(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-30
(54)【発明の名称】建築の基礎構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/08 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
E02D27/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576172
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 IB2022055442
(87)【国際公開番号】W WO2022259231
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】102021000015353
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523463797
【氏名又は名称】メタラァジカ レドレンス ソシエタ コオペラティブ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ティボーニ,ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】グラファー,シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】メナぺス,ステファノ
(72)【発明者】
【氏名】シメオニ,ルチア
(72)【発明者】
【氏名】ガーヨ,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】フェッロ,エドガー
(72)【発明者】
【氏名】モリナーリ,マルコ
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA41
(57)【要約】
木造建築用等の基礎構造(1)は、建築物の上部構造の応力を地面に伝達して逃がすため、埋設されるよう設計されたフッティング構造(2)と、建築物の上部構造をフッティング構造(2)に構造的に締結するための機械的連結要素(3)とを備える。有利には、フッティング構造(2)は、不活性材料(5)で充填されたガビオン構造(4)によって主に定義され、機械的連結要素(3)は、ガビオン構造(4)に強固に締結され、ガビオン構造(4)から上方に突出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築用、特に、木造建築用、プレハブ建築用等の基礎構造(1)であって、
建築物の上部構造の応力を地面に伝達して逃がすため、埋設されるよう設計されたフッティング構造(2)と、
建築物の上部構造を前記フッティング構造(2)に構造的に締結することができるよう、前記フッティング構造(2)に強固に締結された機械的連結要素(3)と、
を備え、
前記フッティング構造(2)は、不活性材料(5)で充填されたガビオン構造(4)によって主に定義され、これを基礎の掘削部に配置することで、実質的に大量鋳造をほぼ使用しないドライな基礎システムを定義し、
前記ガビオン構造(4)は、支持される上部構造に対向するように設計された上側を有し、前記上側は、前記ガビオン構造(4)の閉塞パネル(31)を形成し、
前記機械的連結要素(3)は、前記ガビオン構造(4)に強固に締結され、前記ガビオン構造(4)の上側から上方に突出する、
ことを特徴とする、基礎構造(1)。
【請求項2】
2つ以上の独立したガビオン構造(4)をさらに備え、
各前記ガビオン構造(4)には、それぞれのタイロッド(6)及び/又は金属リング(32)によってそれぞれ固定された、前記機械的連結要素(3)がそれぞれ装備されており、
2つ以上の独立した前記ガビオン構造(4)のそれぞれの前記機械的連結要素(3)は、2つ以上の独立した前記ガビオン構造(4)が実質的にモノリシックなユニットを構成するように、ブレーシングビーム(7)に強固に締結され、
前記機械的連結要素(3)のそれぞれは、各前記ガビオン構造(4)と前記ビームとの間に介在するヒンジ留め具を構造的に形成する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の基礎構造(1)。
【請求項3】
2つ以上の独立した前記ガビオン構造(4)が第1の方向に互いに整列し、2つ以上の独立した前記ガビオン構造(4)の前記機械的連結要素(3)のそれぞれが、前記第1の方向に延びる前記ブレーシングビーム(7)によって強固に締結されており、
前記基礎構造(1)は、前記第1の方向に直交する第2の方向に整列関係で延びる、独立した2つ以上の複数の第2のガビオン構造(4)を備え、
