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特表2024-521299導電性コーティングを有する電解槽双極性プレートおよび多孔質ガス拡散層およびその作製方法
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  • 特表-導電性コーティングを有する電解槽双極性プレートおよび多孔質ガス拡散層およびその作製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】導電性コーティングを有する電解槽双極性プレートおよび多孔質ガス拡散層およびその作製方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/23 20210101AFI20240524BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240524BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240524BHJP
   C25B 11/031 20210101ALI20240524BHJP
   C25B 11/042 20210101ALI20240524BHJP
【FI】
C25B9/23
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B11/031
C25B11/042
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570396
(86)(22)【出願日】2022-06-06
(85)【翻訳文提出日】2023-11-14
(86)【国際出願番号】 US2022032316
(87)【国際公開番号】W WO2022260983
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】63/208,589
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522203075
【氏名又は名称】オーミアム インターナショナル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】カルッパイア, チョカリンガム
(72)【発明者】
【氏名】バランタイン, アルネ
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA15
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB15
4K021DB21
4K021DB31
4K021DB43
4K021DB53
(57)【要約】
双極性プレートまたは多孔質輸送層のうちの少なくとも1つから選択される、プロトン交換膜(PEM)電解槽構成要素は、その少なくとも1つの表面上に、導電性窒化金属または導電性酸化金属の導電性かつ酸化的に安定したコーティングを有する。いくつかの実施形態では、電解槽構成要素は、双極性プレートを備える。いくつかの他の実施形態では、電解槽構成要素は、多孔質輸送層を備える。いくつかの特定の実施形態では、多孔質輸送層は、多孔質チタンシートを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
双極性プレートまたは多孔質輸送層のうちの少なくとも1つを備えるプロトン交換膜(PEM)電解槽構成要素であって、前記電解槽構成要素は、前記電解槽構成要素の少なくとも1つの表面上に、導電性窒化金属または導電性酸化金属を含む導電性かつ酸化的に安定したコーティングを備える、プロトン交換膜(PEM)電解槽構成要素。
【請求項2】
前記コーティングは、前記導電性窒化金属を備える、請求項1に記載の構成要素。
【請求項3】
前記導電性窒化金属は、TiN、WN、またはTaNのうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の構成要素。
【請求項4】
前記コーティングは、前記導電性酸化金属を含む、請求項1-3のいずれかに記載の構成要素。
【請求項5】
前記導電性酸化金属は、式TiO2-x(式中0.1≦x≦0.9)を有する金属を豊富に含む酸化チタン、SnまたはPbの二酸化物、酸化マンガン、式ZrO2-x(式中0.1≦x≦0.9)を有する金属を豊富に含む酸化ジルコニウム、酸化レニウム、酸化イリジウム、酸化コバルト、酸化タングステン、混合酸化金属、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項4に記載の構成要素。
【請求項6】
前記コーティングは、前記導電性酸化金属と、前記導電性窒化金属とを含む、請求項1に記載の構成要素。
【請求項7】
前記導電性かつ酸化的に安定したコーティングは、約0.2ミクロン~約2ミクロンの厚さを有する、請求項1-6のいずれかに記載の構成要素。
【請求項8】
前記構成要素は、前記双極性プレートを備える、請求項1-7のいずれかに記載の構成要素。
【請求項9】
前記構成要素は、前記多孔質輸送層を備え、前記多孔質輸送層は、多孔質チタンシートを備える、請求項1-7のいずれかに記載の構成要素。
【請求項10】
PEM電解槽であって、
アノード側流動プレートであって、前記アノード側流動プレートおよび請求項9に記載の前記多孔質輸送層は、前記電解槽のアノード側に位置する、アノード側流動プレートと、
カソード側流動プレートと、
前記アノード側流動プレートと前記カソード側流動プレートとの間に位置するPEMポリマー電解質と、
前記多孔質輸送層と前記PEMポリマー電解質との間に位置するアノード電極と、
前記PEMポリマー電解質と前記カソード側流動プレートとの間に位置するカソード側ガス拡散層と、
前記カソード側ガス拡散層と前記PEMポリマー電解質との間に位置するカソード電極と
を備える、PEM電解槽。
【請求項11】
