(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】袋なし掃除機
(51)【国際特許分類】
A47L 9/20 20060101AFI20240524BHJP
A47L 9/16 20060101ALI20240524BHJP
A47L 9/12 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A47L9/20 A
A47L9/16
A47L9/12 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023571275
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 IB2022055651
(87)【国際公開番号】W WO2022264108
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512037358
【氏名又は名称】グレイ テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレイ,ニコラス ジェラルド
【テーマコード(参考)】
3B062
【Fターム(参考)】
3B062AA07
3B062AA11
3B062AB01
3B062AB11
(57)【要約】
本発明は、袋なし掃除機(102)、最も好ましくはバッテリ給電式掃除機に関する。掃除機は、シリンダ型掃除機、直立型掃除機、または手持ち型掃除機であってよい。袋なし掃除機は、給気口と、排気口と、排気口のフィルタ(224,324)と、を備えたゴミ収集チャンバ(226,326)を有する。本発明によれば、掃除機は、フィルタを揺り動かして、フィルタに付着したゴミや埃を取り除く攪拌器(240,340)を有し、それにより、フィルタが閉塞するまでの期間を長くする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給気口と、排気口と、その排気口のフィルタと、を備えたゴミ収集チャンバを有する袋なし掃除機であって、前記フィルタを揺り動かす攪拌器を有する、袋なし掃除機。
【請求項2】
インペラを駆動して前記給気口から前記排気口への空気流を創出する電動モータを有する、袋なし掃除機であって、前記フィルタと前記インペラとの間にエアダクトを有し、前記攪拌器が前記エアダクト内に配置されている、請求項1に記載の袋なし掃除機。
【請求項3】
前記攪拌器は前記エアダクトに接続されたチャンバ内に部分的に封止されている、請求項2に記載の袋なし掃除機。
【請求項4】
前記フィルタは移動可能に取り付けられている、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の袋なし掃除機。
【請求項5】
前記掃除機が水平面上に配置されているときに前記フィルタは略上下方向に移動可能である、請求項4に記載の袋なし掃除機。
【請求項6】
前記フィルタはフィルタ支持体に取り付けられている、請求項4または請求項5に記載の袋なし掃除機。
【請求項7】
前記攪拌器は前記フィルタ支持体を揺り動かして前記フィルタ支持体によって前記フィルタを移動させる、請求項6に記載の袋なし掃除機。
【請求項8】
前記フィルタ支持体は互いに相対的に移動可能な第1部分と第2部分とを備えた二部式支持体である、請求項6または請求項7に記載の袋なし掃除機。
【請求項9】
前記第1部分が前記第2部分を囲んでいる、請求項8に記載の袋なし掃除機。
【請求項10】
前記第2部分は可撓性シール要素によって前記第1部分に取り付けられている、請求項8または請求項9に記載の袋なし掃除機。
【請求項11】
前記シール要素は弾性である、請求項10に記載の袋なし掃除機。
【請求項12】
前記第2部分は穿孔された第1壁および穿孔された第2壁を有し、前記フィルタは前記第1壁と前記第2壁との間に配置されている、請求項8から請求項11の何れか一項に記載の袋なし掃除機。
【請求項13】
前記フィルタ支持体はインパクトタブを有し、前記攪拌器は前記インパクトタブに結合可能である、請求項6から請求項12の何れか一項に記載の袋なし掃除機。
【請求項14】
前記インパクトタブは剛性であって前記フィルタ支持体に固く取り付けられている、請求項13に記載の袋なし掃除機。
【請求項15】
前記インパクトタブは前記フィルタ支持体の前記第2部分に固く取り付けられている、請求項8から請求項11の何れか一項に従属する請求項14に記載の袋なし掃除機。
【請求項16】
前記ゴミ収集チャンバは取り外し可能であって、前記ゴミ収集チャンバが取り外されたときに前記攪拌器が前記掃除機内に残る、請求項1から請求項15の何れか一項に記載の袋なし掃除機。
【請求項17】
前記攪拌器は電気的に作動される、請求項1から請求項16の何れか一項に記載の袋なし掃除機。
【請求項18】
前記攪拌器は断続的に作動される、請求項1から請求項17の何れか一項に記載の袋なし掃除機。
【請求項19】
インペラを駆動して前記給気口から前記排気口への空気流を創出する電動モータを有し、前記攪拌器は前記モータがオフに切り替わったときにのみ作動される、請求項1から請求項18の何れか一項に記載の袋なし掃除機。
【請求項20】
前記攪拌器は前記モータがオフに切り替わるたびに作動される、請求項19に記載の袋なし掃除機。
【請求項21】
前記攪拌器は前記モータがオフに切り替わった後で所定期間が経過した時に作動される、請求項19または請求項20に記載の袋なし掃除機。
【請求項22】
前記攪拌器は3秒超の所定時間だけ作動される、請求項1から請求項21の何れか一項に記載の袋なし掃除機。
【請求項23】
前記フィルタは100Hz未満の周期で揺り動かされる、請求項1から請求項22の何れか一項に記載の袋なし掃除機。
【請求項24】
前記攪拌器は前記ゴミ収集チャンバに隣接して配置されたインパクタを含む、請求項1から請求項23の何れか一項に記載の袋なし掃除機。
【請求項25】
前記インパクタは回転偏心要素である、請求項24に記載の袋なし掃除機。
【請求項26】
前記インパクタは回転可能な駆動シャフトに対して偏心して取り付けられている、請求項25に記載の袋なし掃除機。
【請求項27】
前記攪拌器は前記インパクタの偏心のバランスをとるためのバランス要素を含む、請求項24から請求項26の何れか一項に記載の袋なし掃除機。
【請求項28】
前記インパクタは前記バランス要素に取り付けられている、請求項27に記載の袋なし掃除機。
【請求項29】
