IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジボダン エス エーの特許一覧

特表2024-521340ローストされた赤身肉のフレーバーを提供するためのフレーバー増強剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】ローストされた赤身肉のフレーバーを提供するためのフレーバー増強剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/26 20160101AFI20240524BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20240524BHJP
   A23L 19/18 20160101ALI20240524BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20240524BHJP
   A23L 13/40 20230101ALI20240524BHJP
【FI】
A23L27/26
A23L27/20 D
A23L19/18
A23L13/00 A
A23L13/40
A23L13/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574159
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2022064748
(87)【国際公開番号】W WO2022253830
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】2107751.6
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルブリング,イバン
(72)【発明者】
【氏名】ローゼ,クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4B016
4B042
4B047
【Fターム(参考)】
4B016LC02
4B016LG06
4B016LK01
4B016LK02
4B016LK04
4B016LK07
4B016LK08
4B016LK10
4B016LK11
4B016LK18
4B016LP05
4B016LP10
4B042AC01
4B042AC03
4B042AG02
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK02
4B042AK11
4B047LG05
4B047LG06
4B047LG14
4B047LG15
4B047LG28
4B047LG38
4B047LG56
4B047LG60
4B047LP02
4B047LP05
4B047LP07
4B047LP08
(57)【要約】
本開示は、ローストされた赤身肉のフレーバーを提供するためのフレーバー増強剤に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローストされた赤身肉のフレーバーを提供するためのフレーバー増強剤であって、フレーバー増強剤は少なくとも10の以下のマーカー成分:
-0.50ppm~2.00ppmの濃度の2-メチルブタナール;
-0.10ppm~1.00ppmの濃度の2-メチル-1-ブテン-1-チオール
-0.05ppm~2.00ppmの濃度の2-メチル-3-フランチオール;
-0.05ppm~5.00ppmの濃度の2,5-ジメチルピラジン;
-0.05ppm~5.00ppmの濃度の2,6-ジメチルピラジン;
-0.05ppm~0.30ppmの濃度の2,3-ジメチルピラジン;
-5.00ppm~12.0ppmの濃度の2-メチル-4,5-ジヒドロフラン-3-チオール;
-0.10ppm~0.80ppmの濃度のトリメチルピラジン;
-0.05ppm~0.50ppmの濃度のフルフリルメルカプタン;
-4.00ppm~20.00ppmの濃度の2-アセチルピロール;
-25.0ppm~45.0ppmの濃度のフラネオール;
-100ppm~400ppmの濃度のノルフラネオール;
-0.70%~2.00%の濃度のスルフロール;
-1.00ppm~20.0ppmの濃度のプロリン-バリンジケトピペラジン;および
-3.50ppm~30.0ppmの濃度のプロリン-イソロイシンジケトピペラジン
を示された濃度で含む、前記フレーバー増強剤。
【請求項2】
2-メチルブタナールを0.60ppm~1.50ppmの濃度で、より好ましくは0.65ppm~1.20ppm、最も好ましくは0.70ppm~1.00ppmの濃度で含む、請求項1に記載のフレーバー増強剤。
【請求項3】
2-メチル-1-ブテン-1-チオールを0.20ppm~0.90ppm、より好ましくは0.30ppm~0.80ppm、最も好ましくは0.50ppm~0.70ppmの濃度で含む、請求項1または2に記載のフレーバー増強剤。
【請求項4】
2-メチル-3-フランチオールを0.10ppm~1.70ppm、より好ましくは0.50ppm~1.50ppm、最も好ましくは1.00ppm~1.30ppmの濃度で含む請求項1~3のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項5】
2,5-ジメチルピラジンを0.10ppm~0.40ppm、より好ましくは0.20ppm~0.35ppm、最も好ましくは0.25ppm~0.30ppmの濃度で含む請求項1~4のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項6】
2,6-ジメチルピラジンを0.10ppm~0.30ppm、より好ましくは0.12ppm~0.25ppm、最も好ましくは0.15ppm~0.20ppmの濃度で含む請求項1~5のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項7】
2,3-ジメチルピラジンを0.06ppm~0.25ppm、より好ましくは0.07ppm~0.10ppm、最も好ましくは0.07ppm~0.08ppmの濃度で含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項8】