双極性プレートまたは多孔質輸送層のうちの少なくとも1つを備えるプロトン交換膜(PEM)電解槽構成要素を、その少なくとも1つの表面上に、導電性窒化金属または導電性酸化金属を含む導電性かつ酸化的に安定したコーティングを用いてコーティングすることを含む、方法。
【請求項12】
前記導電性かつ酸化的に安定したコーティングは、前記導電性窒化金属を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記導電性窒化金属は、TiN、WN、またはTaNのうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コーティングは、前記導電性酸化金属を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記導電性酸化金属は、式TiO2-x(式中0.1≦x≦0.9)を有する金属を豊富に含む酸化チタン、SnまたはPbの二酸化物、酸化マンガン、式ZrO2-x(式中0.1≦x≦0.9)を有する金属を豊富に含む酸化ジルコニウム、酸化レニウム、酸化イリジウム、酸化コバルト、酸化タングステン、混合酸化金属、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記コーティングは、前記導電性窒化金属と、前記導電性窒化金属とを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記導電性かつ酸化的に安定したコーティングは、約0.2ミクロン~約2ミクロンの厚さを有する、請求項11-16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記電解槽構成要素は、前記双極性プレートを備える、請求項11-17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記電解槽構成要素は、前記多孔質輸送層を備え、前記多孔質輸送層は、多孔質チタンシートを備える、請求項11-17のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記多孔質輸送層をPEM電解槽の中に組み込むことをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記コーティングステップは、スパッタリングによって遂行される、請求項11-20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記コーティングステップは、押付、粉末冶金プロセス、またはテープ成形方法によって遂行される、請求項11-21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記導電性かつ酸化的に安定したコーティングは、その場で形成される、請求項11-22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記構成要素は、前記多孔質輸送層を備え、
前記多孔質輸送層は、粉末冶金によって形成される多孔質チタンシートを備える、
請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その内容全体が、参照することによって本明細書に組み込まれる、2021年6月9日に出願され、「ELECTROLYZER BIPOLAR PLATES AND POROUS GAS DIFFUSION LAYER HAVING AN OXIDATIVELY STABLE AND ELECTRICALLY CONDUCTIVE COATING AND METHOD OF MAKING THEREOF」と題された、米国仮出願第63/208,589号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、概して、電解槽を対象とし、特に、電解槽に関する双極性プレートおよびアノードガス拡散層/多孔質輸送層のためのコーティング、およびその作製方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
プロトン交換膜(PEM)電解槽は、水を別個の水素流および酸素流に転換するために使用され得る。そのようなPEM電解槽は、アノード電極とカソード電極との間に位置する、ポリマー電解質を含む。アノード側およびカソード側の多孔質ガス拡散層が、個別のアノード電極およびカソード電極に隣接して位置する。
【0004】
現在のところ、PEM電解槽は、種々の電解槽構成要素の腐食を引き起こす、酸化環境内で動作する。酸化は、電解槽構成要素の電気抵抗を増加させ、したがって、効率を低減させる。必要とされるものは、腐食に対して耐性がある、PEM電解槽構成要素である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に提供されるものは、双極性プレートまたは多孔質輸送層のうちの少なくとも1つを備える、プロトン交換膜(PEM)電解槽構成要素であって、電解槽構成要素は、その少なくとも1つの表面上に、導電性窒化金属または導電性酸化金属を含む、導電性かつ酸化的に安定したコーティングを備える、プロトン交換膜(PEM)電解槽構成要素である。いくつかの実施形態では、電解槽構成要素は、双極性プレートを備える。いくつかの他の実施形態では、電解槽構成要素は、多孔質輸送層を備える。いくつかの特定の実施形態では、多孔質輸送層は、多孔質チタンシートを備える。
【0006】
いくつかの実施形態では、導電性かつ酸化的に安定したコーティングは、導電性窒化金属を備える。いくつかの側面では、導電性窒化金属は、窒化チタン(TiN)、窒化タングステン(WN)、または窒化タンタル(TaN)のうちの少なくとも1つを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、導電性かつ酸化的に安定したコーティングは、導電性酸化金属を含む。いくつかの側面では、導電性酸化金属は、式TiO2-x(式中0.1≦x≦0.9)を有する金属を豊富に含む酸化チタン、スズ(Sn)または鉛(Pb)の二酸化物、酸化マンガン、式ZrO2-x(式中0.1≦x≦0.9)を有する金属を豊富に含む酸化ジルコニウム、酸化レニウム、酸化イリジウム、酸化コバルト、酸化タングステン、混合酸化金属、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0008】
