(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】RNAシークエンシングライブラリーの構築方法、シークエンシング方法及びキット
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20240524BHJP
C40B 40/08 20060101ALI20240524BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240524BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240524BHJP
【FI】
C12N15/10 Z
C40B40/08 ZNA
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564239
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-19
(86)【国際出願番号】 CN2021088984
(87)【国際公開番号】W WO2022222101
(87)【国際公開日】2022-10-27
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521151692
【氏名又は名称】深▲せん▼華大生命科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲竜▼奇
(72)【発明者】
【氏名】林 秀妹
(72)【発明者】
【氏名】石 泉
(72)【発明者】
【氏名】史 旭洋
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲伝▼宇
(72)【発明者】
【氏名】黄 ▲亜▼▲靈▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲亜▼
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR14
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4B063QR62
4B063QS12
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4B063QX01
(57)【要約】
本発明は、RNAシークエンシングライブラリーの構築方法、シークエンシング方法及びキットを提供する。ここで、構築方法は、mRNAの逆転写産物である一本鎖cDNAを取得するステップであって、一本鎖cDNAの3’端にcDNAタグ配列を含むステップと、一本鎖cDNAを環化して一本鎖環化cDNAを得るステップと、ランダムプライマー又は遺伝子特異的プライマーとcDNAタグプライマーとからなるプライマー組合せを利用して一本鎖環化cDNAを増幅し、増幅断片を得るステップであって、cDNAタグプライマーはcDNAタグ配列の少なくとも一部であるステップと、増幅断片に対して断片化ライブラリー構築を行ってRNAシークエンシングライブラリーを得るステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNAシークエンシングライブラリーの構築方法であって、
mRNAの逆転写産物である一本鎖cDNAを取得するステップであって、前記一本鎖cDNAの3’端にcDNAタグ配列を含むステップと、
前記一本鎖cDNAを環化し、一本鎖環化cDNAを得るステップと、
ランダムプライマー又は遺伝子特異的プライマーとcDNAタグプライマーとからなるプライマー組合せを利用して前記一本鎖環化cDNAを増幅し、増幅断片を得るステップであって、前記cDNAタグプライマーは前記cDNAタグ配列の少なくとも一部であるステップと、
前記増幅断片に対して断片化ライブラリー構築を行い、前記RNAシークエンシングライブラリーを得るステップと、を含む、ことを特徴とするRNAシークエンシングライブラリーの構築方法。
【請求項2】
mRNAの逆転写産物である一本鎖cDNAを取得するステップであって、前記一本鎖cDNAの3’端にcDNAタグ配列を含むステップは、
前記mRNAを逆転写し、第1鎖cDNAを得るステップと、
前記第1鎖cDNAを増幅し、二本鎖cDNAを得るステップであって、前記第1鎖cDNAと相補的な第2鎖cDNAの3’端に前記cDNAタグ配列を含み、前記cDNAタグ配列がpoly(A)を含むステップと、
前記二本鎖cDNAを融解し、前記一本鎖cDNAを得るステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の構築方法。
【請求項3】
前記cDNAタグ配列は3’から5’方向に順次第2PCRリンカー、第2細胞タグ,第2唯一分子標識及び前記poly(A)を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の構築方法。
【請求項4】
前記mRNAは単一細胞サンプル由来であり、前記mRNAは単一細胞mRNAである、ことを特徴とする請求項1に記載の構築方法。
【請求項5】
前記単一細胞mRNAが固相支持体に接続するように、液滴法を採用して前記単一細胞mRNAを調製し、好ましくは前記固相支持体はマイクロビーズである、ことを特徴とする請求項4に記載の構築方法。
【請求項6】
前記単一細胞mRNAが前記マイクロビーズに接続するように、液滴法を採用して前記単一細胞mRNAを調製するステップは、
それぞれ単一細胞懸濁液及び前記マイクロビーズを提供するステップであって、前記マイクロビーズにマイクロビーズタグ配列を付け、前記マイクロビーズタグ配列の末端にpoly(dT)を含むステップと、
前記単一細胞懸濁液及び前記マイクロビーズを液滴に包み込み、各液滴に1つの単一細胞及び1つの前記マイクロビーズを含み、前記マイクロビーズがpoly(dT)を介して前記単一細胞懸濁液中のmRNAのpoly(A)と結合することにより、前記単一細胞懸濁液中のmRNAを前記マイクロビーズに接続し、前記単一細胞mRNAを得るステップと、を含む、ことを特徴とする請求項5に記載の構築方法。
【請求項7】
前記マイクロビーズタグ配列は5’から3’方向に順次第1PCRリンカー、第1細胞タグ、第1唯一分子タグ及び前記poly(dT)を含み、それに対応して、前記cDNAタグ配列は3’から5’方向に順次第2PCRリンカー、第2細胞タグ,第2唯一分子標識及びpoly(A)を含み、ここで、前記第2PCRリンカーは前記第1PCRリンカーと相補的であり、前記第2細胞タグは前記第1細胞タグと相補的であり、前記第2唯一分子標識は前記第1唯一分子標識と相補的である、ことを特徴とする請求項6に記載の構築方法。
【請求項8】
前記一本鎖cDNAの5’端にTSOプライマーの配列を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の構築方法。
【請求項9】
逆転写酵素及びTSOリンカーを採用して前記mRNAを逆転写することにより、前記第1鎖cDNAを獲得し、ここで、前記逆転写酵素はターミナルトランスフェラーゼ活性を有し、前記第1鎖cDNAの3’端に前記TSOリンカーの相補配列を含み、
前記第1鎖cDNAを増幅し、前記第2鎖cDNAを獲得し、前記第2鎖cDNAの5’端に前記TSOプライマーの配列を含む、ことを特徴とする請求項8に記載の構築方法。
【請求項10】
前記TSOリンカーの配列は配列番号1である、ことを特徴とする請求項9に記載の構築方法。
【請求項11】
前記逆転写酵素はMGIのAlpha逆転写酵素、InvitrogenのSuperScript(登録商標)II逆転写酵素、ThermoのSuperscript IV又はMaxima H Minusから選ばれる、ことを特徴とする請求項9に記載の構築方法。
【請求項12】
前記第1鎖cDNAに対してランダム増幅及び/又は完全長増幅を行い、前記二本鎖cDNAを得る、ことを特徴とする請求項2に記載の構築方法。
【請求項13】
リンカー増幅プライマー及びTSOプライマーを採用して前記第1鎖cDNAを増幅し、前記二本鎖cDNAを得るか、又は
リンカー増幅プライマー、TSO-ランダムプライマー及び前記TSOプライマーを採用して前記第1鎖cDNAを増幅し、前記二本鎖cDNAを得る、ことを特徴とする請求項12に記載の構築方法。
【請求項14】
前記リンカー増幅プライマーの配列は配列番号2であり、前記TSOプライマーの配列は配列番号3であり、前記TSO-ランダムプライマーの配列は配列番号4である、ことを特徴とする請求項13に記載の構築方法。
【請求項15】
前記一本鎖cDNAを環化し、一本鎖環化cDNAを得るステップは、
環化補助配列及びリガーゼの作用下で前記一本鎖cDNAをループにさせるように接続し、接続産物を得るステップと、
前記接続産物を酵素切断してループにさせるように接続していない一本鎖cDNAを消化し、前記一本鎖環化cDNAを得るステップと、を含み、
ここで、前記環化補助配列は前記一本鎖cDNAの両端の配列と相補的である、ことを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の構築方法。
【請求項16】
前記環化補助配列は配列番号5から選ばれる、ことを特徴とする請求項15に記載の構築方法。
【請求項17】
前記遺伝子特異的プライマーはTCR遺伝子増幅に対するTCRプライマー及び/又はBCR遺伝子増幅に対するBCRプライマーである、ことを特徴とする請求項1に記載の構築方法。
【請求項18】
前記cDNAタグプライマーはpoly(A)プライマーであり、好ましくは配列番号6である、ことを特徴とする請求項1に記載の構築方法。
【請求項19】
前記増幅断片に対して断片化ライブラリー構築を行い、前記RNAシークエンシングライブラリーを得るステップは、
前記増幅断片にライブラリーリンカーを付加し、前記RNAシークエンシングライブラリーを得るステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の構築方法。
【請求項20】
前記増幅断片に対して酵素切断断片化を行い、酵素切断断片を獲得し、
前記酵素切断断片に対して順次末端修復、A付加及びライブラリーリンカー接続を行い、前記RNAシークエンシングライブラリーを得る、ことを特徴とする請求項19に記載の構築方法。
【請求項21】
前記ライブラリーリンカーの接続を行った後、さらに、前記ライブラリーリンカーの接続産物に対してPCR増幅を行い、前記RNAシークエンシングライブラリーを得ることを含む、ことを特徴とする請求項19又は20に記載の構築方法。
【請求項22】
前記ライブラリーリンカーはMGIシークエンシングプラットフォームのリンカー又はIlluminaシークエンシングプラットフォームのリンカーである、ことを特徴とする請求項19に記載の構築方法。
【請求項23】
環化補助配列と、DNAリガーゼと、cDNAタグプライマーと、及び(a)ランダムプライマー、(b)TCRプライマー、(c)BCRプライマーのうちの少なくとも1つとを含む、ことを特徴とするRNAライブラリー構築キット。
【請求項24】
前記キットはRNA逆転写試薬をさらに含む、ことを特徴とする請求項23に記載のキット。
【請求項25】
前記RNA逆転写試薬はターミナルトランスフェラーゼ活性を有する逆転写酵素である逆転写酵素を含む、ことを特徴とする請求項24に記載のキット。
【請求項26】
前記逆転写酵素はMGIのAlpha逆転写酵素、InvitrogenのSuperScript(登録商標)II逆転写酵素、ThermoのSuperscript IV又はMaxima H Minusから選ばれる、ことを特徴とする請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記RNA逆転写試薬はTSOリンカーをさらに含む、ことを特徴とする請求項25に記載のキット。
【請求項28】
前記TSOリンカーの配列は配列番号1である、ことを特徴とする請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記キットはTSOプライマー及びリンカー増幅プライマーをさらに含む、ことを特徴とする請求項23に記載のキット。
【請求項30】
前記リンカー増幅プライマーの配列は配列番号2であり、前記TSOプライマーの配列は配列番号3である、ことを特徴とする請求項29に記載のキット。
【請求項31】
前記キットはTSO-ランダムプライマーをさらに含む、ことを特徴とする請求項29に記載のキット。
【請求項32】
前記TSO-ランダムプライマーの配列は配列番号4である、ことを特徴とする請求項31に記載のキット。
【請求項33】
前記環化補助配列は配列番号5である、ことを特徴とする請求項23に記載のキット。
【請求項34】
前記cDNAタグプライマーはpoly(A)プライマーである、ことを特徴とする請求項23に記載のキット。
【請求項35】
前記cDNAタグプライマーの配列は配列番号6である、ことを特徴とする請求項34に記載のキット。
【請求項36】
前記キットはエキソヌクレアーゼ及びライブラリーリンカーのうちの少なくとも1つをさらに含む、ことを特徴とする請求項23に記載のキット。
【請求項37】
前記エキソヌクレアーゼはエキソヌクレアーゼI又はエキソヌクレアーゼIIIから選ばれる、ことを特徴とする請求項36に記載のキット。
【請求項38】
