(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】接着装置およびその使用
(51)【国際特許分類】
A61L 27/18 20060101AFI20240524BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240524BHJP
C09J 5/00 20060101ALI20240524BHJP
C09J 175/00 20060101ALI20240524BHJP
C09J 11/02 20060101ALI20240524BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20240524BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20240524BHJP
A61L 27/02 20060101ALI20240524BHJP
A61L 27/12 20060101ALI20240524BHJP
A61B 17/88 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61L27/18
C09J201/00
C09J5/00
C09J175/00
C09J11/02
A61L27/58
A61L27/50
A61L27/02
A61L27/12
A61B17/88
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572710
(86)(22)【出願日】2022-05-26
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 CA2022050844
(87)【国際公開番号】W WO2022246562
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523442161
【氏名又は名称】コヒーシス インク.
【氏名又は名称原語表記】COHESYS INC.
【住所又は居所原語表記】1300-661 University Avenue MaRS Centre, West Tower Toronto, Ontario M5G 0B7 (CA)
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】パサード、 アヴィナーシュ アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】フロロス、 マイケル シー.
(72)【発明者】
【氏名】ラグナナン、 ラチミ
(72)【発明者】
【氏名】ラーシュ、 アレクサンダー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ボルトラート、 ジャナイナ フリータス
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 ブライアン ドノヴァン
【テーマコード(参考)】
4C081
4C160
4J040
【Fターム(参考)】
4C081BA16
4C081BB04
4C081CA16
4C081CA17
4C081CA18
4C081CA20
4C081CA21
4C081CA27
4C081CC04
4C081CF01
4C081CF03
4C081CF21
4C081DA02
4C081DC02
4C160LL70
4J040EF051
4J040EF111
4J040EF281
4J040JB01
4J040KA42
4J040MA14
4J040NA02
4J040PA30
(57)【要約】
本発明は、対象物(例えば、骨片)を互いに固定して保持するための接着剤装置を特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内の骨片を安定化する方法であって、
(i)(a)接着剤組成物を加熱して軟化した接着剤組成物を形成し、軟化した接着剤組成物を第1の骨片に接触させ、そして(b)軟化した接着剤組成物が冷却するのを許容して、第1の骨片に固定された第1のアンカーを形成することによって、第1の骨片上に第1のアンカーを形成するステップ;
(ii)(a)接着剤組成物を加熱して軟化した接着剤組成物を形成し、軟化した接着剤組成物を第2の骨片に接触させ、そして(b)軟化した接着剤組成物が冷却するのを許容して、第2の骨片に固定された第2のアンカーを形成することによって、第2の骨片上に第2のアンカーを形成するステップ
を含み、
ここで、接着剤組成物は、少なくとも40℃の粘着付与温度を有し、
第1のアンカーと第2のアンカーは、骨片を安定させるための支持構造に接続されている、
体内の骨片を安定化する方法。
【請求項2】
支持構造は、第1のアンカーを第2のアンカーに連結する、生分解性および生体適合性ポリマーを含む可撓性支持体であり、任意に、支持構造、第1のアンカー、および第2のアンカーが、(x)支持構造である非接着性の上層と、(y)第1のアンカーおよび第2のアンカーを形成するために軟化すると接着性となる下層とを含むテープから形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)接着剤組成物は水溶性ではなく;および/または
b)接着剤組成物は、熱伝達剤を含み、任意に、熱伝達剤は、軟化した接着剤組成物が120秒以下で冷えて硬化することを可能にする量で存在し、好ましくは、熱伝達剤は、軟化した接着剤組成物が10秒以下で冷えて硬化することを可能にする量で存在する、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
a)熱伝達剤が、エネルギーを加えてから120秒以内に接着剤組成物が軟化することを可能にする量で存在し、好ましくは、熱伝達剤が、非接着性上層にエネルギーを加えてから10秒以内に接着剤組成物が軟化することを可能にする量で存在し;および/または
b)熱伝達剤が、塩化ナトリウム、リン酸鉄(III)二水和物、クエン酸鉄(III)一水和物、ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カルシウム、および炭酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせからなる群より選ばれ、任意に、熱伝達剤がヒドロキシアパタイトであり;および/または
c)接着剤組成物が、約0.5~60%(w/w)の熱伝達剤を含み、好ましくは接着剤組成物が、約35~60%(w/w))の熱伝達剤を含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
接着剤組成物が、式(I)の構造を有するポリマーを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【化1】
(式中、
nは0から4までの整数であり(例えば、n=1、2、3、または4);
ブロックBは、MW≦4,000g/molの、ポリエステル、ポリアルキレングリコール、ポリシリコーン、またはポリカーボネートに由来するオリゴマーを含み;
ブロックAは、置換されていてもよいC
1~C
6アルキレンを含み、ブロックAはジイソシアネート架橋剤から誘導されており;
ブロックWは、置換されていてもよいC
0~C
3アルキル-ベンゼン-ジオール、または置換されていてもよいC
0~C
3アルキル-ベンゼン-トリオールを含み;
リンカーL’は、カルバメートを含み;そして
リンカーLは、尿素を含む。)
【請求項6】
a)ブロックBが、式(II):
【化2】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、または
b)ブロックBが、式(III):
【化3】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、または
c)ブロックBが、式(IV):
【化4】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、または
d)ブロックBが、式(V):
【化5】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
a)ブロックAが、式(VII):
【化6】
(式中、R
1はC
1-C
3アルキルである。)
の構造を有する;および/または
b)リンカーL’が、
【化7】
の構造を有する;および/または
c)リンカーLが、
【化8】
の構造を有する;および/または
d)ブロックWが、
【化9】
の構造を有する、
請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
接着剤組成物は、30~70%(w/w)の充填剤を含み、任意に、充填剤が、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリスルホン、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシアパタイト(HA)、リン酸四カルシウム(TTCP)、リン酸三カルシウム(TCP)、リン酸二カルシウム(DCP)、もしくはそれらのコポリマー、またはそれらのブレンドを含み、
好ましくは、充填剤が、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、もしくはポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ヒドロキシアパタイト(HA)、またはそれらのコポリマー、またはそれらのブレンドを含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(i)およびステップ(ii)は、対象における複数の骨片を安定化するために繰り返され、任意に、2~5、6~10、11~15、16~20、21~25、26~30、31~35、36~40、41~45、46~50、またはそれ以上の骨片が対象物として安定化される、
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
加熱には、エネルギー源を加えることを含み、任意に、エネルギー源は超音波エネルギーであり、
任意に
a)超音波エネルギーは35kHzから70kHzの周波数で印加され、好ましくは超音波エネルギーの周波数は70kHzであり;および/または
b)1.5~5.0Jのエネルギーが印加され;および/または
c)超音波エネルギーは、第1のアンカーおよび第2のアンカーの形成前に接着剤組成物と骨片との間で流体を移動させるのに十分な周波数および量で加えられ;および/または
d)超音波エネルギーは、超音波溶接機を使用して印加され、好ましくは、超音波溶接機は、個々のテクスチャ要素を有するホーンチップを含み、個々のテクスチャ要素は、最大0.127mmの均一な深さで等間隔に配置されている、
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
a)この方法は、骨片を可逆的に安定化することを含み;および/または
b)第1のアンカーと第2のアンカーは可逆的アンカーであり;および/または
c)接着剤組成物は、接着に関してその場での硬化反応に依存せず;および/または
d)接着剤組成物は45±5℃の温度で可逆的に軟化し;および/または
e)支持構造、第1のアンカー、および第2のアンカーは、(x)支持構造である非接着性の上層と、(y)軟化して接着性となって第1アンカーと第2アンカーを形成する下層とを含むテープから形成され;および/または
f)(i)支持構造と、(ii)第1のアンカーおよび第2のアンカーのうちの少なくとも1つは、接着部分と、接着部分に対して裏打ちを形成する支持部分とを形成するように配置され、接着部分は、加熱されると、支持部分を変形させることなく軟化することができ;
任意に、裏打ち部分は0.05~0.31mmの厚さを有し、
任意に、裏打ち部分は0.12から0.20mmの厚さを有し、および/または
任意に、接着部分は0.05~0.16mmの厚さを有し、
任意に、接着部分は0.075±0.025mmまたは0.13±0.03mmの厚さを有し;および/または
g)加熱は、表面全体を覆うように付与面に垂直の一連の連続した溶接鋲を介して溶接機を使用して加えることを含むか;または加熱は、ブラシストロークまたはペイント動作で装置表面全体にわたって溶接機を連続的にスライドさせることを含む、
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
骨片を安定化するための装置であって、
(i)第1の骨片に取り付けることができる第1のアンカーであって、加熱により軟化して冷却により第1のアンカーを形成する接着剤組成物を含む第1のアンカーと、
(ii)第2の骨片に取り付けることができる第2のアンカーであって、加熱により軟化して冷却により第2のアンカーを形成する接着剤組成物を含む第2のアンカーと、
(iii)第1のアンカーを第2のアンカーに接続する、骨片を安定させることができる支持構造
を有し、接着剤組成物は、少なくとも40℃の粘着付与温度を有する、
骨片を安定化するための装置。
【請求項13】
支持構造が、第1のアンカーを第2のアンカーに連結する生分解性および生体適合性ポリマーを含む可撓性支持体であり、任意に、支持構造、第1のアンカー、および第2のアンカーが、(x)支持構造である非接着性の上層と、(y)軟化すると接着性となり第1のアンカーと第2のアンカーを形成する下層とを含むテープから形成される、
請求項12に記載の装置。
【請求項14】
a)接着剤組成物は水溶性ではなく;および/または
b)接着剤組成物は熱伝達剤を含み、任意に、熱伝達剤は軟化した接着剤組成物が120秒以内に冷却して硬化することを可能にする量で存在し、好ましくは、熱伝達剤は軟化した接着剤組成物が10秒以内に冷却して硬化することを可能にする量で存在する、
請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
a)熱伝達剤は、エネルギーを加えてから120秒以内に接着剤組成物が軟化することを可能にする量で存在し、好ましくは、熱伝達剤は、非接着性上層にエネルギーを加えてから10秒以内に接着剤組成物が軟化することを可能にする量で存在し;および/または
b)熱伝達剤は、塩化ナトリウム、リン酸鉄(III)二水和物、クエン酸鉄(III)一水和物、ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カルシウム、および炭酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせからなる群より選ばれ、任意に、熱伝達剤は、ヒドロキシアパタイトであり;および/または
c)接着剤組成物は約0.5~60%(w/w)の熱伝達剤を含み、好ましくは、約35~60%(w/w)の熱伝達剤を含む、
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
接着剤組成物は、式(I)の構造を有するポリマーを含む、請求項12~15のいずれか1項に記載の装置。
【化10】
(式中、
nは0から4までの整数であり(例えば、n=1、2、3、または4);;
ブロックBは、MW<4,000g/molの、ポリエステル、ポリアルキレングリコール、ポリシリコーン、またはポリカーボネートに由来するオリゴマーを含み;
ブロックAは、置換されていてもよいC
1~C
6アルキレンを含み、ブロックAはジイソシアネート架橋剤から誘導されており;
ブロックWは、置換されていてもよいC
0~C
3アルキル-ベンゼン-ジオール、または置換されていてもよいC
0~C
3アルキル-ベンゼン-トリオールを含み;
リンカーL’は、カルバメートを含み;そして
リンカーLは、尿素を含む。)
【請求項17】
a)ブロックBが、式(II):
【化11】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、または
b)ブロックBが、式(III):
【化12】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、または
c)ブロックBが、式(IV):
【化13】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、または
d)ブロックBが、式(V):
【化14】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、
請求項16に記載の装置。
【請求項18】
a)ブロックAが、式(VII):
【化15】
(式中、R
1はC
1-C
3アルキルである。)
の構造を有する;および/または
b)リンカーL’が、
【化16】
の構造を有する;および/または
c)リンカーLが、
【化17】
の構造を有する;および/または
d)ブロックWが、
【化18】
の構造を有する、
請求項12~17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
接着剤組成物は、30~70%(w/w)の充填剤を含み、任意に、充填剤が、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリスルホン、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシアパタイト(HA)、リン酸四カルシウム(TTCP)、リン酸三カルシウム(TCP)、リン酸二カルシウム(DCP)、もしくはそれらのコポリマー、またはそれらのブレンドを含み、
好ましくは、充填剤が、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、もしくはポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ヒドロキシアパタイト(HA)、またはそれらのコポリマー、またはそれらのブレンドを含む、
請求項12~18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
a)装置は、複数の骨片を安定化できる複数の骨アンカーおよび複数の支持構造を含む;および/または
b)(i)支持構造と(ii)第1のアンカーおよび第2のアンカーのうちの少なくとも1つとが、接着部分と、接着部分の裏打ちを形成する支持部分とを形成するように配置され、接着部分は、加熱されると、支持部分を変形させることなく軟化することができる;および/または
c)第1のアンカーおよび第2のアンカーはそれぞれ、濡れたまたは乾いた骨片に付着することができる;および/または
d)第1のアンカーと第2のアンカーは可逆的アンカーである;および/または
e)接着剤組成物は、接着のためのその場での硬化反応に依存しない;および/または
f)接着剤組成物は45±5℃の温度で可逆的に軟化する;および/または
g)裏打ち部分は0.05~0.31mmの厚さを有し、好ましくは、裏打ち部分は0.12から0.20mmの厚さを有する;および/または
h)接着部分は0.05~0.16mmの厚さを有し、任意に、接着剤部分は0.075±0.025mm、または0.13±0.03mmの厚さを有する、
請求項12~19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
(i)0~70%(w/w)の充填剤;および
(ii)30~100%(w/w)の式(I):
【化19】
(式中、
nは0から4までの整数であり(例えば、n=1、2、3、または4);
ブロックBは、MW≦4,000g/molの、ポリエステル、ポリアルキレングリコール、ポリシリコーン、またはポリカーボネートに由来するオリゴマーを含み;
ブロックAは、置換されていてもよいC
1~C
6アルキレンを含み、ブロックAはジイソシアネート架橋剤から誘導されており;
ブロックWは、置換されていてもよいC
0~C
3アルキル-ベンゼン-ジオール、または置換されていてもよいC
0~C
3アルキル-ベンゼン-トリオールを含み;
リンカーL’は、カルバメートを含み;そして
リンカーLは、尿素を含む。)
の構造を有するポリマーを含み、
少なくとも40℃の粘着温度を有する、
接着剤組成物。
【請求項22】
a)接着剤組成物は水溶性ではなく;および/または
