(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-30
(54)【発明の名称】高品質トリカプリリンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/08 20060101AFI20240523BHJP
C07C 69/30 20060101ALI20240523BHJP
C07C 67/62 20060101ALI20240523BHJP
C11C 3/00 20060101ALI20240523BHJP
A61K 31/215 20060101ALI20240523BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240523BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240523BHJP
A23L 33/115 20160101ALI20240523BHJP
【FI】
C07C67/08
C07C69/30
C07C67/62
C11C3/00
A61K31/215
A61K47/14
A61K8/37
A23L33/115
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023571926
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-09
(86)【国際出願番号】 EP2021064135
(87)【国際公開番号】W WO2022242883
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2021/063583
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521302113
【氏名又は名称】アイオーアイ オレオ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】ロッホマン、ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ライアー、セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シュテーア、ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4B018MD14
4B018ME01
4B018ME02
4C076BB01
4C076DD46E
4C076DD46G
4C076FF15
4C076FF17
4C083AC421
4C083BB60
4C083CC19
4C083DD30
4C083DD31
4C083EE17
4C206AA01
4C206DB49
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206NA14
4H006AA02
4H006AB12
4H006AC48
4H006AD40
4H006BC10
4H006KA06
4H006KC12
(57)【要約】
【課題】 本発明は、高純度度のトリカプリリンを製造するための効率的な方法を提供する。
【解決手段】 本発明の製造方法は:(i)結果として生じる反応生成物に存在するハロゲン化物ベースの不純物の好ましくは選択的な誘導体化、および/または、結果として生じる反応生成物を、少なくとも1つの求核剤で処理されることまたは接触させること、(ii)180℃を超えない温度でエステル化を行うこと、(iii)出発物質として、グリセロールまたはその保護形態もしくは前駆体、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)を使用すること、(iv)金属ベース触媒の非存在下でのエステル化を稼働することおよび/または実行すること;という条件の少なくとも1つが適用され、高純度のトリカプリリンを製造するものである。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリカプリリン(すなわちトリオクタノイルグリセリドまたはトリカプリルグリセロール)を、特に高純度で製造する方法であって、
式(I)
CH
2(OH)-CH(OH)-CH
2(OH) (I)
の1,2,3-プロパントリオール(グリセロール、グリセリン)またはその保護形態もしくは前駆体、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)が開始材料として使用されて反応し、および/またはトリカプリリンに変換されるものであること、
式(II)
CH
2[O-C(O)R
1]-CH[O-C(O)R
1]-CH
2[O-C(O)R
1] (II)
のトリカプリリンを、反応生成物として、生成するものであること、
ここで、式(II)において、ラジカルR
1は、式-(CH
2)
6-CH
3の直鎖状飽和脂肪族C
7-アルキルラジカル(すなわち、n-ヘプチルラジカル)を表すものであること、
ここで、この方法は、少なくとも1つのエステル化段階を、特にC
8-脂肪酸、特に直鎖飽和またはモノ-もしくはポリ-不飽和C
8-脂肪酸および/またはそれらの無水物および/またはエステル(好ましくはC
1-C
4-アルキルエステル)を使用するエステル化段階を、好ましくは式CH
3-(CH
2)
6-COOHのカプリル酸(すなわちn-オクチル酸または1-ヘプタンカルボン酸)および/またはその無水物またはエステル(好ましくはC
1-C
4-アルキルエステル)を使用する少なくとも1つのエステル化段階を含むこと;
ここで、この方法は、以下の特徴および/または条件(i)~(iv)のうちの少なくとも1つ、特に、以下の特徴および/または条件(i)~(iv)のうちの少なくとも2つの組み合わせ、好ましくは少なくとも3つの組み合わせ、より好ましくは4つすべての組み合わせによって特徴付けられること:
(i) 結果として生じる反応生成物中に存在するハロゲン化物ベースの不純物、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル、特にMCPDカプリル酸エステル)および脂肪酸のグリシドールエステル(特にグリシドールカプリル酸エステル)の好ましくは選択的な誘導体化が実行されること、且つ/または、結果として生じる反応生成物は、少なくとも1つの求核剤で、特にハロゲン化物ベースの不純物を除去することができる求核剤で、好ましくは亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO
3
-)、亜硫酸塩(SO
3
2-)、チオ硫酸水素塩(HS
2O
3
-)、チオ硫酸塩(S
2O
3
2-)、亜リン酸水素塩(H
2PO
3
-)、亜リン酸塩(HPO
3
2-)およびホスフィンならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される求核剤で、より好ましくは亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO
3
-)で、特に、ハロゲン化物ベースの不純物、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル)および脂肪酸のグリシドールエステルの好ましくは選択的な誘導体化のために、処理されおよび/または接触されること;
(ii) 少なくとも1つのエステル化段階は、180℃を超えない温度、特に150℃を超えない温度、特に120℃を超えない温度、好ましくは100℃を超えない温度、より好ましくは80℃を超えない温度、さらに好ましくは50℃を超えない温度で稼働されおよび/または実施されること;
(iii) 出発物質として使用される式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)は、少なくとも本質的に塩素化種を含まないこと、および、特に、式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)に基づいて、最大1ppm、特に最大0.5ppm、好ましくは最大0.1ppmの全塩素化種含量を有すること;
(iv) 少なくとも1つのエステル化段階は、金属ベースの触媒の非存在下で実施されること、
を特徴とする方法。
【請求項2】
反応生成物、特に、
ラジカルR
1が、式-(CH
2)
6-CH
3の直鎖状飽和脂肪族C
7-アルキルラジカル(すなわち、n-ヘプチルラジカル)を表す式(II)
CH
2[O-C(O)R
1]-CH[O-C(O)R
1]-CH
2[O-C(O)R
1] (II)
のトリカプリリンは、それらの組合せにおいて下記する特性(1)~(5)によって特徴づけられることおよび/または表すこと、および/または下記する生成物仕様を満たすこと:
(1) 特に欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(2) 欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(3) 欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:それぞれ反応生成物に基づいて、≧99%、特に≧99.2%、好ましくは≧99.5%;及び
(4) 特にDGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:それぞれ前記反応生成物に基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppm;及び
(5) 特にDGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:それぞれが前記反応生成物に基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppm;および/または、
前記方法は、上述したように実行され、および/または、特徴および/または条件(i)~(iv)、特に特徴および/または条件(i)~(iv)の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの組み合わせが、適用されおよび/または実行されること、ただし、反応生成物、特に、
ラジカルR
1が、式-(CH
2)
6-CH
3の直鎖状飽和脂肪族C
7-アルキルラジカル(すなわち、n-ヘプチルラジカル)を表す式(II)
CH
2[O-C(O)R
1]-CH[O-C(O)R
1]-CH
2[O-C(O)R
1] (II)
のトリカプリリンは、それらの組合せにおいて下記する特性(1)~(5)によって特徴づけられることおよび/または表すこと、および/または下記する生成物仕様を満たすことを条件とすること:
(1) 欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(2) 欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(3) 欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:それぞれ反応生成物に基づいて、≧99%、特に≧99.2%、好ましくは≧99.5%;及び
(4) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:それぞれが前記反応生成物に基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppm;及び
(5) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:それぞれが前記反応生成物に基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppmであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
式(I)
CH
2(OH)-CH(OH)-CH
2(OH) (I)
の1,2,3-プロパントリオール(グリセロール、グリセリン)またはその保護形態もしくは前駆体、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)が開始材料として使用されて反応し、および/またはトリカプリリンに変換されるものであること、
式(II)
CH
2[O-C(O)R
1]-CH[O-C(O)R
1]-CH
2[O-C(O)R
1] (II)
のトリカプリリンを、反応生成物として、生成するものであること、
ここで、式(II)において、ラジカルR
1は、式-(CH
2)
6-CH
3の直鎖状飽和脂肪族C
7-アルキルラジカル(すなわち、n-ヘプチルラジカル)を表すものであること、
ここで、この方法は、少なくとも1つのエステル化段階を、特にC
8-脂肪酸、特に直鎖飽和またはモノ-もしくはポリ-不飽和C
8-脂肪酸および/またはそれらの無水物および/またはエステル(好ましくはC
1-C
4-アルキルエステル)を使用するエステル化段階を、好ましくは式CH
3-(CH
2)
6-COOHのカプリル酸(すなわちn-オクチル酸または1-ヘプタンカルボン酸)および/またはその無水物またはエステル(好ましくはC
1-C
4-アルキルエステル)を使用する少なくとも1つのエステル化段階を含むこと;
ここで、この方法は、以下の特徴および/または条件(i)~(iv)のうちの少なくとも1つ、特に、以下の特徴および/または条件(i)~(iv)のうちの少なくとも2つの組み合わせ、好ましくは少なくとも3つの組み合わせ、より好ましくは4つすべての組み合わせによって特徴付けられること:
(i) 結果として生じる反応生成物中に存在するハロゲン化物ベースの不純物、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル、特にMCPDカプリル酸エステル)および脂肪酸のグリシドールエステル(特にグリシドールカプリル酸エステル)の好ましくは選択的な誘導体化が実行されること、且つ/または、結果として生じる反応生成物は、少なくとも1つの求核剤で、特にハロゲン化物ベースの不純物を除去することができる求核剤で、好ましくは亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO
3
-)、亜硫酸塩(SO
3
2-)、チオ硫酸水素塩(HS
2O
3
-)、チオ硫酸塩(S
2O
3
2-)、亜リン酸水素塩(H
2PO
3
-)、亜リン酸塩(HPO
3
2-)およびホスフィンならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される求核剤で、より好ましくは亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO
3
-)で、特に、ハロゲン化物ベースの不純物、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル)および脂肪酸のグリシドールエステルの好ましくは選択的な誘導体化のために、処理されおよび/または接触されること;
(ii) 少なくとも1つのエステル化段階は、180℃を超えない温度、特に150℃を超えない温度、特に120℃を超えない温度、好ましくは100℃を超えない温度、より好ましくは80℃を超えない温度、さらに好ましくは50℃を超えない温度で稼働されおよび/または実施されること;
(iii) 出発物質として使用される式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)は、少なくとも本質的に塩素化種を含まないこと、および、特に、式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)に基づいて、最大1ppm、特に最大0.5ppm、好ましくは最大0.1ppmの全塩素化種含量を有すること;
(iv) 少なくとも1つのエステル化段階は、金属ベースの触媒の非存在下で実施されること、
ここで、前記方法は、上述したように実施されること、および/または、前記特徴および/または条件(i)~(iv)、特に前記特徴および/または条件(i)~(iv)の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの組み合わせが適用されおよび/または実行されること、ただし、ただし、反応生成物、特に上記式(II)のトリカプリリンが、以下の特性(1)~(5)の組み合わせによって特徴づけられることおよび/または示されること、および/または、以下の生成物仕様を満たすことを条件とすること:
(1) 欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(2) 欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(3) 欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:それぞれ反応生成物に基づいて、≧99%、特に≧99.2%、好ましくは≧99.5%;及び
(4) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:それぞれが前記反応生成物に基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppm;及び
(5) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:それぞれが前記反応生成物に基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppmであること;
を特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、上述したように実施されること、および/または、前記特徴および/または条件(i)~(iv)、特に前記特徴および/または条件(i)~(iv)の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの組み合わせが適用されおよび/または実行されること、ただし、ただし、反応生成物、特に上記式(II)のトリカプリリンが、以下の特性(1)~(5)の組み合わせによって特徴づけられることおよび/または示されること、および/または、以下の生成物仕様を満たすことを条件とすること:
(1) 欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.1mgKOH/g;及び
(2) 欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.1mgKOH/g;及び
(3) 欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:それぞれ反応生成物に基づいて、≧99.5%、特に≧99.6%、好ましくは≧99.8%;及び
(4) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:前記反応生成物に基づいて≦0.1ppm;及び
(5) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:前記反応生成物に基づいて≦0.1ppmであること;
を特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのエステル化段階において、式CH
3-(CH
2)
6-COOHのカプリル酸および/またはその無水物もしくはエステル(好ましくはC
1-C
4-アルキルエステル)が使用されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記反応生成物はトリカプリリンであること;および/または、
前記式(II)におけるラジカルR
1は、直鎖状飽和脂肪族C
7-アルキルラジカルを表すこと;および/または、
少なくとも1つのエステル化段階において、オクタン酸(カプリル酸)および/またはその無水物および/またはエステル(好ましくはC
1-C
4-アルキルエステル)が使用されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、特徴および/または条件(i)~(iv)の少なくとも2つの組み合わせ、好ましくは少なくとも3つの組み合わせ、より好ましくは4つすべての組み合わせによって特徴付けられることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、特徴および/または条件(ii)~(iv)の少なくとも2つの組み合わせ、好ましくは少なくとも3つの組み合わせによって特徴付けられ、任意選択で特徴および/または条件(i)とさらに組み合わされることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、特徴および/または条件(i)と、特徴および/または条件(ii)~(iv)のうちの少なくとも2つとの組み合わせによって特徴付けられることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、特徴および/または条件(i)~(iv)のすべての組み合わせによって特徴付けられることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
全体的な方法および/または特に任意の前処理および/または後処理段階があればそれも含めた方法の全体は、180℃を超えない温度で、特に160℃を超えない温度で、特に150℃を超えない温度で、150℃を超えない温度で℃、好ましくは120℃を超えない温度で、稼働されることおよび/または実行されることを特徴とする請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、さらなる特徴および/または条件(v):
(v) 全体的な方法および/または特に任意の前処理および/または後処理段階があればそれも含めた方法の全体は、180℃を超えない温度で、特に160℃を超えない温度で、特に150℃を超えない温度で、150℃を超えない温度で℃、好ましくは120℃を超えない温度で、稼働されおよび/または実行されること、によって特徴づけられることを特徴とする請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
全体的な方法および/または特に任意の前処理段階および/または後処理段階があればそれも含めた方法の全体は、金属ベースの触媒の非存在下で、稼働されおよび/または実行されることを特徴とする請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、さらなる特徴および/または条件(vi)、
(vi)全体的な方法および/または特に任意の前処理段階および/または後処理段階があればそれも含めた方法の全体は、金属ベースの触媒の非存在下で、稼働されおよび/または実行されること;
によって特徴づけられることを特徴とする請求項1~13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのエステル化段階は、1段階のエステル化として、あるいは2段階または多段階のエステル化として実施されることを特徴とする請求項1~14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つのエステル化段階は、式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態もしくは前駆体、好ましくはソルケタールと反応するC
8-脂肪酸の無水物、特にカプリル酸無水物を用いて、1段階エステル化として実施されおよび/または実行されること、あるいは、その代わりとして、少なくとも1つのエステル化段階は、第1段階において、C
8-脂肪酸、特にカプリル酸および/またはそれらのエステルを使用して、式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態もしくは前駆体、好ましくはソルケタールと反応させ、次いで、それに続く段階においてエステル化、特に好ましくはC
8-脂肪酸の無水物、特にカプリル酸無水物を用いて、遊離および/または残存するOH-基のさらなるエステル化を実行しおよび/または実施される2段階または多段階のエステル化として実施されおよび/または実行されることを特徴とする請求項1~15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つのエステル化段階は、溶媒の非存在下および/または無溶媒で実施されおよび/または実行されることを特徴とする請求項1~16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つのエステル化段階は、5℃~95℃の範囲内、特に10℃~85℃の範囲内、好ましくは15℃~80℃の範囲内、より好ましくは20℃~75℃の範囲内、さらに好ましくは25℃~70℃の範囲の温度で実施されおよび/または実行されること;および/または、
少なくとも1つのエステル化段階は、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらに好ましくは約1バールの圧力で実施されおよび/または実行されることを特徴とする請求項1~17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つのエステル化段階が、触媒の非存在下で実施されおよび/または実行されるか、あるいはそれに代えて、少なくとも1つのエステル化段階が、触媒としての酵素の存在下および/または酵素ベースの触媒の存在下で少なくとも部分的に実施されおよび/または実行されること;
特に、少なくとも1回のエステル化段階の後に触媒がリサイクルされることを特徴とする請求項1~18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つのエステル化段階は、式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態もしくは前駆体、好ましくはソルケタールと反応するC
8-脂肪酸の無水物、特にカプリル酸無水物を使用する場合、触媒の非存在下で実施されおよび/または実行されること、若しくはそれに代えて、少なくとも1つのエステル化段階は、式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態もしくは前駆体、好ましくはソルケタールと反応させるC
8-脂肪酸、特にカプリル酸および/またはそれらのエステルを使用する場合、触媒として酵素の存在下でおよび/または酵素ベースの触媒の存在下で少なくとも部分的に実行されおよび/または実施されること;
特に、少なくとも1回のエステル化段階の後に触媒がリサイクルされることを特徴とする請求項1~19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つのエステル化段階は、少なくとも部分的に、触媒としての酵素の存在下および/または少なくとも部分的に酵素ベースの触媒の存在下で実施されおよび/または実行されること;
前記酵素は、合成酵素(リガーゼ)、カタラーゼ、エステラーゼ、リパーゼおよびそれらの組み合わせから選択されること;および/または、
前記酵素が、カンディダ・アンタークティカ、ムコール・ミエヘイ(リゾムコール・ミエヘイ)、サーモマイセス・ラヌギノサス、カンディダ・ルゴサ、アスペルギルス・オリゼー、シュードモナス・セパシア、シュードモナス・フルオレッセンス、リゾープス・デレマルおよびシュードモナス属並びにそれらの組み合わせに、好ましくはカンディダ・アンタークティカ、ムコール・ミエヘイ(リゾムコール・ミエヘイ)及びサーモマイセス・ラヌギノサスに、より好ましくはカンディダ・アンタークティカに由来すること;および/または、
前記酵素は、特に固定化形態で、特に担体、優先的には高分子担体、好ましくは高分子有機担体、より好ましくは疎水性を有する担体、さらに好ましくはポリ(メタ)アクリル樹脂系担体に固定化して使用されること;および/または、
前記酵素は、少なくとも1つのエステル化段階の後にリサイクルされること;および/または、
少なくとも1つのエステル化段階は、5℃~95℃の範囲内、特に10℃~85℃の範囲、好ましくは15℃~80℃の範囲内、より好ましくは20℃~75℃の範囲内、さらに好ましくは25℃~70℃の範囲内の温度で実施されおよび/または実行されること;および/または、
前記酵素は、すべての出発化合物の総量に基づいて、0.0001~25重量%の範囲内、特に0.001~20重量%の範囲内、好ましくは0.01~15重量%の範囲内、好ましくは0.05~10重量%の範囲内で使用されること;および/または、
前記酵素は、全出発化合物の総量に基づいて、1×10
-6~5mol%の範囲内、特に1×10
-5~2.5mol%の範囲、好ましくは1×10
-4~1.5mol%の範囲内、より好ましくは1×10
-3~1mol%の範囲内で使用されること;および/または、
少なくとも1つのエステル化段階は、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらに好ましくは約1バールの圧力で実施されおよび/または実行されることを特徴とする請求項1~20のいずれか1つに記載の方法。
【請求項22】
