(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法及び関連機器
(51)【国際特許分類】
H02H 3/34 20060101AFI20240524BHJP
H02H 3/16 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
H02H3/34 M
H02H3/16 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023531652
(86)(22)【出願日】2022-10-10
(85)【翻訳文提出日】2023-05-24
(86)【国際出願番号】 CN2022124233
(87)【国際公開番号】W WO2023216501
(87)【国際公開日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】202210492798.0
(32)【優先日】2022-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522299159
【氏名又は名称】雲南電網有限責任公司電力科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】劉 紅文
(72)【発明者】
【氏名】趙 現平
(72)【発明者】
【氏名】楊 金東
(72)【発明者】
【氏名】柴 晨超
(72)【発明者】
【氏名】唐 立軍
(72)【発明者】
【氏名】聶 鼎
(72)【発明者】
【氏名】朱 全聡
(72)【発明者】
【氏名】聶 永杰
(72)【発明者】
【氏名】鄒 徳旭
(72)【発明者】
【氏名】▲ヂャイ▼ 少磊
(72)【発明者】
【氏名】張 志磊
【テーマコード(参考)】
5G004
【Fターム(参考)】
5G004AA02
5G004AB01
5G004BA01
(57)【要約】
本発明の実施例は配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法及び関連機器を開示する。当該方法は、目標配電網に地絡が発生した場合、前記目標配電網の各線路のフレキシブル接地装置の電圧源は第1の補償電圧を出力するステップと、零相インピーダンス保護装置は、各線路の零相インピーダンスをリアルタイムに計算し始めるステップと、前記第1の補償電圧を第1の出力期間出力した後、前記フレキシブル接地装置の電圧源は出力電圧を調整して第2の補償電圧を出力するステップと、前記線路の零相インピーダンス保護装置は各線路の零相インピーダンスをリアルタイムに計算するステップと、前記零相インピーダンス保護装置は前記零相インピーダンスに基づいて零相インピーダンス保護条件及び零相電圧保護条件を満たす故障線路を決定し、線路遮断器のトリッププリセット遅延時間後に前記故障線路を切断して地絡を分離するステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標配電網に地絡が発生した場合、前記目標配電網の各線路のフレキシブル接地装置の電圧源は第1の補償電圧を出力するステップであって、前記第1の補償電圧は前記地絡に対応する電圧の故障相と逆であるステップと、
零相インピーダンス保護装置は地絡を検出し、各線路の零相インピーダンスをリアルタイムに計算するステップと、
前記第1の補償電圧を第1の出力期間出力した後、前記フレキシブル接地装置の電圧源は出力電圧を調整して第2の補償電圧を連続的に出力し、第2の出力期間出力してから電圧源補償モードを終了するステップと、
前記零相インピーダンス保護装置は各線路の零相インピーダンスをリアルタイムに計算するステップであって、前記零相インピーダンスは最大零相インピーダンス及び最小零相インピーダンスを含むステップと、
前記零相インピーダンス保護装置は前記零相インピーダンスに基づいて零相インピーダンス保護条件及び零相電圧保護条件を満たす故障線路を決定し、線路遮断器のトリッププリセット遅延時間後に前記故障線路を切断して地絡を分離するステップと、
零相インピーダンス保護条件及び零相電圧保護条件を満たす線路がない場合、前記フレキシブル接地装置の電圧源は補償プリセット遅延時間後に第1の補償電圧を出力し続けるステップと、
を含む、
ことを特徴とする配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法。
【請求項2】
前記零相インピーダンス保護装置は各線路の零相インピーダンスを計算するステップは、
零相インピーダンス保護装置は零相インピーダンスの計算式に従って各線路の零相インピーダンスを計算するステップを含み、ここで、零相インピーダンスの計算式は以下のとおりであり、
【数1】
式において、Z
0iはi番目の零相保護装置取り付け点の零相インピーダンス値であり、
【数2】
はi番目の零相保護装置取り付け点の零相電圧であり、
【数3】
はi番目の零相保護装置取り付け点の零相電流であり、Modはモジュロ関数である、
ことを特徴とする請求項1に記載の配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法。
【請求項3】
前記フレキシブル接地装置の電圧源は出力電圧を調整して第2の補償電圧を連続的に出力するステップは、
前記フレキシブル接地装置の電圧源は出力電圧
【数4】
の振幅U
s及び/又は位相ψを調整して連続した複数の異なる電圧とすることができる第2の補償電圧を出力するステップを含み、
第2の補償電圧
【数5】
の決定は接地過渡インピーダンスZ
ABC、インピーダンス変化量保護定数Z
zdに関連し、
【数6】
は故障相電源電圧であり、Cは故障線路の対地静電容量であり、
【数7】
は絶対値であり、前記インピーダンス変化量保護定数Z
zdは下式により決定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法。
【数8】
【請求項4】
前記零相インピーダンス保護条件は、前記第1の期間及び上記第2の期間内の零相インピーダンス偏差ΔZがインピーダンス変化量保護定数Z
