(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】E-HFO-1336mzz及びギ酸メチルを含む組成物並びに熱可塑性発泡体の膨張剤としてのその使用
(51)【国際特許分類】
C08J 9/14 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
C08J9/14 CES
C08J9/14 CET
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566746
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2023-10-30
(86)【国際出願番号】 US2022032753
(87)【国際公開番号】W WO2022261267
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティノス コントマリス
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA16
4F074AA17
4F074AA24
4F074AA32
4F074AA33
4F074AB05
4F074AG10
4F074BA53
4F074BA72
4F074BA95
4F074BC11
4F074CA22
4F074DA03
4F074DA12
(57)【要約】
熱可塑性ポリマー発泡体を調製するためのプロセスを開示する。本プロセスは、熱可塑性ポリマー及び発泡剤を含む溶融発泡性組成物を提供することを含む。発泡剤は、熱可塑性ポリマーの樹脂100重量部当たり約2.0~約7.0重量部(phr)の1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)及び約0.73~約15.37phrのギ酸メチルを含む。HFO-1336mzzの少なくとも50重量%は、E-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(E-HFO-1336mzz)である。熱可塑性ポリマーは、ポリスチレンホモポリマー、ポリスチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの配合物である。本方法はまた、溶融発泡性組成物を押出して熱可塑性ポリマー発泡体を製造することも含む。熱可塑性ポリマー発泡体は、少なくとも80%の気泡が独立気泡である複数の気泡を有する。熱可塑性ポリマー発泡体は、構造的欠陥を本質的に含まない。熱可塑性ポリマー発泡体は、熱可塑性ポリマー及び発泡剤を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマー発泡体を調製するためのプロセスであって、
(a)熱可塑性ポリマー及び発泡剤を含む溶融発泡性組成物を提供することであって、前記発泡剤が、前記熱可塑性ポリマーの樹脂100重量部当たり約2.0~約7.0重量部(phr)の1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)及び約0.73~約15.37phrのギ酸メチルを含み、前記HFO-1336mzzの少なくとも50重量%がE-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(E-HFO-1336mzz)であり、前記熱可塑性ポリマーが、ポリスチレンホモポリマー、ポリスチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの配合物からなる群から選択される、ことと、
(b)前記溶融発泡性組成物を押出して前記熱可塑性ポリマー発泡体を製造することであって、前記熱可塑性ポリマー発泡体は、少なくとも80%の気泡が独立気泡である複数の気泡を有する、ことと、を含み、
前記熱可塑性ポリマー発泡体が、構造的欠陥を本質的に含まない、プロセス。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリマーがポリスチレンホモポリマーである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリマーがポリエチレンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーがポリプロピレンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記溶融発泡性組成物が核形成剤を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記溶融発泡性組成物が難燃剤を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリマー発泡体が、少なくとも0.10mmの平均気泡直径を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記押出プロセスが、少なくとも100℃の温度で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記押出プロセスが、少なくとも700psiの圧力で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリマーが、25g/10分未満のメルトフローレートを有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記HFO-1336mzzの少なくとも95重量%がE-HFO-1336mzzである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記HFO-1336mzzの本質的にすべてがE-HFO-1336mzzである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記発泡剤が、約3.0~約5.0phrのHFO-1336mzz及び約1.65~約9.15phrのギ酸メチルを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記発泡剤が、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)を本質的に含まない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記発泡剤が、最大で約4.0phrの1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
