(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-30
(54)【発明の名称】時計組立体の製造方法及び時計組立体
(51)【国際特許分類】
G04B 17/06 20060101AFI20240523BHJP
G04B 19/247 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
G04B17/06 A
G04B19/247 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575706
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2022065840
(87)【国際公開番号】W WO2022258810
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】CH000159/2022
(32)【優先日】2022-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カラム, フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】エニン, ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】ムルトン, ザビエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンサン-ファルケ, ブノワ
(57)【要約】
【解決手段】
別個の第二時計部品(20)と組み立てられた第一時計部品(10)を含む、時計組立体であって、第一時計部品(10)は、少なくとも1つの機能部分と、機能部分とは別個の接続穴を構成可能な受け開口(11)を含み、受け開口(11)を区切る壁は、第一接続面(12)を形成し、第二時計部品(20)は、第二接続面(22)を含み、固定面において第一及び第二時計部品(10、20)のそれぞれの第一及び第二接続面(12、22)間の直接または間接接触により、第一時計部品に対して確実に組み立てられ、第一及び第二接続面(12、22)または任意の中間第三部品(30)の第三接続面の少なくとも1つは、第一及び第二時計部品が酸化ケイ素の層の成長により互いに固定されるよう、熱処理により酸化されるシリコン製である、時計組立体。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
別個の第二時計部品(20)と組み立てられた第一時計部品(10)を含む、時計組立体であって、前記第一時計部品(10)は、受け開口(11)または接続穴を含み、前記受け開口(11)または前記接続穴を区切る前記壁は、第一接続面(12)を形成し、前記第二時計部品(20)は、第二接続面(22)を含み、固定面において前記第一及び第二時計部品(10、20)のそれぞれの第一及び第二接続面(12、22)間の直接または間接接触により、前記第一時計部品に対して確実に組み立てられ、前記第一及び第二接続面(12、22)または任意の中間第三部品(30)の第三接続面の少なくとも1つは、前記第一及び第二時計部品が酸化ケイ素の層の成長により互いに固定されるよう、熱処理により酸化されるシリコン製である、
時計組立体。
【請求項2】
前記第一時計部品(10)の前記受け開口(11)は、前記第一接続面(12)の全体にわたり一定の断面を有する、
請求項1に記載の時計組立体。
【請求項3】
前記第二時計部品は、前記第二接続面(22)との境界から連続して増加する可変半径方向断面の部分(25)を有し、前記可変半径方向断面の部分(25)は、前記受け開口(11)の端部の直近で、前記受け開口(11)の外に位置決めされる、
請求項1または2に記載の時計組立体。
【請求項4】
前記第一及び第二時計部品(10、20)の少なくとも1つは、主としてセラミック製である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の時計組立体。
【請求項5】
前記第一及び第二時計部品(10、20)の前記固定面または複数の固定面は、円筒状または卵形または楕円形または多角形である、または円筒状または卵形または楕円形または多角形に内接する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の時計組立体。
【請求項6】
前記第一及び第二時計部品(10、20)の少なくとも一つは、主としてシリコン製であり、前記第一時計部品(10)の前記第一接続面(12)と前記第二時計部品(20)の前記第二接続面(22)は、直接接触し、主としてシリコン製の前記部品の前記接続面は、熱処理により酸化されたシリコン製である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の時計組立体。
【請求項7】
前記組立体は、熱処理により酸化されたシリコン製の、外部第三接続面と内部第三接続面を形成する接続区域を含む、スリーブタイプの、主としてシリコン製の中間第三部品(30)を含み、前記内部第三接続面は、前記第二時計部品(20)の前記第二接続面(22)と直接接触し、前記外部第三接続面は、前記第一時計部品(10)の前記第一接続面(12)と直接接触する、
請求項1または2に記載の時計組立体。
【請求項8】
前記第一時計部品(10)は、前記受け開口(11)とは別個の、少なくとも1つの機能部分を含み、前記第一時計部品(10)の前記受け開口(11)を区切る前記壁は、前記機能部分に対して実質的に不動を維持するよう、剛性連結により前記第一時計部品(10)の前記機能部分と接続される、または前記第一時計部品の前記受け開口を区切る前記壁は、とりわけ弾性的に可動な、柔軟連結により、前記機能部分に接続される、
請求項1から7のいずれか一項に記載の時計組立体。
【請求項9】
前記第一及び第二時計部品(10、20)の前記固定面は、前記第二時計部品(20)を、完全に、またはその周囲の少なくとも70%にわたり、またはその周囲の少なくとも40%にわたり、囲む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の時計組立体。
【請求項10】
前記第一及び第二時計部品(10、20)は、シリコン製の少なくとも1つの接続面の熱処理による酸化前に、最小間隙により組み立てられるような、形状を有する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の時計組立体。
【請求項11】
前記第一時計部品(10)の前記受け開口(11)は、円形第一断面を有し、前記第二時計部品(20)の前記接続面(22)は、円形第二断面を有し、前記円形第一断面の直径は、熱処理による前記酸化前の前記円形第二断面の直径より厳密に大きい、または前記第一及び第二接続面の一方は円形断面を有し、他方は、前記2つの部品の前記組立体の自身の中央揃えを可能にするよう、非円形の、とりわけ卵形または楕円形または多角形断面を有する、または前記第一及び第二接続面(12、22)の前記2つの第一及び第二断面はそれぞれ、同一の非円形の、とりわけ卵形または楕円形または多角形の断面を有する、
請求項10に記載の時計組立体。
【請求項12】
前記第一時計部品(10)の前記受け開口(11)は、貫通開口または止まり開口である、
