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特表2024-521274高安定性の注射用ダプトマイシン組成物、その調製方法及びその適用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】高安定性の注射用ダプトマイシン組成物、その調製方法及びその適用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/12 20060101AFI20240524BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240524BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240524BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240524BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240524BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61K38/12
A61P31/04
A61K47/02
A61K47/04
A61K9/19
A61K9/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545306
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(85)【翻訳文提出日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 CN2021096559
(87)【国際公開番号】W WO2022160531
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】202110103108.3
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523282165
【氏名又は名称】ジャージャン ノバス ファーマシューティカルス カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】510187358
【氏名又は名称】ジャージャン メディスン カンパニー リミテッド シンチョン ファーマシューティカル ファクトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ユアン,シーイン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ウェイバオ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,グオフォン
(72)【発明者】
【氏名】イェ,リーリー
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジャーリ
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,ジンジン
(72)【発明者】
【氏名】パン,イービン
(72)【発明者】
【氏名】ジャー,ジュアン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ジョンミン
(72)【発明者】
【氏名】スン,チーミン
(72)【発明者】
【氏名】フー,イーミン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ズオリャン
(72)【発明者】
【氏名】ピン,ジャンホン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA30
4C076BB11
4C076CC32
4C076DD22
4C076DD23
4C076DD23D
4C076DD24
4C076DD25Z
4C076DD26
4C076DD26D
4C076DD26Z
4C076DD30Z
4C076DD41
4C076DD43
4C076DD43D
4C076DD43Z
4C076DD67D
4C076FF65
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA17
4C084BA18
4C084BA27
4C084DA43
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA03
4C084ZB351
4C084ZB352
(57)【要約】
本発明は、高安定性の注射用ダプトマイシン組成物、その調製方法及びその適用を提供し、前記注射用ダプトマイシン組成物は、ダプトマイシン及び薬学的に許容される担体を含み、前記薬学的に許容される担体は、二価金属塩、pH調節剤、及び浸透圧調節剤を含み、ここで、前記注射用ダプトマイシン組成物中のダプトマイシン:二価金属塩のモル比は、1:1.0~1:3.5である。本発明の注射用ダプトマイシン組成物は、製剤の安定性を有意に改善し、室温での製剤の保存及び輸送に容易にし、薬物の安全性を確保し、また、本発明の調製方法は、環境保護、工業化適性等の利点を有する。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高安定性の注射用ダプトマイシン組成物であって、
前記注射用ダプトマイシン組成物は、ダプトマイシン及び薬学的に許容される担体を含み、前記薬学的に許容される担体は、二価金属塩、pH調節剤、及び浸透圧調節剤を含み、ここで、前記注射用ダプトマイシン組成物中のダプトマイシン:二価金属塩のモル比は、1:1.0~1:3.5であることを特徴とする
注射用ダプトマイシン組成物。
【請求項2】
前記二価金属塩は、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、臭化水素酸カルシウム、ヨウ化水素酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化水素酸マグネシウム、ヨウ化水素酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、乳酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化水素酸亜鉛、ヨウ化水素酸亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、リン酸水素亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸亜鉛、リン酸亜鉛のいずれか一種又はその組み合わせから選択されることを特徴とする
