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特表2024-521158着色可能な静電気散逸性(ESD)ポリカルボナートブレンドを用いた物品および構造体
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  • 特表-着色可能な静電気散逸性(ESD)ポリカルボナートブレンドを用いた物品および構造体 図1
  • 特表-着色可能な静電気散逸性(ESD)ポリカルボナートブレンドを用いた物品および構造体 図2
  • 特表-着色可能な静電気散逸性(ESD)ポリカルボナートブレンドを用いた物品および構造体 図3
  • 特表-着色可能な静電気散逸性(ESD)ポリカルボナートブレンドを用いた物品および構造体 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】着色可能な静電気散逸性(ESD)ポリカルボナートブレンドを用いた物品および構造体
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20240521BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20240521BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240521BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L67/02
C08L75/04
C08L67/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572720
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 IB2022055023
(87)【国際公開番号】W WO2022249148
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】21176739.7
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】521198963
【氏名又は名称】エスエイチピーピー グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,シァオミン
(72)【発明者】
【氏名】ツェン,ユン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ユナン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CF03X
4J002CF05X
4J002CG01W
4J002CG02Z
4J002CK02Y
4J002CL00Y
4J002DA060
4J002DL000
4J002EW046
4J002FB08Y
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD036
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD10Y
4J002FD130
4J002FD180
4J002GB01
4J002GH00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【解決手段】 開示されるのは、約0.1wt.%から約99wt.%のポリカルボナートコポリマー、ホモポリマー、またはこれらのブレンドと;約0.1wt.%から約70wt.%の結晶性ポリエステルと;約0.1wt.%から約50wt.%の本質的に散逸性のポリマーと;約0.001wt.%から約10wt.%のトランスエステル化阻害剤と;を含んでなるポリマー組成物であって、全成分の合計重量パーセント値が約100wt.%を超えず、全重量パーセント値がポリマー組成物の総重量を基準にする、ポリマー組成物である。ポリマー組成物は、ASTM D257に準拠して測定される場合に1×10オーム未満の表面抵抗率を示し得る。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.1wt.%から約99wt.%のポリカルボナートコポリマー、ホモポリマー、またはこれらのブレンドと;
約0.1wt.%から約70wt.%の結晶性ポリエステルと;
約0.1wt.%から約50wt.%の本質的に散逸性のポリマーと;
約0.001wt.%から約10wt.%のトランスエステル化阻害剤と;
を含んでなり、
ASTM D257に準拠して測定される場合に1×10オーム未満の表面抵抗率を示すポリマー組成物であって、
全成分の合計重量パーセント値が約100wt.%を超えず、全重量パーセント値がポリマー組成物の総重量を基準にする、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリカルボナートコポリマーが、ITR-BPAPC、BPAPC、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルが、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート、または1,4-シクロヘキサンジメチル-1,4-シクロヘキサンジカルボキシラート)、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項1から2のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記本質的に散逸性のポリマーが、イオンドープされた熱可塑性ポリウレタン(TPU)系のマルチブロックコポリマーを含んでなる、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記本質的に散逸性のポリマーが、イオンドープされたナイロン系マルチブロックコポリマーを含んでなる、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記本質的に散逸性のポリマーが、68mm×68mm×3mmのプラーク試験片上でASTM D257に準拠して試験される場合に約1×10オームの表面抵抗率を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記トランスエステル化阻害剤が、モノリン酸亜鉛、モノ-ステアリル酸ホスファートとジ-ステアリル酸ホスファートとの混合物、またはアルキル酸ホスファートを含んでなる、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
ASTM D257に準拠して測定される場合に1×10オームと1×10オームの間の表面抵抗率を示す、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
反射モード、10度視野観測者においてD65照明のもとで分光光度計を使用して測定される場合に少なくとも約50のL色値を示す、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
反射モード、10度視野観測者においてD65照明のもとで分光光度計を用いて測定される場合に少なくとも約80のL色値を示す、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
炭素繊維、導電性カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、もしくはカーボンナノ構造を含まないか、または実質的に含まない、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
ポリカルボナート-シロキサンコポリマーをさらに含んでなる、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
耐衝撃性改良剤をさらに含んでなる、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
ASTM D648に準拠して0.45MPaおよび3.2mmの試験片厚さで試験される場合に少なくとも90℃の荷重たわみ温度を示す、請求項1~13のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
光学光沢剤をさらに含んでなる、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
前記添加剤が、顔料、染料、充填剤、可塑剤、繊維、難燃剤、抗酸化剤、潤滑剤、木材、ガラス、金属、紫外線剤、帯電防止剤、抗微生物剤、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項15に記載のポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電気散逸性ポリカルボナートブレンド、詳細には着色可能な静電気散逸性ポリカルボナートブレンドに関する。
【背景技術】
【0002】
静電気放電は電子部品に有害となる可能性があり、結果として、故障、信頼性の低下、およびコストの増加、ならびに配備された機器における潜在的な部品故障を生じさせる可能性がある。高分子材料は概して、良好な絶縁体であるが、導電性充填剤、例えば金属充填剤、金属コーティングで被覆された非導電性充填剤、または導電性の非金属充填剤のみならず、カーボンナノチューブ、炭素繊維、カーボンブラックなどの炭素系充填剤を添加すると、導電性または静電放電性にすることができる。そうした材料の添加により、ポリマーマトリクス内部に相互接続した粒子のネットワークが形成されて、電荷が絶縁性ポリマーを通って伝導することが可能になる。静電気散逸性(ESD)材料および帯電防止材料は、静電気の蓄積を防止するために、半導体、民生用電子機器、および工業用構造物のような様々な分野で広く使用されている。これら二つのタイプは、これらの表面抵抗率(SR)によって定義され、これに関して前者は1×10オームから1×10オームの間、そして後者は1×1010オームから1×1012オームである。古典的なESD材料は、導電性炭素充填剤の自然な黒色度または暗度によって制限されるので、着色できないのが一般的である。逆に、(静電挙動を達成するために)従来の本質的に散逸性のポリマー(IDP)をドープされたそれらの化合物は、無色の外観にもかかわらず、1×10オームという低い表面抵抗率に達することができない。充分に低い(少なくとも1×10オームまで低い)表面抵抗率を有すると同時に着色可能な外観をも維持する材料が、当技術分野において依然として求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示の態様は、約1wt.%から約99wt.%のポリカルボナートコポリマー樹脂と;約1wt.%から約70wt.%の結晶性ポリエステル樹脂と;約0.1wt.%から約50wt.%の本質的に散逸性のポリマーと;約0.001wt.%から約10wt.%のトランスエステル化阻害剤とを含んでなり、ASTM D257に準拠して測定される場合に1×10オーム未満の表面抵抗率を示すポリマー組成物であって、全成分の合計重量パーセント値が約100wt.%を超えず、全重量パーセント値がポリマー組成物の総重量を基準にする、ポリマー組成物に関する。
【0004】
さらに他の態様では、本開示は、ポリカルボナートコポリマーと、結晶性ポリエステルと、本質的に散逸性のポリマー添加剤と、トランスエステル化阻害剤とを含む組成物を形成する方法に関する。
【0005】
特定の態様では、本開示は、本明細書に記載されたポリマー組成物から物品をモールド成形するステップを含む、物品を形成する方法に関する。
【0006】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、いくつかの態様を例示し、本明細書とともに、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、C-1、C-2、およびEX-2の配合および特性を示す表5を表す。
図2図2は、C-3、EX-2、EX-3、EX-4、EX-5、EX-6、およびEX-7の配合および特性を示す表6を表す。
図3図3は、EX-8、EX-9、およびEX-10の配合および特性を示す表7を表す。
図4図4Aは、試料EX-2を含んでなるモールド成形されたプレートの画像を示す。図4Bは、試料C-3である、従来の導電性カーボンブラック充填ポリカルボナートを含んでなるモールド成形されたプレートの画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
マイクロエレクトロニクス装置の複雑さと感度を考えると、静電放電の制御はますます困難になりつつある。低電圧であっても、そうした静電放電は、高感度の装置に深刻な損傷を与え得る。静電気散逸性(ESD)材料および帯電防止材料は、静電気の蓄積を防止するために、半導体、民生用電子機器、および工業用構造物のような様々な分野で広く使用されている。これら二つのタイプは、これらの表面抵抗率(SR)によって定義され、これに関して前者は1×10オームから1×10オームの間、そして後者は1×1010から1×1012オームである。よって、様々な異なる静電散逸性(ESD)材料を使用することにより、製造時または使用時のプラスチックへの静電気の蓄積を回避することができる。
【0009】
