(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】凍結乾燥タンパク質製剤を製造する迅速な方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/19 20060101AFI20240524BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240524BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240524BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240524BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240524BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240524BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240524BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240524BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240524BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240524BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240524BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240524BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
A61K9/19
A61K39/395 Y
A61K39/395 W
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/22
A61K47/18
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/34
A61K47/10
A61P43/00 111
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573384
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 US2022031694
(87)【国際公開番号】W WO2022256359
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マコーミック,ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】マコーリー,アーノルド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076CC03
4C076DD26Z
4C076DD41Z
4C076DD42Z
4C076DD43Z
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4C076DD58Z
4C076DD67
4C076EE23F
4C076FF12
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4C076GG06
4C085AA13
4C085CC22
4C085EE01
4C085EE05
4C085EE07
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書では、改善された貯蔵安定性を示す、抗体又は二重特異性抗原結合分子などのタンパク質を含む凍結乾燥製剤を調製する迅速な方法が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結乾燥製剤を調製する方法であって、
(a)タンパク質、糖類及び界面活性剤を含む液体製剤を収容している凍結乾燥チャンバーを約-35℃~約-50℃の範囲の温度まで冷却して、凍結製剤を作製し、且つ前記チャンバーを約-40℃~約-50℃の範囲の温度で約1.5時間~約5.0時間の時間にわたって保持する工程;
(b)前記チャンバーを約-30℃~約-20℃の範囲の温度及び約75mTorr~約125mTorrの範囲の圧力まで加熱して、一次乾燥製剤を作製し、且つ前記チャンバーを約-30℃~約-20℃の範囲の温度及び約75mTorr~約125mTorrの範囲の圧力で約12時間~約24時間の時間にわたって保持する工程;
(c)前記チャンバーを約20℃~約30℃の範囲の温度まで加熱して、二次乾燥製剤を作製し、且つ前記チャンバーを約20℃~約30℃の範囲の温度及び約50mTorr~約100mTorrの範囲の圧力で約5時間~約12時間の時間にわたって保持して、前記凍結乾燥製剤を作製する工程
を含み;前記液体製剤は、約3~7のpHを有し、且つマンニトールを含有せず;及び前記方法は、アニーリング工程を欠く、方法。
【請求項2】
前記工程(a)の冷却は、約-45℃の温度まで行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(a)の冷却は、約0.3℃/分~約1℃/分の範囲の速度で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(a)の冷却は、約0.5℃/分の速度で行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(a)の保持は、約-45℃の温度で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(a)の保持は、約1.5時間~約5時間の時間にわたって行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(a)の保持は、約2~3時間にわたって行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(b)の加熱は、約-25℃~-30℃の温度まで行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程(b)の加熱は、約0.1℃/分~約1℃/分の範囲の速度で行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記工程(b)の加熱は、約0.1℃/分~約0.5℃/分の範囲の速度で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記工程(b)の加熱は、約0.3℃/分の速度で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(b)の加熱は、約75mTorr~約125mTorrの範囲の圧力で行われる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(b)の加熱は、約100mTorrの圧力で行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記工程(b)の保持は、約-25℃~約-30℃の温度で行われる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記工程(b)の保持は、約75mTorr~約125mTorrの範囲の圧力で行われる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記工程(b)の保持は、約100mTorrの圧力で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記工程(b)の保持は、約10時間~約25時間の時間にわたって行われる、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記工程(b)の保持は、約17時間にわたって行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記工程(c)の加熱は、約25℃の温度まで行われる、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
工程(c)の加熱昇温速度は、約0.5℃/分までの範囲の速度で生じる、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
工程(c)の前記加熱昇温速度は、約0.1℃/分~約0.5℃/分の範囲の速度で生じる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記工程(c)の加熱は、約0.4℃/分の速度で行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記工程(c)の保持は、約25℃の温度で行われる、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記工程(c)の保持は、約50mTorr~約100mTorrの範囲の圧力で行われる、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記工程(c)の保持は、約70mTorrの圧力で行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記工程(c)の保持は、約8時間にわたって行われる、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記タンパク質は、抗体である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記タンパク質は、二重特異性抗原結合分子である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記二重特異性抗原結合分子は、半減期延長(HLE)二重特異性抗原結合分子である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記HLE二重特異性抗原結合分子は、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号33、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号55、配列番号65、配列番号66、配列番号76、配列番号77、配列番号87、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号121、配列番号122、配列番号131、配列番号141、配列番号142、配列番号146、配列番号147、配列番号156、配列番号165、配列番号174、配列番号183、配列番号184、配列番号185、配列番号186、配列番号187又は配列番号188に示されたアミノ酸配列を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記HLE二重特異性抗原結合分子は、配列番号22、配列番号77、配列番号87又は配列番号97に示されたアミノ酸配列を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記タンパク質は、前記液体製剤中に約0.1mg/mL~約100mg/mLの範囲の濃度で存在する、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記タンパク質は、約0.1mg/mL~約70mg/mLの範囲の濃度で存在する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記タンパク質は、約0.5mg/mL~約30mg/mLの範囲の濃度で存在する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記タンパク質は、約1mg/mL~約20mg/mLの範囲の濃度で存在する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記タンパク質は、約1mg/mLの濃度で存在する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記工程(a)の液体製剤は、約4~6のpHを有する、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記工程(a)の液体製剤は、緩衝剤をさらに含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記緩衝剤は、酢酸緩衝剤、グルタミン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、乳酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、フマル酸緩衝剤、マレイン酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、リン酸緩衝剤、2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸緩衝剤又はこれらの任意の組み合わせである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記緩衝剤は、グルタミン酸を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記緩衝剤は、約5mM~約200mMの範囲の濃度で存在する、請求項38~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記緩衝剤は、約10mM~約50mMの範囲の濃度で存在する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