前記攪拌器は前記掃除機の密閉チャンバ内に配置されている、請求項1から請求項28の何れか一項に記載の袋なし掃除機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋なし掃除機に関する。
【0002】
特に明記されていない限り、「上」、「上下」のような向きおよび方向の用語は、例えば
図1に示すように、吸引ヘッドを水平面に置いて使用する通常の方向の掃除機におけるものを指す。ただし、吸引ヘッドは、要望に応じて他の方向でも使用できる。
【背景技術】
【0003】
多くの住居施設および商業施設の所有者または入居者は、床や施設内の他の領域を掃除するのに掃除機を利用する。掃除機は、掃除すべき領域の上に、または掃除すべき領域に対するように置かれれた吸引ヘッドを介して空気流を生成することにより、動作する。ゴミや屑は空気流に巻き込まれることによってゴミ収集チャンバに運ばれ、その後、廃棄される。
【0004】
殆どの家庭用掃除機は、大きく3つの類型に分けられる。第1類型は、シリンダ型掃除機と呼ばれることが多い。シリンダ型掃除機では、吸引ヘッドが剛性の管を介して操作ハンドルに接続されており、吸引ヘッドは使用中この操作ハンドルによって操られる。操作ハンドルは次いで可撓性ホースに接続されており、ゴミや屑はこの柔軟なホースを通ってゴミ収集チャンバに送られる。ゴミ収集チャンバは本体内に配され、空気流を創出するインペラとモータもこの本体に含まれており、本体は車輪またはスライダを有し、清掃作業中、これらによって(ホースを引っ張る等により)床面を移動し得る。
【0005】
誤解を避けるため、本明細書で使用する「インペラ」という用語は、掃除機内に空気流を創出するためのあらゆるデバイスを包含する。従って、この用語には、例えばファンやタービンも含まれる。
【0006】
第2類型は、直立型掃除機と呼ばれることが多い。直立型掃除機では、モータとインペラは通常、吸引ヘッドに取り付けられ、ゴミ収集チャンバは操作ハンドルに搭載されるか、場合によっては操作ハンドルに一体化されており、通常、ゴミ収集チャンバを含んでいる本体は、清掃作業中、吸引ヘッドの上にある。通常、本体と吸引ヘッドの間には、ピボットジョイントまたはステアリングジョイントがある。
【0007】
直立型掃除機の吸引ヘッドは、シリンダ型掃除機のものと同じように操ることはできず、直立型掃除機製造者は、階段のような領域の掃除を可能にするために代替解決策を提供している。具体的には、直立型掃除機は、典型的には、吸引ヘッドとゴミ収集チャンバとの間に伸縮可能な長さの可撓性ホースが取り付けられており、吸引ヘッドに隣接するホースの端が取り外し可能であることによって、ユーザは掃除機の残りの部分を移動させることなく、取り外したホースの端に清掃ツールを装着して所望の位置へと操ることができる。可撓性ホースは、典型的には伸縮可能に作製され、掃除機の通常の使用中には、収縮させたホースを掃除機の本体に簡単かつ便利に収納できる。収納位置からホースを取り外せば、これを伸ばして所望の位置に届かせることができる。
【0008】
多くのシリンダ型掃除機、および多くの直立型掃除機は、コンセント給電式である。シリンダ型掃除機の吸引ヘッド、および直立型掃除機の伸縮可能な可撓性ホースの取り外した端は、掃除機の本体に対して伸ばしたホースの長さによって決まる範囲内で操ることができる。また、掃除機の本体は、コンセント電源ケーブルの長さ(およびコンセント電源ソケットの可用性)によって決まる範囲内でのみ操ることができる。従って、吸引ヘッドまたは清掃ツールを、掃除が望まれる全ての位置に移動させることができない場合があり得る。
【0009】
掃除機の第3類型は、手持ち型掃除機である。手持ち型掃除機は、典型的にはバッテリ運転式で、使用中に掃除機全体を(通常は片手で)持ち運べるように持ち運び用ハンドルを有し、ユーザは掃除機のノズルを使用位置へと操ることができる。
【0010】
手持ち型掃除機は、もともとはコンセント給電式の掃除機を補完するために設計されたものであって、コンセント給電式の掃除機の吸引ヘッドや清掃ツールでは届きにくい場所の掃除や、こぼれた粒状製品を取り除くようなスポット清掃や小面積の掃除での使用に適している。
【0011】
バッテリ技術の進歩と手持ち型掃除機の設計改良によって重量が軽くなると共にバッテリ充電間隔が長くなったことで、手持ち型掃除機は、長時間の使用に適し、従って広い範囲の掃除に適するものとなっている。そのため、手持ち型掃除機の実用性は高まっており、最近ではコンセント給電式掃除機の代替物として床等を掃除するための掃除機として使用できるものもある。特に、手持ち型掃除機は、「スティック掃除機」と呼ばれることの多い構成で吸引ヘッドと掃除機本体との間に剛性の管を含めることによって、床を掃除するのに適合させることができる。
【0012】
3つの類型全ての掃除機の吸引ヘッドには、ゴミや屑と結合して物理的に吸引ヘッドに移動させ、そこで空気流に巻き込ませるように設計された、回転ブラシを装着することができる。また、使用中、選択した方向に操縦することができるように、吸引ヘッドにステアリングジョイントを組み込むこともできる。
【0013】
国際公開第2012/085567号は、バッテリ給電式の改良直立型掃除機を開示している。この掃除機は、ステアリングジョイントによって吸引ヘッドに接続された操作ハンドルを備えているという点で、他の直立型掃除機に似ている。しかしながら、この掃除機では、ゴミ収集チャンバがモータおよびインペラと共に吸引ヘッドに配されている。バッテリは吸引ヘッドにも配されている。
【0014】
掃除機は、集められたゴミや屑の処理によっても区別される。「袋付」掃除機には、ゴミ収集チャンバに配された使い捨ての袋があり、使用中、インペラは袋を通して空気を吸い込む。袋の壁は紙または布であり、通気性があって第1段階のフィルタを提供し、殆どのゴミや屑を袋の内部に残して空気を通過させる。袋は、満杯になるとゴミ収集チャンバから取り外されて、含まれているゴミや屑と一緒に廃棄される。
【0015】
一方、「袋なし」掃除機は、恐らくはサイクロン分離器、物理フィルタ、またはこれら両方の組み合わせによって、ゴミ収集チャンバ内の空気流からゴミや屑を分離する。空気はゴミ収集チャンバから出て、殆どのゴミや屑はチャンバ内に残される。ゴミ収集チャンバは、典型的には、取り外し可能に本体に取り付けられており、満杯になると取り外して、廃棄場所、例えば屑箱に運び、そこで開いて含まれているゴミや屑を空にすることができる。空のゴミ収集チャンバは、再利用するために本体に再設置される。
【0016】