b)接着剤組成物は熱伝達剤を含み、任意に、熱伝達剤は軟化した接着剤組成物が120秒以内に冷却して硬化することを可能にする量で存在し、好ましくは、熱伝達剤は軟化した接着剤組成物が10秒以内に冷却して硬化することを可能にする量で存在する、
請求項21に記載の接着剤組成物。
【請求項23】
a)熱伝達剤は、エネルギーを加えてから120秒以内に接着剤組成物が軟化することを可能にする量で存在し、好ましくは、熱伝達剤は、非接着性上層にエネルギーを加えてから10秒以内に接着剤組成物が軟化することを可能にする量で存在し;および/または
b)熱伝達剤は、塩化ナトリウム、リン酸鉄(III)二水和物、クエン酸鉄(III)一水和物、ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カルシウム、および炭酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせからなる群より選ばれ、任意に、熱伝達剤は、ヒドロキシアパタイトであり;および/または
c)接着剤組成物は約0.5~60%(w/w)の熱伝達剤を含み、好ましくは、約35~60%(w/w)の熱伝達剤を含む、
請求項21または22に記載の接着剤組成物。
【請求項24】
a)ブロックBが、式(II):
【化20】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、または
b)ブロックBが、式(III):
【化21】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、または
c)ブロックBが、式(IV):
【化22】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、または
d)ブロックBが、式(V):
【化23】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、
請求項21~23のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項25】
a)ブロックAが、式(VII):
【化24】
(式中、R
1はC
1-C
3アルキルである。)
の構造を有する;および/または
b)リンカーL’が、
【化25】
の構造を有する;および/または
c)リンカーLが、
【化26】
の構造を有する;および/または
d)ブロックWが、
【化27】
の構造を有する、
請求項21~24のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項26】
充填剤が、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリスルホン、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシアパタイト(HA)、リン酸四カルシウム(TTCP)、リン酸三カルシウム(TCP)、リン酸二カルシウム(DCP)、もしくはそれらのコポリマー、またはそれらのブレンドを含み、
好ましくは、充填剤が、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、もしくはポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ヒドロキシアパタイト(HA)、またはそれらのコポリマー、またはそれらのブレンドを含む、
請求項21~25のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項27】
(i)非接着性ポリマー上層と、(ii)請求項21~26のいずれか1項の接着剤組成物を含む下層とを含む、テープ。
【請求項28】
a)非接着性ポリマー上層は、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリスルホン、ポリエチレングリコール(PEG)、またはそれらのコポリマーを含む;および/または
b)非接着性ポリマー上層は0.05~0.31mmの厚さを有し、任意に、非接着性ポリマー上層は0.12から0.20mmの厚さを有する;および/または
c)下層は、0.05~0.16mmの厚さを有し、任意に、下層は、0.075±0.025mmの厚さを有するまたは0.13±0.03mmの厚さを有する、
請求項27に記載のテープ。
【請求項29】
請求項12~20のいずれか1項の装置、または請求項27~28のいずれか1項のテープの製造方法であって、この方法は、
a)(i)請求項21~26のいずれか1項の接着剤組成物を含む第1の部分を、(ii)支持構造を含む第2の部分と接触させること、
b)熱を加えて第1の部分と第2の部分を接合すること、
を含む製造方法。
【請求項30】
第1の部分および第2の部分を圧縮するために力を加えることをさらに含み、任意に、少なくとも800kgの力を加える、
請求項29に記載の方法。
【請求項31】
a)第1の部分と第2の部分は、積層により接合される;および/または
b)第1の部分および第2の部分の一方または両方がシートの形態である、
請求項29または30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年5月28日に出願された米国特許出願第63/194,297号に対する優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
組織と接触するように設計された外科用接着剤、特に内部使用向けのものは、生体適合性があり、貼付/塗布が容易で、湿った状態、乾燥した状態、清潔な状態、および/または生物付着した状態でも生体組織に接着できなければならない。しかし、これらの要件は、生物医学用途における外科用接着剤の適用を大きく制限しており、現在市販されている外科用接着剤は、望ましくない強度、毒性、困難なワークフローの1つ以上を示すか、および/または最適な性能を得るには清潔で乾燥した表面を必要とする。
【0003】
重度の外傷性頭蓋顎顔面(CMF)骨折は、自動車事故、スポーツ傷害、戦争傷害、身体的暴行などの高エネルギー外傷が原因で発生するのが一般的である。これらの骨折の多くは、外科的安定化および/または再建を必要とする。CMFやその他の亀裂を安定させるために使用される現在の接着剤には、次のような欠陥が1つ以上ある。高い水溶性、弱い接着強度、遅すぎるまたは速すぎる硬化時間、適切な整復を許容しない不可逆的な剛直な硬化、および生体適合性の欠如である。したがって、新しい生体接着剤が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、物体(例えば、骨片)を互いに対して所定の位置に固定して保持するための接着装置を特徴とする。
【0005】
第1の態様において、本発明は、体内の骨片を安定化する方法を特徴とし、この方法は以下のステップ:
(i)(a)接着剤組成物を加熱して軟化した接着剤組成物を形成し、軟化した接着剤組成物を第1の骨片に接触させ、そして(b)軟化した接着剤組成物が冷却するのを許容して、第1の骨片に固定された第1のアンカーを形成することによって、第1の骨片上に第1のアンカーを形成するステップ;
(ii)(a)接着剤組成物を加熱して軟化した接着剤組成物を形成し、軟化した接着剤組成物を第2の骨片に接触させ、そして(b)軟化した接着剤組成物が冷却するのを許容して、第2の骨片に固定された第2のアンカーを形成することによって、第2の骨片上に第2のアンカーを形成するステップ
を含み、
ここで、接着剤組成物は、少なくとも40℃(例えば、少なくとも42℃、少なくとも45℃、少なくとも50℃、少なくとも55℃、または40℃~55℃)の粘着付与温度(tackifying temperature)を有し、
第1のアンカーと第2のアンカーは、骨片を安定させるための支持構造に接続されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、支持構造は、第1のアンカーを第2のアンカーに連結する、生分解性および生体適合性ポリマーを含む可撓性支持体である。
いくつかの実施形態では、支持構造、第1のアンカー、および第2のアンカーは、(x)支持構造である非接着性の上層と、(y)第1のアンカーおよび第2のアンカーを形成するために軟化すると接着性となる下層とを含むテープから形成される。
【0007】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物は水溶性ではない(例えば、25℃で30mg/L、25mg/L、20mg/L、または15mg/L未満の水溶解度を有する)。他の実施形態では、接着剤組成物は水溶性である(例えば、25℃で30mg/Lまたは50mg/Lを超える水への溶解度を有する)。
【0008】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、無機微粒子添加熱伝達剤を含む。いくつかの実施形態では、熱伝達剤{例えば、塩化ナトリウム、リン酸鉄(III)二水和物、クエン酸鉄(III)一水和物、ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カルシウム、および炭酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせ(例えば、ヒドロキシアパタイト)}は、軟化した接着剤組成物が120秒以下(例えば、10秒以下)で冷えて硬化することを可能にする量で存在する。いくつかの実施形態では、熱伝達剤は、エネルギーを加えてから120秒以内(例えば、10秒以内)に接着剤組成物が軟化することを可能にする量で存在する。特定の実施形態では、熱伝達剤は、非接着性上層にエネルギーを加えてから10秒以内に接着剤組成物が軟化することを可能にする量で存在する。いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、約0.5~60%(w/w)の熱伝達剤(例えば、7.5±2.5%、10±5%、15±5%、20±5%、25±10%、37.5%±5%、50±10%、または35~60%(w/w))を含む。
【0009】
第2の態様のいくつかの実施形態では、接着剤層は粒子状充填剤を含む。いくつかの実施形態では、粒子状充填剤は、加熱時の接着剤組成物の損失を防ぐ。いくつかの実施形態では、粒子状充填剤は不溶性である。
【0010】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、式(I)の構造を有するポリマーを含む。
【0011】
【0012】
式中、
nは0から4までの整数であり(例えば、n=1、2、3、または4);
ブロックBは、MW<10,000g/mol(例えば、2±1KDa、4±2KDa、5±2.5KDa、または8±2KDa)の、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリシリコーン、またはポリカーボネートに由来するオリゴマーを含み;
ブロックAは、置換されていてもよいC1~C6アルキレンを含み、ブロックAはジイソシアネート架橋剤から誘導されており;
ブロックWは、置換されていてもよいC0~C3アルキル-ベンゼン-ジオール、または置換されていてもよいC0~C3アルキル-ベンゼン-トリオールを含み;
リンカーL’は、カルバメートを含み;そして
リンカーLは、尿素を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、ブロックBは、ポリエステル、ポリアルキレングリコール、ポリシリコーン、またはポリカーボネートに由来するオリゴマーを含む。特定の実施形態では、ブロックBオリゴマーは、MW≦4,000g/mol(例えば、1±0.5KDa、2±0.5KDa、または3±1KDa)を有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、ブロックBは、式(II):
【0015】
【0016】
の構造を有する。式中、各oは、独立して、0~20の整数である(例えば、n=0~4、2~6、4~10、5~15、または10~20)。
【0017】
いくつかの実施形態において、ブロックBは、式(III):
【0018】
【0019】
の構造を有する。式中、各oは、独立して、0~20の整数である(例えば、n=0~4、2~6、4~10、5~15、または10~20)。
【0020】
いくつかの実施形態では、ブロックBは、式(IV):
【0021】
【0022】
の構造を有する。式中、各oは、独立して、0~20の整数である(例えば、n=0~4、2~6、4~10、5~15、または10~20)。
【0023】
いくつかの実施形態において、ブロックBは、式(V):
【0024】
【0025】
の構造を有し、式中、各oは、独立して、0~20の整数である(例えば、n=0~4、2~6、4~10、5~15、または10-20)。
【0026】
いくつかの実施形態では、ブロックBは、式(VI):
【0027】
【0028】
の構造を有し、式中、各oは、独立して、0~20の整数である(例えば、n=0~4、2~6、4~10、5~15、または10-20)。
【0029】
いくつかの実施形態において、ブロックAは、式(VII):
【0030】
【0031】
の構造を有し、式中、R1はC1-C3アルキルである。
【0032】
いくつかの実施形態では、リンカーL’は、
【0033】
【0034】
の構造を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、リンカーLは、
【0036】
【0037】
いくつかの実施形態では、ブロックWは、
【0038】
【0039】
いくつかの実施形態では、接着剤組成物は、30~70%(w/w)の充填剤を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、充填剤として、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリスルホン、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシアパタイト(HA)、リン酸四カルシウム(TTCP)、リン酸三カルシウム(TCP)、リン酸二カルシウム(DCP)、もしくはそれらのコポリマー、またはそれらのブレンドが挙げられる。いくつかの実施形態では、充填剤として、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、もしくはポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、またはそれらのコポリマー、またはそれらのブレンドが挙げられる。
【0041】
いくつかの実施形態において、ステップ(i)およびステップ(ii)は、対象における複数の骨片を安定化するために繰り返される。いくつかの実施形態では、2~5、6~10、11~15、16~20、21~25、26~30、31~35、36~40、41~45、46~50、またはそれ以上の骨片が対象物として安定化される。
【0042】
上記方法のいずれかの実施形態では、加熱には、エネルギー源を加えることが含まれる。例えば、エネルギー源は、超音波エネルギー、または本明細書に記載される任意の他のエネルギー源であり得る。特定の実施形態では、超音波エネルギーは35kHzから70kHzの周波数(例えば、45±10kHz、55±10kHz、または60±10kHz、または70kHz)で印加され、任意に1.5~5.0Jのエネルギーが印加される(例えば、2.0±0.5J、3.0±0.5J、4.0±0.5J、または4.5±0.5J)。特定の実施形態では、超音波エネルギーは、第1のアンカーおよび第2のアンカーの形成前に接着剤組成物と骨片との間で流体を移動させるのに十分な周波数および量で加えられる。超音波エネルギーは、超音波溶接機を使用して印加できる。特定の実施形態では、超音波溶接機は、個々のテクスチャ要素を有するホーンチップを含み、個々のテクスチャ要素は、最大0.127mmの均一な深さで等間隔に配置される。
【0043】
上記の方法のいずれかの実施形態では、この方法は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含む。(i)骨片を可逆的に安定化する。(ii)第1のアンカーと第2のアンカーは可逆的アンカーである。(iii)接着剤組成物は、接着に関してその場での硬化反応に依存しない。および/または(iv)接着剤組成物は45±5℃または55±5℃の温度で可逆的に軟化する。
【0044】
上記方法のいずれかの実施形態では、支持構造、第1のアンカー、および第2のアンカーは、(x)支持構造である非接着性の上層と、(y)軟化して接着性となって第1アンカーと第2アンカーを形成する下層とを含むテープから形成される。
【0045】
上記の方法のいずれかの実施形態では、(i)支持構造と、(ii)第1のアンカーおよび第2のアンカーのうちの少なくとも1つは、接着部分と、接着部分に対して裏打ち(backing)を形成する支持部分とを形成するように配置される。接着部分は、加熱されると、支持部分を変形させることなく軟化することができる。裏打ち部分は0.05~0.31mmの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、裏打ち部分は0.12~0.20mmの厚さを有する。接着部は0.05~0.16mmの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、接着部分は0.075±0.025mmまたは0.13±0.03mmの厚さを有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、加熱は、表面全体を覆うように付与面に垂直な一連の連続した溶接鋲(welding tacks)を介して溶接機を使用して印加することを含む。いくつかの実施形態では、加熱には、ブラシストロークまたはペイント動作で装置表面全体にわたって溶接機を連続的にスライドさせることが含まれる。
【0047】
第2の態様では、本発明は、体内の骨片を安定化するための装置を特徴とし、この装置は以下:
(i)第1の骨片に取り付けることができる第1のアンカーであって、加熱により軟化して冷却により第1のアンカーを形成する接着剤組成物を含む第1のアンカーと、
(ii)第2の骨片に取り付けることができる第2のアンカーであって、加熱により軟化して冷却により第2のアンカーを形成する接着剤組成物を含む第2のアンカーと、
(iii)第1のアンカーを第2のアンカーに接続する、骨片を安定させることができる支持構造
を含み、
ここで、接着剤組成物は、少なくとも40℃(例えば、少なくとも42℃、少なくとも45℃、少なくとも50℃、少なくとも55℃、または40℃~55℃)の粘着付与温度を有する。
【0048】
第2の態様のいくつかの実施形態では、支持構造は、第1のアンカーを第2のアンカーに連結する生分解性および生体適合性ポリマーを含む可撓性支持体である。いくつかの実施形態では、支持構造、第1のアンカー、および第2のアンカーは、(x)支持構造である非接着性の上層と、(y)軟化すると接着性となり第1のアンカーと第2のアンカーを形成する下層とを含むテープから形成される。
【0049】
第2の態様のいくつかの実施形態では、接着剤組成物は水溶性ではない。
【0050】
第2の態様のいくつかの実施形態では、接着剤組成物は熱伝達剤を含む。いくつかの実施形態では、熱伝達剤は無機微粒子添加熱伝達剤である。いくつかの実施形態では、熱伝達剤(例えば、塩化ナトリウム、リン酸鉄(III)二水和物、クエン酸鉄(III)一水和物、ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カルシウム、および炭酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせ(例えば、ヒドロキシアパタイト))は、軟化した接着剤組成物が120秒以内(例えば、10秒以内)に冷却して硬化することを可能にする量で存在する。いくつかの実施形態では、熱伝達剤は、エネルギーを加えてから120秒以内(例えば、10秒以内)に接着剤組成物が軟化することを可能にする量で存在する。いくつかの実施形態では、熱伝達剤は、接着剤組成物の約0.5~60%(w/w)(例えば、7.5±2.5%、10±5%、15±5%、20±5%、25±10%、37.5±5%、50±10%、または35~60%(w/w))を含む。
