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特表2024-521345薄膜光起電モジュール用のレイヤースタック及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】薄膜光起電モジュール用のレイヤースタック及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20240524BHJP
   H01L 31/0465 20140101ALI20240524BHJP
【FI】
H01L31/04 262
H01L31/04 532B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574186
(86)(22)【出願日】2022-05-17
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 CN2022093242
(87)【国際公開番号】W WO2023220911
(87)【国際公開日】2023-11-23
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519375963
【氏名又は名称】中建材玻璃新材料研究院集▲団▼有限公司
【住所又は居所原語表記】No. 1047 Tushan Road Bengbu, Anhui 233010 China
(71)【出願人】
【識別番号】522044582
【氏名又は名称】凱盛科技集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】TRIUMPH SCIENCE & TECHNOLOGY GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】11/F Block B, Guohai Plaza, No. 17 Fuxing Road,Haidian District Beijing 100036, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シェン イレイ
(72)【発明者】
【氏名】クリンカート トーベン
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA10
5F251CB11
5F251CB13
5F251CB27
5F251EA03
5F251EA09
5F251EA15
5F251FA06
5F251FA10
5F251FA14
(57)【要約】
本発明は、薄膜光起電モジュール用のレイヤースタックに関する。レイヤースタックは、真空コーティング堆積により下から上へ対応する基板上に順に積み重ねられた背面電極、吸収体、緩衝層、前面電極及び中間層からなり、レイヤースタックは、P1、P2及びP3構造線によりそれぞれ分割され、導電性金属グリッドがレイヤースタック内に埋め込まれ、金属グリッドがP2構造線の前又は後にバッファ層上に堆積される。本発明によれば、導電性金属グリッドをレイヤースタック内に埋め込み、P2構造線の前又は後に金属グリッドをバッファ層上に堆積することにより、埋め込みグリッドを形成する。そのため、プロセスシーケンス内で、真空破壊することなく前面電極及び中間層を堆積することができる。また、前面電極上での標準的な薄膜光起電モジュールの適用と比較して、このような埋め込みグリッドは資本的支出及び運転コストの削減において大きなメリットを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜光起電モジュール用のレイヤースタックであって、
真空コーティング堆積により下から上へ対応する基板上に順に積み重ねられた背面電極、吸収体、バッファ層、前面電極及び中間層からなり、前記レイヤースタックは、P1構造線、P2構造線及びP3構造線によりそれぞれ分割され、
導電性の金属グリッドが前記レイヤースタック内に埋め込まれ、前記金属グリッドが前記P2構造線の前又は後に前記バッファ層上に堆積される
薄膜光起電モジュール用のレイヤースタック。
【請求項2】
前記レイヤースタックは、前記背面電極が除去されたP1パターン線溝、前記P1構造線に近く前記吸収体が除去されたP2パターン線溝、及び前記P2構造線に近いP3パターン線溝を含むパターン領域をさらに備え、前記金属グリッドは前記P1構造線、P2構造線及びP3構造線と垂直であり、前記パターン領域外の前記金属グリッドは前記バッファ層と前記前面電極との間に位置する
