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特表2024-521318少なくとも2つのアンテナユニット間の距離を評価するための方法及び構成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】少なくとも2つのアンテナユニット間の距離を評価するための方法及び構成
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/84 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
G01S13/84
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572741
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 FI2022050363
(87)【国際公開番号】W WO2022258883
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】20215682
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】323011556
【氏名又は名称】コホエレント オーユー
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】レッパネン カリ
(72)【発明者】
【氏名】サルミ ユッシ
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB15
5J070AC02
5J070AD05
5J070AD16
5J070BC08
(57)【要約】
アンテナユニット間で異なる円偏波を有する少なくとも2つの信号の双方向伝送により、少なくとも第1のアンテナユニットと第2のアンテナユニットとの間の距離を評価する方法。位相情報が決定され、少なくとも第1の位相和と第2の位相和を決定するために使用される。これらの位相和は、第1のアンテナユニットと第2のアンテナユニットとの間の距離を示す少なくとも1つの距離指標の決定に利用される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1のアンテナユニットと第2のアンテナユニットとの間の距離を評価する方法であって、
・ 前記第1のアンテナユニットを通じて、第1の円偏波を有する第1の信号を送信することと;
・ 前記第2のアンテナユニットで前記第1の信号を受信することと;
・ 前記第2のアンテナユニットが関連する無線ユニットのローカル発振器に対する、前記受信した第1の信号の位相を示す、第1の位相情報を決定することと;
・ 前記第2のアンテナユニットを通じて、前記第1の信号に本質的に一致する第1の応答信号を送信することと;
・ 前記第1のアンテナユニットで前記第1の応答信号を受信することと;
・ 前記第1のアンテナユニットが関連する無線ユニットのローカル発振器に対する、前記受信した第1の応答信号の位相を示す、第1の応答位相情報を決定することと;
・ 前記第1の位相情報と前記第1の応答位相情報の和を示す第1の位相和を決定することと;
・ 前記第1のアンテナユニット又は前記第の2アンテナユニットの一方を通じて、前記第1の円偏波とは反対の第2の円偏波を有する第2の信号を送信することと;
・ 前記第1のアンテナユニット又は前記第2のアンテナユニットの他方で前記第2の信号を受信することと;
・ 前記第2の信号を受信したアンテナユニットが関連する無線ユニットのローカル発振器に対する、前記受信した第2の信号の位相を示す、第2の位相情報を決定することと;
・ 前記第2の信号を送信していない、前記第1のアンテナユニット又は前記第2のアンテナユニットの前記他方を通じて、前記第2の信号に本質的に一致する第2の応答信号を送信することと;
・ 前記第2の信号を送信したアンテナユニットで前記第2の応答信号を受信することと;
・ 前記第2の応答信号を受信したアンテナユニットが関連する無線ユニットのローカル発振器に対する、前記受信した第2の応答信号の位相を示す、第2の応答位相情報を決定することと;
・ 前記第2の位相情報と前記第2の応答位相情報の和を示す第2の位相和を決定することと;
・ 少なくとも前記第1の位相和と前記第2の位相和とに基づいて、前記第1のアンテナユニットと前記第2のアンテナユニットとの間の距離を示す少なくとも1つの距離指標を決定することと;
を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの距離指標は、第1の位相和と第2の位相和との和を示す第1の距離変数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のアンテナユニット及び前記第2のアンテナユニットの各々の座標系に関する信号データの方向を取得することと;
前記信号データの方向を、前記少なくとも1つの距離指標の決定において利用することと;
を含む、請求項1又は2に記載の方法であって、前記信号データの方向を前記少なくとも1つの距離指標の決定において利用することは、アンテナ位相パターン較正データを取得し、アンテナ位相応答を補間することを含んでもよい、方法。
【請求項4】
前記信号データの方向を決定するために、前記第1のアンテナユニット及び/又は前記第2のアンテナユニットに備えられる少なくとも3つの異なるアンテナ素子によって、送信された信号が受信される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記位相情報、前記位相和及び/又は前記距離指標は、前記第1のアンテナユニット及び/又は前記第2のアンテナユニットの基準点を基準として決定される、請求項1から4のいずれかに記載の方法であって、
前記基準点は、各アンテナユニットが有する2つ以上のアンテナ素子の位置に関する幾何学的中心であってアンテナユニット平面上の幾何学的中心である、方法。
【請求項6】
信号の送信中に送信アンテナユニットで受信された、前記第1の偏波及び前記第2の偏波についての自己測定信号の位相を示す自己測定データを決定することと、前記自己測定データを、少なくとも1つの距離指標を決定する際に使用さすることとを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの距離指標は、前記第1の位相和と前記第2の位相和との差を示す回転変数を含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法であって、前記方法は、前記回転変数に基づいて前記第1のアンテナユニットと前記第2のアンテナユニットとの間の回転角度を決定することを含んでもよい、方法。
【請求項8】
前記回転変数は少なくとも一度決定されてもよく、その後、前記第1のアンテナユニットと前記第2のアンテナユニットとの間の回転角度の追跡において利用され、前記方法は、後続の第1の位相和を決定するために、後続の第1の信号と後続の第1の応答信号を送信することを含み、前記回転変数は、前記第1のアンテナユニットと前記第2のアンテナユニットとの間の距離を追跡するべく、前記第1のアンテナユニットと前記第2のアンテナユニットとの間の前記回転角度を補償するために使用される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも第1のアンテナユニット及び第2のアンテナユニットの各々は、所定のタイムスロット内で、所定の順序で、少なくとも1つの信号を送信する、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第1のアンテナユニットはマスターユニットであり、残りの少なくとも前記第2のアンテナユニットはスレーブユニットであり、前記マスターユニットは前記第1の信号を送信するように構成され、前記マスターユニットは、各測定サイクルにおける前記第1の信号の送信の前に、無線チャネルが送信のために空いているかどうかをチェックし、前記無線チャネルが空いている場合は少なくとも第1の信号を送信し、前記無線チャネルが空いていない場合は前記送信を実行しないように構成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記スレーブユニットは、所定の測定サイクルにおける信号の送信の前に、アンテナユニットの所定の順序における前のアンテナユニットが前記所定の測定サイクルにおいて信号を送信したか否かを判定し、送信したと判定した場合、前記スレーブユニットの信号を送信し、前記前のアンテナユニットが信号を送信していないと判定した場合、前記スレーブユニットの信号を送信しないように構成される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の方法であって、複数のアンテナユニット間の少なくとも2つの距離を評価することを含み、前記評価することは少なくとも、
・ 前記第1の信号を少なくとも第3のアンテナユニットで受信することと;
・ 前記第3のアンテナユニットを通じて第1の応答信号を送信し、少なくとも前記第1のアンテナユニットで当該第1の応答信号を受信することと;
・ 前記第2の信号を少なくとも前記第3のアンテナユニットで受信することと;
