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特表2024-521319小さな自然僧帽弁構造を治療するための経カテーテル弁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】小さな自然僧帽弁構造を治療するための経カテーテル弁
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572869
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-12
(86)【国際出願番号】 US2022031233
(87)【国際公開番号】W WO2023003628
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/223,594
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515319530
【氏名又は名称】テンダイン ホールディングス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】マルナッハ,ヒース
(72)【発明者】
【氏名】ペクルス,ウイリアム
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB09
4C097CC01
4C097CC05
4C097CC13
4C097CC14
4C097DD10
4C097DD15
4C097EE06
4C097EE09
4C097SB03
(57)【要約】
左心室流出路(LVOT)への血流を改善した人工僧帽弁を提供する。人工僧帽弁は、心房端及び心室端を有する拡張可能な外側ステントと、外側ステントに取り付けられ、かつ、少なくとも部分的に外側ステント内に配置される拡張可能な内側ステントとを含む。内側ステントは、流入端と、流出端と、テザーを固定するコネクタとを備えている。カフ及び複数の弁尖を含む弁アセンブリは、内側ステント内に配置され得る。外側ステントは、外側ステントが軸方向に伸長する送達状態から、人工心臓弁を自然弁輪内で安定させるために自然弁輪の心房表面に係合するフランジを画定するように外側ステントの第1の部分が外側ステントの第2の部分上に折り畳まれる展開状態まで、拡張可能である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工心臓弁であって、
流入端と流出端とを有する拡張可能な内側ステントと、
前記内側ステント内に配置され、かつ、カフ及び複数の弁尖を含む弁アセンブリと、
前記内側ステントに固定され、かつ、前記内側ステントを少なくとも部分的に取り囲む外側ステントと、
テザーと、
を有し、
前記外側ステントは、心房端と心室端とを有し、
前記外側ステントは、前記外側ステントが軸方向に伸長する送達状態から、前記外側ステントの第1の部分と前記外側ステントの第2の部分とが集合的に、自然弁輪の心房表面に係合する大きさのフランジを形成するように、前記第1の部分が前記第2の部分上に折り畳まれる展開状態まで、拡張可能であり、
前記テザーは、前記人工心臓弁を前記自然弁輪内に固定する、人工心臓弁。
【請求項2】
前記外側ステントは、前記外側ステントの前記第2の部分と前記心室端との間に配置される本体部分を更に有し、前記本体部分は、前記外側ステントが前記展開状態にあるときに前記自然弁輪内に収まるように形作られる、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項3】
前記外側ステントは、前記本体部分と前記第2の部分との間に第1の接合部を有し、前記第2の部分は、前記外側ステントが前記送達状態から前記展開状態に移行するときに、前記第1の接合部を中心に外側へ旋回可能である、請求項2に記載の人工心臓弁。
【請求項4】
前記外側ステントは、前記第1の部分と前記第2の部分との間に第2の接合部を有し、前記外側ステントが前記送達状態から前記展開状態に移行するときに、前記第1の部分が前記第2の部分の下に屈曲可能である、請求項3に記載の人工心臓弁。
【請求項5】
前記外側ステントは、前記第1の部分と前記第2の部分との間に第2の接合部を有し、前記外側ステントが前記送達状態から前記展開状態に移行するときに、前記第1の部分が前記第2の部分の上に位置するように屈曲可能である、請求項3に記載の人工心臓弁。
【請求項6】
前記外側ステントが前記展開状態にあるときに、前記外側ステントの前記第1の接合部と前記心室端との間の距離が約5mm~約15mmである、請求項3に記載の人工心臓弁。
【請求項7】
前記人工心臓弁と前記自然弁輪との間の空間をシールするために前記フランジの表面上に配置されるシールカフを更に有する、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項8】
前記シールカフは、伸縮性のある布地で形成されている、請求項7に記載の人工心臓弁。
【請求項9】
前記シールカフが複数の別個の布片から形成されている、請求項7に記載の人工心臓弁。
【請求項10】
旋回点において前記外側ステントの前側に結合される旋回アームを更に有し、
前記旋回アームは、前記外側ステントが前記送達状態にあるときに前記旋回アームの自由端が心室方向に延びる収縮状態と、自然前尖が前記旋回アームと前記外側ステントとの間にクランプされる拡張状態との間で旋回可能である、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項11】
前記テザーを心臓の心室壁に固定するための心尖パッドを更に有する、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項12】
人工心臓弁であって、
流入端と流出端とを有する拡張可能な内側ステントと、
前記内側ステント内に配置され、かつ、カフ及び複数の弁尖を含む弁アセンブリと、
前記内側ステントに固定され、かつ、前記内側ステントを少なくとも部分的に取り囲む外側ステントと、
シールカフと、
テザーと、
を有し、
前記外側ステントは、第1の折り畳み可能部分、第2の折り畳み可能部分、本体部分、前記第2の折り畳み可能部分と前記本体部分との間の第1の接合部、及び、前記第1の折り畳み可能部分と前記第2の折り畳み可能部分との間の第2の接合部を有し、
前記外側ステントは、前記第1の折り畳み可能部分と前記第2の折り畳み可能部分と前記本体部分とが実質的に一列に並ぶ送達状態から、前記第2の折り畳み可能部分が前記本体部分に対して前記第1の接合部を中心に外側へ旋回し、前記第1の折り畳み可能部分と前記第2の折り畳み可能部分とが集合的に、自然弁輪の心房表面に係合する大きさの二重壁フランジを形成するように、前記第1の折り畳み可能部分が前記第2の接合部を中心にカールする展開状態まで、拡張可能であり、
前記シールカフは、前記二重壁フランジの表面に配置され、
前記テザーは、前記人工心臓弁を前記自然弁輪内に固定する、人工心臓弁。
【請求項13】
前記外側ステントが前記展開状態にあり、かつ、前記シールカフが前記第1の折り畳み可能部分の表面上に配置されている場合に、前記第1の折り畳み可能部分が前記第2の折り畳み可能部分の下にカールする、請求項12に記載の人工心臓弁。
【請求項14】
