(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】棒材状の鋼を製造する設備および方法
(51)【国際特許分類】
B21B 1/16 20060101AFI20240521BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20240521BHJP
C22C 38/04 20060101ALI20240521BHJP
C22C 38/58 20060101ALI20240521BHJP
C21D 8/06 20060101ALI20240521BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20240521BHJP
B21B 38/00 20060101ALI20240521BHJP
B21B 37/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B21B1/16 B
C22C38/00 301Y
C22C38/04
C22C38/58
C21D8/06 A
B21C51/00 R
B21B38/00 F
B21B37/00 272
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023573277
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2022058216
(87)【国際公開番号】W WO2022248103
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】102021205431.5
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ケーベリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ レドルフィ
【テーマコード(参考)】
4E002
4E124
4K032
【Fターム(参考)】
4E002AC12
4E002AC14
4E002BD03
4E002BD07
4E124BB02
4E124BB05
4E124BB06
4E124BB07
4E124BB08
4E124EE21
4K032AA04
4K032AA05
4K032AA11
4K032AA14
4K032AA16
4K032AA19
4K032AA21
4K032AA23
4K032AA27
4K032AA28
4K032AA29
4K032AA31
4K032BA02
4K032CA01
4K032CB02
4K032CC02
4K032CC03
4K032CE01
(57)【要約】
本願は、長尺鋼半製品(2)を熱機械的に圧延する設備(1)および方法であって、第1の圧延装置(5)と、搬送方向で第1の圧延装置(5)の下流に配置される第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック(8)と、第1の圧延装置(5)と第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック(8)との間に配置される第1の冷却装置(6)と、搬送方向で第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック(8)の下流に配置される切断装置(14)と、第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック(8)と切断装置(14)との間に配置される第2の冷却装置(11)と、搬送方向で切断装置(14)の下流に配置されるコイル巻回装置(13)と、を備える設備(1)および方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺鋼半製品(2)を熱機械的に圧延する設備(1)であって、
第1の圧延装置(5)と、
搬送方向で前記第1の圧延装置(5)の下流に配置される第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック(8)と、
前記第1の圧延装置(5)と前記第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック(8)との間に配置される第1の冷却装置(6)と、
搬送方向で前記第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック(8)の下流に配置される切断装置(14)と、