請求項1に記載の注射用ダプトマイシン組成物。
【請求項3】
前記pH調節剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムのいずれか一種又はその組み合わせから選択されることを特徴とする
請求項1に記載の注射用ダプトマイシン組成物。
【請求項4】
前記浸透圧調節剤は、塩化ナトリウム、ブドウ糖、リン酸塩、クエン酸塩のいずれか一種又はその組み合わせから選択されることを特徴とする
請求項1に記載の注射用ダプトマイシン組成物。
【請求項5】
前記注射用ダプトマイシン組成物のpHは、3.5~6.0、好ましくは4.0~5.5、より好ましくは4.5~5.0であることを特徴とする
請求項1に記載の注射用ダプトマイシン組成物。
【請求項6】
ダプトマイシン:浸透圧調節剤のモル比は、1:0~3.0、好ましくは1:0.5~2.75、より好ましくは1:1.0~2.5、さらに好ましくは1:1.5~2.25であることを特徴とする
請求項1又は4に記載の注射用ダプトマイシン組成物。
【請求項7】
前記注射用ダプトマイシン組成物中のダプトマイシン:二価金属塩:浸透圧調節剤のモル比は、1:1.0~3.5:0~3.0、好ましくは1:1.2~3.0:0.5~2.75、より好ましくは1:1.5~2.75:1.0~2.5、さらに好ましくは1:1.75~2.50:1.5~2.25であることを特徴とする
請求項1、2又は4に記載の注射用ダプトマイシン組成物。
【請求項8】
前記注射用ダプトマイシン組成物中のダプトマイシン:塩化カルシウム:塩化ナトリウムのモル比は、1:1.5:2.5であり、水酸化ナトリウムを用いて前記注射用ダプトマイシン組成物のpHを4.5に調節することを特徴とする
請求項7に記載の注射用ダプトマイシン組成物。
【請求項9】
前記注射用ダプトマイシン組成物中の総不純物含有量は、≦7.0%であり、脱水ダプトマイシン含有量は、≦4.0%であり、β-異性体含有量は、≦1.5%であり、ラクトン加水分解物含有量は、≦1.5%であることを特徴とする
請求項1に記載の注射用ダプトマイシン組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の高安定性の注射用ダプトマイシン組成物の調製方法であって、
前記注射用ダプトマイシン組成物は、ダプトマイシン及び薬学的に許容される担体を含み、前記薬学的に許容される担体は、二価金属塩、pH調節剤、及び浸透圧調節剤を含み、ここで、前記注射用ダプトマイシン組成物中のダプトマイシン:二価金属塩のモル比は、1:1.0~1:3.5であり、前記調製方法は、
必要量のダプトマイシン及び二価金属塩を注射用水に溶解させて水溶液を調製し、調製した水溶液にpH調節剤を加えて水溶液のpHを3.5~6.0に調節し、必要量の浸透圧調節剤を加えて溶液を等張に調節し、ろ過してろ液を得、ろ液を凍結乾燥又は噴霧乾燥のいずれか一種又はその組み合わせの方法によって処理して、注射用ダプトマイシン組成物を得る段階を含むことを特徴とする
調製方法。
【請求項11】
前記凍結乾燥方法は、
1)ろ液をバイアルに充填した後、凍結乾燥ボックスに置き、-20℃~-70℃に冷却して、サンプルを完全に凍結させる段階と、
2)-10℃~5℃に加熱し、0~0.25mbarの真空度を維持し、乾燥させる段階と、
3)5℃~40℃に加熱し、乾燥させて得る段階とを含むことを特徴とする
請求項10に記載の調製方法。
【請求項12】
前記噴霧乾燥方法は、空気入口温度を150~230℃、空気出口温度を80~150℃に設定し、パラメーターが安定した後、調製したダプトマイシン水溶液を噴霧乾燥させて得る段階を含むことを特徴とする
請求項10に記載の調製方法。
【請求項13】
抗菌薬の調製における請求項1~9のいずれか1項に記載の高安定性の注射用ダプトマイシン組成物の使用であって、
前記注射用ダプトマイシン組成物は、グラム陽性菌によって引き起こされる感染の治療に使用され、前記感染は、皮膚と軟組織感染、心内膜炎、菌血症のいずれか一種又はその組み合わせ又はその合併症から選択されることを特徴とする、前記適用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の技術分野に属し、具体的には、高安定性の注射用ダプトマイシン組成物、その調製方法及びその適用に関する。
【背景技術】
【0002】
ダプトマイシン(構造は、式Iに示されたとおりである)は、環状酸性リポペプチド抗生物質であり、細菌の細胞膜におけるアミノ酸の輸送を妨害し、細菌の細胞壁のペプチドグリカンにおけるテイコ酸脂質の生合成を妨げ、細胞膜の物理的及び科学的特性を変化させる可能性があり、細菌の細胞膜を破壊することにより細胞内の可溶物が外部に漏出することで、グラム陽性菌(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌、糖ペプチド感受性黄色ブドウ球菌、ペニシリン耐性肺炎球菌、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌等を含む)に対して濃度依存的に急速な殺菌活性を発揮し、主に、メチシリン感受性株及びメチシリン耐性株の感染によって引き起こされる付随する右側心内膜炎を含む、グラム陽性菌による複雑な皮膚及び軟組織感染、黄色ブドウ球菌の血液感染による敗血症の治療に使用される。
【化1】
【0003】
ダプトマイシン及びその製剤溶液は、分解されやすい、安定性が悪い等の問題がある。市販されているオリジナルのCUBICINは、冷蔵保存(5±3℃)が必要であり、保管や輸送が不便でコストも増加する。ダプトマイシン及びその製剤溶液の安定性の問題を改善するために、いくつかの研究では、ダプトマイシン溶液に保護剤(例えば、スクロース、スルホブチル-β-シクロデキストリン等)及び/又はt-ブタノール等の有機溶媒を添加したが、これにより操作の困難さとコストが増加し、医薬品の安全性の危険につながる。従って、製剤の保管及び輸送に有益であり、薬物の有効性及び安全性を保障する、高安定性のダプトマイシン製剤が緊急に必要とされる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、高安定性の注射用ダプトマイシン組成物を提供することであり、前記注射用ダプトマイシン組成物は、ダプトマイシン及び薬学的に許容される担体を含み、前記薬学的に許容される担体は、二価金属塩、pH調節剤、及び浸透圧調節剤を含み、ここで、前記注射用ダプトマイシン組成物中のダプトマイシン:二価金属塩のモル比は、1:1.0~1:3.5である。
