IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーメンス ガメサ リニューアブル エナジー エー/エスの特許一覧

特表2024-521255風力タービンに作用する地震荷重の低減
<>
  • 特表-風力タービンに作用する地震荷重の低減 図1
  • 特表-風力タービンに作用する地震荷重の低減 図2
  • 特表-風力タービンに作用する地震荷重の低減 図3
  • 特表-風力タービンに作用する地震荷重の低減 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-30
(54)【発明の名称】風力タービンに作用する地震荷重の低減
(51)【国際特許分類】
   F03D 7/04 20060101AFI20240523BHJP
   F03D 80/00 20160101ALI20240523BHJP
【FI】
F03D7/04 H
F03D80/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023571597
(86)(22)【出願日】2022-05-03
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 EP2022061809
(87)【国際公開番号】W WO2022243023
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】21174331.5
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519081710
【氏名又は名称】シーメンス ガメサ リニューアブル エナジー エー/エス
【氏名又は名称原語表記】Siemens Gamesa Renewable Energy A/S
【住所又は居所原語表記】Borupvej 16, 7330 Brande, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ゲルハルデス ヴァルヤン アルベルツ
(72)【発明者】
【氏名】サキン タイヴァント ナヴァルカ
(72)【発明者】
【氏名】マテオ ラヴァシオ
(72)【発明者】
【氏名】コルネリア デ ヴィンテル
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB41
3H178BB42
3H178CC02
3H178DD12Z
3H178DD34X
3H178DD52X
3H178DD54X
3H178EE04
3H178EE13
3H178EE21
3H178EE34
3H178EE35
(57)【要約】
風力タービン(100)であって、i)タワー(120)と、ii)タワー(120)の頂部部分に配置されていて、少なくとも1つのブレード(114)を備える風力ロータ(110)であって、少なくとも1つのブレード(114)は、第1のブレードピッチ位置に配置されている、風力ロータ(110)と、iii)少なくとも1つのブレード(114)を第1のブレードピッチ位置から、第1のブレードピッチ位置とは異なる第2のブレードピッチ位置まで作動させ、それによって、風力タービン(100)に作用する地震荷重を低減するように構成された地震事象制御装置(153)とを備える、風力タービン(100)が記載されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン(100)であって、
タワー(120)と、
前記タワー(120)の頂部部分に配置されていて、少なくとも1つのブレード(114)を備える風力ロータ(110)であって、前記少なくとも1つのブレード(114)は、第1のブレードピッチ位置に配置されている、風力ロータ(110)と、
前記少なくとも1つのブレード(114)を前記第1のブレードピッチ位置から、前記第1のブレードピッチ位置とは異なる第2のブレードピッチ位置まで作動させて、前記風力タービン(100)に作用する地震荷重を低減するように構成された地震事象制御装置(153)と、
を備え、
前記第1のブレードピッチ位置の第1のブレード縁部共振周波数が、前記第2のブレードピッチ位置の第2のブレード縁部共振周波数よりも地震事象卓越共振周波数に近く、
かつ/または
前記第1のブレードピッチ位置は、エネルギー非生産位置であり、
前記第2のブレードピッチ位置は、エネルギー生産位置である、
風力タービン(100)。
【請求項2】
前記第1のブレードピッチ位置は、フェザー位置またはアイドリング位置である、請求項1記載の風力タービン(100)。
【請求項3】
前記第1のブレードピッチ位置は、第1のブレードピッチ角によって規定されており、
前記第2のブレードピッチ位置は、第2のブレードピッチ角によって規定されており、
前記少なくとも1つのブレード(114)の前記ブレードピッチ角を作動させることは、
前記少なくとも1つのブレード(114)を、前記少なくとも1つのブレード(114)の長手方向の延在部に対して実質的に平行に位置合わせされた軸線を中心として回転させることを含む、
請求項1または2記載の風力タービン(100)。
【請求項4】
前記第2のブレード位置は、予め特定されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の風力タービン(100)。
【請求項5】
前記第2のブレード位置は、動的に設定されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の風力タービン(100)。
【請求項6】
前記風力タービン(100)は、2つ以上、特に正確に3つのブレード(114)を備え、
前記地震事象制御装置(153)は、前記2つ以上のブレード(114)の各々のブレードピッチ角を集合的にまたは個別に作動させるように構成されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の風力タービン(100)。
【請求項7】
前記地震事象制御装置(153)は、特に前記少なくとも1つのブレード(114)を作動させる前に、地震事象を示す情報を取得するように構成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の風力タービン(100)。
【請求項8】
前記風力タービン(100)は、地震事象を示す情報を検出するための地震事象検出器をさらに備え、かつ/または
前記風力タービン(100)は、外部の地震事象検出器から地震事象を示す情報を取得するように構成されている、
請求項1から7までのいずれか1項記載の風力タービン(100)。
【請求項9】
前記風力タービン(100)は、バックアップ電源をさらに備える、請求項1から8までのいずれか1項記載の風力タービン(100)。
【請求項10】
前記地震事象制御装置(153)は、さらに、
地盤特性を示す情報を取得し、
特に動作データに基づいて、前記地盤特性を示す情報を各々のブレードピッチ位置に関連付け、
関連情報を作動に適用する
ように構成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の風力タービン(100)。
