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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】ガンの治療のための組み合わせ療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240521BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20240521BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240521BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240521BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240521BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20240521BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20240521BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240521BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240521BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240521BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240521BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240521BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/39 ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 D
A61K47/68
A61K38/07
A61K38/08
A61P43/00 121
C07K16/28
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573231
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 GB2022051348
(87)【国際公開番号】W WO2022248870
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/194,547
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】513032275
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン、インテレクチュアル、プロパティー、ディベロップメント、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE INTELLECTUAL PROPERTY DEVELOPMENT LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】マシュー、ブルース
(72)【発明者】
【氏名】ロクサーヌ、カチョッポ
(72)【発明者】
【氏名】アイラ、グプタ
(72)【発明者】
【氏名】ブランドン、クレーマー
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー、リン
(72)【発明者】
【氏名】プラニ、パカ
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ、パルンボ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー、シェルトン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA10
4C084BA14
4C084BA15
4C084BA23
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA38
4C085BB11
4C085BB36
4C085CC23
4C085EE06
4C085FF24
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
ガンの治療のための方法および材料が本明細書に開示される。本開示は、ガンを有する対象の治療のための、1つ以上の抗原結合タンパク質(例えば、抗B細胞成熟抗原(BCMA)抗原結合タンパク質)と1つ以上のT細胞エンゲージャーの使用についての方法および材料をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.抗BCMA抗原結合タンパク質;および
b.CD3に結合するT細胞エンゲージャー;
を含む、組み合わせ。
【請求項2】
前記抗BCMA抗原結合タンパク質が抗体を含む、請求項1に記載の組み合わせ。
【請求項3】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項2に記載の組み合わせ。
【請求項4】
前記モノクローナル抗体がIgG1である、請求項3に記載の組み合わせ。
【請求項5】
前記抗体が脱フコシル化されている、請求項2~4のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項6】
前記抗BCMA抗原結合タンパク質がヒト、ヒト化またはキメラである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項7】
前記抗BCMA抗原結合タンパク質が、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むCDRL2;および配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCDRL3を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項8】
前記抗BCMA抗原結合タンパク質が、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);および配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項9】
前記抗BCMA抗原結合タンパク質が、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む重鎖(H);および配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖(L)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項10】
前記抗BCMA抗原結合タンパク質が、免疫コンジュゲートである、請求項1~9のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項11】
前記抗BCMA抗原結合タンパク質が、細胞毒に結合した抗体を含む免疫コンジュゲートである、請求項1~10のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項12】
前記細胞毒がMMAEまたはMMAFである、請求項11に記載の組み合わせ。
【請求項13】
前記細胞毒がMMAFである、請求項12に記載の組み合わせ。
【請求項14】
前記抗BCMA抗原結合タンパク質がベランタマブ・マフォドチンである、請求項1~13のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項15】
少なくとも約0.5mg/kg、0.95mg/kg、1mg/kg、1.4mg/kg、1.9mg/kg、1.92mg/kg、2.5mg/kgまたは約3.4mg/kgのベランタマブ・マフォドチンを含む、請求項14に記載の組み合わせ。
【請求項16】
前記T細胞エンゲージャーが二重特異性T細胞エンゲージャーである、請求項1~15のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項17】
前記T細胞エンゲージャーが、セボスタマブ、タルクエタマブ、テクリスタマブ、PF-3135、TNB-383B、REGN5458、ブリナツモマブおよびソリトマブからなる群より選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項18】
前記T細胞エンゲージャーが抗FcRH5 T細胞エンゲージャーである、請求項1~16のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項19】
前記T細胞エンゲージャーがセボスタマブである、請求項18に記載の組み合わせ。
【請求項20】
少なくとも約1.5mg、2mg、3mg、3.6mg、10mg、15mg、20mg、90mgまたは132mgのセボスタマブを含む、請求項18または19に記載の組み合わせ。
【請求項21】
前記T細胞エンゲージャーが抗GPRC5D T細胞エンゲージャーである、請求項1~16のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項22】
前記T細胞エンゲージャーがタルクエタマブである、請求項21に記載の組み合わせ。
【請求項23】
前記T細胞エンゲージャーが抗BCMA T細胞エンゲージャーである、請求項1~16のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項24】
前記T細胞エンゲージャーが、テクリスタマブ、PF-3135、TNB-383BおよびREGN5458からなる群より選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項25】
前記T細胞エンゲージャーが、CC-93269、AMG701、AMG420、JNJ-7957およびGBR1342からなる群より選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項26】
前記T細胞エンゲージャーがICOSに結合しない、請求項1~16のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項27】
前記T細胞エンゲージャーがCD38に結合しない、請求項1~16のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項28】
薬学的に許容可能な坦体を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項29】
アジュバントをさらに含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項30】
ガンの治療を必要とする対象においてガンを治療する方法であって、治療上有効な用量の請求項1~29のいずれか一項に記載の組み合わせを対象に投与することを含む、方法。
【請求項31】
ガンの治療を必要とする対象においてガンを治療する方法であって、治療上有効な用量の請求項1~29のいずれか一項に記載の組み合わせを対象に投与することを含み、抗BCMA抗原結合タンパク質の用量が第1の投与の後に低用量にステップダウンされる、方法。
【請求項32】
前記ガンが、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症および非ホジキンリンパ腫からなる群より選択される、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記ガンが多発性骨髄腫である、請求項30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ガンが再発性および/または難治性の多発性骨髄腫である、請求項30または31に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が少なくとも一つの以前のガン治療を受けている、請求項30~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記治療上有効な用量が少なくとも約21日に1回前記対象に投与される、請求項30~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記治療上有効な用量の組み合わせ治療を投与することが、治療上有効な用量の抗BCMA抗原結合タンパク質を単独で投与することと比較して、眼毒性を低減する、請求項30~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記抗BCMA抗原結合タンパク質がベランタマブ・マフォドチンである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記眼毒性が、角膜上皮の変化、ドライアイ、刺激、充血、霧視、ドライアイ、羞明、または視力の変化のうちの少なくとも一つである、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
前記眼毒性が、以下の方法のうちの少なくとも一つ:
最良矯正視力、最良矯正視力を得るために使用される自覚的屈折の文書および方法、現在の処方された眼鏡(使用可能な場合)、眼圧測定、角膜および水晶体検査のフルオレセイン染色を含む前部(スリットランプ)検査、拡張眼底検査、または眼表面疾患指数(OSDI)
により測定される、請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記抗BCMA抗原結合タンパク質が、少なくとも約0.5mg/kg、0.95mg/kg、1mg/kg、1.25mg/kg、1.4mg/kg、1.7mg/kg、1.9mg/kg、1.92mg/kg、2.5mg/kgまたは3.4mg/kgの用量で前記対象に投与される、請求項30~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
ガンの治療用医薬の製造における使用のための、請求項1~29のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項43】
ガンの治療における使用のための、請求項1~29のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【請求項44】
a.請求項1~29のいずれか一項に記載の組み合わせ;および
b.ガンの治療における使用のための説明書;
を含む、ガンの治療における使用のためのキット。
【請求項45】
請求項1~29のいずれか一項に記載の組み合わせを含む、プレフィルドシリンジまたは自動注射デバイス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2021年5月28日に出願された米国仮出願番号63/194,547の優先権を主張するものであり、その開示内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含んでおり、参照によりその全体が本出願に援用される。2022年5月13日に作成された当該ASCIIコピーは、Sequence_Listing_009442.00184_ST25.txtと命名され、サイズは60キロバイトである。
【0003】
開示分野
本開示は、ガンを治療するための方法および材料に関する。例えば、本開示は、ガンを有する哺乳動物(例えば、ヒト)を治療するために、1つ以上の抗体薬物コンジュゲート(ADC)および1つ以上のT細胞エンゲージャーを使用するための方法および材料を提供する。本開示はさらに、ガンを有する対象を治療するために、1つ以上の抗原結合タンパク質(例えば、抗B細胞成熟抗原(BCMA)抗原結合タンパク質)および1つ以上のT細胞エンゲージャーを使用するための方法および材料を提供する。
【背景技術】
【0004】
多発性骨髄腫(MM)は不治の悪性腫瘍であり、全ガンの1%、全血液悪性腫瘍の10%を占める。様々な薬剤や併用療法が評価され、多発性骨髄腫の治療に有効であることが判明している(National Comprehensive Cancer Network, 2016; Moreau, San Miguel et al.)。しかし、すべてではないにせよ、これらの患者のほとんどは必然的に再発する(Richardson, Barlogie et al., 2003; Richardson, Barlogie et al., 2006; Jagannath, Barlogie et al., 2008)。
【0005】
現在、免疫療法の分野では、自己免疫疾患やガンをより効率的に治療するための代替的なまたは改良された組成物や方法に対するニーズが残っている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、ガンを治療するための方法および材料を提供する。例えば、本開示は、各分子が以下:(i)ガンを有する対象を治療するための、BCMAポリペプチドに対する結合特異性を有する抗BCMA抗原結合タンパク質またはADCと、1つ以上のT細胞エンゲージャーを含む1つ以上の分子を使用するための方法および材料を提供する。いくつかの場合において、哺乳動物(例えば、ガンを有するヒトなどのヒト)は、(a)BCMAポリペプチドに対する結合特異性を有する抗BCMA抗原結合タンパク質またはADC、および(b)1つ以上のT細胞エンゲージャーを含む、本明細書に開示される組み合わせ治療が投与されうる。
【0007】
本明細書で開示するのは、抗BCMA抗原結合タンパク質とT細胞エンゲージャーを含む組み合わせである。いくつかの場合において、上記T細胞エンゲージャーはCD3に結合する。いくつかの場合において、上記抗BCMA抗原結合タンパク質は抗体を含む。いくつかの場合において、上記抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの場合において、上記モノクローナル抗体はIgG1である。いくつかの場合において、上記抗体は脱フコシル化されている。いくつかの実施態様において、上記抗体はフコシル化されている。いくつかの実施態様において、上記抗体はシアリル化されている。いくつかの実施態様では、上記抗体はグルコシル化されている。いくつかの実施態様では、上記抗体はグリコシル化されている。いくつかの実施態様において、上記抗体はガラクトシル化されている。いくつかの実施態様において、上記抗BCMA抗原結合タンパク質は、ヒト、ヒト化またはキメラである。いくつかの場合において、上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むCDRL2;および配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCDRL3を含む。いくつかの場合において、上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);および配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。いくつかの場合において、上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む重鎖(H);および配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖(L)を含む。いくつかの場合において、上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、免疫コンジュゲートである。いくつかの場合において、上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、細胞毒に結合した抗体を含む免疫コンジュゲートである。いくつかの場合において、上記細胞毒がMMAEまたはMMAFである。いくつかの場合において、上記細胞毒がMMAFである。いくつかの実施態様において、上記細胞毒が、AFP、MMAF、MMAE、AEB、AEVBまたはアウリスタチンEである。いくつかの実施態様において、上記細胞毒が、パクリタキセル、ドセタキセル、CC-1065、SN-38、トポテカン、モルホリノ-ドキソルビシン、リゾキシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、ドラスタチン-10、エキノマイシン、コンブレタスタチン、カリケアマイシン、またはネトロプシンである。いくつかの実施態様では、上記細胞毒が、アウリスタチン、メイタンシノイド、またはカリケアマイシンである。いくつかの実施態様では、上記細胞毒が、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、VP-16、カンプトテシン、エポチロンA、エポチロンB、ノコダゾール、コルヒチン、コルシミド、エストラムスチン、セマドチン、ディスコデルモリド、メイタンシノール、メイタンシン、DM1、DM2、DM3、DM4またはエレウテロビンである。いくつかの場合において、上記抗BCMA抗原結合タンパク質がベランタマブ・マフォドチンである。いくつかの場合において、ベランタマブ・マフォドチンが少なくとも約0.5mg/kg、0.95mg/kg、1.0mg/kg、1.25mg/kg、1.4mg/kg、1.7mg/kg、1.9mg/kg、2.5mg/kgまたは3.4mg/kgの用量で上記組み合わせ中に存在する。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、0.95mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、1.0mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、1.4mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、1.9mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、1.92mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、2.5mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、3.4mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、1週間に1回上記対象に投与される。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、2週間に1回上記対象に投与される。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、3週間に1回上記対象に投与される。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、4週間に1回上記対象に投与される。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、5週間に1回上記対象に投与される。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、6週間に1回上記対象に投与される。いくつかの実施態様において、上記抗BCMA抗原結合タンパク質の治療上有効な用量が、第1の投与の後、本明細書に記載のより低用量にステップダウンされる。いくつかの実施態様において、上記抗BCMA抗原結合タンパク質の3.4mg/kgの用量が、1.9mg/kg、1.4mg/kg以下にステップダウンされる。いくつかの実施態様において、上記抗BCMA抗原結合タンパク質の2.5mg/kgの用量が、1.9mg/kg、1.4mg/kg以下にステップダウンされる。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、1日目、8日目、およびその後3~12週間に1回上記対象に投与される。いくつかの場合において、上記T細胞エンゲージャーが二重特異性T細胞エンゲージャーである。いくつかの場合において、上記T細胞エンゲージャーが、セボスタマブ、タルクエタマブ、テクリスタマブ、PF-3135、TNB-383B、REGN5458、ブリナツモマブおよびソリトマブからなる群より選択される。いくつかの場合において、上記T細胞エンゲージャーが抗FcRH5 T細胞エンゲージャーである。いくつかの場合において、上記T細胞エンゲージャーがセボスタマブである。いくつかの実施態様において、上記T細胞エンゲージャーが配列番号11、12、13および14に記載の配列を含む。いくつかの場合において、上記組み合わせが、少なくとも約1.5mg、2mg、3mg、3.6mg、10mg、15mg、20mg、90mgまたは132mgのセボスタマブを含む。いくつかの場合において、上記T細胞エンゲージャーが抗GPRC5D T細胞エンゲージャーである。いくつかの場合において、上記T細胞エンゲージャーがタルクエタマブである。いくつかの場合において、上記T細胞エンゲージャーが抗BCMA T細胞エンゲージャーである。いくつかの場合において、上記T細胞エンゲージャーが、テクリスタマブ、PF-3135、TNB-383BおよびREGN5458からなる群より選択される。いくつかの場合において、上記T細胞エンゲージャーが、CC-93269、AMG701、AMG420、JNJ-7957およびGBR1342からなる群より選択される。いくつかの場合において、上記T細胞エンゲージャーがICOSに結合しない。いくつかの場合において、上記T細胞エンゲージャーがCD38に結合しない。いくつかの場合において、上記組み合わせが薬学的に許容可能な坦体を含む。いくつかの場合において、上記組み合わせがアジュバントをさらに含む。