2つ以上の複数の前記第2のガビオン構造(4)のそれぞれの前記機械的連結要素(3)は、前記第2の方向に延びる第2のブレーシングビーム(7)によって強固に締結され、
前記ブレーシングビーム(7)と第2のビームとは、互いに強固に連結されている、
ことを特徴とする、請求項2に記載の基礎構造(1)。
【請求項4】
前記機械的連結要素(3)は、前記タイロッド(6)及び/又は前記金属リング(32)によって前記ガビオン構造(4)に強固に締結され、好ましくは、前記機械的連結要素(3)は、前記タイロッド(6)及び前記金属リング(32)によって前記ガビオン構造(4)に強固に締結される、
ことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基礎構造(1)。
【請求項5】
前記タイロッド(6)は、第1の端部(6a)で前記ガビオン構造(4)と係合し、
前記タイロッド(6)の前記第1の端部(6a)は、前記ガビオン建築物(4)の下部に係合し、及び/又は、前記タイロッド(6)の前記第1の端部(6a)は、前記ガビオン構造(4)及び/又はその上部の前記不活性材料(5)によって所定の位置に保持される、フック部、折り部、又はフランジを画定する、
ことを特徴とする、請求項4に記載の基礎構造(1)。
【請求項6】
前記金属リング(32)は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるリング(32)であることを特徴とする、
ことを特徴とする、請求項4又は5に記載の基礎構造(1)。
【請求項7】
前記機械的連結要素(3)は、
所定の厚さ(S)を有し、前記フッティング構造(2)に締結されるように設計されたベースプレート(21)と、
上部構造の支持体として機能するように設計された前記ブレーシングビーム(7)と、
調整可能な締結手段(23)により、前記ベースプレート(21)に締結された下端(22a)及び前記ブレーシングビーム(7)に締結された先端(22b)を有し、これにより、前記下端(22a)から前記先端(22b)までの距離の調整を可能にした連結バー(22)と、
硬化性材料からなり、前記連結バー(22)の少なくとも一部が埋め込まれた硬化層(24)と、
を備え、
前記硬化層(24)は、前記ブレーシングビーム(7)と前記ベースプレート(21)とに接触して、前記連結バー(22)と協働し、前記ブレーシングビーム(7)から前記ベースプレート(21)への荷重の伝達及び分散を行う、
ことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の基礎構造(1)。
【請求項8】
前記連結バー(22)の前記下端(22a)は、ステムと、前記ステムから径方向に突出するヘッド(25)とを備え、好ましくは、前記ヘッド(25)は、貫通孔を有する径方向フランジによって画定される、
ことを特徴とする、請求項7に記載の基礎構造(1)。
【請求項9】
前記連結バー(22)は、前記ベースプレート(21)から前記先端(22b)を含む部分にわたって上方に突出している、
ことを特徴とする、請求項7又は8に記載の基礎構造(1)。
【請求項10】
前記ベースプレート(21)は、前記ブレーシングビーム(7)に対向する上側から反対側の下側に延びる貫通孔(26)を備え、
前記貫通孔(26)は、前記連結バー(22)の前記ステムとの干渉及び前記連結バー(22)の前記ヘッド(25)との干渉を回避するような大きさであり、
前記連結バー(22)は、下側から前記ヘッド(25)が前記ベースプレート(21)の下側の一部に当接するまで、前記貫通孔(26)に導入される、
ことを特徴とする、請求項8又は9に記載の基礎構造(1)。
【請求項11】
前記ベースプレート(21)の下側には、前記ベースプレートの前記厚さ(S)に収まる収容シート(27)が設けられることで、前記連結バー(22)の前記ヘッド(25)が埋め込まれ、
前記貫通孔(26)に前記連結バー(22)が挿入されると、収容シート(27)は、閉塞板(29)によって閉じられる、
ことを特徴とする、請求項10に記載の基礎構造(1)。
【請求項12】
前記ベースプレート(21)は、前記連結バー(22)の前記ヘッド(25)が前記ベースプレート(21)の下側に当接する際に、前記収容シート(27)と前記ベースプレート(21)の上側との流体的な連通を提供するための通気孔を画定する、追加の貫通孔(28)を備える、
ことを特徴とする、請求項11に記載の基礎構造(1)。
【請求項13】
前記ベースプレート(21)は、鉄筋コンクリート製まくら木、好ましくは、プレハブ鉄筋コンクリート製まくら木である、
ことを特徴とする、請求項7乃至12のいずれか一項に記載の基礎構造(1)。
【請求項14】
ベースプレートは、鉄筋コンクリート製まくら木、好ましくは、プレハブ鉄筋コンクリート製まくら木であり、
前記連結バーは、
前記下端から第1の部分にかけて、前記鉄筋コンクリート製まくら木に埋設され、