zd以上であることであり、ここで、前記零相インピーダンス偏差ΔZは前記最大零相インピーダンスと最小零相インピーダンスとの差分値であり、
前記零相電圧保護条件は、電圧源補償モードを終了する場合、測定により得られた零相電圧の整定値U
0zである、
ことを特徴とする請求項1に記載の配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法。
【請求項5】
前記インピーダンス変化量保護定数Z
zdは故障分離の感度に基づいて設定され、ここで、前記インピーダンス変化量保護定数Z
zdは検出する必要がある過渡インピーダンスZ
ABCに基づいて決定される、
ことを特徴とする請求項4に記載の配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法。
【請求項6】
前記零相電圧整定値U
0zは8Vより大きい、
ことを特徴とする請求項4に記載の配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法。
【請求項7】
前記トリッププリセット遅延時間は、前記零相インピーダンス保護装置の線路における取り付け位置に基づいて決定され、母線に近接する零相インピーダンス保護装置のトリッププリセット遅延時間は、母線から離れた零相インピーダンス保護装置のプリセットトリップ遅延時間より大きく、前記プリセットトリップ遅延時間格差は0.1秒以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法。
【請求項8】
前記補償プリセット遅延時間は前記トリッププリセット遅延時間より大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の配電網のフレキシブル接地保護方法を実現でき、フレキシブル接地装置及び零相インピーダンス保護装置を含む、
ことを特徴とする配電網のフレキシブル接地システムの線路保護関連機器。
【請求項10】
前記零相インピーダンス保護装置は、収集及び計算しやすくするために高圧電圧を低圧電圧、電流、周波数などの信号に変換するために用いられる電圧センシングユニットと、高圧零相電流を低圧電圧、電流、周波数などの信号に変換するために用いられる電流センシングユニットと、線路の零相インピーダンス値及び零相インピーダンス値の最大値と最小値との差分値を計算し、トリップを行うか否かを判定するために用いられる制御計算ユニットと、前記制御計算ユニットの命令に応じて遮断器の投入又は遮断を制御するために用いられるトリップユニットと、を含む、
ことを特徴とする請求項9に記載の配電網のフレキシブル接地システムの線路保護関連機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配電網のフレキシブル接地保護の技術分野に関し、特に配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法及び関連機器に関する。
【背景技術】
【0002】
制御可能な電圧源を介した配電網の中性点のフレキシブル接地方式は、国内外の配電システムに広く適用されており、現在の消弧リアクトル接地システムは故障電流を完全に補償できないという不足を補い、地絡点の残留電圧と残留電流による感電、山火事など、二次故障のリスクを徹底的に解消している。制御可能な電圧源を介したフレキシブル接地方式は、故障点電圧の振幅、位相及び周波数を柔軟に制御することができ、応答速度が速く、配電自動化遮断器FTUと協働して故障を迅速に分離することができる。
【0003】
電圧源、電流源を介した配電網の中性点のフレキシブル接地方式は、地絡の能動的で高速で安全な処置を実現する。しかしながら、フレキシブル接地方式は、消弧時にシステムの中性点の零相電圧及び線路零相電流を変化させ、従来の零相電流保護及び零相電圧によるその場の閉鎖分離の技術は、フレキシブル電源注入時に適用しない。上記課題に対して、本発明は、フレキシブル電圧源、電流源による消弧調整時に、故障線路の零相インピーダンスがそれに伴って変化し、非故障線路の零相インピーダンスが変化しない原理を利用し、地絡線保護を行い、当該方法は地絡線選択装置にも適用できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明の概要の部分において簡略化した形式で導入される一連の概念について、発明を実施するための形態の部分においてさらに詳細に説明する。本発明の概要の部分は、保護を請求する技術案の重要な特徴又は必要な特徴を限定することを意図するものではなく、また保護を請求する技術案の範囲を決定することを意図するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
確実な配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法を提供するために、第1の態様では、本発明は配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法を提供し、上記方法は、
目標配電網に地絡が発生した場合、上記目標配電網の各線路のフレキシブル接地装置の電圧源は第1の補償電圧を出力するステップであって、上記第1の補償電圧は上記地絡に対応する電圧の故障相と逆であるステップと、
零相インピーダンス保護装置は地絡を検出し、各線路の零相インピーダンスをリアルタイムに計算するステップと、
上記第1の補償電圧を第1の出力期間出力した後、上記フレキシブル接地装置の電圧源は出力電圧を調整して第2の補償電圧を連続的に出力し、第2の出力期間出力してから電圧源補償モードを終了するステップと、
上記零相インピーダンス保護装置は各線路の零相インピーダンスをリアルタイムに計算するステップであって、上記零相インピーダンスは最大零相インピーダンス及び最小零相インピーダンスを含むステップと、
上記零相インピーダンス保護装置は上記零相インピーダンスに基づいて零相インピーダンス保護条件及び零相電圧保護条件を満たす故障線路を決定し、線路遮断器のトリッププリセット遅延時間後に上記故障線路を切断して地絡を分離するステップと、