【0051】
第2の態様のいくつかの実施形態では、接着剤層は粒子状充填剤を含む。いくつかの実施形態では、粒子状充填剤は、加熱時の接着剤組成物の損失を防ぐ。いくつかの実施形態では、粒子状充填剤は不溶性である。
【0052】
第2の態様のいくつかの実施形態では、接着剤組成物は、式(I)の構造を有するポリマーを含む。
【0053】
【0054】
式中、
nは0から4までの整数であり(例えば、n=1、2、3、または4);
ブロックBは、MW<10,000g/mol(例えば、2±1KDa、4±2KDa、5±2.5KDa、または8±2KDa)の、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリシリコーン、またはポリカーボネートに由来するオリゴマーを含み;
ブロックAは、置換されていてもよいC1~C6アルキレンを含み、ブロックAはジイソシアネート架橋剤から誘導されており;
ブロックWは、置換されていてもよいC0~C3アルキル-ベンゼン-ジオール、または置換されていてもよいC0~C3アルキル-ベンゼン-トリオールを含み;
リンカーL’は、カルバメートを含み;そして
リンカーLは、尿素を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、ブロックBは、ポリエステル、ポリアルキレングリコール、ポリシリコーン、またはポリカーボネートに由来するオリゴマーを含む。特定の実施形態では、ブロックBオリゴマーは、MW≦4,000g/mol(例えば、1±0.5KDa、2±0.5KDa、または3±1KDa)を有する。
【0056】
本発明の第2の態様のいくつかの実施形態において、ブロックBは、式(II):
【0057】
【0058】
の構造を有する。式中、各oは、独立して、0~20の整数である(例えば、n=0~4、2~6、4~10、5~15、または10~20)。
【0059】
本発明の第2の態様のいくつかの実施形態において、ブロックBは、式(III):
【0060】
【0061】
の構造を有する。式中、各oは、独立して、0~20の整数である(例えば、n=0~4、2~6、4~10、5~15、または10~20)。
【0062】
本発明の第2の態様のいくつかの実施形態において、ブロックBは、式(IV):
【0063】
【0064】
の構造を有する。式中、各oは、独立して、0~20の整数である(例えば、n=0~4、2~6、4~10、5~15、または10~20)。
【0065】
本発明の第2の態様のいくつかの実施形態において、ブロックBは、式(V):
【0066】
【0067】
の構造を有し、式中、各oは、独立して、0~20の整数である(例えば、n=0~4、2~6、4~10、5~15、または10-20)。
【0068】
本発明の第2の態様のいくつかの実施形態において、ブロックBは、式(VI):
【0069】
【0070】
の構造を有し、式中、各oは、独立して、0~20の整数である(例えば、n=0~4、2~6、4~10、5~15、または10-20)。
【0071】
本発明の第2の態様のいくつかの実施形態において、ブロックAは、式(VII):
【0072】
【0073】
の構造を有し、式中、R1はC1-C3アルキルである。
【0074】
本発明の第2の態様のいくつかの実施形態において、リンカーL’は、
【0075】
【0076】
の構造を有する。
【0077】
本発明の第2の態様のいくつかの実施形態では、リンカーLは、
【0078】
【0079】
の構造を有する。
【0080】
本発明の第2の態様のいくつかの実施形態では、ブロックWは、
【0081】
【0082】
の構造を有する。
【0083】
本発明の第2の態様のいくつかの実施形態では、接着剤組成物は、30~70%(w/w)の充填剤{例えばポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリスルホン、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシアパタイト(HA)、リン酸四カルシウム(TTCP)、リン酸三カルシウム(TCP)、リン酸二カルシウム(DCP)、もしくはそれらのコポリマー、またはそれらのブレンド}を含む。いくつかの実施形態では、充填剤として、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、もしくはポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、またはそれらのコポリマー、またはそれらのブレンドを含む。特定の実施形態では、充填剤にはヒドロキシアパタイト(HA)が含まれる。
【0084】
本発明の第2の態様のいくつかの実施形態では、装置は、対象内の複数の骨片を安定化できる複数の骨アンカーおよび複数の支持構造を含む。
【0085】
上記のいずれかの装置の一つの実施形態では、(i)支持構造と(ii)第1のアンカーおよび第2のアンカーのうちの少なくとも1つとが、接着部分と、接着部分の裏打ちを形成する支持部分とを形成するように配置される。接着部分は、加熱されると、支持部分を変形させることなく軟化することができる。裏打ち部分の厚さは0.05~0.31mmとすることができる。いくつかの実施形態では、裏打ち部分は0.12から0.20mmの厚さを有する。接着部分は0.05~0.16mmの厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、接着部分は0.075±0.025mmまたは0.13±0.03mmの厚さを有する。
【0086】
上記のいずれかの装置の一つの実施形態では、装置は以下の特徴のうちの1つまたは複数を含む。(i)第1のアンカーおよび第2のアンカーはそれぞれ、濡れたまたは乾いた骨片に付着することができる。(ii)第1のアンカーと第2のアンカーは可逆的アンカーである。(iii)接着剤組成物は、接着のためのその場での硬化反応に依存しない。および/または(iv)接着剤組成物は45±5℃または55±5℃の温度で可逆的に軟化する。
【0087】
第3の態様では、本発明は、以下を含む接着剤組成物を特徴とする:
(i)0~70%(w/w)の充填剤;および
(ii)30~100%(w/w)(例えば、30~35%(w/w))の、式(I)の構造を有するポリマー:
【0088】
【0089】
式中、
nは0から4までの整数であり(例えば、n=1、2、3、または4);
ブロックBは、MW<10,000g/mol(例えば、2±1KDa、4±2KDa、5±2.5KDa、または8±2KDa)の、ポリエステル、ポリアルキレングリコール、ポリシリコーン、またはポリカーボネートに由来するオリゴマーを含み;
ブロックAは、置換されていてもよいC1~C6アルキレンを含み、ブロックAはジイソシアネート架橋剤から誘導されており;
ブロックWは、置換されていてもよいC0~C3アルキル-ベンゼン-ジオール、または置換されていてもよいC0~C3アルキル-ベンゼン-トリオールを含み;
リンカーL’は、カルバメートを含み;そして
リンカーLは、尿素を含み、
接着剤組成物の粘着温度は少なくとも40℃(例えば、少なくとも42℃、少なくとも45℃、少なくとも50℃、少なくとも55℃、または40℃~55℃の間)である。
【0090】
いくつかの実施形態では、ブロックBは、ポリエステル、ポリアルキレングリコール、ポリシリコーン、またはポリカーボネートに由来するオリゴマーを含む。特定の実施形態では、ブロックBオリゴマーは、MW≦4,000g/mol(例えば、1±0.5KDa、2±0.5KDa、または3±1KDa)を有する。
【0091】
第3の態様のいくつかの実施形態では、接着剤組成物は水溶性ではない。
【0092】
第3の態様のいくつかの実施形態では、接着剤組成物は熱伝達剤{例えば、塩化ナトリウム、リン酸鉄(III)二水和物、クエン酸鉄(III)一水和物、ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カルシウム、および炭酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせ(例えば、ヒドロキシアパタイト)}を含む。いくつかの実施形態では、熱伝達剤は、軟化した接着剤組成物が120秒以下(例えば、10秒以下)で冷えて硬化することを可能にする量で存在する。いくつかの実施形態では、熱伝達剤は、エネルギーを加えてから120秒以内(例えば、10秒以内)に接着剤組成物が軟化することを可能にする量で存在する。いくつかの実施形態では、熱伝達剤は、接着剤組成物の約0.5~60%(w/w)(例えば、7.5±2.5%、10±5%、15±5%、20±5%、25±10%、37.5±5%、50±10%、または35~60%(w/w))を含む。
【0093】
第3の態様のいくつかの実施形態では、ブロックBは、式(II):
【0094】
【0095】
の構造を有する。式中、各oは、独立して、0~20の整数である(例えば、n=0~4、2~6、4~10、5~15、または10~20)。
【0096】
本発明の第3の態様のいくつかの実施形態において、ブロックBは、式(III):
【0097】
【0098】
の構造を有する。式中、各oは、独立して、0~20の整数である(例えば、n=0~4、2~6、4~10、5~15、または10~20)。
【0099】
本発明の第3の態様のいくつかの実施形態において、ブロックBは、式(IV):
【0100】
【0101】
の構造を有する。式中、各oは、独立して、0~20の整数である(例えば、n=0~4、2~6、4~10、5~15、または10~20)。
【0102】
本発明の第3の態様のいくつかの実施形態において、ブロックBは、式(V):
【0103】
【0104】
の構造を有し、式中、各oは、独立して、0~20の整数である(例えば、n=0~4、2~6、4~10、5~15、または10-20)。
【0105】
本発明の第3の態様のいくつかの実施形態において、ブロックBは、式(VI):
【0106】
【0107】
の構造を有し、式中、各oは、独立して、0~20の整数である(例えば、n=0~4、2~6、4~10、5~15、または10-20)。
【0108】
本発明の第3の態様のいくつかの実施形態において、ブロックAは、式(VII):
【0109】
【0110】
の構造を有し、式中、R1はC1-C3アルキルである。
【0111】
本発明の第3の態様のいくつかの実施形態において、リンカーL’は、
【0112】
【0113】
の構造を有する。
【0114】
本発明の第3の態様のいくつかの実施形態では、リンカーLは、
【0115】
【0116】
本発明の第3の態様のいくつかの実施形態では、ブロックWは、
【0117】
【0118】
第3の態様のいくつかの実施形態では、充填剤としてポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリスルホン、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシアパタイト(HA)、リン酸四カルシウム(TTCP)、リン酸三カルシウム(TCP)、リン酸二カルシウム(DCP)、もしくはそれらのコポリマー、またはそれらのブレンドが挙げられる。いくつかの実施形態では、充填剤として、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、もしくはポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、またはそれらのコポリマー、またはそれらのブレンドを含む。特定の実施形態では、充填剤にはヒドロキシアパタイト(HA)が含まれる。
【0119】
第4の態様では、本発明は、(i)非接着性ポリマー上層と、(ii)前述の実施形態のいずれか1つの接着剤組成物を含む下層とを含むテープを特徴とする。
【0120】
層状テープの一つの実施形態では、(i)支持構造と、(ii)第1のアンカーおよび第2のアンカーのうちの少なくとも1つとが、接着部分と、接着部分の裏打ちを形成する支持部分とを形成するように配置され、ここで接着部分は、加熱されると、支持部分を変形させることなく軟化することができる。裏打ち部分の厚さは0.05~0.31mmとすることができる。いくつかの実施形態では、裏打ち部分は0.12から0.20mmの厚さを有する。接着部分の厚さは0.05~0.16mmとすることができる。いくつかの実施形態では、接着部分は0.075±0.025mmまたは0.13±0.03mmの厚さを有する。層状テープの一つの実施形態では、テープは以下の特徴のうちの1つまたは複数を含む。(i)第1のアンカーおよび第2のアンカーはそれぞれ、濡れたまたは乾いた骨片に付着することができる。(ii)第1のアンカーと第2のアンカーは可逆的アンカーである。(iii)接着剤組成物は、接着のためのその場での硬化反応に依存しない。および/または(iv)接着剤組成物は45±5℃または55±5℃の温度で可逆的に軟化する。
【0121】
第4の態様のいくつかの実施形態では、非接着性ポリマー上層は、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリスルホン、ポリエチレングリコール(PEG)、またはそれらのコポリマーを含む。
【0122】
第4の態様において、発明は、本発明の装置または本発明のテープを製造する方法を特徴とし、この方法は、a)(i)本発明の接着剤組成物を含む第1の部分を、(ii)支持構造を含む第2の部分と接触させること、b)熱を加えて第1の部分と第2の部分を接合すること、を含む。特定の実施形態では、この方法は、第1の部分および第2の部分を圧縮するために力を加えることをさらに含む。例えば、少なくとも800kgの力を加えることができる。
いくつかの実施形態では、第1の部分と第2の部分は、積層により接合することができる。特定の実施形態では、第1の部分および第2の部分の一方または両方がシートの形態である。
【0123】
定義
本明細書で使用される場合、用語「約」は、用語「約」に続く値の±10%の範囲内の値を表す。
【0124】
本明細書で使用される「接着部(接着セクション)」という用語は、接着組成物を含む本開示の装置の一部を指す。例えば、本発明の装置の接着部は、30~100%(w/w)の1つ以上の接着組成物(例えば、本明細書に記載の式(I)の構造を有するポリマー)、0~70%(w/w)の1つ以上の充填剤(例えば、非粘着性ポリマー)、および0.5~60%(w/w)の1つ以上の熱伝達剤から構成され得る。接着部は、少なくとも1つの物体(例えば、骨片)に接着する。接着部は、装置の片側(例えば、接着側;接着側の面)であってもよい。
【0125】
本明細書で使用される場合、「接着側(接着側の面)」という用語は、以下のものを含むコーティングまたは層を指す。1)1つ以上の接着剤(例えば、好ましくは複数の接着剤); 2)1つ以上の充填剤; 3)1つ以上の熱伝達剤。接着側は、例えば、超音波エネルギー、赤外線、高周波(RF)などのエネルギーにさらされると軟化することができる。
【0126】
本明細書で使用される場合、「接着剤組成物」という用語は、1つ以上の物体または材料を一緒に接着することができる化合物および混合物を指す。接着剤組成物は、本明細書に記載されるように、式(I)の構造を有するポリマーであり得る。
【0127】
本明細書で使用される場合、「生体適合性」という用語は、その材料が、示された用途において細胞、組織、または生体内機能に悪影響を及ぼさないこと、または医療用途のための生体適合性材料を管理する国際的に認められた試験基準によって指定された制限に適合することを意味する。
【0128】
本明細書で使用される「生分解性」という用語は、材料が生物の作用(例えば、生体内生理学的環境)によって特に無害な生成物に分解され得ることを意味する。生分解性材料は、加水分解性または酵素分解性であってもよい。
【0129】
本明細書で使用される「充填剤」という用語は、これらに限定されないが、接着強度、粘着温度、細胞毒性、引張強度、硬化時間、および粘度などの特性を変更するために添加される非接着性の材料または物質を指す。例えば、充填剤は、例えば、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリスルホン、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシアパタイト(HA)、リン酸四カルシウム(TTCP)、リン酸三カルシウム(TCP)、リン酸二カルシウム(DCP)、またはそれらの共重合体であり得る。
【0130】
本明細書で使用する「熱伝達剤」という用語は、軟化した接着剤の形成を促進する化合物である。熱伝達剤は、例えば、塩化ナトリウム、リン酸鉄(III)二水和物、クエン酸鉄(III)一水和物、ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム(TTCP)、リン酸三カルシウム(TCP)、リン酸二カルシウム(DCP)、または炭酸ナトリウムなどの塩であってもよい。
【0131】
本明細書で使用される場合、「固化する(剛性化する)」という用語は、材料または物質の剛性の増大を指す。例えば、本開示の接着部(または接着側)は、エネルギーにさらされた後(例えば、120秒以内(例えば、10秒以内))に軟化することができる。次いで、接着セクション(または接着側)は、120秒以内(例えば、10秒以内)に固化(すなわち、硬化)し得る。2つ(またはそれ以上)の骨片を相互に固定する接着部(または接着側)の固化により、骨折が治癒することが可能になる。
【0132】
本明細書で使用される場合、「軟化する」という用語は、材料または物質の剛性の減少を指す。例えば、本開示の装置または接着側は、エネルギーにさらされた後に軟化することが可能性であり、120秒以下(例えば、10秒以下)以内に、軟化した接着側(接着側の面)が流動し、生体組織または他の基材の形状に適合することができる。
【0133】
本明細書で使用する場合、用語「粘着化(tackifying)温度」は、ガラスピペットチップと接触したときに、接着剤ブレンドまたは接着剤配合物が非流動性から糸を形成する状態となる温度を指す。接着剤ブレンドまたは接着剤配合物は剛性(例えば、可逆相転移温度)が低下することがある。例えば、本開示の装置または接着側は、粘着付与温度に達すると軟化しうる(例えば、本開示の装置または接着側)。
【0134】
本明細書で使用される「対象」という用語は、ヒトまたは非ヒト動物(例えば、非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、ブタ、またはイヌなどの哺乳動物)を指す。
【0135】
本明細書で使用される場合、「支持構造」という用語は、接着部を物理的に支持する本開示の装置の一部を指す。例えば、本発明の装置は、40~100%の1つ以上の非接着性ポリマー(例えば、支持体として)で構成され得る。支持構造は2つの接着部の間にある。例えば、支持構造は、装置の片側(例えば、支持側)であってもよい。
【0136】
本明細書で使用する場合、「支持側(支持側の面)」という用語は、本発明の装置の接着側(接着側の面)の裏打ちとして配置される支持構造を指す。支持体側は、例えばポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリスルホン、ポリエチレングリコール(PEG)、またはその共重合体などの非接着性ポリマーの1つ以上から形成することができる。例えば、装置が骨テープである場合、支持側は、骨テープの粘着面上の接着部分を構造的に支持する非接着性裏打ちを構成することができる。
【0137】
本明細書で使用される場合、「表面ファウリング(汚れ)」という用語は、水性液体(例えば、水、血液、血清、血漿)の存在下で表面に接着する能力を失っている接着剤、または2つ以上の接着剤の混合物を指す。本発明の装置の接着部分は、表面ファウリングに耐えるように配合することができる。
【0138】
本明細書で使用する「水溶性」という用語は、水に溶解する材料または物質を指す。「非水溶性」の材料または物質(例えば、本開示の接着部(または接着側))は、25℃の水1Lに30mg未満の材料または物質が溶解する材料または物質を指す。
