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特表2024-521348アレイアンテナ向けの導波路終端器配置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-31
(54)【発明の名称】アレイアンテナ向けの導波路終端器配置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/06 20060101AFI20240524BHJP
   H01Q 13/22 20060101ALI20240524BHJP
   H01P 1/00 20060101ALI20240524BHJP
   H01P 3/123 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
H01Q21/06
H01Q13/22
H01P1/00 Z
H01P3/123
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574252
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 SE2022050523
(87)【国際公開番号】W WO2022255926
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】2130148-6
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515096169
【氏名又は名称】ギャップウェーブス アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(72)【発明者】
【氏名】カルロ、ベンチベッニ
【テーマコード(参考)】
5J011
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5J011DA01
5J021AA05
5J021AA09
5J021AB05
5J021FA11
5J021FA32
5J021HA04
5J045DA04
5J045HA01
5J045LA04
5J045NA07
(57)【要約】
層状構造を有するアレイアンテナ(100)。アレイアンテナは、複数の放射素子(111)を含む放射層(110)と、放射層に対向する分配層(120)とを含む。分配層は、無線周波数(RF)信号を複数の放射素子へ分配するよう構成される。分配層は、少なくとも1つの分配層給電部(121)と、少なくとも1つの分配層給電部と少なくとも1つの放射素子の間へRF信号を誘導するよう構成されている少なくとも1つの第1導波路(122)とを含む。アレイアンテナは、少なくとも1つの分配層給電部(121)に連結される少なくとも1つの第2導波路(130)をさらに含む。第1導波路(122)と第2導波路(130)のいずれかは第1種類の表面処理(313)がなされたプラスチックを含み、第1種類の表面処理は金属化を含む。少なくとも1つの放射素子は減衰区間により終端処理されるダミー素子であり、減衰区間はダミー素子に連結されてプラスチックを含む導波路(122、130)のいずれかに配置される。減衰区間は、RF信号を減衰させるよう構成されている第2種類の表面処理(314)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放射素子(111)を含む放射層(110)と、
前記放射層に対向する分配層(120)であって、無線周波数(RF)信号を前記複数の放射素子(111)へ分配するよう構成され、少なくとも1つの分配層給電部(121)と、前記RF信号を前記少なくとも1つの分配層給電部と少なくとも1つの前記放射素子の間へ誘導するよう構成される少なくとも1つの第1導波路(122)とを含む、分配層(120)と、
前記少なくとも1つの分配層給電部(121)に連結される少なくとも1つの第2導波路(130)と、
を含む層状構造を有するアレイアンテナ(100)であって、
前記第1導波路(122)と前記第2導波路(130)のいずれかは金属化を含む第1種類の表面処理(313)がなされたプラスチックを含み、
少なくとも1つの前記放射素子は減衰区間(312)により終端処理されるダミー素子であり、前記減衰区間は前記ダミー素子に連結されてプラスチックを含む前記導波路(122、130)のいずれかに配置され、前記減衰区間は前記RF信号を減衰させるよう構成されている第2種類の表面処理(314)を含む、
アレイアンテナ(100)。
【請求項2】
前記第1種類の表面処理(313)はプライマおよび金属化を含む、請求項1に記載のアレイアンテナ(100)。
【請求項3】
前記第2種類の表面処理(314)は未処理のプラスチックを含む、請求項1または2に記載のアレイアンテナ(100)。
【請求項4】
前記第2種類の表面処理(314)はプライマを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のアレイアンテナ(100)。
【請求項5】
前記第2種類の表面処理(314)は金属化を含み、前記金属化の厚さは前記RF信号を減衰させるよう構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のアレイアンテナ(100)。
【請求項6】
プラスチックを含む前記導波路(122、130)のいずれかは損失性プラスチックを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のアレイアンテナ(100)。
【請求項7】
前記少なくとも1つのダミー素子は前記複数の放射素子(111)の外周に配置される、請求項1~6のいずれか一項に記載のアレイアンテナ(100)。
【請求項8】
複数の列の前記放射素子(111)を含み、少なくとも1つの前記列は前記減衰区間により終端処理されたダミー列である、請求項1~7のいずれか一項に記載のアレイアンテナ(100)。
【請求項9】
前記少なくとも1つのダミー列は前記複数の列の外周に配置される、請求項1~8のいずれか一項に記載のアレイアンテナ(100)。
【請求項10】
前記第1導波路はギャップ導波路であり、前記放射層(110)と前記分配層(120)のいずれかは分前記配層(120)と前記放射層(110)の中間に前記ギャップ導波路を形成するよう構成されているメタマテリアル構造(124)を含み、前記メタマテリアル構造は、動作周波数帯において電磁放射が前記ギャップ導波路から前記分配層給電部(121)および前記放射素子(111)を通過する方向以外の方向へ伝搬するのを防ぐようにも構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載のアレイアンテナ(100)。