記緩衝剤は、約10mMの濃度で存在する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記糖類は、単糖又は二糖である、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記糖類は、グルコース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース又はこれらの任意の組み合わせである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記糖類は、スクロースである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記糖類は、前記液体製剤中に約1~約15%(w/v)の範囲の濃度で存在する、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記糖類は、約6%~12%(w/v)の範囲の濃度で存在する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記糖類は、約9%(w/v)の濃度で存在する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポロキサマー188、ポロキサマー407、トリトンX-100、ポリオキシエチレン、PEG3350、PEG4000又はこれらの組み合わせである、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記界面活性剤は、ポリソルベート80である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記界面活性剤は、前記液体製剤中に約0.001%~0.5%(w/v)の範囲の濃度で存在する、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記界面活性剤は、約0.001%~0.01%(w/v)の範囲の濃度で存在する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記界面活性剤は、約0.01%(w/v)の濃度で存在する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記工程(a)の液体製剤は、約4~約5のpHを有する、請求項1~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記工程(a)の液体製剤は、約4.2のpHを有し、且つ約10mMのL-グルタミン酸、約9.0%(w/v)のスクロース及び約0.010%(w/v)のポリソルベート80を含む、請求項1~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記凍結乾燥製剤は、再構成時、40℃で1か月にわたる貯蔵後に高分子量種の割合の0.5%以下の上昇を示す、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記凍結乾燥製剤は、再構成時、40℃で1か月にわたる貯蔵後に高分子量種の割合の0.3%以下の上昇を示す、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
請求項1~58のいずれか一項に記載の方法によって調製された凍結乾燥タンパク質製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、改善された貯蔵安定性を示す、抗体又は二重特異性抗原結合分子などのタンパク質を含む凍結乾燥製剤を調製する迅速な方法を提供する。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
本明細書と同時に提出された、コンピュータにより読み込み可能なヌクレオチド/アミノ酸の配列表は、その全体が参照により組み込まれ、下記のように識別される:ファイル名:I-56846_Seqlisting.txt;サイズ:345,286バイト;作成日:2022年5月12日。
【背景技術】
【0003】
抗体、抗体断片及び二重特異性抗原結合分子を含有する医薬品などのタンパク質系医薬品は、様々な疾患及び病態の治療のために一層重要になっている。しかしながら、タンパク質は、辛うじて安定であるにすぎず、化学的にも物理的にも非常に劣化しやすい。化学的劣化とは、脱アミド、酸化、開裂、クリッピング/断片化、新たなジスルフィド架橋の形成、加水分解、異性化又は脱グリコシル化などの共有結合を伴う改変を指す。物理的劣化には、タンパク質のアンフォールディング、表面への望ましくない吸着及び凝集が含まれる。これらの物理的及び化学的な不安定性への対処は、タンパク質医薬品の開発において最も難しい課題の1つである(Chi et al.,Pharm Res,Vol.20,No.9,Sept 2003,pp.1325-1336,Roberts,Trends Biotechnol.2014 Jul;32(7):372-80)。
【0004】
半減期延長抗原結合分子(例えば、Fc分子などの半減期延長様式を含む二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))は、特にタンパク質凝集及び/又は他の劣化事象から保護する必要がある。BiTE(登録商標)分子のタンパク質凝集が問題となるのは、それが治療用タンパク質の生物学的活性及び品質(仕様)を弱めることがあるためである。さらに、BiTE(登録商標)分子の凝集は、最終生成物から凝集体を除去するために必要とされる綿密な精製工程により生成物収率を低下させる可能性がある。より最近では、凝集したタンパク質(ヒト化タンパク質又は完全なヒトタンパク質であっても)の存在により、患者は、活性タンパク質モノマーに対する免疫反応を起こすことになり、その結果、中和抗体及び薬物耐性の形成又は他の有害な副作用がもたらされるというリスクが顕著に増大する可能性があるといった懸念及びエビデンスも増加している(Mahler J Pharm Sci.2009 Sep;98(9):2909-34)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Chi et al.,Pharm Res,Vol.20,No.9,Sept 2003,pp.1325-1336,Roberts,Trends Biotechnol.2014 Jul;32(7):372-80
【非特許文献2】Mahler J Pharm Sci.2009 Sep;98(9):2909-34
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タンパク質系医薬製剤は、貯蔵中の製剤中の抗体又は二重特異性抗原結合分子などのタンパク質の完全性の保存を促進するために、凍結乾燥され、固体で貯蔵されることが多い。しかしながら、多数の現行のタンパク質製剤の凍結乾燥法では、時間が経過しても好適な安定性を示し、且つ知られた方法に比べて迅速に製造される固体製剤が得られない。したがって、改善された貯蔵安定性を示す凍結乾燥タンパク質製剤を迅速に製造する新規の方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様では、本開示は、凍結乾燥製剤を調製する方法であって、(a)タンパク質、[糖類及び界面活性剤]を含む液体製剤を収容している凍結乾燥チャンバーを約-35℃~約-50℃の範囲の温度まで冷却して、凍結製剤を作製し、且つチャンバーを約-40℃~約-50℃の範囲の温度で約1.0時間~約3.0時間の時間にわたって保持する工程;(b)チャンバーを約-35℃~約-20℃の範囲の温度及び約75mTorr~約125mTorrの範囲の圧力まで加熱して、一次乾燥製剤を作製し、且つチャンバーを約-35℃~約-20℃の範囲の温度及び約75mTorr~約125mTorrの範囲の圧力で約12時間~約24時間の時間にわたって保持する工程;(c)チャンバーを約20℃~約30℃の範囲の温度まで加熱して、二次乾燥製剤を作製し、且つチャンバーを約20℃~約30℃の範囲の温度及び約50mTorr~約100mTorrの範囲の圧力で約5時間~約12時間の時間にわたって保持して、凍結乾燥製剤を作製する工程を含み;液体製剤は、約3~7のpHを有し、且つマンニトールを含有せず;及び方法は、アニーリング工程を欠く、方法を提供する。
【0008】
別の態様では、本開示は、本開示の方法によって調製された凍結乾燥タンパク質製剤を提供する。
【0009】
さらなる態様及び利点は、以下の詳細な説明を精査することによって当業者に明らかになるであろう。本明細書に開示される方法は、様々な形態の実施形態を取り得るが、以下の説明では、本開示が例示であり、且つ本明細書に記載する特定の実施形態に本発明を限定することを意図されないという理解のもとで特定の実施形態を挙げる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】サイクルの完了後の乾燥製品ケーキを示し、その巨視的な崩壊の兆候及び全体的な品質が目視検査によって評価された。BITE Bの製品ケーキは、許容可能であると決定され、いくつかの角度から撮影された写真を示す。
【
図2】経時的にプロットされた高分子量(HMW)種の相対面積%の値を示す。データは、研究の過程で凝集の不安定性がないことを示唆している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書では、改善された安定性を示す、抗体又は二重特異性抗原結合分子(例えば、半減期延長二重特異性抗原結合分子)などのタンパク質を含む凍結乾燥製剤を迅速に調製する方法を開示する。本開示の加速凍結乾燥法は、有利には、凝集などの物理的劣化の減少並びにクリッピング及び脱アミド化の減少などの化学的劣化の減少をもたらす。さらに、本明細書に開示される加速凍結乾燥法は、抗体及び二重特異性抗原結合分子を含有する製剤などのタンパク質製剤を、低濃度及び高濃度のいずれであっても安定化させることができる。
【0012】
定義
本明細書で使用する場合、用語「医薬製剤」は、それを必要とする対象への投与に好適な製剤に関する。「対象」、又は「個体」、又は「動物」、又は「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用され、本発明の医薬製剤の投与が望ましい任意の対象、特に哺乳動物対象を指す。哺乳動物対象としては、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、乳牛、などが挙げられ、ヒトが好ましい。本開示の医薬製剤は、安定であり、且つ薬学的に許容され、すなわちこの医薬製剤が投与される対象に重大な望ましくない局所的作用も全身的作用も引き起こすことなく所望の治療効果を発揮し得る。本開示の薬学的に許容される製剤は、無菌であり得る。具体的には、用語「薬学的に許容される」は、動物、より特にヒトでの使用に関して規制当局又は他の一般に認識されている薬局方により承認されていることを意味し得るが、規制当局によって承認されているものに限定されない。
【0013】
「安定性」又は「安定化」という用語は、医薬製剤全体の安定性に関し、特に活性成分(例えば、二重特異性抗原結合分子などのタンパク質)自体の具体的には製剤、充填、輸送、貯蔵及び投与中の安定性に関する。「安定な製剤」とは、その中のタンパク質(例えば、抗体又は二重特異性抗原結合分子)が貯蔵時及びプロセス(例えば、凍結/解凍、機械的混合及び凍結乾燥)中にその物理的及び/又は化学的完全性並びに生物学的活性を実質的に維持する製剤である。タンパク質の安定性は、高分子量(HMW)種の形成、酵素活性の消失、ペプチド断片の生成及び電荷プロファイルのシフトによって測定することができる。
【0014】
本明細書で使用する用語「凝集」は、例えば、ファンデルワールス力又は化学結合による、分子間の直接的な相互引力を指す。特に、凝集は、蓄積し、塊になっているタンパク質であると理解されている。凝集体には、非晶質凝集体及びオリゴマーが含まれ得るが、典型的には高分子量(HMW)種、すなわち非凝集分子である生成物分子よりも高分子量を有する分子と呼ばれる。
【0015】
本明細書で使用する用語「(タンパク質)凝集体」は、一般に、所望の既定の種(例えば、モノマー)ではなく、「オリゴマー」又は「マルチマー」などの高分子量のタンパク質種を包含する。この用語は、本明細書では、「高分子量」種及び「HMW」という用語と互換的に使用される。タンパク質凝集体は、一般に、サイズ(小型(二量体)から大型の集合体(顕微鏡下でないと見えない粒子又は目に見える粒子)の範囲で、直径がナノメートル~マイクロメートルの範囲)、形態(ほぼ球状~線維状)、タンパク質構造(天然対非天然/変性)、分子間結合の種類(共有結合対非共有結合)、可逆性及び可溶性の点で異なり得る。可溶性凝集体は、およそ1~100nmのサイズ範囲を占め、タンパク質微粒子は、顕微鏡下でないと見えない(約0.1~100nm)及び目に見える(>100nm)範囲を占める。前述のタンパク質凝集体の種類の全ては、一般に、この用語に包含される。したがって、用語「(タンパク質)凝集体」は、2つ以上のタンパク質モノマーが物理的に会合した又は化学的に結合したあらゆる種類の非天然種を指す。
【0016】
本明細書で使用する用語「低分子量(LMW)」種は、二重特異性抗原結合分子などのタンパク質の断片を指す。
【0017】
本明細書で使用する「加速された凍結乾燥方法」という用語は、本明細書に記載の凍結乾燥タンパク質製剤の安定性を維持しながら、凍結乾燥デバイスにおいて異なる温度及び圧力を使用する既知の方法よりも少なくとも25%速い凍結乾燥方法を指す。
【0018】
方法
