(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】神経刺激用途のためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20240521BHJP
A61N 1/05 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576222
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 EP2022065882
(87)【国際公開番号】W WO2022258826
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523463650
【氏名又は名称】インナービア バイオエレクトロニクス エスエルユー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100145791
【氏名又は名称】加藤 志麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100221327
【氏名又は名称】大川 亮
(72)【発明者】
【氏名】バッカー,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ドネガ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス,エリサ
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053CC10
4C053JJ02
4C053JJ03
4C053JJ05
4C053JJ13
4C053JJ21
(57)【要約】
末梢神経刺激のためのシステム(100)に関し、システム(100)は、少なくとも1つの刺激手段(112)を有する少なくとも1つの神経刺激デバイス(110)と、制御装置と、を備える。制御装置は、神経刺激(130)を、神経刺激デバイス(110)を介して神経構造(200)に提供するように構成され、制御装置は、神経刺激(130)の印加に先立っておよび/または印加の後に、少なくとも1つのパルスを有するコンディショニングシーケンス(140)を、神経刺激デバイス(110)を介して神経構造(200)に提供し印加するようにさらに構成される。コンディショニングシーケンス(140)は、神経構造(200)によるオンセット反応(162)および/またはオフセット反応(164)および/または神経反応オーバーシュートを制限できるように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に、神経構造に平行なおよび/または非平行な電場電位および/または電場および/または電位の2次空間微分を整形するための、末梢神経刺激のためのシステム(100)であって、
少なくとも1つの刺激手段(112)、好ましくは、刺激アレイ(114)を形成する複数の刺激手段(112)、を有する少なくとも1つの神経刺激デバイス(110)と、制御装置と、を備え、
前記制御装置は、神経刺激(130)、特に複数の連続した神経刺激パルス(132)を含む神経刺激シーケンス(130)を、前記神経刺激デバイス(110)を介して神経構造(200)に提供するように構成され、
前記制御装置は、前記神経刺激(130)の印加に先立っておよび/または印加の後に、少なくとも1つのパルスを有するコンディショニングシーケンス(140)を、前記神経刺激デバイス(110)を介して前記神経構造(200)に提供し印加するようにさらに構成され、
前記コンディショニングシーケンス(140)は、前記神経構造(200)によるオンセット反応(162)および/またはオフセット反応(164)および/または神経反応オーバーシュートを制限できるように構成されている、システム(100)。
【請求項2】
前記制御装置は、
- 少なくとも1つの前パルス(142)、好ましくは、前記神経刺激(130)と同じ時間遅延または異なる時間遅延を有する複数の前パルス(142)の組み合わせを含む前パルスシーケンス(142)、
- 周波数ランプ(144)、
- 振幅ランプ(146)と組み合わせた周波数ランプ(144)、
- 前記少なくとも1つの前パルス(142)と組み合わせた、好ましくは前パルスシーケンス(142)と組み合わせた、周波数ランプ(144)、
- 振幅ランプ(146)と組み合わせた、少なくとも1つの前パルス(142)、好ましくは前パルスシーケンス(142)、
- 前記少なくとも1つの前パルス(142)、好ましくは前パルスシーケンス(142)と、振幅ランプ(144)と、周波数ランプ(146)との組み合わせ
の少なくとも1つを含む前記コンディショニングシーケンス(140)を提供するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記コンディショニングシーケンス(140)は、前記神経構造(200)に平行なおよび/または非平行な前記電場電位および/または前記電場および/または前記電位の2次空間微分を整形するように構成され、
前記コンディショニングシーケンス(140)による前記整形は、前記神経構造(200)の延びに沿った異なる空間エリアごとに個別化され、および/または、
前記コンディショニングシーケンス(140)による前記整形は、時間に依存して、好ましくは第1のステップでは第1の空間的方向に、第2のステップでは第2の空間的方向に、提供されることを特徴とする、請求項1または2に記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記コンディショニングシーケンス(140)は、好ましくは、ランプ関数(144;146)、好ましくは周波数ランプ関数(144)および/または振幅ランプ関数(146)、を形成するための、少なくとも1つの可変パラメータを含むことができ、前記コンディショニングシーケンス(140)のさらなる刺激パラメータは、前記神経刺激(130)と少なくとも同等であり、好ましくは同様であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項5】
