間である。
【0230】
図31に示す例では、電気制御信号は、各期間[Tmin,Tdebut]、[Tdebut,Tfin]、および[Tfin,Tmax]にわたって線形である。この場合、第4の平均勾配は、期間[Tmin,Tdebut]にわたって一定である信号の瞬時勾配に等しく、第5の平均勾配は、期間[Tdebut,Tfin]にわたって一定である信号の瞬時勾配に等しく、第6の平均勾配は、期間[Tfin,Tmax]にわたって一定である信号の瞬時勾配に等しい。
【0231】
しかしながら、他の形態の電気制御信号ももちろん可能であり、例えば、電気制御信号が各期間にわたって線形ではない形態である。
【0232】
図32は、微小電気機械システム10のアクチュエータ11を制御するのに適した制御回路13を概略的に示す。
【0233】
この例では、制御回路13は、
減衰回路131と、
チャージポンプコンバータおよび電圧調整器を備える電源回路132であって、高電圧電源信号を生成するように構成された電源回路132と、
高電圧スイッチを備える転流回路133であって、アクチュエータ11を電源回路132出力および減衰回路131に選択的に接続するように構成された転流回路133と、
減衰回路を制御するように構成された始動回路134と、
電圧レベルシフト回路135と、
低電圧デジタルマイクロプロセッサ136と、を備える。
【0234】
減衰回路131、電源回路132、転流回路133、始動回路134および電圧レベルシフト回路135は、同じASIC回路の構成要素とすることができる。
【0235】
デジタルプロセッサ136(「低電圧デジタルコア」とも呼ばれる)は、ASIC回路の異なる回路を制御するように構成された低電圧プログラマブルデジタルプロセッサである。
【0236】
電源回路132は、例えば、最大電圧が125ボルトであり、場合によっては最大電圧よりも低い2つの値の間で調整され、チャージポンプの動作周波数に応じて1ms未満の可変立ち上がり時間を特徴とする高電圧電源信号を生成するように構成される。
【0237】
チャージポンプは、転流回路133の入力に印加される電気制御信号の電圧を増幅することを可能にするコンデンサを含むアナログ回路である(チャージポンプは「電圧増倍器」とも呼ばれる)。このアナログ回路は、例えば、従来のバッテリ(ボタンセル)の1.5~3ボルトの入力電圧から、アクチュエータ11のモジュール200、300および400に供給するのに必要な100ボルトを超える出力電圧まで移行することを可能にする。
【0238】
転流回路133のスイッチは、アクチュエータ11に印加される電気制御信号の電圧上昇に必要な高電圧端子(110ボルト)と減衰回路131との間の転流を可能にするように構成される。これらのスイッチは、例えば、高電圧に耐えることができる1つまたは複数のMOSFETパワートランジスタを備える。
【0239】
始動回路134(「VDDブートストラップ」とも呼ばれる)は、減衰回路131のMOSFETトランジスタを制御するように構成される。始動回路134は、デジタルプロセッサ136によって生成された低電圧デジタル制御信号を減衰回路131のMOSFETトランジスタのゲートに適合させ、変換し、注入することを可能にするアナログ回路である。
【0240】
電圧レベルシフタ回路135(「高電圧レベルシフタ」とも呼ばれる)は、デジタルプロセッサ136によって生成された低電圧デジタル制御信号を、転流回路133のMOSFETトランジスタのゲートに印加される高電圧制御信号に変換するように構成されたアナログ回路である。
【0241】
図33は、図18の制御回路13の一部を形成する減衰回路131を概略的に示す。
【0242】
この図では、アクチュエータ11はコンデンサに同化されている。実際、駆動モジュール200、係合モジュール300、および割り出しモジュールの各々は、可動部分および固定部分を備える。可動部分および固定部分は、キャパシタのプレートに同化させることができる。
【0243】
図33では、駆動モジュール200のみが示されている。しかしながら、減衰回路131の概略図は、3つのモジュールについて同一である。
【0244】
減衰回路131は、ダイオードD1と、抵抗器R1と、MOSFETトランジスタQ1と、を備える。ダイオードD1、抵抗器R1およびMOSFETトランジスタQ1は、転流回路133とグランドとの間に並列アセンブリで電気的に接続されている。
【0245】
MOSFETトランジスタQ1は、始動回路134によって制御される。始動回路134は、トランジスタのゲートに接続され、トランジスタを選択的にブロックするかまたはトランジスタを活性化するようにトランジスタを制御するように構成される。
【0246】
