(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-29
(54)【発明の名称】シリコーン粘着剤層用の剥離ライナー、並びに剥離ライナーを含む積層体及びロール体
(51)【国際特許分類】
C09J 7/40 20180101AFI20240522BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20240522BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20240522BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20240522BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240522BHJP
C09D 5/20 20060101ALI20240522BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240522BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240522BHJP
C08F 220/12 20060101ALI20240522BHJP
【FI】
C09J7/40
C09D133/04
C09D4/02
C09J183/04
C09J7/38
C09D5/20
B32B27/00 L
B32B27/30 A
C08F220/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545902
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(85)【翻訳文提出日】2023-07-28
(86)【国際出願番号】 IB2022050680
(87)【国際公開番号】W WO2022162555
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2021013590
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021073647
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 敏宏
(72)【発明者】
【氏名】根本 勝理
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J038
4J040
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AK25
4F100AK25B
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4F100AK52
4F100AK52C
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4J100JA05
(57)【要約】
[目的]シリコーン粘着剤層に適用させることができ、剥離性及び剥離強度の耐熱安定性に優れた非フッ素系剥離ライナー、並びにこれを含む積層体及びロール体を提供することである。
[解決手段]本開示の一実施形態によるシリコーン粘着剤層用の剥離ライナーは、基材と、基材の少なくとも一方の面上の剥離層と、を含み、剥離層はポリ(メタ)アクリル酸エステルを含有し、ポリ(メタ)アクリル酸エステルは8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含有する重合性成分のポリマーである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン粘着剤層用の剥離ライナーであって、
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面上の剥離層と、を含み、
前記剥離層はポリ(メタ)アクリル酸エステルを含有し、前記ポリ(メタ)アクリル酸エステルは8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む重合性成分のポリマーである、剥離ライナー。
【請求項2】
前記重合性成分が、アルキル(メタ)アクリレートモノマー成分の全量に対して、8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーを40質量%以上含有する、請求項1に記載の剥離ライナー。
【請求項3】
前記重合性成分が、直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含有する、請求項1又は2に記載の剥離ライナー。
【請求項4】
前記重合性成分が、側鎖に放射線活性基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の剥離ライナー。
【請求項5】
前記基材が紙を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の剥離ライナー。
【請求項6】
前記基材が白色フィルムを含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の剥離ライナー。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の剥離ライナーと、前記剥離ライナーの前記剥離層上に配置されたシリコーン粘着剤層とを含む、積層体。
【請求項8】
前記剥離ライナーの前記剥離層に対する前記シリコーン粘着剤層の剥離強度が、10N/25mm以下である、請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の剥離ライナーと、
シリコーン粘着剤層と、
第2の剥離ライナーとをこの順で含む、積層体。
【請求項10】
両面に剥離層を有する請求項1~6のいずれか一項に記載の剥離ライナーと、
シリコーン粘着剤層とを含む、ロール体。
【請求項11】
片面テープ、両面テープ又は粘着剤転写テープとして使用される、請求項7~9のいずれか一項に記載の積層体、又は請求項10に記載のロール体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリコーン粘着剤層用の剥離ライナー、並びに剥離ライナーを含む積層体及びロール体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粘着剤層に適用することができる剥離ライナーが開発されている。
【0003】
特許文献1(特開2015-183041(A)号)には、ポリビニルアセタール樹脂と、フルオロアルキル基を有するモノマーに由来する構造単位を有するポリマーとを含有するシリコーン粘着剤用剥離フィルムであって、一方の主面の表面近傍におけるフッ素の原子濃度が1.5at%~50at%であり、一方の主面の表面近傍におけるフッ素の原子濃度と他方の主面の表面近傍におけるフッ素の原子濃度との差が0.5at%以上であるシリコーン粘着剤用剥離フィルムが開示されている。
【0004】
特許文献2(特開2001-240775(A)号)には、基材と、基材上に設けられた剥離剤とを含む剥離剤形成用重合性組成物を重合して得られる剥離剤前駆体に対して更に放射線照射が行われた剥離剤物品であって、剥離剤が、12個~30個の炭素原子を有するアルキル基を有する第1のアルキル(メタ)アクリレートと、1個~12個の炭素原子を有するアルキル基を有する第2のアルキル(メタ)アクリレートと、第1のアルキル(メタ)アクリレート及び第2のアルキル(メタ)アクリレートの重合開始剤とを含有する剥離剤物品が開示されており、剥離剤物品である剥離シートにアクリル系粘着シートを貼り付けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-183041号公報
【特許文献2】特開2001-240775号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シリコーン粘着剤は、一般に、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性などに優れており、広い温度範囲で使用することができる。シリコーン粘着剤を剥離ライナーに適用する場合、特許文献1に開示されているように、フッ素系剥離ライナーが一般に用いられている。
【0007】
フッ素系剥離ライナーは、シリコーン粘着剤に対する剥離性に優れるものの、他の剥離ライナーに比べて高価である。更に、フッ素成分の汚染防止の観点から、フッ素系材料の使用が制限又は抑制される傾向にある。更に、シリコーン粘着剤を含有する片面テープ、両面テープ、粘着剤転写テープに用いられる剥離ライナーには、剥離性に加えて、剥離強度の耐熱安定性が要求される場合がある。
【0008】
[課題]本開示は、シリコーン粘着剤層に適用することができ、剥離性及び剥離強度の耐熱安定性に優れた非フッ素系及び非シリコーン系の剥離ライナー、並びに剥離ライナーを含む積層体及びロール体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一実施形態によれば、シリコーン粘着剤層用の剥離ライナーであって、基材と、基材の少なくとも一方の面上の剥離層と、を含み、剥離層はポリ(メタ)アクリル酸エステルを含有し、ポリ(メタ)アクリル酸エステルは8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含有する重合性成分のポリマーである、剥離ライナーが提供される。
【0010】
本開示の別の実施形態によれば、剥離ライナーと、剥離ライナーの剥離層上に配置されたシリコーン粘着剤層とを含む積層体が提供される。
【0011】
本開示の別の実施形態によれば、剥離ライナーと、シリコーン粘着剤層と、第2の剥離ライナーとをこの順で含む積層体が提供される。
【0012】
本開示の他の実施形態によれば、両面に剥離層を有する剥離ライナーと、シリコーン粘着剤層とを含む、ロール体が提供される。
【0013】
発明の効果
本開示によれば、シリコーン粘着剤層に適用することができ、剥離性及び剥離強度の耐熱安定性に優れた非フッ素系及び非シリコーン系の剥離ライナー、並びに剥離ライナーを含む積層体及びロール体を提供する。
【0014】
上記の説明は、本発明の全ての実施形態及び本発明の全ての利点が開示されていることを意味すると解釈されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示のある実施形態による、剥離ライナー及びシリコーン粘着剤層を含む積層体の概略断面図である。
【
図2】本開示のある実施形態による、剥離ライナー及びシリコーン粘着剤層を含むロール体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の代表的な実施形態を説明するため、必要に応じて図面を参照しながら本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本開示において、「非フッ素系及び非シリコーン系」とは、非フッ素系かつ非シリコーン系であることを意味する。すなわち、使用する材料はフッ素化学材料ではなく、シリコーン系材料でもない。
【0018】
本開示において、「耐熱安定性」とは、耐熱剥離安定性を指し、例えば、剥離ライナーがシリコーン粘着剤に適用され、その後、高温で加熱又は保管された場合であっても、シリコーン粘着剤に対する剥離層の剥離強度が安定して維持される。
【0019】
本開示において、「(メタ)アクリル」はアクリル又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」又は「メタクリロイル」を意味する。
【0020】
本開示において、「重合性成分」とは、8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーなどのラジカル重合性成分を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「硬化」は、一般に「架橋」と呼ばれる概念も含み得る。
【0022】
本開示において、例えば、「基材上に配置された剥離層」における「上」とは、剥離層が基材上に直接配置されていること、又は剥離層がそれらの間に別の層が介在して基材上に間接的に配置されていることを意味する。
【0023】
本開示において、例えば、「剥離ライナーと、シリコーン粘着剤層と、第2の剥離ライナーとをこの順で含む」の「順」とは、剥離ライナー、シリコーン粘着剤層、第2剥離ライナーの3つの構成部材に着目した場合に、積層体がこれらの構成部材をこの順で含み、これらの構成部材の間、例えば、シリコーン粘着剤層と第2剥離ライナーとの間に印刷層などの別の層が介在していてもよいことを意味する。
【0024】
図1は、本開示の一実施形態による積層体の概略断面図である。
図1の積層体100は、剥離ライナー101と、シリコーン粘着剤層103と、第2の剥離ライナー105とをこの順で含む。ここで、剥離ライナー101は、第2の剥離ライナーと区別するために、「第1の剥離ライナー」と称することがある。剥離ライナー101及び第2の剥離ライナー105は、互いに同じであっても異なっていてもよい。
図1の実施形態の積層体は、シリコーン粘着剤層の両面に剥離ライナーが適用されているが、他の実施形態では、剥離ライナーは、シリコーン粘着剤層の片面のみに適用されてもよい。
【0025】
本開示のシリコーン粘着剤層用の剥離ライナーは、基材の少なくとも一方の面上に剥離層を有し、剥離層は8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む重合性成分のポリマーを含む。
【0026】
このような剥離層(「bNSNF剥離層」と称する場合がある)は、フッ素系剥離層に比べてコストを抑えることができる。bNSNF剥離層は、シリコーン粘着剤層(単に「粘着剤層」という)に対して、フッ素系剥離層と実質的に同等の剥離性能を発揮することができ、典型的なシリコーン系剥離層に比べて良好な剥離性能を発揮することができる。更に、bNSNF剥離層は、フッ素系剥離層に比べて優れた剥離強度の耐熱安定性を発揮することができる。
【0027】
図1に示すように、剥離ライナーが粘着剤層の両面に適用される場合、2つの剥離ライナー中の剥離層は、互いに同じであっても異なっていてもよい。剥離層が剥離ライナーの基材の両面に適用される場合、剥離層は互いに同じであっても異なっていてもよい。ここで、剥離層が互いに異なるとは、例えば、