本開示の一態様は、凍結乾燥製剤を迅速に調製する方法であって、アニーリング工程を欠く方法を提供する。本方法は、(a)約3~7のpHを有し、タンパク質、糖類及び界面活性剤を含み、且つマンニトールを欠く液体製剤を収容している凍結乾燥チャンバーを約-40℃~約-50℃の範囲の温度まで冷却して、凍結製剤を作製し、且つチャンバーを約-40℃~約-50℃の範囲の温度で約1時間~約3時間の時間にわたって保持する工程;(b)チャンバーを約-30℃~約-20℃の範囲の温度及び約75mTorr~約125mTorrの範囲の圧力まで加熱して、一次乾燥製剤を作製し、且つチャンバーを約-35℃~約-20℃の範囲の温度及び約75mTorr~約125mTorrの範囲の圧力で約12時間~約24時間の時間保持する工程;及び(c)チャンバーを約20℃~約35℃の範囲の温度まで加熱して、二次乾燥製剤を作製し、且つチャンバーを約20℃~約30℃の範囲の温度及び約50mTorr~約100mTorrの範囲の圧力で約5時間~約10時間の時間にわたって保持して、凍結乾燥製剤を作製する工程を含む。
【0019】
本明細書で使用する用語「温度」は、凍結乾燥チャンバーの内部の温度(凍結乾燥チャンバーの内部温度「内部温度」)を指し、サイクル中の凍結乾燥機の制御された「温度」は、チャンバーの棚を通してポンプで送り出されるシリコーンオイルの入口温度によって正確に測定される。換言すれば、それは、試料バイアルの底部に接触しているチャンバーの金属棚にポンプで送り込まれる液体の温度である。同様に、本明細書で使用する用語「圧力」は、凍結乾燥チャンバーの内部の圧力(すなわち凍結乾燥チャンバーの内部圧力「内部圧力」)を指す。
【0020】
工程(a)。工程(a)では、液体製剤を収容している凍結乾燥チャンバーを約-35℃~約-50℃の範囲の温度(例えば、内部温度)まで冷却して、凍結製剤を作製し、且つ約-40℃~約-50℃の範囲の温度(例えば、内部温度)で約2時間~約24時間の時間にわたって保持する。いくつかの実施形態では、冷却は、約-40℃~約-50℃の範囲の温度(例えば、約-40℃、-41℃、-42℃、-43℃、-44℃、-45℃、-46℃、-47℃、-48℃、-49℃又は-50℃)まで行われる。様々な例において、冷却は、約-45℃の温度まで行われる。いくつかの例では、チャンバーの冷却は、約0.1℃/分~約1℃/分の範囲の速度で行われる。様々な実施形態において、冷却は、約0.5℃/分~約0.8℃/分の速度で行われる。いくつかの実施形態では、冷却は、約0.5℃/分、0.6℃/分、0.7℃/分、0.8℃/分、0.9℃/分又は1℃/分の速度で行われる。いくつかの例では、冷却は、約0.5℃/分の速度で行われる。いくつかの実施形態では、チャンバーの保持は、約-40℃、-41℃、-42℃、-43℃、-44℃、-45℃、-46℃、-47℃、-48℃、-49℃又は50℃の温度で行うことができる。いくつかの実施形態では、保持は、約-45℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、凍結乾燥チャンバーの冷却温度と保持温度とは同じである。様々な実施形態において、保持は、約1時間~約3時間(例えば、約1時間、1.5時間、2時間、2.5時間又は3時間)の時間、行われる。いくつかの例では、保持は、約2時間にわたって行われる。
【0021】
工程(b)。工程(b)では、凍結乾燥チャンバーを約-35℃~約-20℃の範囲の温度(例えば、内部温度)及び約75mTorr~約125mTorrの範囲の圧力(例えば、内部圧力)まで加熱して、一次乾燥製剤を作製し、且つ約-35℃~約-20℃の範囲の温度(例えば、内部温度)及び約75mTorr~約125mTorrの範囲の圧力(例えば、内部圧力)で約12時間~約24時間の時間にわたって保持する。いくつかの実施形態では、加熱は、約-35℃-34℃-33℃-32℃、-31℃、-30℃、-29℃、-28℃、-27℃、-26℃、-25℃、-24℃、-23℃、-22℃、-21℃又は20℃の温度まで行われる。様々な例において、加熱は、約-27℃の温度まで行われる。いくつかの例では、加熱は、約0.1℃/分~約1℃/分の範囲の速度で行われる。様々な実施形態において、加熱は、約0.1℃/分~約0.5℃/分の速度(例えば、0.1℃/分、0.2℃/分、0.3℃/分、0.4℃/分又は0.5℃/分)で行われる。いくつかの例では、加熱は、約0.3℃/分の速度で行われる。様々な例において、加熱は、約75mTorr~約125mTorr、又は約80mTorr~約120mTorr、又は約85mTorr~約115mTorr、又は約90mTorr~約110mTorrの範囲の圧力で行われる。いくつかの例では、加熱は、約95mTorr、96mTorr、97mTorr、98mTorr、99mTorr、100mTorr、101mTorr、102mTorr、103mTorr、104mTorr又は105mTorrの圧力で行われる。様々な実施形態において、加熱は、約100mTorrの圧力で行われる。いくつかの実施形態では、チャンバーの保持は、約-35℃、-34℃、-33℃、-32℃、-31℃、-30℃、-29℃、-28℃、-27℃、-26℃、-25℃、-24℃、-23℃、-22℃、-21℃又は-20℃の温度で行われる。様々な実施形態において、保持は、約-27℃の温度で行われる。様々な実施形態において、保持は、約75mTorr~約125mTorr、又は約80mTorr~約120mTorr、又は約85mTorr~約115mTorr、又は約90mTorr~約110mTorrの範囲の圧力で行われる。いくつかの例では、加熱は、約95mTorr、96mTorr、97mTorr、98mTorr、99mTorr、100mTorr、101mTorr、102mTorr、103mTorr、104mTorr又は105mTorrの圧力で行われる。様々な実施形態において、加熱は、約100mTorrの圧力で行われる。いくつかの実施形態では、凍結乾燥チャンバーが加熱される温度と保持温度とは同じである。いくつかの実施形態では、凍結乾燥チャンバーが加熱される圧力と保持圧力とは同じである。いくつかの実施形態では、凍結乾燥チャンバーを加熱温度と保持温度とは同じであり、且つ凍結乾燥チャンバーが加熱される圧力と保持圧力とは同じである。いくつかの例では、保持は、約12時間~約24時間(例えば、約12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間又は18時間)の時間にわたって行われる。様々な例において、保持は、約16~17時間の時間、例えば16.7時間にわたって行われる。
【0022】
工程(c)。工程(c)では、チャンバーを約20℃~約35℃の範囲の温度(例えば、内部温度)まで加熱して、二次乾燥製剤を作製し、且つ約20℃~約35℃の範囲の温度(例えば、内部温度)及び約50mTorr~約100mTorrの範囲の圧力(例えば、内部圧力)で約5時間~約12時間の時間にわたって保持して、凍結乾燥製剤を作製する。いくつかの実施形態では、加熱は、約20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃又は35℃の温度まで行われる。様々な例において、加熱は、約25℃の温度まで行われる。様々な実施形態において、加熱は、約0.3~0.5℃/分までの範囲の速度で行われ、二次乾燥製剤を作成する。いくつかの例では、加熱は、約0.05℃/分~約0.5℃/分の速度で行われる。様々な例において、加熱は、約0.05℃/分、0.1℃/分、0.15℃/分、0.2℃/分、0.25℃/分、0.3℃/分、0.35℃/分、0.4℃/分、0.45℃/分又は0.5℃/分の速度で行われる。いくつかの実施形態では、加熱は、約0.4℃/分の速度で行われる。いくつかの実施形態では、保持は、約20℃、21℃、22℃、23℃、24℃、25℃、26℃、27℃、28℃、29℃又は30℃の温度で行われる。様々な例において、保持は、約25℃の温度で行われる。いくつかの実施形態では、凍結乾燥チャンバーが加熱される温度は、保持温度と同じである。いくつかの実施形態では、保持は、約50mTorr~約100mTorr、又は約70mTorr~約100mTorr、又は約65mTorr~約75mTorrの範囲の圧力で行われる。いくつかの例では、保持は、約65mTorr、66mTorr、67mTorr、68mTorr、69mTorr、70mTorr、71mTorr、72mTorr、73mTorr、74mTorr又は75mTorrの圧力で行われる。様々な実施形態において、保持は、約70mTorrの圧力で行われる。いくつかの例では、保持は、約5時間、6時間、7時間、8時間、9時間又は10時間の時間、行われる。様々な例において、保持は、約8.1時間、8.2時間、8.3時間、8.4時間、8.5時間の時間にわたって行われ、1つの例では、保持は、約8.3時間の時間にわたって行われる。
【0023】
本明細書に開示されるいずれか(アニーリング工程あり又はなし)の方法の実施形態では、方法は、(d)工程(c)で得られた凍結乾燥製剤を含むチャンバーを約1℃~約10℃の範囲の温度まで(又は約2℃~約7℃まで又は約5℃まで)冷却し、凍結乾燥製剤に、約250mTorr~約750mTorrの範囲の(又は約300mTorr~約600mTorrまで又は約500mTorrまで)圧力で不活性ガスを給気する工程をさらに含み得る。いくつかの例では、不活性ガスは、アルゴン、ヘリウム、窒素及びこれらの任意の組み合わせから選択される。様々な例において、不活性ガスは、窒素である。実施形態では、工程(d)は、凍結乾燥製剤を収容している容器(例えば、バイアル)の施栓を容易にし得る。実施形態では、方法は、凍結乾燥製剤を約2℃~約8℃の範囲の温度で保存することをさらに含む。実施形態では、方法は、凍結乾燥製剤を水で再構成することをさらに含む。
【0024】
さらに別の態様では、本開示は、本明細書に開示される方法によって調製された凍結乾燥タンパク質製剤を提供する。いくつかの実施形態では、タンパク質製剤は、アニーリング工程を欠く、本明細書に開示される方法によって調製される。
【0025】
凍結乾燥タンパク質製剤
本明細書に記載の凍結乾燥タンパク質製剤は、タンパク質、糖類、界面活性剤及び任意選択的に緩衝剤を含み、約3~約7(又は約3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5若しくは7)のpHを有する。いくつかの例では、pHは、約4~約6である。いくつかの例では、製剤のpHは、約4又は約4.2である。様々な例において、製剤のpHは、約5である。いくつかの実施形態では、製剤のpHは、約6である。実施形態では、本明細書に開示される凍結乾燥製剤は、糖アルコールを含有しない。本明細書で使用する場合、「糖アルコール」は、各炭素原子に1つのヒドロキシ基が結合した直鎖状ポリオールを指す。本明細書で使用する糖アルコールの例としては、キシリトール、エリトリトール、マンニトール及びソルビトールが挙げられる。実施形態では、凍結乾燥製剤は、マンニトールを含有しない。
【0026】
タンパク質
いくつかの実施形態では、凍結乾燥製剤のタンパク質は、抗原結合タンパク質である。「抗原結合タンパク質」は、特異的な標的抗原(CD3及び/若しくはCDH19、MSLN、DLL3、FLT3、EGFRvlll、BCMA、PSMA、CD33、CD19、CD70、CLDN18.2又はMUC17など)に結合するドメインを含むタンパク質である。抗原結合タンパク質は、抗原結合ドメインが、抗原結合タンパク質の抗原への結合を促進する立体構造を取ることを可能にする骨格又はフレームワーク部分を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、凍結乾燥製剤の抗原結合タンパク質は、抗体若しくは免疫グロブリン又は抗原結合抗体断片である。いくつかの例では、抗原結合タンパク質は、抗体である。用語「抗体」は、インタクトな抗原結合免疫グロブリンを指す。「抗体」は、抗原結合タンパク質の一種である。抗体は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のいずれか1つを含むIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMの抗体であり得る。様々な実施形態において、インタクトな抗体は、2本の全長重鎖及び2本の全長軽鎖を含む。抗体は、1つの可変領域及び1つの定常領域を有する。IgG形式において、1つの可変領域は、一般に、約100~110個以上のアミノ酸であり、3つの相補性決定領域(CDR)を含み、抗原認識に主に関与し、且つ異なる抗原に結合する他の抗体間で実質的に変動する。1つの可変領域は、通常、少なくとも3つの重鎖又は軽鎖のCDRを含み(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Public Health Service N.I.H.,Bethesda,Md.;Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothia et al.,1989,Nature 342:877-883)、それらは、フレームワーク領域(Kabat et al.,1991によってフレームワーク領域1~4(FR1、FR2、FR3及びFR4)と呼ばれている;Chothia and Lesk,1987(前掲)も参照されたい)内にある。定常領域は、抗体が免疫系の細胞及び分子を動員することを可能にする。
【0028】
いくつかの実施形態では、製剤の抗体は、二重特異性抗原結合分子、すなわち2つの異なる標的(例えば、CD3及び第2の異なる標的)に結合する抗体である。本明細書で使用する用語「二重特異性」は、2つの異なる標的抗原に結合する抗原結合分子又は構築物を指し、すなわち、それは、第1の結合ドメイン及び第2の結合ドメインを含み、第1の結合ドメインは1つの抗原又は標的(例えば、標的細胞の表面抗原)に結合し、第2の結合ドメインは別の抗原又は標的(例えば、CD3)に結合する。したがって、本開示による抗原結合分子は、2つの異なる抗原又は標的に対する特異性を含む。用語「標的細胞表面抗原」は、細胞により発現される抗原性構造を指し、本明細書に記載されるような抗原結合分子又は抗原結合構築物がアクセス可能であるように細胞表面に存在する。標的細胞表面抗原は、タンパク質の細胞外部分などのタンパク質又は糖タンパク質などのタンパク質の炭水化物構造などの炭水化物構造であり得る。標的細胞表面抗原は、腫瘍抗原であり得る。本開示は、三重特異性抗原結合分子若しくは構築物(後者は、3つの結合ドメインを含む)又は3つを超える(例えば、4つ、5つ...)特異性を有する構築物などの多重特異性抗原結合分子若しくは構築物も包含する。
