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特表2024-521336医療器具セット、医療装置、医療方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】医療器具セット、医療装置、医療方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/16 20060101AFI20240524BHJP
   A61B 17/56 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61B17/16
A61B17/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573614
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2022066138
(87)【国際公開番号】W WO2022263429
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】102021115486.3
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512111500
【氏名又は名称】ジョイマックス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ライズ,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】シェンジェローズ,ラース
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL07
4C160LL12
4C160LL24
4C160LL70
(57)【要約】
本発明は、ガイド管を備え、かつこのガイド管に挿入可能な、隣接する2つの椎体間の椎間板腔の組織を処理および除去するための医療器具を備えた医療器具セットに関する。この器具は、その延伸方向を中心として回転可能なシャフトを有している。遠位端領域には、少なくとも2つの剛毛を備える剛毛セットが設けられ、この剛毛セットは少なくとも1つの中間スペースを有している。この中間スペースは、シャフトがその延伸方向を中心として回転する際に、処理された組織が中間スペースの内部で軸方向に移動できるように形成されている。その他に、本発明は医療装置および医療方法にも関する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド管(31)を備え、かつ前記ガイド管(31)に挿入可能な、隣接する2つの椎体(53、54)間の椎間板腔(52)内の組織を処理および除去するための医療器具(10)を備えた医療器具セット(28)であって、前記器具(10)は延伸方向を中心として回転可能なシャフト(11)を有し、前記器具(10)の遠位端領域(18)において少なくとも2つの剛毛(21)を有する剛毛セット(20)が設けられており、前記剛毛セット(20)は少なくとも1つの中間スペース(23)を有し、これによって、前記シャフト(11)がその延伸方向を中心として回転する際に、処理された組織が前記少なくとも1つの中間スペース(23)の内部で実質的に近位方向に移動可能になっており、また前記ガイド管(31)は、前記器具セット(28)の偏向器具(29)の一部として形成されており、前記偏向器具(29)は、前記ガイド管(31)に関節式に旋回可能に接続されている、前記ガイド管(31)に対して旋回可能な、遠位開口部(33)を備える旋回ヘッド(32)を有し、前記遠位開口部(33)の中に前記器具(10)が少なくとも部分的に挿入可能である、医療器具セット(28)。
【請求項2】
前記剛毛セット(20)は螺旋状に配置されており、特に少なくとも1つの前記中間スペース(23)が前記剛毛セット(20)の2つの巻き(22)の間に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の器具セット。
【請求項3】
互いに撚り合わされて螺旋状に配置された少なくとも2本のワイヤ(16、17)が前記器具(10)の前記遠位端領域(18)に設けられており、前記剛毛セット(20)は、特に摩擦結合によって前記ワイヤ(16、17)に接続されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の器具セット。
【請求項4】
前記少なくとも2本のワイヤ(16、17)は相対回転不能に、また少なくとも間接的に前記シャフト(11)に接続されていることを特徴とする、請求項3に記載の器具セット。
【請求項5】
前記剛毛セット(20)の前記剛毛(21)は、特に弾性のあるポリマー、および/または形状記憶合金、および/またはばね鋼、および/またはニチノールから製造されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の器具セット。
【請求項6】
前記器具(10)の遠位正面(24)は、非外傷性の、特に少なくとも部分的に丸い表面を有していることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の器具セット。
【請求項7】
前記器具(10)の遠位端領域(18)は、半径方向の、特に円錐状の突出部(27)を有していることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の器具セット。
【請求項8】
前記器具(10)の前記遠位端領域(18)は、0°以外の角度で、近位端領域(25)の延伸方向に対して、特にユーザー定義に従って偏向可能であり、特に旋回可能であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の器具セット。
【請求項9】
前記器具(10)の前記シャフト(11)は、少なくとも部分的に可撓性を持つように形成されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の器具セット。
【請求項10】
前記剛毛セット(20)は、前記器具(10)の搬送位置では前記シャフト(11)の方に曲がることができ、かつ/または前記剛毛セット(20)は、前記器具(10)の作業位置では実質的に半径方向に整列できることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の器具セット。