【0005】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記二価金属塩は、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩のいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0006】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記二価金属塩は、硝酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、グルコン酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、乳酸塩のいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0007】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記二価金属塩は、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、臭化水素酸カルシウム(calcium hydrobromate)、ヨウ化水素酸カルシウム(calcium hydroiodate)、グルコン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化水素酸マグネシウム(magnesium hydrobromate)、ヨウ化水素酸マグネシウム(magnesium hydroiodate)、硫酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、乳酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化水素酸亜鉛(zinc hydrobromate)、ヨウ化水素酸亜鉛(zinc hydroiodate)、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、リン酸水素亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸亜鉛、リン酸亜鉛のいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0008】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:二価金属塩のモル比は、1:1.2~3.0、好ましくは1:1.5~2.75、より好ましくは1:1.75~2.50である。
【0009】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩酸塩のモル比は、1:1.2~3.0、好ましくは1:1.5~2.75、より好ましくは1:1.75~2.50である。
【0010】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩化カルシウムのモル比は、1:1.2~3.0、好ましくは1:1.5~2.75、より好ましくは1:1.75~2.50である。
【0011】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記pH調節剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムのいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0012】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物のpHは、3.5~6.0、好ましくは4.0~5.5、より好ましくは4.5~5.0である。
【0013】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記浸透圧調節剤は、塩化ナトリウム、ブドウ糖、リン酸塩、クエン酸塩のいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0014】
本発明の好ましい技術的解決策において、ダプトマイシン:浸透圧調節剤のモル比は、1:0~3.0、好ましくは1:0.5~2.75、より好ましくは1:1.0~2.5、さらに好ましくは1:1.5~2.25である。
【0015】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:二価金属塩:浸透圧調節剤のモル比は、1:1.0~3.5:0~3.0、好ましくは1:1.2~3.0:0.5~2.75、より好ましくは1:1.5~2.75:1.0~2.5、さらに好ましくは1:1.75~2.50:1.5~2.25である。
【0016】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩酸塩:浸透圧調節剤のモル比は、1:1.0~3.5:0~3.0、好ましくは1:1.2~3.0:0.5~2.75、より好ましくは1:1.5~2.75:1.0~2.5、さらに好ましくは1:1.75~2.50:1.5~2.25である。
【0017】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩化カルシウム:浸透圧調節剤のモル比は、1:1.0~3.5:0~3.0、好ましくは1:1.2~3.0:0.5~2.75、より好ましくは1:1.5~2.75:1.0~2.5、さらに好ましくは1:1.75~2.50:1.5~2.25である。
【0018】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩化カルシウム:塩化ナトリウムのモル比は、1:1.2:2.74であり、水酸化ナトリウムを用いて組成物のpHを4.0に調節する。
【0019】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩化カルシウム:塩化ナトリウムのモル比は、1:1.2:2.74であり、水酸化ナトリウムを用いて組成物のpHを5.0に調節する。
【0020】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩化カルシウム:塩化ナトリウムのモル比は、1:1.2:2.74であり、水酸化ナトリウムを用いて組成物のpHを6.0に調節する。
【0021】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩化カルシウム:塩化ナトリウムのモル比は、1:1.5:2.5であり、水酸化ナトリウムを用いて組成物のpHを4.5に調節する。
【0022】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩化カルシウム:塩化ナトリウムのモル比は、1:1.75:2.1であり、水酸化ナトリウムを用いて組成物のpHを5.0に調節する。