零相インピーダンス保護条件及び零相電圧保護条件を満たす線路がない場合、上記フレキシブル接地装置の電圧源は補償プリセット遅延時間後に第1の補償電圧を出力し続けるステップと、を含む。
【0006】
任意選択的に、上記零相インピーダンス保護装置は各線路の零相インピーダンスを計算するステップは、
零相インピーダンス保護装置は零相インピーダンスの計算式に従って各線路の零相インピーダンスを計算するステップを含み、ここで、零相インピーダンスの計算式は以下のとおりであり、
【数1】
式において、Z
0iはi番目の零相保護装置の取り付け点の零相インピーダンス値であり、
【数2】
はi番目の零相保護装置の取り付け点の零相電圧であり、
【数3】
はi番目の零相保護装置の取り付け点の零相電流であり、Modはモジュロ関数である。
【0007】
任意選択的に、上記フレキシブル接地装置の電圧源は出力電圧を調整して第2の補償電圧を出力するステップは、
前記フレキシブル接地装置の電圧源は出力電圧
【数4】
の振幅U
s及び/又は位相ψを調整して連続した複数の異なる電圧とすることができる第2の補償電圧を出力するステップを含み、
第2の補償電圧
【数5】
の決定は接地過渡インピーダンスZ
ABC、インピーダンス変化量保護定数Z
zdに関連し、
【数6】
は故障相電源電圧であり、Cは故障線路の対地静電容量であり、
【数7】
は絶対値であり、インピーダンス変化量保護定数Z
zdは下式により決定される。
【数8】
【0008】
任意選択的に、上記零相インピーダンス保護条件は、上記第1の期間及び上記第2の期間内の零相インピーダンス偏差ΔZがインピーダンス変化量保護定数Zzd以上であることであり、ここで、上記零相インピーダンス偏差ΔZは上記最大零相インピーダンスと最小零相インピーダンスとの差分値であり、
上記零相電圧保護条件は、電圧源補償モードを終了する場合、測定により得られた零相電圧の整定値U0zである。
【0009】
任意選択的に、上記インピーダンス変化量保護定数Zzdは故障分離の感度に基づいて設定され、ここで、上記インピーダンス変化量保護定数Zzdは検出する必要がある過渡インピーダンスZABCに基づいて決定される。
【0010】
任意選択的に、上記零相電圧整定値U0zは8Vより大きい。
【0011】
任意選択的に、上記トリッププリセット遅延時間は、上記零相インピーダンス保護装置の線路における取り付け位置に基づいて決定され、母線に近接する零相インピーダンス保護装置のトリッププリセット遅延時間は、母線から離れた零相インピーダンス保護装置のプリセットトリップ遅延時間より大きく、上記プリセットトリップ遅延時間格差は0.1秒以上である。
【0012】
任意選択的に、上記補償プリセット遅延時間は上記トリッププリセット遅延時間より大きい。
【0013】
第2の態様では、本発明は、特許請求の範囲の第1の態様に記載のいずれかの配電網のフレキシブル接地保護方法を実現でき、フレキシブル接地装置及び零相インピーダンス保護装置を含む配電網のフレキシブル接地システムの線路保護関連機器をさらに提供する。
【0014】
任意選択的に、上記零相インピーダンス保護装置は、収集及び計算しやすくするために高圧電圧を低圧電圧、電流、周波数などの信号に変換するために用いられる電圧センシングユニットと、収集及び計算しやすくするために高圧零相電流を低圧電圧、電流、周波数などの信号に変換するために用いられる電流センシングユニットと、線路の零相インピーダンス値及び零相インピーダンス値の最大値と最小値との差分値を計算し、トリップを行うか否かを判定するために用いられる制御計算ユニットと、上記制御計算ユニットの命令に応じて遮断器の投入又は遮断を制御するために用いられるトリップユニットと、を含む。
【0015】
第3の態様では、本発明は、メモリと、プロセッサと、上記メモリに記憶され上記プロセッサで実行可能なコンピュータプログラムとを含む電子機器であって、上記プロセッサは、メモリに記憶されているコンピュータプログラムを実行するとき、上記第1の態様のいずれか1つの配電網のフレキシブル接地保護方法のステップを実現する電子機器をさらに提供する。
【0016】
第4の態様では、本発明は、プロセッサによって実行されるとき、第1の態様の上記いずれかの配電網のフレキシブル接地保護方法を実現するコンピュータプログラムが記憶されているコンピュータ読み取り可能な記憶媒体をさらに提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の実施例を実施すると、以下の有益な効果を有し、
本願により提供される配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法は非故障線路の零相インピーダンスがフレキシブル制御可能な電圧源の出力電圧に伴って変化せず、故障線路の零相インピーダンスがフレキシブル制御可能な電圧源の出力電圧に伴って変化するという特徴を利用し、線路遮断器保護の感度、選択性、確実さ及び迅速な故障分離を保証し、故障停電範囲を減少し、給電の確実さを高める。当該方法は現在の有効電力及び零相電流保護に対して比較的高い感度、選択性、確実さを有し、20kΩ以下の地絡を迅速に分離することができ、また、制御可能な電圧源を介した配電網のフレキシブル接地方式の給電線自動化遮断器が零相電圧、零相電流などの特徴量によって保護を行うことが困難であるという難題を解決し、電力方向を判断する必要がなく、配電自動化遮断器FTUに地絡保護方法を提供し、本発明により提供される配電自動化遮断器の地絡保護方法は、永久的な故障を迅速に除去することに有利であり、給電の確実さを高め、クリーンなエネルギー消費及び新規な配電システムの建設を補助し、またフレキシブル電圧源、電流源による接地方式で地絡消弧時に地絡線を選択するという難題を解決し、フレキシブル電源調整期間において、精確な地絡線選択を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