【請求項11】
前記旋回ヘッド(32)は、前記ガイド管(31)に対してユーザー定義に従って旋回可能であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の器具セット。
【請求項12】
前記器具(10)は、前記ガイド管(31)に対して延伸方向を中心として回転可能であり、および/または前記ガイド管(31)に対して軸方向に固定可能であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の器具セット。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の器具セット(28)、および以下のコンポーネント、すなわち、
- 特にカニューレ状の作業スリーブ(47、47a)および/または
- 内視鏡(50)の作業チャネル(51)
を備える医療装置であって、前記器具セット(28)の前記器具(10)は、前記作業スリーブ(47、47a)内および/または前記作業チャネル(51)内において軸方向に移動可能、特に挿入可能である医療装置。
【請求項14】
隣接する2つの椎体(53、54)間の椎間板腔(52)内の介入部位の組織を処理および除去するための医療方法であって、以下の工程、すなわち、
- 前記介入部位へのアプローチを行う工程、
- 請求項1から13のいずれか一項に記載の医療器具セット(28)を前記介入部位に挿入する工程、および
- 前記器具セット(28)の医療器具(10)を介入部位で前記器具(10)の延伸方向を中心として回転させ、それによって前記介入部位の前記組織を処理し、除去する工程
を備える医療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイド管を備え、かつこのガイド管に挿入可能な、隣接する2つの椎体間の椎間板腔内の組織を処理および除去するための医療器具を備えた医療器具セットに関する。その他に、本発明はこの器具セットを備える医療装置にも関する。さらに、本発明は、椎間板腔内において椎間板腔の組織を処理および除去するための医療方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
医療介入では、介入部位から人体組織を処理し、その処理した組織を介入部位から除去することがしばしば行われる。例えば、椎間板変性の場合、脊椎外科手術においては該当する椎間板腔の組織、特に隣接する2つの椎体の間にあるゼリー状髄核(Nucleus pulposus)が除去された後、椎体同士を相対的に安定させるために椎間板腔内に椎間ケージが挿入される。この術式は、通常、椎間板切除術、髄核摘出術、断片切除術、または環状切開術とも呼ばれる。(椎間板)組織は、通常、例えば特許文献1から公知である、切断器具を備える医療器具セットによって処理される。
【0003】
切断器具を備える公知の器具セットは、それらが本来の処理、特に組織を切開するためだけに設計されているという欠点を有している。介入部位から組織を除去するためには、切断器具の使用後に切断器具を椎間板腔から慎重に取り除く必要があり、続いて、処理された組織を除去するために、この目的のために特別に設けられた別の除去器具を介入部位の椎間板腔に挿入しなければならない。それと同時に、椎間板腔の完全な処理および除去は、しばしば不可能であるか、いずれにせよ多大な労力をかけない限り不可能であり、このことは介入の合併症リスクを高める。そのため、医療介入は長時間に及び、労力とリスクを伴うものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/103839号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、先行技術の欠点を解消し、特に、組織を可能な限り完全に処理し、介入部位から処理した組織を除去することができる医療器具を開発することである。方法についても、同じことが該当する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、次の特徴を備える医療用器具セットによって解決される。すなわち、この器具は、延伸方向を中心として回転可能なシャフトを有し、器具の遠位端領域において少なくとも2つの剛毛を備える剛毛セットが設けられており、この剛毛セットは少なくとも1つの中間スペースを有し、これによって、シャフトがその延伸方向を中心として回転する際に、処理された組織がこの少なくとも1つの中間スペースの内部で実質的に近位方向に移動可能になり、またガイド管は器具セットの偏向器具の一部として形成されており、この偏向器具は、ガイド管に関節式に旋回可能に接続されている、ガイド管に対して旋回可能な、遠位開口部を備える旋回ヘッドを有し、この遠位開口部の中に器具が少なくとも部分的に挿入可能である。
【0007】
さらに、本発明の課題は、本発明に基づく器具セットと以下のコンポーネント、すなわち、特にカニューレ状の作業スリーブおよび/または内視鏡の作業チャネルを備える医療装置によって解決され、器具セットの器具は、作業スリーブ内および/または作業チャネル内において軸方向に移動可能、特に挿入可能である。最後に、本発明の課題は、介入部位へのアプローチを形成する工程、介入部位に本発明に基づく器具セットを挿入する工程、および介入部位の組織が処理され除去されるように、器具の延伸方向を中心として器具セットの器具を介入部位で回転させる工程を含む医療方法によって解決される。
【0008】
本発明は、本発明に基づく器具セットの器具の回転時に剛毛セットの剛毛によって、組織を傷めないように処理することができるという基本的考え方に基づいている。椎間板腔における介入の際、組織の処理は、この剛毛により、特に公知の切断器具と比べると、椎間板腔に隣接している椎体の骨表面を傷めないように行われる。この器具、特にシャフトは、いずれにせよ組織を処理する際に器具の延伸方向を中心として回転することから、この回転運動を利用して、本発明に基づく中間スペースにより、処理した組織は同時に近位方向に移動可能であり、すなわち介入部位から組織を運び出すことができる。このことは、例えばスクリューコンベヤと似たように行われる。特に、これによって、椎間板腔内のゼリー状の髄核の処理が容易になり、その処理された断片を介入部位から特に迅速に除去することができる。従って、本発明に基づく器具セットの器具は、従来はそれぞれ別の器具が必要であった2つの異なる機能を兼ね備えていることになる。これと共働する形で、偏向器具の旋回ヘッドにより、それぞれの局所で優勢な解剖学的条件、特に椎間板腔内のゼリー状髄核を考慮しながら、広い範囲にわたる組織の処理および除去が可能である。本発明の意味において、偏向器具とは、本発明に基づく器具を安定させるため、また特にユーザー定義の偏向を行うために形成されている。同じことが、本発明に基づく装置および本発明に基づく方法にも該当する。
