IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エンティア リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-キュベット 図1
  • 特表-キュベット 図2
  • 特表-キュベット 図3
  • 特表-キュベット 図4
  • 特表-キュベット 図5a
  • 特表-キュベット 図5b
  • 特表-キュベット 図5c
  • 特表-キュベット 図5d
  • 特表-キュベット 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】キュベット
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20240521BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20240521BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G01N1/00 101G
G01N33/48 S
G01N1/10 V
G01N1/10 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574665
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 GB2022051156
(87)【国際公開番号】W WO2022254175
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】2108004.9
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519148138
【氏名又は名称】エンティア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ガルベス、 ジェラルド ジョセ レオン
(72)【発明者】
【氏名】バーガー、 ジュディス
(72)【発明者】
【氏名】オコナ―、 ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ベイシー-フィッシャー、 トビー
(72)【発明者】
【氏名】ジェニングス、 オナー
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045BB10
2G045BB60
2G045CA02
2G045CA25
2G045CA26
2G045FA13
2G052AA30
2G052CA04
2G052CA39
2G052DA09
(57)【要約】
血液試料採取用キュベットである。キュベットは、本体と、本体の中に形成された採取開口部と、採取開口部の第1端とキュベットの外部との間の連通を許容する入口開口部と、本体の中に形成されて採取チャンバの、一般にその第1端の反対側にある第2端に隣接する保持チャンバとを含み、採取チャンバは第1深さを有し、この第1深さは、第1端から第2端まで採取チャンバにわたって同一又は実質同一であり、保持チャンバは、それよりも大きな第2深さを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液試料を採取するためのキュベットであって、
本体と、前記本体の中に形成された採取開口部と、前記採取開口部の第1端と前記キュベットの外部との間の連通を許容する入口開口部と、前記本体の中に形成されて前記採取チャンバの、一般に前記第1端の反対側にある第2端に隣接する保持チャンバとを含み、
前記採取チャンバは第1深さを有し、前記第1深さは、前記第1端から前記第2端まで前記採取チャンバにわたって同一又は実質同一であり、前記保持チャンバは、それよりも大きな第2深さを有する、キュベット。
【請求項2】
前記採取チャンバが前記保持チャンバと出会う領域において、前記採取チャンバは一般に平面であり、前記保持チャンバは、前記採取チャンバの平面の両側において前記採取チャンバの深さよりも大きい深さを有する、請求項1に記載のキュベット。
【請求項3】
前記採取チャンバが前記保持チャンバと出会う領域において、前記採取チャンバは一般に平面であり、前記保持チャンバは、前記採取チャンバの平面と一般に平行な方向に幅を有し、前記幅は、前記採取チャンバの第2端の幅よりも大きい、請求項1または2に記載のキュベット。
【請求項4】
前記採取チャンバは一対の側壁を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のキュベット。
【請求項5】