前記外側ステントが前記展開状態にあり、かつ、前記シールカフが前記第2の折り畳み可能部分の表面上に配置されている場合に、前記第1の折り畳み可能部分がカールして前記第2の折り畳み可能部分を覆う、請求項12に記載の人工心臓弁。
【請求項15】
前記本体部分の反管腔側表面上に配置されて内方成長を促進するように構成される布地を更に有する、請求項12に記載の人工心臓弁。
【請求項16】
人工心臓弁を移植する方法であって、
送達装置を自然弁輪に隣接する標的部位に送達するステップであって、前記送達装置は、内側ステントと、前記内側ステント内に配置される弁アセンブリと、前記内側ステントに固定され、かつ、少なくとも部分的に前記内側ステントを取り囲む外側ステントと、テザーとを含む人工心臓弁を保持する、ステップと、
前記人工心臓弁を前記送達装置から展開し、前記外側ステントの第1の部分が前記外側ステントの第2の部分上にカールすることを可能にするステップであって、前記第1の部分と前記第2の部分とが集合的にフランジを形成する、ステップと、
前記フランジを自然弁輪の心房表面に係合させるステップと、
前記テザーに張力をかけるステップと、
前記テザーを心臓の壁に固定するステップと、を含む、方法。
【請求項17】
前記張力をかけるステップが、前記第1の部分と前記第2の部分とを互いに向かって圧縮する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記送達するステップが、経心尖アプローチを使用して前記人工心臓弁を自然僧帽弁輪に経皮的に送達するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記送達するステップが、経中隔アプローチを使用して前記人工心臓弁を自然僧帽弁輪に経皮的に送達するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記外側ステントの前側に結合された旋回アームを旋回させるステップと、
患者の左心室流出路から離れた前記外側ステントの反管腔側表面に対して自然前尖をクランプするステップと、を更に含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2021年7月20日に出願された米国仮特許出願第63/223,594号の出願日の利益を主張し、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、拡張可能な人工心臓弁に関し、より詳細には、患者の自然弁輪内で拡張可能な人工心臓弁を安定させるための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
比較的小さな円周サイズに折り畳み可能(収縮可能)な人工心臓弁は、折り畳み不可能な弁よりも低侵襲で患者に送達することができる。例えば、折り畳み可能及び拡張可能な弁は、カテーテル、トロカール、腹腔鏡器具などの管状送達装置を介して患者に送達され得る。この折り畳み性(収縮性)により、完全開胸、開胸手術などのより侵襲的な処置の必要性を回避できる。
【0004】
折り畳み可能及び拡張可能な人工心臓弁は、典型的には、ステント上に取り付けられた弁構造の形態をとる。弁構造が通常取り付けられるステントには、自己拡張型ステントとバルーン拡張型ステントの2種類がある。このような弁を送達装置内に配置し、最終的には患者内に配置するには、まず弁を折り畳んでその周囲のサイズを小さくする必要がある。
【0005】
折り畳み式人工弁が患者の所望の移植部位(例えば、人工弁によって修復される患者の心臓弁の自然弁輪又はその近く)に到達すると、人工弁は、送達装置から展開又は解放され、完全な動作サイズまで拡張することができる。バルーン拡張可能な弁の場合、これには通常、弁全体を解放し、適切な位置を確保してから、弁ステント内に配置されたバルーンを拡張することが含まれる。一方、自己拡張型弁の場合、ステントが送達装置から引き抜かれると、ステントは自動的に拡張する。
【0006】
折り畳み可能及び拡張可能な心臓弁の臨床的成功は、部分的には、自然弁輪内での弁の固定に依存している。自己拡張型弁は、典型的には、ステントを自然弁輪に対して拡張させることによって及ぼされる半径方向の力に依存して、人工心臓弁を固定する。しかし、半径方向の力が大きすぎると、心臓組織が損傷し得る。逆に、半径方向の力が低すぎる場合、心臓弁はその展開位置から移動し、及び/又は自然弁輪から、例えば左心室に移動し得る。
【0007】
人工心臓弁が移動すると、人工心臓弁と自然弁輪との間で血液が漏れ得る。この現象は一般に弁周囲漏出(PVL)と呼ばれる。僧帽弁では、弁周囲漏出により、心室収縮期に血液が左心室から左心房に逆流し、心臓効率が低下し、心筋に負担がかかる。
【0008】
人工心臓弁を患者の自然弁輪内、特に自然僧帽弁輪内に固定することは困難な場合がある。例えば、自然僧帽弁輪は、自然大動脈弁輪と比較して石灰化又はプラークが減少しており、人工心臓弁を固定する表面の安定性が低下し得る。この理由から、折り畳み可能及び拡張可能な人工僧帽弁は、弁輪の下に係合するバーブ、及び/又は、自然弁尖を捕捉するか、又は腱索の周りを包み込むコイルなどの追加の固定機構を含むことが多く、それによって人工心臓弁を自然弁輪内で安定させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
折り畳み可能及び拡張可能な人工心臓弁を固定するためになされた改良にもかかわらず、欠点が残っている。例えば、追加の固定機能に対応するために、人工心臓弁は多くの場合、少なくとも部分的に心室内に延び、左心室流出路(LVOT)への血流を妨げる可能性がある。LVOTへの血流を妨げることなく、患者の自然僧帽弁輪内に人工心臓弁を固定するという課題は、患者の自然僧帽弁の解剖学的構造が小さい場合にのみ悪化する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1の態様によれば、低心室プロファイルを有する折り畳み可能(収縮可能)かつ拡張可能な人工心臓弁が提供される。他の利点の中でも特に、人工心臓弁は、心室内に突出することなく自然僧帽弁輪内にしっかりと固定される(例えば(テザーで)繋がれる)ように設計される。結果として、本明細書に開示される人工心臓弁は、LVOTへの血流の障害を最小限に抑える。
【0011】
人工心臓弁の一実施形態は、流入端及び流出端を有する拡張可能な内側ステントと、このステント内に配置され、かつ、カフ及び複数の弁尖を含む弁アセンブリと、内側ステントに固定され、かつ、内側ステントを少なくとも部分的に取り囲む外側ステントと、テザーと、を有する人工心臓弁を含む。外側ステントは、心房端及び心室端を有し、外側ステントが軸方向に伸長する送達状態から、外側ステントの第1の部分と外側ステントの第2の部分とが集合的に、自然弁輪の心房表面に係合する大きさのフランジを形成するように、外側ステントの第1の部分が外側ステントの第2の部分上に折り畳まれる(折り重ねられる)展開状態まで、拡張可能である。
【0012】