以下、本発明の実施例又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、実施例又は従来技術の記述に利用する必要がある図面を簡単に紹介するが、当然ながら、以下に記載する図面は単に本発明の実施例の一部に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【0019】
【
図1】本願の実施例により提供される配電網のフレキシブル接地保護方法のフローチャートである。
【
図2】本願の実施例により提供される中性点フレキシブル接地システムの非故障線路インピーダンス解析簡略化回路の概略図である。
【
図3】本願の実施例により提供される中性点フレキシブル接地システムの故障線路の電気的接続の概略図である。
【
図4】本願の実施例により提供される中性点フレキシブル接地システムの故障線路インピーダンス解析簡略化回路の概略図である。
【
図5】本願の実施例により提供される配電網フレキシブル接地零相インピーダンス保護装置の線路に沿った配置概略図である。
【
図6】本願の実施例により提供される配電網のフレキシブル接地システムの線路保護関連機器の構造概略図である。
【
図7】本願の実施例により提供される零相インピーダンス保護装置の構造概略図である。
【
図8】本願の実施例により提供される配電網フレキシブル接地保護電子機器の構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例における図面を参照して、本発明の実施例における技術案を明確で完全に説明し、明らかに、説明される実施例は、すべての実施例ではなく、本発明の実施例の一部に過ぎない。本発明における実施例に基づき、当業者は創造的な労働をしない前提で得られた全ての他の実施例は、本発明の保護範囲に属する。
【0021】
本発明の明細書及び特許請求の範囲並びに上記の図面における「第1」、「第2」、「第3」及び「第4」という用語(もしある)は、類似の対象を区別するために用いられ、必ずしも特定の順序又は前後順番を説明するために用いられるわけではない。このように使用されるデータは、本明細書に記載の実施例が本明細書に図示又は記載された内容以外の順序で実施できるように、適切な状況下で交換できることを理解されたい。さらに、「含む」及び「有する」という用語並びにそれらの任意の変形は、非排他的包含をカバーすることを意図しており、例えば、一連のステップ又はユニットを含むプロセス、方法、システム、製品又は機器が、必ずしも明確に列挙されたステップ又はユニットに限定されず、明確に列挙されていない、又はそのようなプロセス、方法、製品又は機器に固有の他のステップ又はユニットを含み得る。以下、本願の実施例における図面を参照して、本願の実施例における技術案を明確で完全に説明し、明らかに、説明される実施例は、すべての実施例ではなく、本願の実施例の一部に過ぎない。
【0022】
図1に示すように、本願の実施例により提供される配電網のフレキシブル接地保護方法のフローチャートであり、具体的には、
目標配電網に地絡が発生した場合、上記目標配電網の各線路のフレキシブル接地装置の電圧源は第1の補償電圧を出力するステップであって、上記第1の補償電圧は上記地絡に対応する電圧の故障相と逆であるステップS101と、
零相インピーダンス保護装置は地絡を検出し、各線路の零相インピーダンスをリアルタイムに計算するステップS102と、
上記第1の補償電圧を第1の出力期間出力した後、上記フレキシブル接地装置の電圧源は出力電圧を調整して第2の補償電圧を連続的に出力し、第2の出力期間出力してから電圧源補償モードを終了するステップS103と、
上記零相インピーダンス保護装置は各線路の零相インピーダンスをリアルタイムに計算するステップであって、上記零相インピーダンスは最大零相インピーダンス及び最小零相インピーダンスを含むステップS104と、
上記零相インピーダンス保護装置は上記零相インピーダンスに基づいて零相インピーダンス保護条件及び零相電圧保護条件を満たす故障線路を決定し、線路遮断器のトリッププリセット遅延時間後に上記故障線路を切断して地絡を分離するステップS105と、
零相インピーダンス保護条件及び零相電圧保護条件を満たす線路がない場合、上記フレキシブル接地装置の電圧源は補償プリセット遅延時間後に第1の補償電圧を出力し続けるステップS106と、を含む。
【0023】
具体的には、目標配電網に地絡が発生することを監視した場合、目標配電網の各線路におけるフレキシブル接地装置の電圧源は、上記地絡に対応する電圧の故障相と逆の第1の補償電圧を出力して、線路の完全補償を実現する。また、零相インピーダンス保護装置は地絡を検出すると、保護装置取り付け点の零相インピーダンスをリアルタイムに計算し始める。第1の補償電圧が第1の出力期間t補償した後、フレキシブル接地装置の電圧源は出力電圧を調整して第2の補償電圧を連続的に出力し、第2の出力期間ts出力してから電圧源補償モードを終了する。零相インピーダンス保護装置は各線路における第1の出力期間及び第2の出力期間の零相インピーダンスをリアルタイムに計算し、零相インピーダンスは最大零相インピーダンス及び最小零相インピーダンスを含む。零相インピーダンス保護装置は、零相インピーダンス保護条件及び零相電圧保護条件という2つの条件を満たす線路を検出すれば、故障線路とし、零相インピーダンス保護装置は、線路遮断器のトリッププリセット遅延時間後に上記故障線路を切断して地絡を分離する。零相インピーダンス保護条件及び零相電圧保護条件を満たす線路がない場合、フレキシブル接地装置の電圧源は補償プリセット遅延時間後に第1の補償電圧を出力し続け、完全補償を続ける。
【0024】
さらに、上記方法を用いて故障線路を決定する原理は以下のとおりである。
図2は中性点フレキシブル接地システムの非故障線路インピーダンス解析簡略化回路の概略図であり、
図2に示すように、フレキシブル接地装置の電圧出変化
【数9】
の変化であり、
【数10】
は線形変化である。
非故障線路の等価インピーダンスZ
0は変化せず、下記式(1)のとおりであり、
【数11】
ここで、Z
0は非故障線路の零相インピーダンスであり、
【数12】