【0023】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩化カルシウム:塩化ナトリウムのモル比は、1:2.5:1.1であり、水酸化ナトリウムを用いて組成物のpHを5.0に調節する。
【0024】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩化カルシウムのモル比は、1:3.5であり、水酸化ナトリウムを用いて組成物のpHを5.0に調節する。
【0025】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記組成物は、凍結乾燥粉末又は噴霧乾燥粉末のいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0026】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中の総不純物含有量は、≦7.0%であり、脱水ダプトマイシン含有量は、≦4.0%であり、β-異性体含有量は、≦1.5%であり、ラクトン加水分解物含有量は、≦1.5%である。
【0027】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中の総不純物含有量は、≦6.0%であり、脱水ダプトマイシン含有量は、≦3.5%であり、β-異性体含有量は、≦1.0%であり、ラクトン加水分解物含有量は、≦1.0%である。
【0028】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中の総不純物含有量は、≦5.0%であり、脱水ダプトマイシン含有量は、≦3.0%であり、β-異性体含有量は、≦0.8%であり、ラクトン加水分解物含有量は、≦0.8%である。
【0029】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中の総不純物含有量は、≦4.0%であり、脱水ダプトマイシン含有量は、≦2.0%であり、β-異性体含有量は、≦0.6%であり、ラクトン加水分解物含有量は、≦0.6%である。
【0030】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中の総不純物含有量は、≦3.0%であり、脱水ダプトマイシン含有量は、≦1.0%であり、β-異性体含有量は、≦0.5%であり、ラクトン加水分解物含有量は、≦0.5%である。
【0031】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記組成物の含水量は、≦5.0%、好ましくは≦4.0%、より好ましくは≦3.0%である。
【0032】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物を再溶解させた後の溶液の透明度は、第1濁度標準液未満であるか、又はそれに近い。
【0033】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物を再溶解させた後の溶液吸光度A450nmは、≦0.50、好ましくは≦0.40、より好ましくは≦0.30である。
【0034】
本発明の別の目的は、高安定性の注射用ダプトマイシン組成物の調製方法を提供することであり、前記注射用ダプトマイシン組成物は、ダプトマイシン及び薬学的に許容される担体を含み、前記薬学的に許容される担体は、二価金属塩及びpH調節剤、ならびに浸透圧調節剤を含み、ここで、前記注射用ダプトマイシン組成物中のダプトマイシン:二価金属塩のモル比は、1:1.0~1:3.5であり、前記方法は、必要量のダプトマイシン及び二価金属塩を注射用水に溶解させて水溶液を調製し、調製した水溶液にpH調節剤を加えて水溶液のpHを3.5~6.0に調節し、任意選択で、必要量の浸透圧調節剤を加えて等張に調節し、ろ過してろ液を得、ろ液を凍結乾燥又は噴霧乾燥のいずれか一種又はその組み合わせの方法によって処理して、得る段階を含む。
【0035】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記ろ過は、フィルター膜ろ過であり、ろ膜の孔径は、好ましくは≦0.45μmであり、より好ましくは0.40μm、0.35μm、0.30μm、0.25μm、0.22μmのいずれかである。
【0036】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記二価金属塩は、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩のいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0037】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記二価金属塩は、硝酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、グルコン酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、乳酸塩のいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0038】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記二価金属塩は、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、臭化水素酸カルシウム、ヨウ化水素酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、リン酸カルシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化水素酸マグネシウム、ヨウ化水素酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、乳酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化水素酸亜鉛、ヨウ化水素酸亜鉛、硫酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、リン酸水素亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸亜鉛、リン酸亜鉛のいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0039】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:二価金属塩のモル比は、1:1.2~3.0、好ましくは1:1.5~2.75、より好ましくは1:1.75~2.50である。
