(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-29
(54)【発明の名称】温度及び圧力による結晶振動子マイクロバランスへの影響からリアルタイム質量をデコンボリューションするシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 5/02 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
G01N5/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568141
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 US2022027978
(87)【国際公開番号】W WO2022235992
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520435429
【氏名又は名称】インフィコン インコーポレイティド
(71)【出願人】
【識別番号】324004861
【氏名又は名称】ソン チュンファ
(71)【出願人】
【識別番号】324004872
【氏名又は名称】リンザン モハメド
(71)【出願人】
【識別番号】324004883
【氏名又は名称】レイクマン スティーヴ
(71)【出願人】
【識別番号】324004894
【氏名又は名称】バウムガーテル ルーカス
(71)【出願人】
【識別番号】324004908
【氏名又は名称】ラピドット マタン
(71)【出願人】
【識別番号】324004919
【氏名又は名称】オニール ブライアン
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ソン チュンファ
(72)【発明者】
【氏名】リンザン モハメド
(72)【発明者】
【氏名】レイクマン スティーヴ
(72)【発明者】
【氏名】バウムガーテル ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】ラピドット マタン
(72)【発明者】
【氏名】オニール ブライアン
(57)【要約】
【課題】結晶振動子マイクロバランス(CM)センサの共振周波数の変化と、それに伴う温度によるCMセンサの増分質量の決定の変化とを決定するためのシステム及び方法を開示する。
【解決手段】デコンボリューションプロセスにおいて、二重モードの共振及び係数を使用して温度による周波数偏移を決定及び抽出して、温度補償された増分質量(ΔM)を提供する。一実施形態では、質量モード(例えば、cモード基本周波数(f
c
100))及び温度モード(例えば、非調和周波数(f
c
102))並びに関連係数を使用して二重モード分析を行う。温度変化により敏感な他の実施形態では、bモード基本周波数(f
b
100)を温度モード及び関連係数として使用して二重モード分析を行う。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶振動子マイクロバランス(CM)センサに堆積した増分質量を決定する方法であって、
第1時刻の、(i)第1モード周波数の第1共振周波数、及び(ii)第2モード周波数の第1共振周波数を決定するステップと、
第2時刻の、(i)前記第1モード周波数の第2共振周波数、及び(ii)前記第2モード周波数の第2共振周波数を決定するステップと、
(i)前記第1モード周波数の第2共振周波数と前記第1モード周波数の第1共振周波数との間の第1モード周波数変化、及び(ii)前記第2モード周波数の第2共振周波数と前記第2モード周波数の第1共振周波数との間の第2モード周波数変化を決定するステップと、
(i)前記第1モード周波数変化、(ii)前記第2モード周波数変化、及び(iii)前記CMセンサの温度感度及び質量感度に基づく複数の係数に基づいて、前記CMセンサの温度変化を決定するステップと、
(i)前記CMセンサの温度変化、及び(ii)前記CMセンサの前記複数の係数に基づいて、前記CMセンサに堆積した増分質量を決定するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記CMセンサに堆積した増分質量に基づいて、前記CMセンサに堆積した厚さ変化量を決定するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1モード周波数は、cモード基本周波数(f
c
100)である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2モード周波数は、非調和周波数(f
c
102)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2モード周波数は、bモード基本周波数(f
b
100)である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記CMセンサは、SCカット結晶振動子である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記CMセンサは、ATカット結晶振動子である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記cモード基本周波数(f
c
100)に対する前記CMセンサの温度感度及び質量感度に基づく複数の係数は、複数のモード係数及び1つの質量感度係数を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記非調和周波数(f
c