【請求項11】
前記メタマテリアル構造(124)は突出要素(125)の反復構造を含む、請求項10に記載のアレイアンテナ(100)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のアンテナ配列(100)を含む電気通信用送受信機またはレーダー送受信機。
【請求項13】
金属化プラスチックを含み、減衰区間(312)をさらに含む、無線周波数(RF)信号を誘導する導波路(300、400)であって、前記減衰区間は第2種類の表面処理(314)を含み、前記導波路の残りの部分は第1種類の表面処理(313)を含み、前記第1種類の表面処理は金属化を含み、前記第2種類の表面処理は前記RF信号を減衰させるよう構成される、導波路(300、400)。
【請求項14】
互いに対向する第1層(511)および第2層(512)を含み、前記第1層と前記第2層のいずれかは前記第1層(511)と前記第2層(512)の中間にギャップ導波路を形成するよう構成されているメタマテリアル構造(521)を含み、前記メタマテリアル構造は動作周波数帯において電磁放射が前記ギャップ導波路から意図された導波経路に沿う方向以外の方向へ伝搬するのを防ぐようにも構成される、請求項13に記載の導波路(300、400)。
【請求項15】
前記メタマテリアル構造(521)は突出要素(522)の反復構造を含む、請求項14に記載の導波路(300、400)。
【請求項16】
前記第1種類の表面処理(313)はプライマを含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の導波路(300、400)。
【請求項17】
前記第2種類の表面処理(314)は未処理のプラスチックを含む、請求項13~16のいずれか一項に記載の導波路(300、400)。
【請求項18】
前記第2種類の表面処理(314)はプライマを含む、請求項13~17のいずれか一項に記載の導波路(300、400)。
【請求項19】
前記第2種類の表面処理(314)は金属化を含み、前記金属化の厚さは前記RF信号を減衰させるよう構成される、請求項13~18のいずれか一項に記載の導波路(300、400)。
【請求項20】
プラスチックを含む導波路(300、400)を製造する方法であって、
第2種類の表面処理(314)で前記導波路の減衰区間(312)の表面処理を行うこと(S1)と、
第1種類の表面処理(313)で前記導波路の残りの部分(411)の表面処理を行うこと(S2)と、
を含み、
前記第1種類の表面処理は金属化を含み、前記第2種類の表面処理はRF信号を減衰させるよう構成される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はアンテナ配列、特に導波路に基づいたアレイアンテナおよび導波路一般に関する。アンテナ配列は、例えば電気通信用送受信機やレーダー送受信機における利用に適している。
【背景技術】
【0002】
無線通信ネットワークは、セルラーアクセスネットワークで使用される無線基地局や、例えばコアネットワークへのバックホールで使用されるマイクロ波無線リンク送受信機や、軌道上の人工衛星と通信する衛星送受信機などの無線周波数送受信機を含む。レーダー送受信機は、無線周波数(RF)信号、すなわち電磁信号を送信および受信するので、無線周波数送受信機でもある。
【0003】
送受信機の放射配置はしばしばアレイアンテナを含み、これは、例えば高指向性やビームステアリングのための、および/または、多数のビームに対する放射パターンの整形がアレイにより高度に制御できるからである。アレイアンテナは、一般的には送受信機の動作周波数に対応する波長より小さな間隔で並べられた複数のアンテナ素子を含む。
【0004】
アレイ内の各アンテナ素子にそれぞれ同じ振る舞いをさせることが望ましい。ここで、振る舞いとは放射パターンやインピーダンス整合などを意味する。スロットアンテナを含むアレイ内の各列の素子にそれぞれ同じ振る舞いをさせることが特に望ましい。しかし、最も外側の素子(または列)は、アレイの中央の素子(または列)と比べて隣接するものが少ないため、実際には同等ではない性能を示す。
【0005】
これは、最も外側に新しい素子の組を追加して、それらの素子をダミー素子(またはダミー列)へと変えることで解決することができる。ダミー素子は適合された減衰器により内部的に終端処理される。このようにすることで、隣接する能動素子にはダミー素子は通常の能動素子のように見える。
【0006】
アレイアンテナ用の改善された導波路終端器配置が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、アレイアンテナ用の改善された、つまり、低コストで製造が容易で良好な性能を示す導波路終端器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、層状構造を有するアレイアンテナにより少なくとも部分的に達成される。アレイアンテナは、複数の放射素子を含む放射層と、放射層に対向する分配層とを含む。分配層は、無線周波数(RF)信号を複数の放射素子へ分配するよう構成される。分配層は、少なくとも1つの分配層給電部と、少なくとも1つの分配層給電部と少なくとも1つの放射素子の間へRF信号を誘導するよう構成されている少なくとも1つの第1導波路とを含む。アレイアンテナは、少なくとも1つの分配層給電部に連結される少なくとも1つの第2導波路をさらに含む。第1導波路と第2導波路のいずれかは第1種類の表面処理がなされたプラスチックを含み、第1種類の表面処理は金属化を含む。さらに、少なくとも1つの放射素子は減衰区間により終端処理されるダミー素子である。減衰区間は、ダミー素子に連結されてプラスチックを含む導波路のいずれかに配置される。減衰区間は、RF信号を減衰させるよう構成されている第2種類の表面処理を含む。
【0009】
減衰区間は、減衰器を作るため、減衰機能を得るため、または終端処理機能を得るために使用されて、アレイアンテナに直接組み込まれるが、これは有利である。減衰区間はさらに、製造するのが容易で費用効果が高い。
【0010】
態様によれば、減衰区間は50オームなどの望ましいシステムインピーダンスに適合されるが、任意の値を取り得る。したがって、減衰区間は導波路にうまく適合する終端器として使用することができる。