前記ライブラリーリンカーはMGIシークエンシングプラットフォームのリンカー又はIlluminaシークエンシングプラットフォームのリンカーである、ことを特徴とする請求項36に記載のキット。
【請求項39】
前記MGIシークエンシングプラットフォームはバブルリンカーから選ばれ、前記IlluminaシークエンシングプラットフォームのリンカーはP5及びP7リンカーから選ばれる、ことを特徴とする請求項38に記載のキット。
【請求項40】
前記DNAリガーゼはT4 DNAリガーゼから選ばれる、ことを特徴とする請求項23に記載のキット。
【請求項41】
前記キットは固相支持体をさらに含み、前記固相支持体に支持体タグ配列が設置され、但し、前記cDNAタグプライマーは前記支持体タグ配列の少なくとも一部と相補的であり、好ましくは、前記固相支持体はマイクロビーズであり、前記支持体タグ配列はマイクロビーズタグ配列である、ことを特徴とする請求項23に記載のキット。
【請求項42】
前記支持体タグ配列は5’から3’方向に順次第1PCRリンカー、第1細胞タグ、第1唯一分子タグ及びpoly(dT)を含む、ことを特徴とする請求項41に記載のキット。
【請求項43】
請求項1から22のいずれか一項に記載のRNAシークエンシングライブラリー構築方法を採用してRNAシークエンシングライブラリーを構築し、及び前記RNAシークエンシングライブラリーをシークエンシングするステップを含む、ことを特徴とするRNAライブラリーのシークエンシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シークエンシング分野に関し、具体的には、RNAシークエンシングライブラリーの構築方法、シークエンシング方法及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
単細胞技術の急速な発展に伴い、すぐに単細胞シークエンシングの時代を迎えた。単細胞技術も絶えず更新して世代交替し、単管増幅から現在液滴のハイスループットに基づくものまで、人的、時間、コスト、細胞捕獲量に極めて大きな変化があった。しかし、シークエンシングの読み取り長の制限により、完全長cDNAはシークエンシングのために断裁してライブラリーを構築する必要がある場合が多い。Smart-seq2技術は、単管増幅の戦略を採用し、フローサイトメトリー及び顕微鏡切断などの技術を用いて単一細胞を対応する単孔に分け、溶解、転写及び増幅、断裁、ライブラリー構築を行う。単管ライブラリー構築には細胞由来を区別する特定のbarcodeがないため、ライブラリーを構築する際に1つの細胞の全ての配列をタグ付けし、最後に異なる細胞由来のライブラリーを合わせてシークエンシングすることしかできない。このようなシークエンシング戦略は全長を獲得するが、細胞の流量は限られており、同時にシークエンシングのコストも大きく上昇する。
【0003】
現在液滴のハイスループットシークエンシングに基づく戦略では、特定の分子標識を有する配列の1つの断片をマイクロビーズ上で合成することにより、cDNAの両末端の配列を特異的に捕捉する。しかし、シークエンシングの読み取り長の制限のため、タグ付きの完全長cDNAに対して直接シークエンシングを行うことができず、やはりさらに断裁する必要がある。断裁後のcDNA配列の途中にある配列は、タグ付けなしでスクリーニングされるため、完全長を得ることができず、選択的スプライシングなどの重要な情報の多くが失われる。液滴のハイスループットシークエンシングに基づく戦略の具体的なステップは以下のとおりである。
【0004】
液滴マイクロ流体工学技術に基づいて油中水の液滴を採用して細胞及びマイクロビーズを包むことにより、1つの細胞及び1つの磁気ビーズを同時に含む液滴を獲得し、液滴内の他の成分はまた溶解液を含み、ここでマイクロビーズには特定の分子標識付きのDNA配列(barcode)及びTSO配列を大量含む。液滴が絶えず生成される過程で、液滴内の細胞が溶解液によって裂け、大量のmRNAが放出される。同時に、mRNAは遊離のpoly(dT)に捕捉され、液滴内でRT反応を完了し、同時にmRNA末端にはTSO配列が付加され、第1鎖cDNA延長末端のTSOの相補配列がマイクロビーズ上のTSOに結合することにより、mRNAがマイクロビーズ上に捕捉され、PCR増幅によって5’配列に特定の分子標識を付けさせ、さらに例えば10x genomicsのような5’RNA単一細胞ハイスループットシークエンシングを実現する。しかし、現在10x genomicsの大きな問題点は、そのコストが高いことである。
【0005】
市場で単細胞シークエンシング機器及びサービスを提供する会社は主に10X Genomics、BD、Dolomite社のNadiaなどがある。10X Genomics社以外に、現在まだハイスループット5’RNAシークエンシングの方法がないが、5’RNA seqは、免疫レパートリーの獲得に不可欠な一環であり、例えば5’TCR/BCRは免疫細胞の重要な成分として、TCR/BCR配列を獲得して免疫機序を深く理解することは極めて重要である。また、現在液滴ハイスループットに基づく完全長mRNA単細胞シークエンシング技術もまだ報告されていないが、完全長は遺伝子の多様性を把握し、機構を制御することに重要な役割を果たしている。
【0006】
以上のことから、現在単管の完全長RNAシークエンシング配列では、ハイスループット単細胞シークエンシングを実現することが困難であることが分かった。液滴マイクロ流体工学技術の不足は分子標識がcDNAの3’末端又は5’末端にしか設計できないため、ライブラリー構築過程で断裁し、スクリーニングした後、中間の配列は特定の分子標識がないため、断片由来を追跡できないため廃棄され、そのため完全長を得ることができない。また、現在10x genomicsは、5’RNA単細胞ハイスループットシークエンシングを実現しているが、TSO相補に基づくmRNA捕捉効率はpoly(dT)に基づく捕捉効率よりも高くなく、且つコストも高い。
【0007】
従って、単一細胞のRNA 5’末端又はRNA完全長に対するハイスループットシークエンシングを実現するために、依然として既存の方法を改良する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主な目的は、従来技術ではRNA 5’末端又は完全長に対するハイスループットシークエンシングを実現することが困難であるという問題を解決するために、RNAシークエンシングライブラリーの構築方法、シークエンシング方法及びキットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を実現するために、本発明の一態様によれば、RNAシークエンシングライブラリーの構築方法を提供し、当該構築方法は、mRNAの逆転写産物である一本鎖cDNAを取得するステップであって、一本鎖cDNAの3’端にcDNAタグ配列を含むステップと、一本鎖cDNAを環化し、一本鎖環化cDNAを得るステップと、ランダムプライマー又は遺伝子特異的プライマーとcDNAタグプライマーとからなるプライマー組み合わせを利用して一本鎖環化cDNAを増幅し、増幅断片を得るステップであって、cDNAタグプライマーはcDNAタグ配列の少なくとも一部であるステップと、増幅断片に対して断片化ライブラリー構築を行い、RNAシークエンシングライブラリーを得るステップと、を含む。
【0010】
さらに、mRNAの逆転写産物である一本鎖cDNAを取得するステップであって、一本鎖cDNAの3’端にcDNAタグ配列を含むステップは、mRNAを逆転写し、第1鎖cDNAを得るステップと、第1鎖cDNAを増幅し、二本鎖cDNAを得るステップであって、第1鎖cDNAと相補的な第2鎖cDNAの3’端にcDNAタグ配列を含み、cDNAタグ配列がpoly(A)を含むステップと、二本鎖cDNAを融解し、一本鎖cDNAを得るステップと、を含む。
【0011】
さらに、cDNAタグ配列は3’から5’方向に順次第2PCRリンカー、第2細胞タグ、第2唯一分子標識及びpoly(A)を含む。
【0012】
さらに、mRNAは単一細胞サンプル由来であり、mRNAは単一細胞mRNAである。
【0013】
さらに、単一細胞mRNAが固相支持体に接続するように、液滴法を採用して単一細胞mRNAを調製し、好ましくは固相支持体はマイクロビーズである。
【0014】
さらに、単一細胞mRNAがマイクロビーズに接続するように、液滴法を採用して単一細胞mRNAを調製するステップは、それぞれ単一細胞懸濁液及びマイクロビーズを提供するステップであって、マイクロビーズにはマイクロビーズタグ配列を携帯しており、マイクロビーズタグ配列の末端にpoly(dT)を含むステップと、単一細胞懸濁液及びマイクロビーズを液滴に包み込み、且つ各液滴に1つの単一細胞及び1つのマイクロビーズを含み、マイクロビーズがpoly(dT)を介して単一細胞懸濁液中のmRNAのpoly(A)と結合することにより、単一細胞懸濁液中のmRNAをマイクロビーズに接続し、単一細胞mRNAを得るステップと、を含む。
【0015】
さらに、マイクロビーズタグ配列は5’から3’方向に順次第1PCRリンカー、第1細胞タグ、第1唯一分子タグ及びpoly(dT)を含み、それに対応して、cDNAタグ配列は3’から5’方向に順次第2PCRリンカー、第2細胞タグ、第2唯一分子標識及びpoly(A)を含み、ここで、第2PCRリンカーは第1PCRリンカーと相補的であり、第2細胞タグは第1細胞タグと相補的であり、第2唯一分子標識は第1唯一分子標識と相補的である。
【0016】
さらに、一本鎖cDNAの5’端にTSOプライマーの配列を含む。
【0017】
さらに、逆転写酵素及びTSOリンカーを採用してmRNAを逆転写することにより、第1鎖cDNAを獲得し、ここで、転写酵素はターミナルトランスフェラーゼ活性を有し、第1鎖cDNAの3’端にTSOリンカーの相補配列を含み、第1鎖cDNAを増幅し、第2鎖cDNAを獲得し、第2鎖cDNAの5’端にTSOプライマーの配列を含む。
【0018】
さらに、TSOリンカーの配列は配列番号1である。
【0019】
さらに、逆転写酵素はMGIのAlpha逆転写酵素、InvitrogenのSuperScript(登録商標)II逆転写酵素、ThermoのSuperscript IV又はMaxima H Minusから選ばれる。
【0020】
さらに、第1鎖cDNAに対してランダム増幅及び/又は完全長増幅を行い、二本鎖cDNAを得る。
【0021】
さらに、リンカー増幅プライマー及びTSOプライマーを採用して第1鎖cDNAを増幅し、二本鎖cDNAを得るか、又はリンカー増幅プライマー、TSO-ランダムプライマー及びTSOプライマーを採用して第1鎖cDNAを増幅し、二本鎖cDNAを得る。
【0022】
さらに、リンカー増幅プライマーの配列は配列番号2であり、TSOプライマーの配列は配列番号3であり、TSO-ランダムプライマーの配列は配列番号4である。
【0023】
さらに、一本鎖cDNAを環化し、一本鎖環化cDNAを得るステップは、環化補助配列及びリガーゼの作用下で一本鎖cDNAをループにさせるように接続し、接続産物を得るステップと、接続産物を酵素切断してループにさせるように接続していない一本鎖cDNAを消化し、一本鎖環化cDNAを得るステップと、を含み、ここで、環化補助配列は一本鎖cDNAの両端の配列と相補的である。
【0024】
さらに、環化補助配列は配列番号5から選ばれる。
【0025】
さらに、遺伝子特異的プライマーはTCR遺伝子増幅に対するTCRプライマー及び/又はBCR遺伝子増幅に対するBCRプライマーである。
【0026】
さらに、cDNAタグプライマーはpoly(A)プライマーであり、より好ましくは配列番号6である。
【0027】
さらに、増幅断片に対して断片化ライブラリー構築を行い、RNAシークエンシングライブラリーを得るステップは、増幅断片にライブラリーリンカーを付加し、RNAシークエンシングライブラリーを得るステップを含む。
【0028】
さらに、増幅断片に対して酵素切断断片化を行い、酵素切断断片を獲得し、酵素切断断片に対して順次末端修復、A付加及びライブラリーリンカー接続を行い、RNAシークエンシングライブラリーを得る。
【0029】
さらに、ライブラリーリンカー接続を行った後、さらに、ライブラリーリンカーの接続産物をPCR増幅し、RNAシークエンシングライブラリーを得ることを含む。
【0030】
さらに、ライブラリーリンカーはMGIシークエンシングプラットフォームのリンカー又はIlluminaシークエンシングプラットフォームのリンカーである。
【0031】
本出願の第2態様によれば、RNAライブラリー構築キットを提供し、当該キットは、環化補助配列と、DNAリガーゼと、cDNAタグプライマーと、及び(a)ランダムプライマー、(b)TCRプライマー、(c)BCRプライマーのうちの少なくとも1つとを含む。
【0032】
さらに、キットはRNA逆転写試薬をさらに含む。
【0033】
さらに、RNA逆転写試薬はターミナルトランスフェラーゼ活性を有する逆転写酵素である逆転写酵素を含む。
【0034】
さらに、逆転写酵素はMGIのAlpha逆転写酵素、InvitrogenのSuperScript(登録商標)II逆転写酵素、ThermoのSuperscript IV又はMaxima H Minusから選ばれる。
【0035】
さらに、RNA逆転写試薬はTSOリンカーをさらに含む。
【0036】
さらに、TSOリンカーの配列は配列番号1である。
【0037】
さらに、キットはTSOプライマー及びリンカー増幅プライマーをさらに含む。
【0038】
