(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】自動車用の電気機械式のブレーキシステム、方法
(51)【国際特許分類】
B60T 8/92 20060101AFI20240521BHJP
B60T 17/18 20060101ALI20240521BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B60T8/92
B60T17/18
B60T13/74 G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573535
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2022064195
(87)【国際公開番号】W WO2022253663
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】102021205581.8
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】シエ フェイ
【テーマコード(参考)】
3D048
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB01
3D048CC49
3D048HH18
3D048HH66
3D048HH68
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3D048QQ07
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3D049QQ04
3D246BA08
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3D246GB37
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3D246MA18
3D246MA19
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3D246MA37
(57)【要約】
本発明は、自動車用の電気機械式のブレーキシステム(1)であって、4つのホイールブレーキ装置(2)と、4つの一次の電気モータ(3)と、4つの二次の電気モータ(4)と、4つの制御装置(5)とを備えるブレーキシステム(1)に関する。本発明に係るブレーキシステム(1)は、制御装置(5)が、ホイールブレーキ装置(2)および/または自動車に割り当てられたセンサ(6)のセンサデータを検出および/または評価すべく、形成されており、ホイールブレーキ装置(2)の各々に、それぞれ1つずつ、一次の電気モータ(3)と二次の電気モータ(4)とが、それぞれのホイールブレーキ装置(2)を操作すべく、それぞれ割り当てられており、かつ制御装置(5)の各々が、それぞれ1つずつの、ホイールブレーキ装置(2)のうちの一のホイールブレーキ装置(2)の一次の電気モータ(3)と、ホイールブレーキ装置(2)のうちの他のホイールブレーキ装置(2)の二次の電気モータ(4)とに、電気モータ(3,4)を駆動すべく割り当てられていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の電気機械式のブレーキシステム(1)であって、4つのホイールブレーキ装置(2)と、4つの一次の電気モータ(3)と、4つの二次の電気モータ(4)と、4つの制御装置(5)とを備え、
-前記制御装置(5)は、前記ホイールブレーキ装置(2)および/または前記自動車に割り当てられたセンサ(6)のセンサデータを検出および/または評価すべく、形成されており、
-前記ホイールブレーキ装置(2)の各々に、それぞれ1つずつ、前記一次の電気モータ(3)と前記二次の電気モータ(4)とが、それぞれの前記ホイールブレーキ装置(2)を操作すべく、それぞれ割り当てられており、かつ
-前記制御装置(5)の各々は、それぞれ1つずつの、前記ホイールブレーキ装置(2)のうちの一のホイールブレーキ装置(2)の前記一次の電気モータ(3)と、前記ホイールブレーキ装置(2)のうちの他のホイールブレーキ装置(2)の前記二次の電気モータ(4)とに、前記電気モータ(3,4)を駆動すべく割り当てられている、
自動車用の電気機械式のブレーキシステム。
【請求項2】
前記センサ(6)は、ロータ位置センサ、回転数センサ、エアバッグセンサおよび/または間隔センサとして形成されていることを特徴とする、請求項1記載のブレーキシステム。
【請求項3】
