(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】検出装置の受信装置、検出装置、少なくとも1つの検出装置を備える車両、及び少なくとも1つの検出装置を動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240521BHJP
G01S 7/4863 20200101ALI20240521BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S7/4863
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573635
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2022063967
(87)【国際公開番号】W WO2022253623
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】102021113962.7
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】ハイユエ、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ベルント、ベルトシンガー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ、パール
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA36
5J084BB01
5J084BB28
5J084CA03
5J084CA67
5J084EA06
(57)【要約】
本発明は、電磁走査信号(30)によって物体(18)を検出する検出装置の受信装置(24)、検出装置、少なくとも1つの検出装置を有する車両、及び検出装置を動作させるための方法に関する。受信装置(24)は、電磁信号(30)を電気的受信信号に変換するために使用される、少なくとも1つのレシーバ(38)の少なくとも2つのレシーバ領域(40)と、電磁信号(30)に対する回折効果を有し、少なくとも2つのレシーバ領域(40)の上流側にある電磁信号(30)の信号経路に配置される少なくとも1つの回折素子(32)とを備える。少なくとも1つの回折素子(32)は、入射電磁信号(30)の強度を、異なる信号経路(36)を伝搬する少なくとも2つの電磁信号成分(34)に分割するように設計される。少なくとも1つの回折素子(32)及び少なくとも2つのレシーバ領域(40)は、電磁信号成分(34)用の少なくとも2つの異なる信号経路(36)が異なるレシーバ領域(40)に割り当てられるように、互いに適合している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁信号(28、30)によって物体(18)を検出するための検出装置(12)の受信装置(24)であって、
電磁信号(30)を電気的受信信号に変換することができる少なくとも1つのレシーバ(38)の少なくとも2つのレシーバ領域(40)を有し、
前記電磁信号(30)に対して回折効果を有する少なくとも1つの回折素子(32)を有し、該回折素子が前記少なくとも2つのレシーバ領域(40)の上流側にある前記電磁信号(30)の信号経路内に配置される、
受信装置(24)において、
少なくとも1つの回折素子(32)が、入射電磁信号(30)の強度(I)を異なる信号経路(36)を伝搬する少なくとも2つの電磁信号成分(34)に分割するように設計され、
前記少なくとも1つの回折素子(32)及び前記少なくとも2つのレシーバ領域(40)が、前記電磁信号成分(34)用の少なくとも2つの異なる信号経路(36)が異なるレシーバ領域(40)に割り当てられるように互いに適合している
ことを特徴とする、受信装置(24)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの回折素子(32)が少なくとも1つの格子状構造を有し、及び/又は前記少なくとも1つの回折素子(32)が少なくとも1つの回折光学素子を有するか、もしくは少なくとも1つの回折光学素子から成ることを特徴とする、請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
電磁信号(30)用の少なくとも1つの回折素子(32)が少なくとも部分的に反射性及び/又は少なくとも部分的に透過性であり
及び/又は
少なくとも1つの回折素子(32)が電磁信号(30)を反射するように前記信号経路内に配置され、
及び/又は
少なくとも1つの回折素子(32)が、電磁信号(30)を透過するように前記信号経路内に配置される
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の受信装置。
【請求項4】
強度(I)を1つの次元でのみ分割するための少なくとも1つの回折素子(32)が、入射電磁信号(30)の信号経路に対して横方向に、特に垂直方向に構成され、
及び/又は
強度(I)を2つの次元で分割するための少なくとも1つの回折素子(32)が、入射電磁信号(30)の信号経路に対して横方向に、特に垂直方向に構成される
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項5】
前記受信装置(24)が、高ダイナミックレンジの電磁信号(30)を検出するように設計されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項6】
少なくとも1つのレシーバ(38)が少なくとも1つのラインセンサを有するか、又は少なくとも1つのラインセンサから成り、
及び/又は
少なくとも1つのレシーバ(38)が少なくとも1つの表面センサを有するか、又は少なくとも1つの表面センサから成り、
及び/又は
少なくとも1つのレシーバ領域(40)が少なくとも1つのレシーバ要素(42)で実装されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項7】
少なくとも1つの回折素子(32)及び少なくとも2つのレシーバ領域(40)を有する少なくとも1つの配置が、少なくとも1つの規定された波長範囲で、特に少なくとも1つの規定された波長を有する電磁信号(30)を検出するように設計されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の受信装置。
【請求項8】
電磁信号(30)によって物体(18)を検出するための検出装置(12)であって、
電磁走査信号(28)を送信することができる少なくとも1つの送信装置(22)を有し、
反射された電磁走査信号(28)から得られる電磁エコー信号(30)を検出することができる少なくとも1つの受信装置(24)を有し、
前記検出装置(12)を制御し、電気的受信信号を処理することができる少なくとも1つの制御評価装置(26)を有し、