別の実施形態では、人工心臓弁は、流入端及び流出端を有する拡張可能な内側ステントと、内側ステント内に配置され、かつ、カフ及び複数の弁尖を含む弁アセンブリと、内側ステントに固定され、かつ、内側ステントを少なくとも部分的に取り囲む外側ステントと、テザーとを含む。外側ステントは、第1の折り畳み可能部分、第2の折り畳み可能部分、本体部分、第2の折り畳み可能部分と本体部分との間の第1の接合部、及び、第1の折り畳み可能部分と第2の折り畳み可能部分との間の第2の接合部を有する。外側のステントは、第1の折り畳み可能部分と第2の折り畳み可能部分と本体部分とが実質的に一列に並ぶ(一直線になる)送達状態から、第2の折り畳み可能部分が本体部分に対して第1の接合部を中心に外側へ旋回し、第1の折り畳み可能部分と第2の折り畳み可能部分とが集合的に、自然弁輪の心房表面に係合する大きさの二重壁フランジを形成するように、第1の折り畳み可能部分が第2の接合部を中心にカールする展開状態まで、拡張可能である。シールカフは二重壁フランジの表面上に配置され、人工心臓弁と自然僧帽弁輪との間の空間をシール(密封)する。
【0013】
人工心臓弁を自然心臓弁輪内に移植する方法が本明細書に提供され、送達装置を自然弁輪に隣接する標的部位に送達するステップであって、送達装置は、内側ステントと、このステント内に配置される弁アセンブリと、内側ステントに固定され、かつ、内側ステントを少なくとも部分的に取り囲む外側ステントと、テザーとを有する人工心臓弁を保持する、ステップと;人工心臓弁を送達装置から展開し、外側ステントの第1の部分を外側ステントの第2の部分上に折り畳んでフランジを画定(形成)するステップと;このフランジを自然弁輪の心房表面に係合させるステップと;テザーに張力をかけるステップと;テザーを心臓の壁に固定するステップと;を含む。
【0014】
本開示の様々な実施形態が、図面を参照して本明細書で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】人工僧帽弁を移植位置に送達するための2つのアプローチを示す、人間の心臓の非常に概略的な断面図である。
図2】自然僧帽弁及び関連する心臓構造を非常に概略的に示した図である。
図3】本開示の一実施形態による人工僧帽弁の非常に概略的な縦断面図である。
図4図3の人工僧帽弁の内側ステントの側面図である。
図5図3の人工僧帽弁の外側ステントの側面図である。
図6】自然僧帽弁輪内に移植される図3の人工僧帽弁を示す、人間の心臓の非常に概略的な断面図である。
図7A】自然弁輪内に移植するための送達装置からの図3の人工僧帽弁の展開を示す非常に概略的な部分縦断面図である。
図7B】自然弁輪内に移植するための送達装置からの図3の人工僧帽弁の展開を示す非常に概略的な部分縦断面図である。
図7C】自然弁輪内に移植するための送達装置からの図3の人工僧帽弁の展開を示す非常に概略的な部分縦断面図である。
図7D】自然弁輪内に移植するための送達装置からの図3の人工僧帽弁の展開を示す非常に概略的な部分縦断面図である。
図8】自然僧帽弁輪内に移植される図3の人工僧帽弁の非常に概略的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
血液は、僧帽弁を通って左心房から左心室へ流れる。人工心臓弁に関連して本明細書で使用される場合、「流入端」という用語は、心臓弁が意図したとおりに機能しているときに血液が流入する心臓弁の端を指し、「流出端」という用語は、心臓弁が意図したとおりに機能しているときに血液が流出する心臓弁の端を指す。また、本明細書で使用される場合、用語「実質的に」、「一般に」、「およそ」、及び「約」は、絶対からのわずかな逸脱がそのように修正された用語の範囲内に含まれることを意味することを意図する。
【0017】
図1は、人間の心臓Hの概略断面図である。人間の心臓は、2つの心房と2つの心室、すなわち右心房RAと左心房LA、及び右心室RVと左心室LVを含む。心臓Hは更に、大動脈A、大動脈弓AA及び左心室流出路LVOTを含む。左心房LAと左心室LVとの間には僧帽弁MVが配置されている。二尖弁又は左房室弁としても知られる僧帽弁は、血液で満たされる左心房LA内の圧力の上昇により開く二重フラップである。心房圧が左心室LVの圧力よりも上昇すると、僧帽弁MVが開き、血液が左心室に流れ込む。収縮期に左心室LVが収縮すると、血液は左心室から左心室流出路LVOTを通って大動脈Aに押し出される。血液は矢印「B」で示す方向に心臓Hを通って流れる。
【0018】
「TA」とラベル付けされた破線の矢印は、人工心臓弁を移植する、この場合は僧帽弁を置換するための経心尖アプローチを示す。経心尖アプローチでは、患者の肋骨の間から左心室LVの心尖部に小さな切開が行われ、人工心臓弁が標的部位に送達される。「TS」とラベル付けされた第2の破線の矢印は、人工心臓弁を移植する経中隔アプローチを示す。このアプローチでは、送達装置が大腿静脈に挿入され、腸骨静脈及び下大静脈を通って右心房RAに入り、次に弁を展開するために心房中隔を通り左心房LAに挿入される。人工心臓弁を移植するための他のアプローチも可能であり、本開示で説明される折り畳み可能な人工心臓弁を移植するために使用され得る。
【0019】
図2は、自然僧帽弁MV及びその関連構造のより詳細な概略図である。前述のように、僧帽弁MVは、左心房LAと左心室LVとの間に配置された2つのフラップ又は弁尖、後尖PL(posterior leaflet)及び前尖AL(anterior leaflet)を含む。腱索CTとして知られる索状の腱は、2つの弁尖を内側(ないそく)乳頭筋Pと外側(がいそく)乳頭筋Pに接続する。心房収縮期には、血液は左心房LAの高圧から左心室LVの低圧へと流れる。心室収縮期に左心室LVが収縮すると、室内の血圧上昇により後尖と前尖が押されて閉じ、左心房LAへの血液の逆流が防止される。左心房LAの血圧は左心室LVの血圧よりもはるかに低いため、弁尖は低圧領域に反転しようとする。腱索CTは張力をかけることでこの反転を防ぎ、弁尖を引っ張って閉じた位置に保持する。
【0020】
図3は、本開示の一実施形態による、折り畳み可能(収縮可能)及び拡張可能な人工心臓弁10の非常に概略的な長手方向断面図である。バルーン拡張可能な変形例では、人工心臓弁10は、拡張可能であるが、拡張後は容易には折り畳めないか、又は、折り畳み不可能であってもよい。自然僧帽弁MV(図1及び図2に示す)を置換するために使用される場合、人工弁10は、心臓の電気伝導系経路、心房機能、又は、左心室流出路LVOT(図1に示す)への血流との干渉を最小限に抑えるために、低プロファイル(薄型)であってもよい。
【0021】
人工心臓弁10は、弁アセンブリ14を固定する内側ステント(inner stent)12と、内側ステントに取り付けられてその周囲に配置される外側ステント(outer stent)16と、心尖パッド20に固定されるように構成されるテザー(tether)18とを含む。内側ステント12と外側ステント16との両方は、自己拡張可能な生体適合性材料、例えばニチノールなどの形状記憶合金から形成され得る。あるいは、内側ステント12及び/又は外側ステント16は、バルーン拡張可能であってもよく、又はステントに半径方向外側に加えられる別の力によって拡張可能であってもよい。拡張されると、外側ステント16はそれ自身の上に折り畳まれて(折り重なって)、自然弁輪の心房表面に係合するフランジを形成し、テザー18が張られたときに内側ステント12及び弁アセンブリ14を自然弁輪内に固定するのを助ける。
【0022】