102)に対する前記CMセンサの温度感度及び質量感度に基づく複数の係数は、複数のモード係数及び1つの質量感度係数を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記CMセンサの温度感度及び質量感度に基づく複数の係数に基づいて、係数の代替セットを計算するステップと、
前記係数の代替セットを還元するステップと、を更に含み、
前記CMセンサの温度変化は、(i)前記第1モード周波数変化、(ii)前記第2モード周波数変化、及び(iii)還元された前記係数の代替セットに基づいて決定される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年5月6日に出願された、発明の名称「SYSTEM AND METHOD FOR DETERMINING THE CHANGE IN MASS FROM TOTAL RESONANCE FREQUENCY INFLUENCED BY TEMPERATURE」の米国仮特許出願第63/184,830号の利益及び優先権を主張し、この米国仮特許出願の全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
技術分野
本願は、概して、測定及び監視の分野に関し、より具体的に、結晶振動子マイクロバランス(crystal microbalance、CM)センサ(例えば、水晶(石英)(SiO4)、オルトリン酸ガリウム(GaPO4)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)結晶など)を使用したプロセス監視及び制御のためのシステム及び関連方法に関する。開示された技術は、多くの異なる用途及び産業(例えば、半導体、OLED照明及びディスプレイ、並びに光学コーティング)のための製造に用いられるコーティングプロセスを直接的又は間接的に監視及び/又は制御するために使用され得る。
【背景技術】
【0003】
CMセンサは、例えば、原子層堆積(ALD)技術及び化学蒸着(CVD)技術に統合されている。典型的な構成では、電極を備えたCMセンサは、周波数制御要素として、発振回路のフィードバックループに配置される。CMセンサの等価電気アドミタンスは、直列共振周波数で最大であるため、発振器の出力は、該周波数で維持される傾向がある。CMセンサの直列共振周波数が変化すると、発振器の出力周波数が対応して変化する。CMセンサの表面にかかる質量負荷が増加すると、その共振周波数が低下する。振動しているCMセンサは、チャンバー内の他の基板のコーティングに比例してコーティングされ、その質量負荷による共振周波数の低下は、CMセンサのコーティングの質量を示す。典型的に、更に、CMセンサの共振周波数の偏移は、基板のコーティングの厚さを示す。共振周波数は、塗布されたコーティングの質量(又は厚さ)に非常に敏感な測定値である。経時的な共振周波数の変化率は、コーティング又は堆積速度の動向、すなわち、単位時間あたりの質量(又は厚さ)の変化を示す。共振周波数の変化は、CMセンサに添加された堆積材料の質量に比例する。
【0004】
CMセンサは、温度及び圧力が厳密に維持される用途に用いられる。CMセンサの共振周波数は、CMセンサに堆積した材料の質量に依存するだけでなく、温度及び圧力などの、用途に存在する他の要因にも依存する。したがって、CMセンサによって測定された周波数の変化は、質量の変化だけでなく、温度、圧力及び他の要因によっても影響される。このため、温度及び圧力による誤差の影響を軽減するために、用途に合わせて特定の結晶カットが選択される。これは、結晶カットの公差が非常に高くなければならず、用途によって異なるカットが必要であることを意味する。これを実現するのは、簡単又は普通に思えるかもしれないが、目的の用途に用いられる前に、退屈な検証プロセスが必要である。より重要なことは、特定の結晶カットを使用する場合でも、ユーザにとって、温度及び圧力に対する厳密なプロセス制御を維持するのが大きな負担になることである。
【0005】
半導体の分野では、温度の変化に関して、典型的な用途では、使用されている前駆体を気化/昇華させるために、アンプル加熱が必要である。CMセンサの位置によっては、CMセンサの温度は、前駆体の加熱又は曝露によって影響される(例えば、上昇する)可能性がある。例えば、使用されていない加熱気化前駆体の一部は、CMセンサが配置されたチャンバー又はフォアラインを通過して、CMセンサの温度を上昇させる可能性がある。圧力に関して、ALD及びCVDプロセスでは、異なるレシピステップにより、CMセンサが流体接続された処理チャンバー内の圧力の変化を引き起こす。したがって、共振周波数は圧力の変化によっても影響される。
【0006】
温度変化及び圧力変化は、CMセンサの共振周波数の対応する変化を引き起こすことができるため、質量負荷のみによって引き起こされる共振周波数の変化に基づいて、基板の質量負荷とCMセンサの質量負荷とを正確に相関させるために、CMセンサのこれらの温度変化及び圧力変化(例えば、それぞれの周波数偏移)を考慮し、分離する必要がある。
【0007】
現在、温度によるCMセンサへの影響を制御するための技術がいくつか存在している。例えば、一部の用途(例えば、半導体の分野)では、CMセンサの温度が制御されないため、累積的な周波数変化が生じる。OLEDディスプレイ及び光学コーティングの分野では、CMセンサを一定の温度に維持して温度ゆらぎを最小限に抑えるために、水冷が使用されている。周波数対温度特性の変換点が制御温度に一致するように結晶を設計することにより、温度による、リアルタイム監視された厚さ変化量への影響を排除することができる。しかしながら、半導体用途では、堆積プロセス及びエッチングプロセスには、複数のステップからなるレシピがあり、一部のステップによりチャンバーの温度及びフォアラインの温度が変変するため、CMセンサを一定の温度に維持することは困難である。CMセンサは、熱質量が非常に低いため、周囲環境との熱交換時に温度変化が発生しやすい。