はフレキシブル接地装置の出力電圧であり、
【数13】
はシステム中性点の零相電圧であり、
【数14】
は非故障線路の零相電流であり、Cは非故障線路の対地分布容量である。
【0025】
図3は中性点フレキシブル接地システムの故障線路の電気的接続の概略図であり、
図4は中性点フレキシブル接地システムの故障線路インピーダンス解析簡略化回路の概略図であり、故障線路に対して、線路零相電流は
【数15】
であり、ここで、非故障相--B相電流及びC相電流はそれぞれ
【数16】
である。
故障相A相電流は
【数17】
であり、ここで、Z
AはA相故障時の線路対地分布容量C/3と接地過渡抵抗Rとの並列インピーダンスであり、すなわち、
【数18】
であり、フレキシブル接地電圧源が故障相と逆の電圧を出力し、すなわち、
【数19】
である場合、このとき、地1絡電流が完全に補償され、
【数20】
となり、したがって、
【数21】
、電源電圧
【数22】
が対称的であり、
【数23】
とあり、したがって、
【数24】
であり、
フレキシブル接地システムの完全補償時の故障線路の零相インピーダンスは以下のとおりであり、
【数25】
フレキシブル接地電圧源が出力電圧を変化させると、
【数26】
となり、したがって、
【数27】
となり、したがって、
【数28】
となり、
さらに、以下に示すように、中性点フレキシブル接地システムの零相インピーダンスを得、
【数29】
式(3)から分かるように、故障線路の零相インピーダンスは、
【数30】
により制御されるため、フレキシブル接地装置の出力電圧を変化させることにより、故障線路の零相インピーダンスを変化させることができ、さらに、零相インピーダンスの最大値と最小値の偏差を計算して故障線路を特定することができる。
【0026】
前記インピーダンス変化量保護定数Z
zdの計算について、零相インピーダンス保護装置の零相CT及びPTに検出された零相インピーダンス値Z
0の誤差が0.05Ωであり、完全補償の零相インピーダンスは
【数31】
である場合、誤差0.05Ωより大きいインピーダンス変化量を検出する必要があり、整定値Z
zdを0.1Ωと仮定すると、
【数32】
の出力電圧は、下式により求めることができ、
【数33】
上式から調整の必要な
【数34】
を決定することができる。
【0027】
要すると、本願により提供される配電網のフレキシブル接地システム零相インピーダンス保護方法は、非故障線路の零相インピーダンスがフレキシブル制御可能な電圧源の出力電圧に伴って変化せず、故障線路の零相インピーダンスがフレキシブル制御可能な電圧源の出力電圧に伴って変化するという特徴を利用し、線路遮断器保護の感度、選択性、確実さ及び迅速な故障分離を保証し、故障停電範囲を減少し、給電の確実さを高める。当該方法は現在の有効電力及び零相電流保護方法よれ優れ、比較的高い感度、選択性、確実さを有し、20kΩ以下の地絡を迅速に分離することができ、また、制御可能な電圧源を介した配電網のフレキシブル接地方式の給電線自動化遮断器が零相電圧、零相電流などの特徴量によって保護を行うことが困難であるという難題を解決し、電力方向を判断する必要がなく、配電自動化遮断器FTUに地絡保護方法を提供し、本発明により提供される配電自動化遮断器の地絡保護方法は、永久的な故障を迅速に除去することに有利であり、給電の確実さを高め、クリーンなエネルギー消費及び新規な配電システムの建設を補助し、またフレキシブル電圧源、電流源による接地方式で地絡消弧時に地絡線を選択するという難題を解決し、フレキシブル電源調整期間において、精確な地絡線選択を実現することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、上記零相インピーダンス保護装置は各線路の零相インピーダンスを計算するステップは、
零相インピーダンス保護装置は零相インピーダンスの計算式に従って各線路の零相インピーダンスを計算するステップを含み、ここで、零相インピーダンスの計算式は式(4)であり、
【数35】
式において、Z
0iはi番目の零相保護装置取り付け点の零相インピーダンス値であり、
【数36】
はi番目の零相保護装置取り付け点の零相電圧であり、
【数37】
はi番目の零相保護装置取り付け点の零相電流であり、Modはモジュロ関数である。
【0029】
いくつかの実施形態では、上記フレキシブル接地装置の電圧源は出力電圧を調整して第2の補償電圧を連続的に出力するステップは、
上記フレキシブル接地装置の電圧源は出力電圧
【数38】
の振幅U
s及び/又は位相ψを調整して連続した複数の異なる電圧とすることができる第2の補償電圧を出力するステップを含み、
第2の補償電圧
【数39】
の決定は接地過渡インピーダンスZ
ABC、インピーダンス変化量保護定数Z
zdに関連し、
【数40】
は故障相電源電圧であり、Cは故障線路の対地静電容量であり、
【数41】
は絶対値であり、上記インピーダンス変化量保護定数Z
zdは下式により決定される。
【数42】
【0030】
いくつかの実施形態では、上記零相インピーダンス保護条件は、上記第1の期間及び上記第2の期間内の零相インピーダンス偏差がインピーダンス変化量保護定数Zzd以上であることであり、ここで、上記零相インピーダンス偏差ΔZは上記最大零相インピーダンスと最小零相インピーダンスとの差分値であり、
上記零相電圧保護条件は、電圧源補償モードを終了する場合、測定により得られた零相電圧の整定値U0zである。
【0031】
具体的には、線路における零相パラメータに零相インピーダンス保護条件及び零相電圧保護条件の線路が存在すれば、この2つの条件を満たす線路が故障線路である。ここで、零相インピーダンス保護条件は、故障の発生から第2の補償電圧を出力するまでのプロセス(すなわち第1の期間及び上記第2の期間内)において零相インピーダンス偏差ΔZがインピーダンス変化量保護定数Zzd以上であることであり、ここで、零相インピーダンス偏差ΔZは上記最大零相インピーダンスと最小零相インピーダンスとの差分値である。また、上記零相電圧保護条件は、電圧源補償モードを終了する場合、測定により得られた零相電圧の整定値U0zである。