いくつかの実施形態では、導電性かつ酸化的に安定したコーティングは、導電性窒化金属および導電性酸化金属を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、導電性かつ酸化的に安定したコーティングは、約0.2ミクロン~約2ミクロンの厚さを有する。
【0010】
本明細書にさらに提供されるものは、アノード側流動プレートであって、アノード側流動プレートおよび本開示の多孔質輸送層は、電解槽のアノード側に位置する、アノード側流動プレートと、カソード側流動プレートと、アノード側流動プレートとカソード側流動プレートとの間に位置する、PEMポリマー電解質と、多孔質輸送層とPEMポリマー電解質との間に位置する、アノード電極と、PEMポリマー電解質とカソード側流動プレートとの間に位置する、カソード側ガス拡散層と、カソード側ガス拡散層とPEMポリマー電解質との間に位置する、カソード電極とを備える、PEM電解槽である。
【0011】
本明細書にさらに提供されるものは、双極性プレートまたは多孔質輸送層のうちの少なくとも1つを備える、プロトン交換膜(PEM)電解槽構成要素を、その少なくとも1つの表面上に、導電性窒化金属または導電性酸化金属を含む、導電性かつ酸化的に安定したコーティングを用いてコーティングするステップを含む、方法である。いくつかの実施形態では、電解槽構成要素は、双極性プレートを備える。いくつかの他の実施形態では、電解槽構成要素は、多孔質輸送層を備える。いくつかの特定の実施形態では、多孔質輸送層は、多孔質チタンシートを備える。
【0012】
いくつかの実施形態では、導電性かつ酸化的に安定したコーティングは、導電性窒化金属を備える。いくつかの側面では、導電性窒化金属は、窒化チタン(TiN)、窒化タングステン(WN)、または窒化タンタル(TaN)のうちの少なくとも1つを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、導電性かつ酸化的に安定したコーティングは、導電性酸化金属を含む。いくつかの側面では、導電性酸化金属は、式TiO2-x(式中0.1≦x≦0.9)を有する金属を豊富に含む酸化チタン、スズ(Sn)または鉛(Pb)の二酸化物、酸化マンガン、式ZrO2-x(式中0.1≦x≦0.9)を有する金属を豊富に含む酸化ジルコニウム、酸化レニウム、酸化イリジウム、酸化コバルト、酸化タングステン、混合酸化金属、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される。
【0014】
いくつかの実施形態では、導電性かつ酸化的に安定したコーティングは、導電性窒化金属および導電性酸化金属を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、導電性かつ酸化的に安定したコーティングは、約0.2ミクロン~約2ミクロンの厚さを有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、コーティングステップは、スパッタリングによって遂行される。いくつかの他の実施形態では、コーティングステップは、押付、粉末冶金プロセス、またはテープ成形方法によって遂行される。
【0017】
いくつかの実施形態では、導電性かつ酸化的に安定したコーティングは、その場で形成される。ある実施例では、構成要素は、多孔質輸送層を備え、多孔質輸送層は、粉末冶金によって形成される多孔質チタンシートを備える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本開示のPEM電解槽の斜視切取内部図である。
【0019】
図2図2は、窒化金属または酸化金属コーティングを用いてコーティングされた多孔質輸送層の側面図を示す。
【0020】
図3図3-5は、窒化金属または酸化金属コーティングを形成するために使用され得る、種々の装置の側面断面図を示す。
図4図3-5は、窒化金属または酸化金属コーティングを形成するために使用され得る、種々の装置の側面断面図を示す。
図5図3-5は、窒化金属または酸化金属コーティングを形成するために使用され得る、種々の装置の側面断面図を示す。
【0021】
図6図6は、金(Au)コーティングと比較した、本開示の導電性かつ酸化的に安定したコーティングを備える、双極性プレートの電気化学的安定性のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本明細書に提供されるものは、導電性かつ酸化的に安定したコーティングを用いてコーティングされる、電解槽構成要素である。本コーティングは、導電性窒化金属または導電性酸化金属のうちの少なくとも1つを含む。本コーティングは、電解槽構成要素を酸化から保護しながら、わずかな電気抵抗を提供し、したがって、本開示のコーティングが欠如する、電解槽構成要素と比較して、より高い電気化学的安定性および導電性を呈する。本明細書で使用されるように、「電気化学的安定性」は、高電圧(例えば、約2.5V)に暴露されるときの腐食に対する電解槽構成要素の耐性を指す。したがって、高い電気化学的安定性を伴う電解槽構成要素は、高電圧に暴露されるときの腐食に対して高度に耐性がある。
【0023】
電解槽構成要素は、電解槽の双極性プレートまたは多孔質輸送層を備えてもよい。一実施形態では、導電性かつ酸化的に安定したコーティング(保護層とも称される)は、プロトン交換膜(PEM)電解槽の一方または両方の双極性プレート(すなわち、流動プレート)上および/または多孔質輸送層上に提供される。多孔質輸送層は、本明細書でさらに説明されるように、アノード側ガス拡散層として機能するように構成される、多孔質チタンシートであってもよい。本目的にとって好適な双極性プレートの実施例は、米国出願第17/402,821号(その内容全体が、参照することによって本明細書に組み込まれる)において、より詳細に説明されている。多孔質輸送層の実施例は、米国出願第17/384,033号(その内容全体が、参照することによって本明細書に組み込まれる)において、より詳細に説明されている。