前記第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック(8)と前記切断装置(14)との間に配置される第2の冷却装置(11)と、
搬送方向で前記切断装置(14)の下流に配置されるコイル巻回装置(13)と、
を備える、設備(1)。
【請求項2】
さらに、前記第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック(8)と前記第2の冷却装置(11)との間に配置される第2の熱機械的なサイジング圧延ブロック(8.2)であって、場合によっては、両前記サイジング圧延ブロック(8.1,8.2)間に配置される中間冷却装置(10)を有する第2の熱機械的なサイジング圧延ブロック(8.2)を備える、請求項1記載の設備(1)。
【請求項3】
前記第1の冷却装置(6)は、少なくとも1つのウォータボックス、好ましくは、2つのウォータボックスを有する、請求項1または2記載の設備(1)。
【請求項4】
前記第2の冷却装置(11)は、少なくとも2つのウォータボックス、好ましくは、少なくとも3つのウォータボックス、なおもさらに好ましくは、少なくとも4つのウォータボックスを有し、前記ウォータボックスは、それぞれ互いに離間して配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の設備(1)。
【請求項5】
前記熱機械的なサイジング圧延ブロック(8.1,8.2)の各々は、1スタンド、2スタンド、4スタンド、6スタンドおよび/または8スタンドに形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の設備(1)。
【請求項6】
前記コイル巻回装置(13)は、縦型のコイル巻回装置として形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の設備(1)。
【請求項7】
さらに、組織センサ装置(15)であって、搬送方向で前記コイル巻回装置(13)の直前に、前記切断装置(14)の直前に、かつ/または搬送方向で前記第2の冷却装置(11)の後、場合によっては直後に配置されている組織センサ装置(15)を備える、請求項1から6までのいずれか1項記載の設備(1)。
【請求項8】
前記組織センサ装置(15)は、超音波測定装置、レントゲン線測定装置、レーダビーム測定装置および/または電磁式の測定装置を有する、請求項7記載の設備(1)。
【請求項9】
前記組織センサ装置(15)は、開ループおよび/または閉ループ制御装置に、前記冷却装置(6,10,11)内の温度、前記設備(1)のそれぞれの圧延ユニット(5,8,8.1,8.2)内の圧延温度および/または圧延速度を調整すべく、連結されている、請求項7または8記載の設備(1)。
【請求項10】
長尺鋼半製品(2)から、特に、少なくとも300MPaの降伏点、好ましくは、少なくとも400MPaの降伏点を有する、棒材状の鋼(3)を製造する方法であって、
まず、加熱した、場合によっては少なくとも900℃の温度に加熱した前記長尺鋼半製品(2)を第1の圧延装置(5)内で前圧延し、前記第1の圧延装置(5)に続く第1の冷却装置(6)内で少なくとも850℃の温度に冷却し、
続いて、搬送方向で前記第1の冷却装置(6)の下流に配置される第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック(8)内で前記棒材状の鋼(3)へと仕上げ圧延し、前記棒材状の鋼(3)を、前記第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック(8)に続く第2の冷却装置(11)内で400℃~600℃の範囲の温度に冷却し、
続いて、搬送方向で前記第2の冷却装置(11)の下流に配置される切断装置(14)内で事前二次加工し、
次いで、搬送方向で前記切断装置(14)の下流に配置されるコイル巻回装置(13)に供給し、巻回して、鉛直かつ/または水平に巻回したコイルを形成する、
方法。
【請求項11】
前記長尺鋼半製品(2)を700~850℃の範囲の温度で仕上げ圧延する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記棒材状の鋼製品(3)を450~550℃の範囲の温度で前記コイル巻回装置(13)のマンドレル上に巻く、請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
棒材状の鋼(3)であって、好ましくは、請求項10から12までのいずれか1項記載の方法にしたがって製造され、特に、少なくとも300MPaの降伏点、好ましくは、少なくとも400MPaの降伏点を有し、最大15.0面積%のマルテンサイトの割合を有する、棒材状の鋼(3)。