前記一次の電気モータ(3)および/または前記二次の電気モータ(4)は、電気的に整流される電気モータとして形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記制御装置(5)は、それぞれ、当該制御装置(5)が割り当てられた前記二次の電気モータ(4)を有する前記ホイールブレーキ装置(2)よりも、当該制御装置(5)が割り当てられた前記一次の電気モータ(3)を有する前記ホイールブレーキ装置(2)の近くに配置されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記他のホイールブレーキ装置(2)は、前記自動車の同じホイールアクスルに配置されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記他のホイールブレーキ装置(2)は、前記自動車の他のホイールアクスルに割り当てられており、かつ前記ホイールアクスルの、前記一のホイールブレーキ装置(2)とは反対側に位置する端部に配置されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のブレーキシステム。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の電気機械式のブレーキシステム(1)を運転する方法であって、前記ブレーキシステム(1)の前記電気モータ(3,4)および前記制御装置(5)を機能性について監視し、かつ前記電気モータ(3,4)の1つまたは前記制御装置(5)の1つが失陥した際、代替反応をトリガすることを特徴とする、電気機械式のブレーキシステムを運転する方法。
【請求項8】
前記一次の電気モータ(3)の1つが失陥した際、代替反応として、同じ前記ホイールブレーキ装置(2)に割り当てられた前記二次の電気モータ(4)を駆動することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記制御装置(5)の1つが失陥した際、代替反応として、同じ前記ホイールブレーキ装置(2)に割り当てられた前記制御装置(5)を駆動することを特徴とする、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
代替反応として、特に、前記自動車の運転者に割り当てられた表示装置上に、警告を出力することを特徴とする、請求項7から9までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の電気機械式のブレーキシステムであって、4つのホイールブレーキ装置と、4つの一次の電気モータと、4つの二次の電気モータと、4つの制御装置とを備えるブレーキシステムに関する。
【0002】
さらに本発明は、この種のブレーキシステムを運転する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
自動化されたブレーキプロセスを例えば自動車の自律走行の範疇で実施するには、自動車のブレーキシステムは、自動車の運転者によるブレーキペダル操作とは独立して駆動可能なアクチュエータを備えていなければならない。この種のブレーキシステムは、例えば電気機械式のブレーキシステムとして形成されており、自動車のホイール毎にそれぞれ1つのホイールブレーキ装置を具備している。これらのホイールブレーキ装置の各々は、自動車を制動すべく、ホイールブレーキ装置に割り当てられた電気モータにより操作される。電気モータを駆動すべく、ブレーキシステムは、1つまたは複数の制御装置を備えている。
【0004】
法規には、ブレーキシステムは、安全上の理由から、エラーが起こっても、つまり、ブレーキシステムのコンポーネントの1つが失陥しても、自動車が引き続き、予め決められた最低減速度では制動され得るように構成されていなければならないと定められている。液圧式のブレーキシステムであれば、非常操作用に、一般にブレーキペダルは、ホイールブレーキ装置に機械的に連結されている。
【0005】
ブレーキシステムが、しかし、機械式の非常操作が不能な、純粋に電気機械式の、特にいわゆる「ブレーキバイワイヤ」ブレーキシステムとして形成されているとき、エラーが起こったときの制動は、一般に、ブレーキシステムのコンポーネントが冗長に構築されており、かつ/または互いに冗長性機能を担うことによって保証される。
【0006】