図1の構成の場合、剥離ライナー101の剥離層がbNSNF剥離層であり、第2の剥離ライナー105の剥離層がフッ素系剥離層など剥離層の材料の種類が異なる構成に加えて、剥離ライナー101及び第2の剥離ライナー105の剥離層がともにbNSNF剥離層であるが、剥離ライナー101の剥離層に対する粘着剤層の剥離強度と、第2の剥離ライナーの剥離層に対する粘着剤層の剥離強度とが互いに異なる構成も含まれる。
図1に示すように、剥離層が2つの剥離ライナーを有する構成や、剥離ライナーの基材の両面に剥離層が適用された構成において、いずれか一方がbNSNF剥離層を有していれば、両方がフッ素系剥離層を有する構成に比べてコストを削減することができる。しかしながら、フッ素成分の汚染防止や更なる低コスト化を考慮すると、いずれの構成においても、全ての剥離層がbNSNF剥離層であることが好ましい。
【0028】
本開示のシリコーン粘着剤層用の剥離ライナーは、
図1に示すような粘着剤転写テープとしての態様に加えて、例えば、片面テープ又は両面テープとして用いることもできる。ここで、片面テープの場合、典型的には、剥離ライナー基材の片面に剥離層が設けられ、剥離層が設けられていない側の面に粘着剤が適用される。片面テープに関しては、粘着剤層の片面に支持体が設けられ、粘着剤層の反対面に剥離ライナーが配置されている(剥離ライナーの剥離層が粘着剤層に接して配置されている)広いモードもある。片面テープを被着体に適用させる前に機械加工などに供される場合には、典型的には本態様が用いられる。両面テープに関しては、支持体の両面に粘着剤が適用され、支持体の両面に適用された粘着剤の表面に剥離ライナーが(剥離ライナーの剥離層が粘着剤層と接するように)配置される。
【0029】
本開示の剥離ライナーの剥離層は、8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基(分岐アルキル基)を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む重合性成分のポリマーを含む。そのような重合性成分は、「重合性前駆体組成物」と称される場合があり、そのようなポリマーを含有する剥離剤は、「(メタ)アクリル剥離剤」と称されてもよい。
【0030】
一実施形態では、そのようなポリマーは、20℃及び周波数1Hzで約1.0×102Pa~約3.0×106Paの貯蔵弾性率を有する。
【0031】
貯蔵弾性率は、約5.0×102Pa以上、約1.0×103Pa以上、又は約1.5×103Pa以上であってもよく、約3.0×106Pa以下、約1.0×105Pa以下、又は約1.0×104Pa以下であってもよい。
【0032】
ここで、貯蔵弾性率(G’)は、粘弾性測定装置(例えば、TA Instruments Japan Inc.、ロータリーレオメーターARES-G2)を用いて、20℃、周波数1Hzの剪断モードで測定した値である。
【0033】
分岐アルキル基の炭素原子の数は、シリコーン粘着剤層からの剥離性などの観点から、例えば、10個以上、14個以上、18個以上、20個以上、又は24個以上であってよく、36個以下、34個以下、32個以下又は30個以下であってよい。8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いてもよく、その2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基は、単分岐でも多分岐でもよいが、剥離性の観点から、単分岐であることが好ましい。
【0035】
8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基の分岐位置は、剥離性の観点から、2又は4であることが好ましい。
【0036】
8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの例としては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート(炭素原子8個)、イソノニル(メタ)アクリレート(炭素原子9個)、2-ヘキシルドデシル(メタ)アクリレート(炭素原子18個)、2-ヘプチルウンデシル(メタ)アクリレート(炭素原子18個)、2-オクチルデシル(メタ)アクリレート(炭素原子18個)、イソステアリル(メタ)アクリレート(炭素原子18個)、2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート(炭素原子24個)、2-ドデシルヘキサデシル(メタ)アクリレート(炭素原子28個)、及び2-テトラデシルオクタデシル(メタ)アクリレート(炭素原子32個)が挙げられる。このような分岐側鎖を有するアルキル(メタ)アクリレートは、結晶性が低下することにより、貯蔵弾性率及び表面エネルギーを低下させることができる。これらの中でも、2-ヘキシルドデシル(メタ)アクリレート、2-オクチルデシル(メタ)アクリレート、2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、2-ドデシルヘキサデシル(メタ)アクリレート、2-テトラデシルオクタデシル(メタ)アクリレート、及びイソステアリル(メタ)アクリレートが好ましい。これらを用いて調製されたポリ(メタ)アクリル酸エステルは、剥離層の表面エネルギーを好適に低下させることができる。
【0037】
重合性前駆体組成物中の8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、アルキル(メタ)アクリレートモノマー成分の総量に対して、約40質量%以上、約50質量%以上、約60質量%以上、約70質量%以上、約80質量%以上、約90質量%以上、約95質量%以上、又は約99質量%以上であることができる。そのようなモノマー含有量の上限は、約100質量%以下、約100質量%、約95質量%以下、約90質量%以下、約80質量%以下、約70質量%以下、約60質量%以下、又は約50質量%以下であり得る。
【0038】
一実施形態では、24個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む重合性成分が重合される。
【0039】
24個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基の長鎖アルキル部分は、(メタ)アクリル系剥離剤の硬化生成物の表面エネルギーを低下させるとともに、アルキル基が分岐しているため、硬化生成物の結晶性が低下し、硬化生成物の貯蔵弾性率が低下する。その結果、広い剥離速度で滑らかな(がたつきのない)剥離性を示す剥離層を形成することができる。
【0040】
24個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーの例としては、2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート(炭素原子数:24)、2-ドデシルヘキサデシル(メタ)アクリレート(炭素原子数:28)、2-テトラデシルオクタデシル(メタ)アクリレート(炭素原子数:32)が挙げられる。24個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いてもよく、その2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
24個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基は、単分岐であることが好ましい。その結果、分岐アルキル基の長鎖アルキル部分を確保することができ、シリコーン粘着剤層に対して好適な剥離性を示す剥離層を形成することができる。
【0042】
24個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基の分岐位置は、2又は4であることが好ましい。その結果、硬化生成物の結晶性を効果的に低下させることができ、より滑らかな剥離性を得ることができる。
【0043】
24個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基の分岐鎖の炭素原子の数は、8個以上、10個以上、又は12個以上であることが好ましい。その結果、分岐アルキル基の複数の長鎖アルキル部分を確保することができ、シリコーン粘着剤層に対して好適な剥離性を示す剥離層を形成することができる。
【0044】
重合性前駆体組成物中の24個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、アルキル(メタ)アクリレートモノマー成分の総量に対して、約90質量%以上、約95質量%以上、又は約99質量%以上であることができる。モノマー含有量の上限は、約100質量%以下、又は約100質量%未満であり得る。
【0045】
一実施形態では、重合性前駆体組成物は、剥離強度を調整する観点から、8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーに加えて、直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含有する。直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、単独で用いてもよく、その2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
直鎖アルキル基の炭素原子の数は、1個以上、3個以上、5個以上、7個以上、10個以上、又は12個以上であってよく、24個以下、20個以下、18個以下、16個以下、14個以下、又は12個以下であってよい。
【0047】
直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの例としては、ブチル(メタ)アクリレート(炭素原子4個)、ヘキシル(メタ)アクリレート(炭素原子6個)、オクチル(メタ)アクリレート(炭素原子8個)、デシル(メタ)アクリレート(炭素原子10個)、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレート)(炭素原子12個)、トリデシル(メタ)アクリレート(炭素原子13個)、テトラデシル(メタ)アクリレート(炭素原子14個)、ヘキサデシル(メタ)アクリレート(セチル(メタ)アクリレート)(炭素原子16個)、オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレート)(炭素原子18個)、及びベヘニル(メタ)アクリレート(炭素原子22個)が挙げられる。
【0048】
重合性前駆体組成物中の直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、アルキル(メタ)アクリレートモノマー成分の総量に対して、約60質量%以下、約50質量%以下、約45質量%以下、約40質量%以下、約35質量%以下、約30質量%以下、約20質量%以下、約15質量%以下、又は約10質量%以下であることができる。
【0049】
一実施形態では、重合性前駆体組成物は、8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーに加えて、側鎖に放射線活性基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含有する。そのようなモノマーは、上述のモノマー成分と共に重合性前駆体組成物に配合されて、ポリマーの一部を構成してもよい。側鎖に放射線活性基を有する(メタ)アクリレートは、単独で用いてもよく、その2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
側鎖に放射線活性基を有する(メタ)アクリレートモノマーの例としては、側鎖にベンゾフェノン構造を有する(メタ)アクリレートモノマー、及び側鎖にアセトフェノン構造を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。放射線活性基(例えば、ベンゾフェノン構造、及びアセトフェノン構造)は、電子線、紫外線などの放射線の照射によりラジカルを発生する。発生したラジカルは、重合性前駆体組成物の重合生成物の架橋、及び架橋によって生成された硬化生成物と基材との結合を促進する。その結果、低照射量の放射線で効率よく(メタ)アクリル系剥離剤を硬化させることができ、硬化生成物の凝集力や硬化生成物の基材への密着性が向上し、硬化生成物のシリコーン粘着剤への転写が抑制される。シリコーン粘着剤への硬化生成物の転写が抑制される結果、シリコーン粘着剤の残留粘着力を高いレベルで維持することができる。
【0051】
側鎖にベンゾフェノン構造を有する(メタ)アクリレートモノマーの例としては、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、及び4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ-4’-ブロモベンゾフェノンが挙げられる。
【0052】
側鎖にアセトフェノン構造を有する(メタ)アクリレートモノマーの例としては、O-(メタ)アクリロイルアセトフェノンオキシムが挙げられる。
【0053】
重合性前駆体組成物中の側鎖に放射線活性基を有する(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、アルキル(メタ)アクリレートモノマー成分の総量に対して、約1質量%以下、約0.8質量%以下、又は約0.5質量%以下であることが好ましい。側鎖にベンゾフェノン構造を有する(メタ)アクリレートモノマーの含有量を約1質量%以下とすることにより、剥離力の上昇を抑制することができる。重合性前駆体組成物中の側鎖にベンゾフェノン構造を有する(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、アルキル(メタ)アクリレートモノマー成分の総量に対して、約0.01質量%以上、約0.02質量%以上、又は約0.05質量%以上であることが好ましい。側鎖に放射線活性基を有する(メタ)アクリレートモノマーの含有量が約0.01質量%以上であると、ポリマー(重合生成物)の架橋や硬化生成物の基材への結合を効果的に促進することができる。
【0054】
一実施形態では、8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー及び直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、アルキル基上にカルボキシ基、ヒドロキシル基、窒素含有基(例えば、アミノ基及びアミド基)、並びにリン含有基などの極性官能基を有さない。本実施形態では、硬化生成物が高温に曝された後も好適な剥離性を維持することが可能である。
【0055】