好ましくは周波数ランプ関数および/または振幅ランプ関数(144;146)を参照する、前記コンディショニングシーケンス(140)が、前記神経刺激(130)と同様の波形を備えるように、または、
- 正弦波、単相、もしくは二相波形、
- 異なるパルス幅、
- 異なる振幅、および/または
- 異なるパルス間間隔
と共に印加されることに関して前記神経刺激(130)からずれるように構成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記神経刺激シーケンス(130)は、
- 前記神経構造(200)の高周波ブロックを実現するために前記神経構造(200)に提供される高周波交流、または
- 特に神経変調のために、前記神経構造(200)に提供される低周波刺激
であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項7】
前記神経刺激デバイス(110)は、前記少なくとも1つの刺激手段(112)を介して提供される前記神経刺激が前記神経構造に沿って適合可能となるように構成可能な前記少なくとも1つの刺激手段(112)を備えることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの刺激手段(112)は、前記神経刺激デバイス(112)の設計、特に形状、前記刺激アレイ(114)の構成、および/または同様のものを変更することによって適合可能であることを特徴とする、請求項7に記載のシステム(100)。
【請求項9】
前記制御装置は、前記複数の刺激手段を介して前記神経構造(200)に提供される前記神経刺激を前記神経刺激デバイス(110)の延びに沿って整形することができるよう、前記複数の刺激手段(112)の各々に個々の刺激信号を提供するように構成されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項10】
前記制御装置は、前記複数の刺激手段(112)の各々に個々の刺激信号を提供するために前記刺激信号に重み付け因子を適用することにより、前記神経刺激デバイス(110)の延びに沿って前記神経刺激を整形するように構成されることを特徴とする、請求項9に記載のシステム(100)。
【請求項11】
前記神経刺激デバイス(110)は、植え込み型のパルス発生器または経皮刺激デバイス、特に皮膚パッチ等であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、神経の/神経構造/線維に平行なおよび/または非平行な電場電位および/または電場および/または電位の2次空間微分を整形するための、末梢神経刺激(PNS:peripheral nerve stimulation)のためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
これに関して、神経補綴デバイスは、神経系と電気的にインターフェースを取ることによって神経疾患、障害、および症状を監視、予防、および治療するための強力な道具である。それらは、神経組織に植え込まれると、神経活動を記録し、神経活動を電気的に刺激することができる。現在、大半の神経補綴技術は、神経組織とインターフェースを取る電極を利用している。
【0003】
高周波交流(HFAC:high frequency alternating current)は神経伝導をブロックすることができるが、ブロックの前に常にオンセット反応が伴うか、および/またはHFACの印加が再びオフにされたときにブロックの後にオフセット反応が伴い、これは反復的な神経発火の周期である。HFACは、神経伝導ブロックを発生させることができる。
【0004】
軸索は、HFACの印加から数ミリ秒以内にブロックされた状態になり、HFACが持続している限りブロック状態のままであり、HFACが中止されると数秒以内にその通常の活動状態に戻ることができる。この特徴は、HFACブロックを、潜在的な臨床使用のために極めて魅力的なものにしている。
【0005】
しかし、臨床用途についてのHFACブロックの1つの大きな欠点は、HFACがオンまたはオフされるたびに神経内に発生する、短いが強い活動の斉射である。この活動の斉射は、HFACの作動/非作動に応じて、いわゆる「オンセット反応」/「オフセット反応」と呼ばれる。
【0006】
従来の方法は、例えばJ D Miles et al 2007 J.Neural Eng.4 390に述べられるように、オンセットを克服するために振幅ランピングを応用することを試みてきたが、成功していない。
【0007】
他の方法は、非ゼロの振幅からの振幅ランプを適用し、これは初期オンセットの低減には成功しないが、その後のオンセットの軽減にはいくらか効果がある(Vrabec2019)。
【0008】
Yi2020は、オンセットの軽減に成功する刺激波形を見つけるために、粒子群最適化(PSO:particle swarm optimization)と組み合わせて軸索モデルのシミュレーションを試みた。この研究は、シミュレーションだけに限られており、臨床用途向けに容易に適用できる波形は提供せず、例えばそれは電子機器に直接転換可能ではなく、デフォルトでは安全な(充電バランスされた)刺激限界を満たさない。
【0009】