さらに、リンカー増幅プライマーの配列は配列番号2であり、TSOプライマーの配列は配列番号3である。
【0039】
さらに、キットはTSO-ランダムプライマーをさらに含む。
【0040】
さらに、TSO-ランダムプライマーの配列は配列番号4である。
【0041】
さらに、環化補助配列は配列番号5である。
【0042】
さらに、cDNAタグプライマーはpoly(A)プライマーである。
【0043】
さらに、cDNAタグプライマーの配列は配列番号6である。
【0044】
さらに、キットはエキソヌクレアーゼ及びライブラリーリンカーのうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0045】
さらに、エキソヌクレアーゼはエキソヌクレアーゼI又はエキソヌクレアーゼIIIから選ばれる。
【0046】
さらに、ライブラリーリンカーはMGIシークエンシングプラットフォームのリンカー又はIlluminaシークエンシングプラットフォームのリンカーである。
【0047】
さらに、MGIシークエンシングプラットフォームはバブルリンカーから選ばれ、IlluminaシークエンシングプラットフォームのリンカーはP5及びP7リンカーから選ばれる。
【0048】
さらに、DNAリガーゼはT4 DNAリガーゼから選ばれる。
【0049】
さらに、キットは固相支持体をさらに含み、固相支持体に支持体タグ配列が設置され、ここで、cDNAタグプライマーは支持体タグ配列の少なくとも一部と相補的であり、好ましくは固相支持体はマイクロビーズであり、支持体タグ配列はマイクロビーズタグ配列である。
【0050】
さらに、支持体タグ配列は5’から3’方向に順次第1PCRリンカー、第1細胞タグ、第1唯一分子タグ及びpoly(dT)を含む。
【0051】
本出願の第3態様によれば、RNAライブラリーのシークエンシング方法を提供し、当該シークエンシング方法は、前述したいずれかのRNAシークエンシングライブラリー構築方法を採用してRNAシークエンシングライブラリーを構築し、及びRNAシークエンシングライブラリーをシークエンシングするステップを含む。
【発明の効果】
【0052】
本発明の技術案を適用し、mRNAの逆転写産物である一本鎖cDNAを獲得し、且つ当該一本鎖cDNA鎖の3’端にcDNAタグ配列を付け、当該cDNAタグ配列を付けた一本鎖cDNAを、一本鎖cDNAの2つの末端が連結し、即ちmRNAに対応する5’端及び3’端が連結するように環化し、さらに3’端cDNAタグ配列によってmRNAの5’端の断片を標識する。そしてcDNAタグ配列の少なくとも一部と同じcDNAタグプライマー及びランダムプライマー又は遺伝子特異的プライマーによって一本鎖環化cDNAを増幅することにより、5’端の特定遺伝子の位置から始まる増幅断片、又は5’端の任意の位置から始まる増幅断片を得ることができ、最後にこれらの増幅断片を断片化スクリーニングした後にライブラリー構築シークエンシングすることにより、ハイスループットシークエンシングの目的を実現する。従って、上記で取得したループ形成用の一本鎖cDNAの長さが完全長cDNAであるかランダム長さのcDNAであるかによって、研究目的に応じて、5’RNAシークエンシングライブラリー、又は完全長RNAシークエンシングライブラリーを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
本出願の一部を構成する添付図面は、本発明のさらなる理解を提供するためのものであり、本発明の例示的な実施例及びその説明は、本発明を解釈するためのものであり、本発明を不当に限定するものではない。図面は下記の通りである。
【
図1】本発明の実施例1における液滴を調製するチップ(chip)構成の模式図を示す。
【
図2】本出願のRNA完全長ライブラリー構築原理及びそのライブラリー構築シークエンシングフローの模式図を示す。
【
図3】本出願の5’RNA末端ライブラリー構築原理及びそのライブラリー構築シークエンシングフローの模式図を示す。
【
図4A】本出願の実施例1における細胞株サンプル及び固形組織サンプルの完全長cDNA増幅産物のAgilent 2100バイオアナライザ検出結果を示す。
【
図4B】本出願の実施例1における細胞株サンプル及び固形組織サンプルの完全長cDNA増幅産物のAgilent 2100バイオアナライザ検出結果を示す。
【
図5A】本出願の実施例2における細胞株サンプル及び固形組織サンプルのランダムプライマー増幅cDNA産物のAgilent 2100バイオアナライザ検出結果を示す。
【
図5B】本出願の実施例2における細胞株サンプル及び固形組織サンプルのランダムプライマー増幅cDNA産物のAgilent 2100バイオアナライザ検出結果を示す。
【
図6A】本出願の実施例1における細胞株サンプル及び固形組織サンプルの一本鎖cDNA環化後のランダムプライマー増幅産物のAgilent 2100バイオアナライザ検出結果を示す。
【
図6B】本出願の実施例1における細胞株サンプル及び固形組織サンプルの一本鎖cDNA環化後のランダムプライマー増幅産物のAgilent 2100バイオアナライザ検出結果を示す。
【
図7A】本出願の実施例2における細胞株サンプル及び固形組織サンプルの一本鎖cDNA環化後のTCR/BCRプライマー増幅産物のAgilent 2100バイオアナライザ検出結果を示す。
【
図7B】本出願の実施例2における細胞株サンプル及び固形組織サンプルの一本鎖cDNA環化後のTCR/BCRプライマー増幅産物のAgilent 2100バイオアナライザ検出結果を示す。
【
図8】本出願の好ましい一実施例において構築されたライブラリーのシークエンシング解析後オフラインデータ中の5’端及び3’端のシークエンシング断片による転写産物のカバレッジ状況の解析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
なお、矛盾しない限り、本出願における実施例及び実施例における特徴は、互いに組み合わせることができる。以下、実施例を参照して本発明を詳細に説明する。
【0055】
用語解釈:
TSO:テンプレート置換オリゴヌクレオチド(Template switch oligo、TSO)であり、本出願において「TSOリンカー」と呼ばれることもあり、これは、ターミナルトランスフェラーゼ活性を有する逆転写酵素と組み合わせて用いられる。ターミナルトランスフェラーゼ活性を有する逆転写酵素は、mRNAを逆転写する際に、第1鎖cDNAの末端にCCCを付加する(完全長転写産物にのみ付加する)。一方、TSOリンカーは、CCCと対で結合するrGrG+G(rGはリボースグアニンヌクレオチドを表し、+GはLNA修飾デオキシリボース-グアニンヌクレオチドを表す。)を携帯しており、それにより逆転写の際に第1鎖cDNA 3’末端CCCにrGrG+G以外のTSOリンカーの相補配列を付ける。
【0056】
TSOプライマー:cDNA第2鎖合成及びcDNA増幅のために、第1鎖cDNA 3’末端に少なくとも部分的に結合することができる。具体的な一実施形態では、TSOプライマーは、TSOリンカーからrGrG+Gを除去した配列である。
【0057】
ランダムプライマー及びTSO-ランダムプライマー:本出願におけるランダムプライマーとは、塩基Nのみからなる配列、例えば、6~12ntのNからなるランダム配列を指す。一方、TSO-ランダムプライマーとは、塩基Nからなるランダムプライマーの上流にTSOプライマーを含む配列を指す。
【0058】
支持体タグ配列:本出願において、mRNAを捕捉するための固相支持体に接続されたタグ配列を指し、mRNAを捕捉するためのoligo(dT)を少なくとも含む。いくつかの実施例では、当該支持体タグ配列は、5’から3’の順に細胞タグとoligo(dT)とを含み、ここでoligo(dT)はmRNAのpoly(A)と相補的であることによりmRNAを捕捉するために用いられ、細胞タグは同じ細胞由来のmRNAを標識するために用いられる。ある実施例では、同じ細胞内の異なるmRNA分子をさらに標識するために、細胞タグとoligo(dT)との間に唯一分子標識(即ちUMI)を設置することができる。ある好ましい実施例では、後続のライブラリー構築をさらに便宜にするために、後続のPCR増幅のために、細胞タグの5’方向にPCRリンカーを設置することもできる。いくつかの好ましい実施例では、当該固相支持体はマイクロビーズであり、マイクロビーズに設置されたタグ配列はマイクロビーズタグ配列として表記され、マイクロビーズから近い順に(つまり5’から3’の順に)PCRリンカー、細胞タグ、唯一分子標識(即ちUMI)及びoligo(dT)を含む。
【0059】
cDNAタグ配列:環化されたpoly(A)付きの一本鎖cDNA上のタグ配列であり、ここでpoly(A)は固相支持体上のoligo(dT)と相補的であることにより、固相支持体に捕捉されたmRNAの増幅を実現するために用いられる。いくつかの好ましい実施例では、当該cDNAタグ配列は、poly(A)に加えて、細胞由来をタグするための細胞タグを含む。ある好ましい実施例では、細胞タグとoligo(dT)との間に同じ細胞内の異なるmRNA分子を標識するための唯一分子標識(即ちUMI)がさらに設置される。別の好ましい実施例では、細胞タグの3’方向に後続のライブラリー構築ステップにおけるPCR増幅のためのプライマーとして用いられるPCRリンカーがさらに設置される。より好ましい実施例では、当該cDNAタグ配列は、3’から5’の順にPCRリンカー、細胞タグ、唯一分子標識及びpoly(A)を含む。本出願において、配列をより正確に区別するために、上記支持体タグ配列(又はマイクロビーズタグ配列)上のPCRリンカー、細胞タグ、唯一分子標識(即ちUMI)をそれぞれ第1PCRリンカー、第1細胞タグ、第1唯一分子標識と表記し、それに対応して、cDNAタグ配列上のPCRリンカー、細胞タグ、唯一分子標識(即ちUMI)をそれぞれ第2PCRリンカー、第2細胞タグ、第2唯一分子標識と表記する。
【0060】
リンカー増幅プライマー:本出願におけるリンカー増幅プライマーは、つまりPCRリンカーであり、cDNA増幅の観点から記述されており、cDNA増幅の際に、リンカー増幅プライマーとTSOプライマーをプライマー組合せとして利用して増幅を行う。
【0061】
cDNAタグプライマー:環化された一本鎖cDNAを増幅する際に用いられる1本のプライマーを指し、環化された一本鎖cDNAのpoly(A)に連結するタグ配列上の少なくとも一部(例えば、poly(A)でもよいし、cDNAタグ配列でもよい。)であり、ランダムプライマー又は遺伝子特異的プライマーによる環化された一本鎖cDNAの増幅後の、poly(T)付きの配列を増幅し、それにより5’RNAライブラリー又は完全長RNAライブラリーを構築するのに必要な増幅断片を得るために用いられる。
【0062】
TCR/BCRプライマー:TCR/BCRは、T Cell Receptor/B Cell Receptor、即ちT細胞受容体又はB細胞受容体遺伝子をコードするプライマーを指し、遺伝子特異的プライマーの一種であり、単一細胞T/B細胞受容体をシークエンシングし、さらに免疫機序を研究するために用いられる。
【0063】
環化補助配列:本出願において、一本鎖cDNAを環化する際に、一本鎖cDNAの5’端と3’端とを引き寄せて首尾を互いに近づけるための補助配列を指す。これは、おれぞれ一本鎖cDNAの5’端と相補的な及び3’端と相補的な一セグメントの配列によって一本鎖cDNAの5’端と3’端とを引き寄せ、互いに近接する5’端と3’端との中間に欠損が存在してもよく、DNAリガーゼの作用下で、欠損を補完し、さらに一本鎖cDNAの環化を実現する。
【0064】
poly(A):mRNAはpoly(A)テール(ポリアデニル)を有することが当業者に周知であり、それに対応して、本出願に記載のDNAに対応するpoly(A)テールは、poly(dT)と相補的に対をなすポリデオキシアデニルを指す。
【0065】
背景技術で述べたように、既存のRNAシークエンシング方法のうち、完全長mRNAをシークエンシングできる方法はハイスループットを実現することが困難であり、ハイスループットシークエンシングを実現できる方法の大部分は3’端のmRNAシークエンシングを対象としており、5’端単一細胞シークエンシングは現在主に10x genomicsを主とし、単一細胞完全長mRNAのシークエンシングはまだ報告されておらず、この現状を改善するために、発明者らは、既存の単一細胞シークエンシング技術の欠陥と組み合わせて、既存の単一細胞RNAライブラリー構築方法に対して改良を行い、3’RNA単一細胞ハイスループットに基づいてcDNAを捕捉した後、環化接続の方法によってmRNAの3’端のタグ配列をmRNAの5’端に転移し、又は3’端と1つのタグを共有し、同時に3’端及び/又は5’端のRNA単一細胞ハイスループットシークエンシングを実現することが報告されていないことを発見した。具体的には、発明者らはそれぞれ完全長cDNA単一細胞ハイスループットシークエンシングライブラリーの構築、及び5’端のRNA単一細胞ハイスループットシークエンシングライブラリーの構築について詳細な研究を行い、さらに実験設計を細分化してこの方法の実行可能性を確認し、具体的な原理及びステップはそれぞれ以下のとおりである。
【0066】
(一)RNA完全長単一細胞シークエンシング戦略
