(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-29
(54)【発明の名称】金属繊維のネットワーク及び繊維ネットワークの組立方法
(51)【国際特許分類】
C22C 47/14 20060101AFI20240522BHJP
C22C 21/02 20060101ALI20240522BHJP
C22C 9/02 20060101ALI20240522BHJP
C22C 9/10 20060101ALI20240522BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20240522BHJP
B22F 1/062 20220101ALI20240522BHJP
B22F 3/11 20060101ALI20240522BHJP
D04H 1/4234 20120101ALI20240522BHJP
D04H 1/54 20120101ALI20240522BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240522BHJP
H01M 4/80 20060101ALN20240522BHJP
H01M 4/66 20060101ALN20240522BHJP
【FI】
C22C47/14
C22C21/02
C22C9/02
C22C9/10
B22F1/05
B22F1/062
B22F3/11 C
D04H1/4234
D04H1/54
B22F1/00 N
B22F1/00 L
B22F3/11
H01M4/80 C
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554284
(86)(22)【出願日】2022-05-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2022062655
(87)【国際公開番号】W WO2022238413
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/062435
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512247223
【氏名又は名称】マツクス-プランク-ゲゼルシヤフト ツール フエルデルング デル ヴイツセンシヤフテン エー フアウ
【氏名又は名称原語表記】MAX-PLANCK-GESELLSCHAFT ZUR FOeRDERUNG DER WISSENSCHAFTEN E.V.
【住所又は居所原語表記】Hofgartenstrasse 8,80539 Muenchen, Bundesrepublik Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ハックナー,マクシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】スパッツ,ヨアヒム
【テーマコード(参考)】
4K018
4K020
4L047
5H017
【Fターム(参考)】
4K018AA03
4K018AA08
4K018AA16
4K018AA33
4K018BA02
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4L047AB09
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5H017AA03
5H017BB01
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5H017HH03
5H017HH07
5H017HH08
5H017HH09
(57)【要約】
本発明は、複数の金属繊維を含む繊維ネットワークの組立方法に関し、方法は、組立場所において複数の金属繊維から緩いネットワークを提供するステップと;複数の繊維を、50K/分を超え、特に100K/分を超え、特に200K/分を超え、好ましくは1000K/分を超える加熱速度で、それらの融点温度の50~98%の範囲内で選択される固着温度まで加熱することにより、個々の金属繊維の間に接触点を形成することによって;及び、複数の繊維を、50K/分を超える、好ましくは100K/分を超える冷却速度で冷却することによって、複数の金属繊維を互いに固着させるステップとを含む組立方法に関する。本発明は、接触点において互いに固着した複数の金属繊維を含む金属繊維のネットワークであって、金属繊維非円形断面、特に長方形、正方形、部分円、若しくは長軸と短軸とを有する楕円形の断面、又は上記金属繊維が円形断面を含み、繊維が、繊維の長さに沿って全体的に一定の幅を有し、その長さに沿った上記繊維の上記幅のばらつきは、40%未満、好ましくは30%未満、特に20%未満である、金属繊維のネットワークにさらに関する。20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属繊維(10)を含む繊維ネットワークの組立方法であって:
組立場所(12)において前記複数の金属繊維(10)の緩いネットワークを提供するステップと;
個々の金属繊維(10)の間に接触点(14)を形成することによって、前記複数の金属繊維(10)を互いに固着させるステップであって:
前記複数の繊維(10)を、50K/分を超え、特に100K/分を超え、特に200K/分を超え、好ましくは1000K/分を超える加熱速度で、それらの融点温度の50~98%の範囲内で選択される固着温度まで加熱するステップと;
前記複数の繊維(10)を、50K/分を超え、好ましくは100K/分を超える冷却速度で冷却するステップと、
によって行われるステップと、
を含む、組立方法。
【請求項2】
0秒~30分の範囲内、特に0秒~15分の範囲内、好ましくは0秒~5分の範囲内で選択される固着時間の間、前記固着温度を維持するステップをさらに含み、前記固着温度を維持する前記ステップが、前記複数の繊維の冷却の前に行われる、請求項1に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項3】
前記複数の繊維を互いに固着させる前記ステップの前に行われるさらなるステップを含み、前記さらなるステップが、前記繊維の溶融温度の20~%の範囲内、特に室温から前記繊維の前記溶融温度の60%までで選択される清浄化温度に前記複数の繊維を加熱することによって前記複数の繊維を清浄化することを含む、請求項1又は2に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項4】
前記複数の繊維を清浄化する前記ステップが、前記組立場所にガス流を使用することを含む、請求項3に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項5】
前記複数の繊維を清浄化する前記ステップが、前記組立場所の気圧を、好ましくは80kPa未満の圧力まで、より好ましくは50kPa未満まで、さらにより好ましくは10kPa未満まで、特に1kPa未満まで、0.1kPa未満まで、又はさらには0.0001kPa以下まで低下させることを含む、請求項3又は4に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項6】
清浄化の前記さらなるステップが、除去する化合物を決定することと、除去する前記化合物の蒸気圧曲線に基づいて圧力の低下及び/又は温度の上昇を選択することとを含み、特にさらに、段階的に又は連続的な方法での、前記蒸気圧曲線に基づいた前記圧力の低下及び/又は前記温度の上昇を含む、請求項3~5のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項7】
前記複数の金属繊維(10)を互いに固着させる前に、前記方法が、前記複数の金属繊維(10)を、特に1GPa未満である、あらかじめ決定された圧力に曝露するステップをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項8】
アルゴン、Ar-W5(Ar中5体積%のH2)、Ar-W2(Ar中2体積%のH2)、フォーミングガス(N2中5体積%のH2)又は別の貴ガスなどの保護ガスが前記組立場所(12)に供給される、請求項1~7のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項9】
前記繊維(10)を加熱する前記ステップが、誘導炉、赤外炉、高温セラミック発熱体、及び/又は、例えばコンベア炉などのゾーン炉によって行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項10】
加熱する前記ステップが連続炉によって行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項11】
前記固着温度が電子顕微鏡法によってその場で求められる、請求項1~10のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項12】
前記固着温度が、前記金属繊維の前記融点温度の80~98%の範囲内、特に90~98%の範囲内で選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項13】
前記複数の繊維を加熱するステップ、固着温度を維持する前記任意選択によるステップ、及び前記複数の繊維を冷却する前記ステップが、30分未満、好ましくは15分未満、特に5分未満、特に1分未満のあらかじめ決定された時間で行われる、請求項1~12のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項14】
前記あらかじめ決定された時間が、前記複数の繊維を加熱するステップと、前記複数の繊維を冷却するステップとの間で等しく分割される、請求項1~13のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項15】
前記繊維を冷却する前記ステップにおいて、前記繊維が前記金属繊維の前記融点温度の60%以下の温度に冷却されるまで、前記冷却速度が50K/分を超え、好ましくは100K/分を超えて維持される、請求項1~14のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項16】
前記金属繊維(10)が、1.0mm以上の長さ、及び/又は100μm以下の幅、及び/又は50μm以下の厚さを有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項17】