国際公開第2012/085567号の掃除機は、袋なしである。本発明は、国際公開第2012/085567号の掃除機の改良を説明しており、ゴミ収集チャンバの出口に物理フィルタを有する掃除機に適している。それにもかかわらず、本発明は、他の袋なし掃除機にも、それらがバッテリ給電式であるかどうかにかかわらず、およびそれらが上記の広範な類型の何れに分類されるかどうかにかかわらず、利用できる。例えば、本発明は、1つまたは複数のサイクロン分離器を有し、また、ゴミ収集チャンバの排気口に物理フィルタも有する、袋なし掃除機に用いることができる。
【0017】
国際公開第2012/085567号の掃除機は、回転ブラシとゴミ収集チャンバとの間に断面積の比較的大きな空気流ダクトを有している。この空気流ダクトはまた、比較的短く括れや不連続性がない。この結果、ダクトに沿ったゴミ収集チャンバへの空気流の移動は比較的遅く比較的スムーズになる。加えて、ゴミ収集チャンバの形状と、ゴミ収集チャンバ上方のフィルタ位置によって、多くのゴミや屑のゴミ収集チャンバ内の所望の位置への堆積が促進されることにより、ゴミ収集チャンバへの効果的な充填が担保され、空にする頻度を減らすのに役立つ。特に、髪の毛や綿毛のような軽い要素がゴミ収集チャンバに捕捉され、次いで、同様にゴミ収集チャンバに入る細かいゴミや埃の多くを捕捉する働きをする。
【0018】
ただし、細かいゴミや埃の一部がゴミ収集チャンバを通ってフィルタに入ることは避けられず、その一部はフィルタの表面に付着し、一部はフィルタの細孔や通路に入る。時間が経つにつれ空気が通過できる通路および細孔が少なくなってフィルタの多孔度が低下し、フィルタを通る空気の流れが減って掃除機の性能が低下する。
【0019】
掃除機の性能もまた、収集されたゴミや屑でゴミ収集チャンバが満杯になると低下するであろう。収集されるゴミや屑によっては、空気は既に収集されたゴミ収集チャンバ内部のゴミや屑の塊を通過しなければならなくなり、および/または、ゴミ収集チャンバ内のゴミや屑の量が増えるにつれてゴミ収集チャンバを通る開いた空気流経路は狭くなるであろう。
【0020】
掃除機の性能が低下すると、ユーザは通常、ゴミ収集チャンバを空にする。ユーザは、ゴミ収集チャンバが満杯であることを示すセンサによって、ゴミ収集チャンバを空にするように促されてもよい。センサの一般的な形態は空気流量センサであって、掃除機の一部、典型的には回転ブラシとゴミ収集チャンバとの間の空気流ダクトを通る空気流を検出する。しかし、センサを設けたとしても、ユーザが、性能の低下の原因がゴミ収集チャンバが実際に満杯になったせいなのか、フィルタが閉塞したせいなのか、或いは、これらの原因が組み合わさったせいなのか、必ず理解できるとは限らない。
【0021】
日常的にユーザが掃除機のフィルタを取り外して掃除することは可能であり、一部のフィルタは洗うことができる。しかしながら、まめでないユーザは、効果的な掃除機の性能を維持しようとする場合、通常はフィルタの掃除を避け、代わりに部分的にしか満たされていなくてもゴミ収集チャンバを空にする。
【0022】
フィルタの閉塞に伴う性能の低下は、通常、コンセント給電式の掃除機よりもバッテリ給電式の掃除機の方が顕著である。コンセント給電式の掃除機は、通常、大きなモータと高速回転インペラとを備えており、バッテリ給電式の掃除機で通常可能であるよりも、大きな空気流を創出する。フィルタの細孔や通路の多くが塞がれているために空気流が減少しても、コンセント給電式の掃除機では継続的な運転に十分であり得るが、同様に減少した空気流は、バッテリ給電式の掃除機の効果的かつ効率的な運転には不十分であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の1つの目的は、袋なし掃除機のフィルタの部分的な閉塞によって引き起こされる性能低下を回避または低減することである。本発明は、掃除機の最適な性能をより長期間維持し、フィルタを掃除しなければならない頻度を低減するのに役立てることができる。ゴミ収集チャンバが満杯になる前に空気流が大幅に減少する可能性を回避または低減することで、掃除機の空気流センサの性能も向上させることができる。
【0024】
本発明によれば、排気口にフィルタを備えたゴミ収集チャンバを有する袋なし掃除機であって、フィルタを揺り動かす(agitate)ように構成され位置決めされた攪拌器(agitator)を有する掃除機が提供される。
【0025】
本発明者らは、フィルタを揺り動かすまたは急速移動させると、フィルタ表面に付着している、および/またはフィルタの細孔や通路に捕捉されている、ゴミ(特に微細なゴミや埃)が取り除かれることを見出した。取り除かれたゴミや埃はゴミ収集チャンバの本体に戻すことができ、収集された他のゴミや屑と一緒に、孔や通路を閉塞することのない場所に保持される。従って、孔および通路(または少なくとも、より多くの孔および通路)を、その後の空気の通過に利用できる。
【0026】
掃除機は、インペラを駆動してゴミ収集チャンバを通る空気流を創出する電動モータと、フィルタとインペラとの間のエアダクトと、を有していることが好ましく、攪拌器は、エアダクト内に配されることが好ましい。攪拌器は、エアダクトに接続されたチャンバ内に少なくとも部分的に封止されることが望ましい。従って、攪拌器を、埃やゴミに遭遇する可能性が低いフィルタの「きれいな空気」側に配することができる。エアダクトに接続されたチャンバに攪拌器を配することで、この利点はさらに強化される。
【0027】
掃除機が水平面上に配されているとき、フィルタは略水平に向けられゴミ収集チャンバの上に位置することが好ましい。使用時、ゴミ収集チャンバを出ていく空気は、フィルタを通って上向きに流れる。攪拌器によって取り除かれた細かいゴミや埃は、フィルタ下方のゴミ収集チャンバ本体、恐らくは既に収集されゴミ収集チャンバに保持されているゴミや屑の中に落下する。取り除かれた細かいゴミや埃は重力の影響で落下し、取り除かれた細かいゴミや埃はフィルタの表面に対して略垂直な方向にフィルタから離れるため、フィルタの水平配向が最も効率的であることが、理解されるであろう。フィルタが水平に対して角度付けされている(略上下方向を含む)ような代替構成は、より非効率的である可能性が高いけれども、排除されるものではない。
【0028】
フィルタは、掃除機内に移動可能に取り付けられていることが好ましく、掃除機が水平面上に配されているときに上下方向に移動可能であることが望ましい。
【0029】