図4を参照すると、内側ステント12は、流入端22と流出端24との間で長手方向軸に沿って延びる。一例では、内側ステント12は、ニチノールチューブなどの金属チューブに所定のパターンをレーザーカットして、尖頭26、ポスト部分28、支柱部分(ストラット部分)30、及び、テザー18を固定する弁ステム32(又は「テザークランプ」)(図3に示す)の4つの部分を形成することによって形成される。支柱部分30は、例えば、ポスト部分28からテザークランプ32まで半径方向内側に延びる6つの支柱を含むことができる。内側ステント12が拡張すると、支柱部分30はポスト部分28とテザークランプ32との間に半径方向移行部を形成し、これは、テザー18が送達装置内に格納されるときに内側ステントのクリンピング(圧縮)を容易にする。ポスト部分28はまた、1つ又は複数の縫合糸によって弁アセンブリ14を内側ステント12に固定するため、及び1つ又は複数の縫合糸によって外側ステント16を内側ステントに固定するための複数の穴36を有する6つの長手方向ポスト34を含んでもよい。図4に示されるように、3つの尖頭26が内側ステント12の流入端22に配置される。各尖頭26は、一対の隣接しない長手方向ポスト34の間に円周方向に配置され、単一の長手方向ポストが、隣接しない長手方向ポストのそれぞれの間に配置される。
【0023】
更に図3を参照すると、弁アセンブリ14は、弁アセンブリを長手方向ポスト34に縫合することによって内側ステント12に固定され得る。弁アセンブリ14は、カフ(cuff)38と、集合的に開閉して一方向弁として機能する複数の弁尖(弁葉:leaflets)40とを含む。カフ38及び弁尖40は、ウシ又はブタの心膜などの任意の適切な生物学的材料、又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ウレタンなどの生体適合性ポリマーで全体的に又は部分的に形成され得る。長手方向ポスト34の穴36は、内側ステント12のポスト部分28への弁尖交連の縫合(又は別の締結具もしくは取り付け機構を介した接続)を容易にする。
【0024】
ここで図3及び図5を参照すると、外側ステント16は、内側ステント12と同じ長手方向軸に沿って心房端42と心室端44との間に延びる。一例では、外側ステント16は、自己拡張型ニチノールチューブなどの金属チューブに所定のパターンをレーザーカットして、心房端に隣接する第1の折り畳み可能部分46、第1の折り畳み可能部分に隣接する第2の折り畳み可能部分48、心室端に隣接する取り付け機構(取り付け特徴部)50、及び第2の折り畳み可能部分と取り付け機構との間に配置される本体部分52の4つの部分を画定することによって形成される。第1及び第2の折り畳み可能部分の構造を明確に示すために、外側ステント16は、拡張されているが軸方向に伸長した(例えば折り畳まれていない)状態で図5に示されている。しかし、外側ステント16は、拡張時に第1の折り畳み可能部分46が第2の折り畳み可能部分48上にカールするようにヒートセット(又は他の方法で予めセット)され、その結果、第1及び第2の折り畳み可能部分は、図3及び図6に示すように、集合的に(協同して)フランジ54を形成することが理解されるであろう。
【0025】
外側ステント16の第1の折り畳み可能部分46、第2の折り畳み可能部分48及び本体部分52は、1つ又は複数の環状列で外側ステントの周りに延びるセル58を形成する複数の支柱(ストラット)56を含み得る。セル58は、ステント16の周囲及びステントの長さに沿って実質的に同じサイズであってもよい。あるいは、本体部分52内で、かつ、外側ステント16の心房端42に近いセル58は、本体部分内で、かつ、ステントの心室端44に近いセルより大きくてもよい。取り付け機構50は、外側ステント16の最も心室側のセル列内に位置する隣接するセル58の心尖部を形成する支柱56から延びることができる。取り付け機構50は、内側ステント12の長手方向ポスト34への外側ステント16の縫合(又は別の締結具もしくは取り付け機構を介した接続)を容易にするアイレット(小穴)60を有し、それによって内側ステントと外側ステントを一緒に固定することができる。一例では、取り付け機構50は、内側ステント12の流出端24に近接した長手方向ポスト34の単一の穴36に縫合されてもよい。
【0026】
更に図3図6、及び図7A図7Dを参照すると、外側ステント16が拡張されると、外側ステントの第2の折り畳み可能部分48は、外側ステントの第2の折り畳み可能部分と本体部分52との間に形成された第1の接合部62を中心に(第1の接合部62回りに)外側へ約90度(例えば、長手方向軸に略直交する方向に)屈曲することができる。外側ステント16の拡張により、第1の折り畳み可能部分46が、第1の折り畳み可能部分と第2の折り畳み可能部分との間に形成された第2の接合部64を中心に(第2の接合部64回りに)約180度カールすることでき、その結果、第1の折り畳み可能部分が第2の折り畳み可能部分と実質的に重なり(オーバーラップし)、第1及び第2の折り畳み可能部分の組み合わせが集合的に、「二重壁」を有する半径方向に延びるフランジ54を形成する。
【0027】
図3に示されるように、外側ステント16の第1の折り畳み可能部分46は、ステントの第2の折り畳み可能部分48の下にカールすることができる。換言すれば、外側ステントが送達状態にあるときに外側ステント16の管腔表面を画定する第1の折り畳み可能部分46の表面は、ステントが展開した状態に拡張されると自然僧帽弁輪の心房表面に係合するようにカールすることができる。あるいは、外側ステント16は、外側ステントが展開状態に移行したときに第1の折り畳み可能部分46が反対方向にカールして第2の折り畳み可能部分48の上に位置するようにヒートセットされてもよい。このようにして、外側ステント16が展開状態にあるときに、外側ステントの第2の部分48の反管腔側表面(abluminal surface)は、自然僧帽弁輪の心房表面と係合することができる。図7Cに示されるような一連のループは、外側ステント16の第1の折り畳み可能部分46及び第2の折り畳み可能部分48の反管腔側表面(外表面)に沿って長手方向に延び得る。縫合糸65は、外側ステント16の心室端44に最も近いループから始まり、各ループを通って、外側ステントの心房端42に隣接するループをまわって、ステントの心室端に向かって各ループを通って戻ることができる。従って、縫合糸65の2つの終端は、外側ステントの第2の折り畳み可能部分48に対して外側ステント16の第1の折り畳み可能部分46をカールさせるのを助けるために使用者によって操作される(例えば、近位方向に引っ張られる)ことができる。
【0028】
好ましい実施形態において、シールカフ(sealing cuff)66は、人工心臓弁10が自然僧帽弁内に移植されるときに自然僧帽弁輪の心房表面に係合するフランジ54の表面上に配置される。シールカフ66は、人工心臓弁10と自然僧帽弁輪との間の空間をシールするために、布地(fabric)、又は生物学的組織もしくは合成組織で形成され得る。一例では、シールカフ66の材料は、複数の別個の部分に分割されてもよく、それらのそれぞれは、単一のセル58を形成する支柱56に、あるいは、比較的少数のセルの周囲を形成する支柱に縫合又は他の方法で固定される。これに関して、別個の部品のそれぞれは、本体部分52に対する第1の折り畳み可能部分46及び第2の折り畳み可能部分48の屈曲を妨げないように、互いに対して屈曲することができる。あるいは、シールカフ66は、材料が伸縮性を有する場合、又は外側ステント16が送達状態から展開状態に移行してフランジ54を形成することを妨げない場合には、単一の材料(単一のピース)から形成されてもよい。
【0029】