前記先端部を含む一端部だけ、前記鉄筋コンクリート製まくら木から突出する、
ことを特徴とする、請求項8及び9に記載の基礎構造(1)。
【請求項15】
前記ベースプレート(21)は、その中に埋め込まれたガビオン構造(4)の閉塞パネル(31)を備える、
ことを特徴とする、請求項13又は14に記載の基礎構造(1)。
【請求項16】
前記連結バー(22)は、ねじ付バーであり、
調整可能な前記締結手段(23)は、ナット及び前記ねじ付バーにねじ係合されたロックナットを備えることで、前記ブレーシングビーム(7)の一部をその間に挟み込む、
ことを特徴とする、請求項7乃至15のいずれか一項に記載の基礎構造(1)。
【請求項17】
前記連結バー(22)が少なくとも部分的に埋設された硬化性材料からなる前記硬化層(24)は、仕上げモルタルの鋳物からなる、
ことを特徴とする、請求項7乃至16のいずれか一項に記載の基礎構造(1)。
【請求項18】
前記ベースプレート(21)は、基盤となる前記フッティング構造(2)に締結する際、タイロッドが通過する穴を有し、及び/又は、基盤となる前記フッティング構造(2)に締結するためのタイロッドが複数設けられている、
ことを特徴とする、請求項7乃至17のいずれか一項に記載の基礎構造(1)。
【請求項19】
建設用の基礎構造(1)の製造方法であって、
基礎の掘削部を形成する工程と、
前記掘削部において基盤となるフッティング構造を形成する工程と、
フッティング構造(2)を建築物の上部構造に構造的に締結できるように、前記フッティング構造(2)に強固に締結された機械的連結要素(3)を準備する工程と、
を含み、
前記フッティング構造は、不活性材料(5)で充填されたガビオン構造(4)によって主に定義され、これを基礎の掘削部に配置することで、実質的に大量鋳造をほぼ使用しないドライな基礎システムを定義し、
前記方法は、
不活性材料で充填し、連結バー(22)を取り付けた状態でベースプレート(21)によって振動・閉塞された前記ガビオン構造(4)を、基礎の掘削部において位置決めする工程と、
前記ガビオン構造(4)を、前記機械的連結要素(3)を用いて、上部構造の支持体として機能するように設計されたブレーシングビーム(7)に機械的に連結する工程と、
を含む、
ことを特徴とする、方法。
【請求項20】
基礎構造は、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の前記基礎構造である、
ことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ガビオン構造(4)を、前記機械的連結要素(3)を用いて前記ブレーシングビーム(7)に機械的に連結する前記工程は、
貫通孔(26)に挿入された前記連結バー(22)及び閉塞板(29)によって閉塞された収容シート(27)を有する前記ベースプレート(21)を設ける工程と、
前記ベースプレート(21)を前記ガビオン構造(4)の上に配置する工程と、
前記ベースプレート(21)を、タイロッド(6)を用いて前記ガビオン構造(4)に固定する工程と、
前記ブレーシングビーム(7)を仮設の補助支持構造で支持することにより、所望の位置及び所望の高さに設ける工程と、
調整可能な締結手段(23)に作用することにより、前記連結バー(22)のヘッド(25)が前記ベースプレート(21)の下側に当接するまで、前記連結バー(22)を前記ブレーシングビーム(7)に強固に締結する工程と、
硬化性材料、好ましくは、仕上げモルタルを、少なくとも前記ブレーシングビーム(7)の下側の高さに達するまで、型枠に入れて鋳造する工程と、
を含む、
ことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ガビオン構造(4)を前記ブレーシングビーム(7)に機械的に連結する前記工程は、請求項7乃至9及び請求項13又は14に記載の前記機械的連結要素(3)を用いて行われ、該工程は、
連結バーを内部に埋め込んだベースプレートを設ける工程と、
前記ベースプレート(21)を前記ガビオン構造(4)の上に配置する工程と、
前記ベースプレート(21)を、前記タイロッド(6)及び/又は金属リングを用いて前記ガビオン構造(4)に固定する工程と、
前記ブレーシングビーム(7)を仮設の補助支持構造で支持することにより、所望の位置及び所望の高さに設ける工程と、
調整可能な締結手段(23)に作用することにより、前記連結バー(22)のヘッド(25)が前記ベースプレート(21)の下側に当接するまで、前記連結バー(22)を前記ブレーシングビーム(7)に強固に締結する工程と、
前記連結バー(22)の周囲の領域において、前記ベースプレート(21)の上方に型枠を設ける工程と、
硬化性材料、好ましくは、コンクリートを、少なくとも前記ブレーシングビーム(7)の下側の高さに達するまで、型枠に入れて鋳造する工程と、
を含む、