【0011】
ダミー素子を終端処理するため、減衰区間はアレイアンテナの放射層上に配置することができるが、好ましくは分配層内に配置され、より好ましくは分配層に連結される第2導波路内に配置される。終端処理の目標は、ダミー素子が他の隣接する素子のいずれとも同等であると示すことである。
【0012】
態様によれば、第1種類の表面処理はプライマおよび金属化を含む。プライマは、所望の金属がプラスチック部品により良く付着するようにするために使用することができる。
【0013】
態様によれば、第2種類の表面処理は未処理のプラスチックを含む、つまり、減衰区間は金属化されていない区間により構成される。これは、金属化の間に減衰区間へマスキングすることで実現することができる。これにより、費用対効果の良い、簡単な製造プロセスが可能となる。
【0014】
態様によれば、第2種類の表面処理はプライマを含み、つまり、減衰区間はプライマを含み、銅、銀、金などの通常望ましい金属での金属化は含まれない。このようにすることで、プラスチックを含む導波路全体をまずプライマでコーティングすることができる。その後、減衰区間は金属化でコーティングされないようマスキングすることができる。これにより容易な製造プロセスが提供される。減衰区間のプライマは、減衰区間を外側、例えば隣接する導波路から有利に遮蔽することができる。これにより、望ましくない結合を削減することができる。
【0015】
態様によれば、第2種類の表面処理は金属化を含み、金属化の厚さはRF信号を減衰させるよう構成される。これにより、良好な減衰性能が与えられる。有利には、コーティングの厚さは表面電流分布を実質的に変化させず、それゆえ導波路の特性インピーダンスを実質的に変化させない。それゆえ、第2表面処理の薄い金属化により、第1表面処理のコーティングからの遷移による断絶が存在せず、これは、適合が維持されるということを意味する。さらに、減衰区間を比較的薄く金属化することで、減衰区間を外側、例えば隣接する導波路から有利に遮蔽することができる。これにより、望ましくない結合を削減することができる。
【0016】
態様によれば、プラスチックを含む導波路のいずれかは損失性プラスチックを含む。これにより減衰区間からの漏れなどの不要な信号が減衰して有利である。
【0017】
態様によれば、少なくとも1つのダミー素子が複数の放射素子の外周に配置される。これにより、アレイアンテナ内の残りの素子に対するダミー素子に隣接する各能動アンテナ素子の振る舞いが改善される。
【0018】
態様によれば、アレイアンテナは複数の列の放射素子を含み、少なくとも1つの列は減衰区間により終端処理されたダミー列である。更なる態様によれば、少なくとも1つのダミー列は複数の列の外周に配置される。これにより、アレイアンテナ内の残りの列に対するダミー列に隣接する各能動列の振る舞いが改善される。
【0019】
態様によれば、第1導波路はギャップ導波路であり、放射層と分配層のいずれかは分配層と放射層の中間にギャップ導波路を形成するよう構成されているメタマテリアル構造を含む。また、メタマテリアル構造は、動作周波数帯において電磁放射がギャップ導波路から分配層給電部および放射素子を通過する方向以外の方向へ伝搬するのを防ぐようにも構成される。メタマテリアル構造は、電磁エネルギーが他の方向ではなく意図された導波経路に沿っておおよそ妨害されることなく通過できるように、ギャップ導波路を効率的に密封する。放射層と分配層の配置は非接触とすることができて、電気的な接触はこれらの層の間に必要とされない。これは、高精度で組み立てる必要がないために利点であり、これら2つの層をボルトまたは同種のものなどの締結手段で互いに結合するだけでもよい。さらに、反復構造が非接触で遷移部を密封するので、電気的な接触を確認する必要がない。
【0020】
態様によれば、メタマテリアル構造は突出要素の反復構造を含む。反復構造は、例えば層のうちの一つに直接機械加工されてもよい。これは、そのような機械加工は機械的精度が高く費用対効果の高い方法で行うことができるので、利点である。また、このような一体成型の反復構造は機械的に安定しており、これも利点である。
【0021】
本明細書では、上述したアンテナ配列を含む電気通信用送受信機またはレーダー送受信機も開示される。
【0022】
本明細書では、無線周波数(RF)信号を誘導する導波路も開示され、この導波路は金属化プラスチックを含む。導波路は減衰区間をさらに含み、この減衰区間は第2種類の表面処理を含み、導波路の残りの部分は第1種類の表面処理を含む。第1種類の表面処理は金属化を含み、第2種類の表面処理はRF信号を減衰させるよう構成される。
【0023】
本開示は、減衰器を作るため、減衰機能を得るため、または終端処理機能を得るためにプラスチックの表面処理を利用し、このプラスチックは導波路に直接組み込まれ、これは有利である。態様によれば、減衰区間は50オームなどの望ましいシステムインピーダンスに適合されるが、任意の値を取り得る。したがって、減衰区間は導波路にうまく適合する終端器として使用することができる。
【0024】
態様によれば、導波路は互いに対向する第1層および第2層を含む。第1層と第2層のいずれかは、第1層と第2層の中間にギャップ導波路を形成するよう構成されているメタマテリアル構造を含む。また、メタマテリアル構造は、動作周波数帯において電磁放射がギャップ導波路から意図された導波経路に沿う方向以外の方向へ伝搬するのを防ぐようにも構成される。
【0025】
メタマテリアル構造は、電磁エネルギーが他の方向ではなく意図された導波経路に沿っておおよそ妨害されることなく通過できるように、ギャップ導波路を効率的に密封する。これらの層の配置は非接触とすることができて、電気的な接触はこれらの層の間に必要とされない。これは、高精度で組み立てる必要がないために利点であり、これら2つの層をボルトまたは同種のものなどの締結手段で互いに結合するだけでもよい。さらに、反復構造が非接触で遷移部を密封するので、電気的な接触を確認する必要がない。
【0026】
態様によれば、導波路のメタマテリアル構造は突出要素の反復構造を含む。反復構造は、例えば層のうちの一つに直接機械加工されてもよい。これは、そのような機械加工は機械的精度が高く費用対効果の高い方法で行うことができるので、利点である。また、このような一体成型の反復構造は機械的に安定しており、利点である。
【0027】
態様によれば、導波路の第1種類の表面処理はプライマを含む。
【0028】