Ackerman2009は、1.0mmの離間距離を有する両極電極が、ラットの座骨神経において最小のオンセット反応で、高周波ブロックを発生させつつ、電流伝達を最小にすることを示唆している。この研究に提示されている結果は、両極電極の接触SDが、完全な神経伝導ブロックを実現するために必要とされる電流の量と、オンセット反応の大きさとの両方に影響することを実証している。しかし、これら反応の動向は同じ方向に向かわない。これは、異なるメカニズムが、観察された現象の原因である可能性があることを示唆する。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、オンセット反応および/またはオフセット反応および/または神経反応オーバーシュートを制限するための神経/神経構造/線維の固有のコンディショニングにより、向上した神経ブロッキング/変調、好ましくは高周波神経変調および/または低周波神経変調を提供することが可能な、特に神経刺激用途のためのシステムを提供することである。
【0011】
上述の目的は、独立請求項1の主題によって解決される。本発明の有利な構成が従属請求項に記載される。
【0012】
本発明によれば、特に、神経構造に平行なおよび/または非平行な電場電位および/または電場および/または電位の2次空間微分を整形するための、末梢神経刺激のためのシステムは、少なくとも1つの刺激手段、好ましくは、刺激アレイを形成する複数の刺激手段、を有する少なくとも1つの神経刺激デバイスと、制御装置と、を備え、制御装置は、神経刺激、特に複数の連続した神経刺激パルスを含む神経刺激シーケンスを、神経刺激デバイスを介して神経の/神経構造/線維に提供するように構成される。制御装置は、神経刺激の印加に先立っておよび/または印加の後に、少なくとも1つのパルスを有するコンディショニングシーケンスを、神経刺激デバイスを介して神経の/神経構造/線維に提供し印加するようにさらに構成され、コンディショニングシーケンスは、神経の/神経構造/線維によるオンセット反応および/またはオフセット反応および/または神経反応オーバーシュートを制限/低減できるように構成されている。
【0013】
本発明は、神経構造中での電場/電荷の変化に対するより滑らかな応答/反応を実現するために、神経構造の事前/事後コンディショニングを提供するという発想に基づく。
【0014】
高周波刺激、特に神経ブロックを誘発させるHFACに関して、神経組織によるオンセット反応および/またはオフセット反応が低減/制限され得る。さらに、低周波刺激の過程における組織のオーバーシュート反応が低減/制限され得る。
【0015】
さらに、神経の/神経構造/線維に平行なおよび/または非平行な電場電位および/または電場および/または電位の2次空間微分の固有の整形により、神経の/神経構造/線維の反応も低減/制限され得る。神経構造の中および/または周りのそのような固有に整形された電場は、本発明によれば、神経刺激デバイスの適切な設計、ならびに/または、神経刺激デバイスの延びに沿った神経刺激の印加の固有の制御および/または調節によって実現されてよい。
【0016】
本発明の意味において、神経変調という用語は、活性化/変調、ブロッキング、またはその組み合わせのいずれかによる、神経反応の変調を言うものと理解されてよい。
【0017】
詳細には、少なくとも1つの刺激手段は、電極またはコイルとして提供され得る。例えば、神経刺激デバイスは、電極デバイスの形態で、特に、経皮電気神経刺激(TENS:transcutaneous electrical nerve stimulation)電極、パドルリードや経皮リードなどの脊髄刺激電極として、および/または末梢神経刺激用の神経カフの形態で、提供され得る。
【0018】
本開示のすべての実施形態で、電極デバイスは、グラフェンを含む、特にグラフェンもしくはグラフェン系材料からなる、またはグラフェン(系)コーティングを備える、少なくとも1つの電極を有することができる。
【0019】
好ましくは、例えば還元グラフェン酸化物(rGO)、グラフェン酸化物、化学気相成長グラフェン(CVDグラフェン)、または他の潜在的な形態のグラフェンのような、種々の形態のグラフェン(系)材料が本発明の文脈で使用されてよい。
【0020】
詳細には、そのようなグラフェン系材料は、向上した電気的性質および機械的性質、例えば、結果として得られる電極の有益な可撓性、を提供することができる。
【0021】
そのようなグラフェン電極は、特に、より高い安全電荷注入能力を提供し、また、信号対ノイズ比/性能が改善され得る。それにより、同じ量の電極が維持される場合でも、電極サイズを低減することができる。
【0022】
したがって、電極デバイスの断面に沿って、少なくとも1つの電極の断面積を低減することができる。
【0023】
さらに、そのようなグラフェン系の電極は、神経組織の神経変調の文脈のような水性環境において安全な電気インターフェースを提供することができる。
【0024】
制御装置は、例えば、特定用途集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)として、および/または事前にプログラムされた波形シーケンスを備えたマイクロプロセッサの形態で提供され得る。
【0025】
制御装置は、神経刺激デバイスに一体化される、少なくとも部分的に一体化されてよく、および/または、外部の制御装置として提供される、少なくとも部分的に提供されてよい。
【0026】
神経刺激デバイスは、1つの刺激手段または複数の刺激手段を備えることができる。神経刺激は、1つの刺激手段、複数の刺激手段のうちの複数、または複数の刺激手段のすべてを介して印加され得る。詳細には、神経刺激シーケンスの間、神経刺激パルスが、連続的なまたは平行な方式で、刺激手段の1つまたは複数を介して提供され得る。よって、提供される神経刺激パルスの可変パターンが定義され得る。
【0027】
神経刺激は、例えばHFACの形態で、または低周波刺激パルスの形態で、刺激手段を介して制御装置によって提供され得る。詳細には、神経刺激は、神経刺激デバイス、すなわち、好ましくは刺激アレイを形成する複数の刺激手段、の延びに沿って神経構造に印加される、複数の連続して印加される神経刺激パルスのシーケンスとして提供されてよい。
【0028】
本発明の文脈では、シーケンスは、神経構造に提供される少なくとも1つのパルス、または、例えば単一の刺激手段を介して連続的に、もしくはさらには例えば神経刺激デバイスに沿った複数の刺激手段を介して平行して、印加される複数のパルスと考えることができる。