ことを特徴とする、請求項20又は21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築分野における使用に適した建築の基礎構造に関し、特に、限定はされないが、木造建築等に好適な基礎に関する。
【0002】
さらなる態様において、本発明は、建築の基礎構造の製造における使用に適した方法にも関する。
【0003】
明瞭化のため、本開示では、非制限的な例示として、特に、プレハブタイプの木造建築用の基礎に言及して説明するが、同様の考慮事項は、他のタイプの建築物についても適用されることを意図する。
【背景技術】
【0004】
木造建築やその他のタイプの建物では、静的条件下と風圧や地震などの動的応力下の両方で上部構造の安定性と適切な支持を確保する観点から、基礎は、建築物の重要な部分を形成するものである。
【0005】
特に、基礎が満たすべき最低要件は、以下に関するものである。
・上部構造から基礎に向かって、あるいは、その逆方向における荷重の伝わり方
・上部構造からの応力を吸収し、それを周囲の土壌に伝達する、実質的にモノリシックなシステムを定義する基礎の能力
・基礎の長期耐久性:基礎が設計仕様に従って適切に機能する能力
【0006】
現在、基礎には鉄筋コンクリートスラブが含まれている。また、基礎の掘削部を掘り、掘削部に排水材からなる層を敷設し、10センチメートル~20センチメートルの第1のコンクリート層(「リーンコンクリート」と称される)を流し込み、型枠を建て、スラブの補強材を配置し、最後に、一般的にポンプによってコンクリートを流し込むことによって、基礎が構築される。
【0007】
こうした基礎は、前述のニーズを満たす上で優れたパフォーマンスを保証するが、依然として特定の欠点・問題が残る。
【0008】
例えば、これらの基礎の建設には、特に、建築物の型枠の組み立てと補強において、特別に訓練された技師による、建設現場での長期間の準備やセットアップ時間が必要であることに留意する必要がある。
【0009】
また、次の点にも留意すべきである。
・基礎上に建物を建てて、基礎にその荷重が少なくとも部分的に加わる前に、前述の基礎の設置時間と併せて、コンクリートが固まるまでに必要な最低日数も考慮する必要がある点
・これらの基礎の建設には、コンクリート打設に使用されるトラック搭載ポンプが建設現場に容易にアクセスできるようにする必要がある点
・仮設建築物のように、建設された建築物を解体しなければならない場合、前述の基礎は地面から簡単には取り除かれない点
【0010】
木造建築や類似のプレハブ建築において、特に限られた期間使用される建物を比較的迅速に建設する場合、こうした欠点は非常に問題となることがわかっている。例えば、地震などの自然災害後に建設される木造又はプレハブの建物は、数日以内に完成する必要があるが、後で解体できるように設計されている。
【0011】
特に、上部構造から土壌への、そして逆方向の適切な荷重伝達と、上部構造からの応力を吸収し、周辺の土壌に伝達する、実質的にモノリシックなシステムを定義する基礎の性能と、に関して、仮設の建築物の場合であっても、上記要件は、木造建築又はプレハブ建築にも当然適用されることを留意すべきである。
【0012】
上記を踏まえて、現在、より短い施工時間、かつ、容易な配置操作により、現場で効率的かつ迅速に構築できる基礎システムが強く求められている。
【0013】
さらに、基礎システムの構成要素が撤去された際に、これらを回収して再利用できることが強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述した従来技術の基礎の欠点を解消しつつ、上記のニーズを満たすような構造的・機能的特徴を有する建築の基礎構造を提供するという課題に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は、請求項1に規定する建築用の基礎構造によって解決される。
【0016】
さらなる態様において、課題は、請求項19に定義されるような方法によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
添付の図を参照して、いくつかの好ましい実施形態に関する以下の説明により、本発明のさらなる特徴及び利点を非制限的な例示として明らかにする。
【
図1】
図1は、ガビオンと機械的連結要素とを含む、本発明の基礎構造の縦方向断面図を示す。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III線に沿った断面図であって、基礎構造の機械的連結要素及び筋コンクリート製まくら木を示す。
【
図4】
図4は、機械的連結要素のまくら木の断面図を示す。
【
図5】
図5は、機械的連結要素の連結バーの断面図である。
【
図6】
図6は、
図1の基礎構造を構築する一連の工程の連続図を示す。
【
図7】