前記側壁の間に画定される前記採取チャンバの幅は、前記採取チャンバの中間部分においてよりも前記採取チャンバの第1端においての方が大きい、請求項4に記載のキュベット。
【請求項6】
前記採取チャンバの幅は、前記中間部分においてよりも前記採取チャンバの第2端においての方が大きい、請求項5に記載のキュベット。
【請求項7】
一以上の連通路をさらに含み、前記連通路は第1端が前記保持チャンバと連通し、第2端が前記キュベットの外部と連通する、請求項1から6のいずれか一項に記載のキュベット。
【請求項8】
2つの連通路を含む、請求項7に記載のキュベット。
【請求項9】
前記2つの連通路の第2端が前記入口開口部のいずれかの側部に存在する、請求項8に記載のキュベット。
【請求項10】
分析チャンバをさらに含み、前記分析チャンバは第1端が前記保持チャンバと連通する、請求項1から9のいずれか一項に記載のキュベット。
【請求項11】
前記分析チャンバは、その第1端は別として、すべてまたは実質すべての側面に囲まれる、請求項10に記載のキュベット。
【請求項12】
前記分析チャンバは細長く、その長さに沿って一定または実質一定の幅を有する、請求項10または11に記載のキュベット。
【請求項13】
前記分析チャンバは、その長さに沿って一定または実質一定の幅を有する、請求項12に記載のキュベット。
【請求項14】
前記分析チャンバの容積は、前記採取チャンバの容積と同じまたはそれよりも大きい、請求項10から13のいずれか一項に記載のキュベット。
【請求項15】
前記保持チャンバに隣接する接合領域をさらに含み、前記分析チャンバ及び一以上の連通路が前記接合領域と連通する、請求項7から9のいずれか一項に従属するときの請求項10から14のいずれか一項に記載のキュベット。
【請求項16】
前記入口開口部および採取チャンバの寸法は、前記入口開口部が血液試料に接触すると、血液が毛細管作用によって前記採取チャンバの中に引き込まれるようにされる、請求項1から15のいずれか一項に記載のキュベット。
【請求項17】
前記採取チャンバおよび保持チャンバの寸法は、毛細管作用によって前記採取チャンバの中に引き込まれる血液が、前記保持チャンバに到達したときに停止して前記保持チャンバの中に引き込まれなくなるようにされる、請求項16に記載のキュベット。
【請求項18】
前記本体は一般に平面であり、前記キュベットは、前記本体の平面から離れるように延びる一以上の突起をさらに含み、前記キュベットが一平面上に配置されるときに、前記本体の少なくとも一部が、人が前記キュベットを把持するのを許容する十分な距離だけ表面上に持ち上がる、請求項1から17のいずれか一項に記載のキュベット。
【請求項19】
前記距離は少なくとも0.8cmである、請求項18に記載のキュベット。
【請求項20】
一対の突起が、前記本体の対向する側部に設けられる、請求項18または19に記載のキュベット。
【請求項21】
前記突起または各突起が、前記本体の平面から両方向に離れるように延びる、請求項18から20のいずれか一項に記載のキュベット。
【請求項22】
血液試料を採取する方法であって、請求項1から21のいずれか一項に記載のキュベットの前記入口開口部を、前記保持チャンバに実質的に入ることなく前記採取チャンバを満たしまたは実質的に満たすべく血液が毛細管作用により前記キュベットの前記採取チャンバの中に引き込まれるように、血液試料に接触させる工程を含む、方法。
【請求項23】
前記キュベットは、請求項10から14のいずれか一項に記載のキュベット、またはそのいずれかの従属項に記載のキュベットであり、
前記方法はさらに、前記キュベットに遠心力をかけて、前記採取チャンバにある血液が前記保持チャンバを通って前記分析チャンバの中へと流れるようにする工程を含む、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキュベットに関し、詳しくは、例えば遠心分離後の、流体試料の採取、および流体試料のその後の分析のために適合されたキュベットに関する。
【0002】
キュベット内に含まれる流体の光学的特性を決定する分析装置が知られている。そのような装置では、キュベットは、分析のために流体試料で少なくとも部分的に満たされ、装置内に配置される。光学的(または他の)放射が、流体試料の特性を測定することを可能にするために、流体を通過する。
【0003】
公知タイプのキュベットの例は、特許文献1~4に見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2096444号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1055112号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/008137号