前記複数の繊維を加熱する前記ステップを行う前に、長さに沿った前記繊維の前記幅が、前記繊維の初期の幅と比較して20%未満だけ、より好ましくは10%未満だけ、さらにより好ましくは5%未満だけ、又は最も好ましくは1%未満だけ変化する、請求項1~16のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項18】
互いに固着させる前及び/又は後の前記金属繊維(10)が、DSC測定中に加熱した場合に発熱事象を示し、前記発熱事象によって、好ましくは0.1kJ/g以上の量、より好ましくは0.5kJ/g以上の量、さらにより好ましくは1.0kJ/g以上の量、最も好ましくは1.5kJ/g以上の量のエネルギーが放出される、請求項1~17のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項19】
前記金属繊維(10)が、非円形断面、特に長方形、正方形、部分円、又は長軸と短軸とを有する楕円形の断面を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項20】
前記短軸の前記長軸に対する比が、1~0.05の範囲内、好ましくは0.7~0.1の範囲内、特に0.5~0.1の範囲内にある、請求項18に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項21】
前記金属繊維(10)が円形断面を含む、先行する請求項1~17のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項22】
特に垂直又は水平溶融紡糸によって、前記金属繊維の溶融材料に対して10
2Kmin
-1以上の冷却速度を使用することによって、前記金属繊維(10)を得ることができる、請求項1~21のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項23】
前記複数の金属繊維の前記金属繊維(10)の少なくとも一部が非晶質であるか、又は前記複数の金属繊維の前記金属繊維(10)の少なくとも一部がナノ結晶である、請求項1~22のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項24】
前記金属繊維(10)が互いに電気的に接触する、請求項1~23のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項25】
前記金属繊維(10)が互いに直接電気的に接触する、請求項1~24のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項26】
前記金属繊維(10)が、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト、鉄、クロム、バナジウム、チタン、アルミニウム、ケイ素、リチウム、マンガン、ホウ素、上記の組み合わせ、及び前記上記の1つ以上を含む合金、例えばCuSn8、CuSi4、AlSi1、Ni、ステンレス鋼、Cu、Al、又はvitrovac合金の少なくとも1つを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の繊維ネットワークの組立方法。
【請求項27】
金属繊維のネットワークであって、
接触点(14)において互いに固着した複数の金属繊維を含み;
前記金属繊維(10)非円形断面、特に長方形、正方形、部分円、若しくは長軸と短軸とを有する楕円形の断面、又は
前記金属繊維(10)は円形断面を含み、
前記繊維(10)は、前記繊維の長さに沿って全体的に一定の幅を有し、その長さに沿った前記繊維の前記幅のばらつきは、40%未満、好ましくは30%未満、特に20%未満である、金属繊維のネットワーク。
【請求項28】
前記複数の金属繊維の前記金属繊維(10)がくびれ(16)を含まない、請求項27に記載のネットワーク。
【請求項29】
前記複数の繊維の個々の繊維が互いに焼結される、請求項27又は28に記載の金属繊維のネットワーク。
【請求項30】
前記短軸の前記長軸に対する比が、1~0.05の範囲内、好ましくは0.7~0.1の範囲内、特に0.5~0.1の範囲内にある、先行する請求項の請求項27~29のいずれか一項に記載の金属繊維のネットワーク。
【請求項31】
前記ネットワークが、規則的又は不規則なネットワークである、先行する請求項27~30のいずれか一項に記載の金属繊維のネットワーク。
【請求項32】
前記ネットワークが、前記複数の金属繊維の前記金属繊維の間に開放細孔を有する、先行する請求項27~31のいずれか一項に記載の金属繊維のネットワーク。
【請求項33】
前記金属繊維の間の接触点(12)が、前記ネットワークの3次元構造全体にわたって不規則又は規則的に分布している、先行する請求項27~32のいずれか一項に記載の金属繊維のネットワーク。
【請求項34】
先行する請求項1~26のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、金属繊維のネットワーク、特に請求項27~33のいずれか一項に記載のネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の金属繊維を含む繊維ネットワークの組立方法、及び金属繊維のネットワークに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、繊維のネットワークは、例えばフィルターから電池にまで及ぶ多種多様な用途に使用されている。
【0003】
従来、空気などの気体又は液体の濾過は、金属繊維メッシュ又は発泡体に基づいている。現在、このようなメッシュ又は発泡体は、自動車用途のオイルフィルターから流体又は空気などの気体の洗浄システムにまで及ぶ多種多様な装置の一部である。
【0004】
従来周知のフィルターは、通常、円形断面を含む金属繊維(例えばオイルフィルター)、又は炭素をベースとする発泡体(例えばHEPAフィルター)に基づいている。円形断面を有する金属繊維でできたフィルターは、そのような繊維が、高い機械的安定性を有するが、小さい表面対体積比を有することを特徴とする。しかし、このようなフィルターは、通常、多量の繊維が必要となるのでかなりの高重量を有する。他方、炭素発泡体でできたフィルターは、大部分が非常に脆弱であるが、軽量であり非常に大きな内部表面積を有する。さらに、このような従来周知のフィルターの濾過容量は理想的ではないことが注目される。
【0005】
別の応用分野では、金属繊維のネットワークは、補助電極として使用される場合に二次電池の性能を改善することもできる。金属繊維のこのようなネットワークは、燃料電池及び加水分解などの電気化学用途における触媒材料の性能に寄与することもでき、又は電磁遮蔽材料中の構成要素として、フィルターとして、又は組織材料として、及び組織ハイブリッド材料であって、添加剤として、例えば綿、絹、又は羊毛をも含むことができる組織ハイブリッド材料として寄与することもできる。
【0006】
上記の多種多様な応用分野のために、それらの応用分野に応じた異なる限定的な特性を有する繊維ネットワークを製造可能にする必要性が高まっている。
【0007】
繊維ネットワークの従来周知の製造プロセスでは、複数の繊維がホットプレスに供給され、高圧に曝露される。次に、複数の繊維は炉の中に入れられ、繊維の溶融温度に近い温度までゆっくりと加熱され、同時に、複数の繊維は上記圧力に依然として曝露されている。繊維が互いに接続されるまで、高温が維持される。その後、製造されたネットワークはゆっくりと冷却される。
【0008】
上記プロセスは「焼結」としても知られている。このようなプロセスは、通常、使用されるオーブンの能力に応じて1時間以上かかる。ここで、従来の焼結では、繊維を互いに接続するのに十分高い温度に到達する前に繊維が緩和すると認識されていた。これらの緩和過程(relaxation process)によって、繊維から貯蔵エネルギーが放出される。一例として、急冷技術、例えば溶融紡糸によって得られた繊維は、相当量の貯蔵エネルギーを有することができる。
【0009】
上記プロセスの推進力は、繊維表面の減少、及びそれらの自由エネルギーΔGの関連する減少である。自由エネルギーΔGは、表面成分ΔGS、体積成分ΔGV、及び粒界成分ΔGBに分割することができる。この関係は式(1)で示される。繊維の焼結中、体積部分はほぼ一定のままであり(ΔGV=0)、一方、粒界部分は、転移のため、すなわち表面が減少するため増加し(ΔGB>0)、体積部分は減少する(ΔGV<0)。体積パートΔGVは、明らかに粒界パートΔGBよりも重要であり、これによって系の全自由エネルギーの負の変化が生じ(ΔG<0)、あるエネルギー閾値(活性化エネルギー)を超えるとすぐに、プロセスが自発的に起こる。従来の焼結プロセス中、ΔGの減少は、繊維の円形化(rounding)とも関連しており、すなわち、本明細書では円形化とも呼ばれる繊維直径の円形への変化とも関連している。
ΔGT=ΔGV+ΔGB+ΔGS
【0010】
ここで、超えられるエネルギー閾値は、拡散の活性化エネルギーE
Aである(式(2))。ここで、D
0は温度依存性拡散係数であり、kはボルツマン定数であり、Tは絶対温度であり、Dは温度依存性拡散係数である。温度依存性拡散係数D(単位m
2s
-1)が大きいほど、繊維の円形化が速く起こる。ここで、温度は、活性化エネルギーE
Aの実現に関与するだけでなく、速度決定因子でもある。
【数1】
【0011】
したがって、このような周知の焼結プロセスは、原子レベルの再配列プロセス(拡散)によって起こり、溶融した繊維の再生を伴うプロセスによって起こるのではない。その熱力学的目標は、実現可能な最小表面で実現可能な最大体積を実現することである。その理想的な比率は、完全な球体で実現される。
【0012】
繊維ネットワークの従来周知の製造方法では、例えば限定された断面の繊維を有する繊維ネットワークを製造するために、この効果を実際に制御することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、繊維断面がより十分に制御された繊維ネットワークの組立方法と、対応する繊維ネットワークとを提供することである。この目的は、独立請求項の主題に解決される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
特に、本発明は、複数の金属繊維を含む繊維ネットワークの組立方法であって:
組立場所(assembling site)において複数の金属繊維の緩いネットワーク(loose network)を提供するステップと;
個々の金属繊維の間に接触点を形成することによって、複数の金属繊維を互いに固着させるステップであって:
複数の繊維を、50K/分を超え、特に100K/分を超え、特に200K/分を超え、好ましくは1000K/分を超える加熱速度で、それらの融点温度の50~98%の範囲内で選択される固着温度まで加熱するステップと;
複数の繊維を、20K/分を超え、好ましくは50K/分を超え、好ましくは100K/分を超える冷却速度で、特にそれらの融点の60%の温度まで冷却するステップと、
によって行われるステップと、
を含む、方法を提供する。
【0015】
前述のように、熱に曝露される繊維は、実現可能な最小表面を有する実現可能な最大体積が実現されるように原子レベルで再配列される傾向にある。「ほぼ完全な」状態は、繊維の関連から分かるように、完全な球体である。したがって、一般的な製造方法を用いると、加熱ステップのために、繊維はそれらの原子レベルで再配列を開始し、例えば結晶化によって、又は繊維の結晶格子中の欠陥が減少することによって、より好ましいエネルギーレベルに到達する。その結果、繊維は、それらの断面が平坦又は楕円形の断面から円形断面に変形することによってそれらの形状をさらに変化させることができ、すなわち繊維の断面形状の円形化が起こる。熱力学的に最も好ましい球形に移行する間、繊維の断面形状の円形化効果を観察できるだけでなく、繊維の直径の変化も観察できる。球形に到達する前に、繊維は、直径が減少した部分を示し、本明細書ではくびれ(constriction)と呼ぶ。これらのくびれは、繊維が分断するまでさらに進行する。最終的に、繊維は複数の液滴に変化し、すなわちこれらは球形に到達する。
【0016】
本発明の方法は、上記再配列プロセスの動力学を利用している。再配列のみが起こるのは、繊維がそのために十分な時間を有する場合である。加熱速度及び冷却速度を増加させ、好ましくは固着温度を30分以下維持することによって、金属繊維が互いに接触する接触点の形成を保障することができる。にもかかわらず、上記再配列プロセスは、大幅に減少し、特に、形状変化効果、すなわち円形化、並びにくびれの形成及び分断(interruption)は回避することができる。したがって、本発明の方法では、加熱速度及び冷却速度は、20K/分を有分上回り、好ましくは50K/分を超え、好ましくは100K/分を超えるように維持される。これに関連して、組み立てられたネットワークを上記冷却速度で、繊維の溶融温度の60%未満の温度まで冷却することが好ましい場合があることに留意されたい。繊維を上記温度速度まで冷却した後では、冷却速度は、もはや重要ではなく、したがって必要であれば下げることもできる。一般に知られる焼結プロセスは、約10~20K/分の加熱/冷却速度で行われ、それによって、繊維の加熱/冷却にはるかに長時間を要する(最大数時間)。加熱速度が遅すぎる場合、固着温度に到達する前に、金属繊維の緩いネットワーク内で緩和過程が起こって、自由エネルギーの表面成分ΔGS及び粒界成分ΔGBが減少することがある。その結果、第1の方法ステップとも呼ばれる金属繊維を加熱するステップにおいて遅い加熱速度が用いられる場合、30分を超える間、固着温度が維持される追加の固着ステップが必要となりうる。加熱速度を遅く維持することによって、上記追加の固着ステップにおいて30分以下の固着時間では、繊維を互いに固着させるのに不十分である場合があり、その理由は、固着によって、加熱ステップにおいてより速い加熱速度が使用される場合と同じ程度(extend)で、表面成分ΔGS及び粒界成分ΔGBからの利点を得ることができないからである。固着温度に到達するためにより長い時間を必要とすること、及び/又は任意選択により固着温度においてより長い時間繊維を維持することで、繊維は熱力学的により望ましい状態に変化し、すなわち繊維の断面は円形断面に向かって変化することができる。既に前述したように、繊維が熱力学的により安定な状態に変化しようとする場合、断面が変化する場合があるだけでなく、繊維の幅が不均一になる場合もあり、及び/又は繊維幅のくびれが生じる場合もある。同封の図面に示され、以下により詳細に議論されるように、これらのくびれによって、繊維がさらに分断する場合があり、それによって繊維の長さが減少する。
【0017】
本発明の方法を用いることによって、繊維の緩いネットワークから、固着繊維のネットワークを、それらの原子レベルへの最小限の(望ましくない)影響で組み立てることができる。その結果、繊維の断面形状及び長さを維持することができる。前述の説明のように、従来周知の方法では、これは不可能であったが、その理由は、上記貯蔵エネルギーは、それぞれの固着温度に到達する前に、加熱中に既に繊維から放出されているからである。その結果、一般的な焼結プロセスの場合、固着温度に到達するときに、繊維は熱力学的により安定な状態にある。次に、より高い固着温度及びより長い固着時間が要求されることで、繊維の断面、直径、及び/又は長さの変化が生じる。
【0018】
本発明による方法では、使用される温度、すなわち固着温度は、金属繊維の材料によって決定される。溶着プロセス中に非晶質金属繊維が結晶化するのを防止するため、使用される温度をこれらの繊維の結晶化温度よりも低く維持することが好ましい。結晶化温度は、例えば、対象の金属繊維の示差走査熱量測定(DSC)測定によって求めることができる。DSC測定は、以下の条件を使用して行うことができる:開始温度30℃、10Kmin-1の加熱速度で1200℃まで、続いて10Kmin-1の冷却速度で室温まで。DSC測定は、100ml min-1の一定アルゴン流と、完全に酸素を含まないジルコニウム-酸素トラップシステム(STA 449 F3 Jupiter, Netzsch Bj.2017)とを用いてアルゴン雰囲気下で行うことができる。
【0019】
本発明の説明の状況において、「溶融温度の%」は、例えば、示差走査熱量測定(DSC)測定によって求められる℃の単位での溶融温度を意味する。したがって、溶融温度が1000℃である場合、本発明の説明の状況において、溶融温度の20%は200℃であり、溶融温度の50%は500℃であり、溶融温度の95%は950℃である。
【0020】
さらに、追加の効果として、本発明による方法を用いると、ネットワークは、可撓性であり、ネットワークの劣化を引き起こすことなく、すなわち変形のために金属繊維ネットワークから1つの金属繊維が分離することなく、繰り返し変形可能なように組み立てることができる。金属繊維は互いに固着しており、そのため金属繊維は互いに接触し、すなわち接触点は、金属繊維に対して移動することができず、例えば金属フェルトなどの絡み合った金属繊維の不織凝集の場合には移動可能である。結果として、本発明による金属繊維のネットワークは、機械的に安定性であり、さらに可撓性である。この状況において機械的安定性とは、金属繊維のネットワークが金属繊維の緩い凝集ではないことを意味し、すなわち、ネットワークに小さな力が作用してすぐに、ネットワークが分解して分離した金属繊維になることがないことを意味する。したがって、このような金属繊維のネットワークは、破壊されることなく柔軟に変形させることができる。金属繊維のネットワークは、変形後にその形状を回復することができる。しかし、金属繊維のネットワークが折りたたまれる場合、これを永続的に再成形することもできる。
【0021】
本発明による方法を用いると、接触点が、組み立てられたネットワーク全体にわたって分布することがさらに可能であり、それによって金属繊維のネットワークの3次元構造にわたって接触点が存在する。したがって、接触点は、ネットワークの中央又は周囲などの金属繊維のネットワークの特定の領域中にのみ設けられるのではない。接触点は、ネットワーク全体にわたって均一に分布することが可能である。さらに、接触点の密度は、ネットワーク全体にわたって勾配を有することが可能であり、すなわちネットワークは、接触点の密度が高い領域と接触点密度が低い領域とを有することが可能である。接触点の規則的又は不規則な空間分布を有することも可能である。
【0022】
これに関連して、さらに留意されることは、それぞれの金属繊維は、別の金属繊維と少なくとも2つの接触点を有することができ、より好ましくは少なくとも3つの接触点、さらにより好ましくは少なくとも4つの接触点を有することができる。
【0023】
本発明の一実施形態によると、上記方法は、0秒~30分の範囲内、特に0秒~15分の範囲内、好ましくは0秒~5分の範囲内で選択される固着時間の間、上記固着温度を維持するステップをさらに含むことができ、上記固着温度を維持する上記ステップは、複数の繊維を冷却するステップの前に行われる。したがって、既に前述したように、上記方法は、上記固着温度をあらかじめ決定された時間の間維持する追加のステップを含むことができる。しかし、加熱速度を速く維持することによって、固着時間を最小限まで短縮できることを示すこともできた。すなわち、幾つかの場合では、固着温度に到達してすぐに、それによって上記温度を基本的に0秒維持して、冷却プロセスを開始することもさらに可能である。これに関連して、明らかに、実際には、冷却プロセスが固着温度に到達した直後に開始する場合、固着時間は厳密に0秒ではないか、ある程度0.1秒以下となることに留意すべきである。したがって本出願の状況では、0秒の固着時間は、加熱ステップ中に固着温度に到達した直後に冷却ステップが開始する場合と関連する。幾つかの実施形態の場合、固着時間は、1秒以上、2秒以上、3秒以上、10秒以上、又はさらには30秒以上であってよい。
【0024】
別の一実施形態によると、上記方法は、複数の繊維を互いに固着させるステップの前に、清浄化ステップを含むことができ、上記清浄化ステップは、繊維の溶融温度の20%~60%の範囲内で選択される清浄化温度に複数の繊維を加熱することによって複数の繊維の清浄化を行うことを含む。下限は、さらには室温、特に室温よりもわずかに高温から選択することができる。金属繊維は、通常はそれらのそれぞれの製造方法のバイプロダクト(biproduct)である異なる種類の不純物及び/又は添加剤をそれらの表面上に多くの場合含むことが示されている。繊維を上記清浄化温度まで加熱することによって、不純物及び/又は添加剤は分解し、すなわち蒸発又は燃焼し、それによって、残った繊維は清浄な表面を含む。このような清浄な表面は、次に互いの焼成がより容易になり、より良好になる。
【0025】