請求項1に記載の薄膜光起電モジュール用のレイヤースタック。
【請求項3】
前記金属グリッドは、銀、銅、及びアルミニウムのうちのいずれかで作られている
請求項1に記載の薄膜光起電モジュール用のレイヤースタック。
【請求項4】
前記金属グリッドは、異なる溶液堆積方法により堆積される
請求項3に記載の薄膜光起電モジュール用のレイヤースタック。
【請求項5】
前記溶液堆積方法は、インクジェット印刷、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、電気めっきのいずれかである
請求項4に記載の薄膜光起電モジュール用のレイヤースタック。
【請求項6】
前記金属グリッドに適用される導電性インク溶剤は、前記バッファ層を直接溶解したり、それと反応したりしない
請求項5に記載の薄膜光起電モジュール用のレイヤースタック。
【請求項7】
導電性インクの表面張力は、前記バッファ層の表面エネルギーよりも大きい
請求項6に記載の薄膜光起電モジュール用のレイヤースタック。
【請求項8】
前記バッファ層の表面エネルギーは、前記前面電極の表面エネルギーよりも低い
請求項7に記載の薄膜光起電モジュール用のレイヤースタック。
【請求項9】
前記前面電極は、透明導電性酸化物材料で作られている
請求項1に記載の薄膜光起電モジュール用のレイヤースタック。
【請求項10】
前記前面電極は、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ボロンドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズのうちのいずれかで作られている
請求項9に記載の薄膜光起電モジュール用のレイヤースタック。
【請求項11】
前記中間層は、非導電性透明材料で作られ、その屈折率は、ガラス及び積層フォイルの屈折率と透明導電性酸化物の屈折率との間にある
請求項1に記載の薄膜光起電モジュール用のレイヤースタック。
【請求項12】
前記中間層は、窒化珪素と酸化アルミニウムとのうちのいずれかで作られている
請求項11に記載の薄膜光起電モジュール用のレイヤースタック。
【請求項13】
最初に、背面電極を有する電池スタックを堆積するステップと、前記背面電極を除去して、P1構造線の電池分離を形成するステップと、
次に、吸収体及びバッファ層を堆積するステップであって、前記P1構造線の隣のP2パターン線溝は、まず前記吸収体を除去してから次に前記P1構造線及び前記P2構造線と垂直な金属グリッドを堆積することにより、又はまず前記P1構造線と垂直な金属グリッドを堆積してから次に前記金属グリッド及び前記吸収体を除去することにより形成されたP2パターン線溝であるステップと、
次に、前面電極及び中間層を堆積し、少なくとも前面電極材料を除去することにより、前記P1構造線及び前記P3構造線が前記P2構造線の異なる側に位置するように、前記P2構造線の隣にP3パターン線溝を形成するステップであって、前記金属グリッドが前記バッファ層と前記前面電極との間に垂直に位置するステップと、
を含む請求項2に記載の薄膜光起電モジュール用のレイヤースタックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CIGS薄膜太陽電池の技術分野に属し、具体的には、薄膜光起電モジュール用のレイヤースタック及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既に知られているように、連続真空コーティング機は、真空破壊することなく、より多くの後続の層のための真空コーティング骨材の資本的支出コストを大幅に削減することができる。さらに、製造のプロセスにおいては、より多くの真空破壊は、所望の真空度に達するまでのより短い正常な動作時間につながる。しかしながら、より頻繁な真空切替は、真空ターボポンプの寿命を短縮させ、すなわち、OPEXコストを増大させる。したがって、薄膜光起電生産には、真空破壊の少ない連続プロセスが必要となる。
【0003】