前記少なくとも1つの受信装置(24)が、
電磁エコー信号(30)を電気的受信信号に変換することができる少なくとも1つのレシーバ(38)の少なくとも2つのレシーバ領域(40)と、
電磁エコー信号(30)に対する回折効果を有する少なくとも1つの回折素子(32)であって、前記少なくとも2つのレシーバ領域(40)の上流側にある前記電磁エコー信号(30)の信号経路に配置された、回折素子(32)とを有する、検出装置(12)において、
少なくとも1つの回折素子(32)が、入射電磁エコー信号(30)の強度(I)を異なる信号経路(36)を伝搬する少なくとも2つの電磁信号成分(34)に分割するように設計され、
前記少なくとも1つの回折素子(32)及び前記少なくとも2つのレシーバ領域(40)が、電磁信号成分(34)用の少なくとも2つの異なる信号経路(36)が異なるレシーバ領域(40)に割り当てられるように互いに適合している
ことを特徴とする、検出装置(12)。
【請求項9】
少なくとも1つの送信装置(22)が、少なくとも1つの規定された波長範囲で、特に少なくとも1つの規定された波長を有する電磁走査信号(28)を生成するために使用され得る少なくとも1つの信号源を有することを特徴とする、請求項8に記載の検出装置。
【請求項10】
電磁信号によって物体(18)を検出するための少なくとも1つの検出装置(12)を有する車両(10)であって、前記少なくとも1つの検出装置(12)が、
電磁走査信号(28)を送信することができる少なくとも1つの送信装置(22)と、
反射された電磁走査信号(28)から得られる電磁エコー信号(30)を検出することができる少なくとも1つの受信装置(24)と、
前記少なくとも1つの検出装置(12)を制御し、電気的受信信号を処理するために使用することができる少なくとも1つの制御評価装置(26)とを有し、
前記少なくとも1つの受信装置(24)が、
電磁エコー信号(30)を電気的受信信号に変換することができる少なくとも1つのレシーバ(38)の少なくとも2つのレシーバ領域(40)と、
電磁エコー信号(30)に対する回折効果を有する少なくとも1つの回折素子(32)であって、前記少なくとも2つのレシーバ領域(40)の上流側にある前記電磁エコー信号(30)の信号経路に配置された、回折素子(32)とを有する、車両(10)において、
少なくとも1つの回折素子(32)が、入射電磁エコー信号(30)の強度(I)を異なる信号経路(36)を伝搬する少なくとも2つの電磁信号成分(34)に分割するように設計され、
前記少なくとも1つの回折素子(32)及び前記少なくとも2つのレシーバ領域(40)が、電磁信号成分(34)用の少なくとも2つの異なる信号経路(36)が異なるレシーバ領域(40)に割り当てられるように互いに適合している
ことを特徴とする、車両(10)。
【請求項11】
前記車両(10)が少なくとも1つの運転者支援システム(20)を有することを特徴とする、請求項10に記載の車両。
【請求項12】
電磁信号(28、30)によって物体(18)を検出するための検出装置(12)を動作させるための方法であって、
少なくとも1つの送信装置(22)が電磁走査信号(28)を送信し、
反射された電磁走査信号(28)から得られる電磁エコー信号(30)を検出するために少なくとも1つの受信装置(24)が使用され、前記少なくとも1つの受信装置(24)の少なくとも1つの回折素子(32)が前記電磁エコー信号(30)を回折し、回折された前記電磁エコー信号(30)が少なくとも1つのレシーバ(38)の少なくとも2つのレシーバ領域(40)を使用して電気的受信信号に変換され、
少なくとも1つの制御評価装置(26)が前記電気的受信信号を処理する、
方法において、
少なくとも1つの回折素子(32)を使用して、前記入射電磁エコー信号(30)の強度(I)が、異なる信号経路(36)を伝搬する少なくとも2つの電磁信号成分(34)に分割され、
前記少なくとも2つの電磁信号成分(34)が異なるレシーバ領域(40)に向けられる
ことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁信号によって物体を検出するための検出装置の受信装置であって、電磁信号を電気的受信信号に変換することができる少なくとも1つのレシーバの少なくとも2つのレシーバ領域を有し、電磁信号に対して回折効果を有する少なくとも1つの回折素子を有し、この回折素子は、少なくとも2つのレシーバ領域の上流側にある電磁信号の信号経路に配置される受信装置に関する。
【0002】
本発明は更に、電磁信号によって物体を検出するための検出装置であって、電磁走査信号を送信することができる少なくとも1つの送信装置と、反射された電磁走査信号から得られる電磁エコー信号を検出することができる少なくとも1つの受信装置と、検出装置を制御し電気的受信信号を処理することができる少なくとも1つの制御評価装置とを有する検出装置に関し、少なくとも1つの受信装置は、電磁エコー信号を電気的受信信号に変換することができる少なくとも1つのレシーバの少なくとも2つのレシーバ領域と、電磁エコー信号に対して回折効果を有する少なくとも1つの回折素子とを有し、回折素子は、少なくとも2つのレシーバ領域の上流側にある電磁エコー信号の信号経路に配置される。
【0003】
更に、本発明は、電磁信号によって物体を検出するための少なくとも1つの検出装置を有する車両に関し、少なくとも1つの検出装置は、電磁走査信号を送信することができる少なくとも1つの送信装置と、反射された電磁走査信号から得られる電磁エコー信号を検出することができる少なくとも1つの受信装置と、検出装置を制御し電気的受信信号を処理することができる少なくとも1つの制御評価装置とを有し、少なくとも1つの受信装置は、電磁エコー信号を電気的受信信号に変換することができる少なくとも1つのレシーバの少なくとも2つのレシーバ領域と、電磁エコー信号に対して回折効果を有する少なくとも1つの回折素子とを有し、回折素子は、少なくとも2つのレシーバ領域の上流側にある電磁エコー信号の信号経路に配置される。
【0004】
更に、本発明は、電磁信号によって物体を検出するための検出装置を動作させるための方法に関し、少なくとも1つの送信装置が電磁走査信号を送信し、
少なくとも1つの受信装置が、反射された電磁走査信号から得られる電磁エコー信号を検出するために使用され、少なくとも1つの受信装置の少なくとも1つの回折素子が、電磁エコー信号を回折し、回折された電磁エコー信号が、少なくとも1つのレシーバの少なくとも2つのレシーバ領域を使用して電気的受信信号に変換され、少なくとも1つの制御評価装置が、電気的受信信号を処理する。
【背景技術】
【0005】