フィルタは、ゴミ収集チャンバ全体を覆っていることが望ましい。従って、フィルタの面積は、ゴミ収集チャンバの大きさに対して最大化される。フィルタの面積を増やすとゴミ収集チャンバを出ていく空気が通る面積は増加し、ひいてはゴミ収集チャンバを通る空気流の速度が低下して、巻き込まれたゴミや屑が所望のようにゴミ収集チャンバに堆積する可能性が高くなる。
【0030】
攪拌器は、断続的に作動されることが好ましい。
【0031】
攪拌器は、掃除機のモータがオフに切り替わったときにのみ作動されることが望ましく、理想的には清掃作業の終了時に作動される。攪拌器は、モータがオフになるたびに、すなわち掃除機の各使用後に、作動されることが好ましい。理想的には、攪拌器はモータがオフになった後で選択遅延時間が経過した時に作動され、選択遅延時間は、インペラが回転を停止できる(または少なくとも大幅に減速できる)のに十分なものとされる。従って、攪拌器は、空気がフィルタを通って流れる(この空気流は、どちらかというと攪拌器の作用に反するであろう)のと同時には、フィルタからゴミや埃を除去しようとしないことが好ましい。
【0032】
発明者らは、ゴミおよび埃がフィルタから取り除かれた後、その少なくとも一部がゴミ収集チャンバ内の収集されたゴミおよび屑中に捕捉されること、取り除かれたゴミや埃の全てがその後の(例えば掃除機を次に使用する際の)空気流によって再びアクティブになることはないこと、を見出した。従って、空気流れが再開されたときには、取り除かれたゴミや埃の一部、多くの場合ごく一部のみがフィルタに再結合するため、フィルタの表面を被覆する、および/または、フィルタの細孔や通路を閉塞するゴミや埃の量は全体的に減少する。
【0033】
モータが作動されるとき、すなわち清掃作業の開始時に攪拌器が作動されるのは、あまり好ましくない。インペラがゴミ収集チャンバおよびフィルタを通る最大レベルの空気流を構築するには時間がかかることが認識されており、この間に、攪拌器はフィルタからゴミや埃を取り除くことができる。このような構成では、空気流が最大レベルに達する前に攪拌器がオフに切り替わることが好ましい。
【0034】
最大レベルの空気流で攪拌器を運転できることは排除されない(理論的には、モータが作動されている間は常に運転できる)が、(競合する)空気流が殆どまたは全くない場合に、攪拌器は最も効率的にフィルタからゴミを取り除くと予想される。
【0035】
一部の掃除機では、フィルタを素早く1回移動させることで細かいゴミや埃を十分に取り除ける可能性があるため、攪拌器はフィルタに1回衝撃を与えるように構成され得る。しかしながら、これはあまり好ましいものではなく、フィルタを繰り返し急速移動させたり振とうしたりすることによって、収集された細かいゴミおよび埃のより多くが除去される(および/またはより確実に除去される)と予想される。従って、好ましい実施形態では、攪拌器は、フィルタの急速で周期的な移動の繰り返しを引き起こす。
【0036】
攪拌器は、モータがオフに切り替わった後、継続的な所定期間だけ作動されることが望ましい。所定期間は3秒超であることが好ましい。また、所定期間は5秒未満であることが好ましく、4秒未満であることがより好ましい。
【0037】
(モータがオフに切り替わった後)攪拌器が作動するまでに選択される遅延時間は、3秒未満であることが好ましく、2秒未満であることが理想的であり、1秒未満であることが最も好ましい。
【0038】
上述したように、攪拌器は、フィルタを繰り返し移動させる(衝撃を与える)ように構成されることが好ましい。インパクト周期は、100Hz未満であることが望ましい。最適な周期は、攪拌器の構造およびフィルタの取り付けに依存し、例えば特定の構造では、75~100Hzの間であることが好ましく、85~90Hzの間であることが理想的であり、87Hz前後であることが最も好ましい。
【0039】
攪拌器は、ゴミ収集チャンバに隣接して配されたインパクタを含む。インパクタは、各回転中にフィルタに衝撃を与える回転偏心要素であることが好ましい。
【0040】
インパクタは、回転可能な駆動シャフトに対して偏心して取り付けられた円形ディスクであることが好ましい。インパクタも回転自在に取り付けられていることが好ましい。インパクタは、フィルタに衝突すると、通常は回転するであろう。インパクタとしての円形ディスクの利点は、回転しても重心が変化しないことである。
【0041】
駆動シャフトにはバランス要素も取り付けられ、インパクタの偏心された取り付けをバランス要素が相殺または打ち消すことが望ましい。インパクタとバランス要素とを組み合わせることによって駆動シャフトに対してバランスをとることができ、インパクタがフィルタに衝突して回転するときも、駆動シャフトと一緒にインパクタおよびバランス要素が回転するときも、バランスを保つことができる。
【0042】
インパクタがバランス要素に取り付けられ、次いでバランス要素が駆動シャフトに取り付けられることが好ましく、このようにすれば、バランス要素を介してインパクタを駆動シャフトに偏心して取り付けることができる。
【0043】
駆動シャフトは電動モータに直接接続されることが好ましく、好ましい構成によれば、電動モータに偏心して回転する物体を収容する必要がない。
【0044】
インパクタは、質量15gから20g、理想的には約17.5gの鋼鉄であることが好ましい。インパクタは、直径約25mmであることが好ましい。インパクタは、厚さ約5mmであることが好ましい。
【0045】
フィルタは、フィルタ支持体または枠に取り付けられることが好ましい。攪拌器は、フィルタ支持体を移動させることにより、フィルタ支持体を介してフィルタを移動させることが好ましい。フィルタ支持体は、互いに相対的に移動可能な第1部分と第2部分を備えた二部式支持体であることが望ましい。このようにすれば、フィルタを、第1部分(掃除機の残りの部分に対して移動しない構造部分)を介して、掃除機の吸引ヘッドにしっかりと(ただし取り外し可能に)取り付けることができる。第2部分は、少なくとも一定の範囲内で、第1部分に対して(従って掃除機の残りの部分に対して)比較的自由に移動するように取り付けられる。フィルタは、第2部分に取り付けられることが好ましい。
【0046】
フィルタ支持体の第2部分は、理想的には、第1部分と第2部分との間の空気流を許容することなく相対的な移動を可能にする保護カバー等のような可撓性シール要素によって、フィルタ支持の第1部分に取り付けられる。可撓性シール要素は、弾性であることが好ましい。インパクタは、フィルタ支持体の第2部分を揺り動かし、それによって第2部分および支持されたフィルタを移動させることができる。このようにすれば、フィルタに損傷を与える可能性のあるインパクタの直接の衝撃からフィルタが保護される。加えて、フィルタ支持体の第2部分は比較的硬い材料で作ることができ、衝撃を全く吸収しない(または少なくとも殆どの割合で吸収しない)代わりに、衝撃を受けると急速移動して、その急速移動をフィルタに(そして理想的にはフィルタのほぼ全体に)伝達するであろう。