【0139】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本開示で使用するための方法および材料は、本明細書に記載されている。当技術分野で知られている他の適切な方法および材料も使用することができる。材料、方法、および実施例は単なる例示であり、限定することを意図したものではない。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾が生じた場合には、定義を含む本明細書が優先される。
【0140】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明で説明される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0141】
化学用語
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することを目的としたものであり、限定することを意図したものではないことを理解されたい。
【0142】
本明細書の様々な場所で、本開示の化合物の置換基は、群または範囲で開示される。本開示は、そのような群および範囲のメンバーのあらゆる個々のサブコンビネーションを含むことが特に意図されている。例えば、「C1~C6アルキル」という用語は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルを個別に開示することを特に意図している。さらに、化合物が、置換基が群または範囲で開示される複数のポジションを含む場合、別段の指示がない限り、本開示は、個々の化合物およびあらゆる個体を含む化合物の群(例えば、属および亜属)(各ポジションにおけるメンバーの個々およびすべての個別のサブコンビネーションを含む)を網羅することを意図する。
【0143】
本明細書で使用される用語「アルキル」は、1~20個の炭素原子(例えば、1~16個の炭素原子、1~10個の炭素原子、または1~6個の炭素原子)の分岐鎖または直鎖の一価飽和脂肪族炭化水素ラジカルを指す。いくつかの実施形態では、アルキル基は分岐していない(すなわち、直鎖である)。いくつかの実施形態では、アルキル基は分岐している。アルキル基は、メチル、エチル、n-およびイソ-プロピル、n-、sec-、イソ-およびtert-ブチル、ネオペンチルなどによって例示される。
【0144】
本明細書で使用される場合、用語「アルキレン」は、特定のサイズを有する飽和二価リンカー(例えば、、C1-6アルキレン)を指す。それらには、直鎖、分枝鎖、および環状の形態、ならびにこれらの組み合わせが含まれ、置換されていない場合はCおよびHのみが含まれる。これらは二価であるため、分子の2つの部分を結合できる。例としては、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2-、および-CH2CH2CH2CH2CH2CH2-がある。これらの基は、本明細書に記載のアルキル基の置換基として典型的に適した基で置換することができる。
【0145】
本明細書で使用される「C0-C3アルキル-ベンゼン-ジオール」および「C0-C3アルキル-ベンゼン-トリオール」という用語は、長さ0~3炭素のアルキル鎖を任意に含み、ベンゼン-ジオールまたはベンゼン-トリオールで終端する置換基を指す。置換基は以下の式を持つことができる。
【0146】
【0147】
ここで、mは0、1、2、または3である。pは2または3である。
【0148】
本明細書において、「必要に応じて置換されたX」(例えば、必要に応じて置換されたアルキル)の形式の語句は、「X、ここでXは必要に応じて置換されている」(例えば、「前記アルキルは必要に応じて置換されているアルキル」)と同等であることが意図される。これは、特徴「X」(例、アルキル)自体がオプショナルであることを意味するものではない。特定の実施形態では、所定の構造による置換が必要であり、場合により置換されるとは、1つまたは複数の追加の置換基を指す。例えば、部分構造-L2-R4において、L2がアルキルである場合、その部分は基R4によって置換されたアルキル「L2」を表す。いくつかの実施形態では、場合により置換されていてもよいXという用語は、Xが1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、または6個)の置換基で場合により置換されていてもよいことを意味し、これらの置換基は、独立して、本明細書に記載の置換基のいずれかであり得る。例示的な置換基としては、限定されないが、アルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲン、フルオロアルキル、カルボキシル、 カルボキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、一置換アミノ、二置換アミノ、および、0~6個の炭素原子およびO、N、F、Cl、Br、およびIから選択される0~4個のヘテロ原子を含む第四級アミノ基が挙げられる。置換基にはメチル、エチル、カルボキシメチル、アシル、CF3、フルオロ、およびクロロが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【
図1】材料の細胞毒性を、ネガティブ対照およびポジティブ対照(それぞれDMEMおよび5%DMSO)と比較して示すグラフである。結果は平均値±標準偏差として表される;n=4。
【
図2】他の接着剤化合物とブレンドしたときの接着剤の粘着温度の変化(最も低い粘着温度を有する接着剤の温度で正規化)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0150】
本開示は、物体(例えば、骨片)を互いに固定して保持するための接着装置を特徴とする。開示された装置は、安定性または支持性を提供するために、骨に取り付けたり、材料を組織に固定したりするのに有用である。開示された装置は、損傷した組織(または骨)を固定または修復するために、または体内にインプラントを固定するために、ステープル、縫合糸、鋲、ネジなどを使用する必要性を排除または軽減することができる。
【0151】
装置
本開示の装置は、2つ以上の物体(例えば、骨片、靱帯、腱)を互いに固定して保持するために使用することができる。本開示の装置は、1つ以上の接着剤(例えば、本明細書に記載の式(I)の構造を有するポリマー)と1つ以上の充填剤(例えば、非接着性ポリマー)との混合物の勾配(比率を変えた配合)から作製することができる。
【0152】
接着剤、充填剤、熱伝達剤の配合(勾配)
本開示の装置は、本開示の装置は、装置の異なる部分に異なる組成を有してもよい。例えば、装置は、少なくとも2つの部分:
(i)少なくとも1つの物体(例えば、骨片、靱帯、腱などの組織)に付着する少なくとも1つの接着部{例えば、30~100%(w/w)の1つ以上の接着剤(例えば、本明細書に記載の式(I)の構造を有するポリマー)、0~70%(w/w)の1つ以上の充填剤(例えば、非粘着性ポリマー)、および0.5~60%(w/w)の1つ以上の熱伝達剤をから構成される装置の一部分}; および
(ii)少なくとも1つの支持構造{例えば、40~100%(w/w)の1つ以上の充填剤(例えば、非粘着性ポリマー)、および0~60%(w/w)のゼロ以上の接着剤とゼロ以上の熱伝達剤で構成される装置の一部分}
を含むことができる。
支持構造は、例えばポリカプロラクトンなどの固定材料(アンカー材料)から形成されてもよい。接着部(例えば、十分に多量の接着剤で構成される装置の一部分)は、室温では非粘着性であり得るが、例えば、超音波エネルギー、赤外線放射線、または高周波(RF)などのエネルギーにさらされると軟化してよい。軟化した接着部は、接触する物体(例えば、骨片)の形状に適合することができる。エネルギーへの曝露が止まると、接着部は冷えて硬くなり、接触した物体(骨片など)を結合する。このプロセスは、2番目の物体(および3番目、4番目、5番目の物体、または前の物体に固定する物体の数だけいくつでも)に対して繰り返される。接着部のこの可逆的な軟化機能は、取り扱い、配置、ワークフロー、および装置適用の制御を容易にするために有利である。
【0153】
接着部および支持構造は、装置の両側(面)を形成するように配置されてもよい。2つ以上の物体(例えば、骨片)に接触して接着する接着側(接着部が、1つまたは複数のフィラーと混合された1つまたは複数の接着剤のコーティングである場合)、および接着側を裏付ける支持側(支持側の面)である。この場合、エネルギー(例えば、超音波エネルギー、赤外線、高周波(RF))が装置の支持側に送られ、それを介して、支持構造の大きな変形なしに熱が接着側(物体に接触する)に伝達される。支持構成部材要素に対する接着構成要素のこの選択的な軟化は、支持構造の強度および/または性能を保持するために有利である。
【0154】
接着部(または接着側)は、接着剤(例えば、本明細書に記載の式(I)の構造を有するポリマー)と、本開示の装置の、例えば接着強度、粘着温度、細胞毒性、引張強度、硬化時間、表面耐汚染性、脆性、粘度などの特性を変えるために変化させることができる充填剤との混合物から構成されてもよい。
【0155】
支持構造(または支持側)は、充填剤と接着剤の混合物から構成されてよく、例えば、多孔性(例えば、接着剤が充填され得る細孔またはテクスチャーを有する)、脆性(例えば、支持構造(または支持側)は剥離することなく90°曲げたりねじったりできることが好ましい)、柔軟性、表面汚れ特性、および引張強さなどの支持体の特性を変更するために変更され得る。さらに、支持構造(または支持側)は、適用の方向および配向の決定を助けるために、知覚可能なパターンまたはテクスチャを含んでもよい。このパターンには、方向を決定するための視覚および/または触覚の両方を提供するパターンを含んで良い。
【0156】
本開示の装置(およびその構成要素、例えば、接着部(および接着側)および支持構造(および支持側)を構成する接着性ポリマーおよび非接着性ポリマー)は、任意選択で生分解性であり、任意選択で生体適合性であり得る。さらに、装置(および本明細書に記載されるその構成要素)は、任意選択で生体吸収性であってもよい。
【0157】
本開示の接着剤
本開示の装置は、式(I)の構造を有する1つ以上の接着剤の混合物を含み得る。
【0158】
【0159】
nは0から4までの整数であり(例えば、n=1、2、3、または4);
ブロックBは、MW<10,000g/mol(例えば、2±1KDa、4±2KDa、5±2.5KDa、または8±2KDa)の、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアルキレングリコール、ポリシリコーン、またはポリカーボネートに由来するオリゴマーを含み;
ブロックAは、置換されていてもよいC1~C6アルキレンを含み、ブロックAはジイソシアネート架橋剤から誘導されており;
ブロックWは、置換されていてもよいC0~C3アルキル-ベンゼン-ジオール、または置換されていてもよいC0~C3アルキル-ベンゼン-トリオールを含み;
リンカーL’は、カルバメートを含み;そして
リンカーLは、尿素を含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、ブロックBは、ポリエステル、ポリアルキレングリコール、ポリシリコーン、またはポリカーボネートに由来するオリゴマーを含む。特定の実施形態では、ブロックBオリゴマーは、MW≦4,000g/mol(例えば、1±0.5KDa、2±0.5KDa、または3±1KDa)を有する。
【0161】
ブロックBは、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)、または式(IV)の構造を有することができる。
【0162】
【0163】
式中、各oは、独立して、0~20の整数である(例えば、n=0~4、2~6、4~10、5~15、または10~20)
【0164】
ブロックAは、式(VII):
【0165】
【化34】
の構造を有することができる。式中、R
1はC
1-C
3アルキルである。
【0166】
リンカーL’は、構造:
【0167】
【0168】
を有することができる。
【0169】
リンカーLは、構造:
【0170】
【0171】
を有することができる。
【0172】
ブロックWは、構造:
【0173】
【0174】
を有することができる。
【0175】
単離された接着剤化合物は、少なくとも10℃、少なくとも15℃、少なくとも20℃、少なくとも25℃、または10℃から55℃の間の粘着温度を有し得る。接着剤化合物を含有するブレンド材料は、少なくとも40℃(例えば、少なくとも42℃、少なくとも45℃、少なくとも50℃、少なくとも55℃、または40℃から55℃までの間)の粘着付与温度を有し得る。
【0176】
本開示の接着剤または接着剤の混合物は、場合によっては生分解性であり、場合によっては生体適合性であってもよい。さらに、接着剤または接着剤の混合物は、任意に生体吸収性であってもよい。本開示の接着剤または接着剤の混合物は、水1L当たり30mg未満の水溶解度を有し得る。
【0177】
一般に、従来技術に見られるような生物医学装置に使用される接着剤はすべて、モノマー(例えばモノマー)を使用するか、またはモノマーから化学的に形成される大きなポリマー集合体による不可逆的な架橋ネットワークの集合体を教示する(US20140311673A1、WO2017044896A1、WO2014158288A1、US20120029559A1、US20160346424A1、WO2016134304A1、PCT/CA2020051781)。それらは、硬化前に流動させるために粘度の低い低分子量分子を使用しなければならないか、または大きな固体ポリマー材料が使用される場合には、それらを流動性にするには溶媒または他の希釈剤が必要であることを教示している。しかし、生物医学用接着剤に溶剤を使用すると、不必要な毒性が生じたり、接着剤の硬化や接着が妨げられたりする。さらに、流動性システムは、貼付部位からの反応性接着成分および/または酸化剤の流出または浸出、および/または未反応種の保持の影響を受けやすく、これらはすべて生体内で炎症反応として現れる可能性がある。
【0178】
従来技術と比較して、式Iの接着剤は、接着に関してその場での硬化反応に依存せず、望ましくない副反応や炎症性合併症を引き起こす可能性がある貼付部位からの接着剤の浸出/流出の影響を受けにくい。さらに、ブロックBの性質は、これらの接着剤が特に膨張しにくく、したがって生体内での装置の膨張による炎症合併症を起こしにくいことも意味する。生理的温度に近い温度での接着剤の可逆的軟化特性により、表面を湿らせるために溶剤を必要としないこと、室温で非粘着性であるためワークフローが容易になること、接着剤の軟化に高温を必要としないことなどの利点が生まれ、組織壊死のリスクを軽減する。
【0179】
充填剤
本開示の装置は、様々な量(または勾配)の1つまたは複数の充填剤を含有することができる。充填剤は、非接着性材料、または例えば接着強度、粘着温度、細胞毒性、引張強度、硬化時間、および粘度などの本開示の装置の特性を変えるために添加され得る物質であり得る。例えば、充填剤は、例えば、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリスルホン、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシアパタイト(HA)、リン酸四カルシウム(TTCP)、リン酸三カルシウム(TCP)、リン酸二カルシウム(DCP)、またはそれらの共重合体であり得る。好ましくは、支持構造(または支持側)は、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-グリコール酸共重合体)(PLGA)、またはポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、およびそれらの共重合体のうちの1つまたは複数を含むことができる。より好ましくは、支持構造は、接着剤成分の融解温度より少なくとも20℃高い融解温度(例えば、接着剤成分の温度より少なくとも20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、または150℃高い)を示す。さらにより好ましくは、支持構造は接着剤成分の溶融温度より少なくとも100℃高い溶融温度を示す。
【0180】
本開示の充填剤または充填剤の混合物は、必要に応じて生分解性であり、必要に応じて生体適合性であってもよい。さらに、充填剤または充填剤の混合物は、任意に生体吸収性であってもよい。
【0181】
熱伝達剤
接着部(または接着側)は、装置の接着部または接着側に1つまたは複数の熱伝達剤(例えば、軟化した接着剤の形成を促進し得る化合物)を含むことができる。熱伝達剤は、例えば、塩化ナトリウム、リン酸鉄(III)二水和物、クエン酸鉄(III)一水和物、ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム(TTCP)、リン酸三カルシウム(TCP)、リン酸二カルシウム(DCP)または炭酸ナトリウムなどの塩であってもよい。
【0182】
装置の軟化と硬化
接着部(または接着側)は、エネルギー(例えば、超音波エネルギー、赤外線、高周波(RF))に曝露されると、または冷却(例えば、本明細書に記載のエネルギーにさらさずに周囲温度で冷却)されると、可逆的に軟化(例えば、剛性の低下)または固化(例えば、剛性の増加)することができる。接着剤または接着剤の混合物が固体状態から軟化状態(硬い状態から可鍛性状態)に相転移した場合、接着部(または接着側)は軟化し、ガラスピペットチップと接触すると軟化したポリマーの糸を形成しうる。軟化すると、接着部(または接着側)を1つまたは複数の貼り付け対象物に接触させることができる。軟化した接着部(または接着側)は、接着部(または接着側)がエネルギー(例えば、超音波エネルギー、赤外線放射、高周波(RF))にさらされなくなると、その後、120秒以内(例えば、10秒未満)に硬化することができる。好ましくは、開示された接着部(または接着側)は、40℃以上の粘着付与温度を有する。
【0183】
装置の寸法
本開示の装置は、0.02~1.5mm(例えば、0.3±0.2mm)の厚さを有し得る。用途および安定化する組織/骨の質量に応じて、この厚さは変化する。例えば、より薄い装置(例えば、厚さ0.05mm)が軟組織用途に使用され得る一方、より厚い装置が骨の安定化に使用され得る(例えば、1.0mm厚)。したがって、接着部分(または接着側)が柔らかくなるまでに必要な時間は装置の厚さに比例する。さらに、硬化するのに必要な時間は装置の厚さに比例する。
【0184】
本開示の装置は、長さ100mmまで、幅100mmまで(例えば、60mm×60mm)のシート(本明細書に記載される装置のすべての構成要素(例えば、接着部、支持構造)を有する)として調製され得る。シートは、本明細書に記載されるような厚さを有する任意の寸法および形状(例えば、10mm×40mm)に切断することができる。
【0185】
表面汚れ防止特性
本開示の装置(具体的には、接着部または接着側)は、水性媒体(例えば、血液)の存在下で表面の汚れに耐えることができる。本明細書に記載される接着剤または接着剤の混合物は、本明細書に記載されるように物体(例えば、濡れた組織または乾燥した組織)に結合することができる。一度結合すると、接着剤または混合物は、水性媒体(血液など)の存在下で物体に結合したままになることができる。例えば、本開示の装置は、血液(例えば、馬の血または羊の血)の存在下で2つ(またはそれ以上)の物体を結合することができる。
【0186】
使用と治療方法
開示された装置は、安定性または支持を提供するために、物体(例えば、骨)に取り付けるか、または物体を別の物体(例えば、組織への物質)に固定するのに有用である。開示された装置は、損傷した組織(または骨)を固定または修復するために、または体内にインプラントを固定するために、ステープル、縫合糸、鋲、ネジなどを使用する必要性を排除または軽減することができる。
【0187】
骨への取り付け