【特許文献4】英国特許出願公開第2555403号明細書
【発明の概要】
【0005】
血液やその他の液体試料の光学分析が、貧血の診断を含む幅広い医療診断に利用されている。例えば、光学分析装置は、血液試料を分析して、ヘマトクリット、およびヘモグロビンの存在および量を決定することができる。
【0006】
重要なことは、特に手先の器用さ、協調性又は視力が低下したユーザがキュベットを、血液試料を得るために容易かつ確実に取り扱うことができることである。またも重要なことは、使用中、キュベットが流体試料を確実に集め、その後のステップで試料全体の分析を許容することである。
【0007】
本発明の目的は、このタイプの改良されたキュベットを提供することである。したがって、本発明の一側面は、血液試料を採取するためのキュベットを提供することである。このキュベットは、本体と、本体の中に形成された採取開口部と、採取開口部の第1端とキュベットの外部との間の連通を許容する入口開口部と、本体の中に形成されて採取チャンバの、一般にその第1端の反対側にある第2端に隣接する保持チャンバとを含み、採取チャンバは第1深さを有し、この第1深さは、第1端から第2端まで採取チャンバにわたって同一又は実質同一であり、保持チャンバは、それよりも大きな第2深さを有する。
【0008】
有利には、採取チャンバが保持チャンバと出会う領域において、採取チャンバは一般に平面であり、保持チャンバは、採取チャンバの平面の両側において採取チャンバの深さよりも大きい深さを有する。
【0009】
好ましくは、採取チャンバが保持チャンバと出会う領域において、採取チャンバは一般に平面であり、保持チャンバは、採取チャンバの平面と一般に平行な方向に幅を有し、これは、採取チャンバの第2端の幅よりも大きい。
【0010】
好都合には、採取チャンバは一対の側壁を有する。
【0011】
有利には、側壁の間に画定される採取チャンバの幅は、中間部分においてよりも採取チャンバの第1端においての方が大きい。
【0012】
好ましくは、採取チャンバの幅は、中間部分においてよりも第2端においての方が大きい。
【0013】
好都合には、キュベットは、一以上の連通路をさらに含み、この連通路は第1端が保持チャンバと連通し、第2端がキュベットの外部と連通する。
【0014】
有利には、キュベットは、2つの連通路を含む。
【0015】
好ましくは、2つの連通路の第2端は、入口開口部のいずれかの側部にある。
【0016】
好都合には、キュベットは分析チャンバをさらに含み、分析チャンバは第1端が保持チャンバと連通する。
【0017】
有利には、分析チャンバは、その第1端は別として、すべてまたは実質すべての側面に囲まれる。
【0018】
好ましくは、分析チャンバは細長く、その長さに沿って一定または実質一定の幅を有する。
【0019】
好都合には、分析チャンバは、その長さに沿って一定または実質一定の深さである。
【0020】
有利には、分析チャンバの容積は、採取チャンバの容積と同じまたはそれよりも大きい。
【0021】
好ましくは、キュベットは、保持チャンバに隣接する接合領域をさらに含み、分析チャンバ及び一以上の連通路が接合領域と連通する。
【0022】
好都合には、入口開口部および採取チャンバの寸法は、入口開口部が血液試料に接触すると、血液が毛細管作用によって採取チャンバの中に引き込まれるようにされる。
【0023】
有利には、採取チャンバおよび保持チャンバの寸法は、毛細管作用によって採取チャンバの中に引き込まれる血液が、保持チャンバに到達したときに停止して保持チャンバの中に引き込まれなくなるようにされる。
【0024】
好ましくは、本体は一般に平面であり、キュベットは、本体の平面から離れるように延びる一以上の突起をさらに含む。これにより、キュベットが一平面上に配置されるときに、本体の少なくとも一部が、人がキュベットを把持するのを許容する十分な距離だけ表面上に持ち上がる。
【0025】
便利なことに、その距離は少なくとも0.8cmである。
【0026】
有利には、一対の突起が、本体の対向する側部に設けられる。
【0027】
好ましくは、当該突起または各突起が、本体の平面から両方向に離れるように延びる。
【0028】
本発明の他側面は、血液試料を採取する方法を提供する。この方法は、上記請求項のいずれかに記載のキュベットの入口開口部を、保持チャンバに実質的に入ることなく採取チャンバを満たしまたは実質的に満たすべく血液が毛細管作用によりキュベットの採取チャンバの中に引き込まれるように、血液試料に接触させる工程を含む。
【0029】