【0032】
いくつかの実施形態では、上記インピーダンス変化量保護定数Zzdは故障分離の感度に基づいて設定され、ここで、上記インピーダンス変化量保護定数は検出する必要がある過渡インピーダンスZABCに基づいて決定される。
【0033】
具体的には、Zzdの値は0.01オームから1000オームまでの任意の値とすることができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、上記零相電圧整定値U0zは8Vより大きい。
【0035】
いくつかの実施形態では、上記トリッププリセット遅延時間は、上記零相インピーダンス保護装置の線路における取り付け位置に基づいて決定され、母線に近接する零相インピーダンス保護装置のトリッププリセット遅延時間は、母線から離れた零相インピーダンス保護装置のプリセットトリップ遅延時間より大きく、上記プリセットトリップ遅延時間格差は0.1秒以上である。
【0036】
具体的には、トリッププリセット遅延時間は、線路における取り付け位置に基づいて決定され、プリセットジャンプ遅延格差は0.1s~10s範囲内の任意の値とすることができ、且つ母線に近接する零相インピーダンス保護装置のトリッププリセット遅延時間は、母線から離れた零相インピーダンス保護装置のプリセットトリップ遅延時間より大きい。
【0037】
いくつかの実施形態では、上記補償プリセット遅延時間は上記トリッププリセット遅延時間より大きい。
【0038】
図6に示すように、本発明は特許請求の範囲の第1の態様に記載のいずれかの配電網のフレキシブル接地保護方法を実現でき、フレキシブル接地装置220及び零相インピーダンス保護装置210を含む配電網のフレキシブル接地システムの線路保護関連機器200をさらに提供する。
【0039】
図7に示すように、上記零相インピーダンス保護装置210は、収集及び計算しやすくするために高圧電圧を低圧電圧、電流、周波数などの信号に変換するために用いられる電圧センシングユニット2101と、高圧零相電流を低圧電圧、電流、周波数などの信号に変換するために用いられる電流センシングユニット2102と、線路の零相インピーダンス値及び零相インピーダンス値の最大値と最小値との差分値を計算し、トリップを行うか否かを判定するために用いられる制御計算ユニット2103と、上記制御計算ユニットの命令に応じて遮断器の投入又は遮断を制御するために用いられるトリップユニット2104と、を含む。
【0040】
図8に示すように、本願の実施例は、メモリ310と、プロセッサ320と、メモリ320に記憶されプロセッサで実行可能なコンピュータプログラム311とを含む電子機器300であって、プロセッサ320は、コンピュータプログラム311を実行するとき、上記配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法のステップを実現する電子機器300をさらに提供する。
【0041】
本実施例に紹介された電子機器は本願の実施例における配電網のフレキシブル接地システムの線路保護装置を実施するために用いられる機器であるため、本願の実施例に紹介された方法に基づき、当業者は本実施例の電子機器の具体的な実施形態及びその様々な変更形態を知ることができ、したがって、ここでは当該電子機器が本願の実施例における方法をどのように実現するかについて詳細に紹介せず、当業者が本願の実施例における方法を実施するために用いる機器であれば、いずれも本願の保護しようとする範囲に属する。
【0042】
具体的な実施プロセスにおいて、当該コンピュータプログラム311はプロセッサにより実行されるときに
図1に対応する実施例におけるいずれかの実施形態を実現することができる。
【0043】
なお、上記実施例において、各実施例についての記述はそれぞれに重きをおいており、ある実施例において詳述されていない部分については、他の実施例に関する記述を参照することができる。
【0044】
当業者には、本願の実施例が、方法、システム、又はコンピュータプログラム製品として提供されることが理解される。そのため、本願は、全体的にハードウェアの実施例、全体的にソフトウェアの実施例、又はソフトウェア及びハードウェアの態様を組み合わせた実施例の形式を採用することができる。さらに、本願は、コンピュータ使用可能なプログラムコードを内部に包含する1つ又は複数のコンピュータ使用可能な記憶媒体(磁気ディスクメモリ、CD-ROM、光メモリなどを含むが、これらに限定されない)に実施されるコンピュータプログラム製品の形式を採用することができる。
【0045】
本願は、本願の実施例による方法、機器(システム)、及びコンピュータプログラム製品のフローチャート及び/又はブロック図を参照して記述される。フローチャート及び/又はブロック図における各フロー及び/又はブロック、並びにフローチャート及び/又はブロック図におけるフロー及び/又はブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム命令により実現されることが理解されるべきである。これらのコンピュータプログラム命令を汎用コンピュータ、専用コンピュータ、埋め込みコンピュータ、又は他のプログラマブルデータ処理機器のプロセッサに提供して、1つの機械を生成し、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理機器のプロセッサにより実行される命令を、フローチャートの1つ又は複数のフロー及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックにおいて指定される機能を実現するための装置を生成するようにさせる。
【0046】
これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理機器を特定の方式で動作するように導くことができるコンピュータ読み取り可能なメモリに記憶されてもよく、当該コンピュータ読み取り可能なメモリに記憶される命令を、フローチャートの1つ又は複数のフロー及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックにおいて指定される機能を実現する命令装置を含む製品を生成するようにさせる。