本開示の装置は、骨片(例えば、被験者内または被験者からの骨片)を相互に固定して保持するのに有用であり得る。
【0188】
2つ以上の骨片が、本明細書に開示される1つ以上の装置に接着(したがって固定)され得る。骨片は、装置の接着部(または接着側)と接触してよい。別の骨片が同じ接着部(または接着側)に接触しても、または装置の第2の接着部に接触してもよい。次いで、接触した接着部分を、例えば超音波エネルギー、赤外線、高周波(RF)などのエネルギー源を使用して軟化させることができる。冷却後、接着部が固化して骨片と結合する。次いで、各接着部および骨片接触領域に対してこのプロセスを繰り返すことができる。結合された装置はこのように骨折を安定させ、骨結合に必要な生理学的位置合わせを維持することができます。このプロセスは、現場または現場外で行うこともできる(たとえば、断片を身体から取り出し、装置の接着部(または接着側)に接触させて接着し、その後、元の位置に戻してさらに固定することができる)。
【0189】
本開示の装置は、2つ以上(例えば、2~5、6~10、11~15、16~20、21~25、26~30、31~35、36~40、41~45、46~50以上)の骨片を互いに固定し保持しうる。骨片は、少なくとも1つの装置を用いて相互に固定され得る。場合によっては、2つ以上の骨片を互いに固定して保持するために、開示された装置の2つ以上(例えば、2~5、6~10、11~15、16~20、21~25、26~30、30~40、40~50またはそれ以上)が使用されてもよい。
【0190】
本開示の装置は、例えば、従来のプレートを安定させたり、耐荷重領域の所定の位置に共通部材(communitions)または足場(scaffolds)を保持したりするなど、現在の標準的なケアと組み合わせて使用することができる。
【0191】
組織足場(Tissue Scaffold)
本開示の装置は、再生が起こることを可能にするために、組織足場または充填材料を欠損内の所定の位置に保持するために使用することができる。
【0192】
すでに取り付けた装置への取り付け
本開示の装置は、物体(例えば、骨)に取り付けるために、または、以前に取り付けた本開示の装置の上に追加の装置を適用して固定の剛性を増強することによって、物体を別の物体(例えば、組織への物質)に固定するために使用してもよい。
【0193】
実施形態の列挙
いくつかの特定の実施形態を以下に列挙する。以下に列挙する実施形態は、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、むしろ、以下の実施形態は、本開示の有用性のいくつかの例として提示される。
【0194】
1. 体内の骨片を安定化する方法であって、
(i)(a)接着剤組成物を加熱して軟化した接着剤組成物を形成し、軟化した接着剤組成物を第1の骨片に接触させ、そして(b)軟化した接着剤組成物が冷却するのを許容して、第1の骨片に固定された第1のアンカーを形成することによって、第1の骨片上に第1のアンカーを形成するステップ;
(ii)(a)接着剤組成物を加熱して軟化した接着剤組成物を形成し、軟化した接着剤組成物を第2の骨片に接触させ、そして(b)軟化した接着剤組成物が冷却するのを許容して、第2の骨片に固定された第2のアンカーを形成することによって、第2の骨片上に第2のアンカーを形成するステップ
を含み、
ここで、接着剤組成物は、少なくとも40℃の粘着付与温度を有し、
第1のアンカーと第2のアンカーは、骨片を安定させるための支持構造に接続されている、
体内の骨片を安定化する方法。
【0195】
2. 支持構造は、第1のアンカーを第2のアンカーに連結する、生分解性および生体適合性ポリマーを含む可撓性支持体である、実施形態1に記載の方法。
【0196】
3. 支持構造、第1のアンカー、および第2のアンカーが、(x)支持構造である非接着性の上層と、(y)第1のアンカーおよび第2のアンカーを形成するために軟化すると接着性となる下層とを含むテープから形成される、実施形態2に記載の方法。
【0197】
4. a)接着剤組成物は水溶性ではない、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0198】
5. 接着剤組成物が、熱伝達剤を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0199】
6. 熱伝達剤が、軟化した接着剤組成物が120秒以下で冷えて硬化することを可能にする量で存在する、実施形態5に記載の方法。
【0200】
7. 熱伝達剤が、軟化した接着剤組成物が10秒以下で冷えて硬化することを可能にする量で存在する、実施形態6に記載の方法。
【0201】
8. 熱伝達剤が、エネルギーを加えてから120秒以内に接着剤組成物が軟化することを可能にする量で存在する、実施形態5~7のいずれか1つに記載の方法。
【0202】
9. 熱伝達剤が、非接着性上層にエネルギーを加えてから10秒以内に接着剤組成物が軟化することを可能にする量で存在する、実施形態8に記載の方法。
【0203】
10. 熱伝達剤が、塩化ナトリウム、リン酸鉄(III)二水和物、クエン酸鉄(III)一水和物、ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カルシウム、および炭酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、実施形態5~9のいずれか1つに記載の方法。
【0204】
11. 熱伝達剤がヒドロキシアパタイトである、実施形態10に記載の方法。
【0205】
12. 接着剤組成物が、約0.5~60%(w/w)の熱伝達剤を含む、実施形態5~11に記載の方法。
【0206】
13. 接着剤組成物が、約35~60%(w/w))の熱伝達剤を含む、
実施形態12に記載の方法。
【0207】
14. 接着剤組成物が、式(I)の構造を有するポリマーを含む、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【化38】
(式中、
nは0から4までの整数であり(例えば、n=1、2、3、または4);
ブロックBは、MW≦4,000g/molの、ポリエステル、ポリアルキレングリコール、ポリシリコーン、またはポリカーボネートに由来するオリゴマーを含み;
ブロックAは、置換されていてもよいC
1~C
6アルキレンを含み、ブロックAはジイソシアネート架橋剤から誘導されており;
ブロックWは、置換されていてもよいC
0~C
3アルキル-ベンゼン-ジオール、または置換されていてもよいC
0~C
3アルキル-ベンゼン-トリオールを含み;
リンカーL’は、カルバメートを含み;そして
リンカーLは、尿素を含む。)
【0208】
15. ブロックBが、式(II):
【化39】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、実施形態14に記載の方法。
【0209】
16. ブロックBが、式(III):
【化40】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、実施形態14に記載の方法。
【0210】
17. ブロックBが、式(IV):
【化41】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、実施形態14に記載の方法。
【0211】
18. ブロックBが、式(V):
【化42】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、実施形態14に記載の方法。
【0212】
19. ブロックAが、式(VII):
【化43】
(式中、R
1はC
1-C
3アルキルである。)
の構造を有する、実施形態14~18のいずれか1つに記載の方法。
【0213】
20. リンカーL’が、
【化44】
の構造を有する、実施形態14~19のいずれか1つに記載の方法。
【0214】
21. リンカーLが、
【化45】
の構造を有する、実施形態14~20のいずれか1つに記載の方法。
【0215】
22. ブロックWが、
【化46】
の構造を有する、実施形態14~21のいずれか1つに記載の方法。
【0216】
23. 接着剤組成物が、30~70%(w/w)の充填剤を含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0217】
24. 充填剤が、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリスルホン、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシアパタイト(HA)、リン酸四カルシウム(TTCP)、リン酸三カルシウム(TCP)、リン酸二カルシウム(DCP)、もしくはそれらのコポリマー、またはそれらのブレンドを含む、実施形態23に記載の方法。
【0218】
25. 充填剤が、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、もしくはポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ヒドロキシアパタイト(HA)、またはそれらのコポリマー、またはそれらのブレンドを含む、実施形態24に記載の方法。
【0219】
26. ステップ(i)およびステップ(ii)が、対象における複数の骨片を安定化するために繰り返される、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0220】
27. 2~5、6~10、11~15、16~20、21~25、26~30、31~35、36~40、41~45、46~50、またはそれ以上の骨片が対象物として安定化される、実施形態26に記載の方法。
【0221】
28. 加熱には、エネルギー源を加える(apply)ことを含む、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0222】
29. エネルギー源が超音波エネルギーである、実施形態28に記載の方法。
【0223】
30. 超音波エネルギーは35kHzから70kHzの周波数で印加される、実施形態29に記載の方法。
【0224】
31. 超音波エネルギーの周波数が70kHzである、実施形態30に記載の方法。
【0225】
32. 1.5~5.0Jのエネルギーが印加される、実施形態28~31のいずれか1つに記載の方法。
【0226】
33. 超音波エネルギーは、第1のアンカーおよび第2のアンカーの形成前に接着剤組成物と骨片との間で流体を移動させるのに十分な周波数および量で加えられる、実施形態29~32のいずれか1つに記載の方法。
【0227】
34. 超音波エネルギーが、超音波溶接機を使用して印加される、実施形態29~33のいずれか1つに記載の方法。
【0228】
35. 超音波溶接機は、個々のテクスチャ要素を有するホーンチップを含み、個々のテクスチャ要素は、最大0.127mmの均一な深さで等間隔に配置されている、実施形態34に記載の方法。
【0229】
36. 骨片を可逆的に安定化することを含む、実施形態1~35のいずれか1つに記載の方法。
【0230】
37. 第1のアンカーと第2のアンカーが可逆的アンカーである、実施形態1~36のいずれか1つに記載の方法。
【0231】
38. 接着剤組成物が、接着に関してその場での硬化反応に依存しない、実施形態1~37のいずれか1つに記載の方法。
【0232】
39. 接着剤組成物が、45±5℃の温度で可逆的に軟化する、実施形態1~38のいずれか1つに記載の方法。
【0233】
40. 支持構造、第1のアンカーおよび第2のアンカーは、(x)支持構造である非接着性の上層と、(y)軟化して接着性となって第1アンカーと第2アンカーを形成する下層とを含むテープから形成される、実施形態1~39のいずれか1つに記載の方法。
【0234】
41. (i)支持構造と、(ii)第1のアンカーおよび第2のアンカーのうちの少なくとも1つは、接着部分と、接着部分に対して裏打ちを形成する支持部分とを形成するように配置され、接着部分は、加熱されると、支持部分を変形させることなく軟化することができる、実施形態1~40のいずれか1つに記載の方法。
【0235】
42. 裏打ち部分は0.05~0.31mmの厚さを有し、任意に、裏打ち部分は0.12から0.20mmの厚さを有する、実施形態41に記載の方法。
【0236】
43. 接着部分は0.05~0.16mmの厚さを有し、任意に、接着部分は0.075±0.025mmの厚さを有する、実施形態41または42に記載の方法。
【0237】
44. 接着部分が0.13±0.03mmの厚さを有する、実施形態43に記載の方法。
【0238】
45. 加熱は、表面全体を覆うように付与/印加面に垂直の一連の連続した溶接鋲を介して溶接機を使用して加えることを含む、実施形態1~44のいずれか1つに記載の方法。
【0239】
46. 加熱は、ブラシストロークまたはペイント動作で装置表面全体にわたって溶接機を連続的にスライドさせることを含む、実施形態1~44のいずれか1つに記載の方法。
【0240】
47. 骨片を安定化するための装置であって、
(i)第1の骨片に取り付けることができる第1のアンカーであって、加熱により軟化して冷却により第1のアンカーを形成する接着剤組成物を含む第1のアンカーと、
(ii)第2の骨片に取り付けることができる第2のアンカーであって、加熱により軟化して冷却により第2のアンカーを形成する接着剤組成物を含む第2のアンカーと、
(iii)第1のアンカーを第2のアンカーに接続する、骨片を安定させることができる支持構造
を有し、接着剤組成物は、少なくとも40℃の粘着付与温度を有する、
骨片を安定化するための装置。
【0241】
48. 支持構造が、第1のアンカーを第2のアンカーに連結する生分解性および生体適合性ポリマーを含む可撓性支持体である、実施形態47に記載の装置。
【0242】
49. 支持構造、第1のアンカー、および第2のアンカーが、(x)支持構造である非接着性の上層と、(y)軟化すると接着性となり第1のアンカーと第2のアンカーを形成する下層とを含むテープから形成される、実施形態48に記載の装置。
【0243】
50. 接着剤組成物が水溶性ではない、実施形態47~49のいずれか1つに記載の装置。
【0244】
51. 接着剤組成物が熱伝達剤を含む、実施形態47~50のいずれか1つに記載の装置。
【0245】
52. 熱伝達剤が、軟化した接着剤組成物が120秒以内に冷却して硬化することを可能にする量で存在する、実施形態51に記載の装置。
【0246】
53. 熱伝達剤が、軟化した接着剤組成物が10秒以内に冷却して硬化することを可能にする量で存在する、実施形態51または52に記載の装置。
【0247】
54. 熱伝達剤が、エネルギーを加えてから120秒以内に接着剤組成物が軟化することを可能にする量で存在する、実施形態51~53のいずれか1つに記載の装置。
【0248】
55. 熱伝達剤が、非接着性上層にエネルギーを加えてから10秒以内に接着剤組成物が軟化することを可能にする量で存在する、実施形態54に記載の装置。
【0249】
56. 熱伝達剤は、塩化ナトリウム、リン酸鉄(III)二水和物、クエン酸鉄(III)一水和物、ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カルシウム、および炭酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、実施形態51~55のいずれか1つに記載の装置。
【0250】
57. 熱伝達剤が、ヒドロキシアパタイトである、実施形態56に記載の装置。
【0251】
58. 接着剤組成物が、約0.5~60%(w/w)の熱伝達剤を含む、実施形態51~57おのいずれか1つに記載の装置。
【0252】
59. 接着剤組成物が、約35~60%(w/w)の熱伝達剤を含む、実施形態58に記載の装置。
【0253】
60. 接着剤組成物は、式(I)の構造を有するポリマーを含む、実施形態47~59のいずれか1項に記載の装置。
【化47】
(式中、
nは0から4までの整数であり(例えば、n=1、2、3、または4);;
ブロックBは、MW<4,000g/molの、ポリエステル、ポリアルキレングリコール、ポリシリコーン、またはポリカーボネートに由来するオリゴマーを含み;
ブロックAは、置換されていてもよいC
1~C
6アルキレンを含み、ブロックAはジイソシアネート架橋剤から誘導されており;
ブロックWは、置換されていてもよいC
0~C
3アルキル-ベンゼン-ジオール、または置換されていてもよいC
0~C
3アルキル-ベンゼン-トリオールを含み;
リンカーL’は、カルバメートを含み;そして
リンカーLは、尿素を含む。)
【0254】
61. ブロックBが、式(II):
【化48】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、実施形態60に記載の装置。
【0255】
62. ブロックBが、式(III):
【化49】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、実施形態60に記載の装置。
【0256】
63. ブロックBが、式(IV):
【化50】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、実施形態60に記載の装置。
【0257】
64. ブロックBが、式(V):
【化51】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、実施形態60に記載の装置。
【0258】
65. ブロックAが、式(VII):
【化52】
(式中、R
1はC
1-C
3アルキルである。)
の構造を有する、実施形態60~64のいずれか1つに記載の装置。
【0259】
66. リンカーL’が、
【化53】
の構造を有する、実施形態60~65のいずれか1つに記載の装置。
【0260】
67. リンカーLが、
【化54】
の構造を有する、実施形態60~66のいずれか1つに記載の装置。
【0261】
68. ブロックWが、
【化55】
の構造を有する、実施形態60~67のいずれか1つに記載の装置。
【0262】
69. 接着剤組成物が、30~70%(w/w)の充填剤を含む、実施形態47~68のいずれか1つに記載の装置。
【0263】
70. 充填剤が、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリスルホン、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシアパタイト(HA)、リン酸四カルシウム(TTCP)、リン酸三カルシウム(TCP)、リン酸二カルシウム(DCP)、もしくはそれらのコポリマー、またはそれらのブレンドを含む、実施形態69に記載の装置。
【0264】
71. 充填剤が、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、もしくはポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ヒドロキシアパタイト(HA)、またはそれらのコポリマー、またはそれらのブレンドを含む、実施形態70に記載の装置。
【0265】
72. 複数の骨片を安定化できる複数の骨アンカーおよび複数の支持構造を含む、実施形態47~71のいずれか1つに記載の装置。
【0266】
73. (i)支持構造と(ii)第1のアンカーおよび第2のアンカーのうちの少なくとも1つとが、接着部分と、接着部分の裏打ちを形成する支持部分とを形成するように配置され、接着部分は、加熱されると、支持部分を変形させることなく軟化することができる、実施形態47~72のいずれか1つに記載の装置。
【0267】
74. 第1のアンカーおよび第2のアンカーはそれぞれ、濡れたまたは乾いた骨片に付着することができる、実施形態47~73のいずれか1つに記載の装置。
【0268】
75. 第1のアンカーと第2のアンカーは可逆的アンカーである、実施形態47~74のいずれか1つに記載の装置。
【0269】
76. 接着剤組成物は、接着のためのその場での硬化反応に依存しない、実施形態47~75のいずれか1つに記載の装置。
【0270】