前記発泡剤が、約2.73~約25.37phrの量で存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記ギ酸メチル対前記E-HFO-1336mzzのモル比が、約2.0~約6.0の範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
熱可塑性ポリマーと、発泡剤と、を含む熱可塑性ポリマー発泡体であって
前記熱可塑性ポリマーが、ポリスチレンホモポリマー、ポリスチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの配合物からなる群から選択され、
前記熱可塑性ポリマーは、少なくとも80%の気泡が独立気泡である複数の気泡を画定し、
前記発泡剤が、前記熱可塑性ポリマーの樹脂100重量部当たり約2.0~約7.0重量部(phr)の1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)及び約0.73~約15.37phrのギ酸メチルを含み、
前記HFO-1336mzzの少なくとも50重量%が、E-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(E-HFO-1336mzz)であり、
前記熱可塑性ポリマー発泡体が、構造的欠陥を本質的に含まない、熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項19】
前記熱可塑性ポリマーがポリスチレンホモポリマーである、請求項18に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項20】
前記熱可塑性ポリマーがポリエチレンである、請求項18に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項21】
前記熱可塑性ポリマーがポリプロピレンである、請求項18に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項22】
核形成剤を更に含む、請求項18に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項23】
難燃剤を更に含む、請求項18に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項24】
赤外線減衰剤を更に含む、請求項18に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項25】
前記熱可塑性ポリマー発泡体が、少なくとも0.10mmの平均気泡直径を有する、請求項17に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項26】
前記熱可塑性ポリマーが、25g/10分未満のメルトフローレートを有する、請求項17に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項27】
前記HFO-1336mzzの少なくとも95重量%がE-HFO-1336mzzである、請求項17に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項28】
前記HFO-1336mzzの本質的にすべてがE-HFO-1336mzzである、請求項17に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項29】
前記発泡剤が、約3.0~約5.0phrのHFO-1336mzz及び約1.65~約9.15phrのギ酸メチルを含む、請求項17に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項30】
前記発泡剤が、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)を本質的に含まない、請求項17に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項31】
前記発泡剤が、最大で約4.0phrの1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)を更に含む、請求項17に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項32】
前記発泡剤が、約2.73~約25.37phrの量で存在する、請求項17に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【請求項33】