【0047】
フィルタの揺り動かしは、(あちこちに)移動する複数のサイクルを含むことが好ましく、その移動はフィルタから細かいゴミおよび埃を取り除くのに十分な速さであることが、理解されるであろう。一方向への移動は、攪拌器がフィルタ(またはフィルタ支持体)に物理的に結合してフィルタを一方向に移動させるように駆動することにより、直接的に引き起こされることが好ましい。反対方向への移動は、シール要素の弾性および/または重力によって引き起こされることが好ましい。フィルタ(またはフィルタ支持体)は、所望の攪拌周期に合致する十分な速さで戻らなければならず、シール要素および重力が共にフィルタ(またはフィルタ支持体)を十分に速く移動させることができない場合には、追加の弾性付勢手段を設けてもよいことが、理解されるであろう。
【0048】
フィルタ支持体の第1部分は、フィルタ支持体の第2部分を囲んでいることが好ましい。ゴミ収集チャンバは、その上部に、略長方形形状の開口を有することが好ましい。フィルタ支持体の第1部分または外側部分は、その開口に取り外し可能に嵌合するような形状とされ、フィルタの「汚れた空気」側(すなわちゴミ収集チャンバ内)からフィルタのきれいな空気側への空気の通過を阻止するための適切なシールを備えている。フィルタ支持体の第2部分または内側部分は、第1部分または外側部分の内側に位置していることが好ましく、外側部分と内側部分との間に可撓性で連続的な渦巻状の環または保護カバーを備えていることが望ましい(保護カバーはまた、フィルタの汚れた空気側からフィルタのきれいな空気側への空気の通過を阻止する)。内側部分もまた、略長方形形状であることが好ましく、対応するサイズおよび形状のフィルタを支持するように構成される。
【0049】
フィルタ支持体の第2部分は、下側壁および上側壁を有することが望ましい。使用時、下側壁はゴミ収集チャンバとフィルタとの間にあり、上側壁はフィルタとインペラへのエアダクトとの間にある。下側壁および上側壁は穿孔されており、空気流がゴミ収集チャンバからインペラへ通過できるようになっている。下側壁の穿孔は、フィルタの露出面積が最大化されるよう、比較的大きいことが理想的である。上側壁の穿孔は、使用時に空気流によって引き起こされるフィルタの歪みの可能性を最小限に抑えるため、小さく多くすることができる。
【0050】
インパクタは、フィルタ支持体の第2部分または内側部分に直接結合するように位置決めできる。しかしながら、インパクタは、第2部分または内側部分に接続されたインパクトタブに当たり得ることが好ましい。インパクトタブは、攪拌器がフィルタの汚れた空気側に暴露されないよう、上側壁に取り付けられることが好ましい。
【0051】
攪拌器は1つであることが好ましく、2つ以上の攪拌器があることはあまり好ましくない。2つの攪拌器がある場合、それらは掃除機の両側(およびゴミ収集チャンバの両側)に配されることが好ましい。1つのモータで複数の攪拌器を作動させることができ、モータはそれぞれの駆動シャフトに接続されて、それぞれの攪拌器に駆動を伝達する。
【0052】
その攪拌器または各攪拌器は、密閉チャンバ内に配され、外部環境から隔離され且つフィルタの汚れた空気側からも隔離されることが望ましい。
【0053】
掃除機はバッテリ給電式であることが望ましい。本発明はバッテリ給電式の掃除機に限定されるものではないが、これらの掃除機に特に利益をもたらすことが期待される。上述したように、掃除機のフィルタが満杯になるのに伴う性能の低下は、コンセント給電式の掃除機よりもバッテリ給電式の掃除機の方が顕著である可能性が高く、よって、性能の低下を緩和する本発明の利点が特に有益となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明を、ここで添付の図面を参照しつつ実施例によって更に詳細に説明する。
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る掃除機の、吸引ヘッドを通る側断面図を示す。
【
図2】
図2は、袋なし掃除機の第2実施形態の一部の斜視図を示す。
【
図3】
図3は、
図2の掃除機の吸引ヘッドを通る断面図を示す。
【
図7】
図7は、
図5の攪拌器のインパクタおよびバランス要素の第1斜視図を示す。
【
図8】
図8は、
図5の攪拌器のインパクタおよびバランス要素の第2斜視図を示す。
【
図11】
図11は、本発明に係る掃除機の代替フィルタ支持体の下面図を示す。
【
図14】
図14は、本発明に係る第3実施形態の掃除機の、ゴミ収集チャンバを通る横断面を示す。
【
図15】
図14は、掃除機の第3実施形態の攪拌器の斜視図を示す。
【
図18】
図18は、別の代替フィルタ支持体の上方からの斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
掃除機102は、一部が
図1に示されているが、バッテリ給電式である。バッテリパックは、公知の様式で吸引ヘッド104内に配され主モータに接続されている。主モータは、インペラを駆動して回転させ、吸引ヘッド104の前端底面の開口106からの空気流を創出する。
図1に見られるように、開口106に隣接して回転式ブラシ108が取り付けられており、(主モータによって、または別のモータによって)時計回りに回転するように駆動される。ブラシ108は、開口106の下方のゴミや屑を結合させ、空気流と連動して、そのゴミや屑を吸引ヘッド104内に配されたゴミ収集チャンバ(例えば、
図3のゴミ収集チャンバ226および
図14のゴミ収集チャンバ326を参照)に移動させる。収集されたゴミや屑はゴミ収集チャンバに堆積され、きれいな空気がモータに隣接する通気口を通って吸引ヘッドから出ていく。バッテリ、主モータ、インペラ、および通気口は本発明に附帯するものであって、完全に従来型のものであり得るため、図面には示していない(これらの構成要素の適切な構成は、バッテリ給電式の掃除機の設計者には一目瞭然であろう)。
【0056】
図1は、本発明の第1実施形態の側断面を示している。この実施形態では、攪拌器はハンマー110であって、吸引ヘッド104に旋回可能に取り付けられ、フィルタ支持体112の一部に当たり得る。ハンマー110は、引き込まれてフィルタ支持体部分に結合するように、バネ114によって上方に付勢される。ドロップオフカム116がハンマー110の一端に係合している。カム116が図示された位置から時計回りに回転すると、ハンマー110がフィルタ支持体112から離れて下方に移動し、この移動によってバネ114が圧縮される。カム116が