態様によれば、導波路の第2種類の導波路の表面処理は未処理のプラスチックを含む。更なる態様によれば、導波路の第2種類の表面処理はプライマを含む。他の態様によれば、導波路の第2種類の表面処理は金属化を含み、金属化の厚さはRF信号を減衰させるよう構成される。
【0029】
本明細書では、プラスチックを含む導波路を製造する方法も開示される。この方法は、
第2種類の表面処理で導波路の減衰区間の表面処理を行うことと、
第1種類の表面処理で導波路の残りの部分の表面処理を行うことと、
を含み、
第1種類の表面処理は金属化を含み、第2種類の表面処理はRF信号を減衰させるよう構成される。
【0030】
本明細書で開示される方法は、異なる測定装置に関連して上述されたものと同じ利点に関連している。本明細書では、本明細書に記載の動作のいくつかを制御するよう構成されている制御部がさらに開示される。
【0031】
概して、請求項で使用されるすべての用語は、本明細書で明示的に別の定義がされていない限り、当技術分野におけるその通常の意味に従って解釈されるべきである。「a/an/the」が付された「要素、装置、構成要素、手段、ステップなど」へのすべての言及は、別途明示的に規定されていない限り、要素、装置、構成要素、手段、ステップの少なくとも1つの実例に言及していると率直に解釈されるべきである。本明細書で開示されるいかなる方法のステップも、明示的に規定されていない限り、開示された順番通りに実行される必要はない。本発明の更なる特徴と本発明に伴う利点は、添付の請求項および以下の説明を検討することで明らかとなるであろう。当業者は、本発明の異なる特徴を組み合わせて、本発明の範囲を逸脱することなく以下で説明されているものとは異なる実施形態を作り出すことができることを理解する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
これより、本開示を添付の図面を参照しながらより詳細に説明する。
【0033】
図1A】例示のアンテナ配列を示す。
図1B】例示のアンテナ配列を示す。
図2】例示のアンテナ配列を示す。
図3A】例示のアンテナ配列を示す。
図3B】例示のアンテナ配列を示す。
図4A】例示の導波路を示す。
図4B】例示の導波路を示す。
図5A】例示の導波路を示す。
図5B】例示の導波路を示す。
図6】方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
これより、本開示の態様を添付の図面を参照しながらより詳細に説明する。ただし、本明細書で開示される様々な装置および方法は、多くの異なる形態で実現することができて、本明細書に記載される態様に限定されると解釈されるべきではない。図面のあらゆる場所において、類似の数字は類似の要素を指す。
【0035】
本明細書で使用される専門用語は本開示の態様を説明するために過ぎず、本発明を制限する意図はない。本明細書で使用される場合、単数形の“a”、“an”、および“the”は、文脈上明白にそうではないと示されていない限りは複数形も含む。
【0036】
すでに述べたように、アレイアンテナ用の改善された導波路終端器配置が必要とされている。一般的なアンテナアレイでは、低周波数(<6GHz)は、例えば表面実装型減衰器を有するPCBまたは同軸終端器を用いて、容易に終端処理することができる。導波路ベースのアレイでは、電磁吸収材を使用することができる。これは多くの異なる材料を用いて、また例えば短絡した導波路の端部でくさび型の吸収材を用いるなどの多くの異なる方法で行うことができる。しかし、吸収材を用いるのは高価であり、アレイアンテナの製造を大幅に複雑にする。さらに、吸収材を使用して充分な減衰を行うのは、スペースが限られているため、困難になりうる。また、吸収材では、特に高周波数、例えばミリ波では製造公差も問題になりうる。
【0037】
本開示は、減衰器を作るため、減衰機能を得るため、または終端処理機能を得るためにアレイアンテナに直接組み込まれるプラスチックの表面処理を利用する。より詳細には、アンテナ、アンテナの導波路部分、または導波路は一般的に、金属化プラスチックと、これ以降は減衰区間と呼ばれる区間とを含み、この区間にはアンテナの残りの部分、アンテナの導波路部分、アンテナ、または一般的な導波路と比べて異なる表面処理がなされている。例えば、減衰区間は単にまったく金属化されていない区間、またはプライマのみの区間とすることができる。異なる例では、減衰区間は異なる材料で金属化されている。別の例では、減衰区間は、対応する金属コーティングがより薄くなるように金属化されている。概して、減衰区間は抵抗損失によりRF信号を減衰させるよう構成される。
【0038】
態様によれば、減衰区間は50オームなどの望ましいシステムインピーダンスに適合されるが、任意の値を取り得る。したがって、減衰区間は導波路にうまく適合する終端器として使用することができる。
【0039】
開示される導波路の減衰区間は、アレイアンテナ内の放射素子を終端処理するのに使用することができて、したがってこの放射素子をダミー素子とすることができる。また、減衰区間は列全体を終端処理するのに使用することができて、したがって列全体をダミー列とすることができる。ダミー素子を終端処理するため、減衰区間はアレイアンテナの放射層上に直接配置することができるが、好ましくは分配層内に配置され、より好ましくは分配層に連結される導波路内に配置される。終端処理の目標は、ダミー素子が他の隣接する素子のいずれとも同等であると示すことである。
【0040】
本発明の一態様によれば、本明細書では図1A図1B図2図3A図3Bの例に示されるような層状構造を有するアレイアンテナ100が開示される。アレイアンテナは、複数の放射素子111を含む放射層110と、放射層に対向する分配層120とを含む。分配層は、無線周波数(RF)信号を複数の放射素子111へ分配するよう構成される。分配層は、少なくとも1つの分配層給電部121と、少なくとも1つの分配層給電部と少なくとも1つの放射素子の間へRF信号を誘導するよう構成されている少なくとも1つの第1導波路122とを含む。アレイアンテナは、少なくとも1つの分配層給電部121に連結される少なくとも1つの第2導波路130をさらに含む。第1導波路122と第2導波路130のいずれかは、第1種類の表面処理313がなされたプラスチックを含む。言い換えると、第1導波路と第2導波路のうちの一つまたは両方は第1種類の表面処理を含む。ここでは、第1種類の表面処理は金属化を含む。少なくとも1つの放射素子は減衰区間312により終端処理されるダミー素子である。減衰区間は、ダミー素子に連結されてプラスチックを含む導波路122、130のいずれかに配置される。好ましくは、減衰区間を備える導波路は中空の導波路であり、空気または何らかの誘電材料で充填することができる。そのような導波路の例は、矩形導波路、円形導波路、リッジ導波路、ギャップ導波路、リッジギャップ導波路である。分配層の第1導波路は、放射層の一部を利用して電磁波を閉じ込めることができる。例えば、放射層の一部は矩形導波路内の導波路壁のうちの一つを構成しうる。さらに、第1導波路は、1つまたは複数のリッジが分配層および/または放射層上に配置されるリッジ導波路であってもよい。さらに、減衰区間は、RF信号を減衰させるよう構成されている第2種類の表面処理314を含む。