・ 前記第3のアンテナユニットを通じて第2の応答信号を送信し、少なくとも前記第1のアンテナユニットで当該第2の応答信号を受信することと;
によって、少なくとも第1の偏波を有する信号と第2の偏波を有する信号の双方向伝送を行った、少なくとも2組のアンテナユニットを得ることを含み、更に、
・ アンテナユニットの各組のそれぞれについて位相情報を決定することと;
・ アンテナユニットの各組のそれぞれについて、第1の位相和及び第2の位相和を決定することと;
・ アンテナユニットの各組のそれぞれについて、アンテナユニット間の距離を示す少なくとも1つの距離指標を決定することと;
を含む、方法。
【請求項13】
少なくとも第1のアンテナユニットと第2のアンテナユニットとの間の距離を評価するための構成であって、前記構成は第1の無線ユニットと関連付けられた第1のアンテナユニットと、第2の無線ユニットと関連付けられた第2のアンテナユニットと、プロセッサとを少なくとも備え、前記構成は、
・ 前記第1のアンテナユニットを通じて、第1の円偏波を有する第1の信号を送信することと;
・ 前記第2のアンテナユニットで前記第1の信号を受信することと;
・ 前記第2のアンテナユニットが関連する無線ユニットのローカル発振器に対する、前記受信した第1の信号の位相を示す、第1の位相情報を決定することと;
・ 前記第2のアンテナユニットを通じて、前記第1の信号に本質的に一致する第1の応答信号を送信することと;
・ 前記第1のアンテナユニットで前記第1の応答信号を受信することと;
・ 前記第1のアンテナユニットが関連する無線ユニットのローカル発振器に対する、前記受信した第1の応答信号の位相を示す、第1の応答位相情報を決定することと;
・ 前記第1の位相情報と前記第1の応答位相情報の和を示す第1の位相和を決定することと;
・ 前記第1のアンテナユニット又は前記第の2アンテナユニットの一方を通じて前記第1の円偏波とは反対の第2の円偏波を有する第2の信号を送信することと;
・ 前記第1のアンテナユニット又は前記第2のアンテナユニットの他方で前記第2の信号を受信することと;
・ 前記第2の信号を受信したアンテナユニットが関連する無線ユニットのローカル発振器に対する、前記受信した第2の信号の位相を示す、第2の位相情報を決定することと;
・ 前記第2の信号を送信していない、前記第1のアンテナユニット又は前記第2のアンテナユニットの前記他方を通じて、前記第2の信号に本質的に一致する第2の応答信号を送信することと;
・ 前記第2の信号を送信したアンテナユニットで前記第2の応答信号を受信することと;
・ 前記第2の応答信号を受信したアンテナユニットが関連する無線ユニットのローカル発振器に対する、前記受信した第2の応答信号の位相を示す、第2の応答位相情報を決定することと;
・ 前記第2の位相情報と前記第2の応答位相情報の和を示す第2の位相和を決定することと;
・ 少なくとも前記第1の位相和と前記第2の位相和とに基づいて、前記第1のアンテナユニットと前記第2のアンテナユニットとの間の距離を示す少なくとも1つの距離指標を決定することと;
を行うように構成される、構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、無線通信及びローカリゼーションに関する。より具体的には、本発明は、アンテナユニット間で異なる円偏波を有する少なくとも2つの信号の双方向伝送により、少なくとも第1のアンテナユニットと第2のアンテナユニットとの間の距離を評価することに関する。
【発明の背景】
【0002】
第1(送信)装置から第2(受信)装置への無線信号などの信号伝送を含むシステム及び方法は、多くの用途で使用されており、例えば追跡や、距離測定が利用される様々な目的などに私用されている。システムによっては、第1及び第2のデバイスを送信機及び受信機として交互に使用することにより、2つのデバイス間の距離を評価することが可能な場合がある。この場合、受信装置によって受信される1つ又は複数の送信信号の位相が決定され、距離測定に使用されることがある。しかし、このような測定には多くの複雑な問題があり、装置間の距離に関する正確な結果を得るには、手間がかかるか、実現不可能な場合がある。
【0003】
一つの問題は、信号の反射に関連している。受信装置に到達する、他の物体からの送信信号の反射は、送信装置から直接受信した信号と区別できない場合がある。受信装置のローカル発振器に対する受信信号の位相を決定し、決定した位相から距離又は位相長を決定する場合、決定した距離又は位相長は反射信号の影響を受け、誤る可能性がある。元の送信信号と反射信号を区別することは、反射が元の信号の方向に近い方向で起こる場合に特に困難である。このような場合、反射信号は元の信号とほぼ同じ遅延を持つため、空間的又は時間的信号処理において、反射信号は元の信号と実質的に区別できなくなる。しかし、極めて高い距離測定精度が求められる用途では、このような信号位相の歪みは有害である。
【0004】
反射の影響を低減又は除去するために、偏波信号(Polarized signal)を伝送に使用することができる。円偏波信号(Circularly polarized signal)は、金属表面からの反射信号の影響を低減できる点で特に有利であることが知られている。金属表面は、直線偏波信号(Linearly polarized signal)を使用した場合に最も問題となる反射面である金属面(又は同様の反射係数を持つ他の面)からの反射は、本質的に信号の偏波を変化させるため、受信アンテナが本質的に元の信号の円偏波の信号のみを受信するように構成されている場合、反射信号は、受信されないか、少なくとも強く減衰する。また、円偏波信号は、反射信号の偏波が完全な円偏波でなくても、他の種類の面による反射の影響を低減することができる。
【0005】
しかし、円偏波信号の使用にはいくつかの問題もある。アンテナユニット間の視線(Line-of-Sight,LOS)軸に沿った回転は、位相測定に影響を与え、従ってアンテナユニット間の距離の決定に影響を与える。例えば測地GNSSでは、送信機と受信機の間のLOS軸に沿った回転の問題は、回転角と位置座標の合同解(Joint Solution)と、近接する基準局に対する微分とを用いることで、解消を試みている。しかしこの場合、問題を解くには多数の衛星が必要となり、移動する無線装置の位置を追跡するために少数のアンテナユニットしか利用できない地上システムでは、この解法は非現実的となる。また、基準アンテナは地上ナビゲーションには非実用的かもしれない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、従来技術における問題の少なくとも一部を軽減することである。本発明の捉え方の一つによれば、少なくとも第1のアンテナユニットと第2のアンテナユニットとの間の距離を評価する方法が提供される。この方法は、少なくとも、
・ 前記第1のアンテナユニットを通じて、第1の円偏波を有する第1の信号を送信することと;
・ 前記第2のアンテナユニットで前記第1の信号を受信することと;
・ 前記第2のアンテナユニットが関連する無線ユニットのローカル発振器に対する、前記受信した第1の信号の位相を示す、第1の位相情報を決定することと;
・ 前記第2のアンテナユニットを通じて、前記第1の信号に本質的に一致する第1の応答信号を送信することと;
・ 前記第1のアンテナユニットで前記第1の応答信号を受信することと;
・ 前記第1のアンテナユニットが関連する無線ユニットのローカル発振器に対する、前記受信した第1の応答信号の位相を示す、第1の応答位相情報を決定することと;
・ 前記第1の位相情報と前記第1の応答位相情報の和を示す第1の位相和を決定することと;
・ 前記第1のアンテナユニット又は前記第の2アンテナユニットの一方を通じて、前記第1の円偏波とは反対の第2の円偏波を有する第2の信号を送信することと;
・ 前記第1のアンテナユニット又は前記第2のアンテナユニットの他方で前記第2の信号を受信することと;
・ 前記第2の信号を受信したアンテナユニットが関連する無線ユニットのローカル発振器に対する、前記受信した第2の信号の位相を示す、第2の位相情報を決定することと;
・ 前記第2の信号を送信していない、前記第1のアンテナユニット又は前記第2のアンテナユニットの前記他方を通じて、前記第2の信号に本質的に一致する第2の応答信号を送信することと;
・ 前記第2の信号を送信したアンテナユニットで前記第2の応答信号を受信することと;
・ 前記第2の応答信号を受信したアンテナユニットが関連する無線ユニットのローカル発振器に対する、前記受信した第2の応答信号の位相を示す、第2の応答位相情報を決定することと;
・ 前記第2の位相情報と前記第2の応答位相情報の和を示す第2の位相和を決定することと;
・ 少なくとも前記第1の位相和と前記第2の位相和とに基づいて、前記第1のアンテナユニットと前記第2のアンテナユニットとの間の距離を示す少なくとも1つの距離指標を決定することと;
を含む。
【0007】
別の捉え方によれば、本発明は、独立請求項13に定義されるような構成にも関する。
【0008】