2-メチル-4,5-ジヒドロフラン-3-チオールを5.50ppm~10.0ppmの、より好ましくは6.00ppm~9.00ppm、最も好ましくは6.50ppm~8.00ppmの濃度で含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項9】
トリメチルピラジンを0.12ppm~0.60ppm、より好ましくは0.13ppm~0.40ppm、最も好ましくは0.15ppm~0.20ppmの濃度で含む請求項1~8のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項10】
フルフリルメルカプタンを0.10ppm~0.45ppm、より好ましくは0.20ppm~0.40ppm、最も好ましくは0.30ppm~0.35ppmの濃度で含む請求項1~9のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項11】
2-アセチルピロールを4.50ppm~15.00ppm、より好ましくは5.00ppm~10.0ppm、最も好ましくは5.50ppm~7.00ppmの濃度で含む請求項1~10のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項12】
フラネオールを30.0ppm~40.0ppm、より好ましくは32.0ppm~39.0ppm、最も好ましくは34.0ppm~38.0ppmの濃度で含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項13】
ノルフラネオールを120ppm~350ppm、より好ましくは150ppm~300ppm、最も好ましくは180ppm~250ppmの濃度で含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項14】
スルフロールを0.80%~1.70%、より好ましくは0.90%~1.40%、最も好ましくは1.00%~1.25%の濃度で含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項15】
プロリン-バリンジケトピペラジンを、2.00ppm~16.0ppm、より好ましくは5.00ppm~14.0ppm、最も好ましくは8.00ppm~12.0ppmの濃度で含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項16】
プロリン-イソロイシンジケトピペラジンを5.00ppm~30.00ppm、10.0ppm~26.0ppm、より好ましくは15.0ppm~24.0ppm、最も好ましくは18.0ppm~22.0ppmの濃度で含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項17】
以下の1以上:
1.50ppm~8.00ppm、より好ましくは1.60ppm~7.00ppm、最も好ましくは1.65ppm~6.50ppmの濃度の3-メチルブタナール;
0.10ppm~0.60ppm、より好ましくは0.20ppm~0.50ppm、最も好ましくは0.30ppm~0.40ppmの濃度の3-メルカプト-2-ブタノン;
0.05ppm~2.00ppm、より好ましくは0.10ppm~1.50ppm、最も好ましくは0.12ppm~1.20ppmの濃度の2-エチル-6-メチルピラジン;
0.01ppm~0.25ppm、より好ましくは0.02ppm~0.20ppm、最も好ましくは0.03ppm~0.15ppmの濃度の2-メチルチアゾリジン;
0.05ppm~1.50ppm、より好ましくは0.08ppm~1.00ppm、最も好ましくは0.10ppm~0.80ppmの濃度の2-イソプロピルチアゾリジン;
0.50ppm~5.00ppm、より好ましくは1.00ppm~3.00ppm、最も好ましくは1.50ppm~2.50ppmの濃度の2-イソブチルチアゾリジン;
1.00ppm~12.0ppm、より好ましくは1.50ppm~10.0ppm、最も好ましくは1.75ppm~8.00ppmの濃度のマルトール;および/または
8.00ppm~20.0ppm、より好ましくは12.0ppm~17.0ppm、最も好ましくは14.0ppm~15.0ppmの濃度のプロリン-ロイシンジケトピペラジン、をさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項18】
フレーバー剤調調製品が、固形フレーバー剤調製品であり、好ましくは顆粒状又は粉末状である、請求項1~17のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤を含む食料製品。
【請求項20】
ローストされた赤身肉のフレーバーを食料製品に付与する方法であって、請求項1~18のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤を前記食料製品に添加するステップを含む、前記方法。
【請求項21】
請求項1~18のいずれか一項に記載のフレーバー増強剤の調製方法であって、以下のステップ:
(i)出発材料を提供すること、および、
(ii)出発材料を電子レンジ中で反応させ、および得られる材料を同時に乾燥させて、フレーバー増強剤を得ること、
を含み、
ここで、出発材料は、少なくとも、タンパク質源またはタンパク質の断片、またはアミノ官能基を有する他の材料を包含する、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローストされた赤身肉(red meat)のフレーバーを提供するためのフレーバー増強剤に関する。フレーバー剤は、匂いおよび/または味を付与または変更するために食品や飲料に添加される製品である。食品中/食品上に使用するためのフレーバー剤およびフレーバー剤特性を持つ特定の食品成分に関する規則(EC)No1334/2008は2008年12月16日に採択され、2009年1月20日に発効した。それは、フレーバー剤を安全に使用するための一般的な要件を定め、さまざまな種類のフレーバー剤:フレーバー剤物質、フレーバー剤調製品、熱プロセスフレーバー剤(Thermal process flavoring)、燻煙フレーバー剤(smoke flavorings)、フレーバー剤前駆体、およびその他のフレーバー剤の定義を示す。
