(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】腺腫及び大腸癌のリスクを評価するためのバイオマーカーの組み合わせ及びその使用
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240521BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240521BHJP
G01N 33/92 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/50 S
G01N33/50 D
G01N33/92
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572242
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 CN2022094558
(87)【国際公開番号】W WO2022242779
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】202110557839.5
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519069268
【氏名又は名称】深▲じぇん▼市▲絵▼云生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】賈 偉
(72)【発明者】
【氏名】謝 国祥
(72)【発明者】
【氏名】周 科軍
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CA25
2G045CB03
2G045CB04
2G045CB07
2G045DA02
2G045DA07
2G045DA11
2G045FA36
2G045FB06
(57)【要約】
本発明は、腺腫及び大腸癌のリスクを評価するためのバイオマーカーの組み合わせ及びその使用を開示し、具体的には、被験者の腺腫及び大腸癌のリスクを評価するための代謝マーカーの組み合わせ、及び腺腫及び大腸癌のリスクを評価するための診断用製品の製造におけるこれらの使用である。本発明の診断マーカーの組み合わせは、感度及び特異性が高い特徴を有し、大腸癌の早期診断に高い感度及び高い特異性を有し、大腸癌を早期に発見することができ、患者のために時間を稼ぎ、できるだけ早く治療を開始させ、臨床治療効果を高める。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者における腺腫及び大腸癌のリスクを評価するための診断用製品であって、前記診断用製品の診断指標は、被験者の生体試料中のタウロコール酸、フマル酸、ミリスチン酸、ヒスチジン、チロシン、及び3,4-ジヒドロキシ桂皮酸のうちの1種又は複数種を含み、また、任意に以下の組み合わせA若しくは組み合わせB、又は組み合わせAと組み合わせBの両方を含み、
組み合わせA:3-ヒドロキシアントラニル酸、グアニジノ酢酸、アゼライン酸、スベリン酸、フェニルピルビン酸、アセト酢酸、メチルシステイン、α-ヒドロキシイソ酪酸、N-メチルニコチンアミド、サリチル酸、フェニル酢酸、ホモセリン、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、フェニル乳酸、メチルマロン酸、コハク酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシプロピオン酸、及びp-ヒドロキシフェニル酢酸のうちの1種又は複数種であり、
組み合わせB:リジン、トリプトファン、スレオニン、シトルリン、乳酸、カルノシン、2-ヒドロキシ酪酸、スベリン酸、3-ヒドロキシ酪酸、グルタミン、ピルビン酸、ウリジン、コハク酸、クエン酸、アコニット酸、イソクエン酸、2-メチルクエン酸、インドール酢酸、グアニジノ酢酸、アゼライン酸、トリプタミン、5-ヒドロキシインドール酢酸、スペルミジン、馬尿酸、フェニル酢酸、アセト酢酸、m-ヒドロキシフェニルプロピオン酸、グリシン、p-ヒドロキシフェニル酢酸、2-アミノ酪酸、β-ヒドロキシ酪酸、シスチン、パントテン酸、γ-アミノ酪酸、イソロイシン、バリン、オルニチン、グリセロリン酸、アミノオキシ酢酸、4-ヒドロキシ-L-プロリン、ドコサヘキサエン酸、フェニルアラニン、3,4-ジヒドロキシ酪酸、3-メチルアジピン酸、プソイドウリジン、セリン、ホモセリン、プトレシン、キサントゲン酸、α-ヒドロキシグルタル酸、3-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシイソバレリルカルニチン、3-ヒドロキシアントラニル酸、β-アラニン、パルミトレイン酸、システイン、グルタミン酸、ウラシル、5-オキソプロリン、2-アミノ酪酸、アスパラギン酸、アスパラギン、イノシトール、ホモシトルリン、オキソグルタル酸、3,4-ジヒドロキシマンデル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシプロピオン酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、及びバニリン酸のうちの1種又は複数種であり、
前記生体試料は被験者の尿、血液、唾液、及び糞便から選択される、ことを特徴とする被験者における腺腫及び大腸癌のリスクを評価するための診断用製品。
【請求項2】
前記診断用製品は、キット、医療機器、診断モジュールを備えたコンピュータシステム、及び診断装置から選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の被験者における腺腫及び大腸癌のリスクを評価するための診断用製品。
【請求項3】
被験者における腺腫及び大腸癌のリスクを評価するためのバイオマーカーの組み合わせであって、前記バイオマーカーは、被験者の生体試料中の示差的な代謝物であり、前記生体試料は尿、血液、唾液、及び糞便から選択され、前記バイオマーカーの組み合わせは、タウロコール酸、フマル酸、ミリスチン酸、ヒスチジン、チロシン、及び3,4-ジヒドロキシ桂皮酸のうちの1種又は複数種を含み、また、任意に以下の組み合わせA若しくは組み合わせB、又は組み合わせAと組み合わせBの両方を含む、被験者における腺腫及び大腸癌のリスクを評価するためのバイオマーカーの組み合わせであって、
組み合わせA:3-ヒドロキシアントラニル酸、グアニジノ酢酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、アゼライン酸、スベリン酸、フェニルピルビン酸、アセト酢酸、メチルシステイン、α-ヒドロキシイソ酪酸、N-メチルニコチンアミド、サリチル酸、フェニル酢酸、ホモセリン、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、フェニル乳酸、メチルマロン酸、コハク酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシプロピオン酸、及びp-ヒドロキシフェニル酢酸のうちの1種又は複数種であり、
組み合わせB:リジン、トリプトファン、スレオニン、シトルリン、乳酸、カルノシン、2-ヒドロキシ酪酸、スベリン酸、3-ヒドロキシ酪酸、グルタミン、ピルビン酸、ウリジン、コハク酸、クエン酸、アコニット酸、イソクエン酸、2-メチルクエン酸、インドール酢酸、グアニジノ酢酸、アゼライン酸、トリプタミン、5-ヒドロキシインドール酢酸、スペルミジン、馬尿酸、フェニル酢酸、アセト酢酸、m-ヒドロキシフェニルプロピオン酸、グリシン、p-ヒドロキシフェニル酢酸、2-アミノ酪酸、β-ヒドロキシ酪酸、シスチン、パントテン酸、γ-アミノ酪酸、イソロイシン、バリン、オルニチン、グリセロリン酸、アミノオキシ酢酸、4-ヒドロキシ-L-プロリン、ドコサヘキサエン酸、フェニルアラニン、3,4-ジヒドロキシ酪酸、3-メチルアジピン酸、プソイドウリジン、セリン、ホモセリン、プトレシン、キサントゲン酸、α-ヒドロキシグルタル酸、3-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシイソバレリルカルニチン、3-ヒドロキシアントラニル酸、β-アラニン、パルミトレイン酸、システイン、グルタミン酸、ウラシル、5-オキソプロリン、2-アミノ酪酸、アスパラギン酸、アスパラギン、イノシトール、ホモシトルリン、オキソグルタル酸、3,4-ジヒドロキシマンデル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシプロピオン酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、及びバニリン酸のうちの1種又は複数種である、