【0047】
これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理機器にアップロードされてもよく、コンピュータ又は他のプログラマブル機器で一連の操作ステップを実行して、コンピュータで実現される処理を生成するようになり、それによりコンピュータ又は他のプログラマブル機器で実行される命令が、フローチャートの1つ又は複数のフロー及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックにおいて指定される機能を実現するためのステップを提供する。
【0048】
本願の実施例は、処理機器で実行されると、処理機器に、
図1に対応する実施例における配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法のフローを実行させるコンピュータソフトウェア命令を含む、コンピュータプログラム製品をさらに提供する。
【0049】
コンピュータプログラム製品は1つ又は複数のコンピュータ命令を含む。コンピュータでコンピュータプログラム命令をロードして実行するときに、本願の実施形態によるフロー又は機能を、全体的に又は部分的に生成する。コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、コンピュータネットワーク、又は他のプログラマブル装置とすることができる。コンピュータ命令は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶し、又は、1つのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体から別のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に伝送することができ、例えば、コンピュータ命令は、有線(例えば、同軸ケーブル、光ファイバ、デジタル加入者線(digital subscriber line、DSL))又は無線(例えば、赤外線、無線、マイクロ波など)の方式により、1つのウェブサイトのサイト、コンピュータ、サーバ又はデータセンターから別のウェブサイトのサイト、コンピュータ、サーバ又はデータセンターに伝送されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、コンピュータに記憶可能な任意の利用可能な媒体、又は1つ又は複数の利用可能な媒体を集積化したサーバ、データセンターなどを含むデータ記憶機器とすることができる。利用可能な媒体は、磁気媒体(例えば、フロッピーディスク、ハードディスク、磁気テープ)、光媒体(例えば、DVD)、又は半導体媒体(例えば、ソリッドステートディスク(solid state disk、SSD))などとすることができる。
【0050】
当業者であれば、記述の便宜及び簡潔のために、上述したシステム、装置及びユニットの具体的な動作過程は、前述した方法の実施例における対応する過程を参照することができることを明確に理解でき、ここでは説明を省略する。
【0051】
本願にて提供されるいくつかの実施例において、開示されるシステム、装置、及び方法は、他の形態で実現されることが理解されるべきである。例えば、上述した装置の実施例は、単なる例示的なものであり、例えば、ユニットの分割は、論理機能の分割に過ぎず、実際に実現する際に、別の分割方式にしてもよく、例えば、複数のユニット又は構成要素は結合しても、別のシステムに集積化されてもよく、又はいくつかの特徴は省略されても、実行されなくてもよい。別の面において、示された又は討論された相互の結合又は直接的な結合又は通信接続は、何らかのインタフェース、装置又はユニットを介した間接的な結合又は通信接続であってもよく、電気的、機械的又は他の形式であってもよい。
【0052】
分離部品として説明されるユニットは、物理的に分離されても、分離されなくてもよく、ユニットとして示される部品は、物理的ユニットであってもでなくてもよく、すなわち、一箇所に位置しても、複数のネットワークユニットに分布してもよい。実際のニーズに応じて、そのうちの一部又は全部のユニットを選択して、本実施例の解決手段の目的を実現することができる。
【0053】
また、本願の各実施例における各機能ユニットは、1つの処理ユニットに集積化されてもよく、各ユニットが物理的に別個に存在してもよく、2つ以上のユニットが1つのユニットに集積化されてもよい。上記集積化されたユニットは、ハードウェアの形式で実現されてもよく、ソフトウェア機能ユニットの形式で実現されてもよい。
【0054】
集積化されたユニットは、ソフトウェア機能ユニットの形式で実現され、独立した製品として販売又は使用される場合、1つのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶することができる。このような理解に基づき、本願の技術的解決手段、本質的に、又は、従来技術に寄与する部分、又は、当該技術的解決手段の全部又は一部が、ソフトウェア製品の形式で具体化することができ、当該コンピュータソフトウェア製品は、記憶媒体に記憶され、1台のコンピュータ機器(パーソナルコンピュータ、サーバ、又はネットワーク機器などでもよい)に本願の各実施例の方法の全部又は一部のステップを実行させるためのいくつかの命令を含む。また、前述した記憶媒体は、Uディスク、ポータブルハードディスク、リードオンリーメモリ(Read-Only Memory、ROM)、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAM)、磁気ディスク、光ディスクなど各種のプログラムコードを記憶できる媒体を含む。
【0055】
以上に開示されたものは、本発明の好ましい実施例に過ぎず、当然ながら、本発明の権利範囲をこれらにより限定することはできなく、したがって、本発明の特許請求の範囲に基づいて行われる同等の変化は、依然として本発明がカバーする範囲に属する。