3’端RNA_seq液滴の戦略に基づいてmRNAを捕捉し、逆転写してcDNA完全長を生成する。そしてリンカー増幅プライマー、TSOプライマー及びTSO-ランダムプライマーを用いてcDNAを増幅し、3’端の、固相支持体、例えばマイクロビーズ(英語はbeads)由来のマイクロビーズタグ配列は、増幅されるためcDNAタグ配列に変換されて残存しており、5’端は、TSO-ランダムプライマーの結合位置の違いにより長さ不定のDNA断片を形成する。さらに断片の長さが異なる断片を接続環化し、3’端のcDNAタグ配列と5’端TSOプライマーが首尾連結したループを形成する。さらにcDNAループと相補的なランダムプライマー及びpoly(A)プライマーを用いてさらにループをテンプレートとして増幅し、これらの増幅産物を断片化スクリーニングした後にライブラリー構築シークエンシングを行い、それによりcDNA完全長を増幅するだけでなく、ハイスループットシークエンシングを実現できるという目的を達成する(
図2に示す)。
【0067】
具体的なステップは以下のとおりである。
(1)mRNA 3’端poly(A)を捕捉するためのPCRリンカー配列を設計し、当該PCRリンカー配列は固相支持体(例えばマイクロビーズ)上に接続でき、当該PCRリンカーはcDNA増幅の際にリンカー増幅プライマーとして用いることができ、第1鎖cDNA 3’端と相補的なTSOプライマー、及びTSO-ランダムプライマーを設計し、第1鎖cDNAを合成した後、上記プライマーを用いて増幅し、異なるサイズのcDNA断片を得る。
【0068】
(2)環化接続の技術を利用し、cDNA断片中のpoly(A)付きの一本鎖の3’端cDNAタグ配列と5’端配列とを首尾連結し、不均一なサイズの環状DNA分子を得る。
【0069】
(3)配列を上流プライマーとして設計し、当該上流プライマーはcDNA 3’端poly(A)配列と同じであり、ランダムプライマーを用いて環状DNA分子を増幅し、poly(T)付きの増幅配列を獲得し、poly(A)プライマーとpoly(T)との結合を利用し、それにより増幅して異なる長さのDNA断片を獲得し、これらの断片に対して断裁、ライブラリー構築、及びシークエンシングを行い、それにより完全長のRNA配列を獲得し、具体的には実施例を参照されたい。
【0070】
具体的な一実施形態では、上記完全長RNAシークエンシングの全体的な技術経路は、液滴調製(マイクロビーズ相が溶解液を含む。)→mRNA捕捉→解乳→逆転写反応→ランダムプライマー増幅→増幅産物環化接続→環化産物PCR増幅→断片化ライブラリー構築→シークエンシングである。具体的には実施例を参照されたい。
【0071】
(二)5’端RNA単一細胞シークエンシング戦略
5’端RNAシークエンシングの取る戦略は、3’端RNA_seqの液滴技術によってmRNAを獲得し、そしてmRNAを逆転写増幅し、完全長cDNAを獲得し、増幅後の二本鎖完全長cDNAのうちpoly(A)付きの一本鎖cDNAを環化接続し、mRNA 3’端と5’端配列末端とを首尾連結し、さらに環化cDNAと相補的な遺伝子特異的プライマー(例えばTCR/BCRプライマー)又はランダムプライマー及びpoly Aプライマーを用いてさらにループをテンプレートとして増幅し、これらの増幅産物を断片化スクリーニングした後にライブラリー構築シークエンシングを行い、それにより5’端TCR/BCR配列捕捉又は他の目的遺伝子5’配列捕捉を実現する(
図3に示す)。
【0072】
具体的なステップは以下のとおりである。
(1):mRNA 3’端poly(A)を捕捉するためのPCRリンカー配列を設計する。当該PCRリンカー配列は固相支持体(例えば磁気ビーズ)上に接続でき、cDNA増幅の際にリンカー増幅プライマーとして用いることができる。第1鎖cDNAの3’端と相補的なTSOプライマーを設計する。第1鎖cDNAを合成した後、PCRリンカー配列とTSOプライマーとからなるプライマー組合せを用いて増幅し、cDNA完全長断片を得る。
【0073】
(2)環化接続技術を利用し、上記cDNA完全長断片のpoly(A)付きの一本鎖を環化接続し、3’端のcDNAタグ配列と5’端のTSOプライマーとが首尾連結した環状DNA分子を得る。
【0074】
(3)poly(A)プライマーを上流プライマーとして設計し、当該プライマーはcDNA 3’端poly(A)配列と同じであり、cDNAループと相補的なTCR/BCRプライマー又はランダムプライマーを設計し、環状DNA分子を増幅し、5’端TCR/BCRの断片、又は5’端ランダム開始の増幅断片を得る。
【0075】
(4)TCR/BCRプライマー増幅により得られた断片又は5’端ランダム開始の増幅断片に対してライブラリー構築シークエンシングを行い、さらにmRNA 5’端のTCR/BCR配列又は5’端ランダム開始の配列を得る。
【0076】
具体的な一実施形態では、5’端RNAシークエンシングの全体的な技術経路は、液滴調製(マイクロビーズの液相に細胞溶解液を含む。)→解乳→mRNA捕捉→逆転写反応→完全長cDNA増幅→増幅産物環化接続→ployAプライマー+TCR/BCRプライマー又はランダムプライマーを用いた環化産物のPCR増幅→断片化ライブラリー構築→シークエンシングである。
【0077】
以上から分かるように、本出願は3’液滴に基づく戦略を適用してmRNAを捕捉し、即ち固相支持体(例えば、マイクロビーズ)上にPCRリンカー及び細胞タグ及びUMI(即ち唯一分子標識)配列を携帯しており、同時に末端にpoly(dT)を付加し、poly(dT)が成熟mRNA 3’末端のpoly(A)テールと相補的であることにより、mRNAを捕捉し、さらに逆転写して第1鎖cDNA完全長を合成する。そしてランダムプライマーを用いて増幅し及びループにさせるように接続する方式により、cDNAの異なるサイズの断片又はcDNA完全長を獲得し、それにより単一細胞RNA 5’端及びRNA完全長シークエンシングを実現する。
【0078】
上記改良思想及び研究結果に基づいて、出願人は、本出願の技術案を提出する。典型的な一実施形態では、本出願は、RNAシークエンシングライブラリーの構築方法を提供し、当該構築方法は、
単一細胞mRNAの逆転写産物である一本鎖cDNAを得るステップであって、当該一本鎖cDNAの3’末端にcDNAタグ配列を含むステップと、
一本鎖cDNAを環化し、一本鎖環化cDNAを得るステップと、
ランダムプライマー又は遺伝子特異的プライマーとcDNAタグプライマーとからなるプライマー組合せを利用して増幅し、増幅断片を得るステップであって、cDNAタグプライマーはcDNAタグ配列の少なくとも一部であるステップと、
増幅断片に対して断片化ライブラリー構築を行い、RNAシークエンシングライブラリーを得るステップと、を含む。
【0079】
上記構築方法は、mRNAの逆転写産物である一本鎖cDNAを獲得し、且つ当該一本鎖cDNA鎖の3’端にcDNAタグ配列を携帯しており、当該cDNAタグ配列を携帯した一本鎖cDNAを、一本鎖cDNAの2つの末端が連結し、即ちmRNAに対応する5’端及び3’端が連結するように環化し、さらに3’端cDNAタグ配列によってmRNAの5’端の断片を標識する。そしてcDNAタグ配列の少なくとも一部と同じcDNAタグプライマー及びランダムプライマー又は遺伝子特異的プライマーによって一本鎖環化cDNAを増幅することにより、5’端の特定遺伝子の位置から始まる増幅断片、又は5’端の任意の位置から始まる増幅断片を得ることができ、最後にこれらの増幅断片を断片化スクリーニングした後にライブラリー構築シークエンシングすることにより、ハイスループットシークエンシングの目的を実現する。従って、上記で取得したループ形成用の一本鎖cDNAの長さが完全長cDNAであるかランダム長さのcDNAであるかによって、完全長RNAシークエンシングライブラリー又は5’RNAシークエンシングライブラリーを得ることができる。
【0080】
なお、上記構築方法は、そのサンプルのmRNAの逆転写一本鎖cDNAを取得できれば、どのようなサンプルのRNAライブラリー構築にも適用可能である。特に単一細胞RNAライブラリー構築に適用する。好ましい実施例では、mRNAは単一細胞サンプル由来であり、mRNAは単一細胞mRNAである。
【0081】
単一細胞mRNAを取得する方式について、従来技術における既知の方法を用いて取得することができる。本出願の好ましい実施例では、単一細胞mRNAが固相支持体、好ましくはマイクロビーズに接続するように、液滴法を採用して単一細胞mRNAを調製する。
【0082】
本出願の好ましい実施例では、単一細胞mRNAがマイクロビーズに接続するように、液滴法を採用して単一細胞mRNAを調製するステップは、それぞれ単一細胞懸濁液及びマイクロビーズを提供し、マイクロビーズにマイクロビーズタグ配列を付け、マイクロビーズタグ配列の末端にpoly(dT)を含むことと、単一細胞懸濁液とマイクロビーズを液滴に包み込み、且つ各液滴に1つの単一細胞及び1つのマイクロビーズを含み、マイクロビーズがpoly(dT)を介して単一細胞懸濁液中のmRNAのpoly(A)に結合し、それにより単一細胞懸濁液中のmRNAをマイクロビーズに接続し、単一細胞mRNAを得る。なお、上記単一細胞懸濁液には細胞溶解液が含まれているため、細胞核懸濁液と考えてもよい。当該液滴法は、マイクロビーズ上poly(dT)がmRNAのpoly(A)と結合することによりmRNAの捕捉を実現し、捕捉効率が高い。単一の油滴には単一のマイクロビーズと単一の細胞が対応しているため、マイクロビーズ上のマイクロビーズタグ配列も単一の細胞を特異的に標識することができる。
【0083】
上記構築方法において、mRNAの逆転写産物である一本鎖cDNAを取得する具体的な方法は、mRNAに対応する3’端に上記cDNAタグ配列を付けることができれば限定されない。上記のように、得られた一本鎖cDNAの長さについても特に限定されるものではなく、完全長cDNAであってもよいし、ランダム長さのcDNAであってもよく、いずれの場合も存在していてもよい。トランスクリプトーム情報を十分に掘り起こして利用することを可能にするために、本出願の好ましい実施例では、mRNAの逆転写産物である一本鎖cDNAを取得するステップであって、当該一本鎖cDNAの3’端にcDNAタグ配列を付ける上記ステップは、mRNAを逆転写し、第1鎖cDNAを得るステップと、第1鎖cDNAを増幅し、二本鎖cDNAを得るステップであって、第1鎖cDNAと相補的な第2鎖cDNAの3’端に前述cDNAタグ配列を含み、cDNAタグ配列がpoly(A)を含むステップと、二本鎖cDNAを融解し、cDNAタグ配列を含む一本鎖cDNAを得るステップと、を含む。二本鎖cDNAを融解するのは、後続の環化を行うためであり、二本鎖の場合、環化補助配列が環化しようとする鎖に効果的に結合することは困難である。ここで後続の環化方法は、cDNAを首尾連結することができれば、限定されない。
【0084】
上記好ましい実施例では、単一細胞を捕捉するためのマイクロビーズ上のマイクロビーズタグ配列は好ましくは5’から3’方向に順次第1PCRリンカー、第1細胞タグ、第1唯一分子タグ及びpoly(dT)を含み、それに対応して、cDNAタグ配列は3’から5’方向に順次第2PCRリンカー、第2細胞タグ,第2唯一分子標識及びpoly(A)を含み、ここで、第2PCRリンカーは第1PCRリンカーと相補的であり、第2細胞タグは第1細胞タグと相補的であり、第2唯一分子標識は第1唯一分子標識と相補的である。つまり、第1鎖cDNAの5’末端にマイクロビーズタグ配列を付けるが、増幅して得られた第2鎖cDNAの3’末端に当該マイクロビーズタグ配列と相補的なcDNAタグ配列を付ける。
【0085】
一本鎖cDNAの増幅を便宜にするために、その5’端にTSOプライマーを含む配列が好ましい。具体的には5’端にTSOプライマーの配列を付ける方法は限定されない。本出願の好ましい実施例では、ターミナルトランスフェラーゼ活性を有する逆転写酵素及びTSOリンカーを採用してmRNAを逆転写し、第1鎖cDNAを獲得し、第1鎖cDNAの3’端にTSOリンカーの相補配列を含み、第1鎖cDNAを増幅し、第2鎖cDNAを獲得し、当該第2鎖の一本鎖cDNAの5’端にTSOプライマーの配列を含む。
【0086】
具体的には、第1鎖cDNAを増幅する際に、TSOプライマーを採用すれば完全長第2鎖cDNAが得られ、TSO-ランダムプライマーを採用して増幅すれば、任意の長さの第2鎖cDNAが得られるため、増幅プライマーの種類によっては、完全長又は任意の長さの二本鎖cDNAが得られ、さらに融解後に完全長又は任意の長さの上記cDNAタグ配列付きの一本鎖cDNAが得られる。
【0087】
上記TSOリンカーの配列は、従来公知の配列を採用することができ、必要に応じて自ら設計することもできる。本出願のいくつかの好ましい実施例では、TSOリンカーの配列は、配列番号1である。上記逆転写酵素は、MGIのAlpha逆転写酵素、InvitrogenのSuperScript(登録商標)II逆転写酵素、ThermoのSuperscript IV又はMaxima H Minusを含むが、これらに限定されない。
【0088】
なお、液滴法に基づいて単一細胞mRNAを捕捉する方法は、現在、低コストでハイスループットなトランスクリプトームシークエンシングを実現する方法である。当該方法の核心は、液滴をマイクロリアクターとして利用し、且つ液滴に1つの細胞及び1つのタグ配列(通常第1細胞タグ配列(即ちCell barcode)及び唯一分子標識(即ちUnique Molecular Identifier、UMI)を予め含む。)を含む担体/支持体を含み、当該担体/支持体は好ましくはマイクロビーズである。液滴形成後、液滴中の細胞が溶解するとmRNAが放出され、且つマイクロビーズ上の捕捉配列と結合し、それによりmRNAの捕捉が実現される。通常液滴中でmRNAの濃縮が完了した後、全てのマイクロビーズで濃縮されたmRNA(このときmRNAは既にマイクロビーズタグ配列と相補的なタグを付けており、同じロットで数千個の細胞を処理できる。)を合併して後続のライブラリー構築を行う。10×genomicsのmRNAライブラリー構築は、まさに上記原理を採用し、その欠点は主にmRNAの3’末端のライブラリー構築シークエンシングであり、mRNAの完全長に対してライブラリー構築シークエンシングを実現しにくいことである。