請求項1から11のいずれか一項に記載の時計組立体。
【請求項13】
前記組立体は、粗さを増加するよう構造化された、またはローレット切りまたは溝掘りまたはキー溝を含む、及びまたは平坦な、前記第一時計部品(10)または前記第二時計部品(20)のいずれかである時計部品の少なくとも1つの接続面(12、22)を含む、及びまたは前記第二時計部品(20)は、支持軸受面(23)を含む、
請求項1から12のいずれか一項に記載の時計組立体。
【請求項14】
酸化ケイ素製の前記接続面は、1μm以上の、または1.5μm以上の、及びまたは4μm以下の、平均厚さの、酸化物の層を含む、
請求項1から13のいずれか一項に記載の時計組立体。
【請求項15】
前記第二時計部品(20)は、前記時計組立体が、時計ムーブメント内で回転する能力を持って搭載されることを可能にする、真である、
請求項1から14のいずれか一項に記載の時計組立体。
【請求項16】
前記第一時計部品(10)は、がんぎ車といった歯車、または脱進機ピニオンといったピニオン、またはひげぜんまいである、
請求項1から15のいずれか一項に記載の時計組立体。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の時計組立体を少なくとも1つ含む、
時計ムーブメント。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか一項に記載の時計組立体を少なくとも1つ、または請求項17に記載の時計ムーブメントを含む、時計。
【請求項19】
第一時計部品(10)と、別個の第二時計部品(20)とを含む、時計組立体の製造方法であって、
前記2つの時計部品(10、20)を、前記第二時計部品(20)が前記第一時計部品(10)の受け開口または接続穴(11)内に位置決めされるよう、最小間隙中間構成に組み立てるステップであって、前記第一時計部品(10)の第一接続面(12)は、前記第二時計部品(20)の第二接続面(22)と、任意でスリーブタイプの中間第三部品(30)の内部及び外部第三接続面を介して、対向して位置決めされ、前記第一及び第二接続面(12、22)または任意の内部及び外部第三接続面の少なくとも1つがシリコン製である、ステップと、
前記2つの時計部品(10、20)の予め定めたレベルの互いの固定が得られるまで、シリコン製の前記少なくとも1つの接続面上に酸化ケイ素の層の成長を得るために、中間構成にある前記時計組立体を熱処理するステップと、
のステップを含む、
時計組立体の製造方法。
【請求項20】
前記中間構成は、前記2つの時計部品(10、20)間の半径方向間隙が、2μm以下、または1.5μm以下であるような構成であり、
及びまたは
前記第二時計部品(20)は、保持するために前記熱処理の温度を耐えられる支持部(40)の前記開口(41)内に挿入され保持される、または
複数の第二時計部品(20)は、前記製造に用いられたウェハ(5)上に一時的に結びつけられた、第一時計部品(10)の複数のラフ型とそれぞれ組み立てられる、
請求項19に記載の時計組立体の製造方法。
【請求項21】
前記中間構成において、前記第一時計部品(10)の前記受け開口(11)の一端は、前記第二時計部品(10)の可変半径方向断面の部分に対して、線形に、連続または非連続に、当接する、
請求項19または20に記載の時計組立体の製造方法。
【請求項22】
前記熱処理は、800から1200℃の間の温度で実施される、
請求項19から21のいずれか一項に記載の、時計組立体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの時計部品の時計組立体に関する。本発明はまた、少なくとも1つの当該時計組立体を含む、時計ムーブメント及び時計に関する。本発明はまた、当該時計組立体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
時計において、セラミックは、その固有の機械的性質、とりわけ硬度及び磁界への不感性が多数の時計部品について非常に有利であることを理由に、例えば時計真を形成するために、使用が増加している。
【0003】
時計部品を組み立てるために用いられた従来の解決策は、金属製素材について設計された解決策であり、セラミックについて常に適しているまたは最適であるわけではない。これに加えて、シリコンも同様に、時計部品の製造における使用が増加しており、時計部品を組み立てる従来の解決策は、シリコンの脆性を理由として、同様にシリコンについて常に適しているまたは最適であるわけではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、本発明の一つの目的は、時計組立を改善する、とりわけ特にセラミックの使用に良好に適した、時計組立解決策を定義することである。
【0005】
より具体的には、本発明の一つの目的は、信頼性があり、耐久性があり、実施が簡単な、時計組立解決策を定義することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明は、別個の第二時計部品と組み立てられた第一時計部品を含む、時計組立体であって、前記第一時計部品は、受け開口または接続穴を含み、前記受け開口または前記接続穴を区切る前記壁は、第一接続面を形成し、前記第二時計部品は、第二接続面を含み、固定面において前記第一及び第二時計部品のそれぞれの第一及び第二接続面間の直接または間接接触により、前記第一時計部品に対して確実に組み立てられ、前記第一及び第二接続面または任意の中間第三部品の第三接続面の少なくとも1つは、前記第一及び第二時計部品が酸化ケイ素の層の前記成長により互いに固定されるよう、熱処理により酸化されるシリコン製である、時計組立体に関する。
【0007】
第一時計部品は、少なくとも1つの機能部分と、当該機能部分とは別個の受け開口を含んでもよい。
【0008】
第一実施形態によれば、第一時計部品の受け開口の輪郭は閉鎖され、当該受け開口または接続穴は、その第一接続面の全体にわたり一定の断面を有してもよい。
【0009】
第二実施形態によれば、受け開口の輪郭は、第一時計部品の外周へ開口し、受け開口または接続穴は、その第一接続面の全体にわたり一定の断面を有してもよく、その高さは、第一時計部品の全厚さの一部と全厚さとの間に含まれる。
【0010】
更に、第二時計部品は、とりわけ第二接続面との境界から連続して増加する、可変断面の部分を有してもよく、当該連続して増加する断面の部分は、受け開口の端部の直近において、受け開口、または接続穴の外に位置決めされる。
【0011】
本発明はまた、第一時計部品と、別個の第二時計部品とを含む、時計組立体の製造方法であって、
前記2つの時計部品を、前記第二時計部品が前記第一時計部品の接続穴または受け開口内に位置決めされるよう、最小間隙中間構成に組み立てるステップであって、前記第一時計部品の第一接続面は、前記第二時計部品の第二接続面と、任意でスリーブタイプの中間第三部品の内部及び外部第三接続面を介して、対向して位置決めされ、前記第一及び第二接続面または任意の内部及び外部第三接続面の少なくとも1つがシリコン製である、ステップと、
前記2つの時計部品の予め定めたレベルの互いの固定が得られるまで、シリコン製の前記少なくとも1つの接続面上に酸化ケイ素の層の成長を得るために、中間構成にある前記時計組立体を熱処理するステップと、