【0002】
「フレーバー剤調製品」は次のように定義される:フレーバー剤調製品とは、原材料の段階において、またはヒトの消費のために処理された後のいずれかで適切な物理的、酵素的、または微生物学的プロセスによって、植物、動物、または微生物由来の材料から得られる、定義された化学物質以外のフレーバー剤をいう。
【0003】
一方、「熱プロセスフレーバー剤(Thermal process flavorings)」(一般に「プロセスフレーバー剤(process flavors)」とも呼ばれる)は、それ自体が必ずしもフレーバー剤特性を持たない成分の混合物から加熱処理後に得られる製品として定義され、そのうちの少なくとも1つは窒素(アミノ)を含有し、そしてもう一つは還元糖である。
【0004】
したがって、フレーバー剤調製品および反応/プロセスフレーバー剤は、それ自体は食品ではなく;それらは食品または飲料にフレーバーを付与するため、または食品または飲料のフレーバーを改変または改善するために食品または飲料に添加することを目的とした物品である。それらは本質的に非栄養的であり、すなわち、それらの実質的な目的は、栄養を提供することではなく、食品または飲料にフレーバーを付与すること、またはそれらが添加される食品または飲料のフレーバーを増強、改変、または改善することである。
【0005】
この出願全体を通して、「フレーバー増強剤」という用語は、規則(EC)No1334/2008で定義されているように、フレーバー剤調製品および熱プロセスフレーバー剤の両方を包摂することを意味する。したがって、本明細書中で使用される「フレーバー増強剤」という用語は、アミンまたはアミンの供給源を、これらの出発物質の供給源に関係なく、還元糖または還元糖の供給源と反応させることによって得られるあらゆる種類の反応フレーバー剤を対象とする。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ローストされた赤身肉のフレーバーを与えるための組成物に重点を置く。
【0007】
このようなフレーバーは、典型的には、熱の存在下で還元糖およびアミノ官能基(アミノ酸、アミド、アンモニウム、およびアンモニアを包含する)の非酵素的褐変反応であるメイラード反応によって得られる。しかし、たとえば、シッフ塩基形成(Schiff base formation)、ストレッカー分解(Strecker degradation)、カラメル化反応など、他の反応タイプもフレーバー合成に伴われる可能性がある。
【0008】
メイラード反応の結果として生成される一般的なフレーバーには、赤身肉、鶏肉、コーヒー、野菜、パンの皮、ローストされたノートが包含される。メイラード反応は主に糖とアミノ酸に依存するが、以下:自己分解酵母抽出物、加水分解植物性タンパク質、ゼラチン、植物抽出物、酵素処理タンパク質、肉脂または抽出物、および反応のpHを調整するための酸または塩基を包含する他の成分を含有することもまた可能である。反応は一般に、特定の温度(通常は100℃)で指定された時間(典型的に15分)の間、調整したpHで水性であり、さまざまなフレーバーを生成する。産出される典型的なフレーバーは、鶏肉、豚肉、牛肉、キャラメル、チョコレートである。しかし、反応の成分、温度、および/またはpHを調整することで、多種多様なニュアンスや強さを得ることが可能である。
【0009】
フレーバー増強剤は、典型的には、揮発性および不揮発性の両方の反応生成物、および未反応の出発物質の複雑な多成分ブレンドからなる。それらの組成構成は、反応パラメータに敏感であり、それらの成分の点で、またはそれらの成分の分布パターンにおいて変化し得る。重要な反応パラメータは、前駆体成分の化学的性質、反応時間と温度、水分、圧力、pHなどを包含することが可能である。これらのパラメータのうちの1以上が制御されない場合、フレーバー増強剤のフレーバープロファイルおよび/または着色は、たとえば、出発物質の全てを変換することの失敗、または異味の発生によって、悪影響を及ぼされる可能性がある。
【0010】
フレーバー増強剤の工業生産においては、当業者は前述の反応パラメータまたは変数を考慮に入れるだけでなく、プロセスエンジニアリングの考慮事項も考慮に入れなければならない。たとえば、反応媒体の粘度制御は重要な処理パラメータであり、工業規模ではポンピング、攪拌、ブレンド、ろ過などの操作に影響を与え、これらの操作を容易にするために、たとえば、非常に希薄な水性スラリーからなる反応媒体で反応フレーバー剤を形成するのが従来である。さらにまた、このように粘度をコントロールすることに加えて、高濃度の水を採用することで、伝熱を制御し、フレーバー増強剤の形成時の過熱や局所的な加熱を防ぐことができる。
【0011】
フレーバー増強剤は、異なる物理的形態を有し得る。たとえば、それらはそれらの組成および使用目的に応じて、固体または液体であり得る。
【0012】
乾燥形態のフレーバー増強剤は、その物理的および微生物学的安定性を理由とし、ならびに貯蔵、取り扱い、使用などの容易さなどのサプライチェーンの考慮事項のために特に重要である。したがって、フレーバー増強剤が形成された後の反応混合物からの水分の除去は、決定的なプロセスステップである。
【0013】
従来のプロセス条件を用いて、スラリーを加熱して第1のステップでフレーバー剤調製品または反応フレーバー剤を作成した後、第2のステップで噴霧乾燥または真空オーブン乾燥によりスラリーを脱水する。噴霧乾燥は比較的安価であるが、この技術は比較的大量の担体物質を使用する必要があり、完成したフレーバー調製品のフレーバープロファイルおよび口当たりに悪影響を及ぼす可能性がある。より一般的には、第2のステップでは、真空オーブン乾燥を使用して脱水が達成される。この場合、反応完了後、スラリーを乾燥トレイに移し、トレイを真空オーブンに挿入し、減圧下で加熱(通常は100℃未満)して水分を蒸発させる。しかし、この方法でスラリーを脱水するのに必要な時間とエネルギーは、かなり資源の無駄が多い。プロセスは手間がかかり、複雑で費用がかかり;また、長い乾燥時間と高温への依存は、プロセス内での慎重な制御無しには、乾燥プロセスがフレーバーの品質と信頼性に痕跡を残す可能性があることを意味する。