本発明は、決定した位相情報に基づいて、アンテナユニット間の距離を示す少なくとも1つの距離指標を高精度で決定することを可能にする。決定される距離指標の精度は、第1のアンテナユニットと第2のアンテナユニットとの間の距離をサブミリメートルの精度で評価又は決定し得るように十分に高くなりうる。ただし絶対的な距離測定精度は、メートル単位で波長に変換されたキャリア周波数(搬送波周波数)における位相測定の精度に依存する。本発明は、位相情報の決定と、それに続く1つ又は複数の距離指標を介する操作に関するものであり、それによって高精度の絶対距離を決定することができる。しかし、絶対距離の決定は、特許請求の範囲に特定される発明では構成要件とはされない。そのような絶対距離測定値を得るために使用され得る様々な方法は、本明細書中では詳細に論じられない。
【0009】
本発明は、費用対効果の高いアンテナユニットを使用して高精度の測定を可能にする。このソリューションにより、円偏波アンテナユニット及び円偏波信号を使用して、位相測定における反射の影響を軽減し、アンテナユニット間の回転と、場合によってはアンテナ位相中心の変化(これは信号方向の関数である)とを補正することができる。本発明によって可能になるこれらの補正や補償がなければ、距離測定にセンチメートル波無線が使用される場合、決定される距離の精度は、せいぜいセンチメートルのレベルであろう。
【0010】
本発明は、1つ又は複数の距離を評価又は監視するあらゆる用途に有用でありうる。本発明による構成は、例えば、物体を追跡するためのシステム、又は他の位置追跡、屋内測位システムなどに利用されてもよい。物体の追跡は、例えば、基準位置に関連付けられた第1のアンテナユニットと、物体に関連付けられた又は物体に結合された第2のアンテナユニットとの間の距離の変化を追跡することによって、遂行されてもよい。
【0011】
利用されうるアンテナユニットは、例えば測地GNSS測定で利用されるものよりも低品質である可能性がある。測地GNSS測定で利用されるようなアンテナユニットは、位相中心変動の問題を排除するように選択される、そのような高品質のアンテナユニットは高価である。しかし本発明では、より簡単で安価な円偏波アンテナユニットを使用することができる。従って、本発明による構成は、安価に実施及び使用することができる。
【0012】
本発明により、アンテナユニット(又は少なくともそれらの基準点)間の距離指標の決定において、(場合によってはその後に決定される距離において、)LOS軸に沿った第1のアンテナユニットと第2のアンテナユニットとの間の回転の影響が補償されるか又は除去されうる。これは、補償がない場合よりも距離のより正確な評価につながる。第1のアンテナユニットと第2のアンテナユニットとの間の距離に関して、アンテナユニット間の距離を示す位相長を決定するために使用され得る距離指標を通じて、距離が決定又は評価され得ることが理解されてもよい。距離の評価は、必ずしも絶対距離が決定されることを意味しないが、当業者には理解されるように、アンテナユニット間の全距離の波長の既知の小数部分を与える位相長の知識を通じて距離が評価されてもよい。アンテナユニット間の絶対的な完全距離の決定は、その後、例えば整数アンビギュイティの更なる計算を伴う可能性があるが、本明細書では説明しない。
【0013】
また、第1及び第2のアンテナユニットのみを用いて、アンテナユニット間の距離を評価することが可能な場合がある。すなわち、リンク距離又は基線距離を評価するアンテナユニット間のみで、満足できる精度で距離(又は少なくとも距離指標)を評価するのに十分な場合がある。別個の基準アンテナユニットや合同解の考慮は必要とされない場合がある。(合同解では、複数の衛星又はアンテナユニットが観測され、そこから得られたデータに適合する解が決定される。)実施形態によっては、アンテナユニットの標準アンテナパターンに関する較正データが得られる。しかしこのデータは、以前に決定されたデータであってもよく、また、第1及び/又は第2のアンテナユニットと構造が類似しているアンテナユニットに関するデータのみを必要としてもよい。
【0014】
前記少なくとも1つの距離指標は、第1の位相和と第2の位相和との和を示す第1の距離変数を有してもよい。この第1の距離変数を使用することにより、前記距離指標の決定において、LOS軸に沿った第1のアンテナユニットと第2のアンテナユニットとの間の回転を排除することが可能であり得る。そして、前記距離指標及び(求められ得る)距離は、前記回転とは完全に独立して決定されてもよい。
【0015】
第1及び第2のアンテナユニットの各々の座標系に関する信号データの方向が取得されてもよい。当該信号データの方向は、前記少なくとも1つの距離指標の決定において利用されてもよい。特に実施形態によっては、アンテナ位相パターン較正データを取得し、アンテナ位相応答を補間することによって、前記方向データを前記少なくとも1つの距離指標の決定に利用してもよい。
【0016】
送信された信号は、信号データの方向を決定するために、第1のアンテナユニット及び/又は第2のアンテナユニットに備えられる少なくとも3つの異なるアンテナ素子で受信されてもよい。
【0017】
前記方法の実施形態は、信号の送信中に送信アンテナユニットで受信された、前記第1の偏波及び前記第2の偏波についての自己測定信号の位相を示す自己測定データを決定することを含んでもよい。前記自己測定データは、少なくとも1つの距離指標を決定する際に使用されてもよい。
【0018】
前記少なくとも1つの距離指標は、前記第1の位相和と前記第2の位相和との差を示す回転変数を含んでもよい。そして前記方法は、実施形態によっては、前記回転変数に基づいて前記第1のアンテナユニットと前記第2のアンテナユニットとの間の回転角度を決定することを含んでもよい。従って、前記回転角度を明示的に決定することも可能である。前記回転変数は少なくとも一度決定されてもよく、その後、第1のアンテナユニットと第2のアンテナユニットとの間の回転角度の追跡において利用されてもよい。後続の第1の信号及び第1の応答信号が、前記第1のアンテナユニットと前記第2のアンテナユニットとの間の距離を追跡するための後続の第1の位相和を決定するために送信されてもよい。従って、第2偏波を有する信号の送信なしに、単一の偏波測定(polarization measurement)で、高いレートで距離指標を追跡することが可能であり、第2偏波も含む信号の送信を行う場合であっても、低いレートで行われるだけでもよい。
【0019】
前記少なくとも第1のアンテナユニット及び第2のアンテナユニットの各々は、所定のタイムスロット内で、好ましくは所定の順序で、少なくとも1つの信号を送信してもよい。実施形態によっては、前記第1のアンテナユニットはマスターユニットであってもよく、残りの少なくとも前記第2のアンテナユニットはスレーブユニットであってもよい。前記マスターユニットは前記第1の信号を送信するように構成されてもよく、ここで前記マスターユニットは、各測定サイクルにおける前記第1の信号の送信の前に、無線チャネルが送信のために空いているかどうかをチェックし、前記無線チャネルが空いている場合は少なくとも第1の信号を送信し、前記無線チャネルが空いていない場合は前記送信を実行しないように構成されてもよい。
【0020】
マスタ及びスレーブアンテナユニットを有する実施形態において、前記スレーブユニットは、所定の測定サイクルにおける信号の送信の前に、アンテナユニットの所定の順序における前のアンテナユニットが前記所定の測定サイクルにおいて信号を送信したか否かを判定し、送信したと判定した場合、前記スレーブユニットの信号を送信し、一方、前記前のアンテナユニットが信号を送信していないと判定した場合、前記スレーブユニットの信号を送信しないように構成されてもよい。
【0021】
実施形態によっては、前記第1の信号は、少なくとも第3のアンテナユニットでも受信されてもよい。前記第3のアンテナユニットはまた、第1の応答信号を送信するように構成されてもよく、この第1の応答信号は、少なくとも前記第1のアンテナユニット及び/又は前記第2のアンテナユニット、実施形態によっては、前記第1の応答信号を送信しなかった他の全てのアンテナユニットで受信されてもよい。前記第2の信号もまた、少なくとも前記第3のアンテナユニットで受信されてもよく、また前記第3のアンテナユニットは、第2の応答信号を送信するように構成されてもよい。この第2の応答信号は、少なくとも前記第1のアンテナユニット及び/又は第2のアンテナユニットで受信されてもよい。このように、少なくとも第1の偏波を有する信号と第2の偏波を有する信号の双方向伝送を行った、少なくとも2組のアンテナユニットが得られてもよい。各組のアンテナユニットについて、それぞれの位相情報と、第1の位相和と、第2の位相和とが決定されてもよい。従って、アンテナユニットの組のそれぞれについて、アンテナユニット間の距離を示す少なくとも1つの距離指標が決定されてもよく、また、アンテナユニット間の少なくとも2つの距離が評価されてもよい。
【0022】
本発明の特徴と考えられる新規な特徴は、特に添付の特許請求の範囲に記載されている。しかし、本発明に関する構成や動作方法、付加的な目的及び利点は、以下の特定の例示的実施形態の説明を添付の図面と共に読むことにより、最もよく理解できるであろう。
【0023】
当業者には理解できるように、方法の様々な実施形態に関して先に提示した考察は、装置の実施形態に柔軟に準用することができ、その逆もまた同様である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
次に、本発明を、添付図面に従う例示的な実施形態を参照してより詳細に説明する。
図1】本発明のある実施形態による例示的な構成を概略的に示す。