【0024】
導電性かつ酸化的に安定したコーティングは、少なくとも1つの導電性酸化金属または少なくとも1つの導電性窒化金属コーティングを含む。本コーティングは、単一の金属または2つまたはそれを上回る金属の酸化物または窒化物を含有してもよい。本コーティングは、電解槽構成要素の少なくとも1つの表面、電解槽構成要素の少なくとも1つの表面の一部に塗布されてもよい、または本コーティングは、電解槽構成要素の表面全体に塗布されてもよい。
【0025】
導電性酸化金属または導電性窒化金属の実施例は、TiN、WN、またはTaN等の1つまたはそれを上回る導電性窒化金属、および/または金属を豊富に含む酸化チタン(TiO2-x、式中0.1≦x≦0.9、本明細書では「亜酸化チタン」とも称される)、SnまたはPbの二酸化物(フッ素ドープ酸化スズを含む)、酸化マンガン(例えば、二酸化マンガン、MnO)、金属を豊富に含む酸化ジルコニウム(ZrO2-x、式中0.1≦x≦0.9)、酸化レニウム、酸化コバルト、酸化イリジウム、または酸化タングステン等の1つまたはそれを上回る導電性酸化金属、または酸化インジウムスズ、酸化アルミニウム亜鉛、マンガン酸ランタンストロンチウム等の混合酸化金属を含む。
【0026】
いくつかの側面では、本コーティングが、金属を豊富に含む酸化ジルコニウムZrO2-xを含むとき、xは、約0.1よりも大きいまたはそれに等しい、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、または0.9未満またはそれに等しくあってもよい。いくつかの付加的な側面では、xは、約0.1~約0.2、約0.1~約0.3、約0.1~約0.4、約0.1~約0.5、約0.1~約0.6、約0.1~約0.7、約0.1~約0.8、約0.2~約0.9、約0.3~約0.9、約0.4~約0.9、約0.5~約0.9、約0.6~約0.9、約0.7~約0.9、または約0.8~約0.9であってもよい。
【0027】
いくつかの側面では、本コーティングが、金属を豊富に含む酸化チタンTiO2-xを含むとき、xは、約0.1よりも大きいまたはそれに等しい、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、または0.9未満またはそれに等しくあってもよい。いくつかの付加的な側面では、xは、約0.1~約0.2、約0.1~約0.3、約0.1~約0.4、約0.1~約0.5、約0.1~約0.6、約0.1~約0.7、約0.1~約0.8、約0.2~約0.9、約0.3~約0.9、約0.4~約0.9、約0.5~約0.9、約0.6~約0.9、約0.7~約0.9、または約0.8~約0.9であってもよい。
【0028】
導電性酸化金属または導電性窒化金属コーティングはさらに、ドーパントを含んでいてもよい。ドーパントは、コーティングの導電性を向上させ得る。ドーパントは、ニオブ等の導電性を増加させるために当技術分野において公知のドーパントを含み得る。ドーパントは、コーティングの重量比あたり約1%~約2%の量において存在し得、例えば、ドーパントは、コーティングの重量比あたり、約1.0%、約1.1%、約1.2%、約1.3%、約1.4%、約1.5%、約1.6%、約1.7%、約1.8%、約1.9%、または約2.0%の量において存在し得る。
【0029】
本コーティングは、上記の導電性窒化金属のうちの少なくとも1つ、上記の導電性酸化金属のうちの少なくとも1つを含有してもよい、または2つまたはそれを上回る導電性窒化金属の混合物、2つまたはそれを上回る導電性酸化金属の混合物、または少なくとも1つの導電性窒化金属と少なくとも1つの導電性酸化金属との混合物を含有してもよい。本コーティングが、導電性窒化金属と、導電性酸化金属とを含むとき、本コーティングは、導電性窒化金属と導電性酸化金属との混合物または組み合わせであってもよい、または本コーティングは、少なくとも2つのコーティング層を備え、各コーティング層が、導電性窒化金属および導電性酸化金属のうちの1つを含んでもよい。
【0030】
本コーティングが、少なくとも1つの窒化金属と、少なくとも1つの酸化金属とを含有するとき、少なくとも1つの窒化金属は、コーティングの重量比あたり、約10%~約90%の量において存在し得る。例えば、少なくとも1つの窒化金属は、コーティングの重量比あたり、約10%~約20%、約10%~約30%、約10%~約40%、約10%~約50%、約10%~約60%、約10%~約70%、約10%~約80%、約20%~約90%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、または約80%~約90%の量において存在してもよい。
【0031】
本コーティングが、少なくとも1つの窒化金属と、少なくとも1つの酸化金属とを含有するとき、少なくとも1つの酸化金属は、コーティングの重量比あたり、約10%~約90%の量において存在し得る。例えば、少なくとも1つの酸化金属は、コーティングの重量比あたり、約10%~約20%、約10%~約30%、約10%~約40%、約10%~約50%、約10%~約60%、約10%~約70%、約10%~約80%、約20%~約90%、約30%~約90%、約40%~約90%、約50%~約90%、約60%~約90%、約70%~約90%、または約80%~約90%の量において存在してもよい。
【0032】
本コーティングは、約0.2~約2ミクロン、例えば、約0.2ミクロン~約0.4ミクロン、約0.2ミクロン~約0.6ミクロン、約0.2ミクロン~約0.8ミクロン、約0.2ミクロン~約1ミクロン、約0.2ミクロン~約1.2ミクロン、約0.2ミクロン~約1.4ミクロン、約0.2ミクロン~約1.6ミクロン、約0.2ミクロン~約1.8ミクロン、約0.4ミクロン~約2ミクロン、約0.6ミクロン~約2ミクロン、約0.8ミクロン~約2ミクロン、約1ミクロン~約2ミクロン、約1.2ミクロン~約2ミクロン、約1.4ミクロン~約2ミクロン、約1.6ミクロン~約2ミクロン、または約1.8ミクロン~約2ミクロンの厚さを有してもよい。いくつかの特定の実施形態では、本コーティングは、約0.2ミクロン未満の厚さを有してもよい。厚いコーティングほど、より高い電気抵抗を有する傾向があり、したがって、より薄いコーティング厚が、好ましい。