図1に示す位置に達するとハンマー110はカム116から脱落し、バネ114がハンマーを強制的に上方に移動させてフィルタ支持体112に衝撃を与える。
【0057】
カム116は、モータとカム116との間に適当な減速ギヤ(図示せず)を備えた副モータ(これも図示せず)によって回転されることが好ましい。
【0058】
フィルタ支持体への衝撃によって引き起こされる影響の詳細を、第2実施形態および第3実施形態に関連して以下に説明する。
【0059】
図2は、吸引ヘッド204の一部と操作ハンドル220の一部とを含む、本発明に係る掃除機202の第2実施形態の一部の斜視図を示している。
図3は、掃除機202の断面図を示している。
図4は、吸引ヘッド204を通るほぼ水平な断面を示している。
【0060】
図2から
図4は、ゴミ収集チャンバ226の上に取り付けられたフィルタ支持体212およびフィルタ224の詳細を示している。フィルタ224は、きれいな空気側へと微粒子が通過するのを阻止する任意の適切な材料、例えば、掃除機において広く用いられている多層発泡体、織物またはプリーツフィルタとすることができる。一特定の実施形態では、フィルタ224は、静電フィルタ媒体を備える厚さ1mmの層および90ppiの発泡体層からなる。フィルタ224は自立型ではないためフィルタ支持体212に取り付けられており、フィルタ支持体212は、フィルタに要求される構造剛性を与え、ゴミ収集チャンバ226(汚れた空気側)とインペラ(きれいな空気側)との間の空気経路の全てをフィルタ224で確実に塞ぐのに役立つ。
図2および
図3に示す吸引ヘッド202では、フィルタ224の下方が汚れた空気側であり、フィルタの上方がきれいな空気側である。
【0061】
ゴミ収集チャンバ226は、公知の方法で吸引ヘッド204から取り外すことができる。ゴミ収集チャンバは、フィルタ224、フィルタ支持体212、および掃除機202の使用中にフィルタ支持体212を覆う上カバー230と共に取り外される。上カバー230はハンドル部228を有し、ハンドル部228によって、上カバーの一部または全部をフィルタ支持体212(およびフィルタ224)と共にゴミ収集チャンバ226から分離して、収集したゴミおよび屑を空にすることが可能とされる。上カバーおよびフィルタ支持体を取り外すと、ゴミ収集チャンバ226の上が開き、ゴミ収集チャンバを反転させて収集したゴミおよび屑を適切な容器に捨てることができる。
【0062】
図1の第1実施形態の(および後述する第3実施形態も)ゴミ収集チャンバも、同様の方法で取り外して空にできることが、理解されるであろう。
【0063】
上述したように、本発明は、代替的に、コンセント給電式すなわちバッテリパックなしの掃除機でも使用できる。本発明はまた、代替的に、適切に構成され、所望に応じてゴミ収集チャンバの排気口にフィルタが組み込まれた、シリンダ型掃除機、直立型掃除機、および/または手持ち型掃除機にも使用できる。
【0064】
図2から
図10に示す第2実施形態において、攪拌器240は、
図2から
図4に見られるように、ゴミ収集チャンバ226の側面にあるインパクタ242(
図5から
図9も参照)を有する。インパクタ242が回転すると、以下で説明するようにフィルタ支持体212に担持されたインパクトタブ232に結合する。インパクタ242は、副モータ244によって作動される。
【0065】
この実施形態では、インパクタ242は、厚さ5mm、直径25mmの円形の鋼鉄ディスクである。円形ディスク242の重量は17.5gである。ディスク242は中央に穴246を有しており、この穴がボルト248を受容する。円形ディスク242はボルト248周りに回転自在であって、その結果、インパクトタブ232に衝突したときにはディスクが回転してインパクトタブの横方向の力を最小限にすることができる。
【0066】
攪拌器240はまた、バランス要素250を有する。バランス要素250は、ボルト248を受容するねじ穴252と、モータ244の駆動シャフトを受容する第2穴254と、を有する。第2穴254は、この実施形態では円形であって駆動シャフトへの締まりばめであるが、他の実施形態では非円形とすることができる。バランス要素250およびインパクタ242は、駆動シャフトとともに回転する。
【0067】
インパクタ242は、駆動シャフトに偏心して取り付けられており、駆動シャフトが回転するとインパクタは偏心して回転することが、理解されるであろう。偏心度は、穴252と穴254との間の距離dによって決まり、本実施形態では約5mmである。
【0068】
モータ244は、吸引ヘッド204内の所定位置に固定され、従って駆動シャフトの回転軸もまた吸引ヘッド204に対して固定されている。このため、ディスク242が駆動シャフト周りを回転するのに伴い、各回転の間にその周囲は距離2dだけ平行移動する。ディスクはインパクトタブ232の十分近くにあり、各回転で1回インパクトタブに当たるように配置される。
【0069】
インパクタ242が偏心しているにもかかわらず、インパクタ242は中心に取り付けられた円形のディスクであるため、インパクタの重心は、駆動シャフトが回転しても穴252と位置合わせされたままである。従って、バランス要素250は、インパクタ242の一貫した偏心を直接補償するサイズおよび形状で構成される。そのため、インパクタ242およびバランス要素250が駆動シャフト周りを一緒に回転しても、それらの複合重心は駆動シャフトの回転軸の中心に留まる。従って、モータ244が回転する偏心質量を支持する必要はない。
【0070】
吸引ヘッド204は、ゴミ収集チャンバ226の片側に単一の攪拌器240を有しており、これがフィルタ224を適切に揺り動かすことがわかった。代替実施形態は、要望に応じて、フィルタ224の周囲に間隔を空けた2つ以上の攪拌器を有していてもよい。
【0071】
図2においては、インパクトタブ232はフィルタ支持体212の上側壁に取り付けられており、特にフィルタ支持体212の穿孔された上壁274の上に固く取り付けられていることが分かるであろう。インパクトタブ232は、直角形状であって、攪拌器240が内部に配されたゴミ収集チャンバ226の側面の領域に下方に突出する部分を有する。その領域は、全体がフィルタ224のきれいな空気側に位置しており、攪拌器240の如何なる部分もゴミ収集チャンバ226内のゴミおよび屑には曝されない。