従来の薄膜光起電生産において、真空コーティングはいまだ、ソーラーモジュールのほとんどの層(例えば、背面電極、吸収体、バッファ層、前面電極、中間層)を堆積するための一般的な方法である。しかしながら、後続の層の真空堆積の間にプロセスの中断を引き起こす可能性があるいくつかのプロセスステップ、例えば金属グリッド又は後続のP3構造の溶液処理も存在する。したがって、薄膜光起電生産には、コストを削減し、正常な動作時間を伸ばすために、さまざまな真空コーティングプロセスを最大限に組み合わせる必要がある。こうして、金属グリッド印刷とP3構造を生産プロセス順に並べ替えてコストを削減するために、金属グリッドを有する薄膜ソーラーモジュールについての新たなレイヤースタック設計を設計する必要がある。
【0004】
図1に示すような適用されたレイヤースタックにおいて、P2は、背面電極と前面電極に接触して電池を直列に接続するために、前面電極の堆積前且つバッファ層の後に、接近する必要がある。通常、バッファ層と前面電極との間の真空破壊を避けることは不可能である。しかしながら、図4に示すように、金属グリッドとP3構造の溶液処理プロセスは、標準的な薄膜光起電モジュールのレイヤースタックの前面電極と中間層の堆積の間で発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術に存在する欠点を解決するために、本発明は、薄膜光起電モジュール用のレイヤースタック及びその製造方法を提供する。具体的な技術的解決策は以下の通りである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
薄膜光起電モジュール用のレイヤースタックは、真空コーティング堆積により下から上へ対応する基板上に順に積み重ねられた背面電極、吸収体、バッファ層、前面電極及び中間層からなり、当該レイヤースタックは、P1構造線、P2構造線及びP3構造線によりそれぞれ分割される。
【0007】
導電性の金属グリッドが当該レイヤースタック内に埋め込まれ、当該金属グリッドがP2構造線の前又は後にバッファ層上に堆積される。
【0008】
レイヤースタックは、背面電極が除去されたP1パターン線溝、P1構造線に近く吸収体が除去されたP2パターン線溝、及びP2構造線に近いP3パターン線溝を含むパターン領域をさらに備え、金属グリッドはP1構造線、P2構造線及びP3構造線と垂直であり、パターン領域外の金属グリッドはバッファ層と前面電極との間に位置する。
【0009】
さらに、金属グリッドは、銀、銅、及びアルミニウムのうちのいずれかで作られている。
【0010】
さらに、金属グリッドは、異なる溶液堆積方法により堆積される。
【0011】
さらに、前記溶液堆積方法は、インクジェット印刷、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、電気めっきのいずれかである。
【0012】
さらに、金属グリッドに適用される導電性インク溶剤は、バッファ層を直接溶解したり、それと反応したりしない。
【0013】
さらに、導電性インクの表面張力は、バッファ層の表面エネルギーよりも大きい。
【0014】
さらに、バッファ層の表面エネルギーは、前面電極の表面エネルギーよりも低い。
【0015】
さらに、前面電極は、透明導電性酸化物材料で作られている。
【0016】
さらに、前面電極は、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ボロンドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズのうちのいずれかで作られている。
【0017】
さらに、中間層は、非導電性透明材料で作られ、その屈折率は、ガラス及び積層フォイルの屈折率と透明導電性酸化物の屈折率との間にある。
【0018】
さらに、中間層は、窒化珪素と酸化アルミニウムとのうちのいずれかで作られている。
【0019】
薄膜光起電モジュール用のレイヤースタックの製造方法は、
最初に、背面電極を有する電池スタックを堆積するステップと、前記背面電極を除去して、P1構造線の電池分離を形成するステップと、次に、吸収体及びバッファ層を堆積するステップであって、前記P1構造線の隣のP2パターン線溝は、まず前記吸収体を除去してから次に前記P1構造線及び前記P2構造線と垂直な金属グリッドを堆積することにより、又はまず前記P1構造線と垂直な金属グリッドを堆積してから次に前記金属グリッド及び前記吸収体を除去することにより形成されたP2パターン線溝であるステップと、次に、前面電極及び中間層を堆積し、少なくとも前面電極材料を除去することにより、前記P1構造線及び前記P3構造線が前記P2構造線の異なる側に位置するように、前記P2構造線の隣にP3パターン線溝を形成するステップであって、前記金属グリッドが前記バッファ層と前記前面電極との間に垂直に位置するステップと、を含む。