更に、レシピの各ステップが数秒のオーダーで変化するため、統合されたフィードバック制御された加熱/冷却要素によってCMセンサの温度を維持することは不可能である。そこで、1つ以上の熱電対(TC)を使用してCMセンサの温度を監視し、温度変化による周波数への影響を除去する解決策がある。別の用途では、結晶の温度係数が一致する二重結晶技術が使用される。しかしながら、2つの結晶間に加熱遅れが無いというたいてい誤った仮定に基づいて、CMセンサの物理的な位置の違いにより、重大な測定誤差が生じる可能性がある。熱電対解決策及び二重結晶解決策では、質量負荷周波数変化及び温度周波数変化を同時に取得することは困難である。また、熱電対位置の温度がCMセンサの温度と全く同じではないため、誤差が生じる。更に、温度変化は、非常に急速であることが多く、そのような急速に変化する環境下では、熱電対は、CMセンサの実際の瞬間温度を反映することができない。TC材料の放射率とCM材料の放射率が異なるため、放射結合による熱伝達は、CMとTCに対して異なる影響を与える。
【0008】
発明の名称「Method for Measuring Mass Change Using a Quartz Crystal Microbalance」の米国特許第5,869,763号は、CMセンサの温度変化を自動的に補償する解決策を提供する。この特許には、質量変化及び温度変化を独立して測定するために、同時に2つの異なるモードで励起されるCMセンサを形成することが開示される。この特許には、SCカットなどの2回回転結晶振動子カットが使用される。SCカット結晶振動子は、同時にbモード音波とcモード音波で励起され、bモードは、温度に非常に敏感であり、cモードは、温度にあまり敏感ではない。或いは、SCカット結晶振動子は、基本周波数(fc
100)cモードとその3次オーバートーン(fc
300)cモードで励起され、この2つのモードから温度に敏感なビート周波数を導出することができる。この特許には、bモードの周波数と2つのcモードから導出されたビート周波数とは、両方とも単調であり、温度のほぼ線形関数である。しかしながら、提供されたこれらの解決策には、いくつかの問題がある。
【0009】
例えば、bモードを使用する解決策では、100℃~116℃の範囲でこのモードのモード変換が存在するように思われ、その結果、bモードは、この範囲で単調又は温度の線形関数ではない。温度に敏感なビート周波数を導出する解決策では、基本周波数(fc
100)cモードでの振幅と3次オーバートーン(fc
300)cモードでの振幅とが測定される。3次オーバートーン(fc
300)cモードでの振幅は、基本周波数(fc
100)cモードでの振幅の1/9である。質量の蓄積により、3次オーバートーン(fc
300)の信号は、基本周波数(fc
100)の信号よりも迅速に劣化するため、共振周波数がどの回路でも検出できない可能性がある。3次オーバートーン(fc
300)が検出できない場合、ビート周波数を導出することができない。この特許は、3次オーバートーン周波数から基本周波数の3倍を引くことによって、又は基本周波数から3次オーバートーン周波数の3分の1を引くことによって、このビート周波数を導出できることを教示している。基本周波数の3倍の値は、3次オーバートーン周波数の値に非常に近い(したがって、3次オーバートーン周波数の3分の1の値は、基本周波数の値に非常に近い)ため、ビート周波数は、非常に小さい可能性がある。ビート周波数の変化を検出するには、ビート信号の少なくとも10周期を監視する必要がある。したがって、ビート周波数法では、質量変化の更新時間と温度変化の更新時間とは、非常に長くなる。ビート周波数法は、ALDなどの、高速な質量更新を必要とする用途の場合、同じペースで温度補償を行うことができないため、妥協的である。この特許のもう1つの欠点は、温度による周波数の線形単調変化を仮定することであり、この仮定によると、特に、温度信号が質量信号よりも支配的なことが多く、プロセスを監視するのに重要なのが質量信号である半導体の分野では、不正確な補償厚さ変化量が生成される可能性があることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,869,763号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
この概要は、以下の発明を実施するための形態において更に説明される概念の選択を簡略化された形態で紹介するために提供される。この概要は、請求する主題の重要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図していない。また、この概要は、請求する主題の範囲を限定するために使用されることを意図していない。
【0012】
結晶振動子マイクロバランス(CM)センサの共振周波数の変化と、それに伴う温度によるCMセンサの決定の増分質量の変化とを決定するためのシステム及び方法を開示する。デコンボリューションプロセスにおいて、二重モードの共振及び係数を使用して温度による周波数偏移を決定及び抽出して、温度補償された増分質量(Δm)を提供する。一実施形態では、質量モード(例えば、cモード基本周波数(fc
100))及び温度モード(例えば、非調和周波数(fc
102))、並びに関連係数を使用して二重モード分析を行う。温度変化により敏感な他の実施形態では、bモード基本周波数(fb
100)を温度モード及び関連係数として使用して二重モード分析を行う。
【0013】
CMセンサが質量負荷を受ける製造プロセスにおいて実装する場合、cモード基本周波数(fc
100)、非調和周波数(fc
102)及び/又はbモード基本周波数(fb