【0014】
これらの従来の方法により調製された固形のローストされた赤身肉フレーバー増強剤は、噴霧乾燥により調製された場合は、幾分シャープで刺激があり、真空オーブン乾燥により調製された場合はあまり強くない傾向がある。
【0015】
それにもかかわらず、固形フレーバー増強剤は取り扱いが容易であり、食品または飲料の添加物として多くの用途があり、フレーバー剤メーカーおよび食品および飲料メーカーなどから非常に所望されている。
【0016】
したがって、迅速で信頼性が高く、費用対効果の高い方法で調製し得る、フレーバープロファイルを改善した固形のローストされた肉のフレーバー増強剤の必要性がある。
【0017】
第1の側面において、本発明は、ローストされた赤身肉のフレーバーを提供するための改良されたフレーバー増強剤を提供する。
【0018】
第2の側面において、本発明は、本発明のフレーバー増強剤を含む食料製品を提供する。
【0019】
第3の側面において、本発明は、ローストされた赤身肉のフレーバーを食料製品に付与する方法であって、前記方法は、本発明のフレーバー増強剤を前記食料製品に添加するステップを含む。
【0020】
第4の側面において、本発明は、本発明のフレーバー増強剤の調製方法を提供する。
【0021】
本発明のフレーバー増強剤は、少なくとも10の以下のマーカー成分:
-0.50ppm~2.00ppmの濃度の2-メチルブタナール;
-0.10ppm~1.00ppmの濃度の2-メチル-1-ブテン-1-チオール
-0.05ppm~2.00ppmの濃度の2-メチル-3-フランチオール;
-0.05ppm~5.00ppmの濃度の2,5-ジメチルピラジン;
-0.05ppm~5.00ppmの濃度の2,6-ジメチルピラジン;
-0.05ppm~0.30ppmの濃度の2,3-ジメチルピラジン;
-5.00ppm~12.0ppmの濃度の2-メチル-4,5-ジヒドロフラン-3-チオール;
-0.10ppm~0.80ppmの濃度のトリメチルピラジン;
-0.05ppm~0.50ppmの濃度のフルフリルメルカプタン;
-4.00ppm~20.00ppmの濃度の2-アセチルピロール;
-25.0ppm~45.0ppmの濃度のフラネオール;
-100ppm~400ppmの濃度のノルフラネオール;
-0.70%~2.00%の濃度のスルフロール;
-1.00ppm~20.0ppmの濃度のプロリン-バリンジケトピペラジン;および
-3.50ppm~30.0ppmの濃度のプロリン-イソロイシンジケトピペラジン
を示された濃度で含む。
【0022】
これらのマーカー成分は、さまざまな出発材料、出発材料の比率と画率、スラリーの粘度と流動性、ならびにエネルギー取り込み(たとえば、均質またはホットスポットの形成など)、フレーバー増強剤を調製するための水の吸収および保持を包含する反応および乾燥条件の広範なテスト、ならびに臭気、味、食感、口当たり、安定性、および創造における機能性およびパフォーマンスに関するこのようにして得られたフレーバー増強剤の入念な分析によって特定された。
【0023】
驚くべきことに、上記マーカー成分のうち少なくとも10を含むフレーバー増強剤は、示された濃度で、食品業界が望むサクサクした/表面の硬い(crusty)脂肪の側面のある肉、ローストされた、カラメルの、またはチョコレート(ローストビーフ)のノートで、これらは通常、フレーバー成分の配合を使用して達成することはできない、非常に特徴的なフレーバープロファイルを提供することができることが見出された。特に、本発明のフレーバー増強剤は、獣脂のノートを有する独特な、複雑なローストビーフの特徴を有することが見出された。それは、クリアなボーンマロー牛骨髄と甘いバックグラウンドを備える匂いと味のノートにおいて豊かなローストされた肉らしい特徴を提供する。
【0024】
(真空)オーブン乾燥によって調製された従来の赤身肉フレーバー組成物と比較して、本発明のフレーバー増強剤は、より濃縮され、より強力であり、著しく低い使用量でより優れた性能および機能を供する。
【0025】
噴霧乾燥によって調製された赤身肉フレーバー組成物は、非常に、尖った(peaky)、シャープ、または刺激的である傾向がある。比較すると、本発明のフレーバー増強剤は、より複雑で、より微妙で、より「ホームメイド」で、より本格的で、より「処理」されていない。
【0026】
全体として、本発明のフレーバー増強剤は、より強いローストされたトップノート(top notes)を有する複雑な牛肉らしいフレーバーを提供し、それにより、使用量を減らすことを可能にし、それによってまた、原料コストにプラスの影響を与える。
【0027】
また、常温で数ヶ月間安定である。
【0028】
フレーバー増強剤の成分は、質量分析計と結合されたガスクロマトグラフィーによって特定され得る。
【0029】
成分の濃度は、適当な検出器および試料調製物を用いた定量的ガスクロマトグラフィーによって測定され得る。たとえば、内部標準を使用してよい。
【0030】
本発明の特色は、フレーバー増強剤が、食品または飲料品マトリックスの外部で形成される生成物であることである。これは、食品または飲料品と混合または適用されることにより、単独で、または完全なフレーバー組成物の一部として、食品または飲料にフレーバーを付与したり、変更または改善したりできる物品である。フレーバー増強剤は、食品または飲料が加熱または調理されているプロセス中は、食品または飲料品マトリックス内またはマトリックス上に形成されない。
【0031】
本発明のフレーバー増強剤は上記15のマーカー成分の少なくとも10を示された濃度で含む。好ましくは、フレーバー増強剤は、少なくとも11、より好ましくは少なくとも12、さらにより好ましくは少なくとも13、なおさらにより好ましくは少なくとも15、最も好ましくは15全てのマーカーを、特に示された濃度で含む。
【0032】