【請求項11】
前記地震事象制御装置(153)は、さらに、
タービン負荷のフィードバック情報、特に代理信号を取得し、
前記フィードバック情報を作動のために適用する
ように構成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の風力タービン(100)。
【請求項12】
地震荷重を引き起こす事象中に風力タービン(100)に作用する地震荷重を低減する方法であって、前記風力タービン(100)は、タワー(120)と、前記タワー(120)の頂部部分に配置されていて、少なくとも1つのブレード(114)を備える風力ロータ(110)であって、前記少なくとも1つのブレード(114)は、第1のブレードピッチ位置に配置されている、風力ロータ(110)とを備える、方法において、
地震荷重を引き起こす事象を示す情報を取得するステップと、
前記少なくとも1つのブレード(114)を前記第1のブレードピッチ位置から、前記第1のブレードピッチ位置とは異なる第2のブレードピッチ位置まで作動させ、それによって、前記風力タービン(100)に作用する地震荷重を低減するステップと、
を含み、
前記第1のブレードピッチ位置の第1のブレード縁部共振周波数が、前記第2のブレードピッチ位置の第2のブレード縁部共振周波数よりも地震事象卓越共振周波数に近く、
かつ/または
前記第1のブレードピッチ位置は、エネルギー非生産位置であり、前記第2のブレードピッチ位置は、エネルギー生産位置である、
方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのブレード(114)を前記第2のブレード位置に維持して、今後の地震事象を予期するステップを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
地震事象卓越共振周波数とブレード縁部共振周波数との共振が回避されるように、風力タービン(100)に作用する地震荷重を低減するための風力タービンブレードピッチの作動の使用。
【請求項15】
風力タービン(100)であって、
タワー(120)と、
前記タワー(120)の頂部部分に配置されていて、少なくとも1つのブレード(114)、特に3つのブレードを備える風力ロータ(110)と、
地震事象中に前記少なくとも1つのブレード(114)をエネルギー生産ブレードピッチ位置に維持し、それによって、前記風力タービン(100)に作用する地震荷重を低減するように構成された制御装置(153)と、
を備える、風力タービン(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、風力タービンの技術分野に関する。本発明は、特に、地震事象制御装置を備えた風力タービンに関する。本発明は、さらに、風力タービンに作用する地震荷重を低減する方法に関する。さらに、本発明は、ブレードピッチの作動の特定の使用に関する。
【0002】
技術背景
風力タービンを特に風の強い環境、例えば洋上に設置して、効率的な発電を行うことが一般的であると考えられることがある。しかしながら、こういった環境の幾つかは、例えばアジア太平洋地域における地震活動が活発な地域である。したがって、地震事象が一定の確率で発生するときに、今後の地震荷重を決定することができるように、地震事象に対する風力タービンおよびその支持構造物の応答が評価されなければならないことがある。
【0003】
地域の規制に応じて、風力タービンの構造物が、以下の基準、つまり、
i)損傷しない基準:この条件は、地震荷重があらゆる耐荷性の構成要素の材料降伏強度を超えないことを要求する。日本のような国々では、風力タービンが重大度低の地震事象に対して構造的な完全性を維持することが期待されている;
ii)倒壊しない基準:この条件は、耐荷性の構成要素の材料降伏強度の局所的な超過を許容している。しかしながら、この条件は、材料の極限強度が超過されず、あらゆる耐荷性の構成要素の剥離または致命的な破損がないことを要求する。日本のような国々では、風力タービンが重大度中ないし重大度高の極めて稀な地震事象(再現期間475年)に対して倒壊しない基準を満たすことが期待されている:
を満たすことができることさえ証明されなければならないことがある。
【0004】
日本、韓国および台湾を含むアジア太平洋地域に位置する典型的な洋上風力タービンの場合、地震荷重の危険性により、風力タービンの設計が推進されることが多いことがある。なぜならば、風力タービンのタワーおよび支持構造物に対する地震荷重が、地震荷重でない荷重よりも大幅に高いことがあるからである。したがって、耐震要件を満たすには、タワーおよび支持構造物のコストの増加が必要になることがあり、それにより、風力タービンプロジェクトが経済的に不可能になることがある。さらに、ブレードまたは別のナセル(RNA)構成要素に発生する高い地震荷重により、将来的なサイトまたはタービンのタイプが、こういった地域の洋上サイトでは技術的に非現実的になることがある。
【0005】
地震が発生すると、風力タービンの支持構造物は、(地盤の)岩盤層および土壌層を通って支持構造物に伝達される地震加速度に曝される。高い地震荷重に関する最も困難な課題のうちの1つは、こういった地震加速度の周波数成分が風力タービンおよび支持構造物の構造周波数の一方に一致した場合に発生することがある。この「共振」は、1つ以上のタービン構造構成要素のうちの1つ以上に重大な振動ひいては限界荷重を引き起こすことがある(例えば、ブレードが破損することがある)。
【0006】
風力タービンに対する地震荷重を低減するために、従来のアプローチは、風力タービンの支持構造物の設計を変更して、タービンの構造モードを励起することがある地震周波数を回避することである。
【0007】
しかしながら、このアプローチは多くの欠点を有することがある。なぜならば、それは、多額の付加的なコストを発生させるからである。さらに、このアプローチは、地震周波数がRNAの構造モードを励起する場合には使用することができない。なぜならば、RNAの再設計は、一般に、サイト固有の荷重計算では不可能であるからである。
【0008】
地震事象中でさえ頑強にかつ安定した状態で動作させることができる風力タービンを提供することが必要となることがある。
【0009】
発明の概要
この必要性は、独立請求項による主題によって満たすことができる。本発明の有利な実施形態は、従属請求項によって説明されている。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、風力タービンであって、
i)タワーと、
ii)タワーの頂部部分に配置されていて、少なくとも1つのブレード、特に3つのブレードを備える風力ロータであって、少なくとも1つのブレードは、第1のブレードピッチ位置(通常のブレード位置)、特に第1のブレードピッチ角に配置されている、風力ロータと、
iii)少なくとも1つのブレードを第1のブレードピッチ位置から、第1のブレードピッチ位置とは異なる第2のブレードピッチ位置(地震荷重軽減ブレード位置)、特に第2のブレードピッチ角まで(地震事象の応答として)作動させ、それによって、風力タービンに作用する地震荷重(seismic load)を低減するように構成された地震事象制御装置と