【0009】
本発明の意味において、軸方向とは、器具の延伸方向に対して平行に配置されている方向を指している。半径方向とは、軸方向に対して垂直であり、シャフトの延伸方向と交差する方向である。方位角方向とは、軸方向および半径方向に対して垂直な方向である。近位方向とはユーザーを向く方向を指し、遠位方向とは介入部位を向く方向を指す。
【0010】
好ましくは、剛毛セットは螺旋状であり、特にシャフトの周りに螺旋状に配置されており、特に少なくとも1つの中間スペースが剛毛セットの2つの巻きの間に形成されている。このようにして、中間スペースもまた螺旋状に形成されているため、処理された組織は、本発明に基づく器具の使用時にスクリューコンベアと同じように移動可能である。これにより、特に効率的に器具を使用することができる。
【0011】
本発明の発展形態では、近位側から見て、剛毛セットおよび/または少なくとも1つの中間スペースは、右巻きに螺旋状に形成されている。これにより、例えば器具を反時計回りに回転させた場合、処理された組織は近似方向に動くことができる。好ましくは、剛毛セットが少なくとも一条で、特に正確に一条で螺旋状に配置されている。剛毛の数により、処理した組織の時間的比率を決定することができ、このとき、処理した組織の運び出しと、器具を挿入する時の剛毛の動きを確保するには、剛毛の間にまだ十分な空間がなければならないことを考慮する必要がある。
【0012】
椎間板腔内で器具セットの器具を使用する場合、ゼリー状髄核の組織は処理され、除去されるが、椎間板腔を画定する椎体終板は処理できないように、剛毛の硬度は柔らかく形成されていてよい。代替として、剛毛の硬度は、錐体終板が処理可能であるような硬さにすることもできる。特に、剛毛の硬度は、骨の内側に位置する海綿骨の処理が可能であるように選択されており、このとき、好ましくは、剛毛の硬度により、骨の外側に位置する緻密部の処理は行われない。
【0013】
好ましくは、互いに撚り合わされて螺旋状に配置された少なくとも2本のワイヤが遠位端領域に設けられており、剛毛セットは、摩擦結合および/または形状結合によってワイヤに接続することができる。互いに撚り合わされたワイヤを使用することにより、本発明に基づく器具は、特に簡単に製造可能であり、ワイヤに接続されている剛毛セットは確実に保持されている。好ましくは、剛毛セットは、少なくとも2本の金属ワイヤに挟まれる形で接続されており、このとき、金属ワイヤは固定ワイヤとして形成されていてよい。本発明の有利な実施形態では、特に金属、好ましくは合金から作られている正確に2本のワイヤが形成されている。これらのワイヤは、ステンレスおよび/またはチタンからなる成分、またはステンレス合金および/またはチタン合金からなる成分を有することができる。
【0014】
少なくとも2本のワイヤは、少なくとも間接的に、および/または相対回転不能にシャフトに接続することができ、このとき、ワイヤは特にシャフトの遠位側に配置されている。さらに剛毛は、組織を効果的に処理するために、実質的に半径方向に向けられていてよい。この目的のため、剛毛セットの剛毛の半径方向の長さは同じであり、それぞれ特にシャフトの直径の少なくとも2倍の長さである。
【0015】
剛毛セットの剛毛は、好ましくは少なくとも1つの、特に剛性の高いまたは弾性のあるポリマー(例えばポリアミド)からなる成分、および/または形状記憶合金からなる成分、および/または弾力性のある金属(例えばばね鋼またはニチノール)からなる成分を有している。好ましくは、剛毛は少なくとも1つの繊維強化成分を有している。本発明の発展形態において、剛毛は、これらの成分の少なくとも1つの成分から製造されている。剛毛セットおよび/またはワイヤは、近位側から見て右巻きに配置されていてよい。
【0016】
特に器具の遠位側で意図しない組織の損傷を避けるために、その遠位正面は、好ましくは少なくとも部分的に丸い表面を有する非外傷性先端部を有することができる。本発明の有利な発展形態において、先端部は、特に半球型に形成されている。
【0017】
器具の意図しない動き、特に遠位方向への動きを防止するために、その遠位端領域は、半径方向の、特に円錐状の、好ましくは円筒状の突出部を有することができる。この半径方向の突出部によって生じる半径方向の広がりにより、器具の軸方向への意図しない動き、特に介入部位からの意図しない離脱が阻止され、全体として安全性が向上する。突出部は、特にシャフトの半径方向に突き出ているが、好ましくは剛毛から突き出てはいない。さらに、器具の遠位正面と半径方向の突出部との間の外部輪郭は、この領域においても意図しない組織の損傷を回避するために円錐状に形成することができる。
【0018】
少なくとも2本のワイヤを保護するために、この器具は、少なくとも1つのスリーブを有することができ、少なくとも2本のワイヤは、少なくとも1つのスリーブ内に少なくとも部分的に配置することができる。本発明の有利な実施形態では、第1のスリーブが剛毛セットの近位側に形成され、第2のスリーブが剛毛セットの遠位側に形成されており、少なくとも2本のワイヤは、特に相対回転不能にスリーブと接続されていてよい。少なくとも2本のワイヤは、近位側で少なくとも間接的に、しかし好ましくは相対回転不能にシャフトに接続することができる。本発明の有利な発展形態では、少なくとも2本のワイヤが形状結合によって少なくとも1つのスリーブに接続されており、特にこのスリーブに圧着されている。
【0019】
介入部位の組織を可能な限り広く処理できるようにするため、器具の遠位端領域は、0°以外の角度、特に12°、24°、および/または36°の角度で、近位端領域の延伸方向に対して、特にユーザー定義に従って偏向可能であり、好ましくは旋回可能である。好ましくは、遠位端領域が、近位端領域の延伸方向に対して0°から36°の角度範囲で偏向可能である。旋回軸は、好ましくは、器具の延伸方向に対して垂直に配置されている。これにより、器具の延伸方向に沿って位置していない組織も処理することができる。従って、本発明に基づく器具の使用は、介入部位の解剖学的構造に適合させることができる。器具の剛毛セットを有する遠位端領域は、特に弾性的に曲げることができ、これにより偏向は特に簡単に可能である。