【0029】
本明細書で理解される二重特異性抗体及び/又は抗原結合分子若しくは構築物としては、従来型の二重特異性免疫グロブリン(例えば、BsIgG)、付加された抗原結合ドメインを含むIgG(例えば、軽鎖又は重鎖のアミノ末端又はカルボキシ末端が、単一ドメイン抗体又は対になった抗体可変ドメイン(例えば、Fv又はscFv)などの追加の抗原結合ドメインに連結されている)、BsAb断片(例えば、二重特異性一本鎖抗体)、二重特異性融合タンパク質(例えば、エフェクター部分に融合された抗原結合ドメイン)及びBsAbコンジュゲートが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Spiess et al.,Molecular Immunology 67(2)Part A:97-106(2015)を参照されたい(この文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。二重特異性構築物の例としては、ダイアボディ、単鎖ダイアボディ、タンデムscFv、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))形式(リンカーによって結合される2つの単鎖可変断片(scFv)からなる融合タンパク質)及びFab2二重特異性体並びに全長抗体を含む改変された構築物が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Chames&Baty,2009,mAbs 1[6]:1-9;及びHolliger&Hudson,2005,Nature Biotechnology 23[9]:1126-1136;Wu et al.,2007,Nature Biotechnology 25[11]:1290-1297;Michaelson et al.,2009,mAbs 1[2]:128-141;国際公開第2009/032782号パンフレット及び同第2006/020258号パンフレット;Zuo et al.,2000,Protein Engineering 13[5]:361-367;米国特許出願公開第2002/0103345号明細書;Shen et al.,2006,J Biol Chem 281[16]:10706-10714;Lu et al.,2005,J Biol Chem 280[20]:19665-19672;並びにKontermann,2012 MAbs 4(2):182を参照されたい(これらの文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0030】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される凍結乾燥製剤は、標的細胞表面抗原に結合する第1の結合ドメイン、T細胞表面のヒトCD3に結合する第2の結合ドメイン及び任意選択的にアミノからカルボキシルの順にヒンジ-CH2ドメイン-CH3ドメイン-リンカー-ヒンジ-CH2ドメイン-CH3ドメインを含む第3のドメインを含む二重特異性抗原結合分子又は構築物を含む。いくつかの実施形態では、第1及び第2の結合ドメインのそれぞれは、VH領域及びVL領域を含む。
【0031】
本明細書で使用する用語「結合ドメイン」は、標的分子(抗原)上の所与の標的エピトープ又は所与の標的部位、例えばCDH19、MSLN、DLL3、FLT3、EGFRvlll、BCMA、PSMA、CD33、CD19、CD70、CLDN6、CLDN18.2又はMUC17及びCD3にそれぞれに(特異的に)結合する/と相互作用する/を認識するドメインを指す。
【0032】
第1の結合ドメイン(例えば、CDH19、MSLN、DLL3、FLT3、EGFRvlll、BCMA、PSMA、CD33、CD19、CD70、CLDN6、CLDN18.2又はMUC17を認識する)の構造及び機能並びにまた第2の結合ドメイン(CD3を認識する)の構造及び/又は機能は、抗体、例えば全長若しくは全免疫グロブリン分子の構造及び/若しくは機能に基づき、且つ/又は抗体若しくはその断片の可変重鎖(VH)ドメイン及び/若しくは可変軽鎖(VL)ドメインに由来する。実施形態では、第1の結合ドメインは、3つの軽鎖CDR(すなわちVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3)及び/又は3つの重鎖CDR(すなわちVH領域のCDR1、CDR2及びCDR3)の存在を特徴とする。実施形態では、第2の結合ドメインは、標的結合を可能にする抗体の最小限の構造的要件も含む。実施形態では、第2の結合ドメインは、少なくとも3つの軽鎖CDR(すなわちVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3)及び/又は3つの重鎖CDR(すなわちVH領域のCDR1、CDR2及びCDR3)を含む。第1の結合ドメイン及び/又は第2の結合ドメインは、既存の(モノクローナル)抗体由来のCDR配列を足場にグラフトするのではなく、ファージディスプレイ又はライブラリースクリーニング法によって作製するか又は得ることが想定される。
【0033】
いくつかの実施形態では、標的細胞の表面抗原に結合する第1の結合ドメイン及び/又はCD3εに結合する第2の結合ドメインは、ヒト結合ドメインである。少なくとも1つのヒト結合ドメインを含む抗体及び抗原結合分子又は構築物は、齧歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター又はウサギ)などの非ヒト可変及び/又は定常領域を有する抗体又は抗体構築物に関連する問題のいくつかを回避する。このような齧歯類由来タンパク質が存在すると、抗体又は抗原結合分子若しくは構築物の迅速なクリアランスをもたらすか、又は患者による抗体又は抗原結合分子若しくは構築物に対する免疫応答を発生させる可能性がある。齧歯類由来の抗体又は抗原結合分子若しくは構築物の使用を避けるために、齧歯類が完全ヒト抗体を産生するようにヒト抗体機能を齧歯類に導入することにより、ヒト又は完全ヒト抗体/抗原結合分子を生成することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、単鎖抗原結合分子を含む。scFvは、可変重鎖、scFvリンカー及び可変軽鎖ドメインを含む。任意選択的に、可変軽鎖のC末端は、scFvリンカーのN末端に結合され、そのC末端は、可変重鎖のN末端に結合される(N-vh-リンカー-vl-C)が、配置は切り換えることができる(N-vl-リンカー-vh-C)。代わりに、可変重鎖のC末端は、scFvリンカーのN末端に結合され、そのC末端は、可変軽鎖のN末端に結合される(N-vl-リンカー-vh-C)が、配置は切り換えることができる(N-vh-リンカー-v-C)。したがって、scFvの描写及び説明において、どちらの向きのscFvも特定的に含まれる。
【0035】
本開示の抗原結合ポリペプチドの少なくとも2つの結合ドメイン及び可変ドメイン(VH/VL)は、ペプチドリンカー(スペーサーペプチド)を含んでも又は含まなくてもよい。用語「ペプチドリンカー」は、本発明によれば、本開示の抗原結合分子の一方の(可変及び/又は結合)ドメイン並びにもう一方の(可変及び/又は結合)ドメインのアミノ酸配列を互いに連結するアミノ酸配列を含む。ペプチドリンカーは、第3のドメインを本開示の抗原結合分子の他のドメインに融合させるためにも使用され得る。このようなペプチドリンカーの特徴は、重合活性を含まないことである。好適なペプチドリンカーとしては、米国特許第4,751,180号明細書及び同第4,935,233号明細書又は国際公開第88/09344号パンフレットに記載されたものがあり、これらの文献の開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ペプチドリンカーは、本明細書に記載される二重特異性抗原結合分子に他のドメイン又はモジュール又は領域(例えば、半減期延長ドメイン)を付加するためにも使用することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、第3のドメインは、第1の定常領域免疫グロブリンドメインを除外する抗体の定常領域を含むポリペプチドを指す、「Fc」又は「Fc領域」又は「Fcドメイン」を含む。したがって、「Fcドメイン」は、IgA、IgD及びIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、IgE及びIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン並びにこれらのドメインのN末端のフレキシブルなヒンジを指す。IgA及びIgMでは、Fcは、J鎖を含み得る。IgGでは、Fcドメインは、免疫グロブリンドメインCγ2及びCγ3(Cγ2及びCγ3)並びにCγ1(Cγ1)とCγ2(Cγ2)との間の下位のヒンジ領域を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、IgG抗体である(いくつかのサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含むが、これらに限定されない)を含む)。Fc領域の境界は異なる場合があるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、残基C226又はP230からそのカルボキシル末端までを含むと定義される(ここで、番号付けは、Kabatに記載されるようなEUインデックスに従う)。いくつかの実施形態では、アミノ酸の改変は、Fc領域に対してなされ、例えば、1つ以上のFcγR受容体又はFcRn受容体への結合を変化させる。
【0037】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、ヒトCD3及びヒトCDH19、又はヒトCD3及びヒトMSLN、又はヒトCD3及びヒトDLL3、又はヒトCD3及びヒトFLT3、又はヒトCD3及びヒトEGFRvIII、又はヒトCD3及びヒトBCMA、又はヒトCD3及びPSMA、又はヒトCD3及びヒトCD33、又はヒトCD3及びヒトCD19、ヒトCD3及びヒトCD70、又はヒトCD3及びヒトMUC17、又はヒトCD3及びヒトCLDN18.2、又はヒトCD3及びヒトCLDN6に結合する二重特異性抗原結合分子を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子の第1の結合ドメインは、(a)配列番号24~29、(b)配列番号34~39、(c)配列番号78~83、(d)配列番号10~15、(e)配列番号46~51、(f)配列番号88~93、(g)配列番号67~72、(h)配列番号56~61、(i)配列番号112~117、(j)配列番号100~105、(k)配列番号148~153、配列番号157~162、若しくは配列番号166~171、若しくは配列番号175~180、(l)配列番号132~137、又は(m)配列番号123~128に示した6つのCDRからなるセットを含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子の第1の結合ドメインは、配列番号30、40、84、16、17、52、94、73、62、118、154、163、172、181、106、138、143又は129に示されたアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一)であるアミノ酸配列を含むVH領域を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子の第1の結合ドメインは、配列番号30、40、84、16、17、52、94、73、62、118、154、163、172、181、106、138、143又は129に示されたアミノ酸配列を含むVHを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子の第1の結合ドメインは、配列番号31、41、85、18、19、53、95、74、63、119、155、164、173、182、107、139、144又は130に示されたアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一)であるアミノ酸配列を含むVL領域を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子の第1の結合ドメインは、配列番号31、41、85、18、19、53、95、74、63、119、155、164、173、182、107、139、144又は130に示されたアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、第1の結合ドメインは、(a)配列番号30に示されたアミノ酸配列を含むVH領域及び配列番号31に示したVL領域;(b)配列番号40に示されたアミノ酸配列を含むVH領域及び配列番号41に示されたアミノ酸配列を含むVL領域;(c)配列番号84に示されたアミノ酸配列を含むVH領域及び配列番号85に示されたアミノ酸配列を含むVL領域;(d)配列番号16若しくは17に示されたアミノ酸配列を含むVH領域及び配列番号18若しくは19に示されたアミノ酸配列を含むVL領域;(e)配列番号52に示されたアミノ酸配列を含むVH領域及び配列番号53に示されたアミノ酸配列を含むVL領域;(f)配列番号94に示されたアミノ酸配列を含むVH領域及び配列番号95に示されたアミノ酸配列を含むVL領域;(g)配列番号73に示されたアミノ酸配列を含むVH領域及び配列番号74に示されたアミノ酸配列を含むVL領域;(h)配列番号62に示されたアミノ酸配列を含むVH領域及び配列番号63