のステップを含む、時計組立体の製造方法に関する。
【0012】
本発明は、より具体的には、請求項により定義される。
【0013】
本発明の目的、特徴、及び利点は、添付の図面に関して非限定的実施例として与えられる特定の実施形態の、以下の説明において、詳細に与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1a】
図1aは、本発明の一実施形態にかかる時計組立方法の、第一ステップを示す。
【
図1b】
図1bは、本発明の一実施形態にかかる時計組立方法の、第一ステップを示す。
【
図2a】
図2aは、本発明の一実施形態にかかる時計組立方法の、第二ステップを示す。
【
図2b】
図2bは、本発明の一実施形態にかかる時計組立方法の、第二ステップを示す。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態にかかる時計組立方法の、第三ステップを示す。
【
図4a】
図4aは、本発明の一実施形態にかかる時計組立方法の第三ステップの、拡大図を示す。
【
図4b】
図4bは、本発明の一実施形態にかかる時計組立方法の第三ステップの、拡大図を示す。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態にかかる時計組立方法の第四ステップの、組立体の締付の変化を示す。
【
図6】
図6は、本発明の第一実施形態にかかる時計組立体を含む、時計ムーブメントの一部を示す。
【
図7】
図7は、本発明の第二実施形態にかかる時計組立体を含む、時計ムーブメントの一部を示す。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態にかかる時計組立方法の、第三ステップの第一変形例を示す。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態にかかる時計組立方法の、第三ステップの第二変形例を示す。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態にかかる時計組立方法の、第三ステップの第三変形例を示す。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態にかかる時計組立方法の、第三ステップの第四変形例を示す。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態の第四変形例にかかる時計組立方法の、第三ステップと、第四ステップを実施することで得られた組立体の拡大模式図を示す。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態の第四変形例にかかる時計組立方法の、第三ステップと、第四ステップを実施することで得られた組立体の拡大模式図を示す。
【
図14】
図14は、本発明の一実施形態にかかる時計組立方法の、第三ステップの第五変形例を示す。
【
図15】
図15は、てん輪ピンを受けるための受け開口が設けられた、てん輪を示す。
【
図16】
図16は、本発明の一実施形態にかかる、
図15のてん輪に組み立てられたてん輪ピンを示す。
【
図17】
図17は、インパルスピンを受ける受け開口が設けられた、てん輪を示す。
【
図18】
図18は、本発明の一実施形態にかかる、
図17のてん輪に組み立てられたインパルスピンを示す。
【
図19】
図19は、ジャンパスプールを受ける受け開口が設けられた、ジャンパを示す。
【
図20】
図20は、本発明の一実施形態にかかる、
図19のジャンパと組み立てられた、ジャンパスプールを示す。
【
図21】
図21は、本発明の他の実施形態にかかる開放受け開口を形成する雌部を含む、第一部品を示す。
【
図22】
図22は、本発明の他の実施形態にかかる
図21の第一部品と組み立てられた雄部を含む、第二部品を示す。
【
図23】
図23は、本発明の各種実施形態にかかる、溝彫りされた接続面を示す。
【
図24】
図24は、本発明の各種実施形態にかかる、溝彫りされた接続面を示す。
【
図25】
図25は、本発明の各種実施形態にかかる、溝彫りされた接続面を示す。
【
図26】
図26は、本発明の各種実施形態にかかる、溝彫りされた接続面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、有利には、時計組立体の製造方法に関する。当該方法の目的は、ここでは時計組立体と称される、堅固に接続された実体を形成するため、少なくとも2つの別個の時計部品を確実に組み立てることである。時計組立体の時計部品の少なくとも1つは、有利には、主としてセラミック製である、すなわち完全にまたは部分的にセラミック製である、およびまたは有利には少なくとも50重量%のセラミックを含む。セラミックは、有利には、主としてセラミック製の当該時計部品の接続面上に存在する。
【0016】
セラミックは、とりわけ、ジルコニア、特にイットリア安定化ジルコニア、とりわけ3モル%のイットリア安定化ジルコニアまたは2モル%のイットリア安定化ジルコニア、または単結晶または多結晶アルミナまたはアルミナ-ジルコニア化合物である。変形例として、セラミックは、単体または互いとの組み合わせの、耐熱金属の窒化物、炭化物およびまたはホウ化物であってもよく、上述のジルコニアおよびアルミナといった酸化物との組み合わせであってもよい。
【0017】
以下に、時計組立体の製造方法を説明する。
【0018】
本実施形態にかかる方法の第一ステップは、堅固に接続された実体を形成するため組み立てられる、2つの別個の時計部品を調達することである。
【0019】
図1aは、本実施形態ではシリコン製の歯車である、第一時計部品10を図示する。第一時計部品10は、その中心部に、歯車のハブに対応する、「接続穴」とも呼ばれる、受け開口11を含む。本実施形態によれば、受け開口11(接続穴)は、円形の形状である、横方向断面、すなわち自身の中心軸に垂直な断面を有する。変形例として、当該断面は、例えば楕円、卵形、多角形、等といった他の形状を有してもよい、およびまたはその周囲に沿って、あらゆるタイプの形状の断面を有してよい少なくとも1つの溝彫りを有してもよい。少なくとも1つの溝彫りは、酸化ケイ素層の成長と、2つの時計部品の準備組立の両方を促進するために設けられる。当該受け開口を区切る壁は、以下に説明する接続面12を形成する。歯車は追加で、時計ムーブメント内で他の時計組立体と協働することが意図される、切り欠きまたは歯13を含む、周囲部を含む。当該周囲部は、第一時計部品10の機能部分を形成する。有利には、当該第一時計部品10は、標準シリコンウェハから、(DRIEの略称で知られる)伝統的な深掘反応性インエッチング方法で彫刻されて、シリコンで製造されてもよい。当該方法では、複数の同一歯車が、同一シリコンウェハ上で同時に形成される。
【0020】
図1bは、第一時計部品とは別個の、歯車が時計ムーブメント内で回転する能力を有して配置されることを可能にするため、