【0008】
本明細書では、ガンを治療する方法が開示される。いくつかの場合において、上記方法が、治療上有効な用量の本明細書に記載の組み合わせを対象に投与することを含む、ガンの治療を必要とする対象においてガンを治療することを含む。いくつかの場合において、上記ガンが、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症および非ホジキンリンパ腫からなる群より選択される。いくつかの場合において、上記ガンが多発性骨髄腫である。いくつかの場合において、上記ガンが再発性および/または難治性の多発性骨髄腫である。いくつかの場合において、上記対象が少なくとも一つの以前のガン治療を受けている。いくつかの場合において、上記治療上有効な用量の組み合わせが、少なくとも約1~60日に1回上記対象に投与される。いくつかの場合において、上記治療上有効な用量の組み合わせが、少なくとも約21日に1回上記対象に投与される。いくつかの場合において、上記治療上有効な用量の組み合わせが、少なくとも約8日に1回上記対象に投与される。いくつかの場合において、上記治療上有効な用量の組み合わせ治療を投与することが、治療上有効な用量の抗BCMA抗原結合タンパク質を単独で投与することと比較して、眼毒性を低減する。いくつかの場合において、上記抗BCMA抗原結合タンパク質がベランタマブ・マフォドチンである。いくつかの場合において、上記眼毒性が、角膜上皮の変化、ドライアイ、刺激、充血、霧視、ドライアイ、羞明、または視力の変化のうちの少なくとも一つである。いくつかの場合において、上記眼毒性が、以下の方法のうちの少なくとも一つ:最良矯正視力、最良矯正視力を得るために使用される自覚的屈折の文書および方法、現在の処方された眼鏡(使用可能な場合)、眼圧測定、角膜および水晶体検査のフルオレセイン染色を含む前部(スリットランプ)検査、拡張眼底検査、または眼表面疾患指数(OSDI)により測定される。いくつかの場合において、本明細書に開示される抗BCMA抗原結合タンパク質が、少なくとも約0.5mg/kg、0.95mg/kg、1mg/kg、1.25mg/kg、1.4mg/kg、1.7mg/kg、1.9mg/kg、1.92mg/kg、2.5mg/kgまたは3.4mg/kgの用量で上記対象に投与される。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、0.95mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、1.0mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、1.4mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、1.9mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、1.92mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、2.5mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、3.4mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、1週間に1回上記対象に投与される。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、2週間に1回上記対象に投与される。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、3週間に1回上記対象に投与される。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、4週間に1回上記対象に投与される。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、5週間に1回上記対象に投与される。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間または12週間に1回上記対象に投与される。いくつかの実施態様において、上記抗BCMA抗原結合タンパク質の治療上有効な用量が、第1の投与の後、本明細書に記載のより低用量にステップダウンされる。いくつかの実施態様において、上記抗BCMA抗原結合タンパク質の3.4mg/kgの用量が、1.9mg/kg、1.4mg/kg以下にステップダウンされる。いくつかの実施態様において、上記抗BCMA抗原結合タンパク質の2.5mg/kgの用量が、1.9mg/kg、1.4mg/kg以下にステップダウンされる。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、1日目、8日目、およびその後3~12週間に1回上記対象に投与される。
【0009】
本明細書には、医薬の製造のための使用が開示される。いくつかの場合において、ガンの治療用医薬の製造における使用のための組み合わせが本明細書に開示される。本明細書には、本明細書に記載の組み合わせの、ガンの治療のための使用が開示される。
【0010】
本明細書には、キットが開示される。いくつかの場合において、本明細書に記載のキットは、ガンの治療において使用されるためのものである。いくつかの場合において、本明細書に記載のキットは、本明細書に記載の組み合わせおよびガンの治療における使用のための説明書を含む。
【0011】
本明細書には、プレフィルドシリンジまたは自動注射デバイスが開示される。いくつかの場合において、本明細書に記載のプレフィルドシリンジまたは自動注射デバイスは、本明細書に記載の組み合わせを含む。
【0012】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における通常の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および材料を用いて本発明を実施することができるが、好適な方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及されるすべての文献、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりその全体が援用される。さらに、材料、方法、および実施例は例示に過ぎず、限定を意図するものではない。
【0013】
本発明の1つ以上の実施態様の詳細は、以下に添付される説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的、および利点は、本明細書および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明の具体的説明】
【0014】
組み合わせ
本開示は、ガンを治療するための方法および材料を提供する。いくつかの場合において、本明細書に開示されるのは、ガンまたは他のB細胞媒介疾患もしくは障害の治療に使用するための、抗BCMA抗原結合タンパク質とT細胞エンゲージャーとを含む組み合わせである。
【0015】
本明細書に記載される「組み合わせ」という用語は、少なくとも2つの治療剤を意味する。本明細書で使用される場合、用語「治療剤」は、組織、系、動物、哺乳動物、ヒト、または他の対象において所望の効果をもたらす物質を意味すると理解される。一実施態様において、組み合わせは、例えば、追加のガン治療剤などの追加の治療剤を含むことができる。ある実施態様において、追加のガン治療剤は、サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイド、アプレミラスト、または他のサリドマイド類似体などの免疫調節イミド薬(IMiD)である。いくつかの実施態様では、追加のガン治療薬は、カルフィルゾミブ、ダラツムマブ、イサツキシマブ、イキサゾミブ、マリゾミブ、オプロゾミブ、またはそれらの薬学的に許容可能な塩であってもよい。いくつかの実施態様において、追加のガン治療薬はPD-1阻害剤である。いくつかの場合において、PD-1阻害剤は、PDR001、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、MEDI0680、REGN2810、TSR-042、PF-06801591、およびAMP-224からなる群より選択される。いくつかの実施態様において、PD-1阻害剤はジェンペルリである。いくつかの実施態様において、追加のガン治療薬は、PD-L1阻害剤である。いくつかの場合において、PD-L1阻害剤は、FAZ053、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、およびBMS-93655からなる群より選択される。いくつかの実施態様において、追加のガン治療剤は、CTLA-4阻害剤である。いくつかの実施態様において、CTLA-4阻害剤は、イピリムマブまたはトレメリムマブである。いくつかの実施態様において、追加のガン治療剤は、TIM-3阻害剤である。いくつかの場合において、TIM-3阻害剤は、MGB453またはTSR-022である。いくつかの実施態様において、追加のガン治療剤はLAG-3阻害剤である。いくつかの場合において、LAG-3阻害剤は、LAG525、BMS-986016、およびTSR-033からなる群より選択される。いくつかの実施態様において、追加のガン治療剤は、mTOR阻害剤である。いくつかの場合において、mTOR阻害剤は、RAD001またはラパマイシンである。
【0016】
本開示の組み合わせの投与は、単一の治療薬単独の個別投与と比較して、組み合わせが以下の改善された特性の1つ以上を提供しうるという点で、個々の治療薬よりも有利でありうる:i)最も活性の高い単剤よりも大きな抗ガン効果、ii)相乗的または高度に相乗的な抗ガン活性、iii)副作用プロフィールの低減とともに抗ガン活性の増強を提供する投与プロトコル、iv)毒性効果プロフィールの低減、v)治療ウィンドウの増大、またはvi)治療薬の一方または両方の生物学的利用能の増大。
【0017】
本明細書に記載の組み合わせは、医薬組成物の形態でありうる。「医薬組成物」は、本明細書に記載の組み合わせ、および1つ以上の薬学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤を含む。担体、希釈剤、または賦形剤は、製剤の他の成分と適合性であり、医薬的に製剤化可能であり、かつそのレシピエントにとって有害ではないという意味で許容されなければならない。一実施態様では、組み合わせの各治療薬は、それ自体の医薬組成物に個別に製剤化され、医薬組成物の各々は、ガンを治療するために投与される。この実施態様において、医薬組成物の各々は、同じまたは異なる担体、希釈剤または賦形剤を有することができる。例えば、一実施態様において、第1の医薬組成物は、BCMAポリペプチドに対する結合特異性を有する抗BCMA抗原結合タンパク質またはADCを含み、第2の医薬組成物は、1つ以上のT細胞エンゲージャーを含み、第1および第2の医薬組成物は、ガンを治療するために共に投与される。別の実施態様では、組み合わせの各治療薬は、単一の医薬組成物に一緒に製剤化され、ガンを治療するために投与される。例えば、一実施態様において、単一の医薬組成物は、BCMAポリペプチドに対する結合特異性を有する抗BCMA抗原結合タンパク質またはADCと、1つ以上のT細胞エンゲージャーの両方を含み、ガンを治療するために単一の医薬組成物として投与される。
【0018】
抗BCMA抗原結合タンパク質
本明細書で使用する「抗BCMA抗原結合タンパク質」という用語は、BCMAに結合可能な抗体およびドメインなどの他のタンパク質構築物を指す。用語「BCMA結合タンパク質」および「抗BCMA抗原結合タンパク質」は、本明細書において互換的に使用される。
【0019】
本明細書に記載の抗BCMA抗原結合タンパク質は、ヒトBCMA(例えば、GenBank アクセッション番号Q02223.2のアミノ酸配列を含むヒトBCMA、またはそれと少なくとも90%の相同性または少なくとも90%の同一性を有するヒトBCMAをコードする遺伝子)に結合しうる。
【0020】
例示的な抗BCMA抗原結合タンパク質およびその製造方法は、参照によりその全体が本明細書に援用される国際公開第2012/163805号に開示されている。追加の例示的な抗BCMA抗原結合タンパク質には、国際公開第2016/014789号、同2016/090320号、同2016/090327号、同2016/020332号、同2016/079177号、同2014/122143号、同2014/122144号、同2017/021450号、同2016/014565号、同2014/068079号、同2015/166649号、同2015/158671号、同2015/052536号、同2014/140248号、同2013/072415号、同2013/072406号、同2014/089335号、米国特許出願公開第2017/165373号明細書、国際公開第2013/154760号、同2018/201051号および同2017/051068号に開示されるものであり、それぞれ参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0021】
本明細書で使用される「抗原結合タンパク質」という用語は、抗原に結合可能な抗体やドメインなどのタンパク質構築物を指す。
【0022】
本明細書において、「抗体」という用語は、免疫グロブリン様ドメイン(例えば、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE)を有する分子を指す最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体、組換え抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、二特異性抗体を含む多重特異性抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体;単一可変ドメイン(例えば、ドメイン抗体(DAB))、抗原結合抗体フラグメント、Fab、F(ab’)、Fv、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv、ジスルフィド結合scFv、ダイアボディ、TANDABSなど、および前述のいずれかの改変バージョン(代替「抗体」フォーマットの概要については、Holliger and Hudson, Nature Biotechnology, 2005, Vol 23, No. 9, 1126-1136を参照)を含む。
【0023】
いくつかの実施態様において、本明細書に開示されるBCMA結合タンパク質は、ラット、マウス、霊長類(例えば、カニクイザル、旧世界ザルまたはグレートエイプ)またはヒトに由来しうる。BCMA結合タンパク質は、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であってもよい。BCMA結合タンパク質は、任意のアイソタイプまたはサブクラスであってよい定常領域を含んでよい。定常領域は、IgGアイソタイプ、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはそれらの変異体であってもよい。BCMA結合タンパク質定常領域は、IgG1であってもよい。
【0024】
本明細書で互換的に使用される「完全」、「全」または「インタクト」抗体という用語は、ヘテロ4量体糖タンパク質を指す。インタクトな抗体は、共有結合のジスルフィド結合で結ばれた2つの同一の重鎖(HC)と2つの同一の軽鎖(LC)から構成される。このH構造は、「Fab」フラグメントとして知られる2つの抗原結合フラグメントと「Fc」結晶化可能フラグメントからなる3つの機能的ドメインを形成するために折り畳まれる。Fabフラグメントは、アミノ末端の可変ドメイン、可変重鎖(VH)または可変軽鎖(VL)、およびカルボキシル末端の定常ドメイン、CH1(重鎖)およびCL(軽鎖)から構成される。Fcフラグメントは、対をなすCH2領域とCH3領域の二量体化によって形成される2つのドメインからなる。Fcは免疫細胞上の受容体に結合するか、古典的補体経路の第一成分であるC1qに結合することにより、エフェクター機能を発揮する。抗体の5つのクラスIgM、IgA、IgG、IgEおよびIgDは、それぞれμ、α、γ、εおよびδと呼ばれる異なる重鎖アミノ酸配列によって定義され、各重鎖はΚまたはλ軽鎖と対になることができる。血清中の抗体の大部分はIgGクラスに属し、ヒトIgGには4つのアイソタイプ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)があり、その配列は主にヒンジ領域で異なっている。
【0025】
本明細書において、「約」とはプラスマイナス10%を意味する。
【0026】
完全ヒト抗体は、例えば酵母ベースのライブラリーやヒト抗体のレパートリーを産生するトランスジェニック動物(マウスなど)を用いて、様々な方法で得ることができる。目的の抗原に結合するヒト抗体を表面に持つ酵母は、FACS(Fluorescence-Activated Cell Sorting)ベースの方法や、標識抗原を用いたビーズ上での捕捉によって選択することができる。ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するように改変したトランスジェニック動物を、目的の抗原で免疫し、B細胞ソーティング技術を用いて抗原特異的ヒト抗体を単離することができる。これらの技術を用いて産生されたヒト抗体は、親和性、開発可能性、選択性などの所望の特性について特性評価することができる。
【0027】
いくつかの態様では、代替抗体フォーマットを使用することができる。代替抗体フォーマットには、BCMA抗体の1つ以上のCDRが、アフィボディ、SpAスキャフォールド、LDL受容体クラスAドメイン、アビマー(例えば、米国特許出願公開第2005/0053973号明細書、同第2005/0089932号、同第2005/0164301号を参照)またはEGFドメインなどの適切な非免疫グロブリンタンパク質スキャフォールドまたは骨格上に配置されうる代替スキャフォールドが含まれる。
【0028】
「ドメイン」という用語は、ポリペプチドの残りの部分とは独立した三次構造を保持する折り畳まれたポリペプチド構造を指す。一般に、ドメインはポリペプチドの個別の機能的特性を担っており、多くの場合、タンパク質の残りの部分および/またはドメインの機能を損なうことなく、他のポリペプチドに付加、除去、または移動させることができる。
【0029】
「単一可変ドメイン」という用語は、抗体可変ドメインに特徴的な配列からなる折り畳まれたポリペプチドドメインを指す。したがって、VH、VHH、VLのような完全な抗体可変ドメインや、例えば1つ以上のループが抗体可変ドメインに特徴的でない配列で置換された修飾抗体可変ドメイン、または切断された、あるいはN末端またはC末端の延長を含む抗体可変ドメイン、さらに少なくとも全長ドメインの結合活性および特異性を保持する可変ドメインの折りたたまれたフラグメントが含まれる。単一可変ドメインは、異なる可変領域またはドメインとは独立して抗原またはエピトープと結合することができる。「ドメイン抗体」または「DAB」は、「単一可変ドメイン」と同じと考えられる。単一可変ドメインはヒトの単一可変ドメインであってもよいが、げっ歯類(例えば、国際公開第00/29004号に開示されている)、ナースシャーク、ラクダ科VHH DABなどの他の種の単一可変ドメインも含まれる。ラクダ科のVHHは、ラクダ、ラマ、アルパカ、ドロメダリ、グアナコなどの種に由来する免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドであり、軽鎖を含まない重鎖抗体を天然に産生する。このようなVHHドメインは、当技術分野で利用可能な標準的な技術に従ってヒト化することができ、このようなドメインは「単一可変ドメイン」であると考えられる。本明細書で使用する場合、VHはラクダ科のVHHドメインを含む。
【0030】
抗原結合フラグメント、BCMA結合タンパク質フラグメント、機能性フラグメント、生物学的に活性なフラグメント、または免疫学的に有効なフラグメントは、部分的な重鎖または軽鎖の可変配列からなる場合がある。フラグメントの長さは、少なくとも5、6、8または10アミノ酸である。あるいは、フラグメントは少なくとも15、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも75、または少なくとも100アミノ酸長である。
【0031】
抗原結合フラグメントは、非抗体タンパク質スキャフォールド上の1つ以上のCDRの配置によって提供されうる。本明細書で使用する「タンパク質スキャフォールド」には、免疫グロブリン(Ig)スキャフォールド、例えばIgGスキャフォールドが含まれるが、これらに限定されない。IgGスキャフォールドは、4本鎖抗体であっても2本鎖抗体であってもよく、抗体のFc領域のみから構成されていてもよく、抗体由来の1つ以上の定常領域を含んでいてもよく、これらの定常領域はヒト由来であっても霊長類由来であってもよく、ヒトと霊長類の定常領域の人工キメラであってもよい。
【0032】
タンパク質スキャフォールドは、Igスキャフォールド、例えばIgG、IgAスキャフォールドであってもよい。IgGスキャフォールドは、抗体のドメイン(すなわち、CH1、CH2、CH3、VH、VL)の一部または全てを含んでいてもよい。本明細書に開示される抗原結合タンパク質は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはIgG4PEから選択されるIgGスキャフォールドを含んでいてもよい。例えば、スキャフォールドはIgG1であってもよい。スキャフォールドは、抗体のFc領域からなるか、抗体のFc領域を含むか、またはその一部である。
【0033】
タンパク質スキャフォールドは、CTLA-4、リポカリン、プロテインAのZドメイン(Affibody、SpA)、Aドメイン(Avimer/Maxibody)のようなプロテインA由来の分子;GroElおよびGroESのような熱ショックタンパク質;トランスフェリン(trans-body);アンキリンリピートタンパク質(DARPin)からなる群から選択されるスキャフォールドの誘導体でありうる;ペプチドアプタマー;C型レクチンドメイン(テトラネクチン);ヒトγ-クリスタリンおよびヒトユビキチン(アフィリン);PDZドメイン;ヒトプロテアーゼインヒビターのサソリ毒素クニッツ型ドメイン;およびフィブロネクチン/アドネクチン;これらは天然のリガンド以外の抗原との結合を得るためにタンパク質エンジリアニングが施されている。
【0034】
「抗原結合部位」とは、抗原に特異的に結合できる抗原結合タンパク質上の部位を指し、これは単一可変ドメインである場合もあれば、標準的な抗体に見られるような対になったVH/VLドメインである場合もある。一本鎖Fv(ScFv)ドメインも抗原結合部位を提供することができる。
【0035】
多重特異性抗原結合タンパク質という用語は、少なくとも2つの異なる抗原結合部位を有する抗原結合タンパク質を指す。これらの抗原結合部位はそれぞれ異なるエピトープに結合することが可能であり、同じ抗原上に存在することもあれば、異なる抗原上に存在することもある。多重特異性抗原結合タンパク質は、1つ以上の抗原、例えば2つの抗原、または3つの抗原、または4つの抗原に対して特異性を有していてもよい。
【0036】
二重特異性抗体の分類とフォーマットについては、Labrijn et al 2019およびBrinkmann and Kontermann 2017の総説に包括的に記載されている。二重特異性抗体は、一般的に対称型または非対称型に分類される。二重特異性は、Fcを有するか、またはフラグメントベース(Fcを欠く)である。例えば、Fab-scFv、Fab-scFv、直交のFab-Fab、Fab-Fv、タンデムscFc(BiTEやBiKE分子など)、Diabody、DART、TandAb、scDiabody、タンデムdAbなどである。
【0037】
対称型フォーマットには、フラグメントベースのFc融合タンパク質や、抗体フラグメントが通常の抗体分子に融合されたフォーマットなど、単一のポリペプチド鎖または単一のHLペアに複数の結合特異性が組み合わされている。対称的フォーマットの例としては、DVD-Ig、TVD-Ig、CODV-Ig、(scFv)4-Fc、IgG-(scFv)2、4価DART-Fc、F(ab)CrossMab、IgG-HC-scFv、IgG-LC-scFv、mAb-dAbなどが挙げられる。
【0038】
非対称フォーマットは、3本(共通重鎖または共通軽鎖を使用する場合)または4本のポリペプチド鎖を共発現させる際に、HL鎖の正しいペアリングを強制したり、H鎖のヘテロ二量化を促進したりすることで、天然抗体のネイティブな構造をできるだけ忠実に保持する。例えば、Triomab、非対称リエンジニアリング技術免疫グロブリン(ART-Ig)、CrossMab、Biclonics共通軽鎖、ZW1共通軽鎖、DuoBodyおよびノブズイントゥホール(knobs into holes)(KiH)、DuetMab、κλ体、Xmab、YBODY、HET-mAb、HET-Fab、DART-Fc、SEEDbody、マウス/ラットキメラIgGなどである。
【0039】