しかし、様々な異なる基材またはポリマー樹脂マトリクスに静電散逸性材料(帯電防止剤)を組み込むことには、それ自体限界がある。ポリマーは概して高温処理を必要とするが、これによって帯電防止剤が損傷するまたは破壊される可能性があり、よって、ESD特性が無効になる。さらには、分子量のさらに高い多くのESD試薬は、使用される特定の基材またはマトリクスポリマーと非混和性である。また、帯電防止剤の使用は、使用される組成物に一時的なESD特性しか与えないこともあり得る。性能と有効性は、湿度などの環境条件によっても制限される。従来のESD材料は、炭素繊維、導電性カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、およびカーボンナノチューブなどの導電性充填剤をも含んでおり、これらは概して、組成物に暗色をも付与する。したがって、従来のESD材料は、導電性炭素充填剤の自然な黒色度によって、その色空間が制限され得るので、容易には着色できない。さらには、従来の本質的に散逸性のポリマー(IDP)をドープされた化合物は、添加剤によって暗色になることはない一方で、通常、1×10オームという低い表面抵抗率値には達し得ない。しかし、本開示の配合物は、ESDと広範な着色可能性との両方を達成しつつ、所望の電気的な、衝撃に対する、そして加工に関する性能をも維持する。
【0010】
本開示は、本質的に散逸性のポリマー(IDP)をドープされたポリカルボナート(PEI)と、ポリブチレンテレフタラート(PBT)またはポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレン1,4-シクロヘキシレンジカルボキシラート)(PCCD)などの結晶性ポリマーとを含んでなる着色可能な静電気散逸性(ESD)化合物の組成物を提供する。これら組成物は、少なくとも1×10オームという低い表面抵抗率(SR)を提供し得るものであることから、これらの組成物は、ESD用途に向け充分に着色可能で好適なものとなる。衝撃特性、熱特性、および流動特性もまた製造にとって望ましい。
【0011】
一態様では、開示された組成物は、約1wt.%から約99wt.%のポリカルボナートコポリマー樹脂と;約1wt.%から約70wt.%の結晶性ポリエステル樹脂と;約0.1wt.%から約50wt.%の本質的に散逸性のポリマーと;約0.001wt.%から約10wt.%のトランスエステル化阻害剤とを含んでなる。ポリマー組成物は、ASTM D257に準拠して測定される場合に1×10オーム未満の表面抵抗率を示し得る。さらには、全成分の合計重量パーセント値は約100wt.%を超えず、全重量パーセント値はポリマー組成物の総重量を基準にする。
【0012】
本発明の化合物、組成物、物品、システム、装置、および/または方法が開示され記載されるのに先立って、それらが、別途指定のない限り特定の合成方法に、また別途指定のない限り詳細な試薬に限定されず、よって当然ながら異なり得ることは、理解されよう。また、本明細書で使用される用語が、詳細な態様を記載する目的のためだけのものであって、限定することを意図されないことも理解されよう。
【0013】
本開示の構成要素の様々な組み合わせ、例えば、同一の独立請求項に従属する従属請求項からの構成要素の組み合わせが、本開示によって包含される。
【0014】
さらに、別途明示のない限り、本明細書に記載されるいかなる方法も、そのステップが具体的な順序で実行されるよう要求していると解釈されるようなことは、決して意図されないことが理解されよう。したがって、方法の請求項が、そのステップが従うことになる順序を実際に記載していない場合には、またはそのステップが具体的な順序に限定されることが請求項または明細書において別途具体的に示されていない場合には、いかなる点においても、順序が推察されるようなことは、決して意図されない。このことは、ステップの並びまたは操作の流れに関する論理的な事項;文法的な構成や句読点から導かれる平易な意味;および本明細書に記載される実施形態の数またはタイプを含め、解釈上の非明示的ないかなる可能な根拠についても当てはまる。
【0015】
本明細書で言及されるあらゆる公開文献は、引用された公開文献に関連する方法および/または材料を開示し記載するために、参照により本書に組み込まれる。
定義
【0016】
また、本明細書で使用される用語が、詳細な態様を記載する目的のためだけのものであって、限定することを意図されないことも理解されよう。本明細書、および特許請求の範囲で使用されるとおり、用語「含んでなる(comprising)」は、「からなる(consisting of)、および「から実質的になる(consisting essentially of)」実施形態を含むことができる。別途定義されているのでない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の業者によって広く理解されているものと同じ意味を有する。本明細書、および添付の特許請求の範囲では、本明細書で定義されるものとされる複数の用語が参照されることになる。
【0017】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとおり、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示するのでない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば、「ポリカルボナート」への言及があれば、これは二つ以上のポリカルボナートポリマーの混合物を含む。
【0018】
本明細書で使用されるとおり、用語「組み合わせ」は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物、および同類のものを包含する。
【0019】
範囲は、本明細書では、一つの値(第1の値)から別の値(第2の値)までとして表現することができる。そのような範囲が表現される場合には、その範囲は、いくつかの態様では、第1の値および第2の値のうちの一つまたは両方を含む。同様に、値が近似値として表現される場合には、先行詞「約」の使用により、その詳細な値が別の態様をなすことは理解されよう。さらに、各範囲の端点は、もう一方の端点と関係している場合、およびもう一方の端点と無関係である場合の両方において有効値であることが理解されよう。また、本明細書で開示される複数の値が存在すること、そして各値が、その詳細な値そのものに加えて、「約」その値としても本明細書に開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示される場合には、「約10」もまた開示される。また、二つの詳細な単位の間の各単位も開示されることも理解される。例えば、10と15が開示される場合には、11、12、13、14もまた開示される。
【0020】
本明細書で使用されるとおり、「約」および「のところまたはその近傍」という用語は、問題の量または値が、指定値、近似的に指定値、または指定値とほぼ同じとすることができることを意味する。本明細書で使用されるとおり、別途指示または推論されているのでない限り、その値は、表示された公称値±10%の変動であるとおおむね理解される。この用語は、特許請求の範囲に記載された均等な結果または効果がそうした類似の値によって促されることを伝えるよう意図されている。すなわち、量、サイズ、配合、パラメータ、およびその他の量および特性は、正確ではなく、正確である必要もないが、公差、換算係数、丸め、測定誤差、および同類のもの、ならびに当業者に公知のその他の要因を反映して、所望に応じて近似的であり得る、および/または大きくもしくは小さくなり得ることは理解される。概して、量、サイズ、配合、パラメータ、または他の量もしくは特性は、そのように明示的に定められているかどうかにかかわらず、「約」または「近似値」である。定量的な値の前に「約」が使用される場合には、パラメータもまた、別途具体的に定められているのでない限りその具体的で定量的な値自体をも含むと理解される。
【0021】
本明細書で使用されるとおり、用語「随意の」または「随意に」は、その後に記載される事象または状況が起こり得るまたは起こり得ないこと、およびその記載には、前記事象または状況が起こる実例と起こらない実例とが含まれることを意味する。例えば、語句「随意の添加剤」は、その添加剤が含まれ得るまたは含まれ得ないこと、そしてその記載には、追加の添加剤を含むポリマー組成物と含まないポリマー組成物の両方が含まれることを意味する。
【0022】
一態様では、「実質的に含まない」は、所与の組成物または成分中に0.5wt.%未満、または約0.5wt.%未満で存在することを指し得る。別の態様では、実質的に含まないは、0.1wt.%未満、または約0.1wt.%未満とすることができる。別の態様では、実質的に含まないは、0.01wt.%未満、または約0.01wt.%未満とすることができる。さらに別の態様では、実質的に含まないは、100百万分率(ppm)未満、または約100ppm未満とすることができる。さらに別の態様では、実質的に含まないは、存在するとしても検出可能なレベル未満の量を指すとすることができる。実質的に含まない、または含まないは、さらに、組成物に加えられなかったまたは組み込まれてなかった成分を指し得る。
【0023】
開示されるのは、本開示の組成物を準備するために使用される成分のみならず、本明細書に開示される方法の範囲内で使用される組成物自体である。これらの材料および他の材料は本明細書に開示されており、これらの材料の組み合わせ、部分集合、相互作用、群などを開示する場合に、これらの化合物のそれぞれ様々な個々のそして集合的な組み合わせと並び替えを具体的に言及されたものとして明示的に開示することはできないものの、本明細書においてそれぞれが具体的に企図され記載されるということは、理解される。例えば、特定の化合物が開示、考察され、化合物を含む複数の分子に対して行うことができる複数の修正形態が考察される場合には、具体的に企図されるのは、別途反対のことが具体的に指示されているのでない限り可能な、化合物および修正形態のそれぞれのそしてすべての組み合わせと並び替えである。よって、分子A、B、およびCの類のみならず、分子D、E、およびFの類が開示され、組み合わせ分子の例であるA-Dが開示されている場合には、それぞれが個別に言及されていなくても、それぞれが個別に、そして集合的に企図され、組み合わせ、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、およびC-Fが開示されているとみなされることを意味する。同様に、これらのいずれの部分集合または組み合わせも開示される。よって、例えば、A-E、B-F、およびC-Eという部分群が、開示されるとみなされる可能性がある。この概念は、本開示の組成物を作るおよび使用する方法におけるステップを含むがこれらに限定されない、本出願のすべての態様に適用される。よって、実行できる様々な追加のステップがある場合には、これらの追加のステップのそれぞれが、本開示の方法のいずれの具体的な態様または態様の組み合わせを用いても実行できることが理解される。
【0024】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、組成物または物品中の特定の構成要素または成分の重量部が参照されていれば、それは、その構成要素または成分と、組成物または物品中の他の構成要素または成分との間の、重量部で表現される重量関係を示すものである。よって、2重量部の成分Xと5重量部の成分Yを含有する化合物では、XとYは2:5の重量比で存在し、化合物中に追加の成分が含有されているかどうかにかかわらず、そのような比率で存在する。
【0025】
構成成分の重量パーセントは、反対のことが具体的に言明されているのでない限り、その構成成分が含まれる配合物または組成物の総重量を基準にする。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「重量パーセント、「wt%」、および「wt.%」は、互換的に使用することができ、別途指定されているのでない限り、組成物の総重量を基準にした所与の構成成分の重量パーセントを示す。すなわち、別途指定されているのでない限り、すべてのwt%の値は、組成物の総重量を基準にする。開示された組成物または配合物中の全成分のwt%値の総和は100に等しいと理解されるのが望ましい。
【0027】
本明細書で反対のことが別途言明されているのでない限り、すべての試験基準は、本願出願時点で有効な最新の基準である。
【0028】
本明細書に開示される材料のそれぞれは、市販されている、および/またはその製造方法が当業者に公知であるものである。
【0029】
本明細書に開示される組成物は、特定の機能を有することが理解される。本明細書に開示されるのは、開示される機能を実行する特定の構造要件であり、開示される構造に関連する同一の機能を実行することができる様々な構造が存在すること、およびこれらの構造が典型的には同一の結果を実現することは理解される。
ポリマー樹脂
【0030】
