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特表2024-521310油膜軸受の一部としてのネックブッシュ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】油膜軸受の一部としてのネックブッシュ
(51)【国際特許分類】
   B21B 31/07 20060101AFI20240524BHJP
   F16C 17/10 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B21B31/07 E
F16C17/10 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571968
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2022061370
(87)【国際公開番号】W WO2022243004
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】102021205276.2
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】アルケン・ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】クニー・ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】トゥツァク・アンドレイ
【テーマコード(参考)】
3J011
【Fターム(参考)】
3J011AA07
3J011BA11
3J011JA02
3J011KA04
3J011MA08
3J011PA03
3J011RA03
(57)【要約】
本発明は、ロールスタンド内の油膜軸受の一部としてのネックブッシュ(100)であって、ネックブッシュ(100)が、ロールスタンドのロール、特にバックアップロールの円錐形のロールネックを収容するために使用されるものに関する。ネックブッシュを有する油膜軸受は、ロールスタンド内のロールを支承するために使用される。圧延操作中に、最大の圧力負荷を有する角度領域を通過する際にネックブッシュ(100)の内側とロールネックの外側との間の領域内に十分大きい潤滑膜間隙を形成し、同時に、ネックブッシュ(100)をロールネック上で軸方向に保持する固定リング(230)に作用する軸方向の力が大きくなりすぎないように、本発明は、ネックブッシュを以下の式に従って設計することを企図する:0.35<3.6/a(D-B)+kD<0.5であり、Dはネックブッシュの胴外径を、aは円錐形の縦方向部分の引き出された円錐長さを、kは滑り係数を、Bは円錐大径を意味する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール、特にバックアップロールの円錐形のロールネックを収容するためのロールスタンド内の油膜軸受の一部としてのネックブッシュ(100)であって、
ネックブッシュが、
・ロールスタンドによって加えられる圧延荷重の作用下で弾性変形可能であり、
・外側を胴外径Dのシリンダ状に形成され、
・内側を円錐長さaにわたってロールの円錐形のロールネックを収容するために円錐大径Bと円錐角度βを有する円錐形に形成された、内側が円錐形の縦方向部分(110)を備え、
円錐形の縦方向部分(110)が、内側に、ネックブッシュの内側と円錐形のロールネックの外側との間のスペースに潤滑剤を導入するための潤滑溝(112)を備えるものにおいて、
ネックブッシュ(100)に関して、
0.35<3.6/a(D-B)+kD<0.5 (1)
但し、k=0.15/m 滑り係数
との関係が適用されること、を特徴とするネックブッシュ(100)。
【請求項2】
ネックブッシュ(100)に関して、
0.37<3.6/a(D-B)+kD<0.49 (2)
との関係が適用されること、を特徴とする請求項1に記載のネックブッシュ(100)。
【請求項3】
内径が一致することにより円錐形の縦方向部分の円錐最小径Aの位置でこの円錐形の縦方向部分に接続する中空シリンダ状に形成された終端部分(120)が設けられていること、を特徴とする請求項1又は2に記載のネックブッシュ(100)。
【請求項4】
ネックブッシュ(100)が、内側に、フェザーキー(20)を部分的に収容するための溝(122)を備えること、を特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のネックブッシュ(100)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の内側が円錐形のネックブッシュ(100)を有する油膜軸受として形成された少なくとも1つの軸受ハウジングと、