図2】本発明のある実施形態による、更に例示的な構成を示す。
図3】本発明のある実施形態による第1のアンテナユニットと第2のアンテナユニットを示す。また円偏波信号も示している。
図4】接続線に沿った第1及び第2のアンテナユニットの方向と、両アンテナユニットとそのLCPフィード及びRCPフィードの電気ベクトル基準方向を(単位ベクトルeとして)示している。
図5】第1無線ユニット、第1アンテナユニット、第2無線ユニット、第2アンテナユニットを示す。
図6】本発明の実施形態に利用され得る、ある例示的な無線ユニット及びアンテナユニットを示す。
図7】測定サイクルにおけるタイムスロットの割り当てを示す。
図8】本発明のある実施形態に従う方法のフローチャートである。
図9】本発明のある実施形態に従う方法に関するメッセージシーケンスチャートである。
【詳細説明】
【0025】
図1は、本発明の一実施形態による構成100を概略的に示している。この構成は、少なくとも第1のアンテナユニット(AU)104と第2のアンテナユニット106とを有し、これらはそれぞれ第1の無線ユニット108と第2の無線ユニット110に関連付けられる。アンテナユニット104、106は、無線ユニット108、110内に配置されてもよいし、例えばケーブルを介して無線ユニットに結合されてもよい。アンテナユニットは1つ又は複数のアンテナを有してもよく、図1には詳細に示されていない。例示的なアンテナユニットが、図3に更に詳細に描かれている。
【0026】
構成100はまた、第3の無線ユニット及び第4の無線ユニット等の他の数のアンテナユニット及び無線ユニットを有してもよい。アンテナユニットの各組は、アンテナユニット間で1つ又は複数の信号を送受信する。これらのアンテナユニットは、基線(Baseline)又は距離Dによって隔てられていると考えることができる。この基線又は距離Dは、本明細書では一般に、アンテナユニット間又は少なくともそれらの基準点間の距離を指す。なお基準点とは、アンテナ素子位置に関するアンテナユニット平面上の幾何学的中心などであり、例えば、信号の送信又は受信がその点で行われると単純化して考えることができる、アンテナユニット上の点である。ある構成では、アンテナユニットの各組間の距離を評価することができる。
【0027】
無線ユニット108、110は、少なくとも1つの処理装置102に結合されている。処理装置102は、無線ユニット108や110の外部にあるコントローラユニットであってもよく、マイクロプロセッサユニットとして実装されてもよいし、パーソナルコンピュータなどのより大きな計算装置の一部として提供されてもよい。しかし実施形態によっては、処理装置102は、無線ユニット108、110の中に配置されてもよいし、無線ユニット108、110の一部とみなされてもよい。
【0028】
処理装置102は、構成100が有する無線ユニット及び/又はアンテナユニットを制御するように構成されてもよい。処理装置102は、アンテナユニット104、106又は無線ユニット108、110からデータを受信してもよく、実行されるあらゆる情報決定において当該受信データを利用してもよい。処理装置102はまた、追加データを含む1つ又は複数のデータベース又はメモリユニットを有してもよく、又はそれらにアクセスしてもよい。このような追加データには、例えば、1つ又は複数のアンテナユニットタイプについての、複素(振幅及び位相)アンテナ利得パターンやアンテナ位相パターン較正データが含まれてもよい。
【0029】
追加的又は代替的に、処理装置102は、有線(例えばイーサネット)又は無線(例えばWLAN)方式で、構成100が有するアンテナユニット及び/又は無線ユニットからデータを受信するように構成されてもよい。図2は、処理装置102が無線ユニット108、110に無線で結合される構成100の実施形態を示す。処理装置102は、プロセッサアンテナユニット112に関連付けられてもよい。
【0030】
処理装置102及び無線ユニット108、110は、例えばPoE(Power-over-Ethernet)、直接主電源、バッテリー、ソーラーパネル、又は機械式発電機(風力タービンブレードなど)を使用して電力の供給を受けることができる。
【0031】
実施形態によっては、構成100において、例えばローカルに具備される処理装置であり得る処理装置102に加えて、離れた場所に配置される処理装置が利用されてもよい。または処理装置102は、ローカルな処理装置を必要としない遠隔処理装置として実装されてもよい。遠隔処理装置は、得られたデータのいずれかを受信し、例えば、構成100によって実施されるデータの決定の少なくとも一部を実施し得る。遠隔処理装置は、クラウドコンピューティングを介してアクセスされ得る処理装置を指してもよい。または遠隔処理装置は、例えば、複数の場所に構成される仮想プロセッサであって、並列処理手段を通じて本明細書で提示される処理を実行するように構成され得る仮想プロセッサを指してもよい。
【0032】
第1のアンテナユニット104は、少なくとも第1の円偏波を有する第1の信号を送信するように構成される。第1の円偏波は、例えば左旋円偏波(LCP)であってもよい。第1の信号及び後続の送信信号は無線周波数信号(RF信号)であってもよい。この信号は、変調されていないRF信号(すなわち正弦波)、所定の周波数範囲に亘るRF正弦波のコム(櫛状スペクトル構造)、又は任意の既知の(複素)シーケンスによって変調されたRF信号であってもよい。
【0033】
最初の信号とそれに続く信号の周波数は、例えば10GHz未満であってもよい。しかし、構成100はいかなる周波数範囲にも限定されない。例えば60GHzを利用してもよい。高周波の場合、無線ユニットのローカル発振器(局部発振器,LO)の品質が考慮されるべき因子となりうる。例えば60GHzの周波数を利用するためには、例えば5PPBの発振器で十分な品質が得られるだろう。
【0034】
少なくとも第1の信号、第1の応答信号、第2の信号、第2の応答信号に使用される周波数は、本質的に互いに一致すべきである。構成が後続の信号を送信するように構成されている場合(後続の時間にアンテナユニット間の距離を示す後続の位相情報を決定するため)、信号周波数は、例えば第1の信号に使用されたものと同じであってもよいし、周波数を変化させてもよい。
【0035】
第1の信号(及び構成100の無線ユニット又はアンテナユニットのいずれかによって送信される後続の信号)の持続時間(duration)は、例えば、アンテナユニット又は無線ユニット間の距離、測定サイクルの時間間隔、及び/又は無線ユニット108、110が経路損失が備えるローカル発振器の品質などに応じて、10μsから10000μsの間であってもよい。信号の持続時間は、例えば約100μsであってもよい。
【0036】
システムによっては、測定シーケンス全体に亘る信号の時間変化、すなわち位相回転が、補正されうることに注意されたい。このような位相回転は、ローカル発振器の周波数差又はアンテナユニットの移動によって引き起こされうる(ドップラー)。ローカル発振器の周波数の違いやドップラーの推定と補正は、追加の信号(例えば時間的に繰り返される信号など)を用いて遂行してもよいが、その技術はよく知られており、本発明の範囲外である。
【0037】
第1の信号は、第2のアンテナユニット106を通じて第2の無線ユニット110で受信される。受信した第1の信号に基づいて、第1の信号に関連する少なくとも第1の位相情報が決定される。この第1の位相情報は、第2の無線ユニット110のローカル発振器に対する、受信した第1の信号の位相を示す。
【0038】
正確には、信号周波数は通常ローカル発振器の周波数よりも高く、位相測定は、高速フーリエ変換(FFT)などを用いてデジタルベースバンドで行われることが多い。これは本質的に、簡単のために信号周波数で動作すると考えたローカル発振器に対して位相を測定することと等価である。
【0039】
構成100が、例えば第3のアンテナユニットと関連付けられる第3の無線ユニットなど、更なる無線ユニット及びアンテナユニットを有する場合、第1の信号は、(第3のアンテナユニットを通じて)第3の無線ユニットでも受信され、当該第3の(及びその他の)無線ユニットでも第1の位相情報が決定されてもよい。
【0040】
アンテナユニット間の相対位置を決定するために、2つ以上のアンテナユニットを有する構成を利用してもよい。相対距離は、距離間の変化を追跡又は監視するために複数回決定されてもよい。例えば、3つ以上のアンテナユニットを含む3次元形状を追跡するように、相対距離が複数回決定されてもよい。構成の実施形態は、例えば、地上測位(Terrestrial Positioning)に使用してもよい。
【0041】
第2の無線ユニット110は、第2のアンテナユニット106を通じて少なくとも第1の応答信号を送信するように構成される。第1の応答信号は、少なくとも周波数及び偏波において、第1の信号と等価であってもよいし、本質的に第1の信号に一致してもよい。
【0042】
第1の応答信号は、第1のアンテナユニット104を通じて、第1の無線ユニット108で受信される。受信した第1の応答信号に基づいて、少なくとも第1の応答位相情報が決定される。この第1の応答位相情報は、第1の無線ユニット108のローカル発振器に対する、受信した第1の応答信号の位相を示す。
【0043】