ことを特徴とする被験者における腺腫及び大腸癌のリスクを評価するためのバイオマーカーの組み合わせ。
【請求項4】
腺腫及び大腸癌に罹患するリスクがあるか否かを評価するための診断用製品の製造における、請求項3に記載の被験者における腺腫及び大腸癌のリスクを評価するためのバイオマーカーの組み合わせの使用であって、前記診断用製品は、請求項3に記載のバイオマーカーの含有量を評価指標とする、ことを特徴とする使用。
【請求項5】
前記診断用製品は、キット、医療機器、診断モジュールを備えたコンピュータシステム、及び診断装置を含む、ことを特徴とする請求項4に記載の使用。
【請求項6】
請求項3に記載のバイオマーカーの組み合わせを定量的に検出するためのキットであって、前記キットは、バイオマーカー標準物質及びバイオマーカー抽出剤を含み、前記バイオマーカー抽出剤は、有機溶媒と水の混合物から選択され、有機溶媒はイソプロピルアルコール、メタノール、及びアセトニトリルのうちの1種又は複数種から選択される、ことを特徴とするキット。
【請求項7】
前記キットは誘導体化試薬を含む、ことを特徴とする請求項6に記載のキット。
【請求項8】
請求項3に記載のバイオマーカーの組み合わせの定量検出方法であって、前記方法は、被験者の生体試料を処理し、その後、クロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法を使用して生体試料中のバイオマーカーの組み合わせを定量的に検出することを含み、前記クロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法は、液体クロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法と、ガスクロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法とを含む、ことを特徴とする定量検出方法。
【請求項9】
被験者における腺腫及び大腸癌のリスクを評価するためのコンピュータシステムであって、前記システムは、情報取得モジュールと、被験者における腺腫及び大腸癌のリスク評価モジュールとを含み、
前記情報取得モジュールは少なくとも、被験者試料中の代謝マーカーの組み合わせの検出情報を取得する操作を実行するために使用され、前記代謝マーカーの組み合わせは請求項3に記載のバイオマーカーの組み合わせから選択され、
前記被験者における腺腫及び大腸癌のリスク評価モジュールは少なくとも、前記情報取得モジュールによって取得された代謝マーカーのレベルに基づいて、前記被験者が腺腫及び大腸癌に罹患しているか否か、又は腺腫及び結腸直腸癌に罹患するリスクがあるか否かを評価する操作を実行するために使用される、コンピュータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、出願日が2021/5/21の中国特許出願2021105578395の優先権を主張している。本願は、上記の中国特許出願の全文を援用している。
本発明は、生物の技術分野に関し、腺腫及び大腸癌のリスクを評価するためのバイオマーカーの組み合わせ、その使用及びその測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大腸癌は、罹患率と死亡率が高いが、その古典的な発展過程は、腺腫-非典型的な増殖-進行癌のような緩慢な進行パターンに従い、各種の遺伝子とエピジェネティクス突然変異が10年単位の時間内に累積しており、大腸の悪性腫瘍の発生を招く。
【0003】
大腸癌の早期と前癌病変の段階では、患者はよく明らかな臨床症状がなく、もしすぐに発見すれば完全に切除することができ、治療効果は比較的良い。しかし、大部分のハイリスク群はスクリーニングの機会にアクセスできず、症状が現れたとき、そのほとんどはすでに進行期にあるか、遠方転移さえ発生し、標準化された外科手術と包括的な治療を行ったとしても、予後は依然として良好ではなく、治療コストが高い。そのため、大腸癌及びその前癌病変の早期発見は患者の総生存率を高める上で極めて重要であり、疾患自体の治療難度を下げ、診療費を下げることに役立つ。集団に基づく大規模なスクリーニングは、大腸癌の罹患率を著しく減少させ、治癒率を高め、死亡率を下げることができ、世界各国のがん予防・抑制の主な手段となっている。
【0004】
大腸癌のスクリーニング対象は一般リスク群と散発性大腸癌ハイリスク群の2種類に分けられ、それぞれスクリーニング方法と重点が異なる。前者は、40歳以上で大腸癌の個人歴と家族歴を伴わず、大腸腺腫、炎症性腸疾患などの疾患を伴わず、癌のリスクが平均又は比較的低いレベルにある人として定義され、後者は、大腸癌の家族歴や個人歴、腸管腺腫歴、長期に治らない炎症性腸疾患があり、また、体質指数、喫煙飲酒歴、飲食運動などの多種類の危険因子と組み合わせて判定するものを指す。そのほか、家族性腺腫性ポリポーシスと遺伝性非ポリポーシス大腸癌などを含む遺伝性大腸癌という特殊リスク群がある。高リスク群及び特殊リスク群は、診断のゴールド基準である結腸内視鏡検査を直接行うべきであり、これは、前癌病変を早期に発見し、大腸腫瘍のリスクを下げる面で重要な役割を果たしている。一方、一般リスク群は、規模が大きく、結腸内視鏡は侵襲性検査であり、腸内準備を行う必要があり、しかも合併症のリスクがあり、患者のコンプライアンスは比較的低い。無痛大腸内視鏡検査は、費用が比較的高く、大規模なスクリーニングツールとしては適さない。この自然集団に対して、低侵襲性、低コスト、かつ効率的で信頼性の高い大腸癌や腺腫などの前癌病変のスクリーニング手段を開発する必要がある。
【0005】
現在臨床で常用されている大腸癌のスクリーニング手段は、直腸指診、便潜血検査、血液腫瘍マーカー検出、内視鏡検査、画像検査(CTシミュレーション内視鏡検査やエアバリウムダブルコントラストイメージング検査)などを含む。便潜血試験は最も広く応用されている大腸癌の早期スクリーニング技術であり、その非侵襲、低コストの利点から、患者に受け入れさせやすく、主に結腸内視鏡検査を受けるべき患者をスクリーニングするために用いられ、複数の科学的根拠に基づいた医療のサポートを持っているが、この方法は、感度と特異性が低い。改良された潜血検査方法は、抗ヒトヘモグロビン抗体を一次抗体とし、便に対して免疫組織化学検査を行うことであり、ヘムのペルオキシダーゼ検出と比較して、この方法の特異性は改善されているが、依然として50%以下であり、結果の判断はやや主観的である。糞便DNA検査は、便潜血以外にも、変異DNAも検出可能で、感度が向上しているが、コストが高く、スクリーニング手段として普及するのは難しい。癌胎児性抗原(CEA)や炭水化物抗原19-9(CA19-9)などの血液腫瘍マーカーも、感度が低く、無症状の患者を見逃しやすい可能性があり、また、CEAは、腫瘍特異的抗原ではなく、腫瘍関連抗原であり、他の内胚葉腫瘍(胃がん、肺がん、乳がん、膵臓がんなど)、さらには慢性大腸炎でも増加する可能性があるため、特異性は高くなく、現在、大腸癌の補助的な診断指標や有効性モニタリング手段としてのみ使用されている。CTシミュレーション内視鏡検査は、コンピュータ仮想現実技術と最新の医療画像処理を組み合わせた新しい非侵襲的検査法で、空気バリウム二重コントラスト画像処理に代わる結腸全体の観察が可能であるが、結腸ポリープの検出感度はポリープの大きさと直接的な関係があり、検査対象は放射線に曝露され、検査コストが高いため、自然集団のスクリーニングにはまだ適していない。
【0006】
特許CN201611090742.3は、核酸分離精製試薬、DNA亜硫酸塩変換試薬、KRAS遺伝子変異検出試薬、BMP3及びNDRG4遺伝子メチル化検出試薬、便潜血検出試薬を含む、早期大腸癌の補助診断キット、その使用方法及び検出システムを提供しており、核酸分離精製試薬は、便試料中のヒト由来DNAを分離及び精製するために使用され、DNA亜硫酸塩変換試薬は、精製されたヒト由来DNAを亜硫酸塩変換し、その後のBMP3及びNDRG4遺伝子メチル化の検出に供するために使用される。しかし、同様の遺伝子検査は、結腸直腸ポリープなどの一般的な結腸直腸疾患と区別することが困難であり、感度と特異性を調査する必要がある。また、コストが高く、疾患スクリーニングへの大規模な普及は困難である。