好都合には、キュベットは、上記のいずれか一つに記載のキュベットであり、この方法はさらに、キュベットに遠心力をかけて、採取チャンバにある血液が保持チャンバを通って分析チャンバの中へと流れるようにする工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明がより容易に理解されるように、本発明の実施形態は、次に、添付の図面を参照しながら、例として説明される。
【0031】
図1】本発明に係るキュベットの斜視図である。
図2】本発明に係るキュベットの斜視図である。
図3図1のキュベットの片半体の拡大図である。
図4図1のキュベットの断面図である。
図5a-5d】図1のキュベットの使用における段階を示す。
図6図1のキュベットの一部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1および図2はそれぞれ、本発明を具現化したキュベット1の前面斜視図および背面斜視図を示す。
【0033】
キュベット1は、一般に平面である本体2を有する。本体2は、一般に参照番号3で示される前端と、一般に参照番号4で示される後端とを有する。
【0034】
本体2は一般に、矩形の形態を有し、図示される実施形態では、一般に互いに平行である側面5を有する。また、本体は裏面6を有し、これは一般に側面5に垂直であることが好ましい。図示の実施形態では、側面5と裏面6との間に面取りされた又は丸い角部7が存在する。これらの角部7は、キュベット1の取り扱いの容易さを高める。
【0035】
本体2はまた、図示される実施形態において、やはり一般に互いに平行である一般に平面の上面8および下面9を有する。
【0036】
その前端3において、キュベット1は、それぞれの傾斜面11によって形成された突出頂点10を有する。傾斜面11はそれぞれ、角部12から突出する。ここで、傾斜面11は、前方に(すなわち、一般にキュベット1の後端4から前端3に通過する方向に)、傾斜面11が頂部10において互いに交わるまで、それぞれの側面5と交わる。頂点10は、好ましくは、丸められた形状またはアール付きの形状を有する。
【0037】
各側面5の前方端には、突起13が本体2に対して上方および下方に突出する。図示の例では、突起13は本体2の平面から離れるように突出し、図示の例では、一般に本体2の平面に垂直である。
【0038】
図示の例では、突起13は一般に丸められている。
【0039】
突起13が存在しない場合、キュベット1は一般に平面である。キュベット1がテーブルトップのような平坦な面上に置かれた場合、キュベット1はテーブルトップに対して平らに横たわるので、特に器用さが低下したユーザには、把持して拾い上げるのが比較的困難となり得る。
【0040】
しかしながら、突起13の存在が、キュベット1を平坦な面に配置するときに、本体2の前端3が当該面から離れるように上方に持ち上げられ、ユーザがキュベット1を把持して拾い上げることがずっと容易となる。当業読者であればわかることだが、突起が図に示される正確な位置に形成される必要はなく、キュベット1上の任意の都合のよい箇所に配置される任意の適切な数の突起を、キュベットが把持され及び取り上げられ得る容易性を改良するべく使用することができる。
【0041】
図に示す例では、突起13は本体2から上方および下方の両方に突出し、本体2の前端3が、キュベット1がどちら向きに上がっているかにかかわらず、表面から上に持ち上げられる。他実施形態では、突起13は、本体2から一方向のみに突出してもよい。なおもさらなる例では、各突起が本体から一方向に突出するが、これらの突起が互いに異なる方向に(例えば、一方は本体の平面から上方に、他方は下方に)突出する。これにより、キュベットの重さを最小限に抑えながら、キュベットの一角部を常に平坦面から上に持ち上げることが保証される。
【0042】
好ましい実施形態では、一以上の突起13の存在が意味するのは、キュベット1が平面上に配置されたときに、本体2の少なくとも一部が、キュベット1がユーザによって容易に把持されて拾い上げられるように、本体と表面との間に十分な空間を提供する距離だけ表面より上に持ち上げられることである。ほとんどのユーザにとって、この距離は少なくとも0.8cmになるが、本発明はこれに限らない。
【0043】
キュベット1は、2つの半体から形成されてよく、それらは別々に製造され、次いで互いに取り付けられる。片半分はキュベット1の上面8を含み、もう片半分はその下面9を含み得る。2つの半体が一緒に固定されるとき、一以上のチャンバがキュベット1の本体2の中に存在するように、片半体または両半体が、それらの内面に凹みを有するように形成されてよい。これらのチャンバが、以下に詳細に説明される。しかしながら、本発明がキュベットのこの製造方法に限定されず、キュベットが、任意の他の好適な又は便利な態様で形成され得ることを理解すべきである。