二重特異性フォーマットには、Affimabs、Fynomabs、Zybodies、Anticalin-IgG融合体、ImmTACのような非Igスキャフォールドに融合した抗体も含まれる。
【0040】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載される抗原結合タンパク質は、多重特異性抗原結合タンパク質である。
【0041】
本明細書で使用する「キメラ抗原受容体」(「CAR」)という用語は、細胞外抗原結合ドメイン(これは通常、モノクローナル抗体またはそのフラグメント、例えばscFvの形態のVHドメインおよびVLドメインに由来する)、任意でスペーサー領域、膜貫通領域、および1つ以上の細胞内エフェクタードメインからなる人工受容体を指す。CARはキメラT細胞受容体またはキメラ免疫受容体(CIR)とも呼ばれている。CARは、T細胞などの造血細胞に遺伝的に導入され、所望の細胞表面抗原に対するT細胞の特異性にリダイレクトし、CAR-T治療薬をもたらす。いくつかの実施態様において、CARは、本明細書に開示される抗BCMA抗原結合タンパク質を含む。
【0042】
本明細書で使用する「スペーサー領域」という用語は、膜貫通ドメインと標的結合ドメインとを連結する機能を有するオリゴまたはポリペプチドを指す。この領域は「ヒンジ領域」または「ストーク領域」とも呼ばれる。スペーサーのサイズは、CAR:標的結合に設定された距離(例えば14nm)を維持するために、標的エピトープの位置に応じて変化させることができる。
【0043】
本明細書で使用する「膜貫通ドメイン」という用語は、細胞膜を通過するCAR分子の部分を指す。
【0044】
本明細書で使用される「細胞内エフェクタードメイン」(「シグナル伝達ドメイン」とも呼ばれる)という用語は、抗原結合ドメインの標的への結合に続く細胞内シグナル伝達を担うCAR内のドメインを指す。細胞内エフェクタードメインは、CARが発現している免疫細胞の通常のエフェクター機能の少なくとも一つを活性化する役割を担っている。例えば、T細胞のエフェクター機能は、細胞溶解活性やサイトカインの分泌を含むヘルパー活性でありうる。
【0045】
本明細書に開示されたVHおよび/またはVLドメインは、例えばscFvの形態でCAR-T治療薬に組み込むことができることが当業者には理解されよう。
【0046】
親和性は、「結合親和性」とも呼ばれ、単一の相互作用部位における結合の強さ、すなわち、ある分子、例えば本開示のBCMA結合タンパク質と、別の分子、例えばその標的抗原との、単一の結合部位における結合の強さである。抗原結合タンパク質の標的に対する結合親和性は、平衡法(例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)または放射免疫測定法(RIA))または速度論(例えば、BIACORE分析)によって決定することができる。
【0047】
アビディティとは、機能的親和性とも呼ばれ、複数の相互作用部位における結合の強さの累積であり、例えば、相互作用の原子価を考慮した、複数の部位における2分子(二重特異性分子や多重特異性分子の場合はそれ以上)の互いに結合する強さの合計である。
【0048】
一実施態様において、本明細書に開示される抗原結合タンパク質-抗原相互作用の平衡解離定数(KD)は、100nM以下、10nM以下、2nM以下、または1nM以下である。あるいは、KDは5~10nM;または1~2nMであってもよい。KDは1pM~500pM、または500pM~1nMであってもよい。当業者は、KDの数値が小さいほど結合が強いことを理解するであろう。KDの逆数(すなわち1/KD)は、M-1の単位を有する平衡会合定数(KA)である。当業者は、KAの数値が大きいほど結合が強いことを理解するであろう。
【0049】
解離速度定数(kd)または「オフ速度」は、抗原結合タンパク質-複合体の安定性、すなわち、1秒間に崩壊する複合体の割合を表す。例えば、0.01s-1のkdは、1秒間に1%の複合体が崩壊することに相当する。ある実施態様において、解離速度定数(kd)は、1×10-3-1以下、1×10-4-1以下、1×10-5-1以下、または1×10-6-1以下である。kdは、1×10-5-1~1×10-4-1;または1×10-4-1~1×10-3-1であってもよい。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される抗原結合タンパク質のkdは、2.06×10-4-1以下、1.58×10-4-1以下、1.7×10-4-1以下、または5.68×10-4-1以下、6.78×10-4-1以下、8.26×10-4-1以下、5.15×10-4-1以下、または5.68×10-4-1以下である。
【0050】
会合速度定数(ka)または「オン速度」は、抗原結合タンパク質-複合体形成の速度を表す。ある実施態様において、会合速度定数(ka)は、6.49×10-1-1、4.65×10-1-1、3.27×10-1-1、8.28×10-1-1、1.47×10-1-1、1.10×10-1-1、5.90×10-1-1である。
【0051】
当業者には明らかなように、「由来する」という用語は、材料の物理的な起源であるという意味でのソースだけでなく、材料と構造的に同一であるが参照ソースに由来しない材料も定義することを意図している。
【0052】
「単離」とは、BCMA結合タンパク質のような分子が、自然界に存在する環境から取り除かれることを意図している。例えば、分子は、それが自然界に通常存在するであろう物質から離れて精製されうる。例えば、BCMA結合タンパク質は、BCMA結合タンパク質を含む培養培地に対して少なくとも95%、96%、97%、98%もしくは99%、またはそれ以上に精製されうる。本明細書に開示されるBCMA結合タンパク質および抗体は、単離されたBCMA結合タンパク質および抗体であってもよい。
【0053】
「CDR」とは、抗原結合タンパク質の相補性決定領域アミノ酸配列と定義される。これらは免疫グロブリン重鎖および軽鎖の超可変領域である。免疫グロブリンの可変部には、重鎖と軽鎖にそれぞれ3つのCDR(またはCDR領域)が存在する。したがって、本明細書で使用する「CDR」は、3つの重鎖CDRすべて、3つの軽鎖CDRすべて、重鎖および軽鎖CDRすべて、または少なくとも2つのCDRを指す。
【0054】
本明細書を通して、可変ドメイン配列中のアミノ酸残基および全長抗原結合配列中の可変ドメイン領域、例えば抗体重鎖配列または抗体軽鎖配列中のアミノ酸残基は、Kabat番号付け規則に従って番号付けされている。同様に、実施例で使用される用語「CDR」、「CDRL1」、「CDRL2」、「CDRL3」、「CDRH1」、「CDRH2」、「CDRH3」は、Kabat番号付け規則に従っている。詳細については、Kabat et al, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 4th Ed., U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987)を参照のこと。
【0055】
変異体
可変ドメイン配列および完全長抗体配列のアミノ酸残基には、別の番号付け規則があることは当業者には明らかであろう。CDR配列についても、例えばChothia et al. (1989) Nature 342: 877-883に記載されているような別の番号付け規則がある。例えば、BCMA結合タンパク質の構造およびタンパク質のフォールディングは、他の残基がCDR配列の一部とみなされることを意味し、当業者にはそう理解されるであろう。
【0056】
当業者が利用可能なCDR配列の他の番号付け法には、「AbM」(University of Bath)法および「contact」(University College London)法が含まれる。Kabat法、Chothia法、AbM法、contact法のうち少なくとも2つの方法を用いて最小重複領域を決定し、「最小結合単位」を提供することができる。最小結合単位はCDRの一部分であってもよい。
【0057】
以下の表1は、各CDRまたは結合単位について、それぞれの番号付け規則を用いた1つの定義を表している。表1では、可変ドメインアミノ酸配列の番号付けにKabat番号付け法を用いている。CDRの定義のいくつかは、使用する個々の文献によって異なる場合があることに注意すべきである。
【0058】
【表1】
【0059】
したがって、以下のCDRのいずれか1つまたは組み合わせ:配列番号1のCDRH1、配列番号2のCDRH2、配列番号3のCDRH3、配列番号4のCDRL1、配列番号5のCDRL2、配列番号6のCDRL3を含むBCMA結合タンパク質が提供される。CDRは、少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失または付加によって修飾され得、ここで、変異体抗原結合タンパク質は、抗原への結合のような未修飾タンパク質の生物学的特性を実質的に保持する。
【0060】
【表2】
【0061】
CDRH1、H2、H3、L1、L2、L3の各々は、単独で、または他のCDRと組み合わせて、任意の順列または組み合わせで修飾されうることが理解されよう。一実施態様では、CDRは、最大3個のアミノ酸(例えば、1または2個のアミノ酸、例えば、1個のアミノ酸)の置換、欠失または付加によって修飾される。典型的には、修飾は置換、特に保存的置換であり、例えば、以下の表3に示すような置換である。
【0062】
【表3】
【0063】
例えば、変異体CDRでは、KabatやChothiaのような代替的な定義の一部としてCDRを構成するフランキング残基は、保存的アミノ酸残基で置換されていてもよい。
【0064】
本明細書に開示されるVHまたはVL(またはHCまたはLC)配列は、最大10個のアミノ酸の置換、付加または欠失を有する変異配列でありうる。例えば、変異配列は最大9、8、7、6、5、4、3、2または1個のアミノ酸の置換、付加または欠失を有していてもよい。例えば、CDRはVHまたはVL(またはHCまたはLC)配列と同じであり、変異はVHまたはVL(またはHCまたはLC)配列の残りの部分にあるため、CDR配列は固定されインタクトである。
【0065】
あるいは、重鎖可変領域は、抗体について本明細書に記載されるアミノ酸配列に対して75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、または100%の同一性を有していてもよいし;軽鎖可変領域は、抗体について本明細書に開示されるアミノ酸配列に対して75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、または100%の同一性を有していてもよい。
【0066】
本明細書に開示する抗体またはアミノ酸配列の重鎖可変領域は、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個のアミノ酸の置換、挿入または欠失を含む変異体であってもよい。本明細書に開示する抗体またはアミノ酸配列の軽鎖可変領域は、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個のアミノ酸の置換、挿入または欠失を含む変異体であってもよい。
【0067】
本明細書で用いられる「エピトープ」という用語は、抗原結合タンパク質の特定の結合ドメインと接触する抗原の部分を指し、パラトープとしても知られている。エピトープは、直鎖状であってもよいし、コンフォメーション/不連続であってもよい。コンフォメーション性エピトープまたは不連続性エピトープは、他の配列によって分離された、すなわちポリペプチド鎖の三次元フォールディングによって組み立てられた、抗原の一次配列において連続した配列にないアミノ酸残基を含む。残基はポリペプチド鎖の異なる領域に由来していても、抗原の三次元構造では近接している。多量体抗原の場合、コンフォメーション性エピトープや不連続性エピトープには、異なるペプチド鎖の残基が含まれることがある。エピトープに含まれる特定の残基は、コンピュータモデリングプログラムや、X線結晶構造解析のような当技術分野で公知の方法によって得られる三次元構造によって決定することができる。エピトープマッピングは、Methods in Molecular Biology “Epitope Mapping Protocols”, Mike Schutkowski and Ulrich Reineke (volume 524, 2009)ならびにJohan Rockberg and Johan Nilvebrant (volume 1785, 2018)などの文献に記載されているように、当業者に公知の様々な技術を用いて実施することができる。例示的な方法には、ELISAなどの技術を用いて一連の重複するペプチドが結合についてスクリーニングされるペプスキャン(pepscan)などのペプチドベースのアプローチや、ファージ上などでのペプチドまたはタンパク質変異体の大規模ライブラリーのin vitroディスプレイが含まれる。詳細なエピトープ情報は、X線結晶構造解析、溶液核磁気共鳴(NMR)分光法、低温電子顕微鏡(cryo-EM)などの構造技術によって決定することができる。アラニンスキャニングのような突然変異誘発は、結合消失解析をエピトープマッピングに用いる効果的なアプローチである。もう一つの方法は、水素/重水素交換(HDX)とタンパク質分解および液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)を組み合わせて、不連続性エピトープやコンフォメーション性エピトープの特徴を明らかにする方法である。
【0068】
同一性パーセント
クエリー核酸配列と対象核酸配列との間の「同一性パーセント」とは、適切なアルゴリズムまたはソフトウェア(BLASTN、FASTA、ClustalW、MUSCLE、MAFFT、EMBOSS Needle、T-Coffee、DNASTAR Lasergeneなど)を用いてペアワイズグローバル配列アラインメントを行った後に、クエリー配列の全長にわたって、適切なアルゴリズムまたはソフトウェア(BLASTN、FASTA、DNASTAR Lasergene、GeneDoc、Bioedit、EMBOSS needleまたはEMBOSS infoalignなど)を使用して計算される「同一性」値をパーセントで表したものである。重要なことに、クエリー核酸配列は、本明細書中の1つ以上の請求項において同定される核酸配列によって記載されうる。
【0069】
クエリーアミノ酸配列と対象アミノ酸配列の間の「同一性パーセント」とは、適切なアルゴリズムまたはソフトウェア(BLASTN、FASTA、ClustalW、MUSCLE、MAFFT、EMBOSS Needle、T-Coffee、DNASTAR Lasergeneなど)を用いてペアワイズグローバル配列アラインメントを行った後に、クエリー配列の全長にわたって、適切なアルゴリズムまたはソフトウェア(BLASTN、FASTA、DNASTAR Lasergene、GeneDoc、Bioedit、EMBOSS needleまたはEMBOSS infoalignなど)を使用して計算される「同一性」値をパーセントで表したものである。重要なことに、クエリーアミノ酸配列は、本明細書中の1つ以上の請求項において同定されるアミノ酸配列によって記載されうる。
【0070】
クエリー配列は、対象配列と100%同一であってもよいし、同一性が100%未満となるように、対象配列と比較してある整数個までのアミノ酸またはヌクレオチドの変化を含んでいてもよい。例えば、クエリー配列は対象配列と少なくとも50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98、または99%同一である。このような改変には、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換(保存的置換および非保存的置換を含む)、または挿入が含まれ、上記改変は、クエリー配列のアミノ末端位置またはカルボキシ末端位置、またはそれらの末端位置の間の任意の位置で起こり得、クエリー配列中のアミノ酸またはヌクレオチドの間に個々に、またはクエリー配列内の1つ以上の連続したグループのいずれかに散在する。
【0071】
同一性パーセントは、CDRを含むクエリー配列の全長にわたって決定することができる。あるいは、同一性パーセントは、CDRの1つ以上またはすべてを除外してもよく、例えば、CDRのすべてが対象配列と100%同一であり、同一性パーセントの変動は、CDR配列が固定され、かつインタクトであるように、クエリー配列の残りの部分、例えばフレームワーク配列におけるものである。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される抗BCMA結合タンパク質は、本明細書に開示される配列と少なくとも約50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98、または99%同一である配列を含む。
【0072】
修飾
「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」という用語はそれぞれ、2つ以上のアミノ酸残基を含む分子を指す。ペプチドは単量体であってもポリマーであってもよい。
【0073】
Fcエンジニアリング法は、抗体の機能的特性や薬物動態学的特性を改変するために適用することができる。C1q受容体やFcγ受容体への結合を増加または減少させ、CDC活性やADCC活性をそれぞれ変更するような変異をFc領域に加えることで、エフェクター機能を変更することができる。抗体のグリコシル化パターンを改変してエフェクター機能を変化させることもできる。抗体のin vivoでの半減期は、FcRn(胎児性Fc受容体)へのFcの結合に影響を与える変異を加えることによって変えることができる。
【0074】
本明細書で使用する「エフェクター機能」という用語は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を含む抗体媒介性効果、補体依存性細胞傷害(CDC)を含む抗体媒介性補体活性化、補体依存性細胞媒介性貪食(CDCP)、抗体依存性補体媒介性細胞溶解(ADCML)、およびFc媒介性貪食または抗体依存性細胞貪食(ADCP)の1つ以上を指す。
【0075】
抗原結合タンパク質または抗体のFc領域と、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)、FcRn、C1q、II型Fc受容体などの様々なFc受容体(FcR)との相互作用は、抗原結合タンパク質または抗体のエフェクター機能を媒介すると考えられている。重要な生物学的効果は、エフェクター機能の結果でありうる。通常、エフェクター機能を媒介するには、抗原結合タンパク質または抗体が抗原に結合する必要があり、すべての抗原結合タンパク質または抗体がすべてのエフェクター機能を媒介するわけではない。
【0076】
エフェクター機能は、例えば、FcγRIIIを介したナチュラルキラー(NK)細胞、またはFcγRIを介した単球/マクロファージによって媒介される標的細胞にコートされた抗体のADCCエフェクター機能の評価、またはC1qを介した補体カスケードによって媒介される標的細胞にコートされた抗体のCDCエフェクター機能の評価など、多くの方法で評価することができる。例えば、本発明の抗原結合タンパク質は、ナチュラルキラー細胞アッセイにおいてADCCエフェクター機能を評価することができる。このようなアッセイの例は、Shields et al, 2001, The Journal of Biological Chemistry, Vol. 276, p 6591-6604;Chappel et al, 1993、The Journal of Biological Chemistry, Vol 268, p 25124-25131;Lazar et al, 2006, PNAS, 103; 4005-4010に見出すことができる。
【0077】
CDCの機能を決定するアッセイの例としては、J Imm Meth, 1995, 184: 29-38に記載されているものが挙げられる。
【0078】
エフェクター機能(例えば、FcRn結合、FcγRsおよびC1q結合、CDC、ADCML、ADCC、ADCP)に対する変異の影響は、例えば、Grevys et al, J Immunol. 2015 Jun 1; 194(11): 5497-5508、またはTam et al, Antibodies 2017, 6(3); Monnet et al, 2014 mAbs, 6:2, 422-436に記載されている。
【0079】
本明細書を通して、抗体配列または全長抗原結合タンパク質配列中のFc領域のアミノ酸残基は、EUインデックス番号付け規則に従って番号付けされている。
【0080】
特定の変異を含むヒトIgG1定常領域は、Fc受容体への結合を増強することが示されている。いくつかの場合において、これらの変異は、以下に記載するように、ADCCおよびCDCのようなエフェクター機能を増強することも示されている。本発明の抗原結合タンパク質は、以下の変異のいずれかを含むことができる。
【0081】
CDCの強化:Fcエンジリアニングは補体ベースのエフェクター機能を増強するために用いることができる。例えば(IgG1に関して)、K326W/E333S;S267E/H268F/S324T;およびIgG1/IgG3クロスサブクラスは、C1q結合を増加させることができる;E345R(Diebolder et al, Science 2014; 343: 1260-1293)およびE345R/E430G/S440Yは、予め形成されたIgGヘキサマーをもたらす(Wang et al, Protein Cell. 2018 Jan; 9(1): 63-73)。
【0082】
ADCCの強化:ADCCを増強するためにFcエンジニアリングを用いることができる。例えば(IgG1に関して)、F243L/R292P/Y300L/V305I/P396L;S239D/I332E;およびS298A/E333A/K334Aは、FcγRIIIa結合を増加させる;S239D/I332E/A330Lは、FcγRIIIa結合を増加させ、FcγRIIb結合を減少させる;G236A/S239D/I332Eは、FcγRIIaへの結合を改善し、FcγRIIa/FcγRIIb結合比(活性化/阻害比)を改善し、抗体でコートされた標的細胞のマクロファージによる貪食を促進する。一方の重鎖がL234Y/L235Q/G236W/S239M/H268D/D270E/S298A変異を含み、反対側の重鎖がD270E/K326D/A330M/K334E変異を含む非対称Fcは、FcγRIIIa F158(低親和性対立遺伝子)およびFcγRIIIa V158(高親和性対立遺伝子)に対する親和性を増加させ、阻害性FcγRIIbに対する結合親和性を増加させない(Mimoto et al., 2013)。
【0083】
ADCPの増強:ADCPを増強するためにFcエンジリアニングを用いることができる。例えば(IgG1に関して)、G236A/S239D/I332EはFcγRIIa結合を増加させ、FcγRIIIa結合を増加させる(Richards Jet al, Mol. Cancer Ther. 2008; 7: 2517-2527)。
【0084】
共結合の増加:Fcエンジニアリングは、FcRとの共結合を増加させるために使用することができる。例えば(IgG1に関して)、S267E/L328FはFcγRIIb結合を増加させ;N325S/L328FはFcγRIIa結合を増加させ、FcγRIIIa結合を減少させる(Wang et al.)。
【0085】
グリコシル化
本発明の抗原結合タンパク質は、抗原結合タンパク質が増強されたエフェクター機能(例えば、増強されたADCC、増強されたCDC、または増強されたADCCおよびCDCの両方)を有するように、改変されたグリコシル化プロフィールを有する重鎖定常領域を含みうる。変化したグリコシル化プロファイルを有する抗原結合タンパク質を産生するための適切な方法論の例は、国際公開第2003/011878号、国際公開第2006/014679号および欧州特許第1229125号明細書に記載されており、これらはすべて本発明の抗原結合タンパク質に適用することができる。
【0086】
IgG1抗体のN297上のFc糖鎖部分にα1,6最内側フコース残基がないことは、FcγRIIIAに対する親和性を高める。そのため、脱フコシル化または低フコシル化モノクローナル抗体は治療効果を高める可能性がある(Shields et al, J Biol Chem. 2002, 277(30): 26733-40 and Monnet et al., 2014, mAbs, 6:2, 422-436)。
【0087】
ポテリジェント
本開示はまた、
a)本明細書中に記載される単離された核酸を含む発現ベクターを含む組換え宿主細胞を培養する工程であって、α-1,6-フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子が組換え宿主細胞中で不活性化されている、工程;および
b)抗原結合タンパク質を回収する工程
を含む、本発明による抗原結合タンパク質を産生する方法を提供する。
【0088】
抗原結合タンパク質のこのような生産方法は、例えば、BioWa, Inc. (Princeton,NJ)から入手可能なポテリジェント技術系を用いて実施することができる。この系では、FUT8遺伝子の機能的コピーを欠くCHOK1SV細胞が、米国特許第7214775号明細書、同第6946292号明細書、国際公開第00/61739号および同第02/31240号に記載されているように、機能的FUT8遺伝子を有する細胞で産生される同一のモノクローナル抗体と比較して増大したADCC活性を有するモノクローナル抗体を産生する。当業者であれば、他の適切な系も認識するであろう。