を備える、風力タービンが提供される。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、地震荷重を引き起こす事象中(during a seismic load causing event)、特に地震中に風力タービンに作用する地震荷重を低減する方法であって、風力タービンは、タワーと、タワーの頂部部分に配置されていて、少なくとも1つのブレードを備える風力ロータであって、少なくとも1つのブレードは、第1のブレードピッチ位置に配置されている、風力ロータとを備える、方法が提供される。方法は、
i)地震荷重を引き起こす事象を示す情報、例えば地震警報を取得することと、特にその後、
ii)少なくとも1つのブレードを第1のブレードピッチ位置から、第1のブレードピッチ位置とは異なる第2のブレードピッチ位置まで作動させることと
を含む。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、風力タービンに作用する地震荷重を低減するための風力タービンブレードピッチの作動の使用(使用する方法)が記載されている。特に、これによって、地震事象卓越共振周波数とブレード縁部共振周波数との共振(一致、増幅)が回避される。
【0013】
本発明の更なる態様によれば、風力タービンであって、
i)タワーと、
ii)タワーの頂部部分に配置されていて、少なくとも1つのブレード、特に3つのブレードを備える風力ロータと、
iii)地震事象中に少なくとも1つのブレードをエネルギー生産ブレードピッチ位置に維持し、それによって、風力タービンに作用する地震荷重を低減するように構成された制御装置と
を備える、風力タービンが提供される。
【0014】
本明細書の文脈では、「ブレードピッチ位置」という用語は、特に「ブレードピッチ角」を指すことができる。ブレードピッチ角の規定は、風力タービンの分野では、ブレードの翼弦線とブレードの回転平面(ロータハブ上の基準線)との間の角度として既知である。言い換えると、ブレードピッチ角は、タービンブレードが回転の平面に対して設置される角度、すなわち、回転平面と、ブレードの一方の縁部から他方の縁部までの直線(翼弦線)との間で測定される角度である。この翼弦線は、ブレードの前縁部と後縁部とを結ぶ仮想直線である(説明のため、図3図4も参照)。ピッチの作動は、例えば、液圧式または電気式のピッチの作動であってよい。
【0015】
本明細書の文脈では、「地震事象」という用語は、特に、地盤の動きに関連する事象、例えば地震を指すことができる。地震事象が特定の強さの場合、地震事象により、風力タービンが揺れ、地震荷重が発生し、それにより風力タービンの損傷および故障につながることがある。
【0016】
本明細書の文脈では、「地震事象制御装置」という用語は、特に、制御動作および/または調整動作を実行する際に、地震事象関連情報/地震事象示唆情報を考慮に入れるように構成された任意の装置を指すことができる。地震事象制御装置は、1つのプロセッサまたは複数のプロセッサであってよい。さらに、地震事象制御装置は、風力タービンの制御システムであってよく、または風力タービン制御システム上に実装されるソフトウェアであってよい。特定の例では、既存の風力タービンにハードウェアは付加されず、地震事象制御ソフトウェアが風力タービン制御装置(コントローラ)に実装され、その後、(少なくとも部分的に)地震事象制御装置となる。地震事象制御装置は、ブレードピッチ調整装置を含むことができるか、またはブレードピッチ調整装置に結合されてよい。後者の場合、ブレードピッチ調整装置は、ブレードピッチ調整装置を制御および/または調整し、特に風力タービンに作用する地震荷重を低減することができる。地震事象制御装置は、地震事象示唆情報自体を(例えば、検出器を使用して)検出することができるか、または別の(外部)装置から地震事象示唆情報を受信してよい。
【0017】
地震事象制御装置は、(例えば、ブレードピッチ位置調整装置が地震事象制御装置の一部である場合)ブレードを直接的に作動させることができるか、またはブレードピッチ位置調整装置によって作動をトリガしてよい。本明細書では、両方の任意選択を「作動」という用語で扱う。さらに、地震制御装置は、ブレードピッチ位置を事前に調整することができる。
【0018】
本明細書の文脈では、「地震事象を示す情報」または「地震事象を引き起こす負荷を示す情報」という用語は、現在あるいは潜在的な地震事象に関連する任意の情報を含むことができる。基本的な例では、示唆情報は、風力タービンが地震事象の危険性が高い地域に設置されていることであってよい。別の例では、情報は、例えば地盤が動き始めたという地震警報であってよい。より高度な例では、情報は、地盤の特性と、それに応じてブレードピッチ角を作動させる方法に関する特定の情報を含んでよい。
【0019】
例示的な実施形態によれば、本発明は、ブレードピッチ角を特定の形式で作動させて、地震荷重を低減すれば、たとえ地震(荷重を引き起こす)事象中であっても、風力タービンを頑強にかつ安定した状態で動作させることができるという思想に基づいていてよい。
【0020】
風力タービンに作用する地震荷重を低減するための従来のアプローチは、原則として構造設計(例えば、より頑強な支持構造物)に限定されているが、しかしながら、構造設計はコストがかかり、幾つかの点で最適ではない(例えば、耐震設計の再設計は、典型的には、より重い構造を必要とする)。
【0021】
発明者らは現在、ブレードピッチ位置がエネルギー非生産体制にある場合、例えば、タービン停止の終了時(および/または極端な風速時)に発生するような、フェザー位置に留めている場合に、最大の地震荷重が風力タービン構造内で発生することがあることを観察している。この観察に基づいて、発明者らはさらに、危機的な地震荷重が可能な限り低減されるようにブレードピッチ位置が最適化されるとき(例えば、ブレードピッチ位置をエネルギー生産体制に合わせて調整することによって)、風力タービンに対する地震荷重の驚くほど効率的かつ確実な低減を実現することができることがあることを発見した。
【0022】
最適化されたブレードピッチ位置の直接的な結果により、風力タービンと風力タービンの支持構造物とに作用する地震荷重を低減することができる。このようにして、ブレードピッチ位置を(集合的にまたは個別に)調整し、風力タービンの構造周波数および/または別の空力弾性特性を変化させて、地震荷重を低減することができる。さらに、ブレードピッチ位置の変更により、風力タービンに対する空気力学的な力および/または回転力も変化させることができ、それにより地震事象中に風力タービンが被る負荷をさらに低減することができる。例では、(地震)地盤周波数(地震事象の1つ以上の卓越共振周波数、および/または土壌層/地盤層の1つ以上の増幅周波数)とブレード周波数(ブレード縁部の1つ以上の共振周波数)との共振は、ブレードのピッチングによって回避される。
【0023】
例示的な実施形態