【請求項14】
質量%で、
炭素:0.04~0.35、
ケイ素:0.10~0.80、
マンガン:0.40~1.60、
リン:最大0.06、
硫黄:最大0.06、
窒素:最大0.012、
残り:鉄、場合によっては別の付随元素、および不可避の不純物、
の組成を有する、請求項13記載の棒材状の鋼(3)。
【請求項15】
0.60以下の炭素当量(Ceq)を有する、請求項13または14記載の棒材状の鋼(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺鋼半製品を熱機械的に圧延する設備、長尺鋼半製品から、特に、少なくとも300MPaの降伏点、好ましくは、少なくとも400MPaの降伏点を有する、棒材状の鋼、好ましくは、構造用鋼を製造する方法、ならびに棒材状の鋼製品であって、好ましくは、本発明に係る方法にしたがって入手可能な棒材状の鋼製品に関する。
【0002】
棒材状の鋼製品の従来の製造では、相応の鋼をまず複数のロールスタンドを介して熱間圧延し、圧延トレインに続いて急冷する。大きな温度降下により、マルテンサイトリングが周囲にわたって形成され、これにより材料は、必要な強度を得る。次いで得られた鋼製品を12mまでの長さに個別化し、冷却床上で650℃から100℃にできる限り一様に冷却し、続いて、輸送可能であって、後続の処理に供給可能な束にまとめる。
【0003】
冷却床上での冷却に代えて、この種の鋼製品を巻いて、コンパクトなコイルを形成してもよい。従来の方法形式に対して、巻回したコイルの場合、しかし、著しく不均一な冷却条件が存在し、このような冷却条件は、機械的な特性の高められたばらつきを引き起こし、後続の処理、例えばダイを介した引き抜きに際し、次いで負の影響を及ぼしてしまう。
【0004】
国際公開第2004/104237号において、例えば金属の棒材を巻回する方法が公知である。開示された方法によれば、仕上げ圧延した棒材を、搬送方向で圧延装置の下流に配置され、複数のウォータボックスを有する冷却兼補償区間内で、ゆっくりと600~700℃の範囲の温度に冷却し、次いでコイル巻回装置に供給する。これにより、フェライトとパーライトとからなる芯部を有する微細構造のみが達成され、芯部は、マルテンサイトと、より大きな割合のベイナイトとからなるリング状の構造により包囲されている。
【0005】
それゆえ本発明の根底にある課題は、棒材状の鋼製品、特に構造用鋼を、機械的な素材特性のばらつきを少なく、かつ/またはその組織構造に関して品質を一定に、製造することが可能な、長尺鋼半製品を熱機械的に圧延する設備、および棒材状の鋼製品、特に構造用鋼を製造する方法を提供することである。
【0006】
本発明により、上記課題は、請求項1の特徴を備える設備および請求項10の特徴を備える方法により解決される。
【0007】
長尺鋼半製品を熱機械的に圧延する本発明に係る設備は、第1の圧延装置と、搬送方向で第1の圧延装置の下流に配置される第1の熱機械的なサイジング圧延ブロックと、第1の圧延装置と第1の熱機械的なサイジング圧延ブロックとの間に配置される第1の冷却装置と、搬送方向で第1の熱機械的なサイジング圧延ブロックの下流に配置される切断装置と、第1の熱機械的なサイジング圧延ブロックと切断装置との間に配置される第2の冷却装置と、搬送方向で切断装置の下流に配置されるコイル巻回装置と、を備えている。
【0008】
同様に本発明は、長尺鋼半製品から、特に、少なくとも300MPaの降伏点、好ましくは、少なくとも400MPaの降伏点、なおもさらに好ましくは、少なくとも500MPaの降伏点、最も好ましくは、少なくとも600MPaの降伏点を有する、棒材状の鋼を製造する方法であって、まず、加熱した、場合によっては少なくとも900℃の温度、好ましくは、少なくとも950℃の温度に加熱した長尺鋼半製品を第1の圧延装置内で前圧延し、第1の圧延装置に続く第1の冷却装置内で少なくとも850℃の温度に冷却し、続いて、搬送方向で第1の冷却装置の下流に配置される第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック内で棒材状の鋼へと仕上げ圧延し、棒材状の鋼を、第1の熱機械的なサイジング圧延ブロックに続く第2の冷却装置内で400℃~600℃の範囲の温度に冷却し、続いて、搬送方向で第2の冷却装置の下流に配置される切断装置内で事前二次加工し、次いで、搬送方向で切断装置の下流に配置されるコイル巻回装置に供給し、巻回して、鉛直かつ/または水平に巻回したコイルを形成する、方法に関する。
【0009】