100)の二重モード分析により、質量負荷、温度変化、圧力変化及び各周波数の固有応力変化による周波数偏移に関する情報を提供する。しかしながら、各共振周波数は、異なる温度感度及び応答と、異なる質量感度及び応答とを有する。それぞれの質量感度及び温度感度を使用することにより、質量変化による周波数偏移を、温度変化による周波数偏移から分離して、質量負荷をより正確に決定することができる。
【0014】
本発明は、CMセンサの温度特性の高次項を含むことにより、上で論じたこれらの課題のいくつかを克服する。更に、本発明は、全てのタイプの結晶カットをカバーするために、温度補償を一般化する。最後に、本出願の解決策は、SCカット結晶振動子(crystal)の応力補償機能により、例示的なSCカット結晶振動子と共に使用されるために提供される。この解決策は、ATカット結晶振動子と共に使用されることにも適し、ATカット結晶振動子は、コストと製造可能性の利点により、OLEDディスプレイ、光学コーティング又は他の分野で広く使用されている。この解決策は、ソース熱衝撃現象によるディスプレイパネル及び光学フィルターの厚さ誤差を克服するためにも使用されてもよい。
【0015】
以上の概要と以下の詳細な説明とは、いずれも例示であり、単なる説明に過ぎない。したがって、以上の概要と以下の詳細な説明とは、限定的なものであると見なされるべきではない。更に、本明細書に記載されたものに加えて、特徴又は変形を提供することができる。例えば、実施形態は、詳細な説明で説明された様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせに向けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
一部が添付図面に示される実施形態を参照することによって、上で簡単に要約した本発明のより具体的な説明を行うことができる。しかしながら、添付図面は、本発明の典型的な実施形態のみを示すため、本発明の範囲を限定すると見なされるべきではない。その理由は、本発明が他の同等に有効な実施形態を認めることができるためである。更に、図面は、本開示の特定の実施形態を説明するテキスト又はキャプションを含む場合がある。このテキストは、本開示で詳述された特定の実施形態の例示的かつ非限定的な説明目的で含まれる。したがって、本発明の本質及び目的を更に理解するために、以下の添付図面と併用される、以下の詳細な説明を参照することができる。
【0017】
【
図1】典型的な真空蒸着用途における薄膜堆積速度を測定するためのCMセンサを示す。
【
図2】SCカットCMの、質量負荷の無いある範囲の温度にわたるcモード基本周波数(f
c
100)の温度特性を示す。
【
図3】SCカットCMの、一定温度下でのある範囲の膜質量負荷にわたるcモード基本周波数(f
c
102)の特性を示す。
【
図4】SCカットCMの、質量負荷の無いある範囲の温度にわたるcモード非調和周波数(f
c
102)の温度特性を示す。
【
図5】SCカットCMの、一定温度下でのある範囲の膜質量負荷にわたるcモード非調和周波数(f
c
102)の特性を示す。
【
図6】モニタに接続されたCMにおける単一モード共振又は二重モード共振を監視するための一実施形態のワークフローを示す。
【
図7】モニタに接続されたCMにおける単一モード共振又は二重モード共振を監視するための別の実施形態のワークフローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示が幅広い実用性及び応用性を有することは、当業者に容易に理解されるであろう。理解されるように、任意の実施形態は、本開示の上記に開示した態様の1つのみ又は複数を組み込むことができ、上記に開示した特徴の1つのみ又は複数を更に組み込むことができる。更に、「好ましい」と議論され、特定された実施形態は、本開示の実施形態を実施するために想定される最良の形態の一部であると見なされる。完全かつ実施可能にする開示のために提供される際の追加の例示のために、他の実施形態についても説明することができる。更に、適応、変形、修正、及び同等の構成などの多くの実施形態は、本明細書に記載の実施形態によって暗黙的に開示され、本開示の範囲内に含まれる。
【0019】
したがって、実施形態は、1つ又は複数の実施形態に関連して本明細書で詳細に説明されるが、この開示は、本開示の代表的かつ例示的なものであり、単に完全かつ実施可能にする開示のために提供されることを目的として作成されたものであることを理解されたい。本明細書における1つ以上の実施形態の詳細な開示は、本出願から発行される特許のいずれの請求項において与えられる特許保護の範囲も限定することを意図するものではなく、また、そう解釈されるべきでもなく、その範囲は特許請求の範囲及びその均等物によって規定される。請求項自体に明示的に現れていない本明細書に現れる限定をいずれかの請求項に読み込むことによって、特許保護の範囲を規定することは、意図されていない。
【0020】
したがって、例えば、本明細書に記載される様々なプロセス又は方法のステップの任意のシーケンス及び/又は時間的順序は、例示的なものであり、限定的なものではない。したがって、様々なプロセス又は方法のステップは、シーケンス又は時間的順序で示され説明されるが、いずれのそのようなプロセス又は方法のステップも、別段の指示が無い限り、特定のシーケンス又は順序で実行されることに限定されないことを理解されたい。実際に、そのようなプロセス又は方法のステップは、一般に、様々な異なるシーケンス及び順序で実行されてもよく、本発明の範囲内に入るものである。したがって、特許保護の範囲は、本明細書に記載された説明ではなく、発行された特許請求の範囲によって定義されることが意図される。
【0021】
更に、本明細書で使用される各用語は、当業者が本明細書でのそのような用語の文脈上の使用に基づいてその用語の意味を理解するものを指すものであることに留意することが重要である。本明細書で使用される用語の文脈上の使用に基づいて当業者が理解するようなそのような用語の意味が、そのような用語の特定の辞書定義と何らかの形で異なる場合には、当業者によって理解される用語の意味の方が優先されることが意図される。