【0007】
特許CN201910446079.3は、大腸癌のmicroRNAのためのバイオマーカーを提供する包括:hsa-miR-423-5pをコードする核酸分子、hsa-miR-451aをコードする核酸分子、hsa-miR-30b-5pをコードする核酸分子、hsa-miR-27b-3pをコードする核酸分子、hsa-miR-199a-3pをコードする核酸分子、hsa-let-7d-3pをコードする核酸分子、hsa-miR-423-5pをコードする核酸分子のうちの少なくとも1種を含み、銭核酸分子はすべて、ヌクレオチド配列がSEQIDNO:1~7に示されるmicroRNA配列をコードする。これらのmicroRNAバイオマーカーは、混合試料のスクリーニング、少量の試料の単一検証、及び大量の試料の単一検証によって得られた。しかし、類似の検査はサンプリングのランダム性が大きく、疾患に対する検出感度が低い場合があり、疾患のスクリーニングに用いることが難しい。
このことから、腺癌及び大腸癌のスクリーニング及び早期診断には、より簡便で非侵襲的でコンプライアンスに優れた、高感度と特異性が高い検出技術が、より簡便かつ確実に被験者の腺腫及び大腸癌のリスクを評価するために急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする技術的課題は、上記の従来技術の欠陥及び欠点を解決して、被験者の腺腫及び大腸癌のリスクを評価するための診断マーカー組み合わせ及びその測定方法を提供することである。
本発明は、さらに、被験者の腺腫及び大腸癌のリスクを評価するための診断用製品、及びコンピュータシステムの製造における、前記診断マーカー組み合わせの使用を提供する。
【0009】
本発明における「腺腫及び大腸癌」が「腺腫又は大腸癌」を含む場合、即ち、1回の評価又は診断の過程において、腺腫及び大腸癌の両方の診断又は除外を目的とすることも、又はいずれか一方の診断又は除外を目的とすることもできる。
【0010】
前記「リスク」とは、被験者が「腺腫及び大腸癌」に罹患している可能性を意味し、本発明の方法によるリスク評価の出力は、数値化された確率値であってもよく、予め設定された基準値と比較して「あり」又は「なし」などの定性的表現であってもよい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成させるために、本発明は以下の技術的解決手段を提供する。
【0012】
本発明の第1態様によれば、被験者の腺腫及び大腸癌のリスクを評価するための診断用製品であって、前記診断用製品の診断指標は、被験者の生体試料中のタウロコール酸、フマル酸、ミリスチン酸、ヒスチジン、チロシン、及び3,4-ジヒドロキシ桂皮酸のうちの1種又は複数種を含み、また、任意に以下の組み合わせA若しくは組み合わせB、又は組み合わせAと組み合わせBの両方を含み、
組み合わせA:3-ヒドロキシアントラニル酸、グアニジノ酢酸、アゼライン酸、スベリン酸、フェニルピルビン酸、アセト酢酸、メチルシステイン、α-ヒドロキシイソ酪酸、N-メチルニコチンアミド、サリチル酸、フェニル酢酸、ホモセリン、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、フェニル乳酸、メチルマロン酸、コハク酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシプロピオン酸、及びp-ヒドロキシフェニル酢酸のうちの1種又は複数種であり、
組み合わせB:リジン、トリプトファン、スレオニン、シトルリン、乳酸、カルノシン、2-ヒドロキシ酪酸、スベリン酸、3-ヒドロキシ酪酸、グルタミン、ピルビン酸、ウリジン、コハク酸、クエン酸、アコニット酸、イソクエン酸;2-メチルクエン酸、インドール酢酸、グアニジノ酢酸、アゼライン酸、トリプタミン、5-ヒドロキシインドール酢酸、スペルミジン、馬尿酸、フェニル酢酸、アセト酢酸、m-ヒドロキシフェニルプロピオン酸、グリシン、p-ヒドロキシフェニル酢酸、2-アミノ酪酸、β-ヒドロキシ酪酸、シスチン、パントテン酸、γ-アミノ酪酸、イソロイシン、バリン、オルニチン、グリセロリン酸、アミノオキシ酢酸、4-ヒドロキシ-L-プロリン、ドコサヘキサエン酸、フェニルアラニン、3,4-ジヒドロキシ酪酸、3-メチルアジピン酸、プソイドウリジン、セリン、ホモセリン、プトレシン、キサントゲン酸、α-ヒドロキシグルタル酸、3-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシイソバレリルカルニチン、3-ヒドロキシアントラニル酸、β-アラニン、パルミトレイン酸、システイン、グルタミン酸、ウラシル、5-オキソプロリン、2-アミノ酪酸、アスパラギン酸、アスパラギン、イノシトール、ホモシトルリン、オキソグルタル酸、3,4-ジヒドロキシマンデル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシプロピオン酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、及びバニリン酸のうちの1種又は複数種である。
【0013】
前記生体試料は、被験者の尿、血液、唾液、及び糞便から選択される、ことを特徴とする被験者の腺腫及び大腸癌のリスクを評価するための診断用製品を提供する。
【0014】
前記診断用製品は、キット、医療機器、診断モジュールを備えたコンピュータシステム、及び診断装置から選択される。
【0015】
本発明の第2態様によれば、前記バイオマーカーは、被験者の生体試料に由来し、前記生体試料は、被験者の尿、血液、唾液、及び糞便などの生体試料中の示差的な代謝物を含む、被験者の腺腫及び大腸癌のリスクを評価するためのバイオマーカーの組み合わせを提供する。血液を試料して用いる場合、全血、血清、及び血漿が利用可能である。いくつかの特定の実施形態では、外周血由来の血清を生体試料としてもよい。いくつかの特定の実施形態では、本発明では、より簡便に採取することができ、被験者のコンプライアンスにより優れることから、被験者の尿を生体試料として用いる。
【0016】
本発明は、被験者の腺腫及び大腸癌のリスクを評価するためのバイオマーカーの組み合わせを提供し、前記バイオマーカーは、被験者の生体試料中の示差的な代謝物であり、前記生体試料は、尿、血液、唾液、及び糞便から選択され、前記バイオマーカーの組み合わせは、タウロコール酸、フマル酸、ミリスチン酸、ヒスチジン、チロシン、及び3,4-ジヒドロキシ桂皮酸のうちの1種又は複数種を含み、また、任意に以下の組み合わせA若しくは組み合わせB、又は組み合わせAと組み合わせBの両方を含み、
組み合わせA:3-ヒドロキシアントラニル酸、グアニジノ酢酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、アゼライン酸、スベリン酸、フェニルピルビン酸、アセト酢酸、メチルシステイン、α-ヒドロキシイソ酪酸、N-メチルニコチンアミド、サリチル酸、フェニル酢酸、ホモセリン、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、フェニル乳酸、メチルマロン酸、コハク酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシプロピオン酸、及びp-ヒドロキシフェニル酢酸のうちの1種又は複数種であり、