【0089】
本開示の実施態様において、抗原結合タンパク質は、FUT8遺伝子が不活性化された宿主細胞において産生される。本発明の実施態様において、抗原結合タンパク質は、-/-FUT8宿主細胞において産生される。本発明の実施態様において、抗原結合タンパク質は、Asn297で脱フコシル化されている(IgG1)。
【0090】
いくつかの実施態様では、例えばADCCまたはCDC、半減期などを増強するために、本明細書に開示される抗原結合タンパク質のエフェクター機能を改変することが望ましい場合がある。一実施態様において、抗原結合タンパク質はFc無効化されうる。Fc無効化を達成する1つの方法は、重鎖定常領域の235位および237位(EUインデックス番号付け)のアラニン残基の置換を含む。あるいは、抗原結合タンパク質はFcが有効であってもよく、235位および237位のアラニン置換を含んでいなくてもよい。抗原結合タンパク質は、ヒトまたはマウス動物モデルにおいて、in vivoで少なくとも6時間、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも7日、または少なくとも9日の半減期を有する。
【0091】
抗体のFcエフェクター部分の変異を利用して、FcRnと抗体の相互作用の親和性を変化させ、抗体のターンオーバーを調節することができる。抗体の半減期をin vivoで延長することができる。これは、in vivoでのIC50をより長い期間維持することで、最大投与量や最大投与頻度を達成することができるため、患者集団にとって有益であると考えられる。
【0092】
いくつかの実施態様では、定常領域を含む抗原結合タンパク質は、ADCCおよび/または補体の活性化もしくはエフェクター機能が低下している可能性がある。定常ドメインは、IgG2もしくはIgG4アイソタイプの天然に無効化された定常領域、または変異IgG1定常ドメインからなりうる。適切な改変の例は、欧州特許第0307434号明細書に記載されている。Fc無効化を達成する1つの方法は、重鎖定常領域の235位および237位(EUインデックス番号)のアラニン残基の置換、すなわちL235AおよびG237A(一般に「LAGA」変異と呼ばれる)を含む。別の例は、234位および235位(EUインデックス番号付け)のアラニンとの置換、すなわちL234AおよびL235A(一般に「LALA」変異と呼ばれる)を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される抗原結合タンパク質のFcエフェクター機能は、LAGA変異を用いて無効化されている。
【0093】
エフェクター機能を低下させるさらなる変化および変異には、以下が含まれる:(特に断りのない限りIgG1を参照):グリコシル化N297A、N297QまたはN297G;L235E;IgG4:F234A/L235A;およびキメラIgG2/IgG4。IgG2:H268Q/V309L/A330S/P331S、およびIgG2:V234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331Sは、FcγRおよびC1q結合を低下させることができる(Wang et al, 2018および米国特許第8,961,967号明細書)。
【0094】
エフェクター機能を低下させる他の変異には、以下が含まれる:L234F/L235E/P331S;ヒトIgG2のCH1とヒンジ領域、ヒトIgG4のCH2とCH3領域を用いて作成されたキメラ抗体;IgG4由来の4つの重要なアミノ酸残基の変化(H268Q、V309L、A330S、P331S)を有するIgG2アイソタイプに基づく、IgG2m4;V234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S置換を含み、Fcγ受容体およびC1q補体タンパク質に対する親和性をなくした、IgG2σ;IgG2m4(H268Q/V309L/A330S/P331S、IgG4に対する変化);IgG4(S228P/L234A/L235A);huIgG1 L234A/L235A(AA);huIgG4 S228P/L234A/L235A;IgG1σ(L234A/L235A/G237A/P238S/H268A/A330S/P331S);IgG4σ1(S228P/F234A/L235A/G237A/P238S);およびIgG4σ2(S228P/F234A/L235A/G236/G237A/P238S)(Tam et al., Antibodies 2017, 6(3))。
【0095】
いくつかの実施態様において、本明細書に開示される抗原結合タンパク質は、抗体が増強されたエフェクター機能/ADCCおよび/または補体活性化を有するように、変異した定常ドメインから選択される1つ以上の改変を含みうる。好適な改変の例は、Shields et al. J. Biol. Chem (2001) 276:6591-6604, Lazar et al. PNAS (2006) 103:4005-4010、ならびに米国特許第6737056号明細書、国際公開第2004/063351号および同第2004/029207号に記載されている。抗原結合タンパク質は、抗原結合タンパク質が増強されたエフェクター機能/ADCCおよび/または補体活性化を有するように、グリコシル化プロファイルが変更された定常ドメインを含んでいてもよい。変化したグリコシル化プロファイルを有する抗原結合タンパク質を産生するための適切な方法論の例は、国際公開第2003/011878号、国際公開第2006/014679号および欧州特許第1229125号明細書に記載されている。
【0096】
半減期
半減期とは、抗原結合タンパク質の血清中濃度が元の値の半分になるのに要する時間のことである。タンパク質の血清中半減期は、Kim et al, 1994, Eur. J. of Immuno. 24: 542-548により開示された方法により測定されうる。この方法によると、放射性標識タンパク質をマウスに静脈注射し、その血漿濃度を時間の関数として定期的に測定する(例えば、注射後約3分~約72時間)。薬物動態学的分析および分子の半減期の決定のための他の方法は、当業者に周知であろう。
【0097】
本発明の抗原結合タンパク質は、FcRnに対する定常ドメインまたはそのフラグメントの親和性を増加させるアミノ酸修飾を有していてもよい。治療および診断用IgG抗体および他の生物活性分子の半減期(すなわち、血清中半減期)を増加させることは、これらの分子の投与量および/または投与頻度を減少させることを含む多くの利点を有する。一実施態様において、本発明の抗原結合タンパク質は、以下のアミノ酸修飾の1つ以上を有するIgG定常ドメインの全部または一部(FcRn結合部分)を含む。
【0098】
例えば、IgG1を参照すると、M252Y/S254T/T256E(一般に「YTE」変異と呼ばれる)およびM428L/N434S(一般に「LS」変異と呼ばれる)は、pH6.0でFcRn結合を増加させる(Wang et al)。
【0099】
半減期はまた、T250Q/M428L、V259I/V308F/M428L、N434A、およびT307A/E380A/N434A変異(IgG1およびKabat番号付けを参照)によっても増強されうる(Monnet et al)。
【0100】
半減期およびFcRn結合は、H433KおよびN434F変異(一般に「HN」または「NHance」変異と呼ばれる(IgG1に関して))を導入することによっても延長することができる(国際公開第2006/130834号)。
【0101】
国際公開第00/42072号は、FcRn結合親和性が変化した変異Fc領域を含むポリペプチドを開示しており、このポリペプチドは、Fc領域の253、254、255、256、265、272、286、288、303、305、307、309、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、386、388、400、413、415、424、433、434、435、436、439、および447位のいずれか1つ以上にアミノ酸修飾を含む(EUインデックス番号)。
【0102】
国際公開第02/060919号は、野生型IgG定常ドメインに対して1つ以上のアミノ酸修飾を含むIgG定常ドメインを含む修飾IgGを開示し、ここで修飾IgGは、野生型IgG定常ドメインを有するIgGの半減期と比較して増加した半減期を有し、ここで1つ以上のアミノ酸修飾は、251位、253位、255位、285位~290位、308位~314位、385位~389位、および428位~435位のうちの1つ以上である。
【0103】
Shields et al(2001, J Biol Chem; 276:6591-604)は、アラニンスキャニング変異誘発法を用いてヒトIgG1抗体のFc領域の残基を変化させ、ヒトFcRnとの結合を評価した。アラニンに変化させるとFcRnとの結合を効果的に阻害した位置は、I253、S254、H435、Y436であった。その他の位置では、以下のように結合の減少はそれほど顕著ではなかった:E233~G236、R255、K288、L309、S415、H433。いくつかのアミノ酸の位置は、アラニンに変更するとFcRn結合の改善を示した。これらの中で注目すべきは、P238、T256、E272、V305、T307、Q311、D312、K317、D376、E380、E382、S424、N434である。FcRn結合において、他の多くのアミノ酸の位置はわずかに改善した(D265、N286、V303、K360、Q362およびA378)か、または変化がない(S239、K246、K248、D249、M252、E258、T260、S267、H268、S269、D270、K274、N276、Y278、D280、V282、E283、H285、T289、K290、R292、E293、E294、Q295、Y296、N297、S298、R301、N315、E318、K320、K322、S324、K326、A327、P329、P331、E333、K334、T335、S337、K338、K340、Q342、R344、E345、Q345、Q347、R356、M358、T359、K360、N361、Y373、S375、S383、N384、Q386、E388、N389、N390、K392、L398、S400、D401、K414、R416、Q418、Q419、N421、V422、E430、T437、K439、S440、S442、S444およびK447)。
【0104】
FcRn結合の改善に関して最も顕著な効果が見られたのは、組み合わせ変異体であった。pH6.0において、E380A/N434A変異体はネイティブIgG1に対して8倍以上、E380Aでは2倍、N434Aでは3.5倍のFcRnへの結合改善を示した。これにT307Aを加えると、ネイティブIgG1に対して結合が12倍向上した。一実施態様では、本発明の抗原結合タンパク質はE380A/N434A変異を含み、FcRnへの結合が増加している。
【0105】
Dall'Acqua et al. (2002, J Immunol.;169:5171-80)は、マウスFcRnに対するヒトIgG1ヒンジ-Fcフラグメントファージディスプレイライブラリーのランダム変異導入とスクリーニングについて述べている。彼らは、251位、252位、254~256位、308位、309位、311位、312位、314位、385~387位、389位、428位、433位、434位、436位のランダム変異導入について開示している。IgG1-ヒトFcRn複合体の安定性における主な改善は、Fc-FcRn界面を横切る帯状に位置する残基(M252、S254、T256、H433、N434、およびY436)を置換した場合に起こり、V308、L309、Q311、G385、Q386、P387、およびN389のような周辺部の残基を置換した場合は、より少ない程度であった。ヒトFcRnに対して最も高い親和性を示す変異体は、M252Y/S254T/T256E(「YTE」)とH433K/N434F/Y436Hの変異を組み合わせることによって得られ、野生型IgG1に対して57倍の親和性の増加を示した。このような変異型ヒトIgG1のin vivoでの挙動は、野生型IgG1と比較して、カニクイザルにおける血清中半減期が4倍近く増加した。
【0106】
したがって、本発明は、FcRnへの結合が最適化された抗原結合タンパク質を提供する。好ましい実施態様において、抗原結合タンパク質は、上記抗原結合タンパク質のFc領域において少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、ここで、上記修飾は、226、227、228、230、231、233、234、239、241、243、246、250、252、256、259、264、265、267、269、270、276、284、285、288、289、290、291、292、294、297、298、299、301、302、303、305、307、308、309、311、315、317、320、322、325、327、330、332、334、335、338、340、342、343、345、347、350、352、354、355、356、359、360、361、362、369、370、371、375、378、380、382、384、385、386、387、389、390、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、403、404、408、411、412、414、415、416、418、419、420、421、422、424、426、428、433、434、438、439、440、443、444、445、446、447からなる群より選択されるFc領域のアミノ酸位置におけるものである。
【0107】
さらに、半減期が改善された生理学的活性分子をうるための方法が、様々な文献により開示されている(FcRn結合ポリペプチドを分子に導入することにより(国際公開第97/43316号、米国特許第5869046号明細書、米国特許第5747035号明細書、国際公開第96/32478号および国際公開第91/14438号)、あるいはFcRn結合親和性は維持されているが、他のFc受容体に対する親和性が大きく減少している抗体と融合させる(国際公開第99/43713号)、あるいは抗体のFcRn結合ドメインと融合させる(国際公開第00/09560号、米国特許第4703039号明細書)のいずれかによる)。
【0108】
pH6.0でのスクリーニングにおいて、抗体の細胞毒性と半減期の両方を改善するFcRn親和性増強Fc変異体が同定された。選択されたIgG変異体は低フコシル化分子として産生することができる。得られた変異体は、hFcRnマウスにおいて血清持続性が増加し、ADCCも保存的に増強された(Monnet et al.)。例示的な変異体は、以下を含む(IgG1およびKabat番号付けを参照している):P230T/V303A/K322R/N389T/F404L/N434S;P228R/N434S;Q311R/K334R/Q342E/N434Y;C226G/Q386R/N434Y;T307P/N389T/N434Y;P230S/N434S;P230T/V305A/T307A/A378V/L398P/N434S;P23OT/P387S/N434S;P230Q/E269D/N434S;N276S/A378V/N434S;T307A/N315D/A330V/382V/N389T/N434Y;T256N/A378V/S383N/N434Y;N315D/A330V/N361D/A387V/N434Y;V259I/N315D/M428L/N434Y;P230S/N315D/M428L/N434Y;F241L/V264E/T307P/A378V/H433R;T250A/N389K/N434Y;V305A/N315D/A330V/P395A/N434Y;V264E/Q386R/P396L/N434S/K439R;E294del/T307P/N434Y(ここで、「del」は、削除を示す)。
【0109】
抗体薬物コンジュゲート
また、本発明による抗原結合タンパク質が、1つ以上の薬物、例えば、化学療法剤、免疫療法剤、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物もしくは動物由来の酵素的に活性な毒素などのタンパク質毒素またはそのフラグメント)、抗ウイルス剤、放射性同位元素(すなわち、放射性同位体)、抗生物質、または小干渉RNA(siRNA)などに結合してなる免疫コンジュゲート(互換的に、「抗体-薬物コンジュゲート」、「ADC」または「抗原結合タンパク質-薬物コンジュゲート」と称される)も提供される。
【0110】
免疫コンジュゲートは、ガンの治療において、細胞毒性剤、すなわち細胞の増殖や成長を死滅させたり阻害したりする薬剤の局所投与に用いられてきた(Lambert, J. (2005) Curr. Opinion in Pharmacology 5:543-549; Wu et al. (2005) Nature Biotechnology 23(9):1137-1146; Payne, G. (2003) i 3:207-212; Syrigos and Epenetos (1999) Anticancer Research 19:605-614; Niculescu-Duvaz and Springer (1997) Adv. Drug Deliv. Rev. 26:151-172; U.S. Pat. No.4,975,278)。免疫コンジュゲートは、非コンジュゲート薬物の全身投与が正常細胞に対して許容できないレベルの毒性をもたらす可能性がある場合に特に、腫瘍への薬物部分の標的送達、およびそこでの細胞内蓄積を可能にする(Tsuchikama and An, Protein and Cell, (2018) 9: 33-46)。免疫コンジュゲートは、標的ガン細胞への強力な細胞毒性ペイロードの選択的送達を可能にし、その結果、従来の化学療法と比較して、有効性の改善、全身毒性の低減、および好ましい薬物動態(PK)/薬力学(PD)および生体分布をもたらすことができる(Tsuchikama and An 2018); Beck A. et al (2017) Nature Rev. Drug Disc. 16: 315-337)。
【0111】
ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両方が、これらの戦略に有用であると報告されている(Rowland et al, (1986) Cancer Immunol. Immunother. 21:183-87)。これらの方法で使用される薬剤には、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、ビンデシンなどがある(Rowland et al, (1986)前掲)。抗体-毒素コンジュゲートに使用される毒素には、ジフテリア毒素のような細菌毒素、リシンのような植物毒素、ゲルダナマイシンのような低分子毒素(Mandler et al, (2000) J. Nat. Cancer Inst. 92(19):1573-1581; Mandler et al (2000) Bioorganic & Med. Chem. Letters 10:1025-1028; Mandler et al (2002) Bioconjugate Chem. 13:786-791)、メイタンシノイド(欧州特許第1391213号明細書;Liu et al. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623)、およびカリキアミシン(Lode et al, (1998) Cancer Res. 58:2928; Hinman et al, (1993) Cancer Res. 53:3336-3342)が挙げられる。
【0112】
特定の実施態様において、免疫コンジュゲートは、抗体などの抗原結合タンパク質と、化学療法剤などの毒素などの薬物とを含む。薬物は、薬物を抗原結合タンパク質に結合させるリンカーの反応性末端に化学的に結合できるように(例えば、その化学的結合を可能にする反応ハンドルを含むように)(例えば、標準的な合成化学を介して)修飾することができる。
【0113】
免疫コンジュゲートの薬物成分
免疫コンジュゲートの生成に有用な化学療法剤のような薬物が本明細書に記載されている。使用できる酵素的に活性な毒素およびそのフラグメントとしては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、エキソトキシンA鎖(緑膿菌由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクシンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルチン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセン類が挙げられる。例えば、1993年10月28日発行の国際公開第93/21232号を参照。
【0114】
毒素に加えて、放射性ヌクレオチドのような放射性物質もADCの薬物として使用することができる。放射性コンジュゲート抗体の作製には様々な放射性ヌクレオチドが利用可能である。例えば、212Bi、131I、131In、90Y、186Reなどがある。
【0115】
本発明の抗原結合タンパク質(抗体など)はまた、カリキアミシン、メイタンシノイド、ドラスタチン、オーロスタチン、トリコテセン、およびCC1065、ならびに毒素活性を有するこれらの毒素の誘導体を含むがこれらに限定されない、1つ以上の毒素に結合されていてもよい。好適な細胞毒性剤としては、ドバリン-バリン-ドライソロイニン-ドラプロイン-フェニルアラニン(MMAF)およびモノメチルアウリスタチンE(MMAE)ならびにMMAEのエステル体を含むアウリスタチン、DNA小溝結合剤、DNA小溝アルキル化剤、エネジイン、レキシトロプシン、デュオカルマイシン、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセルなど)、ピューロマイシン、ドラスタチン、メイタンシノイド、ビンカアルカロイドなどが挙げられるが、これらに限定されない。具体的な細胞毒性剤としては、トポテカン、モルホリノ-ドキソルビシン、リゾキシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、ドラスタチン-10、エキノマイシン、コンブレタスタチン、カリキアマイシン、メイタンシン、DM-1、DM-4、ネトロプシンなどが挙げられる。他の適切な細胞毒性剤としては、抗チューブリン剤、例えばアウリスタチン、ビンカアルカロイド、ポドフィロトキシン、タキサン、バッカチン誘導体、クリプトフィジン、メイタンシノイド、コンブレタスタチン、またはドラスタチンなどが挙げられる。抗チューブリン剤としては、ジメチルバリン-バリン-ドライソロイネン-ドラプロイン-フェニルアラニン-p-フェニレンジアミン(AFP)、MMAF、MMAE、アウリスタチンE、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン VP-16、カンプトテシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エポチロンA、エポチロンB、ノコダゾール、コルチシン、コルチミド、エストラムスチン、セマドチン、ディスコデルモリド、メイタンシン、DM-1、DM-4、エレウテロビンが挙げられる。
【0116】
抗体薬物コンジュゲートは、抗チューブリン剤であるモノメチルアウリスタチンE(MMAE)またはモノメチルアウリスタチンF(MMAF)を抗原結合タンパク質(抗体など)に結合させることにより製造することができる。MMAEの場合、リンカーはチオール反応性マレイミド、カプロイルスペーサー、ジペプチドバリン-シトルリン、または自己免疫性フラグメント化基であるp-アミノベンジルオキシカルボニルからなることができる。MMAFの場合、プロテアーゼ耐性のマレイミドカプロイルリンカーを用いることができる。コンジュゲーションプロセスにより、薬物-抗体結合は不均一になり、各抗体分子に結合する薬物の数(モル比[MR])も、結合部位も変化する。最も多く見られるのはMR=4の物質で、MR=0、2、6、8の物質はあまり見られない。全体の平均的な薬物対抗体のMRは約4である。
【0117】
アウリスタチンとドラスタチン
いくつかの実施態様において、免疫コンジュゲートは、ドラスタチンまたはドラスタチンペプチド類似体もしくは誘導体、アウリスタチン(米国特許第5,635,483号明細書;同第5,780,588号明細書)に結合した抗原結合タンパク質(抗体など)を含む。ドラスタチンおよびアウリスタチンは、微小管ダイナミクス、GTP加水分解、核および細胞分裂を阻害すること(Woyke et al,(2001)Antimicrob. Agents and Chemother. 45(12):3580-3584)、抗ガン活性(米国特許第5,663,149号明細書)および抗真菌活性(Pettit et al(1998)Antimicrob. Agents Chemother. 42:2961-2965)を有することが示されている。ドラスタチンまたはアウリスタチン(ドラスタチンのペンタペプチド誘導体)薬物部分は、ペプチド薬物部分のN(アミノ)末端またはC(カルボキシル)末端を介して抗体に結合することができる(国際公開第02/088172号)。
【0118】