【0022】
更に、本明細書で使用される「a」及び「an」はそれぞれ、一般に「少なくとも1つ」を表すが、文脈上特段の矛盾がない限り、複数を排除しないことに留意することが重要である。本明細書で事項の一覧に加えるために使用される場合、「又は」は、「事項のうちの少なくとも1つ」を表すが、一覧の複数の事項を排除するものではない。最後に、本明細書で事項の一覧に加えるために使用される場合、「及び」は、「一覧の全ての項目」を表す。
【0023】
以下の詳細な説明は、添付図面を参照する。可能な限り、同じ又は類似の要素を指すために、図面及び以下の説明において同じ参照番号を使用する。本開示の多くの実施形態を説明するが、修正、適応、及び他の実装が可能である。例えば、図面に示された要素に対して置換、追加、又は修正を行うことができ、本明細書に記載された方法は、開示された方法にステップを置換、順序変更、又は追加することによって修正することができる。したがって、以下の詳細な説明は、本開示を限定するものではない。むしろ、本開示の適切な範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定される。本開示は、ヘッダーを含む。これらのヘッダーは、参考として使用されており、ヘッダーの下に開示された主題を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0024】
図1は、典型的な真空蒸着用途における、CMセンサ104(例えば、QCMセンサ)が処理チャンバー102内の薄膜堆積速度を測定するために使用される測定システム100を示す。
図1の例では、ソース106は、チャンバー102内で材料107を堆積させるために使用される。CMセンサ104は、フィードスルー108を介して重量堆積速度モニタ110に信号を送信する。フィードバック制御ループは、ソース電源112を変調することによって堆積速度を制御するために使用されてもよく、堆積速度情報は、手動で又はフィードバック制御ループで堆積速度を制御するために電圧信号を生成するために任意に使用されてもよい。
【0025】
一実施形態では、二重モード分析は、cモード基本周波数(fc
100)及びbモード基本周波数(fb
100)によって提供される。例えば、CMセンサにかかる質量負荷が非常に小さい(例えば、ALDプロセス)SCカット結晶振動子と、モード変換の無い温度(例えば、100℃未満)とを使用し、非調和周波数(fc
102)で提供されるものよりも更に高い温度感度を必要とする用途の場合、bモード基本周波数(fb
100)を使用することができる。温度に非常に敏感であることに加えて、bモード基本周波数(fb
100)は、非調和周波数(fc
102)と同様に、温度のほぼ線形関数でもある。
【0026】
更に別の実施形態では、システムは、条件を評価し、どの二重モード技術を使用するかを決定する(すなわち、cモード基本周波数(fc
100)及び非調和周波数(fc
102)、又はcモード基本周波数(fc
100)及びbモード基本周波数(fb
100)であり、必要に応じてこれらの技術を切り替える)ことができる。より具体的には、bモードの温度感度が高いという利点は、モードクロスオーバーが発生する温度の両側で使用することができ、非調和モード(fc
102)を監視することでモードクロスオーバーの領域をカバーすることができる。このシステムでは、複数のモードを同時に監視することができるため、適用温度がCMセンサのモード変換点にまたがる場合、前述のことを実現することができる。
【0027】
CMセンサが質量負荷を受ける製造プロセスにおいて実装する場合、cモード基本周波数(fc
100)、非調和周波数(fc
102)及び/又はbモード基本周波数(fb
100)の二重モード分析により、質量負荷、温度変化、圧力変化及び各周波数の固有応力変化による周波数偏移に関する情報が提供される。しかしながら、各共振周波数は、異なる温度感度及び応答と、異なる質量感度及び応答とを有する。それぞれの質量感度及び温度感度を使用することにより、質量変化による周波数偏移を、温度変化による周波数偏移から分離して、質量負荷をより正確に決定することができる。
【0028】
二重モード分析がCモード基本周波数(fc
100)及び非調和周波数(fc
102)によって提供される一実施形態では、以下の例示的な等式は、温度変化(ΔT)及び温度補償された質量負荷(Δm)を決定するために使用され得る。
【0029】
CMの所定の共振モードの場合、質量変化及び温度変化の両方による周波数の変化は、以下のように、測定積分時間にわたる増分質量変化の積分と温度変化の積分との和によって導出することができる。
f=f(m,T)
【数1】
【0030】
以下に説明されるモード係数と質量感度係数とを使用して、cモード基本周波数(f
c
100)での温度支配性の低いモードの周波数偏移Δf
M、及び非調和周波数(f
c
102)での温度支配性の高いモードの周波数偏移Δf
T(以下、それぞれ質量モード及び温度モードと呼ばれる)を下式のように書くことができる。
【数2】
【0031】
下付き文字Mは質量モードを表し、下付き文字Tは温度モードを表す。したがって、fMは、fc
100を表し、fTは、fc
102、fb
100、(3fc
100-fc
300)、(fc
100-fc
300/3)のうちのいずれかを表す。温度モードの選択は、結晶カットのタイプに依存する。例えば、ATカットにはbモードが無い。モード係数及び質量感度係数は、λで表される。
【0032】
次に、ΔTの一般解は、次の等式で求められる。
【数3】
【0033】