一態様では、ポリマー組成物はポリマー樹脂を含んでなり得る。様々な態様では、ポリマー系樹脂は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を含むものとすることができる。熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン系コポリマー、ポリアミド、ポリカルボナート、ポリエステル、ポリオキシメチレン(POM)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタラート(PCT)、液晶ポリマー(LPC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンオキシド-ポリスチレンブレンド、ポリスチレン、ハイインパクト変性ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)ターポリマー、アクリルポリマー、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ乳酸(PLA)系ポリマー、ポリエーテルスルホン(PES)、およびそれらの組み合わせを含むものとすることができる。熱可塑性樹脂はまた、ポリアミドおよびポリエステル系のエラストマーなどの熱可塑性エラストマーを含むものとすることができる。基本になる基材は、上記の樹脂のブレンドおよび/または他のタイプの組み合わせを含むものとすることもできる。様々な態様では、ポリマー系樹脂は熱硬化性ポリマーを含むものとすることもできる。適切な熱硬化性樹脂には、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素-ホルムアルデヒドラテックス、キシレン樹脂、ジアリールフタラート樹脂、エポキシ樹脂、アニリン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン、またはそれらの組み合わせなどを挙げることができる。
【0031】
具体的な態様では、ポリマー組成物は、ポリカルボナート、具体的にはポリカルボナートコポリマー、ポリカルボナートホモポリマー、またはそれらの組み合わせを含んでなる。本明細書で使用されるとおり、「ポリカルボナート」は、カルボナート結合によって結合した一つまたは複数のジヒドロキシ化合物、例えばジヒドロキシ芳香族化合物の残基を含むオリゴマーまたはポリマーを指し、ホモポリカルボナート類、コポリカルボナート類、および(コ)ポリエステルカルボナート類をも包含する。ポリマーの成分に関して使用される用語「残基」および「構造単位」は、本明細書を通して同義である。用語「BisA」、「BPA」、または「ビスフェノールA」は、互換的に使用することができ、本明細書で使用されるとおり、式(1):
【化1】
で表される構造を有する化合物を指す。BisAは、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ジフェノール;p,p’-イソプロピリデンビスフェノール;または2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンと称することもできる。BisAはCAS登録番号80-05-7を有する。
【0032】
ポリカルボナートと他の熱可塑性ポリマーとの組み合わせ、例えばホモポリカルボナート類、コポリカルボナート類、およびポリカルボナートコポリマーとポリエステル類との組み合わせを使用することができる。有用なポリエステル類には、例えば、ポリ(アルキレンジカルボキシラート類)、液晶ポリエステル類、およびポリエステルコポリマーなどが挙げられる。本明細書に記載されるポリエステル類は、ブレンドされる場合には概して、ポリカルボナート類と完全に混和させることができる。
【0033】
さらなる例では、ポリマー系樹脂のポリカルボナートは、分岐ポリカルボナートを含むものとすることができる。例示的な分岐剤には、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)を挙げることができるが、これには限定されない。さらなる例として、分岐ポリカルボナート樹脂は、適切なエンドキャップ剤、例えばp-シアノールフェノール(HBNとして知られている)などによってエンドキャップされ得る。
【0034】
ポリマー樹脂は、BPAから誘導される単位を含むポリカルボナートコポリマー、またはBPAから誘導される単位を含む一つまたは複数のポリカルボナートコポリマーの混合物を含み得る。具体的な例では、ポリマー樹脂は、BPAから誘導される単位を有するポリカルボナートコポリマーと、セバシン酸から誘導されるポリ(脂肪族エステル)-ポリカルボナートコポリマーとを含むものとすることができる。
【0035】
様々な態様によれば、ポリカルボナートは、高流動性PCもしくは低流動性PC、またはそれらの組み合わせを含んでなり得る。高流動性PCは、300℃/1.2kgで10g/10分より大きいメルトフローインデックス(MFI)を有するポリカルボナートとして定義され得る。低流動性PCは、ASTM D1238に準拠して試験される場合に300℃/1.2kgで10g/10分未満のMFIを有するPCとして定義され得る。
【0036】
いくつかの態様では、ポリカルボナートコポリマー成分がポリエステル-ポリカルボナートコポリマーを含む。本明細書にさらに記載されるとおり、ポリエステル類は、以下の式(A):
【化2】
の繰り返し単位を有し、式中、Tは、テレフタル酸またはその化学的均等物から誘導される残基であり、Dは、エチレングリコール、ブチレンジオール、具体的には1,4-ブタンジオール、またはその化学的均等物の重合から誘導される残基である。
【0037】
具体的な態様では、ポリエステル単位は、イソフタル酸、テレフタル酸、およびレソルシノール(ITR樹脂としても知られる)の反応から誘導される。ポリエステル単位は、以下の構造(B):
【化3】
を有し、式中、xはイソフタラートのモル比、yはレソルシノールのモル比、zはテレフタラートのモル比に対応し、x、y、zは100パーセントのポリエステル単位に加わる。ポリエステル(ITR)樹脂の濃度は、ポリマー中のモル数を基準にして、少なくとも5%であり得る。さらなる態様では、ポリエステルとポリカルボナートは、所望の特性に応じて、約5:95から約40:60、より詳細には約5:95から約35:65のモル比で使用される。ポリエステル-ポリカルボナート類は、約1,500から約100,000、より詳細には約2,000から約40,000の重量平均分子量を有し得る。ポリエステル-ポリカルボナートポリマーは、コポリマー、特にブロックコポリマーとすることができる。
【0038】
具体的には、ポリエステル-ポリカルボナートのポリエステル単位は、イソフタル二酸およびテレフタル二酸(またはそれらの誘導体と、レソルシノール、ビスフェノールA、またはこれらの一つもしくは複数を含んでなる組み合わせとの反応から誘導され得るが、ここで、イソフタル酸単位対テレフタル酸単位のモル比は、91:9から2:98、具体的には85:15から3:97、より具体的には80:20から5:95、さらに具体的には70:30から10:90である。ポリカルボナートが、レソルシノールおよび/またはビスフェノールAから誘導される単位を含んでなる場合には、レソルシノールカルボナート単位対ビスフェノールAカルボナート単位のモル比は、0:100から99:1、そしてポリエステル-ポリカルボナート中の混合されたイソフタラート-テレフタラートポリエステル単位対ポリカルボナート単位のモル比は、1:99から99:1、具体的には5:95から90:10、より具体的には10:90から80:20とすることができる。ポリエステル-ポリカルボナートとポリカルボナートとのブレンドが使用される場合には、ブレンド中のポリカルボナート対ポリエステル-ポリカルボナートの比は、それぞれ、1:99から99:1、具体的には10:90から90:10とすることができる。
【0039】
具体的な態様では、ポリカルボナートコポリマーは、レソルシノール系のアリールポリエステル、またはレソルシノール系のポリエステルカルボナートポリマーを含んでなり得る。ITR(イソフタラートテレフタラートレソルシノール)レソルシノール系アリールポリエステル類、および「レソルシノール系ポリアリールエステル類」、および「レソルシノール系ポリアリーラート」はすべて、レソルシノール部分およびレソルシノール系のエステル結合、ならびに場合によってはレソルシノール系のポリカルボナート結合などの他の結合をも含んでなるコポリマーを意味するものとする。これらの用語は、エステル結合のみを含有するポリエステル類と、レソルシノール系のポリカルボナート結合が存在する場合でのポリエステルカルボナート類との両方を含むことを企図している。よって、ポリエステル-ポリカルボナートコポリマーは、ビスフェノールAの繰り返し構造カルボナート単位と、繰り返し構造エステル単位とを含んでなり得るが、これは、BPAポリカルボナートとレソルシノールフタラート(ITR)とのいずれかのコポリマー(C)、および例えば(D)であり得る。
【化4】
【0040】
これらのコポリカルボナート類は、当業者によって合成され得るものであるか、または商業的に入手できるもの、例えばサビック社(SABIC)のLEXAN(商標) SLX樹脂である。LEXAN(商標) SLX樹脂は、20,000~30,000の分子量、約1.59~1.603の屈折率のITR-ポリカルボナートコポリマーである。
【0041】
一例として、レソルシノール系ポリアリールエステルは、カルボナート結合(例えば、レソルシノール部分とビスフェノールA部分との間)と、エステル結合(例えば、レソルシノール部分とイソフタル酸部分との間)との両方を含んでなり得る。本開示の態様では、組成物は、ITR-BPAPCを含んでなる。
【0042】
いくつかの実例では、レソルシノール系ポリアリーラート樹脂は、レソルシノールから誘導される少なくとも約40モル%の部分を含有し得る。レソルシノール部分は、レソルシノールまたは官能化レソルシノールを、レソルシノールとのアリールエステル結合の形成に好適なアリールジカルボン酸またはアリールジカルボン酸誘導体と反応させた反応生成物として導入することができる。好適なジカルボン酸誘導体には、例えば、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸エステル類、およびカルボン酸塩などが挙げられる。
【0043】
レソルシノール系ポリアリーラートは、ビスフェノールとカルボナート形成種、例えばホスゲンとの反応から誘導されるカルボナート結合をさらに含有し得て、レソルシノール系ポリアリーラートをポリエステルカルボナートコポリマーとし得る。本発明の別の実施形態では、レソルシノールポリアリーラートカルボナートコポリマーは、イソフタル酸およびテレフタル酸、レソルシノール、ならびに随意にビスフェノールAおよびホスゲンの反応生成物を含んでなるものとなる。一態様では、レソルシノールポリエステルカルボナートコポリマーは、ビスフェノールジカルボン酸エステル結合の数が最小になるようにして作られることになり、これは例えば、レソルシノールとジカルボン酸とを予め反応させてアリールポリエステルブロックを形成し、次いで、アリールポリエステルブロックとビスフェノールおよびカルボナート部分とを反応させてコポリマーのポリカルボナート部分を形成することによってなされる。レソルシノールエステル含有ポリマーの例は、米国特許第6,861,482号、同第6,559,270号、同第6,265,522号、同第6,294,647号、同第6,291,589号、および同第5,916,997号明細書に見出すことができる。
【0044】
他の例では、ポリカルボナートコポリマーは、少なくとも50mol%のジメチルビスフェノールシクロヘキサンモノマーを含むポリカルボナートジメチルビスフェノールシクロヘキサンコポリマー(DMBPC)を含み得る。DMBPCは、式(E):
【化5】
を有し、式中、xおよびyはそれぞれ、ジメチルビスフェノールシクロヘキサンモノマーおよびポリカルボナートモノマーのモル比を表す。よって、xが50の場合にはyも50であり、コポリマーは、50mol%のジメチルビスフェノールシクロヘキサンモノマーおよび50mol%のポリカルボナートモノマーを含む。いくつかの態様では、xは20から100である。
【0045】
またさらなる態様では、ポリエステル-ポリカルボナートコポリマーは、上式(A)の繰り返し単位を含有し、式中、Dは、ジヒドロキシ化合物から誘導される二価のラジカルであり、例えば、C2-10アルキレンラジカル、C6-20脂環式ラジカル、C6-20芳香族ラジカル、またはアルキレン基が2から6個の炭素原子、具体的には、2、3、または4個の炭素原子を含有するポリオキシアルキレンラジカルであり得て;Tは、ジカルボン酸から誘導される二価のラジカルであり、例えば、C2-10アルキレンラジカル、C6-20脂環式ラジカル、C6-20アルキル芳香族ラジカル、またはC6-20芳香族ラジカルであり得る。
【0046】
一態様では、DはC2-6アルキレンラジカルである。別の態様では、Dは、式(F):
【化6】
の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導され、式中、各Rは独立に、ハロゲン原子、C1-10炭化水素基、またはC1-10ハロゲン置換炭化水素基であり、nは0から4である。ハロゲンは通常、臭素である。式(7)で表され得る化合物の例には、レソルシノール、置換レソルシノール化合物であって、例えば5-メチルレソルシノール、5-エチルレソルシノール、5-プロピルレソルシノール、5-ブチルレソルシノール、5-t-ブチルレソルシノール、5-フェニルレソルシノール、5-クミルレソルシノール、2,4,5,6-テトラフルオロレソルシノール、2,4,5,6-テトラブロモレソルシノール、もしくは同類のもの;カテコール;ヒドロキノン;置換ヒドロキノンであって、例えば2-メチルヒドロキノン、2-エチルヒドロキノン、2-プロピルヒドロキノン、2-ブチルヒドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノン、2-フェニルヒドロキノン、2-クミルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラ-t-ブチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6-テトラブロモヒドロキノン、もしくは同類のもの;または先の化合物の少なくとも一つを含んでなる組み合わせなどを挙げてもよい。
【0047】