に示されたアミノ酸配列を含むVL領域;(i)配列番号118に示されたアミノ酸配列を含むVH領域及び配列番号119に示されたアミノ酸配列を含むVL領域;(j)配列番号154、163、172若しくは181に示されたアミノ酸配列を含むVH領域及び配列番号155、164、173若しくは182に示されたアミノ酸配列を含むVL領域;(k)配列番号106に示されたアミノ酸配列を含むVH領域及び配列番号107に示されたアミノ酸配列を含むVL領域;(l)配列番号138若しくは143に示されたアミノ酸配列を含むVH領域及び配列番号139若しくは144に示されたアミノ酸配列を含むVL領域;又は(m)配列番号129に示されたアミノ酸配列を含むVH領域及び配列番号130に示されたアミノ酸配列を含むVL領域を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子の第2の結合ドメインは、配列番号1~6に示した6つのCDRからなるセットを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子の第2の結合ドメインは、配列番号7に示されたアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一)であるアミノ酸配列を含むVH領域を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子の第2の結合ドメインは、配列番号7に示されたアミノ酸配列を含むVH領域を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子の第2の結合ドメインは、配列番号8に示されたアミノ酸配列と少なくとも90%同一(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一)であるアミノ酸配列を含むVL領域を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子の第2の結合ドメインは、配列番号8に示されたアミノ酸配列を含むVLを含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、第2の結合ドメインは、(a)配列番号7に示されたアミノ酸配列を含むVH領域及び配列番号8に示されたアミノ酸配列を含むVL領域を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号85のアミノ酸配列を含む抗CD19可変軽鎖ドメイン及び配列番号84のアミノ酸配列を含む抗CD19可変重鎖ドメインを含むCD19に結合する第1の結合ドメイン並びに配列番号7のアミノ酸配列を含む抗CD3可変重鎖ドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含む抗CD3可変軽鎖ドメインを含む第2の結合ドメインを含む。例えば、一実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号86のアミノ酸配列を含む第1の結合ドメイン及び配列番号9のアミノ酸配列を含む第2の結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号87に示されたアミノ酸配列を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号41のアミノ酸配列を含む抗MSLN可変軽鎖ドメイン及び配列番号40のアミノ酸配列を含む抗MSLN可変重鎖ドメインを含むMSLNに結合する第1の結合ドメイン並びに配列番号7のアミノ酸配列を含む抗CD3可変重鎖ドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含む抗CD3可変軽鎖ドメインを含む第2の結合ドメインを含む。例えば、一実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号42のアミノ酸配列を含む第1の結合ドメイン及び配列番号9のアミノ酸配列を含む第2の結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号43、44又は45に示されたアミノ酸配列を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号74のアミノ酸配列を含む抗DLL3可変軽鎖ドメイン及び配列番号73のアミノ酸配列を含む抗DLL3可変重鎖ドメインを含むDLL3に結合する第1の結合ドメイン並びに配列番号7のアミノ酸配列を含む抗CD3可変重鎖ドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含む抗CD3可変軽鎖ドメインを含む第2の結合ドメインを含む。例えば、一実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号75のアミノ酸配列を含む第1の結合ドメイン及び配列番号9のアミノ酸配列を含む第2の結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号76又は77に示されたアミノ酸配列を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号63のアミノ酸配列を含む抗FLT3可変軽鎖ドメイン及び配列番号62のアミノ酸配列を含む抗FLT3可変重鎖ドメインを含むFLT3に結合する第1の結合ドメイン並びに配列番号7のアミノ酸配列を含む抗CD3可変重鎖ドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含む抗CD3可変軽鎖ドメインを含む第2の結合ドメインを含む。例えば、一実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号64のアミノ酸配列を含む第1の結合ドメイン及び配列番号9のアミノ酸配列を含む第2の結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号65又は66に示されたアミノ酸配列を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号31のアミノ酸配列を含む抗EGFRvIII可変軽鎖ドメイン及び配列番号30のアミノ酸配列を含む抗EGFRvIII可変重鎖ドメインを含むEGFRvIIIに結合する第1の結合ドメイン並びに配列番号7のアミノ酸配列を含む抗CD3可変重鎖ドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含む抗CD3可変軽鎖ドメインを含む第2の結合ドメインを含む。例えば、一実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号32のアミノ酸配列を含む第1の結合ドメイン及び配列番号9のアミノ酸配列を含む第2の結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号33に示されたアミノ酸配列を含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号95のアミノ酸配列を含む抗BCMA可変軽鎖ドメイン及び配列番号94のアミノ酸配列を含む抗BCMA可変重鎖ドメインを含むBCMAに結合する第1の結合ドメイン並びに配列番号7のアミノ酸配列を含む抗CD3可変重鎖ドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含む抗CD3可変軽鎖ドメインを含む第2の結合ドメインを含む。例えば、一実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号96のアミノ酸配列を含む第1の結合ドメイン及び配列番号9のアミノ酸配列を含む第2の結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号98又は配列番号97に示されたアミノ酸配列を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号119又は107のアミノ酸配列を含む抗PSMA可変軽鎖ドメイン及び配列番号118又は106のアミノ酸配列を含む抗PSMA可変重鎖ドメインを含むPSMAに結合する第1の結合ドメイン並びに配列番号7のアミノ酸配列を含む抗CD3可変重鎖ドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含む抗CD3可変軽鎖ドメインを含む第2の結合ドメインを含む。例えば、一実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号120又は108のアミノ酸配列を含む第1の結合ドメイン及び配列番号9のアミノ酸配列を含む第2の結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号121、122、109、110又は111に示されたアミノ酸配列を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号18又は19のアミノ酸配列を含む抗CD33可変軽鎖ドメイン及び配列番号16又は17のアミノ酸配列を含む抗CD33可変重鎖ドメインを含むCD33に結合する第1の結合ドメイン並びに配列番号7のアミノ酸配列を含む抗CD3可変重鎖ドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含む抗CD3可変軽鎖ドメインを含む第2の結合ドメインを含む。例えば、一実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号189又は190のアミノ酸配列を含む第1の結合ドメイン及び配列番号9のアミノ酸配列を含む第2の結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号20、21、22又は23に示されたアミノ酸配列を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号53のアミノ酸配列を含む抗CDH19可変軽鎖ドメイン及び配列番号52のアミノ酸配列を含む抗CDH19可変重鎖ドメインを含むCDH19に結合する第1の結合ドメイン並びに配列番号7のアミノ酸配列を含む抗CD3可変重鎖ドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含む抗CD3可変軽鎖ドメインを含む第2の結合ドメインを含む。例えば、一実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号54のアミノ酸配列を含む第1の結合ドメイン及び配列番号9のアミノ酸配列を含む第2の結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号55に示されたアミノ酸配列を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号155、164、173又は182のアミノ酸配列を含む抗MUC17可変軽鎖ドメイン及び配列番号154、163、172又は181のアミノ酸配列を含む抗MUC17可変重鎖ドメインを含むMUC17に結合する第1の結合ドメイン並びに配列番号7のアミノ酸配列を含む抗CD3可変重鎖ドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含む抗CD3可変軽鎖ドメインを含む第2の結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号156、165、174又は183に示されたアミノ酸配列を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号139又は144のアミノ酸配列を含む抗cldn18.2可変軽鎖ドメイン及び配列番号138又は143のアミノ酸配列を含む抗cldn18.2可変重鎖ドメインを含むcldn18.2に結合する第1の結合ドメイン並びに配列番号7のアミノ酸配列を含む抗CD3可変重鎖ドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含む抗CD3可変軽鎖ドメインを含む第2の結合ドメインを含む。例えば、一実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号140又は145のアミノ酸配列を含む第1の結合ドメイン及び配列番号9のアミノ酸配列を含む第2の結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号141、142、146又は147に示されたアミノ酸配列を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号130のアミノ酸配列を含む抗CD70可変軽鎖ドメイン及び配列番号129のアミノ酸配列を含む抗CD70可変重鎖ドメインを含むCD70に結合する第1の結合ドメイン並びに配列番号7のアミノ酸配列を含む抗CD3可変重鎖ドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含む抗CD3可変軽鎖ドメインを含む第2の結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、配列番号131に示されたアミノ酸配列を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、製剤のタンパク質は、抗体である。様々な実施形態において、製剤のタンパク質は、二重特異性抗原結合分子である。いくつかの例では、製剤のタンパク質は、半減期延長二重特異性抗原結合分子である。半減期延長二重特異性抗原結合分子は、本明細書では既に説明している。いくつかの実施形態では、本開示のタンパク質製剤は、配列番号1~190に示されたアミノ酸配列を含む。