次に、第1の位相情報と第1の応答位相情報とは、第1の位相情報と第1の応答位相情報の和を示す第1の位相和を少なくとも決定するために(処理装置102によって)使用される。
【0044】
更にまた、構成が更なる無線ユニット及びアンテナユニットを有する場合、例えば第3のアンテナユニットも、第1の応答信号に一致する信号を送信するように構成されてもよい。この信号は、少なくとも第1のアンテナユニットで、好ましくは、第1の応答信号を送信しなかった他の全てのアンテナユニットで受信されてもよく、第1の応答信号を受信したアンテナユニットのそれぞれにおいて、受信した第1の応答信号に関する第1の応答位相情報が決定されてもよい。もちろん、第3のアンテナユニットは、第2のアンテナユニット106によって送信される第1の応答信号を受信し、それぞれの位相情報を決定してもよい。従って、複数の第1の位相和が決定されてもよい。
【0045】
第1の無線ユニット108はまた、第1のアンテナユニット104を通じて、第2の円偏波を有する少なくとも第2の信号を送信するように構成されてもよい。第2の円偏波は、第1の円偏波とは異なり、例えば右旋円偏波(RCP)であってもよい。
【0046】
そして第2の信号は、第2のアンテナユニット106を通じて第2の無線ユニット110で受信されてもよい。受信した第2の信号に基づいて、第2の信号に関連する少なくとも第2の位相情報が決定される。当該第2の位相情報は、第2の無線ユニット110のローカル発振器に対する、受信した第2の信号の位相を示す。
【0047】
第2の無線ユニット110は、第2のアンテナユニット106を通じて少なくとも第2の応答信号を送信するように構成されてもよい。第2の応答信号は、第2の信号と同等であってもよいし、少なくとも周波数及び偏波において第2の信号に本質的に一致してもよい。
【0048】
第2の応答信号は、第1のアンテナユニット104を通じて第1の無線ユニット108で受信される。受信した第2の応答信号に基づいて、少なくとも第2の応答位相情報が決定される。この第2の応答位相情報は、第1の無線ユニット108のローカル発振器に対する、受信した第2の応答信号の位相を示す。
【0049】
第2の信号は第2のアンテナユニットによって送信され、第1のアンテナユニットによって受信される。第2の応答信号は第1のアンテナユニットによって送信され、第2のアンテナユニットによって受信される。送信シーケンス(どのアンテナユニットがどの信号を送信するか)がわかっている場合、ドップラーシフトによる時間依存性を補正してもよい。
【0050】
次に、第2の位相情報と第2の応答位相情報は、第2の位相情報と第2の応答位相情報の和を示す少なくとも第2の位相和を決定するために使用される。
【0051】
第1の位相和及び第2の位相和に基づいて、第1のアンテナユニット104と第2のアンテナユニット106との間の距離D(又は少なくともそれらの基準点間の距離)を示す、少なくとも1つの距離指標を決定してもよい。1つ又は複数の距離指標の候補の少なくともいくつかは、後に紹介されるように、アンテナユニットのLOS軸間の回転角度に対して独立でありうる。
【0052】
従って、構成100は、少なくとも2つの信号とその応答信号とを相互に送受信する少なくとも1対のアンテナユニットを有し、双方向の送信により双方向の位相情報とその和の決定を可能とする。
【0053】
第3の無線ユニット及び関連する第3のアンテナユニットなどの、更なる無線ユニット及びアンテナユニットを含む構成100の実施形態では、当該更なるアンテナユニットは、少なくとも第2のアンテナユニット108によって送信された第2の信号及び場合によっては第2の応答信号も受信し、それぞれの第2の位相情報を決定し、第2の応答信号を送信するように構成されてもよい。その後、複数の第2の位相和が決定されてもよく、また、複数の距離指標が、(それぞれの評価された距離ごとに、複数の第1の位相和と第2の位相和に基づいて、)決定されてもよい。
【0054】
構成中の任意のアンテナユニットは、構成中の他のアンテナユニットによって送信された信号のいずれか又は全てを受信するように構成されてもよい。実施形態によっては、送信アンテナユニットの各々は、所定のタイムスロットでその信号をブロードキャスト送信し、他のアンテナユニットはその信号を受信してもよい。
【0055】
従って、構成は、複数のアンテナユニットを有してもよく、第1の偏波を有する第1及び第2の信号と、第2の偏波を有する第1及び第2の応答信号との双方向送信を実行するように構成されるアンテナユニットの組を有してもよい。第1の偏波を有する第1及び第2の信号を送受信すると共に第2の偏波を有する第1及び第2の応答信号を送受信したアンテナユニットの組のそれぞれについての第1の位相和及び第2の位相和を得るために、受信した送信信号のそれぞれについて、双方向位相情報が決定されてもよい。このようにして、複数の距離指標が決定されてもよい。この距離指標はそれぞれ、特定のアンテナユニット組におけるアンテナユニット間の距離を示す。
【0056】
実施形態によっては、送信アンテナユニットの各々は、所定のタイムスロット内で少なくとも1つの信号を送信してもよく、更に、第1のアンテナユニットはマスターユニットであり、第2のアンテナユニット(及び他の残りのもの)はスレーブユニットであってもよい。マスターユニットは、第1の信号を送信するように構成されたアンテナユニットであってもよい。マスターユニットは、第1の信号の送信前に、無線チャネルが送信のために空いているかどうかをチェックするように構成されてもよい。そしてチャネルが空いている場合は少なくとも第1の信号を送信し、チャネルが空いていない場合は第1の信号の送信を実行しないように構成されてもよい。
【0057】
マスターユニットは、第1の信号の送信前に無線チャネルが空いているかどうかをチェックしてもよく、「はい」の場合は測定サイクルを継続してもよく、当該無線チャネルは、少なくとも1つの測定サイクルのために、構成によって予約されてもよい。つまり前記構成は、有利には、リッスンビフォアトーク(Listen Before Talk,LBT)機能を必要とする無線帯域/チャネルを利用することができる。無線チャネルが空いていないと判定した場合は、第1の信号を送信せず、測定サイクル自体を、信号を送信することなく中止又はキャンセルしてもよい。その後マスターユニット又は第1のアンテナユニットは、測定サイクル間の所定時間を待機してもよい。そして次の測定サイクルで、無線帯域が空いているかどうかをもう一度確認し、無線帯域が空いている場合、測定サイクルを開始するために第1の信号の送信を実行してもよい。
【0058】
マスターアンテナユニットと1つ以上のスレーブアンテナユニットを有する実施形態によっては、各スレーブユニットは、所定の測定サイクルで信号を送信する前に、アンテナユニットの所定の順序における前のアンテナユニットが測定サイクルで信号を送信したかどうかを判定してもよい。そして「はい」の場合、スレーブユニットはその信号を送信し、一方、前のアンテナユニットが信号を送信していないと判定した場合、すなわち有効な測定信号が受信されなかった場合は、当該信号を送信しないように構成されてもよい(すなわち完全な測定サイクルを待つように構成されてもよい)。
【0059】
構成の実施形態において、少なくとも第1のアンテナユニットは、第1の信号の送信前に、少なくとも残りの無線アンテナユニットによって受信される時間同期信号を送信してもよい。時間同期により、アンテナユニットは、信号が送信されるべき所定の順序に関連するタイムスロットを考慮して、同期した形で信号の送信を遂行してもよい。特に、後続の測定サイクルにおける測定サイクル間の時間が1分以上など比較的長い実施形態において、そのような同期した形での信号の送信を遂行してもよい。
【0060】
情報の処理や実行されるステップは、ここで提案されているものとは異なる順序で行われてもよい。例えば、第1の信号をRCP信号とし、第2の信号をLPC信号としてもよい。
【0061】
実施形態によっては、第1の信号と第2の信号は、第1の応答信号と第2の応答信号の前に送信されてもよい。
【0062】
本発明の他の実施形態では、第1の信号と第2の信号は同時に(従って同じタイムスロットで)送信されてもよい。第1の応答信号と第2の応答信号は、追加的又は代替的に、同時に送信されてもよい。それぞれ左又は右の円偏波を有する複数の信号の同時送信では、コード化された送信が利用される。
【0063】
図3Aは、本発明の実施形態による構成100が有しうる、例示的な第1のアンテナユニット104及び第2のアンテナユニット106を示す。ここで、両アンテナユニット104、106は、それぞれ4つのアンテナ素子を有する。第1のアンテナユニット104は、第1のアンテナ素子114と、第2のアンテナ素子116と、第3のアンテナ素子118と、第4のアンテナ素子120とを有する。第2のアンテナユニット106は、第1のアンテナ素子122と、第2のアンテナ素子124と、第3のアンテナ素子126と、第4のアンテナ素子128とを有する。実施形態によっては、第1及び第2のアンテナユニットは、それぞれ異なる数のアンテナ素子を有してもよい。アンテナユニット104、106は、少なくとも信号方向に関して高い位相中心安定性を有するアンテナ素子と関連して、1つのデュアル偏波アンテナ素子のみを有してもよい。
【0064】