77. 接着剤組成物が、45±5℃の温度で可逆的に軟化する、実施形態47~76のいずれか1つに記載の装置。
【0271】
78. 裏打ち部分が0.05~0.31mmの厚さを有する、実施形態73~77のいずれか1つに記載の装置。
【0272】
79. 裏打ち部分が0.12から0.20mmの厚さを有する、実施形態78に記載の装置。
【0273】
80. 接着部分が0.05~0.16mmの厚さを有する、実施形態73~78のいずれか1つに記載の装置。
【0274】
81. 接着剤部分が0.075±0.025mmの厚さを有する、実施形態80に記載の装置。
【0275】
82. 接着剤部分が0.13±0.03mmの厚さを有する、実施形態80に記載の装置。
【0276】
83. (i)0~70%(w/w)の充填剤;および
(ii)30~100%(w/w)の式(I):
【化56】
(式中、
nは0から4までの整数であり(例えば、n=1、2、3、または4);
ブロックBは、MW≦4,000g/molの、ポリエステル、ポリアルキレングリコール、ポリシリコーン、またはポリカーボネートに由来するオリゴマーを含み;
ブロックAは、置換されていてもよいC
1~C
6アルキレンを含み、ブロックAはジイソシアネート架橋剤から誘導されており;
ブロックWは、置換されていてもよいC
0~C
3アルキル-ベンゼン-ジオール、または置換されていてもよいC
0~C
3アルキル-ベンゼン-トリオールを含み;
リンカーL’は、カルバメートを含み;そして
リンカーLは、尿素を含む。)
の構造を有するポリマーを含み、
少なくとも40℃の粘着温度を有する、
接着剤組成物。
【0277】
84. 接着剤組成物が水溶性ではない、実施形態83に記載の接着剤組成物。
【0278】
85. 接着剤組成物が熱伝達剤を含む、実施形態83または84に記載の接着剤組成物。
【0279】
86. 熱伝達剤が、軟化した接着剤組成物が120秒以内に冷却して硬化することを可能にする量で存在する、実施形態85に記載の接着剤組成物。
【0280】
87. 熱伝達剤が、軟化した接着剤組成物が10秒以内に冷却して硬化することを可能にする量で存在する、実施形態86に記載の接着剤組成物。
【0281】
88. 熱伝達剤が、エネルギーを加えてから120秒以内に接着剤組成物が軟化することを可能にする量で存在する、実施形態85~87のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
【0282】
89. 熱伝達剤が、非接着性上層にエネルギーを加えてから10秒以内に接着剤組成物が軟化することを可能にする量で存在する、実施形態88に記載の接着剤組成物。
【0283】
90. 熱伝達剤が、塩化ナトリウム、リン酸鉄(III)二水和物、クエン酸鉄(III)一水和物、ヒドロキシアパタイト、リン酸四カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カルシウム、および炭酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせからなる群より選ばれる、実施形態85~89のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
【0284】
91. 熱伝達剤が、ヒドロキシアパタイトである、実施形態90に記載の接着剤組成物。
【0285】
92. 接着剤組成物が、約0.5~60%(w/w)の熱伝達剤を含む、実施形態85~91のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
【0286】
93. 接着剤組成物が、約35~60%(w/w)の熱伝達剤を含む、実施形態92に記載の接着剤組成物。
【0287】
94. a)ブロックBが、式(II):
【化57】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、実施形態83~93のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
【0288】
95. ブロックBが、式(III):
【化58】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、実施形態83~93のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
【0289】
96. ブロックBが、式(IV):
【化59】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、実施形態83~93のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
【0290】
97. ブロックBが、式(V):
【化60】
(式中、各oは、独立して、0~20の整数である。)
の構造を有する、実施形態83~93のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
【0291】
98. ブロックAが、式(VII):
【化61】
(式中、R
1はC
1-C
3アルキルである。)
の構造を有する、実施形態83~93のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
【0292】
99. リンカーL’が、
【化62】
の構造を有する、実施形態83~98のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
【0293】
100. リンカーLが、
【化63】
の構造を有する、実施形態83~99のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
【0294】
101. ブロックWが、
【化64】
の構造を有する、実施形態83~100のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
【0295】
102. 充填剤が、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリスルホン、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシアパタイト(HA)、リン酸四カルシウム(TTCP)、リン酸三カルシウム(TCP)、リン酸二カルシウム(DCP)、もしくはそれらのコポリマー、またはそれらのブレンドを含む、実施形態83~101のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
【0296】
103. 充填剤が、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、もしくはポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ヒドロキシアパタイト(HA)、またはそれらのコポリマー、またはそれらのブレンドを含む、実施形態102記載の接着剤組成物。
【0297】
104. (i)非接着性ポリマー上層と、(ii)実施形態83~103のいずれか1つの接着剤組成物を含む下層とを含む、テープ。
【0298】
105. 非接着性ポリマー上層が、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDX)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、ポリエチレンカーボネート(PEC)、ポリプロピレンカーボネート(PPC)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリスルホン、ポリエチレングリコール(PEG)、またはそれらのコポリマーを含む、実施形態104に記載のテープ。
【0299】
106. 非接着性ポリマー上層が0.05~0.31mmの厚さを有する、実施形態104または105に記載のテープ。
【0300】
107. 非接着性ポリマー上層が0.12から0.20mmの厚さを有する、実施形態106に記載のテープ。
【0301】
108. 下層が、0.05~0.16mmの厚さを有する、実施形態104~107のいずれか1つに記載のテープ。
【0302】
109. 下層が、0.075±0.025mmの厚さを有する、実施形態108に記載のテープ。
【0303】
110. 下層が、0.13±0.03mmの厚さを有する、実施形態108に記載のテープ。
【0304】
111. 実施形態47~82のいずれか1つの装置、または請求項104~110のいずれか1つのテープの製造方法であって、この方法は、
a)(i)実施形態93~103のいずれか1つの接着剤組成物を含む第1の部分を、(ii)支持構造を含む第2の部分と接触させること、
b)熱を加えて第1の部分と第2の部分を接合すること、
を含む製造方法。
【0305】
112. 第1の部分および第2の部分を圧縮するために力を加えることをさらに含む、実施形態111に記載の方法。
【0306】
113. 少なくとも800kgの力を加える、実施形態112に記載の方法。
【0307】
114. 第1の部分と第2の部分は、積層により接合される、実施形態111に記載の方法。
【0308】
115. 第1の部分および第2の部分の一方または両方がシートの形態である、実施形態111~114のいずれか1つに記載の方法。
【実施例】
【0309】
本明細書に記載の実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0310】
略語:
DSC 示差走査熱量測定
DMAc ジメチルアセトアミド
DMSOジメチルスルホキシド
H 時間
LDI エチルエステルL-リジンジイソシアネート
min 分
MW 分子量
mL ミリリットル
MS 質量分析法
m/v 質量/体積
NMR 核磁気共鳴
PCL ポリカプロラクトン
PDX ポリジオキサノン
TEA トリエチルアミン
TGA 熱重量分析
THF テトラヒドロフラン
【0311】
<<例1 接着剤の合成>>
化合物1
化合物1を、N2雰囲気下で3段階1ポット法により合成した(スキーム1)。PCLポリオール(ポリカプロラクトンジオール;MW1250g/mol)を二口丸底フラスコ内で真空下、75℃で2時間乾燥させた後、DMAc溶媒(~1:5m/v比)に溶解し、放置してN2雰囲気下で室温まで冷却した。2.1モル当量のLDI(エチルエステルL-リジンジイソシアネート)を加え、反応物を室温で1時間撹拌し、2時間かけて75℃まで昇温し、75℃で1時間保持し、最後に室温で一晩撹拌した。次いで、ドーパミン塩酸塩(2モル当量)を反応物に添加し、完全に溶解するまで撹拌した。反応物を氷浴に置き、トリエチルアミン(TEA;2モル当量)を滴下した。反応を一晩進行させた。反応物を濾過してトリエチルアミン塩酸塩副生成物を除去し、得られた濾液を大過剰(反応液の約10倍体積)のエーテル中で一晩撹拌して接着剤を沈殿させた。上清をデカントし、沈殿した接着剤を最小量の熱アセトン/エタノール(90:10v/v)に再溶解し、エーテルによる溶媒交換遠心分離(x3;1:9v/v)によって再沈殿させた。室温、真空下で長時間乾燥させた後、化合物1を白色の結晶性粉末として得た(nは約5(平均))。100%のドーパミン官能化が1H-NMRによって確認された。
【0312】
【0313】
化合物2
化合物2を、N2雰囲気下で3段階1ポット法により合成した(スキーム 2)。PCLポリオール(ポリカプロラクトンジオール;MW2000g/mol)を二口丸底フラスコ内で真空下、75℃で2時間乾燥させた後、DMAc溶媒(~1:5m/v比)に溶解し、放置して、N2雰囲気下で室温まで冷却した。2.1モル当量のLDI(エチルエステルL-リジンジイソシアネート)を添加し、反応物を室温で1時間撹拌し、2時間かけて75℃まで昇温し、75℃で1時間保持し、最後に室温で一晩撹拌した。次いで、ドーパミン塩酸塩(2モル当量)を反応物に添加し、完全に溶解するまで撹拌した。反応物を氷浴に置き、トリエチルアミン(TEA;2モル当量)を滴下した。反応を一晩進行させた。完了したら、反応混合物を濾過して、トリエチルアミン塩酸塩副生成物を除去した。次いで、接着剤をエーテル(×3;1:9v/v)を用いた溶媒交換遠心分離によって沈殿させ、次いで真空下で濾過した。次いで、接着剤を最小量の熱アセトン/エタノール(90:10 v/v)に再溶解し、上記のようにエーテルを用いて再沈殿させた。真空下、室温で長時間乾燥させた後、化合物2を硬い白色のワックス状固体として得た(nは約8.3(平均))。化合物2の1H-NMR分析により、73%のドーパミン官能基化が確認された。
【0314】
【0315】
化合物3
化合物3を、N2雰囲気下で3段階1ポット法により合成した(スキーム 3)。PCLポリオール(ポリカプロラクトンジオール;MW4000g/mol)を二口丸底フラスコ内で真空下、100℃で2時間乾燥させた後、DMAc溶媒(~1:5m/v比)に溶解し、放置して、N2雰囲気下で室温まで冷却した。2モル当量のLDI(エチルエステルL-リジンジイソシアネート)を添加し、反応物を室温で1時間撹拌し、2時間かけて75℃まで昇温し、75℃で1時間保持し、最後に室温で一晩撹拌した。次いで、ドーパミン塩酸塩(2モル当量)を反応物に添加し、完全に溶解するまで撹拌した。反応物を氷浴に置き、トリエチルアミン(TEA;2モル当量)を滴下した。反応系を室温まで戻し、反応を一晩進行させた。完了したら、大過剰(反応量の約10倍)の酸性水中で撹拌することにより接着剤を沈殿させた。次いで、接着剤を真空濾過し、濾液が酸性でなくなるまで大量の蒸留水で洗浄した。長時間凍結乾燥した後、化合物3がふわふわした白色粉末として得られた(nは約17(平均))。化合物3の1H-NMR分析により、82%のドーパミン官能基化が確認された。
【0316】
【0317】
化合物4
化合物4を、N2雰囲気下で3段階1ポット法により合成した(スキーム 4)。PCLポリオール(ポリカプロラクトントリオール;MW300g/mol)を二口丸底フラスコ内で真空下、75℃で2時間乾燥させた後、DMAc溶媒(~1:5m/v比)に溶解し、放置して、N2雰囲気下で室温まで冷却した。3モル当量のLDI(エチルエステルL-リジンジイソシアネート)を添加し、反応物を室温で1時間撹拌し、2時間かけて75℃まで昇温し、75℃で1時間保持し、最後に室温で一晩撹拌した。次いで、ドーパミン塩酸塩(3.1モル当量)を反応物に添加し、完全に溶解するまで撹拌した。反応物を氷浴に置き、トリエチルアミン(TEA;3モル当量)を滴下した。反応を一晩進行させた。完了したら、反応物を濾過して、トリエチルアミン塩酸塩残渣を除去し、酸性水(×1;1:3v/v)での溶媒交換遠心分離によって接着剤を沈殿させた。次いで、接着剤を溶媒交換遠心分離により、中性になるまで水(1:4v/v)およびエーテル(×4;1:9v/v)で洗浄した。接着剤を最小量の熱アセトン/エタノール(90:10v/v)に再溶解し、エーテルによる溶媒交換遠心分離(x3;1:9v/v)によって再沈殿させた。真空下、室温で長時間乾燥させた後、最終的に化合物4を白色の結晶性粉末として得た(nは約0.5(平均))。化合物4の1H-NMR分析により、80%のドーパミン官能化が確認された。
【0318】
【0319】
化合物5
化合物5を、N2雰囲気下で3段階1ポット法により合成した(スキーム5)。PCLポリオール(ポリカプロラクトントリオール;MW900g/mol)を二口丸底フラスコ内で真空下、75℃で2時間乾燥させた後、DMAc溶媒(~1:5m/v比)に溶解し、放置して、N2雰囲気下で室温まで冷却した。3.1モル当量のLDI(エチルエステルL-リジンジイソシアネート)を添加し、反応物を室温で1時間撹拌し、2時間かけて75℃まで昇温し、75℃で1時間保持し、最後に室温で一晩撹拌した。次いで、ドーパミン塩酸塩(3.1モル当量)を反応物に添加し、完全に溶解するまで撹拌した。反応物を氷浴に置き、トリエチルアミン(TEA;3モル当量)を滴下した。反応を一晩進行させた。完了したら、反応物を濾過して、トリエチルアミン塩酸塩残渣を除去し、酸性水(×1;1:3v/v)での溶媒交換遠心分離によって接着剤を沈殿させた。次いで、接着剤を溶媒交換遠心分離により、中性になるまで水(1:4v/v)およびエーテル(×4;1:9v/v)で洗浄した。接着剤を最小量の熱アセトン/エタノール(90:10v/v)に再溶解し、エーテルによる溶媒交換遠心分離(x3;1:9v/v)によって再沈殿させた。真空下、室温で長時間乾燥させた後、最終的に化合物5を淡黄色の硬質ガラス状固体として得た(nは約2.3(平均))。化合物5の1H-NMR分析により、77%のドーパミン官能化が確認された。
【0320】
【0321】
化合物6
化合物6を、N2雰囲気下で3段階1ポット法により合成した(スキーム6)。PCLポリオール(ポリカプロラクトントリオール;MW2000g/mol)を二口丸底フラスコ内で真空下、85℃で2時間乾燥させた後、DMAc溶媒(~1:5m/v比)に溶解し、放置して、N2雰囲気下で室温まで冷却した。3モル当量のLDI(エチルエステルL-リジンジイソシアネート)を添加し、反応物を室温で1時間撹拌し、2時間かけて75℃まで昇温し、75℃で1時間保持し、最後に室温で一晩撹拌した。次いで、ドーパミン塩酸塩(3.1モル当量)を反応物に添加し、完全に溶解するまで撹拌した。反応物を氷浴に置き、トリエチルアミン(TEA;3モル当量)を滴下した。反応系を室温まで戻し、反応を一晩進行させた。完了したら、混合物を濾過して、トリエチルアミン塩酸塩副生成物残渣を除去し、酸性水(×1;1:3v/v)での溶媒交換遠心分離によって接着剤を沈殿させた。次いで、接着剤を溶媒交換遠心分離により、中性になるまで水(1:4v/v)およびエーテル(×4;1:9v/v)で洗浄した。得られた接着剤を最小量の熱アセトン/エタノール(90:10v/v)に再溶解し、エーテル(x4;1:9v/v)による溶媒交換遠心分離によって再沈殿させた後、真空下、室温で長時間乾燥させ、化合物6を白色のふわふわした粉末として得た(nは約5.5(平均))。化合物6の1H-NMR分析により、90%のドーパミン官能化が確認された。
【0322】
【0323】
化合物7
化合物7を、N2雰囲気下で3段階1ポット法により合成した(スキーム7)。PCLポリオール(ポリカプロラクトンテトオール;MW1000g/mol)を二口丸底フラスコ内で真空下、75℃で2時間乾燥させた後、DMAc溶媒(~1:5m/v比)に溶解し、放置して、N2雰囲気下で室温まで冷却した。4モル当量のLDI(エチルエステルL-リジンジイソシアネート)を添加し、反応物を室温で1時間撹拌し、2時間かけて75℃まで昇温し、75℃で1時間保持し、最後に室温で一晩撹拌した。次いで、ドーパミン塩酸塩(3.1モル当量)を反応物に添加し、完全に溶解するまで撹拌した。反応物を氷浴に置き、トリエチルアミン(TEA;4モル当量)を滴下した。反応系を室温まで戻し、反応を一晩進行させた。完了したら、混合物を濾過して、トリエチルアミン塩酸塩副生成物残渣を除去し、酸性水(×1;1:3v/v)での溶媒交換遠心分離によって接着剤を沈殿させた。次いで、接着剤を溶媒交換遠心分離により、中性になるまで水(1:4v/v)およびエーテル(×4;1:9v/v)で洗浄した。得られた接着剤を最小量の熱アセトン/エタノール(90:10v/v)に再溶解し、エーテル(x4;1:9v/v)による溶媒交換遠心分離によって再沈殿させた後、真空下、室温で長時間乾燥させ、化合物7を白色のスポンジ状固体として得た(nは約1.9(平均))。化合物7の1H-NMR分析により、89%のドーパミン官能化が確認された。
【0324】
【0325】
化合物8