独国特許第102017201127号明細書は、光波を受光するための光学配置を開示しており、この光学配置は、少なくとも1つの入射光波を検出するための検出器の表面上に少なくとも1つの入射光波を集光するための受光光学系を有し、平面的な広がりを有する少なくとも1つの回折光学素子が、受信光学系と検出器との間に配置され、少なくとも1つの回折光学素子が、少なくとも1つの光学的機能を有する表面構造を備えた表面を有する。更にまた、このような光学配置を有するLIDAR装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許第102017201127号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、電磁信号の検出におけるダイナミックレンジを拡大することができる、冒頭で述べたタイプの受信装置、検出装置、車両、及び方法を設計することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
受信装置の場合の本発明によるこの目的は、少なくとも1つの回折素子が、入射電磁信号の強度を異なる信号経路を伝搬する少なくとも2つの電磁信号成分に分割するように設計され、少なくとも1つの回折素子及び少なくとも2つのレシーバ領域が、電磁信号成分用の少なくとも2つの異なる信号経路が異なるレシーバ領域に割り当てられるように、互いに適合していることで達成される。
【0009】
本発明によれば、少なくとも1つの回折素子は、レシーバ領域の上流側にある入射電磁信号の信号経路に配置される。少なくとも1つの回折素子は、それぞれの強度が少なくとも2つの電磁信号成分に分割されるように、電磁信号を回折させることができる。信号成分は異なる信号経路を伝搬する。信号経路は異なるレシーバ領域に割り当てられ、信号成分は異なるレシーバ領域から適宜検出される。このようにして、個々のレシーバ領域に割り当てられるそれぞれの強度成分は、入力電磁信号の強度よりも小さくなる。これにより、個々のレシーバ領域の過負荷が防止される。受信した電磁信号の強度を複数のレシーバ領域にわたって分割することにより、単一のレシーバ領域に過負荷がかかるのを回避することができる。
【0010】
本発明を使用すると、1つのレシーバ領域のみを使用して電磁信号を検出する場合よりも、過負荷をかけることなく、より大きな強度の電磁信号を検出することができる。これにより、記録時間を長くすることができ、比較的弱い電磁信号であっても検出することができる。これにより、検出可能な最大信号強度と最小信号強度との間のダイナミックレンジを拡大することができる。
【0011】
本発明による受信装置により、過負荷なしに比較的強い電磁エコー信号を検出することが可能になる。このような強い電磁エコー信号は、比較的近距離に位置し、かつ/又は高反射性、特に再帰反射性の表面を有する物体で反射される走査信号に由来する可能性がある。
【0012】
回折素子は、比較的少ない労力、特に少ない製造労力、組立て労力及び/又は支出で実装及び組立てが可能である。更に、回折素子は比較的堅牢である。したがって、受信装置は、特に車両で使用されるときに起こり得るような厳しい動作条件下でも使用することができる。
【0013】
ダイナミックレンジの拡大により、本発明による受信装置を、特に日射によるバックグラウンドノイズの増加につながる状況が発生し得る応用分野で使用することができる。これは、検出装置が車両で使用される場合に当てはまり得る。
【0014】
更に、本発明により、特に道路交通の場合のように、反射率が大きく異なる物体が検出される応用分野で、本受信装置を使用することが可能になる。一方では、道路交通において、検出装置は、特に道路標識などの形態の再帰反射物体を検出するために使用され、他方では、低反射物体、特に暗い衣服を着た人や暗い車両内にいる人を検出するために使用されることが意図されている。本発明の受信装置は、物体の反射率に関して、約5%~95%の広い帯域幅を検出するために使用することができる。
【0015】
有利には、電磁走査信号は、特にパルス光信号、特にレーザ信号であり得る。光信号を容易に得ることができる。レーザを使用して、単色走査信号を実装することができる。
【0016】
有利には、検出装置は、信号飛行時間法、特に信号パルス飛行時間法に従って動作することができる。信号パルス飛行時間法に従って動作する検出装置は、飛行時間(TOF)システム、光検出及び測距(LiDAR)システム、レーザ検出及び測距(LaDAR)システムなどとして設計及び参照することができる。
【0017】
有利には、検出装置は走査システムとして設計することができる。この場合、電磁走査信号を用いて監視領域をサンプリング、即ち、走査することができる。この目的のために、走査信号の伝播方向を監視領域上で変化させることができ、特に掃引することができる。この場合、少なくとも1つの信号偏向装置、特に走査装置、偏向ミラー装置などを使用することができる。代替的に、検出装置は、いわゆるフラッシュシステム、特にフラッシュLiDARとして具現化することができる。フラッシュシステムでは、適切に広がった走査信号が監視領域の比較的大きな部分又は監視領域全体を同時に照射することができる。
【0018】
有利には、検出装置は、レーザベースの距離測定システムとして設計することができる。レーザベースの距離測定システムは、信号源としてレーザ、特にダイオードレーザを含むことができる。特に、レーザを使用して走査信号としてパルスレーザビームを送信することができる。レーザは、人間の目に可視又は不可視の波長域の伝送信号を放射するのに使用できる。同様に、検出装置のレシーバは、放射される走査信号の波長に合わせて設計されたセンサ、特にポイントセンサ、ラインセンサ、及び/又は表面センサ、特に(アバランシェ)フォトダイオード、フォトダイオードライン、CCDセンサ、アクティブピクセルセンサ、特にCMOSセンサなどを備えることができるか、又はそれらから成ることができる。レーザベースの距離測定システムは、レーザスキャナとして設計することが有利である。監視領域は、レーザスキャナを使用して、特にパルスレーザ走査信号、特にレーザビームで走査することができる。
【0019】
本発明は、車両、特に自動車に有利に使用することができる。本発明は、陸上車両、特に乗用車、トラック、バス、オートバイなど、航空機、特にドローン、及び/又は船舶に有利に使用することができる。本発明はまた、自律的に又は少なくとも半自律的に動作することができる車両に使用することができる。しかしながら、本発明は車両に限定されない。それはまた、定置運転、ロボット工学及び/又は機械、特にクレーン、掘削機などの建設機械又は輸送機械において使用することができる。
【0020】
検出装置は、有利には、車両又は機械の少なくとも1つの電子制御装置、特に運転者支援システム及び/又はシャーシ制御システム及び/又は運転者情報装置及び/又は駐車支援システム及び/又はジェスチャ認識システムなどに接続されるか、又はその一部とすることができる。このようにして、車両又は機械の機能の少なくとも一部を自律的又は半自律的に実行することができる。
【0021】
検出装置は、静止又は移動物体、特に車両、人、動物、植物、障害物、道路の凹凸、特に道路にできた穴や石、道路境界線、交通標識、空き地、特に駐車スペース、降水などの検出、及び/又は動作及び/又はジェスチャの検出に使用することができる。
【0022】