例示的なアウリスタチンの実施態様としては、米国特許第7,498,298号明細書「リガンドに結合可能なモノメチルバリン化合物」に開示されている、N末端に連結したモノメチルアウリスタチン薬物部分DEおよびDFが挙げられる。本明細書で使用される場合、略号「MMAE」は、モノメチルアウリスタチンEを指す。本明細書で使用される場合、略号「MMAF」は、ドバリン-バリン-ドライソロイネン-ドラプロイン-フェニルアラニンを指す。
【0119】
典型的には、ペプチドベースの薬物部分は、2つ以上のアミノ酸および/またはペプチドフラグメントの間にペプチド結合を形成することによって調製することができる。このようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野でよく知られている液相合成法(E. Schroder and K. Lubke, “The Peptides,” volume 1, pp 76-136, 1965, Academic Pressを参照のこと)に従って調製することができる。アウリスタチン/ドラスタチン薬物部分は、以下の方法に従って調製されうる:米国特許第5,635,483号明細書、同第5,780,588号明細書;Pettit et al(1989)J. Am. Chem. Soc. 111:5463-5465;Pettit et al, (1998) Anti-Cancer Drug Design 13:243-277;Pettit,G.R. et al. Synthesis, 1996, 719-725;およびPettit et al. (1996) J. Chem. Soc. Perkin Trans. 15:859-863。また、Doronina(2003)Nat Biotechnol 21(7):778-784;「リガンドへの共役化が可能なモノメチルバリン化合物」、米国特許第7,498,298号明細書(例えば、リンカー、およびリンカーに共役したMMAEおよびMMAFなどのモノメチルバリン化合物を調製する方法を開示する)も参照のこと。細胞毒性剤として作用する生物学的に活性な有機化合物、特にペンタペプチドは、米国特許第6,884,869号明細書;同第7,498,298号明細書;同第7,098,308号明細書;同第7,256,257号明細書;および同第7,423,116号明細書に開示されている。
【0120】
メイタンシンとメイタンシノイド
メイタンシノイドは、チューブリンの重合を阻害することによって作用する有糸分裂阻害剤である。メイタンシンは東アフリカの低木メイテナス・セラータから初めて単離された(米国特許第3,896,111号明細書)。その後、ある種の微生物もメイタンシノールやC-3メイタンシノールエステルなどのメイタンシノイドを産生することが発見された(米国特許第4,151,042号明細書)。細胞毒性の高いメイタンシノイド薬剤は、アクチノシネマ(Actinosynnema)のような微生物の発酵によって生産されるアンサミトシン前駆体から調製することができる。アンサミトシンの単離方法は米国特許第6,573,074号明細書に記載されている。合成メイタンシノール、その誘導体および類似体は、例えば、米国特許第6,573,074号明細書;同4,137,230号明細書;同4,248,870号明細書;同4,256,746号明細書;同4,260,608号明細書;同4,265,814号明細書;同4,294,757号明細書;同4,307,016号明細書;同4,308,268号明細書;同4,308,269号明細書;同4,309,428号明細書;同4,313,946号明細書;同4,315,929号明細書;同4,317,821号明細書;同4,322,348号明細書;同4,331,598号明細書;同4,361,650号明細書;同4,364,866号明細書;同4,424,219号明細書;同4,450,254号明細書;同4,362,663号明細書;同4,371,533号明細書に開示されている。
【0121】
抗体-メイタンシノイドコンジュゲートは、抗体またはメイタンシノイド分子の生物学的活性を著しく低下させることなく、抗原結合タンパク質(抗体など)とメイタンシノイド分子を化学的に結合させることにより調製される。例えば、米国特許第5,208,020号明細書を参照。抗体1分子あたり平均3~4個のメイタンシノイド分子を結合させると、抗体の機能や溶解性に悪影響を与えることなく標的細胞の細胞毒性を増強する効果が示されているが、たとえ1分子の毒素/抗体であっても、裸の抗体を使用するよりも細胞毒性を増強することが期待される。メイタンシノイドは当技術分野でよく知られており、既知の技術によって合成することも、天然源から単離することもできる。適切なメイタンシノイドは、例えば米国特許第5,208,020号明細書および本明細書で言及した他の特許および非特許文献に開示されている。メイタンシノイドは、メイタンシノールおよびメイタンシノール分子の芳香環または他の位置で修飾されたメイタンシノール類似体であり、例えば、種々のメイタンシノールエステルである。抗体との連結のためのメイタンシノイドの調製方法は、例えば米国特許第6,570,024号明細書および同第6,884,874号明細書に開示されている。
【0122】
カリケアマイシン
カリケアミシン・ファミリーの抗生物質は、ピコモル以下の濃度で二本鎖DNA切断を起こすことができる。米国特許第5,712,374号明細書、同第5,714,586号明細書、同第5,739,116号明細書、同第5,767,285号明細書、同第5,770,701号明細書、同第5,770,710号明細書、同第5,773,001号明細書、および同第5,877,296号明細書を参照。使用されうるカリキアミシンの構造類似体としては、 1I、 2I、 3I、N-アセチル 1I、PSAGおよび I1が挙げられるが、これらに限定されない(Hinman et al, Cancer Research 53:3336-3342(1993)、Lode et al, Cancer Research 58:2925-2928(1998)および前述の米国特許)。抗体を結合させることができる別の抗腫瘍薬は、抗葉酸塩であるQFAである。カリキアミシンもQFAも作用部位は細胞内であり、細胞膜を容易に通過しない。したがって、抗体を介した細胞内への取り込みにより、これらの薬剤の細胞毒性作用は大幅に増強される。
【0123】
他の細胞毒性剤
抗原結合タンパク質(抗体など)と結合できる抗腫瘍剤などの他の細胞毒性剤としては、BCNU、ストレプトゾイシン、ビンクリスチン、5-フルオロウラシル、米国特許第5,053,394号明細書および同第5,770,710号明細書に記載されているLL-E33288複合体と総称される薬剤ファミリー、およびエスペラマイシン(米国特許第5,877,290号明細書)が挙げられる。
【0124】
使用可能な酵素活性毒素およびそのフラグメントとしては、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、エキソトキシンA鎖(緑膿菌由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデクチンA鎖、α-サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ツルレイシ阻害剤、クルチン、クロチン、サボンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、およびトリコテセン類が挙げられる。例えば、1993年10月28日発行の国際公開第93/21232号を参照。
【0125】
本発明はさらに、抗原結合タンパク質(抗体など)と核酸分解活性を有する化合物(例えば、リボヌクレアーゼまたはデオキシリボヌクレアーゼなどのDNAエンドヌクレアーゼ;DNase)との間で形成される免疫コンジュゲートを企図する。
【0126】
腫瘍を選択的に破壊するために、抗原結合タンパク質(抗体など)は高放射能原子を含んでいてもよい。放射性標識抗体の製造には、様々な放射性同位体が利用可能である。例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、Luの放射性同位体などである。コンジュゲートが検出のために使用される場合、シンチグラフィ研究用の放射性原子、例えばtc99mやI123、または核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング、mriとしても知られている)用のスピン標識、例えばヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、鉄などを含んでいてもよい。
【0127】
放射性標識または他の標識は、公知の方法でコンジュゲートに組み込むことができる。例えば、ペプチドは生合成してもよいし、例えば水素の代わりにフッ素-19を含む適切なアミノ酸前駆体を用いて化学的アミノ酸合成によって合成してもよい。tc99mまたはI123、Re186、Re188およびIn111などの標識は、ペプチド中のシステイン残基を介して結合させることができる。イットリウム90はリジン残基を介して結合させることができる。IODOGEN法(Fraker et al(1978)Biochem. Biophys. Res. Commun. 80: 49-57)を用いてヨウ素-123を組み込むことができる。”Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy”(Chatal, CRC Press 1989)には他の方法が詳しく記載されている。
【0128】
いくつかの場合において、本明細書に開示される抗BCMA抗原結合タンパク質は、化学療法剤、薬剤、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、動物由来の酵素活性毒素、またはそれらのフラグメント)、または放射性同位元素(すなわち、放射性コンジュゲート)などの1つ以上の細胞毒性剤に結合した抗体を含むが、これらに限定されない、本明細書に記載される本開示による抗原結合タンパク質を含む免疫コンジュゲートである。いくつかの場合において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、アウリスタチン、例えば、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)またはモノメチルアウリスタチンF(MMAF)などの毒素と結合している。いくつかの実施態様において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、AFP、MMAF、MMAE、AEB、AEVBまたはアウリスタチンEに結合されている。いくつかの実施態様において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、パクリタキセル、ドセタキセル、CC-1065、SN-38、トポテカン、モルホリノ-ドキソルビシン、リゾキシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、ドラスタチン-10、エキノマイシン、コンブレタスタチン、カリケアマイシン、またはネトロプシンに結合される。いくつかの実施態様において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、アウリスタチン、メイタンシノイド、またはカリキアミシンに結合される。いくつかの実施態様において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、AFP、MMAP、MMAE、AEB、AEVB、アウリスタチンE、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、VP-16、カンプトテシン パクリタキセル、ドセタキセル、エポチロンA、エポチロンB、ノコダゾール、コルチシン、コルチミド、エストラムスチン、セマドチン、ディスコデルモリド、メイタンシノール、メイタンシン、DM1、DM2、DM3、DM4またはエレウテロビンに結合される。
【0129】
いくつかの場合において、毒素と結合した抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むか、配列番号1に記載のアミノ酸配列を実質的に含むか、または配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるV CDR1;配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むか、配列番号2に記載のアミノ酸配列を実質的に含むか、または配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるV CDR2;配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むか、配列番号3に記載のアミノ酸配列を実質的に含むか、または配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるV CDR3;を有する重鎖を含みうる。例えば、本明細書に記載の毒素と結合した抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含みうる。いくつかの場合において、本明細書に記載の毒素と結合した抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む重鎖を含みうる。
【0130】
いくつかの場合において、毒素と結合した抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むか、配列番号4に記載のアミノ酸配列を実質的に含むか、または配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるV CDR1;配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むか、配列番号5に記載のアミノ酸配列を実質的に含むか、または配列番号5に記載のアミノ酸配列からなるV CDR2;配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むか、配列番号6に記載のアミノ酸配列を実質的に含むか、または配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるV CDR3;を有する軽鎖を含みうる。例えば、本明細書に記載の毒素と結合した抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含みうる。いくつかの場合において、本明細書に記載の毒素と結合した抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含みうる。
【0131】
いくつかの場合において、毒素と結合した抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1;配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むV CDR2;および配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むV CDR3;を有する重鎖を含み得、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むV CDR1;配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むV CDR2;および配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むV CDR3;を有する軽鎖を含みうる。例えば、毒素と結合した抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み得、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含みうる。いくつかの場合において、本明細書に記載の毒素と結合した抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む重鎖を含み得、配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含みうる。
【0132】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号19、23または27の重鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号20、24または28の軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号21、25、30または32の重鎖領域を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号22、26、31または33の軽鎖を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号19の重鎖可変領域および配列番号20の軽鎖可変領域、配列番号23の重鎖可変領域および配列番号24の軽鎖可変領域、または配列番号27の重鎖可変領域および配列番号28の軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号21の重鎖領域および配列番号22の軽鎖、配列番号25の重鎖領域および配列番号26の軽鎖、配列番号30の重鎖領域および配列番号31の軽鎖、または配列番号32の重鎖領域および配列番号33の軽鎖を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号29を含むscFv-fcである。
【0133】
いくつかの場合において、上記抗BCMA抗原結合タンパク質は、以下の一般構造:
【化1】
(式中
ABPは、抗原結合タンパク質であり、
リンカーは、存在しないか、または任意の切断可能もしくは切断不可能なリンカーであり、
Ctxは、本明細書に記載の任意の細胞毒性剤であり、
nは、0、1、2または3であり、
mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である)
を有する免疫コンジュゲートである
【0134】
例示的なリンカーとしては、6-マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドプロパノイル(MP)、バリン-シトルリン(val-cit)、アラニン-フェニルアラニン(ala-phe)、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PAB)、N-スクシンイミジル 4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)、N-スクシンイミジル 4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1 カルボキシレート(SMCC)、N-スクシンイミジル(4-ヨード-アセチル)アミノベンゾエート(SIAB)が挙げられる。
【0135】
いくつかの場合において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、MMAEまたはMMAFに結合したモノクローナル抗体を含む、免疫コンジュゲートである。別の実施態様において、抗BCMA抗原結合タンパク質は、以下に示される構造のようなMCリンカー:
【化2】
によりMMAEまたはMMAFに結合したモノクローナル抗体を含む、免疫コンジュゲートである。
【0136】
ある実施態様において、抗BCMA抗原結合タンパク質は抗体のベランタマブである。別の実施態様では、抗BCMA抗原結合タンパク質は免疫コンジュゲートのベランタマブ・マフォドチンである。
【0137】
いくつかの場合において、本開示のコンジュゲート抗体(抗体薬物コンジュゲートまたはADC)は、健常組織を温存しながら、腫瘍細胞への高活性細胞毒性剤の特異的標的化を可能にするように設計された強力な抗ガン剤である。腫瘍特異的抗体の使用にもかかわらず、ADCの新たな臨床データは、ADCがその最適治療用量に達する前に有害事象が頻繁に起こることを示している。このように、これらのADCは前臨床腫瘍モデルにおいて高い活性を示すにもかかわらず、臨床における治療域は狭く、前臨床モデルからのデータに基づいて常に予測できるわけではない用量制限毒性によって投与レジメンが妨げられているように思われる。
【0138】
安全性プロファイルを悪化させることなく治療効果を相乗的に高めるために併用できる治療法は、特に眼毒性のような治療に起因する有害事象の発生率や重症度に関して、ガン患者の治療における大きな進歩になるであろう。
【0139】
基本的に、最良のベネフィット・リスク・プロフィールを持ちながら、全奏効率(ORR)を著しく向上させる用量の有効性を高めることができる薬剤との組み合わせは、このような抗原結合タンパク質による治療を受けた患者の管理におけるパラダイムシフトにつながるであろう。
【0140】
障害
いくつかの場合において、本明細書に開示される組み合わせは、B細胞障害を治療する。B細胞障害は、B細胞の発生/免疫グロブリン産生の欠損(免疫不全症)と、過剰/制御不能な増殖(リンパ腫、白血病)とに分けられる。本明細書において、B細胞障害は両方のタイプの疾患を指し、抗原結合タンパク質を用いてB細胞障害を治療する方法が提供される。
【0141】
ガン(特に、B細胞媒介性もしくは形質細胞媒介性の疾患、または抗体媒介性の疾患もしくは障害)の例としては、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ性白血病(CLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、非分泌性多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、意義不明の単クローン性ガンマ症(MGUS)、孤立性形質細胞腫(骨、髄外)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、ワルデンストレーム型マクログロブリン血症、形質細胞白血病、重鎖疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、POEMS症候群/骨硬化性骨髄腫、I型およびII型クリオグロブリン血症、軽鎖沈着症、グッドパスチャー症候群、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、急性糸球体腎炎、天疱瘡および類天疱瘡性疾患、後天性表皮水疱症;または非ホジキンリンパ腫B細胞白血病(NHL)およびホジキンリンパ腫(HL)が挙げられる。いくつかの場合において、上記疾患または障害は、多発性骨髄腫(MM)、非ホジキンリンパ腫B細胞白血病(NHL)、濾胞性リンパ腫(FL)、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)からなる群から選択される。いくつかの場合において、上記疾患は多発性骨髄腫または非ホジキンリンパ腫B細胞白血病(NHL)である。いくつかの場合において、上記疾患は多発性骨髄腫の場合もある。
【0142】
いくつかの場合において、ガンは造血(または血液学的または血液性または血液関連)ガン(例えば、血液細胞または免疫細胞に由来するガンで、「液状腫瘍」と呼ばれることがある)であってもよい。いくつかの場合において、ガンはB細胞関連ガンであり、特にBCMA発現ガンである。いくつかの場合において、ガンは慢性骨髄球性白血病、急性骨髄球性白血病、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病などの白血病である。別の場合において、ガンは非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫などのリンパ腫である。別の場合において、ガンは、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症などの形質細胞悪性腫瘍である。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される組み合わせは、ALアミロイドーシスを治療する。
【0143】
いくつかの場合において、ガンは多発性骨髄腫である。いくつかの場合において、ガンは再発性および/または難治性の多発性骨髄腫である。いくつかの場合において、再発性および/または難治性の多発性骨髄腫の患者は、多発性骨髄腫を治療するために、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または少なくとも4つの治療薬で以前に治療されている。
【0144】
以前の治療
いくつかの場合において、本明細書に記載される対象は、本明細書に記載される組み合わせで治療される前に、0、1、2、3、または4ライン以上の以前の治療を受けていてもよい。別の実施態様では、対象は、再発性および/または難治性の多発性骨髄腫を有し、本明細書に記載される組み合わせで治療される前に、0、1、2、3、または4ライン以上の以前の治療を受けていてもよい。別の実施態様では、対象は、免疫調節薬(IMiD)、プロテアソーム阻害薬(PI)、および抗CD38治療(例えば、ダラツムマブ)またはそれらの組み合わせを含みうる、少なくとも3つの以前のラインによる以前の治療を受けている。治療のラインは国際骨髄腫ワークショップ(IMWG)のコンセンサスパネルにより定義される[Rajkumar, 2011]。
【0145】