ポリエステル類を準備するのに使用され得る芳香族ジカルボン酸の例には、イソフタル酸またはテレフタル酸、1,2-ジ(p-カルボキシフェニル)エタン、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ビス安息香酸、および先の酸の少なくとも一つを含んでなる混合物などを挙げてもよい。酸含有縮合環もまた、例えば1,4-、1,5-、または2,6-ナフタレンジカルボン酸中に存在することができる。具体的なジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、またはそれらの混合物である。具体的なジカルボン酸は、イソフタル酸とテレフタル酸の混合物を含んでなり、テレフタル酸対イソフタル酸の重量比は91:1から2:98である。別の具体的な実施形態では、DはC2-6アルキレンラジカルであり、Tはp-フェニレン、m-フェニレン、ナフタレン、二価の脂環式ラジカル、またはこれらの混合物である。この類のポリエステルは、ポリ(アルキレンテレフタラート類)を含む。
【0048】
ポリシロキサン-ポリカルボナートコポリマーは、有用なポリカルボナートコポリマーであり得て、50wt.%から99wt.%のカルボナート単位および1wt.%から50wt.%のシロキサン単位を含み得る。この範囲内では、ポリオルガノシロキサン-ポリカルボナートコポリマーは、70wt.%、から98wt.%、より具体的には75wt.%から97wt.%のカルボナート単位、および2wt%から30wt.%、より具体的には3wt.%から25wt.%のシロキサン単位を含むものとすることができる。
【0049】
一態様では、ポリシロキサン-ポリカルボナートコポリマーは、ポリシロキサン-ポリカルボナートコポリマーの総重量を基準にして10wt%以下、具体的には6wt%以下、より具体的には4wt%以下のポリシロキサンを含むものとすることができ、概して光学的に透明であるものとすることができて、サビック社からEXL-Tの名称で市販されている。別の態様では、ポリシロキサン-ポリカルボナートコポリマーは、ポリシロキサン-ポリカルボナートコポリマーの総重量を基準にして10wt%以上、具体的には12wt%以上、より具体的には14wt%以上のポリシロキサンコポリマーを含むものとすることができ、概して光学的に不透明であるものとすることができて、サビック社からEXL-Pの名称で市販されている。
【0050】
ポリオルガノシロキサン-ポリカルボナート類は、架橋スチレン-ジビニルベンゼンカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって、1ミリグラム毎ミリリットルの試料濃度で測定し、ポリカルボナート標準で較正して、2,000ダルトンから100,000ダルトン、具体的には5,000ダルトンから50,000ダルトンの重量平均分子量を有するものとすることができる。
【0051】
ポリオルガノシロキサン-ポリカルボナート類は、摂氏300度(℃)毎1.2キログラム(kg)で測定される、1から50立方センチメートル毎10分(cm/10分)、具体的には2から30cm/10分のメルトボリュームフローレートを有するものとすることができる。異なる流動特性のポリオルガノシロキサン-ポリカルボナート類の混合物を使用して、全体として所望の流動特性を達成することができる。
【0052】
ポリシロキサン-ポリカルボナートコポリマーの非限定的な例には、サビック社から入手可能な様々なコポリマーなどを挙げることができる。一態様では、ポリシロキサン-ポリカルボナートコポリマーは、ポリシロキサン-ポリカルボナートコポリマーの総重量を基準にして6重量%のポリシロキサン含有量を含有するものとすることができる。様々な態様では、6重量%ポリシロキサンブロックコポリマーは、ビスフェノールAポリカルボナート絶対分子量標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用して、約23,000から24,000ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有するものとすることができる。特定の態様では、6重量%のシロキサンポリシロキサン-ポリカルボナートコポリマーは、300℃/1.2kgで約10cm/10分のメルトボリュームフローレート(MVR)を有するものとすることができる(サビック社から「透明な」EXL C9030T樹脂ポリマーとして市販されている6重量%のポリシロキサン含有量のコポリマーであるC9030Tを見られたい)。別の例では、ポリシロキサン-ポリカルボナートブロックは、ポリシロキサンブロックコポリマーの総重量を基準にして20重量%のポリシロキサンを含むものとすることができる。例えば、適切なポリシロキサン-ポリカルボナートコポリマーは、パラ-クミルフェノール(PCP)でエンドキャップされた、そして20%のポリシロキサン含有量を有するビスフェノールAポリシロキサン-ポリカルボナートコポリマーとすることができる(サビック社から「不透明」EXL C9030Pとして市販されているC9030Pを見られたい)。様々な態様では、20%ポリシロキサンブロックコポリマーの重量平均分子量は、架橋スチレン-ジビニルベンゼンカラム上でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用してポリカルボナート標準に従って試験し、約1.0ml/分のフローレートで溶出した1ミリグラム毎ミリリットル(mg/ml)の試料上で264ナノメートル(nm)に設定されたUV-VIS検出器を使用してポリカルボナート参照に対して較正した場合に、約29,900ダルトンから約31,000ダルトンとすることができる。さらに、20%ポリシロキサンブロックコポリマーは、7cm/10分の、300℃/1.2kgでのメルトボリュームレート(MVR)を有するものとすることができ、約5ミクロンから約20マイクロメートル(ミクロン、μm)の範囲のサイズのシロキサン領域を示すものとすることができる。
【0053】
組成物は、約0.1wt.%から約99wt.%のポリカルボナートコポリマーを含んでなり得る。PCコポリマー成分は、少なくとも約45wt.%から約85wt.%の範囲内でポリマー組成物中に存在し得る。さらなる例では、組成物は、約10wt.%から約90wt.%のポリカルボナートコポリマー、または約10wt.%から約80wt.%のポリカルボナートコポリマー、または約20wt.%から約80wt.%のポリカルボナートコポリマー、または約25wt.%から約80wt.%のポリカルボナートコポリマー、または約30wt.%から約80wt.%のポリカルボナートコポリマー、または約40wt.%から約80wt.%のポリカルボナートコポリマー、または約40wt.%から約75wt.%のポリカルボナートコポリマー、または約45wt.%から約80wt.%のポリカルボナートコポリマーを含んでなり得る。特定の態様では、少なくとも45wt.%で、組成物が少なくとも150℃、または少なくとも約150℃の熱変形温度に達することが可能になり得るが、これは、熱可塑性組成物の最適な適用性能にとって有益である可能性がある。熱可塑性組成の範囲内で最適な性能を得るためには、50~55wt.%、または約50~55wt.%が好ましい。
【0054】
様々な態様では、開示された組成物は、少なくとも一つの結晶性ポリエステルを含んでなり得る。ポリマーの結晶性または半結晶性は、組織化された、またはより緊密に充填された分子鎖を有するポリマーを記述し得る。その結果として、この高度に組織化された分子構造は、より明確な融点を提供し得る。これらのポリマーは流れが異方的であるので、流れに沿った収縮よりも流れに対して横断方向の収縮が大きくなる結果、寸法がいくぶん不安定になる可能性がある。異なる材料間で結晶化度が変動し得るだけでなく、同じ材料でも変動があり得る。結晶化度はポリマーの多くの特性に影響を与える可能性がある。分子量と分岐が、結晶性に影響し得る。
【0055】
少なくとも一つの結晶性ポリエステルには、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタラート(PCT)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンテレフタラートグリコール(PETG)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタラートグリコール(PCTG)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタラート酸(PCTA)、それらのコポリマー、またはそれらの組み合わせなどが挙げられる。詳細な態様では、少なくとも一つの結晶性ポリエステルは、ポリブチレンテレフタラート(PBT)を含む。
【0056】
組成物の特定の態様は、約1wt.%から約99wt.%の少なくとも一つの結晶性ポリエステル、50wt.%から約97wt.%の熱可塑性樹脂、または約40wt.%から約97wt.%のポリマー系樹脂、または約55wt.%から約97wt.%のポリマー系樹脂、または約60wt.%から約97wt.%のポリマー系樹脂、または約70wt.%から約97wt.%のポリマー系樹脂、または約40wt.%から約95wt.%のポリマー系樹脂、または約55wt.%から約95wt.%のポリマー系樹脂、または約60wt.%から約95wt.%のポリマー系樹脂、または約75wt.%から約97wt.%のポリマー系樹脂を含む。
【0057】
本開示の様々な態様では、熱可塑性樹脂は、結晶性ポリエステルを含んでなり得る。例えば、熱可塑性樹脂は、ポリアルキレンエステル(ポリエステル)、例えばポリアルキレンテレフタラートポリマーを含んでなり得る。
【0058】
本明細書で提供されるとおり、ポリエステル類は、上の以下の式(A)の繰り返し単位を有する。二酸の化学的均等物には、ジアルキルエステル類、例えばジメチルエステル類、ジアリールエステル類、無水物、塩類、酸塩化物、酸臭化物、および同類のものなどが挙げられる。エチレンジオールおよびブチレンジオールの化学的均等物には、エステル類、例えば、ジアルキルエステル類、ジアリールエステル類、および同類のものなどが挙げられる。テレフタル酸またはその化学的均等物、およびエチレングリコールまたはブチレンジオール、具体的には1,4-ブタンジオール、またはその化学的等価物に由来する単位に加えて、他のTおよび/またはD単位がポリエステル中に存在することができるが、ただしこれは、そうした単位のタイプまたは量が、熱可塑性組成物の所望の特性に著しく悪影響を与えないことが条件である。ポリ(アルキレンアリーラート類)は、式(A)にしたがうポリエステル構造を有することができ、式中、Tは、芳香族ジカルボキシラート類、脂環式ジカルボン酸類、またはそれらの誘導体から誘導される基を含んでなる。
【0059】
具体的に有用なT基の例には、1,2-、1,3-、および1,4-フェニレン;1,4-および1,5-ナフチレン類;シス-またはトランス-1,4-シクロヘキシレン;ならびに同類のものなどが挙げられるが、これらには限定されない。具体的には、Tが1,4-フェニレンである場合には、ポリ(アルキレンアリーラート)は、ポリ(アルキレンテレフタラート)である。加えて、ポリ(アルキレンアリーラート)の場合には、具体的に有用なアルキレン基Dには、例えば、エチレン、1,4-ブチレン、ならびにシス-および/またはトランス-l,4-(シクロヘキシレン)ジメチレンを含むビス-(アルキレン二置換シクロヘキサン)などが挙げられる。
【0060】
ポリアルキレンテレフタラートの例には、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタラート)(PBT)、およびポリ(プロピレンテレフタラート)(PPT)などが挙げられる。また有用なのが、ポリ(アルキレンナフトアート類)、例えばポリ(エチレンナフタノアート)(PEN)、およびポリ(ブチレンナフタノアート)(PBN)である。有用なポリ(シクロアルキレンジエステル)が、ポリ(シクロヘキサンジメチレンテレフタラート)(PCT)である。先のポリエステル類の少なくとも一つを含む組み合わせもまた使用され得る。
【0061】
他のエステル基を有するアルキレンテレフタラートの繰り返しエステル単位を含むコポリマーもまた有用である可能性がある。有用なエステル単位は、異なるアルキレンテレフタラート単位を含むことができ、これらは個々の単位として、またはポリ(アルキレンテレフタラート類)のブロックとして、ポリマー鎖中に存在することができる。そのようなコポリマーの具体的な例には、ポリ(シクロヘキサンジメチレンテレフタラート)-コ-ポリ(エチレンテレフタラート)などが挙げられ、これは、ポリマーが、50mol%以上のポリ(エチレンテレフタラート)を含む場合にはPETGと略称され、ポリマーが、50mol%より多いポリ(l,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタラート)を含んでなる場合にはPCTGと略称される。ポリ(シクロアルキレンジエステル)類は、ポリ(アルキレンシクロヘキサンジカルボキシラート)類をも含むものとすることができる。これらのうち、具体的な例は、式(G):
【化7】
の繰り返し単位を有するポリ(1,4-シクロヘキサンジメタノール-1,4-シクロヘキサンジカルボキシラート)(PCCD)であり、式中、式(A)を使用して記述したとおり、Rは、1,4-シクロヘキサンジメタノールから誘導される1,4-シクロヘキサンジメチレン基であり、Tは、シクロヘキサンジカルボキシラートまたはその化学的均等物から誘導されるシクロヘキサン環であり、シス-アイソマー、トランス-アイソマー、または先のアイソマーの少なくとも一つを含んでなる組み合わせを含んでなるものとすることができる。
【0062】