【0029】
さらに、シーケンス、特に連続的に提供/印加される複数のパルスは、様々な種類のパルスを含んでもよい。詳細には、シーケンスのそのような連続したパルスは、様々なパルスパラメータ、例えば、パルス幅、パルスの強度、周波数、正弦波、単相または二相形状、パルス間間隔、すなわち陰極相と陽極相との間の時間遅延、等において互いからずれることができる。
【0030】
例えば、正弦波または二相パルスの場合、そのようなパルスパラメータは、それぞれのパルスの陽極相および/または陰極相に関して様々に異なってもよい。
【0031】
したがって、本発明の意味では、シーケンス、例えば、神経刺激シーケンスまたはコンディショニングシーケンスは、高可変性のパルスの組み合わせを含むことができる。代替として、シーケンスは、連続的に提供される、複数の同一のまたは少なくとも同等のパルスを含むことができる。
【0032】
コンディショニングシーケンスは、神経構造の準備/コンディショニングのための単一のパルスとして提供され得る。さらに、コンディショニングシーケンスは、神経刺激デバイスを介して特定のシーケンスの形態で印加される複数のパルスの形態で提供され得る。
【0033】
したがって、複数の刺激手段を介して、特定パターンのパルスをコンディショニングシーケンスとして神経構造に印加することも可能である。本発明によると、コンディショニングシーケンスのパルスは、上述したように様々なパルスパラメータに関して様々に異なることができる。
【0034】
結果として、コンディショニングシーケンス、特に固有に設計されたパルスのコンディショニングシーケンス、が神経刺激デバイスを介して神経構造に提供されることにより、神経の/神経構造/線維のオンセット/オフセット/オーバーシュート反応が制限/低減され得る。
【0035】
1つの好ましい実施形態によると、制御装置は、
- 少なくとも1つの前パルス、好ましくは、神経刺激と同じ時間遅延または異なる時間遅延を有する複数の前パルスの組み合わせを含む前パルスシーケンス、
- 周波数ランプ、
- 振幅ランプと組み合わせた周波数ランプ、
- 上記少なくとも1つの前パルスと組み合わせた、好ましくは前パルスシーケンスと組み合わせた、周波数ランプ、
- 振幅ランプと組み合わせた、少なくとも1つの前パルス、好ましくは前パルスシーケンス、
- 少なくとも1つの前パルス、好ましくは前パルスシーケンスと、振幅ランプと、周波数ランプとの組み合わせ
の少なくとも1つを含むコンディショニングシーケンスを提供するように構成される。
【0036】
神経構造をどのようにして適切にコンディショニング/準備するかについては、様々な選択肢が可能である。
【0037】
例えば、各前パルス間におよび/または陰極相と陽極相との間に時間遅延を含む前パルスのシーケンスを提供することができ、この時間遅延は、対応して印加されるHFACの神経刺激パルス間の時間遅延と同じであってよい。
【0038】
周波数ランプは、神経刺激パルスの振幅がそれに従ってランピング関数の間に同じであり続ける関数を表してよく、周波数は時間と共に増加/減少される。
【0039】
それと対照的に、振幅ランプは、周波数がそれに従ってコンディショニングシーケンスの間に同じであり続けるランプ関数を表し、神経刺激パルスの振幅は時間と共に増加/減少される。
【0040】
振幅ランプと周波数ランプの組み合わせは、コンディショニングシーケンスの振幅と周波数の両方の平行した増大を可能にし得る。
【0041】
さらに、そのような振幅/周波数ランプと、少なくとも1つの前パルスまたはさらには前パルスシーケンスとの組み合わせが、前パルスの追加的な印加によっていずれかの時間点において中断/補足されるランプ関数として提供されてよい。
【0042】
例えば、高周波または低周波(すなわち、1~100Hz)の正弦波ランプが適用されてよい。詳細には、低周波ランプの間、その後のHFACの印加に向けて神経構造を準備/コンディショニングするために、周波数は20~40kHzまで増加されてよい。コンディショニングシーケンスをHFACの印加後に適用すべき場合、周波数は、そのような正弦波形状の周波数ランプ中で再び20~40kHzから1~100Hzに減少され得る。
【0043】
1つの好ましい実施形態によると、コンディショニングシーケンスは、神経構造に平行なおよび/または非平行な電場電位および/または電場および/または電位の2次空間微分を整形する(「整形」)ように構成され、コンディショニングシーケンスによる整形は、神経構造の延びに沿った異なる空間エリアごとに個別化されることが可能であり、および/または、コンディショニングシーケンスによる整形は、時間に依存して、好ましくは第1のステップでは第1の空間的方向に、第2のステップでは第2の空間的方向に、提供される。
【0044】
詳細には、神経の/神経構造/線維に平行なおよび/または非平行な電場電位および/または電場および/または電位の2次空間微分が、好ましくは、神経構造によるオンセット/オフセット反応および/またはオーバーシュート反応を低減/制限するように、固有に整形され得る。
【0045】
そのような神経の/神経構造/線維に平行なおよび/または非平行な電場電位および/または電場および/または電位の2次空間微分の固有の/個別化された整形は、神経構造に沿った1つのエリア/複数のエリアに関して提供されてよい。
【0046】
したがって、整形は、その特定の領域/エリアにおける固有の制御/調節および/または神経刺激デバイスの設計により、神経構造の延びに沿った特定の領域/エリアについて変更/個別化されてよい。
【0047】
これは、本発明の文脈において、エリアに依存する整形とみなされ得る。
【0048】
代替としてまたはそれに加えて、整形は、神経構造に平行なおよび/または非平行な電場電位および/または電場および/または電位の2次空間微分の、時間に依存する変更に関して提供されてよい。