【0041】
開示されるアレイアンテナは、表面実装型減衰器や電磁吸収材などの追加部品が必要ないので、非常に費用対効果が良い。また、アレイアンテナは製造するのが容易であり、これはさらにいろいろな意味でコストを節減する。さらに、開示されるアレイにより高周波数、例えばミリ波での優れた性能が可能となる。
【0042】
概して、本明細書では導波路は電磁波を誘導する構造物である。導波路は、図4Aおよび図4Bに示されているように中空の矩形管とすることができる。断面は円形やより一般的な形状などの多くの他の形状とすることができる。管は中空、または誘電材料で充填することができる。導波路はギャップ導波路であってもよい。
【0043】
層は2つの面を有する平面要素であり、厚さと関連している。厚さは面の大きさよりもずっと小さい、つまり、層は平坦、またはほぼ平坦な要素であり、つまり、弓状の形状のようである。一部の態様によれば、層は矩形または正方形である。しかし、円形または楕円形の円板を含む、より一般的な形状も適用可能である。
【0044】
少なくとも1つの分配層給電部121は、図2に示されているように分配層を通して無線周波数信号を伝送するよう構成されている貫通穴として配置される導波路であってもよい。また、分配層給電部は、図3Aおよび図3Bに示されているように、RF信号を分配層から離れる方向へ送るための第1導波路122の延長部を含むことができる。
【0045】
図2を参照すると、減衰区間は分配層のリッジギャップ導波路122上に配置することができる。また、減衰区間は分配層給電部(図示せず)に連結される導波路上に配置することもできる。このようにすることで、図中のすべての素子がうまく適合して終端処理される。そのような列は、複数の列を含むアレイアンテナ内のダミー列として有益となろう。図3Aおよび図3Bを参照すると、減衰区間は3列のアレイで最も左側の列の第2導波路130上に配置される。
【0046】
放射層、および/または、プラスチックを含まない第1導波路122もしくは第2導波路130は鋳造、成形、パンチ加工、および/または、機械加工された金属、例えば銅や黄銅などを含みうる。金属は高い電気伝導性を有するコーティングを含んでもよく、例えば銀もしくは銅がコーティングされたアルミニウム、または銀もしくは銅がコーティングされた亜鉛である。
【0047】
第1導波路122と第2導波路130のいずれかは第1種類の表面処理313がなされたプラスチックを含み、第1種類の表面処理は金属化を含む。金属化の目的は、電磁波が導波路を通って伝搬できるようにすることであり、これによりアレイアンテナが機能する。金属化は一般的に知られており、それゆえ本明細書では手短にしか記述されない。放射層も金属化プラスチックを含みうる。プラスチックの金属化は多くの異なる方法で行うことができる。プラスチックは直接金属化することができる、または、まずプライマをプラスチック表面に塗布し、その後にプラスチック表面を望ましい金属でコーティングすることができる。プラスチックの金属化で望ましい金属は、低損失で高い電気伝導性を有する、例えば銅、銀、金である。また、多くの他の金属や合金も考えられる。本明細書では金属化は広く解釈される。金属化は、表面に導電性ポリマーを配置することも含むことができる。そのような材料は所望の金属伝導性を有するので、「金属化」という用語に含まれる。
【0048】
多くの他の材料も考えられるが、適切なプライマの例は、ニッケル、クロム、パラジウム、チタンである。プライマは、所望の金属がプラスチック部品により良く付着するようにするために使用することができる。プラスチック表面を所望の形状とするのには、鋳造、成形、および/または機械加工などの多くの異なる方法がある。本明細書では、プラスチックは、固形物へ成形することができる様々な合成有機化合物や半合成有機化合物であると広く解釈される。
【0049】
開示されるアンテナ配列100における複数の放射素子111のうちの少なくとも1つは開口を含みうる。放射層110の開口は、例えば放射層を通って延びる溝型開口であってもよい。溝型開口は、正方形、丸型、より一般的な形状などの他の形状も考えられるが、好ましくは矩形である。溝型開口は放射層110の大きさと比べて好ましくは小さく、他の配置も可能ではあるが放射層上の平行な線の上に配置される。すべての放射素子は溝を含み、放射層110は、(例えば銅や黄銅の)金属シートを含みうる。放射層は、各放射素子と分配層の間に空洞を形成するよう構成されている空洞の副層を含むことができる。他の種類の放射素子も考えられることが理解される。
【0050】
第2導波路は、多くの異なる方法で少なくとも1つの分配層給電部121に連結することができる。例えば、第2導波路は、分配層給電部に直接連結された矩形導波路を単純に含みうる。例示の導波路が図4Aおよび図4Bに示されている。さらに、第2導波路130は分配層120に対向する層、例えばプリント基板(PCB)層131、および/もしくは遮蔽層132、または任意の他の種類の分配層/給電層などの中に配置することができる。
【0051】
放射層は、図2に示されているように、分配層とは別の部品として形成することができる。しかし、放射層と分配層は一つの部品の中に一体的に形成することができる。同様に、第2導波路は分配層給電部とは別とする、または一体的に形成することができる。図3Aおよび図3Bは、第2導波路が分配層給電部と一体的に形成されている例を示す。
【0052】
態様によれば、第1種類の表面処理313はプライマを含む。言い換えると、第1種類の表面処理の金属化は、所望の金属で金属化する前にプライマを配置するステップを含む。
【0053】
第2種類の表面処理314は未処理のプラスチックを含みうる、つまり、減衰区間は金属化されていない区間により構成される。このようにすることで、減衰区間は金属化(および最終的にはプライマ)でコーティングされないようマスキングすることができる。これにより容易な製造プロセスが提供される。アンテナ配列の表面処理プロセスは、以下のステップに従って行うことができる。第2表面処理がなされた部分はマスキングされ、第1表面処理がなされた部分は所望の厚さの金属化によりコーティングされる。ここでは、金属化の前に任意選択のプライマをこれらの部分へコーティングすることができる。このプロセスはマスキングを1回だけ含み、これは処理が簡単で正確であるため、利点である。