前記反応生成物、特にトリカプリリンは、以下の合成経路(A)~(F)のいずれかを経て製造されること:
(A)(第1の)合成経路(A)によれば、
式(I)
CH
2(OH)-CH(OH)-CH
2(OH) (I)
の1,2,3-プロパントリオール(グリセロール、グリセリン)は、好ましくは(特に上記に定義されるような)触媒としての酵素の存在下および/または酵素ベースの触媒の存在下で、好ましくは、ジグリセリド、より好ましくは1,3-ジグリセリドを生成するように、カプリル酸またはそのエステルと最初に反応すること、
次いで、好ましくは触媒の非存在下で、カプリル酸無水物と反応すること、
上記に定義されるような式(II)の反応生成物、特にトリカプリリンを生成すること;
さもなければ、
(B) (第2の)合成経路(B)によれば、
式(I)
CH
2(OH)-CH(OH)-CH
2(OH) (I)
の1,2,3-プロパントリオール(グリセリン、グリセリン)を、好ましくは(特に上記に定義されるような)触媒としての酵素の存在下および/または酵素ベースの触媒の存在下で、好ましくは、ジグリセリド、より好ましくは1,3-ジグリセリドを生成するように、カプリル酸またはそのエステルと最初に反応させること、
次いで、好ましくは触媒としての酵素の存在下でおよび/または酵素ベースの触媒(より好ましくは、例えばシュードモナス・セパシアリパーゼまたはブルクホルデリア・セパシアリパーゼのような、1,3-ジグリセリドの2位を位置選択的にエステル化するための酵素)の存在下で、カプリル酸またはそのエステルと反応させること、
上述した式(II)の反応生成物、特にトリカプリリンを生成すること;
さもなければ、
(C) (第3の)合計経路(C)によれば、
式(I)
CH
2(OH)-CH(OH)-CH
2(OH) (I)
の1,2,3-プロパントリオール(グリセリン、グリセリン)を、好ましくは触媒の非存在下で、カプリン酸無水物と反応させること、
上述したような式(II)の反応生成物、特にトリカプリリンを生成すること;
さもなければ、
(D) (第4の)合成経路(D)によれば、上記式(I)の1,2,3-プロパントリオールの保護形態又は前駆体、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)を、触媒の非存在下で、カプリン酸無水物と反応させ、
特に、脱保護反応、特に開環(好ましくは酸誘導)および任意にアセトンの除去が、上記式(I)の1,2,3-プロパントリオールの保護形態または前駆体の遊離OH-基のモノエステル化の後に実行され、次いでカプリル酸無水物によるさらなるエステル化が実行されること、
上記に定義されるような式(II)の反応生成物、特にトリカプリリンを生成すること;
さもなければ、
(E) (第5の)合成経路(E)によれば、上記式(I)の1,2,3-プロパントリオールの保護形態又は前駆体、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)を、(特に上記に定義されるような)触媒としての酵素の存在下でおよび/または酵素ベースの触媒の存在下で、カプリン酸またはそのエステルと反応させること、次いで、脱保護反応、特に開環(好ましくは酸誘導)およびアセトンの除去が行われること、好ましくはモノグリセリド、より好ましくは末端モノグリセリドおよび/または1-モノグリセリドが生成されること、
次いで、好ましくは触媒の非存在下で、カプリル酸無水物と反応すること、
上記に定義されるような式(II)の反応生成物、特にトリカプリリンを生成すること;
さもなければ、
(F) (第6の)合成経路(F)によれば、上記式(I)の1,2,3-プロパントリオールの保護形態又は前駆体、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)を、任意に、(特に上記に定義されるような)触媒としての酵素の存在下でおよび/または酵素ベースの触媒の存在下で、少なくとも1つの直鎖状モノ-またはポリ-不飽和(好ましくはモノ-不飽和)脂肪族C
8-脂肪酸および/またはそのエステルおよび/または無水物と、好ましくは少なくとも1つの直鎖状モノ-不飽和脂肪族C
8-脂肪酸および/またはそのエステルおよび/または無水物と、反応させること、好ましくは、直鎖状モノ-またはポリー不飽和(好ましくはモノ-不飽和)脂肪族C
8-脂肪酸のトリグリセリドを生成すること、
次いで、好ましくは少なくとも1つの水素化触媒の存在下で、トリグリセリドの直鎖状モノ-不飽和またはポリ-不飽和(好ましくはモノ-不飽和)脂肪族C
8-脂肪酸ラジカルの二重結合を水素化すること、
上記に定義されるような式(II)の反応生成物、特にトリカプリリンを生成すること、を特徴とする請求項1~21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1つに記載の方法により取得可能なまたは取得されるトリカプリリン。
【請求項24】
前記トリカプリリンは、
式(II)
CH
2[O-C(O)R
1]-CH[O-C(O)R
1]-CH
2[O-C(O)R
1] (II)
に対応すること、
ここで、式(II)において、ラジカルR
1は、式-(CH
2)
6-CH
3の直鎖状飽和脂肪族C
7-アルキルラジカル(すなわち、n-ヘプチルラジカル)を表すこと;
ここで、式(II)のトリカプリリンは、以下の特性(1)~(5)をそれらの組み合わせによって特徴とするものであることおよび/または示すものであること、および/または、以下の生成物仕様:
(1) 欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(2) 欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(3) 欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:それぞれトリカプリリンに基づいて、≧99%、特に≧99.2%、好ましくは≧99.5%;及び
(4) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:それぞれ前記トリカプリリンに基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppm;及び
(5) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:それぞれ前記トリカプリリンに基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppm、を満たすものであること、
を特徴とする請求項23記載のトリカプリリン。
【請求項25】
式(II)のトリカプリリンは、それらの組合せにおける以下の特性(1)~(5)によって特徴づけられることおよび/または示すものであることおよび/または以下の生成物仕様;
(1) 欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.1mgKOH/g;及び
(2) 欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.1mgKOH/g;及び
(3) 欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:それぞれトリカプリリンに基づいて、≧99.5%、特に≧99.6%、好ましくは≧99.8%;及び
(4) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm;及び
(5) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm、を満たすものであることを特徴とする請求項23または24記載のトリカプリリン。
【請求項26】
請求項23~25のいずれか1つに記載のトリカプリリンを、特に生理学的に許容される賦形剤とともに含むことを特徴とする医薬組成物、特に薬剤または医薬品。
【請求項27】
ヒトまたは動物の身体の疾患、特にエネルギー代謝の障害を伴う疾患、特に脳外傷、脳卒中、低酸素症などのケトン体代謝、心筋梗塞などの心血管疾患、再栄養症候群、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)、VL-FAODなどの脂肪代謝疾患、およびミトコンドリアチオラーゼ欠損症、ハンチントン病などのミトコンドリア病変、T細胞リンパ腫、星細胞腫、膠芽腫などの癌、HIV、関節リウマチや関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患などの消化管の疾患、特に潰瘍性大腸炎、クローン病、スフィンゴ糖脂質症などのリゾーム貯蔵病、特にニーマン・ピック病、糖尿病、片頭痛、てんかん、特に小児けいれん、化学療法の影響や副作用、の予防的および/または治療的処置のための、または予防的および/または治療的処置に使用するための請求項26記載の医薬組成物。
【請求項28】
アルツハイマー病、特に軽度から中等度のアルツハイマー病;片頭痛および偏頭痛;ならびにてんかん、特に小児けいれんの中から選択される人体の疾患の予防的および/または治療的処置のための、または、予防的および/または治療的処置における使用のための請求項26または27記載の医薬組成物。
【請求項29】
ヒトまたは動物の身体の疾患、特にエネルギー代謝の障害を伴う疾患、特に脳外傷、脳卒中、低酸素症などのケトン体代謝、心筋梗塞などの心血管疾患、再栄養症候群、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)、VL-FAODなどの脂肪代謝疾患、ミトコンドリアチオラーゼ欠損、ハンチントン病などのミトコンドリア病、T細胞リンパ腫、星細胞腫、膠芽腫などの癌、HIV、関節リウマチや関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患などの消化管の疾患、特に潰瘍性大腸炎およびクローン病、スフィンゴ糖脂質症などのリゾーム貯蔵病、特にニーマン・ピック病、糖尿病、片頭痛、てんかん、特に小児けいれん、化学療法の影響や副作用の予防的および/または治療的処置のための、または、予防的および/または治療的処置における使用のための、請求項23~25のいずれか1つに記載のトリカプリリン。
【請求項30】
アルツハイマー病、特に軽度から中等度のアルツハイマー病;片頭痛および偏頭痛;ならびにてんかん、特に小児けいれんの中から選択される人体の疾患の予防的および/または治療的処置のための、または、予防的および/または治療的処置における使用のための、請求項23~25のいずれか1つに記載のトリカプリリン。
【請求項31】
ヒトまたは動物の身体の疾患、特にエネルギー代謝の障害を伴う疾患、特に脳外傷、脳卒中、低酸素症などのケトン体代謝、心筋梗塞などの心血管疾患、再栄養症候群、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)、VL-FAODなどの脂肪代謝疾患、ミトコンドリアチオラーゼ欠損、ハンチントン病などのミトコンドリア病、T細胞リンパ腫、星細胞腫、膠芽腫などの癌、HIV、関節リウマチや関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患などの消化管の疾患、特に潰瘍性大腸炎およびクローン病、スフィンゴ糖脂質症などのリゾーム貯蔵病、特にニーマン・ピック病、糖尿病、片頭痛、てんかん、特に小児けいれん、化学療法の影響や副作用の予防的および/または治療的処置のための、または予防的および/または治療的処置のための医薬を製造するための、請求項23~25のいずれか1つにい記載のトリカプリリンの使用。
【請求項32】
アルツハイマー病、特に軽度から中等度のアルツハイマー病;片頭痛および偏頭痛;ならびにてんかん、特に小児けいれんの中から選択される人体の疾患の予防的および/または治療的処置のための、または、予防的および/または治療的処置のための医薬を製造するための、請求項23~25のいずれか1つに記載のトリカプリリンの使用。
【請求項33】
飢餓、ダイエットまたは低炭水化物栄養のような異化代謝状態の予防的および/または治療的処置のための、または、医薬の製造のための、請求項23~25のいずれか1つに記載のトリカプリリンの使用。
【請求項34】
請求項23~25のいずれ1つに記載のトリカプリリンを含む食品および/または栄養組成物もしくは食品組成物および/または食品生成物および/または医療用食品。
【請求項35】
栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、または筋力および/または持久力のあるスポーツサプリメントであることを特徴とする請求項34記載の食品および/または栄養組成物もしくは食品組成物および/または食品生成物および/または医療用食品。
【請求項36】
食品におよび/または栄養組成物もしくは食品組成物におよび/または食品生成物におよび/または医療用食品における請求項23~25のいずれか1つに記載のトリカプリリンの使用。
【請求項37】
食品および/または栄養組成物もしくは食品組成物および/または食品生成物および/または医療用食品が、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、または筋力および/または持久力のあるスポーツサプリメントであることを特徴とする請求項36記載の使用。
【請求項38】
添加剤または助剤、特に担体または賦形剤、可溶化剤、放出剤、表面処理剤として、輸送剤、潤滑剤、疎水化剤、フィルム形成剤もしくは保護剤、または粘度調整剤として、好ましくは担体または賦形剤として、医薬組成物、特に薬物または医薬品、食品、栄養組成物または食品組成物、食品生成物および/または医療用食品、ならびに化粧品組成物における請求項23~25のいずれか1つに記載のトリカプリリンの使用。
【請求項39】
医薬組成物、特に薬物または医薬における担体または賦形剤としての請求項23~25のいずれか1つに記載のトリカプリリンの使用。
【請求項40】
医薬組成物、特に薬物または医薬品、食品、栄養組成物または食品組成物、食品生成物および/または医療用食品あるいは化粧品組成物における、特に賦形剤と共に、特に生理学的に許容される賦形剤と共に、活性物質(すなわち有効成分)としての請求項23~25のいずれか1つに記載のトリカプリリンの使用。
【請求項41】
医薬組成物、特に薬物または医薬品における活性物質(すなわち有効成分、API)として、特に生理学的に許容される賦形剤とともに、請求項23~25のいずれか1つに記載のトリカプリリンの使用。
【請求項42】
医薬組成物、特に薬物または医薬品における活性物質(すなわち有効成分、API)として、特に生理学的に許容される賦形剤とともに、請求項23~25のいずれか1つに記載のトリカプリリンの使用。
【請求項43】
トリカプリリンを、特に上記に定義されるような式(II)のトリカプリリンを精製するための、および/または、トリカプリリンに、特に上記に定義されるような式(II)のトリカプリリンに存在するハロゲン化物ベースの不純物を好ましくは選択的に除去もしくは誘導体化するための求核剤の使用。
【請求項44】
前記求核剤は、好ましくは、亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO
3
-)、亜硫酸塩(SO
3
2-)、チオ硫酸水素塩(HS
2O
3
-)、チオ硫酸塩(S
2O
3
2-)、亜リン酸水素塩(H
2PO
3
-)、亜リン酸塩(HPO
3
2-)およびホスフィン、ならびにそれらの組み合わせから選択されるか、より好ましくは亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO
3
-)であること;および/または、
精製されるトリカプリリンは、前記求核剤で処理されることおよび/または求核剤と接触させること;および/または、
前記求核剤は、トリカプリリンを、ハロゲン化物ベース、特に塩素ベースの不純物から精製するために、および/または、トリカプリリンからのハロゲン化物ベース、特に塩素ベースの不純物、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル)、脂肪酸のグリシドールエステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される塩素ベースの不純物を除去するために使用されること;および/または、
ハロゲン化物ベースの不純物は、塩素ベースの不純物、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル)、脂肪酸のグリシドールエステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される塩素ベースの不純物であること、を特徴とする請求項43記載の使用。
【請求項45】
精製されるトリカプリリンは、求核剤で、特に好ましくは求核剤の水性溶液で処理されることおよび/または接触されること;および/または、
精製されるトリカプリリンは、不純物を除去するのに十分な反応条件下、特に反応温度および/または反応時間において、前記求核剤と処理されることおよび/または接触されること;および/または、
精製されるトリカプリリンは、10℃~175℃の範囲内、好ましくは25℃~120℃の範囲内、より好ましくは50℃~100℃の範囲内の温度で、および/または、0.001~50時間の範囲内、好ましくは0.01~30時間の範囲内、より好ましくは0.1~20時間の範囲内の時間で、前記求核剤と処理されることおよび/または接触されること、を特徴とする請求項43または44記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸ポリオールエステル、特に脂肪酸グリセロールエステルの技術分野と、関連する代謝および関連疾患の医学的治療概念に関する。
【0002】
特に本発明は、高品位の(トリオクタノイルグリセリド、トリカプリルグリセロール、トリオクタノイングリセロール、トリカプリロイルグリセロール、オクタン酸-1,2,3-プロパントリルエステル、トリカプリル酸グリセロール、トリカプリルグリセリン、トリカプリル酸グリセロール、トリオクタン酸グリセロール、トリカプリル酸グリセリル、カプリルトリグリセリド、トリカプリリン、トリカプリルグリセロールなどと同義語的に呼ばれる)トリカプリリンを製造する方法に関するものであり、ならびに、このようにして取得可能でありまたはこのようにして調製される本発明反応生成物(すなわち、トリカプリリン)に関するものであり、且つ、特に薬剤または医薬品のような医薬組成物における、または、食品における、食品生成物における食品または栄養組成物および/または医療用食品におけるそのそれぞれの使用および応用に関するものであり、さらにそのさらなる用途または使用に関するものである。
【0003】
さらに、本発明は、通常、生理学的に許容される賦形剤とともに、本発明の方法に従って取得可能であるかまたは製造される本発明反応生成物(すなわち、トリカプリリン)を含む医薬組成物、特に薬物または医薬品に関するものであり、さらにそれらのそれぞれの用途または使用に関するものである。
【0004】
さらに、本発明は、食品、栄養組成物または食品組成物に関するものであり、特に、本発明の方法に従って取得可能であるかまたは製造される本発明反応生成物(すなわちトリカプリリン)を含む食品サプリメント、機能性食品、新規食品、食品添加物、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、および筋力および/または持久力のあるスポーツサプリメントに関するものであり、さらに、それらの用途または使用に関するものである。
【0005】
さらに、本発明は、添加剤または助剤として、特に担体または賦形剤、可溶化剤、放出剤、表面処理剤、輸送剤、滑剤、疎水化剤、皮膜形成剤または保護剤、および粘度調整剤として、好ましくは担体または賦形剤として、医薬組成物、特に薬物または医薬品における、食品、栄養組成物または食品組成物における、食品生成物および/または医療用食品における、さらに化粧品組成物における、本発明の反応生成物(すなわち、トリカプリリン)の使用に関する。
【0006】
最後に、本発明はトリカプリリンを精製するための求核剤の使用にも関する。
【背景技術】
【0007】
ヒトのエネルギー代謝において、グルコースは短期的に利用可能なエネルギーキャリアであり、ミトコンドリアで水と二酸化炭素を放出することによってエネルギーに代謝される。肝臓のグリコーゲン貯蔵量は、夜間の睡眠中にすでに空になっている。しかし、特に人間の中枢神経系(CNS)と心臓は、恒久的なエネルギー供給を必要とする。
【0008】
グルコースに代わる生理的な物質で、主に中枢神経系に供給されるのは、いわゆるケトン体(同義語でケト体とも呼ばれる)である。
【0009】
ケトン体という用語は、特に3つの化合物の総称であり、主に異化代謝状態(空腹時、減量食、低炭水化物食など)で生成され、ケトーシスを引き起こす可能性がある。ケトン体という用語は、特にアセト酢酸(同義語としてアセト酢酸とも呼ばれる)およびアセトン、ならびに3-ヒドロキシ酪酸(以下、同義語としてβ-ヒドロキシ酪酸またはBHBまたは3-BHBとも呼ばれる)またはその塩(すなわち3-ヒドロキシ酪酸またはβ-ヒドロキシ酪酸)を含み、後者は前述の3つの化合物の中で最も重要である。3-ヒドロキシ酪酸またはその塩は、生理学的には(R)エナンチオマー、すなわち(R)3-ヒドロキシ酪酸(3-位のキラリティの中心を強調するため、同義語として(3R)3-ヒドロキシ酪酸とも呼ばれる)またはその塩として存在する。
【0010】
これらのケトン体は、空腹時や飢餓時に脂肪分解によって体内に蓄積された脂質からも生理的に大量に供給され、エネルギー源であるブドウ糖にほぼ完全に置き換わる。
【0011】
ケトン体は、肝臓でβ酸化に由来するアセチルコエンザイムA(=アセチルCoA)から生成される;それらは、ヒトの体内におけるアセチルコエンザイムAの運搬可能な形態を表すものである。しかし、ケトン体を利用するためには、まず脳と筋肉がケトン体をアセチルコエンザイムAに戻すのに必要な酵素を発現して適応させなければならない。特に空腹時には、ケトン体がエネルギー生産にかなり貢献する。たとえば、しばらくした後、脳は1日のグルコース量の3分の1しか摂取しなくてもやっていけるようになる。
【0012】
生理学的には、ケトン体は、脂肪酸分解の通常の中間生成物であるアセチルコエンザイムAの形で、活性化された2分子の酢酸から合成され、さらにアセチルコエンザイムAユニットと酵素HMG-CoA-シンターゼを用いて、中間生成物である3-ヒドロキシ-3-メチルーグルタリル-CoA(HMG-CoA)に拡張され、最後にHMG-CoA-リアーゼがアセト酢酸を切断する。これらの3つのステップは肝臓のミトコンドリア(すなわちリネンサイクル)のみで行われ、3-ヒドロキシ酪酸は最終的に細胞質でD-βーヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼによって生成される。また、HMG-CoAは、アミノ酸ロイシンの分解の最終産物であり、アセト酢酸は、アミノ酸フェニルアラニンとチロシンの分解の際に生成される。
【0013】
自発的な脱炭酸によってアセト酢酸はアセトンに変化し、糖尿病患者やダイエット中の人の呼気から時折感じられることがある。それは、体内でそれ以上利用されることはない。しかし、ケトン体に含まれるアセトンの割合は少ない。
【0014】
アセト酢酸は、このようにして、生理学的に適切な形態の3-ヒドロキシ酪酸または3-ヒドロキシ酪酸塩に還元的に変換されるが、生理学的に使用不可能なアセトンに分解することもでき、二酸化炭素が放出される。二酸化炭素は、重度のケトーシス、ケトアシドーシス(例えば、インスリンを補充していない1型糖尿病患者の)において検出可能であり、尿中および呼気中において嗅覚で感知できる。
【0015】
3-ヒドロキシ酪酸は現在、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩としてウェイトトレーニング分野で使用・販売されている。
【0016】
しかし、3-ヒドロキシ酪酸は、植物が3-ヒドロキシ酪酸を生成せず、動物生体内の3-ヒドロキシ酪酸が、ケトーシス状態の衰弱した動物の死体にのみ発生するため、3-ヒドロキシ酪酸を経口投与すると吐き気を催すことが、進化の観点からヒトには知られていないか、ごく少量しか知られていない。遊離酸とその塩の形の3-ヒドロキシ酪酸は、味も非常に苦く、激しい嘔吐と吐き気を引き起こす。
【0017】
さらに、患者、特に新生児だけでなく成人も、3-ヒドロキシ酪酸の塩を大量に永久に耐えることはできない。
【0018】
さらに、3-ヒドロキシ酪酸とその塩の血漿中半減期は非常に短く、数グラム摂取してもケトーシスは3~4時間しか持続しない。代謝性疾患の場合、これは生命を脅かす事態につながりかねない。
【0019】
したがって、このような代謝性疾患の治療の場合、脂肪酸ポリオールエステル、特に脂肪酸グリセロールエステル、特にいわゆる中鎖トリグリセリド(すなわち、いわゆるMCTまたはMCT油脂)が現在ケトジェニック療法に使用されており、すなわち特に対応するトリグリセリドからのカプロン酸、カプリル酸およびカプリン酸(すなわち、飽和直鎖C6-、C8-およびC10-脂肪酸)の代謝変換が意図されている。
【0020】
中鎖トリグリセリド(同義語でMCT、MCT脂肪、MCTオイルなどとも呼ばれる)は、5~12個の炭素原子、特に6~12個の炭素原子の直鎖飽和脂肪族テールを有する2~3個の脂肪酸、すなわち中鎖脂肪酸(MCFA)を有するトリグリセリドである。MCTを商業的に抽出するための豊富な食品源としては、パーム核油やココナッツオイルがある。
【0021】
従って、この定義によれば、中鎖トリグリセリド(MCT)は中鎖脂肪酸を含むトリグリセリドである。中鎖脂肪酸には特に、カプロン酸(C6:0)、カプリル酸(C8:0)、カプリン酸(C10:0)およびラウリン酸(C12:0)が含まれる。これらの酸は飽和脂肪酸で、主にココナッツオイル(約60%)やパーム核油(約55%)などの熱帯植物性脂肪やバターに含まれている。それらは、乳脂肪にもわずかに含まれている(約10%)。純粋なMCTオイルは自然界には存在せず、他のトリグリセリドとの混合物としてのみ存在する。MCTは、脂肪(3852kJ/100g)と比較すると、発熱量または食物エネルギー(3475kJ/100g)がやや低く、従来の長鎖脂肪(LCT=長鎖トリグリセリド)と比較すると、スモークポイントも低い。
【0022】
MCT油脂は、ヤシ油やパーム核油の加水分解、中鎖脂肪酸の分画、その後のグリセロールとのエステル化によって工業的に得られる。純粋なMCTオイルは無色から黄色を帯び、匂いも味も中性で、粘度は非常に低い。これは植物油(すなわち中性油またはoleum neutrale)として表される。
【0023】
1991年ドイツ薬局方第10版(すなわちDeutsches Arzneibuch 10またはDAB 10)および対応する欧州薬局方(Ph. Eur.、特にPh. Eur. 10.0、モノグラフNo.0686「トリグリセリド、中鎖[Triglycerida saturata medium]」)は以下の通りである:カプリル酸C8を50~80%、カプリン酸C10を25~45%、ラウリン酸C12を最大3%、カプロン酸C6を最大2%(参照:医薬品実務のハガーのハンドブック, 第5版,ISBN 978-3-642-63389-8,1059ページ続き)。
【0024】
MCTは幅広い用途と剤形がある。MCT油脂は1995年以来工業的に生産されており、その特異な特性により様々な用途に使用されている。1994年に米国食品医薬品局(FDA)がGRAS申請(一般に安全と認められる申請)を受理したことで、MCTは、特に食品分野で関心を集めるようになった。工業的に得られるMCT油脂は、その物理的特性から、化粧品(軟膏、クリーム、バスオイルなど)や医薬品(錠剤、コーティング錠など)の製造にも応用され、特に担体や賦形剤、可溶化剤、離型剤、表面処理剤、輸送剤、潤滑剤、疎水化剤、皮膜形成剤、保護剤、粘度調整剤としての役割を果たす。さらに、その代謝の特殊性から、ダイエット食品(MCTオイルやMCTマーガリンなど)や人工栄養生成物(経腸・非経口など)としても利用されている。これらの生成物は、ドイツの栄養生成物条例(いわゆるドイツの“Diaetverordnung”)によれば、特別な医療目的のための栄養食品(例えばバランスの取れた食事)に分類される。
【0025】
また、MCTの生理学的特性と代謝についても高い関心が寄せられている: 脂肪酸鎖長が短いため、MCT脂肪は比較的水溶性であり、胆汁酸がなくても代謝される。また、その構造は、膵リパーゼ(すなわち膵臓の酵素)による切断を必要としない。ケトン体は、リンパ系を迂回して血液中に直接肝臓に運ばれ、そこで従来の脂肪よりも優先的に酸化され、ケトン体の生成が促進される。中鎖脂肪酸(MCFA)のミトコンドリア(すなわち脂肪酸の酸化部位)への輸送は、カルニチンとは無関係に起こる。1日の耐容摂取量は個人差があり、約50~約100g以上のMCT脂肪である。副作用(下痢、けいれん、頭痛など)を避けるため、1日あたり約20gのMCT脂肪から始めるのが一般的である。この量は、1日5~10gずつ徐々に増やすことができる。MCT油脂を使った食事療法を行う場合、脂溶性ビタミンと必須脂肪酸(オメガ3やオメガ6など)の補給が不可欠である。脂溶性ビタミンは、MCT油脂を用いると十分に吸収される。