【0020】
本発明のメリットは以下の通りである。
【0021】
本発明によれば、導電性金属グリッドをレイヤースタック内に埋め込み、P2構造線の前又は後に金属グリッドをバッファ層上に堆積することにより、埋め込みグリッドを形成する。そのため、プロセスシーケンス内で、真空破壊することなく前面電極及び中間層を堆積することができる。また、前面電極上での標準的な薄膜光起電モジュールの適用と比較して、このような埋め込みグリッドは資本的支出及び運転コストの削減において大きなメリットを示している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】標準的な薄膜太陽電池のレイヤースタックの構造模式図である。
図2】標準的な薄膜太陽電池の電池幅とデッドエリアを平面視した構造模式図である。
図3】標準的な薄膜光起電モジュールの3つの電池の相互接続を示す平面図である。
図4】前面電極上に堆積された標準的な金属グリッド構造を有する薄膜太陽電池の積層を示す断面図である。
図5】前面電極上に堆積された標準的な金属グリッド構造を有する薄膜太陽電池を平面視した模式図である。
図6】標準的な金属グリッドを有する、前面電極上の薄膜光起電モジュールの3つの電池の相互接続を平面視した図である。
図7】標準的な金属グリッドレイヤースタックの実施形態にかかる、薄膜/CIGS光起電モジュールのための選択された生産プロセス(バッファ層、P2構造線、前面電極、金属グリッド、P3構造線、及び中間層を含む)のシーケンスの模式図である。
図8】標準的な金属グリッドレイヤースタックの別の実施形態にかかる、薄膜/CIGS光起電モジュールのための選択された生産プロセス(バッファ層、P2構造線、前面電極、金属グリッド、中間層、及びP3構造線を含む)のシーケンスの模式図である。
図9図12の埋込みグリッドプロセスのシーケンスの実施形態にかかる、前面電極及び中間層の下に埋め込み金属グリッド構造を有する薄膜太陽電池のレイヤースタックの断面図である。
図10図13の埋込みグリッドプロセスのシーケンスの別の実施形態にかかる、前面電極及び中間層の下に埋め込み金属グリッド構造を有する薄膜太陽電池のレイヤースタックの断面図である。
図11】前面電極及び中間層の下に堆積された埋め込み金属グリッド構造を有する薄膜太陽電池を平面視した模式図である。
図12】埋め込み金属グリッドレイヤースタックの別の実施形態にかかる、薄膜/CIGS光起電モジュールのための選択された生産プロセス(バッファ層、金属グリッド、P2構造線、前面電極、中間層、及びP3構造線を含む)のシーケンスの模式図である。
図13】埋め込み金属グリッドレイヤースタックの別の実施形態にかかる、薄膜/CIGS光起電モジュールのための選択された生産プロセス(バッファ層、P2構造線、金属グリッド、前面電極、中間層、及びP3構造線を含む)のシーケンスの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の目的、技術的解決策及び利点をより明確にするために、以下では、実施形態を参照して本発明についてより詳細に説明する。本明細書で説明される具体的な実施形態は、本発明を限定するものではなく、本発明を説明するためにのみ使用されることを、理解すべきである。
【0024】
先行技術の説明は以下の通りである。
【0025】
ある方法で積層された薄膜光起電モジュールは、背面電極、吸収体、バッファ層/i層、前面電極及びある中間層をこの順に含む。ここで、中間層は、アクティブ領域への光結合を最適化し、BIPV(Building Integrated Photovoltaics:建築一体型光起電)応用の色の外観を調整し、又はいくつかの機械的特性、例えば積層ガラス光起電モジュールの接着力を改善するように構成されている、薄膜光起電モジュールの任意の層である。電池の低い電圧と大きい面積のため、ほとんどのモジュールは、高電流損失を避けるために、各電池が個体として直列に相互接続されるように設計されている。しかしながら、これにより、光起電モジュールにおける総動作電圧を増大させてしまう。
【0026】