組み合わせB:リジン、トリプトファン、スレオニン、シトルリン、乳酸、カルノシン、2-ヒドロキシ酪酸、スベリン酸、3-ヒドロキシ酪酸、グルタミン、ピルビン酸、ウリジン、コハク酸、クエン酸、アコニット酸、イソクエン酸;2-メチルクエン酸、インドール酢酸、グアニジノ酢酸、アゼライン酸、トリプタミン、5-ヒドロキシインドール酢酸、スペルミジン、馬尿酸、フェニル酢酸、アセト酢酸、m-ヒドロキシフェニルプロピオン酸、グリシン、p-ヒドロキシフェニル酢酸、2-アミノ酪酸、β-ヒドロキシ酪酸、シスチン、パントテン酸、γ-アミノ酪酸、イソロイシン、バリン、オルニチン、グリセロリン酸、アミノオキシ酢酸、4-ヒドロキシ-L-プロリン、ドコサヘキサエン酸、フェニルアラニン、3,4-ジヒドロキシ酪酸、3-メチルアジピン酸、プソイドウリジン、セリン、ホモセリン、プトレシン、キサントゲン酸、α-ヒドロキシグルタル酸、3-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシイソバレリルカルニチン、3-ヒドロキシアントラニル酸、β -アラニン、パルミトレイン酸、システイン、グルタミン酸、ウラシル、5-オキソプロリン、2-アミノ酪酸、アスパラギン酸、アスパラギン、イノシトール、ホモシトルリン、オキソグルタル酸、3,4-ジヒドロキシマンデル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシプロピオン酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、及びバニリン酸のうちの1種又は複数種である。
【0017】
いくつかの特定の実施形態では、本発明のバイオマーカーの組み合わせは、タウロコール酸、フマル酸、ミリスチン酸、ヒスチジン、チロシン、及び3,4-ジヒドロキシ桂皮酸を本発明の目的のために含む。
いくつかの特定の実施形態では、本発明バイオマーカーの組み合わせは、リジン、トリプトファン、スレオニン、ヒスチジン、シトルリン、チロシン、乳酸、カルノシン、2-ヒドロキシ酪酸、スベリン酸、3-ヒドロキシ酪酸、グルタミン、ピルビン酸、ウリジン、コハク酸、クエン酸、アコニット酸、イソクエン酸;2-メチルクエン酸、インドール酢酸、グアニジノ酢酸、アゼライン酸、トリプタミン、5-ヒドロキシインドール酢酸、スペルミジン、馬尿酸、フェニル酢酸、アセト酢酸、m-ヒドロキシフェニルプロピオン酸、グリシン、p-ヒドロキシフェニル酢酸、2-アミノ酪酸、ミリスチン酸、β-ヒドロキシ酪酸、シスチン、パントテン酸、γ-アミノ酪酸、イソロイシン、バリン、オルニチン、グリセロリン酸、アミノオキシ酢酸、4-ヒドロキシ-L-プロリン、フマル酸、ドコサヘキサエン酸、フェニルアラニン、3,4-ジヒドロキシ酪酸、3-メチルアジピン酸、プソイドウリジン、セリン、ホモセリン、プトレシン、キサントゲン酸、α-ヒドロキシグルタル酸、3-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシイソバレリルカルニチン、3-ヒドロキシアントラニル酸、β-アラニン、パルミトレイン酸、システイン、グルタミン酸、ウラシル、5-オキソプロリン、2-アミノ酪酸、アスパラギン酸、アスパラギン、イノシトール、ホモシトルリン、オキソグルタル酸、タウロコール酸、3,4-ジヒドロキシマンデル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシプロピオン酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、及びバニリン酸のうちの1種又は複数種の組み合わせを本発明の目的のために含む。
【0018】
いくつかの特定の実施形態では、前記バイオマーカーの組み合わせは、3-ヒドロキシアントラニル酸、グアニジノ酢酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、アゼライン酸、スベリン酸、フェニルピルビン酸、アセト酢酸、メチルシステイン、α-ヒドロキシイソ酪酸、N-メチルニコチンアミド、サリチル酸、チロシン、タウロコール酸、フェニル酢酸、ホモセリン、ヒスチジン、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、フェニル乳酸、メチルマロン酸、コハク酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシプロピオン酸、フマル酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、ミリスチン酸のうちの1種又は複数種の組み合わせを本発明の目的のために含む。
【0019】
いくつかの特定の実施形態では、前記バイオマーカーの組み合わせは、3-ヒドロキシアントラニル酸、グアニジノ酢酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、アゼライン酸、スベリン酸、フェニルピルビン酸、アセト酢酸、メチルシステイン、α-ヒドロキシイソ酪酸、N-メチルニコチンアミド、サリチル酸、チロシン、タウロコール酸、フェニル酢酸、ホモセリン、ヒスチジン、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、フェニル乳酸、メチルマロン酸、コハク酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシプロピオン酸、フマル酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、ミリスチン酸のうちの1種又は複数種の組み合わせを本発明の目的のために含む。
【0020】
いくつかの特定の実施形態では、前記バイオマーカーの組み合わせはタウロコール酸を含み、また、任意に、フマル酸、ミリスチン酸、ヒスチジン、チロシン、3-ヒドロキシアントラニル酸、グアニジノ酢酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、アゼライン酸、スベリン酸、フェニルピルビン酸、アセト酢酸、メチルシステイン、α-ヒドロキシイソ酪酸、N-メチルニコチンアミド、サリチル酸、フェニル酢酸、ホモセリン、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、フェニル乳酸、メチルマロン酸、コハク酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシプロピオン酸、及びp-ヒドロキシフェニル酢酸のうちの1種又は複数種と組み合わせて本発明の目的に用いてもよい。
【0021】
本発明の第3態様によれば、被験者の生体試料を処理し、その後、液体クロマトグラフィー タンデム質量分析法及び/又はガスクロマトグラフィータンデム質量分析法を使用して生体試料中のバイオマーカーの組み合わせを定量的に検出することを含む、前述バイオマーカーの組み合わせを定量的に検出するための方法を提供する。
【0022】
本発明の第4態様によれば、前記キットは、前記バイオマーカーを検出指標とする、前述バイオマーカーの組み合わせを定量的に検出するためのキットを提供する。前記キットは、前記バイオマーカー標準物質及びバイオマーカー抽出剤を含み、前記バイオマーカー抽出剤は、有機溶媒と水の混合物から選択され、有機溶媒は、イソプロピルアルコール、メタノール、及びアセトニトリルのうちの1種又は複数種から選択される。いくつかの特定の実施形態では、また、必要な場合、前記キットは内部標準物質を含む。
【0023】
いくつかの特定の実施形態では、前記キットは、ガスクロマトグラフィー質量分析法に用いる場合、任意に、誘導体化試薬をさらに含んでもよい。
【0024】
本発明の第5態様によれば、被験者の腺腫及び大腸癌のリスクを評価するための診断用製品の製造における、前述生物バイオマーカーの組み合わせの使用であって、前記診断用製品は、前述バイオマーカーの組み合わせの発現レベルを評価指標とする、使用を提供する。
【0025】
いくつかの特定の実施形態では、前記診断用製品は、キット、診断装置、及びコンピュータシステムから選択される。
【0026】
前記被験者の腺腫及び大腸癌のリスクを評価するためのコンピュータシステムは、適切なコンピュータにインストールされたプログラムであってもよく、独立した又は組み合わせたコンピュータ装置であってもよい。本発明の目的を達成させるために、前記コンピュータシステムは、情報取得モジュールと、腺腫及び大腸癌のリスク評価モジュールと、を含み、前記情報取得モジュールは、少なくとも、被験者試料中のバイオマーカーの組み合わせの検出情報を取得する操作を実行するために使用され、前記バイオマーカーの組み合わせは前記のバイオマーカーの組み合わせから選択され、前記腺腫及び大腸癌のリスク評価モジュールは、少なくとも、前記情報取得モジュールによって取得されたバイオマーカーの組み合わせのレベルに基づいて、前記被験者が腺腫及び大腸癌に罹患しているか否か、及び腺腫及び大腸癌に罹患するリスクがあるか否かを評価する操作を実行するために使用される。
【0027】