【0044】
図3を参照すると、キュベット1の片半体14が孤立して示される。いくつかの実施形態では、凹みは、キュベットの片半体の内面に形成され、もう片半体の内面は実質的に滑らかおよび/または平坦である。他例では、両半体が、それらの内面に形成された凹みを有してもよく、キュベットが組み立てられるとき、凹みの少なくともいくつかが、互いに整列してチャンバを形成する。
【0045】
図3は、半体14の内面15、すなわちキュベット1が完全に組み立てられたときにキュベット1の本体2内にある面を示す。
【0046】
内面15の大部分は、平面かつ平行であり、平らな内面を提示する。この内面は、完全に組み立てられたキュベット1において、他の半体14の内面15と出会って当接し、2つの内面15の間には間隙が存在しないか、または実質的に存在しない。このようにして内面が平坦である場合、2つの半体14は互いに出会い、本体2の実質的に中実の領域を形成する。
【0047】
採取チャンバ16は、半体14の前端3において頂点10の領域に形成される。採取チャンバ16は、内面15の主領域の下にある内面17を有する凹み領域または切り欠き領域の形態をとる。
【0048】
採取チャンバ16の内表面17は好ましくは、内面15の主領域と平行であり、これに対して第1距離だけずらされる。採取チャンバ16は頂点10まで延び、採取チャンバ16は、好ましくは頂点10に対して対称的に延びる入口開口部18を有する。
【0049】
頂点10の領域においては、本体2の厚さが低減されることが好ましい。本体2は、(図に示すように)先細りの断面を有していてよく、その結果、厚さが頂点10に向かって徐々に減少する。これは、血液試料を採取するべく使用することができる明確に画定された「点」を提供するのに役立ち、さらに、採取された血液試料をユーザが簡単に見ることを許容する。厚さが低減した領域(任意の先細り部分を含む)は、例えば、頂点10に最も近い採取チャンバ16の4分の1、3分の1または半分の周りにあってよい。
【0050】
採取チャンバ16は、第1側壁および第2側壁19を有し、これらは、入口開口部18の各側面から一般に後方に延びる。
【0051】
図示された実施形態では、側壁19が入口開口部18から後方に延びるにつれて、側壁19は互いに向かって内側に先細りとなり、次いで互いに再びラッパ状に広がる。こちらの利点については、以下で詳細に説明する。
【0052】
その内側端20(すなわち、入口開口部18から最も遠い端)において、採取チャンバ16は保持チャンバ21と出会う。保持チャンバ21は、採取チャンバ16の深さよりも大きい深さを有する。採取チャンバ16が保持チャンバ21と出会うところにおいて、採取チャンバ16の内端20には、それゆえ肩部が存在する。肩部では、採取チャンバ16の第1の比較的小さな深さと保持チャンバ21の第2の比較的大きな深さとの間で深さが比較的急激に変化する。図示の例では、保持チャンバ21は一般に矩形であり、さらに、採取チャンバ16の内端20の全幅にわたって延びる。換言すれば、採取チャンバ16の内端20のすべての部分が、保持チャンバ21と連通する。
【0053】
図示された例では、保持チャンバ21は接合領域23の中に設定される。接合領域23は、(図示された実施形態では)保持チャンバ21が採取チャンバ16と出会う側とは別に、保持チャンバ21のすべての側部を取り囲む。接合領域23の深さは、保持チャンバ21の深さよりも小さく、好ましくは、採取チャンバ16の深さと同一または実質同一である。
【0054】
一対の連通路24が、接合領域23から延び、出口開口部32において半体14の外部と連通する。好ましくは、各連通路24の出口開口部32は、半体14の前縁25まで延びる。図示の実施形態では、各出口開口部32は、入口開口部18から離間した領域において、前縁25上にある。出口開口部32は、入口開口部18の反対側にあってよい。図示の例では、各出口開口部32は、前端3における傾斜面11のうちの一つに沿って部分的に前縁25上にある。
【0055】
好ましくは、2つの連通路24は対称的に配置される。
【0056】
キュベット1の2つの半体14が組み立てられるとき、連通路24は、接合領域23からキュベット1の外部へのガス流路を提供することが重要である。しかしながら、連通路24は、キュベット1の外部と、任意の適切な位置において、例えばその側面において連通してよく、連通路24が前端3と連通することは必須というわけではない。描かれる実施形態が2つの連通路24を含むにもかかわらず、他実施例では、キュベット1が単一の連通路を有してよい。
【0057】