【0049】
そのような時間に依存する整形は、例えば2つのまたは複数のステップで提供されてよい。詳細には、段階的な整形は、神経構造に平行なおよび/または非平行な電場電位および/または電場および/または電位の2次空間微分の方向を、整形の各ステップの間に変えさせる。
【0050】
例えば、神経構造に平行なおよび/または非平行な電場電位および/または電場および/または電位の2次空間微分が、
- 第1のステップでは、第1の方向として神経構造に直角の向きになるように、
- 第2のステップでは、神経構造に対して平行な第2の方向に回転されるように、整形されてよい。
【0051】
このようにして、第1のステップもしくはその後のステップ中に/またはそれらステップにより、神経ブロックが実現され得る。さらに、神経構造によるオンセット/オフセット反応および/またはオーバーシュート反応が、そのような時間に依存する整形方式により、複数のステップで制限/低減されてよい。
【0052】
本発明の別の実施形態では、コンディショニングシーケンスは、好ましくはランプ関数を形成するための、少なくとも1つの可変パラメータを含むことができ、コンディショニングシーケンスのさらなる刺激パラメータは、神経刺激(シーケンス)と少なくとも同等であり、好ましくは同様である。
【0053】
よって、システム、特に制御装置は、神経刺激(シーケンス/パルス)に先立っておよび/またはそれに続いて、どのように神経構造を適切にコンディショニング/準備するかについて各種の選択肢を提供する。
【0054】
詳細には、コンディショニングシーケンスは、段階的な神経構造の(事前)コンディショニングを実現するために、周波数、振幅、パルス継続時間、パルス間間隔などの少なくとも1つの可変パラメータに着目することができる。
【0055】
別の実施形態によると、好ましくは周波数ランプ関数および/または振幅ランプ関数を参照する、コンディショニングシーケンスは、神経刺激と同様の波形を備えるように、または、
- 正弦波、単相、もしくは二相波形、
- 異なるパルス幅、
- 異なる振幅、および/または
- 異なるパルス間間隔
と共に印加されることに関して神経刺激からずれるように構成される。
【0056】
詳細には、異なるパルス間間隔を提供するとは、それぞれのパルスの陰極相と陽極相との間のずれた遅延を言うことがある。
【0057】
このように、コンディショニングシーケンスは、神経刺激(シーケンス)の前/後に神経構造の適切な準備/コンディショニングを提供するために、対応する神経刺激(シーケンス)と同等な形で提供されることができ、またはそれからずれることができる。
【0058】
さらなる実施形態では、神経刺激シーケンスは、
- 神経構造の高周波ブロックを実現するために神経構造に提供される高周波交流、または
- 特に神経変調のために、神経構造に提供される低周波刺激、である。
【0059】
好ましくは、本発明によるシステムは、低周波の神経刺激用途ならびにHFACの印加による神経ブロッキングのような高周波用途に適するような形で構成される。
【0060】
詳細には、オンセット/オフセット反応またはオーバーシュート反応のような、神経刺激の印加に対する神経構造の反応は、最終的に低減/制限されるように整形/影響され得る。
【0061】
別の好ましい実施形態では、神経刺激デバイスは、少なくとも1つの刺激手段を介して提供される神経刺激が神経構造に沿って適合可能となるように構成可能な少なくとも1つの刺激手段を備える。一実施形態によれば、少なくとも1つの刺激手段は、神経刺激デバイスの設計、特に形状、刺激アレイの構成、および/または同様のものを変更することによって適合可能である。
【0062】
詳細には、神経の/神経構造/線維に平行なおよび/または非平行な電場電位および/または電場および/または電位の2次空間微分は、オンセットの変調関数に影響を与える可能性がある。したがって、例えばそれらをより急峻なものでないものにする(すなわちより滑らかにする)ことによって、目的の神経構造に関してそれらを変化させることで、オンセット/オフセット反応を低減することができる。
【0063】
神経中の神経の/神経構造/線維は均一ではなく、例えば束にまとまっており、また様々な運動/感覚求心/遠心機能があるため、それらを、専用の電極アレイおよび/または(固有の)電場整形で標的として、オンセット/オフセット反応を低減することができる。
【0064】
よって、本発明によるこのシステムにより、神経刺激デバイス、特に単一の刺激手段の配置および/または使用は、神経構造の中および/または周りの電場電位および/または電場および/または電位の2次空間微分を適切な形で形成するために、個別に適合されることが可能である。
【0065】
詳細には、結果として得られる電場電位および/または電場および/または電位の2次空間微分は、1つの特定の点だけでなく、好ましくは神経刺激デバイスの一定のエリア/延びにも沿って、神経構造のオンセット/オフセット反応またはオーバーシュート反応の制限/低減を実現するように整形され得る。
【0066】
電場電位および/または電場および/または電位の2次空間微分のそのような整形は、特に、タイミング/時間に依存および/またはエリアに依存するものであってよい。
【0067】
例えば、1つのみの刺激手段を備える神経刺激デバイスの場合、そのような刺激手段は、神経刺激デバイスに沿って、個々に形状付けられた幾何学的延びを備えることができる。
【0068】
複数の刺激手段を備える神経刺激デバイスの場合、そのような刺激手段は、刺激アレイを表す特定の幾何学的パターンを形成することができ、その刺激アレイは、好ましくは、連続した、平行した、または神経刺激パルスを適切に伝送するための他の任意の組み合わされた方式で、適合されるおよび/または固有に使用されてよい。
【0069】
さらに、神経刺激デバイスの(幾何学的)形状、例えばその長さ、直径、外側周囲形状等、が適合されてよい。
【0070】