【0033】
コーティングされた電解槽構成要素は、本開示のコーティングが欠如する電解槽と比較して、より低い界面抵抗を有し得る。本明細書で使用されるように、界面抵抗は、コーティングと電解槽構成要素との間、およびコーティングされた電解槽構成要素と膜(例えば、ポリマー交換膜)との間の電気抵抗を指す。別の言い方をすると、界面抵抗は、コーティングを横断した電気抵抗を指し、コーティングに、またはそれから伝達する電気からの任意の電圧損失を含む。
【0034】
コーティングされた電解槽構成要素の界面抵抗は、約0.1~約5ミリオームcmであってもよく、例えば、コーティングされた電解槽構成要素の界面抵抗は、約0.1~約0.5ミリオームcm、約0.1~約1ミリオームcm、約0.1~約1.5ミリオームcm、約0.1~約2ミリオームcm、約0.1~約2.5ミリオームcm、約0.1~約3ミリオームcm、約0.1~約3.5ミリオームcm、約0.1~約4ミリオームcm、約0.1~約4.5ミリオームcm、0.5~約5ミリオームcm、約1~約5ミリオームcm、約1.5~約5ミリオームcm、約2~約5ミリオームcm、約2.5~約5ミリオームcm、約3~約5ミリオームcm、約3.5~約5ミリオームcm、約4~約5ミリオームcm、または約4.5~約5ミリオームcmであってもよい。界面抵抗は、好ましくは、2ミリオームcmである。
【0035】
電解槽構成要素はまた、輸送層を含んでもよい。多孔質チタン層(例えば、シート)が、アノード側ガス拡散層(すなわち、輸送層)114として使用されてもよい。一実施形態では、アノード側ガス拡散層114として使用される、多孔質チタン層(例えば、シート)は、粉末プロセスによって形成される。いくつかの実施形態では、粉末プロセスは、テープ成形、物理的蒸着、または粉末圧縮を含んでもよい。チタンシートを焼結した後、これは、両方の側面上に(例えば、アノード電極側および流動プレート側に)導電性窒化金属または導電性酸化金属コーティングを用いてコーティングされ、良好な伝導率および腐食抵抗を提供する。
【0036】
多孔質チタン層は、約30%~約50%の多孔率を有してもよい。材料の多孔率を決定するための方法は、当技術分野において一般的に周知である。いくつかの実施例では、チタン層は、約30%~約35%、約30%~約40%、約30%~約45%、約35%~約40%、約35%~約45%、約35%~約50%、約40%~約45%、約40%~約50%、または約45%~約50%の多孔率を有してもよい。
【0037】
図1は、Energy Environ. Sci., 2014, 7, 3026-3032において公開され、「3D printed flow plates for the electrolysis of water: An economic and adaptable approach to device manufacture」と題された、Greig Chisholm et al.による論説において説明される、PEM電解槽セルの斜視切取内部図である。PEM電解槽100は、流体流チャネル106および個別の開口部108、109、110を伴う、アノード側流動プレート102およびカソード側流動プレート104と、流動プレート102と104との間に位置する、PEMポリマー電解質112と、電解質112とアノード側流動プレート102との間に位置する、アノード側ガス拡散層114と、アノード側ガス拡散層114と電解質112との間に位置する、アノード電極116と、電解質112とカソード側流動プレート104との間に位置する、カソード側ガス拡散層118と、カソード側ガス拡散層118と電解質112との間に位置する、カソード電極120とを含み得る、PEM電解槽セルを備える。
【0038】
アノード側流動プレート102は、水入口開口部108と、酸素出口開口部109と、アノード側ガス拡散層114に面する流動プレート102の側面において水入口開口部108および酸素出口開口部109を接続する、水流チャネル(例えば、蛇行性の経路溝)106とを含んでもよい。アノード側ガス拡散層114は、多孔質チタン層を含んでもよい。カソード側ガス拡散層118は、多孔質炭素層を含んでもよい。アノード電極116は、イリジウム層等の任意の好適なアノード触媒を含んでもよい。カソード電極120は、プラチナ層または炭素層上のプラチナ等の任意の好適なカソード触媒を含んでもよい。他の貴金属触媒層もまた、アノードおよび/またはカソード電極のために使用され得る。電解質112は、式CHF13を有する、スルホン化テトラフルオロエチレン系フルオロポリマー共重合体から構成される、Nafion(登録商標)膜等の任意の好適なプロトン交換(例えば、水素イオン輸送)ポリマー膜を含んでもよい。
【0039】
動作時、水が、水入口開口部108を通して水流チャネル106の中に提供される。水は、水流チャネル106を通して、かつアノード側ガス拡散層114を通してアノード電極116まで流動する。水は、アノード電極116とカソード電極120との間への外部電流または電圧の印加に応じて、アノード電極116において酸素および水素に電気化学的に分離される。酸素は、アノード側ガス拡散層114を通してアノード側流動プレート102まで戻るように拡散し、酸素出口開口部109を通して電解槽100から退出する。水素イオンが、電解質112を通してカソード電極120まで拡散し、次いで、カソード側ガス拡散層118およびカソード側流動プレート104内の水素出口開口部110を通して電解槽100から退出する。
【0040】
図2は、窒化金属または酸化金属コーティング130を用いてコーティングされた多孔質輸送層114の拡大側面図を示す。
【0041】