これに関連して、理想的な場合では、清浄化温度は、繊維がそれらの貯蔵エネルギーを失い始める温度よりも十分低くなるべきであり、すなわち前述の再配列プロセスが生じる傾向にある温度よりも低くなるべきであることに留意すべきである。このように、繊維は、互いの焼成を既に開始することなく、上記添加剤/不純物から清浄にすることができる。
【0026】
例えば繊維の表面上に存在する添加剤の特性のため、繊維がそれらの原子レベルで再構成を既に開始する温度で清浄化温度が選択されている望ましくない場合では、できるだけ短い時間の間、すなわち繊維が清浄となるまでの時間のみ上記清浄化温度で繊維を維持することによる特別な配慮を行う必要がある。このような場合、清浄にした繊維を互いに有効に焼結できるようにするため、後の加熱ステップの固着温度をより高い温度に後に適合させることが必要となりうる。繊維を清浄化するための最短時間は、試行錯誤によって容易に決定することができる。
【0027】
したがって、上記清浄化温度は、繊維の材料、及び添加剤/不純物であってそれらから繊維を清浄にすべき添加剤/不純物の材料に応じて選択することができる。
【0028】
複数の繊維を清浄化するステップは、複数の繊維を固着温度に加熱するステップと同じ組立場所において、すなわち同じオーブン中で行うことができる。このような配置は、通常、バッチプロセスと呼ばれる。別の実施形態では、それぞれの方法ステップで複数の繊維が通過する、複数の異なるオーブン、又は複数の異なる加熱ゾーンを有する1つのオーブンが存在することができる。他方、このようなプロセスは連続プロセスと呼ばれ、多量の繊維が加工されることが想定される場合に特に有利である。
【0029】
複数の繊維を清浄化する上記ステップは、組立場所においてガス流を使用することをさらに含むこともできる。このようなガス流は、複数の繊維の周囲からの蒸発/分解した添加剤の除去を促進することができ、これによって、繊維が再び冷却された後、上記添加剤は複数の繊維上に再び集まることができない。
【0030】
上記ガス流は、例えば、組立場所から燃焼/蒸発した添加剤を吸引するために組立場所に吸引を使用することによって得ることができる。別の可能性の1つは、蒸発/燃焼した添加剤を組立場所から吹き飛ばすように構成されるガス、例えば酸素又は空気などの反応性ガス、又は窒素又はアルゴンなどの不活性ガスのストリームを組立場所に供給することであってよい。ガスの上記ストリームを供給する方法の種類は、上記組立場所に存在する別の条件により選択することができ、例えば組立場所が真空中、空気中、又は保護ガス中に設けられるかどうかにより選択することができる。例えば、繊維が、酸素と反応する傾向にある材料でできている場合、添加剤から周囲を清浄にするために供給されるガスのストリームは、例えば不活性ガス又は保護ガスを供給することによって酸素を含有しないように選択することができる。
【0031】
さらに、複数の繊維を清浄化するステップは、組立場所の気圧を低下させることを含むことができる。これは、例えば、高い蒸気圧を有する添加剤の場合に有用となりうる。気圧は、80kPa未満まで、50kPa未満まで、又は10kPa未満まで低下させることができる。幾つかの実施形態では、圧力は、1kPa未満、0.1kPa未満、又はさらには0.0001kPaまでさらに低下させることができ、すなわち真空を使用することができる。本明細書において使用される場合、気圧は101kPaの圧力に相当する。
【0032】
上記蒸気圧は、閉鎖系で特定の温度においてその凝縮相(固体又は液体)熱力学的平衡にある蒸気によって生じる圧力として定義される。平衡蒸気圧は、液体の蒸発速度の指標の1つである。これは、液体(又は固体)から粒子が放出される傾向と関連する。標準温度において高い蒸気圧を有する物質は、多くの場合揮発性と呼ばれる。液体表面の上に存在する蒸気によって示される圧力が蒸気圧として知られる。液体の温度が上昇すると、その分子の運動エネルギーも増加する。分子の運動エネルギーが増加すると、蒸気に転移する分子の数が増加し、それによって蒸気圧が上昇する。
【0033】
この状況の本発明のさらなる一態様では、複数の繊維の清浄化は、除去される化合物、すなわち上記添加剤を決定することも含む。さらに、本発明のこの態様では、複数の繊維を清浄化するステップは、除去される上記化合物の蒸気圧曲線に基づいて圧力の低下及び/又は温度の上昇をさらに含む。圧力の低下及び/又は温度の上昇は、特に、除去される化合物がその蒸気圧曲線により気相となる条件に繊維が最終的にさらされるような方法で行われる。この圧力及び/又は温度の変化は、段階的な方法、すなわち圧力及び/又は温度を徐々に変化させ、続いてこれらのパラメーターをある時間の間、実質的に一定に維持することによって行うことができ、又は圧力及び/又は温度を連続的な方法で変化させることができる。必要な圧力及び/又は温度は、除去される種々の化合物の場合で大きく変動することがある。しかし、利用可能な蒸気圧曲線は、繊維がそれらの融点の60%を超えるまで過熱されることなく適切な清浄化条件に関する当業者への適切な案内となる。
【0034】
したがって、一部の材料の場合、組立場所の気圧を低下させることで、上記材料の蒸発を誘導することができ、それによって清浄化効果を高めることができる。これは、清浄化温度までの繊維の加熱と関連させて行うことができる。
【0035】
一実施形態によると、複数の金属繊維を互いに固着させる前に、上記方法は、複数の金属繊維に、特に1MPa未満、特に500kPa未満であるあらかじめ決定された圧力を加えるステップをさらに含む。本発明による方法を用いると、繊維が互いに接続される接触点の形成を確実にするために、比較的低い圧力を加えることができる。従来周知の方法では、接触点を形成するためにかなり高い圧録を加える必要があった。
【0036】
組立プロセス中の繊維の酸化を防止するために、上記組立場所に保護ガス、例えばアルゴン、窒素、Ar-W5(Ar中5体積%のH2)、Ar-W2(Ar中2体積%のH2)、フォーミングガス(forming gas)(N2中5体積%のH2)、又は別の貴ガスを供給することがさらに好ましい。このステップは、複数の繊維を固着温度まで加熱するステップと、繊維を上記固着温度で維持するステップ(行われるとしても)との両方の場合に適切となることがある。一般に、本発明による方法は、真空中で行うこともできる。したがって、組立場所における厳密な条件は、例えば、繊維に使用される材料に応じて選択することができる。例えば、鉄及び/又は一部の鋼などの一部の材料は、窒素とともに使用することができないが、その理由は、それらは窒化が生じる傾向にあるからである。したがって、このような材料の場合、別の保護ガスを使用することができる。
【0037】
本発明の別の一実施形態によると、繊維を加熱するステップは、適切な加熱装置によって行われる。このような加熱装置の好ましい例は、誘導炉、赤外炉、高温セラミック発熱体、及び/又は例えばコンベア炉などのゾーン炉である。このような加熱装置は、急速加熱、すなわち速い加熱速度、並びに急速冷却、すなわち速い冷却速度を保証することができ、これによって、複数の繊維は、固着温度に到達する前に、再配列及び緩和過程又は同様のあらゆるもののために繊維があまり多くのエネルギーを失うことなく互いに接続できる。加熱装置は、適切には連続炉又はバッチ式炉であってよい。
【0038】
幾つかの実施形態では、加熱ステップを行うための上記の適切な加熱装置は連続炉であってよい。このような連続炉は、多くの場合、高い生産速度の用途、すなわち多量の繊維の加工が想定される場合の用途(工業用途)における好ましい選択肢となる。
【0039】
固着温度は、電子顕微鏡法によってその場で求められることが好ましい。これは例えば、その場SEM(走査型電子顕微鏡)の加熱ステージ内に繊維を配置することによって行うことができる。高真空中で熱伝達がほぼ存在しないため、繊維は加熱ステージとの良好な熱的接続が必要である。このため、熱安定性グラファイトペーパーを使用することができる。したがって、繊維と加熱ステージとの間の支持体として1枚のシートを使用することができ、中央に孔を開けた別の1枚のシートを、繊維を見るために使用することができる。次にこれらの繊維サンドイッチ構造を加熱ステージに移動させ、押し下げることができる。その後、繊維の溶融温度に近いが溶融温度よりも依然として低い温度まで加熱ステージを加熱することができる。一方、繊維が互いに接続し始めるまで、SEMにより繊維断面を観察することができる。これに関連して、固着温度を求めることができる。第2の実験では、繊維サンドイッチ構造を前述の加熱速度で上記の求められた固着温度まで加熱することができる。次に、上記固着温度は、任意選択により、希望する程度の接続に到達するまで、したがって希望する接続強度に到達するまで固着時間の間維持することができる。したがって、言い換えると、第2の実験において、本発明による方法ステップは、求められた固着温度が正しいかどうかを確認するために行うことができる。
【0040】
固着温度及び時間は、繊維の材料、繊維の寸法、すなわち幅及び厚さ、並びに繊維内の貯蔵エネルギーの量によって決定される。例えば、厚さ及び幅が小さいある材料の細い繊維の場合、円形化プロセスは、同じ材料のより細くない繊維よりも速く進む傾向にある。特定の種類の繊維の固着温度及び時間の決定は、前述の電子顕微鏡法によりその場で行うか、試行錯誤試験を用いるかのいずれかを用いることができる。試行錯誤試験は、金属繊維のネットワークを製造するための実際の設備を用いて行うことができ、すなわち実際の製造条件下で行うことができる。
【0041】
これに関連して、固着温度が、金属繊維の溶融温度の80~98%の範囲内、特に90~98%の範囲内で選択されることが好ましい場合があることに留意されたい。上記範囲内の固着温度は、ほとんどの材料の場合に適切であることが分かった。これに関連して、正確な固着温度は、固着時間によっても変動しうることに留意されたい。すなわち、固着温度が高いほど、固着時間が短くなることがあり、逆の場合も同様となりうる。
【0042】
冷却ステップにおける冷却速度は、好ましくは、金属繊維の溶融温度の60%まで金属繊維を冷却するのに十分な時間維持される。
【0043】
本発明による方法ステップ、すなわち加熱ステップ及び冷却ステップ、並びに任意選択により繊維を固着温度で維持するステップは、好ましくは30分未満、好ましくは15分未満、特に5分未満、特に1分未満の合計時間で行われる。方法を速く実施するほど、例えばエネルギーの放出、繊維のくびれ及び/又は分断の形成、並びに繊維断面形状の変化などのマイナスの副次的作用が少なくなることが示されている。また、この状況では、冷却ステップは、必ずしも室温まで冷却する必要はないことに留意すべきである。上記ステップは、金属繊維の溶融温度の60%の温度まで冷却した後に終了することができる。