【0054】
態様によれば、第2種類の表面処理314はプライマを含み、つまり、減衰区間はプライマを含み、銅、銀、金などの通常望ましい金属での金属化は含まれない。このようにすることで、プラスチックを含む導波路全体をまずプライマでコーティングすることができる。その後、減衰区間は金属化でコーティングされないようマスキングすることができる。これにより容易な製造プロセスが提供される。減衰区間のプライマは、減衰区間を外側、例えば隣接する導波路から有利に遮蔽することができる。これにより、望ましくない結合を削減することができる。アンテナ配列の表面処理プロセスは、以下のステップに従って行うことができる。まず、第1表面処理および第2表面処理がなされたすべての部分にプライマがコーティングされる。最終的に、第2表面処理がなされた部分はマスキングされ、第1表面処理がなされた部分は所望の厚さの金属化によりコーティングされる。このプロセスはマスキングを1回だけ含む。
【0055】
第2種類の表面処理314は金属化を含みうる。その場合、金属化の厚さはRF信号を減衰させるよう構成される。減衰区間を比較的薄く金属化することで、減衰区間を外側、例えば隣接する導波路から有利に遮蔽することができる。これにより、望ましくない結合を削減することができる。アンテナ配列の表面処理プロセスは、以下のステップに従って行うことができる。まず、第1表面処理および第2表面処理がなされたすべての部分に任意選択でプライマをコーティングすることができる。次に、金属化の薄い層がすべての部分にコーティングされる。最終的に、第2表面処理がなされた部分はマスキングされ、第1表面処理がなされた部分は所望の厚さの金属化によりコーティングされる。このプロセスはマスキングを1回だけ含む。
【0056】
態様によれば、第1表面処理と第2表面処理のいずれかは保護コーティングを含みうる。この保護コーティングは、腐食防止、または機械的摩耗などからの保護のために使用することができる。さらに、本明細書に記載されるコーティングのステップのいずれかは複数の層の塗布を含みうる。例えば、プライマのコーティングはいくつかの層の塗布を含みうる。
【0057】
すでに述べたように、第2種類の表面処理314は、RF信号を減衰させるよう構成されている金属化の薄い層を含みうる。ここで、減衰区間はプラスチックの上に1つ(または複数の)金属化の薄い層により表面がコーティングされている。RF信号を減衰させるよう構成されている厚さは、いわゆる表皮厚さに関連する。表皮厚さは電場が材料内をどれだけ深く伝搬するかを記述し、周波数および材料特性に依存する(周波数が高いほど表面に含まれる電場が多くなる)。磁気損失や誘電損失がない場合、表皮厚さは以下で表すことができる。
【0058】
【数1】
【0059】
ここで、ρは導体の抵抗率であり、ωは角周波数であり、μは導体の透磁率であり、εは導体の誘電率である。
【0060】
従来の導波路では、低損失が望ましい場合に、金属(または導電性材料)が比較的厚い必要があり、これは表皮厚さより数倍大きな厚さを意味する。減衰区間は、高損失を与えて優れた終端処理を提供するために、代わりに薄い金属コーティングを含みうる。態様によれば、RF信号を減衰させるよう構成されている金属化の厚さは表皮厚さの3倍未満であり、好ましくは表皮厚さ未満であり、より好ましくは表皮厚さの3分の1未満である。
【0061】
薄い厚さによりもたらされる損失は、低い電気伝導性を有する材料と共に使用することができる。
【0062】
金属化コーティングが表皮厚さと同等の、またはより小さい厚さを有する場合、電場は金属化コーティング全体を貫通し、電流はコーティングの反対側(つまり、プラスチック側)にも存在して、この電流は電磁波を放射できる可能性がある。そのような放射は一種の漏れであり、望ましくないことがある。しかし、そのような漏れは外部の手段によって抑えることもできる。漏れは減衰区間に沿って進行する電磁波の強度を減少させうる一方で、抵抗損失は典型的には波を大幅に減衰させる。さらに、減衰区間の金属化を薄くし過ぎないのが望ましいことがあり、これは、金属化コーティングは例えば隣接する導波路から、または漏れによる自己干渉からいくらか遮蔽するからである。したがって、充分な減衰を提供するのに充分薄く、かつ有害な漏れ、または遮蔽問題の影響を受けない、厚さの範囲が存在する。
【0063】
有利には、コーティングの厚さは表面電流分布を実質的に変化させず、それゆえ特性インピーダンスを実質的に変化させない。これにより、通常のコーティングからの断絶が存在せず、これは、適合が維持されるということを意味する。
【0064】
減衰区間は通常の厚さ、つまり表皮厚さの数倍を有する不良導体を含みうる。この場合、遮蔽や漏れに関する問題はない。
【0065】
すでに述べたように、第2表面処理は未処理のプラスチック、つまりコーティングなしとすることができる。これにより、第1表面処理から第2表面処理への遷移時にいくらかの反射がありうる。しかし、2つの表面処理の段階的な遷移、および/または導波路の形状における緩やかな変化により、適合を改善することもできる。形状は、角状のものと同様の口広げ加工(flaring)により変更可能である。これは、強度を減衰させる目的でアンテナを提供すると考えることもできる。さらに、プラスチックを含む導波路122、130のいずれかは損失性プラスチックを含みうる。このようにすることで、不要な漏れが減衰される。減衰区間を含む導波路に損失性プラスチックを含むことは特に有利である。損失性プラスチックは、例えば高誘電損失の材料を含みうる、および/または、炭素もしくは同種のものが注入されたものでありうる。
【0066】
少なくとも1つのダミー素子を複数の放射素子111の外周に配置することができる。言い換えると、ダミー素子は放射層の界面に接続して配置される。態様によれば、外周上にあるすべての素子はダミー素子である。その場合、すべての能動素子はダミー素子により囲まれる。ここで、囲むとは、囲まれる物体の周りに境界を形成することを意味する。
【0067】