有利な実施形態では、少なくとも1つの回折素子は、少なくとも1つの格子状構造を有することができ、及び/又は少なくとも1つの回折素子は、少なくとも1つの回折光学素子を有するか、又はそれから成ることができる。このような回折素子は、電磁信号を回折させるために使用することができる。回折は、電磁信号の強度を複数の信号成分に分割するために使用することができる。
【0023】
有利には、少なくとも1つの回折素子は、ホログラム、ホログラフィック格子などによって実現することができる。このようにして、回折素子を産業界で容易に製造することができる。
【0024】
有利には、少なくとも1つの回折素子は、電磁信号、特に光波を回折する構造を有することができる。干渉効果により、少なくとも1つの回折素子の背後にある入射電磁信号の強度を複数の電磁信号成分に分割することができる。
【0025】
更なる有利な実施形態では、電磁信号用の少なくとも1つの回折素子は、少なくとも部分的に反射性及び/又は少なくとも部分的に透過性であり得、及び/又は少なくとも1つの回折素子は、電磁信号用に反射性であるように信号経路内に配置され得、及び/又は少なくとも1つの回折素子は、電磁信号用に透過性であるように信号経路内に配置され得る。このようにして、受信装置の配置は、全体としてより柔軟になるように設計することができる。
【0026】
有利には、電磁信号用の少なくとも1つの回折素子は、排他的に反射性であり得る。このようにして、電磁信号を更に偏向させることができる。したがって、少なくとも1つの回折素子及び少なくとも1つのレシーバを受信装置に入射する電磁信号の方向に対して一直線上に配置する必要はない。
【0027】
代替的又は追加的に、電磁信号用の少なくとも1つの回折素子は、排他的に透過性であり得る。このようにして、少なくとも1つの回折素子及び少なくとも1つのレシーバを受信装置に入射する電磁信号の方向に対して一直線上に配置することができる。
【0028】
代替的又は追加的に、電磁信号用の少なくとも1つの回折素子は、部分的に透過性であり、部分的に反射性であり得る。このようにして、入射電磁信号の強度の一部を反射することができ、一部を少なくとも1つの回折素子を通過させることができる。特に、複数のレシーバを使用することができる。有利には、レシーバのうちの1つは、少なくとも1つの回折素子と一直線に配置することができ、送信された信号成分を受信することができる。別のレシーバは、少なくとも1つの回折素子の隣に配置されてもよく、反射された電磁信号成分を受信することができる。
【0029】
強度をただ1つの次元で分割するための少なくとも1つの回折素子は、入射電磁信号の信号経路に対して横方向に、特に垂直方向に、具現化することができ、
及び/又は
強度を2つの次元で分割するための少なくとも1つの回折素子は、入射電磁信号の信号経路に対して横方向に、特に垂直方向に、具現化することができる。
【0030】
入射電磁信号の強度を1つの次元でのみ分割する場合、レシーバ領域は、並んで、特に線状に配置することができる。レシーバのレシーバ領域は、一列に配置することも、2つの次元で配置することもできる。
【0031】
二次元的に配置されたレシーバ領域を、強度を1つの次元でのみ分割することと組み合わせて使用する場合、検出された電磁信号が到来する方向を検出するために、第1の次元に対して横方向に、特に垂直方向に延び、かつ信号経路に対して横方向に、特に垂直方向に延びる第2の次元を使用することができる。
【0032】
二次元的に配置された複数のレシーバ領域にわたって、入射電磁信号の強度を2つの次元で分割する場合、少なくとも1つのレシーバは、全体としてよりコンパクトに設計することができる。
【0033】
更なる有利な実施形態では、電磁信号を検出するための受信装置は、高ダイナミックレンジで構成されてもよい。このように、受信装置は、検出される電磁信号の強度に大きな差がある用途に使用することができる。
【0034】
ダイナミックレンジは、電磁信号の最大強度と最小強度の商である。高ダイナミックレンジ(HDR)は、1000:1より大きい、特に10000:1より大きい比を表すために使用される。
【0035】
高ダイナミックレンジの電磁信号の検出により、本発明による受信装置を、いわゆるマルチショット方式に従って動作する検出装置と接続して使用することができる。この場合、測定、特に距離測定、方向測定、及び/又は速度測定において、送信装置を使用して複数の電磁走査信号を監視領域に順次送信し、対応する反射電磁エコー信号を受信装置で受信する。エコー信号は、異なる検出時間で検出することができる。1つの測定のために、順次検出されたエコー信号が合成される。これにより、エコー信号を検出するための全体的な積分時間が長くなる。したがって、より大きなダイナミックレンジを達成することができる。
【0036】
少なくとも1つのレシーバは、少なくとも1つの線形センサを有するか、もしくはそれから成ることができ、及び/又は少なくとも1つのレシーバは、少なくとも1つの表面センサを有するか、もしくはそれから成ることができ、及び/又は少なくとも1つのレシーバ領域は、少なくとも1つのレシーバ要素を用いて実現することができる。
【0037】
線形センサの場合、レシーバ要素は一列に配置される。複数のレシーバ領域を1つの空間次元で並べて配置することができる。これにより、必要なレシーバ領域の数及びレシーバ領域の読み出しに要する時間を低減することができる。
【0038】
表面センサの場合、レシーバ要素は二次元的に配置される。表面センサの場合、レシーバ領域を二次元的に配置することができる。したがって、信号成分を検出するための2つの空間次元を実現することができる。代替的又は追加的に、レシーバ領域は、一列に並んで配置することができる。全体として、複数のレシーバ要素及び対応するレシーバ領域を有する表面センサは、線形センサよりもコンパクトに実現することができ、より柔軟に使用することができる。
【0039】
表面センサは、入射電磁信号の強度を2つの空間次元で分割する少なくとも1つの回折素子と組み合わせて使用することができる。このようにして、強度を複数の信号成分に分割することができる。これにより、個々の信号成分の強度を更に低減することができる。
【0040】
代替的に、表面センサは、入射電磁信号の強度を1つの空間次元で分割する少なくとも1つの回折素子と組み合わせて使用することができる。表面センサに起因して利用可能な第2の空間次元を、受信装置が受信した電磁信号が到来する方向を決定するために使用することができる。この場合、受信した電磁信号は、その信号が到来する方向によって、第2の空間次元の信号成分に分割され、表面センサの対応するレシーバ領域に向けられるように、受信装置を設計することができる。第2の空間次元におけるレシーバ領域の位置から、電磁信号の方向を特徴付ける方向変数を決定することができる。電磁信号、特にエコー信号が到来する方向は、電磁信号を反射した物体が位置する方向に対応し得る。
【0041】
代替的又は追加的に、少なくとも1つのレシーバ領域は、レシーバ要素を備えることができる。