【0072】
攪拌器240の全体をフィルタ224のきれいな空気側に配することで、フィルタの汚れた空気側のゴミや屑から攪拌器を保護するためのシール等を設ける必要がなくなる。
【0073】
フィルタ支持体112およびフィルタ支持体212の詳細な構造は、
図1から
図4には示されていないが、
図11から
図13に、別の実施形態のフィルタ支持体12の詳細な構造が示されており、これに関連する特徴は、前述の実施形態(および以下の後述の実施形態)と共通している。
【0074】
フィルタ支持体12は、略剛性であって特定のゴミ収集チャンバの上に取り付けられるように構成された第1部分または外側部分(または枠)60を有する。適当なシール(図示しない)が設けられ、外枠60とゴミ収集チャンバの上壁との間に配されるであろう。
【0075】
フィルタ支持体12は、外枠60に対し限定された範囲内で移動できる第2部分または内側部分(または枠)62を有する。フィルタ24は、内枠62内に配されて内枠をほぼ充填する。リングまたは保護カバー64の形態の可撓性シール要素が、外枠60と内枠62との間に取り付けられる。
【0076】
図12および
図13に最もよく見られるように、保護カバー64は、切れ目のない渦巻状である。保護カバーの材料は可撓性であって空気を通さない。渦巻状の形態と可撓性の材料により、内枠62と外枠との間の如何なる空気流も許容することなく、外枠60に対して(およびまた外枠60が取り付けられている吸引ヘッドの残りの部分に対して)限定された内枠62の移動が可能になる。そのため、ゴミ収集チャンバからの空気流の全てはフィルタ24を通過する。
【0077】
保護カバー64もまた弾性を有し、図示のように内枠62を中立位置に付勢する。フィルタ支持体12は、理想的には掃除機内で水平に(すなわち
図13に見られるように)向けられることが、理解されるであろう。従って、中立位置では、内枠62にかかる(下向きの)重力は、保護カバー64によって与えられる(上向きの)力によって正確にバランスがとられている。説明した全ての実施形態における攪拌器が、内枠62およびフィルタ24を上方向に移動させ、その後の回復または下方への移動は、一部は保護カバー64の弾性により、また一部は重力により、引き起こされることが、理解されるであろう。保護カバーと重力とが協働して、攪拌器のインパクト周期に一致させるのに十分な速さで内枠62およびフィルタ24を中立位置に向かって(または中立位置へと)戻すことができるように、構成される。従って、攪拌サイクルは、攪拌器が内枠62に衝撃を与えるたびに内枠62がその中立位置に近付くように、繰り返される。他の実施形態では、保護カバー64の弾性を、内枠62に作用する別の弾性付勢手段によって補完(または代替)できる。
【0078】
内枠62は略剛性であって、フィルタ24を構造的に直接支持する。内枠62の剛性は、攪拌器(例えば、攪拌器110または攪拌器240)によって引き起こされる内枠の移動が、最小限の損失またはエネルギー吸収でフィルタ24のほぼ全体に確実に伝達されるようにする。
【0079】
図11から
図13は、インパクトタブを備えていないフィルタ支持体12を示している。従って、フィルタ支持体12は、攪拌器110が内枠62に直接衝撃を与える
図1のような実施形態で使用されるように設計されている。もちろん、要望に応じて、第2実施形態の攪拌器240が内枠に直接衝撃を与えるように配置することもできる。
【0080】
図13から、内枠62は穿孔された下側壁72および穿孔された上側壁74を有することが分かる。この実施形態では穿孔の構成が異なっており、下側壁72は少数の大きな穿孔を有している。下側壁72についての重要な基準は、下側壁を通る空気流に曝されるフィルタ24の面積が最大化されることであって、そのため、下側壁72については材料に対する開空間の割合が最大化される。この基準は、上側壁74についてはそれほど重要ではなく、上側壁74について重要な基準は、フィルタが空気流によって著しく歪んではならないことであって、そのため、上側壁74においては開空間に対する材料の割合が大きくなる。
【0081】
(インパクトタブ232のような)インパクトタブをフィルタ支持体12に嵌め込むことができ、フィルタ支持体の形状および寸法は、特定のゴミ収集チャンバに合致するように必要に応じて変更され得ることが、理解されるであろう。インパクトタブは、理想的には(きれいな空気側で)上側壁74に接続され、保護カバー64と外枠62とを橋渡しするであろうことが、理解されるであろう。従って、攪拌器からの衝撃は、インパクトタブを介して内枠62(およびフィルタ24)に直接伝達される。
【0082】
本発明の第3実施形態を、
図14から
図20に示す。第3実施形態の吸引ヘッド全体は示されていないが、この実施形態のゴミ収集チャンバ326および攪拌器340は、
図1の吸引ヘッド104に類似した吸引ヘッドにおいて、または
図2から
図4の吸引ヘッド204に類似した吸引ヘッドにおいて、軽微な構造変更のみで使用され得る(そしてその逆も同様である)ことが理解されるであろう。
【0083】
第3実施形態は、上述した第2実施形態と多くの特徴を共有している。特に、ゴミ収集チャンバ326は、その上壁となるフィルタ支持体312を有しており、このフィルタ支持体は
図18から
図20に詳細に示されている。フィルタ支持体312には、フィルタ324が取り付けられている。フィルタ支持体312は、略剛性の外枠360および略剛性の内枠362を有し、これらは可撓性保護カバー364によって互いに連結されている。吸引ヘッドは、内枠362を揺り動かしてフィルタ324からゴミや屑を取り除く攪拌器340を有する。
【0084】
この実施形態では、
図15でよりよく見えるように、攪拌器340はひし形のインパクタ342を有しており、この実施形態おけるインパクタ342は鋼鉄製である。偏心錘350は、これを貫通する第1穴352を有しており、この穴がインパクタ342の一端の穴にも挿通されたボルト348を受容する。重要なことに、インパクタ342は、ボルト348周りを回転でき、従って偏心錘350に対して回転することができる。偏心錘350は、これを貫通する第2穴354を有しており、この穴はモータ344の駆動シャフト(図示しない)を受容する。偏心錘350は、駆動シャフトに固く固定されて駆動シャフトと共に回転する。
【0085】
駆動シャフトの回転軸に対するインパクタ342のオフセット取り付け、およびその取り付け周りを回転するインパクタの能力により、フレイル形態のインパクタ342がもたらされる。モータ344の駆動シャフトが回転すると、インパクタ342の慣性によってインパクタ342は