別の態様では、組成物は、ポリ(1,4-ブチレンテレフタラート)または「PBT」樹脂をさらに含んでなるものとすることができる。PBTは、少なくとも70mol%、好ましくは少なくとも80mol%がテトラメチレングリコールからなるグリコール構成成分と、少なくとも70mol%、好ましくは少なくとも80mol%がテレフタル酸および/またはそのポリエステル形成性誘導体からなる、酸またはエステル成分とを重合させることによって得られる可能性がある。PBTの市販の例には、SABIC(商標)製の、VALOX(商標) 315、VALOX(商標) 195、およびVALOX(商標) 176の商品名で入手できるものなどが挙げられ、摂氏23度(℃)から30℃での60:40フェノール/テトラクロロエタン混合物または同様の溶媒中で測定された、0.1デシリットル毎グラム(dl/g)から約2.0dl/g(または0.1dl/gから2dl/g)の固有粘度を有する。一態様では、PBT樹脂は、0.1dl/gから1.4dl/g(または約0.1dl/gから約1.4dl/g)、具体的には0.4dl/gから1.4dl/g(または約0.4dl/gから約1.4dl/g)の固有粘度を有する。
【0063】
本明細書に記載されるとおり、組成物は、約0.1wt.%から約99wt.%の結晶性ポリエステルを含んでなり得る。さらなる例では、組成物は、約0.1wt.%から約50wt.%の結晶性ポリエステル、または約0.1wt.%から約30wt.%の結晶性ポリエステル、または約0.1wt.%から約40wt.%の結晶性ポリエステル、または約0.1wt.%から約25wt.%の結晶性ポリエステル、または約0.1wt.%から約15wt.%の結晶性ポリエステル、または約1wt.%から約15wt.%の結晶性ポリエステル、または約1wt.%から約20wt.%の結晶性ポリエステル、または約0.5wt.%から約12wt.%の結晶性ポリエステルを含んでなり得る。ポリマー組成物は、約0.1wt.%から約70wt.%の結晶性ポリエステルを含んでなり得る。
本質的に散逸性のポリマー
【0064】
様々な態様では、開示されたポリマー組成物は、本質的に散逸性のポリマー(IDP)を含んでなり得る。本質的に散逸性のポリマーは、静電気散逸性(ESD)の特性を有するポリマー樹脂を指し得る。
【0065】
IDPは概して、改質ポリマーを含んでなる。特定の態様では、IDPは熱可塑性エラストマー、または改質熱可塑性エラストマーを含んでなり得る。そうした材料は概して、その骨格構造に硬質および/または結晶性のセグメントおよび/またはブロックを有する、そして軟質および/またはゴム質のセグメントおよび/またはブロックの両方を有するポリマーとして記述される。これらはマルチブロックコポリマーと称され得る。
【0066】
本明細書に開示されるIDPは、イオンドープされ得る。従来、IDPはナトリウムイオンをドープされ得る。本開示のIDPは、ホスホニウムイオンをドープされ得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、本質的に散逸性のポリマーは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリオレフィンポリエーテルコポリマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー(COPE)、ポリエーテルブロックアミドエラストマー(COPAもしくはPEBA)、またはそれらの組み合わせを含んでなる。好適なコポリマーの例には、ポリオレフィン-ポリエーテルコポリマーなどが挙げられる。
【0068】
一例として、ポリマー組成物は、イオンをドープされたナイロン(またはポリアミド)系のマルチブロックコポリマー、例えば市販のPelectron(商標) ASを含んでなるIDPを含み得る。一般的なナイロン系のIDPは、その性質上、PCに有害であり劣化を引き起こす。しかし、本開示の成分の具体的な組み合わせは、この劣化の可能性を克服し得る。処理温度は、IDPとPCの反応とそれに続く表面導電率の喪失を防止するために、望ましくは可能な限り低く維持される。その独自の組成により、低温処理が可能になる。そのため、押出成形、コンパウンディング、射出成形、特に押出成形と射出成形については、処理温度を240℃未満に維持し得る。
【0069】
さらなる例として、ポリマー組成物は、ポリマー樹脂系のポリマーマスターバッチ、例えば市販のavanDISS(商標) 378を含んでなるIDPを含み得る。
【0070】
特定の態様では、選択されるIDPのタイプは、ポリカルボナートのタイプに依存し得る。ポリカルボナートコポリマーとブレンドするには、Pelectron(商標) ASが好適なIDPであった一方、ポリカルボナートコポリマーまたはポリカルボナートホモポリマー組成物には、AvanDISS(商標)が適切であった。
【0071】
IDPは、約E+6からE+8オーム(例えば、1×10オームから9×10オームの大きさの表面抵抗率を有し得る。IDPは、約E+4からE+7オーム・cm(例えば、1×10オームから9×10)の体積抵抗率を有し得る。一例として、IDPは、68mm×68mm×3mmのプラーク試験片上でASTM D257に準拠して試験される場合に約1×10オームの表面抵抗率を有し得る。
【0072】
いくつかの態様では、ポリマー組成物は、約0.1wt.%から約50wt.%のIDPを含み得る。さらなる態様では、組成物は、約10wt.%から約50wt.%のIDP、または約15wt.%から約50wt.%のIDP、または約50wt.%から約70wt.%のIDP、または約18wt.%から約40wt.%のIDP、または約15wt.%から約45wt.%のIDP、または約12wt.%から約35wt.%のIDP、約12wt.%から約40wt.%のIDP、または約12wt.%から約50wt.%のIDP、または約12wt.%から約50wt.%のIDPを含み得る。
トランスエステル化阻害剤
【0073】
ポリマー組成物は、一つまたは複数のトランスエステル化阻害剤を含んでなり得る。トランスエステル化阻害剤は、ポリマーのエステル交換反応を阻害し得て、これにより重合反応を抑制し得る。また、周知であるとおり、トランスエステル化阻害剤の存在により、重合反応を阻害することができる。米国特許第4,069,278号明細書には、酢酸カルシウムと酸化アンチモンとによって触媒されるエチレングリコールとテレフタル酸ジメチルとの重縮合において、リン含有安定剤(触媒阻害剤)を一切添加しなかったことが教示されている。
【0074】
好適なトランスエステル化阻害剤は、当技術分野で周知であり、ペンタエリスリトールジホスファイト(GEスペシャリティ・ケミカルズ社(GE Specialty Chemicals)、パーカーズバーグ(Parkersburg)、ウエストバージニア州、Ultranox(商標) 626)、リン酸、およびポリリン酸などのリン含有安定剤の阻害剤からなる群から選択することができる。他の例は、ジイソプロピルジチオリン酸亜鉛、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、およびそれらの混合物である。さらなるトランスエステル化阻害剤には、リン酸二水素ナトリウム、酢酸カリウム、トリメチルホスファート、およびフェニルリン酸などが挙げられる。式xHO・yPで表されx/y 3を満たすオルトリン酸、縮合度に応じて二リン酸、三リン酸、四リン酸、五リン酸と呼ばれ2DX/y>1を満たすポリリン酸、およびそれらの混合物などもまた挙げられる。式xHO・yPで表されx/y=1を満たすメタリン酸、特にトリメタリン酸およびテトラメタリン酸、ならびに五酸化リン構造の部分を有する網状構造を有し1>x/y>0を満たすウルトラリン酸(これらは「メタリン酸系化合物」と総称され得る)などがさらに挙げられる。これらのリン酸の酸塩類およびエステル類がさらに挙げられる。これらのうち、環状メタリン酸ナトリウム、ウルトラ領域メタリン酸ナトリウム、およびジヘプチルリン酸DHPAが有利に使用される。具体的な例として、トランスエステル化阻害剤は、AX71として市販されているモノ-およびジ-ステアリル酸ホスファートの混合物を含んでなり得る。
【0075】
トランスエステル化阻害剤は、ポリマー組成物の総重量を基準にして約0.001wt.%から約10wt.%の量で存在し得る。
白色顔料
【0076】
ポリカルボナートコポリマー、結晶性ポリエステル、IDP、およびトランスエステル化阻害剤に加えて、本開示のポリマー組成物は、白色顔料をさらに含み得る。白色顔料は、ポリマー樹脂組成物に不透明性または明るい不透明な外観を付与することができる。さらなる態様では、白色顔料は、ポリマー樹脂組成物に白色またはオフホワイトの色を付与することができる。さらに、これらの顔料は、近赤外(NIR)および可視光の両方に対して高い反射率を有する傾向がある。本明細書で使用されるとおり、反射率は、所定の波長で光を吸収することなく、材料の表面から光を散乱させる能力を指すことができる。
【0077】
好適な白色顔料には、二酸化チタン、硫化亜鉛(ZnS)、酸化スズ、酸化アルミニウム(AlO)、酸化亜鉛(ZnO)、硫酸カルシウム、硫酸バリウム(BaSO)、炭酸カルシウム(例えば、チョーク)、炭酸マグネシウム、酸化アンチモン(Sb)、白鉛(塩基性炭酸鉛、2PbCO・Pb(OH))、リトポン(硫酸バリウムと硫化亜鉛の組み合わせ)、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化ケイ素(SiO、すなわちシリカ)、ウンモ、粘土、タルク、先の材料の金属ドープ型、および先の材料の少なくとも一つを含む組み合わせなどを挙げてもよい。より詳細には、無機白色顔料は、ルチルまたはアナターゼ型二酸化チタン、硫化亜鉛、およびシラン化二酸化チタンなどのそれらの被覆型から選択される。異なるタイプの白色顔料の組み合わせを使用することができる。詳細な態様では、白色顔料は、二酸化チタン、酸化アンチモン、酸化亜鉛、白鉛、またはリトポンを含むものとすることができる。本開示のいくつかの態様では、タルクが白色顔料として使用され得る。タルクは、材料に白色を与えるのに充分高い色座標値をその材料が有する場合に、好適な白色顔料であり得る。一例では、80より大きい色座標L(所与の材料の白色度に対応するもの)の値を有するタルクは、本明細書に記載される適切な白色顔料となり得る。
【0078】
白色顔料は、0.01から10マイクロメートル(μm)、具体的には0.05μmから1μm、より詳細には0.1μmから0.6μmの平均粒子サイズを有し得る。白色顔料は、約0.1wt.%から約50wt.%の量で存在することができる。一例として、組成物は、0.1wt.%から50wt.%の量の二酸化チタンを含み得る。さらなる例では、組成物は、0.1wt.%から20wt.%の間の量の二酸化チタンを含み得る。
光学剤
【0079】
本開示のさらなる態様では、ポリマー組成物は、光学剤を含み得る。光学剤は、蛍光増白剤を含み得る。蛍光増白剤の例には、光学光沢剤(OBA)、蛍光光沢剤(FBA)、蛍光増白剤(FWA)等、または先の光学光沢剤の少なくとも一つを含む組み合わせなどが挙げられる。本明細書で使用されるとおり、光学光沢剤は、電磁スペクトルの紫外および紫色領域(通常約340から約370nm)の光を吸収し、青色領域(通常約420から約470nm)の光を再放出する染料を指す。これらの添加剤は、ポリマー組成物の色の外観を向上させるために使用されることが多く、知覚される「増白」効果を引き起こす。増白効果が知覚されると、反射される青色光の全体量を増加させることにより、所与の材料を、黄色が抑えられたように見せることができる。例示的な光学光沢剤は、トリアジン-スチルベン類(ジ-、テトラ-、またはヘキサ-スルホン化されたもの)、クマリン類、イミダゾリン類、ジアゾール類、トリアゾール類、ベンズオキサゾリン類、ビフェニル-スチルベン類、または同類のもの、または先の光学光沢剤の少なくとも一つを含む組み合わせである。本開示の詳細な態様では、光学剤は、イーストマン社(Eastman)のEastobrite(商標) OB-1として市販されている4,4’-ビス(2-ベンズオキサゾリル)スチルベン、または市販のTinopal(商標) OBとして市販されている2,5-ビス(5-tert-ブチル-2-ベンズオキサゾリル)チオフェン、またはそれらの組み合わせを含み得るが、これらには限定されない。
【0080】
特定の態様では、組成物は、約0.001wt.%から約10wt.%の光学光沢剤を含む。さらなる態様では、組成物は、約0.01wt.%から約5wt.%の光学光沢剤、または約0.01wt.%から約1wt.%の光学光沢を含む。
添加剤
【0081】
開示された熱可塑性組成物は、モールド成形熱可塑性部分の製造に従来使用されている一つまたは複数の添加剤を含むことができるが、これは、得られる組成物の所望の特性にそれらの随意の添加剤が悪影響を及ぼさないというのが条件である。随意の添加剤の混合物を使用することもできる。そのような添加剤は、コンポジット混合物を形成するための成分の混合の最中の好適な時点で混合することができる。例示的な添加剤には、紫外線剤、紫外線安定化剤、熱安定化剤、帯電防止剤、抗微生物剤、滴下防止剤、放射線安定化剤、顔料、染料、繊維、充填剤、可塑剤、繊維、難燃剤、抗酸化剤、潤滑剤、木材、ガラス、および金属、ならびにそれらの組み合わせなどを挙げることができる。
【0082】
本明細書に開示される熱可塑性組成物は、一つまたは複数の追加の充填剤を含むことができる。充填剤は、追加の衝撃強度を付与するように、および/またはポリマー組成物の最終的な選択された特性に基づくものとすることのできる追加の特性を提供するように、選択することができる。いくつかの態様では、充填剤は、粘土、酸化チタン、アスベスト繊維、ケイ酸塩およびシリカ粉末、ホウ素粉末、炭酸カルシウム類、タルク、カオリン、硫化物、バリウム化合物、金属および金属酸化物、珪灰石、ガラス球、ガラス繊維、フレーク状充填剤、繊維状充填剤、天然充填剤および強化剤、ならびに強化有機繊維状充填剤を含むことができる無機材料を含むことができる。