【0056】
(付記)
(付記1)
目標配電網に地絡が発生した場合、前記目標配電網の各線路のフレキシブル接地装置の電圧源は第1の補償電圧を出力するステップであって、前記第1の補償電圧は前記地絡に対応する電圧の故障相と逆であるステップと、
零相インピーダンス保護装置は地絡を検出し、各線路の零相インピーダンスをリアルタイムに計算するステップと、
前記第1の補償電圧を第1の出力期間出力した後、前記フレキシブル接地装置の電圧源は出力電圧を調整して第2の補償電圧を連続的に出力し、第2の出力期間出力してから電圧源補償モードを終了するステップと、
前記零相インピーダンス保護装置は各線路の零相インピーダンスをリアルタイムに計算するステップであって、前記零相インピーダンスは最大零相インピーダンス及び最小零相インピーダンスを含むステップと、
前記零相インピーダンス保護装置は前記零相インピーダンスに基づいて零相インピーダンス保護条件及び零相電圧保護条件を満たす故障線路を決定し、線路遮断器のトリッププリセット遅延時間後に前記故障線路を切断して地絡を分離するステップと、
零相インピーダンス保護条件及び零相電圧保護条件を満たす線路がない場合、前記フレキシブル接地装置の電圧源は補償プリセット遅延時間後に第1の補償電圧を出力し続けるステップと、を含む、
ことを特徴とする配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法。
【0057】
(付記2)
前記零相インピーダンス保護装置は各線路の零相インピーダンスを計算するステップは、
零相インピーダンス保護装置は零相インピーダンスの計算式に従って各線路の零相インピーダンスを計算するステップを含み、ここで、零相インピーダンスの計算式は以下のとおりであり、
【数43】
式において、Z
0iはi番目の零相保護装置取り付け点の零相インピーダンス値であり、
【数44】
はi番目の零相保護装置取り付け点の零相電圧であり、
【数45】
はi番目の零相保護装置取り付け点の零相電流であり、Modはモジュロ関数である、
ことを特徴とする付記1に記載の配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法。
【0058】
(付記3)
前記フレキシブル接地装置の電圧源は出力電圧を調整して第2の補償電圧を連続的に出力するステップは、
前記フレキシブル接地装置の電圧源は出力電圧
【数46】
の振幅U
s及び/又は位相ψを調整して連続した複数の異なる電圧とすることができる第2の補償電圧を出力するステップを含み、
第2の補償電圧
【数47】
の決定は接地過渡インピーダンスZ
ABC、インピーダンス変化量保護定数Z
zdに関連し、
【数48】
は故障相電源電圧であり、Cは故障線路の対地静電容量であり、
【数49】
は絶対値であり、前記インピーダンス変化量保護定数Z
zdは下式により決定される、
ことを特徴とする付記1に記載の配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法。
【数50】
【0059】
(付記4)
前記零相インピーダンス保護条件は、前記第1の期間及び上記第2の期間内の零相インピーダンス偏差ΔZがインピーダンス変化量保護定数Zzd以上であることであり、ここで、前記零相インピーダンス偏差ΔZは前記最大零相インピーダンスと最小零相インピーダンスとの差分値であり、
前記零相電圧保護条件は、電圧源補償モードを終了する場合、測定により得られた零相電圧の整定値U0zである、
ことを特徴とする付記1に記載の配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法。
【0060】
(付記5)
前記インピーダンス変化量保護定数Zzdは故障分離の感度に基づいて設定され、ここで、前記インピーダンス変化量保護定数Zzdは検出する必要がある過渡インピーダンスZABCに基づいて決定される、
ことを特徴とする付記4に記載の配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法。
【0061】
(付記6)
前記零相電圧整定値U0zは8Vより大きい、
ことを特徴とする付記4に記載の配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法。
【0062】
(付記7)
前記トリッププリセット遅延時間は、前記零相インピーダンス保護装置の線路における取り付け位置に基づいて決定され、母線に近接する零相インピーダンス保護装置のトリッププリセット遅延時間は、母線から離れた零相インピーダンス保護装置のプリセットトリップ遅延時間より大きく、前記プリセットトリップ遅延時間格差は0.1秒以上である、
ことを特徴とする付記1に記載の配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法。
【0063】
(付記8)
前記補償プリセット遅延時間は前記トリッププリセット遅延時間より大きい、
ことを特徴とする付記1に記載の配電網のフレキシブル接地システムの線路保護方法。
【0064】
(付記9)
付記1~8のいずれか1つに記載の配電網のフレキシブル接地保護方法を実現でき、フレキシブル接地装置及び零相インピーダンス保護装置を含む、
ことを特徴とする配電網のフレキシブル接地システムの線路保護関連機器。
【0065】
(付記10)
前記零相インピーダンス保護装置は、収集及び計算しやすくするために高圧電圧を低圧電圧、電流、周波数などの信号に変換するために用いられる電圧センシングユニットと、高圧零相電流を低圧電圧、電流、周波数などの信号に変換するために用いられる電流センシングユニットと、線路の零相インピーダンス値及び零相インピーダンス値の最大値と最小値との差分値を計算し、トリップを行うか否かを判定するために用いられる制御計算ユニットと、前記制御計算ユニットの命令に応じて遮断器の投入又は遮断を制御するために用いられるトリップユニットと、を含む、
ことを特徴とする付記9に記載の配電網のフレキシブル接地システムの線路保護関連機器。
【国際調査報告】