さらに、制御装置は、神経構造の固有の狙いを定めた刺激を提供するために、神経刺激デバイスの単一の刺激手段に、適切な刺激信号、好ましくは個々の刺激信号、を転送することができる。
【0071】
本発明のさらなる実施形態では、制御装置は、複数の刺激手段を介して神経組織に提供される神経刺激を神経刺激デバイスの延びに沿って整形することができるよう、複数の刺激手段の各々に個々の刺激信号を提供するように構成される。別の実施形態によると、制御装置は、複数の刺激手段の各々に個々の刺激信号を提供するために刺激信号に重み付け因子を適用することにより、神経刺激デバイスの延びに沿って神経刺激を整形するように構成される。
【0072】
本発明の意味において、制御装置は、神経の/神経構造/線維に神経刺激(シーケンス)を印加/伝送するために刺激信号を刺激手段に提供する。
【0073】
そのような刺激信号は、制御装置により、例えば、神経刺激デバイスの特定の刺激手段について刺激信号を増幅するための重み付け因子の適用により、適合されてよい。好ましくは、刺激手段は、個々の刺激信号によってそれぞれの刺激手段の神経刺激が個別化され得るように、個々に制御および/または調節され得る。
【0074】
重み付け因子は、単一の刺激手段を「スイッチオフ」するためには「0」(値:ゼロ)、または対応して伝送される神経刺激パルスを減少するためには1.0(値「1」)よりも小さくてよい。神経刺激パルスが全く増幅せずに適用されるべき場合、重み付け因子は1.0であり得る。増幅された神経刺激(パルス/シーケンス)が特定の刺激手段を介して伝送されるべき場合、対応する刺激信号は、例えば1.1、1.5、2などの重み付け因子によって、増幅、特に増大され得る。
【0075】
したがって、複数の刺激手段を介した神経刺激(シーケンス)の印加は、神経刺激パルスの固有の狙いを定めた印加が実現可能となるように、特に刺激信号それぞれへの重み付け因子の適用により、制御装置によって適合および整形されてよい。
【0076】
ゆえに、複数の刺激手段のうち1つに対する刺激信号は、ゼロまたは少なくともゼロ近くまで低減することすらでき、一方、他の刺激手段には、1.0よりも高い重み付け因子を乗算することにより、増幅された刺激信号が提供される。
【0077】
さらに、複数の刺激手段のうち複数が、神経組織に神経刺激を提供するために同じ刺激信号を受け取ることができ、一方、複数の刺激手段のうち他の刺激手段は、適合された刺激信号を受け取る。したがって、各刺激手段が、制御装置によって提供される固有の刺激信号を受け取ることができる。
【0078】
代替として、制御装置は、複数の刺激手段のすべてに同じ刺激信号を提供することができ、刺激手段の構造、特に刺激手段のアレイの構造的実装が、それぞれの刺激手段による個別化された神経刺激を提供するように構成される。
【0079】
さらなる好ましい実施形態では、神経刺激デバイスは、植え込み型のパルス発生器または経皮刺激デバイス、例えば皮膚パッチ等である。
【0080】
その結果、本発明によるシステムは、PNS用途で使用するために特に設計/構成されてよい。
【0081】
詳細には、HFACの印加による神経ブロッキング機構や低周波神経刺激シーケンスの滑らかな開始は、特にPNSの文脈で利用され得る。
【0082】
したがって、例えば、神経ブロックを開始するためのHFACの印加が、神経組織の狙いを定めた刺激/非刺激を可能にするため、神経の/神経構造/線維の固有の個々の刺激を実現することができる。
【0083】
本発明のさらなる詳細および利点が、添付図面との関連で以下に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図1】システムの一実施形態による(事前)コンディショニングシーケンスの印加と比較した、従来技術による神経ブロック刺激の即座の印加に起因するオンセット/オフセット反応の概略図である。
【
図2】システムの別の実施形態によるコンディショニングシーケンスの印加の概略図である。
【
図3】システムの別の実施形態によるコンディショニングシーケンスの印加の概略図である。
【
図4】システムの別の実施形態によるコンディショニングシーケンスの印加の概略図である。
【
図5】システムの一実施形態による神経刺激デバイス構成の比較である。
【
図6】システムの別の実施形態による神経刺激デバイス構成の比較である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
図1に、システム100の一実施形態による(事前)コンディショニングシーケンス140の印加と比較した、従来技術による神経ブロック刺激130の(即座の)印加に起因する、刺激された神経の/神経構造/線維200のオンセット/オフセット反応162;164の概略図が示されている。
【0086】
図1によると、神経ブロックを誘発するための高周波交流の形態の複数の神経刺激パルス132を有する、神経刺激シーケンス130が印加される。
【0087】
詳細には、神経刺激シーケンス130は、二相パルス132の形態で印加される。
【0088】
従来技術によるHFACの印加を説明する
図1の左の図から推察できるように、刺激された神経構造200によるオンセット/オフセット反応162;164は、神経構造160の対応する反応から推察できるように、HFACの印加の開始/終了時に引き起こされる。
【0089】
神経刺激シーケンス130としてのHFACの単純な即座の印加により、神経構造200内で制御されない活動の強い斉射が引き起こされる/誘発される。
【0090】
それと対照的に、
図1の右側の図は、神経刺激シーケンス130に先立つ単一の前パルス142と組み合わせた、HFACの形態の神経刺激シーケンス130の印加を示す。
【0091】
図1によると、前パルス142は、その後のHFAC、すなわち神経刺激シーケンス130、の強度の75%の振幅で印加される。
【0092】