冗長なコンポーネントを備えるこの種のブレーキシステムは、従来技術において公知である。例えば特許文献1は、自動車用の電気式のブレーキ装置であって、3つの制御ユニットを備え、制御ユニットの各々は、それぞれ2つのブレーキ機構を、2つのホイールを制動すべく、制御し、かつ制御ユニットの1つまたは2つが失陥した際は、他の制御ユニットの少なくとも1つが、失陥した制御ユニットのそれぞれのブレーキ機構を駆動し、その結果、自動車は、引き続き制動され得る、ブレーキ装置を開示している。特に制御ユニットの2つは、対角ホイール制御ユニットとして形成され、3番目の制御ユニットは、フロントホイール制御ユニットとして形成されている。代替的には、制御ユニットがそれぞれ全4つのブレーキ機構を駆動することができるように、制御ユニットを形成してある。ブレーキ機構自体のための冗長性は、しかし、設けられていないので、ブレーキ機構の1つが失陥してしまえば、自動車のブレーキ出力は、減じられてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
請求項1の特徴を備える本発明に係るブレーキシステムは、制御装置が、ホイールブレーキ装置および/または自動車に割り当てられたセンサのセンサデータを検出および/または評価すべく、形成されており、ホイールブレーキ装置の各々に、それぞれ1つずつ、一次の電気モータと二次の電気モータとが、それぞれのホイールブレーキ装置を操作すべく、それぞれ割り当てられており、かつ制御装置の各々が、それぞれ1つずつの、ホイールブレーキ装置のうちの一のホイールブレーキ装置の一次の電気モータと、ホイールブレーキ装置のうちの他のホイールブレーキ装置の二次の電気モータとに、電気モータを駆動すべく割り当てられていることを特徴とする。これにより、有利な冗長性が、ブレーキ装置の操作のためにも、ホイールブレーキ装置に割り当てられた電気モータの駆動のためにも、達成される。こうしてホイールブレーキ装置の各々に、制御装置の2つ、一次の電気モータの1つおよび二次の電気モータの1つが割り当てられているので、ブレーキシステムのブレーキ出力は、制御装置および/または電気モータの1つまたは複数が失陥したときでも、引き続き完全に存在している。電気モータは、それぞれのホイールブレーキ装置に特に機能的に割り当てられているだけ、つまり、ブレーキ装置と相互作用関係にあるだけ、あるいはブレーキ装置に機械的に連結されているだけ、ではなく、空間的にも割り当てられている、つまり、それぞれのホイールブレーキ装置に配置されてもいる。二次の電気モータの各々は、一次の電気モータの1つに対する冗長性をなす。二次の電気モータは、つまり、それぞれの一次の電気モータが失陥したときだけ、使用される。特に、二次の電気モータは、二次の電気モータにより、制動に際し、法規により要求される最低減速度のみが達成されるように指定され、その点において、一次の電気モータより小さい最大の電力およびサイズを有することが可能である。こうして、冗長性が存在するにもかかわらず、有利には組み付けスペースが節減される。制御装置は、ホイールブレーキ装置に特に機能的にのみ割り当てられており、つまり、ホイールブレーキ装置に信号技術的に電気的に接続され、かつ車両内の任意の場所に配置されているか、またはそれぞれ、ホイールブレーキ装置の少なくとも1つに空間的にも割り当てられ、つまり、特にホイールブレーキ装置に配置されてもいる。制御装置をそれぞれ2つのホイールブレーキ装置に割り当てることで、有利な冗長性を達成するのに、8つの制御装置の代わりに4つの制御装置のみが必要とされるので、ブレーキシステムの複雑性およびコストは、下げられる。制御装置をセンサデータの評価および/または検出のために形成することで、有利には、特別にこのために形成されるさらなる制御装置が省略され、またはこの種の制御装置に対する冗長性が、センサの少なくとも1つが、冗長に構築され、かつ/または2つの制御装置に割り当てられていることで、提供される。
【0009】
本発明の好ましい一発展形によれば、センサは、ロータ位置センサ、回転数センサ、エアバッグセンサおよび/または間隔センサとして形成されていることが企図されている。このようにセンサを形成することで、有利には、電気モータの駆動にとって重要なセンサデータが、制御装置により直接的に検出および/または評価されることが保証されている。電気モータが、例えば電気的に整流される電気モータとして形成されている場合、電気モータのロータの正確な角度位置が、駆動のために検出されなければならない。制御装置がこれを、対応するロータ位置センサを介して直接的に検出すると、電気モータの特に有利な、効率的な駆動が保証されている。自動車のホイールに割り当てられた回転数センサにより、ホイール回転数が求められ、制動時、例えば有利には複数あるホイールの1つのホイールのロックを防止すべく、考慮され得る。エアバッグセンサおよび/または間隔センサのセンサデータを基に、危険状況および/または事故状況が認識可能であり、その結果、制御装置は、必要なとき、制動、特に非常制動を導入することができる。好ましくは、センサの少なくとも1つが、ホイール近傍のセンサとして、特にノイズ監視用のマイクロホンとして形成または配置されている。これにより同じく、重要なセンサデータの直接的な検出および/または評価が有利には保証されている。