MOSFETトランジスタQ1が遮断されると、トランジスタ(ドレイン-ソース間)に電流が流れなくなる。
【0247】
MOSFETトランジスタQ1が活性化されると、電流がトランジスタを通過することができる。
【0248】
制御回路13の動作は以下の通りである。
【0249】
MOSFETトランジスタQ1は、最初は遮断されている。
【0250】
高電圧電源信号の電圧が最小電圧値(Vmin)から最大電圧値(Vmax)まで移行するとき、転流モジュール133は、転流モジュール133がアクチュエータ11を電源回路132の出力に接続する第1の構成にある。したがって、アクチュエータ11は、電源回路132によって生成された高電圧電源信号によって供給される。
【0251】
高電圧電源信号の電圧が最大電圧値(Vmax)から最小電圧値(Vmin)に移行すると、転流回路133は、転流モジュール133がアクチュエータ11を減衰回路131に接続する第2の構成に移行する。
【0252】
したがって、転流回路133が第2の構成に位置するとき、駆動モジュール200は減衰回路131を介して放電する。
【0253】
駆動モジュール200の放電は、3つの連続する位相で行われる。
【0254】
最初、固定駆動部分210と可動駆動部分220との間の電圧は、最大電圧値Vmaxに等しい。駆動モジュール200の放電中、固定駆動部分210と可動駆動部分220との間の電圧は低下する。
【0255】
固定駆動部分210と可動駆動部分220との間の電圧がしきい値電圧値Vfin(第1の位相)よりも大きい限り、アクチュエータ11の放電電流はダイオードD1を通過する。駆動モジュール200の端子の電圧は、最大電圧値Vmaxからしきい値電圧値Vfinまで急激に低下する。最大電圧値Vmaxからしきい値電圧値Vfinまでの駆動モジュール200の端子における電圧の変動は、第1の勾配を有する。この例では、第1の平均勾配は準垂直である。言い換えると、第1の平均勾配は-1V/μs未満である。電気制御信号が最大電圧値Vmaxからしきい値電圧値Vfinまで移行するのにかかる時間(Tfin-Tmax)は、50μs未満、またはさらには10μs未満である。
【0256】
固定駆動部分210と可動駆動部分220との間の電圧がしきい値電圧値Vfin(第2の位相)未満になると、ダイオードD1は通過しなくなる。アクチュエータ11の放電電流は、抵抗器R1を通過する。固定駆動部分210と可動駆動部分220との間の電圧は、しきい値電圧値Vfinからしきい値電圧値Vdebutまで低下する。駆動モジュール200の端子における電圧の変動は、抵抗器R1の値に依存する第2の平均勾配を有する。第2の平均勾配は、第1の平均勾配よりも絶対値が小さい。言い換えると、固定駆動部分210と可動駆動部分220との間の電圧の低下は、第1の位相のときよりも緩やかである。抵抗器R1は、固定駆動部分210に対する可動駆動部分220の動きを減衰させる役割を果たす。
【0257】
固定駆動部分210と可動駆動部分220との間の電圧がしきい値電圧値Vdebut(第3の位相)未満になると、MOSFETトランジスタQ1が活性化する。これにより、アクチュエータ11の放電電流がMOSFETトランジスタQ1を通過する。駆動モジュール200の端子における電圧は、しきい値電圧値Vdebutから最小電圧値Vminまで急激に低下する。駆動モジュール200の端子における電圧の変動は、第3の平均勾配を有する。この例では、第3の勾配は準垂直である。言い換えると、第3の平均勾配は-1V/μs未満である。電気制御信号が最大電圧値Vdebutからしきい値電圧値Vmin(Tmin-Tdebut)まで移行するのにかかる時間は、50μs未満、またはさらには10μs未満である。第3の勾配は、第2の勾配よりも絶対値が大きい。
【0258】
実際には、始動回路134は、MOSFETトランジスタQ1を、第1の位相の間および第2の位相の間、トランジスタがブロックされ、第3の位相の間、MOSFETトランジスタQ1が活性化されるように制御する。この目的のために、始動回路134は、電源回路132によって生成された高電圧電源信号に同期してMOSFETトランジスタQ1を交互に遮断および起動するのに適した期間を有する電気制御信号を生成する。2つの信号の同期は、電源回路132および始動回路134がデジタルプロセッサ136によって制御されることによって得られる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
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図32
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【国際調査報告】