様々な実施形態において、本開示のタンパク質製剤は、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号33、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号55、配列番号65、配列番号66、配列番号76、配列番号77、配列番号87、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号121、配列番号122、配列番号131、配列番号141、配列番号142、配列番号146、配列番号147、配列番号156、配列番号165、配列番号174、配列番号183、配列番号184、配列番号185、配列番号186、配列番号187又は配列番号188に示されたアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、本開示のタンパク質製剤は、配列番号22(BiTE A)、配列番号77(BiTE B)、配列番号87(BiTE C)又は配列番号97(BiTE D)に示されたアミノ酸配列を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、抗体又は二重特異性のもの(例えば、HLE二重特異性抗体構築物)などのタンパク質は、(凍結乾燥前の)液体製剤中に約0.1mg/mL~約100mg/mLの範囲(又は約0.1mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mL、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mL、40mg/mL、45mg/mL、50mg/mL、55mg/mL、60mg/mL、65mg/mL、70mg/mL、75mg/mL、80mg/mL、85mg/mL、90mg/mL、95mg/mL若しくは100mg/mL)の量で存在する。様々な実施形態において、タンパク質は、液体製剤中に約0.1mg/mL~約70mg/mLの範囲の量で存在する。いくつかの例では、タンパク質は、液体製剤中に約0.5mg/mL~約30mg/mLの範囲(又は約0.5mg/mL、0.6mg/mL、0.7mg/mL、0.8mg/mL、0.9mg/mL、1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL、4mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/ml、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、21mg/mL、22mg/mL、23mg/mL、24mg/mL、25mg/mL、26mg/mL、27mg/mL、28mg/mL、29mg/mL若しくは30mg/mL)の量で存在する。様々な例において、タンパク質は、液体製剤中に約1mg/mL~約20mg/mLの範囲(又は約1mg/mL、1.5mg/mL、2mg/mL、2.5mg/mL、3mg/mL、3.5mg/mL、4mg/mL、4.5mg/mL、5mg/mL、5.5mg/mL、6mg/mL、6.5mg/mL、7mg/mL、7.5mg/mL、8mg/mL、8.5mg/mL、9mg/mL、9.5mg/mL、10mg/mL、10.5mg/mL、11mg/mL、11.5mg/mL、12mg/mL、12.5mg/mL、13mg/mL、13.5mg/mL、14mg/ml、14.5mg/mL、15mg/mL、15.5mg/mL、16mg/mL、16.5mg/mL、17mg/mL、17.5mg/mL、18mg/mL、18.5mg/mL、19mg/mL、19.5mg/mL若しくは20mg/mL)の量で存在する。いくつかの実施形態では、タンパク質は、液体製剤中に約1mg/mLの量で存在する。
【0060】
糖類
本開示のタンパク質製剤は、糖類を含む。いくつかの実施形態では、糖類は、単糖又は二糖である。好適な糖類としては、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの例では、糖類は、スクロースを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、(凍結乾燥前の)液体製剤は、約1%~約15w/v%、又は約4%~約13w/v%、又は約6%~約12w/v%の濃度で糖類を含む。いくつかの実施形態では、液体製剤は、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%又は少なくとも14w/v%の濃度で糖類を含む。いくつかの実施形態では、液体製剤は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%又は約15w/v%の濃度で糖類を含む。いくつかの実施形態では、液体製剤は、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%、約9.5%、約10%、約10.5%、約11%、約11.5%又は約12w/v%の濃度で糖類を含む。いくつかの実施形態では、液体製剤は、約7%~約12w/v%の濃度で糖類を含む。いくつかの実施形態では、液体製剤は、約9w/v%の濃度で糖類を含む。いくつかの実施形態では、糖類は、スクロースであり、液体製剤中に約6%~約12w/v%の範囲の濃度で存在する。いくつかの例では、糖類は、スクロースであり、液体製剤中に約9w/v%の濃度で存在する。
【0062】
界面活性剤
本開示のタンパク質製剤は、界面活性剤を含む。好適な界面活性剤としては、ポリソルベート、ポロキサマー、ポリオキシエチレン又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。企図される界面活性剤としては、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポロキサマー188、ポロキサマー407、トリトンX-100、ポリオキシエチレン、PEG3350、PEG4000及びこれらの任意の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベートを含む。いくつかの例では、界面活性剤は、ポリソルベート80である。
【0063】
本明細書に記載のタンパク質製剤は、1つの界面活性剤又は界面活性剤の混合物を含み得る。いくつかの実施形態では、(凍結乾燥前の)液体製剤は、約0.001%~約5w/v%(又は約0.001%~約0.5%、又は約0.004~約0.5w/v%、又は約0.001~約0.01w/v%、又は約0.004~約0.01w/v%)の濃度で界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、液体製剤は、少なくとも0.001、少なくとも0.002、少なくとも0.003、少なくとも0.004、少なくとも0.005、少なくとも0.007、少なくとも0.01、少なくとも0.05、少なくとも0.1、少なくとも0.2、少なくとも0.3、少なくとも0.4、少なくとも0.5、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも0.9、少なくとも1.0、少なくとも1.5、少なくとも2.0、少なくとも2.5、少なくとも3.0、少なくとも3.5、少なくとも4.0又は少なくとも4.5w/v%の濃度で界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、液体製剤は、約0.001%~約0.5w/v%の濃度で界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、液体製剤は、約0.001%~約0.1w/v%の濃度で界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、液体製剤は、約0.001%~約0.01w/v%の濃度で界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、液体製剤は、約0.001%、約0.002%、約0.003%、約0.004%、約0.005%、約0.006%、約0.007%、約0.008%、約0.009%、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%又は約0.5w/v%の濃度で界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、液体製剤は、約0.001%~約0.01w/v%の濃度で界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート80であり、ポリソルベート80は、約0.01w/v%の濃度で存在する。
【0064】
緩衝剤
本開示のタンパク質製剤は、任意選択的に緩衝剤を含む。好適な緩衝液としては、酢酸緩衝剤、グルタミン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、乳酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、フマル酸緩衝剤、マレイン酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、リン酸緩衝剤、2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸緩衝剤又はこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの例では、緩衝剤は、グルタミン酸を含む。
【0065】
緩衝剤は、製剤のpHを制御するためによく利用される。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、約3~約7、又は約4~約6、約4~5、又は約4.2の製剤のpHを維持する濃度で添加される。製剤に対するpHの影響は、加速安定性試験及び熱量測定スクリーニング試験などのいくつかの手法のいずれか1つ以上を使用して特徴付けられ得る(Remmele R.L.Jr.,et al.,Biochemistry,38(16):5241-7(1999))。
【0066】
タンパク質製剤中に存在する緩衝系は、生理学的に適合性があり、且つ所望のpHを維持するように選択される。緩衝剤は、(凍結乾燥前の)液体製剤中に約0.1mM~約1000mM(1M)、又は約5mM~約200mM、又は約5mM~約100mM、又は約10mM~約50mMの濃度で存在し得る。好適な緩衝剤濃度には、約200mM以下の濃度が包含される。いくつかの実施形態では、(凍結乾燥前の)液体製剤中において、緩衝剤は、約190mM、約180mM、約170mM、約160mM、約150mM、約140mM、約130mM、約120mM、約110mM、約100mM、約80mM、約70mM、約60mM、約50mM、約40mM、約30mM、約20mM、約10mM又は約5mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、緩衝剤の濃度は、少なくとも0.1、0.5、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.5、1.7、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500、700又は900mMである。いくつかの実施形態では、緩衝剤の濃度は、1、1.2、1.5、1.7、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80又は90mM~100mMである。いくつかの実施形態では、緩衝剤の濃度は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30又は40mM~50mMである。いくつかの実施形態では、緩衝剤の濃度は、約10mMである。
【0067】
いくつかの実施形態では、(凍結乾燥前の)液体タンパク質製剤は、約4.2のpHを有し、且つ約10mMのL-グルタミン酸、約9.0%(w/v)のスクロース及び約0.01%(w/v)のポリソルベート80を含む。
【0068】
凍結乾燥タンパク質製剤の安定性
本明細書に開示される方法は、有利には、液体で再構成した際の、タンパク質の、凝集などの物理的劣化の減少並びにクリッピング及び脱アミド化などの化学的劣化の減少を示す凍結乾燥タンパク質製剤をもたらす。凍結乾燥タンパク質製剤の再構成に使用される液体は、当技術分野で知られている任意の好適な液体であり得る。実施形態では、凍結乾燥タンパク質製剤は、水で再構成することができる。さらに、本明細書で開示する凍結乾燥法は、抗体及び二重特異性抗原結合分子(例えば、半減期延長二重特異性抗体構築物)を含有する製剤などのタンパク質製剤を低濃度及び高濃度のいずれであっても安定化させることができる。
【0069】
抗体又は二重特異性抗原結合分子(例えば、HLE二重特異性抗原結合分子)を含有する製剤などのタンパク質製剤の安定性は、いくつかの方法で定量化することができる。いくつかの実施形態では、タンパク質製剤の安定性は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SE-HPLC)、サイズ排除超高速液体クロマトグラフィー(SE-UHPLC)、カチオン交換高速液体クロマトグラフィー(CE-HPLC)、動的光散乱法(DLS)、超遠心分析(AUC)、フィールドフローフラクショネーション(FFF)、等電点電気泳動法及びイオン交換クロマトグラフィー(IEX)によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、抗体製剤などのタンパク質製剤の安定性は、ドデシル硫酸ナトリウムキャピラリー電気泳動法(CE-SDS)及び/又はドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)によって測定される部分解離によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、製剤の安定性は、還元キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム法(rCE-SDS)によって評価される。rCE-SDS法は、還元条件下で重鎖(HC)、軽鎖(LC)、非グリコシル化HC(NGHC)及び他の微細なピーク種及び基を分離する。