【0026】
その代謝特性から、MCT脂肪は様々な臨床適応症の食事療法における栄養療法の貴重な要素となっている。
【0027】
中鎖トリグリセリドは水溶性に優れ、従来の長鎖脂肪よりも素早く体内に吸収されるため、1950年代に吸収不良症候群の食事療法として臨床栄養学で初めて使用された。リンパ管拡張症(リンパ管の拡張)、ウィップル病(まれな感染症)、気胸(胸腔内のリンパ液の貯留)の場合、MCT脂肪はリンパ管のうっ血を緩和するのに役立つ。未熟児の場合、消化器官がまだ十分に発達していないため、体重増加を達成するために中鎖脂肪が使用される。
【0028】
MCT脂肪は膵酵素とは無関係に代謝され、胃リパーゼで分解されるだけでよいため、酵素の補給で所期の効果が得られない場合、顕著なステアトルレア(脂肪便または糞便中の脂肪の存在)を伴う外分泌膵機能不全の症例にその使用が適応される。外分泌膵不全は、例えば慢性膵炎や嚢胞性線維症で起こる。さらに、膵サプリメントとの併用も有用である。MCT油脂のもう一つの古典的な応用分野は、短腸症候群である。短腸症候群では、切除した腸の範囲や部位によって、特に食用油脂の消化障害が見られる。大腸が保たれていれば、中鎖脂肪酸は十分に吸収され、従来の脂肪の代替となる。長鎖脂肪酸(LCHAD)および超長鎖脂肪酸(VLCAD)のβ-酸化異常のような稀な先天性代謝異常では、中鎖脂肪酸は必須のエネルギー源である。MCT脂肪はまた、主に消化管の様々な疾患に対する人工栄養(すなわち経腸および非経口)にも使用されている。
【0029】
MCT油脂は従来の油脂よりもケト原性が高いため、特にLCT油脂の部分的な代替として、ケトン食(KD)にも使用されている。ケトン食は、薬物抵抗性てんかんや先天性の希少代謝疾患(ピルビン酸脱水素酵素欠損症、GLUT1欠損症など)に応用されている。古典的なケトン食の栄養素の比率は、通常、脂肪が3~4、炭水化物とタンパク質が1である。MCT脂肪を用いたケトン食は、MCT脂肪の高いケト原性により、脂肪と炭水化物およびタンパク質の比率を炭水化物に有利にシフトさせることができるため、小児および成人において、古典的な食事療法に代わる有望な食事療法と考えられる。ケトン食は、脳腫瘍、パーキンソン病、片頭痛、アルツハイマー病、NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患/肝炎)の治療にも用いられている。MCT油脂の代謝特性と従来の油脂に比べ低いエネルギー含有量から、MCT油脂は体重管理やメタボリックシンドロームの分野でも使用されている。
【0030】
様々な疾病の栄養療法におけるMCT油脂の使用は、スポーツ栄養における使用とは区別されるべきであり、MCT油脂は高速エネルギー供給源として知られ、主に持久系スポーツで使用される。
【0031】
中鎖脂肪酸は、ケトアシドーシスのリスクがある場合、および中鎖脂肪酸の酸化障害(MCAD欠損症、MCADDまたは中鎖アシルーCoAデヒドロゲナーゼ欠損症)の場合には禁忌を示すものである。発煙点が低いため、中鎖脂肪の耐熱性は限定的である。
【0032】
具体的には、特に興味深い脂肪酸ポリオールエステル、特に脂肪酸グリセロールエステルは、(トリオクタノイルグリセリド、トリカプリルグリセロール、トリオクタノイングリセロール、トリカプリロイルグリセロール、オクタン酸-1,2,3-プロパントリルエステルとも呼ばれる、トリカプリル酸グリセロール、トリカプリルグリセロール、トリカプリル酸グリセロール、トリオクタン酸グリセロール、トリカプリル酸グリセリル、カプリルトリグリセリド、トリカプリリン、トリカプリルグリセロールなどと同義語的に呼ばれる)トリカプリリンである。トリカプリリンは、カプリル酸のトリグリセリドで、通常はカプリル酸のグリセロールによるエステル化によって製造される。トリカプリリンは無色透明から淡黄色の液体である。アセトン/エタノール(95%)から結晶を形成する。トリカプリリンは無臭である。
【0033】
トリカプリリンは、例えば、中性の担体または賦形剤として、吸収促進剤として、活性薬剤の可溶化剤として、医薬製剤などに使用される。また、水溶性薬物を組み込むための油中水型マルチプルエマルションの調製や、安定したマイクロカプセルを得るための油性相としても使用される。トリカプリリンはまた、外用クリームやローション、化粧品製剤のビークルとしても作用する。また、優れたエモリエント効果と肌をなめらかにする特性を持つ浸透性を高める脂質ベースとしても使用される。べたつかない成分で粘度が低いため、のびが非常に良い。皮膚透過性があるにもかかわらず、トリカプリリンは自然な皮膚呼吸を妨げないため、ベビーオイル、マッサージオイル、フェイスマスクなどに使用されている。優れた分散剤であり、カラー化粧品の可溶化剤、湿潤剤、バインダーとして働く。天然油や界面活性剤と混和しやすいため、トリカプリリンは二相泡風呂の脂肪成分としても使用される。さらに、有機および無機フィルター剤との相性の良さから、日焼け止めクリームやオイルにも使用されている。また、香水やフレグランスの固定剤としても使用される。
【0034】
しかしながら、上述したように、脂肪酸ポリオールエステル、特に脂肪酸グリセロールエステル、特にいわゆる中鎖トリグリセリド(MCT)、そしてとりわけトリカプリリンもまた、医薬組成物の有効成分または活性化合物として使用されてきた。
【0035】
具体的には、トリカプリリン含有組成物は、軽度から中等度のアルツハイマー病に伴う代謝過程の障害の臨床的食事管理のための医療用食品として、商標登録「Axona」に基づいて以前販売されていた。市販されている製剤は、パーム核油を分画したトリカプリリンからなる。消化中、カプリル酸トリグリセリドはケトン体に分解され、脳の代替エネルギー源となる。アルツハイマー病では、脳の正常なエネルギー源(すなわちグルコース)を利用する能力が損なわれているという事実に基づいて使用されている。
【0036】
その結果、従来技術では、脂肪酸ポリオールエステル、特に中鎖トリグリセリド(MCT)のような脂肪酸グリセロールエステル、特にトリカプリリンに対する高い需要が存在し、関心が高まっている。とりわけ、製薬および食品業界では、活性物質が多く、不純物、特に有害不純物が少ない高級脂肪酸ポリオールエステル、特に高級脂肪酸グリセロールエステルに対する需要が高まっている。
【0037】
しかしながら、脂肪酸ポリオールエステル、特に脂肪酸グリセロールエステル、例えば中鎖トリグリセリド(MCT)、特にトリカプリリンだけでなく他のものも製造するだけでなくその後の多段精製処理(高温での上記多段蒸留)を含む従来の製造方法は、特に必要とされる高い処理温度、使用される出発原料および試薬、特にハロゲン含有物質(例えば、塩酸HClや、エステル化プロセスで使用される金属ベースの触媒に由来するもの)により、相対的に高いレベルの不純物および副生成物を生じる。特に、酸価および水酸価が低く、高いエステル化度を有するトリグリセリドが要求される場合、必須の大幅なエステル化条件、特に180℃を超え230℃までの高温、必要な後続の多段精製処理(高温での上記多段蒸留)、および金属ベースの触媒の使用は、高含量の有毒な副生成物および不純物、特に有毒なハロゲン化物ベースの副生成物および不純物の形成を生じる。
【0038】
とりわけ、脂肪酸ポリオールエステル、特に脂肪酸グリセロールエステルを製造し、その後の多段精製処理(高温での上記多段蒸留)を含む従来の製造方法は、通常、比較的高レベルの不純物や副生成物、特に例えば遺伝毒性を有する脂肪酸のグリシドールエステル(同義語として脂肪酸のグリシジルエステルまたは単に脂肪酸のGEまたはGEのみとも呼ばれる)および腎毒性を有するモノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル(同義語としてMCPD脂肪酸エステルまたは単にMCPDエステルとも呼ばれる)、 特に3-モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル(3-MCPDE脂肪酸エステルまたは3-MCPDエステル)および2-モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル(2-MCPD脂肪酸エステルまたは2-MCPDエステル)ような有毒な不純物や副生成物も生成する。
【0039】
以下の例示的な反応スキームは、非限定的な例として選択されたトリグリセリドトリカプリリンについて、前述の3つの有毒な副生成物、すなわち3-MCPD脂肪酸エステル、2-MCPD脂肪酸エステルおよびグリシドール脂肪酸エステルの形成を示し、この形成は、製造工程に由来する塩素含有物質の存在下で、脂肪酸トリグリセリド(例えばトリカプリリン)に高温(例えば200℃以上の温度)が適用された場合に起こる。3-クロロ-1,2-プロパンジオールという物質は、それぞれ塩素含有物質または塩化物の存在下で3-MCPDに反応する場合に、グリセリンから生じる。
【0040】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0041】
特に、医薬品や栄養剤の用途に関しては、不純物プロファイルのコントロールは極めて重要であり、特に3-MCPD脂肪酸エステル、2-MCPD脂肪酸エステル、グリシドール脂肪酸エステルのような、既知の有毒副生成物については必須である。
【0042】
従来の油脂のエステル化/縮合方法の間に起こる過酷なプロセス条件などにより、このような望ましくない有毒な副生成物が生成されることは、数十年前からよく知られていたが、製造プロセスを改良または変更することによって、このような過酷な条件を回避しようとする試みはなされてこなかった。なぜなら、バイオベース触媒を使用し、エステル化温度が低いマイルドなエステル化条件は、例えば前述の3つの有毒な副生成物、すなわち3-MCPD脂肪酸エステル、2-MCPD脂肪酸エステルおよびグリシドール脂肪酸エステルのような有毒な副生成物の生成を減少させるが、同時に、低い転化率および収率で、望ましくないほど高い酸価および水酸価を有し、比較的低いトリグリセリド含量を有するトリグリセリドをもたらすだけであることが知られているからである。
【0043】
その結果、望ましくない有毒な副生成物の生成を避けようとする代わりに、過酷なエステル化条件下(特に180℃を超え230℃までの高温、金属ベースの触媒の使用など)で得られた所望の最終生成物から、これらの望ましくない有毒な副生成物を除去するために、むしろコスト高で負担の大きい前処理および/または後処理方法が実施される。そのような負担の大きい後処理方法は、特に、例えば、KOHのような強アルカリ性試薬の添加、多段蒸留カスケード、強アルカリ性水溶液による熱処理等からなり(例えば、WO2019/038320A1、WO2014/012548A1等)、これらの後処理方法は、そのような生成物品質、および全体的な収率および効率にも影響を及ぼし、悪化させる。例えば、WO2021/070209A1は、トリグリセリドを精製するための複雑な多段抽出プロセスを開示しており、生理食塩水/有機溶媒二相抽出システムを塩素化有機溶媒も用いている。
【0044】
しかし、このような後処理方法では、望ましくない有毒な副産物の最後の痕跡まで除去されることはほとんどなく、最終生成物に残ってしまう。これは、脂肪酸ポリオールエステル、特に脂肪酸グリセロールエステル、例えばトリカプリリンのようなMCTの高用量を医薬および栄養用途(特に非経口用途の場合)に適用する場合に特に危険であり、このような望ましくない微量の望ましくない有毒な副生成物の人体への蓄積につながり、その結果、法律で規制されている望ましくない有毒な副生成物の認可された閾値レベルも超えてしまう。
【0045】
さらに、望ましくない有毒な副生成物の後追い的または遡及的な除去のみを目的とする、このようなコスト高で負担の大きい後処理方法もまた非効率的である。なぜなら、このような後処理方法は、しばしば生成物の望ましくない巻き込みを引き起こし、また、エステル化度や他の不純物の残存量(例えば、全ハロゲン化物質含有量や全酸含有量)のような生成物品質や生成物純度を向上させたり影響を与えたりしないからである。
【0046】
例えば、欧州連合(EU)は、それぞれの法的規制(EU規則2020/1322号および2018/290号など)により、食品用途、特に乳幼児用途について、このような有毒な副産物や不純物の濃度を厳しく制限している。例えば、乳児用液体粉ミルク、フォローオン粉ミルク、乳児・幼児用特別医療用食品、幼児用粉ミルクに含まれる腎毒性のある3-MCPD脂肪酸エステルの最大許容含有量は15mg/kg(すなわち15ppm)のみであるが、同じ製剤に含まれる遺伝毒性のあるグリシドール脂肪酸エステルの最大許容含有量はさらに6.0mg/kg(すなわち6.0ppm)のみである。その結果、栄養用途におけるこれらの有毒副生成物の許容暴露レベルは非常に制限されている。
【0047】
従って、特にMCTオイルのような1日の総摂取量が10g/日をはるかに超えるようなモノグラフ化された原薬(すなわち医薬品有効成分)の場合、最大暴露レベルを常に下回るようにすることは困難である。非経口投与の場合、有害物質が直接人体に入る可能性があるため、これはさらに難しい。
【0048】
脂肪酸ポリオールエステル、特に脂肪酸グリセロールエステル、例えば中鎖トリグリセリド(MCT)、特にトリカプリリンだけでなく他のものの永続的あるいは生涯にわたる投薬は、100g/日までの投与量あるいは摂取量を含む。そのためには、特に純度の高いグレードが必要である。栄養学的用途とは対照的に、医薬品用途の場合、重篤な疾病に罹患している患者がこの薬を服用することになり、その健康状態はいずれにせよ損なわれているため、毒性不純物の観点からも、患者の許容レベルは非常に低い。
【0049】
従って、高い純度または最小レベルの副生成物および不純物をそれぞれ有し、同時に高いエステル化度および良好な安定性、特に貯蔵安定性および高い有効成分含量を示し、特に追加のコスト集約的で負担の大きい後処理操作を必要とせずに、高品位の脂肪酸ポリオールエステル、特に脂肪酸グリセロールエステル、例えばMCT(例えばトリカプリリン)等を直接製造する効率的な製造方法を構想することが望ましいであろう。
【0050】
その結果、従来技術では、効率的な生産工程を見つける試みが欠けていたわけではなく、既存の工程の効率や性能を改善することはできなかった。しかし、これまでのところ、先行技術では効率的な製造工程は考案されていない。また、このような高級脂肪酸ポリオールエステル、特に脂肪酸グリセロールエステル、例えばMCT(例えばトリカプリリン)等へのアクセスは、先行技術によれば不可能であるか、容易ではない。
【0051】
従って、本発明の根底にある問題は、脂肪酸のトリグリセリド(すなわち、脂肪酸グリセロールトリエステル)、とりわけトリカプリリン、特に高純度度を有するトリグリセリドを製造するための効率的な方法を提供することであり、ここで、先行技術の前述の欠点および/または障害は、少なくとも部分的に回避されるべきであり、あるいは少なくとも本質的に克服されるべきである。
【0052】
このような製造方法は、特に、それぞれの脂肪酸ポリオールエステル、特に脂肪酸グリセロールエステル、例えばMCT(特にトリカプリリン)等を、効率的な方法で、特に改善された品質で、かつ有毒な副生成物または不純物を多量に含まずに入手可能にするものであるべきであり、このような製造方法は、工業的なレベル、特に大規模なレベルで実現可能であるべきであり、かつ先行技術の工程で想定されるような過剰でコスト集約的な後処理を伴わないものであるべきである。
【0053】
全く驚くべきことに、本出願人は、製造方法において:(i)結果として生じる反応生成物に存在するハロゲン化物ベースの不純物の好ましくは選択的な誘導体化、および/または、結果として生じる反応生成物を、少なくとも1つの求核剤で処理されることまたは接触させること、(ii)180℃を超えない温度でエステル化を行うこと、(iii)出発物質として、グリセロールまたはその保護形態もしくは前駆体、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)を使用すること、(iv)金属ベース触媒の非存在下でのエステル化を稼働することおよび/または実行すること;という条件の少なくとも1つを適用する場合、特に高純度のトリカプリリンが、とりわけ経済的かつ工業的に実現可能な方法で、直接的かつ効率的に製造できることを見出した。これらの条件の少なくとも1つまたはそれらの組み合わせの適用が、トリカプリリンの製造の大幅な改善につながることは予見できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0054】
したがって、上述した課題を解決するために、本発明は、本発明の第1の態様によれば、請求項1に記載の、特に高純度のトリカプリリンを製造するための方法を提案する;さらに、本発明方法の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、それぞれの従属請求項の主題である。
【0055】
さらに、本発明は、本発明の第2の態様によれば、それぞれの独立請求項(すなわち請求項23)に従う本発明の方法によって取得可能であるかまたは取得される本発明のトリカプリリンに関するものであり、それぞれの独立請求項(すなわち請求項24)に従う本発明のトリカプリリンに関するものである;さらに、本発明のこの態様の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、それぞれの従属請求項の主題である。
【0056】
同様に、本発明は、本発明の第3の態様によれば、それぞれの独立請求項(請求項26)による医薬組成物、特に薬剤または医薬品に関する;さらに、本発明のこの態様の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、それぞれの従属請求項の主題である。
【0057】
さらに、本発明は、本発明の第4の態様によれば、それぞれの独立請求項(請求項29および請求項30)に従い、ヒトまたは動物の身体の疾患の予防的および/または治療的処置のための、または予防的および/または治療的処置における使用のための、本発明のトリカプリリンにも関する。
【0058】
さらに、本発明は、本発明の第5の態様によれば、それぞれの独立請求項(請求項31~33)に従い、ヒトまたは動物の身体の疾患の予防的および/または治療的処置のための、または予防的および/または治療的処置のための医薬を製造するための、本発明のトリカプリリンに関する。
【0059】
さらに、本発明は、本発明の第6の態様によれば、それぞれの独立請求項(請求項34)による食品および/または栄養もしくは食品組成物、および/または、食品生成物および/または医療用食品に関するものである;さらに、本発明による食品および/または栄養もしくは食品組成物、および/または、食品生成物および/または医療用食品の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、それぞれの従属請求項の主題である。
【0060】
同様に、本発明は、本発明の第7の態様によれば、それぞれの独立請求項(請求項36)による本発明のトリカプリリンの使用に関する;さらに、本発明による使用の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、それぞれの従属請求項の主題である。
【0061】
また、本発明は、本発明の第8の態様によれば、さらに、それぞれの独立請求項(請求項38~42)に従う本発明のトリカプリリンの使用に関する。
【0062】
最後に、本発明は、本発明の第9の態様によれば、それぞれの独立請求項(請求項43)による、トリカプリリンを精製するための、および/または、トリカプリリン中に存在するハロゲン化物ベースの不純物を好ましくは選択的に除去もしくは誘導体化するための求核剤の使用に関するものである;さらに、本発明による使用の特に特別なおよび/または有利な実施形態は、それぞれの従属請求項の主題である。
【0063】
以下の特徴、実施形態、利点等は、繰り返しを避ける目的で本発明の一態様に関してのみ以下に記載されているが、当然、本発明の他の態様にも適宜適用され、このことは別途言及を必要としないことは言うまでもない。
【0064】
さらに、本発明の個々の態様および実施形態は、本発明の他の態様および実施形態との任意の組み合わせにおいても開示されているとみなされ、特に、すべての特許請求の範囲の参照から生じる特徴および実施形態の任意の組み合わせも、結果として生じるすべての組み合わせの可能性に関して広範に開示されているとみなされることは言うまでもない。
【0065】
以下に提供される全ての相対的または百分率の重量ベースのデータ、特に相対的な量または重量データに関して、本発明の範囲内で、これらは、特に以下に定義されるように、全ての成分または成分を含めて、それぞれ常に100重量%または100重量%に加算されるように、当業者によって選択されることにさらに留意すべきである;しかしながら、このことは、当業者にとって自明である。
【0066】
さらに、当業者は、必要に応じて、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の範囲指定から逸脱することができる。
【0067】
さらに、以下に規定するすべての値またはパラメータなどは、原則として、標準化されたまたは明示的に規定された測定方法、あるいは当業者に周知の決定方法または測定方法で決定または同定できることが適用される。
【0068】
このことを述べた上で、以下、本発明をより詳細に説明する。
【0069】
従って、本発明の主題は、本発明の第1の態様によれば、トリカプリリン(すなわち、トリオクタノイルグリセリドまたはトリカプリルグリセロール)を、特に高純度で製造するための方法であり、
ここで、式(I)
CH2(OH)-CH(OH)-CH2(OH) (I)
の1,2,3-プロパントリオール(グリセロール、グリセリン)またはその保護形態または前駆体、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)を出発物質として使用して反応させ、および/または、トリカプリリンに変換させ、
反応生成物として、
式(II)
CH2[O-C(O)R1]-CH[O-C(O)R1]-CH2[O-C(O)R1] (II)
のトリカプリリンを生成すること、
ここで、式(II)において、ラジカルR1が、式-(CH2)6-CH3の直鎖状飽和脂肪族C7-アルキルラジカル(すなわち、n-ヘプチルラジカル)を表すものであること、
ここで、この方法は、少なくとも1つのエステル化段階、特にC8-脂肪酸、特に直鎖飽和またはモノ-もしくはポリ-不飽和C8-脂肪酸および/またはそれらの無水物および/またはエステル(好ましくはC1-C4-アルキルエステル)を使用するエステル化段階、好ましくは式CH3-(CH2)6-COOHのカプリル酸(すなわちn-オクチル酸または1-ヘプタンカルボン酸)および/またはその無水物またはエステル(好ましくはC1-C4-アルキルエステル)を使用する少なくとも1つのエステル化段階を含むこと;
ここで、この方法は、
(i)結果として生じる反応生成物中に存在するハロゲン化物ベースの不純物、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル、特にMCPDカプリル酸エステル)および脂肪酸のグリシドールエステル(特にグリシドールカプリル酸エステル)の選択的誘導体化を行うこと、および/または、結果として生じる反応生成物を少なくとも1つの求核剤で、特にハロゲン化物系不純物を除去できる求核剤で、好ましくは亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO3
-)、亜硫酸塩(SO3
2-)、チオ硫酸水素塩(HS2O3
-)、チオ硫酸塩(S2O3
2-)、亜リン酸水素塩(H2PO3
-)、亜リン酸塩(HPO3
2-)およびホスフィンならびにそれらの組合せからなる群から選択される求核剤で、より好ましくは亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO3
-)で、特に、ハロゲン化物ベースの不純物、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル)および脂肪酸のグリシドールエステルの好ましくは選択的な誘導体化のために、処理されおよび/または接触させること;
(ii) 少なくとも1つのエステル化段階は、180℃を超えない温度、特に150℃を超えない温度、特に120℃を超えない温度、好ましくは100℃を超えない温度、より好ましくは80℃を超えない温度、さらに好ましくは50℃を超えない温度で稼働されおよび/または実施されること;
(iii)出発物質として使用される式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)は、少なくとも本質的に塩素化種を含まないこと、特に、式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)を基準として、最大1ppm、特に最大0.5ppm、好ましくは最大0.1ppmの全塩素化種含量を含むこと;
(iv)少なくとも1つのエステル化段階は、金属ベースの触媒の非存在下で実行されること;
という特徴および/または条件(i)~(iv)のうちの少なくとも1つ、特に、上記の特徴および/または条件(i)~(iv)のうちの少なくとも2つの組み合わせ、好ましくは少なくとも3つの組み合わせ、より好ましくは4つすべての組み合わせによって特徴づけられる。
【0070】
上述したように、本出願人は、極めて驚くべきことに、トリカプリリンがこのようにして効率的かつ経済的な方法で、特に高純度度、特に医薬用途または臨床用途ならびに栄養用途に適切な品質で製造され得ることを発見した。
【0071】
こうして、トリカプリリンは、本発明による製造工程を経て、初めて直接かつ効率的な方法で、このような高純度で入手できるようになった。
【0072】
とりわけ、また非常に驚くべきことに、前述の特徴および/または条件(i)~(iv)の最後の1つを適用する場合、例えば、遺伝毒性を有する脂肪酸のグリシジルエステルや、3-MCPD脂肪酸エステルおよび2-MCPD脂肪酸エステルのようなモノクロロプロパンジオールの腎毒性を有する脂肪酸エステルのような、有毒な副生成物および不純物の形成を効率的に回避するか、または少なくとも先験的に最小限に抑えることができることから、先行技術で想定されているような、除去のための負担とコストのかかる後処理作業は必要ない。有害な副産物や不純物の潜在的な痕跡は、以下に詳述するように、前述の基準(i)によって容易かつ効率的に除去される。
【0073】
というのも、驚くべきことに、出願人が予想外の方法で見出したように、上記の特徴および/または条件(i)~(iv)の少なくとも1つ、特に少なくとも2つの組み合わせ、好ましくは少なくとも3つの組み合わせ、より好ましくは4つすべての組み合わせを適用すると、高純度度のトリカプリリンが、すなわちこの物質の特定の反応経路に関係なく得られるからである。
【0074】
とりわけ、絶対に驚くべきことに、上記特徴および/または条件(i)~(iv)の少なくとも1つ、特に少なくとも2つの組み合わせ、好ましくは少なくとも3つの組み合わせ、より好ましくは4つすべての組み合わせを適用すると、高純度度を有するトリカプリリンが得られ、これは同時に5つの純度特性(1)~(5)、いわゆる;(1)非常に低い酸価(AV)、(2)非常に低い水酸価(OHV)、(3)非常に高いトリグリセリド含有量、(4)非常に低いMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル)の総含有量、(5)非常に低い脂肪酸のグリシドールエステルの総含有量;の組み合わせを統一する。このような純度特性(1)~(5)の組み合わせは、これまでの先行技術では両立しないか、実現不可能と考えられていた。しかしながら、出願人が驚くべきことに見出したように、上記の特徴および/または条件(i)~(iv)の少なくとも1つ、特に少なくとも2つの組み合わせ、好ましくは少なくとも3つの組み合わせ、より好ましくは4つすべての組み合わせを適用する場合、この純度仕様は、特定の合成経路とは無関係に到達することができる。
【0075】
この点で、上記出願人による以下の知見は非常に驚くべきものである: 先行技術において、高度の不純物および副生成物(主にグリシドール脂肪酸エステルおよびMCPD脂肪酸エステルに起因する)の形成の原因とみなされるのは、主に高温の後処理手順、特に多段精製処理(高温での多段蒸留以上)である;なぜなら、熱または高温の適用下での精製処理は、これらの有毒な副生成物をもたらすことが知られているからである。しかし、本出願人が現在驚くべきことに発見したように、脂肪酸ポリオールエステル、特に脂肪酸グリセリンエステル、例えば中鎖トリグリセリド(MCT)、特にトリカプリリンだけでなく他のもののデノボ合成それ自体は、必要な後続の多段精製後処理(高温での多段蒸留以上)とは別に、以下の場合に、これらの望ましくない有毒な副生成物を多量に生成する、さらに、低酸価および低水酸価でありながら高いエステル化度を達成するために、大幅なエステル化条件、特に180℃を超え230℃までの高温と金属ベースの触媒の使用が適用される。したがって、これらの有毒な副生成物に関する回避の意図は、製造ラインのかなり早い段階から(すなわち、合成自体に代わって、またグリセロールベースの出発原料の純度グレードの上記選択において)開始されなければならないという、出願人による発見は全く驚くべきものである。