いくつかの場合において、対象は、本明細書に記載される組み合わせで治療される前に、0、1、2、3、または4またはそれ以上の以前の治療ラインを有していてもよく、ここで、1つ以上の以前の治療ラインは不成功であった。いくつかの場合において、以前の治療ラインに関連した有害事象が、当該以前の治療ラインの中止を余儀なくした。本明細書中に記載されるように処置されうる哺乳動物(例えば、ヒト)が、本明細書中に記載されるように処置される前に、0、1、2、3、または4以上の先行治療ラインを有する哺乳動物である場合、先行治療は、任意の適切な治療でありうる。例えば、本明細書に記載されるように治療される前に、0、1、2、3、または4ライン以上の前治療を受けたことのある哺乳動物は、免疫調節薬(IMiD)、プロテアソーム阻害剤(PI)、抗CD38治療またはそれらの組み合わせで前治療を受けることができる。
【0146】
いくつかの場合において、以前の治療ラインを有していた対象が、再発性、再燃性、および/または難治性のガンを有することがある。いくつかの場合において、ガンは原発性のガンでありうる。いくつかの場合において、ガンは転移性のガンでありうる。いくつかの場合において、ガンは化学療法抵抗性のガンでありうる。いくつかの場合において、ガンがB細胞ガン(例えば、白血病やリンパ腫)であることもある。本明細書に記載されるように治療されうるガンの例としては、限定されないが、多発性骨髄腫(MM)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄球性白血病、急性骨髄球性白血病、急性リンパ性白血病、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、非分泌性多発性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、意義不明の単クローン性ガンマ症(MGUS)、孤立性形質細胞腫(例えば、孤立性骨形質細胞腫、髄外孤立性骨形質細胞腫)、リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、ワルデンストレム型マクログロブリン血症、形質細胞白血病、重鎖疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、POEMS症候群、骨硬化性骨髄腫、I型およびII型クリオグロブリン血症、軽鎖沈着症、グッドパスチャー症候群、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、急性糸球体腎炎、類天疱瘡および類天疱瘡性疾患、後天性表皮水疱症、非ホジキンリンパ腫、B細胞白血病、ホジキンリンパ腫が挙げられる。
【0147】
使用の記述
いくつかの場合において、本明細書に開示される組み合わせを使用して、BCMA抗原結合タンパク質が適応となる疾患または状態、例えばガンを治療することができる。そのような治療は、(i)抗BCMA抗原結合タンパク質またはBCMAポリペプチドに対する結合特異性を有するADCと、(ii)1つ以上のT細胞エンゲージャーとを含みうる。いくつかの場合において、哺乳動物(例えば、ガンを有するヒトなどのヒト)に、(i)抗BCMA抗原結合タンパク質またはBCMAポリペプチドに対する結合特異性を有するADCを含むポリペプチドと、(ii)1つ以上のT細胞エンゲージャーとを投与することができる。いくつかの場合において、本明細書に開示される組み合わせは、ADCの細胞毒性剤を、BCMAポリペプチドを発現する(例えば、細胞表面にBCMAポリペプチドを発現する)細胞(例えば、ガン細胞)に標的化し、ガン関連抗原を発現する細胞(例えば、ガン細胞)に対する免疫応答を刺激(例えば、誘導または増強)する。いくつかの場合において、BCMA抗原結合タンパク質とT細胞エンゲージャーを同じガン細胞に結合させることもできる。いくつかの場合において、抗BCMA抗原結合タンパク質とT細胞エンゲージャーは、異なるガン細胞に結合することができる。いくつかの場合において、抗BCMA抗原結合タンパク質とT細胞エンゲージャーは、同じガン細胞または異なるガン細胞と相互作用することができる。
【0148】
いくつかの場合において、本明細書に開示される組み合わせは、対象の治療のためのものである。用語「個体」、「対象」および「患者」は、本明細書では互換的に使用される。対象は、典型的にはヒトである。対象はまた、マウス、ラットまたは霊長類(例えば、マーモセットまたはサル)などの哺乳類であってもよい。対象はヒト以外の動物であってもよい。治療される対象は、例えば、雌牛(cow)または(去勢していない)雄牛(bull)、ヒツジ、ブタ、(去勢した)雄牛(ox)、ヤギまたはウマのような家畜であってもよく、イヌまたはネコのような家畜であってもよい。動物は、任意の年齢であってもよく、成熟した成獣であってもよい。いくつかの実施態様において、治療は、治療的、予防的、または防止的でありうる。対象は、それを必要としているものであってもよい。治療を必要としているものには、将来その疾患を発症する可能性のあるものに加えて、既に医学的疾患を患っているものが含まれうる。
【0149】
したがって、本明細書に記載の組成物は、予防的または防止的治療に使用することができる。この場合、本明細書に記載の組成物は、疾患の1つ以上の局面または症状の発症を予防または遅延させるために、個体に投与される。対象は無症状でありうる。対象は、疾患に対する遺伝的素因を有しうる。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される組み合わせの予防上有効な量が、そのような個体に投与される。いくつかの実施態様において、予防上有効な量は、本明細書に記載される疾患の1つ以上の局面または症状の発症を予防または遅延させる量である。
【0150】
本明細書に開示される組み合わせはまた、治療の方法において使用されうる。「治療」という用語は、疾患の少なくとも1つの局面または症状の緩和、軽減、または予防を包含する。例えば、本明細書に開示される組み合わせは、本明細書に記載される疾患の1つ以上の局面または症状を改善または軽減するために使用されうる。
【0151】
いくつかの場合において、本明細書に記載の組み合わせは、治療的、予防的または防止的処置に有効な量で使用される。いくつかの場合において、本明細書に記載の組み合わせの治療上有効な量は、疾患の1つ以上の態様または症状を改善または軽減するのに有効な量である。いくつかの場合において、本明細書に開示される組み合わせはまた、対象の健康に対して一般的に有益な効果を有し得、例えば、対象の予想寿命を増加させうる。
【0152】
本明細書に記載される組み合わせは、実行可能な治療的処置を構成するために、完全な治癒に影響を及ぼす必要はなく、疾患のすべての症状または発現を根絶する必要もない。関連分野で認識されているように、治療薬として使用される薬剤は、所与の疾患状態の重症度を軽減しうるが、有用な治療薬とみなされるために疾患のすべての発現を消失させる必要はない。同様に、予防的に投与される治療薬が有効な予防薬となるためには、疾患の発症を完全に予防する効果がある必要はない。単に、疾患の影響を軽減する(例えば、その症状の数または重症度を軽減することによって、または別の治療法の有効性を増加させることによって、または別の有益な効果をもたらすことによって)か、または対象において疾患が発生する(例えば、疾患の発症を遅延させることによって)かもしくは悪化させる可能性を減少させるだけで十分である。
【0153】
いくつかの場合において、本明細書に提供される材料および方法は、ガンを有する哺乳動物(例えば、ヒト)内に存在するガン細胞の数を減少または除去するために使用することができる。例えば、それを必要とする哺乳動物(例えば、ガンを有する哺乳動物)に、抗BCMA抗原結合タンパク質およびT細胞エンゲージャーを投与して、ガンを有する哺乳動物内に存在するガン細胞の数(例えば、ガンを有する哺乳動物から得られたサンプル内に存在するガン細胞の数)を、例えば、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、またはそれ以上のパーセント減少させることができる。いくつかの場合において、ガンを有する哺乳動物から得られた試料内にガン細胞が存在しないこともある。例えば、それを必要とする哺乳動物(例えば、ガンを有する哺乳動物)に、抗BCMA抗原結合タンパク質およびT細胞エンゲージャーを投与して、ガンを有する哺乳動物内に存在する1つ以上の腫瘍のサイズ(例えば、体積)を、例えば、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、またはそれ以上のパーセント減少させることができる。いくつかの場合において、治療される哺乳動物内に存在するガン細胞の数をモニターすることができる。哺乳動物内に存在するガン細胞の数が減少したか否かを決定するために、任意の適切な方法を使用することができる。例えば、哺乳動物内に存在するガン細胞の数を評価するために、画像化技術を用いることができる。
【0154】
いくつかの場合において、本明細書で提供される材料および方法は、ガンを有する哺乳動物(例えば、ヒト)の生存を改善するために使用することができる。例えば、それを必要とする哺乳動物(例えば、ガンを有する哺乳動物)に、抗BCMA抗原結合タンパク質およびT細胞エンゲージャーを投与して、哺乳動物の生存を改善することができる。例えば、本明細書に記載の材料および方法は、ガンを有する哺乳動物の生存率を、例えば、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、またはそれ以上のパーセント改善するために使用することができる。例えば、本明細書に記載の材料および方法は、ガンを有する哺乳動物の生存率を、例えば、少なくとも約3ヶ月(例えば、少なくとも約3ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約8ヶ月、少なくとも約10ヶ月、少なくとも約1年、少なくとも約1.5年、少なくとも約2年、少なくとも約2.5年、少なくとも約3年、少なくとも約4年、少なくとも約5年、またはそれ以上)改善するために使用されうる。
【0155】
いくつかの場合において、本明細書で提供される材料および方法は、ガンを有する哺乳動物(例えば、ヒト)の治療に使用することができ、哺乳動物が最小限の副作用、低減された副作用、または全く副作用を経験しないようにすることができる。例えば、本明細書に開示される組み合わせ(例えば、抗BCMA抗原結合タンパク質およびT細胞エンゲージャー)を投与した場合、哺乳動物は、ガンを有する哺乳動物に抗BCMA抗原結合タンパク質単独またはT細胞エンゲージャー単独を投与した場合と比較して、最小限の副作用、軽減された副作用、または全くない副作用を経験することができる。ガンを有する哺乳動物が経験しうる副作用の例としては、限定されるものではないが、視力または眼の変化(例えば、眼科検査で発見されるもの(角膜症)、視力低下または霧視)、吐き気、血球数低下、発熱、輸液関連反応、疲労感、腎臓または肝機能血液検査の変化、血小板減少、眼毒性(例えば、角膜上皮の変化、ドライアイ、刺激、充血、霧視、ドライアイ、羞明、視力の変化など)から選択される1つ以上の副作用が挙げられる。
【0156】
いくつかの場合において、多発性骨髄腫などのガン患者における眼毒性の予防および/または軽減に使用するための、抗BCMA抗原結合タンパク質とT細胞エンゲージャーとを含む、組み合わせが提供される。一実施態様では、抗BCMA抗原結合タンパク質単独(単剤療法)で治療した患者と比較して、眼毒性が予防または軽減される。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される組み合わせ、例えば抗BCMA抗原結合タンパク質とT細胞エンゲージャーは、抗BCMA抗原結合タンパク質単独による治療と比較して、スネレン視力におけるベースラインからの1ラインの低下を低減/遅らせる。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される組み合わせ、例えば抗BCMA抗原結合タンパク質とT細胞エンゲージャーは、抗BCMA抗原結合タンパク質単独による治療と比較して、スネレン視力におけるベースラインからの2または3ラインの低下を低減/遅らせる。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される組み合わせ、例えば抗BCMA抗原結合タンパク質とT細胞エンゲージャーは、抗BCMA抗原結合タンパク質単独による治療と比較して、スネレン視力におけるベースラインからの3ライン以上の低下を低減/遅らせる。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される組み合わせ、例えば抗BCMA抗原結合タンパク質およびT細胞エンゲージャーは、抗BCMA抗原結合タンパク質単独による治療と比較して、スネレン視力のベースラインからの変化を低下を低減/遅らせる。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される組み合わせ、例えば抗BCMA抗原結合タンパク質およびT細胞エンゲージャーは、抗BCMA抗原結合タンパク質単独による治療と比較して、logMAR(分解能の最小角度の対数)単位のベースラインからの低下を減少させる/遅くする。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される組み合わせ、例えば抗BCMA抗原結合タンパク質およびT細胞エンゲージャーは、抗BCMA抗原結合タンパク質単独による治療と比較して、対象における軽度の表在性角膜症、中等度の表在性角膜症、重度の表在性角膜症または角膜上皮欠損の進行を減少/遅らせるかまたは防止する。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される組み合わせ、例えば抗BCMA抗原結合タンパク質とT細胞エンゲージャーは、抗BCMA抗原結合タンパク質単独による治療と比較して、対象における軽度の表在性角膜症、中等度の表在性角膜症、重度の表在性角膜症または角膜上皮欠損を予防する。
【0157】
「眼毒性」とは、眼組織への治療薬の意図しない曝露をいう。眼毒性には、角膜上皮の変化、ドライアイ、刺激、充血、霧視、ドライアイ、羞明、および/または視力の変化などが含まれる。
【0158】
眼検査は、眼科医または検眼医により実施されてもよい。眼検査は、以下のうちの1つ以上:
1.最良矯正視力
2.最良矯正視力を得るために使用される自覚的屈折の文書および方法
3.現在の処方された眼鏡(使用可能な場合)
4.眼圧測定
5.膜および水晶体検査のフルオレセイン染色を含む前部(スリットランプ)検査
6.拡張眼底検査、および/または
7.視力における眼球の潜在的な変化が機能および健康関連QOLに及ぼす影響を評価する視覚機能質問票である、眼表面疾患指数(OSDI)
を含んでもよい。
【0159】
上記の方法は、当業者に公知であり、実施されている。眼科的検査は、治療前、治療中、および/または治療後に行うことができる。
【0160】
本開示の一態様において、ガンの治療を必要とする対象においてガンを治療する方法であって、本開示による治療上有効な用量の抗BCMA抗原結合タンパク質およびT細胞エンゲージャーを投与することを含む、方法が提供される。
【0161】
T細胞エンゲージャー
(i)抗BCMA抗原結合タンパク質を含むポリペプチド、またはBCMAポリペプチドに対する結合特異性を有するADCと、(ii)1つ以上のT細胞エンゲージャーとを含む組み合わせが、本明細書に開示される。本明細書に開示されるT細胞エンゲージャーは、T細胞および腫瘍関連抗原に対して指向化されうる。任意の適切なT細胞エンゲージャーは、本明細書に記載されるように、ガンを有する哺乳動物(例えば、ヒト)を治療するために使用されうる。いくつかの場合において、T細胞エンゲージャーは二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)でありうる。いくつかの場合において、本明細書に記載のT細胞エンゲージャーは、CD3およびBCMA(CD3xBCMA)に結合する二重特異性T細胞エンゲージャーである。いくつかの場合において、本明細書に記載のT細胞エンゲージャーは、CD3およびGPRC5D(CD3xGPRC5D)に結合する二重特異性T細胞エンゲージャーである。いくつかの場合において、本明細書に記載のT細胞エンゲージャーは、CD3およびFcRH5(CD3xFcRH5)に結合する二重特異性T細胞エンゲージャーである。いくつかの場合において、T細胞エンゲージャーは、チェックポイント阻害性T細胞エンゲージャー(CiTE)でありうる。いくつかの場合において、T細胞エンゲージャーは同時多重相互作用T細胞エンゲージャー(SMITE)でありうる。いくつかの場合において、T細胞エンゲージャーは、三重特異性キラーエンゲージャー(TriKE)でありうる。いくつかの実施態様において、本明細書に開示されるT細胞エンゲージャーは、BCMAに結合する。いくつかの実施態様において、本明細書に開示されるT細胞エンゲージャーは、GPRC5Dに結合する。いくつかの実施態様において、本明細書に開示されるT細胞エンゲージャーは、FcRH5に結合する。いくつかの実施態様において、本明細書に開示されるT細胞エンゲージャーは、CD38に結合する。いくつかの実施態様において、本明細書に開示されるT細胞エンゲージャーは、BCMAに結合しない。いくつかの実施態様において、本明細書に開示されるT細胞エンゲージャーは、GPRC5Dに結合しない。いくつかの実施態様において、本明細書に開示されるT細胞エンゲージャーは、FcRH5に結合しない。いくつかの実施態様において、本明細書に開示されるT細胞エンゲージャーは、CD38に結合しない。
【0162】
いくつかの場合において、本明細書に開示されるT細胞エンゲージャーはヒトCD3と結合する。いくつかの場合において、CD3は活性化T細胞抗原である。本明細書で使用する「活性化T細胞抗原」とは、Tリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の表面に発現し、抗原結合分子との相互作用によりT細胞の活性化を誘導することができる抗原決定基を指すことができる。具体的には、抗原結合分子と活性化T細胞抗原との相互作用は、T細胞受容体複合体のシグナル伝達カスケードを誘発することによってT細胞の活性化を誘導することができる。いくつかの場合において、本明細書に開示されるT細胞エンゲージャーは、T細胞の活性化を誘導することができる。本明細書で使用する「T細胞活性化」とは、増殖、分化、サイトカイン分泌、細胞傷害性エフェクター分子放出、細胞傷害活性、および活性化マーカーの発現から選択される、Tリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の1つ以上の細胞応答を指すことができる。いくつかの場合において、本明細書に開示されるT細胞エンゲージャーは二重特異性である。いくつかの場合において、本明細書に開示されるT細胞エンゲージャーは、ヒト腫瘍細胞上に発現する少なくとも1つの表面分子に結合する。いくつかの場合において、本明細書に開示されるT細胞エンゲージャーは、BCMA、CD19、CD20、CD30、CD33、CD38、CD44、CD123、CD138、CEA、CLEC12A、CS-1、EGFR、EGFRvIII、EPCAM、DLL3、LGR5、MSLN、FOLR1、FOLR3、HER2、HM1.24、MCSP、PSMA、またはそれらの組み合わせに結合する。
【0163】
本明細書に記載されるように、ガンを有する哺乳動物を治療するために使用されうるT細胞エンゲージャーの例は、限定されないが、セボスタマブ、タルケタマブ、テクリスチマブ、PF-3135、TNB-383B、REGN5458、ブリナツモマブ、ソリトマブ、シブロツズマブ、フレソリムマブ、デファクチニブAZD4547、またはそれらの組み合わせを含みうる。いくつかの場合において、本明細書に開示される組み合わせは、テクリスチマブ、PF-3135、TNB-383B、REGN5458またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの場合において、本明細書に開示される組み合わせは、CC-93269、AMG701、JNJ-7957、GBR1342またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの場合において、本明細書に開示される組み合わせは、タルケタマブを含む。いくつかの場合において、本明細書に開示される組み合わせは、セボスタマブを含む。いくつかの場合において、本明細書に開示される組成物は、少なくとも約1mg、1.5mg、2mg、3mg、3.6mg、10mg、15mg、20mg、90mg、または132mgのセボスタマブを含む。
【0164】
セボスタマブは、腫瘍関連抗原であるFc受容体様タンパク質5(FCRH5;CD307;FCRL5;IRTA2;BXMAS1)に対する抗体と、Tリンパ球に存在するCD3抗原に対する抗体の2つの単鎖可変フラグメント(scFv)から構成される二重特異性T細胞エンゲージャー抗体である。いくつかの場合において、セボスタマブを投与すると、二重特異性抗体は細胞傷害性Tリンパ球(CTL)上のCD3抗原とFCRH5発現腫瘍細胞上のFCRH5の両方に結合する。いくつかの場合において、これによりCTLが活性化され、FCRH5を発現する腫瘍細胞と架橋し、FCRH5を発現する腫瘍細胞をCTLが介在して細胞死させる。いくつかの場合において、免疫受容体転位関連タンパク質/Fc受容体ホモログ(IRTA/FCRH)ファミリーメンバーであり、B細胞系譜マーカーであるFCRH5が、骨髄腫細胞上で過剰発現している。
【0165】
いくつかの実施態様において、上記T細胞エンゲージャーは、FCRL5に特異的なscFvを含み、配列番号11に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、上記T細胞エンゲージャーは、FCRL5に特異的なscFvを含み、配列番号12に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、上記T細胞エンゲージャーは、FCRL5に特異的なscFvを含み、配列番号11に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、上記T細胞エンゲージャーは、FCRL5に特異的なscFvを含み、配列番号12に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、上記T細胞エンゲージャーは、CD3に特異的な活性化T細胞抗原結合scFvを含み、配列番号13に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、上記T細胞エンゲージャーは、CD3に特異的な活性化T細胞抗原結合scFvを含み、配列番号14に記載のアミノ酸配列と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、上記T細胞エンゲージャーは、CD3に特異的な活性化T細胞抗原結合scFvを含み、配列番号13に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、上記T細胞エンゲージャーは、CD3に特異的な活性化T細胞抗原結合scFvを含み、配列番号14に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、上記T細胞エンゲージャーは、配列番号11、12、13および14に記載の配列を含む。いくつかの実施態様において、上記T細胞エンゲージャーは、配列番号15および17に記載の重鎖と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様において、上記T細胞エンゲージャーは、配列番号16および18に記載の軽鎖と少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施態様において、上記T細胞エンゲージャーは、配列番号15および17に記載の重鎖、ならびに配列番号16および18に記載の軽鎖を有するアミノ酸配列を含む。
【0166】
【表4】
【0167】
タルクエタマブは、ヒトCD3および腫瘍関連抗原であるヒトG-タンパク質共役受容体ファミリーCグループ5メンバーD(GPRC5D)に対する二重特異性ヒト化モノクローナル抗体である。いくつかの場合において、タルケタマブを投与すると、T細胞上のCD3と特定の腫瘍細胞上に発現するGPRC5Dの両方に結合する。いくつかの場合において、この結果、T細胞と腫瘍細胞が架橋し、GPRC5D発現腫瘍細胞に対する強力な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答が誘導される。いくつかの場合において、GPRC5Dは多発性骨髄腫のような特定の腫瘍では過剰発現しているが、正常で健康な細胞では最小限の発現であり、腫瘍細胞の増殖に重要な役割を果たしている。
【0168】
ブリナツモマブは、組換え型の一本鎖抗CD19/抗CD3二重特異性モノクローナル抗体である。ブリナツモマブは2つの抗原認識部位を持ち、1つはCD3複合体、もう1つはB細胞表面に過剰発現している腫瘍関連抗原であるCD19である。いくつかの場合において、ブリナツモマブは、CD19発現腫瘍B細胞と細胞傷害性Tリンパ球(CTL)とヘルパーTリンパ球(HTL)とを引き合わせ、CD19発現Bリンパ球のCTLおよびHTL介在性細胞死をもたらす。
【0169】
ソリトマブは、CD3と上皮細胞接着分子(EpCAM)の両方に対する組換え二重特異性モノクローナル抗体である。いくつかの場合において、ソリトマブはCD3を発現するTリンパ球とEpCAMを発現する腫瘍細胞の両方に接着し、腫瘍細胞とTリンパ球を選択的に架橋する。いくつかの場合において、この結果、Tリンパ球/腫瘍細胞の凝集体に細胞傷害性Tリンパ球(CTL)が動員され、EpCAMを発現する腫瘍細胞がCTLによって死滅する。