ロールネック(210)が、ネックブッシュ(100)内に収容するために、円錐形のロールネック部分(212)と、好ましくはまたシリンダ状のロールネック終端部分(214)を有するように形成された少なくとも1つのロール(200)
を備えるロールスタンドであって、ネックブッシュが、ロールネックと共に、軸受ハウジング内、好ましくは軸受ハウジングの軸受ブッシュ内に回転可能に支承されていること、を特徴とするロールスタンド。
【請求項6】
ロールネック(210)が、外側に溝を備えること、フェザーキー(20)が設けられており、このフェザーキーの第1の部分が、ネックブッシュ(100)の内側の溝によって収容され、このフェザーキーの第2の部分が、ロールネック(210)の外側の溝(216)によって収容されていること、及び、両方の溝の少なくとも一方は、フェザーキー(20)の寸法に関して、フェザーキー(20)が、無負荷状態で、特に圧延操作外で、Sa>0.0mmの軸方向の遊びと、Sr>0.5mmの半径方向の遊びを有するように溝内に位置するように寸法設定されていること、を特徴とする請求項5に記載のロールスタンド。
【請求項7】
ネックブッシュ(100)が、固定リング(230)と、軸方向でネックブッシュ(100)と固定リング(230)の間に配置されたバネリング(220)によって、軸方向のロールネック(210)からの滑落に抗するようにロールネック上に固定されていること、及び、
バネリング(220)のバネ定数は、軸受の最大応力時に、既知の円錐角度で算定される結果として生じる勾配抵抗が、1/10mm、好ましくは3/10mmのネックブッシュの軸方向の最小変位を生じさせるように設計されていること、
を特徴とする請求項6に記載のロールスタンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロールスタンド内の油膜軸受の一部としてのネックブッシュであって、ネックブッシュが、ロール、特にバックアップロールの円錐形のロールネックを収容するために使用されるものに関する。ネックブッシュを有する油膜軸受は、ロールスタンド内のロールを支承するために使用される。ロールスタンドは、典型的に、圧延機内で金属の圧延材を冷間圧延又は熱間圧延するために使用される。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、油膜軸受のネックブッシュは、基本的に知られている。
【0003】
西独国特許出願公開第2843658号明細書には、円錐形のネックブッシュの構造は、軸受が、整備作業時に、同様に円錐形のロールネックに対して容易に取付け又は取外しされ得る点で有利であると記載されている。円錐形のロールネック上での円錐形のネックブッシュの比較的きつい嵌合は、ロールネックに対するネックブッシュの限定的な相対回転が行なわれ得ないほどきつくは取り付けられていない。これら最小の相対回転(西独国特許出願公開第2843658号明細書では、「ミクリープ」とも呼ばれる)は、接触面での微視的に小さい摩耗(「フレッチング」)を生じさせ得る。これにより、回転部品、特にロールネックの表面に永久的な損傷が生じる可能性がある。
【0004】
西独国特許出願公開第2843658号明細書による発明は、油膜軸受の機能を損なうほどの大量の油を負荷領域から除去することなく、ロールネックと、共に回転するネックブッシュとの間の移行部を潤滑するための改善された装置を提供することを課題としている。1次潤滑溝から油を供給される、回転するネックブッシュの内側に配置された付加的な2次潤滑溝によって達成される。周囲にわたって分配された、互いに分離された複数の溝ネットワークは、ロールネックとネックブッシュの間の接触面の潤滑を促進する。
【0005】
国際公開第2011/096672号では、圧延機ロール用の油膜軸受内に潤滑溝を配置する別の方法/装置が提示される。
【0006】
欧州特許第1213061号明細書では、負荷時に当時の従来技術に比して著しく弾性変形することに基づいて高い負荷容量を有する薄肉のネックブッシュが提示される。円錐に関して3度の最小テーパ角が指定され、この最小テーパ角より下で、「セルフロック」が行なわれ、ロールネックの外側のテーパ部分上に取り付けられた10mm~0.024D+14.5(D=軸受の胴直径)のネックブッシュの最小(最も薄い)厚さが指定される。
【0007】