アレイアンテナ100は複数の列の放射素子111を含みうる。その場合、少なくとも1つの列は減衰区間により終端処理されるダミー列である。場合によっては、アレイの中のすべての能動素子が同様に振る舞うという所望の効果を実現するにはアレイアンテナのもっとも外側の2つの列に沿ってダミー素子を配置することだけが必要となる。これは、スロットアンテナを含むアレイの場合でありうる。それゆえ、少なくとも1つのダミー列を複数の列の外周に配置することができる。
【0068】
態様によれば、第1導波路はギャップ導波路であり、放射層110と分配層120のいずれかは分配層120と放射層110の中間にギャップ導波路を形成するよう構成されているメタマテリアル構造124を含む。また、メタマテリアル構造は、動作周波数帯において電磁放射がギャップ導波路から分配層給電部121および放射素子111を通過する方向以外の方向へ伝搬するのを防ぐようにも構成される。
【0069】
メタマテリアル構造により、分配層120は放射層100に直接接触して配置される、または放射層110から少し距離をおいて配置されて、この距離はアンテナ配列100の動作中心周波数の波長の4分の1より小さい。直接接触は、2つの層の一部分のみが接触していることを意味しうる。
【0070】
分配層におけるメタマテリアル構造の使用により、導波路からの損失が小さくなると共に、隣接する導波路間での無線周波数信号間の干渉が小さくなる。この結果が、分配層におけるメタマテリアル構造の使用と配置により高い信号対雑音比を維持できることであり、これは有利である。別の利点は、導波路を構成する2つの層の間に電気的な接触は必要ないことである。電気的な接触を確認する必要がないため高精度で組み立てる必要がないので、これは利点である。ただし、複数の層の間の電気的な接触は選択肢でもある。
【0071】
メタマテリアル構造は、人工磁気導体(AMC)などの高インピーダンス面を形成するよう構成される。高インピーダンスが導電面(つまり、理想的な場合には完全導電体(PEC)などの低インピーダンス面)に対向した場合、かつ2つの面が中心周波数の波長の4分の1より小さな距離だけ離されて配置された場合は、理想的な場合は、すべてのパラレルプレートモードがその周波数帯では遮断されるので、中間面に沿って、または中間面の間を伝搬する動作周波数帯の電磁波はない。言い換えると、高インピーダンス面および低インピーダンス面は2つの面の間に電磁バンドギャップを形成する。また、2つの面は互いに直接隣接して、つまり、互いに電気的に接続して配置することができる。中心周波数は、たいていは動作周波数帯の中央にある。現実的なシナリオでは、動作周波数帯の電磁波は中間面に沿った長さに従って減衰される。本明細書では、減衰させるとは、無線周波数信号などの電磁放射の振幅または強度を大幅に減少させることであると解釈される。減衰は好ましくは完全に行われ、この場合は減衰させると遮断するは同意であるが、そのような完全な減衰はいつでも実現可能ではないことが理解される。
【0072】
メタマテリアル構造で導波路の壁を置き換えて、ギャップ導波路を形成することができる。そのような導波路は、リッジギャップ導波路(RGW)を形成するためのリッジを含みうる。
【0073】
矩形分配層120の寸法の例は、厚さ5mmで縦横ともに100mmである。ただし、分配層は必ずしも矩形ではなく、円形や六角形などの他の形状も考えられる。
【0074】
メタマテリアル構造124は突出要素125の反復構造を含みうる。そのような突出要素は、メタマテリアル構造124を含む層110、120の上、つまり、放射層110および/または分配層120の上に一体的に形成することができる。分配層120と放射層110のいずれかは、少なくとも1つの第1ギャップ導波路を形成する、少なくとも1つの導波リッジ123を任意選択で含む。
【0075】
すでに述べたように、第2導波路130は分配層120に対向するプリント基板(PCB)層131上および/またはPCB層131に対向する遮蔽層132上に配置することができる。したがって、アンテナ配列100は、分配層120に対向するプリント基板(PCB)層131をさらに含むことがあり、PCB層は少なくとも1つのPCB層給電部を含む。
【0076】
分配層においてメタマテリアル構造を使用することで、PCB層131上のPCB層給電部から分配給電部224を通って少なくとも1つの第1導波路への移行時に高効率の結合が可能となり、これは損失を小さくする。PCB層131は、PCB層の片面または両面に配置される少なくとも1つのRF集積回路(IC)を任意選択で含む。少なくとも1つのPCB層給電部を、無線周波数信号をRF ICからPCBの反対側の面へ、分配層へと伝送するよう構成することができる。一例によれば、少なくとも1つのPCB層給電部は、分配層120の対応する開口に連結される貫通穴であり、この貫通穴は少なくとも1つのマイクロストリップ線路により給電される。あるいは、または組み合わせて、少なくとも1つのPCB層給電部を、無線周波数信号をRF ICから分配層に対向する側のPCBの面へ、分配層へと伝送するよう構成することができる。態様によれば、少なくとも1つのPCB層給電部は無線周波数信号をアンテナ配列100から離れる方へ、例えばモデムへ伝送するよう構成される。PCB層はプレス加工された、またはエッチング処理された金属板をグラウンドプレーンとして、または相補的なグラウンドプレーンとして含みうる。
【0077】
アンテナ配列100は、PCB層131に対向する遮蔽層132をさらに含みうる。遮蔽層132は、遮蔽層132とPCB層131の中間にギャップ導波路を形成するよう構成されている第2メタマテリアル構造を任意選択で含む。ギャップ導波路は第2導波路130を構成しうる。また、第2メタマテリアル構造は、動作周波数帯において電磁放射がギャップ導波路から少なくとも1つのPCB層給電部を通過する方向以外の方向へ伝搬するのを防ぐようにも構成される。第2メタマテリアル構造により、低損失で漏れの少ない、つまり、例えば隣接する導波路の間、または隣接するRFICの間での不要な電磁伝搬が少ない、コンパクトな設計が可能となる。さらに、第2メタマテリアル構造はPCB層をアンテナ配列の外側の電磁放射から遮蔽する。
【0078】
第2メタマテリアル構造は突出要素の反復構造を任意選択で含み、PCB層はグラウンドプレーンと少なくとも1つの平面伝送路とを任意選択で含んで、遮蔽層132とPCB層131の中間に少なくとも1つのギャップ導波路を形成する。ギャップ導波路は、例えば反転したマイクロストリップギャップ導波路であってもよい。ギャップ導波路は第2導波路130とすることができる。遮蔽層は2種類の突出要素を含みうる。例えば、幅が狭く背の高いピンと幅広で背の低いピンである。幅がより広く背がより低いピンは、遮蔽層とPCB層の間のRFICに適合するよう構成することができる。ピンは熱伝達を目的としてRFICと接触してもよい。