アンテナ素子が高い位相性能を有していない場合、アンテナユニット104、106は、好ましくは、それぞれ少なくとも3つのアンテナ素子114、116、118、120、122、124、126を有する。この場合、信号の到着方向が決定されてもよい。特に、アンテナ素子の位相中心が一定でない場合に、信号の到着方向の決定が行われることが好ましい。
【0065】
アンテナユニット104、106が複数のアンテナ素子114、116、118、120、122、124、126を有する場合、アンテナユニットの全てのアンテナ素子は、好ましくは、アンテナユニット104と106からなるアンテナユニット組における他方のアンテナユニットによって送信される信号を受信する。アンテナユニットが備える複数のアンテナ素子のうちのいくつか又は全部が、例えば第1の信号及び/又は第2の信号を送信してもよい。しかし、全てのアンテナ素子が信号の受信に使用されるものの、送信に使用されるアンテナ素子は1つだけである方が、効率的であろう。
【0066】
図3Aの例では、第1のアンテナユニット104について、第1のアンテナ素子114は送受信(TX/RX)アンテナ素子であり、第2のアンテナ素子116、第3のアンテナ素子118、及び第4のアンテナ素子120は受信アンテナ素子であってもよい。第2のアンテナユニット106の場合、第1のアンテナ素子122は送受信(TX/RX)アンテナ素子であり、第2のアンテナ素子124、第3のアンテナ素子126、及び第4のアンテナ素子128は受信(RX)アンテナ素子であってもよい。
【0067】
第1のアンテナユニット104と第2のアンテナユニット106は、それぞれ少なくとも1つのRCPフィードと1つのLCPフィードを有してもよい。また、各アンテナエレメントは、単一偏波フィード又は複数偏波フィードのいずれかを有してもよい。TX/RX素子114、122は、両方の偏波用のフィードを有することが好ましい。
【0068】
図3Aは、第1のアンテナユニットの基準点P1と、第2のアンテナユニットの基準点P2も示している。実施される測定は、基準点で行われると単純化してもよい。基準点P1とP2は接続線X(LOS軸)で結ばれていると考えてもよく、その長さはアンテナユニット間の距離Dに対応する。
【0069】
LOS軸Xは、アンテナユニットが横たわる平面、例えば第1のアンテナユニット104の平面x1,y1と角度βを形成する。平面x1、y1へのLOS軸Xの投影は、x1軸と角度αを形成する。これらの角度α及びβは、信号到来方向(DOA)測定によって得ることができる。軸z1は、第1のアンテナユニット104の表面の法線を示す。
【0070】
LOS軸Xに対するアンテナユニットの回転は、DOA法では求めることも評価することもできない。しかし、円偏波信号を使用する場合、この回転は位相情報の決定に影響を与えるため、より正確な位相情報を得るためには考慮する必要がある。
【0071】
図3Bは、一例として、第1のアンテナ素子114(図示せず)を有する第1のアンテナ104から発信される円偏波信号を示している。この信号は、第1のアンテナ素子122を有する第2のアンテナユニット106で受信されうる。簡単のため、第1のアンテナ素子114、122のみが考慮されている。図3Bは、回転するアンテナユニットが、信号と、決定される位相とに影響を与えることを示す目的で、円偏波信号の送信を示している。当業者には理解されるように、例えば、第2のアンテナユニット106に対する第1のアンテナユニット104の回転は、第2のアンテナユニット106における受信信号の位相に影響を与える。このため、アンテナユニット間の距離Dは同じままであるにも関わらず、決定される位相情報及び決定される距離指標、従って評価される距離Dに、影響を与える。
【0072】
図4は、接続線(LOS軸)がページに垂直な方向にあるとして、LOS軸に沿った第1のアンテナユニットと第2のアンテナユニットの方向を示した図である。これらの方向は、第1のアンテナユニットの法線の単位ベクトル
と第2のアンテナユニットの法線の単位ベクトル
を基準に描かれている。両アンテナユニット及びこれらのLCPフィード及びRCPフィードの電気ベクトル基準方向も、単位ベクトル
として示されている。例えば、
は、第1のアンテナユニット104のLCPフィードの単位ベクトルの方向に対応する。後において、項の符号は、第1のアンテナユニット104がページ法線に沿って第2のアンテナユニット106の下にある場合のものである。
【0073】
図5には、第1の無線ユニット104、第1のアンテナユニット104、第2の無線ユニット110、第2のアンテナユニット106が描かれている。この例では、第1のアンテナユニット104は、図3の第1のアンテナ素子114及び第4のアンテナ素子120に対応するアンテナ素子を備えている。第2のアンテナユニット106は、第1のアンテナ素子122及び第4のアンテナ素子128に対応するアンテナ素子を備えている。図4のTX/RXスイッチは「TX」位置にあるものとする。
【0074】
以下では、第1のアンテナユニットの第1のアンテナ素子114が第1及び第2の信号を送信し、第2のアンテナユニットの第4のアンテナ素子128が受信し、第2のアンテナユニットの第1のアンテナ素子122が第1及び第2の応答信号を送信し、第1のアンテナユニットの第4のアンテナ素子120が受信する場合について説明する。アンテナユニット104、106が2つ以上のアンテナ素子を有する場合、同様の考察が他のアンテナ素子にも適用される。個別に決定された例えば位相情報及び/又は距離指標は、アンテナユニット104、106の対応する基準点に関する情報に対応する情報(距離指標など)を得るために組み合わされてもよい。
【0075】
第1のアンテナユニット104は、自身のタイムスロット(時間T1)において、第1のアンテナ素子114を通じて、例えばLCP偏波の第1の信号を送信してもよい。第4のアンテナ素子128を通じて第2のアンテナユニット106で受信される上記送信信号の位相、すなわち決定される第1の位相情報は、以下のようになる。
【0076】
【0077】
ここで、
及び
はそれぞれ、第1の無線ユニット108の送信時刻T1における、第1無線ユニット108及び第2の無線ユニット110のローカル発振器の位相である。なお、添字はアンテナ素子ではなくアンテナユニットを表す。Φ12は、第1のアンテナユニット104の送信アンテナ素子114と、第2のアンテナユニット106の受信アンテナ素子128との間の距離又は基線又は接続幾何学線に対応する幾何学位相である。
は第1アンテナユニット104に対応する送信ブランチ(送信部)の位相長であり、
は第2アンテナユニット106に対応する受信ブランチ(受信部)の位相長である。(ここで位相長とは、ある距離を横断する信号に生じる位相シフトを指す。)ΨLCPは、図4に示されるように、アンテナ素子114のLCPフィードの電気ベクトル基準面(Xと
で形成される面)と、アンテナ素子128のLCPフィードの電気ベクトル基準面(Xと
で形成される面)の間の角度である。
【0078】
送信ブランチ及び受信ブランチの位相長、例えば
及び
は、アンテナユニット及び関連する無線ユニットの送信ブランチ及び受信ブランチの物理的な長さに起因する位相長を含み、ケーブル長も含まれる可能性がある。例えば、図5に見られるように、位相長
は、デジタルアナログ変換器(DAC)から送信アンテナ114までの、第1の無線ユニット108の送信ブランチの長さに対応する。DACとミキサーとの間の位相長は、ミキサーとアンテナとの間の位相長よりもはるかに低い周波数(ベースバンド周波数)に対応することに注意すべきである。また、ローカル発振器からミキサーまでの位相長も考慮する必要がある。ここでは、これらの影響は全て
の項に含まれていると仮定する。
【0079】
第2のアンテナユニット106が第1の信号を受信することに続いて、第2のアンテナユニット106は、第1のアンテナ素子122によって第1の応答信号を送信する。この第1の応答信号はそのタイムスロット(時間T)において、第1のアンテナユニットの第4のアンテナ素子120によって受信されてもよい。(第4のアンテナ素子120において)受信した第1のアンテナユニットに関連して決定又は測定される第1の応答位相情報は、第2のアンテナユニット106がそのローカルクロック/発振器に対してゼロ位相で応答信号を送信したと仮定すると、次のようになる。
【0080】
【0081】
ここで、
及び
は、第2の無線ユニット110の送信時刻Tにおける第2の無線ユニット110及び第1無線ユニット108それぞれのLOの位相である。簡単のため、以下の処理では、無線ノード108と110との間の位相関係
は送信間で同じままであると仮定する。通常、無線ノードは独立して動作するクロックを持つため、このようなことは起こらない。しかし、それなりに優れたクロックでは、この位相関係の変化率は時間的に一定であり、繰り返し測定によって容易に決定することができ、従って、容易に補正することができる。Φ21は、送信アンテナ、ここでは第2のアンテナユニットの第1のアンテナ素子122と、受信アンテナ、ここでは第1のアンテナユニットの第4のアンテナ素子120との間の距離に対応する幾何学的位相である。
及び
は、それぞれ、第2のアンテナユニット106及び第1のアンテナユニット104に対応する送信及び受信ブランチ位相長である。ΨLCPは先に定義した通りである。ここでは、アンテナユニット104と106との間の回転が送信間で大きく変化しないと仮定する。これは、送信間の典型的な時間が100マイクロ秒のオーダーであることから、有効な仮定である。