一実施形態では、(メタ)アクリル系剥離剤は、8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー、直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー、及び側鎖に放射線活性基を有する(メタ)アクリレートモノマーのコポリマーを含有する。更に、剥離剤として、8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー及び直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーのコポリマーと、8個以上の炭素原子を有する分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー及び側鎖に放射線活性基を有する(メタ)アクリレートモノマーのコポリマーとを配合することも可能である。
【0056】
モノマーなどの重合性成分を含有する重合性前駆体組成物は、典型的には、重合開始剤の存在下で重合される。重合モードは様々であるが、重合性成分を溶媒に溶解させて行う溶液重合が、被膜形成に有利な高分子量のポリマーが得られるため好ましい。溶液重合を用いる場合には、重合終了後、重合生成物の溶液を(メタ)アクリル系ポリマー剥離剤として用いることができる。
【0057】
重合溶媒の例としては、n-ヘキサン及びn-ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンなどのケトン、並びにこれらの混合溶媒が挙げられる。また、分子量制御の観点から、連鎖移動剤又は鎖延長剤を用いることもできる。
【0058】
連鎖移動剤の例としては、2-メルカプトエタノール、3-メルカプト-2-ブタノール、3-メルカプト-2-プロパノール、3-メルカプト-1-プロパノール、ドデカンチオール、チオグリコール酸イソオクチル、及び2-メルカプト-エチルアミンなどのチオール化合物が挙げられる。
【0059】
鎖延長剤の例としては、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの二官能性(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。
【0060】
重合性前駆体組成物の溶液重合は、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気中で約2時間~約100時間、通常は約50℃~約100℃の反応温度で行うことができる。
【0061】
重合開始剤としては、一般的な重合開始剤を用いることができる。重合開始剤の例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチルエステル(ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート))などのアゾ化合物、並びに過酸化ベンゾイル及び過酸化ラウロイルなどの過酸化物が挙げられる。
【0062】
重合開始剤の使用量は、アルキル(メタ)アクリレートモノマー成分の100質量部に対して、約0.005質量部以上かつ約0.5質量部以下であることが好ましい。重合開始剤の使用量を約0.005質量部以上とすることにより、実用的な重合速度を確保することができる。重合開始剤の使用量を約0.5質量部以下とすることにより、被膜形成に十分な程度にポリマーの分子量を高めることができる。
【0063】
(メタ)アクリル系剥離剤に含有されるポリマーは、剥離力及び重合反応の取り扱い性の観点から、約100000以上、約300000以上、or約500000以上、約5000000以下、約4000000以下、約3000000以下、約2000000以下、約1500000以下、又は約1000000以下の重量平均分子量を有することが好ましい。ここで、本開示において、「重量平均分子量」とは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0064】
基材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、又はポリブチレンテレフタレート)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)、ポリイミド(例えば、東レ・デュポン株式会社から入手可能なKapton(商品名))などのプラスチックフィルム、紙(例えば、クラフト紙)、又はこれらのプラスチック材料を紙基材にコーティングしたものを用いることができる。また、基材の一例として着色フィルムを用いてもよい。着色フィルムは、プラスチック中の染料の混合物、着色紙、又は着色インクでコーティングされた透明フィルムであってもよい。例えば、着色フィルムとして白色フィルムを用いた例については後述する。着色フィルムを用いることにより、使用者が剥離シートを認識しやすくなる。更に、フィルムには、ロゴや使用説明などが印刷されていてもよい。着色フィルムを用いることにより、これらの印刷された文字などを使用者が見やすくなる。
【0065】
基材の厚さは特に限定されず、例えば、約10マイクロメートル以上、約15マイクロメートル以上、又は約20マイクロメートル以上であってよく、約300マイクロメートル以下、約200マイクロメートル以下、又は約150マイクロメートル以下であってよい。
【0066】
上記剥離剤のコーティング量は、基材に応じて変えることができる。例えば、剥離剤は、典型的には、乾燥厚さが約0.01マイクロメートル以上かつ約10マイクロメートル以下であるように適用される。基材がプラスチックフィルム又はポリエステル及びポリオレフィンなどのプラスチック材料でコーティングされている紙基材の場合、乾燥厚さは、一般に約0.05マイクロメートル以上、約1マイクロメートル以下であり、吸収性が低いか又は平滑性が低い基材の場合、乾燥厚さは、一般に約0.1マイクロメートル以上かつ約5マイクロメートル以下である。
【0067】
一実施形態では、剥離ライナーは、基材の少なくとも一方の面に、上述した剥離剤をコーティングし、乾燥プロセス、加熱による硬化処理、放射線(例えば、電子線及び紫外線)による硬化処理などを行うことにより形成される。
【0068】
剥離ライナーは、例えば、以下の手順で製造することができる。(メタ)アクリル系剥離剤は、必要に応じて、n-ヘキサン若しくはn-ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン若しくはキシレンなどの芳香族炭化水素、酢酸エチル若しくは酢酸ブチルなどのエステル、メチルエチルケトン若しくはメチルイソブチルケトンなどのケトン、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、又はこれらの混合溶媒で希釈した後、バーコーター、ロールコーター、スプレーなどを用いて基材上に所定の厚みで適用し、必要に応じて加熱乾燥することにより、基材上に剥離前駆体層を形成する。希釈溶媒は、溶液重合を行う際の溶媒と同じであっても異なっていてもよい。
【0069】
その後、剥離前駆体層に電子線や紫外線などの放射線を照射して、基材上に剥離層を形成する。剥離層は、放射線照射によって基材に被着される。このようにして、剥離ライナーを得ることができる。例えば、電子線照射の場合、吸収線量は、剥離前駆体層の厚みや組成にもよるが、通常、約1kGy~約100kGyである。紫外線照射の場合、紫外線照射エネルギーは、剥離前駆体層の厚みや組成にもよるが、通常、約10mJ/cm2~約3000mJ/cm2、好ましくは約20mJ/cm2~約500mJ/cm2である。紫外線照射は、電子線照射のような大掛かりな装置を必要としないため、低コストかつ高生産性で剥離ライナーを製造することができる。
【0070】
本開示の剥離ライナーは、上述した剥離層を含むため、シリコーン粘着剤層に対して好適な剥離性能を発揮することができる。
【0071】
剥離ライナーの剥離層上に配置され得るシリコーン粘着剤層に含有されるシリコーン粘着剤としては、特に限定されないが、それらの例としては、ポリオルガノシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリジメチルジフェニルシロキサンなどを主成分として含有する粘着剤が挙げられる。これらのシリコーン粘着剤は、単独で、又はそれらの2種以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0072】
シリコーン粘着剤は、硬化型であっても非硬化型であってもよい。具体的には、このようなシリコーン系粘着剤としては、例えば、過酸化物硬化性シリコーン、付加反応性シリコーン、電子線又はガンマ線硬化性シリコーン、変性シリコーンが挙げられる。
【0073】
過酸化物硬化性シリコーンは、触媒である硬化(架橋)反応によって凝集力を増加させるために使用されてもよい。付加反応性硬化性シリコーンは、金属触媒を使用するヒドロシリル化架橋反応によって凝集力を増加させるために使用されてもよい。過酸化物硬化性シリコーン粘着剤及び付加反応性シリコーン粘着剤は、市販品を用いることができる。市販の過酸化物硬化性シリコーン粘着剤としては、例えば、ダウ・東レ株式会社から入手可能なDOWSIL(商品名)SH 4280、信越化学工業株式会社から入手可能なKR-12などが挙げられる。市販の付加反応性シリコーン粘着剤としては、例えば、ダウ・東レ株式会社から入手可能なDOWSIL(商品名)SD 4570、信越化学工業株式会社から入手可能なX-40-3004Aなどが挙げられる。
【0074】
過酸化物硬化性シリコーン粘着剤の硬化剤(架橋剤)として用いられる過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル、p-クロロベンゾイルパーオキサイド、-2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、及びジ-t-ブチルパーオキサイドが挙げられる。過酸化物は、単独で又はそれらの2種以上の組み合わせで使用されてもよい。過酸化物の使用量は、シリコーン粘着剤の100質量部当たり約0.5質量部~約2.5質量部であってもよい。
【0075】
付加反応性シリコーン粘着剤の硬化剤(架橋剤)として用いられる金属触媒の例としては、白金触媒(例えば、塩化白金酸触媒)、他の第VIIIB族(すなわち、第8族、第9族及び第10族)触媒、及びヒドロシリル化触媒が挙げられる。金属触媒は、単独で又はそれらの2種以上の組み合わせで使用されてもよい。金属触媒の使用量は、シリコーン粘着剤の100質量部当たり約0.5質量部~約1.5質量部であってもよい。
【0076】
一実施形態では、電子線又はガンマ線硬化性シリコーンがシリコーン粘着剤として使用される。電子線又はガンマ線硬化性シリコーンに有用なシリコーン材料としては、例えば、ポリジオルガノシロキサンを挙げることができ、そのような材料はポリシロキサン主鎖を含む。
【0077】
そのようなシリコーン材料としては、非官能化シリコーン材料を用いることができる。非官能化シリコーン材料は、脂肪族及び/又は芳香族置換基を含有するシロキサン主鎖を表す以下の式によって表される直鎖材料であり得る。
【化1】
【0078】
式(1)中、R1、R2、R3,及びR4は、アルキル基及びアリール基からなる群から独立して選択され、各R5はアルキル基であり、n及びmは整数であり、m又はnのうちの少なくとも1つは0ではない。いくつかの実施形態では、1つ以上のアルキル基又はアリール基は、ハロゲン置換基(例えば、フッ素)を含有してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上のアルキル基は、-CH2CH2C4F9であってもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、R5はメチル基であり、すなわち、非官能化ポリジオルガノシロキサン材料は、トリメチルシロキシ基によって終端される。いくつかの実施形態では、R1及びR2はアルキル基であり、nは0であり、すなわち、材料はポリ(ジアルキルシロキサン)である。いくつかの実施形態では、アルキル基はメチル基であり、すなわち、ポリ(ジメチルシロキサン)(「PDMS」)である。いくつかの実施形態では、R1はアルキル基であり、R2はアリール基であり、nは0であり、すなわち、材料はポリ(アルキルアリールシロキサン)である。いくつかの実施形態では、R1はメチル基であり、R2はフェニル基であり、すなわち、材料はポリ(メチルフェニルシロキサン)である。いくつかの実施形態では、R1及びR2はアルキル基であり、R3及びR4はアリール基であり、すなわち、材料はポリ(ジアルキルジアリールシロキサン)である。いくつかの実施形態では、R1及びR2はメチル基であり、R3及びR4はフェニル基であり、すなわち、材料はポリ(ジメチルジフェニルシロキサン)である。
【0080】
いくつかの実施形態では、非官能化ポリジオルガノシロキサン材料は分岐状であり得る。例えば、R1、R2、R3、及び/又はR4基のうちの1つ以上は、アルキル又はアリール(ハロゲン化アルキル又はアリールを含む)置換基及び末端R5基を含有する直鎖又は分岐シロキサンであり得る。
【0081】
本開示において、「非官能基」は、炭素、水素、又はいくつかの実施形態ではハロゲン(例えば、フッ素)原子からなるアルキル基又はアリール基のいずれかである。本明細書で使用されるとき、「非官能化ポリジオルガノシロキサン材料」は、R1、R2、R3、R4、及びR5基が非官能基であるものである。
【0082】
一般に、官能化シリコーン系材料は、出発材料のポリシロキサン主鎖に結合した特有の反応性基(例えば、水素、ヒドロキシル、ビニル、アリル又はアクリル基)を含有する。本明細書で使用されるとき、「官能化ポリジオルガノシロキサン材料」は、以下の式(2)のR基のうちの少なくとも1つが官能基であるものである。
【化2】
【0083】
いくつかの実施形態では、官能化ポリジオルガノシロキサン材料は、少なくとも2つのR基が官能基であるものである。一般に、式(2)のR基は、独立して選択されてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの官能基は、ヒドリド基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ビニル基、エポキシ基、及びアクリレート基からなる群から選択される。
【0084】
官能性R基に加えて、R基は、非官能基、例えば、ハロゲン化(例えば、フッ素化)アルキル及びアリール基を含む、アルキル基又はアリール基であってよい。いくつかの実施形態では、官能化ポリジオルガノシロキサン材料は、分岐状であり得る。例えば、1つ以上のR基は、官能性置換基及び/又は非官能性置換基を有する直鎖又は分岐シロキサンであってもよい。