前記ギ酸メチルと前記E-HFO-1336mzzとのモル比が、約2.0~約6.0の範囲である、請求項17に記載の熱可塑性ポリマー発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレンを含む熱可塑性ポリマーの発泡剤としてのE-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(E-HFO-1336mzz)配合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2008/118627号(Dow Global Technologiesに譲渡)は、オゾン破壊係数(ODP)が0、地球温暖化係数(GWP)が50未満であり、かつ、発泡剤全体の50重量%(wt%)超を構成するこれらの発泡剤が高品質の泡を生成することを可能とするような、アルケニルポリマー、特にポリスチレン中の溶解度を有する発泡剤の発見について開示している。国際公開第2008/118627号の表2には、表1の化合物と比較して中程度の溶解度を有するHFO-1336mzz(CF3-CH=CH-CF3)が開示されている。表2のアルケンは、発泡剤組成物の50重量%超を構成することができるが、高品質の泡を得るにはポリマー中の可溶性がより高い追加の発泡剤が必要であることが更に開示されている(p.15、l.9-12)。高品質の発泡体とは、0.02~5mmの平均気泡サイズを有し、独立気泡であり、かつ64kg/m3以下の密度を有する発泡体として説明されている。高品質ではないことの指標は、小さい平均気泡サイズ、64kg/m3を超える密度、高い連続気泡含有量、及びブローホールである(p.2、l.9-13)。また、高品質の発泡体は、複数の気泡直径の大きさのものとして説明され、かつ発泡体の表面で破裂して不規則な表面を生じ得るブローホールを本質的に含まない(p.2、l.15-20)。破裂しないブローホールはマクロボイドと呼ばれる場合があり、破裂するブローホールによって生じる不規則な表面は、滑らかな表面(表皮)の逆のものである。
【0003】
国際公開第2008/0154612号(E.I.Du Pont De Nemours and Companyに譲渡)は、HFO-1336mzzのE立体異性体及びギ酸メチル、n-ペンタン、2-メチルブタン、E-1,2-ジクロロエチレン(E-HFO-1130)、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)、n-ブタン、又はイソブタンを含む共沸組成物及び共沸様組成物について開示している。
【0004】
米国特許出願公開第2011/0144216号(Honeywell International Inc.に譲渡)は、HFO-1336mzzのZ立体異性体を含む組成物、及び発泡剤としての使用を含むそれらの潜在的な使用について開示している。米国特許出願公開第2011/0144216号は、Z-HFO-1336mzzと、ヒドロフルオロオレフィン(HFO)、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、ヒドロフルオロエーテル(HFE)、クロロフルオロカーボン(CFC)、二酸化炭素、オレフィン、有機酸、アルコール、炭化水素、エーテル、アルデヒド、ケトン、及びギ酸メチルなどの他のものとの配合物について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/118627号
【特許文献2】国際公開第2008/0154612号
【特許文献3】米国特許出願公開第2011/0144216号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
熱可塑性ポリマー発泡体を調製するためのプロセスを開示する。本プロセスは、熱可塑性ポリマー及び発泡剤を含む溶融発泡性組成物を提供することを含む。発泡剤は、熱可塑性ポリマー樹脂100重量部当たり約2.0~約7.0重量部(phr)の1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)及び約0.73~約15.37phrのギ酸メチルを含む。HFO-1336mzzの少なくとも50重量%は、E-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(E-HFO-1336mzz)である。熱可塑性ポリマーは、ポリスチレンホモポリマー、ポリスチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの配合物である。本方法はまた、溶融発泡性組成物を押出して熱可塑性ポリマー発泡体を製造することも含む。熱可塑性ポリマー発泡体は、少なくとも80%の気泡が独立気泡である複数の気泡を有する。熱可塑性ポリマー発泡体は、構造的欠陥を本質的に含まない。
【0007】
熱可塑性ポリマー発泡体は、熱可塑性ポリマー及び発泡剤を含む。熱可塑性ポリマーは、ポリスチレンホモポリマー、ポリスチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はこれらの配合物である。熱可塑性ポリマーは、少なくとも80%の気泡が独立気泡である複数の気泡を画定する。発泡剤は、約2.0~約7.0phrのHFO-1336mzzと、約0.73~約15.37phrのギ酸メチルとを含む。HFO-1336mzzの少なくとも50重量%は、E-HFO-1336mzzである。熱可塑性ポリマー発泡体は、構造的欠陥を本質的に含まない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】異なる圧力における軟化ポリスチレン中の発泡剤の溶解度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に従って発泡させられる熱可塑性ポリマーは、ポリスチレン、ポリエチレン、又はポリプロピレンを含む。
【0010】
発泡剤は、熱可塑性ポリマーの発泡を助けるものである。
【0011】
ポリスチレンはスチレンホモポリマーであってもよく、又はスチレン以外の共重合モノマー、すなわちポリスチレンコポリマーを含有していてもよい。また、熱可塑性ポリマーは、ポリスチレンと他の熱可塑性ポリマーとの配合物であってもよい。また、他の熱可塑性ポリマーは、スチレンとスチレン以外のモノマーとのコポリマーであってよい。スチレン以外の好ましいモノマーは、アクリロニトリルである。一実施形態では、熱可塑性ポリマーは、ポリスチレンホモポリマー、ポリスチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、ポリエチレンホモポリマー、ポリプロピレンホモポリマー、及びこれらの配合物からなる群から選択される。