実施態様において、フレーバー増強剤は、0.60ppm~1.50ppm、より好ましくは0.65ppm~1.20ppm、最も好ましくは0.70ppm~1.00ppmの濃度の2-メチルブタナールを含む。たとえば、フレーバー増強剤は、約0.71、0.88または1.18ppmの2-メチルブタナールを含む。
【0033】
2-メチル-1-ブテン-1-チオールは、シス異性体として、トランス異性体として、または2つの異性体の任意の混合物として存在し得る。実施態様において、フレーバー増強剤は、0.20ppm~0.90ppm、より好ましくは0.30ppm~0.80ppm、最も好ましくは0.50ppm~0.70ppmの濃度の2-メチル-1-ブテン-1-チオールを含む。たとえば、フレーバー増強剤は、約0.11、0.15、0.58または0.68ppmの2-メチル-1-ブテン-1-チオールを含む。
【0034】
実施態様において、フレーバー増強剤は、0.10ppm~1.70ppm、より好ましくは0.50ppm~1.50ppm、最も好ましくは1.00ppm~1.30ppmの濃度の2-メチル-3-フランチオールを含む。たとえば、フレーバー増強剤は、約0.06、0.13、1.05または1.26ppmの2-メチル-3-フランチオールを含む。
【0035】
実施態様において、フレーバー増強剤は、0.10ppm~0.40ppm、より好ましくは0.20ppm~0.35ppm、最も好ましくは0.25ppm~0.30ppmの濃度の2,5-ジメチルピラジンを含む。たとえば、フレーバー増強剤は、約0.06、0.26、0.29または0.46ppmの2,5-ジメチルピラジンを含む。
【0036】
実施態様において、フレーバー増強剤は、0.10ppm~0.30ppm、より好ましくは0.12ppm~0.25ppm、最も好ましくは0.15ppm~0.20ppmの濃度の2,6-ジメチルピラジンを含む。たとえば、フレーバー増強剤は、約0.11、0.16、0.17または0.22ppmの2,6-ジメチルピラジンを含む。
【0037】
実施態様において、フレーバー増強剤は、0.06ppm~0.25ppm、より好ましくは0.07ppm~0.10ppm、最も好ましくは0.07ppm~0.08ppmの濃度の2,3-ジメチルピラジンを含む。たとえば、フレーバー増強剤は、約0.074、0.075または0.225ppmの2,3-ジメチルピラジンを含む。
【0038】
実施態様において、フレーバー増強剤は、5.50ppm~10.0ppm、より好ましくは6.00ppm~9.00ppm、最も好ましくは6.50ppm~8.00ppmの濃度の2-メチル-4,5-ジヒドロフラン-3-チオールを含む。たとえば、フレーバー増強剤は、約1.24、6.98、7.64または7.87ppmの2-メチル-4,5-ジヒドロフラン-3-チオールを含む。
【0039】
実施態様において、フレーバー増強剤は、0.12ppm~0.60ppm、より好ましくは0.13ppm~0.40ppm、最も好ましくは0.15ppm~0.20ppmの濃度のトリメチルピラジンを含む。たとえば、フレーバー増強剤は、約0.16、0.17、0.37または0.69ppmのトリメチルピラジンを含む。
【0040】
実施態様において、フレーバー増強剤は、0.10ppm~0.45ppm、より好ましくは0.20ppm~0.40ppm、最も好ましくは0.30ppm~0.35ppmの濃度のフルフリルメルカプタンを含む。たとえば、フレーバー増強剤は、約0.08、0.23、0.32または0.33ppmのフルフリルメルカプタンを含む。
【0041】
実施態様において、フレーバー増強剤は、4.50ppm~15.0ppmより好ましくは5.00ppm~10.0ppm、最も好ましくは5.50ppm~7.00ppmの濃度の2-アセチルピロールを含む。たとえば、フレーバー増強剤は、約5.60、5.70、6.25または12.7ppmの2-アセチルピロールを含む。
【0042】
実施態様において、フレーバー増強剤は、30.0ppm~40.0ppm、より好ましくは32.0ppm~39.0ppm、最も好ましくは34.0ppm~38.0ppmの濃度でフラネオールを含む。たとえば、フレーバー増強剤は、約34.1、35.9、37.9または39.0ppmのフラネオールを含む。
【0043】
実施態様において、フレーバー増強剤は、120ppm~350ppm、より好ましくは150ppm~300ppm、最も好ましくは180ppm~250ppmの濃度でノルフラネオールを含む。たとえば、フレーバー増強剤は、約114、194、222または250ppmのノルフラネオールを含む。
【0044】
実施態様において、フレーバー増強剤は、0.80%~1.70%、より好ましくは0.90%~1.40%、最も好ましくは1.00%~1.25%の濃度のスルフロールを含む。たとえば、フレーバー増強剤は、約0.21、0.90、1.16または1.20%のスルフロールを含む。
【0045】
実施態様において、フレーバー増強剤は、2.00ppm~16.0ppm、より好ましくは5.00ppm~14.0ppm、最も好ましくは8.00ppm~12.0ppmの濃度のプロリン-バリンジケトピペラジンを含む。たとえば、フレーバー増強剤は、約1.07、2.55、8.46または12.0ppmのプロリン-バリンジケトピペラジンを含む。
【0046】
実施態様において、フレーバー増強剤は、5.00ppm~30.00ppm、10.0ppm~26.0ppm、より好ましくは15.0ppm~24.0ppm、最も好ましくは18.0ppm~22.0ppmの濃度のプロリン-イソロイシンジケトピペラジンを含む。たとえば、フレーバー増強剤は、約3.76、9.87、18.9または21.1ppmのプロリン-イソロイシンジケトピペラジンを含む。
【0047】
本発明のフレーバー増強剤は、典型的には、調製物に特定の匂いまたは味を付与し得る様々な他の成分を含む。
【0048】
以下のさらなる添加成分:3-メチルブタナール、3-メルカプト-2-ブタノン、2-エチル-6-メチルピラジン、2-メチルチアゾリジン、2-イソプロピルチアゾリジン、2-イソブチルチアゾリジン、2-イソブチルチアゾリジン、マルトールおよびプロリンロイシンジケトピペラジンは、本格的なローストされた赤身肉のフレーバーの印象をさらに向上させるのに特に有利であることが見出された。