【0083】
適切な充填剤または強化剤には、例えば、ウンモ、粘土、長石、石英、珪岩、パーライト、トリポリ、珪藻土、ケイ酸アルミニウム(ムライト)、合成ケイ酸カルシウム、溶融シリカ、ヒュームドシリカ、砂、窒化ホウ素粉末、ホウケイ酸粉末、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム類(チョーク、石灰石、大理石、および合成沈降性炭酸カルシウム類など)、タルク(繊維状、モジュール状、針状、ラメラ状タルクを含む)、珪灰石、中空または中実ガラス球、ケイ酸塩球、セノスフェア、アルミノケイ酸塩または(アルモスフェア)、カオリン、ウィスカーであって、炭化ケイ素、アルミナ、炭化ホウ素、鉄、ニッケル、銅のもの、連続およびチョップド炭素繊維またはガラス繊維、硫化モリブデン、硫化亜鉛、チタン酸バリウム、フェライトバリウム、硫酸バリウム、重晶石、TiO、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、微粒子状または繊維状のアルミニウム、青銅、亜鉛、銅、またはニッケル、ガラスフレーク、フレーク状炭化ケイ素、フレーク状二ホウ化アルミニウム、フレーク状アルミニウム、鋼フレーク、天然の充填剤であって、木粉、繊維状セルロース、綿、サイザル麻、ジュート、デンプン、リグニン、挽いたナッツの殻、または籾殻などのもの、強化用有機繊維状充填剤であって、ポリ(エーテルケトン)、ポリイミド、ポリベンズオキサゾール、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリエステル類、ポリエチレン、芳香族ポリアミド類、芳香族ポリイミド類、ポリエーテルイミド類、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリ(ビニルアルコール)などのもの、ならびに先の充填剤または強化剤の少なくとも一つを含む組み合わせなどを挙げることができる。充填剤および強化剤を金属材料の層で被覆して導電性を促進させることができるか、または例えばシラン類で表面処理してポリマーマトリクスとの接着性および分散性を改善させることができる。充填剤は概して、100重量部の全組成物を基準にして、1から200重量部の量で使用することができる。
【0084】
いくつかの態様では、熱可塑性組成物は相乗剤を含み得る。様々な例では、充填剤は難燃性相乗剤として機能し得る。相乗剤は、難燃性組成物に添加された場合に、相乗剤以外の同じ成分の全てを同じ量で含有する比較組成物よりも難燃性の改善を促進する。相乗剤として機能し得る鉱物充填剤の例は、ウンモ、タルク、炭酸カルシウム、ドロマイト、珪灰石、硫酸バリウム、シリカ、カオリン、長石、重晶石、または同類のもの、または先の鉱物充填剤の少なくとも一つを含む組み合わせである。金属相乗剤、例えば酸化アンチモンもまた難燃剤と共に使用することができる。一例では、相乗剤は、水酸化マグネシウムおよびリン酸を含み得る。鉱物充填剤は、約0.1から約20μm、具体的には約0.5から約10μm、より具体的には約1から約3μmの平均粒子サイズを有し得る。
【0085】
熱可塑性組成物は、抗酸化剤を含むものとすることができる。抗酸化剤は、一次抗酸化剤または二次抗酸化剤のいずれかを含むものとすることができる。例えば、抗酸化剤には、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトまたは同類のものなどの有機ホスファイト類;アルキル化されたモノフェノール類またはポリフェノール類;ポリフェノール類とジエン類、例えばテトラキス[メチレン(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、または同類のものなどとのアルキル化反応生成物;パラクレゾールまたはジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物;アルキル化ヒドロキノン類;ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル類;アルキリデンビスフェノール類;ベンジル系化合物;ベータ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオン酸と一価または多価アルコール類とのエステル類;ベータ-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-プロピオン酸と一価または多価アルコール類とのエステル類;ジステアリルチオプロピオナート、ジラウリルチオプロピオナート、ジトリデシルチオジプロピオナート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナートまたは同類のものなどのチオアルキルまたはチオアリール化合物のエステル類;ベータ-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオン酸または同類のもののアミド類、または先の抗酸化剤の少なくとも一つを含む組み合わせなどを挙げることができる。抗酸化剤は概して、いずれの充填剤をも除いた100重量部の全組成物を基準にして、0.01から0.5重量部の量で使用することができる。
【0086】
様々な態様では、熱可塑性組成物は、離型剤を含むものとすることができる。例示的な離型剤には、例えば、金属ステアラート、ステアリルステアラート、ペンタエリスリトールテトラステアラート、蜜ろう、モンタンろう、パラフィンろう、または同類のもの、または先の離型剤の少なくとも一つを含む組み合わせなどを挙げることができる。離型剤は概して、いずれの充填剤をも除いた100重量部の全組成物を基準にして、約0.1から約1.0重量部の量で使用される。
【0087】
一態様では、熱可塑性組成物は、熱安定化剤を含むものとすることができる。一例として、熱安定化剤には、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス-(2,6-ジメチルフェニル)ホスファイト、トリス-(モノ-およびジ-ノニルフェニルの混合物)ホスファイト、もしくは同類のものなどの有機ホスファイト類;ジメチルベンゼンホスホナート、もしくは同類のものなどのホスホナート類、トリメチルホスファート、もしくは同類のものなどのホスファート類、または先の熱安定化剤の少なくとも一つを含む組み合わせなどを挙げることができる。熱安定化剤は概して、いずれの充填剤をも除いた100重量部の全組成物を基準にして、0.01から0.5重量部の量で使用することができる。
【0088】
さらなる態様では、光安定剤が熱可塑性組成物中に存在することができる。例示的な光安定剤には、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、および2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、または同類のものなどのベンゾトリアゾール類、または先の光安定剤の少なくとも一つを含む組み合わせなどを挙げることができる。光安定剤は概して、いずれの充填剤をも除いた100重量部の全組成物を基準にして、約0.1から約1.0重量部の量で使用することができる。
【0089】
熱可塑性組成物は可塑剤を含むものとすることもできる。例えば、可塑剤には、ジオクチル-4,5-エポキシ-ヘキサヒドロフタラートなどのフタル酸エステル類、トリス-(オクトキシカルボニルエチル)イソシアヌラート、トリステアリン、エポキシ化大豆油、または同類のものなど、または先の可塑剤の少なくとも一つを含む組み合わせなどを挙げることができる。可塑剤は概して、いずれの充填剤をも除いた100重量部の全組成物を基準にして、約0.5から約3.0重量部の量で使用される。
【0090】
さらなる態様では、開示された組成物は、帯電防止剤を含むものとすることができる。これらの帯電防止剤には、例えば、グリセロールモノステアラート、ステアリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、または同類のもの、または先の帯電防止剤の組み合わせを挙げることができる。一態様では、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、または先のいずれかの組み合わせを、化学帯電防止剤を含有する高分子樹脂に使用して、組成物を静電気散逸性にすることができる。
【0091】
開示された熱可塑性組成物中に紫外線(UV)吸収剤も存在することができる。例示的な紫外線吸収剤には、例えば;ヒドロキシベンゾフェノン類;ヒドロキシベンゾトリアゾール類;ヒドロキシベンゾトリアジン類;シアノアクリラート類;オキサニリド類;ベンゾオキサジノン類;2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノール (CYASORB(商標) 5411);2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン (CYASORB(商標) 531);2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチルオキシ)-フェノール (CYASORB(商標) 1164);2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン) (CYASORB(商標) UV-3638);1,3-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン (UVINUL(商標) 3030);2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン);1,3-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン;酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛など、いずれも粒子サイズ100ナノメートル未満のナノサイズ無機材料;もしくは同類のもの、または先のUV吸収剤の少なくとも一つを含む組み合わせを挙げることができる。UV吸収剤は概して、いずれの充填剤をも除いた100重量部の全組成物を基準にして、0.01から3.0重量部の量で使用される。
【0092】
熱可塑性組成物は、潤滑剤をさらに含むことができる。例として、潤滑剤は、例えば、アルキルステアリルエステル類などの脂肪酸エステル類、例えばメチルステアラート、または同類のもの;好適な溶媒中、メチルステアラートと、親水性界面活性剤および疎水性界面活性剤、例えばポリエチレングリコールポリマー、ポリプロピレングリコールポリマー、およびそれらのコポリマーとの、例えばメチルステアラートとポリエチレン-ポリプロピレングリコールのコポリマーとの混合物;または先の潤滑剤の少なくとも一つを含む組み合わせを挙げることができる。潤滑剤は概して、いずれの充填剤をも除いた100重量部の全組成物を基準にして、約0.1から約5重量部の量で使用することができる。
【0093】
滴下防止剤もまた、組成物中で使用することができ、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフィブリル形成または非フィブリル形成フルオロポリマーがそうである。滴下防止剤は、硬質コポリマー、例えばスチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)によってカプセル化することができる。SAN中にカプセル化されたPTFEは、TSANとして公知である。一例では、TSANは、カプセル化されたフルオロポリマーの総重量を基準にして、50wt.%のPTFEおよび50wt.%のSANを含むものとすることができる。SANは、例えば、コポリマーの総重量を基準にして、75wt.%のスチレンおよび25wt.%のアクリロニトリルを含むものとすることができる。滴下防止剤、例えばTSANは、いずれの充填剤をも除いた100重量部の全組成物を基準にして、0.1から10重量部の量で使用することができる。
【0094】
一例として、開示された組成物は、耐衝撃性改良剤を含むものとすることができる。耐衝撃性改良剤は、化学反応性の耐衝撃性改良剤とすることができる。定義によれば、化学反応性の耐衝撃性改良剤は、ポリマー組成物に耐衝撃性改良剤が加えられると組成物の耐衝撃特性(アイゾット(IZOD)衝撃値で表される)が改善するような、少なくとも一つの反応性の基を有することができる。いくつかの例では、化学反応性の耐衝撃性改良剤は、無水物、カルボキシル、ヒドロキシル、およびエポキシから選択されるがこれらに限定されない反応性官能基を有するエチレンコポリマーとすることができる。
【0095】
本開示のさらなる態様では、組成物は、ゴム状耐衝撃性改良剤を含むものとすることができる。ゴム状耐衝撃性改良剤は、室温で、力を除いた後に形状とサイズが実質的に回復することが可能なポリマー材料とすることができる。しかし、ゴム状耐衝撃性改良剤は典型的には、0℃未満のガラス転移温度を有することが望ましい。特定の態様では、ガラス転移温度(Tg)は、-5℃、-10℃、-15℃未満とすることができ、-30℃未満のTで典型的にはさらに良好な性能が得られる。代表的なゴム状耐衝撃性改良剤には、例えば、官能化ポリオレフィンエチレン-アクリラートターポリマー、例えばエチレン-アクリル酸エステル類-無水マレイン酸(MAH)またはグリシジルメタクリラート(GMA)などを挙げることができる。官能化されたゴム状ポリマーは随意に、無水物基含有モノマー、例えば無水マレイン酸に由来する繰り返し単位をその骨格に含有することができる。別のシナリオでは、官能化されたゴム状ポリマーは、重合後ステップでポリマーにグラフト化される無水物部分を含有することができる。