図1aの歯車のハブ内への組み立てが意図される、例示的実施形態によればセラミック製の真である、第二時計部品20を図示する。当該実施形態によれば、第二時計部品20は、第一時計部品10の受け開口11(接続穴)を介して搭載されることが意図される。このため、当該実施形態において、第二時計部品20 は、円形である横方向断面、すなわち自身の回転軸に垂直な断面を有する。変形例として、当該断面は、例えば楕円、卵形、多角形、等といったその他の形状を有してもよい。真の2つの端部21は、真を最小の摩擦で回転可能にするよう、時計ムーブメント内に搭載されることが意図される。時計真は、正確な形状と制御された表面仕上げを得ることを可能にする、レーザ旋削方法とその後の摩擦仕上げにより、バーからセラミックで製造されてもよい。第二時計部品20の周囲面は、以下に説明するように、2つの時計部品の時計組立体を形成するため、第一時計部品10の第一接続面12へ固定されることが意図される、第二接続面22を含む。このため、第二時計部品20は、第一時計部品10に属する雌型の接続面22と協働することが意図される、雄型の接続面22を有する。
【0021】
図2aは、複数の第二時計部品20が、止まり穴41が開けられた支持部40に近づけられるフェーズである、組立方法の第二ステップの中間フェーズを図示する。当該支持部40は、製造方法で一時的に用いられる、中間要素である。支持部は、時計組立体の一部を形成しない。支持部は、シリコン酸化温度に耐性を示す、あらゆる素材製であってもよい。有利には、支持部は、第二時計部品20のものと同様の熱膨張率を有する素材である。
【0022】
各第二時計部品20は、支持部40のそれぞれの止まり穴41へ挿入され、
図2bで図示する位置で、第二時計部品20が支持部40により安定かつ正確な態様で保持されるよう、止まり穴の直径は、第二時計部品20の直径に対応する。
【0023】
図3は、第一時計部品10が、各第二時計部品20上に組み立てられる、本発明の実施形態にかかる時計組立方法の第三ステップを図示する。このため、第一時計部品10の受け開口11(接続穴)が、第二時計部品20の上端21に対向して位置され、その後、第一時計部品10が、支持部40の上面42上に載置されるまで、第二時計部品20に沿って下向きに滑動する。
【0024】
図4aは、2つの時計部品の組立体の中間構成を形成する、第三ステップの終わりで得られる構成を、拡大図で示す。2つの時計部品10、20は、互いに対する最終相対位置に位置決めされるが、まだ互いに固定されていない。特に、それぞれの接続面12、22は互いに対向するが、
図4bに示すように、2つの部品間の間隙を表す、小さな距離dにより分離される。当該段階において、2つの時計部品は、互いに接触しない。当該間隙は、固定されない一時的に組み立てられた位置において、2つの時計部品間の最小可動性を保証すると同時に、2つの時計部品の比較的簡単な位置決めを可能にする。有利には、当該距離dは、4μm以下、または2μm以下である。また有利には、距離dは、1μm以上、または1.5μm以上である。このため、支持部40の止まり穴41の深さは、第一時計部品10が位置決めされると、第一時計部品10の第一接続面12に対向して存在することが可能なように、第二時計部品の第二接続面22が、支持部の上面42のすぐ上に存在するように、選択される。
【0025】
図2および3で図示するように、同一の支持部40は、有利には、複数の時計組立体の同時製造を可能にすることを注記する。これは、第一時計部品10がウェハ、とりわけシリコンウェハから微細加工により生成され、これら部品が、例えばつなぎ材により、ウェハに未だ固定され、ウェハに接続された部品の全部または一部について組立体が同時に製作可能な場合、特に有利である。もちろん、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、単一の時計組立体が製造される実施形態も包含する。
【0026】
次に、時計組立方法は、2つの時計部品を互いに固定する第四ステップを実施する。このため、第三ステップの終わりに得られた組立体は、シリコン製の第一時計部品10の表面において酸化ケイ素の層の成長を生成するよう、熱処理に曝される。このため、組立体は、有利には、酸化炉内に位置され、1100℃程度の温度まで、またはより一般的にはシリコンの酸化を発生させるのに十分なあらゆる温度まで、熱せられる。このため、有利には、当該温度は、好ましくは酸化雰囲気(例えば水蒸気)中で、800から1200℃の間である。加えて、処理時間は、2つの時計部品を互いに十分に固定するための酸化の十分な厚さを達成するよう選択される。
【0027】
特に、シリコンが酸化すると、第二時計部品を完全にまたは部分的に覆う接続面も含む、第一時計部品の表面上に、酸化ケイ素の層が形成され、これが全体の体積を増加させる。このため、十分な時間、当該作業を継続することで、2つの時計部品の2つのそれぞれの接続面を分離する距離dは、それぞれの接続面間の直接的接触において2つの時計部品間に十分なレベルの締付が得られるまで、酸化ケイ素により充填される。この現象は、
図5で図示され、第一曲線51が、当該酸化作業中の時間に対する、この場合は円形断面の接続穴である、受け開口11の直径の変化を示す。当該直径が著しく減少することが見てとれる。図示する実施例によれば、当該直径は、接続面22において、第二曲線52で図示され一定に維持される直径である第二時計部品20の直径と等しくなるよう、10時間の処理で2μm減少される。
【0028】
時間に応じた酸化ケイ素の層の厚さの変化は、以下の原理に従う。
【0029】
【0030】
ここで、tは熱処理時間、e
oxは酸化の層の厚さを表し、A、B、Cは定数である。
このため、
図5から、40時間継続の処理により、受け開口11の直径を4μm減少させることが見て取れる。
【0031】
セラミックはケイ素酸化温度に耐えることができ、実施される熱処理により、その寸法またはその性能の観点からも、影響を受けないことを注記する。加えて、支持部40も同様に、熱処理時間中、実体を一定に支持するように、当該熱処理に耐えることができる素材製である。
【0032】
このため、時計ムーブメント内で時計組立体が曝される応力と両立可能な、十分に堅固な連結が得られるまで継続される、接続面12上の酸化ケイ素の層の成長は、それぞれの2つの接続面12、22の直接締結を可能にし、このため時計組立体の作動中に2つの時計部品が永続的に結合を維持することを保証する。当該実施形態において、2つの接続面は、本実施形態では円筒形の形状である、固定面において、互いに接触することを注記する。
【0033】
パーツの形状は、有利には、いかなる場合でも最小限の間隙での組み立てを可能にするのと同時に、容認可能な時間での熱処理により十分な互いの固定を達成する、熱処理の前の十分な間隙を可能にするよう、選択される。このため、熱処理後の時計組立体の酸化ケイ素製の接続面は、有利には、1μm以上のまたは1.5μm以上の、およびまたは4μm以下の、平均厚さの酸化ケイ素の層を含むよう、選択される。変形例において、パーツの形状は、酸化熱処理前に第一および第二部品間に接触がないが、容認可能な時間での酸化熱処理により十分な互いの固定を達成するよう、選択される。この場合、
図2および3に図示するように、支持部40の使用が有利である。
【0034】