図7は、
図1の基礎構造を構築する一連の工程の連続図を示す。
【
図8】
図8は、
図1の基礎構造を構築する一連の工程の連続図を示す。
【
図9】
図9は、
図1の基礎構造を構築する一連の工程の連続図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照すると、符号1は、全体を通して、本発明の基礎構造を示す。
【0019】
本発明の基礎構造は、木造建築、プレハブ建築等の施工に用いるのに特に適している。
【0020】
基礎構造1は、
・建築物の上部構造の応力を地面に伝達して逃がすため、埋設されるよう設計されたフッティング構造(2)と、
・建築物の上部構造をフッティング構造(2)に構造的に締結することができるよう、フッティング構造(2)に強固に締結された機械的連結要素(3)と、
を備える。
【0021】
なお、前述のフッティング構造2は、
・ガビオン構造4によって主に定義され、
・不活性物質5eで満たされ、
・ドライな基礎システムとして、基礎の掘削部に配置されることを意図しており、実質的に大量鋳造を含まない。
前述のガビオン構造4は、使用時に支持される上部構造に対向するように意図された上側を有する。このようなガビオン構造4の上側は、閉塞パネル31が設けられ、閉塞パネル31は、例えば、アルミニウム製の金属リング32によって、ガビオン構造4の側壁の環に固定される。
【0022】
なお、アルミニウム又は他の適切な合金からなる金属リング32を使用することにより、リングの現場でのステープル/クランプが容易になる、すなわち、基礎構造を設置する際に優れた強度を有利に提供し、それによって閉塞パネル31とガビオン4の垂直パネルとの間の適切かつ効果的な連結を確保できる。同じ強度の鋼リングの場合、簡単に取り付けができず、同じ寸法限界に達するまでに、鋼リングに亀裂が生じたり、弱体化が引き起こされたりする。また、アルミニウムは腐食しにくいため、鋼などの金属リングを使用した同一構造と比較して、リング及び基礎構造の寿命が長くなる。この点で、ステンレス鋼リングを使用するとリングの腐食の問題を回避できるが、現場でのステープル/クランプの問題が顕在化し、亀裂/弱体化が発生することにさらに注意する必要がある。
【0023】
前述のリング32は、周期的な応力下においても、閉塞パネル31をガビオン構造4の残りの部分に固定する。
【0024】
好ましい実施形態によれば、ガビオン4は、直径5-8mm(好ましくは6mm)の鋼棒で形成され、1辺あたり1-2メートル程度の平面サイズ(好ましくは1m×2mの矩形の基部を有する)であり、好ましくは0.5-1m程度の高さを有する。一例として、同図に示すような好ましい態様によれば、ガビオンを形成するパネルは、200cm×50cm程度のメッシュを形成するにあたり、二重の水平線と単一の垂直線とを有する電鋳メッシュからなる。
【0025】
上述した機械的連結要素3は、ガビオン構造4に強固に締結され、かかるガビオン構造4の上側から上方に突出している。
【0026】
好ましくは、機械的連結要素3は、コンクリート製まくら木21の介在によってガビオン構造4に強固に固定され、コンクリート製まくら木21は、タイロッド6によってガビオン構造4に固定される。
【0027】
好ましくは、前述のタイロッド6は、第1の下端6aでガビオン構造4に係合しする。ここで、
・タイロッド6の第1の端部6aは、ガビオン構造4の下部に係合し、好ましくは底部に係合する、及び/又は
・タイロッド6の第1下端6aは、フック部(図示)、折り部、又は、フランジを画定し、それぞれが、第1下端6aの上方の不活性材料5によっても少なくとも部分的に所定の位置に保持されるように設計される。
【0028】
図は全体としての基礎構造を示すのではなく、本発明のモジュラー基礎構造の「基本単位」を規定する個々のガビオン4のみを示していることに留意されたい。
【0029】
しかし、本発明の基礎構造1は、全体として、例えば、実質的に隣り合わせの関係で基礎の掘削部に配置された、2つ以上の独立したガビオン構造4を含むことが理解されよう。
・各ガビオン構造4には、コンクリート製まくら木21の介在で締結され、次に、前述のタイロッド6及びクロージングパネル31に取り付けられた前述の金属リング32によってガビオン構造4に固定される、それぞれの機械的連結要素3が装備されている。
・これらのガビオン構造4の前述の機械的連結要素3は、ブレーシングビーム7に強固に締結されており、ブレーシングビーム7は、2つ以上の独立したガビオン構造4を実質的にモノリシックなユニットに形成させることを目的としており、全体として基礎構造に必要とされる。
【0030】
好ましい実施形態によれば、前述の機械的連結要素3は、各ガビオン構造4とブレーシングビーム7との間の拘束ジョイントとしてではなく、ヒンジ留め具として構造的に分類され得る。しかし、このような締結具は、特定のニーズを満たすために必要な場合、拘束ジョイントとして実装され得る。