【0040】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩酸塩のモル比は、1:1.2~3.0、好ましくは1:1.5~2.75、より好ましくは1:1.75~2.50である。
【0041】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩化カルシウムのモル比は、1:1.2~3.0、好ましくは1:1.5~2.75、より好ましくは1:1.75~2.50である。
【0042】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記pH調節剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムのいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0043】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物のpHは、3.5~6.0、好ましくは4.0~5.5、より好ましくは4.5~5.0である。
【0044】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記浸透圧調節剤は、塩化ナトリウム、ブドウ糖、リン酸塩、クエン酸塩のいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0045】
本発明の好ましい技術的解決策において、ダプトマイシン:浸透圧調節剤のモル比は、1:0~3.0、好ましくは1:0.5~2.75、より好ましくは1:1.0~2.5、さらに好ましくは1:1.5~2.25である。
【0046】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:二価金属塩:浸透圧調節剤のモル比は、1:1.0~3.5:0~3.0、好ましくは1:1.2~3.0:0.5~2.75、より好ましくは1:1.5~2.75:1.0~2.5、さらに好ましくは1:1.75~2.50:1.5~2.25である。
【0047】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩酸塩:浸透圧調節剤のモル比は、1:1.0~3.5:0~3.0、好ましくは1:1.2~3.0:0.5~2.75、より好ましくは1:1.5~2.75:1.0~2.5、さらに好ましくは1:1.75~2.50:1.5~2.25である。
【0048】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩化カルシウム:浸透圧調節剤のモル比は、1:1.0~3.5:0~3.0、好ましくは1:1.2~3.0:0.5~2.75、より好ましくは1:1.5~2.75:1.0~2.5、さらに好ましくは1:1.75~2.50:1.5~2.25である。
【0049】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩化カルシウム:塩化ナトリウムのモル比は、1:1.2:2.74であり、水酸化ナトリウムを用いて組成物のpHを4.0に調節する。
【0050】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩化カルシウム:塩化ナトリウムのモル比は、1:1.2:2.74であり、水酸化ナトリウムを用いて組成物のpHを5.0に調節する。
【0051】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩化カルシウム:塩化ナトリウムのモル比は、1:1.2:2.74であり、水酸化ナトリウムを用いて組成物のpHを6.0に調節する。
【0052】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩化カルシウム:塩化ナトリウムのモル比は、1:1.5:2.5であり、水酸化ナトリウムを用いて組成物のpHを4.5に調節する。
【0053】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩化カルシウム:塩化ナトリウムのモル比は、1:1.75:2.1であり、水酸化ナトリウムを用いて組成物のpHを5.0に調節する。
【0054】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩化カルシウム:塩化ナトリウムのモル比は、1:2.5:1.1であり、水酸化ナトリウムを用いて組成物のpHを5.0に調節する。
【0055】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中のダプトマイシン:塩化カルシウムのモル比は、1:3.5であり、水酸化ナトリウムを用いて組成物のpHを5.0に調節する。
【0056】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記組成物は、凍結乾燥粉末又は噴霧乾燥粉末のいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0057】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記凍結乾燥方法は、
1)ろ液をバイアルに充填した後、凍結乾燥ボックスに置き、-20℃~-70℃に冷却して、サンプルを完全に凍結させる段階と、
2)-10℃~5℃に加熱し、0~0.25mbarの真空度を維持し、乾燥させる段階と、
3)5℃~40℃に加熱し、乾燥させて得る段階とを含む。
本発明の好ましい技術的解決策において、前記噴霧乾燥方法は、空気入口温度を150~230℃、空気出口温度を80~150℃、プロセス空気流量を25~45kg/h、ノズル空気流量を3~5.5kg/hに設定し、パラメーターが安定した後、調製したダプトマイシン水溶液を噴霧乾燥させて得る段階を含む。
【0058】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記空気入口温度は、180~220℃、好ましくは200~210℃である。
【0059】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記空気出口温度は、90~130℃、好ましくは100~110℃である。
【0060】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記プロセス空気流量は、30~43kg/h、好ましくは35~40kg/hである。