特に図3を参照すると、フランジ54は、外側ステント16の本体部分52が自然僧帽弁MV内に配置されたときに、左心房LA内に突出して自然僧帽弁輪の心房表面に係合するように設計されており、それにより、人工心臓弁10が左心室LV内に移動するのを防止する。人工心臓弁10は、外側ステント16の本体部分52によって自然僧帽弁輪に対して及ぼされる半径方向の力によって自然僧帽弁輪内に固定され、フランジ54は自然弁輪の心房表面に係合し、テザー18は心臓の心室壁に固定される。フランジは、自然僧帽弁輪から突出するように設計された人工心臓弁10の唯一の部分である。換言すれば、拡張時に内側ステント12及び外側ステント16は、左心室LV内に延びないように、低心室プロファイル(例えば、約5mm~約15mmの高さ)で設計される。このようにして、人工心臓弁10は、左心室流出路LVOTへの血流を妨げない。低心室プロファイル設計は、部分的には、比較的剛性の二重壁フランジ54のおかげで可能である。人工心臓弁10が自然僧帽弁輪内に移植されると、テザー18は、単壁フランジを有する同様に構成された人工心臓弁で許容されるよりも大きな力で張力をかけることができ、張力が増大する結果として、追加の固定機構の必要性が軽減される。言い換えれば、単壁フランジを有する同様に構成された人工心臓弁のテザーに同じ張力を加えると、単壁フランジが屈曲し、その結果、心臓弁が自然僧帽弁輪を通って左心室に引き込まれ得る。一方、医師が、人工心臓弁を自然僧帽弁輪を通して左心室に引き込むことを恐れて、単壁フランジを有する人工心臓弁に張力を加えると、患者はPVLを発症する危険性がある。
【0030】
収縮期前方運動(SAM)防止機構(防止特徴部)は、例えば外側ステント16上に任意に設けられてもよい。SAM(例えば、自然前尖ALの自由端の左心室流出路LVOTへの変位)は、重度の左心室流出路LVOT閉塞及び/又は僧帽弁逆流を引き起こす可能性がある。SAMの発生を防止するため、又はその可能性を少なくとも大幅に低減するために、旋回アーム68(図3及び図8に示す)を外側ステント16の前側(anterior side)に取り付けることができる。図8に示されるように、旋回アーム68は、端70で、外側ステント16の支柱56に取り付け点で取り付けられる2つのアームセグメントを含み、ループ部分72を備え、ループ部分72がアームセグメントの他端同士を互いに接続できる。旋回アーム68は、患者への人工心臓弁10の送達中にループ部分72が心室方向(例えば、内側ステント12の流入端22から離れる方向)に向く収縮状態(折り畳まれた状態)から、ループ部分が実質的に心房方向(例えば、内側ステントの流入端に向かう方向)に向き、かつ、旋回アームと外側ステントの反管腔側表面との間に自然前尖をクランプする(挟み込む)ようにアームセグメントが取り付け点を中心に回転する拡張状態(展開状態)まで、移行可能であるように、外側ステント16に旋回可能に取り付けられ得る。縫合糸73又は他の索は、旋回アーム68に設けられたリングを通してループ状に巻き付けられ、医師が索の張力を解放し終わるまで、送達中に旋回アームが収縮状態から拡張状態に移行するのを防ぐために使用され得る。
【0031】
好ましい実施形態では、図3に示されるように、人工心臓弁10は、内側スカート74及び外側スカート76を含み得る。外側スカート76は、外側ステント16の本体部分52の反管腔側表面の周りに配置され、組織の内方成長を促進するポリエステルなどの布地で形成され得る。外側スカート76の布地は、シールカフ66を形成する材料とは独立した別個の材料であることが好ましい。この点に関して、外側スカート76は、外側ステント16の送達状態から展開状態への移行及びフランジ54の形成を妨げない。しかし、他の実施形態では、外側スカート76の布地は、材料がフランジ54の形成を妨げない伸縮性材料で形成されている場合、シールカフ66と一体的に形成されてもよく、あるいはシールカフに接続されてもよい。内側スカート74は、外側ステント16の管腔表面の周りに配置され得、ウシ又はブタの心膜などの任意の適切な生体材料、又はPTFE、ウレタン又は同様の材料などの任意の適切な生体適合性ポリマーで形成され得る。生体組織は、内側ステント12と外側ステント16を橋渡しし、背圧や材料の膨張を防ぐために縫合糸で補強することができる。人工心臓弁10が自然僧帽弁輪内に移植されると、内側スカート74及び外側スカート76はシールカフ66と協働して僧帽弁逆流、又は人工心臓弁10と自然僧帽弁輪との間の血流を防止する。一実施形態では、内側スカート74及び外側スカート76は、外側ステント16の心房端42と、外側ステントの本体部分52と取り付け機構50との間の接合部との間にのみ延びることで、外側ステントの内側ステント12への縫合を容易にしている。
【0032】
次に、機能不全の自然心臓弁(自然僧帽弁など)、又は以前に移植され機能不全に陥った人工心臓弁を修復するための人工心臓弁10の使用について、図3図6図7A図7D図8を参照して説明する。人工心臓弁10は本明細書では経心尖アプローチを使用して自然僧帽弁を修復するものとして説明されているが、人工心臓弁は、経中隔又は他の適切なアプローチを使用して自然僧帽弁を修復するために、ならびに任意の適切なアプローチを使用して大動脈弁などの他の心臓弁を修復するために使用され得ることが理解されよう。
【0033】
テザー18の第1の端が内側ステント12のクランプ32に固定された状態で、医師は、漏斗などの装填装置(図示せず)を通してテザーの自由端を引っ張って、内側ステント12をクリンピング(圧縮)又は折り畳み、外側ステント16を拡張又は展開状態から折り畳まれ又は送達状態に移行させることができる。人工心臓弁10が折り畳まれた後、人工心臓弁は、医師が操作できるように、テザー18の自由端が送達装置の後端(図示せず)に向かって後方に延びた状態で送達装置100内に装填され得る。
【0034】
患者の肋骨間及び心尖部への切開が行われた後、送達装置100は、経心尖アプローチを使用して患者に導入され、自然僧帽弁輪に隣接する移植部位に送達され得る。送達装置100が標的部位に到達すると、送達シース104の先端102が左心房LA内に配置され、送達シースを後退させて外側ステント16の心房端42を露出させると、外側ステント16が拡張して送達状態から展開状態に移行することが可能になる。
【0035】
図7A図7Dに示されるように、外側ステント16の拡張により、ステントの第2の折り畳み可能部分48は、第2の折り畳み可能部分が長手方向軸に対して略直交する方向に配向されるまで、第1の接合部62を中心に半径方向外側へ旋回する。外側ステント16の拡張により、第1の折り畳み可能部分46が第2の折り畳み可能部分の下に位置するまで第2の接合部64を中心にカールし、それによって二重壁フランジ54が形成される。特定の実施形態では、第2の接合部64を中心に第1折り畳み可能部分46をカールさせることは、医師が縫合糸65の終端を近位方向に引っ張ることによって補助され得る。二重壁フランジ54が形成された後、医師は、フランジ54、より具体的には第1の折り畳み可能部分46が自然僧帽弁輪の心房表面に係合するまで、送達装置100を近位方向に後退させることができる。送達装置100が後退するときに人工心臓弁10が後退するのを防ぐために、プッシャ又は同様の部材を利用することができる。フランジ54を僧帽弁輪の心房表面に係合させた状態で、医師は更に人工心臓弁10からシースを外すことができ、これにより、外側ステント16の本体部分52が拡張して自然弁輪に係合できると同時に、内側ステント12が外側ステント内で折り畳まれた状態から拡張した状態に拡張することもできる。内側ステント12及び外側ステント16が拡張された後、医師は、人工心臓弁10が自然僧帽弁を通る適切な血流を回復したかどうかを特定することができる。より具体的には、医師は、1)弁アセンブリ14が適切に機能しているかどうか、2)人工心臓弁10が自然弁輪内に適切に設置されて、人工心臓弁と自然僧帽弁輪との間にシールが形成されているかどうか、を特定することができる。