【0020】
シャフトは、特にこの目的のために、少なくとも部分的に可撓性を持つように形成されていてよく、特に部分的に形状記憶合金から、例えばチタン合金から作られていてよい。その例は、ニチノールとして知られているニッケルチタン合金がある。シャフトは、特に部分的に曲げることができる。好ましくは、シャフトの可撓性部分は、器具が偏向器具内に挿入されている場合、旋回ヘッドおよび/または偏向器具のジョイント部の軸方向の高さに配置されている。
【0021】
近位端領域において、器具は、回転運動を器具に伝達するためのドライバを有していてよく、これにより、アクチュエータを形成する必要性がなくなる。このドライバは、トルクをできる限り簡単に器具のシャフトに伝達できるようにするため、好ましくは多角形の、特に四角形の断面を有している。ドライバは、特に相対回転不能にシャフトに接続され、かつ/または軸方向中心にある領域においてシャフトよりも大きな半径方向の広がりを有している。
【0022】
器具の剛毛セットは、器具の搬送位置ではシャフト方向に、特に近位方向に曲がることができ、かつ/または器具の作業位置では実質的に半径方向に整列することができ、特に再びまっすぐに立つことができる。本発明の意味において、介入部位へ器具を動かす場合は、器具を搬送位置にすることができ、組織を処理し、除去するために器具を使用する場合は、器具を作業位置にすることができる。
【0023】
好ましくは、器具は、器具セットのガイド管内で軸方向に可動であり、そのようにして安全に介入部位に移動することができる。
【0024】
器具の有利な発展形態では、旋回ヘッドがガイド管に対して、ユーザー定義に従って旋回可能である。これにより、特に部分的に可撓性を持つように形成されているシャフトと組み合わせることで、椎間板腔のできる限り完全な処理および除去が可能になる。
【0025】
好ましくは、偏向器具の旋回ヘッドは、ガイド管の遠位端に配置されている。本発明の有利な発展形態において、この旋回ヘッドは、ユーザー側でアクセスできる偏向器具のグリップに取り付けられている操作可能なアクチュエータと、このアクチュエータおよび旋回ヘッドに接続されている、ガイド管内に配置された接続部品、例えばリンケージまたはリンクプレートとによって旋回させることができる。
【0026】
器具は、その延伸方向を中心として、ガイド管に対して回転可能であってよく、このとき、ガイド管は特に固定して配置されている。器具セットの安全な使用を確保するため、器具は、偏向器具のガイド管に対して軸方向に固定することができる。偏向器具は、特に、器具のドライバに相対回転不能に接続可能であるアクチュエータを有することができ、これにより、ドライバをその延伸方向を中心として回転させることができる。
【0027】
本発明に基づく装置の作業スリーブは、特にカニューレ状に形成されていてよく、これにより、介入部位、特に椎間板腔へのアプローチが容易になる。
【0028】
本発明に基づく方法の有利な発展形態において、本発明に基づく器具セットおよび/または本発明に基づく装置は、2つの隣接する錐体間の椎間板腔の組織、特にゼリー状随核組織を処理および除去するために設けられる。
【0029】
本発明に基づく器具セットの器具を挿入する際、その遠位端領域を、近位端領域に対して旋回させることができ、それによって、希望する介入部位への器具の移動が容易になり、このとき、好ましくは偏向器具の旋回ヘッドが旋回する。旋回角は0°~36°とすることができ、特に0°、12°、24°および/または36°の旋回角が設けられてよい。好ましくは、介入部位の組織の処理および/または除去は、器具の遠位端領域を曲げた状態で、および/または本発明に基づく器具セットの偏向器具の旋回ヘッドを曲げた状態で行われる。
【0030】
器具の位置および動きは、光学検査、特に内視鏡カメラによって、および/またはX線検査、例えばCアームによって確認することができるので、必要に応じてできるだけ早期に修正を行うことが可能である。
【0031】
好ましくは、椎間板腔へのアプローチは、後方、後側方、経椎間孔、前方、側方、頭側、経椎間孔および/または経椎弓間の少なくとも1つの方向から行われる。椎間板腔への経椎間孔アプローチは、椎間関節のわずかな切除しか必要としないため、椎間板腔へのアプローチ法としては特に低侵襲である。さらに、経椎間孔アプローチは組織外傷を最小限に抑えることができる。後方アプローチは、第5腰椎L5と仙骨の第1仙椎S1の間の脊柱の領域に特に適しており、この領域には比較的大きな経椎弓間窓があるため、後方アプローチはこの点で比較的非外傷性である。前方アプローチは、例えば椎間ケージのような大きなインプラントの挿入を可能にするが、優先的には2本の太い腸骨動脈への大動脈分岐部の脊柱の尾側領域でのみ推奨される。椎間板腔への外側アプローチは特に容易なアプローチ法であり、インプラントの広い接触面を確保できるが、この場合、軟部組織損傷のリスクがある。
【0032】
本発明に基づく方法は、例えば、機械的不安定性とも呼ばれる脊柱の機能不全の分節運動の治療において使用することができる。機能不全の分節運動は、例えば、椎間板および/または運動分節の退行性変化、ならびに腫瘍および感染が原因となり得る。二次的な不安定性は、その治療には本発明に基づく方法も同様に使用できるものであるが、腫瘍または以前の手術など、他の病変および/または事象によって発生した不安定性である。本発明に基づく方法の適用ケースである機能不全の分節運動の例は、脊椎すべり症である。好ましくは、本発明に基づく方法は、脊柱を安定化させるための椎間ケージの移植準備に使用される。
【0033】
本発明のその他の利点および特徴は、請求項、および図を用いて本発明の実施例を詳細に述べている以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明に基づく器具セットの器具の側面図である。
図2図1の器具の遠位端領域の斜視図である。
図3図1の器具の遠位側の図である。
図4】さらなる実施形態による器具の側面図である。
図5図4の器具の遠位端領域の斜視図である。