本明細書にさらに提供されるものは、プロトン交換膜電解槽構成要素をコーティングするステップを含む、方法である。電解槽構成要素は、本明細書に説明される任意の電解槽構成要素であってもよく、好ましくは、導電性かつ酸化的に安定したコーティングを伴う双極性プレートまたは多孔質輸送層のうちの少なくとも1つを備える。導電性かつ酸化的に安定したコーティングは、本開示の任意のコーティングであってよく、好ましくは、電解槽構成要素の少なくとも1つの表面上に、導電性窒化金属または導電性酸化金属を含む。本方法はさらに、コーティングされた電解槽構成要素をPEM電解槽の中に組み込むステップを含んでもよい。
【0042】
コーティングステップは、物理的蒸着(例えば、スパッタリング)、粉末冶金、押付、スクリーン印刷、またはテープ成形等の当技術分野において公知な任意の好適な方法によって遂行され得る。好ましい実施形態では、コーティングは、スクリーン印刷またはテープ成形を介して形成される。
【0043】
好ましい実施形態では、コーティングは、電解槽構成要素を焼結するステップに先立って、すなわち、その場で形成されてもよい。コーティングをその場で形成することによって、電解槽構成要素の界面抵抗は、焼結後に形成されるコーティングと比較して、大幅に低減される。その場でのコーティングは、粉末冶金、押付、スクリーン印刷、またはテープ成形によって形成され得る。
【0044】
図3は、https://en.wikipedia.org/wiki/Sputter_deposition(参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)において説明されるような例示的スパッタリング装置の側面断面図を示す。スパッタリング装置およびスパッタ堆積の方法は、当業者に一般的に公知である。スパッタリングは、制御されたガスを真空チャンバの中に導入し、カソードを電気的に励起し、自己維持プラズマを確立することによって実施される。カソードの暴露された表面は、基板の上にコーティングされることになる材料のスラブである。制御されたガスの原子は、イオン化された状態になり、カソードの中に加速し、カソード材料内の原子を取り除き、これらは、次いで、基板の上に堆積される。スパッタリングは、窒素または酸素含有プラズマ内で、1つまたはそれを上回る金属標的から導通され、窒化金属および/または酸化金属コーティングを形成する、反応性スパッタリング、または不活性ガス(例えば、アルゴン)プラズマ内で、1つまたはそれを上回る窒化金属および/または酸化金属標的から導通される、非反応性スパッタリングであり得る。
【0045】
図4は、(参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる)https://thelibraryofmanufacturing.com/pressing_sintering.htmlにおいて説明されるような例示的粉末圧縮(例えば、粉末冶金)装置の側面断面図を示す。粉末圧縮装置および粉末圧縮の方法は、当技術分野において一般的に周知である。酸化金属または窒化金属粉末は、ダイ空洞内のチタン層の上に、および/またはその下に設置され、次いで、圧縮され、コーティングされたチタンシート圧密体を形成し得る。圧縮するステップは、概して、室温において実施され、グリーン圧密体を結果としてもたらす。圧縮力は、概して、約10,000psi~約120,000psiである。グリーン圧粉体は、次いで、当業者に公知の任意の焼結方法によって焼結される。本プロセスは、PEM電解槽構成要素の製造の間、窒化金属または酸化金属保護コーティングの作成をその場で可能にする。
【0046】
本コーティングは、テープ成形を介して遂行されてもよい。図5は、例示的テープ成形装置の側面断面図を示す。テープ成形装置およびテープ成形の方法は、当業者に一般的に公知である。図5に示される例示的テープ成形装置500では、金属粉末、溶媒、結合剤、および随意に、塑性剤および/または界面活性剤等の1つまたはそれを上回る付加的成分の混合物(例えば、スラリ)等の滑動材料502が、流体保持タンク等の貯蔵容器から分注チャンバ504の中に提供される。金属粉末は、元素金属粉末(すなわち、チタン)および/または水素化金属(例えば、TiH)粉末を含んでもよい。いくつかの実施例では、水素化チタン粉末は、約600~800℃のTi転換を受けるときのその発熱反応に起因する、焼結の間のより低い原材料コストおよびより少ないエネルギー使用量によって生産コストを低下させるために使用され得る。したがって、一実施形態では、チタン含有粉末は、元素チタンおよび水素化チタン粉末の混合物を含み、水素化チタンは、続いて、焼結の間および/または別個の焼鈍ステップの間等の発熱反応において、元素チタンに熱転換される。
【0047】
滑動材料502が、分注チャンバ504から可動テープ担体ウェブ506の上に分注される。テープ担体ウェブ506は、ドクターブレード508を通り越して移動する、金属(例えば、鋼鉄)、ガラス、ポリマー等のベルトを備えてもよい。ドクターブレード508の下のテープ担体ウェブ506上で移動する、滑動材料502は、ドクターブレード508によってグリーンチタン含有テープ510に平坦化される。粉末径、具体的含有量、および固体比の種々の配合のグリーンチタン含有テープ510が、滑動材料(すなわち、スラリ)502調合物のわずかな変動を伴って生産されることができる。
【0048】
テープ担体ウェブ506は、次いで、グリーンチタン含有テープ510を乾燥チャンバ512を通して移動させ得る。乾燥チャンバ512は、加熱空気入口514と、飽和空気出口516とを含んでもよい。加熱された空気(または別の熱源)が、グリーンチタン含有テープ510を乾燥させ、テープ510から蒸発された溶媒が、飽和空気出口516を通して空気とともに除去される。乾燥されたグリーンチタン含有テープ510が、次いで、切断ステーション518内で、アノード側ガス拡散層の形状を有するチタングリーンシート510Sに切断されてもよい。
【0049】
チタングリーンシート510Sに切断されている乾燥されたグリーンチタン含有テープ510は、続いて、焼結チャンバ520内で所望の温度で焼結され、アノード側ガス拡散層114を形成する。好ましくは、チタングリーンシート510Sは、無酸素または低酸素雰囲気中で摂氏1,000~1,100度で焼結される。大気は、アルゴン等、希ガス等の任意の好適な不活性ガスの不活性雰囲気を含んでもよい。大気は、0.0001~0.01気圧等の0.1気圧未満の酸素分圧を含んでもよい。