【0010】
本発明の好ましい一発展形によれば、一次の電気モータおよび/または二次の電気モータは、電気的に整流されるあるいはブラシレスの電気モータとして形成されていることが企図されている。電気モータを電気的に整流される電気モータとして形成することで、有利には、ホイールブレーキ装置の操作が効率的に実施されることが保証されている。好ましくは、一次の電気モータだけが、電気的に整流される電気モータとして形成されており、二次の電気モータは、有利には、組み付けスペースが省スペースで済む直流モータとして形成されている。代替的には、一次の電気モータおよび/または二次の電気モータは、三相交流非同期モータとして形成されている。これにより電気モータは、有利には低コストに形成されている。それというのも、特に、この種のモータは、モータのロータの角度位置を検出するロータ位置センサを必要としないからである。同じく、それぞれ、一次の電気モータの1つと、二次の電気モータの1つとが、1つの共通の電気モータとして、1つの一次のモータ巻線と、1つの二次のモータ巻線とを有して、特にステータ巻線を有して形成されており、一次のモータ巻線と、二次のモータ巻線とは、互いに独立的に駆動可能であり、かつ一次のモータ巻線の駆動時、電気モータは、一次の電気モータとして使用され、二次のモータ巻線の駆動時、電気モータは、二次の電気モータとして使用されることが可能である。モータ巻線の、制御装置に対する割り当ては、電気モータの、制御装置に対する前述の割り当てと同様に実施される。これにより電気モータは、同じく有利には低コストに形成されている。それというのも、特に、こうしてそれぞれ、一次の電気モータの1つと、二次の電気モータの1つとが、1つの共通のハウジング内に、1つのロータしか伴わず配置されているからである。
【0011】
本発明の好ましい一発展形によれば、制御装置は、それぞれ、当該制御装置が割り当てられた二次の電気モータを有するホイールブレーキ装置よりも、当該制御装置が割り当てられた一次の電気モータを有するホイールブレーキ装置の近くに配置されていることが企図されている。このように制御装置を配置することで、有利には、それぞれの一次の電気モータと、制御装置との間の、潜在的にエラーが起こりやすい電気的な線路の長さが最小化されることが保証されているので、駆動の信頼性は、向上されている。代替的には、制御装置は、自動車の保護された領域内に配置されており、この領域内では、ホイールブレーキ装置の近傍におけるよりも低い温度要求および環境影響に曝されており、そこでは、それほどロバストでなくてよく、ひいては有利には、より低コストに構成されている。
【0012】
本発明の好ましい一発展形によれば、上記他のホイールブレーキ装置は、自動車の同じホイールアクスルに配置されていることが企図されている。このように配置することで、有利には、制御装置の2つが、それぞれ、同じホイールアクスルにおいて互いに冗長性機能を担い、これにより、1つを除きすべての制御装置が仮に失陥したとしても、少なくとも、両アクスルの一方における両ホイールブレーキユニットが操作可能であることが保証されている。このブレーキシステムは、アクスルに関してパラレルに冗長に設計されている。
【0013】
本発明の好ましい一発展形によれば、代替的には、上記他のホイールブレーキ装置は、自動車の他のホイールアクスルに割り当てられており、かつこのホイールアクスルの、上記一のホイールブレーキ装置とは反対側に位置する端部に配置されていることが企図されている。このように割り当てることで、有利には、制御装置の各々が、両アクスルの各々に設けられた電気モータのそれぞれ1つを駆動し、これにより、1つを除きすべての制御装置が仮に失陥したとしても、両アクスルの各々に設けられたホイールブレーキユニットのそれぞれ一方がまだ操作可能であることが保証されている。このブレーキシステムは、アクスルに関してダイアゴナルに冗長に設計されている。
【0014】
請求項7の特徴を備える本発明に係る方法は、ブレーキシステムの電気モータおよび制御装置を機能性について監視し、かつ電気モータの1つまたは制御装置の1つが失陥した際、代替反応をトリガすることを特徴とする。機能性について監視し、かつ代替反応をトリガすることで、有利には、電気モータの1つおよび/または制御装置の1つの失陥が遅滞なく認識され、かつブレーキシステムのブレーキ作用が引き続き維持されることが保証されている。
【0015】
本発明の好ましい一発展形によれば、一次の電気モータの1つが失陥した際、代替反応として、同じホイールブレーキ装置に割り当てられた二次の電気モータを駆動することが企図されている。二次の電気モータを駆動することで、有利には、ホイールブレーキ装置の操作が引き続き保証されている。