追加として、図1に示すように、電池内の全てのレイヤーが相互接続されている。レイヤースタックはP1構造線、P2構造線、P3構造線によりそれぞれ分割されていることが分かる。なお、P1とP3が前面電極と背面電極とを絶縁し、P2が前面電極と背面電極との間の電気接点として機能することにより、隣接する2つの電池を直列に接続する。P1/P2/P3の構造領域が電気を発生させないため、図2に示すように、通常は「デッドエリア」と称される。
【0027】
太陽電池の電力変換効率を最適化するためには、例えば、前面電極の層厚を薄くすることにより前面電極の透過率を上げること、発生する光電流をさらに増大させることなどの方法が一般的に考えられる。しかしながら、その結果、前面電極のシート抵抗を増大させ、導通損失を引き起こしてしまう。前面電極におけるこのような導電損失を低減させるために、高い導電性を有する狭い金属グリッドを前面電極層上に適用することにより、関連する導電性を向上させることができ、これはすなわち光起電生産のための金属化プロセスである。そのため、図4図5及び図6に示すように、金属グリッド構造は、電池に横方向に周期的な間隔で、又はP1/P2/P3に対して垂直に適用される。グリッド線が太陽電池に連続的に適用されていることが分かる。P3は、グリッド線を中断させることにより、1つの電池の前面電極と隣接するセルとの間の短絡を防止する。
【0028】
ここで、図7及び図8は、薄膜光起電モジュール生産シーケンスの2つの例を示している。前面電極6と中間層7の堆積の間に真空破壊が存在する。そのため、同一の真空コーティング機内で2つの層を順次堆積できれば、コストを削減することができる。できあがったレイヤシーケンスは、前節で説明されている(図4参照)。本発明のような、金属化層を有する薄膜光起電デバイス用の代替的なレイヤースタックは、まだ公開されていない。
【0029】
本発明の具体的な実施形態は以下の通りである。
【0030】
図9から図11に示すように、薄膜光起電モジュール用のレイヤースタックは、真空コーティング堆積により下から上へ対応する基板上に順に積み重ねられた背面電極、吸収体、バッファ層、前面電極及び中間層からなり、当該レイヤースタックは、P1構造線、P2構造線及びP3構造線によりそれぞれ分割され、
導電性金属グリッドが当該レイヤースタック内に埋め込まれ、当該金属グリッドがP2構造線の前又は後にバッファ層上に堆積される。
【0031】
上記の技術的解決策を採用することにより、導電性金属グリッドをレイヤースタック内に埋め込み、P2構造線の前又は後に金属グリッドをバッファ層上に堆積することにより、埋め込みグリッドを形成する。そのため、プロセスシーケンス内で、真空破壊することなく前面電極及び中間層を堆積することができる。また、前面電極上での標準的な薄膜光起電モジュールの適用と比較して、このような埋め込みグリッドは資本的支出及び運転コストの削減において大きなメリットを示している。
【0032】
図2に示すように、レイヤースタックは、背面電極が除去されたP1パターン線溝、P1構造線に近く吸収体が除去されたP2パターン線溝、及びP2構造線に近いP3パターン線溝を含むパターン領域をさらに備え、金属グリッドはP1構造線、P2構造線及びP3構造線と垂直であり、パターン領域外の金属グリッドはバッファ層と前面電極との間に位置する。
【0033】
上述した技術的解決策を採用することにより、パターン領域、P1パターン線溝、P2パターン線溝及びP3パターン線溝が図面に示されている。
【0034】
上述の技術的解決策を採用することにより、P1構造線、P2構造線及びP3構造線を含むパターン領域は、CIGSモジュール内に単一チップ直列相互接続構造を形成する。
【0035】
図9に示すように、P2パターン線溝は金属グリッドの材料を含まず、バッファ層と前面電極との間のパターン領域外の金属グリッドはP2パターン線溝により中断されることにより、P2パターン線溝内の電気的P2コンタクトは前面電極、背面電極の順にのみ電極として形成される。図10に示すように、P2パターン線溝が前面電極材料でコーティングされた金属グリッド材料を含むため、電気的P2コンタクトは、前面電極、金属グリッド材料、背面電極の順に電極として形成される。
【0036】
上記2つの順序に従って電極を形成することは、ソーラーモジュールデバイスとして可能な選択肢であり、関連する利点において差はない。これは、埋設メッシュの適用について、それらが可能であり、何の問題も生じさせないことを示しているに過ぎない。