【0082】
その後、RCP偏波を有する第2の信号が、第1のアンテナユニットの第1のアンテナ素子114から、(時間Tにおいて割り当てられたタイムスロットにおいて)送信され、第2のアンテナユニットの第4のアンテナ素子128で受信されてもよい。そして、決定される第2の位相情報は次のようになる。
【0083】
ここで、ΨRCPは、図4から分かるように、ΨLCPと同様であるが、RCPフィードのためのものである。第2の応答信号は、第2のアンテナユニットの第1のアンテナ素子122によって送信される。そして時間Tのそのタイムスロットにおいて、第1のアンテナユニットの第4のアンテナ素子120によって受信される。決定される第2の応答位相情報は次のようになる。
【0084】
【0085】
ブランチの位相項、例えば
は、信号の送信中に送信アンテナユニットで受信される自己測定信号の位相を示す自己測定データ又は自己較正データによって、除去してもよい。例えば、第1のアンテナユニットの第1のアンテナ素子114が第1の信号を送信すると、第1のアンテナユニットの第4のアンテナ素子120は、第1の自己測定位相を以下のように決定してもよい。
【0086】
第1のアンテナ104ユニットが第2の信号を送信する場合、自己測定位相情報は、以下のように決定されてもよい。
【0087】
ここで、
は、第1のアンテナユニットの第1のアンテナ素子114(送信アンテナ素子)と第1のアンテナユニットの第4のアンテナ素子120(受信アンテナ素子)との間の信号伝達関数の位相である。これら、
のような安定的な位相項は、例えば無響室で1つのアンテナユニットについて測定してもよく、
のような自己較正位相データへの当該安定的な位相項の影響を除去するために、この測定データを用いてもよい。(ただし、全ての類似アンテナユニットにおいてほぼ同じであると仮定する。)このため、アンテナユニットiの
は、更なる計算において省略又は補償されてもよい。第2のアンテナユニット106も、同様に自己測定位相情報を決定してもよい。
【0088】
第1の位相和S1は、次のように決定される。
【0089】
【0090】
一方、第2の位相和S2は次のようになる。
【0091】
【0092】
特に、送信ブランチと受信ブランチが安定しており、その長さが既知であり、どこかで補正されていることが分かっている場合には、位相和は、自己測定位相情報なしで計算されうる。
【0093】
しかし、構成が複数のアンテナユニットを有する場合、各送信アンテナユニットは、それぞれの自己較正/自己測定位相情報を決定してもよい。
【0094】
図4から分かるように、
【0095】
及び
【0096】
である。
【0097】
ここで、Ωは、第1のアンテナユニット104と第2のアンテナユニット106との間のLOS軸に沿った回転角度であり、
及び
は、アンテナユニットi及びそれぞれの偏波フィードについてのLOS軸(信号方向)に沿って測定される、z軸と電気基準ベクトル
及び
との間の角度である。
及び
は、所定の方向におけるそれぞれの偏波フィードの位相応答として理解することもできる。
【0098】
距離指標として、第1の距離変数VDが、第1及び第2の位相和S1,S2に基づいて、例えばそれらの和として決定されてもよい。上記を利用すると、
【0099】
【0100】
送信の間、回転に大きな変化がなかったと仮定すると、アンテナユニット間の回転Ωがキャンセルされることがわかる。これは、送信間の時間が100マイクロ秒のオーダーであることを考慮すると、例えばフォークリフトのような典型的な物体を追跡するための安全な仮定である。従って、第1のアンテナユニットと第2のアンテナユニットの基準点間の幾何学的位相長、1/2(Φ12+Φ21)は、自己較正された位相測定値の和から決定されてもよい。例えば、第1の距離変数VDを用いて式(11)から容易に導出できる。
【0101】
残りのフィード固有の位相応答パラメータ
及び

は信号方向に依存する。アンテナユニットが良好な位相性能を持つ場合、つまりアンテナ位相中心が信号方向に依存せず本質的に一定である場合、アンテナユニットiについて次のように書くことができる。
【0102】
【0103】
その結果、Φ12のような位相長は、式(13)からわかるように、(自己較正された)位相和S1、S2から直接導出されうる。
【0104】
しかし、近似式(12)が成立しない場合、アンテナ位相パターン較正データを得るために、例えば無響室で、アンテナフィードの位相応答
及び
を測定することが可能である。このような較正データは、測定によって得られてもよいし、外部ソースから得られてもよいし、データベースに保存されていてもよい。大量生産ではごく一般的なことであるが、生産されるアンテナユニットが互いに十分に類似していると仮定すると、これらのアンテナは、そのフィードにおいて、本質的に類似したパターンを有すると仮定してもよい。信号の方向(α,β)がアンテナユニット座標系において既知である場合、
及び
は、記憶されたアンテナ位相パターン較正データから補間されてもよく、また、(好ましくは自己較正された)位相和測定値からアンテナユニット基準点間の距離を示す1/2(Φ12+Φ21)を得るために、以下のように使用されてもよい。
【0105】
【0106】
信号の方向(到来方向)を決定するいくつかの例には、以下が含まれる。
1) 複数の受信アンテナによって受信した信号に到来方向アルゴリズム(ビームフォーミングやMUSICなどの部分空間ベースの手法など)を適用する。
2) アンテナユニットの位置と方向を追跡する。
又はこれらの組み合わせ。
【0107】
アンテナ位相パターン較正データから決定した信号方向についてのアンテナ位相応答の補間は、周知の技術に基づいてモデル化されてもよい。例えば、ベクトル球面高調波に基づいてモデル化されてもよいし、測定データから計算された2D-FFTベースの分解に基づいてモデル化されてもよい。
【0108】
更に別の実施形態では、回転角度Ωを明示的に決定することも可能である。 これは、距離指標として、回転変数VRを決定することによって行うことができる。回転変数VRは、位相和の差を次のように形成することによって決定することができる。
【0109】
信号の方向に依存するΨ項は、前述のように求めることができる。これにより、(自己較正された)位相和から、アンテナユニット間の回転角Ωが決定される。
【0110】
【0111】
Ωを明示的に決定する利点は、カルマン推定や粒子推定などの推定アルゴリズムでΩを追跡できることである。推定値は、単一偏波測定における回転効果の除去に使用できる。
【0112】
【0113】
このような構成により、第2の偏波を有する信号の送信を行わずに、第1の偏波を有する第1の信号及び第1の応答信号のみを送信して第1の位相和を決定することにより、単一の偏波測定で高速に変化する幾何学的位相長を追跡することが可能になる。第1の位相和は、選択された第1の時間間隔(例えば、毎秒70~300回、100~250回、又は150~200回)で決定されてもよく、そこから幾何学的位相長が以下のように決定されてもよい。
【0114】
【0115】
ゆっくりと変化する回転角Ωは、より頻度の低い二重偏波測定を用いた推定器で追跡してもよい。この場合、第1及び第2の偏波を有する信号(第1の信号、第1の応答信号、第2の信号、及び第2の応答信号)は、選択された第2の時間間隔(例えば、1秒当たり1~30回又は1~10回の間)で送信されてもよい。
【0116】
図6は、本発明の実施形態において利用されてもよい、4つのアンテナ素子を有する例示的な無線ユニット108、110及びアンテナユニット104、106を示す。図6の無線ユニット108、110は、自己較正及び/又は信号方向測定が実施される実施形態において利用されてもよい。
【0117】
図7A及び図7Bは、構成100における信号の送受信及び場合によってはデータの通信のための測定サイクルにおいて、タイムスロットがどのように割り当てられうるかを示している。測定サイクルは、送信される信号のセットを表す場合もあり、また、送信と送信の間の間隔が閾値未満の時間となるように信号が次々に送信される期間(time duration)を表す場合もある。第1の測定サイクルは、例えば、第1の信号、第1の応答信号、第2の信号、第2の応答信号の送信(及び受信)を含んでもよい。実施形態によっては、第2の測定サイクルを実施してもよい。第2の測定サイクルは、例えば、第1の測定サイクルと同等であってもよい。
【0118】
1つの測定サイクルは、(N個の測定スロットを有する)少なくとも1つの測定フレームを含んでもよい。測定フレーム中、少なくとも第1のアンテナユニット104及び第2のアンテナユニット106は、それぞれに割り当てられたタイムスロットにおいて、それぞれの信号を別々に送信してもよい。図7Aの測定サイクルは、N個の無線ユニットを有する構成100に適用可能であり、各アンテナユニット間について距離が評価されてもよい。各アンテナユニットは、それぞれのタイムスロットでそれぞれの信号を送信してもよい。
【0119】
送信は、送信の間に空のタイムスロットが残らないように、後続のタイムスロットで送信が発生するように実施されてもよい。送信とタイムスロットは、送信の終了と後続のアンテナユニットが送信を開始する後続のタイムスロットの開始との間の時間間隔が、選択された最大時間間隔以下となるようにバランスさせられてもよい。送信の終了と後続の送信の開始との間の時間間隔は、同じ測定フレーム内で発生する送信の間で、少なくとも50μs未満、好ましくは20μs未満、例えば16μs未満としてもよい。