図6図4の器具の遠位側の図である。
図7図1の器具の遠位領域の拡大図である。
図8】本発明に基づく器具セットの偏向器具の側面図である。
図9図8の偏向器具および部分的に挿入された図1の器具を備える本発明に基づく器具セットの拡大側面図である。
図10】器具を完全に挿入した図9の器具セットの図である。
図11図10の器具セットの縮小側面図である。
図12】アクチュエータを備える図11の器具セットの部分断面図である。
図13】偏向器具の接続手段を備える器具の近位領域の斜視図である。
図14】偏向器具の接続手段を備える器具の近位領域の斜視図である。
図15】偏向器具の接続手段を備える器具の近位領域の斜視図である。
図16】偏向器具の接続手段を備える器具の近位領域の斜視図である。
図17】偏向器具の接続手段を備える器具の近位領域の斜視図である。
図18】作業スリーブを備える図11の器具セットの図である。
図19】作業スリーブを備える図11の器具セットの図である。
図20】内視鏡を備える図11の器具セットの図である。
図21】内視鏡を備える図11の器具セットの図である。
図22】内視鏡を備える図11の器具セットの図である。
図23】内視鏡および器具の前方装備を備える図11の器具セットの図である。
図24】内視鏡および器具の前方装備を備える図11の器具セットの図である。
図25】内視鏡および器具の前方装備を備える図11の器具セットの図である。
図26】椎間板腔内における図11の器具セットの配置を上から見た図である。
図27】椎間板腔内における図11の器具セットの配置を上から見た図である。
図28図26、27の器具セットの配置を正面から見た図である。
図29図28の器具セットのさまざまな旋回角の図である。
図30図28の器具セットのさまざまな旋回角の図である。
図31図28の器具セットのさまざまな旋回角の図である。
図32】椎間板腔への器具セットのアプローチ法を示す図である。
図33】椎間板腔への器具セットのアプローチ法を示す図である。
図34】椎間板腔への器具セットのアプローチ法を示す図である。
図35】椎間板腔への器具セットのアプローチ法を示す図である。
図36】椎間板腔への器具セットのアプローチ法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明に基づく器具セット28の医療器具10の概略的側面図であり、この器具は、実質的に軸方向に延伸している。器具10は、同軸に配置された、ニチノールまたはステンレスからなる可撓性シャフト11を有し、シャフト11は、特に以下でさらに説明する本発明に基づく偏向器具29とともにこの器具10を使用する場合、特に半径方向に広げられた遠位部12において、その延伸方向に対して垂直な軸を中心に曲げることができる。
【0036】
器具10は、可撓性シャフト11の遠位側に、シャフト11に対して半径方向に僅かに広がった強固な接続部13を有しており、この接続部13は、遠位方向に第1のスリーブ14と一体形成で接続され、この第1のスリーブ14をシャフト11と接続している。軸方向に向けられた、少なくとも部分的に中空円筒状の第1のスリーブ14は、半径方向に接続部13から突き出し、また内部空洞15を有しており、この中には2本の金属ワイヤ16、17が器具10の遠位端領域18に配置され、形状結合によってスリーブ14に、従って間接的にシャフト11に、圧着されている。視点の理由から、空洞15と、従って第1のスリーブ14内部の金属ワイヤ16、17の配置も図には示されていない。
【0037】
金属ワイヤ16、17の直径は、それぞれシャフト11の直径にほぼ相当する。金属ワイヤ16、17は、螺旋状に互いに撚り合わされており、近位側から見て右巻きの二重螺旋の形を形成している。遠位側で、金属ワイヤ16、17は、第2の中空円筒状のスリーブ19内に突き出し、スリーブ19と形状結合によって圧着されている。この第2のスリーブ19は、第1の近位側スリーブ14と同じ直径を有しているが、軸方向の長さは後者より短い。
【0038】
2本の金属ワイヤ16、17の間には、それぞれ半径方向に延びる剛毛21を備える剛毛セット20が挿入され、この剛毛セット20は撚り合わされた金属ワイヤ16、17に挟まれる形で接続されている。剛毛セット20は、近位側から見て右巻の螺旋形を形成しているので、2本の金属ワイヤ16、17と合わせて、全体として3重の螺旋形状が存在している。剛毛21の長さは、金属ワイヤ16、17の直径の少なくとも2倍であり、それにより、剛毛21は半径方向にそれぞれ2つのスリーブ14、19から突き出している。剛毛21は弾性があり、ここでは弾性ポリマーから製造されている。代替として、剛毛21はステンレス、バネ鋼、またはニチロールから製造されていてよい。器具10をその延伸方向を中心として回転させると、剛毛21は自身に接触している組織を分離する。剛毛セット20が右巻きのねじとして構成されていることから、剛毛21のそれぞれ隣接する2つの巻き22の間には中間スペース23が形成されている。器具10がその延伸軸を中心として回転すると、分離された組織は中間スペース23に集められ、近位方向に移動することで、組織が介入部位から取り除かれる。これにより、組織の処理中に処理された組織が介入部位に蓄積することが回避される。この器具の本発明に基づく形態により、処理した組織を別の器具によって介入部位から取り除く必要性もなくなる。
【0039】
第2の遠位スリーブ19は、遠位正面24として半球型の非外傷性遠位表面を有し、その丸い形態により、器具10の使用時に望ましくない組織損傷が回避される。特に、それにより、椎間板腔52内でゼリー状随核56を取り囲む線維輪(Anulus fibrosus)57の損傷が回避される。
【0040】
近位側で、可撓性シャフト11は、器具10の近位端領域25に、半径方向に拡張された直径と断面が四角形の基本形状を持つエンドピース26を有している。器具10の近位エンドピース26は、トルクを器具10のシャフト11に伝達するために形成されているドライバとして用いられ、このドライバ26によって、器具10はその延伸方向を中心とする回転運動において駆動され、このとき剛毛セット20は周辺の組織を分離し、中間スペース23を介して近位方向に介入部位から除去する。
【0041】