いくつかの特定の実施形態では、前記腺腫及び大腸癌のリスク評価モジュールは、少なくとも、前記情報取得モジュールによって取得されたバイオマーカーの組み合わせのレベルを診断モデルに入力し、診断モデルによって、前記被験者が腺腫及び大腸癌に罹患しているか否か、及び腺腫及び大腸癌に罹患するリスクがあるか否かを評価する操作を実行するために使用される
【0028】
本発明の第6態様によれば、具体的には、本発明の実施例1において例示的に説明する、腺腫及び大腸癌に関連するバイオマーカーのスクリーニング方法を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の有益な技術的効果は以下の通りである。
本発明では、液体クロマトグラフィー質量分析装置(LC-QTOFMS)とガスクロマトグラフィー質量分析装置(GC-TOFMS)を用いて、腺腫及び大腸癌患者、並びに健常者の生体試料について代謝物のフルスペクトル分析の試験を行い、バイオインフォマティクスツールと組み合わせて、示差的な代謝物を探し、検証を通じて、当該代謝物は、腺腫及び大腸癌の診断マーカーとして、腺腫及び大腸癌の早期発見や診断に有用であり、大腸癌の治療効果を高めることができると確認した。従来技術と比べて、本発明は、前記の新規なバイオマーカー及びこれらの組み合わせを検出指標とすることを初めて提案し、当該バイオマーカーは、腺腫及び大腸癌のリスクを評価するバイオマーカーとして、大腸癌の診断については高い感度及び高い特異性を持ち、また、大腸腺癌の早期診断にも高い感度及び高い特異性を持ち、大腸癌を早期に発現し、患者ができるだけ早く治療を開始できるまでの時間を稼ぎ、臨床治療効果を向上させるのに有用である。
本発明の一部を構成する図面は、本発明をさらに理解するために使用されるものであり、本発明の例示的な実施例及びその説明は、本発明を解釈するために使用されるものであり、本発明を何らか限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】大腸癌患者(CRC)と正常対照(control)のPCAスコアを区別する分布図であり、P値は当該群と正常群との差の統計的有意性を表す。
【
図1B】大腸癌患者(CRC)と正常対照(control)のOPLS-DAスコアを区別する分布図である。
【
図2A】対照に対する、OPLS-DAによって同定された大腸癌患者における示差的な代謝物のボルケーノプロットである(VIP>1、|相関係数|>0.3)。
【
図2B】一次元統計解析によって大腸癌患者及び対照群について同定された代謝物のボルケーノプロットである(p<0.05、CRC中の代謝物は有意に増加(FC>1、赤い点)、CRC中の代謝物は有意に減少(FC<1、青い点)。
【
図2C】大腸癌患者と対照の示差的なバイオマーカーのヒートマップである(Zスコア範囲は-2~2)。
【
図2D】大腸癌患者と健常対照との代表的な示差的な代謝物のボックスプロットである(p<0.05)。
【
図3】訓練セットの大腸癌患者及び健常対照の尿試料中の27種類の代謝物(3-ヒドロキシアントラニル酸、グアニジノ酢酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、アゼライン酸、スベリン酸、フェニルピルビン酸、アセト酢酸、メチルシステイン、α-ヒドロキシイソ酪酸、N-メチルニコチンアミド、サリチル酸、チロシン、タウロコール酸、フェニル酢酸、ホモセリン、ヒスチジン、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、フェニル乳酸、メチルマロン酸、コハク酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシプロピオン酸、フマル酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、ミリスチン酸)のROC曲線図である。
【
図4】検証セットの大腸癌患者及び健常対照の尿試料中の27種類の代謝物(3-ヒドロキシアントラニル酸、グアニジノ酢酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、アゼライン酸、スベリン酸、フェニルピルビン酸、アセト酢酸、メチルシステイン、α-フェニルヒドロキシイソ酪酸、N-メチルニコチンアミド、サリチル酸、チロシン、タウロコール酸、フェニル酢酸、ホモセリン、ヒスチジン、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、フェニル乳酸、メチルマロン酸、コハク酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシプロピオン酸、フマル酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、ミリスチン酸)のROC曲線図である。
【
図5】早期大腸癌(I+II期)患者及び健常対照の尿試料中の27種類の代謝物(3-ヒドロキシアントラニル酸、グアニジノ酢酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、アゼライン酸、スベリン酸、フェニルピルビン酸、アセト酢酸、メチルシステイン、α-ヒドロキシイソ酪酸、N-メチルニコチンアミド、サリチル酸、チロシン、タウロコール酸、フェニル酢酸、ホモセリン、ヒスチジン、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、フェニル乳酸、メチルマロン酸、コハク酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシプロピオン酸、フマル酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、ミリスチン酸)のROC曲線図である。
【
図6】大腸癌患者と腺腫患者を区別するROC曲線図である(以下の27種類の代謝物からなる代謝物セットを含む:3-ヒドロキシアントラニル酸、グアニジノ酢酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、アゼライン酸、スベリン酸、フェニルピルビン酸、アセト酢酸、メチルシステイン、α-ヒドロキシイソ酪酸、N-メチルニコチンアミド、サリチル酸、チロシン、タウロコール酸、フェニル酢酸、ホモセリン、ヒスチジン、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、フェニル乳酸、メチルマロン酸、コハク酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシプロピオン酸、フマル酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、ミリスチン酸)。
【
図7】腺腫患者及び健常対照の尿試料中の27種類の代謝物(3-ヒドロキシアントラニル酸、グアニジノ酢酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、アゼライン酸、スベリン酸、フェニルピルビン酸、アセト酢酸、メチルシステイン、α-ヒドロキシイソ酪酸、N-メチルニコチンアミド、サリチル酸、チロシン、タウロコール酸、フェニル酢酸、ホモセリン、ヒスチジン、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、フェニル乳酸、メチルマロン酸、コハク酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシプロピオン酸、フマル酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、ミリスチン酸)のROC曲線図である。
【
図8】6種類の代謝物(包括フマル酸、ミリスチン酸、ヒスチジン、チロシン、及び3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、タウロコール酸)の、大腸癌患者と健常対照を区別する尿試料のROC曲線図である。
【
図9】大腸癌患者と腺腫患者を区別するROC曲線図である(6種類の代謝物からなる代謝物セットは、フマル酸、ミリスチン酸、ヒスチジン、チロシン、及び3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、タウロコール酸を含む)。
【