【0085】
電子線又はガンマ線硬化性シリコーン粘着剤は、1つ以上のポリジオルガノシロキサン材料(例えば、シリコーンオイル又は流体)を所望の好適な粘着性付与樹脂(例えば、MQ樹脂)と組み合わせ、得られた混合物をコーティングし、電子線(Eビーム)又はガンマ線照射を使用して硬化させることによって調製することができる。一般に、粘着剤を配合するのに有用な任意の既知の添加剤も含めることができる。
【0086】
一実施形態では、変性シリコーンがシリコーン粘着剤として使用される。ここで、本開示において、「変性シリコーン」とは、シリコーンの主鎖に官能基(例えば、ウレタン構造を有する官能基)が付与されたシリコーンを意味する。変性シリコーン粘着剤は、単独で又はそれらの2種以上の組み合わせで使用されてもよく、上記のような未変性シリコーン粘着剤と組み合わせて使用されてもよい。
【0087】
一実施形態では、変性シリコーンを含有するシリコーン粘着剤層の-20℃以下での弾性率は、約2×105Pa以上、約5×105Pa以上、又は約1×106Pa以上、かつ約7×107Pa以下、約3×107Pa以下、又は約2×107Pa以下であってもよい。ここで、弾性率は、粘弾性測定装置Discovery HR2(TA Instrument,DE,USAから入手可能)を用いて、平行平板φ8mm、昇温速度3℃/分、測定温度範囲-65℃~150℃、周波数1Hz(6.28ラジアン/秒)の条件で測定した値である。
【0088】
一実施形態では、シリコーン粘着剤層に含有される変性シリコーンのソフトセグメント(シリコーン部分)の重量平均分子量は、独立して、5000以上、約10000以上、約15000以上、かつ約70000以下、約60000以下、又は約50000以下である。
【0089】
変性シリコーンは、シリコーンの主鎖に官能基(例えば、ウレタン構造を有する官能基)が付与されたシリコーンであり、典型的には、主鎖を構成するシリコーン部分がソフトセグメントを構成し、官能基部分がハードセグメントを構成する。一実施形態では、シリコーン粘着剤層に含有される変性シリコーンにおけるソフトセグメントとハードセグメントとの質量比は、ソフトセグメント:ハードセグメント=約1,000:約1~約50:約1、約900:約1~約100:約1、又は約600:約1~約200:約1の範囲である。
【0090】
変性シリコーンとしては、特に限定されないが、例えば、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマー、シリコーンポリオキサミドブロックコポリマー、及びシリコーンポリオキサミド-ヒドラジドブロックコポリマーからなる群より選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0091】
一実施形態では、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーは、ポリジオルガノシロキサンジアミン(「シリコーンジアミン」と称され得る)ポリイソシアネートと、任意選択的に有機ポリアミンとの反応生成物とを含有する。シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーは、単独で又はそれらの2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0092】
好適なシリコーンポリ尿素ブロックコポリマーは、式Iの繰り返し単位によって表される。
【化3】
【0093】
式I中、Rは、それぞれ独立して、好ましくは、約1個~12個の炭素原子を有するアルキル部分、例えば、トリフルオロアルキル基又はビニル基で置換されていてもよい部分、又は好ましくは、式R2(CH2)aCH=CH2(式中、R2は-(CH2)b-又は(CH2)cCH=CH-であり、aは1、2、又は3であり、bは0、3、又は6であり、cは3、4、又は5である))で表される高級アルケニル基、約6個~12個の炭素原子を有するシクロアルキル部分、アルキル基、フルオロアルキル基、及びビニル基で置換されていてもよい部分、又は好ましくは、約6個~20個の炭素原子を有するアリール部分、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基、及びビニル基で置換されていてもよい部分であり、あるいは、Rは、米国特許第5,028,679号に開示されているペルフルオロアルキル基、米国特許第5,236,997号に開示されているフッ素含有基、並びに米国特許第4,900,474号及び同第5,118,775号に開示されているペルフルオロポリエーテル含有基であり;好ましくは、R部分のうちの少なくとも50%はメチル基であり、残りは、1個~20個の炭素原子を有する一価アルキル若しくは置換アルキル基、アルケニル基、フェニル基、又は置換フェニル基であり;Zはそれぞれ多価基であり、好ましくは約6個~20個の炭素原子を有するアリーレン基又はアラルキレン基であり、好ましくは約6個~20個の炭素原子を有するアルキレン基又はシクロアルキレン基であり、好ましくは、Zは、2,6-トルイレン、4,4’-メチレンジフェニレン、3,3’-ジメトキシー4,4’-ビフェニレン、テトラメチル-m-キシリレン、4,4’-メチレンジシクロヘキシレン、3,5,5-トリメチル-3-メチレンチクロヘキシレン(methyleneticlohexylene)、1,6-ヘキサメチレン、1,4-シクロヘキシレン、2,2,4-トリメチレンヘキシレン、及びこれらの混合物であり;Yは、各々独立して、1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基であり、好ましくは6個~20個の炭素原子を有するアラルキレン基又はアリーレン基の多価基であり;Dは、各々、水素、1個~10個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル、及びB又はYと一緒に環構造を完成させて複素環を形成する基からなる群から選択され;式Iにおいて、Bは、アルキレン、アラルキレン、シクロアルキレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシドなどのポリアルキレンオキシド、並びにそれらのコポリマー及び混合物からなる群から選択される多価基であり;mは0~約1,000の数であり、nは少なくとも1の数であり、pは少なくとも10、好ましくは約15~約2,000、より好ましくは30~1,500の数である。
【0094】
有用なシリコーンポリ尿素ブロックコポリマーは、例えば、米国特許第5,512,650号、同第5,214,119号、及び同第5,461,134号、国際公開第96/17726号、同第96/34028号、同第96/34030号、及び同第97/40103号に開示されている。
【0095】
シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーの合成において使用される有用なシリコーンジアミンの例は、以下の式IIによって表されるポリジオルガノシロキサンジアミンである。好ましくは、ポリジオルガノシロキサンジアミンの数平均分子量は約700g/mol以上である。
【化4】
【0096】
式II中、R、Y、D、及びpの各々は、先述と同様に定義される。
【0097】
有用なポリジオルガノシロキサンジアミンとしては、式IIの範囲内のポリジオルガノシロキサンジアミンのいずれかを挙げることができる。これらの中でも、壁紙に対する適用性及び剥離性、並びに部材保持性のバランスの観点から、約700g/mol以上、約1000g/mol以上、約3000g/mol以上、約5000g/mol以上、約10000g/mol以上、約15000g/mol以上、約20000g/mol以上、若しくは約25000g/mol以上、かつ約150000g/mol以下、約100000g/mol以下、約80000g/mol以下、約60000g/mol以下、約50000g/mol以下、若しくは約40000g/molの数平均分子量を有するポリジオルガノシロキサンジアミンを好適に用いることができる。
【0098】
ポリジオルガノシロキサンジアミン及びポリジオルガノシロキサンジアミンの好適な合成方法は、例えば、米国特許第3,890,269号、同第4,661,577号、同第5,026,890号、同第5,276,122号、国際公開第95/03354号、及び国際公開第96/35458号に公開されている。
【0099】
有用なポリジオルガノシロキサンジアミンの例としては、ポリジメチルシロキサンジアミン、ポリジフェニルシロキサンジアミン、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサンジアミン、ポリフェニルメチルシロキサンジアミン、ポリジエチルシロキサンジアミン、ポリジビニルシロキサンジアミン、ポリビニルメチルシロキサンジアミン、ポリ(5-ヘキセニル)メチルシロキサンジアミン、及びこれらの混合物又はコポリマーが挙げられる。
【0100】
好適なポリジオルガノシロキサンジアミンは、例えば、SEH America Inc,Huls America Inc.,CAから市販されている。ポリジオルガノシロキサンジアミンは、好ましくは実質的に純粋であり、例えば、米国特許第5,214,119号に公開されているような方法で合成することができる。そのような高純度のポリジオルガノシロキサンジアミンは、テトラメチルアンモニウム-3アミノプロピルジメチルシラノレートなどの無水アミノアルキル官能性シラノレート触媒を、好ましくは環状オルガノシランの総量に基づいて1.15重量%未満の量で使用して、環状オルガノシランをビス(アミノアルキル)ジシロキサンと2段階反応させることによって合成することができる。特に好ましくは、ポリジオルガノシロキサンジアミンは、セシウム及びルビジウム触媒を使用して合成され、そのような合成方法は、例えば、米国特許第5,512,650号に公開されている。
【0101】
ポリジオルガノシロキサンジアミン成分は、合成されたシリコーンポリ尿素ブロックコポリマーの弾性率を調整するための手段を提供し得る。一般に、高分子量ポリジオルガノシロキサンジアミンは、低弾性率コポリマーをもたらすことができ、一方、低分子量ポリジオルガノシロキサンポリアミンは、高弾性率コポリマーをもたらすことができる。
【0102】
有用なポリアミンの例としては、HUNTSMAN(Houston,Texas)から商品名:JEFFAMINE(商品名)D-230(すなわち、230g/molの数平均分子量を有するポリオキシプロピレンジアミン)、JEFFAMINE(商品名)D-400(すなわち、400g/molの数平均分子量を有するポリオキシプロピレンジアミン)、JEFFAMINE(商品名)D-2000(すなわち、2,000g/molの数平均分子量を有するポリオキシプロピレンジアミン)、JEFFAMINE(商品名)D-4000、JEFFAMINE(商品名)ED-2001、及びJEFFAMINE(商品名)EDR-148(すなわち、トリエチレングリコールジアミン)で入手可能なポリオキシアルキレンジアミンを含むポリオキシアルキレンジアミン、例えば、HUNTSMANから商品名T-403、T-3000、及びT-5000で入手可能なポリオキシアルキレントリアミンを含むポリオキシアルキレントリアミン、並びにDuPont(Wilmington,Delaware)から商品名Dytek(商品名)A及びDytek(商品名)EPで入手可能なエチレンジアミンとポリアルキレンとを含むアルキレンジアミンが挙げられる。
【0103】
任意のポリアミンは、コポリマーの弾性率を調整するための手段を提供し得る。有機ポリアミンの濃度、種類、分子量を調整することによって、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーの弾性率を調整することができる。
【0104】
一実施形態では、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーは、好ましくは約3モル以下、より好ましくは約0.25モル~約2モルのポリアミンを含有する。好ましくは、ポリアミンは、約300g/mol以下の数平均分子量を有する。
【0105】
ポリイソシアネートは特に限定されず、例えば、ジイソシアネート及びトリイソシアネートなどを用いることができる。
【0106】
好適なジイソシアネートの例としては、芳香族ジイソシアネート、例えば2,6-トルエンジイソシアネート、2,5-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、メチレンビス(o-クロロフェニルジイソシアネート)、メチレンジフェニレン-4,4’-ジイソシアネート、ポリカーボネートジイミド修飾メチレンジフェニレンジイソシアネート、(4,4’-ジイソシアネート-3,3’,5,5’-テトラエチル)ジフェニルメタン、4,4’-ジイソシアネート-3,3’-ジメトキシビフェニル(o-ジアニシジンジイソシアネート)、5-クロロ-2,4-トルエンジイソシアネート、及び1-クロロメチル-2,4-ジイソシアネートベンゼンなど、芳香族-脂肪族ジイソシアネート、例えばm-キシレンジイソシアネート及びテトラメチル-m-キシレンジイソシアネートなど、脂肪族ジイソシアネート、例えば1,4-ジイソシアネートブタン、1,6-ジイソシアネートヘキサン、1,12-ジイソシアネートドデカン、及び2-メチル-1,5-ジイソシアネートペンタンなど、並びに脂環式ジイソシアネート、例えばメチレンジシクロヘキシレン-4,4’-ジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、及びシクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネートが挙げられる。
【0107】
ポリアミン、特にポリジオルガノシロキサンジアミンと反応することができる任意のトリイソシアネートが好適である。好適なトリイソシアネートの例としては、ビウレット、イソシアヌレート、及び付加物から生成される多官能性イソシアネートがある。市販のポリイソシアネートの例は、Bayer AGから商品名DESMODUR(商品名)及びMONDUR(商品名)、旭化成株式会社から商品名DURANATE(商品名)及びDow Plasticsから商品名PAPI(商品名)で入手可能な一連のポリイソシアネートの一部である。
【0108】
ポリイソシアネートは、好ましくは、ポリジオルガノシロキサンジアミンと任意のポリアミンとの量に基づく化学量論的な量で存在する。
【0109】
シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーは、例えば、溶媒系反応、無溶媒反応、又はこれらの組み合わせによって合成され得る。有効な溶媒系工程は、例えば、「Tyagiら」セグメント化オルガノシロキサンコポリマー:2に記載されている。有効な溶媒系工程については、例えばTyagiら、「Segmented Organicosiloxane Copolymers:2.Thermal and Mechanical Properties of Siloxane-Urea Copolymer」,Polymer,vol.25,12月(1984)、米国特許第5,214,119号(Leir)により記載されている。シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーの有用な製造方法については、例えば、米国特許第5,512,650号、同第5,214,119号、同第5,461,134号、国際公開第96/35458号、国際公開第98/17726号、国際公開第96/34028号、及び国際公開第97/40103号にも記載されている。
【0110】
シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーを含有する粘着剤組成物は、例えば、溶媒系反応、無溶媒反応、又はこれらの組み合わせを使用して調製することができる。
【0111】
溶媒系反応では、存在する場合、MQ樹脂を、ポリアミンとポリイソシアネートとを反応混合物に導入する前、導入中、又は導入後に取り入れることができる。ポリアミンとポリイソシアネートとの反応は、単一溶媒又は混合溶媒中で行うことができる。好ましくは、溶媒はポリアミン及びポリイソシアネートと反応しない。重合反応の途中から重合反応終了後まで、出発材料と最終生成物とが溶媒中で完全に混合されていることが好ましい。これらの反応は、室温から又は反応溶媒の沸点以下の温度で行うことができる。反応は、好ましくは最高で50℃の周囲温度で実行される。
【0112】
MQ樹脂が存在する場合、実質的に無溶媒の反応において、ポリアミンとポリイソシアネートとは、反応容器内でMQ樹脂と混合され、ポリアミンとポリイソシアネートとは反応してシリコーンポリ尿素ブロックコポリマーを生成することができ、生成物はMQ樹脂と反応して粘着剤組成物を生成することができる。
【0113】
MQ樹脂が存在する場合に溶媒系反応及び無溶媒反応を伴う1つの有用な方法は、無溶媒反応を使用してシリコーンポリ尿素ブロックコポリマーを調製し、続いて溶媒中でシリコーンポリ尿素ブロックコポリマー及びMQ樹脂溶液を混合することである。好ましくは、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマー系粘着剤組成物は、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマーとMQ樹脂との混合物を生成する上述の組み合わせ方法によって合成され得る。
【0114】
一実施形態では、シリコーンポリオキサミドブロックコポリマー及びシリコーンポリオキサミド-ヒドラジドコポリマーは、式Aの少なくとも2つの繰り返し単位を有する。
【化5】
【0115】
式Aにおいて、R1は、各々独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、若しくはアリール、又はアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールであり;Yは、各々独立して、アルキレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせであり;Gは、各々独立して、結合、又は式R3HN-G-NHR3のジアミンから2つの-NHR3基を除いたものに対応する二価残基であり、R3は、各々独立して、水素若しくはアルキルであるか、又は各R3は、G及びR3とGの両方が結合した窒素とともに複素環基を形成し;nは、各々独立して、0~1,500の整数であり;pは、各々独立して、1~10の整数であり;qは、各々独立して、1以上の整数であり、少なくとも50%のqは整数2である。
【0116】
式A中のR1に好適なアルキル基は、典型的には、1個~10個、1個~6個、又は1個~4個の炭素原子を有する。例示的なアルキル基としては、限定されるものではないが、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、及びイソブチルが挙げられる。R1に好適なハロアルキル基は、多くの場合、対応するアルキル基の水素原子の一部分のみがハロゲンで置き換えられている。例示的なハロアルキル基としては、1個~3個のハロ原子及び3個~10個の炭素原子を有するクロロアルキル基及びフルオロアルキル基が挙げられる。R1に好適なアルケニル基は、多くの場合、2個~10個の炭素原子を有する。例示的なアルケニル基には、多くの場合、2個~8個、2個~6個、又は2個~4個の炭素原子を有する、エテニル、n-プロペニル、及びn-ブテニルが挙げられる。R1に好適なアリール基は、6個~12個の炭素原子を有する。フェニルは、例示的なアリール基である。このアリール基は、非置換であってもよく、又はアルキル(例えば、1個~10個の炭素原子、1個~6個の炭素原子、又は1個~4個の炭素原子を有するアルキル)、アルコキシ(例えば、1個~10個の炭素原子、1個~6個の炭素原子、又は1個~4個の炭素原子を有するアルコキシ)、若しくはハロ(例えば、クロロ、ブロモ、又はフルオロ)によって置換されていてもよい。R1に好適なアラルキル基は、典型的には、1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基及び6個~12個の炭素原子を有するアリール基を有する。一部の例示的なアラルキル基において、アリール基はフェニルであり、アルキレン基は、1個~10個の炭素原子、1個~6個の炭素原子、又は1個~4個の炭素原子を有する(すなわち、アラルキルの構造は、アルキレン-フェニルであり、アルキレンがフェニル基に結合している)。
【0117】
一実施形態では、式Aのいくつかの繰り返し単位中のR1基のうちの少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%がメチルである。例えば、R1基のうちの少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%がメチルであってもよい。残りのR1基は、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又は少なくとも2個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールから選択することができる。
【0118】
式A中のYは、各々独立して、アルキレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせである。好適なアルキレン基は、典型的には、最大で10個の炭素原子、最大で8個の炭素原子、最大で6個の炭素原子、又は最大で4個の炭素原子を有する。例示的なアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、及びブチレンが挙げられる。好適なアラルキレン基は、典型的には、1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基に結合した、6個~12個の炭素原子を有するアリーレン基を有する。いくつかの例示的なアラルキレン基において、アリーレン部分はフェニレンである。すなわち、二価のアラルキレン基は、フェニレン-アルキレンであり、このフェニレンは、1個~10個、1個~8個、1個~6個、又は1個~4個の炭素原子を有するアルキレンに結合している。本明細書において使用される場合、Y基に関して、「これらの組み合わせ」とは、アルキレン基及びアラルキレン基から選択される2つ以上の基の組み合わせを指す。例えば、組み合わせは、単一のアルキレンに結合した単一のアラルキレン(例えば、アルキレン-アリーレン-アルキレン)であってもよい。例示的なアルキレン-アリーレン-アルキレンの組み合わせの1つにおいて、アリーレンはフェニレンであり、各アルキレンは、1個~10個、1個~6個、又は1個~4個の炭素原子を有する。
【0119】
式A中のGは、独立して、結合、又は式R3HN-G-NHR3のジアミン化合物から2つのアミノ基(すなわち、-NHR3基)を除いたものに相当する残基単位である。Gが結合である場合、コポリマーは、シリコーンポリオキサミド-ヒドラジドである。一実施形態では、Gは結合であり、各R3は水素である。
【0120】
Gが残基単位である場合、コポリマーは、シリコーンポリオキサミドである。ジアミンは、第一級又は第二級アミノ基を有し得る。R3基は、水素若しくはアルキル(例えば、1個~10個、1個~6個、若しくは1個~4個の炭素原子を有するアルキル)であるか、又はR3は、R3とGの両方が結合している窒素と一緒になって、G及び複素環基を形成する(例えば、R3HN-G-NHR3はピペラジンである)。大部分の実施形態において、R3は、水素又はアルキルである。多くの実施形態では、ジアミンの両方のアミノ基は第一級アミノ基であり(すなわち、両方のR3基は水素である)、ジアミンは、式H2N-G-NH2を有する。
【0121】
一実施形態では、Gは、アルキレン、ヘテロアルキレン、アリーレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせである。好適なアルキレンは、多くの場合、2個~10個、2個~6個、又は2個~4個の炭素原子を有する。例示的なアルキレン基としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、及びこれらに類似するものが挙げられる。好適なヘテロアルキレンは、多くの場合、少なくとも2つのエチレン単位を有するポリオキシエチレン、少なくとも2つのプロピレン単位を有するポリオキシプロピレン、又はこれらのコポリマーなどのポリオキシアルキレンである。好適なアラルキレン基は、典型的には、1個~10個の炭素原子を有するアルキレン基に結合した、6個~12個の炭素原子を有するアリーレン基を含有する。いくつかの例示的なアラルキレン基は、フェニレン-アルキレンであり、このフェニレンは、1個~10個の炭素原子、1個~8個の炭素原子、1個~6個の炭素原子、又は1個~4個の炭素原子を有するアルキレンに結合している。本明細書において使用される場合、G基に関して、「これらの組み合わせ」とは、アルキレン、ヘテロアルキレン、ポリジオルガノシロキサン、アリーレン、及びアラルキレンから選択される2つ以上の基の組み合わせを意味する。例えば、組み合わせは、アルキレンに結合したアラルキレン(例えば、アルキレン-アリーレン-アルキレン)であってもよい。例示的なアルキレン-アリーレン-アルキレンの組み合わせの1つにおいて、アリーレンはフェニレンであり、各アルキレンは、1個~10個、1個~6個、又は1個~4個の炭素原子を有する。
【0122】
式A中の各下付き文字nは、独立して、0~1,500の整数である。例えば、下付き文字nは、最大で1,000、最大で500、最大で400、最大で300、最大で200、最大で100、最大で80、最大で60、最大で40、最大で20、又は最大で10の整数であってもよい。nの値は、多くの場合、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、又は少なくとも40である。例えば、下付き文字nは、40~1,500、0~1,000、40~1,000、0~500、1~500、40~500、1~400、1~300、1~200、1~100、1~80、1~40、又は1~20の範囲であってもよい。
【0123】
各下付き文字pは、独立して、1~10の整数である。例えば、pの値は、多くの場合、最大で9、最大で8、最大で7、最大で6、最大で5、最大で4、最大で3、又は最大で2の整数である。pの値は、1~8、1~6、又は1~4の範囲内であってもよい。
【0124】
各下付き文字qは、独立して1以上の整数であり、qのうちの少なくとも50%は2の整数である。一実施形態では、qのうちの少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも99%、又は全てが2の整数である。
【0125】
一実施形態では、シリコーンポリオキサミドブロックコポリマー及びシリコーンポリオキサミド-ヒドラジドブロックコポリマーは、以下の式:-Ra-(CO)-NH-(式中、Raはアルキレンである)を有する基を含まない傾向がある。コポリマー材料の主鎖に沿う全てのカルボニルアミノ基は、オキサリルアミノ基(例えば、-(CO)-(CO)-NH-基)の一部である。すなわち、コポリマー材料の主鎖に沿うあらゆるカルボニル基は、別のカルボニル基に結合しており、オキサリル基の一部である。より具体的には、コポリマーは、複数のアミノオキサリルアミノ基を含有する。
【0126】
シリコーンポリオキサミドブロックコポリマー及びシリコーンポリオキサミド-ヒドラジドブロックコポリマーは、直鎖ブロックコポリマー(すなわち、ハードブロックとソフトブロックとを含む)、及びエラストマーであってもよい。これらは、既知のポリジオルガノシロキサンポリオキサミドよりも優れた耐溶剤性を有する傾向がある。いくつかのコポリマーは不溶性であり、例えば、トルエン又は更にはテトラヒドロフランに不溶性である。ここで、以下の方法は、コポリマーが特定の溶媒に「不溶性」であるかどうかを決定することができる。約1gの試料コポリマーをジャーに入れ、約100gの所望の溶媒を加え、ジャーを密封し、周囲温度下で約4時間ローラー上に置いた。コポリマー試料は、その元の質量の90%以上が一定重量まで乾燥した後に保持される場合、不溶性であると考えられる。
【0127】
シリコーンポリオキサミドブロックコポリマー及びシリコーンポリオキサミド-ヒドラジドブロックコポリマーは、例えば、本開示の方法に従って調製することができる。以下の方法を使用して、少なくとも2つの式Bの繰り返し単位を有するコポリマー材料を生成することができる。
【化6】
【0128】
式Bにおいて、R1は、各々独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、若しくはアリール、又はアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールであり;Yは、各々独立して、アルキレン、アラルキレン、又はこれらの組み合わせであり;Gは、各々独立して、結合、又は式R3HN-G-NHR3のジアミンから2つの-NHR3基を除いたものに対応する二価残基であり、R3は、各々独立して、水素若しくはアルキルであるか、又は各R3は、G及びR3とGの両方が結合した窒素とともに複素環基を形成し;nは、各々独立して、0~1,500の整数である。