【0061】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記ノズル空気流量は、3.5~5.0kg/h、好ましくは4.0~4.5kg/hである。
【0062】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中の総不純物含有量は、≦7.0%であり、脱水ダプトマイシン含有量は、≦4.0%であり、β-異性体含有量は、≦1.5%であり、ラクトン加水分解物含有量は、≦1.5%である。
【0063】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中の総不純物含有量は、≦6.0%であり、脱水ダプトマイシン含有量は、≦3.5%であり、β-異性体含有量は、≦1.0%であり、ラクトン加水分解物含有量は、≦1.0%である。
【0064】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中の総不純物含有量は、≦5.0%であり、脱水ダプトマイシン含有量は、≦3.0%であり、β-異性体含有量は、≦0.8%であり、ラクトン加水分解物含有量は、≦0.8%である。
【0065】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中の総不純物含有量は、≦4.0%であり、脱水ダプトマイシン含有量は、≦2.0%であり、β-異性体含有量は、≦0.6%であり、ラクトン加水分解物含有量は、≦0.6%である。
【0066】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物中の総不純物含有量は、≦3.0%であり、脱水ダプトマイシン含有量は、≦1.0%であり、β-異性体含有量は、≦0.5%であり、ラクトン加水分解物含有量は、≦0.5%である。
【0067】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記組成物の含水量は、≦5.0%、好ましくは≦4.0%、より好ましくは≦3.0%である。
【0068】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物を再溶解させた後の溶液の透明度は、第1濁度標準液未満であるか、又はそれに近い。
【0069】
本発明の好ましい技術的解決策において、組成物を再溶解させた後の溶液吸光度A450nmは、≦0.50、好ましくは≦0.40、より好ましくは≦0.30である。
【0070】
本発明の別の目的は、抗菌薬の調製における本発明の高安定性の注射用ダプトマイシン組成物の適用を提供することである。
【0071】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記組成物は、凍結乾燥粉末、噴霧乾燥粉末のいずれか一種から選択される。
【0072】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記組成物は、グラム陽性菌によって引き起こされる感染の治療に使用される。
【0073】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記感染は、皮膚と軟組織感染、心内膜炎、菌血症のいずれか一種又はその組み合わせ又はその合併症から選択される。
【0074】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記感染は、複雑性皮膚軟部組織感染(cSSTIs)、黄色ブドウ球菌による右心内膜炎(RIE)、菌血症のいずれか一種又はその組み合わせ及びその合併症から選択される。
【0075】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記組成物は、他の抗菌薬をさらに含む。
【0076】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記他の抗菌薬は、キノロン系、ペニシリン系、セファロスポリン系、β-ラクタム系、アミノグリコシド系、マクロライド系、リンコマイシン系薬物のいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0077】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記キノロン系薬物は、ノルフロキサシン(ノルフロキサシン)、エノキサシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、ペフロキサシン、スパルフロキサシンのいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0078】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記ペニシリン系薬物は、ペニシリンG、ペニシリンV、メチシリン(XinqingI)、アンピシリン(Ampicillin)、アモキシシリン(Amoxicillin)、チカルシリン(Ticarcillin)、ピペラシリン(Piperacillin)のいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0079】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記セファロスポリン系薬物は、セファゾリン、セフラジン、セファレキシン、セフラジン、セファドロキシル、セフロキシム(Cefuroxime)、セファマンドール、セフォキシチン、セフメタゾール、セフロキシムアキセチル、セファクロール、セフォタキシム、セフタジジム、セフトリアキソン、セフォペラゾン、セフチゾキシム、セフォジジム、セフィキシム、セフポドキシムプロキセチル、セフテラムピボキシル、セフェタメットピボキシル、セフェピム、セフピロムのいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0080】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記β-ラクタム系薬物は、イミペネム、シラスタチン、メロペネムのいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0081】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記アミノグリコシド系薬物は、ゲンタマイシン、トブラマイシン、ネチルマイシン、アミカシン(Amikacin)、ストレプトマイシン、スペクチノマイシンのいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0082】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記マクロライド薬物は、エリスロマイシン、クラリスロマイシン(Clarithromycin)、ロキシスロマイシン、アジスロマイシン、ジョサマイシン、ミデカマイシン、スピラマイシンのいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0083】