【0031】
これにより、せん断力及び引張力がガビオン構造4に伝達され、モーメントはそれに伴って伝達されない。
【0032】
好ましい実施形態によれば、本発明の基礎構造は、
・第1の方向に互いに整列し、その機械的連結要素4のそれぞれが、第1の方向に延びるブレーシングビーム7によって強固に締結されている、2つ以上の独立したガビオン構造4と、
・第1の方向に直交する第2の方向に互いに整列し、かつ、その機械的連結要素3のそれぞれが第2方向に延びる第2のブレーシングビーム7によって強固に締結されている、2つ以上の独立したガビオン構造4と、
を備え、第1ブレーシングビーム7及び第2のビームは、互いに強固に連結されており、ビームに対し、一方向又は他方向の直線的かつ均一な荷重で力が分散され、それによって、基礎システムの増大した慣性が活用される。
【0033】
上述したように、機械的連結要素3が、拘束ジョイントとしてではなく、構造的にヒンジ留め具として分類され得る実施形態が好ましく、かつ有利である。この点に関して、基礎構造のための前述の機械的連結要素3は、
・所定の厚さSを有し、基盤となるフッティング構造2に締結されるように設計されたベースプレート21であって、特に、内部に常に鋼棒で形成された、ガビオンの開閉パネル31を備えるベースプレート21と(
図4参照)、
・上部構造の支持体として作用するように設計されたブレーシングビーム7と、
・調整可能な締結手段23により、ベースプレート21に締結された下端22a及びブレーシングビーム7に締結された先端22bを有し、これにより下端22aから先端22bまでの距離の調整を可能にした連結バー22と(
図5参照)、
・硬化性材料からなり、連結バー22の少なくとも一部が埋め込まれた硬化層24(
図3参照)と、
を備え、硬化層24は、ブレーシングビーム7とベースプレート21とに接触して、連結バー22と協働し、ブレーシングビーム7からベースプレート21への荷重の伝達及び分散を行う。多くの試験の結果、前述の構造は、構造的に拘束ジョイントとしてではなく、ヒンジとして機能する機械的連結要素3を提供し得ることが分かった。
【0034】
好ましくは、連結バー22の前述の下端22aは、ステムと、ステムから径方向に突出するヘッド25とを備える。
【0035】
図に示されるような好ましい実施形態によれば、連結バー22の下端25は、貫通孔を有するフランジ、すなわち角板(
図5参照)によって画定される。
【0036】
同図に示すように、連結バー22は、ベースプレート21から先端22bを含む部分にわたって上方に突出している。
【0037】
好適な実施形態によれば、図に示されるように、
・ベースプレート21は、ブレーシングビーム7に対向する上側から反対側の下側に延びる貫通孔26を備え、
・貫通孔26は、連結バー22のステムとの干渉及び連結バー22のヘッド25との干渉を回避するような大きさであり、
・連結バー22は、ベースプレート21の下側から、ヘッド25がベースプレート21の下側の一部に当接するまで、貫通孔26に導入される。
【0038】
好ましくは、ベースプレート21の下側には、ベースプレートの厚さSに収まる収容シート27が設けられることで、連結バー22のヘッド25が全面的に埋め込まれる。
【0039】
好ましくは、連結バー22のヘッド25は、ベースプレート21の収容シート27にある程度のクリアランスを伴って受け入れられ、その結果、硬化層24を形成する硬化性材料を注ぐ前に、ベースプレート21に対してヘッド25及びそれに連結された連結バー22の平面内で、任意の位置決め誤差を軽減/補償するために、ある程度の位置決め/変位が許容される。
【0040】
好ましくは、前述の収容シート27は、連結バー22を貫通孔26に導入した後に設けられる、閉塞板29によって閉塞される。
【0041】
好ましくは、前述の閉塞板29は、コンクリート釘又は他の手段によってベースプレート21の下側に固定されており、以下でさらに説明するように、硬化性材料が硬化して硬化層24を形成する少なくとも初期期間において、分離を防止し、流体の気密性を確保することができる。
【0042】
好ましくは、ベースプレート21は、連結バー22のヘッド25がベースプレート21の下側に当接する際に、収容シート27とベースプレート21の上側との流体的な連通を提供するための通気孔を画定する、追加の貫通孔28を備える。本明細書でさらに説明するように、これらの貫通孔28は、硬化層24を形成する硬化性材料の鋳造又は注入中に収容シート27から空気を排出することを可能にし、それによって、硬化層24内の気泡又はエアポケットの形成を防止する。
【0043】
好ましい実施形態によれば、前述のベースプレート21は、鉄筋コンクリート製まくら木であり、より好ましくは、以下に挙げるものを備える、既製のプレハブコンクリート製まくら木である。