【0076】
天然油脂、特にパーム油においては、有害な副生成物、特にMCPDEやグリシドール脂肪酸エステルの含有量を低減するために、最適化された精製条件を見出すことに過去10年間多くの努力が払われてきたが、合成トリグリセリドを製造するための従来の縮合反応の場合には、適切な条件を見出すための体系的な試みは先行技術にはなかった。しかしながら、天然油の精製に関連する研究からの教示を単純に転用するだけでは、これらの教示は、すでに形成され最終生成物中に存在する副生成物の事後的または遡及的な不純物低減にのみ焦点を当てているが、同時に存在する高品位の品質に対する必要性(すなわち、これらの望ましくない有毒な副生成物の形成の起源における先験的な回避の必要性)を考慮に入れていないからである。さらに、これらの先行教示は、特にMCPDとグリシドール脂肪酸エステルといった有毒な副生成物の起源に関する根本原因の分析を示してい
ない。
【0077】
その結果、出願人が予想外に見出したように、絶対的に驚くべきことに、特徴および/または条件(i)~(iv)の少なくとも1つ、特に上記特徴および/または条件(i)~(iv)の少なくとも2つの組合せ、好ましくは少なくとも3つの組合せ、より好ましくは4つすべての組合せを適用すると、上記5つの純度特性(1)~(5)の組合せを統一した、上記定義された純度仕様に効率的に到達することができる。したがって、本発明によれば、前記の特徴および/または条件、特に前記の特徴および/または条件(ii)~(iv)は、グリシドール脂肪酸エステルおよびMCPD脂肪酸エステルのような有毒な副生成物の形成を、それらの形成の原因を回避することによってその起源において防止し、一方、優勢な特徴および/または条件(i)は、それ以外の方法で生成または取り込まれるにもかかわらず、これらの有毒な副生成物の痕跡を効率的かつ選択的に除去することを可能にする。
【0078】
このように、出願人は、高純度のトリカプリリンを高い収率および変換率で製造するための概念を初めて提供することができた。言い換えれば、出願人は、この目的のために普遍的なそれぞれのコンセプトを提供することが初めてできた。
【0079】
結果として生じる反応生成物中に存在するハロゲン化物ベースの不純物の好ましくは選択的な誘導体化によって、結果として生じる得られる反応生成物の少なくとも1つの求核剤による処理によって、それぞれ、金属ベースの触媒の非存在下での比較的穏やかなエステル化条件を選択することによって、および/または、グリセロール出発材料の純度グレードを選択することによって、高いトリグリセリド含量、低い酸価および水酸価、ならびに低いMCPDおよびグリシドール脂肪酸エステルの総含量という生成物特性の複数の組み合わせを示すトリカプリリンを得ることが驚くほど可能であるとともに、過酷なエステル化条件や、負担が大きく非効率的な前処理や後処理を避けるものである。
【0080】
これとは別に、前述の特徴および/または条件(i)~(iv)は、この物質の既知の製造方法およびプラントに容易に実施することができ、またはこの物質の既知の製造方法およびプラントを修正するために使用することができるので、本発明の方法は、同時に、この物質の既知の先行技術の製造方法およびプラントと高い柔軟性および適合性を有する。
【0081】
これとは対照的に、負担が大きくコスト高な後処理を伴う従来の合成プロセスによるこの物質の従来技術の製造は、非常に複雑で高価で非効率的である。なぜなら、従来技術の合成プロセスでは、前述の有毒な副生成物や不純物がかなり大量に生成され、これらの副生成物は、複雑でほとんどの場合、多段階の後処理操作でそれぞれの粗生成物から分離しなければならないからである。とりわけ、負担とコストのかかる後処理作業は、最終生成物の高いエステル化度と低い酸度に関して、生成物の品質を高めることもできない。また、生産方法の歩留まりは、この方法において影響を受けない。
【0082】
本発明の範囲内において、トリカプリリンが、この物質の高い含有度、高いエステル化度、および非常に低い酸価で製造されると同時に、前述の有毒な副生成物および不純物を含まないかまたは少なくとも本質的に含まない効率的に機能する製造方法を提供することが初めて可能になった。
【0083】
さらに、本発明による製造方法は、経済的に稼働でき、大規模にも実施できる。
【0084】
特に、本発明の製造方法は、市販の出発化合物を使用し、さらに大規模な実施であっても比較的簡単な工程管理が可能である。
【0085】
さらなる複雑な後処理操作を必要とする従来の先行技術の製造方法とは対照的に、本発明による製造方法は、そのような複雑な後処理操作を用いないにもかかわらず、優れた収率を達成し、有毒な副生成物の生成は最小限に抑えられるかあるいはまったく回避される。
【0086】
さらに、本発明の方法は、実施が容易であり、経済的である。特に、本発明による製造方法、特にエステル化は、通常、溶媒の非存在下および/または無溶媒で(すなわち、質量反応として、あるいは物質反応として、あるいはいわゆるバルク反応として)実施される;その結果、得られる反応生成物は溶媒で汚染されることがなく、プロセスや反応を実施した後に、溶媒を除去して廃棄したり、コストやエネルギー集約的な方法でリサイクルしたりする必要がない。さらに、有毒な副生成物は形成されないか、少なくとも本質的に形成されない。
【0087】
要約すると、前述したように、本発明はトリカプリリン(すなわちトリオクタノイルグリセリドまたはトリカプリルグリセロール)を、特に高純度で製造する方法に関するものであり、
式(I)
CH2(OH)-CH(OH)-CH2(OH) (I)
の1,2,3-プロパントリオール(グリセロール、グリセリン)またはその保護形態もしくは前駆体、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)が開始材料として使用されて反応し、および/またはトリカプリリンに変換されるものであり、
式(II)
CH2[O-C(O)R1]-CH[O-C(O)R1]-CH2[O-C(O)R1] (II)
のトリカプリリンを、反応生成物として、生成するものであり、
ここで、式(II)において、ラジカルR1は、式-(CH2)6-CH3の直鎖状飽和脂肪族C7-アルキルラジカル(すなわち、n-ヘプチルラジカル)を表すものであり、
ここで、この方法は、少なくとも1つのエステル化段階を、特にC8-脂肪酸、特に直鎖飽和またはモノ-もしくはポリ-不飽和C8-脂肪酸および/またはそれらの無水物および/またはエステル(好ましくはC1-C4-アルキルエステル)を使用するエステル化段階を、好ましくは式CH3-(CH2)6-COOHのカプリル酸(すなわちn-オクチル酸または1-ヘプタンカルボン酸)および/またはその無水物またはエステル(好ましくはC1-C4-アルキルエステル)を使用する少なくとも1つのエステル化段階を含むものである。
【0088】
上述したように、本発明の方法は、以下の特徴および/または条件(i)~(iv)の少なくとも1つ、特に以下の特徴および/または条件(i)~(iv)の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの組み合わせによって特徴付けられ、これらの特徴および/または条件(i)~(iv)については、以下により詳細に説明する、いわゆる;
(i)結果として生じる反応生成物中に存在するハロゲン化物ベースの不純物の、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル、特にMCPDカプリル酸エステル)および脂肪酸のグリシドールエステル(特にグリシドールカプリル酸エステル)の好ましくは選択的誘導体化が実行されること、および/または、結果として生じる反応生成物は、少なくとも1つの求核剤で、特にハロゲン化物系不純物を除去できる求核剤で、好ましくは亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO3
-)、亜硫酸塩(SO3
2-)、チオ硫酸水素塩(HS2O3
-)、チオ硫酸塩(S2O3
2-)、亜リン酸水素塩(H2PO3
-)、亜リン酸塩(HPO3
2-)およびホスフィン類ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される求核剤で、より好ましくは亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO3
-)で、特にハロゲン化物ベースの不純物、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル)および脂肪酸のグリシドールエステルの好ましくは選択的に誘導体化のために、処理されることおよび/または接触させること;
(ii)少なくとも1つのエステル化段階は、180℃を超えない温度、特に150℃を超えない温度、特に120℃を超えない温度、好ましくは100℃を超えない温度、より好ましくは80℃を超えない温度、さらに好ましくは50℃を超えない温度で稼働されることおよび/または実施されること;
(iii)出発物質として使用される式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)は、少なくとも本質的に塩素化種を含まないこと、特に、式(I)の1、2,3-プロパントリオールまたはその保護形態、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)を基準として、最大1ppm、特に最大0.5ppm、好ましくは最大0.1ppmの全塩素化種含量を含むこと;
(iv)少なくとも1つのエステル化段階は、金属ベースの触媒の非存在下で実行されること。
【0089】
特徴および/または条件(i)に関しては、以下のことが強調され、考慮されるべきである:結果として生じる反応生成物中に存在するハロゲン化物ベースの不純物、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル、特にMCPDEカプリル酸エステル)および脂肪酸のグリシドールエステル(特にグリシドールカプリル酸エステル)の好ましくは選択的な誘導体化を行うことが想定されること、および/または、結果として生じる反応生成物は、少なくとも1つの求核剤によって、特にハロゲン化物系不純物を除去できる求核剤による、好ましくは、亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO3
-)、亜硫酸塩(SO3
2-)、チオ硫酸水素塩(HS2O3
-)、チオ硫酸塩(S2O3
2-)、亜リン酸水素塩(H2PO3
-)、亜リン酸塩(HPO3
2-)およびホスフィンならびにそれらの組合せからなる群から選択される求核剤によって、より好ましくは亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO3
-)によって、特に、ハロゲン化物ベースの不純物の、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル、特にMCPDカプリル酸エステル)および脂肪酸のグリシドールエステル(特にグリシドールカプリル酸エステル)の好ましくは選択的に誘導体化のために、処理されおよび/または接触させる。
【0090】
本出願人が意外にも見出したように、前述の求核剤を用いると、ハロゲン化物系不純物、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル、特にMCPDカプリル酸エステル)を好ましくは選択的に誘導体化することができ、さらに脂肪酸のグリシドールエステル(特にカプリル酸グリシドールエステル)が効果的である。これらのハロゲン化物ベースの不純物は、通常、非常に少量、特に微量しか存在しないので、これはさらに驚くべきことである;それにもかかわらず、前述の求核剤による処理は、通常、以下の反応スキームに従って、これらの物質の選択的誘導体化をもたらし、この誘導体は、その後、容易に除去または排除、すなわち最終反応生成物から分離することができる(以下の説明を参照)。
【0091】
以下の反応スキームは、単なる例示であって限定するものではないが、ハロゲン化物系不純物の選択的誘導体化、すなわち、一方ではMCPD脂肪酸エステルの選択的誘導体化(上の反応)、他方ではグリシドール脂肪酸エステルの選択的誘導体化(下の反応)を示しており、ここで、亜硫酸水素ナトリウム(重亜硫酸ナトリウム、NaHSO3)が求核剤として使用され(単に例示であって限定するものではない)、ラジカルRは、互いに独立して、直鎖飽和C7-アルキルラジカルを示す。この反応スキームからわかるように、求核剤は、いわゆる求核置換を介して、好ましくはいわゆるSN2のような反応機構を介して、MCPD脂肪酸エステル中の有機的に結合した塩素原子を置換し、塩素原子は塩化ナトリウムとして除去され、これは置換生成物(上の反応)とともに水性相で容易に分離することができる。この反応スキームからわかるように、求核剤は開環下でグリシドール脂肪酸エステルと反応し、水溶性の生成物も得ることができる(下の反応)。水性相の分離後の精製トリグリセリド生成物の分離は、例えば蒸留(例えば短経路蒸留)を介して行うことができる。
【0092】
【0093】
上記の反応スキームが示すように、ハロゲン化物系不純物(すなわち、MCPD脂肪酸エステルおよびグリシドール脂肪酸エステル)は、求核剤(ここでは、例えば重亜硫酸塩=亜硫酸水素塩)との選択的反応によって効率的に除去することができる。ハロゲン化物ベースの不純物は、(たとえ微量であっても)選択的に水溶性分子に変換され、特に水による洗浄や短経路蒸留などによって容易に除去することができる。
【0094】
したがって、本発明の特徴および/または条件(i)により、ハロゲン化物ベースの不純物、特にMCPDおよびグリシドール脂肪酸エステルは、誘導体化によって選択的に除去することができるが、しかし、例えば酸価(AV)、水酸価(OHV)およびトリグリセリド含量などの他の関連する生成物特性に影響を与えることなく、または影響を及ぼすことなく、除去することができる。
【0095】
したがって、上記の特徴および/または条件(i)は、例えば遺伝毒性のある脂肪酸のグリシドールエステルや腎毒性のあるMCPD脂肪酸エステルのような有毒なハロゲン化物ベースの不純物を選択的に除去するための効率的な手段である。結果として生じる誘導体化生成物は、洗浄除去または短経路蒸留(短経路蒸留の場合、誘導体化生成物は通常、蒸留残渣(汚水槽)に残存または保持される)によって、容易に除去することができる。上記の反応スキームにも示されているように、塩素原子は好ましくは無害な塩化ナトリウムに変換され、これは水相で容易に洗い流される。
【0096】
一般に、上記の特徴および/または条件(i)は、一段階または単段階の処理として実施されることが好ましい。しかしながら、特に不純物の程度が高い場合には、精製すべきトリカプリリンを求核剤で処理されおよび/または接触させることを、特に2回以上のサイクルでおよび/または多段プロセスとして、繰り返し実施することも可能である。とはいえ、精製されるトリカプリリンと求核剤との処理および/または接触は、1段階で行うのが好ましい(すなわち、処理および/または接触を繰り返すことなく);特に不純物の程度が高い場合には、代替実施形態として、繰り返し処理および/または接触を行う代わりに、より高い量または濃度の求核剤を使用することも可能である。
【0097】
その結果、本発明の特徴および/または条件(i)により、効率的かつ選択的な方法で、すなわち、得られる生成物の他の要求され所望される特性(例えば、低酸価および低水酸価ならびに高トリグリセリド含量など)に影響を及ぼすことなく、低量、好ましくは微量の有毒なハロゲン化物系不純物であっても選択的に除去または除去することが可能となる。
【0098】
特徴および/または条件(ii)に関しては、以下のことが強調され、考慮されるべきである:前記特徴および/または条件(ii)によれば、少なくとも1つのエステル化段階が、180℃を超えない温度、特に150℃を超えない温度、特に120℃を超えない温度、好ましくは100℃を超えない温度、より好ましくは80℃を超えない温度、さらに好ましくは50℃を超えない温度で稼働されおよび/または実施されることが想定される。
【0099】
驚くべきことに、本出願人が見出したように、少なくとも1つのエステル化段階中の温度を制限することは、エステル化中の有毒不純物、特にMCPDおよびグリシドール脂肪酸エステルの形成を回避するための効率的な手段でもある。それにもかかわらず、高転化率、高収率ならびに高エステル化レベル、特に低酸価および低水酸価による高トリグリセリド含量は、特に他の特徴および/または条件を考慮する場合、特に以下に記載する合成経路を適用する場合、本発明の方法に代わって到達する。
【0100】
その結果、本発明の方法は、特に前述の種類の有毒な副生成物の形成を回避する目的で、少なくとも1つのエステル化段階を比較的温和な条件下で実施することを初めて可能にし、同時に、高いエステル化レベル、特に高いトリグリセリド含量、および優れた転化率および収率を確保できるものである。
【0101】
とりわけ、前述の他の特徴および/または条件(i)、(iii)および/または(iv)の少なくとも1つと組み合わせることにより、本発明の特徴および/または条件(ii)は優れた結果をもたらす。
【0102】
特徴および/または条件(iii)に関しては、以下の点を強調し、考慮すべきである:前記特徴及び/又は基準(iii)によれば、出発物質として使用される式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)は、少なくとも本質的に塩素化種を含まないものであり、式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)に基づいて、最大1ppm、特に最大0.5ppm、好ましくは最大0.1ppmの塩素化種の総含有量を含むものである。
【0103】
出願人が意外にも見出したように、塩素化種の存在、特にいわゆる全塩素化種の含有量は、最終反応生成物における有毒な副生成物の形成、すなわち有毒なMCPDおよびグリシドール脂肪酸エステルの形成に関して、決定的な影響を及ぼす。
【0104】
従って、1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態、好ましくはソルケタールの形態の出発原料の純度グレードの選択は、非常に驚くべきことに、エステル化中の有毒な副生成物(例えばMCPDEおよびグリシドール脂肪酸エステル)の形成を回避する上で重要な役割を持つ。これらの出発原料を、少なくとも本質的に塩素化種を含まないもの、特に指示された総塩素化種含量を持つものとして選択することにより、これらの有毒な副生成物の形成が効率的に防止されるか、少なくとも最大限に最小化される。
【0105】
従来技術では、1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態(例えばソルケタール)の形態の出発原料中の塩素化種の含有量が、得られる最終反応生成物(すなわちトリカプリリン)の純度に決定的な影響を及ぼすことは全く知られておらず、これまで全く実現されていなかった。
【0106】
必要な純度の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態、好ましくはソルケタールの形態の出発生成物は、一般に市販品として入手可能である。
【0107】
本発明で使用される必要な純度を有する1,2,3-プロパントリオールは、例えばエピクロリン-ヒドリンを起源とする石油化学原料または例えば天然油脂の加水分解を起源とする油脂化学原料から得ることができる。適切な純度と品質を持つ石油化学的または油脂化学的に誘導されたグリセロールは、主に物理的技術(例えば蒸留や膜限外濾過などの膜濾過)による精製によって得られる。
【0108】
出願人による実験データが驚くべきことを示すように、出発物質としてのグリセロールまたはその保護誘導体(例えばソルケタール)の塩素化種含量とは対照的に、残りの出発物質、すなわちC8-脂肪酸、特に直鎖飽和またはモノ-もしくはポリ-不飽和C8-脂肪酸および/またはそれらの無水物および/またはエステル(好ましくはC1-C4-アルキルエステル)、好ましくはカプリル酸および/またはその無水物またはエステル(好ましくはC1-C4-アルキルエステル)の塩素化種含量は、少なくともエステル化段階にも使用されるように、そのような重要な役割は果たさない。20ppm~100ppmの範囲の総塩素化種含量を有するカプリル酸および/またはその無水物および/またはエステルを用いて実施されるエステル化は、同時に、1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態、好ましくはソルケタールを本発明の純度等級(すなわち、総塩素化種含量が、最大1ppm、特に最大0.5ppm、好ましくは最大0.1ppm)であるものが使用される。翻って、本出願人による更なる実験データも驚くべきことを示しているように、20ppm~100ppmの範囲の全塩素化種含量からなる1.2.3-プロパントリオールまたはその保護形態、好ましくはソルケタールは、たとえ残りの出発物質、すなわち、C8-脂肪酸、特に線状飽和またはモノ-もしくはポリ-不飽和C8-脂肪酸および/またはそれらの無水物および/またはエステル、好ましくはカプリル酸および/またはその無水物またはエステルは、高純度のグレード(すなわち、塩素化種の総含有量が最大1ppm、特に最大0.5ppm、好ましくは最大0.1ppm)を有するものである。次に、本出願人による更なる実験データも驚くべきことを示しているように、20ppm~100ppmの範囲の全塩素化種含量からなる1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態、好ましくはソルケタールは、たとえ残りの出発物質、すなわち、C8-脂肪酸、特に直鎖状飽和またはモノ-もしくはポリ-不飽和C8-脂肪酸および/またはそれらの無水物および/またはエステル、好ましくはカプリル酸および/またはその無水物またはエステルは、高純度グレード(すなわち、最大1ppm、特に最大0.5ppm、好ましくは0.1ppmの塩素化種の総含有量)を有するとしても、エステル化の間、有毒なMCPDとグリシドール脂肪酸エステルが著しく生成されるものである。特定の理論に束縛されることなく、この驚くべき現象は、1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態、好ましくはソルケタールが、エステル化の際にMCPDおよびグリシドール脂肪酸エステルの形成に寄与する有機結合形態の塩素化種を少なくとも主に含んでいるという事実によって説明できるかもしれない。一方で、C8-脂肪酸、特に線状飽和またはモノ-もしくはポリ-不飽和C8-脂肪酸および/またはそれらの無水物および/またはエステル、好ましくはカプリル酸および/またはその無水物またはエステルの場合、これらの物質は、エステル化の際にMCPDおよびグリシドール脂肪酸エステルの形成に全く寄与できない(またはせいぜい無視できる程度にしか寄与できない)無機形態、特にNaClのような無機塩として、巻き込まれた塩素化種を少なくとも主に含む可能性がある。
【0109】
その結果、全体として、前述のグリセロールベースおよびソルケタールベースの出発原料の純度、特に塩素化種の含有量に関する特定の選択、およびこれらの出発原料中の全塩素化種の含有量の最小化も、最終反応生成物の純度および品質にとって重要な役割を果たす。
【0110】
特徴及び/又は基準(iv)に関しては、以下のことが強調され、考慮されるべきである: 前記特徴および/または測定(iv)によれば、少なくとも1つのエステル化段階が、金属ベースの触媒の非存在下で実行されることおよび/または実行されることが想定される。
【0111】
金属ベースの触媒の非存在下の少なくとも1つのエステル化段階は、そのような金属ベースの触媒が、しばしば望ましくないハロゲン化物、特に塩化物を多量に導入されるかまたは取り込まれることから、本発明の方法における重要な課題である。こうして導入または取り込まれたハロゲン化物、特に塩化物は、エステル化の際に有害な副生成物、特にMCPDやグリシドール脂肪酸エステルの望ましくない生成につながる可能性がある。エステル化の際にこのような金属ベースの触媒を避けることで、ハロゲン化物ベースの不純物の制御されない望ましくない導入や取り込みが効率的に回避されまたは防止される。
【0112】
さらに、特定の実施形態による本発明の方法によるエステル化中に使用される酵素ベースの触媒とは対照的に、金属ベースの触媒(例えば、テトラブチルチタネートなど)は、エステル化のために相対的に高温(例えば、190℃~230℃)を必要とし、したがって、前述の有毒な副生成物、特にMCPDおよびグリシドール脂肪酸エステルの望ましくない制御されない形成をもたらす。
【0113】
その結果、本発明の特徴および/または条件(iv)も、優れた純度および他の特性、例えば低い酸価、低い水酸価および高いトリグリセリド含量に関して所望の特性を有する最終反応生成物を得ることに著しく寄与する。
【0114】
したがって、全体として、本発明によれば、本発明の方法により、高純度のトリカプリリンが製造される。
【0115】
特に、本発明の方法によれば、反応生成物、特に、
ラジカルR1が、式-(CH2)6-CH3の直鎖状飽和脂肪族C7-アルキルラジカル(すなわち、n-ヘプチルラジカル)を表す式(II)
CH2[O-C(O)R1]-CH[O-C(O)R1]-CH2[O-C(O)R1] (II)
のトリカプリリンは、それらの組合せにおいて下記する特性(1)~(5)によって特徴づけられることおよび/または表すこと、および/または下記する生成物仕様を満たすこと:
(1) 特に欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(2) 欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(3) 欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:それぞれ反応生成物に基づいて、≧99%、特に≧99.2%、好ましくは≧99.5%;及び
(4) 特にDGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:それぞれが前記反応生成物に基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppm;及び
(5) 特にDGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:それぞれが前記反応生成物に基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppm。
【0116】
特に換言すれば、本発明によれば、前記方法は、上述したように実行され、および/または、特徴および/または条件(i)~(iv)、特に特徴および/または条件(i)~(iv)の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの組み合わせが、適用されおよび/または実行されること、ただし、反応生成物、特に、
ラジカルR1が、式-(CH2)6-CH3の直鎖状飽和脂肪族C7-アルキルラジカル(すなわち、n-ヘプチルラジカル)を表す式(II)
CH2[O-C(O)R1]-CH[O-C(O)R1]-CH2[O-C(O)R1] (II)
のトリカプリリンは、それらの組合せにおいて下記する特性(1)~(5)によって特徴づけられることおよび/または表すこと、および/または下記する生成物仕様を満たすことを条件とすること:
(1) 特に欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(2) 欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(3) 欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:それぞれ反応生成物に基づいて、≧99%、特に≧99.2%、好ましくは≧99.5%;及び
(4) 特にDGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:それぞれが前記反応生成物に基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppm;及び
(5) 特にDGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:それぞれが前記反応生成物に基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppm。
【0117】
驚くべきことに、本発明の反応生成物は、これまで互いに相容れないと考えられてきた前述の5つの特性(1)~(5)を、それらの総合的な組み合わせで統一している。というのも、先行技術の方法によれば、トリグリセリド含量を高め、酸および水酸価を下げると、通常、MCPDおよびグリシドール脂肪酸エステルの総含有量が、劇的なエステル化条件のために高くなり;逆に、先行技術によれば、MCPDEおよびグリシドール脂肪酸エステルの総含有量を下げると、高い酸および水酸価を有する比較的低いトリグリセリド含量に達するからである。