【0120】
しかし、測定フレーム間においては、送信終了から後続の送信開始までの時間間隔が長くなる場合がある。このような場合、マスターユニットは、各測定フレームの開始時に、伝送チャネルが空いているかどうかをチェックするように構成されてもよい。
【0121】
コンパクトな送信信号の供給は、例えばWi-Fiネットワークと組み合わせて使用することができ、有利で或る。本発明では、送信用の無線チャネルは、測定サイクルごとに1回だけ予約すればよい。この特徴により、Wi-Fiのようなネットワークとの互換性が可能になりうる。
【0122】
後続のタイムスロットで送信が行われないと、測定サイクルが完了するまでに、より長い、未知の時間を要する可能性がある。これは、例えばETSI EN 301 893(5GHzのWi-Fi伝送を規制する標準仕様)で定義されているように、チャネルを1回だけ競合させる必要がある無線チャネルでは、1つの測定サイクルを1回の伝送として効果的に実行できないためである。送信中は、各送信アンテナユニットが別々にチャネルを競合させる必要があるため、送信の間にチャネルが他のユーザーによって占有されると、測定シーケンスがかなり長くなる可能性がある。
【0123】
図7Bは、(1つ以上の通信スロットを有する)少なくとも1つの通信フレームも採用される測定サイクルにおいて、タイムスロットがどのように割り当てられるかを示している。通信フレーム中に、信号、測定/決定データ、又はその他のデータが処理装置102に送信されてもよい。少なくとも1つのデータ通信が送信され、無線ユニットによって送信される測定信号と、時間領域又は周波数領域で多重化されてもよい。少なくとも1つのデータ通信は、決定された位相情報を少なくとも含んでもよい。追加的又は代替的に、データ通信は任意の他の情報を含んでもよい。このように、構成100は、測定システム及び通信ネットワークとして同時に機能することができる。
【0124】
必要な時間同期精度は、送信の重複を防ぐために、後続信号の間の可能なガードタイムの持続時間の4分の1よりも優れていることが望ましい。
【0125】
図8は、本発明のある実施形態のフローチャートを描いたものである。802において、第1の偏波を有する少なくとも第1の信号が、第1のアンテナユニット(AU)104によって送信される。804において、この第1の信号は少なくとも第2のアンテナユニット(AU)106によって受信され、少なくとも第1の位相情報が決定される。第1のアンテナユニット104によって送信された第1の信号はまた、構成100が有する任意の他のアンテナユニットにおいて受信されてもよい。そして、受信したアンテナユニットのローカル発振器に対する、受信した第1の信号の位相に関する第1の位相情報が、それぞれ決定されてもよい。806において、少なくとも1つの第1の応答信号が、少なくとも第2のアンテナユニット106によって送信される。第1の応答信号は、本質的に第1の信号に一致する。第1の応答信号はまた、構成が有する任意の第3の又はその他のアンテナユニットを通じても送信されてもよく、各アンテナユニットは好ましくは、自身の所定のタイムスロットで、好ましくは所定の順序で、信号を送信する。808において、第1の応答信号は、少なくとも第1のアンテナユニット104によって受信され、第1の応答位相情報が決定される。送信されるどの信号についても、それを送信しなかったアンテナユニットで受信され、それぞれ位相情報が決定されてもよい。自己較正情報も決定する場合には、信号は、それを送信したアンテナユニットの受信アンテナでも受信されてもよい。
【0126】
810において、少なくとも第1のアンテナユニット104及び第2のアンテナユニット106に関して、少なくとも1つの第1の位相和が決定される。第1の位相和は、第1の位相情報と第1の応答位相情報の和であってもよい。第1の位相和は、互いの間で双方向信号を送信したアンテナユニットの組のいずれか又は全てについて決定されてもよい。
【0127】
812において、少なくとも第2の偏波を有する第2の信号がアンテナユニットに送信される。第2の信号は、第1のアンテナユニット104、第2のアンテナユニット106、又は構成の他のどのAUによって、送信されてもよい。814において、第2の信号は、第2の信号を送信しなかった少なくとも1つの他のアンテナユニットによって受信され、少なくとも第2の位相情報が決定される。いずれかのアンテナユニットによって送信された第2の信号はまた、構成100が有する任意の他のアンテナユニットにおいて受信されてもよい。そして、受信したアンテナユニットのローカル発振器に対する、受信した第2の信号の位相に関する第2の位相情報が、それぞれ決定されてもよい。816において、第2の信号を送信しなかった他のアンテナユニットの少なくとも1つによって、少なくとも1つの第2の応答信号が送信される。第2の応答信号は、本質的に第2の信号に一致する。第2の応答信号は、(第2の信号を送信していない)別のアンテナユニットを通じても送信されてもよい。これらのアンテナユニットは、好ましくは、自身の所定のタイムスロットで、好ましくは所定の順序で、第2の応答信号を送信する。818において、第2の応答信号は、第2の応答位相情報を決定するために、アンテナユニットの少なくとも1つによって受信される。
【0128】
820において、少なくとも第1のアンテナユニット104及び第2のアンテナユニット106に関して、少なくとも1つの第2の位相和が決定される。第2の位相和は、第2の位相情報と第2の応答位相情報の和であってもよい。第2の位相和は、互いの間で双方向信号を送信したアンテナユニットの組のいずれか又は全てについて決定されてもよい。
【0129】
822において、少なくとも1つの距離指標が決定される。この距離指標は、少なくとも、第1のアンテナユニット104と第2のアンテナユニット106との間の距離を示す。第1及び第2の偏波に関してそれらの間で双方向信号を送信した、すなわち、少なくとも第1の信号、第1の応答信号、第2の信号、及び第2の応答信号を含む信号を送信した、アンテナユニットの各組に関して、少なくとも1つの距離指標が決定されてもよい。
【0130】
図9は、本発明の一実施形態による方法の少なくとも一部に関するメッセージシーケンスチャートを示す。図9は、N個のアンテナユニット104、106を含む構成及び方法に関するものであり、実施されてもよい信号伝送及びデータ伝送を描いている。各アンテナユニットは無線ユニット108、110に関連付けられ、無線ユニットは1つ以上のアンテナユニットに関連付けられ得る。例えば、第1のアンテナユニット104と第2のアンテナユニット106は、同一の無線ユニットに関連付けられていてもよいし、同一の無線ユニットに具備されていると考えてもよい。図9の実施形態では、第1のアンテナユニット104は、時間T1に第1の信号を送信する。第1の信号は、構成100の他のアンテナユニットの少なくとも一部によって受信されうる。図9は、第1の信号が、第2のアンテナユニット106、第3のアンテナユニット902、N番目のアンテナユニット904で受信されることを示している。
【0131】
第2のアンテナユニット106は、時間T2において第1の応答信号を送信するように構成されてもよい。そしてこの信号は、構成100の他のアンテナユニットの少なくとも一部又は全てによって受信されてもよい。第3のアンテナユニット902も、時間T3に第1の応答信号を送信するように構成されてよい。この信号は、構成の他のアンテナユニットの少なくとも一部によって受信されてもよい。図9は、アンテナユニットNが時間TNに第1の応答信号を送信し、この信号が、少なくとも第1のアンテナユニット104、第2のアンテナユニット106、第3のアンテナユニット902によって受信されることも示している。
【0132】
時刻TN+1において、第1のアンテナユニット104は、第2の信号を送信するように構成されてもよい。本発明の他の実施形態では、第2の信号は、構成内の他のアンテナユニットの1つによって送信されてもよい。第2の応答信号は、第2のアンテナユニット(時刻TN+2)、第3のアンテナユニット(時刻TN+3)、N番目のアンテナユニット(時刻T2N)の各々によって送信されることが示されている。
【0133】
無線ユニット108、110(第1の無線ユニット108、第2の無線ユニット110、及び/又は構成100の任意の更なる無線ユニット)の各々は、少なくとも第1の位相情報、第1の応答位相情報、第2の位相情報、及び/又は第2の応答位相情報を決定してもよい。図9は、決定された位相情報が時間T2N+1において処理装置102に送信されることを示している。処理装置102は、その後、アンテナユニットの各組に関連して、少なくとも第1及び第2の位相和を決定してもよい。また、少なくとも1つの距離指標を決定してもよい。
【0134】
以上、本発明を前述の実施形態を参照して説明し、本発明のいくつかの利点を示した。本発明がこれらの実施形態に限定されるものではなく、発明思想の精神及び範囲、並びに以下の特許請求の範囲の範囲内で可能な全ての実施形態を含むものである。
【0135】
特に明示しない限り、従属請求項に記載された特徴は、相互に自由に組み合わせることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】