【0096】
一例では、組成物は、ポリ(ブチルアクリラート)を含む約80wt.%のコアと、ポリ(メチルメタクリラート)を含む約20wt.%のシェルとを有するコア-シェルコポリマー耐衝撃性改良剤を含むことができる。さらなる例では、耐衝撃性改良剤は、20wt.%未満のエチルアクリラート含有量を有するエチレン-エチルアクリラートコポリマーなどのアクリル系耐衝撃性改良剤(サビック社から供給されるEXL 3330など)を含むものとすることができる。組成物は、約5wt.%のエチレン-エチルアクリラートコポリマーを含むものとすることができる。
【0097】
多くの態様では、組成物は、様々な方法に従って準備することができる。本開示の組成物は、配合物において所望されるいずれかの追加の添加剤との材料の親密な混和が関与する様々な方法によって、先の成分とブレンドする、配合する、またはそうでければ一つに合わせることができる。商業的なポリマー処理設備において溶融混合装置が利用可能であるため、溶融成形法を使用することができる。様々なさらなる態様では、そのような溶融成形法において使用される装置には、共回転および逆回転押出機、単軸スクリュ押出機、共混練機、ディスク・パック・プロセッサ(disc-pack processor)、および様々な他のタイプの押出装置を挙げることができるが、これらには限定されない。さらなる態様では、押出機は二軸スクリュ押出機である。様々なさらなる態様では、組成物は、約180℃から約350℃、詳細には250℃から300℃の温度で、押出機中で処理することができる。
特性および物品
【0098】
IDP、ポリカルボナート(PC)またはそのコポリマー(ITR-BPAPC、SLX)と結晶性ポリマーとの開示された組み合わせは、広い色空間を維持しつつ、望ましいESD特性をも提供する。また、開示された組成物は、結晶性ポリマーおよび特有の非晶質PCまたはPCコポリマーの長所を兼ね備えることにより、電気、美観、耐衝撃性、および加工において、バランスの取れた性能を達成する。
【0099】
特定の態様では、組成物は、静電気散逸特性を示し得る。例えば、いくつかの態様では、組成物は、ASTM D257に準拠して測定される場合に1×10オーム未満の表面抵抗率を示し得る。
【0100】
本明細書で提供されるとおり、本開示の組成物は着色可能である。着色可能であることが、ポリマー組成物の着色の容易さを記述し得る。すなわち、ポリマー組成物は、染料、顔料、または組成物に所望の色相を付与する他の色処理/添加剤を受容するよう、充分に「明るい」色であり得る。従来の散逸性材料は、炭素繊維またはカーボンブラックなどの暗い色の散逸性添加剤を含むことが多い。そのため、従来のESD材料の場合の色空間が制限され得る。開示された組成物は、ASTM D257に準拠して試験される場合に1×10オーム未満の表面抵抗率を達成すると同時に、着色可能であるので、これらの制約を緩和し得る。本開示の値は、特定の比色座標L、a、bについて特定の値を有する。L値」は明度-暗度特性を表す。L値が0ならば、対象は黒色である。L値が100ならば、対象は白色である。L値は常に正である。極値(0と100)から離れたL値を有する組成物ほど、自然な色を有し、これが、特定の用途のために選択された色であり得るし、または組成物にさらに容易に着色できるようにするものであり得る。Lについての値が0から遠く、100に近いほど、組成物は広い「色空間」を有するという結果になる。「色空間」は、随意の着色剤、顔料、および/または染料を使用して実現できるLの範囲である。Lは、ASTM2244を使用し、10度視野観測者;国際照明委員会(CIE)標準光源D65光源;正反射光を含む(SCI)反射率;および大開口)のもとで測定してもよい。ポリマー組成物は、反射モード、10度視野観測者においてD65照明のもと分光光度計を使用して測定される場合に少なくとも約50、または少なくとも約80、または少なくとも約90のL色値を示し得る。
【0101】
よって、これらの組成物は、民生用電子機器/半導体/建設の用途に好適な候補であり、個別最適化された色を有するESD製造物にするための基本的に重要な機能を実現できる。さらに、これらの組成物は、市場における炭素繊維、導電性カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブなどの、充填されたESD材料に取って代わる可能性を実証している。
【0102】
様々な態様では、本開示は、本明細書の組成物を含む物品に関する。組成物は、物品を形成する、射出成形、押出成形、回転成形、ブロー成形、および熱成形などの様々な手段によって、有用な成形された物品に成形することができる。組成物は、高弾性率、良好な流動性、良好な衝撃強度、熱伝導性、および反射性を有する材料を必要とする物品の製造に有用である可能性がある。
【0103】
本明細書で開示される組成物の有利な特性は、一連の用途にとって適切なものとなり得る。形成された物品には、パーソナルコンピュータ、ノートブックコンピュータ、およびポータブルコンピュータ、携帯電話アンテナ、および他のそうした通信機器、医療用途、近距離無線通信を用いた自動認識技術RFID用途、自動車用途、および同類のものなどを挙げることができるが、これらには限定されない。様々なさらなる態様では、物品は、ハイエンドのラップトップパーソナルコンピュータ、モニタ、ロボット工学用の筐体、携帯式の電子デバイス筐体(スマートフォン、タブレット、音楽デバイス用の筐体またはフラッシュホルダなど)、電気コネクタ、発光ダイオードLEDヒートシンク、および照明器具、ウェアラブル装置、装飾品、家電製品の部品、および同類のものなど、計算機および事務機器の筐体として適切なものとすることができる。
【0104】
さらなる態様では、熱可塑性組成物を採用することのできる分野の非限定的な例には、電気技術、電気機械技術、無線周波数(RF)技術、電気通信、自動車、航空、医療、センサ、軍事、およびセキュリティなどを挙げることができる。さらなる態様では、熱可塑性組成物はまた、重複分野、例えば、自動車工学または医療工学で使用できる機械的特性と電気的特性とを統合するメカトロニクスシステムなどにも存在する可能性がある。
【0105】
さらなる態様では、好適な物品は、電子装置、自動車装置、電気通信装置、医療装置、セキュリティ装置、またはメカトロニクス装置とすることができる。さらなる態様では、物品は、計算機装置、電磁干渉装置、プリント回路、Wi-Fi装置、Bluetooth装置、GPS装置、セルラーアンテナ装置、スマートフォン装置、自動車装置、医療装置、センサ装置、セキュリティ装置、遮蔽装置、RFアンテナ装置、LED装置、およびRFID装置から選択することができる。さらなる態様では、物品は、計算機装置、センサ装置、セキュリティ装置、RFアンテナ装置、LED装置、およびRFID装置から選択することができる。
【0106】
さらなる態様では、モールド成形された物品は、自動車分野の装置の製造に使用することができる。さらなる態様では、開示のブレンドされた熱可塑性組成物を車両の内装に使用することができる自動車分野における、そうした装置の非限定的な例には、定速走行・車間距離制御装置、ヘッドライトセンサ、フロントガラスワイパセンサ、およびドア/窓スイッチなどが挙げられる。さらなる態様では、開示のブレンドされた熱可塑性組成物を車両の外装に使用することができる自動車分野における、装置の非限定的な例には、エンジン制御、空調、衝突検知、および外装照明器具に向けた圧力および流量センサなどが挙げられる。
【0107】
さらなる態様では、得られる開示の組成物は、いかなる所望の成形された、形成された、またはモールド成形された物品を提供するためにも使用することができる。例えば、開示された組成物は、射出成形、押出成形、回転成形、ブロー成形、および熱成形などの様々な手段によって、有用な成形された物品にモールド成形することができる。上述されたとおり、開示された組成物は、電子部品および電子装置の製造における使用に特に好適である。このように、いくつかの態様によれば、開示された組成物は、プリント回路基板キャリア、バーンイン試験ソケット、ハードディスクドライブ用フレックスブラケット、および同類のものの物品を形成するのに使用することができる。
態様
【0108】
態様1. 約0.1wt.%から約99wt.%のポリカルボナートコポリマー、ホモポリマー、またはこれらのブレンドと;約0.1wt.%から約70wt.%の結晶性ポリエステルと;約0.1wt.%から約50wt.%の本質的に散逸性のポリマーと;約0.001wt.%から約10wt.%のトランスエステル化阻害剤と;を含んでなり、ASTM D257に準拠して測定される場合に1×10オーム未満の表面抵抗率を示すポリマー組成物であって、全成分の合計重量パーセント値が約100wt.%を超えず、全重量パーセント値がポリマー組成物の総重量を基準にする、ポリマー組成物。
【0109】
態様1B. 約0.1wt.%から約99wt.%のポリカルボナートコポリマー、ホモポリマー、またはこれらのブレンドと;約0.1wt.%から約70wt.%の結晶性ポリエステルと;約0.1wt.%から約50wt.%の本質的に散逸性のポリマーと;約0.001wt.%から約10wt.%のトランスエステル化阻害剤と;からなり、ASTM D257に準拠して測定される場合に1×10オーム未満の表面抵抗率を示すポリマー組成物であって、全成分の合計重量パーセント値が約100wt.%を超えず、全重量パーセント値がポリマー組成物の総重量を基準にする、ポリマー組成物。
【0110】
態様1C. 約0.1wt.%から約99wt.%のポリカルボナートコポリマー、ホモポリマー、またはこれらのブレンドと;約0.1wt.%から約70wt.%の結晶性ポリエステルと;約0.1wt.%から約50wt.%の本質的に散逸性のポリマーと;約0.001wt.%から約10wt.%のトランスエステル化阻害剤と;から本質的になり、ASTM D257に準拠して測定される場合に1×10オーム未満の表面抵抗率を示すポリマー組成物であって、全成分の合計重量パーセント値が約100wt.%を超えず、全重量パーセント値がポリマー組成物の総重量を基準にする、ポリマー組成物。
【0111】
態様2. ポリカルボナートコポリマーが、ITR-BPAPC、BPAPC、またはそれらの組み合わせを含んでなる、態様1A~1Cのいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【0112】
態様3. ポリエステルが、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート、または1,4-シクロヘキサンジメチル-1,4-シクロヘキサンジカルボキシラート)、またはそれらの組み合わせを含んでなる、態様1A~2のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【0113】
態様4. 本質的に散逸性のポリマーが、イオンドープされた熱可塑性ポリウレタン(TPU)系のマルチブロックコポリマーを含んでなる、態様1A~3のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【0114】
態様5. 本質的に散逸性のポリマーが、イオンドープされたナイロン系マルチブロックコポリマーを含んでなる、態様1A~4のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【0115】
態様6. 本質的に散逸性のポリマーが、68mm×68mm×3mmのプラーク試験片上でASTM D257に準拠して試験される場合に約1×10オームの表面抵抗率を有する、態様1A~5のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【0116】
態様7. トランスエステル化阻害剤が、モノリン酸亜鉛、モノ-ステアリル酸ホスファートとジ-ステアリル酸ホスファートとの混合物、またはアルキル酸ホスファートを含んでなる、態様1A~6のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【0117】
態様8. ASTM D257に準拠して測定される場合に1×10オームと1×10オームの間の表面抵抗率を示す、態様1A~8のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【0118】
態様9. 反射モード、10度視野観測者においてD65照明のもとで分光光度計を使用して測定される場合に少なくとも約50のL色値を示す、態様1A~8のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【0119】
態様10. 反射モード、10度視野観測者においてD65照明のもとで分光光度計を用いて測定される場合に少なくとも約80のL色値を示す、態様1A~9のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【0120】
態様11. 炭素繊維、導電性カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、もしくはカーボンナノ構造を含まないか、または実質的に含まない、態様1A~10のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【0121】
態様12. ポリカルボナート-シロキサンコポリマーをさらに含んでなる、態様1A~11のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【0122】