【0170】
REGN5458は、2つの単鎖可変フラグメント(scFv)から構成されるヒト二重特異性T細胞エンゲージャー抗体であり、1つはBCMAに対して、もう1つはTリンパ球に発現するCD3抗原に対して指向する。いくつかの場合において、投与により抗BCMA/抗CD3 REGN5458は細胞傷害性Tリンパ球(CTL)上のCD3とBCMA発現腫瘍細胞上のBCMAの両方に結合する。いくつかの場合において、このことがCTLを活性化し、BCMA発現腫瘍細胞にリダイレクトし、BCMA発現腫瘍細胞のCTL媒介性死につながる。
【0171】
TNB-383Bは、腫瘍関連抗原BCMAとTリンパ球に存在するCD3抗原に対する二重特異性抗体である。TNB-383Bは、片方の腕に2つのaBCMA部位、片方の腕に1つのaCD3部位、そしてサイレンシングされたIgG4 Fcから構成される。いくつかの場合において、抗aBCMA/aCD3 T細胞関与二重特異性抗体TNB-383Bを投与すると、この二重特異性抗体は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)上のCD3およびBCMA発現腫瘍細胞上に見られるBCMAの両方に結合する。いくつかの場合において、CTLを活性化し、BCMA発現腫瘍細胞にリダイレクトし、BCMA発現腫瘍細胞のCTL介在性細胞死をもたらす。
【0172】
用量
いくつかの場合において、治療上有効な用量の配列番号1に係るCDRH1;配列番号2に係るCDRH2;配列番号3に係るCDRH3;配列番号4に係るCDRL1;配列番号5に係るCDRL2;および配列番号6に係るCDRL3を含む抗BCMA抗原結合タンパク質と、T細胞エンゲージャーとを含む、ガンの治療において使用するための組み合わせが本明細書に提供される。
【0173】
いくつかの場合において、治療上有効な用量の配列番号7に係る重鎖可変領域(VH);および配列番号8に係る軽鎖可変領域(VL)を含む抗BCMA抗原結合タンパク質と、T細胞エンゲージャーとを含む、ガンの治療において使用するための組み合わせが本明細書に提供される。
【0174】
いくつかの場合において、治療上有効な用量の配列番号9に係る重鎖(V);および配列番号10に係る軽鎖(V)を含む抗BCMA抗原結合タンパク質と、T細胞エンゲージャーとを含む、ガンの治療において使用するための組み合わせが本明細書に提供される。
【0175】
いくつかの実施態様において、本明細書に開示される抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号19、23または27の重鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号20、24または28の軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号21、25、30または32の重鎖領域を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号22、26、31または33の軽鎖領域を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号19の重鎖可変領域および配列番号20の軽鎖可変領域、配列番号23の重鎖可変領域および配列番号24の軽鎖可変領域、または配列番号27の重鎖可変領域および配列番号28の軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号21の重鎖領域および配列番号22の軽鎖、配列番号25の重鎖領域および配列番号26の軽鎖、配列番号30の重鎖領域および配列番号31の軽鎖、または配列番号32の重鎖領域および配列番号33の軽鎖を含む。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される抗BCMA抗原結合タンパク質は、配列番号29を含むscFv-fcである。
【0176】
いくつかの場合において、本明細書に開示される組み合わせは、医薬製剤中にある場合、単位用量形態で存在する。いくつかの実施態様において、用量レジメンは、医療専門家および/または臨床的要因によって決定される。医療技術において周知であるように、任意の1人の患者に対する投与量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与される組み合わせ、性別、投与時間および投与経路、一般的な健康状態、ならびに同時に投与される他の薬剤を含む多くの要因に依存する。例示的な投与量は、治療される個人の体格および健康状態、ならびに治療される状態に応じて変化しうる。
【0177】
本明細書に記載の抗BCMA抗原結合タンパク質の好適な用量は、患者の体重に応じて計算することができ、例えば、好適な用量は、約0.1mg/kg~約20mg/kg、例えば、約1mg/kg~約20mg/kg、例えば、約10mg/kg~約20mg/kg、または、例えば、約1mg/kg~約15mg/kg、例えば、約10mg/kg~約15mg/kgの範囲である。
【0178】
いくつかの場合において、抗BCMA抗原結合タンパク質の治療上有効な用量は、約0.03mg/kg~約4.6mg/kgの範囲である。さらに別の実施態様では、抗BCMA抗原結合タンパク質の治療上有効な用量は、0.03mg/kg、0.06mg/kg、0.12mg/kg、0.24mg/kg、0.48mg/kg、0.96mg/kg、1.92mg/kg、2.5mg/kg、3.4mg/kg、または4.6mg/kgである。さらに別の実施態様では、抗BCMA抗原結合タンパク質の治療上有効な用量は、1.9mg/kg、2.5mg/kg、または3.4mg/kgである。
【0179】
いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、0.95mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、1.0mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、1.4mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、1.9mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、1.92mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、2.5mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、3.4mg/kgである。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、1週間に1回上記対象に投与される。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、2週間に1回上記対象に投与される。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、3週間に1回上記対象に投与される。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、4週間に1回上記対象に投与される。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、5週間に1回上記対象に投与される。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、6週間に1回上記対象に投与される。いくつかの実施態様において、上記抗BCMA抗原結合タンパク質の治療上有効な用量が、第1の投与の後、本明細書に記載のより低用量にステップダウンされる。いくつかの実施態様において、上記抗BCMA抗原結合タンパク質の3.4mg/kgの用量が、1.9mg/kg、1.4mg/kg以下にステップダウンされる。いくつかの実施態様において、上記抗BCMA抗原結合タンパク質の2.5mg/kgの用量が、1.9mg/kg、1.4mg/kg以下にステップダウンされる。いくつかの実施態様において、治療上有効な用量の上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、1日目、8日目、およびその後3~12週間に1回上記対象に投与される。
【0180】
本明細書に記載のT細胞エンゲージャーの適切な用量は、患者の体重に応じて計算することができ、例えば、適切な用量は、約0.1mg/kg~約30mg/kg、例えば、約5mg/kg~約20mg/kg、または、例えば、約10mg/kg~約20mg/kgの範囲とすることができる。
【0181】
いくつかの場合において、T細胞エンゲージャーの治療上有効な用量は、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約11mg/kg、約12mg/kg、約13mg/kg、約14mg/kg、約15mg/kg、約16mg/kg、約17mg/kg、約18mg/kg、約19mg/kg、または約20mg/kgである。
【0182】
一態様では、ガンの治療に使用するための、ベランタマブ・マフォドチンとT細胞エンゲージャーとを含む組み合わせが提供され、ここで、ベランタマブ・マフォドチンは、少なくとも約0.5mg/kg、0.95mg/kg、1mg/kg、1.4mg/kg、1.9mg/kg、1.92mg/kg、2.5mg/kg、または3.4mg/kg投与され、T細胞エンゲージャー(例えばセボスタマブ)は、少なくとも約2mg、3mg、3.6mg、10mg、15mg、20mg、50mg、100mg、または150mg投与される。
【0183】
一態様では、ガンの治療に使用するための、ベランタマブ・マフォドチンとT細胞エンゲージャーとを含む組み合わせが提供され、ここで、ベランタマブ・マフォドチンは、21日サイクルの1日目に0.5mg/kg、0.95mg/kg、1mg/kg、1.4mg/kg、1.9mg/kg、1.92mg/kg、2.5mg/kg、または3.4mg/kg投与され、T細胞エンゲージャー(例えばセボスタマブ)は、21日サイクルの1日目に2mg、3mg、3.6mg、10mg、15mg、20mg、50mg、100mg、または150mg投与される。
【0184】
一態様では、ガンの治療に使用するための、ベランタマブ・マフォドチンとT細胞エンゲージャーとを含む組み合わせが提供され、ここで、ベランタマブ・マフォドチンは、21日サイクルの1日目に0.5mg/kg、0.95mg/kg、1mg/kg、1.4mg/kg、1.9mg/kg、1.92mg/kg、2.5mg/kg、または3.4mg/kg投与され、T細胞エンゲージャー(例えばセボスタマブ)は、8日サイクルの1日目に2mg、3mg、3.6mg、10mg、15mg、20mg、50mg、100mg、または150mgに投与される。
【0185】
一態様では、ガンの治療に使用するための、ベランタマブ・マフォドチンとT細胞エンゲージャーとを含む組み合わせが提供され、ここで、ベランタマブ・マフォドチンは、21日サイクルの1日目に0.5mg/kg、0.95mg/kg、1mg/kg、1.4mg/kg、1.9mg/kg、1.92mg/kg、2.5mg/kg、または3.4mg/kg投与され、T細胞エンゲージャー(例えばセボスタマブ)は、15日サイクルの1日目に2mg、3mg、3.6mg、10mg、15mg、20mg、50mg、100mg、または150mg投与される。
【0186】
一態様では、ガンの治療に使用するための、ベランタマブ・マフォドチンとT細胞エンゲージャーとを含む組み合わせが提供され、ここで、ベランタマブ・マフォドチンは、0.5mg/kg、0.95mg/kg、1mg/kg、1.4mg/kg、1.9mg/kg、1.94、mg/kg、2.5mg/kg、または3.4mg/kg投与され、投与量の半分が21日サイクルの1日目に投与され、投与量の半分が21日サイクルの8日目に投与され;そしてT細胞エンゲージャー(例えばセボスタマブ)は、2mg、3mg、3.6mg、10mg、15mg、20mg、50mg、100mg、または150mg投与される。
【0187】
一態様では、多発性骨髄腫の治療に使用するための、ベランタマブ・マフォドチンとT細胞エンゲージャーとを含む組み合わせが提供され、ここでベランタマブ・マフォドチンは、0.5mg/kg、0.95mg/kg、1mg/kg、1.4mg/kg、1.9mg/kg、1.92mg/kg、2.5mg/kg、または3.4mg/kg投与され、T細胞エンゲージャー(例えば、セボスタマブ)は、2mg、3mg、3.6mg、10mg、15mg、20mg、50mg、100mg、または150mg投与される。
【0188】
一態様では、多発性骨髄腫の治療に使用するための、ベランタマブ・マフォドチンとT細胞エンゲージャーとを含む組み合わせが提供され、ここでベランタマブ・マフォドチンは、0.5mg/kg、0.95mg/kg、1mg/kg、1.4mg/kg、1.9mg/kg、1.92mg/kg、2.5mg/kg、または3.4mg/kg投与され、投与量の半分が21日サイクルの1日目に投与され、投与量の半分が21日サイクルの8日目に投与され;そしてT細胞エンゲージャー(例えばセボスタマブ)は、21日サイクルの1~7日目に2mg、3mg、3.6mg、10mg、15mg、20mg、50mg、100mg、または150mg投与される。
【0189】
いくつかの場合において、対象は、少なくとも1つの以前のガン治療を受けたことがある。いくつかの場合において、治療上有効な用量の組成物は、少なくとも約1~60日に1回上記対象に投与される。いくつかの場合において、治療上有効な用量の組成物は、少なくとも約21日に1回上記対象に投与される。いくつかの場合において、組成物の治療上有効な用量は、少なくとも約8日に1回上記対象に投与される。
【0190】
投与経路
いくつかの場合において、(i)抗BCMA抗原結合タンパク質またはBCMAポリペプチドに対する結合特異性を有するADCを含むポリペプチドと、(ii)1つ以上のT細胞エンゲージャーとを、同時に(例えば、単一の組成物において)哺乳動物に投与することができる。いくつかの場合において、(i)抗BCMA抗原結合タンパク質またはBCMAポリペプチドに対する結合特異性を有するADCを含むポリペプチドと、(ii)1つ以上のT細胞エンゲージャーとを別々に対象に投与することができる。別々に投与される場合、これは、任意の順序で(同じ投与経路または異なる投与経路によって)同時にまたは逐次的に起こりうる。このような逐次投与は、時間的に近接していてもよいし、時間的に離れていてもよい。上記組み合わせまたはその医薬組成物の治療剤およびさらなる治療活性薬剤の用量、ならびに投与の相対的なタイミングは、所望の組み合わせ治療効果を達成するために選択される。
【0191】
いくつかの実施態様において、投与量は、単回または複数回、例えば、毎日、毎週、隔週、または毎月、1時間ごとに投与されるか、または治療される疾患または状態の再発、再燃、または進行時に投与される。いくつかの実施態様において、用量の投与は、約2時間~約24時間、例えば、約2時間~約12時間、または約2時間~約6時間の期間にわたる緩徐連続注入によって行うことができる。
【0192】
いくつかの実施態様において、本明細書に開示される医薬組成物は、非経口投与、経皮投与、腔内投与、動脈内投与、髄腔内投与、および/または鼻腔内投与、または組織への直接注入のための組み合わせを含む。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、注入または注射により患者に投与される。ある実施態様では、静脈内投与のための、BCMA結合タンパク質およびT細胞エンゲージャーを含む医薬組成物が提供される。ある実施態様において、皮下投与のためのBCMA結合タンパク質およびT細胞エンゲージを含む医薬組成物が提供される。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の医薬組成物は、経動脈的、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射、静脈内(i.v.)注入、または腹腔内によって対象に投与される。いくつかの実施態様において、上記組み合わせは、皮内または皮下注射によって対象に投与される。
【0193】
一実施態様では、上記組み合わせの1つ以上の治療剤が静脈内投与される。別の実施態様において、上記組み合わせの1つ以上の治療剤は、腫瘍内に投与される。別の実施態様では、上記組み合わせの1つ以上の治療剤が経口投与される。別の実施態様では、上記組み合わせの1つ以上の治療剤が全身投与、例えば静脈内投与され、上記組み合わせの1つ以上の他の治療剤が腫瘍内投与される。別の実施態様において、本明細書に開示される組み合わせのすべての治療剤は、全身的に、例えば静脈内に投与される。代替的な実施態様では、本明細書に記載される組み合わせのすべての治療剤は、腫瘍内に投与される。いずれの実施態様においても(例えば本項において)、本開示の治療剤は、1つ以上の医薬組成物として投与される。
【0194】
医薬組成物
いくつかの実施態様において、医薬組成物は、有効量のBCMA結合タンパク質+T細胞エンゲージャーが薬学的に許容可能な担体との混合物中に組み合わされるような、対象に投与される薬学的に許容可能な組成物の調製のためのそれ自体公知の方法によって、調製される。適切な担体は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa., USA, 2000)に記載されている。これに基づいて、組成物は、排他的ではないが、1つ以上の薬学的に許容可能な担体または希釈剤に関連した物質の溶液を含み得、適切なpHを有し、生理学的流体と等浸透圧の緩衝溶液中に含まれる。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される医薬組成物は酸性である。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される医薬組成物は塩基性である。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、または約14のpHを有しうる。
【0195】
いくつかの実施態様において、好適な薬学的に許容可能な担体には、医薬組成物の生物学的活性の有効性を妨げない、本質的に化学的に不活性で無毒性の組成物が含まれる。好適な薬学的担体の例としては、水、生理食塩水、グリセロール溶液、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、ジオレシルホスホチジル-エタノールアミン(DOPE)、およびリポソームが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、このような組成物は、本明細書に開示される治療上有効な量のBCMA結合タンパク質およびT細胞エンゲージャーを、対象への直接投与のための形態を提供するように、適切な量の担体とともに含む。
【0196】
医薬組成物には、限定されるものではないが、凍結乾燥粉末、または水性もしくは非水性の無菌注射用溶液もしくは懸濁液が含まれ得、これらはさらに、組成物を意図されるレシピエントの組織または血液に実質的に適合させる抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および溶質を含みうる。このような組成物中に存在しうる他の成分としては、例えば、水、界面活性剤(Tweenなど)、アルコール、防腐剤、ポリオール、グリセリンおよび植物油が挙げられる。臨時の注射液および懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、錠剤、または濃縮溶液もしくは懸濁液から調製することができる。
【0197】
本明細書に開示される医薬組成物は、様々な形態に製剤化され、多くの異なる手段によって投与されうる。医薬製剤は、所望により、従来から許容可能な担体、アジュバント、およびビヒクルを含む製剤で、経口的、直腸的、または非経口的に投与されうる。本明細書で使用される「非経口的」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、または軟骨内注射および注入技術を含む。投与は、動脈内、心臓内、脳室内、皮内、十二指腸内、髄内、筋肉内、骨内、腹腔内、髄腔内、血管内、静脈内、硝子体内、硬膜外および皮下)、吸入、経皮、経粘膜、舌下、頬および局所(経皮、経皮、浣腸、点眼、点耳、鼻腔内、膣内を含む)の注射または注入が挙げられる。いくつかの例示的な実施態様において、投与経路は、筋肉内注射、静脈内注射、皮下注射、または腹腔内注射などの注射によるものである。
【0198】
液体製剤には、経口製剤、静脈内製剤、経鼻製剤、眼用製剤、耳用製剤、エアロゾルなどが含まれうる。特定の実施態様において、種々の製剤の組み合わせが投与される。特定の実施態様において、組成物は、徐放プロファイルのために処方化される。
【0199】
本開示の医薬組成物は、他の治療薬または治療と組み合わせて投与されうる。いくつかの実施態様において、対象に対する治療は、手術、放射線、化学療法、栄養療法、身体活動、免疫療法、医薬組成物、細胞移植、血液融合、またはそれらの任意の組み合わせでありうる。いくつかの場合において、本明細書に開示される組み合わせは、ガンを治療するために使用される1つ以上の追加の薬剤/療法とともに、ガンを有する哺乳動物に投与される。ガンを治療するために使用される追加の薬剤/療法の例としては、限定されないが、手術、放射線療法、化学療法、標的療法(例えば、モノクローナル抗体療法)、ホルモン療法、血管新生阻害剤、免疫抑制剤、チェックポイント遮断療法(例えば、抗PD-1抗体療法、抗PD-L1抗体療法、および/または抗CTLA4抗体療法)、骨髄移植が挙げられる。
【0200】
いくつかの実施態様において、本明細書に開示される組み合わせ/製剤は安定である。いくつかの実施態様において、「安定な」製剤とは、その中の組み合わせが、保存時にその物理的および/または化学的安定性および/または生物学的活性を本質的に保持するものである。タンパク質の安定性を測定するための様々な分析技術が当該技術分野で利用可能であり、Peptide and Protein Drug Delivery, 247-301, Vincent Lee Ed., Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., Pubs (1991)およびJones, A. Adv. Drug Delivery Rev. 10: 29-90 (1993)などに概説されている。安定性は、選択された期間、選択された温度で測定されうる。いくつかの実施態様において、製剤は、周囲温度または40℃で少なくとも1ヶ月間安定であり、および/または2~8℃で少なくとも1~2年間安定である。いくつかの実施態様において、製剤は、凍結(例えば、-700℃まで)および解凍後も安定である。いくつかの実施態様において、タンパク質は、色および/または透明度の目視検査によって観察されるように、またはUV光散乱(可視凝集体を測定する)もしくはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定されるように、凝集、沈殿および/または変性においてほとんど変化を示さない場合、製剤中で「その物理的安定性を保持する」。SECは、必ずしも可視凝集体の前駆体ではない可溶性凝集体を測定する。いくつかの実施態様において、所与の時間における化学的安定性が、タンパク質がその生物学的活性を保持すると考えられるようなものである場合、タンパク質は、製剤において「その化学的安定性を保持する」。化学的に分解された種は、生物学的に活性であっても化学的に不安定であってもよい。化学的安定性は、タンパク質の化学的に変化した形態を検出し、定量することにより評価することができる。化学的変化は、例えば、SEC、SDS-PAGEおよび/またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間型質量分析法(MALDI/TOF MS)を用いて評価することができるサイズ修飾(例えば、クリッピング)を含むことができる。他のタイプの化学変化としては、電荷変化(例えば脱アミド化の結果として起こる)があり、これは例えばイオン交換クロマトグラフィーで評価できる。
【0201】
いくつかの実施態様において、BCMA結合タンパク質は、所定の時間におけるBCMA結合タンパク質の生物学的活性が、例えば抗原結合アッセイにおいて決定されるように、医薬製剤が調製された時点で示された生物学的活性の約10%以内(アッセイの誤差の範囲内)である場合、医薬製剤において「その生物学的活性を保持する」。いくつかの実施態様において、T細胞エンゲージャーは、所定の時間におけるT細胞エンゲージャーの生物学的活性が、例えば抗原結合アッセイにおいて決定された、医薬製剤が調製された時点で示された生物学的活性の約10%以内(アッセイの誤差の範囲内)である場合、医薬製剤において「その生物学的活性を保持する」。
【0202】