実施形態によれば、ブレード周波数は、第2のブレードピッチ位置よりも第1のブレードピッチ位置の方が地震事象の地盤周波数に近い。言い換えると、第1のブレードピッチ位置の第1のブレード縁部共振周波数(first blade edge resonant frequency)は、第2のブレードピッチの第2のブレード縁部共振周波数(second blade edge resonant frequency)よりも地震事象卓越共振周波数(dominant seismic event resonant frequency)に近い。したがって、ブレード縁部共振周波数は、第2のブレードピッチ位置よりも第1のブレードピッチ位置の方が地震事象卓越共振周波数(言い換えると、土壌層/地盤層の増幅周波数)に近い(より類似する)。それゆえ、第1のブレードピッチ位置で発生する第1のブレード縁部共振周波数は、第2のブレードピッチ位置で発生する第2のブレード縁部共振周波数よりも前記地震事象卓越共振周波数(土壌層の増幅周波数)に近くすることができる。このようにして、ブレード(共振)周波数と(地震)地盤増幅周波数との共振(一致、増幅)を効率的に低減させることができることが発明者らによって発見された。
【0024】
更なる実施形態によれば、第1のブレードピッチ位置は、エネルギー非生産(体制)位置であり、特にフェザー位置、アイドリング位置、タービン停止位置、極端な風の位置からなる群のうちの1つである。発明者らは、地震事象中にブレードピッチ角がエネルギー非生産体制でない場合には、風力タービンに作用する地震荷重を大幅に低減させることができることを発見した。
【0025】
「エネルギー非生産」という用語は、(本質的に)電気エネルギーが生産されない風力タービンの動作状態を指すことができる。この状態では、ブレードピッチ角は、一般に50°より大きく、特に90°付近である。通常、エネルギー非生産体制に入るのは、風力タービンがオフの状態か、フェザー位置か、または風力タービンの負荷がエネルギー生産するには強すぎる極端な風の状態のときである。
【0026】
更なる実施形態によれば、第2のブレードピッチ位置は、エネルギー生産(体制)位置である。同様に、本発明者らは、ブレードピッチ角が地震事象中にエネルギー生産体制にある場合、風力タービンに作用する地震荷重を大幅に低減させることができることを発見した。
【0027】
「エネルギー生産」という用語は、電気エネルギーが生産される風力タービンの動作状態を指すことができる。これは、微風速および高風速で実行することができるが、極端な風速では実行することができない。できるだけ多くの風力を集めるために、ブレードピッチ角は、この体制では、一般に50°未満、特に30°以下である。
【0028】
上述の主題の結果として、地震活動が活発な地域における風力タービンのブレードピッチ位置は、潜在的な地震事象に備えるために(本質的に)常にエネルギー生産位置にあってよい。
【0029】
更なる特定の実施形態によれば、第1のブレード位置は、エネルギー生産(体制)位置であってよい。更なる特定の実施形態によれば、第2のブレード位置は、エネルギー非生産(体制)位置であってよい。
【0030】
更なる実施形態によれば、第1のブレードピッチ位置は、第1のブレードピッチ角によって規定されており、第2のブレードピッチ位置は、第2のブレードピッチ角によって規定されており、少なくとも1つのブレードのブレードピッチ角を作動させることは、少なくとも1つのブレードを、少なくとも1つのブレードの長手方向の延在部に対して実質的に平行に位置合わせされた軸線を中心として回転させることを含む。ブレードピッチ角を使用することにより、ブレードピッチ位置を極めて正確に調整することができる。
【0031】
更なる実施形態によれば、第1のブレードピッチ角は、50°より大きい。更なる実施形態によれば、第2のブレードピッチ角は、50°より小さい。更なる実施形態によれば、第2のブレードピッチ角は、30°以下、特に20°以下である。
【0032】
上述したように、50°を超える体制は、地震事象には不適切であることがあるエネルギー非生産体制と考えることができる。一方、50°未満、特に30°未満または20°未満の体制では、地震事象中に入るのに適していることがあるエネルギー生産体制と考えることができる。
【0033】
一例では、ブレードピッチ角が従来のパッシブアイドリングピッチ角に近い場合、すなわち、60°~89°の範囲にある場合、タワー頂部の地震荷重は、極めて大きくなることがあり、従来では、高価なタワーと支持構造物との設計および非現実的なナセル構造によってのみ低減可能である。しかしながら、ブレードピッチ角を20°付近に向けて下げることにより、50%超の負荷低減を実現することができる(図2も参照)。この負荷低減により、風力タービンおよび/または支持構造物を設計する際に、大幅なコスト削減を実現することができる。さらに、地震荷重の効果的な低減により、地震活動が活発な地域で以前は非現実的だったプロジェクトを実行可能にすることができる。
【0034】
更なる実施形態によれば、第2のブレード位置は、予め特定されている(予め特定された設定値)。更なる実施形態によれば、第2のブレード位置は、動的に設定されている(動的に計算される設定値)。したがって、現在の状況に応じて、有利なアプローチを選択することができる。
【0035】
更なる実施形態によれば、風力タービンは、2つ以上、特に正確に3つのブレードを備え、地震事象制御装置は、2つ以上のブレードの各々のブレードピッチ角を集合的にまたは個別に作動させる(作動をトリガする)ように構成されている。各々の状況に応じて、すべてのブレードを集合的に制御/調整するか、または各ブレードを個別に制御/調整することが有利な場合がある。
【0036】
更なる実施形態によれば、地震事象制御装置は、特に少なくとも1つのブレードを作動させる前に、地震事象を示す情報を取得するように構成されている。これにより、地震事象制御装置は、潜在的な地震事象に対して効率的に反応することができる。
【0037】
更なる実施形態によれば、風力タービンは、地震事象を示す情報を検出するための地震事象検出器をさらに備える。
【0038】
更なる実施形態によれば、風力タービンは、外部の地震事象検出器から地震事象を示す情報を取得するように構成されている。
【0039】
更なる実施形態によれば、風力タービンは、バックアップ電源をさらに備える。これは、風力タービンを特に安全にかつ頑強に動作させることができるという利点を提供することがある。
【0040】
地震事象中に風力タービンが送電網にアクセスできなくなると、風力タービンは、ブレードピッチ位置を作動させることができなくなることがある。このような場合、補助電源またはバックアップ電源を適用して、ブレードピッチ角の作動が適切に機能できるようにすることが極めて有益であることがある。
【0041】
更なる実施形態によれば、作動(地震荷重応答)は、動的に計算されたブレードピッチ位置の作動、または所定のブレードピッチ位置の作動を含む。したがって、現在の状況に応じて、有利なアプローチを選択することができる。
【0042】