単一の前パルス142は、神経刺激シーケンス130の開始前に、1μs~1分の間、好ましくは1μs~1秒の間、1μs~100ms、さらにより好ましくは25~50msの間、印加される。
【0093】
前パルス142は、二相パルスシーケンスとして印加される。
【0094】
図1の左の図と右の図の比較から推察できるように、神経刺激シーケンス130に先立つ前パルス142の印加は、神経構造200の反応(信号)においてオンセット反応162の制限/低減を生じさせる。
【0095】
これは特に、オンセット反応162の方だけが制限/低減されていることから、
図1(右側の図)から推察することができ、その後のオフセット反応164は、神経刺激シーケンス130の終了即時に低減/制限されていない。
【0096】
図2~
図4に、システム100のさらなる実施形態によるコンディショニングシーケンスの印加の概略図が示される。
【0097】
図2によると、周波数ランプ144がコンディショニングシーケンス140として印加される。
【0098】
周波数ランプ144は、その後の神経刺激シーケンス130、好ましくはHFAC、と同じ強度/振幅を有する複数のパルスを有するコンディショニングシーケンス140として印加される。
【0099】
周波数ランプ144を構成するコンディショニングシーケンス140は、神経刺激シーケンス130が開始する前に25~50msの時間にわたって印加される。
【0100】
コンディショニングシーケンス140としての周波数ランプ144の文脈では、印加されるパルスの周波数は時間と共に、好ましくはその後の神経刺激シーケンス130の周波数と一致する周波数まで、増大される。
【0101】
さらに、
図2の右側の図では、神経刺激シーケンス130の終了に続いて周波数ランプ144の形態のコンディショニングシーケンス140も印加されて、時間と共に、例えばさらに25~50msにわたって、周波数を低下させる。
【0102】
神経構造160の対応する反応から分かるように、神経刺激シーケンス130の前のコンディショニングシーケンス140は、神経構造160の反応に沿ったオンセット反応162を制限/低減させる。
【0103】
さらに、さらなる(事後)コンディショニングシーケンス140が神経刺激シーケンス130(
図2の右の図)の終了後に印加されると、神経構造160の反応に沿って示されるように、オフセット反応164も低減/制限することができる。
【0104】
図3では、コンディショニングシーケンス140が振幅ランプ146の形態で提供される。
【0105】
コンディショニングシーケンス140を形成するために印加されるパルスの振幅は、好ましくはその後の神経刺激シーケンス130の振幅が得られるまで、時間と共に増大される。
【0106】
振幅ランプ146は、一定した周波数、好ましくはその後の神経刺激シーケンス130の周波数、で提供され得る。
【0107】
図3によると、コンディショニングシーケンス140は、神経刺激シーケンス130に先立って25~50msの時間範囲にわたって提供される。
【0108】
ここでも、
図3の右側の図において、さらなるコンディショニングシーケンス140が、詳細には時間に伴う振幅/強度の低下を構成する振幅ランプ146の形態で、神経刺激シーケンス130の終了後に印加される。
【0109】
神経構造160の対応する反応から分かるように、オンセット反応162は、(事前)コンディショニングシーケンス140;146によって制限/低減され得る。
【0110】
さらに、神経刺激シーケンス130の終了後に印加されている(事後)コンディショニングシーケンス140;146が、神経構造160の反応に沿ってオフセット反応164も低減/制限することができる。
【0111】
振幅ランプ146の形態のコンディショニングシーケンス140は、HFACの印加のような神経刺激シーケンス130の印加全体を平滑化するために、オンセット反応およびオフセット反応162;164を低減することが可能であってよい。
【0112】
図4では、振幅ランプ146と周波数ランプ144の組み合わせが、神経刺激シーケンス130の前および/または後にコンディショニングシーケンス140として印加される。
【0113】
詳細には、神経刺激シーケンス130の前に、振幅と周波数の両方が、コンディショニングシーケンス140;144;146の間に、25~50msの時間にわたって、好ましくはその後の神経刺激シーケンス130の周波数および振幅まで、増大される。
【0114】
神経構造160のそれぞれの反応から分かるように、オンセット反応162は、
図4に示されるように両方の実施形態で制限される。さらに、対応するコンディショニングシーケンス140が神経刺激シーケンス130の後に印加される場合には、オフセット反応164も制限され得る。
【0115】
図5および
図6に、システム100の様々な実施形態による神経刺激デバイス110の構成の比較が示される。
【0116】
図5は、システム100の神経刺激デバイス110の構成の3つの異なる実施形態(上、真ん中、下)を示している。
【0117】
3つの実施形態は、刺激アレイ114を形成することができる、刺激手段112の各自の量に関して互いと異なる。
【0118】
図5によると、刺激手段112は、神経構造200に沿って配置されている。
【0119】
詳細には、
図5は、例えばPNS用の神経カフの配置を概略的に説明することができる。
【0120】
好ましくは、
図5の刺激手段112はコイルの形態で提供されてよい。
【0121】
代替として、刺激手段112は、例えば(棒状の)神経刺激電極として、電極の形態で提供され得る。
【0122】
神経構造200に沿って神経構造に平行なおよび/または非平行な電場電位および/または電場および/または電位の2次空間微分170を整形するために、単一の刺激手段112に異なる極性が与えられ得る(
図5の真ん中および上の図を参照)。
【0123】
さらに、重み付け因子150が、神経構造に平行なおよび/または非平行な電場電位および/または電場および/または電位の2次空間微分170の整形のために適用されてよく、好ましくは、制御装置により、神経刺激パルス132を神経構造200に伝達するためにそれぞれの刺激手段112に転送される刺激信号に対して適用される。