【0049】
したがって、実施態様において、本発明のフレーバー増強剤は、以下の1以上:
-特に1.50ppm~8.00ppm、より好ましくは1.60ppm~7.00ppm、最も好ましくは1.65ppm~6.50ppmの濃度の3-メチルブタナール;
-特に0.10ppm~0.60ppm、より好ましくは0.20ppm~0.50ppm、最も好ましくは0.30ppm~0.40ppmの濃度の3-メルカプト-2-ブタノン;
-特に0.05ppm~2.00ppm、より好ましくは0.10ppm~1.50ppm、最も好ましくは0.12ppm~1.20ppmの濃度の2-エチル-6-メチルピラジン;
-特に0.01ppm~0.25ppm、より好ましくは0.02ppm~0.20ppm、最も好ましくは0.03ppm~0.15ppmの濃度の2-メチルチアゾリジン;
-特に0.05ppm~1.50ppm、より好ましくは0.08ppm~1.00ppm、最も好ましくは0.10ppm~0.80ppmの濃度の2-イソプロピルチアゾリジン;
-特に0.50ppm~5.00ppm、より好ましくは1.00ppm~3.00ppm、最も好ましくは1.50ppm~2.50ppmの濃度の2-イソブチルチアゾリジン;
-特に1.00ppm~12.0ppm、より好ましくは1.50ppm~10.0ppm、最も好ましくは1.75ppm~8.00ppmの濃度のマルトール;および/または
-特に8.00ppm~20.0ppm、より好ましくは12.0ppm~17.0ppm、最も好ましくは14.0ppm~15.0ppmの濃度のプロリン-ロイシンジケトピペラジン、をさらに含む。
【0050】
本発明のフレーバー増強剤は、典型的には固体形態である。あるいは、それらはまた、ペースト、懸濁液または溶液、たとえばスラリーまたはエマルションの形態で提供され得る。
【0051】
好ましくは、本発明のフレーバー増強剤は、顆粒状または粉末の形態である。この目的のために、フレーバー増強剤は、造粒、粉砕および/またはふるい分けされてもよい。
【0052】
本発明のフレーバー増強剤は、食品または飲料品にフレーバーを付与するか、またはそのフレーバーを改変もしくは改良するためにそれらと配合され得る完全なフレーバー組成物を表し得る。あるいは、フレーバー増強剤は、完全なフレーバー組成物の一部のみを形成してもよく、他のフレーバー成分と混合して、完全なフレーバー組成物を形成することができる。熟練したフレーバリストは、本発明のフレーバー増強剤を、フレーバー組成物に採用される他の既知の成分と混合して、食品および飲料業界の要件を満たすために多種多様な完全なフレーバー組成物を開発することができるであろう。
【0053】
本発明のフレーバー増強剤は汎用性が高く、所望のローストされた赤身肉の印象を付与するために多種多様な食料製品に採用することができる。たとえば、肉を含む食品や肉ベースの食品、またはコンデンススープ、乾燥肉、包装されたグレービーソース、キャセロールなどの野菜タイプの食物に、これらの食品を補ったり強化したりするために採用できる。たとえば、肉ではないタンパク質源にも、より嗜好性が高く、肉に似せるようにするためにまた採用することができる。
【0054】
したがって、ある側面において、本発明は、本発明のフレーバー増強剤を含む食料製品も提供する。
【0055】
食料製品は、ローストされた肉らしいフレーバーが望ましいあらゆる種類の食物であり得る。食料製品の例には、ミートボール、生または原材料のソーセージ調製物、および味付けまたはマリネした生または塩肉製品、焼き菓子;焼いた、または揚げたポテトチップスまたはポテト生地製品、パン生地製品、トウモロコシまたはピーナッツベースの押出成形品などのスナック食品;ペットフード;缶詰;キャセロール料理;人間用冷凍食品;スパイスブレンド;薬味;マリネ;発酵製品;温めれば食べられる食品(ready-to-heat foods);インスタント食品(ready-to-eat meals);シーズニング調製物;ソース;グレービー;スープ;ブイヨン;ストック;フォン;ミートスプレッドおよびディップ;たとえば、バーガー、ソーセージ、ひき肉、ステーキなどの肉類;および麺類などの肉製品が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明のフレーバー増強剤は、これらの食料製品のフレーバーを全般的に改善することができる。それらは、インスタント食品などの食べ物の最終ブレンドにおいて、他の成分と単純に混合することによって食料製品に添加され得る。あるいは、それらは、たとえば、スナック食品を粉塵またはスプレーコーティングするプロセスによって、食べ物の外側に添加されてもよい。さらに、フレーバー増強剤は、その形成中に、ときに内部フレーバー剤(internal flavoring)と呼ばれることもあるプロセスで、食べ物に添加されてもよい。
【0057】
本発明のフレーバー増強剤は、牛肉フレーバーに限らず、他の赤身肉フレーバー、たとえば、豚肉、子羊肉、狩猟肉、ビーガン料理などにもまた用いることができる。また、ロースト、グリル、または茹でた肉のフレーバーにおいてもよく作用する。
【0058】
本発明のフレーバー増強剤は、他のプロセスフレーバー剤と混合して、完全なフレーバー組成物を作成してもよい。たとえば、他のトップノートおよび/または不揮発性の味成分と混合することができる。また、酵母エキス、スパイス、および/または肉のトップノートなど、他の伝統的なモジュールと組み合わせ得る。
【0059】
完全なフレーバー組成物において有用な他の公知の成分は、フレーバー増強剤の形成前にスラリーに添加されてもよく、またはそれらが形成された後にフレーバー増強剤と配合されてもよいし、またはその両方であってもよい。
【0060】
完全なフレーバー組成物は、以下記載されるようなフレーバー増強剤;芳香揮発性物質および当該技術分野において一般に公知の他のフレーバー成分;脂肪または脂肪酸、またはそれらの供給源、ハーブ、スパイスなどの他の相乗剤または増強剤;pH調節剤;無機塩;味マスキング剤、味センセート(taste sensates);ビタミン;染料;着色剤;顔料等を含むことができる。
【0061】