図2は、図1の器具10の斜視図であり、その遠位端領域18を拡大して示したものである。図2から、特に近位側から見て右巻きの渦巻き状または螺旋状の、2本の金属ワイヤ16、17と剛毛セット20からなる3重構造が明らかであり、剛毛セット20の剛毛21は、それぞれスリーブ14、19から、および一般的には器具10のその他のコンポーネントからも半径方向に突き出している。図2から、剛毛セット20の巻き22の間にある中間スペース23もまた、右巻きの螺旋状に配置されており、剛毛21と比較して半分のピッチしか有していない、すなわち2倍のサイクル数を有していることが分かる。図3は、図1の器具10を遠位側から見た、非外傷性遠位正面24と、剛毛セット20の半径方向に突き出している剛毛21の図であり、特に、剛毛21の半径方向の長さは、遠位側の第2のスリーブ19の直径のほぼ2倍に相当することが分かる。
【0042】
図4は、器具10のさらなる形態の側面図であり、特に遠位端領域18の形態が図1に示されている器具とは異なっている。図4において、遠位正面24は半円形の形態を有しておらず、その代わりに、遠位の丸い先端部24から、遠位先端部24と一体形成されている半径方向に広がる突出部27へと連続的かつ円錐状に移行している。さらに、近位方向では、半径方向の突出部27から第2のスリーブ19への移行は、連続的に、円錐状に形成されている。半径方向の突出部27は、器具10の遠位先端部24からもスリーブ14、19からも突き出しているが、剛毛セット20の剛毛21からは突き出していない。このことは、図5の側面図および図6の遠位上面図にも示されている。半径方向の突出部27はロック装置として用いられ、これにより、器具10の使用時に、例えば椎間板腔52などの介入部位からの意図しない離脱が防止される。
【0043】
図7図1の器具を示し、この図からスリーブ14、19に圧着されている金属ワイヤ16、17のすでに説明した配置が分かる。
【0044】
図8は、本発明に基づく器具セット28の部品としての偏向器具29を概略的側面図で示したものである。偏向器具29は、軸方向に、かつ器具10の延伸方向と平行に調整された、軸方向の内部空間30を有するガイド管31を有し、このガイド管31には、遠位開口部33を持つ中空円筒状の旋回ヘッド32がジョイント34によって旋回可能に連結されている。旋回ヘッド32は、固定されているガイド管31に対して、ガイド管31の延伸方向に垂直な軸を中心として旋回可能であり、旋回ヘッド32の旋回運動はユーザー制御に従って実施することができる。特に、0°~36°の旋回角が可能である。器具10は、旋回ヘッド32の遠位開口部33から偏向器具29の中に挿入可能であり、これについて以下でさらに説明する。
【0045】
その近位端領域35において、偏向器具29は、ガイド管31の延伸方向を中心として回転可能な旋回レバー36を有し、この旋回レバー36は、図示されていないロッドによって旋回ヘッド32に接続されおり、旋回レバー36を操作すると旋回ヘッド32が旋回できるようになっている。旋回レバー36の近位には、図8には示されていない、偏向器具29のガイド管31の内部に配置されている器具10のシャフト11を駆動するために、接続ピース37が設けられている。このために、偏向器具29の近位接続ピース37には、それぞれ軸方向に配向された長細い穴状の凹部38が周方向にわたって配分されており、それらの中に図12に示されているアクチュエータ39が形状結合的に係合する。ユーザー側でアクチュエータ39を操作することにより、近位接続ピース37と、最終的には接続ピースに相対回転不能に接続されている器具10のシャフト11が、その延伸方向を中心とする回転において駆動可能である。
【0046】
図9は、図1による器具10と図8による偏向器具29を備える本発明に基づく器具セット28を示しており、ここでは器具10は、遠位方向から偏向器具29の中にほぼ完全に挿入されている。このために、近位エンドピース26を備える器具10が旋回ヘッド32の遠位開口部33の中に挿入され、器具10の近位第1スリーブ14が旋回ヘッド32に接触し、器具10が偏向器具29の中に挿入されるまで、偏向器具29の内部空間30を介して、特にそのガイド管31を介してさらに軸方向に移動する。このことが図10に示されている。器具の近位スリーブ14の直径は、偏向器具10の旋回ヘッド32の直径と一致するので、図10で示されているように、器具10と偏向器具29の間の移行部は面一に揃っている。シャフト11の可撓部は、実質的にジョイント34の軸方向の高さにある。旋回ヘッド32のユーザー定義された偏向により、器具10の遠位端領域18も、従って特にその剛毛セット20も、器具10の近位端領域25に対して旋回可能である。これについて以下で詳しく説明する。
【0047】
図11は、旋回ヘッド32の中に挿入されている図10による器具10を備える器具セット28の縮小側面図である。図12では、図11の器具セットがすでに説明した近位アクチュエータ39を備え、このことは部分断面図から分かる。
【0048】
図13から図17を用いて、以下に、偏向器具29の接続手段40を使用した器具10と偏向器具29の接続について説明する。図13によれば、接続手段40は、手動操作可能な押しボタン41を有しており、この押しボタン41は接続手段40の中央固定部42に固定されている。固定部42は、実質的に円筒状に形成されており、軸方向の開口部43を有し、この開口部43の断面は鍵穴状に形成されている。すなわち、開口部の上領域は下領域よりも広くなっているため、開口部の断面は軸方向に対して垂直に下方に細くなっている。押しボタン41の下方には機械式ばね44が配置されており、このばね44は、操作されていない状態では押しボタン41が図13に示されている静止位置になるように、この押しボタン41に上向きの力を加えている。この位置において、偏向器具29の図示されていないガイド管31内に配置されている器具10のシャフト11は、開口部43の下領域の高さにあり、その部分の開口部43の半径方向の開口は、シャフト11の半径方向の広がりよりも小さいので、シャフト11は固定部42を通ることができない。
【0049】