【0037】
好ましくは、金属グリッドは、銀、銅、及びアルミニウムのうちのいずれかで作られている。
【0038】
好ましくは、金属グリッドは、異なる溶液堆積方法により堆積される。
【0039】
好ましくは、前記溶液堆積方法は、インクジェット印刷、エアロゾル印刷、スクリーン印刷、電気めっきのいずれかである。
【0040】
好ましくは、金属グリッドに適用される導電性インク溶剤は、バッファ層を直接溶解したり、それと反応したりしない。
【0041】
上記の技術的解決策を採用することにより、このような変更を実現するためには、前提条件として、金属グリッドに適用される導電性インク溶剤は、バッファ層を直接溶解したり、それと反応したりせず、そうでなければ、金属グリッドの適用はバッファ層の電気的特性に影響を与え、界面を劣化させることになる。
【0042】
好ましくは、導電性インクの表面張力は、バッファ層の表面エネルギーよりも大きい。
【0043】
上記の技術的解決策を採用することにより、適用される導電性インクは、バッファ層の表面エネルギーよりはるかに大きい表面張力を有する導電性インクとして選択/再配合される必要があり、すなわち、適用が予想される導電性インクはバッファ層に対するより小さい濡れ性を有する。バッファ層の表面エネルギーが前面電極の表面エネルギーよりも高い場合、いくつかの添加剤を添加することにより導電性インクの表面張力を高めるべきである。使用される導電性インクの濡れ性が小さいほど、グリッド線が狭くなり、すなわち、グリッド線の影による光損失が小さくなる。
【0044】
好ましくは、バッファ層の表面エネルギーは、前面電極の表面エネルギーよりも低い。
【0045】
上記の技術的解決策を採用することにより、バッファ層の表面エネルギーが前面電極の表面エネルギーよりも低い場合、埋め込みグリッドは、前面電極上の標準グリッドと比較して、グリッド線幅が小さいというメリットを有する。
【0046】
好ましくは、前面電極は、透明導電性酸化物材料で作られている。
【0047】
好ましくは、前面電極は、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ボロンドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化亜鉛、インジウムドープ酸化スズ、フッ素ドープ酸化スズのうちのいずれかで作られている。
【0048】
好ましくは、中間層は、非導電性透明材料で作られ、その屈折率は、ガラス及び積層フォイルの屈折率と透明導電性酸化物の屈折率との間にある。
【0049】
好ましくは、中間層は、窒化珪素と酸化アルミニウムとのうちのいずれかで作られている。
【0050】
図9から図13に示すように、薄膜光起電モジュール用のレイヤースタックの製造方法は、
最初に、背面電極を有する電池スタックを堆積するステップと、前記背面電極を除去して、P1構造線の電池分離を形成するステップと、次に、吸収体及びバッファ層を堆積するステップであって、前記P1構造線の隣のP2パターン線溝は、まず前記吸収体を除去してから次に前記P1構造線及び前記P2構造線と垂直な金属グリッドを堆積することにより、又はまず前記P1構造線と垂直な金属グリッドを堆積してから次に前記金属グリッド及び前記吸収体を除去することにより形成されたP2パターン線溝であるステップと、次に、前面電極及び中間層を堆積し、少なくとも前面電極材料を除去することにより、前記P1構造線及び前記P3構造線が前記P2構造線の異なる側に位置するように、前記P2構造線の隣にP3パターン線溝を形成するステップであって、前記金属グリッドが前記バッファ層と前記前面電極との間に垂直に位置するステップと、を含む。
【0051】
上記の技術的解決策を採用することにより、前記方法は、レイヤースタックの埋め込みメッシュと協働することで、真空破壊することなく、連続的な真空コーティングプロセス内で前面電極及び中間層の堆積を行うことができる。
【0052】
上述したものは、本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明を限定するためのものではなく、本発明の精神及び原理の範囲内で行われるいかなる変更、均等な置換、改良なども、本発明の保護範囲に入るものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】