【0129】
R1、Y、G、及びR3の好適な例は、式Aに関して上に述べたものと同様である。
【0130】
本開示の方法の第1の工程は、以下の式Cの化合物の使用を含み得る。
【化7】
【0131】
式Cにおいて、pは1~10の整数である。
【0132】
式Cの化合物は、少なくとも1個のポリジオルガノシロキサンセグメント及び少なくとも2個のオキサリルアミノ基を含有する。R
1、Y、及び下付き文字nは、式Bについて記載されたものと同様であり、pは1~10の整数である。R
2基は、各々独立して、アルキル、ハロアルキル、若しくはアリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ、又はアルコキシカルボニルで置換されたアリールであるか、又はNを介して以下の式Dに結合されている。
【化8】
【0133】
式Dにおいて、R4は、各々独立して、水素、アルキル、若しくはアリールであるか、又はR4は一緒になって環を形成する。
【0134】
式C中のR2に好適なアルキル基及びハロアルキル基は、多くの場合、1個~10個、1個~6個、又は1個~4個の炭素原子を有する。第三級アルキル(例えば、t-ブチル)及びハロアルキル基を使用することが可能であるが、隣接するオキシ基に直接取り付けられた(すなわち、結合した)第一級又は第二級の炭素原子があることが多い。例示的なアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、及びイソ-ブチルが挙げられる。例示的なハロアルキル基としては、対応するアルキル基上の水素原子のいくつか(全てではない)が、ハロ原子で置換されている、クロロアルキル基及びフルオロアルキル基が挙げられる。例えば、クロロアルキル基又はフルオロアルキル基は、クロロメチル、2-クロロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、3-クロロプロピル、4-クロロブチル、フルオロメチル、2-フルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、3-フルオロプロピル、4-フルオロブチルなどであってよい。R2に好適なアリール基の例としては、6個~12個の炭素原子を有するもの、例えば、フェニルが挙げられる。アリール基は、非置換であってよく、又は、アルキル(例えば、メチル、エチル、又はn-プロピルなどの、1個~4個の炭素原子を有するアルキル)、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、又はプロポキシなどの、1個~4個の炭素原子を有するアルコキシ)、ハロ(例えば、クロロ、ブロモ、又はフルオロ)、若しくはアルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、又はプロポキシカルボニルなどの、2個~5個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル)によって置換されていてもよい。
【0135】
式Cの化合物は、単一化合物を含むことができ(すなわち、化合物の全てがp及びnについて同一の値を有する)、又は多数の化合物を含むことができる(すなわち、化合物がpについての異なった値、nについての異なった値、又はp及びnの両方についての異なった値を有する)。異なるn値を有する化合物は、異なる長さのシロキサン鎖を有する。少なくとも2つのp値を有する化合物は、伸長鎖を有する。
【0136】
一実施形態では、下付き文字pが1に等しい式Cの第1の化合物と下付き文字pが少なくとも2に等しい式Cの第2の化合物との混合物である。第1の化合物は、異なるn値を有する複数の異なる化合物を含むことができる。第2の化合物は、異なるp値、異なるn値の両方、又はpとnの両方について異なる値を有する多数の化合物を含むことができる。混合物は、混合物中の第1及び第2の化合物の総重量に基づいて、少なくとも50質量%の式Cの第1の化合物(すなわち、pは1に等しい)及び50質量%以下の式Cの第2の化合物(すなわち、pは少なくとも2に等しい)を含有することができる。いくつかの混合物において、第1の化合物は、式Cの化合物の総量に基づいて、少なくとも55質量%、少なくとも60質量%、少なくとも65質量%、少なくとも70質量%、少なくとも75質量%、少なくとも80質量%、少なくとも85質量%、少なくとも90質量%、少なくとも95質量%、又は少なくとも98質量%の量で存在する。混合物は、多くの場合、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、又は2質量%以下の第2の化合物を含有する。
【0137】
混合物において、鎖が伸長される式Cの化合物の異なる量は、式Bのエラストマー材料の最終的な性質に影響を及ぼし得る。すなわち、式Cの第2の化合物(すなわち、pは少なくとも2に等しい)の量は、一連の特性を有するエラストマー材料を提供するために有利に変化させることができる。例えば、式Cの第2の化合物を増加させることにより、溶融レオロジーを調整する(例えば、溶融物として存在する場合にエラストマー材料をより容易に流動させる)、エラストマー材料の可撓性を調整する、エラストマー材料の弾性率を減少させる、又はこれらの組み合わせを実現することができる。
【0138】
本開示の方法の第1の工程において、反応条件下で、式Cの化合物及びモル過剰の以下の式Eのジアミンが組み合わされる。
【化9】
【0139】
式E中のR3基及びG基は、式Bについて記載したものと同様である。
【0140】
式Eのジアミンは、任意選択で、有機ジアミンとして、又は例えば、アルキレンジアミン、ヘテロアルキレンジアミン、アリーレンジアミン、アラルキレンジアミン、若しくはアルキレン-アラルキレンジアミンから選択される有機ジアミンを有するポリジオルガノシロキサンジアミンとして分類されてもよい。ジアミンはアミノ基を2個しか持たないので、得られるポリジオルガノシロキサンポリオキサミド及びポリオキサミド-ヒドラジドは直鎖ブロックコポリマーであり、これは多くの場合、エラストマーであり、高温で溶融し、いくつかの一般的な有機溶媒に可溶である。ジアミンは、3つ以上の第一級又は第二級アミノ基を有するポリアミンを有さない。式Cの化合物と反応しない第三級アミンが存在し得る。
【0141】
例示的なポリオキシアルキレンジアミン(すなわち、Gはヘテロ原子が酸素であるヘテロアルキレンである)としては、HUNTSMAN(Woodlands,TX)から、上で列挙した商品名JEFFAMINE(商品名)D-230、JEFFAMINE(商品)D-400、JEFFAMINE(商品名)D-2000、及びJEFFAMINE(商品名)EDR-148、並びにJEFFAMINE(商品名)HK-511(すなわち、オキシエチレン基とオキシプロピレン基の両方を含有し、220g/molの数平均分子量を有するポリエーテルジアミン)及びJEFFAMINE ED-2003(すなわち、末端をポリプロピレンオキシドで保護され、2000g/molの数平均分子量を有するポリエチレングリコール)市販されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
例示的なアルキレンジアミン(すなわち、Gがアルキレンである)としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレン-1,5-ジアミン(すなわち、DuPont(Wilmington,DE)から商品名DYTEK(商品名)Aで市販されている)、1,3-ペンタンジアミン(Dupontから商品名DYTEK(商品名)EPで市販されている)、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン(Dupontから商品名DHC-99で市販されている)、4,4’-ビス(アミノシクロヘキシル)メタン、及び3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】
例示的なアリーレンジアミン(すなわち、Gがフェニレンのようなアリーレンである)としては、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、及びp-フェニレンジアミンが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアラルキレンジアミン(すなわち、Gがアルキレン-フェニルなどのアラルキレンである)としては、4-アミノメチル-フェニルアミン、3-アミノメチル-フェニルアミン、及び2-アミノメチル-フェニルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアルキレン-アラルキレンジアミン(すなわち、Gがアルキレン-フェニレン-アルキレンなどのアルキレン-アラルキレンである)としては、4-アミノメチル-ベンジルアミン、3-アミノメチル-ベンジルアミン、及び2-アミノメチル-ベンジルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
例示的なヒドラジン(すなわち、Gが結合である)としては、ヒドラジン及びN,N’-ジアミノピペリジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
いくつかの好ましい実施形態では、式Eのジアミンは、ヒドラジン、1,2-ジアミノエタン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-5-ペンタンジアミン、1,6-ジアミノヘキサン、及びm-キシレンジアミンからなる群から選択される。
【0146】
式Cの化合物とモル過剰の式Eのジアミンとの反応により、式Fのアミン末端ポリマーが得られる。
【化10】
【0147】
反応は、式Cの複数の化合物、複数のジアミン、又はそれらの組み合わせを使用して実施することができる。異なる数平均分子量を有する複数の式Cの化合物を、反応条件下で単一のジアミン又は複数のジアミンと組み合わせることができる。例えば、式Cの化合物は、nの異なる値、pの異なる値、又はn及びpの両方の異なる値を有する、異なる値を有する材料の混合物を含んでもよい。複数のジアミンは、例えば、有機ジアミンである第1のジアミン、及びポリジオルガノシロキサンジアミンである第2のジアミンを含むことができる。同様に、式Cの単一の化合物を反応条件下で複数のジアミンと組み合わせることもできる。
【0148】
式Cの化合物とジアミンとの縮合反応は、多くの場合、室温又は高温(例えば、最大約250℃の温度)で行われる。例えば、この反応は、多くの場合、室温又は最大約100℃の温度で行うことができる。他の例では、反応は、少なくとも約100℃、少なくとも約120℃、又は少なくとも約150℃の温度で行うことができる。例えば、この反応温度は、多くの場合、約100℃~約220℃の範囲、約120℃~約220℃の範囲、又は約150℃~約200℃の範囲である。この縮合反応は、多くの場合、約1時間未満、約2時間未満、約4時間未満、約8時間未満、又は約12時間未満で完了する。
【0149】
反応は、溶媒の存在下又は非存在下にて生じることができる。好適な溶媒は通常、反応に関与する反応物又は生成物とも反応しない。更に、典型的には、好適な溶媒は、プロセス全体を通して全ての反応物及び全ての生成物を溶液中に維持することができる。例示的な溶媒としては、限定するものではないが、トルエン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサンなどのアルカン)、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0150】
反応の完了後、存在する場合、過剰のジアミン及び溶媒を除去する。過剰のジアミンは、例えば真空蒸留によって除去することができる。
【0151】
次いで、得られた式Fのアミン末端ポリマーをオキサラートエステルで処理して、アミン末端基を利用して式Fの繰り返し単位を形成する。有用なオキサラートエステルは、以下の式Gを有する。
【化11】
【0152】
式Gのオキサレートは、例えば、式R5-OHのアルコールをオキサリルジクロリドと反応させることにより調製できる。市販の式Gのオキサレート(例えば、Sigma-Aldrich(Milwaukee、WI)及びVWR International(Bristol、CT)から)としては、ジメチルオキサレート、ジエチルオキサレート、ジ-n-ブチルオキサレート、ジ-tert-ブチル-オキサレート、ビス(フェニル)オキサレート、ビス(ペンタフルオロフェニル)オキサレート、1-(2,6-ジフルオロフェニル)-2-(2,3,4,5,6-ペンタクロロフェニル)オキサレート、及びビス(2,4,6-トリクロロフェニル)オキサレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
式Gの特に有用なオキサラートエステルとしては、例えば、フェノール、エタノール、ブタノール、メチルエチルケトンオキシム、アセトンオキシム、及びトリフルオロエタノールのオキサラートエステルが挙げられる。
【0154】
任意の好適な反応器(例えば、ガラス容器又は撹拌器を備えた一般的な容器)若しくはプロセスを使用して、本開示の方法に従ってシリコーンポリオキサミドブロックコポリマー及びシリコーンポリオキサミド-ヒドラジドブロックコポリマーを調製することができる。この反応は、バッチプロセス、半バッチプロセス、又は連続プロセスを用いて実施することができる。
【0155】
存在する任意の溶媒は、反応の終わりに、得られたポリジオルガノシロキサンポリオキサミド又はポリオキサミド-ヒドラジドから除去することができる。この除去プロセスは、多くの場合、少なくとも約100℃、少なくとも約125℃、又は少なくとも約150℃の温度で実施される。この除去プロセスは、典型的には、約300℃未満、約250℃未満、又は約225℃未満の温度で実施される。
【0156】
溶媒の非存在下で反応を行うことが望ましい場合がある。反応物及び生成物の両方と相溶性でない溶媒中では、反応は不完全になり、重合度は低い。
【0157】
シリコーン粘着剤層における過酸化物硬化性シリコーン、付加反応性シリコーン、電子線又はガンマ線硬化性シリコーン、及び変性シリコーンの各々の配合量は、粘着剤層の総量に対して、独立して、例えば、約30質量%以上、約35質量%以上、約40質量%以上、約45質量%以上、又は約50質量%以上であってよく、約90質量%以下、約85質量%以下、約80質量%以下、約75質量%以下、約70質量%以下、約65質量%以下、約60質量%以下、又は約55質量%以下であってよい。