図15および
図16に示される位置となり、この位置では重心が回転軸から最も遠くなる。モータの損傷の可能性を低減するため、この位置で偏心錘350とインパクタ342との合成回転質量の回転軸周りのバランスがほぼとれるように構成される。
【0086】
第3実施形態は、ゴミ収集チャンバ326の片側に単一の攪拌器340を有しており、これがフィルタ324を適切に揺り動かすことが見出された。代替実施形態は、要望に応じて、フィルタ324の周囲に間隔を空けて2つ以上の攪拌器を有することができる。
【0087】
図18でよりよく見えるように、インパクトタブ332は、フィルタ支持体312に固く取り付けられ、特にフィルタ支持体の穿孔された上壁374に固く取り付けられる。インパクトタブ332は、インパクタ342およびバランス要素350が配されたゴミ収集チャンバ326の側方にあるチャンバ382内に下方に突出している。チャンバ382は、全体がフィルタ324のきれいな空気側に配されており、攪拌器340の如何なる部分も、ゴミ収集チャンバ326内のゴミおよび屑に暴露されない。
【0088】
第1実施形態および第2実施形態と同様に、ゴミ収集チャンバ326は、吸引ヘッドから取り外して空にすることができる。ゴミ収集チャンバ326は、上カバー330、フィルタ支持体312、およびフィルタ324と共に取り外され、攪拌器340および副モータ344は取り外されない。
【0089】
先の実施形態と同様に、可撓性保護カバー364は、内側部分または枠362の枠360の外側部分に対する移動を許容する。可撓性保護カバー364は、内枠362を囲み、内枠と外枠との間の空気の流れを阻止する。保護カバー364は、より詳細に
図20に示されており、この実施形態では、外枠と内枠のそれぞれの部分の間に挟持される渦巻状の可撓性シールである。別の実施形態では、保護カバーは、オーバーモールドされている。先の実施形態の保護カバーは、同一構造とすることができる。
【0090】
内枠362は略剛性であって、フィルタ324を構造的に直接支持する。
【0091】
インパクタ342の回転に伴ってその外端が通過する経路Pは、
図16に表されており、(モータ344の駆動シャフトの回転軸における穴354を中心とする)半径Rを有する。インパクトタブ332の下端は、円Pの内側に位置するように構成される。従って、インパクタ342は、回転に伴ってインパクトタブ332の下端に繰り返し当たる。
【0092】
ボルト348周りを回転するインパクタ342の能力、およびその偏心取り付けは、インパクタ342が
図16に示されている位置から(偏心錘350に対して)移動でき、特に、その外端が半径Rよりも回転軸に近くなる位置に移動できることを意味する。インパクタ342がインパクトタブ332を通過するのを許容してモータ出力シャフトが回転し続けられるよう、回転軸方向への移動が十分となるように構成される。インパクトタブ332を通過した後、インパクタ342は、
図16の完全に伸長した位置に戻り、次の回転で再びインパクトタブ332に当たる。従って、インパクトタブ332への繰り返しの衝突によってモータの継続的な回転が阻止されることはない。
【0093】
図18から、内枠362は穿孔された上側壁374を有することが分かるだろう。下側壁372も穿孔されている。穿孔の構造および相対的な大きさは、特定の掃除機に適するよう、先の実施形態のフィルタ支持体のものと異なってもよいし、類似していてもよい。
【0094】
攪拌器は連続的に運転できるが、理想的には競合する空気流が殆どまたは全くない場合に、断続的に運転されることが好ましい。好ましい実施形態では、インパクタは、掃除機の主モータがオフに切り替わるたびに作動される。フィルタを通る空気流が停止するか少なくとも大幅に減少するよう、インペラの減速または停止を許容するために、主モータのオフ切替と攪拌器副モータの作動のと間には、短い遅延時間が設けられる。
【0095】
試験では、インパクタ242,342を速度約87rpmで回転させ3秒強の間持続する衝撃波を与えることで、フィルタ226,326の表面に付着するか、またはフィルタの細孔および通路を占有する細かいゴミおよび埃をかなりの割合で除去できることが示された。
【0096】
一方、
図1の実施形態では、ハンマー110からの約15~18回の衝撃(理想的には17回の衝撃)が効果的であって、衝撃が少ないと効果が著しく低下し、衝撃を多くしてもその恩恵は無視できるほど小さいことが分かった。カム116の回転速度がインパクト周期を決定するが、この実施形態では17Hz前後のインパクト周期が有効であることが見出された。このような構成では、掃除機の各使用後にカムモータを約1秒間だけ作動させる必要がある。
【0097】
第3実施形態の一構成では、インパクタ342の外端が通過する経路Pの最大半径R(モータ出力シャフトの回転軸から測定)は、約16.5mmである。インパクタ342の質量は、約15gから約20gである。このようなインパクタを用いた試験により、インパクタ342(従って、モータ244の出力シャフト)の最適な回転速度は約5,200rpmであって、これは毎秒約87のインパクト速度を与えることが示された。また、約4,500rpmから約6,000rpmの回転速度(それぞれ毎秒約75から100のインパクト速度)も効果的であることが分かった。回転速度を約3,500rpmに下げると清掃効果が低下し、回転速度を約6,600rpmに上げても追加の恩恵は得られないことが分かった。同じ経路半径、質量および回転速度の範囲が、
図2から
図10の攪拌器240に対しても効果的であることが分かった。
【0098】
略剛性の内枠262,362は、インパクタ242,342が内枠262,362の局所的な領域に衝撃を与えるにも関わらず、攪拌器240,340からの衝撃をフィルタ224,324のほぼ全体にそれぞれ伝達することが分かった。
【0099】
フィルタ224,324から取り除かれたゴミおよび埃の少なくとも一部は、ゴミ収集チャンバ226,326の本体ヘと戻り、ゴミ収集チャンバ内の収集されたゴミおよび屑の塊内に保持される。空気流が再開されると、保持されたゴミや埃の全てが再可動化されフィルタに再び結合することはない。従って、インパクタ110,242,342は、フィルタ224,324の表面を被覆したり、フィルタの細孔や通路を閉塞したりするのに関与するゴミや埃の量を減らすことができ、これにより、フィルタを通る大きな空気流をより長い期間維持することができる。
【国際調査報告】