【0042】
ただ1つのレシーバ要素から成るレシーバ領域によって、対応する高い空間分解能を達成することができる。
【0043】
複数のレシーバ要素を有するレシーバ領域では、それぞれの信号成分の強度を複数のレシーバ要素に分配することができる。これにより、ダイナミックレンジを更に向上させることができる。
【0044】
有利には、いわゆる「ビニング」を使用して複数のレシーバ要素を組み合わせてレシーバ領域を形成することができる。
【0045】
本発明の文脈におけるレシーバ要素は、「絵素」又は「画素」と呼ぶこともできる。
【0046】
更なる有利な実施形態では、少なくとも1つの回折素子及び少なくとも2つのレシーバ領域を有する少なくとも1つの配置は、少なくとも1つの規定された波長範囲で、特に少なくとも1つの規定された波長の電磁信号を検出するために設計され得る。このようにして、信号成分の信号経路をより正確に対応するレシーバ領域に割り当てることができる。
【0047】
有利には、少なくとも1つの回折素子及び少なくとも2つのレシーバ領域を有する少なくとも1つの配置は、単色光、特にレーザ信号を検出するために設計することができる。したがって、少なくとも1つの回折素子によって分割された信号成分を、対応するレシーバ領域に、より正確に向けることができる。
【0048】
更に、検出装置の場合の本発明による本目的は、少なくとも1つの回折素子が、入射電磁エコー信号の強度を異なる信号経路を伝搬する少なくとも2つの電磁信号成分に分割するように設計され、少なくとも1つの回折素子及び少なくとも2つのレシーバ領域が、電磁信号成分用の少なくとも2つの異なる信号経路が異なるレシーバ領域に割り当てられるように、互いに適合していることで達成される。
【0049】
本発明によれば、少なくとも1つの受信装置は、入射エコー信号を少なくとも2つの電磁信号成分に分割する少なくとも1つの回折素子を有する。少なくとも2つの電磁信号成分は、少なくとも1つの回折素子によって異なるレシーバ領域に向けられ、電気的受信信号に変換される。
【0050】
有利には、少なくとも1つの送信装置は、電磁走査信号を生成するための少なくとも1つの信号源を備えることができる。少なくとも1つの送信装置及び少なくとも1つの受信装置は、少なくとも1つの制御評価装置と互いに適合しているように動作することができる。このようにして、特に信号飛行時間法を使用して、物体情報、特に検出装置に対する物体の距離、方向及び/又は速度を、エコー信号に基づいて決定することができる。
【0051】
少なくとも1つの送信装置は、有利には、少なくとも1つの光学系、特に少なくとも1つの光学レンズなどを有することができる。光学系では、走査信号を操作、特に広げたり及び/又は集束させることができる。
【0052】
少なくとも1つの送信装置は、有利には、少なくとも1つの信号偏向装置、特に偏向ミラー、MEMSミラーなどを有することができる。このようにして、電磁走査信号を少なくとも1つの監視領域に向けることができる。
【0053】
少なくとも1つの信号偏向装置は、有利には変更可能、特に調整可能であり得る。このようにして、電磁走査信号の伝搬方向を変えることができる。したがって、監視領域をサンプリングし、特に少なくとも1つの電磁走査信号で走査することができる。有利には、少なくとも1つの信号偏向装置は、少なくとも1つの振動ミラー又は振動ミラー配置を有することができる。したがって、電磁走査信号の方向を連続的に変化させることができる。
【0054】
有利には、少なくとも1つの制御評価装置は、1つ又は複数の構成要素を用いて集中的又は分散的に実装することができる。この場合、少なくとも1つの制御評価装置は、少なくとも1つの送信装置及び/又は少なくとも1つの受信装置で部分的に実装することができる。
【0055】
少なくとも1つの制御評価装置は、ソフトウェア及び/又はハードウェアソリューションによって有利に実装することができる。
【0056】
有利には、少なくとも1つの制御評価装置を使用して、検出装置に対する物体の距離、方向及び/又は速度を特徴付ける物体変数を、電気的受信信号から決定することができる。これらの対象変数は、適切な電気的手段によって更に処理することができる。
【0057】
有利な実施形態では、少なくとも1つの送信装置は、少なくとも1つの信号源を有することができ、この信号源は、少なくとも1つの規定された波長範囲で、特に少なくとも1つの規定された波長で電磁走査信号を生成するために使用することができる。このようにして、反射走査信号から得られる電磁エコー信号を、少なくとも1つの回折素子を使用して、対応するレシーバ領域に、より正確に割り当てることができる。
【0058】
有利には、少なくとも1つの送信装置は、信号源として少なくとも1つのレーザを有することができる。レーザを使用して単色光信号を生成することができる。
【0059】
更に、方法の場合の本発明による目的は、
少なくとも1つの回折素子が、入射電磁エコー信号の強度を異なる信号経路を伝搬する少なくとも2つの電磁信号成分に分割するように設計され、少なくとも1つの回折素子及び少なくとも2つのレシーバ領域が、電磁信号成分用の少なくとも2つの異なる信号経路が異なるレシーバ領域に割り当てられるように互いに適合していることで達成される。
【0060】
有利には、特に物体を検出するために、車両外及び/又は車両内の少なくとも1つの監視領域を検出装置で監視することができる。
【0061】
有利な実施形態では、車両は、少なくとも1つの運転者支援システムを有することができる。車両は、運転者支援システムによって自律的又は半自律的に運転することができる。
【0062】
有利には、少なくとも1つの検出装置は、少なくとも1つの運転者支援システムに機能的に接続することができる。このようにして、少なくとも1つの検出装置で得られる監視領域に関する情報、特に物体情報は、車両の自律的又は半自律的な運転を制御するための少なくとも1つの運転者支援システムと共に使用することができる。
【0063】
加えて、方法の場合の本発明による目的は、少なくとも1つの回折素子を使用して、入射電磁エコー信号の強度が異なる信号経路を伝搬する少なくとも2つの電磁信号成分に分割され、少なくとも2つの電磁信号成分が異なるレシーバ領域に向けられることで達成される。
【0064】
本発明によれば、入射電磁エコー信号の強度は、複数のレシーバ領域で分割される。これにより、強い電磁エコー信号に起因して個々のレシーバ領域で過負荷が発生することが防止される。
【0065】
有利には、少なくとも1つの制御評価装置を使用して、電気的受信信号を、検出装置に対する検出物体の距離、方向及び/又は速度を特徴付ける変数に処理することができる。このようにして、検出された物体に関する対応する情報を検出装置で決定することができる。
【0066】