押しボタン41が操作されると、押しボタン41は図14に示されている作動位置になる。それにより、開口部43の上領域がシャフト11の高さに来るので、図15に示されているように、シャフト11は開口部43を通ることができる。このとき、シャフト11の近位エンドピース26は、開口部43の上領域を完全に通り抜け、接続ピース37の遠位エンドピース45に形状結合によって接続される。シャフト11の近位端領域25は、部分的に開口部43の内部に配置されている。押しボタン41が解放されると、押しボタン41は図16に示されている位置になり、これによって、開口部43の下領域がシャフト11の高さになり、開口部43の下領域はシャフト11の近位エンドピース26よりも外側に小さな直径を有しているので、シャフト11はそれ以上遠位方向に動くことはできなくなる。従って、器具10は、軸方向に形状結合によって、かつ分離不能に偏向器具29に接続されている。このとき、開口部43の下領域はアンダーカットとして用いられる。図17は、この位置における図13の器具セット28の別の斜視図であり、この図から、特にシャフト11の近位エンドピース26の位置が分かる。遠位エンドピースが軸方向に回転すると、器具10の近位エンドピース26は、シャフト11と一緒に延伸方向を中心として回転する。
【0050】
図18から19を用いて、以下に、本発明に基づく医療装置46を説明する。図18は、本発明に基づく医療装置46の側面図であり、この医療装置46は、遠位側に配置された実質的に中空円筒状の作業スリーブ47と、この作業スリーブ47の近位側に配置されている図12の器具セット28を備えている。作業スリーブ47は、軸方向の内腔48と、円錐状の斜面を備えるカニューレ状の遠位正面49を有している。器具セット28は、図18において作業スリーブ47の近位側に、作業スリーブ47と同軸に配置されている。
【0051】
器具10のスリーブ14、19の直径は、それぞれ内腔48の直径よりも小さく、剛毛21の半径方向の長さはこれよりも大きい。器具10は、偏向器具29とともに近位方向から作業スリーブ47の内腔48を通って案内され、剛毛21はその半径方向の長さと弾性のある広がりにより、近位方向およびシャフト11の方に曲げられ、これにより、器具10の通過が可能になる。このようにして、本発明の意味において、器具10は搬送位置になる。器具10の遠位端領域18が作業スリーブ47の遠位正面49から出ると、剛毛21は再びまっすぐになり、図19に示されているように実質的に半径方向に整列する。この場合、本発明の意味において、器具10は作業位置にある。この位置において、器具10は、例えば椎間板腔52内の介入部位にあり、アクチュエータ39によって回転し、椎間板腔52の組織を処理することができる。さらに、旋回ヘッド32は、すでに説明したように、ユーザー定義に従って旋回可能である。
【0052】
図20から22は、近位側に配置された器具セット28および遠位側に配置された内視鏡50を備える、本発明に基づく医療装置46のさらなる実施形態を示しており、内視鏡50は、内側の中空円筒状軸方向作業チャネル51と遠位作業スリーブ47aとを有している。器具セット28は、近位方向から内視鏡50の作業チャネル51の中に案内され、作業チャネル51の内径は、スリーブ14、19の直径よりも大きいが、剛毛21の半径方向の長さよりは小さいので、器具セット28を挿入する際、剛毛21は、すでに前述したように、近位側およびシャフトの方向に曲げられる(図21を参照)。器具セット28が遠位側で作業チャネル51から出たとき、器具セット28は作業スリーブ47aの中にあり、この作業スリーブ47aの内径は、実質的に作業チャネル51の直径に相当する。器具セット28が遠位側で作業スリーブ47aから出ると、図22に示されているように、剛毛21は再びまっすぐになる。この配置において、器具セット28は、意図したように椎間板腔52の処理および除去のために使用可能である。
【0053】
図20から22による医療装置46の代替装備が図23から25に示されている。図23では、内視鏡50の近位側に器具セット28の偏向器具29だけが配置されており、器具10は配置されていない。偏向器具28は、器具10なしで、すでに説明したように、偏向器具29の旋回ヘッド32が遠位作業スリーブ47aを完全に通り過ぎるまで、内視鏡50の作業チャネル51およびその遠位作業スリーブ47aを通って移動する(図24を参照)。続いて、すでに説明したように、器具10を遠位方向から偏向器具29の中に挿入し、すなわち前方に装着する(図25を参照)。これによって得られた図25の装置46は、装着後、すでに説明した図22の装置と実質的に同一である。
【0054】
図26は、2つの隣接する椎骨53、54の間の椎間板腔52と、これらの椎骨に属している後椎体突出部55を示している。椎間板腔52は、ゼリー状随核(Nucleus pulposus)56を有し、これは、比較的固い繊維輪(Anulus fibrosus)57によって取り囲まれている。図26では、すでに説明した、器具10と偏向器具29からなる器具セット28が繊維輪57を通り抜けており、従って、特に器具10は椎間板腔52の内部に配置されている。偏向器具29を取り囲む作業スリーブ47は、繊維輪57の外部にある。椎間板腔52へのアプローチは外側から行われ、従って、特に容易であり、移植する椎間ケージのための特に大きな接触面を得ることができる。
【0055】
図26には、偏向器具29の旋回ヘッド32が偏向されず、図1による器具10の非外傷性先端部24がアプローチに対向する椎間板腔52の側面にある繊維輪57に対して間隔をあけて配置されている。このとき、先端部24の丸い形態により、意図しない繊維輪の損傷は回避される。図26に示されている位置では、ユーザー定義に従って器具10がその延伸方向を中心として回転すると、剛毛21の性質により、周辺にあるゼリー状随核56の組織が分離され、その組織は剛毛セット20の形態により中間スペース23を介して介入部位から除去される。
【0056】
椎間板腔52、特にゼリー状随核56の組織をできる限り完全に処理するために、偏向器具29の旋回ヘッド32を、器具10の回転運動を維持したまま、図27に示されているように、ガイド管31に対して旋回させる。旋回ヘッド32の旋回は、実質的に垂直に向けられている軸を中心として行われるので、旋回ヘッド32は前方に移動する。これにより、ゼリー状随核56のさらに離れた組織も処理され、椎間板腔52から除去される。器具セット28を、その延伸方向に沿って図27による位置から近位側に引き戻し、旋回ヘッド32を追加的にさらに旋回させることにより、結果的に、ほぼ完全なゼリー状随核組織の処理および椎間板腔52の除去が可能となる。処理が正常に終了したら、器具28を椎間板腔52から完全に取り外し、作業スリーブ47を通って近位側に戻す。
【0057】