態様13. 耐衝撃性改良剤をさらに含んでなる、態様1A~11のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【0123】
態様14. ASTM D648に準拠して0.45MPaおよび3.2mmの試験片厚さで試験される場合に少なくとも90℃の荷重たわみ温度を示す、態様1A~13のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【0124】
態様15. 光学光沢剤をさらに含んでなる、態様1A~14のいずれか一つに記載のポリマー組成物。
【0125】
態様16. 添加剤が、顔料、染料、充填剤、可塑剤、繊維、難燃剤、抗酸化剤、潤滑剤、木材、ガラス、金属、紫外線剤、帯電防止剤、抗微生物剤、またはそれらの組み合わせを含んでなる、態様15に記載のポリマー組成物。
【実施例
【0126】
本開示の詳細な態様をここに開示するが、開示される態様は、様々な形態で具現化され得る本開示の単なる例示であることは理解されるものとする。したがって、ここに開示される特定の構造的および機能的な細部は、制限として解釈されるものではなく、単に、当業者に本開示の採用を教示するための基礎として解釈されるものとする。以下の具体的な実施例により、本開示をより良く理解することが可能になる。しかし、これらは単に指針として与えられるものであり、いかなる限定をも意味しない。
【0127】
以下の実施例は、本開示の組成物、工程、および特性を説明するために提供される。実施例は単なる例示であり、そこに記載された材料、条件、または工程パラメータに本開示を限定することは意図されていない。
一般的な材料および方法
【0128】
以下の実施例に記載される組成物を、表1に示される成分から準備した。
表1. 組成物の成分
【表1】


【0129】
以下の実施例に記載される組成物を、表1に示される成分から準備した。
【0130】
配合物は、ツイン押出機を用いて予めブレンドした成分を押出すことによって準備した。ポリマー系樹脂(ポリカルボナートおよびポリエステル)、IDP、阻害剤、および添加剤は予め混合し、メインスロートを介して供給する。押出物を、ペレット化する前にウォーターバスで冷却した。成分を、Toshiba(商標) TEM-37BS二軸スクリュ押出機を使用して、240℃と250℃の間でコンパウンディングした。使用したコンパウンディング条件およびモールド成形条件を表2および3に示す。IDPは、ポリカルボナートと反応して劣化を生じ最終的に表面導電性を失う可能性が大きいので、処理温度を可能な限り維持した。成分の特定の組み合わせにより、この技術的ハードルを克服し、本開示におけるとおりの低温処理が可能になった。
表2. 着色可能なESDポリカルボナートグレードのコンパウンディング条件
【表2】



表3. 着色可能なESDポリカルボナートグレードの射出成形条件
【表3】


【0131】
モールド成形された試料を、表4に示す基準に準拠して試験した。
表4. 試験基準
【表4】


【0132】
色および反射率などの光学特性を、ColorEye(商標) 7000Aを用い、反射モード、10度視野観測者においてD65照明のもとで測定した。評価は、国際照明委員会(CIE)の測色座標L、a、bの値に従って行った。座標は、異なる色属性に対応し、aは赤色度および緑色、bは黄色および青色、Lは白色度を表す。Lの値は0と100の間の範囲である。低いLの値は、材料の暗度に対応し、70より大きいLの値は、裸眼にはほぼ白色に見える。
【0133】
ノッチ付きアイゾット衝撃(「NII」)試験を、ASTM D256に準拠して、63.5mm×12.7mm×3.2mmのモールド成形された試料(棒)上、25℃で実行した。データ単位はJ/mである。
【0134】
ノッチなしアイゾット衝撃(「UNII」)試験は、ASTM D4812に準拠して、63.5mm×12.7mm×3.2mmのモールド成形された試料(棒)上、25℃で実行した。データ単位はJ/mである。
【0135】
メルトボリュームレート(MVR)を、ISO 1133に従って、220℃、2.16kgで決定した。
【0136】
荷重たわみ温度を、ASTM D 648に従って、厚さ3.2mmの試験片(127mm×12.7mm)を用いて0.45メガパスカル(MPa)で、平らな向きで測定した。データは℃の単位を提供する。
【0137】
比較試料C-1およびC-2を準備して、トランスエステル化阻害剤を含む配合物および含まない配合物の性能を評価した。比較試料は、ポリカルボナートコポリマーまたはポリエステルPBT 315を含んでいなかった。表5(図1に示す)は、配合物および観察された特性(表面抵抗率およびL)を表す。
【0138】
ナイロン系IDPと純PCの組み合わせ(表5におけるC-1およびC-2)は、追加のトランスエステル化阻害剤を加えたか否かにかかわらず、表面抵抗率を1×1010オーム以下には低減させなかった。EX-1については、ITR-BPAPCコポリマーSLXとPBTをビルディング・ブロックとして使用し、表面抵抗率をESD要件に合わせて1×10オームまで低下させた。SLXは耐薬品性に優れているので、ナイロン系のIDPの攻撃にも無傷で持ちこたえることができ、結晶性ポリマーとしてのPBTもまたナイロンに耐性がある。加えて、PBTは非晶質PCよりも高速に流動し、モールド成形された部分のさらに表面近くまでIDPを運ぶことができるが、このことは導電性ネットワークの形成に極めて重要である。
【0139】
表5の配合物を、いかなる熱劣化をも防ぐために小規模のスクリュでコンパウンディングした。さらに一般的な製造目的のために、従来サイズのスクリュを使用してさらなる試料を準備した。それらの配合物および対応する性能を、表6(図2)に表す。
【0140】
EX-2は、EX-1の結果を再現し、結果はE+9オームという低い表面抵抗率を示した。HDTとノッチ付きアイゾット衝撃(NII)についての値も、依然として高いレベルであった。EX-1のSLX/PBTと比較すると、EX-5は、PCホモポリマーのみ(ITR PCコポリマーではなく)を使用した場合に、1x10オームの表面抵抗率を維持しなかった。SLXとブレンドした他の結晶性ポリマーについては、EX-4におけるPCCDは、低い表面抵抗率を達成したが、ポリエステルポリマー系樹脂としてPETを有するEX-3はそうではなかった。IDP/SLX/PCCDを含むEX-4も、高いHDTおよびNIIを維持した。PCホモポリマーとPETとのブレンド(EX-6)またはPCCDとのブレンド(EX-7)については、押出されたストランドがその形状を保てなかったので、ペレットにはできなかった。特定の理論に拘束されるものではないが、これはPCホモポリマーの劣化に帰着される可能性がある一方、SLX(ITR-BPAPCコポリマー)は良好な耐薬品性を示した。対照試料C-3(市販グレード名DD000)と比較すると、ノッチ付きアイゾット衝撃により測定した場合に、我々の特許請求される配合物(EX-2からEX-5)はすべて、大幅に高い靭性を有することが分かる。加工の自由度に関しては、従来の導電性カーボンブラック充填PC(C-3)は、300℃以下では加工できない一方、表5.2のEX-2からEX-5はいずれも、220℃で射出成形が可能である。
【0141】
さらなるIDPを調べた。アバンツァーレ(Avanzare)が製造するAvanDISS(商標) 378は、ナイロン系ポリマーではなく、PCに対してPelectron(商標) ASほどの化学的攻撃性はないとこれまで見なされている。表7(図3に示す)は、avanDISS(商標) 378/SLXまたはPCホモポリマー/PBTという三つのブレンドを表すが、これは1×10オームという低い表面抵抗率を示し、また同等の熱/機械的特性も示した。
【0142】
また試料を、裸眼での目視検査および分光光度計によって光学的特性について評価した。配合物のもう一つの非常に重要な特徴は、列挙されたブレンドすべての外観がほぼ白色であることであった。図4Aに示されるとおり、PCコポリマー/PBT/IDPブレンド(EX-2)から形成されたモールド成形されたプレートは、白色または淡色であり、よってさらなる着色が可能である。図4Bでは、従来のESD材料(C-3)は完全に黒く見え、着色される可能性はない。表5および表6に示されるL値はまた、着色される可能性を定量的に示した。EX-1およびEX-2のL値はそれぞれ90.6、および82.5である。これは、さらに着色される可能性が高いことを示唆している。対照試料C-3(導電性カーボンブラック充填PC)の場合には、観察されたL値は26であった。この黒色度または暗度は、いかなるさらなる色空間をも阻害する。
【0143】
本開示の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者に連想される他の例を含むことができる。そのような他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造構成要素を有する場合には、または特許請求の範囲の文言からの実質的でない差異を有する均等な構造構成要素を含む場合には、特許請求の範囲に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.1wt.%から約99wt.%のポリカルボナートコポリマー、ホモポリマー、またはこれらのブレンドと;
約0.1wt.%から約70wt.%の結晶性ポリエステルと;
約0.1wt.%から約50wt.%の本質的に散逸性のポリマーと;
約0.001wt.%から約10wt.%のトランスエステル化阻害剤と;
を含んでなり、
ASTM D257に準拠して測定される場合に1×10オーム未満の表面抵抗率を示すポリマー組成物であって、
全成分の合計重量パーセント値が約100wt.%を超えず、全重量パーセント値がポリマー組成物の総重量を基準にする、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記ポリカルボナートコポリマーが、ITR-BPAPC、BPAPC、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記ポリエステルが、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート、または1,4-シクロヘキサンジメチル-1,4-シクロヘキサンジカルボキシラート)、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記本質的に散逸性のポリマーが、イオンドープされた熱可塑性ポリウレタン(TPU)系のマルチブロックコポリマーを含んでなる、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記本質的に散逸性のポリマーが、イオンドープされたナイロン系マルチブロックコポリマーを含んでなる、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記本質的に散逸性のポリマーが、68mm×68mm×3mmのプラーク試験片上でASTM D257に準拠して試験される場合に約1×10オームの表面抵抗率を有する、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記トランスエステル化阻害剤が、モノリン酸亜鉛、モノ-ステアリル酸ホスファートとジ-ステアリル酸ホスファートとの混合物、またはアルキル酸ホスファートを含んでなる、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
ASTM D257に準拠して測定される場合に1×10オームと1×10オームの間の表面抵抗率を示す、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
反射モード、10度視野観測者においてD65照明のもとで分光光度計を使用して測定される場合に少なくとも約50のL色値を示す、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
反射モード、10度視野観測者においてD65照明のもとで分光光度計を用いて測定される場合に少なくとも約80のL色値を示す、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
炭素繊維、導電性カーボンブラック、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、もしくはカーボンナノ構造を含まないか、または実質的に含まない、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
ポリカルボナート-シロキサンコポリマーをさらに含んでなる、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
耐衝撃性改良剤をさらに含んでなる、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
ASTM D648に準拠して0.45MPaおよび3.2mmの試験片厚さで試験される場合に少なくとも90℃の荷重たわみ温度を示す、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
光学光沢剤をさらに含んでなる、請求項1又は2に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
添加剤として、顔料、染料、充填剤、可塑剤、繊維、難燃剤、抗酸化剤、潤滑剤、木材、ガラス、金属、紫外線剤、帯電防止剤、抗微生物剤、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項15に記載のポリマー組成物。
【国際調査報告】