その上に、本発明による受信装置、本発明による検出装置、本発明による車両、及び本発明による方法、並びにそれらのそれぞれの有利な実施形態と組み合わせて開示された特徴及び利点は、互いに適宜適用され、逆の場合もまた同様である。もちろん、個々の特徴及び利点は、互いに組み合わせることができ、個々の効果の総和を超える更なる有利な効果がもたらされる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0067】
本発明の更なる利点、特徴及び詳細は、本発明の例示的な実施形態が図面を参照してより詳細に説明される以下の説明から明らかになるであろう。当業者であれば、図面、明細書及び特許請求の範囲において組み合わせて開示されている特徴を個々に考慮することが好都合であり、それらを組み合わせて意味のある更なる組合せを形成するであろう。概略図では、
【
図1】運転者支援システムと、車両前方の進行方向の物体を検出するためのLiDARシステムとを有する車両の正面図を示す。
【
図2】
図1の運転者支援システム及びLiDARシステムを有する車両の機能図を示す。
【
図3】
図1及び
図2のLiDARシステム用の第1の例示的な実施形態による受信装置を示し、レシーバと反射回折素子とを有し、反射回折素子によって、1つの空間次元における受信エコー信号の強度が、一列に配置されたレシーバのレシーバ領域に向けられる信号成分に分割される。
【
図5】
図3の回折素子の背後の例示的なエコー信号の信号成分の強度分布を示す。
【
図6】
図1及び
図2のLiDARシステムの第2の例示的な実施形態による受信装置を示し、レシーバ領域が一列に配置されたレシーバと、透過型回折素子とを備える。
【
図7】
図1及び
図2のLiDARシステム用の第3の例示的な実施形態による受信装置を示し、レシーバ領域が二次元的に配置されているレシーバと、1つの空間次元におけるエコー信号の強度が信号成分に分解され、異なる方向からのエコー信号がレシーバ領域の異なるグループに向けられる透過型回折素子とを有する。
【
図9】
図1及び
図2のLiDARシステム用の第4の例示的な実施形態による受信装置を示し、レシーバ領域が二次元的に配置されているレシーバと、2つの空間次元におけるエコー信号の強度が信号成分に分割され、対応するレシーバ領域に向けられる透過型回折素子とを有する。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図中、同一の構成要素には、同一の参照符号を付している。
【0069】
図1は、一例として、乗用車の形態の車両10の正面図を示す。
【0070】
車両10は、一例として、LiDARシステム12の形態の検出装置を有する。LiDARシステム12は、レーザスキャナとして設計されている。
図2は、LiDARシステム12を有する車両10の機能図を示す。
【0071】
一例として、LiDARシステム12は、車両10のフロントフェンダに配置される。LiDARシステム12は、物体18の進行方向16における車両10の前方の監視領域14を監視するために使用することができる。LiDARシステム12はまた、車両10上の別の場所に配置され、異なる向きにすることができる。LiDARシステム12はまた、内部を監視するために車両10に配置することができる。LiDARシステム12は、物体情報、例えば、車両10に対する、又はLiDARシステム12それぞれに対する物体18の距離、方向、及び速度、又は対応する特徴変数を特定するために使用することができる。
【0072】
物体18は、静止物体又は移動物体、例えば、他の車両、人、動物、植物、障害物、道路の凸凹、例えば、道路にできた穴や石、道路境界線、交通標識、空き地、例えば、駐車スペース、降水などであってもよい。人のジェスチャは、LiDARシステム12を使用して検出することもできる。
【0073】
LiDARシステム12は、運転者支援システム20に接続される。運転者支援システム20は、車両10を自律的又は半自律的に運転するために使用することができる。
【0074】
LiDARシステム12は、例として、送信装置22と、受信装置24と、制御評価装置26とを備える。
【0075】
制御評価装置26の機能を集中的又は分散的に実行することができる。制御評価装置26の機能の一部を送信装置22及び/又は受信装置24に統合することもできる。また、制御評価装置26と運転者支援システム20とを部分的に組み合わせてもよい。制御評価装置26の機能は、ソフトウェア及びハードウェアにより実装される。
【0076】
LiDARシステム12を使用して測定を実行するために、制御評価装置26を使用して電気送信信号が生成される。送信装置22は、電気送信信号を使用して起動され、対応する単色電磁走査信号28をレーザ信号の形態で送信する。送信装置22は、この目的のために、例えば、ダイオードレーザの形態の信号源を有する。例えば、パルス走査信号28は、信号源を使用して放射される。
【0077】
LiDARシステム12は、走査LiDARシステム又はフラッシュLiDARシステムとして設計することができる。
【0078】
送信装置22は、任意選択で、少なくとも1つの光学系、例えば、少なくとも1つの光学レンズを備えていてもよく、この光学レンズを用いると、生成された走査信号28を適宜操作することができ、特に広げたり/又は集束させることができる。
【0079】
更に、送信装置22は、任意選択で、走査信号28を監視領域14に向けるために使用できる信号偏向装置を有してもよい。信号偏向装置は、変更可能、例えば、旋回可能であり得る。このようにして、走査信号28の伝播方向を掃引することができ、監視領域14をサンプリング又は走査することができる。
【0080】
走査信号28は、送信装置22を使用して監視領域14に送信される。
【0081】
物体18において受信装置24の方向に反射された電磁走査信号28は、受信装置24を使用して電磁エコー信号30として受信される。受信装置24は、高ダイナミックレンジの強度を有するエコー信号30を検出するように設計されている。
【0082】
図3に、
図1及び
図2のLiDARシステム12に使用することができる第1の例示的な実施形態による受信装置24が示されている。
【0083】
受信装置24は、任意選択で、その入力側に、エコー信号偏向装置及び/又は光学系、例えば、光学レンズを有してもよく、この光学レンズにより、電磁エコー信号30は受信装置24の反射型回折素子32に向けられる。
【0084】
反射型回折素子32は、一例として、反射型格子構造を有する。回折素子32は、例えば、回折光学素子として実現することができる。回折素子32は、例えば、入射エコー信号30の信号経路に垂直な空間次元において、エコー信号30に対して回折効果を有する。
【0085】
回折素子32を用いて、入射エコー信号30の強度は、回折によって、例えば、干渉によって、例えば、1つの空間次元で5つの信号成分34に分割され、例えば、約90°偏向される。信号成分34は、図において、より良く区別するために、参照符号34a、34b、即ち、34b
1及び34b
2、並びに34c、即ち、34c
1及び34c
2で指定されている。信号成分34の例示的な強度分布が