【0158】
シリコーン粘着剤層は、本開示の効果を損なわない範囲で、任意成分として、粘着付与剤(例えば、MQ樹脂)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、可塑剤、流動性向上剤、界面活性剤、レベリング剤、シランカップリング剤、触媒、フィラー、顔料、染料などを含有することができる。これらの任意選択の成分は、単独で、又はそれらの2種以上の組み合わせで使用されてもよい。
【0159】
一実施形態では、シリコーン粘着剤層は、MQ樹脂(「MQ粘着付与樹脂」と呼ばれる場合がある)を含有する。
【0160】
有用なMQ樹脂としては、例えば、MQシリコーン樹脂、MQDシリコーン樹脂、及びMQTシリコーン樹脂からなる群より選択される少なくとも1つが挙げられる。これらのMQ樹脂は、約100以上、又は約500以上、約50,000以下、又は約20,000以下の数平均分子量を有してもよく、メチル置換基を有してもよい。ここで、本開示において、「数平均分子量」とは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0161】
MQシリコーン樹脂は、非官能性樹脂及び官能性樹脂の両方を含むことができる。官能性シリコーン樹脂は、例えば、ケイ素結合水素、ケイ素結合アルケニル、又はシラノール基を含む1つ以上の官能基を有する。
【0162】
MQシリコーン樹脂は、R’3SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)を有する共重合性シリコーン樹脂である。このような樹脂は、例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,vol.15,John Wiley Sons,New York,(1989),pp.265-270、並びに米国特許第2,676,182号(Daudiら)、同第3,627,851号(Brady)、同第3,772,247号(Flannigan)及び同第5,248,739号(Schmidtら)に開示されている。官能基を有するMQシリコーン樹脂は、例えば、シリルヒドリド基を開示している米国特許第4,774,310号(Butler)、ビニル基及びトリフルオロプロピル基を開示している米国特許第5,262,558号(Kobayashiら)、及びシリルヒドリド基及びビニル基を開示している米国特許第4,707,531号(Shirahata)に開示されている。上記の樹脂は一般に、溶媒中で調製され得る。乾燥した又は無溶媒のMQシリコーン樹脂は、米国特許第5,319,040号(Wengrovisら)、同第5,302,685号(Tsumulaら)、及び同第4,935,484号(Wolfgruberら)に開示のように調製することができる。
【0163】
MQDシリコーン樹脂は、例えば、米国特許第5,110,890号(Butler)に開示のとおり、R’3SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)、及びR’2SiO2/2単位(D単位)を有するターポリマーである。
【0164】
MQTシリコーン樹脂は、R’3SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)、及びR’SiO3/2単位(T単位)を有するターポリマー(MQT樹脂)である。
【0165】
MQシリコーン樹脂は、典型的には、有機溶媒中で供給される。市販のMQシリコーン樹脂としては、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社から入手可能である、トルエン中のSilGrip(商品名)SR-545MQ樹脂、PCR,Inc.(Gainesville,Fla.)から入手可能である、トルエン中のMQOH樹脂が挙げられる。MQシリコーン樹脂のこれらの有機溶液は、供給業者によって提供されるように使用されてもよく、又は当該技術分野において既知の任意の数の技術によって乾燥されて、100%の不揮発性含量でMQシリコーン樹脂を提供してもよい。好適な乾燥方法の例としては、噴霧乾燥、オーブン乾燥、及び蒸気分離乾燥が挙げられるが、これらに限定されない。
【0166】
粘着剤層におけるMQ樹脂の配合量は、例えば、粘着剤層の総量に対して、約30質量%以上、約35質量%以上、約40質量%以上、約45質量%以上、又は約50質量%以上であってよく、約70質量%以下、約65質量%以下、約60質量%以下、約55質量%以下、又は約50質量%以下であってよい。
【0167】
シリコーン粘着剤層は、例えば、紙、プラスチックフィルム、不織布、発泡体層などの支持体を有していても有していなくてもよい。
【0168】
シリコーン粘着剤層の厚さは、約1μm以上、約5μm以上、又は約10μm以上、かつ約100μm以下、約80μm以下、又は約50μm以下であり得る。ここで、粘着剤層の厚さとは、積層体の厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡で測定し、積層体の粘着剤層における少なくとも5箇所の任意の位置における厚さの平均値である。このような厚さ測定方法は、積層体を構成する各層の厚さについても同様に用いることができる。
【0169】
一実施形態では、剥離ライナーの剥離層に対するシリコーン粘着剤層の剥離強度は、約10N/25mm以下、約7.5N/25mm以下、約5.0N/25mm以下、約3.0N/25mm以下、又は約1.5N/25mm以下、かつ約0.01N/25mm以上、約0.02N/25mm以上、約0.05N/25mm以上、約0.10N/25mm以上、又は約0.20N/25mm以上である。ここで、剥離強度とは、JIS Z 0237に準拠して、剥離ライナーを180度方向に300mm/分で剥離したときの剥離強度である。
【0170】
シリコーン粘着剤を剥離ライナーに適用して積層体を得る方法は、特に限定されず、例えば、ノッチバーコーティング、ナイフコーティング、ロールコーティング、リバースロールコーティング、グラビアコーティング、巻線ロッドコーティング、スロットオリフィスコーティング、スロットダイコーティング、又は押出コーティングなどの溶剤コーティング法、水系コーティング法、ホットメルトコーティング法が挙げられる。粘着剤を剥離ライナーに適用した後、必要に応じて、乾燥又は硬化などの任意の工程を適用してもよい。上述のように、シリコーン粘着剤が剥離ライナーに適用された積層体は、片面テープ、両面テープ、粘着剤転写テープなどのテープに使用することができる。
【0171】
一実施形態のテープは、その上に配置された剥離層を有する剥離ライナーと、剥離ライナーの剥離層上に積層されたシリコーン粘着剤層とを含む。粘着剤層が剥離シートから分離されて被着体に貼り付けられる態様で使用される場合、粘着剤層は粘着剤転写テープとも称される。
【0172】
本実施形態のテープは、粘着剤層の剥離ライナーとは反対の面に積層された、紙、プラスチックフィルム、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂などの発泡体、不織布などの支持基材を更に備えていてもよい。本実施形態において、支持基材の粘着剤層側の面とは反対の面が第2の粘着剤層を有する場合、いわゆる両面テープの形態となる。支持基材の粘着剤層側の面とは反対の面が粘着剤層を有さない場合、いわゆる片面テープの形態となる。
【0173】
図1に示すようなシリコーン粘着剤層の両面に剥離ライナーが適用される構成の積層体100は、例えば、剥離ライナー101(第1の剥離ライナー)の剥離層上に粘着剤を適用してシリコーン粘着剤層103を形成した後、それらの間に挟まれた剥離層を介して別の第2の剥離ライナー105を固着させることにより製造することができる。このような構成の積層体は、例えば、粘着剤転写テープとして用いることができる。
【0174】
なお、このような構成の積層体に含まれる2つの剥離ライナー(すなわち、第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナー)は、同じ種類の剥離ライナーであってもよいし、異なる種類の剥離ライナーであってもよい。一実施形態では、第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナーは、いずれもbNSNF剥離層を有する剥離ライナーであり、第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナーは、それぞれ、フッ素系剥離層を有する剥離ライナー及びbNSNF剥離層を有する剥離ライナー、又はbNSNF剥離層を有する剥離ライナー及びフッ素系剥離層を有する剥離ライナーであってもよい。また、第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナーにおいて異なるbNSNF剥離層を有する剥離ライナーを用いることも可能である。2つの剥離ライナーは、bNSNF剥離層を有する剥離ライナーであることが、コスト及びフッ素成分の汚染防止の観点から有利である。
【0175】
このような構成の積層体の使用性の観点から、第1の剥離ライナーの剥離層に対するシリコーン粘着剤層の剥離強度と、第2の剥離ライナーの剥離層に対するシリコーン粘着剤層の剥離強度とは、互いに、約2.0倍以上、約2.5倍以上、又は約3.0倍以上、約20倍以下、約10倍以下、約5.0倍以下、約4.5倍以下、又は約4.0倍以下異なることが好ましい。両者の剥離強度は、第1の剥離ライナーの剥離層に対する第1の粘着剤層の剥離強度が高くてもよいし、第2の剥離ライナーの剥離層に対する第2の粘着剤層の剥離強度が高くてもよい。
【0176】
図2に示すようなロール体200は、例えば、両面に剥離層を有する剥離ライナー201の一方の剥離層に粘着剤をコーティングし、シリコーン粘着剤層203を形成しながらロール状に巻き取ることで製造することができる。このような構成のロール体は、例えば、粘着剤転写テープなどとして用いることができる。
【0177】
なお、このような構成のロール体に含まれる2つの剥離層は、同じ種類の剥離層であってもよいし、異なる種類の剥離層であってもよい。一実施形態では、2つの剥離層は両方ともbNSNF剥離層であり、2つの剥離層は、それぞれ、フッ素系剥離層及びbNSNF剥離層、又はbNSNF剥離層及びフッ素系剥離層とすることができる。なお、2つの剥離層に異なるbNSNF剥離層を用いることも可能である。コスト、環境的な問題、及びフッ素成分の汚染防止の観点から、両方の2つの剥離層は、bNSNF剥離層であることが有利である。
【0178】
このような構成のロール体の使用性の観点から、剥離ライナーの2つの剥離層の剥離層(第1の剥離層)に対するシリコーン粘着剤層の剥離強度と、他の剥離層(第2の剥離層)に対するシリコーン粘着剤層の剥離強度とは、互いに、約2.0倍以上、約2.5倍以上、又は約3.0倍以上、約20倍以下、約10倍以下、約5.0倍以下、約4.5倍以下、又は約4.0倍以下異なることが好ましい。両方の剥離強度は、使用性の観点から、ロール体の外周側に配置された剥離層(すなわち、
図2の符号201側の剥離層)に対する粘着剤層の剥離強度が、ロール体の内周側に配置された剥離層(すなわち、
図2の符号201とは反対側の剥離層)に対する粘着剤層の剥離強度よりも低いことが好ましい。
【0179】
本開示の剥離ライナー、積層体及びロール体には、本開示の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、印刷層、装飾層、隠蔽層などの他の層が設けられていてもよい。他の層は、全ての面に、又は部分的に適用されてもよい。
【実施例】
【0180】
本開示の具体的な実施形態を以下の実施例において例示するが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。全ての部及び百分率は、別途の記載がない限り、質量に基づく。この数値は、本質的に測定原理や測定装置に起因する誤差を含んでいる。数値は、通常の四捨五入処理を行った有効数字で示される。
【0181】
試験実施例1
製造した剥離ライナーを用いて調製した粘着テープを調べた。
【0182】
表1は使用される材料を示す。ここでは、表中の「Mw」は重量平均分子量を意味する。「直鎖型」、「分岐型」及び「炭素原子の数」は、アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキルに関する。更に、HCA-32に関しては、米国特許第8,137,807号の8~9頁(第14欄の63行~第15欄の8行)の方法2に記載の反応条件及び精製方法を用いて、2-テトラデシル-1-オクタデカノール(イソ-C32アルコール)と塩化アクリロイルとのエステル化反応からHCA-32(2-テトラデシルオクタデシルアクリレート)を合成した。
【0183】
【0184】
前駆体ポリマー1
これらのモノマーを、STA、ISA、及びAEBPの配合割合が50.0質量部、50.0質量部、0.2質量部となるように混合した。モノマー混合物を、モノマー濃度が50質量%となるように、酢酸エチル/n-ヘプタン(50質量%/50質量%)混合溶媒で希釈した。更に、開始剤としてV-601を(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分に対して0.20質量部添加し、系内を2分間窒素パージした。その後、65℃の恒温槽中で48時間反応させ、粘稠な溶液の前駆体ポリマー1を得た。
【0185】
前駆体ポリマー2~12
前駆体ポリマー2~12を、表2に示すように配合を変更した以外は、上記前駆体ポリマー1と同じ方法で得た。前駆体ポリマー10において、モノマー混合物は、モノマー濃度が40質量%となるように酢酸エチル溶媒で希釈したことに留意されたい。
【0186】
【0187】
剥離ライナー1
前駆体ポリマー1をトルエン/MEK(50質量%/50質量%)の混合溶媒で1質量%に希釈した。この希釈液をバーコーター(#04)を用いてポリエステルフィルム(EMBLET(商品名)S-50)上にコーティングした。次いで、溶媒を蒸発させて、約0.1マイクロメートルの厚さを有する剥離前駆体層を形成した。
【0188】
剥離前駆体層を有するポリエステルフィルムに、紫外線照射装置Heraeus(Hanau,Hessen,Germany)製、F300、中圧水銀ランプ(Hバルブ))を用いて、窒素ガス雰囲気下、ライン速度20m/分で紫外線を1パス照射して剥離前駆体層を硬化させ、剥離ライナー1を製造した。照射時に、EITから入手可能な放射線計UV POWER PUCK(商品名)IIで測定した1パスあたりの紫外線量は350mJ/cm2(UVA 168mJ/cm2、UVB 158mJ/cm2、及びUVC 24mJ/cm2)であった。