【0089】
本出願の上記好ましい実施例では、液滴法によって単一細胞のmRNAを捕捉するステップは、上記方法と同じである。mRNAを逆転写して第1鎖cDNAを得る過程も従来法と同じであり、ターミナルトランスフェラーゼ活性を有する逆転写酵素を利用して逆転写して第1鎖完全長cDNAを得ることができる。当該逆転写酵素のターミナルトランスフェラーゼ活性により、第1鎖完全長cDNAの末端に3つのCを付加することができ、このとき、液滴中で遊離しているTSOリンカー(例は実施例1の配列番号1を参照)の末端3ビットrGrG+Gが3つのCに結合することができ、次に第1鎖完全長cDNAの末端CCCの下流でTSOリンカーと相補的な配列を合成する(例は実施例1の配列番号1の下線部の配列を参照)。そしてTSOプライマー又はTSO-ランダムプライマーで第2鎖cDNAの合成を完了する。このようにして得られた二本鎖cDNAは、完全長cDNAを有し、任意の長さの断片のcDNAも有し、且つmRNAの3’端に対応する一端にcDNAタグ配列を付ける。上記のように、本出願は、このような二本鎖cDNAの一方の鎖(即ちpoly(A)付きの一本鎖cDNA)を環化することによりcDNAタグ配列の転移を実現することができ、それによりmRNAの5’端を標識する非完全長の増幅断片、ひいては完全長の増幅断片を獲得し、これらの増幅断片をライブラリーに構築することによりmRNAの5’端及び/又は完全長シークエンシングを実現することができる。
【0090】
従って、実際の必要に応じて、上記第1鎖cDNAをランダム増幅又は完全長増幅することができる。上記増幅断片のmRNAの5’端断片、ひいては完全長にわたる全被覆度をさらに向上させるために、本出願の好ましい実施例では、上記第1鎖cDNAに対してランダム増幅及び/又は完全長増幅を行い、二本鎖cDNAを得る。別の好ましい実施例では、リンカー増幅プライマー(例は実施例1の配列番号2を参照)、及びTSOプライマー(例は実施例1の配列番号3を参照)及びTSO-ランダムプライマー(例は実施例1の配列番号4を参照)のうちの少なくとも1つを利用し、第1鎖cDNAを増幅し、二本鎖cDNAを得る。
【0091】
TSO-ランダムプライマーにより増幅して5’端の任意の位置から始まる二本鎖cDNA断片を得ることができ、それによりmRNAの5’端から3’端の全ての配列の断片を可能な限り完全に包含する。TSOプライマーは完全長二本鎖cDNA断片を確実に得ることができる。これらの不等長断片を環化することにより、不均一なサイズの一本鎖環状DNA分子が得られ、全ての環状断片を増幅することにより、mRNAの5’端の異なる位置を標識できる増幅断片が得られ、これらの増幅断片をライブラリー構築することにより、mRNAの5’端及び/又は完全長の異なる位置を包含する断片のシークエンシングライブラリーが得られる。
【0092】
一本鎖cDNAを環化する上記ステップは、既存の環化方法を採用すればよい。例えば、華大智造環化シークエンシング技術における環化手段を採用して実現する。本出願の好ましい実施例では、一本鎖cDNAを環化し、一本鎖環化cDNAを得る上記ステップは、環化補助配列及びリガーゼの作用下で一本鎖cDNAをループにさせるように接続し、接続産物を得るステップと、接続産物を酵素切断してループにさせるように接続していない一本鎖DNAを消化し(二本鎖DNAが、融解した後に分離せずに直接に環化されてしまうと、ここで、環化していない二本鎖DNAが存在する可能性もある。)、一本鎖環化cDNAを得るステップと、を含み、ここで、環化補助配列(例は実施例1の配列番号5を参照)は、ループを形成する一本鎖cDNAの両端の配列と相補的である(例えば、それぞれcDNAタグ配列における第2PCRリンカーと相補的であり、及びTSOプライマーと相補的である)。
【0093】
より好ましい実施例では、まず二本鎖cDNAを熱変性させ、二本鎖cDNAを2本の一本鎖に融解させ、一本鎖状態で環化補助配列(環化しようとする一本鎖の両端配列に基づいて合理的に設計する。)を一本鎖とインキュベートし、環化補助配列が一本鎖の両端配列と相補することによって首尾両端を引き寄せ、さらにリガーゼの作用下で一本鎖環化を実現する。
【0094】
一本鎖環化cDNAを得た後、実際の研究目的に応じて、poly(A)プライマーとランダムプライマー又は特定タイプの遺伝子特異的プライマー(例えばTCR/BCRプライマー)を利用して増幅し、それにより5’端が標識された異なる増幅断片を得る。当該方法は、環化後増幅により、既存のmRNAの3’端を標識する方法をmRNAの5’端の目的断片を標識する方法に変換することを実現し、それによりmRNAの5’端シークエンシング及び/又は完全長シークエンシングを実現する。当該方法は、簡便であり、且つ既存の多様なシークエンシングプラットフォームのライブラリー構築ステップと互換性があり、単一細胞のmRNA 5’端及び/又は完全長のハイスループットシークエンシングを実現するのに役立つ。
【0095】
好ましい実施例では、(a)ランダムプライマー、(b)TCR遺伝子プライマー、(c)BCR遺伝子プライマープライマーのうちの少なくとも1つとcDNAタグプライマーとの組合せを採用して一本鎖環化cDNAを増幅し、異なる需要を満たす増幅断片を獲得し、好ましくは、cDNAタグプライマーはpoly(A)プライマーであり、より好ましくは配列番号6である。前述のように、免疫レパートリーを研究する場合、TCR及び/又はBCR遺伝子のプライマーを採用し、それにより免疫関連の遺伝子の発現状況を得る。
【0096】
増幅断片に対して断片化ライブラリー構築を行い、単一細胞のRNAシークエンシングライブラリーを得る上記ステップは、通常の断片化ライブラリー構築フローを採用すればよい。本出願の好ましい実施例では、当該ステップは、増幅断片にライブラリーリンカーを付加すれば、RNAシークエンシングライブラリーを獲得可能であるステップを含む。具体的なリンカーの付加方式は、異なるシークエンシングプラットフォームの違いに応じて、適切なライブラリーリンカー及び操作方式を選択して付加することができる。本出願の好ましい実施例では、当該ステップは、増幅断片を酵素切断断片化し、酵素切断断片を得るステップと、酵素切断断片に対して順次末端修復A付加及びリンカー接続を行い、単一細胞のRNAシークエンシングライブラリーを得るステップと、を含む。より好ましくは、末端修復A付加及びリンカー接続の後、得られた接続断片を増幅し、それによりシークエンシングの需要を満たすRNAシークエンシングライブラリーを得ることをさらに含む。
【0097】
上記リンカー接続ステップにおいて、シークエンシングプラットフォームの違いに応じて、特定のシークエンシングプラットフォームに適するリンカーを合理的に選択することができる。例えば、MGIシークエンシングプラットフォームのリンカーであってもよいし、Illuminaシークエンシングプラットフォームのリンカーであってもよい。それに対応して、リンカーに接続した接続断片を増幅するために採用される増幅プライマーも、対応するプラットフォームのリンカー配列とセットになっている。例えば、MGIシークエンシングプラットフォームのリンカーを採用する場合、接続断片を増幅するプライマーもMGIシークエンシングプラットフォームの増幅プライマーである。
【0098】
本出願の第2典型的な実施形態では、単一細胞RNAライブラリー構築キットをさらに提供し、当該キットは、環化補助配列と、DNAリガーゼと、cDNAタグプライマーと、及び、(a)ランダムプライマー、(b)TCR遺伝子プライマー、(c)BCR遺伝子プライマーのうちの少なくとも1つとを含む。
【0099】
当該キットは、主に、上記ライブラリー構築方法における環化ステップ及び一本鎖環化DNA上の目的遺伝子5’端の特定断片又は5’端の任意の位置から始まるランダム断片の増幅ステップに用いられる試薬に基づいて設計されたものであり、上記試薬を含むことにより、ライブラリーの構築を便宜かつ迅速に完了することができる。ここで、環化補助配列は、それぞれmRNAの5’端に対応して付加されたTSOリンカー及びmRNAの3’端に対応するタグ配列と相補的に結合するので、その具体的な配列構成もタグ配列及びTSOリンカー上の具体的な配列の違いによって異なる。
【0100】
上記キットにおけるDNAリガーゼは、主に、DNA鎖の、リン酸化修飾を有する一つの塩基と水酸基を有する一つの塩基とを接続するものであり、DNA接続を実現できるDNAリガーゼは、いずれも本出願に適用する。具体的には、T4 DNAリガーゼのような熱的に不安定なDNAリガーゼであってもよいし、Thermo stable DNA ligaseのような熱的に安定なDNAリガーゼであってもよい。
【0101】
ライブラリーの構築を便宜にするために、好ましい実施例では、上記キットは、固相支持体をさらに含み、当該固相支持体に支持体タグ配列を付け、ここで、cDNAタグプライマーは支持体タグ配列の少なくとも一部と相補的であり、好ましくは当該固相支持体はマイクロビーズであり、支持体タグ配列はマイクロビーズタグ配列である。支持体タグ配列付きの固相支持体は、単一細胞mRNAの捕捉を便利にすると同時に、mRNAに支持体タグ配列と相補的なタグ配列を付けさせる。
【0102】
上記キットにおいて、タグ配列付きのマイクロビーズ(例えば、ゲルマイクロビーズ)は、既存のマイクロビーズを採用するものから選択して購入してもよいし、自ら調製してもよい。各マイクロビーズ上のタグ配列は、以下のDNA配列を含み、(1)PCRリンカーであり、PCR増幅に用いられる。(2)細胞タグ(Cell barcode)であり、1つのマイクロビーズが1種類の細胞タグに対応する。(3)唯一分子標識(Unique Molecular Identifier、UMI)であり、同じ細胞中の異なるテンプレート分子を標識し、転写産物の存在量を定量するために用いられる。(4)捕捉配列であり、通常poly(dT)であり、mRNAのpoly(A)テールに結合することによりmRNAを捕捉する。
【0103】
上記ライブラリー構築の利便性をさらに向上させるために、好ましくは当該キットはRNA抽出試薬及び/又はRNA逆転写試薬をさらに含み、RNA逆転写試薬は逆転写酵素を含み、逆転写酵素はターミナルトランスフェラーゼ活性を有する逆転写酵素(例えばMGIのAlpha reverse transcriptaseであってもよいし、InvitrogenのSuperScript(登録商標)II逆転写酵素であってもよいし、ThermoのMaxima H Minus,Superscript IVなどであってもよい)である。
【0104】
液滴法に基づくmRNAの捕捉及び逆転写に関連する試薬はセットで用いることができ、
poly(dT)がmRNAのpoly(A)テールに結合することによりmRNAを捕捉した後、逆転写酵素の作用下で第1鎖cDNAの合成を実現し、第2鎖の合成を便宜にするために、通常の逆転写試薬は逆転写酵素の他にTSOリンカー(例えば配列番号1に示す。)を含む。例えばターミナルトランスフェラーゼ活性を有する逆転写酵素を採用して第1cDNA鎖の末端にCCCを付加し、そしてTSOリンカー上のrGrG+Gを利用してCCCと相補的に結合した後、さらにTSOリンカー配列をテンプレートとして、CCCの後ろにTSOリンカーの相補配列を付加する(即ち第1cDNA鎖の末端にTSOの相補配列を接続することに相当する。)。
【0105】
mRNAの5’端の任意の位置から3’端の配列断片を得ることを可能にし、これにより不均一なサイズの複数の断片により、mRNA完全長を包含する全ての断片を獲得し、それにより5’端のシークエンシング又は完全長のシークエンシングを実現する。そのため、本出願の好ましい実施例では、上記キットは、TSOプライマー、TSO-ランダムプライマー及びリンカー増幅プライマーをさらに含む。好ましくは、リンカー増幅プライマーの配列は、配列番号2であり、TSOプライマーの配列は、配列番号3であり、TSOプライマーTSO-ランダムプライマーは、配列番号4である。リンカー増幅プライマーは、第2cDNA鎖3’端(mRNA 3’端に対応する。)のcDNAタグ配列と結合することができるが、TSO-ランダムプライマーは第1鎖cDNA 3’端(mRNA 5’端に対応する。)の任意の位置に結合することができ、それにより不均一なサイズのcDNA断片を得ることができる。
【0106】
好ましくは、環化補助配列は配列番号5であり、好ましくは、cDNAタグプライマーはpoly(A)プライマーであり、より好ましくは配列番号6である。
【0107】