【0044】
これに関連して、あらかじめ決定された時間を上記ステップの間で等しく分配することが可能となりうることに留意されたい。別の実施形態では、固着温度を維持するステップが行われる場合、このステップは繊維の加熱及び冷却のステップよりもはるかに長い時間をかけることも可能となりうる。理想的な実験では、例えば、繊維の加熱及び冷却を行うステップは、1分かけることができるが、一方、固着を維持するステップは30秒以下かけることができる。しかし、別の実験では、加熱ステップは1~5分の範囲内で行うことができ、固着温度を維持するステップは0.5~1分の範囲内で行うことができ、冷却ステップは、組み立てられたネットワークが使用される繊維の溶融温度の約60%の温度まで冷却されるまで10分以内で行うことができる。組み立てられたネットワークの室温までのさらなる冷却は、例えばさらに1~2時間かけることができる。
【0045】
金属繊維は、1.0mm以上の長さ、及び/又は100μm以下の幅、及び/又は50μm以下の厚さを有することが望ましい場合がある。このような寸法を有する金属繊維を用いると、金属繊維を30分を超える時間、それらの融点に近い温度まで加熱する必要なしに、互いに固着する金属繊維を有するネットワークを製造することができる。従来の焼結技術では、金属の溶融温度に近い温度又はさらにはそれよりわずかに高い温度を比較的長時間維持する必要がある。この結果として、金属繊維の材料をある程度溶融又は少なくとも軟化させることができ、それによって、特に焼結中に比較的高い圧力が加えられる場合、金属繊維はネットワークではなく金属箔を形成する。金属繊維のネットワークは金属箔ではないので、すなわち金属繊維のネットワークの製造に使用される金属材料の構造は、金属繊維のネットワーク内に依然として認識することができる。したがって、金属繊維のネットワークの断面図では、金属繊維の一部ではなく、ネットワーク繊維の金属繊維の間にある空隙が存在する。
【0046】
本発明によると、互いに固着させる前の金属繊維は、DSC測定において加熱される場合に発熱事象を示すことが好ましく、ここでこの発熱事象は、0.1kJ/g以上の量、より好ましくは0.5kJ/g以上の量、さらにより好ましくは1.0kJ/g以上の量、最も好ましくは1.5kJ/g以上の量のエネルギーを放出する。この絶対量は、使用される金属又は金属合金に非常に大きく依存する。発熱事象の程度は、熱平衡の前後の金属繊維のDSC測定を比較することによって求めることができる。言い換えると、このような発熱事象を示す金属繊維は、周囲温度においてそれらの熱力学的平衡にはない。DSC測定における加熱中、金属繊維は、例えば結晶化、再結晶、又は金属原子の格子中の欠陥を減少させる別の緩和過程によって、準安定状態から熱力学的により安定な状態に移行することができる。例えばDSC測定中に加熱された場合に金属繊維に観察される発熱事象は、金属繊維がそれらの熱力学的平衡にないことを示しており、例えば金属繊維は、結晶化又は再結晶が起こるために金属繊維の加熱中に放出される欠陥エネルギー及び/又は結晶化エネルギーを有する非晶質又はナノ結晶状態であってよい。このような事象は、例えばDSC測定を用いて認識することができる。このような発熱事象を示す金属繊維のネットワークは、金属繊維が互いに固着した後で改善された強度を示すことが分かった。
【0047】
別の一実施形態によると、金属繊維は、非円形断面、特に長方形、正方形、部分円、又は長軸と短軸とを有する楕円形の断面を有する。このような断面によって、通常は、それらの熱平衡にない、すなわち準安定状態にある繊維が得られ、このことは一部の用途では有益となりうる。
【0048】
これに関連して、明らかに、短軸の値は長軸の値よりも小さくなる必要があることに留意されたい。短軸が長軸よりも大きな値を有する、すなわち長軸よりも長い場合、「短」及び「長」の定義を単に交換する必要がある。
【0049】
短軸の長軸に対する比は、1~0.05の範囲内、好ましくは0.7~0.1の範囲内、特に0.5~0.1の範囲内であることが好ましい場合がある。一般に知られているように、楕円の短軸と長軸との長さの間の比が大きいほど、その楕円は、比が1である円に類似するようになる。この比の値が小さくなるほど、楕円は扁平になる。したがって、短軸の長軸に対する比は、特に1未満である。
【0050】
或いは、金属繊維は、円形の断面を含むことができる。このような断面の場合、「長」軸の「短」軸に対する比は、明らかに厳密に1になる。円形断面は、アスペクト比が1未満であるエネルギー的により好ましい状態の断面を含む。したがって、円形断面を有する繊維は、別の形状の断面を有する繊維よりもそれらの平衡状態にエネルギー的に近い。
【0051】
本発明の別の一実施形態によると、金属繊維は、金属繊維の溶融材料を102Kmin-1以上の冷却速度にさらすことによって、特に垂直又は水平溶融紡糸によって得ることができる。溶融紡糸によって製造されたこのような金属繊維は、溶融紡糸プロセス中に行われた急速冷却のために、高エネルギー状態(すなわち準安定状態)で空間的に閉じ込められた領域を含む場合がある。これに関連する急速冷却は、102K・min-1以上、好ましくは104K・min-1以上の冷却速度、より好ましくは105K・min-1以上の冷却速度を意味する。
【0052】
また、溶融紡糸によって得られた繊維は、長方形又は半楕円形の断面を含むことが多く、このことは、それらの平衡状態からそれらが離れているので、ある応用分野には好ましい。このような繊維を製造可能な溶融紡糸機の例は、例えば、参照により本明細書に援用される、まだ公開されていない国際出願PCT/EP2020/063026号、並びに公開された出願の国際公開第2016/020493 A1号及び国際公開第2017/042155 A1号によって周知である。
【0053】
別の一例によると、複数の金属繊維の金属繊維の少なくとも一部は非晶質であり、又は複数の金属繊維の金属繊維の少なくとも一部はナノ結晶である。ナノ結晶金属繊維は結晶ドメインを含む。ナノ結晶金属繊維の溶融温度の約20~60%の温度まで加熱すると、これらのドメインの再結晶が起こり、その結果、加熱前のナノ結晶金属繊維中の初期結晶ドメインの平均サイズよりも、結晶ドメインの平均サイズが増加する。非平衡の繊維(例えばナノ結晶又は非晶質の繊維)と、平衡の(例えばアニールされた)繊維とを混合することも可能である。
【0054】
幾つかの用途では、金属繊維が互いに電気的に接触することが好ましい。このことは、例えば、組み立てられたネットワークが電池、燃料電池などの電気化学用途に使用される場合に好ましくなりうる。
【0055】
一実施形態によると、金属繊維は、導電率を最大まで高めることができるように互いに直接電気的に接触する。この点に関して、特に好ましくは、すべての金属繊維が別の金属繊維に焼結し、最も好ましくは別の金属繊維に直接焼結し、追加のバインダー、例えばポリマーバインダーは不用である。したがって、このようなポリマーバインダーは不十分な導電率及び高温性能を有することが多いので、ポリマーバインダーを用いずに金属繊維が互いに固着することがさらに好ましい。
【0056】
金属繊維は、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、コバルト、鉄、クロム、バナジウム、チタン、アルミニウム、ケイ素、リチウム、マンガン、ホウ素、上記の組み合わせ、及び上記を1つ以上含む合金、例えばCuSn8、CuSi4、AlSi1、Ni、ステンレス鋼、Cu、Al、又はvitrovac合金の少なくとも1つを含むことが好ましくなりうる。Vitrovac合金は、Fe基及びCo基非晶質合金である。金属繊維が、銅、又はアルミニウム、又はステンレス鋼合金でできていることが特に好ましくなりうる。異なる種類の金属繊維を互いに組み合わせることができ、それによって、フィルターは、例えば銅、1つ以上ステンレス鋼合金、及び/又はアルミニウムでできた金属繊維を含むことができる。金属繊維が、銅、アルミニウム、コバルト、ステンレス鋼合金であって銅、アルミニウム、ケイ素、及び/又はコバルトを含有するステンレス鋼合金である金属繊維でできたネットワークが特に好ましい。
【0057】
本発明の別の一態様によると、金属繊維のネットワークであって、上記ネットワークが、接触点において互いに固着した複数の金属繊維を含み、金属繊維が、非円形断面、例えば長方形、正方形、部分円、又は長軸及び短軸を有する楕円形の断面を有するか、又は金属繊維が円形断面を有するかのいずれかである金属繊維のネットワークが提供される。上記繊維は、繊維の長さに沿って全体的に一定である幅をさらに有し、その長さに沿った繊維の幅のばらつきは、好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満、又はさらにより好ましくは20%未満である。
【0058】
好ましくは、繊維の長さに沿った繊維の幅は、20%未満、より好ましくは10%未満、さらにより好ましくは5%未満、又は最も好ましくは1%未満だけ変化する。本明細書において、繊維の幅の変化は、繊維を互いに焼結する前及び焼結した後の繊維の幅の比較を意味する。
【0059】
従来周知のネットワークでは、繊維は、通常、不規則な形状を有し、そのため、1つの繊維の幅は、その長さに沿ってあまり変化しないことを保障できない。例えば、繊維の幅が大きく変動する場合、上記繊維は、幅がより狭い部分で分裂することがあり、すなわち繊維がくびれを有し、次にそこで分断が生じる。他方、(ほぼ)一定の幅を有する繊維は、個々の繊維が、それらの長さに沿った任意の位置で互いに接続することができ、このプロセス中に分断が生じる危険性はないという利点を有する。
【0060】
これに関連して、金属繊維は、幅が実質的に一定であることが好ましく、すなわち、その長さに沿った繊維の幅のばらつきは、好ましくは40%未満、より好ましくは30%未満又はさらにより好ましくは20%未満であることに留意されたい。前述のように、金属繊維が遅い加熱速度で加熱される場合、それらの平衡状態により近いエネルギーレベルに到達するために、原子レベルでの再配列プロセスが生じる。完全な球が最も好ましい状態であるので、これによって、場合により、さらに繊維の形状が変化する。このような形状変化が開始する場合、上記繊維の分断を発生させることがあるくびれが形成されることによって繊維が分解し始めることがありうる。最終的には、加熱が長すぎると、繊維は金属の液滴に変化する。本発明による方法では、速い加熱速度及び冷却速度が使用され、行われる場合には短い固着時間も使用される。結果として得られる固着した金属繊維のネットワークにおいて、繊維はこのような分断を実質的に含まず、それによって繊維の長さが維持される。さらに、速い加熱速度及び冷却速度のため、繊維断面の形状変化を回避することができ、すなわち繊維形状にわたる動的制御が存在する。その結果、本発明の方法では、繊維形状に関して高度な制御が行われる。