本発明の発展の範囲内で、調整されたプロセスガイドにより、棒材状の鋼製品の、鉛直かつ/または水平に巻回したコイルであって、一方では、特定のパーライト-ベイナイト系の微細構造組織を有し、他方では、機械的な素材値のばらつきが減じられたコイルが得られることが分かっている。好ましくは、棒材状の鋼製品は、機械的な素材値、特に25MPa以下である降伏点Reのばらつき、より好ましくは、20MPa以下である降伏点Reのばらつき、なおもさらに好ましくは、15MPa以下である降伏点Reのばらつき、最も好ましくは、10MPa以下である降伏点Reのばらつきを有し、DIN 488に準拠したそれぞれの規格において所定の強度レベルと、さらなる素材値とが一部改善される。
【0010】
熱機械的な圧延と、棒材状の鋼製品内のこれにより達成される細粒化効果とのさらなる利点は、マンガンまたは強度を上げる別のマイクロアロイ元素の使用を減少または節減することができ、このことが、有利に製造コストに作用することにある。
【0011】
さらに、棒材状の鋼製品を巻いて、鉛直かつ/または水平に巻回したコイルを形成することは、輸送および所要スペースに関してさらなる利点を有している。
【0012】
本発明の別の有利な構成は、従属形式で記載される請求項に記載されている。従属形式で記載される請求項に個々に記載の特徴は、技術的に有意義な形式で互いに組み合わせ可能であり、本発明の別の構成を規定し得る。さらに、特許請求の範囲に記載の特徴について明細書内でより細かく規定し、説明する。これらは、本発明の別の好ましい構成をなす。
【0013】
付言すると、ここで挙げる温度は、圧延素材の横断面にわたる平均温度を表し、これに伴い表面温度とは同一視し得ない。
【0014】
「長尺鋼半製品」なる概念は、本発明の意味では、本発明に係る棒材状の鋼あるいは鋼製品、特に構造用鋼を製造するのに好適な鋼半製品と解される。このような長尺鋼半製品は、バーともいい、通例、正方形または長方形の横断面を有している。
【0015】
「棒材状の鋼製品」なる概念は、本発明の意味では、6.0~50mm、好ましくは、6.0~32mmの範囲の直径を有する円形の横断面を有し、リブ付きかつ/または平滑に構成された表面を有する鋼製品または棒鋼、特に構造用鋼と解される。このような棒材状の鋼製品は、英語の呼び名「rebars」でも知られている。
【0016】
前域において少なくとも900℃の温度、好ましくは、少なくとも950℃の温度に加熱した長尺鋼半製品を前圧延する第1の圧延装置は、多数のハウジングレスのロールスタンドから形成されてもよい。有利には、第1の圧延装置は、少なくとも10個、より好ましくは、少なくとも12個、なおもさらに好ましくは、少なくとも14個、最も好ましくは、16個のこれらのハウジングレスのロールスタンドを有している。
【0017】
補足的または代替的に、第1の圧延装置は、ハウジングレスのロールスタンドの代わりに、液圧式に可動調節可能なロールスタンドを有していてもよい。
【0018】
搬送方向で第1の圧延装置の後には、第1の冷却装置が、第1の圧延装置と第1の熱機械的なサイジング圧延ブロックとの間に延在する第1の区間セクション内に配置されている。第1の冷却装置は、1つ、またはより好ましくは、2つのウォータボックスを有していることができ、これらのウォータボックスは、第1の区間セクション内でさらに互いに離間して配置されている。冷却装置により、圧延素材内の温度減少が、熱機械的な圧延のステップの前に達成される。
【0019】
各冷却装置のウォータボックスの冷却能力は、冷却水の体積流量、ウォータボックス毎の作動している冷却管の数、冷却管直径および/または冷却水圧力ならびに場合によっては冷却水温度を基に、好適に調整され得る。設定は、典型的には、固有のプロセスモデルにより予め規定され、オンライン閉ループ制御により適合され得る。
【0020】
1つの例示的なウォータボックスは、6500mmのウォータボックス長さを有し、それぞれ750mmの長さを有する6つの冷却管を有していてもよい。この種のウォータボックスは、さらに、典型的には、230m3/hの最大の冷却水量と、1.5~6.0barの閉ループ制御可能な冷却水圧力範囲とを有している。
【0021】
第1の区間セクションは、加えて、好ましくは、圧延素材が、横断面にわたり十分な温度補償のための時間も十分に得るように選択されている。圧延素材内の温度の補償は、芯部から表面への伝導により実施される。圧延素材の横断面全体にわたりできる限り一様な温度を達成すべく、特に好ましくは、最大100℃の温度勾配、より好ましくは、最大80℃の温度勾配、なおもさらに好ましくは、最大60℃の温度勾配、最も好ましくは、最大50℃の温度勾配が調整される。横断面温度の均質化の制御は、それぞれのステーション間で、圧延した長尺鋼半製品の表面温度の測定を介して間接的に実施されてもよい。補足的に相応のプロセスモデルが援用されてもよい。