【0118】
この先行技術とは対照的に、本発明は、前述の5つの特性(1)~(5)のすべてを1つの同じ生成物に組み合わせて提供することを初めて可能にした。その結果、本発明の方法から得られる本発明反応生成物は、高用量および/または高濃度の非経口用途であっても、食品および医薬用途に非常に適している。
【0119】
本発明によれば、本発明の方法から得られる本発明反応生成物は、非常に低い酸価(AV)、すなわち特に欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g酸価(AV)を有するものである。いわゆる酸価のパラメーターは、エステル化に由来する残留遊離酸を示す。酸の値が低いほど、生成物の品質は高くなる。特に、本発明で想定されるような非常に低い酸価は、得られる反応生成物(すなわちトリカプリリン)の高い安定性、特に優れた長期安定性および/または貯蔵安定性、ならびに優れた保存安定性をもたらす。
【0120】
上記で示したように、本発明によれば、酸価(AV)は通常、欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)に従って決定される。酸価(同義語で中和価、酸価、酸度とも呼ばれる)は、化学物質1グラムを中和するのに必要な水酸化カリウム(KOH)の質量(ミリグラム)であり、特に酸価は、化合物(ここではトリカプリリン)中のカルボン酸基の数を示す尺度である。示された標準欧州薬局方2.5.1は滴定法に基づいている。
【0121】
酸価(AV)のパラメーターとは別に、本発明の方法から得られる本発明の反応生成物の水酸価(OHV)も重要な役割を果たす。本発明によれば、本発明の反応生成物は、また、非常に低い水酸価(OHV)、すなわち特に欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)従って決定される水酸価(OHV)、≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g水酸価(OHV)を有するものである。この場合、水酸価(OHV)は、エステル化度の指標であり、本発明の反応生成物のエステル化度が非常に高いことを示す。
【0122】
本発明によれば、水酸価(OHV)は、特に欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)に従って決定される。この方法に従って測定される水酸価は、遊離水酸基を含む化学物質(ここではトリカプリリン)1グラムをアセチル化する際に取り込まれる酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウム(KOH)のミリグラム数として定義される。したがって、水酸価とは、化学物質(ここではトリカプリリン)中の遊離水酸基の含有量を示す尺度であり、通常、化学物質1グラム中の水酸基含有量に相当するミリグラム単位の水酸化カリウム(KOH)の質量で表される。示された測定法欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)は、ピリジン溶媒中、反応生成物(ここではトリカプリリン)の遊離水酸基を無水酢酸でアセチル化することからなり、反応終了後、水を加え、残存する未反応の無水酢酸を酢酸に変換し、水酸化カリウムで滴定して測定する。
【0123】
したがって、本発明の反応生成物の場合、本発明のトリカプリリンは、非常に低い酸価(AV)とは別に、高いエステル化度に対応する、上述したような非常に低い水酸価(OHV)も同時に含む。
【0124】
さらに、第3のパラメーターおよび/または特性(3)として、本発明の反応生成物は、非常に高いトリグリセリド含量、すなわち特に欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)に従って測定した、それぞれ反応生成物を基準とした≧99%、特に≧99.2%、好ましくは≧99.5%のトリグリセリド含量を有するものである。トリグリセリド含量に関するこれらの極めて高い値は、本発明の反応生成物の純度グレードが高いことも示している。本発明の生成物のトリグリセリド含量は、特に欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)に従って測定される。この方法は、ガスクロマトグラフィーによる測定に基づいている。
【0125】
低酸価(AV)、低水酸価(OHV)および高トリグリセリド含量というパラメーターおよび/または特性とは別に、本発明の反応生成物は、MCPD脂肪酸エステルおよびグリシドール脂肪酸エステルの総含量が極めて低いという特徴も有する:特にDGF C-VI 187(10)の方法(ドイツ脂肪学会標準法)に従って測定されるMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル)の総含有量は、反応生成物を基準として、それぞれ≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppmである;特にDGF C-VI 187(10)の方法(ドイツ脂肪学会標準法)に従って測定される脂肪酸のグリシドールエステルの総含有量は、反応生成物を基準として、それぞれ≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppmである。
【0126】
DGF C-VI 18(10)の指示された定量法は、これらの有毒不純物の確実な定量を可能にする。とりわけ、本発明の方法から得られる本発明の反応生成物は、上述したように、これらの非常に低い毒性エステルの総含有量と、高いトリグリセリド含有量レベルと、低い酸および水酸化物値とを兼ね備えている。
【0127】
その結果、前述の特徴および/またはパラメータ(1)~(5)の5重の組み合わせは、本発明の方法から得られる反応生成物の独特な特徴であり、この反応生成物を同種の先行技術の反応生成物から区別する。このように、本発明の方法によって初めて、低酸価および低水酸価で示される高純度グレードのトリカプリリンを製造することができ、同時に、非常に高いトリグリセリド含量と、毒性のあるMCPDおよびグリシドール脂肪酸エステルの総含量が極めて低くなる。
【0128】
特定の実施形態によれば、本発明は、トリカプリリン(すなわち、トリオクタノイルグリセリドまたはトリカプリルグリセロール)、特に高純度度を有するトリカプリリン(すなわち、トリオクタノイルグリセリドまたはトリカプリルグリセロール)を製造するための方法に関し、特に、上記に記載され定義されるような方法に関するものであり、
式(I)
CH2(OH)-CH(OH)-CH2(OH) (I)
の1,2,3-プロパントリオール(グリセロール、グリセリン)またはその保護形態または前駆体、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)が、開始材料として使用されて反応しおよび/またはトリカプリリンに変換され、
反応生成物として、式(II)
CH2[O-C(O)R1]-CH[O-C(O)R1]-CH2[O-C(O)R1] (II)
が生成されるものであり、
ここで、式(II)において、ラジカルR1は、式-(CH2)6-CH3の直鎖状飽和脂肪族C7-アルキルラジカル(すなわち、n-ヘプチルラジカル)を表すものであり、
ここで、この方法は、少なくとも1つのエステル化段階を、C8-脂肪酸、特に直鎖飽和またはモノ-もしくはポリ-不飽和C8-脂肪酸および/またはそれらの無水物および/またはエステル(好ましくはC1-C4-アルキルエステル)を使用するエステル化段階を、好ましくは式CH3-(CH2)6-COOHのカプリル酸(すなわちn-オクチル酸または1-ヘプタンカルボン酸)および/またはその無水物またはエステル(好ましくはC1-C4-アルキルエステル)を使用する少なくとも1つのエステル化段階を含むものであり;
ここで、この方法は、以下の特徴および/または条件(i)~(iv)のうちの少なくとも1つ、特に、以下の特徴および/または条件(i)~(iv)のうちの少なくとも2つの組み合わせ、好ましくは少なくとも3つの組み合わせ、より好ましくは4つすべての組み合わせによって特徴付けられるもの:
(i) 結果として得られる反応生成物中に存在するハロゲン化物ベースの不純物、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル、特にMCPDカプリル酸エステル)および脂肪酸のグリシドールエステル(特にグリシドールカプリル酸エステル)の好ましくは選択的な誘導体化が、実行され、且つ/または、結果として生じる反応生成物が、少なくとも1つの求核剤で、特にハロゲン化物系不純物を除去できる求核剤で、好ましくは、亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO3
-)、亜硫酸塩(SO3
2-)、チオ硫酸水素塩(HS2O3-)、チオ硫酸塩(S2O3
2-)、亜リン酸水素塩(H2PO3
-)、亜リン酸塩(HPO3
2-)およびホスフィンならびにそれらの組合せからなる群から選択される求核剤で、ハロゲン化物ベースの不純物の好ましくは選択的な誘導体化のために、特にMCPDE脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル)および脂肪酸のグリシドールエステルの好ましくは選択的な誘導体化のために、処理されおよび/または接触させること;
(ii)少なくとも1つのエステル化段階は、180℃を超えない温度、特に150℃を超えない温度、特に120℃を超えない温度、好ましくは100℃を超えない温度、より好ましくは80℃を超えない温度、さらに好ましくは50℃を超えない温度で稼働されおよび/または実施されること;
(iii)出発物質として使用される式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)は、少なくとも本質的に塩素化種を含まないこと、特に、式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)を基準として、最大1ppm、特に最大0.5ppm、好ましくは最大0.1ppmの全塩素化種含量を含むこと;
(iv)少なくとも1つのエステル化段階は、金属ベースの触媒の非存在下で実行されること、
ここで、この方法が上述したように実行され、且つ/又は、特徴および/または条件(i)~(iv)、特に特徴および/または条件(i)下R(iv)の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの組合せが適用され、および/または、実施されるものであるか、ただし、反応生成物、特に上記式(II)のトリカプリリンが、組合せにおいて、以下の特性(1)~(5)によって特徴づけられ、および/または、示すものであり、且つ/または、以下の生成物仕様を満たすことを条件とすること:
(1) 特に欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(2) 欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(3) 欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:それぞれ反応生成物に基づいて、≧99%、特に≧99.2%、好ましくは≧99.5%;及び
(4) 特にDGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:それぞれが前記反応生成物に基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppm;及び
(5) 特にDGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:それぞれが前記反応生成物に基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppm。
【0129】
本発明のさらなる特定の実施形態によれば、本発明の方法が上述したように実施され、および/または、特徴および/または条件(i)~(iv)、特に特徴および/または条件(i)~(iv)の少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの組み合わせが適用され、および/または、実行されるものであるが、ただし、反応生成物、特に上記式(II)のトリカプリリンが、組合せにおいて以下の特性(1)~(5)によって特徴付けられおよび/または示すものであり、および/または、以下の生成物仕様を満たすことを条件とするものである:
(1) 特に欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.1mgKOH/g;及び
(2) 欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.1mgKOH/g;及び
(3) 欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:それぞれ反応生成物に基づいて、≧99.5%、特に≧99.6%、好ましくは≧99.8%;及び
(4) 特にDGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:前記反応生成物に基づいて≦0.1ppm;及び
(5) 特にDGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:前記反応生成物に基づいて≦0.1ppm。
【0130】
このような反応生成物、特に上記一般式(II)のトリカプリリンは、高純度グレードを必要とし、同時に高い活性成分レベルを必要とする用途、例えば、栄養学的用途およびとりわけ医薬的用途および使用(例えば、高用量および/または高濃度の非経口用途でさえも)に特に適している。
【0131】
上述したように、本発明の方法は、特にC8-脂肪酸、特に直鎖飽和またはモノ-もしくはポリ-不飽和C8-脂肪酸および/またはそれらの無水物および/またはエステル(好ましくはC1-C4-アルキルエステル)を使用する、好ましくは式CH3-(CH2)6-COOHのカプリル酸(すなわちn-オクチル酸または1-ヘプタンカルボン酸)および/またはその無水物またはエステル(好ましくはC1-C4-アルキルエステル)を使用する、少なくとも1つのエステル化段階を含むものである。
【0132】
本発明の方法の特定の実施形態によれば、少なくとも1つのエステル化段階において、式CH3-(CH2)6-COOHのカプリル酸および/またはその無水物もしくはエステル(好ましくはC1-C4-アルキルエステル)が使用される。
【0133】
上述したように、本発明の方法によれば、反応生成物として、式(II)
CH2[O-C(O)R1]-CH[O-C(O)R1]-CH2[O-C(O)R1] (II)
のトリカプリリンが提供および/または製造される。
ここで、式(II)において、ラジカルR1は、式-(CH2)6-CH3の直鎖状飽和脂肪族C7-アルキルラジカル(すなわち、n-ヘプチルラジカル)を表すものである。
【0134】
この点に関して、本発明の方法の特定の実施形態によれば、反応生成物がトリカプリリンであること;および/または、
上記式(II)において、ラジカルR1は直鎖状飽和脂肪族C7-アルキルラジカルを表すこと;および/または、
少なくとも1つのエステル化段階において、オクタン酸(カプリル酸)および/またはその無水物および/またはエステル(好ましくはC1-C4-アルキルエステル)が使用されること;
が想定される。
【0135】
既に詳述したように、本発明によれば、本発明の方法は、前記定義された特徴および/または条件(i)~(iv)のうちの少なくとも1つによって、特に、前記定義された特徴および/または条件(i)~(iv)のうちの少なくとも2つの組み合わせによって、好ましくは少なくとも3つの組み合わせによって、より好ましくは4つすべての組み合わせによって特徴付けられる。
【0136】
この点に関して、本発明の方法の特定の実施形態によれば、本発明の方法は、前記定義された特徴および/または条件(i)~(iv)の少なくとも2つの組み合わせ、好ましくは少なくとも3つの組み合わせ、より好ましくは4つすべての組み合わせによって特徴付けられることが想定される。
【0137】
本発明のプロセスの別の特定の実施形態によれば、本発明の方法は、前述の特徴および/または条件(ii)~(iv)の少なくとも2つの組み合わせ、好ましくは少なくとも3つの組み合わせによって特徴付けられること、任意に、前述の特徴および/または条件(i)との組合せによって特徴づけられることが想定される。
【0138】
さらに、本発明の方法のさらに別の特定の実施形態によれば、本発明の方法は、上記の特徴および/または条件(i)と、上記の特徴および/または測定(ii)~(iv)の少なくとも2つとの組み合わせによって特徴付けられることが想定される。
【0139】
最後に、本発明の方法のさらなる特定の実施形態によれば、本発明の方法は、前述の特徴および/または条件(i)~(iv)のすべての組み合わせによって特徴付けられることが想定される。
【0140】
すでに説明したように、本発明によれば、前述の特徴および/または条件(i)および/または(ii)および/または(iii)および/または(iv)を適用する場合、特に高純度のトリカプリリン、上述された生成物仕様に従って取得される。
【0141】
本発明の方法の特定の実施形態によれば、全体な方法および/または特に任意の前処理段階および/または後処理段階があればそれも含めた方法の全体は、180℃を超えない温度で、特に160℃を超えない温度で、特に150℃を超え内温度で、好ましくは120℃を超えない温度で、稼働されおよび/または実行されることが特に好ましい。
【0142】
換言すれば、本発明の方法のこの特定の実施形態によれば、この方法がさらなる特徴および/または条件(v):
(v) 全体的な方法および/または特に任意の前処理および/または後処理段階があればそれも含めた方法の全体は、180℃を超えない温度で、特に160℃を超えない温度で、特に150℃を超えない温度で、150℃を超えない温度で℃、好ましくは120℃を超えない温度で、稼働されおよび/または実行されること、によって特徴づけられることが特に好ましい。
【0143】
この測定(v)により、有毒な副産物、例えば、MCPDまたはグリシドール脂肪酸エステルは、通常、これらの表示値よりも高い温度で形成されるため、効率的に防止できる。
【0144】
本発明の方法の別の特定の実施形態によれば、全体的な方法および/または特に任意の前処理段階および/または後処理段階があればそれも含めた方法の全体は、金属ベースの触媒の非存在下で、稼働されおよび/または実行されることが特に好ましい。
【0145】
換言すれば、本発明の方法のこの特定の実施形態によれば、この方法は、さらなる特徴および/または条件(vi)、
(vi)全体的な方法および/または特に任意の前処理段階および/または後処理段階があればそれも含めた方法の全体は、金属ベースの触媒の非存在下で、稼働されおよび/または実行されること;
によって特徴づけられることが好ましい。
【0146】
金属ベースの触媒の非存在下における全体的な方法および/または特に任意の前処理段階および/または後処理段階があればそれも含めた方法の全体は、そのような金属ベースの触媒が、望ましくないハロゲン化物、特に塩化物十分な量を導入しまたは取り込むことから、本発明の方法における重要な問題である。このようにして導入されまたは取り込まれたハロゲン化物、特に塩化物は、エステル化中に有毒な副生成物、特にMCPDおよびグリシドール脂肪酸エステルの望ましくない形成を引き起こす可能性がある。全体的な方法および/または特に任意の前処理段階および/または後処理段階があればそれも含めた方法の全体にわたるそのような金属ベースの触媒を避けることによって、ハロゲン化物ベースの不純物の制御されていない且つ望ましくない導入または取り込みが、効率的に回避または防止される。
【0147】
すでに説明したように、本発明の方法は、少なくとも1つのエステル化段階を含むものである。
【0148】
一般に、少なくとも1つのエステル化段階は、1段階エステル化として、あるいは、2段階もしくは多段階エステル化として、実施されおよび/または実行されることが好ましい。
【0149】
本発明の方法の特定の実施形態によれば、少なくとも1つのエステル化段階は、
式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態若しくは前駆体、好ましくはソルケタールと反応するC8-脂肪酸の無水物、特に無水カプリル酸を使用する1段階エステル化として実施および/または実行されることが好ましい。あるいは、本発明の方法の別の特定の実施形態によれば、少なくとも1つのエステル化段階は、2段階または多段階のエステル化として、実施されおよび/または実行される(すなわち、式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態もしくは前駆体、好ましくはソルケタールと反応するC8-脂肪酸、特にカプリル酸および/またはそれらのエステルを使用する第1段階において、それに続く段階において、さらなるエステル化、遊離および/または残留するOH基のさらなるエステル化、好ましくはC8-脂肪酸の無水物、特に無水カプリル酸を使用したエステル化が実行される)。
【0150】
一般に、本発明の方法の特定の実施形態によれば、少なくとも1つのエステル化段階が溶媒の非存在下および/または溶媒なしで実施されおよび/または実行されることが好ましい。これは、少なくとも1つのエステル化段階が、質量における反応/エステル化としてまたは物質における反応/エステル化として、またはいわゆる嵩反応(すなわち、嵩エステル化)として実行されることを意味する。これには、得られる反応生成物がいかなる溶媒にも汚染されないこと、少なくとも1つのエステル化段階が実行された後に、コストとエネルギーを大量に消費する方法で溶媒が除去され且つ廃棄され且つ再利用したりする必要がないという利点がある。それにもかかわらず、驚くべきことに、少なくとも1つのエステル化段階は、高い変換率および収率で、少なくとも本質的にいかなる重大な副生成物も形成することなく進行する。さらに、少なくとも1つのエステル化段階中に溶媒の使用を避けることは、もし使用されるならば、エステル化触媒を使用した場合のリサイクルも容易になり、とりわけ、溶媒がそのようなエステル化触媒を失活させたり、さらには毒にしてしまう可能性があることから、その再活性化なしに、エステル化触媒のリサイクルが可能であることが確保される。
【0151】
少なくとも1つのエステル化段階に適用される温度範囲は、広範囲にわたって変化し得る。通常、本発明によれば、少なくとも1つのエステル化段階が、適度な温度で、すなわち5℃~95℃の範囲内、特に10℃~85℃の範囲内、好ましくは15℃~80℃の範囲内、より好ましくは20℃~75℃の範囲内、さらにより好ましくは25℃~80℃の範囲内の温度で、実施されおよび/または実行される場合が好ましい。少なくとも1つのエステル化段階に適用されるこの適度な温度レジームは、特に有毒な副生成物の形成を効果的に防止し、効率的なエステル化を確保する。しかし、当業者は、必要に応じて、または単一のまたは例外的な場合に、本発明の範囲を逸脱することなく、これらの範囲仕様から逸脱することができる。
【0152】
また、少なくとも1つのエステル化段階に適用される圧力範囲は、広範囲にわたって変化し得る。一般に、本発明によれば、少なくとも1つのエステル化段階は、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらにより好ましくは約1バールの圧力で実施されおよび/または実行されることが好ましい。少なくとも1つのエステル化段階に適用されるこの圧力レジームは、効率的なエステル化を確保できる。しかし、当業者は、必要に応じて、または単一のまたは例外的な場合に、本発明の範囲を逸脱することなく、これらの範囲仕様から逸脱することができる。
【0153】
基本的に、本発明によれば、少なくとも1つのエステル化段階を触媒の非存在下で実施されおよび/または実行されること、あるいは、少なくとも1つのエステル化ステップが、少なくとも部分的に触媒としての酵素の存在下で、および/または、少なくとも部分的に酵素ベースの触媒の存在下で、実施されおよび/または実行されることが可能である。触媒として酵素および/または酵素ベースの触媒が使用される場合、触媒は少なくとも1つのエステル化段階の後にリサイクルされることが好ましい;これは、特に本発明の方法が、大規模または工業レベルで行われる場合、効率およびプロセス経済性を向上させる。
【0154】
本明細書において、「触媒として(使用される)酵素」および「酵素ベースの触媒」という文言または表現は同義語として使用される。
【0155】
この点において、本発明の方法の特定の実施形態によれば、少なくとも1つのエステル化段階は、式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態もしくは前駆体、好ましくはソルケタールと反応するC8-脂肪酸の無水物、特に無水カプリル酸を使用する場合、触媒の非存在下で実施されおよび/または実行されるものである。あるいは、本発明の方法の別の特定の実施形態によれば、少なくとも1つのエステル化段階が、式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態もしくは前駆体、好ましくはソルケタールと反応するC8-脂肪酸、特にカプリル酸および/またはそれらのエステルを使用する場合に、実行されおよび/または実施されることが好ましい;上述したように、触媒として酵素および/または酵素ベースの触媒が使用される場合、触媒は少なくとも1つのエステル化段階の後にリサイクルされることが好ましい。
【0156】
上述したように、本発明の特定の実施形態によれば、少なくとも1つのエステル化段階は、少なくとも部分的に、触媒としての酵素の存在下および/または少なくとも部分的に酵素ベースの触媒の存在下で(上述したように好ましくは、溶媒の非存在下および/または溶媒なしに)実施することができる。これは、高いエステル化効率、特にマイルドなエステル化条件下での優れたエステル化度と低い酸価および水酸価による高い転化率および収率を確保する。
【0157】
一般に、少なくとも1つのエステル化段階が、触媒としての酵素の存在下および/または酵素ベースの触媒の存在下で少なくとも部分的に行われる場合、酵素は特に、合成酵素(リガーゼ)、カタラーゼ、エステラーゼ、リパーゼおよびそれらの組み合わせから選択されることが好ましい。
【0158】
特に、カンディダ・アンタークティカ(Candida antarctica)、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)(リゾムコール・ミエヘイ:Rhizomucor miehei)、サーモマイセス・ラヌギノサス(Thermomuces lanuginosus)、カンディダ・ルゴサ(Candida rugosa)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、リゾープス・デレマル(Rhizopus delemar)およびシュードモナス属(Pseudomonas sp.)並びにそれらの組み合わせに、好ましくはカンディダ・アンタークティカ、ムコール・ミエヘイ(リゾムコール・ミエヘイ)及びサーモマイセス・ラヌギノサスに、より好ましくはカンディダ・アンタークティカに由来することが好ましい。これらの種は、特に良好なエステル化結果をもたらす。
【0159】
さらに、前記酵素は、特に固定化形態で、特に担体、優先的には高分子担体、好ましくは高分子有機担体、より好ましくは疎水性を有する担体、さらに好ましくはポリ(メタ)アクリル樹脂系担体に固定化して使用されることができる。これは、取り扱いや使用、触媒としての酵素のリサイクルを著しく改善する。
【0160】
特に、上述したように、上記の理由から、少なくとも1つのエステル化段階の後に酵素を再利用することが好ましい。
【0161】
一般に、少なくとも1つのエステル化段階が、少なくとも部分的に触媒としての酵素の存在下および/または少なくとも部分的に酵素ベースの触媒の存在下で実施される場合、少なくとも1つのエステル化段階に適用される温度範囲は、広い範囲にわたって変化し得る。特にそのような場合、少なくとも1つのエステル化段階は、5℃~95℃の範囲内、特に10℃~85℃の範囲内、好ましくは15℃~80℃の範囲内、より好ましくは20℃~75℃の範囲内、さらに好ましくは25℃~70℃の範囲内の温度で実行されおよび/または実施されることができる。しかしながら、当業者は、必要な場合、または単一もしくは例外的な場合には、本発明の範囲を逸脱することなく、これらの範囲指定から逸脱することができる。
【0162】
また、少なくとも1つのエステル化段階が、少なくとも部分的に触媒としての酵素の存在下および/または少なくとも部分的に酵素ベースの触媒の存在下で実施される場合、少なくとも1つのエステル化段階に適用される酵素量は、広い範囲で変化し得る。特にそのような場合、酵素は、全ての出発化合物の総量を基準として、0.0001~25重量%の範囲内、特に0.001~20重量%の範囲内、好ましくは0.01~15重量%の範囲内、より好ましくは0.05~10重量%の範囲内の量で使用される。しかしながら、当業者は、必要な場合、または単一もしくは例外的な場合には、本発明の範囲を逸脱することなく、これらの範囲指定から逸脱することができる。