【0061】
複数の繊維の繊維が互いに焼結され、より好ましい互いに直接焼結されることが好ましい場合がある。これによって、繊維を互いに維持するためのさらなる枠などが不用となる。さらに、金属繊維を互いに直接焼結させることによって、接続箇所が導電性となる。これによって、金属繊維のネットワークの内部抵抗が比較的小さくなる。
【0062】
短軸の長軸に対する比が、1~0.05の範囲内、好ましくは0.7~0.1の範囲内、特に0.5~0.1の範囲内にあることが好ましくなりうる。既に前述したように、より扁平な断面を有する繊維は、それらの平衡状態からさらに離れてエネルギー的に賢明であり、これらは、例えば円形断面を有する繊維よりも多くのエネルギーを貯蔵する。
【0063】
実際、前述のように短軸及び長軸の長さの間の比がより大きい又はより小さい繊維を使用することによって、ネットワークの用途によりネットワークの特性を選択することが可能となりうる。したがって、より小さい比の繊維を使用することによって、ネットワークの機械的安定性の低下及び重量の減少が起こり、一方、より大きな比の繊維を使用することによって、ネットワークの機械的安定性の向上及び重量の増加が起こる。これは、特性がより重要になる用途により選択することができる。本発明によって得られる動的制御のために、繊維の形状は実質的に維持され、すなわち繊維のアスペクト比は実質的に維持される。その結果、ネットワークの特性は、所望の最終形状を有する繊維から出発することによって容易に調節可能となる。
【0064】
一実施形態によると、ネットワークは、規則的又は不規則なネットワークである。このような不規則なネットワークは、例えば、あらゆる方向で良好な導電率を有し、異方性の流体特性を有する。さらに、不規則な金属繊維のネットワークは、規則的な繊維のネットワークよりも製造が容易である。にもかかわらず、幾つかの用途では、個別の繊維の方向性を得るために、ネットワーク中の繊維が異なる方向にならされることが好ましい場合がある。したがって、ネットワーク中で、繊維の一部又はすべては、ある配向を有し、すなわち繊維の長さは、不規則な配向ではないが、1つ以上の空間方向で主要な配向を有することが好ましい場合がある。金属繊維が主要な配向を有することによって、フィルターは等方性の流体特性を有することができる。
【0065】
本発明の別の一実施形態によると、ネットワークは、複数の金属繊維の金属繊維の間に開放細孔を有する。ネットワークの多孔度は、好ましくは最大95体積%である。ネットワークの多孔度が80体積%を超えることも好ましい。多孔度が80体積%~95体積%の範囲内である場合がさらにより好ましい。活性電極材料又は活性触媒材料などの活性材料を開放細孔中に混入することができる。本発明によるネットワーク中、複数の金属繊維の金属繊維の少なくとも一部は、少なくとも部分的にコーティングされることがさらに好ましい。このコーティングは、例えば、電池中のLiイオンと相互作用する電極活物質、又はCOをCO2に変換する触媒活性材料、又は加水分解において活性である触媒活性材料などの活性材料であってよい。金属繊維が互いに固着することを改善するコーティングを金属繊維上に塗布することもでき、それによってネットワークの機械的強度が増加する。多孔度は、マイクロコンピュータートモグラフィーを用いてネットワーク構造を再現し、次に後述のバブルポイント法を用いて多孔度を評価することによって求めることができる。
【0066】
例として、このような電池の活性電極材料は、アノードの場合:黒鉛、ケイ素、炭化ケイ素(SiC)、及び酸化スズ(SnO)、二酸化スズ(SnO2)、及びリチウムチタノキシド(litium-Titanoxide)(LTO)であり;カソードの場合:リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)及びリチウム鉄リン酸塩(LFP)である。
【0067】
ネットワークは、0.1~100μmの範囲内、好ましくは0.5~50μmの範囲内、特に1~10μmの範囲内で選択される平均孔径を有することができる。平均孔径は、マイクロコンピュータートモグラフを用いて繊維構造を再現し、次にバブルポイント法を用いて平均細孔直径を評価することで求めることができる。バブルポイント法によって、2つの繊維の間にフィット可能な最大ボール直径が求められ、これが孔径と見なされる。さらに詳細には、2つの繊維の間の中心にある点が配置され、上記点を中心として有するバブルの半径が、両方の繊維の表面に接触するまで増加させる。バブルの直径は、孔径に相当する。任意の特定のパラメーターにおいて、バブル直径が一方の繊維にのみ接触する場合、中心点は、バブルが接触しなかった繊維の方向に移動させる。
【0068】
本発明による金属繊維のネットワークで、金属繊維が、金属繊維のネットワーク全体に不規則に分布する接触点において互いに固着する、特に直接固着する場合が特に好ましい。発明の別の一態様によると、接触点は、不規則に分布していないが、例えば金属繊維のネットワークの周囲領域に設けられること、又は接触点も規則的となるように金属繊維が規則的であることが好ましい。金属繊維が互いに固着する接触点が、特定の領域内に局在化し、金属繊維のネットワーク全体にわたって均一に設けられるのではないことがさらに好ましい。金属繊維が互いに固着する接触点が分離した領域にのみ存在する場合、これらの領域の間にある繊維は、高い可撓性を有し、同時に、機械的安定性及び良好な導電率を保証することができる。
【0069】
本発明のネットワークの厚さは特に限定されない。しかし、ネットワークが0.01mm以上の厚さを有する場合が好ましくなりうる。より好ましくは、ネットワークの厚さは0.03mm以上であり、さらにより好ましくは0.05mm以上、さらにより好ましくは0.07mm以上、最も好ましくは0.1mm以上である。ネットワークの厚さが0.01mm未満である場合、ネットワークの機械的安定性が不十分となる危険性がある。ネットワークの厚さの上限は、特に限定されない。しかし、用途によっては、上限は3.0mm以下、又は2.5mm以下であってよい。電池用途の場合、ネットワークの好ましい厚さは0.1mm~0.5mmの範囲内である。この範囲内の厚さを有するネットワークは、電池を製造するための活物質がコーティングされたネットワークの積層及び巻取りに関して有利となる。別の好ましい厚さ範囲は、0.5mmを超え5mmまでの範囲内、より好ましくは1~3mmの範囲内である。
【0070】
本発明の別の一態様によると、金属繊維のネットワークが提供され、上記ネットワークは、例えば、本発明による方法によって得ることができる本発明によるネットワークであってよい。
【0071】
これより、本発明が、さらに詳細に、例として添付の図面及び写真のみが参照され、本発明のネットワーク及び方法の種々の例によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】焼結中に生じうる典型的なプロセスを示す代表図である。
【
図2】CuSi4の焼結及び緩和を示すビデオのフレームである。
【
図3】AlSi1の焼結及び緩和を示すビデオのフレームである。
【
図4】従来の焼結繊維ネットワークの顕微鏡写真である。
【
図5】扁平な形状を有する焼結CuSi4繊維の顕微鏡写真である。
【
図6】扁平な形状を有する焼結AlSi1繊維の顕微鏡写真である。
【
図7】扁平な形状を有する清浄化され焼結されたAlSi1繊維の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
図1は、焼結プロセス中に緩和を引き起こす典型的な拡散プロセスを示している。種々の矢印は、表面拡散1、(表面からの)格子拡散2、蒸発及び凝縮3、粒界拡散4、(境界領域からの)格子拡散5、及び体積拡散6を示している。プロセス1~3では収縮は起こらず、繊維が互いに接続されるのみであるが、プロセス4~6では、境界領域から材料が除去され、焼結したネック上にそれが堆積する。このため、既に前述したように、繊維の表面が減少し、関連してそれらの自由エネルギーΔGが減少する。
【0074】
本発明の方法によって、金属繊維の境界領域のみが熱的に活性化し、これによって、繊維10は互いに焼結するが、繊維の形状及び寸法を維持するために、繊維10の一部が円形化し、このことは、多くの用途、例えば電気化学用途又は濾過用途の場合に有益な性質が得られる拡大された表面と関連しうる。
【0075】
本発明による方法では、繊維10の緩いネットワークが組立場所12において形成される。次に、個々の繊維10の間に接触点14を形成することによって、上記繊維10は互いに固着する。上記接触点14を形成するために、本発明による方法によって3つのステップが提供される。
A.複数の繊維10は、50K/分を超え、特に100K/分を超え、特に200K/分を超え、好ましくは1000K/分を超える加熱速度で、それらの融点温度の50~98%の範囲内で選択される固着温度まで加熱される。
B.次に、任意選択により、上記固着温度は、0秒~30分の範囲内、特に0秒~15分の範囲内、好ましくは0秒~5分の範囲内で選択される固着時間の間維持することができる。
C.最後に、上記複数の繊維10は、50K/分を超え、好ましくは100K/分を超える冷却速度で、特にそれらの融点の60%未満の温度まで冷却される。
【0076】
さらに、上記3つのステップA、B、及びCを行う前に、1つの繊維10が互いに接触するように繊維10に圧力を加えることができる。上記圧力は、比較的低く、すなわち0.05~1GPaの範囲内であってよく、接続していない金属繊維の間の接触を形成する機能を果たす。ステップA、B、及びCを行うときに圧力を維持する必要はなく、すなわち、ステップA、B、及びCを行う間ではなく行う前にのみ上記圧力を加えることによって繊維を短時間圧縮すれば十分である。ステップA、B、及びCの間に外部圧力を加えないことが好ましい。外部圧力の力を回避することによって、特に溶融温度に近い固着温度で操作される場合に、金属繊維が金属箔に変形する危険性を回避することができる。
【0077】