第一時計部品10の受け開口11(接続穴)を区切る壁は、当該第一時計部品10の周囲機能部分に、説明する実施形態においては剛性である、連結により接続されることが注目に値すべきであることを注記する。より具体的には、提示した実施例によれば、歯車のハブは、4つの剛性スポークにより、機能的周囲部に接続される。換言すれば、受け開口11の壁は、当該機能部分に対して不動である。受け開口と機能部分との間の連結は、剛性連結としての資格を有し、より一般的には、このような時計部品は、剛性タイプ時計部品としての資格を有する。もちろん、当該剛性連結は、上述の4つのスポークというよりも、あらゆる数の剛性スポークにより形成されてもよく、必ずしもスポークの形状ではない他の連結構造により形成されてもよい。
【0035】
このような剛性連結は、特に酸化ケイ素の層の成長を介した、2つの接続面の互いの締付の最終フェーズ中に、本発明の時計組立方法の実施に著しい利点を提供する。特に、当該成長中、接触する2つの接続面に力が発揮される。もし受け開口(接続穴)の壁が、第一時計部品の残部に対して、とりわけ機能部分に対して動く能力を持って搭載されると、酸化物の成長中に発揮される力は、(接続穴の)受け開口の当該壁を移動させかねず、このため接続面における所望の締付を損ねて、当該移動により吸収されるかもしれない。このため、上記定義の意味合い内の、剛性タイプの時計部品は、本発明にかかる時計組立体に特に良く適合する。
【0036】
図6は、例として、上述の意味合い内の、剛性タイプの複数の時計組立体を含む、時計ムーブメントの一部を示す。時計ムーブメントの当該一部は、より具体的には、とりわけ軸A2周りに旋回するがんぎ車2と、第三軸A3a周りに旋回する第一係止歯車3aと第4軸A3b周りに旋回する第二係止歯車3bを含む係止部3とを含み、これら3要素は同一平面P内に配置され、シリコン製であり、本発明にかかる時計組立方法を用いてセラミック製のそれぞれの真により組み立てられた、調速装置1を形成する。
【0037】
例えば以下のようなクロックワーク機構の他の部分は、本発明にかかる時計組立体の恩恵を受けることができる。
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図15及び16において、スイスレバー脱進機で遭遇するような種類の、てん輪ピンを有するてん輪60。本実施形態において、主としてシリコン製のてん輪60は、てん輪ピン65を受ける受け開口62を有する。受け開口の輪郭は、閉鎖され、その形状は、てん輪ピン65の形状を補完する。好ましくは単結晶または多結晶アルミナ製のてん輪ピン65は、非常に小さな間隙の量をもって、てん輪60内に、その第一面に垂直に、てん輪ピン65の締結端部が第一面に平行なてん輪60の第二面と同一平面になるまで、導入される。今や2つの時計部品は、互いに対して位置決めされたことから、その後本発明にかかる時計組立方法を用いて組み立てられる。
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図17及び18において、スイスレバー脱進機以外の脱進機のタイプで遭遇するような、インパルスピン75を有するてん輪70。本実施形態において、高さを区切る2つの面が平行で主としてシリコン製のてん輪70は、インパルスピン75を受けるための受け開口72を有する。受け開口72の外形は開放であり、てん輪70の周囲内に開いている。好ましくは単結晶または多結晶アルミナ製のインパルスピン75は、てん輪70の面に平行に、非常に小さな間隙の量をもって、てん輪70内で噛み合う。インパルスピン75の突出長さが適合するよう調節されると、2つの時計部品は、本発明の組立方法を用いて組み立てられる。
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図19及び20において、上述の開口72のように、開放輪郭受け開口82を有する形状は、例えば日付機構に用いられるような、ジャンパ80とのジャンパスプール85の組立に適している。
【0038】
図21及び22は、雌部の周囲から突出する雄部の台座を提供する、雌部を含む第一部品と、雄部を含む第二部品の間の組立の他の解決策を図示する。当該実施形態において、組立は、第一時計部品90において、輪郭が開放し、第一時計部品90の全厚さにわたっては貫通しない、受け開口92を伴う。受け開口92の深さは、第二時計部品95の台座93を提供するために、第一時計部品90の全厚さの40%であってもよい、一部に限定される。当該構成において、第二時計部品95が第一時計部品90を通過しないように、受け開口は止まり穴であり、第一部品の厚さ内で封止される。
【0039】
非常に驚くべきことに、出願人の研究によれば、組立体の機械的強度は、
図17、18、19、20、23、24、25、及び26で示すように、第二時計部品を案内することが意図される接続面12が、少なくとも1つの溝彫り110を挿入することで分裂されると、増加することが証明された。少なくとも1つの溝彫り110は、接触面積を減少させることにより、時計部品の予備組立を簡単にするためや、同様に酸化熱処理中の接続面12への酸素の供給を簡単にするため、そしてとりわけ開放輪郭の受け開口の場合には、酸化ケイ素層の成長によって引き起こされかねない雄部のあらゆる移動を防止することで時計部品の事前位置決めが酸化後でも維持されることを可能にするためなど、様々な目的のために設けられる。少なくとも1つの溝彫り110は、
図25に示すように、接続開口内の凸状突起物の連続をもたらすものを含む、あらゆる種類の形状を有してもよい。少なくとも1つの溝彫り110はまた、
図26に示すように、接続面22上に形成されてもよい。
【0040】
上述のように、受け開口の断面は、開放であっても封止であってもよく、止まり穴であっても貫通してもよく、円形またはU字型の形状、または例えば楕円、卵形、多角形等、他の形状を取ってもよい。
【0041】
上述のように、本発明は、セラミック製の真を含む、時計組立体の製造に特に良く適合する。加えて、本発明は、当該セラミック真をシリコン製の第一時計部品、とりわけシリコン製の歯車と組み立てるのに、特に良く適合する。特に、シリコンは、その高度に有利な性質により、時計部品の製造への使用が増加している。しかしながら、シリコンは、脆弱、とりわけ脆性であるとの欠点があり、他の部品との組立を難しくしている。このため、本発明は、シリコン製の第一時計部品とセラミック製の第二時計部品との間の時計組立体形成に、特に有利である。
【0042】
もちろん、実施形態の変形例において、第二時計部品、とりわけ時計真は、セラミック以外の素材、例えば上述の酸化温度に耐えられる、他の非常に硬い素材製であってもよい。このため、上述の実施形態は、特にセラミックに非常に良く適合するものの、変形例としてセラミック以外の素材製の時計部品にも使用可能である。
【0043】
例えば、第二部品は、酸化温度に耐えられる、金属、とりわけ金属合金製であってもよい。当該金属は、非限定的に、Ti、Zr、Nb、Mo、Ta、W、そしてそれぞれの合金であってもよい。
【0044】
他の実施例によれば、第一及び第二部品は、シリコンSi製であってもよい。当該構成は、酸化時間を減少させる(第一部品の受け開口の寸法の減少と、第二部品の本体の寸法の増加が同時である)、及びまたはより大きな初期間隙で作業可能にするという、利点を提供する。
【0045】