【0050】
一実施形態では、乾燥されたグリーンチタン含有テープ510が、乾燥チャンバ512から切断ステーション518の中に提供されてもよく、切断されたテープ(すなわち、チタングリーンシート510S)が、次いで、同一のテープ担体ウェブ506を使用して、焼結のために切断ステーション518から焼結チャンバ520の中に提供される。随意に、乾燥温度と焼結温度との間の温度で実行される、脱バインドステップが、所望される場合、脱バインドチャンバ等の付加的なチャンバが、乾燥チャンバ512と焼結チャンバ520との間に位置してもよい。
【0051】
焼結チャンバ520は、抵抗加熱またはガス加熱された連続炉(例えば、ベルト炉)を備えてもよい。そのような実施形態では、乾燥されたグリーンチタン含有テープ510(すなわち、チタングリーンシート510S)は、同一のテープ担体ウェブ506上の乾燥チャンバ512、切断ステーション518、および連続炉を通して移動する。別の実施形態では、焼結チャンバ520は、切断および乾燥されたグリーンチタン含有テープ510(すなわち、チタングリーンシート510S)が、閃光灯またはレーザビームによって加熱される、急速熱焼鈍(「RTA」)装置(急速熱処理(「RTP」)装置とも称される)を備えてもよい。本実施形態では、グリーンチタン含有テープ510は、同一のテープ担体ウェブ506上の乾燥チャンバ512、切断ステーション518、およびRTA装置を通して移動する。したがって、滑動材料502を平坦化するステップ、テープを乾燥させるステップ、テープを切断するステップ、および切断されたテープを焼結するステップは、同一の可動テープ担体ウェブ506上で連続的に生じ得る。
【0052】
焼結チャンバ520は、上流部分520Aと、テープ担体ウェブ506の移動方向に対して上流部分520Aの下流に位置する、下流部分520Bとを備えてもよい。随意のパーティション520Pが、焼結チャンバ520の上流部分と下流部分との間に提供されてもよい。上流部分520Aは、希ガス(例えば、アルゴン)雰囲気等の無酸素または低酸素雰囲気中に維持されてもよい。下流部分520Bは、窒素ガスまたはアンモニア含有雰囲気等の窒素含有雰囲気(例えば、窒素含有ガス分圧を伴う低圧または真空雰囲気)中に維持されてもよい。チタングリーンシート510Sは、下流部分520B内で反応焼結され、その表面上に窒化チタンまたは酸化チタン層を形成してもよい。本コーティングは、チタンガス拡散層114の性能を改良する。
【0053】
代替実施形態では、滑動材料502は、図6に示されるように、上部からの代わりに、側面および/または底部からテープ担体ウェブ506の上に提供されてもよい。滑動材料502が、側面から提供される場合、装置500は、スロットダイコータ装置と称され得る。滑動材料502が、底部から提供される場合、装置500は、辺縁コータまたはマイクログラビアコータと称され得る。
【実施例
【0054】
(実施例1)
コーティングされた電解槽構成要素の酸化電流性能
本開示において説明されるようなプレートが、提供され、金(Au)コーティングまたは亜酸化チタンコーティングのいずれかを用いてコーティングされた。プレートは、電気化学セルの中に組み込まれ、コーティングされたプレートは、電極として作用した。本電極は、プラチナ対電極に対して高度に酸化正電位に曝された。金コーティングされたプレートは、2Vの電位に曝され、チタンコーティングされたプレートは、2Vおよび2.4Vの電位に曝された。電気化学的活動が、電流の流動を測定することによって決定されたが、これは、電流の流動に比例する、正規化された性能指数(FOM)として、図6に示されている。低いFOMは、小さな電流の流動を示すのに対し、高いFOMは、大きな電流の流動を示す。大きな電流の流動は、コーティングおよび基板の高レベルの酸化を示し、これは、電気化学的安定性を減少させる。
【0055】
図6に見られ得るように、亜酸化チタンコーティングを伴うプレートは、金コーティングを伴うプレートと比較して、より低いFOMを有した。これは、亜酸化チタンコーティングを伴うプレートを通した電流の流動が、より小さな電流の流動、すなわち、コーティングおよび基板のより低い酸化を有したことを示す。さらに、亜酸化チタンコーティングを伴うプレートの電圧を増加させると、さらに電流の流動を低下させた。したがって、亜酸化チタンコーティングされたプレートは、金コーティングされたプレートと比較して、より高い電気化学的安定性を有した。
(例示的実施形態)
【0056】
実施形態1:双極性プレートまたは多孔質輸送層のうちの少なくとも1つを備えるプロトン交換膜(PEM)電解槽構成要素であって、電解槽構成要素は、電解槽構成要素の少なくとも1つの表面上に、導電性窒化金属または導電性酸化金属を含む導電性かつ酸化的に安定したコーティングを備える、プロトン交換膜(PEM)電解槽構成要素。
【0057】
実施形態2:コーティングは、導電性窒化金属を備える、実施形態1に記載の構成要素。
【0058】
実施形態3:導電性窒化金属は、TiN、WN、またはTaNのうちの少なくとも1つを含む、実施形態2に記載の構成要素。
【0059】
実施形態4:コーティングは、導電性酸化金属を含む、実施形態1-3のいずれかに記載の構成要素。
【0060】
実施形態5:導電性酸化金属は、式TiO2-x(式中0.1≦x≦0.9)を有する金属を豊富に含む酸化チタン、SnまたはPbの二酸化物、酸化マンガン、式ZrO2-x(式中0.1≦x≦0.9)を有する金属を豊富に含む酸化ジルコニウム、酸化レニウム、酸化イリジウム、酸化コバルト、酸化タングステン、混合酸化金属、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、実施形態4に記載の構成要素。
【0061】
実施形態6:コーティングは、導電性酸化金属と、導電性窒化金属とを含む、実施形態1に記載の構成要素。
【0062】