・連結バー22を通過させる、図示例では中央に位置する貫通孔26
・収容シート27
・空気孔として機能する通気孔28
・ベースプレート21を下地のガビオン構造4に締結するためのタイロッド6又は他のフック手段のための追加の通路30
【0044】
代替実施形態によれば、前述のベースプレートは、鉄筋コンクリート製まくら木、好ましくはプレハブ鉄筋コンクリート製まくら木であり、連結バーは、前述の硬化層の存在を損なうことなく、
・鉄筋コンクリート製まくら木に、下端から第1の部分にかけて埋設され、
・ビームに締結される先端部を含む一端部だけ、鉄筋コンクリート製まくら木から突出する。
【0045】
好ましい及び有利な実施形態によれば:
・前述の連結バー22は、ねじ付バーであり、
・前述の調整可能な締結手段23は、ナット及びねじ付バーにねじ係合されたロックナットを備えることで、ブレーシングビーム7の一部をその間に挟み込む。
【0046】
好ましくは、連結バー22は、貫通孔でブレーシングビーム7に係合する。
【0047】
好ましくは、前述の連結バー22が少なくとも部分的に埋設された硬化性材料からなる前述の硬化層24は、仕上げモルタルの鋳物からなる。
【0048】
上述したように、前述のベースプレート21は、下層フッティング構造2に締結するためのタイロッド6を通すための孔30を備えているが、これに加えて、又はこれに代替して、前述のベースプレート21は、複数のタイロッド、金属製の固定リング、又は基盤となるフッティング構造2に固定するための他の手段を備える。
【0049】
上記を参照すると、建築の基礎構造を作る方法には、以下の工程が含まれる。
・基礎の掘削部を形成する工程
・当該掘削において基礎となるフッティング構造を形成する工程
・かかるフッティング構造2を建築物の上部構造に構造的に締結できるように、前述のフッティング構造2に強固に締結された機械的連結要素3を準備する工程
【0050】
好ましくは、前述の機械的連結要素3は、上述したように、基礎構造とブレーシングビームとの間に構造的ヒンジ締結具を形成する。
【0051】
この場合、前述の機械的連結要素3によってガビオン構造4をブレーシングビーム7に機械的に連結する前述の工程は、次の方法によって実行される。
・貫通孔26に挿入された連結バー22及び閉塞板29によって閉塞された収容シート27を有するベースプレート21を設ける工程(
図9参照)
・前述のベースプレート21をガビオン構造4の上に配置する工程(
図10参照)
・好ましくはタイロッド6及び金属リング32によって、ベースプレート21をガビオン構造4に固定する工程(
図11参照)
・ブレーシングビーム7を仮設の補助支持構造で支持することにより、所望の位置及び所望の高さに設ける工程(
図12参照)
・調整可能な締結手段23に作用することにより、連結バー22をこのようなブレーシングビーム7に強固に締結し、連結バー22のヘッド25がベースプレート21の下側に当接するまで(
図12参照)、上述したように、連結バー22のヘッド25がある程度の隙間をあけて収容シート27に受け止められることになり、硬化層24を形成する硬化性材料を流し込む前に、ベースプレート21に対してヘッド25及びそれに連結された連結バー22の平面内で、位置決め誤差を軽減/補償するために、ある程度の位置決め/変位が許容されるようにする工程
・連結バー22の周囲の領域にベースプレート21の上方に型枠を設ける工程
・硬化性材料、好ましくは仕上げモルタルを、少なくともブレーシングビーム7の下側の高さに達するまで、型枠に入れて鋳造し、硬化層24がブレーシングビーム7と基礎となるベースプレート21との間の物理的連続性を確保できるようにする工程(
図3及び
図13参照)。
【0052】
なお、ベースプレート21の下側に施された前述の閉塞板29により、少なくとも硬化材が部分的に硬化するまでは、ベースプレート21の外部への硬化材の漏れが防止される。層24の材料が硬化してしまえば、閉塞板29が存在してもしなくても問題なくなるため、そのような閉塞板29は構造的機能を有しない。
【0053】
なお、基礎にすでに設置された、あるいは、埋め込まれた連結バーが装備されている場合、前述の機械的連結要素を使用してガビオン構造をブレーシングビームに機械的に連結する前述の工程は、次の方法で実行するものとする。
・ベースプレートをガビオン構造の上に配置する工程
・可能であればタイロッドと金属リングを使用して、ベースプレートをガビオン構造に固定する工程
・ブレーシングビームを仮設の補助支持構造で支持することにより、所望の位置及び所望の高さに設ける工程
・調整可能な締結手段に作用することで、連結バーをブレーシングビームに強固に締結する工程(上述したように、連結バー22のヘッド25をベースプレート21の収容シート27にある程度のクリアランスで受け止めることにより、硬化層24を形成する硬化性材料を流し込む前に、連結バーをブレーシングビームにしっかりと締結し、任意の位置決め誤差を軽減/補償するために、ベースプレート21に対してヘッド25及びそれに連結された連結バー22の平面内で、ある程度の位置決め/変位が許容され得る)