【0079】
態様によれば、分配層120は第3メタマテリアル構造を含み、この第3メタマテリアル構造は第1メタマテリアル構造124の反対側に配置される、つまり、第3メタマテリアル構造はPCB層131に対向する。このようにすることで、複数のギャップ導波路を分配層120とPCB層131の中間に形成することができる。これらのギャップ導波路は、PCB層131上のRFICとPCB層給電部との間で電磁信号を結合するのに使用することができる。任意のそのようなギャップ導波路は第2導波路130を構成しうる。第3メタマテリアル構造により、低損失で漏れの少ない、つまり、例えば隣接する導波路の間、または隣接するRFICの間での不要な電磁伝搬が少ない、コンパクトな設計が可能となる。さらに、第3メタマテリアル構造はPCB層をアンテナ配列の外側の電磁放射から遮蔽する。
【0080】
態様によれば、電気通信用送受信機またはレーダー送受信機はアンテナ配列100を含む。
【0081】
また、本明細書では層状構造を有するアレイアンテナ(100)を製造する方法も開示される。この方法は、
複数の放射素子111を含む放射層110を準備することと、
放射層に対向するように分配層120を配置することであって、分配層は無線周波数(RF)信号を複数の放射素子111へ分配するよう構成され、分配層は少なくとも1つの分配層給電部121と、RF信号を少なくとも1つの分配層給電部と少なくとも1つの放射素子の間へ誘導するよう構成される少なくとも1つの第1導波路122とを含む、配置することと、
少なくとも1つの第2導波路130を少なくとも1つの分配層給電部121に連結されるように配置すること、
を含み、
第1導波路122と第2導波路130のいずれかはプラスチックを含み、方法はさらに、
金属化を含む第1種類の表面処理313でプラスチックを含む導波路に表面処理を行うことと、
を含み、
少なくとも1つの放射素子は減衰区間312により終端処理されるダミー素子であり、方法はさらに、
ダミー素子に連結されてプラスチックを含む導波路122、130のいずれかに減衰区間を配置することであって、この減衰区間はRF信号を減衰させるよう構成されている第2種類の表面処理314を含む、配置すること、
を含む。
【0082】
本明細書では、無線周波数(RF)信号を誘導する導波路300、400も開示され、これらの導波路は金属化プラスチックを含む。導波路は減衰区間312をさらに含む。減衰区間は第2種類の表面処理314を含み、導波路の残りの部分は第1種類の表面処理313を含む。第1種類の表面処理は金属化を含み、第2種類の表面処理はRF信号を減衰させるよう構成される。
【0083】
開示される導波路300、400は、矩形導波路、円形導波路、または反復される突起状のピンなどのメタマテリアル構造に基づく導波路のいずれかとすることができる。また、多くの他の種類の導波路も考えられる。図4A図4B図5A図5Bは、開示される導波路の異なる例を示す。
【0084】
態様によれば、導波路300、400は互いに対向する第1層511および第2層512を含む。第1層と第2層のいずれかは、第1層511と第2層512の中間にギャップ導波路を形成するよう構成されているメタマテリアル構造521を含む。また、メタマテリアル構造は、動作周波数帯において電磁放射がギャップ導波路から意図された導波経路に沿う方向以外の方向へ伝搬するのを防ぐようにも構成される。
【0085】
意図された導波経路とは、電磁放射を誘導することを意図している経路である。例えば、マイクロ波装置が2つの別の導波路を含む場合、この2つの別の導波路が分離されることが意図され、意図された導波経路は各導波路に沿ったものとなる。メタマテリアル構造521は2つの導波路を分離する。意図された導波経路の他の例は企業の給電網であり、一つの導波路は分配給電部と放射素子を連結し、一つの導波路はPCB上の異なる集積部品を連結する。
【0086】
メタマテリアル構造により、第1層511および第2層512は互いに直接接触して配置される、または互いから少し距離をおいて配置され、この距離は開示される導波路300、400の動作中心周波数の波長の4分の1より小さい。直接接触は、2つの層の一部分のみが接触していることを意味しうる。
【0087】
第1層511と第2層512のいずれかにおけるメタマテリアル構造の使用により、導波路からの損失が小さくなると共に、隣接する導波路または回路における無線周波数信号間の干渉が小さくなる。一つの利点は、導波路を構成する2つの層の間に電気的な接触は必要ないことである。電気的な接触を確認する必要がないため高精度で組み立てる必要がないので、これは利点である。ただし、複数の層の間の電気的な接触は選択肢でもある。
【0088】
導波路300、400のメタマテリアル構造521は突出要素522の反復構造を含みうる。そのような突出要素は、メタマテリアル構造521を含む層511、512の上に一体的に形成することができる。第1層511と第2層512のいずれかは、第1層511と第2層512の中間に少なくとも1つの第1ギャップ導波路を形成する、少なくとも1つの導波リッジ523を任意選択で含む。
【0089】
導波路300、400の第1種類の表面処理313は、プライマを含みうる。言い換えると、第1種類の表面処理の金属化は、所望の金属で金属化する前にプライマを配置するステップを含む。
【0090】
導波路300、400の第2種類の表面処理314は未処理のプラスチックを含みうる、つまり、減衰区間は未処理のプラスチックにより構成しうる。
【0091】
態様によれば、導波路300、400の第2種類の表面処理314はプライマを含んでもよく、つまり、減衰区間はプライマを含み、銅、銀、金などの通常望ましい金属での金属化は含まれない。
【0092】
導波路300、400の第2種類の表面処理314は、金属化を含みうる。その場合、金属化の厚さはRF信号を減衰させるよう構成される。
【0093】
本明細書では、図6に示されているように、プラスチックを含む導波路300、400を製造する方法も開示される。この方法は、
第2種類の表面処理314で導波路の減衰区間312の表面処理を行うこと(S1)と、
第1種類の表面処理313で導波路の残りの部分411の表面処理を行うこと(S2)と、
を含み、
第1種類の表面処理は金属化を含み、第2種類の表面処理はRF信号を減衰させるよう構成される。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
【国際調査報告】