【0124】
例えば、重み付け因子150の適用により、エリアに依存した整形を提供することができる。
【0125】
神経刺激デバイス110、特に、特定の刺激アレイ114を形成する刺激手段112、の設計により、および/または、制御装置が、例えば重み付け因子150の適用により、特別に適合された刺激信号を提供することにより、電場(線)が整形され、神経構造200に適合され得る。
【0126】
これは特に、
図5による様々な実施形態の電場電位170のそれぞれの曲線から推察することができる。
【0127】
図5の一番上の実施形態は、正の電位を有する単一の刺激手段112を備え、それにより、電場電位の単極の陽極相を生じさせている。
【0128】
図5の真ん中の実施形態は、異なる極性を有する2つの刺激手段112を備え、それにより、陽極相および陰極相を有する両極の電場電位を生じさせている。
【0129】
図5の一番下の実施形態は、異なる重み付け因子150をもつ正の極性を有する複数の刺激手段112を備え、それにより、神経構造200の延びに沿って比較的一定した陽極相を生じさせている。
【0130】
代替として、重み付け因子150の時間ごとの適用が、時間に依存する整形を提供することができる。
【0131】
さらなる代替法として、神経構造に平行なおよび/または非平行な電場電位および/または電場および/または電位の2次空間微分の段階的な(再)方向付けを、好ましくは連続的に異なる方向に、生じさせる/提供することにより、時間に依存する整形が実現されてもよい。
【0132】
図6に、神経刺激デバイス110などのための神経カフ(
図6の左下の図)および電極配置(
図6の右下の図)を参照する、一実施形態の断面が示されている。
【0133】
さらに、
図6は、神経構造200に沿った神経刺激デバイス110の分散(
図6の真ん中の図)、ならびに、対応する、神経構造200に平行なおよび/または非平行な電位の2次空間微分(
図6の一番上の図)も示している。
【0134】
図6の神経刺激デバイス110は、複数の異なる神経線維200を取り囲んでいる。
【0135】
神経刺激デバイス110としての神経カフの実施形態(
図6の左の図)は、コイルの形態の刺激手段112を示している。
【0136】
神経刺激手段112は、その周囲に沿って同じ正の電位を有する。
【0137】
例えば神経刺激デバイス110としての神経電極の実施形態は、神経刺激デバイス110の周囲全体に沿って分散された刺激手段112としての複数の電極を備える。
【0138】
刺激手段112は、刺激アレイ114を形成する。
【0139】
単一の刺激手段112の極性は、神経刺激デバイス110の周囲に沿って異なる電位を適用できるように、制御/変更することができる。
【0140】
図6によると、それぞれの刺激手段に対して適用される重み付け因子150は、1であってよい。
【0141】
図6の2次空間微分電位の図(一番上の図)からさらに分かるように、2つの実施形態は、神経構造200に沿って異なる電位を発生させる。
【0142】
刺激手段112としての複数のコイルを有する神経カフを参照する実施形態(
図6の左の図)は、神経構造200に沿って二相電位を生じさせ、神経刺激デバイス110の電極構成は、神経刺激電極(
図6の右の図)と同様、神経構造200に沿って単相電位を生じさせる。
【0143】
このように、例えば神経ブロックを提供するためのHFAC印加の文脈でオンセット/オフセット反応の制限/低減を実現するために、神経刺激デバイス110の形状および構成と、例えば重み付け因子150を使用することによる、制御装置による刺激信号の個々の整形とが、エリアに依存したおよび/または時間に依存した形で、神経構造200に沿った電位の個別化を可能にする。
【0144】
要約すると、本発明によるシステム100は、高周波または低周波の神経刺激(シーケンス)130の印加に高い可変性を提供することができ、それにより、オンセット反応162および/またはオフセット反応164および/またはオーバーシュート反応における制御されない神経反応が制限/低減され得る。
【0145】
詳細には、神経構造160;200の反応を低減/制限するために、例えば神経ブロックを実現するためのHFACのような神経刺激(シーケンス)130の前および/または後に、コンディショニングシーケンス140が適用されてよい。
【0146】
そのようなコンディショニングシーケンス140は、例えば前パルス(シーケンス)142、周波数ランプ144、または振幅ランプ146の形態で、様々な形で提供され得る。さらに、そのような手段の組み合わせも提供可能である。
【0147】
さらに、神経の/神経構造/線維200のオンセット/オフセット反応162;164もまた、特に刺激アレイ114の形態で刺激手段112の構成に関する神経刺激デバイス110の固有の設計により、および/または制御装置が、重み付け因子150に基づいて増幅される刺激信号を提供することにより、制限可能/低減可能であってもよい。
【0148】
このように、本発明はまた、少なくとも1つの刺激手段112を有する刺激デバイス110の延びに沿って、神経構造に平行なおよび/または非平行な電場電位および/または電場および/または電位の2次空間微分170の固有の整形を可能にする。
【符号の説明】
【0149】
100 システム
110 神経刺激デバイス
112 刺激手段
114 刺激アレイ
130 神経刺激(シーケンス)
132 神経刺激パルス
140 (パルスの)コンディショニングシーケンス
142 前パルス(シーケンス)
144 周波数ランプ
146 振幅ランプ
150 重み付け因子
160 神経構造の反応
162 オンセット反応
164 オフセット反応
170 神経構造に平行なおよび/または非平行な電場電位/電場/電位の2次空間微分
200 神経構造
【国際調査報告】