【0016】
本発明の好ましい一発展形によれば、制御装置の1つが失陥した際、代替反応として、同じホイールブレーキ装置に割り当てられた制御装置を駆動することが企図されている。この制御装置を駆動することで、有利には、両ホイールブレーキ装置の操作が引き続き保証されている。
【0017】
本発明の好ましい一発展形によれば、代替反応として、特に、自動車の運転者に割り当てられた表示装置上に、警告を出力することが企図されている。警告を出力することで、有利には、運転者は、失陥について遅滞なく情報提供を受け、好適な対策を、特に走行を中止し、かつ/または整備場に行くために、講じ得ることが保証されている。好ましくは、警告の出力は、制御装置の1つおよび/または電気モータの1つを好適に駆動することで、制御装置の他の1つおよび/または電気モータの他の1つの失陥を補償する前述の代替反応の1つと同時に実施される。二次の電気モータの1つの失陥しか確認されない場合、特に駆動の変更は、不要であり、警告の出力で十分である。好ましくは、警告を失陥の重要度または深刻度に応じて出力し、例えば色分けして符号化する。こうして、例えば二次の電気モータの1つの失陥は、黄色の警告灯で表示するだけであるのに対し、一次の電気モータの1つおよび/または制御装置の1つの失陥は、赤色の警告灯で表示する等、なされてもよい。同じく運転者には、有利には様々な取り扱い指示を出力することができ、例えば一次の電気モータの1つおよび/または制御装置の1つが失陥した際には、走行の即時中止要求を出力することができる。
【0018】
さらなる好ましい特徴および特徴組み合わせは、先の説明および特許請求の範囲から看取可能である。以下に本発明について図面を基に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】電気機械式のブレーキシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しながら、詳しくは図示しない自動車用の有利な電気機械式のブレーキシステム1について説明する。ブレーキシステム1は、正確に4つのホイールブレーキ装置2を備えている。ホイールブレーキ装置2の各々は、自動車の同じく図示しないホイールに1つずつ割り当てられている。ブレーキシステム1は、本実施例では、純粋に電気機械式に構成されており、つまり、ホイールブレーキ装置2を操作する液圧式のコンポーネントまたは液圧液体回路を具備していない。制動は、むしろ、ホイールブレーキ装置2の直接的な操作により実施され、ホイールブレーキ装置2は、特に摩擦ブレーキ装置として形成されている。このためにブレーキシステム1は、それぞれ正確に4つの一次の電気モータ3と、正確に4つの二次の電気モータ4とを備えている。電気モータ3,4は、本実施例では、電気的に整流される電気モータとして形成されている。ホイールブレーキ装置2の各々には、それぞれ1つずつ、一次の電気モータ3と二次の電気モータ4とが、それぞれのホイールブレーキ装置2を操作すべく、それぞれ割り当てられている。
【0021】
さらにブレーキシステム1は、正確に4つの制御装置5を備えている。制御装置5の各々は、それぞれ1つずつの、ホイールブレーキ装置2のうちの一のホイールブレーキ装置2の一次の電気モータ3と、ホイールブレーキ装置2のうちの他のホイールブレーキ装置2の二次の電気モータ4とに、電気モータ3,4を駆動すべく割り当てられている。上記他のホイールブレーキ装置2は、この場合、それぞれ、自動車の同じホイールアクスルに割り当てられている。制御装置5は、それぞれ、当該制御装置5が割り当てられた二次の電気モータ4を有するホイールブレーキ装置2よりも、当該制御装置5が割り当てられた一次の電気モータ3を有するホイールブレーキ装置2の近くに配置されている。
【0022】
二次の電気モータ4の各々は、同じホイールブレーキ装置2に割り当てられた一次の電気モータ3のための冗長性機能を担う。対応する一次の電気モータ3が失陥すると、この場合は、同じホイールブレーキ装置2に割り当てられた二次の電気モータ4が駆動される。
【0023】
同じく制御装置5の各々は、同じホイールブレーキ装置2に割り当てられた他の制御装置5のための冗長性機能を担う。制御装置5の1つが失陥すると、この場合は、同じホイールブレーキ装置2に割り当てられた制御装置5が駆動される。
【0024】
制御装置5は、さらに、ホイールブレーキ装置2および/または自動車に割り当てられたセンサ6のセンサデータを検出および/または評価すべく、形成されている。センサは、特に、複数ある電気モータ3,4の1つの電気モータのロータ位置センサ、自動車の複数あるホイールの1つのホイールの回転数センサ、自動車のエアバッグセンサおよび/または自動車の間隔センサである。