例示的な実施形態では、岩盤および泥線(地盤)での地震事象の予想されるスペクトルエネルギーについての適切な知識が前提となる。さらに、タービンの構造周波数と、ブレードピッチ角にわたるタービンの構造周波数の変化とについての十分な知識も前提となる。入手可能な情報に基づいて、タービンが地震事象に曝されたときにタービンの構造負荷を最小限に抑えるブレードピッチ位置を(例えば、空力弾性タービンシミュレーションを使用して)決定することができる。これは、特定の位置、または一般的なレベルで実行することができる。これらのブレードピッチ位置は、デフォルトのピッチ位置として使用されてよい。外部通信、タービン構造上あるいはタービンサイトの専用地震センサに基づき、またはタービン標準信号が使用される地震検出システムが使用される場合、そのような検出システムは、タービンを直接的に起動して、上記で規定されたブレードピッチ位置に入れることがある。これらのブレードピッチ位置はまた、(タービンコントローラ(地震事象制御装置)によって決定される)重大な事象または危機的な事象が発生したときに、タービンが入る安全なピッチ位置として使用することができ、風力タービンが地震に誘発された荷重の影響を最も受けにくい状態に入ることを保証する。ブレードピッチ位置は、3枚のブレードすべてで同じであってよく、またはブレードピッチ位置は、個々のブレードごとに異ならせ、例えば面内および面外の共振周波数を分散させて、それによって共振効果を低減してもよい。
【0043】
更なる実施形態によれば、地震事象制御装置は、さらに、i)地盤特性を示す情報を取得し、ii)特に動作データに基づいて、地盤特性を示す情報を各々のブレードピッチ位置に関連付け、iii)関連情報を作動(に提供するよう)に適用するように構成されている。これは、地震事象示唆情報が能動的に決定されて、有利なブレードピッチ位置に関連付けられ、その結果、地震事象での好ましいブレードピッチ位置を直接的に利用することができるという利点を提供することができる。
【0044】
例示的な実施形態では、地盤(土壌および岩盤)の特性に関する完全な知識を事前に得るのは一般に困難であるが、この例では必要ないことがある。しかしながら、地震事象の予想されるスペクトルエネルギーについての適切な知識が必要な場合がある。さらに、タービンの構造周波数と、ブレードピッチ角にわたるタービンの構造周波数の変化とについての知識が前提となる。設置後、(地震事象制御装置を含む)風力タービンコントローラは、(第1の支持構造物の周波数などの)動作データに基づいて、地盤特性に関する更なる情報を収集することができる。タービンコントローラは、専用の実験を実行し、更なる地盤特性を決定することができる。現場で決定された地盤特性に基づいて、ブレードピッチ位置は、微風速の場合のデフォルトピッチ位置として、または故障状態あるいは(上記の例で説明したような)地震検知システムの場合の安全なブレードピッチ位置として規定することができる。地盤の特性は、時間の経過とともに変化することがあり、その場合、タービンコントローラは、そのような特性を継続的に追跡し、それに応じてブレードピッチ位置を更新する。ルックアップテーブルは、タービンコントローラで使用するために(例えば、空力弾性タービンシミュレーションを使用して)事前に生成されており、測定された地盤特性を、タービン地震荷重を最小化する最適なブレードピッチ位置に関連付けることができる。このようなルックアップテーブルの例は、特定のタービン固有振動数[Hz]と、各ブレードの対応するブレードピッチ位置とを含むことができる。
【0045】
更なる実施形態によれば、地震事象制御装置は、さらに、i)タービン負荷のフィードバック情報、特に代理信号(proxy signal)を取得し、ii)フィードバック情報を作動(の提供/トリガ)のために適用するように構成されている。これにより、利用可能な地震事象示唆情報がそれほど多く存在しない場合でも、現在のタービン負荷を考慮した効率的な作動が可能になるという利点がもたらされることがある。
【0046】
例示的な実施形態では、地盤(土壌および岩盤)の特性、地震スペクトルエネルギー、またはタービンの構造特性についての知識が本質的に存在しないと想定されている。外部通信、専用の地震センサ、または標準のタービン信号に基づく地震検出システムが必要になる場合がある。さらに、限界タービン負荷の(好ましくは線形の)代理として機能する信号を使用することができる。この特定の例は、地震検出システムからトリガ信号を受信すると有効になる地震事象制御装置のアクティブピッチ制御に基づいてよい。アクティブコントローラは、有効になると、タービン負荷(の代理)信号からのフィードバックを使用し、地震荷重を最小限に抑えるようにブレードピッチ位置を指令することができる。制御アクションは、(多変数)フィードバック負荷信号とピッチ位置アクチュエータとの間の、静的あるいは動的な、線形または非線形の伝達関数に基づいてよい。アクティブコントローラは、3つのブレードすべてに同じ位置をアクティブに指令するか、または個別のピッチ制御を実行し、地震荷重を低減することができる。
【0047】
更なる実施形態によれば、方法は、特に長期間、さらに特にエネルギー非生産期間中、少なくとも1つのブレードを第2のブレード位置に維持して、今後の、特に突然の/予見できない/検出不可能な地震事象を予期する(anticipate)ことをさらに含む。これにより、地震が突然発生し、ブレードピッチ位置をさらに適応させる時間がないままであっても、風力タービンに作用する地震荷重が低減されるという利点が得られることがある。
【0048】
通常、ブレードピッチ位置は、エネルギー非生産、系統障害、内部障害、メンテナンス、または微風状態(言い換えると、風力タービンの停止時)の場合の「安全」位置として、第1のブレードピッチ位置に作動する。しかしながら、突然の地震事象の場合に地震荷重を効率的に低減するために、ブレードピッチ位置は(特にほとんどの場合、または(本質的に)常に)第2のブレードピッチ位置に維持される。
【0049】
更なる実施形態によれば、地震荷重を引き起こす事象中、特に地震中に風力タービンに作用する地震荷重を低減する方法であって、風力タービンは、タワーと、タワーの頂部部分に配置され、少なくとも1つのブレードを備える風力ロータとを備える、方法が提供される。方法は、少なくとも1つのブレードを第2のブレード位置に維持して、今後の地震事象を予期することを含み、ブレード周波数は、第2のブレード位置とは異なる第1のブレードピッチ位置の方が、第2のブレードピッチ位置よりも地震事象の地盤周波数に近い(より類似している)。
【0050】
本発明の上記の態様および更なる態様は、以下に説明する実施形態の例から明らかであり、実施形態の例を参照して説明される。以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明の例示的な実施形態による風力タービンを示す図である。
図2】本発明の例示的な実施形態による風力タービンに作用する地震荷重を低減する方法を説明する図である。
図3】ブレードピッチ角の一般的な規定を示す図である。
図4】ブレードピッチ角の一般的な規定を示す図である。
【0052】
詳細な説明
図中の説明は、概略的なものである。異なる図面でも、類似あるいは同一の要素または特徴には、同一の参照符号が付与されるか、または先頭の桁内のみが、対応する参照符号と異なる参照符号が付与されることに留意されたい。不必要な繰り返しを避けるために、前述の実施形態に関してすでに説明された要素または特徴は、説明の後の部分では再度説明されない。