更に、上記のように、本発明は、剛性タイプの2つの時計部品の時計組立体の創作に、特に良く適している。しかしながら、柔軟タイプの時計部品を使用することも有利であり、ここで「柔軟タイプ」の表現は、「剛性タイプ」の表現の反対である。このため本発明の第二実施形態は、少なくとも1つの柔軟タイプの、特に弾性的に可動なパーツを含む時計部品を含む、時計組立体に依拠する。特に、第一時計部品は、機能部分への弾性的可動連結により接続された、受け開口(接続穴)壁を有してもよい。第二実施形態にかかるこのような解決策は、このような組立体の創作、すなわち2つの時計部品を互いに固定する機能には、あまり有利ではないが、2つの時計部品が一時的に組み立てられた、
図3の構成の一時的組立を簡単にするという、追加的利点を提供する。特に、第一時計部品の機能部分に対する、(接続穴の)受け開口の1以上の壁のわずかな弾性可動性のため、2つの時計部品の一時的組立中に、当該壁を移動することが可能であり、このためそれぞれの接続面間の間隙を減少させ、互いの固定を達成するのに必要な熱処理時間を減少させることを可能にする。
【0046】
このため、少なくとも1つの弾性タイプの時計部品に基づくこのような実施形態は、妥協を示す。この(非常に小さな度合いの)柔軟性は、2つの時計部品の一時的配置を可能にする一方、酸化ケイ素の層の成長を通じた互いの固定を十分に達成させるために、接続面の起こり得る移動を制限することを可能にするよう、選択される。
【0047】
このため、
図7は、理解を容易にするため同一の参照番号が維持される、同じ時計部品を含むが、本発明にかかる時計組立によりセラミック真が固定される接続穴であって歯車の接続穴の壁をそれぞれの周囲機能部分へ接続する弾性連結を介して、柔軟性を導入するために歯車の形状が変更された、
図6の調速装置の実施形態変形例を図示する。より具体的には、好みとして、歯車はそれぞれ、弾性スポークにより区切られた、中央受け開口(接続穴)を含む。弾性スポークの寸法は、歯車のそれぞれを、それぞれの真の上へ保持する、適切な保持トルクを提供するように、定義される。
【0048】
もちろん、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0049】
このため、第一または第二実施形態の第一変形例によれば、第二時計部品20は、軸受面23を含む。真の場合、当該軸受面23は、真の大径部分により形成されてもよい。
図8は、当該実施形態変形例にかかる、時計組立体の製造方法の第三ステップを図示する。当該実施形態を、上述の第一実施形態に対応する
図3と比較すると、主たる差異は、第一時計部品が、支持部40の表面42上ではなく、第二時計部品の軸受面23上に載置されるという事実から生じることが明らかになる。支持部40は、少なくとも1つの第二時計部品を保持し続けるが、その止まり穴41の深さは、2つのそれぞれの時計部品の接続面が、支持部40の上面42よりも空間を開けて上に配置されているため、減少される。もちろん、変形例として、第一時計部品を受ける表面を形成し、軸受面としての役割を果たす、第二時計部品のあらゆる他の形状が実施されてもよい。このような軸受面の存在は、組立作業を促進するかもしれないが、追加の機械加工作業とより大きな体積を必要とすることから、部品の製造には有利ではない。また、第一時計部品は、上述の実施形態と同一の形状を維持することを注記する。第一時計部品の接続面は、可能な限り単純に、すなわち円筒状に、維持される。例えば、好みとして、軸受面23上に載置される表面に、座ぐりが追加されることはない。
【0050】
図9は、時計組立方法の第三ステップの一時的組立が、支持部なくして、例えば第一時計部品10の、ウェハ5から完全に取り外されていない、少なくとも1つのラフ型を含む、シリコンウェハ5上に直接実施される、第一または第二実施形態の、第二実施形態変形例を図示する。当該第二実施形態変形例において、第二時計部品または複数の第二時計部品はまた、ウェハ5の上面6上に載置される、軸受面23を有し、ウェハ5は当該構成において支持部の役割も果たす。当該第二実施形態変形例の実施中、方法の第三ステップにより生じ、
図9に示す当該構成に形成された組立体は、方法の第四ステップで酸化されることを注記する。このため、ウェハ5はその全体が酸化され、取り外しが意図される第一時計部品10のラフ型は、それぞれの第二時計部品20と既に組み立てられた、第一時計部品10のそれぞれを取り外す後続のステップの前に、酸化される。ウェハ全体の酸化は当該実施形態に限定されず、あらゆる構成で、とりわけ
図3及びまたは4に図示の構成において、実施されてもよい。上記の変形例のように、第一時計部品は、上述の実施形態の形状と同一の形状を維持する。第一時計部品の接続面は、可能な限り単純に、すなわち円筒状に、維持される。例えば、好みとして、軸受面23上に載置される表面に、座ぐりが追加されることはない。2つの時計部品間の接触面を形成する軸受面23において、酸化ケイ素の成長があるものの、当該接触面において互いの固定機能はないことを注記する。このため、2つの部品が互いに固定される表面は、未だ上述の変形例と同じ円筒面である。
【0051】
図10は、本発明の第一及び第二実施形態とその様々な変形例と、同じく両立可能な、第三実施形態変形例を図示する。当該第三実施形態変形例は、組み立てられるべき2つの時計部品とは別個の、シリコン製の中間第三部品を採用するという点において、上述の全ての変形例と異なり、中間第三部品の目的は、当該組み立てられるべき2つの時計部品の時計組立体に加わることである。当該中間第三部品は、一方では第二時計部品20の第二接続面と接触することが意図される、内部第三接続面と、他方では第一時計部品10の第一接続面と接触することが意図される、外部第三接続面と、を含む、第三接触区域を含む。組立方法の酸化第四ステップ中、中間第三部品の第三接続区域が酸化し、内部と外部に、2つの酸化ケイ素の層の成長につながり、3つの部品が所望のように互いに固定されるまで、酸化ケイ素の層が、第一時計部品の第一接続面と、第二時計部品の第二接続面のそれぞれと接触する。当該第三実施形態変形例において、2つの時計部品10、20の2つの接続面12、22は、それぞれ、中間第三部品の接続区域による素材の連続により接続される、間接接触にあるが、上述の実施形態においては、両者は直接接触していた。図示した実施例において、中間第三部品30は、一方では、第二時計部品の接続面において、その周囲に位置され、他方では、第一時計部品の受け開口(接続穴)内で、第一接続面に対向して位置された、スリーブの形状を取る。当該中間第三部品は、組み立てられるべき2つの時計部品のそれぞれと、間隙をもって、中間組立構成に組み立てられる。当該間隙は、2つの時計部品間について上述された間隙と同じ寸法を有する。当該実施形態変形例において、2つの時計部品の互いの固定面は、外面と内面のそれぞれに存在し、2倍になる。2つの固定面は、この場合円筒形であるが、開放輪郭を有しても良く、例えば楕円、卵形、多角形、等他の形状を取ることもでき、及びまたは溝彫りされてもよい。2つの時計部品間の接触の面を形成する、軸受面23において、酸化ケイ素の成長があるものの、当該接触面において互いの固定機能はないことを注記する。このため、2つの部品の互いの固定面は、上述の変形例同様、未だ円筒状を維持する。
【0052】