・連結バーの周囲の領域にベースプレートの上方に型枠を設ける工程
・硬化性材料、好ましくは仕上げモルタルを、少なくともブレーシングビームの下側の高さに達するまで、型枠に入れて鋳造する工程
【0054】
上述したように、使用中の前述の基礎構造は、不活性材料5で充填されたガビオン構造4によって主に定義され、そのようなガビオン構造5は、基礎の掘削部に配置されるように設計され、それによって、実質的に大量鋳造をほぼ使用しないドライな基礎システムを定義する。
【0055】
ここで、前述の建築用の基礎構造の製造方法において、掘削部において基盤となるフッティング構造を形成するための前述の工程は、
・ガビオン建築物4を不活性材料で充填し、振動させ(ガビオンの体積中の不活性材料の圧縮を促進するため)、ベースプレート21によって閉塞し、連結バー22を設置した状態で、基礎の掘削部に配置する工程と、
・ガビオン構造4を、機械的連結要素3を用いて、上部構造の支持体として機能するように設計されたブレーシングビーム7に、機械的に連結する工程と、
を備える。
【0056】
上記方法では、ガビオン構造は、上述した通りであり、2つ以上のガビオン構造4と、それぞれの機械的連結要素3が同一のブレーシングビーム7によって強固に締結されて構成される。
【0057】
なお、ガビオン4の収容性向上のため、基礎の掘削部は、その底部に「リーンコンクリート」と呼ばれるコンクリート系層を流し込むことによって準備され、水/湿気の上方への浸入を防ぐための防水バリアなどの要素、及びガビオンの腐食を防止し、及び/又は、クロールスペースを形成するための適切な対策を提供することが可能である。
【0058】
上記の説明に明確に示されているように、本発明による基礎の機械的連結要素、ならびに本発明による建設用の基礎構造及びその製造方法は、上記のニーズを満たすことができ、また、本開示の紹介で述べたような従来技術の欠点を解決することができる。
【0059】
したがって、例えば、本発明による基礎の機械的連結要素は、有利には、これらのガビオンが互いに独立して輸送及び設置されるが、有利には、同じブレーシングビームに連結されたガビオンがモノリシックユニットを形成できることも理解されるであろう。
【0060】
さらに、これらの連結要素の構造により、基礎におけるブレーシングビームとフッティング構造との間が連結され、構造的観点からは、拘束ジョイントではなくヒンジとして定義されるため、せん断力と引張力がガビオン構造に伝達され、モーメントは伝達されない。
【0061】
有利には、ベースプレートの上面とブレーシングビームの下面とを連結する前述の硬化層を形成する鋳造により、ブレーシングビームからの応力の分布が改善される。
【0062】
なお、硬化性材料、好ましくは仕上げモルタルの鋳造は、前述の連結要素の前述の硬化層を形成することを意図しており、少量かつ早期硬化材料で作製することができる。それにより、ブレーシングビームを装填する前の、長い待機時間の必要性が回避できる。
【0063】
本発明の建築物の基礎構造に関しては、個々のガビオンを配置し、次いで、それらを所定の粒径を有するバルク不活性材料で充填することにより、「ドライ」なシステムとして提供できる。言い換えれば、大規模な大量コンクリート打設を必要とせずに、異なる石材だけでなく、建設廃材や他の石材、セメント質などの廃棄物も、その大きさや性質が適している場合に使用できる。
【0064】
したがって、本発明による建築用の基礎構造は、大掛かりな大工仕事や補強作業を必要とせずに、基礎の掘削部に配置する際、部分的に組み立てるだけでよい種々の構成要素で構成されるモジュール構造を提供する。
【0065】
本発明による建築用の基礎構造のさらなる利点は、容易に輸送され、迅速に設置され得るモジュール構造を使用できる点にある。しかし、全体としては、上部構造からの応力を吸収し、それらを周囲の土壌に伝達するモノリシック構造として機能する基礎構造を提供できる点にある。
【0066】
本発明による建築用の基礎構造のさらなる利点は、建設業界における循環型経済の利益となるよう、基礎構造の構成要素が除去される際に、それらを回収し、再利用できる点にある。
【0067】
同様に、本発明による建築用の基礎構造を製造する方法は、少量のコンクリート打設物を使用し、大工仕事及び補強作業をほとんど行わない建設現場で、容易かつ迅速に実施することができる。
【0068】
無論、当業者は、以下の特許請求の範囲に定義されるように、本発明の範囲から逸脱しない範囲であれば、本明細書に記載されたものに対して、多くの変更及び変形が加えられ得ることを、理解するであろう。
【国際調査報告】