【0163】
特に、本発明の特定の実施形態によれば、酵素は、全ての出発化合物の総量を基準として、1×10-6~5mol%の範囲内、特に1×10-5~2.5mol%の範囲内、好ましくは1×10-4~1.5mol%範囲内、より好ましくは1×10-3~1mol%の範囲内の量で使用することができる。しかしながら、当業者は、必要な場合、または単一もしくは例外的な場合には、本発明の範囲を逸脱することなく、これらの範囲指定から逸脱することができる。
【0164】
さらに、少なくとも1つのエステル化段階が、少なくとも部分的に触媒としての酵素の存在下および/または少なくとも部分的に酵素ベースの触媒の存在下で実施される場合、少なくとも1つのエステル化段階に適用される圧力範囲も広い範囲にわたって変化し得る。特にその場合、少なくとも1つのエステル化段階は、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらにより好ましくは約1バールの圧力で実行されおよび/または実施されることができる。しかしながら、当業者は、必要な場合、または単一もしくは例外的な場合には、本発明の範囲を逸脱することなく、これらの範囲指定から逸脱することができる。
【0165】
上述したように、本発明は、高収率および高転化率で高純度トリカプリリンを製造するための普遍的な概念/方法に基づいており、この概念/方法は、いかなる特定の合成経路からも独立している。したがって、本出願人の概念は、この目的に適用できる普遍的なものである。
【0166】
その結果、本発明の範囲内で多数の合成経路を適用することができ、これらの可能な合成経路については、以下により詳細に説明する。
【0167】
本発明の特定の実施態様によれば、本発明の方法から取得可能なまたは取得される反応生成物は、例えば、以下の合成経路(A)~(F)の1つを経由して製造することができる:
(A)(第1の)合成経路(A)によれば、
式(I)
CH2(OH)-CH(OH)-CH2(OH) (I)
の1,2,3-プロパントリオール(グリセロール、グリセリン)は、好ましくは(特に上記に定義されるような)触媒としての酵素の存在下および/または酵素ベースの触媒の存在下で、好ましくは、ジグリセリド、より好ましくは1,3-ジグリセリドを生成するように、カプリル酸またはそのエステルと最初に反応すること、
次いで、好ましくは触媒の非存在下で、カプリル酸無水物と反応すること、
上記に定義されるような式(II)の反応生成物、特にトリカプリリンを生成すること;
さもなければ、
(B) (第2の)合成経路(B)によれば、
式(I)
CH2(OH)-CH(OH)-CH2(OH) (I)
の1,2,3-プロパントリオール(グリセリン、グリセリン)を、好ましくは(特に上記に定義されるような)触媒としての酵素の存在下および/または酵素ベースの触媒の存在下で、好ましくは、ジグリセリド、より好ましくは1,3-ジグリセリドを生成するように、カプリル酸またはそのエステルと最初に反応させ、
次いで、好ましくは触媒としての酵素の存在下でおよび/または酵素ベースの触媒(より好ましくは、例えばシュードモナス・セパシアリパーゼまたはブルクホルデリア・セパシアリパーゼのような、1,3-ジグリセリドの2位を位置選択的にエステル化するための酵素)の存在下で、カプリル酸またはそのエステルと反応させ、
上述した式(II)の反応生成物、特にトリカプリリンを生成すること;
さもなければ、
(C) (第3の)合計経路(C)によれば、
式(I)
CH2(OH)-CH(OH)-CH2(OH) (I)
の1,2,3-プロパントリオール(グリセリン、グリセリン)を、好ましくは触媒の非存在下で、カプリン酸無水物と反応させ、
上述したような式(II)の反応生成物、特にトリカプリリンを生成すること;
さもなければ、
(D) (第4の)合成経路(D)によれば、上記式(I)の1,2,3-プロパントリオールの保護形態又は前駆体、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)を、触媒の非存在下で、カプリン酸無水物と反応させ、
特に、脱保護反応、特に開環(好ましくは酸誘導)および任意にアセトンの除去が、上記式(I)の1,2,3-プロパントリオールの保護形態または前駆体の遊離OH-基のモノエステル化の後に実行され、次いでカプリル酸無水物によるさらなるエステル化が実行され、
上記に定義されるような式(II)の反応生成物、特にトリカプリリンを生成すること;
さもなければ、
(E) (第5の)合成経路(E)によれば、上記式(I)の1,2,3-プロパントリオールの保護形態又は前駆体、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)を、(特に上記に定義されるような)触媒としての酵素の存在下でおよび/または酵素ベースの触媒の存在下で、カプリン酸またはそのエステルと反応させ、次いで、脱保護反応、特に開環(好ましくは酸誘導)およびアセトンの除去が行われ、好ましくはモノグリセリド、より好ましくは末端モノグリセリドおよび/または1-モノグリセリドを生成し、
次いで、好ましくは触媒の非存在下で、カプリル酸無水物と反応し、
上記に定義されるような式(II)の反応生成物、特にトリカプリリンを生成すること;
さもなければ、
(F) (第6の)合成経路(F)によれば、上記式(I)の1,2,3-プロパントリオールの保護形態又は前駆体、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)を、任意に、(特に上記に定義されるような)触媒としての酵素の存在下でおよび/または酵素ベースの触媒の存在下で、少なくとも1つの直鎖状モノ-またはポリ-不飽和(好ましくはモノ-不飽和)脂肪族C8-脂肪酸および/またはそのエステルおよび/または無水物と、好ましくは少なくとも1つの直鎖状モノ-不飽和脂肪族C8-脂肪酸および/またはそのエステルおよび/または無水物と、反応させ、好ましくは、直鎖状モノ-またはポリー不飽和(好ましくはモノ-不飽和)脂肪族C8-脂肪酸のトリグリセリドを生成し、
次いで、好ましくは少なくとも1つの水素化触媒の存在下で、トリグリセリドの直鎖状モノ-不飽和またはポリ-不飽和(好ましくはモノ-不飽和)脂肪族C8-脂肪酸ラジカルの二重結合を水素化し、
上記に定義されるような式(II)の反応生成物、特にトリカプリリンを生成すること。
【0168】
上記の(第1の)合成経路(A)は、非限定的な方法で、視覚化の目的のみのために、本発明反応生成物トリカプリリンの製造を示す以下の簡略化した反応スキームによって例示することができる。
【0169】
【0170】
上述の(第2の)合成経路(B)は、非限定的な方法で、視覚化の目的のみのために、本発明反応生成物トリカプリリンの製造を示す以下の簡略化した反応スキームによって例示することができる。
【0171】
【0172】
上述の(第3の)合成経路(C)は、非限定的な方法で、視覚化の目的のみのために、本発明反応生成物トリカプリリンの製造を示す以下の簡略化した反応スキームによって例示することができる。
【0173】
【0174】
上述の(第4の)合成経路(D)は、非限定的な方法で、視覚化の目的のみのために、本発明反応生成物トリカプリリンの製造を示す以下の簡略化した反応スキームによって例示することができる。
【0175】
【0176】
上記の(第5の)合成経路(E)は、非限定的な方法で、可視化の目的のみのために、本発明反応生成物トリカプリリンの製造を示す以下の簡略化した反応スキームによって例示することができる。
【0177】
【0178】
上述の(第6の)合成経路(F)は、非限定的な方法で、視覚化の目的のみのために、本発明反応生成物トリカプリリンの製造を示す以下の簡略化した反応スキームによって例示することができる。
【0179】
【0180】
全体として、出願人は、高収率および高変換率で高純度のトリカプリリンを製造するための普遍的な概念および方法をそれぞれ提供することができ、その概念/方法は、いかなる特定の合成経路からも独立している。したがって、出願人の概念は、この目的に適用される普遍的なものである。前述の発明の特徴および/または条件(i)~(iv)が、これらの物質の既知の製造方法およびプラントに容易に導入することができ、またはこれらの物質のための既知の製造方法およびプラントを修正するために使用することができることから、本発明の方法は、同時に非常に柔軟であり、これらの物質の既知の先行技術の製造方法およびプラントと互換性がある。
【0181】
とりわけ、本発明の製法は高純度のトリカプリリンを製造し、同時に少なくとも5つの純度特性、いわゆる;(1)非常に低い酸価(AV)、(2)非常に低い水酸価(OHV)、(3)非常に高いトリグリセリド含量、(4)非常に低いMCPD脂肪酸エステルの総含量、および(5)非常に低い脂肪酸のグリシドールエステルの総含量;の組み合わせを統一する。このような純度特性(1)~(5)の組み合わせは、これまでは両立しないか、実現不可能と考えられてきたが、出願人が意外にも発見したように、本発明の方法は、このような純度特性の組み合わせを初めて可能にする。
【0182】
さらなる主題は、本発明の第2の態様によれば、本発明による方法によって取得可能であるかまたは取得される反応生成物である。換言すれば、本発明のこの態様によれば、本発明は、上記で画定されおよび定義される本発明の本発明の存在による方法によって取得可能でありまたは取得されるトリカプリリンに関する。
【0183】
特に、本発明の主題は、本発明のこの態様によれば、トリカプリリンであり、特に、本発明の本発明による方法によって取得可能でありまたは取得されるトリカプリリンであり、
該トリカプリリンは、
式(II)
CH2[O-C(O)R1]-CH[O-C(O)R1]-CH2[O-C(O)R1] (II)
に対応し、
ここで、式(II)において、ラジカルR1は、式-(CH2)6-CH3の直鎖状飽和脂肪族C7-アルキルラジカル(すなわち、n-ヘプチルラジカル)を表す;
ここで、式(II)のトリカプリリンは、以下の特性(1)~(5)をそれらの組み合わせによって特徴とするものでありおよび/または示すものであり、および/または、以下の生成物仕様:
(1) 特に、欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(2) 特に、欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(3) 特に、欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:それぞれトリカプリリンに基づいて、≧99%、特に≧99.2%、好ましくは≧99.5%;及び
(4) 特に、DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:それぞれ前記トリカプリリンに基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppm;及び
(5) 特に、DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:それぞれ前記トリカプリリンに基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppm、を満たすものである。
【0184】
特に、本発明の主題は、特に上記の定義に従ったトリカプリリンであり、
ここで、式(II)のトリカプリリンは、それらの組合せにおける以下の特性(1)~(5)によって特徴づけられおよび/または示すものでありおよび/または以下の生成物仕様;
(1) 特に欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.1mgKOH/g;及び
(2) 欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.1mgKOH/g;及び
(3) 欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:それぞれトリカプリリンに基づいて、≧99。5%、特に≧99.6%、好ましくは≧99.8%;及び
(4) 特にDGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm;及び
(5) 特にDGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm、を満たすものである。
【0185】
本発明の反応生成物、すなわちトリカプリリンは、多数の有利で特殊な特性および特徴に関連し、これらを一体化している;したがって、不必要な繰り返しを避けるために、上記の説明を参照されたい。
【0186】
とりわけ、本発明の反応生成物、すなわち本発明のトリカプリリンは、高純度グレードを必要とし、同時に高い活性成分レベルを必要とする用途、例えば栄養学的用途、とりわけ医薬的用途および使用(例えば、高用量および/または高濃度の非経口適用にも)に特に適している。
【0187】
さらに、本発明の反応生成物、すなわち本発明のトリカプリリンは、全体的な組み合わせにおいて、これまで互いに相容れないとみなされてきた前述の5つの特性(1)~(5)を一体化する。というのも、先行技術の方法によれば、トリグリセリド含量を増やし、酸価および水酸価を下げると、通常、MCPDおよびグリシドール脂肪酸エステルの総含有量が思い切ったエステル化条件により高くなる;一方、先行技術によれば、MCPDとグリシドール脂肪酸エステルの総含有量を下げると、高い酸価と水酸価を持つ比較的低いトリグリセリド含量に達する。この先行技術とは対照的に、本発明は、前述の5つの特性(1)~(5)すべてを1つの同じ生成物に組み合わせて提供することを初めて可能にした。その結果、本発明の方法から得られる本発明の反応生成物(すなわち、トリカプリリン)は、高用量および/または高濃度の非経口用途であっても、食品および医薬用途に非常に適している。
【0188】
本発明の第2の態様に関連するさらなる詳細については、不必要な繰り返しを避けるために、本発明の第1の態様(すなわち、本発明の方法)に関連する上記の説明および備考を参照することができ、これらの説明および備考は、それに応じて本発明のこの第2の態様にも準用される。
【0189】
同様に、本発明は、本発明の第3の態様によれば、上記の定義に従った本発明のトリカプリリンを、特に生理学的に許容される賦形剤と共に含む医薬組成物、特に薬剤または医薬品に関する。
【0190】
特に、本発明のこの態様によれば、本発明は、ヒトまたは動物の身体の疾患、特にエネルギー代謝の障害を伴う疾患、特に脳外傷、脳卒中、低酸素症などのケトン体代謝、心筋梗塞などの心血管疾患、再栄養症候群、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)、VL-FAODなどの脂肪代謝疾患、およびミトコンドリアチオラーゼ欠損症、ハンチントン病などのミトコンドリア病変、T細胞リンパ腫、星細胞腫、膠芽腫などの癌、HIV、関節リウマチや関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患などの消化管の疾患、特に潰瘍性大腸炎、クローン病、スフィンゴ糖脂質症などのリゾーム貯蔵病、特にニーマン・ピック病、糖尿病、片頭痛、てんかん、特に小児けいれん、化学療法の影響や副作用、の予防的および/または治療的処置のための、または予防的および/または治療的処置に使用するための医薬組成物に関する。
【0191】
特に、本発明のこの態様によれば、本発明は、アルツハイマー病、特に軽度から中等度のアルツハイマー病;片頭痛および偏頭痛;ならびにてんかん、特に小児けいれんの中から選択される人体の疾患の予防的および/または治療的処置のための、または、予防的および/または治療的処置における使用のための医薬組成物に関する。
【0192】
本発明の第3の態様に関連するさらなる詳細については、不必要な繰り返しを避けるために、本発明の第1および第2の態様に関連する上記の説明および言及を参照することができ、これらの説明および言及は、それに応じて本発明のこの第3の態様にも準用される。
【0193】
さらに、本発明は、本発明の第4の態様によれば、ヒトまたは動物の身体の疾患、特にエネルギー代謝の障害を伴う疾患、特に脳外傷、脳卒中、低酸素症などのケトン体代謝、心筋梗塞などの心血管疾患、再栄養症候群、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)、VL-FAODなどの脂肪代謝疾患、ミトコンドリアチオラーゼ欠損、ハンチントン病などのミトコンドリア病、T細胞リンパ腫、星細胞腫、膠芽腫などの癌、HIV、関節リウマチや関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患などの消化管の疾患、特に潰瘍性大腸炎およびクローン病、スフィンゴ糖脂質症などのリゾーム貯蔵病、特にニーマン・ピック病、糖尿病、片頭痛、てんかん、特に小児けいれん、化学療法の影響や副作用の予防的および/または治療的処置のための、または、予防的および/または治療的処置における使用のための、上記の定義による本発明のトリカプリリンにも関する。
【0194】
特に、本発明のこの態様によれば、本発明は、アルツハイマー病、特に軽度から中等度のアルツハイマー病;片頭痛および偏頭痛;ならびにてんかん、特に小児けいれんの中から選択される人体の疾患の予防的および/または治療的処置のための、または、予防的および/または治療的処置における使用のための、上記の定義による本発明のトリカプリリンに関する。
【0195】
本発明の第4の態様に関連するさらなる詳細については、不必要な繰り返しを避けるために、本発明の第1、第2および第3の態様に関連する上記の説明および言及を参照することができ、これらの説明および言及は、それに応じて本発明のこの第4の態様にも準用される。
【0196】
さらに、本発明は、本発明の第5の態様によれば、ヒトまたは動物の身体の疾患、特にエネルギー代謝の障害を伴う疾患、特に脳外傷、脳卒中、低酸素症などのケトン体代謝、心筋梗塞などの心血管疾患、再栄養症候群、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)、VL-FAODなどの脂肪代謝疾患、ミトコンドリアチオラーゼ欠損、ハンチントン病などのミトコンドリア病、T細胞リンパ腫、星細胞腫、膠芽腫などの癌、HIV、関節リウマチや関節炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患などの消化管の疾患、特に潰瘍性大腸炎およびクローン病、スフィンゴ糖脂質症などのリゾーム貯蔵病、特にニーマン・ピック病、糖尿病、片頭痛、てんかん、特に小児けいれん、化学療法の影響や副作用の予防的および/または治療的処置のための、または予防的および/または治療的処置のための医薬を製造するための、上記の定義による本発明のトリカプリリンの本発明による使用にも関する。
【0197】
特に、本発明のこの態様によれば、本発明は、アルツハイマー病、特に軽度から中等度のアルツハイマー病;片頭痛および偏頭痛;ならびにてんかん、特に小児けいれんの中から選択される人体の疾患の予防的および/または治療的処置のための、または、予防的および/または治療的処置のための医薬を製造するための、上記の定義による本発明のトリカプリリンの本発明による使用に関する。
【0198】
特に、本発明のこの態様によれば、本発明は、飢餓、ダイエットまたは低炭水化物栄養のような異化代謝状態の予防的および/または治療的処置のための、または、医薬の製造のための、上記の定義による本発明のトリカプリリンの本発明による使用に関する。
【0199】
本発明の第5の態様に関連するさらなる詳細については、不必要な繰り返しを避けるために、本発明の第1、第2、第3および第4の態様に関連する上記の説明および言及を参照することができ、これらの説明および言及は、それに応じて本発明のこの第5の態様にも準用される。
【0200】
さらに、本発明は、本発明の第6の態様によれば、上記定義に従った本発明のトリカプリリンを含む食品および/または栄養組成物もしくは食品組成物および/または食品生成物および/または医療用食品に関する。
【0201】
特に、本発明のこの態様によれば、食品および/または栄養組成物もしくは食品組成物および/または食品生成物および/または医療用食品は、例えば、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、または筋力および/または持久力のあるスポーツサプリメントであることが好ましい。
【0202】
本発明の第6の態様に関連するさらなる詳細については、不必要な繰り返しを避けるために、本発明の第1、第2、第3、第4および第5の態様に関連する上記の説明および言及を参照することができ、これらの説明および言及は、それに応じて本発明のこの第6の態様にも準用される。
【0203】
同様に、本発明は、本発明の第7の態様によれば、食品におよび/または栄養組成物もしくは食品組成物におよび/または食品生成物におよび/または医療用食品における上記の定義による本発明のトリカプリリンの本発明による使用に関する。
【0204】
特に、本発明のこの態様によれば、食品および/または栄養組成物もしくは食品組成物および/または食品生成物および/または医療用食品は、例えば、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、または筋力および/または持久力のあるスポーツサプリメントであることが好ましい。
【0205】
本発明の第7の態様に関連するさらなる詳細については、不必要な繰り返しを避けるために、本発明の第1、第2、第3、第4、第5および第6の態様に関連する上記の説明および言及を参照することができ、これらの説明および言及は、それに応じて本発明のこの第7の態様にも準用される。
【0206】
また、本発明は、本発明の第8の態様によれば、さらに、添加剤または助剤、特に担体または賦形剤、可溶化剤、放出剤、表面処理剤として、輸送剤、潤滑剤、疎水化剤、フィルム形成剤もしくは保護剤、または粘度調整剤として、好ましくは担体または賦形剤として、医薬組成物、特に薬物または医薬品、食品、栄養組成物または食品組成物、食品生成物および/または医療用食品、ならびに化粧品組成物における上記の定義による本発明のトリカプリリンの本発明による使用に関する。
【0207】
特に、本発明のこの態様によれば、本発明は、医薬組成物、特に薬物または医薬における担体または賦形剤としての、上記の定義による本発明のトリカプリリンの本発明による使用に関する。
【0208】
さらに、本発明のこの態様によれば、本発明は、医薬組成物、特に薬物または医薬品、食品、栄養組成物または食品組成物、食品生成物および/または医療用食品あるいは化粧品組成物における、特に賦形剤と共に、特に生理学的に許容される賦形剤と共に、活性物質(すなわち有効成分)としての、上記の定義による本発明のトリカプリリンの本発明による使用にも関する。
【0209】
さらに、本発明のこの態様によれば、本発明は、医薬組成物における活性物質(すなわち、有効成分、API)としての、上記の定義による本発明のトリカプリリンの本発明による使用に関する。
【0210】
さらに、本発明のこの態様によれば、本発明はまた、医薬組成物、特に薬物または医薬品における活性物質(すなわち有効成分、API)として、特に生理学的に許容される賦形剤とともに、上記の定義による本発明のトリカプリリンの本発明による使用に関する。
【0211】
本発明の第8の態様に関連するさらなる詳細については、不必要な繰り返しを避けるために、本発明の第1、第2、第3、第4、第5、第6および第7の態様に関連する上記の説明および言及を参照することができ、これらの説明および言及は、それに応じて本発明のこの第8の態様にも準用される。
【0212】
最後に、本発明は、本発明の第9の態様によれば、トリカプリリンを、特に上記で定義される式(II)のトリカプリリンを精製するため、および/または、トリカプリリンに、特に上記で定義される式(II)のトリカプリリンに存在するハロゲン化物ベースの不純物を、好ましくは選択的に除去もしくは誘導体化するための、求核剤の使用にも関する。
【0213】
特に、本発明のこの態様によれば、前記求核剤は、好ましくは、亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO3
-)、亜硫酸塩(SO3
2-)、チオ硫酸水素塩(HS2O3
-)、チオ硫酸塩(S2O3
2-)、亜リン酸水素塩(H2PO3
-)、亜リン酸塩(HPO3
2-)およびホスフィン、ならびにそれらの組み合わせから選択されるか、より好ましくは亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO3
-)であることが好ましい。
【0214】
通常、本発明のこの態様による特定の実施形態によれば、精製されるトリカプリリンは、求核剤で処理されるおよび/または求核剤と接触させる。
【0215】
一般に、精製すべきトリカプリリンが、前記求核剤で処理されおよび/または接触させることは、一段階処理または単段階処理として行うことが好ましい。しかしながら、特に不純物の程度が高い場合には、精製すべきトリカプリリンを求核剤で処理および/または接触させることを、特に2回以上のサイクルにおいておよび/または多段階方法として、繰り返し実施することも可能である。とはいえ、精製すべきトリカプリリンと求核剤との処理および/または接触は、(つまり、処理や接触を繰り返すことなく)一段階で行うのが好ましい;特に不純物の程度が高い場合には、代替実施形態として、繰り返し処理および/または接触を行う代わりに、より高い量または高い濃度の求核剤を使用することも可能である。
【0216】
特に、本発明のこの態様による別の特定の実施形態によれば、前記求核剤は、トリカプリリンを、ハロゲン化物ベース、特に塩素ベースの不純物から精製するために、および/または、トリカプリリンからのハロゲン化物ベース、特に塩素ベースの不純物、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル)、脂肪酸のグリシドールエステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される塩素ベースの不純物を除去するために使用される。
【0217】
特に、本発明のこの態様によるさらに別の特定の実施形態によれば、ハロゲン化物ベースの不純物は、塩素ベースの不純物、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル)、脂肪酸のグリシドールエステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される塩素ベースの不純物である。
【0218】
特に、本発明のこの態様によるさらなる特定の実施形態によれば、精製されるトリカプリリンは、通常、求核剤、特に好ましくは求核剤の水性溶液で処理されおよび/または接触される。
【0219】
特に、精製されるトリカプリリンは、不純物を除去するのに十分な反応条件下、特に反応温度および/または反応時間において、前記求核剤と処理されおよび/または接触される。
【0220】
特に、精製されるトリカプリリンは、10℃~175℃の範囲内、好ましくは25℃~120℃の範囲内、より好ましくは50℃~100℃の範囲内の温度で、および/または、0.001~50時間の範囲内、好ましくは0.01~30時間の範囲内、より好ましくは0.1~20時間の範囲内の時間で、前記求核剤と処理されおよび/または接触される。
【0221】
したがって、全体として、例えば亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO3
-)、亜硫酸塩(SO3
2-)、チオ硫酸水素塩(HS2O3
-)、チオ硫酸塩(S2O3
2-)、亜リン酸水素塩(H2PO3
-)、亜リン酸塩(HPO3
2-)およびホスフィンなどならびにそれらの組み合わせなどの求核剤は、トリカプリリンを精製するための優れた反応剤、特にトリカプリリンからハロゲン化物ベースの不純物、特に塩素ベースの不純物を除去するための優れた反応剤、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル)、脂肪酸のグリシドールエステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される塩素ベースの不純物を(ハロゲン化物ベースの不純物の選択的誘導体化を介して)除去するための優れた反応剤である。
【0222】
本発明の第9の態様に関連するさらなる詳細については、不必要な繰り返しを避けるために、本発明の第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7および第8の態様に関連する上記の説明および言及を参照することができ、これらの説明および言及は、それに応じて本発明のこの第9の態様にも準用される。
【0223】
本発明のさらなる実施形態、修正および変形は、本発明の範囲を逸脱することなく、当業者が本明細書を読むことにより容易に認識または実現可能である。
【発明を実施するための形態】
【0224】