【0012】
ポリエチレンはエチレンホモポリマーであってもよく、又はエチレン以外の共重合モノマー、すなわちポリエチレンコポリマーを含有していてもよい。
【0013】
ポリプロピレンはプロピレンホモポリマーであってもよく、又はプロピレン以外の共重合モノマーすなわちポリプロピレンコポリマーを含有していてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、発泡させられる熱可塑性ポリマーがポリスチレンであるか又はポリスチレンと他の熱可塑性ポリマーとの配合物であるかによらず、発泡させられる熱可塑性ポリマー中の主な重合モノマー(単位)はスチレンであることが好ましい。より好ましくは、スチレンの重合単位は、発泡させられる熱可塑性ポリマーを構成する重合モノマー単位の少なくとも70モル%、あるいは少なくとも80モル%、あるいは少なくとも90モル%、あるいは少なくとも100モル%を構成する。
【0015】
熱可塑性ポリマーがスチレンコポリマーを含有する場合、スチレンと共重合させられる他のモノマーの量は、コポリマーを構成する総モル数(100%)に基づいたコポリマーのスチレン含有量がコポリマーの少なくとも60モル%、好ましくはコポリマーの少なくとも70モル%、又は少なくとも80モル%、又は少なくとも90モル%になるような量で存在する。これは、スチレンコポリマーが熱可塑性ポリマー中の唯一のスチレン含有ポリマーであろうと、スチレンホモポリマー若しくは他のスチレンコポリマーなどの他の熱可塑性ポリマーとの配合物であろうと当てはまる。
【0016】
いくつかの実施形態では、発泡させられる熱可塑性ポリマーは全体がポリスチレン、特にスチレンホモポリマーである。発泡させられる熱可塑性ポリマーが上述のようなポリスチレンと他の熱可塑性ポリマーとの配合物である場合、この配合物のポリスチレン成分は、好ましくは、ポリスチレンと他の熱可塑性ポリマーとの合計重量の少なくとも80重量%を構成するスチレンホモポリマーである。
【0017】
発泡させられる熱可塑性ポリマーの分子量は、発泡体の用途の要件に必要な強度を与えるうえで十分に高い。強度の要件が、発泡生成物の最低密度を決定する。また、熱可塑性ポリマーの高い分子量は、発泡生成物の強度にも寄与する。分子量の指標は、規定の荷重下で規定のオリフィスを通って溶融ポリマーが流れる速度である。流速が遅くなるほど、分子量が高くなる。メルトフローレートの測定値は、ASTM D 1238に従って200℃で、また溶融ポリマーに対して5kgの荷重を使用して求められる。規定の時間内にオリフィスを通って流れる溶融ポリマーの重量のため、メルトフローレートはg/10分で記録することができる。好ましくは、熱可塑性ポリマーのメルトフローレートは、20g/10分以下、より好ましくは15g/10分以下、最も好ましくは10g/10分以下である。
【0018】
一実施形態では、本明細書に開示されるすべてのメルトフローレートの最低メルトフローレートは、少なくとも1g/10分であり、本明細書に開示されるメルトフローレートは、すべての値がg/10分であるものとして、1~25、1~20、1~15、1~10、2~8、2~6、又は3~5の範囲である。
【0019】
ポリスチレンを含む熱可塑性ポリマーへの言及は、ポリスチレン自体にも適用される。したがって、例えば、ポリスチレンを含む熱可塑性ポリマーについての開示を、本開示のポリスチレンに置き換えることができる。
【0020】
E-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(E-HFO-1336mzz)及びギ酸メチル(MF)を含有する発泡剤の、本組成物中で使用される熱可塑性ポリマー中での溶解度は、MFを含まない同じ発泡剤の同じポリマー中での溶解度よりも大幅に高いことが期せずして発見された。この予想外の溶解度の1つの利点として、E-HFO-1336mzz及びMFを含む配合物の発泡剤が、高品質の発泡体を形成するための安定した押出プロセスを可能にすることがある。
【0021】
HFO-1336mzzは、熱可塑性ポリマー樹脂100部当たり少なくとも2.0重量部(phr)の量で熱可塑性ポリマー発泡体中に存在する。本明細書で使用する場合、phrとは、熱可塑性ポリマー樹脂100重量当たりの発泡助剤又は発泡助剤成分の重量を指す。本明細書で使用する場合、mhrとは、熱可塑性ポリマー樹脂100グラム当たりの発泡助剤又は発泡助剤成分のモル数を指す。
【0022】
HFO-1336mzzの少なくとも50重量%はE-HFO-1336mzzであり、例えば、HFO-1336mzzの少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも99重量%、又は本質的にすべてがE-HFO-1336mzzである。残りのHFO-1336mzzは、HFO-1336mzzの本質的にすべてよりも少ない量がE-HFO-1336mzzである場合、Z-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(Z-HFO-1336mzz)である。
【0023】
HFO-1336mzzは、好ましくは約2.0~約7.0phrの範囲、より好ましくは約3.0~約5.0phrの範囲の量で熱可塑性ポリマー発泡体中に存在する。
【0024】
MFは、熱可塑性ポリマー発泡体中に、少なくとも0.73phr、好ましくは約0.73phr~約15.37phrの範囲、より好ましくは約1.65phr~約9.15phrの範囲の量で存在する。ギ酸メチルは、好ましくは、E-HFO-1336mzzに対して約2.0~約6.0の範囲、より好ましくは約3.0~約5.0の範囲のモル比となるように選択される。
【0025】