【0053】
さらに、図に示すように、「前」および「後」、「上」および「下」、「左」および「右」などの空間的に相対的な用語は、要素と別の要素の関係を説明するために使用される。したがって、空間的に相対的な用語は、使用時には図に示されている配向とは異なる配向に適用されてよい。明らかに、そのような空間的に相対的な用語はすべて、説明を容易にするために図に示される配向を指すだけであり、本発明の一実施形態による装置は使用時には図に示される配向とは異なる配向であってよいので、必ずしも限定するものではない。
【0054】
例示的な実施形態によれば、風力タービンが地震事象に曝される際、地震の加速度スペクトルがタービン構造の固有振動数を励起するときに、風力タービンは最大のタービン負荷に直面することがあるという態様を考慮することができる。第1のブレードのモードを含む幾つかの風力タービンの構造モードの固有振動数は、ブレードピッチ位置に直接的に左右される。しかしながら、カットイン風速未満、カットアウト風速超かつ動作体制でのブレードピッチ位置は、慣例的に、最大発電量および地震荷重でない最適なタービン負荷のみを考慮して設計されている。タービンが地震荷重を受ける場合、このブレードピッチ位置は最適ではないことがある。具体的な例として、風速が低いときに最大の地震荷重を被ると、ブレードがフェザー位置にあり、許容できないほど高い地震荷重が発生することがある。
【0055】
図1は、本発明の一実施形態による風力タービン100を示す。風力タービン100は、地震などの地震事象が発生することがある地域の地盤に取り付けられた(図示されていない支持構造物体を備えた)タワー120を備える。風力タービン100は、沿岸または洋上に位置してよい。
【0056】
タワー120の頂部には、ナセル122が配置されている。タワー120とナセル122との間には、タワー120の長手方向の延長線上に位置合わせされた図示しない鉛直軸線を中心としてナセル122を回転させることができるヨー角調整部分121が設けられている。ヨー角調整部分121を適切に制御することにより、風力タービン100の通常動作中にナセル122が常に現在の風向と適切に位置合わせされることを確実にすることができる。
【0057】
風力タービン100は、3つのブレード114を有する風力ロータ110をさらに備える。図1の斜視図では、2つのブレード114のみが見える。ロータ110は、回転軸線110aを中心として回転可能である。ハブ112に取り付けられたブレード114は、回転軸線110aに対して半径方向に延在し、回転平面RP内で回転する。
【0058】
ハブ112とブレード114との間には、ブレードピッチ角調整装置116がそれぞれ設けられており、各々のブレード114を各々のブレード114の長手方向の延在部に対して実質的に平行に位置合わせされた軸線を中心として回転させることによって各々のブレード114のブレードピッチ角が調整される。ブレードピッチ角調整装置116を制御することにより、各々のブレード114のブレードピッチ角は、少なくとも風が強すぎないときに、風力ロータ110を駆動する利用可能な風の機械動力から最大の風力を引き出すことができるように調整することができる。
【0059】
図1から分かるように、ナセル122内には変速機124が設けられている。変速機124を使用して、ロータ110の回転数が、既知の様式で電気機械変換器140に結合されたシャフト125でより高い回転数になるように変換される。電気機械変換器は、発電機140である。この点で、変速機124は任意選択であり、発電機140は回転数を変えることなくシャフト125によってロータ110に直接的に結合されてもよいことが指摘される。この場合、風力タービンは、いわゆるダイレクトドライブ(DD)風力タービンである。
【0060】
さらに、ブレーキ126が設けられ、緊急時には、風力タービン100またはロータ110の動作は安全に停止する。
【0061】
風力タービン100は、風力タービン100を高効率で動作させるための制御システムをさらに備える。例えばヨー角調整装置121の制御とは別に、図示の制御システムはまた、最適化された様式でアクチュエータ116を使用して、ロータブレード114のブレードピッチ角が調整される。
【0062】
制御システムは、ブレード114を、第1のブレードピッチ位置から、第1のブレードピッチ位置とは異なる第2のブレードピッチ位置までそれぞれ作動させ、風力タービン100に作用する地震荷重を低減するように構成された地震事象制御装置153を含む。図示の例では、地震事象制御装置153は、ブレードピッチ角調整装置116を制御/調整する。
【0063】
地震事象制御装置153はさらに、地震事象を示す情報を取得する。前記情報は、地震事象制御装置153自体によって決定することができるか、または図1に示すように、外部の地震事象検出装置160から取得してもよい。
【0064】
図2は、ブレードピッチ角の作動を使用して風力タービンに作用する地震荷重を低減する方法を説明するための図を示す。図は、タワー頂部の曲げモーメントの変化を(集合的な)ブレードピッチ位置の関数として示している。特に、洋上風力タービンのシミュレーションが実行された。図2は、x軸に沿ってブレードピッチ角[°]を示し、y軸に沿ってタワー頂部の地震荷重[任意単位]を示している。ブレードピッチ角の作動の実施の結果として、タワー頂部の地震荷重(曲げモーメント)が低減することが分かる。特に、エネルギー非生産体制およびフェザー位置(90°付近)では地震荷重が極めて大きいことが分かる。また、アイドリングピッチ角(60°~86°の範囲)でも地震荷重は、比較的大きくなる。これとは対照的に、エネルギー生産体制のブレードピッチ角、例えば30°未満、特に20°未満では、タワーの地震荷重は比較的小さい。
【0065】
図3および図4は、ブレード114の回転平面RPに対するブレード114の翼弦線CLの間の角度であるブレードピッチ角の共通の規定を示す。翼弦線CLは、本明細書では、ブレード114の前縁部から後縁部までの仮想線である。
【0066】
「備える(comprising)」という用語は、別の要素または別のステップを排除するものではなく、冠詞「a」または「an」の使用は、複数を排除するものではないことに留意されたい。また、異なる実施形態に関連して説明した要素は、組み合わせることができる。また、特許請求の範囲における参照符号は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことにも留意されたい。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-06-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン(100)であって、
タワー(120)と、
前記タワー(120)の頂部部分に配置されていて、少なくとも1つのブレード(114)を備える風力ロータ(110)であって、前記少なくとも1つのブレード(114)は、第1のブレードピッチ位置に配置されている、風力ロータ(110)と、