本発明は、以下の実施例によって説明されるが、これらの実施例は、本発明を何ら限定することを意図するものではなく、本発明の例示的かつ非限定的な実施および構成を説明するためのものである。
【実施例】
【0225】
製造例
本発明による方法は、以下の実施例により説明されるが、そこでは、以下に詳細に説明されるように、合成の異なる様式が適用されている。
【0226】
すべての本発明実施例において、それぞれ使用される出発物質1,2,3-プロパントリオール(グリセリン、グリセリン)およびソルケタール(イソプロピリデングリセリン)は、それぞれ少なくとも本質的に塩素化種を含まないものであり、すなわちそれぞれ(それぞれ1,2,3-プロパントリオールまたはソルケタールに基づいて)最大0.1ppmの全塩素化種含量を含むものである。さらに、MCPD脂肪酸エステルとグリシドール脂肪酸エステルの合計の濃度は、検出限界以下(それぞれグリセロールまたはソルケタールを基準として、MCPDとグリシドールエステルの合計がそれぞれ0.1ppm以下)である。
【0227】
さらに、すべての発明例において、エステル化は100℃を超えない温度、好ましくは80℃を超えない温度で行う。
【0228】
また、すべての本発明例において、エステル化は、金属ベースの触媒の非存在下で行われる。
【0229】
最後に、すべての本発明例は、ハロゲン化物ベースの不純物、特にMCPD脂肪酸エステルおよびグリシドール脂肪酸エステルの痕跡を除去するために、選択的誘導体化、すなわち求核剤による化学処理を含む。すべての本発明例において、このような処理がなくても生成物の純度要件は満たされるが、このような選択的誘導体化、すなわち求核剤による化学処理により、存在する微量の不純物も選択的に除去されるため、純度グレードをさらに高めることができる。
【0230】
1.合成経路(A)
トリカプリリンは前述の合成経路(A)に従って製造される。この目的のために、以下の手順が適用される:
【0231】
カプリル酸(すなわち飽和直鎖C8-脂肪酸またはオクタン酸)を、触媒としての固定化酵素(カンディダ・アンタルクティカ由来のポリマー担体上のCALBリパーゼ、例えばシグマ-アルドリッヒまたはメルク社製のNovozym(商標登録)435またはシュトレム-ケミカルズ社製のLipozym(商標登録)435;反応混合物に基づいて1重量%)の存在下、真空下(<100ミリバール)、80℃でグリセロールと反応させる。カプリル酸は、グリセロールのOH-基を基準として300mol%まで、好ましくは100mol%までの量で使用される。次いで、過剰のカプリル酸を短経路蒸留(≪180℃、好ましくは120℃~130℃;≪0.1ミリバール、好ましくは<2ミリバール)を用いて除去する。ジカプリリン、特に1,3-ジカプリリン(カプリル酸の1,3-ジグリセリド)が得られる。
【0232】
その後、ジカプリリンは、180℃未満、好ましくは80℃~150℃の温度で、水酸価(OHV)が0.1mgKOH/g未満になるまでカプリル酸無水物と反応させる。結果として生じる生成物は、通常の方法で処理され、副生成物として形成されるカプリル酸を除去する(すなわち、短経路蒸留など)。
【0233】
得られたトリカプリリン生成物は、次のように分析される:
・ 欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.1mgKOH/g;及び
・ 欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.1mgKOH/g;及び
・ 欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:反応生成物に基づいて、≧99.4%;及び
・ DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:前記反応生成物に基づいて≦0.14ppm;及び
・ DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:それぞれが前記反応生成物に基づいて≦0.12ppm。
【0234】
トリカプリリン生成物は,さらに求核剤として亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)水溶液の形において処理(80℃、6時間)(ハロゲン化物ベースの不純物、すなわちMCPD脂肪酸エステルおよびグリシドール脂肪酸エステルの選択的誘導体化)にかけられる。水性相を分離し、結果として生じるトリカプリリン生成物を乾燥させると、トリグリセリド含量が99.5%以上に増加し、MCPD脂肪酸エステルの含量と脂肪酸のグリシドールエステルの含量の合計がそれぞれ検出限界以下(すなわち、それぞれ0.1ppm以下)になるため、生成物全体の品質がさらに向上する。任意で、こうして処理された生成物は、漂白土および/または活性炭でさらに処理することもでき、任意でその後脱臭(例えば加圧蒸気を使用)を行う。亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)で処理し、任意でさらに処理した後のトリカプリリン生成物は、以下のように分析される:
・ 酸価(AV)(欧州薬局方2.5.1):≦0.1mgKOH/g、
・ 水酸価(OHV)(欧州薬局方2.5.3):≦0.1mgKOH/g、
・ トリグリセリド含有量(欧州薬局方2.2.28):トリカプリリンに基づいて≧99.5%、
・ MCPD脂肪酸エステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm、
・ 脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm。
【0235】
亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)の代わりに、他の求核剤(すなわち、チオ硫酸水素ナトリウムNaHS2O3、亜リン酸水素ナトリウムNaH2PO3およびホスフィン類)を用いても、同等の結果が得られる。得られた結果は同等である。
【0236】
前述の製造手順を、異なる出発原料、すなわちカプリル酸のそれぞれのC1-C4-エステルを用いて、類似の方法で繰り返す。いずれの方法でも同等の結果が得られた。
【0237】
同様の方法で、一方ではトリヘプタノインが、他方ではカプロン酸(C6)/カプリル酸(C8)/カプリン酸(C10)をベースとする中鎖トリグリセリド(MCT)が、それぞれ同等の結果で製造される(トリヘプタノインとMCTそれぞれについて亜硫酸水素で処理した後の特性:酸価:≦0.1mgKOH/g、水酸価:≦0.1mgKOH/g、トリグリセリド含量:≧99.5%、MCPD脂肪酸エステルの総含有量:≦0.1ppm、グリシドールエステルの総含有量:≦0.1ppm)。
【0238】
比較手順(本発明のものではない)
非特許的な態様において、トリカプリリンの合成経路(A)は、以下の逸脱を伴って実施される:出発原料として使用されるグリセロールは、全塩素化種の含有量が約30ppmである。使用されるエステル化触媒は、テトラブチルチタネート(TBT)をベースとする金属ベースの触媒である。エステル化は190℃~230℃の温度範囲で行われる。
【0239】
結果として生じるトリカプリリンは以下のように分析される:酸価(欧州薬局方2.5.1:>0.6mgKOH/g、水酸価(欧州薬局方2.5.3):>0.7mgKOH/g、トリグリセリド含有量(欧州薬局方2.2.28):トリカプリリンを基準として97.5%、MCPD脂肪酸エステルの総含有量(DGF C-VI18(10)):トリカプリリンを基準として0.9ppm、脂肪酸のグリシドールエステルの総含有量(DGF C-VI18(10)):トリカプリリンを基準として0.7ppm。
【0240】
その後、水溶液の形で亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)で処理(80℃、6時間)すると、MCPDE脂肪酸エステルの総含有量と脂肪酸のグリシドールエステルの総含有量の両方を、それぞれ約0.4ppmの値まで低下させることができるが、酸価、水酸価、トリグリセリド含量のパラメーターは改善しないかまたは影響を与えない。
【0241】
2.合成経路(B)
トリカプリリンは前述の合成経路(B)に従って製造される。この目的のために、以下の手順が適用される:
カプリル酸(すなわち飽和直鎖C8-脂肪酸またはオクタン酸)を、触媒としての固定化酵素(カンディダ・アンタルクティカ由来のポリマー担体上のCALBリパーゼ、例えばシグマ-アルドリッヒまたはメルク社製のNovozym(登録商標)435またはシュトレムケミカルズ社製のLipozym(登録商標)435;反応混合物を基準として1重量%)の存在下、真空下(<100ミリバール)、80℃でグリセロールと反応させる。カプリル酸は、グリセロールのOH-基を基準として300mol%まで、好ましくは100mol%までの量で使用される。次に、短経路蒸留(180℃、好ましくは120℃~130℃;0.1ミリバール、好ましくは2ミリバール)を用いて過剰のカプリル酸を除去する。ジカプリリン、特に1,3-ジカプリリン(カプリル酸の1,3-ジグリセリド)が得られる。その後、ジカプリリンは、酵素、特に1,3-ジグリセリドの2位を位置選択的にエステル化する酵素(例えば、それぞれキトサンに固定化される第1のアプローチではシュードモナス・フルオレッセンスリパーゼ、代替的な第2のアプローチではブルクホルデリア・セパシアリパーゼ)の存在下で、50℃で水酸価(OHV)が、0.1mgKOH/g未満になるまでカプリル酸と反応させる。
【0242】
得られたトリカプリリン生成物は次のように分析される:
・ 酸価(AV)(欧州薬局方2.5.1):≦0.1mgKOH/g、
・ 水酸価(OHV)(欧州薬局方2.5.3):≦0.1mgKOH/g、
・ トリグリセリド含有量(欧州薬局方2.2.28):トリカプリリンに基づいて≧99.5%、
・ MCPD脂肪酸エステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.17ppm、
・ 脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.19ppm。
【0243】
トリカプリリン生成物はさらに、求核剤として亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)水溶液の形で処理(80℃、6時間)(ハロゲン化物ベースの不純物、すなわちMCPD脂肪酸エステルおよびグリシドール脂肪酸エステルの選択的誘導体化)にかけられる。水性相を分離し、結果として生じるトリカプリリン生成物を乾燥させると、MCPD脂肪酸エステルの含有量と脂肪酸のグリシドールエステルの含有量の合計がそれぞれ検出限界以下(すなわち、それぞれ≦0.1ppm)であるため、生成物全体の品質がさらに向上する。任意で、こうして処理された生成物は、漂白土および/または活性炭でさらに処理することもでき、任意でその後脱臭(例えば加圧蒸気を使用)を行う。
【0244】
亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)で処理し、任意でさらに処理した後結果として生じるトリカプリリン生成物は、以下のように分析される:
・ 酸価(AV)(欧州薬局方2.5.1):≦0.1mgKOH/g、
・ 水酸価(OHV)(欧州薬局方2.5.3):≦0.1mgKOH/g、
・ トリグリセリド含有量(欧州薬局方2.2.28):トリカプリリンに基づいて≧99.5%、
・ MCPD脂肪酸エステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm、
・ 脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm。
【0245】
前述の製造手順を、異なる出発原料、すなわちカプリル酸のそれぞれのC1-C4-エステルを用いて、類似の方法で繰り返す。いずれの方法でも同等の結果が得られた。
【0246】
類似の方法で、一方ではトリヘプタノインも、他方ではカプロン酸(C6)/カプリル酸(C8)/カプリン酸(C10)ベースの中鎖トリグリセリド(MCT)も、それぞれ同等の結果で製造される。(トリヘプタノインとMCTそれぞれについて亜硫酸水素で処理した後の特性:酸価:≦0.1mgKOH/g、水酸価:≦0.1mgKOH/g、トリグリセリド含量:≧99.5%、MCPD脂肪酸エステルの総含有量:≦0.1ppm、グリシドールエステルの総含有量:≦0.1ppm)。
【0247】
3.合成経路(C)
トリカプリリンは、前述の合成経路(C)に従って製造される。この目的のために、以下の手順が適用される:
カプリル酸無水物(すなわち直鎖飽和C8-脂肪酸無水物またはオクタン酸無水物)は、180℃未満、好ましくは80℃~150℃の間で、水酸価(OHV)が0.1mgKOH/g未満になるまでグリセロールと反応させる。次に、生成したカプリル酸(副生成物)を短経路蒸留(≪180℃、好ましくは120℃~130℃;≪0.1ミリバール、好ましくは<2ミリバール)を用いて除去する。
【0248】
結果として生じるトリカプリリン生成物は、以下のように分析される:
・ 酸価(AV)(欧州薬局方2.5.1):≦0.1mgKOH/g、
・ 水酸価(OHV)(欧州薬局方2.5.3):≦0.1mgKOH/g、
・ トリグリセリド含有量(欧州薬局方2.2.28):トリカプリリンに基づいて≧99.5%、
・ MCPD脂肪酸エステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.16ppm、
・ 脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.12ppm。
【0249】
トリカプリリン生成物はさらに、求核剤として亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)水溶液の形で処理(80℃、6時間)(ハロゲン化物ベースの不純物、すなわちMCPDE脂肪酸エステルおよびグリシドール脂肪酸エステルの選択的誘導体化)にかけられる。水性相を分離し、結果として生じるトリカプリリン生成物を乾燥させると、MCPD脂肪酸エステルの含有量と脂肪酸のグリシドールエステルの含有量の合計がそれぞれ検出限界以下(すなわち、それぞれ≦0.1ppm)であるため、生成物全体の品質がさらに向上する。任意で、このように処理された生成物は、漂白土および/または活性炭でさらに処理することもでき、任意でその後脱臭(例えば加圧蒸気を使用)を行う。
【0250】
亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)で処理され、任意でさらに処理した後のトリカプリリン生成物は、以下のように分析される:
・ 酸価(AV)(欧州薬局方2.5.1):≦0.1mgKOH/g、
・ 水酸価(OHV)(欧州薬局方2.5.3):≦0.1mgKOH/g、
・ トリグリセリド含有量(欧州薬局方2.2.28):トリカプリリンに基づいて≧99.5%、
・ MCPD脂肪酸エステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm、
・ 脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm。
【0251】
同様の方法で、一方ではトリヘプタノインが、他方ではカプロン酸(C6)/カプリル酸(C8)/カプリン酸(C10)をベースとする中鎖トリグリセリド(MCT)が、それぞれ同等の結果で製造される(トリヘプタノインとMCTそれぞれについて亜硫酸水素で処理した後の特性:酸価:≦0.1mgKOH/g、水酸価:≦0.1mgKOH/g、トリグリセリド含量:≧99.5%、MCPDE脂肪酸エステルの総含有量:≦0.1ppm、グリシドールエステルの総含有量:≦0.1ppm)。
【0252】
4.合成経路(D)
トリカプリリンは前述の合成経路(D)に従って製造される。この目的のために、以下の手順が適用される:
ソルケタールおよびカプリル酸無水物(直鎖飽和C8-脂肪酸無水物またはオクタン酸無水物)がフラスコに入れられ、システムは排気される。前記混合物は180℃未満、好ましくは80℃~150℃の温度で、6時間反応させる。その後、副生成物として生成したカプリル酸は、20ミリバール未満、130℃で蒸留除去される。カプリル酸のソルケタールモノエステルが95%未満の純度で得られる。
【0253】
その後、カプリル酸のソルケタールモノエステルを酸誘導脱保護反応(すなわち開環)にかける。希硫酸または希リン酸のいずれかを使用してpH値を好ましくは約1に調整し、脱保護の副産物として生成したアセトンを除去する。
【0254】
次に、得られたカプリル酸グリセリンモノエステル(すなわち、カプリル酸モノグリセリド)を、さらにカプリル酸無水物と80℃で90分間反応させ、トリグリセリド(すなわち、トリカプリリン)を得る。反応終了後、副生成物として生成したカプリル酸は、20ミリバール未満、130℃で、蒸留除去される。
【0255】
結果として生じるトリカプリリン生成物は、下記のように分析される:
・ 酸価(AV)(欧州薬局方2.5.1):≦0.1mgKOH/g、
・ 水酸価(OHV)(欧州薬局方2.5.3):≦0.1mgKOH/g、
・ トリグリセリド含有量(欧州薬局方2.2.28):トリカプリリンに基づいて≧99.5%、
・ MCPD脂肪酸エステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm、
・ 脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm。
【0256】
トリカプリリン生成物はさらに、求核剤として亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)水溶液の形で処理(80℃、6時間)(ハロゲン化物ベースの不純物、すなわちMCPD脂肪酸エステルおよびグリシドール脂肪酸エステルの選択的誘導体化)にかけられる。水性相を分離し、結果として生じるトリカプリリン生成物を乾燥させると、トリグリセリド含量が99.5%以上に増加し、MCPD脂肪酸エステルの含量と脂肪酸のグリシドールエステルの含量の合計がそれぞれ検出限界以下(すなわち、それぞれ0.1ppm以下)になるため、生成物全体の品質がさらに向上する。任意で、こうして処理された生成物は、漂白土および/または活性炭でさらに処理することもでき、任意でその後脱臭(例えば加圧蒸気を使用)を行う。亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)で処理し、任意でさらに処理した後のトリカプリリン生成物は、以下のように分析される:
・ 酸価(AV)(欧州薬局方2.5.1):≦0.1mgKOH/g、
・ 水酸価(OHV)(欧州薬局方2.5.3):≦0.1mgKOH/g、
・ トリグリセリド含有量(欧州薬局方2.2.28):トリカプリリンに基づいて≧99.5%、
・ MCPD脂肪酸エステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm、
・ 脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm。
【0257】
類似の方法で、一方ではトリヘプタノインも、他方ではカプロン酸(C6)/カプリル酸(C8)/カプリン酸(C10)ベースの中鎖トリグリセリド(MCT)も、それぞれ同等の結果で製造される;(トリヘプタノインとMCTそれぞれについて亜硫酸水素で処理した後の特性:酸価:≦0.1mgKOH/g、水酸価:≦0.1mgKOH/g、トリグリセリド含量:≧99.5%、MCPD脂肪酸エステルの総含有量:≦0.1ppm、グリシドールエステルの総含有量:≦0.1ppm)。
【0258】
5.合成経路(E)
トリカプリリンは前述の合成経路(E)に従って製造される。この目的のために、以下の手順が適用される:
ソルケタールおよびカプリル酸(すなわち直鎖飽和C8-脂肪酸またはオクタン酸)を、触媒としての固定化酵素(カンディダ・アンタルクティカ由来のポリマー担体上のCALBリパーゼ、例えばシグマーアルドリッヒまたはメルク社製のNovozym(登録商標)435またはシュトレムケミカルズ社製のLipozym(登録商標)435;反応混合物を基準として1重量%)と混合し、N2雰囲気下、80℃で6時間反応させる。その後、酵素をろ過する。カプリル酸のソルケタールモノエステルが得られる。
【0259】
その後、カプリル酸のソルケタールモノエステルを酸誘導脱保護反応(すなわち開環)にかける。希硫酸または希リン酸のいずれかを使用してpH値を好ましくは約1に調整し、脱保護の副産物として生成したアセトンを除去する。
【0260】
次に、結果として生じるカプリル酸グリセリンモノエステル(すなわち、カプリル酸モノグリセリド)をさらにカプリル酸無水物と80℃で90分間反応させ、トリグリセリド(すなわち、トリカプリリン)を得る。反応終了後、副生成物として生成したカプリル酸を、20ミリバール未満、130℃で蒸留除去する。
【0261】
結果として生じるトリカプリリン生成物は次のように分析される:
・ 酸価(AV)(欧州薬局方2.5.1):≦0.1mgKOH/g、
・ 水酸価(OHV)(欧州薬局方2.5.3):≦0.1mgKOH/g、
・ トリグリセリド含有量(欧州薬局方2.2.28):トリカプリリンに基づいて≧99.4%、
・ MCPD脂肪酸エステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.15ppm、
・ 脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.12ppm。
【0262】
トリカプリリン生成物は、さらに求核剤として亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)水溶液の形で処理(80℃、6時間)(ハロゲン化物ベースの不純物、すなわちMCPD脂肪酸エステルおよびグリシドール脂肪酸エステルの選択的誘導体化)にかけられる。水性相を分離し、結果として生じるトリカプリリン生成物を乾燥させると、トリグリセリド含量が99.5%以上に増加し、MCPD脂肪酸エステルの含量と脂肪酸のグリシドールエステルの含量の合計がそれぞれ検出限界以下(すなわち、それぞれ0.1ppm以下)になるため、生成物全体の品質がさらに向上する。任意で、このように処理された生成物は、漂白土および/または活性炭でさらに処理することもでき、任意でその後(例えば加圧蒸気を使用する)脱臭を行う。亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)で処理され、任意でさらに処理された後の結果として生じるトリカプリリン生成物は、以下のように分析される:
・ 酸価(AV)(欧州薬局方2.5.1):≦0.1mgKOH/g、
・ 水酸価(OHV)(欧州薬局方2.5.3):≦0.1mgKOH/g、
・ トリグリセリド含有量(欧州薬局方2.2.28):トリカプリリンに基づいて≧99.5%、
・ MCPD脂肪酸エステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm、
・ 脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm。
【0263】
同様の方法で、一方ではトリヘプタノインも、他方ではカプロン酸(C6)/カプリル酸(C8)/カプリン酸(C10)ベースの中鎖トリグリセリド(MCT)も、それぞれ同等の結果で製造される。
(トリヘプタノインとMCTそれぞれについて亜硫酸水素で処理した後の特性:酸価:≦0.1mgKOH/g、水酸価:≦0.1mgKOH/g、トリグリセリド含量:≧99.5%、MCPD脂肪酸エステルの総含有量:≦0.1ppm、グリシドールエステルの総含有量:≦0.1ppm)。
【0264】
6.合成経路(F)
トリカプリリンは前述の合成経路(F)に従って製造される。この目的のために、以下の手順が適用される:
2-オクテン酸が、グリセロール(MCPD脂肪酸エステルとグリシドールエステルの総和の0.1ppm以下;塩素化種の総含有量0.1ppm以下)で、触媒として固定化酵素(カンディダ・アンタルクティカ由来のポリマー担体上のCALBリパーゼ、例えばシグマ-アルドリッヒまたはメルク社製のNovozym(登録商標)435またはシュトレムケミカルズ社製のLipozym(登録商標)435;反応混合物を基準として0.5重量%以下、好ましくは0.1重量%以下)の存在下で、真空下(100ミリバール以下)、70℃で、エステル化される。反応副産物として生成された水は連続的に抜き取られる。エステル化は、水酸価(OHV)が、0.1mgKOH/g以下になるまで行われる。
【0265】
次に、短経路蒸留(≪180℃、≪10ミリバール、好ましくは120~130℃、<2ミリバール)を用いて過剰の2-オクテン酸を除去する。2-オクテン酸のトリグリセリドが得られる。
【0266】
その後、2-オクテン酸のトリグリセリドは、2-オクテン酸のトリグリセリドに基づいて≦10重量%の濃度の通常の水素化触媒(すなわち、好ましくは触媒担体上の遷移金属触媒、例えばPd、Pt、Ru、Rh、Niなど)を用いて水素化される。水素化は、50℃~180℃の間の、好ましくは80℃~120℃の間の温度で、50バール未満、好ましくは5バール~30バールの間の水素圧で行われる。水素化は、反応混合物のヨウ素価が100g当たり1.0g未満となるまで継続される。その後、触媒は濾過され、反応生成物は化学的に洗浄/処理され、その後濾過される漂白土/活性炭で処理される。化学的洗浄/処理は、水溶液の形態の亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)を用いて、上記に定義されるように実施される(80℃、6時間)。
【0267】
その後、加圧蒸気(HPW-蒸気)を用いて脱臭し、120℃~180℃未満の温度、10ミリバール以下の圧力で、残存する2-オクテン酸を除去する。
【0268】
亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)処理後のトリカプリリン生成物は、以下のように分析される:
・ 酸価(AV)(欧州薬局方2.5.1):≦0.1mgKOH/g、
・ 水酸価(OHV)(欧州薬局方2.5.3):≦0.1mgKOH/g、
・ トリグリセリド含有量(欧州薬局方2.2.28):トリカプリリンに基づいて≧99.5%、
・ MCPD脂肪酸エステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm、
・ 脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量(DGF C-VI 18(10)):トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm。
【0269】
しかしながら、前述の製造手順は、異なる出発物質、すなわち4-オクテン酸、7-オクテノイド酸、2-オクテノイド酸、4-オクテノイド酸および7-オクテノイド酸、および、2-オクテノイド酸、4-オクテノイド酸および7-オクテノイド酸の三重混合物を用いて、類似の方法で繰り返す。いずれの方法でも同等の結果が得られた。
【0270】
同様の方法で、一方でトリヘプタノイン、他方でカプロン酸(C6)/カプリル酸(C8)/カプリン酸(C10)ベースの中鎖トリグリセリド(MCT)が、それぞれ同等の結果で製造される(トリヘプタノインとMCTそれぞれについて亜硫酸水素で処理した後の特性:酸価:≦0.1mgKOH/g、水酸価:≦0.1mgKOH/g、トリグリセリド含量:≧99.5%、MCPD脂肪酸エステルの総含有量:≦0.1ppm、グリシドールエステルの総含有量:≦0.1ppm)。
【0271】
発明的特徴および/または条件(i):選択的誘導体化/少なくとも1つの求核剤による処理
本発明の基準(i)の有効性、特にハロゲン化物系不純物の選択的誘導体化、すなわちハロゲン化物系不純物(特にMCPDおよびグリシドール脂肪酸エステル)の選択的除去を示すために、市販のトリグリセリドを本発明の基準(i)に従った処理が実施される。
【0272】
MCTオイル(トリグリセリド)ベースの市販品は、グリシドールエステル含量が70ppmである。80℃の亜硫酸水素ナトリウム水溶液で6時間処理した後、グリシドールエステル含量は、9.11ppmに減少する。
【0273】
MCTオイル(トリグリセリド)をベースにした別の市販品(MCT60/40)は、3-MCPD脂肪酸エステル含量が8ppmである。80℃の亜硫酸水素ナトリウム水溶液で6時間処理すると、3-MCPD含量は2.21ppmに減少する;従って、約3.5倍の削減が達成される。
【0274】
さらなる市販品(Miglyol(登録商標)812N、C8/C10-トリグリセリド)の3-MCPD脂肪酸エステル含量は1.56ppmである。80℃で12%の亜硫酸水素ナトリウム水溶液による15時間の処理の後、3-MCPD含量は0.16ppmまで減少する;従って、約9.7倍の削減が達成される。
【0275】
亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO3)の代わりに、他の求核剤(すなわち、チオ硫酸水素ナトリウムNaHS2O3、亜リン酸水素ナトリウムNaH2PO3またはホスフィン)を用いても、同等の結果が得られる。得られた結果は同等である。
【0276】