他の成分には、アセトアルデヒド、プロパナール、ブタナール、メチルプロパナール、C3C5アルカン、HVP、アルファジケトンおよびブタンジオン、ペンタン-2,3-ジオン、ピルバルデヒド、ピルビン酸、グリセルアルデヒド、グリオキサール、ジヒドロキシアセトン、α-ケト酪酸、ヘプタン-3,4-ジオン-2,5-ジアセテート、HMFone、HDFone、および関連誘導体、アスコルビン酸、5-ケトグルコン酸、シクロチン、マルトール、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、およびタンパク質加水分解物を包含するアルデヒドおよびケトン源が含有される。
【0062】
前述の成分に加えて、完全なフレーバー組成物は担体物質を含有してもよい。担体物質は、特に完全なフレーバー組成物が粉末の形態で提示される場合、流動助剤(flow aids)または増量剤として、または粉末のガラス転移温度(Tg)を変更することによって粉末に物理的安定性を提供するために採用される。
【0063】
本発明のフレーバー増強剤は、固形フレーバー組成物のために特に有利である。
【0064】
それは水系、脂肪系、および混合系で使用し得る。
【0065】
本発明のフレーバー増強剤は、典型的には、オーブン乾燥により調製された従来の組成物よりもより強く、より濃縮されている。その結果、従来のフレーバーモジュールと比較して使用量が減り得る。
【0066】
完全なフレーバー調合物または食料製品中のフレーバー増強剤の使用量または濃度は所望の効果と用途に応じて選択し得る。
【0067】
完全なフレーバー調合物におけるフレーバー増強剤の典型的な使用量は、5~30重量%の範囲であり;しかし、より高いまたはより低い使用量もまた使用し得る。
【0068】
典型的には、肉ベースの食料製品には約0.2~0.3%の風味が含まれているが、より高いまたはより低い使用量も使用し得る。ベジタリアンやビーガンの代替品は、一般的により高いフレーバー濃度、たとえば最大1%を必要とする。
【0069】
さらなる側面において、本発明は、ローストされた赤身肉のフレーバーを食料製品に付与する方法に関し、前記方法は、本発明のフレーバー増強剤を前記食料製品に添加するステップを含む。
【0070】
フレーバー増強剤は、食料製品の製造中の任意の時点で食料製品に添加されてもよい。たとえば、食料製品の形成中に他の成分と混合されてもよいし、または、たとえば、その上に注入またはコーティングされて、食料製品に適用されてもまたよい。
【0071】
さらなる側面において、本発明は、本発明のフレーバー増強剤の調製方法に関する。上記の前記方法は、電子レンジ中での材料の付随反応と乾燥を伴う。
【0072】
より具体的には、方法は、以下のステップを含む:
(i)出発材料を提供すること、および、
(ii)出発材料を電子レンジ中で反応させおよび同時に乾燥させて、フレーバー増強剤を得ること、
ここで、出発材料は、少なくとも、タンパク質源またはタンパク質の断片、またはアミノ官能基を有する他の材料を包含する。
【0073】
たとえば、適切な方法は、国際公開第2018/083224号に記述されており、その開示は、方法に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
出発材料は通常、固体または液体である。
【0075】
実施態様では、出発材料は、スラリーまたはエマルション、特に水性スラリーの形態でマイクロ波に導入される。一般的な水分含有量は約20~30%であるが、それより低い水分含有量も可能である。スラリーは、脂肪ベースでも、水と脂肪の混合物でもよい。
【0076】
出発材料は、少なくともタンパク質源またはタンパク質の断片、またはアミノ官能基を有する他の材料を包含する。
【0077】
ほとんどの場合、出発材料は、還元糖または還元糖の供給源または他の炭水化物をさらに包含する。
【0078】
場合により、出発材料は、さらに脂肪、抽出物(例として、植物および/または肉など)、香辛料、塩、担体、繊維、植物由来、果物由来または動物由来の粉末、酸、またはその他の一般的な添加物を包含してもよい。
【0079】
出発材料、特に出発材料を含有するスラリーを、フィルムの形態で電子レンジ中へと導入してもよく、これは、たとえば、スラリーを蒸発面に鋳造すること、注ぐこと、またはポンプで送ることによって形成され得る。フィルムの厚さは、スラリーを一定期間内に脱水しなければならないことを考慮して選択され、これにより、所望のフレーバー剤調製品が生成される。また、入射したマイクロ波がフィルムを透過し、効率的かつ均一な加熱を確保する必要がある。
【0080】
得られた生成物は、規則(EC)No1334/2008で定義されているように、フレーバー剤調製品または熱プロセスフレーバー剤(「反応フレーバー剤」)であり得る。
【0081】
材料を反応させ、同時に乾燥させるための電子レンジの使用は、反応後の別のステップで乾燥が起こる従来の方法と比較して、プロセス時間を大幅に短縮することができる。フレーバー剤調製品の合成とその脱水は、基本的に1つのステップで同時に起こる。
【0082】
本発明に従う方法には、任意の工業用電子レンジを採用することができる。適切な電子レンジには、30kW/915MHz(50kVA)~最大100kW/915MHz(150kVA)迄,または100W/2450MHz(0.15kVA)~最大30kW/2450MHz(45kVA)迄が包含される。
【0083】
マイクロ波エネルギー入力は、典型的には、3~100kW、またはさらにそれ以上、好ましくは30~100kWの範囲であり得る。
【0084】
得られるフレーバー増強剤は、典型的には、約0.1~5.0重量%、より好ましくは約0.5~3.0%の含水率を有する。
【0085】
反応時間と温度は、出発物質および所望の生成物、特に所望のプロセスグレードに応じて適合させることができる。たとえば、反応・乾燥ステップは、約100~180℃の温度で約30秒~15分間行ってもよい。
【0086】
なお、反応・乾燥ステップは、バッチ式または連続式で行ってもよい。
【0087】
電子レンジを通過した後に得られるフレーバー増強剤は、粘性のあるペースト、ケーキ、リボンなどの形態で提示されてもよい。
【0088】