いくつかの実施形態では、発泡剤は1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)を本質的に含まない。いくつかの実施形態では、発泡剤は、HFC-152aを更に含む。HFC-152aは、存在する場合、熱可塑性ポリマー中に好ましくは最大で約4.0phr、より好ましくは約1.0phr~約3.0phrの範囲の量で存在する。
【0026】
熱可塑性ポリマー中の発泡剤の総量は、少なくとも2.73phr、好ましくは約2.73phr~約25.37phrの範囲、より好ましくは約4.65phr~約17.15phrの範囲である。
【0027】
発泡剤は、約21~約74重量%のHFO-1336mzz、約13~約69重量%のギ酸メチル、及び0~約52重量%のHFC-152a、好ましくは約26~約64重量%のHFO-1336mzz、約22~約65重量%のギ酸メチル、及び0~約39重量%のHFC-152aを含む。特に注目に値するのは、最小限のHFC-152aを含有するか、又はHFC-152aを本質的に含有しない発泡剤組成物である。
【0028】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、約31~約74重量%のHFO-1336mzz及び約27~約69重量%のギ酸メチル、好ましくは約35~約64重量%のHFO-1336mzz及び約35~約65重量%のギ酸メチルを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、発泡剤は、約21~約56重量%のHFO-1336mzz、約13~約61重量%のギ酸メチル、及び約12~約52重量%のHFC-152a、好ましくは約26~約46重量%のHFO-1336mzz、約22~約53重量%のギ酸メチル、及び約17~約39重量%のHFC-152aを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、発泡剤の少なくとも95重量%、あるいは発泡剤の少なくとも98重量%、あるいは少なくとも99重量%が、E-HFO-1336mzzとMFとの合計量である。
【0031】
いくつかの実施形態では、発泡剤の少なくとも95重量%、あるいは発泡剤の少なくとも98重量%、あるいは少なくとも99重量%が、E-HFO-1336mzz、Z-HFO-1336mzz、及びMFの合計量である。
【0032】
いくつかの実施形態では、発泡剤の少なくとも95重量%、あるいは発泡剤の少なくとも98重量%、あるいは少なくとも99重量%が、E-HFO-1336mzz、HFC-152a、及びMFの合計量である。
【0033】
いくつかの実施形態では、発泡剤の少なくとも95重量%、あるいは発泡剤の少なくとも98重量%、あるいは少なくとも99重量%が、E-HFO-1336mzz、Z-HFO-1336mzz、HFC-152a、及びMFの合計量である。
【0034】
いくつかの実施形態では、発泡剤配合物は、共沸又は近共沸組成物である。他の実施形態では、発泡剤配合物は、共沸組成物でも近共沸組成物でもない。
【0035】
いくつかの実施形態では、発泡剤配合物は、炭化水素、ヒドロフルオロオレフィン、又はヒドロフルオロカーボンを含み得るがこれらに限定されない他の化合物を更に含んでもよい。
【0036】
一実施形態では、発泡体生成物は、少なくとも0.10mmの平均気泡サイズを有する複数の気泡を画定する、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びこれらの配合物からなる群から選択される熱可塑性材料を含むポリマーマトリックスと、E-HFO-1336mzz及びMFを含む発泡剤とを含む。
【0037】
他の実施形態では、発泡させられる溶融組成物は、発泡させられるポリマー及びE-HFO-1336mzz発泡剤以外の添加剤、例えば、補助発泡剤、核形成剤、難燃剤、気泡安定剤、界面活性剤、防腐剤着色剤、酸化防止剤、補強剤、充填剤、帯電防止剤、赤外線(IR)減衰剤、押出助剤、可塑剤、粘度調整剤、及び他の既知の添加剤を、いずれも所望の効果を得るための量で含有することができる。本発明は、本明細書に添付されるいずれかの特許請求の範囲で指定される場合があることを除いて、いかなる特定の添加剤にも限定されない。
【0038】
核形成剤の好ましい例としては、タルク、黒鉛、及びケイ酸マグネシウムが挙げられる。
【0039】
好ましい難燃剤の例としては、テトラブロモ-ビスフェノールA及び高分子難燃剤が挙げられる。
【0040】
溶融組成物は、事実上発泡性組成物である。溶融組成物中の発泡剤の量は、発泡剤以外の添加剤の量、及び発泡生成物において望まれる密度に依存する。一実施形態では、発泡剤の量は、熱可塑性ポリマー樹脂100グラム当たり0.01~0.2モル(mhr)の発泡剤である。別の実施形態では、発泡剤の量は、0.05~0.15mhrである。別の実施形態では、発泡剤の量は、0.08~0.12mhrである。様々な実施形態において、これは、発泡体の所望の密度及び発泡剤の組成に応じて異なり得る。いくつかの実施形態では、発泡剤の量は、0.024~0.344mhrの範囲、好ましくは0.046~0.228mhrの範囲である。
【0041】
一実施形態では、押出成形機を使用して発泡プロセスを行って、溶融組成物を形成し、これを押し出して発泡生成物を形成する。熱可塑性ポリマーは押出成形機への供給原料を形成する。発泡剤は、好ましくは、押出成形機の供給端と押出端との中間の位置で押出成形機に供給され、典型的には、供給原料が押出スクリューによって押出成形機の長さに沿って押出成形機へと前進するときに形成される溶融組成物に供給される。溶融組成物への他の添加剤は、便利な箇所で、添加剤の状態によって決定され得るように添加される。例えば、固体添加剤は、押出成形機の供給端部に、場合によっては粒子状形態のポリマー供給原料との混合物として押出成形機に便宜よく添加することができる。押出成形機内の溶融組成物は、ダイを通して押し出され、それによって発泡性組成物を膨張させて発泡生成物にする。次いで、シート、厚板、ロッド、又は管などの形態であり得る発泡生成物を冷却する。