当該第三実施形態変形例は、例えば、2つの時計部品のいずれもシリコン製でないときに、適している。このため、例えば、両者は完全にまたは主としてセラミック製であってもよい。変形例として、部品の一方が主としてセラミック製であり、他方は他の素材製である。他の実施例によれば、例えば受け開口(接続穴)が、第二時計部品と比較して2つの時計部品間の直接組立を達成するには大きすぎる直径を有するなど、組み立てられるべき2つの時計部品のそれぞれの接続面が、直接互換性を有する寸法を有さなくても、適している。
【0053】
図11から14はそれぞれ、第二時計部品20が、可変の横方向または半径方向断面25を、即ち表面積が、好ましくは連続的に、可変の断面25を有する、第四及び第五実施形態を図示する。加えて、以下で説明するように、断面は接続面22の直近に位置する。
【0054】
図11から13は、軸受面23が、第二接続面22と拡大断面の境界の間で連続して変化する、可変半径方向断面25により代替された、
図8の第一実施形態変形例に例えられる、第四実施形態を図示する。
図12及び13に図示するように、当該可変半径方向断面25は、第二接続面22との境界における最小半径方向断面積Se1から、最大半径方向断面積Se2へ連続して発展する、変化する半径方向断面の部分の形状を取る。当該実施形態において、第二時計部品は、全体として、断面積Se1の第一円筒部と、拡大断面積Se2の第二円筒部を含み、2つの円筒部は、互いに、それぞれの間に介在する、可変半径方向断面部分25により互いに接続される。好みにより、上述の断面の変動は、直線状である。変形例として、変動はあらゆる他の形状を取ってもよい。第二接続面22は、可変半径方向断面25の直近で、第一円筒部上に位置される。
【0055】
第一時計部品10は不変のままであり、受け開口11(接続穴)を含む。実施形態によれば、当該受け開口11は、一定の断面を有する。
【0056】
図12は、本発明の第三ステップを実施する際の、当該構成の利点を特に図示する。第一時計部品10の第二時計部品20との一時的組立中、受け口11(接続穴11)は、第二時計部品20上へ、
図12で図示する固定されない中間組立構成を達成するため、その進入端部が第二時計部品20の可変半径方向断面部分25へ当接するまで、減少された間隙をもって滑動し、ここで間隙は、
図4bを参照して上述した範囲内にある。2つの時計部品間で得られた接触は、このため、線形接触タイプである。可変半径方向断面部分25の断面の変動は、最大断面Se2が、受け開口11の断面よりも大きいというものであることを注記する。反対に、最小断面Se1は、受け開口11が、第二時計部品20の最小断面と、最小間隙をもって協働可能になるというものであり、ここで間隙は、2つの接続面12、22の間について前述の変形例で説明した間隙である。
【0057】
当該中間組立構成において、実体は、有利には、
図8で図示する第一変形例同様、支持部40に位置決めされる。当該支持部40は、とりわけ、第二時計部品または複数の第二時計部品20を、重力の影響下で、第二時計部品20の軸に垂直な、実質的に水平面内に、2つの時計部品間の接触線を維持するために、垂直の向きに保持する。このような第四実施形態変形例によれば、2つの部品間の線形接触は、円形の形状であるが、あらゆる種類の形状、または開口輪郭をとってもよく、及びまたは不連続線形接触を形成する溝彫りを有してもよい。
【0058】
図13は、上述のようにケイ素酸化熱処理により2つの時計部品を互いに固定することを伴う、第四ステップの実施後に得られた組立体を図示する。当該第四ステップの終わりに、均一の厚さe
oxの酸化ケイ素の層15が、シリコン製の製品の、この場合は第一時計部品10の表面に形成される。上述のように、当該酸化ケイ素の層の形成は、2つの時計部品を互いに固定させるため、第二時計部品20の第二接続面22と接触するまで、第一時計部品10の第一接続面12を移動させる、体積の増加を伴う。酸化ケイ素の層15の厚さの均一性は、
図13において円弧で図示するように、シリコン製の第一時計部品10の角が丸められる理由でもあることを注記する。
【0059】
当該実施形態変形例によれば、第一時計部品10の表面上に、酸化ケイ素の層が徐々に増大するにつれて、受け開口11(接続穴)の断面は減少し、第一時計部品10を第二時計部品20に対して移動させる。特に、線形接触の区域は、断面が減少するにつれて、徐々に上昇する(
図12において、より一般的には、第二時計部品の軸に沿って移動する)。第二時計部品20の可変半径方向断面部分25は、このため、方法の第四ステップ、酸化ステップ中に、第一時計部品の相対移動を案内する、案内斜面を形成する。当該現象は、第一時計部品10が、より具体的には第二時計部品20との線形接触が、可変半径方向断面部分25と第二接続面22との間の境界に到達するまで、継続する。この時点で、酸化ケイ素の層の成長は、もはや第一時計部品10を移動させず、
図13の最終構成に従い、2つのそれぞれの接続面12、22の互いの固定を終了させる。
【0060】
当該第四実施形態変形例にかかる2つの時計部品10、20の相対移動は、上述の軸方向のみならず、中間構成にあらゆるオフセットがあった場合に、2つの時計部品10、20の相対的再中央揃えを可能にする、半径方向の、2つの方向への移動を促進することを注記する。
【0061】
最後に、第二時計部品20の当該形状は、有利には、一方では第一時計部品10の予備位置決めの手段を形成し、他方では、特に使用された素材が低い耐衝撃性を有する場合、及びまたは関与する断面が小さい場合に、機械的強度の意味で有害となる、第二時計部品10の断面の急な変動を防止することを可能にする。また、当該実施形態は、均一な酸化ケイ素の層15を得ること、また熱処理後の2つの時計部品の正確な相対的位置決めを得ることを、非常に促進することも明らかである。上記した利点は、例えば
図8及び9に示すように、第二時計部品上の軸受面を利用する構成に関して、より具体的には当該軸受面を、第一時計部品10の受開口11に配置された座ぐりと組み合わせる構成に関して、特に注目される。このように、当該実施形態変形例は、酸化焼き嵌め方法の頑強性の補強を最適化する。熱処理前の線形接触を伴う当該実施形態変形例の利点は、とりわけ、上述のように、得られた酸化ケイ素の層の均一性から生じ、これは熱処理中に主流となる酸化雰囲気に対するのと同様に、シリコン製の時計部品の表面の全体が、線形接触を除き、曝されたままになるという事実により説明できる。
【0062】
一実施形態によれば、第二時計部品20の可変半径方向断面部分25は、上述のように、とりわけ第二時計部品が全体または部分的にセラミック製の場合に、旋盤加工作業で製造されてもよい。加えて、当該可変変形方向断面部分25は、線形変動を示してよく、この場合は円錐台状形状を示す。一実施形態によれば、可変半径方向断面部分は、線形台状部分に、半径方向断面に急な変動がないこと即ち当該区域における応力の集中がないことを介して時計部品の機械的強度を促進する、小さな値と、第一時計部品10の受開口11または第二時計部品20の可変半径方向断面部分25の寸法のばらつきが小さな軸方向移動により相殺されていることによる、製造公差に対する感度の低さを理由に2つの時計部品の相対位置決めを促進する、より大きな値との間の妥協を示す、開口角度「α」を有してもよい。有利には、角度「α」は、10から80度の間、または30から60度の間である。例えば、45度のまたは45度に近い角度「α」の選択は、良好な妥協を示す。
【0063】
図14は、上述の第四変形例同様、軸受面が可変半径方向断面部分25により代替された、