いくつかの好ましい実施例では、当該キットは、エキソヌクレアーゼ及びライブラリーリンカーのうちの少なくとも1つをさらに含む。ここで、エキソヌクレアーゼは、二本鎖cDNAを一本鎖に融解して環化した後、環化に成功しなかった一本鎖又は二本鎖cDNAを分解するために用いられ、例えば、エキソヌクレアーゼI又はエキソヌクレアーゼIIIなどであってもよい。ライブラリー構築用リンカーは、MGIシークエンシングプラットフォームのリンカー(例えば1本がリニアリンカーであり、もう1本がバブルリンカーである二本鎖リンカーであり、ここで、リニアリンカーはA+31bp配列+10bp index配列+17bpであり、バブルリンカーは17bpのバブル配列、17bpバブル配列前の13bp及び17bpバブル配列後の7bp+Tを含み、リンカー全長は97bpである。)であってもよい。他のシークエンシングプラットフォームのリンカー、例えばIlluminaシークエンシングプラットフォームのリンカー(例えばY型P5及びP7リンカーであり、必要に応じてP5及びP7リンカーの一方又は両方にライブラリータグ配列を付け、後続のサンプル混合シークエンシングのライブラリーの生成データの分割を容易にする。)であってもよい。
【0108】
本出願の第3典型的な実施形態では、RNAシークエンシングの方法をさらに提供し、当該方法は、上記いずれかのRNAシークエンシングライブラリー構築方法を採用してRNAシークエンシングライブラリーを構築し、及びRNAシークエンシングライブラリーをシークエンシングするステップを含む。前述したRNAシークエンシングライブラリー構築方法を採用して構築されたRNAシークエンシングライブラリーは、研究目的の違いによって、より多くのmRNA 5’端を包含する断片であってもよいし、mRNA完全長を包含する断片であってもよく、従って現在市場で必要とされる5’端シークエンシングの需要、例えば免疫ペプチドライブラリーを構築する際の5’端シークエンシングの需要を満たすことができる。完全長RNAシークエンシングライブラリーをシークエンシングすることは、ある転写産物の選択的スプライシングの構造変異状況に対する研究を満たすことができる。
【0109】
なお、上記5’端RNAシークエンシングと完全長シークエンシングは同時に行うことも、単独で行うことも可能であり、具体的な応用シーンに応じて決定される。
【0110】
以下、具体的な実施例を参照して本出願の技術的効果をさらに説明する。
【0111】
以下の実施例は、細胞懸濁液準備、マイクロビーズ準備、液滴生成、解乳、逆転写RT反応、cDNA増幅、環化接続、環化産物増幅、断片化酵素のライブラリー構築、ハイスループットシークエンシングなどを含む。
【0112】
(実施例1)完全長RNAシークエンシング
本実施例は、
図2に示す原理フローに従って調製し、具体的には以下のとおりである。
【0113】
1.単一細胞懸濁液準備
1.1 細胞株、固形組織について、適切な消化法/研磨法を採用して単一細胞/細胞核懸濁液を調製し、且つPBS(0.04% BSAを含む。)で1~2回洗浄し、且つ40μmの細胞篩を用いて濾過した。
【0114】
1.2 細胞計数板又は計数器を用いて細胞/細胞核の濃度を検出した。
【0115】
1.3 細胞濃度に応じて、10万個の細胞/細胞核を吸引し、300~500g、4°C、5min遠心分離して細胞沈殿物を収集し、100μLの細胞再懸濁液(Cell Resuspension Buffer:0.04% BSA+PBS)を加えて細胞/細胞核を再懸濁した。
【0116】
2 マイクロビーズ準備
2.1 200μL(220,000個)の磁気ビーズを0.2mL PCRチューブに吸引し、磁気ラック上に置いて2min静置し、上清を除去した。
【0117】
2.2 磁気ラックからPCRチューブを取り外し、200μL 1xBuffer D(1mM EDTA、9mg/mL 85% KOH)を加えて磁気ビーズを懸濁し、室温で5minインキュベートした。
【0118】
2.3 磁気ラックに置いて2min静置し、上清を除去した。
【0119】
2.4 PCRチューブを磁気ラックに保持し、200μL 1xBuffer Dを加え、30s静置して上清を除去した。
【0120】
2.5 200μL LSWB(50mM TrTSO-HCl、150mM NaCl、0.05% Tween-20)を加え、30s静置し、そして上清を除去した。その一つ前のステップを繰り返した。
【0121】
2.6 200μL 溶解液(Lysis Buffer:6% Ficoll PM-400、0.2%サルブタモール、20mM EDTA、200mM Tris pH 7.5、H2O)を加え、30s静置し、そして上清を除去した。磁気ラックからPCRチューブを取り外し、100μL 溶解液及び5μL 1M DTTを加えた。
【0122】
3 液滴生成
3.1 チップ(chip)(
図1参照)表面保護膜を剥離し、液滴発生装置(10×Genomics)のチップ溝領域に置いた。
【0123】
3.2 収集蓋上の接続管A端(収集管の底部に接触する接続管)をチップの出口(Outlet)孔に挿入した。
【0124】
3.3 50mL注射器を固定ラックに置き、且つプッシュロッドを初期位置に調整した。平口針で注射器と収集管の蓋上の接続管B端(収集管の底部に接触しない接続管)を接続した。
【0125】
3.4 収集管に200μL 液滴生成油を加え、収集蓋を締め付け、且つ収集管を固定ラックに垂直に置いた。
【0126】
3.5 ピペットを用いて細胞を軽く吹き混ぜ、チップの細胞(cells)孔に100μLのステップ1.3で調製した細胞懸濁液を加え、ピペットの先端が孔底部に接触することを確保した。
【0127】
3.6 ピペットを用いて磁気ビーズを軽く吹き混ぜ、チップのマイクロビーズ(beads)孔に100μLの磁気ビーズを加え、ピペットの先端が孔底部に接触することを確保した。
【0128】
3.7 直ちに350μLの液滴生成油をチップ油滴(Oil)孔に添加した。
【0129】
3.8 迅速に注射器のプッシュロッドを係止スロットの位置に引っ張り、プッシュロッドを係止スロットに係合した。
【0130】
3.9 タイマーを開始して20 min計時し、液滴を収集した。
【0131】
3.10 20 min後に、直ちに収集管上の収集蓋を緩め、チップ出口孔の接続管を引き抜き、接続管を垂直に伸ばし、管内の液滴を収集管に流し、そして通常の収集管蓋に交換した。
【0132】
3.11 室温で20 min静置し、mRNA分子を磁気ビーズと十分に結合させた。
【0133】
4 解乳
4.1 解乳試薬を準備し、15mLの遠心管に10mL 6X SSC(20X SSC、Invitrogen、酵素なし水で6xに希釈する。)及び200μL PFO(Perfluorooctanol、Sigma、370533-25G)を加えた。
【0134】
4.2 濾過装置と真空ポンプを接続し、圧力パラメータを0.01MPa又は100mbarに調整し、真空ポンプを起動した。
【0135】
4.3 20mL 6X SSCを加え、装置を前処理した。
【0136】
4.4 濾過膜に液体が残留しないと、収集管内の全ての液体を濾過膜表面に均一に注ぎ、且つ2mL 6X SSCで収集管を2回洗浄し、洗浄液を濾過装置に一括注いだ。
【0137】
4.5 力を入れて10mLの解乳試薬を逆さにして均一に混合し、回に分けてゆっくりと濾過装置に注いだ。
【0138】
4.6 濾過膜に液体が残留しないと、30mL 6X SSCを連続して加え、回に分けて磁気ビーズを洗浄した。
【0139】
4.7 濾過膜に液体が残留しないと、真空ポンプを閉じ、真空ポンプと濾過装置との接続を切断した。
【0140】
4.8 注射器又はゴム栓で濾過装置の濾過口を塞いだ。
【0141】
4.9 ピペットを用いて1.0mLの収集緩衝液を加え、且つ濾過膜表面全体を軽く約20回吹き付け、磁気ビーズを懸濁させた。
【0142】
4.10 磁気ビーズを含む収集液を1.5mLの低吸着遠心管に移送した。
【0143】
4.11 さらに1.0mLの収集緩衝液で、濾過膜表面全体を軽く約10回吹き付け、残留した磁気ビーズを懸濁させた。
【0144】
4.12 磁気ビーズを含む収集液を1.5mLの低吸着遠心管に移送し、磁気ラックに置き、2min静置し、上清液をゆっくりと除去した。
【0145】
4.13 磁気ラックから遠心管を取り外し、100μLの収集緩衝液を用いて、順次2つの遠心管の片側に吸着する磁気ビーズを懸濁させ、液体を0.2mLの低吸着PCRチューブに移送した。
【0146】
4.14 再び100μLの収集緩衝液を用いて、順次2つの遠心管の片側に吸着する磁気ビーズを懸濁させ、液体を上記0.2mLの低吸着PCRチューブに移送した。
【0147】
4.15 磁気ビーズを入れたPCRチューブを磁気ラックに置き、2min静置し、上清液を除去した。
【0148】
4.16 磁気ビーズ吸着状態を保持し、200μL 6X SSCを加え、30s静置し、上清液を除去した。
【0149】
4.17 200μL 5X FS Buffer(MGI,01E022MS)を加え、30s静置し、磁気ビーズを吸引することを回避しながら、上清をゆっくりと除去した。
【0150】
5 逆転写反応
5.1 氷上に逆転写反応系を調製する:5μL H2O、20μL 5x FS Buffer(First-Strand Buffer)、20μL 5M ベタイン(Betaine)、10μL 10mM dNTPs、7.5μL 100mM MgCl2、5μL 50μMテンプレート置換オリゴヌクレオチド(Template switch oligo、TSOリンカー)、5μL 100mM DTT、5μL 200U/μL SuperScript(登録商標)II 逆転写酵素(Invitrogen,18064014)、2.5μL 40U/μL RNA酵素阻害剤(RNase inhibitor)。
【0151】
TSOリンカー配列:配列番号1:5′-AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACATrGrG+G-3′であり、+Gは鎖ヌクレオチドを表し、rGrG+Gを採用する原因はRNAとDNAのハイブリダイゼーション熱安定性がよりよいからである。
【0152】
5.2 100μLの逆転写反応系を吸引し、ステップ4.17の磁気ビーズを入れたPCRチューブに加え、吹き混ぜた。
【0153】
5.3 42℃、90min;10サイクル(50℃、2min;42℃、2min)の条件に従って逆転写反応を行い、熱蓋温度を75℃に設定した。磁気ビーズに沈降現象が存在するため、20minごとに磁気ビーズを軽く弾いて混合し、短時間遠心分離した後、反応を継続した。
【0154】
5.4 反応終了後、短時間遠心分離し、磁気ラックに置き、2min静置し、反応液を除去した。
【0155】
5.5 磁気ラックからPCRチューブを取り外し、200μL TE-SDS (TE Buffer+0.5% SDS)を加え、均一に振とう混合し、反応を終了した。
【0156】
5.6 短時間遠心分離した後、磁気ラックに置き、2min静置し、液体を除去した。
【0157】
5.7 磁気ビーズ吸着状態を保持し、200μL TE-TW(TE Buffer+0.01% Tween-20)を加え、30s静置し、上清液を除去した。
【0158】
5.8 上記ステップを繰り返した。
【0159】
5.9 磁気ビーズ吸着を保持し、200μL 10mM NF-H2Oを加え、30s静置して上清液を除去した。
【0160】
6.第1鎖cDNAランダムプライマー増幅
6.1 PCR反応系調製:42μL H2O、4μL 10μM Tnプライマー(即ちリンカー増幅プライマー)、2μL 20μm TSO-ランダムプライマー、2μL 20μm TSOプライマー及び50μL 2x KAPA HiFi Hotstart Ready mix(KAPA:KK2602)。
【0161】
ここで、Tnプライマー(即ちリンカー増幅プライマー)は、磁気ビーズに接続する一端から増幅を開始するために用いられ、その具体的な配列は、
配列番号2:5’-CGTAGCCATGTCGTTCTG-3’であり、
TSOプライマーは、TSOリンカーの一端から増幅を開始するために用いられ、その具体的な配列は、
配列番号3:5’Phos-AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACAT-3’であり、
TSO-ランダムプライマーは、cDNAの5’端の任意の位置から3’端方向に増幅するために用いられ、その具体的な配列は、
配列番号4:5’phos-AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACATNNNNNN-3’である。
【0162】
6.2 下記の条件に従ってPCR反応を行った:95℃、3min;10~15サイクル(98℃、20s;58℃、20s;72℃、3min);72℃、5min;4℃、維持する。
【0163】
6.3 PCR終了後、120μL(1.2x)VAHTSTM DNA Clean Beads(VAZYME:N411-03)(室温で30min前平衡化する。)を用いてPCR産物を精製回收した。
【0164】
6.4 Qubit蛍光計を用いてPCR精製産物を定量し及びAgilent 2100バイオアナライザを用いて断片の分布状況を検出した(細胞株サンプル及び固形組織サンプルはそれぞれ
図4A及び4Bを参照)。
【0165】
7.DNA環化
7.1 100~200ngの上記cDNA産物を取り、NF-H2Oで体積を45μLまで補充し、5μL splint oligo 1(20μm)を加え、短時間ボルテックスして均一に混合し、5s瞬時遠心分離し、95℃で3分間反応させ(熱蓋105℃で、一本鎖環化のためにdsDNAを一本鎖に融解させる。)、迅速に氷上に5~10分間置いた。
【0166】
ここで、splint oligo 1(環化補助配列)の具体的な配列は、