したがって、本発明の特徴および/または条件(i)は、ハロゲン化物系不純物、特にMCPDおよびグリシドール脂肪酸エステルの含有量を効果的に低減する。しかしながら、本発明の基準(i)だけに基づくだけでは、特に純度の低いグレードの市販または先行技術のトリグリセリドから出発する場合には、先に定義した項目(1)~(5)で5倍の純度/グレード要件からなる生成物仕様全体を満たすには必ずしも十分ではない;しかしながら、特に、(4)MCPD脂肪酸エステルの総含有量が0.1ppm未満であること、及び(5)グリシドールエステルの総含有量が0.1ppm未満であることの少なくとも2つの特徴は、この基準(i)によって効率的に調整及び/又は効果を得ることができる。
【0277】
結論
本出願人は、高純度のトリカプリリン(トリカプリリンとの混合物の製造に使用できる他の脂肪酸のトリグリセリドも)を高収率および高転化率で製造するための普遍的なコンセプト/方法を提供することができ、そのコンセプト/方法は、特別な合成経路から独立している。
【0278】
本発明の方法は、同時に非常に柔軟であり、これらの物質の既知の先行技術の製造方法およびプラントと互換性がある。なぜなら、前述の本発明の特徴および/または条件(i)~(iv)は、これらの物質の既知の製造方法およびプラントに容易に実施することができ、またはこれらの物質の既知の製造方法およびプラントを修正するために使用することができるからである。
【0279】
とりわけ、本発明の方法は、高純度のトリカプリリン(しかし、他の脂肪酸のトリグリセリドも製造することができ、これらはトリカプリリンとの混合物の製造に使用することができる)を製造し、同時に少なくとも5つの純度特性の組み合わせを統一する;すなわち、(1)非常に低い酸価(AV)、(2)非常に低い水酸価(OHV)、(3)非常に高いトリグリセリド含有量、(4)非常に低いMCPD脂肪酸エステルの総含有量、および(5)非常に低い脂肪酸のグリシドールエステルの総含有量であり、ここで、この純度仕様は、特定の合成経路とは無関係に到達することができる。このような純度特性(1)~(5)の組み合わせは、これまでは両立しないか、実現不可能と考えられてきたが、出願人が意外にも発見したように、本発明の方法は、このような純度特性の組み合わせを初めて可能にする。
【0280】
さらに、例えば、亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO3
-)、亜硫酸塩(SO3
2-)、チオ硫酸水素塩(HS2O3
-)、チオ硫酸塩(S2O3
2-)、亜リン酸水素塩(H2PO3
-)、亜リン酸塩(HPO3
2-)およびホスフィンならびにこれらの組み合わせなどの求核剤は、トリカプリリンを精製するための、且つ、ハロゲン化物ベースの不純物、特に塩素ベースの不純物を、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル)、脂肪酸のグリシドールエステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される塩素ベースの不純物を、トリカプリリンから除去する(すなわち、ハロゲン化物ベースの不純物の選択的誘導体化)ための優れた反応剤である。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリカプリリンを、特に高純度で製造する方法であって、
式(I)
CH
2(OH)-CH(OH)-CH
2(OH) (I)
の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態若しくはソルケタールから選択される前駆体が開始材料として使用されて反応し、および/または、トリカプリリンに変換されること、
式(II)
CH
2[O-C(O)R
1]-CH[O-C(O)R
1]-CH
2[O-C(O)R
1] (II)
のトリカプリリンを、反応生成物として、生成すること、
ここで、式(II)において、ラジカルR
1は、式-(CH
2)
6-CH
3の直鎖状飽和脂肪族C
7-アルキルラジカル(すなわち、n-ヘプチルラジカル)を表すものであること、
ここで、この方法は、少なくとも1つのエステル化段階を、特にC
8-脂肪酸、特に直鎖飽和またはモノ-もしくはポリ-不飽和C
8-脂肪酸および/またはそれらの無水物および/またはエステルを使用するエステル化段階を、好ましくは式CH
3-(CH
2)
6-COOHのカプリル酸および/またはその無水物またはエステルを使用する少なくとも1つのエステル化段階を含むこと;
ここで、この方法は、以下の特徴および/または条件(i)~(iv)の4つすべての組み合わせによって特徴付けられること:
(i) 結果として生じる反応生成物中に存在するハロゲン化物ベースの不純物、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル、特にMCPDカプリル酸エステル)および脂肪酸のグリシドールエステル(特にグリシドールカプリル酸エステル)の好ましくは選択的な誘導体化が実行されること、且つ/または、結果として生じる反応生成物は、少なくとも1つの求核剤で、特にハロゲン化物ベースの不純物を除去することができる求核剤で、好ましくは亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO
3
-)、亜硫酸塩(SO
3
2-)、チオ硫酸水素塩(HS
2O
3
-)、チオ硫酸塩(S
2O
3
2-)、亜リン酸水素塩(H
2PO
3
-)、亜リン酸塩(HPO
3
2-)およびホスフィンならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される求核剤で、より好ましくは亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO
3
-)で、特に、ハロゲン化物ベースの不純物、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル)および脂肪酸のグリシドールエステルの好ましくは選択的な誘導体化のために、処理されおよび/または接触されること;
(ii) 少なくとも1つのエステル化段階は、180℃を超えない温度、特に150℃を超えない温度、特に120℃を超えない温度、好ましくは100℃を超えない温度、より好ましくは80℃を超えない温度、さらに好ましくは50℃を超えない温度で稼働されおよび/または実施されること;
(iii) 出発物質として使用される式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態、好ましくはソルケタール(イソプロピリデングリセロール)は、少なくとも本質的に塩素化種を含まないこと、および、特に、ソルケタールら選択される式(I)の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態に基づいて、最大1ppm、特に最大0.5ppm、好ましくは最大0.1ppmの全塩素化種含量を有すること;
(iv) 少なくとも1つのエステル化段階は、金属ベースの触媒の非存在下で実施されること、を特徴とする方法。
【請求項2】
式(II)のトリカプリリンは、それらの組合せにおいて下記する特性(1)~(5):
(1) 特に欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(2) 欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(3) 欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:それぞれ反応生成物に基づいて、≧99%、特に≧99.2%、好ましくは≧99.5%;及び
(4) 特にDGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:それぞれ前記反応生成物に基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppm;及び
(5) 特にDGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:それぞれが前記反応生成物に基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppm、によって特徴づけられることおよび/または表すことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記反応生成物が、トリカプリリンであること;および/または、
前記式(II)において、ラジカルR
1が、直鎖状飽和脂肪族C
7-アルキルラジカルを表すこと;および/または、
少なくとも1つのエステル化において、オクタン酸および/またはその無水物および/またはエステルが使用されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
全体的な方法および/または特に任意の前処理および/または後処理段階があればそれも含めた方法の全体は、180℃を超えない温度で、特に160℃を超えない温度で、特に150℃を超えない温度で、150℃を超えない温度で℃、好ましくは120℃を超えない温度で、稼働されることおよび/または実行されること;および/または、
ここで、前記方法は、さらなる特徴および/または条件(v):
(v) 全体的な方法および/または特に任意の前処理および/または後処理段階があればそれも含めた方法の全体は、180℃を超えない温度で、特に160℃を超えない温度で、特に150℃を超えない温度で、150℃を超えない温度で℃、好ましくは120℃を超えない温度で、稼働されおよび/または実行されること、によって特徴づけられること;および/または、
全体的な方法および/または特に任意の前処理段階および/または後処理段階があればそれも含めた方法の全体は、金属ベースの触媒の非存在下で、稼働されおよび/または実行されること;および/または、
前記方法は、さらなる特徴および/または条件(vi)、
(vi)全体的な方法および/または特に任意の前処理段階および/または後処理段階があればそれも含めた方法の全体は、金属ベースの触媒の非存在下で、稼働されおよび/または実行されること;
によって特徴づけられること、を特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのエステル化段階は、1段階のエステル化として、あるいは2段階または多段階のエステル化として実施されること;および/または、
少なくとも1つのエステル化段階は、溶媒の非存在下で実施されおよび/または実行されること;および/または、
少なくとも1つのエステル化段階が、触媒の非存在下で実施されおよび/または実行されるか、あるいはそれに代えて、少なくとも1つのエステル化段階が、触媒としての酵素の存在下および/または酵素ベースの触媒の存在下で少なくとも部分的に実施されおよび/または実行されることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の方法によって取得可能でありまたは取得されるトリカプリリン。
【請求項7】
前記トリカプリリンが、
式(II)
CH
2[O-C(O)R
1]-CH[O-C(O)R
1]-CH
2[O-C(O)R
1] (II)
に対応すること、
ここで、式(II)において、ラジカルR
1は、式-(CH
2)
6-CH
3の直鎖状飽和脂肪族C
7-アルキルラジカルを表すこと;
ここで、式(II)のトリカプリリンは、以下の特性(1)~(5):
(1) 欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(2) 欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.5mgKOH/g、特に≦0.2mgKOH/g、好ましくは≦0.1mgKOH/g;及び
(3) 欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:それぞれトリカプリリンに基づいて、≧99%、特に≧99.2%、好ましくは≧99.5%;及び
(4) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:それぞれ前記トリカプリリンに基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppm;及び
(5) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:それぞれ前記トリカプリリンに基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppm、をそれらの組み合わせによって特徴とするものであることおよび/または示すものであることを特徴とするトリカプリリン。
【請求項8】
式(II)のトリカプリリンは、以下の特性(1)~(5):
(1) 欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.1mgKOH/g;及び
(2) 欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.1mgKOH/g;及び
(3) 欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:それぞれトリカプリリンに基づいて、≧99.5%、特に≧99.6%、好ましくは≧99.8%;及び
(4) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:前記トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm;及び
(5) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:前記トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm、をそれらの組み合わせによって特徴とするものであることおよび/または示すものであることを特徴とする請求項6または7記載のトリカプリリン。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1つに記載のトリカプリリンを、特に生理学的に許容される賦形剤とともに含むことを特徴とする医薬組成物、特に薬剤または医薬品。
【請求項10】
ヒトまたは動物の身体の疾患のための予防的および/または治療的処置に使用するための請求項6~8のいずれか1つに記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項6~8のいずれか1つに記載のトリカプリリンを含む食品および/または食品および/または栄養もしくは食品組成物および/または食品生成物および/または医療用食品。
【請求項12】
添加剤または助剤、特に担体または賦形剤、可溶化剤、放出剤、表面処理剤として、輸送剤、潤滑剤、疎水化剤、フィルム形成剤もしくは保護剤、または粘度調整剤として、好ましくは担体または賦形剤として、医薬組成物、特に薬物または医薬品、食品、栄養組成物または食品組成物、食品生成物および/または医療用食品、ならびに化粧品組成物における請求項6~8のいずれか1つに記載のトリカプリリンの使用。
【請求項13】
医薬組成物、特に薬物または医薬における担体または賦形剤としての請求項6~8のいずれか1つに記載のトリカプリリンの使用。
【請求項14】
医薬組成物、特に薬物または医薬品、食品、栄養組成物または食品組成物、食品生成物および/または医療用食品あるいは化粧品組成物における、特に賦形剤と共に、特に生理学的に許容される賦形剤と共に、活性物質としての請求項6~8のいずれか1つに記載のトリカプリリンの使用。
【請求項15】
医薬組成物、特に薬物または医薬品における活性物質として、特に生理学的に許容される賦形剤とともに、請求項6~8のいずれか1つに記載のトリカプリリンの使用。
【請求項16】
トリカプリリンを、特に上記に定義されるような式(II)のトリカプリリンを精製するための、および/または、トリカプリリンに、特に上記に定義されるような式(II)のトリカプリリンに存在するハロゲン化物ベースの不純物を好ましくは選択的に除去もしくは誘導体化するための求核剤の使用であって、
前記求核剤は、好ましくは、亜硫酸水素塩(重亜硫酸塩、HSO
3
-)、亜硫酸塩(SO
3
2-)、チオ硫酸水素塩(HS
2O
3
-)、チオ硫酸塩(S
2O
3
2-)、亜リン酸水素塩(H
2PO
3
-)、亜リン酸塩(HPO
3
2-)およびホスフィン、ならびにそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする使用。
【請求項17】
精製されるトリカプリリンは、前記求核剤で処理されることおよび/または求核剤と接触させること;および/または、
前記求核剤は、トリカプリリンを、ハロゲン化物ベース、特に塩素ベースの不純物から精製するために、および/または、トリカプリリンからのハロゲン化物ベース、特に塩素ベースの不純物、特にMCPD脂肪酸エステル(モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル)、脂肪酸のグリシドールエステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される塩素ベースの不純物を除去するために使用されること;および/または、
ハロゲン化物ベースの不純物は、塩素ベースの不純物、特にMCPD脂肪酸エステル、脂肪酸のグリシドールエステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される塩素ベースの不純物であること;および/または、
精製されるトリカプリリンは、求核剤で、特に好ましくは求核剤の水性溶液で処理されることおよび/または接触されること;および/または、
精製されるトリカプリリンは、不純物を除去するのに十分な反応条件下、特に反応温度および/または反応時間において、前記求核剤と処理されることおよび/または接触されること;および/または、
精製されるトリカプリリンは、10℃~175℃の範囲内、好ましくは25℃~120℃の範囲内、より好ましくは50℃~100℃の範囲内の温度で、および/または、0.001~50時間の範囲内、好ましくは0.01~30時間の範囲内、より好ましくは0.1~20時間の範囲内の時間で、前記求核剤と処理されることおよび/または接触されること、を特徴とする請求項16記載の方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度のトリカプリリンを製造する方法であって、
式(I)
CH
2(OH)-CH(OH)-CH
2(OH) (I)
の1,2,3-プロパントリオールまたはその保護形態若しくはソルケタールから選択される前駆体から選択される少なくとも1つの開始材料が、反応してトリカプリリンに変換され、
式(II)
CH
2[O-C(O)R
1]-CH[O-C(O)R
1]-CH
2[O-C(O)R
1] (II)
のトリカプリリンを、反応生成物として、生成すること、
ここで、式(II)において、ラジカルR
1は、式-(CH
2)
6-CH
3の直鎖状飽和脂肪族C
7-アルキルラジカルを表すものであること、
ここで、この方法は、C
8-脂肪酸およびそれらの無水物並びにエステルを使用するエステル化段階を含むこと;
ここで、この方法は、以下の特徴および/または条件(i)~(iv):
(i) 結果として生じる反応生成物中に存在するモノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステルおよび脂肪酸のグリシドールエステルから選択されるハロゲン化物ベースの不純物の選択的な誘導体化が、亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、チオ硫酸水素塩、チオ硫酸塩、亜リン酸水素塩、亜リン酸塩およびホスフィンならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される求核剤で、結果として生じる反応生成物を処理することによって実施されること;
(ii) 少なくとも1つのエステル化段階は、180℃を超えない温度で実施されること;
(iii) 式(I)の1,2,3-プロパントリオールおよびソルケタールから選択されるその保護体ならびに前駆体から選択される出発物質が使用され、塩素化された種を含まないように選択され、式(I)の1,2,3-プロパントリオールおよびその保護形態ならびにソルケタールから選択される前駆体に基づいて、最大1ppmの全塩素化種含量を含むこと;
(iv) 少なくとも1つのエステル化段階は、金属ベースの触媒の非存在下で実施されること;の4つすべての組み合わせを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
式(II)のトリカプリリンは、それらの組合せにおいて下記する特性(1)~(5):
(1) 欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.5mgKOH/g;及び
(2) 欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.5mgKOH/g;及び
(3) 欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:前記反応生成物に基づいて、≧99%;及び
(4) 特にDGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:前記反応生成物に基づいて≦0.5ppm;及び
(5) 特にDGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:前記反応生成物に基づいて≦0.5ppm、を表すことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記式(II)において、ラジカルR
1が、直鎖状飽和脂肪族C
7-アルキルラジカルを表すこと;および
少なくとも1つのエステル化段階において、オクタン酸およびその無水物ならびにエステルの中から選択される少なくとも1つの化合物が使用されること、を特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
付加的な前処理および/または後処理段階を含む全体的な方法は、180℃を超えない温度で実行されること;および
付加的な前処理および/または後処理段階を含む全体的な方法は、金属ベースの触媒の非存在下で、実行されること、を特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのエステル化段階は、溶媒の非存在下で実行されること;および
少なくとも1つのエステル化段階は、触媒の非存在下、または代替的に、触媒として酵素の存在下で少なくとも部分的に実行されること、を特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
請求項1または2記載の方法によって取得可能であるか、取得されるトリカプリリン。
【請求項7】
トリカプリリンが、
式(II)
CH
2[O-C(O)R
1]-CH[O-C(O)R
1]-CH
2[O-C(O)R
1] (II)
に対応すること、
ここで、式(II)において、ラジカルR
1は、式-(CH
2)
6-CH
3の直鎖状飽和脂肪族C
7-アルキルラジカルを表すこと;
ここで、式(II)のトリカプリリンは、以下の特性(1)~(5):
(1) 欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.5mgKOH/g;及び
(2) 欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.5mgKOH/g;及び
(3) 欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:前記トリカプリリンに基づいて、≧99%;及び
(4) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:前記トリカプリリンに基づいて≦0.5ppm;及び
(5) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:前記トリカプリリンに基づいて≦0.5ppm、をそれらの組み合わせにおいて示すものであることを特徴とするトリカプリリン。
【請求項8】
前記トリカプリリンが、
式(II)
CH
2[O-C(O)R
1]-CH[O-C(O)R
1]-CH
2[O-C(O)R
1] (II)
に対応すること、
ここで、式(II)において、ラジカルR
1は、式-(CH
2)
6-CH
3の直鎖状飽和脂肪族C
7-アルキルラジカルを表すこと;
ここで、式(II)のトリカプリリンは、以下の特性(1)~(5):
(1) 欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.2mgKOH/g;及び
(2) 欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.2mgKOH/g;及び
(3) 欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:トリカプリリンに基づいて、≧99.2%;及び
(4) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:前記トリカプリリンに基づいて≦0.5ppm、特に≦0.2ppm、好ましくは≦0.1ppm;及び
(5) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:前記トリカプリリンに基づいて≦0.2ppm、をそれらの組み合わせにおいて示すものであることを特徴とする請求項7記載のトリカプリリン。
【請求項9】
前記トリカプリリンが、
式(II)
CH
2[O-C(O)R
1]-CH[O-C(O)R
1]-CH
2[O-C(O)R
1] (II)
に対応すること、
ここで、式(II)において、ラジカルR
1は、式-(CH
2)
6-CH
3の直鎖状飽和脂肪族C
7-アルキルラジカルを表すこと;
ここで、式(II)のトリカプリリンは、以下の特性(1)~(5):
(1) 欧州薬局方2.5.1(欧州薬局方10.0)によって測定される酸価(AV):≦0.1mgKOH/g;及び
(2) 欧州薬局方2.5.3(欧州薬局方10.0)によって測定される水酸価(OHV):≦0.1mgKOH/g;及び
(3) 欧州薬局方2.2.28(欧州薬局方10.0)によって測定されるトリグリセリド含有量:トリカプリリンに基づいて、≧99.5%;及び
(4) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定されるMCPD脂肪酸エステルの合計含有量:前記トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm;及び
(5) DGF C-VI 18(10)(ドイツ脂肪学会標準法)の方法によって測定される脂肪酸のグリシドールエステルの合計含有量:前記トリカプリリンに基づいて≦0.1ppm、をそれらの組み合わせによって特徴とするものであることおよび/または示すものであることを特徴とする請求項7記載のトリカプリリン。
【請求項10】
生理学的に許容される賦形剤とともに、請求項7または8記載のトリカプリリンを含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項11】
請求項7または8記載のトリカプリリンを有する食品、栄養組成物、食品組成物、食品生成物および医療用食品からなる群から選択される食品ベースの生成物。
【請求項12】
請求項7または8記載のトリカプリリンを有する化粧品組成物。
【請求項13】
請求項7または8記載のとりカプリリンを有する、担体または賦形剤、可溶化剤、離型剤、表面処理剤、輸送剤、滑沢剤、疎水化剤、皮膜形成剤または保護剤、および粘度調整剤の少なくとも1つとして使用するための添加剤。
【請求項14】
食品、栄養組成物、食品組成物、食品生成物および医療用食品からなる群から選択される医薬組成物、医薬品、化粧品および食品ベースの生成物の少なくとも1つに適用されることを特徴とする請求項13記載の添加剤。
【請求項15】
ハロゲン化物系不純物を含むトリカプリリンを精製するための方法において、
該方法が、少なくとも1つの求核剤による処理によって精製されるトリカプリリンに存在するハロゲン化物ベースの不純物の選択的な除去および誘導体化の少なくとも1つの段階を有すること、
前記求核剤が、亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、チオ硫酸水素塩、チオ硫酸塩、亜リン酸水素塩、亜リン酸塩およびホスフィンならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項16】
ハロゲン化物ベースの不純物は、モノクロロプロパンジオールの脂肪酸エステル、脂肪酸のグリシドールエステルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項15記載の方法。
【国際調査報告】