化合物8を、N2雰囲気下で3段階1ポット法により合成した(スキーム8)。PEEポリオール(ポリエチルエーテルヘキソール;MW815g/mol)を二口丸底フラスコ内で真空下、75℃で2時間乾燥させた後、DMAc溶媒(~1:5m/v比)に溶解し、放置して、N2雰囲気下で室温まで冷却した。6モル当量のLDI(エチルエステルL-リジンジイソシアネート)を添加し、反応物を室温で1時間撹拌し、2時間かけて75℃まで昇温し、75℃で1時間保持し、最後に室温で一晩撹拌した。次いで、ドーパミン塩酸塩(6.1モル当量)を反応物に添加し、完全に溶解するまで撹拌した。反応物を氷浴に置き、トリエチルアミン(TEA;6モル当量)を滴下した。反応系を室温まで戻し、反応を一晩進行させた。完了したら、混合物を濾過して、トリエチルアミン塩酸塩副生成物残渣を除去し、酸性水(×1;1:3v/v)での溶媒交換遠心分離によって接着剤を沈殿させた。次いで、接着剤を溶媒交換遠心分離により、中性になるまで水(1:4v/v)およびエーテル(×4;1:9v/v)で洗浄した。得られた接着剤を最小量の熱アセトン/エタノール(90:10v/v)に再溶解し、エーテル(x4;1:9v/v)による溶媒交換遠心分離によって再沈殿させた後、真空下、室温で長時間乾燥させ、化合物8を白色の淡黄色の硬いガラス状固体として得た。1H-NMR分析により、78%のドーパミン官能化が確認された。
【0326】
【0327】
<<例2. 接着剤ブレンド>>
接着剤ブレンドを、必要なブレンド製品の量に基づいて、極低温粉砕プロセスまたはマイクロコンパウンディング手順のいずれかを使用して調製した。接着剤ブレンドは、本明細書に記載の接着剤、例えばPCL(MW=50kDa、Polysciences、米国)などのポリマー、および例えば塩化ナトリウム(Bioshop、米国)、ヒドロキシアパタイト(Sigma、SS-nano、米国)、リン酸四カルシウム(TCP)(Himed、米国)または炭酸ナトリウム(Bioshop USA)などの可溶性または不溶性粒子を含んでいる。
【0328】
接着剤ブレンドを極低温で粉砕するために、接着剤成分の総質量1~3gを、4個の硬化ボールベアリングを含むスチール製キャニスターに加えた。粉砕は、液体窒素を取り付けた Retsch Cryomill (Retsch, DE) で30Hz、-196℃で、自動予冷とサイクル間の5分間冷却をともなう、5分間の粉砕サイクルを3回使用して実行した。混合物をキャニスター内で室温まで温めた後、ガラス製シンチレーションバイアルに移した。
【0329】
あるいは、10mL Xplore Twin Screw Micro-compounder(マイクロコンパウンダー)を使用して、約2分間、200rpm、約105℃で、コンパウンド化接着フィラメントを調製した。ブレンドした接着剤をフィラメントに押し出し、ペレット化した。
【0330】
ブレンド方法に関係なく、すべての接着剤ブレンドを真空下、室温で2時間以上乾燥させてから密封し、使用前に-20℃で保管した。表1aは、本開示の接着剤ブレンドを示す。
【表1a】
【表1a-2】
【表1a-3】
【表1a-4】
【0331】
<<例3.支持部側の製造>>
ポリマーブレンドのフィラメントを、マイクロコンパウンディング手順を使用して作成した。簡単に言うと、ポリマーを使用前に真空下、室温で一晩乾燥した。ポリマーのブレンドで構成されるフィルムの場合、最初に10mLの Xplore Twin Screw Micro-compounder を使用して、ポリマー類を溶融するのに適した温度 (配合されるポリマーに基づいて115~220℃)で200rpmで約5分間、ポリマーを混合(コンパウンド化)しフィラメント状にした。ポリマーをフィラメントに押し出し、ペレット化した。
【0332】
ペレットを真空下で乾燥させ、その後、カーバー自動(Carver Automated)加熱プレスで1000~2000kgで薄膜に圧縮成形した。簡単に言えば、プラテンを適切な溶融温度まで加熱した。フィラメントは、プレスするシートのサイズに応じて、特定の質量に合わせて約3cmの長さに切断した。溶融ポリマーがスチールプラテンに付着するのを防ぐために、テフロンライナー(テフロンは登録商標)と金型を使用した。選択した場合には、得られるシートにテクスチャーを与えるために、テフロンライナーにテクスチャー加工を施した(実施例4を参照)。テフロン金型の厚さは0.1~0.5mmである。成形は鋼板、テフロンライナー、テフロン金型とポリマー材料、テフロンライナー、鋼板を積層して行った。
層状成形サンドイッチを底部プラテン上に置き、上部プラテンの下約1mmまで持ち上げた。ポリマーを、力を加えずに10分間溶融した。溶解後、手動で約100~300kgまで力を増加させた。力が約0~100kgまで低下したら、油圧を解放して気泡を消散させた。次に、自動モードで15%の速度で力を1000~2000kg(所望の厚さに応じて)まで5分間増加させました。セットアップした層状モールドを37℃に移し、自然に冷却してからシートをモールドから取り外した。シートをトリミングして余分な材料を除去し、使用前にデシケーター内に保管した。表1bは、支持体側を構成する本発明のポリマーを示す。
【0333】
【0334】
<<例4.ポリマーシートのテクスチャリング>>
ポリマーシートの接着側にテクスチャーを作成するために、サブトラクティブレーザーエッチングを使用してテフロンライナーにテクスチャーを付け、圧縮成形中にポリマーシートにポジの特徴(凸型)を与えた。テクスチャーはAutocadのコンピューター支援設計を使用して作成した。テクスチャは、60W CO2レーザー彫刻機 (Universal Laser Systems、VLS3.5)でテフロンシートにレーザーエッチングした。エッチング後、テクスチャード加工されたテフロンシートをイソプロパノールと圧縮空気で洗浄し、余分な材料を除去した。使用前にテクスチャードライナーをさらに洗浄するために、1枚のポリマーシートを新たにエッチングしたテフロンライナー上に押し付け、そして取り除いた。特徴の寸法は、必要に応じてより多くパスの使用またはより高い出力を使用して調整したが、一般に深さは100~200μmに測定される。次に、ポリマーシートの圧縮成形中にテクスチャー加工されたシートをライナーとして使用し、高さ約100~150μmのポジティブな特徴を形成した。
【0335】
<<例5.装置アセンブリ>>
方法1:プレス
凍結粉砕/配合された接着剤、接着剤ブレンドまたは接着剤混合物をポリマーシート/フィルム上にホットプレスした。簡単に言うと、ポリマーシート/フィルム(実施例4で報告したように調製した)を、ベンチトッププラズマクリーナー(Harrick Plasma、米国)を使用して部分酸素雰囲気下で少なくとも2分間プラズマ処理した。一方、ホットプレス(Carver、米国)を75℃(上部プラテン)と70℃(下部プラテン)まで加熱した。約0.8gの接着剤、接着剤ブレンドまたは接着剤混合物をポリマーシートの中心に配置した。次いで、シートを、接着側を上にして、シートの圧縮成形に使用されるのと同様の積層金型の中に配置した。接着剤の厚さを設定するために、金型の厚さを設定した。金型をプラテン上に置き、上部プラテンが金型から<1mmになるように持ち上げた。材料を圧力をかけずに5~10分間溶融させた。溶融ステップの後、15%の速度で800kgの力を自動的に加え、さらに5分間保持した。得られたポリマーシート/接着剤複合体を除去する前に、型を取り外し、室温まで冷却した。
【0336】
方法2:ラミネート
ラミネート方法は、支持ポリマーと接着剤層の予めプレスされたシートを互いに積層することを含む。粘着シートは、支持体側ポリマーに使用される圧縮成形法の変形版によって調製した(実施例4)。簡単に説明すると、接着剤ブレンドの配合ロッドを長さ方向に5mm片に切断し、約0.8~1.0gを圧縮成形装置に入れた。次に、この金型をホットプレスに置き、両方のプラテンで105°Cに維持し、圧縮金型が上部プラテンから1mm未満になるようにして加熱を最大化した。接着剤を5分間溶融させ、その後1000~4000kg(所望の厚さに応じて)の力を2分間加えた。次いで、金型をホットプレスから取り外し、室温まで冷却し、積層のために接着剤層を取り外した。別に、ポリマーシート/フィルム(実施例4で報告したように調製した)を、ベンチトッププラズマクリーナー(Harrick Plasma、米国)を使用して部分酸素雰囲気下で少なくとも2分間プラズマ処理した。ラミネートのために、2枚のテフロンシート間において裏打ち層を接着層の上に置き、約150~250°F(接着剤の厚さに応じて)に設定したラミネーターに置いた。得られたシートを室温まで冷却した後、積層テープをテフロンシートから剥がした。
【0337】
【0338】
<<例6 接着剤化合物の熱安定性と揮発性物質含有量の分析>>
接着剤化合物の揮発分含有量を、模擬TGA実験から求めた。100mgの各接着剤化合物を室温で耐熱ガラスバイアルに入れた。サンプルを真空条件下で160°Cまで1時間加熱した。1時間後、サンプルを真空下でさらに1時間放置して冷却した。サンプルの質量は、冷却後に記録した。残留溶媒を、160°Cで得られた質量損失のパーセンテージから計算した。各接着剤について2つのサンプルをテストした。
【0339】
結果を表1dに示します。表1dは、事前に設定した温度(最高沸点溶媒の沸点)-我々の場合は、DMAc160℃-までの物質質量損失として得られる模擬熱重量分析(sTGA)で得られた接着剤の熱安定性/揮発分を示す。熱安定性は、加工、保管、出荷などの際に接着剤が安定に保たれるようにするために重要である。簡単に説明すると、100mgの接着剤サンプルを真空下で1時間かけて160°Cまで加熱し、その後真空下でさらに1時間冷却してから最終的な質量が決定された接着剤を完成させた。熱安定性/揮発性物質含有量は、加熱前後の質量の差として取得された。
【0340】
【0341】
<<例8.接着剤の水溶解度および膨潤性の分析>>
接着性化合物の溶解性と膨潤性を評価した。簡単に説明すると、0.200gの接着剤サンプルを真空下、40℃で48時間かけて乾燥し、重量を量って最初の乾燥質量を取得した。25.0mLの脱イオン水を各サンプルに加え、断続的に混合しながらサンプルを室温(約21℃)で48時間インキュベートした。48時間後、水相をデカントし、凍結乾燥し、次いで水中に抽出された物質の質量を測定するために40℃で一晩真空乾燥した。抽出された物質と水溶液の質量の比を使用して、各接着剤の水溶解度を推定した。残留接着剤の膨潤は、初期接着剤質量に対して増加した水の質量パーセントとして取り、インキュベーション後にサンプルを質量化する前にキムワイプで過剰な水を除去することによって決定した。表2は、接着剤化合物の溶解性と膨潤の可能性を示す。
【0342】
【0343】
テストしたすべての接着剤は明らかに水溶解度が低い。最も高い平均溶解度は、1mg/g水未満であった(化合物2では0.66mg/g)。しかし、テストした接着剤の大部分は、一桁低い溶解度を示した。2つのケース(化合物4および6)では、抽出可能な質量が小さすぎて確実に記録できなかった。
【0344】
<<例9.接着剤の熱特性の分析>>
純粋な接着剤のガラス転移温度および/または溶融温度は、電気冷却システムを備えたDSC7020熱分析システム(HitachiHighTechnologiesCanadaInc.、オンタリオ州、カリフォルニア州)で実行された示差走査熱量測定(DSC)実験から得られた。サンプル(5~15mg)を開いた40μLアルミニウムDSCパンにロードし、DSCサンプルチャンバーに導入した。チャンバー内は乾燥窒素流40mL/minで連続的にパージした。各サンプルを150℃で5分間平衡させて熱履歴を消去し、20℃/分の速度で-90℃まで冷却し、等温で5分間保持し、5℃/minの速度で再度150℃まで加熱した。等温で5分間保持し、その後5℃/minの速度で再び-90℃まで冷却し、等温で5分間保持し、最後に5℃/minの速度で再び180℃まで加熱した。融解(TM)温度および/またはガラス転移(Tg)温度は、NEXTA標準分析用ソフトウェア、v2.0を使用してサーモグラムから計算した。純粋な接着剤と接着剤ブレンドの熱特性を表4に示す。
【0345】
純粋な接着剤の粘着温度を次のように測定した。100mgの接着剤サンプルをシンチレーションガラスバイアルに入れ、室温(23℃)の水浴中で5分間平衡化した。加熱プレートの速度プログラム可能な機能を使用して、ウォーターバスの温度を1℃/分の速度で75℃まで上昇させた。粘着付与温度は、接着剤が非流動性の硬質/ガラス状態から、ピペットで突くと糸を引くだけの粘稠な非晶質状態に変化する温度で測定した。結果を表3に示す。
【0346】
【0347】
<<例10.接着強度の分析>>
接着剤のラップシェア(重ね剪断)強度は、1000Nロードセルおよび25mm/minの印加ひずみ速度を備えた引張モードのInstron万能試験機を使用して、標準的なラップシェア試験(重ね剪断試験)を実行することによって得られた。サンプル(n=6)は、2x1cm2の接触面積を持つアルミニウム基板の間に挟まれた接着剤で構成され、試験前に室温で一晩インキュベートした。結果を表4に示す。
【0348】
【0349】
<<例11.インビトロ細胞毒性>>
接着剤化合物4、6および7、ならびにポリマーフィルムおよびテープ装置のインビトロ細胞毒性を、WSTアッセイによって試験した。材料は、化合物については10mg/mL、ポリマーフィルムおよび装置については7mm
2/mLの濃度で増殖培地(DMEM)に抽出した。陽性対照および陰性対照は、それぞれ5%DMSOおよび増殖培地で処理した。細胞をウェル当たり10,000細胞の密度で播種した。細胞生存率は、材料とA10細胞との接触の24時間および72時間後に測定した。両方の時点で約10%の細胞生存率を有していた化合物4を除いて、すべての材料は、FDA申請に必要な最小細胞生存率70%を超える細胞生存率を示した(
図1)。
材料の細胞毒性を、A10細胞と24時間および72時間直接接触させ、陰性および陽性対照(それぞれDMEMおよび5%DMSO)と比較して分析した。細胞生存率(%)値は、WST-1比色アッセイによって決定された。結果は平均値±標準偏差として表される。n=4。
【0350】
<<例12.装置の性能に対する接着剤組成の影響>>
接着性能は、接着成分の組成を変えることで調整できる。しかしながら、これは、
図2に見られるように、簡単な作業ではない。これは、異なる接着剤成分に対する粘着付与温度(
図2)などの接着特性の非類似であって、従って非自明な依存性があるからである。
【0351】
接着剤と接着剤のブレンド混合物の粘着付与温度と接着特性を評価した。ブレンドを、接着剤成分を選択した重量比で加熱混合することによって調製した。接着剤サンプル100mgをシンチレーションガラスバイアルに入れ、室温(23℃)の水浴中で5分間平衡させた後、加熱プレートのプログラム可能な機能を使用して水浴の温度を1℃/分で75℃まで上昇させた。粘着付与温度を、接着剤混合物が非流動固体から、ピペットで突くと糸を引くだけの粘稠な非晶質状態に変化する温度で測定した。接着特性は、AutoC-PL,H実験用プレス(CarverInc,USA)を使用して得られた接着フィルムで測定した。約0.1gの接着剤をテフロンライナーの間に置き、プレス機上に5分間放置して、80℃の設定温度に熱平衡させた。次に、サンプルを80℃、600kgの荷重で5分間圧縮し、プレスから取り出し、20分間かけて室温まで冷却した。次に、接着剤のブレンドを観察するためにテフロンライナーを分離した。接着剤ブレンドを、1)テフロンへの接着力とフィルムの粘着性、2)テフロンを曲げてフィルムの亀裂を観察することによる剛性/可塑性/脆さ、および3)テフロン表面から剥がしたときのフィルムの凝集性、について定性的に評価した。
【0352】
表5は接着剤と接着剤のブレンドの影響を示し、表6は接着剤ブレンド内のポリマー充填剤の影響を示し、表7は接着剤ブレンドに対する粒子状接着剤の影響を示す。
【0353】
【0354】
骨テープ装置Cの性能に対するポリマー充填剤の影響を評価した。ここで、接着剤成分は、50%w/w%の接着剤ブレンド4aと50%のリストしたポリマー充填剤で構成され、支持側はポリマー3で構成されている。インビボでの利用を模倣するために、適用前に超音波エネルギー源を使用して、クエン酸塩を加えた馬の血液で覆われた頬骨に装置を適用した。テープの性能は、テープの接着力、貼りやすさ、剥離強度、および引張強度を見て定性的に評価した。ここで、スコア0=骨への接着なし、5=良好な適用、および骨への接着、および良好な引張強度または良好な剥離強度、10=望ましい接着力、耐剥離性、引張強さである。結果を表6に示す。
【0355】
【0356】
表6は、接着性能を向上させるためにポリマー充填剤を使用できることを示している。理論に束縛されるものではないが、これは、ポリマー充填剤が接着剤の物理的および/または機械的特性にプラスの影響を与え、それによって第二相強化剤として機能する場合に起こる。
【0357】
例えば、軟化温度が低すぎるポリマー充填剤(例:PLC7015)または高すぎる(例:LG824s、L210s HA)ものは、対照接着剤(フィラーなし)自体の性能よりも、接着剤層の性能が低く制限されている。分子量の高いポリマーは引張抵抗が向上し(例:PCL50対PCL14、PBA)、一方、柔軟なポリマー(例:PBA)は剥離性能の向上に貢献する。
【0358】
HAなどの無機充填剤は、適合性ポリマー充填剤と同じレベルの第2相強化を提供しない。理論に束縛されるものではないが、無機微粒子は通常、空隙充填剤であり、これに対して、ポリマー充填剤は長鎖の絡み合い相互作用により伸び/引張特性の向上に寄与する。
【0359】
接着剤化合物と混和しないポリマー(DSCサーモグラム上、別個の接着剤およびポリマーTgドメインから明らか)、たとえばLG824およびL210sHAもうまく機能しない。これはおそらく、鎖の絡み合いが存在せず、ポリマー相と接着性化合物との相混合によって促進される関連する分子間相互作用の影響が存在しないため、それらの相強化メカニズムが主として空隙充填のために低減されるためである。これは、適切な機械的特性および/または物理的特性を備えた別の接着剤化合物がポリマー充填剤成分として接着剤層に組み込まれた場合に最高のスコアが得られることを示す装置C-7(表6)によって裏付けられている。
【0360】
接着層の全体的な親水性を高めるポリマー充填剤、例えばPF127は、接着層の膨潤能力および/または溶解性を増加させ、最終的には骨および/またはサイド支持材からの剥離による骨テープの破損につながる。一方、接着層の親水性を低下させるポリマー充填剤(例えばPCL)は、生体内での水の浸入による骨テープの破損を軽減するために望ましい。
【0361】
<<例13.骨テープ装置の性能に対する微粒子添加剤の影響>>
骨テープの装置Dおよび装置Fの性能に対する粒子添加剤の影響を評価した。列挙された粒子の様々な量を、50重量%の接着剤ブレンド4aまたは接着剤ブレンド9a、および50%のポリマー充填剤を含む接着剤配合物に混合し、ウサギ頬骨への適用および接着について評価した。骨テープ装置は、超音波エネルギー源を使用して、クエン酸塩を加えた馬の血液で覆われた頬骨に適用した。重量%は、接着剤配合物の有機質量に対して添加される無機粒子の量を反映する。テープの性能は、テープの接着力、貼りやすさ、剥離強度、および引張強度を見て定性的に評価した。スコア0=骨への接着なし、5=良好な適用および骨への接着、および良好な引張強度または良好な剥離強度、10=望ましい接着力、耐剥離性、引張強さである。結果を表7に示す。
【0362】
【0363】
2.5wt%未満の濃度で添加剤を添加すると、効果が得られないか、性能が低下する。添加剤レベルが2.5wt%の場合、テープの貼り付けは容易になりますが、性能の向上は観察されなかった。添加剤レベルが5~10%の場合、貼り付け性と流体置換性は向上しましたが、強度は顕著には向上しなかった。理論に束縛されるものではないが、これらの添加剤が適切な量で存在すると、裏打ち材から接着成分へのエネルギー伝達が促進され、骨テープの支持側成分を損なうことなく接着成分が粘着温度に達することを可能にするという仮説が立てられる。
【0364】
しかし、10重量%を超える可溶性添加剤を使用すると、可溶性添加剤成分が溶解または浸出して骨テープにクレーター/空隙が残るため、適用時に骨テープの完全性が損なわれる。一方、不溶性添加剤、例えばHAやTTCPを20wt%以上のレベルで使用すると、対照と比較して引張強度と適用性が向上する。理論に束縛されるものではないが、これは、適用中に支持体から接着剤成分へのエネルギー伝達を助けることに加えて、空隙充填第二相強化剤として機能する不溶性添加剤の能力に起因すると考えられる。空隙充填第二相強化剤としてのこれらの微粒子添加剤の役割の証拠は、表7の装置D-12とD-14~D-16の比較、装置F-1とF-6の比較、装置F-1とF-6の比較、装置F-2とF-7およびF-8の比較から説明できる。これらはすべて、所定のHA含有量に対して、接着剤内のポリマー充填剤の性質が添加剤の有効性に強く影響することを示している(PESを除いて、これらすべの装置注のポリマー充填剤は、すべて同様の融点を示すことに注意)。さらなる証拠は、装置F-2対F-4で見ることができ、より多孔質であるが組成的に類似したTTCP充填剤は、HAと比較して空隙充填剤の有効性が低い。