この段階で、それはさらなるプロセスステップに供されてもよい。たとえば、フレーバー増強剤は、粉砕され、挽かれ、および/またはふるい分けによって等級分けされ、所望の粒径を有する粉末、顆粒などの形態でレンダリングされ得る。
【0089】
したがって、本発明は、以下の非限定的な例によってさらに例示される:
例1:固形のローストされた赤身肉フレーバー増強剤の調製
適当なビーカーで、出発物質の懸濁液/エマルションを前処理した。適切な反応スラリーの品質と均質性を保証するために、ビーカーには、高せん断攪拌ユニット(Polytron PT6100、スイス、Littau、Kinematica製)が装備された。
以下の材料を所定の順序でビーカーに加えた。
水 170.0g
酵母自己分解物 150.0g(yeast autolysate)(米国Cedar Rapids、Lesaffre製)
粉末醤油 120.0g(日本、東京 味の素製)
L-シスチン 20.5g(ドイツ、Burghausen WackerChemie製)
アップルシロップ 30.0g(オーストリア、Juice製、Kroellendorf、)
L-リジン 10.7g(スイス、Bubendorf,Bachem製)
チアミン塩酸塩 50.0g(スイス、Sisseln、DSM製)
ひまわり油 40.0g(スイス、Muttenz、Florin製)
マルトデキストリンDE6 320.0g(オランダ、Veendam、AVEBE製)
【0090】
激しい撹拌(vigorous stirring)をしながら、155mlの4MのNaOHをゆっくりと添加することにより、スラリーのpHを7.6に調整した。得られたスラリーをMWS flexiWAVE電子レンジ(スイス、Heerbrugg)で以下のように処理した。
結晶皿中で、上記のスラリー90.0gを段階的マイクロ波レジーム(400Wで1分;800Wで2.25分)に供した。穏やかな発泡から激しい発泡が観察され、スラリー温度は室温から約100~125℃まで上昇した。処理の終わりに向かって、スラリーは凝固し始め、冷却時に比較的均質で脆い固体を形成した。
乾燥した発泡固体(ドイツ、Retsch製ZM100)を制御雰囲気下で粉砕し、本発明のフレーバー増強剤を得た。最終粉末の含水率は3.5%であった(スイス、Mettler-Toledo製、Moisture AnalyserHB43)。
マイクロ波で加熱された製品の機能官能評価と従来のプロセス製品との比較により、同等の味の影響での10~30%の使用量削減が可能になった。マイクロ波プロセス製品は、以下の:よりシャープで、それでいてなお複雑なプロファイルで、よりローストされ、味と芳香において大幅に強化された本物の赤身肉(牛肉タイプ)のトーンを提供するという記述子によって特徴付けられた。
【0091】
例2:固形のローストされた赤身肉フレーバーの分析
本発明に従う4種類のフレーバー増強剤の組成物(サンプルA、B、C、およびD)を、通常のオーブン乾燥により調製された赤身肉のフレーバー組成物(サンプルE)の組成物と比較した。
この目的のために、各サンプル10gを20mlの水に溶解し、0.5mgの内部標準を含む0.5mlのtert-ブチルメチルエーテルを添加した。このようにして得られた混合物を、20mlのtert-ブチルメチルエーテルで3回抽出した。組み合わせた有機相をビグリューカラムで濃縮し、最終容量を3mLにした。抽出物は、キャピラリーカラム(Innowax 60 m x 0.32 iD x 0.25 ft、Agilent)を備えたGC-MS/FID(Agilent MSD 5977Bに接続されたAgilent GC 7890B)によって分析された。濃度は、次の式:
cTarget=cSTD*AreaTarget/AreaSTD
を使用して計算し、ここで、cTargetはフレーバー成分の濃度であり、cSTDは内部標準の濃度、AreaTargetは構成物質のFID面積、AreaSTDは標準試料のFID面積である。
4つのサンプルには、次の主要成分が含まれていることが見出された:
【表1】
【0092】
例3:ポテトチップス
プレーンポテトチップスを、オーブン(80℃)中で30分ほどカリカリにおよび温かくなるまで温め、以下の4つのシーズニングをまぶしてコーティングした。
シーズニング1:5%RTE塩フレーバー(食塩、グルタミン酸ナトリウム、リボチド、酵母粉末、有機酸、クリーマー、ホエイパウダー)
シーズニング2:5%RTE塩フレーバー(食塩、グルタミン酸ナトリウム、リボチド、酵母粉末、有機酸、クリーマー、ホエイパウダー)+例1の赤身肉フレーバー増強剤の0.4%RTE
シーズニング3:6%RTEバーベキューフレーバー(ホエイパウダー、砂糖、塩、玉ねぎ、グルタミン酸ナトリウム、トマト、ホットパプリカ、マルトデキストリン、ニンニク、5'-グアニル酸二ナトリウム、有機酸、イーストパウダー、肉フレーバー剤、燻煙フレーバー剤)
シーズニング4:6%RTEバーベキューフレーバー(ホエイパウダー、砂糖、塩、玉ねぎ、グルタミン酸ナトリウム、トマト、ホットパプリカ、マルトデキストリン、ニンニク、5'-グアニル酸二ナトリウム、有機酸、酵母粉、肉フレーバー剤、燻煙フレーバー剤)+例1の赤身肉フレーバー増強剤のRTE0.24%。
次に、4つのポテトチップサンプルを4人のフレーバリストによって評価した。
シーズニング1は、塩味、うま味、ブイヨンのようなフレーバープロファイルを提供した。
シーズニング2のポテトチップスは、焼いたノートを有するジューシー、肉厚、ボディ、ステーキのプロファイル、ナッツ、表面の硬い、赤身肉の鉄の金属味、と記述された。
シーズニング4のポテトチップスは、シーズニング3のポテトチップスと比較して、より表面が硬く肉厚で、炭火焼きのノートが強いと記述された。
【0093】
例4:タコスシーズニング
牛ひき肉(肉80%/脂身20%)を調理し、水気を切った。調理した牛ひき肉を、例1の赤身肉フレーバー増強剤を1.5%含有するタコスシーズニングで味付けした。以下の比率が用いられた。
【表2】
本発明のフレーバー増強剤は、全体的なオーブンでローストされたビーフの香りと香ばしさとを増大させることが見出だされた。さらに、それは料理にボディと複雑さを提供する。
【国際調査報告】