図5に示されている。図示の例示的な実施形態における強度分布は対称的である。エコー信号30の強度の主成分は、主信号成分34aに割り当てられる。強度の小さい成分は、それぞれの場合において、強度が小さくなる順に、主信号成分34aに対して対称に配置された2つの第1の副信号成分34b
1及び34b
2と、2つの第2の副信号成分34c
1及び34c
2に割り当てられている。
【0086】
信号成分34a、34b1、34b2、34c1及び34c2は、異なる信号経路36を伝搬している。信号経路36は、図において、より良く区別するために、参照符号36a、36b、即ち、36b1及び36b2、並びに36c、即ち、36c1及び36c2と指定されている。
【0087】
信号成分34は、回折素子32によって受信装置24のレシーバ38に向けられる。
【0088】
レシーバ38は、一例としてCCDセンサとして実装される。代替的に、アクティブピクセルセンサ、フォトダイオードラインなどが設けられてもよい。レシーバ38は、例えば、第1のセンサ軸44に沿って一列に並んで配置された7つのレシーバ領域40を有する。
図4では、レシーバ38は、回折素子32から見た平面図で示されている。代替的なレシーバ38はまた、7つより多い又は少ないレシーバ領域40を有することもできる。
【0089】
第1のセンサ軸44は、デカルトx-y-z座標系のx軸に平行に延びており、方向を分かり易くするために、その対応する座標軸を
図3、
図4及び
図6~
図14に示す。第2のセンサ軸46は、第1のセンサ軸44に垂直方向で、かつx-y-z座標系のy軸に平行に延びる。回折素子32の格子構造がそれに沿って延びる回折素子平面48は、x-y-z座標系のx-z平面に垂直に延びる。
【0090】
一例として、各レシーバ領域40は、単一のレシーバ要素42を備える。レシーバ要素42は、ピクセルとも呼ばれ得る。図示されていない例示的な実施形態では、複数のレシーバ要素42を組み合わせてレシーバ領域40を形成することもできる。レシーバ38としてCCDセンサを使用する場合、複数のレシーバ要素42を組み合わせてレシーバ領域40を形成する、いわゆるビニング方法を使用することができる。
【0091】
回折素子32及びレシーバ38は、例えば、各信号経路36がレシーバ領域40のうちの1つに割り当てられるように、それらの構成、それらの向き及び/又は互いに対する距離において、互いに適合している。全体として、信号経路36及び対応する信号成分34は、異なるレシーバ領域40に割り当てられる。したがって、入射エコー信号30の強度は、信号成分34を介して複数のレシーバ領域40に分配される。
【0092】
レシーバ領域40を用いて、入射電磁エコー信号30のそれぞれの信号成分34は、対応する電気的受信信号に変換される。電気的受信信号は、制御評価装置26を使用して処理される。例えば、物体変数、例えば、LiDARシステム12に対する、又は車両10に対する検出された物体18の距離、方向、及び速度をそれぞれ特徴付ける距離変数、方向変数、及び/又は速度変数は、制御評価装置26を使用して、電気的受信信号から確認される。
【0093】
確認された物体変数は、制御評価装置26を使用して運転者支援システム20に送信される。物体変数は、運転者支援システム20を使用して車両10を自律的又は半自律的に運転するために使用される。
【0094】
例えば、日射は、車両10の運転においてバックグラウンドノイズを増加させる可能性がある。更に、例えば、道路交通では、例えば、5%~95%の範囲内で反射率が大きく異なる物体18を検出することが可能でなければならない。再帰反射特性を有する交通標識は、例えば、高い反射率を示す。一方、例えば、薄暗い衣服の人は、反射率が比較的低い。エコー信号30の強度を複数の信号成分34及び複数のレシーバ領域40に分割することにより、エコー信号30の強度に関して高ダイナミックレンジ(HDR)が可能になる。したがって、単一のレシーバ領域40に当たると過負荷につながる大強度のエコー信号30と小強度のエコー信号30の両方が、確実に検出される。
【0095】
図6は、
図1及び
図2のLiDARシステム12用の受信装置24の第2の例示的な実施形態を示す。
図3及び
図4の第1の例示的な実施形態の要素と同様の要素には、同じ参照符号が付されている。第2の例示的な実施形態は、回折素子32及び対応する回折格子構造がエコー信号30に対して透過性である点で、第1の例示的実施形態と異なる。回折素子32は、レシーバ38と一直線上に配置されている。透過型回折素子32を用いると、走査信号28の強度は、第1の例示的な実施形態と同様に、例えば、5つの信号成分34に分割され、それぞれのレシーバ領域40に向けられる。
【0096】
図7は、
図1及び
図2のLiDARシステム12用の受信装置24の第3の例示的な実施形態を示す。
図8は、受信装置24のレシーバ38の平面図を示す。
図6の第2の例示的な実施形態の要素と同様の要素には、同じ参照符号が付されている。第3の例示的な実施形態は、レシーバ38が、例えば、49個のレシーバ領域40を有する点で、第2の実施形態と異なる。49個のレシーバ領域40は、それぞれ7つのレシーバ領域40を有する7つの列50で、二次元的に配置されている。二次元配置により、レシーバ38は、第1のセンサ軸44に沿った第1の空間次元に加えて、第2のセンサ軸46に沿った第2の空間次元を有する。
【0097】
7つのレシーバ領域40を有する列50のそれぞれは、最初の2つの例示的な実施形態と同様に第1のセンサ軸44に沿って延びる。7つの列50は、第2のセンサ軸46に沿って並んで配置されている。
【0098】
エコー信号30が到来する方向に応じて、第2の空間次元の信号成分34は、対応する列50のレシーバ領域40に向けられる。反射物体18が位置する方向も、照射されたレシーバ領域40から決定される。
【0099】
第3の例示的な実施形態による受信装置24を用いると、例えば、異なる方向に位置する複数の物体18を別々に検出することができる
図7及び
図8では、一例として、2つの物体18からのそれぞれのエコー信号30及び30’が異なる方向から受信される場合が示されている。
【0100】
図9は、受信装置24の第4の例示的な実施形態を示す。
図10は、受信装置24のレシーバ38の平面図を示す。
図7及び
図8の第3の例示的な実施形態の要素と同様の要素には、同じ参照符号が付されている。第4の例示的な実施形態は、エコー信号30が回折素子32によって2つの空間次元で回折される点で、第3の例示的実施形態と異なる。この目的のために、回折素子32は、例えば、同心円状の格子構造を有することができる。
【0101】
回折素子32を用いて、エコー信号30の強度は、例えば、17個の信号成分34a、34b及び34cにわたって2つの空間次元で回折によって分割される。副信号成分34b、34aの信号経路36b、36cは、主信号成分34aの信号経路36aを中心に同心円状に配置されている。最初の3つの例示的な実施形態と同様に、信号成分34a、34b及び34cは、異なる信号経路36a、36b及び36cに沿って、レシーバ38の異なるレシーバ領域40に向けられ、それらによって検出される。