【0070】
いくつかの実施形態では、製剤の安定性は、抗体又は二重特異性抗原結合分子(例えば、HLE二重特異性抗原結合分子)などのタンパク質の高分子量(HMW)種の量又は様々な時点の貯蔵条件後のタンパク質のHMW種の量の増加速度によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、タンパク質のHMW種の量は、再構成後、およそ4℃又は40℃で貯蔵した場合の1週間後、2週間後、1か月後、3か月後、6か月後又は12か月後に決定される。いくつかの実施形態では、タンパク質のHMW種の増加速度は、再構成後、およそ4℃又は40℃で貯蔵した場合の1週間後、2週間後、1か月後、3か月後、6か月後又は12か月後に決定される。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中の抗体又は二重特異性抗原結合分子(例えば、HLE二重特異性抗原結合分子)などのタンパク質のHMW種は、SE-UHPLCによって測定される。
【0071】
抗体又は二重特異性抗原結合分子(例えば、HLE二重特異性抗原結合分子)などのタンパク質の安定性及び製剤がタンパク質の安定性を維持する能力は、長期間(例えば、数週間又は数か月)にわたって評価することができる。製剤の観点において、安定な製剤とは、その中の抗体又は二重特異性抗原結合分子(例えば、HLE二重特異性抗原結合分子)などのタンパク質が、貯蔵時並びに凍結/解凍、機械的混合及び凍結乾燥などのプロセス中、その物理的及び/若しくは化学的完全性並びに/又は生物学的活性を実質的に維持する製剤である。タンパク質の安定性は、例えば、高分子量(HMW)凝集体の形成のレベル及び/又は速度、電荷プロファイルのシフト並びに粒径の変化を測定することによって評価することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、インタクトなBiTE(登録商標)分子若しくは主要種、又は高分子量(HMW)種(すなわち凝集体)、又は低分子量(LMW)種(すなわち断片)など、タンパク質の任意の特定の種の相対値は、全生成物の各数値に対して表示される。例えば、いくつかの実施形態では、抗体又は二重特異性抗原結合分子などのタンパク質の2.5%以下(例えば、2.5%、又は2%、又は1.9%、又は1.8%、又は1.7%、又は1.6%、又は1.5%、又は1.4%、又は1.3%、又は1.2%、又は1.1%、又は1%、又は0.5%)は、再構成された凍結乾燥製剤中のHMW種として存在する。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中のHMW種の量は、1か月以上(例えば、1か月、3か月又は6か月)にわたって4℃で貯蔵すると、1%未満(例えば、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%)増加する。いくつかの実施形態では、1か月以上(例えば、1か月、3か月又は6か月)にわたって4℃で貯蔵すると、再構成された凍結乾燥製剤中のHMW種の量は、およそ0.1%~0.4%(例えば、0.1%、0.2%、0.3%又は0.4%)増加する。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中のHMW種の量は、1週間以上(例えば、1週間、2週間、1か月間又は3か月間)、40℃で貯蔵すると、1%未満(例えば、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%)増加する。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中のHMW種の量は、1週間以上(例えば、1週間、2週間、1か月間又は3か月間)、40℃で貯蔵すると、0.5%未満(例えば、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%)増加する。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中のHMW種の量は、1か月以上(例えば、1か月、3か月、6か月、9か月又は12か月)にわたって40℃で貯蔵すると、0.5%未満(例えば、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%0.1%)増加する。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中のHMW種の量は、1か月間、40℃で貯蔵すると、0.5%未満増加する。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中のHMW種の量は、1か月間、40℃で貯蔵すると、0.3%未満増加する。いくつかの実施形態では、1週間以上(例えば、1週間、2週間、1か月間又は3か月間)、40℃で貯蔵すると、再構成された凍結乾燥製剤中のHMW種の量は、およそ0.1%~0.7%(例えば、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%又は0.7%)増加する。いくつかの実施形態では、1週間以上(例えば、1週間、2週間、1か月間又は3か月間)、40℃で貯蔵すると、再構成された凍結乾燥製剤中のHMW種の量は、およそ0.1%~0.5%(例えば、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%及び0.5%)増加する。いくつかの実施形態では、1か月以上(例えば、1か月、3か月、6か月、9か月又は12か月)にわたって40℃で貯蔵すると、再構成された凍結乾燥製剤中のHMW種の量は、およそ0.1%~0.5%(例えば、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%及び0.5%)増加する。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中の二重特異性抗原結合分子のHMW種は、SE-UHPLCによって測定される。
【0073】
いくつかの実施形態では、製剤の安定性は、抗体又は二重特異性抗原結合分子(HLE二重特異性抗原結合分子)などのタンパク質の低分子量(LMW)種の量又は様々な時点の貯蔵条件下のタンパク質のLMW種の量の増加速度によって特徴付けられる。いくつかの実施形態では、LMW種の量は、およそ4℃又は40℃で貯蔵した場合の1週間後、2週間後、1か月後、3か月後、6か月後又は12か月後に決定される。いくつかの実施形態では、LMW種の増加速度は、およそ4℃又は40℃で貯蔵した場合の1週間後、2週間後、1か月後、3か月後、6か月後又は12か月後に決定される。いくつかの実施形態では、製剤中の抗体又は二重特異性抗原結合分子(HLE二重特異性抗原結合分子)などのLMW種は、キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム法(rCE-SDS)によって測定される。いくつかの実施形態では、製剤中の二重特異性抗原結合分子のLMW種は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定される。
【0074】
いくつかの実施形態では、抗体又は二重特異性抗原結合分子(HLE二重特異性抗原結合分子)などのタンパク質の2%未満(例えば、1.9%、1.8%、1.7%、1.6%、1.5%、1.4%、1.3%、1.2%、1.1%、1%又は0.5%)は、再構成された凍結乾燥製剤中に低分子量(LMW)種として存在する。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中のLMW種の量は、1か月以上(例えば、1か月、3か月又は6か月)にわたって4℃で貯蔵すると、2%未満(例えば、1.9%、1.8%、1.7%、1.6%、1.5%、1.4%、1.3%、1.2%、1.1%、1%又は0.5%)増加する。いくつかの実施形態では、1か月以上(例えば、1か月、3か月又は6か月)にわたって4℃で貯蔵すると、再構成された凍結乾燥製剤中のLMW種の量は、およそ0.1%~0.7%(例えば、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%又は0.7%)増加する。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中のLMW種の量は、1週間以上(例えば、1週間、2週間、1か月間又は3か月間)、40℃で貯蔵すると、1%未満(例えば、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%)増加する。いくつかの実施形態では、1週間以上(例えば、1週間、2週間、1か月間又は3か月間)、40℃で貯蔵すると、再構成された凍結乾燥製剤中のLMW種の量は、およそ0.1%~0.7%(例えば、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%.又は0.7%)増加する。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中の二重特異性抗原結合分子のLMW種は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定される。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中の二重特異性抗原結合分子のLMW種は、還元キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム法(rCE-SDS)によって測定される。
【0075】
いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中の抗体又は二重特異性抗原結合分子(HLE二重特異性抗原結合分子)などのタンパク質(すなわちメインピーク種)のパーセントは、製剤中の全タンパク質含量の95%超である。
【0076】
いくつかの実施形態では、製剤は、1か月にわたって約4℃で貯蔵しても安定であり、再構成された凍結乾燥製剤中のHMW種の量は、少なくとも1か月の貯蔵中、およそ0.1%~0.7%(例えば、0.1%、又は0.2%、又は0.3%、又は0.4%、又は0.5%、又は0.6%、又は0.7%)増加する。いくつかの実施形態では、製剤は、3か月にわたって約4℃で貯蔵しても安定であり、再構成された凍結乾燥製剤中のHMW種の量は、少なくとも3か月の貯蔵中、およそ0.0%~0.2%(例えば、0%、又は0.1%、又は0.2%)増加する。いくつかの実施形態では、製剤は、6か月にわたって約4℃で貯蔵しても安定であり、再構成された凍結乾燥製剤中のHMW種の量は、少なくとも6か月の貯蔵中、およそ0.0%~0.4%(例えば、0%、又は0.1%、又は0.2%、又は0.3%、又は0.4%)増加する。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中の二重特異性抗原結合分子のHMW種は、SE-UHPLCによって測定される。
【0077】
いくつかの実施形態では、製剤は、1か月、3か月及び6か月にわたって約4℃で貯蔵しても安定であり、抗体又は二重特異性抗原結合分子(HLE二重特異性抗原結合分子)などのタンパク質のパーセントは、全タンパク質含量の95%超である。いくつかの実施形態では、製剤は、1か月、3か月、6か月、12か月及び48か月にわたり、約4℃で貯蔵しても安定であり、再構成後の抗体又は二重特異性抗原結合分子(HLE二重特異性抗原結合分子)などのタンパク質のパーセントは、全タンパク質含量の96%超である。
【0078】
本明細書に記載の製剤の安定性は、電荷分布、例えば抗体又は二重特異性抗原結合分子(HLE二重特異性抗原結合分子)などのタンパク質の電荷変化ピークの量における変化によっても特徴付けられ得る。例えば、いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中の酸性ピーク(例えば、相対的に低い等電点(pI)を有する電荷変化である脱アミド化)の量は、少なくとも1か月(例えば、1か月、3か月、6か月又は12か月)にわたって4℃で貯蔵された場合、2%未満(例えば、2%、1.9%、1.8%、1.7%、1.6%、1.5%、1.4%、1.3%、1.2%、1.1%、1.0%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%又はそれ未満)増加する。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中の塩基性ピーク(例えば、相対的に高いpIを有する電荷変化)の量は、少なくとも1か月(例えば、1か月、3か月、6か月又は12か月)にわたって4℃で貯蔵された場合、6%未満(例えば、6%、5%、4%、3%、2%又は1%)増加する。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中のメインピークの量は、少なくとも1か月にわたり4℃で貯蔵された場合、4%未満(例えば、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1%又はそれ未満)減少する。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中のメインピークの量は、少なくとも3か月にわたり4℃で貯蔵された場合、6%未満(例えば、6%、5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%又はそれ未満)減少する。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中のメインピークの量は、少なくとも6か月にわたり4℃で貯蔵された場合、9%未満(例えば、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%又はそれ未満)減少する。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中のメインピークの量は、少なくとも12か月にわたり4℃で貯蔵された場合、9%未満(例えば、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%又はそれ未満)減少する。