この特許で言及された負荷容量の増加(当業者は、EHD;弾性流体力学的負荷容量の増加を話題にする)は、半径方向の負荷(荷重領域内の油圧)時にネックブッシュが軸方向にロール胴から離れるように変位し得ることによって生じる。この変位は、例えば独国特許出願公開第102016214011号明細書、独国特許出願公開第102017217562号明細書に記載されているようなロールネックのテーパのついた端部における固定ユニットによって制限される。加えて、シミュレーション研究は、ネックブッシュのこの軸方向の摺動(原因は、円錐テーパ角上での勾配抵抗「Hangabtriebskraft」である)が、円周上で均等に行なわれるのではなく、荷重領域を回転して通過する時に最大化されて生じることを示す。円周上で変化するネックブッシュのこの摺動により、両摩擦対の正弦波状の前後の滑動が生じ、この滑動は、油が油潤滑溝(上記)を介してロールネックとネックブッシュの間の接触面-ここは、潤滑溝が配置されていない(即ち潤滑溝の間)-に到達することもできることを保証する。
【0008】
ネックブッシュの摺動により、固定ユニット内に、ロールネック端部で支持するか、ロールネック端部によって保持しなければならない軸力が生じる。これら軸力(勾配抵抗)の大きさは、円錐テーパ角に直接的に関係する。実際に、構造に起因して、角度が大きすぎる場合は、ロール端部(軸方向の力がロールによって受け止められる)に損傷が生じ得ることがわかっている。これから、相反する設計目標が生じる:
・ネックブッシュは、潤滑溝を介して加えられる潤滑剤(油)が潤滑溝の間に位置する面に十分に到達し得るように、軸方向に摺動しなければならない。
・ネックブッシュは、軸方向の固定ユニットが損傷を受けないように、過大な力を軸方向の固定ユニットに加えてはいけない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】西独国特許出願公開第2843658号明細書
【特許文献2】国際公開第2011/096672号
【特許文献3】欧州特許第1213061号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第102016214011号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第102017217562号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の根底にある課題は、前述の両方の相反する設計目標を満足するように、油膜軸受の一部としての既知のネックブッシュと、ネックブッシュを有する既知のロールスタンドを発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、ネックブッシュに関しては、請求項1の対象によって解決される。この解決策は、ネックブッシュ(100)に関して、
0.35<3.6/a(D-B)+kD<0.5 (1)
但し、
a[m] ネックブッシュの円錐長さ
D[m] ネックブッシュの胴外径
B[m] ネックブッシュの円錐大径
k=0.15[1/m] 滑り係数
との関係が適用されること、を特徴とする。
【0012】
好ましくは、下限の値は0.37であり、及び/又は、上限の値は0.49である。
【0013】
式(1)に従って新たに請求した設計条件を満足するネックブッシュが、本発明の課題を解決することを発見したことが、発明者の功績である。即ち、このようなネックブッシュの場合、圧延操作中に、角度位置に依存した軸方向のネックブッシュ変位もしくはネックブッシュ変形に基づく大きい圧延荷重の作用時に、一方で、ロールネックとネックブッシュの間の領域に十分な潤滑油が到達し、これにより、そこでは、ロールネックの表面に損傷が全く生じない。更に、式1に従って設計されたネックブッシュの場合、通常の大きさの圧延荷重に基づく弾性的な軸方向のネックブッシュ変位もしくはネックブッシュ変形時に生じる軸力は、有利には許容可能であり、即ち、軸力は、許容可能な力の範囲内にある。この力の範囲による軸力は、バネリングが付設された固定装置によって受け止めることができる。換言すれば、本発明に従って設計されたネックブッシュの場合、ネックブッシュ変位もしくはネックブッシュ変形時に生じる軸方向の力は、非常に小さく、固定システムによってロールネックに導入される(軸方向の)力が非常に大きいために、ロールネックの端部が残りのロールネックから切り取られる危険、又は、固定システム自体が、過負荷もしくは損傷を受ける危険はない。バネリングのバネ定数は、軸受の最大応力時に、結果として生じる勾配抵抗(既知の円錐角度で算定される)が、1/10mm、好ましくは3/10mmのネックブッシュの軸方向の最小変位を生じさせるように設計されなければならない。
【0014】
1つの実施例によれば、円錐形のロールネックの外側と同様に、円錐形のネックブッシュは、内側に、フェザーキーを部分的に収容するための少なくとも1つの溝を備える。フェザーキーは、両方の溝に係合し、これにより、ロールネックと、ロールネックに取り付けられかつ共に回転するネックブッシュとの間の周方向の回転連結部を構成する。本発明によれば、各溝対のこれら両方の溝の少なくとも一方は、フェザーキーが、軸方向の遊び及び/又は半径方向の遊びを有するように溝内に位置するように寸法設定されている。両方の遊びは、ネックブッシュが圧延操作中に最高の負荷を有する領域を通過する時に、初めて、ネックブッシュの前記軸方向の変位もしくは変形を容易にする又は可能にする。