上記等式から分かるように、質量モードの周波数偏移(ΔfM)の値と温度モードの周波数偏移(ΔfT)の値とが決定され、かつ以下に説明される、質量モードのモード係数及び質量感度係数(λM0~3)と、温度モードのモード係数及び質量感度係数(λT0~3)とがわかると、ΔTの値を決定することができる。
【0034】
質量モード及び温度モードの両方のモード係数の変化は、CMにかかる質量負荷が適度である場合に無視できることが検証された。例えば、9kAのアルミニウム(0.1ミリグラム)の質量負荷の場合、SCカット結晶振動子のcモード(fc
100=fM)とその非調和周波数(fc
102=fT)の温度モードの係数に変化が見られなかった。
【0035】
質量モードの周波数(f
M)の変化及び温度モードの周波数(f
T)の変化を追跡することにより、上記等式からΔTを決定することができる。監視システムは、この2つのモードを交互に追跡してΔTを評価し、ΔTによって、温度補償された増分質量(Δm)を評価することにより、温度補償されたプロセスをリアルタイムに監視する。真の質量変化(Δm)は、次の等式で求められる。
【数4】
【0036】
高感度の場合、温度モードの非調和周波数(fc
102)をbモード基本周波数(fb
100)に置き換えることができる。
【0037】
図2は、SCカットCMセンサの、質量負荷の無い(Δm=0)、ある範囲の温度にわたる、質量モードと呼ばれるcモード基本周波数(f
c
100)の共振周波数のプロット200を示す。温度は、室温(28.2℃)を基準としてΔTとしてプロットされ、周波数は、室温基本共振周波数(5984848Hz)を基準としてΔfとしてプロットされる。
図2に示すように、cモード基本周波数(f
c
100)の共振周波数は、ある温度の範囲にわたって比較的安定する(すなわち、温度変化にあまり敏感ではない)が、温度の線形関数ではなく、約93℃の変曲点の両側で谷(下位転換点)と山(上位転換点)が存在する。
【0038】
図3は、
図2と同じSCカットCMセンサの、ある範囲の質量負荷にわたる、質量モードと呼ばれるcモード基本周波数(f
c
100)の共振周波数のプロット300を示す。真の質量負荷データは、室温(ΔT=0)で重量測定法で測定された。質量負荷は、負荷の無いCMの室温質量を基準としてΔMとしてプロットされ、周波数は、負荷の無い室温基本周波数を基準としてΔfとしてプロットされる。質量モードの質量感度は、データを線形フィッティングすることによって導出された。
【0039】
質量モードの以下の例示的なモード係数及び質量感度係数(λ
M0~3)は、
図2及び
図3で収集されたデータをフィッティング分析することによって導出された。最大3次のモード係数を使用することにより、cモード基本周波数(f
c
100)の特性を線形として扱う制限がなくなり、質量負荷の正確なデコンボリューションが可能になる。
【数5】
【0040】
図4は、
図2及び
図3と同じSCカットCMセンサの、質量負荷の無い(ΔM=0)、ある範囲の温度にわたる、温度モードと呼ばれるcモード非調和周波数(f
c
102)の特性のプロット400を示す。温度は、室温(28.2℃)を基準としてΔTとしてプロットされ、周波数は、室温非調和共振周波数(6186685Hz)を基準としてΔfとしてプロットされる。
図4に示すように、cモード非調和モード(f
c
102)の共振周波数は、基本モード(f
c
100)の場合に比べて、温度変化により敏感である。
【0041】
図5は、
図2、
図3及び
図4と同じSCカットCMセンサの、ある範囲の質量負荷にわたる、温度モードと呼ばれるcモード非調和周波数(f
c
102)の共振周波数のプロット500を示す。真の質量負荷データは、室温(ΔT=0)で重量測定法で測定された。質量負荷は、負荷の無いCMの室温質量を基準としてΔMとしてプロットされ、周波数は、負荷の無い室温非調和周波数を基準としてΔfとしてプロットされる。温度モードの質量感度は、データを線形フィッティングすることによって導出された。
【0042】
温度モードの以下のモード係数及び質量感度係数(λ
T0~3)は、フィッティング分析によって導出された。
【数6】
【0043】
図2、
図3、
図4及び
図5は、SCカットCMセンサの性能に基づくものであるが、cモード基本周波数(f
c
100)(すなわち、温度にあまり敏感ではない)の温度感度と非調和周波数(f
c
102)(すなわち、温度により敏感である)の温度感度に関する同様の相対性能がATカットCMセンサによって提供されることが理解される。したがって、cモード基本周波数(f
c
100)及び非調和周波数(f
c
102)を使用した二重モード分析は、ATカット結晶振動子に使用することができ、ATカット結晶振動子は、SCカット結晶振動子に比べて、コストと製造可能性の利点により、OLEDディスプレイ製造、光学コーティング及び他の分野で典型的に使用される。一実施形態では、CMセンサは、
図2に示す結晶振動子である。別の実施形態では、CMセンサは、オルトリン酸ガリウム(GaPO
4)結晶又はランガサイト(La
3Ga
5SiO
14)結晶であり、これらは高温用途での二重モード分析の使用を可能にする。
【0044】
cモード基本周波数(fc
100)を質量モードとして、非調和周波数(fc
102)及び/又はbモード基本周波数(fb
100)を温度モードとして使用した二重モード分析を提供する際、単結晶が、質量負荷による周波数偏移を温度変化による周波数偏移から分離するために使用される。これにより、結晶又は熱電対を個別に配置する必要がある以前の温度補償方式に関連する課題が解決される。
【0045】