配列番号5:5’-TACCACTGCTTCGTAGCCATGT-3’である。
【0167】
7.2 接続:
上記PCRチューブを氷浴に入れ、以下の表に従って反応系を調製した。
【表1】
【0168】
調製した接続産物を融解産物に加え、短時間ボルテックスして均一に混合し、短時間遠心分離し、PCRチューブをPCR装置に置き、37℃で45minインキュベートし、熱蓋温度を75℃とした。
【0169】
7.3 酵素切断消化:
一本鎖環化反応が終了しようとするとき、予め以下の表に従って氷上に酵素切断消化反応液を調製した。
【表2】
【0170】
ピペットを用いて4μLの調製した酵素切断消化反応液(環化されていない一本鎖及び場合により未融解の二本鎖を消化するために用いられる。)を吸引して一本鎖環化産物に加え、短時間ボルテックスして均一に混合し、瞬時遠心分離し、PCRチューブをPCR装置に置き、37℃で30minインキュベートし、熱蓋温度を75℃とした。
【0171】
7.4 酵素切断終了:酵素切断反応終了後、PCRチューブに3μLの終了液(Stop solution,0.1MEDTA)を加え、均一に混合し、短時間遠心分離して液体を管底部に収集した。
【0172】
7.5 cDNA環化ライブラリー精製:PEG32磁気ビーズを用いてステップ7.4で得られた環化産物を精製し、Qubit蛍光計を用いて精製後のcDNA環化産物を定量し、後続の増幅に備えた。
【0173】
8 cDNAランダムプライマーPCR増幅
8.1 初期に10~50ngの環化DNA産物を取り、NF-H2Oで体積を42μLまで補充し、4μL 20μm poly(A)プライマー、4μLランダムプライマー(配列番号12:5’-NNNNNN-3’)、50μL 2x KAPA HiFi Hotstart Ready mixを加えた。このようなプライマーは、異なるサイズの環化産物に対して、異なる長さの断片の増幅を行うことができ、それにより可能な限りcDNAの完全長配列をカバーすることができる。
【0174】
poly(A)プライマーの具体的な配列は、
配列番号6:5’phos-AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA-3’である。
【0175】
8.2 下記の条件に従ってPCR反応を行った:95℃、3min;10~15サイクル(98℃、20s;60℃、20s;72℃、30s);72℃、5min;4℃、維持する。
【0176】
8.3 0.5×+0.7×のVAHTSTM DNA Clean Beads磁気ビーズを用いてPCR産物精製を行い、スクリーニングされた断片(長さが150~800bpである。)をQubit定量し及びAgilent 2100 バイオアナライザを用いて断片の分布状況を検出した(細胞株サンプル及び固形組織サンプルはそれぞれ
図6A及び
図6Bを参照)。
【0177】
9 cDNAライブラリー構築
9.1 DNA断片化:
ステップ8.3で得られたcDNA濃度に応じて、100~200ng(約0.1~0.2pmol)の断裁対象cDNAを新しい0.2mL PCRチューブに取り、体積が≦16μLであり、16μL未満の部分をH
2Oで補充した。以下の表に従って氷上に断片化反応液を調製した。
【表3】
【0178】
PCRチューブをPCR装置に置き、熱蓋を75℃とし、37 ℃で10minインキュベートし、反応終了後にPCRチューブに30μL 0.1M EDTAを加え、ボルテックスして均一に混合し、反応を終了した。
【0179】
9.2 断片化産物精製:上記断裁されたDNA産物に対して、0.6×+0.2×のVAHTSTM DNA Clean Beads磁気ビーズを用いて精製スクリーニング(300~500bpの断片を保留する。)を行い、且つQubit蛍光計を用いて濃度定量を行った。
【0180】
9.3 以下の表に従って氷上に末端修復反応液を調製した:
【表4】
【0181】
ピペットを用いて10μLの調製した末端修復反応液を吸引してステップ9.2の精製後の断片化産物に加え、短時間ボルテックスして均一に混合し、瞬時遠心分離し、PCRチューブをPCR装置に置き、37℃、30min、65℃、15min、4℃、維持した。
【0182】
9.4 ライブラリーリンカー接続
以下の表に従って氷上にリンカー接続反応液を調製した:
【表5】
【0183】
ライブラリーリンカーの具体的な配列は、
配列番号7:5’-Phos-AGTCGGAGGCCAAGCGGTCTTAGGAAGACAA-3’、
配列番号8:3’-TTCAGCCTCCGGT-5’である。
【0184】
ピペットを用いて30μLの調製したリンカー接続反応液をゆっくりと吸引し、末端修復産物に加え、ボルテックス振とうして均一に混合し、瞬時遠心分離して反応液を管底部に収集し、PCRチューブをPCR装置に置き、23℃、30min、4℃、維持した。
【0185】
9.5 接続産物精製:1.0×のVAHTSTM DNA Clean Beads磁気ビーズを用いて精製し、且つQubit蛍光計を用いて接続産物に対して濃度測定を行った。
【0186】
9.6 リンカー接続産物PCR増幅
リンカー接続産物増幅のプライマーの具体的な配列は、
FP:5’-phos-AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA-3’(配列番号9)、
RP:5’-TGTGAGCCAAGGAGTTGNNNNNNNNNNTTGTCTTCCTAAGACCGCT-3’(配列番号10)であり、
NNNNNNNNNNはタグ配列であり、NはA/T/C/Gのいずれかを表し、異なるライブラリーを区別するために用いられる。遠心管に以下の表に従ってPCR反応混合液を調製した。
【表6】
【0187】
ピペットを用いて54μLの調製したPCR反応混合液を吸引して精製後の接続産物に加え、ボルテックス振とうして均一に混合し、瞬時遠心分離して反応液を管底部に収集し、PCR増幅を行う:95℃、3min;10~15サイクル(98℃、20s;60℃、20s;72℃、30s);72℃、5min;4℃、維持する。
【0188】
9.7 PCR増幅産物断片スクリーニング:(0.6×+0.6×)VAHTSTM DNA Clean Beads磁気ビーズを用いて精製し、且つQubitを用いて産物定量を行った。
【0189】
10 ハイスループットシークエンシング
10.1 変性:200~400ngの上記cDNA産物を取り、NF-H2Oで体積を47μLまで補充し、3μL splint oligo 2(20μm)を加え、短時間ボルテックスして均一に混合し、5s瞬時遠心分離し、95℃で3分間反応させ(熱蓋105℃)、迅速に氷上に5~10分間置いた。
(splint oligo 2:5’-TTTTTTTTTTTTGTGAGCCAAG-3’)(配列番号11、下線部分の配列は配列番号10におけるFP配列の最初の11位と同じである。)。
【0190】
10.2 接続:
上記PCRチューブを氷浴に置き、以下の表に従って反応系を調製した。
【表7】
【0191】
調製した接続産物を融解産物に加え、短時間vortexして均一に混合し、短時間遠心分離し、PCRチューブをPCR装置に置き、37℃で30minインキュベートし、熱蓋温度を75℃とした。
【0192】
10.3 酵素切断消化:
一本鎖環化反応が終了しようとするとき、予め以下の表に従って氷上に酵素切断消化反応液を調製した。
【表8】
【0193】
ピペットを用いて4μLの調製した酵素切断消化反応液を吸引して一本鎖環化産物に加え、短時間vortexして均一に混合し、瞬時遠心分離し、PCRチューブをPCR装置に置き、37℃で30minインキュベートし、熱蓋温度を75℃とした。
【0194】
10.4 酵素切断終了:酵素切断反応終了後、PCRチューブに3μLの終了液(Stop solution,0.1M EDTA)を加え、vortexして均一に混合し、短時間遠心分離して液体を管底部に収集し、
10.5 環化ライブラリー精製:PEG32磁気ビーズを用いて環化産物を精製し、Qubit蛍光計を用いて精製後の産物を定量し、ライブラリー質量>0.5ng/μLを要求し、ライブラリー検出に合格し、MGISEQ2000ハイスループットシーケンサーを用いてシークエンシングを行った。
【0195】
(実施例2)5’端RNA単一細胞シークエンシング
本実施例は、
図2に示す原理フローに従って調製し、具体的には以下のとおりである。
【0196】
(一)単一細胞mRNA捕捉及び第1鎖cDNA合成
ステップは前の完全長RNAシークエンシングステップと一致する。
【0197】
(二)cDNA増幅のステップは以下のとおりである。
1 PCR反応系調製:42μL H2O、4μL 10μM Tnプライマー(即ち前述リンカー増幅プライマー配列番号2)、4μL TSOプライマー(即ち前述配列番号4)、50μL 2x KAPA HiFi Hotstart Ready mix。
【0198】
2 下記の条件に従ってPCR反応を行った:95℃、3min;13~20サイクル(98℃、20s;58℃、20s;72℃、3min);72℃、5min;4℃、維持する。
【0199】
3 PCR終了後、60μl(0.6X)VAHTSTM DNA Clean Beads(室温で30min前平衡化する。)を用いてPCR産物を精製回收した。
【0200】
4 Qubit蛍光計を用いてPCR精製産物を定量し及びAgilent 2100バイオアナライザを用いて断片の分布状況を検出した(細胞株サンプル及び固形組織サンプルはそれぞれ
図5A及び5Bを参照)。
【0201】
(三)cDNA環化
環化過程は上記完全長RNAシークエンシングステップと同じである。
【0202】
(四)5’RNA増幅
1、初期に10~50ngの環化DNA産物を取り、NF-H2Oで体積を42μlまで補充し、4μL 20μM poly(A)プライマー(配列番号6:5’-phos-AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA-3’)、4μL 20μM TCR/BCRプライマー(10x Genomics V(D)J 配列:PN-1000005,PN-1000016)又はランダムプライマー(5’-NNNNNN-3’)、50ul 2x KAPA HiFi Hotstart Ready mixを加えた。
【0203】
2 下記の条件に従ってPCR反応を行った:95℃、3min;13~20サイクル(98℃、20s;60℃、20s;72℃、30s);72℃、5min;4℃、維持する。
【0204】
3 0.5×+1.0×のVAHTSTM DNA Clean Beads磁気ビーズを用いてPCR産物精製を行い、スクリーニングされた断片をQubit定量し及びAgilent 2100バイオアナライザを用いて断片の分布状況を検出した(細胞株サンプル及び固形組織サンプルはそれぞれ
図7A及び7Bを参照し、ここで
図7AはTCR特異的プライマー増幅の2100検出結果を示し、
図7BはBCR特異的プライマー増幅の2100検出結果を示す)。
【0205】
(五)cDNA 5’ライブラリー構築(後続のステップは実施例1と同じであり、説明を省略する)。
検出及び検証:
実施例2で構築されたライブラリーに対してMGIシークエンシングプラットフォームのシークエンシング機器を採用してシークエンシングし、且つオフラインデータの5’端及び3’端のシークエンシング断片による転写産物のカバレッジ状況を解析し、具体的な結果を
図8に示す。ここで、階調が浅いのは5’端のカバレッジ状況に対応し、階調が深いのは3’端のカバレッジ状況に対応する。
図8から分かるように、本発明の方法は、転写産物5’端及び3’端の情報を効果的に捕捉することができる。
【0206】
以上の説明は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、当業者によって種々の変更及び変形が可能である。本発明の趣旨及び原理を逸脱しない範囲でなされた任意の修正、均等物、改良などは、本発明の保護範囲に含まれる。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
さらに、マイクロビーズタグ配列は5’から3’方向に順次第1PCRリンカー、第1細胞タグ、第1唯一分子標識及びpoly(dT)を含み、それに対応して、cDNAタグ配列は3’から5’方向に順次第2PCRリンカー、第2細胞タグ、第2唯一分子標識及びpoly(A)を含み、ここで、第2PCRリンカーは第1PCRリンカーと相補的であり、第2細胞タグは第1細胞タグと相補的であり、第2唯一分子標識は第1唯一分子標識と相補的である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
さらに、MGIシークエンシングプラットフォームのリンカーはバブルリンカーから選ばれ、IlluminaシークエンシングプラットフォームのリンカーはP5及びP7リンカーから選ばれる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
さらに、支持体タグ配列は5’から3’方向に順次第1PCRリンカー、第1細胞タグ、第1唯一分子標識及びpoly(dT)を含む。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0084
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0084】