【0015】
本発明の上記課題は、更に、請求項5によるロールスタンドによって解決される。この解決策の利点は、請求したネックブッシュに関して上で述べた利点と一致する。
【0016】
ネックブッシュとロールスタンドの別の有利な形態は、従属請求項の対象である。
【0017】
明細書には、5つの図が添付されている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明によるネックブッシュを経る縦断面図
図2】本発明によるネックブッシュの寸法の許容範囲
図3】フェザーキーと関連する圧延荷重による負荷の無い本発明によるネックブッシュ
図4】圧延荷重による負荷時の油膜軸受内のネックブッシュ表面上の典型的な圧力分布
図5】圧延荷重による負荷下の本発明によるネックブッシュとこのネックブッシュ内に支承されたロールネックを経る縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を、言及した図を参照して以下で実施例の形態で詳細に説明する。全ての図で、同じ技術要素が、同じ符号で示されている。
【0020】
図1は、本発明によるネックブッシュ100を縦断面図で示す。ネックブッシュは、シリンダ状の外周を有し、軸受ブッシュ(この軸受ブッシュのシリンダ状の空洞部内にネックブッシュが収容される)と共に油膜軸受を構成する(図1には示されていない)。軸受ブッシュとネックブッシュの間には、油膜軸受の潤滑剤を満たされた潤滑剤間隙が存在する。
【0021】
本発明によるネックブッシュは、円錐形の縦方向部分110から成り、この円錐形の縦方向部分のネックブッシュのシリンダ状の外周に引き出された長さが、符号aで示されている。円錐形の縦方向部分110は、円錐大径Bと円錐小径Aを有する円錐形の空洞部を構成する。円錐形の縦方向部分110は、円錐角度βを有する。円錐小径Aの領域で、円錐形の縦方向部分110に、ネックブッシュのシリンダ状の終端部分120が継ぎ目なく接続する。終端部分120は、シリンダ状の空洞部を構成し、このシリンダ状の空洞部の直径は、円錐小径Aの直径に一致する。
【0022】
円錐形の縦方向部分110によって構成された円錐形の空洞部と、この円錐形の空洞部に接続する、終端部分120によって構成されたシリンダ状の空洞部の両方が、ロールスタンド内のロールの対応する相補的に形成されたネックを収容するために使用される。外側がシリンダ状のネックブッシュの外径はDである。ネックブッシュのシリンダ状の外側は、接続路113を介してネックブッシュの内側の潤滑溝112と接続されている。
【0023】
このように支承されたロールの操作時、軸受ブッシュとネックブッシュ100の外側との間に、潤滑剤からなる前記油膜が構成されている。接続路113を介して、潤滑剤は、潤滑溝112に到達する。しかしながら、ネックブッシュ100がロールネック上に固定して取り付けられている限り、潤滑剤は、潤滑溝112内に留まり、そこからネックブッシュとロールネックの間の接触面に広がることはできない。
【0024】
本発明によれば、ネックブッシュ(100)に関して、
0.35<3.6/a(D-B)+k*D<0.5 (1)
但し、
B[m] 円錐大径
D[m] 胴外径
a[m] ネックブッシュのシリンダ状の外周に引き出された円錐形の縦方向部分の長さ
k=0.15[1/m] 滑り係数
との関係が適用される。
【0025】
好ましくは、下限は0.37(0.35の代わりに)であり、及び/又は、上限は0.49(0.5の代わりに)である。
【0026】
請求した下限及び上限は、図2に具体的に図示されている。下限及び上限は、構造的に許容可能な範囲を構成する。即ち、ネックブッシュが、請求した上限及び下限を有する、好ましくは増加した下限及び/又は減少した上限を有する請求した式(1)を満足する限り、ネックブッシュは、本発明の根底にある課題を、即ち解決すべき相反する設計目標を満足する。この相反する設計目標と、本発明によるその解決策を、以下で更に図3~5によって詳細に説明する。
【0027】
図3は、図1の補足を示す。図3でも、ネックブッシュ100は、ロールネック210上に固定して取り付けられている。即ち、ネックブッシュ100の円錐形の縦方向部分110は、実質的に相補的に形成された円錐形のロールネック部分212上に遊びなく位置し、ネックブッシュのシリンダ状の終端部分120は、ロールネックのシリンダ状のロールネック終端部分214上に位置する。ネックブッシュ100とロールネック210の間には、基本的に摩擦係合があり、即ち、ネックブッシュ100は、存在する静止摩擦に基づいてロールネック210と共に回転する。摩擦係合式の回転カップリングは、少なくとも1つのフェザーキー20によって固定され、このフェザーキーは、それぞれ、一部が、ネックブッシュの内側の軸方向に位置合わせされた溝122内に位置し、他の一部が、ロールネックの外側の軸方向に延在する溝216内に位置する。