前記少なくとも1つのブレード(114)を前記第1のブレードピッチ位置から、前記第1のブレードピッチ位置とは異なる第2のブレードピッチ位置まで作動させて、前記風力タービン(100)に作用する地震荷重を低減するように構成された地震事象制御装置(153)と、
を備え、
前記第1のブレードピッチ位置の第1のブレード縁部共振周波数が、前記第2のブレードピッチ位置の第2のブレード縁部共振周波数よりも地震事象卓越共振周波数に近く、
かつ/または
前記第1のブレードピッチ位置は、エネルギー非生産位置であり、
前記第2のブレードピッチ位置は、エネルギー生産位置である、
風力タービン(100)。
【請求項2】
前記第1のブレードピッチ位置は、フェザー位置またはアイドリング位置である、請求項1記載の風力タービン(100)。
【請求項3】
前記第1のブレードピッチ位置は、第1のブレードピッチ角によって規定されており、
前記第2のブレードピッチ位置は、第2のブレードピッチ角によって規定されており、
前記少なくとも1つのブレード(114)の前記ブレードピッチ角を作動させることは、前記少なくとも1つのブレード(114)を、前記少なくとも1つのブレード(114)の長手方向の延在部に対して実質的に平行に位置合わせされた軸線を中心として回転させることを含む、
請求項1または2記載の風力タービン(100)。
【請求項4】
前記第2のブレード位置は、予め特定されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の風力タービン(100)。
【請求項5】
前記第2のブレード位置は、動的に設定されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の風力タービン(100)。
【請求項6】
前記風力タービン(100)は、2つ以上、特に正確に3つのブレード(114)を備え、
前記地震事象制御装置(153)は、前記2つ以上のブレード(114)の各々のブレードピッチ角を集合的にまたは個別に作動させるように構成されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の風力タービン(100)。
【請求項7】
前記地震事象制御装置(153)は、特に前記少なくとも1つのブレード(114)を作動させる前に、地震事象を示す情報を取得するように構成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の風力タービン(100)。
【請求項8】
前記風力タービン(100)は、地震事象を示す情報を検出するための地震事象検出器をさらに備え、かつ/または
前記風力タービン(100)は、外部の地震事象検出器から地震事象を示す情報を取得するように構成されている、
請求項1から7までのいずれか1項記載の風力タービン(100)。
【請求項9】
前記風力タービン(100)は、バックアップ電源をさらに備える、請求項1から8までのいずれか1項記載の風力タービン(100)。
【請求項10】
前記地震事象制御装置(153)は、さらに、
地盤特性を示す情報を取得し、
特に動作データに基づいて、前記地盤特性を示す情報を各々のブレードピッチ位置に関連付け、
関連情報を作動に適用する
ように構成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の風力タービン(100)。
【請求項11】
前記地震事象制御装置(153)は、さらに、
タービン負荷のフィードバック情報、特に代理信号を取得し、
前記フィードバック情報を作動のために適用する
ように構成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の風力タービン(100)。
【請求項12】
地震荷重を引き起こす事象中に風力タービン(100)に作用する地震荷重を低減する方法であって、前記風力タービン(100)は、タワー(120)と、前記タワー(120)の頂部部分に配置されていて、少なくとも1つのブレード(114)を備える風力ロータ(110)であって、前記少なくとも1つのブレード(114)は、第1のブレードピッチ位置に配置されている、風力ロータ(110)とを備える、方法において、
地震荷重を引き起こす事象を示す情報を取得するステップと、
前記少なくとも1つのブレード(114)を前記第1のブレードピッチ位置から、前記第1のブレードピッチ位置とは異なる第2のブレードピッチ位置まで作動させ、それによって、前記風力タービン(100)に作用する地震荷重を低減するステップと、
を含み、
前記第1のブレードピッチ位置の第1のブレード縁部共振周波数が、前記第2のブレードピッチ位置の第2のブレード縁部共振周波数よりも地震事象卓越共振周波数に近く、
かつ/または
前記第1のブレードピッチ位置は、エネルギー非生産位置であり、前記第2のブレードピッチ位置は、エネルギー生産位置である、
方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのブレード(114)を前記第2のブレード位置に維持して、今後の地震事象を予期するステップを含む、請求項12記載の方法
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
しかしながら、このアプローチは多くの欠点を有することがある。なぜならば、それは、多額の付加的なコストを発生させるからである。さらに、このアプローチは、地震周波数がRNAの構造モードを励起する場合には使用することができない。なぜならば、RNAの再設計は、一般に、サイト固有の荷重計算では不可能であるからである。
米国特許出願公開第2011/0293418号明細書には、風力タービン、特にシャットダウンシーケンスを制御するための装置および方法が記載されている。
独国特許出願公開第102018132413号明細書には、風力エネルギープラントの種々異なる振動を特定するための方法が記載されている。
国際公開第2010/083835号には、警報システムを備えた風力タービンが記載されている。
欧州特許出願公開第2589800号明細書には、風車用ピッチ制御装置が記載されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、風力タービンであって、
i)タワーと、
ii)タワーの頂部部分に配置されていて、少なくとも1つのブレード、特に3つのブレードを備える風力ロータであって、少なくとも1つのブレードは、第1のブレードピッチ位置(通常のブレード位置)、特に第1のブレードピッチ角に配置されている、風力ロータと、
iii)少なくとも1つのブレードを第1のブレードピッチ位置から、第1のブレードピッチ位置とは異なる第2のブレードピッチ位置(地震荷重軽減ブレード位置)、特に第2のブレードピッチ角まで(地震事象の応答として)作動させ、それによって、風力タービンに作用する地震荷重を低減するように構成された地震事象制御装置と
を備える、風力タービンが提供される。