分析チャンバ26が、接合領域23から後方に延びる。分析チャンバ26は好ましくは、採取チャンバ16および接合領域23の深さと同一または一般に同一の深さを有する。
【0058】
分析チャンバ26は好ましくは、その長さに沿って一貫した幅を有し、互いに平行な対向する側壁27を有する。分析チャンバ26は好ましくは、その長さに沿って一定の深さを有する。分析チャンバ26は、半体14の後端4に向かって延び、キュベット1の外部との連通を許容しない行き止まり(図3には示されない)で終端する。したがって、分析チャンバ26は好ましくは、上端28が接合領域23と連通し、それ以外がすべての側部に囲まれる。分析チャンバ26の行き止まりは好ましくは、分析チャンバ26の長さに対して直角または実質直角である端面を含む四角に仕切られた形状を有する。
【0059】
好ましくは、分析チャンバ26の容積は、採取チャンバ16の容積よりも大きい。実施形態では、例えば、分析チャンバ26の容積は、採取チャンバ16の容積よりも5%~15%大きくてよい。
【0060】
図4は、組み立てられたキュベット1の断面図を示す。この図ではっきりとわかるように、採取チャンバ16は、入口開口部18から後方に延び、その長さに沿って一貫したまたは実質的に一貫した深さを有する(当業読者は、採取チャンバ16を形成するための凹みが両方の半体14に形成されている場合、組み立てられたキュベット1の採取チャンバ16の総深さが、2つの半体14に形成された凹みの深さの2倍になることを理解するであろう)。採取チャンバ16は、さらに深い深さを有する保持チャンバ21と連通する。その後方端において、保持チャンバ21は接合領域23と連通し、この接合領域23は分析チャンバ26と連通する。接合領域23及び分析チャンバ26は同じ深さを有し、この例では、これら2つの領域23、26間の境界は図4において不可視である。
【0061】
図5aから図5dは、血液試料を採取するためにキュベット1を使用する段階を示す。
【0062】
第1工程として、キュベット1を把持し、その頂部10を一定量の血液量に接触させる。これは、例えば、ユーザの指に一滴の血液が生じる指の刺し傷を介して得ることができる。
【0063】
入口開口部18が血液に接触すると、血液は、毛細管作用によって入口開口部18の中に引き込まれ、ひいては採取チャンバ16の中に引き込まれる。図5aは、保持チャンバ21の領域におけるキュベット1の内部の断面図を示す。図5aでは、一定量の血液29が採取チャンバ16の長さに沿って進行しているのを見ることができる。この時点で、血液29は保持チャンバ21に到達していない。
【0064】
血液29が毛細管作用によって採取チャンバ16の中に効果的に引き込まれるためには、採取チャンバ16は、適切な深さを有していなければならない。当業読者が理解するように、この深さは、採取チャンバ16の寸法(特に長さ)、および採取チャンバ16が作られる材料にも依存する。一例では、チャンバの長さは約16mmであり、チャンバ壁は、PMMA(ポリ(メタクリル酸メチル))から形成され、チャンバに適した深さは0.5mmから1mmの間である。しかしながら、他構造に対してはチャンバの深さが異なり得る。血液29が採取チャンバ16の内端20に到達すると、採取チャンバ16と保持チャンバ21との接合部において、血液29の流れが停止する。これは、採取チャンバ16の比較的小さな深さと保持チャンバ21の比較的大きな深さとの間の段部で作用する表面張力から引き起こされる。
【0065】
この状況を図5bに示す。この段階では、採取チャンバ16は、血液が満杯または実質的に満杯であるが、血液は保持チャンバ21に入っていない。
【0066】
当業読者は、血液が採取チャンバ16の中に流入すると、それが、従前に採取チャンバ16内にあった空気を置換し、空気が連通路24を通ってキュベット1から流出することがわかる。
【0067】
この結果、ユーザは単に、キュベット1の頂点10を一定量の血液29に接触させて保持すればよく、血液は、入口開口部18を通って流入して採取チャンバ16を満たし、次いで自動的に流れを停止する。ひとたびユーザがこれを行えば、ユーザはキュベット1を当該量の血液から離すように持ち上げてよく、採取チャンバ16は血液で満たされたままである。血液は、毛細管作用によって所定位置に保持されるので、入口開口部18から逃げることがなく、また、(上述のように)採取チャンバ16から保持チャンバ21へと流れることもない。
【0068】
したがって、キュベット1は、固定された既知の量の血液(すなわち、採取チャンバ16の容積に等しい)を、容易かつ信頼性の高い方法で採取するように構成される。
【0069】