【0042】
組成物が溶融して溶融組成物が形成される押出成形機内の領域では、この溶融は加熱により、また、混合プロセスで発生する熱により生じ、溶融物を形成する。これは、押出成形機の溶融物混合領域とみなされる。一実施形態では、溶融物混合領域内の温度は、少なくとも185℃、より好ましくは少なくとも190℃、又は少なくとも200℃、又は少なくとも210℃である。別の実施形態では、本明細書に開示されるすべての溶融混合温度における最高温度は、250℃である。本明細書に開示される溶融混合温度は、混合時の混合ゾーンにおける溶融物の温度である。一実施形態では、溶融混合が行われる圧力は、少なくとも2000psi(138バール)、より好ましくは少なくとも3000psi(207バール)、より好ましくは少なくとも4000psi(276バール)である。一実施形態では、溶融混合が実施される開示されたすべての最低圧力についての最高値は、5000psi(345バール)以下である。本明細書に開示される圧力は、ゲージ圧である。
【0043】
溶融組成物が押出される押出成形機内の領域では、溶融組成物は、押出が行われる温度が好ましくは少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも110℃、より好ましくは少なくとも120℃、更により好ましくは少なくとも125℃となるように冷却される。一実施形態では、本明細書に開示されるすべての最低押出温度における最高値は、好ましくは140℃以下である。本明細書に開示される押出温度は、押出時の溶融物の温度である。
【0044】
一実施形態では、押出は、少なくとも700psi(48バール)、好ましくは少なくとも1000psi(69バール)、より好ましくは少なくとも1300psi(90バール)の圧力で行われる。本明細書に開示される最低押出圧力についての最高値は、好ましくは2000psi(138バール)以下である。押出圧力は、押出ダイ内部の圧力である。
【0045】
上記のメルトフローレート、温度、及び圧力についての複数の範囲の開示は、所望の特定の発泡構造を得るために、本発明の実施において任意の組み合わせで使用することができる。例えば、泡密度の低い発泡生成物を得るためには2000~5000psi(138~345バール)の溶融混合圧力が好ましく、本明細書に開示される滑らかなスキンの独立気泡発泡体生成物密度のいずれかを形成するためには、この圧力範囲は溶融混合及び押出の温度範囲のいずれかで使用することができる。同じことが、溶融混合のための3000~5000psi(207~345バール)の圧力範囲と共に、700~2000psi(48~138バール)の溶融押出圧力範囲についても当てはまる。最も好ましくは、溶融混合(138~345バール)及び押出(48~138バール)のための2つの好ましい圧力範囲が共に使用される。25、20、15、及び10以下、かつ最低少なくとも1(すべての値はg/10分である)の発泡させられるポリマーについてのメルトフローレートは、発泡生成物の所望の結果に応じて、これらの圧力及び温度の組み合わせのいずれかと共に使用することができる。
【0046】
好ましくは、押出後の熱可塑性ポリマー発泡体及び発泡剤は、以下の4つの発泡生成物属性のうちの少なくとも1つ、2つ以上、又はすべてを示す。
(1)熱可塑性ポリマー発泡体は、長期発泡体耐熱性目標値を満たすように、約2.0phr以上のHFO-1336mzz濃度を有し、HFO-1336mzzの少なくとも50重量%はE-HFO-1336mzzである。
(2)熱可塑性ポリマー発泡体は、発泡体の圧潰及び複数の気泡直径を上回るサイズのブローホールを含む(ただし、これらに限定されない)構造的欠陥を本質的に含まないという点で、良好な発泡体品質を有する。
(3)熱可塑性ポリマー発泡体は、0.10mm超、好ましくは0.15mm超の平均発泡体セル直径を有する。
(4)熱可塑性ポリマー発泡体は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の独立気泡を有する。独立気泡含有量は、ASTM法D6226-05に従って測定することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、押出後の熱可塑性ポリマー発泡体及び発泡剤は、約40kg/m3以下、より好ましくは約35kg/m3又は約25kg/m3以下の密度を有する。密度は、ISO法845-85に従って測定することができる。いくつかの実施形態では、発泡生成物の最低必要強度(圧縮)は、密度が少なくとも16kg/m3であることを規定する。
【0048】
好ましくは、熱可塑性ポリマー発泡体は、熱可塑性ポリマーと、E-HFO-1336mzz及びMFを含む発泡剤とを含む溶融組成物を押出すことを含むプロセスによって形成される。好ましくは、押出は、少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも120℃、又は更により好ましくは少なくとも125℃の温度で、少なくとも700psi、より好ましくは少なくとも1000psi、又は更により好ましくは少なくとも1300psiaの圧力下で行われ、その結果として、独立気泡で、欠陥のない発泡熱可塑性ポリマーが得られる。本明細書に開示される押出温度は、押出時の溶融物の温度である。押出圧力は、押出ダイ内部の圧力である。
【0049】
本明細書で使用する場合、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、又はこれらの他の任意の変化形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、これらの要素のみに必ずしも限定されるものではなく、そのようなプロセス、方法、物品、又は装置に対して明示的に記載されていない、又はこれらに固有のものではない、他の要素も含む場合がある。
【0050】