実施形態7:導電性かつ酸化的に安定したコーティングは、約0.2ミクロン~約2ミクロンの厚さを有する、実施形態1-6のいずれかに記載の構成要素。
【0063】
実施形態8:構成要素は、双極性プレートを備える、実施形態1-7のいずれかに記載の構成要素。
【0064】
実施形態9:構成要素は、多孔質輸送層を備え、多孔質輸送層は、多孔質チタンシートを備える、実施形態1-7のいずれかに記載の構成要素。
【0065】
実施形態10:PEM電解槽であって、
アノード側流動プレートであって、アノード側流動プレートおよび実施形態9に記載の多孔質輸送層は、電解槽のアノード側に位置する、アノード側流動プレートと、
カソード側流動プレートと、
アノード側流動プレートとカソード側流動プレートとの間に位置するPEMポリマー電解質と、
多孔質輸送層とPEMポリマー電解質との間に位置するアノード電極と、
PEMポリマー電解質とカソード側流動プレートとの間に位置するカソード側ガス拡散層と、
カソード側ガス拡散層とPEMポリマー電解質との間に位置するカソード電極と
を備える、PEM電解槽。
【0066】
実施形態11:双極性プレートまたは多孔質輸送層のうちの少なくとも1つを備えるプロトン交換膜(PEM)電解槽構成要素を、その少なくとも1つの表面上に、導電性窒化金属または導電性酸化金属を含む導電性かつ酸化的に安定したコーティングを用いてコーティングすることを含む、方法。
【0067】
実施形態12:導電性かつ酸化的に安定したコーティングは、導電性窒化金属を含む、実施形態11に記載の方法。
【0068】
実施形態13:導電性窒化金属は、TiN、WN、またはTaNのうちの少なくとも1つを含む、実施形態12に記載の方法。
【0069】
実施形態14:コーティングは、導電性酸化金属を含む、実施形態11に記載の方法。
【0070】
実施形態15:導電性酸化金属は、式TiO2-x(式中0.1≦x≦0.9)を有する金属を豊富に含む酸化チタン、SnまたはPbの二酸化物、酸化マンガン、式ZrO2-x(式中0.1≦x≦0.9)を有する金属を豊富に含む酸化ジルコニウム、酸化レニウム、酸化イリジウム、酸化コバルト、酸化タングステン、混合酸化金属、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、実施形態14に記載の方法。
【0071】
実施形態16:コーティングは、導電性窒化金属と、導電性窒化金属とを含む、実施形態11に記載の方法。
【0072】
実施形態17:導電性かつ酸化的に安定したコーティングは、約0.2ミクロン~約2ミクロンの厚さを有する、実施形態11-16のいずれかに記載の方法。
【0073】
実施形態18:電解槽構成要素は、双極性プレートを備える、実施形態11-17のいずれかに記載の方法。
【0074】
実施形態19:電解槽構成要素は、多孔質輸送層を備え、多孔質輸送層は、多孔質チタンシートを備える、実施形態11-17のいずれかに記載の方法。
【0075】
実施形態20:多孔質輸送層をPEM電解槽の中に組み込むことをさらに含む、実施形態19に記載の方法。
【0076】
実施形態21:コーティングステップは、スパッタリングによって遂行される、実施形態11-20のいずれかに記載の方法。
【0077】
実施形態22:コーティングステップは、押付、粉末冶金プロセス、またはテープ成形方法によって遂行される、実施形態11-21のいずれかに記載の方法。
【0078】
実施形態23:導電性かつ酸化的に安定したコーティングは、その場で形成される、実施形態11-22のいずれかに記載の方法。
【0079】
実施形態24:
構成要素は、多孔質輸送層を備え、
多孔質輸送層は、粉末冶金によって形成される多孔質チタンシートを備える、
実施形態23に記載の方法。
【0080】
濃度、量、および他の数値データは、範囲形式において本明細書内で表される、または提示され得る。そのような範囲形式は、単に便宜上および簡潔性のために使用され、範囲の限界値として明示的に列挙される数値を含むだけではなく、各数値およびサブ範囲が明示的に列挙される場合と同様に、その範囲内に網羅される全ての個々の数値またはサブ範囲を含むように柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。例証として、「約2~約50」の数値範囲は、2~50の明示的に列挙された値を含むだけではなく、示された範囲内の全ての個々の値およびサブ範囲も含むように解釈されるべきである。したがって、本数値範囲内に含まれるものは、2、2.4、3、3.7、4、5.5、10、10.1、14、15、15.98、20、20.13、23、25.06、30、35.1、38.0、40、44、44.6、45、48等の個々の値、および1~3、2~4、5~10、5~20、5~25、5~30、5~35、5~40、5~50、2~10、2~20、2~30、2~40、2~50等のサブ範囲である。本同一の原理が、最小値または最大値として、1つの数値のみを列挙する範囲にも適用される。さらに、そのような解釈は、範囲の範疇または説明されている特性にかかわらず、適用されるべきである。
【0081】
本明細書で使用されるように、用語「約」は、所与の値が、終点の「わずかに上」または「わずかに下」であり得ることを前提とすることによって、数値範囲の終点に柔軟性を提供するために使用される。例えば、終点は、列挙された値の10%、8%、5%、3%、2%、または1%以内であり得る。さらに、便宜上および簡潔性のために、「約50mg/mL~約80mg/mL」の数値範囲もまた、「50mg/mL~80mg/mL」の範囲に関する支持を提供することを理解されたい。
【0082】
前述は、特定の好ましい実施形態を参照するが、本発明が、そのように限定されないことが理解されるであろう。種々の修正が、開示される実施形態に対して行われ得ること、およびそのような修正が、本発明の範囲内であることが意図されることが、当業者に想起されるであろう。本明細書で引用される公開文書、特許出願、および特許の全ては、参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】