【0028】
ファザーキー20は、これら両方の溝122,216内に、軸方向の遊びSa及び/又は半径方向の遊びSrを有するように位置する。
【0029】
ネックブッシュ100は、一方でバネリング220と固定リング230によってロールネック上に軸方向に固定される。
【0030】
図3は、ネックブッシュとロールネック無負荷状態の、即ち、圧延荷重の作用のない、又は、ネックブッシュの変形を生じさせないほど小さい圧延荷重の作用時のネックブッシュとロールネックの配置を示す。この状態で、ネックブッシュとロールネックの間に、潤滑膜は形成されていない。
【0031】
図4は、圧延操作中の回転するネックブッシュと静止した軸受ブッシュの間の軸受け間隙内で生じるような現実の圧力分布を示す。模範的に、圧力分布は、ここでは、ネックブッシュ100が取り付けられた上のバックアップロールネック210が、ロールスタンド内に回転支承され、圧延操作中に矢印方向に回転する場合に関して示されている(図4の左右の図を参照)。重要であるのは、軸受、特にネックブッシュに対する圧力負荷が、周囲にわたって等しく分配されているのではなく、圧延荷重作用FRとは反対のネックブッシュの表面の領域で最大負荷Mが形成されることが認められることである。
【0032】
図4に示した圧力分布は、少なくとも圧延荷重FRが作用する方向が変化しない限り、圧延操作中は、実質的に、ある周囲角度領域内で位置不動である。これは、圧延荷重が基本的にその量を変化させ得ることと矛盾しない。
【0033】
前記位置不動の圧力分布は、結果として、ロールネックの表面もしくは共に回転するネックブッシュの表面上の点が、その回転中に図4に示した、大きい最大圧力負荷Mを有する圧力領域を通過する場合にだけ、示した大きい圧力負荷にさらされることをもたらす。この状況では、即ち、大きい圧力負荷を有する角度領域を通過する際は、圧延荷重FRから生じる、半径方向のネックブッシュへの圧縮力FPと、特に円錐形の縦方向部分110と関連してこれから生じる勾配抵抗は、ネックブッシュ100が図5に示したように局所的に変位もしくは変形するほどに大きくなり得る。局所的な変形は、特に、それぞれ回転時に大きい圧力負荷Mの領域を現在通過するネックブッシュの部分がロールネック上で勾配抵抗の方向に変位もしくは変形し、これにより局所的にロールネックから剥離する点にある。
【0034】
ロールネック210からのネックブッシュの剥離は、ネックブッシュ100とロールネック210の間に微視的に狭く局所的に制限された潤滑剤間隙130を形成しつつ行なわれる。この微視的に狭い潤滑剤間隙130も、決して全周にわたって延在するものではなく、実質的に周方向に図4に図示した大きい圧力負荷の領域に限定されている。従って、大きい圧力負荷Mの角度領域を通過する際、潤滑油は、図4に示したような軸受ブッシュとネックブッシュ100の間の本来の潤滑膜から、接続路113を介して潤滑溝112に押し込まれ、そこから図5に示したような前記潤滑剤間隙130に押し込まれる。大きい圧力負荷の角度領域を通過するネックブッシュ100の部分は、図5にも示したような圧縮力FPに基づいて、潤滑剤膜130上で摺動してバネリング220を押圧し、バネリングも変形させるように変形する。変形/変位時に、ネックブッシュの溝122及び/又はロールネックの溝216内の軸方向及び半径方向の遊びSa,Srは、フェザーキーが、図5によるロールネックの変位に基づいてその限界まで押し込まれることによって、利用される。
【0035】
注目すべきは、ネックブッシュが、反対側では、即ち図5で下では、僅かにしか変形せず、これにより、潤滑剤間隙なしのプレス嵌めでほぼ変化せずにロールネック上に位置することである。
【0036】
式(1)に従ったネックブッシュ100の本発明による設計により、一方で、ネックブッシュとロールネックの間の潤滑油が潤滑溝112の領域に局所的に限定されたままではなく、潤滑溝112の間の領域にも分配されることを保証する前記潤滑剤間隙130が形成されることが保証される。これは、従来技術から知られたフレッチング、即ち、さもなければ大きい圧力負荷を有する角度領域を通過する際にネックブッシュとロールネックの間の接触面の領域内に生じる微視的に小さい摩耗を防止するために、ロールネック上にネックブッシュが基本的に不動の嵌合が依然として存在するにもかかわらず、望ましい。この摩耗は、潤滑剤間隙130によって防止され、この潤滑剤間隙自体は、勾配抵抗FHができるだけ大きくなることによって、実現もしくは促進される。勾配抵抗は、特に円錐大径Bと円錐小径Aの間の差が大きいほど大きくなる。しかしながら、他方で、勾配抵抗FHは、大きすぎてはいけないが、それは、さもなければ、バネリング220と固定リング230が、勾配抵抗FHをもはや受け止めること及びロールネック210に導き出すことができないからである。最悪の場合、即ち、勾配抵抗FHが大きすぎる場合は、シリンダ状のロールネック終端部分214が、円錐形のロールネック部分212から軸方向にはじき飛ばされることが生じ得る。