上記好ましい実施例では、単一細胞を捕捉するためのマイクロビーズ上のマイクロビーズタグ配列は好ましくは5’から3’方向に順次第1PCRリンカー、第1細胞タグ、第1唯一分子標識及びpoly(dT)を含み、それに対応して、cDNAタグ配列は3’から5’方向に順次第2PCRリンカー、第2細胞タグ,第2唯一分子標識及びpoly(A)を含み、ここで、第2PCRリンカーは第1PCRリンカーと相補的であり、第2細胞タグは第1細胞タグと相補的であり、第2唯一分子標識は第1唯一分子標識と相補的である。つまり、第1鎖cDNAの5’末端にマイクロビーズタグ配列を付けるが、増幅して得られた第2鎖cDNAの3’末端に当該マイクロビーズタグ配列と相補的なcDNAタグ配列を付ける。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
mRNAの5’端の任意の位置から3’端の配列断片を得ることを可能にし、これにより不均一なサイズの複数の断片により、mRNA完全長を包含する全ての断片を獲得し、それにより5’端のシークエンシング又は完全長のシークエンシングを実現する。そのため、本出願の好ましい実施例では、上記キットは、TSOプライマー、TSO-ランダムプライマー及びリンカー増幅プライマーをさらに含む。好ましくは、リンカー増幅プライマーの配列は、配列番号2であり、TSOプライマーの配列は、配列番号3であり、TSO-ランダムプライマーは、配列番号4である。リンカー増幅プライマーは、第2cDNA鎖3’端(mRNA 3’端に対応する。)のcDNAタグ配列と結合することができるが、TSO-ランダムプライマーは第1鎖cDNA 3’端(mRNA 5’端に対応する。)の任意の位置に結合することができ、それにより不均一なサイズのcDNA断片を得ることができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RNAシークエンシングライブラリーの構築方法であって、
mRNAの逆転写産物である一本鎖cDNAを取得するステップであって、前記一本鎖cDNAの3’端にcDNAタグ配列を含むステップと、
前記一本鎖cDNAを環化し、一本鎖環化cDNAを得るステップと、
ランダムプライマー又は遺伝子特異的プライマーとcDNAタグプライマーとからなるプライマー組合せを利用して前記一本鎖環化cDNAを増幅し、増幅断片を得るステップであって、前記cDNAタグプライマーは前記cDNAタグ配列の少なくとも一部であるステップと、
前記増幅断片に対して断片化ライブラリー構築を行い、前記RNAシークエンシングライブラリーを得るステップと、を含む、ことを特徴とするRNAシークエンシングライブラリーの構築方法。
【請求項2】
mRNAの逆転写産物である一本鎖cDNAを取得するステップであって、前記一本鎖cDNAの3’端にcDNAタグ配列を含むステップは、
前記mRNAを逆転写し、第1鎖cDNAを得るステップと、
前記第1鎖cDNAを増幅し、二本鎖cDNAを得るステップであって、前記第1鎖cDNAと相補的な第2鎖cDNAの3’端に前記cDNAタグ配列を含み、前記cDNAタグ配列がpoly(A)を含むステップと、
前記二本鎖cDNAを融解し、前記一本鎖cDNAを得るステップと、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の構築方法。
【請求項3】
前記cDNAタグ配列は3’から5’方向に順次第2PCRリンカー、第2細胞タグ,第2唯一分子標識及び前記poly(A)を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の構築方法。
【請求項4】
前記mRNAは単一細胞サンプル由来であり、前記mRNAは単一細胞mRNAである、ことを特徴とする請求項1に記載の構築方法。
【請求項5】
前記単一細胞mRNAが固相支持体に接続するように、液滴法を採用して前記単一細胞mRNAを調製し、好ましくは前記固相支持体はマイクロビーズである、ことを特徴とする請求項4に記載の構築方法。
【請求項6】
前記単一細胞mRNAが前記マイクロビーズに接続するように、液滴法を採用して前記単一細胞mRNAを調製するステップは、
それぞれ単一細胞懸濁液及び前記マイクロビーズを提供するステップであって、前記マイクロビーズにマイクロビーズタグ配列を付け、前記マイクロビーズタグ配列の末端にpoly(dT)を含むステップと、
前記単一細胞懸濁液及び前記マイクロビーズを液滴に包み込み、各液滴に1つの単一細胞及び1つの前記マイクロビーズを含み、前記マイクロビーズがpoly(dT)を介して前記単一細胞懸濁液中のmRNAのpoly(A)と結合することにより、前記単一細胞懸濁液中のmRNAを前記マイクロビーズに接続し、前記単一細胞mRNAを得るステップと、を含む、ことを特徴とする請求項5に記載の構築方法。
【請求項7】
前記マイクロビーズタグ配列は5’から3’方向に順次第1PCRリンカー、第1細胞タグ、第1唯一分子
標識及び前記poly(dT)を含み、それに対応して、前記cDNAタグ配列は3’から5’方向に順次第2PCRリンカー、第2細胞タグ,第2唯一分子標識及びpoly(A)を含み、ここで、前記第2PCRリンカーは前記第1PCRリンカーと相補的であり、前記第2細胞タグは前記第1細胞タグと相補的であり、前記第2唯一分子標識は前記第1唯一分子標識と相補的である、ことを特徴とする請求項6に記載の構築方法。
【請求項8】
前記一本鎖cDNAの5’端にTSOプライマーの配列を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の構築方法。
【請求項9】
逆転写酵素及びTSOリンカーを採用して前記mRNAを逆転写することにより、前記第1鎖cDNAを獲得し、ここで、前記逆転写酵素はターミナルトランスフェラーゼ活性を有し、前記第1鎖cDNAの3’端に前記TSOリンカーの相補配列を含み、
前記第1鎖cDNAを増幅し、前記第2鎖cDNAを獲得し、前記第2鎖cDNAの5’端に前記TSOプライマーの配列を含む、ことを特徴とする請求項8に記載の構築方法。
【請求項10】
前記TSOリンカーの配列は配列番号1である、ことを特徴とする請求項9に記載の構築方法。
【請求項11】
前記逆転写酵素はMGIのAlpha逆転写酵素、InvitrogenのSuperScript(登録商標)II逆転写酵素、ThermoのSuperscript IV又はMaxima H Minusから選ばれる、ことを特徴とする請求項9に記載の構築方法。
【請求項12】
前記第1鎖cDNAに対してランダム増幅及び/又は完全長増幅を行い、前記二本鎖cDNAを得る、ことを特徴とする請求項2に記載の構築方法。
【請求項13】
リンカー増幅プライマー及びTSOプライマーを採用して前記第1鎖cDNAを増幅し、前記二本鎖cDNAを得るか、又は
リンカー増幅プライマー、TSO-ランダムプライマー及び前記TSOプライマーを採用して前記第1鎖cDNAを増幅し、前記二本鎖cDNAを得る、ことを特徴とする請求項12に記載の構築方法。
【請求項14】
前記リンカー増幅プライマーの配列は配列番号2であり、前記TSOプライマーの配列は配列番号3であり、前記TSO-ランダムプライマーの配列は配列番号4である、ことを特徴とする請求項13に記載の構築方法。
【請求項15】
前記一本鎖cDNAを環化し、一本鎖環化cDNAを得るステップは、
環化補助配列及びリガーゼの作用下で前記一本鎖cDNAをループにさせるように接続し、接続産物を得るステップと、
前記接続産物を酵素切断してループにさせるように接続していない一本鎖cDNAを消化し、前記一本鎖環化cDNAを得るステップと、を含み、
ここで、前記環化補助配列は前記一本鎖cDNAの両端の配列と相補的である、ことを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の構築方法。
【請求項16】
前記環化補助配列は配列番号5から選ばれる、ことを特徴とする請求項15に記載の構築方法。
【請求項17】
前記遺伝子特異的プライマーはTCR遺伝子増幅に対するTCRプライマー及び/又はBCR遺伝子増幅に対するBCRプライマーである、ことを特徴とする請求項1に記載の構築方法。
【請求項18】
前記cDNAタグプライマーはpoly(A)プライマーであり、好ましくは配列番号6である、ことを特徴とする請求項1に記載の構築方法。
【請求項19】
前記増幅断片に対して断片化ライブラリー構築を行い、前記RNAシークエンシングライブラリーを得るステップは、
前記増幅断片にライブラリーリンカーを付加し、前記RNAシークエンシングライブラリーを得るステップを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の構築方法。
【請求項20】
前記増幅断片に対して酵素切断断片化を行い、酵素切断断片を獲得し、
前記酵素切断断片に対して順次末端修復、A付加及びライブラリーリンカー接続を行い、前記RNAシークエンシングライブラリーを得る、ことを特徴とする請求項19に記載の構築方法。
【請求項21】
前記ライブラリーリンカーの接続を行った後、さらに、前記ライブラリーリンカーの接続産物に対してPCR増幅を行い、前記RNAシークエンシングライブラリーを得ることを含む、ことを特徴とする請求項19又は20に記載の構築方法。
【請求項22】
前記ライブラリーリンカーはMGIシークエンシングプラットフォームのリンカー又はIlluminaシークエンシングプラットフォームのリンカーである、ことを特徴とする請求項19に記載の構築方法。
【請求項23】
環化補助配列と、DNAリガーゼと、cDNAタグプライマーと、及び(a)ランダムプライマー、(b)TCRプライマー、(c)BCRプライマーのうちの少なくとも1つとを含む、ことを特徴とするRNAライブラリー構築キット。
【請求項24】
前記キットはRNA逆転写試薬をさらに含む、ことを特徴とする請求項23に記載のキット。
【請求項25】
前記RNA逆転写試薬はターミナルトランスフェラーゼ活性を有する逆転写酵素である逆転写酵素を含む、ことを特徴とする請求項24に記載のキット。
【請求項26】
前記逆転写酵素はMGIのAlpha逆転写酵素、InvitrogenのSuperScript(登録商標)II逆転写酵素、ThermoのSuperscript IV又はMaxima H Minusから選ばれる、ことを特徴とする請求項25に記載のキット。
【請求項27】
前記RNA逆転写試薬はTSOリンカーをさらに含む、ことを特徴とする請求項25に記載のキット。
【請求項28】
前記TSOリンカーの配列は配列番号1である、ことを特徴とする請求項27に記載のキット。
【請求項29】
前記キットはTSOプライマー及びリンカー増幅プライマーをさらに含む、ことを特徴とする請求項23に記載のキット。
【請求項30】
前記リンカー増幅プライマーの配列は配列番号2であり、前記TSOプライマーの配列は配列番号3である、ことを特徴とする請求項29に記載のキット。
【請求項31】
前記キットはTSO-ランダムプライマーをさらに含む、ことを特徴とする請求項29に記載のキット。
【請求項32】
前記TSO-ランダムプライマーの配列は配列番号4である、ことを特徴とする請求項31に記載のキット。
【請求項33】
前記環化補助配列は配列番号5である、ことを特徴とする請求項23に記載のキット。
【請求項34】
前記cDNAタグプライマーはpoly(A)プライマーである、ことを特徴とする請求項23に記載のキット。
【請求項35】
前記cDNAタグプライマーの配列は配列番号6である、ことを特徴とする請求項34に記載のキット。
【請求項36】
前記キットはエキソヌクレアーゼ及びライブラリーリンカーのうちの少なくとも1つをさらに含む、ことを特徴とする請求項23に記載のキット。
【請求項37】
前記エキソヌクレアーゼはエキソヌクレアーゼI又はエキソヌクレアーゼIIIから選ばれる、ことを特徴とする請求項36に記載のキット。
【請求項38】
前記ライブラリーリンカーはMGIシークエンシングプラットフォームのリンカー又はIlluminaシークエンシングプラットフォームのリンカーである、ことを特徴とする請求項36に記載のキット。
【請求項39】
前記MGIシークエンシングプラットフォーム
のリンカーはバブルリンカーから選ばれ、前記IlluminaシークエンシングプラットフォームのリンカーはP5及びP7リンカーから選ばれる、ことを特徴とする請求項38に記載のキット。
【請求項40】
前記DNAリガーゼはT4 DNAリガーゼから選ばれる、ことを特徴とする請求項23に記載のキット。
【請求項41】
前記キットは固相支持体をさらに含み、前記固相支持体に支持体タグ配列が設置され、但し、前記cDNAタグプライマーは前記支持体タグ配列の少なくとも一部と相補的であり、好ましくは、前記固相支持体はマイクロビーズであり、前記支持体タグ配列はマイクロビーズタグ配列である、ことを特徴とする請求項23に記載のキット。
【請求項42】
前記支持体タグ配列は5’から3’方向に順次第1PCRリンカー、第1細胞タグ、第1唯一分子
標識及びpoly(dT)を含む、ことを特徴とする請求項41に記載のキット。
【請求項43】
請求項1から22のいずれか一項に記載のRNAシークエンシングライブラリー構築方法を採用してRNAシークエンシングライブラリーを構築し、及び前記RNAシークエンシングライブラリーをシークエンシングするステップを含む、ことを特徴とするRNAライブラリーのシークエンシング方法。
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】