これによって、a)第1のブレードピッチ位置の第1のブレード縁部共振周波数が、第2のブレードピッチ位置の第2のブレード縁部共振周波数よりも地震事象卓越共振周波数に近く、かつ/またはb)第1のブレードピッチ位置は、エネルギー非生産位置であり、第2のブレードピッチ位置は、エネルギー生産位置である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明の第2の態様によれば、地震荷重を引き起こす事象中、特に地震中に風力タービンに作用する地震荷重を低減する方法であって、風力タービンは、タワーと、タワーの頂部部分に配置されていて、少なくとも1つのブレードを備える風力ロータであって、少なくとも1つのブレードは、第1のブレードピッチ位置に配置されている、風力ロータとを備える、方法が提供される。方法は、
i)地震荷重を引き起こす事象を示す情報、例えば地震警報を取得することと、特にその後、
ii)少なくとも1つのブレードを第1のブレードピッチ位置から、第1のブレードピッチ位置とは異なる第2のブレードピッチ位置まで作動させることと
を含む。
これによって、a)第1のブレードピッチ位置の第1のブレード縁部共振周波数が、第2のブレードピッチ位置の第2のブレード縁部共振周波数よりも地震事象卓越共振周波数に近く、かつ/またはb)第1のブレードピッチ位置は、エネルギー非生産位置であり、第2のブレードピッチ位置は、エネルギー生産位置である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明をより理解しやすくするための例によれば、風力タービンに作用する地震荷重を低減するための風力タービンブレードピッチの作動の使用(使用する方法)が記載されている。特に、これによって、地震事象卓越共振周波数とブレード縁部共振周波数との共振(一致、増幅)が回避される。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明をより理解しやすくするための例によれば、風力タービンであって、
i)タワーと、
ii)タワーの頂部部分に配置されていて、少なくとも1つのブレード、特に3つのブレードを備える風力ロータと、
iii)地震事象中に少なくとも1つのブレードをエネルギー生産ブレードピッチ位置に維持し、それによって、風力タービンに作用する地震荷重を低減するように構成された制御装置と
を備える、風力タービンが提供される。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン(100)であって、
タワー(120)と、
前記タワー(120)の頂部部分に配置されていて、少なくとも1つのブレード(114)を備える風力ロータ(110)であって、前記少なくとも1つのブレード(114)は、第1のブレードピッチ位置に配置されている、風力ロータ(110)と、
前記少なくとも1つのブレード(114)を前記第1のブレードピッチ位置から、前記第1のブレードピッチ位置とは異なる第2のブレードピッチ位置まで作動させて、前記風力タービン(100)に作用する地震荷重を低減するように構成された地震事象制御装置(153)と、
を備え、
前記第1のブレードピッチ位置の第1のブレード縁部共振周波数が、前記第2のブレードピッチ位置の第2のブレード縁部共振周波数よりも地震事象卓越共振周波数に近く、
かつ/または
前記第1のブレードピッチ位置は、エネルギー非生産位置であり、
前記第2のブレードピッチ位置は、エネルギー生産位置である、
風力タービン(100)。
【請求項2】
前記第1のブレードピッチ位置は、フェザー位置またはアイドリング位置である、請求項1記載の風力タービン(100)。
【請求項3】
前記第1のブレードピッチ位置は、第1のブレードピッチ角によって規定されており、
前記第2のブレードピッチ位置は、第2のブレードピッチ角によって規定されており、
前記少なくとも1つのブレード(114)の前記ブレードピッチ角を作動させることは、前記少なくとも1つのブレード(114)を、前記少なくとも1つのブレード(114)の長手方向の延在部に対して実質的に平行に位置合わせされた軸線を中心として回転させることを含む、
請求項1または2記載の風力タービン(100)。
【請求項4】
前記第2のブレード位置は、予め特定されている、請求項1または2記載の風力タービン(100)。
【請求項5】
前記第2のブレード位置は、動的に設定されている、請求項1または2記載の風力タービン(100)。
【請求項6】
前記風力タービン(100)は、2つ以上、特に正確に3つのブレード(114)を備え、
前記地震事象制御装置(153)は、前記2つ以上のブレード(114)の各々のブレードピッチ角を集合的にまたは個別に作動させるように構成されている、
請求項1または2記載の風力タービン(100)。
【請求項7】
前記地震事象制御装置(153)は、特に前記少なくとも1つのブレード(114)を作動させる前に、地震事象を示す情報を取得するように構成されている、請求項1または2記載の風力タービン(100)。
【請求項8】
前記風力タービン(100)は、地震事象を示す情報を検出するための地震事象検出器をさらに備え、かつ/または
前記風力タービン(100)は、外部の地震事象検出器から地震事象を示す情報を取得するように構成されている、
請求項1または2記載の風力タービン(100)。
【請求項9】
前記風力タービン(100)は、バックアップ電源をさらに備える、請求項1または2記載の風力タービン(100)。
【請求項10】
前記地震事象制御装置(153)は、さらに、
地盤特性を示す情報を取得し、
特に動作データに基づいて、前記地盤特性を示す情報を各々のブレードピッチ位置に関連付け、
関連情報を作動に適用する
ように構成されている、請求項1または2記載の風力タービン(100)。
【請求項11】
前記地震事象制御装置(153)は、さらに、
タービン負荷のフィードバック情報、特に代理信号を取得し、
前記フィードバック情報を作動のために適用する
ように構成されている、請求項1または2記載の風力タービン(100)。
【請求項12】
地震荷重を引き起こす事象中に風力タービン(100)に作用する地震荷重を低減する方法であって、前記風力タービン(100)は、タワー(120)と、前記タワー(120)の頂部部分に配置されていて、少なくとも1つのブレード(114)を備える風力ロータ(110)であって、前記少なくとも1つのブレード(114)は、第1のブレードピッチ位置に配置されている、風力ロータ(110)とを備える、方法において、
地震荷重を引き起こす事象を示す情報を取得するステップと、
前記少なくとも1つのブレード(114)を前記第1のブレードピッチ位置から、前記第1のブレードピッチ位置とは異なる第2のブレードピッチ位置まで作動させ、それによって、前記風力タービン(100)に作用する地震荷重を低減するステップと、
を含み、
前記第1のブレードピッチ位置の第1のブレード縁部共振周波数が、前記第2のブレードピッチ位置の第2のブレード縁部共振周波数よりも地震事象卓越共振周波数に近く、
かつ/または
前記第1のブレードピッチ位置は、エネルギー非生産位置であり、前記第2のブレードピッチ位置は、エネルギー生産位置である、
方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのブレード(114)を前記第2のブレード位置に維持して、今後の地震事象を予期するステップを含む、請求項12記載の方法。
【国際調査報告】