図9の第二変形例に例えられる、第五実施形態変形例を図示する。酸化ステップ中に得られる作業は、前述の変形例で説明されたものと同様であり、得られる利点も近似するものである。
【0064】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の特定の実施形態変形例は、互いに組み合わされて、他の実施形態変形例を形成してもよい。
【0065】
本発明はまた、上述の時計組立方法から得られた時計組立体に関する。このため、当該時計組立体は、別個の第二時計部品と組み立てられた、第一時計部品を含み、第一時計部品は、少なくとも機能部分と、当該機能部分とは別個の受け開口(接続穴)とを含み、当該受け開口を区切る壁は、第一接続面を形成し、第二時計部品は、第二接続面を含み、第一及び第二時計部品のそれぞれの第一及び第二接続面間の、直接または間接接触を介して、第一時計部品へ確実に固定される。
【0066】
当該2つの接続面間の間接接触は、当該2つの時計部品とは別個の、1以上の他の素材の層が、当該2つの接続面の間に介在され、2つの時計部品が互いに固定されることを可能にするために、当該2つの接続面間に素材の連続を形成する構成に対して、ここで使用する文言である。
【0067】
いずれの場合でも、酸化ケイ素の層の成長により第一及び第二時計部品が互いに固定されるように、第一及び第二接続面または任意の中間第三部品の内側及びまたは外側第三接続面のいずれか一つは、熱処理で酸化されたケイ素製である。
【0068】
このため、酸化ケイ素の表面が、その成長を介して、対応する接続面と締結することで、2つの時計部品を互いに固定するための、十分な締まり嵌めを接続面において形成するのに、十分であることが明らかである。上述のように、2つの時計部品は、中間組立構成に対応する最終位置に2つの時計部品を固定するために、熱処理により酸化されるケイ素の層の成長前に、まず中間組立構成に位置決めされる。このため、このような時計組立体は、酸化ケイ素製ではあるが、酸化ケイ素の仲介を介するのではなく接着や打ち込みといった従来の方法により互いの部品に接続された部品を含んでもよい時計組立体とは異なる。後者の場合、酸化ケイ素は、2つの部品間の接続において、酸化に続き実施される機械的結合において、欠陥の存在により、検出可能な方法で不可避的に破損し、これは変形に加えて、酸化ケイ素の層の剥離やひび割れの危険性につながる。反対に、本発明の実施により、酸化ケイ素の層は、時計部品接続面において、より具体的にはその表面を介して互いに固定される表面において、欠陥が存在しないままである。更に、本発明の実施により、従来の解決策のように、2つの部品を互いに固定するあらゆる他の手段の追加を必要としないものの、本発明は、別個の追加の第二固定手段の任意の使用と両立不可能ではない。
【0069】
上述の時計部品は、がんぎ車といった歯車タイプである、または脱進機ピニオンといったピニオンタイプである、または一方ではひげぜんまいであってもよく、他方では時計真であってもよい。もちろん、本発明は、より一般的には、「雄」型のあらゆる第二時計部品と組み立てられる、「雌」型のあらゆる第一時計部品に適用される。
【0070】
更に、上述のように、本発明は、セラミック製である、または主としてセラミック製である、時計部品の少なくとも1つに特に良好に適している。当該時計部品は、第一及びまたは第二時計部品であってもよい。当該時計部品は、「雌」型の時計部品及びまたは「雄」型の第二時計部品であってもよい。
【0071】
熱処理で酸化されたシリコン製の少なくとも1つの接続面、またはより一般的には雌型の時計部品の接続面は、第二の雄型の時計部品を、横方向平面での、即ち軸にまたは長手方向範囲の方向に実質的に垂直な平面での、断面の少なくとも1つに鑑み、完全に、またはその周囲の少なくとも70%にわたり、またはその周囲の少なくとも40%にわたり、囲っても良いことを注記する。
【0072】
更に、2つの部品間の機械的結合は、第一時計部品の受け開口により区切られる接続面の全高さにわたり、達成される。このため、酸化ケイ素の成長は、2つの接続面間で、即ち、第二時計部品が真の形状を取る場合には半径方向でもある、上で定義するように横方面に、達成される。2つの時計部品を互いに固定する、結果として得られる固定面は、雌型部品の受け開口の表面上に、当該横方向または半径方向の酸化ケイ素の成長に垂直に延長する。
【0073】
2つの時計部品間の結合における、横方向(半径方向)断面の検討を続けると、第一時計部品の受け開口(接続穴)は、円形第一断面を有してもよく、第二時計部品の接続面は円形第二断面を有してもよく、熱処理による酸化前に、円形第一断面の直径は、厳密に円形第二断面の直径以上である。変形例として、第一または第二接続面の1つは、円形第一断面を有してもよく、他方は、両者が中間組立構成に位置決めされると、2つの時計部品の組立体による自身の中央揃えを可能にする、非円形の、とりわけ卵形または楕円形または多角形の断面を有してもよい。更なる変形例として、第一及び第二接続面のそれぞれの、2つの第一及び第二断面は、同一の非円形の、とりわけ卵形または楕円形または多角形の断面を有してもよい。更なる変形例として、第一及びまたは第二接続面は、非連続形状の、及びまたは受け開口の全体にわたり一定であってもなくてもよい、断面を有してもよい。ここから、2つの時計部品の固定面または複数の固定面は、1つの固定面が非連続である、または卵形または楕円形または多角形の場合に、円筒状または卵形または楕円形または多角形または円筒形状に内接することが好ましいことが、明らかである。
【0074】
第一時計部品10の受け開口11(接続穴)は、貫通開口または止まり開口であってもよい。
【0075】
第二時計部品20の接続面22を補完する、第一時計部品10の接続面12は、有利には、とりわけ酸化熱処理中の接続面12への酸素の供給を容易にするため、溝彫り110の挿入により分裂されてもよい。
【0076】
変形例として、案内部分と溝彫りの交互配列の生成は、
図26に示すように、第二時計部品20の接続面22に適用されてもよい。
【0077】
酸化ケイ素製ではなく、例えばセラミック製である、第一時計部品または第二時計部品のいずれかである、一時計部品の接続面は、粗さを増加させるように構成されてもよく、またはローレット切りまたは溝掘りまたはキー溝を含んでもよく、及びまたは平坦でもよい。
【0078】
主としてセラミック製である時計部品の接続面は、酸化ケイ素と化学的に両立可能にする処理に曝されてもよい。
【0079】
第二時計部品は、支持軸受面を含んでもよい。
【0080】
変形例として、第二部品は、可変断面の、とりわけ第二接続面との境界から連続して増加する、部分を有してもよく、当該連続して増加する断面部分は、第一時計部品の受け開口の外で、当該受け開口の端部の直近に、位置決めされる。当該可変断面の部分は、
図11から14を参照する実施形態変形例において、より詳細に説明された。
【0081】
酸化ケイ素製の接続面は、1μm以上の、または1.5μm以上の平均厚さを有してもよい。接続面は、4μm以下の平均厚さを有してもよい。
【0082】
本発明はまた、1以上の上述の時計組立体を含む、時計ムーブメントに関する。
【0083】
本発明はまた、少なくとも1つの上述の時計組立体を含む、または当該時計ムーブメントを含む、時計に関する。
【国際調査報告】