【0037】
前記のように、式(1)に従ったネックブッシュ100の構造設計は、相反する両設計目標が実現もしくは遵守され得ることを保証する。
【0038】
右から固定リング230の方を向いた図5に示した両矢印は、勾配抵抗が固定リング230を介してロールネック210に導き出される時に、ロールネック、特にシリンダ状のロールネック終端部分214によって受け止めなければならない勾配抵抗FHに対する反力FGを示す。
【符号の説明】
【0039】
100 ネックブッシュ
110 円錐形の縦方向部分
112 潤滑溝
113 接続路
120 終端部分
122 フェザーキー用の溝
130 潤滑剤間隙
20 フェザーキー
200 ロール
210 ロールネック
212 円錐形のロールネック部分
214 シリンダ状のロールネック終端部分
216 フェザーキー用の溝
220 バネリング
230 固定リング
A 円錐小径
B 円錐大径
D ネックブッシュの胴外径
M 最大負荷
Sa 軸方向の遊び
Sr 半径方向の遊び
β 円錐角度
FG 勾配抵抗FHに対する反力
FP 圧延荷重FRから生じる圧縮力
FR 圧延荷重
FH 勾配抵抗
a 円錐形の縦方向部分の(引き出された)円錐長さ
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-11-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール、特にバックアップロールの円錐形のロールネックを収容するためのロールスタンド内の油膜軸受の一部としてのネックブッシュ(100)であって、
ネックブッシュが、
・ロールスタンドによって加えられる圧延荷重の作用下で弾性変形可能であり、
・外側を胴外径Dのシリンダ状に形成され、
・内側を円錐長さaにわたってロールの円錐形のロールネックを収容するために円錐大径Bと円錐角度βを有する円錐形に形成された、内側が円錐形の縦方向部分(110)を備え、
円錐形の縦方向部分(110)が、内側に、ネックブッシュの内側と円錐形のロールネックの外側との間のスペースに潤滑剤を導入するための潤滑溝(112)を備えるものにおいて、
ネックブッシュ(100)に関して、
0.35<3.6/a(D-B)+kD<0.5 (1)
但し、k=0.15/m 滑り係数
との関係が適用されること、を特徴とするネックブッシュ(100)。
【請求項2】
ネックブッシュ(100)に関して、
0.37<3.6/a(D-B)+kD<0.49 (2)
との関係が適用されること、を特徴とする請求項1に記載のネックブッシュ(100)。
【請求項3】
内径が一致することにより円錐形の縦方向部分の円錐最小径Aの位置でこの円錐形の縦方向部分に接続する中空シリンダ状に形成された終端部分(120)が設けられていること、を特徴とする請求項に記載のネックブッシュ(100)。
【請求項4】
ネックブッシュ(100)が、内側に、フェザーキー(20)を部分的に収容するための溝(122)を備えること、を特徴とする請求項に記載のネックブッシュ(100)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の内側が円錐形のネックブッシュ(100)を有する油膜軸受として形成された少なくとも1つの軸受ハウジングと、
ロールネック(210)が、ネックブッシュ(100)内に収容するために、円錐形のロールネック部分(212)と、好ましくはまたシリンダ状のロールネック終端部分(214)を有するように形成された少なくとも1つのロール(200)
を備えるロールスタンドであって、ネックブッシュが、ロールネックと共に、軸受ハウジング内、好ましくは軸受ハウジングの軸受ブッシュ内に回転可能に支承されていること、を特徴とするロールスタンド。
【請求項6】
ロールネック(210)が、外側に溝を備えること、フェザーキー(20)が設けられており、このフェザーキーの第1の部分が、ネックブッシュ(100)の内側の溝によって収容され、第2の部分が、ロールネック(210)の外側の溝(216)によって収容されていること、及び、両方の溝の少なくとも一方は、フェザーキー(20)の寸法に関して、フェザーキー(20)が、無負荷状態で、特に圧延操作外で、Sa>0.0mmの軸方向の遊びと、Sr>0.5mmの半径方向の遊びを有するように溝内に位置するように寸法設定されていること、を特徴とする請求項5に記載のロールスタンド。