【0365】
表7の装置F-1~F-3は、装置の性能に対する添加剤のpHの影響を示している。従来技術から、塩基性添加剤がカテコール含有接着剤のカテコール部分の現場架橋を誘導することが知られている。これは、この実施形態の接着装置でも明らかである。HA添加剤中の残留反応物は、添加剤の有効な非中性pHを与える。HAの実質pHは、サプライヤーの製造方法に基づいて酸性から塩基性までの範囲であることがわった。非中性不純物を除去するためのさらなる洗浄を行わずに骨テープの製造にそのまま使用すると、塩基性pH特性を示すHAは、骨テープの製造における高温の製造プロセル条件において、その場でpH誘導性のカテコール-カテコール架橋および/または二量体化を引き起こす。しかしながら、この実施形態の装置について表7に示すように、接着剤がその場で架橋/オリゴマー化を受ける装置(例えば、装置F-1)では骨テープの性能がいくらか改善される可能性があるが、これらの改善がほんのわずかである(例:装置F-2およびF-3)ことも明らかである。
これらの結果は、この実施形態の接着剤が所望の接着剤および/または装置性能のために架橋を必要としないことを強くうらづける。さらに、前記その場で誘起される接着架橋が存在する場合、得られる骨テープは美的に最も美しくない。pHによる架橋が増加すると、接着剤とその結果得られる骨テープの色が白から暗褐色/黒に変化するので。したがって、pH≦7の微粒子添加剤を使用して製造された本実施形態の非架橋接着装置は、外科的処置での使用に望ましい美的および性能基準を満たす。
【0366】
接着剤や添加剤を含まず、充填剤ポリマーPCLだけからなる接着層を備えた骨テープは、骨に貼りつかない。
【0367】
<<例14.骨テープ装置の性能に対する支持側組成の影響>>
支持側組成の影響を骨テープ装置Eについて調査した。様々な支持側組成物上に接着剤ブレンド6fを含む装置Eを製造し、ウサギ頬骨への適用および接着について評価した。適用は超音波加熱システムを使用して実行した。インビボでの適用を模倣するために、適用前に頬骨をクエン酸を含む馬の血液で覆った。テープの性能は、テープの接着力、貼りやすさ、剥離強度、引張強度を見て定性的に評価した。ここで、Y=yesはい。N=Noいいえ。スコアは0=不合格、3=平均、5=非常に優れた性能であり。結果を表8に示します。
【0368】
【0369】
表8は、骨テープの性能が支持側部材の特性に大きく依存していることを示している。
【0370】
接着剤配合物の粘着温度以下で溶融/軟化するポリマー(PCL、PLC7015など)は、単独で使用する場合には最適ではない。このような状況では、術後の装置の引張強度を妥協させる(損なう)ような欠陥を支持側部材に導入することなく骨テープを貼り付けることが課題となる。これは、接着剤層の粘着温度に近い温度またはそれ以下の温度で急速に溶融する、結晶含有量が多いPCLなどのポリマーに特に当てはまる。これは、多形相転移を示すポリマー、および/または接着剤配合物の粘着付与温度以下で相転移を伴う複数の多形体を含むポリマーにも当てはまる。たとえば、PDXは最終溶融温度は110℃であるが、室温と50℃の間で溶融媒介再結晶を含むいくつかの多形転移も起こす。
【0371】
接着剤配合物の粘着付与温度と比較して高すぎる温度で溶融/軟化するポリマー(例:PLC9517)も、装置の性能を妥協させる用途上の課題を引き起こす。これらのシステムでは、支持側部材を骨表面の形状に適合させるために支持側部材を軟化させ、接着剤部材による骨表面の完全な湿潤を促進するためにかなり高い温度が必要となるため、実際に骨テープ装置の下から接着剤が流出し、結果として不十分な接着特性を有する妥協した装置となる。同様の課題は、弾性率が高すぎるポリマー(Etensile>0.5GPa;LG824s、PLC8516など)でも観察されており、一般に、骨の形に十分にあった輪郭を保つために十分な柔軟性を向上させるためには、ガラス転移温度を十分に超える加熱が必要となる。
【0372】
一般に、所望の溶融プロファイル、引張強度、および/または弾性率を有するポリマーは、個々のポリマー、例えば上記の表8のポリマー3および6をブレンドすることによって得ることができる。しかしながら、PCLまたはPCLを含むコポリマーを含まない支持体組成物は、接着剤と支持体との界面の支持体表面にテクスチャーを導入する、またはラミネート-プレスプロトコル(表9)などの製造上の調整を行ったとしても、一般に接着剤層に十分に接着しないことに我々は注目する。たとえば、純粋なPDX裏打ち(ポリマー2)およびLG824s(ポリマー5)裏打ちでは、接着剤と支持体側の界面でのテクスチャリングの導入に関係なく、テープを曲げると接着剤層の剥離が発生する(表9)。一方、ポリマーブレンドでは、他のほぼすべてのポリマーと相溶性がないにもかかわらず、PCL(例:ポリマーブレンド3)および/またはPCL含有コポリマー(例:ポリマーブレンド6)が軟化温度の低下(表8)、製造方法に関係なく接着剤層の相溶性(表9)、および疎水性による強度保持(表10)に寄与する。
【0373】
【0374】
*接着剤と支持側の適合性は、0.5x1cm2の骨テープ片を半分に折り、次のように採点する180°柔軟性テストに基づいて定性的に評価した:0=接着剤が支持側に接着しない。1=接着剤が支持側から簡単に剥がれる。2=接着剤が裏地から剥がれる。3=ピッキングすると接着剤が裏打ちから剥がれる。4=接着剤は裂けるが、支持側から剥離しない。5=接着層は支持体側から分離できない。
【0375】
**骨テープ装置の性能は、超音波加熱システムを使用して、クエン酸を加えた馬の血液で覆われたウサギの頬骨に適用することによって定性的に評価されました。スコア0=骨への接着なし、5=良好な適用と骨への接着、および良好な引張強度または良好な剥離強度。10=望ましい接着力、耐剥離性、引張強度である。
【0376】
表10:生体内での長期使用に対する有用性を評価するため、生理学的条件下での7週間にわたる選択されたPCL含有ポリマーブレンドの機械的特性。引張試験片はレーザーカッターを使用して約0.5cmに切断し、修正ASTMD882-18規格を使用して評価した。
【表10】
【0377】
<<例15.骨テープの性能に対する接着剤と裏打ちの厚さの影響>>
骨テープは、さまざまな裏打ちの厚さと接着剤の厚さを使用して製造できる。接着剤ブレンド9cとポリマーブレンド6裏打ちを使用し、接着剤とバッキングの厚さのいくつかの組み合わせを使用して、積層装置F-2の性能に対する部材の厚さの影響を調べました。2.5Jのエネルギーに設定された70kHzの超音波溶接機を使用して、装置F-2を、生体内での適用を模倣するために適用前にクエン酸を加えた馬の血液で覆ったウサギの頬骨に適用した。テープの性能は、テープの接着力、貼りやすさ、剥離強度、および引張強度を見て定性的に評価した。スコア0=骨への接着なし、5=良好な適用および骨への接着、および良好な引張強度または良好な剥離強度、10=望ましい接着力、耐剥離性、引張強さである。
【0378】
【0379】
表11は、非常に厚い支持体側ポリマー(0.31mm)がテープの柔軟性と性能を制限する一方、非常に薄い裏材もテープの性能を制限するものの、柔軟性が大幅に改善されることを示している。一方、接着層の厚さを薄くすると、同様の性能スコアを維持しながらテープの柔軟性が向上する。したがって、より薄い接着剤および/または支持側層を備えたテープは、最大の柔軟性を必要とする用途により適しており、一方、より厚い支持側層を備えたテープは、テープに最大の安定性/強度補強を提供する。
【0380】
理論に束縛されるものではないが、支持体層が薄いか接着剤が薄い場合、支持体ポリマーから接着剤層へのエネルギー伝達が増加する結果、剥離が向上する。支持層が最も薄い場合、支持層に失われる熱エネルギーは最小になる。接着層が最も薄い場合、エネルギー伝達効率に関係なく、接着剤を溶かすのに必要なエネルギーは最小限になる。
【0381】
<<例16.骨テープ装置の性能に対するエネルギー印加の影響>>
例12~15に示すように、最適な装置特性と性能を得るには、充填剤および/または微粒子添加剤を含む接着剤成分の選択と、支持体側成分の選択を慎重かつ重要に調整する必要がある。ただし、装置の部材の選択に加えて、骨テープの性能は適用(貼付)方法にも関係する。表12は、骨テープの適用におけるさまざまなアプリケーター(塗布、貼付装置)の成功を示している。表13は、骨への超音波溶接中に得られる温度プロファイルを示している。表14~15は、希望の骨テープ性能を達成するための溶接時間や溶接力などの外科的流動特性に対する超音波装置の周波数の影響を示している。表16は骨テープの組成と厚さに対する超音波印加の依存性を示し、表17はさまざまな貼付スタイルでの溶接機の使用可能性を示す。特に記載のない限り、骨テープの貼付は、生体内での貼付を模倣するために、貼付前にクエン酸塩を加えた馬の血液で覆われたウサギの頬骨に70kHzの超音波溶接機を使用して実行され、テープの性能はテープの粘着力、貼りやすさ、剥離強度、および引張強度を見て定性的に評価した。スコア0=骨への接着なし、5=良好な適用および骨への接着、および良好な引張強度または良好な剥離強度、10=望ましい接着力、耐剥離性、引張強さである。
【0382】
表12:骨テープのパフォーマンスに対するエネルギー源の影響
ボーンテープ装置F-2をさまざまな熱源を使用して頬骨に貼付し、その後手動で骨を引き剥がして癒着の程度を測定し、1~5の定性スケールで評価した。1=いかなる状況でも癒着なし。5=優れた接着性と貼付/塗布性。すべての場合において、加熱したボーンテープを基材に加工/押し付けることによって貼り付けた。各方法の可能性を最大限に評価するために、骨テープの破損が発生するまで、適用エネルギー(超音波)、時間(ヒートガン、ヒートランプ、UVランプ)、または温度(はんだごて)を順次増加させた。
【0383】
【0384】
表12は、調査した他のエネルギー源と比較して、超音波エネルギーを適用した場合の骨テープが優れた性能を示している。理論に束縛されるものではないが、この成功は、テープ貼り付け中に現場で支持ポリマー層に対して接着剤層を選択的に溶融または軟化させる超音波溶接機の能力によるものであると考えられる。この選択的なその場での溶融は、適用時に加えられた溶接力の下で超音波の一定の振動力と組み合わされて、流体を移動させると同時に接着剤層を骨孔内にさらに押し込むように作用し、その結果、観察された優れた接着特性がもたらされた。逆に、他の方法では環境への熱エネルギーの無差別的な損失が発生し、テープ形状の適合性および/または接着剤の粘着性を高めるために、より長い加熱時間および/またはより高い加熱温度が必要であった。より長い加熱時間および/またはより高い加熱温度に加えて、環境への熱エネルギーの無差別的な損失は、貼付中の過度の/集中した加熱によって支持ポリマー層の損傷および組織損傷の両方の機会の増大をもたらした。したがって、これらの代替方法を使用してテープを貼り付ける場合、テープに「影」が発生するのを避け、火傷を避けるために、貼り付け前にテープを加熱する必要があり、その結果、外科的ワークフローのプロセスや時間が最適化されなかった。一方、超音波溶接機は、比較的短い溶接サイクル(溶接ごとに1秒未満)で望ましい接着力を示し、7J未満の溶接エネルギーでは、組織の損傷や壊死を引き起こす可能性のある溶接温度に到達したり維持したりすることはなかった(表13)。
ただし、これらの実験で使用した70kHz溶接機の場合、7Jのエネルギー設定は通常高すぎ、骨テープ貼付の際に骨に損傷が発生した。これは、溶接機と接触した骨の漂白として明らかであり、適用中に骨が過度に加熱されて脱水症状を引き起こしたことが原因であると考えられた。しかし、これらの条件下では骨の焦げは観察されず、溶接工が適用中に健康な骨の熱壊死を引き起こす温度に到達および/または維持しなかったことを示している。さらに、表13に示すように、このような過酷な条件下での熱曝露の深刻さは、連続する溶接間の時間を長くすることで軽減できる。
【0385】
表13:70kHz超音波溶接機を使用して、濡れた頬骨の骨にボーンテープ装置F-2を適用する際の超音波溶接温度プロファイル。
貼付部位近くの骨の温度プロファイルを、先端が細いタイプE熱電対を使用してexvivoで評価した。これを達成するために、ウサギの死骸から頬骨の半分(切断されたもの)を切り出し、熱電対の先端(直径0.47mm)を収容するために小さな穴(直径0.69mm)を端に開けた。骨の厚さが2.28mmであるとすると、骨表面から熱電対までの公称距離は約0.9mmである。骨を脱イオン水で湿らせた後、溶接ごとに2.5Jまたは7Jを使用して、BoneTapeDeviceF-2をプローブ先端の真上で頬骨に貼付した。温度プロファイルを、4つの条件、すなわち単一の溶接、5つの連続した溶接、10つの連続した溶接、および5秒間隔の5つの溶接、のそれぞれについて1秒間隔で記録した。
【0386】
【0387】
表14および15は、骨テープの外科手術ワークフロー適用の超音波溶接パラメータに対する依存性をさらに説明する。
【0388】
表14:外科手術のワークフロー(溶接時間および/または溶接力)の超音波周波数への依存性;invitroでの概念実証。
断面積と表面仕上げ(ローレット加工など)が一致したホーンを使用して、BoneTapeDeviceD-12を鋸骨(Sawbones)に適用する35kHzおよび70kHzの超音波溶接の能力を調べた。超音波ホーンは、溶接部分を上にして上下逆に取り付け、リニアガイドと校正質量を使用して0.5N~5.5Nの溶接力を加えた。溶接部の品質、主に接着力と裏当ての損傷を定性的に評価した。
【0389】
【0390】
表15:35kHzおよび70kHzでの超音波溶接を使用した湿った骨への骨テープ装置F-2の適用を生体外で調査した。断面積と表面仕上げが一致したホーンを使用して、35kHzまたは70kHzの超音波溶接ユニットを使用して、骨テープ装置F-2をウサギの頬骨にフリーハンドで貼り付けた。
【0391】
【0392】
表14は、高周波溶接機が、1.0N~5.5Nの任意の溶接力で、わずか1.5Jの超音波エネルギーで、骨テープを鋸骨にうまく貼付できたことを示す。対照的に、低周波溶接機は、溶接力に大幅に依存していた。これは、低周波溶接機はユーザーのスキル(つまり、溶接ごとに加えられる力)に大きく依存するのに対し、高周波溶接機はユーザーごとの加える力の違いに関係なく、望ましい貼付を提供することを示している。
【0393】
表14と表15の両方は、高周波ユニットと比較して、低周波ユニットの方がより多くのエネルギーを必要とし、したがって溶接を完了するのに実質的に長い時間を必要としたことも示している。さらに、より低周波数ユニットで実行された溶接は、一般に、70kHzのユニットで作成された溶接よりも定性的に弱かった。接着剤の溶融はエネルギーの供給速度、つまりその電力に直接関係しているため、この結果は、所定の電力制限を下回ると、所定の溶接サイクル内で接着剤層を溶かすのに十分なエネルギーが供給されないことを示している。出力が高すぎると、溶接サイクル中に伝達されるエネルギーが多すぎ、その結果、支持ポリマーが溶けて焼き切れてしまう。全体として、これらの結果は、高周波溶接機の方が外科的ワークフローの改善に有利であり、骨テープを骨に所望の溶接するために必要な溶接時間および/または溶接力を削減する必要があることを示している。
【0394】
上記の結果は、高い溶接パワーに耐える骨テープの能力が手順の実用性の向上に関連していることも示している。表16は、骨テープの組成上の特徴が、高い溶接エネルギー、つまり高い溶接電力に耐える能力にどのような影響を与えるかを示している。
【0395】
【0396】
表16は、骨テープのエネルギー耐性が一般に接着剤および/または支持ポリマー層の増加に伴って増加することを示している。所定の支持ポリマーの厚さの場合、接着剤の厚さに関係なく、エネルギーを増やすと一般にテープの性能、特に剥離スコアがピークエネルギーまで向上し、その後、エネルギーがさらに増加すると、テープの総合スコアが低下する。性能の向上は接着剤層が薄いほど顕著であり、ピークエネルギーも接着剤層が厚い場合に比べて薄い方が早く発生する。つまり、溶ける接着剤が少ないと、装置を骨に固定するために必要なエネルギーが少ない。
【0397】
さらに、表16は、最適未満のエネルギーでも優れた接着力と引張強度が達成できたが、最大の剥離はピークエネルギーでのみ得られたことを示している。これは、接着剤自体が完全に流動性になる必要がなく、接着剤が骨表面に適合して接触するように十分に軟化すると、骨表面と強い引張結合を形成できることを示している。ただし、最適な剥離強度を達成するには、接着剤が完全に溶けて流動性が得られ、それによって接着剤が骨の細孔に流れ込んだり、骨の表面から液体が除去されたりする必要がある。したがって、剥離強度は、機械的結合と物理的結合の両方の現れであると考えられる。エネルギーが高すぎると、接着剤が流動化しすぎて骨テープから流れ出て失われる可能性がある。より薄い接着剤層を含む骨テープで観察されたポストピークスコアの低下は、これを裏付けている。
【0398】
表17は、さまざまな貼付スタイルでのさまざまなホーン形状を備えた超音波溶接機の使用可能性を示している。
【0399】
表17:ホーンの形状が手術ワークフローと骨テープ装置F-2のパフォーマンスに与える影響
すべての場合において、骨テープ装置は、2.5Jのさまざまなホーン形状を備えた70kHz溶接機を使用して湿った頬骨に貼付され、その後、癒着の程度を測定するために手動で骨から引き剥がされ、次の1~5の定性スケールで評価された。ここで、1=いかなる状況下でも接着性がなく、5=優れた接着性及び適用性を有する。スタンプ法は、貼り付け面に垂直な一連の連続溶接鋲を介して溶接機を使用してボーンテープを貼り付け、表面全体を覆うことを指す。一方、ペイント法は、描画/ブラシストロークの動きでテープ表面全体を溶接機で連続的にスライドさせることを指す。
【0400】
表17に記載されているホーンテクスチャは次のように定義される。
【0401】
- 細かい:個々のテクスチャ要素が均等な間隔で配置され、最大0.127mmの均一な深さがあり、これはテープの総厚の30~80%に相当する。
- 粗い:個々のテクスチャ要素は均等な間隔で配置され、≧0.381mmの均一な深さがあり、これはテープの総厚の80~400%に相当する。
- サンドブラスト加工:個々のテクスチャ要素は不均一な形状と分布を持ち、不均一な深さはテープ全体の厚さの30%未満である。
- スムーズ:ホーン形状の先端にホーンテクスチャがない。
- 丸い:鋭い角のない滑らかなホーン。
【0402】
【0403】
示されるように、骨テープはさまざまな方法および/またはホーンの形状を使用して適切に貼付できる。一部の形状は特定の技術によっては骨テープの貼り付けには不向きであり、たとえば、粗いホーンをペイント動作で使用するとテープや骨に大きな損傷を与えるが、細かい形状などの他の形状はどのユーザーにも好ましい技術である。一般に、ペイント技術は、超音波溶接機を表面に対して垂直に保持して付与/印加する必要があるため、学習曲線(learning curve)が急になる。ただし、スタンピングにより、取り付け中にアンカーBTへの最初の溶接点が容易になり、より望ましい外科的ワークフローが実現する。全体として、これらの結果は、ユーザーのテクニックの変化に対する骨テープの適用の柔軟性、したがって処置の有用性の向上を示している。
【0404】
他の実施形態
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、さらなる修正が可能であり、一般に本発明の原理に従った本発明のあらゆる変形、使用、または適応を網羅し、本発明が属する技術分野における公知または慣用の範囲内であり、本明細書で先に述べた本質的特徴に適用され得る本開示からの逸脱をも含むことを意図していることが理解されるであろう。
【国際調査報告】