図6は、多くの異なる用途及び産業(例えば、半導体、OLED照明及びディスプレイ、及び光学コーティング)のための製造に用いられるコーティングプロセスにおいて厚さ変化量(thickness rate)を決定するための例示的な方法のワークフロー600を示す。一態様では、二重モード温度補償方法650が使用される。プロセスのワークフロー600の開始ステップ602後、ステップ604で、塗布(付与、application)又は製造プロセスで使用されるCMのタイプを、ユーザが入力し、及び/又はシステムが受信する。ステップ606で、監視システムのプロセッサ(例えば、マイクロコントローラ)は、特定されたCMをサポートするかどうかを判断する。サポートされるタイプのCMは、不揮発性メモリに記憶された2つのモード(前述のように、質量モード、例えば、cモード基本周波数(f
c
100)、及び温度モード、例えば、非調和周波数(f
c
102))のモード係数及び質量感度係数を有することができる。使用されるCMのタイプに関するユーザ入力に基づいて、関連係数(例えば、モード係数及び質量感度係数)を、監視システムのプロセッサによってリアルタイムで監視されるΔf
M及びΔf
Tとともに使用して、塗布中の温度補償された堆積速度を計算し報告する。
【0046】
ステップ606でシステムが特定されたCMをサポートすると判断した(「Yes」)場合、ステップ610で、システムのプロセッサは、周波数掃引を実行して各モードの初期共振周波数(例えば、fM(t=0)及びfT(t=0))を決定することにより、二重モード(すなわち、質量モード及び温度モード)を初期化する。ステップ610で、二重モードを初期化すると、ステップ612で、監視システムは、次の所定の時刻の質量モードの共振周波数(fM)及び温度モードの共振周波数(fT)(例えば、fM(t=100ms)及びfT(t=100ms))を測定する。ステップ612で、質量モードの周波数変化(ΔfM)と温度モードの周波数変化(ΔfT)とを決定し、そして、この2つのモード(質量モード、例えば、cモード基本周波数(fc
100)、及び温度モード、例えば、非調和周波数(fc
102))のモード係数及び質量感度係数がわかると、ステップ614で、以上の等式からΔTを決定することができる。監視システムは、この2つのモードを交互に追跡してΔTを評価する。ΔTがわかり、かつこの2つのモードのモード係数及び質量感度係数がわかると、同じくステップ614で、温度補償された質量(ΔM)を決定することができる。
【0047】
ステップ614で温度補償された増分質量(ΔM)がわかると、ステップ616で、従来の技術を使用して、膜パラメータを使用してΔMを特定の膜の厚さ変化量に変換する。ステップ618で、監視システムは、二重モード温度補償方法650を継続するかどうかを判断する。方法650を継続しない場合、ステップ624で停止する。この方法を継続する場合、次の時間増分で(例えば、100msごとに)ステップ612、614、616及び618を繰り返す。
【0048】
図6はまた、単一モード(例えば、質量モード)の厚さ変化量の計算ワークフローを示す。例えば、ステップ606でシステムが特定されたCMをサポートしていないと判断した(「No」)場合、ステップ608で、システムは、周波数掃引を実行して質量モードの初期共振周波数(f
M(t=0))を特定することにより、単一モード(すなわち、質量モード)を初期化する。ステップ610で質量モードを初期化すると、ステップ620で、監視システムは、次の所定の時刻の質量モードの共振周波数(f
M)(例えば、f
M(t=100ms))を測定する。ステップ626で、システムは、質量モードの周波数偏移(Δf
M)と補償されていない質量変化(ΔM)とを決定する。補償されていない増分質量(ΔM)がわかると、ステップ628で、従来の技術を使用して、膜パラメータを使用してΔMを特定の膜の厚さ変化量に変換する。ステップ622で、監視システムは、単一モード温度補償方法を継続するかどうかを判断する。この方法を継続しない場合、ステップ624で停止する。この方法を継続する場合、ステップ620、626、628及び622を繰り返す。設置されたCMセンサに対して第2モード(温度モード)が利用不可能である場合、又は監視中に温度モードが不安定になったか又は消失した場合、厚さの計算は、デフォルトで単一モードになり、第2モード(温度モード)が利用可能な時間に得られる任意の知識を使用することができる。これは、ウェハレシピが絶えず循環される半導体用途の場合に当てはまる。
【0049】
図7は、
図6に示す二重モード温度補償方法650の上位のワークフローを示す。
図6と同様に、プロセスのワークフロー700の開始ステップ702の後、ステップ704で、塗布又は製造プロセスで使用されるCMのタイプを、ユーザが入力し、及び/又はシステムが受信する。ステップ706で、監視システムのプロセッサは、特定されたCMをサポートするかどうかを判断する。ステップ706でシステムが特定されたCMをサポートしていないと判断した(「No」)場合、ステップ808で、システムは、デフォルトで単一モード(すなわち、質量モード)になる。ステップ706でシステムが特定されたCMをサポートすると判断した(「Yes」)場合、ステップ710で、システムのプロセッサは、周波数掃引を実行して各モードの初期共振周波数(例えば、f
M(t=0)及びf
T(t=0))を特定することにより、二重モード(すなわち、質量モード及び温度モード)を初期化する。ステップ710で、二重モードを初期化すると、ステップ711で、監視システムは、次の所定の時刻の質量モードの共振周波数(f
M)及び温度モードの共振周波数(f
T)(例えば、f
M(t=100ms)及びf
T(t=100ms))を測定する。これにより、ステップ711で、質量モードの周波数変化(Δf
M)と温度モードの周波数変化(Δf
T)とを決定することができる。ステップ712で、監視システムは、例えば、機器のフラッシュメモリ内のルックアップテーブル(LUT)から、この2つのモード(質量モード、例えば、cモード基本周波数(f