さらに、上記ステップA、B、及びCを行う前に、繊維10の表面上に存在する場合がある添加剤及び/又は不純物の分解、すなわち蒸発又は燃焼が起こり、それによって繊維10の清浄な表面が得られるように、複数の繊維10を清浄化温度まで加熱することを含む、さらなる清浄化ステップを行うことができる。この繊維10を清浄化するステップは、
図7に関連して以下にさらに説明される。
【0078】
以下のように、従来周知の方法と比較すると、ステップA、B、及びCはより迅速に行われる。3つすべてのステップを行うために最長時間は、45分未満、さらには約15分の範囲内と規定することができる。5分未満、さらには1分未満の時間が、本発明による方法を用いて可能であることは既に示すことができている。これは、従来は数時間を要する焼結に用いられる一般的な時間を十分に下回っている。
【0079】
このような短時間を実現可能にするために、ステップA、さらに任意選択によりステップB、及びCは、誘導炉、赤外炉、高温セラミック発熱体、及び/又は例えばコンベア炉などのゾーン炉(図面には示していない)などの速い加熱速度及び冷却速度が得られるように構成された炉又は別の加熱装置を用いて行われる。
【0080】
特に関心が持たれることは、互いに接続されることが想定される繊維10は、上記繊維10の溶融温度の50~98%の範囲内、特に80~98%の範囲内、特に90~98%の範囲内にある厳密な固着温度まで加熱されることである。この厳密な固着温度は繊維10に使用される材料によって決定される(以下の表1及び2も参照されたい)。正しい固着温度を選択することで、繊維10を互いに接続することができ、形状の変化、すなわち前述の緩和過程による円形化は開始せず、又は溶融は開始しない。
【0081】
上記固着温度及び時間の決定を可能にするために、実際の金属繊維の試料に対して試行錯誤実験及び/又は電子顕微鏡実験を行うことができる。電子顕微鏡実験の場合、繊維はその場SEM(走査型電子顕微鏡)の加熱ステージ内に配置される。このため、高真空中ではほとんど熱伝達が起こらないので、繊維は加熱ステージとの良好な熱的接続が必要となる。したがって、熱安定性グラファイトペーパーを使用することができ、例えば、繊維と加熱ステージとの間の支持体として1枚のシートを使用することができ、中央に孔を開けた別の1枚のシートを、繊維を見るために使用することができる。このような繊維サンドイッチ構造を次に加熱ステージ内に移動させ、押し下げる。その後、溶融温度に近い温度まで加熱ステージが加熱される。次に、繊維が互いに接続し始めるまで、SEMによって繊維断面が観察される。このようにして、固着温度が求められる。第2の実験では、望ましい程度の接続が得られるまで、したがって望ましい接続強度が得られるまで、少なくとも前述のステップA及びCが行われる。このような試行錯誤実験のために、ある量の繊維が高速加熱炉内に入れられる。繊維間の接触点を実現するために、ネットワークは、互いにプレスすることができ、又はスペースホルダーとカバープレートとを有するプレート上に配置することができる。炉内の空気/酸素を除去し、試験雰囲気の設定を行った後、炉は可能な、すなわち決定された固着温度まで加熱され、ある時間の間維持され、この時間が固着時間となりうる。繊維の結果により、例えば繊維が互いに接続されるかどうか、及び/又は繊維の形状が変化するかどうかによるが、パラメーターを調整する必要がある。これに関連して、1)繊維が焼結しない、2)繊維は焼結するが円形化する、又は3)繊維は焼結しないが円形化する、の3つの可能性のある結果を予想できることに留意されたい。第1の結果の場合、固着温度を上昇させ、及び/又は固着時間を増加させるべきである。第2の結果の場合、固着温度を低下させ、及び/又は固着時間を減少させるべきであり、第3の結果の場合、加熱速度を増加させるべきであり、固着温度を低下させ、及び/又は固着時間を減少させるべきである。
【0082】
幾つかの材料の場合、金属繊維10の酸化を防止するために、保護ガス、例えばアルゴン、窒素 Ar-W5(Ar中5体積%のH2)、Ar-W2(Ar中2体積%のH2)、フォーミングガス(N2中5体積%のH2)、又は別の貴ガスが、組立場所12に供給されることも有益である。このような保護ガスの供給が必要かどうかは、繊維10の材料により選択することができる。
【0083】
組み立てられたネットワークの接触点14は、組み立てられたネットワークの用途に応じてネットワーク全体に規則的に分布する場合も不規則に分布する場合もあり、これによって繊維を互いに固着させることができる。また、より多い又は少ない接触点14が形成されるように、少なくともステップA及びCを行う前に、より高い又はより低い圧力を繊維10に加えることによって、ネットワークの用途により接触点14の量を選択することができる。また、接触点14の数を調節するために、繊維密度、すなわち体積当たりの繊維量、及び/又は繊維の細さを利用することができる。
【0084】
上記接触点14によって、組み立てられたネットワーク全体にわたって導電性にすることもできる。したがって、接触点14の数が多いことは、ネットワークの高い導電率が必要な用途に有益となりうる。他方、フィルターの場合、すべての繊維10が互いに依然として維持されるのであれば、ネットワーク全体にわたって形成される接触点14の数はそのように重要とならない場合がある。
【0085】
本発明によるネットワークの組立に使用される繊維10は、1.0mm以上の長さ、及び/又は100μm以下の幅、及び/又は50μm以下の厚さを有する(
図2~6を参照されたい)。このような繊維10は、例えば、文献の国際出願PCT/EP2020/063026号(まだ公開されていない)、国際公開第2016/020493 A1号、及び国際公開第2017/042155A1 号に記載されるいわゆる垂直又は水平溶融紡糸プロセスによって製造することができる。これらの繊維10は、多くの場合、断面を含み、全体的に楕円形、長方形、又は平坦な形状である。さらに、溶融紡糸によって製造される繊維10は、多くの場合、多量のエネルギーを貯蔵する。
【0086】
本発明による方法をより十分に理解するために、
図2~7と関連して以下に説明される幾つかの実験を行った。
【0087】
銅合金(CuSi4(4重量%のSi及び96重量%のCu)及びAlSi1(1重量%のSi及び99重量%のAl))の繊維を、繊維の平坦でリボン状の構造を維持しながら互いに焼結させた。プロセスの系統的な試験を行うため、繊維を電子顕微鏡中で10K/分の加熱速度で加熱し、ビデオを記録した。
図2は、焼結開始(繊維10間の鋭い移行部14が不鮮明であることを見るため、左図)、及び繊維10が円形化し始めてくびれ15及び分断16が形成され、繊維10が分解する時点(右図)などの特別な時点におけるCuSi4のビデオからの1つのフレームを示している。対応する温度は互いに非常に近いものであり、これが、最良の結果を得るために最大限の温度の精度及び制御が必要となる理由である。
【0088】
図3は、
図2のビデオと同じ条件下でAlSi1繊維を用いて撮影したビデオのフレームを示している。
図3は、
図2で説明した同じ特徴的な時点を示しており、すなわち焼結の開始、及び円形化プロセスの開始を示している。繊維が約602℃で、一方では624℃で互いに焼結することを観察できた。さらに602℃と624℃との間で、繊維は、平坦なリボン状の繊維から円形断面を有する繊維に向かって変形した。これは、繊維が624℃において602℃におけるよりも細くなることによって認識することができる。フレームが
図2及び3中に示されるビデオは、高真空条件において遅い加熱条件下(10K/分)で記録したことに留意されたい。これらの条件は、本発明のものとは異なる。このことが、
図2及び3中に示される値が、以下の表に示される値と異なる理由である。にもかかわらず、
図2及び3は、より遅い加熱速度を使用する従来方法における繊維の焼結の難しさを示している。
【0089】
抵抗加熱炉などの炉を用いた従来の熱焼結では、繊維10は10~20K/分の速度で加熱され、すなわち比較的ゆっくりと加熱される。この時間の間、繊維10は、いわゆる緩和過程が起こり、例えば溶融紡糸プロセスによる製造によってこれらの繊維中に貯蔵されたエネルギーは、ゆっくりと放出され、金属繊維間の接続点を形成するためにはもはや利用できない。貯蔵されたエネルギーが遅い加熱中に放出されることは、繊維10の機械的性質に影響を与えるだけでなく、実際の焼結中に要求されるエネルギーも増加させるが、その理由は、繊維10は、もはや製造後のような熱力学的不均衡にはないからである。このため、溶融紡糸から得られる未処理の繊維10、及び比較のため300℃で1時間焼もどしを行った繊維10を、高速加熱炉(ここでは赤外炉)中で1分以内に焼結温度にした。この温度を1分間維持し、次にできる限り急速に冷却した(30秒未満で焼結温度から600℃未満まで)。赤外線ヒーターに加えて、別の可能性のある加熱装置は、例えばセラミックヒーター又は誘導加熱器である。接触点14で繊維10を互いに焼結させるためには、わずか1分以下の非常に短いプロセス時間で十分であるが、そのエネルギー及び時間は、繊維10を熱力学的に好ましい円形に変化させるためには不十分である。目標温度に到達するために長時間を要する(焼結温度から600℃未満まで数時間)従来の加熱速度及び冷却速度を用いる場合にはこれは不可能である。従来の加熱速度及び冷却速度を用いて、繊維10を互いに焼結させることは依然として可能である。しかし、焼結した繊維は、理想的な円形に適合しており、例えばねじれた箇所において生じうるくびれ15又はさらには分断16によって損傷した。繊維が円形になるときの非常に長い拡散経路のため、高温及び/又は長時間のいずれかが、熱力学的に好ましい円形に変形させるために必要である。これは、例えば溶融紡糸による製造で得られる貯蔵エネルギーを有する繊維を用いることによって回避できる。貯蔵エネルギーは、例えばDSC測定によって測定することができ、ここでこれは発熱事象の形態で観察することができる。
【0090】
それぞれAlSi1及びCuSi4でできた繊維10を、それらの理想的な丸形に到達するまである温度で加熱する必要がある時間の長さについてさらに試験を行った。AlSi1の繊維は、30mmの平均長さ、75μmの平均幅、及び15μmの平均厚さを有するリボン状構造を有した。CuSi4の繊維は、20mmの平均長さ、35μmの平均幅、及び7μmの平均厚さを有するリボン状構造を有した。これらの試験の場合、繊維は、以下の表に示すように決定された固着温度まで1分以内に加熱した。上記固着温度をある時間維持した後、CuSi4の場合30秒以内に約500℃まで、約20分で室温まで、AlSi1の場合30秒以内に約330℃まで、15分で室温まで急速に自然冷却した。冷却後、繊維が円形化した断面を有するかどうかについて調べた。それぞれの固着温度で固着時間を増加させて実験を繰り返した。これらの試験の結果を以下の表に示す。