このようにしてひとたび血液が採取チャンバ16内に集められれば、キュベット1を遠心分離機(図示せず)の中に配置してよい。キュベット1は、キュベット1の頂点10が回転軸に最も近く位置するように遠心分離機内に配置され、分析チャンバ26は、回転軸から一般に径方向に延びる。
【0070】
キュベットに遠心力がかけられると、血液29はキュベット1の後端4に向かう方向に駆動される。この力は、この時点まで、血液29の前縁を採取チャンバ16の内端20に保持する表面張力の力を克服するのに十分であろう。したがって、血液29は、保持チャンバ21内に流入し、次いで、保持チャンバ21から接合領域23内に流入し、分析チャンバ26の上端28内に流入する。この状況を図5cに示す。
【0071】
遠心分離が続くと、血液29は分析チャンバ26の中へと駆動される。上述したように、分析チャンバ26の容積は、採取チャンバ16の容積よりもわずかに大きいので、採取された血液29の試料全体が分析チャンバ26の中に収まる。これにより、採取チャンバ16、保持チャンバ21、接合領域23、および分析チャンバ26の上端28の領域が、血液29を含まないか、または実質的に含まないままになる。この位置を図5dに示す。
【0072】
血液29が分析チャンバ26の中に完全に移送されると、血液29はさらに遠心分離および分析され得る。例えば、一以上の光源をキュベット1の片側に配置し、一以上の光検出器をキュベット1の同じ側(反射により光源からの光を受光する)またはキュベット1の反対側(キュベット1および血液試料を透過した光源からの光を受光する)に配置することができる。
【0073】
採取領域16の中へと採取された血液の全試料が分析チャンバ26の中に完全に収まることの一つの利点は、採取された血液29のすべての成分が、分析対象の分析チャンバ26の中に存在することである。例えば、ユーザは、血液試料を分析して、その中の赤血球の体積を、試料全体の体積の割合として決定することを望み得る。遠心分離の結果として、(血液の最も密度の高い成分としての)赤血球は、分析チャンバ26の底端まで強制されるであろう。赤血球は、血液の他の成分よりも多くの光を吸収する。当業読者は、白血球および血小板などの血液の他の成分の分析がどのように実施され得るかを容易に理解するであろう。
【0074】
血液のすべての成分は、血液がない領域とは対照的に光を吸収する。したがって、血液による吸収のために光強度が低い分析チャンバ26の領域の長さを分析すれば、血液試料の全体の容積が決まり(分析チャンバ26の深さと幅は既知であるため)、光が強く吸収される分析チャンバ26の長さを分析すれば、赤血球の容積がわかる。
【0075】
上述したように、血液が最初に採取チャンバ16の中に流入するとき、血液は表面張力の結果として、その内端20で停止する。図6は、採取チャンバ16の内端20の拡大図を示し、ここで、採取チャンバ16は保持チャンバ21と出会う。この図に見られるように、採取チャンバ16は、介在チャンバまたは他の特徴部なしに保持チャンバ21と直接連通する。
【0076】
図6は、断面側面図を示している。この例では、保持チャンバ33の前壁33(すなわち、採取チャンバ16に最も近い壁)は、本体2の平面と正確にまたは実質的に垂直である。このため、採取チャンバ16の内表面17が保持チャンバの前壁33と交わるところには、約90°の角度34が形成される。
【0077】
血液29がこの角度34に合致する場合、血液中の表面張力は、血液が保持チャンバ21の中へと通過するのを妨げる。血液29が採取チャンバ16の内端20で停止する場合、短い距離だけ採取チャンバ16の中へと内方に突出する凹み形状35が形成され得る。
【0078】
保持チャンバ21の前壁33は、本体2の平面に対して垂直である必要はない。しかしながら、角度34が大きすぎると、上述した表面張力効果は生じず、血液29は、採取チャンバ16の内端20で停止しないであろう。この効果は、約135°より上の角度では生じないと想定される。
【0079】
また、採取チャンバ16の内表面17と保持チャンバの前壁33との間に鋭い角部が存在することも、所望の表面張力効果を確実に生じさせるために好ましい。この点で、丸まったまたは面取りされた角部を回避することが好ましい。
【0080】
保持チャンバ21は、採取チャンバ21よりも深い。図6に示すように、採取チャンバ16の各内表面17と、保持チャンバ21の対応する内表面37との間には距離36が存在する。
【0081】
保持チャンバ21はまた、その前壁33と保持チャンバ21の遠端、すなわち保持チャンバ16と整列する第1特徴部(図6には図示せず)との間に、本体2の平面と一般に平行な方向の長さ38を有する。
【0082】