図10】腺腫患者及び健常対照の尿試料中の6種類の代謝物(フマル酸、ミリスチン酸、ヒスチジン、チロシン、及び3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、タウロコール酸を含む)のROC曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の特定実施例及び図面を参照して、本発明の技術的解決手段について詳細に説明する。明らかに、本部分で説明される特定実施例は、本発明の技術的解決手段を実施するための実施例の一部にすぎず、全ての実施例として理解されるべきではない。本部分に記載の特定実施例は、本発明を解釈するためにのみ使用され、本発明を限定するためには使用されないことが理解されるべきである。本部分の実施例に基づいて、当業者がその示唆に基づいて、創造的な労働を行わずに得ることができる他のすべての実施形態は、本発明の保護範囲に属するものとする。
実施例1 バイオマーカーの発見及び測定方法
【0032】
本部分では、発明者らは、前記バイオマーカーのスクリーニング方法及びスクリーニング対象のバイオマーカーの組み合わせを定量的に測定する方法を含む、腺腫及び大腸癌のリスクを評価するためのバイオマーカーを発見するステップを例示の目的で提供し、具体的には、以下のステップ1~ステップ4を含む。
ステップ1:腺腫及び大腸癌患者並びに健常者の生体試料を採取し、適切な前処理を行う。
ステップ2:クロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法によって、腺腫及び大腸癌患者並びに健常者の生体試料中の初期の示差的な代謝物を分析して同定する。
ステップ3:多次元OPLS-DAモデルの変数重み(VIP)値が1よりも大きく、ノンパラメトリック検定のP値が0.05よりも小さいという選択基準で、次のステップのための示差的な代謝物を得る。
ステップ4:ロジスティック回帰モデルによって検証し、示差的な代謝物を得る。
【0033】
前記ステップ1では、生体試料は、大腸癌患者、良性腺腫患者、及び健常者の尿試料、血液試料、及び唾液試料から選択されてもよく、当業者であれば、1回の試験では、これらの被験者の同一のタイプの生体試料を使用することが理解できる。
【0034】
前記ステップ2におけるクロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法は、液相/ガスクロマトグラフィー及び質量分析法を組み合わせたメタボロミクス分析法を含む。
【0035】
1つの特定の実施形態として、前記ステップ2にはガスクロマトグラフィー質量分析法が使用された。試験のためのクロマトグラフィー条件:Rxi-5ms キャピラリーカラム、キャリアガス:超純ヘリウム、流量:1.0mL/min、試料注入口温度:260℃、輸送ライン温度:260℃、イオン源温度:210℃、試料注入量:1μL、試料導入方式:分流なしで試料注入、昇温手順:80℃で2min保温、10℃/minで220℃、その後5℃/minで240℃、さらに25℃/minの昇温速度で290℃に昇温、最後に290℃で8min保温、質量分析イオン源:EI源、電子衝撃エネルギー:70eV、質量分析走査範囲:m/z、40~600、フルスキャンモード。
【0036】
1つの特定の実施形態として、前記ステップ2には液体クロマトグラフィー質量分析法が使用された。試験のためのクロマトグラフィー条件:Agilent ZORBAX Eclipse XDB-C18カラム(4.6 ×.6 ent、5μm)、カラム温度:30℃、移動相A:水(0.1%ギ酸)、B:アセトニトリル(0.1%ギ酸、)、移動相溶出勾配:0~25min:1~100%B、流速:0.4mL/min、試料注入量:10μL、飛行時間型質量分析の最適化条件:(1)プラスイオンモード(ES+)、キャピラリ電圧3500 V、噴霧器45 psig、乾燥ガス温度325℃、乾燥器流速11 L/min、(2)マイナスイオンモード(ES-)、キャピラリ電圧3000V、残りのパラメータはプラスイオンモードの場合と一致した。代謝物スペクトル分析の際、データ収集形式はplotとcentroidを同時に行い、収集質量範囲は50~1000Daである。
【0037】
前記ステップ1に記載の試料の前処理については、ガスクロマトグラフィー質量分析法試験に適用される尿及び血清試料を例とすると、その前処理ステップには、以下のことが含まれる。血清50μLを採取し、クロロフェニルアラニン10μl(0.1mg/mL、水溶解)及びヘプタデカン酸10μl(1mg/mL、アルコール溶解)を内部標準物質として添加して、試料の再現性をモニターした。さらにクロロホルムメタノール混合溶媒(1:3、v/v)175μLを加え、30sボルテックス振とうさせた。遠心管を-20℃で10min放置し、タンパク質沈殿を促進した。その後、13000rpmで10min遠心分離し、上澄み200μLを高回収サンプル瓶に取り、室温で真空乾燥して、サンプルを得た。得られたサンプルを2段法で誘導し、まず、メトキシアミン50μL(15mg/mL、ピリジン溶解)を加え、30℃でボルテックス振とうさせ、30℃で90min反応させた後、BSTFA 50μL(1%TMCSを含む)を加えて70℃で60min反応させ、静置した後、GC-TOFMS分析を行った。
【0038】
前記ステップ1に記載の試料の前処理については、液体クロマトグラフィー質量分析装置に適用された尿及び血清試料を例とすると、その前処理ステップには、以下のことが含まれる。血清試料50μlとクロロフェニルアラニン(5μg/mL、水溶解)を含むメタノールアセトニトリル混合液200μl(5:3、v/v)を混合し、2minボルテックス振とうさせ、10min静置した後、13000rpmで20min遠心分離し、上澄みを検査対象試料とした。
【0039】
本発明の測定方法は、腺腫及び大腸癌患者と健常者との間の代謝産物の変化状態を包括的かつ総合的に具現化し、腺腫及び大腸癌の診断マーカーを見出し、腺腫及び大腸癌の早期診断及び予後の有利な技術的支援を提供することができる。
実施例2 被験者、生物学的試料及び群分け
【0040】
臨床で確診された大腸腺腫患者、大腸癌患者及び健常者の尿試料を収集し、当該試料及びその収集は、所在医療機関の倫理委員会の承認を得た。収集した試料のうち、大腸癌患者220例、腺腫患者20例、健常者対照180例であった。実施例1に関連して、前記試料を処理した後、クロマトグラフィー質量分析装置による検出分析を行い、多次元統計モデルを構築して、腺腫及び大腸癌患者と健常者対照との間の代謝スペクトルの差を視覚的に表示することにより、示差的な代謝物を得た。
【0041】
実施例における被験者は、臨床診断指標に従って確認された大腸癌患者、大腸腺腫患者、及び健常被験者を含む。以下のプランに基づき、訓練セットと検証セットに分け、試験した生物試料は被験者の空腹時の朝の中間尿試料である。
(1)訓練セット
大腸癌患者の臨床尿試料100例、健常者の対照尿試料100例。
(2)検証セット
大腸癌患者の臨床尿試料120例、健常者対照尿試料80例、大腸腺腫患者の尿試料は20例であった。
実施例3 ガスクロマトグラフィー質量分析装置(GC-TOFMS)による尿試料の試験
【0042】
ガスクロマトグラフィー質量分析装置を用いて訓練セット試料を測定した。
【0043】
尿試料の前処理:尿50μLを1.5mL遠心管に取り、クロロフェニルアラニン(0.1mg/mL、水溶解)10μlとヘプタデカン酸(1mg/mL、アルコール溶解)10μLを内部標準物質として添加し、試料の再現性をモニターした。さらにクロロホルムメタノール混合溶媒(1:3、v/v)175μLを加え、30sボルテックス振とうさせた。遠心管を-20℃で10min放置し、タンパク質沈殿を促進した。その後、13000rpmで10min遠心分離し、上澄み200μLを高回収サンプル瓶に取り、室温で真空乾燥した。
【0044】
試料を吸引した後、2段法によって誘導し、まず、メトキシアミン50μL(15mg/mL、ピリジン溶解)を加え、30sボルテックス振とうさせ、30℃で90min反応させた後、BSTFA 50μL(1%TMCSを含む)を加えて70℃で60min反応させた。反応生成物を室温で1h静置した後、GC-TOFMS分析を行った。
【0045】