【0022】
第1の区間セクションは、80~120mの長さ、より好ましくは、90~100mの長さを有していてもよい。
【0023】
第1の冷却装置内で少なくとも850℃の温度に冷却した圧延した長尺鋼半製品を次いで第1の熱機械的なサイジング圧延ブロックに供給する。第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック内では、長尺鋼半製品を、所望のあるいは所定の最終直径に仕上げ圧延する。
【0024】
特に有利な一実施変化態様において、圧延した長尺鋼半製品を第1の熱機械的なサイジング圧延ブロックに、少なくとも700℃の温度、好ましくは、少なくとも730℃の温度、より好ましくは、少なくとも750℃の温度、なおもさらに好ましくは、少なくとも760℃の温度、最も好ましくは、少なくとも770℃の温度で供給する。圧延した長尺鋼半製品の温度は、しかし、高すぎてはならない。それというのも、さもなければ、表面温度と芯部温度との間の、冶金学的な再結晶プロセスと、これに伴う細粒化効果とのために必要な、できる限り低い温度勾配が調整され得ないからである。それゆえ、圧延した長尺鋼半製品を第1の熱機械的なサイジング圧延ブロックに供給する温度は、850℃、好ましくは、840℃、より好ましくは、820℃、最も好ましくは、800℃に制限されている。殊に特に好ましくは、圧延した長尺鋼半製品を第1の熱機械的なサイジング圧延ブロックに780℃の温度で供給する。
【0025】
熱機械的なサイジング圧延ブロック内では、好ましくは、30~80%であり得る最大変形加工あるいは最大圧下が実施される。熱機械的なサイジング圧延ブロックは、1スタンド、好ましくは、2スタンド、より好ましくは、4スタンド、なおもさらに好ましくは、6スタンド、最も好ましくは、8スタンドに形成されていてもよい。
【0026】
別の有利な一実施変化態様において、設備は、第1の熱機械的なサイジング圧延ブロックと第2の冷却装置との間に第2の熱機械的なサイジング圧延ブロックを備えていてもよく、第2の熱機械的なサイジング圧延ブロックは、同じく1スタンド、好ましくは、2スタンド、より好ましくは、4スタンド、なおもさらに好ましくは、6スタンド、最も好ましくは、8スタンドに形成されていてもよい。この関連において、殊に特に好ましくは、両熱機械的なサイジング圧延ブロック間に中間冷却装置が設けられており、中間冷却装置は、1つの、または互いに離間した2つのウォータボックスを有している。而して、例えば第1の有利な実施変化態様では、第1の熱機械的なサイジング圧延ブロックは、4スタンドに、そして第2の熱機械的なサイジング圧延ブロックは、2スタンドに形成されていてもよい。別の有利な一実施変化態様では、第1の熱機械的なサイジング圧延ブロックは、例えば4スタンドに、そして第2の熱機械的なサイジング圧延ブロックは、同じく4スタンドに形成されていてもよい。両熱機械的なサイジング圧延ブロックへのスタンドの分配に関して、その他のあらゆる組み合わせが可能であり、考え得る。
【0027】
而して、さらに、基本構成で形成される1つの熱機械的なサイジング圧延ブロック、例えば、6スタンドに形成される1つの熱機械的なサイジング圧延ブロックが、6つの1スタンドの熱機械的なサイジング圧延ブロックに分配されてもよく、例えば6つの1スタンドの熱機械的なサイジング圧延ブロックからなるカスケード全体内に、これらの6つの1スタンドの熱機械的なサイジング圧延ブロックのそれぞれ2つのサイジング圧延ブロック間に、それぞれ1つの中間冷却装置であって、少なくとも1つのウォータボックスを有する中間冷却装置を設けてもよい。
【0028】
熱機械的なサイジング圧延ブロックは、基本的に公知であり、本件出願人によりMEERdrive(登録商標)という商品名で販売されている。
【0029】
搬送方向で第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック、場合によっては第2の熱機械的なサイジング圧延ブロックの後には、次いで、第2の冷却装置が第2の区間セクション内に配置されており、第2の冷却装置内では、さらなる粒成長を停止させるべく、棒材状の鋼へと仕上げ圧延した長尺鋼半製品を冷却する。
【0030】
第2の冷却装置は、4つ~9つのウォータボックス、より好ましくは、5つ~8つのウォータボックスを有していてもよい。別の一実施変化態様において、第2の冷却装置は、少なくとも2つ、より好ましくは、3つ、なおもさらに好ましくは、4つ、最も好ましくは、5つのウォータボックスを有していてもよく、ウォータボックスを介して、棒材状の鋼は、一方では、温度補償を、他方では、マルテンサイトまたはベイナイトの形態の硬化された組織構造の形成を防止すべく、冷却される。