本発明の好ましい技術的解決策において、前記リンコマイシン系薬物は、リンコマイシン及びクリンダマイシンのいずれか一種又はその組み合わせから選択される。
【0084】
本発明の凍結乾燥機は、上海TOFFLON社のモデルLyo1(CIP)の真空凍結乾燥機を使用する。
【0085】
本発明の噴霧乾燥機は、SPX社のモデルMS35の噴霧乾燥機を使用する。
【0086】
特に明記しない限り、本発明が液体と液体との間のパーセンテージに関する場合、前記パーセンテージは、体積/体積パーセンテージであり、本発明が液体と固体との間のパーセンテージに関する場合、前記パーセンテージは、体積/重量パーセンテージであり、本発明が固体と液体との間のパーセンテージに関する場合、前記パーセンテージは、重量/体積パーセンテージであり、残りは、重量/重量パーセンテージである。
【0087】
従来技術と比較して、本発明は、次のような有益な効果を有する。
1.本発明は、注射用ダプトマイシン組成物の成分及び割合を科学的にスクリーニングし、製剤の安定性を大幅に改善し、高濃度のカルシウムイオンによって引き起こされる不適格な透明度、過剰な浸透圧等の問題を克服し、室温での製剤の保存及び輸送に容易にし、薬物の安全性を確保する。
2.本発明の注射用ダプトマイシン組成物は、成分が単純で、保護剤及び有機溶媒を含まない、安定性が良い、補助材料が安価で入手やすい、コストが良い、製品の品質が制御可能で、環境にやさしい、工業化に適する等の利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0088】
以下、実施例及び実験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例及び実験例は、単に例示を目的とするものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0089】
実施例1.注射用プトマイシン組成物の調製
注射用ダプトマイシン組成物の調製方法は、次のような段階を含む。
1.500gのダプトマイシン、51.4gの塩化カルシウムを秤量し、これを2.5Lの注射用水に溶解させ、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを4.5に調節し、45.1gの塩化ナトリウムを加え、得られた溶液を0.22μmのフィルター膜でろ過し、ろ液を収集し、
2、噴霧乾燥機の空気入口温度を200℃、空気出口温度を110℃、プロセス空気流量を35kg/h、ノズル空気流量を4.5kg/hに設定し、収集したろ液を噴霧乾燥させ、収集した的噴霧乾燥粉末をバイアルに分注し、打栓し、蓋をして密封する。サンプルを取り、検出された含水量は、3.0%である。
【0090】
実施例2.注射用ダプトマイシン組成物の調製
注射用ダプトマイシン組成物の調製方法は、次のような段階を含む。
500gのダプトマイシン、60gの塩化カルシウムを秤量し、これを1.5Lの注射用水に溶解させ、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを5.0に調節し、38gの塩化ナトリウムを加え、得られた溶液を0.22μmのフィルター膜でろ過し、収集したろ液をバイアルに分注し、半打栓した後凍結乾燥ボックスに入れ、サンプル溶液を-40℃以下で約4時間予備凍結し、製品の温度が5℃以下に制御されるように、プログラムで昇温させ、真空度を約0.25mbarに制御し、約20時間昇華乾燥させ、プログラムで温度を制御して、製品温度25℃以下の条件下で約7時間解析及び乾燥させ、窒素を充填し、栓を押し、真空破壊および箱から取り出して蓋をする。サンプルを取り、検出された含水量は、2.0%である。
【0091】
試験例1.注射用ダプトマイシン組成物の安定性調査
実施例1及び実施例2で調製した注射用ダプトマイシン組成物、オリジナルの市販製剤CUBICIN RF及びCUBICINを40℃で1ヶ月放置し、その関連物質及びその変化を検出する。結果は、表1に示される。
【表1】
【0092】
結果は、噴霧乾燥粉末又は凍結乾燥粉末の両方の安定性がCUBICIN及びCUBICIN RFよりも優れていることを示す。
【0093】
試験例2.注射用ダプトマイシン組成物の再溶解の安定性の検討
実施例1及び実施例2で調製した注射用ダプトマイシン組成物及びCUBICINを注射用水に加えた後、これを50mg/mlの溶液に溶解させ、再びこれを2~8℃条件下で48時間放置し、関連物質の変化状況を検討する。結果は、表2に示される。
【表2】
【0094】
結果は、CUBICINと比較して、実施例1の噴霧乾燥粉末及び実施例2の凍結乾燥粉末の安定性が優れており、患者の薬物安全性を確保していることを示す。
【0095】
試験例3.ダプトマイシン塩化カルシウム溶液の安定性検討
5.0gのダプトマイシン、1.2gの塩化カルシウムを100mlの注射用水に溶解させ、これを三つに均等に分け、水酸化ナトリウム溶液を加えて、pHを4.0、5.0および7.0に調節し、ろ過し、収集したろ液をバイアルに分注し、密封し、これを25℃下で24時間放置し、関連物質の変化を検討し、結果は、表3に示される。
【表3】
【0096】
結果は、pH値の増加につれて、ダプトマイシン関連物質の変化程度が小さくなり、pHが高い方の安定性がより優れることを示す。
【0097】
実施例3.注射用ダプトマイシン組成物の調製
500gのダプトマイシン、41gの塩化カルシウムを秤量し、これを2.5Lの注射用水に溶解させ、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを4.0に調節し、48gの塩化ナトリウムを加え、ろ過し、ろ液を収集する。空気入口温度を220℃、空気出口温度を120℃、プロセス空気流量を30kg/h、ノズル空気流量を3.5kg/hに設定し、収集したろ液を噴霧乾燥させ、収集した噴霧乾燥粉末をバイアルに分注し、打栓し、蓋をして密封する。
【0098】
実施例4~6.注射用ダプトマイシン組成物の調製
実施例3の方法及び製剤成分に従って、水酸化ナトリウム溶液を用いて、実施例4~6のダプトマイシン溶液のpHをそれぞれ5.0、6.0、7.0に調節し、噴霧乾燥させて、注射用ダプトマイシンの噴霧乾燥粉末を調製する。