GC-TOFMS測定:Leco Pegasus HTガスクロマトグラフィータンデム飛行時間質量分析装置(Leco社、米国)、カラム:Rxi-5msキャピラリーカラム(5%ビフェニル/95%ジメチルポリシロキサン充填、Restek社、ペンシルベニア州、米国)、キャリアガス:超純ヘリウム、流量:1.0mL/min、試料注入口温度:260℃、輸送ライン温度:260℃、イオン源温度:210℃、試料注入量:1μL、試料注入方式:分流無しで試料注入、昇温手順:80℃で2min保温、10℃/minプラスイオンモード(ES+)、キャピラリ電圧1500 V、イオン源温度150℃、乾燥ガス温度550℃、乾燥器流速1000 L/hr、(2)マイナスイオンモード(ES-)、キャピラリ電圧2000V、その他のパラメータはプラスイオンモードの場合と一致した。
【0046】
データ分析処理にはMassLynxソフトウェア(v4.1、ウォーターズ社、米国)を使用した。
実施例4 液体クロマトグラフィータンデム質量分析装置(LC-TQMS)による尿試料の試験
【0047】
液体クロマトグラフィー質量分析装置を用いて訓練セット試料を測定した。
【0048】
尿試料の前処理:尿試料50μlとクロロフェニルアラニン200μl(5μg/mL、水溶解)を含むメタノールアセトニトリル混合液(5:3,v/v)を混合し、2minボルテックス振とうさせ、10min静置した後、13,000rpmで20min遠心分離し、上澄みをLC-TOFMS分析に用いた。
【0049】
LC-QTOFMS試験:溶媒コントローラー、カラム温度器、試料コントローラーを搭載した超高性能液体クロマトグラフ(ウォーターズ社、米国)。質量分析にはエレクトロスプレーイオン化源を搭載したウォーターズ質量分析装置(ウォーターズ社、米国)を用いた。カラム:ACQUITY UPLC BEH C18(100mm×2.1mm、1.7μm)カラム、カラム温度:40℃。移動相A:水(0.1%ギ酸)、B:アセトニトリル(30%イソプロピルアルコールを含む)、移動相の溶出勾配:は0~20min:5~100%B、流速:0.4mL/min、試料注入量:5μL。タンデム質量分析の最適化条件:(1)プラスイオンモード(ES+)、キャピラリ電圧1500V、イオン源温度150℃、乾燥ガス温度550℃、乾燥器流速1000L/hr、(2)マイナスイオンモード(ES-)、キャピラリ電圧2000V、その他のパラメータはプラスイオンモードと一致した。データ分析処理にはMassLynxソフトウェア(v4.1、ウォーターズ社、米国)を使用した。
実施例5 示差的な代謝マーカーのスクリーニング
【0050】
実施例3及び実施例4に基づいて、訓練セット試料をLC-QTOFMS及びGC-TOFMSによって代謝物のフルスペクトル分析の試験を行い、
図1A、1B、2A、2B、及び2Cに示す結果のように、多次元PCA以及びOPLS-DAモデルによる変数重みVIP値(VIP>1)及びMann-Whitney U検定によるP値(P<0.05)の選択基準に準じて、訓練セット試料から、大腸癌と健常者正常対照を区別するための77種類の初期の示差的な代謝物を得た。この示差的な代謝物には、リジン、トリプトファン、スレオニン、ヒスチジン、シトルリン、チロシン、乳酸、カルノシン、2-ヒドロキシ酪酸、スベリン酸、3-ヒドロキシ酪酸、グルタミン、ピルビン酸、ウリジン、コハク酸、クエン酸、アコニット酸、イソクエン酸;2-メチルクエン酸、インドール酢酸、グアニジノ酢酸、アゼライン酸、トリプタミン、5-ヒドロキシインドール酢酸、スペルミジン、馬尿酸、フェニル酢酸、アセト酢酸、m-ヒドロキシフェニルプロピオン酸、グリシン、p-ヒドロキシフェニル酢酸、2-アミノ酪酸、ミリスチン酸、β-ヒドロキシ酪酸、シスチン、パントテン酸、γ-アミノ酪酸、イソロイシン、バリン、オルニチン、グリセロリン酸、アミノオキシ酢酸、4-ヒドロキシ-L-プロリン、フマル酸、ドコサヘキサエン酸、フェニルアラニン、3,4-ジヒドロキシ酪酸、3-メチルアジピン酸、プソイドウリジン、セリン、ホモセリン、プトレシン、キサントゲン酸、α-ヒドロキシグルタル酸、3-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシイソバレリルカルニチン、3-ヒドロキシアントラニル酸、β -アラニン、パルミトレイン酸、システイン、グルタミン酸、ウラシル、5-オキソプロリン、2-アミノ酪酸、アスパラギン酸、アスパラギン、イノシトール、ホモシトルリン、オキソグルタル酸、3,4-ジヒドロキシマンデル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシプロピオン酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、及びバニリン酸が含まれる。
【0051】
結果を
図2A、
図2B、
図2C、及び
図2Dに示す。このうち、
図2Aは、対照に対する、OPLS-DAによって同定された大腸癌患者の示差的な代謝産物のボルケーノプロットである(VIP>1、相関係数>0.3)。
図2Bは、一次元統計解析によって大腸癌患者及び対照群において同定された代謝物のボルケーノプロットである(p<0.05、CRC中の代謝物は有意に増加(FC>1、赤い点)、CRC中の代謝物は有意に減少(FC<1、青い点)。
図2Cは、大腸癌患者と対照との示差的なバイオマーカーのヒットマップでる(Zスコア範囲は-2~2)。
図2Dは、大腸癌患者と健常対照の間の代表的な示差的な代謝物のボックスプロット(p<0.05)である。
実施例6 ロジスティック回帰モデルによるバイオマーカーの検証
【0052】
本実施例では、ロジスティック回帰モデルを使用して、初期の示差的な代謝物と大腸癌との間の関連性を検討することが例示されている。
【0053】
ロジスティック回帰モデルを用いて、実施例5でスクリーニングされた初期の示差的な代謝物を検証した結果、表1に示す27種類の代謝物を発見し、これらの代謝物は、3-ヒドロキシアントラニル酸、グアニジノ酢酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、アゼライン酸、スベリン酸、フェニルピルビン酸、アセト酢酸、メチルシステイン、αヒドロキシイソ酪酸、N-メチルニコチンアミド、サリチル酸、チロシン、タウロコール酸、フェニル酢酸、ホモセリン、ヒスチジン、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、フェニル乳酸、メチルマロン酸、コハク酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシプロピオン酸、フマル酸である。p-ヒドロキシフェニル酢酸、ミリスチン酸は、腺腫及び大腸癌マーカーとしての作用が特に重要である。
【0054】
【0055】
その後、臨床診断性能曲線(ROC曲線)を用いて、上記バイオマーカーを大腸癌患者の尿試料で評価した。ROC曲線を適用すると、満足のいく結果が得られ、訓練セットの尿試料では、AUC=0.997、95%信頼区間(CIs):0.991~1.000(
図3)、感度は97%、特異度は100%であった。
【0056】
訓練セットによって得られた27種類の代謝物セットの大腸癌に対する予測確率パラメータは、検証セット試料を用いて検証された。予測確率を用いてROC曲線を構築し、ここで、検証セットは、AUC=0.962(95%CIs:0.933~0.99)、曲線の感度87.5%、特異度94.4%であった(
図4)。一方、早期大腸癌患者(I+II期)と健常者対照の区分では、AUC=0.974(95%CIs:0.949~1.00)、曲線の感度87.9%、特異度100.0%であった(
図5に示す)。27種類の代謝物セットを40名の大腸癌患者と20名の大腸腺腫患者の区別に用いた場合、AUC=0.89、感度78.9%、特異度87.5%であった(
図6)。腺腫患者と健常対照の区別では、AUC=0.934、感度79.1%、特異度100.0%であった(
図7)。
【0057】