【0031】
第1の熱機械的なサイジング圧延ブロックもしくは第2の熱機械的なサイジング圧延ブロック、またはサイジング圧延ブロックの最後のスタンドと、コイル巻回装置との間に延在する第2の区間セクションも、好ましくは、圧延素材が、横断面にわたり十分な温度補償のための時間を十分に得るように選択されている。好ましくは、それゆえ、棒材状の鋼へと仕上げ圧延した長尺鋼半製品内に、最大100℃の温度勾配、より好ましくは、最大80℃の温度勾配、なおもさらに好ましくは、最大60℃の温度勾配、最も好ましくは、最大50℃の温度勾配が調整される。
【0032】
第2の区間セクションは、有利には、200~350mの搬送長さ、より好ましくは、250~300mの搬送長さを有していることができる。この関連において、特に好ましくは、最後のパスの直後の、つまり、第1の熱機械的なサイジング圧延ブロックもしくは第2の熱機械的なサイジング圧延ブロック、またはサイジング圧延ブロックの最後のスタンドの直後の、できる限り短い期間で開始する冷却が、再結晶プロセスのコントロールと、高い細粒度、好ましくは、12.0μm未満の平均の粒径、さらに好ましくは、10.0μm未満の平均の粒径、なおもさらに好ましくは、8.0μm未満の平均の粒径、最も好ましくは、5.0~6.5μmの範囲の平均の粒径を有する細粒度とにとって決定的であることが分かっている。
【0033】
有利には、それゆえ、最後のパスの後に800℃~950℃の範囲の温度、好ましくは、800℃~900℃の範囲の温度を有する棒材状の鋼を、最大100ms後、好ましくは、最大90ms後、なおもさらに好ましくは、最大80ms後、さらに好ましくは、最大70ms後、最も好ましくは、最大60ms後、第2の冷却装置、特に第2の冷却装置の第1のウォータボックスに供給する。
【0034】
さらなる粒成長を阻止すべく、棒材状の鋼を、400℃~600℃の範囲のコイル巻回温度内への進入温度、好ましくは、450℃~550℃のコイル巻回装置内への進入温度が達成される程度に冷却する。
【0035】
別の有利な一実施変化態様において、設備は、第2の冷却装置と切断装置との間に配置されていて、熱機械的に圧延した棒材状の鋼製品内の、場合によっては存在するマルテンサイト系の組織、特に面積百分率(面積%)でのマルテンサイトの割合を、進行しているプロセス中に直接求めることが可能な組織センサ装置を備えていてもよい。第2の区間セクション内に配置されている本発明に係る組織センサ装置は、有利には、搬送方向でコイル巻回装置の直前に、切断装置の直前に、かつ/または搬送方向で第2の冷却装置の後、特に第2の冷却装置の最後のウォータボックスの後、場合によっては直後に配置されていてもよい。第2の冷却装置内の複数あるウォータボックスの2つのウォータボックス間における配置も可能である。
【0036】
有利な一実施変化態様において、設備は、第2の区間セクション内の第2の冷却装置内に配置されている複数のウォータボックスの各々の後に、それぞれ1つの本発明に係る組織センサ装置を備えている。これにより、複数のウォータボックスの各々は、個別に調整可能であり、特定のウォータボックス内でのマルテンサイト系の組織の形成に割り当て可能である。
【0037】
組織センサ装置を介して、棒材状の鋼内のマルテンサイト系の組織、特に面積%でのマルテンサイトの割合をオンラインで、進行しているプロセス中に識別することが可能である。測定方法として、基本的には、当業者に出願の時点で知られているすべての技術が使用可能である。有利には、しかし、望ましくないマルテンサイトを識別する組織センサ装置は、超音波測定装置、レントゲン線測定装置、レーダビーム測定装置および/または電磁式の測定装置を有している。
【0038】
組織センサ装置は、有利には、所望の組織を調整すべく、場合によっては相応のアルゴリズムを用いて、それぞれのプロセスステップへの能動的な介入を行うことができる開ループおよび/または閉ループ制御装置に連結されていてもよい。
【0039】
別の一態様において、本発明は、加えて棒材状の鋼製品であって、好ましくは、本発明に係る方法にしたがって製造され、特に、少なくとも300MPaの降伏点、より好ましくは、少なくとも400MPaの降伏点、なおもさらに好ましくは、少なくとも500MPaの降伏点、最も好ましくは、少なくとも600MPaの降伏点を有し、最大15.0面積%のマルテンサイトの割合、好ましくは、最大10.0面積%のマルテンサイトの割合、より好ましくは、最大8.0面積%のマルテンサイトの割合、なおもさらに好ましくは、最大6.0面積%のマルテンサイトの割合、最も好ましくは、最大5.0面積%のマルテンサイトの割合を有する、棒材状の鋼製品に関する。