【0036】
弁アセンブリ14が機能不全に陥っている、又は人工心臓弁10が自然僧帽弁輪内に正しく配置されていないと医師が特定した場合、医師は人工心臓弁を再捕捉することができる。人工心臓弁10を再捕捉するには、医師は、テザー18を送達装置100の後端に向かって引っ張ることができ、それにより、人工心臓弁を後退させ、内側ステント12の支柱部分30を送達シース104の先端102に係合させ、内側ステントとそれとともに外側ステント16を、送達シースの先端に挿入できる直径までクリンピング(圧縮)する。弁アセンブリ14が意図したとおりに機能しているが、人工心臓弁10が自然僧帽弁輪内に誤って配置されていた場合、医師は、前述したように、自然僧帽弁輪に対して送達シースを再配置し、人工心臓弁を再展開する前に、送達装置100内で人工心臓弁を部分的に折り畳むだけでよい。あるいは、弁アセンブリ14が機能不全に陥っていた場合には、人工心臓弁10を完全に再捕捉して患者から除去してもよい。その後、医師は、異なる人工心臓弁10を用いて上記の手順を繰り返すことができる。
【0037】
場合によっては、医師は、SAMを防止するために、自然僧帽弁MVの自然前尖ALを人工僧帽弁10の外側ステント16に固定することが望ましいと考える場合がある。所望の場合、医師は、旋回アーム68を有する人工心臓弁10を使用することができ、旋回アーム68は、シースから外され、縫合糸73から張力が解放されると、収縮状態から拡張状態へ自動的に旋回して、自然弁尖を人工心臓弁10に固定し、左心室流出路から遠ざける。
【0038】
人工心臓弁10が適切に配置され、弁尖40が適切に接合していることを医師が確認した後、医師は、切開部を通して心尖パッド20を挿入し、その後、テザー18と心尖パッド20とを結合してテザーに張力を加えることができる。図7Dに示されるように、テザー18の自由端を送達シース104の後端に向かって引っ張ることによってテザーに張力を与えると、第1の折り畳み可能部分46と第2の折り畳み可能部分48とが一緒に圧縮され、また、フランジ54上に配置されたシールカフ66が自然僧帽弁輪の心房表面を押し付け、それによってフランジと自然僧帽弁輪の心房表面との間の空間をシールする。従って、人工心臓弁10の二重壁フランジ54は、自然僧帽弁輪内で人工心臓弁を安定させ、弁周囲漏出を防止すると同時に、低プロファイル(薄型)人工心臓弁を自然僧帽弁輪内の比較的高い位置(例えば、弁輪の心房表面に配置された平面内)に位置させることを可能にし、その結果、人工心臓弁が左心室流出路への血流を妨げないようにすることができる。
【0039】
心尖パッド20は、経心尖穿刺部位で左心室LVの外面と接触して配置され、次いで、テザー18にロックされ、テザーが張力を解放するのを防止できる。次に、医師は、心臓の外側に位置するテザーを切断し、その後、テザーの切断部分及び送達装置100を患者から除去することができる。人工心臓弁10が患者の自然僧帽弁輪内に適切に配置され固定されると、人工心臓弁は、血液の逆流を防ぎながら、血液が一方向に(例えば、左心房から左心室へ)流れることを可能にすることによって心臓弁の適切な機能を回復する一方向弁として機能し得る。
【0040】
上記を要約すると、人工心臓弁は、流入端と流出端とを有する拡張可能なステントと;ステント内に配置され、かつ、カフ及び複数の弁尖を含む弁アセンブリと;内側ステントに固定され、かつ、内側ステントを少なくとも部分的に取り囲む外側ステントと;テザーと;を有し、外側ステントは、心房端と心室端とを有し、外側ステントが軸方向に伸長する送達状態から、外側ステントの第1の部分と外側ステントの第2の部分とが集合的に、自然弁輪の心房表面に係合する大きさのフランジを形成するように、外側ステントの第1の部分が外側ステントの第2の部分上に折り畳まれる展開状態まで、拡張可能であり、テザーは、人工心臓弁を自然弁輪内に固定する、及び/又は
外側ステントは、外側ステントの第2の部分と心室端との間に配置される本体部分を更に有することができ、本体部分は、外側ステントが展開状態にあるときに自然弁輪内に位置するような形状にすることができる、及び/又は
外側ステントは、本体部分と第2の部分との間に第1の接合部を有することができ、第2の部分は、外側ステントが送達状態から展開状態に移行するときに、第1の接合部を中心に(第1の接合部回りに)外側へ旋回可能であってもよい、及び/又は
外側ステントは、第1の部分と第2の部分との間に第2の接合部を有することができ、外側ステントが送達状態から展開状態に移行するときに、第1の部分は第2の部分の下に屈曲することができる、及び/又は
外側ステントは、第1の部分と第2の部分との間に第2の接合部を有することができ、外側ステントが送達状態から展開状態に移行するときに、第1の部分は第2の部分の上に位置するように屈曲可能であってもよい。
【0041】
外側ステントは、外側ステントが展開状態にあるときに、外側ステントの第1の接合部と心室端との間の距離を約5mmと約15mmとの間で規定し得る、及び/又は
人工心臓弁は、人工心臓弁と自然弁輪との間の空間をシールするために、フランジの表面上に配置されるシールカフを更に有することができる、及び/又は
シールカフは伸縮性のある布地で形成されてもよい、及び/又は
シールカフは、複数の別個の布片から形成されてもよい、及び/又は
人工心臓弁は、旋回点で外側ステントの前側に結合される旋回アームを更に有することができ、旋回アームは外側ステントが送達状態にあるときに旋回アームの自由端が心室方向に延びる収縮状態(折り畳まれた状態)と、自然前尖が旋回アームと外側ステントとの間にクランプされる(挟み込まれる)拡張状態との間で旋回可能である、及び/又は
人工心臓弁は、テザーを心臓の心室壁に固定するための心尖パッドを更に有することができる。
【0042】
別の実施形態では、人工心臓弁は、流入端と流出端とを有する拡張可能な内側ステントと;内側ステント内に配置され、かつ、カフ及び複数の弁尖を含む弁アセンブリと;内側ステントに固定され、かつ、内側ステントを少なくとも部分的に取り囲む外側ステントと;シールカフと;テザーと;を有し、外側ステントは、第1の折り畳み可能部分、第2の折り畳み可能部分、本体部分、第2の折り畳み可能部分と本体部分との間の第1の接合部、及び、第1の折り畳み可能部分と第2の折り畳み可能部分との間の第2の接合部を有し、外側ステントは、第1の折り畳み可能部分と第2の折り畳み可能部分と本体部分とが実質的に一列に並ぶ送達状態から、第2の折り畳み可能部分が本体部分に対して第1の接合部を中心に(第1の接合部回りに)外側へ旋回し、第1の折り畳み可能部分と第2の折り畳み可能部分とが集合的に、自然弁輪の心房表面に係合する大きさの二重壁フランジを形成するように、第1の折り畳み可能部分が第2の接合部を中心に(第2の接合部の周りで)カールする展開状態まで、拡張可能であり、シールカフは、二重壁フランジの表面上に配置され、テザーは、人工心臓弁を自然弁輪内に固定する、及び/又は