【0099】
試験例4.注射用ダプトマイシン組成物の安定性検討
実施例3~6で調製した噴霧乾燥粉末を60℃下で10日間放置し、関連物質の変化を検討する。結果は、表4に示される。
【表4】
【0100】
結果は、pH値が増加するにつれて、噴霧乾燥粉末の安定性が低下し、総不純物の変化幅が増加することを示し、データは、注射用ダプトマイシンが固体粉末として存在する場合、低pHでの安定性がより優れていることを示す。
【0101】
実施例7.注射用ダプトマイシン組成物の調製
500gのダプトマイシン、41gの塩化カルシウムを秤量し、これを2.5Lの注射用水に溶解させ、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを5.0に調節し、48gの塩化ナトリウムを加え、ろ過し、ろ液を収集する。空気入口温度を220℃、空気出口温度を120℃、プロセス空気流量を30kg/h、ノズル空気流量を3.5kg/hに設定し、収集したろ液を噴霧乾燥させ、収集した噴霧乾燥粉末をバイアルに分注し、打栓し、蓋をして密封する。
【0102】
実施例8.注射用ダプトマイシン組成物の調製
500gのダプトマイシン、41gの塩化カルシウムを秤量し、これを2.5Lの注射用水に溶解させ、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを7.0に調節し、48gの塩化ナトリウムを加え、ろ過し、ろ液を収集する。空気入口温度を220℃、空気出口温度を120℃、プロセス空気流量を30kg/h、ノズル空気流量を3.5kg/hに設定し、収集したろ液を噴霧乾燥させ、収集した噴霧乾燥粉末をバイアルに分注し、打栓し、蓋をして密封する。
【0103】
試験例5.注射用ダプトマイシン組成物の安定性検討
実施例7及び実施例8で調製した噴霧乾燥粉末、CUBICIN RF及びCUBICINを40℃下で2ヶ月放置し、不純物の変化状況を検討する。結果は、表5に示される。
【表5】
【0104】
結果は、pH5.0の条件下で調製した噴霧乾燥粉末の安定性がpH7.0の噴霧乾燥粉末の安定性よりも優れており、CUBICIN RFと同様であり、CUBICINよりも優れていることを示す。
【0105】
ダプトマイシンを噴霧乾燥により固体粉末に調製された後、弱酸性サンプル(pH4.0~6.0)の安定性は、ほぼ中性のサンプル(pH6.0~7.0)の安定性よりも優れている。
【0106】
実施例9.注射用ダプトマイシン組成物の調製
50.0gのダプトマイシン、4.1gの塩化カルシウムを取り、これを250mLの注射用水に溶解させ、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを5.0に調節し、4.8gの塩化ナトリウムを加え、ろ過し、ろ液を収集し、これをバイアルに分注し、半打栓した後凍結乾燥ボックスに入れ、サンプル溶液を-50℃以下で約4時間予備凍結し、製品の温度が-5℃以下に制御されるように、プログラムで昇温させ、真空度を約0.05mbarに制御し、約20時間昇華乾燥させ、プログラムで温度を制御して、製品温度が20℃以下の条件下で約5時間乾燥させ、窒素を充填し、栓を押し、真空破壊および箱から取り出して蓋をする。
【0107】
実施例10~14.注射用ダプトマイシン組成物の調製
実施例10~14の注射用ダプトマイシン組成物及びその成分については、表6に示される。実施例7の方法による調製:ダプトマイシン5部をそれぞれ50.0g秤量し、それぞれ6.0gの塩化カルシウム及び3.8gの塩化ナトリウム、8.6gの塩化カルシウム及び2.0gの塩化ナトリウム、12.0gの塩化カルシウム、13.7gの塩化カルシウム、20.6gの塩化カルシウムを秤量し、これを250mLの注射用水に溶解させ、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを5.0に調節し、ろ過し、収集したろ液を凍結乾燥させて、凍結乾燥粉末を調製する。
【表6】
【0108】
試験例6.様々な塩化カルシウム含有量の製剤の安定性
実施例9~12で調製した凍結乾燥粉末、オリジナルの市販製剤CUBICIN RF及びCUBICINを取って40℃下で1ヶ月放置し、関連物質の変化を検討する。結果は、表7に示される。
【表7】
【0109】
結果は、カルシウムイオン比率が増加するにつれて、凍結乾燥粉末の安定性が増加することを示す。
【0110】
試験例7.注射用ダプトマイシン組成物の再溶解後の透明度の検討
実施例9、実施例11、実施例12、実施例13、実施例14で調製した凍結乾燥粉末を取って注射用水に加えて、50mg/mlのダプトマイシン溶液に溶解させ、「中国薬局方」2020年版に従って、濁度標準液と比較し、結果は、表8に示される。
【表8】
【0111】
結果は、ダプトマイシン:カルシウムイオンのモル比が1:2.5未満の場合、溶液透明度が第1濁度標準液未満又は近いことを示す。ダプトマイシン:カルシウムイオンのモル比が1:3.5を超える場合、溶液透明度が第2濁度標準液未満であり、第1濁度標準液を超えて、透明度標準を満たさない。
【0112】
試験例8.注射用ダプトマイシン組成物の浸透圧検討
ダプトマイシン5部をそれぞれ500mg秤量し、それぞれ41mgの塩化カルシウム、85.7mgの塩化カルシウム、120mgの塩化カルシウム、137mgの塩化カルシウム、205.7mgの塩化カルシウムと10mlの注射用水に溶解させ、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを5.5に調節し、ろ過し、ろ液を収集し、これをバイアルに分注し、半打栓した後凍結乾燥ボックスに入れ、サンプル溶液を-30℃以下で約4時間予備凍結し、製品の温度が-5℃以下に制御されるように、プログラムで昇温させ、真空度を約0.05mbarに制御し、約20時間昇華乾燥させ、プログラムで温度を制御して、製品温度15℃の条件下で約5時間乾燥させ、窒素を充填し、栓を押し、真空破壊および箱から取り出して蓋をする。ダプトマイシンの濃度が50mg/mlとなるように注射用水を加えて溶解させ、「中国薬局方」2020年版(第IV部)「0632」の凝固点低下法に従って、浸透圧を測定し、結果は、表9に示される。
【表9】
【0113】
結果は、ダプトマイシン:カルシウムイオンのモル比が1:3.5の場合、溶液の浸透圧のモル濃度が約300mosmであり、ヒト血漿の浸透圧に近く、等張溶液であることを示す。
【0114】
以上、本発明の具体的な実施形態に関する説明は、本発明を限定するものではなく、当業者は、本発明の精神から逸脱しない限り、本発明に従って様々な変更又は変形を行うことができ、すべて本発明の特許請求の範囲の保護範囲に属するものとする。
【国際調査報告】