移行句「からなる(consisting of)」は、特定されていないあらゆる要素、工程、又は成分を除外する。特許請求の範囲においては、材料に通常付随する不純物を除き、そのような語句は、記載された材料以外の材料を含むことに対して特許請求の範囲を限ることになる。語句「からなる」がプリアンブルの直後ではなく特許請求の範囲の本文の分節内で現れる場合、この語句はその節内に示される要素のみを限定するものであり、その他の要素が特許請求の範囲全体から除外されるわけではない。移行句「から本質的になる」は、これらの追加的に含まれる材料、工程、機構、構成成分、又は要素が、特許請求される発明の基本的及び新規の特徴、特に本発明のプロセスのいずれかの所望の結果を達成するための作用機序に実質的に影響を及ぼさないことを条件に、文字通り開示されているものに加えて、材料、工程、機構、構成成分、又は要素を含む、組成物、方法を定義するために使用される。「から本質的になる」という用語は、「~を含む」と「~からなる」との間の中間の意味をもつ。
【0051】
出願人らが、発明又はその一部分を、「含む」などの非限定的な用語で定義した場合、(特に明記しない限り)その記載は用語「から本質的になる」又は「からなる」を用いる発明も含むように解釈されるべきであることが容易に理解されるはずである。
【実施例】
【0052】
本発明を、具体的な実施例によって、より詳細に説明する。以下の実施例は、例示目的のために提供され、いかなる意味でも本発明を限定することを意図するものではない。
【0053】
実施例1:
軟化ポリスチレンホモポリマー中のE-HFO-1336mzz/HFC-152a/ギ酸メチル配合物の溶解度
未希釈のE-HFO-1336mzz(比較例1)、50重量%のE-HFO-1336mzzと50重量%のHFC-152aとの配合物(比較例2)、40重量%のE-HFO-1336mzzと40重量%のHFC-152aと20重量%のギ酸メチルとの配合物(本発明の実施例1)、及び41重量%のHFC-134aと9重量%のHFC-134と50重量%のHFC-152aとの参照流体(Formacel(商標)Z-6)(比較例3)の軟化ポリスチレン中の溶解度を評価した。
【0054】
78グラムのポリスチレンホモポリマー試料を125ccのステンレススチール反応器(Parr Instrument Company,Moline,IL)に充填した。熱可塑性ポリマーは、溶融ポリマーに対して5kgの重りを用いて200℃でASTM D1238の手順に従って測定して25g/10分以下のメルトフローレート(MFR又はMFIと呼ばれる場合もある)を示すことによって示されるように、高分子量であることが好ましい。
【0055】
反応器を計量し、入口/出口配管に取り付け、油浴に浸し、排気した。HiP圧力発生器(Graco High Pressure Equipment Inc.,Erie,PA)を使用して、予想される溶解度を上回る量の発泡剤を反応器に充填した。油浴を約90分間かけて179℃まで加熱し、次いで179℃で30分間維持した。システム圧力をモニタリングし、発泡プロセスで使用される押出成形機の圧力に類似する最終圧力を記録した。反応器を油浴から取り出し、室温まで冷却した。過剰な(ポリスチレン中に溶解していない)発泡剤を排出又は放出した後、反応器(内部に再固化したポリスチレンを含む)を計量した。流体の溶解度は、179℃の選択された温度及び記録された最終圧力での選択された発泡剤流体の吸収から生じる軟化ポリスチレン試料の重量の増分として、式(1)に従って熱可塑性ポリマー樹脂100部当たりの部(phr)で定量化した。
溶解度(phr)=(重量増分÷78)×100 (1)
図1は、軟化ポリスチレン中での比較例1(10)、比較例2(20)、及び比較例3(30)の溶解度と比較して、軟化ポリスチレン中の本発明の実施例1(40)の向上した溶解度を示す。
【0056】
図1は、E-HFO-1336mzzとHFC-152a及びギ酸メチル(MF)との配合物が、同じ条件で、未希釈のE-HFO-1336mzzの溶解度及びE-HFO-1336mzzとHFC-152aとの配合物の溶解度を大幅に上回る軟化ポリスチレン中の溶解度を期せずして有し得ることを示している。
【0057】
179℃及び1,557psiaで5.0g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有する軟化ポリスチレンホモポリマー中の比較例1の溶解度は、ポリスチレン100g当たり2.6g(2.6phr)と測定された。
【0058】
同じポリスチレン中、同じ温度(179℃)及び圧力(1,557psia)条件での比較例2の溶解度は、ポリスチレン100g当たり7.3g(又は7.3phr)と測定された。
【0059】
これに対して、同じポリスチレン中、同じ温度(179℃)及び圧力(1,557psia)条件下での本発明の実施例1の溶解度は、ポリスチレン100g当たり12.0g(又は12.0phr)と測定された(すなわち、未希釈のE-HFO-1336mzzの溶解度より367%超高く、50/50重量%のE-HFO-1336mzz/HFC-152a配合物の溶解度よりも64%超高かった)。
【0060】
参考として、従来の押出ポリスチレン(XPS)発泡剤、すなわちFormacel(商標)Z-6(比較例3)の、同じポリスチレン中、同じ温度(179℃)及び圧力(1,557psia)条件下での溶解度は、ポリスチレン100g当たり7.9g(又は7.9phr)と測定された。
【0061】
したがって、本発明の実施例1の溶解度は、比較条件下で、従来のXPS発泡剤の溶解度よりも52%超高かった。
【0062】
実施例2:
発泡剤としてE-HFO-1336mzz/ギ酸メチル配合物を使用した、2.9phrを超えるE-HFO-1336mzzを含有するポリスチレン発泡体の押出成形
E-HFO-1336mzzとHFC-152aとの配合物(比較例4~6)、未希釈のギ酸メチル(比較例7)、及びE-HFO-1336mzzとギ酸メチルとの配合物(本発明の実施例2)のポリスチレン用発泡剤としての有効性を評価した。