【請求項7】
ネックブッシュ(100)が、固定リング(230)と、軸方向でネックブッシュ(100)と固定リング(230)の間に配置されたバネリング(220)によって、軸方向のロールネック(210)からの滑落に抗するようにロールネック上に固定されていること、及び、
バネリング(220)のバネ定数は、軸受の最大応力時に、既知の円錐角度で算定される結果として生じる勾配抵抗が、1/10mm、好ましくは3/10mmのネックブッシュの軸方向の最小変位を生じさせるように設計されていること、
を特徴とする請求項6に記載のロールスタンド。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
右から固定リング230の方を向いた図5に示した両矢印は、勾配抵抗が固定リング230を介してロールネック210に導き出される時に、ロールネック、特にシリンダ状のロールネック終端部分214によって受け止めなければならない勾配抵抗FHに対する反力FGを示す。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.ロール、特にバックアップロールの円錐形のロールネックを収容するためのロールスタンド内の油膜軸受の一部としてのネックブッシュ(100)であって、
ネックブッシュが、
・ロールスタンドによって加えられる圧延荷重の作用下で弾性変形可能であり、
・外側を胴外径Dのシリンダ状に形成され、
・内側を円錐長さaにわたってロールの円錐形のロールネックを収容するために円錐大径Bと円錐角度βを有する円錐形に形成された、内側が円錐形の縦方向部分(110)を備え、
円錐形の縦方向部分(110)が、内側に、ネックブッシュの内側と円錐形のロールネックの外側との間のスペースに潤滑剤を導入するための潤滑溝(112)を備えるものにおいて、
ネックブッシュ(100)に関して、
0.35<3.6/a(D-B)+kD<0.5 (1)
但し、k=0.15/m 滑り係数
との関係が適用されること、を特徴とするネックブッシュ(100)。
2.ネックブッシュ(100)に関して、
0.37<3.6/a(D-B)+kD<0.49 (2)
との関係が適用されること、を特徴とする上記1に記載のネックブッシュ(100)。
3.内径が一致することにより円錐形の縦方向部分の円錐最小径Aの位置でこの円錐形の縦方向部分に接続する中空シリンダ状に形成された終端部分(120)が設けられていること、を特徴とする上記1又は2に記載のネックブッシュ(100)。
4.ネックブッシュ(100)が、内側に、フェザーキー(20)を部分的に収容するための溝(122)を備えること、を特徴とする上記1~3のいずれか1つに記載のネックブッシュ(100)。
5.上記1~4のいずれか1つに記載の内側が円錐形のネックブッシュ(100)を有する油膜軸受として形成された少なくとも1つの軸受ハウジングと、
ロールネック(210)が、ネックブッシュ(100)内に収容するために、円錐形のロールネック部分(212)と、好ましくはまたシリンダ状のロールネック終端部分(214)を有するように形成された少なくとも1つのロール(200)
を備えるロールスタンドであって、ネックブッシュが、ロールネックと共に、軸受ハウジング内、好ましくは軸受ハウジングの軸受ブッシュ内に回転可能に支承されていること、を特徴とするロールスタンド。
6.ロールネック(210)が、外側に溝を備えること、フェザーキー(20)が設けられており、このフェザーキーの第1の部分が、ネックブッシュ(100)の内側の溝によって収容され、このフェザーキーの第2の部分が、ロールネック(210)の外側の溝(216)によって収容されていること、及び、両方の溝の少なくとも一方は、フェザーキー(20)の寸法に関して、フェザーキー(20)が、無負荷状態で、特に圧延操作外で、Sa>0.0mmの軸方向の遊びと、Sr>0.5mmの半径方向の遊びを有するように溝内に位置するように寸法設定されていること、を特徴とする上記5に記載のロールスタンド。
7.ネックブッシュ(100)が、固定リング(230)と、軸方向でネックブッシュ(100)と固定リング(230)の間に配置されたバネリング(220)によって、軸方向のロールネック(210)からの滑落に抗するようにロールネック上に固定されていること、及び、
バネリング(220)のバネ定数は、軸受の最大応力時に、既知の円錐角度で算定される結果として生じる勾配抵抗が、1/10mm、好ましくは3/10mmのネックブッシュの軸方向の最小変位を生じさせるように設計されていること、
を特徴とする上記6に記載のロールスタンド。
【国際調査報告】