【0079】
いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中の酸性ピークの量は、少なくとも1週間(例えば、1週間、2週間、1か月間又は3か月間)にわたり40℃で貯蔵された場合、30%未満(例えば、30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、4%、3%、2%、1%又はそれ未満)増加する。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中の塩基性ピーク(例えば、相対的に高いpIを有する電荷変化)の量は、少なくとも1週間(例えば、1週間、2週間、1か月間又は3か月間)にわたり40℃で貯蔵された場合、15%未満(例えば、15%、10%、9%、8%、7%、6%、4%、3%、2%、1%又はそれ未満)増加する。いくつかの実施形態では、再構成された製剤中のメインピークの量は、少なくとも1か月にわたり4℃で貯蔵された場合、4%未満(例えば、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1%又はそれ未満)減少する。いくつかの実施形態では、再構成された凍結乾燥製剤中のメインピークの量は、少なくとも3か月にわたり4℃で貯蔵された場合、6%未満(例えば、6%、5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%又はそれ未満)減少する。
【0080】
本開示の方法によって凍結乾燥されたタンパク質製剤は、相当する液体タンパク質製剤より優れた安定性を示す。例えば、pH4.2で、1mg/mLの本開示の二重特異性抗原結合分子、10mMのL-グルタミン酸、9%(w/v)のスクロース及び0.01%(w/v)のポリソルベート80を含有するタンパク質製剤であって、アニーリング工程を使用する本開示によって凍結乾燥され、次いで再構成されたタンパク質製剤の安定性を、ドデシル硫酸ナトリウムを用いる還元キャピラリー電気泳動(rCE-SDS)を行って、25℃及び40℃で1か月間貯蔵した後に生じたクリッピングの程度を決定した。
【0081】
本開示の凍結乾燥法は、有利には、低濃度及び高濃度のいずれのタンパク質製剤も安定化させる。例えば、pH4.2で、1mg/mL、5mg/mL、13mg/mL及び23mg/mLの本開示の二重特異性抗原結合分子、10mMのL-グルタミン酸、9%(w/v)のスクロース並びに0.01%(w/v)のポリソルベート80を含有する本開示のタンパク質製剤であって、アニーリング工程を使用して凍結乾燥され、次いで再構成されたタンパク質製剤を、40℃で1か月間貯蔵した後、SEC-UHPLCに供して、高分子量種の割合(HMW%)によって製剤中の凝集の程度を決定した。
【0082】
アニーリング工程を欠いた本開示の凍結乾燥法は、驚くべきことに、アニーリング工程を含んだ凍結乾燥法よりも、タンパク質製剤の優れた安定性をもたらすことが明らかとなった。例えば、pH4.2で、15mg/mL、20mg/mL又は23mg/mLの本開示の二重特異性抗原結合分子、10mMのL-グルタミン酸、9%(w/v)のスクロース及び0.01%(w/v)のポリソルベート80を含有するタンパク質製剤であって、アニーリング工程あり及びアニーリング工程なしで凍結乾燥させたタンパク質製剤を、再構成後にSE-UHPLCに供して、各試料における凝集の量を決定した。
【0083】
以下の実施例は、例示のために提供されるものであり、本発明の範囲を限定することを意図されない。
【実施例】
【0084】
一般手順
ドデシル硫酸ナトリウムを用いる還元キャピラリー電気泳動(rCE-SDS)は、還元及び変性条件下でタンパク質をその流体力学的サイズの違いに基づいて分離する。タンパク質種は、アニオン性洗剤であるSDSに結合し、SDSゲル緩衝剤が充填された裸の溶融石英キャピラリー内に電気動力学的に注入される。電圧はキャピラリー全体に印加され、その下においてSDSでコーティングされたタンパク質が親水性ポリマーベース溶液中での移行におけるそれらの差によって分離される。タンパク質は、UV検出窓を通過するとき、光ダイオードアレイ(PDA)検出器によって検出される。純度は、リーチ成分の正確なピーク面積率を決定することによって評価される。rCE-SDS法は、還元条件下で重鎖(HC)、軽鎖(LC)、非グリコシル化HC(NGHC)及び他の微細なピーク種及び基を分離する。ドデシル硫酸ナトリウムによる還元キャピラリー電気泳動(rCE-SDS)を、試料をSDS-MW還元ゲル中で70+/-10℃で10分間、したがって60~80℃で10分間インキュベートし、その後、室温に戻すことによって行った。インキュベーション後、試料を遠心分離し、次いで、電気動力学的注入により、内径50μmを有する裸の67cm溶融石英キャピラリーに電気動力学的に注入した。キャピラリーの有効長は30.2cmであった。CE-SDSゲル(Beckman Coulter、Brea、Calif.)及び30kV実効電圧を用いて分離を行った。検出は、UV吸光度によって220nmで実施した。
【0085】
凍結乾燥ケーキの目視検査。サイクルの完了後、乾燥製品ケーキを、その巨視的な崩壊の兆候及び全体的な品質を目視検査によって評価した。BITE Bの製品ケーキは、許容可能であると決定され、いくつかの角度から撮影された写真を
図1に示す。インタクトな視覚的ケーキ構造は、サイクルパラメータが試料バイアル全体で適切な乾燥及び均質性を可能にするという予備的指標として機能する。
【0086】
サイズ排除超高速液体クロマトグラフィー(SE-UHPLC)。SE-UHPLCは、タンパク質をその流体力学的体積の違いに基づいて分離する。より高い流体力学的体積を有する分子は、より小さい体積を有する分子より先に溶出する。試料を、SE-UHPLCカラム(BEH200、4.6×150mm、(Waters Corporation、186005226))にロードし、均一濃度で分離させ、溶出液をUV吸光度によってモニターした。純度は、全積分面積と比較した各分離成分の割合を算出することによって決定した。SE-UHPLCの設定は以下のとおりである:流量:0.4mL/分、実行時間:9分、UV検出:220nm(280nmは抗体を含むタンパク質のために選択される一般的な波長であるが、大部分の二重特異性分子は220nmで検出される)。カラム温度:周囲温度、標的タンパク質負荷:10μg、タンパク質適合性フローセル:5mm。このサイクルを用いて許容される水分含量が達成可能であることを決定した後、BiTE Bの乾燥製品バイアルを、5℃、25℃及び40℃で、合計4週間、安定に置いた。この期間中、試料バイアルを2週及び4週に抜き取り、それらの凝集をSE-UHPLCによって評価した。サンプルを再構成し、旋回させて混合し、そのまま注入した。高分子量(HMW)種の相対面積%値が
図2に経時的にプロットされており、このデータは、研究の過程で凝集の不安定さがないことを示唆しており、提案されたサイクルを使用することによって凝集が導入されなかったという結論を裏付けている。
【0087】
カールフィッシャー滴定(水分含量)。提案されたサイクルの乾燥効率をより正確に評価するために、製品ケーキの水分含量をカールフィッシャー滴定によって評価した。許容基準は5w/w%程度の水分含有量を許容するが、水分含量は2%未満であることが非常に好ましい。本発明のサイクルを使用して乾燥したBITE B製品ケーキを、以前に最先端のBiTEを使用して製造されたケーキと比較し、表1に示すように、水分含量が許容可能であり、且つ競争力のあるものであることがわかった。
【0088】
【0089】
タンパク質製剤。pH4.2で、1mg/mL、5mg/mL、13mg/mL又は23mg/mLの濃度のインタクトな二重特異性抗原結合分子、10mMのL-グルタミン酸、9%(w/v)のスクロース、0.01%(w/v)のポリソルベート80を含むタンパク質製剤を調製した。このタンパク質製剤を、(アニーリング工程のない)凍結乾燥用バイアルに入れた。
【0090】
実施例1
アニーリング工程なしでの二重特異性抗原結合分子製剤の凍結乾燥
Schott ISO 6RガラスバイアルからなるFIH BiTEプラットフォーム条件を満たす充填バイアルに、1.3mLの溶液を充填し、D-777 20mmエラストマーフルオロポリマーで栓をした。サイクルの開発及び分析制御の目的のために、G42SuT(10mMのグルタミン酸、9.0w/w%のスクロース、0.01%のポリソルベート80、pH4.2)と称する製剤緩衝液を、全体を通して使用した。BITE B製剤を含有する試料バイアルもG42SuT中において1mg/mLのタンパク質濃度で製剤化する。SE-UHPLC法では、BITE Bをシステム適合性の目的で使用する。カールフィッシャー滴定のための標準として、水分含量1%及び5%の標準を使用する。
【0091】
加速凍結乾燥サイクル
約32.7時間の最終時間で、これは、従来の凍結乾燥サイクルと比較して、およそ67%の時間の減少を表す。さらに、このサイクルでは、アニーリングとして知られる任意選択的なフェーズが除かれ、これは、乾燥均一性をより促進すると考えられるが、最近、凍結乾燥BiTE様分子中の生成物凝集と相関している。
【0092】
液体タンパク質製剤を上記のように調製し、凍結乾燥チャンバーに導入した。チャンバーを5℃のロード温度から-45℃まで0.5℃/分の速度で冷却し、-45℃で2時間保持した。その後、0.3℃/分で昇温させ、約-27℃の温度及び100mTorrのチャンバー圧で16.7時間一次乾燥を行った。2次乾燥を、0.4℃/minの速度及び70mTorrの圧力で25℃に昇温させ、70mTorrの圧力で8.3時間にわたって行った。バイアルの施栓を可能にするために、チャンバーの温度を5℃まで低下させ、500mTorrにおいて凍結乾燥チャンバーに窒素を給気した。凍結乾燥タンパク質製剤を含有するバイアルを凍結乾燥チャンバーから取り出し、さらなる処理及び解析まで、2~8℃で貯蔵した。本発明のサイクルを使用する全サイクル時間は、以前のサイクル条件を使用する70時間(正確には72.7時間)を超えるサイクル時間に対して、32.7時間であった。表2に、加速及び確立された凍結乾燥サイクルのパラメータを示す。
【0093】
【0094】
上記の説明は、明確な理解のために示されているにすぎず、そこから、余計な限定があるものと解釈すべきではなく、なぜなら、本発明の範囲に含まれる改変形態が当業者に明らかであり得るためである。
【0095】
本明細書及び続く特許請求の範囲を通して、文脈上別段の解釈が必要でない限り、単語「含む(comprise)」並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる」などの変形は、明記された整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群の包含を意味するが、他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群を排除するものではないことが理解されるであろう。
【0096】
値の範囲を記載する場合、記載されている特徴は、範囲内にある個々の値であり得ることを理解すべきである。例えば、「約pH4~約pH6のpH」は、pH4、4.2、4.6、5.1、5.5(これらに限定されない)など、及びそのような値間の任意の値であり得る。さらに、「約pH4~約pH6のpH」は、目的の製剤のpHが保管中にpH4~pH6の範囲において2pH単位で変動するという意味で解釈されるべきではなく、むしろ溶液のpHについてその範囲内で値が選択され得、pHがそのpH付近で緩衝を維持されることを意味する。
【0097】
用語「約」が使用される場合、列挙された数に対してその列挙された数の5%、10%、15%又はそれを超えるものが加えられるか又は減じられることを意味する。意図される実際の変動は、文脈から決定可能である。
【0098】
本明細書を通して、組成物が成分又は材料を含むものとして記載される場合、別段の記載がない限り、組成物は、列挙された成分又は材料の任意の組み合わせから実質的になるか又はそれらからなり得ることも企図される。同様に、方法が特定の工程を含むと記載される場合、その方法は、別段の記載がない限り、列挙された工程の任意の組み合わせから実質的になるか又はそれらからなり得ることも企図される。本明細書に例示的に開示される本発明は、好適には、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素又は工程の不在下で実施され得る。
【0099】
本明細書に開示される方法及びその個々の工程の実施は、手動で且つ/又は電子機器によって提供される自動化を用いて若しくは自動化を利用して行うことができる。方法を特定の実施形態に関して記載してきたが、当業者であれば、その方法に関連した行為を行う他の方法を用い得ることを容易に理解するであろう。例えば、様々な工程の順序は、別段の記載がない限り、本方法の範囲又は趣旨から逸脱することなく変更され得る。加えて、個々の工程のいくつかを組み合わせるか、省略するか又は追加の工程にさらに細分することができる。
【0100】
本明細書に記載の全ての特許、刊行物及び参考文献は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。本開示と、組み込まれる特許、刊行物及び参考文献との間に矛盾がある場合、本開示が優先されるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】