外側ステントが展開状態にある場合に、第1の折り畳み可能部分は第2の折り畳み可能部分の下にカールし得、シールカフは第1の折り畳み可能部分の表面上に配置され得る、及び/又は
外側ステントが展開状態にある場合に、第1の折り畳み可能部分はカールして第2の折り畳み可能部分を覆うことができ、シールカフは第2の折り畳み可能部分の表面上に配置され得る、及び/又は
人工心臓弁は、本体部分の反管腔側表面上に配置されて内方成長を促進するように構成される布地を更に有することができる。
【0043】
別の実施形態では、人工心臓弁を移植する方法が提供され、これは、自然弁輪に隣接する標的部位に送達装置を送達するステップであって、送達装置は、内側ステントと、内側ステント内に配置される弁アセンブリと、内側ステントに固定され、かつ、内側ステントを少なくとも部分的に取り囲む外側ステントと、テザーとを含む人工心臓弁を保持する、ステップと;人工心臓弁を送達装置から展開し、外側ステントの第1の部分が外側ステントの第2の部分上にカールすることを可能にするステップであって、第1の部分と第2の部分とが集合的にフランジを形成するステップと;フランジを自然弁輪の心房表面に係合させるステップと;テザーに張力をかけるステップと;テザーを心臓の壁に固定するステップと;を含む、及び/又は
張力をかけるステップは、第1の部分と第2の部分とを互いに向かって圧縮することができる、及び/又は
送達ステップは、経心尖アプローチを使用して人工心臓弁を自然僧帽弁輪に経皮的に送達することを含んでもよい、及び/又は
送達ステップは、経中隔アプローチを使用して人工心臓弁を自然僧帽弁輪に経皮的に送達することを含んでもよい、及び/又は
この方法は、外側ステントの前側に結合された旋回アームを旋回させるステップと、患者の左心室流出路から離れた外側ステントの反管腔側表面に対して自然前尖をクランプする(固定する)ステップと、を更に含むことができる。
【0044】
本発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、これらの実施形態は本発明の原理及び応用を単に例示するものであることを理解されたい。従って、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に多くの修正を加え得ること、及び他の構成を考案し得ることが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-12-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工心臓弁であって、
流入端と流出端とを有する拡張可能な内側ステントと、
前記内側ステント内に配置され、かつ、カフ及び複数の弁尖を含む弁アセンブリと、
前記内側ステントに固定され、かつ、前記内側ステントを少なくとも部分的に取り囲む外側ステントと、
テザーと、
を有し、
前記外側ステントは、心房端と心室端とを有し、
前記外側ステントは、前記外側ステントが軸方向に伸長する送達状態から、前記外側ステントの第1の部分と前記外側ステントの第2の部分とが集合的に、自然弁輪の心房表面に係合する大きさのフランジを形成するように、前記第1の部分が前記第2の部分上に折り畳まれる展開状態まで、拡張可能であり、
前記テザーは、前記人工心臓弁を前記自然弁輪内に固定する、人工心臓弁。
【請求項2】
前記外側ステントは、前記外側ステントの前記第2の部分と前記心室端との間に配置される本体部分を更に有し、前記本体部分は、前記外側ステントが前記展開状態にあるときに前記自然弁輪内に収まるように形作られる、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項3】
前記外側ステントは、前記本体部分と前記第2の部分との間に第1の接合部を有し、前記第2の部分は、前記外側ステントが前記送達状態から前記展開状態に移行するときに、前記第1の接合部を中心に外側へ旋回可能である、請求項2に記載の人工心臓弁。
【請求項4】
前記外側ステントは、前記第1の部分と前記第2の部分との間に第2の接合部を有し、前記外側ステントが前記送達状態から前記展開状態に移行するときに、前記第1の部分が前記第2の部分の下に屈曲可能である、請求項3に記載の人工心臓弁。
【請求項5】
前記外側ステントは、前記第1の部分と前記第2の部分との間に第2の接合部を有し、前記外側ステントが前記送達状態から前記展開状態に移行するときに、前記第1の部分が前記第2の部分の上に位置するように屈曲可能である、請求項3に記載の人工心臓弁。
【請求項6】
前記外側ステントが前記展開状態にあるときに、前記外側ステントの前記第1の接合部と前記心室端との間の距離が約5mm~約15mmである、請求項3に記載の人工心臓弁。
【請求項7】
前記人工心臓弁と前記自然弁輪との間の空間をシールするために前記フランジの表面上に配置されるシールカフを更に有する、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項8】
前記シールカフは、伸縮性のある布地で形成されている、請求項7に記載の人工心臓弁。
【請求項9】
前記シールカフが複数の別個の布片から形成されている、請求項7に記載の人工心臓弁。
【請求項10】
旋回点において前記外側ステントの前側に結合される旋回アームを更に有し、
前記旋回アームは、前記外側ステントが前記送達状態にあるときに前記旋回アームの自由端が心室方向に延びる収縮状態と、自然前尖が前記旋回アームと前記外側ステントとの間にクランプされる拡張状態との間で旋回可能である、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項11】
前記テザーを心臓の心室壁に固定するための心尖パッドを更に有する、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項12】
人工心臓弁であって、
流入端と流出端とを有する拡張可能な内側ステントと、
前記内側ステント内に配置され、かつ、カフ及び複数の弁尖を含む弁アセンブリと、
前記内側ステントに固定され、かつ、前記内側ステントを少なくとも部分的に取り囲む外側ステントと、
シールカフと、
テザーと、
を有し、
前記外側ステントは、第1の折り畳み可能部分、第2の折り畳み可能部分、本体部分、前記第2の折り畳み可能部分と前記本体部分との間の第1の接合部、及び、前記第1の折り畳み可能部分と前記第2の折り畳み可能部分との間の第2の接合部を有し、
前記外側ステントは、前記第1の折り畳み可能部分と前記第2の折り畳み可能部分と前記本体部分とが実質的に一列に並ぶ送達状態から、前記第2の折り畳み可能部分が前記本体部分に対して前記第1の接合部を中心に外側へ旋回し、前記第1の折り畳み可能部分と前記第2の折り畳み可能部分とが集合的に、自然弁輪の心房表面に係合する大きさの二重壁フランジを形成するように、前記第1の折り畳み可能部分が前記第2の接合部を中心にカールする展開状態まで、拡張可能であり、
前記シールカフは、前記二重壁フランジの表面に配置され、
前記テザーは、前記人工心臓弁を前記自然弁輪内に固定する、人工心臓弁。
【請求項13】
前記外側ステントが前記展開状態にあり、かつ、前記シールカフが前記第1の折り畳み可能部分の表面上に配置されている場合に、前記第1の折り畳み可能部分が前記第2の折り畳み可能部分の下にカールする、請求項12に記載の人工心臓弁。
【請求項14】