【0189】
剥離ライナー2~12
剥離ライナー2~12を、表2の前駆体ポリマー2~12を剥離ライナー2~12に用いた以外は、上記剥離ライナー1と同じ方法で得た。ここで、前駆体ポリマー8及び9は、トルエン/MEK/n-ヘプタン(34質量%/33質量%/33質量%)の混合溶媒で1.06質量%に希釈した。また、前駆体ポリマー12については、この前駆体ポリマーをn-ヘプタンの単一溶媒で1.22質量%に希釈した。
【0190】
剥離ライナー13及び14(PCK基材の剥離ライナー)
剥離ライナー13及び14については、ポリエステルフィルム(EMBLET(商品名)S-50)の代わりに、PCKに上記前駆体ポリマー1及び9をそれぞれコーティングした以外は、上記剥離ライナー1と同じ方法で、剥離ライナー13及び14を得た。
【0191】
剥離ライナー15~21(白色フィルム付き剥離ライナー)
剥離ライナー15については、ポリエステルフィルム(EMBLET(商品名)S-50)の代わりに、白色ポリエステルフィルムCrisper(商品名)K1212-100上に前駆体ポリマー9をコーティングした以外は、上記剥離ライナー1と同じ方法で、剥離ライナー15を得た。剥離ライナー16及び17については、前駆体ポリマー9を1.06質量%に代えて、それぞれ1.5質量%及び2.0質量%に希釈した以外は、剥離ライナー15と同じ方法で、剥離ライナー16及び17を得た。剥離ライナー18については、白色ポリエステルフィルムCrisper(商品名)K1212-100上に前駆体ポリマー9の代わりに前駆体ポリマー1を2.0質量%コーティングした以外は、剥離ライナー17と同じ方法で、剥離ライナー18を得た。剥離ライナー19及び20については、Crisper(商品名)K1212-100の代わりに白色ポリエステルフィルムDIAFOIL(商品名)W400-75及びLumirror(商品名)#75-E20上に、前駆体ポリマー1をそれぞれ2.0質量%コーティングした以外は、剥離ライナー18と同じ方法で、剥離ライナー19及び20を得た。剥離ライナー21については、Crisper(商品名)K1212-100の代わりに白色ポリエステルフィルムDIAFOIL(商品名)W100-75上に、1.0質量%の前駆体ポリマー1を2.0質量%前駆体ポリマー1の代わりにコーティングした以外は、剥離ライナー18と同じ方法で、剥離ライナー21を得た。
【0192】
シリコーンポリ尿素ブロックコポリマー系粘着剤を有する製造された剥離ライナーを使用する粘着テープの調製
実施例及び比較例で用いた評価用テープの試料は、以下の2つの方法で調製した。
【0193】
(1)製造した剥離ライナー上に粘着剤溶液を適用(直接適用)
まず、60質量部のSPU 33Kと、100質量部のXR37-B1795、180部のトルエンと、60部のイソプロピルアルコールとを混合して、粘着剤溶液を調製した。ここで、SPU 33Kは、米国特許第6,569,521号の実施例28に記載されているのと同じ方法で調製した。製造された剥離ライナー上に粘着剤溶液をコーティングし、105℃で10分間乾燥させた。乾燥した粘着剤層の厚さは、約50マイクロメートルであった。この粘着剤層上に剥離ライナーとしてFD-75を適用させて粘着テープを得た。
【0194】
(2)製造した剥離ライナーを粘着剤層に適用する(ドライラミネート)
上記の粘着剤溶液を剥離ライナーのFD-75上にコーティングし、105℃で10分間乾燥させた。乾燥した粘着剤層の厚さは、約50マイクロメートルであった。製造した剥離ライナーを粘着剤層に適用させ、粘着テープを得た。
【0195】
製造した粘着テープを以下のように評価し、結果を表3~6に示す。ここでは、表中、剥離ライナーについては、例えば、剥離ライナー1を「ライナー1」と略記する。また、表中の「NSNF系」とは、分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーを使用せずに、直鎖アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーを使用して調製された非フッ素系及び非シリコーン系剥離ライナーを意味し、「bNSNF系」とは、分岐アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーを使用して調製された非フッ素系及び非シリコーン系剥離ライナーを意味する。
【0196】
剥離強度試験:製造した剥離ライナーの剥離層に対する粘着剤層の剥離強度
剥離ライナーのFD-75を粘着テープから剥離し、ポリエステルフィルム(COSMOSHINE(商品名)A4100)を粘着テープの粘着剤層に貼り付けた。次に、ポリエステルフィルムとSUSパネルとを、それらの間に挟まれた両面テープを介して接着させた。精密万能試験機Autograph AG-X(株式会社島津製作所(日本、京都府京都市))を用いて、製造した剥離ライナーを300mm/分の剥離速度で180度方向に剥離したときの剥離強度を測定した。ここでは、剥離強度が10N/25mmを超えた場合は、表中に「>10」と記載した。表3は、直接コーティングによって調製された粘着テープの試験結果を示し、表4は、直接コーティングによって調製された粘着テープを50℃及び80%RHの環境下で数週間エージングしたときの試験結果を示し、表5は、直接コーティングによって調製された粘着テープ及びドライラミネーションによって調製された粘着テープの試験結果を示す。
【0197】
残留粘着試験
剥離強度試験後にSUSパネル上に粘着剤層が残ったポリエステルフィルムを両面テープから剥がし、ポリエステルフィルム上に露出した粘着剤層をSUS 304(BA)パネルに貼り付けた。精密万能試験機Autograph AG-X(株式会社島津製作所(日本、京都府京都市))を用いて、ポリエステルフィルムを室温で30分間放置した後、剥離速度300mm/分で180度方向に剥離したときの粘着力を残留粘着力として測定した。表6には、参照例1として、2つのフッ素系剥離ライナー(FD-75)を用いて、上記(1)の直接適用法により調製した粘着テープの残留粘着力も併せて示すことに留意されたい。
【0198】
【0199】
表3の結果から、本開示の非フッ素系及び非シリコーン系bNSNF剥離ライナーの剥離層は、シリコーン粘着剤層に対して良好な剥離性能を示すことが分かった。加えて、例えば、ポリマー成分を調整することにより、軽剥離の剥離ライナーと重剥離の剥離ライナーとを別々に製造できることも確認した。
【0200】
【0201】
表4の結果から、本開示の非フッ素系及び非シリコーン系bNSNF剥離ライナーは、エージング処理を施しても物性(剥離強度)に影響を与えず、剥離強度の耐湿熱性に優れることが確認された。
【0202】
【0203】
表5の結果から、本開示の非フルオリン系及び非シリコーン系bNSNF剥離ライナーは、直接適用法及びドライラミネート法のいずれによっても同等の物性(剥離強度)を有することが確認された。
【0204】
【0205】
表6の結果から、本開示の非フッ素系及び非シリコーン系bNSNF剥離ライナーから剥離された粘着剤層の残留粘着力は、参照例1のフッ素系剥離ライナーと同等であることが確認された。
【0206】
シリコーンポリオキサミドブロックコポリマー系粘着剤を有する製造された剥離ライナーを使用する粘着テープの調製剥離強度試験及び残留粘着力試験のために、シリコーンポリ尿素ブロックコポリマー系粘着剤の代わりにシリコーンポリオキサミドブロックコポリマー系粘着剤を使用した。まず、60質量部のSPO 20Kと、100質量部のXR37-B1795、及び140部の酢酸エチルとを混合して、粘着剤溶液を調製した。ここで、SPO 20Kは、米国特許第8,765,881号の実施例12に記載されているのと同じ方法で調製した。次いで、粘着剤溶液を剥離ライナーのFD-75上にコーティングし、105℃で10分間乾燥させた。乾燥した粘着剤層の厚さは、約50マイクロメートルであった。最後に、製造した剥離ライナー(ライナー1、ライナー18~ライナー21)を粘着剤層に適用させ、ドライラミネート法により粘着テープを得た。
【0207】
シリコーンポリオキサミドブロックコポリマー系粘着剤を用いて調製された粘着テープの剥離強度試験及び残留粘着力試験を、上記のシリコーンポリ尿素ブロックコポリマー系粘着剤を用いて調製された粘着テープと同じ方法で評価した。表7に剥離強度試験及び残留粘着力試験の試験結果を示す。
【0208】
【0209】
試験例2
いくつかのシリコーン粘着テープに対する剥離ライナーの剥離強度の耐熱安定性を評価した。
【0210】
表8は、使用される種々の材料を示す。製造した剥離ライナーを用いた粘着テープを以下のようにして調製し、剥離ライナーの耐熱安定性を評価した。
【0211】
【0212】
実施例38及び39並びに比較例4~6
100質量部のDOWSIL(商品名)BY-24-740と、50質量部のトルエンと、1質量部のDOWSIL(商品名)BY-24-741と、0.9質量部のDOWSIL(商品名)SRX-212とを混合して粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を基材(COSMOSHINE(商品名)A4100)にコーティングし、65℃で5分間乾燥させた後、120℃で3分間乾燥させた。乾燥した粘着剤層の厚さは、約30マイクロメートルであった。この粘着剤層上に、表9に示す剥離ライナーを適用させて、実施例38及び39並びに比較例4~6の粘着テープを得た。
【0213】
実施例40及び41並びに比較例7~9
100質量部のDOWSIL(商品名)SH4280と、50質量部のトルエンと、3質量部のNiper(商品名)BMT-K40とを混合して粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を基材(COSMOSHINE(商品名)A4100)にコーティングし、65℃で5分間乾燥させた後、130℃で10分間乾燥させた。乾燥した粘着剤層の厚さは、約30マイクロメートルであった。この粘着剤層上に、表9に示す剥離ライナーを適用させて、実施例40及び41並びに比較例7~9の粘着テープを得た。
【0214】
剥離強度試験
上記のようにして作製した各粘着テープのポリエステルフィルム基材(COSMOSHINE(商品名)A4100)表面を、両面テープを介してSUSパネルに接着させた。精密万能試験機Autograph AG-X(株式会社島津製作所(日本、京都府京都市))を用いて、剥離ライナーを300mm/分の剥離速度で180度方向に剥離したときの剥離強度を測定した。測定結果を表9に示す。ここで、剥離強度は、室温(23±1℃、相対湿度50±5%)で24時間放置した後の粘着テープと、70℃で3日間放置した後の粘着テープを用いて測定した。
【0215】
【0216】
表9の結果から、実施例38及び39並びに実施例40及び41の粘着テープでは、剥離ライナーの剥離強度は、室温放置後及び70℃放置後のいずれにおいても安定しており、大きく変化しなかった。
【0217】
実施例42及び49並びに比較例10~21
4つの市販のシリコーン粘着テープ、すなわち、3M(商品名)ポリイミド基材シリコーン両面粘着テープ4390、3M(商品名)ポリエステルテープ8403、3M(商品名)耐熱性ポリイミドテープ5413、及びニトフロン(商品名)903 ULを用いて、剥離ライナーの耐熱安定性を評価した。
【0218】
3M(商品名)ポリイミド基材シリコーン両面粘着テープ4390については、まず、一方のライナーを剥がし、基材(COSMOSHINE(商品名)A 4100)を剥がし、粘着剤層上に適用させ、片面粘着テープを得た。次に、この片面粘着テープと、同じくシリコーン片面粘着テープである3M(商品名)ポリエステルテープ8403、3M(商品名)耐熱性ポリイミドテープ5413、Nitoflon(商品名)903 ULとを、表10~13に示す剥離ライナー上にそれぞれ適用させ、実施例42~49及び比較例10~21の粘着テープを得た。ここで、剥離ライナーへのシリコーン粘着剤の適用は、シリコーン粘着剤面を自重5kgのゴムロールで押圧しながら往復させて剥離ライナーに貼り付け、積層体を室温(23±2℃、相対湿度50±5%)で24時間放置することにより行った。
【0219】
この粘着テープについて、実施例38で行った上記剥離強度試験を同様に行い、測定結果を表10~13に示す。ここで、剥離強度は、室温で24時間放置した粘着テープ、100℃で12時間放置した粘着テープ、及び120℃で1時間放置した粘着テープを用いて測定した。
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
表10~13の結果から、実施例42~49の粘着テープは、非常に高い耐熱安定性を有していた。一方、比較例として示した市販の剥離ライナーの全ては、環境に応じて重い剥離力をもたらした。
【0225】
実施例50~57
実施例42~49と同様に、4つの市販のシリコーン粘着テープを用いて、剥離ライナー13及び14の耐熱安定性を評価した。実施例42~49の同じ方法において、剥離ライナー13及び14を、表13~16に示した市販のシリコーン粘着テープの各々のシリコーン粘着面に適用させ、実施例50~57の粘着テープを得た。
【0226】
この粘着テープについて、実施例38で行った上記剥離強度試験を同様に行い、測定結果を表14~17に示す。ここで、剥離強度は、室温で24時間放置した粘着テープ及び70℃で3日間放置した粘着テープを用いて測定した。
【0227】
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】
表14~17の結果から、実施例50~57の粘着テープは、PCK基材の場合でも安定した剥離力を有しており、高温でも安定した剥離力を有していた。
【0232】
本発明の基本原理から逸脱することなく、上記の実施形態及び実施例に様々な変更を加えることができることは、当業者には明らかである。加えて、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、種々の改良及び変更を行ってもよいことは、当業者にとって明らかであろう。
【0233】
符号の説明
100 積層体
101 剥離ライナー(第1の剥離ライナー)
103 シリコーン粘着剤層
105 第2の剥離ライナー
200 ロール体
201 剥離ライナー
203 シリコーン粘着剤層
【手続補正書】
【提出日】2023-07-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正書】
【提出日】2024-02-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】