図3に示すように、本実施例のこの27種類のバイオマーカー及びこれらの組み合わせ(3-ヒドロキシアントラニル酸、グアニジノ酢酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、アゼライン酸、スベリン酸、フェニルピルビン酸、アセト酢酸、メチルシステイン、α-ヒドロキシイソ酪酸、N-メチルニコチンアミド、サリチル酸、チロシン、タウロコール酸、フェニル酢酸、ホモセリン、ヒスチジン、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、フェニル乳酸、メチルマロン酸、コハク酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシプロピオン酸、フマル酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、ミリスチン酸)は、大腸腺腫及び大腸癌の早期診断マーカーとして好適であり、臨床診断に有用であり、腺腫及び大腸癌の早期検査率を高め、腺腫及び大腸癌の臨床治療効果を改善し、患者の痛苦を低減させ、患者の臨床生存率を高めることができる。
実施例7 バイオマーカー診断モデルの作成
【0058】
実施例5及び実施例6に基づいて、訓練セット試料から、腺腫及び大腸癌患者と正常対照を区別するための27種類の示差的な代謝物を得た。これらの示差的な代謝物には、3-ヒドロキシアントラニル酸、グアニジノ酢酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、アゼライン酸、スベリン酸、フェニルピルビン酸、アセト酢酸、メチルシステイン、α-ヒドロキシイソ酪酸、N-メチルニコチンアミド、サリチル酸、チロシン、タウロコール酸、フェニル酢酸、ホモセリン、ヒスチジン、グリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、フェニル乳酸、メチルマロン酸、コハク酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシプロピオン酸、フマル酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、及びミリスチン酸が含まれる。
【0059】
有効な臨床診断モデルを作成するために、さらにロジスティック回帰モデルを利用して最適化と検証を行い、フマル酸、ミリスチン酸、ヒスチジン、チロシン、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、タウロコール酸を腺腫及び大腸癌のリスクを評価するためのマーカーとして用いた場合、各診断マーカーの腺腫及び大腸癌患者と正常対照群間の差の倍数の大きさ、有意性の大きさ及び濃度値の大きさの範囲などの総合要素に基づき、ロジスティック回帰モデルを通じてスコア診断モデルを作成した。
【0060】
モデルスコアP=4.059*C1-0.019*C2-0.017*C3-0.011*C4-0.056*C5-0.25*C6+5.873
【0061】
ここで、C1はフマル酸の生物試料中の濃度、C2は3,4-ジヒドロキシ桂皮酸の生物試料中の濃度、C3はヒスチジンの生物試料中の濃度、C4はタウロコール酸の生物試料中の濃度、C5はチロシンの生物試料中の濃度、C6はミリスチン酸の生物試料中の濃度であり、これらの濃度単位はすべてμMである。受信機動作特性曲線(ROC)曲線分析の結果、大腸癌に対する診断閾値範囲は-0.13から-0.11、最適な診断閾値は-0.12である。腺腫の診断閾値範囲は-0.105から-0.09、最適な診断閾値は-0.10である。各試料の診断マーカーによりその濃度値を検出し、診断モデルからスコアを算出し、診断閾値との比較により被験者が罹患しているか否か、又は罹患リスクがあるか否かを評価した。
【0062】
診断モデルを訓練セットと検証セットに応用して大腸癌患者と健常者を区別し、
図8に示すように、訓練セットでは、ROC曲線下面積:0.980、感度96.6%、特異性100%、検証セットでは、ROC曲線下面積:0.980、感度96.6%、特異性90.5%であった。
図9は、大腸癌患者と腺腫患者のROC曲線図である。
図10は腺腫患者と健常対照のROC曲線図である。
【0063】
上記方法を用いて、以下のバイオマーカーの組み合わせをそれぞれ利用して、診断モデルを作成した。
(一)フマル酸、ミリスチン酸、ヒスチジン、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、及びタウロコール酸
(二)ヒスチジン、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、及びタウロコール酸
(三)フマル酸、及びタウロコール酸
(四)タウロコール酸、チロシン、及び3,4-ジヒドロキシ桂皮酸
(五)フマル酸、ミリスチン酸、ヒスチジン、チロシン、及び3,4-ジヒドロキシ桂皮酸
(六)フマル酸、タウロコール酸、及びヒスチジン
(七)3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、及びタウロコール酸
(八)フマル酸、タウロコール酸、ヒスチジン、3-ヒドロキシアントラニル酸、グアニジノ酢酸、ヒドロキシプロピオン酸、フマル酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、及びミリスチン酸
(九)3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、アゼライン酸、スベリン酸、フェニルピルビン酸、アセト酢酸、メチルシステイン、α-ヒドロキシイソ酪酸、N-メチルニコチンアミド、サリチル酸、チロシン、及びタウロコール酸
(十)3-ヒドロキシアントラニル酸、グアニジノ酢酸、3,4-ジヒドロキシ桂皮酸、サリチル酸、フェニル乳酸、メチルマロン酸、コハク酸、2-ヒドロキシ-2-メチル酪酸、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシプロピオン酸、フマル酸、p-ヒドロキシフェニル酢酸、及びミリスチン酸
上記で作成した診断モデルを用いて試験セットを検証した結果、上記組み合わせは、いずれも、大腸癌患者と健常者、腺腫患者と健常者、大腸癌患者と腺腫患者を区別し診断する能力があることが明らかにあった。この結果を表2に示す。
【0064】
表2. 生物マーカー組み合わせの一部の診断能力
実施例8 腺腫及び大腸癌を検出するコンピュータシステムの作成
【0065】
実施例1~7に基づいて、本実施例では、情報取得モジュール、腺腫及び大腸癌のリスク評価モジュール、サンプル検出モジュール、及びサンプル前処理モジュールを含む、被験者の腺腫及び大腸癌のリスクを評価するためのコンピュータシステムを作成する。
【0066】
そのうち、前記情報取得モジュールは、少なくとも、被験者サンプル中のバイオマーカーの組み合わせ検出情報を取得する操作を実行するために使用され、前記バイオマーカーの組み合わせは、前記のバイオマーカーの組み合わせから選択される。
【0067】
前記腺腫及び大腸癌のリスク評価モジュールは、少なくとも、前記情報取得モジュールによって取得されたバイオマーカーの組み合わせのレベルに基づいて、前記被験者が腺腫及び大腸癌に罹患しているか、又は腺腫及び大腸癌に罹患するリスクがあるかを評価する操作を実行するために使用され、具体的には、前記情報取得モジュールによって取得されたバイオマーカーの組み合わせのレベルを診断モデルに入力し、診断モデルによって、前記被験者が腺腫及び大腸癌に罹患しているか、又は腺腫及び大腸癌に罹患するリスクがあるかを評価する。
【0068】
前記診断モデルの作成及び評価モデルを用いた評価方法については、前述実施例を参照する。本実施例のコンピュータシステムは、また、任意に、サンプル検出モジュール及び/又はサンプル前処理モジュールを含んでも、含まなくてもよい。前記サンプル検出モジュールは、少なくとも、サンプル中の前記バイオマーカーレベルを検出する操作を実行するために使用され、具体的には、少なくともバイオマーカーを検出するための液体クロマトグラフィー タンデム質量分析法用の操作又はガスクロマトグラフィー タンデム質量分析法用の操作を実行するために使用され、検出条件は、本明細書の関連部分を参照する。前記サンプル前処理モデルは、少なくとも、処理サンプルの注入前の操作を実行するために使用され、具体的には、本明細書の関連部分を参照する。
【0069】
以上、本発明の特定実施例について詳細に説明したが、あくまで例示の目的であり、本発明は上記の特定実施例に限定されるものではない。当業者にとっては、本発明に加えられた任意の同等の修正及び置換もまた、本発明の範囲内に含まれる。したがって、本発明の精神及び範囲から逸脱しないで行われる均等な変形及び補正は、すべて本発明の範囲内に含まれるものとする。
【国際調査報告】