前記外側ステントが前記展開状態にあり、かつ、前記シールカフが前記第2の折り畳み可能部分の表面上に配置されている場合に、前記第1の折り畳み可能部分がカールして前記第2の折り畳み可能部分を覆う、請求項12に記載の人工心臓弁。
【請求項15】
前記本体部分の反管腔側表面上に配置されて内方成長を促進するように構成される布地を更に有する、請求項12に記載の人工心臓弁。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
本発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、これらの実施形態は本発明の原理及び応用を単に例示するものであることを理解されたい。従って、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に多くの修正を加え得ること、及び他の構成を考案し得ることが理解されるべきである。
尚、出願当初の請求項は以下のとおりであった。
[請求項1]
人工心臓弁であって、
流入端と流出端とを有する拡張可能な内側ステントと、
前記内側ステント内に配置され、かつ、カフ及び複数の弁尖を含む弁アセンブリと、
前記内側ステントに固定され、かつ、前記内側ステントを少なくとも部分的に取り囲む外側ステントと、
テザーと、
を有し、
前記外側ステントは、心房端と心室端とを有し、
前記外側ステントは、前記外側ステントが軸方向に伸長する送達状態から、前記外側ステントの第1の部分と前記外側ステントの第2の部分とが集合的に、自然弁輪の心房表面に係合する大きさのフランジを形成するように、前記第1の部分が前記第2の部分上に折り畳まれる展開状態まで、拡張可能であり、
前記テザーは、前記人工心臓弁を前記自然弁輪内に固定する、人工心臓弁。
[請求項2]
前記外側ステントは、前記外側ステントの前記第2の部分と前記心室端との間に配置される本体部分を更に有し、前記本体部分は、前記外側ステントが前記展開状態にあるときに前記自然弁輪内に収まるように形作られる、請求項1に記載の人工心臓弁。
[請求項3]
前記外側ステントは、前記本体部分と前記第2の部分との間に第1の接合部を有し、前記第2の部分は、前記外側ステントが前記送達状態から前記展開状態に移行するときに、前記第1の接合部を中心に外側へ旋回可能である、請求項2に記載の人工心臓弁。
[請求項4]
前記外側ステントは、前記第1の部分と前記第2の部分との間に第2の接合部を有し、前記外側ステントが前記送達状態から前記展開状態に移行するときに、前記第1の部分が前記第2の部分の下に屈曲可能である、請求項3に記載の人工心臓弁。
[請求項5]
前記外側ステントは、前記第1の部分と前記第2の部分との間に第2の接合部を有し、前記外側ステントが前記送達状態から前記展開状態に移行するときに、前記第1の部分が前記第2の部分の上に位置するように屈曲可能である、請求項3に記載の人工心臓弁。
[請求項6]
前記外側ステントが前記展開状態にあるときに、前記外側ステントの前記第1の接合部と前記心室端との間の距離が約5mm~約15mmである、請求項3に記載の人工心臓弁。
[請求項7]
前記人工心臓弁と前記自然弁輪との間の空間をシールするために前記フランジの表面上に配置されるシールカフを更に有する、請求項1に記載の人工心臓弁。
[請求項8]
前記シールカフは、伸縮性のある布地で形成されている、請求項7に記載の人工心臓弁。
[請求項9]
前記シールカフが複数の別個の布片から形成されている、請求項7に記載の人工心臓弁。
[請求項10]
旋回点において前記外側ステントの前側に結合される旋回アームを更に有し、
前記旋回アームは、前記外側ステントが前記送達状態にあるときに前記旋回アームの自由端が心室方向に延びる収縮状態と、自然前尖が前記旋回アームと前記外側ステントとの間にクランプされる拡張状態との間で旋回可能である、請求項1に記載の人工心臓弁。
[請求項11]
前記テザーを心臓の心室壁に固定するための心尖パッドを更に有する、請求項1に記載の人工心臓弁。
[請求項12]
人工心臓弁であって、
流入端と流出端とを有する拡張可能な内側ステントと、
前記内側ステント内に配置され、かつ、カフ及び複数の弁尖を含む弁アセンブリと、
前記内側ステントに固定され、かつ、前記内側ステントを少なくとも部分的に取り囲む外側ステントと、
シールカフと、
テザーと、
を有し、
前記外側ステントは、第1の折り畳み可能部分、第2の折り畳み可能部分、本体部分、前記第2の折り畳み可能部分と前記本体部分との間の第1の接合部、及び、前記第1の折り畳み可能部分と前記第2の折り畳み可能部分との間の第2の接合部を有し、
前記外側ステントは、前記第1の折り畳み可能部分と前記第2の折り畳み可能部分と前記本体部分とが実質的に一列に並ぶ送達状態から、前記第2の折り畳み可能部分が前記本体部分に対して前記第1の接合部を中心に外側へ旋回し、前記第1の折り畳み可能部分と前記第2の折り畳み可能部分とが集合的に、自然弁輪の心房表面に係合する大きさの二重壁フランジを形成するように、前記第1の折り畳み可能部分が前記第2の接合部を中心にカールする展開状態まで、拡張可能であり、
前記シールカフは、前記二重壁フランジの表面に配置され、
前記テザーは、前記人工心臓弁を前記自然弁輪内に固定する、人工心臓弁。
[請求項13]
前記外側ステントが前記展開状態にあり、かつ、前記シールカフが前記第1の折り畳み可能部分の表面上に配置されている場合に、前記第1の折り畳み可能部分が前記第2の折り畳み可能部分の下にカールする、請求項12に記載の人工心臓弁。
[請求項14]
前記外側ステントが前記展開状態にあり、かつ、前記シールカフが前記第2の折り畳み可能部分の表面上に配置されている場合に、前記第1の折り畳み可能部分がカールして前記第2の折り畳み可能部分を覆う、請求項12に記載の人工心臓弁。
[請求項15]
前記本体部分の反管腔側表面上に配置されて内方成長を促進するように構成される布地を更に有する、請求項12に記載の人工心臓弁。
[請求項16]
人工心臓弁を移植する方法であって、
送達装置を自然弁輪に隣接する標的部位に送達するステップであって、前記送達装置は、内側ステントと、前記内側ステント内に配置される弁アセンブリと、前記内側ステントに固定され、かつ、少なくとも部分的に前記内側ステントを取り囲む外側ステントと、テザーとを含む人工心臓弁を保持する、ステップと、
前記人工心臓弁を前記送達装置から展開し、前記外側ステントの第1の部分が前記外側ステントの第2の部分上にカールすることを可能にするステップであって、前記第1の部分と前記第2の部分とが集合的にフランジを形成する、ステップと、
前記フランジを自然弁輪の心房表面に係合させるステップと、
前記テザーに張力をかけるステップと、
前記テザーを心臓の壁に固定するステップと、を含む、方法。
[請求項17]
前記張力をかけるステップが、前記第1の部分と前記第2の部分とを互いに向かって圧縮する、請求項16に記載の方法。
[請求項18]
前記送達するステップが、経心尖アプローチを使用して前記人工心臓弁を自然僧帽弁輪に経皮的に送達するステップを含む、請求項16に記載の方法。
[請求項19]
前記送達するステップが、経中隔アプローチを使用して前記人工心臓弁を自然僧帽弁輪に経皮的に送達するステップを含む、請求項16に記載の方法。
[請求項20]
前記外側ステントの前側に結合された旋回アームを旋回させるステップと、
患者の左心室流出路から離れた前記外側ステントの反管腔側表面に対して自然前尖をクランプするステップと、を更に含む、請求項16に記載の方法。
【国際調査報告】