上述したように、図6は側面図、すなわちキュベット1の深さを通る図である。図3に見られるように、保持チャンバ21もまた、本体2の幅を横切る方向において、採取チャンバ16の内端20よりも広い。上述したように、血液29が採取チャンバ16の内端20で停止するところでは、血液29が凹み形状35を形成することが想定される。しかしながら、所定の状況下では、血液が膨らみを形成し、それが保持チャンバの中へと短い距離だけ突出する可能性がある。その場合、保持チャンバ21の寸法、特に段差高さ36及び長さ38が、膨出部のどの部分も保持チャンバ21の内壁のどの部分にも接触しないように十分であることが重要である。
【0083】
図1および図2に戻ると、好ましい実施形態では、キュベット1の本体2の主上面および下面8、9は、つや消しまたはザラザラ仕上げを有するように形成される。これはユーザによるキュベット1の容易な把持及び取り扱いを支援し、また他には透明なキュベット1を見ること容易にする。
【0084】
しかしながら、図示の例では、キュベット1は、それぞれの側に、つや消しまたはザラザラが存在しない2つの領域を有し、キュベット1は、光を効果的に透過する、一般に滑らかかつ平坦な表面を有するように形成される。
【0085】
第1領域30は一般に、採取チャンバ16の上にあり、採取チャンバ16の形状と同一または類似した形状を有してよい。この第1領域30により、ユーザは、キュベット1が最初に使用されたときに血液がキュベット1の中に首尾よく引き込まれたことをはっきりと見ることができる。
【0086】
第2領域31は、分析チャンバ26の上にある。この第2領域31は、例えば遠心分離の間に、分析チャンバ26の中に保持される血液29の効果的な分析を許容する。
【0087】
図示の実施形態では、採取チャンバ16は「砂時計」形状を有し、キュベット1の前端3にある入口開口部18から通過するとき、幅が狭い点まで先細りとなり、再び幅がラッパ状に広がって保持チャンバ21に合流する。好ましい実施形態では、この形状はベンチュリ収縮として機能し、これは、血液が入口開口部18から採取チャンバ16の前領域の中に引き込まれるときに、血液の流れを加速するのに役立つ。
【0088】
採取チャンバ16の拡幅部分は、狭い点とその内端20との間で、再び血液の流れを遅くする役割を果たし、採取チャンバ16と保持チャンバ21との接合部に到達するにつれて比較的遅い速度で移動し、表面張力によりこの接合部で確実に停止することになる。
【0089】
上述したように、様々なチャンバが、キュベット1の半体の一方または両方の内側に形成された凹みによってもたらされ得る。図に示す例では、保持チャンバ21をもたらすために両半体に凹みが形成されているが、一方の半体のみに凹みが形成されて、採取チャンバ16、接合部23および分析チャンバ26がもたされてよい。当業読者は、他にも多くの可能性があることを理解するであろう。
【0090】
また、本発明を具現化するキュベットは、任意の深さの一連の内部チャンバを有してよく、すなわち、上述したように、表面張力の影響を介して血流を停止させるチャンバ深さの変化を必ずしも有するわけではなく、キュベットを平坦な表面から拾い上げやすくする一以上の突起を有することが想定される。このような実施形態では、キュベットは、一般に平面である本体と、本体の平面に垂直である構成要素を有する方向に本体から離れるように延在する少なくとも一つの突起とを有する。この突起の結果、本体を平らな面に置くと、本体の少なくとも一部が少なくとも1cmだけ表面から上方に持ち上げられ、すなわち本体と平らな面との間に少なくとも1cmの空間があり、ユーザは指を挿入してキュベットを容易に把持して持ち上げることができる。上述した突起の他の特徴部のいずれが含まれてもよい。当業読者であれば、本発明を具現化したキュベットは、家庭のユーザによって容易に取り扱い及び操作をすることができ、周知設計のキュベットと比較して大きな利点があることを理解するであろう。
【0091】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、用語「含む」及び「備える」並びにこれらの変形は、指定された特徴、ステップ又は整数が含まれることを意味する。この用語は、他の特徴、ステップまたは成分の存在を除外するように解釈されるものではない。
【0092】
前述の説明、又は以下の請求項、又は添付図面に開示された特徴は、それらの具体的な形態で、又は開示された機能を実行するための手段、又は開示された結果を達成するための方法又は工程の観点から適宜表現され、個別に、又はそれらの特徴の任意の組み合わせで、その多様な形態で発明を実現するために利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
図2
図3
図4
図5a-5d】
図6
【国際調査報告】