【0025】
さらに制御装置5は、双方向矢印により略示するように、通信技術的にバスシステム、例えばEthernet、FlexrayまたはCANを介して相互に、かつ自動車の別の制御装置7に接続されている。複数ある別の制御装置7の少なくとも1つは、例えば、制御装置5により検出あるいは評価されるセンサデータをさらに処理すべく、形成されている。
【0026】
さらに、例えば複数ある別の制御装置7の少なくとも1つは、電気モータ3,4および制御装置5を機能性について監視し、かつ電気モータ3,4の1つおよび/または制御装置5の1つが失陥した際、好適な代替反応をトリガ、特に前述のように駆動を変更し、かつ/またはエラー通知を出力すべく、形成されている。
【符号の説明】
【0027】
1 ブレーキシステム
2 ホイールブレーキ装置
3 一次の電気モータ
4 二次の電気モータ
5 制御装置
6 センサ
7 別の制御装置
【図】
【手続補正書】
【提出日】2023-11-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の電気機械式のブレーキシステム(1)であって、4つのホイールブレーキ装置(2)と、4つの一次の電気モータ(3)と、4つの二次の電気モータ(4)と、4つの制御装置(5)とを備え、
-前記制御装置(5)は、前記ホイールブレーキ装置(2)および/または前記自動車に割り当てられたセンサ(6)のセンサデータを検出および/または評価すべく、形成されており、
-前記ホイールブレーキ装置(2)の各々に、それぞれ1つずつ、前記一次の電気モータ(3)と前記二次の電気モータ(4)とが、それぞれの前記ホイールブレーキ装置(2)を操作すべく、それぞれ割り当てられており、かつ
-前記制御装置(5)の各々は、それぞれ1つずつの、前記ホイールブレーキ装置(2)のうちの一のホイールブレーキ装置(2)の前記一次の電気モータ(3)と、前記ホイールブレーキ装置(2)のうちの他のホイールブレーキ装置(2)の前記二次の電気モータ(4)とに、前記電気モータ(3,4)を駆動すべく割り当てられている、
自動車用の電気機械式のブレーキシステム。
【請求項2】
前記センサ(6)は、ロータ位置センサ、回転数センサ、エアバッグセンサおよび/または間隔センサとして形成されていることを特徴とする、請求項1記載のブレーキシステム。
【請求項3】
前記一次の電気モータ(3)および/または前記二次の電気モータ(4)は、電気的に整流される電気モータとして形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記制御装置(5)は、それぞれ、当該制御装置(5)が割り当てられた前記二次の電気モータ(4)を有する前記ホイールブレーキ装置(2)よりも、当該制御装置(5)が割り当てられた前記一次の電気モータ(3)を有する前記ホイールブレーキ装置(2)の近くに配置されていることを特徴とする、請求項1
または2記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記他のホイールブレーキ装置(2)は、前記自動車の同じホイールアクスルに配置されていることを特徴とする、請求項1
または2記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記他のホイールブレーキ装置(2)は、前記自動車の他のホイールアクスルに割り当てられており、かつ前記ホイールアクスルの、前記一のホイールブレーキ装置(2)とは反対側に位置する端部に配置されていることを特徴とする、請求項1
または2記載のブレーキシステム。
【請求項7】
請求項1
または2記載の電気機械式のブレーキシステム(1)を運転する方法であって、前記ブレーキシステム(1)の前記電気モータ(3,4)および前記制御装置(5)を機能性について監視し、かつ前記電気モータ(3,4)の1つまたは前記制御装置(5)の1つが失陥した際、代替反応をトリガすることを特徴とする、電気機械式のブレーキシステムを運転する方法。
【請求項8】
前記一次の電気モータ(3)の1つが失陥した際、代替反応として、同じ前記ホイールブレーキ装置(2)に割り当てられた前記二次の電気モータ(4)を駆動することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記制御装置(5)の1つが失陥した際、代替反応として、同じ前記ホイールブレーキ装置(2)に割り当てられた前記制御装置(5)を駆動することを特徴とする、請求項
7記載の方法。
【請求項10】
代替反応として、特に、前記自動車の運転者に割り当てられた表示装置上に、警告を出力することを特徴とする、請求項
7記載の方法。
【国際調査報告】