【0040】
好ましくは、棒材状の鋼、特に構造用鋼は、質量%で、
炭素:0.04~0.35、
ケイ素:0.10~0.80、
マンガン:0.40~1.60、
リン:最大0.06、
硫黄:最大0.06、
窒素:最大0.012、
残り:鉄、場合によっては別の付随元素、および不可避の不純物、
の組成を有している。
【0041】
別の付随元素として、棒材状の鋼は(質量%で)、
クロム:最大0.40、
モリブデン:最大0.20、
ニッケル:最大0.90、
銅:最大1.0、
鉛:最大0.25、
すず:最大0.07、
の元素を単独でかつ/または組み合わせで含んでいてもよい。
【0042】
特に好ましくは、棒材状の鋼、特に構造用鋼は、0.60以下の炭素当量(Ceq)、より好ましくは、0.50以下の炭素当量(Ceq)を有している。
【0043】
本発明および技術的環境について以下に図面および例を基に詳しく説明する。付言すると、本発明は、図示の実施例により限定されるものではない。特に、別途断りのない限り、図面において説明する事柄の一部を抜き出し、本明細書および/または図面から看取可能な別の構成部分および知識と組み合わせることも可能である。特に付言すると、図面および特に図示の大きさ比は、概略的なものにすぎない。同じ符号は、同じ対象を指しており、その結果、場合によっては、説明は、他の図から補足的に援用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明に係る設備の一実施変化態様を示す図である。
【
図2】本発明に係る方法の第1の実施例の温度プロファイルを示す図である。
【
図3】本発明に係る方法の第2の実施例の温度プロファイルを示す図である。
【
図4】本発明に係る方法の第3の実施例の温度プロファイルを示す図である。
【0045】
図1には、長尺鋼半製品2を熱機械的に圧延する本発明に係る設備1の一実施変化態様を概略的なブロック図で示してある。設備1内で棒材状の鋼3へと熱機械的に圧延されるこのような長尺鋼半製品または原材料バー2は、160×160mmの外寸を有する四角形(正方形)の横断面を有していてもよい。相応に仕上げ圧延された棒材状の鋼3は、6.0~32mmの範囲の直径を有していてもよい。
【0046】
相応の棒材状の鋼3を製造するために、長尺鋼半製品2をまず再熱炉4に供給する。再熱炉4内では、圧延すべき長尺鋼半製品2を900℃~1000℃の温度に加熱する。
【0047】
次いで加熱した長尺鋼半製品2を第1の圧延装置5に供給する。第1の圧延装置5内では、長尺鋼半製品2を16個のハウジングレスのロールスタンド(図示せず)のカスケード内で熱間にて前圧延する。このとき、それぞれのロールスタンド内のパス毎に20~40%の範囲の圧下が達成される。第1の圧延装置5内の圧延素材の平均の温度は、850℃~1000℃である。
【0048】
搬送方向で第1の圧延装置5の後には、第1の冷却装置6が第1の区間セクション7内に配置されており、第1の冷却装置6は、ここでは、2つのウォータボックス(図示せず)を有し、これにより、850℃~1000℃の高温の圧延素材の温度減少を、熱機械的な圧延の後続のステップの前に達成することができる。第1の圧延装置5の最後のハウジングレスのロールスタンドと、第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック8との間に延在する第1の区間セクション7は、加えて、圧延素材が、温度減少の他に、十分な温度補償のための時間を十分に得るように選択されている。第1の区間セクションは、90m~100mの長さを有していてもよい。
【0049】
その間に円形および/またはオーバルの横断面を有する前圧延して冷却した長尺鋼半製品2を次いで第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック8に760℃~820℃の範囲の温度で供給し、所望のあるいは所定の最終直径に仕上げ圧延する。最終直径は、例えば8mm、12mmまたは25mmであってもよい。このために、第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック8は、一実施変化態様では、6スタンドに形成されていてもよく、個々のスタンド内のパス毎に22~27%の圧下が達成可能である。
【0050】