いくつかの実施態様において、本明細書に開示される緩衝剤は、その酸塩基共役成分の作用によってpHの変化に抵抗する緩衝溶液を指す。いくつかの実施態様において、緩衝剤は、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸でありうる。いくつかの実施態様において、緩衝剤は、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、ビシン、トリシン、リンゴ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸、またはそれらの混合物からなる群より選択される。本明細書に開示される組成物は、アスコルビン酸および/またはメチオニンを含む抗酸化剤を含みうる。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される組成物は、保存剤を含む。いくつかの実施態様において、保存剤は、その中の細菌を含む微生物の作用を本質的に低減するために製剤に含まれうる化合物であり、したがって、例えば、多用途製剤の製造を容易にする。潜在的な防腐剤の例としては、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシン;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンのようなアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトールのような糖;ナトリウムのような塩形成性対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);および/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0203】
いくつかの実施態様において、本明細書に開示される組み合わせは、化学療法剤、細胞毒性剤、サイトカイン、成長阻害剤、抗ホルモン剤、および/または心臓保護剤をさらに含みうる。このような分子は、好適には、意図される目的に有効な量で組み合わせて存在する。
【0204】
いくつかの実施態様において、本明細書に開示される組み合わせは、徐放性製剤において調製される。徐放性製剤の好適な例としては、組み合わせまたはその一部を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成形品、例えばフィルム、またはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタミン酸のコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、ルプロン・デポ(商標)(乳酸-グリコール酸共重合体と酢酸リュープロリドからなる注射用ミクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸共重合体、ポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0205】
いくつかの実施態様において、BCMA結合タンパク質と、1mg/ml~500mg/mlの濃度で存在するT細胞エンゲージャーとを含む医薬組成物が本明細書に開示され、上記医薬組成物は、2.0~10.0のpHを有する。医薬組成物は、緩衝剤、保存剤、強壮剤、キレート剤、安定剤および界面活性剤をさらに含んでもよい。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、水性製剤、例えば、水を含む製剤である。このような製剤は、典型的には、溶液または懸濁液である。さらなる実施態様において、医薬製剤は水溶液である。いくつかの実施態様において、水性製剤は、少なくとも50%w/wの水を含む製剤である。いくつかの実施態様において、水溶液は、少なくとも50%w/wの水を含む溶液として定義される。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、本明細書に記載の組み合わせを含む安定な液体水性医薬製剤である。
【0206】
医薬組成物はまた、治療的に活性な組み合わせの安定性をさらに高めることができる、追加の安定化剤を含むことができる。安定化剤としては、メチオニンの酸化からポリペプチドを保護するメチオニンおよびEDTA、ならびに凍結融解または機械的剪断に伴う凝集からポリペプチドを保護する非イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、界面活性剤をさらに含みうる。界面活性剤は、洗剤、エトキシル化ヒマシ油、ポリグリコール化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックポリマー(例えば、PLURONIC F68、ポロクサマー188および407、Triton X-100などのポロクサマー)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンおよびアルキル化およびアルコキシル化誘導体(Tween、例えば、Tween-20、Tween-40、Tween-80およびBrij-35)などのポリエチレン誘導体、モノグリセリドまたはそのエトキシル化誘導体、ジグリセリドまたはそのポリオキシエチレン誘導体、アルコール、グリセロール、レクチンおよびリン脂質(例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロールおよびスフィンゴミエリン)、リン脂質の誘導体(例えば、ジパルミトイルホスファチジン酸)およびリゾリン脂質(例えば、パルミトイルリゾホ)スファチジル-L-セリンおよび1-アシル-sn-グリセロ-3-エタノールアミン、コリン、セリンまたはスレオニンのリン酸エステル)およびリゾホスファチジルおよびホスファチジルコリンのアルキル、アルコキシル(アルキルエステル)、アルコキシ(アルキルエーテル)誘導体、例えば、リゾホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンのラウロイルおよびミリストイル誘導体、および極性頭部基の修飾体(つまりコリン、エタノールアミン、ホスファチジン酸、セリン、スレオニン、グリセロール、イノシトール、および正に荷電したDODAC、DOTMA、DCP、BISHOP)、リゾホスファチジルセリンおよびリゾホスファチジルスレオニン、およびグリセロリン脂質(例えば、セファリン)、グリセロ糖脂質(例えば、ガラクトピランソイド)、スフィンゴ糖脂質(例えば、セラミド、ガングリオシド)、ドデシルホスホコリン、鶏卵リゾレシチン、フシジン酸誘導体(例えば、タウロジヒドロフシド酸ナトリウムなど)、長鎖脂肪酸およびその塩、C6~C12(例えば、オレイン酸およびカプリル酸)、アシルカルニチンおよび誘導体、リジン、アルギニンもしくはヒスチジンのN-アシル化誘導体、またはリジンもしくはアルギニンの側鎖アシル化誘導体、リジン、アルギニンまたはヒスチジンと中性または酸性アミノ酸との任意の組み合わせ含むジペプチドのN-アシル化誘導体、中性アミノ酸と2つの荷電アミノ酸との任意の組み合わせを含むトリペプチドのN-アシル化誘導体、DSS(ドキュセートナトリウム、CAS登録番号[577-11-7])、ドキュセートカルシウム、CAS登録番号[128-49-4])、ドキュセートカリウム、CAS登録番号[7491-09-0])、SDS(ドデシル硫酸ナトリウムまたはラウリル硫酸ナトリウム)、カプリル酸ナトリウム、コール酸、またはその誘導体、胆汁酸およびその塩、ならびにグリシンまたはタウリン結合体、ウルソデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココ酸ナトリウム、N-ヘキサデシル-N,N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホネート、アニオン性(アルキル)-アリールスルホネート)一価界面活性剤、両性イオン界面活性剤(例えば、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホネート、3-コールアミド-1-プロピルジメチルアンモニオ-1-プロパンスルホネート、カチオン性界面活性剤(第4級アンモニウム塩基)(例えば、セチル)-臭化トリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム)、非イオン性界面活性剤(ドデシルβ-D-グルコピラノシドなど)、ポロキサミン(テトロニクスなど)、エチレンジアミンへのプロピレンオキシドとエチレンオキシドの連続付加から誘導される4官能性ブロックコポリマーから選択されてもよいし、界面活性剤は、イミダゾリン誘導体またはそれらの混合物の群から選択されてもよい。
【0207】
キット
使用説明書とともに医薬組成物を含むキットオブパーツ(kit-of-parts)がさらに提供される。便宜上、キットオブパーツは、使用説明書とともに所定量の試薬を含んでいてもよい。
【0208】
いくつかの実施態様において、BCMA結合タンパク質および本明細書に開示されるT細胞エンゲージャーを含むキットが本明細書に開示される。上記キットは、複数のシリンジ、アンプル、ホイルパック、またはブリスターパックを含み得、各々が、本明細書に記載されるキット成分の単回単位用量を含む。キットの容器は、気密性、防水性(例えば、水分または蒸発の変化に対して不透過性)、および/または光密閉性であってもよい。上記キットは、成分の投与に適したデバイス、例えば、注射器、吸入器、ピペット、鉗子、計量スプーン、スポイト(例えば、点眼器)、綿棒(例えば、綿棒または木製の綿棒)、または任意のそのような送達デバイスを含みうる。いくつかの実施態様において、上記デバイスは、医療用インプラントデバイス、例えば、外科的挿入用に包装されたものであってもよい。本明細書に開示されるキットは、上記方法の実施を可能にする1つ以上の試薬または器具を含んでもよい。
【0209】
上記の構成要素に加えて、使用説明書がキット中に提供されてもよい。これらの説明書は、適切な媒体または基材(例えば、情報が印刷された紙片または紙片)上の印刷情報、キットの包装中、パッケージ挿入物中など、様々な形態でキット中に存在しうる。いくつかの実施態様において、使用説明書は、情報が記録されたコンピュータ可読媒体(例えば、ジャンプ/サムドライブ、CDなど)、またはインターネットを介してウェブサイトにアクセスするために使用されうるウェブサイトのアドレスで提供されうる。
【0210】
デバイス
本開示の別の態様では、本明細書に記載のBCMA抗原結合タンパク質、T細胞エンゲージャーまたは組み合わせを含む、プレフィルドシリンジまたは自動注射デバイスを提供する。いくつかの実施態様において、容器、プレフィルドシリンジ、注射器または自動注射デバイスに保存される組み合わせは、本明細書に記載のBCMA抗原結合タンパク質およびT細胞エンゲージャーを含む。
【実施例
【0211】
実施例1:ガンの治療
対象がガンであると同定される。対象には、(a)抗BCMA抗原結合タンパク質または抗BCMA ADCと、(b)T細胞エンゲージャーとを含む組み合わせが投与される。
【0212】
実施例2:ガンの治療
対象がガンであると同定される。対象には、(a)抗BCMA抗原結合タンパク質または抗BCMA ADC、および(b)T細胞エンゲージャーが、共投与される別々の組成物で投与される。例えば、ガンを有する対象には、BCMAポリペプチドに対する結合特異性を有する1つ以上のADCを含む第1の組成物と、1つ以上のT細胞エンゲージャーを含む第2の組成物を共投与する。
【0213】
実施例3:ガンの治療
対象がガンであると同定される。対象には、(a)抗BCMA抗原結合タンパク質または抗BCMA ADC、および(b)T細胞エンゲージャーが、別々に投与される別々の組成物で投与される。例えば、ガンを有する対象には、BCMAポリペプチドに対する結合特異性を有する1つ以上のADCを含む第1の組成物と、1つ以上のT細胞エンゲージャーを含む第2の組成物とが別々に投与される。
【0214】
実施例4:ガンの治療
対象がガンであると同定される。対象には、ベランタマブ・マフォドチンとセボスタマブを含む組み合わせが投与される。
【0215】
他の実施態様
本発明をその詳細な説明と併せて説明したが、前述の説明は、本発明の範囲を例示することを意図したものであり、限定するものではないことを理解されたい。他の態様、利点、および変更は、以下の特許請求の範囲に含まれる。
【0216】
実施態様
1.a.抗BCMA抗原結合タンパク質;および
b.CD3に結合するT細胞エンゲージャー;
を含む、組み合わせ。
【0217】
2.上記抗BCMA抗原結合タンパク質が抗体を含む、実施態様1に記載の組み合わせ。
【0218】
3.上記抗体がモノクローナル抗体である、実施態様2に記載の組み合わせ。
【0219】
4.上記モノクローナル抗体がIgG1である、実施態様3に記載の組み合わせ。
【0220】
5.上記抗体が脱フコシル化されている、実施態様2~4のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0221】
6.上記抗BCMA抗原結合タンパク質がヒト、ヒト化またはキメラである、実施態様1~5のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0222】
7.上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むCDRH1;配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むCDRH2;配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むCDRH3;配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むCDRL1;配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むCDRL2;および配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むCDRL3を含む、実施態様1~6のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0223】
8.上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH);および配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、実施態様1~7のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0224】
9.上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む重鎖(H);および配列番号10に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖(L)を含む、実施態様1~8のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0225】
10.上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、免疫コンジュゲートである、実施態様1~9のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0226】
11.上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、細胞毒に結合した抗体を含む免疫コンジュゲートである、実施態様1~10のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0227】
12.上記細胞毒がMMAEまたはMMAFである、実施態様11に記載の組み合わせ。
【0228】
13.上記細胞毒がMMAFである、実施態様12に記載の組み合わせ。
【0229】
14.上記細胞毒が、パクリタキセル、ドセタキセル、CC-1065、SN-38、トポテカン、モルホリノ-ドキソルビシン、リゾキシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、ドラスタチン-10、エキノマイシン、コンブレタタスタチン、カリケアマイシン、ネトロプシン、アウリスタチン、メイタンシノイド、カリケアマイシン、AFP、MMAP、MMAE、AEB、AEVB、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、VP-16、カンプトテシン、エポチロンA、エポチロンB、ノコダゾール、コルヒチン、コルシミド、エストラムスチン、セマドチン、ディスコデルモライド、マイタンシノール、メイタンシン、DM1、DM2、DM3、DM4またはエレイセロビンである、実施態様11に記載の組み合わせ。
【0230】
15.上記抗BCMA抗原結合タンパク質がベランタマブ・マフォドチンである、実施態様1~14のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0231】
16.少なくとも約0.5mg/kg、0.95mg/kg、1mg/kg、1.4mg/kg、1.9mg/kg、1.92mg/kg、2.5mg/kgまたは約3.4mg/kgのベランタマブ・マフォドチンを含む、実施態様15に記載の組み合わせ。
【0232】
17.上記T細胞エンゲージャーが二重特異性T細胞エンゲージャーである、実施態様1~16のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0233】
18.上記T細胞エンゲージャーが、セボスタマブ、タルクエタマブ、テクリスタマブ、PF-3135、TNB-383B、REGN5458、ブリナツモマブおよびソリトマブからなる群より選択される、実施態様1~17のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0234】
19.上記T細胞エンゲージャーが抗FcRH5 T細胞エンゲージャーである、実施態様1~17のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0235】
20.上記T細胞エンゲージャーがセボスタマブである、実施態様19に記載の組み合わせ。
【0236】
21.少なくとも約1.5mg、2mg、3mg、3.6mg、10mg、15mg、20mg、90mgまたは132mgのセボスタマブを含む、実施態様19に記載の組み合わせ。
【0237】
22.上記T細胞エンゲージャーが抗GPRC5D T細胞エンゲージャーである、実施態様1~17のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0238】
23.上記T細胞エンゲージャーがタルクエタマブである、実施態様22に記載の組み合わせ。
【0239】
24.上記T細胞エンゲージャーが抗BCMA T細胞エンゲージャーである、実施態様1~17のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0240】
25.上記T細胞エンゲージャーが、テクリスタマブ、PF-3135、TNB-383BおよびREGN5458からなる群より選択される、実施態様1~17のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0241】
26.上記T細胞エンゲージャーが、CC-93269、AMG701、AMG420、JNJ-7957およびGBR1342からなる群より選択される、実施態様1~17のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0242】
27.上記T細胞エンゲージャーがICOSに結合しない、実施態様1~17のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0243】
28.上記T細胞エンゲージャーがCD38に結合しない、実施態様1~17のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0244】
29.薬学的に許容可能な坦体を含む、実施態様1~28のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0245】
30.アジュバントをさらに含む、実施態様1~29のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0246】
31.ガンの治療を必要とする対象においてガンを治療する方法であって、治療上有効な用量の実施態様1~30のいずれか一項に記載の組み合わせを対象に投与することを含む、方法。
【0247】
32.ガンの治療を必要とする対象においてガンを治療する方法であって、治療上有効な用量の実施態様1~30のいずれか一項に記載の組み合わせを対象に投与することを含み、抗BCMA抗原結合タンパク質の用量が第1の投与の後に低用量にステップダウンされる、方法。
【0248】
33.上記ガンが、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症および非ホジキンリンパ腫からなる群より選択される、実施態様31または32に記載の方法。
【0249】
34.上記ガンが多発性骨髄腫である、実施態様31~33のいずれか一項に記載の方法。
【0250】
35.上記ガンが再発性および/または難治性の多発性骨髄腫である、実施態様31または32に記載の方法。
【0251】
36.上記対象が少なくとも一つの以前のガン治療を受けている、実施態様31~35のいずれか一項に記載の方法。
【0252】
37.上記治療上有効な用量が少なくとも約21日に1回上記対象に投与される、実施態様31~36のいずれか一項に記載の方法。
【0253】
38.上記治療上有効な用量の組み合わせ治療を投与することが、治療上有効な用量の抗BCMA抗原結合タンパク質を単独で投与することと比較して、眼毒性を低減する、実施態様31~37のいずれか一項に記載の方法。
【0254】
39.上記抗BCMA抗原結合タンパク質がベランタマブ・マフォドチンである、実施態様38に記載の方法。
【0255】
40.上記眼毒性が、角膜上皮の変化、ドライアイ、刺激、充血、霧視、ドライアイ、羞明、または視力の変化のうちの少なくとも一つである、実施態様38または39に記載の方法。
【0256】
41.上記眼毒性が、以下の方法のうちの少なくとも一つ:
最良矯正視力、最良矯正視力を得るために使用される自覚的屈折の文書および方法、現在の処方された眼鏡(使用可能な場合)、眼圧測定、角膜および水晶体検査のフルオレセイン染色を含む前部(スリットランプ)検査、拡張眼底検査、または眼表面疾患指数(OSDI)
により測定される、実施態様38~40のいずれか一項に記載の方法。
【0257】
42.上記抗BCMA抗原結合タンパク質が、少なくとも約0.5mg/kg、0.95mg/kg、1mg/kg、1.25mg/kg、1.4mg/kg、1.7mg/kg、1.9mg/kg、1.92mg/kg、2.5mg/kgまたは3.4mg/kgの用量で上記対象に投与される、実施態様31~41のいずれか一項に記載の方法。
【0258】
43.ガンの治療用医薬の製造における使用のための、実施態様1~30のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0259】
44.ガンの治療における使用のための、実施態様1~30のいずれか一項に記載の組み合わせ。
【0260】
45.a.実施態様1~30のいずれか一項に記載の組み合わせ;および
b.ガンの治療における使用のための説明書;
を含む、ガンの治療における使用のためのキット。
【0261】
46.実施態様1~30のいずれか一項に記載の組み合わせを含む、プレフィルドシリンジまたは自動注射デバイス。
【0262】
配列表
【0263】
配列番号1:CDRH1
【化3】
【0264】
配列番号2:CDRH2
【化4】
【0265】
配列番号3:CDRH3
【化5】
【0266】
配列番号4:CDRL1
【化6】
【0267】
配列番号5:CDRL2
【化7】
【0268】
配列番号6:CDRL3
【化8】
【0269】
配列番号7:重鎖可変領域
【化9】
【0270】
配列番号8:軽鎖可変領域
【化10】
【0271】
配列番号9:重鎖領域
【化11】
【0272】
配列番号10:軽鎖領域
【化12】
【0273】
配列番号11:FCRL5標的:重鎖可変
【化13】
【0274】
配列番号12:FCRL5標的:軽鎖可変
【化14】
【0275】
配列番号13:CD3標的:重鎖可変
【化15】
【0276】
配列番号14:CD3標的:軽鎖可変
【化16】
【0277】
配列番号15:FCRL5標的:重鎖
【化17】
【0278】
配列番号16:FCRL5標的:軽鎖
【化18】
【0279】
配列番号17:CD3標的:重鎖
【化19】
【0280】
配列番号18:CD3標的:軽鎖
【化20】
【0281】
配列番号19:BQ76重鎖可変領域
【化21】
【0282】
配列番号20:BQ76軽鎖可変領域
【化22】
【0283】
配列番号21:BQ76重鎖領域
【化23】
【0284】
配列番号22:BQ76軽鎖領域
【化24】
【0285】
配列番号23:BU76重鎖可変領域
【化25】
【0286】
配列番号24:BU76軽鎖可変領域
【化26】
【0287】
配列番号25:BU76重鎖領域
【化27】
【0288】
配列番号26:BU76軽鎖領域
【化28】
【0289】
配列番号27:EE11重鎖可変領域
【化29】
【0290】
配列番号28:EE11軽鎖可変領域
【化30】
【0291】
配列番号29:EE11 scFV-Fc
【化31】
【0292】
配列番号30:EM90重鎖
【化32】
【0293】
配列番号31:EM90軽鎖
【化33】
【0294】
配列番号32:FP31重鎖領域
【化34】
【0295】
配列番号33:FP31軽鎖領域
【化35】
【配列表】
2024521187000001.app
【国際調査報告】