図28は、作業スリーブ47内に配置されている器具セット28を後方から見た図であり、器具セット28は図27の器具セットに対して90°回転しており、これにより、旋回ヘッド32は患者の矢状軸を中心としてガイド管31に対して旋回可能であり、図28では24°の旋回角度で旋回している。椎間板腔52へのアプローチは、実質的に頭側外側方向から行われる。図29から31は、椎間板腔52内において、0°、12°、36°のさまざまな旋回角で作業スリーブ47内に配置されている図28の器具セット28を示している。
【0058】
図32から36は、椎間板腔52への器具セット28のさらなるアプローチ法を示し、図32では同様に外側からアプローチが行われている。図33では前方からアプローチが行われ、比較的大きなインプラント、特に椎間ケージの移植が可能である。しかし、図33による前方アプローチは、脊柱尾側領域、すなわち2本の太い腸骨動脈への大動脈分岐部の下方にのみ推奨される(図示されていない)。図34は、椎間板腔52への経椎間孔アプローチを示しており、これは椎間関節をわずかに切除するだけであるため、特に低侵襲なアプローチである。同様のことが図35にも当てはまり、図34の経椎間孔アプローチに対して僅かに後方に旋回している。最後に、図36は脊椎間腔52への後方アプローチを示し、第5腰椎L5と第1仙椎S1の間の脊柱の領域では、そこに大きな経椎弓間窓があるため非外傷性である。
【0059】
以下に、本発明に基づく方法の形態を、椎間板腔52における介入に基づいて説明する。最初に、周知の方式によって椎間板腔52へのアプローチが行われる。このアプローチは、例えば図26から36に示されているアプローチ法のいずれかを用いて行われる。続いて、図22に示されている装置46を椎間板腔52の方に移動させる。このとき、作業スリーブ47は繊維輪57を通過しないが、偏向器具29と器具10を備える器具セット28はすでに通り抜けている。このとき、器具10の位置と方向は、好ましくは、例えば内視鏡カメラや、CアームなどによるX線検査を用いて視覚的に確認される。続いて、器具10がその延伸方向を中心として作業スリーブ47に対して回転し、それにより、ゼリー状随核56の組織が処理され、介入部位から除去される。引き続き、偏向器具29の旋回ヘッド32が、器具10の回転を維持したまま、ユーザー定義に従って旋回し、かつ/または器具セット28が軸方向にさらに移動し、ゼリー状随核56のすべての組織が除去される。次に、本発明に基づく装置46は介入部位から取り外される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
【手続補正書】
【提出日】2024-01-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド管(31)を備え、かつ前記ガイド管(31)に挿入可能な、隣接する2つの椎体(53、54)間の椎間板腔(52)内の組織を処理および除去するための医療器具(10)を備えた医療器具セット(28)であって、前記器具(10)は延伸方向を中心として回転可能なシャフト(11)を有し、前記器具(10)の遠位端領域(18)において少なくとも2つの剛毛(21)を有する剛毛セット(20)が設けられており、前記剛毛セット(20)は少なくとも1つの中間スペース(23)を有し、これによって、前記シャフト(11)がその延伸方向を中心として回転する際に、処理された組織が前記少なくとも1つの中間スペース(23)の内部で実質的に近位方向に移動可能になっており、また前記ガイド管(31)は、前記器具セット(28)の偏向器具(29)の一部として形成されており、前記偏向器具(29)は、前記ガイド管(31)に関節式に旋回可能に接続されている、前記ガイド管(31)に対して旋回可能な、遠位開口部(33)を備える旋回ヘッド(32)を有し、前記遠位開口部(33)の中に前記器具(10)が少なくとも部分的に挿入可能である、医療器具セット(28)。
【請求項2】
前記剛毛セット(20)は螺旋状に配置されており、特に少なくとも1つの前記中間スペース(23)が前記剛毛セット(20)の2つの巻き(22)の間に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の器具セット。
【請求項3】
互いに撚り合わされて螺旋状に配置された少なくとも2本のワイヤ(16、17)が前記器具(10)の前記遠位端領域(18)に設けられており、前記剛毛セット(20)は、特に摩擦結合によって前記ワイヤ(16、17)に接続されていることを特徴とする、請求項に記載の器具セット。
【請求項4】
前記少なくとも2本のワイヤ(16、17)は相対回転不能に、また少なくとも間接的に前記シャフト(11)に接続されていることを特徴とする、請求項3に記載の器具セット。
【請求項5】
前記剛毛セット(20)の前記剛毛(21)は、特に弾性のあるポリマー、および/または形状記憶合金、および/またはばね鋼、および/またはニチノールから製造されていることを特徴とする、請求項に記載の器具セット。
【請求項6】
前記器具(10)の遠位正面(24)は、非外傷性の、特に少なくとも部分的に丸い表面を有していることを特徴とする、請求項に記載の器具セット。
【請求項7】
前記器具(10)の遠位端領域(18)は、半径方向の、特に円錐状の突出部(27)を有していることを特徴とする、請求項に記載の器具セット。
【請求項8】
前記器具(10)の前記遠位端領域(18)は、0°以外の角度で、近位端領域(25)の延伸方向に対して、特にユーザー定義に従って偏向可能であり、特に旋回可能であることを特徴とする、請求項に記載の器具セット。
【請求項9】
前記器具(10)の前記シャフト(11)は、少なくとも部分的に可撓性を持つように形成されていることを特徴とする、請求項に記載の器具セット。
【請求項10】
前記剛毛セット(20)は、前記器具(10)の搬送位置では前記シャフト(11)の方に曲がることができ、かつ/または前記剛毛セット(20)は、前記器具(10)の作業位置では実質的に半径方向に整列できることを特徴とする、請求項に記載の器具セット。
【請求項11】
前記旋回ヘッド(32)は、前記ガイド管(31)に対してユーザー定義に従って旋回可能であることを特徴とする、請求項に記載の器具セット。
【請求項12】
前記器具(10)は、前記ガイド管(31)に対して延伸方向を中心として回転可能であり、および/または前記ガイド管(31)に対して軸方向に固定可能であることを特徴とする、請求項に記載の器具セット。
【国際調査報告】