別の一実施変化態様において、第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック8/8.1は、第2の熱機械的なサイジング圧延ブロック8.2により補足されてもよく、第2の熱機械的なサイジング圧延ブロック8.2は、同じくマルチスタンドに形成されていてもよい。本実施変化態様では、両熱機械的なサイジング圧延ブロック8.1,8.2間に形成される中間区間セクション9内に、2つのウォータボックス(図示せず)を有する中間冷却装置10が設けられている。この中間区間セクション9も、圧延素材に両熱機械的な圧延ステップ間において十分な温度補償のための時間を十分に可能とすべく、例えば72mの特定区間を有している。
【0051】
搬送方向で第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック8,8.1または第2の熱機械的なサイジング圧延ブロック8.2の後には、次いで第2の冷却装置11が、第1の熱機械的なサイジング圧延ブロック8,8.1または第2の熱機械的なサイジング圧延ブロック8.2と、コイル巻回装置13との間に延在する第2の区間セクション12内に配置されている。第2の冷却装置11内では、棒材状の鋼3へと仕上げ圧延した800℃~900℃の温度を有する長尺鋼半製品2を、相前後して離間したここでは4つのウォータボックスのカスケードにより冷却し、これにより、さらなる粒成長を阻止し、かつマルテンサイトまたはベイナイトの形態の硬化された組織構造の形成を防止することができる。このためには、最後のパスの直後の、できる限り短い期間で開始する冷却が必要であり、これにより、再結晶プロセスをコントロールすることができ、かつ6.0~10.0μmの範囲の平均の粒径を有する高い細粒度を達成することができる。圧延素材に、最後のステーションに向かう途上で、十分な温度補償のための時間を十分に可能とすべく、第2の区間セクション12も、相応に長く選択されている。第2の区間セクション12は、例えば250~300mの長さを有していてもよい。
【0052】
棒材状の鋼3を、切断装置14内での事前二次加工後、次いで450℃~500℃のコイル巻回温度でコイル巻回装置13に供給する。コイル巻回装置13は、縦型のコイル巻回装置として形成されている。
【0053】
すべての冷却プロセスは、それぞれの目標温度に関して不安定性があるので、かつこれに伴い、プロセスガイドの範囲内でマルテンサイト系の組織構造の急激な形成が生じてしまうことがあるので、設備1は、加えて組織センサ装置15を備えていてもよく、組織センサ装置15は、第2の区間セクション12内に配置されている。
【0054】
組織センサ装置15を介して、生産された棒材状の鋼3内のマルテンサイト系の組織の形成、特にマルテンサイトの割合(面積%)をオンラインで、進行しているプロセス中に識別することができる。望ましくないマルテンサイトを識別するのに、組織センサ装置15は、例えば超音波測定装置、レントゲン線測定装置、レーダビーム測定装置および/または電磁式の測定装置を有していてもよい。
【0055】
破線の矢印を介して、第2の区間セクション12における組織センサ装置15の可能なポジショニングを示してある。而して組織センサ装置15は、例えば搬送方向で第2の冷却装置11の前に、切断装置14の直前にまたはコイル巻回装置13の直前に配置可能である。第2の冷却装置11または中間区間セクション9内の複数あるウォータボックスのウォータボックス間における配置も可能である。
【0056】
図2ないし
図4には、本発明に係る方法の一実施変化態様により製造した、直径がそれぞれ異なる3つの棒鋼3の3つのそれぞれ異なる温度プロファイル(平均温度)16,17,18を示してある。このために、160×160mmの外寸を有する四角形(正方形)の横断面を有する素材C20Dのバーを、設備1であって、再熱炉4と、16個のハウジングレスのロールスタンド(図示せず)を有する第1の圧延装置5と、2つのウォータボックスを有する第1の冷却装置6と、6スタンドのサイジング圧延ブロック8と、4つのウォータボックスを有する第2の冷却装置11と、コイル巻回装置13と、を備える設備1内で、熱機械的に、8mm(
図2)、12mm(
図3)および25mm(
図4)の直径を有する棒鋼3へ圧延した。
【符号の説明】
【0057】
1 設備
2 長尺鋼半製品
3 棒材状の鋼/棒鋼
4 炉
5 第1の圧延装置
6 第1の冷却装置
7 第1の区間セクション
8 第1のサイジング圧延ブロック
8.1 第1のサイジング圧延ブロック
8.2 第2のサイジング圧延ブロック
9 中間区間セクション
10 中間冷却装置
11 第2の冷却装置
12 第2の区間セクション
13 コイル巻回装置
14 切断装置
15 組織センサ装置
16 温度プロファイル
17 温度プロファイル
18 温度プロファイル
【国際調査報告】