【0102】
第4の例示的な実施形態では、入射エコー信号30の強度は、合計17個のレシーバ領域40にわたって分布する。したがって、検出されたエコー信号30の強度に対するダイナミックレンジを、最初の3つの例示的な実施形態と比較して更に拡大することができる。
【0103】
図示されていない更なる例示的な実施形態では、第3及び第4の例示的な実施形態からの二次元回折素子30は、第1の例示的な実施形態と同様に反射型回折素子32として構成することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁信号によって物体を検出するための検出装置の受信装置であって、
電磁信号を電気的受信信号に変換することができる少なくとも1つのレシーバの少なくとも2つのレシーバ領域を有し、
前記電磁信号に対して回折効果を有する少なくとも1つの回折素子を有し、該回折素子が前記少なくとも2つのレシーバ領域の上流側にある前記電磁信号の信号経路内に配置される、
受信装置において、
少なくとも1つの回折素子が入射電磁信号の強度を異なる信号経路を伝搬する少なくとも2つの電磁信号成分に分割するように設計され、
前記少なくとも1つの回折素子及び前記少なくとも2つのレシーバ領域が前記電磁信号成分用の少なくとも2つの異なる信号経路が異なるレシーバ領域に割り当てられるように互いに適合している、
受信装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの回折素子が少なくとも1つの格子状構造を有し、及び/又は、前記少なくとも1つの回折素子が少なくとも1つの回折光学素子を有するか、若しくは、少なくとも1つの回折光学素子から成る、
請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
電磁信号用の少なくとも1つの回折素子が少なくとも部分的に反射性及び/又は少なくとも部分的に透過性であり、
及び/又は
少なくとも1つの回折素子が電磁信号を反射するように前記信号経路内に配置され、
及び/又は
少なくとも1つの回折素子が、電磁信号を透過するように前記信号経路内に配置される、
請求項1に記載の受信装置。
【請求項4】
強度を1つの次元でのみ分割するための少なくとも1つの回折素子が、入射電磁信号の信号経路に対して横方向に、垂直方向に構成され、
及び/又は
強度を2つの次元で分割するための少なくとも1つの回折素子が、入射電磁信号の信号経路に対して横方向に、垂直方向に構成される、
請求項1に記載の受信装置。
【請求項5】
前記受信装置が、高ダイナミックレンジの電磁信号を検出するように設計されている、
請求項1に記載の受信装置。
【請求項6】
少なくとも1つのレシーバが少なくとも1つのラインセンサを有するか、又は少なくとも1つのラインセンサから成り、
及び/又は
少なくとも1つのレシーバが少なくとも1つの表面センサを有するか、又は少なくとも1つの表面センサから成り、
及び/又は
少なくとも1つのレシーバ領域が少なくとも1つのレシーバ要素で実装される、
請求項1に記載の受信装置。
【請求項7】
少なくとも1つの回折素子及び少なくとも2つのレシーバ領域を有する少なくとも1つの配置が、少なくとも1つの規定された波長範囲で、少なくとも1つの規定された波長を有する電磁信号を検出するように設計されている、
請求項1に記載の受信装置。
【請求項8】
電磁信号によって物体を検出するための検出装置であって、
電磁走査信号を送信することができる少なくとも1つの送信装置と、
反射された電磁走査信号から得られる電磁エコー信号を検出することができる少なくとも1つの受信装置と、
前記検出装置を制御し、電気的受信信号を処理することができる少なくとも1つの制御評価装置と、
を備え、
前記少なくとも1つの受信装置が、
電磁エコー信号を電気的受信信号に変換することができる少なくとも1つのレシーバの少なくとも2つのレシーバ領域と、
電磁エコー信号に対する回折効果を有する少なくとも1つの回折素子であって、前記少なくとも2つのレシーバ領域の上流側にある前記電磁エコー信号の信号経路に配置された、回折素子と、
を有し、
少なくとも1つの回折素子が、入射電磁エコー信号の強度を異なる信号経路を伝搬する少なくとも2つの電磁信号成分に分割するように設計され、
前記少なくとも1つの回折素子及び前記少なくとも2つのレシーバ領域が、電磁信号成分用の少なくとも2つの異なる信号経路が異なるレシーバ領域に割り当てられるように互いに適合している、
検出装置。
【請求項9】
少なくとも1つの送信装置が、少なくとも1つの規定された波長範囲で、少なくとも1つの規定された波長を有する電磁走査信号を生成するために使用され得る少なくとも1つの信号源を有する、
請求項8に記載の検出装置。
【請求項10】
電磁信号によって物体を検出するための少なくとも1つの検出装置を有する車両であって、前記少なくとも1つの検出装置が、
電磁走査信号を送信することができる少なくとも1つの送信装置)と、
反射された電磁走査信号から得られる電磁エコー信号を検出することができる少なくとも1つの受信装置と、
前記少なくとも1つの検出装置を制御し、電気的受信信号を処理するために使用することができる少なくとも1つの制御評価装置と、
を備え、
前記少なくとも1つの受信装置が、
電磁エコー信号を電気的受信信号に変換することができる少なくとも1つのレシーバの少なくとも2つのレシーバ領域と、
電磁エコー信号に対する回折効果を有する少なくとも1つの回折素子であって、前記少なくとも2つのレシーバ領域の上流側にある前記電磁エコー信号の信号経路に配置された、回折素子と、を有する、
車両において、
少なくとも1つの回折素子が、入射電磁エコー信号の強度を異なる信号経路を伝搬する少なくとも2つの電磁信号成分に分割するように設計され、
前記少なくとも1つの回折素子及び前記少なくとも2つのレシーバ領域が、電磁信号成分用の少なくとも2つの異なる信号経路が異なるレシーバ領域に割り当てられるように互いに適合している
車両。
【請求項11】
前記車両が少なくとも1つの運転者支援システムを有する、
請求項10に記載の車両。
【請求項12】
電磁信号によって物体を検出するための検出装置を動作させるための方法であって、
少なくとも1つの送信装置が電磁走査信号を送信し、
反射された電磁走査信号から得られる電磁エコー信号を検出するために少なくとも1つの受信装置が使用され、前記少なくとも1つの受信装置の少なくとも1つの回折素子が前記電磁エコー信号を回折し、回折された前記電磁エコー信号が少なくとも1つのレシーバの少なくとも2つのレシーバ領域を使用して電気的受信信号に変換され、
少なくとも1つの制御評価装置が前記電気的受信信号を処理する、
方法において、
少なくとも1つの回折素子を使用して、入射電磁エコー信号の強度が、異なる信号経路を伝搬する少なくとも2つの電磁信号成分に分割され、
前記少なくとも2つの電磁信号成分が異なるレシーバ領域に向けられる、
方法。
【国際調査報告】