【0091】
【0092】
より高い固着温度が選択されると、外径を変化させることなく繊維10を互いに焼結させるために維持される時間が短くなることは明らかである。さらに、明らかに上記温度は、繊維10ができている材料に依存していることが分かる。さらに、繊維のサイズ、特に厚さ及び幅は、繊維の断面形状が扁平から円形に変化する速度に対してある影響を有する。上記実験によって、それぞれの繊維材料に関する単純な試行錯誤によって当業者がいかに容易に適切な条件を決定できるかが示された。
【0093】
材料及び/又は寸法に関して異なる金属繊維は、互いに固着させるために異なる条件が必要となりうるが、繊維10が互いに焼結する間の時間が最小限になる場合、上記繊維10は、繊維10の長さ、形状、及び/又は直径が変化することなくネットワークに接続できることが、上記実験的研究によって調べられる。
【0094】
図4は、以前は扁平な繊維10の従来の焼結ネットワークを示している。繊維10のくびれ15及び分断16の形成をはっきりと見ることができる。さらに、繊維の断面は、扁平から円形に変化した。焼結ネック、すなわちくびれの形成は
図1と関連して説明される現行の理論に対応している。
【0095】
表1は、熱的に未処理(溶融紡糸から得られる)の場合、及び焼もどしを行った(アルゴン雰囲気下300℃で1時間)場合の、20mmの平均長さ、35μmの平均幅、及び7μmの平均厚さを有するリボン状構造を有するCuSi4繊維10の焼結温度(それぞれの場合で1分の保持時間)を示している。同様に表2は、30mmの平均長さ、75μmの平均幅、及び15μmの平均厚さを有するAlSi1繊維10の場合の同じものを示している。10K/分の加熱速度で保護ガス雰囲気(アルゴン)下で管状炉を用いて、未処理の繊維と焼もどしを行った繊維との間の比較を行った。焼もどしを行ったCuSi4繊維10の場合、繊維10を互いに焼結させるために、少なくとも950℃温度及び少なくとも1時間の保持時間が必要であることが分かった。焼結後、あらかじめ焼もどしを行った繊維10は、ほぼ完全に円形になり、幾つかの場合には、くびれ15及び分断16によって長さが大きく制限される。対照的に、熱的に未処理のCuSi4繊維の焼結は、焼もどしを行った繊維(950℃よりも高温で焼結を開始する)よりもはるかに低い温度(890~910℃の間)で開始し、CuSi4繊維の場合0.5~5分の範囲内、AlSi1繊維の場合0.5~5分の範囲内で完了し、これは固着温度によって左右され、固着温度が低いほど長い固着時間が必要になる。
【0096】
【0097】
【0098】
緩和させた繊維10(保護ガス下300℃で1時間熱処理、形状の変化なし、欠陥の劣化のみ、貯蔵エネルギーの放出)を用いた比較実験では、本明細書に記載の焼結は不可能であるか、又は未処理の繊維10よりも高温でのみ可能であることを示している。緩和させた繊維の場合、焼結開始と繊維形状の変化との間の温度帯は非常に狭い。しかし、貯蔵エネルギーを有する繊維、例えばDSC測定中に発熱信号を示す繊維を使用する場合、円形化なしに繊維を互いに焼結させる温度帯ははるかに広い。周知の焼結プロセスの遅い加熱速度及び冷却速度を用いると、繊維10は、焼結温度に到達できる前に緩和過程が生じ、貯蔵エネルギーが非常に早く放出され、そのためこれは焼結プロセスの推進に利用できない。遅い加熱速度を使用する場合、繊維は焼結温度に到達する前に焼もどしが起こる。その結果、これらは、表1及び2中に報告される焼なましが行われた繊維と同様の挙動を示す。製造プロセス中に繊維10中に多くのエネルギーが貯蔵されるほど、必要な焼結温度が低くなり、時間が短くなりうる。
【0099】
可能性のある最大のエネルギーは、例えば周知の溶融紡糸プロセスによる速い急冷速度によって導入することができる。プロセスの基本的な機構のため、十分なエネルギーが貯蔵されるのであれば、本発明による方法は、ほとんどすべての金属、金属-無機、並びに同等の合金及び材料に置き換えることができる。
【0100】
図5は、依然として元の扁平な形状を維持するように本発明による方法により焼結させたCuSi4繊維10を示している。
図6は、AlSi1繊維10の場合の同じものを示している。
図5及び6中の繊維10は、それらの長さに沿ってほぼ一定の幅を有することがはっきりと分かり、すなわち、繊維10の完全な破壊の原因となりうるくびれ15又はさらには分断16はまったく見られなかった。すなわち、本発明によるネットワーク中の繊維10の幅の変動は、40%以下、好ましくはさらには30%以下である。
【0101】
最後に、
図7は、扁平な断面を有し、繊維10を固着温度まで加熱する前に表面を前述の清浄化ステップで清浄にした焼結AlSi1繊維10のネットワークを示している。
図7中に見ることができるように、繊維10の表面は、
図6中に示されるAlSi1繊維よりも滑らかに見える。したがって、繊維10の表面は、以前に存在した不純物が除去されていると結論づけることができる。このような不純物は、繊維10の製造プロセスのバイプロダクト(biproduct)として生じることが多く、これは回避できない。したがって、良好な焼結結果を得るために、繊維10をそれらの融点の40%~60%の範囲内で選択される温度まで加熱することにより繊維10を清浄化する追加のステップが好ましい選択肢となりうる。
【実施例】
【0102】
繊維10を清浄化する追加のステップの有効性を示すために、清浄化ステップのその利点を実証するための3つの実験を行った。
【0103】
実験1:セラミック発熱体オーブン中での(溶融紡糸)金属繊維の焼結
実験1では、セラミック発熱体を含む自分で組み立てたオーブンを使用した。アルミニウム-ケイ素合金(Al中1重量%のSi)でできており従来の溶融紡糸(前述の説明の通り)で製造された複数の繊維10をオーブンの加熱表面上に配置した。次に、加熱表面によって、繊維10を640℃の温度まで4分以内に加熱し、これは約155K/分の平均加熱速度になる。これに関連して、一般に知られているオーブンはより速い加熱速度で加熱し始め、より高い温度に到達するとすぐに加熱速度が低下する傾向にあることにさらに留意されたい。
【0104】
繊維10を640℃の固着温度より高温まで加熱した後、上記温度をそれぞれ10秒、20秒、30秒、及び60秒維持した。それによって、繊維10が上記固着温度で維持される時間とは無関係に、すべての繊維10は互いに接続し、すなわち焼結した。
【0105】
引き続く冷却ステップは、自然に行われ、すなわち、外部の干渉なしに繊維10を冷却した。約1分後、繊維10の温度は既に500℃未満であり、続いて約5分後に300℃未満になり、これは繊維を640℃から300℃までの冷却で約68K/分の平均冷却速度になる。
【0106】
結果として、上記プロセス中に断面が変化することなく繊維10が互いに焼結したことが分かった。
【0107】
上記実験1を、繊維10の酸化を防止するための保護ガス(すなわちAr)下でさらに行った。
【0108】
実験2:セラミック発熱体オーブン中での金属(抽出ホイール)繊維の焼結
この実験2は実験1と同じ方法で行った。しかし、使用した繊維10は同じ合金、すなわちAlSi1でできていたが、これらはいわゆる抽出ホイール法を用いて製造された。上記抽出ホイール法は、一般に周知の(金属)繊維製造方法である(例えば、Cramer, A., et al., Tailored magnetic fields in the melt extraction of metallic filaments. Metallurgical and Materials Transactions B, 2009. 40(3): p. 337-344;又はPark, M.H., Y.S. Song, and J.H. Won. A Study on the Fabrication of Metal Fiber by Fine Melt Extraction Process. in Advanced Materials Research. 2007. Trans Tech Publ.を参照されたい)。抽出ホイール方を使用するために、それによって製造された繊維10は、溶融紡糸によって製造されたものより粗く、すなわち細くなかった。したがって、複数の繊維10の互いの接触をより良好にできるように、繊維10の上部に追加のカバープレートを載せた。
【0109】
前述のように同じ条件で加熱及び冷却のステップを行った後、これらの焼結繊維10も焼結プロセス後にそれらの断面が変化しないことが分かり、互いに接続された後でさえもそれらの半月形断面(製造方法によって形成される)を依然として有した。
【0110】
実験3:追加の清浄化プロセスを行いセラミック発熱体オーブン中での金属(溶融紡糸)繊維の焼結
この実験3は実験1と同じ方法で行った。しかし、製造中に繊維10の表面上に不純物及び/又は添加剤が残存しうることを示すために、互いに焼結させる前に繊維10を約400℃の温度までさらに加熱した。一例として、薄いパラフィンオイル及びPVA(ポリビニルアルコール)が使用されている。両方の場合で、繊維10が前述の清浄化温度で約5分間維持され、これによって表面上に存在する添加剤が分解し、これは繊維10の組立場所12にガスストリームを用いて除去することができた。
【0111】
分解した、すなわち蒸発/分解/燃焼が起こった添加剤を組立場所12から除去した後、繊維を、400℃から640℃の固着温度まで約2分で加熱し、すなわち約70K/分の平均加熱速度で加熱した。実験1と同様に、上記固着温度を数秒間維持した後、約68K/分の平均冷却速度で再び冷却した。
【0112】
この場合も、繊維が以前と同じ断面を依然として有し、さらに表面上に残留物が残っていないことを示すことができた。これは
図7中に見ることができ、依然として扁平な断面を有し、パラフィンオイル及び又はPVAがそれらの表面上への残存が見られない焼結繊維10がこの図に示されている。
【0113】
したがって、上記3つの実験1~3を比較すると、全体的に、追加の清浄化ステップは、断面を変化させることなく繊維を互いに焼結可能にするためには不用であることが分かる。しかし、追加の清浄化ステップは、結果として得られる清浄な表面は汚染された表面よりも互いに良好に接続できるので、焼結品質の向上に役立てることができる。
【国際調査報告】