【0063】
比較例4(CE4)における発泡剤は、約22重量%のE-HFO-1336mzzと約78重量%のHFC-152aを含んでいた。比較例5(CE5)における発泡剤は、約33重量%のE-HFO-1336mzzと約67重量%のHFC-152aを含んでいた。比較例6(CE6)における発泡剤は、約39重量%のE-HFO-1336mzzと約61重量%のHFC-152aを含んでいた。核形成剤(成核剤)(すなわち比較例7(CE7)におけるタルク)は、押出機内で形成された溶融組成物中にポリスチレン及び発泡剤と共に存在した。本発明の実施例2(IE2)における発泡剤は、約38重量%のE-HFO-1336mzzと約62重量%のHFC-152aを含んでいた。表1の発泡剤の総量は、ポリスチレン100グラム当たりの発泡剤のモル数(mhr)として与えられる。ポリスチレンは、4g/10分のメルトフローレートを有するPS 535BとしてTotal Petrochemicalsから入手可能なスチレンホモポリマーとした。
【0064】
9つの個別に制御される、電気加熱されたゾーンを備える50mmの二軸実験室用押出機を使用してポリスチレンを押出した。押出機の最初の4つのゾーンを使用して、ポリマーを加熱及び軟化させた。発泡剤注入位置から押出機の端部までの残りのバレル部分は、選択された、より低い温度に設定した。3mmの開口部を有する環状ダイを、発泡ロッド試料の押出に使用した。表1は、押出機の運転パラメータ、及び4つの上記の発泡体生成物の属性を含む押出されたポリスチレンの得られた特性を示す。
【0065】
【表1】
1ブローホールがあった。
2ブローホールがあった。不安定な押出運転
3初期膨張後、冷却時に発泡体が潰れた。
【0066】
HFC-152aは、Formacel(商標)Z-6(HFC-134/HFC-134a/HFC-152a;9/41/50重量%)及びOpteon(商標)1000(Z-HFO-1336mzz)/HFC-152a配合物を含む従来のXPSフォーム発泡剤用の効果的な共発泡剤として実証されている(例えば、本明細書に参照により援用する米国特許出願公開第2018/0327565号を参照)。発泡剤としてE-HFO-1336mzz/HFC-152a配合物を用いてポリスチレン発泡体を押出成形する試みでは、所定の属性を有する発泡体の製造を可能とする一連の運転条件(従来の発泡剤を用いて実施される条件の範囲内)を特定できなかった。太字で示された表1の値は、所定の属性を有していなかった。E-HFO-1336mzzのレベルが、比較例4から比較例5、比較例6へと増加するにつれて、発泡体の品質は劣化した。
【0067】
E-HFO-1336mzzの共発泡剤としてギ酸メチル(MF)についても評価した。発泡剤として未希釈のMFを用いてポリスチレン発泡体を押出成形する試みでは、比較例7に示されるように、所定の属性を満たす発泡体の製造を可能とする一連の運転条件(従来の発泡剤を用いて実施される条件の範囲内)を特定できなかった。
【0068】
E-HFO-1336mzz/MF配合物は、驚くべきことに、未希釈のE-HFO-1336mzz、未希釈のギ酸メチル、及びE-HFO-1336mzz/HFC-152a配合物が効果的でないことが見出された条件と同様の押出操作条件下で、本発明の実施例2によって示されるように、所定の属性を満たすポリスチレンフォームを得るうえで発泡剤として有効であることが見出された。これは、構造欠陥を本質的に含まず、平均気泡直径が0.10mmを超え、独立気泡含量が80%を超える、2.9phrを超えるE-HFO-1336mzzを含有するポリスチレン発泡断熱材を製造するための発泡剤としてのE-HFO-1336mzz/ギ酸メチル配合物の性能を実証するものである。本発明の実施例2の発泡断熱材中にマクロボイド及びブローホールは存在していなかった。
【0069】
実施例3:
5.0phrのHFO-1336mzzを含有する、発泡剤としてE-HFO-1336mzz/Z-HFO-1336mmz/HFC-152a/メチルホルメート配合物を使用したポリスチレンフォームの押出
E-HFO-1336mzz、HFC-152a、及びギ酸メチルの配合物(比較例8)と、E-HFO-1336mzz、Z-HFO-1336mzz、HFC-152a、及びギ酸メチルの配合物(本発明の実施例3)のポリスチレン用発泡剤としての性能を評価した。
【0070】
比較例8(CE8)における発泡剤は、約53重量%のE-HFO-1336mzz、約6重量%のHFC-152a、及び約41重量%のギ酸メチルを含んでいた。本発明の実施例3(IE3)における発泡剤は、約26.5重量%のE-HFO-1336mzz、約26.5重量%のZ-HFO-1336mzz、約6重量%のHFC-152a、及び約41重量%のギ酸メチルを含んでいた。ポリスチレンは実施例2で使用したものと同じであった。
【0071】
実施例2と同じ50mmの実験室用二軸スクリュー押出機を用いてポリスチレンを押出した。表2は、押出機の運転パラメータ及び押出ポリスチレン発泡体の得られた特性を示す。
【0072】
【0073】
表2に示されるように、比較例8(HFO-1336mzzのE立体異性体を含有するがZ立体異性体を含有しない配合物)によって、約5phrのE-HFO-1336mzzを含有する押出ポリスチレンが得られたが、従来の発泡剤を用いて実施される条件の範囲内の押出運転条件下で、発泡体の品質、気泡直径、及び独立気泡のパーセントについての所定の属性を満たすポリスチレン発泡体の製造を可能とする発泡剤としては効果的ではなかった。
【0074】
表2に示されるように、本発明の実施例3(等量のHFO-1336mzzのE立体異性体及びZ立体異性体を含有する配合物)は、驚くべきことに、比較例8が効果的でないことが見出された条件と同様の押出操作条件下で、発泡体の品質、気泡直径、及び独立気泡のパーセントについての所定の属性を満たすポリスチレンフォームの製造を可能とする発泡剤として効果的であることが見出された。
【国際調査報告】