c
100)、及び温度モード、例えば、非調和周波数(f
c
102))のモード係数及び質量感度係数を取得(fetch)又は受信する。
【0050】
短いサンプル期間(例えば、100ms)内にCMの温度の値を求めることは、重要であり、その理由は、本発明の用途の1つは、半導体製造の用途であり、この場合にCMセンサの温度は、キャリア/前駆体の流れ、プラズマのON/OFFイベントなどにより急速に変化する可能性があるためである。センサの監視回路に使用される典型的なプロセッサ(例えば、マイクロコントローラ又はFPGA)は、3次方程式の根を解いて正しい実根を導出して、CMセンサのリアルタイム温度を導出するのに長い時間がかかる場合がある。本明細書に記載の方法により、立方根をより速く解くことが容易になる。更新ループから初期化段階までの時間オーバーヘッドを除去して、変換された係数のセットを計算し、次に、このセットをレジスタR0~R9に記憶する。これらの係数のうち、係数R5だけをリアルタイムのΔfM及びΔfTに基づいて更新する必要がある。これにより、温度補償された厚さをより迅速に求めて更新することができる。
【0051】
半導体用途では、CMにかかる質量負荷を10Hzで監視する必要があり、更に高い速度、例えば、100Hz以上で監視する必要がある。監視システムの典型的なマイクロコントローラは、3次多項式を解いて3次方程式を導出するのに長い時間がかかる。本発明の方法は、3次方程式に対するカルダーノの解析解の改良版を使用する。以下の操作を、示されたシーケンスで実行して、測定期間にわたる温度変化を導出することができる。ステップ712で2つのモードのモード係数及び質量感度係数を取得すると、ステップ714で、2つのモードのモード係数及び質量感度係数に基づいて、係数R0~R9を計算し、還元する(reduced)。ステップ716で、還元された係数R0~R4及びR6~R9を、レジスタにロードして、ステップ718でΔT及びΔMを決定する際に使用する。しかしながら、ステップ730で、以下の等式に示すように、測定期間にわたる質量モードの周波数変化(Δf
M)及び温度モードの周波数変化(Δf
T)に基づいて、還元された係数R5を更新する。以下の等式に示すように、還元された係数R5は、ステップ718でΔT及びΔMを決定する際にも使用される。これにより、新しい温度変化の値を求める時間を短縮して、厚さ変化量から得られる温度補償された質量を解く時間を短縮する。
λ=二重モードの係数(結晶のタイプ)を取得(FetchDualModeCoefficients(CrystalType))
R=還元された係数をRAM(λ)にロード(LoadReducedCoefficientToRAM(λ))
【数7】
【0052】
ステップ718で温度補償された増分質量(ΔM)がわかると、ステップ720で、従来の技術を使用して、膜パラメータを使用してΔMを特定の膜の厚さ変化量に変換する。ステップ722で、監視システムは、二重モード温度補償方法を継続するかどうかを判断する。この方法を継続しない場合、ステップ724で停止する。この方法を継続する場合、ステップ711で、監視システムは、次の所定の時刻の質量モードの共振周波数(fM)及び温度モードの共振周波数(fT)(例えば、fM(t=200ms)及びfT(t=200ms))を測定する。これにより、ステップ726で質量モードの周波数変化(ΔfM)と温度モードの周波数変化(ΔfT)とを決定することができる。
【0053】
ステップ728で監視システムが追跡中に温度モードが消失したと判断した場合、チャンバー停止時間が利用可能になってCMセンサを交換するまで、以下のいずれかを使用することができる。ステップ710で、システムは、周波数掃引を実行して、CMセンサに対して利用可能な他の温度モードを見つけることができる(例えば、温度モードfc
102が消失した場合、システムは、周波数掃引を実行して、CMセンサの温度モードfb
100を見つけることができる)。いずれの温度モードも見つからない場合、ステップ709で、監視システムは、デフォルトで単一モード測定になり、両方のモードが利用可能であった時間のデータからの学習を、温度補償された質量を予測するために使用することができる。すべてのウェーハに対して同じレシピが呼び出される半導体用途では、この方法は、チャンバーを停止させてCMセンサを交換するまで使用され得る。
【0054】
一実施形態では、二重モード共振は、同時ではなく、交互にモードロックされ、励起される。これにより、モードホッピングを防止し、補償された質量の誤った計算を更に防止する。これにより、質量及び温度の変換の信頼性が高くなる。
【0055】
温度モードが質量モードよりも温度により敏感である2つのモードを厳密に選択することにより、任意の所定の時刻の温度の単一の実数解を求めることができる。
【0056】
一実施形態では、温度変化及びそのCMセンサの周波数応答に対する影響を補償することに加えて、システムは、圧力変化及びその影響も補償する。例えば、CMセンサにかかる質量負荷が非常に小さい用途では、圧力補償技術とともに圧力計を使用することで、SCカット結晶振動子にかかる圧力による周波数変化を考慮に入れることができる。この場合、圧力により敏感なモードを追加して、3つのモードの補償を実装する。
【0057】
本発明は、特定の例示的な実施形態を参照して特に示され説明されてきたが、当業者であれば、本明細書及び図面によってサポートされる本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、細部の様々な変更が可能であることを理解するであろう。更に、例示的な実施形態が特定の数の要素を参照して説明される場合、その例示的な実施形態は、その特定の数よりも少ない又は多い要素を利用して実施できることが理解されるであろう。
【国際調査報告】